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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】半減期が改善された細胞外小胞
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/04 20060101AFI20230724BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20230724BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 47/46 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 38/00 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230724BHJP
   C12N 5/10 20060101ALN20230724BHJP
【FI】
C12N1/04 ZNA
C07K14/00
C07K14/705
A61K45/00
A61K48/00
A61K31/7088
A61K31/7105
A61K31/711
A61K47/46
A61K38/00
A61K39/00 G
C12N5/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580970
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2021068526
(87)【国際公開番号】W WO2022003206
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】2010278.6
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518259431
【氏名又は名称】エヴォックス・セラピューティクス・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】シュミン・リアン
(72)【発明者】
【氏名】サミル・エル・アンダロッシ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4C076AA95
4C076EE56
4C084AA03
4C084AA13
4C084AA17
4C084BA03
4C084NA05
4C084NA13
4C085AA02
4C085BA01
4C085EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA13
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA50
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、細胞外小胞(EV)に関し、EVは、EVの表面上に存在するドメインを含み、そのようなEVの循環時間を修飾する。そのようなEVは、改善された薬物動態を示すため、治療薬として有用である。そのようなEVは、EV薬物物質の親和性精製にも有用であり得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞外小胞(EV)であって、前記EVの表面上に存在する少なくとも1つのアルブミン結合ドメイン(ABD)を含むように修飾された、細胞外小胞(EV)。
【請求項2】
前記ABDが、EVタンパク質との融合タンパク質の一部を形成し、任意選択的に、前記EVタンパク質が、膜貫通EVタンパク質又はEV膜の外面に会合したEVタンパク質である、請求項1に記載のEV。
【請求項3】
前記ABDが、マルチパス膜貫通タンパク質の小胞外ループに操作され、任意選択的に、前記マルチパス膜貫通タンパク質が、テトラスパニンである、請求項2に記載のEV。
【請求項4】
前記EVタンパク質が、CD63、CD81、CD9、CD82、CD44、CD47、CD55、LAMP2B、ICAM、及びARRDC1、並びにそれらの誘導体、ドメイン、バリアント、変異体、又は領域からなる群から選択される、請求項2又は3に記載のEV。
【請求項5】
前記EVが、1つより多くのABDを含む、先行請求項のいずれか一項に記載のEV。
【請求項6】
1つより多くのABDが同じ融合タンパク質中に存在する、請求項2~5のいずれか一項に記載のEV。
【請求項7】
前記EVが、治療用カーゴを更に装填され、任意選択的に、前記治療用カーゴが、タンパク質、核酸、ウイルス、ウイルスゲノム、抗原、又は小分子である、先行請求項のいずれか一項に記載のEV。
【請求項8】
前記治療用カーゴが、核酸、任意選択的にRNA分子、DNA分子若しくはミキシマー(mixmer)、mRNA、アンチセンス若しくはスプライススイッチングオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、プラスミドDNA(pDNA)、スーパーコイルド若しくは非スーパーコイルドプラスミド、又はミニサークル;ペプチド若しくはタンパク質、任意選択的にトランスポーター、酵素、受容体(任意選択的にデコイ受容体)、膜タンパク質、サイトカイン、抗原若しくはネオ抗原、リボ核タンパク質、核酸結合タンパク質、抗体、ナノボディ若しくは抗体断片;抗体-薬物複合体;小分子薬物;遺伝子編集技術、任意選択的にCRISPR-Cas9、TALEN、メガヌクレアーゼ;又は小胞をベースとするカーゴ、任意選択的にウイルス、任意選択的にAAV若しくはレンチウイルスからなる群から選択される、請求項7に記載のEV。
【請求項9】
前記治療用カーゴが、前記EVの内側、前記EVの外側、及び/又は前記EVの前記膜に存在する、請求項7又は8に記載のEV。
【請求項10】
前記治療用カーゴが、前記EVタンパク質-ABD融合タンパク質の一部を形成する、請求項7~9のいずれか一項に記載のEV。
【請求項11】
前記EVが、標的化部分を更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載のEV。
【請求項12】
前記標的化部分が、前記ABD融合タンパク質の一部を形成する、請求項11に記載のEV。
【請求項13】
先行請求項のいずれか一項に記載のEVを製造するための方法であって、(i)EV産生細胞に、ABD-EVタンパク質融合構築物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド構築物を導入することと、(ii)前記EV産生細胞内で前記構築物を発現し、それによって、前記EVの前記表面上に存在するABDを含むEVを生成することと、を含む、方法。
【請求項14】
請求項1~12のいずれか一項に記載の少なくとも1つのEVと、薬学的に許容される賦形剤又は担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項15】
医薬に使用するための、請求項1~12のいずれか一項に記載のEV、及び/又は請求項14に記載の薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬物動態プロファイルが改善され、半減期が増加し、インビボでの腫瘍蓄積が増加し、及び貯蔵中の安定性が増加した、遺伝子操作された細胞外小胞(EV)に関する。本発明はまた、治療における上記EVの使用、上記EVの製造方法及び上記EVの精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
EV(エキソソームなど)は、典型的には、ほとんどの細胞型によって内因的に産生され、細胞間のタンパク質、核酸、ペプチド、脂質、及び様々な他の分子のための身体の天然輸送システムとして機能するナノメートルサイズの小胞である。EVは、いくつかの潜在的な治療用途を有し、EVは、タンパク質、核酸、及び小分子の治療のための送達ビヒクルとして既に調査されている。しかしながら、疾患の治療のためのEVの有望な潜在的な臨床用途は、現在、特に静脈内投与後のEVの迅速なクリアランスの影響を受ける。半減期が短いため、非標的化EVの大部分は肝臓及び脾臓に向かい、これは、非標的化EV治療薬の治療用途が主にこれらの標的器官に焦点を当てていることを意味する。
【0003】
EVのインビボでの短い循環時間は、それらのかなりの治療可能性を利用することに対する主要な制限のうちの1つである。更に、EVは、主に肝臓及び脾臓によって取り込まれることが知られている。この明確な生体内分布パターンは、肝脾臓系以外の臓器を標的とする場合、EVを他の標的臓器へと導くためには大量の用量及び/又は特定の標的化部分を含むことが必要であることを意味し、これは、本発明が克服しようとする課題である。これが他の臓器への送達を増加させ、したがって(特に、脳への標的EVの)生体内分布を改善するように、肝臓及び脾臓による取り込みからEVを逸らすことが望ましい。
【0004】
薬物及び生物学的製剤の半減期を増加させるために多くの技術が一般的に使用されている。典型的には、半減期の延長に関する4つの一般的な戦略のうちの1つが使用される:
1)薬理学的に活性なペプチド若しくはタンパク質の、天然に半減期が長いタンパク質若しくはタンパク質ドメイン(例えば、Fc融合、トランスフェリン)への非共有結合若しくは遺伝子融合、又はアルブミン融合、又は不活性なポリペプチド(例えば、XTEN)、ホモアミノ酸ポリマー、プロリン-アラニン-セリンポリマー、若しくはエラスチン様ペプチドへの融合。
2)反復化学部分(例えば、ポリエチレングリコール(PEG)(PEG化)又はヒアルロン酸)への、薬理学的に活性なペプチド又はタンパク質の化学的コンジュゲーションにより、流体力学的半径を増加させること。
3)ポリシアリル化により、薬理学的に活性なペプチド又はタンパク質の負電荷を著しく増加させるか、あるいは、ヒトCG βサブユニットなどの天然タンパク質の半減期を延長することが知られている負に荷電した高シアリル化ペプチド(例えば、カルボキシ末端ペプチド[CTP;絨毛性ゴナドトロピン(CG)β鎖のもの])を生物学的薬物候補に融合させること。
4)異なる長さ及び構造のPEGを有する薬物(pharmacological agents)(例えば、脂質若しくはポリマーナノ粒子、又は治療用タンパク質)をコーティング又はコンジュゲートして、カーゴ分子の静電荷を減少させ、免疫系細胞、腎臓又は肝臓クリアランス機構から当該分子を遮蔽すること。
【0005】
PEG化を除くこれらの全ての現在のアプローチは、組換えタンパク質又はいくつかの例ではRNA治療薬のいずれかとともに使用した場合のみ臨床的に成功しているが、インビボでは全く異なる生物物理学的及び免疫学的考慮事項の影響を受けるEVなどのナノ粒子の形態をなす大きな巨大分子アセンブリとともには決して使用されていない。特に、EVは、単一のタンパク質又はRNA治療薬よりもはるかに大きいことに加えて、非常に異なる電荷も担持しているため、薬物動態/薬力学を変更する既存の方法をEVの文脈へと変換することが非常に予測不可能になる。
【0006】
しかしながら、上述の既存の方法は、いくつかの重大な欠点を有する。Fc融合に関する主な懸念は、リンカー及び融合タンパク質における安定性、異常なグリコシル化であり、一方、HSA融合についての主な懸念は、生体内分布が特定の臓器により限定され得ることである。また、Fcタンパク質の融合はかさばり、融合タンパク質の、治療薬の活性への干渉の問題を引き起こす可能性がある。
【0007】
EVのPEG化に関する過去の試みは、ほとんど成功していない。第1に、EVのトポロジー及び表現型を乱すことなく、EVにPEGをコンジュゲートすることが課題である。第2に、PEGは、注射されると毒性の副作用を引き起こし得る人工物質である。更に、PEGは免疫原性であるため、医薬品の循環からのクリアランスだけでなく、毒性を引き起こす可能性もある。
【0008】
特定のEVサブクラスの取り込みを駆動するシアリル化部分を認識する受容体が存在するため、EVの文脈でシアリル化を使用してそれらの半減期を増加させることが機能する可能性は非常に低いであろう。例えば、B細胞エキソソームは、脾臓のシアロアドヘシンによって取り込まれる。更に、EV上のグリコシル化パターンを増加させることは、より単純なタンパク質治療薬の場合ほど容易ではない。なぜなら、EVは、EVを覆う形質膜と同様の膜を既に含んでいるため、それらの表面上に既にグリコシル化タンパク質を有するからである。EV上で一般的に見られるタンパク質は、重度にグリコシル化され、それによって負に荷電することが知られている。したがって、EV表面のシアリル化を増加させる利点はおそらくない。
【発明の概要】
【0009】
したがって、EVの半減期及び生体内分布に伴う上記問題を克服することが、本発明の目的である。
【0010】
第1の態様では、本発明は、EVの表面上に存在する少なくとも1つのアルブミン結合ドメイン(ABD)を含むように修飾された、EVに関する。ABDは、EVタンパク質との融合タンパク質の一部を形成し得、任意選択的に、EVタンパク質は、膜貫通EVタンパク質又はEV膜の外面に会合したEVタンパク質である。
【0011】
第2の態様では、本発明は、第1の態様によるEVを製造するための方法であって、(i)EV産生細胞に、ABD-EVタンパク質融合構築物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド構築物を導入することと、(ii)EV産生細胞内で上記構築物を発現し、それによって、EVの表面上に存在するABDを含むEVを生成することと、を含む、方法に関する。
【0012】
第3の態様では、本発明は、第1の態様の少なくとも1つのEVと、薬学的に許容される賦形剤又は担体と、を含む、薬学的組成物に関する。
【0013】
第4の態様では、本発明は、医薬に使用するための、第1の態様のEV及び/又は第3の態様の薬学的組成物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】安定した細胞における融合構築物の良好な発現を示すウエスタンブロット。
図2】EV中の融合構築物の良好な発現を示すウエスタンブロット。
図3】ABDの存在を示すインビボ半減期の延長により、循環中のEVの半減期が有意に増加し、それらをより安定させることによって、対照群と比較して循環中のEVが14倍超になった。
図4】対照EVと比較した、標的臓器中のEVの有意な倍数増加を示すABD EVのインビボ生体内分布。
図5】対照EVと比較した、ABD EVの腫瘍蓄積を示すABD EVのインビボ生体内分布。
図6】対照EVと比較した、ABD EVのリンパ節蓄積を示すABD EVのインビボ生体内分布。
図7】対照EVと比較して、ABD EVがアルブミンと結合できることを示すABD-EVアルブミンインビトロ結合アッセイ。
図8】対照EVと比較した、ABD EVがアルブミンと結合する能力のフローサイトメトリー分析。
図9】様々な追加の構築物を試験する、更なるABD-EVアルブミンインビトロ結合アッセイ。
図10】様々な追加の構築物を試験する、更なるインビボ半減期延長実験アッセイ。
図11】シングルパス膜貫通EVタンパク質に融合したABDを発現するEVについてのインビボ血漿半減期延長データと組み合わせた、インビトロアルブミン結合データ。
図12】対照EVと比較した、ABD EVのリンパ節及び腫瘍蓄積を示すABD EVのインビボ生体内分布。
図13】異なる投与経路による送達後の血漿中のABD EV半減期を示すグラフ。
図14】代替の細胞供給源に由来するABD EVの血漿半減期の改善を示すグラフ。
図15】アルブミンとABD発現EVとの共存を示す勾配分離(ドット-ブロット定量)及び広視野顕微鏡画像。
図16】インビボのABD発現EVがアルブミンと結合することを確認する、定量されたドット-ブロットとして表されるインビボABD結合アッセイを示すグラフ。
図17】ABD EVがアルブミンと結合することを示す、ドット-ブロットによる更なる勾配分離分析。
図18】融合タンパク質の構築物設計を概説する概略図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、EVの表面上に存在する少なくとも1つのABDを含む、EVに関する。本発明はまた、それらEVの作製及び精製方法、並びに治療におけるそれらの使用に関する。本発明のEVは、それらの表面上にABDが存在するため、いくつかの明確な利点を有する。理論に拘束されることを望まないが、主に、EVの表面上に存在するABDは、おそらくはEVと血清アルブミンとの間の相互作用を媒介することによって、循環中のEVの半減期を延長することができると推測される。この半減期の延長は、任意及び全てのEVにわたって広く応用可能である。これは、任意のカーゴ及び任意の標的化部分を装填したEVに適用され、すなわち、本発明は、カーゴ又は標的化部分に特異的ではなく、広く適用可能である。生物学的製剤の半減期を増加させる以前の試みには、当該生物学的製剤に特化した調整が必要であった。本発明は、治療用カーゴには適用可能ではなく、送達小胞に適用可能であるため、EV内又はEV上に装填可能な任意のカーゴ分子の半減期を増加させるのに非常に適応可能であるという点において、顕著である。理論に拘束されることを望まないが、ABD EVの半減期が長くなると、ABD EVの生体内分布が変化する可能性もある。EV生体内分布のこの変化、したがって、EV内又はEV上に運ばれる薬物カーゴの薬物動態は、EVの循環時間を延長し、治療用EVの標的送達の機会を改善するために非常に重要である。アルブミンタンパク質はまた、受容体媒介性エンドサイトーシスに関与するリサイクル受容体FcRNに結合することもできる。したがって、標的細胞及び/又は組織へのEV又はエキソソームの取り込みが可能になる。理論に拘束されることを望まないが、これにより、より高いペイロードが標的臓器に送達されることに起因して、より高い治療効果が得られる。例えば、ABD EVは、脳を標的にするのに適しているのが理想的である。アルブミンなどのタンパク質を利用することによって、PEG化などのEVの半減期を増加させるための既知の方法の前述の欠点を全回避することもできる。
【0016】
便宜上及び明確にするために、本明細書で使用される特定の用語をまとめて、以下に説明する。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味と同じ意味を有する。本明細書では、単数形は、文脈が特に明確に指示しない限り、複数形も含む。例として、用語「a」、「an」、及び「the」は、単数形又は複数形であると理解され、用語「or」は、包括的であると理解される。例として、「要素」は、1つ以上の要素を意味する。本明細書全体を通して、「含む(comprising)」、又はその変形形態(例えば、「含む(comprises)」若しくは「含む(comprising)」は、記載された要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群を包含することを意味するが、任意の他の要素、整数、若しくはステップ、又は要素、整数、若しくはステップの群を除外することを意味するものではないことが理解されるであろう。「約」は、記載される値の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.1%、0.05%、又は0.01%以内であると理解することができる。文脈から特に明確でない限り、本明細書で提供される全ての数値は、「約」という用語によって修飾される。
【0017】
本明細書に記載されるものと類似又は同等の方法及び材料を本開示の実施又は試験で使用することが可能であるが、以下では好適な方法及び材料が記載される。本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照によりそれらの全体が組み込まれる。本明細書で引用された参考文献は、特許請求された発明の先行技術であるとは認められない。矛盾する場合では、画定を含む本明細書は、優先される。加えて、材料、方法、及び例は、例示的であるのみであり、限定的であることを意図しない。本開示の他の特徴及び利点は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかとなるであろう。
【0018】
本発明の特徴、態様、実施形態、又は代替物がマーカッシュ群に関して説明される場合、当業者は、本発明がそれによってマーカッシュ群メンバーの任意の個々のメンバー又は下位群に関しても説明されることを認識するであろう。当業者は、本発明がそれによって、マーカッシュ群メンバーの個々のメンバー又は下位群の任意の組み合わせに関しても記載されることを更に認識するであろう。加えて、本発明の態様及び/又は実施形態のうちの1つに関連して説明される実施形態及び特徴はまた、本発明の全ての他の態様及び/又は実施形態において準用されることに留意されたい。例えば、EVと関連して本明細書に記載されるABDタンパク質及びABD融合タンパク質/ポリペプチドは、本明細書の他の全ての態様、教示及び実施形態、例えば、EVの製造若しくは精製方法に関する態様及び/若しくは実施形態、又は本明細書に記載の対応するポリヌクレオチド構築物若しくはEVが由来する操作されたEV産生細胞に関する態様及び/又は実施形態と開示され、関連し、かつ適合性があると理解されるべきである。更に、特定の態様に関連して説明される特定の実施形態、例えば、特定の医学的適応の治療に関する態様に関連して説明されるような治療用カーゴ分子及び任意選択的に融合ポリペプチドを含むEVの投与経路はまた、当然そのようなEVを含む薬学的組成物に関するものなどの他の態様及び/又は実施形態と関連してもよい。更に、本明細書で同定される全てのポリペプチド及びタンパク質は、ポリペプチドを融合するための従来の戦略を使用して、融合タンパク質中で自由に組み合わせることができる。非限定的な例として、本明細書に記載のアルブミン結合ドメインタンパク質は、任意の組み合わせで1つ以上のEVタンパク質と自由に組み合わせてもよく、任意選択的に他の全てのポリペプチドドメイン、領域、配列、ペプチド、本明細書の基、例えば、任意の多量体化ドメイン、リンカー配列、放出ドメイン、治療用カーゴ分子、エンドソーム脱出ドメイン、及び/又は標的化部分と組み合わせてもよい。更に、任意及び全ての特徴(例えば、マーカッシュ群の任意及び全てのメンバー)は、任意及び全ての他の特徴(例えば、任意の他のマーカッシュ群の任意及び全てのメンバー)と自由に組み合わせることができ、例えば、任意のABDは、任意のEVタンパク質と組み合わせてもよい。更に、本明細書の教示が単数形のEV及び/又は別個の天然ナノ粒子様小胞としてのEVを指す場合、全てのそのような教示は、複数のEV及びEV集団に同様に関連し、適用可能であることが理解されるべきである。一般的な注釈として、本発明によるアルブミン結合ドメイン、EVタンパク質、EV産生細胞供給源、追加のドメイン及び部分、治療用カーゴ分子、標的化部分、並びに全ての他の態様、実施形態、及び代替物は、本発明の範囲及び要旨から逸脱することなく、任意及び全ての可能な組み合わせで自由に組み合わせることができる。更に、本発明の任意のポリペプチド若しくはポリヌクレオチド、又は任意のポリペプチド若しくはポリヌクレオチド配列(それぞれアミノ酸配列若しくはヌクレオチド配列)は、任意の所与の分子がそれに関連する所望の技術的効果を実行する能力を保持する限り、元のポリペプチド、ポリヌクレオチド及び配列から大幅に逸脱してもよい。それらの生物学的特性が維持される限り、本出願によるポリペプチド及び/又はポリヌクレオチド配列は、可能な限り高い配列同一性又は類似性が好ましいが(例えば、60%、70%、80%、又は例えば90%以上)、天然配列と比較して最大50%(例えば、BLAST又はClustalWを使用して計算される)逸脱してもよい。配列同一性又は相同性を決定するために、当該技術分野の標準的な方法を使用してもよい。例えば、PILEUPアルゴリズム及びBLASTアルゴリズムを使用して、相同性を計算するか、又は配列を並べることができる。例えば、いくつかのポリペプチドの組み合わせ(融合)は、それぞれのポリペプチドの特定のセグメントが置き換えられてもよく、及び/若しくは修飾されてもよいこと、かつ/又は配列が、他のアミノ酸伸長の挿入によって中断されてもよいことを暗示し、これは、重要な特性(例えば、アルブミンと結合し、ひいては半減期を延長する能力、融合構築物をEVに輸送する能力、標的化能力など)が保存されている限り、天然配列からの逸脱がかなりのものであってもよいことを意味する。したがって、そのようなポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列に同様の論法が当然適用される。ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質に関連して本明細書で言及される任意の配列番号は、単なる例として、単なる情報のためとみなされ、全てのペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質は、当業者がそれらを理解するように、通常の意味を付与されるものとする。したがって、上述のように、当業者はまた、本発明が、本明細書で言及される特定の配列番号及び/又は受託番号だけでなく、その変異体及び誘導体、例えば、配列番号5~10からのHisタグ(HHHHHH)の除去も包含することも理解するであろう。本明細書で言及される全てのタンパク質、ポリペプチド、ペプチド、ヌクレオチド、及びポリヌクレオチドは、当業者によって理解されるように、それらの従来の意味に従って解釈されるべきである。
【0019】
「少なくとも1つ」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、又はそれ以上を意味することができる。
【0020】
本明細書で使用される場合、「半減期」及び「T1/2」という用語は、生物の全血中を循環するときに、物質の血漿濃度がその定常状態を半減させるのに要する時間(血漿半減期)を意味し得る。
【0021】
「細胞外小胞」又は「EV」又は「エキソソーム」又は「遺伝子修飾/遺伝子操作EV/エキソソーム」、又は「操作/修飾EV/エキソソーム」という用語は、本明細書で互換的に使用され、任意の形態で細胞から得ることができる任意の種類の小胞、例えば、微小胞(例えば、細胞の形質膜から脱落した任意の小胞)、エキソソーム(例えば、エンドソーム、リソソーム、及び/若しくはエンドリソソーム経路に由来する任意の小胞、並びに/又は細胞の形質膜若しくは任意の他の膜に由来する任意の小胞)、アポトーシス体(アポトーシス細胞、ARRDC1媒介性微小胞(ARMM)(アレスチンドメイン含有タンパク質1[ARRDC1]媒介性微小胞))、微粒子(血小板に由来し得る)、エクトソーム(例えば、血清中の好中球及び単球などに由来し得る)、プロスタソーム(前立腺がん細胞から得ることができる)、又はカーディオソーム(例えば、心臓細胞に由来し得る)に関すると理解され得る。エキソソーム、微小胞、及びARMMは、特に好ましいEVを表すが、他のEVもまた、様々な状況で有利であり得る。「遺伝子修飾(された)」EV及び「遺伝子操作(された)」EVという用語は、EVが、通常、それらの細胞によって産生されるEVに組み込まれる組換え融合タンパク質産物を含む遺伝子修飾/遺伝子操作細胞に由来することを示す。「修飾EV」という用語は、例えば、EV産生細胞の遺伝子操作を介して、又は、例えば、エキソソーム表面に部分を付着させるための化学的コンジュゲーションを介して、遺伝子アプローチ又は化学的アプローチのいずれかを使用して小胞が修飾されたことを示す。
【0022】
EVのサイズは、大幅に変化し得るが、EVは、典型的には、ナノサイズの流体力学半径、すなわち、1000nm未満の半径を有する。エキソソームは、多くの場合、30~300nm、典型的には40~250nmの範囲のサイズを有し、これは、非常に好適なサイズ範囲である。明らかに、EVは、インビボ、エクスビボ、及びインビトロの両方の任意の細胞型に由来し得る(供給源細胞の更なる詳細は、以下に記載される)。
【0023】
「アルブミン結合ドメイン」又は「ABD」という用語は、アルブミンに結合することができる任意のタンパク質、ペプチド、抗体若しくはナノボディ、又はその断片若しくはドメインに関すると理解することができる。ABDは、任意の種に由来し得る。好ましくは、ABDは、ヒト血清アルブミン(HSA)に対して特異的な結合親和性を有する。一般に知られているABDは、Peptostreptococcus magnus由来のPABタンパク質、並びにC群及びG群の連鎖球菌由来のプロテインGに由来するアルブミン又はABDに対して上昇される抗体又はナノボディであり、これらの両方は、高い親和性でアルブミンに結合する。
【0024】
ABDは、例えばグラム陽性細菌によって発現されることが多い様々な表面タンパク質に見られる小さな3螺旋タンパク質ドメインである。ABDは、異なるアルブミンに対するより広範な特異性、安定性の増加、免疫原性の低下、又は結合親和性の向上を達成するために、特異的変異誘発によって操作されてもよい。本発明におけるABDによって結合されるアルブミンは、組換えアルブミン又は任意の種に由来するアルブミンであり得るが、好ましくはHSAである。
【0025】
本発明で使用される例示的なABD配列としては、配列番号1(G418-GA3、ABD001(WT))、配列番号2(ABD011)、配列番号3(ABD013)、及び配列番号4(ABD035)が挙げられる。本発明はまた、これらの配列に対して少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は99%の配列同一性又は相同性を有し、アルブミンに結合することができる、これらの配列のバリアント又は誘導体を包含する。本発明は、EVの表面上に存在するABDを含むEVに関し、ABDは、配列番号1~4のうちのいずれかと約50%、60%、70%、80%、90%、又は95%の配列同一性又は相同性を有する。ABDは、当該技術分野で既知の標準的なペプチド合成方法を使用して合成され得る。
【0026】
本発明のABDは、アルブミンに結合することができる、抗体、一本鎖可変断片(scFv)ナノボディ、重鎖抗体(hcAb)、VHH若しくはVNARなどの一本鎖ドメイン抗体(sdAb)、又はその断片であってもよい。sdAb及び抗体断片は、それらのサイズが小さいために特に好ましく、他の追加のドメインが融合タンパク質に導入されることを可能にし、単純な構築物の生成及び発現を可能にする。
【0027】
本発明によるABDは、EVの表面上に存在するため、それらは、治療される患者の循環系で主に見出されるアルブミン、又は医薬品製剤、若しくはEVが患者に投与する前に曝露される任意の貯蔵緩衝液又は他の溶液中に存在するアルブミンに結合することができる。ABDは、当業者に知られている任意の数の方法でEVの表面上に提示されてもよい。ただし、ABDは、アルブミンと結合することができるようにEVの外面上に曝露されている。一般に、ABDは、EVタンパク質との融合タンパク質の一部を形成する。EVは、1つより多くのABD、すなわち、複数のABDを含んでもよい。複数のABDは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0028】
本発明は、(生物学的製剤の半減期を増加させるための従来のアプローチのように)完全なアルブミンタンパク質を融合構築物に含めることを必要としない。代わりに、本発明は、循環への注入後の対象の天然アルブミンへのEVの結合、又は例えば、製剤又は緩衝液中に存在するアルブミンへのエクスビボの結合に依存する。アルブミンのMrは66.5kDaであり、ABDは典型的には、アルブミン自体よりもはるかに小さい。理論に拘束されることを望まないが、ABDのサイズがより小さいと、安定した細胞株をより単純に生成することができ、ABDのより多くのコピーが本発明の融合ポリペプチドに融合されることができ、また、そのような小さいサイズは、カーゴタンパク質及び/又は標的化部分などの他のタンパク質が同じ融合構築物内に含まれることを可能にするのにより適しているため、有益である。理論に拘束されることを望まないが、これにより、ABD EVは、より多くのカーゴ及び/又は標的化部分を収容するように容易に修飾することができるため、任意の数の異なる治療用EVを製造することができる非常に柔軟なプラットフォームとして機能することができる。
【0029】
一実施形態では、本発明のEVは、EVの表面上に存在する少なくとも1つのABDを含み、ABDは、EVタンパク質との融合タンパク質の一部を形成する。
【0030】
別の実施形態では、本発明のEVは、EVの表面上に存在する少なくとも1つのABDを含み、ABDは、膜貫通EVタンパク質又はEV膜の外面に会合したEVタンパク質との融合タンパク質の一部を形成する。EVタンパク質の存在が融合構築物のEVへの装填を能動的に駆動するので、ABDとの融合物の一部としてEVタンパク質を含むことにより、ABDがEVに能動的に装填されることが可能になる。この融合タンパク質で使用されるEVタンパク質は、シングル又はマルチパス膜貫通タンパク質であってもよい。
【0031】
本発明による融合タンパク質に含まれるEVタンパク質は、以下の非限定的な例からなる群から選択され得る:CD9、CD53、CD63、CD81、CD54、CD50、FLOT1、FLOT2、CD49d、CD71、CD133、CD138、CD235a、AAAT、AT1B3、AT2B4、ALIX、アネキシン、BASI、BASP1、BSG、シンテニン-1、シンテニン-2、Lamp2、Lamp2a、Lamp2b、TSN1、TSN3、TSN4、TSN5 TSN6、TSN7、TSPAN8、TSN31、TSN10、TSN11、TSN12、TSN13、TSN14、TSN15、TSN16、TSN17、TSN18、TSN19、TSN2、TSN4、TSN9、TSN32、TSN33、TNFR、TfR1、シンデカン-1、シンデカン-2、シンデカン-3、シンデカン-4、、CD37、CD82、CD151、CD224、CD231、CD102、NOTCH1、NOTCH2、NOTCH3、NOTCH4、DLL1、DLL4、JAG1、JAG2、CD49d/ITGA4、ITGB5、ITGB6、ITGB7、CD11a、CD11b、CD11c、CD18/ITGB2、CD41、CD49b、CD49c、CD49e、CD51、CD61、CD104、CLIC1、CLIC4、インターロイキン受容体、免疫グロブリン、MHC-I若しくはMHC-II成分、CD2、CD3エプシロン、CD3ゼータ、CD13、CD18、CD19、CD30、CD34、CD36、CD40、CD40L、CD44、CD45、CD45RA、CD47、CD53、CD86、CD110、CD111、CD115、CD117、CD125、CD135、CD184、CD200、CD279、CD273、CD 274、CD362、COL6A1、AGRN、EGFR、FPRP、GAPDH、GLUR2、GLUR3、GP130、GPIアンカータンパク質、GTR1、HLAA、HLA-DM、HSPG2、ITA3、ラクトアドヘリン、L1CAM、LAMB1、LAMC1、LIMP2、MYOF、ARRDC1、ATP2B2、ATP2B3、ATP2B4、BSG、IGSF2、IGSF3、IGSF8、ITGB1、ITGA4、ATP1A2、ATP1A3、ATP1A4、ITGA4、SLC3A2、ATPトランスポーター、ATP1A1、ATP1B3、ATP2B1、LFA-1、LGALS3BP、Mac-1アルファ、Mac-1ベータ、MFGE8、MARCKSL1などのミリストイル化アラニンリッチプロテインキナーゼC基質(MARCKS)タンパク質ファミリーのメンバー、マトリックスメタロプロテイナーゼ-14(MMP14)、PDGFR、PTGFRN、PRPH2、ROM1、SLIT2、SLC3A2、SSEA4、STX3、TCRA、TCRB、TCRD、TCRG、TFR1、UPK1A、UPK1B、VTI1A、VTI1B、及び任意の他のEVタンパク質、並びにそれらの任意の組み合わせ、誘導体、ドメイン、バリアント、変異体、又は領域。その機能を変化させるために、EVタンパク質の野生型配列に変異を導入してもよい。本発明による好ましい変異体は、CD63(Y235A)である。理論に拘束されることを望まないが、EVタンパク質の使用は、ABDが(上記のように)EVに能動的に装填されるように、EVへのABDの装填を駆動する効果を有する。そのため、EVタンパク質は、キャリアタンパク質と呼ばれることもある。特に有利なEVタンパク質としては、テトラスパニン、CD63、CD81、CD9、CD82、CD44、CD47、CD55、LAMP2B、LIMP2、ICAM、インテグリン、ARRDC1、シンデカン、シンテニン、TNFR、TfR1、及びAlix、並びにそれらの誘導体、ドメイン、バリアント、変異体、又は領域が挙げられる。
【0032】
別の実施形態では、本発明のEVは、それらの表面上に存在する少なくとも1つのABDを含み、ABDは、マルチパス膜貫通タンパク質の1つ又は複数の小胞外ループに操作され、任意選択的に、マルチパス膜貫通タンパク質は、CD36、CD9、CD81、又はTSPAN1-TSPAN33のうちのいずれかなどのテトラスパニンである。ABDは、マルチパス膜貫通EVタンパク質の第1、第2、第3、第4、若しくは任意の後続のループに、又はループのうちの1つ以上に融合されてもよい。好適には、ABDは、マルチパス膜貫通EVタンパク質の第1、第2、又は任意の後続のループに融合される。本発明者らは、驚くべきことに、膜貫通タンパク質のループにABDを組み込むことが、融合タンパク質の発現又は膜へのその挿入を妨げないことを見出し、重要なことに、膜貫通タンパク質のループにおけるABDが、この高度に非定型の融合タンパク質の位置にもかかわらず、ABDの構造及び機能に影響を及ぼさないことが示されている。有利には、ABDは、上記マルチパス膜貫通タンパク質のループのうちの1つより多くに組み込まれてもよく、かつ/又は1つより多くのABD、すなわち、複数のABDは、上記マルチパス膜貫通タンパク質の各ループに組み込まれてもよい。1つ又は複数のループに存在する複数のABDは、同じABDであっても、異なるABDであってもよい。本出願のデータは、膜貫通タンパク質の発現に影響を及ぼすことなく、1つより多くのABDが膜貫通融合タンパク質に組み込まれ得ることを示す。膜貫通EVタンパク質当たり1つより多くのABDが存在することは、より多くのアルブミン分子が、発現される融合タンパク質当たりのEVに結合することができることを意味する。これは、EVをコーティングするアルブミンの量を増加させ、したがってABDの遮蔽効果を増加させるため、有利である。これは次に、ABD EVの半減期を増加させる一方で、追加の構築物を同じEV内で発現させることを可能にし、例えば、追加の構築物は、治療用カーゴ及び/又は標的化部分を含んでよい。ABDを、マルチパス膜貫通EVタンパク質の1つのループ及び別のエンティティ(例えば、標的化エンティティ)に操作するか、又は治療用カーゴタンパク質を、同じ膜貫通EVタンパク質の別のループに操作することにより、異なる成分を単一の融合タンパク質に多重化することが可能になり、結果として生じるEVの汎用性が劇的に拡大する。機能の多重化により、この操作EV技術は、成分部を比較的簡単に追加又は交換できる、非常に汎用性の高いプラットフォーム技術になる。技術的には、単一の安定した細胞株の生成のみを必要とするが、複数の異なる機能要素を有するEVを作製するため、単一のEVタンパク質上に1つより多くの特徴を有することもまた、より単純である。
【0033】
別の実施形態では、ABDは、EVタンパク質のN末端ドメイン(NTD)又はC末端ドメイン(CTD)に融合されてもよい。
【0034】
別の実施形態では、本発明のEVは、ABD EVタンパク質融合タンパク質構築物内の追加の配列又はドメインを含む。有利な一実施形態では、ABD EVタンパク質は、少なくとも1つの多量体化ドメインを更に含む。
【0035】
本発明による多量体化ドメインは、ホモ多量体化ドメイン又はヘテロ多量体化ドメインであってもよい。本発明の多量体化ドメインは、二量体化ドメイン、三量体化ドメイン、四量体化ドメイン、又は任意のより高次の多量体化ドメインであってもよい。理論に束縛されることを望まないが、多量体化ドメインは、融合ポリペプチドの二量体化、三量体化、又は任意のより高次の多量体化を可能にし得、これは、融合ポリペプチドのEVへの選別及び輸送を増加させ、EV産生細胞によって産生される小胞の収率の増加にも寄与し得る。例示的な多量体化ドメインとしては、ロイシンジッパー、フォールドオンドメイン、断片X、コラーゲンドメイン、2G12 IgGホモ二量体、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質CARDフィラメント、心臓ホスホランバン膜貫通五量体、副甲状腺ホルモン二量体化ドメイン、グリコホリンA膜貫通、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)Gp41三量体化ドメイン、HPV45オンコプロテインE7C末端二量体ドメイン、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0036】
別の有利な実施形態では、ABD EVタンパク質融合タンパク質は、少なくとも1つのエンドソーム脱出ドメインを更に含む。本発明によるエンドソーム脱出ドメインとしては、HA2、VSVG、GALA、B18が挙げられる。他の例示的なエンドソーム脱出ドメインとしては、HIV TAT PDT(ペプチド/タンパク質形質導入ドメイン)、HIV Gp-120、KALA、GALA、及びINF-7(インフルエンザウイルスヘマグルチニンHA-2サブユニットのN末端ドメインに由来)、ジフテリア毒素Tドメインなどの膜融合を引き起こすことによって作用するエンドソーム脱出部分、ヒスチジン若しくはイミダゾール部分を有するペプチド又は脂質、及び細胞膜透過性ペプチド(CPP)などのプロトンスポンジ型エンドソーム脱出部分、並びにエンドソーム脱出を可能にする他の部分が挙げられるが、これらに限定されない。当業者によって理解されるように、CPPは、典型的には、50個未満のアミノ酸であるが、より長くてもよく、典型的には、非常に陽イオン性であり、アルギニン及び/又はリジンアミノ酸に富み、事実上任意の細胞型の内部に接近する能力を有する。例示的なCPPは、トランスポータン、トランスポータン10、ペネトラチン、MTS、VP22、CADYペプチド、MAP、KALA、PpTG20、プロリンリッチペプチド、MPGペプチド、PepFectペプチド、Pep-1、L-オリゴマー、カルシトニンペプチド、種々のアルギニンリッチCPP、例えば、ポリ-Arg、tat、及びそれらの組み合わせである。エンドソーム脱出ドメインの存在は、有利には、エンドソーム脱出を駆動し、それによってEV自体の生体活性送達を増強する。エンドソーム脱出戦略の使用は、EV内に運ばれるカーゴが、レシピエント細胞の細胞質内又はエンド-リソソーム系の外側にある任意の他の区画内に送達されることが必要とされる疾患の治療に使用することができる。
【0037】
別の有利な実施形態では、ABD EVタンパク質融合タンパク質は、少なくとも1つのリンカー、スペーサー、及び/又は骨格配列を更に含む。リンカー、スペーサー、及び/又は骨格配列の存在により、柔軟性が可能になり、EVの表面上に表示するためにABDを最適に配置することが可能になる。
【0038】
本発明によるリンカーは、融合ポリペプチド構築物の柔軟性の増加を提供し、薬物動態(PK)を改善し、発現を増加させ、生物学的活性を改善する上で有用であり、かつ、対応するポリヌクレオチド構築物にも有用であり、また、立体障害の回避及び融合ポリペプチドの機能維持を確実にするためにも使用され得る。本発明による例示的なリンカーとしては、(GGGGS)(n=1、2、4)又は(Gly)6,(Gly)8,などの安定性又は柔軟性を増加させるグリシン又はセリンリンカー、(EAAAK)n(n=1~3、及びA(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4Aなどの強固なリンカー、屈曲リンカー(XP)、又はジスルフィド、プロテアーゼ感受性配列などの切断可能なリンカーが挙げられる。
【0039】
特定の実施形態では、本発明のEVは、1つより多くのABD、すなわち、複数のABDを含む。複数のABDは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。上述のように、これは、単一の融合タンパク質に存在する1つより多くのABDの結果であり得、あるいは、複数の融合タンパク質が単一のEVに装填された結果であり得る。上記複数の融合タンパク質は、同じ又は異なるEVタンパク質を含み得る。理論に拘束されることを望まないが、単一のEV上に1つより多くのABDが存在することは、それがEVをコーティングするアルブミンの量を増加させ、ひいてはABDの遮蔽効果を増加させるために有利であり、これは、次いで、ABD EVの半減期を増加させることができる。いくつかの実施形態では、本発明のEVは、少なくとも1つのABD EV融合タンパク質を含み、少なくとも1つのABD EV融合タンパク質は、少なくとも1つ、又は少なくとも2つ、又は少なくとも3つ、又は少なくとも4つ、又は少なくとも5つ、又は少なくとも6つ、又は少なくとも7つ、又は少なくとも8つ、又は少なくとも9つ、又は少なくとも10個のABDを含む。
【0040】
ABDを含むEVは、本明細書に開示される方法のうちのいずれかを使用して製造され得る。
【0041】
本発明の一実施形態では、本発明のEVは、治療用カーゴを更に装填され、任意選択的に、治療用カーゴは、タンパク質、核酸、ウイルス、ウイルスゲノム、抗原若しくは小分子、又はそれらの組み合わせである。
【0042】
本発明に従って装填されるカーゴは、本質的に任意の種類の薬物カーゴ、例えば、核酸(RNA分子、DNA分子若しくはミキシマー(mixmer)、mRNA、アンチセンス若しくはスプライススイッチングオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、プラスミドDNA(pDNA)、スーパーコイルド若しくは非スーパーコイルドプラスミド、又はミニサークルなど);ペプチド若しくはタンパク質(トランスポーター、酵素、受容体(デコイ受容体など)、膜タンパク質、サイトカイン、抗原若しくはネオ抗原、リボ核タンパク質、核酸結合タンパク質、抗体、ナノボディ若しくは抗体断片を含む);抗体-薬物複合体;小分子薬物;遺伝子編集技術(CRISPR-Cas9、TALEN、メガヌクレアーゼなど);又は小胞をベースとするカーゴ(ウイルス(例えば、AAV、レンチウイルスなど)など)であってもよい。一実施形態では、カーゴは、タンパク質、核酸、ウイルス、ウイルスゲノム、抗原、及び/又は小分子の混合物であってもよい。
【0043】
より詳細には、本発明の核酸カーゴ分子は、shRNA、siRNA、saRNA、miRNA、抗miRNA、mRNA、gRNA、pri-miRNA、pre-miRNA、環状RNA、piRNA、tRNA、rRNA、snRNA、lncRNA、リボザイム、ミニサークルDNA、プラスミドDNA、RNA/DNAベクター、トランススプライシングオリゴヌクレオチド、スプライススイッチングオリゴヌクレオチド、CRISPRガイド鎖、モルホリノ(PMO)アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ペプチド核酸(PNA)、ウイルスゲノム及びウイルス遺伝子材料(例えば、裸のAAVゲノム)を含む群から選択され得るが、本質的に任意の種類の核酸分子が、本発明のEVによって送達され得る。一本鎖及び二本鎖の両方の核酸分子が本発明の範囲内であり、核酸分子は、天然に存在し得る(RNA若しくはDNAなど)か、又は2’-O-Me、2’-O-アリル、2’-O-MOE、2’-F、2’-CE、2’-EA、2’-FANA、LNA、CLNA、ENA、PNA、ホスホロチオエート、トリシクロ-DNA、チオヌクレオチド、ホスホラミデート、PNA、PMOなどの化学修飾ヌクレオチドを含み得る化学的に合成されたRNA及び/又はDNA分子であり得る。
【0044】
「核酸」は、ポリヌクレオチドを指し、ポリリボヌクレオチド及びポリデオキシリボヌクレオチドを含む。本発明による核酸には、ピリミジン及びプリン塩基、例えば、それぞれシトシン(C)、チミン(T)及びウラシル(U)、並びにアデニン(A)及びグアニン(G)の任意のポリマー又はオリゴマーが含まれ得る(これらは、Albert L.Lehninger,Principles of Biochemistry,at 793-800(Worth Pub.1982)及びG.Michael Blackburn,Michael J.Gait,David Loakes and David M.Williams,Nucleic Acids in Chemistry and Biology 3rd edition,(RSC publishing 2006)(全ての目的のためにそれらの全体が本明細書に組み込まれる))を参照されたい)。実際、本発明は、任意のデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチド成分、及びそれらの任意の化学的バリアントを企図する。ポリマー又はオリゴマーは、組成物において不均一又は均質であり得、天然に存在する供給源から単離され得るか、又は人工的若しくは合成的に産生され得る。加えて、核酸は、DNA若しくはRNA、又はそれらの混合物であってもよく、ホモ二重鎖、ヘテロ二重鎖、及びハイブリッド状態を含む、一本鎖又は二本鎖の形態で永続的に又は移行的に存在してもよい。
【0045】
「オリゴヌクレオチド」又は「ポリヌクレオチド」は、長さが少なくとも2、少なくとも8、少なくとも15、又は少なくとも25ヌクレオチドの範囲の核酸を意味することができるが、最大50、100、1000、5000、10000、15000、若しくは20000ヌクレオチド長であってもよく、又はポリヌクレオチドに特異的にハイブリダイズする化合物であってもよい。ポリヌクレオチドは、天然供給源から単離され得る、組換えによって産生され得る、あるいは人工的に合成され得る、DNA若しくはRNA、又はその模倣体の配列を含む。本発明で用いるポリヌクレオチドの更なる例は、ペプチド核酸(PNA;米国特許第6,156,501号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい)であってよい。本発明はまた、特定のtRNA分子において同定され、三重螺旋に存在すると仮定されている、フーグステン型塩基対合などの非従前的な塩基対合が存在する状況も包含する。「ポリヌクレオチド」及び「オリゴヌクレオチド」は、本明細書では互換的に使用される。ヌクレオチド配列が本明細書においてDNA配列(例えば、A、T、G、及びC)で表される場合、これは、「U」が「T」を置き換わった対応するRNA配列(例えば、A、U、G、C)も含むことが理解されるであろう。
【0046】
本明細書で使用される場合、「ポリヌクレオチド」は、例えば、cDNA、RNA、DNA/RNAハイブリッド、アンチセンスRNA、siRNA、mRNA、リボザイム、ゲノムDNA、合成形態、及び混合ポリマー、センス鎖及びアンチセンス鎖の両方を含み、非天然若しくは誘導体化された、合成の、又は半合成のヌクレオチド塩基を含有するように化学的又は生化学的に修飾され得る。欠失、挿入、1つ以上のヌクレオチドの置換、又は他のポリヌクレオチド配列への融合を含むがこれらに限定されない、野生型又は合成遺伝子の改変も企図される。
【0047】
本発明は、具体的には、がんの発症に関与することが知られているがん遺伝子を標的とする、siRNAなどの核酸を更に装填したABD EVに関する。本発明による核酸が標的とする遺伝子は、ABL、AF4/HRX、AKT-2、ALK、ALK/NPM、AML1、AML1/MTG8、AXL、BCL-2、3、6、BCR/ABL、c-MYC、DBL、DEK/CAN、E2A/PBX1、EGFR、ENL/HRX、ERG/TLS、ERBB、ERBB-2、ETS-1、EWS/FLI-1、FMS、FOS、FPS、GLI、GSP、HER2/neu、HOX11、HST、IL-3、INT-2、JUN、KIT、KS3、K-SAM、LBC、LCK、LMO1、LMO2、L-MYC、LYL-1、LYT-10、LYT-10/Cα1、MAS、MDM-2、MLL、MOS、MTG8/AML1、MYB、MYH11/CBFB、NEU、N-MYC、OST、PAX-5、PBX1/E2A、PIM-1、PRAD-1、RAF、RAR/PML、RAS-H、RAS-K、RAS-N、REL/NRG、RET、RHOM1、RHOM2、ROS、SKI、SIS、SET/CAN、SRC、TAL1、TAL2、TAN-1、TIAM1、TSC2、TRKであり得る。
【0048】
より詳細には、本発明による治療用タンパク質カーゴとしては、抗体、イントラボディ、ナノボディ、scFv、アフィボディ、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)を含む二重特異性及び多重特異性抗体又は結合剤、受容体、リガンド、トランスポーター、例えば酵素補充療法(ERT)又は遺伝子編集のための酵素、腫瘍抑制剤、ウイルス又は細菌阻害剤、細胞成分タンパク質、DNA及び/又はRNA結合タンパク質、DNA修復阻害剤、ヌクレアーゼ、プロテイナーゼ、インテグラーゼ、転写因子、成長因子、アポトーシス阻害剤及び誘導剤、毒素(例えば、シュードモナスエキソトキシン)、構造タンパク質、NT3/4などの神経栄養因子、脳由来神経栄養因子(BDNF)及び神経成長因子(NGF)、並びにその個々のサブユニット、例えば、2.5Sベータサブユニット、イオンチャネル、膜トランスポーター、タンパク質恒常性因子、細胞シグナル伝達に関与するタンパク質、翻訳及び転写関連タンパク質、ヌクレオチド結合タンパク質、タンパク質結合タンパク質、脂質結合タンパク質、グリコサミノグリカン(GAG)及びGAG結合タンパク質、代謝タンパク質、細胞ストレス調節タンパク質、サイトカインなどの炎症及び免疫系調節タンパク質、並びにそのようなサイトカインの阻害剤(サイトカインとしては、CXCL8、GMCSF、IL-1ファミリー、IL-2、IL-4、IL-6、IL-6様、IL-9、IL-10、IL12、IL-13、IL-17を含むインターロイキン、INF-アルファ/ベータ/ガンマを含むインターフェロン、TNFファミリーメンバー、CD40及びCD40L、TRAIL、並びにTGF-ベータファミリーが挙げられる)、ミトコンドリアタンパク質、並びに熱ショックタンパク質などが挙げられる。カーゴタンパク質は、緑色蛍光タンパク質(GFP)又はnanoLucなどのレポータータンパク質であってもよい。好ましい一実施形態では、コードされたタンパク質は、Casポリペプチドが一旦ペプチドによって送達されると、標的細胞内でそのヌクレアーゼ活性を実施することを可能にするRNA鎖と会合する(すなわち、それとともに担持する)、無傷のヌクレアーゼ活性を有するCRISPR関連(Cas9など)ポリペプチドである。代替的に、別の好ましい実施形態では、Casポリペプチドは、標的遺伝子操作を可能にするために、触媒的に不活性であり得る。更に別の代替物は、単一のRNA誘導エンドヌクレアーゼ、Cpf1などの任意の他の種類のCRISPRエフェクターであり得る。Cpf1の包含は、互い違いの二本鎖切断を介して標的DNAを切断するので、本発明の特に好ましい実施形態である。Cpf1は、Acidaminococcus又はLachnospiraceaeなどの種から得ることができる。更なる例示的な方法では、Casポリペプチドはまた、遺伝子発現を特異的に誘導するために、転写活性化因子(P3330コアタンパク質など)に対して融合され得る。
【0049】
本発明はまた、いくつかの実施形態では、核酸カーゴに関し、これらがEVタンパク質の核酸結合タンパク質(NA結合タンパク質)への融合によって装填され、次いで、NA結合タンパク質が、核酸カーゴ分子に結合し、核酸カーゴのEVへの装填を引き起こす。NA結合タンパク質の非限定的な例は、hnRNPA1、hnRNPA2B1、DDX4、ADAD1、DAZL、ELAVL4、IGF2BP3、SAMD4A、TDP43、FUS、FMR1、FXR1、FXR2、EIF4A13、MS2コートタンパク質、並びにそれらの任意のドメイン、部分、又は誘導体である。より広義には、RNA結合タンパク質及びドメインの特定の下位分類、例えば、mRNA結合タンパク質(mRBP)、pre-rRNA結合タンパク質、tRNA結合タンパク質、小核又は核小体RNA結合タンパク質、ノンコーディングRNA結合タンパク質、miRNA結合タンパク質、shRNA結合タンパク質、及び転写因子(TF)である。更に、様々なドメイン及び誘導体が、EVへ核酸カーゴを輸送するためのNA結合ドメインとして使用されてもよい。RNA結合ドメインの非限定的な例としては、DEAD、KH、GTP_EFTU、dsrm、G-patch、IBN_N、SAP、TUDOR、RnaseA、MMR-HSR1、KOW、RnaseT、MIF4G、zf-RanBP、NTF2、PAZ、RBM1CTR、PAM2、Xpo1、Piwi、CSD、及びRibosomal_L7Aeなどの小分子RNA結合ドメイン(RBD)(一本鎖及び二本鎖RBD(ssRBD及びdsRBD)の両方であり得る)が挙げられる。そのようなRNA結合ドメインは、それらの主要機能(すなわち、目的とする核酸カーゴ、例えば、mRNA又は短RNAを輸送する能力)が維持される限り、複数で、単独で、又は他のものと組み合わせて存在してもよく、その結果として、より大きなRNA結合タンパク質構築物の一部を形成してもよい。
【0050】
好ましい実施形態では、本発明は、2つのNA結合ドメイン群、すなわち、PUFタンパク質及びCRISPR関連ポリペプチド(Cas)、具体的にはCas6及びCas13、並びに様々な種類のNA結合アプタマーに関する。
【0051】
本発明は、「PUFタンパク質」という用語を使用して、全ての関連タンパク質及びそのようなタンパク質のドメイン(「PUMタンパク質」とも称され得る)、例えば、PUM1の複製物であるヒトPumilioホモログ1(PUM1)、PUMx2若しくはPUFx2、又は任意のPUF(PUM)タンパク質から入手可能な任意のNA結合ドメインを包含する。当業者であれば理解するであろうが、PUFタンパク質は、典型的には、8つの連続したPUF反復の存在を特徴とし、これらPUF反復は各々約40個のアミノ酸からなり、2つの関連配列であるCsp1及びCsp2に隣接することが多い。各反復は、芳香族及び塩基性の残基を含有する「コアコンセンサス」を有する。PUF反復のクラスター全体がRNA結合に必要である。注目すべきことに、この同じ領域は、タンパク質共調節因子とも相互作用し、PUFタンパク質変異体の欠損をかなりの程度まで救済するのに十分であり、これにより、PUFタンパク質は、本発明で使用される変異に非常に好適となる。更に、PUFタンパク質は、核酸カーゴ分子に好適な親和性で結合し、それによって、PUFタンパク質の核酸カーゴへの放出可能な可逆的結合を可能にする放出可能なNA結合ドメインの例である。PUFタンパク質は、ほとんどの真核生物で見出され、胚発生及び発達に関与する。PUFは、RNAと結合する1つのドメインを有し、このドメインは、一般に36個のアミノ酸を含有する8つの反復からなり、本発明においてRNA結合に典型的に利用されるドメインである。各反復は、特定のヌクレオチドに結合し、通常、アミノ酸13からのスタッキング相互作用との特異性を付与するのは12位及び16位のアミノ酸である。PUFは、ヌクレオチド、アデノシン、ウラシル及びグアノシンと結合することができ、操作されたPUFは、ヌクレオチド、シトシンとも結合することができる。したがって、システムはモジュール式であり、PUFドメインが結合する8ヌクレオチド配列は、反復ドメインの結合特異性を切り替えることによって変更することができる。したがって、本発明によるPUFタンパク質は、天然であり得るか、又はRNA分子内の任意の場所に結合するように操作され得る。あるいは、異なる配列に対して異なる結合親和性を有するPUFタンパク質を選択し、上記配列を含有するようにこのRNA分子を操作することもできる。配列特異的に16ヌクレオチドと結合する、更に操作された及び/又は複製されたPUFドメインが存在し、これを利用して核酸カーゴ分子に対する特異性を更に増加させることもできる。したがって、PUFドメインは、異なる親和性及び配列長で任意の配列と結合するように修飾することができ、これにより、本発明による任意のRNAカーゴ分子に対してシステムを高度にモジュール式にし、適応可能にする。本発明に従ってNA結合ドメインとして使用され得るPUFタンパク質並びにそれらの領域及び誘導体には、PUFタンパク質の以下の非限定的リストが含まれる:全てC.elegans由来のFBF、FBF/PUF-8/PUF-6、-7、-10;D.melanogaster由来のPumilio;全てS.cerevisiae由来のPuf5p/Mpt5p/Uth4p、Puf4p/Ygl014wp/Ygl023p、Puf5p/Mpt5p/Uth4p、Puf5p/Mpt5p/Uth4p、Puf3p;Dictyostelium由来のPufA;ヒトPUM1(Pumilio1、時にはPUF-8Rとしても知られている)及びその任意のドメイン、少なくとも2つのPUM1由来のNA結合ドメインを含むポリペプチド、例えばPUF-6R、PUF-9R、PUF-10R、PUF-12R及びPUF-16R、又はそれらの誘導体などの任意の短縮若しくは修飾若しくは操作されたPUFタンパク質;並びにXenopus由来のX-Puf1。本発明による特に好適なNA結合PUFは、以下を含む:PUF 531、PUF mRNA loc(PUF操作(PUFengineered)若しくはPUFengと称されることもある)、及び/又はPUFx2(その配列は、国際特許公開第2019/092145号で入手可能である)、並びにそれらの任意の誘導体、ドメイン、及び/又は領域。PUF/PUMタンパク質は、ヒト起源であるものを選択することができるため、非常に有利である。
【0052】
更に、PUFタンパク質の場合と同様に、Cas6及びCas13などのCasタンパク質は、核酸カーゴ分子に好適な親和性で結合し、それによって、Casタンパク質の核酸カーゴへの放出可能な可逆的な結合を可能にする放出可能なNA結合ドメインの例である。PUFをベースとするNA結合ドメインと同様に、Casタンパク質は、標的核酸カーゴ分子に対するプログラム可能で修飾可能な配列特異性を有する、放出可能で不可逆的なNA結合ドメインを表し、これは、より低い総親和性でより高い特異性を可能にし、それによって、核酸カーゴのEVへの装填、及び標的位置での核酸カーゴの放出の両方を可能にする。
【0053】
更なる好ましい実施形態は、リソソーム貯蔵障害のための酵素又はトランスポーター、例えば、グルコセレブロシダーゼ、例えば、イミグルセラーゼ、アルファ-ガラクトシダーゼ、アルファ-L-イズロニダーゼ、イズロネート-2-スルファターゼ及びイズルスルファーゼ、アリールスルファターゼ、ガルスルファーゼ、酸-アルファグルコシダーゼ(GAA)、スフィンゴミエリナーゼ、ガラクトセレブロシダーゼ、ガラクトシルセラミダーゼ、セラミダーゼ、アルファ-N-アセチルガラクトサミニダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リソソーム酸性リパーゼ、酸スフィンゴミエリナーゼ、NPC1、NPC2、ヘパランスルファミダーゼ、N-アセチルグルコサミニダーゼ、ヘパラン-α-グルコサミニド-N-アセチルトランスフェラーゼ、N-アセチルグルコサミン6-スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、ガラクトース-6-硫酸スルファターゼ、ヒアルロニダーゼ、アルファN-アセチルノイラミニダーゼ、GlcNAcホスホトランスフェラーゼ、ムコリピン1、パルミトイルプロテインチオエステラーゼ、トリペプチジルペプチダーゼI、パルミトイル-プロテインチオエステラーゼ1、トリペプチジルペプチダーゼ1、バテニン、リンクリン、アルファ-D-マンノシダーゼ、ベータ-マンノシダーゼ、アスパルチルグルコサミニダーゼ、アルファ-L-フコシダーゼ、シスチノシン、カテプシンK、シアリン、LAMP2、及びヘキソアミダーゼを含む群から選択される治療用タンパク質カーゴを含む。
【0054】
追加の好ましい実施形態は、N-アセチルグルタメートシンターゼ、カルバモイルホスフェートシンセターゼ、オルニチントランスカルバモイラーゼ(OTC)、アルギニノコハク酸シンターゼ、アルギニノコハク酸リアーゼ、アルギナーゼ、ミトコンドリアオルニチントランスポーター、シトリン、y+Lアミノ酸トランスポーター1及びウリジンモノホスフェートシンターゼ(UMPS)を含む、尿素サイクル障害に関連する酵素を含む群から選択される、治療用タンパク質カーゴを含む。
【0055】
他の好ましい実施形態では、治療用タンパク質カーゴは、例えば、炎症応答を修飾する細胞内タンパク質(例えば、メチラーゼ及びブロモドメインなどのエピジェネティックタンパク質)、又は筋肉機能を修飾する細胞内タンパク質(例えば、MyoD若しくはMyf5などの転写因子)、筋肉収縮性を調節するタンパク質(例えば、ミオシン、アクチン、トロポニンなどのカルシウム/結合タンパク質)、又は構造タンパク質(ジストロフィン、ミニジストロフィン、マイクロジストロフィン、ウトロフィン、チチン、ネブリン、ジストロフィン関連タンパク質(ジストロブレビン、シントロフィン、シンコイリン、デスミン、サルコグリカン、ジストログリカン、サルスパン、アグリン、及び/若しくはフクチンなど)であってもよい。治療用タンパク質カーゴは、典型的には、それらの名称、任意の他の命名法によって、又は当業者に知られているように別段の指示がない限り、ヒト起源のタンパク質又はペプチドであり、これらを、様々な公的に利用可能なデータベース(例えば、Uniprot、RCSBなど)において見出すことができる。
【0056】
別の好ましい実施形態では、治療用カーゴは、抗原/ネオ抗原であり、任意選択的に、抗原/ネオ抗原は、がん免疫療法での使用に適している。
【0057】
任意の抗原/ネオ抗原は、本発明のEVに組み込まれてもよい。抗原は、細菌、ウイルス及び真菌などの病原体に対する免疫応答を上昇させるのに適し得るか、又は抗原は、がん免疫療法のための腫瘍に対する免疫応答を誘発するのに有用な腫瘍抗原であり得る。本発明による任意のEVに、1つ以上の抗原/ネオ抗原が存在してもよい。1つ以上の抗原/ネオ抗原は、内因性/自己由来(対象自体に由来する)若しくは外因性/同種異系(別の対象に由来する)であってもよく、又はより多くの抗原/ネオ抗原がEV内に/EV上に組み込まれる場合、抗原/ネオ抗原は、任意の自己由来/同種異系抗原の混合物であってもよい。好ましくは、抗原は、自己由来である。更に、1つ以上の抗原/ネオ抗原は、例えば、ウイルス若しくは細菌などの任意の起源を有してもよく、又は腫瘍抗原であってもよく、更に、免疫刺激若しくは免疫抑制又はそれらの組み合わせであってもよい。抗原/ネオ抗原は、免疫療法による任意の疾患の治療に有用であり得る。免疫療法によるがんの治療は、特に好ましい実施形態である。抗原がネオ抗原である場合、ネオ抗原を同定するための腫瘍の配列決定によって同定され得る。
【0058】
例示的な腫瘍抗原としては、アルファフェトプロテイン(AFP)、がん胎児性抗原(CEA)、CA-125、MUC-1、上皮腫瘍抗原(ETA)、黒色腫関連抗原(MAGE)、WT-1、NY-ESO-1、LY6K、IMP3、DEPDC1、CDCA-1、ras、p53、KRAS、又はNRASの異常産物、CTAG1B、BCR-ABL又はETV6-AML1などの染色体転位に由来するペプチド、HPV関連がん由来のペプチドなどのウイルス抗原、チロシナーゼ、gp100/pmel17、Melan-A/MART-1、gp75/TRP1、又はTRP2などのタンパク質に由来するペプチド、並びにMOK(RAGE-1)、ERBB2(HER2/NEU)などの過剰発現抗原が挙げられるが、これらに限定されない。
【0059】
治療用カーゴが抗原又はネオ抗原である場合、EV又はEVを含む薬学的組成物(以下で更に説明する)は、任意に、少なくとも1つのアジュバントを更に含んでもよい。抗原が免疫応答を刺激するためにアジュバントとともに投与される場合、アジュバントは、以下に限定されないが、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム、水酸化カルシウムなどの無機化合物、パラフィン油などの鉱物油、殺菌されたBordetella pertussisなどの細菌産物、Mycobacterium bovis、トキソイド、スクアレンなどの非細菌有機化合物、Quil Aなどの洗剤、植物サポニン、IL-1、IL-2、IL-12などのサイトカイン、又はRibiアジュバント(ムラミルジペプチド)、又は環状ジヌクレオチドを含むことができるインターフェロン遺伝子刺激因子(STING)アゴニストなどの免疫刺激複合体(ISCOM)であってもよい。そのようなアジュバントは、治療用EVを局所堆積物中に隔離することによって急速な分散から保護してもよく、又は、マクロファージ及び免疫系の他の成分にとって化学運動性である因子を分泌するように宿主を刺激する物質を含有してもよい。ワクチンに組み込むことができるアジュバントは、当業者によって周知であり、それらがEVの免疫活性に悪影響を及ぼさないように選択される。
【0060】
本発明はまた、任意選択的に、ウイルスカーゴを装填されるABD EVに関し、ABD EVは、免疫エフェクター機能を提供する1つ以上の免疫エフェクター分子を更に含む。例示的なウイルスカーゴには、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベクター又はレンチウイルスベクターであるウイルスベクターが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、AAVベクターである。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、ヒトAAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、又はAAV12からのカプシドを含む。いくつかの実施形態では、AAVベクターは、ヒトAAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、又はAAV10からの逆位末端反復(ITR)配列を含むAAVウイルスゲノムを含む。いくつかの実施形態では、AAVカプシド及びAAV ITRは、同じ血清型に由来するか、又は異なる血清型に由来する。
【0061】
上記の態様のいくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、HIV、サル免疫不全ウイルス、又はネコ免疫不全ウイルスに由来する。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、非複製型である。いくつかの実施形態では、レンチウイルスベクターは、非組み込み型である。
【0062】
いくつかの実施形態では、ウイルスベクターは、ウイルスカプシド及びウイルスゲノムを含み、ウイルスゲノムは、1つ以上の異種導入遺伝子を含む。好ましい実施形態では、異種導入遺伝子は、ポリペプチド又はタンパク質をコードする。ウイルスゲノム内でコードされるタンパク質は、ウイルスカーゴが遺伝子置換療法として作用することを可能にする本発明によるタンパク質カーゴのうちの任意の1つであり得る。
【0063】
いくつかの実施形態では、カーゴ装填されたABD EVは、免疫エフェクター機能を提供する1つ以上の分子を更に含んでもよい。免疫エフェクター分子は、ウイルス(例えば、AVV又はレンチウイルス)カーゴを装填したABD EVの場合に特に有用であるが、ABD EVが本発明による任意のカーゴを装填する場合にも同様に使用され得る。免疫エフェクターは、ABD EVの免疫原性を低下させるように作用してもよい。いくつかの実施形態では、免疫エフェクター機能は、免疫阻害剤を刺激する。他の実施形態では、免疫エフェクター機能は、免疫刺激分子を阻害する。いくつかの実施形態では、ABD-EVは、免疫阻害剤を刺激する分子及び免疫刺激分子を阻害する分子を含む。
【0064】
例示的な免疫エフェクター分子としては、CTLA4、B7-1、B7-2、PD-l、PD-L1、PD-L2、CD28、又はVISTAのうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、EVは、CTLA4及びPD-L1、CTLA及びPD-L2、CTLA-4及びVISTA、PD-L1及びPD-L2、PD-L1及びVISTA、PD-L2及びVISTA、CTLA4及びPD-L1及びPD-L2、CTLA4及びPD-L1及びVISTA、CTLA4及びPD-L2及びVISTA、PD-L1及びPD-L2及びVISTA、又はCTLA4及びPD-L1及びPD-Ll及びVISTAを更に含む。
【0065】
免疫エフェクター分子は、ABD EV融合構築物、カーゴ、標的化部分の一部を形成し得るか、又は本発明による任意のEVタンパク質に融合した免疫エフェクター分子を含む、完全に別個の融合タンパク質構築物の一部を形成し得る。
【0066】
本発明はまた、小分子カーゴを装填するABD EVにも関する。「小分子」、「小分子カーゴ」、「小分子薬物」、及び「小分子治療薬」という用語は、本明細書において互換的に使用され、疾患及び/若しくは障害の治療、予防並びに/又は診断に使用され得る任意の分子剤に関すると理解され得る。小分子剤は、通常、化学合成手段を介して合成されるが、例えば天然源からの精製を介した天然由来のものであってもよく、又は任意の他の好適な手段若しくは技術の組み合わせにより得られてもよい。「小分子」の簡単な定義は、生物学的プロセスを調節するのに役立ち得る、900g/mol未満の分子量(ダルトン)を有する任意の有機化合物である。本発明の目的のために、小分子は、900g/molより実質的に大きくてもよく、例えば、1500g/mol、3000g/mol、又は場合によっては更に大きくてもよい。多くの小分子は良好な経口バイオアベイラビリティを示すが、多くの小分子薬物は、薬物動態、薬力学的、毒性及び/又は安定性の理由から、静脈内投与又は何らかの他の投与経路を介して投与される必要がある。小分子の例としては、ドキソルビシン、メトトレキサート、5-フルオロウラシルなどの抗がん剤、又はシトシンアラビノシドなどの他のヌクレオシド類似体、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、又はイマチニブ若しくはセリシクリブなどのキナーゼ阻害剤、又はナプロキセン、アスピリン、若しくはセレコキシブなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ヘラシリンなどの抗生物質、又はエナラプリルなどのアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤などの抗高血圧剤、カンデサルタンなどのARBなどが挙げられる。本発明は、当業者には明らかであろうが、本発明の要旨から逸脱することなく、当然、他の小分子にも適用可能である。
【0067】
ある特定の実施形態では、ABD EVによって運ばれる治療用カーゴは、EVの内側、EVの外側、又はEVの膜内に存在してもよい。治療用カーゴの所望の位置は、カーゴの性質及びその作用機序に依存し、例えば、膜タンパク質は、好ましくは、EVの膜内に位置し、デコイ受容体は、好ましくは、EVの表面上に存在するが、サイレンシングRNAなど、レシピエント細胞の細胞質又は核内に送達されるように設計されたカーゴは、好ましくは、EVの管腔内に位置する。
【0068】
治療用カーゴは、EV産生細胞の細胞質に存在する治療用カーゴによってEVに受動的に装填されてもよい。そのような受動的な装填は、例えば、EVに天然に装填される核酸、小分子、ウイルス、可溶性タンパク質、又は膜タンパク質に適用される。
【0069】
ある特定の実施形態では、治療用カーゴは、本発明のABD EVに能動的に装填される。カーゴの能動的装填の1つの形態は、外因的かつ能動的な装填を伴い、これは、エレクトロポレーション、カチオン性トランスフェクション剤、リポフェクタミン(RTM)などのトランスフェクション試薬でのトランスフェクション、脂質若しくはコレステロール尾部などの膜アンカー部分へのカーゴのコンジュゲーション、又はCPP-カーゴ複合体の形態若しくはCPP-カーゴ非共有複合体の形態のいずれかのCPPによる装填を含む、任意の既知の外因的装填方法を使用してカーゴを装填することを伴う。再び、この種の能動的装填によって、治療用カーゴタンパク質がEVの内側、EVの外側、又はEVの膜内に位置し得る。
【0070】
特定の実施形態では、治療用カーゴは、融合タンパク質の使用によって、本発明のABD EVに能動的に装填される。この場合、EVによって運ばれる治療用カーゴは、EVタンパク質-ABD融合タンパク質の一部を形成するか、又は代替的に、EVによって運ばれる治療用カーゴは、EVタンパク質-ABD融合タンパク質とは別個のEVタンパク質との追加の融合タンパク質の一部を形成する。いずれの場合も、治療用カーゴタンパク質は、EVの内側、EVの外側、又はEVの膜内に位置するように、融合タンパク質中に融合されてもよい。融合タンパク質中のEVタンパク質の存在は、治療用タンパク質をEVに能動的に装填する。治療用カーゴタンパク質は、治療用タンパク質をEVの表面上に表示するか、又はEV内で治療用カーゴを保護するために、C又はN末端のいずれかでシングル又はマルチパス膜貫通タンパク質に融合されるように操作されてもよい。上記で定義されるように、任意のEVタンパク質は、治療用タンパク質カーゴを装填するための融合パートナーとして使用され得る。カーゴタンパク質をEVへ装填するために採用され得るEVタンパク質は、膜貫通であってもよいが、そうである必要はない。治療用カーゴが、EV-タンパク質-ABD融合タンパク質とは別個のEV-タンパク質との追加の融合タンパク質の一部を形成する場合、この融合タンパク質は、膜貫通ではなく、膜会合EVタンパク質を含み得ることは明らかである。例えば、融合タンパク質は、治療用カーゴがEVの管腔に装填されることを確実にする、EV膜の管腔/小胞内表面と会合するEVタンパク質を用いてもよい。あるいは、カーゴは、EV膜の外面と会合するEVタンパク質に融合されてもよい。特に有利なEVタンパク質としては、CD63、CD81、CD9、CD82、CD44、CD47、CD55、LAMP2B、ICAM、インテグリン、ARRDC1、シンデカン、シンテニン、及びAlix、並びにそれらの誘導体、ドメイン、バリアント、変異体、又は領域が挙げられる。
【0071】
治療用タンパク質はまた、マルチパス膜貫通タンパク質の1つ若しくは複数の小胞外又は小胞内ループに操作されてもよく、任意選択的に、マルチパス膜貫通タンパク質は、CD36、CD9、CD81、又はTSPAN1~TSPAN33のうちのいずれかなどのテトラスパニンである。有利には、カーゴタンパク質は、上記マルチパス膜貫通タンパク質のループのうちの1つより多くに組み込まれてもよく、かつ/又は1つより多くのカーゴタンパク質は、上記マルチパス膜貫通タンパク質の各ループに組み込まれてもよい。1つより多くのカーゴタンパク質を、膜貫通融合タンパク質の発現に影響を及ぼすことなく、膜貫通融合タンパク質に組み込むことができる。理論に拘束されることを望まないが、膜貫通EVタンパク質当たり2つ以上の治療用カーゴタンパク質が存在することは、発現された融合タンパク質当たり、より多くのカーゴ分子がEVに結合することができ、これが、EVの治療効力を増加させ、異なる治療用カーゴを同じEVに組み込むことを可能にし、作製されたEVの汎用性を著しく増加させることを意味する。
【0072】
治療用カーゴが、別個の融合タンパク質構築物を利用して、すなわち、アルブミン結合ドメインを含まない追加の融合構築物上でEVに能動的に装填される実施形態では、上記追加の融合構築物は、(i)少なくとも1つの多量体化ドメイン、(ii)少なくとも1つのエンドソーム脱出ドメイン、(iii)少なくとも1つのリンカー/スペーサー/骨格配列、(iv)治療用カーゴを放出するように切断することができる少なくとも1つの放出ドメイン若しくは放出可能なリンカー、(v)少なくとも1つの免疫エフェクター分子、及び/又は(vi)少なくとも1つの標的化部分を更に含んでもよい。
【0073】
本発明による好適な放出ドメインとしては、インテインなどのシス切断配列、Kaede、KikGR、EosFP、tdEosFP、mEos2、PSmOrange、GFP様Dendraタンパク質、Dendra及びDendra2、CRY2-CIBNなどの光誘導性の単量体又は二量体の放出ドメインが挙げられるが、これらに限定されない。あるいは、核局在化シグナル(NLS)-核局在化シグナル結合タンパク質(NLSBP)(NLS-NLSBP)放出系を用いてもよい。プロテアーゼ切断部位もまた、融合ポリペプチドの所望の機能性に応じて、自発放出などのために融合タンパク質に組み込まれ得る。核酸カーゴの場合、特定の核酸切断ドメインが含まれてもよい。核酸切断ドメインの非限定的な例としては、Cas6、Cas13、操作されたPUFヌクレアーゼ、部位特異的RNAヌクレアーゼなどのエンドヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0074】
理論に拘束されることを望まないが、放出ドメインを含むことにより、元の融合ポリペプチドから特定の部分又はドメインを放出することができる。これは、融合ポリペプチドの一部の放出がカーゴの生体活性送達を増加させる場合、及び/又はより小さな構築物の一部の場合に融合ポリペプチドの特定の機能がより良好に働く場合、特に有利である。
【0075】
更なる実施形態では、本発明によるEVは、目的の細胞、組織、器官、及び/又は区画への標的送達を可能にするために、少なくとも1つの標的化部分を含み得る。標的化部分は、EVタンパク質との融合ポリペプチドに含まれ得る。有利な実施形態では、標的化部分は、膜貫通EVタンパク質を有する融合タンパク質の一部であり、EVの表面上の標的化部分の表示を可能にする。一実施形態では、標的化部分は、ABD EVタンパク質融合構築物の一部として含まれてもよく、あるいは、標的化部分は、EVタンパク質との別個の融合の一部として存在してもよい。標的化部分は、タンパク質、ペプチド、一本鎖断片、又は抗体の任意の他の誘導体であり得、ヒトから、又は非ヒト動物などからのいずれかから得ることができる。標的化部分は、ABD EV融合構築物の一部を形成し得るか、又は代替的に、EVに含まれる別個のポリペプチド構築物の一部を形成し得る。標的化部分を含むEVは、本明細書に開示される方法のうちのいずれかを使用して製造され得る。
【0076】
ABD EVの改善された生体内分布と組み合わせて標的化部分が存在することにより、ABD EVが臓器標的化において特に有用なものとなる。理論に拘束されることを望まないが、ABD EVがアルブミンでコーティングされると、それは、肝臓又は免疫系の細胞による取り込みを避けて、より長く循環したままになり、したがって、所望の標的臓器に到達することができる。
【0077】
標的化部分は、本発明による任意のEVタンパク質に融合され得る。標的化部分EVタンパク質融合は、シングルパス膜貫通タンパク質の小胞外部分への融合によってEVの表面上に標的化部分を表示するように操作されてもよい。代替的には、標的化部分は、マルチパス膜貫通タンパク質の1つ又は複数の小胞外ループに操作されてもよく、任意選択的に、マルチパス膜貫通タンパク質は、CD63、CD9、CD81、又はTSPAN1~TSPAN33のうちのいずれかなどのテトラスパニンである。
【0078】
標的化部位が別個の融合タンパク質構築物、すなわち、アルブミン結合ドメインを含まない追加の融合構築物に存在する実施形態では、上記追加の融合構築物は、(i)少なくとも1つの多量体化ドメイン、(ii)少なくとも1つのエンドソーム脱出ドメイン、(iii)少なくとも1つの免疫エフェクター分子、及び/又は(iv)少なくとも1つのリンカー/スペーサー/足場配列を更に含んでもよい。
【0079】
標的化部分を使用して、EVを細胞、細胞内位置、組織、器官、又は他の体内区画に標的化することができる。標的化され得る臓器及び細胞種としては、脳、神経細胞、血液脳関門、筋肉組織、眼、肺、肝臓、腎臓、心臓、胃、腸、膵臓、赤血球、B細胞及びT細胞を含む白血球、リンパ節、骨髄、脾臓、及びがん細胞が挙げられるが、これらに限定されない。
【0080】
当業者であれば理解するように、標的化は、例えば、標的化ペプチドの使用などの様々な手段によって達成することができる。そのような標的化ペプチドは、数アミノ酸長~数100アミノ酸長の範囲、例えば、約3~100アミノ酸、約3~30アミノ酸、約5~25アミノ酸の間隔の範囲、例えば、約7アミノ酸、約12アミノ酸、約20アミノ酸などであってもよい。本発明の標的化ペプチドはまた、受容体、受容体リガンドなどの全長タンパク質を含んでもよい。更に、本発明による標的化ペプチドは、抗体及び抗体誘導体、例えば、モノクローナル抗体、scFv、他の抗体ドメインなども含んでもよい。例示的な標的化部分としては、狂犬病ウイルス糖タンパク質(RVG)、神経成長因子(NGF)、メラノトランスフェリン、及びFC5ペプチドなどの脳標的化部分、及び筋肉特異的ペプチド(MSP)などの筋肉標的化部分が挙げられる。
【0081】
標的化部分はまた、EVタンパク質に融合したFc結合剤によってEVに結合し得る。Fcドメインを含むように操作された抗体又はタンパク質などのFcドメインを含有する標的化部分は、標的化融合構築物に組み込まれるFc結合剤の存在によってEVの表面に結合されてもよい。Fc結合剤タンパク質の例は、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G、プロテインL、プロテインLG、Zドメイン、ZZドメイン、ヒトFCGRI、ヒトFCGR2A、ヒトFCGR2B、ヒトFCGR2C、ヒトFCGR3A、ヒトFCGR3B、ヒトFCGRB、ヒトFCAMR、ヒトFCERA、ヒトFCAR、マウスFCGRI、マウスFCGRIIB、マウスFCGRIII、マウスFCGRIV、マウスFCGRn、SPHペプチド、SPAペプチド、SPG2、SpA模倣物1、SpA模倣物2、SpA模倣物3、SpA模倣物4、SpA模倣物5、SpA模倣物6、SpA模倣物7、SpA模倣物8、SpA模倣物9、SpA模倣物10、Fcγ模倣物1、Fcγ模倣物2である。特定の実施形態では、Fc結合剤は、ABDと同じマルチパス膜貫通タンパク質に組み込まれ、例えば、ABDは、第1のループに操作され得、標的化部分は、第2のループに操作され得る、又はその逆もまた同様である。より具体的な実施形態では、EVは、Fcドメイン、例えば、抗体を含む標的化部分のアンカーとして作用するABD及びFc結合剤の両方をそのループに操作した少なくとも1つのマルチパス膜貫通タンパク質を含み得る。
【0082】
本発明はまた、EVの表面上に存在する少なくとも1つのABDを含むEVの集団に関する。ある特定の実施形態では、本発明によるEVの集団におけるEV当たりのABDの平均数は、EV当たり1ABD超であるが、EV当たり1未満でもよい。更に、ある特定の実施形態では、本発明によるEV集団では、EV当たりのカーゴ分子の平均数は、EV当たり1つのカーゴ分子を上回るか、又は下回る。別の実施形態では、本発明によるEVの集団では、全EVの少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、及び/又は少なくとも95%が、少なくとも1つのABD及び任意選択的にはまた少なくとも1つのカーゴ分子を含む。
【0083】
本発明はまた、少なくとも1つのABD及び少なくとも1つのEVタンパク質を含む融合タンパク質、及びそのような融合タンパク質をコードするポリヌクレオチド構築物、並びにそのような構築物を含むベクター、EV及び細胞に関する。
【0084】
EVタンパク質は、所望により、膜貫通EVタンパク質、又はEVの外膜と会合したEVタンパク質であってもよい。EVタンパク質がマルチパス膜貫通EVタンパク質である場合、ABDは、マルチパス膜貫通タンパク質の1つ又は複数の小胞外ループに操作され得る。好ましい実施形態では、融合タンパク質のマルチパス膜貫通EVタンパク質は、テトラスパニンである。本発明の融合タンパク質は、有利には、1つより多くのABD、すなわち、複数のABDを含み得る。複数のABDは、互いに同じであっても、異なっていてもよい。
【0085】
本発明による融合タンパク質は、(i)少なくとも1つの多量体化ドメイン、(ii)少なくとも1つのエンドソーム脱出ドメイン、(iii)少なくとも1つのリンカー/スペーサー/骨格配列、(iv)任意選択的に治療用カーゴを放出するように切断可能な放出ドメイン又は放出可能なリンカーを更に含む、少なくとも1つの治療用カーゴタンパク質、(v)少なくとも1つの免疫エフェクター分子、及び/又は(vi)少なくとも1つの標的化部分を更に含んでもよい。
【0086】
明確にするために、いくつかのABD-EVタンパク質融合タンパク質の構造を以下及び図18に示す。
EVタンパク質-ABD
EVタンパク質ドメインI-ABD-EVタンパク質ドメインII
EVタンパク質ドメインI-ABD-ABD-EVタンパク質ドメインII
EVタンパク質ドメインI-ABD-EVタンパク質ドメインII-ABD-EVタンパク質ドメインIII
EVタンパク質ドメインI-ABD-EVタンパク質ドメインII-治療用カーゴ
治療用カーゴ-EVタンパク質ドメインI-ABD-EVタンパク質ドメインII
EVタンパク質ドメインI-ABD-EVタンパク質ドメインII標的化部分
EVタンパク質ドメインI-ABD-EVタンパク質ドメインII標的化部分-EVタンパク質ドメインIII
EVタンパク質ドメインI-ABD-EVタンパク質ドメインII-治療用カーゴ-EVタンパク質ドメインIII
【0087】
本発明は、上で特定された融合タンパク質を含むEVに関する。
【0088】
一般に、EVは、初代細胞供給源であろうと、不死化細胞株であろうと、本質的に任意の細胞供給源に由来し得る。EV供給源細胞は、人工多能性幹細胞(iPSC)及び任意の方法によって得られる他の幹細胞、並びに任意の成人細胞供給源を含む、任意の胚性、胎生、又は成体体性幹細胞型であってもよい。本発明による供給源細胞は、広範な細胞及び細胞株、例えば、間葉系幹細胞又は間質細胞(例えば、骨髄、脂肪組織、ウォートンゼリー、周産期組織(perinatal tissue)、漿膜、胎盤、歯芽、臍帯血、皮膚組織などから得られる)、線維芽細胞、羊膜細胞、より具体的には様々な初期マーカーを発現する羊膜上皮(AE)細胞、骨髄抑制細胞、M2偏光マクロファージ、脂肪細胞、内皮細胞、線維芽細胞などから選択され得る。特定の目的の細胞株としては、ヒト臍帯内皮細胞(HUVEC)、ヒト胎児由来腎臓(HEK)細胞、微小血管又はリンパ内皮細胞などの内皮細胞株、赤血球、赤血球前駆細胞、軟骨細胞、異なる起源の間葉系間質細胞(MSC)、羊膜細胞、AE細胞、CEVEC製CAP(登録商標)細胞、羊水穿刺を通じて又は胎盤から得られる任意の細胞、気道又は肺胞上皮細胞、線維芽細胞、内皮細胞などが挙げられる。また、B細胞、T細胞、NK細胞、マクロファージ、単球、樹状細胞(DC)などの免疫細胞も本発明の範囲内であり、本質的にEVを産生することができる任意の細胞型も本明細書に包含される。供給源細胞は、治療される患者にとって、本来は同種、自己、又は異種のいずれであってもよく、すなわち、細胞は、患者自身に由来してもよく、又は無関係、適合若しくは不適合のドナーに由来してもよい。
【0089】
具体的には、本発明は、(上述のように定義される)EVタンパク質及び少なくとも1つのABDタンパク質の融合タンパク質をコードする、本発明による少なくとも1つのモノシストロン、バイシストロン、又はマルチシストロンポリヌクレオチド構築物を含むように安定して修飾された細胞に関する。そのような細胞には、本発明によるポリヌクレオチドを安定的に又は一時的にトランスフェクトして、それらをABD-EV産生細胞とすることができる。そのような細胞はまた、任意選択的にEVタンパク質との融合タンパク質の一部を形成し得る治療用カーゴタンパク質をコードする構築物を含むように、安定的又は一過性に修飾され得る。そのような細胞はまた、標的化部分の融合タンパク質及びEVタンパク質を含む標的化部分をコードする構築物を含むように、安定的又は一過的に修飾されてもよい。本発明の細胞は、モノクローナル細胞又はポリクローナル細胞株であってよい。
【0090】
本発明による好ましい産生細胞としては、限定されないが、HEK細胞、HEK293細胞、HEK293T細胞、MSC、特にWJ-MSC細胞若しくはBM-MSC細胞、線維芽細胞、羊膜細胞、AE細胞、CEVEC製CAP(登録商標)細胞、胎盤由来細胞、脊髄血液細胞、免疫系細胞、内皮細胞、上皮細胞、又は任意の他の細胞型が挙げられ、上記細胞は、例えば、接着細胞、懸濁細胞、及び/又は懸濁適応細胞であってもよい。
【0091】
本発明は、本発明によるEVを製造するための方法に関する。EVを製造するための方法は、
(i)EV産生細胞に、ABD-EVタンパク質融合構築物をコードする少なくとも1つのポリヌクレオチド構築物を導入することと、
(ii)EV産生細胞内で上記構築物を発現し、それによって、EVの表面上に存在するABDを含むEVを生成することと、を含む。
【0092】
有利には、本方法によるEVの製造は、ABD-EVタンパク質融合構築物のEVへの内因的装填をもたらす。タンパク質の内因的装填は、適切なタンパク質確認及び膜タンパク質の膜への挿入、並びに任意の必要な翻訳後修飾に不可欠である。膜タンパク質を骨格として使用して、EVの表面上にも存在する一方で、ABDをEVに固定することは、EV上にABDを表示する一方で、天然由来EVの全ての固有の利益、例えば、それらの天然RNA及びタンパク質カーゴ、並びにそれらの免疫不全性質を保持するために不可欠である。免疫原性を回避することは、治療薬にとって重要であり、合成又はインビトロで製造された治療薬を超えるEVの固有の利点の1つである。
【0093】
EVを製造するための方法は、EVに少なくとも1つのカーゴ分子を装填するステップを更に含み得る。上記カーゴ装填ステップは、内因的装填又は外因的装填によることができる。
【0094】
カーゴ装填ステップが外因的装填ステップである場合、装填ステップは、エレクトロポレーション、マイクロ流体、カチオン性トランスフェクション剤、リポフェクタミン(RTM)などのトランスフェクション試薬でのトランスフェクション、脂質又はコレステロール尾部などの膜アンカー部位へのカーゴのコンジュゲーション、又はCPP-カーゴ複合体の形態又はCPP-カーゴ非共有複合体の形態のいずれかのCPPによる装填を含む任意の外因的装填方法によるカーゴの装填を含み得る。
【0095】
カーゴ装填ステップが内因的である場合、内因的装填ステップは、カーゴタンパク質をABD-EVタンパク質融合構築物に導入すること、又はEV産生細胞に治療用カーゴをコードする更なる核酸構築物を導入することを含み得る。また、単一の核酸構築物が、双方向プラスミドの使用によって、ABD-EVタンパク質融合タンパク質とカーゴタンパク質との両方を別々にコードし得る可能性もある。上記治療用カーゴ構築物は、EV産生細胞によって単純に発現され、EVに受動的に装填されてもよく、又は治療用カーゴは、EVタンパク質との融合タンパク質として含まれてもよく、その結果、カーゴタンパク質は、翻訳されると、EV産生細胞によって産生されるEVに内因的かつ能動的に装填される。
【0096】
EVの製造方法は、EVに少なくとも1つの標的化部位を装填するステップを更に含み得る。この特定の実施形態では、標的化部位装填工程は、内因的装填工程であり、EV産生細胞に、標的化部位をコードする更なる核酸構築物を導入することを含み得、これは、EV産生細胞によって産生されるEVに標的化部位が内因的かつ活性的に装填されるように、EVタンパク質との融合タンパク質として含まれる。
【0097】
理論に拘束されることを望まないが、二重又は多重安定性細胞として細胞を生成する利点は、カーゴ及び/又は標的化構築物を交換することによって、プロデューサー細胞株の大きなライブラリーを迅速かつ容易に生成することができることである。更に、各々の別個の構築物は、異なるプロモータの制御下に置くことができ、したがって、ABD、カーゴ及び/又は標的化部分の発現レベルを慎重にかつ個別に制御することができる。あるいは、治療用カーゴ及び/又は標的化部位がABD-EVタンパク質融合構築物の一部を形成する場合、ABD-EVタンパク質カーゴ/標的化部位構築物が単一である利点は、細胞を単独で安定性にすることのみを必要とし、単純かつ堅牢な細胞株の生成をもたらすことである。単一、二重、又は多重の安定細胞株の選択は、所望のカーゴ及び標的化部分、それらのサイズ、並びにEV上の所望の位置に依存する。
【0098】
EVの精製は、液体クロマトグラフィー(LC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ビーズ溶出液クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、スピン濾過、タンジェント流濾過(TFF)、中空糸濾過、遠心分離、免疫沈降、フローフィールドフラクショネーション、透析、マイクロ流体系分離など、又はそれらの任意の組み合わせを含む技術を含むが、これらに限定されない任意の方法によって達成される。有利な一実施形態では、EVの精製は、濾過(好ましくは限外濾過(UF)、TFF、又は中空糸濾過)及びアフィニティークロマトグラフィーの連続併用を使用して行われ、任意選択的に、サイズ排除LC、又はビーズ溶出LCも含む。精製ステップを組み合わせることにより、通常、得られる試料の純度が向上し、次に優れた治療薬活性がもたらされる。更に、エキソソームを精製するために日常的に使用される超遠心分離(UC)と比較して、連続濾過クロマトグラフィーは、かなり速く、より高い製造量にスケーリングすることが可能であり、これは、従来技術を支配する現在のUC方法論の有意な欠点である。別の有利な精製方法は、スケーラビリティ及び純度を提供し、任意の他の種類の精製技術と組み合わせることができるTFFである。
【0099】
いくつかの実施形態では、本発明のEVは、単離されたEVである。したがって、本発明は、EVの表面上に存在する少なくとも1つのABDを含む単離されたEVを提供し、ABDは、EVタンパク質との融合タンパク質の一部を形成する。
【0100】
本発明はまた、本発明による少なくとも1つのEVと、薬学的に許容される賦形剤又は担体と、を含む、薬学的組成物に関する。
【0101】
「賦形剤」又は「担体」という用語は、化合物の投与を更に容易にするために薬学的組成物に添加される不活性物質を指す。この用語は、FDA若しくはEMEAなどの規制機関によって承認されているか、又はヒトを含む動物に使用するための米国薬局方に記載されている薬剤のうちのいずれか、並びに対象に著しい刺激を引き起こさず、治療用カーゴの生物学的活性及び特性を無効にしない任意の担体又は希釈剤を包含する。薬学的組成物を調製する際に有用であり、一般的に安全であり、かつ無毒である賦形剤及び担体が含まれる。
【0102】
例示的な賦形剤には、HSAなどのタンパク質、グリセロール、ソルビトール及びエリスリトールなどのポリオール、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、プロリン、グリシン、ヒスチジン及びメチオニンなどのアミノ酸、ポリビニルピロリドン及びヒドロキシプロピルセルロースなどのポリマー、ポリソルベート80、ポリソルベート20及びpluronicF68などの界面活性剤、アスコルビン酸及びアルファ-トコフェロール(ビタミンE)などの抗酸化剤、アセテート、スクシネート、シトレート、ホスフェート、ヒスチジン、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(TRIS)などの緩衝動剤、Ca2+、Zn2+及びEDTAなどの金属イオン/キレート剤、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリンベースの賦形剤、並びにポリアニオン及び塩などの他のもの、ラクトース、トレハロース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、グリセロール、アルブミン、ゼラチン、マンニトール及びデキストランなどの安定剤若しくは増量剤、又はベンジルアルコール、m-クレゾール、フェノール、2-フェノキシエタノールなどの防腐剤が含まれる。
【0103】
本発明によるEVは、様々な異なる投与経路、例えば、耳介(耳)、頬、結膜、皮膚、歯、電気浸透、頚管内、副鼻腔内、気管内、経腸、硬膜外、羊膜外、体外、血液透析、浸潤、間質、腹腔内、羊膜内、動脈内、関節内、胆管内、気管支内、嚢内、心臓内、軟骨内、仙骨内、海綿体内(intracavernous)、腔内、大脳内、大脳室内、大槽内、角膜内、冠内(歯)、冠動脈内、海綿体内(intracorporus cavernosum)、皮内、椎間板内、管内、十二指腸内、硬膜内、表皮内、食道内、胃内、歯肉内、回腸内、病巣内、管腔内、リンパ管内、髄内、髄膜内、筋肉内、眼内、卵巣内、心膜内、腹腔内、胸腔内(intrapleural)、前立腺内、肺内、鼻腔内、脊髄内、関節滑液嚢内、腱内、精巣内、髄腔内、胸腔内(intrathoracic)、管内(intratubular)、腫瘍内、鼓室内、子宮内、血管内、静脈内、静脈内ボーラス、静脈内点滴、心室内、膀胱内、硝子体内、イオントフォレシス、灌漑、喉頭、鼻、経鼻胃、密封療法、目、経口、口腔咽頭、その他、非経口、経皮、関節周囲、硬膜周囲、神経周囲、歯周、直腸、呼吸器(吸入)、眼球後(retrobulbar)、軟部組織、くも膜下、結膜下、皮下、舌下、粘膜下、局所、経皮、経粘膜、経胎盤、経気管、経鼓室、尿管、尿道、及び/若しくは膣投与、並びに/又は上記の投与経路の任意の組み合わせを介してヒト若しくは動物の対象に投与されてもよく、これは通常、治療する疾患、及び/又はEVの特徴、問題のカーゴ分子、若しくはEV集団自体に依存する。
【0104】
EVの医学的及び科学的な使用及び用途を説明する場合、当業者には、本発明は通常、複数のEV、すなわち、数千、数百万、数十億、又は更には数兆のEVを含み得るEVの集団に関することが明らかであろう。EVは、単位体積当たり、又は単位重量当たり(例えば、ml当たり、又はL当たり、又はkg体重当たり)、約10、10、1010、1011、1012、1013、1014、1015、1018、1025、1030個のEV(しばしば「粒子」と称される)又はより大きい、より小さい、若しくはその中間の任意の他の数などの濃度で存在し得る。同じように、例えば、ある特定のABD又はカーゴを含むEVに関する「集団」という用語は、そのような集団を構成する複数のエンティティを包含すると理解されることができる。言い換えれば、個々のEVは、複数で存在する場合、EV集団を構成する。したがって、当然、本発明は、当業者に明らかであるように、個々のEV及びEVを含む集団の両方に関する。インビボで適用される場合のEVの投薬量は、当然、治療される疾患、投与経路、目的のカーゴの活性及び効果、ABD、EVに存在する任意の標的化部分、医薬製剤などに応じて、大幅に変化し得る。
【0105】
任意の投与計画が、本発明のABD EVに適用可能であることが想定される。選択される投与計画は、ABD EVによって送達されるカーゴ、及び治療される疾患、並びに当業者によって決定されるであろう任意の追加の投与される療法に依存する。
【0106】
本発明のABD EVは、複数回、すなわち、1回を超えるが、通常2回を超えて投与されるか、又は潜在的には慢性の長期治療のために投与される(すなわち、数十~数百~数千回投与される)ことが想定される。好ましくは、カーゴがワクチンとして投与されている抗原である場合、免疫化スケジュールは、数週間にわたって広がるポリペプチドの2つ以上の投与を伴う。同様に、カーゴが例えば、siRNA若しくはmRNAなどのRNA剤、又は抗体若しくは酵素若しくはトランスポーターなどのタンパク質である場合、問題のカーゴを含むABD EVは、慢性治療レジメンの一部として、通常は複数回投与される可能性が高い。
【0107】
本発明はまた、医薬に使用するための本発明によるEVに関する。本発明はまた、医薬に使用するための本発明による薬学的組成物に関する。本発明はまた、治療を必要とする患者に、少なくとも1つの有効量の本発明によるEV又は少なくとも1つの有効量の本発明の薬学的組成物を投与することを含む、治療方法に関する。本発明はまた、患者の少なくとも1つの疾患、障害及び/又は状態を治療する方法であって、少なくとも1つの有効量の本発明によるEV又は少なくとも1つの有効量の本発明の薬学的組成物を患者に投与することを含む、方法に関する。
【0108】
医療使用又は治療方法は、本発明による任意の種類のカーゴの送達によることができる。例えば、医療使用又は治療は、タンパク質置換療法としての機能性タンパク質の送達、タンパク質置換療法としても機能する機能性タンパク質をコードするmRNAの送達によって行われ得る。そのようなタンパク質補充療法は、例えば、フェニルケトン尿症(PKU)、尿素サイクル障害、又はリソソーム蓄積症などの代謝における先天性エラーによって引き起こされる疾患についてERTであり得る。医療使用又は治療は、遺伝子サイレンシングRNA、スプライススイッチングRNA、又は遺伝子編集のためのCRISPR-Cas9の送達によることができる。医療使用又は治療は、プラスミドDNA、ミニサークル、又はAAV若しくはレンチウイルスなどのウイルス遺伝子治療の送達による遺伝子治療であり得る。医療使用又は治療は、免疫療法のための抗原又はネオ抗原の提示によって行われ得、実際には、免疫応答を誘導するためのワクチンとして機能する。例えば、EVは、がん免疫療法のための腫瘍抗原、又は病原体に対する免疫化のためのウイルス、細菌、若しくは真菌抗原の送達及び/又は提示によって作用し得る。医療使用又は治療は、細胞若しくは細胞外マトリックスに送達されると治療効果を媒介することができる小分子、抗体又は抗体-薬物複合体の送達によって行われ得る。一実施形態では、医療使用又は治療は、1つより多くの種類の治療用カーゴを含むEVによって行われてもよく、すなわち、治療用カーゴは、タンパク質、核酸、ウイルス、ウイルスゲノム、抗原、及び/又は小分子の混合物であってもよい。
【0109】
重要なことに、本発明は、本明細書に記載のEV又は薬学的組成物の、様々な疾患の予防及び/又は治療及び/又は緩和における使用に関し、典型的には、核酸(RNA分子、DNA分子若しくはミキシマー(mixmer)、mRNA、アンチセンス若しくはスプライススイッチングオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、pDNA、スーパーコイルド若しくは非スーパーコイルドプラスミド、又はミニサークルなど)、ペプチド若しくはタンパク質(トランスポーター、酵素、受容体(デコイ受容体など)、膜タンパク質、サイトカイン、抗原若しくはネオ抗原、リボ核タンパク質、核酸結合タンパク質、抗体、ナノボディ、抗体断片を含む)、抗体-薬物複合体、小分子薬物、遺伝子編集技術(CRISPR-Cas9、TALEN、メガヌクレアーゼなど)、又は小胞をベースとするカーゴ(ウイルス(例えば、AAV、レンチウイルスなど)など)などの、本質的に任意の種類の薬物カーゴの送達を介している。一実施形態では、カーゴは、タンパク質、核酸、ウイルス、ウイルスゲノム、抗原、及び/又は小分子の混合物であってもよい。
【0110】
本明細書に記載のEV及び薬学的組成物を用いた治療に好適な標的である疾患及び状態の非限定的な例としては、以下の非限定的な例が挙げられる:自己免疫疾患(例えば、セリアック病、クローン病、1型糖尿病、バセドウ病、炎症性腸疾患、多発性硬化症、乾癬、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、強直性脊椎炎、サルコイドーシス、特発性肺線維症、乾癬、腫瘍壊死因子(TNF)受容体関連周期性症候群(TRAPS)、インターロイキンI受容体拮抗分子欠損症(DIRA)、子宮内膜症、自己免疫性肝炎、強皮症、筋炎)、脳卒中、急性脊髄損傷、血管炎、ギラン・バレー症候群、急性心筋梗塞、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)、敗血症、髄膜炎、脳炎、肝不全、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、腎不全、心不全、又は任意の急性若しくは慢性器官不全及び関連する基礎病因、移植片対宿主病、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)及び他の筋ジストロフィー、炭水化物代謝障害を含む先天性代謝エラー、例えば、G6PD欠損症 ガラクトース血症、遺伝性フルクトース不耐症、フルクトース1,6-ジホスファターゼ欠損症及び糖原病、有機酸代謝異常症(有機酸尿症)、例えばアルカプトン尿症、2-ヒドロキシグルタル酸尿症、メチルマロン酸若しくはプロピオン酸血症、多発性カルボキシラーゼ欠損症、アミノ酸代謝異常症、例えばPKU、メープルシロップ尿症、グルタル酸血症1型、アミノ酸症、例えば遺伝性チロシン血症、非ケトーシス型高グリシン血症及びホモシスチン尿症、遺伝性チロシン血症、ファンコーニ症候群、原発性乳酸アシドーシス、例えばピルビン酸デヒドロゲナーゼ、ピルビン酸カルボキシラーゼ及びチシトクロムオキシダーゼ欠損症、脂肪酸酸化障害及びミトコンドリア代謝障害、例えば短鎖、中鎖、及び長鎖アシル-CoAデヒドロゲナーゼ欠損症(ベータ酸化欠損症としても知られる)、ライ症候群、中鎖アシル-CoA脱水素酵素欠損症(MCADD)、ミトコンドリア脳筋症・乳酸アシドーシス・脳卒中様症候群(MELAS)、赤色ぼろ線維・ミオクローヌスてんかん症候群(myoclonic epilepsy with ragged red fibers)(MERRF)、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ欠損症、急性間欠性ポルフィリン症などのポルフィリン代謝障害、プリン又はピリミジン代謝障害、レッシュ・ナイハン症候群などのプリン又はピリミジン代謝障害、先天性リポイド過形成症などのステロイド代謝障害、先天性副腎過形成症、カーンズ・セイヤー症候群などのミトコンドリア機能障害、ツェルベルガー症候群及び新生児性副腎白質ジストロフィーなどのペルオキシゾーム機能障害、先天性副腎過形成症又はスミス・レムリ・オピッツ、メンケス症候群、新生児ヘモクロマトーシス症、尿素サイクル異常症、例えばN-アセチルグルタミン酸合成酵素欠損症、カルバモイルリン酸合成酵素欠損症、OTC欠損症、シトルリン血症(アルギニノコハク酸合成酵素欠損症)、アルギニノコハク酸尿症(ASA;アルギニノコハク酸リアーゼ欠損症)、アルギニン血症(アルギナーゼ欠損症)、高オルニチン血症、高アンモニア血症、ホモシトルリン尿症(HHH)症候群(ミトコンドリアオルニチントランスポーター欠損症)、シトルリン血症II(シトリン欠損症、アスパラギン酸・グルタミン酸トランスポーター)、リジン尿性タンパク質不耐症(y+Lアミノ酸トランスポーター1の変異)、オロト酸尿症(酵素欠損症、UMPS)、全てのリソソーム蓄積症、例えば、アルファ-マンノース症、β-マンノース症、アスパチルグルコサミン尿症、コレステロールエステル蓄積症、シスチン症、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシド蓄積症、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病I型、ゴーシェ病II型、ゴーシェ病III型、GM1ガングリオシドーシスI型、GM1ガングリオシドーシスII型、GM1ガングリオシドーシスIII型、GM2-サンドホフ病、GM2-テイ-サックス病、GM2-ガングリオシドーシス、ABバリアント、ムコリピドーシスII型、クラッベ病、リソソーム酸リパーゼ欠損症、メタ色素性白質ジストロフィー、MPS I-ハーラー-シャイエ症候群、MPS I-シェイ症候群、MPS I-ヒューラー-シェイ症候群、MPS II-ハンター症候群、MPS IIIA-サンフィリポ症候群A型、MPS IIIB-サンフィリポ症候群B型、MPS IIIB-サンフィリポ症候群C型、MPS IIIB-サンフィリポ症候群D型、MPS IV-モルキオA型、MPS IV-モルキオB型、MPS IX-ヒアルロニダーゼ欠損症、MPS VI-マロトー-ラミー、MPS VII-スライ症候群、ムコリピドーシスI-シアリドーシス、ムコリピドーシスIIIC、ムコリピドーシスIV型、ムコ多糖症、マルチプルスルファターゼ欠損症、神経セロイドリポフスチン症T1、神経セロイドリポフスチン症T2、神経セロイドリポフスチン症T3、神経セロイドリポフスチン症T4、神経セロイドリポフスチン症T5、神経セロイドリポフスチン症T6、神経セロイドリポフスチン症T7、神経セロイドリポフスチン症T8、神経セロイドリポフスチン症T9、神経セロイドリポフスチン症T10、ニーマン・ピック病A型、ニーマン・ピック病B型、ニーマン・ピック病C型(NPC)、ポンペ病、濃化異骨症、サラ病、シンドラー病及びウォルマン病など、嚢胞性線維症、原発性線毛機能不全症、肺胞タンパク症、関節拘縮-腎機能障害-胆汁うっ滞(ARC)症候群、レット症候群、アルツハイマー病、パーキンソン病、GBA関連パーキンソン病、ハンチントン病及び他のトリヌクレオチド反復関連疾患を含む神経変性疾患、プリオン病、前頭側頭型認知症を含む認知症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、運動ニューロン疾患、多発性硬化症、がん悪液質、食欲不振、2型糖尿病、並びに各種がん。
【0111】
本発明は、少なくとも1つのABDを含むEVを提供し、EVは、少なくとも1つのABDを欠く他の方法で同一のEVによって示される蓄積レベルよりも高いレベルで腫瘍及び/又はリンパ節内に蓄積する。具体的には、ABDを欠くEVと比較した腫瘍及び/又はリンパ節蓄積のレベルは、少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも4倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも6倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも8倍、又は少なくとも9倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍以上であってもよい。
【0112】
本発明は、腫瘍内でのABD EVの蓄積に起因するがんの治療、具体的には、リンパ節内での蓄積に起因する免疫療法によるがんの治療に特に有利である。
【0113】
具体的には、本発明は、がん免疫療法によるがんの治療、すなわち、抗原ががん抗原に対する免疫応答を上昇させるように、ABD EVの表面上にがん抗原を提示することに有用であると想定される。事実上全ての種類のがんが、本発明に関連する疾患標的であり、例えば、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病、副腎皮質がん、AIDS関連がん、AIDS関連リンパ腫、肛門がん、虫垂がん、星状細胞腫、小脳若しくは大脳、基底細胞がん、胆管がん、膀胱がん、骨腫瘍、脳幹神経膠腫、脳がん、脳腫瘍(小脳星状細胞腫、大脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、上皮腫、髄芽腫、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、視経路及び視床下膠腫)、乳がん、気管支腺腫/カルチノイド、バーキットリンパ腫、カルチノイド腫瘍(小児、胃腸)、原発不明がん、中枢神経系リンパ腫、小脳星状細胞腫/悪性神経膠腫、子宮頸がん、慢性リンパ球性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性骨髄増殖性障害、結腸がん、皮膚T細胞リンパ腫、線維形成性小細胞腫瘍、子宮内膜がん、上皮がん、食道がん、頭蓋外胚細胞腫瘍、性腺外胚細胞腫瘍、肝外胆管がん、眼がん(眼内黒色腫、網膜芽細胞腫)、胆嚢がん、胃(gastric)(胃(stomach))がん、消化管カルチノイド腫瘍、消化管間質腫瘍(GIST)、胚細胞腫瘍(頭蓋外、性腺外、若しくは卵巣)、妊娠性絨毛腫瘍、神経膠腫(脳幹神経膠腫、小脳星状細胞腫、視経路及び視床下部膠腫)、胃膠腫カルチノイド、有毛細胞白血病、頭頸部がん、心臓がん、肝細胞(肝臓)がん、ホジキンリンパ腫、下咽頭がん、眼内黒色腫、島細胞がん(内分泌膵臓)、カポジ肉腫、腎臓がん(腎臓細胞がん)、喉頭がん、白血病(急性リンパ芽球性(急性リンパ球性白血病とも呼ばれる)、急性骨髄性白血病(急性骨髄性白血病とも呼ばれる)、慢性リンパ球性白血病(慢性リンパ球性白血病とも呼ばれる)、慢性骨髄性白血病(慢性骨髄性白血病とも呼ばれる))、口唇及び口腔がん、脂肪肉腫、肝臓がん(原発性)、肺がん(非小細胞、小細胞)、リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、バーキットリンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、髄芽腫、メルケル細胞がん、中皮腫、原発不明の転移性頸部扁平上皮がん、口腔がん、多発性内分泌腫瘍症候群、多発性骨髄腫/形質細胞腫瘍、菌状息肉腫、骨髄異形成/骨髄増殖性疾患、骨髄性(yelogenous)白血病、慢性骨髄性白血病(急性、慢性)、骨髄腫、鼻腔及び副鼻腔がん、鼻咽頭がん、神経芽腫、口腔がん、口腔咽頭がん、骨肉腫/骨悪性線維性組織球腫(malignant fibrous histiocytoma of bone)、卵巣がん、卵巣上皮がん(上皮性間質腫瘍)、卵巣胚細胞腫瘍、卵巣低悪性度腫瘍、膵臓がん、膵島細胞がん、副甲状腺がん、陰茎がん、咽頭がん、褐色細胞腫、松果体星状細胞腫、松果体胚腫、松果体芽腫及びテント上原始神経外胚葉性腫瘍、下垂体腺腫、肺気芽腫、前立腺がん、直腸がん、腎細胞がん(腎臓がん)、網膜芽腫、横紋筋肉腫、唾液腺がん、肉腫(腫瘍肉腫のユーイングファミリー、カポジ肉腫、軟組織肉腫、子宮肉腫)、セザリー症候群、皮膚がん(非黒色腫、黒色腫)、小腸がん、扁平上皮細胞、頸部扁平上皮がん、胃がん、テント上原始神経外胚葉性腫瘍、精巣がん、咽頭がん、胸腺腫及び胸腺がん腫、甲状腺がん、腎盂及び尿管がん、尿道がん、子宮がん、子宮肉腫、膣がん、外陰がん、原発性マクログロブリン血症、並びに/又はウィルムス腫瘍である。
【0114】
本発明はまた、脳へのABD EVの生体内分布の増加に起因する脳及びCNS障害の治療に特に有利である。本発明は、少なくとも1つのABDを含むEVを提供し、EVは、少なくとも1つのABDを欠く他の同一のEVによって示される蓄積レベルよりも高いレベルで脳内に蓄積する。具体的には、ABDを欠くEVと比較した腫瘍蓄積レベルは、少なくとも2倍、又は少なくとも3倍、又は少なくとも4倍、又は少なくとも5倍、又は少なくとも6倍、又は少なくとも7倍、又は少なくとも8倍、又は少なくとも9倍、又は少なくとも10倍、又は少なくとも20倍以上であってもよい。本発明は、具体的には、本発明に従って任意の種類のカーゴが装填されているが、好ましくは、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、脊髄小脳失調症、ALS、前頭側頭型認知症、運動ニューロン病、多発性硬化症、ワーラー変性及び水疱性網膜症、ゴールドバーグ・シュプリンツェン症候群、クールー病、自己免疫性GFAPアストロサイトパチー、メチルCpG結合タンパク質2(MECP2)重複症候群、アクアポリン-4(AQP4)-アストロサイトパチーなどの神経変性疾患、紅斑症などの家族性疼痛症候群、発作性激痛症及び先天性無痛覚症、ペリツェウス・メルツバッハー病、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー症候群(GSS)、及び致死性家族性不眠症(FFI)を含むプリオン病、並びに脱髄性、成人発症性、常染色体優性及び白質萎縮症を含む白質萎縮症に関与することが知られているRNAを標的とするsiRNAなどのサイレンシングRNAなどの核酸カーゴが装填されている、EVの表面上に存在するABDを有するEVに関する。
【0115】
本発明は、本発明による任意の治療用カーゴを更に装填されている、表面上に存在するABDを有するEVに関し、治療用カーゴは、DMD;NPC及びポンペ病を含むリソソーム蓄積症、ASA及びシトルリン血症及びOTC欠損症などの尿素サイクル障害、メタ色素性白質ジストロフィー、並びにPKUを含む、先天性代謝エラーによって引き起こされる疾患の治療のためのタンパク質及び/又は核酸カーゴの両方であってもよい。
【0116】
治療用エキソソームなどの複合製品の貯蔵寿命を延ばすことは、EVの膨大な治療効果を実現するために非常に重要である。更に、EVは、構造的に、凍結融解サイクルの繰り返しに対する脆弱なホスファチジルセリンの曝露に起因して損傷を受けやすいことが知られている。本発明は、これらの問題を克服することを目的とする。
【0117】
本発明はまた、貯蔵中のEVの半減期を改善する方法であって、a)本発明によるEVを得ることと、b)アルブミンを含む貯蔵又は製剤緩衝液中で上記EVを製剤化することと、を含む方法に関する。任意の形態のアルブミンが利用されてもよく、任意に、アルブミンは、組換えアルブミン、ヒトアルブミン、血清アルブミン、HSA、組換え血清アルブミン、組換えHSA、Albunorm(登録商標)、又はしたがって本発明のABDに結合する任意の断片又はドメインである。HSAは特に半減期が長いため、好ましい。この事実はまた、本出願におけるマウスデータで観察される半減期延長が、本発明のABD-EVがヒトで試験されるときに更に改善されることが期待できることを意味する。
【0118】
理論に拘束されることを望まないが、EVの表面上のABDの存在は、貯蔵/製剤緩衝液中のアルブミンの存在と組み合わされ、アルブミンがEVの表面上のABDに結合することを可能にし、ひいては、EVの周囲に保護シールドを作り出すという利点を有する。これは、EVの凝集を防止する可能性があるが、また、より大きな異種ナノ粒子の形成を促進し、加工中の凍結融解サイクル及び剪断応力の損傷からEVを保護する。これは、長い貯蔵寿命を有する、はるかに堅牢なEV集団をもたらす。理論に拘束されることを望まないが、アルブミンコートは、EV膜と容器の壁との望ましくない相互作用を防止すると考えられ、これは、より多くのEVが貯蔵後に回収され、更に、回収されるものは高品質であることを意味する。
【0119】
これらの組成物の保存期間を延長するためにABD及びアルブミンを使用する追加の利点は、アルブミンでコーティングされたEVを患者に直接投与することができ、次いでアルブミンが循環中のEVの半減期を延長するように機能することである。したがって、EVに対する1つの修飾、ABDドメインの包含のみによって、EVは、貯蔵及び製剤化の間により堅牢となる。これは、それらがより大きな治療効果を有し、容器表面への付着によるEVの損失が低減され、重要なことに、それらのEVが次いで患者に投与されると、それらもまた、インビボでの循環時間の増加を有することを意味する。
【0120】
本発明は、少なくとも1つのABDを含むEVを提供し、EVは、少なくとも1つのABDを欠く他の同一のEVによって示される貯蔵寿命よりも、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、少なくとも70%、少なくとも90%、又はそれ以上である貯蔵寿命を示す。EVは、少なくとも1つのABDを欠く他の同一のEVによって示される貯蔵寿命よりも数週間、数ヶ月、又は数年長い貯蔵寿命を示してもよく、例えば、貯蔵寿命は、5週間、10週間、20週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、9ヶ月、1年、2年、又はそれ以上延長されてもよい。
【0121】
アルブミンは、そうでなければ望ましくない細胞経路を活性化し、宿主細胞タンパク質レベルに関する規制承認要件を満たすことができない生成物をもたらす可能性のある血液由来の不純物を含有しないことに留意することが重要である。組換えアルブミンは、宿主細胞タンパク質の存在を回避することによって、貯蔵中に最終医薬品の安全性及び有効性を維持するのに役立つことができる。
【0122】
貯蔵又は製剤緩衝液中に存在する組換えアルブミンなどのアルブミンでABD-EVを予めコーティングすることは、予めコーティングされた形態のABD-EVを作成する追加の利点を有する。そのような予めコーティングされたABD-EVを、患者に投与することができ、ABD-EVの半減期を延長するために必要な患者の循環からアルブミンを取得するABD-EVの遅延はない。したがって、そのような予めコーティングされたABD-EVは、注入部位でのABD-EV取り込みの大幅な減少(すなわち、オフターゲット取り込みの減少)を示すであろう。これにより、投与された用量のより多くのABD-EVがより長く循環中に存在することになり、したがって、予めコーティングされたABD-EVの治療有効性が増加する。
【0123】
本発明はまた、本発明によるABD-EVを含むナノ粒子複合体に関し、ABD-EVのABDの一部又は全ては、アルブミンに結合される(すなわち、ABD-EVは、少なくとも1つのタイプのアルブミンでEVの表面に装飾又は予めコーティングされる)。本発明はまた、薬学的に許容される賦形剤又は担体と組み合わせた本発明のナノ粒子複合体を含む、薬学的組成物に関する。
【0124】
更なる態様では、本発明は、したがって、医療で使用するための、好ましくは抗体又はFcドメイン含有タンパク質ベースの治療、抗体-薬物複合体(ADC)ベースの治療、及び/又は抗体媒介標的化から利益を得る疾患の治療で使用するためのEV、EV-タンパク質複合体、及び/又はそのようなEV及びEV-タンパク質複合体を含む薬学的組成物に関する。
【0125】
上記のように、組換えアルブミンなどのアルブミンを用いたABD-EVのプレコーティングは、患者自身の血液からのアルブミンの結合に依存しない、ABD-EVのプレコーティング形態を作成するという追加の利点を有する。これは、アルブミンの保護効果を加速し、次いで、半減期を増加させ、したがって、ABD-EVの治療効果を増加させる。ナノ粒子複合体を用いる別の有意な利点は、ABDへのアルブミンの結合の強度が、ABD結合部位の遺伝子操作及び使用されるアルブミンの遺伝子操作によって事前に定義され得ることである。これにより、ABDとアルブミンとの間の高強度、中強度又は弱強度の会合が可能になり、ナノ粒子複合体に調節可能な結合親和性を与えるため、半減期は非常に洗練された方法で制御することができる。
【0126】
本発明はまた、本発明のEVの親和性クロマトグラフィー単離及び精製に関し、EVは、例えばクロマトグラフィーマトリックスへの高度に特異的な結合、及び任意選択的に後続の溶出を可能にするように操作される。本発明によるEVは、EVの表面上にABDタンパク質を含む。親和性精製による上記EVの精製は、その結合パートナーであるアルブミンに対するEVに存在するABDの親和性を利用して行うことが可能である。
【0127】
EV(例えば、エキソソーム)を調製及び単離するための従来の方法は、EV産生細胞によってEVが放出される培養培地中に存在する細胞又は細胞残屑から小胞を分離するための一連の分画遠心分離ステップを含む。典型的には、一連の遠心分離が、例えば、300g、10,000g及び70,000g、又は100,000gで適用され、その際に、チューブの底部に生じるペレットが、生理食塩水溶液でその元の体積の一部に対して再懸濁されて、濃縮されたEV又はエキソソーム溶液を構成する。しかしながら、これらの方法は、以下の複数の理由のために、臨床応用に本質的に不適である:(1)プロセス全体に必要とされる時間の延長された長さ、(2)GMP環境におけるスケールアップ及び検証に関する問題、(3)細胞残屑による著しい汚染のリスク、その結果として、規制承認に許容されないレベルの宿主細胞タンパク質汚染、(4)操作者による変動性のための再現性の乏しさ、(5)小胞のペレット化に起因するEV/エキソソームの凝集、(6)処理の終了時の低回収、並びに(7)小胞形態、それによる生体内分布及び活性への悪影響。したがって、産業上の制約に適し、治療品質の小胞調製物の産生を可能にする、膜小胞を調製する改善された方法が必要である。そのために、国際特許公開第2000/044389号は、陰イオン交換クロマトグラフィー及び/又はゲル浸透クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー技術によって生体試料から膜小胞を調製する方法を開示している。しかしながら、特に、EV治療分野が臨床翻訳及びEVベースの治療の影響に向かって進むにつれて、上記開示よりも有意な改善の余地がある。エキソソームを精製するための既知の方法は、EV治療薬の商業的製造に必要となる大規模生産及びスケールアップに理想的ではない。本発明は、以前に知られている方法で達成可能なよりも高い親和性を有する操作されたエキソソームのより大きなスケールの精製を可能にする。
【0128】
本発明は、本発明のEVに対する親和性を有する(EVの表面にABDポリペプチドを含むように操作された)アルブミンドメインを含むクロマトグラフィーマトリックスを利用することによって、これら及び他の目的を達成する。したがって、したがって、本発明は、EVを単離及び/又は精製するためのプロセスを取り巻く様々な態様及び実施形態に関する。有利には、ABDは、EVを精製するために使用され、更に、ABD-EVが産生され、精製されると、表面上に存在するABDは、EVに、増加した貯蔵寿命及び延長された半減期を付与する。EVにABDを添加することは、精製並びに改善された半減期及び貯蔵寿命の両方を可能にする二重機能の利点を有することは明らかである。したがって、ABDの追加は、単一の遺伝子操作ステップのみで、極めて汎用的なEVを生成する。
【0129】
本発明は、少なくとも1つのABDを含むEVを提供し、EVは、少なくとも1つのABDを欠く他の同一のEVによって示される半減期よりも少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも50%、又はそれ以上長い多い半減期をヒトにおいて示す。例えば、EVは、少なくとも1つのABDを欠く他の同一のEVによって示される半減期よりも少なくとも10分、少なくとも20分、少なくとも30分、少なくとも1時間、少なくとも2時間、少なくとも3時間多い半減期をヒトにおいて示し得る。
【0130】
本発明の親和性精製方法は、(i)ABD EVを含む培地を、アルブミン又はその断片若しくはドメインを含むクロマトグラフィーマトリックスと接触させることと、(ii)本発明のABD EVがアルブミン又はその断片/ドメインに吸着することを可能にすることと、(iii)アルブミン又はその断片若しくはドメインからABD EVを放出する媒体をクロマトグラフィーマトリックスに通すことによってABD EVを溶出することと、を含む。上述のように、本発明のEVは、配列番号1~4に示されるABDなどのそれらの表面ABDを含み、それらの表面に表示するように操作される。
【0131】
このプロセスの原理は、一般的なリガンド及び一般的な対応する受容体、この場合はアルブミン又はその断片若しくはドメインとABDとの間の特定の相互作用に基づいて、様々な種類の溶質を含有する複合体生体流体からの特定の標的溶質(この場合は、エキソソームなどのEV)の精製、すなわち、親和性精製及び/又は親和性クロマトグラフィーとして知られるものである。したがって、アルブミン又はその断片/ドメインは、静止相に結合されるが、一方、ABDポリペプチドは、液体相、例えば細胞培養培地に含まれるEVに存在する。本発明のプロセス及び方法は、任意の種類の細胞培養培地に容易に適用され、接着細胞及び懸濁細胞の両方に使用される様々な細胞培養培地は、本発明の親和性クロマトグラフィー法、例えば、RPMI、EMEM、DMEM、MEM、PMEM、PEM、Opti-MEM、IMDM、Advanced DMEM、McCoy培地、血清、抗生物質、栄養素などの添加剤を伴う又は伴わない培地などで試験されている。
【0132】
更なる実施形態では、プロセスは、アルブミン-ABD結合を好適なpHを有する培地に曝露することによって、アルブミン又はその断片/ドメインからのEVの放出を誘発することを含み得る。これは、EV含有培地(すなわち、液相)を、静止相として、それに付着したアルブミン又はその断片/ドメインを有するクロマトグラフィーマトリックスを含むクロマトグラフィーカラムを通して実行し、EVのABDポリペプチドを、マトリックス上に存在するアルブミン又はその断片/ドメインに吸着させ、次いで、好適なpHを有する溶液をクロマトグラフィーカラムなどを通して実行することによって達成される。カラムからのEVの放出を誘発することが意図される溶液のpHは、pH8未満、pH7未満、又はpH6未満であってもよい。EVを捕捉するプロセス及びEVを放出するプロセスの両方は、複数回、例えば、1回から最大例えば500回までの任意の回数で繰り返され得る。
【0133】
更なる実施形態では、アルブミン又はその断片/ドメインは、異なる種類の化学的及び生化学的連結及び結合を介してクロマトグラフィーマトリックスに結合され得る。マトリックスと、アルブミン又はその断片/ドメイン、例えばHSAを含むタンパク質との間の共有結合は、従来のアミド結合、ジスルフィド結合、エーテル結合、エステル結合、チオ-エーテル結合、チオ-エステル結合、グルタチオン-GST相互作用、ストレプトアビジン-ビオチン相互作用などであり得る。マトリックスは、当業者に周知であるように、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS;NHC-EDC/EDACカップリングの場合)、チオール、シアノゲンブロミド(CNBr)、エポキシ、チオプロピル、一級アミン、スルフヒドリル、カルボン酸、アルデヒド、ヨードアセチル、アズラクトン、カルボニルジイミダゾール(CDI)、マレイミドなどの化学的コンジュゲーション部分を使用して、アルブミンタンパク質又はその断片/ドメインへの結合を促進するために化学的に活性化されてよい。
【0134】
好ましい実施形態では、本発明のプロセスは、アルブミン又はその断片/ドメインを含むクロマトグラフィーマトリックスを含むクロマトグラフィーカラムでは実施される。
【0135】
ABD EVの捕捉に使用するためのクロマトグラフィーマトリックスは、静止クロマトグラフィー相として好適な本質的に任意の種類の材料から構成され得る。非限定的な例としては、アガロース、デキストラン、レクチン、ヘパリン、セルロース、デンプン、デキストラン、寒天、アガロース、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスルホン、ポリビニルポリマー、ポリスチレン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、多糖-鉱物構造、多糖-合成ポリマー、合成ポリマー-鉱物構造、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上が挙げられる。マトリックスは、ビーズ、繊維、不規則な形状の粒子、膜、平坦な構造、多孔質鉱物材料、又は本質的に任意の種類の好適な静止相の形態であり得る。当然ながら、マトリックスに結合したアルブミン又はその断片/ドメインは、化学結合及びリンカーを使用して様々な表面に直接結合してもよい。これは、例えば表面プラズモン共鳴などの方法に特に有用であり得る。
【0136】
本発明による親和性精製方法は、本発明の親和性捕捉ステップの前に実施され得る追加のEV精製ステップを更に含み得る。好適な精製方法は、本発明の第2の態様に関連して本明細書に開示される通りである。
【0137】
重要なことに、上述のように、ABD EVの親和性精製は、複数回、本質的に無制限に、少なくとも2~500回の間の任意の回数で実行され得る。アルブミン結合EVの連続精製は、精製ステップ間の外因的薬物装填を可能にする。例えば、アルブミン結合EVは、EV産生細胞供給源の調節培地(CM)から直接精製されてよく、続いて外因的薬物装填ステップ、及び更に別のラウンドの精製が行われてよい。概略的には、これは以下のように例示され得る:
-EV産生細胞による細胞培養培地へのEVの分泌、
-本発明のプロセス及び方法を使用したEVの親和性精製、
-薬物装填(例えば、エレクトロポレーション又はトランスフェクション試薬によるsiRNAのEV内への/EVの表面上への装填)、
-本発明のプロセス及び方法を使用したEVの親和性精製。
【0138】
追加の外因的装填ステップは、エレクトロポレーション、カチオン性トランスフェクション剤、リポフェクタミン(RTM)などのトランスフェクション試薬でのトランスフェクション、脂質若しくはコレステロール尾部などの膜アンカー部分へのカーゴのコンジュゲーション、又はCPP-カーゴ複合体の形態若しくはCPP-カーゴ非共有複合体の形態のいずれかのCPPによる装填を含む、任意の既知の外因的装填方法を使用して装填されるカーゴを含んでよい。
【0139】
上記の態様のいずれかは、任意の他の態様と組み合わせることができる。
【実施例
【0140】
実施例1:プロデューサー細胞における構築物の発現
以下の「キー」に記載される融合タンパク質をコードする核酸融合構築物を設計し、本明細書に開示される技術を使用してEV産生細胞に導入し、それらの細胞が融合タンパク質を発現するようにした。次いで、この融合タンパク質を、融合構築物中のEVタンパク質の存在のために、プロデューサー細胞によって産生されるEVに組み込んだ。安定して形質導入されたHEK-293Tプロデューサー細胞における構築物の発現をウエスタンブロットによって試験した。Nanoluc及びアクチン一次抗体をそれぞれ検出に使用した。図1に示されるデータは、全ての構築物がHEK-293T安定細胞において良好に発現したことを示す。
【0141】
キー:
-mCD63-Nluc(配列番号5):エキソソームタンパク質(CD63)及びnanolucレポーターの融合タンパク質を含む対照融合タンパク質(ABDを欠く)。
-mCD63-ABDX2-Nluc(配列番号6):EVの表面上に存在し、かつnanolucレポーターを発現するように操作されたABDとのエキソソームタンパク質(CD63)の融合タンパク質(P6=継代6、P10=継代10)。
-mCD63-ABDX2-Neo-Nluc(配列番号9):EVの表面上に存在し、かつ腫瘍抗原(ネオ抗原=6つの腫瘍抗原)を追加的に含むnanolucレポーターを発現するように操作されたABDとのエキソソームタンパク質(CD63)の融合タンパク質。
【0142】
ネオ抗原は、免疫療法によってがんを治療するためのワクチンとして使用するためのネオ抗原カーゴを送達するために含まれる。構築物へのネオ抗原の添加は、追加の配列及びモチーフを、構築物の発現に影響を与えることなく、同じCD63-ABD構築物に添加できることを示す。この実施例では、任意の他の治療用タンパク質を、ネオ抗原の代わりに融合構築物に挿入することができた。
【0143】
全ての構築物は、HEK-293T安定細胞において良好に発現した。mCD63-ABDX2-Nluc構築物の発現は、顕著な遺伝子操作にもかかわらず、構築物がいくつかの継代にわたって安定であることを示すいくつかの継代の後に減少しなかったが、これは、いくつかの継代の後の特定の発現カセットの発現に影響を与え得ることが知られている。実施例1の構築物で使用したABDは、ABD035(配列番号4)であった。
【0144】
実施例2:EV画分における構築物の発現
安定して形質導入されたHEK-293Tプロデューサー細胞における構築物の発現が確立されると、精製後のEV画分における構築物の発現をウエスタンブロットによって試験した。
【0145】
キー:
-HEK-WT:陰性対照としてのHEK-293T WT細胞からのEV。
-mCD63-ABDX2-Mut30-Nluc(配列番号10):EVの表面上に存在し、かつnanolucレポーターを発現するように操作されたABDとのエキソソームタンパク質(CD63)の融合タンパク質。追加的に、腫瘍抗原(Mut30)を含む。
-mCD63-ABDX2-Nluc(配列番号6):EVの表面上に存在し、かつnanolucレポーターを発現するように操作されたABDとのエキソソームタンパク質(CD63)の融合タンパク質。
-mCD63-Nluc(配列番号5):エキソソームタンパク質(CD63)とnanolucレポーターの融合タンパク質を含む対照融合タンパク質(ABDを欠いている)。
-mCD63-ABDX2-Neo-Nluc(配列番号9):EVの表面上に存在し、かつ腫瘍抗原(ネオ抗原=6つの腫瘍抗原)を追加的に含むnanolucレポーターを発現するように操作されたABDとのエキソソームタンパク質(CD63)の融合タンパク質。
【0146】
HEK-293T安定細胞から精製したEVにおいて、全ての構築物が良好に発現した。構築物の発現は、いくつかの継代を経ても減少しなかった。
【0147】
Nanoluc、ALIX、及びCD81一次抗体をそれぞれ検出に使用した(ALIX及びCD81はエキソソームマーカータンパク質である)。実施例2の構築物で使用したABDは、ABD035(配列番号4)であった。
【0148】
実施例3:インビボでのABD EVの半減期の改善
ABDドメインを欠くEVと比較して、NMRIマウスにおいてインビボでABD EVの半減期を試験した。表面上でABD+発光nanolucレポーターを発現するように操作されたEVと(mCD63-ABDX2-Nanoluc(配列番号6))、Nanolucのみを発現するように操作されたEV(mCD63-Nanoluc(配列番号5))とを比較した。実施例3の構築物で使用したABDは、ABD035(配列番号4)であった。群当たり6匹のNMRIマウスを使用し、EVを1e11/マウスの用量で静脈内注射した。ある特定の時点で循環中の残存EVの数は、相対発光量(RLU)/注入されたEVの数(総RLU/1E11)に基づいて計算される。これから、血漿中に注入されたEVのパーセンテージが導き出される。
【0149】
図3のデータは、ABDの存在が、少なくとも4.5時間の時点まで循環中のEVをより安定させることによって、それらの半減期を有意に増加させたことを示す。
【0150】
EVの表面上にABDが存在することにより、対照群と比較して、循環中のEVが14倍超になり、図3から分かるように、循環中のEVの半減期が驚くほど大きく増加した。
【0151】
実施例4:対照EVと比較したABD EVの生体内分布
EVの改善された半減期は、それらEVの生体内分布に影響を及ぼすと予測された。対照EV(mCD63-NanoLuc(配列番号5))と比較したABD EV(mCD63-ABDx2-NanoLuc(配列番号6))の生体内分布を調査するために、血液を採取し、注入から270分後に内臓を採取した。実施例4の構築物で使用したABDは、ABD035(配列番号4)であった。各臓器又は血漿における総RLUを測定し、注入されたEVのパーセンテージを、RLU/注入されたEVの数(総RLU/1E11)に基づいて計算した。
【0152】
図4のデータは、EVの表面上のABDの存在が、脳、腎臓、血漿及び肝臓におけるEV数を増加させたことを示す。図4の棒の上の数字は、対照群と比較した倍率変化を示す。脳では3倍の増加が見られ、腎臓では2倍の増加が見られ、血漿では14倍の増加が見られ、肝臓では1.3倍の増加が見られた。EVの表面上にABDが存在することは、肺におけるEV生体内分布に影響を与えず、脾臓におけるEV生体内分布を減少させた。
【0153】
したがって、ABDの存在は、EVの生体内分布を変化させるのに有益である。これは、対象となる標的臓器が脳であるEV、又は血漿及びリンパ節において高レベルのEVが望まれるがん治療に特に当てはまる。本発明は、標的化部分を追加的に含むEV、例えば、特定の臓器又は疾患状態を標的化するように操作されるEV、例えば、脳を標的とするEV又はがん標的化部分を含むEVの場合に非常に有用であることは明らかである。
【0154】
実施例5:ABD EVの腫瘍蓄積
EVの表面上のABDの存在が、循環中のEVの半減期を延長し、EVの生体内分布を変化させるという発見を受けて、半減期の改善及びEVの生体内分布の変化が、それらEVの腫瘍蓄積に影響を及ぼすことが予測された。加えて、腫瘍血管は透過性であり、腫瘍組織は機能的リンパ系を欠くため、血管透過性・滞留性亢進(EPR)効果によって腫瘍組織内にEVが蓄積され得る。EVは循環系に戻ることはできない。更に、腫瘍組織は通常、アルブミンの受容体を発現し、アルブミンに結合するEVは、このようにして腫瘍を標的とするであろう。対照EV(mCD63-NanoLuc(配列番号5))と比較したABD EV(mCD63-ABDx2-NanoLuc(配列番号6))の腫瘍蓄積を調査するために、C57マウス(群当たり3匹のマウス)に、対照EV又はアルブミン結合EVのいずれかを静脈内に注射した(1E11 EV/マウス)。実施例5の構築物で使用したABDは、ABD035(配列番号4)であった。注射から4.5時間後、腫瘍を採取し、組織溶解剤を用いて緩衝液(0.1%(v/v)TritonX-100)中で溶解した。溶解物からのNanolucシグナルをルミノメーターによって測定した。
【0155】
図5のデータは、EVの表面上のABDの存在が、対照群と比較して、腫瘍におけるEVの蓄積を1.73倍増加させたことを示す。
【0156】
したがって、ABDの存在は、EVの生体内分布を変化させるのに有益であり、EVが腫瘍内に蓄積することを可能にする。これは、EVに小腫瘍性分子、抗がん抗体、又は抗がんサイレンシングRNAなどの治療用カーゴを装填することを伴い得る、EV治療薬によるがんの治療において特に有用である。代替的又は追加的に、治療用EVは、免疫療法によってがんに対する免疫応答を上昇させるために使用されるネオ抗原を含み得る。更に、腫瘍標的化部分のEVへの添加は、ABD EVの腫瘍蓄積を更に増加させるであろう。
【0157】
実施例6:ABDはリンパ節の蓄積を増加させる
EVの表面上のABDの存在が、循環中のEVの半減期を延長し、EVの生体内分布を変化させるという発見を受けて、半減期の改善及びEVの生体内分布の変化が、それらリンパ節内へのEVの蓄積に影響を及ぼすことも予測された。加えて、ABDとナノ粒子とのコンジュゲーションにより、リンパ節内にナノ粒子が蓄積することが示されている。対照EV(mCD63-NanoLuc(配列番号5))と比較したABD EV(mCD63-ABDx2-NanoLuc(配列番号6))のリンパ節蓄積を調査するために、NMRIマウス(群当たり6匹のマウス)に、対照EV又はアルブミン結合EVのいずれかを静脈内に注射した(1E11 EV/マウス)。実施例6の構築物で使用したABDは、ABD035(配列番号4)であった。注射から4.5時間後、リンパ節を採取し、組織溶解剤を用いて緩衝液(0.1%(v/v)TritonX-100)中で溶解した。溶解物からのNanolucシグナルをルミノメーターによって測定した。
【0158】
図6のデータは、EVの表面上のABDの存在が、対照群と比較して、リンパ節におけるEVの蓄積を11.5倍劇的に増加させたことを示す。
【0159】
したがって、ABDの存在は、EVの生体内分布を変化させるのに有益であり、EVがリンパ節内にも蓄積することを可能にする。これは、治療用カーゴが免疫応答、すなわち、ワクチンとして機能するように設計された抗原又は複数の抗原を装填したEVを誘発するように設計された場合に特に有用である。なぜなら、T細胞抗原提示細胞のクロストークがリンパ節に生じることが知られているからである。図5及び6のデータを合わせると、特に、ABD EVは、免疫療法によるがんの治療に特に有用であることが分かるが、免疫療法による任意の他の状態の治療も想定される。
【0160】
実施例7:ABD-EVアルブミンインビトロ結合アッセイ
EVの表面上に存在するABDがアルブミンと結合することができることを検証するために、クロマトグラフィーを使用してインビトロ結合アッセイを実行した。フルオレセインイソチオシアネート(FITC)標識アルブミンの、ABD-EV(mCD63-ABD第2のループ-NanoLuc(配列番号8))又はABDを欠く対照EV(mCD63-NanoLuc(配列番号5))+リン酸緩衝生理食塩水(PBS)対照のいずれかへの結合。
【0161】
1E11 EVをFITC-ヒトアルブミン(360μg/ml)とともに37℃で2時間インキュベートした。このインキュベーションの後、サイズ排除クロマトグラフィーを使用して、各試料について48個の画分を、画分1~8をEV画分とし、画分9~48を可溶性タンパク質画分として得た。これらのデータを図7Aに示す。
【0162】
図7AのEV画分(1~8)に関するデータは、アルブミン結合EV(ABD-EV)のみがSpectraMaxによって検出される明らかなFITC蛍光を示すことを示し、これは、FITC-アルブミンとのEVの結合を示している。画分3及び4は、最も高い蛍光シグナルを有した。
【0163】
図7Bは、nanolucシグナルを示し、これらを、画分1~8がEV画分であることを確認するために、48画分全てで試験した。画分3及び4は、FITC実験で検出された蛍光シグナルに対応する、アルブミン結合EV群(ABD-EV)中で最も高いnanolucシグナルを示した。
【0164】
実施例8:フローサイトメトリーによるABD-EVアルブミン結合アッセイ
図7に示されるクロマトグラフィーデータに続いて、ABD-EVのアルブミンへの結合の更なるインビトロ分析を行った。EVの表面上に存在するABDがアルブミンと結合することができることを検証するために、実施例7のクロマトグラフィー実験からの画分3及び4を、CellStreamによるフローサイトメトリー分析のために採取した。パン(CD9-CD63-CD81)-腺腫性大腸ポリポーシス(APC)抗体を使用して、試料を染色した。図8のデータは、アルブミン結合EV群(ABD-EV)のみが、二重(APC及びFITC)陽性シグナルを示し、画分3及び4でそれぞれ6.69%及び4.14%であったことを示す。
【0165】
フローサイトメトリー中に試料を希釈する必要があるため、これは、EVからのアルブミンの解離を引き起こした可能性があることに留意することが重要である。したがって、二重陽性EVの真のパーセンテージは、図8に提示されるものよりも有意に高い可能性がある。にもかかわらず、図8に提供されるデータは、アルブミンが操作されたABD-EVに結合することを明確に示す。データは、SpectraMaxによって検出された蛍光シグナル及びルミノメーターによって検出されたnanolucシグナルと良好に相関する。
【0166】
実施例9:追加のABD-EVアルブミンインビトロ結合アッセイ
実施例7に記載され、図7A及び7Bに示されるインビトロ結合アッセイが成功した後。実施例7に概説されているのと同じプロトコルを使用したが、より広範囲の構築物を試験した。これらの構築物は、様々な異なるEVタンパク質(ヒトCD81、CD9、及びCD63)、並びにABDの様々な異なる位置(第1のループ、第2のループ、又は両方のループ(x2))を含む。
【0167】
図9A~Fは、図7と同様の結果を示し、ABDが様々な異なるEVタンパク質との融合構築物に操作され、かつEVタンパク質内の様々な異なる位置(第1のループ、第2のループ、又は両方のループ)で操作されるときに、FITC-アルブミンがEVの表面上に結合することを示す。これは、ABDへのアルブミンの結合が、融合構築物内に存在するEVタンパク質の種類、又は融合タンパク質内のABDの位置に依存しないことを示す。
【0168】
重要なことに、ABDが両方のループに融合される実験では、EVタンパク質が、破壊されるか、又は膜挿入に影響を与えることなく、機能性タンパク質をマルチパス膜貫通EVタンパク質の2つ以上のループに操作することが可能であることが示される。
【0169】
実施例10:追加のインビボ半減期延長実験
実施例3に示される実験が成功した後、追加の構築物をインビボで試験して、様々な異なるEVタンパク質及び異なるループ内に位置するABDと組み合わせたABDの効果を評価した。構築され試験されたものは次の通りである。
■マウスCD81-ABD第2のループ
■マウスCD9-ABD第2のループ
■マウスCD63-ABD第2のループ
■ヒトCD81-ABD第2のループ
■ヒトCD9-ABD第2のループ
■ヒトCD63-ABD第2のループ
■マウスCD9-ABDx2(両方のループ)
■ヒトCD9-ABDx2(両方のループ)
【0170】
使用されるプロトコルは、実施例3に示されたものと同一である。要約すると、NMRIマウス、1E11 EVのIV注射、及び4.5時間後に採取された血漿である。
【0171】
図10A及びBのデータは、ABDの存在が、循環中のEVの数を有意に増加させることを示す。EVの表面上のABDの存在により、全ての構築物にわたって、血漿中の注射されたEVのパーセンテージが有意に増加した。
【0172】
実施例11:シングルパス膜貫通タンパク質を使用した追加のインビトロ及びインビボ半減期延長実験。
実施例7及び3に記載のものと同様の設計の実験を実行して、マルチパス膜貫通タンパク質ではなくシングルパス膜貫通タンパク質を利用した融合タンパク質構築物のインビトロ結合可能性及びインビボ半減期延長能力を試験した。
【0173】
使用されたプロトコルは、実施例7及び3に示されたものと同一である。シングルパス膜貫通EVタンパク質Lamp2bを使用した構築物:
-対照:Lamp2b-NanoLuc
-実薬:Lamp2b-ABD-NanoLuc
【0174】
図11A及びBは、ABDをシングルパス膜貫通タンパク質Lamp2bに操作すると、このABDがEVに結合する(インビトロアッセイ)ことを示し、図11Cは、同EVが、インビボの場合、循環時間を3~4倍有意に増加させることを示し、これは、ABD操作が、シングルパス又はマルチパス膜貫通タンパク質のいずれかを使用して循環中のEVを伸長させるための汎用性のプラットフォームであることを示す。
【0175】
実施例12:追加の腫瘍/リンパ節蓄積実験
実施例5及び実施例6に示される、ABD EVが腫瘍及びリンパ節に蓄積するという証拠を受けて、同様の追加の実験を実行して、代替の構築物、具体的にはCD63-ABD第2のループ構築物を使用して、腫瘍及びリンパ節への蓄積を試験した。
【0176】
図12のデータは、EVの表面上のABDの存在が、対照群と比較して、腫瘍(A)及びリンパ節(B)におけるEVの蓄積を有意に増加させたことを示す。
【0177】
このデータもまた、ABDの存在が、したがって、EVの生体内分布を変化させるのに有益であり、EVが腫瘍及びリンパ節内に蓄積することを可能にすることを示す。重要なことに、このデータは、表面上でのABDの存在が、異なる設計を有する異なる構築物にわたって広く有効であることを示す。前述のように、腫瘍を標的とする能力は、EVに小腫瘍性分子、抗がん抗体、又は抗がんサイレンシングRNAなどの治療用カーゴを装填することを伴い得る、EV治療薬によるがんの治療において特に有用である。代替的又は追加的に、治療用EVは、免疫療法によってがんに対する免疫応答を上昇させるために使用されるネオ抗原を含み得る。更に、腫瘍標的化部分のEVへの添加は、ABD EVの腫瘍蓄積を更に増加させるであろう。
【0178】
実施例13:異なる投与経路による送達後の血漿中での半減期。
異なる投与経路を介して投与されたときに半減期を延長するABD EVの可能性を評価するために、別の実験を実行した。静脈内(IV)、皮下(SC)、又は腹腔内(IP)投与経路によってEVを送達したことを除いて、融合タンパク質CD63-ABD-第2のループ-nanoLucを発現するEVを、実施例7に記載されるのと同じインビボプロトコルを使用してCD63-nanolucのみを発現する対照EVと比較した。
【0179】
図13A~Cは、ABDの存在が、投与経路に関係なく、対照と比較してEVのインビボ血漿レベルを増加させることを示す。
【0180】
実施例14:IV送達後の代替細胞供給源からのEVの血漿中での半減期。
実施例3に記載されるプロトコルと同様の別のインビボ半減期延長実験を行ったが、今回は、CAP細胞(羊膜上皮細胞)に由来するEVを用いた。
【0181】
図14は、マウスCD63-ABD第2のループを発現するCAP由来EVを試験する実験からの結果を示す。図14A及びBは、上述のデータと同様に、表面上にABDを発現するCAP供給源細胞に由来するEVが、対照EVよりも高いレベルで血漿中に存在することを示し、これは、ABD EVの半減期がより長いことを示している。これは、EVへのABDの操作の効果が、異なる供給源細胞に由来するEVに広く適用可能であることを示す。
【0182】
また、実施例4に記載されるものと同様の生体内分布実験を、CAP由来のEVについて実行し、HEK由来のEVについて示されるデータ(データには示さず)と同様に、脳、リンパ節、及び腫瘍内に優先的に蓄積することを実証した。
【0183】
実施例15:勾配分離及び広視野顕微鏡検査
勾配分離を実行して、表面上にABDを発現するEVへのアルブミンの結合を評価した。試験した融合構築物は、以下の通りである。
-mCD63-Nluc(濃度:1.37×1012個の粒子/ml)
-mCD63-ABD-第2のループNluc(濃度:6.5×1011個の粒子/ml)
【0184】
異なる又は両方のCD63ループに融合されたアルブミン結合ドメインを有するHEK EVを、80μg/mlのヒト血清アルブミン(Alexa Fluor488で標識)及びAlexa Fluor647で標識したテトルスパニン(tetrspanin)抗体(CD9、CD63及びCD81、1:100)の混合物とともに、4℃、5μlで一晩インキュベートした。翌日、EVをOptiprep勾配超遠心分離によって分離し、300μlの画分を収集し、各画分からの100μlをDOTBLOT分析に使用し、3つの後続の画分からの50μlをプールし、イメージング(広視野及びdSTORM)に使用した。
【0185】
図15Aは、プールされた画分の画像を示す。これは、EVの表面上にABDが存在しない場合、HSA染色(上部パネル)がEV画分(CD9/63/81で染色した下部パネル)と重複しないことを示し、これは、ABDが存在しない場合、HSAがEVに会合しておらず、HSAが凝集画分のみに存在することを示している。
【0186】
図15Bは、EVの表面上にABDが存在する場合、画分10~24においてHSA染色(上部パネル)がEV(CD9/63/81で染色した下部パネル)と重複することが観察され、これは、ABDの存在下で、HSAがEV画分と会合していることを示している。
【0187】
図15C及びDは、図15BからのmCD63-ABD第2のループ-Nluc EVの広視野顕微鏡検査によって、HSA標識がEVマーカーCD9、CD63及びCD81と重複することを示す。これもまた、HSAがABD EVの表面上に存在することを裏付けている。
【0188】
実施例16-ドット-ブロットによるABD結合アッセイのためのインビボ。
アルブミンがインビトロでABD EVに結合することが見出されたことを確認した後、インビボ実験を行って、EVの表面上にABDが存在することにより、EVが循環に注入された後にアルブミンが結合され、ひいてはそれらEVの半減期が延長されるかどうかを評価した。
【0189】
マウスに、mCD63-ABD-第2のループNluc HEK EV又はmCD63-Nluc(ABDを含まない対照)を注入した。注入から10分後に血清を採取し、サイズ排除カラム(qEV)で精製してEVを単離した。次いで、2.5×1010個のEVを、抗体抗マウス血清アルブミン(FITCで標識)、及びAlexa Fluor647で標識したテトラスパニン抗体(ヒト特異的CD9、CD63及びCD81、1:100)の混合物とともに、4℃で一晩インキュベートした。翌日、EVをOptiprep勾配超遠心分離によって分離し、300μlの画分を収集し、各画分からの100μlをDOTBLOT分析に使用し、3つの後続の画分からの50μlを引っ張り、イメージング(広視野)に使用した。
【0190】
図16は、DOTBLOTデータの定量を示す。このグラフは、対照EVよりも多くのABD EVが血清から採取されることを示し、また、表面上に存在するABDが、EVの表面にアルブミンを引き付け、それらEVの血漿半減期を延長することを示している。
【0191】
実施例17-Dot-Blotによるインビトロ結合アッセイ。
実施例16及び図16のデータを受けて、次いで、更なるインビトロ結合実験を実行し、ABDが異なる融合構築物の一部としてEVの表面上に発現されるときのHSAのABDへの結合を評価した。
【0192】
以下の融合構築物を含むEVを試験した:
-hCD81-ABD-第1のループ-Nluc
-hCD81-ABD-第2のループ-Nluc
-hCD81-ABD-2x-Nluc(ABDは両方のループに存在する)
-hCD81-ABD-Nluc
-hCD9-ABD-第1のループ-Nluc
-hCD9-ABD-第2のループ-Nluc
-hCD9-ABD-2x-Nluc(ABDは両方のループに存在する)
-hCD9-ABD-Nluc
-mCD63-ABD-第2のループ-Tluc
-mCD63-Tluc
-Lamp2b-ABD-Nluc
-Lamp2b-Nluc
【0193】
この実験を、上記で詳細に説明した構築物を発現する4e10HEK EVを、80μg/mlのヒト血清アルブミン(Alexa Fluor488で標識)及びテトラスパニン抗体の混合物とともに4℃で一晩インキュベートすることによって実行した。翌日、EVをOptiprep勾配超遠心分離によって分離し、300μlの画分を収集し、各画分からの100μlをDOTBLOT分析に使用し、3つの後続の画分からの50μlを引っ張り、Alexa Fluor64で標識したイメージング(広視野及びdSTORM)ダイ(CD9、CD63及びCD81、1:100)に使用した。
【0194】
図17Aは、CD81構築物のドットブロットの定量を示す。
【0195】
図17Bは、CD9構築物のドットブロットの定量を示す。
【0196】
図17Cは、CD63構築物のドットブロットの定量を示す。
【0197】
図17Dは、Lamb2b構築物のドットブロットの定量を示す。
【0198】
図17のデータは、HSAレベルが、ABDが存在する全ての試料において大幅に増加することを示す。これは、EVの表面上にABDが存在することにより、EVがアルブミンに結合し、処理後にそのアルブミンを表面上に保持できることを示し、これは、EVの表面上のABDへのアルブミン結合の強度が比較的強いことを示している。注目すべきことに、この効果は、a)ABDが融合されたEVタンパク質の種類(マルチパス膜貫通若しくはシングルパス膜貫通)、又はb)ABDの位置(テトラスパニンの第1のループ、第2のループ、又は両方のループ)とは無関係である。
【0199】
実施例18:ABDは貯蔵中のEVの安定性を高める
上記の実施例から示されるように、EVの表面上のABDの存在が、EVの安定性、ひいては半減期をインビボで増加させることができる。したがって、EVの表面上のABDの存在は、貯蔵中のEVの安定性を改善することができることも予測される。EVの貯蔵緩衝液にアルブミンを添加すると、EVがアルブミンに結合し、アルブミンの保護シールドにコーティングされることになる。そのような保護シールドは、凍結解凍サイクルによって引き起こされる損傷からEVを保護し、したがって、インビボでの半減期を改善することに加えて、製剤の安定性を改善すると考えられている。この安定性は、EVの薬学的組成物の貯蔵寿命を延ばし、貯蔵中により長期間生物活性を保持するより堅牢な汎用性の産物を作製するため、有利である。
【0200】
ABD-EVは、バイオリアクタ内で培養されたEV産生遺伝子操作及び不死化細胞株から得られる。EVを含有するCMをバイオリアクタから採取する。次いで、EVを、遠心分離によってCMから単離して、細胞及び細胞残屑を除去し、その後、濾過して、任意の大きな粒子を除去する。次いで、濾過したCMを、TFFシステムを使用して中空繊維フィルタを通して実行し、ダイアフィルトレーション後に濃縮する。次いで、EVを、アルブミンを含む製剤緩衝液と組み合わせ、次いで、この製剤を、a)一定期間(異なる温度(-80℃、-20℃、4℃)で最大30週間)貯蔵するか、又はb)凍結解凍サイクルの繰り返しに供する。
【0201】
次いで、異なる温度での長期間の貯蔵、及び凍結解凍サイクルの繰り返しに続いて、EV集団の品質及び堅牢性を試験する。EV数は、ナノ粒子トラッキング解析(NTA)を用いて試験する。EVの品質は、いくつかの技術を使用して測定される:
i)貯蔵/ストレス試験の前後のRNA含有量を比較することにより、
ii)EVを、GFP又はnanolucなどの蛍光標識でタグ付けし、蛍光/生物発光のレベルを、分光計(SpectraMax)による貯蔵/ストレス試験の前後に分析する、及び
iii)カーゴを装填したEVを使用して、EVの治療機能を、貯蔵/ストレス試験の前後に試験し、その効果をインビボで観察することができる。例えば、スプライススイッチングカーゴRNAをEVに添加してもよい。これらのEVが、スプライススイッチングオリゴの存在下でスイッチングするレポーターを含む細胞に添加されるとき、EVに装填されたカーゴの有効性が測定可能である。あるいは、TNFアルファ誘引(decoying)受容体を表示するように遺伝子修飾されたEVなどの、表面上にデコイリガンドを発現するEVは、炎症のモデルとしてNF-κB-ルシフェラーゼレポーター遺伝子を発現するように遺伝子修飾されているNF-κBレポーター細胞モデルにおいて試験してもよい。次いで、TNFアルファ誘引受容体を含むEVの抗炎症活性を、貯蔵/ストレス試験の前後に測定することができる。更に、Creを担持するABD-EVを使用して、貯蔵/ストレス試験の前後に、レシピエント細胞内のCre-Loxレポーターを使用して、Creの機能を試験することもできる。
【0202】
実施例19:ABD EVの精製
また、アルブミンに対するABDの結合親和性により、アフィニティークロマトグラフィーを使用して本発明のABD EVを精製することが可能になることが予測される。精製ステップは、(i)ABD EVを含む培地を、アルブミン又はその断片若しくはドメインを含むクロマトグラフィーマトリックスと接触させることと、(ii)本発明のABD EVがアルブミン又はその断片/ドメインに吸着することを可能にすることと、(iii)アルブミン又はその断片若しくはドメインからABD EVを放出する媒体をクロマトグラフィーマトリックスに通すことによってABD EVを溶出することと、を含む。
【0203】
ABD EVは、中空繊維バイオリアクタ内で成長させた遺伝子操作EV産生細胞株から収集されたCMから得られる。分泌されたEVは、表面上に存在するABDを含む。バイオリアクタから得られたCMを、クロマトグラフィーシステムに接続されたカラムに装填する。クロマトグラフィーマトリックスは、表面に結合したアルブミンを含む。カラム平衡化のための流速設定、試料装填、及び適切なカラム清浄化の手順は、製造元の説明書に従って選択される。ABD EVを含む培地は、クロマトグラフィーカラムに装填され、ABD EVは、アルブミンを含むマトリックスに結合する。溶出緩衝液は、溶液のpHを変化させることによって、カラムからABD EVを溶出するように選択される。次いで、試料を、フローサイトメトリー、電子顕微鏡、及び生物活性アッセイを使用して、更なる下流分析のために、-80℃で収集し、貯蔵する。
【0204】
EVを捕捉するプロセス及びEVを放出するプロセスの両方を複数回繰り返す。溶出ステップは、アルブミン-ABD結合を好適なpHを有する培地に曝露することによって、アルブミン又はその断片/ドメインからのEVの放出を誘発することを含む。これは、EV含有培地(すなわち、液相)を、静止相として、それに付着したアルブミン又はその断片/ドメインを有するクロマトグラフィーマトリックスを含むクロマトグラフィーカラムを通して実行し、EVのABDポリペプチドを、マトリックス上に存在するアルブミン又はその断片/ドメインに吸着させ、次いで、好適なpHを有する溶液をクロマトグラフィーカラムを通して実行することによって達成される。カラムからのEVの放出を誘発することを意図する溶液のpHは、pH8未満、pH7未満、又はpH6未満であってもよい。
【0205】
配列表
ABDのアミノ酸配列
配列番号1 ABD001(WT)
SDYYKNLINNAKTVEGVKALIDEILAALP
配列番号2 ABD011
SDYYKNIINRAKTVEGVRALKLHILAALP
配列番号3 ABD013
SDYYKNLINKAKTVEGVEALTLHILAALP
配列番号4 ABD035
SDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALP
Hisタグとともに使用される構築物のアミノ酸配列(任意選択的)。使用される構築物をコードするヌクレオチド配列識別子も、かっこ内及び配列表(参照によりその全体が組み込まれる)に提供される。
配列番号5 mCD63-Nanoluc(配列番号34及び44)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号6 mCD63-ABDX2-Nanoluc(配列番号35及び45)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHGSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPGSELMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRRTQHDEAVDANSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPRTCTSGTRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号7 mCD63-ABD第1のループ-Nanoluc(配列番号36及び46)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHGSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPGSELMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号8 mCD63-ABD第2のループ-Nanoluc(配列番号37及び47)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRRTQHDEAVDANSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPRTCTSGTRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号9 mCD63-ABDX2-Neo-Nanoluc(配列番号38)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHGSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPGSELREGVELCPGNKYEMRRHGTTHSLVIHDDSGSPFPAAVILRDALHMARGLKYLHQELMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRRTQHDEAVDANSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPRTCTSGVYDFFVWLGRGHLLGRLAAIVGKQVLLGRKVVVVRSHCHWNDLAVIPAGVVHNWDFEPRKVSCTPSKPSFQEFVDWENVSPELNSTDQPFLSGTRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号10 mCD63-ABDX2-Mut30-Nanoluc(配列番号39)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHGSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPGSELMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRRTQHDEAVDANSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPRTCTPSKPSFQEFVDWENVSPELNSTDQPFLSGTRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号11 mCD9-Nluc(配列番号40)
【化1】
配列番号12 mCD9-ABDX2-Nluc(配列番号41)
【化2】
配列番号13 mCD9-ABD第1-Nluc(配列番号42)
【化3】
配列番号14 mCD9-ABD第2-Nluc(配列番号43)
【化4】
配列番号15 mCD81-Nluc(配列番号48)
【化5】
配列番号16 mCD81-ABDX2-Nluc(配列番号49)
【化6】
配列番号17 mCD81-ABD第1-Nluc(配列番号50)
【化7】
配列番号18 mCD81-ABD第2-Nluc(配列番号51)
【化8】
配列番号19 hCD9-Nluc(配列番号52)
【化9】
配列番号20 hCD9-ABDX2-Nluc(配列番号53)
【化10】
配列番号21 hCD9-ABD第1-Nluc(配列番号54)
【化11】
配列番号22 hCD9-ABD第2-Nluc(配列番号55)
【化12】
配列番号23 hCD63-Nluc(配列番号56)
【化13】
配列番号24 hCD63-ABDX2-Nluc(配列番号57)
【化14】
配列番号25 hCD63-ABD第1-Nluc(配列番号58)
【化15】
配列番号26 hCD63-ABD第2-Nluc(配列番号59)
【化16】
配列番号27 hCD63-RC第2-Nluc(配列番号60)
【化17】
配列番号28 hCD81-Nluc(配列番号61)
【化18】
配列番号29 hCD81-ABDX2-Nluc(配列番号62)
【化19】
配列番号30 hCD81-ABD第1-Nluc(配列番号63)
【化20】
配列番号31 hCD81-ABD第2-Nluc(配列番号64)
【化21】
配列番号32 Lamp2B-Nluc(配列番号65)
【化22】
配列番号33 Lamp2B-ABD-Nluc(配列番号66)
【化23】
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9-1】
図9-2】
図9-3】
図10
図11-1】
図11-2】
図12
図13-1】
図13-2】
図14
図15-1】
図15-2】
図16
図17-1】
図17-2】
図18
【配列表】
2023532701000001.app
【手続補正書】
【提出日】2023-02-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0038】
本発明によるリンカーは、融合ポリペプチド構築物の柔軟性の増加を提供し、薬物動態(PK)を改善し、発現を増加させ、生物学的活性を改善する上で有用であり、かつ、対応するポリヌクレオチド構築物にも有用であり、また、立体障害の回避及び融合ポリペプチドの機能維持を確実にするためにも使用され得る。本発明による例示的なリンカーとしては、(GGGGS)(n=1、2、4)又は(Gly)6,(Gly)8,などの安定性又は柔軟性を増加させるグリシン又はセリンリンカー、(EAAAK)n(n=1~3、及びA(EAAAK)4ALEA(EAAAK)4Aなどの強固なリンカー、屈曲リンカー(XP)、又はジスルフィド、プロテアーゼ感受性配列などの切断可能なリンカーが挙げられる。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
本発明はまた、小分子カーゴを装填するABD EVにも関する。「小分子」、「小分子カーゴ」、「小分子薬物」、及び「小分子治療薬」という用語は、本明細書において互換的に使用され、疾患及び/若しくは障害の治療、予防並びに/又は診断に使用され得る任意の分子剤に関すると理解され得る。小分子剤は、通常、化学合成手段を介して合成されるが、例えば天然源からの精製を介した天然由来のものであってもよく、又は任意の他の好適な手段若しくは技術の組み合わせにより得られてもよい。「小分子」の簡単な定義は、生物学的プロセスを調節するのに役立ち得る、900g/mol未満の分子量(ダルトン)を有する任意の有機化合物である。本発明の目的のために、小分子は、900g/molより実質的に大きくてもよく、例えば、1500g/mol、3000g/mol、又は場合によっては更に大きくてもよい。多くの小分子は良好な経口バイオアベイラビリティを示すが、多くの小分子薬物は、薬物動態、薬力学的、毒性及び/又は安定性の理由から、静脈内投与又は何らかの他の投与経路を介して投与される必要がある。小分子の例としては、ドキソルビシン、メトトレキサート、5-フルオロウラシルなどの抗がん剤、又はシトシンアラビノシドなどの他のヌクレオシド類似体、ボルテゾミブなどのプロテアソーム阻害剤、又はイマチニブ若しくはセリシクリブなどのキナーゼ阻害剤、又はナプロキセン、アスピリン、若しくはセレコキシブなどの非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、ヘシリンなどの抗生物質、又はエナラプリルなどのアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤などの抗高血圧剤、カンデサルタンなどのARBなどが挙げられる。本発明は、当業者には明らかであろうが、本発明の要旨から逸脱することなく、当然、他の小分子にも適用可能である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0135
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0135】
ABD EVの捕捉に使用するためのクロマトグラフィーマトリックスは、静止クロマトグラフィー相として好適な本質的に任意の種類の材料から構成され得る。非限定的な例としては、アガロース、デキストラン、レクチン、ヘパリン、セルロース、デンプン、寒天、アガロース、ポリ(メタ)アクリレート、ポリアクリルアミド、ポリスルホン、ポリビニルポリマー、ポリスチレン、シリカ、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化チタン、多糖-鉱物構造、多糖-合成ポリマー、合成ポリマー-鉱物構造、又はそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上が挙げられる。マトリックスは、ビーズ、繊維、不規則な形状の粒子、膜、平坦な構造、多孔質鉱物材料、又は本質的に任意の種類の好適な静止相の形態であり得る。当然ながら、マトリックスに結合したアルブミン又はその断片/ドメインは、化学結合及びリンカーを使用して様々な表面に直接結合してもよい。これは、例えば表面プラズモン共鳴などの方法に特に有用であり得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0169
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0169】
実施例10:追加のインビボ半減期延長実験
実施例3に示される実験が成功した後、追加の構築物をインビボで試験して、様々な異なるEVタンパク質及び異なるループ内に位置するABDと組み合わせたABDの効果を評価した。試験された構築物は次の通りである。
■マウスCD81-ABD第2のループ
■マウスCD9-ABD第2のループ
■マウスCD63-ABD第2のループ
■ヒトCD81-ABD第2のループ
■ヒトCD9-ABD第2のループ
■ヒトCD63-ABD第2のループ
■マウスCD9-ABDx2(両方のループ)
■ヒトCD9-ABDx2(両方のループ)
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0205
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0205】
配列表
ABDのアミノ酸配列
配列番号1 ABD001(WT)
SDYYKNLINNAKTVEGVKALIDEILAALP
配列番号2 ABD011
SDYYKNIINRAKTVEGVRALKLHILAALP
配列番号3 ABD013
SDYYKNLINKAKTVEGVEALTLHILAALP
配列番号4 ABD035
SDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALP
Hisタグとともに使用される構築物のアミノ酸配列(任意選択的)。使用される構築物をコードするヌクレオチド配列識別子も、かっこ内及び配列表(参照によりその全体が組み込まれる)に提供される。
配列番号5 mCD63-Nanoluc(配列番号34及び44)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号6 mCD63-ABDX2-Nanoluc(配列番号35及び45)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHGSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPGSELMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRRTQHDEAVDANSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPRTCTSGTRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号7 mCD63-ABD第1のループ-Nanoluc(配列番号36及び46)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHGSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPGSELMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号8 mCD63-ABD第2のループ-Nanoluc(配列番号37及び47)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRRTQHDEAVDANSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPRTCTSGTRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号9 mCD63-ABDX2-Neo-Nanoluc(配列番号38)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHGSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPGSELREGVELCPGNKYEMRRHGTTHSLVIHDDSGSPFPAAVILRDALHMARGLKYLHQELMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRRTQHDEAVDANSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPRTCTSGVYDFFVWLGRGHLLGRLAAIVGKQVLLGRKVVVVRSHCHWNDLAVIPAGVVHNWDFEPRKVSCTPSKPSFQEFVDWENVSPELNSTDQPFLSGTRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号10 mCD63-ABDX2-Mut30-Nanoluc(配列番号39)
MAVEGGMKCVKFLLYVLLLAFCACAVGLIAIGVAVQVVLKQAMHGSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPGSELMHITHETTAGSLLPVVIIAVGAFLFLVAFVGCCGACKENYCLMITFAIFLSLIMLVEVAVAIAGYVFRDQVKSEFNKSFQQQMQNYLKDNKTATILDKLQKENNCCGATRRTQHDEAVDANSLAEAKVLANRELDKYGVSDFYKRLINKAKTVEGVEALKLHILAALPRTCTPSKPSFQEFVDWENVSPELNSTDQPFLSGTRSNYTDWENIPGMAKDRVPDSCCINITVGCGNDFKESTIHTQGCVETIAIWLRKNILLVAAAALGIAFVEVLGIIFSCCLVKSIRSGYEVMGSGSGSGSGSVFTLEDFVGDWRQTAGYNLDQVLEQGGVSSLFQNLGVSVTPIQRIVLSGENGLKIDIHVIIPYEGLSGDQMGQIEKIFKVVYPVDDHHFKVILHYGTLVIDGVTPNMIDYFGRPYEGIAVFDGKKITVTGTLWNGNKIIDERLINPDGSLLFRVTINGVTGWRLCERILAHHHHHH*
配列番号11 mCD9-Nluc(配列番号40)
【化1】
配列番号12 mCD9-ABDX2-Nluc(配列番号41)
【化2】
配列番号13 mCD9-ABD第1-Nluc(配列番号42)
【化3】
配列番号14 mCD9-ABD第2-Nluc(配列番号43)
【化4】
配列番号15 mCD81-Nluc(配列番号48)
【化5】
配列番号16 mCD81-ABDX2-Nluc(配列番号49)
【化6】
配列番号17 mCD81-ABD第1-Nluc(配列番号50)
【化7】
配列番号18 mCD81-ABD第2-Nluc(配列番号51)
【化8】
配列番号19 hCD9-Nluc(配列番号52)
【化9】
配列番号20 hCD9-ABDX2-Nluc(配列番号53)
【化10】
配列番号21 hCD9-ABD第1-Nluc(配列番号54)
【化11】
配列番号22 hCD9-ABD第2-Nluc(配列番号55)
【化12】
配列番号23 hCD63-Nluc(配列番号56)
【化13】
配列番号24 hCD63-ABDX2-Nluc(配列番号57)
【化14】
配列番号25 hCD63-ABD第1-Nluc(配列番号58)
【化15】
配列番号26 hCD63-ABD第2-Nluc(配列番号59)
【化16】
配列番号27 hCD63-RC第2-Nluc(配列番号60)
【化17】
配列番号28 hCD81-Nluc(配列番号61)
【化18】
配列番号29 hCD81-ABDX2-Nluc(配列番号62)
【化19】
配列番号30 hCD81-ABD第1-Nluc(配列番号63)
【化20】
配列番号31 hCD81-ABD第2-Nluc(配列番号64)
【化21】
配列番号32 Lamp2B-Nluc(配列番号65)
【化22】
配列番号33 Lamp2B-ABD-Nluc(配列番号66)
【化23】
【国際調査報告】