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特表2023-532702蚊媒介疾患を防除するための相乗的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】蚊媒介疾患を防除するための相乗的組成物
(51)【国際特許分類】
   A01N 47/40 20060101AFI20230724BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20230724BHJP
   A01N 51/00 20060101ALI20230724BHJP
   A01N 37/46 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
A01N47/40 Z
A01P7/04
A01N51/00
A01N37/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580971
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-02-24
(86)【国際出願番号】 EP2021067833
(87)【国際公開番号】W WO2022002928
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】20183036.1
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513324723
【氏名又は名称】ウニヴェルシテ・ダンジェ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】マリヌ・エル・アドウジ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェロニク・アパイル-マルシェ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァレリー・レイモン
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノ・ラピド
【テーマコード(参考)】
4H011
【Fターム(参考)】
4H011AC02
4H011BB06
4H011BB10
4H011BB11
4H011DA13
4H011DD01
(57)【要約】
本発明は、二成分及び三成分相乗的組合せ、並びにこのような相乗的組合せを含有する蚊殺虫剤及び蚊殺幼虫剤に関する。本発明はまた、蚊媒介疾患、例えば、マラリア、デング熱、ジカ熱、チクングニア熱及び黄熱病の防除における蚊殺虫剤及び蚊殺幼虫剤の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チアクロプリド及びチアメトキサムからなる二成分相乗的組合せを含む、又はチアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535からなる三成分相乗的組合せを含む、蚊殺虫剤。
【請求項2】
前記蚊殺虫剤が、蚊殺成虫剤である、請求項1に記載の蚊殺虫剤。
【請求項3】
前記蚊殺虫剤が、蚊殺幼虫剤である、請求項1に記載の蚊殺虫剤。
【請求項4】
チアクロプリド及びチアメトキサムの相乗的二成分混合物において、チアクロプリドとチアメトキサムとの間のモル比が、約0.01:1~約1:0.01の間、好ましくは約0.1:1~約1:0.1の間に含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の蚊殺虫剤。
【請求項5】
チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535の相乗的三成分混合物において、IR3535とチアクロプリド及びチアメトキサムの混合物との間のモル比が、約0.005:1~約0.1:1の間、より好ましくは約0.01:1~約0.1:1の間に含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の蚊殺虫剤。
【請求項6】
チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535の相乗的三成分混合物において、チアクロプリドとチアメトキサムとの間のモル比が、約0.01:1~約1:0.01の間、好ましくは約0.1:1~約1:0.1の間に含まれる、請求項5に記載の蚊殺虫剤。
【請求項7】
チアクロプリド及びチアメトキサムの二成分相乗的組合せを含む前記蚊殺虫剤において、チアクロプリド及びチアメトキサムの各々の濃度が、約10-9M~約10-5Mの間、好ましくは約5.10-8M~約5.10-6Mの間に含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の蚊殺虫剤。
【請求項8】
チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535のインビトロ三成分相乗的混合物を含む前記蚊殺虫剤において、IR3535の濃度が、約5.10-12~約5.10-9Mの間、好ましくは約10-11M~約5.10-10Mの間に含まれ、チアクロプリド及びチアメトキサムの各々の濃度が、約10-9M~約10-5Mの間、好ましくは約5.10-8M~約5.10-6Mの間に含まれる、請求項1から3のいずれか一項に記載の蚊殺虫剤。
【請求項9】
チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535のインビボ三成分相乗的混合物を含む前記蚊殺虫剤において、IR3535の濃度が、100mg/L(4.6.10-4M)であり、チアクロプリドの濃度が、0.01mg/L(4.10-8M)以下であり、チアメトキサムの濃度が、0.02mg/L(6.9.10-8M)又は0.01mg/L(3.4.10-8M)以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の蚊殺虫剤。
【請求項10】
少なくとも1種の追加の生物活性剤を更に含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の蚊殺虫剤。
【請求項11】
蚊の侵襲を防止又は阻害するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の蚊殺虫剤の使用。
【請求項12】
前記蚊が、殺虫剤抵抗性である、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
前記蚊が、有機リン殺虫剤、カルバメート殺虫剤、及びピレスロイド殺虫剤からなる群から選択される少なくとも1種の殺虫剤に抵抗性である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
蚊媒介疾患を防除するための、請求項1から10のいずれか一項に記載の蚊殺虫剤の使用であって、前記蚊媒介疾患が、ウイルス、線虫、原虫、及び細菌からなる群から選択される病原体に感染した蚊によって伝播される、使用。
【請求項15】
前記蚊媒介疾患が、哺乳動物宿主、特にヒトに伝播される、請求項14に記載の使用。
【請求項16】
前記蚊媒介疾患が、ジカウイルス感染症、デング熱感染症、黄熱病、チクングニア熱、ウエストナイルウイルス感染症、セントルイス脳炎、デング熱及びマラリアからなる群から選択される、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記蚊が、アエデス属、アノフェレス属、クレクス属、クリセタ属及びマンソニア属からなる群から選択される属に属する、請求項11から16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記蚊が、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、アエデス・アウストラリス、アエデス・カンタトル、アエデス・シネレウス、アエデス・ポリネシエンシス、アエデス・ルスチクス、アエデス・タエニオルヒンチュス、アエデス・ベクサンス、アノフェレス属種:アノフェレス・アルビマヌス、アノフェレス・アラビエンシス、アノフェレス・アトロパルブス、アノフェレス・バイマイイ、アノフェレス・バラバセンシス、アノフェレス・バルベリ、アノフェレス・ベラトール、アノフェレス・クルジ、アノフェレス・クリキファキエス、アノフェレス・ダーリンギ、アノフェレス・ディルス、アノフェレス・エアルレイ、アノフェレス・ファラウチ、アノフェレス・フリーボルニ、アノフェレス・フネスツス、アノフェレス・ガンビエ、アノフェレス・イントロラツス、アノフェレス・ラテンス、アノフェレス・ロイコスフィルス、アノフェレス・マクラツス、アノフェレス・ミニムス、アノフェレス・ムーシェティ、アノフェレス・ニリ、アノフェレス・プンクチペニス、アノフェレス・プンクツラツス、アノフェレス・シュードプンクチペニス、アノフェレス・クアドリマクラツス、アノフェレス・セルゲンティ、シナハマダラカ、アノフェレス・ステフェンシ、アノフェレス・スブピクツス、アノフェレス・スンダイクス、アノフェレス・ワルケリ、クレクス・アンヌリロストリス、クレクス・アンテナツス、クレクス・ジェンセニ、アカイエカ、クレクス・プシルス、ネッタイイエカ、クレクス・ラージャ、クレクス・レスツアンス、クレクス・サリナリウス、クレクス・タルサリス、クレクス・テリタンス、クレクス・タイレリイ、コガタアカイエカ、クリセタ・インシデンス、クリセタ・インパチェンス、クリセタ・イノルナタ、クリセタ・パルチセプス、マンソニア・アヌリフェラ、マンソニア・ボネアエ、マンソニア・ディベス、マンソニア・インディアナ、アシマダラヌマカからなる群から選択される種に属する、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記蚊が、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、ネッタイイエカ、アカイエカ、クレクス・タルサリスからなる群から選択される種に属する、請求項17に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、全体が参照により本明細書に組み込まれる、2020年6月30日に出願された欧州特許出願第20 183 036.1号の優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
蚊媒介疾患(Mosquito-borne diseases)は、蚊によって伝播される細菌、ウイルス又は寄生生物によって引き起こされる医学的状態である。毎年ほぼ7億人が蚊媒介疾患になり、100万超の死をもたらしている(アメリカ疾病予防管理センター)。よって、蚊は、地球上で最も致命的な生き物の1つであると考えられている。2016年に、マラリアの症例だけで2億1600万件に達し、推定445000の死をもたらした(世界保健機関(WHO)-World Malaria Report 2017)。近年、感染率が劇的に上昇している。世界中のデング熱の発生率は、過去30年で30倍上昇し、より多くの国が、この疾患の最初の大流行を報告している。2016年にアメリカ大陸のほぼ全ての国に広がったので、蚊媒介ジカウイルスは、WHOによって国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態を宣言され、「異常事態」と呼ばれた。ジカ熱、デング熱、チクングニア熱、及び黄熱病は全て、単一蚊種、ネッタイシマカ(Aedes aegypti)によってヒトに伝播され;世界の人口の半数超が、この蚊種が存在する地域に住んでいる。更に、現在、ますます多くの科学者が、地球温暖化が世界中で蚊媒介疾患の爆発的な増加につながることを懸念している。
【0003】
ベクター媒介疾患、例えばマラリア、デング熱、チクングニア熱及びジカ熱の出現/再出現のこの公衆衛生の状況においては、保健当局、例えばWHOが、感染のリスクを低下させるための新たな戦略を探している。これらの戦略には、ワクチンも処置もない、これらの通常重篤な病態のベクターである蚊との接触を制限すること、住宅内及び住宅外用途において主に化学物質を使用すること、並びに/又は様々な織物、例えば衣服及び蚊帳を処理することが含まれる。
【0004】
今日、疾患ベクター防除(control)の一部として、ほとんどの織物、例えば蚊帳が、例えば殺虫作用と忌避作用の両方を有する、ピレスロイド系殺虫剤を含浸されている。残念ながら、蚊集団におけるこれらの殺虫剤に対する抵抗性の出現は、それらの有効性、したがって、それらの使用に疑問を呈している。実際、殺虫剤に対する感受性の遺伝的な減少として定義される、蚊の抵抗性は、自然選択プロセスによる、殺虫剤の存在によって作り出される新たな環境への適応の形態に対応する。疾患ベクター防除の状況で行われる処理に加えて、蚊は農業及び家庭使用から生じる殺虫剤圧力にもさらされて、ベクター集団における抵抗性遺伝子の現れ及び伝播を加速し、処理有効性の喪失をもたらす。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】World Malaria Report 2017
【非特許文献2】Killeenら、Malaria J.、2002、1:8
【非特許文献3】「Pesticide Formulation and Adjuvant Technology」、Chesterら、1996、CRC Press、Boca Raton
【非特許文献4】「The Pesticide Book」、Ware、2000、第5版、Thomson Publications、Fresno、CA
【非特許文献5】Raymondら、Curr. Med. Chem.、2017、24:2974~2987頁
【非特許文献6】Abbott、 J. Econom. Entomol.、1925、18:265~267頁
【非特許文献7】Perrierら、Communications Biology、2021、4:665頁
【非特許文献8】Moreauら、Scientific Reports、2020、10(1):1~15頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、当技術分野には、蚊媒介疾患のベクター防除のための新たな戦略の継続的な必要性が依然として残っている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の概要
本出願人らは、2種のネオニコチノイド、チアクロプリド及びチアメトキサムを含む二成分組合せ、並びに忌避剤IR3535と2種のネオニコチノイド、チアクロプリド及びチアメトキサムを含む三成分組合せの相乗効果を明らかにした。本出願人らは、相乗的組合せが、蚊に対する、特に蚊幼虫に対する有意な殺虫活性を有することを示した。ネオニコチノイド分子は、蚊に対して単独で使用されたことがなく、結果として、蚊は、これらの分子に対する公知の抵抗性を発達させていない。ネオニコチノイド系で直接処理されたことがない抵抗性蚊は、この殺虫剤ファミリーに対して抵抗性ではないので、これは重要である。したがって、提案される戦略を、現在、従来の殺虫剤、例えばピレスロイド、有機リン及びカルバメートに抵抗性であり、利用可能な防除手段が無効になってきている蚊に対して、特に、蚊幼虫に対して使用することができる。
【0008】
したがって、一態様では、本発明は、チアクロプリド及びチアメトキサムからなる二成分相乗的組合せを含む、又はチアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535からなる三成分相乗的組合せを含む、蚊殺虫剤を提供する。
【0009】
ある特定の実施形態では、蚊殺虫剤が蚊殺成虫剤である。
【0010】
他の実施形態では、蚊殺虫剤が蚊殺幼虫剤である。
【0011】
ある特定の実施形態では、チアクロプリド及びチアメトキサムの相乗的二成分混合物において、チアクロプリドとチアメトキサムとの間のモル比が、約0.01:1~約1:0.01の間、好ましくは約0.1:1~約1:0.1の間に含まれる。
【0012】
ある特定の実施形態では、チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535の相乗的三成分混合物において、IR3535とチアクロプリド及びチアメトキサムの混合物との間のモル比が、約0.005:1~約0.1:1の間、より好ましくは約0.01:1~約0.1:1の間に含まれる。例えば、チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535の相乗的三成分混合物において、チアクロプリドとチアメトキサムとの間のモル比は、約0.01:1~約1:0.01の間、好ましくは約0.1:1~約1:0.1の間に含まれ得る。
【0013】
ある特定の実施形態では、チアクロプリド及びチアメトキサムの二成分相乗的組合せを含む蚊殺虫剤において、チアクロプリド及びチアメトキサムの各々の濃度が、約10-9M~約10-5Mの間、好ましくは約5.10-8M~約5.10-6Mの間に含まれる。
【0014】
ある特定の実施形態では、チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535のインビトロ三成分相乗的混合物を含む蚊殺虫剤において、IR3535の濃度が、約5.10-12M~約5.10-9Mの間、好ましくは約10-11M~約5.10-10Mの間に含まれ、チアクロプリド及びチアメトキサムの各々の濃度が、約10-9M~約10-5Mの間、好ましくは約5.10-8M~約5.10-6Mの間に含まれる。
【0015】
ある特定の実施形態では、チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535のインビボ三成分相乗的混合物を含む蚊殺虫剤(特に、殺幼虫剤)において、IR3535の濃度が100mg/L(4.6.10-4M)であり、チアクロプリドの濃度が0.01mg/L(4.10-8M)以下であり、チアメトキサムの濃度が0.02mg/L(6.9.10-8M)以下である。このような実施形態では、蚊殺虫剤が蚊殺幼虫剤である。好ましくは、蚊殺幼虫剤が、従来の殺虫剤に抵抗性の、特にピレスロイドに抵抗性の蚊の幼虫に対して使用されることを意図している。
【0016】
ある特定の実施形態では、チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535のインビボ三成分相乗的混合物を含む蚊殺虫剤(特に、殺幼虫剤)において、IR3535の濃度が100mg/L(4.6.10-4M)であり、チアクロプリドの濃度が0.01mg/L(4.10-8M)以下であり、チアメトキサムの濃度が0.01mg/L(3.4.10-8M)以下である。このような実施形態では、蚊殺虫剤が蚊殺幼虫剤である。好ましくは、蚊殺幼虫剤が、従来の殺虫剤に抵抗性の、特に有機リン及びカルバメートに抵抗性の蚊の幼虫に対して使用されることを意図している。
【0017】
ある特定の実施形態では、蚊殺虫剤が、少なくとも1種の追加の生物活性剤を更に含む。
【0018】
別の態様では、本発明は更に、蚊の侵襲を防止又は阻害するための本明細書に開示される蚊殺虫剤の使用に関する。
【0019】
ある特定の実施形態では、蚊が殺虫剤抵抗性である。例えば、蚊は、有機リン殺虫剤、カルバメート殺虫剤、及びピレスロイド殺虫剤からなる群から選択される少なくとも1種の殺虫剤に抵抗性であり得る。
【0020】
ある特定の実施形態では、蚊殺虫剤が、ウイルス、線虫、原虫、及び細菌からなる群から選択される病原体に感染した蚊によって伝播される蚊媒介疾患を防除するために使用される。
【0021】
ある特定の実施形態では、蚊媒介疾患が、哺乳動物宿主、特にヒトに伝播される。
【0022】
ある特定の実施形態では、蚊媒介疾患が、ジカウイルス感染症、デング熱感染症、黄熱病、チクングニア熱、ウエストナイルウイルス感染症、セントルイス脳炎、デング熱及びマラリアからなる群から選択される。
【0023】
ある特定の実施形態では、蚊が、アエデス属(Aedes)、アノフェレス属(Anopheles)、クレクス属(Culex)、クリセタ属(Culiseta)及びマンソニア属(Mansonia)からなる群から選択される属に属する。例えば、蚊は、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)、アエデス・アウストラリス(Aedes australis)、アエデス・カンタトル(Aedes cantator)、アエデス・シネレウス(Aedes cinereus)、アエデス・ポリネシエンシス(Aedes polynesiensis)、アエデス・ルスチクス(Aedes rusticus)、アエデス・タエニオルヒンチュス(Aedes taeniorhynchus)、アエデス・ベクサンス(Aedes vexans)、アノフェレス属(Anopheles)種:アノフェレス・アルビマヌス(Anopheles albimanus)、アノフェレス・アラビエンシス(Anopheles arabiensis)、アノフェレス・アトロパルブス(Anopheles atroparvus)、アノフェレス・バイマイイ(Anopheles baimaii)、アノフェレス・バラバセンシス(Anopheles balabacensis)、アノフェレス・バルベリ(Anopheles barberi)、アノフェレス・ベラトール(Anopheles Bellator)、アノフェレス・クルジ(Anopheles cruzii)、アノフェレス・クリキファキエス(Anopheles culicifacies)、アノフェレス・ダーリンギ(Anopheles darlingi)、アノフェレス・ディルス(Anopheles dirus)、アノフェレス・エアルレイ(Anopheles earlei)、アノフェレス・ファラウチ(Anopheles farauti)、アノフェレス・フリーボルニ(Anopheles freeborni)、アノフェレス・フネスツス(Anopheles funestus)、アノフェレス・ガンビエ(Anopheles gambiae)、アノフェレス・イントロラツス(Anopheles introlatus)、アノフェレス・ラテンス(Anopheles latens)、アノフェレス・ロイコスフィルス(Anopheles leucosphyrus)、アノフェレス・マクラツス(Anopheles maculatus)、アノフェレス・ミニムス(Anopheles minimus)、アノフェレス・ムーシェティ(Anopheles moucheti)、アノフェレス・ニリ(Anopheles nili)、アノフェレス・プンクチペニス(Anopheles punctipennis)、アノフェレス・プンクツラツス(Anopheles punctulatus)、アノフェレス・シュードプンクチペニス(Anopheles pseudopunctipennis)、アノフェレス・クアドリマクラツス(Anopheles quadrimaculatus)、アノフェレス・セルゲンティ(Anopheles sergentii)、シナハマダラカ(Anopheles sinensis)、アノフェレス・ステフェンシ(Anopheles stephensi)、アノフェレス・スブピクツス(Anopheles subpictus)、アノフェレス・スンダイクス(Anopheles sundaicus)、アノフェレス・ワルケリ(Anopheles walker)、クレクス・アンヌリロストリス(Culex annulirostris)、クレクス・アンテナツス(Culex antennatus)、クレクス・ジェンセニ(Culex jenseni)、アカイエカ(Culex pipiens)、クレクス・プシルス(Culex pusillus)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)、クレクス・ラージャ(Culex rajah)、クレクス・レスツアンス(Culex restuans)、クレクス・サリナリウス(Culex salinarius)、クレクス・タルサリス(Culex tarsalis)、クレクス・テリタンス(Culex territans)、クレクス・タイレリイ(Culex theileri)、コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)、クリセタ・インシデンス(Culiseta incidens)、クリセタ・インパチェンス(Culiseta impatiens、クリセタ・イノルナタ(Culiseta inornate)、クリセタ・パルチセプス(Culiseta particeps)、マンソニア・アヌリフェラ(Mansonia annulifera)、マンソニア・ボネアエ(Mansonia bonneae)、マンソニア・ディベス(Mansonia dives)、マンソニア・インディアナ(Mansonia Indiana)、アシマダラヌマカ(Mansonia uniformis)からなる群から選択される種に属し得る。
【0024】
ある特定の実施形態では、蚊が、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、ネッタイイエカ、アカイエカ、クレクス・タルサリスからなる群から選択される種に属する。
【0025】
本発明のこれらの及び他の目的、利点並びに特徴は、好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読めば、当業者に明らかになるだろう。
図面の簡単な説明
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】短期培養で維持された単離ニューロンを得るための蚊頭部用の機械的解離プロトコルの概要図である。
図2】蛍光カルシウム技術を使用した神経細胞体内の細胞内カルシウム濃度の変動の可視化を示す図である。疑似カラーは、細胞内カルシウムのレベルを示す:低い細胞内カルシウムについては青色、及びカルシウムの強力な増加については赤色。
図3】25のバッチの後期L3/初期L4期の幼虫の選別(左)及び試験される物質を含有するビーカー中の幼虫の沈着(右)を示す写真である。
図4】アノフェレス・ガンビエ蚊系統AcerKis(左)及びKis(右)から単離されたニューロンに対するチアクロプリドの効果に対する異なる濃度で試験したIR3535の相乗作用を示す比較ヒストグラムを示す図である。データは平均±S.E.M.として表される。Nは、10~20回の異なる実験で使用したニューロンの数を表す。クラスカル-ウォリス及びマン-ホイットニー検定、**p値<0.01、***p値<0.001。
図5】アノフェレス・ガンビエ蚊系統AcerKis(左)及びKis(右)から単離されたニューロンに対するチアメトキサムの効果に対する異なる濃度で試験したIR3535の相乗作用を示す比較ヒストグラムを示す図である。データは平均±S.E.M.として表される。Nは、5~33回の異なる実験で使用したニューロンの数を表す。クラスカル-ウォリス及びマン-ホイットニー検定、**p値<0.01、***p値<0.001。
図6】アノフェレス・ガンビエ蚊系統Kisから単離されたニューロンに対する会合体チアクロプリド/チアメトキサムの効果に対するIR3535の相乗作用を示す比較ヒストグラムを示す図である。データは平均±S.E.M.として表される。Nは、5~16回の異なる実験で使用したニューロンの数を表す。クラスカル-ウォリス及びマン-ホイットニー検定、*p値<0.05、**p値<0.01。
図7】アノフェレス・ガンビエ系統AcerKis及び系統Kisの幼虫の死亡率に対するチアクロプリドの効果に対する異なる濃度で試験したIR3535の相乗作用を示す比較ヒストグラムを示す図である。データは平均±S.E.M.として表される。Nは、100の個体の1~6回の間の反復である。
図8】アノフェレス・ガンビエ系統AcerKisの幼虫の、24時間で観察された、死亡率に対する、組み合わせた2種のネオニコチノイド、チアクロプリド及びチアメトキサムの相乗効果を示す比較ヒストグラムを示す図である。データは平均±S.E.M.として表される。N=80の個体での2回の反復。
図9】抵抗性系統AcerKis及びKdrKisの幼虫死亡率に対する単独で使用したIR3535の効果を示す図である。比較ヒストグラムは、a.AcerKis系統及びb.KdrKis系統における24時間及び48時間でのアノフェレス・ガンビエ幼虫の死亡率に対する異なる濃度で試験したIR3535の作用を示している。平均±S.E.M、Nは75~100個体の2~6回の間の反復。これらの濃度で死亡率間の有意差は観察されなかった(マン-ホイットニー;p値>0.05)。
図10】AcerKis及びKdrKis系統の幼虫の死亡率に対する単独で使用したチアクロプリド及びチアメトキサムの効果を示す図である。AcerKis(a、b)及びKdrKis(c、d)系統のアノフェレス・ガンビエ幼虫でのチアクロプリド(a、c)及びチアメトキサム(b、d)についての濃度-死亡率(log-プロビット)回帰曲線。1系統当たり、及び殺虫剤1種当たり100個体の4回の反復を使用した。
図11】24時間での抵抗性系統AcerKis及びKdrKisのアノフェレス・ガンビエ幼虫に対する二成分組合せチアクロプリド/チアメトキサムの効果を示す図である。比較ヒストグラムは、抵抗性系統AcerKis(a)及び抵抗性系統KdrKis(b)のアノフェレス・ガンビエ幼虫の死亡率に対するチアクロプリド/チアメトキサム組合せの効果を示している。組合せ中のチアクロプリド及びチアメトキサムの濃度は、それぞれ、0.02mg/L及び0.04mg/Lであった。平均±S.E.M、Nは80~100個体の2~3回の間の反復である。
図12】48時間での抵抗性系統AcerKis及びKdrKisのアノフェレス・ガンビエ幼虫に対する二成分組合せチアクロプリド/チアメトキサムの効果を示す図である。比較ヒストグラムは、抵抗性系統AcerKis(a、b)及び抵抗性系統KdrKis(c、d)のアノフェレス・ガンビエ幼虫の死亡率に対するチアクロプリド/チアメトキサム組合せの効果を示している。二成分組合せ中のチアクロプリド及びチアメトキサムの濃度は、それぞれ、0.01mg/L及び0.01mg/L(a、c)並びに0.01mg/L及び0.02mg/L(b、d)であった。平均±S.E.M、Nは50~100個体の3~14回の間の反復である。マン-ホイットニー;*p値<0.05;**p値<0.01;***p値<0.001。
図13】抵抗性系統AcerKis及びKdrKisのアノフェレス・ガンビエ幼虫に対する三成分組合せIR3535/チアクロプリド/チアメトキサムの効果を示す図である。比較ヒストグラムは、抵抗性系統AcerKis(a)及び抵抗性系統KdrKis(b)のアノフェレス・ガンビエ幼虫の死亡率に対するIR3535/チアクロプリド/チアメトキサム組合せの効果を示している。試験したIR3535の濃度は、1000~5000mg/Lで変化する。平均±S.E.M、Nは50~100個体の2~10回の間の反復である。マン-ホイットニー:NS有意でない。
図14】抵抗性系統AcerKis及びKdrKisのアノフェレス・ガンビエ幼虫に対する三成分組合せIR3535/チアクロプリド/チアメトキサムの効果を示す図である。比較ヒストグラムは、24時間及び48時間で測定された、抵抗性系統AcerKis(a、b)及び抵抗性系統KdrKis(c、d)のアノフェレス・ガンビエ幼虫の死亡率に対するIR3535/チアクロプリド/チアメトキサムの三成分組合せの効果を示している。チアクロプリド及びチアメトキサム濃度は、それぞれ、0.01mg/L及び0.01mg/L(a、c)並びに0.01mg/L及び0.02mg/L(b、d)であった。試験したIR3535濃度は、1~500mg/Lで変化する。平均±S.E.M、Nは50~100個体の3~10回の間の反復である。マン-ホイットニー:*p値<0.05;**p値<0.01;NS有意でない。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の詳細な説明
本発明は、殺虫剤抵抗性の蚊を含む蚊に対する殺虫剤及び殺幼虫剤として有用な相乗的組合せに関する。
【0028】
I-相乗的組合せ
本発明は、チアクロプリド及びチアメトキサムの二成分混合物若しくは会合体からなる、又はチアクロプリド、チアメトキサム、及びIR3535の三成分混合物若しくは会合体からなる相乗的組合せを提供する。
【0029】
本明細書で使用される場合、「相乗的」という用語は、組合せの各成分の個々の効果の合計と比較して増強された又は拡大された少なくとも1つの特性に対する組合せの効果を意味する。本発明の文脈において、相乗効果は、殺虫特性又は殺幼虫特性に関する。相乗効果は、対応する相加効果よりも少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約20%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約100%、少なくとも約200%、少なくとも約500%、又は少なくとも約1000%高くなり得る。数に関して本明細書で使用される「およそ」及び「約」という用語は、一般的に、特に明記しない限り、又は文脈から証明されない限り、その数のいずれかの方向の10%の範囲内にある数(その数より大きい又は小さい)を含む(このような数が、考えられる値の100%を超える場合を除く)。
【0030】
本明細書で使用される場合、「チアクロプリド」という用語は、そのIUPAC名が{(2Z)-3-[(6-クロロピリジン-3-イル)メチル]-l,3-チアゾリジン-2-イリデン}シアナミドであり、[3-[(6-クロロ-3-ピリジニル)メチル]-2-チアゾリジニリデン]シアナミドとしても公知である、ネオニコチノイドクラスの殺虫剤を指す。チアクロプリドの作用機序は、他のネオニコチノイドと同様であり、ニコチン性アセチルコリン受容体を刺激することによる、昆虫の神経系の破壊を伴う。チアクロプリドは、様々な吸汁昆虫及び咀嚼昆虫、主にアブラムシ及びコナジラミを防除するために、農業作物に使用するためにBayer CropScience社によって開発された。フランスでは、チアクロプリドは、2018年9月1日から農業使用のための殺虫剤として禁止されている。
【0031】
本明細書で使用される場合、「チアメトキサム」という用語は、Syngenta社によって開発されたネオニコチノイドクラスの殺虫剤を指す。そのIUPAC名は3-[(2-クロロ-l,3-チアゾール-5-イル)メチル]-5-メチル-N-ニトロ-l,3,5-オキサジアジナン-4-イミンである。チアメトキサムは広域スペクトル浸透殺虫剤である。これは、中枢神経系のニコチン性アセチルコリン受容体に干渉することによって神経細胞間の情報伝達の妨げになり、最終的に、昆虫の筋肉を麻痺させる。チアメトキサムは、多くの国で広範囲の農業、ブドウ栽培及び園芸使用について承認されている。しかしながら、2018年4月に、欧州連合の加盟各国は、3種のネオニコチノイド:クロチアニジン、イミダクロプリド及びチアメトキサムがミツバチ及び野生バチに深刻な危険をもたらすと考えられるので、これら殺虫剤の農業への使用について禁止することを決定した。
【0032】
「IR3535」、「IR3535(登録商標)」及び「昆虫忌避剤3535」という用語は、本明細書で互換的に使用される。これらは、そのIUPAC名がエチルN-アセチル-N-ブチル-β-アラニネートであり、エチルブチルアセチルアミノプロピオネートとしても公知の昆虫忌避剤を指す。IR3535は、単なる忌避剤であり、殺傷作用を有さず、選択圧も抵抗性の発達も生じさせない。これは、ヒト及び動物の皮膚に施用されることを意図しており、乳児並びに妊婦及び授乳中の女性に使用するのに安全である無色でほぼ無臭の油である。IR3535は、生分解性であり、極めて短い期間内に環境中で完全に分解される。IR3535は、様々な昆虫、例えば蚊、ダニ、シラミ、及び他の虫に対する広範な有効性を有する。IR3535は、臭気揮発性を低下させ、それによって、皮膚上の揮発性臭気物質が嗅神経細胞を活性化し、蚊を誘引する能力を隠すことによって機能する。
【0033】
チアクロプリド及びチアメトキサムの二成分混合物からなる相乗的組合せにおいて、2種のネオニコチノイド分子間のモル比は、相乗効果をもたらす任意のモル比であり得る。ある特定の実施形態では、本発明による相乗的組合せ中のチアクロプリドとチアメトキサムとの間のモル比が、約0.01:1~約1:0.01の間、好ましくは約0.1:1~約1:0.1の間、例えば、約0.2:1;約0.3:1;約0.4:1;約0.5:1;約0.6:1;約0.7:1;約0.8:1;約0.9:1;約1:1;約1:0.9;約1:0.8;約1:0.7;約1:0.6;約1:0.5;約1:0.6;約1:0.7;約1:0.8;又は約1:0.9に含まれる。ある特定の好ましい実施形態では、チアクロプリドとチアメトキサムとの間のモル比が、約1:1、例えば約0.8:1;約0.9:1;1:1;約1:0.9;又は約1:0.8である。
【0034】
チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535の三成分混合物からなる相乗的組合せにおいて、昆虫忌避剤と2種のネオニコチノイド分子の混合物との間のモル比は、相乗効果をもたらす任意のモル比であり得る。ある特定の実施形態では、本発明による相乗的組合せ中のIR3535と2種のネオニコチノイド分子の混合物との間のモル比が、約0.005:1~約0.1:1の間、より好ましくは約0.01:1~約0.1:1の間、例えば約0.02:1;約0.03:1;約0.04:1;約0.05:1;約0.06:1;約0.07:1;約0.08:1;約0.09:1;又は約0.10:1に含まれる。三成分混合物からなる相乗的組合せにおいて、2種のネオニコチノイド分子間のモル比は、任意のモル比、例えば2種のネオニコチノイド分子の混合物の相乗効果に関連するモル比であり得る。よって、例えば、相乗的三成分組合せ中の2種のネオニコチノイド分子間のモル比は、上記のように、約0.01:1~約1:0.01の間、好ましくは約0.1:1~約1:0.1の間に含まれ得る。
【0035】
II-蚊殺虫剤
本発明は、上に定義される相乗的組合せを含む蚊殺虫剤(殺成虫剤及び殺幼虫剤)を提供する。一般的に、本発明による蚊殺虫剤は、有効量の上に定義される相乗的組合せと、少なくとも1種の担体とを含む。
【0036】
A.蚊
本明細書で使用される「蚊」という用語は、カ科(Culicidae)に属する昆虫を指す。典型的には、蚊の生活環は、4種の別々の異なる段階:卵、幼虫、蛹、及び成虫を含み、過程全体で約1か月かかる。蚊の生活環は、卵が水面(例えば、クレクス属、クリセタ属、及びアノフェレス属種)、又は水浸しの湿った土(例えば、アエデス属種)に産みつけられると始まる。ほとんどの卵は、48時間以内に孵化して幼虫になる。幼虫は水の中で生活し、微生物及び有機物を餌にし、水面に浮上して呼吸する。幼虫は、4回脱皮して、脱皮のたびに大きくなり、4回目の脱皮で、幼虫は蛹に変化する。蛹期は、約2日間の静止した非摂食期である。発達が完了したら、蛹の皮が割れて、蚊が成虫となって現れる。特に明記しない限り、本明細書で使用される「蚊」という用語は、これらの異なる生活環のうちのいずれか1つの昆虫を指す。
【0037】
本発明は主に、その幼虫期及び成虫期の間の蚊に関する。本明細書で使用される場合、「蚊幼虫」という用語は、それらの生活環の幼虫期中の蚊を指す。ボウフラとしても知られる、蚊幼虫は、水温に応じて、4~14日間水中で生活する。蚊幼虫は、長さ0.6cm未満で、大きな頭部及び胸部並びに狭い腹部を有する、小型の毛虫のように見える。これらは典型的には、水面近くに逆さにぶら下がっている。本明細書で使用される場合、「成虫蚊」という用語は、この昆虫が飛ぶことができる唯一の期である、生活環の成虫期中の蚊を指す。成虫蚊は、数週間しか生きられない。ほとんどの蚊種の成虫雌は、宿主の皮膚を突き刺し、卵を産むために必要とされるタンパク質及び鉄分を含有する血液を摂食することができるチューブ状口器(口吻と呼ばれる)を有する。蚊の唾液が咬刺中に宿主に移され、痒みを伴う発疹を引き起こし得る。更に、多くの種が、咬刺の間に疾患を引き起こす病原体を摂取し、それらを将来の宿主に伝播する。
【0038】
ある特定の実施形態では、本発明による殺虫剤が使用され得る蚊が、疾患を哺乳動物宿主に伝播し得る蚊である。このような蚊は、アエデス属、アノフェレス属、クレクス属、クリセタ属及びマンソニア属からなる群から選択される属に属し得る。
【0039】
アエデス属の蚊の例としては、それだけに限らないが、以下のアエデス属種:ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ、アエデス・アウストラリス、アエデス・カンタトル、アエデス・シネレウス、アエデス・ポリネシエンシス、アエデス・ルスチクス、アエデス・タエニオルヒンチュス、及びアエデス・ベクサンスが挙げられる。
【0040】
アノフェレス属の蚊の例としては、それだけに限らないが、以下のアノフェレス属種:アノフェレス・アルビマヌス、アノフェレス・アラビエンシス、アノフェレス・アトロパルブス、アノフェレス・バイマイイ、アノフェレス・バラバセンシス、アノフェレス・バルベリ、アノフェレス・ベラトール、アノフェレス・クルジ、アノフェレス・クリキファキエス、アノフェレス・ダーリンギ、アノフェレス・ディルス、アノフェレス・エアルレイ、アノフェレス・ファラウチ、アノフェレス・フリーボルニ、アノフェレス・フネスツス、アノフェレス・ガンビエ、アノフェレス・イントロラツス、アノフェレス・ラテンス、アノフェレス・ロイコスフィルス、アノフェレス・マクラツス、アノフェレス・ミニムス、アノフェレス・ムーシェティ、アノフェレス・ニリ、アノフェレス・プンクチペニス、アノフェレス・プンクツラツス、アノフェレス・シュードプンクチペニス、アノフェレス・クアドリマクラツス、アノフェレス・セルゲンティ、シナハマダラカ、アノフェレス・ステフェンシ、アノフェレス・スブピクツス、アノフェレス・スンダイクス、及びアノフェレス・ワルケリが挙げられる。
【0041】
クレクス属の蚊の例としては、それだけに限らないが、以下のクレクス属種:クレクス・アンヌリロストリス、クレクス・アンテナツス、クレクス・ジェンセニ、アカイエカ、クレクス・プシルス、ネッタイイエカ、クレクス・ラージャ、クレクス・レスツアンス、クレクス・サリナリウス、クレクス・タルサリス、クレクス・テリタンス、クレクス・タイレリイ及びコガタアカイエカが挙げられる。
【0042】
クリセタ属の蚊の例としては、それだけに限らないが、以下のクリセタ属種:クリセタ・インシデンス、クリセタ・インパチェンス、クリセタ・イノルナタ及びクリセタ・パルチセプスが挙げられる。
【0043】
マンソニア属の蚊の例としては、それだけに限らないが、以下のマンソニア属種:マンソニア・アヌリフェラ、マンソニア・ボネアエ、マンソニア・ディベス、マンソニア・インディアナ、及びアシマダラヌマカが挙げられる。
【0044】
ある特定の実施形態では、本発明による殺虫剤が使用され得る蚊が、殺虫剤抵抗性の蚊である。「殺虫剤抵抗性」は、同じ種の正常な(すなわち、非抵抗性の)集団の個体の大部分にとって致死的であることが証明される用量の殺虫剤に耐える昆虫の系統の発達した能力として定義される。所与の殺虫剤に対する抵抗性遺伝子を有する個体は正常な集団ではまれであるが、殺虫剤の広範な使用が、抵抗性個体の流行に好都合となる。これらの個体は、種内競争の非存在下で速く増殖し、いくつかの世代にわたって、迅速に優勢な割合の集団になり、殺虫剤をもはや無効にする。歴史的に、蚊を防除するための殺虫剤の使用パターンは、化学化合物DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)、有機リン、カルバメート、及びピレスロイドに対する殺虫剤抵抗性の進化をもたらしてきた。
【0045】
ある特定の実施形態では、本発明による殺虫剤が使用され得る蚊が、DDT、有機リン、カルバメート、及びピレスロイドからなる群から選択される少なくとも1種の殺虫剤に抵抗性の蚊である。
【0046】
ある特定の好ましい実施形態では、本発明による殺虫剤が使用され得る蚊が、有機リン、カルバメート、及びピレスロイドからなる群から選択される少なくとも1種の殺虫剤に抵抗性の蚊である。
【0047】
例えば、本明細書に記載される殺虫剤によって標的とされる蚊は、有機リン殺虫剤に抵抗性であり得る。有機リン殺虫剤は、酵素アセチルコリンエステラーゼ及び他のコリンエステラーゼに干渉することによって昆虫の神経系を標的とし、神経流入の伝達を破壊し、昆虫を殺傷又は無能にする。単独で使用される有機リン殺虫剤の例としては、それだけに限らないが、パラチオン、マラチオン、メチルパラチオン、クロルピリホス、ダイアジノン、ジクロルボス、ホスメット、フェニトロチオン、テトラクロルビンホス、アザメチホス、アジンホス-メチル、テルブホス、及びテメホスが挙げられる。
【0048】
或いは、又は更に、本明細書に記載される殺虫剤によって標的とされる蚊は、カルバメート殺虫剤に抵抗性であり得る。カルバメート殺虫剤は、有機リンと同様の作用機序を有するが、はるかに短い作用持続時間を有する。単独で使用されるカルバメート殺虫剤の例としては、それだけに限らないが、アルジカルブ、カルボフラン、カルバリル、エチエノカルブ(ethienocarb)、フェノブカルブ、オキサミル、プロポクスル、及びメトミルが挙げられる。
【0049】
或いは、又は更に、本明細書に記載される殺虫剤によって標的とされる蚊は、ピレスロイド殺虫剤に抵抗性であり得る。ピレスロイド殺虫剤は、非持続性ナトリウムチャネルモジュレーターである。これらの殺虫剤は、有機リン及びカルバメートよりも毒性が低い。ピレスロイド殺虫剤は、例えばマラリア防除のために、ハウススプレー及び蚊帳の含浸に広く使用されている。単独で使用されるピレスロイド殺虫剤の例としては、それだけに限らないが、アレスリン、ビフェントリン、シフルトリン、シペルメトリン、シフェノトリン、デルタメトリン、エスフェンバレレート、エトフェンプロックス、フェンプロパトリン、フェンバレレート、フルシトリネート、フルメトリン、イミプロトリン、メトフルトリン、ペルメトリン、レスメトリン、シラフルオフェン、シミトリン(simithrin)、テフルトリン、テトラメトリン、トラロメトリン、及びトランスフルトリンが挙げられる。
【0050】
B.蚊殺虫剤及び蚊殺幼虫剤
本明細書で使用される「蚊殺虫剤」という用語は、その生活環の少なくとも1つの期の蚊を標的とし、殺傷することができる殺虫剤を指す。一部の実施形態では、蚊殺虫剤が殺成虫剤である。本明細書で使用される場合、「蚊殺成虫剤」という用語は、成熟した成虫蚊(すなわち、その蛹の皮を脱いだ蚊)を標的とし、殺傷する殺虫剤を指す。他の実施形態では、蚊殺虫剤が殺幼虫剤である。本明細書で使用される場合、「蚊殺幼虫剤」という用語は、蚊幼虫(すなわち、卵孵化後に始まり、幼虫が蛹に変化すると終わる期間中の蚊)を標的とし、殺傷する殺虫剤を指す。よって、殺幼虫剤は、成虫蚊に成熟し、分散することができる前の繁殖生息地の幼虫を標的とする。
【0051】
蚊殺幼虫剤の使用は、蛹及び成虫に発達する幼虫の数の減少をもたらす。蚊防除において、殺幼虫剤は、殺成虫剤と比較してある特定の利点を有する。実際、幼虫の防除は、成虫の防除よりもはるかに効率的である:成虫蚊は出現後にすぐに分散する傾向があるが、同じ幼虫発達場所で非常に多数の幼虫蚊を処理することが確かに可能である。成虫とは異なり、蚊幼虫は、繁殖地を標的とする防除介入を回避するように行動を修正しない(Killeenら、Malaria J.、2002、1:8)。幼虫防除戦略はまた、抵抗性の発達に関連する選択圧を低下させることによって殺虫剤の寿命を延長するように働く。また、殺幼虫剤の使用は、殺成虫剤の使用よりも物議を醸さない。非毒性製剤を使用した蚊幼虫の排除は、水性環境を汚染せず、非標的動物とヒトの両方の中毒のリスクを実質的に排除する。
【0052】
C.蚊殺虫剤の製剤
本発明の相乗的組合せは、それ自体で使用され得る。しかしながら、好ましくは、本明細書に記載される相乗的組合せは、固体及び/若しくは液体分散性担体ビヒクルを用いて、又はそこから製造される特異的用途のための特定の投与調製物の形態、例えばすぐに使用できる溶液、エマルジョン、懸濁液、粉末、ペースト、及び顆粒の形態で製剤化される。ある特定の実施形態では、相乗的組合せが、蚊殺虫剤中の唯一の活性成分である。他の実施形態では、相乗的組合せが、少なくとも1種の追加の生物活性剤と組み合わされる。
【0053】
1.蚊殺虫剤中の二成分及び三成分相乗的組合せの濃度。上に示されるように、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)は、効率的な量の上に定義される相乗的組合せを含む。本明細書で使用される「効率的な量」という用語は、意図した目的、例えば、蚊(例えば、蚊幼虫)又は蚊集団(例えば、所与の殺虫剤に抵抗性の蚊)における所望の反応を果たすのに十分な相乗的組合せの任意の量を指す。蚊殺虫剤が、施用時に希釈される濃縮形態であり得ることが当業者によって認識される。このような場合、効率的な量は、希釈後の濃度に対応する。
【0054】
本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)においては、チアクロプリド及びチアメトキサムの二成分相乗的組合せ、又はチアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535の三成分相乗的組合せは、所望の目標を達成するのに十分な任意の濃度で存在し得る。例えば、チアクロプリド及びチアメトキサムの二成分混合物からなる相乗的組合せを含む蚊殺虫剤において、ネオニコチノイド分子の各々の濃度は、約10-9M~約10-5Mの間に含まれ得る。好ましくは、ネオニコチノイド分子の各々の濃度は、約5.10-8M~約5.10-6Mの間に含まれる。例えば、チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535の三成分混合物からなる相乗的組合せを含む蚊殺虫剤において、昆虫忌避剤は、約5.10-12M~約5.10-9Mの間、好ましくは約10-11~約5.10-10Mの間に含まれる濃度で存在し得る。これらの濃度で、IR3535は、昆虫に対する亜忌避濃度(sub-repellent concentration)である、すなわち、昆虫に対して、特に蚊に対して単独で忌避剤有効性を有さず、殺虫剤有効性を有さない。蚊殺虫剤において、2種のネオニコチノイド分子の各々の濃度は、約10-10M~約10-6Mの間、例えば約10-9M~約5.10-7Mの間に含まれ得る。
【0055】
ある特定の実施形態では、蚊殺虫剤が、チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535のインビボ三成分相乗的混合物を含み、IR3535の濃度が100mg/L(4.6.10-4M)であり、チアクロプリドの濃度が0.01mg/L(4.10-8M)以下であり、チアメトキサムの濃度が0.02mg/L(6.9.10-8M)又は0.01mg/L(3.4.10-8M)以下である。
【0056】
このような極めて低い濃度の使用は、ヒト又は非標的動物に対する毒性のリスクを低下させる。
【0057】
2.蚊殺虫剤の製剤。本発明による蚊殺虫剤は、溜水又は他の蚊生息地に適切に施用することができる任意の方法で製剤化され得る。例えば、本発明による蚊殺虫剤は、溶液、濃縮液、エマルジョン、懸濁液、乳剤、噴霧乾燥濃縮液、スプレー粉末、可溶性粉末、水和剤、散布剤、粒剤、ドライフロアブル、水和粒剤、顆粒水和剤、ペレット、非水性懸濁液、ブリケット、フォーム、ペースト、エアロゾル、水溶性パウチ、錠剤、浮遊製剤、徐放製剤、及び燃焼装置、例えば燻蒸カートリッジ、燻蒸缶及び燻蒸油と使用される製剤、並びにULV(超微量)低温ミスト及び加温ミスト製剤、又はこれらの任意の組合せとして製剤化され得る。
【0058】
蚊幼虫は一般的に水中に見られるので、殺幼虫剤は、好ましくは水中で使用するのに特に有効となるように製剤化される。したがって、殺幼虫剤として使用される製剤は、好ましくは水溶性又は水混和性である。液体処理は噴霧によって施され得る。製剤には、水溶性粉末、可溶性液体濃縮物、水和剤又は顆粒水和剤が含まれる。活性成分が増量剤、例えば、おがくず、砂又はプラスターと混合されている固体製剤、例えば粒剤又はブリケットは、製剤を水容器、例えばタンク又は便所に導入することによって容易に使用することができる。他方で、乳剤は、約24時間後に沈降するので、殺幼虫剤としての水中での長期使用には一般的に効果がない。水を処理するために、活性成分が一定期間にわたってゆっくり放出されるように殺幼虫剤組成物を製剤化することが特に有益となる。これにより、連続的な再処理の必要性が回避される。
【0059】
担体。上に示されるように、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)は、効率的な量の上に定義される相乗的組合せと、少なくとも1種の担体とを含む。本明細書で使用される場合、「担体」という用語は、活性成分の殺虫/殺幼虫活性の有効性に干渉せず、それが使用される濃度で環境及び/又は標的とされないヒト若しくは動物集団に対して過度に毒性でない担体媒体を指す。この用語には、溶媒、分散媒、コーティング等が含まれる。殺虫剤のためのこのような媒体及び薬剤の使用は当技術分野で周知である(例えば、「Pesticide Formulation and Adjuvant Technology」、Chesterら、1996、CRC Press、Boca Raton;「The Pesticide Book」、Ware、2000、第5版、Thomson Publications、Fresno, CA参照)。
【0060】
担体は、水性液体担体、例えば水、生理食塩水、ゲル、不活性粉末、ゼオライト、セルロース系材料、マイクロカプセル、アルコール、例えばエタノール、炭化水素、ポリマー、ワックス、脂肪、油、タンパク質、炭水化物、及びこれらの任意の組合せであり得る。担体は、相乗的組合せが数時間、又は数日間、又は数週間にわたって放出されるように、時間放出材料を含んでもよい。他の企図される担体には、組成物内の相乗的組合せを完全又は部分的に可溶化及び/又は液化するものが含まれる。このような担体の例としては、それだけに限らないが、水、水性溶媒(例えば、水とエタノールの混合物)、エタノール、メタノール、塩素化炭化水素、酢酸エチル、石油系溶剤、テレビン油、キシレン、及びこれらの組合せが挙げられる。有機溶媒は主に、乳剤、超微量(ULV)製剤、及びより少ない程度に、粒剤の製剤に使用される。例示的な有機溶媒には、それだけに限らないが、芳香族溶媒(例えば、キシレン)、及び塩素化炭化水素が含まれる。担体は、相乗的組合せを液体担体中に分散させることができる界面活性剤と組み合わせた液体担体であり得る。或いは、又は更に、相乗的組合せは、マイクロ-又はナノ-カプセルにカプセル化され得、カプセルは水性担体に分散される。
【0061】
環境、例えば標的とされる昆虫以外の動植物を害することなく、殺虫剤を貯水池又は他の蚊繁殖地若しくは生息地に施用することができるように、好ましくは、非毒性の生分解性担体が本発明の蚊殺虫剤の製剤に使用される。
【0062】
担体又は担体混合物は、組成物の約10重量%、又は約15重量%、又は約20重量%、又は約25重量%、又は約30重量%、又は約50重量%の量で組成物中に存在し得る。他の実施形態では、担体又は担体混合物が、組成物の少なくとも約30重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%、若しくは約99重量%、又は約30重量%、約70重量%、約80重量%、約90重量%、約95重量%、若しくは約99重量%超の量で存在し得る。更に他の実施形態では、担体又は担体混合物が、組成物に含まれる相乗的組合せの量に加えられると、体積の100%になるような量で含まれ得る。
【0063】
ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤が、相乗的組合せが有機相に可溶化されているか、又はマイクロ-若しくはナノ-カプセルにカプセル化されている液体形態である。
【0064】
他の成分及び添加剤。本発明による蚊殺虫剤は、安定剤、保存剤、抗酸化剤、界面活性剤、ワックス状物質、及びこれらの任意の組合せからなる群から選択される少なくとも1種の他の化合物又は薬剤の存在下で製剤化され得る。
【0065】
安定剤を使用して、濃縮物の粒径を調節する、及び/又は安定な懸濁液の調製を可能にすることができる。適切な安定剤の例としては、それだけに限らないが、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドコポリマー、ポリアルコール、デンプン、マルトデキストリン及び他の可溶性炭水化物又はそれらのエーテル若しくはエステル、セルロースエーテル、ゼラチン、ポリアクリル酸並びにその塩及び部分エステル等が挙げられる。安定剤には、ポリビニルアルコール及びそのコポリマー、例えば部分加水分解ポリ酢酸ビニルが含まれ得る。安定剤は、粒径を調節する、及び/又は安定な懸濁液を調製するのに十分なレベル、例えば水溶液の0.1%~15%の間で使用され得る。
【0066】
1種又は複数の保存剤が本発明による蚊殺虫剤中に存在し得る。本明細書で使用される場合、「保存剤」という用語は、組成物に損傷を与えるか、又は組成物上若しくは中で増殖するか、又はその他の方法で組成物を汚染し得る微生物の増殖を防止する、及び/又は微生物と反応する、及び/又は微生物を破壊する物質を指す。保存剤の例としては、それだけに限らないが、抗微生物剤(例えば、第四級アンモニウム化合物)、アルコール、塩化フェノール、パラベン及びパラベン塩、イミダゾリジニル尿素、フェノキシエタノール、p-ヒドロキシベンゾエート、有機酸、短鎖カルボン酸、例えば安息香酸、クエン酸、乳酸、ソルビン酸、サリチル酸、ギ酸、プロピオン酸又は対応する塩が挙げられる。ホルムアルデヒド放出剤及びイソチアゾリノンも使用され得る。他の典型的な非限定的な例としては、ジアゾリジニル尿素、イミダゾリジニル尿素、ホルムアルデヒド、プロピルパラベン、エチルパラベン、ブチルパラベン、メチルパラベン、ベンジルパラベン、イソブチルパラベン、フェノキシエタノール、ソルビン酸、安息香酸、メチルクロロ-イソチアゾリノン、メチルイソチアゾリノン、メチルジブロモグルタロニトリル、デヒドロ酢酸、重亜硫酸ナトリウム、ジクロロフェン、カプリリルグリコール、前記化合物のいずれかの塩、及び前記化合物のいずれかの混合物が挙げられる。保存剤は、存在する場合、典型的には約0.01%~約5%w/wの量で使用される。
【0067】
本発明による蚊殺虫剤は、1種又は複数の抗酸化剤を含有し得る。本明細書で使用される場合、「抗酸化剤」という用語は、典型的には、酸化剤が化合物と反応する前に酸化剤と優先的に反応することによって、酸化感受性化合物の酸化を阻害する化合物又は薬剤を指す。適切な水溶性抗酸化剤には、それだけに限らないが、アスコルビン酸、エリソルビン酸、植物性抽出物(例えば、ローズマリー抽出物、緑茶抽出物、又はポリフェノール抗酸化剤を含有する他の抽出物)、及びこれらの任意の組合せが含まれる。適切な油溶性抗酸化剤には、それだけに限らないが、ビタミンE、トコフェロール、パルミチン酸アスコルビル、ブチルヒドロキシアニソール(butylated hydroxyanixole)(BHA)、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、テトラジt-ブチルヒドロキシヒドロケイヒ酸ペンタエリスリチル、及びこれらの任意の組合せが含まれる。抗酸化剤は、存在する場合、典型的には約0.01%~約1%w/w、典型的には約0.1%w/wの量で使用される。
【0068】
本発明による蚊殺虫剤は、少なくとも1種の界面活性剤を含有し得る。「界面活性剤」及び「表面活性剤」という用語は、本明細書で互換的に使用され、少なくとも1つの疎水性尾部及び少なくとも1つの親水性頭部、より典型的には単一の疎水性尾部及び単一の親水性頭部を有する両親媒性化合物を指す。界面活性剤は、典型的には表面張力を低下させるように作用し、濡れ性、乳化、及び泡を提供することができる。界面活性剤は、双性イオン性、両親媒性、カチオン性、アニオン性、非イオン性、又はこれらの組合せであり得る。界面活性剤の例としては、それだけに限らないが、ポリアクリル酸塩、リグノスルホン酸塩、フェノールスルホン酸塩又は(モノ-若しくはジ-アルキル)ナフタレンスルホン酸塩、ラウリル硫酸塩、エチレンオキシドとリグノスルホン酸塩の重縮合物、エチレンオキシドと脂肪族アルコール又は脂肪酸又は脂肪族アミンの重縮合物、置換フェノール(特に、アルキルフェノール又はアリールフェノール、例えばモノ-及びジ(ポリオキシアルキレンアルキルフェノール)ホスフェート、ポリオキシアルキレンアルキルフェノールカルボキシレート又はポリオキシアルキレンアルキルフェノールサルフェート)、スルホコハク酸エステルの塩、タウリン誘導体(特に、アルキルタウリド)、エチレンオキシドとリン酸化トリスチリルフェノールの重縮合物及びエチレンオキシドとアルコール又はフェノールのリン酸エステルの重縮合物が挙げられる。活性物質が水に可溶性ではなく、施用のための担体剤が水である場合に、少なくとも1種の界面活性剤の存在が通常要求される。存在する場合、界面活性剤は、典型的には約0.5%w/x~約20%w/wの総量で使用される。
【0069】
ワックス状物質を、噴霧可能な組成物に担体として使用することができる。ワックス状物質は、例えば、生分解性ワックス、例えば蜜ろう、カルナウバワックス等、キャンデリラワックス(炭化水素ワックス)、モンタンワックス、シェラック及び同様のワックス、飽和又は不飽和脂肪酸、例えばラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸又はステアリン酸、脂肪酸アミド及びエステル、ヒドロキシ脂肪酸エステル、例えばヒドロキシエチル又はヒドロキシプロピル脂肪酸エステル、脂肪アルコール、及び低分子量ポリエステル、例えばポリアルキレンスクシネートであり得る。
【0070】
本発明による蚊殺虫剤に使用するのに適した他の添加剤の例としては、それだけに限らないが、1種又は複数の充填剤(例えば、鉱物クレイ、例えばアタパルジャイト)、1種又は複数のゲル化剤又は増粘剤(例えば、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(SCMC);ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、及びこれらの任意の組合せ;モンモリロナイト(例えば、ベントナイト;ケイ酸アルミニウムマグネシウム;及びアタパルジャイト);種子及び海藻から抽出された多糖;グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アルギン酸塩、加工デンプン、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、及びキサンタンガム);1種又は複数の結合剤(例えば、合成若しくは天然樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、部分加水分解ポリ酢酸ビニル、カルボキシメチルセルロース、デンプン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー及びポリ酢酸ビニル、又はこれらの組合せ);1種又は複数の潤滑剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸ナトリウム、タルク若しくはポリエチレングリコール、又はこれらの組合せ);1種又は複数の消泡剤(例えば、シリコーンエマルジョン、長鎖アルコール、リン酸エステル、アセチレンジオール、脂肪酸又は有機フッ素化合物);1種又は複数の錯化剤(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)の塩、トリ-ニトリロ三酢酸の塩、ポリリン酸の塩、又はこれらの組合せ);1種又は複数の湿潤剤(例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、アルキルフェノールエトキシレート及び脂肪族アルコールエトキシレート(aliphatic alcohol athoxylates));1種又は複数の乳化剤(例えば、12個以上のエチレンオキシド単位を有するアルキルフェノール又は脂肪族アルコール及びドデシルベンゼンスルホン酸の油溶性カルシウム塩);及び/又は1種又は複数の分散剤が挙げられる。
【0071】
蚊殺虫剤の製剤に応じて、当業者であれば、適切な添加剤及びそれらのそれぞれの量を選択する方法が分かる。
【0072】
追加の生物活性剤。ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤が、少なくとも1種の追加の生物活性剤を更に含む。適切な生物活性剤には、それだけに限らないが、蚊誘引剤、昆虫摂食刺激剤、及び昆虫不妊化剤(sterilants)が含まれる。
【0073】
例えば、蚊誘引剤が本発明による蚊殺虫剤に添加され得る-蚊誘引剤はベイト又はルアーとして使用される。本明細書で使用される場合、「誘引剤」という用語は、昆虫、例えば蚊を誘引することができる任意の化合物、組成物又は組合せを指す。本明細書で使用される場合、「ベイト」又は「ルアー」は、昆虫、例えば蚊を特定の場所又はトラップに誘引することができる誘引剤である。例えば、化学誘引剤、例えばフェロモンを本発明の蚊殺幼虫剤に添加することができ、殺幼虫剤はトラップ、産卵構造又は蚊繁殖容器と組み合わせて使用され得る。他の種類の誘引剤、例えば水性媒体に直接添加することができる乾草注入液を使用することもできる。乾草注入液は、長期間水に浸された乾草を含む。
【0074】
例えば、昆虫摂食刺激剤が本発明による蚊殺虫剤に添加され得る。昆虫摂食刺激剤には、それだけに限らないが、粗綿実油、フィトールの脂肪酸エステル、ゲラニルゲラニオールの脂肪酸エステル、他の植物アルコールの脂肪酸エステル、植物抽出物、及びこれらの組合せが含まれる。
【0075】
例えば、昆虫不妊化剤が、本発明による蚊殺虫剤に添加され得る。昆虫不妊化剤は、昆虫を不妊化するか、又はその他の方法でその生殖能を遮断し、それによって、次の世代の集団を減少させる化合物、薬剤又はこれらの組合せである。
【0076】
カプセル化。本発明による蚊殺虫剤は、少なくとも相乗的組合せがマイクロカプセルにカプセル化されるように製剤化され得る。本明細書で使用される場合、「カプセル化」という用語は、活性物質又は有用な物質の小粒子又は液滴(「コア」)がポリマー(「シェル」)でコーティングされるか、又はシェルに包埋されるプロセスを指す。コア材料は、シェルの腐食、浸透又は破裂を通してマイクロカプセルから放出される。シェルの厚さ又は材料のバリエーションを利用して、コア材料がカプセルから放出される速度又はタイミングを制御することができる。本明細書で使用される場合、「マイクロカプセル」という用語は、コア材料(ここでは蚊殺虫剤)を囲むポリマー膜(「シェル」)を有する構造を指す。「マイクロカプセル」という用語は、包括的であることを意図しており、特定の径(すなわち、ナノ、マイクロ等)に限定されない。マイクロカプセルは、約100nm~約2000μmの直径を有し得る。
【0077】
カプセル化は、当技術分野で公知の様々な方法のいずれかを使用して、例えば乳化法、界面重合又は重縮合を介して達成され得る。マイクロカプセル化は、マイクロ流体液滴生成又はカプセル化装置を含むマイクロカプセル化装置により実施され得る。
【0078】
マイクロカプセルは、それだけに限らないが、セルロース、タンパク質、例えばカゼイン、フルオロカーボン系ポリマー、水素化ロジン、リグニン、メラミン、ポリウレタン、ビニルポリマー、例えばポリ酢酸ビニル(PVAC)、ポリカーボネート、ポリビニリデンジニトリル、ポリアミド、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアミド-アルデヒド、ポリビニルアルデヒド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン、ポリエチレンオキシド、ポリスチレン、ポリビニリデン、シリコーン、及びこれらの組合せを含む多種多様なポリマー材料から作製され得る。セルロースの例としては、それだけに限らないが、メチルセルロース、エチルセルロース、酢酸セルロース、酪酸酢酸セルロース、酢酸プロピオン酸セルロース、プロピオン酸セルロース、及びこれらの組合せが挙げられる。
【0079】
存在する場合、添加剤はカプセル化形態で製剤に含まれ得る。添加剤は、単独で、別々に、又は個々の群でカプセル化され得る。カプセル化戦略は、材料に求められる放出プロファイルに依存し得る。
【0080】
粒剤及びスマート粒剤。ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤が粒剤として製剤化される。粒剤は、予め形成された粒剤に含浸された相乗的組合せを有することができるか、又は充填剤と混合されて遅延放出粒剤を形成することができる。粒剤は、粒剤を予測可能な時間にわたって崩壊するポリマーでコーティングすることによって、相乗的組合せが特定の時間に放出されるように製剤化され得る。適切なポリマーは当業者に公知である。粒剤の径は一般的に250~1000ミクロンの範囲にあり、粒剤の少なくとも90%が指定されるメッシュサイズ範囲内にある。大きな粒剤の径は、粒剤が風に吹き流されるのを防ぎ、粉末及び液体製剤による場合よりもはるかに少ない殺虫剤の損失をもたらす。粒剤中の活性成分は通常、約1%~約40%w/wの濃度で存在する。
【0081】
展着剤溶液を使用して、ブレンダーで、相乗的組合せの微粉末が担体顆粒、例えば砂上にコーティングされるコーティングを含む、粒剤を調製する異なる方法が当技術分野で公知である。別の含浸方法は、ブレンダーで、相乗的組合せの溶媒系溶液を吸収性担体上に噴霧することを伴う。粒剤はまた、粉末ブレンドを少量の水と混合してペーストを形成し、次いで、これを押し出し、必要であれば乾燥させることによって、低い水溶解度を有する相乗的組合せを処理することができる押出によっても調製することができる。各方法において、結果として生じる粒剤を樹脂又はポリマーでスプレーコーティングして、施用後の相乗的組合せの放出速度を制御することができる。
【0082】
例えば、粒剤は、1~40%w/wの相乗的組合せ、1~2%w/wの安定剤、0~10%w/wのポリマー又は樹脂、0~5%w/wの界面活性剤、0~5%w/wの結合剤、及び最大98%w/wの担体を含み得る。
【0083】
粒剤は、浮遊油として主に水面で活性成分を放出する、水体(water body)に直接施用するように設計された「スマート粒剤」であり得る。有利には、「スマート粒剤」は、水面上に広がって、従来の粒剤によって可能になるよりも優れた分配を与える相乗的組合せ(及び場合により他の活性剤)を含有する油の薄膜を提供する。油膜は有益に粘着性であり、天候による分散に抵抗する。典型的な例では、活性成分が、低揮発性の油又は溶媒に溶解又は分散され、次いで、結果として生じる液体が適切な顆粒担体に組み込まれる。粒剤は、水に沈み、油に含有される活性成分を放出し、次いで、これが水面に浮遊するように設計される。
【0084】
殺成虫製剤。蚊殺成虫剤の使用は、一般的に、残留表面処理、空中散布(煙霧)及び殺虫剤処理した蚊帳(ITN)の使用の3つの主な形態をとる。ベッドネットは、蚊と下で寝ているヒトとの間に物理的障壁を作り出すためにベッド又は他の就寝スペース上に固定されたネットである。
【0085】
煙霧では、活性成分が液滴として空気中に吹き飛ばされるのを可能にする油溶液に製剤化される。網羅される標的距離、要求される液滴径、及びそれを施用するために利用可能な機構に応じて、煙霧は、「ミスト機」(液滴径50~80μm)、「煙霧器」(熱及び冷液滴、<50μm)の使用、又は一定量の活性成分が高容量の溶媒に分散されている「超微量」(ULV)の使用を通したものであり得る。蚊に対する公衆衛生の戦いにおいて、最も広く使用される方法が煙霧、特に熱煙霧(熱風を使用する方法)である。煙霧は、蚊の数が多い地域で、又は疾患の大流行中に定期的に使用される。したがって、本発明による蚊殺成虫剤は、煙霧に適するように製剤化され得る。
【0086】
本発明はまた、残留スプレーとして製剤化された相乗的組合せを含む蚊殺虫剤に関する。残留表面処理では、殺虫剤が、通常は携帯型加圧スプレーパックから表面に噴霧されて、表面に残留物を残す。ほとんどの場合、使用される製剤は水和剤であり、土壁及び茅葺屋根材料上の残留成分の活性は、再処理が要求される前およそ6か月間続く。煙霧に対する残留噴霧の利点には、環境汚染が少ないことが含まれ、この技術は、抵抗性選択圧の集団の雌にのみ曝露する傾向がある。
【0087】
本発明はまた、布にコーティングされる、及び/又は布に吸収される相乗的組合せを含む蚊殺虫剤を提供する。本発明はまた、殺成虫剤が布、例えばベッドネットの処理用に製剤化される、蚊殺成虫剤の使用に関する。相乗的組合せを含有する組成物でコーティングされた布は、一般的に織布である。これらの布は、天然繊維又は合成繊維から作製され得る。未処理ネット、例えばベッドネットは、物理的障壁として作用するだけであるので、もし穴がある場合、又はくるまれていない場合、昆虫が依然として侵入し、咬刺することができる。同様に、手足がネットに接して置かれている場合、雌は一般的にネットを通して咬刺することができる。これらの欠陥を克服するために、近年、ネット、好ましくはベッドネットに、相互作用して表面に接触する蚊を殺傷する即効性殺虫剤を含浸させる動きがある。
【0088】
マラリアの研究は、接触殺虫剤を含浸させたベッドネットの使用が、疾患の伝播のリスクを低下させるのに有用であることを示しており、殺虫剤処理した蚊帳の使用の促進が、WHOによって採用される重要なマラリア防除戦略になっている。殺虫剤処理した蚊帳(ITN)の使用は、その地域のベクターであるアノフェレス・ガンビエが非常に夜遅くに屋内で摂食するので、サブサハラアフリカにおいてマラリア罹患率及び死亡率を低下させることに特に成功している。更なる利点には、雌のみが曝露されて、両性に対する抵抗性選択圧を低下させるという事実、及び少量が極めて局所的な方法で使用されるので、コスト及び汚染を減少させるという事実が含まれる。ITNは、およそ6~12か月間活性なままであるので、再処理はまれであり、布を希釈した殺虫剤に再浸漬することによって容易に達成される。このような浸漬に使用される殺虫剤は、典型的には乳剤として製剤化される。
【0089】
一般的に、殺虫剤の溶媒中25~50%溶液が使用され、製剤を経済的に輸送するためには少なくとも10%の溶解度が典型的に必要とされる。多くの場合、殺虫剤は、水よりも有機溶媒に可溶性である。適切な溶媒に加えて、製剤を水に希釈した場合に、水エマルジョン中に微細油滴(1~2nm)が生成されることを確実にするために乳化剤が添加される。結果として生じるエマルジョンは不透明に見え、24時間は沈降しない。乳剤は、水不溶性成分を製剤化する便利な方法であり、これらはノズル摩耗を引き起こさない。乳剤が水と混合され、次いで、ネットが溶液に浸漬され、絞られ、放置乾燥される。本発明による乳剤は、好ましくは10重量%又は25重量%溶液である。
【0090】
殺成虫剤はまた、ベッドネットだけでなく、ヒト標的と蚊との間に物理的障壁を作り出すことができる他の保護材料、例えばテント、旅行用ベッドネット、ハンモック又は衣類(例えば、Tシャツ、シャツ、パンツ、帽子)を含浸するためにも使用される。
【0091】
エアロゾル。本発明による蚊殺虫剤は、エアロゾル化フォーム用途を含むエアロゾルベースの用途にも適している。加圧缶がエアロゾルを形成するための典型的なビヒクルである。殺虫剤組成物と適合性のエアロゾル噴射剤が使用される。好ましくは、液化ガス型噴射剤が使用される。適切な噴射剤には、圧縮空気、二酸化炭素、ブタン及び窒素が含まれる。殺虫剤組成物中の噴射剤の濃度は、殺虫剤組成物の約5重量%~約40重量%、好ましくは殺虫剤組成物の約15重量%~約30重量%である。
【0092】
III-蚊殺虫剤の使用
ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)が、殺虫剤抵抗性蚊を含む蚊に対して使用される。本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)は、蚊の侵襲を防止するために使用され得る。蚊の侵襲を「防止する」、「阻害する」又は「防除する」という用語は、蚊の幼虫の成虫への成熟の減少及び/又は成虫蚊の死若しくは生存減少を含む。蚊の侵襲の阻害の減少は、所与の領域中の成虫蚊の数の減少によって測定され得る。
【0093】
ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)が、疾患を引き起こす病原体を伝播することができる蚊に対して使用される。よって、本発明による蚊殺虫剤は、蚊媒介疾患を防除するために使用され得る。殺成虫剤は、病原的に感染した成虫蚊(特に、成虫雌蚊)に対して使用され得る。殺幼虫剤は、感染症(例えば、ウイルス感染症、線虫感染症、原虫感染症又は細菌感染症)を運ぶ蚊幼虫に対して使用され得る。
【0094】
数千の蚊種が様々な宿主の血液を餌とする。この血液の損失が宿主にとって重要であることはめったにない。蚊の唾液は、咬刺中に宿主に運ばれ、痒みを伴う発疹を引き起こし得る。多くの蚊種は、咬刺の間に病原体を摂取し、それらを将来の宿主に伝播する。このようにして、蚊は疾患の重要なベクターとなる。
【0095】
A.病原体
本明細書で使用される場合、「病原体」という用語は、疾患をもたらし得る微生物を指す。蚊によって伝播され得る病原体には、ウイルス、原虫、蠕虫(線虫)及び細菌が含まれる。
【0096】
蚊によって伝播され得るウイルス病原体の非限定的な例としては、アルボウイルス病原体、例えばアルファウイルス(Alphaviruses)病原体(例えば、東部ウマ脳炎ウイルス、西部ウマ脳炎ウイルス、ベネズエラ脳炎ウイルス、ロスリバーウイルス、シンドビスウイルス及びチクングニアウイルス)、フラビウイルス(Flavivirus)病原体(例えば、日本脳炎ウイルス、マレー渓谷脳炎ウイルス、ウエストナイル熱ウイルス、黄熱病ウイルス、デング熱ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、及びダニ媒介性脳炎ウイルス)、ブニヤウイルス(Bunyavirus)病原体(例えば、ラクロス脳炎ウイルス、リフトバレー熱ウイルス、及びコロラドダニ熱ウイルス)及びオルビウイルス(Orbivirus)(例えば、ブルータングウイルス)が挙げられる。
【0097】
蚊によって伝播され得る蠕虫病原体の例としては、それだけに限らないが、線虫(例えば、フィラリア線虫、例えばバンクロフト糸状虫(Wunchereria bancrofti)、マレー糸状虫(Brugia malayi)、パハンギ糸状虫(Brugia pahangi)、チモール糸状虫(Brugia timori)及びイヌ糸状虫、例えばディロフィラリア・イミティス(Dirofilaria immitis))が挙げられる。
【0098】
蚊によって伝播され得る細菌病原体の非限定的な例としては、エルシニア・ペスティス(Yersinia pestis)、ボレリア属(Borellia)種、リケッチア属(Rickettsia)種、及びエルウィニア・カロトボラ(Erwinia carotovora)を含むグラム陰性菌及びグラム陽性菌が挙げられる。
【0099】
蚊によって伝播され得る原虫病原体の例としては、それだけに限らないが、プラスモジウム属(Plasmodium)のマラリア原虫(例えば、熱帯熱マラリア原虫(Plasmodium falciparum)、三日熱マラリア原虫(Plasmodium vivax)、卵形マラリア原虫(Plasmodium ovale)、四日熱マラリア原虫(Plasmodium malariae)、ネズミマラリア原虫(Plasmodium berghei)、プラスモジウム・ガリナセウム(Plasmodium gallinaceum)、及びサルマラリア原虫(Plasmodium knowlesi))が挙げられる。
【0100】
B.宿主
蚊咬刺は、多種多様な宿主:一部の無脊椎動物、主に他の節足動物と共に、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、及び一部の魚類を含む脊椎動物を標的とすることができる。
【0101】
本明細書で使用される場合、「宿主」という用語は、蚊が摂食する、及び/又は蚊が疾患を引き起こす病原体を伝播することができる動物又はヒトを指す。宿主の非限定的な例としては、ヒト、飼育ペット(例えば、イヌ及びネコ)、野生動物(例えば、サル、齧歯類、及び野生ネコ)、家畜動物(例えば、ヒツジ、ブタ、ウシ、及びウマ)、鳥類、例えば家禽(例えば、ニワトリ、七面鳥、アヒル)及び他の動物、例えば甲殻類(例えば、クルマエビ及びロブスター)、ヘビ及びカメが挙げられる。ある特定の好ましい実施形態では、「宿主」という用語が、特にヒト及び哺乳動物を指す。
【0102】
C.蚊媒介疾患
本明細書で使用される場合、「蚊媒介疾患」という用語は、病原体によって引き起こされ、蚊の咬刺(より具体的には、病原的に感染している雌蚊の咬刺)によって伝播される任意の疾患を指す。ある特定の好ましい実施形態では、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)が、哺乳動物、特にヒトに影響を及ぼす蚊媒介疾患を防除するために使用される。
【0103】
蚊及び蚊が伝播する病原体の非限定的な例としては、マラリア原虫及びミクロフィラリア、アルボウイルス(脳炎ウイルスを含む)を伝播するアノフェレス属の種(例えば、アノフェレス・ガンビエ)及びバンクロフト糸状虫も伝播する一部の種;ウエストナイルウイルス、フィラリア症、日本脳炎、セントルイス脳炎及び鳥類マラリアを伝播するクレクス属の種(例えば、アカイエカ);線虫病原体(例えば、イヌ糸状虫(ディロフィラリア・イミティス)、疾患、例えば東部ウマ脳炎、西部ウマ脳炎、ベネズエラウマ脳炎及びチクングニア病を引き起こすアルボウイルス病原体、例えばアルファウイルス病原体;疾患、例えば日本脳炎、マレー渓谷脳炎、ウエストナイル熱、黄熱病、デング熱を引き起こすフラビウイルス病原体、及び疾患、例えばラクロス脳炎、リフトバレー熱、及びコロラドダニ熱を引き起こすブニヤウイルス病原体を伝播するアエデス属の種(例えば、ネッタイシマカ、ヒトスジシマカ及びアエデス・ポリネシエンシス)が挙げられる。
【0104】
ある特定の実施形態では、ネッタイシマカによって伝播され得る病原体が、デングウイルス、黄熱病ウイルス、チクングニアウイルス及びイヌ糸状虫(ディロフィラリア・イミティス)である。
【0105】
ある特定の実施形態では、ヒトスジシマカによって伝播され得る病原体が、ウエストナイルウイルス、黄熱病ウイルス、セントルイス脳炎ウイルス、デングウイルス、及びチクングニアウイルスを含む。
【0106】
ある特定の実施形態では、アノフェレス・ガンビエによって伝播され得る病原体が、プラスモジウム属のマラリア原虫、例えば、それだけに限らないが、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、卵形マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、ネズミマラリア原虫、プラスモジウム・ガリナセウム、及びサルマラリア原虫を含む。
【0107】
本発明の実施においては、ベクター媒介病、例えばジカウイルス感染症、デング熱感染症、黄熱病、チクングニア熱、ウエストナイルウイルス感染症、セントルイス脳炎、及びマラリアを伝播することができる蚊種が好ましくは標的とされる。
【0108】
よって、ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)が、ジカウイルス感染症を防除するために使用される。ジカウイルスは、小頭症と呼ばれるまれな先天性欠損症-異常に小さな頭及び発達上の問題を持って生まれる新生児をもたらす神経障害を引き起こす。ジカウイルスは、典型的にはネッタイシマカ蚊によって伝播されるが、性的に拡散もし得る。ネッタイシマカ蚊は、活動的な昼間の咬刺者(biter)であり、官庁職員は、警戒を怠らず、体を覆い隠し、忌避剤を定期的に再施用するよう人々に警告している。デング熱及びチクングニア熱も伝播する、アジアンタイガーモスキート(ヒトスジシマカ)もジカウイルスを伝播することができ得る。この疾患のためのワクチンも、処置も、治療もなく、感染地域への渡航者は、この疾患に対する最良で唯一の防御として蚊咬刺を防ぐように促されている。妊婦は、胎児に対するリスクのために、ジカが存在する国々への渡航を控えるよう警告されている。ジカに感染したほとんどの人々(80%)は、症状を示さず、症状が典型的には軽度であるので、感染していることに気づかない。一般的な徴候には、微熱、発疹、関節痛及び結膜炎が含まれる。
【0109】
ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)が、原虫、主に熱帯熱マラリア原虫又は三日熱マラリア原虫によって引き起こされるマラリアを防除するために使用される。雌アノフェレス属蚊は、感染したヒトを餌とすることによって原虫を取り上げる。原虫は、蚊の体内で10~18日間発達し、次いで、蚊が摂食している間に唾液を注入すると伝達される。いったんヒトの体内に入ると、マラリア原虫は肝臓に移動し、ここで、成長及び増殖する。最終的に、原虫は、血流に入って、赤血球で発達し続ける。原虫が増殖し、放出されるにつれて、これらは血球を破壊する。これは、感染した者が症状、例えば発熱、悪寒、発汗、頭痛及び他のインフルエンザ様症状を示し始める段階である。この感染症は、特に未処置のままにした場合、時々、腎不全及び死を含む更により重篤な反応をもたらし得る。キニーネ及び他の抗マラリア薬は、血液中の原虫を攻撃することによって患者を治療する。
【0110】
ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)が、鳥類の血液で運ばれるウイルス感染症である、ウエストナイルウイルス感染症を防除するために使用される。クレクス属蚊は、感染した鳥類を餌とすることによってこのウイルスを取り上げ、次いで、ウイルスが蚊の系を通して広がった後、摂食中に唾液を通してウイルスをヒトに伝達する。ウエストナイルウイルスは、ヒト血流中で増殖し、脳に運ばれ、そこで中枢神経系を冒し、脳炎として知られている、脳組織の炎症を引き起こす。これが起こると、人は高熱、頭痛、リンパ節の腫大及び肩こりを発症する。ほとんどの重篤な症例で、この感染症は痙攣、昏睡及び死をもたらし得る。重症感染者が生存した場合であっても、永久的神経障害の可能性が十分にある。ウエストナイルウイルスの特異的な処置は存在しない。しかしながら、ウエストナイルウイルスに感染した150人のうちわずか1人しか重篤な症状を経験しない。CDC(疾病対策予防センター)によると、感染者の約80%は症状を全く示さない。
【0111】
ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)が、熱帯及び亜熱帯気候に一般的な4種のウイルスのうちの1種によって引き起こされる感染症であるデング熱を防除するために使用される。この疾患は、ウエストナイルウイルス及び他の脳炎ウイルスとほぼ同じようにアエデス属蚊によって拡散される。蚊は、感染者を咬刺した約1週間後にデング熱を伝播することができる。デングウイルスが増殖し、細胞に損傷を与えるにつれて、感染者は他の感染症と同様の症状:高熱、頭痛、背部及び関節痛、発疹並びに眼痛を示し始める。デング出血熱の症状には、最大1週間続く発熱、引き続いて紫斑及び出血が含まれる。CDCによると、出血熱の致死率は約5%である。世界中で約1億人が、特にアフリカ及び熱帯西半球で、毎年デング熱に感染している。出血熱症例は数十万と推定されている。デング熱は東南アジアでより一般的であり、子供は特に感染しやすい。ほとんどのウイルスのように、特異的な処置はない。医師は、デング熱のために、アセトアミノフェン、多量の水分及び休息、出血熱のために、入院を推奨した。
【0112】
ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)が、元々アフリカ及び南アメリカで霊長類に一般的なフラビウイルスの感染症である黄熱病を防除するために使用される。デング熱のように、黄熱病はアエデス属蚊、特に黄熱病蚊であるネッタイシマカによって伝播される。ウイルスが3~6日間体内に潜伏した後、感染者は発熱、悪寒、頭痛及び悪心の一般的な感染症状を示し始める。疾患がはるかにより深刻な症状、例えば鼻血、血性吐物及び腹痛を伴って戻る前に短期の緩解が存在し得る。致死率は15%~50%の範囲である。黄熱病のための処置はないので、疾患が流行している気候に住んでいるか、又は渡航する者は感染症に対するワクチン接種を受けることが可能である。
【0113】
ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤(殺成虫剤又は殺幼虫剤)が、ウイルスによって引き起こされる、チクングニア熱を防除するために使用される。デング熱のように、チクングニア熱は、アエデス属蚊、特にネッタイシマカ(黄熱病蚊)及びヒトスジシマカ(アジアンタイガーモスキート)によって伝播される。潜伏期は通常3~7日であり、症状には、突然の発熱、腫脹を伴う又は伴わない関節痛、悪寒、頭痛、悪心、嘔吐、腰痛及び発疹が含まれ得る。チクングニア熱を予防するためのワクチンは現在存在しない。疾患の管理には、休息、水分並びに発熱及び疼痛の症状を軽減するための医薬、例えばイブプロフェン、ナプロキセン及びパラセタモールが含まれる。
【0114】
D.蚊殺虫剤の施用
本発明による相乗的組合せを含む蚊殺虫剤は、蚊及び/又は蚊繁殖地に施用され得る。例えば、本発明による蚊殺虫剤は、蚊又は蚊侵襲地域若しくはその一部、接続給水系統、蚊繁殖地又はその一部、蚊が通過又は生息しようとする可能性がある表面領域及び/又は材料、或いは蚊が観察され得る、又は運搬のためのベクターとして作用し得る表面及び物体に施用され得る。このような表面の例としては、限定されないが、湿った土、木の穴、水面(例えば、池、湖、沼地、水路、潟、川、クリーク、排水溝、用水路、湿地帯等の)、水体の縁(例えば、海岸線、プールライナー及びカバー、堤防等)、及び水のプールを作り出し得る物体の表面(例えば、動物の水おけ、観賞用の池、スイミングプール、排水ます、子供用プール、天水桶、樋、噴水、縦樋、鉢植え、又は上記物体のいずれかと合わせて使用される装置若しくはツールの任意の表面)が挙げられる。蚊殺成虫剤又は殺幼虫剤は、成虫蚊及び/又は蚊幼虫の存在が明らかであるかどうかにかかわらず、このような表面に直接施用され得る。
【0115】
本発明による蚊殺虫剤は、1つ又は複数のトラップに関連して使用され得る。本明細書で使用される場合、「トラップ」という用語は、蚊を誘引する、捕捉する、及び/又は殺傷するために使用される任意の装置及び/又は物体を指す。昆虫トラップは当技術分野で周知であり(例えば、鱗翅目(Lepidoptera)の昆虫種を誘引するために使用されるトラップ)、昆虫根絶プログラムにおいて多くの国々で一般的に使用されている。蚊殺虫剤を含有することに加えて、トラップは、ベイト又はルアーとして使用され得る誘引剤を含有し得る(又は蚊殺虫剤が誘引剤を含有し得る)。ルアー/誘引-及び殺傷技術は当技術分野で公知である-いったん昆虫がルアーに誘引されると、昆虫は蚊殺虫剤にさらされる。ある特定の実施形態では、トラップがオビトラップ(ovitrap)である。本明細書で使用される場合、「オビトラップ」という用語は、その分野で理解される意味を有し、蚊が産卵することができる水を含有する暗い容器を指す。その後、卵はメッシュを通って水に落ち、次いで、孵化して幼虫になる。本発明の文脈において、オビトラップは、蚊を誘引して殺幼虫剤処理水に産卵させるために使用され得る。
【0116】
蚊の侵襲の処理は、日常的であってもよいし、又は環境条件の変化(例えば、上昇した湿度若しくは温度)、季節変化、蚊幼虫の観察に基づいて、若しくは多数の成虫蚊に応じて予防的であってもよい。本発明による蚊殺幼虫剤は、蚊の繁殖活性が高い季節中に施用され得る。本発明による蚊殺幼虫剤は、蚊繁殖地の表面又は蚊繁殖地の温度が卵の孵化及び幼虫期の昆虫の生存に適した温度範囲に達したら、蚊繁殖地の表面に施用され得る。例えば、ある特定の実施形態では、第1の処理が、蚊幼虫の生息地として作用するのに適した水体の水温が16℃超、又は17℃超、又は18℃超、又は19℃超になったら施用され得る(蚊の生活環の幼虫期を維持するために必要な最低水温は具体的な蚊種によって変化する)。
【0117】
本発明による蚊殺虫剤は、約1日1回、約3日に1回、約1週間に2回、約1週間に1回、約2週間に1回、約1か月に1回、約2か月に1回、約3か月に1回、又は約1シーズンに1回施用され得る。ある特定の実施形態では、本発明による蚊殺虫剤が、第1の処理が所与の表面又は蚊繁殖地に施用される場合、第1の処理が施用された前日から数えて成虫期が終わる前に、第2の処理が同じ表面又は蚊繁殖地に施用され得るように計算された頻度で施用され得る。この方法で、第1の処理は、その時点に存在する幼虫に対して有効であり、第2の処理は、第1の処理中に成虫形態になったと思われる、第1の処理の直前の最後の世代の成熟蚊によって産卵された卵から生じた幼虫に対して有効である。未処理蚊繁殖地からの蚊が以前処理された蚊繁殖地で産卵するのを防ぐために、処理の反復が成虫生活環のタイムラインを越えて継続し得る。少なくとも1つのアクセス不能な蚊繁殖地を含む複数の蚊繁殖地が存在する、及び/又は蚊繁殖地を処理するいくらかの困難が存在する場合、この戦略が好ましく使用され得る。
【0118】
本発明による蚊殺虫剤は、それだけに限らないが、小滴、ミスト又はエアロゾルとして噴霧、浸漬、ブラッシング、ドレッシング、滴下、コーティング、展延、施用することを含む任意の適切な又は所望の手動又は機械的技術を使用して行われ得る。施用は、当技術分野で公知の任意の適切なディスペンサーを使用して実施され得る。ディスペンサーの例としては、それだけに限らないが、エアロゾルエミッター、手動ディスペンサー、トラック-、飛行機-又はボート-搭載噴霧器、農薬散布用飛行機、灌漑噴霧器、及びフローティングディスペンサーが挙げられる。エアロゾルエミッター及び手動ディスペンサーの例としては、それだけに限らないが、バックパック噴霧器、スプレーボトル、ブラシ、ドロッパー、スポンジ、加圧ディスペンサー、エアロゾル缶、ロールオンボトル、ワイプ、ティッシュ等が挙げられる。水体の縁で使用するためのディスペンサーは、水体のベッド又は水体の端で駆動され得るスパイク又は同様の装置の形態であり得る。その後、装置内の蚊殺虫剤は、水体に浸出して、存在する蚊又は幼虫を有効に処理し、接続給水系統又は蚊繁殖地の更なる侵襲を防止することができる。
【0119】
本発明による蚊殺虫剤を施用するために使用されるディスペンサー又はアプリケーターは再使用され得る(例えば、詰め替えられた後)。或いは、ディスペンサー又はアプリケーターは、それ自体が、分注又は分解される蚊殺虫剤担体として機能する単回使用装置又は物質であり得る。例えば、ディスペンサー又はアプリケーターは、ディスペンサー若しくはアプリケーターの構造又はディスペンサー若しくはアプリケーターからの蚊殺虫剤の制御放出の少なくとも1つに寄与する少なくとも1種の追加の物質(すなわち、担体)を含有する溶解可能なビヒクル、例えばパウチ、パック、ペレット、ブロック、顆粒、小胞、又はカプセルであり得る。
【0120】
本発明は以下の実施例によって更に例示される。
【実施例
【0121】
実施例
以下の実施例は、本発明を作製及び実行する好ましい様式の一部を記載している。しかしながら、これらの実施例は単なる例示目的のためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことが理解されるべきである。
【0122】
(実施例1)
予備的結果
材料及び方法
蚊の系統アノフェレス・ガンビエ感受性Kis(キスムを表す)(すなわち、殺虫剤に抵抗性ではない系統)及び今日、世界の抵抗性蚊の最大集団を構成する抵抗性蚊の系統AcerKis(有機リン及びカルバメートに抵抗性)において、相乗効果の試験を並行して行った。
【0123】
細胞モデル。使用した細胞モデルは、成虫雌蚊アノフェレス・ガンビエ(Kis及びAcerKis)の集団に対応する。これらの蚊から単離した神経細胞は、忌避剤及び殺虫剤の標的である膜受容体を発現するので、殺虫効果を有する分子の作用様式を試験するために一般的に使用される。更に、蚊の頭部に関する機械的解離プロトコルの開発により、これらの神経細胞を短期培養で維持することは容易である(図1参照)。
【0124】
カルシウムイメージング技術。本試験で使用された蚊ニューロンに適合したカルシウムイメージング技術は、相乗効果に関与する細胞内の細胞内カルシウムの変動の可視化を可能にする技術である。カルシウムは、カルシウム依存性細胞内シグナル伝達において必須の役割を果たし、殺虫剤に対する標的の感受性の制御に関与する(Raymondら、Curr. Med. Chem.、2017、24:2974~2987)。カルシウム特異的蛍光指示薬の使用のおかげで、神経細胞体内の細胞内カルシウムの変動の測定が可能である。蚊ニューロンの場合、蛍光マーカーFura-2-AMを使用した。これにより、細胞内カルシウムの変動の空間時間的レシオメトリック測定が可能になる。このいわゆる「二重励起/一重発光」プローブは、そのコンフォメーションに応じて、2つの異なる波長での伝達の特殊性を有する。Fura-2は、遊離形態では、380nmで最大励起波長を有する一方、カルシウム結合形態では、その励起波長は340nmである。両方の場合で、発せられた蛍光を記録するための発光波長は510nmである。したがって、この二重励起の使用により、異なる薬理学的薬剤の存在下で観察されるカルシウムの変動を反映する(図2参照)、340nmで発せられる蛍光と380nmで発せられる蛍光との間の比(R=340/380)を計算することが可能になる。
【0125】
幼虫試験プロトコル。本試験で使用された幼虫感受性試験又はカップ試験は、蚊幼虫の殺虫剤及び忌避剤に対する感受性を評価する。試験する物質、又は対照の場合には溶媒のみを添加した100mLの浸透水(osmosis water)を含有するカップに幼虫を入れた(図3参照)。25匹の幼虫の4つの容器(カップ)を、合計100匹の幼虫について1つの様式に曝露した。殺虫剤への曝露の24時間後に死亡率を観察した。使用された蚊は、標準化された条件下、MIVEGEC実験室で成長させた、アノフェレス・ガンビエ、感受性Kis参照系統及び抵抗性系統AcerKisの後期L3/初期L4幼虫(最後の幼虫期)であった。
【0126】
結果
混合物IR3535/チアクロプリド及びIR3535/チアメトキサムの施用後の蚊Kis及びAcerKisから単離されたニューロンに対するインビトロで観察された相乗効果。特にAcerKis蚊のニューロンで、チアクロプリド(図4参照)及びチアメトキサム(図5参照)の作用で、IR3535の相乗効果が実証された。使用された実験条件下で、最良の相乗作用を得ることを可能にする様々な化合物の濃度をTable 1(表1)に要約する。
【0127】
【表1】
【0128】
予備的試験は、三成分会合体IR3535/チアクロプリド/チアメトキサムが、IR3535と2種のネオニコチノイドの一方又は他方との二成分会合体よりもはるかに高い相乗作用を誘導することを明らかにした(図6参照)。これらの予備的試験はKis蚊のみで行われた。組み合わせて2種のネオニコチノイドを使用することの利点は、Kis系統について、10倍低い殺虫剤濃度で死亡率に対するより高い相乗効果が得られたことである。
【0129】
IR3535/チアクロプリド混合物とIR3535/チアメトキサム混合物の施用後のKis及びAcerKis蚊幼虫に対するインビボで観察された相乗効果。主な結果はKis及びAcerKis蚊幼虫で得られた。実際、使用された実験条件下では、成虫Kis及びAcerKis蚊に対する相乗効果を観察することは不可能であった。他方で、Kis及びAcerKis蚊幼虫では、IR3535/チアクロプリド混合物の施用が、Kis蚊幼虫で得られた効果と比較して、AcerKis蚊幼虫に対する極めて有意な相乗効果を誘導することが分かった(図7参照)。
【0130】
チアクロプリド/チアメトキサム混合物の施用後のAcerKis蚊幼虫に対するインビボで観察された相乗効果。Kis及びAcerKis蚊のニューロンにおいてインビボで行った試験の場合において上に示されるように、蚊幼虫AcerKisにおいてインビボで試験された2種のネオニコチノイドの会合体は、はるかに大きな効果をもたらす(図8参照)。
【0131】
(実施例2)
チアクロプリド、チアメトキサム及びIR3535の三成分相乗的組合せ
異なる膜標的及び/又は作用部位を有する化合物の三重組合せの主な利点により、特定の標的及び所与の殺虫剤について観察される抵抗性発達のサイクルを破壊することが可能になる。
【0132】
本試験は、蚊幼虫におけるインビボ実験に関する。実施した試験の主な目的は、標準感受性系統Kisと比較した、AcerKis(有機リン及びカルバメートに抵抗性)及びKdrKis(ピレスロイドに抵抗性)系統のアノフェレス・ガンビエ蚊幼虫の死亡率に対する三重組合せIR3535/チアクロプリド/チアメトキサムの効果を決定することであった。目的は、
1)抵抗性系統AcerKis及びKdrKisの幼虫の死亡率に対する、単独で又は組み合わせて使用された、IR3535、チアクロプリド及びチアメトキサムの効果の評価、
2)異なる系統の蚊の幼虫の死亡率に対して最適な増強相乗作用をもたらすために三重組合せで使用される化合物の各々の最良の濃度の決定
であった。
【0133】
ベクター防除において大いに興味が持たれるのが抵抗性系統AcerKis及びKdrKisであるので、これら2種の系統の幼虫でインビボでの幼虫感受性試験を最初に行った。感受性Kis系統はもっぱら実験室での参照系統である-これは自然界にはもはや存在しない。
【0134】
材料及び方法
殺虫剤及び忌避剤に対する幼虫の感受性のWHO認証試験の方法論。幼虫感受性試験(又はWHO認証カップ試験)を使用して、感受性Kis系統並びに抵抗性AcerKis及びKdrKis系統のアノフェレス・ガンビエ蚊幼虫の殺虫剤及び忌避剤に対する感受性を決定した。L3/L4期で選択された幼虫を、試験される物質又は対照の場合には溶媒のみの存在下で、100mLの浸透水を含有するカップに入れた。25匹の幼虫の4つのカップを、合計100匹の幼虫について1つの様式に曝露した。殺虫剤への曝露の24時間(jours)後及び48時間後に死亡率を観察した。本明細書で提示される死亡率を、アボットの式(Abbott、 J. Econom. Entomol.、1925、18:265~267)に従って、各反復の対照で観察された死亡率に対して補正した。
【0135】
結果
単独で使用した忌避剤IR3535に対する抵抗性系統AcerKis及びKdrKisのアノフェレス・ガンビエ幼虫の感受性の評価。幼虫感受性試験により、異なる濃度のIR3535でAcerKis及びKdrKis系統の蚊幼虫の死亡率のパーセンテージを評価することが可能になった。図9は、24時間及び48時間で決定した蚊幼虫死亡率に対する1000mg/L~4000mg/Lの間の範囲のIR3535濃度の効果を示している。これらの濃度で誘導された死亡率は5%未満である、すなわち、三成分会合体を試験するために検討される興味深い亜致死濃度である。実際、IR3535は、相乗剤として使用した場合、有意な死亡を引き起こさないはずである。
【0136】
単独で使用した、2種のネオニコチノイド殺虫剤、チアメトキサム及びチアクロプリドに対する抵抗性系統AcerKis及びKdrKisのアノフェレス・ガンビエ幼虫の感受性の評価。2種の抵抗性系統AcerKis及びKdrKisの蚊幼虫において、24時間及び48時間で、10%(LC10)~90%(LC90)の間の致死濃度を構成するために、0.001~0.2mg/Lの間の範囲にわたって、チアクロプリド及びチアメトキサムの異なる濃度を考慮することによって、図10に提示される濃度-死亡率回帰曲線(log-プロビット)を確立した。
【0137】
これらの曲線を確立した後、本発明者らは、2種の抵抗性系統AcerKis及びKdrKisの各々について、24時間及び48時間の2種の殺虫剤への曝露後の、幼虫において10%の亜致死死亡率をもたらす濃度(LC10)を推定したTable 2(表2)。これらのLC10を、試験する様々な組合せで使用した。実験の残りについては、低濃度で死亡を引き起こす殺虫剤組合せの最適化製剤を使用することが望ましいので、LC10のみを考慮する。
【0138】
【表2】
【0139】
2種のネオニコチノイド殺虫剤、チアメトキサム及びチアクロプリドの会合体に対する抵抗性系統AcerKis及びKdrKisのアノフェレス・ガンビエ幼虫の感受性の評価。
AcerKis及びKdrKis系統の幼虫に対する2種の殺虫剤の組合せの効果(24時間LC10)。幼虫感受性試験を使用して、抵抗性系統AcerKis及びKdrKsに対する二成分組合せチアクロプリド/チアメトキサムの効果を評価した。24時間の曝露後のLC10に対応する組合せ:チアクロプリド0.02mg/L及びチアメトキサム0.04mg/Lは、2種の抵抗性系統AcerKis(図11a)及びKdrKis(図11b)の幼虫において相乗効果を誘導することが分かった。この効果は、殺虫剤への曝露の24時間後により有意であった。
【0140】
AcerKis及びKdrKis系統の幼虫に対する2種の殺虫剤の組合せの効果(48時間LC10)。図12に示されるように、LC10に対応するが、このときは、曝露48時間後に決定したチアクロプリド/チアメトキサム会合体も、2種の抵抗性系統の幼虫において相乗効果を誘導した。これらの抵抗性系統に応じて、チアクロプリド濃度は、AcerKis及びKdrKis系統について、0.01mg/Lであり、チアメトキサム濃度は、AcerKisについて、0.01mg/Lであり、KdrKisについて、0.02mg/Lである。これらの条件下で、AcerKis系統について、曝露48時間後にチアクロプリド0.01mg/L及びチアメトキサム0.02g/Lの組合せで、最も強力な相乗作用が得られた(図12a)。この場合、二成分組合せは89.93%の死亡を引き起こすことが分かったが、単独で試験した殺虫剤は20%未満の死亡率を個別に誘導した(図12b)。KdrKis系統では、0.01mg/Lで使用したチアクロプリド及び同様に0.01mg/Lで使用したチアメトキサムを含む組合せへの曝露の48時間後に、最も強力な相乗作用が得られる(図12c)。死亡率のパーセンテージは75.02%であった。より高濃度のチアメトキサム(0.02mg/L)については、48時間で測定した相乗効果はそれほど重要ではなかった(図12d)。
【0141】
効果におけるこれらの差は、2種の抵抗性系統に固有の、SIFCIR実験室で最近実証された生理的代償機序によるものである(Perrierら、Communications Biology、2021、4:665)。
【0142】
会合体IR3535/チアクロプリド/チアメトキサムに対する抵抗性系統AcerKis及びKdrKisのアノフェレス・ガンビエ幼虫の感受性の評価
三成分組合せIR3535/チアクロプリド/チアメトキサムに対する幼虫の感受性の試験において、本発明者らは、IR3535の添加の効果を評価することができるようになるために、相乗効果及び50%未満の幼虫死亡率をもたらす殺虫剤の組合せを考えた。したがって、本発明者らは、0.01mg/Lのチアクロプリド、0.01mg/L(AcerKis)及び0.02mg/L(KdrKis)のチアメトキサムの濃度の組合せを試験した(図13)。
【0143】
0.02mg/Lのチアクロプリドと2000~4000mg/Lの間の範囲のIR3535との間の会合体は、抵抗性系統AcerKisの幼虫で観察される平均死亡率に対する相乗効果を誘導することが上で示された。本発明者らは、確実に最大の結果を得るために、IR3535の濃度範囲を広げることによってこれらの結論から進んだ。試験したIR3535の濃度範囲は1000~5000mg/Lの間であった。図13a図13bは、異なる濃度のIR3535の添加が、抵抗性系統AcerKis及びKdrKisにおいて、IR3535なしで使用した二成分組合せチアクロプリド/チアメトキサムと比較して有意に高い死亡率を誘導しないことを示している。これらの結果は、相乗的増強効果におけるカルシウムの役割に基づくいくつかの仮説を示唆している。本発明者らは、カルシウムが殺虫効果の最適化における必須の要素であるが、必要であるカルシウムのこの上昇は制御されなければならないことを示した。カルシウムの上昇が高すぎる場合、効果も、殺虫作用で観察され得る拮抗効果も存在しない(Moreauら、Scientific Reports、2020、10(1):1~15)。しかしながら、これらの3種の化合物、IR3535、チアクロプリド及びチアメトキサムは単独で、細胞内カルシウムを上昇させる。これらの結果から、蚊幼虫の死亡率に対する三重組合せの効果を最適化するために、三成分組合せ中のIR335濃度を低下させることを決定した。
【0144】
したがって、1~500mg/Lの間の範囲のより低濃度のIR3535を試験した(図14)。得られた結果は、相乗効果におけるカルシウム上昇の影響を明確に示している。AcerKis系統(図14a図14b)及びKdrKis(図14c図14d)について得られた結果から、以下の組合せ及び100mg/LのIR3535の最大濃度により、48時間で三成分会合体の有意な相乗効果が得られた:
- AcerKis系統:IR3535 100mg/L+チアクロプリド0.01mg/L+チアメトキサム0.01mg/L;及び
- KdrKis系統:IR3535 100mg/L+チアクロプリド0.01mg/L+チアメトキサム0.02mg/L。
【0145】
結論
試験の目的は、幼虫感受性試験を使用して、抵抗性系統、AcerKis及びKdrKisのアノフェレス・ガンビエ蚊幼虫の感受性に対する三成分会合体IR3535/チアクロプリド/チアメトキサムの異なる組合せの効果を特徴付けることであった。結果により、以下の組合せで、2種の抵抗性系統に対するこの会合体の有意な相乗効果を実証することが可能になった:
- AcerKis系統について:IR3535 100mg/L+チアクロプリド0.01mg/L+チアメトキサム0.01mg/L;及び
- KdrKis系統について:IR3535 100mg/L+チアクロプリド0.01mg/L+チアメトキサム0.02mg/L。
【0146】
本発明者らは、抵抗性アノフェレス・ガンビエ系統AcerKisの蚊幼虫の平均死亡率に対する、0.02mg/Lのチアクロプリドと2000~4000mg/Lの間の濃度範囲のIR3535の組合せの相乗効果を示していた。最新の結果は、40倍低いIR3535濃度による、48時間で得られる三重組合せの高い有効性を示している。後者の場合、抵抗性幼虫の死亡率は、二成分会合体のみで得られる死亡率の2倍にのぼる(図14a図14d)。処理の有効性を更に最適化するために、各殺虫剤の濃度の低下が可能であるかどうかはまだ分からない。
【0147】
他の実施形態
本発明の他の実施形態は、本明細書に開示される本発明の明細書又は実施の考察から当業者に明らかになるだろう。明細書及び実施例は単なる例示とみなされるべきであり、本発明の真の範囲は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【国際調査報告】