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特表2023-532890船舶のためのラダートランク、ラダートランクを有する船舶、及びラダートランクを生成する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】船舶のためのラダートランク、ラダートランクを有する船舶、及びラダートランクを生成する方法
(51)【国際特許分類】
   B63H 25/38 20060101AFI20230725BHJP
   B63H 25/08 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B63H25/38 Z
B63H25/08
B63H25/38 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580422
(86)(22)【出願日】2021-07-01
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 EP2021068258
(87)【国際公開番号】W WO2022003133
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】202020103872.9
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518190020
【氏名又は名称】ベッカー マリン システムズ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】becker marine systems GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100196117
【弁理士】
【氏名又は名称】河合 利恵
(72)【発明者】
【氏名】ヘニング キュールマン
(57)【要約】
船舶の流体力学的な効率を向上するために、船舶(13)のためのラダートランク(100)が提案され、それはラダーストック管(10)と、受容シャフト(11)と、受容シャフト(11)にラダーストック管(10)を保持するためのホルダ(20)とを備え、ラダーストック管(10)が受容シャフト(11)内に配置された状態でラダーストック管(10)と受容シャフト(11)の間に中間空間(19)が設けられ、ホルダ(20)は少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)を備え、少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)はラダーストック管(10)に配置され、少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)は受容シャフト(11)に配置され、少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び/又は少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)はラダーストック管(10)が受容シャフト(11)内に配置された状態で中間空間(19)内に突出する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶(13)のためのラダートランク(100)であって、ラダーストック管(10)と、受容シャフト(11)と、該受容シャフト(11)に前記ラダーストック管(10)を保持するためのホルダ(20)とを備え、前記ラダーストック管(10)が前記受容シャフト(11)内に配置された状態で、前記ラダーストック管(10)と前記受容シャフト(11)の間に中間空間(19)が設けられ、
前記ホルダ(20)は少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)を備え、前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)は前記ラダーストック管(10)に配置され、前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)は前記受容シャフト(11)に配置され、
前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び/又は前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)は、前記ラダーストック管(10)が前記受容シャフト(11)内に配置された状態で、前記中間空間(19)内に突出する、ラダートランク(100)。
【請求項2】
前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)は、前記ラダーストック管(10)が前記受容シャフト(11)内に配置された状態で、特にラダーストック管(10)及び受容シャフト(11)を備える船舶(13)に前記ラダートランクが配置された状態で、前記受容シャフト(11)内の前記ラダーストック管(10)の該ラダーストック管(10)の軸方向(26)への移動が阻止又は防止されるように、形状嵌め及び/又は圧力嵌めの態様で相互に配置可能であり及び/又は配置されている、請求項1に記載のラダートランク(100)。
【請求項3】
少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より一層好ましくは少なくとも4個、特に好ましくは4個のみの、ホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)が設けられ、及び/又は少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より一層好ましくは少なくとも4個、特に好ましくは4個のみの、相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)が設けられた、請求項1又は2に記載のラダートランク(100)。
【請求項4】
前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)が、前記ラダーストック管(10)と一体として形成され、及び/又は前記ラダーストック管(10)に物質的結合、形状嵌め及び/若しくは圧力嵌めの態様で接続され、並びに/又は
前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)が、前記受容シャフト(11)と一体として形成され、及び/又は前記受容シャフト(11)に物質的結合、形状嵌め及び/若しくは圧力嵌めの態様で接続された、請求項1から3のいずれか一項に記載のラダートランク(100)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び/若しくは前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)は、ピン、ボルト好ましくはねじ切りボルト、突起、プレート、バー(32)、若しくはプロファイル体(29)好ましくはU字プロファイル体(28)であり、
前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び/若しくは前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)は、受容部、特に、好ましくは雌ネジを有するボア孔及び/若しくはブラインドボア孔、又は凹部(37)特に溝、(38)及び/若しくはネジ部、特にネジ部であり、並びに/又は
前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び/若しくは前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)は、クランプ要素、特にクランプリング(39)である、請求項1から4のいずれか一項に記載のラダートランク(100)。
【請求項6】
前記少なくとも2個のホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)が、前記ラダーストック管(10)の外周にわたって、好ましくは均一に、配置され、及び/又は
前記少なくとも2個の相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)が、前記受容シャフト(11)の内周にわたって、好ましくは均一に、配置された、請求項2から5のいずれか一項に記載のラダートランク(100)。
【請求項7】
前記少なくとも2個のホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)が、前記ラダーストック管(10)の前記外周にわたって周方向に離間して配置され、及び/又は
前記少なくとも2個の相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)は、前記ラダーストック管(10)を前記受容シャフト(11)内に挿入する場合に前記ホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)が前記軸方向(26)に前記相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)によって挿通可能となるように、前記受容シャフト(11)の前記内周にわたって周方向に離間されている、請求項6に記載のラダートランク(100)。
【請求項8】
前記ラダーストック管(10)は、前記中間空間(19)が充填されていない場合、軸方向(26)に見て前記ラダーストック管(10)を回転することによって前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)が相互に位置合せ可能となるように、前記受容シャフト(11)内で回転されるように配置可能であり及び/又は回転されるように配置されている、請求項1から7のいずれか一項に記載のラダートランク(100)。
【請求項9】
前記受容シャフト(11)内の前記ラダーストック管(10)は、前記中間空間(19)が充填されていない場合、前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)が前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)に配置可能となり、特に位置合せされるように、及び/又は前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)が前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)上に載置可能となり、特に位置合せされるように、前記軸方向(26)に可動となるように配置可能であり及び/又は配置されている、請求項8に記載のラダートランク(100)。
【請求項10】
前記ラダーストック管(10)は、特に前記中間空間(19)が充填されていない場合に、前記受容シャフト(11)内に配置された状態で、特にラダーストック管(10)及び受容シャフト(11)を備える前記ラダートランクの前記船舶(13)に配置された状態で、さらに前記受容シャフト(11)内で調整可能であり、特に位置合せ可能である、請求項9に記載のラダートランク(100)。
【請求項11】
調整手段が設けられ、該調整手段は、特に相互に対して配置されたホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)の場合、前記受容シャフト(11)内における前記ラダーストック管(10)の位置及び/若しくはアライメント、特に前記受容シャフト(11)内の前記ラダーストック管(10)の位置が、前記ラダーストック管(10)の中心軸(35)と前記受容シャフト(11)の中心軸(36)とがなす角度(α)並びに/又は前記受容シャフト(11)の径方向(23)に対して調整可能となるように、形成されている、請求項10に記載のラダートランク(100)。
【請求項12】
前記調整手段はネジ及び/又はワッシャ(34)、好ましくはワッシャ、を調整し、前記調整手段が好ましくは前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び/又は前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)に配置された、請求項11に記載のラダートランク(100)。
【請求項13】
前記中間空間(19)は、結合剤(24)、好ましくは鋳造プラスチック、特に鋳造樹脂で、充填可能であり又は充填されている、請求項1から12のいずれか一項に記載のラダートランク(100)。
【請求項14】
封止要素(42)、特に封止スリーブ(43)が設けられ、前記封止要素(42)は、中間空間(19)を充填する場合に前記封止要素(42)による外部への前記結合剤(24)の漏出が防止可能となるように、前記ラダートランクの外部に取り付けられ、好ましくは、特に前記中間空間(19)を充填した後に前記封止要素(42)が除去可能である、請求項13に記載のラダートランク(100)。
【請求項15】
前記封止要素(42)は、一体として、特に単一の部品又は複数の部品として、形成される、請求項14に記載のラダートランク(100)。
【請求項16】
前記封止要素(42)は、好ましくはリング形状の、フレーム、Oリング及び/又はエラストマーからなる、請求項14又は15に記載のラダートランク(100)。
【請求項17】
前記封止要素(42)は、少なくとも1つの貫通孔(44)、特に開口又は通路、を備え、前記結合剤(24)は、前記開口を通じて、特に前記中間空間(19)内に、導入可能である、請求項14から16のいずれか一項に記載のラダートランク(100)。
【請求項18】
前記結合剤(24)、特に鋳造プラスチック(25)は、前記結合剤(24)の液化後に前記ラダーストック管(10)が前記受容シャフト(11)から取り外し可能となるように、好ましくは熱投入によって、液化可能である、請求項1から17のいずれか一項に記載のラダートランク(100)。
【請求項19】
加熱要素、特に加熱ワイヤが、前記中間空間(19)内に配置され、かつ好ましくは前記結合剤(24)に埋め込まれた、請求項1から18のいずれか一項に記載のラダートランク(100)。
【請求項20】
前記ラダーストック管(10)及び/又は前記受容シャフト(11)の外側及び/又は内側に、凹部、特に溝又はボア孔、が配置され、信号伝導手段、特にケーブルが、好ましくは前記凹部内に配置された、請求項1から19のいずれか一項に記載のラダートランク(100)。
【請求項21】
ともに配置された前記ホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)、特に前記ボルト又はバー(32)、及び相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)、特に前記プロファイル体(29)又はU字プロファイル体(28)は、回転力又はねじり力が前記ラダーストック管(10)に作用する際に、前記ラダーストック管(10)の回転を制限又は防止する、請求項1から20のいずれか一項に記載のラダートランク(100)。
【請求項22】
請求項1から21のいずれか一項に記載のラダートランク(100)を有する船舶(13)。
【請求項23】
請求項1から21のいずれか一項に記載のラダートランク(100)のためのラダーストック管(10)であって、少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)を備える、ラダーストック管(10)。
【請求項24】
請求項1から21のいずれか一項に記載のラダートランク(100)のための受容シャフト(11)であって、少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)を備える、受容シャフト(11)。
【請求項25】
請求項1から21のいずれか一項に記載のラダートランク(100)のためのキットであって、少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)を備え、好ましくは、ラダーストック管(10)及び/又は受容シャフト(11)を備えるキット。
【請求項26】
船舶(13)において請求項24に記載の受容シャフト(11)又は請求項23に記載のラダーストック管(10)を備えるラダートランク(100)を生成する方法であって、船舶(13)、特に船、特に船尾部分、が提供され、前記受容シャフト(11)は前記船舶(13)に配置され、前記ラダーストック管(10)は前記受容シャフト(11)内に挿入され、前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)は前記少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)によって挿通され、前記ラダーストック管(10)は、前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)が前記ラダーストック管(10)及び/又は前記受容シャフト(11)の軸方向(26)に相互に位置合せされるように回転され、前記ラダーストック管(10)は、前記少なくとも1つのホルダ要素(21、21a、21b、21c、21d)及び少なくとも1つの相補ホルダ片(22、22a、22b、22c、22d)が相互に対して配置され、特に相互に対して載置されるように、前記軸方向(26)に移動される、方法。
【請求項27】
前記船舶(13)は下向きに竜骨と位置合せされ、前記ラダーストック管(10)は前記受容シャフト(11)内に下方から見て鉛直方向(16)に挿入される、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ラダーストック管(10)は調整装置を用いて前記受容シャフト(11)内に位置合せされ、前記船舶(13)のプロペラ軸及び/又は船尾管との位置合せが実行される、請求項26又は27に記載の方法。
【請求項29】
前記ラダーストック管(10)と前記受容シャフト(11)の間の中間空間(19)が結合剤(24)、特に鋳造プラスチック(25)、で充填され、前記結合剤(24)、特に前記鋳造プラスチック(25)が硬化される、請求項26から28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
封止要素(42)が、前記中間空間(19)を充填する際に前記封止要素(42)による外側への前記結合剤(24)の漏出が防止されるように、前記ラダートランク(100)の外側、特に前記船舶(13)の外側(14)、さらに特に船体(12)の外側に、配置される、請求項26から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記結合剤(24)が前記ラダートランク(100)の外側、特に前記船舶(13)の外側(14)、さらに特に前記船体(12)の外側において、硬化した後に、前記封止要素(42)が残留し、又は除去される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
加熱要素、特に加熱ワイヤが、前記中間空間(19)内に配置される、請求項29から31のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラダーストック管と、受容シャフトと、受容シャフト内にラダーストック管を保持するためのホルダとを備え、ラダーストック管が受容シャフト内に配置された状態で、ラダーストック管と受容シャフトの間に中間空間が設けられた、船舶のためのラダートランクに関する。さらに、本発明は、ラダートランクを備える船舶、ラダートランクのためのラダーストック管、ラダートランクのための受容シャフト、ラダートランクのためのキット、及びラダートランクを生成する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大型ラダーを収容するために、例えば、商船又はコンテナ船では、いわゆるラダートランクが先行技術では用いられている。ラダーストックを搭載するとともに舵力を船舶に伝達するのにステアリングギアのラダートランクが用いられる。船上で配置された状態では、ラダートランクは、船体に配置される受容シャフト及び受容シャフト内に配置されるラダーストック管を備える。ラダーストック管は、受容シャフトにそれを溶接することによって、又は接着することによって固定され得る。ラダーストックは、受容シャフトにおいて固定されたラダーストック管内に挿入され、軸方向軸受及び径方向軸受を用いてそこに支持される。
【0003】
同出願人による特許文献1により、接着式ラダートランクが知られている。ラダーストック管が受容シャフト内に配置され、コーク管の第1部分と受容シャフトの壁の間に中間空間が設けられ、中間空間は少なくとも部分的に結合剤で充填され、結合剤は接着手段である。
【0004】
従来技術では、船体での受容シャフト内へのラダーストック管の設置は、頭上で実行される。ラダートランクが配置される船尾部分は、通常、船の建造中に上下に180度回転されて、すなわち、上甲板を下向きにした状態で個別に製造される。したがって、ラダートランクのラダーストック管は、上部から船尾部分に挿入される。ラダートランクの配置及び完全な完成の後にのみ、船尾部分は直立姿勢に変えられ、これは上甲板が上に向いて船体に接続されることを意味する。船体は、プロペラ及び船尾管を備える。したがって、受容シャフトにおけるラダーストック管の位置合せは、この時点までは、実際のプロペラ軸又は船尾管から独立している。
【0005】
一方で、流体力学的な効率のために、ラダートランク又はラダートランクのラダーストック管、及びそれによりラダーは、船の実際のプロペラ軸又は実際の船尾管に位置合せ又は調整されることが好ましい。ラダーストック管についての、実際のプロペラ心棒又は船尾管に言及する可能性のない周知の設置方法では、そのような調整又は位置合せは、間接的かつ高価な態様でしか実施可能でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第2583892号明細書
【発明の概要】
【0007】
本発明の課題は、生成が容易かつ安価な船舶用ラダートランクであって、船尾部分が既に船体に接続されている場合に船体に、ラダートランク、特にラダーストック管は、実際のプロペラ軸又は実際の船尾管との関係で位置合せ又は調整されて流体力学的な効率を向上させるように設置され得るラダートランクを提供することである。
【0008】
またさらに、本発明の課題は、上記の有利な効果を奏するラダートランクを備える船舶、ラダートランクのためのラダーストック管、ラダートランクのための受容シャフト、ラダートランクのためのキット、及びラダートランクを製造する方法を提供することである。
【0009】
本発明の本来的な課題を達成するため、船舶のためのラダートランクが提案され、ラダートランクは、ラダーストック管と、受容シャフトと、受容シャフトにラダーストック管を保持するためのホルダとを備え、ラダーストック管が受容シャフト内に配置された状態でラダーストック管と受容シャフトの間に中間空間が設けられ、ホルダは少なくとも1つのホルダ要素及び少なくとも1つの相補ホルダ片を備え、少なくとも1つのホルダ要素はラダーストック管に配置され、少なくとも1つの相補ホルダ片は受容シャフトに配置され、少なくとも1つのホルダ要素及び/又は少なくとも1つの相補ホルダ片は、ラダーストック管が受容シャフト内に配置された状態で中間空間内に突出する。
【0010】
船舶のための本発明に係るラダートランクは、ラダーストック管及び受容シャフトを備える。受容シャフトは船舶、特に、船舶の船尾部分に設置されるものであり、又は受容シャフトは既に船舶に位置している。ラダーストック管がラダートランクを構成するように受容シャフトに配置されてもよく、又はラダーストック管は既に受容シャフトに配置されている。さらに、ラダーストックは、ラダーストック管が受容シャフトにおいて船体に取り付けられた場合にラダーストック管に配置され得る。
【0011】
ラダーストック管が受容シャフトに配置された状態において、中間空間はラダーストック管と受容シャフトの間、特に、ラダートランクの外壁と受容シャフトの内壁の間に設けられる。中間空間全体は、好ましくはラダーストック管の外壁と受容シャフトの内壁の間に形成される。ラダーストック管に配置された少なくとも1つのホルダ要素及び/又は受容シャフトに配置された少なくとも1つの相補ホルダ片は、中間空間内に突出する。ホルダ要素及び相補ホルダ片は、受容シャフト内でラダーストック管を保持するためのホルダを形成する。
【0012】
少なくとも1つのホルダ要素及び少なくとも1つの相補ホルダ片を備えるホルダによる受容シャフト内のラダーストック管のホルダによって、船尾部分が既に船体に接続されている場合、すなわち、船の上甲板、特に船尾部分が上向きとされ、船体の竜骨が下向きとされた場合に、船体に、特に船舶の船尾部分に設置済み又は設置予定の受容シャフトにラダーストック管を挿入することができる。一方で、従来技術では、船体での受容シャフト内へのラダートランクの設置は、頭上で、すなわち、ラダートランクが配置される船尾部分が180度上下に回転され、すなわち、上甲板に対して下向きに位置合せされる際に行われる。
【0013】
従来技術から知られている設置方法と比較して、本発明に係るラダートランクのラダーストック管は受容シャフト内に下方から導入されて受容シャフト内に保持され得る。特に、ラダートランクを受容シャフト内に下方から挿入する際に船尾部分が既に船体に接続されているので、ホルダによって保持されたラダーストック管は船舶の実際のプロペラ軸又は実際の船尾管と位置合せされ得る。
【0014】
したがって、従来技術から知られているラダートランクとの関係で、流体力学的な効率が向上可能となる。
【0015】
ラダーストック管が受容シャフト内に配置された状態での中間空間への少なくとも1つのホルダ要素及び/又は少なくとも1つの相補ホルダ片の突出は、ホルダの他の要素が受容シャフト外部に配置される必要がないので、受容シャフト内にラダーストック管を保持するためのホルダの省スペースの実施形態を提供する。
【0016】
ただし、適用可能な場合には、受容シャフト内のラダーストック管の位置合せのために、受容シャフトの内側及び/又は外側に、ラダーストック管の位置合せ及びその後の固定のためのアライメント位置にラダーストック管が保持され得るアライメント補助部が設けられてもよい。ただし、アライメント補助部は、好ましくは位置合せ及び固定の後に除去される。
【0017】
実際のプロペラ軸又は実際の船尾管に対する受容シャフト内のラダーストック管の位置合せ又は調整後に、中間空間は、ラダーストック管を受容シャフト内に固定するために、好ましくは部分的に結合剤で充填されてもよい。
【0018】
本発明に係るラダートランクの更なる有利な効果は、ホルダはラダーストック管を接続した後又は固定した後にラダートランクに残留し、それにより、ホルダを介して力が分散可能ともなることである。例えば、結合剤の不具合の場合に、ラダーストック管の落下又は滑落に対する保護を与えることができる。
【0019】
ラダーストック管が受容シャフト内に配置された状態、特に、トランク及び受容シャフトを備える船舶にラダートランクが配置された状態で、ラダーストック管の軸方向における受容シャフト内でのラダーストック管の移動が阻止又は防止されるように、少なくとも1つのホルダ要素及び少なくとも1つの相補ホルダ片が積極的ロック、すなわち、形状嵌め及び/又は非積極的ロック、すなわち、圧力嵌めの態様で配置可能であり及び/又は配置されていることが好ましくは規定される。
【0020】
特にラダーストック管及び受容シャフトを備えるラダートランクの船舶に配置された状態での相補ホルダ片及びホルダ要素の圧力嵌め及び/又は形状嵌め構成によって、ラダーストック管は、受容シャフト内で竜骨と下向きに位置合せされた船体における設置状況で保持され得る。この場合、ホルダ要素又は相補ホルダ片の形状嵌め及び/又は圧力嵌め構成は、ラダーストック管の軸方向におけるラダーストック管の移動を阻止又は防止し、特に、受容シャフトから下向きに抜けるラダーストック管の移動が防止される。言い換えると、受容シャフト内のラダーストック管は、軸方向に沿って滑り得ず、特に、軸方向下向きに滑り得ない。これにより、ラダーストック管が受容シャフト内で固定される前にラダーストック管が船舶の実際のプロペラ軸又は船尾管に対して調整可能となる。
【0021】
さらに好適には、少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より一層好ましくは少なくとも4個、特に好ましくは4個のみのホルダ要素が設けられ、及び/又は少なくとも2個、好ましくは少なくとも3個、より一層好ましくは少なくとも4個、特に好ましくは4個のみの相補ホルダ片が設けられることが規定され得る。
【0022】
少なくとも2個のホルダ要素又は少なくとも2個の相補ホルダ片が設けられる場合、これらは、好ましくはラダーストック管の外壁又は受容シャフトの内壁にラダーストック管又は受容シャフトの中心軸に関して相互に対向配置され得る。これらのホルダ要素及び相補ホルダ片の形状嵌め及び/又は圧力嵌め構成によって、ラダーストック管の2点ホルダが受容シャフト内に設けられ、これにより、ラダーストック管の位置合せ又は調整のための受容シャフト内でのラダーストック管の旋回又は移動が可能となる。少なくとも3個のホルダ要素及び3個の相補ホルダ片であれば、特に好適な3点ホルダが確保される。4個のホルダ要素及び4個の相補ホルダ片が設けられると特に好適である。この場合、受容シャフト内には、ラダーストック管の特に安定した支持が存在する。
【0023】
さらに好適には、少なくとも1つのホルダ要素がラダーストック管と一体として形成され、及び/又はラダーストック管に物質的結合、形状嵌め及び/若しくは圧力嵌めの態様で接続され、並びに/又は少なくとも1つの相補ホルダ片が受容シャフトと一体として形成され、及び/又は受容シャフトに物質的結合、形状嵌め及び/若しくは圧力嵌めの態様で接続されることが規定され得る。
【0024】
ラダーストック管とのホルダ要素の物質的結合での接続又は受容シャフトとの相補ホルダ片の物質的結合での接続は、例えば、溶接又は接着によって行われ得る。
【0025】
少なくとも1つのホルダ要素及び/又は少なくとも1つの相補ホルダ片がラダーストック管及び/又は受容シャフトに形状嵌め及び/又は圧力嵌めの態様で接続される場合、この接続は、ホルダ要素又は相補ホルダ片をラダーストック管の外壁又は受容シャフトの内壁において対応の受容部に挿入することによって確立され得る。形状嵌め及び/又は圧力嵌め接続は、ネジ、ボルト、接着剤、クランプなどの締結要素を設けることによって可能とされてもよい。
【0026】
さらに好適には、少なくとも1つのホルダ要素及び/若しくは少なくとも1つの相補ホルダ片はピン、ボルト、好ましくはねじ切りボルト、突起、プレート、バー若しくはプロファイル体、好ましくはU字プロファイル体であり、少なくとも1つのホルダ要素及び/若しくは少なくとも1つの相補ホルダ片は受容部、特に、好ましくは雌ネジを有するボア孔及び/若しくはブラインドボア孔又は凹部、特に溝及び/若しくはネジ部であり、並びに/又は少なくとも1つのホルダ要素及び/若しくは少なくとも1つの相補ホルダ片はクランプ要素、特にクランプリングであることが規定され得る。
【0027】
少なくとも1つの相補ホルダ片及び少なくとも1つのホルダ要素は、異なる態様で設計されてもよいし、同一に設計されてもよい。好適な実施形態では、ホルダ要素は、ピン、ボルト、突起、プレート又はバーの形態で設計される。そして、ピン、ボルト、突起、プレート又はバーは、略一径方向にラダーストック管の外壁から突出する。一方、相補ホルダ片はプロファイル体、好ましくは接触面を備えるU字プロファイル体として設計され、プロファイル体、好ましくはU字プロファイル体は受容シャフトの内壁から受容シャフトの内部空間内に略径方向に突出する。
【0028】
U字プロファイル体としての相補ホルダ片及びピン、ボルト、突起、プレート又はバーとしてのホルダ要素の一実施形態では、ホルダ要素は、U字プロファイル体内に吊設されてもよい。この目的のため、ホルダ要素は、U字プロファイル体の脚部間に挿入され、U字プロファイル体の底部に載置される。この実施形態では、ラダーストック管を捻じろうとすると、ピン、ボルト、プレート、バー又は突起として形成されたホルダ要素はU字プロファイル体の脚部に当たるので、受容シャフト内でのラダーストック管の捻れも防止又は制限され得る。ホルダ要素及び相補ホルダ片の相互作用を通じて、回転ブレーキが与えられる。
【0029】
基本的には、ラダーストック管におけるホルダ要素がU形状プロファイル体として形成され、一方で、相補ホルダ片がピン、ボルト、突起、プレート又はバーとして受容シャフトにおいて形成されることも可能である。両方の選択肢があれば、U字プロファイル体の配向のみが考慮されればよいことになる。
【0030】
U字プロファイル体が相補ホルダ片として受容シャフトに配置された場合、受容シャフトにおけるU字プロファイル体の脚部は、ピン、ボルト、突起、プレート又はバーとして形成されたラダーストック管のホルダ要素がU字プロファイル体内に上方から挿入可能となるように、鉛直方向において上向きに配向されなければならない。
【0031】
一方、U字プロファイル体がラダーストック管上のホルダ要素として配置された場合、ラダーストック管上のU字プロファイル体の脚部は、ピン、ボルト、突起、プレート又はバーとして形成された受容シャフトの相補ホルダ片に上方からU字プロファイル体が載置可能となるように、鉛直方向において下向きに位置合せされなければならない。用語「鉛直方向」、「上」及び「下」は、船舶に位置する受容シャフト内のラダーストック管の状態を指す。
【0032】
ただし、これらの好適な実施形態に加えて、ホルダ要素及び相補ホルダ片の他の実施形態も可能である。
【0033】
したがって、ホルダ要素又は相補ホルダ片のいずれかは、ねじ切りボルトであってもよい。そして、対応する相補ホルダ片又は対応するホルダ要素は、受容部として、特に、好ましくは雌ネジを有するボア孔として形成される。ねじ切りボルトは、ホルダ又はボア孔の雌ネジに螺合され得る。ネジ深さを決定することによって、ラダーストック管は、受容シャフト内で、特に受容シャフトの径方向に位置合せ又は調整され得る。
【0034】
他の好適な可能性は、ホルダ要素が凹部、特に周方向の凹部、好ましくはラダーストック管の周囲の溝であることである。相補ホルダ片は、クランプ要素として、特にクランプリングとして形成されてもよく、それはさらに好ましくは、受容シャフトの内壁の溝にも配置される。ラダーストック管が受容シャフト内に挿入される場合、相補ホルダ片として形成されたクランプ要素は、ラダーストック管の凹部内にかつ特に受容シャフトの溝の凹部の双方に介在し、それにより、受容シャフト内のラダーストック管の形状嵌め及び/又は圧力嵌めホルダを有利とし又は確保することができる。ただし、基本的には、クランプ要素として設計された相補ホルダ片及び対応のホルダ要素は、クランプ要素及び対応のホルダ要素がともにラダーストック管と受容シャフトの間の圧力嵌め及び/又は形状嵌めクランプをもたらす限り、クランプリング及び凹部とは異なる態様で設計されてもよい。
【0035】
他の可能性は、ホルダ要素及び/又は相補ホルダ片がネジ部として形成されることであり、雄ネジがラダーストック管に設けられ、雌ネジが受容シャフト内に設けられる。この場合、ラダーストック管が受容シャフト内に螺合可能であり、雌ネジ及び雄ネジとして形成されたホルダ要素及び相補ホルダ片は形状嵌め及び/又は圧力嵌め接続を与える。ネジ部の適切な実施形態、特にネジ部の分割形態があれば、受容シャフト内のラダーストック管の移動が、これが実際のプロペラ軸及び実際の船尾管において船舶上で位置合せ可能となるような態様で可能とされ得る。ラダーストック管は、位置合せ後に、結合剤を用いて受容シャフト内に固定可能である。
【0036】
さらに好適には、少なくとも1つのホルダ要素及び少なくとも1つの相補ホルダ片がラダーストック管と受容シャフトの間の中間空間内に突出し、少なくとも1つの相補ホルダ片及び/又は少なくとも1つのホルダ要素がラダーストック管又は受容シャフトの軸方向の方向においてラダーストック管又は受容シャフトに関してそれぞれの径方向に傾斜して配置されることが規定される。
【0037】
受容シャフト及びラダーストック管の船体に配置された状態において、ホルダ要素及び/又は相補ホルダ片は、好ましくはわずかに下向き及び/又は上向きに傾斜されて位置合せされる。この軸方向におけるわずかな傾斜によって、受容シャフト内のラダーストック管の特に好適な位置合せ及び調整が確保可能となる。例えば、2個のU字プロファイル体が相補ホルダ片として受容シャフト内で相互に対向して配置された場合、U字プロファイル体の脚部が上向きとなり、受容シャフトの内部空間への径方向におけるU字プロファイル体の経路が下向きにわずかな傾斜を有する一方で2つのボルトがラダーストック管の外壁にホルダ要素として配置され、ボルトは、形状嵌め及び圧力嵌め接続又はホルダを確立するように上方からU字プロファイル体内に挿入可能となる。ここでラダーストック管が位置決めされ、すなわち、特にラダーストック管の中心軸が受容シャフトの中心軸と位置合せされる場合、これは、受容シャフトにおける略径方向にラダーストック管を移動させることによって実行可能となる。そして、ボルトの一方はわずかに下向きに傾斜したU字プロファイル体に沿ってわずかに下向きにガイドされ、一方で、他方のボルトは第2のU字プロファイル体においてわずかに上向きにガイドされる。これによって、ラダーストック管の中心軸は、受容シャフトの中心軸に関して傾斜される。対応する効果は、少なくとも3個、少なくとも4個又は4個のみのホルダ要素又は相補ホルダ片においても得られる。
【0038】
さらに好適には、少なくとも2個のホルダ要素がラダーストック管の外周にわたって、好ましくは均等に配置され、及び/又は少なくとも2個の相補ホルダ片が受容シャフトの内周にわたって、好ましくは均等に配置されることが規定され得る。
【0039】
ホルダ要素及び相補ホルダ片の均等構成によって、受容シャフト内のラダーストック管の容易な生成並びに容易な位置合せ及び調整が可能となる。
【0040】
好適には、少なくとも2個のホルダ要素がラダーストック管の外周にわたって周方向に離間され、及び/又は少なくとも2個の相補ホルダ片が受容シャフトの内周にわたって周方向に離間され、ラダーストック管を受容シャフトに挿入する際にホルダ要素が軸方向に相補ホルダ片を越えてガイド可能となるように配置されることが規定される。
【0041】
受容シャフトが船体、特に船尾部分に配置された状態で、竜骨との船尾部分又は船体の下向きの位置合せにおいて、ラダーストック管は受容シャフト内に下方から挿入可能となる。それにより、ホルダ要素は受容シャフトの相補ホルダ片を越えてガイドされ、その後に相補ホルダ片との形状嵌め及び/又は圧力嵌め構成に移行可能となり、好ましくは挿入方向に対するラダーストック管の移動を阻止又は防止する。
【0042】
さらに好適には、中間空間が充填されていない場合、ラダーストック管を軸方向に見て回転することによって少なくとも1つのホルダ要素及び少なくとも1つの相補ホルダ片が相互に対して位置合せ可能となるように、ラダーストック管が受容シャフト内で回転可能に配置されるように構成されてもよいし、配置されてもよいことが規定される。
【0043】
またさらに、好適には、中間空間が充填されていない場合、少なくとも1つのホルダ要素が少なくとも1つの相補ホルダ片において配置され、特に位置合せ可能となるように、及び/又は少なくとも1つのホルダ要素が相補ホルダ片上に載置され、特に位置合せ可能となるように、ラダーストック管は軸方向において受容シャフト内で移動可能に配置されるように構成され及び/又は移動可能に配置されることが規定され得る。
【0044】
この場合、ラダーストック管を受容シャフト内に下方から挿入する際にホルダ要素が相補ホルダ片を越えてガイドされた後に、ラダーストック管を回転させることによってホルダ要素及び相補ホルダ片を相互に対して配置する前に、ラダーストック管の回転可能な構成によって、ホルダ要素が相補ホルダ片と位置合せされることが可能となることが特に好適である。このように設けられたホルダは、その機能においてバヨネットロックと同様である。
【0045】
ラダーストック管を受容シャフト内に下方から挿入する際に、ラダーストック管は、まず、ホルダ要素が相補ホルダ片を越えてガイド可能となるように位置合せされる。ホルダ要素が相補ホルダ片の上方となると直ちに、ラダーストック管は、ラダーストック管又は相補ホルダ片に位置合せされた受容シャフトの軸方向にホルダ要素が位置合せされるように回転可能とされる。続いて、ラダーストック管は軸方向に下向きに移動可能となり、ホルダ要素は相補ホルダ片との形状嵌め及び/又は圧力嵌め接続に移行し、受容シャフト内でラダーストック管を保持する。
【0046】
ラダーストック管は、受容シャフト内に配置された状態で、特にラダーストック管及び受容シャフトを備えるラダートランクの船舶に配置された状態で、特に中間空間が充填されていない場合に、受容シャフト内で調整され、特に位置合せ可能とされることが好適に規定され得る。
【0047】
したがって、受容シャフト内に配置されたラダーストック管の調整は、船体上で配置された状態で、すなわち、実際のプロペラ軸又は実際の船尾管と比較して、特に好適に実施され得る。この調整は、好ましくは中間空間が結合剤で未だ充填されていない場合に実施される。ただし、中間空間が好ましくは結合剤で部分的に充填された場合に実施されてもよい。結合剤が鋳造プラスチックである場合、位置合せ又は調整は、鋳造プラスチックが硬化している間に実行され得る。
【0048】
好ましくは、位置合せ又は調整のために、ラダーストック管は、受容シャフトの内側で受容シャフトの径方向に関して移動可能とされる。
【0049】
さらに有利には、調整手段が設けられてもよく、調整手段は、特に隣接するホルダ要素及び相補ホルダ片の場合、受容シャフト内におけるラダーストック管の位置及び/又は配向、特に受容シャフトの径方向に関する受容シャフト内のラダーストック管の位置、並びに/又はラダーストック管の中心軸と受容シャフトの中心軸とがなす角度が調整可能となるように形成される。
【0050】
調整手段は、追加の要素であってもよいが、ホルダ要素及び/又は相補ホルダ片の一部であってもよい。例えば、ホルダ要素及び/又は相補ホルダ片を調整可能とすることが可能である。好適な実施形態では、ホルダ要素及び/又は相補ホルダ片の傾斜角が調整され得る。
【0051】
さらに好適には、調整手段がネジ及び/又はワッシャ、特にワッシャを調整し、調整手段は、好ましくは少なくとも1つのホルダ要素及び/又は少なくとも1つの相補ホルダ片に配置されることが規定され得る。
【0052】
好ましくは、ラダーストック管の外壁と受容シャフトの内壁との間の中間空間がラダーストック管の少なくとも軸方向に拡大又は縮小することが規定される。言い換えると、ラダーストック管の外壁と受容シャフトの内壁との間の中間空間のギャップ幅は、少なくとも一部の領域において、ラダーストック管の軸方向において増加又は減少する。特に好適には、中間空間のギャップ幅は、ラダーストック管の軸方向上向きに見て少なくとも局部的に、すなわち、ラダーストック管又は受容シャフトが船舶本体、特に船体の方向に船舶上、特に船上に配置された状態で、ラダーストック管の外壁と受容シャフトの内壁との間で増加する。
【0053】
ギャップ幅の増加は、船上に配置された状態の受容シャフトの内径が船体の方向に少なくとも局部的に増加すること、及び/又は船上に配置された状態のラダーストック管の外径が船体の方向に少なくとも部分的に減少することで実行され得る。特に好適には、ラダーストック管の軸方向に見てラダーストック管の壁厚は減少し、ラダーストック管の内径は軸方向に一定であり、外径が減少する。
【0054】
ラダーストック管が受容シャフト内に配置された状態で、ラダーストック管は受容シャフト内のクランプ高さにわたって配置される。クランプ高さは、好ましくは、受容シャフトの下端又は外側とラダーストック管の上部領域、特に上端との間に形成される。好ましくは、ギャップ幅は、クランプ高さの経路にわたって少なくとも部分的に増加する。この場合、特に好適には、クランプ高さの下部領域は、一定のギャップ幅を有し得る。領域によってギャップ幅を増加させるために、それは一定のギャップ幅の領域上で増加する。
【0055】
さらに、軸方向に見てクランプ高さの上部範囲では、ギャップ幅は、再度減少してもよい。クランプ高さの上部領域におけるギャップ幅の減少は、ホルダの相補ホルダ片及び/又はホルダ要素が中間空間内に突出することによってもたらされてもよい。さらに、クランプ高さの上部領域におけるギャップ幅の減少は、上部領域において受容シャフトの内壁又はラダーストック管の外壁上の、特に周方向のフランジによって実施されてもよい。
【0056】
ただし、基本的には、中間空間のギャップ幅が、ラダーストック管の外壁と受容シャフトの内壁との間で、下向きから見てラダートランクの軸方向に少なくとも局部的に、すなわち、ラダートランク又は受容シャフトが船舶上、特に船上に配置された状態で、船舶から、特に船体から離れる方向に増加することも考えられる。
【0057】
さらに好適には、中間空間が、少なくとも一部の領域において結合剤、好ましくは鋳造プラスチック、特に鋳造樹脂で充填可能であり、又は充填されることが規定され得る。
【0058】
中間空間は、少なくとも局部的に、好ましくは受容シャフト内でのラダーストック管の位置合せ及び調整後にのみ、結合剤、特に鋳造プラスチックで充填される。ラダーストック管と受容シャフトとの強固な接続が結合剤でなされると直ちに、例えば、鋳造プラスチックが硬化すると直ちに、固定及び位置合せ又は調整されたラダーストック管が受容シャフト内で得られ、それにより、特に高い流体力学的な効率が与えられる。さらに、中間空間において好適に残留するホルダ要素及び相補ホルダ片によって、結合剤の不具合の場合、例えば、鋳造プラスチックが離脱する場合であっても、ラダーストック管の滑落が防止される。
【0059】
特に好適には、中間空間は、専ら一定のギャップ幅を有するクランプ高さの下部領域において結合剤で充填される。さらに又は代替例として、中間空間は、クランプ高さの上部領域においてのみ、特にホルダ要素及び/若しくは相補ホルダ片並びに/又はフランジの領域において、結合剤で充填されてもよい。特に好適には、拡大するギャップ幅の領域において中間空間は、結合剤で充填されない。
【0060】
さらに好適には、封止要素、特に封止スリーブが設けられ、封止要素は中間空間を充填する場合に封止要素による外側への結合剤の漏出が防止可能となるように、ラダートランクの外部に取り付けられ、好ましくは、特に中間空間を充填した後に封止要素が除去可能であることが規定され得る。
【0061】
ラダートランクの外側は、ラダートランクが船舶に配置された状態において船体の外側、好ましくは受容シャフトの外部開口を包含する船体の領域に対応する。船上の受容シャフトの位置において、ラダーストック管は、受容シャフト内に下方から挿入可能である。続いて、封止要素、特に封止スリーブが、船体の外側に及びその結果としてラダートランクの外側に取り付けられ、それがラダーストック管と受容シャフトの間の中間空間を下方から封止する。封止要素を取り付けた後、ラダーストック管と受容シャフトの間の中間空間は、結合剤、特に鋳造プラスチックで充填され得る。封止要素は、結合剤による中間空間からの、特にラダートランクの外側又は船体の外側への下向きの脱落を防止する。中間空間を結合剤で充填した後、封止要素は、船体上に又はラダートランクの外側に残留し得る。ただし、中間空間を結合剤で充填した後に封止要素が除去されることも可能である。封止要素が船体上又はラダートランクの外側に残留する場合、結合剤、特に鋳造プラスチックの漏出に対する更なる保護が提供される。一方、封止要素が除去される場合、それは再使用可能である。
【0062】
さらに有利には、封止要素が、特に一部品又は複数部品からなる単一片として設計されることが規定される。
【0063】
封止要素の多部品設計によって、ラダートランクの外側又は船体の外側における封止要素の特に簡素な取付けが可能となる。
【0064】
さらに有利には、封止要素がフレーム、Oリング及び/又はエラストマー、特にリング形状のものからなることが規定され得る。
【0065】
封止要素が少なくとも1つの貫通孔、特に開口又は通路を有するとさらに有利となり、結合剤は、特に中間空間に開口を通じて導入され得る。
【0066】
封止要素がラダートランクの外側又はラダートランクの領域における船体の外側に位置する場合、結合剤は中間空間に船舶の外側から貫通孔を通じて、特に開口又は通路を通じて導入され得る。これは、中間空間を充填するための特に容易な態様を提供する。
【0067】
開口は、中間空間を充填した後に、結合剤、特に鋳造プラスチックの漏出を防止するように閉塞可能であってもよい。さらに、結合剤の導入のためのホースが、開口に挿通されてもよい。結果として、結合剤、特に鋳造プラスチックにおける気泡形成が防止可能となる。
【0068】
さらに有利には、結合剤、特に鋳造プラスチックは、結合剤の液化後にラダーストック管が受容シャフトから除去可能となるように、好ましくは熱投入によって液化され得ることが規定される。
【0069】
結合剤、特に鋳造プラスチックが熱投入によって液化可能である場合、ラダーストック管の交換は簡素化される。したがって、ラダーストック管の交換が必要な場合には、結合剤は熱投入によって液化され得る。そして、ラダーストック管は、船体上の受容シャフトから除去可能となる。この目的のため、好適な実施形態では、ラダーストック管は、ラダーストック管が受容シャフト内で上向きに移動するように、結合剤を液化した後に鉛直方向に上昇されなければならない。続いて、以前に位置合せされたホルダ要素及び相補ホルダ片が相互に対して捻じられるように、ラダーストック管が回転される。続いて、ラダーストック管は受容シャフトから軸方向に引き下げられることになり、ホルダ要素は相補ホルダ片を越えてガイドされる。そして、新たなラダーストック管が挿入され得る。
【0070】
さらに好適には、加熱要素、特に加熱ワイヤが中間空間内に配置され、好ましくは結合剤に埋め込まれることが規定される。
【0071】
加熱要素、特に加熱ワイヤを設けることによって、ラダーストック管の交換がさらに簡素化される。交換のために、加熱要素、特に加熱ワイヤを通じて、熱エネルギーが結合剤に、それが均一に液化するように均質に導入され得る。
【0072】
さらに好適には、凹部、特に溝又はボア孔が、ラダーストック管及び/又は受容シャフトの外側及び/又は内側に配置され、好ましくは信号伝導手段、特にケーブルが凹部に配置されることが規定され得る。
【0073】
センサがラダートランク、ラダーストック管、受容シャフト又はラダーシャフトに取り付けられるように、ケーブルなどの適切な信号導体をガイドするために、ラダーストック管に又は受容シャフト内に溝又はボア孔が設けられてもよい。好ましくは、信号導体は、ラダーストック管と受容シャフトの間の中間空間にガイドされてもよく、さらに好適には受容シャフト又はラダーストック管の少なくとも装填地点において引き出されてもよい。
【0074】
好ましくは、隣接するホルダ要素、特にボルト又はバー及び相補ホルダ片、特にプロファイル体又はU字プロファイル体が、回転力又はねじり力がラダーストック管に対して作用する場合にラダーストック管の回転を制限又は防止することが規定される。
【0075】
したがって、ホルダ要素及び相補ホルダ片は、好ましくは回転ブレーキとなる。これは、船体内へのラダーストックの力の伝達をさらに向上する。特に、相補ホルダ片がU字プロファイル体として形成された場合、及びホルダ要素が、U字プロファイル体として形成された相補ホルダ片の脚部間に配置されたボルト、ピン、突起、バー又はプレートとして形成された場合、受容シャフト内でのラダーストック管の捻じりが防止される。ただし、わずかな捻じりが可能とされてもよい。これは、U字プロファイル体の脚部間の距離が脚部間に配置されたホルダ要素の幅よりも大きい場合になされ得る。許容される回転が小さいため、製造公差は、受容シャフト内でラダーストック管を位置合せする際に補償され得る。
【0076】
本発明に内在する課題に対する更なる解決手段は、上述のラダー及びラダートランクを有する船舶、特に船のためのラダー構成を提供することである。
【0077】
本発明に内在する課題に対する更なる解決手段は、前述のラダートランクを有する船舶、特に船の提供である。
【0078】
本発明に内在する課題に対する追加の解決手段は、上述のラダートランクのためのラダーストック管を提供することであり、ラダーストック管は少なくとも1つのホルダ要素を備える。
【0079】
ホルダ要素は、上述の実施形態によって形成され得る。
【0080】
本発明に内在する課題に対する更なる解決手段は、上述のラダートランクのための受容シャフトの提供であり、受容シャフトは少なくとも1つの相補ホルダ片を有する。
【0081】
相補ホルダ片は、上述の実施形態によって形成され得る。
【0082】
本発明に内在する課題に対する更なる解決手段は、少なくとも1つの、特に前述のホルダ要素を備え、かつ少なくとも1つの、特に前述の相補ホルダ片を備える前述のラダートランクのためのキットにあり、キットは、好ましくはラダーストック管及び/又は受容シャフトを備える。
【0083】
ラダーストック管及び受容シャフトも、上述の実施形態の1つによって形成され得る。
【0084】
さらに、本発明に内在する課題は、船舶において、前述の受容シャフト及び前述のラダーストック管を備える特に前述のラダートランクを生成する方法を提供することによって実現され、船舶、特に船、さらに特に船尾部分が提供される。受容シャフトは船舶に配置され、ラダーストック管は受容シャフト内に導入される。少なくとも1つのホルダ要素は、少なくとも1つの相補ホルダ片によって挿通される。ラダーストック管は、少なくとも1つのホルダ要素及び少なくとも1つの相補ホルダ片が位置合せ中のラダーストック管及び/又は受容シャフトの軸方向に相互に位置合せされるように回転される。ラダーストック管は、少なくとも1つのホルダ要素及び少なくとも1つの相補ホルダ片が相互に対して、特に相互に対して載置されるように軸方向に移動される。
【0085】
上述の船舶、ラダーストック管、受容シャフト、ラダートランクのためのキットによって、及びラダートランクを生成する方法によって、本発明に係る進歩的な有利な効果が達成される。
【0086】
本発明に係る方法は、特に、ラダーストック管が受容シャフト内に挿入されることを可能とし、受容シャフトは船体の船尾部分に配置され、かつ船尾部分は上甲板を上向きに有し、又は船体は下向きに竜骨と位置合せされる。特に、従来技術との比較において、本発明に係る方法は、ラダーストック管は上下に回転された船尾部分の受容シャフト内に上方から挿入される必要はなく、竜骨を下に向けた船体の配向において、受容シャフト内に下方から挿入可能である。これにより、ラダーストック管を実際のプロペラ軸及び実際の船尾管と位置合せすることが可能となる。
【0087】
これは、特にラダー構成の流体力学的な効率を高める。
【0088】
好適には、船舶は下向きに竜骨と位置合せされ、ラダーストック管は受容シャフト内に下方から鉛直方向に挿入されることが規定され得る。
【0089】
ラダーストック管を受容シャフト内に下方から鉛直方向に挿入することの可能性によって、ラダーストック管が実際のプロペラ軸又は実際の船尾管に対して調整又は位置合せされることが可能となる。
【0090】
さらに好適には、受容シャフト内のラダーストック管は調整手段と位置合せされ、位置合せは船舶のプロペラ軸及び/又は船尾管に対してなされることが規定され得る。
【0091】
調整手段は、ホルダ要素又は相補ホルダ片の一部であってもよいし、ホルダ要素又は相補ホルダ片と同一であってもよい。またさらに、調整手段は、ワッシャなどとして設計されてもよい。
【0092】
さらに好適には、ラダーストック管と受容シャフトの間の中間空間が結合剤、特に鋳造プラスチックで充填され、結合剤、特に鋳造プラスチックが硬化されることが規定される。
【0093】
中間空間を結合剤で、特に鋳造プラスチックで充填することによって、実際のプロペラ軸又は実際の船尾管に位置合せされたラダーストック管は、受容シャフト内に固定可能となる。
【0094】
さらに好適には、中間空間を充填する際に封止要素による外側への結合剤の漏出が防止されるように、封止要素がラダートランクの外側、特に船舶の外側、さらに特に船体の外側に配置されることが規定される。
【0095】
さらに好適には、結合剤、特に鋳造プラスチックがラダートランクの外側、特に船舶の外側、さらに特に船体の外側において硬化した後に封止剤が残留し又は除去されることが規定されてもよい。
【0096】
加熱要素、特に加熱ワイヤが中間空間に配置されることが特に好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
図1】ラダーストック管及び受容シャフトを備えるラダートランクを有する船体である。
図2a】ラダーストック管のためのホルダを有するラダートランクに対して軸方向に沿った図である。
図2b】ラダーストック管のホルダのためのホルダ要素及び相補ホルダ片を示す。
図2c】受容シャフト内に位置合せされたラダーストック管を示す。
図2d】受容シャフト内に位置合せされた他のラダーストック管を示す。
図3】回転態様で配置された受容シャフト内のラダーストック管を示す。
図4】ホルダを有する受容シャフト内に配置されたラダーストック管を示す。
図5a】クランプ要素を備えるホルダを有する(受容シャフトに配置された)他のラダーストック管を示す。
図5b】ラダーストック管のホルダのためのクランプ要素を示す。
図6】ラダーストック管と受容シャフトの間の増加するギャップ幅を有するラダートランクを示す。
図7】ラダーストック管と受容シャフトの間の増加するギャップ幅を有するラダートランクの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0098】
本発明を、図面に基づいてより詳細に説明する。
【0099】
図1は、ラダーストック管10及び受容シャフト11を備えるラダートランク100を示す。ラダートランク100は、船舶13の船体12に配置される。船体12は、外側14を備える。ラダーストック管10は、中空管15として形成され、船体12の外側14から受容シャフト11に下方から鉛直方向16に挿入される。ラダーストック管10の外壁17と受容シャフト11の内壁18との間には、中間空間19が、ラダーストック管10が受容シャフト11に配置された状態で形成される。ラダートランク100は、ラダーストック管10を受容シャフト11内に保持するホルダ20を備える。ホルダ20は、物質的結合、形状嵌め又は圧力嵌めの態様でラダーストック管10の外壁17に取り付けられたホルダ要素21を備える。さらに、ホルダ20は、形状嵌め、物質的結合又は圧力嵌めの態様で受容シャフト11の内壁18に配置された相補ホルダ片22を備える。相補ホルダ片22の各々は、受容シャフト11の内壁18から中間空間19内に径方向23に突出する。同様に、ホルダ要素21の各々は、ラダーストック管10の外壁17から中間空間19内に径方向23に突出する。さらに、中間空間19には結合剤24が存在し、それは鋳造プラスチック25として形成され、受容シャフト11におけるラダーストック管10の確実な固定を確保する。さらに、ラダーストック管10は、軸方向26に延在する。
【0100】
ホルダ20の第1の実施形態を図2a及び2bに示す。
【0101】
図2aは、軸方向26に対向するラダーストック管10及び受容シャフト11の図を示す。図2bは、受容シャフト11の内壁18に配置された相補ホルダ片22及びラダーストック管10の外壁17に配置されたホルダ要素21の、図2aによる断面線A-Aに沿う図を示す。
【0102】
ラダーストック管10は、ラダーストック管10の外壁17から中間空間19内に突出した4個のホルダ要素21a~21dを備える。受容シャフト11の内壁18において、4個の相補ホルダ片22a~22dが配置され、それらはまた、中間空間19内に突出している。ホルダ要素21a~21d及び相補ホルダ片22a~22dは、ラダーストック管10の外周にわたって、又は受容シャフト11の内周にわたって、等間隔に配置される。図2bから分かるように、相補ホルダ片22又は22a~22dは、プロファイル体29として、及び特にU字プロファイル体28として形成される。U字プロファイル体28は、脚部30及び底部31を備える。ホルダ要素21又は21a~21dは、バー32として形成され、U字プロファイル体28として形成された相補ホルダ片22又は22a~22dの底部31に置かれる。バー32をU字プロファイル体28の底部31に載せることによって、軸方向26におけるラダーストック管10の下向きの移動が、阻止又は防止される。U字プロファイル体28の脚部30は、回転ブレーキ33としても作用する。したがって、図2a及び2bに示す配置におけるラダーストック管10は、ホルダ要素21a~21dのバー32がU字プロファイル体28の脚部30に衝突する前に、受容シャフト11においてわずかにしか回転可能でない。図2aでは、ラダーストック管10と受容シャフト11の間の中間空間19は充填されていない。したがって、ラダーストック管10は、受容シャフト11内で位置合せ又は調整可能である。この目的のために、図2bに示すワッシャ34が設けられてもよい。バー32とU字プロファイル体28の底部31の間にワッシャ34を配置することによって、ラダーストック管10は、受容シャフト11内で調整され得る。図2c及び2dに、受容シャフト11においてラダーストック管10を調整する可能性を示す。したがって、図2cでは、ラダーストック管10は、ラダーストック管10の中心軸35が受容シャフト11の中心軸36に対して側方にずれるように、受容シャフト11において側方に移動可能である。図2dでは、ホルダ要素21と相補ホルダ片22の間にワッシャ34を配置することによって、ラダーストック管10の中心軸35と受容シャフト11の中心軸36との間の角度αが調整可能であることを強調して示す。位置合せ後、中間空間19は、結合剤24、特に鋳造プラスチック25で充填可能である。結合剤24が硬化した後、ラダーストック管10は受容シャフト11内に固定される。
【0103】
図1~2dに係るラダートランクの生成のために、ラダーストック管は、船体12の外側14から受容シャフト11内に鉛直方向16に挿入される(図1)。この目的のために、図3に示すように、ラダーストック管10は、ホルダ要素21a~21d及び相補ホルダ片22a~22dが相互に位置合せされないように、受容シャフト11に対向して回転される。この姿勢では、ラダーストック管10は、ホルダ要素21a~21dが相補ホルダ片22a~22dの上部に配置されるまで、ホルダ要素21a~21dが相補ホルダ片22a~22dを越えてガイドされるように、受容シャフト11に鉛直方向16に導入可能である。続いて、図2aの図に示すように、ラダーストック管10をラダーストック管10の中心軸35を中心に回転させることによって、ホルダ要素21a~21dは、相補ホルダ片22a~22dと位置合せ可能となる。続いて、ラダーストック管10は、ホルダ要素21a~21d、特にバー32として形成されたものが相補ホルダ片22a~22d、特にU字プロファイル体28として形成されたものにおいて配置されるように、軸方向26に下向きに、又は鉛直方向16に対して移動可能となる。ホルダ要素21a~21dを相補ホルダ片22a~22dに配置することによって、受容シャフト11内の軸方向26におけるラダーストック管の移動を防止又は阻止するホルダ20が形成される(図1)。続いて、ラダーストック管10は、特にプロペラ軸又は船尾管に対して位置合せ可能となる。受容シャフトにラダーストック管10を固定するために、その後中間空間19は、結合剤24で充填される。
【0104】
ホルダ20のさらなる実施形態を図4に示す。図4に係る実施形態は、図1及び2aの実施形態とは、ラダーストック管10と受容シャフト11の間の中間空間19に径方向23に突出するバー32として形成されるホルダ要素21又は21a~21dが、さらに軸方向26に対して上向きに傾斜することのみが異なる。これによって、次のようになる。ラダーストック管10を受容シャフト11において径方向23に移動することによって、U字プロファイル体28として形成された相補ホルダ片22又は22a~22d内のホルダ要素21又は21a~21dが、傾斜により、軸方向26への移動又は軸方向26に対する移動の追加成分を受ける。結果として、ラダーストック管10の中心軸35は、受容シャフト11の中心軸36と位置合せされる。
【0105】
ホルダ20の更なる実施形態を図5a及び5bに示す。図5a及び5bは、クランプ要素を用いたホルダ20の可能な実施形態を示す。ラダーストック管10におけるホルダ要素21は、凹部37、特に溝38として形成される。凹部37は、ラダーストック管10の周囲に周方向に形成される。相補ホルダ片22は、クランプリング39の形態でクランプ要素として形成され、受容シャフト11の内壁18の周方向周囲の第2溝部40を介して、受容シャフト11に積極的ロック態様で配置される。図5bによると、クランプリング39は完全に閉じておらず、一点にギャップ41を備え、これにより、クランプリング39が拡径可能となることが可能となる。ラダーストック管10を受容シャフト11に挿入すると、その後にクランプリング39は、まず、ラダーストック管10がクランプリング39を通じて導入可能となるように拡径される。ラダーストック管10の凹部37又は溝38がクランプリング39のレベルに配置されると直ちに、クランプリング39が弛緩されて、図5aに示すように、これがラダーストック管10の凹部37又は溝38に介在することになる。これは、受容シャフト11においてラダーストック管10の軸方向26におけるラダーストック管10の移動を防止する。クランプリング39及び溝38の代わりに、他のクランプ要素及び適した形態のホルダ要素21も、ラダーストック管10と受容シャフト11の間の積極的ロック及び/又は非積極的ロッククランプを生じる相補ホルダ片22として使用可能である。
【0106】
さらに、図1に、船体12の外側14に配置された封止要素42を示す。封止要素42は封止スリーブ43として設計され、結合剤24、特に鋳造プラスチック25がラダーストック管10と受容シャフト11の間の中間空間19に導入可能な貫通孔44を備える。結合剤24が硬化した後、封止スリーブ43は船体12の外側14に残存し得る。あるいは、封止スリーブ43は、船体12の外側14から除去可能となる。
【0107】
図6及び7は、他のラダートランク100を示す。ラダートランク100は、船舶13の船体12に配置される受容シャフト11を備える。ラダーストック管10は、中間空間19がラダーストック管10の外壁17と受容シャフト11の内壁18との間に形成されるように、受容シャフト11内に配置される。ラダーストック管10は、受容シャフト11内のクランプ高さ45にわたって配置される。クランプ高さ45の下部領域46において、受容シャフト11の内壁18とラダーストック管10の外壁17との間の中間空間19は、一定ギャップ幅47を有する。軸方向26に船体12に向かって上方に、又はラダーストック管10の鉛直方向16に見てクランプ高さ45の下部領域46の上部に、ラダーストック管10の外壁17と受容シャフト11の内壁18との間のギャップ幅47が船体12の方向に増加する中央領域48が設けられる。ギャップ幅47の増加に対して、ラダーストック管10は、上方へ減少する壁厚49を有する。ホルダ要素21は、クランプ高さ45の上部領域50におけるラダーストック管10の外側に配置される。対応する相補ホルダ片22は、受容シャフト11の内壁18に配置される。ホルダ要素21又は相補ホルダ片22を介して、クランプ高さ45の上部領域50でのギャップ幅47の減少がもたらされる。ホルダ要素21及び/又は相補ホルダ片22の代わりに、周方向のフランジが設けられてもよい。例えば、鋳造プラスチック25などの結合剤24は、ホルダ要素21及び相補ホルダ片22の領域における上部領域50内に配置される。同様に、結合剤24は、ギャップ幅47の下部領域46内に供給される。クランプ高さ45の中央領域48はクランプ高さ45の上部領域50と下部領域46の間にあり、中央領域48における中間空間19は結合剤24で充填されていない。
【0108】
図7の斜視図では、ラダーストック管10の外壁17と受容シャフト11の内壁18の間の増加するギャップ幅を明瞭に見ることができる。さらに、下部領域46の一定ギャップ幅47において、及びホルダ要素21又は相補ホルダ片22の領域の上部領域50において、鋳造プラスチック25として形成された結合剤24が示される。
【符号の説明】
【0109】
100 ラダートランク
10 ラダーストック管
11 受容シャフト
12 船体
13 船舶
14 外側
15 中空管
16 鉛直方向
17 外壁
18 内壁
19 中間空間
20 ホルダ
21 ホルダ要素
21a ホルダ要素
21b ホルダ要素
21c ホルダ要素
21d ホルダ要素
22 相補ホルダ片
22a 相補ホルダ片
22b 相補ホルダ片
22c 相補ホルダ片
22d 相補ホルダ片
23 径方向
24 結合剤
25 鋳造プラスチック
26 軸方向
27 上部領域
28 U字プロファイル体
29 プロファイル体
30 脚部
31 底部
32 バー
33 回転ブレーキ
34 ワッシャ
35 中心軸
36 中心軸
37 凹部
38 溝
39 クランプリング
40 第2溝部
41 ギャップ
42 封止要素
43 封止鍔(封止スリーブ)
44 貫通孔
45 クランプ高さ
46 下部領域
47 ギャップ幅
48 中央領域
49 壁厚
50 上部領域
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
【国際調査報告】