(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】セルフレーム、電気化学セル、セルスタック、および動作方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20230724BHJP
H01M 8/0273 20160101ALI20230724BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/0273
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581414
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2021068187
(87)【国際公開番号】W WO2022003106
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】102020117367.9
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502155482
【氏名又は名称】フラウンホーファー-ゲゼルシャフト ツァー フェルデルング デア アンゲヴァンテン フォーシャング アインゲトラーゲナー フェアアイン
【氏名又は名称原語表記】FRAUNHOFER-GESELLSCHAFT ZUR FORDERUNG DER ANGEWANDTEN FORSCHUNG E.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】ヤン ギルシュック
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA10
5H126EE11
5H126FF03
5H126GG06
5H126JJ02
5H126RR01
(57)【要約】
特にレドックスフロー電池の、電気化学セル(2)を形成するためのセルフレーム(4)が説明および図示される。セルフレーム(4)は少なくとも1つのセル内部(5)の周囲を取り囲み、電解液をセル内部(5)に給送するための給送チャネル(13)を少なくとも1つ備える。給送チャネル(13)は、給送される電解液のための、セル内部(5)から隔てられた入口開口(18)と、給送される電解液をセル内部(5)に流出させるための、セル内部(5)に隣接する出口開口(19)とを有する。出力密度の増加を可能にするために、給送チャネル(13)は、電解液を給送チャネル(13)経由でセル内部(5)に輸送するための、入口開口(18)を出口開口(19)に少なくとも部分的に接続する少なくとも1つの輸送チャネル(21)と、給送される電解液を、輸送チャネル(21)内の給送される電解液の輸送方向(T)とは逆に、部分的に戻すための少なくとも1つの戻りチャネル(22)とを有する。各戻りチャネル(22)は、戻される電解液を流入させるための少なくとも1つの流入開口(25)と戻される電解液を流出させるための流出開口(26)とを介して、輸送チャネル(21)と流体接触している。これら開口は、給送される電解液の輸送方向(T)に互いに隔てられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特にレドックスフロー電池の、電気化学セル(2)を形成するためのセルフレーム(4)であって、前記セルフレーム(4)は、少なくとも1つのセル内部(5)の周囲を取り囲み、電解液を前記セル内部(5)に給送するための給送チャネル(13)を少なくとも1つ備え、前記給送チャネル(13)は、前記給送される電解液のための、前記セル内部(5)から隔てられた入口開口(18)と、前記給送される電解液を前記セル内部(5)に流出させるための、前記セル内部(5)に隣接する出口開口(19)とを有する、セルフレーム(4)において、
前記給送チャネル(13)は、前記電解液を前記給送チャネル(13)経由で前記セル内部(5)に輸送するための、前記入口開口(18)を前記出口開口(19)に少なくとも部分的に接続する、少なくとも1つの輸送チャネル(21)と、前記給送される電解液を、前記輸送チャネル(21)内の前記給送される電解液の輸送方向(T)とは逆に、部分的に戻すための少なくとも1つの戻りチャネル(22)とを有することと、前記戻りチャネル(22)は、前記戻される電解液を流入させるための少なくとも1つの流入開口(25)と前記戻される電解液を流出させるための流出開口(26)とを介して、前記輸送チャネル(21)と流体接触し、前記流入開口と前記流出開口とは、前記給送される電解液の前記輸送方向(T)に、互いに隔てられていることと、
を特徴とするセルフレーム。
【請求項2】
前記輸送チャネル(21)は、前記戻りチャネルの前記少なくとも1つの流入開口(25)と前記少なくとも1つの流出開口(26)との間に少なくとも部分的に流液チャンバ(27)を有するので、前記給送される電解液は、少なくとも2つの異なる主流で、交互に、好ましくは少なくともほぼ一定の頻度で、前記流液チャンバ(27)を通って前記出口開口(19)の方向に流れることができ、この結果として、前記出口開口(19)から少なくとも2つの異なる出口方向で前記セル内部(5)に流入することと、好ましくは、前記流液チャンバ(27)は、前記輸送チャネル(21)を通る体積流量の増加に伴い、前記頻度が少なくともほぼ直線的に増加するように、設計されることと、を特徴とする、請求項1に記載のセルフレーム。
【請求項3】
前記輸送チャネル(21)は、前記戻りチャネル(22)の前記少なくとも1つの流入開口(25)と前記少なくとも1つの流出開口(26)との間に少なくとも部分的に流液チャンバ(27)を有し、前記流液チャンバ(27)は、前記給送チャネル(13)の、および/または前記輸送チャネル(21)の、前記入口開口(18、23)の、および/または前記出口開口(19、24)の、自由流過横断面の断面積の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも2.5倍、特に少なくとも3倍、に相当する断面積を有する自由流過横断面を少なくとも部分的に形成することを特徴とする、請求項1または2に記載のセルフレーム。
【請求項4】
前記給送チャネル(13)の前記出口開口(19)の前記自由流過横断面の前記断面積が前記流液チャンバ(27)の前記出口開口(28)の前記自由流過横断面の前記断面積より大きいことと、好ましくは、前記輸送チャネル(21)は、前記給送される電解液の前記輸送方向(T)に前記流液チャンバ(27)の後で、好ましくは直後で、漏斗状に広がる、特に前記給送チャネル(13)の前記出口開口(19)に合体する、ように設計されていることと、を特徴とする、請求項2または3に記載のセルフレーム。
【請求項5】
前記給送チャネル(13)は、前記給送される電解液を、前記輸送チャネル(21)内の前記給送される電解液の前記輸送方向(T)とは逆に、部分的に戻すための戻りチャネル(22)を少なくとも2つ有することと、前記少なくとも2つの戻りチャネル(22)は前記輸送チャネル(21)の相対する側に配置されることと、好ましくは、前記少なくとも2つの戻りチャネル(22)は互いに接続されていないことと、を特徴とする、請求項1~4の何れか一項に記載のセルフレーム。
【請求項6】
少なくとも2つの、好ましくは少なくとも4つの、特に少なくとも6つの、給送チャネル(13)が設けられていることと、好ましくは、前記複数の給送チャネル(13)は前記セルフレーム(4)の同じ側に設けられている、および/または互いに接続されていない、ことと、更に好ましくは、前記複数の給送チャネル(13)は前記流入側において共通の供給ライン(11)に接続されていることと、を特徴とする、請求項1~5の何れか一項に記載のセルフレーム。
【請求項7】
開放細孔構造を有する充填要素が前記セル内部(5)に設けられ、前記充填要素は、好ましくは前記セル内部(5)を少なくともほぼ完全に満たすことと、好ましくは、前記充填要素は、グラファイト製のフェルト様の一体型充填要素として、および/または電極(6)として、設計されていることと、を特徴とする、請求項1~6の何れか一項に記載のセルフレーム。
【請求項8】
少なくとも1つのセルフレーム(4)の全ての出口チャネル(14)および/または前記複数の給送チャネル(13)が、前記少なくとも1つのセルフレーム(4)の片側全体にわたって、少なくともほぼ一様に分散配置されていることを特徴とする、請求項1~7の何れか一項に記載のセルフレーム。
【請求項9】
2つのハーフセル(3)を有する、特にレドックスフロー電池の、電気化学セル(2)であって、前記2つのハーフセルは少なくとも1つの半透膜(7)によって互いに隔てられ、各ハーフセルは、電解液を流すための少なくとも1つのセル内部(5)の周囲を取り囲むセルフレーム(4)を少なくとも1つ有する、電気化学セル(2)において、少なくとも1つのセルフレーム(4)が請求項1~8の何れか一項により設計されていることを特徴とする電気化学セル。
【請求項10】
前記少なくとも1つのセル内部(5)は、その周囲が前記セルフレーム(4)に界接し、片側が前記半透膜(7)に界接し、反対側が電極(6)または双極板に界接すること、および/または前記セル内部(5)および前記セルフレーム(4)はフレーム平面に周方向に配置されること、を特徴とする、請求項9に記載の電気化学セル。
【請求項11】
前記給送チャネル(13)、前記輸送チャネル(21)、および/または前記戻りチャネル(22)が前記フレーム平面に少なくともほぼ平行に位置合わせされていることと、好ましくは、前記給送チャネル(13)、前記輸送チャネル(21)、および/または前記戻りチャネル(22)がその長手方向の全延長にわたって前記フレーム平面に配置されていることと、を特徴とする、請求項10に記載の電気化学セル。
【請求項12】
特にレドックスフロー電池の、セルスタック(1)であって、互いに隣接して並置された、且つ互いに堅固に接続された、複数の電気化学セル(2)を備えたセルスタック(1)において、前記複数の電気化学セル(2)は、請求項9~11の何れか一項により設計されていることを特徴とするセルスタック(1)。
【請求項13】
請求項9~11の何れか一項に記載の電気化学セル(2)の、または請求項12に記載のセルスタックの、動作方法であって、
- 電解液が、給送チャネル(13)を介して、少なくとも1つのハーフセル(3)の少なくとも1つのセルフレーム(4)の少なくとも1つのセル内部(5)に給送され、
- 前記電解液は、前記輸送チャネル(21)、特に前記流液チャンバ(27)、を通って流れるときに、少なくとも2つの異なる主流を前記出口開口の方向に一時的に交互に形成し、この結果として、前記出口開口(19、24)から少なくとも2つの異なる出口方向で前記セル内部(5)に交互に流れる、
ことを特徴とする動作方法。
【請求項14】
- 前記電解液の前記流れは、前記輸送チャネル(21)、特に前記流液チャンバ(27)、を通って流れるとき、前記少なくとも2つの主流の間で一時的に交互に、好ましくは一定の頻度で、変化し、
- 好ましくは、前記給送される前記電解液の前記流れが前記少なくとも2つの主流に交互に変化する頻度は、前記給送される電解液の前記体積流量に少なくともほぼ比例する、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
- 前記少なくとも2つの主流は、前記流液チャンバ(27)の相対する側に、好ましくは相対する戻りチャネル(22)、に割り当てられる、および/または、
- 前記給送される電解液は、少なくとも1つの共通の供給ライン(11)から少なくとも1つのセルフレーム(4)の複数の給送チャネル(13)に分配され、前記複数の給送チャネル(13)を介して前記セル内部(5)に平行に給送される、
請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にレドックスフロー電池の、電気化学セルを形成するためのセルフレームであって、セルフレームは少なくとも1つのセル内部の周囲を取り囲み、電解液をセル内部に給送するための給送チャネルを少なくとも1つ備え、給送チャネルは、給送される電解液のための、セル内部から隔てられた入口開口と、給送される電解液をセル内部に流出させるための、セル内部に隣接する出口開口とを有する、セルフレームに関する。加えて、本発明は、電気化学セルとこのようなセルフレームを有するセルスタックとに関する。更に、本発明は、このような電気化学セルの、またはこのようなセルスタックの、動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学セルはさまざまな設計で公知であり、電気化学反応が電気化学セル内で生じるため、電気化学リアクタと称されることもある。電気化学セルはその用途に応じて設計可能であり、例えば、異なる電極での化学反応によって有用な電気エネルギーを供給する電気化学的電流源の形態のガルバニ電池として設計可能である。ただし、代わりに、電気化学セルを電解セルとすることもできる。電解セルは、外部電圧の印加によって特定の生成物を生じさせる。あるいは、蓄電池セルは、ガルバニ電池のような電流源として、更には電解セルの場合のように電流貯蔵部として、機能する。
【0003】
本発明は、あらゆる種類の電気化学セルにおいて使用可能である。ただし、本発明は、蓄電池セルに関連して極めて特に好適であり、ここでレドックスフロー電池に関連して好ましい。レドックスフロー電池自体は古くからさまざまな設計で公知である。そのような設計は、例として特許文献1および特許文献2に記載されている。レドックスフロー電池の重要な一利点は、極めて大量の電気エネルギーの貯蔵を可能にするその適合性にある。エネルギーは、電解液に貯蔵される。電解液は、極めて大型のタンク内に省スペースで利用可能に保持できる。電解液は、通常、酸化状態がそれぞれ異なる複数の金属イオンを含む。電気エネルギーを電解液から抽出するために、または電解液を再充電するために、電解液は、所謂電気化学セルを通して送られる。
【0004】
電気化学セルは、半透膜の形態の隔離板を介して互いに隔てられた2つのハーフセルから形成される。各ハーフセルは、電解液と電極とを有する。半透膜は、電気化学セルの陰極と陽極とを互いに空間的および電気的に隔てる役割を有する。したがって、半透膜はイオンに対して透過性である必要がある。イオンは、貯蔵されている化学物質を電気エネルギーに、またはこの逆に、変換させる。半透膜は、例えば、微孔性プラスチック、ならびにガラス繊維製またはポリエチレン製の不織布、および所謂ダイヤフラム、から形成可能である。電気化学セルの両電極において、酸化還元反応が起こる。一方の電極において電解液によって電子が放出され、もう一方の電極において電解液によって電子が受け取られる。電解液の金属および/または非金属イオンは、酸化還元対を形成し、結果として酸化還元電位を発生させる。酸化還元対として、例えば、鉄-クロム、ポリスルフィド-臭化物、またはバナジウムが考えられる。これらの、または他の、酸化還元対は、基本的に水溶液または非水溶液に存在し得る。
【0005】
酸化還元電位の結果として電位差がその間に形成される1つのセルの両電極は、セルの外側で、例えば電気需要体を介して、互いに電気的に接続されている。電子がセルの外側で一方のハーフセルからもう一方のハーフセルに達するとき、両電解液のイオンは一方のハーフセルからもう一方のハーフセルに半透膜を通って直接通過する。レドックスフロー電池を再充電するために、電気需要体ではなく、両ハーフセルの電極に、例えば充電装置によって、電位差を印加することができる。この電位差によって、両ハーフセルの電極で起こる酸化還元反応が逆になる。
【0006】
記載のセルを形成するために、とりわけ、セル内部を取り囲むセルフレームが使用される。セルフレームは、一般に、セル内部を完全には取り囲まず、周囲の狭い側に沿ってのみ取り囲む。すなわち、セルフレームは、セル内部の周囲を周方向に延び、2つの相対するより大きな側面を互いに隔てる。これら側面は半透膜または電極に割り当てられている。セルフレームの端縁によって形成されるセルフレームの厚さは、一般に、相対するより大きな側面を画成するセルフレームの幅および高さより著しく小さい。
【0007】
電気化学セルの各ハーフセルは、例えば射出成形工程において熱可塑性材料から製造される、このようなセルフレームを備える。2つのセルフレームの間に半透膜が配置される。半透膜は、対流物質交換に関しては両ハーフセルの電解液を互いから隔てるが、一方のハーフセルからもう一方のハーフセルへの特定のイオンの拡散を許容する。更に、各セル内部に、セル内部を流れる電解液と接触するように、電極が割り当てられている。電極は、例えば、各セルフレームのセル内部を半透膜とは反対の側で封止できる。セル内部は、ほぼ空のままにしておくことができ、何れの場合も1種類の電解液のみで充填可能である。ただし、各電極をセル内部に少なくとも部分的に設けることもできる。その場合、電極は、一般に、電解液が電極を部分的に通って流れることができるように設計されている。多くの場合、ここには比表面積が大きい電極が考えられる。そこでは、対応する電気化学反応が相応に迅速および/または広範囲に起こり得る。これは、最終的に、セルの容積当たりの性能を高める。ただし、電極がセル内部まで延在する場合でも、セル内部は、通常、半透膜とは反対の側で電極によって閉じられている。例えば、リアクタまたは別の物質で被覆され得る、所謂双極板も電極の非多孔質部分として考えられる。
【0008】
各セルフレームは、複数の開口部と複数のチャネルとを有する。これらを通って、対応する電解液は供給ラインから各セル内部に流入でき、そこから再び抜き出されて除去ラインに給送される。この過程で、各ハーフセルの電解液は、貯蔵容器から供給ラインおよび除去ラインを介して収集容器に送られる。これにより、電解液の再使用が可能になる。したがって、電解液を廃棄または交換する必要がない。
【0009】
レドックスフロー電池が単一セルのみを備える場合、各ハーフセルのための供給ラインおよび各ハーフセルのための除去ラインは、ハーフセルを形成するセルフレームの外側に存在する。各セルフレームは、少なくとも2つの開口部を備える。これら開口部のうちの少なくとも1つは供給ラインに接続され、別の少なくとも1つの開口部は除去ラインに接続されている。セルフレームの内側で、各開口部はセル内部に開口する流液チャネルに接続されている。これにより、電解液を供給ラインから給送チャネルを介してセル内部に給送でき、セル内部を流れた電解液を排出チャネルから排出できる。電解液をセル内部の幅全体にわたってより一様に分配するために、および電解液をセル内部の幅全体にわたってより一様に抜き出すために、外側開口部とセル内部の間で、すなわちセルフレームのフレームシェルの領域において、各給送チャネルおよび/または排出チャネルを1回または数回分岐させることができる。あるいは、電解液を給送もしくは排出するための隔てられた一連の給送チャネルおよび/または排出チャネルがセルフレームに設けられ得る。どちらの場合も、電解液は、セルフレームの一方の側の給送チャネルの出口開口を介して、できる限り一様に分散されてセル内部に入り、セルフレームのもう一方の側の排出チャネルを介して同じくできる限り一様に分散されてセル内部から出る。これにより、セル内部を通る、できる限り一様な流れの実現が試みられる。各給送チャネルは、それぞれの他端において、入口開口を介して供給ラインに接続されている。これにより、電解液は、供給ラインから各ハーフセルのセルフレームの少なくとも1つの給送チャネルを通って、対応するセル内部に達することができる。
【0010】
必要であれば、同じ種類の複数の電気化学セルが1つのレドックスフロー電池において組み合わされる。この目的のために、これらのセルは、通常、互いに上下に積み重ねられる。それ故に、これらのセルの全体がセルの積み重ね、すなわちセルスタック、とも称される。電解液は、通常、個々のセルに互いに並列に流れるが、これらのセルは、通常、電気的に直列に接続される。したがって、これらのセルは、通常、流体的に並列に、且つ電気的に直列に、接続されている。この場合、電解液の充電状態は、何れの場合も、セルスタックのそれぞれのハーフセルのうちの一方において同じである。電解液をセルスタックのそれぞれのハーフセルに分配するために、およびそれぞれのハーフセルから電解液を一斉に排出するために、それぞれのハーフセルは、互いに供給および除去ラインに接続されている。1つのセルの各ハーフセルもしくは各セル内部には異なる電解液が流れるので、この2つの電解液は、セルスタックの通過中、互いから隔てられている必要がある。したがって、2つの別個の供給ラインおよび2つの別個の除去ラインが、通常、セルスタックに沿って設けられている。これらチャネルの各々は、通常、セルフレーム自体によって部分的に形成される。セルフレームは、この目的のために、4つの穴を有する。これらの穴は、セルスタックに沿って延在し、次々と配置されて、必要であれば封止材によって互いから隔てられて、供給および除去ラインを形成する。
【0011】
複数の電気化学セルにおいて分かっていることであるが、出力密度を高めるために好都合であるのは、少なくとも一方のハーフセル内の電極が少なくとも部分的にセル内部に嵌合し、多孔質であり、対応する電解液が電極を通って流れる場合である。ただし、出力密度の上昇が十分でないことが多い。これが示しているのは、電極によって設けられた表面が十分に利用されていないか、またはできる限り効果的には利用されていないことである。これは、同様に多孔質の固体を通る流れにおいても観察可能であるように、電極を通る非一様な流れによって説明可能である。圧力損失はそれぞれの自由流過横断面および体積流量に大きく依存するので、多孔性の非一様性が僅かであっても非一様な流れを引き起こす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0 051 766(A1)号
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0170893(A1)号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明は、出力密度を上げられるように、冒頭で言及し上でより詳細に説明した種類のセルフレーム、電気化学セル、セルスタック、および方法を設計し、更に発展させるという課題に基づく。
【0014】
この課題は、請求項1の前提部分に記載のセルフレームにおいては、給送チャネルが、電解液を給送チャネル経由でセル内部に輸送するための、入口開口を出口開口に少なくとも部分的に接続する少なくとも1つの輸送チャネルと、給送される電解液を、輸送チャネル内の給送される電解液の輸送方向とは逆に、部分的に戻すための少なくとも1つの戻りチャネルとを有することと、戻りチャネルが、戻される電解液の流入のための少なくとも1つの流入開口と、戻される電解液の流出のための流出開口とを介して、輸送チャネルと流体接触し、流入開口と流出開口とは給送される電解液の輸送方向に互いから隔てられていることと、で解決される。
【0015】
前記課題は、請求項9の前提部分に記載の電気化学セルにおいても、少なくとも1つのセルフレームが請求項1~8の何れか一項により設計されることで、解決される。
【0016】
前記課題は、更に、請求項12の前提部分に記載のセルスタックにおいても、電気化学セルが請求項9~11の何れか一項により設計されることで、解決される。
【0017】
更に、上記課題は、請求項13によると、請求項9~11の何れか一項に記載の電気化学セルの、または請求項12に記載のセルスタックの、動作方法によって解決される。本方法においては、
- 電解液が、給送チャネルを介して、少なくとも1つのハーフセルの少なくとも1つのセルフレームの少なくとも1つのセル内部に給送され、
- 電解液は、輸送チャネル、特に流液チャンバ、を通って流れるときに、少なくとも2つの異なる主流を出口開口の方向に一時的に交互に形成し、この結果として、出口開口から少なくとも2つの異なる出口方向でセル内部に交互に流れる。
【0018】
本発明は、給送チャネルが少なくとも1つの輸送チャネルと少なくとも1つの戻りチャネルとに分割されていると、出力密度の観点から好都合であることを見出した。この場合、輸送チャネルは、給送される電解液を流入させるための入口開口と、給送される電解液をセル内部に流出させるための、給送される電解液の出口開口と、の間に延在する。給送チャネルの、および輸送チャネルの、入口開口および出口開口は、一致し得る。ただし、これは必須ではない。ただし、少なくとも、給送チャネルの入口開口と給送チャネルの出口開口とは、輸送チャネルを介して、互いに少なくとも部分的に接続されるであろう。
【0019】
更に、適切であり得るのは、少なくとも1つの給送チャネルの入口開口が供給ラインから給送チャネルに給送される電解液の移行部を画成し、給送チャネルの出口開口がセル内部への電解液の移行部を画成する場合である。ただし、これも必須ではない。特に、供給ラインの正確な終端位置および給送チャネルの正確な開始位置、または給送チャネルの正確な終端位置およびセル内部の正確な開始位置を絶対的に確実に決定できないセルフレームの設計が考えられる。ただし、これも、本発明にとっての重要性は副次的である。その理由は、給送チャネルの具体的な広がりは、給送チャネル内の流量より重要でないからである。更に、給送チャネルは、給送チャネルの周囲がセルフレーム内に完全に収容されている場合は、給送ラインであると理解できる。ただし、給送チャネルが開放チャネルとしてセルフレームに組み込まれていれば十分な場合もあり得る。これは、例えば射出成形工程における、セルフレームの製作を簡素化できる。この場合、給送チャネルは、給送ラインを形成するために、セルフレームの対応する側に隣接する構成要素によって閉じられる。ここで、同じことが輸送チャネルおよび戻りチャネルにも当てはまる。
【0020】
戻りチャネルは輸送チャネルから分岐し、分岐した電解液を、輸送チャネル内の電解液の流動方向に見て、戻りチャネルに分岐する手前に設けられた、輸送チャネルの領域に戻すように導くものである。したがって、電解液の一部が戻される。もしくは電解液の一部が給送チャネル内で環状に案内される。したがって、戻される電解液は、輸送チャネルから戻りチャネルの流入開口に入り、流出開口を介して、すなわち輸送方向に流入開口の手前で、給送チャネルの輸送チャネルに再流入する。したがって、戻された電解液は、戻りチャネルから輸送チャネルへの流出領域において、輸送チャネル内を流れている給送される電解液と相互作用する。
【0021】
この相互作用は、例えば、流出する戻された電解液と、この領域において輸送チャネル内を輸送方向に流れている給送される電解液との間の角度に依存する。更に、この角度は、給送チャネルの設計によって事前に固定的に定められていることが好ましい。ただし、対応する相互作用は、輸送チャネルに再び戻された電解液の体積流量および速度にも依存する。したがって、戻された電解液の流れは、輸送チャネル内を給送される電解液の流れをさまざまな程度に偏向させることができる。偏向の程度は、戻される電解液の量、および/または戻りチャネルの流出開口から輸送チャネルに流出する戻された電解液の速度、に依存する。
【0022】
戻された電解液と戻りチャネルの流出開口の領域を給送される電解液との相互作用の強さが、輸送チャネルの、もしくは給送チャネルの、出口開口に給送されずに、少なくとも1つの流入開口を介して戻りチャネルに入る給送される電解液の量、もしくは割合、に影響を及ぼすように、給送チャネルを設計できる。これが特に好都合であるのは、戻りチャネルの流出開口を介して輸送チャネルに戻る電解液の大きな体積流量が輸送チャネル内の電解液の流れに影響を及ぼすので、その結果として、流入開口を介して戻りチャネルに入る戻される電解液の体積流量がより小さくなる場合である。この場合、戻りチャネルの流出開口の領域において給送される電解液の流れに及ぼされる戻された電解液の影響が小さくなる。これを利用すると、給送チャネルが適切に設計されていれば、戻りチャネルの流入開口に入る給送される電解液の体積流量または割合がより大きくなるように、給送される電解液の流れを輸送チャネル内に流すことができる。
【0023】
したがって、これにより、更なる介入なしに、輸送チャネルを通る流れを経時的に何度も変化させることができ、そうすることで少なくとも2つの流動状態が交互に繰り返されるようにすることができる。2つの流動状態の結果として、給送される電解液が少なくともほぼ異なる方向に、および/またはそれぞれ異なる出口開口を介して、セル内部に交互に流入するように、セル内部に隣接する給送チャネルの領域が設計されていると、流れの不変の分散がセル内部に形成されない。むしろ、少なくとも変化する流れの分散がセル内部に発生することになる。これにより、流れの分散が不変である故の、電解液が全く流れない、または少ししか流れない、デッドスペースがセル内部に、特に電極に、形成されることを防止できる。この場合、継時的に形成されるデッドスペースがより少なくなるか、より小さくなる、および/またはデッドスペースの位置が経時的に変化する、可能性がより高い。これにより、最終的に達成されるのは、電極によって設けられた内面を電気化学反応のためにより効果的に使用できることである。
【0024】
この文脈において、給送チャネル内の自由流過横断面の拡大は、その拡大領域に流入する電解液の噴流の形成をもたらし、その噴流は輸送チャネルの壁の一方の側に対接する傾向があるという流体の基本原理を給送チャネルの、特に輸送チャネルの、設計に使用できる。壁のこの側の領域には、壁の反対側より高い流速が存在する。戻された電解液がこの領域の流れに及ぼす影響の程度に応じて、流れは壁の複数の異なる側に対接することになる。より長い距離にわたって、流れ、もしくはその流速、は、摩擦作用の故に、再びより一様化する。したがって、給送チャネル、もしくは輸送チャネル、は過度に長く設計されるべきではないが、壁の複数の異なる側に流れを当接させるには、ある程度の距離の流れを必要とするので、依然として十分に長い必要がある。
【0025】
それぞれのセルフレームを特に好都合に使用できるのは、これらセルフレームが電気化学セルの一部、または対応するセルスタックの一部、を形成している場合である。ここで、上で既に言及した諸利点が実現される。これら利点は、特にレドックスフロー電池の、電気化学セルに関連して、またはセルスタックに関連して、特に有利に使用され得る。各電気化学セルは、2つのセル内部を有することが好ましい。ただし、特殊な場合は、3つ以上のセル内部を設けることができる。必要であれば、個々のセル内部が半透膜によって互いに隔てられ得ることが好ましい。更に、セル内部の数が奇数の場合は、中間のセル内部を一種の混合セル内部として設計できる。その2分の1は、電気化学セルの一方のハーフセルに属し、もう一方の2分の1は、電気化学セルのもう一方のハーフセルに属する。
【0026】
方法の観点から、上記のセルフレームは、少なくとも1つの給送チャネルを介して、少なくとも1つのハーフセルのセルフレームのセル内部に電解液を好都合に給送させる。電解液が給送チャネルを通って流れるとき、電解液は、その過程で、輸送チャネル、好ましくは輸送チャネルの流液チャンバ、を通過する。その過程で、給送される電解液は、少なくとも2つの異なる主流を形成する。主流とは、面積当たりの流量(独:Durchfluss aufweist,英:area-specific flow rate)が最も多い流れの部分であると理解されたい。流れが非一様である給送チャネルの領域においては、流れが非一様な時点において、流れが相対的に強い部分と流れが相対的に弱い部分とが存在する。この過程において、流れが相対的に強い部分は主流を形成し、流れが相対的に弱い部分は、電解液の流れの体積流量にそれほど寄与しない。それぞれの領域の流れを複数のフローラインによって表した場合、主流に沿った複数のフローラインは互いに近接し、主流の外側の領域の複数のフローラインは互いから著しく広く離れることになる。主流内の複数のフローラインは、少なくともほぼ、または少なくとも実質的に、互いに平行に延びることになるが、主流の外側の複数のフローラインは互いに独立に延び得る。これが該当し得るのは、例えば、電解液の顕著な乱流が主流の外側の領域に発生する場合である。このような乱流は、主流には皆無か、または少なくとも著しく少ないはずである。
【0027】
主流は経時的に一定ではなく、複数の異なる時点において少なくとも2つの異なる主流が観察され得る。加えて、一方の主流の時間ともう一方の主流の時間とは交互に切り替わる。ただし、これら主流の各々は出口開口の方向に向けられている。その理由は、セルの内部に給送された電解液の大部分は、何れの場合も、主流によってセル内部に給送されるからである。これら主流の交互の切り替えに応じて、これら主流が出口開口を介してセルフレームのセル内部に流入する流れの方向も交互に切り替わる。したがって、セル内部に流入する電解液の流れは、好ましくはセル内部を通る、もしくはそこに少なくとも部分的に設けられた電極を通る、電解液の流れも、繰り返し何度も、あるいは必要であれば連続的に、変化する。
【0028】
第1の特に好適なセルフレームにおいて、輸送チャネルは、戻りチャネルの少なくとも1つの流入開口と少なくとも1つの流出開口との間に少なくとも部分的に、流液チャンバを有するので、給送される電解液は少なくとも2つの異なる主流で交互に流液チャンバを通って出口開口の方向に流れ、この結果として、出口開口から少なくとも2つの異なる出口方向でセル内部に流入する。これにより、セル内部への電解液の変化する流れ、ひいてはより高い出力密度、を実現できる。この文脈において、特に好適であるのは、これらの主流が少なくともほぼ一定の頻度で交互に切り替わるように、流液チャンバが設計されている場合である。これは、流動状態をより予測可能にするので、出力密度の上昇をより容易且つより確実にもたらす。より一層好都合であるのは、輸送チャネルを通る体積流量の増加に伴い、頻度が少なくともほぼ直線的に増加するように、流液チャンバが設計されている場合である。体積流量が大きいほど、顕著なデッドゾーンを有する非一様な流れが形成される危険が大きい。したがって、より一層重要であるのは、給送チャネルからセル内部への電解液の流れの方向が変化する頻度が増すことである。
【0029】
代わりに、または加えて、輸送チャネルは、戻りチャネルの少なくとも1つの流入開口と少なくとも1つの流出開口との間に少なくとも部分的に流液チャンバを有し、流液チャンバは、給送チャネルの、および/または輸送チャネルの、入口開口の、および/または出口開口の、自由流過横断面の断面積の少なくとも2倍、好ましくは少なくとも2.5倍、特に少なくとも3倍、に相当する断面積を有する自由流過横断面を少なくとも部分的に形成し得る。これにより、給送される電解液は、流液チャンバのより大きな横断面に自由噴流のように入ることができ、流動状態に応じて、例えば、流液チャンバの壁の一方の側に対接し易い、または流液チャンバの壁の別の側に対接し易い。これにより、交互に切り替わる2つの主流が流液チャンバ内に形成され得る。これにより、一方では、交互に切り替わる2つの主流をもたらし、更には給送される電解液を給送チャネルからセル内部に導く方向を交互に切り替える。
【0030】
給送チャネルの出口開口の自由流過横断面の断面積が流液チャンバの出口開口の自由流過横断面の断面積より大きい場合は、給送チャネルの拡大が給送チャネルの端部においてもたらされ得る。これにより、追加の可動部品なしに、簡単な方法で、電解液を複数の異なる方向でセル内部に流出させることができる。これが特に該当するのは、この領域において輸送チャネルが漏斗状に広がる場合である。この場合、給送チャネルを簡素化するために、この広がりは、給送される電解液の輸送方向に流液チャンバの直後に設けられ得ることが好ましい。同様に、構造的に簡単であるのは、輸送チャネルが給送チャネルの出口開口に合体するように広がって設けられている場合である。
【0031】
給送チャネルが、給送される電解液を、輸送チャネル内の給送される電解液の輸送方向とは逆に、部分的に戻すための戻りチャネルを少なくとも2つ有していると、給送される電解液の流れを少なくとも2つの異なる主流に容易且つ確実に変化させることができる。これにより、両戻りチャネルによって、各戻りライン(独:Rueckfuehrleitungen,英:return lines)の出口開口の領域における主流の偏向に連続的に影響を及ぼすことができる。給送チャネルの簡素化および信頼性のために有用であるのは、これら戻りチャネルが輸送チャネルの相対する側に配置されている場合である。加えて、電解液の簡単且つ意図的な戻りを実現できるのは、特に、これら戻りチャネルが互いに接続されていない場合である。
【0032】
可能な限り一様な流れをセル内部に、特にそこに設けられた電極に、実現するには、セルフレーム当たり少なくとも2つの、好ましくは少なくとも4つの、特に少なくとも6つの、給送チャネルを設けることが妥当であり得る。同じ理由により、これら給送チャネルをセルフレームの同じ側に設けると有用である。このことに関係なく、これら給送チャネルは、相互干渉を回避するために、互いに接続されずに設けられ得ることが好ましい。それにも拘わらず、さまざまな給送チャネルを流入側において共通の供給ラインに接続することができる。これにより、セルフレームの相対的に簡素な、しかも機能的な、設計がもたらされ得る。この場合、その他の点に関しては、これら給送チャネルは連続的に並列に、且つ互いに隔てて、設けられていることが好ましい。
【0033】
上記の対応するセルフレームの諸利点は、開放細孔構造を有する充填要素がセル内部に設けられている場合、電気化学セルの出力密度の増大において特に効果的である。この充填要素は、セル内部を少なくともほぼ完全に満たすことが好ましい。開放細孔構造を通る良好な流れと体積当たりの良好な反応性とを同時に実現するために更に有用であり得るのは、充填要素がグラファイト製のフェルト様の一体型充填要素として、および/または電極として、設計されている場合である。
【0034】
このことに関係なく、必要であれば、少なくとも1つのセルフレームの全ての出口チャネルおよび/または全ての給送チャネルが少なくとも1つのセルフレームの片側全体にわたって少なくともほぼ一様に分散配置されることで、より一様な流れをセル内部にもたらすことができる。これにより、得られる自由流横断面を最終的により良好に利用でき、ひいてはより高い出力密度を達成できる。
【0035】
第1の特に好適な電気化学セルにおいて、少なくとも1つのセル内部は、その周囲がセルフレームに界接し、片側が半透膜に界接し、反対側が電極または双極板に界接する。これにより、電気化学セルの簡単且つ費用効果の高い、且つ極めて機能的な、構造を実現できる。代わりに、または加えて、セル内部とセルフレームとをフレーム平面に周方向に配置できる。これにより電気化学セルの構造も簡素化されるのは、特に、多くの電気化学セルが1つのセルスタックに組み合わされる場合である。
【0036】
給送チャネル、輸送チャネル、および/または戻りチャネルがフレーム平面に少なくともほぼ平行に位置合わせされている場合は、セル内部への電解液の適切な導通が構造的に簡単にもたらされる。これが特に該当するのは、給送チャネル、輸送チャネル、および/または戻りチャネルが、それぞれの長手方向の全延長にわたってフレーム平面に配置されている場合である。
【0037】
第1の特に好適な方法において、電解液の流れは、輸送チャネルを流れているとき、特に流液チャンバを流れているとき、少なくとも2つの主流の間で一時的に交互に変化する。この変化とは、給送チャネルの動作中の少なくとも2つの主流の間の自動的な、もしくは強制的な、変化として理解されたい。この文脈において、これら主流間の変化が如何に急速または急激に生じるかは必ずしも重要でない。ただし、少なくとも2つの主流への流れの変化が一定の頻度で交互に生じると、更に好適である。その理由は、この場合、原理上、セル内部を通るより一様な、ひいてはより効率的な、流れを実現できるからである。加えて、有用であり得るのは、給送される電解液の流れが少なくとも2つの主流に変化する頻度が、給送される電解液の体積流量に少なくともほぼ比例する場合である。この場合、体積流量の増加に伴い、セル内部への電解液の流れが一時的に急速に均質化される。これが好適である理由は、さもなければ、体積流量の増加に伴い、セル内部を流れるときの流れの差が大きくなるからである。
【0038】
セル内部を通る電解液の一様な流れの実現は、流液チャンバの相対する側に、必要であれば相対する戻りチャネルに、少なくとも2つの主流を割り当てることによっても可能である。その場合は、所望の流動状態をより容易且つより確実に調整することができる。より大きな体積流量の電解液を構造的に簡単な方法でセル内部に供給するには、給送される電解液を少なくとも1つの共通の供給ラインから少なくとも1つのセルフレームの複数の給送チャネルに分配し、給送される電解液を複数の給送チャネルを介して並列にセル内部に給送することが有用であり得る。
【0039】
以下においては、一例示的実施形態のみを示している図面によって、本発明をより詳細に説明する。図面には、以下の図が示されている。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1A】レドックスフロー電池の形態の本発明によるセルスタックの長手方向断面図である。
【
図1B】レドックスフロー電池の形態の本発明によるセルスタックの長手方向断面図である。
【
図2】
図1のセルスタックの本発明によるセルフレームの上面図である。
【
図4A】
図2のセルフレームを備えた本発明による電気化学セルの動作中の一時点おける
図3のセルフレームの詳細である。
【
図4B】
図2のセルフレームを備えた本発明による電気化学セルの動作中の別の時点おける
図3のセルフレームの詳細である。
【
図4C】
図2のセルフレームを備えた本発明による電気化学セルの動作中の別の時点おける
図3のセルフレームの詳細である。
【
図4D】
図2のセルフレームを備えた本発明による電気化学セルの動作中の別の時点おける
図3のセルフレームの詳細である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1Aおよび
図1Bは、セルスタック1、すなわち、特にレドックスフロー電池の形態の、電気化学セルのセルスタック、を長手方向断面で示す。セルスタック1は、2つのハーフセル3をそれぞれ有するセル2を3つ備え、2つのハーフセル3は対応する電解液をそれぞれ有する。各ハーフセル3は、セルフレーム4を有する。セルフレーム4は、貯蔵容器に貯蔵された電解液を導通させることができるセル内部5を備える。電極6がセル内部5に少なくとも部分的に嵌合する。電極6は、更にセル内部5を片側で封止して閉じる。それぞれのセル内部5を流れる電解液は、互いに異なる。各セル内部5は、同じ電気化学セル2の第2のハーフセル3のセルフレーム4に隣接する電極6とは反対の側で、2つのハーフセル3のセルフレーム4間に設けられた半透膜7によって、閉じられている。したがって、2つのハーフセル3の2つの異なる電解液がもう一方のハーフセル3のセルフレーム4のセル内部5に対流移動することが防止される。ただし、イオンは、半透膜7を介した拡散によって、一方の電解液からもう一方の電解液に通過できる。これにより、電荷輸送が生じる。1つのセル2の両ハーフセル3の各電極6における電解液の酸化還元対の酸化還元反応の故に、電子が放出される、または受け取られる。放出された電子は、レドックスフロー電池の外側に設けられた、必要であれば電気需要体を有する、電気接続を介して、1つのセル2の一方の電極6からもう一方の電極6に流れることができる。どの電極6でどの反応が起きるかは、レドックスフロー電池が充電されるか放電されるかに応じて決まる。
【0042】
図示のセルスタック1において、各電極6はセルフレーム4の外側面8に平らに配置されている。したがって、これら電極6は、セルフレーム4の外側面8との接触領域にフレーム表面を形成する。このフレーム表面は、封止面9として機能する。1つのセル2の両セルフレーム4の互いに面する外側面8の間に封止材10が存在し、そこに半透膜7が封止式に収容されている。封止材10は、隣接する両セルフレーム4の外側面8に平らに隣接し、ひいては封止面9として機能するフレーム表面を形成する。
【0043】
図示のレドックスフロー電池において、4本のチャネルが長手方向にセルスタック1まで延在している。これらのうちの2本は、2つの電解液を各セルフレーム4のセル内部5に給送するための供給ライン11である。他の2本のチャネルは、各セルフレーム4のセル内部5から電解液を排出するための除去ライン12である。
図1Aは、1本の供給ライン11と1本の除去ライン12とを示している。各セル2の一方のハーフセル3において複数の給送チャネル13が供給ライン11からそれぞれ分岐する。電解液は、給送チャネル13を介して、ハーフセル3のそれぞれのセル内部5に給送され得る。それぞれのセルフレーム4の反対側の部分に排出チャネル14が設けられている。電解液は、排出チャネル14を介して、セル内部5から除去ライン12に排出され得る。
図1Aに不図示の供給ライン11と同じく不図示の除去ライン12とにより、もう一方のハーフセル3のセル内部5を通る第2の電解液を同様の給送チャネル13および排出チャネル14を介して流すことができる。
【0044】
図2は、セルフレーム4の上面図を示す。4つの穴15がセルフレーム4の角部に設けられている。各穴15は、供給ライン11または除去ライン12の一部を形成する。給送チャネル13および排出チャネル14は、凹部または開放チャネルとしてセルフレーム4のフレームシェル16の図示の外側面8に窪んでいる。フレームシェル16は、セル内部5の周囲を取り囲んでいる。給送チャネル13および排出チャネル14は、セルスタック1への組み付け中、周囲に閉じたラインを形成するために、閉じられる。図示のセルスタック1において、これは、例えば、封止材10と電極6とによって、行われる。ただし、封止材10、および/またはこれら封止材の電気的絶縁、によって、電極6を供給ライン11および除去ライン12から空間的に隔てることもできる。代わりに、または加えて、半透膜7、給送チャネル13、および排出チャネル14、に隣接する封止材10を省くこともできる。
【0045】
図示の実施形態において、電解液を除去ライン12に集約的に導くために、全ての排出チャネル14は互いに接続されている。ただし、これは必須ではない。全ての給送チャネル13を供給ライン11から個別に始めることもできる。ただし、セルフレーム4の図示の実施形態においては、供給ライン11を介して給送された電解液を各給送チャネル13に段階的に分配するために、分岐が設けられている。全ての給送チャネル13にわたる、ひいては全ての給送チャネル13を通る流れにわたる、圧力降下ができる限り一様であることを保証するために、電解液は、大きな自由断面を有する収集ライン17を介して、給送チャネル13に給送される。したがって、セル内部5に給送される電解液の流れの圧力損失は、全ての給送チャネル13にわたる圧力損失によって少なくともほぼ決定される。セルフレーム4の図示の実施形態において、給送チャネル13は、排出チャネル14とは異なる設計になっている。
【0046】
図3には、
図2のセルフレーム4の同様に設計された給送チャネル13のうちの1つが示されている。図示の給送チャネル13は、入口開口18と出口開口19とを有する。図示の給送チャネル13において、入口開口18および出口開口19のそれぞれの位置は、出口開口19が給送チャネル13からセル内部5への直接移行部を画成するように、および入口開口18が自由流過横断面の広がりの開始位置に配置されるように、決定され得る。図示の給送チャネル13の場合、入口開口18は、電解液のための自由流過横断面の狭窄部20に位置すると想定され得る。ただし、通常、狭まっている自由流過横断面が広がっている自由流過横断面に合体する箇所に各狭窄部20が存在する必要はない。図示の給送チャネル13において、電解液をセル内部5に給送するための入口開口18は、輸送チャネル21と2つの戻りチャネル22とが互いに接続される給送チャネル13の領域の直前にも、または当該領域に隣接する位置にも、設けられる。輸送チャネル21は、セル内部5に給送される電解液を輸送する役割を担う。したがって、輸送チャネル21は、給送チャネル13の入口開口18と出口開口19とを互いに、少なくとも部分的に、接続する。
【0047】
この場合、輸送チャネル21の入口開口23は、図示の給送チャネル13の場合に示されているように、給送チャネル13の入口開口18と一致し得る。あるいは、輸送チャネル21の入口開口23は、セル内部5の方向に給送される電解液の輸送方向Tに給送チャネル13の入口開口18から隔てられている。ただし、入口開口18、23の対向間隙は、原則として設けられていない。同様に、輸送チャネル21の出口開口24は、給送チャネル13の出口開口19に一致し得る。ただし、輸送チャネル21の出口開口24は、セル内部5の方向に給送される電解液の輸送方向Tに、給送チャネル13の出口開口19の手前に配置され得る。
【0048】
この点に関して好適な図示の給送チャネル13は、輸送チャネル21に加え、2つの戻りチャネル22を更に備える。これら戻りチャネル22は、輸送チャネル21の相対する側に配置されており、給送される電解液の一部が、セル内部5に給送されずに、これら戻りチャネル22を介して戻される。戻される電解液は、輸送チャネル21から流入開口25を介して戻りチャネル22に流入し、輸送チャネル21内の電解液の輸送方向Tとは逆に、戻りチャネル22に沿って戻され、その後、流出開口26を介して再び輸送チャネル21に戻される。
【0049】
輸送チャネル21は、流液チャンバ27を備える。流液チャンバ27は、戻りチャネル22の流出開口26と流入開口25との間に少なくとも部分的に配置されている。流液チャンバ27は、給送チャネル13の入口開口18、および/または輸送チャネル21の入口開口23、に比べ、自由流過横断面の断面積がより大きい。これにより、流液チャンバ27内に著しく異なる複数の流動状態が形成され得る。この点に関して好適な図示の給送チャネル13の場合、給送チャネル13の出口開口19の自由流過横断面の断面積は、流液チャンバ27の出口開口28の自由流過横断面の断面積より大きいので、給送チャネル13は、流液チャンバ27の後、セル内部5の方向に広がるので、セル内部5に給送される電解液を複数の異なる方向でセル内部5に流入させることができる。これは、自由流過横断面の対応する広がりに隣接するセル内部5への給送チャネル13の合体によっても容易になる。輸送チャネル21または給送チャネル13は、流液チャンバ27の直後で、給送される電解液の輸送方向Tに漏斗状に広がるので、給送チャネル13は相対的に短く設計されることが好ましい。
【0050】
図4A~
図4Dには、給送される電解液が流れている給送チャネル13のそれぞれ異なる時点が示されている。最初に、給送チャネル13内の基本的な流動状態が
図4Aによって示されている。以下においては、明瞭化のために、
図3の参照符号を参照されたい。給送される電解液は、入口開口18を介して給送チャネル13に流入し、その後、輸送チャネル21の流液チャンバ27に入る。その自由流過横断面の断面積は、輸送チャネル21の、もしくは流液チャンバ27の、入口開口23、29の領域における断面積のほぼ3倍または4倍に相当する。したがって、入口開口23の後の流液チャンバ27の領域には、流液チャンバ27内への一種の自由噴流が形成される。したがって、流液チャンバ27内の流れは一様ではなく、給送される電解液の体積流量の少なくとも大部分を含む主流が形成される。これに対して、輸送チャネル21の流液チャンバ27内の主流の外側では、流速が著しく低い。そのため、そこを流れる電解液は著しく少ない。加えて、そこを流れる電解液の部分は大きく渦巻く。
【0051】
流体力学の基本原理のために、自由噴流のように流液チャンバ27に入る電解液の流れは、流液チャンバ27の壁に対接し易いであろう。
図4Aの説明図によると、流液チャンバ27内の電解液の主流は、流液チャンバ27の左側に対接し、この側でセル内部5に割り当てられた流液チャンバ27の端部の方向に広がり、ひいては輸送チャネル21の、したがって給送チャネル13の、出口開口19、24の方向に広がる。主流は流液チャンバ27の左側に沿って流れるので、主流は、狭窄部30の領域において流液チャンバ27の端部の方向に一定の角度で入る。狭窄部30、もしくは流液チャンバ27の先細部、において、自由流過横断面の断面積は、流液チャンバ27の中心部分の約3分の1または4分の1である。流液チャンバ27の端部、もしくは狭窄部30、の後、輸送チャネル21、もしくは給送チャネル13、は広がるので、自由流過横断面がより大きくなる。この理由により、流液チャンバ27からの電解液の主流は、輸送チャネル21の、もしくは給送チャネル13の、出口開口19、24から、主流が狭窄部30に流入するときと同様の角度で、セル内部5に流入できる。
【0052】
ただし、電解液の主流の一部は、狭窄部30を通過せず、電解液の輸送方向Tに流液チャンバ27の端部の前に配置された流入開口25から戻りチャネル22に押し込まれる。戻される電解液は、戻りチャネル22に沿って、流液チャンバ27内の電解液の輸送方向Tとは逆に戻され、流液チャンバ27の始端、もしくは輸送チャネル21の始端、の領域で流出開口26を通して案内され、流液チャンバ27、もしくは輸送チャネル21、に戻される。そこで、戻された電解液は、流液チャンバ27内に向かっている給送される電解液の自由噴流と相互作用する。
【0053】
図4Aに示されているケースにおいて、2つの戻りチャネル22を介して戻される電解液の体積流量は同じではない。電解液の主流は流液チャンバ27の左側に沿って流れるので、左側の戻りチャネル22に押し込まれる電解液の量は、相対する右側の戻りチャネル22に押し込まれる電解液の量よりはるかに多い。この結果として、はるかに多い電解液が左側の戻りチャネル22の流出開口から流出する。この点に関して好適な図示の給送チャネル13の場合、戻された電解液は、自由噴流の本来の方向に対してほぼ直角に、流出開口26から流出するので、自由噴流は、
図4Bのシーケンスに示されているように、戻された電解液によって流液チャンバ27の壁に向けて右側に偏向される。したがって、給送される電解液の主流は、一定時間後に変化し、その後、流液チャンバ27の右側に沿ってセル内部5の方向に流れる。
【0054】
これは、
図4Cに示されている。その後、主流は、逆の角度で流液チャンバ27の端部の狭窄部30に流入し、給送チャネル13の設計の故に、同様の角度で給送チャネル13からセル内部5にも流入する。ただし、流液チャンバ27内で主流が移動しているため、左側の戻りチャネル22より右側の戻りチャネル22によって戻される電解液の量が多いので、右側の戻りチャネル22の右側の流出開口26から流出する戻された電解液は、
図4Dに示されているように、この領域内の自由噴流を再び左側に押しやる。この結果として、給送される電解液の主流は再び左側に戻るので、上記のサイクルが繰り返される。この過程で、給送される電解液の体積流量が少なくともほぼ一定であれば、サイクル時間、ひいては対応する頻度、は少なくともほぼ一定に維持される。
【符号の説明】
【0055】
1 セルスタック
2 セル
3 ハーフセル
4 セルフレーム
5 セル内部
6 電極
7 半透膜
8 外側面
9 封止面
10 封止材
11 供給ライン
12 除去ライン
13 給送チャネル
14 排出チャネル
15 穴
16 フレームシェル
17 収集ライン
18 入口開口
19 出口開口
20 狭窄部
21 輸送チャネル
22 戻りチャネル
23 入口開口
24 出口開口
25 流入開口
26 流出開口
27 流液チャンバ
28 出口開口
29 入口開口
30 狭窄部
T 輸送方向
【国際調査報告】