(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】血液脳関門を通過する薬物送達のための化合物
(51)【国際特許分類】
C07K 7/02 20060101AFI20230724BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230724BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20230724BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230724BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230724BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230724BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230724BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20230724BHJP
A61K 38/08 20190101ALI20230724BHJP
【FI】
C07K7/02 ZNA
A61K45/00
A61K47/64
A61P35/00
A61P9/10
A61P9/00
A61P25/28
A61P25/16
A61K38/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581583
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 US2021038408
(87)【国際公開番号】W WO2022005807
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511248249
【氏名又は名称】ユニバーシティー オブ ヒューストン システム
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100150500
【氏名又は名称】森本 靖
(74)【代理人】
【識別番号】100176474
【氏名又は名称】秋山 信彦
(74)【代理人】
【識別番号】100136696
【氏名又は名称】時岡 恭平
(72)【発明者】
【氏名】グオ,ビン
(72)【発明者】
【氏名】ウドゥガマスーリヤ,ダミス ゴミカ
(72)【発明者】
【氏名】リウ,シンリー
(72)【発明者】
【氏名】シュクラ,サトヤ プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,クァンボク
(72)【発明者】
【氏名】ジョウ,シュエ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC01
4C076CC11
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF34
4C084AA02
4C084AA07
4C084AA17
4C084BA01
4C084BA17
4C084BA23
4C084NA05
4C084NA13
4C084ZA02
4C084ZA16
4C084ZA36
4C084ZB26
4H045AA10
4H045AA30
4H045BA14
4H045BA15
4H045BA17
4H045BA50
4H045EA20
4H045FA10
(57)【要約】
本明細書に開示される化合物は、トランスフェリン受容体に結合して血液脳関門(BBB)を通過することが可能で、がん、虚血性脳卒中、アルツハイマー病、またはパーキンソン病などの脳の疾患または障害を治療するのに有用であることが示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の構造:
【化1】
で示される、血液脳関門を通過することが可能な化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物および治療剤を含む薬物送達組成物であって、請求項1に記載の化合物が治療剤に結合している、薬物送達組成物。
【請求項3】
治療有効量の請求項2に記載の薬物送達組成物、および、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝剤、安定剤、またはそれらの混合物を含む、医薬組成物。
【請求項4】
請求項3に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む、対象における脳の疾患または障害を予防または治療する方法。
【請求項5】
脳の疾患または障害が、がん、虚血性脳卒中、アルツハイマー病、またはパーキンソン病である、請求項4に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月2日に出願された「Compounds for Drug Delivery Across Blood-Brain Barrier」(血液脳関門を通過する薬物送達のための化合物)とのタイトルの米国特許仮出願第63/047,440号に対する優先権を主張し、その内容は全て参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、血液脳関門を通過する薬物送達に有用な化合物に関する。
【背景技術】
【0003】
脳の疾患は治療が困難である。それらには、脳へのがん転移(肺がん、乳がんなど)、虚血性脳卒中、アルツハイマー病、およびパーキンソン病が挙げられる。脳は、血液脳関門(blood-brain barrier、BBB)によって末梢から保護されており、BBBは、タイトジャンクションタンパク質を介して堅く相互接続している内皮細胞で構成されている。ほとんどの薬物は、BBBを通過して脳に入ることができないため、脳の多くの疾患は、治療が困難である。トランスフェリン受容体を標的とすることにより、BBBを通過させて薬物を送達するためのさまざまな方法が試みられている。トランスフェリン受容体は、脳への鉄の輸送を担っている。トランスフェリン受容体に結合する抗体が開発されている。これらの抗体は、それらを脳に送達するために薬物とコンジュゲートされている。しかしながら、抗体は、送達効率が低いという欠点があり、そして毒性に関与する。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、概して、血液脳関門(BBB)を通過することが可能な化合物、および薬物送達のためのその使用に関する。
【0005】
概して、本開示は、BBBを通過することが示され、
図1に示される構造を有する化合物に関する。
図1は、好ましい実施形態による、(A)TRBP6の化学構造、(B)TRBP3の化学構造、および、(C)TRBP5の化学構造、を示す。
【0006】
本開示はまた、本明細書に開示されるBBBを通過することが示される化合物を含む薬物送達剤および組成物、および、本明細書に開示されるBBBを通過することが示される化合物を含む薬物送達のための方法、に関する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本明細書に記載の好ましい実施形態による、(A)TRBP6の化学構造、(B)TRBP3の化学構造、および(C)TRBP5の化学構造、を示す。
【0008】
【
図2】例示的な化合物のトランスフェリン受容体への結合を確認するプルダウンアッセイの結果を示す。
【0009】
【
図3】テンタゲル(tentagel)ビーズ上で再合成された例示的な化合物(TRBP6)が、トランスフェリン受容体発現HeLa細胞に結合し、トランスフェリン受容体陰性細胞に結合しないことを示す。
【0010】
【0011】
【
図5】本明細書に記載の好ましい実施形態による、BBBを通過することができる例示的な化合物(TRBP6)を注射したマウスについての、5分、15分、および30分の、および30分の灌流後のエクスビボでの、蛍光強度のIVIS画像を示す。
【0012】
【
図6】Angペプチドを注射したマウスについての、5分、15分、および30分の、および30分の灌流後のエクスビボでの、蛍光強度のIVIS画像を示す。
【0013】
【
図7】本明細書に記載の好ましい実施形態による、BBBを通過することができる例示的な化合物(TRBP5)を注射したマウスについての、5分、15分、および30分の、および30分の灌流後のエクスビボでの、蛍光強度のIVIS画像を示す。
【0014】
【
図8】本明細書に記載の好ましい実施形態による、BBBを通過することができる例示的な化合物(TRBP3)を注射したマウスについての、5分、15分、および30分の、および30分の灌流後のエクスビボでの、蛍光強度のIVIS画像を示す。
【0015】
【
図9-1】本明細書に記載の好ましい実施形態によるTRBP6の誘導体の化学構造を示し、(A)二量体、および(B)三量体を示す。
【
図9-2】本明細書に記載の好ましい実施形態によるTRBP6の誘導体の化学構造を示し、(C)四量体、および(D)環状二量体を示す。
【0016】
【
図10】TRBP6のHPLCクロマトグラムを示し、(A)PDAクロマトグラム、および(B)PDAスペクトルを示す。
【0017】
【
図11】異なる時間間隔での、PBS(pH7.4)およびヒト血漿(n=3)中のTRBP-6ペプトイドの安定性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、血液脳関門(BBB)を通過することが示される化合物、および薬物送達におけるその使用に関する。
【0019】
したがって、本明細書に開示される好ましい実施形態は、下記の構造:
【化1】
で示される、血液脳関門を通過することが可能な化合物に関する。
【0020】
トランスフェリン受容体への3つの例示的な化合物の結合は、プルダウンアッセイで確認された。
図2に結果を示す。トランスフェリン受容体陽性または陰性のHeLa細胞からの細胞溶解物を、RIPAバッファーを使用して抽出し、続いて、TRBP3、TRBP5、またはTRBP6をコンジュゲートしたビーズと、4℃で一晩、インキュベートした。次いで、ビーズをRIPAバッファーで3回洗浄し、結合タンパク質を1%SDSで溶出した。次いで、得られた溶解物を、10%SDS-PAGEゲルに適用し、トランスフェリン受容体に対する抗体をウェスタンブロッティング分析に供した。
【0021】
テンタゲル(tentagel)ビーズ上で化合物を再合成し、それらをトランスフェリン受容体陽性HeLa細胞およびトランスフェリン受容体陰性HeLa細胞と別々に、ならびにこれらの細胞の混合物とともに、インキュベートすることによって、オンビーズ2色コンビナトリアル細胞スクリーニングを実施した。ビーズは、トランスフェリン受容体陽性のHeLa細胞に特異的に結合した。
図3に結果を示し、左側の列に細胞が示され、右側の列に細胞とのインキュベーション後のTRBP6を含むビーズが示される。
【0022】
Cy5.5蛍光色素をマウスの脳に送達するこれらの化合物の活性を調べた。
図4は、ペプチドCy5.5-TRBP6の化学構造を示す。Cy5.5標識ペプトイドまたはCy5.5-Angペプチドを、CD-1マウスに静脈内注射し(25nmol/マウス、化合物ごとにn=4)、IVISイメージング装置を用いて、画像化した。マウスを、30分に屠殺し、心臓を10mLのPBSで灌流し、エクスビボ(ex vivo)イメージングのために血液と臓器を採取した。
図5~8に示すように、化合物TRBP3、TRBP5、およびTRBP6は、Cy5.5を脳に効果的に送達した。TRBP6の脳送達の有効性は、よく研究されているAngiopep-2(Ang)ペプチドなどを含めた他の化合物よりもはるかに高い。
【0023】
さらなる好ましい実施形態は、BBBを通過することが可能な3つの例示的な化合物の誘導体に関する。可能性のある誘導体として、化合物の、二量体、三量体、四量体、および環状二量体が挙げられ、例えば、TRBP6について、
図9(
図9-1および
図9-2)に示される。
【0024】
本明細書に記載のBBBを通過することが可能な例示的な化合物は、異なる幾何異性体形態および鏡像異性体形態で存在していてもよく、これらの別の異性体の純粋な形態および混合物の両方が本発明の範囲に含まれ、生理学的に機能し得るまたは薬理学的に許容されるその塩と誘導体またはプロドラッグも含まれる。これらの代替の形態の生成は、当業者の能力の範囲内である。
【0025】
本発明はまた、薬物または治療剤に結合した本明細書に記載のBBBを通過することが可能な例示的な化合物を含む、薬物送達組成物に関する。本発明はまた、BBBを通過させて薬物または治療剤を送達する方法であって、本明細書に記載のBBBを通過することが可能な例示的な化合物を、薬物または治療剤と結合させて、例示的な薬物送達組成物を生成し、その後、本明細書に開示される好ましい実施形態にしたがって、対象に例示的な薬物送達組成物を投与するステップを含む、方法にも関する。好ましい実施形態において、薬物または治療薬は、がん、虚血性脳卒中、アルツハイマー病、およびパーキンソン病などの、脳の疾患または障害の予防または治療に有用であり得る。
【0026】
本発明の別の態様において、本明細書に開示される好ましい実施形態による例示的な薬物送達組成物の治療有効量を含む医薬組成物であって、薬物または治療剤に結合した本明細書に記載のBBBを通過することが可能な例示的な化合物、および、薬学的に許容される賦形剤、アジュバント、担体、緩衝剤または安定剤を含む、医薬組成物が提供される。「治療有効量」は、脳の疾患または障害に対して予防または治療効果を示すのに十分である例示的な薬物送達組成物の量として理解されるべきである。投与の実際の量、割合および時間経過は、疾患または障害、対象、および作用の性質および重症度に依存する。治療の処方は、一般開業医および他の医師の責任の範囲内である。薬学的に許容される賦形剤、アジュバント、担体、緩衝剤または安定剤は、無毒であるべきであり、有効成分の有効性を妨げてはならない。担体または他の材料の正確な特質は、経口、舌下、鼻腔内、または皮内、皮下、または静脈内注射などの注射、または乾燥粉末吸入などであり得る、投与経路に依存する。
【0027】
経口投与のための医薬組成物は、錠剤、カプセル、粉末または液体の形態であり得る。錠剤は、固体担体またはアジュバントを含み得る。液体医薬組成物は、一般に、水、石油、動物油または植物油、鉱油または合成油などの液体担体を含む。生理食塩水、デキストロースまたは他の糖類溶液、または、エチレングリコール、プロピレングリコールまたはポリエチレングリコールなどのグリコールが含まれてもよい。カプセルは、ゼラチンなどの固体担体を含み得る。静脈内、皮内または皮下の注射の場合、活性成分は、パイロジェンフリーで、適切なpH、等張性および安定性を有する、非経口的に許容される水溶液の形態である。当業者は、例えば、塩化ナトリウム溶液、リンゲル液、または乳酸リンゲル液などの等張ビヒクルを使用して、適切な溶液を十分に調製することができる。保存剤、安定剤、緩衝剤、抗酸化剤および/または他の添加剤が、必要に応じて含まれてもよい。
【0028】
別の態様において、対象への投与のために上記で定義されるBBBを通過させて薬物または治療剤を送達するための、治療有効量の例示的な薬物送達組成物の、医薬の製造における使用が提供される。
【0029】
本明細書を通して使用される「薬理学的に許容される塩」との用語は、塩酸、硫酸、リン酸、酢酸、クエン酸、シュウ酸、マロン酸、サリチル酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸、アスコルビン酸、マレイン酸、メタンスルホン酸、イソエトン酸(isoethonic acid)など、および、炭酸カリウム、水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウム、アンモニア、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどから形成される、任意の酸または塩基由来の塩を意味すると解釈されるべきである
【0030】
「プロドラッグ」との用語は、不活性または活性が極めて低い形態で投与される、薬理学的物質を意味する。投与されると、プロドラッグは、インビボで活性な代謝物に代謝される。
【0031】
「治療有効量」との用語は、非毒性であるが、所望の治療効果を提供するのに十分な薬物の量を意味する。「有効な」量は、個体の年齢および全身状態、投与される特定の濃度および組成などに応じて、対象ごとに異なる。したがって、正確な有効量を規定することが可能であるとは限らない。しかしながら、個々の場合における適切な有効量は、通常の実験を行うことで当業者により決定することができる。さらに、有効量は、治療上有効な範囲内となる量の薬物を送達するために、製剤を容易に適用するのに十分な範囲内にある濃度である。
【0032】
本発明のさらなる態様は、例示としてのみ与えられる以下の記載から明らかになるであろう。
【実施例】
【0033】
実施例1
図1に示されるトランスフェリン受容体に結合する小分子化合物は、ペプトイドライブラリーを用いたオンビーズ2色(OBTC)コンビナトリアル細胞スクリーニングを実施することによって確認した。
【0034】
化学薬剤および試薬
テンタゲル(TentaGel)MB NH2レジン(粒子径:140~170μm、担持容量:0.2~0.3mmol/g、520,000ビーズ/g)は、Rapp Polymere GmbH(Tuebingen、ドイツ)から購入した。リンクアミド(rink amide)レジン(粒子サイズ:100~200メッシュ、担持容量:0.3~0.6mmol/g)は、Chem-Impex International,Inc.(Wood Dale、IL、米国)から購入した。すべてのFmoc保護アミノ酸および2-(1H-ベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt)、すべての第一級アミン、ブロモ酢酸、N,N-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)、N,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)、ピペリジン、トリフルオロ酢酸(TFA)、臭化シアン(CNBr)、トリイソプロピルシアリン(TIS)、α-シアノ-4-ヒドロキシケイ皮酸、アセトニトリル(ACN)、塩酸(HCl)、ジクロロメタン(DCM)およびN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)は、MilliporeSigma(Massachusetts、MA、米国)から入手した。GIBCO酵素フリー細胞解離バッファー、およびQtracker細胞標識キットは、ThermoFisher Scientific(Waltham、MA、米国)から入手した。末端システイン(TFFYGGSRGKRNNFKTEEYC)を有するAngiopep-2ペプチド(Ang)は、ChinaPeptidesでカスタムメイドした。シアニン5.5マレイミドは、Lumiprobeから購入した。商業的供給元からのすべての化学試薬および溶媒は、さらに精製することなく使用した。固相合成用の反応容器として、5mlのディスポーザブル反応カラム(Intavis AG、Tuebingen、ドイツ)を使用した。マイクロ波条件下でのペプトイドの合成は、1000Wマイクロ波オーブンにおいて10%出力で実施した。すべての精製は、Waters HPLCシステム(Waters Corporation、MA、米国)で行った。マススペクトルは、α-シアノ-4-ヒドロキシ桂皮酸をマトリックスとして使用して、Applied Biosystems Voyager DE Pro質量分析計で記録した。
【0035】
ライブラリー合成
ライブラリーの基本構造は、2つのアミノ酸とそれに続く6merのさまざまなペプトイド領域で構成される。テンタゲル(TentaGel)MB NH2(140~170μm;置換:0.2~0.3mmol/gレジン;Rapp Polymere,ドイツ)6gを、5ml反応カラム(各カラムに200mgのレジン)において、室温で30分間、DMFで膨潤させた。DMFを反応容器から取り出し、レジンをまず、10.0当量のDIPEAの存在下、カップリング試薬として5.0当量のHBTUおよび5.0当量のHOBtを使用して、一晩振盪して、Fmoc-Met-OH(5.0当量)にカップリングさせた。Fmoc基を、20%ピペリジンのDMF液で、10分間2回、レジンを処理することにより、除去した。レジンを洗浄した後、Fmoc-Lys(Boc)-OHを加え(反応時間2.0時間)、Fmoc基を前述のように除去した。残りの合成は、スプリットプール合成プロトコルを用いて実施した。ライブラリーのために合計10種類のアミン、N-Boc-1,4-ブタンジアミン、アリルアミン、イソブチルアミン、2-メトキシエチルアミン、3-イソプロポキシプロピルアミン、β-アラニン、(R)-(+)-α-メチルベンジルアミン、4-メトキシベンジルアミン、ピペロニルアミン、およびフルフリルアミン、が選択された。レジンを、マイクロ波で促進するペプトイド合成ステップのために、10バッチ(30個の反応カラム)に均等に分配した。反応容器のそれぞれを、1.0Mのブロモ酢酸の無水DMF液(1.0ml)、および1.5MのDICの無水DMF液(1.0ml)で処理し、30秒間穏やかに振盪し、15秒間、10%の出力に設定したマイクロ波(1000W)にかけた。ビーズを再度30秒間振とうし、上記のようにもう1回マイクロ波にかけた。反応カラムを取り出し、DMFで洗浄した(2.0ml×10回)。次いで、各反応バッチを、一級アミンの2.0M溶液1.0ml(アミン当たり3つの反応カラム(1バッチ))で処理し、25℃で2.0時間、振盪機に置いた。レジンを洗浄し、プールし、再度10バッチ(30個の反応カラム)に均等に分け、次のペプトイド残基の添加に供した。6merのペプトイド領域が完了するまで、この手順を繰り返した。合成の最後に、ビーズをDCMで洗浄し(2.0ml×3回)、2.5mlの95%TFA、2.5%水および2.5%TISで、振盪機により2時間処理して、側鎖保護を除去し、10%ジイソプロピルエチルアミンのDMF液で中和した。反応容器を取り出し、DMFで洗浄し(2.0ml×3回)、無水DMF中、4℃で保管した。
【0036】
細胞およびsiRNA形質導入
細胞株HeLaは、American Type Culture Collectionから購入した。HeLa細胞は、100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、および10%ウシ胎児血清(Corning)を添加したダルベッコ改変イーグル培地(Corning)で、37℃、5%CO2で、維持した。siRNAトランスフェクションでは、トランスフェクションの1日前に、HeLa細胞を10cm細胞培養皿に播種し(2.5×106/dish)、製造元の指示に従って、X-tremeGENE siRNAトランスフェクション試薬(Roche)を用い、ヒトTFRC siRNA(Dharmacon、Cat# M-003941-02-0010)で、24時間、処理した。
【0037】
コンビナトリアルライブラリースクリーニングのためのオンビーズ2色結合アッセイ
約50,000個のペプトイドライブラリービーズを、10%FBSを含むDMEM培地(培地)で2回洗浄し、ポリプロピレンチューブ内で1.0ml(DMEM+10%FBS)で1.0時間インキュベートした。トランスフェリン受容体陽性HeLa細胞およびトランスフェリン受容体陰性HeLa細胞を、37℃で20分間、プレートあたり2.0mlのGIBCO酵素フリー細胞解離バッファーを用いて培養プレートから取り出した。細胞を洗浄し、DMEM+10%FBS培地に懸濁した。細胞を計数し、1.5mlマイクロ遠心チューブに、培地1.0mlに1.0×106個の細胞で、分配した。次いで、細胞標識手順を以下のように実施した:各1.0μlのQtracker試薬Aおよび試薬Bを、1.5mlマイクロ遠心チューブ中で混合し、室温で5.0分間インキュベートした。0.2mlの培地を各チューブに加え、30秒間ボルテックスした。1.0×106個の細胞を、標識溶液を含む各チューブに加え、37℃で60分間インキュベートした。トランスフェリン受容体陽性HeLa細胞は、Qtracker655(赤色)で標識し、トランスフェリン受容体陰性HeLa細胞は、Qtracker565(緑色)で標識した。細胞を2回洗浄し、DMEM+10%FBS培地に懸濁した。標識された細胞を、カラーカメラを備えたBX-51蛍光顕微鏡(Olympus、PA)のロングパスフィルターで可視化した。細胞タイプをどちらも完全に混合し、数回ピペッティングして塊を壊した。2.0mlの細胞懸濁液混合物を、50,000個のビーズを含有するチューブに添加し、穏やかに振盪しながら室温で1.0時間インキュベートした。インキュベーション中、ビーズへの細胞の結合を約15分間隔で時々チェックして、平衡化しすぎないようにし、ビーズへの細胞の非特異的結合を増加させた。ビーズをDMEM+10%FBS培地で2回穏やかに洗浄し、ロングパスフィルターを使用して蛍光顕微鏡で可視化した。
【0038】
シーケンシングのためのビーズの単離および調製
蛍光標識された赤色の細胞を含む単一のビーズを、対物倍率10倍の蛍光顕微鏡を使用して識別し、中型サイズのピペットチップを備えた20μlピペットによって手動で取り出した。選ばれたビーズを1.0%SDSで3回洗浄し、同じ溶液で45分間煮沸して、結合した細胞とタンパク質を取り除いた。最後にビーズを水で3回洗浄した。ビーズから化合物を切断し、MS/MSシーケンシング用のものを調製するために、切断溶液を調製した。そのために、30μlのCNBr(ACN中5.0M)を、1.0mlの0.1NのHClに加えた。50μlの切断溶液を、単一の単離されたビーズを含む1.5mlチューブに添加した。チューブを25℃で4.0時間インキュベートした。凍結乾燥機(SP Scientific、米国)を使用して、溶液を蒸発させ、切断された化合物を20μlの水に懸濁した。MS/MSシーケンスデータを、AB Sciex TOF/TOF 5800機器を使用して取得した。
【0039】
このスクリーニング実験において、3つの「ヒット」が確認された。
図1にその化合物を示しており、1つは、TRBP6(トランスフェリン受容体結合ペプトイド#6)として識別される。
【0040】
インビトロプルダウンアッセイ
トランスフェリン受容体の発現またはトランスフェリン受容体のノックダウンがされたHeLa細胞からの細胞溶解物を、プロテアーゼ阻害剤(Roche)を添加したRIPAバッファー(Alfa Aesar)を使用して抽出し、続いて、TRBP6、TRBP3、およびTRBP5がコンジュゲートしたビーズと共に4℃で一晩インキュベートした。次いで、ビーズをRIPAバッファーで3回洗浄し、結合タンパク質を1%SDSにより95℃で5分間溶出した。次いで、得られた溶解物を、4×Laemmli Sample Buffer(ローディングバッファー)(Bio-Rad)と混合した。次いで、サンプルを8%SDS-PAGEゲルに適用した。そして、ゲルをウェスタンブロッティング分析にかけた。
【0041】
ウエスタンブロット分析
細胞をRIPAバッファー(1%NP-40、0.5%デオキシコール酸ナトリウム、0.1%SDSのPBS液)で溶解した。完全なプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche)を、使用前に溶解バッファーに添加した。タンパク質濃度は、Bio-Rad DCタンパク質アッセイ(Bio-Rad)によって決定した。タンパク質サンプルをSDS-PAGEにかけ、ニトロセルロースメンブレンに転写した。メンブレンをPBST中の5%脱脂乳で一晩ブロックし、一次抗体とインキュベートし、続いて、適切なホースラディッシュ・ペルオキシダーゼ結合二次抗体とインキュベートした。標的タンパク質のシグナルを、Immun-Star HRP peroxide Luminol/Enhancer(Bio-Rad)によって検出し、ChemiDoc Touch Imaging System(Bio-Rad)で記録した。抗hTfR(ヒトトランスフェリン受容体)抗体は、R&D system,Inc.から購入した(Cat#AF2474)。
【0042】
図2に結果を示す。そこでは、トランスフェリン受容体への結合が、3つの例示的な化合物において見られる。
【0043】
オンビーズ2色結合スクリーニング結果の検証
MS/MSシーケンシングで化合物(TRBP6)を同定した後、テンタゲル(TentaGel)MB NH2ビーズで再合成した。25,000個のビーズ(TRBP6化合物を含む)の3つのチューブをそれぞれ、洗浄し、DMEM+10%FBSで1.0時間インキュベートすることによって、調製した。セクション4で説明した方法に従って、200万個の細胞についてそれぞれ、Qtracker655を使用して、トランスフェリン受容体陽性HeLa細胞を赤色に染色し、Qtracker565を使用して、トランスフェリン受容体陰性HeLa細胞を緑色に染色した。100万個のトランスフェリン受容体陽性HeLa細胞(赤色細胞)を1.0mlのDMEM+10%FBS培地に懸濁し、25,000個のビーズを含むチューブに加えた。100万個のトランスフェリン受容体陰性HeLa細胞(緑色細胞)を1.0mlのDMEM+10%FBS培地に懸濁し、25,000個のビーズを含む別のチューブに加えた。細胞の混合物を作るために、0.5×106個の赤色細胞と0.5×106個の緑色細胞を一緒に混合し、1.0mlのDMEM+10%FBS培地に懸濁し、25,000個のビーズを含む第3のチューブに加えた。細胞をビーズと共に室温で1.0時間インキュベートした。ビーズをDMEM+10%FBS培地で2回穏やかに洗浄し、ロングパスフィルターを使用して蛍光顕微鏡で可視化した。
【0044】
図3に結果を示す。この図において、細胞は左の列に示され、細胞とのインキュベーション後のTRBP6を含むビーズは右の列に示されている。ビーズは、赤色細胞との結合のみを示し、緑色細胞との結合は示さなかったため、OBTCスクリーニング結果の所見が検証された。
【0045】
動物
メスのCD-1マウス(6~8週齢)は、Charles River Laboratoriesから入手し、組織分布研究に使用した。すべての手順は、ヒューストン大学のアニマルケアオペレーションによって承認され、動物のケアと使用に関する機関のガイドラインに従って実施した。
【0046】
化合物TRBP6の合成
TRBP6は、リンクアミド(rink amide)レジンで合成した。100mgのレジンを5mLの反応カラムに入れ、レジンを、使用1.0時間前に、ジメチルホルムアミド(DMF)で膨潤させ、2.0mlの20%ピペリジンDMF溶液で、レジンを10分ずつ2回、処理することにより、Fmoc基を脱保護した。10.0当量のDIPEAの存在下で一晩、カップリング試薬として5.0当量のHBTUおよび5.0当量のHOBtを使用して、まずレジンをFmoc-Met-OHにカップリングさせた。上記の方法でFmocを除去した。後続のアミノ酸Fmoc-Lys(Boc)-OHを、同じペプチド結合プロトコル(HBTU/HOBt/DIPEA)を使用して導入し、DMFで10回洗浄した。上記のようにFmoc基を除去した後、マイクロ波アシスト合成プロトコルの下で2段階のペプトイドカップリング手順(アシル化およびアミノ化)を用いて、6つのペプトイド残基をカップリングさせた。アシル化の段階では、ビーズを、1.0Mのブロモ酢酸(1.0mL)および1.5MのN,N’-ジイソプロピルカルボジイミド(DIC)(1.0mL)で処理し、10%の出力でマイクロ波にかけ(2×15秒)、その間に30秒間穏やかに振とうした。DMFで洗浄後、ビーズを、1.0mLの2-メトキシエチルアミン(2.0M)で処理し、25℃で2時間振とうして、カップリングを行った。この手順を何度か繰り返して、残りの5つの残基:それぞれ、イソブチルアミン、(R)-(+)-α-メチルベンジルアミン、N-Boc-1,4-ブタンジアミン、3-イソプロポキシプロピルアミン、およびN-Boc-1,4-ブタンジアミン、を結合させた。最後に、ビーズをジクロロメタン(DCM)で洗浄し、切断の前に、真空下で乾燥させた。次いで、ビーズを、TFA/H2O/TIS(95%/2.5%/2.5%)の切断カクテルで2.0時間、処理した。次いで、粗化合物を、HPLCを用いて精製し、MALDI-TOFにより分析した。
【0047】
化合物Cy5.5-TRBP6の合成
Cy5.5-TRBP6の合成は、TRBP6について記載したものと同様のプロトコルを使用して行った。Cy5.5-TRBP6についてのアミノ酸残基の配列は、Fmoc-Cys(Trt)-OH、Fmoc-Met-OH、およびFmoc-Lys(Boc)-OHであり、Fmoc基の除去は毎回、2.0mlの20%ピペリジンDMF溶液で10分間ずつ2回、レジンを処理することにより行った。次に、マイクロ波アシスト合成プロトコルを使用して、6つのペプトイド残基をカップリングさせた。6つのペプトイド配列は、それぞれ、2-メトキシエチルアミン、イソブチルアミン、(R)-(+)-α-メチルベンジルアミン、N-Boc-1,4-ブタンジアミン、3-イソプロポキシプロピルアミン、およびN-Boc-1,4-ブタンジアミンであった。TFA/H2O/TIS(95%/2.5%/2.5%)で2.0時間処理することにより、化合物をビーズから切断した。システイン結合TRBP6誘導体は、HPLCを使用して混合物を精製し、これに、シアニン5.5マレイミドを、チオール-マレイミドカップリングプロトコルを使用して、それらを水中で1:1の当量比で混合することによってカップリングさせ、溶液のpHを7に調整することによって得られた。混合物を4℃で一晩撹拌した。混合物をHPLCで精製し、MALDI-TOFで分析して、Cy5.5-TRBP6を得た。
【0048】
【0049】
Cy5.5-Angiopep-2(Cy5.5-Ang)の合成
Angペプチドを、シアニン5.5マレイミドと水中で1:1のモル比で混合し、0.5MのEDTAを加えた。反応混合物のpHを塩酸(1N)で6.9~7.0に調整した。反応物を4℃で一晩撹拌し、MALDI-TOFによってモニタリングした。反応の完了後、混合物を凍結乾燥し、分取HPLCを使用して精製して、目的の化合物Cy5.5-Angiopep-2(38.5%)を青色粉末として得た。
【0050】
CD-1マウスにおけるインビボ生体内分布研究
Cy5.5標識ペプトイドと対照Cy5.5-Angの生体内分布研究を、健康なメスのCD-1マウス(6~8週齢、1群あたりn=4)で実施した。蛍光標識されたペプトイドおよびCy5.5-Angを、100μlの生理食塩水に調製し(マウス1匹あたり、25nmolのCy5.5-TRBPを含む生理食塩水100μl)、尾静脈からマウスに静脈内注射した。IVIS Spectrumインビボイメージングシステム(PerkinElmer)を使用して、蛍光シグナルの全身イメージングを、5分、15分、および30分において測定した。30分において、マウスを安楽死させ、マウスの左心室を介して、4/ml/minの流速で10mLの10%ヘパリン化PBSで脳を灌流した。灌流の前に、虹彩ハサミを使用して右心房を小さく切開した。脳灌流後、エクスビボイメージングのために、重要な臓器(脳、心臓、肺、肝臓、脾臓、血液および血漿)を収集した。蛍光強度を、励起波長660nm、最大発光波長710nmで測定した。目的の臓器の領域(ROI)を測定し、Living画像ソフトウェアを使用して分析した。実験のデータは平均±SDとして表され、ダネットの多重比較検定を使用した一元配置分散分析によって分析した。統計分析は、Graphpad Prism(Graphpad Inc.、バージョン7.04)で行い、p<0.05の場合、結果は統計的に有意であるとみなした。
【0051】
統計分析
特に断りのない限り、データは平均±SEMとして表す。データはスチューデントt検定によって分析し、p<0.05の場合に統計的に有意であるとみなした。p値は、正確なp値として表されるか、一般に、*p<0.05、**p<0.01、および***p<0.001として表される。
【0052】
図5は、BBBを通過することが可能な例示的な化合物、Cy5.5-TRBP6を注射したマウスについての、5分、15分、および30分の、ならびに30分の灌流後のエクスビボでの、蛍光強度のIVIS画像を示す。注射後30分で、TRBP6は、他の化合物(十分に研究されたAngペプチドを含む)よりも優れた脳への送達効率を示した。
【0053】
図6は、Cy5.5-Angペプチドを注射したマウスについての、5分、15分、および30分の、ならびに30分の灌流後のエクスビボでの、蛍光強度のIVIS画像を示す。
【0054】
図7は、BBBを通過することが可能な例示的な化合物、Cy5.5-TRBP5を注射したマウスについての、5分、15分、および30分の、ならびに30分の灌流後のエクスビボでの、蛍光強度のIVIS画像を示す。
【0055】
図8は、BBBを通過することが可能な例示的な化合物、Cy5.5-TRBP3を注射したマウスについての、5分、15分、および30分の、ならびに30分の灌流後のエクスビボでの、蛍光強度のIVIS画像を示す。
【0056】
実施例2
水への溶解性
TRBP-6ペプトイドの溶解性は、滴定によって測定した。簡単に言うと、TRBP-6の正確な量(5mg)を、透明な1.5mlエッペンドルフチューブに測った。固形物が完全に溶解し、溶液が透明になるまで、DI水をチューブに滴下して加えた(~5μl/滴)。溶解性は、ペプトイド量とDI水総量との比率として計算した。10μl中4.96mgの濃度(496mg/ml)において、TRBP-6は完全に溶解したままである。したがって、TRBP-6の水溶解性は496mg/mlより高く、水溶性が高いと考えられる。TRBP-6の水への溶解性を以下に示す。
【表1】
【0057】
HPLC分析
RP-HPLCを、LC-20A液体クロマトグラフィーシステム(Shimadzu、日本)で実施した。詳細には、HPLCシステムは、Shimadzu LC-20AD溶媒送出ポンプ、SIL-20Aオートサンプラー、およびShimadzu SPD-M20A UV/Vis検出器で構成された。TRBP-6ペプトイドを、室温で、Phenomenex(登録商標)HPLC C18カラム(250×4.6mm、5μm)を使用して分析した。移動相は、溶媒A(0.1%TFAの水溶液)、および溶媒B(0.1%TFAのアセトニトリル液、TFA:トリフルオロ酢酸)から構成された。10μlのTRBP-6ペプトイド溶液(ACN:H
2O、1:1中、350μg/ml)のアリコートを、HPLCシステムに注入した。TRBP-6について、流速1ml/minのアイソクラティック法を、30%B液で15分間適用した。検出波長は220nmに設定した。データを取得し、LabSolutionsバージョン5.92で処理した。TRBP-6のHPLCクロマトグラムは、
図10に示しており、すなわち、(A)PDAクロマトグラム、および(B)PDAスペクトルを示す。
図10(A)は、上記のHPLC法によって得られたTRBP-6(保持時間t
R=4.904min)のRP-HPLCクロマトグラムであり、合成したTRBP-6の純粋性を示している。
図10(B)は、TRBP-6をHPLCカラムに注入して得たTRBP-6のUV吸収スペクトルをプロットしたもので、TRBP-6の最大UV吸光度の波長(λ
max=216nm)を示している。
【0058】
PBS、pH7.4における安定性
TRBP-6ペプトイドを、PBS、pH7.4で、350μg/mlに希釈した。溶液を穏やかに振とうしながら37℃の水浴中でインキュベートした。アリコート(50μl)を異なる時間間隔(0、1、3、6、9、24時間)で、TRBP-6溶液から抜き取った。各時点で、分析のために10μlの溶液をHPLCに注入した。再現性を調べるために、実験は3回実施した。下記の表は、さまざまな時間間隔でのPBS、pH7.4中のTRBP-6ペプトイドの量を示している。
【0059】
ヒト血漿における安定性
濃度5mg/mlのTRBP-6ペプトイドのPBS溶液を、ヒト血漿で1.4mg/mlに希釈した。ヒト血漿中、37℃で、0、1、3、6、9、および24時間インキュベートした後、50μlの混合物を150μlの冷アセトニトリルでクエンチし、148000rpm×20分で遠心分離した。上清(100μl)をHPLCで測定した。アッセイは3回実施した。下記の表は、さまざまな時間間隔でのヒト血漿中のTRBP-6ペプトイドの量を示している。このデータは、TRBP-6の優れた安定性を支持している。
【表2】
【0060】
図11は、さまざまな時間間隔での、PBS、pH7.4中およびヒト血漿中(n=3)の、TRBP-6ペプトイドの安定性を示す。
【国際調査報告】