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特表2023-532852MIC抗体及び結合剤ならびにそれらの使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】MIC抗体及び結合剤ならびにそれらの使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230725BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20230725BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230725BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230725BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230725BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230725BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230725BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230725BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20230725BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/18 ZNA
C07K16/28
C12N15/63 Z
C12N5/10
C12N1/21
C12N1/19
C12N1/15
C12P21/08
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61K45/00
A61K35/17
A61K39/395 T
A61P35/00
A61P35/02
A61P43/00 121
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578860
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 US2021040445
(87)【国際公開番号】W WO2022010847
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/049,012
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】522492233
【氏名又は名称】キャンキュア, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ウー, ジェニファー トンラン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG27
4B064CA19
4B064CC24
4B064DA01
4B064DA03
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA44
4B065CA45
4C084AA19
4C084MA02
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB271
4C084ZB272
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB01
4C085BB36
4C085BB41
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG02
4C087AA01
4C087AA02
4C087BB37
4C087CA04
4C087MA02
4C087MA66
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB26
4C087ZB27
4C087ZC75
4H045AA11
4H045AA30
4H045BA09
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
本発明は、がんの治療用のMIC抗体、その抗原結合部分、及びそのMIC結合剤を提供する。
【選択図】図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域とを含む結合剤であって、前記重鎖及び前記軽鎖のフレームワーク領域が、任意選択で、前記フレームワーク領域における1~8個のアミノ酸の置換、欠失または挿入によって改変されている、前記結合剤。
【請求項2】
(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む、結合剤。
【請求項3】
重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む結合剤であって、前記VH領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域HCDR1配列、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含み、前記VL領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するLCDR1配列、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含み、前記VH領域及び前記VL領域がそれぞれヒト化フレームワーク領域配列を含む、前記結合剤。
【請求項4】
前記ヒト化VHフレームワーク領域は、IMGT IGHV4-59*11、IGHV4-30-4*01またはIGHV4-30-4*08で表されるアミノ酸配列を有するヒト生殖細胞遺伝子に由来する、請求項3に記載の結合剤。
【請求項5】
前記ヒト化VLフレームワーク領域は、IMGT IGKV1-5*01、IGKV1-5*02またはIGKV1-5*03で表されるアミノ酸配列を有するヒト生殖細胞遺伝子に由来する、請求項3または請求項4に記載の結合剤。
【請求項6】
重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む結合剤であって、前記VH領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域HCDR1配列、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含み、前記VL領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するLCDR1配列、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含み、前記VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも92%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含み、前記VL領域が、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも87%、少なくとも90%、少なくとも92%、または少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を含む、前記結合剤。
【請求項7】
前記結合剤は、MICに特異的に結合する、請求項1~6のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項8】
前記結合剤は、抗体またはその抗原結合部分である、請求項1~7のいずれかに記載の結合剤。
【請求項9】
前記結合剤は、MICに結合する抗体またはその抗原結合部分である、請求項1~8のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項10】
前記結合剤は、モノクローナル抗体、Fab、Fab′、F(ab′)、Fv、ジスルフィド結合Fc、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である、請求項8または請求項9に記載の結合剤。
【請求項11】
前記結合剤は、前記VH領域と重鎖定常領域とを含む重鎖を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項12】
前記重鎖定常領域はIgGアイソタイプである、請求項11に記載の結合剤。
【請求項13】
前記重鎖定常領域はIgG1定常領域である、請求項12に記載の結合剤。
【請求項14】
前記重鎖定常領域はIgG4定常領域である、請求項12に記載の結合剤。
【請求項15】
前記重鎖定常領域は、少なくともヒトFcガンマRIIIに対する結合アフィニティーを増加させるアミノ酸改変を含む、請求項11~14のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項16】
前記重鎖定常領域は、CDC活性を増加させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項17】
前記重鎖定常領域は、1つ以上のFcガンマレセプターへの結合を減少させる少なくとも1つのアミノ酸改変を含む、請求項11~16のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項18】
前記重鎖は、配列番号3で表されるアミノ酸配列を含む、請求項11に記載の結合剤。
【請求項19】
前記結合剤は、前記VL領域と軽鎖定常領域とを含む軽鎖を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項20】
前記軽鎖定常領域はカッパアイソタイプである、請求項19に記載の結合剤。
【請求項21】
前記軽鎖は、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含む、請求項19に記載の結合剤。
【請求項22】
前記結合剤は単一特異性である、先行請求項のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項23】
前記結合剤は二価である、請求項1~22のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項24】
前記結合剤は第2の結合ドメインを含み、前記結合剤は二重特異性である、請求項23に記載の結合剤。
【請求項25】
MICに結合する結合剤であって、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む抗体である、前記結合剤。
【請求項26】
前記結合剤は、可溶型MICに特異的に結合する、請求項1~25のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項27】
前記結合剤は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合し、配列番号36のアミノ酸配列を含むVH領域と、配列番号37のアミノ酸配列を含むVL領域とを含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の結合剤。
【請求項28】
先行請求項のいずれか1項に記載の結合剤と、薬学的に許容されるキャリヤーとを含む、医薬組成物。
【請求項29】
配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域をコードする、核酸。
【請求項30】
配列番号21で表される核酸配列を含む、請求項29に記載の核酸。
【請求項31】
配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする、核酸。
【請求項32】
配列番号22で表される核酸配列を含む、請求項31に記載の核酸。
【請求項33】
請求項1~24のいずれか1項に記載の結合剤をコードする、核酸。
【請求項34】
配列番号21及び配列番号22で表される核酸配列を含む、請求項33に記載の核酸。
【請求項35】
請求項29~34のいずれか1項に記載の核酸を含む、ベクター。
【請求項36】
請求項29~34のいずれか1項に記載の核酸、または請求項35に記載のベクターを含む、細胞株。
【請求項37】
請求項1~22のいずれか1項に記載の結合剤を発現する、細胞株。
【請求項38】
請求項36または請求項37に記載の細胞株を、前記結合剤を発現させるのに適した条件下で培養することを含む、結合剤の製造方法。
【請求項39】
前記培養から前記結合剤を回収することをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
MIC+癌を治療する方法であって、治療を必要とする対象者に、治療有効量の、請求項1~27のいずれかに記載の結合剤、または請求項28に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項41】
前記がんは、癌腫、肉腫、神経内分泌腫瘍、または悪性血液疾患である、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記がんは癌腫である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記癌腫は、任意選択で、黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、及び頭頸部癌から選択される固形腫瘍である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記がんは悪性血液疾患である、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記悪性血液疾患は、リンパ腫または多発性骨髄腫である、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象者に免疫療法を投与することをさらに含む、請求項40~45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
前記免疫療法は、養子細胞療法またはチェックポイント阻害剤を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記免疫療法は、養子細胞療法を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記養子細胞療法は、自己NK細胞、同種NK細胞、自己T細胞、CAR改変T細胞及びCAR改変NK細胞から選択される、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記免疫療法はチェックポイント阻害剤を含む、請求項46に記載の方法。
【請求項51】
前記チェックポイント阻害剤は、ヒトPD-1、ヒトPD-L1、またはヒトCTLA4に特異的に結合する抗体から選択される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブまたはイピリムマブである、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
前記結合剤の前記投与より前に、少なくとも4週間、前記対象者に化学療法が投与されない、請求項40~52のいずれか1項に記載の方法。
【請求項54】
前記結合剤は静脈内に投与される、請求項40~53のいずれか1項に記載の方法。
【請求項55】
前記結合剤は、約0.1mg/kg~約10mg/kgの用量で投与される、請求項40~54のいずれか1項に記載の方法。
【請求項56】
がんを有する対象者における循環sMICのレベルを低下させる方法であって、治療有効量の、請求項1~27のいずれか1項に記載の結合剤、または請求項28に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【請求項57】
前記がんは、癌腫、肉腫、神経内分泌腫瘍、または悪性血液疾患である、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記がんは癌腫である、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記癌腫は、任意選択で、黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、及び頭頸部癌から選択される固形腫瘍である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記がんは悪性血液疾患である、請求項57に記載の方法。
【請求項61】
前記悪性血液疾患は、リンパ腫または多発性骨髄腫である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
MIC+癌に対する免疫療法を受ける対象者の治療成績を改善させる方法であって、
a)がんを有する前記対象者に有効量の免疫療法を投与することと、
b)前記対象者に、治療有効量の、請求項1~27のいずれか1項に記載の結合剤、または請求項28に記載の医薬組成物を投与することとを含み、
前記対象者の少なくとも1つの治療成績が、前記免疫療法単独の投与と比べて改善される、前記方法。
【請求項63】
前記少なくとも1つの改善された治療成績は、安定、部分奏効または完全奏効から選択される客観的応答である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記少なくとも1つの改善された治療成績は、腫瘍量の減少である、請求項62または請求項63に記載の方法。
【請求項65】
前記少なくとも1つの改善された治療成績は、無増悪生存期間または無病生存期間である、請求項62~64のいずれか1項に記載の方法。
【請求項66】
前記免疫療法は、養子細胞療法またはチェックポイント阻害剤である、請求項62~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
前記免疫療法は養子細胞療法である、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記養子細胞療法は、自己NK細胞、同種NK細胞、自己T細胞、CAR改変T細胞及びCAR改変NK細胞を含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
前記免疫療法はチェックポイント阻害剤である、請求項66に記載の方法。
【請求項70】
前記チェックポイント阻害剤は、ヒトPD-1、ヒトPD-L1、またはCTLA4に特異的に結合する抗体を含む、請求項69に記載の方法。
【請求項71】
前記チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブまたはイピリムマブである、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
前記結合剤の前記投与より前に、少なくとも4週間、前記対象者に化学療法が投与されない、請求項62~71のいずれか1項に記載の方法。
【請求項73】
前記結合剤は静脈内に投与される、請求項62~72のいずれか1項に記載の方法。
【請求項74】
前記結合剤は、約0.1mg/kg~約10mg/kgの用量で投与される、請求項62~73のいずれか1項に記載の方法。
【請求項75】
対象者におけるMIC+癌の治療のための、請求項1~27のいずれか1項に記載の結合剤または請求項28に記載の医薬組成物の使用。
【請求項76】
免疫療法を受ける対象者におけるsMIC+癌の治療のための、請求項1~27のいずれか1項に記載の結合剤または請求項28に記載の医薬組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年7月7日に出願された米国仮出願第63/049,012号の優先権の利益を主張するものであり、この米国仮出願の全体をあらゆる目的のために参照により本明細書に援用する。
【0002】
支援資金についての記載
本発明は、米国連邦中小企業庁によって与えられた中小企業技術移転助成1R41CA206688-01A1に基づく政府支援を受けてなされたものである。政府は、本発明に一定の権利を有している。
【背景技術】
【0003】
主要組織適合複合体クラスI鎖関連分子A及びB(それぞれMICA及びMICB、一般にMICと呼ばれる)は、NKG2Dに結合するタンパク質のファミリーである。NKG2Dは、ナチュラルキラー(NK)細胞、NKT細胞、ガンマデルタT細胞のサブセット、及びヒトCD8T細胞によって発現される活性化免疫レセプターである。MICがNK細胞またはT細胞のNKG2Dに結合すると、他にも効果があるが、インビトロで、NK細胞が活性化され、CD8T細胞及びガンマデルタT細胞が共刺激される。
【0004】
MICファミリー分子は、腫瘍細胞に発現され、腫瘍細胞に対する免疫応答の抑制に関与していると考えられていることが報告されている。MICAは、MICBよりも頻繁かつ多量に腫瘍細胞表面に発現する。MICタンパク質は、膜結合型及び可溶型(sMIC)の両方で見られ、後者の型は腫瘍細胞から脱落したものである。sMICの血清レベルの上昇は、固形腫瘍、例えば、黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、胃腸(GI)癌、及び頭頸部癌などの癌腫、ならびにリンパ腫及び多発性骨髄腫などの血液癌、ならびに肉腫などの骨及び軟部組織由来の癌を含む、多くの種類のがんに関連している。膜制限型のMIC(B)は、マウスでNKG2Dを介した保護的な抗腫瘍免疫を維持することが報告されているが、可溶型は、NK細胞及びCD8T細胞でのNKG2D発現の低下とNK細胞の末梢維持障害とによってもたらされる腫瘍の進行と相関した。したがって、sMICに結合する薬剤は、患者のための治療アプローチになる可能性がある。また一方、ヒトにおけるMIC+癌の治療用に最適化された薬剤が依然として求められている。
【発明の概要】
【0005】
本明細書に開示された発明は、一部、可溶型MIC(sMIC)及び/または細胞膜結合型MIC(膜結合型MICとも呼ばれる)に特異的に結合し、治療特性の改善を示すMIC結合抗体、その抗原結合部分、及び関連する結合剤に基づく。MIC、及び特にsMICは、特定のがんの治療の重要かつ有利な治療標的である。これらのMIC結合抗体、その抗原結合部分、及び結合剤は、MIC+癌の治療におけるそのような抗体、抗原結合部分及び関連する結合剤の使用に基づく組成物及び方法を提供する。したがって、本発明は、MIC結合剤に関連する方法、組成物、キット、及び製品を提供する。
【0006】
いくつかの実施形態では、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む結合剤であって、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個のアミノ酸の置換、欠失または挿入によって改変されている、結合剤が提供される。本結合剤は、MICに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、結合剤は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、結合剤は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。本結合剤は、MICに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、結合剤は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する。
【0007】
いくつかの実施形態では、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む結合剤であって、VH領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域HCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含み、VL領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するLCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含み、VH領域及びVL領域がそれぞれヒト化フレームワーク領域を含む、結合剤が提供される。いくつかの実施形態では、ヒト化VHフレームワーク領域は、IMGT IGHV4-59*11(配列番号29)及びIGHJ4*01(配列番号30)またはIGHV4-30-4*01(配列番号31)及びIGHJ4*01(配列番号30)で表されるアミノ酸配列を有するヒト生殖細胞遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、ヒト化VLフレームワーク領域は、IMGT IGKV1-NL1*01(配列番号32)及びIMGT IGKJ1*01(配列番号33)、IMGT IGKV1-33*01(配列番号34)及びIMGT IGKJ1*01(配列番号33)、またはIMGT IGKV1-5*01(配列番号35)及びIMGT IGKJ1*01(配列番号33)で表されるアミノ酸配列を有するヒト生殖細胞遺伝子に由来する。本結合剤は、MICに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、結合剤は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する。
【0008】
いくつかの実施形態では、結合剤は、抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの実施形態では、結合剤は、モノクローナル抗体、Fab、Fab′、F(ab′)、Fv、ジスルフィド結合Fc、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である。
【0009】
いくつかの実施形態では、結合剤は、重鎖定常領域に連結した重鎖可変領域を有する。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域はIgGアイソタイプである。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域はIgG1定常領域である。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域はIgG4定常領域である。いくつかの実施形態では、重鎖可変領域及び重鎖定常領域は、配列番号3で表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、結合剤は、軽鎖定常領域に連結した軽鎖可変領域を有する。いくつかの実施形態では、軽鎖定常領域はカッパアイソタイプである。いくつかの実施形態では、軽鎖可変領域及び軽鎖定常領域は、配列番号4で表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、少なくともヒトFcガンマRIIIに対する結合アフィニティーを増加させるアミノ酸改変をさらに含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、少なくとも抗体依存性細胞傷害(ADCC)活性を増加させるアミノ酸改変をさらに含む。いくつかの実施形態では、重鎖定常領域は、CDC活性を増加させる少なくとも1つのアミノ酸改変をさらに含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、結合剤は単一特異性である。いくつかの実施形態では、結合剤は、単一特異性及び二価である。いくつかの実施形態では、結合剤は二価である。いくつかの実施形態では、結合剤は、二価及び二重特異性または多価及び多重特異性である。
【0011】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかの結合剤と、薬学的に許容されるキャリヤーとを含む医薬組成物が提供される。
【0012】
いくつかの実施形態では、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する結合剤の重鎖可変領域をコードする核酸であって、任意選択で、配列番号21で表される核酸配列を有する核酸が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する結合剤の軽鎖可変領域をコードする核酸であって、任意選択で、配列番号22で表される核酸配列を有する核酸が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される実施形態のいずれかの結合剤をコードする核酸であって、任意選択で、配列番号21及び配列番号22で表される核酸配列を有する核酸が提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMIC結合剤ポリペプチドをコードする核酸のいずれかを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される結合剤ポリペプチドのいずれかをコードする核酸、またはそのような核酸(複数可)を含むベクターを含む細胞が提供される。
【0013】
いくつかの実施形態では、MIC+癌を治療する方法であって、治療を必要とする対象者に、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む結合剤であって、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個のアミノ酸の置換、欠失または挿入によって改変されており、結合剤がsMIC及び/または膜結合型MICに特異的に結合する、治療有効量の結合剤を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、結合剤は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する。
【0014】
いくつかの実施形態では、MIC+癌を治療する方法であって、治療を必要とする対象者に、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む結合剤であって、結合剤がMICに特異的に結合する、治療有効量の結合剤を投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、結合剤は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する。
【0015】
いくつかの実施形態では、MIC+癌を治療する方法であって、治療を必要とする対象者に、治療有効量の、本明細書に記載される結合剤実施形態のいずれかを投与することを含む、方法が提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、薬学的に許容されるキャリヤーを含む医薬組成物として結合剤を投与することを含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、がんは、癌腫、肉腫、神経内分泌腫瘍、または悪性血液疾患である。いくつかの実施形態では、癌腫は、任意選択で、黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、及び頭頸部癌から選択される固形腫瘍である。いくつかの実施形態では、悪性血液疾患は、リンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫である。
【0017】
いくつかの実施形態では、方法は、対象者に免疫療法を投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、免疫療法は、養子細胞療法またはチェックポイント阻害剤である。いくつかの実施形態では、養子細胞療法は、自己NK細胞、同種NK細胞、自己T細胞、CAR改変T細胞及びCAR改変NK細胞から選択される。いくつかの実施形態では、免疫療法はチェックポイント阻害剤を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ヒトPD-1、ヒトPD-L1、またはヒトCTLA4に特異的に結合する抗体から選択される。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブまたはイピリムマブである。
【0018】
いくつかの実施形態では、方法は、結合剤の投与より前に、少なくとも4週間、少なくとも6週間、または少なくとも8週間、対象者に化学療法を投与しないステップを含む。いくつかの実施形態では、結合剤は静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、結合剤は、約0.1mg/kg~約100mg/kg、または約0.1mg/kg~約25mg/kg、または約0.1mg/kg~約20mg/kg、または約0.1mg/kg~約15mg/kg、または約0.1mg/kg~約10mg/kgの用量で投与される。
【0019】
いくつかの実施形態では、がんを有する対象者における循環sMICのレベルを低下させる方法であって、治療有効量の、本明細書に記載される実施形態のいずれかの結合剤、または本明細書に記載される結合剤実施形態のいずれかの医薬組成物を投与することであって、結合剤が循環sMICに特異的に結合する、投与することを含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、がんは、癌腫、肉腫、神経内分泌腫瘍、または悪性血液疾患である。いくつかの実施形態では、癌腫は、黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、及び頭頸部癌を含むがこれらに限定されない固形腫瘍から選択される。いくつかの実施形態では、悪性血液疾患は、リンパ腫、白血病、または多発性骨髄腫である。
【0020】
いくつかの実施形態では、免疫療法を受ける対象者の治療成績を改善させる方法であって、がんを有する対象者に有効量の免疫療法を投与することと、対象者に、治療有効量の、本明細書に記載される実施形態のいずれかの結合剤、または本明細書に記載される結合剤の実施形態のいずれかの医薬組成物を投与することとを含み、結合剤が循環sMIC及び/または細胞膜結合型MICに特異的に結合し、対象者の治療成績が免疫療法単独の投与と比べて改善される、方法が提供される。いくつかの実施形態では、改善された治療成績は、安定、部分奏効または完全奏効から選択される客観的応答である。いくつかの実施形態では、改善された治療成績は、腫瘍量の減少である。いくつかの実施形態では、改善された治療成績は、無増悪生存期間または無病生存期間である。いくつかの実施形態では、免疫療法は、養子細胞療法またはチェックポイント阻害剤である。いくつかの実施形態では、養子細胞療法は、自己NK細胞、同種NK細胞、自己T細胞、CAR改変T細胞及びCAR改変NK細胞である。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ヒトPD-1、ヒトPD-L1、またはCTLA4に特異的に結合する抗体を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブまたはイピリムマブである。
【0021】
いくつかの実施形態では、結合剤の投与より前に、少なくとも4週間、少なくとも6週間または少なくとも8週間、対象者に化学療法が投与されない。いくつかの実施形態では、結合剤は静脈内に投与される。いくつかの実施形態では、結合剤は、約0.01mg/kg~約100mg/kg、または約0.01mg/kg~約25mg/kg、または約0.01mg/kg~約20mg/kg、または約0.01mg/kg~約15mg/kg、約0.01mg/kg~約10mg/kg、約0.1mg/kg~約100mg/kg、または約0.1mg/kg~約25mg/kg、または約0.1mg/kg~約20mg/kg、または約0.1mg/kg~約15mg/kg、または約0.1mg/kg~約10mg/kgの用量で投与される。
【0022】
本発明のこれら及び他の態様は、以下の詳細な説明、特定の実施形態の非限定的な例、及び添付の図面を参照することによって、より完全に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】(ヒトIgG1のFc領域に連結した)抗体B10G5のヒト化バリアントのFACSによる結合アフィニティーの分析を示す。2つのヒト化バリアント、抗体G及び抗体Kは、抗体J(Ab-J、マウスB10G5抗体のF(ab)及びヒトIgG1 Fcドメインに構成されたB10G5キメラ抗体)よりも高い平均蛍光強度(MFI)を示した。
図2A】抗体B10G5(図2A)は、抗体K(Ab-K、図2B)よりも低い(弱い)結合アフィニティーを有し、Octet Red96(ForteBio)を用いたバイオレイヤー干渉法で決定して、それぞれKd=12.1nM対7.2nMであることを示す。
図2B】抗体B10G5(図2A)は、抗体K(Ab-K、図2B)よりも低い(弱い)結合アフィニティーを有し、Octet Red96(ForteBio)を用いたバイオレイヤー干渉法で決定して、それぞれKd=12.1nM対7.2nMであることを示す。
図3A】抗体K(Ab-K)は、MIC甲状腺オンコサイトーマUC1腫瘍細胞(図3A)及び膵臓PL12細胞(図3B)のIL-2活性化初代NK細胞による殺傷の増強において、Ab-J(キメラB10G5)よりも高い活性を示すことを示す。
図3B】抗体K(Ab-K)は、MIC+甲状腺オンコサイトーマUC1腫瘍細胞(図3A)及び膵臓PL12細胞(図3B)のIL-2活性化初代NK細胞による殺傷の増強において、Ab-J(キメラB10G5)よりも高い活性を示すことを示す。
図4A】動的光散乱(DLS)アッセイで決定した、マウス抗体B10G5(図4A)、キメラAb-K抗体(ch-Ab-K、Ab-K可変ドメイン及びマウスIgG1-FC、図4B)、及び抗体K(Ab-K、ヒト化、図4C)の抗体モノマー及び凝集体のレベルを示す。
図4B】動的光散乱(DLS)アッセイで決定した、マウス抗体B10G5(図4A)、キメラAb-K抗体(ch-Ab-K、Ab-K可変ドメイン及びマウスIgG1-FC、図4B)、及び抗体K(Ab-K、ヒト化、図4C)の抗体モノマー及び凝集体のレベルを示す。
図4C】動的光散乱(DLS)アッセイで決定した、マウス抗体B10G5(図4A)、キメラAb-K抗体(ch-Ab-K、Ab-K可変ドメイン及びマウスIgG1-FC、図4B)、及び抗体K(Ab-K、ヒト化、図4C)の抗体モノマー及び凝集体のレベルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
便宜上、明細書、実施例、及び特許請求の範囲の特定の用語をここで定義する。別段の記載がない限り、または文脈から暗に示されていない限り、以下の用語及び語句は、以下に提供される意味を有する。定義は、特定の実施形態を説明するのを補助するために提供され、本発明の範囲は特許請求の範囲によってのみ限定されるため、特許請求された発明を限定することを意図するものではない。別段の規定がない限り、本明細書で使用される全ての専門用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。
【0025】
本明細書で使用するとき、特に明記しない限り、用語「a」及び「an」は、「1つ」、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味するものと解釈される。別段文脈によって要求されない限り、本明細書で使用される単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。
【0026】
文脈上明らかに別の解釈を必要とする場合を除き、明細書及び特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」、「含んでいる(comprising)」等の用語は、排他的または網羅的な意味ではなく、包括的な意味で解釈されるべきであり、すなわち、「~を含むが~に限定されない(including,but not limited to)」という意味で解釈されるべきである。
【0027】
本明細書では、「減少させる」、「低減させる」、「低減された」、「低減」、「減少する」、及び「抑制する」という用語は全て、基準に対して統計的に有意な量だけ減少することを意味するために一般的に使用される。
【0028】
本明細書では、「増加した」、「増加する」または「増強する」または「活性化する」という用語は全て、基準に対して静的に有意な量だけ増加することを意味するために一般的に使用される。
【0029】
本明細書で使用される「単離された」または「部分的に精製された」という用語は、核酸、ポリペプチドまたはタンパク質の場合、その天然源に見られるような核酸、ポリペプチドまたはタンパク質と共に存在する、及び/または細胞によって発現されたときに、または分泌ポリペプチド及び分泌タンパク質の場合には分泌されたときに、核酸、ポリペプチドまたはタンパク質と共に存在するであろう、少なくとも1つの他の成分(例えば、核酸またはポリペプチドまたはタンパク質)から分離した核酸、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。化学的に合成された核酸、ポリペプチドもしくはタンパク質、またはインビトロの転写/翻訳を用いて合成されたものが「単離された」と見なされる。「精製された」または「実質的に精製された」という用語は、対象の核酸、ポリペプチドまたはタンパク質が、重量で、例えば、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%またはそれ以上を含む、少なくとも95%である、単離された核酸、ポリペプチドまたはタンパク質を指す。
【0030】
本明細書で使用するとき、「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、隣接する残基のアルファアミノ基とカルボキシル基との間のペプチド結合によって互いに接続された一連のアミノ酸残基を示すために、本明細書では交換可能なようにして使用される。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語はまた、そのサイズまたは機能に関係なく、修飾アミノ酸(例えば、リン酸化、糖化、グリコシル化など)及びアミノ酸類似体を含むタンパク質アミノ酸のポリマーを指す。「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、比較的大きなポリペプチドに関して使用されることが多いのに対して、「ペプチド」という用語は、小さなポリペプチドに関して使用されることが多いが、当技術分野におけるこれらの用語の使用は重複する。「タンパク質」及び「ポリペプチド」という用語は、コードされた遺伝子産物及びそのフラグメントを指す場合には、本明細書では交換可能なようにして使用される。したがって、例示的なポリペプチドまたはタンパク質には、遺伝子産物、天然に存在するタンパク質、ホモログ、オルソログ、パラログ、フラグメント及び他の同等物、バリアント、フラグメント、ならびに前述の類似体が含まれる。
【0031】
主要組織適合複合体クラスI鎖関連(MIC)ポリペプチドは、細胞表面膜貫通タンパク質である。MICポリペプチドには、ヒトMICAアイソフォーム(例えばアイソフォーム1、NCBI参照配列NP_000238.1(配列番号9)及び001170990)(これらの配列は、参照により本明細書に組み込まれる)ならびに他のMICAアイソフォーム)、及びヒトMICBアイソフォーム(例えばアイソフォーム1、NCBI参照配列NP_005922.2(配列番号10)(この配列は、参照により本明細書に組み込まれる)及び他のMICBアイソフォーム)が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、MICポリペプチドはMICAを指す。いくつかの実施形態では、MICポリペプチドはMICBを指す。いくつかの実施形態では、MICポリペプチドは、MICA及びMICBの共有される構造的特徴、すなわち、MICA及びMICBによって共有されるエピトープ(複数可)を指す。
【0032】
本明細書で使用するとき、「可溶型MIC」または「sMIC」は、アルファ1及びアルファ2ドメインならびにアルファ3ドメインまたはアルファ3ドメインのタンパク質分解的切断部位までの部分を含み、膜貫通ドメイン(例えば、MICの細胞外部分)を欠く、MICポリペプチド(MICAまたはMICB)の部分を指す。いくつかの実施形態では、可溶型MICAは、Genbankアクセッション番号CAA77031.1(配列番号27)で表されるアミノ酸配列、あるいはそのバリアント、例えばGenbankアクセッション番号AAU95072.1、AAO45822.1、AFR69318.1、AFR69319.1もしくはAAH16929.1のアミノ酸残基24~297または参照配列NP_000238.1、またはGenbankアクセッション番号CAE45581.1のアミノ酸1~274、またはGenbankアクセッション番号AAD52069.1、AAD52070.1、もしくはQDW65494.1のアミノ酸1~273で表されるアミノ酸配列など(これらの開示内容は参照により本書に組み込まれる)を含むことができる。いくつかの実施形態では、可溶型MICBは、Genbankアクセッション番号ARB08539.1(配列番号28)、AAB71646.1、AAB71647.1もしくはAAB71644.1で表されるアミノ酸配列、あるいはそのバリアント、例えばGenbankアクセッション番号ABO16470.1、ABB51802.1、AAB42011.1、AAB71643.1、もしくはQ29980.1のアミノ酸残基24~297、または参照配列NP_005922.2、またはGenbankアクセッション番号AAC39848.1、AEK67483.1、AFR7773.1、AXY93666.1、CAB72098.1、もしくはAAC39849.1のアミノ酸1~273で表されるアミノ酸配列など(これらの開示内容は参照により本書に組み込まれる)を含むことができる。特に明記しない限り、用語「MIC」の使用は、MICの細胞膜結合型及び可溶型の両方を指すことを意図している。
【0033】
本明細書で使用される場合、抗体B10G5は、米国特許第9,803,017号(その開示は、全ての目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載される同じ名称のMIC抗体を指す。
【0034】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は、本明細書に記載の抗体及び結合剤など、免疫グロブリンVH/VL対によって通常結合されるアミノ酸を指す。エピトープは、隣接アミノ酸、またはタンパク質の三次フォールディングによって並列される非隣接アミノ酸からポリペプチド上に形成され得る。隣接アミノ酸から形成されたエピトープは、通常、変性溶媒にさらされても保持されるが、三次フォールディングによって形成されたエピトープは、通常、変性溶媒で処理されると失われる。エピトープは、通常は少なくとも3個、より一般的には、少なくとも5個、約9個、または約8~10個のアミノ酸を固有の空間コンホメーションに含む。エピトープは、抗体または他の結合剤の最小結合部位を定め、したがって、抗体、その抗原結合部分、または他の免疫グロブリン系結合剤の特異性の標的を表す。単一ドメイン抗体の場合、エピトープは、孤立した可変ドメインによって結合された構造単位を表す。
【0035】
本明細書で使用するとき、「特異的に結合する」とは、本明細書に記載される結合剤(例えば、抗体またはその部分)が、10-5M(10000nM)以下、例えば、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、またはそれ以下のKDでMICなどの標的に結合する能力を指す。特異的結合は、例えば、結合剤のアフィニティー及びアビディティー、ならびに標的ポリペプチドの濃度によって影響を受ける可能性がある。当業者は、適切な細胞結合アッセイにおける結合剤の滴定などの任意の適切な方法を使用して、本明細書に記載の抗体及び他の結合剤がMICに選択的に結合する適切な条件を決定することができる。MICに特異的に結合した結合剤は、非類似の競合物によって置換されることはない。特定の実施形態において、MIC抗体またはその抗原結合部分は、タンパク質及び/または高分子の複合混合物において、その標的抗原であるMICを優先的に認識するとき、MICに特異的に結合すると言われる。
【0036】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、10-5M(10000nM)以下、例えば、10-6M、10-7M、10-8M、10-9M、10-10M、10-11M、10-12M、またはそれ以下の解離定数(KD)でMICポリペプチドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-5M~10-6Mの解離定数(KD)でMICポリペプチドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-6M~10-7Mの解離定数(KD)でMICポリペプチドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-7M~10-8Mの解離定数(KD)でMICポリペプチドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-8M~10-9Mの解離定数(KD)でMICポリペプチドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-9M~10-10Mの解離定数(KD)でMICポリペプチドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-10M~10-11Mの解離定数(KD)でMICポリペプチドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、約10-11M~10-12Mの解離定数(KD)でMICポリペプチドに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、10-12M未満の解離定数(KD)でMICポリペプチドに特異的に結合する。
【0037】
本明細書で使用される場合、「抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する」という語句は、可溶型MICに対する結合アフィニティーを意味する。
【0038】
本明細書で使用するとき、用語「本質的に~からなる」は、所与の実施形態に必要である要素を指す。この用語は、その実施形態の基本的かつ新規なまたは機能的な特徴(複数可)に実質的な影響を及ぼさない要素の存在を許容する。
【0039】
「~からなる」という用語は、本明細書に記載の組成物、方法、及びこれらのそれぞれの構成要素を指し、実施形態の記述に挙げられていない要素はいずれも除外される。
【0040】
実施例、または他に指示がある場合を除き、本明細書で使用される成分量または反応条件を表す全ての数字は、全ての場合において「約」という用語によって修飾されると理解されるべきである。パーセンテージに関連して使用される「約」という用語は、+/-1%を意味する場合がある。
【0041】
「統計的に有意な」または「有意に」という用語は、統計的有意性を指し、一般に、基準値を上回るまたは下回る2標準偏差(2SD)の差を意味する。
【0042】
他の用語は、本発明の様々な態様の説明内で定義される。
【0043】
本明細書では、MICに特異的に結合するMIC結合抗体(MIC抗体またはMIC結合抗体とも呼ばれる)及びその抗原結合部分が提供される。MIC抗体は、驚くべきことに、抗体B10G5と比較して改善された特性を示す。いくつかの実施形態では、MIC抗体は、対象者内で循環している遊離sMICのレベルを低下させる。いくつかの実施形態では、MIC結合抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、MIC結合抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含み、重鎖及び軽鎖の可変フレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個、1~6個、1~4個または1~2個の保存的アミノ酸置換によって改変されており、重鎖または軽鎖可変領域のCDRが改変されていない。いくつかの実施形態では、MIC結合抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含み、重鎖及び軽鎖の可変フレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個、1~6個、1~4個または1~2個のアミノ酸の置換、欠失または挿入によって改変されており、重鎖または軽鎖可変領域のCDRが改変されていない。これらの実施形態のいずれかのさらなる態様において、MIC結合抗体またはその抗原結合部分は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する。
【0044】
いくつかの実施形態では、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む結合剤であって、結合剤がMICに特異的に結合する、結合剤が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む結合剤であって、重鎖及び軽鎖の可変フレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個、1~6個、1~4個または1~2個の保存的アミノ酸置換によって改変されており、重鎖または軽鎖可変領域のCDRが改変されていない、結合剤が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む結合剤であって、重鎖及び軽鎖の可変フレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個、1~6個、1~4個または1~2個のアミノ酸の置換、欠失または挿入によって改変されており、重鎖または軽鎖可変領域のCDRが改変されていない、結合剤が本明細書で提供される。本明細書に記載のように、結合剤は、MIC抗体またはその抗原結合部分(複数可)を含み、MIC抗体またはその抗原結合部分に共有結合した他のペプチドまたはポリペプチドを含むことができる。これらの実施形態のいずれにおいても、結合剤はMICに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、結合剤は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する。
【0045】
いくつかの実施形態では、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む結合剤であって、VH領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域HCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含み、VL領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するLCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含み、各VH及びVLがヒト化フレームワーク領域を含む、結合剤が提供される。いくつかの実施形態では、VHフレームワーク領域は、IMGT IGHV4-59*11(配列番号29)及びIGHJ4*01(配列番号30)またはIGHV4-30-4*01(配列番号31)及びIGHJ4*01(配列番号30)で表されるアミノ酸配列を有するヒト生殖細胞遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、VLフレームワーク領域は、IMGT IGKV1-NL1*01(配列番号32)及びIMGT IGKJ1*01(配列番号33)、IMGT IGKV1-33*01(配列番号34)及びIMGT IGKJ1*01(配列番号33)、またはIMGT IGKV1-5*01(配列番号35)及びIMGT IGKJ1*01(配列番号33)で表されるアミノ酸配列を有するヒト生殖細胞遺伝子に由来する。
【0046】
いくつかの実施形態では、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む結合剤であって、VH領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域HCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含み、VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、結合剤が提供される。
【0047】
いくつかの実施形態では、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む結合剤であって、VL領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するLCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含み、VL領域が、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、結合剤が提供される。
【0048】
いくつかの実施形態では、重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む結合剤であって、VH領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域HCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含み、VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、VL領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するLCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含み、VL領域が、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、結合剤が提供される。
【0049】
いくつかの実施形態では、重鎖可変(VH)領域を含む重鎖、及び軽鎖可変(VL)領域を含む軽鎖を含む結合剤であって、VH領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域HCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含み、VH領域が、配列番号1のアミノ酸配列を含み、VL領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するLCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含み、VL領域が、配列番号2のアミノ酸配列を含み、重鎖が、配列番号3のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含み、軽鎖が、配列番号4のアミノ酸配列と少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%同一であるアミノ酸配列を含む、結合剤が提供される。いくつかの実施形態では、配列番号3のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号4のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む結合剤が提供される。いくつかのそのような実施形態では、結合剤は抗体である。
【0050】
いくつかの実施形態では、MIC抗体などの本明細書で提供される結合剤は、良好な熱安定性、及び/または低レベルの凝集体(高分子量(HMW)凝集体など)を示す。MIC抗体の熱安定性は、例えば、固有タンパク質蛍光(IPF)(266nm励起、280~450nm放射スキャン)、及びUncleシステム(Unchained Labs)を使用した473nmでの静的光散乱(SLS)によってそれぞれ得ることができるTm及びTaggによって評価することができる。MIC抗体の凝集体のレベルは、例えば、HPLC-SECを使用することによって、または動的光散乱(DLS)を使用することによって測定され得る。いくつかの実施形態では、MIC抗体のHMW凝集体のレベルは、MIC抗体の総量のパーセンテージとして、抗体のモノマー及びHMW凝集体のピーク面積に基づいて、10%、9.5%、9%、8.5%、8%、7.5%、7%、6.5%、6%、5.5%、5%、4.5%、4%、3.5%、3%、2.5%、2%、1.5%、1%、または0.5%未満であり得る。つまり、MIC抗体の少なくとも90%、90.5%、91%、91.5%、92%、92.5%、93%、93.5%、94%、94.5%、95%、95.5%、96%、96.5%、97%、97.5%、98%、98.5%、99%、または99.5%は、溶液中にある場合、モノマー形態で存在する。いくつかの実施形態では、MIC抗体の多分散指数(PDI)は、DLSによって決定されて、0.1未満であり得る。
【0051】
特定の実施形態では、MIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、配列番号27または28で表されるアミノ酸配列の約66~77、136~144及び247~258のアミノ酸位置の範囲内に位置するMICA及びMICB上の立体構造エピトープに特異的に結合する。特定の実施形態では、MIC抗体もしくは抗原結合部分または他の結合剤は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを有し、本明細書に記載される任意選択で置換されたフレームワーク領域を有し、配列番号27及び28で表されるアミノ酸配列の約66~77、136~144及び247~258のアミノ酸の範囲内に位置するMICA及びMICB上の立体構造エピトープに特異的に結合する抗体B10G5との特異的結合を競合する。
【0052】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される組成物及び方法は、インビボでのMIC抗体、その抗原結合部分または他の結合剤によるsMICの免疫抑制効果(例えば、細胞レセプターNKG2Dとの相互作用に利用できるsMICのレベル及び/または活性を低下させる)の抑制に関する。いくつかの実施形態では、sMICの抑制は、結合していないMICの血清レベルの低減、ならびにNK及びCD8 T細胞上の細胞表面NKG2D発現の回復であり得る。いくつかの実施形態では、sMICの抑制は、MICのレベル(例えば、循環中のsMICのレベル)の低減であり得る。
【0053】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、すなわち、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を含有する分子を指す。この用語は、一般に、完全長抗体(重鎖及び軽鎖定常領域を有する)及びその抗原結合部分を含む、2つの免疫グロブリン重鎖可変領域及び2つの免疫グロブリン軽鎖可変領域からなる抗体を指す。例えば、無傷モノクローナル抗体、Fab、Fab′、F(ab′)、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、多重特異性抗体、デュアル特異性抗体、二重特異性抗体、及び単鎖(例えば、Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,85,5879-5883(1988)及びBird et al.,Science 242,423-426(1988)を参照されたい(これらは参照により本明細書に組み込まれる))を含む。
【0054】
各重鎖は、可変領域(VHと略される)及び定常領域で構成される。重鎖定常領域は、3つのドメインCH1、CH2及びCH3、ならびに任意選択で第4のドメインCH4を含み得る。各軽鎖は、可変領域(VLと略される)及び定常領域で構成される。軽鎖定常領域はCLドメインである。VH及びVL領域は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域にさらに分割され得、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる保存領域が組み入れられ得る。したがって、各VH及びVL領域は、N末端からC末端へ次の順序で、すなわち、FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4の順序で配列した3つのCDR及び4つのFRからなる。この構造は、当業者には周知である。
【0055】
MIC抗体のVH CDRのアミノ酸配列は、アミノ酸26~34(GYSITSDYA、HCDR1、配列番号11)、50~58(GYISYSGST、HCDR2、配列番号12)及び97~105(ARGGTYFDY、HCDR3、配列番号13)で配列番号1に記述される。MIC抗体のVL CDRのアミノ酸配列は、アミノ酸24~32(RASAHINNW、LCDR1、配列番号14)、50~56(DATSLES、LCDR2、配列番号15)及び98~107(QHYWSTPWT、LCDR3、配列番号16)で配列番号2に記述される。「重鎖または軽鎖可変領域のCDRが改変されていない」という語句は、これらのVH及びVL CDR(配列番号11~16)を指し、これらにはアミノ酸の置換、欠失または挿入がない。
【0056】
本明細書で使用される場合、MIC抗体の「抗原結合部分」は、MIC抗体のVH及びVL配列を有する本明細書に記載のMIC抗体の部分を指す(配列番号1及び配列番号2で表され、任意選択で、本明細書に記載のように改変される)。抗体の「抗原結合部分」という用語によれば、抗原結合部分の例には、Fab、Fab′、F(ab′)、Fv、ジスルフィド結合Fv、scFv、単一ドメイン抗体(dAb)、ダイアボディ、及び単鎖が含まれる。本明細書で使用するとき、用語Fab、F(ab′)2及びFvは、以下の、(i)Fabフラグメント、すなわち、VL、VH、CL及びCH1ドメインで構成される一価フラグメント、(ii)F(ab′)2フラグメント、すなわち、ジスルフィド架橋を介してヒンジ領域で互いに連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント、及び(iii)MIC抗体のVL及びVHドメインで構成されるFvフラグメントを指す。Fvフラグメントの2つのドメイン、すなわちVL及びVHは、別個のコード領域によってコードされているが、これらは、さらに合成リンカー、例えばポリG4Sアミノ酸配列(配列番号17として開示される「(G4S)n」、ここでn=1~5)を用いて互いに連結することができ、VL及びVH領域が一価分子(単鎖Fv(ScFv)として知られている)を形成するために結合する単一タンパク質鎖としてそれらを調製することを可能にする。抗体の「抗原結合部分」という用語は、そのような単鎖抗体を含むことも意図されている。「ダイアボディ」などの単鎖抗体の他の形態も同様にここに含まれる。ダイアボディは、VH及びVLドメインが単一のポリペプチド鎖上に発現されるが、VHドメインとVLドメインとを接続するリンカーが、2つのドメインが同じ鎖上で結合できるようにするには短いため、VHドメインとVLドメインとを別々の鎖(それぞれVL及びVH)の相補的ドメインと対にさせ、2つの抗原結合部位を形成させる、二価の二重特異性抗体である(例えば、Holliger,R,et al.(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:64446448;Poljak,R.J,et al.(1994)Structure 2:1121-1123を参照されたい)。
【0057】
免疫グロブリン定常領域は、重鎖または軽鎖の定常領域を指す。ヒト重鎖定常領域アミノ酸配列及びヒト軽鎖定常領域アミノ酸配列は、当技術分野で周知である。定常領域は、免疫グロブリン、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのクラスから選択できる任意の適切なタイプであり得る。いくつかの免疫グロブリンクラスは、アイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、またはIgA1、及びIgA2にさらに分けることができる。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常領域(Fc)は、それぞれα、δ、ε、γ、及びμであり得る。軽鎖は、カッパすなわちκ及びラムダすなわちλのいずれかであり得る。
【0058】
いくつかの実施形態では、定常領域は、IgG1アイソタイプを有することができる。いくつかの実施形態では、定常領域は、IgG2アイソタイプを有することができる。いくつかの実施形態では、定常領域は、IgG3アイソタイプを有することができる。いくつかの実施形態では、定常領域は、IgG4アイソタイプを有することができる。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、2つ以上のアイソタイプからの定常領域を含むハイブリッドアイソタイプを有することができる。いくつかの実施形態では、免疫グロブリン定常領域は、IgG1またはIgG4定常領域であり得る。
【0059】
いくつかの実施形態では、MIC抗体重鎖は、IgG1アイソタイプであり、配列番号7で表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、MIC抗体軽鎖は、カッパアイソタイプであり、配列番号8で表されるアミノ酸配列を有する。
【0060】
さらに、MIC抗体またはその抗原結合部分は、抗体または抗体部分と1つ以上の他のタンパク質またはペプチドとの共有結合または非共有結合によって形成される、より大きな結合剤の一部であり得る。そのような結合剤は、四量体scFv分子を調製するためのストレプトアビジンコア領域の使用(Kipriyanov,S.M.,et al.(1995)Human Antibodies and Hybridomas 6:93-101)、及び二価及びビオチン化scFv分子を製造するためのシステイン残基、マーカーペプチド及びC末端ポリヒスチジニルペプチド、例えばヘキサヒスチジニル(hexahistidinyl)タグ(配列番号18として開示される「ヘキサヒスチジニルタグ」)の使用(Kipriyanov,S.M.,et al.(1994)Mol.Immunol.31:10471058)に関連する。
【0061】
VH及びVLのアミノ酸配列に関しては、VHまたはVLをコードする核酸に対する個々の置換、欠失または付加(挿入)、あるいはコードされた配列中の単一のアミノ酸または少数のアミノ酸の割合を変更するポリペプチド中のアミノ酸は、「保存的改変バリアント」であると当業者は認識する。この改変は、アミノ酸を化学的に類似したアミノ酸で置換すること(保存的アミノ酸置換)をもたらし、改変されたポリペプチドは、抗体B10G5よりも大きな結合アフィニティーでMICに特異的に結合する能力を保持する。
【0062】
いくつかの実施形態では、MIC抗体またはその抗原結合部分の保存的改変バリアントは、FRにおいて(すなわち、CDR以外において)変更を有し得、例えば、MIC抗体の保存的改変バリアントは、VH及びVL CDRのアミノ酸配列(配列番号11~16で表される)を有し、FRにおいて少なくとも1つの保存的アミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、VH及びVLアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)は、VH及びVLのアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2)と比較して、集合的に、FRに8または6または4または2または1以下の保存的アミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、VH及びVLアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)は、VH及びVLのアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)と比較して、FRに8~1、6~1、4~1、または2~1の保存的アミノ酸置換を有する。これらの実施形態のいずれかのさらなる態様において、MIC抗体、その抗原結合部分または他の結合剤の保存的改変バリアントは、抗体B10G5の結合アフィニティーよりも大きい結合アフィニティーをMICに対して示す。
【0063】
保存的アミノ酸置換では、所与のアミノ酸が類似の生理化学的特性を有する残基によって置換され、例えば、ある脂肪族残基を別の脂肪族残基に置換すること(Ile、Val、Leu、またはAlaなどの互いの置換)、またはある極性残基を他の残基に置換すること(LysとArgとの置換、GluとAspとの置換、もしくはGlnとAsnとの置換など)が可能である。他のそのような保存的アミノ酸置換、例えば類似の疎水性特性を有する全領域の置換がよく知られている。保存的アミノ酸置換を含むポリペプチドは、天然型ポリペプチドまたは参照ポリペプチドの所望の活性、例えば抗原結合活性及び特異性が保持されていること、すなわちMIC(sMIC及び/または膜結合型MIC)に対して保持されていることを確認するために、本明細書に記載のアッセイのいずれか1つで試験することが可能である。
【0064】
保存的置換の場合、アミノ酸を側鎖の特性の類似性に従ってグループ化することができる(A.L.Lehninger,Biochemistry,second ed.,pp.73-75,Worth Publishers,New York(1975))。すなわち、(1)非極性のAla(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)、(2)非荷電極性のGly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)、(3)酸性のAsp(D)、Glu(E)、及び(4)塩基性のLys(K)、Arg(R)、His(H)である。
【0065】
あるいは、保存的置換の場合、天然に存在する残基を、共通の側鎖特性に基づいてグループに分けることができる。すなわち、(1)疎水性のノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile、(2)中性親水性のCys、Ser、Thr、Asn、Gln、(3)酸性のAsp、Glu、(4)塩基性のHis、Lys、Arg、(5)鎖の向きに影響を与える残基のGly、Pro、及び(6)芳香族のTrp、Tyr、Pheである。非保存的置換では、これらのクラスのいずれかのまたは別のクラスのメンバーを交換することを伴うようになる。
【0066】
特定の保存的置換には、例えば、AlaからGlyまたはSerへの置換、ArgからLysへの置換、AsnからGlnまたはHisへの置換、AspからGluへの置換、CysからSerへの置換、GlnからAsnへの置換、GluからAspへの置換、GlyからAlaまたはProへの置換、HisからAsnまたはGlnへの置換、IleからLeuまたはValへの置換、LeuからIleまたはValへの置換、LysからArg、Gln、またはGluへの置換、MetからLeu、Tyr、またはIleへの置換、PheからMet、Leu、またはTyrへの置換、SerからThrへの置換、ThrからSerへの置換、TrpからTyrへの置換、TyrからTrpへの置換、及び/またはPheからVal、Ile、またはLeuへの置換が含まれる。
【0067】
いくつかの実施形態では、MIC抗体またはその抗原結合部分上の保存的改変バリアントは、好ましくは、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、またはそれ以上が、参照VHまたはVL配列と同一であり、VH及びVL CDR(配列番号11~16)は改変されていない。参照配列と改変配列との間の相同性の程度(同一性パーセント)は、例えば、ワールドワイドウェブ上でこの目的のために一般的に使用される自由に入手可能なコンピュータープログラム(例えば、デフォルト設定のBLASTpまたはBLASTn)を使用して2つの配列を比較することによって決定することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、VH及びVLアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)は、VH及びVLのアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)と比較して、集合的に、フレームワーク領域に8または6または4または2または1以下の保存的アミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、VH及びVLアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)は、VH及びVLのアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)と比較して、集合的に、フレームワーク領域に8~1、または6~1、または4~1、または2~1の保存的アミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、VH及びVLアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)は、VH及びVLのアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)と比較して、集合的に、フレームワーク領域に8または6または4または2または1以下のアミノ酸の置換、欠失または挿入を有する。いくつかの実施形態では、VH及びVLアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)は、VH及びVLのアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)と比較して、フレームワーク領域に8~1、6~1、4~1、または2~1の保存的アミノ酸置換を有する。いくつかの実施形態では、VH及びVLアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)は、VH及びVLのアミノ酸配列(それぞれ配列番号1及び2で表される)と比較して、集合的に、8または6または4または2または1以下のアミノ酸の置換、欠失または挿入を有する。
【0069】
天然型(または参照)アミノ酸配列の改変は、当業者に知られている多数の技術のいずれかによって達成することができる。変異は、例えば、天然型配列のフラグメントへのライゲーションを可能にする制限部位が隣接する、所望の変異配列を含むオリゴヌクレオチドを合成することにより、特定の遺伝子座に導入することができる。ライゲーションの後、得られた再構築された配列は、所望のアミノ酸の挿入、置換、または欠失を有するバリアントをコードする。あるいは、オリゴヌクレオチド標的化部位特異的変異誘発手順を使用して、所望の置換、欠失、または挿入に従って変更された特定のコドンを有する変更されたヌクレオチド配列を提供することができる。そのような変更を行うための手法は、非常に確立されており、例えば、Walder et al.(Gene 42:133,1986)、Bauer et al.(Gene 37:73,1985)、Craik(BioTechniques,January 1985,12-19)、Smith et al.(Genetic Engineering:Principles and Methods,Plenum Press,1981)、ならびに米国特許第4,518,584号及び第4,737,462号によって開示されたものが挙げられ、これらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
いくつかの実施形態では、MIC抗体またはその抗原結合部分は、完全ヒト定常領域を有する。いくつかの実施形態では、MIC抗体またはその抗原結合部分は、非ヒト定常領域を有する。いくつかの実施形態では、MIC抗体重鎖は、IgG1アイソタイプであり、配列番号7で表されるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、MIC抗体軽鎖は、カッパアイソタイプであり、配列番号8で表されるアミノ酸配列を有する。
【0071】
いくつかの実施形態では、MIC抗体またはその抗原結合部分は、改変された定常領域(Fc領域)またはFcドメインを有する。Fcドメイン(例えば、CH1、CH2、CH3及び任意選択でCH4)は、Fc領域の一部である。FcドメインまたはFc領域の一部は、細胞上のFcレセプター(FcR)に結合できる。FcRは、FcRが認識する抗体のクラスに基づいてクラス(例えば、ガンマ(γ)、アルファ(α)及びイプシロン(ε))に編成される。FcaRクラスは、IgAに結合でき、FcaRI(CD89)などのいくつかのアイソフォームを含む。FcyRクラスは、IgGに結合でき、いくつかのアイソフォーム、FcyRI(CD64)、FcyRIIA(CD32a)、FcyRIIB(CD32b)、FcyRIIIA(CD16a)、及びFcyRIIIB(CD16b)を含む。FcyRIIIA(CD16a)には、F158またはV158という2つの主要なバリアントがある。
【0072】
FcドメインまたはFc領域のFcRへの結合は、参照と比較して、免疫応答を修正することができる。同様に、FcドメインのFcRへの結合の欠如は、参照と比較して、免疫応答を修正することができる。
【0073】
MIC抗体は、野生型または参照配列と比較して、対応する野生型配列または参照配列と関連した、少なくとも1つの定常ドメインまたは定常領域を介する生物学的エフェクター機能を変更するように改変された配列を有するFcドメインを有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、Fcドメインを修飾して、未改変Fcドメインと関連した、少なくとも1つの定常ドメインまたは定常領域を介する生物学的エフェクター機能を低減または増大させることができ、例えば、Fcレセプター(FcR)への結合を低減または増大させることができる。FcR結合は、例えば、FcR相互作用に関与する(例えば、必要である、または影響を及ぼす)特定の部位(複数可)で抗体の免疫グロブリン定常領域セグメントを改変することによって低減または増大させることができる。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、1つ以上のFcガンマレセプター(例えば、FcyRI、FcyRIIA、FcyRIIB、FcyRIIIA、FcyRIIIB、及び/またはFcRNの1つ以上)への結合を低減させるように変更されている。
【0074】
いくつかの実施形態では、抗体の定常領域または定常ドメインは、未改変Fcドメインに関連した、少なくとも1つの定常領域を介する生物学的エフェクター機能を獲得または改善するように、例えば、FcyR相互作用を強化するように改変されている。例えば、抗体の定常領域または定常ドメインは、対応する野生型FcドメインまたはFc領域よりも高いアフィニティーで、FcyRIIA、FcyRIIB及び/またはFcyRIIIAに結合するように改変することが可能である。
【0075】
アミノ酸配列Fcドメインにおける改変は、FcドメインまたはFc領域に対するFcRの認識を変更し得る。ただし、そのような改変をしてもFcRを介したシグナル伝達は可能である。改変(複数可)は、ある残基におけるアミノ酸を、その残基における異なるアミノ酸へ置換することであり得る。改変(複数可)は、FcRが普通なら結合できないFcドメインまたはFc領域上の部位へのFcRの結合を可能にすることができる。改変(複数可)は、参照配列の結合と比較して、FcドメインまたはFc領域に対するFcRの結合アフィニティーを増加させることができる。改変(複数可)は、参照配列の結合と比較して、Fcドメイン上の部位に対するFcRの結合アフィニティーを低下させることができる。
【0076】
いくつかの実施形態では、アミノ酸配列Fcドメインにおける改変(複数可)は、FcドメインまたはFc領域に対する1つのFcR、または複数のFcRの認識を変更し得る。そのような改変(複数可)は、抗体または抗原結合部分が免疫細胞と相互作用する能力を変化させることができる。FcドメインまたはFc領域に対するそのような改変または一連の改変は、免疫細胞上のFcRへのFcドメインの選択的結合を可能にし、あるいは改変ドメインを有する抗体または抗原結合部分と免疫細胞との相互作用を低減させる、または排除することができる。例えば、Fcドメインへの改変は、FcドメインのFcガンマレセプターへの結合を低減させるが、FcドメインがFcRnに結合する能力を保持することができる。
【0077】
改変Fc領域またはドメインは、野生型Fc領域またはドメインの配列と比較して、少なくとも1つのアミノ酸変化を有することができる。Fc領域におけるアミノ酸変化は、抗体またはその抗原結合部分が、野生型または参照Fc領域と比較してより高いアフィニティーで、少なくとも1つのFcレセプターに結合することを可能にすることができる。Fcドメインにおけるアミノ酸変化は、野生型または参照Fcドメインと比較してより高いアフィニティーで、抗体が少なくとも1つのFcレセプターに結合することを可能にすることができる。Fc領域におけるアミノ酸変化は、野生型または参照Fc領域と比較してより低いアフィニティーで、抗体が少なくとも1つのFcレセプターに結合することを可能にすることができる。Fcドメインにおけるアミノ酸変化は、野生型または参照Fcドメインと比較してより低いアフィニティーで、抗体が少なくとも1つのFcレセプターに結合することを可能にすることができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、MIC抗体またはその抗原結合部分は、野生型IgG1配列から改変されたIgG1アイソフォームの配列を含むFcドメインまたはFc領域を有することができる。改変は、KabatのEU指数による、L235V/F243L/R292P/Y300L/P396L(IgG1VLPLL)を含む5つの異なるアミノ酸残基などのFcドメインの1つ以上のアミノ酸残基における置換を含むことができる。改変は、KabatのEU指数による、S239D/I332E(IgG1DE)を含むFcドメインの2つの異なるアミノ酸残基などの1つ以上のアミノ酸残基における置換を含むことができる。改変は、KabatのEU指数による、S298A/E333A/K334A(IgG1 AAA)を含むFcドメインの3つの異なるアミノ酸残基などの1つ以上のアミノ酸残基における置換を含むことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、MIC抗体またはその抗原結合部分のFcドメインまたはFc領域は、1つ以上のFcレセプターに対しての結合アフィニティーの低下を示し得る。いくつかの実施形態では、FcドメインまたはFc領域は、1つ以上のFcガンマレセプターに対しての結合アフィニティーの低下を示し得る。いくつかの実施形態では、FcドメインまたはFc領域は、FcRnレセプターに対しての結合アフィニティーの低下を示し得る。いくつかの実施形態では、FcドメインまたはFc領域は、Fcガンマレセプター及びFcRnレセプターに対しての結合アフィニティーの低下を示し得る。いくつかの実施形態では、Fcドメインは、FcヌルドメインまたはFcヌル領域である。本明細書で使用される場合、「Fcヌル」は、Fcガンマレセプターのいずれに対しても、弱い結合~非結合、を示すドメインを指す。いくつかの実施形態では、FcヌルドメインまたはFcヌル領域は、少なくとも1000倍の、Fcガンマレセプターに対する結合アフィニティーの低下(例えば、Kdの増加)を示す。
【0080】
いくつかの実施形態では、MIC抗体のFcドメインまたはFc領域は、GGGSなどのフレキシブル配列を含むFcヌルドメインまたはFcヌル領域である。いくつかの実施形態では、MIC抗体はIgG1アイソフォームであり、フレキシブル配列はヒトIgG1重鎖のG237とG238との間に挿入される。いくつかの実施形態では、MIC抗体へのフレキシブル配列の組み入れは、抗体の結合アフィニティーに対して、ほとんど影響を及ぼさない~全く影響を及ぼさない、結果となる。いくつかの実施形態では、MIC抗体にフレキシブル配列を含めると、抗体のADCC活性が低下する。いくつかの実施形態では、MIC抗体へのフレキシブル配列への組み入れは、グリコシル化の損失を、ほとんど生じさせない~全く生じさせない、結果をもたらし、及び/または抗体のグリカンプロファイルの大幅な変更(複数可)をもたらす。抗体のグリコシル化及び/またはグリカンプロファイルは、例えば、抗体をPNGaseF消化に供し、蛍光検出器を備えた親水性相互作用クロマトグラフィー(HILIC)を使用して酵素生成物を分析することによって測定することができる。
【0081】
特定の実施形態では、Fcドメインは、FcyRI(CD64)、FcyRIIA(CD32)、FcyRIIIA(CD16a)、FcyRIIIB(CD16b)、またはそれらの任意の組み合わせのうちの1つ以上に対して、減少した結合アフィニティーを有する。FcドメインまたはFc領域のFcレセプターへの結合アフィニティーを低下させるために、FcドメインまたはFc領域は、FcドメインまたはFc領域のFcレセプターへの結合アフィニティーを低減させる1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。
【0082】
いくつかの実施形態では、1つ以上の置換は、KabatナンバリングのEU指数による、E233P、L234V、L234A、L235A、L235E、AG236、G237A、E318A、K320A、K322A、A327G、A330S、及び/またはP331Sに対応するIgG1重鎖置換のうちの任意の1つ以上を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、E233P/L234V/L235AまたはE233P/L234V/L235A/AG236などの、E233、L234及びL235の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、P238AなどのP238の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、D265AなどのD265の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、N297AなどのN297の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、A327QなどのA327の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、P239AなどのP329の置換であり得る。
【0083】
いくつかの実施形態では、IgG FcドメインまたはIgG Fc領域は、野生型または参照IgG Fcドメインと比較して、そのFcyRIへの結合アフィニティーを低減させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、F241AなどのF241での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、F243AなどのF243での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、V264AなどのV264での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、D265AなどのD265での置換を含み得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、IgG FcドメインまたはIgG Fc領域は、野生型または参照IgG Fcドメインと比較して、そのFcyRIへの結合アフィニティーを増大させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、A327Q/P329AなどのA327及びP329での置換を含み得る。
【0085】
いくつかの実施形態では、IgG Fc改変(複数可)は、FcyRII及びFcyRIIIAレセプターに対するIgG FcドメインまたはIgG Fc領域の結合アフィニティーを低減させる1つ以上のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、D270AなどのD270の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、Q295AなどのQ295の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、A237SなどのA327の置換であり得る。
【0086】
いくつかの実施形態では、改変は、FcyRII及びFcyRIIIAレセプターに対するIgG FcドメインまたはIgG Fc領域の結合アフィニティーを増大させる1つ以上のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、T256AなどのT256の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、K290AなどのK290の置換であり得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、改変は、FcyRIIレセプターに対するIgG FcドメインまたはIgG Fc領域の結合アフィニティーを増大させる1つ以上のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、R255AなどのR255の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、E258AなどのE258の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、S267AなどのS267の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、E272AなどのE272の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、N276AなどのN276の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、D280AなどのD280の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、H285AなどのH285の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、N286AなどのN286の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、T307AなどのT307の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、L309AなどのL309の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、N315AなどのN315の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、K326AなどのK326の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、P331AなどのP331の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、S337AなどのS337の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、A378AなどのA378の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、E430などのE430の置換であり得る。
【0088】
いくつかの実施形態では、改変は、FcyRIIレセプターに対するIgG FcドメインまたはIgG Fc領域の結合アフィニティーを増大させ、FcyRIIIAレセプターに対する結合アフィニティーを低減させる、1つ以上のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、H268AなどのH268の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、R301AなどのR301の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、K322AなどのK322の置換であり得る。
【0089】
いくつかの実施形態では、改変は、FcyRIIレセプターに対するIgG FcドメインまたはIgG Fc領域の結合アフィニティーを低下させるが、FcyRIIIAレセプターに対する結合アフィニティーには有意に影響を及ぼさない、1つ以上のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、R292AなどのR292の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、K414AなどのK414の置換であり得る。
【0090】
いくつかの実施形態では、改変は、FcyRIIレセプターに対するIgG FcドメインまたはIgG Fc領域の結合アフィニティーを低下させ、FcyRIIIAレセプターに対する結合アフィニティーを増大させる、1つ以上のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、S298AなどのS298の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、S239D/I332E/A330Lなどの、S239、I332及びA330の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、S239D/I332Eなどの、S239及びI332の置換であり得る。
【0091】
いくつかの実施形態では、改変は、FcyRIIIAレセプターに対するIgG FcドメインまたはIgG Fc領域の結合アフィニティーを低下させる1つ以上のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、F241S/F243SまたはF241I/F243Iなどの、F241及びF243の置換であり得る。
【0092】
いくつかの実施形態では、改変は、FcyRIIIAレセプターに対するIgG FcドメインまたはIgG Fc領域の結合アフィニティーを低下させ、FcyRIIレセプターに対する結合アフィニティーには有意に影響を及ぼさない、1つ以上のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、S239AなどのS239の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、E269AなどのE269の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、E293AなどのE293の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、Y296FなどのY296の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、V303AなどのV303の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、A327GなどのA327の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、K338AなどのK338の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、D376AなどのD376の置換であり得る。
【0093】
いくつかの実施形態では、改変は、FcyRIIIAレセプターに対するIgG FcドメインまたはIgG Fc領域の結合アフィニティーを増大させ、FcyRIIレセプターに対する結合アフィニティーには影響を及ぼさない、1つ以上のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、E333AなどのE333の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、K334AなどのK334の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、A339TなどのA339の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、S239D/I332Eなどの、S239及び1332の置換であり得る。
【0094】
いくつかの実施形態では、改変は、FcyRIIIAレセプターに対するIgG FcドメインまたはIgG Fc領域の結合アフィニティーを増大させる1つ以上のアミノ酸の置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、L235V/F243L/R292P/Y300L/P396L(IgG1 VLPLL)などの、L235、F243、R292、Y300及びP396の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、S298A/E333A/K334Aなどの、S298、E333及びK334の置換であり得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、K246FなどのK246の置換であり得る。
【0095】
IgG Fcドメインにおける、その1つ以上のFcガンマレセプターとの相互作用に影響を与える他の置換は、米国特許第7,317,091号及び第8,969,526号に開示されている(これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0096】
いくつかの実施形態では、IgG FcドメインまたはIgG Fc領域は、野生型または参照IgG Fcドメインと比較して、FcRnへの結合アフィニティーを低減させる少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、H435AなどのH435での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、I253AなどのI253での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、H310AなどのH310での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、I253A/H310A/H435Aなどの、I253、H310及びH435での置換を含み得る。
【0097】
いくつかの実施形態では、改変は、野生型または参照IgG Fcドメインと比較して、FcRnに対するIgG Fcドメインの結合アフィニティーを増加させる1つのアミノ酸残基の置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、V308PなどのV308での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、M428LなどのM428での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数によるN434A、またはKabatのEU指数によるN434Hなどの、N434での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、T250Q及びM428Lなどの、T250及びM428での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、M428L及びN434S、N434AまたはN434Hなどの、M428及びN434での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、KabatのEU指数による、M252Y/S254T/T256Eなどの、M252、S254及びT256での置換を含み得る。いくつかの実施形態では、改変は、P257L、P257N、P257I、V279E、V279Q、V279Y、A281S、E283F、V284E、L306Y、T307V、V308F、Q31IV、D376V、及びN434Hから選択される1つ以上のアミノ酸の置換であり得る。IgG Fcドメインにおける、そのFcRnとの相互作用に影響を及ぼす他の置換は、米国特許第9,803,023号に開示されている(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。
【0098】
いくつかの実施形態では、MIC抗体またはその抗原結合部分は、補体依存性細胞傷害(CDC)活性を改変する、改変された定常領域(Fc領域)またはFcドメインを有する。CDCは、抗体によって指示できる細胞殺傷法である。IgMは、補体活性化に最も効果的なアイソタイプである。IgG1とIgG3とはどちらも、古典的補体活性化経路を介してCDCを誘導するのに非常に効果的である。
【0099】
いくつかの実施形態では、Fc領域は、KabatのEU指数による、E318A、K320A、K322A、P329A及び/またはP331AなどのIgG1のアミノ酸位置E318、K320、K322、P329、及び/またはP331の1つ以上において、CDC活性を低減させる改変を有する。いくつかの実施形態では、Fc領域は、E430G、E345K、E430S、E430F、E430T、E345Q、E345R、E345Y、S440Y及び/またはS440Wの1つ以上など、KabatのEU指数による、IgG1のアミノ酸位置E430、E345及びS440の1つ以上において、CDC活性を増加させる改変を有する。
【0100】
様々な実施形態において、MIC抗体、その抗原結合部分及び他の結合剤は、ヒト、マウスまたは他の動物由来の細胞株で産生され得る。組み換えDNA発現を使用して、MIC抗体、その抗原結合部分及び他の結合剤を産生することができる。これにより、選択した宿主種において、MIC抗体だけでなく、MIC抗原結合部分及び他の結合剤(融合タンパク質を含む)のスペクトルの産生が可能になる。細菌、酵母、トランスジェニック動物及び鶏卵におけるMIC抗体、その抗原結合部分及び他の結合剤の産生も、細胞ベースの産生系の代替である。トランスジェニック動物の主な利点は、再生可能資源からの潜在的高収量である。
【0101】
いくつかの実施形態では、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するMIC VHポリペプチドは、核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するMIC VLポリペプチドは、核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するMIC VHポリペプチドは、配列番号21で表される配列を有する核酸によってコードされる。いくつかの実施形態では、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するMIC VLポリペプチドは、配列番号22で表される配列を有する核酸によってコードされる。
【0102】
本明細書で使用するとき、「核酸」または「核酸配列」または「ポリヌクレオチド配列」または「ヌクレオチド」という用語は、リボ核酸、デオキシリボ核酸またはその類似体の単位を組み込んだ高分子を指す。核酸は、一本鎖または二本鎖のいずれかであり得る。一本鎖核酸は、変性二本鎖DNAの一本鎖核酸であり得る。いくつかの実施形態では、核酸は、cDNA、例えば、イントロンを欠く核酸であり得る。
【0103】
MIC抗体、その抗原結合部分、及び他の結合剤のアミノ酸配列をコードする核酸分子は、当技術分野で知られている様々な方法によって調製することができる。これらの方法には、MIC抗体、抗原結合部分または他の結合剤(複数可)をコードする合成ヌクレオチド配列の調製が含まれるが、これに限定されない。さらに、オリゴヌクレオチド媒介(または部位特異的)変異誘発、PCR媒介変異誘発、及びカセット式変異誘発を使用して、MIC抗体または抗原結合部分及び他の結合剤をコードするヌクレオチド配列を調製することができる。本明細書に記載される少なくともMIC抗体、その抗原結合部分、結合剤、またはそのポリペプチドをコードする核酸配列は、例えば、ライゲーションのためのブラントエンド末端またはスタッガード末端、適切な末端を提供するための制限酵素消化、適宜の付着端の充填、望ましくない接合を避けるためのアルカリホスファターゼ処理、及び適切なリガーゼによるライゲーションなどの従来の技術に従って、ベクターDNAに組み換えることができる。そのような操作のための技術は、例えば、Maniatis et al.,Molecular Cloning,Lab.Manual(Cold Spring Harbor Lab.Press,NY,1982 and 1989)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(John Wiley & Sons),1987-1993によって開示されており、MIC抗体またはその抗原結合部分またはそのVHもしくはVLポリペプチドをコードする核酸配列及びベクターを作成するために使用することができる。
【0104】
DNAなどの核酸分子は、転写及び翻訳の調節情報を含むヌクレオチド配列を含み、そのような配列が、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列に「作動可能に連結」されている場合、ポリペプチドを「発現できる」と言われる。作動可能な連結とは、調節DNA配列と発現させようとするDNA配列(例えば、MIC抗体またはその抗原結合部分)とが、回収可能な量のポリペプチド(複数可)または抗原結合部分の遺伝子発現を可能にするように連結されている連結である。遺伝子発現に必要な調節領域の正確な性質は、類似技術において周知であるように、生物によって異なり得る。例えば、Sambrook et al.,1989;Ausubel et al.,1987-1993を参照されたい。
【0105】
したがって、本明細書に記載されるMIC抗体またはその抗原結合部分の発現は、原核細胞または真核細胞のいずれかで起こり得る。適切な宿主には、インビボまたはインサイチュの酵母、昆虫、菌類、鳥及び哺乳類細胞を含む細菌または真核宿主、あるいは哺乳類、昆虫、鳥または酵母由来の宿主細胞が含まれる。哺乳類細胞または組織は、ヒト、霊長類、ハムスター、ウサギ、齧歯動物、ウシ、ブタ、ヒツジ、ウマ、ヤギ、イヌまたはネコ由来のものであり得るが、他の任意の哺乳類細胞を使用してもよい。さらに、例えば、酵母ユビキチンヒドロラーゼ系を使用することにより、ユビキチン-膜貫通ポリペプチド融合タンパク質のインビボ合成を達成することができる。そのように産生された融合タンパク質は、インビボで処理するか、またはインビトロで精製及び処理することができ、特定のアミノ末端配列を有する本明細書に記載のMIC抗体またはその抗原結合部分の合成を可能にする。さらに、直接的な酵母(または細菌)発現における開始コドン由来のメチオニン残基の保持に関連する問題を回避することができる。(例えば、Sabin et al.,7 Bio/Technol.705(1989);Miller et al.,7 Bio/Technol.698(1989)を参照されたい。)酵母がグルコースに富む培地で生育された場合に大量に産生される解糖酵素をコードする活発に発現される遺伝子からのプロモーター及び終結エレメントを組み込む一連の酵母遺伝子発現系のいずれかを利用して、組み換えMIC抗体またはその抗原結合部分を得ることができる。既知の解糖系遺伝子は、非常に効率的な転写制御シグナルを提供することもできる。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ遺伝子のプロモーター及びターミネーターシグナルを利用することができる。
【0106】
昆虫におけるMIC抗体またはその抗原結合部分の産生は、例えば、当業者に公知の方法によってポリペプチドを発現するように操作されたバキュロウイルスを昆虫宿主に感染させることによって達成することができる。Ausubel et al.,1987-1993を参照されたい。
【0107】
いくつかの実施形態では、導入される核酸配列(MIC抗体またはその抗原結合部分またはそのポリペプチドをコードする)は、レシピエント宿主細胞において自律複製可能なプラスミドまたはウイルスベクターに組み込まれる。多種多様なベクターのいずれもこの目的のために使用することができ、当業者に知られており、利用可能である。例えば、Ausubel et al.,1987-1993を参照されたい。特定のプラスミドまたはウイルスベクターを選択する際の重要な要因には、ベクターを含むレシピエント細胞を、ベクターを含まないレシピエント細胞から認識し選択できることが容易であること、特定の宿主において望まれるベクターのコピー数、及び異なる種の宿主細胞間でベクターを「シャトル」できることが望ましいかどうかが含まれる。
【0108】
当技術分野で知られている代表的な原核ベクターには、E.coliで複製ができるようなプラスミドが含まれる。MIC抗体またはその抗原結合部分をコードするDNAの発現に有用な他の遺伝子発現エレメントとしては、(a)SV40初期プロモーター(Okayama et al.,3 Mol.Cell.Biol.280(1983))、ラウス肉腫ウイルスLTR(Gorman et al.,79 PNAS 6777(1982))、及びモロニーマウス白血病ウイルスLTR(Grosschedl et al.,41 Cell 885(1985))などのウイルス転写プロモーター及びそのエンハンサーエレメント、(b)SV40後期領域(Okayarea et al.,1983)に由来するようなスプライス領域及びポリアデニル化部位、ならびに(c)SV40(Okayama et al.,1983)などにおけるポリアデニル化部位などがあるが、これらに限定されない。免疫グロブリンコード化DNA遺伝子は、発現エレメントのSV40初期プロモーター及びそのエンハンサー、マウス免疫グロブリンH鎖プロモーターエンハンサー、SV40後期領域mRNAスプライシング、ウサギS-グロビン介在配列、免疫グロブリン及びウサギS-グロビンポリアデニル化部位、ならびにSV40ポリアデニル化エレメントを用いて、Liu et al.,infra,and Weidle et al.,51 Gene 21(1987)によって記載されたように、発現することが可能である。
【0109】
免疫グロブリンをコードするヌクレオチド配列の場合、転写プロモーターは、例えば、ヒトサイトメガロウイルスとすることができ、プロモーターエンハンサーは、サイトメガロウイルス及びマウス/ヒト免疫グロブリンとすることができる。
【0110】
いくつかの実施形態では、齧歯類細胞におけるDNAコード領域の発現のために、転写プロモーターをウイルスLTR配列とすることができ、転写プロモーターエンハンサーをマウス免疫グロブリン重鎖エンハンサー及びウイルスLTRエンハンサーのいずれかまたは両方、ならびにポリアデニル化領域及び転写終結領域とすることができる。他の実施形態では、他のタンパク質をコードするDNA配列を上記の発現エレメントと組み合わせて、哺乳類細胞におけるタンパク質の発現を達成する。
【0111】
各コード領域または遺伝子融合は、発現ベクターに組み立てられるか、または挿入される。MIC可変領域(複数可)またはその抗原結合部分を発現することができるレシピエント細胞(例えば、本明細書に記載される配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するVH及び/または配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するVLまたはそのバリアント)は、次に、MIC抗体または抗体ポリペプチドまたはその抗原結合部分をコードするヌクレオチドを単独にトランスフェクトされ、あるいはVH及びVL鎖コード領域をコードするポリヌクレオチド(複数可)をコトランスフェクトされる。トランスフェクトされたレシピエント細胞は、組み込まれたコード領域の発現を可能にする条件下で培養され、発現された抗体鎖または無傷の抗体もしくは抗原結合部分が培養から回収される。
【0112】
いくつかの実施形態では、MIC抗体またはその抗原結合部分(例えば、本明細書に記載される配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するVH及び/または配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するVLまたはそのバリアント)をコードするコード領域を含む核酸は、別々の発現ベクターに組み立てられ、その後、レシピエント宿主細胞をコトランスフェクトするために使用される。各ベクターは、1つ以上の選択可能な遺伝子を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、2つの選択可能遺伝子、細菌系での選択のために設計された第1の選択可能遺伝子及び真核細胞系での選択のために設計された第2の選択可能遺伝子が使用され、各ベクターがコード領域のセットを有する。この戦略は、細菌系におけるヌクレオチド配列の産生を最初に指示し、増幅を可能にするベクターをもたらす。このように細菌宿主中で産生され増幅されたDNAベクターは、その後、真核細胞をコトランスフェクトするために使用され、所望のトランスフェクトされた核酸(例えば、MIC抗体の重鎖及び軽鎖を含む)を担持するコトランスフェクトされる細胞の選択を可能にする。細菌系で使用するための選択可能な遺伝子の非限定的な例は、アンピシリンに対する耐性を付与する遺伝子及びクロラムフェニコールに対する耐性を付与する遺伝子である。真核トランスフェクタントで使用するための選択可能な遺伝子には、キサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(gptと命名)及びTn5由来のホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neoと命名)が含まれる。あるいは、VH及びVL鎖をコードする融合ヌクレオチド配列を、同じ発現ベクター上で組み立てることができる。
【0113】
発現ベクターのトランスフェクション及びMIC抗体またはその抗原結合部分の産生のために、レシピエント細胞株は、チャイニーズハムスター卵巣細胞株(例えば、DG44)または骨髄腫細胞であり得る。骨髄腫細胞は、トランスフェクトされた免疫グロブリン遺伝子によってコードされる免疫グロブリンを合成、組み立て、及び分泌し、免疫グロブリンのグリコシル化のメカニズムを保有することができる。例えば、いくつかの実施形態では、レシピエント細胞は組み換えIg産生骨髄腫細胞SP2/0(ATCC#CRL 8287)である。SP2/0細胞は、トランスフェクトされた遺伝子によってコードされる免疫グロブリンのみを産生する。骨髄腫細胞は、培養中またはマウスの腹腔内で増殖させることができ、分泌された免疫グロブリンを腹水から得ることができる。
【0114】
MIC抗体またはその抗原結合部分(例えば、本明細書に記載される配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するVH及び/または配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するVLまたはそのバリアント)をコードする発現ベクターは、形質転換、トランスフェクション、プロトプラスト融合、リン酸カルシウム沈殿、及びジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランなどのポリカチオンを用いたアプリケーションのような生化学的手段、ならびにエレクトロポレーション、直接マイクロインジェクション及びマイクロプロジェクタイルボンバードメントのような機械的手段を含む、様々な好適な手段のいずれかによって、適切な宿主細胞に導入することができる。当業者に知られている、Johnston et al.,240 Science 1538(1988)を参照されたい。
【0115】
酵母は、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖の産生に関して細菌よりも優れた利点を提供する。酵母は、グリコシル化を含む翻訳後ペプチド修飾を実行する。強力なプロモーター配列と高コピー数のプラスミドとを利用する組み換えDNA戦略がいくつか存在し、酵母で所望のタンパク質を産生するために使用することができる。酵母は、クローン化された哺乳動物遺伝子産物のリーダー配列を認識し、リーダー配列を持つポリペプチド(すなわち、プレポリペプチド)を分泌する。例えば、Hitzman et al.,11th Intl.Conf.Yeast,Genetics & Molec.Biol.(Montpelier,France,1982)を参照されたい。
【0116】
酵母遺伝子発現系は、抗体の産生、分泌、及び安定性のレベル、ならびに組み立てられたMIC抗体及びその抗原結合部分について規定どおりに評価することができる。酵母がグルコースに富む培地中で増殖される場合に、大量に産生される解糖酵素をコードする活発に発現される遺伝子からのプロモーター及び終結エレメントを組み込む、様々な酵母遺伝子発現系を利用することができる。既知の解糖系遺伝子は、非常に効率的な転写制御シグナルを提供することもできる。例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)遺伝子のプロモーター及びターミネーターシグナルを利用することができる。別の例は、翻訳伸長因子1アルファプロモーターである。酵母における免疫グロブリンの発現に最適な発現プラスミドを評価するために、いくつかのアプローチを取ることができる。II DNA Cloning 45,(Glover,ed.,IRL Press,1985)及び例えば、米国公開第US2006/0270045A1号を参照されたい。
【0117】
本明細書に記載の抗体分子またはその抗原結合部分の産生のための宿主として、細菌株を利用することもでき、E.coli W3110(ATCC 27325)などのE.coli K12株、バチルス種、サルモネラチフィムリウムまたはセラチアマルセセンスなどの腸内細菌、及び種々のシュードモナス種を使用することができる。これらの細菌宿主に関連して、宿主細胞と適合性のある種に由来するレプリコン及び制御配列を含有するプラスミドベクターが使用される。このベクターは、複製部位だけでなく、形質転換細胞において表現型の選択を提供することができる特定の遺伝子を持つ。細菌におけるMIC抗体及びその抗原結合部分の産生のための発現プラスミドを評価するために、いくつかのアプローチを取ることができる(Glover,1985;Ausubel,1987,1993;Sambrook,1989;Colligan,1992-1996を参照されたい)。
【0118】
宿主哺乳類細胞は、インビトロまたはインビボで増殖させることができる。哺乳類細胞は、リーダーペプチドの除去、VH鎖及びVL鎖のフォールディング及び組み立て、抗体分子のグリコシル化、ならびに機能性抗体及び/またはその抗原結合部分の分泌を含む翻訳後修飾を免疫グロブリン分子に提供する。
【0119】
抗体タンパク質の産生のための宿主として有用であり得る哺乳類細胞には、上記のリンパ系起源の細胞に加えて、Vero(ATCC CRL 81)またはCHO-K1(ATCC CRL 61)細胞などの線維芽細胞起源の細胞が含まれる。免疫グロブリンポリペプチドを発現するために使用できる例示的な真核細胞には、COS7細胞を含むCOS細胞、293-6E細胞を含む293細胞、CHO--S及びDG44細胞を含むCHO細胞、PERC6(商標)細胞(Crucell)、ならびにNSO細胞が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、特定の真核生物宿主細胞は、重鎖及び/または軽鎖に対して所望の翻訳後修飾を行う能力に基づいて選択される。例えば、いくつかの実施形態では、CHO細胞は、293細胞で産生される同じポリペプチドよりも高いシアリル化レベルを有するポリペプチドを産生する。
【0120】
いくつかの実施形態では、任意の適切な方法に従って、ポリペプチドをコードする1つ以上の核酸分子を操作またはトランスフェクトされた動物において、1つ以上のMIC抗体またはその抗原結合部分(例えば、本明細書に記載される配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するVH及び/または配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するVLまたはそのバリアント)をインビボで産生することができる。
【0121】
いくつかの実施形態では、抗体またはその抗原結合部分(例えば、本明細書に記載される配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するVH及び/または配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するVLまたはそのバリアント)は、無細胞系で産生される。非限定的な例示的な無細胞系は、例えば、Sitaraman et al.,Methods Mol.Biol.498:229-44(2009);Spirin,Trends Biotechnol.22:538-45(2004);Endo et al.,Biotechnol.Adv.21:695-713(2003)に記載されている。
【0122】
哺乳類細胞でのVH鎖及びVL鎖(例えば、本明細書に記載される配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するVH及び/または配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するVLまたはそのバリアント)の発現には、多くのベクター系が利用可能である(Glover,1985を参照されたい)。無傷の抗体を得るために、様々なアプローチに従うことができる。上述のように、VH鎖及びVL鎖、ならびに任意選択で関連する定常領域を同じ細胞内で同時発現させて、VH鎖及びVL鎖の細胞内会合及び連結を達成して、完全な四量体H抗体またはその抗原結合部分にすることが可能である。同時発現は、同じホストで同じまたは異なるプラスミドを使用することによって起こり得る。VH鎖及びVL鎖またはその抗原結合部分(例えば、本明細書に記載される配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するVH及び配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するVLまたはそのバリアント)をコードする核酸を同じプラスミドに配置し、次いでこれらを細胞にトランスフェクトし、それによって両方の鎖を発現する細胞を直接選択することができる。あるいは、細胞は、1つの鎖、例えばVL鎖をコードするプラスミドを最初にトランスフェクトされ、その後、得られた細胞株に第2の選択可能マーカーを含むVH鎖プラスミドがトランスフェクトされ得る。抗体やその抗原結合部分を産生する細胞株には、いずれかの経路を介して、ペプチド、VH、VL、またはVHプラスVL鎖(例えば、本明細書に記載される配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するVH及び/または配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するVLまたはそのバリアント)の追加のコピーをコードするプラスミドが、追加の選択可能マーカーと併せてトランスフェクトされて、組み立てられたMIC抗体またはその抗原結合部分のより高い産生、またはトランスフェクトされた細胞株の安定性の向上など、特性が強化された細胞株を生成することができる。
【0123】
さらに、植物が、微生物または動物細胞の大規模培養に基づく組み換え抗体産生のための便利で安全かつ経済的な代替発現系として浮上している。MIC結合抗体または抗原結合部分を、植物細胞培養、または通常に生育された植物で発現させることができる。植物における発現は、全身性であるか、細胞内色素体に限定されているか、または種子(胚乳)に限定されている場合がある。例えば、米国特許公開第2003/0167531号、米国特許第6,080,560号、米国特許第6,512,162号、WO0129242を参照されたい。いくつかの植物由来抗体は、臨床試験を含む開発の進んだ段階に達している(例えば、Biolex,N.C.を参照)。
【0124】
無傷の抗体の場合、MIC抗体(例えば、本明細書に記載される配列番号1で表されるアミノ酸配列を有するVH及び/または配列番号2で表されるアミノ酸配列を有するVLまたはそのバリアント)の可変領域(VH及びVL)は、典型的には免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にはヒト免疫グロブリンの少なくとも一部に連結される。ヒト定常領域DNA配列は、不死化B細胞などの様々なヒト細胞から周知の手順に従って単離され得る(WO87/02671;この全体が参照により本明細書に組み込まれる)。MIC結合抗体は、軽鎖と重鎖の両方の定常領域を含むことができる。重鎖定常領域には、CH1、ヒンジ、CH2、CH3、及び場合によってはCH4領域が含まれ得る。いくつかの実施形態では、CH2ドメインを欠失または省略することができる。
【0125】
あるいは、単鎖抗体の産生のために説明された手法(例えば米国特許第4,946,778号;Bird,Science 242:423-42(1988);Huston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883(1988);及びWard et al.,Nature 334:544-54(1989)を参照されたい;これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を、MICに特異的に結合する単鎖抗体を産生するように適合させることができる。単鎖抗体は、Fv領域の重鎖及び軽鎖可変領域(本明細書に記載の配列番号1及び2で表されるアミノ酸配列、またはそのバリアント(例えば、任意選択で1~8個のアミノ酸の置換、欠失及び/または挿入によって改変されている)を有する)を、アミノ酸架橋を介して連結することによって形成され、単鎖ポリペプチドが得られる。E.coliにおける機能的Fvフラグメントの組み立ての手法も使用できる(例えばSkerra et al.,Science 242:1038-1041(1988)を参照されたい;この全体が参照により本明細書に組み込まれる)。
【0126】
無傷の(例えば、完全な)抗体、それらの二量体、個々の軽鎖及び重鎖、またはそれらの抗原結合部分は、既知の手法、例えば、免疫吸着または免疫アフィニティークロマトグラフィー、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)などのクロマトグラフィー法、硫酸アンモニウム沈殿、ゲル電気泳動、またはこれらの任意の組み合わせによって回収及び精製することができる。一般に、Scopes,Protein Purification(Springer-Verlag,N.Y.,1982)を参照されたい。少なくとも約90%~95%の均一性を有する実質的に純粋なMIC結合抗体またはその抗原結合部分は、98%~99%以上の均一性を有するものと同様に、特に薬学的用途に有利である。部分的または所望の均一性まで精製されると、その後、無傷のMIC抗体またはその抗原結合部分を治療に、またはアッセイ手順の開発及び実施、免疫蛍光染色などに使用することができる。一般に、Vols.I&II Immunol.Meth.(Lefkovits & Pernis,eds.,Acad.Press,NY,1979 and 1981)を参照されたい。
【0127】
さらに、本明細書に記載のように、ヒトでの治療のために、MIC抗体またはその抗原結合部分は、機能活性を維持しながら潜在的な免疫原性を低下させるように、さらに最適化することができる。いくつかの実施形態では、最適化されたMIC結合抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含むMIC抗体であって、重鎖及び軽鎖の可変フレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個、1~6個、1~4個または1~2個の保存的アミノ酸置換によって改変されており、重鎖または軽鎖可変領域のCDRが改変されていない、MIC抗体に由来する。いくつかの実施形態では、最適化されたMIC結合抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含むMIC結合抗体であって、重鎖及び軽鎖の可変フレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個、1~6個、1~4個または1~2個のアミノ酸の置換、欠失または挿入によって改変されており、重鎖または軽鎖可変領域のCDRが改変されていない、MIC結合抗体に由来する。この関連で、機能活性とは、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含むMIC結合抗体またはその抗原結合部分に関連する1つ以上の既知の機能活性を示すことができるMIC抗体またはその抗原結合部分を意味する。これらの実施形態のいずれかにおいて、MIC結合抗体またはその抗原結合部分の機能活性は、抗体B10G5よりも大きい結合アフィニティーでMICに特異的に結合することを含む。追加の機能活性には、MICの抑制、及び/または抗癌活性が含まれる。さらに、機能活性を有するMIC抗体またはその抗原結合部分は、用量依存性を伴うかまたは伴わずに、例えば生物学的アッセイなどの特定のアッセイで測定したときに、ポリペプチドが、本明細書に記載の参照抗体またはその抗原結合部分(例えば、本明細書に記載される(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域またはそのバリアントとを含むMIC結合抗体またはその抗原結合部分)の活性と同様の、またはそれよりも優れた活性を示すことを意味する。用量依存性が存在する場合、参照抗体またはその抗原結合部分の用量依存性と同一である必要はなく、むしろ本明細書に記載の参照抗体またはその抗原結合部分と比較して、所与の活性における用量依存性と実質的に同様またはそれよりも優れている(すなわち、候補ポリペプチドは参照抗体に対してより大きな活性を示すことになる)。
【0128】
MIC抗体及びその抗原結合部分または他の結合剤の他の態様は、活性成分(すなわち、本明細書に記載のMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤、あるいは本明細書に記載の抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤をコードする核酸を含む)を含む組成物に関するものである。いくつかの実施形態では、本組成物は医薬組成物である。本明細書で使用するとき、「医薬組成物」という用語は、製薬業界での使用が認められている薬学的に許容されるキャリヤーと組み合わせた活性剤を指す。本明細書で用いられる「薬学的に許容される」という語句は、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、または他の問題もしくは合併症のないヒト及び動物の組織と接触させて使用するのに適した、安全な医学的判断の範囲内にあり、妥当な利益/リスク比に見合う、化合物、材料、組成物及び/または剤形を指す。
【0129】
その中に溶解または分散された活性成分を含む薬理学的組成物の調製は、当技術分野でよく理解されており、特定の製剤に基づいて少しも限定される必要はない。典型的に、このような組成物は、液体溶液または懸濁液のいずれかの注射剤として調製され、また一方、使用前に液体中に再水和または懸濁するのに好適な固体形態を調製することもできる。調製物は、乳化するか、リポソーム組成物として提供することもできる。MIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、薬学的に許容され活性成分に適合性である賦形剤と、本明細書に記載の治療方法での使用に適した量で、混合することができる。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノールまたはこれらに類するもの、及びそれらの組み合わせである。さらに、必要に応じて、医薬組成物は、活性成分(例えば、MIC抗体またはその抗原結合部分)の効果を増強または維持する湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤及びこれらに類するものなどの少量の補助物質を含有することができる。本明細書に記載の医薬組成物は、その中の成分の薬学的に許容される塩を含むことができる。薬学的に許容される塩としては、例えば塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成された(ポリペプチドの遊離アミノ基で形成された)酸付加塩が挙げられる。また、遊離カルボキシル基で形成された塩は、無機塩基(例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または水酸化第二鉄など)、及び有機塩基(例えば、イソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなど)に由来してもよい。生理的に認容性のキャリヤーは当技術分野において周知である。例示的な液体キャリヤーは、活性成分(例えば、MIC抗体及び/またはその抗原結合部分)及び水を含有する無菌水性溶液、ならびに生理的pH値のリン酸ナトリウムなどの緩衝液、生理食塩水、またはその両方(例えば、リン酸緩衝食塩水)を含有できる無菌水性溶液である。またさらに、水性キャリヤーは2つ以上の緩衝塩、さらに塩化ナトリウム及び塩化カリウムなどの塩、ブドウ糖、ポリエチレングリコール、ならびに他の溶質を含有することができる。また液体組成物は、水に加えて及び水以外に、液相も含有することができる。このような追加の液相の例示としては、グリセリン、綿実油などの植物油、及び水-油エマルジョンがある。特定の障害または状態の治療に有効となる活性剤の量は、障害または状態の性質に依存し、標準的な臨床技術により決定され得る。
【0130】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のMIC抗体もしくはその抗原結合部分、または本明細書に記載のMIC抗体もしくはその抗原結合部分をコードする核酸を含む医薬組成物は、凍結乾燥物であり得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、治療有効量のMIC抗体もしくはその抗原結合部分、または本明細書に記載の医薬組成物を含む注射器が提供される。
【0132】
がんの治療
いくつかの態様では、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤は、本明細書に記載されるMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤を、それを必要とする対象者に投与することを含む方法(複数可)で使用することができる。いくつかの実施形態では、MIC結合抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む。いくつかの実施形態では、MIC結合抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含み、重鎖及び軽鎖の可変フレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個、1~6個、1~4個または1~2個の保存的アミノ酸置換によって改変されており、重鎖または軽鎖可変領域のCDRが改変されていない。いくつかの実施形態では、MIC結合抗体またはその抗原結合部分は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含み、重鎖及び軽鎖の可変フレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個、1~6個、1~4個または1~2個のアミノ酸の置換、欠失または挿入によって改変されており、重鎖または軽鎖可変領域のCDRが改変されていない。これらの実施形態のいずれかでは、MIC結合抗体は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する。
【0133】
いくつかの実施形態では、対象者は、がん及び/または悪性腫瘍の治療を必要としている。いくつかの実施形態では、対象者は、例えば、上皮細胞癌、MIC+固形腫瘍またはMIC+造血器悪性腫瘍などの、MIC+癌またはMIC+悪性腫瘍の治療を必要としている。いくつかの実施形態では、この方法は、MIC+癌または悪性腫瘍を有する対象者を治療するためのものである。いくつかの実施形態では、この方法は、対象者における上皮細胞癌または造血器悪性腫瘍を治療するためのものである。いくつかの実施形態では、この方法は、対象者におけるMIC+上皮細胞癌またはMIC+造血器悪性腫瘍を治療するためのものである。本明細書で使用するとき、「上皮細胞癌」とは、上皮細胞から発生する癌をいう。
【0134】
本明細書に記載の方法は、治療有効量のMIC結合抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤を投与することを含む。本明細書で使用される場合、語句「治療有効量」、「有効量」または「有効量」は、腫瘍または悪性腫瘍の治療、管理または再発の予防において治療的有用性を提供する本明細書に記載のMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤の量、例えば腫瘍または悪性腫瘍の少なくとも一つの症状、兆候またはマーカーにおける統計的に有意な減少を提供する量を指す。治療有効量の決定は、十分に当業者の能力の範囲内である。一般に、治療有効量は、対象者の病歴、年齢、状態、性別のみならず、対象者の医学的状態の重症度及び種類、ならびに他の薬学的に活性な薬剤の投与によって変えることができる。
【0135】
「がん」及び「悪性腫瘍」という用語は、身体器官及び系の正常な機能を妨げる細胞の無制御な増殖を指す。がんまたは悪性腫瘍は、原発性または転移性である場合があり、つまり、侵襲性になり、元の腫瘍部位から離れた組織に腫瘍増殖を播種する。「腫瘍」とは、身体器官及び系の正常な機能を妨げる細胞の無制御な増殖を指す。がんを有する対象者は、対象の体内に存在する客観的に測定可能ながん細胞を有する対象者である。この定義には、良性腫瘍及び悪性がん、ならびに潜在的に休止状態の腫瘍及び微小転移が含まれる。元の場所から移動し、他の重要な臓器に播種するがんは、影響を受けた臓器の機能低下により、最終的に対象者の死に至る可能性がある。白血病及びリンパ腫などの血液悪性腫瘍(血液癌)は、例えば、対象者の正常な造血コンパートメントを打ち負かし、それによって(貧血、血小板減少症及び好中球減少症の形で)造血不全を引き起こし、最終的には死に至る可能性がある。
【0136】
がんの例には、癌腫、リンパ腫、芽細胞腫、肉腫、及び白血病が含まれるが、これらに限定されない。このようながんのより具体的な例には、基底細胞癌腫、胆道癌、膀胱癌、骨癌、脳癌及びCNS癌、乳癌、腹膜癌、子宮頸癌;絨毛癌、結腸直腸癌(大腸癌)、結合組織癌、消化器系癌、子宮内膜癌、食道癌、眼癌、頭頸部癌、胃癌(gastric cancer)(胃腸癌及び胃癌(stomach cancer)を含む)、神経膠芽腫(GBM)、肝細胞癌、肝癌、上皮内腫瘍、腎臓癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌、及び肺扁平上皮癌)、ホジキンリンパ腫及び非ホジキンリンパ腫を含むリンパ腫、黒色腫、骨髄腫、神経芽細胞腫、口腔癌(例えば、口唇、舌、口腔、及び咽頭)、卵巣癌、膵臓癌、前立腺癌、網膜芽細胞腫、横紋筋肉腫、呼吸器系癌、唾液腺癌、肉腫、皮膚癌、扁平上皮癌、精巣癌、甲状腺癌、子宮癌または子宮内膜癌、泌尿器系癌、外陰癌;ならびに他の癌腫及び肉腫、ならびにB細胞リンパ腫(低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)、小リンパ球(SL)NHL、中悪性度/濾胞性NHL、中悪性度びまん性NHL、高悪性度免疫芽球性NHL、高悪性度リンパ芽球性NHL、高悪性度小型非開裂細胞性NHL、巨大病変NHL、マントル細胞リンパ腫、AIDS関連リンパ腫、及びワルデンストームマクログロブリン血症を含む)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性リンパ性白血病(ALL)、毛状細胞白血病、慢性骨髄性白血病、及び移植後リンパ増殖性疾患(PTLD)、ならびに母斑症に伴う異常な血管増殖、浮腫(脳腫瘍性浮腫)、及びメイグス症候群が含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
いくつかの実施形態では、癌腫は、黒色腫、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、肺癌、結腸癌、腎臓癌、及び頭頸部癌を含むがこれらに限定されない固形腫瘍から選択される。
【0138】
いくつかの実施形態では、がんまたは悪性腫瘍はMIC陽性(MIC+)である。本明細書で使用するとき、「MIC陽性」または「sMIC+」という用語は、細胞表面にMICを発現し(膜結合型MIC)、及び/またはがん細胞(複数可)から放出されるsMICタンパク質を産生する、がん細胞、がん細胞集団、腫瘍塊、または転移細胞を説明するために使用される。これらの用語は、MICタンパク質の細胞外ドメインの全部または一部を腫瘍内空間または循環系もしくはリンパ系に放出する全てのがん細胞及び/または腫瘍塊を包含することを意図している。したがって、これらの細胞は、その表面上に短期間だけMICタンパク質を示し得る。すなわち、この用語は、検出可能なMICタンパク質がその細胞表面に存在するか否かにかかわらず、エクソソームまたは他の機構を介して、sMICタンパク質を排出するか、またはsMICを分泌するがん細胞及び腫瘍細胞を包含する。しかし、MICを脱落させることによって自然免疫拒絶を回避することができる任意の癌細胞または腫瘍は、本明細書でその用語が使用される「MIC陽性癌」であると見なされる。MIC陽性癌のいくつかの非限定的な例には、上皮細胞癌及び造血器悪性腫瘍が含まれる。いくつかの実施形態では、MIC陽性癌または悪性腫瘍は、MIC陽性前立腺癌及び/またはその転移であり得る。
【0139】
本明細書で使用するとき、「対象者」は、ヒトまたは動物を指す。通常、動物は、霊長類、齧歯類、家畜または狩猟動物などの脊椎動物である。霊長類には、チンパンジー、カニクイザル、クモザル、及びマカク、例えば、アカゲザルが含まれる。齧歯類には、マウス、ラット、ウッドチャック、フェレット、ウサギ及びハムスターが含まれる。家畜及び狩猟動物には、ウシ、ウマ、ブタ、シカ、バイソン、バッファロー、ネコ科の種、例えば、イエネコ、イヌ科の種、例えば、イヌ、キツネ、オオカミ、鳥類、例えば、ニワトリ、エミュー、ダチョウ、及び魚、例えば、マス、ナマズ及びサーモンが含まれる。特定の実施形態では、対象者は、哺乳動物、例えば霊長類、例えばヒトである。本明細書では「患者」、「個人」及び「対象者」という用語は、交換可能なようにして使用される。
【0140】
好ましくは、対象者は哺乳動物である。哺乳動物は、ヒト、非ヒトの霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウマ、またはウシであり得るが、これらの例に限定されない。ヒト以外の哺乳動物は、例えば、様々ながんの動物モデルを代表する対象者として有利に使用することができる。さらに、本明細書に記載の方法は、家畜及び/またはペットを治療するために使用することができる。対象者は男性でも女性でもよい。特定の実施形態では、対象者はヒトである。
【0141】
対象者は、sMIC+癌またはMIC+癌であると以前に診断されたか、またはこれに罹患していると同定され、治療を必要としているが、sMIC+癌またはMIC+癌の治療をすでに受けている必要はない。あるいは、対象者はまた、治療を必要とするsMIC+癌またはMIC+癌を有すると以前に診断されていない対象者であり得る。対象者は、sMIC+癌またはMIC+癌に関連する状態または1つ以上の合併症に対する1つ以上の危険因子を示す者、あるいは危険因子を示さない対象者であり得る。特定のsMIC+癌の治療を「必要とする対象者」は、その状態を有するか、またはその状態を有すると診断された対象者であり得る。他の実施形態では、状態を「発症するリスクがある」対象者は、状態(例えば、sMIC+癌またはMIC+癌)を発症するリスクがあると診断された対象者を指す。
【0142】
本明細書で使用するとき、用語「治療する」、「治療」、「治療すること」、または「改善」は、疾患、障害または医学的状態に関して使用される場合、症状または状態の進行または重症度を逆転、緩和、改善、抑制、減速または停止させることが目的である、状態のための治療的処置を意味する。「治療する」という用語は、状態の少なくとも1つの有害事象または症状を軽減または緩和することを含む。治療は一般に、1つ以上の症状または臨床マーカーが減少した場合に「有効」である。あるいは、状態の進行が減少または停止した場合、治療は「有効」である。つまり、「治療」には、症状またはマーカーの改善だけでなく、治療を行わない場合に予想される症状の進行の停止もしくは少なくとも減速または悪化も含まれる。有益なまたは望ましい臨床結果には、対象者の遊離sMICレベルの低下、1つ以上の症状の緩和、欠損の範囲の縮小、がんまたは悪性腫瘍の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、腫瘍の成長及び/または転移の遅延または減速、ならびに治療しない場合に予想される状態と比較しての寿命の延長があるが、これらに限定されない。本明細書で使用するとき、「投与すること」という用語は、本明細書に記載のMIC結合抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤、あるいは本明細書に記載のMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤をコードする核酸を、MIC結合抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤とMICとの結合をもたらす方法または経路によって、対象者に提供することを意味する。同様に、本明細書に記載のMIC結合抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤、あるいは本明細書に開示のMIC抗体もしくはその抗原結合部分または他の結合剤をコードする核酸を含む医薬組成物は、対象者において有効な治療をもたらす任意の適切な経路で投与され得る。
【0143】
MIC結合抗体またはその抗原結合部分の投与量範囲は効力に依存し、所望の効果、例えばMICレベルの低下、腫瘍増殖の減速または腫瘍サイズの縮小を生じるのに十分な量を含む。投与量は、許容できない有害な副作用を引き起こすほど多くすべきではない。一般に、投与量は、対象者の年齢、状態、及び性別によって異なり、当業者によって決定され得る。投与量は、合併症が発生した場合に、個々の医師が調整することもできる。いくつかの実施形態では、投与量は、0.01mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲である。いくつかの実施形態では、用量範囲は、0.05mg/kg体重~5mg/kg体重である。いくつかの実施形態では、投与量は、0.01mg/kg体重~10mg/kg体重の範囲である。いくつかの実施形態では、用量範囲は、0.05mg/kg体重~5mg/kg体重である。あるいは、血清レベルを1pg/mL~1000ug/mLの間に維持するように用量範囲を決めることができる。全身投与では、対象者は、例えば、0.01mg/kg、0.1mg/kg、0.5mg/kg、1.0mg/kg、2.0mg/kg、2.5mg/kg、5mg/kg、10mg/kg、15mg/kg、20mg/kg、25mg/kgまたはそれ以上などの治療量を投与されることが可能である。
【0144】
上記用量の投与を、繰り返し行うことができる。実際には、遊離または未結合のMICを除去することで、腫瘍、がん細胞または悪性細胞に対する免疫攻撃を促進できる程度まで、例えば、最初に腫瘍、がんまたは悪性腫瘍自体を治療し、その後、MICを放出する能力を獲得する腫瘍細胞の発生に対して継続的な監視を提供するために、長期投与が企図される。好ましい実施形態では、上記の用量は、毎週、隔週、3週間ごと、または毎月、数週間または数ヶ月にわたって投与される。治療期間は、対象者の臨床的経過と治療に対する反応性とに依存する。
【0145】
いくつかの実施形態では、用量は、約0.01mg/kg~約100mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約0.01mg/kg~約25mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約0.01mg/kg~約20mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約0.01mg/kg~約15mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約0.01mg/kg~約100mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約0.01mg/kg~約25mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約0.01mg/kg~約20mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約0.01mg/kg~約15mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約0.1mg/kg~約10mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約1mg/kg~約100mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約1mg/kg~約25mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約1mg/kg~約20mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約1mg/kg~約15mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約2mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約4mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約5mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約6mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約8mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約10mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約15mg/kgであり得る。いくつかの実施形態では、用量は、約100mg/m~約700mg/mであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約250mg/mであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約375mg/mであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約400mg/mであり得る。いくつかの実施形態では、用量は約500mg/mであり得る。
【0146】
いくつかの実施形態では、用量は静脈内に投与され得る。いくつかの実施形態では、静脈内投与は、約10分~約4時間の期間にわたって行われる注入であり得る。いくつかの実施形態では、静脈内投与は、約30分~約90分の期間にわたって行われる注入であり得る。
【0147】
いくつかの実施形態では、用量は毎週投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は隔週で投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は約2週間ごとに投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は約3週間ごとに投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は3週間ごとに投与され得る。いくつかの実施形態では、用量は4週間ごとに投与され得る。
【0148】
いくつかの実施形態では、合計約2~約10の用量が対象者に投与される。いくつかの実施形態では、合計4用量が投与される。いくつかの実施形態では、合計5用量が投与される。いくつかの実施形態では、合計6用量が投与される。いくつかの実施形態では、合計7用量が投与される。いくつかの実施形態では、合計8用量が投与される。いくつかの実施形態では、合計9用量が投与される。いくつかの実施形態では、合計10用量が投与される。いくつかの実施形態では、合計10を超える用量が投与される。
【0149】
MIC結合抗体もしくはその抗原結合部分または他のMIC結合剤を含有する医薬組成物は、単位用量で投与することができる。医薬組成物に関して使用される場合、用語「単位用量」は、対象者への単位投与として適した物理的に離散した単位を指し、各単位は、所要の生理学的に許容される希釈剤、すなわちキャリヤーまたはビヒクルとの関連で所望の治療効果をもたらすように算出された所定の量の活性物質(例えば、MIC結合抗体またはその抗原結合部分)を含有する。
【0150】
いくつかの実施形態では、MIC結合抗体もしくはその抗原結合部分、またはこれらのいずれかもしくは両方の医薬組成物は、免疫療法と共に投与される。本明細書で使用される場合、「免疫療法」は、対象者自身の免疫系を誘導または増強して、がんまたは悪性腫瘍と闘うように設計された治療戦略を指す。免疫療法の例には、養子細胞療法(例えば、自己NK細胞、同種NK細胞、自己T細胞、CAR改変T細胞及びCAR改変NK細胞)、チェックポイント阻害剤などの抗体、ならびに代謝シグナルを撹乱する抗体、ガンマ鎖ファミリーサイトカインIL-2、IL15及びそのバリアントなどの免疫サイトカイン、ケモトキシン(chemotoxin)、放射線療法、及びエピジェネティック修飾因子などがあるが、これらに限定されない。例えば、Rohaan et al.,Virchows Archiv 474:449-461(2019);Magalhaes et al.,Expert Opinion on Biological Therapy 19:8,811-827(2019)及びOtt et al.,2019 ASCO Educational Book,Developmental Immunotherapy and Tumor Immunobiology,e70-78(2020)を参照されたい。これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0151】
いくつかの実施形態では、養子細胞療法は、T細胞を対象者の血液から取り出し、がん細胞上の適切な標的に対してキメラ抗原レセプターを発現するように遺伝子改変し)、その後対象者に再投与するCAR T細胞療法などのT細胞療法である。例えば、WO2019/018603;WO2019/090003;WO2020/033927;WO2019089969;WO2015/164675;WO2016064929;WO2019/032929;WO2016/115559;WO2016/033570;WO2014/130657;WO2016028896;WO2015/090230;及びWO2014/153270を参照されたい。
【0152】
いくつかの実施形態では、養子細胞療法は、PBMCが対象者の血液から取り出され、特定の抗原に応答するようにプライミングされ、その後対象者に再投与される細胞療法である(例えば、シプロイセルT)。(例えば、WO2001/039594;WO2001/074855;及びWO1999/063050を参照されたい。)
【0153】
いくつかの実施形態では、養子細胞療法はNK細胞療法である。NK細胞は、がん細胞上の適切な標的に対してキメラ抗原レセプターを発現するように操作され得、その後、操作されたNK細胞が対象者に投与される。(例えば、WO2006/103569;WO2018/165291;WO2016/201304;WO2017/100709;WO2019/028337;WO2016/176651及びWO2018/183385を参照されたい。)
【0154】
いくつかの実施形態では、免疫療法は、チェックポイント阻害剤の投与を含む。いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、阻害剤またはCTLA-4、PD-1、PD-L1、PD-L2、B7-H3、B7-H4、BMA、HVEM、TIM3、GAL9、LAG3、VISTA、KIR、LILRB1、LILRB2、CD47、CD137、CD70、2B4、CD160、TIGIT、CGEN-15049、CHK1、CHK2、SIGLEC-15、NKG2A、CD39、CD73、A2AR、及びA2BRから選択される。いくつかの実施形態では、免疫チェックポイント阻害剤には、CTLA-4、PD-1、PD-L1などを阻害する薬剤が含まれる。好適な抗CTLA-4療法剤には、例えば、抗CTLA-4抗体、ヒト抗CTLA-4抗体、マウス抗CTLA-4抗体、哺乳動物抗CTLA-4抗体、ヒト化抗CTLA-4抗体、モノクローナル抗CTLA-4抗体、ポリクローナル抗CTLA-4抗体、キメラ抗CTLA-4抗体、イピリムマブ、トレメリムマブ、抗CTLA-4アドネクチン、抗CTLA-4ドメイン抗体、単鎖抗CTLA-4 mAbs、重鎖抗CTLA-4 mAbs、軽鎖抗CTLA-4 mAbs、共刺激経路を刺激するCTLA-4の阻害剤、PCT公開第WO2001/014424号に開示された抗体、PCT公開第WO2004/035607号に開示された抗体、米国公開第2005/0201994号に開示された抗体、及び欧州特許第EP1212422B 1号に開示されている抗体が含まれる。追加の抗CTLA-4抗体は、米国特許第5,811,097号、第5,855,887号、第6,051,227号、及び第6,984,720号、PCT公開第WO01/14424号及び第WO00/37504号、ならびに米国公開第2002/0039581号及び第2002/086014号に記述されている。本発明の方法に用いることができる他の抗CTLA-4抗体としては、例えば、WO98/42752、米国特許第6,682,736号及び第6,207,156号、Hurwitz et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,95(17):10067-10071(1998)、Camacho et al.,J.Clin.Oncology,22(145):Abstract No.2505(2004)(抗体CP-675206)、Mokyr et al.,Cancer Res,58:5301-5304(1998)、米国特許第5,977,318号、第6,682,736号、第7,109,003号、及び第7,132,281号に開示されているものが挙げられる。
【0155】
好適な抗PD-1及び抗PD-L1療法剤には、例えば、抗PD-1及び抗PD-L1抗体、ヒト抗PD-1及び抗PD-L1抗体、マウス抗PD-1及び抗PD-L1抗体、哺乳動物抗PD-1及び抗PD-L1抗体、ヒト化抗PD-1及び抗PD-L1抗体、モノクローナル抗PD-1及び抗PD-L1抗体、ポリクローナル抗PD-1及び抗PD-L1抗体、キメラ抗PD-1及び抗PD-L1抗体、抗PD-1アドネクチン及び抗PD-L1アドネクチン、抗PD-1ドメイン抗体及び抗PD-L1ドメイン抗体、単鎖抗PD-1 mAbs及び単鎖抗PD-L1 mAbs、重鎖抗PD-1 mAbs及び重鎖抗PD-L1 mAbs、及び軽鎖抗PD-1 mAbs及び軽鎖抗PD-L1 mAbsが含まれる。特定の実施形態では、抗PD-1療法剤には、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、MEDI0680、及びそれらの組み合わせが含まれる。他の特定の実施形態では、抗PD-L1療法剤には、アテゾリズマブ、BMS-936559、MEDI4736、MSB0010718C、及びそれらの組み合わせが含まれる。
【0156】
好適な抗PD-1抗体及び抗PD-L1抗体は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Topalian,et al.,Immune Checkpoint Blockade:A Common Denominator Approach to Cancer Therapy,Cancer Cell 27:450-61(April 13,2015)にも記載されている。
【0157】
いくつかの実施形態では、チェックポイント阻害剤は、イピリムマブ(ヤーボイ)、ニボルマブ(オプジーボ)、ペンブロリズマブ(キイトルーダ)、アテゾリズマブ(テセントリク)、アベルマブ(バベンシオ)、またはデュルバルマブ(インフィンジ)である。
【0158】
いくつかの実施形態では、免疫療法を受ける対象者における治療成績を改善させる方法が提供される。この方法は、一般に、がんを有する対象者に有効量の免疫療法を投与することと、治療有効量の結合剤またはその医薬組成物を対象者に投与することであって、結合剤が循環MICに特異的に結合する、投与することとを含み、対象者の治療成績が、免疫療法単独の投与と比べて改善される。いくつかの実施形態では、結合剤は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含み、重鎖及び軽鎖のフレームワーク領域が、任意選択で、フレームワーク領域における1~8個のアミノ酸の置換、欠失または挿入によって改変されており、結合剤は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、結合剤は、(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含み、結合剤は、MICに特異的に結合する。いくつかの実施形態では、結合剤は、抗体またはその抗原結合部分である。いくつかの実施形態では、結合剤は、モノクローナル抗体、Fab、Fab′、F(ab′)、Fv、ジスルフィド結合Fc、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である。
【0159】
いくつかの実施形態では、改善された治療成績は、治療されるがんの標準的な医学的基準によって決定される、安定、部分奏効または完全奏効から選択される客観的応答である。いくつかの実施形態では、改善された治療成績は、腫瘍量の減少である。いくつかの実施形態では、改善された治療成績は、無増悪生存期間または無病生存期間である。
【0160】
いくつかの実施形態では、方法は、内在性NK細胞もしくはT細胞またはそれらの前駆体を枯渇させることによって免疫系を損なう化学療法または他の治療を投与してから、少なくとも4週間、少なくとも6週間または少なくとも8週間の後に、MIC抗体またはその抗原結合部分をさらに投与する。いくつかのそのような実施形態では、化学療法または治療は、放射線療法または化学療法からなる群から選択される。化学療法剤の非限定的な例としては、アルキル化剤、例えば、チオテパ及びCYTOXAN(商標)シクロホスファミド、スルホン酸アルキル、例えば、ブスルファン、インプロスルファン、及びピポスルファン、アジリジン、例えば、ベンゾドーパ、カルボコン、メツレドーパ、及びウレドーパ、エチレンイミン及びメチルアメラミン、例えば、アルトレタミン、トリエチレンメラミン、トリエチレンホスホルアミド、トリエチレンチオホスホラミド、及びトリメチローロメラミン、アセトゲニン(具体的には、ブラタシン及びブラタシノン)、カンプトテシン(合成類似体トポテカン等)、ブリオスタチン、カリスタチン、CC-1065(そのアドゼレシン、カルゼレシン、及びバイゼレシン合成類似体等)、クリプトフィシン(具体的には、クリプトフィシン1及びクリプトフィシン8)、ドラスタチン、デュオカルマイシン(合成類似体KW-2189及びCB1-TM1等)、エリュテロビン、パンクラチスタチン、サルコジクチイン、スポンギスタチン、ナイトロジェンマスタード、例えば、クロラムブシル、クロルナファジン、コロホスファミド、エストラムスチン、イホスファミド、メクロレタミン、メクロレタミンオキシドヒドロクロリド、メルファラン、ノベンビチン、フェネステリン、プレドニムスチン、トロフォスファミド、及びウラシルマスタード、ニトロソウレア、例えば、カムルスチン、クロロゾトシン、フォテムスチン、ロムスチン、ニムスチン、及びラニムスチン、抗生物質、例えば、エンジイン抗生物質(例えば、カリケアマイシン、具体的には、カリケアマイシンガンマll及びカリケアマイシンオメガll(例えば、Agnew,Chem.Intl.Ed.Engl.,33:183-186(1994));ダイネミシン(ダイネミシンAを含む);ビスホスホネート(クロドロネートなど);エスペラミシン、ならびにネオカルジノスタチン発色団及び関連する色素タンパク質エンジイン抗生物質発色団)、アクラシノマイシン類、アクチノマイシン、オースラマイシン、アザセリン、ブレオマイシン、カクチノマイシン、カラビシン、カミノマイシン、カルジノフィリン、クロモマイシニス、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、デトルビシン、6-ジアゾ-5-オキソ-L-ノルロイシン、ADRIAMYCIN.RTM.ドキソルビシン(モルフォリノ-ドキソルビシン、シアノモルフォリノ-ドキソルビシン、2-ピロリノ-ドキソルビシン及びデオキシドキソルビシンを含む)、エピルビシン、エソルビシン、イダルビシン、マルセロマイシン、マイトマイシン(マイトマイシンCなど)、ミコフェノール酸、ノガラマイシン、オリボマイシン、ペプロマイシン、ポルフィロマイシン、ピューロマイシン、クエラマイシン、ロドルビシン、ストレプトニグリン、ストレプトゾシン、ツベルシジン、ウベニメクス、ジノスタチン、ゾルビシン;抗代謝剤(メトトレキサート及び5-フルオロウラシル(5-FU)など);葉酸類似体(デノプテリン、メトトレキサート、プテロプテリン、トリメトレキサートなど);プリン類似体(フルダラビン、6-メルカプトプリン、チアミプリン、チオグアニンなど);ピリミジン類似体(アンシタビン、アザシチジン、6-アザウリジン、カルモフール、シタラビン、ジデオキシウリジン、ドキシフルリジン、エノシタビン、フロクスウリジンなど);アンドロゲン類(カルステロン、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピチオスタノール、メピチオスタン、テストラクトンなど);抗副腎剤(アミノグルテチミド、ミトタン、トリロスタンなど);葉酸補充剤(フロリン酸など);アセグラトン;アルドホスファミドグリコシド;アミノレブリン酸;エニルウラシル;アムサクリン;ベストラブシル;ビサントレン;エダトラキセート;デフォファミン;デメコルチン;ジアジクオン;エルフォミチン;酢酸エリプチニウム;エポチロン;エトグルシド;硝酸ガリウム;ヒドロキシ尿素;レンチナン;ロニダイニン;メイタンシノイド(メイタンシン及びアンサマイトシンなど);ミトグアゾン;ミトキサントロン;モピダムノール;ニトラエリン;ペントスタチン;フェナメット;ピラルビシン;ロソキサントロン;ポドフィリン酸;2-エチルヒドラジド;プロカルバジン;PSK(商標)多糖類複合体(JHS Natural Products,Eugene,Oreg.);ラゾキサン、リゾキシン;シゾフラン;スピロゲルマニウム;テヌアゾン酸;トリアジクオン;2,2’,2”-トリクロロトリエチルアミン;トリコテセン類(特に、T-2毒素、ベラクリンA、ロリジンA、及びアングイジン);ウレタン;ビンデシン;ダカルバジン;マンノムスチン;ミトブロニトール;ミトラクトール;ピポブロマン;ガシトシン;アラビノシド(「Ara-C」);シクロホスファミド;チオテパ;タキソイド(例えば、TAXOL(商標)パクリタキセル(Bristol-Myers Squibb Oncology,Princeton,N.J.)、ABRAXANE.RTM.パクリタキセルのクレモフォールアルブミン操作されたナノ粒子製剤(American Pharmaceutical Partners、Schaumberg,Ill.)、及びTAXOTERE(商標)ドセタキセル(Rhone-Poulenc Rorer,Antony,France)、クロランブシル、GEMZAR(商標)ゲムシタビン、6-チオグアニン、メルカプトプリン、メトトレキサート、白金類似体、例えば、シスプラチン、オキサリプラチン及びカルボプラチン、ビンブラスチン、白金、エトポシド(VP-16)、イホスファミド、ミトキサントロン、ビンクリスチン、NAVELBINE(商標)ビノレルビン、ノバントロン、テニポシド、エダトレキサート、ダウノマイシン、アミノプテリン、ゼローダ、イバンドロネート、イリノテカン(Camptosar、CPT-11)(イリノテカンの5-FU及びロイコボリンでの治療レジメン等)、トポイソメラーゼ阻害剤RFS2000、ジフルオロメチルオルニチン(DMFO)、レチノイド、例えば、レチノイン酸、カペシタビン、コンブレタスタチン、ロイコボリン(LV)、オキサリプラチン、例えば、オキサリプラチン治療レジメン(FOLFOX)、ラパチニブ(Tykerb(商標))、細胞増殖を低減するPKC-アルファ、Raf、H-Ras、EGFR(例えば、エルロチニブ(Tarceva(商標)))及びVEGF-A阻害剤、ならびに上述のうちのいずれかの薬学的に許容される塩、酸、または誘導体が挙げられ得る。
【0161】
「放射線療法」とは、正常に機能するか、または細胞を完全に破壊するその能力を制限するように細胞に十分な損傷を誘導するための指向性ガンマ線またはベータ線の使用を意味する。
【0162】
本開示の実施形態の説明は、網羅的であること、または本開示を開示された正確な形式に限定することを意図していない。本開示の特定の実施形態、及びそれに対する実施例が、例解目的で本明細書において説明されるが、関連分野の当業者が認識するように、種々の同等の修正が、本開示の範囲内において可能である。本明細書で提供される開示の教示は、必要に応じて他の手順または方法に適用することができる。本明細書に記載の様々な実施形態を組み合わせて、さらなる実施形態を提供することができる。本開示の態様は、必要に応じて修正して、上記の参考文献及び出願の構成、機能、及び概念を採用して、本開示のさらなる実施形態を提供することができる。これらの変更及び他の変更を、詳細な説明に照らして本開示に加えることができる。
【0163】
前述の実施形態のいずれかの特定の要素を組み合わせたり、他の実施形態の要素に置き換えたりすることができる。さらに、本開示の特定の実施形態に関連する利点が、これらの実施形態の文脈において説明されるが、他の実施形態もそのような利点を呈することができ、全ての実施形態が必ずしも本開示の範囲内に入るように、そのような利点を呈する必要はない。
【0164】
全ての特許及び他の認定された出版物は、例えば、本発明と関連して使用され得る、かかる出版物において記述される手順を記述及び開示する目的で参照することにより、明示的に本明細書に組み込まれる。これらの出版物は、本出願の出願日以前のそれらの開示にのみ提供される。この点のいかなる内容も、先行発明、または任意の他の理由によって、発明者らがかかる開示に先行する権利がないことを承認すると、解釈するべきではない。日付に関する記載、または、これらの文書の内容の描写の全ては、出願人が利用可能な情報に基づき、日付または、これらの文書の内容の正確性のいかなる承認も構成しない。
【0165】
非限定的な例示的な実施形態
本発明は、次の実施形態によってさらに説明されるが、これらは限定と解釈されるべきではない。
1.(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変(VH)領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変(VL)領域とを含む結合剤であって、前記重鎖及び前記軽鎖のフレームワーク領域が、任意選択で、前記フレームワーク領域における1~8個のアミノ酸の置換、欠失または挿入によって改変されている、前記結合剤。
【0166】
2.(i)配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域と、(ii)配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域とを含む、結合剤。
【0167】
3.重鎖可変(VH)領域及び軽鎖可変(VL)領域を含む結合剤であって、前記VH領域が、配列番号11で表されるアミノ酸配列を有する相補性決定領域HCDR1、配列番号12で表されるアミノ酸配列を有するHCDR2、及び配列番号13で表されるアミノ酸配列を有するHCDR3を含み、前記VL領域が、配列番号14で表されるアミノ酸配列を有するLCDR1、配列番号15で表されるアミノ酸配列を有するLCDR2、及び配列番号16で表されるアミノ酸配列を有するLCDR3を含み、前記VH領域及び前記VL領域がそれぞれヒト化フレームワーク領域を含む、前記結合剤。
【0168】
4.前記ヒト化VHフレームワーク領域は、IMGT IGHV4-59*11(配列番号29)及びIGHJ4*01(配列番号30)またはIGHV4-30-4*01(配列番号31)及びIGHJ4*01(配列番号30)で表されるアミノ酸配列を有するヒト生殖細胞遺伝子に由来する、実施形態3に記載の結合剤。
【0169】
5.前記ヒト化VLフレームワーク領域は、IMGT IGKV1-NL1*01(配列番号32)及びIMGT IGKJ1*01(配列番号33)、IMGT IGKV1-33*01(配列番号34)及びIMGT IGKJ1*01(配列番号33)、またはIMGT IGKV1-5*01(配列番号35)及びIMGT IGKJ1*01(配列番号33)で表されるアミノ酸配列を有するヒト生殖細胞遺伝子に由来する、実施形態3または実施形態4に記載の結合剤。
【0170】
6.前記結合剤は、MICに特異的に結合する、実施形態1~5のいずれか1つに記載の結合剤。
【0171】
7.前記結合剤は、抗体またはその抗原結合部分である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の結合剤。
【0172】
8.前記結合剤は、モノクローナル抗体、Fab、Fab′、F(ab′)、Fv、ジスルフィド結合Fc、scFv、単一ドメイン抗体、ダイアボディ、二重特異性抗体、または多重特異性抗体である、実施形態7に記載の結合剤。
【0173】
9.前記重鎖可変領域は、重鎖定常領域をさらに含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の結合剤。
【0174】
10.前記重鎖定常領域はIgGアイソタイプである、実施形態9に記載の結合剤。
【0175】
11.前記重鎖定常領域はIgG1定常領域である、実施形態10に記載の結合剤。
【0176】
12.前記重鎖定常領域はIgG4定常領域である、実施形態10に記載の結合剤。
【0177】
13.前記重鎖可変領域及び前記重鎖定常領域は、配列番号3で表されるアミノ酸配列を有する、実施形態11に記載の結合剤。
【0178】
14.前記軽鎖可変領域は、軽鎖定常領域をさらに含む、先行実施形態のいずれか1つに記載の結合剤。
【0179】
15.前記軽鎖定常領域はカッパアイソタイプである、実施形態14に記載の結合剤。
【0180】
16.前記軽鎖可変領域及び前記軽鎖定常領域は、配列番号4で表されるアミノ酸配列を有する、実施形態15に記載の結合剤。
【0181】
17.前記重鎖定常領域は、少なくともヒトFcガンマRIIIに対する結合アフィニティーを増加させるアミノ酸改変をさらに含む、実施形態9~16のいずれか1つに記載の結合剤。
【0182】
18.前記重鎖定常領域は、1つ以上のFcガンマレセプターへの結合を減少させる少なくとも1つのアミノ酸改変をさらに含む、実施形態9~17のいずれか1つに記載の結合剤。
【0183】
19.前記重鎖定常領域は、CDC活性を増加させる少なくとも1つのアミノ酸改変をさらに含む、実施形態9~17のいずれか1つに記載の結合剤。
【0184】
20.前記結合剤は単一特異性である、実施形態のいずれか1つに記載の結合剤。
【0185】
21.前記結合剤は二価である、実施形態1~20のいずれか1つに記載の結合剤。
【0186】
22.前記結合剤は第2の結合ドメインを含み、前記結合剤は二重特異性である、実施形態21に記載の結合剤。
【0187】
23.前記結合剤は、可溶型MIC(sMIC)に特異的に結合する、実施形態1~22のいずれか1つに記載の結合剤。
【0188】
24.前記結合剤は、抗体B10G5よりも高い結合アフィニティーでMICに特異的に結合する、実施形態1~23のいずれか1つに記載の結合剤。
【0189】
25.先行実施形態のいずれかに記載の結合剤と、薬学的に許容されるキャリヤーとを含む、医薬組成物。
【0190】
26.配列番号1で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域をコードする核酸であって、任意選択で、配列番号21で表される核酸配列を有する、前記核酸。
【0191】
27.配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域をコードする核酸であって、任意選択で、配列番号22で表される核酸配列を有する、前記核酸。
【0192】
28.実施形態1~24のいずれか1つに記載の結合剤をコードする核酸であって、任意選択で、配列番号21及び配列番号22で表される核酸配列を有する、前記核酸。
【0193】
29.実施形態26~28のいずれか1つに記載の核酸を含む、ベクター。
【0194】
30.実施形態26~28のいずれか1つに記載の核酸、または実施形態29に記載のベクターを含む、細胞株。
【0195】
31.MIC+癌を治療する方法であって、治療を必要とする対象者に、治療有効量の、実施形態1~24のいずれか1つに記載の結合剤、または実施形態25に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0196】
32.前記がんは、癌腫、肉腫、神経内分泌腫瘍、または悪性血液疾患である、実施形態31に記載の方法。
【0197】
33.前記がんは癌腫である、実施形態33に記載の方法。
【0198】
34.前記癌腫は、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、肺癌、結腸癌、及び頭頸部癌から選択される、実施形態33に記載の方法。
【0199】
35.前記がんは悪性血液疾患である、実施形態32に記載の方法。
【0200】
36.前記悪性血液疾患は、リンパ腫または多発性骨髄腫である、実施形態33に記載の方法。
【0201】
37.前記対象者に免疫療法を投与することをさらに含む、実施形態31~36のいずれか1つに記載の方法。
【0202】
38.前記免疫療法は、養子細胞療法またはチェックポイント阻害剤を含む、実施形態37に記載の方法。
【0203】
39.前記免疫療法は、養子細胞療法を含む、実施形態38に記載の方法。
【0204】
40.前記養子細胞療法は、自己NK細胞、同種NK細胞、自己T細胞、CAR改変T細胞及びCAR改変NK細胞から選択される、実施形態39に記載の方法。
【0205】
41.前記免疫療法はチェックポイント阻害剤を含む、実施形態38に記載の方法。
【0206】
42.前記チェックポイント阻害剤は、ヒトPD-1、ヒトPD-L1、またはヒトCTLA4に特異的に結合する抗体から選択される、実施形態41に記載の方法。
【0207】
43.前記チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブまたはイピリムマブである、実施形態42に記載の方法。
【0208】
44.前記結合剤の前記投与より前に、少なくとも4週間、前記対象者に化学療法が投与されない、実施形態31~43のいずれか1つに記載の方法。
【0209】
45.前記結合剤は静脈内に投与される、実施形態31~44のいずれか1つに記載の方法。
【0210】
46.前記結合剤は、約0.1mg/kg~約100mg/kgの用量で投与される、実施形態31~45のいずれか1つに記載の方法。
【0211】
47.がんを有する対象者における循環sMICのレベルを低下させる方法であって、治療有効量の、実施形態1~24のいずれか1つに記載の結合剤、または実施形態25に記載の医薬組成物を投与することを含む、前記方法。
【0212】
48.前記がんは、癌腫、肉腫、神経内分泌腫瘍、または悪性血液疾患である、実施形態47に記載の方法。
【0213】
49.前記がんは癌腫である、実施形態48に記載の方法。
【0214】
50.前記癌腫は、前立腺癌、卵巣癌、子宮頸癌、乳癌、肺癌、結腸癌、及び頭頸部癌から選択される、実施形態49に記載の方法。
【0215】
51.前記がんは悪性血液疾患である、実施形態48に記載の方法。
【0216】
52.前記悪性血液疾患は、リンパ腫または多発性骨髄腫である、実施形態51に記載の方法。
【0217】
53.免疫療法を受ける対象者の治療成績を改善させる方法であって、
a.がんを有する前記対象者に有効量の免疫療法を投与することと、
b.前記対象者に、治療有効量の、実施形態1~24のいずれか1つに記載の結合剤、または実施形態25に記載の医薬組成物を投与することであって、前記結合剤がMICに特異的に結合する、前記結合剤または前記医薬組成物を前記投与することとを含み、
前記対象者の前記治療成績が、前記免疫療法単独の投与と比べて改善される、前記方法。
【0218】
54.前記改善された治療成績は、安定、部分奏効または完全奏効から選択される客観的応答である、実施形態53に記載の方法。
【0219】
55.前記改善された治療成績は、腫瘍量の減少である、実施形態53に記載の方法。
【0220】
56.前記改善された治療成績は、無増悪生存期間または無病生存期間である、実施形態53に記載の方法。
【0221】
57.前記免疫療法は、養子細胞療法またはチェックポイント阻害剤である、実施形態53に記載の方法。
【0222】
58.前記免疫療法は養子細胞療法である、実施形態57に記載の方法。
【0223】
59.前記養子細胞療法は、自己NK細胞、同種NK細胞、自己T細胞、CAR改変T細胞及びCAR改変NK細胞を含む、実施形態58に記載の方法。
【0224】
60.前記免疫療法はチェックポイント阻害剤である、実施形態57に記載の方法。
【0225】
61.前記チェックポイント阻害剤は、ヒトPD-1、ヒトPD-L1、またはCTLA4に特異的に結合する抗体を含む、実施形態60に記載の方法。
【0226】
62.前記チェックポイント阻害剤は、ペムブロリズマブ、ニボルマブ、セミプリマブまたはイピリムマブである、実施形態61に記載の方法。
【0227】
63.前記結合剤の前記投与より前に、少なくとも4週間、前記対象者に化学療法が投与されない、実施形態53~62のいずれか1つに記載の方法。
【0228】
64.前記結合剤は静脈内に投与される、実施形態53~63のいずれか1つに記載の方法。
【0229】
65.前記結合剤は、約0.1mg/kg~約10mg/kgの用量で投与される、実施形態53~64のいずれか1つに記載の方法。
【0230】
66.対象者におけるMIC+癌の治療のための、実施形態1~24のいずれか1つに記載の結合剤または実施形態25に記載の医薬組成物の使用。
【0231】
67.免疫療法を受ける対象者におけるMIC+癌の治療のための、実施形態1~24のいずれか1つに記載の結合剤または実施形態25に記載の医薬組成物の使用。
【0232】
68.前記VHは、配列番号1、23及び24で表されるアミノ酸配列を有する重鎖可変領域から選択され、前記VLは、配列番号2、25及び26で表されるアミノ酸配列を有する軽鎖可変領域から選択される、実施形態1及び3~24のいずれか1つに記載の結合剤。
【0233】
69.前記VHは、配列番号24で表されるアミノ酸配列を有し、前記VLは、配列番号2で表されるアミノ酸配列を有する、実施形態68に記載の結合剤。
【実施例
【0234】
実施例1:ヒト化抗体の作製
以下の実施例では、抗体B10G5のヒト化バージョンの調製について説明する。2つの異なる重鎖及び軽鎖のヒトアクセプターフレームワークに基づいて、3つのヒト化軽鎖及び3つのヒト化重鎖を設計した。各親鎖の第1のヒト化鎖は、最初のフレームワークを利用し、最少の親抗体フレームワーク配列を含むほとんどのヒト配列を含む(ヒト化HC1、LC1と命名)。各親鎖の第2のヒト化鎖は、前と同じフレームワークを使用するが、追加の親配列を含む(ヒト化HC2、LC2と命名)。それぞれの第3のヒト化鎖は、それぞれの第2のフレームワークを利用し、HC2/LC2と同様に、ヒトフレームワークと融合した追加の親配列も含む(ヒト化HC3、LC3と命名)。
【0235】
次に、軽鎖及び重鎖のヒト化鎖を組み合わせて、バリアントの完全ヒト化抗体を作成する準備を整えた。以下の実施例に記載するように、ヒト化軽鎖及び重鎖の全ての可能な組み合わせについて、それらの発現レベル及び結合アフィニティーの試験を実施した。
【0236】
完全長抗体遺伝子は、最初に可変領域配列を合成することによって構築した。その配列を、哺乳類細胞での発現のために最適化した。次に、これらの可変領域配列を、すでにヒトFcドメインを含む発現ベクターにクローニングした。重鎖については、要求に応じてIgG1定常領域を利用した。さらに、比較のために、親抗体の重鎖及び軽鎖を、同じ主鎖Fc配列を使用して、完全長キメラ鎖として構築した。抗体を、以下の表1に示すように同定した。
【表1】
【0237】
実施例2:小規模生産におけるヒト化抗体の評価
9つのヒト化抗体は全て、0.01リットルの小規模生産を経たものである。B10G5抗体もまた、直接比較するためにスケールアップした。血清の非存在下で化学的に定義された培地を用いて懸濁培養したHEK293細胞に、指定の重鎖及び軽鎖のプラスミドをトランスフェクトした。トランスフェクションの5日後、各生産ランからの馴化培地を収集し、清澄化した。馴化培地中の抗体は、MabSelectSuRe(商標)プロテインA培地(GE Healthcare)を使用して精製した。最終的な収量を以下に示す(表2)。
【表2】
【0238】
LabChip GXII(Perkin Elmer)を用いて還元条件下で抗体にCE-SDS解析を行い、得られたエレクトロフェログラムを解析した。精製されたヒト化抗体では、重鎖と軽鎖の別個のピークが観察された。ピークの高さ(または重鎖及び軽鎖の曲線下面積)は同様であった。抗体C(HC2/LC2)及びK(HC2/LC3)が最大の抗体収量を生み出した。
【0239】
実施例3:ヒト化抗体の結合アフィニティー試験
実施例2からの精製抗体を、ヒト前立腺腫瘍細胞株M12に対するFACSによって、結合アフィニティーについて分析した。3つの異なる抗体濃度を試験した(0.1ug/mL、0.05ug/mL及び0.01ug/mL)。結合アフィニティーを比較するために、各濃度での各抗体のMFIを決定し、結果を図1に示すようにプロットした。0.1ug/mL濃度で上から下へ、抗体は、Ab-G、Ab-K、Ab-E、Ab-J、Ab-I及びAb-H(重複)、Ab-D、Ab-B、Ab-A及びAb-Cである。驚くべきことに、2つの抗体、Ab-G及びAb-Kは、抗体J(ヒトIgG1 Fc領域を有するキメラB10G5)よりも高いMFIを有していた。
【0240】
実施例4:BLIによる抗体KのBLI解析
Octet Red96(ForteBio)を使用して、一般にKamat and Rafique,Analytical Biochemistry 536:16-31(2017)に記載されているように、バイオレイヤー干渉法(BLI)を実行した。抗体サンプル、Ab-K及びAb-J(キメラB10G5)を、キネティックグレードのバイオセンサーでキャプチャした。次に、0.1%BSA、0.02%Tween-20、pH7.2のPBSバッファーで連続希釈した抗原(MICB)を含むサンプルの希釈系列に、ロードしたバイオセンサーを浸漬させた。会合が150秒間観察され、続いて200秒間の解離が観察された。同じ抗原濃度の繰り返しの注入は、良好な重複を示した。キネティック解析は、Scrubberソフトウェアを用い、1:1結合モデル、及び質量輸送制限を伴うグローバルフィッティングを使用して行った。図2A図2Bを参照すると、Ab-K(図2B)は、キメラ抗体B10G5(Ab-J、Kd=12.1nM)(図2A)よりも高いアフィニティー(Kd=7.2nM)を有していた。
【0241】
実施例5:NK細胞細胞毒性アッセイ
抗体KがNK細胞の細胞毒性を刺激する能力を測定した。Stem Cell Technologies(Vancouver,BC,Canada)の単離キットを使用して、健常なドナーPBMCからNK細胞をネガティブ選択した。UC1腫瘍細胞またはPL-12細胞を、10ug/mlの対照ヒトIgG、抗体Ab-J(ヒトIgG1 Fc領域を有するキメラB10G5)、または抗体K(Ab-K)とともに37℃で30分間プレインキュベートした。精製NK細胞を、UC1腫瘍細胞またはPL-12細胞に対する細胞毒性アッセイに使用する前に、IL-2(1000U/mL)で18時間活性化させた。NK細胞媒介性細胞毒性は、標準的な4時間の51Cr放出アッセイ(Jewett A.et al.,Hum.Immunol,2003;64:505-520)を用いて決定した。具体的には、NK細胞を51Cr標識UC1またはPL12細胞とともに、10:1の割合で、細胞培養インキュベーター内で、4時間、共培養した。4時間のインキュベーション後、各サンプルから上清を採取し、ガンマカウンターで計数した。特定の細胞毒性のパーセンテージを、式:%細胞毒性=(実験cpm-自然発生cpm)/(合計cpm-自然発生cpm)を使用して算出した。NK細胞殺傷活性は、標的細胞の30%を溶解するのに必要なNK細胞数の逆数×100を使用して求めた溶解単位30/10細胞として表した。各条件の5つの複製を実験に含めた。
【0242】
図3A図3Bを参照すると、抗体K(Ab-K)は、MIC甲状腺オンコサイトーマUC1腫瘍細胞(図3A)、及び膵臓PL12細胞(Panc 10.05とも呼ばれる、図3B)のIL-2活性化一次NK細胞殺傷を増強する上で、キメラ抗体B10G5よりも高い活性を示す。
【0243】
実施例6:凝集アッセイ
マウス抗体B10G5、キメラAb-K抗体(ch-Ab-K、ヒト化可変領域及びマウスFc)、及び抗体K(Ab-K、ヒト化)のサンプルを、準弾性光散乱装置とともに動的光散乱(DLS)を使用してアッセイした。B10G5、ch-Ab-K、またはAb-KをそれぞれPBSバッファーで1.0mg/mLの濃度に希釈し、50μLの容量とした。全てのサンプルは、スピンフィルター(SpinX(登録商標)Cat.#8160)によって濾過し、不要な大きな粒子を除去し、アッセイの前に脱気した。Unchained Lab nanoDLS pUNKマシンを使用したDLSアッセイのために、5μLのサンプルをそれぞれの使い捨てキュベットにロードするために使用した。アッセイの詳細は、例えば、Berne et al.,Dynamic Light Scattering with Applications to Chemistry,Biology and Physics,Courier Dover Publications,ISBN0-486-41155-9(2000)に記載されている。このアッセイでは、DLSにより、拡散粒子による散乱光強度の変動が測定される。粒子は、時間の経過とともに凝集し、流体力学的直径(x軸)の増加として見られる。ピーク面積は、抗体の総量のパーセンテージとして、異なる抗体種(例えば、抗体モノマーまたは凝集体)のそれぞれのレベルを表す。
【0244】
図4A図4Cは、それぞれ、マウス抗体B10G5(マウスIgG1、図4A)、キメラAb-K抗体(ch-Ab-K、マウスIgG1-FcとともにAb-Kヒト化可変領域で構成される)(図4B)、及びAb-K(ヒト化)(図4C)についての抗体モノマー及び凝集体のレベルを示す。抗体キメラAb-K(図4B、99.5%)及び完全ヒト化抗体Ab-K(図4C、99.95%)の高いモノマーレベルが示すように、キメラ抗体ch-Ab-Kと完全ヒト化抗体Ab-Kとはどちらもマウス抗体B10G5よりも溶液中で安定である。
【0245】
実施例7:免疫療法の臨床試験
第I相臨床試験は、MIC+腫瘍サンプルを有するか、または血清sMIC+である、がん患者に実施される。MIC抗体の安全性、最大耐用量(MTD)及び主要有効性を、適応的用量漸増3+3デザインまたはTime-to-Event Bayesian Optimal Intervalデザインを用いて決定する。患者集団には、標準治療に失敗したが、化学療法を受けていない患者が含まれている。MIC抗体の試験用量範囲は、0.01mg/Kgから100mg/Kgまで、2~4週間ごとに最長90日間、静脈内注入し、MTDまたは推奨される第2相用量(RP2D)を決定するために、最大1年間の経過観察を行うことができる。重大な副作用を示さない患者については、主要な有効性を判断するために、最大2年間の臨床的追跡調査を伴う、長期間の注入が行われることになる。
【0246】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態によって範囲を限定されるものではない。実際、本明細書に記載されたものだけでなく、本発明の様々な修正が、上記の説明及び添付の図面から当業者に明らかになるであろう。かかる修正は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0247】
特許、特許出願公開、及び科学文献を含む様々な出版物が本明細書で引用されており、その開示は全ての目的のために参照によりその全体が組み込まれる。
配列表
配列番号1 - HC2のVHアミノ酸配列
EVQLQESGPG LVKPSQTLSL TCTVSGYSIT SDYAWNWIRQ PPGKGLEWIG YISYSGSTNY NPSLKSRVTI SRDTSKNQFS LKLSSVTAAD TAVYYCARGG TYFDYWGQGT LVTVSS
配列番号2 - LC3のVLアミノ酸配列
DVVMTQSPST LSASVGDRVT ITCRASAHIN NWLAWYQQKP GKAPKLLISD ATSLESGVPS RFSGSGSGKE YTLTISSLQP DDFATYYCQH YWSTPWTFGQ GTKVEIK
配列番号3 - VH-IgG1アミノ酸配列
EVQLQESGPG LVKPSQTLSL TCTVSGYSIT SDYAWNWIRQ PPGKGLEWIG YISYSGSTNY NPSLKSRVTI SRDTSKNQFS LKLSSVTAAD TAVYYCARGG TYFDYWGQGT LVTVSSASTK GPSVFPLAPS SKSTSGGTAA LGCLVKDYFP EPVTVSWNSG ALTSGVHTFP AVLQSSGLYS LSSVVTVPSS SLGTQTYICN VNHKPSNTKV DKKVEPKSCD KTHTCPPCPA PELLGGPSVF LFPPKPKDTL MISRTPEVTC VVVDVSHEDP EVKFNWYVDG VEVHNAKTKP REEQYNSTYR VVSVLTVLHQ DWLNGKEYKC KVSNKALPAP IEKTISKAKG QPREPQVYTL PPSRDELTKN QVSLTCLVKG FYPSDIAVEW ESNGQPENNY KTTPPVLDSD GSFFLYSKLT VDKSRWQQGN VFSCSVMHEA LHNHYTQKSL SLSPG
配列番号4 - VL-Igカッパアミノ酸配列
DVVMTQSPST LSASVGDRVT ITCRASAHIN NWLAWYQQKP GKAPKLLISD ATSLESGVPS RFSGSGSGKE YTLTISSLQP DDFATYYCQH YWSTPWTFGQ GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC
配列番号5 シグナル配列
MDPKGSLSWR ILLFLSLAFE LSYG
配列番号6 シグナル配列
METDTLLLWV LLLWVPGSTG
配列番号7 シグナル配列付きVH-IgG1アミノ酸配列
MDPKGSLSWR ILLFLSLAFE LSYGEVQLQE SGPGLVKPSQ TLSLTCTVSG YSITSDYAWN WIRQPPGKGL EWIGYISYSG STNYNPSLKS RVTISRDTSK NQFSLKLSSV TAADTAVYYC ARGGTYFDYW GQGTLVTVSS ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSCDKTHTCP PCPAPELLGG PSVFLFPPKP KDTLMISRTP EVTCVVVDVS HEDPEVKFNW YVDGVEVHNA KTKPREEQYN STYRVVSVLT VLHQDWLNGK EYKCKVSNKA LPAPIEKTIS KAKGQPREPQ VYTLPPSRDE LTKNQVSLTC LVKGFYPSDI AVEWESNGQP ENNYKTTPPV LDSDGSFFLY SKLTVDKSRW QQGNVFSCSV MHEALHNHYT QKSLSLSPG
配列番号8 シグナル配列付きVL-Igカッパアミノ酸配列
METDTLLLWV LLLWVPGSTG DVVMTQSPST LSASVGDRVT ITCRASAHIN NWLAWYQQKP GKAPKLLISD ATSLESGVPS RFSGSGSGKE YTLTISSLQP DDFATYYCQH YWSTPWTFGQ GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC
配列番号9 ヒトMICA,アイソフォーム1_
MGLGPVFLLL AGIFPFAPPG AAAEPHSLRY NLTVLSWDGS VQSGFLTEVH LDGQPFLRCD RQKCRAKPQG QWAEDVLGNK TWDRETRDLT GNGKDLRMTL AHIKDQKEGL HSLQEIRVCE IHEDNSTRSS QHFYYDGELF LSQNLETKEW TMPQSSRAQT LAMNVRNFLK EDAMKTKTHY HAMHADCLQE LRRYLKSGVV LRRTVPPMVN VTRSEASEGN ITVTCRASGF YPWNITLSWR QDGVSLSHDT QQWGDVLPDG NGTYQTWVAT RICQGEEQRF TCYMEHSGNH STHPVPSGKV LVLQSHWQTF HVSAVAAAAI FVIIIFYVRC CKKKTSAAEG PELVSLQVLD QHPVGTSDHR DATQLGFQPL MSDLGSTGST EGA
配列番号10 ヒトMICB,アイソフォーム1
MGLGRVLLFL AVAFPFAPPA AAAEPHSLRY NLMVLSQDGS VQSGFLAEGH LDGQPFLRYD RQKRRAKPQG QWAENVLGAK TWDTETEDLT ENGQDLRRTL THIKDQKGGL HSLQEIRVCE IHEDSSTRGS RHFYYDGELF LSQNLETQES TVPQSSRAQT LAMNVTNFWK EDAMKTKTHY RAMQADCLQK LQRYLKSGVA IRRTVPPMVN VTCSEVSEGN ITVTCRASSF YPRNITLTWR QDGVSLSHNT QQWGDVLPDG NGTYQTWVAT RIRQGEEQRF TCYMEHSGNH GTHPVPSGKA LVLQSQRTDF PYVSAAMPCF VIIIILCVPC CKKKTSAAEG PELVSLQVLD QHPVGTGDHR DAAQLGFQPL MSATGSTGST EGT
配列番号11 VH CDR1
GYSITSDYA
配列番号12 VH CDR2
GYISYSGST
配列番号13 VH CDR3
ARGGTYFDY
配列番号14 VL CDR1
RASAHINNW
配列番号15 VL CDR2
DATSLES
配列番号16 VL CDR3
QHYWSTPWT
配列番号17
(Gly Gly Gly Gly Ser)n,ここでn=1~5
配列番号18
His His His His His His
配列番号19 HC2のコード配列
ATG GAC CCC AAG GGC AGC CTG AGC TGG AGA ATC CTG CTG TTC CTG AGC CTG GCC TTC GAG CTG AGC TAC GGC GAA GTG CAG CTG CAG GAA TCT GGC CCT GGC CTC GTG AAG CCT TCC CAG ACC CTG TCT CTG ACC TGC ACC GTG TCC GGC TAC TCC ATC ACC TCC GAC TAC GCC TGG AAC TGG ATC CGG CAG CCT CCT GGC AAG GGA CTG GAA TGG ATC GGC TAC ATC TCC TAC TCC GGC TCC ACC AAC TAC AAC CCC AGC CTG AAG TCC AGA GTG ACC ATC TCC CGG GAC ACC TCC AAG AAC CAG TTC TCC CTG AAG CTG TCC TCC GTG ACC GCC GCT GAT ACC GCC GTG TAC TAC TGT GCT AGA GGC GGC ACC TAC TTC GAC TAC TGG GGC CAG GGC ACC CTC GTG ACC GTG TCA TCT GCT AGC ACC AAG GGC CCC AGC GTG TTC CCT CTG GCC CCC AGC AGC AAG AGC ACC AGC GGC GGA ACC GCC GCC CTG GGC TGC CTG GTG AAG GAC TAC TTC CCC GAG CCC GTG ACC GTG TCC TGG AAC AGC GGC GCT CTG ACC AGC GGA GTG CAC ACC TTC CCT GCC GTG CTG CAG AGC AGC GGC CTG TAC TCC CTG AGC AGC GTG GTG ACC GTG CCC AGC AGC AGC CTG GGC ACC CAG ACC TAC ATC TGC AAC GTG AAC CAC AAG CCC TCC AAC ACC AAG GTG GAC AAG AAG GTG GAG CCT AAG AGC TGC GAC AAG ACC CAC ACC TGC CCT CCC TGC CCC GCC CCC GAG CTG CTG GGC GGA CCC AGC GTG TTC CTG TTC CCT CCC AAG CCC AAG GAC ACC CTG ATG ATC AGC CGC ACC CCC GAG GTG ACC TGC GTG GTG GTG GAC GTG AGC CAC GAG GAC CCC GAG GTG AAG TTC AAC TGG TAC GTG GAC GGC GTG GAG GTG CAC AAC GCC AAG ACC AAG CCT CGG GAG GAG CAG TAC AAC TCC ACC TAC CGC GTG GTG AGC GTG CTG ACC GTG CTG CAC CAG GAC TGG CTG AAC GGC AAG GAG TAC AAG TGC AAG GTG AGC AAC AAG GCC CTG CCC GCT CCC ATC GAG AAG ACC ATC AGC AAG GCC AAG GGC CAG CCC CGG GAG CCT CAG GTG TAC ACC CTG CCC CCC AGC CGC GAC GAG CTG ACC AAG AAC CAG GTG AGC CTG ACC TGC CTG GTG AAG GGC TTC TAC CCC TCC GAC ATC GCC GTG GAG TGG GAG AGC AAC GGC CAG CCT GAG AAC AAC TAC AAG ACC ACC CCT CCC GTG CTG GAC AGC GAC GGC AGC TTC TTC CTG TAC AGC AAG CTG ACC GTG GAC AAG TCC CGG TGG CAG CAG GGC AAC GTG TTC AGC TGC AGC GTG ATG CAC GAG GCC CTG CAC AAC CAC TAC ACC CAG AAG AGC CTG AGC CTG AGC CCC GGA TAG TAA
配列番号20 LC3のコード配列
ATG GAG ACC GAC ACC CTG CTG CTC TGG GTG CTG CTG CTC TGG GTG CCC GGC TCC ACC GGA GAC GTC GTG ATG ACC CAG TCC CCC TCC ACA CTG TCT GCC TCT GTG GGC GAC AGA GTG ACC ATC ACC TGT CGG GCC TCC GCC CAC ATC AAC AAC TGG CTG GCC TGG TAT CAG CAG AAG CCC GGC AAG GCC CCT AAG CTG CTG ATC TCT GAT GCC ACC TCC CTG GAA TCC GGC GTG CCC TCC AGA TTC TCC GGC TCT GGC TCT GGC AAG GAG TAT ACC CTG ACC ATC AGC TCC CTG CAG CCC GAT GAC TTC GCC ACC TAC TAC TGC CAG CAC TAC TGG TCC ACC CCC TGG ACC TTT GGC CAA GGC ACC AAG GTG GAA ATC AAG CGG ACC GTG GCC GCC CCC AGC GTG TTC ATC TTC CCT CCC AGC GAC GAG CAG CTG AAG TCT GGC ACC GCC AGC GTG GTG TGC CTG CTG AAC AAC TTC TAC CCC CGC GAG GCC AAG GTG CAG TGG AAG GTG GAC AAC GCC CTG CAG AGC GGC AAC AGC CAG GAG AGC GTG ACC GAG CAG GAC TCC AAG GAC AGC ACC TAC AGC CTG AGC AGC ACC CTG ACC CTG AGC AAG GCC GAC TAC GAG AAG CAC AAG GTG TAC GCC TGC GAG GTG ACC CAC CAG GGA CTG TCT AGC CCC GTG ACC AAG AGC TTC AAC CGG GGC GAG TGC TAA
配列番号21 VHコード領域
GAA GTG CAG CTG CAG GAA TCT GGC CCT GGC CTC GTG AAG CCT TCC CAG ACC CTG TCT CTG ACC TGC ACC GTG TCC GGC TAC TCC ATC ACC TCC GAC TAC GCC TGG AAC TGG ATC CGG CAG CCT CCT GGC AAG GGA CTG GAA TGG ATC GGC TAC ATC TCC TAC TCC GGC TCC ACC AAC TAC AAC CCC AGC CTG AAG TCC AGA GTG ACC ATC TCC CGG GAC ACC TCC AAG AAC CAG TTC TCC CTG AAG CTG TCC TCC GTG ACC GCC GCT GAT ACC GCC GTG TAC TAC TGT GCT AGA GGC GGC ACC TAC TTC GAC TAC TGG GGC CAG GGC ACC CTC GTG ACC GTG TCA TCT
配列番号22 VLコード領域
GAC GTC GTG ATG ACC CAG TCC CCC TCC ACA CTG TCT GCC TCT GTG GGC GAC AGA GTG ACC ATC ACC TGT CGG GCC TCC GCC CAC ATC AAC AAC TGG CTG GCC TGG TAT CAG CAG AAG CCC GGC AAG GCC CCT AAG CTG CTG ATC TCT GAT GCC ACC TCC CTG GAA TCC GGC GTG CCC TCC AGA TTC TCC GGC TCT GGC TCT GGC AAG GAG TAT ACC CTG ACC ATC AGC TCC CTG CAG CCC GAT GAC TTC GCC ACC TAC TAC TGC CAG CAC TAC TGG TCC ACC CCC TGG ACC TTT GGC CAA GGC ACC AAG GTG GAA ATC AAG
配列番号23 HC1のVHアミノ酸配列
QVQLQESGPG LVKPSQTLSL TCTVSGYSIT SDYAWNWIRQ PPGKGLEWIG YISYSGSTNY NPSLKSRVTI SVDTSKNQFS LKLSSVTAAD TAVYYCARGG TYFDYWGQGT LVTVSS
配列番号24 HC3のVHアミノ酸配列
EVQLVESGPG LVKPSETLSL TCTVSGYSIT SDYAWNWIRQ PPGKGLEWIG YISYSGSTNY NPSLKSRVTI SRDTSKNQFS LKLSSVTAAD TAVYYCARGG TYFDYWGQGT TVTVSS
配列番号25 LC1のVLアミノ酸配列
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASAHIN NWLAWYQQKP GKAPKLLLSD ATSLESGVPS RFSGSGSGTD YTLTISSLQP EDFATYYCQH YWSTPWTFGG GTKVEIK
配列番号26 LC2のVLアミノ酸配列
DIVMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASAHIN NWLAWYQQKP GKAPKLLLSD ATSLESGVPS RFSGSGSGKD YTLTISSLQP EDFATYYCQH YWSTPWTFGG GTKVEIK
配列番号27 可溶型MICA
EPHSLRYNLT VLSWDGSVQS GFLAEVHLDG QPFLRCDRQK CRAKPQGQWA EDVLGNKTWD RETRDLTGNG KDLRMTLAHI KDQKEGLHSL QEIRVCEIHE DNSTRSSQHF YYDGELFLSQ NLETEEWTMP QSSRAQTLAM NIRNFLKEDA MKTKTHYHAM HADCLQELRR YLKSGVVLRR TVPPMVNVTR SEASEGNITV TCRASGFYPW NITLSWRQDG VSLSHDTQQW GDVLPDGNGT YQTWVATRIC QGEEQRFTCY MEHSGNHSTH PVPS
配列番号28 可溶型MICB
EPHSLRYNLM VLSQDGSVQS GFLAEGHLDG QPFLRYDRQK RRAKPQGQWA EDVLGAKTWD TETEDLTENG QDLRRTLTHI KDQKGGLHSL QEIRVCEIHE DSSTRGSRHF YYDGELFLSQ NLETQESTVP QSSRAQTLAM NVTNFWKEDA MKTKTHYRAM QADCLQKLQR YLKSGVAIRR TVPPMVNVTC SEVSEGNITV TCRASSFYPR NITLTWRQDG VSLSHNTQQW GDVLPDGNGT YQTWVATRIR QGEEQRFTCY MEHSGNHGTH PVPS
配列番号29 IGHV4-59*11 (MK471385)
QVQLQESGPG LVKPSETLSL TCTVSGGSIS SHYWSWIRQP PGKGLEWIGY IYYSGSTNYN PSLKSRVTIS VDTSKNQFSL KLSSVTAADT AVYYCAR
配列番号30 IGHJ4*01
YFDYWGQGTL VTVSS
配列番号31 IGHV4-30-4*01 (Z14238)
QVQLQESGPG LVKPSQTLSL TCTVSGGSIS SGDYYWSWIR QPPGKGLEWI GYIYYSGSTYY NPSLKSRVTI VDTSKNQFSL KLSSVTAADT AVYYCAR
配列番号32 IGKV1-NL1-4*01 (Y14865)
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQGIS NSLAWYQQKP GKAPKLLLYA ASRLESGVPS RFSGSGSGTD YTLTISSLQP EDFATYYCQQ YYSTP
配列番号33 IGKJ1*01 (J00242)
WTFGQGTKVE IK
配列番号34 IGKV1-33*01 (M64856)
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCQASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKLLIYD ASNLETGVPS RFSGSGSGTD FTFTISSLQP EDIATYYCQQ YDNLP
配列番号35 IGKV1-5*01 (Z00001)
DIQMTQSPST LSASVGDRVT ITCRASQSIS SWLAWYQQKP GKAPKLLIYD ASSLESGVPS RFSGSGSGTE FTLTISSLQP DDFATYYCQQ YNSYS
配列番号36 B10G5 VH
EVQLEESGPG LVKPSQSLSL TCTVTGYSIT SDYAWNWIRQ FPGNKLEWMG YISYSGSTNY NPSLKSRISI TRDTSKNQFF LQLNSVITED TATYYCARGG TYFDYWGQGT TLTVSS
配列番号37 B10G5 VL
DIVLTQTTSY LSVSLGGRVT IACKASAHIN NWLAWYQQKP GNAPRLLISD ATSLETGVPS RFSGSGSGKD YTLSITSLQT EDVATYYCQH YWSTPWTFGG GTKLEIK
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
【配列表】
2023532852000001.app
【国際調査報告】