IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レスシテック ゲーエムベーハーの特許一覧

<>
  • 特表-血液ポンプ 図1a
  • 特表-血液ポンプ 図1b
  • 特表-血液ポンプ 図2
  • 特表-血液ポンプ 図3
  • 特表-血液ポンプ 図4
  • 特表-血液ポンプ 図5
  • 特表-血液ポンプ 図6
  • 特表-血液ポンプ 図7
  • 特表-血液ポンプ 図8a
  • 特表-血液ポンプ 図8b
  • 特表-血液ポンプ 図8c
  • 特表-血液ポンプ 図8d
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-31
(54)【発明の名称】血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/221 20210101AFI20230724BHJP
   F04D 29/22 20060101ALI20230724BHJP
   F04D 29/66 20060101ALI20230724BHJP
   A61M 60/419 20210101ALI20230724BHJP
   A61M 60/422 20210101ALI20230724BHJP
   A61M 60/806 20210101ALI20230724BHJP
   A61M 60/825 20210101ALI20230724BHJP
   A61M 60/00 20210101ALI20230724BHJP
【FI】
A61M60/221
F04D29/22 A
F04D29/66 A
A61M60/419
A61M60/422
A61M60/806
A61M60/825
A61M60/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501025
(86)(22)【出願日】2021-04-21
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2021060363
(87)【国際公開番号】W WO2022008114
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】102020117818.2
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513089121
【氏名又は名称】レスシテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンク,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ハイムガルトナー,リオン
【テーマコード(参考)】
3H130
4C077
【Fターム(参考)】
3H130AA05
3H130AB22
3H130AB50
3H130AC18
3H130BA07C
3H130CA05
3H130CA13
3H130DB00Z
3H130DD01Z
4C077AA04
4C077BB10
4C077CC03
4C077DD10
4C077EE01
(57)【要約】
本発明はポンプハウジングを有する血液ポンプに関し、血液ポンプは、回転可能に取り付けられた回転軸に結合して回転可能に取り付けられ、ポンプハウジングとともに主流路を取り囲み、n個のブレードを有するブレードアセンブリが配置され、ブレードは、回転軸に対して径方向に配向され、それぞれ平坦な形状を有し、回転軸の周りに互いに等距離で配置されている、ボトルネック形状の流入口領域と、ボトルネック形状の流入口領域の下流に隣接し、内側ハウジング内に回転モータが配置され、回転モータは、ブレードアセンブリを回転するために磁気カップリングを介してブレードアセンブリに動作可能に接続され、内側ハウジングは、ポンプハウジングとともに主流路と連続する流路を取り囲み、ブレードアセンブリとともに主流路と流体的に連通する2次チャネルを取り囲み、2次チャネルは、ブレードアセンブリを通過し、ボトルネック形状の流入口領域に開口する少なくとも1つのフラッシングチャネルと流体的に接続され、内側ハウジングは、回転軸の下端を回転可能に受け入れるためのブレードアセンブリに面している下部軸受をさらに備え、回転軸の上端は、ボトルネック形状の流入口領域に配置され、ポンプハウジングに間接的に固定された軸受スリーブに取り付けられている、中空円筒状のポンプハウジング部と、を備える。
本発明は、それぞれが回転軸と平行に配向されたフラッシングチャネル長手方向軸線を有する3つのフラッシングチャネルが回転軸の周りに均等に分布しており、3つのフラッシングチャネルのそれぞれが回転軸に直交して配向されたフラッシングチャネル横断面を有し、横断面はそれぞれ腎臓形であり、回転軸をセクター状に包囲している点において特徴づけられる。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプハウジング(1)を有する血液ポンプであって、
回転可能に取り付けられた回転軸(3)に結合して回転可能に取り付けられ、前記ポンプハウジング(1)とともに主流路(6)を取り囲み、n個のブレード(5)を有するブレードアセンブリ(4)が配置され、前記ブレード(5)は、前記回転軸に対して径方向に配向され、それぞれ平坦な形状を有し、前記回転軸(3)の周りに互いに等距離で配置されている、ボトルネック形状の流入口領域(2)と、
前記ボトルネック形状の流入口領域(2)の下流に隣接し、内側ハウジング(8)内に回転モータ(9)が配置され、前記回転モータ(9)は、前記ブレードアセンブリ(4)を回転するために磁気カップリング(10)を介して前記ブレードアセンブリ(4)に動作可能に接続され、前記内側ハウジング(8)は、前記ポンプハウジング(1)とともに前記主流路(6)と連続する流路(11)を取り囲み、前記ブレードアセンブリ(4)とともに前記主流路(6)と流体的に連通する2次チャネル(12)を取り囲み、前記2次チャネル(12)は、前記ブレードアセンブリ(4)を通過し、前記ボトルネック形状の流入口領域(2)に開口する少なくとも1つのフラッシングチャネル(13)と流体的に接続され、前記内側ハウジング(8)は、前記回転軸(3)の下端(3u)を回転可能に受け入れるための前記ブレードアセンブリ(4)に面している下部軸受(14)をさらに備え、前記回転軸の上端(3o)は、前記ボトルネック形状の流入口領域に配置され、前記ポンプハウジング(1)に間接的に固定された軸受スリーブ(15)に取り付けられている、中空円筒状のポンプハウジング部(7)と、を備え、
それぞれが前記回転軸(3)と平行に配向されたフラッシングチャネル長手方向軸線(16)を有する3つのフラッシングチャネル(13)は、前記回転軸(3)の周りに均等に分布しており、
前記3つのフラッシングチャネル(13)のそれぞれは、前記回転軸(3)に直交して配向されたフラッシングチャネル横断面(17)を有し、前記横断面(17)はそれぞれ腎臓形であり、前記回転軸(3)をセクター状に包囲している、血液ポンプ。
【請求項2】
前記腎臓形のフラッシングチャネル横断面(17)は、それぞれ、前記回転軸の反対側を向いている径方向外側の凸形周縁輪郭と、前記回転軸の方を向いている径方向内側の凹形周縁輪郭とを有する周縁に囲まれており、
前記3つのフラッシングチャネル横断面(17)の凹形周縁輪郭は、前記回転軸(3)を中心として配置された第1の仮想円形線(18)上に位置しており、
前記3つのフラッシングチャネル横断面(17)の凸形周縁輪郭は、前記回転軸(3)を中心として配置された第2の仮想円形線(19)上に位置している、請求項1に記載の血液ポンプ。
【請求項3】
前記ブレードの数nは6である、請求項1または2に記載の血液ポンプ。
【請求項4】
前記ブレード(5)はそれぞれ、前記ブレードアセンブリ(4)への軸方向投影において、前記第2の仮想円形線(19)から、前記回転軸(3)を中心として配置される第3の仮想円形線(20)まで、前記回転軸(3)に沿って延びる径方向の延長部を有し、
前記第2の仮想円形線(19)の半径(R2)は、前記第3の仮想円形線(20)の半径(R3)よりも小さい、請求項2または3に記載の血液ポンプ。
【請求項5】
第1グループ(G1)のn/2個の前記ブレード(5)はそれぞれ、前記ブレードアセンブリ(4)への軸方向投影において、前記第2の仮想円形線(19)から、前記回転軸(3)を中心として配置される第3の仮想円形線(20)まで、前記回転軸(3)に沿って延びる径方向の延長部を有し、前記第3の円形線(19)の半径(R3)は、前記第2の円形線(19)の半径(R2)よりも大きく、
第2グループ(G2)のn/2個の前記ブレード(5)はそれぞれ、前記ブレードアセンブリ(4)への軸方向投影において、前記第1の仮想円形線(19)から、前記回転軸(3)を中心として配置される前記第3の仮想円形線(20)まで、前記回転軸(3)に沿って延びる径方向の延長部を有し、
前記第1および第2グループ(G1、G2)の前記ブレードはそれぞれ、前記回転軸(3)の周りに交互に配置されている、請求項2または3に記載の血液ポンプ。
【請求項6】
前記内側ハウジング(8)に取り付けられた前記下部軸受(14)は、前記内側ハウジング(8)に固定して接合され、前記回転軸(3)の下端(3u)が回転可能かつ軸方向に固定的に開口し、前記内側ハウジング(8)の材料とは異なる材料で作られている、ポット形状のインレイ要素(21)を備える、請求項1から5のいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項7】
前記インレイ要素(21)の材料は、セラミックまたはUHMプラスチックで構成されている、請求項6に記載の血液ポンプ。
【請求項8】
前記軸受スリーブ(15)は、前記インレイ要素(21)と同一の材料で作られている、請求項7に記載の血液ポンプ。
【請求項9】
前記ブレードアセンブリ(4)は、前記ポンプハウジング(1)とともに前記主流路(6)を画定するカバーディスク(22)を備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の血液ポンプ。
【請求項10】
前記カバーディスク(22)は、前記ポンプハウジングの方に向けて配向された真っ直ぐな円錐台形の表面を有する、請求項9に記載の血液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポンプハウジングを有する血液ポンプに関し、血液ポンプは、回転可能に取り付けられた回転軸に結合して回転可能に取り付けられ、ポンプハウジングとともに主流路を取り囲み、n個のブレードを有するブレードアセンブリが配置され、ブレードは、回転軸に対して径方向に配向され、それぞれ平坦な形状を有し、回転軸の周りに互いに等距離で配置されている、ボトルネック形状の流入口領域を備える。ボトルネック形状の流入口領域の下流には、中空円筒状のポンプハウジング部があり、内側ハウジング内に回転モータが配置され、回転モータは、ブレードアセンブリを回転させるために磁気カップリングを介してブレードアセンブリに動作可能に接続されている。内側ハウジングは、ポンプハウジングとともに主流路と連続する流路を取り囲み、ブレードアセンブリとともに主流路と流体的に連通する2次チャネルを取り囲み、2次チャネルは、ブレードアセンブリを通過し、ボトルネック形状の流入口領域に開口する少なくとも1つのフラッシングチャネルと流体的に接続されている。内側ハウジングは、回転軸の下端を回転可能に受け入れるためのブレードアセンブリに面している下部軸受をさらに備え、回転軸の上端は、ボトルネック形状の流入口領域に配置された軸受スリーブに取り付けられている。
【背景技術】
【0002】
血液ポンプは、独国特許出願公開第19626224号明細書に記載されており、そのポンプハウジングにはブレードアセンブリが配置され、ブレードアセンブリは、回転軸とともに、ポンプハウジングの中心を通過する回転の軸線の周りを回転可能に取り付けられている。回転軸は、その回転軸端が上部軸受および下部軸受に回転可能に取り付けられている。下部軸受は内側ハウジングの上方に据えつけられており、内側ハウジングは、ポンプハウジング内のブレードアセンブリの下流に配置され、電動回転駆動部を取り囲み、電動回転駆動部は、磁気カップリングを介してブレードアセンブリに動作可能に接続され、ブレードアセンブリは、回転軸に結合して回転可能に配置されている。
【0003】
ブレードアセンブリの螺旋形状の羽根車は、ポンプハウジングの内壁とともに、血液ポンプを通る血流が圧力で駆動される軸方向の主流路を取り囲んでいる。加えて、ブレードアセンブリは、ブレードアセンブリの吸い込み側とその後側とを油圧で接続する2次チャネルまたはフラッシングチャネルを有している。このようにして、血液はブレードアセンブリと内側ハウジングとの間の後側の間隙に入り、流すことができる。ブレードアセンブリの後側の死水域を、こうして効果的に回避することができる。
【0004】
米国特許出願公開第2018/0050140号明細書は、螺旋状のブレードを備え、6つのいわゆる洗い流しチャネルが貫通するインペラを有する血液ポンプを開示している。洗い流しチャネルは少なくとも1つの接線方向成分を有し、実質的に円形のチャネル断面を有している。
【0005】
欧州特許第1727987号明細書は、磁気軸受を介してポンプハウジング内に回転可能に取り付けられたブレードアセンブリを有する血液ポンプを記載しており、そのアセンブリのブレードは、平坦、螺旋状、またはその他の曲線であってよい。ブレードアセンブリの磁気軸受は、低コストおよび低磨耗のポンプを実現することが可能であり、特に、ポンプハウジングとの接触がないブレードアセンブリの軸受を提供する。ポンプハウジングに接続される軸受ストラットがないことにより、血液ポンプの流入領域における血栓形成の問題を少なくとも軽減することができる。公知のブレードアセンブリは、回転モータを包囲する内側ハウジングに取り付けられている玉軸受によってのみ支持されている。
【0006】
ブレードアセンブリの磁気軸受を有する同等の血液ポンプは、欧州特許第2566533号明細書に見出すことができ、金属製の円錐形のピンを有している。ピンは、動作により生じる摩擦熱の放散のためにポンプハウジング内の内側ハウジングに接続され、ブレードアセンブリがボール輪郭を介して回転可能に取り付けられている。
【0007】
ブレードアセンブリの回転原理に基づくあらゆる公知の血液ポンプは、回転するブレードアセンブリの遠心効果を利用して血液ポンプ内に流れおよび圧力を発生させる。この効果は、ブレードアセンブリならびに内側ハウジングおよびポンプハウジングによって径方向に境界付けられた主流路に沿った主流に加え、主流から分岐し、そこからさらなるポンプ内の中間のスペースを通って流れる一連の二次流れを発生させる。ブレードアセンブリと回転モータを包囲する内側ハウジングとの間の設計に関連した中間間隙が流れのデッドスペースを構成すること、およびそれに伴う血栓形成のリスクを防止するために、ブレードアセンブリはいわゆるフラッシングチャネルを有し、一般的な圧力条件によって、二次的な血流が中間間隙およびそこに流体的に接続されたフラッシングチャネルを通過する。特別な予防措置がなくとも、ブレードアセンブリを通過するフラッシングチャネルを通じて、主流方向に逆行する二次流れが形成される。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、ポンプハウジングを有する血液ポンプを提供するという課題に基づいており、血液ポンプは、血液ポンプの効率が向上するように、すなわち、血液ポンプによって搬送される血液量がより低いエネルギー投入で達成されるように、回転可能に取り付けられた回転軸に結合して回転可能に取り付けられ、前記ポンプハウジングとともに主流路を取り囲み、n個のブレードを有するブレードアセンブリが配置され、前記ブレードは、前記回転軸に対して径方向に配向され、それぞれ平坦な形状を有し、前記回転軸の周りに互いに等距離で配置されている、ボトルネック形状の流入口領域と、前記ボトルネック形状の流入口領域の下流に隣接し、内側ハウジング内に回転モータが配置され、前記回転モータは、前記ブレードアセンブリを回転するために磁気カップリングを介して前記ブレードアセンブリに動作可能に接続され、前記内側ハウジングは、前記ポンプハウジングとともに前記主流路と連続する流路を取り囲み、前記ブレードアセンブリとともに前記主流路と流体的に連通する2次チャネルを取り囲み、前記2次チャネルは、前記ブレードアセンブリを通過し、前記ボトルネック形状の流入口領域に開口する少なくとも1つのフラッシングチャネルと流体的に接続され、前記内側ハウジングは、前記回転軸の下端を回転可能に受け入れるための前記ブレードアセンブリに面している下部軸受をさらに備え、前記回転軸の上端は、前記ボトルネック形状の流入口領域に配置された軸受スリーブに取り付けられている、中空円筒状のポンプハウジング部と、を備える。特に、公知の血液ポンプと比較して、搬送される血液量を減らすことなく、回転駆動式ブレードアセンブリの動作速度を大幅に低下させることを目的としている。血液ポンプのより経済的な動作およびそれに伴う動作速度の望ましい低減を目的として目指す手段により、血液ポンプの助けを借りて実現される血液輸送は、さらに、より穏やかに達成されることになる。
【0009】
本発明の基礎をなす問題の解決策は、請求項1に記載されている。解決手段に係る血液ポンプを有利に形成する特徴は、特に図示する代表的な実施形態を参照した従属請求項および詳細な説明の主題である。
【0010】
請求項1のプリアンブルに明記されている特徴を有する解決手段に係る血液ポンプは、回転軸と平行に配向されたフラッシングチャネル長手方向軸線をそれぞれ有する3つの別々のフラッシングチャネルが回転軸の周りに均等に分布しており、3つのフラッシングチャネルのそれぞれは回転軸に直交して配向されたフラッシングチャネル横断面を有し、前記横断面はそれぞれ腎臓形であり、回転軸をセクター状に包囲していることを特徴とする。
【0011】
異なる設計の血液ポンプを用いた多数の流量試験の範囲内において、最適化された流体力学的特性を有する上記の血液ポンプ設計を見出すことができた。これは特に、回転軸に対して放射状に延在し、回転軸の周りで互いに等距離にある、それぞれ平坦な形に形成されたブレードと併せて、フラッシングチャネル長手方向軸線と平行に配向されているフラッシングチャネルの形状および数を特別に選択することにより、任意の回転速度で最大の吐出量が実現できるという事実に反映されている。言い換えると、公知の同じサイズの血液ポンプと比較して、解決手段に係る血液ポンプはより低い回転速度で任意の吐出量を処理することができ、これにより血液ポンプを通って流れる血液が受ける機械的応力が少なくなる。
【0012】
前記腎臓形のフラッシングチャネル横断面は、それぞれ、前記回転軸の反対側を向いている径方向外側の凸形周囲輪郭と、前記回転軸の方を向いている径方向内側の凹形周囲輪郭とを有する周縁に囲まれていることが好ましい。この場合、3つのフラッシングチャネル横断面の凹形周囲輪郭はそれぞれ、回転軸を中心として配置された第1の仮想円形線上に位置している。一方、3つのフラッシングチャネル横断面の凸形周囲輪郭は、回転軸を中心として配置され、その半径が第1の円形線の半径よりも大きい第2の仮想円形線上に位置している。
【0013】
6つのブレードを回転軸の周りに均等に分布して配置することが特に有利であることが証明された。
【0014】
特に好ましい実施形態では、6つのブレードはそれぞれ、ブレードアセンブリへの軸方向投影において、いずれの場合もフラッシングチャネル横断面の凹形周囲輪郭を画定する前述の第2の仮想円形線から、回転軸を中心として配置される第3の仮想円形線まで、回転軸に沿って延びる径方向の延長部を有し、第2の仮想円形線の半径は、第3の仮想円形線の半径よりも小さい。第3の円形線の半径は、回転軸への軸方向投影において、最大でブレードアセンブリの円形周縁の半径に対応することが好ましい。
【0015】
血液ポンプの代替的な実施形態では、6つのブレードは、それらの形状および大きさ、ならびにブレードアセンブリ上の配置に関して、それぞれ第1グループおよび第2グループの2つのグループに分けられる。例えば、6つのブレードのうち、第1グループに属し、以下1次ブレードと称する3つのブレードは、それぞれ、ブレードアセンブリへの軸方向投影において、前述の腎臓形のフラッシング横断面の凹形周囲輪郭を画定する第1の仮想円形線から、回転軸を中心として配置され、上述の場合のように、最大でブレードアセンブリの円形周縁の半径に対応する第3の仮想円形線まで、回転軸に沿って延びる径方向の延長部を有する。
【0016】
一方、第2グループに属する3つのブレード、いわゆる2次ブレードは、それぞれ、ブレードアセンブリへの軸方向投影において、第2の仮想円形線から、回転軸を中心として配置される第3の仮想円形線まで、回転軸に沿って延びる径方向の延長部を有する。この場合、1次ブレードおよび2次ブレードは、それぞれ回転軸の周りに交互に配置されている。この点に関するさらなる構造的特徴および設計詳細は、図面を参照した詳細な説明に見出すことができる。
【0017】
さらに、好ましくは、回転軸の上端と下端とがそれぞれ回転可能に、しかし軸方向に固定的に接合されている上部軸受と下部軸受とは、セラミックまたは耐摩耗性プラスチック材料、好ましくはUHMプラスチックで作られている。内側ハウジングに取り付けられた下部軸受は、好ましくは、内側ハウジングに固定して接合され、回転軸の下端が回転可能かつ軸方向に固定的に開口し、内側ハウジング自体が作られている材料とは異なる材料で作られている、ポット形状のインレイ要素を備える。
【図面の簡単な説明】
【0018】
一般的な発明概念を限定することなく、図面を参照して好適な実施形態の例に基づき、以下に本発明を例示的に説明する。
図1a】ポンプハウジングの平面図を示す。
図1b】ポンプハウジングの側面図を示す。
図2】流入口の領域におけるポンプハウジングの縦断面図を示す。
図3】上部軸受要素を示す。
図4】ポンプハウジングの縦断面図を示す。
図5】第1実施形態に係るブレードアセンブリの平面図を示す。
図6】第2実施形態に係るブレードアセンブリの斜視図を示す。
図7】第2実施形態に係るブレードアセンブリの平面図を示す。
図8a】カバープレートを有するブレードアセンブリの横面図を示す。
図8b】カバープレートを有するブレードアセンブリの横面図を示す。
図8c】カバープレートを有するブレードアセンブリの横面図を示す。
図8d】カバープレートを有するブレードアセンブリの横面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1aおよび図1bは、血液ポンプのポンプハウジング1の側面図および平面図を示す。上部が実質的にボトルネック形状のポンプハウジング1は、血液が通過してポンプハウジング1の長手方向延長部の血液ポンプに入る流入口1’を有する。ポンプハウジング1は、ボトルネック形状の流入口領域2と、流入口領域に面一に隣接する中空円筒状のポンプハウジング部7とに分けることができる。流入口と実質的に直交して配向されている流出口1’’は、中空円筒状のポンプハウジング部7の領域に設けられている。
【0020】
とりわけコストおよび重さの理由から、血液ポンプのポンプハウジング1の肉厚をできるだけ薄く保つために、4つの安定ストラット1’’’がポンプハウジング1の外側のボトルネック形状の流入口領域2の領域に取り付けられている。
【0021】
流入口1’のすぐ下流では、4つの支持ストラット1stが一方の側でポンプハウジング1の内壁に接続され、直角に集結して一種のインレットスターを形成し、以下で説明する上部回転軸受用の空間的なアタッチメントを一緒に形成する。支持ストラット1stは、流入口1’を通って入る血流に対して可能な限り低い流動抵抗を形成するために、流体力学の点で最適化されている。
【0022】
図示の血液ポンプは斜流ポンプを表しており、すなわち、ポンプハウジング1の長手方向延長部の流入口1’を通って入る血流は、流出口1’’を通ってポンプハウジング1から接線方向に出る血流に、流入方向と直交して分流される。
【0023】
図2は、ボトルネック形状の流入口領域2の領域におけるポンプハウジング1の上部を通る部分的な縦断面を示す。流入口1’の下流には、ポンプハウジング1に一体的に接続された支持ストラット1stが配置されており、これらは流体力学の点で最適化され、集結して一種のインレットスターを形成し、流体力学の点で好都合なカプセル状設計の軸受構造1Lの中心に通じている。ポンプハウジング1は、支持ストラット1stおよび軸受構造1Lとともに、好ましくは射出成形プロセスにおいて、プラスチックから一体的に形成されることが好ましい。好ましくはセラミックまたはほとんど摩耗のないプラスチック素材で作られている軸受スリーブ15は、回転軸3の上端が軸受スリーブ内に軸方向に固定され、回転可能に接合されている状態で、面一に、すなわち縁のないように軸受構造1L内に挿入されている(図3も参照のこと)。
【0024】
図4は、ポンプハウジング1を通るさらなる部分的な縦断面を示し、ボトルネック形状の流入口領域2および隣接する中空円筒状のポンプハウジング部7の一部を示している。
【0025】
ポンプハウジング1は、回転軸3と、軸方向に固定されて回転可能に軸受スリーブ15に通じる回転軸の上端3oと、結合して回転可能に回転軸3に接続されたブレードアセンブリ4と、内側ハウジング8とを備え、内側ハウジング8の上方には、回転軸の下端3uが軸方向に固定されて回転可能に取り付けられたインレイ要素21を有する下部軸受14がある。
【0026】
結合して回転可能に回転軸3に接続されているブレードアセンブリ4は、6つの平坦なブレード5を有しており、これらは、図4に示される例示的な実施形態では同じ形状および大きさである。6つのブレード5は、回転軸3の周りにそれぞれ互いに等距離で配置されている。これらの径方向外側のブレード輪郭は、ポンプハウジング1の内壁とともに主流路6を取り囲み、血液ポンプの動作中に、血流が主流路を主流方向HRに通過する。
【0027】
加えて、この時点で、ブレードアセンブリ4を流れ方向の軸方向平面図で示す図5を参照されたい。ブレードアセンブリ4は、回転軸3の周りに均等に分布している3つのフラッシングチャネル13に隣接している。フラッシングチャネル13のそれぞれは腎臓形のフラッシングチャネル横断面17を有し、フラッシングチャネル横断面17のそれぞれは、回転軸3の反対側を向いている凸形周囲輪郭17’と、回転軸3の方を向いている径方向内側の凹形周囲輪郭17’’とを有している。
【0028】
3つのフラッシングチャネル横断面17の凹形周囲輪郭17’’は、回転軸3を中心として配置された第1の仮想円形線18上に位置している。一方、3つのフラッシングチャネル横断面17の凸形周囲輪郭17’は、回転軸を中心として配置された第2の仮想円形線19上に位置している。
【0029】
図示の例示的な実施形態では、全てのブレード5はそれぞれ径方向の延長部を有し、この延長部において、径方向に回転軸3の方を向いているブレード端部5’は全て、ブレードアセンブリ4への軸方向投影において第2の仮想円形線19上に位置している。一方、ブレード5の径方向外側端5’’は第3の仮想円形線20上に位置しており、これはブレードアセンブリ4の円周方向の縁に対応しているか、またはそこから短い距離Δxだけ間隔を空けており、0.1mm<=δx<=2mmである。
【0030】
3つのフラッシングチャネル13は回転の軸線3と平行に延びており、それぞれ、流体力学の点で最適化された下部フラッシングチャネル開口部13uおよび上部フラッシングチャネル開口部13oを有している。
【0031】
上部フラッシングチャネル開口部13oは、それぞれ、2つの流れ領域S1、S2に開口し、各流れ領域は、2つのブレード5によって境界が定められている。上部フラッシングチャネル開口部13oは、それぞれがランの花のような形状であり、主流路6に沿って流れる主流HRに逆行して配向されたフラッシングチャネル流SRでは、可能な限り低い流動抵抗を提供する。これによって、逆行するフラッシング流SRは、ほとんど乱流を伴わずに、しかし少なくとも弱い乱流を伴って、ボトルネック形状の流入口領域2の主流HRに通じることが可能である。
【0032】
各フラッシングチャネル13の下部フラッシングチャネル開口部13uもまた、可能な限り低い流動抵抗のために流れが最適化されるように設計されている。このために、内側ハウジング8に取り付けられた下部軸受14は、流体力学的に下部フラッシングチャネル開口部13uの方向に配向され、逆行するフラッシングチャネル流SRのために、様々なフラッシングチャネル13の入口抵抗を可能な限り低くするフローゲートを提供する。
【0033】
ブレードアセンブリ4は、内側ハウジング8内に取り付けられた回転モータ9と磁気結合している磁気カップリング10をさらに有する。磁気カップリング10に必要な永久磁石または磁石装置は、好ましくは摩耗のないプラスチック部材で作られている、ブレードアセンブリ4内に完全に組み込まれている。磁石装置は、ブレードアセンブリ4を作成する鋳造プロセスまたは付加製造プロセスの一環として、完全にカプセル化することが可能である。
【0034】
図6および図7は、ブレードアセンブリ4の代替的な実施形態を斜視図および軸方向平面図で示している。図4および図5に示すブレードアセンブリと対照的に、図6および図7のブレードアセンブリ4は、同一の形状および大きさの3つの1次ブレード5Pを有しており、これらは回転軸3の周りの軸方向の配置において、径方向により短い設計の2次ブレード5Sと交互に並んでいる。ブレード5Pおよびブレード5Sは全て平坦な形状である。1次ブレード5Pは、縁が第1の仮想円形線18から第3の円形線20まで延びている径方向の延長部を有する。その一方で、2次ブレード5Sは、第2の仮想円形線19から第3の円形線20まで延びているのみである。
【0035】
図6は、上部フラッシングチャネル開口部13oが2つの1次ブレード5Pの間でランの花のように開口し、いずれの場合も2次ブレード5Sが上部開口領域を2つの流れ領域S1およびS2に分割していることを示している。
【0036】
3つの1次ブレード5Pのそれぞれは、径方向に回転軸3の方を向いている端部が、回転軸3で直接的または間接的に終端する。2次ブレード5Sは、短い径方向の延長部を除いて、それ以外は1次ブレード5Pと同じ形状および寸法の平面的な延長部を有している。
【0037】
図8a、図8b、図8c、および図8dはそれぞれ、カバーディスク22を有するブレードアセンブリ4の代替的な実施形態を様々な図または表現形式で示している。図8aはブレードアセンブリ4を斜め上からの斜視図で示し、図8bは縦断面として示し、図8cは側方から示し、図8dは上方から示している。ブレードアセンブリ4は、すでに図4および図5に示したブレードアセンブリと同様であり、すなわち個々のブレード5は全て同一の設計であり、それらの径方向内側のブレード縁部5’は、腎臓形のフラッシングチャネル横断面17の凸形周囲輪郭17’に隣接している。加えて、流れに面するブレード5の側縁5K(図4参照)は、ポンプハウジング1の内壁とともに主流路6を画定するカバーディスク22に接続されている。カバーディスク22は円錐形であり、そうでない場合は真っ直ぐな円錐台状の表面を有し、ポンプハウジング1の内壁とともに、ブレードアセンブリ4の回転速度に関係なく常に所定の主流路6を画定する。カバーディスク22は血流が血液ポンプを通過する際に血流に影響を与える剪断力および機械的応力を低減することに役立ち、血液が血液ポンプをより穏やかに通過することを可能にする。
【0038】
当然ながら、図6および図7に示す例示的な実施形態に係るブレードアセンブリ4に、カバーディスク22を適宜提供することも可能である。
【符号の説明】
【0039】
1:ポンプハウジング
1’:流入口
1’’:流出口
1’’’:安定ストラット
1st:支持ストラット
1L:軸受構造
2:ボトルネック形状の流入口領域
3:回転軸
3o:回転軸の上端
3u:回転軸の下端
4:ブレードアセンブリ
5:ブレード
5P:1次ブレード
5S:2次ブレード
5’:径方向内側のブレード縁部
5’’:径方向外側のブレード縁部
5K:側縁
6:主流路
7:中空円筒状のポンプハウジング部
8:内側ハウジング
9:回転モータ
10:磁気カップリング
11:連続流路
12:2次チャネル
13:フラッシングチャネル
13u:下部フラッシングチャネル開口部
13o:上部フラッシングチャネル開口部
14:下部軸受
15:軸受スリーブ
16:フラッシングチャネル長手方向軸線
17:フラッシングチャネル横断面
17’:凸形周囲輪郭
17’’:凹形周囲輪郭
18:第1の円形線
19:第2の円形線
20:第3の円形線
21:インレイ要素
22:カバーディスク
SR:二次流れ、フラッシング流
HR:主流
S1、S2:流れ領域
R1、R2、R3:半径
図1a
図1b
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図8d
【国際調査報告】