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  • 特表-前赤内期マラリアワクチン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】前赤内期マラリアワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/39 20060101AFI20230724BHJP
   A61K 39/015 20060101ALI20230724BHJP
   A61P 33/06 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 47/22 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20230724BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20230724BHJP
   C07D 239/49 20060101ALI20230724BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20230724BHJP
   C07K 14/445 20060101ALI20230724BHJP
   C12N 15/30 20060101ALN20230724BHJP
【FI】
A61K39/39 ZNA
A61K39/015
A61P33/06
A61K9/107
A61K9/19
A61K47/06
A61K47/26
A61K47/22
A61K47/14
A61K47/10
C07D239/49
A61K31/505
C07K14/445
C12N15/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581611
(86)(22)【出願日】2020-12-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-21
(86)【国際出願番号】 JP2020044675
(87)【国際公開番号】W WO2022003999
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】63/045,540
(32)【優先日】2020-06-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 2019年12月2日にウェブサイト(https://reader.elsevier.com/reader/sd/pii/S0021925817483360?token=65865EEA41C7B9EBE39C7069221E5B08C7F3A3DCF3DC3E278F2AD41C213D228F71ECEEB1DFD15E6B3114CC5140BD1F6F&originRegion=us-east-1&originCreation=20221116043431)で公開されたJournal of Biological Chemistryのウェブサイトにて、前赤内期マラリアワクチンに関する研究結果について公開した。
(71)【出願人】
【識別番号】522378317
【氏名又は名称】ピーエイティエイチ
【氏名又は名称原語表記】PATH
(71)【出願人】
【識別番号】000002912
【氏名又は名称】住友ファーマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(72)【発明者】
【氏名】キング,シー リヒター
(72)【発明者】
【氏名】ウー,イーミン
(72)【発明者】
【氏名】プリースカット,ジョーダン リー
(72)【発明者】
【氏名】タイゼン,ミケル
(72)【発明者】
【氏名】シン,スシール クマール
(72)【発明者】
【氏名】福島 晃久
【テーマコード(参考)】
4C076
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA30
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076BB25
4C076BB31
4C076CC06
4C076DD08E
4C076DD08F
4C076DD09E
4C076DD09F
4C076DD34
4C076DD38
4C076DD59
4C076DD60
4C076DD67
4C076FF01
4C076FF11
4C076FF15
4C076FF16
4C085AA03
4C085AA38
4C085EE03
4C085EE06
4C085FF12
4C085FF17
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG05
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA07
4C086MA22
4C086MA44
4C086MA55
4C086MA59
4C086MA63
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZB38
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA22
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
保存安定性および免疫賦活活性に優れた前赤内期マラリアワクチンを提供する。本発明によれば、抗原に対する特異的免疫反応をさらに増強することができ、かつ保存安定性の高いワクチンアジュバントとして(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物と、生物活性を示すマラリアワクチンとを組み合わせることにより、保存安定性および免疫賦活活性に優れた前赤内期マラリアワクチンを提供することが可能となる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトに、医薬上の有効量の医薬組成物I)およびワクチンII)の組み合わせを投与することを含む、マラリア感染を阻止するための方法であって、当該医薬組成物I)が、以下の成分i)~vi):
i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含み;および
当該ワクチンII)が、配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含むマラリアワクチンである、方法。
【請求項2】
i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含む、医薬組成物I);および
配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含むマラリアワクチンII)
を含む、組み合わせ医薬。
【請求項3】
i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含む、医薬組成物I);および
配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含むマラリアワクチンII)
を含む、マラリア用ワクチン製剤。
【請求項4】
i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含む、医薬組成物I);および
配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含むマラリアワクチンII)
を含む、キット。
【請求項5】
医薬組成物が、水中油型エマルション製剤またはその凍結乾燥製剤である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項6】
親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、およびポリソルベート80);ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60);またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類(例えば、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(124)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、およびポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール)である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項7】
親水性界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート40、またはポリソルベート80である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項8】
親油性界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、および中鎖トリグリセリド);グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、およびトリイソオクタン酸グリセリン);ショ糖脂肪酸エステル類(例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、およびショ糖パルミチン酸エステル);またはプロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびモノステアリン酸プロピレングリコール)である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項9】
親油性界面活性剤が、トリオレイン酸ソルビタンである、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項10】
医薬組成物が、トコフェロール(例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、およびδ-トコフェロール);トコフェロール酢酸エステル;およびブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択される抗酸化剤Bをさらに含む、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項11】
医薬組成物が、α-トコフェロールをさらに含む、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項12】
抗酸化剤Aが、パルミチン酸アスコルビン酸、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、またはアスコルビン酸である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項13】
抗酸化剤Aが、アスコルビン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸カリウムである、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項14】
賦形剤が、非還元性の糖類(例えば、スクロースおよびトレハロース)または糖アルコール類(例えば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、およびラクチトール)である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項15】
賦形剤が、スクロースまたはトレハロースである、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【請求項16】
医薬組成物の凍結乾燥製剤を5℃で6ヵ月保存した後の不純物UK-1.02の面積百分率の増加量が、5.0%以下である、請求項1に記載の方法または請求項2に記載の組み合わせ医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワクチンアジュバントとして有用な化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物およびマラリアワクチンの組み合わせ使用、およびマラリア感染を阻止するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
病原体その物を用いるワクチンに比べ、病原体の成分の一部を抗原としたサブユニットワクチンは、化学合成および遺伝子組換えによって製造できることから、当該サブユニットワクチンは、ワクチンの安全性および製造方法の面で優れている。しかしながら、サブユニットワクチンは、病原体その物から製造された生ワクチンまたは不活化ワクチンに比べて免疫賦活活性が低い傾向にある。このことから、エピトープの免疫原性を強化し、ワクチンの免疫賦活活性を向上させるために、ワクチン抗原およびアジュバントを併用する疾患の予防および治療について検討されている。
【0003】
最近、TLR7アゴニスト活性を有するアジュバントとして、下記:
【化1】
で示される(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミド(以下、「化合物A」と称する)が報告されている(特許文献1)。
化合物Aは、優れたワクチンアジュバント活性を有しているが、実際哺乳動物にワクチンアジュバントとして投与する場合、エマルションなどの製剤処方にすることが求められている。一般的には、エマルション製剤において、製剤の保存安定性を向上するためにアスコルビン酸類などの抗酸化剤を用いることが知られている。しかしながら、アスコルビン酸類などの抗酸化剤が粒度分布を安定化させることは知られていない。
【0004】
マラリア原虫Plasmodium falciparumのスポロゾイトの表面タンパクであるPfCSPは、397アミノ酸からなる前赤内期マラリアワクチンの標的抗原として知られている。しかしながら、正しく折り畳まれたタンパクの形成が困難であるため、PfCSP4/38で示される全長PfCSPはほとんどの異種発現系における製造には困難な標的であることが示されてきた(非特許文献1~6)。
【0005】
アジュバント、Alhydrogel(登録商標)によって強化された免疫原性を獲得しているマラリアワクチンが知られている(非特許文献1)。Alhydrogel(登録商標)は、化合物Aとは相違する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】WO2017/061532
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Gordon, D. M. et al., J Infect Dis 1995; 171, 1576-1585
【非特許文献2】Young, J. F. et al., Science 1985; 228, 958-962
【非特許文献3】Noe, A. R. et al., PLoS One 2014; 9, e107764
【非特許文献4】Schwenk, R. et al., PLoS One 2014; 9, e111020
【非特許文献5】Kedees, M. H. et al., Exp Parasitol 2002; 101, 64-68
【非特許文献6】Plassmeyer, M. L. et al., J Biol Chem 2009; 284, 26951-26963
【非特許文献7】Singh, S. K. et al., Microbial cell factories 2018; 17, 55
【非特許文献8】Singh, S. K. et al., Microbial cell factories 2017; 16, 97
【非特許文献9】Theisen, M. et al., Vaccine 2014; 32, 2623-2630
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、保存安定性および免疫賦活活性に優れた、ワクチンアジュバントとして有用な化合物またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物および前赤内期マラリアワクチンの組み合わせ使用、およびこれらの医薬組成物および前赤内期マラリアワクチンを哺乳動物に投与することを含むマラリア感染を阻止するための方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
化合物Aは、分子中にスクワレン様構造に由来する6個の不飽和結合を有している。化合物Aの製剤検討をする中で、化合物Aは、油状組成物としてスクワレンを用いる一般的なエマルション製剤の凍結乾燥製剤とした場合に、化合物Aの分子内の不飽和結合が酸化され、それにより化合物Aの含量が低下してしまうことが判明した。そこで実用可能な保存安定性を有するワクチンアジュバントの製剤を提供すべく本発明者らは鋭意検討を行った結果、化合物Aのエマルション組成物を調製する際に油状組成物としてスクワランを用いることにより、化合物Aの酸化に対する安定性が高まることを見出した。さらに、アスコルビン酸類などの抗酸化剤を添加することにより、保存安定性、特に化合物A自体の酸化に対する安定性だけでなく、粒度分布の安定性にも優れた製剤処方となることを見出した。
【0010】
本発明者らはまた、PfCSP4/38で示される、前赤内期マラリアワクチンとして改良されたPfCSPがインビボおよびインビトロ解析の両方で確認されたように抗体の立体構造エピトープを保持し、生物活性を示すことを見出した。
【0011】
化合物Aを含む医薬組成物およびPfCSP4/38を含むマラリアワクチンの組み合わせ使用が、保存安定性および免疫賦活活性に優れた前赤内期マラリアワクチンとして有用であることが期待される。
【0012】
すなわち、本発明の態様は以下のとおりである。
[項1]ヒトに、医薬上の有効量の医薬組成物I)およびワクチンII)の組み合わせを投与することを含む、マラリア感染を阻止するための方法であって、当該医薬組成物I)が、以下の成分i)~vi):
i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミド(以下、「化合物A」と称する)、またはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル類(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含み;および
当該ワクチンII)が、配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含むマラリアワクチンである、方法。
【0013】
[項2] i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル類(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含む、医薬組成物I);および
配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含むマラリアワクチンII)
を含む、組み合わせ医薬。
【0014】
[項3] i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸等のアスコルビン酸エステル、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム等のアスコルビン酸の無機塩、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含む、医薬組成物I);および
配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含むマラリアワクチンII)
を含む、マラリア用ワクチン製剤。
【0015】
[項4] i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸等のアスコルビン酸エステル、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム等のアスコルビン酸の無機塩、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含む、医薬組成物I);および
配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含むマラリアワクチンII)
を含む、キット。
【0016】
[項5]医薬組成物が、水中油型エマルション製剤またはその凍結乾燥製剤である、項1~4のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0017】
[項6]親水性界面活性剤が、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、およびポリソルベート80);ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60);またはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類(例えば、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(124)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、およびポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール)である、項1~5のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0018】
[項7]親水性界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、またはポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールである、項1~5のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0019】
[項8]親水性界面活性剤が、ポリソルベート20、ポリソルベート40、またはポリソルベート80である、項1~5のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0020】
[項9]親油性界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、および中鎖トリグリセリド);グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、およびトリイソオクタン酸グリセリン);ショ糖脂肪酸エステル類(例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、およびショ糖パルミチン酸エステル);またはプロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびモノステアリン酸プロピレングリコール)である、項1~8のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0021】
[項10]親油性界面活性剤が、ソルビタン脂肪酸エステル、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、またはトリオレイン酸ソルビタンである、項1~8のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0022】
[項11]親油性界面活性剤が、トリオレイン酸ソルビタンである、項1~8のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0023】
[項12]医薬組成物が、トコフェロール類(例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、およびδ-トコフェロール);トコフェロール酢酸エステル;およびブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択される抗酸化剤Bをさらに含む、項1~11のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0024】
[項13]医薬組成物が、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、およびδ-トコフェロールからなる群より選択される抗酸化剤Bをさらに含む、項1~11のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0025】
[項14]医薬組成物が、α-トコフェロールである抗酸化剤Bをさらに含む、項1~11のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0026】
[項15]抗酸化剤Aが、パルミチン酸アスコルビン酸、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、またはアスコルビン酸である、項1~14のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0027】
[項16]抗酸化剤Aが、アスコルビン酸ナトリウムまたはアスコルビン酸カリウムである、項1~14のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0028】
[項17]賦形剤が、非還元性の糖類(例えば、スクロースおよびトレハロース)または糖アルコール類(例えば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、およびラクチトール)である、項1~16のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0029】
[項18]賦形剤が、スクロース、トレハロース、ソルビトール、またはキシリトールである、項1~16のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0030】
[項19]賦形剤が、スクロースまたはトレハロースである、項1~16のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0031】
[項20]医薬組成物中のスクワランの含量が、化合物Aの重量の50倍~500倍である、項1~19のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0032】
[項21]医薬組成物中のスクワランの含量が、化合物Aの重量の100倍~400倍である、項1~19のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0033】
[項22]医薬組成物中のスクワランの含量が、化合物Aの重量の200倍~300倍である、項1~19のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0034】
[項23]医薬組成物中の親水性界面活性剤の含量が、化合物Aの重量の0.5倍~250倍である、項1~22のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0035】
[項24]医薬組成物中の親水性界面活性剤の含量が、化合物Aの重量の5倍~100倍である、項1~22のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0036】
[項25]医薬組成物中の親水性界面活性剤の含量が、化合物Aの重量の10倍~50倍である、項1~22のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0037】
[項26]医薬組成物中の親油性界面活性剤の含量が、化合物Aの重量の0.5倍~250倍である、項1~25のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0038】
[項27]医薬組成物中の親油性界面活性剤の含量が、化合物Aの重量の5倍~100倍である、項1~25のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0039】
[項28]医薬組成物中の親油性界面活性剤の含量が、化合物Aの重量の10倍~50倍である、項1~25のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0040】
[項29]医薬組成物中の抗酸化剤Aの含量が、アスコルビン酸ナトリウムの重量に換算して算出すると化合物Aの重量の0.5倍~500倍である、項1~28のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0041】
[項30]医薬組成物中の抗酸化剤Aの含量が、アスコルビン酸ナトリウムの重量に換算して算出すると化合物Aの重量の2.5倍~250倍である、項1~28のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0042】
[項31]医薬組成物中の抗酸化剤Aの含量が、アスコルビン酸ナトリウムの重量に換算して算出すると化合物Aの重量の5倍~100倍である、項1~28のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0043】
[項32]医薬組成物中の賦形剤の含量が、化合物Aの重量の50倍~1000倍である、項1~31のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0044】
[項33]医薬組成物中の賦形剤の含量が、化合物Aの重量の100倍~750倍である、項1~31のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0045】
[項34]医薬組成物中の賦形剤の含量が、化合物Aの重量の200倍~625倍である、項1~31のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0046】
[項35]医薬組成物中の抗酸化剤Bの含量が、化合物Aの重量の5倍~250倍である、項12~34のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0047】
[項36]医薬組成物中の抗酸化剤Bの含量が、化合物Aの重量の12.5倍~125倍である、項12~34のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0048】
[項37]医薬組成物中の抗酸化剤Bの含量が、化合物Aの重量の25倍~50倍である、項12~34のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0049】
[項38]化合物Aの重量が、化合物Aを含まない医薬組成物の凍結乾燥物の重量の0.0001倍~0.65倍である、項1~37のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0050】
[項39]化合物Aの重量が、化合物Aを含まない医薬組成物の凍結乾燥物の重量の0.0002倍~0.35倍である、項1~37のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0051】
[項40]化合物Aの重量が、化合物Aを含まない医薬組成物の凍結乾燥物の重量の0.0005倍~0.065倍である、項1~37のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0052】
[項41]製造直後の医薬組成物のエマルションおよび凍結乾燥製剤として25℃で6ヵ月保存後に復水した医薬組成物のエマルションの粒子径D90値が、1000nm以下である、項5~40のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0053】
[項42]医薬組成物の凍結乾燥製剤を5℃で6ヵ月保存した後の不純物UK-1.02の面積百分率値の増加量が、5.0%以下である、項5~41のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0054】
[項43]医薬組成物の凍結乾燥製剤を5℃で6ヵ月保存した後の不純物UK-1.02の面積百分率値の増加量が、1.0%以下である、項5~41のいずれか1項に記載の方法、組み合わせ医薬、ワクチン製剤、またはキット。
【0055】
[項44]ヒトに、医薬上有効な量の医薬組成物I)を医薬上有効な量のワクチンII)と組み合わせて投与することを含む、マラリア感染を阻止するための方法であって、当該医薬組成物I)は、以下の成分i)~vi):
i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル(例えばL-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含み;および
当該ワクチンII)は、配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含むマラリアワクチンである、方法。
【0056】
[項45]マラリアワクチンと組み合わせてマラリア感染を阻止するのに用いるための医薬組成物であって、当該医薬組成物は、以下の成分i)~vi):
i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含み;および
当該マラリアワクチンは、配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含む、医薬組成物。
【0057】
[項46]医薬組成物と組み合わせてマラリア感染を阻止するのに用いるためのマラリアワクチンであって、当該マラリアワクチンは、配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原を含み;および
当該医薬組成物は、以下の成分i)~vi):
i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含む、マラリアワクチン。
【発明の効果】
【0058】
本発明によれば、抗原に対する特異的免疫反応をさらに増強することができ、かつ保存安定性の高いワクチンアジュバントとしての医薬組成物および均質かつ生物活性を示すマラリアワクチンを組み合わせることにより、保存安定性および免疫賦活活性に優れた前赤内期マラリアワクチンを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1図1は、mAb 1E8に対して反応性である完全な反復領域(4 NVDP/38 NANP)を含むPfCSP4/38のスキーム図を示す。シグナルペプチド(SP)の位置、NVDPおよびNANPタンパクユニットを含む中央反復領域、およびグリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを示す。4つのC末端システインを線で示し、これらは立体構造mAb 1A6に反応性である。配列は、N末端システインとともにN末端を省略し、Tyr26で開始し、C末端のGPIアンカーの前(Ser383)で終了する。組換えPfCSP4/38タンパクはN末端にベクターでコードされたアミノ酸残基A-E-R-Sを、C末端に短いフレキシブルなリンカー(G-G-S)に次いで6つのヒスチジンタグを含む。
【0060】
図2図2は、精製したPfCSP4/38の電気泳動を示す。非還元性および還元性条件において異なる量(0.5、1.0および1.5μgPfCSP)を含む、クマシーブルーで染色された4~12.5%ポリアクリルアミドゲル。上段パネルに立体構造(mAb 1A6)抗体、および非立体構造(mAb 1E8)抗体で充填された同じゲルを用いたウェスタンブロット。分子質量マーカーのサイズ(kDa)を示す。
【0061】
図3図3は、PfCSP4/38の免疫原性を示す。マウス(n=8)に、0、21および42日目にAlhydrogel(登録商標)でアジュバントした、10μgの精製PfCSP4/38で免疫性を与え、21、42および56日目に出血させた。IgG抗体力価はEC50値として示した。各日にち間の抗体力価における有意な差はマン・ホイットニー順位和検定を用いて分析した。
【0062】
図4図4は、抗PfCSP4/38抗体が(A、B)スポロゾイト滑走運動、(C、D)トラバーサルおよび(E、F)肝細胞浸潤を阻害したことを示す。PfCSP4/38特異的抗体(A,CおよびE)またはmAb 2A10(B,DおよびF)を含むマウスポリクローナル血清をナイーブマウス血清に対して正規化した。血清中のマウスポリクローナル(PfCSP4/38)IgGの開始濃度はスポロゾイトELISAによりまず決定し、ELISAではmAb2A10で生成した検量線を用いて、血清特異的光学密度値を4パラメータ曲線フィッティングプログラムで濃度値に変換した。アッセイ特異的IC50濃度値は、存在するポリクローナルPfCSP4/38抗体の決定した開始濃度に基づき、血清の連続希釈物を用いて推定した。mAb 2A10濃度は精製IgGからのものである。IC50は4パラメータモデルおよび最小2乗法を用いてロジスティック回帰により計算し、最適値を決定した。各y値の最小値をゼロに設定し、最大値を100%に設定した。pAb:ポリクローナル抗体。
【発明を実施するための形態】
【0063】
医薬組成物
本発明において、医薬組成物としては、化合物A、スクワラン、アスコルビン酸類の抗酸化剤Aおよび賦形剤Aを含むエマルションの凍結乾燥製剤が挙げられる。凍結乾燥前のエマルション製剤および凍結乾燥製剤を復水したエマルション製剤も本発明に含まれる。
本発明の医薬組成物において、活性成分として含有する化合物Aは、フリー体であっても、その医薬的に許容される酸付加塩または塩基付加塩であってもよい。当該酸付加塩としては、例えば無機酸または有機酸(塩酸、臭化水素酸、硫酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、およびマレイン酸など)との酸付加塩が挙げられる。当該塩基付加塩としては、例えばナトリウム塩およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、カルシウム塩などのアルカリ土類金属塩、およびアンモニウム塩が挙げられる。また、本発明における化合物Aまたはその医薬的に許容される塩は、水和物および溶媒和物の形で存在することもあるので、それらの化合物も本発明における化合物Aまたはその医薬的に許容される塩に含まれる。それらの詳細および製造法については、特許文献1に記載されており、化合物Aまたはその医薬的に許容される塩は、例えば、特許文献1に記載の方法にしたがって製造することができる。
本発明の医薬組成物において、化合物Aの含量は、化合物Aのフリー体の含量として記載している。よって、化合物Aがその医薬的に許容される塩として用いられる場合の含量は、化合物Aの重量に塩の重量を加えた重量に換算して算出される。
【0064】
本発明において、エマルションまたはエマルション製剤とは、水中油型または油中水型エマルションを意味する。好ましくは、水中油型エマルションである。油状組成物と水性溶液の重量比として、好ましくは、1:99~15:85であり、より好ましくは、2:98~10:90であり、さらに好ましくは、3:97~9:91であり、またさらに好ましくは、4:96~7:93である。本発明のエマルション製剤において、化合物Aは、油状組成物中に溶解して存在している。
本発明の凍結乾燥製剤とは、本発明のエマルション製剤における水を凍結乾燥条件下にて除去した製剤を意味する。凍結乾燥製剤の重量に対して2倍~20倍の重量の注射用水を用いて復水することによって、エマルション製剤とすることができる。
【0065】
本発明において、親水性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、およびポリソルベート80);ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60);およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類(例えば、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(124)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、およびポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール)が挙げられる。好ましくは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート80、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、およびポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコールであり、さらに好ましくは、ポリソルベート20、ポリソルベート40、およびポリソルベート80であり、特に好ましくは、ポリソルベート80である。
本発明の医薬組成物において、親水性界面活性剤の含量は、化合物Aの重量の0.5倍~250倍であり、好ましくは5倍~100倍であり、より好ましくは10倍~50倍である。
【0066】
本発明において、親油性界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、および中鎖トリグリセリド);グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、およびトリイソオクタン酸グリセリン);ショ糖脂肪酸エステル類(例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、およびショ糖パルミチン酸エステル);およびプロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびモノステアリン酸プロピレングリコール)が挙げられる。好ましくは、ソルビタン脂肪酸エステル、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、およびトリオレイン酸ソルビタンであり、さらに好ましくは、トリオレイン酸ソルビタンである。
本発明の医薬組成物において、親油性界面活性剤の含量は、化合物Aの重量の0.5倍~250倍であり、好ましくは5倍~100倍であり、より好ましくは10倍~50倍である。
【0067】
本発明の医薬組成物において、油状組成物としては、スクワランが用いられる。本発明の医薬組成物の製剤検討において、エマルション製剤の油状組成物として一般的なスクワレンを用いた場合と比べて、スクワランを用いた場合に化合物Aの酸化に対する安定性が高まることから、本発明の医薬組成物においては油状組成物としてスクワランを用いるのが好ましい。本発明の医薬組成物において、スクワランの含量は、化合物Aの重量の50倍~500倍であり、好ましくは100倍~400倍であり、より好ましくは200倍~300倍である。
【0068】
本発明において、抗酸化剤Aとしては、アスコルビン酸エステル類(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸);アスコルビン酸の無機酸塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、およびアスコルビン酸カルシウム);およびアスコルビン酸が挙げられる。好ましくは、パルミチン酸アスコルビン酸、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、およびアスコルビン酸であり、さらに好ましくは、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カリウムである。
本発明の医薬組成物において、抗酸化剤Aの含量は、化合物Aの重量の0.5倍~500倍であり、好ましくは2.5倍~250倍であり、より好ましくは5倍~100倍であり、ここで、その含量は、アスコルビン酸ナトリウムに換算して、すなわち、抗酸化剤Aであるアスコルビン酸(アスコルビン酸誘導体)をアスコルビン酸ナトリウムの重量に換算することによって算出される。
【0069】
本発明において、賦形剤Aとしては、非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)が挙げられる。好ましくは、非還元性の糖類(例えば、スクロース、トレハロース)および糖アルコール類(例えば、ソルビトール、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、およびラクチトール)であり、さらに好ましくは、スクロース、トレハロース、ソルビトール、およびキシリトールであり、さらにより好ましくは、スクロースおよびトレハロースであり、特に好ましくは、スクロースである。
本発明の医薬組成物において、賦形剤Aの含量は、化合物Aの重量の50倍~1000倍であり、好ましくは100倍~750倍であり、より好ましくは200倍~625倍である。
【0070】
本発明において、抗酸化剤Bとしては、トコフェロール類(例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、およびδ-トコフェロール);トコフェロール酢酸エステル;およびブチルヒドロキシアニソールが挙げられる。好ましくは、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、およびδ-トコフェロールであり、さらに好ましくは、α-トコフェロールである。
本発明の医薬組成物において、抗酸化剤Bの含量は、化合物Aの重量の5倍~250倍であり、好ましくは12.5倍~125倍であり、より好ましくは20倍~50倍であり、さらに好ましくは25倍~50倍である。
【0071】
本発明において、凍結乾燥製剤は、エマルションをバイアルに充填し、凍結乾燥機を用いて通常の製造条件下で凍結乾燥を行うことにより製造することができる。当該製造条件は限定されるものではないが、具体的には、例えば、-40℃付近で凍結させた後、庫内を真空に減圧し、同時に、庫内の温度を-20℃に上昇させて、約10~80時間乾燥させた上で、庫内の温度を25℃に上昇させて約10~30時間乾燥させる条件が挙げられる。
【0072】
本発明の医薬組成物の一の態様として、
i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル類(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウムおよびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤A;
v)親水性界面活性剤;および
vi)親油性界面活性剤
を含む、エマルションの凍結乾燥製剤が挙げられる。
【0073】
本発明の医薬組成物の別の態様として、
i)(4E,8E,12E,16E,20E)-N-{2-[{4-[(2-アミノ-4-{[(3S)-1-ヒドロキシヘキサン-3-イル]アミノ}-6-メチルピリミジン-5-イル)メチル]ベンジル}(メチル)アミノ]エチル}-4,8,12,17,21,25-ヘキサメチルヘキサコサ-4,8,12,16,20,24-ヘキサンアミドまたはその医薬的に許容される塩;
ii)スクワラン;
iii)アスコルビン酸エステル類(例えば、L-アスコルビン酸ステアリン酸エステルおよびパルミチン酸アスコルビン酸)、アスコルビン酸の無機塩(例えば、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、およびアスコルビン酸カルシウム)、およびアスコルビン酸からなる群より選択される抗酸化剤A;
iv)非還元性の糖類および糖アルコール類(ただし、マンニトールは除く)からなる群より選択される賦形剤A;
v)親水性界面活性剤、例えば、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート65、およびポリソルベート80);ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油類(例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油10、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油20、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油40、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油50、およびポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60);およびポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール類(例えば、ポリオキシエチレン(42)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、ポリオキシエチレン(54)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(105)ポリオキシプロピレン(5)グリコール、ポリオキシエチレン(124)ポリオキシプロピレン(39)グリコール、ポリオキシエチレン(160)ポリオキシプロピレン(30)グリコール、ポリオキシエチレン(196)ポリオキシプロピレン(67)グリコール、およびポリオキシエチレン(200)ポリオキシプロピレン(70)グリコール);
vi)親油性界面活性剤、例えば、ソルビタン脂肪酸エステル類(例えば、ソルビタン脂肪酸エステル、モノラウリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、および中鎖トリグリセリド);グリセリン脂肪酸エステル類(例えば、グリセリン脂肪酸エステル、モノステアリン酸グリセリン、モノミリスチン酸グリセリン、モノオレイン酸グリセリン、およびトリイソオクタン酸グリセリン);ショ糖脂肪酸エステル類(例えば、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖ステアリン酸エステル、およびショ糖パルミチン酸エステル);プロピレングリコール脂肪酸エステル類(例えば、プロピレングリコール脂肪酸エステルおよびモノステアリン酸プロピレングリコール);および
iii’)トコフェロール類(例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、およびδ-トコフェロール)、トコフェロール酢酸エステル、およびブチルヒドロキシアニソールからなる群より選択される抗酸化剤B
を含む、エマルションの凍結乾燥製剤が挙げられる。
【0074】
本発明の医薬組成物のまた別の態様として、抗酸化剤としてiii’)トコフェロール類(例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、およびδ-トコフェロール)を含むが、iii)の抗酸化剤Aを含まない凍結乾燥製剤が挙げられる。当該トコフェロール類として、好ましくは、α-トコフェロールである。
本発明の医薬組成物において、トコフェロールの含量は、化合物Aの重量の5倍~250倍であり、好ましくは12.5倍~125倍であり、より好ましくは20倍~50倍であり、さらにより好ましくは25倍~50倍である。
当該医薬組成物において、さらなる抗酸化剤として、チオ硫酸ナトリウムまたはブチルヒドロキシアニソールを含んでいてもよい。
【0075】
本発明の医薬組成物において、化合物Aの重量は、化合物Aを含まない医薬組成物の凍結乾燥物の重量の0.0001倍~0.65倍であり、好ましくは0.0002~0.35倍であり、より好ましくは0.0005倍~0.065倍である。
【0076】
本発明の医薬組成物において、油滴の粒子径D90値は、製造工程中または製造直後のエマルションの粒子径D90値が1000nm以下、好ましくは300nm以下である。製造直後のエマルションとしては、例えば、製造後30秒以内のエマルションが挙げられる。凍結乾燥製剤として保存した後に復水した医薬組成物のエマルションの油滴の粒子径D90値は、好ましくは、5℃または25℃で6ヵ月保存後に復水したエマルションの油滴の粒子径D90値が1000nm以下である。
【0077】
本発明の医薬組成物において、油滴の粒子径D90値は、エマルションに含まれる油滴粒子の粒度分布を示す代表値の一つであり、散乱強度基準による90%粒子径を意味する。一般的には、粒子径D90値は、動的光散乱式粒度分布測定装置、レーザー回折式粒度分布測定装置、または画像処理式粒度分布測定装置を用いて測定し、算出される。本発明において、粒子径D90値は、動的光散乱式粒度分布測定装置:Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments)で測定した際の値を意味する。
【0078】
本発明の医薬組成物において、不純物UK-1.02は、高速液体クロマトグラフィーを用いた類縁物質の評価において検出される代表的な不純物の一つである。特に、それは、Phenyl-Hexylカラム(Waters製Xselect CSH Phenyl-Hexyl XP Column、4.6mmx75mm、2.5μm、型番:186006134)を用いて、純水、アセトニトリル、メタノール、およびトリフルオロ酢酸を用いた逆相系高速液体クロマトグラフィー法により、化合物Aとして0.4~2μg相当量を注入し、220nmの波長で分光学的に測定した際に、化合物Aの1.02倍の溶出時間に検出される不純物を意味する。測定条件の詳細については、以下のとおりである。
移動相A:0.1% トリフルオロ酢酸水溶液
移動相B:0.06% トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル/メタノール混合溶液(8:2)
送液条件:
【表1】

【0079】
本発明の医薬組成物の保存安定性としては、本発明の医薬組成物の凍結乾燥製剤を5℃で6ヵ月保存した後の不純物UK-1.02の面積百分率値における増加量が、保存開始時の5.0%以下、好ましくは1.0%以下であることを意味する。面積百分率は、実測値で比較している。
【0080】
本発明の医薬組成物は、調製した水中油型エマルションを乳化した後に無菌ろ過フィルターを用いて無菌ろ過を行い、凍結乾燥した状態で保存される。無菌ろ過をする際に、目詰まりを避け効率よくろ過するために、粒子径D90値が1000nm以下であることが好ましい。
【0081】
本発明の医薬組成物は、復水した後のエマルションの粒子径が変化しない範囲で、他の添加剤をさらに含んでいてもよい。投与時に、本発明の医薬組成物は、復水した後のエマルションの粒子径が変化しない範囲で、ワクチン抗原(本明細書において、「ワクチン」とも称される)を含む製剤と混合して投与してもよい。本発明の医薬組成物および当該ワクチン抗原の混合方法および混合比は限定されるものではないが、例えば、復水したエマルション製剤と、等容量のワクチン抗原を含む製剤を、バイアル中で転倒混和することによって混合することができる。
【0082】
本発明の医薬組成物は、化合物Aを含む凍結乾燥製剤およびワクチン抗原を含むキットとして提供することができる。
【0083】
本発明の医薬組成物は、投与時に凍結乾燥製剤の重量の2倍~20倍の注射用水で復水し、さらにワクチン抗原を含む製剤と混合して投与することができる。本発明の医薬組成物の一回当たりの投与量は、化合物Aの重量として1ng~250mg、好ましくは1ng~50mgである。同時に投与するワクチン抗原の種類または投与される対象の年齢によって異なるが、一回投与であってもよく、一回または複数回、追加投与されてもよい。
【0084】
本発明の医薬組成物の保存安定性は、下記の試験例にしたがって評価した。
【0085】
ワクチン抗原
本明細書におけるワクチン抗原は、配列番号1、配列番号2、配列番号3またはそれらと実質的に同一のいずれかの配列で表される配列を含む抗原であってもよい。本明細書において用語「実質的に同一」の配列は、配列番号1、配列番号2または配列番号3で表される配列と少なくとも70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%または99%の相同性を有するいずれかの配列を意味する。本発明のワクチン抗原の一の態様として、完全長PfCSP抗原を含むマラリアワクチンが含まれる。別の態様として、ワクチン抗原は、配列番号1で表される配列を有するヒスチジンタグPfCSP4/38(ここで、N末端の4アミノ酸残基A-E-R-Sのいずれかおよび/またはC末端の9アミノ酸残基G-G-S-H-H-H-H-H-Hは適宜修飾、欠失または置換されていてもよく、または少なくとも1つのアミノ酸がこれらの残基に適宜挿入されていてもよい)の抗原を含むワクチンである。また別の態様として、ワクチン抗原は、配列番号2で表される配列を有するPfCSP4/38(ここで、N末端の4アミノ酸残基A-E-R-Sのいずれかおよび/またはC末端の3アミノ酸残基G-G-Sは適宜修飾、欠失または置換されていてもよく、または少なくとも1つのアミノ酸がこれらの残基に適宜挿入されていてもよい)の抗原を含むワクチンである。さらに別の態様として、ワクチン抗原は、PfCSP26-383に対応する配列番号3で表される配列を有するPfCSP4/38の抗原を含むワクチンである。
【0086】
スケーラブルな乳酸連鎖球菌発現系は、後で精製および解析される、PfCSP4/38構築物を発現するのに用いてもよい。PfCSP4/38はインビボおよびインビトロ解析の両方で確認されたように抗体の立体構造エピトープを保持し、天然の分子と同様の機能的な免疫原性をもたらしうる(試験例4~7)。
【0087】
組み合わせ医薬/組み合わせ療法
本発明の前赤内期マラリアワクチンは、ワクチン抗原およびアジュバントであるTLR7アゴニスト活性を有する化合物Aを含む医薬組成物を組み合わせることにより、IgG2(Th1)抗体の誘導能が高められ、優れたワクチン活性を示しうる。当該組み合わせ使用は、ワクチン抗原と医薬組成物を同時に投与することまたは所定の時間間隔で別々に投与することを含んでいてもよい。一の態様として、そのような組み合わせの同時使用には、ワクチン抗原および医薬組成物を含む組み合わせ医薬が含まれる。本明細書において、当該組み合わせ医薬はまた、「アジュバント製剤」または「ワクチン製剤」と称してもよい。別の態様として、当該組み合わせ使用には、ワクチン抗原および医薬組成物を含むキットが含まれる。
本発明において、医薬組成物、ワクチン抗原、組み合わせ医薬、およびキットの投与経路は、疾患、対象の状態、および標的部位などの条件に応じて適宜選択することができる。当該投与経路としては、例えば、非経口投与、具体的には、血管内投与(例えば、静脈内投与)、皮下投与、皮内投与、筋肉内投与、経鼻投与、および経皮投与が挙げられる。
本発明において、医薬組成物、ワクチン抗原、および組み合わせ医薬の剤形の例として、注射剤、例えば、プレフィルドシリンジが挙げられる。
本発明において、アジュバント製剤の各投与に要する投与量、投与レジメン、および時間は、対象の年齢および標的部位などの条件に応じて適宜選択することができる。当該アジュバント製剤は、1回投与または接種してもよく、あるいは、初回投与後に所定の期間でさらに投与してもよい。初回投与から追加投与までの期間は、例えば、20日から3年、好ましくは3ヵ月から2年、より好ましくは6ヶ月から1年の任意の期間であってもよいが、これらに限定されるものではない。
本発明の組み合わせ使用における一回当たりの前赤内期マラリアワクチン抗原の投与量は、1μg~200μgであってもよく、好ましくは10μg~30μgであってもよく、より好ましくは15μgであってもよいが、これらに限定されるものではない。アジュバント製剤の1回の投与量は、例えば0.5mLである。
本発明の組み合わせ使用における一回当たりの化合物Aを含む医薬組成物の投与量は、化合物Aの重量の1ng~250mgであってもよく、好ましくは1ng~50mgであってもよいが、これらに限定されるものではない。
【実施例
【0088】
以下、本発明を実施例、参考例、比較例、および試験例により説明するが、本発明は何らこれらに限定されるものではない。
【0089】
本明細書において、スクワランとして「スクワラン(和光純薬製)」、「スクワラン(岸本特殊肝油工業所製)」、または「スクワラン(マルハニチロ製)」を用い;スクワレンとして「スクワレン(和光純薬製)」、「スクワレン(岸本特殊肝油工業所製)」、または「スクワレン(マルハニチロ製)」を用い;アスコルビン酸ナトリウムとして「アスコルビン酸ナトリウム(和光純薬製)」または「L-アスコルビン酸ナトリウム(協和ファーマケミカル製)」を用い;α-トコフェロールとして「α-トコフェロール(三菱ケミカルフーズ製)」または「オール-rac-α-トコフェロール EMPROVE(登録商標) ESSENTIAL Ph Eur,BP,USP,E 307(メルク製)」を用い;トリオレイン酸ソルビタンとして「Span85(シグマアルドリッチ製)」、「Rheodol SP-O30V(花王ケミカル製)」、または「Span85(CRODA製)」を用い;ポリソルベート80として「PS80(GS)(日油製)」、「ポリソルベート80(HX2)(日油製)」、「Tween80(メルク製)」、または「Tween80 HP-LQ-(HM)(CRODA製)」を用い;スクロースとして「スクロース(ナカライテスク製)」または「賦形剤としての使用に適当なスクロース(低エンドトキシン)EMPROVE(登録商標) exp Ph Eur,BP,JP,NF(メルク製)」を用い;注射用水として「注射用大塚蒸留水(大塚製薬工場製)」を用い;パルミチン酸アスコルビン酸、ブチルヒドロキシアニソール、およびチオ硫酸ナトリウムは、和光純薬製のものを使用した。
【0090】
略語
BCA:ビシンコニン酸
CV:カラム容量
Da:ダルトン
DNA:デオキシリボ核酸
ELISA:酵素結合免疫吸着測定法
EPA:緑膿菌エキソプロテインA
HPLC:高速液体クロマトグラフィー
kDa:キロダルトン
LDS:ドデシル硫酸リチウム
MES:2-(N-モルホリノ)エタンスルホン酸
MOI:感染多重度
MS:質量分析法
Ni-NTA:ニッケル-ニトリロ三酢酸
SDS:ドデシル硫酸ナトリウム
SDS-PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動
SE:サイズ排除
SEC:サイズ排除クロマトグラフィー
SMFA:標準的膜供給アッセイ
【0091】
凍結乾燥組成物の調製
実施例1~16、比較例1~3
表1~4の組成となるように化合物Aを油性成分に溶解した。油性成分は、以下のとおりである:スクワラン、トリオレイン酸ソルビタン、およびα-トコフェロール(実施例1~9および15);スクワランおよびトリオレイン酸ソルビタン(実施例10~13);スクワラン、トリオレイン酸ソルビタン、α-トコフェロール、およびパルミチン酸アスコルビル(実施例14);スクワラン、トリオレイン酸ソルビタン、α-トコフェロール、およびブチルヒドロキシアニソール(実施例16);スクワレン、トリオレイン酸ソルビタン、およびα-トコフェロール(比較例1~3)。表1~4の組成となるように注射用水に水性成分(実施例1~3、14、16におけるスクロースおよびポリソルベート80;実施例4~13におけるスクロース、ポリソルベート80、およびアスコルビン酸ナトリウム;実施例15におけるスクロース、ポリソルベート80、およびチオ硫酸ナトリウム)を溶解後、それに上記油性組成物を加えた。混合物を予備混合し、超高圧乳化分散機を用いて乳化分散させた。得られた反応物を0.2μmの滅菌フィルターを通してろ過した後、ガラス製バイアルに1mLずつ充填し、凍結乾燥した。各バイアルを常圧にて窒素ガスでパージした後、ゴム栓で密封し、凍結乾燥組成物である実施例1~16および比較例1~3を得た。
【表2】


【表3】


【表4】


【表5】

【0092】
[試験例1]製造工程中の粒子径の評価
凍結乾燥組成物の製造工程において、乳化後で凍結乾燥前のエマルションに含まれる油滴粒子の粒度分布を、以下の方法にしたがって測定した。
注射用水を用いてエマルションを10倍に希釈し、動的光散乱式粒子径分布測定装置(Zetasizer Nano ZS)を用いて、散乱強度基準の90%粒子径(D90)を測定した。実施例1~16および比較例1~3のD90(nm)を表5に示す。
【表6】

【0093】
[試験例2]安定性評価(1)
以下の方法にしたがって、調製した凍結乾燥組成物について、保存開始時ならびに5℃および25℃の恒温庫内で6ヶ月保存後の粒度分布を測定した。
実施例1~16および比較例1~3で調製した凍結乾燥組成物の各バイアルに1mLの注射用水を加えて復水した。次いで、100μLの復水後の溶液をマイクロピペットを用いて採取し、900μLの注射用水と混合した。次いで、動的光散乱式粒子径分布測定装置(Zetasizer Nano ZS)を用いて、散乱強度基準の90%粒子径(D90)を測定した。保存前後の実施例1~16および比較例1~3のD90(nm)を表6に示す。
【表7】


試験結果より、抗酸化剤としてアスコルビン酸類を含む実施例4~14の処方は、5℃および25℃の恒温庫内で6ヵ月保存後の粒度分布が、保存開始時の値から変化が少なく、粒度分布の安定性が高いことを示した。
【0094】
[試験例3]安定性評価(2)
以下の方法にしたがって、保存開始時ならびに5℃の恒温庫内で6ヶ月保存後の不純物の量(Uk-1.02の面積百分率値)を測定した。Phenyl-Hexylカラム(Waters製Xselect CSH Phenyl-Hexyl XP Column、4.6mmx75mm、2.5μm、型番:186006134)を用いて、純水、アセトニトリル、メタノール、およびトリフルオロ酢酸を用いた逆相系高速液体クロマトグラフィー法により、化合物Aとして0.4~2μg相当量を注入し、220nmの波長で分光学的にその量を検出した。測定条件の詳細については、以下のとおりである。
移動相A:0.1% トリフルオロ酢酸水溶液
移動相B:0.06% トリフルオロ酢酸を含むアセトニトリル/メタノール混合溶液(8:2)
送液条件:
【表8】


本方法で測定したピーク面積および溶出時間を用い、化合物Aの1.02倍の溶出時間に検出される不純物ピーク(Uk-1.02)の面積百分率値を以下の式により算出した。
Uk-1.02の面積百分率値(%)=Uk-1.02のピーク面積/類縁物質および化合物Aの総ピーク面積x100

保存前後の実施例1~16および比較例1~3の不純物ピーク(Uk-1.02)の面積百分率値(%)を表7に示す。
【表9】

試験結果より、抗酸化剤としてアスコルビン酸類を含む実施例4~14の処方は、5℃の恒温庫内で6ヶ月保存後の不純物の値(Uk-1.02の面積百分率値)が低く、保存安定性が高いことを示した。油性成分としてスクワランを含有する実施例1~3の処方および油性成分としてスクワレンを含有する比較例1~3の処方を比較すると、油性成分としてスクワランを含む処方の方が、不純物の値(Uk-1.02の面積百分率値)が低いことから、スクワランが化合物Aの抗酸化安定性に寄与しており、スクワランを含む処方は保存安定性(reservation stability)が高い処方であると言える。
【0095】
ワクチン抗原の製造
[実施例17]PfCSP4/38の製造および精製
乳酸連鎖球菌発現構築物(PfCSP4/38)
ジスルフィド結合タンパクの異種発現のためによく確立されたホストであるグラム陽性乳酸連鎖球菌(非特許文献7~9)を、4つのシステインおよび完全な38 NANPおよび4 NVDPの繰り返しを含む組換えPfCSP4/38の製造に用いた。コドンは、(GeneArt(登録商標)Life Technologies,ドイツ)により合成し、乳酸連鎖球菌におけるタンパク発現のためにpSS1プラスミドベクターに挿入した、4 NDVPおよび38 NANPリピート(NCBI参照配列:XM_001351086.1)3D7を含むPfCSP26-383を最適化した。C末端にて3つのアミノ酸(GGS)で分けられた、6つのヒスチジンタグを含む最終構築物は、PfCSP4/38と称し、シークエンシングにより確認し、エレクトロポレーション法により乳酸連鎖球菌MG1363に形質転換した(図1、配列番号1)。
【0096】
PfCSP4/38の発現および精製
乳酸連鎖球菌MG1363におけるPfCSP4/38タンパクの発現をスクリーニングした。簡潔には、乳酸連鎖球菌MG1363/PfCSP4/38構築物を4%グリセロールリン酸、5%グルコースおよび1μg/mLエリスロマイシンを補った5mL LAB培地中30℃にて終夜培養した。培養液の上清を4℃にて30分間9,000gで遠心分離することにより浄化し、クマシー染色したSDS-PAGEゲルおよびウェスタン・ブロッティングにより分析した。乳酸連鎖球菌MG1363/PfCSP4/38は、穏やかに撹拌しながら(150rpm)、pHを6.5±0.2に維持し、1Lラボスケールのバイオリアクタ(BIOFLO310、New Brunswick Scientific)中、30℃にて終夜発酵させた。細胞不含培養ろ液を10倍に濃縮し、QuixStand卓上系(Hollowファイバーカートリッジ カットオフ30,000Da、表面積650cm、GE Healthcare、Sweden)を用いてHEPES緩衝液pH7.0(20mM HEPES、50mM NaCl、10mMイミダゾール)に緩衝液交換した。緩衝液交換した物質を5mL Ni+2- NTAカラム(HisTrap HP、GE Healthcare、Sweden)に適用した。結合タンパクを流速4mL/分、HEPES緩衝液pH7.0(20mM HEPES、50mM NaCl)中700mMイミダゾール、段階勾配で溶出した。溶出フラクションをSDS-PAGEにより純度を分析し、プールし、ポリッシングおよびホスト細胞タンパクを除去するために5mLカチオン交換カラム(HiTrap SP HPカラム、GE Healthcare、Sweden)にさらに適用した。IECカラムからの結合タンパクをHEPES緩衝液pH7.0(20mM HEPES、1M NaClおよび1mM EDTA)の段階勾配溶出により溶出し、純粋なPfCSP4/38を含むフラクションをVIVAスピンカラム 10kDaカットオフ(Sartorius、UK)、20mM HEPES、200mM NaClおよび1mM EDTA、pH7.0で濃縮し、-80℃にて冷凍した。1A6および1E8でのSDSPAGEおよび免疫ブロッティング分析に基づき、フラクションをプールした。
【0097】
タンパク質濃度測定
BCAタンパクアッセイ(Thermo Fisher Scientific,USA)によりタンパク質濃度を測定し、Pierce LAL Chromogenic Endotoxin Quantitation Kit(Thermo Fisher Scientific,USA)によりエンドトキシン含量を定量した。
【0098】
[試験例4]SDS-PAGEおよび免疫ブロッティング
サンプルを6X SDS(ドデシル硫酸ナトリウム、Sigma-Aldrich)サンプル緩衝液で希釈し、98℃にて8分間加熱し、SDS-PAGEゲル(4-12% NuPAGE Bis-Tris,Invitrogen)に最終容量20μL/ウェルにて充填した。ゲルは150-200Vにて50分間、1X MOPS SDSランニング緩衝液中にて実行し、クマシーまたはインスタントブルータンパク染色(Expedeon,英国)のいずれかで染色した。SDS-PAGEに次いで、タンパクを抗His-HRP抗体(Miltenyi Biotech,ドイツ)またはモノクローナル抗体1A6および1E8によるウェスタンブロットのためにニトロセルロース膜上に移した。立体構造(1A6)および非立体構造(1E8)モノクローナル抗体はGennova Biopharmaceuticals(Pune,インド)により製造された完全長PfCSPで免疫付与し、PATH,米国により本試験に供した。膜は、0.05%Tween-20(TBST)を含むTris緩衝生理食塩水中1%スキムミルク中、室温にて1時間遮断した。一次抗体はTBST中mAb 1A6または1E8(2.0mg/ml)1μg/mlにて加え、室温1時間でインキュベーションした。膜をTBST(3X 5分間)で洗浄し、二次抗体はTBST中1:4,000希釈のヤギ抗マウスIgG-HRP複合体(DAKO,デンマーク)として室温1時間でインキュベーションした。膜をTBST(3X 5分間)で再洗浄し、HRPキット(SERA CARE,米国)を用いて展開させた(図2)。
【0099】
[試験例5]動物および免疫原性試験ならびに抗体測定
2つのインビボ動物試験をマウスで行った。最初の試験のために、雌6~8週齢CD-1マウス(Taconic,デンマーク)を、最初の免疫付与前7日間デンマーク、コペンハーゲン大学パナム実験動物施設センターにて飼育した。動物免疫付与に関するすべての手順は欧州および国内規制に準拠した。8匹のマウスの群を、3週間間隔で3回、Alhydrogel(登録商標)に吸着させた10μgのPfCSP4/38で皮下注射により免疫付与した。ワクチン製剤は使用直前に作製した。3回の免疫付与の2週間後(56日目)に採取した血清を用いて反応を測定した。
PfCSP4/38に対する血漿抗体レベルは酵素結合免疫吸着検査法(ELISA)により測定した。簡潔には、マイクロタイタープレートを0.33μg/mLの組換えタンパクでコーティングし、希釈サンプル(1:200)でインキュベーションした。結合抗体をHRP複合ヤギ抗マウスIgG-HRP(DAKO,デンマーク)で検出した(図3)。
免疫原性はまた、Alhydrogel(登録商標)に代えて、アジュバントとして8110μgの実施例6の組成物(10μgの化合物Aに相当)を用いて同様に測定してもよい。
【0100】
[試験例6]インビトロスポロゾイト滑走運動アッセイ
カバーグラスベース付き平底オプティカルボトム96ウェルプレートを抗PfCSPモノクローナル抗体(3SP2,Radboudumc,Nijmegenから得た)で4℃にて終夜インキュベーションした。ブロッキング中、2A10の5倍希釈物またはポリクローナルマウス血清(PfCSP4/38抗体含有)をスポロゾイトでプレインキュベーションした後、プレート上に二重に移した。3000rpmにて10分間のスピンの後、スポロゾイトを90分間37℃/5%COにてプレート上でインキュベーションした後、滑走運動性を測定した。結果をGraphPad Prism version5.03にてプロットした。ウェルごとに得た25の個別画像から作成した縫合画像上にあるピクセル数はその特定のウェルにあるPfCSP4/38の量の尺度であり、そのためピクセル数の違いはスポロゾイトの滑走跡表面の違いとして解することができる(図4A~4B)。
【0101】
[試験例7]インビトロスポロゾイトトラバーサルおよびヒトヘパトーマ細胞株の感染性アッセイ
HC-04ヒトヘパトーマ細胞株をBiodefense and Emerging Infections Research Resources Repository(BEI Resources)の一部としてMR4を通じて取得し、培養した。トラバーサルは新たに解剖した熱帯熱マラリア原虫(P.falciparum)NF54スポロゾイトを用いて行った。簡潔には、スポロゾイトをモノクローナル2A10またはPfCSP4/38抗体を含むマウスポリクローナル血清で30分間プレインキュベーションした。スポロゾイト/抗体サンプルを、テトラメチルローダミン(Rh)標識デキストランとともに、384ウェルプレート上に播種したHC-04細胞に二重に加えた(ウェルあたり10,000スポロゾイトおよび12,500HC-04細胞)。スポロゾイトを5%CO中、37℃にて2時間HC-04細胞をトラバースさせた後、PBSにて洗浄した。Biotek Synergy 2にて蛍光レベルを測定した。データ分析はGraphPad version5.03にて行った。トラバーサル阻害をアッセイ対照に対して正規化し、IC50は4パラメータモデルおよび最小2乗法を用いてロジスティック回帰により計算し、最適値を決定した(図4C~4D)。インビトロ初代ヒト肝細胞浸潤および成熟を少し適応させて行った。凍結保存した初代ヒト肝細胞をTebu-bio(ドナーHC10-10)から得、コラーゲンコーティングした96ウェル透明底ブラックプレート中にて2日間ウェルあたり50,000細胞の密度で解凍し、播種した。ウェルあたり50,000の新たに解剖したPfNF54スポロゾイトをモノクローナル2A10またはPfCSP4/38抗体を含むマウスポリクローナル血清と30分間混合し、その後、混合物を肝細胞上に移した。クイックスピン(1900gにて10分間)の後、プレートを5%CO中37℃下に移した。浸潤の3時間後、培地を正常肝細胞培地でリフレッシュした。サンプルは、毎日肝細胞培地でリフレッシュして二重で試験した。スポロゾイト浸潤の4日後、肝細胞を4%(v/v)パラホルムアルデヒドで固定した。ウェルをウサギ抗PfHSP70、次いでAlexaFluor594標識ヤギ抗ウサギIgGおよび4’,6-ジアミジノ-2-フェニルインドール(DAPI)で染色した。Cytation(BioTek)上の自動化ハイコンテントイメージングおよびFIJIイメージングソフトウェアを用いることにより、肝細胞の総数および陽性染色(感染)肝細胞数を決定した。データ分析をGraphPad version5.03にて行った。浸潤阻害はアッセイ対照に対して正規化し、IC50は4パラメータモデルおよび最小2乗法を用いてロジスティック回帰により計算し、最適値を決定した(図4E~4F)。
【産業上の利用可能性】
【0102】
化合物A、またはその医薬的に許容される塩を含む医薬組成物は、ワクチンアジュバントとして保存安定性および免疫賦活活性が高く、当該医薬組成物とマラリアワクチンとの組み合わせ使用は、マラリア感染を阻止するのに有用であり得る。
【配列表フリーテキスト】
【0103】
配列番号1
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配列番号2
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配列番号3
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図1
図2
図3
図4
【配列表】
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【国際調査報告】