(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】カテーテル先端受動制御デバイスおよび関連するシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61M 25/09 20060101AFI20230724BHJP
A61M 25/00 20060101ALI20230724BHJP
A61M 25/01 20060101ALI20230724BHJP
【FI】
A61M25/09
A61M25/00 504
A61M25/00 510
A61M25/00 600
A61M25/01 510
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581331
(86)(22)【出願日】2021-06-14
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 US2021037234
(87)【国際公開番号】W WO2022005730
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
【住所又は居所原語表記】1 BECTON DRIVE, FRANKLIN LAKES, NEW JERSEY 07417-1880, UNITED STATES OF AMERICA
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ショーン ステイリー
(72)【発明者】
【氏名】メーガン シューリッヒ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン カール バークホルツ
(72)【発明者】
【氏名】イーピン マー
(72)【発明者】
【氏名】ユエチアン シュエ
【テーマコード(参考)】
4C267
【Fターム(参考)】
4C267AA03
4C267AA28
4C267AA32
4C267BB07
4C267BB12
4C267BB26
4C267BB40
4C267CC09
4C267FF03
4C267GG02
4C267GG23
4C267HH01
4C267HH04
4C267HH08
(57)【要約】
血管系内の流体経路を受動的に開くための血管アクセスデバイス。血管アクセスデバイスは、カテーテルおよびガイドワイヤを含んでもよい。カテーテルは、近位端と、先端と、それらの間のチューブの長さとを有してもよい。ガイドワイヤは、チューブの長さに沿って延在し得、ベント部分を含み得る。チューブの長さの少なくとも一部分は、カテーテルの先端が血管系内のオブストラクションを回避するように、ベント部分に実質的に適合してもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管系内でカテーテル先端を受動的に再配置するための血管アクセスデバイスであって、
近位端と、先端と、それらの間のチューブの長さとを備えるカテーテルと、
前記チューブの長さに沿って延在するガイドワイヤであって、ベント部分を含み、前記チューブの長さの少なくとも一部分は、前記カテーテルの前記先端がその中のオブストラクションを回避するように、前記血管系内の前記ベント部分に実質的に適合し、ガイドワイヤと、を備える、ガイドワイヤと、を備える、血管アクセスデバイス。
【請求項2】
前記ガイドワイヤが、前記カテーテルの表面の少なくとも一部分に結合される、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項3】
前記ガイドワイヤが、前記カテーテルの少なくとも一部分に埋め込まれる、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項4】
前記カテーテルは、追加の流体経路を提供するために、その中に配置された少なくとも1つのフェネストレーションをさらに備える、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項5】
前記ガイドワイヤが、ニチノールおよびフッ化スカンジウム(ScF3)のうちの1つを含む、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項6】
前記ガイドワイヤは、温度活性化材料を含む、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項7】
前記カテーテルおよび前記ガイドワイヤのそれぞれが、固有の熱膨張特性を備える、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項8】
前記ガイドワイヤが、前記カテーテルの前記先端が、前記血管系の水平軸に対して上向き、下向き、および横方向のうちの少なくとも1つに向けられるように、前記チューブの前記長さに沿って適応される、請求項1に記載の血管アクセスデバイス。
【請求項9】
流体経路を受動的に開くカテーテルアセンブリであって、
近位端と、遠位端と、それらの間に延在する管腔とを備えるカテーテルアダプタと、
前記遠位端から延在し、先端およびチューブの長さを含む、カテーテルであって、前記チューブの長さは、前記チューブの長さの第1の部分を含む初期形状を有する弾性ベント部分を含み、前記チューブの長さの前記第1の部分は、前記チューブの長さの第2の部分に対して位置ずれしている、カテーテルと、
前記チューブの長さを通って延在するように構成される針であって、前記針がそれを通って延在することに応答して、前記弾性ベント部分と前記カテーテルの先端が前記針に適合し、前記針が近位方向に引き抜かれることに応答して、前記カテーテルの先端が前記血管系内の前記チューブの長さと位置ずれしているように、前記弾性ベント部分が前記初期形状に戻る、針と、を備える、カテーテルアセンブリ。
【請求項10】
前記弾性ベント部分は、非対称断面を含む、請求項9に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項11】
前記弾性ベント部分は、延在された長さを含む、請求項9に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項12】
前記弾性ベント部分は、少なくとも1つの接合部を含む、請求項9に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項13】
カテーテルは、前記チューブの長さに沿って延在するガイドワイヤを備える、請求項9に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項14】
前記ガイドワイヤが、前記カテーテルの前記表面の少なくとも一部分に結合される、請求項13に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項15】
前記ガイドワイヤが、前記カテーテルの壁の少なくとも一部分に埋め込まれる、請求項13に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項16】
前記弾性ベント部分は、前記カテーテルの先端を、その水平軸に対して前記血管系内で上向きに向ける、請求項9に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項17】
前記弾性ベント部分は、前記カテーテルの先端を、その水平軸に対して前記血管系内で下方に向ける、請求項9に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項18】
前記弾性ベント部分は、前記カテーテルの先端を、その水平軸に対して前記血管系内で横向きに向ける、請求項9に記載のカテーテルアセンブリ。
【請求項19】
流体経路を受動的に開くカテーテルアセンブリであって、
近位端と、先端と、それらの間のチューブの長さとを備えるカテーテルと、
前記チューブの長さに結合される熱エレメントであって、前記血管系内に配置されることに応答して形状を変化させるように温度活性化される、熱エレメントと、を備える、カテーテルアセンブリ。
【請求項20】
前記カテーテルおよび前記熱エレメントは、単一のユニットとしてモノリシックに形成される、請求項19に記載のカテーテルアセンブリ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、流体を注入する、及び/または患者の血管系から血液を採取するための血管アクセスデバイスまたは静脈内カテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
カテーテルは、一般的にさまざまな輸液治療に用いられる。例えば、カテーテルは、生理食塩水、さまざまな薬剤、および総合的な非経口栄養のような流体を患者へと注入するために使用し得る。カテーテルはまた、血液サンプルを得るために患者から血液を取り出すために使用され得る。
【0003】
一般的なカテーテルは、オーバーニードル方式の末梢静脈(「IV」)カテーテルである。オーバーニードルカテーテルは、その名のとおり、鋭利な遠位端を有する導入針の上に装着することができるカテーテルである。カテーテル及び導入針は、導入針の遠位先端が、カテーテルの遠位先端を越えて延び、針の斜角(bevel)を患者の皮膚から離れる方向に向くように組み立てられ得る。カテーテルと導入針は、通常、皮膚から浅い角度で患者の血管系に挿入される。
【0004】
血管内の導入針および/またはカテーテルの適切な配置を検証すべく、臨床医は、一般的に、カテーテルアセンブリのフラッシュバックチャンバー内に血液の「フラッシュバック」があることを確認する。針の配置が一度確認されると、臨床医は、血管系内の流れを一時的に塞いで、針を除去し、後の採血、輸液またはプローブアクセスのためにカテーテルを定位置に残し得る。
【0005】
しかしながら、カテーテルの機能は、いくつかの理由、特に血管系内のカテーテルの滞留時間が長い場合に妨げられる可能性がある。より一般的には、経時的に、カテーテルは、流体の流れを妨げる合併症および閉塞の影響を受けやすくなり得る。例えば、カテーテルは、フィブリン鞘、血栓、静脈壁、または弁の存在により、その先端で閉塞してもよい。その結果、カテーテルは、カテーテルの配置時に血液サンプルを取得するために一般的に使用されるが、カテーテルの滞留期間中に血液サンプルを取得するために使用されることはあまりない。カテーテル留置期間中に血液サンプルが所望される場合、典型的には、追加の針スティックを使用して、採血のための静脈アクセスを提供し、患者に追加の疼痛を引き起こすとともに、材料コストを増加させる。しかしながら、静脈内でカテーテル先端を移動または再配置するために牽引を適用することは、閉塞およびオブストラクションを回避することによって、採血成功およびカテーテル機能を大幅に改善することが示されている。
【0006】
本明細書で請求される主題は、任意の欠点を解決する実施形態や、上記のような環境でのみ動作する実施形態に限定されない。むしろ、この背景技術は、本明細書で説明されるいくつかの実施例を実行し得る技術領域の一例を示すために提供されるにすぎない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかしながら、様々な合併症及び閉塞は、カテーテルを通る流体の流れを妨げ得、したがって、カテーテルの機能および/または性能を損なう。例えば、カテーテルは、フィブリン鞘、血栓、静脈壁、または弁の存在により、その先端で閉塞し得る。カテーテル先端を患者の血管系内に再配置して流体経路を開くことで、カテーテルの機能が大幅に改善され、採血が成功し得る。
【0008】
本明細書のいくつかの実施形態は、カテーテルの先端を受動的に再配置し、流体経路を開くことによって、吸引、採血、および注入を可能にする血管アクセスデバイスを開示する。いくつかの実施形態では、血管系内の流体経路を受動的に開くための血管アクセスデバイスは、カテーテルおよびガイドワイヤを含み得る。いくつかの実施形態では、カテーテルは、近位端、先端、および近位端と先端の間のチューブの長さを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、チューブの長さに沿って延在し得、ベント部分を含み得る。いくつかの実施形態では、チューブの長さの少なくとも一部は、カテーテルの先端がその中の閉塞を回避し得るように、血管系内のベント部分に実質的に適合してもよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、カテーテルの表面の少なくとも一部に結合されてもよい。あるいは、いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、カテーテルの少なくとも一部に埋め込まれてもよい。カテーテルのいくつかの実施形態は、追加の流体経路を提供するためにその中に配置された1つまたは複数のフェネストレーション(fenestrations)を含んでもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、ニチノールまたはフッ化スカンジウム(ScF3)などの温度活性化材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルおよびガイドワイヤは、独自の熱膨張特性を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、カテーテルの先端が血管系の水平軸に対して上向き、下向き、または横方向に向けられるように、チューブの長さに沿って適応されてもよい。
【0011】
いくつかの実施形態は、流体経路を受動的に開くためのカテーテルアセンブリを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルアセンブリは、近位端と、遠位端と、近位端と遠位端の間に延在する管腔とを有するカテーテルアダプタを含んでもよい。いくつかの実施形態において、カテーテルは、カテーテルアダプタの遠位端から延在してもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルは、先端およびチューブの長さを含んでもよい。いくつかの実施形態では、チューブの長さは、弾性ベント部分を含んでもよい。弾性ベント部分のいくつかの実施形態は、チューブの長さの第1の部分がチューブの長さの第2の部分に対して位置ずれている初期形状を含んでもよい。
【0012】
カテーテルアセンブリのいくつかの実施形態は、チューブの長さを通して延在するように構成された針をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、弾性ベント部分およびカテーテルの先端は、そこを通って延在する針に応答して針に適合してもよい。いくつかの実施形態では、針が近位方向に引き抜かれることに応答して、弾性ベント部分は、カテーテルの先端が血管系内のチューブの長さと位置ずれるように、初期形状に戻ってもよい。
【0013】
いくつかの実施形態では、弾性ベント部分は、非対称断面、延在された長さ、および/または1つ以上の接合部を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルは、チューブの長さに沿って延在するガイドワイヤを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、カテーテルの表面の少なくとも一部分に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤは、カテーテルの壁の少なくとも一部分に埋め込まれてもよい。
【0014】
いくつかの実施形態では、弾性ベント部分は、血管系の水平軸に対してカテーテルの先端を上方に向けてもよい。いくつかの実施形態では、弾性ベント部分は、カテーテルの先端を水平軸に対して下方に向けてもよい。いくつかの実施形態では、弾性ベント部分は、カテーテルの先端を水平軸に対して横方向に向けてもよい。
【0015】
いくつかの実施形態では、流体経路を受動的に開くカテーテルアセンブリは、カテーテルおよび熱エレメントを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルは、近位端、先端、および近位端と先端の間のチューブの長さを含み得る。いくつかの実施形態では、熱エレメントは、チューブの長さに結合されてもよい。熱エレメントのいくつかの実施形態は、血管系内に配置されることに応答して形状を変化させるために温度活性化されてもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルおよび熱エレメントは、単一のユニットとしてモノリシックに形成されてもよい。
【0016】
上述の概略の説明、及び、以下の詳細な説明の両方は、例示であり、また、説明のためのものであり、特許請求された発明を限定するものではないことが理解されるべきである。さまざまな実施形態は、図に示されている配置及び手段に限定されないことが理解されるべきである。また、実施形態は、組み合わされてよいこと、又は、他の実施形態が用いられてよいこと、及び、そのように特許請求されていない限り、本発明の様々な実施形態の範囲から逸脱することなく構造変更がなされてよいことが理解されるべきである。従って、以下の詳細な説明は、限定的な意味で解釈されてはならない。
【0017】
例示的な実施形態は、添付の図面を使用することにより、さらに具体的かつ詳細に記載および説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、いくつかの実施形態による、事前成形ガイドワイヤを有する例示的なカテーテルを示す、例示的な血管アクセスデバイスの断面図である。
【
図2】
図2は、いくつかの実施形態による、別の例示的な血管アクセスデバイスの断面図であり、それを通って延在する例示的な針を示す。
【
図3】
図3は、
図2の血管アクセスデバイスの断面図であり、断面は、図示された線に沿って撮影される。
【
図4】
図4は、いくつかの実施形態による、例示的なカテーテルに結合された例示的な熱エレメントを含む例示的な血管アクセスデバイスの側面斜視図である。
【
図5】
図5は、いくつかの実施形態による、血管系内に配置された接合カテーテルを含む別の例示的な血管アクセスデバイスの側面斜視図である。
【
図6】
図6は、いくつかの実施形態による、延在された長さを有するカテーテルを含む例示的な血管アクセスデバイスの側面斜視図である。
【
図7A】
図7Aは、いくつかの実施形態による、非対称断面を有する例示的なカテーテルの断面図である。
【
図7B】
図7Bは、いくつかの実施形態による、固有の熱特性を有する例示的な材料で埋め込まれた例示的なカテーテルの断面図である。
【
図8】
図8は、いくつかの実施形態による例示的なカテーテルに沿って延在する例示的なガイドワイヤを示す、例示的なカテーテルアダプタの上面斜視図である。
【
図9A】
図9Aは、いくつかの実施形態による、例示的な曲がった部分を有する例示的なガイドワイヤの斜視図である。
【
図9B】
図9Bは、いくつかの実施形態による、別の例示的なベント部分を有する別の例示的なガイドワイヤの斜視図である。
【
図9C】
図9Cは、いくつかの実施形態による、別の例示的なベント部分を有する別の例示的なガイドワイヤの斜視図である。
【
図9D】
図9Dは、いくつかの実施形態による、別の例示的なベント部分を有する別の例示的なガイドワイヤの斜視図である。
【
図9E】
図9Eは、いくつかの実施形態による、別の例示的なベント部分を有する別の例示的なガイドワイヤの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「遠位」は、デバイスを患者と接触させ、患者に近づける臨床医から離れる方向を指す。「近位」という用語は、デバイスを患者と接触させる臨床医により近く、患者からより遠くなる方向を指す。したがって、例えば、最初に患者の身体に触れるカテーテルの端部は遠位端であり、一方、カテーテルの反対側の端部はカテーテルの近位端である。
【0020】
前述したように、特に血管系内のカテーテルの滞留時間が延在された場合、カテーテルの機能はいくつかの理由で妨げられ得る。例えば、カテーテルは、フィブリン鞘、血栓、静脈壁、または弁の存在により、その先端で閉塞してもよい。特に、カテーテルは、静脈内に配置されると「S」形状を形成する傾向があり、カテーテルの先端を反対側の静脈壁に固定させる。静脈壁とカテーテルとの間のそのような近接性は、2つの間の相対的な動きを促進し得、静脈壁および/またはカテーテル先端上の血栓の形成をもたらす。さらに、カテーテル先端が静脈壁に近接すると、カテーテル先端の近くで静止し、それによって血栓の形成を促進してもよい。
【0021】
静脈内でカテーテル先端を移動または再配置するために牽引を適用することは、そのような閉塞およびオブストラクションを回避することによって、採血の成功およびカテーテルの機能を大幅に改善し得る。本明細書に記載の実施形態は、血管系内のカテーテルの先端を静脈壁から離れた位置に受動的に再配置して、カテーテル先端の近くで血栓が形成される可能性を最小限に抑え、それによって流体経路の開存性を延在することによって、吸引、採血、および/または注入を可能にし得る。
【0022】
ここで
図1を参照すると、いくつかの実施形態では、カテーテルアクセスデバイス100は、閉塞を回避し、採血または流体送達のための流体経路を開くために、患者の血管系122内のカテーテル102の先端106の位置を制御するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、末梢IVカテーテル102、末梢挿入型中心カテーテル102、または正中線カテーテル102を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、前もって患者の血管系122に挿入され得、血管系122内に留置され得る。そのような場合、カテーテル116は、破片(例えば、フィブリンまたは血栓)による閉塞、および/またはカテーテル102の先端106の血管系122への付着の影響を受けやすいかもしれない。したがって、カテーテル102を使用した採血は困難であり得る。
【0023】
本明細書のいくつかの実施形態は、血管系122内でカテーテル102の先端106を受動的に再配置して流体経路を開くことによって、吸引、採血、および/または注入を容易にする血管アクセスデバイス100を開示する。
図1に示されるように、いくつかの実施形態では、血管系122内の流体経路を受動的に開くための血管アクセスデバイス100は、カテーテル102および1つまたは複数のガイドワイヤ110を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、近位端104、先端106、および近位端と先端の間のチューブ108の長さを含んでもよい。
【0024】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、カテーテル102の少なくとも一部分に埋め込まれてもよい。ガイドワイヤ110のいくつかの実施形態は、ガイドワイヤ110がチューブ108の長さに沿って部分的にまたは完全に延在するように、カテーテル102内で共押出されてもよい。他の実施形態では、ガイドワイヤ110は、カテーテル102の外面116または内面124の少なくとも一部分に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、例えば、挿入部位でのカテーテル102のねじれを防止してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態では、カテーテル102は、追加の流体経路を提供するための1つまたは複数のフェネストレーション(fenestrations)118を含んでもよい。いくつかの実施形態では、フェネストレーション118は、チューブ108の長さに沿って、および/またはカテーテル102の先端106に配置されてもよい。
【0026】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、ベント部分112を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、弾性または形状メモリワイヤ、または独自の予め形成された形状を有する他の適切な材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、曲線または別の適切な非線形形状に予め形成されてもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、熱成形、機械的成形、または別の適切な成形技術を介して予め形成されてもよい。
【0027】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、金属、金属合金、ポリカーボネート、プラスチック、または他の適切な材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、チューブ108の長さの少なくとも一部分は、血管系122内でガイドワイヤ110のベント部分112に実質的に適合してもよい。このようにして、カテーテル102の先端106は、血管系122内の任意の閉塞または閉塞部114から離れて受動的に向けられてもよい。
【0028】
ここで
図2を参照すると、いくつかの実施形態では、カテーテル102は、カテーテル102の長さを通して延在し得る針210を受容するように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、針210の鋭い遠位先端212は、カテーテル102を血管系122に導入するために、カテーテル102の遠位端206で露出されてもよい。
【0029】
いくつかの実施形態では、カテーテル102は、ベント部分112を含むガイドワイヤ110の形状に適合してもよい。いくつかの実施形態では、ベント部分112を含むカテーテル102の少なくとも一部分は、針210がそれを通って延在するときに針210の形状に適合してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、カテーテル102および/またはガイドワイヤ110のベント部分112は、針210がカテーテル102に挿入され、それを通って遠位方向に前進するにつれてまっすぐにされ得る。
【0030】
いくつかの実施形態では、カテーテル102から針210を取り外すと、ベント部分112は、その初期形状に戻ってもよい。次に、カテーテル102のいくつかの実施形態は、ガイドワイヤ110およびベント部分112の予め形成された形状に適合してもよい。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110のベント部分112は、1つまたは複数の曲げを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ベント部分112は、先端106でまたはそれに近接する曲がりを含んでもよい。いくつかの実施形態では、ベント部分112は、チューブ108の長さに沿ってより近位に1つまたは複数の曲がりを提供してもよい。一実施形態では、例えば、ベント部分112は、チューブ108の長さに沿った「s」曲線形状を提供するために、複数の曲がりを含んでもよい。
【0031】
このようにして、カテーテル102のいくつかの実施形態は、カテーテル102の先端106が血管系122内のチューブ108の長さと位置ずれするように、カテーテル102の先端106を受動的に移動させる。いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110の予め形成された形状は、カテーテル102の先端106を血管系122の中心に向かって持ち上げてもよい。このようにして、カテーテル102の先端106は、例えば、血栓などの静脈周囲の閉塞部114から離れるように向けられてもよい。
【0032】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、カテーテル102の外面に結合された材料のストリップを含んでもよい。他の実施形態では、ガイドワイヤ110は、カテーテル102とストライプ状に押し出されてもよい。ガイドワイヤ110のいくつかの実施形態は、血管系122内に配置されることに応答して曲がるように構成されてもよい。例えば、以下でより詳細に説明されるように、いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、血管系122の温度上昇に応答して曲がるように構成されてもよい。いくつかの実施形態では、そのような曲げは、針210がカテーテル102から取り外されるときに、先端106を血管系122の壁、天井、または床から離して持ち上げてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、熱エレメントまたは任意の適切な温度活性化材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、温度活性化材料は、針210がカテーテル102から取り外されると、その予め形成された形状に戻るように構成された、予め形成されたまたは他の形状記憶金属またはプラスチックのストリップを含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル102およびガイドワイヤ110は、独自の熱膨張特性を含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ110は、フッ化スカンジウム(ScF3)または温度の上昇と共に収縮し得る別のそのような材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、フッ化スカンジウムまたは他の適切な材料は、その周囲に沿ってカテーテル102のチューブの上部セクションに配置されてもよい。このようにして、いくつかの実施形態では、材料の収縮は、カテーテル先端106を静脈壁から離れるように持ち上げてもよい。他の実施形態では、ガイドワイヤ110は、ニチノールまたは他の同様のまたは適切な材料を含んでもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、1つより多くのガイドワイヤ110がカテーテル102に埋め込まれても、または結合されてもよい。
図2および3に示されるように、いくつかの実施形態では、複数のガイドワイヤ110a、110bは、カテーテル102の外面116の反対側に埋め込まれてもよい。いくつかの実施形態では、複数のガイドワイヤ110は、針210を取り外す際にカテーテル102の形状を再構成するために適用される力を増加させるように同様に形作られてもよい。
【0035】
いくつかの実施形態では、1つまたは複数のガイドワイヤ110は、カテーテル102の先端106が血管系122の水平軸120に対して上向き、下向き、または横方向に向けられ得るように、チューブ108の長さに沿って適応され得る。いくつかの実施形態では、1つまたは複数のガイドワイヤ110は、チューブ108の長さに沿って1つまたは複数の他のガイドワイヤ110に対して同様にまたは一意に適応されてもよい。
図3は、ライン300に沿って取られた
図2のカテーテル102およびガイドワイヤ110の断面を示す。示されるように、複数のガイドワイヤ110A、110Bは、カテーテル壁に対して均等に間隔を保たせてもよい。他の実施形態では、複数のガイドワイヤ110a、110bは、チューブ108の長さの受動曲げおよび/またはベント部分112の形成を促進するために、一緒にグループ化されてもよく、そうでなければ、所望に応じて配置または適応されてもよい。
【0036】
ここで
図4を参照すると、いくつかの実施形態は、流体経路を受動的に開くためのカテーテルアセンブリ200を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテルアセンブリ200は、近位端204、遠位端206、および近位端と遠位端の間に延在する管腔を有するカテーテルアダプタ202を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル102は、カテーテルアダプタ202の遠位端206から延在してもよい。
【0037】
いくつかの実施形態では、カテーテル102は、近位端104、先端106、および近位端と先端の間のチューブ108の長さを含んでもよい。いくつかの実施形態では、チューブ108の長さは、チューブ108の長さに沿った柔軟性を促進するために、1つまたは複数の機械的特徴を含んでもよい。いくつかの実施形態では、機械的特徴は、チューブ108の長さが血管系122内に配置されるとき、ベント部分112を作成するための柔軟性を促進してもよい。
【0038】
例えば、
図4に示されるように、カテーテル102のいくつかの実施形態は、待機期間中に先端106が血管系122内の実質的に中心の位置に静止することを可能にするために、延在された長さ400を有するカテーテル102を含んでもよい。いくつかの実施形態では、延在された長さ400は、血管系122内のカテーテル102の先端106の受動的な持ち上げを容易にしてもよい。いくつかの実施形態では、延在された長さ400は、オブストラクション202を回避するために、血管系122内のカテーテル102の先端106の受動的な再配置を容易にしてもよい。
【0039】
ここで
図5を参照すると、カテーテル102のいくつかの実施形態は、カテーテル102が血管系122内に配置されるときに、ベント部分112を形成するための1つまたは複数の接合部500、ヒンジ、曲げ、または他の適切な機械的接合部を含んでもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の接合部500は、チューブ108の長さに結合され得るか、または一体化され得る。接合部500のいくつかの実施形態は、チューブ108の長さに対する先端106の移動を容易にするために、カテーテル102の先端106に近接して配置されてもよい。他の実施形態では、接合部500は、チューブ108の長さに沿って配置されてもよい。接合部500のいくつかの実施形態は、双方向または多方向であってもよい。いくつかの実施形態では、1つまたは複数の接合部500は、カテーテル102の先端106を単一の方向に促してもよい。
【0040】
ここで
図6を参照すると、いくつかの実施形態では、カテーテル102は、チューブ108の長さに結合または統合された1つまたは複数の熱エレメント600を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル102および熱エレメント600は、単一のユニットとしてモノリシックに形成されてもよい。
【0041】
熱エレメント600のいくつかの実施形態は、チューブ108の長さに対して先端106を受動的に移動および/または方向転換することを容易にするために、先端106に近接して配置されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、熱エレメント600は、血管系122内の温度に応答して形状を変化させてもよい。いくつかの実施形態では、この形状変化は、カテーテル102の先端106を、チューブ108の長さに対して移動させてもよい。もちろん、いくつかの実施形態では、熱エレメント600のうちの1つまたは複数は、先端106および近位端104の中間の任意の位置にチューブ108の長さに沿って配置されてもよい。
【0042】
図2を参照して前述したように、熱エレメント600のいくつかの実施形態は、形状を変化させることによって温度の変化に反応する熱特性を有する金属、プラスチック、または他の適切な材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、熱エレメント600は、周囲環境の温度に応答して膨張または収縮してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、熱エレメント600は、ニチノール、フッ化スカンジウム(ScF3)、または別の適切な材料を含んでもよい。
【0043】
ここで
図7Aを参照すると、いくつかの実施形態では、カテーテル102は、非対称断面702を有するカテーテル壁700を含み得、それによって、チューブ108の長さに沿ってベント部分112をもたらす。いくつかの実施形態では、ベント部分112は、非対称断面702を含むカテーテル102に加えて、1つまたは複数の他の機械的特徴またはそれに結合された、またはそれと統合された熱エレメント600から生じてもよい。
【0044】
例えば、いくつかの実施形態では、カテーテル102は、チューブ108の長さに沿って延在するガイドワイヤを含んでもよい。いくつかの実施形態では、チューブ108の長さは、ガイドワイヤ110がその中に埋め込まれた非対称702カテーテル壁700を含んでもよい。このようにして、弾性ベント部分112は、ガイドワイヤ110の形状及び適応、ならびにカテーテル壁700の非対称断面702の両方から生じてもよい。
【0045】
ここで
図7Bを参照すると、他の実施形態では、カテーテル102は、カテーテル壁700に結合されるか、または埋め込まれる1つまたは複数の熱エレメント600を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カテーテル壁700は、血管系122内の熱エレメント600の移動をさらに支持してベント部分112を形成するために非対称702であってもよい。他の実施形態では、カテーテル壁700は、実質的に対称な断面プロファイルを含んでもよい。
【0046】
示されるように、いくつかの実施形態では、複数の熱エレメント600は、カテーテル壁700に埋め込まれてもよく、またはカテーテル壁700と共押出されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の熱エレメント600は、カテーテル壁700に結合されてもよい。いくつかの実施形態では、複数の熱エレメント600は、カテーテル壁700の周囲に均等に間隔を空けて保たれてもよい。他の実施形態では、複数の熱エレメント600は、チューブ108の長さの受動曲げおよび/またはベント部分112の形成を促進するために、一緒にグループ化されてもよく、そうでなければ、所望に応じて配置または適応されてもよい。
【0047】
ここで
図8を参照すると、いくつかの実施形態では、血管系122は、水平軸120を含んでもよい。カテーテル102のベント部分112のいくつかの実施形態は、カテーテル102の先端106を血管系122内で水平軸120に対して実質的に横方向に上方に向けてもよい。いくつかの実施形態では、ベント部分112は、血管系122内でカテーテル102の先端106を、水平軸120に対して実質的に横方向に下方に向けてもよい。いくつかの実施形態では、ベント部分112は、水平軸120に対して血管系122内でカテーテル102の先端106を横方向に向けてもよい。いずれにせよ、ベント部分112は、針210が引き抜かれるか、またはそうでなければ取り外された後、カテーテル102の先端106が血管系122内で受動的に再適応されて流体経路をクリアすることができるように、実質的に弾性があり得、および/または温度活性化され得る。
【0048】
ここで
図9A-Eを参照すると、弾性ベント部分112のいくつかの実施形態は、初期形状900a、900b、900c、900d、900eを含んでもよい。いくつかの実施形態では、初期形状900a、900b、900c、900d、900eは、チューブ108の長さの第2の部分904に対して位置ずれている第1の部分902を有するチューブ108の長さを含み得、それによって、ベント部分112を形成する。いくつかの実施形態では、第2の部分904は、第1の部分902から延在してもよい。いくつかの実施形態では、チューブ108の長さは、第2の部分904から延在する第3の部分906をさらに含んでもよい。第3の部分906のいくつかの実施形態は、第2の部分904に対して位置ずれていてもよい。いくつかの実施形態では、第3の部分906は、第1の部分902と整列または実質的に整列されてもよい。他の実施形態では、第3の部分906は、第1の部分902に対して位置ずれていてもよい。
【0049】
いずれにしても、弾性ベント部分112は、血管系122の水平軸120に対して実質的に横方向にカテーテル102の先端106を上方に押し上げるように構成された初期形状900a、900b、900c、900d、900eを含んでもよい。いくつかの実施形態では、初期形状602 900a、900b、900c、900d、900eは、カテーテル102の第1の部分902および/または第2の部分904に対して、カテーテル102の先端106を上方に押し上げてもよい。このようにして、カテーテル102のいくつかの実施形態は、カテーテル102の先端106が、血管系122内に配置または配置されたオブストラクション202との干渉を受動的に回避することを可能にし得る。
【0050】
本明細書で記載される全ての例及び条件付き文言は、本発明、および技術を促進するために発明者によって提供される概念を理解することの助けとなるような教育的目的を意図しており、その具体的に列挙されている例及び条件に限定されないものとして解釈されるべきである。本発明の実施形態について詳細に説明されているが、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更、置換、および改変が本明細書にされ得ることを理解されたい。
【国際調査報告】