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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】振動増幅装置を備えた時計
(51)【国際特許分類】
   G04B 21/06 20060101AFI20230724BHJP
   G04B 23/02 20060101ALI20230724BHJP
   G04C 21/02 20060101ALI20230724BHJP
   G04C 21/06 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
G04B21/06 Z
G04B23/02 F
G04C21/02 Z
G04C21/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580760
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-24
(86)【国際出願番号】 EP2021066501
(87)【国際公開番号】W WO2022002622
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】20183534.5
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501099611
【氏名又は名称】パテック フィリップ ソシエテ アノニム ジュネーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ゲイザー、シルヴァン
(72)【発明者】
【氏名】ベノワ、クエンティン
【テーマコード(参考)】
2F101
【Fターム(参考)】
2F101EA00
2F101EC06
2F101EE02
2F101EE08
2F101EE29
(57)【要約】
本発明は、ムーブメントを収容するケース2と、少なくとも1つの音を生成するように意図された少なくとも1つの振動発生装置と、前記振動発生装置によって発生した振動を増幅するための少なくとも1つの装置16とを備える時計1に関し、振動を増幅するための前記装置16はレバー20を備え、前記レバー20は、単一の回転軸の周りで関節によって支持体22に連結され、振動発生装置と協働して前記レバー20に振動を伝達する伝達部材28によって作動されるように配置される。振動を増幅するための装置16は、振動運動に応じて変位するためにレバーと協働するように配置された少なくとも1枚のプレート18を備え、前記プレート18は、前記プレート18の周長の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%にわたって、前記プレート18の周縁部上に自由空間を形成するように、ケース2に収容される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムーブメントを収容するケース(2)と、少なくとも1つの音を生成するように意図された少なくとも1つの振動発生装置と、前記振動発生装置によって発生した前記振動を増幅するための少なくとも1つの装置(16)とを備え、前記振動を増幅するための前記装置(16)は、単一の回転軸(21)の周りで関節によって支持体(22)に連結されたレバー(20)を備え、前記レバーは、その回転軸(21)の周りの振動運動に応じてその支持体(22)に対して前記レバー(20)を枢動させるために、前記振動発生装置と協働して前記レバー(20)に前記振動を伝達する伝達部材(28)によって作動されるように配置されている、時計(1)において、前記振動を増幅するための前記装置(16)は、振動運動に応じて変位するために前記レバーと協働するように配置された少なくとも1枚のプレート(18)を備え、前記プレート(18)は、前記プレート(18)の周長の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%にわたって、前記プレート(18)の周縁部上に自由空間を形成するように前記ケース(2)に収容されることを特徴とする、時計(1)。
【請求項2】
前記プレート(18)は、前記プレート(18)が少なくとも2オクターブの周波数の間隔にわたってピストンのように作用するような剛性を有し、その結果、前記プレートの表面上の点の平均変位は、最大変位の50%より大きく、好ましくは75%よりも大きいことを特徴とする、請求項1に記載の時計。
【請求項3】
前記プレート(18)は、前記レバー(20)と一体になっており、前記レバー(20)の前記回転軸(21)を中心とした回転運動において、前記レバー(20)とともに変位することを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の時計。
【請求項4】
前記プレート(18)は、その主表面によって前記レバー(20)に固定されていることを特徴とする、請求項3に記載の時計。
【請求項5】
前記プレート(18)は、前記レバー(20)が収容される開口部(36)を備えていることを特徴とする、請求項4に記載の時計。
【請求項6】
前記プレート(18)は、その周方向縁部によって前記レバー(20)に固定されていることを特徴とする、請求項3に記載の時計。
【請求項7】
前記レバー(20)は、互いからできるだけ離間するように配置された2つの可撓性ボール・ジョイント(24)によって、前記支持体(22)上に関節式に取り付けられていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の時計。
【請求項8】
少なくとも2つの振動発生装置と、少なくとも2つのレバー(20’、20”)と、前記レバーの一方(20’)と連携する少なくとも1つの第1のプレート(18’)と、他方のレバー(20”)と連携する第2のプレート(18”)とを備え、前記第1及び第2のプレート(18’、18”)は、それら自体の振動運動に応じて互いに独立して自由に変位することを特徴とする、請求項3から7までのいずれか一項に記載の時計。
【請求項9】
前記プレート(18)は、前記プレート(18)に垂直な軸に沿った直線的な並進運動によって駆動されるために、前記レバー(20)と協働するように配置されていることを特徴とする、請求項1及び2のいずれか一項に記載の時計。
【請求項10】
前記プレート(18)は、前記プレート(18)に垂直な前記軸に沿って直線的に並進する案内手段と協働することを特徴とする、請求項9に記載の時計。
【請求項11】
前記案内手段は、前記プレート(18)の周縁部にわたって規則的に分散されて前記プレート(18)を連結支持体(42)に接続する少なくとも3つの可撓性締結具(40)を備えることを特徴とする、請求項10に記載の時計。
【請求項12】
前記締結具(40)及び前記連結支持体(42)は、前記プレート(18)に切り込みを入れることによって成形されていることを特徴とする、請求項11に記載の時計。
【請求項13】
前記案内手段は、前記プレート(18)と一体になった中央プレート(48)を備えるブラケット(46)と、前記中央プレート(48)を前記ケース(2)に接続する少なくとも3つの弾性アーム(50)とから成ることを特徴とする、請求項10に記載の時計。
【請求項14】
前記プレート(18)は、球面連結によって前記レバー(20)に結合されることを特徴とする、請求項9から13までのいずれか一項に記載の時計。
【請求項15】
前記ブラケット(46)の前記中央プレート(48)は、前記レバー(20)の自由端(20b)との接触領域(54)を備え、前記接触領域(54)及び前記自由端(20b)は、丸みを帯びていることを特徴とし、前記中央プレート(48)及び前記レバー(20)の前記自由端(20b)は、それぞれ、互いに連通している前記プレート(18)に垂直な中央チャネル(56、58)を備えることを特徴とし、プレストレスを与えられた弾性ワイヤ(60)が前記チャネル(56、58)を通り抜け、前記弾性ワイヤ(60)の一端は、前記中央プレート(48)と一体であり、前記弾性ワイヤ(60)の他端は、前記レバー(20)の前記自由端(20b)と一体となっていることを特徴とする、請求項13及び14のいずれか一項に記載の時計。
【請求項16】
前記プレート(18)の周りに形成された前記自由空間は、前記プレート(18)と前記プレート(18)に最も近い前記ケース(2)の前記周方向縁部との間に、10μm~500μmの間の、好ましくは30μm~60μmの間の幅を有することを特徴とする、請求項1から15までのいずれか一項に記載の時計。
【請求項17】
前記振動発生装置は、打撃ハンマー(12)によって叩かれるように配置された打撃ゴング(14)であり、前記打撃ゴング(14)は、前記伝達部材(28)と一体になっており、前記伝達部材(28)は、前記レバー(20)と一体になっていることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか一項に記載の時計。
【請求項18】
前記振動発生装置は、回転ディスクであり、音を生成するように配置された彫り込み溝を備え、前記伝達部材(28)は、前記レバー(20)と一体になった針であり、前記ディスク上の前記溝をたどるように配置されていることを特徴とする、請求項1から16までのいずれか一項に記載の時計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ムーブメントを収容するケースと、少なくとも1つの音を生成するように意図された少なくとも1つの振動発生装置と、前記振動発生装置によって発生した振動を増幅するための少なくとも1つの装置とを備える時計に関し、振動を増幅するための前記装置は、単一の回転軸の周りで関節によって支持体に連結されたレバーを備え、前記レバーは、その回転軸の周りの振動運動に応じてその支持体に対してレバーを枢動させるために、振動発生装置と協働して前記レバーに振動を伝達する伝達部材によって作動されるように配置されている。
【背景技術】
【0002】
そのような時計は、例えば、チャイムが鳴る携帯時計(ミニッツ・リピータ、グラン・ソヌリ、プチ・ソヌリ、又は目覚まし時計)であり、振動発生装置は、例えば、音を生成するために打撃機構が振動を発生させるように係合されたときに、ハンマーによって叩かれるように配置されたゴングである。ゴングは、典型的に、ムーブメントの周りに巻かれたワイヤの形態である。ゴングは、ゴングの振動を携帯時計用アセンブリ(フレーム、ムーブメント及び外部部品)に伝達するために、ヒール又はゴング・ホルダによって、携帯時計のフレーム(プレート及びブリッジ・アセンブリ)と一体になるように取り付けられる。したがって、ゴングの振動は、最大強度で携帯時計の着用者に伝達される。
【0003】
音の伝達は、携帯時計全体を振動させることによって得られるため、携帯時計の様々な要素の振動を促進して前記音の伝達を改善するために、これらの要素をより強固にすることが提案されてきた。
【0004】
この解決策は、音の伝達品質に関しては満足な結果を与えたが、寄生音の発生など、他の問題を生じさせた。実際には、音響強度が大きいほど、ムーブメントはより多く振動し、振動中にムーブメントの異なる部品がより多くのノイズを発生させる。この一連の振動により、寄生ノイズが発生する。
【0005】
音を増幅させるための解決策の1つは、ハンマーがゴングを叩く力を増大させることである。これにより、音の増大は実現できたが、音質は、寄生ノイズによって悪影響を与えられた。
【0006】
特許出願EP3644133に記載されたチャイムが鳴る携帯時計は、ムーブメント及び打撃装置を水分及び不純物から保護するために、ケースを密閉するように実装された防水性音伝達膜を使用することにより、この問題を解決することを提案している。膜は、例えば、Oリング・シールによって保持することができる。前記防水性音伝達膜は、回転において1自由度のみを有する可動部と一体化した音伝達ブリッジに接触し、前記可動部は、ゴングを担持するヒールと連携している。したがって、音伝達ブリッジは、そのハンマーで叩かれたときにゴングの振動によって発生するヒールからの振動を、前記防水膜を振動させるのに最適な振動方向で防水膜に直接伝達し、これにより、携帯時計の外部で知覚可能な音の音量が増大する。
【0007】
しかしながら、実際は、防水膜は、それが防水であることを保証するために、定義上は、その周縁部にわたってケースの要素に固定され、前記膜は、音伝達ブリッジから振動を受けるときに、第1の振動モードでは、1つの方向に膨らんだ後、他方向に膨らむことによって変形する。これらの変形は、音質に悪影響を与える著しい減衰を生じさせる。さらに、レバーと膜との接触は、レバーが膜にプレストレスを与えることによって実現することができ、これによって、減衰を増幅させることができる。固定された接点の場合、膜は非対称的に変形し、それにより応力が加わる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許出願EP3644133
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、少なくとも1つの音を生成するように意図された振動を発生させるための装置、及び、これらの振動を増幅させるための装置を備え、音質を維持しつつ、前記発生した音を大幅に増幅させることを可能にする時計を提案することによって、これらの欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的のために、本発明は、ムーブメントを収容するケースと、少なくとも1つの音を生成するように意図された少なくとも1つの振動発生装置と、前記振動発生装置によって発生した振動を増幅するための少なくとも1つの装置とを備える時計に関し、振動を増幅するための前記装置は、単一の回転軸の周りで関節によって支持体に連結されたレバーを備え、前記レバーは、その回転軸の周りの振動運動に応じてその支持体に対してレバーを枢動させるために、発生装置と協働して前記レバーに振動を伝達する伝達部材によって作動されるように配置されている。
【0011】
本発明によれば、振動を増幅するための装置は、振動運動に応じて変位するためにレバーと協働するように配置された少なくとも1枚のプレートを備え、前記プレートは、その周長の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、又はさらに100%にわたって、前記プレートの周縁部上に自由空間を形成するようにケースに収容される。
【0012】
したがって、プレートが、レバーによって伝達された振動を受けてその振動運動を開始するとき、実質的に自由に変位される前記プレートは、実際には変形せず、空気に対してピストンのように作用する。その結果、ゴングによって生成された音は、高品質を維持しつつ、大きく増幅される。
【0013】
第1の実施例によれば、プレートは、レバーと一体になっており、前記レバーの回転軸を中心とした回転運動において、レバーとともに変位する。
【0014】
第1の変形例によれば、プレートは、その主表面によってレバーに固定され、その結果、プレートの周縁部の100%が固定されない。
【0015】
別の変形例によれば、プレートは、増幅装置が使用者には見えないように、その周方向縁部によってレバーに固定される。
【0016】
第2の実施例によれば、プレートは、プレートに垂直な軸に沿った直線的な並進運動によって駆動されるために、レバーと協働するように配置される。
【0017】
プレートは、直線運動を保証するために、プレートに垂直な前記軸に沿って直線的に並進する案内手段と有利に協働する。
【0018】
第1の変形例によれば、前記案内手段は、プレートの周縁部にわたって規則的に分散されて前記プレートを連結支持体に接続する、少なくとも3つの可撓性締結具を備える。
【0019】
したがって、プレートの第1の振動モードは、前記締結具を曲げることによるプレート全体の直線的な変位である。
【0020】
別の変形例によれば、案内手段は、プレートと一体になった中央プレートを備えるブラケットと、中央プレートをケースに接続する少なくとも3つの弾性アームとから成る。
【0021】
このようなブラケットは、プレート全体の直線運動を有利に生み出すことができ、プレートの周縁部の100%が自由に変位される。
【0022】
本発明の他の特徴及び利点は、非限定的な例として提供される、添付図面を参照した本発明の異なる実施例の以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1の実施例の第1の変形例による時計の背面の図である。
図2】本発明による時計の斜視図である。
図3】本発明の第1の実施例の第1の変形例の概略断面図である。
図4】本発明で使用されるレバーの斜視図である。
図5】本発明の第1の実施例の別の変形例の背面の概略図である。
図6】本発明の第1の実施例の別の変形例の背面の概略図である。
図7】本発明の第1の実施例の別の変形例の概略断面図である。
図8】本発明の第2の実施例の第1の変形例によるプレートの図である。
図9】第1の振動モードにおける図8のプレートの概略断面図である。
図10】本発明の第2の実施例の第2の変形例の背面からの斜視断面図である。
図11図10のケース内部からの斜視図である。
図12】本発明の第2の実施例の第2の変形例によるブラケットのプレート及びレバーの断面図である。
図13】伝達部材及びレバーと振動発生装置とが協働する別の実施例の斜視図である。
図14図4のレバーの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ムーブメントを収容するケースと、少なくとも1つの音を生成するように意図された少なくとも1つの振動発生装置と、前記振動発生装置によって発生した振動を増幅するための少なくとも1つの装置とを備える時計に関し、振動を増幅するための前記装置は、回転において1自由度のみを有して、すなわち単一の回転軸の周りで関節によって支持体に連結されたレバーを備え、前記レバーは、その回転軸の周りの振動運動に応じてその支持体に対してレバーを枢動させるために、前記支持体に直接連結されないで振動発生装置と協働して前記レバーに振動を伝達する伝達部材によってさらに作動されるように配置されており、振動を増幅するための前記装置は、時計の内側から外側への音を生成するために空気に圧力を加えるため、振動運動に応じて変位するために、レバーと協働してレバーによって増幅された振動を受け取るように配置された少なくとも1枚のプレートを備え、前記プレートは、変形例に応じて、前記プレートの周長の少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、より好ましくは少なくとも90%、又はさらに100%にわたって、前記プレートの周縁部上に自由空間を形成するようにケースに収容され、一定の空気流が自由空間を通過する。
【0025】
振動発生装置と連結した前記伝達部材の振動によって発生した伝達部材の変位が、前記レバーの梃子の効果によって増幅される方法で、前記伝達部材により作用されるレバーによってプレートに伝達されるように、レバーの作動点、支持体上のレバー枢動点、及びレバーのプレートとの結合点が位置付けられるため、プレートの振動運動は増幅される。したがって、プレートの増幅された振動の変位によって、増幅された音が生成される。
【0026】
さらに、プレートは、できるだけ小さい画定領域によってレバーに固定され、プレートの残りの部分は隔絶された状態(in a vacuum)で、時計の他のいかなる要素とも接触しない。
【0027】
プレートは、その振動運動中にできるだけ多くの空気を変位させるために、できるだけ大きいが、一方で、プレートにかかる力を低減し、振動をできるだけ小さく減衰させるために、前記プレートの周りには空気が通過できる自由空間を残し、増幅された音の質に悪影響を及ぼさないようにする。したがって、プレートは、できるだけ小さい減衰で振動するために、変形することなく自由に変位され、その結果、力強くきれいな音がするようになる。
【0028】
所望の目的は、振動発生装置に対してプレートを共振させることであり、その結果、伝搬音は、できるだけ長く持続する。
【0029】
プレートは、ケースの形状に応じて、円形又は多角形であってもよい。
【0030】
プレートは、静止状態では、実質的に平坦であってもよいし、貝殻の形に膨らんでいてもよく、携帯時計の直径よりも大きな曲率半径、すなわち、好ましくは30mmより大きな、より好ましくは50mmより大きな、好ましくは50mmから500mmの間の曲率半径を有する。膨らんでいるプレートの凹面側は、有利には、音の出口側でケースの外側に向けられ、レバーは、プレートの凸面側に連結されている。しかしながら、逆の構成も可能である。
【0031】
本明細書において、「プレート」という用語は、一般に、平坦な又は膨らんでいるプレートを指す。
【0032】
プレートは、上記で定義したように、大きな動的応答を得るために、及び、その変位の間にその中心部だけでなく自由な周縁部でも変形しないようにするために、非常に軽く剛性の高い材料で作られるのが好ましい。
【0033】
プレートは、前記プレートが少なくとも2オクターブ、例えば1kHzから4kHzの間の周波数の間隔にわたってピストンのように作用するような剛性を有し、その結果、プレートの主表面上の点の平均変位は、最大変位の、すなわち、本発明で使用されるプレートがその表面全体にわたって、特に低周波では実質的にいかなる変形も示さないように、最も変位するプレートの主表面上の点の変位の50%より大きく、好ましくは75%よりも大きい。
【0034】
比較として、その縁部がケースに固定されている打撃機構で従来使用される防水膜は、膜の表面上の点の平均変位が最大変位の50%未満となるように、放物線運動に応じて変形する。
【0035】
プレートは、好ましくは透明な材料で作られる。例えば、それは、サファイア、ミネラル・ガラス、プレキシガラス、ダイアモンド、複合材料、セルロース、又は安全ガラスのタイプの複合ガラスなどで作られていてもよい。
【0036】
プレートは、好ましくは、ミネラル・ガラス、サファイア、又はダイアモンドで作られる。
【0037】
プレートが文字盤として使用されるとき、後述するように、プレートは、好ましくは、シリコン、チタン、炭素、又はアルミニウムなどの非透明材料で作られる。
【0038】
プレートは、できるだけ剛性が高く、且つ軽くなければならない。このため、その厚さは、1mm未満、好ましくは0.5mm以下、好ましくは0.15mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。
【0039】
振動発生装置は、打撃ハンマーによって叩かれるように配置された打撃ゴングであってもよく、前記打撃ゴングは、伝達部材と一体化され、前記伝達部材はレバーと一体化されている。
【0040】
別の変形例では、振動発生装置は、回転ディスクであってもよく、音を生成するように配置された彫り込み溝を含み、伝達部材は、レバーと一体になった針であり、ディスク上の溝をたどるように配置されている。
【0041】
別の変形例では、振動発生装置は、スタッドによって固定された振動翼を備えるオルゴールであってもよく、伝達部材は、前記スタッド及びレバーと一体になっている。
【0042】
以下の説明では、振動発生装置は、時計が時刻を示す(ミニッツ・リピータ、グラン・ソヌリ、プチ・ソヌリ)ための、又は所定の時刻で叩く(アラーム)ための打撃機構を備えるように、打撃ハンマーによって叩かれる打撃ゴングである。時計は、好ましくは携帯時計、より好ましくは、使用者が手首に装着するように意図された腕時計である。
【0043】
特に示されない限り、本発明の説明の残りの部分は、特に、振動を増幅するための装置の残りの部分は、オルゴール、又は針によって読み取られる回転ディスクを備える携帯時計と同様に適用され、針の一端は、レバーと一体になっており、針の他端は、回転ディスク上の彫り込み溝を読み取るように配置されている。針は、例えば、埋込み又ははんだ付けによって、例えば、この目的のためにレバー上に設けられたオリフィス内に導入されることによって、レバー上に取り付けられる。
【0044】
図1及び図2を参照すると、携帯時計1は、中間部3と、背面4と、ベゼル5と、第1のガラス6とを有するケース2を備える。背面4は環状で、その中央開口部は、第2のガラス7によって閉じられている。ベゼル及び中間部は、2つの異なる部品であってもよいし、単一の一体部品を形成していてもよい。同様に、背面及び中間部は、2つの異なる部品であってもよいし、単一の一体部品を形成していてもよい。
【0045】
以下の説明では、振動を増幅するための装置及びプレートは、携帯時計の背面から音を生成するように配置される。振動を増幅するための装置及びプレートは、同様に配置されてもよいが、携帯時計の文字盤側で音を生成するために逆に配置されてもよいことは明らかである。
【0046】
図1をより具体的に参照すると、携帯時計1はまた、ムーブメントと、少なくとも1つの音を生成するように意図された振動発生装置を構成する打撃機構9とを備える。ムーブメント及び打撃機構9は、ケース2の中間部3内に収容され、フレーム10(プレート及びブリッジ)に取り付けられている。打撃機構9は、既知の方法で、ここではムーブメントの周りに巻かれたワイヤ・ゴング又はストリップばねの形態で、打撃ゴング14を叩くように配置されたハンマー12を備える。
【0047】
ゴング14によって発生した音を増幅するために、単一の回転軸21の周りで関節によって支持体22に連結されたレバー20を備える、ゴング14によって発生した振動を増幅するための装置16が設けられ、その結果、前記レバーは前記回転軸21の周りの前記支持体22上に傾斜して又は枢動的に取り付けられており、前記増幅された振動を受け取って携帯時計の内側から外側へ増幅された音を生成するように配置されたプレート18(図3以降を参照)も同様である。音が背面側に伝達されると、プレート18は、それが少なくともムーブメントと第2のガラス7との間で振動を受けない静止位置にあるときに、前記背面4に平行に位置付けられることにより、背面4側に取り付けられる。音が文字盤側に伝達されると、プレート18は、ムーブメントと第1のガラス6との間で少なくとも静止位置にあるときに、前記ベゼル5に平行に位置付けられることにより、ベゼル5の内部に取り付けられる。
【0048】
レバー20及びプレート18は、前記プレート18が少なくとも静止位置にあるときに、レバー20の回転軸21がプレート18の主表面の平面に平行になるように、互いに対して配置されることが特に好ましい。レバー20の他の自由度は、回転軸21を中心とした回転の自由度に対して無視できる程度であると考えられる。
【0049】
図3図7図10及び図11を参照すると、レバー20は、振動をレバー20に伝達するためにゴング14と協働する伝達部材28によって作動されるように配置される。伝達部材28は、レバー20が関節式に取り付けられる支持体22に伝達部材28が直接連結されないように、支持体22を有する前記レバー20の関節21に対してレバー20と同じ側に位置付けられる。伝達部材28は、好ましくは、レバー20と一体になっている。伝達部材28は、例えば、レバー20と一体になったヒール又はゴング・ホルダから成っていてもよく、その中に、例えば埋込みか、ねじで塞がれるか、はんだ付けによってゴング14が取り付けられている。この目的のために、伝達部材28は、例えば、ゴング14が導入されるオリフィス30を含む。したがって、ゴング14は、レバー20と一体になっており、ヒールを介して携帯時計のフレームに固定されていない。伝達部材28は、図3図7図10及び図11に示すように、レバー20に追加又は一体化することができる。伝達部材28がレバー20と一体になるとき、ゴングは、例えば、溶接によってレバーに直接組み付けられる。
【0050】
図示されていない別の変形例によれば、伝達部材28は、ゴング14が保持されるクランプを形成するように配置されることによって、レバー20と一体化することができる。この配置によって、振動のロスを極力抑えることができる。
【0051】
図13に示す別の変形例によれば、レバー20と有利に一体形成されている伝達部材28は、ゴング14を担持しておらず、ゴング14のヒールを構成していないが、ゴング14の振動を捕捉することを可能にするために、且つ、レバー20を作動させて捕捉した振動をプレート18に伝達することを可能にするために、接触によってゴング14と協働するように配置される。伝達部材28は、単純な接触によってゴング14と協働するか、又はクランプの形状を有することができる。次に、ゴング14は、好ましくは中間部若しくは背面などのケースの要素上に、又は、場合によりムーブメントの要素上に固定されたヒール64上に固定される。ゴング14上の伝達部材28の捕捉点は、好ましくは、ヒール上の埋込領域に比較的近い。この構成では、振動がレバー20によって捕捉される点は、有利には、低振動減衰を達成するために、そのヒール上ではなくゴング14上に位置付けられ、信号の振幅はより大幅である。
【0052】
レバー20、ゴング14及び伝達部材28の材料は、有利には、これらの3つの要素を一体にするように選択される。この材料は、振動を伝達するものとして、例えば、鋼又はマグネシウムから選択される。
【0053】
振動を増幅するための装置、より詳細には、レバー20の支持体22は、有利には、ムーブメントと、打撃機構9と、フレーム10とから隔離されている。この目的のために、レバー20の支持体22は、ケーシングの要素上に、より詳細には、音が文字盤に伝達された場合はベゼル5上に、音が背面を通って伝達された場合は背面4上に取り付けることができる。打撃ゴング14が、レバー20と一体になった伝達部材28に埋め込まれるとき、前記ゴング14は、従来のようにヒールを介してフレームに固定されるのではなく、ムーブメントの周りに浮かんでいるように見える。
【0054】
レバー20の支持体22はまた、ムーブメント上に、又は中間部3上にさえ取り付けることができるが、有利には、ムーブメント、中間部、及びフレームからの支持体22の隔離を保証するために、ポリマーなどの絶縁要素を介して取り付けることができる。
【0055】
レバー20の支持体22がベゼル5、背面4それぞれに取り付けられるとき、前記ベゼル5、前記背面4それぞれは、従来の方法で中間部3に直接組み付けることができる。しかしながら、中間部3上で、したがって、ムーブメント上で寄生振動が発生しないことを確実にするために、前記ベゼル5又は前記背面4それぞれは、有利には、ポリマーなどの絶縁要素によって中間部3上に組み付けられる。
【0056】
プレート18はまた、ムーブメント及び打撃機構9から隔離されているため、振動を増幅するための装置及びプレートは、ムーブメント及びフレームから隔離され、その結果、レバー20によって捕捉されたゴングの振動の全てが、プレート18に向けられ、プレート18に伝達され、ムーブメント、フレーム又は中間部には伝達されない。
【0057】
レバー20は、好ましくは、非常に軽く、非常に剛性の高い材料で作られている。例えば、レバー20は、鋼、チタン、アルミニウム、マグネシウム、複合材料、炭素、ガラス、サファイア、及びセラミックで作られていてもよい。
【0058】
レバー20は、図1に示すように、単一の中央可撓性ボール・ジョイント24によって、支持体22上に、関節式又は枢動式に有利に取り付けることができる。可撓性ボール・ジョイント(より詳細には、単一の回転軸21の周りの関節であると考えると、可撓性ピボット)によって、必要であれば、振動の方向を変更することができる。特に、打撃ゴングの場合、打撃ゴングは、ハンマーの打撃方向に放射状に振動する傾向を有する。レバー20の可撓性ボール・ジョイント24の(すなわち、可撓性ピボットの)位置は、ゴングの放射状の振動を、前記レバー20の枢動を介して、例えば、背面によって画定される平面、すなわちプレート18が静止位置にあるときにプレート18によって画定される平面に垂直な振動運動に変換するために、好ましくは、ゴングの放射状の振動の方向を90°だけ変更することを可能にする。可撓性ボール・ジョイント24(すなわち、可撓性ピボット)は、好ましくは、ゴング/レバー/プレート・アセンブリの質量中心上に位置付けられる。
【0059】
図4に示すように、レバー20は、寄生運動、特に横方向の運動を減らすことによってプレート18の良好な案内を確保するために、互いからできるだけ離間されるように外側に配置された2つの可撓性ボール・ジョイント又はピボット24によって、支持体20上に、関節式又は枢動式に取り付けることができる。
【0060】
図4及び図14に示すように、可撓性ボール・ジョイント24(すなわち、可撓性ピボット)の壁の厚さeは、レバー20及びプレート18の振動周波数、ひいては、生成される音の長さを変化させるために、有利に変更することができる。厚さeは、好ましくは、レバー20/プレート18のアセンブリの振動周波数がゴング14の複数の固有周波数であるように選択され、その結果、レバー/プレートシステムはゴングと共振し始め、それにより、音の減衰が減少し、したがって、音の長さが長くなる。いくつかのゴングが使用される場合、周波数の平均値を周波数として選択することができる。
【0061】
レバー20の厚さは、最も高い剛性をできるだけ保ってシステムの慣性を減少させるために、回転軸21の側でより厚く、プレート18の方向で薄くなるように選択することができる。
【0062】
支持体22に横方向に取り付けられ、レバー20の回転軸21を構成するピンによって、レバー20を支持体22上に関節式又は枢動式に取り付けることも可能である。支持体22は、ばねによって応力が加えられる。
【0063】
より具体的には、レバー20は、支持体22上に関節式又は枢動式に取り付けられて伝達部材28と一体になった第1の端部20aと、プレート18と協働するように配置された第2の端部20bとを備える。レバー20の長さ、すなわち、その第1の端部20aとその第2の端部20bとの間の距離は、本発明の変形例に応じて変化する。
【0064】
本発明の第1の実施例によれば、プレート18は、画定された領域によって前記レバー20に固定されることにより、レバー20と一体になっており、前記レバー20の回転軸21を中心とした振動性回転運動に応じて、すなわちレバー20と同じ回転自由度によって、前記レバー20とともに変位する。
【0065】
プレート18は、前記プレート18が静止位置にあるとき、文字盤及び背面に平行な2つの主表面18a、18b、すなわち、背面側の表面18aと文字盤側の表面18bとを備え、前記主表面18a、18bは、横方向の縁部18cによって接合されている。
【0066】
図3に示すこの第1の実施例の第1の変形例によれば、プレート18は、その主表面の一方、ここでは、文字盤側のその表面18bによってレバー20に固定され、その結果、プレート18の周縁部の100%が固定されない状態になる。レバー20は、例えば、プレート18上に設けられた穴、及びレバー20の第2の端部20b上に設けられた穴34(図4参照)にねじ込まれたねじ32によって、又は接着、溶接等によって、プレート18に固定することができる。
【0067】
変位された空気の体積は、図3の矢印によって示される回転軸21から最も遠く離れているプレート18の領域上で、より大きくなる。
【0068】
さらに、プレート18は、レバー20に平行に変位するため、プレートとレバーとの間の遊びを極端に小さく、又はゼロにさえすることが可能であり、それにより、嵩を小さくすることができる。
【0069】
図5に示す別の変形例によれば、プレート18は、半径方向開口部36を備えるように切断することができ、半径方向開口部36内には、レバー20が半径方向開口部36の両側でプレート18に接触することなく収容される。これにより、レバー20を前記半径方向開口部36に通過させることで、前記半径方向開口部36内にレバー20を一体化させることができ、嵩を小さくすることができる。
【0070】
前記プレート18をムーブメント内に一体化する目的で、プレート18の特定の領域を切り離すことも可能である。これにより、嵩を小さくすることができる。前記切り離された領域は、好ましくは、効率が最も低い位置に配置される。
【0071】
図6に示す別の変形例によれば、時計は、ケース2内に分散された少なくとも2つの振動発生装置、例えば、2つの異なるゴング14’、14”と、支持体22’、22”上にそれぞれ関節接合されて、ゴング14’、14”をそれぞれ担持する少なくとも2つのレバー20’、20”と、レバー14’の一方と連携する少なくとも1つの第1のプレート18’と、他方のレバー14”と連携する第2のプレート14”とを備える。前記第1及び第2のプレート18’、18”は、本発明によれば、前記プレート18’、18”と、前記プレートに最も近いケース2の要素の周方向縁部との間の全体的に自由な空間を残して、ケース2の内部空間を占有するように選択される相補的な形状を有してもよい。また自由空間23が前記プレート18’、18”の間に形成されて、前記プレート18’、18”を、各自のレバー20’、20”の振動運動に応じて、それら自体の振動運動に従って互いに独立して自由に変位させることができる。したがって、異なる方法でソースを増幅することが可能である。例えば、甲高い音のゴングと低音のゴングとを別々に調整することが可能である。ミニッツ・リピータの場合、例えば、正時を表すゴング(hour gong)と分を表すゴング(minute gong)とを独立して調整することが可能である。
【0072】
ゴング14’、14”は、互いに向かい合うプレート18’、18”の周りに、又は任意の他の位置に配置することができる。2つより多いゴングを設けることができることが明らかである。
【0073】
図7に示す本発明の第1の実施例の別の変形例によれば、プレート18は、例えば、埋込みにより、その周方向縁部によってレバー20に固定される。この目的のために、レバー20は、埋込クランプを形成する溝38を有し、溝38では、レバー20によって圧縮されたこれらの主表面18a、18bの周縁部によって、プレート18が保持される。図示されていない別の変形例では、追加のプレートが設けられ、それは、これらの主表面18a、18bの周縁部によってレバー20の上面にプレート18を固定することを可能にする。プレート18は、追加のプレートとレバー20の上面との間で主表面18a、18bの周縁部によって圧縮することができ、又は、プレートの主表面18aの周縁部は、レバー20の上面上にそれ自体がねじ留めされた追加のプレートの下に接着され、主表面18bの周縁部は、レバー20の前記上面に接触する。レバー20の長さは、それに応じて、埋込クランプの長さにのみ、又はプレート18の主表面18a、18bの周縁部を保持するための必要な面にのみ実質的に対応するように縮小される。したがって、ムーブメントの上、又は文字盤の上を通過する要素はない。増幅装置は使用者には見えず、そのことは、プレート18が文字盤側にある場合に特に有利である。
【0074】
プレート18の剛性と軽さとを両立させるために、前記プレートは、有利には、レバー20が固定される周方向縁部から反対側の自由周方向縁部に向かって厚みが増す。剛性は、レバー20に固定される点の近くでより顕著であり、軽さは、最も遠くに離れたプレートの領域上で最も軽い。
【0075】
有利には、プレート18は、文字盤側にあるとき、針を通すために中央部に穿設されることにより、文字盤自体を構成するように配置されていてもよい。文字盤は、好ましくは、プレートの重量を増加させないように、アップリケ又は他の付加素子を有さず、転写によって印刷される。
【0076】
これらの変形例では、レバー20は、有利には、プレート18の案内を確実にするために、図4を参照して、上述の2つの可撓性ボール・ジョイント又はピボット24を備える。
【0077】
図示されていない別の変形例では、プレート18は、レバー20及び支持体22が有利にはケース2の要素に直接埋め込まれたプレート18のリムによって構成されるように、レバー20及び支持体22と一体に作られてもよく、プレートの残りの部分は、自由に振動することができるように隔絶された状態である。ゴングのヒールは、プレートがケース2の要素内に埋め込まれている点の近くで、プレート上に直接固定される。ゴングのヒール及びプレートは、一体で作られていてもよい。
【0078】
本発明の第2の実施例によれば、プレート18は、プレート18全体が前記プレート18に垂直な軸に沿って直線的な並進運動によって駆動されるように、レバー20と協働するように配置され、レバー20の回転軸21及びプレート18は、振動モードでは平行なままである。つまり、プレートの全ての点は、同じ直線的な並進運動に従って変位される。
【0079】
レバー20とプレート18との連結点は、前記プレート18の幅の40%未満の、好ましくは20%未満の、前記プレート18の中心部からの距離に位置することが好ましい。レバー20とプレート18との連結点は、最大の梃子の効果を有するために、前記プレート18の中心部に配置されることが好ましい。
【0080】
プレート18は、有利には、動きが直線であることを保証するために、プレートに垂直な前記軸に沿って直線的に並進する案内手段と協働する。
【0081】
図8に示す第2の実施例の第1の変形例によれば、前記案内手段は、少なくとも3つの可撓性締結具40を備え、その可撓性締結具40は、プレート18の周縁部にわたって規則的に分散され、例えばケース2の要素に強固に接続された連結支持体42に前記プレート18を接続している。
【0082】
したがって、プレートの第1の振動モードは、図9に示すように、プレート18及びレバー20の振動的変位を案内する前記締結具40を曲げることによるプレート18全体の直線的な変位である。
【0083】
前記連結支持体42は、この変形例では、プレート18に最も近いケース2の要素を構成し、連結支持体42と前記プレート18との間の、プレート18の周りの自由空間44をプレート18で区切る。
【0084】
プレート18が円形であるとき、締結具40の数は、互いに120°の角度だけ離間した3つであってもよく、又は3つより多くてもよい。この原則によって、プレート/弾性締結具のシステムの共振による低周波の強化が可能になる。締結具の形状及びその数は、プレート/締結具のシステムの共振周波数を決定するために変化してもよい。例えば、図示されていない変形例では、締結具は、プレートと同心円状に延在することができ、3つ以上の数であってもよい。
【0085】
締結具40の寸法、特に長さは、前記締結具の柔軟性(順応性)に対応するように選択される。したがって、長さがより長いことによって、締結具40の柔軟性を高めることができる。
【0086】
可撓性又は柔軟性の高い締結具40及び連結支持体42は、有利には、例えばレーザによってプレート18に切り込みを入れることによって成形されている。レーザ切断は、プレート18がゴング14に対して共振し始めるように、非常に精密に締結具40を成形する利点を有する。これによって、以下で説明するように、前記空間44から移る空気の流量を管理するために、プレート18と連結支持体42との間の空間44の幅を正確に寸法設定することもできる。締結具40の幅は、有利には、プレートの周縁部の少なくとも70%、好ましくは少なくとも90%が自由に変位されるような幅である。
【0087】
図10図12に示された本発明の第2の実施例の別の変形例によれば、案内手段は、プレート18と一体になった中央プレート48を備えるブラケット46と、中間部3などのケース2の要素に中央プレート48を接続する少なくとも3つの弾性アーム50とで作られていてもよい。
【0088】
アーム50は、好ましくは、中央プレート48の周りに規則的に分散され、非常に長いので、直線的な案内を確実にするために、一定の弾力性又は柔軟性がアーム50に与えられる。それらは、シール52によって保持されたケース2の要素、例えば中間部3に追加することができる。それらは、ケース2の要素と一体的に形成することもできる。
【0089】
プレート18は、例えば、ねじ留め、接着、溶接、又は任意の他の適切な固定手段によって、中央プレート48と一体になる。プレート18は、プレート18の周縁部の100%が自由に変位するように、その中心部によって中央プレート48に固定される。
【0090】
プレートを変形することなく、プレート18の完全に直線的な振動運動を行うために、前記プレート18は、好ましくは、球面連結によってレバーに結合される。
【0091】
このような球面連結は、前記レバーと中央プレート48との間のレバー20の第2の端部20bに設けられた追加の可撓性ボール・ジョイントによって提供することができる。
【0092】
有利には、より詳細に図12を参照すると、このような球面連結は、ブラケット46の中央プレート48上に、レバー20の第2の自由端20bとの接触領域54を設けることによっても確保することができ、前記接触領域54及びレバー20の前記第2の自由端20bは、丸みを帯びている。さらに、中央プレート48及びレバー20の第2の自由端20bは、それぞれ、互いに連通しているプレート18の主平面に垂直な中央チャネル56、58を備える。ナイロン糸などのプレストレスを与えられた弾性ワイヤ60が前記チャネル56、58を通り抜け、弾性ワイヤ60の一端は、中央プレート48と一体であり、弾性ワイヤ60の他端は、レバー20の第2の自由端20bと一体となっている。ワイヤ60の端部は、例えば接着によってプレート48とレバー20とにそれぞれ固定することができる。この配置により、柔軟な固定によって、レバー20とプレート18とを結合させ、ストレスなく、レバー20とプレート18との間の接触を確保することができる。
【0093】
実施例と無関係に、有利には、プレート18の周りに形成された自由空間は、前記プレート18とプレートに最も近いケース2の要素の周方向縁部との間に、10μm~500μmの間の、好ましくは10μm~400μmの間の、好ましくは10μm~300μmの間の、より好ましくは30μm~60μmの間の幅を有する。使用可能な技術によっては、10μm未満の幅が考えられ得る。図6に示すように、いくつかのプレートが使用されるとき、プレート間に残された自由空間についても同様である。
【0094】
プレート18の周りに形成された自由空間は、ピストン・モードで動作し、したがって、前記プレート18内の内部摩擦を減少させるために必要であるが、それは漏れ口を生じさせ、その漏れ口は、音響出力の損失を減らするために、できるだけ小さくなるように寸法設定されなければならない。
【0095】
自由空間はまた、例えば、ケース2上に横向きに設けられた開口部62(図2参照)に対して寸法設定されており、そこを通って、増幅された音が出る。漏れ口及び開口部62は、それらの音響抵抗によって特徴付けることができる。開口部62は、圧縮空気の大部分が前記開口部62を通って出て、増幅された音を伝播するように、漏れ口の音響抵抗よりもはるかに低い音響抵抗を有する。好ましくは、漏れ口と開口部62との間の有用な周波数範囲における音響抵抗の比は、少なくとも2であり、好ましくは5である。
【0096】
開口部62は、プレート18によって発生された音の音量を調整することができるように配置された、又は、例えば、音が打撃時間以外に発生すると開口部62を塞ぐように配置された、調整可能な閉塞手段によって、有利に塞ぐことができる。これらの閉塞手段は、開口部62が完全に塞がれる閉鎖位置と、開口部62が最大となる開放位置との間で変位することができるように配置され、中間位置は、開口部62を塞いで、音量をいくぶん調整することを可能にする。例えば、閉塞手段は、リングなどの回転要素を備えていてもよく、その回転要素は、背面4上で回転して取り付けられ、開口部62が完全に塞がれる閉鎖位置と、開口部62が最大となる開放位置との間で回転するように配置される。
【0097】
有利には、防水時計が求められる場合、各開口部62は、不純物又は水がケースに入るのを防ぐために、通気性及び非透水性のフィルタによって保護することができる。このようなフィルタは、当業者に知られている。
【0098】
本発明による時計により、音源の振動を正しい軸に向ける関節接合式レバーによって音を大幅に増幅することができ、同時に、周りを空気が通過できる自由プレートが使用されることによって、実質的に減衰のない音質を維持し、その結果、プレートはもはや変形応力を受けなくなる。振動の減衰が非常に重要な防水膜を使用する装置とは異なり、伝播された音は非常に強いが非常に短く、本発明により、強い伝播音でできるだけ長く続く良質な共鳴を得ることができる。
【0099】
上述した実例の大部分については、単一のゴングが示されている。いくつかのゴングが同様に使用され得ることは明らかである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】