(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】例えば製品の最初の使用後などの汚染を防止するための抗菌性コーティングを備えたパッケージ
(51)【国際特許分類】
B65D 23/02 20060101AFI20230725BHJP
B65D 83/00 20060101ALI20230725BHJP
B65D 83/76 20060101ALI20230725BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20230725BHJP
A61P 11/02 20060101ALI20230725BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230725BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230725BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230725BHJP
A61Q 1/04 20060101ALI20230725BHJP
A61Q 1/10 20060101ALI20230725BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20230725BHJP
A45D 34/00 20060101ALI20230725BHJP
A45D 34/04 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B65D23/02 Z
B65D83/00 J
B65D83/00 K
B65D83/76 120
A61P27/02
A61P11/02
A61K45/00
A61Q19/00
A61K8/02
A61Q1/04
A61Q1/10
A61Q5/00
A45D34/00 510Z
A45D34/04 515Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022577671
(86)(22)【出願日】2021-06-16
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 US2021037667
(87)【国際公開番号】W WO2021257728
(87)【国際公開日】2021-12-23
(32)【優先日】2020-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522410167
【氏名又は名称】エスアイオー2 メディカル プロダクツ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ウェイカート,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】クラーク,ベッキー エル.
(72)【発明者】
【氏名】スティーブンソン,アダム
(72)【発明者】
【氏名】フェルツ,ジョン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】タハ,アーマッド
(72)【発明者】
【氏名】エイブラムス,ロバート エス.
【テーマコード(参考)】
3E014
3E062
4C083
4C084
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PB03
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4C083CC01
4C083CC02
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4C084ZA331
4C084ZA332
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4C084ZA342
(57)【要約】
本開示は、点眼瓶、点鼻スプレー瓶、化粧品及びフレグランス容器などの複数回用量の容器であって、流体製品と接触する容器内壁の少なくとも一部に抗菌コーティングが設けられられている容器に関する。抗菌コーティングは、製品の使用中に内腔に入る可能性がある微生物の増殖を阻害する及び/又は細菌などの微生物を不活性化若しくは殺すのに有効である。そのため、最初の使用後の製品の保存可能期間を延ばすことができ、及び/又は流体製品中の防腐剤又は賦形剤の量を減らすことができる。容器は、最初の使用前の製品の保存可能期間を延ばすことができる1つ以上の酸素バリアコーティングも含み得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内腔の少なくとも一部を囲む1つ以上の壁を備えた容器;
前記内腔内の流体であって、複数回の用量又は適用のために構成された量で存在し、任意選択的には薬剤又は医療製品であり、任意選択的には化粧品であり、任意選択的にはスキンケア製品である流体;
前記1つ以上の壁の内表面上の抗菌コーティングであって、前記流体と接触しており、前記内腔内の前記流体中の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な抗菌コーティング;
を含むパッケージ。
【請求項2】
内腔の少なくとも一部を囲む1つ以上の壁を備えた容器;
前記内腔内の無菌又は滅菌状態の流体であって、複数回の用量又は適用のために構成された量で存在し、任意選択的には薬剤又は医療製品であり、任意選択的には化粧品であり、任意選択的にはスキンケア製品である流体;
前記1つ以上の壁の内表面上の抗菌コーティングであって、前記流体と接触しており、前記内腔内に入った細菌を不活性化する又は殺すのに有効である抗菌コーティング;
を含むパッケージ。
【請求項3】
内腔の少なくとも一部を囲む1つ以上の壁を備えた容器;
前記内腔内の無菌又は滅菌状態の流体であって、複数回の用量又は適用のために構成された量で存在し、任意選択的には薬剤又は医療製品であり、任意選択的には化粧品であり、任意選択的にはスキンケア製品である流体;
流体用のアプリケータであって、使用時に細菌汚染されやすいアプリケータ;
前記1つ以上の壁の内表面上の抗菌コーティングであって、流体と接触しており、最初の使用後のパッケージの保存可能期間を任意選択的には少なくとも1週間、任意選択的には少なくとも2週間、任意選択的には少なくとも1ヶ月、任意選択的には少なくとも2ヶ月、任意選択的には少なくとも3ヶ月、任意選択的には少なくとも4ヶ月、任意選択的には少なくとも5ヶ月、任意選択的には少なくとも6ヶ月、任意選択的には少なくとも9ヶ月、任意選択的には少なくとも1年延ばすのに有効である抗菌コーティング;
を含むパッケージ。
【請求項4】
前記パッケージが前記流体用のアプリケータをさらに含み、前記アプリケータが細菌汚染されやすい、請求項1~3のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項5】
前記容器がスポイトチップ又はスポイトを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項6】
前記容器が点鼻スプレーアプリケータを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項7】
前記容器が複数回用量の点眼瓶を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項8】
前記容器が点鼻スプレー瓶である、請求項1~7のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項9】
前記流体が薬剤の液体製剤であり、任意選択的には眼又は鼻に投与するために構成された薬剤の液体製剤であり、任意選択的には眼に投与するために構成された薬剤の液体製剤であり、任意選択的には鼻に投与するために構成された薬剤の液体製剤である、請求項1~8のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項10】
前記流体が眼科用薬物製剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項11】
前記流体が、局所的に作用する経鼻薬剤、任意選択的には鼻充血除去剤を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項12】
前記抗菌コーティングが、最初の使用後の前記パッケージの保存可能期間を延ばすのに有効である、請求項1~11のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項13】
前記抗菌コーティングが最初の使用後のパッケージの保存可能期間を少なくとも1週間、任意選択的には少なくとも2週間、任意選択的には少なくとも1ヶ月、任意選択的には少なくとも2ヶ月、任意選択的には少なくとも3ヶ月、任意選択的には少なくとも4ヶ月、任意選択的には少なくとも5ヶ月、任意選択的には少なくとも6ヶ月、任意選択的には少なくとも9ヶ月、任意選択的には少なくとも1年延ばすのに有効である、請求項1~12のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項14】
前記容器が、化粧品容器、任意選択的にはマスカラの瓶又はチューブ、任意選択的にはアイライナーの瓶又はチューブ、任意選択的にはリップグロスの瓶又はチューブである、請求項1~13のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項15】
前記アプリケータが、メイクアップアプリケータ;任意選択的には前記容器に固定可能なキャップの下側から伸びるアプリケータブラシ;任意選択的にはまつ毛ブラシ、アイライナーブラシ、又はリップブラシ、任意選択的にはまつ毛ブラシ、任意選択的にはアイライナーブラシ、任意選択的にはリップブラシである、請求項1~14のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項16】
前記流体が、マスカラ組成物、アイライナー組成物、又はリップグロス組成物である、請求項1~15のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項17】
前記容器がコンタクトレンズ容器である、請求項1~16のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項18】
前記流体がコンタクトレンズ液である、請求項1~17のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項19】
前記容器が瓶であり、前記流体がコンタクトレンズ液又は生理食塩水である、請求項1~18のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項20】
前記流体が人の皮膚又は毛髪に適用されるように構成され、任意選択的には前記流体がクリーム、軟膏、又は外用薬である、請求項1~19のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項21】
前記容器が、ポンプアプリケータを有するポンプキャップを備える、請求項1~20のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項22】
前記容器が少用量の薬瓶である、請求項1~21のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項23】
前記アプリケータが、スポイト、スポイトキャップ、又はプランジャー作動式アプリケータである、請求項1~22のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項24】
前記プランジャー作動式アプリケータの1つ以上の表面に前記抗菌コーティングが設けられ、任意選択的には、前記プランジャー作動式アプリケータのバレルの内表面の少なくとも一部に前記抗菌コーティングが設けられる、請求項1~23のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項25】
前記スポイト又はスポイトキャップの1つ以上の表面に前記抗菌コーティングが設けられ、任意選択的には、前記スポイト内腔の内表面の少なくとも一部に前記抗菌コーティングが設けられる、請求項1~24のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項26】
前記流体が、食品、任意選択的には塗り広げ可能な食品、任意選択的には塗り広げ可能な調味料である、請求項1~25のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項27】
前記流体製品が、同じパッケージであるが前記抗菌コーティングがないパッケージ内に保存されている同じ流体製品と比較して低減された量の抗菌賦形剤及び/又は添加剤を有する;任意選択的には同じパッケージであるが前記抗菌コーティングがないパッケージ内に保存されている同じ流体製品と比較して少なくとも5%少ない、任意選択的には少なくとも10%少ない、任意選択的には少なくとも20%少ない、任意選択的には少なくとも30%少ない、任意選択的には少なくとも40%少ない、任意選択的には少なくとも50%少ない、任意選択的には少なくとも60%少ない、任意選択的には少なくとも70%少ない、任意選択的には少なくとも80%少ない、任意選択的には少なくとも90%少ない、任意選択的には少なくとも95%少ない抗菌賦形剤及び/又は添加剤を有する;任意選択的には前記流体製品が抗菌賦形剤及び/又は添加剤を含まない、請求項1~26のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項28】
前記抗菌コーティングが酸化亜鉛、二酸化チタン、又は酸化銀を含み、任意選択的には前記抗菌コーティングが酸化亜鉛を含み、任意選択的には前記抗菌コーティングが二酸化チタンを含み、任意選択的には前記抗菌コーティングが酸化銀を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項29】
前記抗菌コーティングがPECVD、ALD、PEALD、スパッタリング、蒸着、又は焼結によって適用されており、任意選択的には前記抗菌コーティングがPECVD、ALD、又はPEALDによって適用されており、任意選択的には前記抗菌コーティングがPECVDによって適用されており、任意選択的には前記抗菌コーティングがALDによって適用されており、任意選択的には前記抗菌コーティングがPEALDによって適用されている、請求項1~28のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項30】
前記抗菌コーティングが本質的に複数の単原子層からなり、任意選択的には前記抗菌コーティング又は層が原子層堆積によって、任意選択的にはプラズマ支援原子層堆積によって堆積されている、請求項1~29のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項31】
前記抗菌コーティングが、約1nm~約1000nm、任意選択的には約2nm~約1000nm、任意選択的には約5nm~約1000nm、任意選択的には約10nm~1000nm、任意選択的には約1nm~約500nm、任意選択的には2nm~約500nm、任意選択的には約5nm~約500nm、任意選択的には約10nm~500nm、任意選択的には約1nm~約250nm、任意選択的には約2nm~約250nm、任意選択的には約5nm~約250nm、任意選択的には約10nm~250nm、任意選択的には約1nm~約100nm、任意選択的には約2nm~約100nm、任意選択的には約5nm~約100nm、任意選択的には約10nm~100nm、任意選択的には約1nm~約50nm、任意選択的には約2nm~約50nm、任意選択的には約5nm~約50nm、任意選択的には約10nm~約50nmの厚さ、任意選択的には約1nm~約15nmの厚さ、或いは2~12nmの厚さ、或いは3~10nmの厚さ、或いは4~8nmの厚さ、或いは5~7nmの厚さを有する、請求項1~30のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項32】
酢酸亜鉛、ジエチル亜鉛、又はそれらの組み合わせと酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用された酸化亜鉛(ZnO)を前記抗菌コーティングが含む、請求項1~31のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項33】
四塩化チタンと酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用された二酸化チタン(TiO2)を前記抗菌コーティングが含む、請求項1~32のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項34】
有機銀化合物と酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用された酸化銀(Ag2O)を前記抗菌コーティングが含み、任意選択的には、前記有機銀化合物が、
Ag(Hfac)(PR
3)
の組成を有し、Hfacは1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトナートであり、Pはホスフィンであり、Rはメチル、エチル、又はそれらの組み合わせである、請求項1~33のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項35】
酢酸亜鉛、ジエチル亜鉛、又はそれらの組み合わせと酸化剤とを含む供給ガスを使用してALD又はPEALDによって適用された酸化亜鉛(ZnO)を前記抗菌コーティングが含む、請求項1~34のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項36】
四塩化チタン、チタンイソプロポキシド、又はそれらの組み合わせと酸化剤とを含む供給ガスを使用してALD又はPEALDによって適用された二酸化チタン(TiO2)を前記抗菌コーティングが含む、請求項1~35のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項37】
有機銀化合物と酸化剤とを含む供給ガスを使用してPECVDによって適用された酸化銀(AgO2)を前記抗菌コーティングが含み、任意選択的には、前記有機銀化合物が、
Ag(Hfac)(PR
3)
の組成を有し、Hfacは1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトナートであり、Pはホスフィンであり、Rはメチル、エチル、又はそれらの組み合わせである、請求項1~36のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項38】
前記酸化剤がO
2、O
3、H
2O、H
2O
2、N
2O、NO
2、空気、又はそれらの組み合わせから選択され、任意選択的には前記酸化剤がO
2である、請求項1~37のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項39】
前記壁の前記内表面と外表面のうちの少なくとも一つによって支持される酸素バリアコーティングであって、前記酸素バリアコーティングのない容器と比較して前記内腔への酸素の侵入を低減するのに有効である酸素バリアコーティングをさらに含む、請求項1~38のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項40】
前記酸素バリアコーティングが、25℃、相対湿度60%、0.21barで前記内腔への酸素の侵入を0.0005cc/パッケージ/日未満、任意選択的には25℃、相対湿度60%、0.21barで0.0004cc/パッケージ/日未満、任意選択的には25℃、相対湿度60%、0.21barで0.0003cc/パッケージ/日未満、任意選択的には25℃、相対湿度60%、0.21barで0.0002cc/パッケージ/日未満、任意選択的には25℃、相対湿度60%、0.21barで0.0001cc/パッケージ/日未満に低減するのに有効である、請求項1~39のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項41】
前記酸素バリアコーティングが、前記壁の前記内表面と前記抗菌コーティングとの間に配置される、請求項1~40のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項42】
前記酸素バリアコーティングが純粋な元素又は化合物の複数の原子単層から本質的になり、任意選択的には前記酸素バリアコーティングが原子層堆積(ALD)によって、任意選択的にはプラズマ支援原子層堆積(PEALD)によって堆積される、請求項1~41のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項43】
前記酸素バリアコーティングが、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって適用される、請求項1~42のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項44】
前記酸素バリアコーティングが、SiOx(xは1.5~2.9である)を含むか、それから本質的になるか、それからなる、請求項1~43のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項45】
前記酸素バリアコーティングが、1~1000nm、任意選択的には2~1000nm、任意選択的には10~1000nm、任意選択的には10~500nm、任意選択的には10~200nm、任意選択的には20~100nmの厚さを有し、任意選択には前記酸素バリアコーティングが1~15nmの厚さ、或いは2~12nmの厚さ、或いは3~10nmの厚さ、或いは4~8nmの厚さ、或いは5~7nmの厚さを有する、請求項1~44のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項46】
前記酸素バリアコーティングと前記内腔との間に配置されたpH保護コーティングをさらに含み、前記pH保護コーティングが前記内腔内の前記流体による前記酸素バリアコーティングの溶解を低減するのに有効である、請求項1~45のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項47】
前記pH保護コーティングが、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であるSiOxCy又はSiNxCyを含む、請求項1~46のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項48】
前記pH保護コーティングが、少なくとも6ヶ月間、5を超えるpHを有する流体から前記酸素バリアコーティングを実質的に溶解しないままに保つのに有効である、請求項1~47のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項49】
前記内腔に含まれる5を超えるpHを有する流体が直接接触した場合の前記pH保護コーティングの浸食速度が、同じ条件下で同じ流体が直接接触した場合の前記酸素バリアコーティングの浸食速度の20%未満である、請求項1~48のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項50】
前記内腔に含まれる5~9のpHを有する流体が、前記流体との接触88時間あたり1nm以下のpH保護コーティングの厚さの速度で、任意選択的には前記流体との接触44時間あたり1nm以下のpH保護コーティングの厚さの速度で、前記pH保護コーティングを除去する、請求項1~49のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項51】
前記pH保護コーティングが10~1000nmの厚さである、請求項1~50のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項52】
前記pH保護コーティングが前記酸素バリアコーティングと少なくとも同一の広がりを持つ、請求項1~51のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項53】
前記pH保護コーティングのFTIR吸光度スペクトルが、0.75より大きい、任意選択的には0.9より大きい、
・約1000~1040cm-1のSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と
・約1060~約1100cm-1のSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅と
の間の比率を有する、請求項1~52のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項54】
前記pH保護コーティングが、以下:
【数1】
の通りに測定される減衰全反射(ATR)で測定される0.4未満のO-パラメータを示す、請求項1~53のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項55】
前記pH保護コーティングがプラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって適用される、請求項1~54のいずれか1項に記載のパッケージ。
【請求項56】
前記酸素バリアコーティングと前記壁内表面又は外表面との間に位置するタイコーティングをさらに含む、請求項1~55のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項57】
前記タイコーティングが、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であるSiOxCy又はSiNxCyを含む、請求項1~56のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項58】
前記タイコーティングが5~200nmの平均厚さを有する、請求項1~57のいずれか一項に記載のパッケージ。
【請求項59】
アプリケータを介して流体に入る可能性がある細菌などによる、最初の使用後の流体製品、任意選択的には無菌又は滅菌状態の流体製品の汚染を防止するための、請求項1~58のいずれか一項に記載のパッケージの使用。
【請求項60】
流体製品中の抗菌賦形剤又は添加剤の量を減らすための、任意選択的には前記流体製品中の抗菌賦形剤又は添加剤の存在を排除するための、請求項1~58のいずれか一項に記載のパッケージの使用。
【請求項61】
最初の使用後の流体製品、任意選択的には無菌又は滅菌状態の流体製品の汚染を防止するための方法であって、
請求項1~58のいずれか一項に記載の抗菌コーティングを含むパッケージ中の前記流体製品を提供すること、
を含む方法。
【請求項62】
内腔の少なくとも一部を囲む1つ以上の壁を備えた容器;
前記内腔の開口部のスポイトチップ;
前記内腔内の眼科医療用流体;及び
前記1つ以上の壁の内表面上にあり前記流体と接触している抗菌コーティングであって前記内腔内に入った細菌を不活性化する又は殺すのに有効である抗菌コーティング;
を含む複数回用量の点眼瓶。
【請求項63】
前記抗菌コーティングが、最初の使用後の前記複数回用量の点眼瓶の保存可能期間を延ばすのに有効である、請求項62に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項64】
前記抗菌コーティングが、最初の使用後の前記複数回用量の点眼瓶の保存可能期間を少なくとも1週間、任意選択的には少なくとも2週間、任意選択的には少なくとも1ヶ月、任意選択的には少なくとも2ヶ月、任意選択的には少なくとも3ヶ月、任意選択的には少なくとも4ヶ月、任意選択的には少なくとも5ヶ月、任意選択的には少なくとも6ヶ月、任意選択的には少なくとも9ヶ月、任意選択的には少なくとも1年延ばすのに有効である、請求項63に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項65】
内腔の少なくとも一部を囲む1つ以上の壁を備えた容器;
前記内腔の開口部のスポイトチップ;
前記内腔内の眼科医療用流体;及び
前記1つ以上の壁の内表面上にあり前記流体と接触している抗菌コーティング;
を含む複数回用量の点眼瓶であって、前記抗菌コーティングが、最初の使用後の複数回用量の点眼瓶の保存可能期間を任意選択的には少なくとも1週間、任意選択的には少なくとも2週間、任意選択的には少なくとも1ヶ月、任意選択的には少なくとも2ヶ月、任意選択的には少なくとも3ヶ月、任意選択的には少なくとも4ヶ月、任意選択的には少なくとも5ヶ月、任意選択的には少なくとも6ヶ月、任意選択的には少なくとも9ヶ月、任意選択的には少なくとも1年延ばすのに有効である、複数回用量の点眼瓶。
【請求項66】
前記眼科医療用流体製品が、同じ複数回用量の点眼瓶であるが前記抗菌コーティングがない同じ複数回用量の点眼瓶内に保存されている同じ眼科医療用流体製品と比較して低減された量の抗菌賦形剤を有し、任意選択的には前記眼科医療用流体製品は抗菌賦形剤を含まない、請求項62~65のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項67】
前記抗菌コーティングが酸化亜鉛、二酸化チタン、又は酸化銀を含み、任意選択的には前記抗菌コーティングが酸化亜鉛を含み、任意選択的には前記抗菌コーティングが二酸化チタンを含み、任意選択的には前記抗菌コーティングが酸化銀を含む、請求項62~66のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項68】
前記抗菌コーティングがPECVD、ALD、PEALD、スパッタリング、蒸着、又は焼結によって適用されており、任意選択的には前記抗菌コーティングがPECVD、ALD、又はPEALDによって適用されており、任意選択的には前記抗菌コーティングがPECVDによって適用されており、任意選択的には前記抗菌コーティングがALDによって適用されており、任意選択的には前記抗菌コーティングがPEALDによって適用されている、請求項62~67のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項69】
前記抗菌コーティングが本質的に複数の単原子層からなり、任意選択的には前記抗菌コーティング又は層が原子層堆積によって、任意選択的にはプラズマ支援原子層堆積によって堆積される、請求項62~68のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項70】
前記抗菌コーティングが、約1nm~約1000nm、任意選択的には約2nm~約1000nm、任意選択的には約5nm~約1000nm、任意選択的には約10nm~1000nm、任意選択的には約1nm~約500nm、任意選択的には2nm~約500nm、任意選択的には約5nm~約500nm、任意選択的には約10nm~500nm、任意選択的には約1nm~約250nm、任意選択的には約2nm~約250nm、任意選択的には約5nm~約250nm、任意選択的には約10nm~250nm、任意選択的には約1nm~約100nm、任意選択的には約2nm~約100nm、任意選択的には約5nm~約100nm、任意選択的には約10nm~100nm、任意選択的には約1nm~約50nm、任意選択的には約2nm~約50nm、任意選択的には約5nm~約50nm、任意選択的には約10nm~約50nm、任意選択的には約1nm~約15nmの厚さ、或いは2~12nmの厚さ、或いは3~10nmの厚さ、或いは4~8nmの厚さ、或いは5~7nmの厚さを有する、請求項62~69のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項71】
酢酸亜鉛、ジエチル亜鉛、又はそれらの組み合わせと酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用された酸化亜鉛(ZnO)を前記抗菌コーティングが含む、請求項62~70のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項72】
四塩化チタンと酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用された二酸化チタン(TiO2)を前記抗菌コーティングが含む、請求項62~71のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項73】
有機銀化合物と酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用された酸化銀(Ag2O)を前記抗菌コーティングが含み、任意選択的には、前記有機銀化合物が、
Ag(Hfac)(PR
3)
の組成を有し、Hfacは1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトナートであり、Pはホスフィンであり、Rはメチル、エチル、又はそれらの組み合わせである、請求項62~72のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項74】
酢酸亜鉛、ジエチル亜鉛、又はそれらの組み合わせと酸化剤とを含む供給ガスを使用してALD又はPEALDによって適用された酸化亜鉛(ZnO)を前記抗菌コーティングが含む、請求項62~73のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項75】
四塩化チタン、チタンイソプロポキシド、又はそれらの組み合わせと酸化剤とを含む供給ガスを使用してALD又はPEALDによって適用された二酸化チタン(TiO2)を前記抗菌コーティングが含む、請求項62~74のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項76】
有機銀化合物と酸化剤とを含む供給ガスを使用してPECVDによって適用された酸化銀(Ag2O)を前記抗菌コーティングが含み、任意選択的には、前記有機銀化合物が、
Ag(Hfac)(PR
3)
の組成を有し、Hfacは1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトナートであり、Pはホスフィンであり、Rはメチル、エチル、又はそれらの組み合わせである、請求項62~75のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項77】
前記酸化剤がO
2、O
3、H
2O、H
2O
2、空気、又はそれらの組み合わせから選択され、任意選択的には前記酸化剤がO
2である、請求項62~76のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項78】
前記壁の前記内表面と外表面のうちの少なくとも一つによって支持される酸素バリアコーティングであって、前記酸素バリアコーティングのない容器と比較して前記内腔への酸素の侵入を低減するのに有効である酸素バリアコーティングをさらに含む、請求項62~77のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項79】
前記酸素バリアコーティングが、25℃、相対湿度60%、0.21barで前記内腔への酸素の侵入を0.0005cc/パッケージ/日未満、任意選択的には25℃、相対湿度60%、0.21barで0.0004cc/パッケージ/日未満、任意選択的には25℃、相対湿度60%、0.21barで0.0003cc/パッケージ/日未満、任意選択的には25℃、相対湿度60%、0.21barで0.0002cc/パッケージ/日未満、任意選択的には25℃、相対湿度60%、0.21barで0.0001cc/パッケージ/日未満に低減するのに有効である、請求項62~78のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項80】
前記酸素バリアコーティングが、前記壁の前記内表面と前記抗菌コーティングとの間に配置される、請求項62~79のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項81】
前記酸素バリアコーティングが純粋な元素又は化合物の複数の原子単層から本質的になり、任意選択的には前記酸素バリアコーティングが原子層堆積(ALD)によって、任意選択的にはプラズマ支援原子層堆積(PEALD)によって堆積される、請求項62~80のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項82】
前記酸素バリアコーティングがプラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって適用される、請求項62~81のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項83】
前記酸素バリアコーティングが、SiOx(xは1.5~2.9である)を含むか、それから本質的になるか、それからなる、請求項62~82のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項84】
前記酸素バリアコーティングが、1~1000nm、任意選択的には2~1000nm、任意選択的には10~1000nm、任意選択的には10~500nm、任意選択的には10~200nm、任意選択的には20~100nmの厚さを有し、任意選択には前記酸素バリアコーティングが1~15nmの厚さ、或いは2~12nmの厚さ、或いは3~10nmの厚さ、或いは4~8nmの厚さ、或いは5~7nmの厚さを有する、請求項62~83のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項85】
前記酸素バリアコーティングと前記内腔との間に配置されたpH保護コーティングをさらに含み、前記pH保護コーティングが前記内腔内の前記流体による前記酸素バリアコーティングの溶解を低減するのに有効である、請求項62~84のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項86】
前記pH保護コーティングが、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であるSiOxCy又はSiNxCyを含む、請求項62~85のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項87】
前記pH保護コーティングが、少なくとも6ヶ月間、5を超えるpHを有する流体から前記酸素バリアコーティングを実質的に溶解しないままに保つのに有効である、請求項62~86のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項88】
前記内腔に含まれる5を超えるpHを有する流体が直接接触した場合の前記pH保護コーティングの浸食速度が、同じ条件下で同じ流体が直接接触した場合の前記酸素バリアコーティングの浸食速度の20%未満である、請求項62~87のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項89】
前記内腔に含まれる5~9のpHを有する流体が、前記流体との接触88時間あたり1nm以下のpH保護コーティングの厚さの速度で、任意選択的には前記流体との接触44時間あたり1nm以下のpH保護コーティングの厚さの速度で、前記pH保護コーティングを除去する、請求項62~88のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項90】
前記pH保護コーティングが10~1000nmの厚さである、請求項62~89のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項91】
前記pH保護コーティングが前記酸素バリアコーティングと少なくとも同一の広がりを持つ、請求項62~90のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項92】
前記pH保護コーティングのFTIR吸光度スペクトルが、0.75より大きい、任意選択的には0.9より大きい、
・約1000~1040cm-1のSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と
・約1060~約1100cm-1のSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅と
の間の比率を有する、請求項62~91のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項93】
前記pH保護コーティングが、以下:
【数2】
の通りに測定される減衰全反射(ATR)で測定される0.4未満のO-パラメータを示す、請求項62~92のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項94】
前記pH保護コーティングが、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって適用される、請求項62~93のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項95】
前記酸素バリアコーティングと前記壁内表面又は外表面との間に位置するタイコーティングをさらに含む、請求項62~94のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項96】
前記タイコーティングが、xが約0.5~約2.4であり、yが約0.6~約3であるSiOxCy又はSiNxCyを含む、請求項62~95のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項97】
前記タイコーティングが5~200nmの平均厚さを有する、請求項62~96のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶。
【請求項98】
前記スポイトチップを介して前記眼科医療用流体に入る可能性がある細菌などによる、最初の使用後の前記内腔内の前記眼科医療用流体の汚染を防止するための、請求項62~97のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶の使用。
【請求項99】
前記内腔内の前記眼科医療用流体中の抗菌賦形剤の量を減らすための、任意選択的には前記眼科医療用流体中の抗菌賦形剤の存在を排除するための、請求項62~97のいずれか一項に記載の複数回用量の点眼瓶の使用。
【請求項100】
眼科医療用流体製品の汚染を防止するための方法であって、
請求項62~97のいずれか一項に記載の抗菌コーティングを含む複数回用量の点眼瓶を提供すること、
を含む方法。
【請求項101】
・内腔の少なくとも一部を囲む内表面を有する熱可塑性樹脂壁;
・SiO
xC
yH
z又はSiN
xC
yH
zを含むか、又はそれからなり、壁面に面する外表面と内表面とを有するタイコーティング又は層であって、xが、X線光電子分光法(XPS)によって測定したときに約0.5~約2.4であり、yが、XPSによって測定したときに約0.6~約3であり、zが、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱(HFS)のうちの少なくとも1つによって測定したときに約2~約9である、タイコーティング又は層;
・前記タイコーティング又は層の前記内表面と前記内腔との間に配置されるSiOxのバリアコーティング又は層であって、xがXPSによって測定したときに約1.5~約2.9である、バリアコーティング又は層;及び
・前記バリアコーティング又は層と前記内腔との間に配置されるSiO
xC
yH
zのpH保護コーティング又は層であって、xが、XPSによって測定したときに約0.5~約2.4であり、yが、XPSによって測定したときに約0.6~約3であり、zが、RBS又はHFSのうちの少なくとも1つによって測定したときに約2~約9である、pH保護コーティング又は層;
を含む又はそれらからなる容器であって、
前記pH保護コーティング若しくは層及びタイコーティング若しくは層が、一緒に、前記内腔に含まれる5を超えるpHを有する流体による攻撃の結果として、少なくとも6ヶ月間前記バリアコーティング又は層を少なくとも実質的に溶解しないままに保つのに有効であり、
前記流体がフレグランス又は化粧品である、容器。
【請求項102】
前記タイコーティング又は層が、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって適用される、請求項101に記載の容器。
【請求項103】
前記バリアコーティング又は層がPECVDによって適用される、請求項101又は102に記載の容器。
【請求項104】
前記pH保護コーティング又は層がPECVDによって適用される、請求項101~103のいずれか一項に記載の容器。
【請求項105】
前記流体が、液体フレグランス、乾燥粉末化粧品、又は湿潤化粧品であり、任意選択的には前記流体がマスカラ組成物又はクリームなどの化粧品である、請求項101~104のいずれか一項に記載の容器。
【請求項106】
前記熱可塑性樹脂壁の少なくとも一部が、
・ポリオレフィン、
・ポリビニルアルコール、
・ポリメタクリレートエーテル、
・ポリアクリル酸、
・ポリアミド、
・ポリイミド、
・ポリスルホン、
・ポリ乳酸、
・環状オレフィンポリマー若しくはコポリマー、
・ポリエステル、
・ポリオレフィンとポリエステルとの組み合わせ、又は
・前述のいずれかの組み合わせ、
を含むか又はこれらからなる、請求項101~105のいずれか一項に記載の容器。
【請求項107】
前記pH保護コーティング又は層について、xがXPSで測定したときに約1~約2であり、yがXPSで測定したときに約0.6~約1.5であり、zがRBS又はHFSによって測定したときに約2~約5である、請求項101~106のいずれか一項に記載の容器。
【請求項108】
前記pH保護コーティング又は層が、有機ケイ素前駆体を含む前駆体供給物のPECVDによって適用された、請求項101~107のいずれか一項に記載の容器。
【請求項109】
前記有機ケイ素前駆体が、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、トリメチルシラン(TriMS)、テトラメチルシラン(TetraMS)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含むか、又はこれらからなる、請求項8に記載の容器。
【請求項110】
前記pH保護コーティング又は層のための前記前駆体供給物が、
・0.5~10標準体積の有機ケイ素前駆体;
・0.1~10標準体積の酸素;及び
・1~100標準体積のキャリアガス;
を含むか、又はこれらからなる、請求項8又は9に記載の容器。
【請求項111】
前記pH保護コーティング又は層が約10~約1000nmの厚さである、請求項101~110のいずれか一項に記載の容器。
【請求項112】
前記流体組成物と接触する前記pH保護コーティング又は層が、前記内腔内に含まれる5を超えるpHを有する流体と2年間接触した後、約10~約1000nmの厚さである、請求項101~111のいずれか一項に記載の容器。
【請求項113】
前記内腔に含まれる5を超えるpHを有する流体が直接接触した場合の前記pH保護コーティング又は層の浸食速度が、同じ条件下で同じ流体が直接接触した場合の前記バリアコーティング又は層の浸食速度の20%未満である、請求項101~112のいずれか一項に記載の容器。
【請求項114】
前記内腔に含まれる5を超えるpHを有する流体と直接接触している間の保存可能期間が少なくとも2年である、請求項101~113のいずれか一項に記載の容器。
【請求項115】
前記保存可能期間が20℃の前記流体を含む前記容器の保存に基づく、請求項114記載の容器。
【請求項116】
前記保存可能期間が40℃の前記流体を含む前記容器の保存に基づく、請求項114に記載の容器。
【請求項117】
前記内腔に含まれる5を超えるpHを有する流体が、前記流体との接触88時間あたり1nm以下のpH保護コーティング又は層の厚さの速度で前記pH保護コーティング又は層を除去する、請求項101~116のいずれか一項に記載の容器。
【請求項118】
前記pH保護コーティング又は層のFTIR吸光度スペクトルが、0.75より大きい
・約1000~1040cm
-1のSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と
・約1060~約1100cm
-1のSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅と
の間の比率を有する、請求項101~117のいずれか一項に記載の容器。
【請求項119】
注射用の水で希釈して濃硝酸でpH8に調整した、0.2重量%のポリソルベート-80界面活性剤を含む50mMリン酸カリウム緩衝液による前記容器からのケイ素溶解速度が170ppb/日未満である、請求項101~118のいずれか一項に記載の容器。
【請求項120】
前記pH保護コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及びタイコーティング又は層を前記容器から40℃の0.1Nの水酸化カリウム水溶液に溶解することによって測定される、前記pH保護コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及びタイコーティング又は層の総ケイ素含有量が66ppm未満である、請求項101~119のいずれか一項に記載の容器。
【請求項121】
計算上の保存可能期間が2年を超える、請求項101~120のいずれか一項に記載の容器。
【請求項122】
集束イオンビームにより、前記pH保護コーティング又は層、前記バリアコーティング又は層、前記タイコーティング又は層を通して前記内腔壁に溝が形成され、前記内腔内で40℃に維持した1Nの水酸化カリウム(KOH)溶液に6.5時間前記溝を曝露した後、前記バリアコーティング又は層がXPSにより検出可能であり、前記KOH溶液による前記溝の処理前の値の10原子パーセント以内の酸素及びケイ素の原子パーセントを有する、請求項101~121のいずれか一項に記載の容器。
【請求項123】
前記pH保護コーティング又は層が、以下:
【数3】
の通りに測定される減衰全反射(ATR)で測定される0.4未満のO-パラメータを示す、請求項101~122のいずれか一項に記載の容器。
【請求項124】
前記pH保護コーティング又は層が、以下:
【数4】
の通りに測定される減衰全反射(ATR)で測定される0.7未満のN-パラメータを示す、請求項101~123のいずれか一項に記載の容器。
【請求項125】
前記pH保護コーティング又は層が、前記PECVD反応チャンバー内の重合ガスの質量1kgあたり22,000kJを超える出力レベルでPECVDによって適用された、請求項101~124のいずれか一項に記載の容器。
【請求項126】
前記pH保護コーティング又は層が、1~200Wの出力レベルでPECVDによって適用された、請求項101~125のいずれか一項に記載の容器。
【請求項127】
前記pH保護コーティング又は層の形成のためにPECVDによって印加される電極出力とプラズマ体積との比率が5W/ml~75W/mlある、請求項101~126のいずれか一項に記載の容器。
【請求項128】
前記タイコーティング又は層について、xはX線光電子分光法(XPS)で測定したときに約1~約2であり、yはXPSで測定したときに約0.6~約1.5であり、zはラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱(HFS)によって測定したときに約2~約5である、請求項101~127のいずれか一項に記載の容器。
【請求項129】
前記タイコーティング又は層が、有機ケイ素前駆体を含む前駆体供給物のPECVDによって適用される、請求項101~128のいずれか一項に記載の容器。
【請求項130】
前記有機ケイ素前駆体が、テトラメチルシラン(TetraMS)、トリメチルシラン(TriMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、又はこれらの2つ以上の組み合わせである、請求項129に記載の容器。
【請求項131】
前記タイコーティング又は層のための前駆体供給物が、
・0.5~10標準体積の有機ケイ素前駆体;
・0.1~10標準体積の酸素;及び
・1~120標準体積のキャリアガス;
を含むか、又はこれらからなる、請求項129又は130に記載の容器。
【請求項132】
前記タイコーティング又は層が平均約5~約200nmの厚さである、請求項101~131のいずれか一項に記載の容器。
【請求項133】
前記pH保護コーティング又は層と前記内腔との間に適用された潤滑コーティング又は層をさらに含む、請求項101~132のいずれか一項に記載の容器。
【請求項134】
前記内腔に5を超えるpHを有するフレグランス及び/又は化粧品組成物が収容され、少なくとも6ヶ月の保存可能期間を有する、請求項101~133のいずれか一項に記載の容器。
【請求項135】
液体フレグランス、乾燥粉末化粧品、又は湿潤化粧品をさらに含む、請求項134に記載の容器。
【請求項136】
5を超えるpHを有する流体を保存するための、請求項101~135のいずれか一項に記載の容器の使用。
【請求項137】
・タイコーティング又は層を形成する工程;
・バリアコーティング又は層を形成する工程;
・前記バリアコーティング又は層と前記内腔との間に配置されるpH保護コーティング又は層を形成する工程;
を含む、請求項101~135のいずれか一項に記載の容器の製造方法であって、
前記pH保護コーティング若しくは層及びタイコーティング若しくは層が、一緒に、前記内腔に含まれる5を超えるpHを有する流体による攻撃の結果として、少なくとも6ヶ月間前記バリアコーティング又は層を少なくとも実質的に溶解しないままに保つのに有効である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年6月16日に出願された米国仮特許出願第63/039,666号及び2020年12月14日に出願された米国仮特許出願第63/125,231号に基づく優先権を主張するものであり、これらの全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
発明の分野
本発明は、一度に全てではなく、一定期間にわたって使用される製品を収容する複数回用量パッケージの技術分野に関する。パッケージには、限定するものではないが、複数回用量の医薬品容器、複数回用量の点眼瓶、複数回用量の点鼻スプレー瓶、複数回用量の吸入器、化粧品容器、スキンクリーム又は軟膏容器、フレグランス容器などが含まれる。特に、これらの複数回用量パッケージの内表面は、容器が開封された後の容器の内容物の汚染を防止する抗菌コーティングで処理することができる。
【0003】
本発明は、例えば上述した複数回用量の容器を含む、例えばフレグランス及び/又は化粧品パッケージの内表面などのバリアコーティングされた表面の技術分野にも関する。適切な流体の例には、フレグランス、香水、乾燥粉末化粧品、湿潤化粧品、溶液、及び液体が含まれる。本発明は、フレグランス及び/又は化粧品パッケージ又は他の容器、並びに内容物とバリアコーティング又は層との間にpH保護コーティング又は層を有するフレグランス及び/又は化粧品パッケージの製造方法にも関する。
【0004】
本開示は、複数回用量のパッケージ、フレグランス及び/又は化粧品パッケージ、例えば複数の同一の複数回用量のフレグランス及び/又は化粧品パッケージを処理するための改善された方法にも関する。得られるパッケージも特許請求される。そのような複数回用量のフレグランス及び/又は化粧品のパッケージは、大量に使用され、比較的経済的に製造できなければならないが、それでも依然として保存及び使用において高い信頼性を有していなければならない。
【背景技術】
【0005】
発明の背景
複数回用量パッケージについての1つの重要な考慮事項は、パッケージ内の製品が細菌などの微生物によって汚染されないままであることである。多くの製品は、包装されたときには無菌又は滅菌状態であるが、1回又は複数回した後に細菌で汚染される可能性がある。その結果、多くの複数回用量製品のパッケージは、最初の開封/使用後の保存可能期間が限られる。
【0006】
汚染を避けるために、典型的には、複数回用量化粧品パッケージの使用者は、適用する前に手を洗うことが推奨される。しかしながら、米国では、化粧品メーカーが化粧品パッケージに開封後の保存可能期間又は有効期限を印刷することを要求されることはない。欧州では、30ヶ月を超える寿命の化粧品は、「開封後品質保持期間」(POA)の時間、すなわち消費者が製品を初めて開封して使用した後に製品が良好な状態を維持する時間(通常は数カ月)を示す必要がある。POAは、典型的には、開封したクリーム瓶の記号に配置された月数を識別する数字として示される。この記号は、米国でも化粧品に使用されることがある。同様に、欧州では、30ヶ月未満の寿命を有する化粧品(これはあまり一般的ではない)は、「品質保持期限」の日付を表示しなければならず、これは、典型的には「エッグタイマー」記号とそれに続く日付を使用して表示される。或いは、BBE又はExpと省略することができる単語の後に日付が表示される。
【0007】
例えば、クリーム及びローション向けの多くの化粧品パッケージは、一定量の製品を取り出すために使用者が容器に指を浸すことを要し、これによって例えば細菌や真菌などの微生物が製品に直接取り込まれる。この対策として、化粧品メーカーは製品に防腐剤を配合することが多い。しかしながら、防腐剤は経時的に分解される、及び/又は特定の使用者に有害反応を引き起こす可能性がある。
【0008】
例えば目の領域の製品及び化粧品、例えば点眼薬、マスカラ、アイライナーなどの特定の製品の保存可能期間も、アプリケータが使用中に微生物感染しやすく、これによって目の感染を引き起こすリスクが高まることから、しばしば制限される。例えば、メーカーは、通常、購入後3~6ヶ月でマスカラを廃棄することを推奨している。同じことが、唇に適用される製品、例えばリップグロスや口紅などにも当てはまることがある。
【0009】
使用済みの口紅、リップグロス、アイライナー、及びマスカラ製品の最近の研究からは、これらの製品の約79~90%がかなりのレベルの微生物で汚染されており、細菌負荷は1mL当たり102~103CFUの範囲であることが示された。検出された細菌には、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)、大腸菌(Escherichia coli)、及びシトロバクター・フレウンディイ(Citrobacter freundii)が含まれていた。使用済み製品からも腸内細菌(Enterobacteriaceae)及び真菌が検出された。Bashir et al.,“Microbiological study of used cosmetic products:highlighting possible impact on consumer health,”J.Appl.Microbiol.,vol.128(2),pp.598-605(2020)を参照のこと。
【0010】
従って、本開示の複数の実施形態は、使用中に製品を微生物、例えば細菌や真菌などから保護し、最初の開封/使用後の製品パッケージの保存可能期間を延ばすための、抗菌コーティングを備えた複数回用量(複数回使用とも呼ばれる)製品パッケージに関する。
【0011】
多くの複数回用量製品のパッケージ、化粧品、及び/又はフレグランスパッケージに関する別の重要な考慮事項は、パッケージの内容物が実質的に開封前の保存可能期間を有することである。この開封前保存可能期間の間、容器壁、バリア層、若しくは他の機能層から予め充填された内容物への、又はその逆の物質浸出を避けるために、製品を含む容器壁から、又は容器壁に適用されたバリア層若しくは他の機能層から製品を隔離することが望ましい場合がある。
【0012】
従来のガラス製の複数回用量のフレグランス及び/又は化粧品のパッケージ又は他の容器は、製造、充填作業、輸送、及び使用中に破損又は劣化しやすい。これは、ガラス微粒子が複数回用量のフレグランス及び/又は化粧品に入る可能性があることを意味する。ガラス粒子の存在は、多くのFDA警告書や製品リコールをもたらした。その結果、一部の企業は、ガラスよりも寸法公差が大きく、破損が少ない、プラスチック製の複数回用量のフレグランス及び/又は化粧品のパッケージに転換したが、ガス(酸素)透過性のためそれらの使用は限定的なままである場合がある。プラスチックは、小分子ガスを物品の内部に(又は外部に)透過させ、パッケージ開封前の保存可能期間を短縮させる。ガスに対するプラスチックの透過性は、ガラスの透過性よりもはるかに高く、多くの場合、プラスチックはその理由のため受け入れられなかった。
【0013】
本発明の新規なパッケージに含まれるフレグランス及び/又は化粧品組成物は、多種多様な基材への塗布に適することができるが、特に皮膚及び毛髪への塗布に適することができる。組成物、特に化粧品組成物には、まつ毛の長さと湾曲の美しさを高めるために一般的に使用されているタイプのようなマスカラ組成物、又は顔若しくはボディ用クリーム若しくは毛髪用クリームなどのクリームが含まれ得る。そのようなマスカラ組成物又はクリームは、組成物材料又は混合物の中でも特に、1種以上のワックス、皮膜形成ポリマー、シリコーン、天然若しくは合成ラテックス又は疑似ラテックス、並びにラテックス及びシリコーンを懸濁させるための薬剤及び/又は増粘剤を含み得る。
【0014】
他の化粧品組成物、より具体的にはフレグランス組成物は、フレグランスオイルと、封入材料と、50%を超える揮発性溶媒とを含むことができ、フレグランスオイルは、「トップノート」及び「ミドルノート及びベースノート」の両方の香料原料を含み、2種類のフレグランス原料の重量比は約1:20~約20:1の範囲である。より具体的には、「トップノート」香料原料のフレグランスの特徴は、塗布後少なくとも2時間は基材上で検出可能なままである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
発明の概要
本発明の一態様は、壁によって少なくとも一部が画定された内腔を有する容器であって、壁が、内腔に面する内表面と、外表面と、抗菌コーティング及び任意選択的なバリアコーティングを含む内表面上のコーティングセットと、を有する容器である。
【0016】
本開示の複数の実施形態は、内腔の少なくとも一部を囲む1つ以上の壁を備えた容器;内腔内の流体であって、複数回の用量又は適用のために構成された量で存在し、任意選択的には薬剤又は医療製品であり、任意選択的には化粧品であり、任意選択的にはスキンケア製品である流体;1つ以上の壁の内表面上の抗菌コーティングであって、流体と接触しており、内腔内の流体中の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な抗菌コーティング;を含むパッケージに関する。
【0017】
本開示の複数の実施形態は、内腔の少なくとも一部を囲む1つ以上の壁を備えた容器;内腔内の無菌又は滅菌状態の流体であって、複数回の投与又は適用のために構成された量で存在し、任意選択的には薬剤又は医療製品であり、任意選択的には化粧品であり、任意選択的にはスキンケア製品である流体;1つ以上の壁の内表面上の抗菌コーティングであって、流体と接触しており、内腔内に入った細菌を不活性化する又は殺すのに有効である抗菌コーティング;を含むパッケージに関する。
【0018】
本開示の複数の実施形態は、内腔の少なくとも一部を囲む1つ以上の壁を備えた容器;内腔内の無菌又は滅菌状態の流体であって、複数回の投与又は適用のために構成された量で存在し、任意選択的には薬剤又は医療製品であり、任意選択的には化粧品であり、任意選択的にはスキンケア製品である流体;流体用のアプリケータであって、使用時に細菌汚染されやすいアプリケータ;1つ以上の壁の内表面上の抗菌コーティングであって、流体と接触しており、最初の使用後のパッケージの保存可能期間(本明細書では開封後の保存可能期間とも呼ばれる)を任意選択的には少なくとも1週間、任意選択的には少なくとも2週間、任意選択的には少なくとも1ヶ月、任意選択的には少なくとも2ヶ月、任意選択的には少なくとも3ヶ月、任意選択的には少なくとも4ヶ月、任意選択的には少なくとも5ヶ月、任意選択的には少なくとも6ヶ月、任意選択的には少なくとも9ヶ月、任意選択的には少なくとも1年延ばすのに有効である抗菌コーティング;を含むパッケージに関する。
【0019】
本開示の複数の実施形態は、内腔の少なくとも一部を囲む1つ以上の壁を備えた容器;内腔の開口部のスポイトチップ;内腔内の眼科医療用流体;及び1つ以上の壁の内表面上にあり流体と接触している抗菌コーティングであって内腔内に入った細菌を不活性化する又は殺すのに有効である抗菌コーティング;を含む複数回用量の点眼瓶に関する。
【0020】
本開示の複数の実施形態は、内腔の少なくとも一部を囲む1つ以上の壁を備えた容器;内腔の開口部のスポイトチップ;内腔内の眼科医療用流体;1つ以上の壁の内表面上の抗菌コーティングであって、流体と接触しており、最初の使用後の複数回用量の点眼瓶の保存可能期間(本明細書では開封後の保存可能期間とも呼ばれる)を任意選択的には少なくとも1週間、任意選択的には少なくとも2週間、任意選択的には少なくとも1ヶ月、任意選択的には少なくとも2ヶ月、任意選択的には少なくとも3ヶ月、任意選択的には少なくとも4ヶ月、任意選択的には少なくとも5ヶ月、任意選択的には少なくとも6ヶ月、任意選択的には少なくとも9ヶ月、任意選択的には少なくとも1年延ばすのに有効である抗菌コーティング;を含む複数回用量の点眼瓶に関する。
【0021】
本発明の多くの追加の及び代替の態様及び実施形態も想定されており、それらは以降の明細書及び特許請求の範囲に記載されている。一部の任意選択的な特徴には以下のことが含まれる。
【0022】
前述したパッケージは、パッケージが流体用のアプリケータをさらに含み、アプリケータが細菌汚染されやすい任意の実施形態において想定されている。
【0023】
前述したパッケージは、スポイトチップ、スポイトキャップ、スポイト、又はプランジャー作動式アプリケータを含む任意の実施形態において想定されている。
【0024】
前述したパッケージは、容器が点鼻スプレー瓶である場合など、容器がスプレートップのような点鼻スプレーアプリケータを含む任意の実施形態において想定されている。
【0025】
前述したパッケージは、容器が複数回用量の点眼瓶である任意の実施形態において想定されている。
【0026】
前述したパッケージは、流体が薬剤の液体製剤であり、任意選択的には眼又は鼻に投与するために構成された薬剤の液体製剤であり、任意選択的には眼に投与するために構成された薬剤の液体製剤であり、任意選択的には鼻に投与するために構成された薬剤の液体製剤である任意の実施形態において想定されている。
【0027】
前述したパッケージは、流体が眼科用薬物製剤を含む任意の実施形態において想定されている。
【0028】
前述したパッケージは、流体が局所的に作用する経鼻薬剤、任意選択的には鼻充血除去剤を含む任意の実施形態において想定されている。
【0029】
前述したパッケージは、容器が複数回用量の吸入器、例えば加圧定量吸入器である任意の実施形態において想定されている。
【0030】
前述したパッケージは、抗菌コーティングが最初の使用後のパッケージの保存可能期間(本明細書では開封後の保存可能期間とも呼ばれる)を延ばすのに有効であり、任意選択的には抗菌コーティングが少なくとも1週間、任意選択的には少なくとも2週間、任意選択的には少なくとも1ヶ月、任意選択的には少なくとも2ヶ月、任意選択的には少なくとも3ヶ月、任意選択的には少なくとも4ヶ月、任意選択的には少なくとも5ヶ月、任意選択的には少なくとも6ヶ月、任意選択的には少なくとも9ヶ月、任意選択的には少なくとも1年、最初の使用後のパッケージの保存可能期間を延ばすのに有効である任意の実施形態において想定されている。
【0031】
前述したパッケージは、容器が化粧品容器、任意選択的にはマスカラの瓶又はチューブ、任意選択的にはアイライナーの瓶又はチューブ、任意選択的にはリップグロスの瓶又はチューブである任意の実施形態において想定されている。
【0032】
前述したパッケージは、アプリケータがメイクアップアプリケータ、任意選択的にはまつ毛ブラシである任意の実施形態において想定されている。
【0033】
前述したパッケージは、流体がマスカラ組成物である任意の実施形態において想定されている。
【0034】
前述したパッケージは、流体が液体又はゲル状のアイライナーであり、アプリケータがアイライナーブラシである任意の実施形態において想定されている。
【0035】
前述したパッケージは、流体がリップグロスであり、アプリケータがリップグロスブラシ又はパッドである任意の実施形態において想定されている。
【0036】
前述したパッケージは、容器がコンタクトレンズ容器である任意の実施形態において想定されている。
【0037】
前述したパッケージは、流体がコンタクトレンズ液である任意の実施形態において想定されている。
【0038】
前述したパッケージは、容器が瓶であり、流体がコンタクトレンズ液又は生理食塩水である任意の実施形態において想定されている。
【0039】
前述したパッケージは、流体が人の皮膚に適用されるように構成されており、任意選択的には流体がクリーム、軟膏、又は外用薬である任意の実施形態において想定されている。
【0040】
前述したパッケージは、流体が食品、任意選択的には塗り広げ可能な食品、任意選択的には塗り広げ可能な調味料である任意の実施形態において想定されている。
【0041】
前述したパッケージは、抗菌コーティングが酸化亜鉛、二酸化チタン、又は酸化銀を含み、任意選択的には抗菌コーティングが酸化亜鉛を含み、任意選択的には抗菌コーティングが二酸化チタンを含み、任意選択的には抗菌コーティングが酸化銀を含む、任意の実施形態において想定されている。
【0042】
前述したパッケージは、抗菌コーティングがPECVD、ALD、PEALD、スパッタリング、蒸着、又は焼結によって適用されており、任意選択的には抗菌コーティングがPECVD、ALD、又はPEALDによって適用されており、任意選択的には抗菌コーティングがPECVDによって適用されており、任意選択的には抗菌コーティングがALDによって適用されており、任意選択的には抗菌コーティングがPEALDによって適用されている、任意の実施形態において想定されている。
【0043】
前述したパッケージは、抗菌コーティングが本質的に複数の単原子層からなり、任意選択的には抗菌コーティング又は層が原子層堆積によって、任意選択的にはプラズマ支援原子層堆積によって堆積されている、任意の実施形態において想定されている。
【0044】
前述したパッケージは、抗菌コーティングが約1nm~約1000nm、任意選択的には約2nm~約1000nm、任意選択的には約5nm~約1000nm、任意選択的には約10nm~1000nm、任意選択的には約1nm~約500nm、任意選択的には2nm~約500nm、任意選択的には約5nm~約500nm、任意選択的には約10nm~500nm、任意選択的には約1nm~約250nm、任意選択的には約2nm~約250nm、任意選択的には約5nm~約250nm、任意選択的には約10nm~250nm、任意選択的には約1nm~約100nm、任意選択的には約2nm~約100nm、任意選択的には約5nm~約100nm、任意選択的には約10nm~100nm、任意選択的には約1nm~約50nm、任意選択的には約2nm~約50nm、任意選択的には約5nm~約50nm、任意選択的には約10nm~約50nmの厚さを有する任意の実施形態において想定されている。
【0045】
前述したパッケージは、酢酸亜鉛、ジエチル亜鉛、又はそれらの組み合わせと酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用された酸化亜鉛(ZnO)を抗菌コーティングが含む任意の実施形態において想定されている。
【0046】
前述したパッケージは、四塩化チタンと酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用された二酸化チタン(TiO2)を抗菌コーティングが含む任意の実施形態において想定されている。
【0047】
前述したパッケージは、有機銀化合物と酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用された酸化銀(Ag2O)を抗菌コーティングが含み、任意選択的には、有機銀化合物が、
Ag(Hfac)(PR3)
の組成を有し、Hfacは1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトナートであり、Pはホスフィンであり、Rはメチル、エチル、又はそれらの組み合わせである、任意の実施形態において想定されている。
【0048】
前述したパッケージは、酢酸亜鉛、ジエチル亜鉛、又はそれらの組み合わせと酸化剤とを含む供給ガスを使用してALD又はPEALDによって適用された酸化亜鉛(ZnO)を抗菌コーティングが含む任意の実施形態において想定されている。
【0049】
前述したパッケージは、四塩化チタン、チタンイソプロポキシド、又はそれらの組み合わせと酸化剤とを含む供給ガスを使用してALD又はPEALDによって適用された二酸化チタン(TiO2)を抗菌コーティングが含む任意の実施形態において想定されている。
【0050】
前述したパッケージは、有機銀化合物と酸化剤とを含む供給ガスを使用してPECVDによって適用された酸化銀(Ag2O)を抗菌コーティングが含み、任意選択的には、有機銀化合物が、
Ag(Hfac)(PR3)
の組成を有し、Hfacは1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトナートであり、Pはホスフィンであり、Rはメチル、エチル、又はそれらの組み合わせである、任意の実施形態において想定されている。
【0051】
前述したパッケージは、酸化剤がO2、O3、H2O、H2O2、N2O、NO2、空気、又はそれらの組み合わせから選択され、任意選択的には酸化剤がO2である、任意の実施形態において想定されている。
【0052】
前述したパッケージは、容器壁がバリアコーティングをさらに含み、任意選択的には、バリアコーティングが、タイコーティング又は層と、バリアコーティング又は層と、pH保護コーティング又は層とを含むコーティングセットの一部であってよい、任意の実施形態において想定されている。
【0053】
タイコーティング又は層は、SiOxCy又はSi(NH)xCyを含むことができる。いずれの配合においても、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3である。タイコーティング又は層は、内腔に面する内表面と壁内表面に面する外表面とを有する。
【0054】
バリアコーティング又は層は、SiOx(xは1.5~2.9である)を含むことができる。バリア層は、2~1000nmの厚さであってよい。これは、内腔に面する内表面と、タイコーティング又は層の内表面に面する外表面とを有することができる。バリアコーティング又は層は、任意選択的には、バリアコーティング又は層がない容器と比較して、内腔への大気ガスの侵入の低減に有効である。
【0055】
pH保護コーティング又は層は、SiOxCy又はSi(NH)xCy(xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3である)を含むことができる。pH保護コーティング又は層は、内腔に面する内表面と、バリアコーティング又は層の外表面とを有することができる。
【0056】
一実施形態では、内腔内に収容されたpHが5~9の流体組成物の存在下で、パッケージの計算上の保存可能期間は、4℃の保存温度で6ヶ月を超えることができる。
【0057】
前述した容器は、容器の壁の少なくとも一部が熱可塑性ポリマーを含み、任意選択的には容器壁が熱可塑性ポリマー製である任意の実施形態において想定されている。
【0058】
前述した容器は、抗菌コーティング及び/又はバリアコーティング若しくは層が4nm~500nmの厚さである任意の実施形態において想定されている。
【0059】
前述した容器は、pH保護コーティング又は層がSiOxCyを含む任意の実施形態において想定されている。
【0060】
前述した容器は、pH保護コーティング又は層が、非環式シロキサン、単環式シロキサン、多環式シロキサン、ポリシルセスキオキサン、単環式シラザン、多環式シラザン、ポリシルセスキアザン、シラトラン、シルクアシラトラン、シルプロアトラン、アザシラトラン、アザシルクアシアトラン、アザシルプロアトラン、又はこれらの前駆体の任意の2種以上の組み合わせを含む前駆体供給物のPECVDによって適用される、任意の実施形態において想定されている。
【0061】
前述した容器は、pH保護コーティング又は層が、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)を含む前駆体供給物のPECVDによって適用される、任意の実施形態において想定されている。
【0062】
前述した容器は、適用されるpH保護コーティング又は層が10~1000nmの厚さである任意の実施形態において想定されている。
【0063】
前述した容器は、pH8の流体組成物が直接接触した場合のpH保護コーティング又は層の浸食速度が、同じ条件下で同じ流体組成物が直接接触した場合のバリアコーティング又は層の浸食速度の20%未満である、任意の実施形態において想定されている。
【0064】
前述した容器は、pH保護コーティング又は層がバリアコーティング又は層と少なくとも同一の広がりを持つ任意の実施形態において想定されている。
【0065】
前述した容器は、流体組成物が、流体組成物との44時間の接触当たり1nm以下のpH保護コーティング又は層の厚さの速度でpH保護コーティング又は層を除去する、任意の実施形態において想定されている。
【0066】
前述した容器は、pH保護コーティング又は層のFTIR吸光度スペクトルが、0.75より大きい
・約1000~1040cm-1のSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と
・約1060~約1100cm-1のSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅と
の間の比率を有する、任意の実施形態において想定されている。
【0067】
前述した容器は、注射用の水で希釈して濃硝酸でpH8に調整した、0.2重量%のポリソルベート-80界面活性剤を含む50mMリン酸カリウム緩衝液による容器からのケイ素溶解速度が170ppb/日未満である、任意の実施形態において想定されている。
【0068】
前述した容器は、容器から40℃の0.1N水酸化カリウム水溶液に溶解したときのpH保護コーティング又は層及びバリアコーティング又は層の総ケイ素含有量が66ppm未満である、任意の実施形態において想定されている。
【0069】
前述した容器は、計算上の保存可能期間(総Si/Si溶解速度)が2年を超える任意の実施形態において想定されている。
【0070】
前述した容器は、pH保護コーティング又は層が、以下:
【数1】
の通りに測定される減衰全反射(ATR)で測定される0.4未満のO-パラメータを示す、任意の実施形態において想定されている。
【0071】
前述した容器は、pH保護コーティング又は層が、以下:
【数2】
の通りに測定される減衰全反射(ATR)で測定される0.7未満のN-パラメータを示す、任意の実施形態において想定されている。
【0072】
前述した容器は、タイコーティング又は層が、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、又はヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)を含む前駆体供給物のPECVDによって適用される任意の実施形態において想定されている。
【0073】
前述した容器は、タイコーティング又は層が平均で5~200nmの厚さである任意の実施形態において想定されている。
【0074】
前述した容器は、タイコーティング又は層がバリアコーティング又は層と少なくとも同一の広がりを持つ任意の実施形態において想定されている。
【0075】
前述した容器は、バリアコーティング又は層が10~200nmの厚さである任意の実施形態において想定されている。
【0076】
本発明の別の態様は、壁によって少なくとも部分的に画定された内腔を有する複数回用量のフレグランス及び/又は化粧品パッケージであり、壁は、内腔に面する内表面と、外表面と、バリアコーティング及び少なくとも1つの追加のコーティング層を含む内表面上のコーティングセットとを有する。
【0077】
透過性の問題は、パッケージの流体内容物と接触するプラスチック製のフレグランス及び/又は化粧品パッケージにバリアコーティング又は層を追加することによって対処することができる。1つのそのようなバリア層は、プラズマ励起化学気相堆積によって適用される以下で定義されるSiOxの非常に薄いコーティングである。しかし、PECVDによってパッケージ上に堆積されたSiOxバリア層は、4より大きいpH値、特に高いpH値を有するパッケージの水性の内容物によってエッチングされる。これにより、バリア効果が低下するため、パッケージの開封前の保存可能期間が短くなる。
【0078】
化粧品組成物用の容器も、化粧品組成物自体の複雑さの結果として克服しなければならない多くの課題を有している。化粧品組成物には、まつ毛の長さと湾曲の美しさを高めるために一般的に使用されているタイプのようなマスカラ組成物、又は顔若しくはボディ用クリーム若しくは毛髪用クリームなどのクリームが含まれる。そのようなマスカラ組成物又はクリームは、組成物材料又は混合物の中でも特に、1種以上のワックス、皮膜形成ポリマー、シリコーン、天然若しくは合成ラテックス又は疑似ラテックス、並びにラテックス及びシリコーンを懸濁させるための薬剤及び/又は増粘剤を含み得る。本発明の複数の実施形態は、容器内に含まれる組成物の有害な影響又は組成物との相互作用を回避するために、下にあるプラスチックに適切な溶質ブロックを提供する。本発明の複数の実施形態は、不活性環境を提供することによって、化粧品組成物であるかフレグランス組成物であるかにかかわらず、組成物中の添加物の必要性を低減させることもできる。
【0079】
コーティングセットは、バリアコーティング又は層と、タイコーティング又は層及びpH保護コーティング又は層のうちのいずれか1つ以上とを含み得る。
【0080】
タイコーティング又は層は、SiOxCyHz又はSiNxCyHzを含むか、又はこれからなり、xは、X線光電子分光法(XPS)によって測定したときに約0.5~約2.4であり、yは、XPSによって測定したときに約0.6~約3であり、zは、ラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱(HFS)のうちの少なくとも1つによって測定したときに約2~約9である。タイコーティング又は層は、壁面に面する外表面と内表面とを有する。
【0081】
バリアコーティング又は層は、SiOxを含むか、又はこれからなり、xは、XPSによって測定したときに約1.5~約2.9である。バリアコーティング又は層は、タイコーティング又は層の内表面と内腔との間に配置される。
【0082】
pH保護コーティング又は層は、SiOxCyHzを含むか、又はこれから構成されていてもよく、xは、XPSによって測定したときに約0.5~約2.4であり、yは、XPSによって測定したときに約0.6~約3であり、zは、RBS又はHFSのうちの少なくとも1つによって測定したときに約2~約9である。pH保護コーティング又は層は、バリアコーティング又は層と内腔との間に配置される。
【0083】
pH保護コーティング又は層及びタイコーティング又は層は、内腔に含まれる5を超えるpHを有する流体による攻撃の結果として、少なくとも6ヶ月バリアコーティング又は層を少なくとも実質的に溶解しないままに保つのに有効であることができる。
【0084】
本発明の別の態様は、5を超えるpHを有する複数回用量のフレグランス(例えば香水)及び/又は化粧品流体を保存するためのそのような容器の使用である。
【0085】
本発明のさらに別の態様は、容器の内壁の上にタイコーティング又は層を形成する工程;タイコーティング又は層の少なくとも一部の上にバリアコーティング又は層を形成する工程;及びバリアコーティング又は層と内腔との間に配置されたpH保護コーティング又は層を形成する工程;を含む、又はこれからなるそのような容器の製造方法である。
【0086】
本発明の任意の実施形態において、タイコーティング又は層は、任意選択的には、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって適用することができる。本発明の任意の実施形態において、バリアコーティング又は層は、任意選択的にはPECVDによって適用することができる。本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層は、任意選択的にはPECVDによって適用することができる。
【0087】
本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層について、xは任意選択的にはXPSで測定したときに約1~約2であってよく、yは任意選択的にはXPSで測定したときに約0.6~約1.5であってよく、zは任意選択的にはRBS又はHFSによって測定したときに約2~約5であってよい。
【0088】
本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層は、有機ケイ素前駆体を含む前駆体供給物のPECVDによって適用することができる。本発明の任意の実施形態において、有機ケイ素前駆体は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、トリメチルシラン(TriMS)、テトラメチルシラン(TetraMS)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、又はそれらの2つ以上の組み合わせを含むか、又はこれらからなる。
【0089】
本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層のための前駆体供給物は、
・0.5~10標準体積の有機ケイ素前駆体;
・0.1~10標準体積の酸素;及び
・1~100標準体積のキャリアガス;
を含んでいてもよく、或いはこれらから構成されていてもよい。
【0090】
本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層は、任意選択的には約10~約1000nmの厚さであってよい。
【0091】
本発明の任意の実施形態において、流体組成物と接触するpH保護コーティング又は層は、任意選択的には、内腔内に含まれる5を超えるpHを有する流体と2年間接触した後、約10~約1000nmの厚さであることができる。
【0092】
本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層の浸食速度は、内腔内に含まれる5を超えるpHを有する流体と直接接触した場合、任意選択的には同じ条件下で同じ流体が直接接触した場合のバリアコーティング又は層の浸食速度の20%未満にすることができる。
【0093】
本発明の任意の実施形態において、容器は、内腔に含まれる5を超えるpHを有する流体と直接接触している間、少なくとも2年の開封前の保存可能期間を有し得る。
【0094】
本発明の任意の実施形態において、開封前の保存可能期間は、任意選択的には、20℃の流体を含む容器の保存に基づくことができる。本発明の任意の実施形態において、開封前の保存可能期間は、任意選択的には、40℃の流体を含む容器の保存に基づくことができる。
【0095】
本発明の任意の実施形態において、内腔内に含まれる5を超えるpHを有する流体は、任意選択的には、pH保護コーティング又は層を、流体との接触88時間当たり1nm以下のpH保護コーティング又は層の厚さの速度で除去することができる。
【0096】
本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層のFTIR吸光度スペクトルは、0.75より大きい
・約1000~1040cm-1のSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と
・約1060~約1100cm-1のSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅と
の間の比率を有し得る。
【0097】
本発明の任意の実施形態において、水で希釈して濃硝酸でpH8に調整された0.2重量%のポリソルベート-80界面活性剤を含む50mMリン酸カリウム緩衝液による容器からのケイ素溶解速度は、任意選択的には170ppb/日未満とすることができる。
【0098】
本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及びタイコーティング又は層を容器から40℃の0.1Nの水酸化カリウム水溶液に溶解することによって測定される、pH保護コーティング又は層、バリアコーティング又は層、及びタイコーティング又は層の総ケイ素含有量は、任意選択的には66ppm未満とすることができる。
【0099】
本発明の任意の実施形態において、開封前の計算上の保存可能期間は、任意選択的には2年を超えることができる。
【0100】
本発明の任意の実施形態において、集束イオンビームにより、pH保護コーティング又は層、バリアコーティング又は層、タイコーティング又は層を通して内腔壁に溝を形成し、内腔内で40℃に維持した1Nの水酸化カリウム(KOH)溶液に6.5時間溝を曝露した後、バリアコーティング又は層は、任意選択的にはXPSにより検出可能であり、任意選択的にはKOH溶液による溝の処理前の値の10原子パーセント以内の酸素及びケイ素の原子パーセントを有することができる。
【0101】
本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層は、任意選択的には、以下:
【数3】
の通りに測定される減衰全反射(ATR)で測定される0.4未満のO-パラメータを示すことができる。
【0102】
本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層は、任意選択的には、以下:
【数4】
の通りに測定される減衰全反射(ATR)で測定される0.7未満のN-パラメータを示すことができる。
【0103】
本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層は、任意選択的には、PECVD反応チャンバー内の重合ガスの質量1kgあたり22,000kJを超える出力レベルでPECVDによって適用することができる。本発明の任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層は、任意選択的には、1~200Wの出力レベルでPECVDによって適用することができる。本発明の任意の実施形態において、プラズマ体積に対するpH保護コーティング又は層の形成のためにPECVDによって印加される電極出力の比率は、任意選択的には5W/ml~75W/mlとすることができる。
【0104】
本発明の任意の実施形態において、タイコーティング又は層について、xは任意選択的にはX線光電子分光法(XPS)で測定したときに約1~約2であってよく、yは任意選択的にはXPSで測定したときに約0.6~約1.5であってよく、zは任意選択的にはラザフォード後方散乱分光法(RBS)又は水素前方散乱(HFS)によって測定したときに約2~約5であってよい。
【0105】
本発明の任意の実施形態において、タイコーティング又は層は、任意選択的には、有機ケイ素前駆体を含む前駆体供給物のPECVDによって適用することができる。本発明の任意の実施形態において、有機ケイ素前駆体は、任意選択的には、テトラメチルシラン(TetraMS)、トリメチルシラン(TriMS)、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)、オクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)、テトラメチルジシロキサン(TMDSO)、又はこれらの2つ以上の組み合わせとすることができる。
【0106】
本発明の任意の実施形態において、タイコーティング又は層のための前駆体供給物は、任意選択的には、
・0.5~10標準体積の有機ケイ素前駆体;
・0.1~10標準体積の酸素;及び
・1~120標準体積のキャリアガス;
を含むか、又はこれらからなる。
【0107】
本発明の任意の実施形態において、タイコーティング又は層は、任意選択的には、平均約5~約200nmの厚さであってよい。
【0108】
本発明の任意の実施形態は、任意選択的には、pH保護コーティング又は層と内腔との間に適用される潤滑コーティング又は層をさらに含むことができる。
【0109】
本発明の任意の実施形態において、容器は、任意選択的には、内腔に5を超えるpHを有するフレグランス及び/又は化粧品組成物を収容することができ、パッケージは、少なくとも6ヶ月の開封前の保存可能期間を有し得る。
【0110】
本発明の任意の実施形態において、容器は、液体フレグランス、乾燥粉末化粧品、又は湿潤化粧品を収容することができる。
【0111】
本発明の任意の実施形態において、前記容器に収容される組成物には、化粧品又はフレグランス組成物の中でも、まつ毛の長さと湾曲の美しさを高めるために一般的に使用されているタイプのようなマスカラ組成物、又は顔若しくはボディ用クリーム若しくは毛髪用クリームなどのクリームが、又はフレグランス/香水が含まれ得る。そのようなマスカラ組成物又はクリームは、組成物材料又は混合物の中でも特に、1種以上のワックス、皮膜形成ポリマー、シリコーン、天然若しくは合成ラテックス又は疑似ラテックス、並びにラテックス及びシリコーンを懸濁させるための薬剤及び/又は増粘剤を含み得る。本発明の複数の実施形態は、容器内に含まれる組成物の有害な影響又は組成物との相互作用を回避するために、下にあるプラスチックに適切な溶質ブロックを提供する。本発明の複数の実施形態は、不活性環境を提供することによって、化粧品組成物であるかフレグランス組成物であるかにかかわらず、組成物中の添加物の必要性も低減する。
【0112】
本発明の多くの追加の及び代替の態様及び実施形態も想定され、それらは以下の明細書及び特許請求の範囲に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0113】
図面の簡単な説明
【
図1】本発明の一実施形態による複数回用量の点眼瓶の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態による複数回用量の点眼瓶の斜視図である。
【
図3】容器壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態による複数回用量の点眼瓶の概略断面図である。
【
図4】容器壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態による複数回用量の点眼瓶の概略断面図である。
【
図5】本発明の一実施形態による点鼻スプレー瓶の斜視図である。
【
図6】本発明の一実施形態による点鼻スプレー瓶の斜視図である。
【
図7】容器壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態による点鼻スプレー瓶の概略断面図である。
【
図8】容器壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態による点鼻スプレー瓶の概略断面図である。
【
図9】本発明の一実施形態によるマスカラ瓶の斜視図である。
【
図10】本発明の一実施形態によるマスカラ瓶の斜視図である。
【
図11】容器壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態によるマスカラ瓶の概略断面図である。
【
図12】容器壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態によるマスカラ瓶の概略断面図である。
【
図13】本発明の一実施形態による少用量薬瓶パッケージの斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態による少用量薬瓶パッケージの斜視図である。
【
図15】容器壁及びコーティングの一部、並びにアプリケータ壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態による少用量薬瓶パッケージの概略断面図である。
【
図16】容器壁及びコーティングの一部、並びにアプリケータ壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態による少用量薬瓶パッケージの概略断面図である。
【
図17】本発明の一実施形態によるポンプ瓶の斜視図である。
【
図18】本発明の一実施形態によるポンプ瓶の斜視図である。
【
図19】容器壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態によるポンプ瓶の概略断面図である。
【
図20】容器壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態によるポンプ瓶の概略断面図である。
【
図21】本発明の一実施形態によるコンタクトレンズケースの斜視図である。
【
図22】容器壁及びコーティングの一部の拡大詳細図を含む、本発明の一実施形態によるコンタクトレンズケースの概略断面図である。
【
図23】本発明の一実施形態による複数回用量の吸入器の概略断面図である。
【
図24】本発明の任意の実施形態による容器の概略断面図である。
【
図25】
図1の容器壁及びコーティングの一部の拡大詳細図である。
【
図26】ガラス容器対内壁にコーティングされたSiO
xバリア層を有するプラスチック容器についての、pH6における暴露時間に対するケイ素溶解のプロットである。
【
図27】ガラス容器対内壁にコーティングされたSiO
xバリア層を有するプラスチック容器についての、pH7における暴露時間に対するケイ素溶解のプロットである。
【
図28】ガラス容器対内壁にコーティングされたSiO
xバリア層を有するプラスチック容器についての、pH8における暴露時間に対するケイ素溶解のプロットである。
【
図29】3~9の異なる公称pH値で溶液と共に保存されたときの、30nmの残留コーティング厚さを残すために最初に必要なSiO
xコーティング厚さのプロットである。
【
図30】様々なPECVDコーティングのpH8及び40℃におけるケイ素溶解速度を示す。
【
図31】反応性前駆体ガスとしてOMCTS及び酸素を使用するPECVDコーティングの単位質量当たりのエネルギー入力(W/FM又はKJ/kg)に対するSi-O-Si対称/非対称伸縮モードの比率のプロットである。
【
図32】反応性前駆体ガスとしてOMCTS及び酸素を使用するPECVDコーティングの単位質量当たりのエネルギー入力(W/FM又はKJ/kg)に対するケイ素保存可能期間(日)のプロットである。
【
図33】PECVDコーティングのフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)吸光度スペクトルである。
【
図34】PECVDコーティングのフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)吸光度スペクトルである。
【
図35】PECVDコーティングのフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)吸光度スペクトルである。
【
図36】PECVDコーティングのフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)吸光度スペクトルである。
【
図37】PECVDコーティングのフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)吸光度スペクトルであり、元々は米国特許第8,067,070号の
図5として提示されたものであり、その特許で言及されているO-パラメータの計算を示す注釈が付けられている。
【
図38】
図1、2、及び3による三層コーティングを有するシリンジの概略図であり、円筒形領域と、データを取得した具体的な位置を示している。
【
図39】
図18、1、2、及び3によって示されたシリンジの円筒形領域における位置に対する全体の三層コーティング厚さのトリメトリックマップである。
【
図40】
図18に示されている位置2における三層コーティングの基材とコーティングを示す顕微鏡断面図である。
【
図41】
図18、1、2、及び3によって示されたシリンジの円筒形領域における位置に対する全体の三層コーティング厚さの別のトリメトリックマップである。
【
図42】
図21と同じコーティングを表す、
図18に示される位置1、2、3、及び4におけるコーティング厚さのプロットである。
【
図43】シリンジの概略図であり、実施例において測定が行われたその表面上の位置を示す。
【
図44】実施例で説明される、アルカリ試薬による攻撃後のピンホールの防止における本発明の三層コーティングの利益を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0114】
本発明との関係において、以下の定義及び略語が使用される。
【0115】
RFは無線周波数である。
【0116】
本発明との関係における「少なくとも」という用語は、その用語に続く整数と「等しいかそれ以上」を意味する。「含む」という言葉は、他の要素又はステップを除外せず、不定冠詞「a」又は「an」は、別段の指示がない限り複数を除外しない。パラメータ範囲が示される場合は常に、範囲の限界として示されるパラメータ値、及び前記範囲内に入るパラメータの全ての値を開示することが意図されている。
【0117】
例えば層、処理ステーション、又は処理装置に対する「第1の」及び「第2の」又は同様の言及は、存在する層、処理ステーション、又は装置の最小の数を指すが、必ずしも層、処理ステーション、及び装置の順序又は合計を表すものではなく、又は記載されている数を超える追加の層、処理ステーション、及び装置を必要とするものではない。これらの用語は、処理ステーションの数又はそれぞれのステーションで行われる具体的な処理を限定するものではない。例えば、本明細書との関係における「第1の」層は、限定なしに、唯一の層又は複数の層のいずれか1つであってよい。言い換えると、「第1の」層の記載は、第2の層又は追加の層も有する実施形態を許容するが、必要としない。
【0118】
本発明の目的のためには、「有機ケイ素前駆体」は、以下の結合:
【化1】
のうちの少なくとも1つを有する化合物であり、これは、酸素又は窒素原子と有機炭素原子とに結合した四価のケイ素原子である(有機炭素原子は、少なくとも1つの水素原子に結合した炭素原子である)。PECVD装置内に蒸気として供給することができる前駆体として定義される揮発性有機ケイ素前駆体は、任意選択的な有機ケイ素前駆体である。任意選択的には、有機ケイ素前駆体は、直鎖シロキサン、単環式シロキサン、多環式シロキサン、ポリシルセスキオキサン、アルキルトリメトキシシラン、直鎖シラザン、単環式シラザン、多環式シラザン、ポリシルセスキアザン、及びこれらの前駆体の任意の2種以上の組み合わせからなる群から選択される。
【0119】
PECVD前駆体、ガス状反応体又はプロセスガス、及びキャリアガスの供給量は、明細書及び特許請求の範囲において「標準体積」で表されることがある。充填量又はその他の固定量のガスの標準体積は、固定量のガスが標準温度及び圧力で占める体積である(実際の温度と供給圧力に無関係)。標準体積は、異なる体積単位を使用して測定することができ、それらも依然として本開示及び特許請求の範囲内にある。例えば、同じ固定量のガスは、標準立方センチメートルの数、標準立方メートルの数、又は標準立方フィートの数として表すことができる。標準体積は、異なる標準温度及び圧力を使用して定義することもでき、それも依然として本開示の範囲及び特許請求の範囲内にある。例えば、標準温度が0℃で標準圧力が760Torr(従来通り)であってよく、或いは標準温度が20℃で標準圧力が1Torrであってよい。ただし、所定の場合に使用される標準が何であっても、特定のパラメータを指定せずに2種以上の異なるガスの相対量を比較する場合、別段の指示がない限り、各ガスに対して同じ体積、標準温度、及び標準圧力の単位が使用されなければならない。
【0120】
PECVD前駆体、ガス状反応物又はプロセスガス、及びキャリアガスの対応する供給速度は、本明細書においては単位時間当たりの標準体積で表される。例えば、実施例では、流量は、sccmと略される標準立方センチメートル/分として表される。他のパラメータと同様に、秒や時間などの他の時間単位を使用することができるものの、別段の指示がない限り、2種以上のガスの流量を比較する場合には一貫したパラメータが使用されなければならない。
【0121】
本発明との関係における「容器」は、少なくとも1つの開口部と、内部又は内表面を規定する壁とを有する任意のタイプの容器であってよい。基材は、内腔を有する容器の壁であってよい。基材表面は、少なくとも1つの開口部と内部又は内表面とを有する容器の内部又は内表面の一部又は全部であってよい。容器は任意の形状であってよく、その開口端の少なくとも1つに隣接する実質的に円筒形の壁を有する容器が好ましい。
【0122】
いくつかの実施形態では、パッケージ及び容器は、複数回用量の流体製品を保存するように構成することができる。例えば、容器は、一定期間にわたる複数回の適用/使用のために構成された複数回用量の点眼瓶又は点鼻スプレー瓶であってもよい。或いは、容器は、マスカラの瓶若しくはチューブ、又はリキッド/ゲルアイライナーの瓶若しくはチューブ、又はリップグロスの瓶若しくはチューブなどの化粧品容器であってもよい。或いは、容器は、皮膚に適用されるクリームを保存するように構成された容器、例えば外用クリーム又は軟膏の缶又はキャニスターであってもよい。或いは、容器は、フレグランス、例えば香水を保存するように構成された容器であってもよい。
【0123】
いくつかの実施形態では、パッケージ又は容器は、流体製品用のアプリケータを含み得る。
【0124】
本発明との関係における「アプリケータ」は、流体製品を意図した位置に適用するために使用される任意のタイプの装置であってよく、スポイト、スプレーノズル、ブラシなどを含み得る。いくつかの実施形態では、例えば、容器は、スポイトチップ又はスプレーチップを含み得る。スポイトチップ又はスプレーチップは、典型的には内腔への開口部に挿入され、それによって流体がスポイトチップ又はスプレーチップのみを通って内腔を出るように閉じられる。別の実施形態では、アプリケータは、使用中に容器から取り外すことができる。例えば、アプリケータは、まつ毛ブラシ、アイライナーブラシ若しくはパッド、又はリップグロスブラシなどのメイクアップブラシを含み得る。或いは、アプリケータは、使用のために容器からねじって開け、その後使用後に容器に再び取り付けるスポイトキャップを含み得る。
【0125】
別の実施形態では、本開示のパッケージの一部ではなく、アプリケータは外部の供給源由来であってよい。例えば、外用クリームは手で塗布することができ、そのため使用者の手がアプリケータとして機能する。或いは、食品は、スプーン、フォーク、又はナイフなどの一般的な台所用品によって塗布されてもよい。
【0126】
「開封前保存可能期間」及び「開封後保存可能期間」という用語は、本開示では、2つの異なるものを指すために使用される。パッケージ開封前の保存可能期間は、パッケージを最初に開封する前のパッケージの保存可能期間である。すなわち、その間、容器の内腔内の製品は、1つ以上の閉じ具及び/又はシールによって内腔内に密封されたままである。パッケージの開封後の保存可能期間は、パッケージが開封され(そして典型的には製品が初めて取り分けられ)、潜在的な微生物/細菌汚染にさらされた後のパッケージの保存可能期間である。製品開封前の保存可能期間は、容器壁を介したガスの侵入及び/又は排出を減らす、及び/又は容器壁と容器内に含まれる組成物との間の有害な影響若しくは相互作用を回避するための溶質ブロックを提供する、1つ以上のコーティング又は層を適用することによって延ばすことができる。一方、製品開封後の保存可能期間は、一方、製品の開封後の保存可能期間は、1つ以上の抗菌コーティングを適用することによって延ばすことができる。
【0127】
本発明との関係における「少なくとも」という用語は、その用語に続く整数と「等しいかそれ以上」を意味する。従って、本発明との関係における容器は、1つ以上の開口部を有する。容器に2つの開口部がある場合には、それらは同じサイズであっても異なるサイズであってもよい。2つ以上の開口部がある場合には、1つの開口部を本発明によるPECVDコーティング法のためのガス入口のために使用することができ、別の開口部は蓋をされるか又は開放される。
【0128】
本発明との関係における「疎水性層」は、コーティング又は層が、対応するコーティングされていない表面と比較して、コーティング又は層でコーティングされている表面の濡れ張力を低下させることを意味する。従って、疎水性は、コーティングされていない基材とコーティング又は層の両方の関数である。同じことが、「疎水性」という用語が使用される他の文脈に、適切な変更を加えて適用される。「親水性」という用語は、その反対を意味する。すなわち、濡れ張力が参照サンプルと比較して増加することを意味する。本発明の疎水性層は、主としてその疎水性及び疎水性を提供する処理条件によって定義される。コーティング又は層又は処理は、対応するコーティングされていない又は処理されていない表面と比較して表面の濡れ張力を低下させる場合に、「疎水性」と定義される。従って、疎水性は、未処理の基材と処理の両方の関数である。
【0129】
「濡れ張力」は、表面の疎水性又は親水性ついての特定の尺度である。本発明との関係における任意選択的な濡れ張力測定方法は、ASTM D2578、又はASTM D2578に記載されている方法の修正版である。この方法は、標準の濡れ張力溶液(ダイン溶液と呼ばれる)を使用して、プラスチックフィルム表面を正確に2秒間濡らすのに最も近い溶液を決定する。これがフィルムの濡れ張力である。本明細書内で使用される手順はASTM D2578のものとは異なり、基材は平坦なプラスチックフィルムではなく、「PETチューブを形成するためのプロトコル」に従って製造され(対照を除き)「チューブ内部を疎水性コーティング又は層でコーティングするためのプロトコル」に従ってコーティングされたチューブである(欧州特許出願公開第2251671号の実施例9を参照)。
【0130】
w、x、y、及びzのこれらの値は、本明細書全体を通して実験式SiwOxCyHzに適用可能である。本明細書全体を通して使用されるw、x、y、及びzの値は、分子内の原子の数又は種類の制限としてではなく、比率又は実験式(例えばコーティング又は層について)として理解されるべきである。例えば、分子組成がSi4O4C8H24であるオクタメチルシクロテトラシロキサンは、分子式中のw、x、y、及びzをそれぞれ最大公約数である4で割った実験式Si1O1C2H6で表すことができる。w、x、y、及びzの値は整数に限定されることもない。例えば、(非環状)オクタメチルトリシロキサン、分子組成Si3O2C8H24は、Si1O0.67C2.67H8へと小さくすることができる。また、SiOxCyHzはSiOxCyと等価であると説明されているが、SiOxCyの存在を示すために比率で水素の存在を示す必要はない。
【0131】
原子比は、XPSによって決定することができる。従って、XPSによって測定されないH原子を考慮すると、コーティング又は層は、一態様では、式SiwOxCyHz(又はその等価のSiOxCy)を有することができ、例えば、wは1であり、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、zは約2~約9である。従って、典型的には、そのようなコーティング又は層は、100%の炭素+酸素+ケイ素に正規化された36%~41%の炭素を含むであろう。
【0132】
「含む」という言葉は、他の要素又はステップを排除しない。
【0133】
不定冠詞「a」又は「an」は、複数を排除しない。
【0134】
詳細な説明
以降で、複数の実施形態が示されている添付の図面を参照して本発明をより完全に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化することができ、本明細書に記載されている実施形態に限定されると解釈すべきではない。むしろ、これらの実施形態は、特許請求の範囲の文言によって示される完全な範囲を有する本発明の例示である。同様の番号は、全体を通して同様の又は対応する要素を指す。以下の開示は、特定の実施形態に特に限定されない限り、全ての実施形態に関する。
【0135】
複数回使用されるパッケージ
様々な製品、特に流体製品は、複数回又は繰り返し使用されるパッケージで販売されている。そのような製品には、例えば、眼への投与用に構成されており複数回使用される点眼瓶に収容されている液体製剤、点鼻用に構成されており点鼻スプレー瓶に収容されている液体製剤、定量吸入器用に構成されており定量吸入器キャニスターに収容されている液体製剤、及び乳児、幼児、又はペット用の医薬品などの少用量のアプリケータを有する瓶に収容されている薬物製剤を含む薬剤又は医薬製品が含まれる。そのような製品には、クリーム(本開示との関係では流体とみなされる)及び/又は軟膏などの外用薬剤、スキンケア製品、又は化粧品も含まれる。そのような製品には、メイクアップ、液体/ゲルアイライナー、リップグロス、及びマスカラなどの化粧品も含まれ、これらは、例えば1種以上の顔料、1種以上の油、及び1種以上のワックスを含み得る。そのような製品には、複数回使用される瓶の中に詰められたコンタクトレンズ液、及びコンタクトレンズ液が入れられる再利用可能なコンタクトレンズ容器/ケースも含まれ得る。そのような製品には、例えばマヨネーズやマスタードなどを含む食品、及びピクルスやオリーブなどの液体に詰められた固形食品も含まれ得る。
【0136】
そのようなパッケージは、典型的には、内腔を取り囲み少なくとも部分的に規定する1つ以上の壁と、内腔への開口部と、開口部を密閉するキャップなどの閉め具とを有する容器を含む。流体製品は、内腔に保存される。これらのパッケージのいくつかは、流体製品を適用するためのアプリケータをさらに含む。パッケージの販売時には内腔内の流体製品は無菌又は滅菌状態とすることができるが、パッケージが開封されて製品が使用されると、汚染物質がアプリケータなどを通じて容器の流体リザーバに入る可能性がある。
【0137】
例えば、複数回用量の点眼瓶は、典型的には、内腔を密封して内腔と連通するスポイトチップを含む。しかしながら、使用中、例えば眼に近付けすぎた場合、スポイトの先端が細菌で汚染される可能性がある。点鼻スプレー瓶は、典型的には、一体型ポンプによって操作され得るスプレーキャップを含む。しかしながら、使用中、スプレーキャップは鼻に挿入されることが多く、それによって容器の流体リザーバに入る可能性のある細菌を拾う可能性がある。乳児、幼児、又はペット用などの少用量の医薬品は、取り外し可能なスポイトキャップ、又は独立したスポイト若しくはプランジャーで作動するアプリケータを有している場合がある。これらのアプリケータは、典型的には患者の口に挿入されるが、使用の合間に十分に洗浄されない場合がある。その結果、口からの細菌がその後の使用中に流体リザーバに入る可能性がある。定量吸入器は、使用者の口に挿入されるマウスピースアプリケータを有するアクチュエータを含み、それによってこれは細菌と接触する場合があり、これがその後キャニスターの流体リザーバに入る可能性がある。メイクアップ又はマスカラなどの化粧品は、瓶、チューブ、キャニスターなどの中で提供される場合があり、これらはメイクアップアプリケータも含み得る。例えばマスカラの場合、パッケージは、典型的には、容器の内腔に挿入されて容器開口部を閉じるまつ毛ブラシを含むキャップを備える。同様に、液体/ゲルアイライナー及びリップグロスは、典型的には、容器の内腔に挿入されて容器の開口部を閉じる適切に構成されたアプリケータブラシを含むキャップを備えた瓶又はチューブで提供される。アプリケータブラシに細菌が溜まると、その細菌はすぐに流体リザーバに入る。
【0138】
スキンクリーム及び軟膏のパッケージはアプリケータを有さない場合があるが、それらは典型的には手で塗布される。従って、細菌又は他の汚染物質が流体リザーバに入るのは非常に容易である。同様に、ほとんどの食品パッケージには専用のアプリケータが含まれていないものの、内容物は、ナイフ、スプーン、又はフォークなどの一般的な台所用品、又は使用者の手のいずれかによって容器から取り出すことができる(液体中に保存されている固体食品の場合)。このような場合、汚染物質が食品の流体リザーバに入ることは非常に容易である。
【0139】
容器の内腔への細菌の侵入は、多くの場合、そこに含まれる製品の腐敗をもたらし、使用者がパッケージの内容物全体を使用できなくなる可能性がある。
【0140】
本開示の複数の実施形態は、上述した製品及びパッケージのいずれかなどの複数回使用されるパッケージ内に含まれる流体中の細菌及び真菌を含む微生物の増殖を阻害する方法に関する。本開示の複数の実施形態は、上述した製品及びパッケージのいずれかなどの複数回使用されるパッケージ内に含まれる流体中の細菌及び真菌を含む微生物を不活化するか殺す方法にも関する。上記メカニズムのいずれか(又は両方)に関連して、本開示の複数の実施形態は、上述した製品及びパッケージのいずれかなどの複数回使用されるパッケージの開封後の保存可能期間を延ばす方法にも関する。いくつかの実施形態では、例えば、上述した製品及びパッケージのいずれかの開封後の保存可能期間は、少なくとも1週間、任意選択的には少なくとも2週間、任意選択的には少なくとも1ヶ月、任意選択的には少なくとも2ヶ月、任意選択的には少なくとも3ヶ月、任意選択的には少なくとも4ヶ月、任意選択的には少なくとも5ヶ月、任意選択的には少なくとも6ヶ月、任意選択的には少なくとも9ヶ月、任意選択的には少なくとも1年延ばすことができる。容器内腔に侵入する微生物を阻害する及び/又は不活化する/殺すことにより、本開示の複数の実施形態は、複数回使用されるパッケージに含まれる製品に使用される防腐剤及び/又は賦形剤の量を減らす方法にも関する。
【0141】
抗菌コーティング
本開示の抗菌コーティングは、細菌などの微生物の増殖を阻害することができる。言い換えると、抗菌コーティングは、抗菌コーティングがない同じ容器と比較して、細菌侵入後の定められた期間に内腔内の流体製品に存在する細菌の量を減らすことができる。この決定のために選択される期間は、細菌が増殖する速さに応じて異なっていてよく、数時間、数日、数週間、又は数ヶ月のオーダーであってよい。いくつかの実施形態では、内腔内に存在する細菌の量の比較分析のために選択される期間は、例えば1日~7日(例えば侵入後1日、侵入後2日、侵入後3日、侵入後4日、侵入後5日、侵入後6日、又は侵入後7日)又は1~4週間(例えば侵入後1週間、侵入後2週間、侵入後3週間、又は侵入後4週間)であってよい。
【0142】
いくつかの実施形態では、比較試験は、製品のサンプル有効期限に対応する使用期間又は繰り返しの使用期間の後、例えば3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月、又は36ヶ月後に行うことができる。具体的な試験方法の例は、例えば、Bashir et al., “Microbiological study of used cosmetic products:highlighting possible impact on consumer health,”J.Appl.Microbiol.,vol.128(2),pp.598-605(2020)の中でみることができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
減少させることができ、望ましくは除去するか又は実質的に除去することができる具体的な細菌としては、サルモネラ菌(Salmonella)、大腸菌(Escherichia coli(E.coli))、シトロバクター・フレウンディイ(C.freundii)、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa(P.aeruginosa))、黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus(S.aureus))、表皮ブドウ球菌(Staphylococcus epidermis)、エシェリキア・ヘルマニイ(Escherichia hermannii)、バチルス・セレウス(Bacillus cereus)、エンテロバクター(Enterobacter)種、及びカンジダ(Candida)種が挙げられる。いくつかの実施形態では、大腸菌(E.coli)、シトロバクター・フレウンディイ(C.freundii)、緑膿菌(P.aeruginosa)、及び/又は黄色ブドウ球菌(S.aureus)などの病原性細菌は、本開示の抗菌コーティングによって明らかに低減され得る。いくつかの実施形態では、マスカラ、アイライナー、及びリップグロスなどの化粧品の2つの最も一般的な病原性汚染物質である黄色ブドウ球菌(S.aureus)及び緑膿菌(P.aeruginosa)の存在は、本開示の抗菌コーティングによって明らかに低減され得る。
【0144】
本開示の抗菌コーティングは、内腔に侵入した細菌などの微生物を不活性化するか殺すのに有効な場合がある。例えば、銀イオンは、他の用途において、特定の酵素と反応してそれらを不活性化し、細胞死を引き起こすことが示されている。従って、本開示の抗菌コーティングの複数の実施形態は、アプリケータの汚染などを通じて内腔内の流体リザーバに入る細菌性汚染物質を破壊し、それによって(単にその増殖を阻害するのとは対照的に)細菌の量を減らすために使用することができる。従って、本開示の複数の実施形態は、汚染された流体リザーバ内で無菌又は滅菌状態を復元するのに有効な場合がある。
【0145】
機構にかかわらず、本開示の抗菌コーティングは、製品の最初の使用後の複数回用量パッケージの保存可能期間を延ばすのに有効な場合がある。開封後の汚染のリスク、特に製品の使用(例えばアプリケータを介した)による汚染のリスクのため、多くの製品は開封後の保存可能期間が限られている。例えば、複数回用量の点眼瓶は、開封後、例えば4週間以内に使用することが推奨されていることが多い。言い換えると、多くの複数回用量の点眼瓶の保存可能期間は、最初の使用から約4週間である。細菌性汚染物質の増殖を阻害及び/又は不活性化することにより、本開示の抗菌コーティングは、開封後(すなわち最初の使用後)の保存可能期間を商業的に有意義な時間延ばすことができる。例えば、本開示の抗菌コーティングの複数の実施形態は、最初の使用後のパッケージの保存可能期間を、少なくとも1週間、任意選択的には少なくとも2週間、任意選択的には少なくとも1ヶ月、任意選択的には少なくとも2ヶ月、任意選択的には少なくとも3ヶ月、任意選択的には少なくとも4ヶ月、任意選択的には少なくとも5ヶ月、任意選択的には少なくとも6ヶ月、任意選択的には少なくとも9ヶ月、任意選択的には少なくとも1年間延ばすことができる。
【0146】
いくつかの実施形態では、本開示のパッケージは、流体製剤中の抗菌防腐剤の量の削減、又は除去を可能にすることができる。再度例として点眼液を用いて説明すると、眼科用製剤用に防腐剤などの賦形剤を含めることは一般に望ましくない。従って、これらの賦形剤を低減又は除去する能力は、改善された点眼液をもたらす。
【0147】
本開示の抗菌コーティングは、特に酸化亜鉛、二酸化チタン、及び酸化銀などの、様々な金属酸化物のいずれかを含むことができる。抗菌コーティングは、例えば、スパッタリング、蒸着、又は焼結などの様々なプロセスのいずれかによって適用することができる。いくつかの好ましい実施形態では、抗菌コーティングは、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)や、例えばプラズマ強化原子層堆積(PEALD)などの原子層堆積(ALD)によって適用することができる。
【0148】
本開示の容器及びパッケージが大量に製造され、使い捨て可能であり比較的低価格であることを考慮すると、本開示の抗菌コーティングは、薄いこと、例えばナノメートルスケールであることが望ましい。抗菌コーティングが、流体と接触する容器の内表面の少なくとも一部にわたって、好ましくは容器の内表面全体にわたって一貫して適用されることも望ましい。最後に、抗菌コーティングは、容器自体に損傷を与えることなしに、例えば熱可塑性樹脂容器壁の変形又は溶融なしに、容器の壁に適用できることが望ましい。本開示によるPECVD又はALD(PEALDを含む)による抗菌コーティングの適用により、望まれる表面全体に薄く一貫したコーティングが得られ、熱可塑性樹脂容器壁に損傷を与えることなしに適用することができる。
【0149】
いくつかの実施形態では、例えば、抗菌コーティングは、酢酸亜鉛、ジエチル亜鉛、又はそれらの組み合わせと、酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用される酸化亜鉛(ZnO)を含む。或いは、抗菌コーティングは、酢酸亜鉛、ジエチル亜鉛、又はそれらの組み合わせと、酸化剤とを含む供給ガスを使用して、ALD又はPEALDによって適用される酸化亜鉛(ZnO)を含み得る。
【0150】
いくつかの実施形態では、例えば、抗菌コーティングは、四塩化チタンと酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用される二酸化チタン(TiO2)を含む。或いは、抗菌コーティングは、四塩化チタン、チタンイソプロポキシド、又はそれらの組み合わせと、酸化剤とを含む供給ガスを使用して、ALD又はPEALDによって適用される二酸化チタン(TiO2)を含み得る。
【0151】
いくつかの実施形態では、例えば、抗菌コーティングは、有機銀化合物と酸化剤とを含む供給ガスからPECVDによって適用される酸化銀(Ag2O)を含み、任意選択的には、有機銀化合物は、組成:Ag(Hfac)(PR3)(式中、Hfacは、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトナートであり、Pはホスフィンであり、Rはメチル、エチル、又はそれらの組み合わせである)を有する。或いは、抗菌コーティングは、有機銀化合物と酸化剤とを含む供給ガスを使用してPECVDによって適用された酸化銀(Ag2O)を含むことができ、任意選択的には、有機銀化合物は、組成:Ag(Hfac)(PR3)(式中、Hfacは、1,1,1,5,5,5-ヘキサフルオロアセチルアセトナートであり、Pはホスフィンであり、Rはメチル、エチル、又はそれらの組み合わせである)を有する。
【0152】
これらの実施形態のいずれにおいても、酸化剤は、O2、O3、H2O、H2O2、N2O、NO2、空気、又はそれらの組み合わせから選択することができる。
【0153】
いくつかの実施形態では、抗菌コーティングは、約1nm~約1000nm、任意選択的には約2nm~約1000nm、任意選択的には約5nm~約1000nm、任意選択的には約10nm~1000nm、任意選択的には約1nm~約500nm、任意選択的には2nm~約500nm、任意選択的には約5nm~約500nm、任意選択的には約10nm~500nm、任意選択的には約1nm~約250nm、任意選択的には約2nm~約250nm、任意選択的には約5nm~約250nm、任意選択的には約10nm~250nm、任意選択的には約1nm~約100nm、任意選択的には約2nm~約100nm、任意選択的には約5nm~約100nm、任意選択的には約10nm~100nm、任意選択的には約1nm~約50nm、任意選択的には約2nm~約50nm、任意選択的には約5nm~約50nm、任意選択的には約10nm~約50nmの厚さを有し得る。
【0154】
いくつかの実施形態では、抗菌コーティングは、容器壁の内表面全体に比較的一貫した層として適用され得る。
【0155】
例示的な実施形態
本開示の一実施形態による複数回使用パッケージの例、及び特に複数回用量の点眼瓶300の複数の実施形態が、
図1~4に示されている。複数回用量の点眼瓶300は、壁214、より具体的には1つ以上の側壁215と底壁216とを有する容器210を含み、壁(例えば1つ以上の側壁と底壁とを合わせたもの)は、内腔212を規定し、少なくとも部分的に囲んでいる。側壁215は、本体部分217と、本体部分と比較して小さい直径を有するネック部分218とを含むことができ、本体部分とネック部分は移行領域219によって接続されている。底壁216の向かい側は、内腔212内に保存された流体を容器210から投与することができる開口部220である。
【0156】
図1に示されている複数回用量の点眼瓶300において、容器は、開口部311を含む一体型スポイトチップ310を含み、開口部は、少量の規定用量、例えば液滴で流体を排出するような大きさにされ、構成されている。他方で、
図2に示されている複数回用量の点眼瓶300では、容器210は、スポイトチップ要素310の挿入によって密閉される比較的大きな開口部を備えている。スポイトチップ要素310は、少量の規定用量、例えば液滴で容器の内腔から流体を排出するような大きさにされ構成されている開口部311を有する。典型的には、各液滴は、0.3mL未満、任意選択的には0.2mL未満、任意選択的には0.1mL未満であってよい。いくつかの実施形態では、例えば、各液滴は約0.05mL以下であってよい。
【0157】
複数回用量の点眼瓶300は、キャップ312も備えていてもよく、キャップは、使用の合間(すなわち製品が投与されていないとき)に開口部311を密閉するように構成される。キャップ312は、任意の様々な方式で容器210に固定することができる。図示の実施形態では、例えば、ネック部分218の外表面は、キャップを容器210のネック部分に固定するために、キャップ312の内表面上のねじ部分と嵌合するように構成されたねじ部分313を備えていてもよい。
【0158】
複数回用量の点眼瓶300は、内腔312内に流体350、例えば眼科用医薬流体をさらに含む。いくつかの実施形態では、眼科医療用流体350は薬剤含有溶液あってもよい。いくつかの実施形態では、例えば、眼科医療用流体350は、以下のうちのいずれか1つ以上を含み得る:アルカフタジン眼用、アトロピン眼用、アゼラスチン眼用、ベポタスチン眼用、ベタキソロール眼用、ビマトプロスト眼用、ブリモニジン及びチモロール眼用、ブリモニジン眼用、ブリンゾラミド及びブリモニジン眼用、ブリンゾラミド眼用、ブロムフェナク眼用、カルテオロール眼用、セネゲルミン眼用、セチリジン眼用、クロラムフェニコール眼用、クロモリン眼用、シクロペントラート及びフェニレフリン眼用、シクロペントラート眼用、シクロスポリン眼用、システアミン眼用、デキサメタゾン眼用、ジクロフェナク眼用、ジフルプレドナート眼用、ジピブフリン眼用、ドルゾラミド及びチモロール眼用、ドルゾラミド眼用、ヨウ化エコーチオファート眼用、エミダスチン眼用、エピナスチン眼用、フルオシノロン眼用、フルオロメトロン眼用、フルルビプロフェン眼用、ガンシクロビル眼用、ホマトロピン眼用、ヒドロコルチゾン眼用、ヒドロキシアンフェタミン及びトロピカミド眼用、ケトロラック眼用、ケトチフェン眼用、ラタノプロスト及びネタルスジル眼用、ラタノプロスト眼用、ラタノプロステンブノド眼用、レボブノロール眼用、レボカバスチン眼用、リドカイン眼用、リフィテグラスト眼用、ロドキサミド眼用、ロテプレドノール眼用、メチプラノロール眼用、ナファゾリン及びアンタゾリン眼用、ナファゾリン及びフェニラミン眼用、ナファゾリン及び亜鉛眼用、ナファゾリン眼用、ネドクロミル眼用、ネパフェナク眼用、ネタルスジル眼用、眼用潤滑剤、オロパタジン眼用、オキシメタゾリン眼用、ペミロラスト眼用、フェニレフリン眼用、フィソスチグミン眼用、ピロカルピン眼用、ポビドン及びテトラヒドロゾリン眼用、ポビドンヨード眼用、プレドニゾロン眼用、プロパラカイン眼用、リメキソロン眼用、スコポラミン眼用、塩化ナトリウム、高張性眼用剤、タフルプロスト眼用、テトラカイン眼用、テトラヒドロゾリン及び亜鉛眼用、テトラヒドロゾリン眼用、チモロール眼用、トラボプロスト眼用、トリアムシノロン眼用、トリフルリジン眼用、トロピカミド眼用、ウノプロストン眼用、ビダラビン眼用、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0159】
いくつかの実施形態では、眼科医療用流体350は、1種以上の湿潤剤(水分の保持を助ける物質)、1種以上の潤滑剤、カリウムなどの1種以上の電解質、又はそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、眼科医療用流体350は、1種以上の充血除去剤、1種以上の抗ヒスタミン剤、1種以上のマスト細胞安定剤、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、眼科医療用流体350は1種以上のステロイドを含み得る。いくつかの実施形態では、眼科医療用流体350は水と同様の粘度を有してもよく、別の実施形態では、眼科医療用流体はより粘度の高いゲル又は軟膏であってよい。
【0160】
図3に示されているように、複数回用量の点眼瓶300の複数の実施形態は、壁214の内表面の少なくとも一部(例えば側壁215の内表面及び底壁216)、すなわち内腔212内に保存される流体350と接触する表面に抗菌コーティング100を含み得る。なお、
図3は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、抗菌コーティング100は容器壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0161】
図4に示されているように、複数回用量の点眼瓶300の複数の実施形態は、バリアコーティング又は層288と、任意選択的な1つ以上のタイコーティング又は層289及びpH保護コーティング又は層286とを含むコーティングセット285を含み得る。上述した抗菌コーティング100と同様に、このコーティングセット285は、容器壁214の内表面の少なくとも一部、例えば容器の側壁215と底壁216の内表面とに適用することができる。このコーティングセット285は、例えば
図4に図示されているように、抗菌コーティング100に加えて設けられてもよく、或いは単独で、すなわち抗菌コーティングとは独立して設けられてもよい(図示せず)。通常、抗菌コーティング100と組み合わせて適用される場合、抗菌コーティングは、最も内側の層、すなわち内腔212内に保存される流体350と接触する層として適用される。なお、
図4は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、様々なコーティングは、容器壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0162】
複数回用量の点眼瓶300のいくつかの実施形態では、キャップ312は、最初に、(例えば、キャップの本体と容器との間で圧縮され得る1つ以上のガスケットの組み込みにより)水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐ形式で容器210を密閉することができる。その最初のシールは、その後、複数回用量の点眼瓶300の最初の開封時に最終使用者によって破壊され、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の投与)に対応する。別の実施形態では、複数回用量の点眼瓶300は、シール、例えばフィルム、ホイル、又はラミネートを含んでいてもよく、これは容器の開口部の上に延在し、典型的には、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐようにネック部分218の上面又は上部フランジに密閉されていてもよい。このシールは、複数回用量の点眼瓶300の最初の開封時に最終使用者によって取り除かれ、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の投与)に対応する。いくつかの実施形態では、複数回用量の点眼瓶300は、両方の初期シールを含んでいてもよい。しかしながら、複数回用量の点眼瓶300が最初の密閉状態にある場合であっても、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)は、容器壁215、216を介して容器の内腔212に入る可能性があり、その結果、最終使用者がパッケージを開封する前に、内腔内に含まれる流体350が劣化することがある。従って、本発明の複数の実施形態は、酸素バリアコーティングのない容器と比較して内腔212への酸素の進入を低減する酸素バリアコーティング288を含むことができる。その結果、酸素バリア特性が向上することで、パッケージの開封前の保存可能期間を延ばすことができる。
【0163】
使用中、複数回用量の点眼瓶300は、典型的には逆さにされ、眼科医療用流体350の特定の数の液滴が、スポイトチップ310の開口部311を通して使用者の眼に投与される。その際、複数回用量の点眼瓶300は、典型的には目の近くに配置され、使用者の目、まぶた、まつ毛などと接触する可能性がある。その結果、スポイトチップ310が細菌と接触する可能性があり、その細菌が、その後将来の使用のために眼科医療用流体の残りが保存されている容器210の内腔212に入り、それによって眼科医療用流体350が汚染される可能性がある。本発明の複数の実施形態は、容器210の内腔212内に含まれる眼科医療用流体350中の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な(例えば抗菌コーティングのない容器と比較して)、及び/又は複数回用量の点眼瓶300の内腔に入った細菌を不活性化するか殺すのに有効な、及び/又は最初の使用後の複数回用量の点眼瓶パッケージの保存可能期間を延ばすのに有効な、抗菌コーティング100を含む。
【0164】
本開示の一実施形態による複数回使用されるパッケージ、特に点鼻スプレー瓶400の別の例が
図5~8に示されている。点鼻スプレー瓶400は、壁214、より具体的には1つ以上の側壁215と底壁216とを有する容器210を含み、壁(例えば1つ以上の側壁と底壁とを合わせたもの)は、内腔212を規定し、少なくとも部分的に囲んでいる。側壁215は、本体部分217と、本体部分と比較して小さい直径を有するネック部分218とを含むことができ、本体部分とネック部分は移行領域219によって接続されている。底壁216の向かい側は、内腔内に保存された流体を容器から投与することができる開口部である。
【0165】
点鼻スプレー瓶400は、容器210に固定可能であり、特に容器のネック部分218に固定可能であることができるキャップ412も含み得る。キャップ412は、任意の様々な形式で容器210に固定することができる。図示の実施形態では、例えば、ネック部分218の外表面は、キャップを容器のネック部分に固定するために、キャップ412の内表面上のねじ部分と嵌合するように構成されたねじ部分413を備えていてもよい。
【0166】
点鼻スプレー瓶400は、スプレーアプリケータ420をさらに備えていてもよい。例えば
図5及び6に示されているものなどのいくつかの実施形態では、スプレーアプリケータ420は、キャップ412の一部を形成していてもよい、及び/又はキャップ412に取り付けられていてもよい(及び/又はスプレーアプリケータの一部がキャップ412と一体化されていてもよい)。スプレーアプリケータ420は、少用量の医療用流体を投与するように構成された出口421を備えていてもよい。典型的には、少用量は、0.5mL未満、任意選択的には0.4mL未満、任意選択的には0.3mL未満、任意選択的には0.2mL未満、任意選択的には0.1mL未満とすることができる。スプレーアプリケータ420は、容器212の内腔内に延在し、望ましくは容器の底壁216に近接する浸漬管422も備えていてもよく、容器の内腔内に保存されている医療用流体が出口へ向かう途中にこれを通って移動する。スプレーアプリケータ420は、使用者が少用量の医療用流体を吐出することができる作動要素をさらに含む。例えば
図5~6に示されているものなどのいくつかの実施形態では、作動要素は、使用者が指フランジ424を押し下げることによって手動で作動するピストン423であってよい。
【0167】
いくつかの実施形態では、点鼻スプレー瓶400は、瓶が使用されていないときにスプレーアプリケータ421の出口を覆う、フードとも呼ばれるキャップを備えていてもよい。
【0168】
点鼻スプレー瓶は、内腔212内に流体450、例えば医療用流体をさらに含む。いくつかの実施形態では、医療用流体450は薬剤含有溶液であってよい。いくつかの実施形態では、点鼻スプレー瓶400は、鼻腔内投与などによって、薬剤含有溶液が使用者の脳及び/又は使用者の血流に送達されるように構成することができる。別の実施形態では、点鼻スプレー瓶400は、薬剤含有溶液が鼻腔に局所的に標的化されるように、例えば局所投与として送達されるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態では、例えば、経鼻的に送達される医療用流体450は、以下のうちの任意の1つ以上を含み得る:アゼラスチン鼻用、アゼラスチン及びフルチカゾン鼻用、ベクロメタゾン鼻用、ブデソニド鼻用、ブトルファノール鼻用、カルシトニン鼻用、シクレソニド鼻用、コルチコステロイド鼻用、クロモリン鼻用、シアノコバラミン鼻用、デスモプレシン鼻用、エピネフリン鼻用、クエン酸フェンタニル鼻用、フルニソリド鼻用、フルチカゾン鼻用、イプラトロピウム鼻用、ケトロラック鼻用、レボカバスチン鼻用、メトクロプラミド鼻用、モメタゾン鼻用、ナファレリン鼻用、ナファゾリン鼻用、ニコチン鼻用、オロパタジン鼻用、オキシメタゾリン鼻用、フェニレフリン鼻用、塩化ナトリウム鼻用、テストステロン鼻用、テトラヒドロゾリン鼻用、トリアムシノロン鼻用、キシロメタゾリン鼻用。
【0169】
いくつかの実施形態では、医療用溶液450は、1種以上の充血除去薬、例えばプソイドエフェドリン、フェニレフリン、プロピルヘキセドリン、フェニルプロパノールアミン、レボメタンフェタミン、エフェドリン、オキシメタゾリン、アンファゾリン、オキシメタゾリン、シンフリン、テトリゾリン、トラマゾリン、キシロメタゾリン、及び/又はコルチコステロイド(ジプロピオン酸ベクロメタゾン、ブデソニド、シクレソニド、デキサメタゾン、フルニソリド、フルチカゾン、フルチカゾンフロエート、フルチカゾンプロピオネート、アゼラスチン/フルチカゾン、モメタゾンフロエート、プレドニゾロン、チキソコルトール、トリアムシノロン、及び/又はトリアムシノロンアセトニド(acedtonide)など);1種以上の抗ヒスタミン薬;1種以上の去痰薬;生理食塩水;又はそれらの組み合わせ。いくつかの実施形態では、医療用溶液450は、1種以上の片頭痛薬を含み得る。いくつかの実施形態では、医療用溶液450は、1種以上の抗喘息薬を含み得る。いくつかの実施形態では、医療用溶液450は、1種以上のペプチド薬、例えばホルモン治療のためのペプチド薬を含み得る。いくつかの実施形態では、医療用溶液450は、1種以上のステロイドを含み得る。いくつかの実施形態では、医療用溶液450は、1種以上の麻酔薬を含み得る。
【0170】
図7に示されているように、点鼻スプレー瓶400の複数の実施形態は、容器壁214の内表面の少なくとも一部(例えば側壁215の内表面及び底壁215)、すなわち内腔212内に保存される流体450と接触する表面に抗菌コーティング100を含む。なお、
図7は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、抗菌コーティング100は容器壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0171】
図8に示されているように、点鼻スプレー瓶400の複数の実施形態は、バリアコーティング又は層288と、任意選択的な1つ以上のタイコーティング又は層289及びpH保護コーティング又は層286とを含むコーティングセット285を含み得る。上述した抗菌コーティング100と同様に、このコーティングセット285は、容器壁214の内表面の少なくとも一部、例えば容器の側壁215及び/又は底壁216の内表面に適用することができる。このコーティングセット285は、例えば
図8に図示されているように、抗菌コーティング100に加えて設けられてもよく、或いは単独で、すなわち抗菌コーティングとは独立して設けられてもよい(図示せず)。通常、抗菌コーティング100と組み合わせて適用される場合、抗菌コーティングは、最も内側の層、すなわち内腔212内に保存される流体450と接触する層として適用される。なお、
図8は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、様々なコーティングは、容器壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0172】
点鼻スプレー瓶400のいくつかの実施形態では、キャップ412、又はキャップとフードとの組み合わせを、最初に、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐ形式で容器210の開口を密閉することができる。その最初のシールは、その後点鼻スプレー瓶400の最初の開封時に最終使用者によって破壊され、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の投与)に対応する。別の実施形態では、点鼻スプレー瓶400は、シール、例えばフィルム、ホイル、又はラミネートを含んでいてもよく、これは容器210の開口部の上に延在し、典型的には、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐようにネック部分218の上面又は上部フランジに密閉されていてもよい。このシールは、点鼻スプレー瓶400の最初の開封時に最終使用者によって取り除かれ、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の投与)に対応する。それらの実施形態では、シールは別個のキャップによって覆われていてもよく、スプレーアプリケータ420を含むキャップは容器から取り外されていてもよく、及び/又は別個に供給されてもよい。しかしながら、点鼻スプレー瓶400が最初の密閉状態にある場合であっても、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)は、容器壁214を介して容器210の内腔212に入る可能性があり、その結果、最終使用者がパッケージを開封する前に、内腔内に含まれる流体450が劣化することがある。従って、本発明の複数の実施形態は、酸素バリアコーティングのない容器と比較して内腔への酸素の進入を低減する酸素バリアコーティング288を含むことができる。その結果、酸素バリア特性が向上することで、パッケージの開封前の保存可能期間を延ばすことができる。
【0173】
使用中、点鼻スプレー瓶400は、典型的には使用者又は患者の鼻の近くに保持され、スプレーアプリケータ420の少なくとも先端が使用者又は患者の鼻孔に配置され、鼻孔に医療用流体を吐出するためにアクチュエータが1回以上作動される。従って、使用中、スプレーアプリケータ420は、使用者又は患者の鼻腔の内部及びそこに存在する細菌と接触する可能性があり、その細菌が、その後将来の使用のために眼科医療用流体の残りが保存されている容器210の内腔212に入り、それによって医療用流体450が汚染される可能性がある。本発明の複数の実施形態は、容器の内腔212内に含まれる医療用流体450中の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な(例えば抗菌コーティングのない容器と比較して)、及び/又は点鼻スプレー瓶400の内腔に入った細菌を不活性化するか殺すのに有効な、及び/又は最初の使用後の点鼻スプレー瓶パッケージの保存可能期間を延ばすのに有効な、抗菌コーティング100を含む。
【0174】
本開示の一実施形態による複数回使用されるパッケージの別の例、特にマスカラチューブとも呼ばれるマスカラ瓶500の実施形態が、
図9~12に示されている。マスカラ瓶500は、壁214、より具体的には1つ以上の側壁215と底壁216とを有する容器210を含み、壁(例えば1つ以上の側壁と底壁とを合わせたもの)は、内腔212を規定し、少なくとも部分的に囲んでいる。側壁215は、本体部分217と、本体部分と比較して小さい直径を有するネック部分218とを含むことができ、本体部分とネック部分は移行領域219によって接続されている。底壁216の向かい側は、内腔内に保存された流体、例えばマスカラ組成物を容器から投与することができる開口部である。
【0175】
マスカラ瓶500は、キャップ512も備えていてもよく、キャップは、使用の合間(すなわち製品が投与されていないとき)に開口部を密閉するように構成される。キャップ512は、任意の様々な方式で容器210に固定することができる。図示の実施形態では、例えば、容器のネック部分218の外表面は、キャップを容器のネック部分に固定するために、キャップ512の内表面上のねじ部分と嵌合するように構成されたねじ部分513を備えていてもよい。
【0176】
マスカラ瓶500は、マスカラ組成物を塗布するために使用されるワンドとも呼ばれるまつ毛ブラシ520を備えることもできる。
図9~10に示されているマスカラ瓶500では、まつ毛ブラシ520はキャップ512に取り付けられている。しかしながら、別の実施形態では、まつ毛ブラシ520はキャップ512から分離されていてもよい。まつ毛ブラシ520は、容器の開口部を通って容器の内腔212に挿入されるような大きさにされ構成されている。まつ毛ブラシ520は、キャップ512に取り付けられたとき、容器に含まれる一定量のマスカラ組成物を取るように容器210の内腔212に挿入することができ、その後、まつ毛ブラシは容器の内腔から取り出され、使用者のまつ毛にその量のマスカラ組成物を塗布するために使用され得る。望みの量のマスカラが塗布されるまで、このプロセスを複数回繰り返すことができる。望みの量が塗布された後、まつ毛ブラシ520は容器の内腔212に挿入することができ、その後、キャップ512を回転させて容器210にキャップを固定することができる。
【0177】
マスカラ瓶500は、内腔212内に、例えばマスカラ組成物などの流体550をさらに含む。いくつかの実施形態では、マスカラ組成物550は、1種以上の顔料、1種以上のワックス及び/又はオイル、並びに1種以上の皮膜形成ポリマーを含み得る。いくつかの実施形態では、例えば、マスカラ組成物550は、まつ毛を暗くするためのカーボンブラック、酸化鉄、二酸化チタン、及び/又はウルトラマリンブルー顔料;まつ毛を被覆する皮膜を形成するためのポリビニルピロリドン(PVP)、セレシン、トラガカントガム、メチルセルロースなどの1種以上のポリマー;ラノリン、鉱物油、アマニ油、ユーカリ油、ゴマ油、テレピン油、パラフィン、ワセリン、ヒマシ油、カルナバワックス、蜜蝋、パームワックス、及びキャンデリラワックスなどの1種以上の増粘ワックス又はオイルを含み得る。いくつかの実施形態では、マスカラ組成物550は、蜜蝋、パラフィン、カルナバワックス、パームワックス、及びそれらの組み合わせから選択されるワックスの基剤と、カーボンブラック及び/又は酸化鉄を含む顔料と、1種以上の皮膜形成ポリマーとを含み得る。マスカラ組成物550のいくつかの実施形態は、まつ毛に長さをより付与するために、ナイロン及び/又はレーヨンのマイクロファイバーも含み得る。マスカラ組成物550のいくつかの実施形態は、まつ毛をコンディショニングするための保湿剤及び/又はビタミンも含み得る。
【0178】
いくつかのマスカラ組成物550は、水を含まないか又は実質的に含まなくてもよく、それによって防水性及び疎水性マスカラとみなされるものが得られる一方で、他のマスカラ組成物は、水と油のエマルションを含んでいてもよく、親水性とみなすことができる。例示的な防水性マスカラ組成物は、石油留分、ポリエチレン、カルナバワックス、水添ロジン酸ペンタエリスリチル、及びトール油グリセリドを含み得る。親水性マスカラの例は、例えば、水、ステアリン酸グリセリル、アクリル酸アンモニウムコポリマー、ポリビニルアルコール、及びアルコールを含み得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、マスカラ瓶500は、容器の内腔212が約3mL~約15mLの流体、或いは約5mL~約12mLの流体、或いは約7mL~約12mLの流体、或いは約4mL~約12mLの流体、或いは約4mL~約10mLの流体、或いは約4mLの流体、或いは約10mLの流体を含むように構成することができる。
【0180】
図11に示されているように、マスカラ瓶500の複数の実施形態は、容器壁214の内表面(側壁215及び/又は底壁216の内表面)の少なくとも一部、すなわち内腔212内に保存されている流体550と接触する表面に抗菌コーティング100を含む。なお、
図11は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、様々なコーティング100は、容器壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0181】
図12に示されているように、マスカラ瓶500の複数の実施形態は、バリアコーティング又は層288と、任意選択的な1つ以上のタイコーティング又は層289及びpH保護コーティング又は層286とを含むコーティングセット285を含み得る。上述した抗菌コーティング100と同様に、このコーティングセット285は、容器壁214の内表面の少なくとも一部、例えば容器の側壁215及び/又は底壁216の内表面に適用することができる。このコーティングセット285は、例えば
図12に図示されているように、抗菌コーティング100に加えて設けられてもよく、或いは単独で、すなわち抗菌コーティングとは独立して設けられてもよい(図示せず)。通常、抗菌コーティング100と組み合わせて適用される場合、抗菌コーティングは、最も内側の層、すなわち内腔内に保存される流体550と接触する層として適用される。なお、
図12は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、様々なコーティングは、容器壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0182】
マスカラ瓶500のいくつかの実施形態では、キャップ512は、最初に、(例えば、キャップの本体と容器との間で圧縮され得る1つ以上のガスケットの組み込みにより)水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐ形式で容器210の開口を密閉することができる。その最初のシールは、その後マスカラ瓶500の最初の開封時に最終使用者によって破壊され、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の投与)に対応する。別の実施形態では、マスカラ瓶500は、シール、例えばフィルム、ホイル、又はラミネートを含んでいてもよく、これは容器の開口部の上に延在し、典型的には、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐようにネック部分218の上面又は上部フランジに密閉されていてもよい。このシールは、マスカラ瓶500の最初の開封時に最終使用者によって取り除かれ、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の投与)に対応する。いくつかの実施形態では、マスカラ瓶500は、両方の初期シールを含んでいてもよい。しかしながら、マスカラ瓶500が最初の密閉状態にある場合であっても、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)は、容器壁214を介して容器210の内腔212に入る可能性があり、その結果、最終使用者がパッケージを開封する前に、内腔212内に含まれる流体450が劣化することがある。従って、本発明の複数の実施形態は、酸素バリアコーティングのない容器と比較して内腔212への酸素の進入を低減する酸素バリアコーティング288を含むことができる。その結果、酸素バリア特性が向上することで、パッケージの開封前の保存可能期間を延ばすことができる。
【0183】
使用中、まつ毛ブラシ520は、典型的には使用者のまつ毛と接触し、使用者の顔の近くに配置される。その結果、まつ毛ブラシ520が細菌と接触する可能性があり、その細菌が、その後将来の使用のためにマスカラ組成物の残りが保存されている容器210の内腔212に入り、それによってマスカラ組成物550が汚染される可能性がある。本発明の複数の実施形態は、容器210の内腔212内に含まれるマスカラ組成物550中の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な(例えば抗菌コーティングのない容器と比較して)、及び/又はマスカラ瓶500の内腔に入った細菌を不活性化するか殺すのに有効な、及び/又は最初の使用後のマスカラ瓶パッケージの保存可能期間を延ばすのに有効な、抗菌コーティング100を含む。
【0184】
本開示の一実施形態による複数回使用パッケージの図示されていない別の例は、液体又はゲルのアイライナーのパッケージである(例えばペンシルアイライナーとは対照的に)。液体又はゲルのアイライナーは、上で示し説明したマスカラの瓶/チューブと同様のパッケージで提供される。流体自体の組成を除いて、主な違いはアプリケータの構成である。
図9~12に示されるようなまつ毛ブラシではなく、アプリケータはアイライナーブラシ又はパッドを含んでいてもよい。
図9~12に示されているまつ毛ブラシと同様に、アイライナーブラシ又はパッドは、典型的には、キャップの下側から延び、キャップが容器に固定されると容器の内腔に挿入されて保管される。主な違いはブラシ自体の構成にあり、アイライナーブラシは、アプリケータの少なくとも一部の外縁/円周の周りに延びておりマスカラをまつ毛に塗るために用いられるまつ毛ブラシとは反対に、典型的には、アプリケータの端部から延び、目の周りの皮膚に細く正確なラインを形成する細くて鋭い先端のブラシを有する。容器の内腔に保存されているアイライナー流体は、1種以上の皮膜形成剤、1種以上の増粘剤(例えばジャパンワックスなどのワックス、天然ゴム、粘土)、及び/又は1種以上の顔料(例えば酸化鉄、ウルトラマリン、酸化クロム、二酸化チタン)を含み得る。抗菌コーティング又は層100及び/又はコーティングセット285のうちの1つ以上は、マスカラ瓶/チューブに関して上述した方法と同じ方法でアイライナー容器の内表面に設けることができ、同じように機能する。
【0185】
本開示の一実施形態による複数回使用されるパッケージの図示されていない別の例は、リップグロスのパッケージである。リップグロスは、上で示し説明したマスカラの瓶/チューブ、及び上述したアイライナーの瓶/チューブと同様のパッケージで提供され得る。ここでも同様に、主な違いは、流体自体の組成を除いてアプリケータの構成である。
図9~12に示されるようなまつ毛ブラシ又はアイライナーブラシではなく、アプリケータはワンドと呼ばれることもあるリップブラシを含んでいてもよい。
図9~12に示されるまつ毛ブラシ及び上記アイライナーブラシのように、リップブラシは、典型的には、キャップの下側から延び、キャップが容器に固定されると容器の内腔に挿入されて保管される。リップブラシは、典型的には、アプリケータの先端にスポンジ状の材料を有しており、これが使用者の唇にリップグロスを塗るために使用されるため、主な違いはブラシ自体の構成にある。スポンジ状の先端部(「ドウフット(due foot)」と呼ばれることもある)は、曲線、ヘラ、炎、及び滴の形状などの任意の様々な形状で提供され得る。容器の内腔に保存されるリップグロス液は、1種以上のワックス(例えばラノリン)、1種以上のオイル、及び/又は1種以上の顔料を含み得る。抗菌コーティング又は層100及び/又はコーティングセット285のうちの1つ以上は、マスカラ瓶/チューブに関して上述した方法と同じ方法でリップグロス容器の内表面に設けることができ、同じように機能する。
【0186】
本開示の一実施形態による複数回使用されるパッケージの別の例、特に少用量医薬品パッケージ600の別の例が
図13~16に示されている。少用量医薬品パッケージ600は、壁214、より具体的には1つ以上の側壁215と底壁216とを有する容器210を含み、壁(例えば1つ以上の側壁と底壁とを合わせたもの)は、内腔212を規定し、少なくとも部分的に囲んでいる。側壁215は、本体部分217と、本体部分と比較して小さい直径を有するネック部分218とを含むことができ、本体部分とネック部分は移行領域219によって接続されている。底壁216の向かい側は、内腔内に保存された流体、例えば少用量の医薬流体を容器210から投与することができる開口部である。
【0187】
少用量薬瓶600は、キャップ612も備えていてもよく、キャップは、使用の合間(すなわち製品が投与されていないとき)に開口部を密閉するように構成される。キャップ612は、任意の様々な方式で容器210に固定することができる。図示の実施形態では、例えば、容器のネック部分218の外表面は、キャップを容器のネック部分に固定するために、キャップ612の内表面上のねじ部分と嵌合するように構成されたねじ部分613を備えていてもよい。
【0188】
乳幼児、幼児、又はペット用などの少用量医薬品パッケージ600は、
図13~16に示されているように、多くの場合、スポイト(キャップに一体化されてスポイトキャップとして提供されてもよく、或いはこれは独立した構成要素であってもよい)又はプランジャー作動式アプリケータなどのアプリケータ620を含む。
【0189】
プランジャー作動式アプリケータ620は、本体622部分と、第1の端部にある狭い投与チップ623と、反対側端部の開口部624とを有するプラスチックバレル621を含み得る。プラスチックプランジャー625は、開口部624を通してバレル621に挿入され、バレル内で摺動可能である。いくつかの実施形態では、バレル621は、様々な投与量測定値に対応する一連の隆起及び/又はマーキングを含んでいてもよく、別の実施形態では、アプリケータ620は、単一の投与量サイズのみのために構成されていてもよい。使用中、アプリケータ620の投与チップ623は、容器210の内腔212に挿入され、投与チップ623から望まれる量の医療用流体650が、プランジャー625の後方への移動によって生じる吸引によって、投与チップ623からアプリケータのバレル621内に引き込まれる。次いで、適切に測定された投与量の医療用流体が、アプリケータ620の投与チップ623を通して、その意図された場所、典型的には幼児、幼児、又はペットの口に直接投与される。
【0190】
スポイトタイプのアプリケータは、実質的に同じ方法で使用され、使用者がスポイトの投与端ではない開口部に取り付けられているゴム球への圧力をゆっくりと解放することによって生じる吸引によって、望まれる量の流体が容器210の内腔212からスポイト内に引き込まれ、その後、投与量の流体がゴム球へ圧力を加えることによってスポイトの投与端から投与される。これらのアプリケータ620は、典型的には、服用者の口の中に挿入されるが、使用の合間に十分に洗浄されない場合がある。従って、口からの細菌が、使用直後(例えばアプリケータ620が容器内腔に保存されている場合)又はその後の使用中(アプリケータが内腔に再導入される場合)に容器210の内腔212内に含まれる医療用流体に入る可能性がある。
【0191】
少用量医薬品パッケージ600は、流体650、例えば容器210の内腔212内の医薬製剤をさらに含む。いくつかの実施形態では、流体650は、アセトアミノフェン又はイブプロフェンなどの鎮痛薬を含み得る。いくつかの実施形態では、流体650は処方薬を含み得る。
【0192】
いくつかの実施形態では、アプリケータ620は、最大約10mLの流体、或いは最大約7mLの流体、或いは最大約5mLの流体、或いは最大約2mLの流体を保持及び投与するように構成することができる。
【0193】
図15に示されているように、少用量医薬品パッケージ600の容器210の複数の実施形態は、容器壁214の内表面の少なくとも一部(例えば側壁215の内表面及び/又は底壁216)、すなわち内腔212内に保存される流体650と接触する表面に抗菌コーティング100を含む。なお、
図15は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、抗菌コーティング100は容器壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0194】
図16に示されているように、少用量医薬品パッケージ600の容器210の複数の実施形態は、バリアコーティング又は層288と、任意選択的な1つ以上のタイコーティング又は層289及びpH保護コーティング又は層286とを含むコーティングセット285を含み得る。上述した抗菌コーティング100と同様に、このコーティングセット285は、容器の内表面214の少なくとも一部、例えば容器の側壁215及び/又は底壁216の内表面とに適用することができる。このコーティングセット285は、例えば
図16に図示されているように、抗菌コーティング100に加えて設けられてもよく、或いは単独で、すなわち抗菌コーティングとは独立して設けられてもよい(図示せず)。通常、抗菌コーティング100と組み合わせて適用される場合、抗菌コーティングは、最も内側の層、すなわち内腔212内に保存される流体650と接触する層として適用される。なお、
図16は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、様々なコーティングは、容器壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0195】
いくつかの実施形態では、アプリケータ620の1つ以上の表面も抗菌コーティング100を含み得る。例えば、少用量医薬品パッケージ600がプランジャー作動式アプリケータ620を備えている場合、バレル壁621の少なくとも一部の内表面及び/又はバレル壁の少なくとも一部の外表面は、本明細書に記載の抗菌コーティング100を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、及び
図15に示されているように、バレル壁621の少なくとも一部の内表面は、本明細書に記載の抗菌コーティング100を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、バレル壁621の少なくとも一部の外表面は、本明細書に記載の抗菌コーティング100を備えていてもよい。いくつかの実施形態では、バレル壁621の少なくとも一部の内表面とバレル壁の少なくとも一部の外表面の両方が、本明細書に記載の抗菌コーティング100を備えていてもよい。
【0196】
少用量医薬品パッケージ600のいくつかの実施形態では、キャップ612は、最初に、(例えば、キャップの本体と容器との間で圧縮され得る1つ以上のガスケットの組み込みにより)水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐ形式で容器210の開口を密閉することができる。その最初のシールは、その後、少用量医薬品パッケージ600の最初の開封時に最終使用者によって破壊され、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の投与)に対応する。別の実施形態では、少用量医薬品パッケージ600は、シール、例えばフィルム、ホイル、又はラミネートを含んでいてもよく、これは容器の開口部の上に延在し、典型的には、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐようにネック部分218の上面又は上部フランジに密閉されていてもよい。このシールは、少用量医薬品パッケージ600の最初の開封時に最終使用者によって取り除かれ、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の投与)に対応する。いくつかの実施形態では、少用量医薬品パッケージ600は、両方の初期シールを含んでいてもよい。しかしながら、少用量医薬品パッケージ600が最初の密閉状態にある場合であっても、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)は、容器壁214を介して容器210の内腔212に入る可能性があり、その結果、最終使用者がパッケージを開封する前に、内腔内に含まれる流体650が劣化することがある。従って、本発明の複数の実施形態は、酸素バリアコーティングのない容器と比較して内腔212への酸素の侵入を低減する酸素バリアコーティング288を含むことができる。その結果、酸素バリア特性が向上することで、パッケージの開封前の保存可能期間を延ばすことができる。
【0197】
使用中、アプリケータ620、より具体的にはアプリケータの投与チップ623(及び多くの場合には投与チップに隣接する本体622の一部)は、服用者の口の中に挿入され、医療用流体は服用者の口の中に直接投与される。その結果、アプリケータ620は細菌と接触する可能性があり、その細菌が、その後将来の使用のために医療用流体の残りが保存されている容器210の内腔212に入り、それによって内腔内に含まれている医療用流体650が汚染される可能性がある。本発明の複数の実施形態は、容器210の内腔212内に含まれる医療用流体650中の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な(例えば抗菌コーティングのない容器と比較して)、及び/又は少用量医薬品パッケージ600の内腔に入った細菌を不活性化するか殺すのに有効な、及び/又は最初の使用後の少用量医薬品パッケージの保存可能期間を延ばすのに有効な、抗菌コーティング100を含む。
【0198】
本開示の一実施形態による複数回使用されるパッケージ、特にポンプ瓶700の別の例が
図17~20に示されている。ポンプ瓶700は、壁214、より具体的には1つ以上の側壁215と底壁216とを有する容器210を含み、壁(例えば1つ以上の側壁と底壁とを合わせたもの)は、内腔212を規定し、少なくとも部分的に囲んでいる。側壁215は、本体部分217と、本体部分と比較して小さい直径を有するネック部分218とを含むことができ、本体部分とネック部分は移行領域219によって接続されている。底壁216の向かい側は、内腔内に保存された流体を容器から投与することができる開口部である。
【0199】
ポンプ瓶700は、容器210に固定可能であり、特に容器のネック部分218に固定可能であることができるポンプキャップ712も含み得る。ポンプキャップ712は、任意の様々な形式で容器210に固定することができる。いくつかの実施形態では、例えば、ネック部分218の外表面は、ポンプキャップを容器210のネック部分に固定するために、ポンプキャップ712の内表面上のねじ部分と嵌合するように構成されたねじ部分を備えていてもよい。
【0200】
ポンプ瓶700は、ポンプアプリケータ720をさらに備えていてもよい。ポンプアプリケータ720は、キャップ712の一部を形成していてもよい、及び/又はキャップ712に取り付けられていてもよい。ポンプアプリケータ720は、容器210の内腔212内に含まれるある量の流体を、典型的には使用者の手に吐出するように構成された出口721を備える。ポンプアプリケータ720は、容器212の内腔内に延在し、望ましくは容器の底壁216に近接する浸漬管722も備えていてもよく、容器の内腔内に保存されている流体が出口721へ向かう途中にこれを通って移動する。ポンプアプリケータ720は、使用者がある量の流体を出口721から吐出することができる作動要素をさらに含み得る。例えば
図17~18に示されているものなどのいくつかの実施形態では、作動要素723は、使用者がポンプアプリケータ720の上面724を押し下げることよって手動で操作されるピストンであってよい。
【0201】
ポンプ瓶700は、瓶が使用されていないときにポンプアプリケータ720の出口721を覆う、フードとも呼ばれるキャップ725を備えていてもよい。
【0202】
ポンプ瓶700は、さらに、流体750、例えば化粧用流体を内腔212内に含む。いくつかの実施形態では、化粧用流体750は、保湿及び/又はコンディショニングクリーム又はローションなどのクリーム又はローション(例えばベビークリーム又はローションを含む)、スキンケアクリーム又はローション、アンチエイジングクリーム又はローション、毛穴クレンジングクリーム又はローション、シェービングクリーム又はローションなどのクリーム又はローションであってよい。いくつかの実施形態では、流体750は、軟膏(ointment、salve)又は医療用クリームなどの医療用流体であってもよい。いくつかの実施形態では、流体750は、香水又はオーデコロンなどのフレグランス組成物であってもよい。
【0203】
図19に示されているように、ポンプ瓶700の複数の実施形態は、容器壁214の内表面の少なくとも一部(例えば側壁215及び/又は底壁216の内表面)、すなわち内腔212内に保存される流体と接触する表面に抗菌コーティング100を含む。なお、
図19は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、抗菌コーティング100は容器壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0204】
図20に示されているように、ポンプ瓶700の複数の実施形態は、バリアコーティング又は層288と、任意選択的な1つ以上のタイコーティング又は層289及びpH保護コーティング又は層286とを含むコーティングセット285も含み得る。上述した抗菌コーティング100と同様に、このコーティングセット285は、容器壁214の内表面の少なくとも一部、例えば容器の側壁215と底壁216の内表面とに適用することができる。このコーティングセット285は、例えば
図20に図示されているように、抗菌コーティング100に加えて設けられてもよく、或いは単独で、すなわち抗菌コーティングとは独立して設けられてもよい(図示せず)。通常、抗菌コーティング100と組み合わせて適用される場合、抗菌コーティングは、最も内側の層、すなわち内腔212内に保存される流体750と接触する層として適用される。なお、
図20は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、様々なコーティングは、容器壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0205】
ポンプ瓶700のいくつかの実施形態では、キャップ712、又はキャップとフードとの組み合わせは、最初に、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐ形式で(例えばキャップの本体と容器との間で圧縮され得る1つ以上のガスケットを組み込むことによって)容器210を密閉することができる。その最初のシールは、その後ポンプ瓶700パッケージの最初の開封時に最終使用者によって破壊され、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の吐出)に対応する。別の実施形態では、ポンプ瓶700は、シール、例えばフィルム、ホイル、又はラミネートを含んでいてもよく、これは容器210の開口部の上に延在し、典型的には、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐようにネック部分218の上面又は上部フランジに密閉されていてもよい。このシールは、ポンプ瓶700パッケージの最初の開封時に最終使用者によって取り除かれ、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の吐出)に対応する。それらの実施形態では、シールは別個のキャップによって覆われていてもよく、ポンプキャップ712は容器210から取り外されていてもよく、及び/又は使用者がシールを取り外した後にポンプキャップを容器に取り付けるように別個に供給されてもよい。しかしながら、ポンプ瓶700が最初の密閉状態にある場合であっても、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)は、容器壁214を介して容器210の内腔212に入る可能性があり、その結果、最終使用者がパッケージを開封する前に、内腔内の流体750が劣化することがある。従って、本発明の複数の実施形態は、酸素バリアコーティングのない容器と比較して内腔212への酸素の侵入を低減する酸素バリアコーティング288を含むことができる。その結果、酸素バリア特性が向上することで、パッケージの開封前の保存可能期間を延ばすことができる。
【0206】
使用中、使用者は、典型的には、手をポンプアプリケータ720の出口721の近くに置き、容器210の内腔から望みの量の液体750を吐出させるためのアクチュエータ723を操作する。例えば、ポンプアプリケータの上面724を押し下げる。多くの場合、特にアクチュエータ723の操作によって出口が使用者の手に向かって下方に移動し得るため、使用者の手は、ポンプアプリケータ720の出口721に接触することになる。従って、使用中、ポンプアプリケータ720は、使用者の手に存在する細菌と接触する可能性があり、その細菌が、その後将来の使用のために流体の残りが保存されている容器210の内腔212に入り、それによって流体750が汚染される可能性がある。従って、本発明の複数の実施形態は、容器210の内腔212内に含まれる流体750中の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な(例えば抗菌コーティングのない容器と比較して)、及び/又はポンプ瓶700の内腔に入った細菌を不活性化するか殺すのに有効な、及び/又は最初の使用後のポンプ瓶パッケージの保存可能期間を延ばすのに有効な、抗菌コーティング100を含む。
【0207】
本開示の一実施形態による複数回使用されるパッケージの別の図示されていない例は、化粧品瓶である。化粧品瓶は、1つ以上の側壁215と底壁216とを有する容器を含み、1つ以上の側壁と底壁とを合わせたものは、内腔212を規定し、少なくとも部分的に囲む。底壁216の向かい側は、中に入っているある量の化粧品、例えばクリームなどを取り出すために、使用者の指(それによってアプリケータとして機能する)又はアプリケータを内腔212に浸すことができるような大きさにされ構成されている開口部である。化粧品瓶は、容器上で取り外し可能で再密封可能なキャップをさらに備えてもよい。
【0208】
化粧品瓶は、例えば容器内腔内に含まれる化粧用クリーム又はローションなどの流体をさらに含む。
【0209】
化粧品瓶の複数の実施形態は、容器壁214の内表面(例えば1つ以上の側壁215及び底壁216の内表面)の少なくとも一部、すなわち内腔内に保存されている流体と接触する表面に抗菌コーティング100を含む。化粧品瓶の複数の実施形態は、バリアコーティング又は層288と、任意選択的な1つ以上のタイコーティング又は層289及びpH保護コーティング又は層286とを含むコーティングセット285も含み得る。上述した抗菌コーティング100と同様に、このコーティングセット285は、容器壁214の内表面の少なくとも一部、例えば容器の側壁215及び/又は底壁216の内表面に適用することができる。このコーティングセット285は、抗菌コーティング100に加えて設けられてもよく、或いは単独で、すなわち抗菌コーティングとは独立して設けられてもよい。通常、抗菌コーティング100と組み合わせて適用される場合、抗菌コーティングは、最も内側の層、すなわち内腔212内に保存される流体と接触する層として適用される。
【0210】
化粧品瓶のいくつかの実施形態では、キャップは、最初に、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔212に入るのを防ぐ形式で(例えばキャップの本体と容器との間で圧縮され得る1つ以上のガスケットを組み込むことによって)容器210の開口を密閉することができる。その最初のシールは、その後化粧品瓶の最初の開封時に最終使用者によって破壊され、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の取り出し)に対応する。別の実施形態では、化粧品瓶は、シール、例えばフィルム、ホイル、又はラミネートを含んでいてもよく、これは容器210の開口部の上に延在し、典型的には、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)及び/又は細菌が内腔に入るのを防ぐように容器側壁の上面又は上部フランジに密閉されていてもよい。このシールは、化粧品瓶の最初の開封時に最終使用者によって取り除かれ、これは、典型的には、瓶の最初の使用(すなわち瓶からの製品の取り出し)に対応する。いくつかの実施形態では、化粧品瓶は両方の初期シールを含み得る。しかしながら、化粧品瓶がその最初の密閉状態にある場合であっても、水分及び/又は大気ガス(例えば酸素)は、容器壁214を介して容器210の内腔212に入る可能性があり、その結果、最終使用者が瓶を開封する前に、内腔内に含まれる流体が劣化することがある。従って、本発明の複数の実施形態は、酸素バリアコーティングのない容器と比較して内腔への酸素の侵入を低減する酸素バリアコーティング288を含むことができる。その結果、酸素バリア特性が向上することで、パッケージの開封前の保存可能期間を延ばすことができる。
【0211】
使用中、使用者は、典型的には、中に含まれる化粧品、例えばクリーム又はローションを取り出すために、容器210の内腔212に手を入れる。従って、使用のたびに、将来の使用のために製品の残りが保存されている容器210の内腔212に、使用者の手に存在する細菌が容易に侵入する可能性があり、それによって製品が汚染される可能性がある。従って、本発明の複数の実施形態は、容器の内腔内に含まれる流体中の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な(例えば抗菌コーティングのない容器と比較して)、及び/又は化粧品瓶の内腔に入った細菌を不活性化するか殺すのに有効な、及び/又は最初の使用後の化粧品瓶の保存可能期間を延ばすのに有効な、抗菌コーティングを含む。
【0212】
本開示の一実施形態による複数回使用されるパッケージの別の例、特にコンタクトレンズケース800の一実施形態が、
図21~22に示されている。コンタクトレンズケースは、第1のリザーバ811と第2のリザーバ812とを有する容器810を含む。第1及び第2のリザーバ811、812のそれぞれは、側壁815と底壁816とによって規定されており、側壁と底壁とが一緒にリザーバを規定している。各リザーバ811、812の底壁816の向かい側は、そこからコンタクトレンズをリザーバに入れることができる開口部である。第1及び第2のリザーバ811、812は、典型的には連結部813によって一体に連結されている。
【0213】
コンタクトレンズケース800は、第1のキャップ821及び第2のキャップ822も備えていてもよく、第1及び第2のキャップ821、822のそれぞれは、第1及び第2のリザーバ811、812のうちの1つの開口部を閉鎖するように構成される。キャップ821、822は、任意の様々な形式で容器810に固定することができる。図示の実施形態では、例えば、各リザーバ811、812の側壁815の外表面は、キャップを容器に固定するためにキャップ821、822の内表面上のネジ部分823と嵌合するように構成されたネジ部817を備えていてもよい。
【0214】
コンタクトレンズケース800は、購入時に、容器の内腔が複数回使用される化粧品及び/又はフレグランス製品で満たされる製品パッケージではなく、リザーバが空の状態で通常購入されるコンタクトレンズ用の再利用可能な保管容器として機能するという点で、本明細書に記載の別の実施形態とは異なる。そのため、コンタクトレンズケース800は、開封前の保存可能期間を有さず、従って、本明細書に記載されている性質の酸素バリアコーティングは不要である。しかしながら、第1及び第2のリザーバ811、812のそれぞれを規定する壁の少なくとも一部、及び/又は内表面の少なくとも一部、例えば第1及び第2のキャップ821、822のそれぞれの下側は、本明細書に記載の性質の抗菌コーティング100でコーティングされ得る。
【0215】
使用中、第1及び第2のリザーバ811、812のそれぞれは、典型的には、コンタクトレンズを洗浄、すすぎ洗い、及び/又は消毒するように構成され得るコンタクトレンズ液で部分的に満たされており、コンタクトレンズが使用者の指で保存のために各リザーバに入れられ、第1及び第2のリザーバの上で第1及び第2のキャップ821、822が締められる。そして、保存期間の後、使用者は、第1及び第2のキャップ821、822のそれぞれを取り外し、再び指を使用してリザーバ811、812からコンタクトレンズを取り出す。その結果、第1及び第2のリザーバ811、812のそれぞれは、コンタクトレンズの挿入時と取り出し時の両方で、使用者の手からの細菌と接触する可能性がある。同様に、使用者が第1及び第2のキャップ821、822のそれぞれを取り外す際に、キャップの内表面が、使用者の手及び/又はそれらが置かれ得る様々な表面のいずれかと接触する可能性があり、そのいずれかに細菌が含まれている可能性がある。従って、コンタクトレンズ液及び/又はコンタクトレンズは、汚染された環境に保存のために封入される可能性がある。
【0216】
本発明の複数の実施形態は、コンタクトレンズケース800のリザーバ811、812内の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な(例えば抗菌コーティングのないコンタクトレンズケースと比較して)、及び/又はコンタクトレンズケースのリザーバに入った細菌を不活性化するか殺すのに有効な、及び/又は最初の使用後のコンタクトレンズケースの保存可能期間を延ばすのに有効な、抗菌コーティング100を含む。
【0217】
図22に示されているように、コンタクトレンズケース800の複数の実施形態は、壁214、例えば各リザーバ211、212の側壁215及び/又は底壁216の内表面の少なくとも一部に抗菌コーティング100を含み得る。同様に、コンタクトレンズケース800の複数の実施形態は、第1及び第2のキャップ821、822のそれぞれ内表面、例えば下面に、抗菌コーティング100を含み得る。なお、
図22は縮尺通りに描かれることは意図されておらず、抗菌コーティング100は、容器及びキャップ壁214の厚さに対して非常に薄いコーティングとして適用することができる。
【0218】
本開示の一実施形態による複数回使用パッケージ、特に複数回用量の吸入器又は定量吸入器(MDI)900の別の例が
図23に示されている。複数回用量の吸入器900は、側壁215と底壁216とを有する例えばキャニスターなどの容器210を含み、側壁と底壁は一緒に内腔212を規定し少なくとも部分的に囲んでいる。側壁215は、本体部分217と、本体部分と比較して小さい直径を有するネック部分218とを含むことができ、本体部分とネック部分は移行領域219によって接続されている。底壁216の向かい側は、内腔212内に保存された流体を容器210から投与することができる開口部である。キャニスター210は、計量チャンバー921と、キャニスターの頂部から延びる計量バルブステム922とを含み得る計量バルブ920をさらに備えていてもよい。計量バルブ920は、内腔内に保存された流体を容器から投与することができるキャニスターの開口部として機能することができる。
【0219】
キャニスター210は、容器に固定可能であり、特に容器のネック部分218に固定されることができ最初の使用前に計量バルブステム922を覆うことができるキャップも備えていてもよい。
【0220】
複数回用量の吸入器900は、アクチュエータ930をさらに含み得る。アクチュエータ930は、第1の端部にマウスピース931を有し、反対側の端部にキャニスター210を受け入れるような大きさにされ構成された開口部932を有するプラスチック本体を備えることができる。アクチュエータ930は、キャニスター210の計量バルブステム922を受け入れるように構成されたシート933と、流体内容物をマウスピース931から噴霧するように構成されたノズル934とをさらに含み得る。アクチュエータ930は、使用されていないときにマウスピース931を覆うように構成されたキャップも備えていてもよい。
【0221】
複数回用量の吸入器900は、キャニスターの内腔212内に流体950、例えば医療用流体をさらに含む。いくつかの実施形態では、医療用流体950は、患者の肺への投与のために処方された薬剤含有溶液であってもよい。いくつかの実施形態では、薬剤含有溶液は、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、又は他の呼吸器疾患を治療するように構成されたものなどの呼吸器系薬剤を含み得る。いくつかの実施形態では、例えば、医療用流体950は、1種以上の気管支拡張剤、1種以上のコルチコステロイド、又はそれらの組み合わせを含み得る。いくつかの実施形態では、医療用流体950は、クロモグリケート又はネドクロミルなどの1種以上のマスト細胞安定剤、又は1種以上のリン脂質を含み得る。流体950は、1種以上の噴射剤をさらに含み得る。いくつかの実施形態では、例えば、流体950は、例えばハイドロフルオロアルカンなどのハイドロフルオロカーボンである噴射剤を含み得る。
【0222】
使用中、キャニスター210は、アクチュエータ930に挿入され、キャニスターの計量バルブステム922がアクチュエータのシート933と動作可能に係合するように配置される。マウスピース931は、使用者の口の中に配置され、キャニスター210の底壁216を押し下げることによってアクチュエータ作動され、これにより、計量された用量の流体がキャニスターから計量バルブ920を通ってアクチュエータノズル934から排出される。薬剤は噴射剤に溶解していても懸濁されていてもよい。ノズルから排出されると、揮発性の噴射剤は微細な液滴になり、これはその後急速に蒸発してマイクロメートルサイズの薬剤粒子のエアロゾルとなり、その後、使用者の肺に吸入される。
【0223】
複数回用量吸入器900の複数の実施形態は、容器壁214の内表面(例えばキャニスターの側壁215及び/又は底壁216の内表面)、すなわち内腔212内に保存された流体950と接触する表面の少なくとも一部に抗菌コーティング100を含み得る。
【0224】
複数回用量の吸入器900の複数の実施形態は、例えばマウスピース931の内表面及び/又はノズル934とマウスピース931との間に配置されるアクチュエータ本体の内表面を含むアクチュエータ930の内表面の少なくとも一部に抗菌コーティング100を含み得る。
【0225】
使用中、複数回用量の吸入器900のマウスピース931は、使用者又は患者の口の中に配置され、アクチュエータ930は、医療用流体を使用者又は患者の肺に投与するために1回以上作動される。従って、使用中、アクチュエータ930、特にマウスピース931は、使用者又は患者の内部で細菌と接触する可能性があり、その細菌が、その後将来の使用のために医療用流体950の残りが保存されている容器210のアクチュエータ930内及び/又は内腔212に入り、それによってアクチュエータ及び/又は医療用流体が汚染される可能性がある。本発明の複数の実施形態は、容器210の内腔212内に含まれる医療用流体950中の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な(例えば抗菌コーティングのない容器と比較して)、及び/又はキャニスターの内腔に入った細菌を不活性化するか殺すのに有効な、及び/又は最初の使用後のキャニスターの保存可能期間を延ばすのに有効な、抗菌コーティング100を含む。さらに、本発明の複数の実施形態は、アクチュエータ930内の細菌などの微生物の増殖を抑制するのに有効な(例えば抗菌コーティングのないアクチュエータと比較して)、及び/又はアクチュエータの内部に入った細菌を不活性化するか殺すのに有効な、及び/又は最初の使用後のアクチュエータの保存可能期間を延ばすのに有効な、抗菌コーティング100を含み得る。
【0226】
複数回用量の吸入器900の複数の実施形態は、バリアコーティング又は層288と、任意選択的な1つ以上のタイコーティング又は層289及びpH保護コーティング又は層286とを含むコーティングセット285を有するキャニスター210も含み得る。上述した抗菌コーティング100と同様に、このコーティングセット285は、容器壁214の内表面の少なくとも一部、例えば容器の側壁215及び/又は底壁216の内表面に適用することができる。このコーティングセット285は、抗菌コーティング100に加えて設けられてもよく、或いは単独で、すなわち抗菌コーティングとは独立して設けられてもよい。通常、抗菌コーティング100と組み合わせて適用される場合、抗菌コーティングは、最も内側の層、すなわち内腔212内に保存される流体と接触する層として適用される。
【0227】
ガスバリアコーティング
上述したように、本開示の複数の実施形態は、酸素バリアコーティングなどのガスバリアコーティングを含み得る。いくつかの実施形態では、ガスバリアコーティングは、酸素ガスバリアを含んでよい、及び/又は後述する「三層」コーティングセットなどのコーティングセットの一部であってもよい。
【0228】
容器及びコーティングセット
図24及び
図25の詳細図によって最も広く示される本発明の一態様は、内腔212を囲む壁214と、内腔212に面する壁214の少なくとも一部の上の容器コーティング又は層のセット285とを含む容器210である。容器は、上述した複数回用量の容器のいずれか、又は化粧品又はフレグランス組成物を収容及び/又は含むように構成された任意の他の容器であってよい。
【0229】
容器コーティング又は層のセット285の一実施形態は、少なくとも1つのタイコーティング又は層289、少なくとも1つのバリアコーティング又は層288、及び少なくとも1つのpH保護コーティング又は層286であり、
図24~25に示されている。容器コーティング又は層のセットのこの実施形態は、「三層コーティング」として認識される場合があり、この実施形態では、SiO
xのバリアコーティング又は層288は、それぞれ本明細書で定義されるSiO
xC
yの有機層であるpH保護コーティング又は層286とタイコーティング又は層289との間に挟まれることによって、これが除去されるほどに十分に高いpHを有する内容物から保護される。この三層コーティングの具体的な例は、本明細書において提供される。それぞれの層の好ましいと考えられる厚さ(nm)(括弧内に好ましい範囲)は、「三層の厚さの表」に示されている。
【0230】
【0231】
三層コーティングセット285は、基材、すなわち容器壁へのバリアコーティング又は層の接着を改善する接着又はタイコーティング又は層289を第1の層として含む。接着又はタイコーティング又は層289は、バリアコーティング又は層288への応力を緩和し、熱膨張又は収縮又は機械的衝撃による損傷をバリア層が受けにくくするとも考えられる。接着若しくはタイコーティング又は層289は、バリアコーティング又は層288と基材との間の欠陥を取り除くとも考えられる。これは、接着又はタイコーティング又は層289が適用されるときに形成される可能性のあるピンホール又は他の欠陥が、バリアコーティング又は層288が適用されるときに継続しない傾向がある結果、一方のコーティングにおけるピンホール又は他の欠陥が他方の欠陥と並ばないため生じると考えられている。接着又はタイコーティング又は層289は、バリア層としてある程度の有効性を有するため、バリアコーティング又は層289を通って延びる漏れ経路を与える欠陥であっても、接着又はタイコーティング又は層289によって遮断される。
【0232】
三層コーティングセット285は、第2の層として、容器壁を透過した酸素に対するバリアを提供するバリアコーティング又は層288を含む。バリアコーティング又は層288は、内腔214の内容物によるバレル壁214の組成物の抽出に対するバリアでもある。
【0233】
三層コーティングセット285は、第3の層として、pH4~8の容器の内容物から下にあるバリアコーティング又は層288を保護するpH保護コーティング又は層286を含む。パッケージが製造された時から使用される時まで容器の内容物と接触している容器壁では、pH保護コーティング又は層286は、パッケージの意図されている使用前の保存可能期間にわたって有効な酸素バリアを維持するために十分にバリアコーティング又は層288への攻撃を防止又は阻害する。
【0234】
タイコーティング又は層
タイコーティング又は層289は、少なくとも2つの機能を有する。タイコーティング又は層289の1つの機能は、基材、特に熱可塑性樹脂基材へのバリアコーティング又は層288の接着を改善することであるが、ガラス基材又は別のコーティング又は層への接着を改善するためにタイ層を使用することができる。例えば、バリア層又はコーティングの基材への接着を改善するために、接着層又はコーティングとも呼ばれるタイコーティング又は層を基材に適用することができ、またバリア層を接着層に適用することができる。
【0235】
タイコーティング又は層289の別の機能が見出された:バリアコーティング又は層288の下に適用されるタイコーティング又は層289は、バリアコーティング又は層288の上に適用されるpH保護コーティング又は層286の機能を改善することができる。
【0236】
タイコーティング又は層289は、xが0.5~2.4であり、yが0.6~3であるSiOxCyから構成されるか、それを含むか、又は本質的にそれからなることができる。或いは、原子比は、式SiwOxCyとして表すことができる。タイコーティング又は層289の中のSi、O、及びCの原子比は、いくつかの選択肢として、
・Si 100:O 50~150:C 90~200(すなわちw=1、x=0.5~1.5、y=0.9~2);
・Si 100:O 70~130:C 90~200(すなわちw=1、x=0.7~1.3、y=0.9~2)
・Si 100:O 80~120:C 90~150(すなわちw=1、x=0.8~1.2、y=0.9~1.5)
・Si 100:O 90~120:C 90~140(すなわちw=1、x=0.9~1.2、y=0.9~1.4)、又は
・Si 100:O 92~107:C 116~133(すなわちw=1、x=0.92~1.07、y=1.16~1.33)である。
【0237】
原子比はXPSにより決定することができる。従って、XPSによって測定されないH原子を考慮すると、タイコーティング又は層289は、一態様では、式SiwOxCyHz(又はその等価のSiOxCy)を有することができ、例えば、式中のwは1であり、xは約0.5~約2.4であり、yは約0.6~約3であり、zは約2~約9である。従って、典型的には、タイコーティング又は層289は、100%の炭素+酸素+ケイ素に正規化された36%~41%の炭素を含む。
【0238】
任意選択的には、タイコーティング又は層は、本明細書の他の箇所に記載されているpH保護コーティング又は層286と組成が類似又は同一であってもよいが、これは要件ではない。
【0239】
タイコーティング又は層289は、特に化学気相成長によって適用される場合、任意の実施形態において、通常5nm~100nmの厚さ、好ましくは5~20nmの厚さであることが想定されている。これらの厚さは重要ではない。一般的には、しかし必ずしもそうではないが、タイコーティング又は層289は、その機能が基材の表面特性を変えることであるため、比較的薄い。
【0240】
バリア層
バリアコーティング又は層288は、酸素、二酸化炭素、又は他のガスが容器に入るのを防ぐために、及び/又は容器の内容物がパッケージ壁の中に又はパッケージ壁を通して浸出するのを防ぐために、容器壁、特に熱可塑性樹脂容器壁の上にプラズマ励起化学気相堆積(PECVD)又は他の化学気相成長プロセスによって、任意選択的に堆積させることができる。
【0241】
本明細書で定義される任意の実施形態のバリアコーティング又は層は(特定の場合に別段の規定がない限り)、米国特許第7,985,188号に示されているような任意選択的にPECVDによって適用されたコーティング又は層である。バリア層は、任意選択的には「SiOx」コーティングとして特徴付けられ、ケイ素、酸素、及び任意選択的な他の元素を含み、x(ケイ素原子に対する酸素の比率)は、約1.5~約2.9、又は1.5~約2.6、又は約2である。xのこれらの別の定義は、本明細書における用語SiOxのあらゆる使用に適用される。
【0242】
バリアコーティング288は、SiOxを含むか又は本質的にこれからなり、xは1.5~2.9であり、2~1000nmの厚さであり、SiOxのバリアコーティング288は、内腔212に面する内表面220と、物品表面254の壁214に面する外表面222とを有し、バリアコーティング288は、コーティングされていない容器250と比較して、内腔212への大気ガスの侵入を低減するのに有効である。1つの適切なバリア組成は、例えばxが2.3であるものである。
【0243】
例えば、任意の実施形態の288などのバリアコーティング又は層は、少なくとも2nm、又は少なくとも4nm、又は少なくとも7nm、又は少なくとも10nm、又は少なくとも20nm、又は少なくとも30nm、又は少なくとも40nm、又は少なくとも50nm、又は少なくとも100nm、又は少なくとも150nm、又は少なくとも200nm、又は少なくとも300nm、又は少なくとも400nm、又は少なくとも500nm、又は少なくとも600nm、又は少なくとも700nm、又は少なくとも800nm、又は少なくとも900nmの厚さで適用することができる。バリアコーティング又は層は、最大1000nm、又は最大900nm、又は最大800nm、又は最大700nm、又は最大600nm、又は最大500nm、又は最大400nm、最大300nm、又は最大200nm、又は最大100nm、又は最大90nm、又は最大80nm、又は最大70nm、又は最大60nm、又は最大50nm、又は最大40nmnm、又は最大30nm、又は最大20nm、又は最大10nm、又は最大5nmの厚さであってよい。20~200nm、任意選択的には20~30nmの範囲が想定される。上で示した最小厚さのいずれか1つに、上で示した最大厚さのいずれか1つ以上を加えたものから構成される特定の厚さ範囲が明確に想定される。
【0244】
SiOx又は他のバリアコーティング又は層の厚さは、例えば透過型電子顕微鏡(TEM)により測定することができ、その組成はX線光電子分光法(XPS)により測定することができる。
【0245】
xが1.5~2.9であるSiOxのバリアコーティング又は層286は、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって熱可塑性樹脂壁214に直接的に又は間接的に適用され(例えばタイコーティング又は層289がそれらの間に介在することができる)、その結果、充填された容器210内で、バリアコーティング又は層286が、熱可塑性樹脂壁214の内側又は内表面220と流体218との間に配置される。
【0246】
SiOxのバリアコーティング又は層286は、熱可塑性樹脂壁214によって支持される。本明細書の他の箇所又は米国特許第7,985,188号に記載されているバリアコーティング又は層286を、任意の実施形態で使用することができる。
【0247】
本明細書で定義されるSiOxなどの特定のバリアコーティング又は層286は、特にバリアコーティング又は層が内容物に直接接触する場合には、本明細書の他の箇所に記載されているようなコーティングされた容器の特定の比較的高いpHの内容物による攻撃の結果として、6ヶ月未満でバリア改善度が測定可能に減少する特徴を有することが判明している。この問題は、本明細書で説明されるように、pH保護コーティング又は層を使用して対処することができる。
【0248】
SiOxのバリアコーティング又は層286は、本明細書の他の箇所で説明されるように、プライマーコーティング又は層283としても機能することができる。
【0249】
pH保護コーティング又は層
SiOxのバリア層又はコーティングは、一部の流体、例えば約5を超えるpHを有する水性組成物によって浸食又は溶解される。化学気相成長によって適用されたコーティングは非常に薄く、数十から数百ナノメートルの厚さの場合があるため、比較的遅い浸食速度であっても、製品パッケージの望ましい使用前保存可能期間よりも短い時間でバリア層の効果が除去される又は低減する可能性がある。これは、おおよそ7、より広範には5~9の範囲のpHを有する多用途の化粧品及び/又はフレグランス組成物に特に問題である。組成物のpHが高いほど、SiOxコーティングをより迅速に浸食又は溶解する。任意選択的には、この問題は、バリアコーティング若しくは層288、又は他のpH感受性材料をpH保護コーティング若しくは層286で保護することによって対処することができる。
【0250】
任意選択的には、pH保護コーティング又は層286は、それぞれ先に定義したSiwOxCyHz(又はその等価のSiOxCy)又はSiwNxCyHz又はその等価のSi(NH)xCy)から構成されるか、それらを含むか、又はそれらから本質的になることができる。Si:O:C又はSi:N:Cの原子比は、XPS(X線光電子分光法)により決定することができる。従って、H原子を考慮すると、pH保護コーティング又は層は、一態様において、式SiwOxCyHz、又はその等価のSiOxCyを有することができ、例えばwは1であり、xは約0.5~約2.4であり、yは約3であり、zは約2~約9である。
【0251】
典型的には、式SiwOxCyとして表され、Si、O、及びCの原子比は、いくつかの選択肢として:
・Si 100:O 50~150:C 90~200(すなわちw=1、x=0.5~1.5、y=0.9~2);
・Si 100:O 70~130:C 90~200(すなわちw=1、x=0.7~1.3、y=0.9~2);
・Si 100:O 80~120:C 90~150(すなわちw=1、x=0.8~1.2、y=0.9~1.5);
・Si 100:O 90-120:C 90~140(すなわちw=1、x=0.9~1.2、y=0.9~1.4);
・Si 100:O 92~107:C 116~133(すなわちw=1、x=0.92~1.07、y=1.16~1.33);
・Si 100:O 80~130:C 90~150
である。
【0252】
或いは、pH保護コーティング又は層は、X線光電子分光法(XPS)により決定される、炭素、酸素、及びケイ素を100%に正規化したときの、50%未満の炭素及び25%を超えるケイ素の原子濃度を有することができる。或いは、原子濃度は、25~45%の炭素、25~65%のケイ素、及び10~35%の酸素である。或いは、原子濃度は、30~40%の炭素、32~52%のケイ素、及び20~27%の酸素である。或いは、原子濃度は、33~37%の炭素、37~47%のケイ素、及び22~26%の酸素である。
【0253】
pH保護コーティング又は層の厚さは、例えば、
・10nm~1000nm;
・或いは10nm~1000nm;
・或いは10nm~900nm;
・或いは10nm~800nm;
・或いは10nm~700nm;
・或いは10nm~600nm;
・或いは10nm~500nm;
・或いは10nm~400nm;
・或いは10nm~300nm;
・或いは10nm~200nm;
・或いは10nm~100nm;
・或いは10nm~50nm;
・或いは20nm~1000nm;
・或いは50nm~1000nm;
・或いは10nm~1000nm;
・或いは50nm~800nm;
・或いは100nm~700nm;
・或いは300~600nm;
とすることができる。
【0254】
任意選択的には、X線光電子分光法(XPS)により決定される、炭素、酸素、及びケイ素を100%に正規化した保護層中の炭素の原子濃度は、有機ケイ素前駆体の原子式中の炭素の原子濃度よりも大きくすることができる。例えば、炭素の原子濃度が1~80原子パーセント、或いは10~70原子パーセント、或いは20~60原子パーセント、或いは30~50原子パーセント、或いは35~45原子パーセント、或いは37~41原子パーセント増加した実施形態が考えられる。
【0255】
任意選択的には、pH保護コーティング又は層の中の酸素に対する炭素の原子比は、有機ケイ素前駆体と比較して増加させることができ、及び/又はケイ素に対する酸素の原子比は、有機ケイ素前駆体と比較して減少させることができる。
【0256】
任意選択的には、X線光電子分光法(XPS)によって決定される炭素、酸素、及びケイ素の100%に正規化されたpH保護コーティング又は層のケイ素の原子濃度は、供給ガスの原子式におけるケイ素の原子濃度より低くすることができる。例えば、ケイ素の原子濃度が1~80原子パーセント、或いは10~70原子パーセント、或いは20~60原子パーセント、或いは30~55原子パーセント、或いは40~50原子パーセント、或いは42~46原子パーセント減少する実施形態が想定される。
【0257】
別の選択肢として、pH保護コーティング又は層は、有機ケイ素前駆体の合計の式と比較して原子比C:Oを増加させることができる、及び/又は原子比Si:Oを減少させることができる合計式によって特徴付けることができる任意の実施形態において想定される。
【0258】
pH保護コーティング又は層286は、一般的に、完成品におけるバリアコーティング又は層288と流体218との間に配置される。pH保護コーティング又は層286は、熱可塑性樹脂壁214によって支持される。
【0259】
pH保護コーティング又は層286は、任意選択的には、少なくとも6ヶ月間、流体218による攻撃の結果としてバリアコーティング又は層288を少なくとも実質的に溶解しない状態に保つのに有効である。
【0260】
pH保護コーティング又は層は、X線反射率(XRR)によって決定される1.25~1.65g/cm3、或いは1.35~1.55g/cm3、或いは1.4~1.5g/cm3、或いは1.4~1.5g/cm3、或いは1.44~1.48g/cm3の密度を有することができる。
【0261】
pH保護コーティング又は層は、任意選択的には、コーティングされていない表面と比較してpH保護コーティング又は層と接触する組成物の化合物又は成分の析出を防止又は低減することができる。
【0262】
pH保護コーティング又は層は、任意選択的には、約5~約9、任意選択的には約6~約8、任意選択的には約6.4~約7.8のRMS表面粗さ値(AFMにより測定)を有することができる。AFMによって測定されるpH保護コーティング又は層のRa表面粗さ値は、約4~約6、任意選択的には約4.6~約5.8とすることができる。AFMによって測定されるpH保護コーティング又は層のRmax表面粗さ値は、約70~約160、任意選択的には約84~約142、任意選択的には約90~約130とすることができる。
【0263】
pH保護の内表面は、任意選択的には、ASTM D7334-08“Standard Practicefor Surface Wettability of Coatings,Substrates and Pigments by Advancing Contact Angle Measurement”によるpH保護表面上の水滴のゴニオメータ角測定によって測定される、90°~110°、任意選択的には80°~120°、任意選択的には70°~130°の(蒸留水との)接触角を有することができる。
【0264】
パッシベーション層又はpH保護コーティング若しくは層286は、任意選択的には、以下:
【数5】
の通りに測定される減衰全反射(ATR)で測定される0.4未満のO-パラメータを示す。
【0265】
O-パラメータは、米国特許第8,067,070号で定義されており、これは0.4~0.9の最も広いO-パラメータ値を特許請求している。これは、
図6に示すように、上記式の分子と分母を求めるためにFTIR振幅対波数プロットの物理的分析から測定することができ、これは、1253cm-1における吸光度が0.0424であり、1000~1100cm-1における最大吸光度が0.08となるように波数と吸光度のスケールの補間を示す注釈があることを除いては米国特許第8,067,070号の
図5と同じであり、結果として計算上のO-パラメータは0.53になる。O-パラメータは、デジタル波数対吸光度のデータからも測定することができる。
【0266】
米国特許第8,067,070号は、共に非環状シロキサンであるHMDSOとHMDSNのみを用いた実験に基づいて、特許請求されたO-パラメータ範囲が優れたpH保護コーティング又は層を提供すると主張している。驚くべきことに、PECVD前駆体が環状シロキサン、例えばOMCTSである場合、米国特許第8,067,070号で特許請求されている範囲外のO-パラメータが、HMDSOを用いた米国特許第8,067,070号で得られるよりもさらに良い結果をもたらすことが見出された。
【0267】
或いは、いくつかの実施形態では、O-パラメータは、0.1~0.39、又は0.15~0.37、又は0.17~0.35の値を有する。
【0268】
パッシベーション層又はpH保護コーティング若しくは層286は、任意選択的には、以下:
【数6】
の通りに測定される減衰全反射(ATR)で測定される0.7未満のN-パラメータを示す。
【0269】
N-パラメータは、米国特許第8,067,070号にも記載されており、2つの特定の波数(これらの波数のいずれも範囲ではない)における強度が使用されることを除いて、O-パラメータに類似して測定される。米国特許第8,067,070号は、0.7~1.6のN-パラメータを有するパッシベーション層を特許請求している。ここでも、上述した0.7より低いN-パラメータを有するpH保護コーティング又は層286を使用して、より良いコーティングを製造することができると判断されている。或いは、N-パラメータは、少なくとも0.3、又は0.4~0.6、又は少なくとも0.53の値を有する。
【0270】
流体218が直接接触した場合のpH保護コーティング又は層286の浸食、溶解、又は浸出(関連する概念の異なる名称)の速度は、流体218が直接接触した場合のバリアコーティング又は層288の浸食の速度よりも小さい。
【0271】
pH保護コーティング又は層の厚さは、任意の実施形態において、50~500nmであると想定されており、好ましい範囲は100~200nmである。
【0272】
pH保護コーティング又は層286は、少なくとも、容器210の開封前の保存可能期間中にバリアコーティングがバリアとして機能できるのに十分な時間、流体218をバリアコーティング又は層288から隔離するのに有効である。
【0273】
ポリシロキサン前駆体から形成されたSiOxCy又はSi(NH)xCyの特定のpH保護コーティング又は層であって、そのpH保護コーティング又は層が実質的な有機成分を有するものは、流体に曝露されたときに急速には浸食されず、実際に、流体が5~9の範囲内の高いpHを有するときに浸食又は溶解がより遅くなることも見出された。例えば、pH8では、前駆体であるオクタメチルシクロテトラシロキサン又はOMCTSから製造されたpH保護コーティング又は層の溶解速度はかなり遅い。従って、SiOxCy又はSi(NH)xCyのこれらのpH保護コーティング又は層は、SiOxのバリア層を覆うために使用することができ、複数回使用される化粧品及び/又はフレグランス製品パッケージ内の流体からバリア層を保護することによってバリア層の利点を保持する。保護層は、SiOx層の少なくとも一部の上に適用され、適用されない場合に内容物がSiOx層と接触することになる容器内に保存された内容物からSiOx層を保護する。
【0274】
本発明は以下の理論の正確さに依存しないが、浸食を回避するための有効なpH保護コーティング又は層は、本開示に記載のシロキサン及びシラザンから製造できるとさらに考えられる。環状シロキサン又は直鎖シラザン前駆体、例えばオクタメチルシクロテトラシロキサン(OMCTS)から堆積されたSiOxCy又はSi(NH)xCyコーティングは、完全なままの環状シロキサン環、及び前駆体構造のより長い一連の繰り返し単位を含むと考えられている。これらのコーティングは、ナノポーラスであるが構造化され疎水性であると考えられており、これらの特性は、pH保護コーティング又は層、及び保護コーティング又は層としての成功に貢献すると考えられている。これは、例えば米国特許第7,901,783号に示されている。
【0275】
SiOxCy又はSi(NH)xCyのコーティングは、直鎖シロキサン又は直鎖シラザン前駆体、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)又はテトラメチルジシロキサン(TMDSO)から堆積することもできる。
【0276】
任意選択的には、任意の実施形態のpH保護コーティング又は層286のFTIR吸光度スペクトルは、通常約1000~1040cm-1に位置するSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と、通常約1060~約1100cm-1に位置するSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅との間で0.75より大きい比率を有する。或いは、任意の実施形態において、この比率は、少なくとも0.8、又は少なくとも0.9、又は少なくとも1.0、又は少なくとも1.1、又は少なくとも1.2であってよい。或いは、任意の実施形態において、この比率は、最大1.7、又は最大1.6、又は最大1.5、又は最大1.4、又は最大1.3であってよい。ここで記載されている任意の最小比率は、ここで記載されている任意の最大比率と組み合わせることができる。
【0277】
任意選択的には、任意の実施形態において、pH保護コーティング又は層286は、薬剤が存在しない場合、油っぽくない外観を有する。この外観は、いくつかの例では有効なpH保護コーティング又は層を、いくつかの例では油っぽい(すなわち光沢のある)外観を有することが観察されている潤滑層と区別するために観察された。
【0278】
任意選択的には、任意の実施形態におけるpH保護コーティング又は層286について、注射用の水で希釈して濃硝酸でpH8に調整した、0.2重量%のポリソルベート-80界面活性剤を含む50mMリン酸カリウム緩衝液によるケイ素溶解速度(溶解試薬の変化を避けるために薬剤の不存在下で測定)は、40℃で170ppb/日未満である。(ポリソルベート-80は、医薬品の一般的な成分であり、例えばWilmington DelawareのUniqema Americas LLCからTween(登録商標)-80として入手可能である)。
【0279】
任意選択的には、任意の実施形態におけるpH保護コーティング又は層286について、ケイ素溶解速度は、160ppb/日未満、又は140ppb/日未満、又は120ppb/日未満、又は100ppb/日未満、又は90ppb/日未満、又は80ppb/日未満である。任意選択的には、
図24~26の任意の実施形態において、ケイ素溶解速度は、10ppb/日超、又は20ppb/日超、又は30ppb/日超、又は40ppb/日超、又は50ppb/日超、又は60ppb/日超である。ここに記載されている任意の最小速度は、任意の実施形態におけるpH保護コーティング又は層286について、ここに記載されている任意の最大速度と組み合わせることができる。
【0280】
任意選択的には、任意の実施形態におけるpH保護コーティング又は層286について、pH保護コーティング又は層及びバリアコーティングの総ケイ素含有量は、容器からpH8の試験組成物に溶解した時に、66ppm未満、又は60ppm未満、又は50ppm未満、又は40ppm未満、又は30ppm未満、又は20ppm未満である。
【0281】
SiwOxCy又はその等価のSiOxCyの保護コーティング又は層は、pH保護コーティング又は層としても機能するかにかかわらず、疎水性層としての有用性も有することができる。適切な疎水性コーティング又は層、及びそれらの適用、特性、及び使用は、米国特許第7,985,188号に記載されている。本発明の任意の実施形態において、両方のタイプのコーティング又は層の特性を有する二重機能保護/疎水性コーティング又は層を提供することができる。
【0282】
一実施形態は、基材上に疎水性pH保護コーティング又は層を形成するのに有効な条件下で実施することができる。任意選択的には、pH保護コーティング又は層の疎水性特性は、ガス状反応物中の有機ケイ素前駆体に対するO2の比率を設定することによって、及び/又はプラズマを生成するために使用される電力を設定することによって設定することができる。任意選択的には、pH保護コーティング又は層は、コーティングされていない表面よりも低い濡れ張力、任意選択的には20~72ダイン/cm、任意選択的には30~60ダイン/cm、任意選択的には30~40ダイン/cm、任意選択的には34ダイン/cmの濡れ張力を有することができる。任意選択的には、pH保護コーティング又は層は、コーティングされていない表面よりも疎水性であることができる。
【0283】
容器の原子層堆積コーティング
本明細書に記載の1つ以上の層は、原子層堆積コーティングによって適用することができる。原子層堆積によって適用されるコーティングは、CVD又はPECVDによって適用されるものとは構造的に(必ずしも化学的にではないが)異なる。CVD又はPECVDによって適用されるコーティングとは対照的に、原子層堆積によって適用されるコーティングは、堆積された化合物の複数の単層から構成される。各ステップで単一の単分子層のみが堆積されるため、CVD又はPECVD中の不均一な成長によって発生する可能性のある種類の欠陥が回避される。その結果、CVD又はPECVDによって適用された(通常は同じ化学組成の)コーティングよりも大幅に高い密度を有するコーティングが得られる。コーティングは、堆積した化合物の複数の単層からなるため、コーティングは、PECVDによって適用されたコーティングよりも高度の組成的な純度及び一貫性も有し得る。
【0284】
原子層堆積プロセスでは、原料、すなわち前駆体は、一度に1つの材料を堆積させるために、重複しない時間枠で逐次的に導入することができる。各可能な吸着部位が特定の前駆体の流れで占有されると、前駆体は停止され、次の原料が導入される前にパージプロセスを完了することができ、各前駆体の1つの時間枠が1サイクルを構成する。チャンバーは、典型的には1~20mbarの真空下にあるため、残りの前駆体は流れを停止した際に排出され得る。この方式では、反応物が吸着できる部位の数が限られているためそれらが満たされると次の前駆体が導入されるまで成長が停止する点で、自己制限的な方式で堆積プロセスが継続し、材料の総厚さはサイクル数によって制御される。このプロセスは、各前駆体について継続することができ、結果としてコーティング又は層は一度に1原子層ずつ堆積される。従って、ALDは、他の堆積技術と比較して、優れた厚さの均一性と制御性を備えているのみならず、密度も増加した非常に薄いコンフォーマルな膜を成長させることができる。さらに、ALDプロセスにより、精密な組成制御が可能にされる。
【0285】
材料堆積を強化するためにプラズマを任意選択的に利用することができ、すなわち、プラズマ支援原子層堆積と呼ばれることもあるプラズマ強化原子層堆積(PEALD)を利用することができ、これにより、プラズマを使用して前駆体の解離を増加させることができ、より低い成長温度が可能になり、これは特定の熱可塑性樹脂にコーティングを適用する場合に有用な場合がある。
【0286】
ALDは、低欠陥密度で高密度の層を堆積するために有用である。一例では、熱及び/又はプラズマ強化ALDによって薄いSiOx膜を堆積させることができる。堆積温度は、30℃~120℃の範囲であってもよい。例えば、熱ALDが使用される場合、堆積温度は望ましくは80~120℃の範囲とすることができる。PEALDが使用される場合、温度は少なくとも30℃、例えば30℃~80℃、又は30℃~60℃とすることができる。
【0287】
ALD又はPEALDによるSiOx膜の堆積のための前駆体には、1種以上のケイ素含有前駆体と1種以上の酸素前駆体とが含まれる。ケイ素前駆体としては、例えば、アミノシラン;テトラジメチルアミノケイ素などのアルキルアミノシラン;1,2-ビス(ジイソプロピルアミノ)ジシラン(低温堆積用、例えば50~60℃);ジイソプロピルアミノシラン;トリス(ジメチルアミノ)シラン;ビス(エチルメチルアミノ)シラン;及びこれらの組み合わせを挙げることができる。熱ALDにおいて酸素前駆体としてオゾンが使用されてもよく、O2プラズマはPEALDで利用することができる。さらに、ケイ素前駆体(又は複数の前駆体)は、成長速度を制御するためにパルス化されてもよい。
【0288】
別の例では、ALD及び/又はPEALDは、窒化ケイ素、炭化ケイ素、及び酸化アルミニウムなどの他のバリア層材料、又はガスバリア及び/又は材料解離能力を改善することができる他のそのような材料を堆積させるために利用することができる。ALDの成長速度は遅く、制御されており、その結果材料の接着性が向上し得ることから、タイ層の必要がない場合がある。
【実施例】
【0289】
実施例
以下で示される実施例は、主に本出願の主題ではない熱可塑性樹脂製のシリンジ及びバイアルのコーティングを含むが、当業者であれば、本明細書に記載の複数回使用される化粧品及び/又はフレグランスのパッケージのための望みのコーティングセットを得るために、必要に応じて本明細書の教示を使用してコーティングパラメータを調節することができると考えられる。
【0290】
実施例1~4 pH保護層の製造条件
pH保護層の製造のために使用されるいくつかの条件を表1に示す。
【0291】
【0292】
実施例5~8
シリンジサンプルは以下の通りに製造した。「COCシリンジバレルを形成するためのプロトコル」に従って、COC8007拡張バレルシリンジを製造した。「COCシリンジバレル内部をSiOxでコーティングするためのプロトコル」に従って、シリンジバレルにSiOxバリアコーティング又は層を適用した。「COCシリンジバレル内部をOMCTSでコーティングするためのプロトコル」(以下のように修正)に従って、SiOxでコーティングされたシリンジにpH保護コーティング又は層を適用した。アルゴンキャリアガス及び酸素は、表2に記載されている場所で使用した。プロセス条件は、以下の通り又は表2に示されている通りに設定した。
・OMCTS:3sccm(使用時)
・アルゴンガス:7.8sccm(使用時)
・酸素:0.38sccm(使用時)
・出力:3ワット
・電源オン時間:10秒
実施例5、6、及び7のシリンジを、この実施例に示す通りに修正及び補完した「容器内の溶存ケイ素を測定するためのプロトコル」を使用して全抽出可能ケイ素レベル(有機ケイ素に基づくPECVDのpH保護コーティング又は層の抽出を表す)を決定するために試験した。
【0293】
ケイ素は、食塩水温浸を使用して抽出した。エラストマーの先端材料からの材料の抽出を防止するために各シリンジプランジャーの先端をPTFEテープで覆い、その後シリンジバレルベースに挿入した。シリンジバレルに、シリンジのルアーチップを通して挿入された皮下注射針から、2ミリリットルの0.9%生理食塩水を充填した。多くのプレフィルドシリンジが生理食塩水を入れて供給するために使用されるため、これは抽出可能物に適した試験である。ルアーチップは、適切な直径のPTFEビーズ片で塞いだ。ルアーチップを上に向けてシリンジをPTFEテストスタンドにセットし、50℃のオーブンに72時間入れた。
【0294】
その後、静的モードと動的モードのいずれかを使用して、シリンジバレルから生理食塩水を除去した。表2に示す静的モードに従って、シリンジプランジャーをテストスタンドから取り外し、シリンジ内の液体を容器にデカンテーションした。表2に示す動的モードに従って、ルアーチップシールを取り外し、プランジャーを押し下げて、シリンジバレルを通して液体を押し出し、内容物を容器に排出した。いずれの場合も、18.2MΩ-cmの脱イオン水を使用して各シリンジバレルから得られた液体を50mlの体積にし、分析中のナトリウムバックグラウンドを最小限に抑えるためにさらに2倍に希釈した。CVHバレルには2ミリリットル、市販のバレルには2.32ミリリットルが含まれていた。
【0295】
次に、各シリンジから回収された流体を、「容器内の溶存ケイ素を測定するためのプロトコル」を使用して、抽出可能なケイ素について試験した。使用した装置は、CetacASX-520オートサンプラーを備えたPerkin Elmer Elan DRC IIであった。次のICP-MS条件を採用した:
・ネブライザー:Quartz Meinhardt
・スプレーチャンバー:サイクロン式
・RF(無線周波数)出力:1550ワット
・アルゴン(Ar)流量:15.0L/分
・補助Ar流量:1.2L/分
・ネブライザーガス流量:0.88L/分
・積分時間:80秒
・スキャンモード:ピークホッピング
・CeOとしてのセリウムのRPq(RPqは棄却パラメータである)(m/z156:<2%)
【0296】
シリンジE、F、Gから得られた水性希釈液のアリコートを注入し、1リットル当たりマイクログラムの濃度単位でSiについて分析した。この試験の結果を表2に示す。結果は定量的ではないものの、pH保護コーティング又は層からの抽出物が、SiOxバリア層のみの抽出物よりも明らかに高いわけではないことを示している。また、静的モードでは動的モードよりもはるかに少ない抽出物が生成され、これは予想通りであった。
【0297】
【0298】
実施例9~11
3つの異なるpH保護コーティング又は層を採用したシリンジ実施例9、10、及び11を、以下の通り又は表3に示す通りであることを除いては実施例5~8と同じ方法で製造した:
・OMCTS:2.5sccm
・アルゴンガス:7.6sccm(使用時)
・酸素:0.38sccm(使用時)
・出力:3ワット
・電源オン時間:10秒
【0299】
シリンジ実施例9は、OMCTS、酸素、及びキャリアガスを使用する三成分pH保護コーティング又は層を有していた。シリンジ実施例10は、OMCTS及び酸素を使用するがキャリアガスを使用しない二成分pH保護コーティング又は層を有していた。シリンジ実施例11は、一成分pH保護コーティング又は層(OMCTSのみ)を有していた。その後、実施例9~11のシリンジを、実施例5~8について記載した通りに潤滑性について試験した。
【0300】
これらの実施例に従って製造されたpH保護コーティング又は層は、バリアコーティング又は層を備えているがpH保護コーティング又は層を備えていない同様の容器と比較して、容器の保存可能期間を延ばす保護コーティング又は層として機能するとも考えられる。
【0301】
表3:OMCTS pH保護コーティング又は層
・OMCTS:2.5sccm
・アルゴンガス:7.6sccm(使用時)
・酸素:0.38sccm(使用時)
・電源:3ワット
・電源オン時間:10秒
【0302】
実施例12~14
HMDSOが実施例12~14で前駆体として使用されたことを除いて、OMCTS前駆体ガスを使用する実施例9~11を実施例12~14で繰り返した。結果を表4に示す。これらの実施例に従って製造されたコーティングは、pH保護コーティング又は層として機能し、またバリアコーティング又は層を備えているがpH保護コーティング又は層を備えていない同様の容器と比較して容器の保存可能期間を延ばすための保護コーティング又は層としても機能すると考えられる。
【0303】
【0304】
これらの実施例に従って製造されたpH保護コーティング又は層は、バリアコーティング又は層を備えているがpH保護コーティング又は層を備えていない同様の容器と比較して、容器の保存可能期間を延ばす保護コーティング又は層として機能するとも考えられる。
【0305】
【0306】
【0307】
潤滑性及び/又は保護の測定のまとめ
表8は、上記OMCTSコーティング又は層のまとめを示す。
【0308】
【0309】
比較例26:pHに対するSiOxコーティングの溶解
ここで変更されたものを除いて、「容器内の溶存ケイ素を測定するためのプロトコル」に従う。試験溶液:pH3、6、7、8、9、及び12の50mM緩衝液を調製する。調査対象のpH値を得るために、適切なpKa値を有する緩衝液を選択する。pH3、7、8、及び12についてはリン酸カリウム緩衝液が選択され、pH6についてはクエン酸ナトリウム緩衝液が利用され、pH9についてはトリス緩衝液が選択される。ホウケイ酸ガラス製の5ml医薬品バイアルと、SiOxコーティングされた5mlの熱可塑性樹脂製の医薬品バイアルに、各試験溶液3mlを入れる。バイアルは、全て、標準的なコーティングされたストッパーで閉じ、クリンプする。バイアルを20~25℃で保存し、異なる保存時間について、バイアルに含まれる溶液中のSi含有量(重量基準のパーツ・パー・ビリオン(ppb))を誘導結合プラズマ分光計(ICP)で分析するために、様々な時点で抜き出す。
【0310】
ここで変更されたものを除いて、「平均溶解速度を決定するためのプロトコル」のSi含有量が、ガラスの溶解速度を監視するために使用される。データは、各pH条件におけるホウケイ酸ガラス又はSiO
xコーティングの溶解の平均速度を決定するためにプロットされる。pH6~8についてを表すプロットは
図26~28である。
【0311】
ppb単位におけるSiの溶解速度は、除去されたSiの総重量を決定し、次いで溶液にさらされたバイアル表面(11.65cm2)の量の表面積計算と2.2g/cm3のSiO
xの密度を使用することによって、Si溶解の予測厚さ(nm)速度に変換される。
図29は、この実施例の条件と仮定に基づいた、必要とされるSiO
xコーティングの予測される初期厚さを示す(2年間の望まれる保存可能期間の終了時に少なくとも30nmの残留SiO
xコーティングが想定されており、20~25℃で保存することが想定されている)。
図29に示されているように、コーティングの予測される初期厚さは、pH5で約36nm、pH6で約80nm、pH7で約230nm、pH7.5で約400nm、pH8で約750nm、pH9で約2600nmである。
【0312】
図29のコーティング厚さは、医薬品及びバイオテクノロジー製品の典型的ではない過酷なケースのシナリオを表している。ほとんどのバイオテクノロジー製品と多くの医薬品は冷蔵条件で保存され、典型的には室温より高い温度での保存が推奨されるものはない。一般的な経験則として、他の全ての条件が同等であれば、低温で保存すると必要な厚さが減少する。
【0313】
この試験に基づいて、以下の結論に到達する。第1に、SiOxコーティング又はガラスの溶解したSiの量は、pHの上昇と共に指数関数的に増加する。第2に、SiOxコーティングは、8未満のpHではホウケイ酸ガラスよりもゆっくりと溶解する。SiOxコーティングは時間と共に直線的に単相性の溶解を示す一方で、ホウケイ酸ガラスは、溶液への曝露の初期にはより速い溶解を示し、その後より遅い直線的な溶解を示す傾向がある。これは、SiOxコーティングの均一な組成と比較して、成形プロセス中にホウケイ酸塩上にいくらかの塩や元素が表面蓄積するためと考えられる。この結果は、8より低いpHにおけるガラスの溶解を低減するためのホウケイ酸ガラスバイアル壁上のSiOxコーティングの有用性を付随的に示唆している。第3に、医薬製剤が保存されるバイアルにPECVDが適用されたバリアコーティングは、医薬製剤がバリアコーティングと著しく相互作用する少なくともいくつかの例では、特定の医薬製剤及び提案された保存条件に(又はその逆)に適合する必要があるであろう。
【0314】
実施例27
保護コーティング又は層としての機能についてpH保護コーティング又は層を試験するために、SiOxコーティング+OMCTSのpH保護コーティング又は層でコーティングした容器を用いて実験が行われる。容器は環状オレフィンコポリマー(COC、Topas(登録商標)6013M-07)から構成される5mLのバイアルである(バイアルには通常5mLまで製品が充填される;キャップをしたときのヘッドスペースを除いた容量は約7.5mLである)。
【0315】
60個の容器の内表面を、バイアルをコーティングするのに適した装置を使用する以外は上で説明した「SiOxを用いたチューブ内部のコーティングのためのプロトコル」に従って、HMDSO前駆体ガスを使用するプラズマ励起化学気相堆積(PECVD)プロセスで生成したSiOxコーティングでコーティングする。以下の条件が使用される。
・HMDSO流量:0.47sccm
・酸素流量:7.5sccm
・RF出力:70ワット
・コーティング時間:12秒(2秒のRF出力上昇時間を含む)
【0316】
次に、SiOxコーティングと同じコーティング装置を使用する以外は上で説明した「OMCTS潤滑コーティングでCOCシリンジバレル内部をコーティングするためのプロトコル」に従って、OMCTS前駆体ガスを使用してPECVDプロセスで生成されたSiOxCyコーティングを、SiOxコーティングされたバイアルのSiOx上にコーティングする。従って、シリンジをコーティングするためのプロトコルの特別な調整は使用されない。以下の条件が使用される。
・OMCTS流量:2.5sccm
・アルゴン流量:10sccm
・酸素流量:0.7sccm
・RF出力:3.4ワット
・コーティング時間:5秒
【0317】
8個のバイアルを選択し、Perkin Elmer Optima Model 7300DV ICP-OES装置を用いて、PECVDコーティング(SiOx+SiOxCy)の総堆積量を、上で説明した「総ケイ素測定のためのプロトコル」を使用して決定する。この測定は、両方のコーティング中のケイ素の総量を決定し、それぞれのSiOxコーティングとSiOxCyコーティングを区別しない。結果を以下に示す。
【0318】
【0319】
以下の作業では、この実施例で別段の指示がない限り、「平均溶解速度の決定のためのプロトコル」に従う。溶解速度に対するpHの影響を試験するために、残りの実験では、それぞれpH4とpH8の2つの緩衝pH試験溶液を使用する。両方の試験溶液は、緩衝液としてリン酸カリウムを使用する50mM緩衝液であり、注射用水(WFI)で希釈されている(0.1um、滅菌済、ろ過済)。pHは濃硝酸でそれぞれpH4又は8に調整されている。
【0320】
25個のバイアルに、pH4の緩衝試験溶液のバイアル当たり7.5mlを充填し、他の25個のバイアルに、pH4の緩衝試験溶液のバイアル当たり7.5mlを充填する(充填レベルはバイアルの頂部までであることに注意-ヘッドスペースなし)。バイアルは、洗浄済みのブチルストッパーとアルミニウムクリンプを使用して閉じる。各pHのバイアルを2つのグループに分ける。12個のバイアルを含む各pHの1つのグループは4℃で保存し、13個のバイアルの第2のグループは23℃で保存する。
【0321】
バイアルは、1、3、6、及び8日目にサンプリングする。この実施例で別段の指示がない限り、「容器内の溶存ケイ素を測定するためのプロトコル」を使用する。分析結果は、各バイアルの緩衝試験溶液中のケイ素のppbに基づいて報告される。溶解速度は、「平均溶解速度を決定するためのプロトコル」で前述したように、1日あたりのppbで計算される。それぞれの保存温度における結果は以下の通りである。
【0322】
【0323】
pH8及びpH4におけるOMCTSに基づくコーティングの時間に対するSi溶解の観察は、pH4の速度が周囲条件でより高いことを示している。従って、溶解する初期コーティングの量を考慮して、保存可能期間の終わりに適切な厚さのコーティングを残すために最初に適用する必要がある材料の量を決定するために、pH4の速度が使用される。この計算結果は以下の通りである。
【0324】
【0325】
保存可能期間の計算
この計算に基づくと、OMCTS保護層は約2.5倍厚くする必要があり、計算上の3年間の保存可能期間を達成するために、試験されたコーティングの全質量を表す14,371ppbに対して33945ppbが溶解する。
【0326】
実施例28
上記比較例26及び実施例27の結果は、以下の通りに比較することができ、ここでの「pH保護コーティング又は層」は、実施例BBで言及されたSiOxCyのコーティングである。
【0327】
【0328】
このデータは、SiOx単独のケイ素溶解速度が、SiOxCyコーティングでもコーティングされたバイアルにおいて、pH8で2桁以上低下することを示している。
【0329】
実施例29
別の比較は、同様の加速溶解条件下で行った複数の異なる実験からの以下のデータによって示され、そのうちの1日目のデータは
図30にも示されている。
【0330】
【0331】
図30及び行A(OMCTSコーティングを有するSiO
x)対C(OMCTSコーティングを有さないSiO
x)は、OMCTSのpH保護コーティング又は層が、pH8でSiO
xコーティングに対する有効な保護コーティング又は保護層でもあることを示している。OMCTSコーティングは、1日の溶解速度を2504ug/L(本明細書で使用される「u」又はμ又はギリシャ文字「ミュー」は同じであり、「マイクロ」の略語である)から165ug/Lまで減少させた。このデータは、HMDSOに基づくSi
wO
xC
y(又はその等価のSiO
xC
y)オーバーコート(行D)が、OMCTSに基づくSi
wO
xC
y(又はその同等のSiO
xC
y)オーバーコート(行A)よりもはるかに高い溶解速度を与えたことも示している。このデータは、環状前駆体を使用することによって、直鎖前駆体よりも大きな利益が得られることを示している。
【0332】
実施例30
表9に列挙されているサンプル1~6を、実施例AAに記載の通りに作製した。詳細は以下の通りである。
【0333】
環状オレフィンコポリマー(COC)樹脂を射出成形して、5mlのバイアルのバッチを形成した。シリコンチップをバイアルの内壁に両面テープで貼り付けた。バイアルとチップは、プラズマ励起化学気相堆積(PECVD)によって二層コーティングでコーティングした。第1の層は、本開示で定義されるバリア特性を有するSiOxから構成され、第2の層は、SiOxCyのpH保護コーティング又は層であった。
【0334】
OMCTS、アルゴン、及び酸素を含む前駆体ガス混合物を各バイアル内に導入した。バイアル内のガスは、無線周波数(13.56MHz)電源によって容量結合電極間で励起した。sccm単位のモノマー流量(Fm)、sccm単位の酸素流量(Fo)、sccm単位のアルゴン流量、及びワット単位の出力(W)を表9に示す。
【0335】
kJ/kg単位の複合パラメータW/FMは、個々のガス種のプロセスパラメータW、Fm、Fo及び分子量M(g/モル)から計算した。W/FMは、重合ガスの単位質量あたりのエネルギー入力として定義される。重合ガスは、限定するものではないが、モノマーや酸素などの成長するコーティングに取り込まれるガス種として定義される。対照的に、非重合性ガスは、アルゴン、ヘリウム、及びネオンなどの(ただしこれらに限定されない)、成長するコーティングに組み込まれない種である。
【0336】
この試験では、高W/FMでのPECVD処理が、より高い架橋密度を持つオルガノシロキサンコーティングを生成する高いモノマーフラグメンテーションをもたらしたと考えられる。比較による低W/FMでのPECVD処理は、比較的低い架橋密度を有するオルガノシロキサンコーティングを生成するより低いモノマーフラグメンテーションをもたらすと考えられる。
【0337】
サンプル5、6、2、及び3の相対架橋密度を、FTIR吸光度スペクトルを測定することによって、異なるコーティング間で比較した。サンプル5、6、2、及び3のスペクトルは、
図33~
図36に示されている。各スペクトルにおいて、Si-O-Si結合の非対称伸縮モード(1060~1100cm
-1)のピーク吸光度に対する対称伸縮モード(1000~1040cm
-1)のピーク吸光度の比率を測定し、全て表9に示すようにこれら2つの測定値の比率を計算した。
図31に示されているように、それぞれの比率が複合パラメータW/FMと線形相関を有することが見出された。
【0338】
コーティングがシリコンチップ上に適用されたときに油っぽいように(光沢があり、しばしば虹色を伴う)又は油っぽくないように(非光沢)見えるか否かの質的関係も、表9のW/FM値と相関することが見出された。表9によって確認されるように、より低いW/FM値で堆積された油っぽい外観のコーティングは、より高いW/FM及びより高い架橋密度で堆積された油っぽくないコーティングと比較して、より低い対称/非対称比によって決定されるより低い架橋密度を有すると考えられる。この一般的な経験則の唯一の例外は、表9のサンプル2であった。これは、サンプル2のコーティングが薄すぎて見えなかったため油っぽくない外観を示したと考えられる。従って、サンプル2の表9では、油っぽさの観察は報告されなかった。チップは透過モードでFTIRによって分析した。赤外線スペクトルはチップとサンプルコーティングを透過し、コーティングされていないヌルチップを通る透過を差し引いた。
【0339】
表9によって確認されるように、高いpH及び温度の水溶液から下にあるSiOxコーティングを保護する、高いW/FM値で製造された油っぽくないオルガノシロキサン層は、より低いSi溶解及びより長い保存可能期間を提供することから好ましいものであった。例えば、pH8及び40℃におけるバイアルの内容物による計算上のケイ素の溶解は、油っぽくないコーティングで減少し、その結果、油っぽいコーティングの場合のはるかに短い保存可能期間及び高い溶解速度とは対照的に、あるケースにおいて得られる保存可能期間は1381日、別のケースでは1147日であった。計算上の保存可能期間は、実施例AAについて示した通りに決定した。計算上の保存可能期間は、オルガノシロキサンpH保護コーティング又は層のSi-O-Si結合の非対称伸縮モードに対する対称伸縮モードの比率にも線形相関していた。
【0340】
サンプル6は、特にサンプル5と比較することができる。表9のサンプル6のプロセス条件に従って、オルガノシロキサン、pH保護コーティング又は層を堆積させた。コーティングは、高いW/FMで堆積させた。これにより、0.958の高いSi-O-Si対称/非対称比を有する油っぽくないコーティングが得られ、84.1ppb/日の低い溶解速度(「平均溶解速度を決定するためのプロトコル」により測定)と1147日の長い保存可能期間(「計算上の保存可能期間を決定するためのプロトコル」により測定)が得られた。このコーティングのFTIRスペクトルは
図35に示されており、対称Si-O-Siピーク吸光度と比較して、比較的類似した非対称Si-O-Siピーク吸光度を示している。これは、より高い架橋密度のコーティングを示す指標であり、pH保護と長い保存可能期間に好ましい特徴である。
【0341】
表9のサンプル5のプロセス条件に従って、オルガノシロキサンpH保護コーティング又は層を堆積させた。コーティングは、中程度のW/FMで堆積させた。これにより、0.673の低いSi-O-Si対称/非対称比を有する油っぽいコーティングが得られ、236.7ppb/日の高い溶解速度(「平均溶解速度を決定するためのプロトコル」に従う)と271日の短い保存可能期間(「計算上の保存可能期間を決定するためのプロトコル」に従う)が得られた。このコーティングのFTIRスペクトルは
図13に示されており、対称Si-O-Siピーク吸光度と比較して、比較的高い非対称Si-O-Siピーク吸光度を示している。これは、より低い架橋密度のコーティングの指標であり、任意の実施形態においてpH保護と長い保存可能期間に望ましくない特徴であると考えられる。
【0342】
サンプル2は特にサンプル3と比較することができる。表9のサンプル2のプロセス条件に従ってpH保護コーティング又は層を堆積させた。コーティングは低いW/FMで堆積させた。これにより、0.582という低いSi-O-Si対称/非対称比を示すコーティングが得られ、174ppb/日の高い溶解速度と107日の短い保存可能期間が得られた。このコーティングのFTIRスペクトルは
図36に示されており、対称Si-O-Siピーク吸光度と比較して、相対的に高い非対称Si-O-Siピーク吸光度を示している。これは、より低い架橋密度のコーティングを示す指標であり、pH保護と長い保存可能期間に望ましくない特徴である。
【0343】
表9のサンプル3のプロセス条件に従って、オルガノシロキサン、pH保護コーティング又は層を堆積させた。コーティングは、高いW/FMで堆積させた。これにより、0.947の高いSi-O-Si対称/非対称比を有する油っぽくないコーティングが得られ、79.5ppb/日の低いSi溶解速度(「平均溶解速度を決定するためのプロトコル」により測定)と1381日の長い保存可能期間(「計算上の保存可能期間を決定するためのプロトコル」により測定)が得られた。このコーティングのFTIRスペクトルは
図37に示されており、対称Si-O-Siピーク吸光度と比較して、比較的類似した非対称Si-O-Siピーク吸光度を示している。これは、より高い架橋密度のコーティングの指標であり、pH保護と長い保存可能期間に好ましい特徴である。
【0344】
【0345】
実施例31
実施例27と同様の実験を、この実施例及び表10(結果が表にまとめられている)に示されている通りに変更して行った。100個の5mLのCOPバイアルを製造し、サンプルPC194についてはpH保護コーティング又は層のみを適用したことを除いて、前述したようにSiOxバリア層とOMCTSに基づくpH保護コーティング又は層でコーティングした。コーティング量は、表10に報告されているように、pH保護コーティング又は層全体を除去するためにバイアルの表面から抽出されたppbで再度測定した。
【0346】
この実施例では、いくつかの異なるコーティング溶解条件を採用した。溶解に使用した試験溶液には、0.02又は0.2重量%のいずれかのポリソルベート-80界面活性剤と、pH8を維持するための緩衝液とが含まれていた。溶解試験は、23℃又は40℃のいずれかで行った。複数のシリンジに各試験溶液を充填し、指示された温度で保存し、抽出プロファイルと抽出されたケイ素の量を決定するために複数回の間隔で分析した。次いで、「平均溶解速度を決定するためのプロトコル」に従って得られたデータを外挿することによって、長期化した保存時間についての平均溶解速度を計算した。結果は前述した通りに計算した。これは表10に示されている。特に注目すべきは、表10に示されているように、PC194のpH保護コーティング又は層を備えた充填パッケージの非常に長い計算上の保存可能期間であった。
・pH8、0.02重量%のポリソルベート-80界面活性剤、23℃の保存に基づいて21045日(57年超)。
・pH8、0.2重量%のポリソルベート-80界面活性剤、23℃の保存に基づいて38768日(100年超)。
・pH8、0.02重量%のポリソルベート-80界面活性剤、40℃の保存に基づいて8184日(22年超)。
・pH8、0.2重量%のポリソルベート-80界面活性剤、40℃の保存に基づいて14732日(40年超)。
【0347】
表10を参照すると、計算上の最も長い保存可能期間は、150ワットのRF出力レベルの使用及び対応する高いW/FM値の使用に対応していた。より高い出力レベルを使用すると、pH保護コーティング又は層の架橋密度が高くなると考えられる。
【0348】
【0349】
実施例32
pH保護コーティング又は層のFTIR吸光スペクトルに対してRF出力レベルを漸進的に増加させる効果を示す、実施例31と同様の別の一連の実験を行う。結果は表11にまとめられており、各例で、通常約1000~1040cm-1に位置するSi-O-Si対称伸縮ピークの最大振幅と、通常約1060~約1100cm-1に位置するSi-O-Si非対称伸縮ピークの最大振幅との間のより大きい対称/非対称比が示される。従って、対称/非対称比は、その他は同等な条件下で、出力レベル20Wで0.79、出力レベル40、60、又は80Wで1.21又は1.22、100ワットで1.26である。
【0350】
表11の150ワットのデータは、他のデータとは若干異なる条件下で得られたものであるため、上述した20~100ワットのデータと直接比較することはできない。表11のサンプル6及び8のFTIRデータはバイアルの上部から取得したものであり、表11のサンプル7及び9のFTIRデータはバイアルの下部から取得したものである。また、OMCTSの量は、表11のサンプル8及び9では、サンプル6及び7と比較して半分に減らした。出力レベルを150Wに維持したまま酸素レベルを下げると、表11のサンプル6及び7とサンプル8及び9を比較することによって示されるように、対称/非対称比が一層増加した。
【0351】
他の条件が同じ場合、対称/非対称比が増加すると、pHが5を超える材料が充填された容器の保存可能期間が延びると考えられる。
【0352】
表12は、表11にまとめられている実験について計算したO-パラメータ及びN-パラメータ(米国特許第8,067,070号で定義)を示している。表12に示されているように、O-パラメータは0.134~0.343の範囲、N-パラメータは0.408~0.623の範囲であり、全て米国特許第8,067,070号で特許請求されている範囲の外であった。
【0353】
【0354】
【0355】
実施例33
この実施例の目的は、ガラス、COP、及びコーティングされたバイアルからのわずかに粘性のある水溶液の回収可能性又は排出性を評価することであった。
【0356】
この調査では、(A)コーティングされていないCOPバイアル、(B)上記「SiOxでシリンジバレル内部をコーティングするためのプロトコル」、続いて「OMCTSのPH保護コーティング又は層でシリンジバレル内部をコーティングするためのプロトコル」に従って作製したSiOx+pH保護層でコーティングされたCOPバイアル、及び(C)ガラスバイアル、からの注射用水中の30cps(センチポアズ)炭水化物溶液の回収を評価した。
【0357】
2.0mlの炭水化物溶液を、それぞれガラス、COP、及びpH保護コーティングされたバイアルの30個のバイアルにピペットで入れた。23ゲージ、1.5インチの針を通して、10mlシリンジでバイアルから溶液を吸引した。回収量を最大にするために、溶液を吸引する際にバイアルを片側に傾けた。全てのバイアルについて、同じ手法と同様の回収時間を使用した。2.0mlの溶液をバイアルに入れてから溶液をバイアルから吸引した後、空のバイアルを秤量した。バイアルに供給された量(A)は、2.0mlの溶液が入っているバイアルの重量から空のバイアルの重量を差し引くことによって決定した。回収されなかった溶液の重量(B)は、バイアルから溶液を吸引した後のバイアルの重量から空のバイアルの重量を差し引くことによって決定した。未回収率は、BをAで割ってから100を掛けることによって決定した。
【0358】
医薬品の吸引の間、ガラスバイアルが溶液で濡れたままであることが観察された。COPバイアルは溶液がバイアルから吸引されると、液体をはじいた。これは回収に役立ったが、吸引中に液滴がバイアルの側壁に付着することが観察された。pH保護コーティングされたバイアルも吸引中に液体をはじいたが、側壁での溶液の液滴の付着は観察されなかった。
【0359】
結論は、pH保護コーティングされたバイアルが、ガラス製バイアルのようには水溶液で濡れず、ガラスと比較して医薬品の優れた回収をもたらすということであった。pH保護コーティングされたバイアルは、水性製品の吸引中に側壁に溶液液滴の付着を引き起こすことが観察されなかったため、コーティングされたバイアルは、製品回収実験においてコーティングされていないCOPバイアルよりも優れた性能を発揮した。
【0360】
pH保護コーティング又は層の疎水性の特徴は、pH保護コーティング又は層がバリアコーティング又は層上に適用されるか否かにかかわらず、及び/又は任意のそのようなバリアコーティング又は層を溶解から保護することが意図されているか否かにかかわらず、本開示の複数回使用される化粧品及び/又はフレグランスパッケージにおいて大きな利益/用途を有し得る。例えば、疎水性コーティング又は層は、容器の内腔内に含まれる水性流体が容器の壁に付着しないため、例えばアプリケータによる抽出のために、容器の内腔内に含まれる水性流体をより多く利用可能にするのに有用な場合がある。
【0361】
実施例34
シリンジサンプルは以下の通りに製造した。「COCシリンジバレルを形成するためのプロトコル」に従って、COC8007拡張バレルシリンジを製造した。「COCシリンジバレル内部をSiOxでコーティングするためのプロトコル」に従って、一部のシリンジにSiOxコーティング又は層を適用した。以下の通りに修正した「COCシリンジバレル内部をOMCTS潤滑コーティングでコーティングするためのプロトコル」に従って、pH保護コーティング又は層をSiOxでコーティングしたシリンジに適用した。OMCTSは揮発性が低いため、気化器から供給した。アルゴンキャリアガスを使用した。プロセス条件は以下の通りに設定した:
・OMCTS:3sccm
・アルゴンガス:65sccm
・出力:6ワット
・時間:10秒
【0362】
コーターは、後に、表で特定されたサンプルを製造している間に少量の漏れがあることが判明し、その結果、推定酸素流量は1.0sccmとなった。サンプルは、酸素を導入せずに製造した。
【0363】
これらの実施例に従って製造したコーティングは、プライマーコーティング又は層として機能し、バリアコーティング又は層を備えているがpH保護コーティング又は層を備えていない同様の容器と比較して、容器の保存可能期間を延ばすための保護コーティング又は層としても機能すると考えられる。
【0364】
三層コーティングのためのPECVDプロセス
本明細書に記載のPECVD三層コーティングは、例えば1~5mLの容器に対して以下のように適用することができる。2つの具体的な例は、1mLの熱可塑性樹脂製シリンジと5mLの熱可塑性樹脂製薬剤バイアルである。本出願は、これらのシリンジ及びバイアルを具体的に対象とするものではないが、様々な多用途の化粧品及び/又はフレグランスのパッケージ向けのより大きい又はより小さい容器は、当業者が本明細書の教示を考慮して実行できるパラメータの調整を必要とするであろう。
【0365】
使用される装置は、本明細書に一般的に記載されているような回転する四重極磁石を備えたPECVD装置である。
【0366】
1mLのシリンジバレルの三層コーティングについての一般的なコーティングパラメータ範囲(かっこ内に好ましい範囲を含む)が、「PECVD三層プロセスの基本パラメータ表(1mLシリンジ及び5mLバイアル)」に示されている。
【0367】
【0368】
実施例35
1mLシリンジ及び5mLバイアルに使用した具体的なコーティングパラメータの例が、「PECVD三層プロセスの特定のパラメータの表」(1mLシリンジ及び5mLバイアル)に示されている。
【0369】
【0370】
上述した1mLシリンジに適用されたpH保護コーティング又は層のO-パラメータ及びN-パラメータの値は、それぞれ0.34及び0.55である。
【0371】
5mLバイアルに適用されたpH保護コーティング又は層のO-パラメータ及びN-パラメータの値は、それぞれ0.24及び0.63である。
【0372】
実施例36
図38及び表、実施例36を参照すると、固定針(PECVD堆積中に存在する)及び示された三層コーティング(平均厚さ:接着又はタイコーティング又は層38μm;バリアコーティング又は層55nm、pH保護コーティング又は層273nm)を有する1mLシリンジの長さに沿った4つの異なる地点での厚さの均一性が示されている。表は、4つのマークされた地点における個々の層の厚さを示し、高プロファイルシリンジバレルに沿った各地点における各層の十分な厚さを示している。
【0373】
【0374】
図39を参照すると、プロットは、
図38に示されたバレルの円筒形内表面部分の上のコーティング厚さを、長方形を形成するように広げたようにマッピングしている。三層コーティングの厚さの全体的な範囲は、572±89nmである。
【0375】
図40は、
図38に示されている地点2におけるCOPシリンジ基材上の三層コーティングの断面を示す顕微鏡写真である。
【0376】
図38~40の三層コーティングと同様のコーティングを有するシリンジを、本明細書に記載のケイ素溶解及び外挿法を使用して保存可能期間について試験し、二層コーティング(タイコーティング又は層がないことを除いて三層コーティングと同様)を有するシリンジ及びバリア層を有さずシリンジの熱可塑性樹脂製バレルに直接適用されたpH保護コーティング又は層のみの単層コーティングを有するシリンジと比較する。試験溶液は、0.2%Tween、pH8リン酸緩衝液であった。単層コーティングと三層コーティングの外挿した保存可能期間は類似しており、非常に長く、14年程度であった。二層コーティングを有するシリンジの保存可能期間ははるかに短く、2年未満であった。言い換えると、pH保護層の下にバリア層が存在すると、コーティングの保存可能期間が大幅に短くなるが、保存可能期間は、バリア層の下にタイコーティング又は層を設け、バリアコーティング又は層をそれぞれのSiO
xC
y層で挟むことによって回復した。バリア層はガスバリア性を確立するために必要であるため、単層コーティングはそれ自体では十分なガスバリア性を得ることは期待できないだろう。従って、三層コーティングのみが、露出したバリアコーティング又は層を攻撃する溶液と接触している間であっても、ガスバリア特性と長い保存可能期間の組み合わせを有していた。
【0377】
実施例37
図41及び42は、5mLバイアルの三層コーティング分布を示しており、これは、内径に比べてはるかに短いため、均一にコーティングしやすく、コーティングの厚さのばらつきがほとんどなく、表面の大部分が三層の150~250nmの厚さでコーティングされており、容器のわずかな部分のみが50~250nmの三層でコーティングされた。
【0378】
実施例38
図43は、バイアルの位置によるコーティング厚さ(nm)の内訳を示す。「バイアルコーティングの分布の表」は、コーティングの均一性を示している。
【0379】
【0380】
実施例39
図44は、上述した三層バイアルコーティングの完全性を示す目視試験の結果である。
図44及び44Aの3つの5mLの環状オレフィンポリマー(COC)バイアルは、それぞれ以下の通りであった:
・コーティングなし(左のバイアル)、
・本明細書に記載の二層コーティング(バリアコーティング又は層+pH保護コーティング又は層-三層コーティングの第2及び第3の構成要素)でコーティングされたもの(中央のバイアル)、及び
・上記三層コーティングでコーティングされたもの(右のバイアル)。
【0381】
3つのバイアルをそれぞれ1Nの水酸化カリウムに4時間曝露し、その後、コーティングで保護されていない熱可塑性樹脂バイアル内の露出部分を黒くする酸化ルテニウム(RuO4)染料に24時間暴露した。高pHの水酸化カリウムへの暴露により、バリアコーティング又は層の露出部分がかなりの速度で浸食されるが、無傷のpH保護コーティング又は層によって大幅に低減される。特に、高pHに暴露されると、コーティング系にピンホールが生じる。
図44に示されているように、コーティングされていないバイアルは完全に黒色であり、有効なコーティングがないことを示している。二層コーティングは、処理条件下でほとんど無傷であったが、顕微鏡検査では、ルテニウム染色がコーティングを通して熱可塑性樹脂基材に到達した多くのピンホール(
図44Aによって示される)を有する。二層コーティングの全体的な外観は、染色が浸透した目に見える「汚れた」領域をはっきりと示している。しかしながら、三層コーティングはバイアル全体を染色の浸透から保護し、図示されたバイアルは処理後も透明のままである。これは、バリアコーティング又は層を2つのSiOxCy層の間に挟んだ結果であると考えられ、これは、バリア層をダイレクトエッチングから保護し、バリア層のフレークのアンダーカット及び除去からも保護する。
【0382】
総ケイ素測定のプロトコル
このプロトコルは、容器壁全体に存在するケイ素コーティングの総量を決定するために使用される。溶液又は成分とガラスとの接触を避けるように注意しながら、0.1Nの水酸化カリウム(KOH)水溶液の供給を準備する。使用する水は18MΩの品質の純水である。別段の指示がない限り、測定にはPerkin Elmer Optima Model 7300DV ICP-OES装置を使用する。
【0383】
試験する各装置(バイアル、シリンジ、チューブなど)、並びにそのキャップ及びクリンプ(バイアルの場合)又は他の蓋を、0.001gまで空の状態で秤量し、次いでKOH溶液で完全に満たし(ヘッドスペースなし)、蓋をし、クリンプし、再度0.001gまで秤量する。温浸工程では、各バイアルを121℃のオートクレーブオーブン(液体サイクル)内に1時間入れる。温浸工程は、容器壁からKOH溶液中にケイ素コーティングを定量的に除去するために行われる。この温浸工程の後、バイアルをオートクレーブオーブンから取り出し、室温まで放冷する。バイアルの内容物をICPチューブに移す。総Si濃度は、ICP/OESの操作手順に従って、ICP/OESによって各溶液について実行する。
【0384】
総Si濃度は、KOH溶液中のSiのppbとして報告される。この濃度は、温浸工程を使用して除去する前に容器壁にあったケイ素コーティングの総量を表す。
【0385】
総Si濃度は、SiOxバリア層が適用され、次いでSiOxCyの第2の層(例えば潤滑層又はプライマーコーティング若しくは層)が適用された際にSiOxCy層のみの総ケイ素濃度を知ることが望まれるときのように、容器上の全てのケイ素層よりも少ない層について決定することもできる。この決定は、SiOx層のみが適用された容器セットと、同じSiOx層が適用された後にSiOxCy層又は他の目的の層が適用された容器セットの2つの容器セットを準備することによって行われる。容器の各セットの総Si濃度は、上述したものと同じ方法で決定される。2つのSi濃度の差は、SiOxCyの第2の層の総Si濃度である。
【0386】
容器内の溶存ケイ素を測定するためのプロトコル
いくつかの実施例では、例えば試験溶液の溶解速度を評価するために、試験溶液によって容器壁から溶解したケイ素の量をパーツ・パー・ビリオン(ppb)単位で決定する。この溶存ケイ素の決定は、試験条件下でSiOx及び/又はSiOxCyコーティング又は層を備えた容器に試験溶液を保存し、次いで容器から溶液のサンプルを取り出し、サンプルのSi濃度を試験することによって行われる。試験は、「総ケイ素測定のためのプロトコル」の温浸工程を、このプロトコルに記載されている容器内の試験溶液の保存に置き換えた以外は、「総ケイ素測定のためのプロトコル」と同じ方法で行われる。総Si濃度は、試験溶液中のSiのppbとして報告される。
【0387】
平均溶解速度を決定するためのプロトコル
実施例で報告される平均溶解速度は以下の通りに決定される。既知の総ケイ素測定値を有する一連の試験容器に、「総ケイ素測定のためのプロトコル」におけるバイアルにKOH溶液を充填する方法と同様の方法で、目的の試験溶液を充填する(試験溶液は、本実施例で使用される生理学的に不活性な試験溶液、又は医薬品パッケージを形成するために容器内に保存されることが意図されている生理学的に活性な医薬品とすることができる)。試験溶液は、いくつかの異なる時間それぞれの容器に保存した後、各保存時間の試験溶液中のSi濃度をppb単位で分析する。その後、それぞれの保存時間とSi濃度がプロットされる。プロットは、最も急な勾配を有する一連の実質的に線形の点を見つけるために調査される。
【0388】
Si層は試験溶液によって完全に温浸されたようには見えないものの、溶解量(ppb単位のSi)対日数のプロットは、時間と共に傾きが減少する。
【0389】
下の表10のPC194試験データについて、最小二乗線形回帰プログラムを使用して実験プロットのそれぞれ最初の5つのデータ点に対応する線形プロットを見つけることによって、溶解対時間データの線形プロットを作成する。次いで、各線形プロットの傾きを決定し、試験に適用可能な平均溶解速度を表すものとして報告し、単位時間あたりに試験溶液に溶解したSiをppb単位で測定する。
【0390】
計算上の保存可能期間を決定するためのプロトコル
実施例で報告される計算上の保存可能期間の値は、「総ケイ素測定のためのプロトコル」及び「平均溶解速度を決定するためのプロトコル」に記載されている通りにそれぞれ決定される総ケイ素測定値及び平均溶解速度の外挿によって決定される。示された保存条件下で、コーティングが完全に除去されるまで、SiOxCyプライマーコーティング又は層が平均的な溶解速度で除去されると仮定する。従って、溶解速度で割った容器の総ケイ素測定値は、試験溶液がSiOxCyコーティングを完全に溶解するのに必要な時間を示す。この時間が計算上の保存可能期間として報告される。商業上の保存可能期間の計算とは異なり、安全係数は計算されない。代わりに、計算上の保存可能期間は、破損までの計算上の時間である。
【0391】
ppb単位のSi対時間のプロットは、時間と共に傾きが減少するため、比較的短い測定時間から比較的長い計算上の保存可能期間への外挿は、実際に得られる計算上の保存性を過小評価する傾向がある「最も悪い場合」の試験であると考えられることが理解されるべきである。
【国際調査報告】