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特表2023-532847結晶化金属硫酸塩を製造するための処理及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】結晶化金属硫酸塩を製造するための処理及び方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 3/20 20060101AFI20230725BHJP
   C22B 3/22 20060101ALI20230725BHJP
   C22B 3/44 20060101ALI20230725BHJP
   C22B 3/04 20060101ALI20230725BHJP
   C22B 23/00 20060101ALI20230725BHJP
   C22B 47/00 20060101ALI20230725BHJP
   C22B 7/00 20060101ALI20230725BHJP
   C22B 3/26 20060101ALI20230725BHJP
   C22B 3/42 20060101ALI20230725BHJP
   C22B 3/46 20060101ALI20230725BHJP
   C22B 3/08 20060101ALI20230725BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20230725BHJP
   C01G 53/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C22B3/20
C22B3/22
C22B3/44 101B
C22B3/44 101Z
C22B3/44 101A
C22B3/04
C22B23/00 102
C22B47/00
C22B7/00 C
C22B3/26
C22B3/42
C22B3/46
C22B3/08
C22B7/00 A
H01M10/54
C01G53/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022577198
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-02-14
(86)【国際出願番号】 IB2021055363
(87)【国際公開番号】W WO2022009004
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/050,191
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521444701
【氏名又は名称】ノースボルト・エービー
【氏名又は名称原語表記】Northvolt AB
【住所又は居所原語表記】Alstroemergatan 20,112 47 Stockholm,Sweden
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100212705
【弁理士】
【氏名又は名称】矢頭 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【弁理士】
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】フレイザー、ロバート・ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スタマティウ、エバンゲロス
(72)【発明者】
【氏名】マチャド、マーク・ジョセフ
(72)【発明者】
【氏名】フォン・シュレター、ヘンリー・クリスティアン・インモ
(72)【発明者】
【氏名】アレンラジャビ、マフムード
【テーマコード(参考)】
4G048
4K001
5H031
【Fターム(参考)】
4G048AA03
4G048AB02
4G048AC06
4G048AE05
4K001AA07
4K001AA16
4K001AA19
4K001BA19
4K001BA22
4K001BA23
4K001DB01
4K001DB03
4K001DB18
4K001DB22
4K001DB23
4K001DB24
4K001DB26
5H031EE01
5H031EE03
5H031HH03
5H031HH06
5H031RR02
(57)【要約】
金属硫酸塩を生成する方法であって、水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて、母液中に残留する未結晶化金属硫酸塩とともに母液中で結晶化金属硫酸塩を形成すること;母液から結晶化金属硫酸塩を分離すること;母液の一部を塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換すること;及び金属硫酸塩の結晶化の上流で塩基性金属塩を使用することを含む、方法。そのようにして結晶化して生成された金属硫酸塩は、電池グレード又は電気めっきグレードであってもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属硫酸塩の生成方法であって、
水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて、未結晶化金属硫酸塩を含む母液中で結晶化金属硫酸塩を形成すること;
前記母液から前記結晶化金属硫酸塩を分離すること;
前記母液の一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換すること;及び
前記金属硫酸塩の結晶化の上流で前記塩基性金属塩を使用すること
を含む、方法。
【請求項2】
上流で前記塩基性金属塩を使用することが、前記塩基性金属塩を前記未結晶化金属硫酸塩に戻し変換することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記塩基性金属塩を前記未結晶化金属硫酸塩に戻し変換することが、前記塩基性金属塩を第1の中和剤として使用して、前記金属硫酸塩の結晶化の上流で酸を中和することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記母液の前記一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換することが、
前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、前記金属硫酸塩の結晶化の上流で中和される酸の量と少なくともおよそ等しい量の前記塩基性金属塩を製造すること
を更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記塩基性金属塩を前記第1の中和剤として使用することが、前記塩基性金属塩を、浸出段階及び精錬段階の1つ以上において前記第1の中和剤として使用することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記母液の前記一部を塩基性化することが、第2の中和剤を使用して、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の中和剤が水酸化ナトリウムであり、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換するときに、前記水酸化ナトリウムが硫酸ナトリウムに変換される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記未結晶化金属硫酸塩を結晶化させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、晶析装置からの水の蒸発速度を制御すること、及び晶析装置への水の添加を制御することの1つ以上によって、晶析装置中の遊離水の量を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記不純物が、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記母液から前記塩基性金属塩を単離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記塩基性金属塩を単離することが、一段階又は二段階沈殿回路を使用し、前記塩基性金属塩を選択的に沈殿させることを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記金属硫酸塩が、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンのいずれか1つ又は組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基性金属塩が金属水酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記金属水酸化物が、水酸化ニッケル、水酸化コバルト又は水酸化マンガンのいずれか1つ又は組合せを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記水溶液から硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルトのいずれか1つ以上を選択的に結晶化させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
供給原料を浸出させて、前記金属硫酸塩を含む前記水溶液を形成することを更に含み、
前記供給原料が、リサイクルリチウムイオン電池又はリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料を含み;
前記結晶化金属硫酸塩が、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを含み;
前記塩基性金属塩が、水酸化ニッケル、水酸化コバルト及び水酸化マンガンを含み;
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときにリチウム不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む
請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、<0~5のpHで実施される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記pHが1.5~2.5である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記母液の前記一部を塩基性化することが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を含む塩基を添加することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記塩基を添加することが、pHを7.5~10に増加させる、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記水溶液に硫酸を添加することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記リチウム不純物及び/又はナトリウム不純物の飽和点に達する水の蒸発量よりも少ない量の水を、前記水溶液から蒸発させることを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
前記母液の前記一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換することが、前記母液から前記塩基性金属塩を除去し、前記塩基性金属塩のケーキを形成することを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項26】
上流で前記塩基性金属塩を使用することが、前記供給原料を浸出させるときに、前記ケーキの第1の部分を使用することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記第1の部分が、前記ケーキの0~40重量%である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
上流で前記塩基性金属塩を使用することが、精錬段階において前記ケーキの第2の部分を使用することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記第2の部分が、前記ケーキの60~100重量%である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記供給原料が、少なくとも50重量%のリサイクルリチウムイオン電池材料及び/又はリチウムイオン電池製造スクラップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項31】
金属硫酸塩の生成方法であって、
水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて、未結晶化金属硫酸塩を含む母液中で結晶化金属硫酸塩を形成すること;
前記母液から前記結晶化金属硫酸塩を分離すること;及び
前記母液の一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換すること
を含む、方法。
【請求項32】
前記金属硫酸塩の結晶化の上流で前記塩基性金属塩を使用することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記金属硫酸塩の結晶化の上流で前記水溶液を精錬することを更に含む、請求項31に記載の方法。
【請求項34】
供給原料を浸出させて、前記金属硫酸塩を含む前記水溶液を形成することを更に含み、
前記供給原料が、リサイクルリチウムイオン電池又はリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料を含み;
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときにリチウム不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む
請求項31に記載の方法。
【請求項35】
前記結晶化金属硫酸塩が、電池グレードの結晶化金属硫酸塩又は電気めっきグレードの結晶化金属硫酸塩である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
結晶化金属硫酸塩の生成方法であって、
供給原料を浸出させて、金属硫酸塩を含む浸出貴液を形成すること;
前記浸出貴液から前記金属硫酸塩を結晶化させて、未結晶化金属硫酸塩を含む母液中で結晶化金属硫酸塩を形成すること;
前記母液から前記結晶化金属硫酸塩を分離すること;
前記母液の一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換すること;及び
前記金属硫酸塩の結晶化の上流で前記塩基性金属塩を第1の中和剤として使用し、前記塩基性金属塩を前記未結晶化金属硫酸塩に戻し変換すること;
を含み、
前記結晶化金属硫酸塩が、電池グレードの結晶化金属硫酸塩である、方法。
【請求項37】
前記供給原料が、混合水酸化物沈殿物、混合硫化物沈殿物、硫化ニッケル濃縮物、硫化コバルト濃縮物、ニッケルラテライト、ニッケルマット、フェロニッケル、リサイクルリチウムイオン電池若しくはリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料、又は使用済みカソード材料のいずれか1つ又は組合せを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記金属硫酸塩の結晶化の上流で前記浸出貴液を精錬することを更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項39】
前記浸出貴液を精錬することが、前記浸出貴液を少なくとも1つの成分除去段階に供して、前記浸出貴液から1つ以上の不純物又は成分を除去することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記少なくとも1つの成分除去段階が、沈殿、大気又は圧力浸出、硫化、溶媒抽出、イオン交換、セメンテーション又はそれらの組合せを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記不純物が、ナトリウム、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、リチウム、コバルト、マンガン及びそれらの組合せを含み、前記成分が、ニッケル、コバルト及びマンガンのいずれか1つ又は2つを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項42】
前記母液の前記一部を塩基性化することが、第2の中和剤を使用して、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換することを含み、
前記第2の中和剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム及び酸化マグネシウムのいずれか1つ又は組合せである、
請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記第2の中和剤が水酸化ナトリウムである場合、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換するときに、前記水酸化ナトリウムが硫酸ナトリウムに変換される、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記硫酸ナトリウムを、電気分解によって前記水酸化ナトリウムに戻し変換することを更に含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム又は酸化マグネシウムのいずれか1つ又は組合せを前記第2の中和剤として使用することにより、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸リチウム又は硫酸マグネシウムのいずれか1つ又は組合せが副生成物として形成される、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記未結晶化金属硫酸塩を結晶化させることを更に含む、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記浸出貴液を第1の晶析装置に導入すること、及び前記第1の晶析装置を、前記結晶化金属硫酸塩を形成する条件下で操作することを含む、請求項36に記載の方法。
【請求項48】
前記結晶化金属硫酸塩を形成する前記条件が、
前記第1の晶析装置から前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、及び前記第1の晶析装置中の遊離水の量を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物が結晶化することを選択的に抑制すること
の1つ以上を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記不純物が、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムを含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記結晶化金属硫酸塩を水溶液に溶解して、硫酸塩水溶液を形成すること;
前記硫酸塩水溶液を、第2の晶析装置に導入すること;及び
前記第2の晶析装置を、前記金属硫酸塩水溶液から前記結晶化金属硫酸塩を再形成する条件下で操作すること
を更に含む、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記金属硫酸塩が、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンのいずれか1つ又は組合せである、請求項36に記載の方法。
【請求項52】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記浸出貴液から前記硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルトのいずれか1つ以上を選択的に結晶化させることを含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記塩基性金属塩が金属水酸化物を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項54】
前記金属水酸化物が、水酸化ニッケル、水酸化コバルト又は水酸化マンガンのいずれか1つ又は組合せを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記供給原料が、リサイクルリチウムイオン電池又はリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料を含み;
前記結晶化金属硫酸塩が、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを含み;
前記塩基性金属塩が、水酸化ニッケル、水酸化コバルト及び水酸化マンガンを含み;
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記浸出貴液を晶析装置に導入すること、及び前記晶析装置を、前記結晶化金属硫酸塩を形成する条件下で操作することを含み、
前記条件が、前記晶析装置から前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときにリチウム不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを含む、
請求項36に記載の方法。
【請求項56】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、1.5~2.5のpHで実施される、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記母液の前記一部を塩基性化することが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を含む第2の中和剤を添加することを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項58】
前記第2の中和剤を添加することにより、pHを7.5~9.5に増加させる、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記浸出貴液に硫酸を添加することを更に含む、請求項55に記載の方法。
【請求項60】
前記結晶化金属硫酸塩を形成する条件が、前記リチウム不純物及び/又はナトリウム不純物の飽和点に達する水の蒸発量よりも少ない量の水を、前記浸出貴液から蒸発させることを更に含む、請求項55に記載の方法。
【請求項61】
前記リチウム不純物がLiSOであり、前記ナトリウム不純物がNaSOである、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記母液の前記一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換することが、前記母液から前記塩基性金属塩を除去し、前記塩基性金属塩のケーキを形成することを更に含む、請求項55に記載の方法。
【請求項63】
上流で前記塩基性金属塩を第1の中和剤として使用することが、前記供給原料を浸出させるときに、前記ケーキの第1の部分、及び精錬段階において前記ケーキの第2の部分を使用することを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記第1の部分が、前記ケーキの0~40重量%である、請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記第2の部分が、前記ケーキの60~100重量%である、請求項63に記載の方法。
【請求項66】
前記供給原料が、少なくとも50重量%のリサイクルされたリチウムイオン電池材料及び/又はリチウムイオン電池製造スクラップを含む、請求項65に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月10日に出願された米国特許仮出願第63/050,191号への優先権を主張し;その内容は、その全体が参照によりこの明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、金属硫酸塩の製造に関する。より具体的には、本開示は、結晶化金属硫酸塩、例えば、電池グレードの金属硫酸塩の生成に関する。
【背景技術】
【0003】
気候変動は輸送の電化、結果として、電池、例えば、リチウムイオン電池(LIB)の必要性を推進している。LIBは、既に社会に普及しているが、マスマーケットでの電気自動車の採用に必要であると考えられるものと比較すると、年間総消費量は少ない。LIBへの需要の増加に伴って、LIBが製造される化学物質、特に、電池グレードの金属硫酸塩への需要が増加している。
【0004】
硫酸ニッケル及びコバルト電池の化学物質は、ニッケル金属及びコバルト金属を、別々に硫酸と溶解し、精製を行った後、それらを電池グレードの硫酸塩として結晶化させることによって一般に製造される。この金属溶解方法は、それらの精錬所で硫酸塩製造回路を構築しているカソード製造業者と鉱業会社の両者によって実施される。鉱石から電池への金属溶解経路は、溶解前にロンドン金属取引所(LME)グレードの金属を製造するための電解採取又は水素還元のいずれかの費用のかかる工程を必要とする。この経路は、金属価格に優る、電池グレードの硫酸塩、主に硫酸ニッケルに対して求められる割増額の主要な寄与因子である。産業は、濃縮物又は中間体から電池用化学物質へのより直接的な製造経路に向けて移行している。例えば、より直接的な経路は、携帯電話及び電子機器に使用されるコバルト酸リチウム電池化学の成熟のおかげで、コバルト化学物質に関して既に開発されている。
【0005】
さらに、現在の電池用化学物質の製造方法は、多くの場合、溶媒抽出(SX)を介したコバルト及びニッケルの分離を含み、これにより、純度要件を満たす個々の電池グレードの硫酸塩の製造が可能になる。SXは、金属の分離に非常に効果的であるが、複数段階の抽出、洗浄及びストリッピング、並びに水性排出流の有機物処理、沈殿くず除去、有機蒸気回収及び防火のためのシステムを必要とする比較的複雑な単位操作である。これらの要件は、商業規模でのSX操作に関連する実質的な資本費用となる。必要なSX回路の数に依存して、SXに関連する直接費用は、精錬所費用の30%超となりうる。
【0006】
さらに、電池グレードの金属硫酸塩の製造は、廃棄が困難な場合がある副生成物塩を生じる。多くの場合、現在の電池用化学物質の製造方法において、SX及び他の不純物除去工程は、効果的に実施するために特定のpHで操作しなくてはならない。一般に使用される塩基の1つは水酸化ナトリウムであり、この理由は、水酸化ナトリウムが水溶性であり、高純度で利用可能であるため、大規模化の問題を最小にし、方法へのさらなる不純物の導入を最小にしながら、効果的なpH制御が可能となるからである。しかしながら、水酸化ナトリウムの大量消費は、大量の硫酸ナトリウムの製造につながり、これは、深刻な差し迫った環境問題を提示する。硫酸ナトリウムは、安価(例えば1トン当たり90~150米ドル)であるため、バルク商用化学製品であるが、現地での需要が存在しない場合、輸送費用がしばしばその販売利益を打ち消してしまう。さらに、硫酸ナトリウムの市場は限られており、新しい電池用化学物質及び電池前駆体プラントから生じる生産予測がこれを上回る場合がある。
【発明の概要】
【0007】
結晶化金属硫酸塩を製造するための改善された処理及び方法が望まれる。
【0008】
以下、本開示の態様を、図面を参照して、例としてのみ記載する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、供給原料浸出、精錬、結晶化/共結晶化、塩基性金属塩沈殿及び金属硫酸塩単離の工程を含む、供給原料から結晶化金属硫酸塩を単離する方法の流れ図を示す。
図2図2は、低濃度のリチウム不純物を有する電池グレードの金属硫酸塩を単離する方法の流れ図を示す。
図2a図2aは、金属硫酸塩を生成するための一般的な方法の流れ図を示す。
図3図3は、Co/Mn溶媒抽出、Co/Mn結晶化及びNi結晶化を使用したニッケル、マンガン、コバルト及びリチウム含有供給原料から製造された硫酸コバルト及びマンガン、並びに硫酸ニッケルの回収のための、湿式製錬方法の流れ図を示す。
図4図4は、マット浸出段階を、カリウムに対して選択的な(又はそうではない)Co/Mn除去段階、Co/Mn結晶化及びNi結晶化とともに含む湿式製錬方法の流れ図を示す。
図5図5は、マット浸出段階を、カリウムに対して選択的な(又はそうではない)NMC結晶化とともに含む湿式製錬方法の流れ図を示す。
図6図6は、混合硫化物沈殿物浸出段階をNi/Co結晶化とともに含む湿式製錬方法の流れ図を示す。
図7図7は、コバルト濃縮物浸出に続いて、CoSO結晶化により、電池グレードのCoSOを作製する方法の流れ図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本開示は、金属硫酸塩の生成方法について説明し、この方法は、水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて、未結晶化金属硫酸塩を含む母液中に結晶化金属硫酸塩を形成すること、;母液から結晶化金属硫酸塩を分離すること;母液の一部を塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換すること;及び金属硫酸塩の結晶化の上流で塩基性金属塩を使用することを含む。
【0011】
本願の方法の1つ以上の態様では、上流で塩基性金属塩を使用することは、塩基性金属塩を未結晶化金属硫酸塩に戻し変換することを含む。1つ以上の態様では、塩基性金属塩を未結晶化金属硫酸塩に戻し変換することは、塩基性金属塩を第1の中和剤として使用して、金属硫酸塩の結晶化の上流で酸を中和することを含む。本願の方法の1つ以上の態様では、母液の一部を塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換することは、母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、金属硫酸塩の結晶化の上流で中和される酸の量と少なくともおよそ等しい量の塩基性金属塩を製造することを更に含む。本願の方法の1つ以上の態様では、塩基性金属塩を第1の中和剤として使用することは、塩基性金属塩を、浸出段階において第1の中和剤として使用することを含む;又は塩基性金属塩を、精錬段階において第1の中和剤として使用することを含む。
【0012】
本願の方法の1つ以上の態様では、母液の一部を塩基性化することは、第2の中和剤を使用して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換することを含む。本願の方法の1つ以上の態様では、第2の中和剤は水酸化ナトリウムであり、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換するときに、水酸化ナトリウムは硫酸ナトリウムに変換される。1つ以上の態様では、方法は、電気分解によって硫酸ナトリウムを水酸化ナトリウムに戻し変換することを更に含む。本願の方法の1つ以上の態様では、第2の中和剤は、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム又は酸化マグネシウムのいずれか1つ又は組合せである。1つ以上の態様では、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム又は酸化マグネシウムのいずれか1つ又は組合せを使用することにより、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸リチウム又は硫酸マグネシウムのいずれか1つ又は組合せが副生成物として形成される。
【0013】
本願の方法の1つ以上の態様では、方法は、未結晶化金属硫酸塩を結晶化させることを更に含む。1つ以上の態様では、金属硫酸塩を結晶化させることは、母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む。1つ以上の態様では、金属硫酸塩を結晶化させることは、晶析装置中の遊離水の量を制御して、金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む。1つ以上の態様では、遊離水の量を制御することは、晶析装置からの水の蒸発速度を制御すること、又は晶析装置への水の添加を制御することを含む。1つ以上の態様では、不純物は、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムを含む。
【0014】
本願の方法の1つ以上の態様では、方法は、供給原料を浸出させ、金属硫酸塩を含む水溶液を形成することを更に含む。1つ以上の態様では、供給原料は、混合水酸化物沈殿物、混合硫化物沈殿物、硫化ニッケル濃縮物、硫化コバルト濃縮物、ニッケルラテライト、ニッケルマット、フェロニッケル、リサイクルリチウムイオン電池若しくはリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料、又は使用済みカソード材料のいずれか1つ又は組合せを含む。本願の方法の1つ以上の態様では、方法は、母液から塩基性金属塩を単離することを更に含む。1つ以上の態様では、塩基性金属塩を単離することは、一段階又は二段階沈殿回路を使用し、塩基性金属塩を選択的に沈殿させることを含む。本願の方法の1つ以上の態様では、金属硫酸塩は、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンのいずれか1つ又は組合せである。本願の方法の1つ以上の態様では、塩基性金属塩は金属水酸化物を含む。1つ以上の態様では、金属水酸化物は、水酸化ニッケル、水酸化コバルト又は水酸化マンガンのいずれか1つ又は組合せを含む。
【0015】
本願の方法の1つ以上の態様では、金属硫酸塩を結晶化させることは、水溶液から硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルトのいずれか1つ又は2つを選択的に結晶化させることを含む。本願の方法の1つ以上の態様では、金属硫酸塩を結晶化させることは、水溶液から硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルトの任意の組合せを選択的に結晶化させることを含む。本願の方法の1つ以上の態様では、結晶化金属硫酸塩は、電池グレードの結晶化金属硫酸塩又は電気めっきグレードの結晶化金属硫酸塩である。
【0016】
1つ以上の態様では、本願の方法は、金属硫酸塩を含む水溶液(例.硫酸塩マトリックス、浸出貴液(PLS:pregnant leach solution))を精錬することを更に含み、PLSは、特定の不純物又は成分、例えば、Cu(例.硫化、溶媒抽出、セメンテーション、イオン交換などによる)、Fe及びAl(例.沈殿、イオン交換などによる)、Zn(例.硫化、溶媒抽出、イオン交換などによる)、Co(例.溶媒抽出、イオン交換、沈殿などによる)、Ca(例.溶媒抽出、イオン交換などによる)、Mg(例.溶媒抽出、イオン交換などによる)、F(例.カルシウム/石灰の添加による)、又はグラファイト(例.ろ過による)を除去する精錬段階(この明細書では不純物又は成分除去段階とも呼ぶ)のいずれか1つ又は組合せに供される。
【0017】
精錬PLSは、精錬PLSから硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸マンガン(MnSO)及び硫酸リチウム(LiSO)のいずれか1つ又は組合せを選択的に結晶化させるのに十分な条件下で晶析装置に導入されて、母液中で結晶化金属硫酸塩が製造される(例えば、供給原料に応じてリチウム、マグネシウム、ナトリウム又はカリウムに対する真空下での強制循環晶析装置などを介して)。次いで、これらの結晶化金属硫酸塩は、母液から単離される(例えば、晶析装置から排出される)。1回の結晶化サイクル(例えば、1つの晶析装置を使用する)では結晶化金属硫酸塩を製造するのに不十分である場合(例えば、より高濃度の不純物を含有する供給原料により行ってもよい)、晶析装置から排出される結晶は、第2の結晶化サイクル(例えば、第2の晶析装置を使用する)に導入されて再結晶化する前に、純水に溶解して、硫酸塩水溶液を形成してもよい。
【0018】
結晶化後、母液は、望ましくない塩/金属(例.LiSO、MgSO、NaSO)、及び溶液から結晶化しなかった金属硫酸塩(この明細書では未結晶化金属硫酸塩とも呼ぶ)を含有する。これらの未結晶化金属硫酸塩を溶液中の残存する望ましくない材料から選択的に回収するために、母液を晶析装置からブリードさせ、塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩、例えば、金属水酸化物(例.Ni(OH)、Co(OH)、Mn(OH))に変換させる。これらの金属水酸化物は、方法のPLSを形成する浸出及び/又は精錬段階の間に導入される酸を中和し、したがって、金属水酸化物を、次いで結晶化を介して単離できる金属硫酸塩に戻し変換するために、上流で使用される。上流で使用する前に、金属水酸化物を母液から単離し、洗浄してもよく、移動用の水で再スラリー化してもよく、これにより、空気への曝露が制限され、したがって、水酸化物の酸化が制限されうる。
【0019】
金属水酸化物を中和剤として使用することに加え、方法は、中和剤の外部供給源(例.添加酸化物、水酸化物)を使用して、晶析装置から出てくる母液を塩基性化し、任意に、浸出及び/又は精錬段階の間に導入される酸を中和してもよい。これらの外部中和剤は、それらの廃棄生成物(例えば、電気分解を介したものなど)から再生されて、廃棄流(例.薬剤としてCaO/CaCO、廃棄生成物としてCaSO.2HO;薬剤としてNaOH、廃棄生成物としてNaSO)の形成を最小にする若しくは回避するそれらの能力;又はより高価値副生成物(例.薬剤としてKOH、副生成物としてKSO)を生成するそれらの能力のいずれかについて選択される。
【0020】
一般に、方法は、大部分は供給原料にとらわれず、生供給原料(例.濃縮物、混合水酸化物/硫化物沈殿物、他のNiベースの供給原料)及びリサイクル供給原料(例.使用済み電池材料)を耐用しうる。方法は、金属硫酸塩(例.硫酸塩マトリックス、浸出貴液(PLS))を含む水溶液を形成する条件下で供給原料を浸出させること(例.圧力浸出、圧力酸化)を含んでいてもよい。
【0021】
方法は、結晶化硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸マンガン(MnSO)及び硫酸リチウム(LiSO)のいずれか1つ又は組合せを製造してもよい。方法は、結晶化硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)及び硫酸マンガン(MnSO)のいずれか1つ又は2つを製造してもよい。方法は、結晶化硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)及び硫酸マンガン(MnSO)の3つ全てを製造してもよい。方法から単離された結晶化金属硫酸塩のうち、一部は電池グレードであってもよい。方法から単離された結晶化金属硫酸塩のうち、一部は、電気めっきに使用するのに適していてもよい。方法から単離された結晶化金属硫酸塩のうち、一部は、金属硫酸塩水和物(例.結晶の必須部分としてさまざまな比、例えば、金属硫酸塩当たり1つの水分子、又は金属硫酸塩あたり6つの水分子、又は金属硫酸塩当たり7つの水分子の比で組み合わせられた結晶化金属硫酸塩及び水分子)であってもよい。
【0022】
本開示の1つ以上の態様では、図1又は図2aに示す方法を提供する。
【0023】
浸出
本願の方法の1つ以上の態様では、方法は、供給原料を浸出させ、金属硫酸塩を含む水溶液を形成することを含む。1つ以上の態様では、浸出は、図1又は図2aに示されている(「供給原料」、「浸出」を参照)。
【0024】
方法は、1つ以上の供給原料の投入で開始する。好適な供給原料としては、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、マンガン(Mn)又はリチウム(Li)のいずれか1つ又は組合せを含む任意の供給原料が挙げられる。一部の態様では、供給原料は、生供給原料及びリサイクル材料供給原料のいずれか1つ又は組合せを含んでいてもよい。生供給原料の例としては、これらに限定されないが、混合水酸化物沈殿物(MHP)、混合硫化物沈殿物(MSP)、硫化ニッケル濃縮物、硫化コバルト濃縮物、ニッケルラテライト、ニッケルマット又はフェロニッケルが挙げられる。リサイクル材料供給原料の例としては、これらに限定されないが、使用済みカソード材料及びリサイクルリチウムイオン電池又はリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料(本明細書ではブラックマス(black mass)と総称す)が挙げられる。
【0025】
供給原料は、金属硫酸塩(PLS)を含む水溶液;例えば、硫酸塩マトリックス、浸出貴液を形成する条件下で浸出される。一般に、浸出条件は、供給原料を、酸流;酸流及び過酸化水素;酸流及び二酸化硫黄;又は酸流及び別の還元体、例えば、スクロースを含んでいてもよい酸性浸出液流と反応させることを含む。浸出条件は、酸素又は空気を使用して、圧力容器中で供給原料を酸化することによって供給原料を可溶化することを含んでいてもよい。硫酸塩マトリックスPLSの形成において、酸流が、硫酸塩源として作用し、例えば、硫酸を含んでもよく、又は酸流及び/若しくは供給原料が、硫酸塩源として作用してもよい。
【0026】
PLSを形成するのに適しうるいくつかの浸出条件が存在する。処理される供給原料の種類又は供給源に基づいて、当業者は、選択を確認し特定の条件を規定するために、どの浸出条件を選択し試験するかを認識されよう。例えば、浸出は、周囲温度及び/若しくは圧力で、又は周囲温度及び/若しくは圧力超で行ってもよい。MHP又はブラックマスを含む供給原料の場合、浸出は、約65℃及び大気圧で、例えば、酸及び還元剤の添加により行ってもよい。MSP又はニッケルマットを含む供給原料の場合、浸出は、150℃~220℃で圧力浸出及び/又は圧力酸化を介して行ってもよい。
【0027】
浸出条件は、酸又は塩基試薬の使用を最小にするように選択してもよい。例えば、浸出条件は、向流浸出を含んでもよく、これは、相対する方向の供給原料及び酸性浸出液流を接触及び流動させることを含む。そのような向流を使用することにより、浸出効率を増加させ、浸出段階における酸試薬の使用を減少させることができる。酸試薬の使用を低減することによって、方法の下流に通過し、後で塩基によって中和する必要のある酸が少なくなるため、向流浸出では、塩基試薬の使用も低減しうる。一部の態様では、浸出条件は、圧力浸出を含んでもよく、これは、供給原料中の硫化物の酸化によって、硫酸塩を生成し、したがって、供給原料中の金属を可溶化するために追加の酸試薬を使用する必要がない場合がある。
【0028】
本願の方法の1つ以上の態様では、実施例1及び図2/2a(例えば、ブラックマス浸出、NMC浸出を参照);実施例2及び図3(例えば、ブラックマス浸出、NMC浸出を参照);実施例3及び図4(例えば、大気、圧力酸化浸出を参照);実施例4及び図5(例えば、大気、圧力酸化浸出を参照);実施例5及び図7(例えば、圧力酸化浸出を参照);並びに実施例7及び図6(例えば、圧力酸化浸出を参照)に記載し、示すとおりで、方法は、供給原料を浸出させ、金属硫酸塩を含む水溶液を形成することを含む。
【0029】
精錬
1つ以上の態様では、本願の方法は、金属硫酸塩を含む水溶液(例.硫酸塩マトリックス、浸出貴液(PLS))を精錬することを含み、PLSは、特定の不純物又は成分を除去する精錬段階(この明細書では不純物又は成分除去段階とも呼ぶ)のいずれか1つ又は組合せに供される。1つ以上の態様では、精錬は、図1又は図2aに示されている(「精錬」を参照)。
【0030】
浸出に続いて、PLSは、1つ以上の不純物又は成分を除去することによって、PLSを精錬する1つ以上の精錬段階を受ける。除去される不純物又は成分の種類及び量は、少なくとも一部には、PLSが形成される供給原料の種類、並びに方法によって生成される最終生成物の仕様(例えば、硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)及び硫酸マンガン(MnSO)の1つのみ又は2つが必要である場合、純度、グレードなど)に依存する。除去される不純物又は成分の例としては、これらに限定されないが、ナトリウム(Na)、アルミニウム(Al)、鉄(Fe)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、リチウム(Li)、コバルト(Co)及びマンガン(Mn)が挙げられる。除去する必要がありうる成分としては、ニッケル、コバルト及びマンガンのいずれか1つ又は2つを挙げてもよく、例えば、結晶化硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)及び硫酸マンガン(MnSO)の1つのみ又は2つが、晶析装置から、例えば、最終生成物、例えば電池グレードの金属硫酸塩として使用するために単離される。他の方法では、硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)及び硫酸マンガン(MnSO)の3つ全てが晶析装置から単離される。電池グレードの金属硫酸塩が必要である場合、例えば、電池グレードの硫酸ニッケルに耐用されるそのような不純物について特定の生成物の仕様(例.制限)が存在し、前記生成物の仕様を超える量の、方法の供給原料中に存在する任意のそのような不純物、水又は試薬は、それらの濃度を低減する必要がある。
【0031】
PLSから不純物又は成分を除去するための多くの好適な方法が存在する。そのような方法としては、これらに限定されないが、沈殿、大気又は圧力浸出、硫化、溶媒抽出、イオン交換及びセメンテーションが挙げられる。適切な方法(及びその操作条件)を選択することは、少なくとも一部には、除去される不純物又は成分の種類及び量、並びに方法によって生成される最終生成物の仕様に依存する。例えば、銅は、沈殿、溶媒抽出、硫化、セメンテーション又はイオン交換などによって除去してもよく;鉄及びアルミニウムは、沈殿又はイオン交換などによって除去してもよく;亜鉛は、硫化、溶媒抽出又はイオン交換などによって除去してもよく;コバルトは、溶媒抽出、イオン交換又は酸化沈殿などによって除去してもよい。各方法についての条件及び操作パラメーターは、一般に公知であり、除去される不純物又は成分の種類及び量に応じて選択できる。
【0032】
例えば、セメンテーションは、第1の金属イオン及び第1の固体金属の間のレドックス反応を含む方法であり、それによって、第1の金属イオンは、第1の固体金属によって第2の固体金属に還元され、第1の固体金属は、次に第2の金属イオンに酸化される。セメンテーションは、他の試薬使用なしに、(例えば、ニッケル粉末を第1の固体金属として使用する場合、Niを添加することによって)方法に価値ある金属を添加できるので;及び/又は方法への酸若しくは塩基試薬を添加する必要なしに、(例えば、還元によって)不純物の除去を可能にするので、例えば銅を除去するために選択してもよい。
【0033】
PLSから不純物又は成分を除去するための精錬段階は、酸又は塩基試薬の使用を最小にするように選択してもよい。例えば、Cuは、セメンテーションを介してニッケル粉末により除去でき、これは、酸をほとんど必要とせず、塩基をまったく必要とせず、酸を生成せず;これとは対照的に、溶媒抽出(SX)によるCuの除去は、除去されるCu1モル当たり1モルの硫酸が必要であり、前記添加される酸は全て、下流で塩基によって中和される必要がある。他の不純物、例えば、Fe及びAlは、pHを上昇させる(例.約5.5に)ことによって沈殿を介して除去でき、これは、塩基の添加を必要とするが、酸の添加は必要とせず;塩基は、外部中和剤として、又は方法の下流で生成される塩基性金属塩として導入されうる。これとは対照的に、イオン交換(IX)によるFe及びAlの除去は、塩基を添加して交換カラム上にFe及びAlを担持する必要があり、これはまた、交換カラムからFe及びAlをストリッピングするために酸の添加、並びにそれらの不純物を廃棄可能な形態に変換するための追加試薬又は工程が必要である。
【0034】
本願の方法の1つ以上の態様では、実施例1及び図2図2a(例えば、銅SX、不純物除去、不純物イオン交換を参照);実施例2及び図3(例えば、銅SX、不純物除去、Co/Mn溶媒抽出を参照);実施例3及び図4(例えば、銅除去、鉄除去、不純物除去回路、コバルト/マンガン溶媒抽出を参照);実施例4及び図5(例えば、銅除去回路、鉄除去、コバルト/マンガン溶媒抽出を参照);実施例5及び図7(例えば、鉄沈殿1及び2、銅セメンテーション、銅イオン交換を参照);並びに実施例7及び図6(例えば、鉄除去を参照)に記載し、示すとおりで、方法は、金属硫酸塩(PLS)を含む水溶液を精錬することを含み、PLSは、精錬段階のいずれか1つ又は組合せに供される。
【0035】
結晶化/共結晶化
本願の方法は、水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて、結晶化金属硫酸塩を形成することを含む。1つ以上の態様では、結晶化は、図1又は図2aに示されている(「結晶化/共結晶化」又は「結晶化」を参照)。
【0036】
精錬PLSは、溶液から硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硫酸マンガン及び/又は硫酸リチウムのいずれか1つ又は組合せを選択的に結晶化又は共結晶化させるのに十分な条件下で晶析装置に導入される。そのような選択的結晶化は、精錬PLS中に残存する(供給原料に依存して)成分、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムに対して行われて、母液中に1つ以上の結晶化金属硫酸塩(例.NMC硫酸塩及び/又は硫酸リチウム)を供給する。
【0037】
異なる種類の晶析装置が、NMC硫酸塩及び/又は硫酸リチウムの選択的結晶化又は共結晶化に作用するのに適しうる。そのような晶析装置としては、これらに限定されないが、蒸発晶析装置、強制循環(FC)晶析装置、間接力循環(IFC)晶析装置及びドラフトチューブバッフル(DTB)晶析装置が挙げられる。そのような晶析装置のための条件及び操作パラメーターは、結晶化する金属硫酸塩の種類及び純度、並びに/又はPLS中の不純物の種類及び濃度に依存して選択できる。例えば、IFC又はDTB晶析装置が使用される場合、NMC硫酸塩を結晶化させる場合;より粗い結晶が形成される場合があり、これは、前記結晶化の間に不純物、例えば、リチウム、ナトリウム、マグネシウム及び/又はカリウムの引き込みを抑制しうる。強制循環晶析装置が使用される場合、PLSを周囲温度(例.約25℃)にフラッシュ冷却するために、真空下で操作してもよく、これが、次に、水蒸発並びにNMC硫酸塩及び/又は硫酸リチウムの結晶化を促進しうる。そのような場合、蒸発されている遊離水の量は、特定の不純物、例えば、リチウム又はナトリウムの飽和点に達するのに必要な量未満であってもよい。晶析装置を使用して、不純物、例えば、リチウム及びナトリウムに対して硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを一緒に選択的に結晶化させる場合、晶析装置は、1~5、又は1.5~2.5のpHで操作してもよい。一部の態様では、0未満、1.5未満又は0.5~1.5のpHが効果的である。
【0038】
さらに、晶析装置の条件及び操作パラメーターは、溶液中の他の硫酸塩及び成分(例.不純物)に対して、1つの金属硫酸塩又は金属硫酸塩の組合せを選択的に結晶化させるように選択してもよい。例えば、1つ又は2つの金属硫酸塩の濃度がPLS中で非常に低濃度であり、第3の金属硫酸塩がはるかに高い濃度である場合、晶析装置のブリード速度(例.十分高いブリード速度)の慎重な選択により、1つ又は2つの金属硫酸塩に対して第3の金属硫酸塩の選択的結晶化が可能となりうる。
【0039】
晶析装置のための条件及び操作パラメーターは、結晶化金属硫酸塩の純度を管理するように選択してもよい。結晶化中の晶析装置からの母液のブリード、及びブリードを行う速度は;例えば、不純物の結晶化を選択的に抑制することによって、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を与えうる。この明細書では、特定の不純物の結晶化を選択的に抑制するブリード速度を選択することは、異なる不純物の結晶化の抑制よりも特定の不純物の結晶化を抑制する、可能なブリード速度の範囲内の晶析装置ブリード速度を設定することを意味する。ブリード速度は、特定の不純物の結晶化の抑制を最大にするように選択してもよい。不純物は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどであってもよい。母液のより速いブリード速度を使用すること、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を与えうる母液中の不純物及び他の成分をより低濃度に維持するのを補助する。例えば、晶析装置供給速度(すなわち、精錬PLSが晶析装置中に導入される速度)の40%超である晶析装置ブリード速度は、Li結晶化の選択的抑制のために、実質的にLiを含まない(例.<2%Li、又は<1%Li、又は<0.5%Li、又は<0.1%Li)結晶化金属硫酸塩をもたらしうる。一例では、例えば、一次供給原料不純物の30%増加に起因して、精錬PLSが低純度である場合、これは、5~10%の桁のより低いNMC結晶化単回通過収率及びより高い母液総ブリード率をもたらす。
【0040】
さらに、不純物溶解度は、温度依存でありえ、したがって、晶析装置温度及び晶析装置ブリード速度の選択は、結晶化されている金属硫酸塩の純度を管理するのに効果的でありうる。例えば、硫酸リチウム溶解度は、温度上昇に伴って減少し、そのため、晶析装置がより高温で操作される場合、PLS中に残存する硫酸リチウムが沈殿し、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を及ぼす場合がある。しかしながら、晶析装置がより低温で操作される場合、硫酸リチウムは溶液中に残存する場合があり;晶析装置ブリード速度を増加させることにより、晶析装置から硫酸リチウムを除去し、金属硫酸塩の結晶化により硫酸リチウムが溶液から出てくるのを防止してもよい。あるいは、晶析装置が、同じブリード速度を維持しながら異なる温度条件で操作される場合、異なるレベルのリチウム夾雑物を得てもよい。これとは対照的に、ナトリウムの溶解度は、温度の上昇に伴って増加する。そのため、晶析装置がより高温で操作される場合、ナトリウムは溶液中に残存する場合があり;晶析装置ブリード速度を増加させることにより、金属硫酸塩の結晶化によりナトリウムが溶液から出てきうる前に晶析装置からナトリウムを除去してもよい。しかしながら、晶析装置がより低温で操作される場合、そのより低い溶解度に起因して、母液中に残存するナトリウムが沈殿する場合があり、又は、ニッケルと反応して、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を及ぼしうる複塩が形成される場合がある。
【0041】
不純物溶解度はまた、PLS及び/又は母液中に存在する遊離水の量に依存しえ、したがって、晶析装置中の水の管理は、結晶化されている金属硫酸塩の純度を管理する効果的な手段でありうる。例えば、一部の例では、金属硫酸塩は、溶液から金属硫酸塩水和物(すなわち、結晶の必須部分として限定された比で合わせられた結晶化金属硫酸塩及び水分子)として結晶化し、これにより、母液の水の濃度が低減する。遊離水の濃度を減少させることによって、母液中の不純物(例.リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム)の濃度はまた、それらが溶液から結晶化し、結晶化金属硫酸塩の純度に影響を及ぼす程度まで増加させてもよい。しかしながら、晶析装置中にある場合に十分な量の水がPLS及び/若しくは母液に添加された場合、又は上流処理後にPLS中に過剰量の水(例.少なくとも水和物の形成に起因して失われると予想されるのと同じくらい多くの水)が残存している場合、遊離水の存在は、溶液からの不純物の結晶化を抑制しうる。
【0042】
結晶化金属硫酸塩は、それらを晶析装置から排出することによって母液から単離してもよい。例えば、結晶化金属硫酸塩は、フィルター又は遠心分離機を通過させて母液から結晶が分離されるスラリーとして排出してもよい。次いで、ろ液又は濃縮物(すなわち、母液)は、晶析装置に戻してもよく、又はその画分は、ブリードさせてもよく、単離された結晶は、フィルター又は遠心分離機で洗浄し、乾燥してもよい。一部の例では、1つの晶析装置のみの使用は、例えば、PLSがより不純物の多い(dirtier)供給原料から形成される場合に、好適に純粋な結晶化金属硫酸塩を製造するには不十分である。次いで、第1の晶析装置から排出された結晶は、水(例.純水)に溶解した後、第2の晶析装置に導入して、再結晶化し、更に精製してもよい。
【0043】
本願の方法の1つ以上の態様では、実施例1及び図2図2a(例えば、NMC結晶化を参照);実施例2及び図3(例えば、硫酸コバルト及びマンガン結晶化、硫酸ニッケル結晶化を参照);実施例3及び図4(例えば、コバルト/マンガン結晶化、硫酸ニッケル結晶化を参照);実施例4及び図5(例えば、NMC結晶化を参照);実施例5及び図7(例えば、コバルト結晶化を参照);並びに実施例7及び図6(例えば、ニッケル及びコバルト結晶化回路を参照)に記載し、示すとおりで、方法は、水溶液から金属硫酸塩を結晶化して、結晶化金属硫酸塩を形成することを含む。
【0044】
塩基性化
本願の方法は、母液の一部を塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換することを含む。本願の方法の1つ以上の態様では、方法は、第2の中和剤を使用して母液の一部を塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換することを含む。1つ以上の態様では、塩基性金属塩を未結晶化金属硫酸塩に戻し変換することは、塩基性金属塩を第1の中和剤として使用して、金属硫酸塩の結晶化の上流で酸を中和することを含む。1つ以上の態様では、塩基性化及び塩回収は、図1又は図2a(「塩基性金属塩沈殿」及び「塩回収」又は「塩基性化」を参照)に示されている。
【0045】
結晶化母液は、他の不純物及び成分、例えば、塩及び金属、例えば、LiSO、NaSOなどに加えて、未結晶化金属硫酸塩を含有する。これらの未結晶化金属硫酸塩を選択的に回収し、上流で中和剤(この明細書では第1の中和剤とも呼ぶ)として使用するための塩基性金属塩を形成するために、母液は晶析装置からブリードさせ、母液中に残存する未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩、例えば、金属水酸化物(例.Ni(OH)、Co(OH)、Mn(OH))に変換するために塩基性化する。母液を塩基性化する場合、pHを7.5~10、又は7.5~9.5に上昇させるのに十分な塩基を、添加してもよい。母液から得られた金属水酸化物沈殿物は、ろ過を介して母液から単離し、洗浄してケーキを形成してもよく、再パルプ化してスラリーを形成してもよい。例えば、金属水酸化物は、ろ過、濃厚化及びろ過、又は遠心分離によって回収してもよく、次いで、フィルター又は遠心分離機で洗浄して、ケーキを形成してもよい。ケーキの少なくとも一部は、再パルプタンクを通過して、水又は処理溶液を使用してスラリー化してもよい。金属水酸化物は、例えば、一段階又は二段階沈殿回路を介して母液から選択的に沈殿させてもよい。沈殿回路を使用して、金属水酸化物を、母液中のそれらの存在に起因して、金属水酸化物中の不純物から選択的に沈殿させることができる。
【0046】
金属水酸化物は、方法の上流に導入され、浸出及び/又は精錬段階で導入された酸を中和する中和剤として使用される。例えば、約0%~40%の金属水酸化物を(例えば、ケーキとして)浸出段階に導入してもよく;約60%~100%の金属水酸化物を(例えば、ケーキとして)精錬段階に導入してもよい。金属水酸化物を中和剤として使用することにより、外部中和剤を導入する必要性が低減及び/又は排除され;これにより、試薬の使用(及び関連費用)が低減され、製品純度に影響を及ぼす場合があり(例えば、外部中和剤からのカチオンNa、K、Li、Ca2+、Mg2+)、そうでなければ晶析装置ブリード速度をより速くして不純物及び結晶化金属硫酸塩の夾雑物の共沈殿を回避する必要がある不純物の追加の供給源が低減及び/又は排除される。一部の例では、中和剤として使用するために利用可能な、十分な量の塩基性金属塩、例えば、金属水酸化物が存在することを確実にするために、母液を晶析装置からブリードさせ、塩基性化して金属水酸化物を形成する速度は、形成される金属水酸化物の量が、浸出及び/又は精錬段階で導入される酸の量と少なくともおよそ等しい又はおよそ等しいように制御してもよい。例えば、精錬PLSが高純度のものである場合、晶析装置ブリード速度は、結晶化金属硫酸塩の純度を管理するために非常に高い必要はなくてもよく(例えば、上記のとおり);しかしながら、それにもかかわらず、晶析装置ブリード速度は、十分な量の金属水酸化物が上流での使用のために形成されることを確実にするために増加させる必要がある場合がある。他の例では、母液を晶析装置からブリードさせ、塩基性化して金属水酸化物を形成する速度は、外部中和剤の添加量と組み合わせて、形成される金属水酸化物の量が、浸出及び/又は精錬段階で導入される酸の量と少なくともおよそ等しい又はおよそ等しいように制御してもよく;しかしながら、添加される外部中和剤の量は、外部中和剤の使用により、不純物(例.カチオンNa、K、Li、Mg2+)が結晶化金属硫酸塩の純度に影響を及ぼすと考えられる濃度で導入されないように十分低く維持される。そのような例では、形成される金属水酸化物及び外部中和剤の組合せは、資本及び/又は運転費用を管理するために使用してもよい。さらに、金属水酸化物を上流の処理に合わせて計量する速度は、前記処理(例.浸出、精錬)についてのpH設定点によって制御してもよい。
【0047】
さらに、塩基性金属塩(例.金属水酸化物)を中和剤として使用することにより、精錬PLS内の塩基性金属塩が金属硫酸塩に戻される。次いで、変換された金属硫酸塩を含む精錬PLSは、晶析装置に進み、そこで、変換された金属硫酸塩は、結晶化し、母液から単離してもよい。母液を単離及び塩基性化して、溶液中の未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換し、これらの塩基性金属塩を中和剤として使用して、塩基性金属塩を、次いで結晶化を介して単離されうる金属硫酸塩に戻し変換するこのループは、粒子状供給原料から得られた単離された結晶化金属硫酸塩の収率を改善しうる。
【0048】
塩基性金属塩、例えば、金属水酸化物を中和剤として使用することに加えて、方法は、酸を中和する、及び/又は晶析装置から出てくる母液ブリード液を塩基性化するために、精錬段階において中和剤の外部供給源(例.酸化物、水酸化物などの添加)(この明細書では第2の中和剤とも呼ぶ)を使用してもよい。外部中和剤の種類及び量の選択は、少なくとも一部には、精錬段階の性質、並びに母液中の金属硫酸塩及び他の成分の種類に依存してもよい。当業者は、精錬段階における使用及び/又は母液の塩基性化における使用に適していると考えられるさまざまな外部中和剤が存在することを認識する。好適な外部中和剤としては、これらに限定されないが、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)又は酸化マグネシウム(MgO)が挙げられる。例えば、水酸化カリウム(KOH)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化リチウム(LiOH)及び酸化マグネシウム(MgO)のいずれか1つ又は組合せを、外部中和剤として使用してもよい。当業者はまた、精錬段階における使用及び/又は母液の塩基性化における使用にあまり適していないと考えられる種類の外部中和剤が存在することを認識する。例えば、アンモニアの外部中和剤としての使用は、複塩、例えば、硫酸ニッケルアンモニウム塩、又は金属錯体、例えば、Ni及び/若しくはCo錯体の形成をもたらす場合がある。そのようなカチオン、塩又は錯体は、方法を実行不可能にしえ、並びに/又は溶媒抽出回路が必要であることに起因して運転及び資本費用を増加させうる。
【0049】
外部中和剤の量は、精錬段階の性質に応じて選択してもよい。例えば、精錬段階で除去する必要がある高濃度のCuが存在する場合、銅溶媒抽出段階で生成された酸を中和するために、高濃度/体積の中和剤が必要であってもよい。さらに、精錬段階で除去する必要がある高濃度のFeが存在する場合、pHを上昇させ、加水分解によってFeを除去するために、高濃度/体積の中和剤が必要であってもよい。
【0050】
外部中和剤の種類は、塩回収工程を介して、特定の副生成物、例えば、商品価値を有する副生成物を生成及び回収するように選択してもよい。例えば、外部中和剤として水酸化カリウムが選択される場合、その使用により、肥料である硫酸カリウム(KSO)が生成される。外部中和剤として水酸化カルシウムが選択される場合、その使用により、廃棄物として処分してもよく、又は乾式壁及び構造物として使用しうる製品である石膏(CaSO.2HO)が生成される。外部中和剤として酸化マグネシウム(MgO)が選択される場合、その使用により、硫酸マグネシウムが生成される。外部中和剤として水酸化リチウム(LiOH)が選択される場合、その使用により、硫酸リチウムが生成される。
【0051】
外部中和剤の種類はまた、中和剤が方法で使用でき、次いで、再使用のために再生されるように、外部中和剤が、塩回収工程を介して回収され、再生される能力に基づいて選択してもよい。例えば、外部中和剤として水酸化ナトリウムが選択される場合、その使用により、硫酸ナトリウムが副生成物として生成される。水酸化ナトリウムは、電気分解を介して硫酸ナトリウムから再生されうる。特に、電気分解は、方法における再使用のために、副生成物である硫酸ナトリウムを直接水酸化ナトリウムに戻し変換でき、変換の間に硫酸が製造される。より特には、電気分解は、印加電位及び塩溶液から酸及び塩基を再生するための1つ以上のイオン選択膜を使用し、選択膜で分離された2つ以上のコンパートメントを含みうる電気化学セルを使用して行われる。例えば、電気分解は、電位6V及び電流密度1500~3000A/mで動作する3コンパートメントセルを含んでもよく、これにより、硫酸ナトリウムから、水酸化ナトリウムのおよそ20重量%溶液を、硫酸のおよそ10重量%溶液とともに製造でき、これらは、方法の上流で使用するためにリサイクルされうる。外部中和剤としてLiOHが選択される場合、その使用により、硫酸リチウムが生成され、これは、下流回収工程、例えば、塩基性化及び結晶化、若しくは電気分解を使用してLiOHに戻し変換されえ、又は販売可能な生成物として炭酸リチウムに変換されうる。
【0052】
本願の方法の1つ以上の態様では、実施例1及び図2図2a(例えば、ニッケル、コバルト及びマンガン回収を参照);実施例2及び図3(例えば、水酸化コバルト及びマンガン沈殿、水酸化ニッケル沈殿を参照);実施例3及び図4(例えば、コバルト及びマンガン回収、水酸化ニッケル沈殿、硫酸カリウム製造へを参照);実施例4及び図5(例えば、ニッケル、マンガン、コバルト(NMC)沈殿、硫酸カリウム製造へを参照);実施例5及び図7(例えば、水酸化コバルト沈殿、硫酸ナトリウムプラントへを参照);並びに実施例7及び図6(例えば、ニッケル及びコバルト沈殿回路、硫酸カリウム製造へを参照)に記載し、示すとおりで、方法は、母液の一部を塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換することを含む。
【0053】
金属硫酸塩の生成方法
本開示の1つ以上の態様では、本願の方法は、硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)、硫酸マンガン(MnSO)及び硫酸リチウム(LiSO)のいずれか1つ又は組合せの選択的結晶化又は共結晶化を提供する。1つ以上の態様では、本願の方法は、結晶化硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)及び硫酸マンガン(MnSO)の1つ又は2つの選択的結晶化又は共結晶化を提供する。1つ以上の態様では、本願の方法は、結晶化硫酸ニッケル(NiSO)、硫酸コバルト(CoSO)及び硫酸マンガン(MnSO)の3つ全ての選択的共結晶化を提供する。1つ以上の態様では、本願の方法は、電池グレードの結晶化金属硫酸塩を提供する。1つ以上の態様では、方法は、電気めっきグレードの結晶化金属硫酸塩を提供する。1つ以上の態様では、本願の方法は、電池グレードの結晶化金属硫酸塩を単離するための溶媒抽出回路を使用しない。1つ以上の態様では、本願の方法は、資本及び運転費用を低減し;結晶化金属硫酸塩の収率を増加させ;並びに/又は固体廃棄物として硫酸ナトリウムを低減若しくは排除する(水酸化ナトリウムが外部中和剤として使用され、硫酸ナトリウムが、電気分解を介して水酸化ナトリウムに戻される場合、又は必要な外部中和剤の量が低減される場合)。
【0054】
一部の態様では、本願の方法は、溶媒抽出回路の代わりに、結晶化金属硫酸塩を単離する晶析装置を使用するため、資本及び運転費用を低減する。結晶化はエネルギー入力を必要とする一方、試薬の添加の使用を必要とせず、それによって、運転費用が低減される。さらに、結晶化と関連する資本費用は、溶媒抽出回路と関連する資本費用よりも低い。
【0055】
他の態様では、本願の方法は、試薬使用を低減することによって、資本及び運転費用を低減する。例えば、硫酸ニッケルを形成するニッケル溶媒抽出回路は、製造される硫酸ニッケル1モル当たり1モルの硫酸及び2モルの水酸化ナトリウムの消費を必要とする。これとは対照的に、結晶化は、試薬の添加の使用を何ら必要としない。本願の方法は、溶媒抽出工程が精錬段階の一部として使用される場合であってさえ、前記溶媒抽出は、一般により小さな担持量(すなわち、より低濃度の不純物)を受け、必要な酸及び塩基がより少ないため、試薬使用を低減しうる。一部の態様では、本願の方法は、処理工程の数を低減することによって、資本及び運転費用を低減する。工程の数を低減することは、資本及び運転費用を低減するだけでなく、方法の複雑さも低減し、したがって、基本設備の複雑さ及び方法を実施するのに必要な技能を低減する。例えば、溶媒抽出は、複数の段階の抽出、洗浄及びストリッピングを必要とし、水性排出流の処理、沈殿くず除去、有機蒸気回収及び防火のためのシステムを必要とする比較的複雑な単位操作である。溶媒抽出回路の代わりに結晶化金属硫酸塩を単離する晶析装置を使用することによって、そのような方法の複雑さ(及び関連費用)は、回避されうる。
【0056】
他の態様では、本願の方法は、方法の浸出及び/又は精錬段階における特定の不純物又は成分、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムの添加を低減又は防止することによって、結晶化金属硫酸塩の収率を増加させる。例えば、晶析装置における結晶化金属硫酸塩の1回通過収率が増加するにつれて、母液中の不純物、例えば、リチウム、ナトリウムなどの濃度も上昇する。結果として、晶析装置ブリード速度もまた、結晶化金属硫酸塩の純度を管理するために増加させなくてはならない(例えば、不純物が母液中のそれらの飽和濃度に近づくことを抑制又は防止することによって)。しかしながら、晶析装置ブリード速度の増加により、ブリードした未結晶化金属硫酸塩が塩基性化され、沈殿し、試薬を消費するため、非効率となる場合がある。そのため、方法の浸出及び/又は精錬段階におけるこれらの不純物の添加を低減又は防止することは、晶析装置がより低ブリード速度で操作されうる一方、金属硫酸塩との不純物の共結晶化が回避され、これにより、結晶化金属硫酸塩の1回通過収率を改善しながら、運転費用を減少させることもできることを意味する。本開示の方法の1つ以上の態様では、特定の不純物(例.リチウム、ナトリウム、マグネシウム)の添加は、晶析装置からブリードさせる母液から沈殿される塩基性金属塩(例.金属水酸化物Ni(OH)、Co(OH)、Mn(OH))を使用することによって、低減又は防止される。一部の態様では、塩基性金属塩の沈殿及び洗浄は、不純物(例.リチウム、ナトリウム、マグネシウム)が塩基性金属塩中に沈殿するのを低減又は防止するために、慎重に制御される(例えば、pHの選択、2段階沈殿回路の使用などによって)。
【0057】
一部の態様では、本願の方法は、結晶化母液を単離及び塩基性化して、溶液中の未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩(例.金属水酸化物)に変換し、これらの塩基性金属塩を中和剤として使用して、塩を結晶化のための金属硫酸塩に戻し変換するループを使用することによって、結晶化金属硫酸塩の収率を増加させる。ループの反復性により、結晶化金属硫酸塩の非常に良好な回収が確実になる。
【0058】
他の態様では、本願の方法は、硫酸ナトリウムから水酸化ナトリウムを再生することによって、廃棄流としての硫酸ナトリウムを低減又は排除する。硫酸ナトリウムは、環境と経済的観点の両者から、費用のかかる廃棄物の問題のある可能性を有し、一般に安価であると考えられる、市場性を有する副生成物である。
【0059】
追加の例示的な態様は、以下を含む
1. 金属硫酸塩の生成方法であって、水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて、未結晶化金属硫酸塩を含む母液中で結晶化金属硫酸塩を形成すること;母液から結晶化金属硫酸塩を分離すること;母液の一部を塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換すること;及び金属硫酸塩の結晶化の上流で塩基性金属塩を使用することを含む、方法。
2. 上流で塩基性金属塩を使用することが、塩基性金属塩を未結晶化金属硫酸塩に戻し変換することを含む、態様1に記載の方法。
3. 塩基性金属塩を未結晶化金属硫酸塩に戻し変換することが、塩基性金属塩を第1の中和剤として使用して、金属硫酸塩の結晶化の上流で酸を中和することを含む、態様2に記載の方法。
4. 母液の一部を塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換することが、母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、金属硫酸塩の結晶化の上流で中和される酸の量と少なくともおよそ等しい量の塩基性金属塩を製造することを更に含む、態様3に記載の方法。
5. 塩基性金属塩を第1の中和剤として使用することが、塩基性金属塩を、浸出段階において第1の中和剤として使用することを含む、態様3又は4に記載の方法。
6. 塩基性金属塩を第1の中和剤として使用することが、塩基性金属塩を、精錬段階において第1の中和剤として使用することを含む、態様3~5のいずれか1つに記載の方法。
7. 母液の一部を塩基性化することが、第2の中和剤を使用して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換することを含む、態様1~6のいずれか1つに記載の方法。
8. 第2の中和剤が水酸化ナトリウムであり、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換するときに、水酸化ナトリウムが硫酸ナトリウムに変換される、態様7に記載の方法。
9. 硫酸ナトリウムを、電気分解によって水酸化ナトリウムに戻し変換することを更に含む、態様8に記載の方法。
10. 第2の中和剤が、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム又は酸化マグネシウムのいずれか1つ又は組合せである、態様1~7のいずれか1つに記載の方法。
【0060】
11. 水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム又は酸化マグネシウムのいずれか1つ又は組合せを使用することにより、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸リチウム又は硫酸マグネシウムのいずれか1つ又は組合せが副生成物として形成される、態様10に記載の方法。
12. 未結晶化金属硫酸塩を結晶化させることを更に含む、態様1~11のいずれか1つに記載の方法。
13. 金属硫酸塩を結晶化させることが、母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む、態様1~12のいずれか1つに記載の方法。
14. 金属硫酸塩を結晶化させることが、晶析装置中の遊離水の量を制御して、金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む、態様1~13のいずれか1つに記載の方法。
15. 遊離水の量を制御することが、晶析装置からの水の蒸発速度を制御すること、又は晶析装置への水の添加を制御することを含む、態様14に記載の方法。
16. 不純物が、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムを含む、態様13~15のいずれか1つに記載の方法。
17. 供給原料を浸出させ、金属硫酸塩を含む水溶液を形成することを更に含む、態様1~16のいずれか1つに記載の方法。
18. 供給原料が、混合水酸化物沈殿物、混合硫化物沈殿物、硫化ニッケル濃縮物、硫化コバルト濃縮物、ニッケルラテライト、ニッケルマット、フェロニッケル、リサイクルリチウムイオン電池若しくはリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料、又は使用済みカソード材料のいずれか1つ又は組合せを含む、態様17に記載の方法。
19. 母液から塩基性金属塩を単離することを更に含む、態様1~18のいずれか1つに記載の方法。
20. 塩基性金属塩を単離することが、一段階又は二段階沈殿回路を使用し、塩基性金属塩を選択的に沈殿させることを含む、態様19に記載の方法。
【0061】
21. 金属硫酸塩が、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンのいずれか1つ又は組合せである、態様1~20のいずれか1つに記載の方法。
22. 塩基性金属塩が金属水酸化物を含む、態様1~21のいずれか1つに記載の方法。
23. 金属水酸化物が、水酸化ニッケル、水酸化コバルト又は水酸化マンガンのいずれか1つ又は組合せを含む、態様22に記載の方法。
24. 金属硫酸塩を結晶化させることが、水溶液から硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルトのいずれか1つ又は2つを選択的に結晶化させることを含む、態様21~23のいずれか1つに記載の方法。
25. 金属硫酸塩を結晶化させることが、水溶液から硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルトの任意の組合せを選択的に結晶化させることを含む、態様21~23のいずれかに記載の方法。
26. 結晶化金属硫酸塩が、電池グレードの結晶化金属硫酸塩又は電気めっきグレードの結晶化金属硫酸塩である、態様1~25のいずれか1つに記載の方法。
27. 供給原料を浸出させて、金属硫酸塩を含む水溶液を形成することを更に含み、供給原料が、リサイクルリチウムイオン電池又はリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料を含み;結晶化金属硫酸塩が、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを含み;塩基性金属塩が、水酸化ニッケル、水酸化コバルト及び水酸化マンガンを含み;金属硫酸塩を結晶化させることが、母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、金属硫酸塩を結晶化させるときにリチウム不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む、態様1に記載の方法。
28. 金属硫酸塩を結晶化させることが、<0~5のpHで実施される、態様27に記載の方法。
29. pHが、1.5~2.5である、態様28に記載の方法。
30. 母液の一部を塩基性化することが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を含む塩基を添加することを含む、態様27~29のいずれか1つに記載の方法。
【0062】
31. 塩基を添加することが、pHを7.5~10に増加させる、態様30に記載の方法。
32. pHが7.5~9.5である、態様31に記載の方法。
33. 金属硫酸塩を結晶化させることが、水溶液に硫酸を添加することを含む、態様27~32のいずれか1つに記載の方法。
34. 金属硫酸塩を結晶化させることが、リチウム不純物及び/又はナトリウム不純物の飽和点に達する水の蒸発量よりも少ない量の水を、水溶液から蒸発させることを含む、態様27~33のいずれか1つに記載の方法。
35. リチウム不純物がLiSOであり、ナトリウム不純物がNaSOである、態様34に記載の方法。
36. 母液の一部を塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換することが、母液から塩基性金属塩を除去し、塩基性金属塩のケーキを形成することを更に含む、態様27~35のいずれか1つに記載の方法。
37. 上流で塩基性金属塩を使用することが、供給原料を浸出させるときに、ケーキの第1の部分を使用することを含む、態様36に記載の方法。
38. 第1の部分が、ケーキの0~40重量%である、態様37に記載の方法。
39. 上流で塩基性金属塩を使用することが、精錬段階においてケーキの第2の部分を使用することを含む、態様36~38のいずれか1つに記載の方法。
40. 第2の部分が、ケーキの60~100重量%である、態様39に記載の方法。
【0063】
41. 結晶化金属硫酸塩が、電池グレードの結晶化金属硫酸塩である、態様27~40のいずれか1つに記載の方法。
42. 供給原料が、少なくとも50重量%のリサイクルされたリチウムイオン電池材料及び/又はリチウムイオン電池製造スクラップを含む、態様27~41のいずれか1つに記載の方法。
【0064】
明細書に記載した本発明のより良好な理解を得るために、以下の例を示す。これらの例は、例示のみを目的とすることが理解されるべきである。したがって、これらの例は、本開示の範囲をどのようにも限定しない。
【実施例
【0065】
実施例1
明細書に記載する方法の一態様として、Ni、Co、Mn及びLiを含むブラックマスからリサイクル金属を処理し、電池製造に適した材料を製造するように設計された湿式製錬方法を以下で説明する。主な工程を以下の節に記載し、図2に示す。
【0066】
浸出
ブラックマス浸出及びNMC浸出
表1.0に示すおよその化学組成を有するブラックマスを、ブラックマス浸出回路に毎時4.3メートルトンの供給速度で供給し、価値ある金属、例えば、ニッケル、コバルト及びリチウムの完全溶解を実現するために、予備冷却した希酸流及び過酸化水素を使用して一連の大気リアクター中で浸出した。この浸出は、マンガン及びコバルトを含む高酸化成分の浸出を促進するために好適な酸化還元電位(ORP)が得られるように制御した。この工程の間、ブラックマス中のグラファイトが浸出残留物中に残り、これを、ろ過し、洗浄し、真空ベルトフィルターを使用して分離した。フィルターからの強ろ液(strong filtrate)はNMC水酸化物再浸出工程に移し、フィルターからの弱ろ液洗浄液(weak filtrate wash)はブラックマス浸出回路に戻した。NMC水酸化物再浸出用の強ろ液の化学組成の例を、表2.0に示す。NMC水酸化物再浸出において、下流のNMC回収回路からの過剰のNMC水酸化物は、硫酸で中和するときに再可溶化した(以下を参照)。ブラックマス及び再浸出リアクターの温度は、外部再循環冷却システムで65℃に制御した。浸出タンクからの塵及び有害蒸気は、充填カラムの希NaOHを使用するスクラバーに収集し、希NaOHを使用して、さらなる処理及び排出前にこれらの化合物をストリッピングした。再浸出で得たNMC液は、フッ化物除去回路経由で下流の銅溶媒抽出回路に移行した。
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
銅SX
銅溶媒抽出
銅溶媒抽出(Cu SX)では、浸出貴液流がニッケル、コバルト及びマンガンを回収するさらなる処理を受ける前に、約15m/時の浸出貴液流(PLS;浸出を参照)から銅を回収した。このSX回路で使用した抽出剤試薬は、LIX 860N-I又は同様の特性を有する有機物であった。銅リッチPLSを有機物除去工程に供給して、SX有機物の夾雑及び性能の劣化につながる、ブラックマス浸出回路からの残留有機物と銅溶媒抽出試薬との接触を防止した。これは、構造充填物からなる多媒体フィルターを使用して、引き込まれた有機物のバルクを癒合させることによって実現した。充填物の下は、微粒化ガーネット層上の無煙炭層であった。無煙炭及びガーネットは固体を除去し、有機物のさらなる癒合媒体として作用した。操作の間、有機物を、工程からパージされることになるフィルターの上部に引き上げ、収集した。ユニット中に保持された固体は、逆洗及びろ過工程で除去し、フィルターケーキを廃棄用容器に排出した。最後に、PLSは、処理水(treated aqueous)中の残留有機分を1ppmv未満で排出させる粒状活性炭(GAC)カラムユニットに供給し、その後抽出回路に供給した。この替わり、又はこれに追加して、ブラックマス浸出回路に由来する引き込まれた有機物を除去するために有機物洗浄段階又は蒸発/蒸留段階が使用される。
【0070】
PLS中の銅は、3つのCu SX抽出段階で担持され、これを、酸性ストリップ溶液の一部を使用して洗浄した。有機物の洗浄は2段階で行い、主に抽出の間に有機物に担持された鉄を除去した。洗浄された水溶液は抽出回路に戻した。
【0071】
有機物に担持された銅及び一部の残留鉄イオンは、硫酸溶液を使用してストリッピングした。硫酸銅リッチストリップ液は、銅カソード材料を製造する電解採取プラントに送る前に有機物処理工程に供給して、残留有機物を除去した。
【0072】
抽出からのラフィネート溶液も、不純物除去回路に進む前に、有機物処理工程に供給した。図2(Cu SX)を参照。
【0073】
不純物除去
不純物沈殿、Fe/Al再浸出及び沈殿
銅溶媒抽出からのラフィネート溶液を、下流で製造されたNMC水酸化物を中和剤として使用して、存在する遊離酸、鉄及び硫酸アルミニウムと反応させる沈殿工程に供給した。リアクターをエアスパージして、全ての鉄を確実に第2鉄形態に酸化させた。鉄及びアルミニウムが水酸化物として沈殿した。リアクター中、NMC水酸化物はほぼ完全に金属硫酸塩に戻し変換された。
【0074】
不純物沈殿タンクからのスラリーは、不純物の金属水酸化物ケーキを分離し、再浸出処理に移送するフィルタープレスにポンプ輸送した。ろ液は研磨ろ過工程に供給して、溶液から微粒子を除去した後、下流の不純物イオン交換回路に供給した。
【0075】
再浸出回路に供給されたケーキを硫酸溶液と混合すると、pHが約1.5に下降して、ケーキ中に存在する残留NMC固体が溶解した。同じリアクタートレイン内で、系を塩基性化してpHを約4~5.5に上昇させて、鉄及びアルミニウムの再沈殿を促進した。その後、得られたスラリーは、ケーキを残留物として除去し、ろ液を方法中に回収して戻すフィルタープレスに供給した。図2(Fe/Al沈殿)を参照。
【0076】
不純物イオン交換
不純物イオン交換
不純物イオン交換(IX)の目的は、精製PLSがコバルト、ニッケル及びマンガンを回収するさらなる処理を受ける前に、精製PLSから亜鉛及び残留銅を除去することであった。カラムにローティングする前に、イオン交換供給液を希酸で予備調整して、供給液pHをおよそ3に調節した。
【0077】
イオン交換カラムは、亜鉛への高い親和性を有するLewatit VP OC 1026又は等価なイオン交換樹脂で充填した。亜鉛及び他の微量不純物金属をこれらの条件で樹脂上に担持する一方、NMCリッチ溶液はNMC結晶化回路に向けて回路を通過させた。図2(不純物IX回路)を参照。
【0078】
NMC結晶化
硫酸ニッケル/コバルト/マンガン結晶化
NMC蒸発器/晶析装置の目的は、NMC金属硫酸塩を溶液から結晶化させる一方、LiSO/MgSOを母液中に残すことによって、NMC金属硫酸塩を精製することであった。上流の不純物イオン交換回路からの流出液を、希硫酸溶液を使用して予備調整して、NMC結晶化回路に供給する前に1のpHを得た。回路は、生じたフラッシュ蒸気を機械的蒸気再圧縮(MVR:mechanical vapor recompression)ファンにより圧縮する強制循環(FC)蒸発器からなっていた。圧縮蒸気は熱を生じて、65℃で操作されるユニット中の蒸発を推進した。後続の冷却結晶化工程の前に、水を蒸発器中でフラッシュして、溶液を約10~15g/L Liに濃縮した。
【0079】
得られたスラリーは蒸発器再循環レグから一組の真空フラッシュ晶析装置にポンプ輸送し、これにより温度を20℃に徐々に低下させた。溶液がフラッシュ冷却されるにつれて、より多くの水が蒸発し、これにより、主にニッケル、マンガン及びコバルトの水和硫酸塩としての結晶化が促進される一方、一次不純物は主として母液中に残った。
【0080】
次いで、得られたスラリーは、外部冷却ループを使用して表面冷却晶析装置ユニットで0℃の低さの温度に更に冷却した(より高温も使用されうる)。より低温での液中へのNMC構成成分の溶解度の低減により、追加の結晶生成物が生じた。全結晶化金属硫酸塩生成物はベルトろ過ユニットに供給し、洗浄した。次いで、NMC硫酸塩ケーキは、脱塩水と混合することによって120g/L(の合わせたNMC)に再溶解し、下流の電池カソード設備に供給した。ろ液の一部又は全てをNMC回収回路にブリードさせた。これは、晶析装置回路ブリード液であった。方法条件が指示するならば、追加の母液もブリードさせる。図2(NMC結晶化回路)を参照。晶析装置処理条件、晶析装置ユニット供給流、晶析装置回路ブリード流、結晶化金属硫酸塩生成物流及び回収速度を含むNMC結晶化工程のマスバランスの例については表3.0を参照。
【0081】
【表3】
【0082】
ニッケル、コバルト及びマンガン回収
高Li NMC回収回路の目的は、ニッケル、コバルト及びマンガンを晶析装置ブリード液(晶析装置飽和未満の)から水酸化物として沈殿させることであった。水酸化ナトリウムをpH調整剤として使用した。NMC結晶化からのブリード液を、連続撹拌タンクリアクターで水酸化ナトリウムと反応させて8.5のpHで操作し、これによりニッケル、マンガン及びコバルトの水酸化物としての沈殿を促進した。回路は、リアクタートレインに続いてろ過ユニットからなった。フィルタープレスからの合わせたろ液及び洗浄液を下流のリチウム回収処理に移した。
【0083】
フィルタープレスからの洗浄ケーキ生成物は、NMC水酸化物からなり、これを、上流のFe/Al沈殿回路の中和剤として使用して、主処理ループへのナトリウムの添加を低減し、NMC結晶化回路の単回通過変換率を改善した。過剰のNMC水酸化物はNMC水酸化物再浸出に戻し、硫酸と反応させて、金属を硫酸塩として溶液中に再可溶化し戻した。図2(NMC水酸化物沈殿)を参照。
【0084】
一般レベルで、実施例1に概説の金属硫酸塩を生成する方法は、図2aを参照して以下のように説明してもよい。
【0085】
リサイクルリチウムイオン電池又はリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料を含む供給原料を第1に浸出させて、金属硫酸塩を含む水溶液を形成する。一部の変形例では、供給原料は、リサイクルリチウムイオン電池又はリチウムイオン電池製造スクラップに由来する少なくとも50%の材料を含んでいてもよいが、供給原料の他の組成が可能である。
【0086】
任意に、1つ以上の追加のろ過及び精錬工程を実施して、浸出液をろ過し、種々の不純物を除去してもよい。実施例1に関連して上記のとおり、これらの工程は、ろ過、フッ化物除去、銅除去、並びにアルミニウム、鉄及び亜鉛の除去を含んでいてもよい。図2aは、これらの工程を単一の「精錬」段階として概念的に例示している。
【0087】
次いで、結晶化工程を実施し、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを含む金属硫酸塩を水溶液から結晶化させて、母液中で結晶化金属硫酸塩を形成する。母液は、未結晶化金属硫酸塩も含む。結晶化工程の間、母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、金属硫酸塩を結晶化させるときにリチウム不純物が結晶化するのを選択的に抑制する。方法の一部の変形例では、これにより、実質的にリチウムを含まない結晶化金属硫酸塩を得ることができる。例えば、結晶化金属硫酸塩は、2重量%未満、又は一部の変形例では、1重量%未満若しくは0.5重量%未満のリチウムを含有してもよい。
【0088】
方法の一部の変形例では、結晶化工程は、0~5、特定の変形例では、1.5~2.5のpHで実施される。
【0089】
次いで、結晶化金属硫酸塩を、母液から分離する。
【0090】
母液の一部を塩基性化して、未結晶化金属硫酸塩を、水酸化ニッケル、水酸化コバルト及び水酸化マンガンを含む塩基性金属塩に変換する。塩基性化はさまざまな方法で行ってもよいが、一部の変形例では、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、特に水酸化ナトリウムを含む塩基を添加することを含む。一部の例では、塩基を添加することにより、pHが7.5~10、特定の例では7.5~9.5に増加する。
【0091】
次いで、塩基性金属塩は、それを中和剤として使用しうる、金属硫酸塩を結晶化させる上流で使用される。
【0092】
一部の変形例では、塩基性化する工程は、母液から塩基性金属塩をケーキとして除去することを含む。例えば、ケーキの第1の部分、例えば、最大40%が、供給原料を浸出させるときに上流で使用してもよい。ケーキのもう一方の部分、例えば、60%以上は、精錬段階において使用してもよく、例えば、Fe及びAl除去段階に添加してもよい。全ケーキを精錬段階において使用することも可能である。
【0093】
結晶化金属硫酸塩は、電池グレード品質のものであってもよく、新しい電池材料の後続の製造に適していてもよい。
【0094】
実施例2
明細書に記載する方法の一態様として、Co/Mn溶媒抽出、Co/Mn結晶化及びNi結晶化を使用したニッケル、マンガン、コバルト及びリチウム含有供給原料から製造された硫酸コバルト及びマンガン溶液、並びに硫酸ニッケル溶液の回収のための、湿式製錬方法を以下で説明する。特に、ブラックマス浸出段階に続いて、不純物除去段階、Co/Mn除去段階、Co/Mn結晶化段階及びリチウムに対してニッケルに選択的な結晶化を含む方法を説明する。主な工程を、単位操作の変形例とともに、図3のブロック流れ図に示す。
【0095】
浸出
ブラックマス浸出及びNMC浸出
価値ある金属、例えば、Ni、Co及びリチウムの完全溶解を実現するために、ブラックマス供給物を、予備冷却された希酸流及び過酸化水素を使用した一連の大気リアクターで浸出させた。この浸出は、マンガン及びコバルトを含む高酸化成分の浸出を促進するために好適な酸化還元電位(ORP)を得るように制御した。この工程の間、ブラックマス中のグラファイトが浸出残留物中に残り、これを、真空ベルトフィルターを使用してろ過し、洗浄し、分離した。(フィルターからの)強ろ液はNMC水酸化物再浸出工程に移す一方、弱ろ液(フィルターからの洗浄液)はブラックマス浸出回路に戻した。NMC水酸化物再浸出において、下流のNMC回収回路からの過剰のNMC水酸化物は、硫酸で中和するときに再可溶化した(下記を参照)。ブラックマス及び再浸出リアクターの温度は、外部再循環冷却システムで65℃に制御した。浸出タンクからの塵及び有害蒸気は、充填カラムの希NaOHを使用するスクラバーに収集し、さらなる処理及び排出前にこれらの化合物をストリッピングした。再浸出で得たNMC液は、フッ化物除去回路経由で下流の銅溶媒抽出回路に移行した。
【0096】
銅SX
銅溶媒抽出
銅溶媒抽出(Cu SX)により、浸出貴液(PLS;浸出を参照)がニッケル、コバルト及びマンガンを回収するさらなる処理を受ける前に、浸出貴液から銅を回収した。このSX回路で使用した抽出剤試薬は、LIX 860N-I又は同様の特性を有する有機抽出剤であった。銅リッチPLSを有機物除去工程に供給して、SX有機抽出剤の夾雑及び性能の劣化につながる、ブラックマス浸出回路からの残留有機物と銅溶媒抽出試薬との接触を防止した。これは、構造充填物からなる多媒体フィルターを使用して、引き込まれた有機物のバルクを癒合させることによって実現した。充填部の下は、微粒化ガーネット層上の無煙炭層であった。無煙炭及びガーネットは固体を除去し、有機物のさらなる癒合媒体として作用した。操作の間、有機物は、方法からそれがパージされることになるフィルターの上部に引き上げ、収集した。ユニット中に保持された固体は、逆洗及びろ過工程で除去し、フィルターケーキを他者による廃棄のための容器に排出した。最後に、PLSは、処理水中の残留有機分を1ppmv未満で排出させる粒状活性炭(GAC)カラムユニットに供給し、その後抽出回路に供給した。この替わり、又はこれに追加して、ブラックマス浸出回路に由来する引き込まれた有機物を除去するために有機物洗浄段階又は蒸発/蒸留段階が使用される。
【0097】
PLS中の銅は、3つのCu SX抽出段階で担持し、これを、酸性ストリップ溶液の一部を使用して洗浄した。有機物の洗浄は2段階で行い、主に抽出の間に有機物に担持された鉄を除去した。洗浄された水溶液は抽出回路に戻した。
【0098】
有機抽出剤に担持された銅及び一部の残留鉄イオンは、硫酸溶液を使用してストリッピングした。硫酸銅リッチストリップ液は、銅カソード材料を製造する電解採取(EW)プラントに送る前に有機物処理工程に供給して、残留有機物を除去した。
【0099】
抽出からのラフィネート溶液も、不純物除去回路に進む前に、有機物処理工程に供給した。
【0100】
不純物除去
不純物沈殿、Fe/Al再浸出及び沈殿
銅溶媒抽出からのラフィネート溶液を、下流で製造されたNMC水酸化物を中和剤として使用して、存在する遊離酸、鉄及び硫酸アルミニウムと反応させる、沈殿回路に供給した。リアクターをエアスパージして、全ての鉄を確実に第2鉄形態に酸化させた。鉄及びアルミニウムが、およそpH5~5.5で水酸化物として沈殿した。リアクター中、NMC水酸化物はほぼ完全に金属硫酸塩に戻し変換された。不純物沈殿タンクからのスラリーは、不純物の金属水酸化物ケーキを分離し、再浸出処理に移送するフィルタープレスにポンプ輸送した。ろ液を研磨ろ過工程に供給して、溶液から微粒子を除去した後、下流のCo/Mn溶媒抽出回路に供給した。
【0101】
再浸出回路に供給されたケーキを硫酸溶液と混合すると、pHが約1.5に下降して、ケーキ中に存在する残留NMC固体が溶解した。同じリアクタートレイン内で、系を塩基性化してpHを約4~5.5に上昇させて、鉄及びアルミニウムの再沈殿を促進した。その後、得られたスラリーは、そのケーキを残留物として除去し、ろ液を方法中に回収して戻すフィルタープレスに供給した。
【0102】
Co/Mn溶媒抽出及び精製
Co/Mn溶媒抽出
Co/Mn SXの目的は、コバルト及びマンガンをニッケル含有液から分離する一方、結晶化前にCo及びMn
リッチストリップ液中の残留不純物を更に除去することである。
【0103】
このSX回路で使用した抽出剤は、高引火点の脂肪族溶媒に希釈された市販のCyanex 272(ビス(2,4,4トリメチルペンチル(Trimethlpentyl))ホスフィン酸(Phosphenic Acid))である(明細書全体で、有機物又は有機抽出剤と呼ぶ)。
【0104】
下流のニッケル結晶化回路からのリサイクル硫酸ニッケルを使用して、ストリッピングされた有機抽出剤をある程度予備担持させ、その後、pH制御、追加担持、及び担持から生成された遊離酸の中和のために水酸化ナトリウムを補充した。非担持金属硫酸塩を含有する予備担持工程からのラフィネートは、水酸化Ni沈殿工程に供給した。
【0105】
抽出において、コバルト、マンガン及び微量のニッケル、並びにいくらかの残留不純物を、有機抽出剤で抽出した。担持された有機抽出剤を洗浄して、弱く結合した不純物を除去した後、コバルト及びマンガンを、硫酸溶液を用いて有機抽出剤からストリッピングした。コバルトストリップ溶液の一部を洗浄に使用し、残部は、残留有機物を1ppmv未満に低減するための有機物処理に向け、その後コバルト及びマンガン精製回路/不純物除去回路に向けた。抽出からのニッケルリッチラフィネート流もまた、有機物処理工程に供給した後、ニッケル回収処理に向けて進めた。
【0106】
有機物フリーでCo/Mnリッチなストリップ液をpH3で亜鉛イオン交換処理に供給した(不純物除去回路を参照)。イオン交換カラムに、亜鉛及び微量の銅及び鉄イオンをCo/Mnリッチ溶液から引き取り、水素イオンを放出するLewatit VP OC 1026又は同等のイオン交換樹脂を充填した。Co/Mnリッチ溶液を、樹脂への高親和性を有する亜鉛を担持するイオン交換カラムに通過させた。カラム出口の流出溶液をコバルト及びマンガン結晶化回路にポンプ輸送した。
【0107】
希硫酸溶離溶液を使用して、担持亜鉛を飽和樹脂からストリッピングした。亜鉛リッチ溶出液を、硫化水素ナトリウム(sodium hydrosulfide)(NaHS)を添加して亜鉛を硫化物として沈殿させるリアクタートレインに供給した。固体をフィルタープレス中で分離し、保存用ドラムに向けた。次いで、ろ液を、下流の水酸化コバルト及びマンガン沈殿処理から製造された過剰の水酸化コバルト及びマンガンで中和し、これによりいくらかの残留金属不純物が沈殿し、次いでこれをろ過し、方法から除去した。回収したろ液をZn IX流出液と合わせ、硫酸コバルト及びマンガン結晶化回路に向けた。
【0108】
硫酸コバルト及びマンガン結晶化
合わせた供給溶液を、希硫酸溶液を使用して酸性化して、<1の目標pHを実現した。
【0109】
Co/Mn蒸発/結晶化回路の目的は、Co/Mnを溶液から結晶化させる一方、残留不純物(例.Ni、Na、Mg、Li及びCa)を母液中に残すことによって、硫酸Co/Mnを精製することであった。
【0110】
回路は、生じたフラッシュ蒸気を機械的蒸気再圧縮(MVR)ファンにより圧縮する強制循環(FC)蒸発器からなっていた。圧縮蒸気は熱を生じて、80℃で操作されるユニット中の蒸発を推進した。水を蒸発器中でフラッシュして、溶液を濃縮し、方法の上流で生成された酸に少なくともおよそ等しい、合わせたコバルト及びマンガンの単回通過変換率を実現した。
【0111】
次いで、貴液を、真空下で操作される蒸発結晶化回路に供給して、溶液を30℃にフラッシュ冷却した。溶液がフラッシュ冷却されるにつれて、より多くの水が蒸発し、硫酸コバルト及びマンガン塩の組合せが溶液から強制的に結晶化された。結晶は、晶析装置から排出し、結晶を脱水して洗浄することになる遠心分離機に供給した。ケーキをタンク中に排出し、蒸発器/晶析装置からの高温凝縮水を使用してケーキを120g/L(Co+Mn)の目標濃度に再溶解した。
【0112】
Co/Mn結晶化母液中に蓄積した不純物を、処理ブリード液を介して制御し、これをモニタリング及びパージして、結晶化固体生成物要件を確実に実現した。
【0113】
硫酸ニッケル結晶化
Co/Mn溶媒抽出処理からのニッケルリッチラフィネートを、硫酸を使用して1のpHに酸性化した後、硫酸ニッケル蒸発ユニット/結晶化回路に供給した。
【0114】
回路は、生じたフラッシュ蒸気を機械的蒸気再圧縮(MVR)ファンにより圧縮する強制循環(FC)蒸発晶析装置からなっていた。圧縮蒸気は熱を生じて、80℃で操作されるユニット中の蒸発を推進した。ブリード液が水を塩基性化するときに、方法の上流で生成される酸と少なくともおよそ等しい量のNMC水酸化物が生成されるような晶析装置ブリード速度をもたらす蒸発器で水をフラッシュした。
【0115】
次いで、貴液を、真空下で操作される蒸発結晶化回路に供給して、溶液を30℃にフラッシュ冷却した。溶液がフラッシュ冷却されるにつれて、より多くの水が蒸発し、硫酸ニッケル塩が溶液から強制的に結晶化された。結晶は、晶析装置から排出し、結晶を脱水して洗浄する遠心分離機に供給した。ケーキをタンク中に排出し、蒸発器/晶析装置からの高温凝縮水を使用してケーキを120g/LのNiの目標濃度に再溶解した。
【0116】
Ni結晶化母液中に蓄積した不純物(例.マグネシウム、ナトリウム)を、処理ブリード液を介して制御し、これをモニタリング及びパージして、結晶化固体生成物要件を確実に実現した。
【0117】
水酸化コバルト及びマンガン沈殿
硫酸コバルト及びマンガン結晶化回路からの処理ブリード液は、水酸化ナトリウムを添加してコバルト及びマンガンの水酸化物としての沈殿を促進する8.5のpHで操作される、コバルト及びマンガン沈殿回路に供給した。回路は、リアクタートレインに続いてろ過ユニットからなった。フィルタープレスからのろ液及び洗浄液を下流のリチウム回収プラントに移した。
【0118】
フィルタープレスからの洗浄ケーキ生成物は、水酸化コバルト及びマンガンからなり、これを、上流の不純物及び鉄/アルミニウム除去回路の中和剤として使用して、主処理ループへのナトリウムの添加を低減し、コバルト及びマンガン結晶化回路の単回通過変換率を改善した。
【0119】
水酸化ニッケル沈殿
予備担持工程からのラフィネート及び硫酸ニッケル晶析装置ブリード液は、水酸化ナトリウムを添加して水酸化ニッケルの沈殿を促進する8のpHで操作される、ニッケル沈殿回路に供給した。回路は、リアクタートレインに続いてろ過ユニットからなった。フィルタープレスからのろ液及び洗浄液を下流のリチウム回収処理に移した。
【0120】
ろ過ユニットからのケーキ生成物は、主に水酸化ニッケルからなり、鉄/アルミニウム除去回路の中和剤として使用して、主処理ループへのナトリウムの添加を低減し、硫酸ニッケル結晶化回路の単回通過変換率を改善した。過剰のNMC水酸化物はNMC再浸出に戻し(浸出を参照)、硫酸と反応させて、金属を硫酸塩として溶液中に再可溶化し戻した。
【0121】
実施例3
明細書に記載する方法の一態様として、Co/Mn溶媒抽出、Co/Mn結晶化及びNi結晶化を使用したNMC含有供給原料から製造された硫酸コバルト及び硫酸マンガン、並びに硫酸ニッケルの回収のための、別の湿式製錬方法を以下で説明する。特に、マット浸出段階を、カリウムに対して選択的な(又はそうではない)Co/Mn除去段階、Co/Mn結晶化及びNi結晶化とともに含む方法を説明する。主な工程を図4のブロック流れ図に示す。
【0122】
マット浸出
大気浸出
銅29%、ニッケル42%、鉄0.8%及びコバルト1.5%(重量による)を含有する生マット供給原料を、毎時約14メートルトンの供給速度で摩砕回路に供給した。得られた摩砕マットスラリーを、大気条件、85℃で動作するリアクタートレインに供給し、これを、下流の銅電解採取処理からの使用済み電解質と混合した。酸素を初期リアクタータンク中にスパージし、これによりマットの浸出を促進した。主にヒーズルウッド鉱(Ni)として存在するマット中のニッケルを、使用済み電解質及び酸素と反応させて、溶液中の硫酸ニッケル及びいくらかの針ニッケル鉱(NiS)固体を形成した。追加の酸素をリアクタートレイン内の最終タンクに導入せず、使用済み電解質中に存在する硫酸銅、初期リアクタータンクから浸出した銅及びNiとして存在する残存するニッケルの間のメタセシス反応を促進して、主に硫酸ニッケルとして可溶化する一方、主に硫化銅が生成した。次いで、ニッケルリッチ溶液を、ろ過工程により残留するマットから分離し、鉄除去回路に進めた。残留するマットは圧力酸化浸出に送った。
【0123】
圧力酸化浸出
圧力酸化浸出工程の目的は、大気浸出回路からの銅リッチマットの分解を最大にすることであった。マットを、600kPa及び>130℃で動作するオートクレーブ中、電解採取からの使用済み電解質及び濃硫酸と混合した。酸素及び冷却水をオートクレーブに直接添加した。浸出後に残存し、現在、PGMで濃縮された残留物を、ろ過工程により分離し、PGM精錬所に販売した。銅リッチろ液を精製し、冷却した後、銅電解採取に進めた。
【0124】
銅除去
銅電解採取
圧力酸化浸出回路からの銅リッチろ液は、銅カソード材料を製造するタンクハウスに供給した。使用済み電解質は、大気及び圧力浸出回路にリサイクルして戻した。
【0125】
鉄除去
鉄沈殿回路
大気浸出からのニッケルリッチ溶液をリアクタートレインに供給し、下流で製造された水酸化ニッケル及び水酸化Co/Mnを一次中和剤として使用して、pHを約4~5.5に上昇させ、水酸化カリウムを使用して補充した。リアクターをエアスパージして、全ての鉄を確実に第2鉄形態に酸化させた。これらの条件において、大部分の鉄は液から沈殿する一方、水酸化ニッケル及びコバルト及びマンガンは、ほぼ完全に金属硫酸塩に戻し変換された。得られたスラリーは濃縮装置に供給し、そこの下層流スラリーは、主に水酸化鉄残留物を分離し、再浸出処理工程に移送する一列のフィルタープレスにポンプ輸送した。研磨ろ液を濃縮装置の上層流と合わせ、Co/Mn溶媒抽出回路に向けて供給した。
【0126】
再浸出工程において、残留物ケーキを硫酸溶液と混合すると、pHが約1.5に下降して、ケーキ中に存在する残留ニッケル及び水酸化コバルト/マンガン固体が溶解した。同じリアクタートレイン内で、水酸化カリウムを使用して系を塩基性化してpHを約5に上昇させて、鉄の再沈殿を促進した。その後、得られたスラリーは、そのケーキを残留物として方法から除去し、ろ液を方法の水酸化ニッケル沈殿回路に回収して戻すフィルタープレスに供給した。
【0127】
コバルト/マンガン溶媒抽出
コバルト/マンガン溶媒抽出
Co/Mn溶媒抽出の目的は、Co/Mnをニッケル含有液から分離する一方、結晶化前にCo/Mnリッチストリップ液中の残留不純物を更に除去することであった。
【0128】
このSX回路で使用した有機抽出剤は、高引火点の脂肪族溶媒に希釈された市販のCyanex 272(ビス(2,4,4トリメチルペンチル)ホスフィン酸)であった。
【0129】
下流のニッケル結晶化回路からのリサイクル硫酸ニッケルを使用して、ストリッピングされた有機抽出剤をある程度予備担持させ、その後、pH制御、追加担持、及び担持から生成された遊離酸を中和するために水酸化カリウムを補充した。非担持硫酸ニッケルを含有する予備担持工程からのラフィネートをニッケル沈殿工程に供給した。
【0130】
抽出において、コバルト及びマンガン、並びにいくらかの残留不純物を、有機抽出剤で抽出した。次いで、担持された有機抽出剤を洗浄して、弱く結合した不純物を除去した後、Co/Mnを、硫酸溶液を用いて有機抽出剤からストリッピングした。次いで、Co/Mnストリップ溶液の一部を洗浄に使用し、残部は有機物処理に向けて、残留有機物を1ppmv未満に低減した後、精製回路/不純物除去回路に向けた。抽出からのニッケルリッチラフィネート流もまた、有機物処理工程に供給した後、ニッケル結晶化回路に向けて進めた。
【0131】
有機物フリーのコバルトリッチなストリップ液を銅イオン交換処理に供給した。イオン交換カラムに、銅、微量のニッケル及び他の不純物をCo/Mnリッチ溶液から引き取り、水素イオンを放出するAmberlite 718又は同等のイオン交換樹脂を充填した。Co/Mnリッチ溶液は、樹脂への高親和性を有する銅を担持するイオン交換カラムに通過させた。次いで、Co/Mnリッチラフィネート溶液は、下流の沈殿工程からの水酸化Co/Mnを、溶液pHを上昇させ、存在する残留鉄を沈殿させるためのアルカリ源として使用する、研磨沈殿工程に供給した。残留物をろ過し、処理されたCo/Mnリッチ溶液をコバルト/Mn結晶化回路にポンプ輸送した。硫酸溶液を使用して、担持された銅を飽和樹脂から溶出し、これを上流でPOX浸出回路にリサイクルした。
【0132】
コバルト/マンガン結晶化
上流の不純物除去回路からの処理されたCo/Mnリッチ溶液を、希硫酸溶液を使用して、<1の目標pHに酸性化した。
【0133】
回路は、生じたフラッシュ蒸気を機械的蒸気再圧縮(MVR)ファンにより圧縮する強制循環(FC)蒸発晶析装置からなっていた。圧縮蒸気は熱を生じて、80℃で操作されるユニット中の蒸発を推進した。水を蒸発器中でフラッシュして、溶液を濃縮し、方法の上流で生成された酸に少なくともおよそ等しい、コバルト及びマンガンの単回通過変換率を実現した。
【0134】
次いで、貴液を、真空下で操作される蒸発結晶化回路に供給して、溶液を30℃にフラッシュ冷却した。溶液がフラッシュ冷却されるにつれて、より多くの水が蒸発し、硫酸(sulphated)コバルト及びマンガン水和塩が溶液から強制的に結晶化された。結晶は晶析装置から排出し、結晶を脱水して洗浄する遠心分離機に供給した。ケーキをタンク中に排出し、蒸発器/晶析装置からの高温凝縮水を使用してケーキを120g/L(Co+Mn)の目標濃度に再溶解した。
【0135】
Co/Mn結晶化母液中に蓄積した不純物を、処理ブリード液を介して制御し、これをモニタリング及びパージして、結晶化固体生成物要件を確実に実現した。
【0136】
コバルト及びマンガン回収
硫酸Co/Mn結晶化回路からの処理ブリード液は、水酸化カリウムを添加し、主にコバルト及びマンガンの水酸化物としての沈殿を促進するpH8.5で操作される、リアクタートレインに供給した。得られたスラリーは、その固体が上流の不純物除去及び鉄除去の回路における沈殿剤として使用される、ろ過ユニットに供給した。固体/液体分離ユニットからのろ液及び洗浄液を、硫酸カリウム製造回路にポンプ輸送した。
【0137】
硫酸ニッケル結晶化
Co/Mn溶媒抽出処理からのニッケルリッチラフィネートを、硫酸を使用して1のpHに酸性化した後、硫酸ニッケル結晶化回路に供給した。
【0138】
回路は、生じたフラッシュ蒸気を機械的蒸気再圧縮(MVR)ファンにより圧縮する強制循環(FC)蒸発晶析装置からなっていた。圧縮蒸気は熱を生じて、80℃で操作されるユニット中の蒸発を推進した。ブリード液が水を塩基性化するときに、方法の上流で添加及び生成される酸全体と少なくともおよそ等しい量のNMC水酸化物が生成されるような晶析装置ブリード速度をもたらす蒸発器で水をフラッシュした。
【0139】
次いで、貴液を、真空下で操作される蒸発結晶化回路に供給して、溶液を30℃にフラッシュ冷却した。溶液がフラッシュ冷却されるにつれて、より多くの水が蒸発し、硫酸ニッケル水和塩が溶液から強制的に結晶化された。結晶は、晶析装置から排出し、結晶を脱水して洗浄する遠心分離機に供給した。ケーキをタンクに排出し、蒸発器/晶析装置からの高温凝縮水を使用してケーキを120g/Lのニッケルの目標濃度に再溶解した。
【0140】
硫酸ニッケル結晶化母液中に蓄積した不純物を、処理ブリード液を介して制御し、これをモニタリング及びパージして、結晶化固体生成物要件を確実に実現した。
【0141】
水酸化ニッケル沈殿
硫酸ニッケル結晶化回路からの処理ブリード液を使用して、ニッケルを予備担持剤としてCo/Mn溶媒抽出回路に供給した。ストリッピングされた有機抽出剤にニッケルをある程度担持させ、水酸化カリウムを補充した(上記のとおり)。
【0142】
予備担持工程からのラフィネートは、水酸化カリウムを添加して、ニッケルの水酸化物としての沈殿を促進する8のpHで操作される、ニッケル沈殿回路に供給した。回路は、リアクタートレインに続いてろ過ユニットからなった。フィルターからのろ液及び洗浄液を下流の硫酸カリウム製造処理に移した。
【0143】
ろ過ユニットからのケーキ生成物は主に水酸化ニッケルからなり、鉄除去回路の中和剤として使用して、主処理ループへのカリウムの添加を低減し、硫酸ニッケル結晶化回路の単回通過変換率を改善した。
【0144】
実施例4
明細書に記載する方法の一態様として、Ni/Co/Mn結晶化を使用したNMC含有供給原料から製造された硫酸ニッケル、コバルト及びマンガン溶液の回収のための、別の湿式製錬方法を以下で説明する。特に、マット浸出段階を、カリウムに対して選択的な(又はそうではない)NMC結晶化とともに含む方法を説明する。主な工程を図5のブロック流れ図に示す。
【0145】
マット浸出
銅32.2%、ニッケル40.7%、鉄5%、コバルト3.6%及び硫黄18.3%(重量による)を含有する生マット供給原料を、毎時約19.5メートルトンの供給速度で摩砕回路に供給した。得られた摩砕マットスラリーを、大気条件、85℃で動作するリアクタートレインに供給し、これを、下流の銅電解採取処理からの使用済み電解質と混合した。酸素を初期リアクタータンク中にスパージし、これはマットの浸出を促進する。主にヒーズルウッド鉱(Ni)として存在するマット中のニッケルを、使用済み電解質及び酸素と反応させて、溶液中の硫酸ニッケル及びいくらかの針ニッケル鉱(NiS)固体を形成した。追加の酸素をリアクタートレイン内の最終タンクに導入せず、使用済み電解質中に存在する硫酸銅、初期リアクタータンクから浸出した銅及びNiとして存在する残存するニッケルの間のメタセシス反応を促進して、主に硫酸ニッケルとして可溶化する一方、主に硫化銅が生成した。次いで、ニッケルリッチ溶液を、ろ過工程により残留するマットから分離して、鉄除去回路に進めた。残留するマットは圧力酸化浸出に送った。
【0146】
圧力酸化浸出
マットを、600kPa及び150℃で動作するオートクレーブ中、電解採取からの使用済み電解質及び濃硫酸と混合した。酸素及び冷却水をオートクレーブに直接添加した。浸出後、残存する残留物を、ろ過工程により分離し、PGM精錬所に送った。銅リッチろ液を精製し、冷却した後、銅電解採取に進めた。
【0147】
銅除去回路
電解採取
圧力酸化浸出回路からの銅リッチろ液は、銅カソード材料を製造するタンクハウスに供給する。使用済み電解質は、大気及び圧力浸出回路にリサイクルして戻す。
【0148】
鉄除去
鉄沈殿回路
大気浸出からのニッケルリッチ溶液をリアクタートレインに供給し、下流で製造された水酸化Ni/Mn/Coを一次中和剤として使用して、pHを約4~5.5に上昇させ、水酸化カリウムを使用して補充した。リアクターをエアスパージして、全ての鉄を確実に第2鉄形態に酸化させた。これらの条件において、大部分の鉄は液から沈殿する一方、水酸化ニッケル、マンガン及びコバルトは、ほぼ完全に金属硫酸塩に戻し変換された。得られたスラリーは濃縮装置に供給し、そこの下層流スラリーは、主に水酸化鉄残留物を分離し、再浸出処理工程に移送する一列のフィルタープレスにポンプ輸送した。研磨ろ液を濃縮装置の上層流と合わせ、不純物イオン交換回路に向けて供給した。
【0149】
再浸出工程において、残留物ケーキを硫酸溶液と混合すると、pHが約1.5に下降して、ケーキ中に存在する残留ニッケル及び水酸化Co/Mn固体が溶解する。同じリアクタートレイン内で、水酸化カリウムを使用して系を塩基性化してpHを約5.5に上昇させて、鉄の再沈殿を促進した。その後、得られたスラリーは、ケーキを残留物として方法から除去し、ろ液を方法の水酸化ニッケル沈殿回路に回収して戻す、フィルタープレスに供給した。
【0150】
不純物除去回路
不純物イオン交換回路
不純物イオン交換回路の目的は、残留銅、亜鉛、鉄及び他の金属不純物を、NMC結晶化前にNMCリッチ液から除去することであった。
【0151】
イオン交換カラムに、銅及び他の不純物をNMCリッチ溶液から担持させると水素イオンを放出するLewatit VP OC 1026又は同等のイオン交換樹脂を充填した。次いで、NMCリッチラフィネート溶液をNMC結晶化回路に供給した。硫酸溶液を使用して、担持銅を飽和樹脂から溶出し、この溶液を上流のPOX浸出回路にリサイクルした。
【0152】
MC結晶化
不純物イオン交換回路からのNMCリッチ流出液を、硫酸を使用して1のpHに酸性化した後、NMC結晶化回路に供給した。
【0153】
回路は、生じたフラッシュ蒸気を機械的蒸気再圧縮(MVR)ファンにより圧縮する強制循環(FC)蒸発晶析装置からなっていた。圧縮蒸気は熱を生じて、80℃で操作されるユニット中の蒸発を推進した。水を蒸発器中でフラッシュして、溶液を濃縮し、方法の上流で生成された酸に少なくともおよそ等しい、ニッケル、マンガン及びコバルトの単回通過変換率を実現した。
【0154】
次いで、貴液を、真空下で操作される蒸発結晶化回路に供給して、溶液を30℃にフラッシュ冷却した。溶液がフラッシュ冷却されるにつれて、より多くの水が蒸発し、混合硫酸ニッケル、マンガン及びコバルト水和塩が溶液から強制的に結晶化された。結晶は晶析装置から排出し、結晶を脱水して洗浄する遠心分離機に供給した。ケーキをタンクに排出し、蒸発器/晶析装置からの高温凝縮水を使用してケーキを120g/L(Ni+Mn+Co)の目標濃度に再溶解した。
【0155】
NMC結晶化母液中に蓄積した不純物を、処理ブリード液を介して制御し、これをモニタリング及びパージして、結晶化固体生成物要件を確実に実現した。
【0156】
ニッケル、マンガン、コバルト(NMC)沈殿
NMC硫酸塩結晶化回路からの処理ブリード液は、水酸化カリウムを添加して、NMC水酸化物の沈殿を促進する8.5のpHで操作される、NMC水酸化物沈殿回路に供給した。回路は、リアクタートレインに続いてろ過ユニットからなっていた。フィルターからのろ液及び洗浄液は、下流の硫酸カリウム製造処理に移した。
【0157】
ろ過ユニットからのケーキ生成物は主にNMC水酸化物からなり、これを、鉄除去回路の中和剤として使用して、主処理ループへのカリウムの添加を低減し、NMC結晶化回路の単回通過変換率を改善した。
【0158】
実施例5
明細書に記載する方法の一態様として、コバルト結晶化を使用した、コバルト含有供給原料から製造された硫酸コバルト溶液の回収のための別の湿式製錬方法を以下で説明する。特に、Co結晶化を用いた圧力酸化段階を含む方法を説明する。主な工程を図7のブロック流れ図に示す。
【0159】
方法の説明
この節の目的は、コバルト濃縮物から硫酸コバルト(CoSO・7HO)を製造する方法を記載することである。
【0160】
圧力酸化浸出
コバルト2.5%、鉄28%、ヒ素30%、マグネシウム1.8%、銅0.6%及び硫黄18%のおよその組成(重量による)を有する硫化コバルト濃縮物を、約9.5t/時の質量供給速度で再パルプ化し、スラリーとして圧力酸化回路にポンプ輸送した。オートクレーブユニットにおいて、予備加熱するための高圧蒸気及び酸素を使用して、200℃で硫化コバルト濃縮物を硫酸コバルトに酸化させた。大部分の鉄は第2鉄に酸化され、沈殿した。スラリーを大気条件にフラッシュ冷却し、フラッシュ蒸気を熱回収及びベンチュリースクラバーに送った。冷却スラリーを鉄沈殿1に向けてポンプ輸送した。
【0161】
鉄沈殿1
この段階では、圧力浸出排出の過剰の酸をリアクタートレインに供給し、下流で製造された水酸化コバルトを中和剤として使用して、2.5の目標pHを実現した。得られたスラリーを濃厚化し、下層流をろ過し、分離した残留物を方法から除去した。濃縮装置の上層流及びろ液を合わせ、銅セメンテーションに供給した。
【0162】
銅セメンテーション
浸出液をCuセメンテーションに進め、鉄粉末を添加して銅をセメント処理した。硫酸を投入して、pHをおよそ3に制御した。鉄粉末を溶液中の硫酸銅と反応させて、硫酸鉄(II)を形成し、銅を沈殿させた。次いで、スラリーをろ過して、銅セメンテートを除去する一方、ろ液を鉄沈殿2に進めた。
【0163】
鉄沈殿2
この段階では、銅セメンテーション処理からのろ液をリアクタートレインに供給し、エアスパージして鉄を酸化させ、下流で製造された水酸化コバルトを添加して、ヒ素の安定なスコロダイトとしての沈殿を促進し、これを濃厚化及びろ過によって除去した。上層流及びろ液は、やはり下流で製造された水酸化コバルトを一次中和剤として使用し、水酸化ナトリウムを補充してpHを約5(4.5~5.5)に上昇させる、別の1組のリアクターに通過させた。更にエアスパージして、全ての鉄を確実に第2鉄形態に酸化させた。これらの条件において、大部分の鉄及びアルミニウムは液から沈殿する一方、水酸化コバルトは、ほぼ完全に硫酸コバルトに戻し変換された。
【0164】
得られたスラリーを濃縮装置に供給し、下層流を上流の鉄沈殿1回路にポンプ輸送し戻した。
【0165】
濃縮装置の上層流を研磨フィルターに供給して、残留微細固体を除去した後、銅イオン交換(IX)回路に送った。
【0166】
銅イオン交換
鉄沈殿2からの、濃縮装置上層流に残存する残留銅は、銅への高い親和性を有するLewatit VP OC 1026又は等価なイオン交換樹脂を充填した銅イオン交換カラムに供給した。銅及び他の微量不純物金属をこれらの条件で樹脂上に担持させる一方で、コバルトリッチ溶液は硫化亜鉛沈殿回路に向けてこの回路を通過させた。硫酸溶液を使用して、担持銅を飽和樹脂から溶出し、この溶液を銅回収用の上流の鉄沈殿1にリサイクルした。
【0167】
硫化亜鉛沈殿
コバルトリッチ銅イオン交換流出液は、硫化水素ナトリウム(NaHS)を添加して、溶液から亜鉛を硫化亜鉛生成物として沈殿させる、リアクタートレインに供給し、硫化亜鉛生成物はろ過し、洗浄し、袋詰めした。次いで、ろ液をコバルト結晶化回路に供給した。
【0168】
コバルト結晶化
硫化亜鉛沈殿からのコバルトリッチ溶液を、第1にそれを濃縮する蒸発器、次いで、晶析装置スラリー中の水和硫酸コバルト生成物を結晶化する晶析装置に入れ、母液を分離した。スラリーを激しくかき混ぜ、遠心分離して、残存する溶液を可能な限り除去し、次いで、生成物ケーキを乾燥し、輸送のために包装した。
【0169】
コバルト結晶化母液中に蓄積した不純物を、処理ブリード液を介して制御し、これをモニタリング及びパージして、結晶化固体生成物要件を確実に実現した。
【0170】
水酸化コバルト沈殿
結晶化回路からのブリード流は、飽和濃度で硫酸コバルトを含有していた。このブリード流は、NaOHを添加してpHを8に上昇させ、溶液中に含有される硫酸コバルトを水酸化コバルトに沈殿させる、水酸化コバルト沈殿工程に供給した。これはまた、可溶性硫酸ナトリウムも生成した。
【0171】
主に水酸化コバルトからなるろ過ユニットからのケーキ生成物を、上流の鉄沈殿回路(1及び2)の中和剤として使用して、主処理ループへのナトリウムの添加を低減し、コバルト結晶化回路の単回通過変換率を改善した。
【0172】
水酸化コバルトろ液は、水酸化ナトリウムを添加してマグネシウムを水酸化物として沈殿させる、マグネシウム除去段階に供給し、次いでこの水酸化物をろ過し、洗浄して、固体残留物として分離した。ろ液は硫酸ナトリウム回収プラントに送った。
【0173】
実施例6
明細書に記載する方法の一態様として、典型的な電池用化学物質精錬工程図と比較した場合に、本願の方法の経済的改善を例示するために完成させた事例研究を以下で説明する。事例研究は、年間40,000トンのニッケルの設計容量を有する硫酸ニッケル及びコバルト精錬所の開発を考察した。資本及び運転費用を、Association for the Advancement of Cost Engineering(AACE)クラス4レベルでの方法モデリング及びエンジニアリング設計に基づいて開発した。資本費用の見積は、設備調達及び設置費用、訓練費用、支持基本設備及び道路、建設に関連する間接費、所有者の費用並びに予備費を考慮した。鉄道線の建設、製品の長期保管又は港湾開発に関連する費用は考慮しなかった。次いで、財務分析を実施して、本願の方法の経済価値を評価した。
【0174】
典型的な電池用化学物質精錬所の2つの変形例を事例研究として考察した:典型事例1:水酸化ナトリウムを中和剤として使用し、硫酸ナトリウムが副生成物として製造された。典型事例2:アンモニアを中和剤として使用し、硫酸アンモニウムが副生成物として製造された。
【0175】
本願の方法の3つの変形例を事例研究として考察した。事例A - Ni SXを排除し、特に、Ni及びCoを含有するマット/MSP/MHP型の供給原料を、Ni結晶化及びCo SXとともに含む基本方法(実施例3に記載の方法の変形例)。事例B:事例Aと同じであるが、Co SXも排除し;特に、Ni及びCoを含有するマット/MSP/MHP型の供給原料、NaOHを用いたNi及びCo結晶化を含む(実施例4に記載の方法の変形例)。事例C:事例Aと同じであるが、水酸化カリウムを中和剤として使用し、したがって、硫酸カリウムが副生成物として製造され;特に、Ni及びCoを含有するマット/MSP/MHP型の供給原料、KOHを用いたNi結晶化及びCo結晶化を含む(実施例3に記載の方法の変形例)。
【0176】
表4.0は事例研究の基準を形成した想定を列挙する。硫酸ナトリウムの価格は、その販売に関連する困難に起因してゼロと仮定したことに留意されたい。表5.0に、比較の結果をまとめる。典型的な工程図の場合、試薬費用想定に基づいて、水酸化ナトリウムの代わりにアンモニアを使用したときに運転費用は約30%低くなった。硫酸アンモニウムについて想定される追加収益と合わせると、これは、液体アンモニアを現地で保存するために必要な追加資本を相殺して余りがあり、追加の約3億のNPV及び約3%IRRをもたらした。
【0177】
【表4】
【0178】
【表5】
【0179】
2番目に最良の案である事例2と比較すると、本願の方法(事例A)は、精錬所に関連する資本費用を215M米ドル削減する一方、運転費用もまた67M米ドル/年削減した。上で言及したとおり、これらの節約は、ニッケルSX回路及びその関連費用の排除によって大きく推進された。そのため、プラントの回収期間は5.2年から3.0年に短縮され、税引き前内部収益率は約10%改善された。
【0180】
コバルトSX回路もまた除去して(事例Bのとおり)、合わせた硫酸ニッケル-コバルト生成物を製造する場合、ビジネスケースは更に改善され、追加の135M米ドルの資本費用が節約され、10M米ドル/年の運転費用が節約され、その結果、回収期間は1.7年となり、約5%の税引き前内部収益率の追加の改善がもたらされた。
【0181】
水酸化カリウムの使用(事例C)は、その高い試薬費用にも関わらず、硫酸ナトリウムの製造を回避するのに実行可能な解決法であることが見いだされた。これはビジネスケースを実質的に変化させなかったが、硫酸ナトリウム生成物廃棄に関連する問題を排除し、高価値な肥料である硫酸カリウムを製造することによって循環経済に寄与した。
【0182】
LIB費用の削減は、気候変動を制限するのに必要なEVの採用を加速する。本願の方法は、LIBへの2つの主要な費用寄与因子であるニッケル及びコバルト電池用化学物質に関連する費用を削減することが見いだされた。
【0183】
方法は、現在の電池用化学物質工程図に含まれるSX回路を排除し、それを結晶化回路で置き換え、それによって、方法の複雑さを簡略化し、試薬消費を低減することによってその費用の節約を実現した。追加の利益として、方法はまた、環境に対して問題のある硫酸ナトリウム副生成物の製造を>80%低減することが見いだされた。本願の方法に対して完了した分析は、統合プロセスモデリング及び研究室規模の試験によって支持された。
【0184】
実施例7
明細書に記載する方法の一態様として、Ni/Co結晶化を使用したニッケル及びコバルト含有供給原料から製造された硫酸ニッケル及びコバルト溶液の回収のための、別の湿式製錬方法を以下で説明する。特に、Ni/Co結晶化を用いた混合硫化物沈殿物浸出段階を含む方法を説明する。主要な工程を図6のブロック流れ図に示す。
【0185】
圧力酸化浸出
硫化ニッケル及びコバルト沈殿物(MSP)供給原料を再パルプ化し、摩砕回路に供給した後、圧力酸化浸出にポンプ輸送した。回路は、高圧及び高温(165℃)で操作され、高純度酸素の添加により硫化ニッケル及びコバルトを、いくらかの不純物とともに可溶化するオートクレーブからなった。酸性排出液を大気条件にフラッシュ冷却した後、鉄除去/沈殿回路に供給した。
【0186】
鉄除去
鉄沈殿回路
圧力酸化浸出回路からのフラッシュ冷却スラリーをリアクタートレインに供給し、下流で製造された水酸化ニッケル及びコバルトを一次中和剤として使用して、存在する遊離酸、鉄及び硫酸アルミニウムと反応させた。リアクターをエアスパージして、全ての鉄を確実に第2鉄形態に酸化させた。これらの条件において、大部分の鉄及びアルミニウムは液から沈殿する一方、水酸化ニッケル及びコバルトは、ほぼ完全に金属硫酸塩に戻し変換された。
【0187】
得られたスラリーは濃縮装置に供給し、そこの下層流スラリーは、主に水酸化鉄及びアルミニウムの残留物を分離し、再浸出処理工程に移送する一列のフィルタープレスにポンプ輸送した。研磨ろ液を濃縮装置の上層流と合わせ、いくらかの希硫酸で4の目標pHに予備調整した後、ニッケル及びコバルト結晶化回路に供給した。
【0188】
再浸出工程において、残留物ケーキを硫酸溶液と混合すると、pHが約1.5に下降して、ケーキ中に存在する残留ニッケル及び水酸化コバルト固体が溶解した。同じリアクタートレイン内で、水酸化カリウムを使用して系を塩基性化してpHを約5.5に上昇させて、鉄及びアルミニウムの再沈殿を促進した。その後、得られたスラリーは、ケーキを残留物として除去し、ろ液を方法のニッケル及びコバルトの沈殿回路に回収して戻す、フィルタープレスに供給した。
【0189】
ニッケル及びコバルト結晶化回路
ニッケル及びコバルト結晶化回路の目的は、ニッケル及びコバルトリッチ硫酸塩を溶液から結晶化させる一方、残留物を母液中に残すことによってニッケル及びコバルトリッチ硫酸塩を精製することであった。
【0190】
回路は、生じたフラッシュ蒸気が機械的蒸気再圧縮(MVR)ファンにより圧縮される強制循環(FC)蒸発晶析装置からなっていた。圧縮蒸気は熱を生じて、80℃で操作されるユニット中の蒸発を推進した。水を蒸発器中でフラッシュして、溶液を濃縮し、方法の上流で生成された酸に少なくともおよそ等しい、合わせたニッケル及びコバルトの単回通過変換率を実現した。
【0191】
晶析装置からのスラリーは、生成物ケーキを洗浄する一次遠心分離工程に排出した。濃縮物の一部を蒸発晶析装置及び湿式粉砕レグに再循環して戻して、排出スラリー中の固体濃縮物を希釈した。残存する遠心分離液を一組の真空フラッシュ晶析装置に供給し、これにより温度を30℃に徐々に低下させた。溶液がフラッシュ冷却されるにつれて、より多くの水が蒸発し、これにより、追加のニッケル、及びコバルトの水和硫酸塩としての結晶化が促進される一方、一次不純物は主として母液中に残った。
【0192】
得られたスラリーは、生成物ケーキを洗浄し、その後一次生成物ケーキ固体と合わせる、二次遠心分離工程に供給した。生成物ケーキを脱塩水で再溶解し、カソード製造設備にポンプ輸送した。次いで、二次遠心分離液を研磨ろ過工程に供給して、微細粒子を除去した後、下流の銅除去回路に供給した。
【0193】
銅除去回路
ニッケル及びコバルト結晶化回路からのブリード液は、ニッケル粉末及び硫酸を添加し、銅金属の沈殿を促進する一方、大部分のニッケル粉末を硫酸ニッケルに再可溶化する、セメンテーション処理に供給した。得られた混合物は、銅ケーキを洗浄し、生成物保存に排出する、フィルタープレスに供給した。NMCリッチ溶液を含有するろ液を研磨ろ過工程に供給した後、亜鉛/不純物溶媒抽出回路に供給した。
【0194】
亜鉛/不純物溶媒抽出(SX)回路
亜鉛SXの目的は、ニッケル及びコバルトリッチブリード液から亜鉛を選択的に除去することであった。
【0195】
このSX回路で使用した有機抽出剤は、高引火点の脂肪族溶媒に希釈された市販のCyanex 272(ビス(2,4,4トリメチルペンチル)ホスフィン酸)であった。銅除去回路からの研磨ろ液溶液を硫酸で予備調整して、抽出前にpHを3に低下させた。
【0196】
抽出において、亜鉛及びいくらかの残留不純物を、有機抽出剤で抽出した。次いで、担持された有機抽出剤を洗浄して、その媒体と弱く結合したコバルトを主に除去した。亜鉛は、硫酸溶液を用いて有機物からストリッピングした。次いで、亜鉛リッチストリップ溶液の一部を洗浄に使用し、残部は、残留有機物を1ppmv未満に低減するための有機物処理に向け、その後水酸化カリウムを添加して、中間生成物である水酸化亜鉛を沈殿させる、亜鉛/不純物沈殿に向けた。抽出からのニッケル及びコバルトリッチラフィネート流もまた、有機物処理工程に供給した後、ニッケル及びコバルト沈殿処理に向けて進めた。
【0197】
ニッケル及びコバルト沈殿回路
亜鉛/不純物SXからのニッケル及びコバルトリッチラフィネートは、水酸化カリウムを添加して、ニッケル及びコバルトの水酸化物としての沈殿を促進するおよそ8のpHで操作される、ニッケル及びコバルト沈殿回路に供給した。回路は、リアクタートレインに続いてろ過ユニットからなった。フィルタープレスからのろ液及び洗浄液を下流の硫酸カリウム製造処理に移した。フィルタープレスからの洗浄ケーキ生成物は、水酸化ニッケル及びコバルトからなり、これを、上流の鉄除去/沈殿回路の中和剤として使用して、主処理ループへのカリウムの添加を低減し、ニッケル及びコバルト結晶化回路の単回通過変換率を改善した。
【0198】
明細書に記載の態様は、例であることのみが意図される。特定の態様への修正、変更及び変形が当業者によって行われうる。特許請求の範囲は、明細書で示す特定の態様によって限定されるべきではなく、全体として、本明細書と一致する方式で解釈されるべきである。
【0199】
本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈がそうでないことを明らかに記述していない限り複数の参照も含む。この明細書では、「含むこと」という用語は、続く列挙が網羅的ではなく、任意の他の追加の好適な項目、例えば、1つ以上のさらなる特徴、成分(component)及び/又は成分(ingredient)を適宜含んでもよく、含まなくてもよいことを意味することが理解される。
【0200】
この明細書では、「NMC」は、ニッケル、マンガン及び/又はコバルトを指す。例えば、NMC硫酸塩は、硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び/又は硫酸コバルトを指す。この明細書では、「金属硫酸塩」は、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び/又は硫酸マンガンのいずれか1つ又は組合せを指す。さらに、「金属水酸化物」は、水酸化ニッケル、水酸化コバルト及び/又は水酸化マンガンのいずれか1つ又は組合せを指す。
【0201】
この明細書では、「結晶化」、「結晶化させること」又は「結晶化した」は、PLS中で金属硫酸塩から選択的にゆっくり形成される結晶ネットワークを形成し、純粋な結晶性化合物(少なくともx線回折によって示されるとおり)をもたらす処理を指す。これとは対照的に、この明細書では、「沈殿」は、塩基性化試薬の添加及び溶液からの結晶性又は非晶質固体の形成によって特徴付けられる処理を指す。この明細書では、「共結晶化」又は「共結晶化させること」は、2つ以上の成分(例.金属硫酸塩、不純物)を溶液から一緒に(例えば、同時に)結晶化させることを指す。この明細書で、金属硫酸塩を「選択的に結晶化させること」又は「選択的に共結晶化させること」について説明する場合、「選択的」は、全ての不純物又は他の成分ではないとしても大部分から金属硫酸塩を結晶化させることを指し;言い換えると、「選択的」は純粋な結晶化金属硫酸塩を形成することを指す。
【0202】
この明細書で、「選択的に沈殿した」塩基性金属塩、例えば、金属水酸化物について説明する場合、「選択的」は、全ての不純物又は他の成分ではないとしても大部分から塩基性金属塩を沈殿させることを指し;言い換えると、「選択的」は、純粋な塩基性金属塩を形成することを指す。
【0203】
この明細書では、「金属硫酸塩の結晶化の上流で中和される酸の量」は、(i)金属硫酸塩の結晶化の上流の処理(例.浸出段階及び/若しくは精錬段階)に添加された酸を中和すること;(ii)精錬段階の間に生成されて、不純物及び/若しくは成分を除去する酸を中和すること;又は(iii)その組合せを指す。添加された又は生成された酸の量は、浸出段階及び/又は精錬段階の条件に依存し、使用されている供給原料並びにその既知の不純物及び成分、浸出段階から生成された浸出貴液を処理するのに使用されている精錬段階、並びに浸出及び精錬段階の各々のための化学反応/処理及びその化学量論性を鑑みて決定できる。
【0204】
この明細書では、「遊離水」は、水和球の一部ではなく及び/又は格子構造に組み込まれていない、水溶液の液相を構成する水を指す。「遊離水の量」は、水溶液中に存在する遊離水の体積(例.mL、L)を指す。
図1
図2
図2a
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-02-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属硫酸塩の生成方法であって、
水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて、未結晶化金属硫酸塩を含む母液中で結晶化金属硫酸塩を形成すること;
前記母液から前記結晶化金属硫酸塩を分離すること;
前記母液の一部に塩基を添加することにより前記母液の一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換すること;及び
前記金属硫酸塩の結晶化の上流で前記塩基性金属塩を使用すること
を含む、方法。
【請求項2】
塩基性化することが、塩基を添加することによりpHを7.5以上に上昇させることを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
塩基性化することが、塩基を添加することによりpHを7.5~10に上昇させることを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上流で前記塩基性金属塩を使用することが、前記塩基性金属塩を前記未結晶化金属硫酸塩に戻し変換することを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記塩基性金属塩を前記未結晶化金属硫酸塩に戻し変換することが、前記塩基性金属塩を第1の中和剤として使用して、前記金属硫酸塩の結晶化の上流で酸を中和することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項6】
前記母液の前記一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換することが、
前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、前記金属硫酸塩の結晶化の上流で中和される酸の量と少なくともおよそ等しい量の前記塩基性金属塩を製造すること
を更に含む、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基性金属塩を前記第1の中和剤として使用することが、前記塩基性金属塩を、浸出段階及び精錬段階の1つ以上において前記第1の中和剤として使用することを含む、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記母液の前記一部を塩基性化することが、第2の中和剤を使用して、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の中和剤が水酸化ナトリウムであり、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換するときに、前記水酸化ナトリウムが硫酸ナトリウムに変換される、請求項に記載の方法。
【請求項10】
前記未結晶化金属硫酸塩を結晶化させることを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、晶析装置からの水の蒸発速度を制御すること、及び晶析装置への水の添加を制御することの1つ以上によって、晶析装置中の遊離水の量を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記不純物が、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記母液から前記塩基性金属塩を単離することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記塩基性金属塩を単離することが、一段階又は二段階沈殿回路を使用し、前記塩基性金属塩を選択的に沈殿させることを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記金属硫酸塩が、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンのいずれか1つ又は組合せである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記塩基性金属塩が金属水酸化物を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記金属水酸化物が、水酸化ニッケル、水酸化コバルト又は水酸化マンガンのいずれか1つ又は組合せを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記水溶液から硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルトのいずれか1つ以上を選択的に結晶化させることを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
供給原料を浸出させて、前記金属硫酸塩を含む前記水溶液を形成することを更に含み、
前記供給原料が、リサイクルリチウムイオン電池又はリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料を含み;
前記結晶化金属硫酸塩が、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを含み;
前記塩基性金属塩が、水酸化ニッケル、水酸化コバルト及び水酸化マンガンを含み;
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときにリチウム不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む
請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、<0~5のpHで実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記pHが1.5~2.5である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
記塩基が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記塩基を添加することが、pHを7.5~10に増加させる、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記水溶液に硫酸を添加することを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記リチウム不純物及び/又はナトリウム不純物の飽和点に達する水の蒸発量よりも少ない量の水を、前記水溶液から蒸発させることを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項27】
前記母液の前記一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換することが、前記母液から前記塩基性金属塩を除去し、前記塩基性金属塩のケーキを形成することを更に含む、請求項20に記載の方法。
【請求項28】
上流で前記塩基性金属塩を使用することが、前記供給原料を浸出させるときに、前記ケーキの第1の部分を使用することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記第1の部分が、前記ケーキの0~40重量%である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
上流で前記塩基性金属塩を使用することが、精錬段階において前記ケーキの第2の部分を使用することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
前記第2の部分が、前記ケーキの60~100重量%である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記供給原料が、少なくとも50重量%のリサイクルリチウムイオン電池材料及び/又はリチウムイオン電池製造スクラップを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項33】
金属硫酸塩の生成方法であって、
水溶液から金属硫酸塩を結晶化させて、未結晶化金属硫酸塩を含む母液中で結晶化金属硫酸塩を形成すること;
前記母液から前記結晶化金属硫酸塩を分離すること;及び
前記母液の一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換すること
を含む、方法。
【請求項34】
前記金属硫酸塩の結晶化の上流で前記塩基性金属塩を使用することを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記金属硫酸塩の結晶化の上流で前記水溶液を精錬することを更に含む、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
供給原料を浸出させて、前記金属硫酸塩を含む前記水溶液を形成することを更に含み、
前記供給原料が、リサイクルリチウムイオン電池又はリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料を含み;
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときにリチウム不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを更に含む
請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記結晶化金属硫酸塩が、電池グレードの結晶化金属硫酸塩又は電気めっきグレードの結晶化金属硫酸塩である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
結晶化金属硫酸塩の生成方法であって、
供給原料を浸出させて、金属硫酸塩を含む浸出貴液を形成すること;
前記浸出貴液から前記金属硫酸塩を結晶化させて、未結晶化金属硫酸塩を含む母液中で結晶化金属硫酸塩を形成すること;
前記母液から前記結晶化金属硫酸塩を分離すること;
前記母液の一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を塩基性金属塩に変換すること;及び
前記金属硫酸塩の結晶化の上流で前記塩基性金属塩を第1の中和剤として使用し、前記塩基性金属塩を前記未結晶化金属硫酸塩に戻し変換すること;
を含み、
前記結晶化金属硫酸塩が、電池グレードの結晶化金属硫酸塩である、方法。
【請求項39】
前記供給原料が、混合水酸化物沈殿物、混合硫化物沈殿物、硫化ニッケル濃縮物、硫化コバルト濃縮物、ニッケルラテライト、ニッケルマット、フェロニッケル、リサイクルリチウムイオン電池若しくはリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料、又は使用済みカソード材料のいずれか1つ又は組合せを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記金属硫酸塩の結晶化の上流で前記浸出貴液を精錬することを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記浸出貴液を精錬することが、前記浸出貴液を少なくとも1つの成分除去段階に供して、前記浸出貴液から1つ以上の不純物又は成分を除去することを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの成分除去段階が、沈殿、大気又は圧力浸出、硫化、溶媒抽出、イオン交換、セメンテーション又はそれらの組合せを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記不純物が、ナトリウム、アルミニウム、鉄、銅、亜鉛、リチウム、コバルト、マンガン及びそれらの組合せを含み、前記成分が、ニッケル、コバルト及びマンガンのいずれか1つ又は2つを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記母液の前記一部を塩基性化することが、第2の中和剤を使用して、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換することを含み、
前記第2の中和剤が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム及び酸化マグネシウムのいずれか1つ又は組合せである、
請求項38に記載の方法。
【請求項45】
前記第2の中和剤が水酸化ナトリウムである場合、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換するときに、前記水酸化ナトリウムが硫酸ナトリウムに変換される、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記硫酸ナトリウムを、電気分解によって前記水酸化ナトリウムに戻し変換することを更に含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム又は酸化マグネシウムのいずれか1つ又は組合せを前記第2の中和剤として使用することにより、硫酸カリウム、硫酸カルシウム、硫酸リチウム又は硫酸マグネシウムのいずれか1つ又は組合せが副生成物として形成される、請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記未結晶化金属硫酸塩を結晶化させることを更に含む、請求項38に記載の方法。
【請求項49】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記浸出貴液を第1の晶析装置に導入すること、及び前記第1の晶析装置を、前記結晶化金属硫酸塩を形成する条件下で操作することを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項50】
前記結晶化金属硫酸塩を形成する前記条件が、
前記第1の晶析装置から前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、及び前記第1の晶析装置中の遊離水の量を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときに不純物が結晶化することを選択的に抑制すること
の1つ以上を含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記不純物が、リチウム、ナトリウム、カリウム又はマグネシウムを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記結晶化金属硫酸塩を水溶液に溶解して、硫酸塩水溶液を形成すること;
前記硫酸塩水溶液を、第2の晶析装置に導入すること;及び
前記第2の晶析装置を、前記金属硫酸塩水溶液から前記結晶化金属硫酸塩を再形成する条件下で操作すること
を更に含む、請求項49に記載の方法。
【請求項53】
前記金属硫酸塩が、硫酸ニッケル、硫酸コバルト又は硫酸マンガンのいずれか1つ又は組合せである、請求項38に記載の方法。
【請求項54】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記浸出貴液から前記硫酸ニッケル、硫酸マンガン及び硫酸コバルトのいずれか1つ以上を選択的に結晶化させることを含む、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記塩基性金属塩が金属水酸化物を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項56】
前記金属水酸化物が、水酸化ニッケル、水酸化コバルト又は水酸化マンガンのいずれか1つ又は組合せを含む、請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記供給原料が、リサイクルリチウムイオン電池又はリチウムイオン電池製造スクラップに由来する材料を含み;
前記結晶化金属硫酸塩が、硫酸ニッケル、硫酸コバルト及び硫酸マンガンを含み;
前記塩基性金属塩が、水酸化ニッケル、水酸化コバルト及び水酸化マンガンを含み;
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記浸出貴液を晶析装置に導入すること、及び前記晶析装置を、前記結晶化金属硫酸塩を形成する条件下で操作することを含み、
前記条件が、前記晶析装置から前記母液をブリードさせ、ブリード速度を制御して、前記金属硫酸塩を結晶化させるときにリチウム不純物が結晶化するのを選択的に抑制することを含む、
請求項38に記載の方法。
【請求項58】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、1.5~2.5のpHで実施される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記母液の前記一部を塩基性化することが、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物を含む第2の中和剤を添加することを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項60】
前記第2の中和剤を添加することにより、pHを7.5~9.5に増加させる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記金属硫酸塩を結晶化させることが、前記浸出貴液に硫酸を添加することを更に含む、請求項57に記載の方法。
【請求項62】
前記結晶化金属硫酸塩を形成する条件が、前記リチウム不純物及び/又はナトリウム不純物の飽和点に達する水の蒸発量よりも少ない量の水を、前記浸出貴液から蒸発させることを更に含む、請求項57に記載の方法。
【請求項63】
前記リチウム不純物がLiSOであり、前記ナトリウム不純物がNaSOである、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記母液の前記一部を塩基性化して、前記未結晶化金属硫酸塩を前記塩基性金属塩に変換することが、前記母液から前記塩基性金属塩を除去し、前記塩基性金属塩のケーキを形成することを更に含む、請求項57に記載の方法。
【請求項65】
上流で前記塩基性金属塩を第1の中和剤として使用することが、前記供給原料を浸出させるときに、前記ケーキの第1の部分、及び精錬段階において前記ケーキの第2の部分を使用することを含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記第1の部分が、前記ケーキの0~40重量%である、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記第2の部分が、前記ケーキの60~100重量%である、請求項65に記載の方法。
【請求項68】
前記供給原料が、少なくとも50重量%のリサイクルされたリチウムイオン電池材料及び/又はリチウムイオン電池製造スクラップを含む、請求項67に記載の方法。
【国際調査報告】