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特表2023-532884紙および板紙のためのバリアコーティング
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】紙および板紙のためのバリアコーティング
(51)【国際特許分類】
   C09D 105/00 20060101AFI20230725BHJP
   D21H 21/14 20060101ALI20230725BHJP
   C09D 179/02 20060101ALI20230725BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20230725BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C09D105/00
D21H21/14 Z
C09D179/02
C09D7/63
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580394
(86)(22)【出願日】2021-06-18
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 IB2021055399
(87)【国際公開番号】W WO2022003472
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】2050800-8
(32)【優先日】2020-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501239516
【氏名又は名称】ストラ エンソ オーワイジェイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガールステッド, ミカエル
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナーソン ブローディン, フレドリック
(72)【発明者】
【氏名】ニフレット, オーサ
【テーマコード(参考)】
3E086
4J038
4L055
【Fターム(参考)】
3E086AD02
3E086AD05
3E086BA04
3E086BA14
3E086BA15
3E086BB05
3E086BB74
3E086DA08
4J038BA011
4J038DJ012
4J038JA20
4J038KA02
4J038MA08
4J038MA14
4J038NA08
4J038PB04
4J038PC10
4L055AG10
4L055AG27
4L055AG34
4L055AG44
4L055AG46
4L055AG48
4L055AG87
4L055AG99
4L055AH01
4L055BE08
4L055EA14
4L055EA30
4L055FA30
4L055GA05
4L055GA30
(57)【要約】
本発明は、水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、50~99.9重量%の、2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上のアニオン性低分子量多糖類と、0.1~10重量%のポリカチオン性ポリマーとを含む水性バリアコーティング組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性バリアコーティング組成物であって、
水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、
50~99.9重量%の、2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上のアニオン性低分子量多糖類と、
0.1~10重量%のポリカチオン性ポリマーと
を含む水性バリアコーティング組成物。
【請求項2】
水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、75~99重量%の1つ以上のアニオン性低分子量多糖類を含む、請求項1に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項3】
2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上の低分子量多糖類が、アニオン性ヘミセルロース、アニオン性セルロースおよびアニオン性デンプン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1または2に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項4】
2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上の低分子量多糖類が、アニオン性ヘミセルロースである、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項5】
2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上の低分子量多糖類がキシランである、請求項1から4のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項6】
1つ以上の低分子量多糖類が、2~8の範囲、好ましくは2~7の範囲のDPを有する、請求項1から5のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項7】
水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて0.5~6重量%のポリカチオン性ポリマーをさらに含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項8】
ポリカチオン性ポリマーがポリエチレンイミン(PEI)である、請求項7に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項9】
ポリカチオン性ポリマーが、2000~1000000g/molの範囲、好ましくは10000~100000g/molの範囲の重量平均分子量を有する、請求項7または8に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項10】
水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて1~10重量%の可塑剤をさらに含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項11】
可塑剤が、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項10に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項12】
水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて5~40重量%の充填剤をさらに含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項13】
充填剤が、粘土、タルカム、CaCO、および繊維、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の水性バリアコーティング組成物。
【請求項14】
バリアフィルムまたはバリアコーティングであって、
バリアフィルムまたはバリアコーティングの総乾燥重量に基づいて、
50~99.9重量%の、2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上のアニオン性低分子量多糖類と、
0.1~10重量%のポリカチオン性ポリマーと
を含むバリアフィルムまたはバリアコーティング。
【請求項15】
フィルムまたはコーティングの坪量が、5~15g/mの範囲、好ましくは5~10g/mの範囲である、請求項14に記載のバリアフィルムまたはバリアコーティング。
【請求項16】
請求項1~13のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物でコーティングされた基材を含む、コーティングされた基材。
【請求項17】
コーティングされた基材が、繊維系基材、好ましくは紙または板紙、好ましくはミネラルコーティングされた紙または板紙である、請求項16に記載のコーティングされた基材。
【請求項18】
20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、最も好ましくは1%未満の棄却率(PTS RH 021/97試験方法に従って決定される)を特徴とする再パルプ化性を有する、請求項16または17に記載のコーティングされた基材。
【請求項19】
バリアフィルムまたはバリアコーティングを製造するための方法であって、
a)請求項1~13のいずれか一項に記載の水性バリアコーティング組成物を調製すること、
b)水性バリアコーティング組成物の湿式フィルムまたは湿式コーティングを形成すること、および
c)湿式フィルムまたは湿式コーティングを乾燥させて、バリアフィルムまたはバリアコーティングを得ること
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、紙または板紙などの繊維系基材をコーティングして、そのバリア特性、特に酸素およびグリースバリア特性を改善するためのコーティング組成物に関する。本開示は、さらに、そのようなコーティング組成物でコーティングされた繊維系基材に関する。
【背景技術】
【0002】
包装産業において、敏感な製品を遮蔽するために、効果的なガス、芳香、および/または水分バリアが必要とされている。特に、酸素に敏感な製品は、その貯蔵寿命を延長するために酸素バリアを必要とする。酸素に敏感な製品には、多くの食品だけでなく、医薬品および電子工業製品も含まれる。酸素バリア特性を有する公知の包装材料は、通常は多層コーティング構造の一部として、酸素バリアポリマーの1つまたは複数の層でコーティングされた、1つまたは複数のポリマーフィルムまたは繊維系基材、例えば、紙または板から構成され得る。
【0003】
食品の包装における別の重要な特性は、グリースおよび油に対する耐性である。
【0004】
バリアは、通常、基材バリア特性を与える組成物で繊維系基材をコーティングすることによって生成される。必要なバリア特性に応じて、異なるコーティングを塗布することができる。繊維系基材上にバリアを形成するときに最も一般的に使用される材料は、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレンビニルアルコール(EVOH)またはエチレン酢酸ビニル(EVA)である。EVOHは通常、酸素バリアを生成するために使用され、PEまたはPETは通常、液体および/または蒸気バリアを生成するために使用される。ポリマーは、通常、繊維系基材に積層または押出コーティングされる。しかしながら、製品バリア特性を与えるポリマー層は、通常、比較的厚い必要があるため、そのようなバリアを製造するには非常に費用がかかる。
【0005】
紙または板紙を介した酸素透過(OTR)の低減に取り組む最も一般的な方法は、複数のポリマー層を使用することである。このようにして、1つの層は低いOTRを提供することができるが、他の層は撥水性および/または低い水蒸気透過率を提供することができる。
【0006】
別の一般的に使用されるバリア材料は、アルミニウムである。アルミニウム層は、典型的には、紙または板紙製品の酸素および光バリアを改善するために使用される。アルミニウム層は薄く、典型的には7~9μm程度である。アルミニウムは優れたバリア特性を提供するが、製品の二酸化炭素負荷を著しく増加させる。
【0007】
また、ポリマー層とアルミニウム層の両方が、生分解性を低下させ、包装材料を効率的にリサイクルする可能性を低下させるという問題がある。
【0008】
二酸化炭素負荷を減少させ、製品の生分解性およびリサイクル性を改善するために、紙または板紙製品における合成ポリマーおよびアルミニウム層の使用を回避することが、製造業者、加工業者およびエンドユーザから要求されている。
【0009】
したがって、紙または板紙などの繊維系基材に、改善されたバリア特性を提供するための改善された方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0010】
本開示の目的は、先行技術のバリアフィルムおよびコーティングの問題の少なくともいくつかを緩和する、繊維系基材用のバリアフィルムまたはコーティングを提供することである。
【0011】
本開示のさらなる目的は、酸素および/またはグリースに対する良好な耐性を提供する、繊維系基材用のバリアフィルムまたはコーティングを提供することである。
【0012】
本開示のさらなる目的は、従来のコーティング方法を使用して繊維系基材に効率的に塗布することができるバリアフィルムまたはコーティングを提供することである。
【0013】
植物からの天然ポリマーは、生分解性であり、再生可能およびリサイクル可能であり、包装材料におけるバリアフィルムのための興味深い原料源を構成する。ヘミセルロースは大部分の植物で生合成される多糖類であり、セルロースミクロフィブリル間に存在するマトリックス材料として、およびリグニンとセルロースの間の結合として作用する。ヘミセルロースは、食品中の甘味剤、増粘剤および乳化剤として商業的に使用されてきた。ヘミセルロースから形成されるバリアフィルムは、良好な酸素およびグリースバリア特性を提供できることが以前に示されている。しかしながら、ヘミセルロース組成物の粘度が高いため、固形分が制限されるために、このようなフィルムを効率的に製造することが困難であり得る。
【0014】
本明細書に示される第1の態様によれば、
水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、
50~99.9重量%の、2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上のアニオン性低分子量多糖類と、
0.1~10重量%のポリカチオン性ポリマーと、
を含む水性バリアコーティング組成物が提供される。
【0015】
本発明は、2~12の範囲の重合度(DP)を有する短いアニオン性多糖類、例えば、キシランなどのアニオン性ヘミセルロースが、ポリカチオン性ポリマーと組み合わされた場合に良好なバリアフィルムを形成することができるという驚くべき認識に基づいている。2~12の範囲の重合度(DP)を有するこのような低分子量多糖類は、これまでバリアフィルムにおける使用が考慮されてこなかった。
【0016】
本発明者らは、優れた酸素およびグリースバリア特性を有するバリアフィルムおよびコーティングを提供することに加えて、比較的多量の低分子量多糖類と比較的少量のポリカチオン性ポリマーとの組み合わせにより、適度に低い粘度を維持しながら、少なくとも50重量%などの高い総固形分を有する水性バリアコーティング組成物を調製することを可能にすることを見出した。これにより、水性バリアコーティング組成物は、従来のコーティング方法を用いて基材に効率的に塗布することが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
水性バリアコーティング組成物は、2~12の範囲の重合度(DP)を有する低分子量多糖類と、水性媒体に溶解または分散したポリカチオン性ポリマーとを含む。水性媒体は、水または水溶液であってもよく、または水または水溶液と有機溶媒との混合物を含んでもよい。好ましい実施形態では、水性媒体は水系であり、すなわち、50重量%を超える水で構成される。より好ましい実施形態では、水性媒体は水である。
【0018】
水性バリアコーティング組成物は、希薄または高固形分組成物であり得る。しかしながら、高固形分組成物が典型的には好ましい。
【0019】
本発明のコーティング組成物の利点は、適度に低い粘度を維持しながら、30重量%以上などの高い総固形分を可能にすることである。本明細書で使用される「総固形分」または「固形分」という用語は、水溶液または懸濁液中の溶解した固形物+懸濁したおよび沈降可能な固形物の総画分を指す。
【0020】
低粘度と組み合わされた高い固形分は、コーティング組成物の輸送コストを低減し、単一のコーティング工程で高い坪量を有するコーティングを調製することを可能にする。高い固形分はまた、フィルムまたはコーティングが乾燥されるときに除去されるべき水の量を減少させ、それにより、コーティング方法の乾燥エネルギー要件を減少させることができる。好ましくは、コーティング組成物の総固形分は、コーティング組成物の総重量に基づいて、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも20%、または少なくとも30重量%である。
【0021】
コーティング組成物の総固形分は、コーティング組成物の総重量に基づいて、典型的には90重量%以下、好ましくは80重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0022】
いくつかの実施形態では、水性バリアコーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、10~90重量%の範囲、好ましくは20~80重量%の範囲、より好ましくは30~70重量%の範囲の総固形分を有する。
【0023】
水性バリアコーティング組成物の総固形分は、その主成分として1つ以上のアニオン性低分子量多糖類を含む。水性バリアコーティング組成物の総固形分は、50~99.9重量%の1つ以上のアニオン性低分子量多糖類を含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、水性バリアコーティング組成物は、水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて、75~99重量%の1つ以上のアニオン性低分子量多糖類を含む。
【0025】
多糖類中の単糖単位の数は、重合度(DP)と呼ばれる。本明細書で使用される低分子量多糖類という用語は、一般に、2~12個の単糖単位で構成される短い糖鎖を指す。いくつかの実施形態では、1つ以上の低分子量多糖類は、2~8の範囲、好ましくは2~7の範囲のDPを有する。これは、例えば、約7,000~15,000個のグルコース分子からなるセルロースと比較して、非常に短い鎖長である。本明細書で使用される低分子量多糖類の分子量は、典型的には、250~2000g/molの範囲、例えば、250~1500g/molの範囲または250~1000g/molの範囲であり得る。
【0026】
単糖単位は、同じタイプ(ホモ多糖類)または異なるもの(ヘテロ多糖類)であり得る。低分子量多糖類は、例えばより長い多糖類の化学的または合成的加水分解によって、合成的に天然に調製することができる。本発明において有用なアニオン性低分子量多糖類の例としては、限定されるものではないが、ジェラン、デキストラン、プルラン、セルロース、ヘミセルロース、ヒアルロン酸、アルギネート、キサンタン、ズオグラン、スクシノグルカン、およびグルコマンナンのアニオン性低分子量多糖類が挙げられる。
【0027】
低分子量多糖類はアニオン性であり、低分子量多糖類が少なくとも1つのアニオン性官能基を含むことを意味する。アニオン性官能基は、典型的にはカルボキシレート/カルボン酸官能基であるが、他のアニオン性官能基も可能である。アニオン性官能基は、グルクロン酸またはガラクツロン酸中のカルボキシレート/カルボン酸官能基などの低分子量多糖類中に天然に存在していてもよく、または化学修飾、例えば低分子量多糖類の酸化またはグラフト化によって導入されてもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上の低分子量多糖類は、アニオン性ヘミセルロース、アニオン性セルロースおよびアニオン性デンプン、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0029】
いくつかの実施形態では、2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上の低分子量多糖類は、アニオン性ヘミセルロースである。
【0030】
ヘミセルロースは、低分子量から高分子量に及ぶ置換/分岐多糖類である。それらは、異なる部分に配置され、異なる置換基を有する異なる糖単位からなる。
【0031】
ヘミセルロースは、キシラン、キシログルカン、グルコマンナンおよび混合結合β-グルカンの主な群に分けることができる。一部のヘミセルロースは、糖鎖中にグルクロン酸および/またはガラクツロン酸単位が存在するため、天然に負電荷を有する。水性バリアコーティング組成物に使用するためのヘミセルロースは、好ましくは、このようなアニオン性ヘミセルロースである。ヘミセルロースは、希酸または塩基ならびに様々なヘミセルラーゼ酵素によって容易に加水分解される。
【0032】
いくつかの実施形態では、2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上の低分子量多糖類は、キシランである。キシランは、木材、穀類、草およびハーブなどのバイオマス中に存在し、植物界で2番目に豊富なバイオポリマーであると考えられている。キシランを様々なバイオマス源中の他の成分から分離するために、水および水性アルカリによる抽出を使用することができる。
【0033】
水性バリアコーティング組成物の総固形分は、0.1~10重量%のポリカチオン性ポリマーをさらに含む。いくつかの実施形態では、水性バリアコーティング組成物は、水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて0.5~6重量%のポリカチオン性ポリマーを含む。
【0034】
ポリカチオン性ポリマーは、複数のカチオン性官能基を有する合成または天然ポリマーである。本発明で使用するためのポリカチオン性ポリマーの例は、ポリ(N-メチルビニルアミン)、ポリアリルアミン、ポリアリルジメチルアミン、ポリジアリルメチルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(pDADMAC)、ポリジアリルジメチルアンモニウムトリフルオロメタンスルホネート(pDADMAT)、ポリジアリルジメチルアンモニウムニトレート(pDADMAN)、ポリジアリルジメチルアンモニウムペルクロレート(pDADMAP)、ポリビニルピリジニウムクロリド、ポリ(2-ビニルピリジン)、ポリ(4-ビニルピリジン)、ポリビニルイミダゾール、ポリ(4-アミノメチルスチレン)、ポリ(4-アミノスチレン)、ポリビニル(アクリルアミド-コ-ジメチルアミノプロピルアクリルアミド)、ポリビニル(アクリルアミドーコ-ジメチルアミノエチルメタクリレート)、ポリエチレンイミン、ポリリジン、DAB-AmおよびPAMAMデンドリマー、ポリアミノアミド、ポリヘキサメチレンビグアニド、ポリジメチルアミン-エピクロロヒドリン、アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-トリメトキシシリルプロピル-N,N,N-トリメチルアンモニウムクロリド、ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン、キトサン、カチオン性デンプン、カチオン性ゼラチン、メチルクロリドによるポリエチレンイミンのアルキル化生成物、ポリアミノアミドとエピクロロヒドリンとのアルキル化生成物、カチオン性モノマーを有するカチオン性ポリアクリルアミド、ジメチルアミノエチルアクリレートメチルクロリド(AETAC)、ジメチルアミノエチルメタクリレートメチルクロリド(METAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、イオネン、シランおよびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0035】
いくつかの実施形態では、カチオン性ポリマーは、ポリアミノアミド、ポリエチレンイミン、ポリビニルアミン、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド(pDADMAC)、キトサン、カチオン性デンプンおよびカチオン性ゼラチンからなる群から選択される。
【0036】
好ましい実施形態では、ポリカチオン性ポリマーはポリエチレンイミン(PEI)である。
【0037】
いくつかの実施形態では、ポリカチオン性ポリマーは、2000~1000000g/molの範囲、好ましくは10000~100000g/molの範囲の重量平均分子量を有する。
【0038】
水性バリアコーティング組成物の配合は、コーティングおよびコーティングされた基材の意図される用途に応じて大きく異なり得る。いくつかの実施形態では、水性バリアコーティング組成物の総固形分は、1つ以上の低分子量多糖類およびポリカチオン性ポリマーのみからなる。他の実施形態では、コーティング組成物は、製品の最終性能またはコーティングの加工を改善するために、様々な量の広範囲の成分をさらに含んでもよい。
【0039】
いくつかの実施形態では、可塑剤が水性バリアコーティング組成物に添加されて、得られるフィルムまたはコーティングの弾性を増加させ、それらの脆性を低下させる。これにより、形成されたフィルムまたはコーティングは、それらのバリア特性を失うことなく、より良好に曲げに耐えることができる。
【0040】
いくつかの実施形態では、水性バリアコーティング組成物は、水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて1~10重量%の可塑剤を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、可塑剤は、グリセロール、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0042】
いくつかの実施形態では、得られるフィルムまたはコーティングのバリア特性および機械的特性を改善するために、充填剤が水性バリアコーティング組成物に添加される。
【0043】
いくつかの実施形態では、水性バリアコーティング組成物は、水性バリアコーティング組成物の総乾燥重量に基づいて5~40重量%の充填剤をさらに含む。
【0044】
いくつかの実施形態では、充填剤は、粘土(カオリンまたは焼成カオリンなど)、タルカム、CaCO(PCCまたはGCCなど)、TiO、Al、SiO、ベントナイト、繊維、またはそれらの混合物からなる群から選択される。繊維は、好ましくは、親水性表面を有し、水の密度に近い密度、すなわち好ましくは0.85~1.15g/cmの範囲または0.90~1.10g/cmの範囲の密度を有する任意の繊維であってよい。
【0045】
いくつかの実施形態では、充填剤は、粘土、タルカム、CaCO、および繊維、またはそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0046】
コーティング組成物は、好ましくは、ブレードコーターおよびバーコーターなどの従来の紙コーティング装置および技術を使用して、紙または板紙に塗布するのに好適な配合物で提供される。したがって、コーティング組成物は、好適なコーティング特性を付与するために、様々な添加剤を含んでもよい。そのようなコーティング添加剤としては、分散剤(例えば界面活性剤)、潤滑剤(例えばステアレート)、レオロジー調整剤、不溶化剤、保湿剤、バリア化学物質、およびpH調整剤(例えばNaOH)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
水性バリアコーティング組成物を基材に塗布し、乾燥させてバリアフィルムまたはコーティングを形成することができる。したがって、本明細書に示される第2の態様によれば、バリアフィルムまたはコーティングが提供され、バリアフィルムまたはコーティングは、
バリアフィルムまたはコーティングの総乾燥重量に基づいて、
50~99.9重量%の、2~12の範囲の重合度(DP)を有する1つ以上のアニオン性低分子量多糖類と、
0.1~10重量%のポリカチオン性ポリマーと、
を含む。
【0048】
バリアフィルムまたはコーティングは、好ましくは乾燥または実質的に乾燥している。バリアフィルムまたはコーティングは、好ましくは、90重量%以上、好ましくは95重量%以上の総固形分を有する。
【0049】
第2の態様によるバリアフィルムまたはコーティングの組成は、第1の態様による水性バリアコーティング組成物の総固形分の組成に対応することが理解される。例えば、水性バリアコーティング組成物中の1つ以上のアニオン性低分子量多糖類の50~99.9重量%の乾燥含有量は、乾燥バリアフィルムまたはコーティング中の1つ以上のアニオン性低分子量多糖類の50~99.9重量%の含有量をもたらす。
【0050】
本発明によるフィルムまたはコーティングは、一般に、30g/m以下の坪量を有することができる。典型的には、許容可能なバリア特性を得るために、少なくとも1g/mの坪量が必要である。いくつかの実施形態では、フィルムまたはコーティングの坪量は、5~15g/mの範囲であり、好ましくは5~10g/mの範囲である。
【0051】
本発明によるフィルムまたはコーティングは、一般に、100μm以下の厚さを有することができる。特に、フィルムまたはコーティングは、50μm以下の厚さを有することができ、より具体的には、フィルムまたはコーティングは、15μm以下または10μm以下の厚さを有することができる。いくつかの実施形態では、フィルムまたはコーティングの厚さは、1~15μmの範囲、好ましくは5~10μmの範囲である。
【0052】
バリアフィルムまたはコーティングは、好ましくは、第1の態様に関して上述したような水性バリアコーティング組成物から調製される。
【0053】
本発明のバリアフィルムまたはコーティングは、良好な酸素およびグリースバリア特性を有する。
【0054】
いくつかの実施形態では、フィルムまたはコーティングは、相対湿度50%および23℃で標準ASTM D-3985に従って測定され、100cc/m/24h/atm未満、好ましくは50cc/m/24h/atm未満、より好ましくは10cc/m/24h/atm未満の酸素透過率(OTR)を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、フィルムまたはコーティングは、標準TAPPI T559に従って測定され、8を超える、好ましくは10を超えるKIT値を有する。
【0056】
本明細書に示される第3の態様によれば、第1の態様による水性バリアコーティング組成物でコーティングされた基材を含むコーティングされた基材が提供される。
【0057】
第1の態様による水性バリアコーティング組成物は、繊維系基材のコーティングに特に興味深い。したがって、いくつかの実施形態では、コーティングされた基材は、繊維系基材である。繊維系基材は、好ましくは、紙または板紙である。
【0058】
紙は一般に、木材のパルプまたはセルロース繊維を含む他の繊維状物質からシートまたはロールで製造される材料を指し、例えば、材料上に筆記、描画、または印刷するために、もしくは包装材料として使用される。紙は、最終用途の要件に応じて、漂白されていても漂白されていなくてもよく、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよく、様々な厚さで製造することができる。
【0059】
板紙は一般に、例えば平坦な基材、トレイ、箱および/または他のタイプの包装として使用される、セルロース繊維を含む丈夫で厚い紙または厚紙を指す。板紙は、最終用途の要件に応じて、漂白されていても漂白されていなくてもよく、コーティングされていてもコーティングされていなくてもよく、様々な厚さで製造することができる。
【0060】
水性バリアコーティング組成物は、抄紙機(オンマシンコーティング)または別の機械(オフマシンコーティング)のいずれかに添加することができる。コーティング組成物を塗布するために、例えばブレードコーター、エアナイフコーター、およびキャストコーターなど、様々な紙コーティング装置および技術を使用することができる。コーティング組成物は、紙または板紙の片面または両面に塗布することができる。
【0061】
水性バリアコーティングが塗布される紙または板紙の表面は、好ましくは、表面の多孔性を低下させるために、例えば分散コーティングミネラルコーティングによって前処理されてもよい。このようにして、水性バリアコーティングの量を減少させることができる。したがって、いくつかの実施形態において、コーティングされた基材は、分散コーティングされた、好ましくはミネラルコーティングされた、紙または板紙である。
【0062】
コーティングされた基材は、好ましくは、再パルプ化するのに好適である。いくつかの実施形態では、コーティングされた基材は、20%未満、好ましくは10%未満、より好ましくは5%未満、および最も好ましくは1%未満の棄却率(PTS RH 021/97試験方法に従って決定される)を特徴とする再パルプ化性(repulpabiity)
を有する。
【0063】
本明細書に示す第4の態様によれば、
a)第1の態様による水性バリアコーティング組成物を調製すること、
b)水性バリアコーティング組成物の湿式フィルムまたは湿式コーティングを形成すること、および
c)湿式フィルムまたは湿式コーティングを乾燥させて、バリアフィルムまたはコーティングを得ること
を含む、バリアフィルムまたはコーティングを製造するための方法が提供される。
【0064】
いくつかの実施形態では、水性バリアコーティング組成物は、コーティング組成物の総重量に基づいて、10~90重量%の範囲、好ましくは20~80重量%の範囲、より好ましくは30~70重量%の範囲の総固形分を有する。
【0065】
乾燥工程c)において、湿式フィルムまたは湿式コーティングの総固形分は、水のエバポレーションによって増加する。得られたバリアフィルムまたはバリアコーティングは、好ましくは、90重量%を超える総固形分を有する。
【0066】
いくつかの実施形態では、乾燥したバリアフィルムまたはバリアコーティングの坪量は、5~15g/mの範囲であり、好ましくは5~10g/mの範囲である。
【0067】
いくつかの実施形態では、乾燥したバリアフィルムまたはバリアコーティングの厚さは、5~15μmの範囲、好ましくは5~10μmの範囲である。
【0068】
本明細書で使用されるコーティングという用語は、一般に、基材、例えば紙または板紙などの繊維系基材の表面を組成物で被覆して、基材に所望の仕上げまたはテクスチャを付与するか、その印刷性または光学特性またはバリア特性などの他の特性を改善する仕上げ作業を指す。本明細書で使用されるバリアコーティングという用語は、一般に、基材に改善されたバリア特性を付与するように設計されたコーティングを指す。
【0069】
本明細書で使用されるフィルムという用語は、一般に、薄い連続シート形成材料を指す。本明細書で使用されるバリアフィルムという用語は、一般に、良好なバリア特性を提供するように設計されたフィルムを指す。
【0070】
一般に、製品、ポリマー、材料、層および方法は、様々な成分または工程を「含む」ことに関して記載されるが、製品、ポリマー、材料、層および方法はまた、様々な成分および工程「から本質的になる」または「からなる」ことができる。
【0071】
本発明を様々な例示的な実施形態を参照して説明したが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を行うことができ、その要素を等価物で置き換えることができることが当業者には理解されよう。さらに、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるために多くの修正を行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を含むことが意図されている。
【実施例
【0072】
材料:
乾燥キシラン粉末、DP2-7、純度95%、水分含有量8%(Coreychem)
グリセロール、水中87%濃度(Merck)
粘土、水中72%濃度(Omya)
PEI、水中50重量%濃度(Sigma Aldrich)
【0073】
実施例1-キシラン/水混合物の調製
80gの水を含む撹拌容器に20gのキシラン粉末を徐々に添加して、20%キシラン混合物を調製した。混合物は、約16LmPa(19%溶液、スピンドル2、21℃におけるブルックフィールド粘度)の非常に低い粘度を有していた。
【0074】
水53g、49gおよび47gをそれぞれ含む撹拌容器に、キシラン粉末47g、51gおよび53gを徐々に添加することによって、47%、51%および53%のキシラン混合物を調製した。混合物は、ロッドコーティングに好適な約16LmPa(39%溶液、スピンドル2、21℃におけるブルックフィールド粘度)の中程度の粘度レベルを有していた。
【0075】
実施例2-コーティングカラーの調製
表1に示すように、キシランおよび添加剤(グリセロール、粘土およびPEI)を混合することによって、異なる化学組成を有するキシラン系コーティングカラーを室温で調製した。
【0076】
実施例3-板紙のコーティング
IR乾燥を備えた実験室用ロッドコーターを使用して、コーティングカラーを板紙基材(Tambrite 200gsm、印刷コーティング)の表面に塗布した。すべての試料を溝付きロッド(赤色)で2回コーティングした。試料を23℃および50%RHで数日間調整した後、分析した。
【0077】
分析
試料を、ピンホールの発生、グリース耐性(KIT)および酸素透過性(酸素透過率、OTR)について以下のように試験した。
酸素移動速度(OTR)は、ASTM D3985に従って、23℃の温度および50%相対湿度(RH)で測定した。
ピンホール数はEN13676:2001に従って測定する。測定は、包装材料を着色溶液(例えばエタノール中の染料E131ブルー)で処理し、表面を顕微鏡で検査することを含む。
KIT値は、グリース耐性の尺度であり、TAPPI T559に従って測定される。
【0078】
分析の結果を表1に示す。
【国際調査報告】