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特表2023-532687ハードコート組成物、及び熱可塑性ポリウレタンを含む複合フィルム
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  • 特表-ハードコート組成物、及び熱可塑性ポリウレタンを含む複合フィルム 図1
  • 特表-ハードコート組成物、及び熱可塑性ポリウレタンを含む複合フィルム 図2
  • 特表-ハードコート組成物、及び熱可塑性ポリウレタンを含む複合フィルム 図3
  • 特表-ハードコート組成物、及び熱可塑性ポリウレタンを含む複合フィルム 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】ハードコート組成物、及び熱可塑性ポリウレタンを含む複合フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09D 175/04 20060101AFI20230724BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20230724BHJP
   C08G 18/73 20060101ALI20230724BHJP
   C08G 18/75 20060101ALI20230724BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20230724BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20230724BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20230724BHJP
   C09D 5/00 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
C09D175/04
B32B27/40
C08G18/73
C08G18/75
C08G18/76 014
C08G18/65 011
C08G18/66 040
C09D5/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580728
(86)(22)【出願日】2021-06-02
(85)【翻訳文提出日】2022-12-27
(86)【国際出願番号】 IB2021054838
(87)【国際公開番号】W WO2022003447
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】63/045,424
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ル,ヨンシャン
(72)【発明者】
【氏名】ホー,チャーリー シー.
【テーマコード(参考)】
4F100
4J034
4J038
【Fターム(参考)】
4F100AK01B
4F100AK51
4F100AK51A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB03B
4F100CB05B
4F100JA05
4F100JB16
4F100JB16A
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4F100JK12A
4F100JL09
4F100JL10C
4F100YY00A
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CB07
4J034CC03
4J034CC08
4J034CC12
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4J034CC24
4J034CC26
4J034CC45
4J034CC52
4J034CC62
4J034CD04
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB05
4J034DB07
4J034DC02
4J034DC03
4J034DF01
4J034DF02
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4J034HA01
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4J034HC17
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4J034HC52
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4J034HC64
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4J034JA14
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4J034KB02
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4J034LA22
4J034MA14
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4J034QB13
4J034QB16
4J034QC03
4J034QC08
4J034QD04
4J034RA05
4J034RA07
4J034RA13
4J038DG111
4J038DG261
4J038MA07
4J038NA11
4J038NA12
4J038PB06
4J038PC08
(57)【要約】
本明細書では、ハードコート組成物、及び熱可塑性ポリウレタンを含む複合フィルム、を開示する。ハードコート組成物は、80重量パーセント以上のハードセグメント含有量を有する熱可塑性ポリウレタンを含む。熱可塑性ポリウレタンは、a)ジイソシアネートと、b)環状構造を含んでいてもよいポリオールと、c)鎖延長剤と、の反応生成物である。ポリオール又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは少なくとも1つの側鎖を含み、ジイソシアネート又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは環状構造を含む。複合フィルムは、1)対向する第1及び第2の主面を有するハードコート層と、2)ハードコート層の少なくとも一部分の上に配置された第2の層と、を含む。これらの材料は、適度な温度での良好な伸びと、高い硬度との両方を示しつつ、装飾機能及び/又は保護機能に役立つことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
80重量パーセント以上のハードセグメント含有量を有する熱可塑性ポリウレタンを含むハードコート組成物であって、前記熱可塑性ポリウレタンは、
a)ジイソシアネートと、
b)環状構造を含んでいてもよいポリオールと、
c)鎖延長剤と、
の反応生成物であり、前記ポリオール又は前記鎖延長剤のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの側鎖を含み、前記ジイソシアネート又は前記鎖延長剤のうちの少なくとも1つが環状構造を含む、ハードコート組成物。
【請求項2】
前記ハードセグメント含有量が90重量パーセント以上である、請求項1に記載のハードコート組成物。
【請求項3】
前記ジイソシアネートが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,4-シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、並びにこれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択される、請求項1又は2に記載のハードコート組成物。
【請求項4】
前記ジイソシアネートが環状構造を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項5】
前記鎖延長剤が、ジオール、ポリエステルジオール、2~4個の炭素原子を有するオキシアルキレン基を有するポリ(オキシ)アルキレンジオール、又はこれらの組み合わせを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項6】
前記鎖延長剤が環状構造を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項7】
前記ポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、脂肪酸ダイマージオール、並びにこれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択される、請求項1~6のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項8】
前記ポリオールが側鎖を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項9】
前記ポリオールが、以下の式(I):
【化1】
[式中、R及びRは、独立して、(C~C40)アルキレン、(C~C40)アルケニレン、(C~C20)アリーレン、(C~C40)アシレン、(C~C20)シクロアルキレン、(C~C20)アラルキレン、又は(C~C40)アルコキシエンであり、これらは置換又は非置換であってもよく、R及びRは、独立して、-H、(C~C40)アルキル、(C~C40)アルケニル、(C~C20)アリール、(C~C20)アシル、(C~C20)シクロアルキル、(C~C20)アラルキル、及び(C~C40)アルコキシから選択され、これらは置換又は非置換であってもよく、nは、1以上の正の整数である]の構造を有する、請求項1~8のいずれか一項に記載のハードコート組成物。
【請求項10】
1)対向する第1及び第2の主面を含むハードコート層であって、80重量パーセント以上のハードセグメント含有量を有する熱可塑性ポリウレタンを含み、前記熱可塑性ポリウレタンは、a)ジイソシアネートと、b)環状構造を含んでいてもよいポリオールと、c)鎖延長剤と、の反応生成物であり、前記ポリオール又は前記鎖延長剤のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの側鎖を含み、前記ジイソシアネート又は前記鎖延長剤のうちの少なくとも1つが環状構造を含む、ハードコート層と、
2)前記ハードコート層の少なくとも一部分の上に配置された第2の層と、を含む、複合フィルム。
【請求項11】
前記第2の層が接着剤層である、請求項10に記載の複合フィルム。
【請求項12】
前記接着剤層が、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、又はこれらの組み合わせを含む、請求項11に記載の複合フィルム。
【請求項13】
前記第2の層がポリマー層である、請求項10に記載の複合フィルム。
【請求項14】
前記ハードコート層と前記第2の層との間に配置されたカラーコーティングを更に含む、請求項10~13のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【請求項15】
前記ハードコート層が、請求項1~9のいずれか一項に記載のハードコート組成物を含む、請求項10~14のいずれか一項に記載の複合フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ハードコート組成物及びそれに由来するフィルムを提供する。より具体的には、提供されるポリウレタン組成物は、保護及び装飾フィルム用途に好適な熱可塑性ポリウレタンである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンは、大きな商業的及び産業的重要性を有するポリマーの幅広いファミリーを表している。これらの材料は、広範囲の材料特性を有するように配合することができるが、ポリウレタンは、それらの耐摩耗性、靭性、柔軟性、耐衝撃性、引裂強度、及び耐化学薬品性について良く知られている。主要用途としては、フィルム、コーティング、エラストマー、及び発泡体が挙げられる。フィルム及びコーティングは、環境耐候性、化学曝露、熱、及び/又は摩耗から基材を保護する際に特に有利であり得る。ポリウレタンはまた、高度に透明であるように加工することもでき、必要に応じて、装飾用途のためにグラフィック技術によってフィルム及びコーティングに形成することができる。
【0003】
化学的には、ポリウレタンは、それらの特徴的なカルバメート(-NH-CO-O-)結合によって区別され、全般的には、多官能性イソシアネートを、多官能性ジオールと、又はより全般的にはポリオールと、触媒の存在下で反応させることによって調製される。ポリウレタンには、熱硬化性及び熱可塑性の2つの全般的なタイプがある。熱硬化性ポリウレタンは、共有結合によって高度に架橋されている。熱可塑性ポリウレタンは、自己配列ブロック構造を有する直鎖状ポリマー鎖によって特徴付けられる。これらのポリウレタンは、概して架橋されていないが、軽度に架橋することもできる。熱可塑性ポリウレタンのブロック構造は、概して、末端間で互いに共有結合された、交互の「ハード」及び「ソフト」セグメントを含む。ハードセグメントは、凝集して、周囲温度で物理的な架橋のように機能する結晶領域を形成するが、加熱すると溶融状態に変化する。結果として、熱可塑性ポリウレタンは、三次元物品への熱成形によく適しており、容易に再加工することができる。
【0004】
ポリウレタンの特定の有利な用途は、ハードコート用途でのそれらの使用と関連がある。これらには、例えば、過酷な環境条件から自動推進ビークル(automotive vehicle)の外面を保護する塗料保護フィルム又は塗料交換フィルムが含まれる。そのような状態としては、石、砂、デブリ、及び昆虫の衝突、並びに全般的な屋外曝露が挙げられ、これは、経時的に自動推進ビークルの外部を実質的に劣化させる可能性がある。複合ポリウレタンフィルムは、米国特許第5,405,675号(Sawkaら)、同第5,468,532号(Hoら)、同第6,607,831号(Ho)、同第6,383,644号(Fuchs)、並びに国際公開第2008/042883号(Hoら)及び同第2016/018749号(Hoら)に既に記載されている。
【発明の概要】
【0005】
ハードコート用途に関して、熱硬化性ポリウレタン材料及び熱可塑性ポリウレタン材料は、矛盾する利点及び欠点を示す。熱可塑性塗料保護フィルムは、最小性能要件を満たすことができるが、向上した耐汚染性、耐化学薬品性、及び紫外線(ultraviolet light、UV)安定性からの利益を得ることができる。熱硬化性ポリウレタンは、全般的に、高度の耐汚染性、耐化学薬品性、及び耐UV性を示すが、複数のコーティングステップを必要とし、製造コストを押し上げ、また、自動推進ビークルの不規則な輪郭に対して伸縮かつ適合するその能力を阻害する可能性がある高いフィルム弾性率を有する。更に、高い硬度及び伸び(elongation)の両方を同時に達成することは、従来技術の熱可塑性ポリウレタン材料によって適切に対処されてこなかった技術的問題である。
【0006】
本明細書では、改善された熱可塑性ポリウレタンの組成物、物品、及び関連する方法を開示する。これらの組成物は、既存のハードコート組成物と比較して、驚くほど高い耐汚染性、耐摩耗性、耐引っ掻き性、耐UV性、及びガラス処理化学薬品に対する耐性を示すことが見出された。これらの材料の加工性により、保護及び装飾用途のための、デュアル真空熱成形(真空接触ボンディングと呼ばれることもある)部品に特に適している。更に、これらのポリウレタンは、より軟質で反応性の押出成形された熱可塑性ポリウレタンコーティングに対して優れた接着性を示し、それにより、ブラックアウトフィルムからデュアル真空熱成形部品までに及ぶ様々な潜在的な用途を有するハイブリッド複合フィルム構成が可能になる。
【0007】
第1の態様では、ハードコート組成物が提供される。ハードコート組成物は、80重量パーセント以上のハードセグメント含有量を有する熱可塑性ポリウレタンを含む。熱可塑性ポリウレタンは、a)ジイソシアネートと、b)環状構造を含んでいてもよいポリオールと、c)鎖延長剤と、の反応生成物である。ポリオール又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは少なくとも1つの側鎖を含み、ジイソシアネート又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは環状構造を含む。
【0008】
第2の態様では、複合フィルムが提供される。複合フィルムは、1)対向する第1及び第2の主面を含むハードコート層と、2)ハードコート層の少なくとも一部分の上に配置された第2の層と、を含む。ハードコート層は、80重量パーセント以上のハードセグメント含有量を有する熱可塑性ポリウレタンを含む。熱可塑性ポリウレタンは、a)ジイソシアネートと、b)環状構造を含んでいてもよいポリオールと、c)鎖延長剤と、の反応生成物である。ポリオール又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは少なくとも1つの側鎖を含み、ジイソシアネート又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは環状構造を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】様々な実施形態による複合フィルムの断面概略立面図である。
図2】様々な実施形態による複合フィルムの断面概略立面図である。
図3】様々な実施形態による複合フィルムの断面概略立面図である。
図4】様々な実施形態による複合フィルムの断面概略立面図である。
【0010】
定義
本明細書で使用するとき、
「周囲条件」は、摂氏25度の温度及び1気圧(約100キロパスカル)の圧力を意味し、
「触媒」は、化学反応の速度を増すことができる物質を意味し、
「ジオール」は、厳密に2個のヒドロキシル官能基を有する化合物を意味し、
「ジイソシアネート」は、厳密に2個のイソシアネート官能基を有する化合物を意味し、
「硬化」は、流体から流動性がより少ない状態に、粘性から非粘性の状態に、可溶性から不溶性の状態に変化させるように、化学反応中の重合性材料の消費によりその量を低減するように、又は特定の分子量の材料からより高分子量にするように、組成物の物理的状態及び/又は化学的状態を変化させることを意味し、
「硬化性」は、硬化することができることを意味し、
「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート官能基を有する化合物を意味し、
「ポリオール」は、2つ以上のヒドロキシル官能基を有する化合物を意味している。
「短鎖ジオール」は、最大185グラム/モル(g/mol)の重量平均分子量を有するジオールを意味している。
「骨格鎖(backbone)」又は「主鎖(main chain)」に対する「側鎖」は、重合によって形成された炭素原子の直鎖から分岐している2つ以上の原子の群である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書で使用するとき、「好ましい」及び「好ましくは」という用語は、特定の状況下で特定の利点をもたらすことができる本明細書に記載される実施形態を指す。ただし、他の実施形態もまた、同じ又は他の状況下で好ましい場合がある。更には、1つ以上の好ましい実施形態の記述は、他の実施形態が有用ではないことを含意するものではなく、他の実施形態を本発明の範囲から排除することを意図するものでもない。
【0012】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用する場合、文脈上別段の明記がない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は複数の指示物を含むものとする。したがって、例えば、「a」又は「the」が付いた構成要素への言及には、構成要素及び当業者に公知のその等価物のうちの1つ以上を含んでもよい。
【0013】
「含む」という用語及びその変化形は、これらの用語が添付の記載に現れた場合、限定的意味を有していないことに注意されたい。また更に、「a」、「an」、「the」、「少なくとも1つの」及び「1つ以上の」は、本明細書では互換的に使用される。
【0014】
左、右、前方、後方、上部、底部、側、上方、下方、水平、垂直などの相対語が、本明細書で使用される場合があり、その場合、特定の図において見られる視点からのものである。しかしながら、これらの用語は、記載を簡単にするために使用されるに過ぎず、決して本発明の範囲を制限するものではない。図は、必ずしも一定の比率の縮尺ではない。
【0015】
本明細書全体を通して、「一実施形態」、「特定の実施形態」、「1つ以上の実施形態」又は「実施形態」に対する言及は、その実施形態に関して記載される特定の機能部、構造、材料又は特徴が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体を通して「1つ以上の実施形態では」、「特定の実施形態では」、「一実施形態では」又は「実施形態では」などの句の出現は、必ずしも本発明の同一の実施形態に言及しているわけではない。更に、特定の機能部、構造、材料、又は特徴は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わされてもよい。
【0016】
フィルム構成
一態様では、
1)対向する第1及び第2の主面を含むハードコート層であって、80重量パーセント以上のハードセグメント含有量を有する熱可塑性ポリウレタンを含み、その熱可塑性ポリウレタンは、a)ジイソシアネートと、b)環状構造を含んでいてもよいポリオールと、c)鎖延長剤と、の反応生成物であり、そのポリオール又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つが少なくとも1つの側鎖を含み、そのジイソシアネート又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つが環状構造を含む、ハードコート層と、
2)ハードコート層の少なくとも一部分の上に配置された第2の層と、を含む、複合フィルムが提供される。
【0017】
1つの例示的な実施形態による複合フィルムを、図1に概略図として示しており、番号100を付記している。複合フィルム100は、第1の主面(例えば、上面)104と、対向する第2の主面(例えば、底面)106と、を有するハードコート層102を含む。複合フィルム100は、ハードコート層102上に配置され、ハードコート層102の第2の主面106にわたって延びている第2の層108を更に含む。任意選択的に、また示したように、第2の層108及びハードコート層102は、層102、108が本質的に第2の表面106全体に沿って互いに直接接触するように、互いにラミネートされる(laminated)。必要に応じて、第2の層108は、第2の表面106の一部分のみに沿ってハードコート層102に接触し得る。
【0018】
いくつかの実施形態では、第2の層108は、接着剤層、例えば、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、又はこれらの組み合わせを含む接着剤層である。いくつかの実施形態では、第2の層108は、(例えば、非接着性)ポリマー層、例えば、ポリマーフィルム又は自己支持性基材である。ポリマー層に好適なポリマー材料は、ポリウレタン又はポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)を含み得る。
【0019】
第2の層108は、図1において直線的ジオメトリーを有するものとして示されているが、いくつかの異なる配置のいずれかを取り得る。例えば、第2の層108は、正及び/又は負の曲率の領域を含む三次元輪郭を有し得る。例示的な第2の層としては、シート、装飾物品、グラフィック、及びこれらの組み合わせが挙げられる。第2の層108が平坦なシートとして形成された場合であっても、その後に、その元の形状とは異なる形状にダイカット、熱成形、エンボス加工、又は他の方法で形成することができる。図1には示されていないが、接着剤又は機械的デバイスを使用して、第2の層108を別個の基材に固定することが可能である。
【0020】
ハードコート層102は、手動で、用途に基づいて任意の好適な厚さで提供することができる。典型的には、ハードコート層102は、5マイクロメートル~300マイクロメートルの範囲の厚さを有する。車体パネル上に形成された保護フィルムのための典型的な全体的なフィルムの厚さは、少なくとも50マイクロメートル、少なくとも75マイクロメートル、又は少なくとも100マイクロメートルである。同じ又は代替の実施形態では、フィルムの厚さは、最大1.27ミリメートル、最大1.1ミリメートル、又は最大1.0ミリメートルである。
【0021】
図2は、2つの代わりに3つの層を有する別の実施形態による複合フィルム200の概略図を示している。図1の実施形態と同様に、複合フィルム200は、ハードコート層202と、ハードコート層202上に配置され、ハードコート層202の第2の表面206に沿って互いに接触している第2の層208と、を含む。第2の層208は、第1の主面(例えば、上面)210及び対向する第2の主面(例えば、底面)212を有する。この実施形態では、第2の層208は、ポリマー層であることができ、複合フィルムは、第2の層208の第2の主面212に接触しそれに沿って延びている接着剤層214を更に含む。
【0022】
図3は、ハードコート層302がプライマー層316に取り付けられ、次にカラーコーティング318に取り付けられ、次に第2の層308上に配置されている、更に別の実施形態による複合フィルム300の概略図を示している。したがって、プライマー層316は、ハードコート層302とカラーコーティング層318との間に配置され、カラーコーティング層318は、ハードコート層302と第2の層308との間に配置されている。カラーコーティング318は、例えば、金属蒸気コート、アクリルカラーコート、又はポリマー結合剤及び着色剤のうちの1つ以上を含み得る。ポリマー結合剤は、熱可塑性又は熱硬化したものであり得る。典型的には、複合フィルム300は、2.5%以下、又は2.0%以下、1.5%以下、又は1.0%以下のヘイズを示す。ヘイズは、任意の好適な方法によって測定することができる。いくつかの実施形態では、ヘイズの測定は、BYK Haze-Gard Plus(BYK Gardner USA,Columbia,Maryland)を使用することによって、決定することができる。各複合フィルム試料上の6つの異なるスポットで測定を行い、平均化する。
【0023】
1つ以上の追加の層を、複合フィルムのいずれかの主面にコーティング又はラミネートしてもよい。あるいは、1つ以上の中間層を、複合フィルム中に存在する任意の2つの隣接している層の間に挿入してもよい。かかる層は、上記の層と類似していてもよく、又は構造的若しくは化学的に異質であってもよい。異質の層としては、例えば、異なるポリマーの押出成形シート、金属蒸気コーティング、印刷されたグラフィックス、粒子、及びプライマーを挙げることができ、それらは、連続又は不連続であり得る。例えば、図2では、2つの層の間の接着の質を改善するために、第2の層208と接着剤層214との間に結合層を配置してもよい。
【0024】
必要に応じて、複合フィルム100、200、300は、ビークル本体パネルなどの基材上にラミネートすることができ、第2の層108、208、308は、基材と接触して、コーティングされた物品を提供する。あるいは、第2の層108、208、308は、それが既に基材に接着されている又はそうでなければ結合されている配置で提供され得る。いくつかの実施形態では、基材は、三次元輪郭を有するポリマー基材である。有用な基材としては、例えば、自動推進ビークルにおける内部構成要素の形状を有する射出成形基材を挙げることができる。
【0025】
図4は、ハードコート層が高度に充填されていて不透明な「ブラックアウト」フィルムを形成する更に別の実施形態による二層複合フィルム400を示している。そのようなフィルムは、例えば、自動車用途のための塗料交換フィルムに好適な場合がある。複合フィルム400は、図示したように、接着剤層414上に直接コーティングされたハードコート層402を含む。ハードコート層402は、フィルム全体を不透明にするために黒色顔料又は染料で高度に充填されるという点で上記したものとは異なる。ブラックアウトフィルム用途では、接着剤層414は、一般に感圧接着剤層であるが、他の接着剤も可能である。
【0026】
上記の図には示されていないが、露出した接着剤層表面(例えば、接着剤層214、414)を有する複合フィルムは、接着剤層表面にわたって延びていてそれと接触している剥離ライナーを更に含み得る。剥離ライナーは、接着剤層がハードコート層と剥離ライナーとの間に挿入されるように、接着剤層の少なくとも一部分の上に剥離可能に結合される。この配置は、接着剤層を保護し、複合フィルムの取り扱いを容易にする。
【0027】
1つ以上の追加の層は、ハードコート層102、202、302、402の外向き表面上に恒久的又は一時的に配置することができる。例えば、ハードコート層は、それ自体が複数のハードコート層を含み得る。ハードコート層102、202、302と同様に、本明細書に記載の他の層のいずれも、複合フィルムの外観を変更するために染色又は着色され得る。
【0028】
前述のハードコート層、第2の層(例えば、接着剤層又はポリマー層)、カラーコーティング、プライマー層、及び他の補助層の化学組成に関する更なる詳細を以下に記載する。
【0029】
ハードコート組成物
典型的には、複合フィルムの露出した外面上において、ハードコート層は、少なくとも1つのポリイソシアネート及び少なくとも1つのポリオールを重合することによって合成されたポリウレタン層から構成される。より具体的には、第1の態様では、ハードコート組成物は、80重量パーセント以上のハードセグメント含有量を有する熱可塑性ポリウレタンを含み、その熱可塑性ポリウレタンは、
a)ジイソシアネートと、
b)環状構造を含んでいてもよいポリオールと、
c)鎖延長剤と、の反応生成物であり、ポリオール又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは少なくとも1つの側鎖を含み、ジイソシアネート又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは環状構造を含む。
【0030】
ポリウレタン合成において使用されるポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリオレフィンポリオール、脂肪酸ダイマージオール、並びにこれらのコポリマー及び混合物が挙げられる。好適なポリオールの例としては、DESMOPHENの商標名で、Covestro LLC(Pittsburgh,PA)から市販されている材料が挙げられる。ポリオールは、ポリエステルポリオール(例えば、DESMOPHEN C1100、C1200、850、及び1700、又はLanxess AG(Cologne,Germany)から商標名FOMREZで入手可能)又はStepan Company(Northfield,IL)からSREPANPOLで入手可能;ポリエーテルポリオール(例えば、DESMOPHEN 1262BD、1110BD、1111BD、又はクラレ(東京)からKURARAY P-500、P-1010、P-2010、P-3010、P-4010、P-5010、P-6010、P-2011、P-520、P-1020、P-2020、P-1012、P-2012、P-530、P-2030、及びP-2050の商標名で市販されている材料);ポリカプロラクトンポリオール、例えば、Ingevity(North Charleston,SC)から商標名CAPAで入手可能なカプロラクトンポリオール(例えば、CAPA 2043、2054、2100、2121、2200、2201、2200A、2200D、2100A、3031、3091、及び3051);ポリカーボネートポリオール(例えば、Picassian Polymers(Boston,MA)から商標名PC-1122、PC-1167、及びPC-1733で入手可能なポリカーボネートポリオール、Covestro LLCから商標名DESMOPHEN C2102、2202、C XP 2716、C XP 2613で入手可能なポリカーボネートポリオール、及びクラレから商標名KURARAY C-590、C-1090、C-2090、及びC-3090で入手可能なポリカーボネートポリオール);ポリオレフィンポリオール(例えば、商標名NISSO-PBで日本曹達から入手可能なポリオレフィンポリオール);脂肪酸ダイマージオール(例えば、Croda Inc(Newark,New Jersey)から入手可能な商標名PRIPOL又はPRIPLASTの脂肪酸ダイマージオール(例えば、ダイマー酸))であることができる。
【0031】
いくつかの実施形態では、ポリオールは、500グラム/モル(g/mol)以上、550g/mol以上、600g/mol以上、650g/mol以上、700g/mol以上、750g/mol以上、800g/mol以上、850g/mol以上、900g/mol以上、950g/mol以上、又は1,000g/mol以上の数平均(Mn)分子量、かつ2,000g/mol以下、1,900g/mol以下、1,800g/mol以下、1,700g/mol以下、1,600g/mol以下、1,500g/mol以下、1,400g/mol以下、1,300g/mol以下、1,200g/mol以下、若しくは1,100g/mol以下のMwを有する。
【0032】
いくつかの実施形態では、ポリオールは、以下の式(I):
【化1】
[式中、R及びRは、独立して、(C~C40)アルキレン、(C~C40)アルケニレン、(C~C20)アリーレン、(C~C40)アシレン、(C~C20)シクロアルキレン、又は(C~C20)アラルキレン、又は(C~C40)アルコキシエンであり、これらは置換又は非置換であってもよく、R及びRは、独立して、-H、-OH、(C~C40)アルキル、(C~C40)アルケニル、(C~C20)アリール、(C~C20)アシル、(C~C20)シクロアルキル、(C~C20)アラルキル、及び(C~C40)アルコキシから選択され、これらは置換又は非置換であってもよく、nは、1以上の正の整数(例えば、2、4、5を超える、又は更に10を超える)である]の構造を有する。R~Rのいずれかに好適な置換基としては、例えば、アルキル、シクロヘキシル、ベンジル、アリール、アルコキシ、及び/又はアリールオキシが挙げられる。
【0033】
式(I)による好適なカルボン酸の具体例としては、グリコール酸(2-ヒドロキシエタン酸)、乳酸(2-ヒドロキシプロパン酸)、コハク酸(ブタン二酸)、3-ヒドロキシブタン酸、3-ヒドロキシペンタン酸、テレフタル酸(ベンゼン-1,4-ジカルボン酸)、ナフタレンジカルボン酸、4-ヒドロキシ安息香酸、6-ヒドロキシナフタラン-2-カルボン酸、シュウ酸、マロン酸(プロパン二酸)、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸(ヘプタン二酸)、エタン酸、スベリン酸(オクタン二酸)、アゼライン酸(ノナン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、グルタル酸(ペンタン二酸)、ドデカンジオン酸、ブラシル酸、タプス酸、マレイン酸((2Z)-ブタ-2-エン二酸)、フマル酸((2E)-ブタ-2-エン二酸)、グルタコン酸(ペンタ-2-エン二酸)、2-デセン二酸、トラウマチン酸((2E)-ドデカ-2-エン二酸)、ムコン酸((2E,4E)-ヘキサ-2,4-ジエン二酸)、グルチン酸(glutinic acid)、シトラコン酸((2Z)-2-メチルブタ-2-エン二酸)、メサコン酸((2E)-2-メチル-2-ブテン二酸)、イタコン酸(2-メチリデンブタン二酸)、リンゴ酸(2-ヒドロキシブタン二酸)、アスパラギン酸(2-アミノブタン二酸)、グルタミン酸(2-アミノペンタン二酸)、タルトン酸(tartonic acid)、酒石酸(2,3-ジヒドロキシブテン二酸)、ジアミノピメリン酸((2R,6S)-2,6-ジアミノヘプタン二酸)、サッカリン酸((2S,3S,4S,5R)-2,3,4,5-テトラヒドロキシヘキサン二酸)、メキソシュウ酸(mexooxalic acid)、オキサロ酢酸(オキソブタン二酸)、アセトンジカルボン酸(3-オキソペンタン二酸)、アルビナリン酸、フタル酸(ベンゼン-1,2-ジカルボン酸)、イソフタル酸、ジフェン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、ダイマー脂肪酸、又はこれらの混合物が挙げられる。好ましい酸は、テレフタル酸(ベンゼン-1,4-ジカルボン酸)、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸(ヘプタン二酸)、スベリン酸(オクタン二酸)、アゼライン酸(ノナン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカンジオン酸(dedecandioic acid)、フタル酸(ベンゼン-1,2-ジカルボン酸)、イソフタル酸、ダイマー脂肪酸、又はこれらの混合物である。最も好ましい酸は、テレフタル酸(ベンゼン-1,4-ジカルボン酸)、アジピン酸(ヘキサン二酸)、フタル酸(ベンゼン-1,2-ジカルボン酸)、イソフタル酸、ダイマー脂肪酸、又はこれらの混合物である。
【0034】
ポリオール又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つの構造中に側鎖が存在していると、得られるポリウレタンの結晶化は有利に減少し、それは、ポリウレタンの硬度を減少させることもなく、ポリウレタンの脆さを抑える傾向があることが発見された。いくつかの実施形態では、ポリオールは側鎖を含む。いくつかの実施形態では、鎖延長剤は側鎖を含む。任意選択的に、ポリオール及び鎖延長剤の両方が、それらの構造中に側鎖を有することができる。選択実施形態では、ポリオールは、その構造中に少なくとも1つの環を含む、すなわち、環状構造を含む。
【0035】
ジイソシアネートの例としては、芳香族ジイソシアネート(例えば、2,6-トルエンジイソシアネート;2,5-トルエンジイソシアネート;2,4-トルエンジイソシアネート;m-フェニレンジイソシアネート;p-フェニレンジイソシアネート;メチレンビス(o-クロロフェニルジイソシアネート);メチレンジフェニレン-4,4’-ジイソシアネート;ポリカルボジイミド変性メチレンジフェニレンジイソシアネート;(4,4’-ジイソシアナト-3,3’,5,5’-テトラエチル)ジフェニルメタン;4,4’-ジイソシアナト-3,3’-ジメトキシビフェニル(o-ジアニシジンジイソシアネート);5-クロロ-2,4-トルエンジイソシアネート;及び1-クロロメチル-2,4-ジイソシアナトベンゼン)、芳香-脂肪族ジイソシアネート(例えば、m-キシリレンジイソシアネート及びテトラメチル-m-キシリレンジイソシアネート);脂肪族ジイソシアネート(例えば、1,4-ジイソシアナトブタン;1,6-ジイソシアナトヘキサン;2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート;1,12-ドデカンジイソシアネート);脂環式ジイソシアネート(例えば、メチレンジシクロヘキシレン-4,4’-ジイソシアネート;3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(イソホロンジイソシアネート);2,2,4-トリメチルヘキシルジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン;及びシクロヘキシレン-1,4-ジイソシアネート)、2つのイソシアネート官能基によって終端されたポリマー又はオリゴマー化合物(例えば、ポリオキシアルキレン、ポリエステル、ポリブタジエニルなど)(例えば、トルエン-2,4-ジイソシアネート末端ポリプロピレンオキシドグリコール);Covestro LLC(Pittsburgh,PA)から商標名MONDUR又はDESMODUR(例えば、DESMODUR XP7100及びDESMODUR 3300)で市販されているポリイソシアネート;及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
これらのうち、特に有利なジイソシアネートとしては、脂肪族ジイソシアネートが挙げられる。脂肪族ジイソシアネートは、概して、その芳香族同等物に比べて、より優れた耐候性をもたらすことが観察された。特に好ましい種としては、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(tetramethylxylene diisocyanate、TMXDI)、1,4-シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、並びにこれらのコポリマー及び混合物が挙げられる。選択実施形態では、ジイソシアネートは、その構造中に少なくとも1つの環を含む、すなわち、環状構造を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、鎖延長剤は、最大400g/mol、最大300g/mol、又は最大200g/molの重量平均分子量を有する。鎖延長剤が最大185g/molの重量平均分子量及び2つのヒドロキシル基を有するとき、それは短鎖ジオールとみなされる。鎖延長剤のサイズは、概して、化学構造よりも重要である。理論に拘束されることを望むものではないが、比較的小さいサイズの鎖延長剤は、得られるポリウレタンの任意の結晶構造の生成を最小限に抑える又は防止するのを助けることによって、非晶質構造の形成を助けると考えられる。好適な鎖延長剤としては、例えば、限定するものではないが、ジオール、ポリエステルジオール、2~4個の炭素原子を有するオキシアルキレン基を有するポリ(オキシ)アルキレンジオール、又はこれらの任意の組み合わせが挙げられる。好適な鎖延長剤の代表的な例としては、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、1,4-ブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、ビス(2-ヒドロキシルエチル)ヒドロキノン(bis(2-hydroxylethyl)hydroquinone、HQEE)、及びこれらの組み合わせが挙げられる。3-メチル-1,5-ペンタンジオール(3-Methyl-1,5-pentanediol、MPD)は、東京化成工業(東京)から市販されており、1,4-ブタンジオールは、BASF(Ludwigshafen,Germany)から市販されており、1,4-シクロヘキサンジメタノール及び1,6-ヘキサンジオールは、各々、Sigma Aldrich(St.Louis,MO)から市販されている。選択実施形態では、鎖延長剤は、その構造中に少なくとも1つの環を含む、すなわち、環状構造を含む。
【0038】
好ましい実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、実質的に非架橋である。これらの場合、上記ジイソシアネート及びポリオールは、概してそれぞれ、ジイソシアネート及びジオールであり、これらの成分の各々は、2の官能価を有する。そのような官能基は、ポリウレタン材料を高温で再加工することを可能にする、長い直鎖状ポリマー鎖を生成する。それにもかかわらず、場合によっては、低い架橋度が許容される場合がある。
【0039】
熱可塑性ポリウレタンの直鎖状ポリマー鎖は、概して、長い低極性の「ソフトセグメント」及びより短い高極性の「ハードセグメント」を含有する。いくつかの実施形態では、ソフト及びハードセグメントは、一段階反応で合成され、イソシアネート、短鎖ジオール、及び長鎖ジオールを含む。変換時に、イソシアネート及び短鎖ジオールは、集合的にハードセグメントを形成し、一方、長鎖ジオール単独はソフトセグメントを形成する。周囲条件で、ハードセグメントは、ポリウレタンの微細構造中に結晶又は擬結晶を形成し、これがその弾性の主要因となる。ソフトセグメントは、ポリウレタン材料の容易な伸長を可能にする連続的マトリクスを与える。ソフトセグメント部分は、ポリウレタン組成物の多数派相であってもそうでなくてもよい。
【0040】
長鎖ジオールは、短鎖ジオールの重量平均分子量よりも有意に大きい重量平均分子量を有する。いくつかの実施形態では、例えば、長鎖ジオールは、少なくとも500g/mol、少なくとも600g/mol、少なくとも700g/mol、少なくとも800g/mol、少なくとも900g/mol、又は少なくとも950g/molの重量平均分子量を有する。
【0041】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、熱可塑性ポリウレタンの総重量に対して、少なくとも80重量パーセント、少なくとも81重量パーセント、少なくとも82重量パーセント、少なくとも83重量パーセント、少なくとも84重量パーセント、少なくとも85重量パーセント、少なくとも86重量パーセント、少なくとも重量で87重量パーセント、少なくとも88重量パーセント、少なくとも89重量パーセント、又は少なくとも90重量パーセントのハードセグメント含有量を有する。いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、熱可塑性ポリウレタンの総重量に対して、最大98パーセント、最大97パーセント、最大96パーセント、最大95パーセント、最大94パーセント、最大93パーセント、最大92パーセント、最大91パーセント、最大90パーセント、最大89パーセント、最大88パーセント、最大87パーセント、最大86パーセント、最大85パーセント、最大84パーセント、最大83パーセント、又は最大82パーセントのハードセグメント含有量を有する。
【0042】
ハードセグメント含有量は、熱可塑性ポリウレタンの調製において使用される出発材料の相対的重量から計算することができる。本明細書に記載の実施形態では、ハードセグメント含有量は、以下の式を用いて決定される:
ハードセグメント重量%=100%×[(短鎖ジオール+ジイソシアネート)の重量]/[(ポリオール+ジイソシアネート+添加剤)の重量]
添加剤としては、例えば、触媒、及び紫外線関連成分(例えば、安定剤、吸収剤など)を挙げることができる。長鎖及び短鎖ジオールの相対量は、所望の硬度に応じて広範囲にわたって変えることができるが、ポリイソシアネート対ポリオール(全てのジオールを含む)の全体的な相対量は、概ね、化学量論的当量の量であるように選択される。場合によっては、未反応で残っている他の成分を最小限にするために、ポリオールなどの一成分を過剰に使用することが望まれることがある。
【0043】
80重量%以上のハードセグメント含有量を有し、及び少なくとも1つの側鎖を含むポリオール及び/又は鎖延長剤構造から形成されたポリウレタンハードコート組成物は、80重量%未満のハードセグメント含有量を有し、及び/又は反応物中に側鎖を有していないポリウレタンハードコート組成物と比較して、改善された耐化学薬品性を提供することが予想外に発見された。
【0044】
ポリイソシアネート種とポリオール種との間の重合の反応速度は、典型的には、好適な触媒の助けを借りて加速される。例示的な実施形態では、ハードコート組成物は、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、第一スズオクトエート、トリエチレンジアミン、ジルコニウム触媒、及びビスマス触媒を含む、多種多様な既知のウレタン触媒のいずれかを使用して調製する。
【0045】
ハードコート組成物の性能を向上させるために、他の添加剤を添加することができる。例えば、紫外線関連成分は、紫外線(UV)吸収剤、ラジカル捕捉剤、酸化防止剤などのうちの1つ以上を含み得る。そのような添加剤及びそれらの使用は、当該技術分野において周知である。ハードコート組成物の特性に悪影響を及ぼさない限り、これらの化合物のいずれも使用できることが理解される。添加剤の典型的な量としては、ハードコート組成物の総重量に基づいて、約0.1~5重量%、約0.5~4重量%、又は約1~3重量%の量が挙げられる。
【0046】
好適な紫外線吸収剤のいくつかの代表的な例としては、5-トリフルオロメチル-2-(2-ヒドロキシ-3-アルファ-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-アルファ-クミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3-tert-ブチル-5-メチルフェニル)-2H-ベンゾチアゾール、5-クロロ-2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3,5-ジ-tert-アミルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(2-ヒドロキシ-3-アルファ-クミル-5-tert-オクチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、2-(3-tert-ブチル-2-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール、2(-4,6-ジフェニル-l-3,5-トリアジン-2-イル)-5-ヘキシルオキシ-フェノール、及びこれらの組合せが挙げられる。好適なラジカル捕捉剤のいくつかの代表的な例としては、ヒンダードアミン光安定剤(hindered amine light stabilizer、HALS)化合物及び/又はヒドロキシルアミンが挙げられる。1つの代表的な好適な酸化防止剤としては、ヒンダードフェノールが挙げられる。
【0047】
重合後のポリウレタンの全分子量は、熱成形用途のために高い強度及び伸び特性をもたらすのに十分に高い必要があるが、ポリマーの溶融加工が過度に複雑になる程高くならないようにする必要がある。例示的な実施形態では、脂肪族熱可塑性ポリウレタンは、少なくとも100,000g/mol、少なくとも150,000g/mol、少なくとも200,000g/mol、250,000g/mol、少なくとも300,000g/mol、少なくとも350,000g/mol、又は少なくとも400,000g/molの重量平均分子量を有することができる。例示的な実施形態では、脂肪族熱可塑性ポリウレタンは、最大800,000g/モル、最大750,000g/モル、最大700,000g/モル、最大650,000g/モル、又は最大600,000g/モルの重量平均分子量を有することができる。
【0048】
いくつかの実施形態では、熱可塑性ポリウレタンは、実質的に単峰性の分子量分布を有する。このような分布は、例えば、米国特許第8,128,779号(Hoら)で開示される方法を利用して実現することができる。重量平均分子量と数平均分子量との間の比として定義される、ポリウレタンの多分散性指数は、少なくとも1.1、少なくとも1.5、少なくとも2.0、少なくとも2.5、又は少なくとも3.0であってもよい。同じ又は代替の実施形態に従って、ポリウレタンの多分散性指数は、最大6.0、最大5.7、最大5.5、最大5.2、又は最大5.0であってよい。
【0049】
開示のハードコート組成物は、長期間にわたって苛酷な環境におかれたとき、その表面仕上げの劣化を回避又は実質的に低減するのに充分な硬度を示すことが望ましい。例えば、自動車塗料保護用途では、ハードコート組成物は、保護フィルムの予想寿命中に石、砂、道路片、及びバグからの引っ掻き傷に耐性を示すのに十分に硬い必要がある。例示的な実施形態では、ハードコート組成物は、少なくとも70、少なくとも71、少なくとも72、少なくとも73、少なくとも74、少なくとも75、少なくとも76、少なくとも77、少なくとも78、少なくとも79、少なくとも80、少なくとも81、少なくとも82、少なくとも83、少なくとも84、少なくとも85、少なくとも86、少なくとも87、少なくとも88、少なくとも89、少なくとも90、少なくとも91、少なくとも92、少なくとも93、少なくとも94、又は少なくとも95のショアD硬度を有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、ハードコート組成物は、摂氏70度(℃)以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、又は95℃以上、及び120℃以下のガラス転移温度(T)を示す。
【0051】
ハードコート組成物の例示的な実施形態は、三次元の複雑な湾曲を有する基材にわたってハードコート層を延伸できるようにする機械的特性を有する。生じ得る基材が多種多様であるため、ハードコート組成物は、破断されずに大きな距離にわたって均一に延伸できることが望ましい。摂氏25度で、ハードコート組成物は、任意選択的に、少なくとも140パーセント、少なくとも145パーセント、少なくとも150パーセント、少なくとも155パーセント、少なくとも160パーセント、少なくとも165パーセント、少なくとも170パーセント、少なくとも175パーセント、少なくとも180パーセント、少なくとも185パーセント、少なくとも190パーセント、少なくとも200パーセント、少なくとも205パーセント、少なくとも210パーセント、少なくとも215パーセント、少なくとも220パーセント、少なくとも225パーセント、少なくとも230パーセント、少なくとも235パーセント、少なくとも240パーセント、少なくとも245パーセント、又は少なくとも250パーセントの破断点伸び試験結果(具体的には下記の実施例で定義されるものとする)を有する。
【0052】
提供されたハードコート組成物が破損することなく伸長する能力は、高温において実質的に増強され得る。更に、増強の程度は予想外であった。例えば、熱成形温度で処理されると、提供されたハードコート組成物のフィルムは、従来のハードコートフィルムのフィルムよりもはるかに大きく延伸することが観察された。摂氏50度で、提供されたハードコート組成物は、少なくとも160パーセント、少なくとも165パーセント、少なくとも170パーセント、少なくとも175パーセント、少なくとも180パーセント、少なくとも185パーセント、少なくとも190パーセント、少なくとも195パーセント、少なくとも200パーセント、少なくとも205パーセント、少なくとも210パーセント、少なくとも215パーセント、少なくとも220パーセント、少なくとも225パーセント、少なくとも235パーセント、少なくとも240パーセント、少なくとも245パーセント、少なくとも250パーセント、少なくとも260パーセント、少なくとも270パーセント、少なくとも280パーセント、少なくとも290パーセント、少なくとも300パーセント、少なくとも310パーセント、少なくとも320パーセント、又は少なくとも330パーセントの破断点伸び試験結果を有することができる。
【0053】
動的機械分析では、tanδ(又は貯蔵弾性率と損失弾性率との比E”/E’)は、所与のポリマーのガラス転移温度において1つのサイクル当たり熱として散逸される変形エネルギーの量の尺度である。いくつかの実施形態では、提供されたハードコート組成物は、少なくとも0.7、少なくとも0.75、少なくとも0.8、少なくとも0.85、又は少なくとも0.9のtanδピークを示す。同じ又は代替の実施形態では、提供されたハードコート組成物は、最大1.5、最大1.45、最大1.4、最大1.35、又は最大1.3のtanδピークを示す。
【0054】
上記のtanδ値を有するポリウレタンは、デュアル真空熱成形用途で良好に機能するが、低いメモリを示す。冷却後の応力状態に保持されるポリマー分子から生じるメモリは、ハードコートと下地層又は基材との間の結合に応力が掛かる場合、熱成形用途においては望ましくない場合がある。提供されたハードコート組成物は、比較的低いtanδを特徴とする、周囲条件でガラス状の弾性挙動を示す。摂氏25度で、例えば、tanδは、0.4未満、0.35未満、0.3未満、0.25未満、又は0.20未満であることができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、ハードコート組成物(その関連する複合フィルムと共に)のデュアル真空熱成形は、少なくとも25℃、少なくとも35℃、少なくとも40℃、少なくとも50℃、又は少なくとも60℃の温度で行う。いくつかの実施形態では、複合フィルムのデュアル真空熱成形は、最大180℃、最大170℃、最大165℃、最大160℃、最大150℃、又は最大140℃の温度で行う。
【0056】
三次元オーバーレイ法(Three-dimension Overlay Method、TOM)とも呼ばれる場合もあるデュアル真空熱成形は、当業者に知られている任意の好適な器具を使用して行うことができる。そのような器具としては、日本国内の布施真空によって製造された真空成形機が挙げられる。デュアル真空熱成形の更なる態様は、米国特許出願公開第2011/10229681号(Sakamotoら)に記載されている。
【0057】
第2の層組成物
いくつかの実施形態では、第2の層108は、保護される所与の基材上にわたって延伸することができるポリマー、例えば、脂肪族熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、又はポリエチレンテレフタレート(PET)から作製される。例えば、低光沢PET第2の層を使用することによって、艶消し外観を提供することができる。
【0058】
いくつかの実施形態では、第2の層108は、接着剤層を含み、その組成物は、「接着剤組成物」の見出しにおいて以下で詳細に説明する。
【0059】
接着剤組成物
例示的な実施形態では、接着剤層(第2の層として、又は複合フィルムの異なる層としてのいずれか)は、通常は、周囲条件で粘着性の感圧接着剤である。好適な感圧接着剤は、ポリアクリレート系、合成及び天然ゴム系、ポリブタジエン及びコポリマー系、又はポリイソプレン及びコポリマー系であり得る。ポリジメチルシロキサン及びポリメチルフェニルシロキサンなどのシリコーン系接着剤も使用することができる。特に好ましい感圧接着剤としては、高い透明度、UV安定性、及びエージング耐性のような有利な特性を示すことができる、ポリアクリレート系接着剤が挙げられる。保護フィルム用途に好適であるポリアクリレート接着剤は、例えば、米国特許第4,418,120号(Kealyら)、再公表特許第24,906号(Ulrich)、同第4,619,867号(Charbonneauら)、同第4,835,217号(Haskettら)、及び国際公開第87/00189号(Bonkら)に記載されている。
【0060】
好ましくは、ポリアクリレート感圧接着剤は、C~C12アルキルアクリレートとアクリル酸との架橋性コポリマーを含む。接着剤は、架橋剤あり又はなしで使用することができる。有用な架橋反応としては、化学架橋及びイオン架橋が挙げられる。化学架橋剤としては、ポリアジリジン及び/又はビスアミドを挙げることができ、イオン架橋剤としては、アルミニウム、亜鉛、ジルコニウムの金属イオン、又はこれらの混合物を挙げることができる。化学架橋剤とイオン架橋剤との混合物も使用することができる。いくつかの実施形態では、ポリアクリレート感圧接着剤は、ロジンエステルなどの粘着付与剤を含む。本発明において有用な接着剤はまた、表面への接着剤の結合の品質を過度に劣化させない量で供給される限り、すりガラス、二酸化チタン、シリカ、ガラスビーズ、蝋、粘着付与剤、低分子量熱可塑性樹脂、オリゴマー種、可塑剤、顔料、金属フレーク、及び金属粉末などの添加剤を含有してもよい。
【0061】
感圧接着剤の代替として、接着剤層は、室温で粘着性ではなく、加熱時に粘着性となるホットメルト接着剤を含み得る。このような接着剤としては、アクリル、エチレンビニルアセテート、及びポリウレタン材料が挙げられる。
【0062】
カラーコーティング
着色剤の例としては、自動車又はグラフィックアートで知られている任意の着色剤(例えば、高性能又は自動車グレードの顔料(有色、白色、又は黒色かを問わず)、真珠光沢顔料、二酸化チタン、カーボンブラック、金属フレーク、染料、及びこれらの組み合わせ)が挙げられる。いくつかの好適な着色剤としては、染料、金属フレーク、顔料、又はこれらの組み合わせが挙げられる。典型的には、着色剤は、複合フィルムの意図される使用に許容可能な耐光性及び耐候性を有するように選択される。カラーコーティングがポリマー結合剤及び着色剤を含むとき、ポリマー結合剤は、熱可塑性ポリマー又は熱硬化性ポリマーであり得る。ポリマー結合剤の例としては、アクリル、ウレタン、シリコーン、ポリエーテル、フェノール、アミノプラスト、及びこれらの組み合わせが挙げられる。任意選択的に、カラーコーティングは、インクを印刷することによって形成され得る。
【0063】
プライマー層
概して、屋外使用のための耐久性を強化するために、プライマー層は、好ましくは脂肪族であり芳香族配合成分を実質的に含まないプライマー組成物から形成される。更に、ポリウレタン及び/又はアクリル系プライマー組成物が好ましい。プライマー層を形成するためのプライマー組成物としては、水系プライマー組成物、溶媒系プライマー組成物、及び100%固体である組成物(例えば、押出可能な組成物)が挙げられる。溶媒(例えば、水及び/又は有機溶媒)を蒸発させ、及び/又は放射線硬化させると、プライマー組成物は連続層を形成する。水系及び溶媒系プライマー組成物は、1つ以上のフィルム形成樹脂を含む。種々のフィルム形成樹脂が知られている。代表的なフィルム形成樹脂としては、アクリル樹脂、ポリビニル樹脂、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリウレタン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0064】
溶媒系プライマー組成物のフィルム形成樹脂は、溶媒と混合される。溶媒は、単一溶媒であってもよく、又は溶剤ブレンドであってもよい。プライマー組成物は、好ましくは、プライマー組成物全体に基づいて、約5~約80重量部の樹脂、より好ましくは約10~約50部の樹脂、最も好ましくは約15~約30部の樹脂を含有する。
【0065】
溶媒は、単一溶媒であってもよく、又は溶剤ブレンドであってもよい。好適な溶媒として、イソプロピルアルコール(isopropyl alcohol、IPA)又はエタノールなどのアルコール;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン(methyl isobutyl ketone、MIBK)、ジイソブチルケトン(diisobutyl ketone、DEBK)などのケトン;シクロヘキサノン又はアセトン;トルエンなどの芳香族炭化水素;イソホロン;ブチロラクトン;N-メチルピロリドン;テトラヒドロフラン;ラクテート、アセテートなどのエステル、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(propylene glycol monomethyl ether acetate、PMアセテート)、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート(diethylene glycol ethyl ether acetate、DEアセテート)、エチレングリコールブチルエーテルアセテート(ethylene glycol butyl ether acetate、EBアセテート)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(dipropylene glycol monomethyl acetate、DPMアセテート);イソアルキルエステル、例えば、イソヘキシルアセテート、イソヘプチルアセテート、イソオクチルアセテート、イソノニルアセテート、イソデシルアセテート、イソドデシルアセテート、イソトリデシルアセテート、又は他のイソアルキルエステル;及びこれらの組み合わせなどが挙げられる。
【0066】
好ましい溶媒系及び水系プライマー組成物は、少なくとも約25重量パーセント、好ましくは少なくとも約50重量パーセントのアクリル樹脂の乾燥樹脂を含む。他の好ましい溶媒系及び水系プライマー組成物は、少なくとも約10重量パーセント、好ましくは少なくとも約25重量パーセントのポリウレタンの乾燥樹脂を含む。例示的な溶媒系プライマーは、「8801 Toner for Scotchlite Process Color Series Inks」という商標名で3Mから市販されている。更に、水系プライマーとして使用するための例示的な組成物としては、米国特許第5,929,160号(Krepskiら)に記載されているものなどのスルホポリ(エステルウレタン)組成物が挙げられる。
【0067】
製造方法
図1図4に示した複合フィルムの製造は、記載されているように2つ以上の層を形成し、その後、互いに結合せることを伴う。複合フィルムを構成する層は、並行し又は順に調製され得る。
【0068】
特に、ハードコート層は、当業者に知られている従来の技術を使用して形成され得る。このような技術としては、例えば、基材上へのコーティング又は押出加工が挙げられる。当業者は、バッチ法又は連続的手法のいずれかを使用して、基材上に本開示の硬化性組成物をコーティング又は押出成形することができる。
【0069】
好ましい方法において、熱可塑性ポリウレタン層は、それを高温で押出成形ダイに通して押出成形することによって形成される。熱可塑性ポリウレタン層はまた、熱可塑性ポリウレタンを所望の形状にキャスティング又はそうでなければ成形(例えば、射出成形)することによって形成してもよい。
【0070】
必要に応じて、ハードコート層及び1つ以上の中間層は、高温及び高圧で層を互いにラミネートすることによって、結合され得る。例えば、ハードコート層の1つの主面は、中間層の1つの主面に圧力下で冷間ラミネートされ(cold laminated)得る一方で、ハードコート層の少なくとも1つの主面は、又はハードコート層及び中間層の両方の少なくとも1つの主面は、2つの層の間に適切な結合を促進するのに十分に高い高温である。「冷間ラミネート(cold laminating)」プロセスでは、周囲温度環境に近い2つのニップ表面の間で層が一緒にラミネートされる(すなわち、ラミネートプロセス(laminating process)中に層は意図的に加熱された環境では保たれない)。
【0071】
有利には、冷却された表面の使用は、ラミネートプロセスから生じる層の反りを排除し、又は少なくとも低減するのに役立ち得る。同時に、ポリウレタン層間の界面で接触する主面は、ニップ表面によって加えられるラミネート圧力(laminating pressure)によって一緒に十分に結合されるのに十分な高温で維持される。冷間ラミネートは、新たに押出成形されたハードコート層を予め形成された中間層上に直接ラミネートすることによって達成することができ、一方、ハードコート組成物は、押出成形プロセスからの大きな熱を保持する。任意選択的に、中間層は、キャリアウェブ又はライナーに剥離可能に結合されて、追加の構造強度を提供する。
【0072】
あるいは、ハードコート層は、熱間ラミネートプロセス(hot laminating process)を使用して、それらのそれぞれの主面に沿って中間層に結合され得る。このプロセスでは、層の初期温度が低過ぎて、それらの間の適切な結合を維持できず、ハードコート層、中間層のいずれか、又は両方の少なくとも1つの主面が、加熱され、加圧されて、ハードコート層と中間層との間の結合が促進される。典型的には、冷間又は熱間ラミネートプロセスのいずれかを使用して層を一緒に結合するための最小の温度及び圧力は、それぞれ少なくとも約93℃及び少なくとも約10.3N/cmである。
【0073】
いくつかの実施形態では、主面を接着剤層に結合させる前に、押出成形されたハードコート層の主面をコロナ処理(例えば、空気又は窒素を使用)することが望ましい場合がある。そのような処理は、ハードコート層と接着剤層との間の接着性を改善することができる。
【0074】
本明細書に記載のハードコート組成物の作製及び加工に関する更なる詳細は、米国特許第8,128,779号(Hoら)に記載されている。
【0075】
提供されるハードコート組成物及び複合フィルムは、以下の実施形態によって更に例示することができる。
【0076】
第1の実施形態では、本開示は、ハードコート組成物を提供する。ハードコート組成物は、80重量パーセント以上のハードセグメント含有量を有する熱可塑性ポリウレタンを含む。熱可塑性ポリウレタンは、a)ジイソシアネートと、b)環状構造を含んでいてもよいポリオールと、c)鎖延長剤と、の反応生成物である。ポリオール又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは少なくとも1つの側鎖を含み、ジイソシアネート又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは環状構造を含む。
【0077】
第2の実施形態では、本開示は、ハードセグメント含有量が90重量パーセント以上である、第1の実施形態に記載のハードコート組成物を提供する。
【0078】
第3の実施形態では、本開示は、ジイソシアネートが、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)、1,4-シクロヘキサンビス(メチレンイソシアネート)、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2-メチル-1,5-ペンタメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、並びにこれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択される、第1の実施形態又は第2の実施形態に記載のハードコート組成物を提供する。
【0079】
第4の実施形態では、本開示は、ジイソシアネートが環状構造を含む、第1~第3の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0080】
第5の実施形態では、本開示は、鎖延長剤が最大200g/molの重量平均分子量を有する、第1~第4の実施形態のいずれかに1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0081】
第6の実施形態では、本開示は、鎖延長剤が、ジオール、ポリエステルジオール、2~4個の炭素原子を有するオキシアルキレン基を有するポリ(オキシ)アルキレンジオール、又はこれらの組み合わせを含む、第1~第5の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0082】
第7の実施形態では、本開示は、鎖延長剤が環状構造を含む、第1~第6の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0083】
第8の実施形態では、本開示は、ポリオールが、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリオレフィンポリオール、脂肪酸ダイマージオール、並びにこれらのコポリマー及び混合物からなる群から選択される、第1~第7の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0084】
第9の実施形態では、本開示は、ポリオールが環状構造を含む、第1~第8の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0085】
第10の実施形態では、本開示は、ポリオールが、500g/mol以上、600g/mol以上、700g/mol以上、800g/mol以上、900g/mol以上、又は1,000g/mol以上の分子量を有する、第1~第9の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0086】
第11の実施形態では、本開示は、ポリオールが以下の式(I)の構造:
【化2】
[式中、R及びRは、独立して、(C~C40)アルキレン、(C~C40)アルケニレン、(C~C20)アリーレン、(C~C40)アシレン、(C~C20)シクロアルキレン、(C~C20)アラルキレン、又は(C~C40)アルコキシエンであり、これらは置換又は非置換であってもよく、R及びRは、独立して、-H、(C~C40)アルキル、(C~C40)アルケニル、(C~C20)アリール、(C~C20)アシル、(C~C20)シクロアルキル、(C~C20)アラルキル、及び(C~C40)アルコキシから選択され、これらは置換又は非置換であってもよく、nは、1以上の正の整数(例えば、2、4、5を超える、又は更に10を超える)である]の構造を有する、第1~第10の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0087】
第12の実施形態では、本開示は、ポリオールが側鎖を含む、第1~第11の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0088】
第13の実施形態では、本開示は、鎖延長剤が側鎖を含む、第1~第12の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0089】
第14の実施形態では、本開示は、ポリオールが、テレフタル酸(ベンゼン-1,4-ジカルボン酸)、ナフタレンジカルボン酸、アジピン酸(ヘキサン二酸)、ピメリン酸(ヘプタン二酸)、スベリン酸(オクタン二酸)、アゼライン酸(ノナン二酸)、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカンジオン酸(dedecandioic acid)、フタル酸(ベンゼン-1,2-ジカルボン酸)、イソフタル酸、ダイマー脂肪酸、又はこれらの混合物を含む、第1~第13の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0090】
第15の実施形態では、本開示は、ポリオールが、テレフタル酸(ベンゼン-1,4-ジカルボン酸)、アジピン酸(ヘキサン二酸)、フタル酸(ベンゼン-1,2-ジカルボン酸)、イソフタル酸、ダイマー脂肪酸、又はこれらの混合物を含む、第1~第14の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0091】
第16の実施形態では、本開示は、80以上のショアD硬度を示す、第1~第15の実施形態のいずれかに1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0092】
第17の実施形態では、本開示は、摂氏70度(℃)以上、75℃以上、80℃以上、85℃以上、90℃以上、又は95℃以上のガラス転移温度(T)を示す、第1~第16の実施形態のいずれか1つに記載のハードコート組成物を提供する。
【0093】
第18の実施形態では、本開示は、複合フィルムを提供する。複合フィルムは、1)対向する第1及び第2の主面を含むハードコート層と、2)ハードコート層の少なくとも一部分の上に配置された第2の層と、を含む。ハードコート層は、80重量パーセント以上のハードセグメント含有量を有する熱可塑性ポリウレタンを含む。熱可塑性ポリウレタンは、a)ジイソシアネートと、b)環状構造を含んでいてもよいポリオールと、c)鎖延長剤と、の反応生成物である。ポリオール又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは少なくとも1つの側鎖を含み、ジイソシアネート又は鎖延長剤のうちの少なくとも1つは環状構造を含む。
【0094】
第19の実施形態では、本開示は、第2の層が接着剤層である、第18の実施形態に記載の複合フィルムを提供する。
【0095】
第20の実施形態では、本開示は、接着剤層が、感圧接着剤、ホットメルト接着剤、又はこれらの組み合わせを含む、第19の実施形態に記載の複合フィルムを提供する。
【0096】
第21の実施形態では、本開示は、第2の層がポリマー層である、第18の実施形態に記載の複合フィルムを提供する。
【0097】
第22の実施形態では、本開示は、ポリマー層が、ポリエチレンテレフタレート(PET)又はポリウレタンを含む、第21の実施形態に記載の複合フィルムを提供する。
【0098】
第23の実施形態では、本開示は、ハードコート層と第2の層との間に配置されたカラーコーティングを更に含む、第18~第22のいずれか1つの実施形態に記載の複合フィルムを提供する。
【0099】
第24の実施形態では、本開示は、カラーコーティングとハードコート層との間に配置されたプライマー層を更に含む、第23の実施形態に記載の複合フィルムを提供する。
【0100】
第25の実施形態では、本開示は、ハードコート層が、第1~第17の実施形態のいずれか1つのハードコート組成物を含む、第18~第24の実施形態のいずれか1つに記載の複合フィルムを提供する。
【実施例
【0101】
別段の記載がない限り、又は文脈から明らかでない限り、実施例及び本明細書の他の箇所における全ての部、百分率、比などは、重量に基づくものである。表1(以下)に、実施例で使用した材料及びそれらの供給元を一覧で示す。
【表1】
【0102】
試験方法
硬度試験法
複合フィルムのハードコート層のショアD硬度を、ASTMD2240-05試験プロトコルに従って測定した。
【0103】
ゲル浸透クロマトグラフィー(GEL PERMEATION CHROMATOGRAPHY、GPC)分子量/分布分析試験法
調製されたポリウレタン材料の平均分子量及び分子量分布を、全般的にASTM D5296-11に記載されている手順を使用して得た。使用した機器は、Agilent Technologies(Hewlett-Packard-Strasse Waldbronn,Germany)からのモデル1100であった。カラムセットは、2xJordi Gel DVB Mixed Bed(15cm×内径4.6mm)であり、検出器は示差屈折率インデック(differential refractor index、DRI)であった。10ミリリットル(mL)のクロロホルムを約25~30ミリグラム(mg)の試料に添加して、約0.25~0.3%w/v濃度の溶液を得た。溶液を少なくとも14時間かき混ぜ、次いで0.2マイクロメートルのPTFEシリンジフィルターを使用して濾過した。30マイクロリットルを注入し、溶出液を、1分間当たり0.3ミリリットルで収集した。重量平均分子量は、多分散性と一緒に報告された。
【0104】
動的機械的熱分析試験法
熱可塑性フィルムの弾性率は、1Hz(6.28ラジアン/秒)でRheometric’s Solid Analyzer(RSA II)を使用して、張力下、-50℃~150℃で測定した。約6.865ミリメートル(mm)の幅×22.8mmの長さ及び0.012mm~0.022mm範囲の厚さの典型的な薄いストリップを、クランプに取り付け、締め付けた。所定の振幅及び周波数を薄いフィルム試料に適用し、材料の応力応答を測定した。ガラス転移温度(T)はタンデルタの最大値で得られた。
【0105】
汚染試験(Staining Test)法
汚染試験を実施した後、色の変化(デルタE)を測定した。
【0106】
Marathon Oil AC-20非乳化アスファルトセメント(Marathon,Houston,TX)の50体積%の混合物を、無鉛ガソリン中で調製した。試験片を試験流体に10秒間浸漬した。次いで、試験片を、換気フード試験チャンバに15分間吊るし、溶液を排出/蒸発させた。15分後、試験片をナフサで徹底的に清浄にした。汚染試験前後の色変化を、ASTM E1347(2020)に従って比色計X-rite(Grand Rapids,MI)からのColor i5によって測定し、赤色から緑色への色変化Δa、黒色から白色への色変化ΔL、黄色から青色への色変化Δb、及び総色変化ΔEを、報告した。
【0107】
化学曝露試験法
日焼け止め(日光保護因子(SPF)8又はSPF70)、30%リン酸、1%硝酸、1%硫酸、又は苛性ソーダなどの様々な化学物質を、直径10ミリメートル(mm)のスポットサイズでフィルム表面上に個々に滴下した。次いで、フィルム試料を85℃で30分間オーブンに入れた。30分後、試験片をオーブンから取り出し、洗剤及び透明な水で徹底的に清浄にし、次いで乾燥させた。「合格」の表記は、表面にマークが残っていないことを意味している。「不合格」の表記は、フィルム表面が損傷又は膨潤したことを意味する。
【0108】

比較例A(Comp Ex-A)
ポリエステルポリオール及び脂肪酸ダイマー系熱可塑性ポリウレタンハードコート組成物を、A剤としてポリエステルポリオールFOMREZ 44-111、1,4-ブタンジオール、TINUVIN 292、TINUVIN 571、DABCO T12、及びB剤としてDESMODUR Wを共回転二軸押出成形機に個々に供給することによって、調製した。押出成形機は、58mmの共回転二軸押出成形機(Davis-Standard,Pawcatuck,CT,USAから入手可能)であった。押出成形機は、独立して加熱された13のバレルゾーンを有していた。真空ポンプを押出成形機に適用した。バレル温度、ダイ、及びネックチューブの温度を以下の表に列挙する。幅66cmのドロップダイを二軸スクリュー押出成形機の出力端に接続した。
【表2】
【0109】
成分の詳細な重量パーセントを、表2に要約する。重合混合物を、標準ドロップダイを使用して押出成形し、約25マイクロメートルの厚さ及び64センチメートルの幅のポリエステルフィルム(50マイクロメートルの延伸されたポリエステルフィルム)上にキャストした。溶融カーテンを、ゴムロール及び金属キャスティングロールからなるニップ中に垂直にキャストし、次いでロールに巻き取った。ポリウレタンのショアD硬度は65Dであった。
【表3】
【0110】
比較例B(Comp Ex-B)
上記の表2に記載されるように組成物を調整したことを除いて、比較例Aに記載されているようにポリウレタンフィルム比較例Bを押出成形した。
【0111】
比較例C~E(Comp Ex-C~E)
上で調製したハードコート比較例の上に、ポリエステルポリオールから調製した軟質ポリウレタンを押出成形した(比較例C)。軟質熱可塑性ポリウレタンに基づくポリエステルポリオールのための配合を表3に要約する。全ての6つの配合成分を、共回転二軸押出成形機に個々に供給した。重合をバレル内で完了し、フィルムをダイから、約5ミル(約127マイクロメートル)の厚さでハードコートフィルム上に直接押出成形した。全体の厚さは、約6ミル(約162マイクロメートル)であった。次いで、それを2ミル(51マイクロメートル)のアクリル感圧接着剤にラミネートした。ポリエステルキャリアウェブを剥ぎ取った。軟質ポリウレタンのショアA硬度は約90Aであった。
【表4】
【表5】
【0112】
実施例1(EX-1)
機械的撹拌機、凝縮器、及び窒素入口を備えた樹脂反応容器に、62.5グラム(g)のKP-1020及び200gのDMFを添加した。その溶液を最高75℃まで加熱し、0.09gのDT12及び99.79gのDES-Wを撹拌しながら添加した。NCO含有量が、標準的なジブチルアミン逆滴定法を利用することによって決定された理論的NCO値に達するまで、温度を75±2℃に維持した。理論的NCO値が得られてから、28.02gの1,4-ブタンジオールを添加することによってポリウレタンの鎖を延長させ、FT-IRによるNCO基の強度又は強度変化が全く観察されなくなるまで反応させた。反応中、更に170gのDMFを添加して固形分含有量を約35重量%に調整し、明澄で透明なポリウレタン溶液を得た。
【0113】
熱可塑性ポリウレタンハードコートは、上記のEX-1配合物から作製された。DMF中の熱可塑性ポリウレタンの溶液を、RDS#18メイヤーバー(RD Specialties,Inc.,Webster,NY)を使用することによりPETキャリアウェブ上にキャストし、90℃に設定したオーブン内で5分間乾燥させて、明澄なコートでコーティングされたフィルムを得た。次いで、ハードコートを、235°F(113℃)でポリウレタン投入フィルムに熱ラミネートした。ポリウレタン投入フィルムは、(1)市販のLubrizol Estane CLA87A樹脂ペレット(Wickliffe,OH)から押出成形されたポリウレタンフィルム、(2)アクリル感圧接着剤、及び(3)ポリエステル剥離ライナーから構成されていた。ニップロール圧力は、1平方インチ当たり40ポンド(psi)に設定し、ライン速度は12フィート/分(3.66メートル/分)であった。PETキャリアウェブを剥ぎ取り、ポリウレタン投入フィルム上にハードコートを生成させた。
【表6】
【0114】
実施例2~4(EX-2~4)
上記の表5に記載したように組成物を調整したことを除いて、実施例1に記載したように、追加のポリウレタン配合物を、調製し、押出成形した。
【表7】
【0115】
上記の特許出願において引用された全ての参考文献、特許文献及び特許出願は、一貫した形でその全文が参照により本明細書に組み込まれる。組み込まれている参照文献の部分と本出願との間に不一致又は矛盾がある場合、前述の説明における情報が優先される。前述の記載は、当業者が、特許請求の範囲に記載の開示を実践することを可能にするためのものであり、本開示の範囲を限定するものと解釈すべきではなく、本開示の範囲は特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義される。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】