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<図1>
  • 特表-塩回収用液およびその使用方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】塩回収用液およびその使用方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 9/02 20060101AFI20230725BHJP
   B01D 11/04 20060101ALI20230725BHJP
   C02F 1/24 20230101ALI20230725BHJP
【FI】
B01D9/02 602E
B01D9/02 601B
B01D9/02 601C
B01D9/02 604
B01D9/02 615Z
B01D11/04 B
C02F1/24 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580454
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 NZ2021050105
(87)【国際公開番号】W WO2022010366
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/050,402
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519114786
【氏名又は名称】アクアフォータス テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AQUAFORTUS TECHNOLOGIES LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】プラカシュ、チャイトラ
(72)【発明者】
【氏名】タン、ハイミン
(72)【発明者】
【氏名】マドックス、クリスタル
【テーマコード(参考)】
4D037
4D056
【Fターム(参考)】
4D037AA11
4D037AB11
4D037BA11
4D056AB01
4D056AC06
4D056AC07
4D056AC08
4D056AC29
4D056CA39
(57)【要約】
本発明は、塩回収溶液および水溶液から塩を分離する方法に関する。本開示はまた、塩回収溶液、および塩またはブライン液から水を回収することによって塩またはブライン液を濃縮するためのその使用方法、に関する。塩回収溶液はa)、b)、c)およびd)の任意の組み合わせから独立して選択される少なくとも2つ以上の成分を含む。
a)は直鎖、分岐または任意選択で置換された環状C~Cエーテル含有化合物、
b)は-OHで置換された直鎖または分岐C~Cアルキル、
c)は直鎖、分岐または環状C~CケトンまたはC~Cジケトン、および、
d)は直鎖または分岐C~Cエステル含有化合物である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩含有水溶液から塩を回収するのに適した塩回収溶液であって、前記塩回収溶液は、a)、b)、c)およびd)の任意の組み合わせから独立して選択される少なくとも2つ以上の成分を含み、
a)は直鎖、分岐または任意選択で置換された環状C~Cエーテル含有化合物であり、
b)は-OHで置換された直鎖または分岐C~Cアルキルであり、
c)は直鎖、分岐または環状C~CケトンまたはC~Cジケトンであり、
d)は直鎖または分岐C~Cエステル含有化合物であり、
前記塩回収溶液のうち少なくとも1つの成分が、摂氏20度以上および1気圧での1モル濃度の塩化ナトリウム水溶液と実質的に非混和性である、
前記塩回収溶液。
【請求項2】
前記エーテル含有化合物がジエーテルまたはポリエーテルである、請求項1に記載の塩回収溶液。
【請求項3】
前記C~Cエーテル含有化合物が、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、2-エチルテトラヒドロフラン、3-エチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、1-エトキシプロパン、およびC~Cグリコールエーテル、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される、請求項1または請求項2に記載の塩回収溶液。
【請求項4】
前記-OHで置換された直鎖または分岐C~Cアルキルが、1-ブタノール、2,ブタノールおよび1-ペンタノールまたはこれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の前記塩回収溶液。
【請求項5】
前記C~Cグリコールエーテルが、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルアセテート、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールジアセテートまたはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の塩回収溶液。
【請求項6】
前記C~Cケトンまたはジケトンが、アセトニルアセトン、2-ブタノンまたはシクロヘキサノンの1つ以上から選択される、請求項1~5のいずれか一項に記載の塩回収溶液。
【請求項7】
前記C~Cエステルが酢酸メチルまたは酢酸エチルである、請求項1~6のいずれか一項に記載の塩回収溶液。
【請求項8】
前記塩回収溶液が、2-メチルテトラヒドロフランおよびアセトニルアセトンの組み合わせである、請求項1に記載の塩回収溶液。
【請求項9】
前記塩回収溶液が、2-メチルテトラヒドロフランおよび1-ブタノールの組み合わせである、請求項1に記載の塩回収溶液。
【請求項10】
前記塩回収溶液が、2-メチルテトラヒドロフランおよび1-ペンタノールの組み合わせである、請求項1に記載の塩回収溶液。
【請求項11】
前記塩回収溶液が、酢酸エチルおよび2-ブタノンの組み合わせである、請求項1に記載の塩回収溶液。
【請求項12】
前記塩回収溶液が、酢酸エチルおよび2-メチルテトラヒドロフランの組み合わせである、請求項1に記載の塩回収溶液。
【請求項13】
前記塩回収溶液が、酢酸エチルおよび1-ブタノールの組み合わせである、請求項1に記載の塩回収溶液。
【請求項14】
前記塩回収溶液が、酢酸エチルおよびアセトニルアセトンの組み合わせである、請求項1に記載の塩回収溶液。
【請求項15】
前記塩含有水溶液が工業用ブラインである、請求項1~14のいずれか一項に記載の塩回収溶液。
【請求項16】
水溶液から塩を回収する方法であって、請求項1~15のいずれか一項で定義された塩回収溶液へ前記塩を含有する第1の水溶液を添加し、前記塩回収溶液を通過する際に前記塩を沈殿させるステップを含む、前記方法。
【請求項17】
前記方法が廃液排出ゼロ法である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記方法が向流の方法である、請求項16または請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法が非膜の方法である、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記方法が非浸透圧の方法である、請求項16~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
塩含有水溶液を濃縮するための方法であって、
(a)前記塩含有水溶液を、請求項1~15のいずれか一項で定義された塩回収溶液へ添加するステップと、
(b)前記塩含有水溶液からの水を前記塩回収溶液中に通過させるステップと、
を含む、前記方法。
【請求項22】
前記方法が非膜の方法である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記方法が非浸透圧の方法である、請求項21または請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記方法が非膜および非浸透圧の方法である、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記方法が前記第1の水溶液を少なくとも20%だけ濃縮する、請求項21~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記方法が前記第1の水溶液を少なくとも30%だけ濃縮する、請求項21~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記方法が前記第1の水溶液を少なくとも40%だけ濃縮する、請求項21~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記方法が前記第1の水溶液を少なくとも50%だけ濃縮する、請求項21~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記方法が前記第1の水溶液を少なくとも60%だけ濃縮する、請求項21~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記方法が前記第1の水溶液を少なくとも70%だけ濃縮する、請求項21~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記方法が前記第1の水溶液を少なくとも80%だけ濃縮する、請求項21~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記方法が前記第1の水溶液を少なくとも90%だけ濃縮する、請求項21~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記方法が最小排出法である、請求項21~32のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記方法が廃液排出ゼロ法である、請求項21~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
前記水溶液が工業用ブラインである、請求項21~34のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、塩回収溶液および水溶液から塩を分離する方法に関する。本開示はまた、塩回収溶液、および塩またはブライン液から水を回収することによって塩またはブライン液を濃縮するための使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水溶液からの塩の抽出は、典型的には、高エネルギおよび時間のかかる方法であり、水の除去および塩の結晶化を必要とする。2016年にTongら(非特許文献1)によって報告されたように、廃液排出ゼロ(ZLD)は、プラントまたは施設の境界から出るあらゆる液体廃棄物を排除し、水の大部分を再利用のために回収する、壮大な廃水管理戦略である。しかしながら、ZLDを達成することは、概して、エネルギの集中的な使用および高い費用によって特徴付けられる。結果として、ZLDは、技術的に長い間考慮されてきたが、経済的に実行可能ではなく、限られた場合にのみ適用されてきた。近年、水不足および水環境の汚染という二重の課題へのより重大な認識が、ZLDへの世界的な関心を復活させた。より厳格な規制、廃水処理の費用の高騰、および淡水の価値の増大は、ZLDを廃水管理のための有益なまたは必要な選択肢にさえしている。ZLDの世界市場は、少なくとも1~2億ドルの年間投資に達すると推定されており、北米および欧州の先進国から中国およびインドなどの新興経済へと急速に広がっている。初期のZLDシステムは、独立型加熱方式に基づいており、廃水は、典型的には、ブライン濃縮器、続いてブライン晶析装置または蒸発池において蒸発させられた。ZLDシステムにおける凝縮された蒸留水は、再利用のために収集され、一方、生成された固体は、埋立て地に送られるか、または貴重な塩副産物として回収される。このようなシステムは、40年にわたって順調に稼働し、まだ建設されているが、かなりのエネルギと資本を必要とする。脱塩に広く適用されている膜ベースの技術である逆浸透(RO)は、エネルギ効率および費用効率を改善するためにZLDシステムに組み込まれている。しかしながら、ROは、熱蒸発よりもはるかにエネルギ効率が高いが、限られた塩分範囲を有する供給水にのみ適用できるものである。したがって、電気透析(ED)、正浸透(FO)、および膜蒸留(MD)など、より高い塩分の供給水を処理することができる他の塩濃縮技術が、ROを超えて廃水をさらに濃縮するための代替ZLD技術として最近登場した。ZLDは、水質汚染を減少させ、水供給を増加させることに、大いに期待されているが、その実行可能性は、ZLD、エネルギ消費、および資本/稼働費用に関連する利益の間のバランスによって決定される。
【0003】
本発明の目的は、これらの困難を克服する解決策を提供すること、または少なくとも有用な代替案を提供することにある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Tong et al.American Chemical Society 6846 DOI:10.1021/acs.est.6b01000 Environ.Sci.Technol.2016,50,6846-6855
【発明の概要】
【0005】
第1の態様において、本発明は、塩含有水溶液から塩を回収するのに適した塩回収溶液を提供するものであって、その塩回収溶液はa)、b)、c)およびd)の任意の組み合わせから独立して選択される少なくとも2つ以上の成分を含み、
a)は直鎖、分岐または任意選択で置換された環状C~Cエーテル含有化合物であり、
b)は-OHで置換された直鎖または分岐C~Cアルキルであり、
c)は直鎖、分岐または環状のC~CケトンまたはC~Cジケトンであり、
d)は直鎖または分岐C~Cエステル含有化合物であり、
ここで、前記塩回収溶液のうち少なくとも1つの成分が、摂氏20度以上および1気圧での1モル濃度の塩化ナトリウム水溶液と実質的に非混和性である。
【0006】
一実施形態において、エーテル含有化合物は、ジエーテルまたはポリエーテルであり得る。
一実施形態において、C~Cエーテル含有化合物は、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、2-エチルテトラヒドロフラン、3-エチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、2,2-ジメトキシプロパン、2-フェノキシエタノール、1-エトキシプロパン、および、C~Cグリコールエーテル、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される。
【0007】
一実施形態において、-OHで置換された直鎖または分岐C~Cアルキルは、1-ブタノール、2,ブタノールおよび1-ペンタノールまたはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される。
【0008】
一実施形態において、C~Cグリコールエーテルは、プロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(およびその異性体混合物)、ジプロピレングリコールメチルエチルアセテート、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、またはそれらの組み合わせのうちの1つ以上から選択される。
【0009】
一実施形態において、C~Cケトンまたはジケトンは、アセトニルアセトン、2-ブタノンまたはシクロヘキサノンのうちの1つ以上から選択される。
一実施形態において、C~Cエステルは酢酸エチルまたは酢酸メチルである。
【0010】
一実施形態において、塩回収溶液は、2-メチルテトラヒドロフランおよびアセトニルアセトンの組み合わせである。
一実施形態において、塩回収溶液は、2-メチルテトラヒドロフランおよび1-ブタノールの組み合わせである。
【0011】
一実施形態において、塩回収溶液は、2-メチルテトラヒドロフランおよび1-ペンタノールの組み合わせである。
一実施形態において、塩回収溶液は、酢酸エチルおよび2-ブタノンの組み合わせである。
【0012】
一実施形態において、塩回収溶液は、酢酸エチルおよび2-メチルテトラヒドロフランの組み合わせである。
一実施形態において、塩回収溶液は、酢酸エチルおよび1-ブタノールの組み合わせである。
【0013】
一実施形態において、塩回収溶液は、酢酸エチルおよびアセトニルアセトンの組み合わせである。
一実施形態において、塩回収溶液は、酢酸メチルおよび2-ブタノンの組み合わせである。
【0014】
一実施形態において、塩回収溶液は、酢酸エチルおよび2-フェノキシエタノールの組み合わせである。
一実施形態において、塩含有水溶液は工業用ブラインである。
【0015】
別の態様において、本発明は、水溶液から塩を回収するための方法を提供し、その方法は、
(a)前記塩を含有する第1の水溶液を塩回収溶液へ添加するステップ、および
(b)前記塩回収溶液を通過させて通路上に前記塩を沈殿させるステップ、を含む。
【0016】
一実施形態において、前記方法は廃液排出ゼロの方法である。
一実施形態において、前記方法は向流の方法である。
一実施形態において、前記方法は非膜の方法である。
【0017】
一実施形態において、前記方法は非浸透圧の方法である。
別の態様において、本発明は、塩含有水溶液を濃縮するための方法を提供し、前記方法は、
(a)前記塩含有水溶液を、上で定義した塩回収溶液へ添加するステップ、および
(b)前記塩含有水溶液からの水を前記塩回収溶液中に通過させるステップ、を含む。
【0018】
一実施形態において、沈殿した塩は、塩回収溶液とは異なる水層の一部を形成する。
一実施形態において、前記方法は非膜の方法である。
一実施形態において、前記方法は非浸透圧の方法である。
【0019】
一実施形態において、前記方法は、非膜および非浸透圧の方法である。
一実施形態において、前記方法は、第1の水溶液を少なくとも20%だけ濃縮する。他の実施形態おいて、前記方法は、第1の水溶液を少なくとも30%だけ、または少なくとも40%だけ、または少なくとも50%だけ、または少なくとも60%だけ、または少なくとも70%だけ、または少なくとも80%だけ、または少なくとも90%だけ濃縮する。
【0020】
一実施形態において、前記方法は最小排出の方法である。
一実施形態において、前記方法は廃液排出ゼロ法である。
一実施形態において、前記水溶液は工業用ブラインである。
【0021】
前述の概要は、本発明の特定の実施形態の特徴および技術的利点を広く説明している。さらなる技術的利点は、以下の、発明を実施するための形態および実施例において記載される。
【0022】
本発明の特徴であると考えられる新規な特徴は、任意の添付の図面および実施例に関連して考慮される場合、発明を実施するための形態からより深く理解される。しかしながら、本明細書で提供される図面および実施例は、本発明を説明するのを助けるか、または本発明の理解を深めるのを助けることを意図しており、本発明の範囲を限定することは意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、市販のブラインについての5段階向流吸収方法の各状態についての水回収率のプロットを概略的に示す。
図2図2は、5段階でブライン/塩溶液から水が吸収される5段階の吸収を与える工程系統図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下の説明では、多数の例示的な構成、パラメータなどを記載する。しかしながら、このような説明は、本発明の範囲を限定することを意図するものではなく、例示的な実施形態の説明として提供されることを認識されたい。
【0025】
定義
本明細書の各事例において、本発明の説明、実施形態、および実施例において、「構成する(comprising)」、「含む(including)」などの用語は、限定することなく、拡張的に読み取られるべきである。したがって、文脈上明らかに他の意味に解すべき場合を除き、説明および特許請求の範囲を通じて、「構成する」、「構成している」などの語は、排他的な意味とは反対に包括的な意味で、すなわち「含むが、これに限定されない」という意味で解釈されるべきである。
【0026】
「約(about)」または「およそ(approximately)」という用語は、通常、所与の値または範囲の20%以内、より好ましくは10%以内、最も好ましくはさらに5%以内を意味する。あるいは、「約」という用語は、対数(すなわち、1桁)以内、好ましくは所与の値の2倍以内を意味する。
【0027】
本明細書で使用される「最小排出」という用語は、最小限の流出物または排出物が残される塩水またはブラインの処理方法を意味する。
本明細書を通して使用される「ブライン(brine)」または「ブライン液(brine solution)」という用語は、水中に塩濃度を有する水溶液を意味する。水中の塩は、塩化ナトリウム、硫酸アルミニウムなどを含み得るが、任意の数の範囲のカチオンおよびアニオンを含み得る広範囲の塩溶液が想定される。水溶液中の塩の濃度は、約3.5%(海水の典型的な濃度)から、塩漬け食品に使用される塩水溶液を含む25%などのはるかに高い濃度までの範囲であってもよい。織物加工、半導体産業または石油、鉱業およびガス産業からの他のブライン廃水溶液もまた、本明細書で定義される現在の塩回収溶液および方法とともに使用が適用可能ある。
【0028】
本明細書中で使用される場合、「廃液排出ゼロ」という用語は、本明細書全体を通して使用される場合、流出物または排出物が残されない廃水処理方法を意味する。
本明細書中で使用される場合、「C~Cアルキル」という用語は、完全に飽和した分岐または非分岐の炭化水素部分を指し、これは、3~9個の炭素の特定の範囲の直鎖または分岐鎖であり得る。好ましくは、アルキルは、3~7個の炭素原子、または3~6個の炭素原子を含む。C~Cアルキルの代表例としては、n-プロピル、イソ-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソ-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0029】
本明細書で使用される「C~Cエーテル含有化合物」という用語は、4員、5員、6員、7員、8員または9員の飽和、非分岐、分岐または環状エーテルである。代表的な非分岐C~Cエーテル基としては、メトキシエタン、1-メトキシプロパン、1-メトキシブタン、1-メトキシペンタン、1-メトキシヘキサン、1-メトキシヘプタンおよび1-メトキシオクタン、エトキシエタン、1-エトキシプロパン、1-エトキシブタン、1-エトキシペンタン、1-エトキシヘキサン、1-エトキシヘプタン、1-プロポキシプロパン、1-プロポキシブタン、1-プロポキシペンタン、1-プロポキシヘキサン、1-ブトキシブタン、1-ブトキシペンタンが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な分岐C~Cエーテル基としては、2-メトキシプロパン、2-エトキシプロパン、1-イソプロポキシプロパン、1-イソプロポキシブタン、1-イソプロポキシペンタン、1-イソプロポキシヘキサン、2-メトキシ-2-メチルプロパン、2,2-ジメトキシプロパン、2-エトキシ-2-メチルプロパン、2-メチル-2-プロポキシプロパン、1-(tert-ブトキシ)ブタン、1-(tert-ブトキシ)ペンタン、2-(tert-ブトキシ)-2-メチルプロパン、2-イソプロポキシ-2-メチルプロパン、2-(tert-ブトキシ)ブタン、1-(tert-ブトキシ)-2,2-ジメチルプロパンが挙げられるが、これらに限定されない。代表的な環状C~Cエーテル基としては、オキセタン、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、3-メチルテトラヒドロフラン、2-エチルテトラヒドロフラン、3-エチルテトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン、3-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン、4-メチルテトラヒドロ-2H-ピラン、2,4-ジメチルテトラヒドロ-2H-ピラン、2-エチルテトラヒドロ-2H-ピラン、3-エチルテトラヒドロ-2H-ピラン、4-エチルテトラヒドロ-2H-ピラン、オキセパン、オキソカン、オキサナン、1,3-ジオキソラン、ジオキサン、1,4-ジオキセパン、1,5-ジオキソカン、1,5-ジオキサナンおよび2-フェノキシエタノールが挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態において、C~Cエーテル含有化合物は、1つ以上の-OHで置換されていてもよい。一実施形態において、C~Cエーテル含有化合物は、ジエーテルまたはポリエーテル、例えば2,2-ジメトキシプロパンであってもよい。
【0030】
「CからCのケトンまたはジケトン」という用語は、1つまたは2つのケトン官能基を含むCからCの員の直鎖、分岐または環状化合物を指す。CからCの員ケトンの代表的な例としては、ブタノン、ペンタノン、ヘキサノン、シクロヘキサノン、4-メチルシクロヘキサノン、ヘプタノン、1,2-ジケトン、2,3-ペンタンジオン、オクタノン、ノナノン、ヘプタン-2,6-ジオン、アセトニルアセトン、およびメチルエチルケトンなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0031】
本明細書で使用される「C~Cエステル含有化合物」という用語は、4員、5員、6員、7員、8員または9員の飽和、非分岐、分岐エステルである。本明細書で使用される代表的なC~Cエステル含有化合物としては、酢酸メチル、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、プロピルプロピオネート、ブチルプロピオネート、ブチルブチレート、イソペンチルアセテート、3,3-ジメチルブチルアセテート、3,3-ジメチルブチルプロピオネート、イソプロピルプロピオネート、tert-ブチルプロピオネート、エチルプロピオネート、メチルピバラート、エチルピバレートが挙げられるが、これらに限定されない。
【0032】
本明細書で使用される「C~Cグリコールエーテル」という用語は、4員、5員、6員、7員、8員または9員の飽和、非分岐、分岐またはグリコールエーテルであり、グリコールエーテルはプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルアセテート、ジプロピレングリコールジメチルエーテル(およびその異性体混合物)、ジプロピレングリコールn-プロピルエーテル、プロピレングリコールn-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールn-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールジアセテートを含むが、これらに限定されない。
【0033】
本開示は、工業用ブラインなどの水溶液から塩を回収するのに適した塩回収溶液を提供する。開示される塩回収溶液は、かなり酸性のブラインに適しているが、記載される塩回収溶液は、広いpH範囲にわたって使用され得ることが理解されるべきである。記載された塩回収溶液はまた、過飽和溶液に向かう傾向がある非常に溶解度の高い塩を有するブラインと共に使用するのにも適している。工業用ブラインは、性質が非常に多様であり得る。任意の無機カチオンまたは無機アニオンおよびそれらの組み合わせが、無機塩を生成し得ることが理解されるべきであり、本開示はすべてのそのような塩への適用を想定している。非常に広範囲の塩が、本明細書に記載される塩回収溶液を使用して水溶液から回収可能であり得ることが想定される。非限定的な例として、典型的な工業用ブラインは、いくつかの異なる塩を含む以下のような組成を有する場合がある。
【0034】
工業用ブラインまたは水溶液から塩を回収または沈殿させることは、ブラインまたは水溶液内の水を解放することを助け、その後の水回収のために水を自由にする。廃水溶液からの水の抽出または回収が望ましく、最終的な目標は、最小限の液体排出または廃液排出ゼロ(ZLD)をもたらすために水性系から実質的にすべての水を回収または抽出することである。記載された塩回収溶液は、水溶液から水を抽出することによって作用し、言い換えれば、水は水溶液から塩回収溶液に移動する。その際、水溶液に溶けていた塩が、溶媒(水)を失って沈殿する。塩回収溶液中に移動した水は、塩から分離および回収することができる。これは、ブライン液から塩および水を物理的に分離する実行可能なエネルギ効率の高い方法をもたらす。
【0035】
塩回収溶液は、a)、b)、c)およd)の任意の組み合わせから独立して選択される少なくとも2つ以上の成分を含み、
a)は直鎖、分岐または任意選択で置換された環状C~Cエーテル含有化合物であり、
b)は-OHで置換された直鎖または分岐C~Cアルキルであり、そして
c)は直鎖または分岐C~CケトンまたはC~Cジケトンであり、そして
d)は直鎖または分岐C~Cエステル含有化合物であり、
ここで、前記塩回収溶液のうち少なくとも1つの成分が、摂氏20度以上および1気圧での1モル濃度の塩化ナトリウム水溶液と実質的に非混和性である。
【0036】
複数の成分の多くの組み合わせが、塩回収溶液として適切であることが見出されている。これらの組み合わせには、以下が挙げられるが、これらに限定されない。
置換された環状C~Cエーテル含有化合物およびC~Cジケトンの組み合わせであって、
A.置換された環状C~Cエーテル含有化合物および-OHで置換された直鎖C~Cアルキルの組み合わせ、
B.C~Cエステルおよび-OHで置換された直鎖C~Cアルキルの組み合わせ、
C.C~CエステルおよびC~Cジケトンの組み合わせ、
D.置換された環状C~Cエーテル含有化合物、-OHで置換された直鎖C~Cアルキルおよび-OHで置換された直鎖C~Cアルキルの組み合わせ、
E.置換された環状C~Cエーテル含有化合物、C~Cジケトンおよび-OHで置換された直鎖C~Cアルキルの組み合わせ、
F.置換された環状C~Cエーテル含有化合物、C~Cジケトンおよび-OHで置換されたC~Cアルキルの組み合わせ、
G.2-メチルテトラヒドロフランおよびアセトニルアセトンの組み合わせ、
H.2-メチルテトラヒドロフランおよび1-ブタノールの組み合わせ、
I.2-メチルテトラヒドロフランおよび2-ブタノールの組み合わせ、
J.2-メチルテトラヒドロフランおよび1-ペンタノールの組み合わせ、
K.2-メチルテトラヒドロフランおよびメチルエチルケトンの組み合わせ、
L.酢酸エチルおよびアセトニルアセトンの組み合わせ、
M.酢酸エチルおよび1-ブタノールの組み合わせ、
N.2-メチルテトラヒドロフラン、1-ブタノールおよびアセトニルアセトンの組み合わせ、
O.2-メチルテトラヒドロフラン;1-ブタノールおよび1-プロパノールの組み合わせ、
P.2-メチルテトラヒドロフラン、1-ブタノールおよび3-メチル-1-ブタノールの組み合わせ、
Q.2-メチルテトラヒドロフラン、1-ブタノールおよび1,4-ブタンジオールの組み合わせ、
R.酢酸メチルおよび2-ブタノンの組み合わせ、
S.酢酸エチルおよびジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル(異性体混合物)の組み合わせ、
T.酢酸エチルおよび2-フェノキシエタノールの組み合わせ、
U.酢酸エチルおよび2-ジメトキシプロパンの組み合わせ、
V.酢酸エチルおよびシクロヘキサノンの組み合わせ、
W.2-メチルテトラヒドロフランおよび酢酸メチルの組み合わせ、である。
【0037】
上記で定義された成分は、水が容易に移動することができる溶液を作り出す。塩回収溶液の成分のモル比は大きく変化させることができるが、成分の各組み合わせについて決定し得る好ましいモル比がある。モル比は、成分のそれぞれの組み合わせの1:99または99:1からのいずれかで変動し得る。より好ましくは、モル比は、約1:50または50:1、もしくは約1:30または30:1、もしくは約1:10または10:1、もしくは約1:5または5:1、もしくは約1:3または3:1、もしくは約1:2または2:1、もしくは約1:1からであり得る。
【0038】
前記特定の組み合わせだけでなく特定の水溶液についてもまた、モル比の組み合わせを最適化することが可能であることを理解されたい。一実施形態において、300g/リットルの塩化ナトリウムを含む単純塩溶液についてのいくつかの特定の組み合わせのモル比の組み合わせは、以下のように最適化されることが見出された。
A.約1:1~約1:10のモル比、または約2:1~約3:2のモル比の、2-メチルテトラヒドロフランおよびアセトニルアセトンの組み合わせ
B.約1:1~約1:10、または約3:2~約3.7、または約2:1~約3:2のモル比の、2-メチルテトラヒドロフランおよび1-ブタノールの組み合わせ
C.約1:1~約1:10のモル比、または約2:1~約3:2のモル比の2-メチルテトラヒドロフランおよび1-ペンタノールの組み合わせ
D.約1:1~約1:10のモル比の、酢酸エチルおよび2-ブタノンの組み合わせ
E.約1:1~約1:10のモル比の、酢酸エチルおよび2-メチルテトラヒドロフランの組み合わせ
F.約1:1~約1:10のモル比の、酢酸エチルおよび1-ブタノールの組み合わせ
G.約1:1~約1:10のモル比の、酢酸エチルおよびアセトニルアセトンの組み合わせ
最適化されたモル比は、塩含有水溶液から塩回収溶液への水の最も迅速かつ最も効率的な通過または抽出をもたらし得るモル比である。これは、廃液排出ゼロ目標が最適化されたモル比でより容易に達成され得ることを意味する。ZLD比は、元の水溶液から全ての水を抽出するために添加される必要のある塩回収溶液の量である。ZLD比が低いほど、塩含有水溶液からの水の抽出がより効率的になり、必要とされる塩回収溶液がより少なくなる。約50未満のZLD比が好ましい。50より高いZLD比も機能はするが、ZLDを達成するために、より大量の塩回収溶液を要するだけであろう。
【0039】
塩回収溶液のための成分を選択する時、塩回収溶液中への塩のクロスオーバーが最小であるかまたは全く見られないことが重要であることも理解されるべきである。溶液の目的は、塩含有水溶液の水から塩を分離することである。したがって、最も望ましい組み合わせは、選択されたモル比で最小の塩のクロスオーバーを示す組み合わせによっても決定され得る。これは、塩回収溶液ごとによって異なるであろう。
【0040】
別の態様において、本発明は、塩含有水溶液を濃縮するための方法を提供し、前記方法は以下のステップを含む。
(a)前記塩含有水溶液を、上で定義した塩回収溶液へ添加するステップ、および
(b)前記塩含有水溶液からの水を前記塩回収溶液中へ通過させるステップ。
【0041】
一実施形態において、本方法は、水からの塩の分離を達成するために膜を必要としない。
一実施形態において、本方法は非浸透圧の方法である。
【0042】
一実施形態において、本方法は、第1の水溶液を少なくとも20%だけ濃縮する。他の実施形態おいて、本方法は、第1の水溶液を少なくとも30%だけ、または少なくとも40%だけ、または少なくとも50%だけ、または少なくとも60%だけ、または少なくとも70%だけ、または少なくとも80%だけ、または少なくとも90%だけ濃縮する。
【0043】
一実施形態において、方法は、最小排出法、好ましくは廃液排出ゼロ法である。
一実施形態において、水溶液は工業用ブラインである。
さらなる実施形態において、塩回収溶液は、その中に抽出された水を除去することによって回収される。この方法は、塩回収溶液から水を除去または水を解放するための公知の技術を用いて行うことができる。いったん塩回収溶液から水が除去されると、さらなる分離方法で使用するために、それを再利用することができる。本方法は、連続方法に変換することができる。本方法は大規模に利用することができる。塩回収溶液から水を除去または水を解放するための好適な方法は、国際公開第2020/204733号として公開された国際特許出願PCT/NZ2020/050034に記載されており、その明細書の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
本方法は、塩回収溶液内に保持された水をさらに解放するために、塩回収溶液に添加剤を添加するさらなるステップを含み得ることを理解されたい。一実施形態において、添加剤はクエン酸である。一実施形態において、クエン酸は、水1リットル当たり約200~450グラムの間のクエン酸を含むクエン酸の濃縮溶液である。別の実施形態において、クエン酸は、塩回収溶液に直接添加される無水クエン酸である。
【0045】
a)~c)の少なくとも1つの成分と、a)~c)から独立して選択される他の成分とのモル比は、約1:99または99:1の比で存在し、約1:99または99:1から、もしくは約1:50または50:1から、もしくは約1:10または10:1から、もしくは約1:5または5:1から、もしくは約1:3からまたは約3:1から、もしくは約1:2からまたは約2:1からであり得ることが認識されるべきである。好ましい実施形態では、モル比は約1:1である。化学技術者は、塩回収溶液が使用される目的に応じて、最適なモル比をルーチン的に決定することができるであろう。
【0046】
さらなる実施形態において、塩含有水溶液は塩水またはブライン液である。
塩含有水溶液は、塩回収溶液に曝露される前に任意の前処理ステップを必要とし得ることが理解されるべきである。そのような前処理は、例えば、任意の未溶解固体または粘土を除去するために、濾過ステップを必要とし得る。
【0047】
実施例
本明細書中に記載される実施例は、本発明の特定の実施形態を例示する目的で提供され、そして本発明を決して限定することを意図しない。当業者であれば、本明細書の開示および教示を利用することで、過度の実験を行うことなく他の実施形態および変形形態を生み出すことができる。全てのそのような実施形態および変形は、本発明の一部であると考えられる。
【0048】
実施例 様々な塩回収溶液の調製および試験
塩回収溶液は全て、2つの成分、成分Aおよび成分Bを使用して作製した。塩回収溶液の各タイプについて、成分Aおよび成分Bをモル比に従って変化させた。得られた溶液を塩含有水溶液(ブライン)と混合した。完全な塩の沈殿、すなわち廃液排出ゼロ(ZLD)状態が存在した比率を特定した。
【0049】
標準塩溶液を水溶液として使用した。塩化ナトリウム(NaCl)を300,000ppmの濃度で水に溶解することによって調製した。
塩回収溶液の処方に使用した化合物は、2-メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、1-ブタノール、2,5-ヘキサンジオン(アセトニルアセトン)、1-ペンタノール、酢酸エタノールおよび2-ブタノンである。
【0050】
使用装置:ブライン液を塩回収溶液に添加した後、試料をボルテックスミキサーで30秒間混合した。完全に混合した後、これらの試料を4000rpmで1分間遠心分離し、沈殿した塩をサンプルチューブの底に沈降させた。
【0051】
以下の表は、塩回収溶液を調製する際に使用した種々の化合物を示す。
【0052】
【表1】
【0053】
実施例1 MeTHFおよびアセトニルアセトン
塩回収溶液は、MeTHFおよびアセトニルアセトンを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、以下の表2に示した。
【0054】
【表2】
【0055】
実施例2 MeTHFおよび1-ブタノール
塩回収溶液は、MeTHFおよび1-ブタノールを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、以下の表3に示した。
【0056】
【表3】
【0057】
実施例3 MeTHFおよび1-ペンタノール
塩回収溶液は、MeTHFおよび1-ペンタノールを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、以下の表4に示した。
【0058】
【表4】
【0059】
実施例4 酢酸エチルおよび2-ブタノン
塩回収溶液は、酢酸エタノールおよび2-ブタノンを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、以下の表5に示した。
【0060】
【表5】
【0061】
実施例5 酢酸エチルおよびMeTHF
塩回収溶液は、酢酸エタノールおよびMeTHFを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、表6に示した。
【0062】
【表6】
【0063】
実施例6 酢酸エチルおよび1-ブタノール
塩回収溶液は、酢酸エチルおよび1-ブタノールを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、表7に示した。
【0064】
【表7】
【0065】
実施例7 酢酸エチルおよびアセトニルアセトン
塩回収溶液は、酢酸エチルおよびアセトニルアセトンを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、表8に示した。
【0066】
【表8】
【0067】
実施例8 酢酸メチルおよび2-ブタノン
塩回収溶液は、酢酸メチルおよび2-ブタノンを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、表9に示した。
【0068】
【表9】
【0069】
実施例9 酢酸エタノールおよびジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル、異性体混合物
塩回収溶液は、酢酸エタノールおよびジ(プロピレングリコール)ジメチルエーテル、異性体混合物を用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、表10に示した。
【0070】
【表10】
【0071】
実施例10 酢酸エタノールおよび2-フェノキシエタノール
塩回収溶液は、酢酸エタノールおよび2-フェノキシエタノールを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、表11に示した。
【0072】
【表11】
【0073】
実施例11 酢酸エタノールおよび2-ジメトキシプロパン
塩回収溶液は、酢酸エタノールおよび2-ジメトキシプロパンを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、表12に示した。
【0074】
【表12】
【0075】
実施例12 酢酸エタノールおよびシクロヘキサノン
塩回収溶液は、酢酸エタノールおよびシクロヘキサノンを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、表13に示した。
【0076】
【表13】
【0077】
実施例13 MeTHFおよび酢酸メチル
塩回収溶液は、MeTHFおよび酢酸メチルを用いて調製した。これらの個々の成分を異なるモル比で混合し、NaClブライン液(300,000ppm)のZLD比を特定し、表14に示した。
【0078】
【表14】
【0079】
これらの塩回収溶液の結果は、ブライン液中の水から塩を効果的に分離するために、低いZLD比を有する非常に効果的な塩回収溶液を得ることが可能であることを示す。これらの結果は、より低いエネルギ要件で工業用ブラインを用いてZLDを達成するためのこれらの塩回収溶液の可能性および適用性を実証する。多くのZLD比が50未満であり、多くが30未満であることが示されており、これらの結果は有望である。実施例5におけるZLD比は50より大きいが、ZLDの可能性を大幅に変更し得る三成分系を生成するためのさらなる成分の添加など、実施例5の成分に変更を加えることができることが理解されるべきである。
【0080】
実施例14 塩回収溶液を三成分系に改変する
上記の実施例1~7において、塩回収溶液は、2つの成分(二成分系)を含むように配合された。以下の実施例では、得られる塩回収溶液のZLD比および吸水性能に対する三成分系の効果を見るために、追加の成分を添加した。
【0081】
三成分塩回収溶液を、300,000ppmの濃度のNaClから構成される標準水溶液と混合した。完全な塩の沈殿、すなわち廃液排出ゼロ(ZLD)状態が存在した比率を特定した。
【0082】
いくつかの組み合わせ(二成分系および三成分系の両方)を、その組成が鉱業廃水流の組成とよく一致する市販の合成ブライン試料に対しても試験した。
以下の三成分塩回収溶液を、表15に示すように調製した。塩回収溶液は、3つの化合物、化合物A、化合物Bおよび化合物Cから構成された。この実施例では、化合物AはMeTHFであり、化合物Bは1-ブタノールであった。使用した追加の化合物Cは、アセトニルアセトン、1-プロパノール、1-ペンタノール、3-メチル-1-ブタノールおよび1,4-ブタンジオールであった。以下の表は、塩回収溶液組成物の一部として選択された異なる化合物を示す。
【0083】
【表15】
【0084】
化合物Cのモル比を0.1から0.3まで変化させ、塩回収溶液の吸水性能に対するその効果を決定した。三成分塩回収溶液のZLD比を、300,000ppmの濃度の標準NaClブラインについて特定した。
【0085】
塩化ナトリウム(NaCl)を脱イオン水中に300,000ppmの濃度で含むブライン試料を調製した。
5mLの塩回収溶液を遠心管に採取した。ブライン試料を100μLずつ添加し、ZLD比を特定した。以下の表16は、塩回収溶液中の化合物の種々のモル比および標準NaClブラインについてのそのZLD比を示す。
【0086】
【表16】
【0087】
15のZLDを有する0.5:0.5のモル比の二成分系であるMeTHFおよび1-ブタノールについて、観察されたZLD比(上記実施例2の表3を参照のこと)と比較する時、ZLD比は第3の成分の添加によって非常に顕著に変化し得ることが、表16から分かる。それぞれ0.5:0.2:0.3のモル比のMeTHF、1-ブタノールおよび1,4-ブタンジオールの三成分系は、5のZLD比を与え、これは極めて有望であると思われる。
【0088】
硫酸アルミニウム(Al(SO.18HO)、塩化カルシウム(CaCl)、硫酸カルシウム(CaSO)、硫酸鉄(FeSO.7HO)および硫酸マグネシウム(MgSO)を使用して、鉱業廃水流からの低pHの市販のブラインを模倣する合成ブライン液を調製した。市販の合成ブラインの組成は、主にpH1.74を有する硫酸塩を含んでいた。組成は表17に示す通りであった。
【0089】
【表17】
【0090】
上記で試験した二成分系および三成分系のいくつかを、市販の合成ブラインに対して分析した。ブライン液が塩回収溶液を通過し、塩回収溶液の下に「重いブライン層」を形成する時点まで、ブライン溶液を塩回収溶液に100μlずつ添加し、以下の表18に示す体積にした。重いブラインは、単に、水中で劣化したブライン液である。試料をボルテックスミキサーで30秒間混合した。完全に混合した後、試料を1分間遠心分離し、沈殿した塩をサンプルチューブの底に沈降させた。ZLD比は、塩回収溶液(ml)を、添加したブライン(ml)で割った体積の比を計算することによって特定した。結果を表18に示す。
【0091】
【表18】
【0092】
表中の結果から、広範囲のZLD比が市販の合成ブラインで観察されたことが分かる。ZLD比は、酢酸エチルとMeTHFとの組み合わせおよび酢酸エチルと2,2-ジメトキシプロパンとの組み合わせを除いて、すべて非常に有望である。しかしながら、酢酸エチルおよびMeTHF系ならびに酢酸エチルおよび2,2-ジメトキシプロパンのさらなる精製は、三成分系に変換することによって可能であり得、これは、類似の合成ブラインについてより低いZLD比をもたらし得ることが予想される。達成すべき用途および結果に応じて、ある範囲の組み合わせが有用かつ適切であり得ることを理解されたい。例えば、いくつかの用途には四成分の組み合わせも適していると想定される。
【0093】
図1を参照すると、異なる向流吸収法を利用することも可能であることを理解されたい。図1は、完全な結晶化に到達するための5段階の向流吸収法を示し、塩回収溶液のブラインに対する比率は、必要とされる塩回収溶液(吸収)の量を低減するために、カスケード構成において40:1で確認された。塩回収溶液は、ブタノールに対する酢酸エチルであった。ブラインは、ある範囲の塩化物および硫酸塩を有し、pHが2未満であり、0.45μmの膜を通して濾過した後の密度が1.13g/mlである市販のブラインであった。
【0094】
図1は、それぞれ異なる吸収段階での水回収率を示す。第5段階において、完全な結晶化が達成される。5段階の吸収を使用することによって、ZLD比は40:1であると特定され、これは単一段階吸収のZLD比(700:1)よりも著しく低い。向流吸収の5段階について、塩回収溶液の比を最適化するための多くの試験を通して、40:1の比が得られた。ZLD比は、ブラインが完全な結晶化に達する最も低い比であった。
【0095】
図2を参照すると、5段階の向流吸収法がどのように設定され得るかを示す工程系統図が示されている。ブラインまたは塩タンクは吸収段階1に供給され、水がブラインから塩回収溶液に吸収された時点で、ブラインは次に吸収段階2に供給され、今や水が劣化したブラインからさらなる水を回収する。このサイクルは、全ての水がブラインから回収されるまで繰り返される。図1に示すように、ZLDを達成するために5段階の水回収または吸収が必要であった。
【0096】
本発明およびその実施形態を詳細に説明してきた。しかしながら、本発明の範囲は、本明細書に記載される任意の方法、製造、物質組成、化合物、手段、順序、および/またはステップの特定の実施形態に限定されることを意図しない。本発明の精神および/または本質的な特徴から逸脱することなく、開示された材料に対して様々な修正、置換、および変形を行うことができる。したがって、当業者は、本明細書に記載された実施形態と実質的に同じ機能を実行するか、または実質的に同じ結果を達成する、後の修正、置換、および/または変形が、本発明のそのような関連する実施形態に従って利用され得ることを、本開示から容易に理解するであろう。したがって、以下の特許請求の範囲は、本明細書に開示される組み合わせ、キット、化合物、手段、順序、および/またはステップに対する修正、置換、および変形をその範囲内に包含することが意図される。
図1
図2
【国際調査報告】