(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】自家移植片の人工皮膚構築物オーバーレイ
(51)【国際特許分類】
A61L 27/60 20060101AFI20230725BHJP
A61L 27/38 20060101ALI20230725BHJP
A61L 27/24 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61L27/60
A61L27/38 100
A61L27/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579744
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 US2021040892
(87)【国際公開番号】W WO2022011141
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507295048
【氏名又は名称】ストラタテック コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100107489
【氏名又は名称】大塩 竹志
(72)【発明者】
【氏名】カマー, アレン アール.
(72)【発明者】
【氏名】スミール, ジャニス
(72)【発明者】
【氏名】ルータン, ランディ
(72)【発明者】
【氏名】ロクタ, メアリー
(72)【発明者】
【氏名】アレン-ホフマン, ビー. リン
【テーマコード(参考)】
4C081
【Fターム(参考)】
4C081AB19
4C081BA13
4C081CD121
4C081CD34
4C081DA02
(57)【要約】
本開示は、メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することによって創傷を治療するための方法であって、皮膚代替物が、NIKS(登録商標)細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物である、方法を提供する。ある態様において、本開示は、対象における全層創傷を治療するための方法を包含する。本方法は、約2:1~約8:1のメッシュ比を有する自家移植片(「治療用自家移植片」)及び皮膚代替物オーバーレイを創傷に適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における全層創傷を治療するための方法であって、約2:1~約8:1のメッシュ比を有する自家移植片(「治療用自家移植片」)及び皮膚代替物オーバーレイを前記創傷に適用することを含み、前記皮膚代替物が、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物である、方法。
【請求項2】
対象における全層創傷の閉鎖を得るための方法であって、約2:1~約8:1のメッシュ比を有する自家移植片(「治療用自家移植片」)及び皮膚代替物オーバーレイを前記創傷に適用することを含み、前記皮膚代替物が、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷閉鎖が、約90%再上皮化されているか又はそれ以上である、方法。
【請求項3】
創傷閉鎖が、前記皮膚代替物の初回適用から約12週間以内に生じる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
創傷閉鎖が、前記皮膚代替物の初回適用から約8週間以内に生じる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
創傷閉鎖が、前記皮膚代替物の初回適用から約4週間以内に生じる、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
創傷閉鎖が、前記皮膚代替物の初回適用から約2週間以内に生じる、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
創傷閉鎖が、約95%再上皮化されているか又はそれ以上である、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
創傷閉鎖が、約98%再上皮化されているか又はそれ以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
創傷閉鎖が、約100%再上皮化されているか又はそれ以上である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
創傷閉鎖が、完全な創傷閉鎖である、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
創傷閉鎖が、耐久性のある創傷閉鎖である、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記閉鎖創傷が、観察者によって又は前記対象によって、自家移植片単独(「比較対照自家移植片」)で治療された同等の創傷と比較して評価された場合に、同等の若しくは改善された血管分布、同等の若しくは改善された色素沈着、同等の若しくは減少した厚さ、同等の若しくは軽減された疼痛、同等の若しくは増加した柔軟性、同等の若しくは増加した瘢痕表面積、同等の若しくは減少した硬さ、同等の若しくは増加した痒み、同等の若しくは改善された色、又はそれらの任意の組み合わせを有し、前記比較対照自家移植片が、前記治療用自家移植片と同じか又はそれより低いメッシュ比を有する、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
対象における創傷治癒の転帰を改善するための方法であって、約2:1~約8:1のメッシュ比を有する自家移植片(「治療用自家移植片」)及び皮膚代替物オーバーレイを対象の全層創傷に適用することを含み、前記皮膚代替物が、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、
前記改善された転帰は、観察者によって又は前記対象によって、自家移植片単独(「比較対照自家移植片」)で治療された同等の創傷と比較して測定される、自家移植の発生率の低下、ドナー皮膚利用率の低下、疼痛の軽減、前記閉鎖創傷の1つ以上の審美的な質の改善、治療関連有害事象の減少、感染率の低下、創傷感染関連事象の減少、ドナー部位の病的状態の軽減、医療資源利用の減少、生活の質の改善、又はそれらの組み合わせであり、前記比較対照自家移植片が、前記治療用自家移植片と同じか又はそれより低いメッシュ比を有する、方法。
【請求項14】
前記改善が、統計的に有意である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記比較対照自家移植片が、前記治療用自家移植片よりも低いメッシュ比を有する、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記治療用自家移植片が、約3:1~約8:1のメッシュ比を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記治療用自家移植片が、約4:1~約8:1、又は約4:1~約6:1のメッシュ比を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記治療用自家移植片が、約3:1~約6:1、又は約3:1~約5:1のメッシュ比を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記治療用自家移植片が、約2:1~約6:1のメッシュ比を有する、請求項1~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記治療用自家移植片が、約2:1~約5:1、又は約2:1~約4:1のメッシュ比を有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記創傷に対する前記皮膚代替物の単回適用のみが存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記創傷に対する前記治療用自家移植片の単回適用のみが存在する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記創傷が、熱傷創である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記創傷が、電撃熱傷創、化学熱傷創、又は温度熱傷創である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記対象が、最大約85%の全体表面積(TBSA)を覆う全創傷領域を有し、前記全創傷領域が、前記創傷の領域を含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記対象が、約10%~約60%の全層%TBSAを有する、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記対象が、約20%~約60%の全層%TBSAを有する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が、前記治療用自家移植片及び前記皮膚代替物オーバーレイを複数の創傷に適用することを更に含む、請求項25、26又は27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記皮膚代替物が、真皮等価物を含み、前記真皮等価物が、正常なヒト皮膚線維芽細胞を含有するゲル化コラーゲンを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記真皮等価物中に存在する前記コラーゲンが、マウスI型コラーゲンを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記真皮等価物中の唯一のコラーゲンが、前記皮膚代替物の細胞によって産生される、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記創傷が、切除及び移植に対して臨床的に適応がある、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記対象が18~75歳である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記対象が10歳以下である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記対象が5歳以下である、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記対象が2歳以下である、請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記対象が1歳以下である、請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記対象が65歳超である、請求項1~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記対象が75歳超である、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記治療用自家移植片及び前記皮膚代替物が、200cm
2未満の表面積に適用される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記治療用自家移植片及び前記皮膚代替物が、約100cm
2以上の表面積に適用される、請求項1~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記治療用自家移植片及び前記皮膚代替物が、約100cm
2~約400cm
2の表面積に適用される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記治療用自家移植片及び前記皮膚代替物が、約100cm
2~約2000cm
2の表面積に適用される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記治療用自家移植片及び前記皮膚代替物が、約100cm
2~約5000cm
2の表面積に適用される、請求項41に記載の方法。
【請求項45】
前記治療用自家移植片及び前記皮膚代替物が、約100cm
2~約10,000cm
2の表面積に適用される、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記治療用自家移植片及び前記皮膚代替物が、約100cm
2~約15,000cm
2の表面積に適用される、請求項39に記載の方法。
【請求項47】
NIKSを含む前記器官型ヒト皮膚等価物が、約1:1のメッシュ比を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2020年7月8日に出願された米国仮特許出願第63/049,447号に対する優先権を主張する。
【0002】
本開示は、メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することによって創傷を治療するための方法を包含する。
【背景技術】
【0003】
多くの深達性部分層(DPT)又は全層(FT)創傷の閉鎖のための現在の標準的なケアは、自家移植、すなわち、ドナー部位からの健康な皮膚の外科的採取、及び同じ個体のレシピエント部位への採取されたドナー組織の移植である。この方法は、元の創傷の閉鎖を達成するのに有効であるが、ドナー皮膚を採取するための部位の利用可能性が限定される場合があり、大きな損傷領域の閉鎖は、利用可能なドナー部位の連続的な再採取を必要とし得る。ドナー部位の採取が、患者の全体的な創傷負担を増大させる追加の部分層創傷を生じさせ、それ自体が痛みを伴い、感染、瘢痕、及び慢性的な皮膚機能障害を起こしやすく、FT創傷に変換する可能性があるため、完全な創傷閉鎖を達成するために必要なドナー組織の量を減少させることは、臨床的に有益である。
【0004】
自家移植片のメッシュ化、すなわち、その表面積を増加させるためのメッシュ化デバイスを通した採取された組織の拡張は、ドナー組織の量を減少させるために使用される1つの戦略である。しかしながら、メッシュ化された移植片は、間隙の二次的治癒に起因してより多くの瘢痕を伴って治癒するため、メッシュ化されていない皮膚移植片と比較して美的魅力が乏しい。
【0005】
その結果、DPT及びFT創傷の閉鎖を達成するために必要なドナー部位の面積を減少させる代替案が緊急に必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある態様において、本開示は、対象における全層創傷を治療するための方法を包含する。本方法は、約2:1~約8:1のメッシュ比を有する自家移植片(「治療用自家移植片」)及び皮膚代替物オーバーレイを創傷に適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物である。
【0007】
別の態様において、本開示は、対象における全層創傷の閉鎖を得るための方法を包含する。本方法は、約2:1~約8:1のメッシュ比を有する自家移植片(「治療用自家移植片」)及び皮膚代替物オーバーレイを創傷に適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷閉鎖は、約90%再上皮化されているか又はそれ以上である。
【0008】
更に別の態様において、本開示は、対象における創傷治癒の転帰を改善するための方法を包含する。本方法は、約2:1~約8:1のメッシュ比を有する自家移植片(「治療用自家移植片」)及び皮膚代替物オーバーレイを対象の全層創傷に適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、
改善された転帰は、観察者によって又は対象によって、自家移植片単独(「比較対照自家移植片」)で治療された同等の創傷と比較して測定される、自家移植の発生率の低下、ドナー皮膚利用率の低下、疼痛の軽減、閉鎖創傷の1つ以上の審美的な質の改善、治療関連有害事象の減少、感染率の低下、創傷感染関連事象の減少、ドナー部位の病的状態の軽減、医療資源利用の減少、生活の質の改善、又はそれらの組み合わせであり、比較対照自家移植片は、治療用自家移植片と同じか又はそれより低いメッシュ比を有する。
【0009】
本発明の他の態様及び反復は、以下により完全に記載される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
一態様において、本開示は、様々な創傷を治療するための方法であって、メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを創傷に適用することを含む、方法を提供する。「皮膚代替物オーバーレイ」という用語は、皮膚代替物が何かの上に配置されることを示す。本開示において、皮膚代替物は常に自家移植片の上に適用され、自家移植片が創傷と皮膚代替物との間に配置されることを意味する。治療は、創傷閉鎖を容易にし、また、創傷閉鎖を達成するために必要とされる自家移植片の総面積を減少させ、対象の自家移植の発生率を低下させ(例えば、後続の自家移植を排除するか又は減少させ)、かつ対象の他の転帰を改善し得る。
【0011】
したがって、別の態様において、本開示は、創傷閉鎖のための方法であって、メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを対象の創傷に適用することを含む、方法を提供する。本明細書で使用される場合、「創傷閉鎖」という用語は、ドレナージなしでの創傷表面の90%以上の再上皮化を意味する。別の態様において、本開示は、創傷治癒の転帰を改善するための方法であって、メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを対象の創傷に適用することを含む、方法を提供する。対象の改善された転帰の非限定的な例として、疼痛の軽減、自家移植の発生率の低下、ドナー皮膚利用率の低下、閉鎖創傷の1つ以上の審美的な質の改善、治療関連有害事象の減少、感染率の低下、創傷感染関連事象の減少、ドナー部位の病的状態の軽減、医療資源利用の減少、又はそれらの組み合わせが挙げられる。改善され得る閉鎖創傷の審美的な質には、限定されないが、色素沈着又は着色化、瘢痕の厚さ、柔軟性、硬さ、痒み、血管分布、及び全体的な外観が含まれる。ドナー部位の病的状態には、限定されないが、圧痛、疼痛、冷感受性、一般的な瘢痕、又はより具体的には肥厚性瘢痕、感染症、分層創傷から複雑な創傷又は全層創傷への変換等が含まれる。ドナー部位利用の減少は、対象から採取されるドナー部位の全表面の減少を指す。自家移植の発生率の低下は、初回適用後の自家移植の排除又は減少であり得る。いくつかの実施形態において、改善された転帰は、メッシュ化された自家移植片のみで治療された同等の創傷と比較においてであり、両方の自家移植片が同じメッシュ比を有するか、又は比較対照自家移植片がより低いメッシュ比を有する。本明細書で使用される場合、「同等の創傷」という用語は、治療創傷として、実質的に同様の面積、創傷床の組成(例えば、脂肪、筋膜、又は筋肉)、及び運動生理学的ストレス要因を有する。
【0012】
本開示の方法は、創傷にメッシュ化された自家移植片を適用し、次いで皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物である。皮膚代替物のサイズは、メッシュ化された自家移植片を実質的に覆うように調整される。典型的には、メッシュ化された自家移植片は、少なくとも2:1のメッシュ比を有する。自家移植片及び皮膚代替物は、連続的に適用され得る。例えば、最初に自家移植片が創傷に適用され、次いで皮膚代替物が自家移植片の上に適用される。メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物の連続的適用の好適な代替手段は、メッシュ化された自家移植片と皮膚代替物とからなる予め形成された「サンドイッチ」の適用である。自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイは、創傷の形成から数時間若しくは数日以内、創傷の形成から1週間若しくは2週間以内、又は更に後に創傷に適用され得る。創傷は、典型的には、当該技術分野で既知の方法、例えば、石鹸及び水による洗浄、臨床的に適応があり、かつ実行可能である場合には外科的切除(筋膜切除又は接線切除)等によって、治療のために調製される。創傷の位置は限定されない。例えば、創傷は、腕、脚、胴体、顔、頭部、首、手、足、尻、関節の上等にあってもよい。いくつかの実施形態において、方法は、皮膚代替物オーバーレイの単回適用からなる。他の実施形態において、方法は、皮膚代替物オーバーレイの2回以上の適用を含む。
【0013】
本開示の方法は、様々な創傷、特に深達性部分層創傷及び全層創傷に有用である。
【0014】
本開示の他の態様については、以下に更に詳細に記載する。
【0015】
I.自家移植片
本開示の方法は、メッシュ化された自家移植片を創傷に適用することを必要とする。自家移植は、ドナー部位からの健康な皮膚の外科的採取、及び同じ個体のレシピエント部位への採取されたドナー組織の移植である。「自家移植片」という用語は、採取したドナー組織を指す。自家移植片は、分層自家移植片又は全層自家移植片であり得る。好ましい実施形態において、自家移植片は、全層自家移植片である。
【0016】
「メッシュ化された組織」は、典型的にはメッシュ化デバイスによって、スリットを有するように多孔化された組織を指す。スリットのサイズ及び数は、ドレナージ及び潜在的な拡張に影響を与える。「m」と省略されるメッシュ比は、メッシュ化の量を間接的に説明するために当該技術分野で使用され、拡張前のそのサイズと比較した拡張した組織の予想されるサイズとして定義される。1:1のメッシュ比は、組織(例えば、自家移植片)がメッシュ化されているが、拡張は予想されないことを示す。より高いメッシュ比を有する組織は、より多くの数及び/又はサイズのスリットを有する。次いで、メッシュ化された組織によって覆われる表面積を増加させるために、メッシュ化された組織が、適用前に使用者によっておよその予想されるサイズまで拡張され得る。
【0017】
本開示のメッシュ化された自家移植片は、少なくとも1:1、典型的には少なくとも2:1のメッシュ比を有する。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片を創傷に適用することを含む。例えば、自家移植片は、2:1、又は約3:1、約4:1、約5:1、約6:1、約7:1、約8:1、又はそれ以上のメッシュ比を有し得る。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、約2:1~約8:1のメッシュ比を有する自家移植片を創傷に適用することと、次いで皮膚代替物オーバーレイを適用することとを含む。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、約3:1~約8:1のメッシュ比を有する自家移植片を創傷に適用することと、次いで皮膚代替物オーバーレイを適用することとを含む。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、約4:1~約8:1のメッシュ比を有する自家移植片を創傷に適用することと、次いで皮膚代替物オーバーレイを適用することとを含む。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、約2:1~約6:1のメッシュ比を有する自家移植片を創傷に適用することと、次いで皮膚代替物オーバーレイを適用することとを含む。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、約3:1~約6:1のメッシュ比を有する自家移植片を創傷に適用することと、次いで皮膚代替物オーバーレイを適用することとを含む。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、約4:1~約6:1のメッシュ比を有する自家移植片を創傷に適用することと、次いで皮膚代替物オーバーレイを適用することとを含む。
【0018】
分層及び全層自家移植片の採取、自家移植片のメッシュ化、自家移植片の配置及び固定のための方法は、当該技術分野において周知である。
【0019】
II.皮膚代替物
本開示の方法はまた、皮膚代替物オーバーレイの適用を必要とし、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物である。したがって、皮膚代替物は、内側の真皮様層及び外側の表皮様層の両方を有する天然のヒト皮膚を模倣するように設計された、人工(非天然の)二重層組織である。例えば、器官型培養による皮膚代替物の生成は、インタクトなヒト皮膚と同等のバリア機能を示す、完全に層別化されたヒト角質細胞の十分に発達した表皮層をもたらす。
【0020】
内側の真皮様層は、「真皮等価物」とも称される。好適な真皮等価物は、ゲル化コラーゲン及びヒト皮膚線維芽細胞を含むマトリックスである。例示的な実施形態において、ヒト皮膚線維芽細胞は、正常な初代ヒト皮膚線維芽細胞である。真皮等価物中に存在するコラーゲンは、マウスI型コラーゲンを含み得る。代替として、真皮等価物中に存在する唯一のコラーゲンは、皮膚代替物の細胞(例えば、ヒト皮膚線維芽細胞)によって産生され得る。マトリックスは、その中に含まれる細胞によって産生される追加の生体分子を更に含んでもよい。例示的な実施形態において、真皮層は、線維芽細胞によって産生され、組織化された細胞外マトリックス内に埋め込まれた正常なヒト皮膚線維芽細胞からなる。疑義を避けるために、本実施形態において、真皮層に非ヒトコラーゲンは存在しない。別の例示的な実施形態において、真皮層は、精製されたマウスI型コラーゲンを含有するゲル化コラーゲンマトリックスに埋め込まれた正常なヒト皮膚線維芽細胞からなる。疑義を避けるために、本実施形態において、ラット尾腱I型コラーゲンは、真皮層にその一次構造を与えるようにゲル化されているが、その中に埋め込まれた正常なヒト皮膚線維芽細胞は、コラーゲン(及び他の生体分子)を産生し、マトリックスに寄与し得る。
【0021】
外側の表皮様層は、NIKS細胞を含む。NIKS(登録商標)細胞は、ATCC(CRL-12191)に預託され、米国特許第5,989,837号及び米国特許第6,964,869号に更に詳細に記載されており、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。「NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物」という語句は、創傷閉鎖において有益な効果をもたらし得る(例えば、創傷治癒を直接的又は間接的に促進するタンパク質をコードする)様々な外因性核酸を発現するように操作されたNIKS(登録商標)細胞を包含する。明示的に企図されるのは、VEGFタンパク質(例えば、VEGF-A等)をコードする外因性遺伝子、低酸素誘導性因子(例えば、HIF-1A等)をコードする外因性遺伝子、アンジオポエチン(例えば、ANGPT1等)をコードする外因性遺伝子)、カテリシジンペプチド又はその切断産物(例えば、hCAP-18等)をコードする外因性遺伝子、βデフェンシン(例えば、hBD-3等)をコードする外因性遺伝子、ケラチノサイト成長因子(例えば、KGF-2等)をコードする外因性遺伝子、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(例えば、TIMP-1等)をコードする外因性遺伝子、外因性IL-12遺伝子、並びに他の抗菌剤、成長因子、転写因子、インターロイキン及び細胞外マトリックスタンパク質をコードする外因性核酸配列を発現するように操作されたNIKS(登録商標)細胞である。非限定的な例として、例えば、米国特許第7498167号、同第7915042号、同第7807148号、同第7988959号、同第8808685号、同第7674291号、同第8092531号、同第8790636号、同第9526748号、同第9216202号、及び同第9163076号、並びにUS2019/0030130を参照されたく、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。所望のタンパク質をコードする外因性核酸を発現するように操作されたNIKS細胞を含む皮膚代替物は、外因性核酸を含まないNIKS細胞を含む皮膚代替物よりも多くの量のそのタンパク質(例えば、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%多い等)を産生する。
【0022】
皮膚代替物の生存細胞(例えば、線維芽細胞、NIKS細胞等)は、代謝的に活性であり、創傷床を調節し、組織の再生及び修復を促進し、感染を軽減する、一連の成長因子、走化性因子、サイトカイン、炎症メディエーター、酵素、及び宿主防御ペプチドを分泌する。一実施形態において、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、皮膚代替物の細胞は、自家移植片と比較して、少なくとも約10%~約15%、約15%~約25%、約25%~約50%、約50%~約75%、約75%~約85%、約85~約95%、約90%~100%、約95%~約105%、約100%~110%、約105%~約115%、約110%~120%、約115%~約125%、約120%~130%、約125%~約135%、又はそれより多くの、創傷床を調節し、組織の再生及び修復を促進し、かつ/又は感染を軽減する、成長因子、走化性因子、サイトカイン、炎症メディエーター、酵素、宿主防御ペプチド、及びそれらの組み合わせを分泌する。別の実施形態において、皮膚代替物の細胞は、自家移植片と比較して、少なくとも約10%~約15%、約15%~約25%、約25%~約50%、約50%~約75%、約75%~約85%、約85%~約95%、約90%~100%、約95%~約105%、約100%~110%、約105%~約115%、約110%~120%、約115%~約125%、約120%~130%、約125%~約135%、又はそれより多くの、成長因子、走化性因子、サイトカイン、炎症メディエーター、酵素、宿主防御ペプチド、及びそれらの組み合わせを分泌し、更に、皮膚代替物の使用は、自家移植片と比較して、感染の減少の改善された転帰(例えば、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の感染の軽減)をもたらす。上記実施形態の特定の実施例において、成長因子、走化性因子、サイトカイン、炎症メディエーター、酵素、及び宿主防御ペプチドは、VEGFタンパク質(例えば、VEGF-A等)、低酸素誘導性因子(例えば、HIF-1A等)、アンジオポエチン(例えば、ANGPT1等)、カテリシジンペプチド又はその切断産物(例えば、hCAP-18等)、βデフェンシン(例えば、hBD-3等)、ケラチノサイト成長因子(例えば、KGF-2等)、メタロプロテイナーゼの組織阻害剤(例えば、TIMP-1等)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され得る。
【0023】
NIKS(登録商標)細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物である皮膚代替物を生成するための好適な製造プロセスは、当該技術分野において以前に記載されている。例えば、米国特許第7498167号、同第7915042号、同第7807148号、同第7988959号、同第8808685号、同第7674291号、同第8092531号、同第8790636号、同第9526748号、同第9216202号、同第9163076号及び同第10091983号、並びにUS2019/0030130を参照されたく、これらの開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。有利なことに、上述のように生成された皮膚代替物は、自己皮膚移植片、死体同種移植片、及び異種移植片と同じ様式で、それらをメッシュ化、縫合、ステープル留め、又は接着剤で固定することを可能にする優れた取り扱い特性を有する。
【0024】
皮膚代替物は、任意選択的にメッシュ化され得る。いくつかの実施形態において、皮膚代替物は、約1:1以上(例えば、約1.5:1、約2:1、約2.5:1、約3:1等)のメッシュ比を有する。いくつかの実施形態において、皮膚代替物はメッシュ化されていない。
【0025】
例示的な実施形態において、皮膚代替物は、StrataGraft(登録商標)である。別の例示的な実施形態において、皮膚代替物は、ExpressGraft(商標)組織である。
【0026】
III.創傷
「皮膚創傷」及び「創傷」という用語は、本明細書において互換的に使用され、皮膚の連続性の破損を指す。皮膚創傷は、当該技術分野において、急性又は慢性として定義される。急性創傷は、正常な創傷生理を有し、創傷治癒の正常な段階を経て治癒が進行することが予想される。慢性創傷は、正常な治癒プロセスを通過することができなかった損傷として定義され、すなわち、順序だった一連の段階において、かつ予測可能な時間(例えば、3~4週間の期間)では治癒しない。いくつかの実施形態において、メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイは、慢性創傷に適用される。いくつかの実施形態において、メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイは、急性創傷に適用される。
【0027】
急性創傷は、一般に、受傷機序及び/又は原因物質に基づいて分類される。本開示の方法は、外科創傷、熱傷創、咬創、穿刺創、鋭利な切断、裂傷等を含むがこれらに限定されない、様々な急性創傷の種類を治療するために使用することができる。例示的な実施形態において、メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイは、外科創傷に適用される。治療され得る外科創傷の非限定的な例として、移植片のためのドナー部位、レーザー手術後創傷、小児科手技後創傷、美容整形による創傷、がん切除、瘢痕収縮の治療によって形成される創傷等が挙げられる。他の例示的な実施形態において、メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイは、熱傷創に適用される。いくつかの例において、創傷は温度熱傷から生じる。「温度熱傷」とは、火災、熱い物体、蒸気、又は熱い液体によって引き起こされる熱傷を指す。いくつかの例において、創傷は電撃熱傷から生じる。「電撃熱傷」とは、落雷を含む電源との接触によって引き起こされる熱傷を指す。いくつかの例において、創傷は放射線熱傷から生じる。「放射線熱傷」は、日光(例えば、日光皮膚炎)、日焼けブース、若しくは太陽灯等の紫外線源への長期曝露によって、又はX線、放射線療法、若しくは放射性降下物によって引き起こされる熱傷を指す。いくつかの実施例において、創傷は化学熱傷から生じる。「化学熱傷」とは、高酸性又は高塩基性物質との接触によって引き起こされる熱傷を指す。いくつかの例において、創傷は摩擦熱傷から生じる。「摩擦熱傷」とは、皮膚と、道路、カーペット、床等の硬い表面との間の摩擦によって引き起こされる熱傷を指す。
【0028】
慢性創傷は、当該技術分野で既知の他の理由の中でも、血管新生、神経支配、又は細胞遊走の障害の結果としての創傷治癒サイクルの中断に起因する創傷治癒の生理学的障害を有する。本開示の方法は、非治癒性の又は感染した外科的若しくは外傷的創傷、静脈性潰瘍、褥瘡、糖尿病性足潰瘍、及び虚血性潰瘍を含むがこれらに限定されない、様々な慢性創傷を治療するために使用され得る。
【0029】
上記実施形態の各々において、急性創傷又は慢性創傷は、全層創傷、部分層創傷、又は無傷の真皮要素を含む複雑な創傷であり得る。本開示の方法は、全層創傷、及び深達性部分層創傷に特に有用である。皮膚創傷に関連して「全層」という用語は、表皮及び真皮を貫通しているが、皮下組織を超えて延在はしていないものとして定義される。皮膚創傷に関連して「部分層」という用語は、表皮を貫通し、真皮内に延在しているが貫通はしていないものとして定義される。真皮自体は2つの領域に分かれており、最上部は乳頭領域である。この領域は、ほとんどが結合組織で構成されており、表皮と真皮との間の接続を強化するためだけの役割を果たす。皮膚のこの層までしか延在しない部分層創傷は、浅達性部分層創傷とみなされる。真皮の網状領域には、結合組織だけでなく、毛包、皮脂腺及び汗腺、皮膚感覚受容器、並びに血管が含まれる。皮膚のこの層への損傷は、深達性部分層創傷として分類され、著しい瘢痕につながる可能性がある。皮膚創傷に関連して「複雑な創傷」という用語は、創傷の全体にわたって深さ又は病因が異なることを意味する。「無傷の真皮要素を含む」という用語は、創傷床表面に遊走するためのケラチノサイト又はケラチノサイト前駆細胞の供給源を提供することができる、創傷床に残る皮膚構造(例えば、毛包、汗腺等)の一部が存在することを意味する。「部分層」及び「全層」という用語は、互いに排他的であるが、複雑な創傷にわたって同時発生し得る。例えば、「無傷の真皮要素を含む複雑な創傷」は、全層の特性(例えば、無傷の真皮要素等がない)及び部分層の特性(例えば、無傷の真皮要素等)の両方を有する創傷を指し得る。
【0030】
熱傷創の管理において、最初の数日間にわたって急性熱傷創が進行し続け、創傷の分類が変化する可能性があることが知られている。非限定的な例として、浅達性熱傷創は、数日の期間にわたって、部分層熱傷創、無傷の真皮要素を含む複雑な熱傷創、又は全層熱傷創に進行し得る。代替として、又は熱傷の深さの変化に加えて、熱傷表面積の増加が起こり得る。この現象は、「熱傷創の変換」と称され、その後、その創傷は「二次熱傷創」と称される。この進行は、正常な治癒プロセスを通過できなかったとは見なされない。そのため、いくつかの実施形態において、急性創傷は、二次熱傷創であり得る。
【0031】
熱傷創は、熱傷の程度によっても分類されている。第3度熱傷は全層熱傷創であり、第2度熱傷は部分層熱傷創である。しかしながら、多くの熱傷創は複雑な傷創であり、創傷の全体にわたって深さが異なる。診療において、これらの創傷は、程度分類システムを使用する場合、創傷の最も重篤な側面に基づいて分類されることが多い。
【0032】
上記実施形態において、創傷は、200cm2未満であり得る。例えば、創傷は、150cm2未満、100cm2未満、50cm2未満、10cm2未満、又は1cm2未満であり得る。いくつかの実施形態において、創傷は、約1cm2~199cm2であり得る。例えば、創傷は、0.5cm2~約195cm2、0.5cm2~約150cm2、0.5cm2~約100cm2、又は0.5cm2~約50cm2であり得る。代替として、創傷は、約5cm2~約195cm2、約5cm2~約150cm2、約5cm2~約100cm2、又は約5cm2~約50cm2であり得る。代替として、創傷は、約50cm2~約195cm2、約50cm2~約150cm2、又は約50cm2~約100cm2であり得る。
【0033】
代替として、上記実施形態において、創傷は200cm2以上であり得る。例えば、創傷は、250cm2以上、300cm2以上、350cm2以上、又は400cm2以上であり得る。創傷はまた、500cm2以上、600cm2以上、700cm2以上、800cm2以上、900cm2以上、又は1000cm2以上であり得る。創傷はまた、2000cm2以上、3000cm2以上、4000cm2以上、5000cm2以上、又は10,000cm2以上であり得る。いくつかの実施形態において、創傷は、200cm2~1000cm2であり得る。例えば、創傷は、約200cm2~約950cm2、約200cm2~約900cm2、約200cm2~約800cm2、約200cm2~約700cm2、又は約200cm2~約600cm2であり得る。代替として、創傷は、約200cm2~約500cm2、約200cm2~約450cm2、又は約200cm2~約400cm2であり得る。いくつかの実施形態において、創傷は、200cm2~2000cm2であり得る。例えば、創傷は、約200cm2~約1950cm2、約200cm2~約1900cm2、約200cm2~約1800cm2、約200cm2~約1700cm2、又は約200cm2~約1600cm2であり得る。代替として、創傷は、約200cm2~約1500cm2、約200cm2~約1450cm2、又は約200cm2~約1400cm2であり得る。代替として、創傷は、約1000cm2~約1950cm2、約1000cm2~約1900cm2、約1000cm2~約1800cm2、約1000cm2~約1700cm2、又は約1000cm2~約1600cm2であり得る。代替として、創傷は、約1000cm2~約1500cm2、約1000cm2~約1450cm2、又は約1000cm2~約1400cm2であり得る。代替として、創傷は、約1000cm2~約15,000cm2、約3500cm2~約15,000cm2、又は約5000cm2~約15,000cm2であり得る。
【0034】
本開示の方法を使用して、未感染の創傷又は臨床的に感染したと見なされる創傷を治療することができる。創傷が臨床的に感染したと見なされる実施形態において、1つ以上の抗菌ペプチドを発現するように操作されたNIKS(登録商標)細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物を使用することが有利であり得る。
【0035】
本開示の方法は、外科的介入(例えば、切除及び自家移植)が臨床的に適応とされ、急性創傷が全層創傷又は深達性部分層創傷である創傷に対して特に好ましい場合がある。
【0036】
IV.対象
本明細書で使用される「対象」は、用語がセクションIIIに記載されるように、急性創傷又は慢性創傷を有するヒトを指す。いくつかの実施形態において、対象は、外科的介入が臨床的に適応とされる急性創傷又は慢性創傷(例えば、デブリードマン及び自家移植)を有する。更なる実施形態において、創傷は、全層創傷又は深達性部分層創傷である。なおも更なる実施形態において、急性創傷は、熱傷から生じるか、又は外科創傷である。なおも更なる実施形態において、急性創傷は、温度熱傷から生じる。
【0037】
いくつかの実施形態において、対象は、18~75歳である。他の実施形態において、対象は、年齢18歳未満である。更なる他の実施形態において、対象は、65歳以上、75歳以上、75歳超である。
【0038】
上記実施形態の各々において、本明細書において「%TBSA」と称される、創傷によって、又はそれどころか複数の創傷によって覆われた対象の全体表面積は、変動し得る。いくつかの実施形態において、%TBSAは、少なくとも1%、少なくとも2%、又は少なくとも5%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、5%超、10%超、15%超、又は20%超である。いくつかの実施形態において、%TBSAは25%超である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約1%~約90%、又は約1%~約85%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約1%~約60%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約1%~約50%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約5%~約50%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約10%~約50%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約15%~約50%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約20%~約50%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約25%~約50%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約10%~約90%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約15%~約90%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約20%~約90%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約25%~約90%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約10%~約85%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約15%~約85%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約20%~約85%である。いくつかの実施形態において、%TBSAは、約25%~約85%である。
【0039】
「全層%TBSA」は、全層創傷によって覆われた対象の全体表面積を示す。種々の実施形態において、対象は、少なくとも1%、又は少なくとも5%の全層%TBSAを有する。例えば、対象は、1%、2%、3%、4%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%以上の全層%TBSAを有し得る。いくつかの実施形態において、対象の全層%TBSAは、%TBSAと同一であるか、又はほぼ同一である。他の実施形態において、対象の全層%TBSAは、%TBSA未満である。いくつかの実施例において、対象は、少なくとも10%の%TBSAと、少なくとも2%又は少なくとも5%の全層%TBSAとを有し得る。いくつかの実施例において、対象は、少なくとも20%の%TBSA%と、少なくとも5%、少なくとも10%、又は少なくとも15%の全層%TBSAとを有し得る。いくつかの実施例において、対象は、少なくとも25%の%TBSA%と、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%の全層%TBSAとを有し得る。いくつかの実施例において、対象は、少なくとも30%の%TBSA%と、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、又は少なくとも20%の全層%TBSAとを有し得る。いくつかの実施例において、対象は、少なくとも40%の%TBSA%と、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、又は少なくとも30%の全層%TBSAとを有し得る。いくつかの実施例において、対象は、少なくとも50%の%TBSAと、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、又は少なくとも40%の全層%TBSAとを有し得る。
【0040】
本開示の方法は、脆弱な対象を含む様々な対象に好適である。脆弱な対象の非限定的な例として、ドナー部位に利用可能な表面積が限られている対象、ドナー部位の採取が禁忌である対象、高いBauxスコアを有する対象、血行動態的に安定していない対象、創傷治癒の遅延若しくは障害のリスクがある対象、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ドナー部位に利用可能な表面積が限られた脆弱な対象の非限定的な例として、約25%以上、約30%以上、又は約35%以上のTBSA%等の高い%TBSAを有する対象、10歳以下、5歳以下、又は1歳以下の対象、並びに65歳以上、70歳以上、75歳以上、又は80歳以上の対象が挙げられる。高いBauxスコアを有する脆弱な対象は、典型的には、100以上のBauxスコアを有する。創傷治癒の遅延又は障害のリスクがある対象の非限定的な例として、真皮の薄化、吸入傷害若しくは他の共存する傷害、≧25%TBSA、糖尿病、感染症(典型的には創傷部位であるが、他の場所にもあり得る)、肥満、創傷治癒を損なうことが知られている薬物、喫煙習慣、過剰なアルコール摂取、低血圧、血管疾患、浮腫、がん、栄養不良、肥厚性瘢痕形成の病歴、又はそれらの任意の組み合わせを有する対象が挙げられる。真皮の薄化を有する脆弱な対象は、典型的には、2mm未満の真皮厚さを有する。
【0041】
V.創傷閉鎖
一態様において、本開示は、創傷を閉鎖するための方法であって、創傷にメッシュ化された自家移植片を適用し、皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物である、方法を提供する。いくつかの実施形態において、自家移植片は、少なくとも2:1のメッシュ比を有する。いくつかの実施形態において、自家移植片は、約2:1~約8:1、約3:1~約8:1、又は約4:1~約8:1のメッシュ比を有する。いくつかの実施形態において、自家移植片は、約2:1~約6:1、約3:1~約6:1、又は約4:1~約6:1のメッシュ比を有する。上記の実施形態の各々において、皮膚代替物は、メッシュ化されていないか、又は約1:1以下のメッシュ比を有し得る。
【0042】
創傷は、典型的には、当該技術分野で既知の方法、例えば、石鹸及び水による洗浄、臨床的に適応があり、かつ実行可能である場合には外科的切除(生育不能組織の筋膜切除又は接線切除)等によって、治療のために調製される。創傷の位置は限定されない。例えば、創傷は、腕、脚、胴体、顔、頭部、首、手、足、尻、関節の上等にあってもよい。自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイは、創傷の形成から数時間若しくは数日以内、創傷の形成から1週間若しくは2週間以内、又は更に後に創傷に適用され得る。自家移植片によって覆われる創傷の全表面積が、皮膚代替物の製造サイズより小さい場合、皮膚代替物は、自家移植片によって覆われる創傷領域の表面積及び形状に実質的に適合するようにトリミングされ得る。自家移植片によって覆われる創傷の全表面積が、皮膚代替物の製造サイズよりも大きい場合、複数の試料を当接させることによって自家移植片によって覆われる創傷領域を実質的に覆うように複数の試料を使用することができる。疑義を避けるために、自家移植片を覆うための複数の試料の使用は、単回適用とみなされる。いくつかの実施形態において、皮膚代替物の単回適用のみが必要である。他の実施形態において、方法は、1日以上の異なる日における、自家移植片によって覆われた創傷又は自家移植片によって覆われた創傷の一部に対する、皮膚代替物の複数回の適用を含む。後続の各適用のタイミングは異なり得る。例えば、後続の適用(例えば、2回目、3回目、4回目等)は、前回の適用の数日後又は数週間後に行われてもよい。創傷の全表面積に応じて、同種異系組織、皮膚代替物オーバーレイを含まない自己組織、自己細胞、又は異なる皮膚代替物が、いくつかの実施形態において、自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイと併せて使用されてもよい。例えば、創傷領域は、自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイの1つ以上の試料を当接させることによって、また、皮膚代替物オーバーレイなしで1つ以上の自家移植片を当接させることによって覆われ得る。
【0043】
本明細書で使用される場合、「創傷閉鎖」という用語は、ドレナージなしでの創傷表面の90%以上の再上皮化を意味する。いくつかの実施形態において、創傷閉鎖は、ドレナージなしでの、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の創傷表面の再上皮化であり得る。別の実施形態において、創傷閉鎖は、少なくとも2週間の間隔を空けた2回の訪問で医療提供者によって確認される、ドレナージなしでの創傷表面の100%再上皮化であり得る(「完全な創傷閉鎖」)。創傷閉鎖を達成するのに要する時間は、皮膚代替物の初回適用(すなわち、1日目)から評価される。いくつかの実施形態において、創傷閉鎖は、皮膚代替物の初回適用後3ヶ月以内に生じ得る。いくつかの実施形態において、創傷閉鎖は、皮膚代替物の初回適用後、約1週間、約2週間、約3週間、約4週間、約1ヶ月、約2ヶ月、又は約3ヶ月以内に生じ得る。
【0044】
なおも更なる実施形態において、創傷閉鎖のための本開示の方法は、耐久性のある創傷閉鎖をもたらし得る。本明細書で使用される場合、「耐久性のある創傷閉鎖」という用語は、閉鎖が最初に観察された後少なくとも3ヶ月間の完全な創傷閉鎖の持続を意味する。いくつかの例において、耐久性のある創傷閉鎖は、皮膚代替物の初回適用後4ヶ月以内に生じる。
【0045】
いくつかの実施形態において、創傷は急性創傷である。例示的な急性創傷は、セクションIIIに詳述され、参照により本セクションに組み込まれる。いくつかの実施形態において、急性創傷は、全層創傷又は深達性部分層創傷であり、創傷の種類は、外科創傷、熱傷創、咬創、穿刺創、裂傷又は鋭利な切断からの創傷である。いくつかの実施形態において、急性創傷は、深達性部分層熱傷創、又は全層熱傷である。いくつかの実施形態において、急性創傷は、深達性部分層温度熱傷創、又は全層熱傷創である。いくつかの実施形態において、急性創傷は、深達性部分層外科創傷、又は全層外科的傷である。典型的には、上記実施形態の各々において、創傷は、自家移植が臨床的に適応とされるデブリードされた創傷であり、適用時に創傷の深さが評価される。
【0046】
いくつかの実施形態において、創傷は慢性創傷である。例示的な急性創傷は、セクションIIIに詳述され、参照により本セクションに組み込まれる。
【0047】
好適な対象は、セクションIVに詳述され、参照により本セクションに組み込まれる。いくつかの実施形態において、対象は、18~60歳、18~65歳、18~70歳、又は18~75歳である。いくつかの実施形態において、対象は、60歳以上、65歳以上、70歳以上、又は75歳以上である。いくつかの実施形態において、対象は、18歳未満、15歳以下、又は10歳以下である。いくつかの実施形態において、対象は、5歳以下、3歳以下、2歳以下、又は1歳以下である。いくつかの実施形態において、対象は、ドナー部位に利用可能な表面積が限られている。いくつかの実施形態において、ドナー部位の採取は、対象において禁忌である。いくつかの実施形態において、対象は、血行動態的に安定していない。いくつかの実施形態において、対象は、創傷治癒の遅延又は障害のリスクがある。いくつかの実施形態において、対象は、ドナー部位に利用可能な限られた表面積、ドナー部位の採取の禁忌、血行動態の不安定性、又は創傷治癒の遅延若しくは障害のリスクの任意の組み合わせを有する。
【0048】
創傷閉鎖のための本開示の方法は、自家移植片単独(「比較対照自家移植片」)による同等の創傷の治療と比較して、同等の又は改善された創傷転帰を提供し得、比較対照自家移植片は、皮膚代替物と重ねられる自家移植片と同じか又はそれより低いメッシュ比を有する。同等の転帰は、統計的有意差を有しない転帰である。改善されたアウトは、統計的有意差(改善)を有する転帰である。種々の実施形態において、同等の又は改善された転帰は、観察者によって又は対象によって、自家移植片単独(「比較対照自家移植片」)で治療された同等の創傷と比較して評価された場合の、同等の若しくは軽減された疼痛、同等の若しくは改善された審美的な質、同等の若しくは減少した治療関連有害事象、同等の若しくは減少した瘢痕、同等の若しくは低下した感染率、同等の若しくは減少した創傷感染関連事象、又はそれらの任意の組み合わせであり得、比較対照自家移植片は、治療用自家移植片と同じか又はそれより少ないメッシュ比を有する。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、観察者によって又は対象によって、自家移植片単独(「比較対照自家移植片」)で治療された同等の創傷と比較して評価された場合に、同等の若しくは改善された血管分布、同等の若しくは改善された色素沈着、同等の若しくは減少した厚さ、同等の若しくは軽減された疼痛、同等の若しくは増加した柔軟性、同等の若しくは増加した瘢痕表面積、同等の若しくは減少した硬さ、同等の若しくは増加した痒み、同等の若しくは改善された色、又はそれらの任意の組み合わせを提供し、比較対照自家移植片は、治療用自家移植片と同じか又はそれより低いメッシュ比を有する。更なる詳細は、セクションVIに提供される
【0049】
例示的な実施形態において、本開示は、対象の創傷を閉鎖する方法であって、創傷に少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片を適用し、自家移植片の上に皮膚代替物を適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創である、方法を提供する。種々の実施形態において、対象は、ドナー部位に利用可能な表面積が限られているか、自家移植が禁忌であるか、血行動態的に不安定であるか、創傷治癒の遅延若しくは障害のリスクがある場合があるか、又はそれらの任意の組み合わせを有する場合がある。なおも更なる実施形態において、熱傷は、温度熱傷であり得る。なおも更なる実施形態において、ドナー皮膚利用率は、少なくとも約25%、50%、75%、90%、95%、又はそれ以上低下する。上記の特定の例示的な実施形態において、方法は、皮膚代替物の単回適用のみを含む。
【0050】
別の例示的な実施形態において、本開示は、対象の創傷を閉鎖する方法であって、創傷に少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片を適用し、自家移植片の上に皮膚代替物を適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創であり、%TBSAは、≧15%、≧20%、若しくは≧25%であり、かつ/又は創傷の表面は、≧200cm2、≧300cm2、≧400cm2、若しくは≧500cm2である、方法を提供する。種々の実施形態において、対象は、ドナー部位に利用可能な表面積が限られているか、自家移植が禁忌であるか、血行動態的に不安定であるか、創傷治癒の遅延若しくは障害のリスクがある場合があるか、又はそれらの任意の組み合わせを有する場合がある。なおも更なる実施形態において、熱傷は、温度熱傷であり得る。なお更なる実施形態において、ドナー皮膚利用率は、少なくとも約25%、50%、75%、90%、若しくは95%、又はそれ以上低下する。上記の特定の例示的な実施形態において、方法は、皮膚代替物の単回適用のみを含む。
【0051】
別の例示的な実施形態において、本開示は、対象の創傷を閉鎖する方法であって、創傷に少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片を適用し、自家移植片の上に皮膚代替物を適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創であり、%TBSAは、≧25%、≧35%、若しくは≧50%であり、かつ/又は創傷の表面は、≧900cm2、≧1000cm2、≧2000cm2、≧5000cm2、若しくは≧10,000cm2である、方法を提供する。種々の実施形態において、対象は、ドナー部位に利用可能な表面積が限られているか、自家移植が禁忌であるか、血行動態的に不安定であるか、創傷治癒の遅延若しくは障害のリスクがある場合があるか、又はそれらの任意の組み合わせを有する場合がある。なおも更なる実施形態において、熱傷は、温度熱傷であり得る。なお更なる実施形態において、ドナー皮膚表面積は、少なくとも約25%、50%、75%、90%、又は95%減少する。上記の特定の例示的な実施形態において、方法は、皮膚代替物の単回適用のみを含む。
【0052】
別の例示的な実施形態において、本開示は、創傷閉鎖のための方法であって、18歳未満の対象の創傷に、少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創である、方法を提供する。様々な実施形態において、対象は、約15歳以下、約10歳以下、約5歳以下、又は約3歳以下であり得る。なおも更なる実施形態において、熱傷は、温度熱傷であり得る。なお更なる実施形態において、ドナー皮膚利用率は、少なくとも約25%、50%、75%、90%、95%、又はそれ以上低下する。上記の特定の例示的な実施形態において、方法は、皮膚代替物の単回適用のみを含む。
【0053】
別の例示的な実施形態において、本開示は、創傷閉鎖のための方法であって、65歳以上の対象の創傷に、少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創である、方法を提供する。種々の実施形態において、対象は、ドナー部位に利用可能な表面積が限られている場合があり、かつ/又は創傷治癒が遅延若しくは障害されるリスクがある場合がある。なおも更なる実施形態において、熱傷は、温度熱傷であり得る。なお更なる実施形態において、ドナー皮膚利用率は、少なくとも約25%、50%、75%、90%、95%、又はそれ以上低下する。上記の特定の例示的な実施形態において、方法は、皮膚代替物の単回適用のみを含む。
【0054】
別の例示的な実施形態において、本開示は、創傷閉鎖のための方法であって、75歳以上の対象の創傷に、少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創である、方法を提供する。種々の実施形態において、対象は、ドナー部位に利用可能な表面積が限られている場合があり、かつ/又は創傷治癒が遅延若しくは障害されるリスクがある場合がある。なおも更なる実施形態において、熱傷は、温度熱傷であり得る。なお更なる実施形態において、ドナー皮膚利用率は、少なくとも約25%、50%、75%、90%、95%、又はそれ以上低下する。上記の特定の例示的な実施形態において、方法は、皮膚代替物の単回適用のみを含む。
【0055】
別の例示的な実施形態において、本開示は、創傷閉鎖のための方法であって、創傷治癒の障害又は遅延のリスクがある対象の創傷に、少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創である、方法を提供する。種々の実施形態において、創傷治癒の遅延又は障害のリスクがある対象は、肥厚性瘢痕、真皮の薄化、吸入傷害若しくは他の共存する傷害、≧25%のTBSA、糖尿病、感染症(典型的には創傷部位であるが、他の場所にもあり得る)、肥満、創傷治癒を損なうことが知られている薬物、喫煙習慣、過剰なアルコール摂取、低血圧、血管疾患、浮腫、がん、栄養不良、又はそれらの任意の組み合わせの病歴を有する対象であり得る。更なる実施形態において、対象は、18歳未満、10以下、5歳以下、3歳以下、2歳以下、1歳以下、60歳以上、65歳以上、又は70歳以上であり得る。なおも更なる実施形態において、熱傷は、温度熱傷であり得る。なお更なる実施形態において、ドナー皮膚利用率は、少なくとも約25%、50%、75%、90%、95%、又はそれ以上低下する。上記の特定の例示的な実施形態において、方法は、皮膚代替物の単回適用のみを含む。
【0056】
VI.改善された転帰
別の態様において、本開示は、創傷治癒の転帰を改善するための方法であって、対象の創傷にメッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物である、方法を提供する。いくつかの実施形態において、自家移植片は、少なくとも2:1のメッシュ比を有する。いくつかの実施形態において、自家移植片は、約2:1~約8:1、約3:1~約8:1、又は約4:1~約8:1のメッシュ比を有する。いくつかの実施形態において、自家移植片は、約2:1~約6:1、約3:1~約6:1、又は約4:1~約6:1のメッシュ比を有する。上記の実施形態の各々において、皮膚代替物は、メッシュ化されていないか、又は約1:1以下のメッシュ比を有し得る。改善された転帰は、観察者(例えば、医療提供者)によって、又は対象によって、自家移植片単独(「比較対照自家移植片」)で治療された同等の創傷と比較して測定されてもよく、比較対照自家移植片は、皮膚代替物と重ねられる自家移植片と同じ又はそれより低いメッシュ比を有する。
【0057】
創傷は、典型的には、当該技術分野で既知の方法、例えば、石鹸及び水による洗浄、臨床的に適応があり、かつ実行可能である場合には外科的切除(筋膜切除又は接線切除)等によって、治療のために調製される。創傷の位置は限定されない。例えば、創傷は、腕、脚、胴体、顔、頭部、首、手、足、尻、関節の上等にあってもよい。メッシュ化された自家移植片及び皮膚代替物は、創傷の形成から数時間若しくは数日以内、創傷の形成から1週間若しくは2週間以内、又は更に後に創傷に適用され得る。自家移植片によって覆われる創傷の全表面積が、皮膚代替物の製造サイズより小さい場合、皮膚代替物は、自家移植片によって覆われる創傷領域の表面積及び形状を実質的に覆うようにトリミングされ得る。自家移植片によって覆われる創傷の全表面積が、皮膚代替物の製造サイズよりも大きい場合、皮膚代替物の複数の試料を当接させることによって自家移植片によって覆われる創傷領域を実質的に覆うように複数の試料を使用することができる。疑義を避けるために、自家移植片を覆うための複数の試料の使用は、単回適用とみなされる。いくつかの実施形態において、皮膚代替物の単回適用のみが必要である。他の実施形態において、方法は、自家移植片によって覆われた創傷領域又は自家移植片によって覆われた創傷領域の一部に対する、皮膚代替物の複数回の適用を含む。創傷の全表面積に応じて、同種異系組織、皮膚代替物オーバーレイを含まない自己組織、又は自己細胞は、いくつかの実施形態において、自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイと併せて使用されてもよい。例えば、創傷領域は、自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイの1つ以上の試料を当接させることによって、また、皮膚代替物オーバーレイなしで1つ以上の自家移植片を当接させることによって覆われ得る。
【0058】
様々な実施形態において、改善された転帰は、自家移植の発生率の低下、ドナー皮膚利用率の低下、疼痛の軽減、閉鎖創傷の1つ以上の審美的な質の改善、治療関連有害事象の減少、感染率の低下、創傷感染関連事象の減少、ドナー部位の病的状態の軽減、医療資源利用の減少、生活の質の改善、又はそれらの組み合わせであり得る。改善され得る閉鎖創傷の質には、色素沈着又は着色化、瘢痕の厚さ、柔軟性、硬さ、痒み、血管分布、外的刺激(例えば、疼痛、接触、温度等)に対する感受性、及び全体的な外観が含まれるが、これらに限定されない。ドナー部位の病的状態には、圧痛、疼痛、冷感受性、一般的な瘢痕、又はより具体的には肥厚性瘢痕、感染症、分層創傷から複雑な創傷又は全層創傷への変換等が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、改善された転帰は、自家移植の発生率の低下、ドナー皮膚利用率の低下、疼痛の軽減、瘢痕の減少、移植部位における色素沈着若しくは着色化の改善、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。特定の実施形態において、改善された転帰は、自家移植の発生率の低下、ドナー皮膚利用率の低下、及び/又は疼痛の軽減であり得る。改善された転帰は、観察者(例えば、医療提供者)によって、又は対象によって、自家移植片単独(「比較対照自家移植片」)で治療された同等の創傷と比較して測定されてもよく、比較対照自家移植片は、皮膚代替物と重ねられる自家移植片と同じ又はそれより低いメッシュ比を有する。
【0059】
自家移植の発生率の低下とは、最初の自家移植片の完全な又は部分的な失敗に起因して、再移植が必要とされる回数の減少を指す。自家移植の発生率の低下は、同じメッシュ比又は同様のメッシュ比(例えば、m-0.5又はm-1)の自家移植片のみで治療された同等の創傷と比較され得る。改善された転帰が自家移植の発生率の低下を含む実施形態において、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の低下があり得る。
【0060】
ドナー部位利用率の低下は、初回適用及びその後の再適用(行われる場合)のために採取されたドナー部位を含む、対象から採取されたドナー部位の全表面積の減少を指す。ドナー部位利用率の低下は、同じメッシュ比の自家移植片のみで治療された同等の創傷と比較され得る。代替として、ドナー部位利用率の低下は、より低いメッシュ比(例えば、m-1、m-2、m-3等)を有する自家移植片のみで治療された同等の創傷と比較され得るが、両方の創傷が、1、2、3ヶ月までの完全な創傷閉鎖、又は4、5、6ヶ月までの耐久性のある閉鎖、又は閉鎖創傷の1つ以上の審美的な質(例えば、厚さ、柔軟性、着色化、疼痛、痒み等)等の類似の転帰を有する。改善された転帰がドナー部位利用率の低下を含む実施形態において、約1.5倍、約2倍、約2.5倍、約3倍、約3.5倍、約4倍、約4.5倍、又は約5倍の低下があり得る。
【0061】
疼痛は、患者が報告する転帰であり、様々な既知の臨床的に試験された疼痛評価ツールによって評価され得る。非限定的な例として、視覚的なアナログスケール及びWong-Baker FACES疼痛評価スケールが挙げられる。疼痛の軽減は、より低いメッシュ比(例えば、m-1、m-2、m-3等)を有する自家移植片のみで治療された同等の創傷と比較され得るが、両方の創傷が、1、2、3ヶ月までの完全な創傷閉鎖、又は4、5、6ヶ月までの耐久性のある閉鎖、又は閉鎖創傷の1つ以上の審美的な質(例えば、瘢痕、柔軟性、着色化、疼痛、痒み等)等の類似の転帰を有する。本開示の方法に関連する疼痛の軽減の一因は、自家移植の減少であり、これによりドナー部位の減少がもたらされる。移植部位の疼痛の軽減は、疼痛の全体的な軽減にも寄与し得る。疼痛は、局所的に(例えば、移植部位のみで)評価及び報告することもできる。改善された転帰が疼痛の軽減を含む実施形態において、疼痛の1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の軽減があり得る。特定の実施形態において、約5%~約50%の疼痛の軽減、又は約15%~約50%の疼痛の軽減、約25%~約50%の疼痛の軽減、又は約35%~約50%の疼痛の軽減があり得る。他の実施形態において、疼痛の約25%~約75%の軽減、又は疼痛の約35%~約75%の軽減、疼痛の約45%~約75%の軽減、又は疼痛の約55%~約75%の軽減があり得る。なおも他の実施形態において、疼痛の約50%~約100%の軽減、疼痛の約60%~約100%の軽減、疼痛の約70%~約100%の軽減、又は疼痛の約80%~約100%の軽減があり得る。更なる実施形態において、疼痛の約90%~100%の軽減、又は更には疼痛の100%の軽減があり得る。改善された転帰が閉鎖創傷の1つ以上の審美的な質の改善を含む実施形態において、評価は、全ての創傷部位、ドナー部位のみ、又は移植部位のみを考慮に入れることができる。閉鎖創傷の1つ以上の審美的な質の改善は、同じメッシュ比又は同様のメッシュ比(例えば、m-0.5又はm-1)の自家移植片のみで治療された同等の創傷と比較され得る。閉鎖創傷の質を評価するために、好ましくは、1つ以上のパラメータが、同等の解剖学的位置上の正常な皮膚と比較される。非限定的なパラメータとして、全体的な意見、血管分布、色素沈着又は着色化、瘢痕の厚さ、緩和、柔軟性、瘢痕表面積、瘢痕に関連する疼痛、及び痒みが挙げられる。以下でこれらのパラメータを説明する際には、評価者が使用できる様々な試験が記載される。しかしながら、評価者が患者である場合、評価は主観的であり得る。血管分布は、赤みの量によって評価される閉鎖創傷又は瘢痕組織内の血管の存在を指す。これは、プレキシグラス(又はそれと同等のもの)でブランチングした後の血液戻り量によって試験され得る。色素沈着は、色素(メラニン)による組織の茶褐色の着色を指す。血管分布の影響を排除するために、中程度の圧力で皮膚にプレキシグラス(又はその同等物)を適用することによって試験することができる。患者の評価の場合、「瘢痕の色」が典型的には評価される。厚さは、皮下組織-真皮境界と瘢痕の表皮表面との間の平均距離を指す。緩和は、表面の凹凸が存在する程度を指す(好ましくは、隣接する正常な皮膚と比較して)。柔軟性とは、親指と人差し指との間の領域にしわを寄せることによって試験される創傷又は瘢痕のしなやかさを指す。表面積とは、元の創傷領域と関連する瘢痕の表面積を指す。全体所見とは、上記のパラメータに基づいている場合とそうでない場合がある創傷領域又は瘢痕の全体的な意見を指す。例示的な実施形態において、患者及び観察者の瘢痕評価尺度(POSAS)又は患者瘢痕評価質問票(PSAQ)を使用して、瘢痕を評価する。したがって、閉鎖創傷の1つ以上の審美的な質の改善は、一般に、瘢痕の減少と称され得る。改善された転帰が閉じた閉鎖創傷の1つ以上の審美的な質の改善を含む実施形態において、瘢痕の1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の減少があり得る。特定の実施形態において、瘢痕の約5%~約50%の減少、又は瘢痕の約15%~約50%の減少、瘢痕の約25%~約50%の減少、又は瘢痕の約35%~約50%の減少があり得る。他の実施形態において、瘢痕の約25%~約75%の減少、又は瘢痕の約35%~約75%の減少、瘢痕の約45%~約75%の減少、又は瘢痕の約55%~約75%の減少があり得る。なおも他の実施形態において、瘢痕の約50%~約100%の減少、瘢痕の約60%~約100%の減少、瘢痕の約70%~約100%の減少、又は瘢痕の約80%~約100%の減少があり得る。更なる実施形態において、瘢痕の約90%~100%の減少、又は更には瘢痕の100%の減少があり得る。
【0062】
改善された転帰が感染の減少である実施形態において、感染の1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%の減少があり得る。評価は、全ての治療部位、ドナー部位のみ、又は移植部位のみの感染を考慮に入れることができる。特定の実施形態において、感染の約1%~約25%の減少、感染の約1%~約15%の減少、感染の約1%~約10%の減少、又は感染の約1%~約5%の減少があり得る。他の実施形態において、感染の約5%~約50%の減少、又は感染の約15%~約50%の減少、感染の約25%~約50%の減少、又は感染の約35%~約50%の減少があり得る。他の実施形態において、感染の約25%~約75%の減少、又は感染の約35%~約75%の減少、感染の約45%~約75%の減少、又は感染の約55%~約75%の減少があり得る。なおも他の実施形態において、感染の約50%~約100%の減少、感染の約60%~約100%の減少、感染の約70%~約100%の減少、又は感染の約80%~約100%の減少があり得る。更なる実施形態において、感染の約90%~100%の減少、又は更には感染の100%の減少があり得る。本発明の方法に関連する感染の減少の一因は、ドナー皮膚利用率の低下であり、これによりドナー部位(すなわち、開放創傷)の減少がもたらされる。移植部位における感染の減少は、感染率の全体的な低下にも寄与し得る。
【0063】
生活の質は、患者が報告する転帰であり、様々な既知の、臨床的に試験された熱傷特有の又は一般的な評価ツールによって評価され得る。非限定的な例として、Sickness Impact Profile,the Burn Specific Health Scale-Brief(BSHS-B)、Medical Outcome Study Short Form-36 items(SH-36)、EuroQol五次元質問票(EQ-5D)、Burn Specific Health Scale-Abbreviated(BSH-A)、Burn Specific Health Scale-Revised 15D(BSHS-R)、Quality of Life Questionnaire(QLQ)等が挙げられる。生活の質の向上は、同じメッシュ比又は同様のメッシュ比(例えば、m-0.5又はm-1)の自家移植片のみで治療された同等の創傷と比較され得る。改善された転帰が生活の質(QOL)の向上を含む実施形態において、QOLスコアの1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%、55%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%以上の増加があり得る。特定の実施形態において、QOLスコアの約5%~約50%の増加、又はQOLスコアの約15%~約50%の増加、QOLスコアの約25%~約50%の増加、又はQOLスコアの約35%~約50%の増加があり得る。他の実施形態において、QOLスコアの約25%~約75%の増加、又はQOLスコアの約35%~約75%の増加、QOLスコアの約45%~約75%の増加、又はQOLスコアの約55%~約75%の増加があり得る。なおも他の実施形態において、QOLスコアの約50%~約100%の増加、QOLスコアの約60%~約100%の増加、QOLスコアの約70%~約100%の増加、又はQOLスコアの約80%~約100%の増加があり得る。更なる実施形態において、QOLスコアの約90%~100%の増加があり得るか、又はQOLスコアには100%の増加さえもあり得る。
【0064】
例示的な急性創傷は、セクションIIIに詳述され、参照により本セクションに組み込まれる。いくつかの実施形態において、急性創傷は、全層創傷、部分層創傷、又は無傷の真皮要素を含む複雑な創傷であり、創傷の種類は、外科創傷、熱傷創、咬創、穿刺創、裂傷、又は鋭利な切断からの創傷である。いくつかの実施形態において、急性創傷は、部分層熱傷創、又は無傷の真皮要素を含む複雑な熱傷創である。いくつかの実施形態において、急性創傷は、部分層温度熱傷創、又は無傷の真皮要素を含む複雑な温度熱傷創である。いくつかの実施形態において、急性創傷は、部分層外科創傷、又は無傷の真皮要素を含む複雑な外科創傷である。典型的には、上記実施形態の各々において、創傷は、自家移植が臨床的に適応とされるデブリードされた創傷である。
【0065】
いくつかの実施形態において、創傷は慢性創傷である。例示的な急性創傷は、セクションIIIに詳述され、参照により本セクションに組み込まれる。
【0066】
好適な対象は、セクションIVに詳述され、参照により本セクションに組み込まれる。いくつかの実施形態において、対象は、18~60歳、18~64歳、又は18~65歳である。いくつかの実施形態において、対象は、60歳以上、又は65歳以上である。いくつかの実施形態において、対象は、18歳未満、15歳以下、又は10歳以下である。いくつかの実施形態において、対象は、5歳以下、3歳以下、2歳以下、又は1歳以下である。いくつかの実施形態において、対象は、ドナー部位に利用可能な表面積が限られている(例えば、若年者、高齢者、≧25%のTBSA等)。いくつかの実施形態において、ドナー部位の採取は、対象において禁忌である。いくつかの実施形態において、対象は、血行動態的に安定していない。いくつかの実施形態において、対象は、創傷治癒の遅延又は障害のリスクがある。いくつかの実施形態において、対象は、ドナー部位に利用可能な限られた表面積、ドナー部位の採取の禁忌、血行動態の不安定性、又は創傷治癒の遅延若しくは障害のリスクの任意の組み合わせを有する。
【0067】
一例示的な実施形態において、本開示は、創傷治癒の転帰を改善するための方法であって、対象の創傷に、少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創であり、対象は、少なくとも10%の%TBSAを有し、改善された転帰は、自家移植片単独(「比較対照自家移植片」)で治療された同等の創傷と比較して、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%のドナー皮膚利用率の低下であり、比較対照自家移植片は、皮膚代替物と重ねられる自家移植片と同じメッシュ比を有する、方法を提供する。
【0068】
別の例示的な実施形態において、本開示は、創傷治癒の転帰を改善するための方法であって、対象の創傷に、少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創であり、対象は、少なくとも20%の%TBSAを有し、改善された転帰は、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%のドナー皮膚利用率の低下である、方法を提供する。
【0069】
別の例示的な実施形態において、本開示は、創傷治癒の転帰を改善するための方法であって、対象の創傷に、少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創であり、対象は、少なくとも30%の%TBSAを有し、改善された転帰は、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%のドナー皮膚利用率の低下である、方法を提供する。
【0070】
別の例示的な実施形態において、本開示は、創傷治癒の転帰を改善するための方法であって、対象の創傷に、少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創であり、対象は、少なくとも40%の%TBSAを有し、改善された転帰は、少なくとも30%、少なくとも40%、又は少なくとも50%のドナー皮膚利用率の低下である、方法を提供する。
【0071】
別の例示的な実施形態において、本開示は、創傷治癒の転帰を改善するための方法であって、対象の創傷に、少なくとも2:1のメッシュ比を有する自家移植片及び皮膚代替物オーバーレイを適用することを含み、皮膚代替物は、NIKS細胞を含む器官型ヒト皮膚等価物であり、創傷は、深達性部分層熱傷創又は全層熱傷創であり、対象は、少なくとも50%の%TBSAを有し、改善された転帰は、少なくとも20%、少なくとも30%、又は少なくとも40%のドナー皮膚利用率の低下である、方法を提供する。
【0072】
本発明がより容易に理解され得るように、特定の用語が定義される。別段に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明の実施形態が関連する分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様の、修飾された、又は同等の多くの方法及び材料は、過度の実験なしに本発明の実施形態の実施に使用することができ、好ましい材料及び方法は本明細書に記載される。本発明の実施形態を説明及び請求する際に、以下の用語は、以下に記載される定義に従って使用される。
【0073】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、質量、体積、時間、距離、及び量を含むがこれらに限定されない任意の定量化可能な変数に関して、例えば、典型的な測定技法及び機器を通じて生じ得る数値量の変動を指す。更に、現実世界で使用される固体及び液体の取り扱い手順を考慮すると、組成物を作製するため、又は方法を実施するため等に使用される成分の製造、供給源、又は純度の違いを通して生じる可能性が高い、特定の不注意な誤差及び変動が存在する。「約」という用語はまた、これらの変形を包含し、最大±5%であり得るが、±4%、3%、2%、1%等でもあり得る。「約」という用語によって修飾されるかどうかにかかわらず、特許請求の範囲は量の等価物を含む。
【実施例】
【0074】
以下の実施例は、本発明の様々な反復を例示する。
【0075】
実施例1
第1/2a相、多施設、非盲検、無作為化、患者内、対照試験は、全層温度熱傷の治療におけるメッシュ化された自家移植片(SOMA)のStrataGraft(登録商標)オーバーレイの有効性、安全性、及び忍容性を評価している。治験参加者は、熱傷の一部にメッシュ化された自家移植片(AG Tx)を受容し、熱傷の異なる部分にStrataGraft(登録商標)カバーとともにメッシュ化された自家移植片(SOMA Tx)を受容する。両方の治験治療(すなわち、SOMA Tx及びAG Tx)を総称する場合、「治験Tx」という用語が使用される。
【0076】
適格な対象は、外科的切除及び自家移植に臨床的に適応とされる全層損傷の領域を含む、10%~49%の全体表面積(TBSA)の(含む)の温度熱傷を有する18~75歳である。各対象において、面積、創傷床の組成(脂肪、筋膜、又は筋肉)、及び運動生理学的ストレス要因が同等である2つの全層創傷を、部位A及びBとして指定する。部位A及びBを、AG Tx又はSOMA Txのいずれかを受容するように無作為化して、各対象が両方の治療を受けるようにする。このようにして、対象が自身の対照としての役割を果たす。部位A及びBは、胴体又は四肢に100~1900cm2あり、関節を横切ってもよい。
【0077】
切除後、AG Tx部位は、メッシュ化された分層自家移植片(臨床的判断によるメッシュ比「m」)を受容し、SOMA Tx部位は、AG Tx部位よりも1又は2メッシュ比大きくメッシュ化された(m+1又はm+2)分層自家移植片を受容し、1:1でメッシュ化されたStrataGraft(登録商標)皮膚組織と重ねられる。1日目に自家移植が行われる。治験責任医師の判断に基づき、ステープル、縫合糸、又は接着剤を使用して、自家移植片を所定の位置に固定する。治験責任医師の判断に基づき、StrataGraft(登録商標)を自家移植片のおよそのサイズにトリミングし、ステープル、縫合糸、又は接着剤を使用して所定の位置に固定する。全ての治療された創傷の盲検評価を、7日目±1日に開始し、創傷が閉鎖したことが確認されるまで毎日継続し、その後、その対象の治験参加期間(例えば、14日目±1日、21日目±2日、28日目±3日、42日目±4日、2ヶ月目±4日、3ヶ月目±7日、6ヶ月目±2週間、12ヶ月目±4週間)の間は各来院時に継続する。
【0078】
StrataGraft(登録商標)は、独自のプロセスを介して、製造管理及び品質管理に関する基準(GMP)に準拠してStratatech(Madison,WI)によって製造されている。StrataGraft(登録商標)は、凍結保存され、ドライアイス上で凍結した状態で各治験施設に出荷され、使用前は-70℃~90℃で保管される。
【0079】
本治験では、創傷治癒に関連する有効性評価には、ドナー皮膚利用率、再上皮化、完全な創傷閉鎖、耐久性のある創傷閉鎖、患者及び観察者の瘢痕評価尺度(POSAS)評価、並びに患者瘢痕評価質問票(PSAQ)評価が含まれる。本治験の完全な創傷閉鎖は、少なくとも2週間の間隔を空けて2回の訪問で確認される、ドレナージなしでの完全な皮膚再上皮化として定義される。本治験の耐久性のある創傷閉鎖は、閉鎖が最初に観察された後少なくとも3ヶ月間維持される、閉鎖の持続性として定義される(FDA.Guidance for Industry:Chronic cutaneous ulcer and burn wounds-developing products for treatment.June 2006)。治療部位及びドナー部位の美容術は、POSAS及び/又はPSAQを使用して臨床観察者及び対象の両方によって評価される。対象及び観察者は、6つの審美的カテゴリー及び全体的な意見を別々に評価し、それぞれを1(正常な皮膚)~10(考えられる最悪)のスケールでランク付けした後、カテゴリースコアを合計して各評価者からの合計スコアを作成する。観察者の評価には、血管分布、色素沈着、厚さ、緩和、柔軟性、及び表面積のカテゴリー、並びに全体的な意見スコアが含まれる。患者の評価には、疼痛、痒み、色、硬さ、厚さ、及び凹凸のカテゴリー、並びに全体的な意見スコアが含まれる。
【0080】
1つのエンドポイントは、28日目±3日に完全に閉鎖したSOMA Tx部位及びAG Tx部位のパーセントの差である。別のエンドポイントは、28日目±3日のSOMA Tx部位及びAG Tx部位の観察者評価(POSAS)の合計スコアの差である。別のエンドポイントは、2ヶ月目に計算されるドナー皮膚の減少パーセント([1-(AG Txメッシュ比/SOMA Txメッシュ比)X100]によって定義される)である。別のエンドポイントは、2ヶ月目の更なる自家移植を伴わない完全な創傷閉鎖を示すSOMA Tx部位及びAG Tx部位のパーセントの差である。追加のエンドポイントには、14日目±1日、21日目±2日、28日目±3日、42日目±4日、2ヶ月目±4日、3ヶ月目±7日の治験Tx部位の発生率及び/又は再上皮化のパーセント;3ヶ月目±7日、6ヶ月目±2週、12ヶ月目±4週の治験Tx部位の耐久性のある創傷閉鎖を有する対象のパーセント;28日目±3日、2ヶ月目±4日、3ヶ月目±7日、6ヶ月目±2週、及び12ヶ月目±4週の治験Tx部位のPOSAS/PSAQスコア;2ヶ月目±4日、3ヶ月目±7日、6ヶ月目±2週、12ヶ月目±4週に治験Tx部位に適用されたドナー皮膚の総面積が含まれ得る。別のエンドポイントは、創傷閉鎖率に対する総創傷負担の影響である。SOMA Tx部位は、1つ以上のエンドポイントに関してAG Tx部位と同等か又はそれより優れた性能を発揮することが期待される。
【0081】
本治験の他の有効性評価は、StrataGraft(登録商標)が適用される治療場所(例えば、入院病院、外来/外来病院、診療所等)、切除後の他の全ての治験以外の熱傷領域に用いられる治療、及びそれぞれで治療される全体表面積%(TBSA)、治験の熱傷治療に必要な手術室手技の数及び期間、入院期間、疼痛制御のために与えられる処方薬、退院時に外来で使用するために与えられる抗生物質、退院後30日以内の再入院、再入院が計画されているかどうか、並びに再入院後の入院期間を含む、医療リソースの利用に関する。
【0082】
安全性評価には、治験薬投与下の有害事象(TEAE)、バイタルサイン、臨床検査パラメータ、治験Tx部位における創傷感染及び創傷感染関連事象の発生率、ドナー部位の合併症、並びにStrataGraft(登録商標)に対する免疫学的応答のモニタリングが含まれる。各患者は、ベースライン及び3ヶ月目±7日のパネル反応性抗原(PRA)により、StrataGraft(登録商標)への免疫応答について評価される。PRA評価は、CTHLAクラスI抗体及びCL1RFX HLAクラスII抗体の固相Luminexアッセイを使用してお行われてもよい。PRA値が>0%の患者は、陽性PRA反応を有するとみなされる。免疫状態の変化を、各患者のベースライン値と比較することによってモニタリングする。3ヶ月目±7日に、患者は、創傷/正常な皮膚境界にわたる治験Tx部位の治癒縁部から1×0.5cmの生検パンチを採取される。生検組織は、標準的な組織学的技術を用いて検査され、構造、免疫細胞の存在、エラスチン及びコラーゲン分布等の組織特性について評価される。
【0083】
安全性エンドポイントには、治験全体を通じての治験薬投与下AE(TEAE)の発生率、各治験Txに関連するTEAEの発生率、治験Tx部位での創傷感染関連事象の発生率、ベースラインと比較した治験全体を通じてのバイタルサインの臨床的に有意な変化、ベースラインと28日目との間の臨床検査値の臨床的に有意な変化、ベースラインと3ヶ月目との間のパネル反応性抗体(PRA)及び抗ウシ血清アルブミン(BSA)レベルの臨床的に有意な変化、並びに併用薬使用の臨床的に有意な変化が含まれ得る。
【国際調査報告】