(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】酸化亜鉛粒子、光安定性UVフィルター及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C01G 9/03 20060101AFI20230725BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20230725BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20230725BHJP
A61K 8/06 20060101ALI20230725BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230725BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20230725BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20230725BHJP
C01G 9/02 20060101ALI20230725BHJP
C09C 1/04 20060101ALI20230725BHJP
C09C 3/06 20060101ALI20230725BHJP
C09C 3/08 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C01G9/03
A61K8/27
A61K8/37
A61K8/06
A61K8/92
A61K8/89
A61Q17/04
C01G9/02 Z
C09C1/04
C09C3/06
C09C3/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581353
(86)(22)【出願日】2021-06-29
(85)【翻訳文提出日】2023-02-22
(86)【国際出願番号】 US2021039667
(87)【国際公開番号】W WO2022006143
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518040194
【氏名又は名称】ナノフェーズ テクノロジーズ コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】Nanophase Technologies Corporation
【住所又は居所原語表記】1319 Marquette Drive Romeoville, Illinois 60446 USA
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】サルカス ハリー ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ボッファ クリストファー シー.
【テーマコード(参考)】
4C083
4G047
4J037
【Fターム(参考)】
4C083AA081
4C083AA121
4C083AB032
4C083AB172
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB232
4C083AB242
4C083AB332
4C083AB362
4C083AB432
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC341
4C083AC342
4C083AC351
4C083AC352
4C083AC421
4C083AC422
4C083AC432
4C083AC442
4C083AC662
4C083AD151
4C083AD152
4C083AD242
4C083BB25
4C083CC19
4C083DD05
4C083DD08
4C083DD11
4C083DD17
4C083DD27
4C083DD32
4C083DD33
4C083DD41
4C083EE17
4C083FF01
4G047AA02
4G047AB04
4G047AC02
4G047AD03
4J037AA11
4J037CA24
4J037CB04
4J037CB07
4J037CB22
4J037DD05
4J037DD06
4J037EE02
4J037EE03
4J037EE22
4J037FF03
(57)【要約】
酸化亜鉛粒子は、プラズマプロセスにより形成された気相によって、又は機械的応力により液体担体中の化学量論的酸化亜鉛粒子に欠陥を導入することによって乾燥粉末として調製される。酸化亜鉛は、少なくとも0.99のO:Zn比、10~300nmの平均粒子径、及びC12-C15安息香酸アルキル中の粒子の分散液に、分散色試験で少なくとも15のΔE値に相当する橙色から黄褐色を与えるのに十分な濃度の酸素空孔及び亜鉛空孔を有する。粒子は集合体を含有せず、数加重基準で500nm以上の検出可能な粒子を有さない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも0.99のO:Zn比、
10~300nmの平均粒子径、
C12-C15安息香酸アルキル中の粒子の分散液に、分散色試験で少なくとも15のΔE値に相当する橙色から黄褐色を与えるのに十分な濃度の酸素空孔及び亜鉛空孔を有する酸化亜鉛粒子であって、
前記粒子が集合体を含有せず、数加重基準で500nm以上の検出可能な粒子を有さない、前記酸化亜鉛粒子。
【請求項2】
化学量論的酸化亜鉛であり、
DPPH光触媒安定性試験で最大10のΔE値を有し、
分散色試験で少なくとも15のΔE値を有する、
10~300nmの平均粒子径を有する酸化亜鉛粒子。
【請求項3】
光触媒安定性である、請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粒子。
【請求項4】
少なくとも0.999のO:Zn比を有する、請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粒子。
【請求項5】
平均粒子径が15~200nmである、請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粒子。
【請求項6】
DPPH光触媒安定性試験で1~10のΔE値を有する、請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粒子。
【請求項7】
粒子が、分散色試験で15~26のΔE値を有する、請求項1又は2に記載の酸化亜鉛。
【請求項8】
(a)請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粒子、及び
(b)前記酸化亜鉛粒子上の無機酸化物コーティング
を含む、コーティングされた粒子。
【請求項9】
(a)請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粒子、及び
(b)前記酸化亜鉛粒子上の有機部位含有コーティング
を含む、コーティングされた粒子。
【請求項10】
有機部位含有コーティングが、粒子を、ホスファチド、レシチン、脂肪アルコール及びグリセロールエステルからなる群から選択される少なくとも1種と反応させることによって調製される、請求項9に記載のコーティングされた粒子。
【請求項11】
(a)(i)少なくとも0.99のO:Zn比、及び
(ii)C12-C15安息香酸アルキル中の粒子の分散液に、分散色試験で少なくとも15のΔE値に相当する橙色から黄褐色を与えるのに十分な濃度の酸素空孔及び亜鉛空孔
を有する酸化亜鉛粒子、並びに
(b)前記酸化亜鉛粒子上のシリカコーティング
を含むコーティングされた粒子であって、前記コーティングされた粒子が10~300nmの平均粒子径を有し、
前記コーティングされた粒子が集合体を含有せず、数加重基準で500nm以上の検出可能な粒子を有さない、前記コーティングされた粒子。
【請求項12】
(a)(i)少なくとも0.99のO:Zn比、及び
(ii)C12-C15安息香酸アルキル中の粒子の分散液に、分散色試験で少なくとも15のΔE値に相当する橙色から黄褐色を与えるのに十分な濃度の酸素空孔及び亜鉛空孔
を有する酸化亜鉛粒子、並びに
(b)前記酸化亜鉛粒子上の有機部位含有コーティング
を含むコーティングされた粒子であって、前記コーティングされた粒子が10~300nmの平均粒子径を有し、
前記コーティングされた粒子が集合体を含有せず、数加重基準で500nm以上の検出可能な粒子を有さない、前記コーティングされた粒子。
【請求項13】
シリカコーティングが、コーティングされた粒子の0.5~40重量%の量で存在する、請求項11又は12に記載のコーティングされた粒子。
【請求項14】
(I)請求項8又は11に記載のコーティングされた粒子、及び
(II)前記コーティングされた粒子上の有機部位含有コーティング
を含む、多層コーティングされた粒子。
【請求項15】
有機部位含有コーティングが、粒子を、ホスファチド、レシチン、脂肪アルコール及びグリセロールエステルからなる群から選択される少なくとも1種と反応させることによって調製される、請求項11又は12に記載の多層コーティングされた粒子。
【請求項16】
(1)請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粒子、
(2)液体担体、及び
(3)任意に、抗酸化物質
を含む、分散液。
【請求項17】
(1)請求項11又は12に記載のコーティングされた粒子、
(2)液体担体、及び
(3)任意に、抗酸化物質
を含む、分散液。
【請求項18】
(1)請求項14又は15に記載の多層コーティングされた粒子、
(2)液体担体、及び
(3)任意に、抗酸化物質
を含む、分散液。
【請求項19】
抗酸化物質を含み、前記抗酸化物質が、ビタミン、抗酸化ミネラル、抗酸化タンパク質、抗酸化酵素及び補酵素、植物栄養素及び抗酸化ホルモンからなる群から選択される、請求項16~18のいずれかに記載の分散液。
【請求項20】
液体担体が化粧学的に許容可能であり、並びに/又は液体担体が安息香酸アルキル、脂肪酸エステル、天然物油、シリコーン油及びそれらの混合物からなる群から選択される1種を含み、並びに/又は液体担体が安息香酸エチル、直鎖安息香酸アルキル、カプリン酸/カプリル酸トリグリセリド及びそれらの混合物からなる群から選択される1種を含む、請求項16~19のいずれかに記載の分散液。
【請求項21】
請求項1~20のいずれかに記載の粒子、コーティングされた粒子、多層コーティングされた粒子又は分散液を含む、化粧料/皮膚科学的組成物。
【請求項22】
水中油型若しくは油中水型エマルジョン又は無水調製物である、請求項21に記載の化粧料/皮膚科学的組成物。
【請求項23】
エアロゾルフォームクリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、スティック又は粉末である、請求項21に記載の化粧料/皮膚科学的組成物。
【請求項24】
請求項1~23のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子、コーティングされた粒子、多層コーティングされた粒子、分散液又は化粧料/皮膚科学的組成物で皮膚をコーティングすることを含む、皮膚を光から保護する方法、ケラチン物質を保護する方法、ヒトの皮膚を保護する方法、脂質過酸化反応を抑制する方法、皮膚の筋及びシワを予防する若しくは低減する方法、皮膚の弾力性の損失を予防する方法、皮膚の菲薄化を予防する方法、並びに/又は抗酸化物質を保護する方法。
【請求項25】
ヒトの皮膚を保護することが、ヒトの皮膚中の抗酸化物質を保護することを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
化学量論的酸化亜鉛を研磨して、10~300nmの平均粒子径、並びにC12-C15安息香酸アルキル中の粒子の分散液に、分散色試験で少なくとも15のΔE値に相当する色を与えるのに十分な濃度の酸素空孔及び亜鉛空孔を有する酸化亜鉛粉末を生成することを含む、請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粒子を作製する方法。
【請求項27】
酸化環境中の冷却を伴うプラズマプロセスにより形成された気相によって酸化亜鉛粒子を調製することを含む、請求項1又は2に記載の酸化亜鉛粒子を作製する方法。
【請求項28】
少なくとも370nmの臨界波長値を有する、請求項1~27のいずれかに記載の酸化亜鉛粒子、コーティングされた粒子、多層コーティングされた粒子、分散液、又は化粧料/皮膚科学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
酸化亜鉛は、バンドギャップが3.3~3.4eVと報告されているワイドバンドギャップ半導体であり、主要白色顔料(H. Rafla-Yuan and J.F Cordaro, J. Applied Phys. 74, 4685 (1993)、J.C. Simpson and J.F Cordaro, J. Applied Phys. 63, 1781 (1988))、種々の電子、光電子及び磁気光学デバイス(M.D. McCluskey and S.J. Jokela, J. Applied Phys. 106, 071101 (2009)、L. Schmidt-Mende and J. L. Macmanus-Driscoll, Materials Today, 10 (5), 40 (2007))として、並びに局所日焼け止め剤用途のための広域スペクトルUVフィルター(米国特許第5,223,250号明細書、米国特許第5,441,726号明細書、米国特許第5,536,492号明細書、Federal Register 63 FR 56584、21CRF352.10 (Sunscreen Drug Products for Over-The-Counter Human Use)、Federal Register 84 FR 6204)としての使用を含む多種多様な用途に最適な候補になっている。日焼け止め剤における酸化亜鉛の使用は、FDAが提案した規則の中で2つしかない一般的に安全と認められている(GRASE,Generally Regarded as Safe and Effective)日焼け止め剤活性物質の1つとして最近特に注目されている(Federal Register 84 FR 6204)。顔料粒子は通常、可視光を散乱させるために粒子径がより大きいが(300nm超~約16μm)、UVフィルターに使用される粒子は、典型的には、光の散乱を避けるために粒子径が小さい(300nm以下)。
【0002】
主要顔料として、酸化亜鉛は、真空中で機械的研磨又は高線量のUV線を受けると黄変を示すという好ましくない特性を有する。純白からのずれは、顔料として使用するために商業的に許容されず、従来からUVフィルターとして又は化粧品用途で使用する場合に許容されなかった。この特徴の起源は、Cordaroによって大きな顔料サイズの粒子に対する反射分光法を使用して広範に研究され(H. Rafla-Yuan and J.F Cordaro, J. Applied Phys. 74, 4685 (1993))、彼は、着色の起源が酸化亜鉛中の酸素空孔の形成にあると考え、さらにバルク単結晶酸化亜鉛の固有欠陥(defect)レベルを広範に特性評価した(J.C. Simpson and J.F Cordaro, J. Applied Phys. 63, 1781 (1988))。顔料粒子の研究から、研磨(機械的損傷及びそれに伴う障害を引き起こした)と、過剰な亜鉛の添加(亜鉛蒸気の存在下での熱処理による)の両方によって酸素空孔欠陥が作り出される可能性があるが、急冷は粉末の観察される反射スペクトルにほとんど影響を及ぼさないことが明らかになった。研究はさらに、ZnOと比較して酸素に富む酸化物を有する選択されたドーパントでドープすることにより、酸素欠陥の形成、及びそれに伴う着色を予防するための方法を開示している。このドーピング方法は、酸素欠陥の除去をもたらし、顔料の白色を保持する。この方法は、大きな顔料サイズの粒子には適切であるが、一部の管轄区域で薬物活性物質として分類され、USPレベルの純度で送達することが要求されるUVフィルター粒子には実用的でなく、添加できるドーパントの量が厳しく制限される。
【0003】
固有欠陥レベルの特性評価は継続されており、その概要が公表されている(L. Schmidt-Mende and J. L. Macmanus-Driscoll, Materials Today, 10 (5), 40 (2007))。酸化亜鉛の自然欠陥の種類を
図1に示す。欠陥の種類はクレーガー=ビンクの表記法を使用して記載され、Zn=亜鉛、O=酸素、i=格子間位置、V=空孔であり、ドットは正電荷を示し、二重ドットは二重正電荷を示し、プライムは負電荷を示し、ダブルプライムは二重負電荷を示し、xは無電荷を示す。酸化亜鉛の自然ドナー欠陥は、電子ドナー欠陥
及び電子アクセプター欠陥
である。
【0004】
酸化亜鉛粒子は、UV線の吸収と散乱の両方を行い、粒子径が小さくなるほど前者が大きな役割を果たす。酸化亜鉛を含む無機UVフィルターがUV線を吸収すると、励起子として公知の電子-正孔対が形成される。励起子は電子移動反応によって酸素分子と反応し、スーパーオキシドアニオンラジカルを生成することが公知である。スーパーオキシドアニオンラジカルは、ヒドロキシルラジカル(OH・)、脂質アルコキシラジカル、脂質ペルオキシルラジカル、一重項酸素及び一酸化窒素を含む様々な活性酸素種の形成を担う、反応性が高く攻撃的な種である。これらの種は、連鎖反応を開始するか又はそれに関与し、皮膚の健康に有害な影響を与える一因となる可能性がある。このような反応は、UV吸収から生じた電荷担体を、標的化表面処理によって(米国特許第9,139,737号明細書、国際公開20180291210A1)又は励起子種の消光によって隔離することにより阻害することができる。
【0005】
励起子を消光するために、酸化亜鉛に欠陥を導入することができる。励起子を消光するための欠陥の導入方法の1つは、Knowland et al.の米国特許第6,869,596号明細書に記載されている。ルミネッセンストラップ又はキラーサイトが、水素を使用して酸素を取り除く熱還元によって200nmより小さい酸化亜鉛粒子に導入された。トラップの導入は、酸化亜鉛粒子をUV線で励起する際に生じる電子及び正孔を捕捉する目的を果たす。粒子は、吸収コア内に過剰なZn2+イオンを含有すると考えられ、光触媒効果のある程度の減少をもたらすことが示された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,223,250号明細書
【特許文献2】米国特許第5,441,726号明細書
【特許文献3】米国特許第5,536,492号明細書
【特許文献4】米国特許第9,139,737号明細書
【特許文献5】国際公開20180291210A1
【特許文献6】米国特許第6,869,596号明細書
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】H. Rafla-Yuan and J.F Cordaro, J. Applied Phys. 74, 4685 (1993)
【非特許文献2】J.C. Simpson and J.F Cordaro, J. Applied Phys. 63, 1781 (1988)
【非特許文献3】M.D. McCluskey and S.J. Jokela, J. Applied Phys. 106, 071101 (2009)
【非特許文献4】L. Schmidt-Mende and J. L. Macmanus-Driscoll, Materials Today, 10 (5), 40 (2007)
【非特許文献5】Federal Register 63 FR 56584
【非特許文献6】21CRF352.10 (Sunscreen Drug Products for Over-The-Counter Human Use)
【非特許文献7】Federal Register 84 FR 6204
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、本発明は酸化亜鉛粒子である。粒子は、少なくとも0.99のO:Zn比、10~300nmの平均粒子径、及びC12-C15安息香酸アルキル中の粒子の分散液に、分散色試験(Dispersion Color Test)で少なくとも15のΔE値に相当する橙色から黄褐色を与えるのに十分な濃度の酸素空孔及び亜鉛空孔を有する。粒子は集合体を含有せず、数加重基準で500nm以上の検出可能な粒子を有さない。
【0009】
第2の態様では、本発明は、10~300nmの平均粒子径を有する酸化亜鉛粒子である。粒子は化学量論的酸化亜鉛であり、粒子は、DPPH光触媒安定性試験(Photocatalytic Stability Test)で最大10のΔE値を有し、粒子は、分散色試験で少なくとも15のΔE値を有する。
【0010】
第3の態様では、本発明は、(a)酸化亜鉛粒子及び酸化亜鉛粒子上のシリカコーティングを含むコーティングされた粒子である。酸化亜鉛は、(i)少なくとも0.99のO:Zn比、並びに(ii)C12-C15安息香酸アルキル中の粒子の分散液に、分散色試験で少なくとも15のΔE値に相当する橙色から黄褐色を与えるのに十分な濃度の酸素空孔及び亜鉛空孔を有する。コーティングされた粒子は、10~300nmの平均粒子径を有する。粒子は集合体を含有せず、数加重基準で500nm以上の検出可能な粒子を有さない。
【0011】
第4の態様では、本発明は、(a)酸化亜鉛粒子、及び(b)酸化亜鉛粒子上の有機部位含有コーティングを含むコーティングされた粒子である。酸化亜鉛粒子は、(i)少なくとも0.99のO:Zn比、並びに(ii)C12-C15安息香酸アルキル中の粒子の分散液に、分散色試験で少なくとも15のΔE値に相当する橙色から黄褐色を与えるのに十分な濃度の酸素空孔及び亜鉛空孔を有する。コーティングされた粒子は、10~300nmの平均粒子径を有する。粒子は集合体を含有せず、数加重基準で500nm以上の検出可能な粒子を有さない。
【0012】
定義
用語「粒子径」は、電子顕微鏡で見られる粒子の像の平均直径を意味する。用語「粒子径」は、別段記載されない限り、このように使用される。用語「平均粒子径」は、粒子の集まりの粒子径の平均、又は完全密度の粒子と一致する、ブルナウアー-エメット-テラー(BET,Brunauer-Emmett-Teller)法を使用して決定された、m2/gで測定された粒子の比表面積から球形モデルを使用して計算されるものを意味する。用語「粉末」及び「粒子」は、互換的に使用される。
【0013】
用語「化学量論的」は、≧0.99のO:Zn(「n」と称する)の比を有する酸化亜鉛の組成物を意味する。これは、酸素雰囲気下での熱重量分析中に400℃より高い開始点を有する明確な変曲点を示す任意の質量増加特徴によって決定され、すべての質量増加が酸素であると仮定して計算することができる。好ましくは、n≧0.999は、酸素雰囲気下での熱重量分析中に400℃より高い開始点を有する明確な変曲点を示す質量増加特徴の欠如によって決定される。
【0014】
用語「表面処理」及び「表面コーティング」は、互換的に使用される。さらに、用語「酸化亜鉛UVフィルター」は、最大300nmの平均粒子径を有する酸化亜鉛を意味する。
【0015】
用語「光安定性」、「光触媒安定性」及び「超光安定性」はいずれも、酸化亜鉛の同じ特性である、光の吸収によって生じる励起子の化学反応性の低減又は除去を指す。用語はそれぞれ反応性の低減の異なる度合いを指し、「超光安定性」が最も反応性が低く、「光安定性」が最も反応性が高く、それぞれ別の試験を有しており、1つは次の試験よりも感度が高い。酸化亜鉛粉末が光安定性であるかどうかを決定する試験は、米国特許第9139737号明細書に記載され、光触媒安定性の試験は後述され、超光安定性の試験は、米国特許公開第2018/0291210号明細書に記載されている。
【0016】
語句「有機部位含有コーティング」は、-CH3及び/又は-CH2-部位を含有する表面コーティングを意味する。例として、シラン化剤で表面処理された粒子、プロピルシルセスキオキサン/ジメチコノール/シリケートクロスポリマーでコーティングされた粒子、植物由来のホスファチドで表面処理された粒子、及び脂肪アルコール又はポリグリセリル(ポリオール)化合物をエステル化することにより表面処理された粒子が挙げられる。これらの表面コーティング及び処理を使用して、粒子を疎水性にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ZnO中の欠陥のエネルギー準位を示すバンド図である。
【
図2】例1~4の酸化亜鉛粉末の熱重量分析(TGA,thermogravimetric analysis)を示すグラフである。
【
図3】例1~15の酸化亜鉛粉末のDPPH光触媒安定性試験の結果(横軸)対分散色試験の結果(縦軸)を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
Knowland et al.の組成物は、酸素の除去をもたらす高温での水素中の熱還元によって形成され、したがって過剰の亜鉛を含み、非化学量論的である。このような酸化亜鉛組成物は、熱重量分析を使用して特定することができ、粒子の再酸化によって引き起こされる、400℃より上で開始する空気中の重量増加を示す。類似の全体的な組成の粒子(Zn/ZnOコアシェル粒子と記載される)は、暗所でフリーラジカル及び他の活性酸素種を発生することが報告されている(G. Yi, G. Agarwal, and Y. Zhang, J. Phys. Chem. C 123, 19230 (2019))。暗所で実施されたフリーラジカル試験により、Knowland et al.の粒子は、暗所環境でフリーラジカルを発生するこの挙動を共有することが確認された。フリーラジカルの発生は、これらの粒子を皮膚に使用することをより好ましくないものにする。
【0019】
本発明は、化学量論的であり、有意なアルミニウム又は遷移金属ドーパントを含有せず、10~300nmの平均粒子径を有し、励起子を消光するのに十分な濃度の欠陥を含有することにより、粒子を光安定性及び光触媒安定性にする酸化亜鉛粒子を利用する。さらに、任意で1種又は2種以上のコーティングを添加することにより、光安定性及び光触媒安定性が向上し、化粧料配合物との適合性の向上が可能になる。欠陥の濃度は、液体担体中に分散された場合に特徴的な橙色から黄褐色をもたらすが、この色は、消費者の嗜好の変化により、近年では化粧料配合物に商業的に許容されるようになった。理論に束縛されることを望むことなく、光触媒安定性及び色は、欠陥状態の吸収による色と、励起子捕捉による低い光触媒活性の両方の原因となる欠陥状態の閾値濃度に起因すると考えられる。このような着色の黄色の様相は、酸素空孔欠陥に起因するとされてきた。粒子は化学量論的ZnOであるため、粒子に存在する電子供与性酸素空孔欠陥は、過剰な亜鉛原子の存在に起因するものではなく、電子アクセプターの亜鉛空孔欠陥の均衡とともに、原子の無秩序に起因するものと推察することができる。また、本発明の粒子は、粒子径が非顔料性(すなわち、平均粒子径が300nm未満)であるため、可視光を実質的に散乱させない。このため、皮膚への適用時に著しい色を付与することなく使用することができ、実際、従来の白色酸化亜鉛を含有するものと比較して、この粒子を含有する配合物の美的特性をいくらか向上させることができる。
【0020】
好ましくは、粒子は、最大100、200及び300nmの平均粒子径、より好ましくは10nm~200nmの平均粒子径、最も好ましくは15nm~200nm、例えば20、30、40、50、60、70、80、90、100、110、120、130、140、150、160、170、180、190及び200nmの平均粒子径を含む、最大300nmの平均粒子径を有する。顔料サイズの(酸化亜鉛の平均粒子径が300nmを超える)UV吸収粒子は、一般に、波長領域290~400nmにおける吸収係数が十分に低いことを特徴とし、通常の濃度レベルでは十分なSPFをもたらさないため、UV保護組成物におけるそれらの実用は排除される。さらに、粒子径が10nm未満の場合、酸化亜鉛における有効励起子半径が粒子の外に広がるほど十分大きいため、空孔の濃度に関わらず、粒子が効率的に励起子を消光することができない。このような小さな粒子は、光触媒安定性ではない。
【0021】
凝集体(agglomerates)は、静電相互作用によって結合した、弱く結合した粒子の集まりとして定義される。集合体(aggregates)は、共有結合又はイオン結合などの強い相互作用によって結合した粒子と定義される。この2つは、超音波処理と組み合わされた低強度混合を使用した粒子の分散に続き、ISO13320:2009(粒子径分析-レーザー回折法)に記載されるレーザー光散乱を使用した検出及び粒子径分析によって区別することができる。凝集体は分解されて構成粒子を現すが、集合体は公称(nominal)集合体サイズのままであり、そのように検出される。この方法による測定及び粒子径分布の決定のために粉末を分散させるのに適した分析装置は、Horiba LA910、Horiba 960、又は同等物である。好ましくは、本発明の酸化亜鉛粒子は、集合体を含有せず、数加重基準で500nm以上の検出可能な粒子を有さない。このような集合体が存在すると、可視光とUV光の両方が散乱し、生成物に乏しい美観とUV光の吸収の減少の両方がもたらされる。分析される粒子がイソプロパノール以外の流体に分散されている場合、まず粒子をイソプロパノールで希釈しなければならない。乾燥粉末は、まずイソプロパノールに分散させてから分析しなければならない。
【0022】
好ましくは、粒子は化学量論的であり、すなわち酸化亜鉛粒子は≧0.99のO:Zn(「n」と称する)の比を有する。これは、酸素雰囲気下での熱重量分析中に400℃より高い開始点を有する明確な変曲点を示す任意の質量増加特徴によって決定され、すべての質量増加が酸素であると仮定して計算することができる。好ましくは、n≧0.999は、酸素雰囲気下での熱重量分析中に400℃より高い開始点を有する明確な変曲点を示す、0.02%より大きい質量増加特徴の欠如によって決定される。酸素環境中のKnowland et al.の粒子の熱重量分析は、十分な温度に達すると、粒子の再酸化に起因する明確で特徴的な質量増加をもたらす。過剰な酸素を含有する酸化亜鉛は、穏やかな加熱に対して安定ではない。
【0023】
粒子の化学量論は、白金パンで10℃/分~20℃/分の走査速度で、25℃~800℃の範囲で純酸素雰囲気下で実施される熱重量分析を使用して決定される。適切な機器は、0.01%の精度を有する。適切な機器として、TA Instruments Q Series 50 TGA Analyzer又は同等の機器が挙げられる。化学量論を決定する分析のために、ベースライン試料の質量は、乾燥した非コーティング粉末ではガス脱着による質量損失温度を超える温度、又はコーティング化学による強熱(ignition)温度を超える温度(乾燥したコーティング粉末の場合)、又は溶媒及び/若しくは分散媒による強熱温度を超える温度(コーティング粉末若しくは分散液の場合)におけるものと解釈される。このベースラインポイントは、ベース酸化亜鉛の組成を反映したものと解釈される。
【0024】
化学量論的であることと、以下に記載するように十分な深さの液体担体に分散させた際に橙色から黄褐色になることとの組合せは、ZnO粒子が、酸素空孔欠陥
と亜鉛空孔欠陥
とを実質的に同じ数で含み、実質的な励起子消光をもたらし、それにより粒子が光触媒安定性であることを意味する。化学量論的酸化亜鉛は、化学量論的である低い光触媒活性を有する非顔料性粒子であり、ここで低い光触媒活性は、励起子トラップとして機能することができ、かつ暗色化する閾値レベルを超えた色を有することにより、識別するのに十分な濃度である電荷均衡のとれた固有欠陥(すなわち、均衡のとれた酸素空孔及び亜鉛空孔)の十分な濃度に起因する。
【0025】
酸化亜鉛(ZnO)の光触媒安定性は、以下の試験を使用して測定される。この試験を「DPPH光触媒安定性試験」と称する。まず、50mLの使い捨てプラスチックビーカー6個に、活性物質基準で0.025g±0.001gのZnO粉末を添加する。0.0125%のDPPH(ジフェニルピクリルヒドラジルとも称されるジ(フェニル)-(2,4,6-トリニトロフェニル)イミノアザニウム;CAS番号1898-66-4)を、エチレングリコールブチルエーテル(BCS,ethylene glycol butyl ether)溶液中で調製する。酸化亜鉛粉末を含有する各ビーカーに、0.0125%DPPHのBCS中溶液19.975g±0.001を添加する。酸化亜鉛活性物質を分散液から試験する場合、0.025g±0.001の酸化亜鉛活性物質を、酸化亜鉛含有量が既知である分散液から6個の50mL使い捨てプラスチックビーカーに添加する。公称0.0125%DPPH溶液をBCS(エチレングリコールブチルエーテル)中で調製し、BCSの濃度は、液体分散担体及び酸化亜鉛含有分散液中の任意の他の賦形剤成分を補償するために十分な量で調整される。調整された公称0.0125%DPPHのBCS中溶液19.975g±0.001を、酸化亜鉛分散液を含有する各ビーカーに添加する。試料をガラス撹拌棒で十分に混合し、各ビーカーを60秒間超音波処理し、粒子が溶液全体に十分に分散するようにする。超音波処理後、試料を標識されたシンチレーションバイアルに移す。
【0026】
照射前の試料を、NISTトレーサブル白色タイルを使用して校正されたKonica Minolta社製比色計CM-600D Colorimeter、又は適切な同等の比色計で測定する。測定を行った後、試料に照射する。試験混合物を、Q-Labs QUVウェザロメーターで、UVB電球を1.28Wm-2s-1で50℃の一定温度で使用して正確に5.5分間UV光に曝露する。最後に、照射後の試料を比色計で測定する。UV曝露後の光触媒安定性は、520nmの色素の吸収帯による紫色の持続性によって示される。光触媒安定性は、指定されたUV曝露時間にわたる標準に対する色の総変化(L*a*b*色空間におけるΔE)として表すことができる。ΔEは、CIE76の定義に従い、以下の式から計算される:
【0027】
【0028】
式中、
は、照射後の試験混合物の色座標であり、式中
は、照射前の試験混合物の初期色座標である。データは、6つの試料の平均ΔE値として報告される。粒子は、上記の光触媒安定性試験でΔE≦10の場合に光触媒安定性である。DPPH光触媒安定性試験では、粒子はΔE≦9、8、7、6、5又は3、例えばΔE=1~10を有することが好ましい。
【0029】
酸化亜鉛(ZnO)の色は、以下に記載する試験を使用して測定される。酸化亜鉛粉末は、以下の試験でΔE値が少なくとも15であれば、実質的に励起子を消光させるのに十分な濃度の空孔欠陥を有する(すなわち、粉末は光触媒安定性である)。この試験を「分散色試験」と称する。まず、4.30±0.1%Hostaphat KW 340D(INCI名:トリセテアレス-4リン酸)のFinsolv TN(INCI名:C12-15安息香酸アルキル)中に担体溶液を調製する。粉末試料の場合、活性物質基準で3.00±0.01gの酸化亜鉛粉末をシンチレーションバイアルに添加し、担体溶液で合計10.00±0.01gに希釈する。液体担体が2以下のガードナー数を有することが既知である分散液ベースの試料の場合、酸化亜鉛含有量が既知の分散液から活性物質基準で3.00±0.01gの酸化亜鉛をシンチレーションバイアルに添加し、純粋なFinsolv TNで10.00±0.01gに希釈する。色は、標準に対する総色差(L*a*b*色空間におけるΔE)として表すことができる。ΔEは、CIE76の定義に従い、以下の式から計算される:
【0030】
【数2】
式中、
は、被験試料の色座標であり、式中
であり、白色基準タイルの色座標に相当する。
【0031】
分散色試験では、少なくとも16、17、19、20又は25のΔE値、例えばΔE=15~26を有することが好ましい。好ましくは、粒子は、元素分析によって決定され得るクロム又はマンガンを含有しない。好ましくは、酸化亜鉛は、ケイ素又はアルミニウムでドープされておらず、これは亜鉛の色が純白でないことによって確認することができる。
【0032】
化学量論的酸化亜鉛粒子は、化学量論的生成物を確実にするのに十分な酸素を含有する環境で、非常に高い冷却速度を使用したプラズマプロセスによって形成された蒸気相によって乾燥粉末として調製することができる。乾燥粉末として存在する場合、分散液の形態で、酸化亜鉛粒子は、液体担体で湿潤した際に粒子の実際の色が明らかになるにも関わらず、光散乱のために白色に見える。あるいは、欠陥を含有する化学量論的酸化亜鉛粒子及び粉末は、機械的応力により液体担体中の化学量論的酸化亜鉛粒子に欠陥を導入することによって調製されてもよい。
【0033】
特に米国特許第5,460,701号明細書及び第5,874,684号明細書に記載された方法によるプラズマに基づく粒子生成法は、化学量論的酸化亜鉛粒子の生成によく適している(米国特許第2,616,842号明細書、米国特許第3,900,762号明細書、米国特許第4,642,207号明細書、米国特許第4,732,369号明細書、米国特許第5,460,701号明細書、米国特許第5,874,684号明細書、米国特許第7,517,513号明細書)。それらに記載される方法を「移行アーク物理的気相合成」と称する。これらのプロセスでは、亜鉛蒸気は、カソード及びアノードプラズマジェットの磁場が、生成物前駆体の飽和蒸気を含有する、高速の噴射された合流プラズマジェットを生成する形状(geometry)で移行アークによって発生する。このプラズマジェットの速度は、非平衡プロセスで急速冷却をもたらす。この蒸気は過飽和状態になり、凝縮核生成プロセスによって粒子へと形成され、凝縮粒子は酸素含有ガスに曝露され、酸化反応を完了する。酸化剤はさらに、粒子径を制御するためのマイクロ混合により、出現する酸化亜鉛粒子流を同時に希釈するために使用されてもよい。酸化亜鉛エアロゾルを生成するこの希釈プロセスは、出現する粒子流を抑える(quench)ために使用されてもよく、アニーリング、酸化、一次粒子の成長、及び粒子の合体を制御するために使用されてもよい。この酸化亜鉛エアロゾルは、最終的に希釈/輸送ガスと混合され、エアロゾルはこのガスによってコレクターに輸送され、生成物は弱い凝集体からなる静電結合粉末として収集される。
【0034】
米国特許第5,460,701号明細書及び第5,874,684号明細書に記載される、粒子径に影響を与えるプロセス要因は、酸化の程度及び欠陥濃度にも影響を与える。アークパワーは、前駆体の気化速度を通して、プラズマジェット温度とプラズマ中の亜鉛原子濃度の両方に影響を与える。酸化剤急冷ガス(oxidant quench gas)の導入速度、及びその発生位置に対する出現するアークジェットに沿った関連する位置は、亜鉛/酸素原子比、酸化速度、平均粒子径、及び欠陥の形成に影響を与える。最後に、輸送ガスの導入速度は、酸化速度及び欠陥の形成にさらに影響を及ぼす。
【0035】
このような種類のプラズマプロセスでは、六方晶紅亜鉛鉱結晶構造(ウルツ鉱結晶構造とも称する)のみが形成される。この構造は比較的オープンな構造であり、様々な固有欠陥状態を支持することができる(L. Schmidt-Mende and J. L. Macmanus-Driscoll, Materials Today, 10 (5), 40 (2007))。急速冷却は、様々なレベルの原子の無秩序を紅亜鉛鉱結晶構造に「凍結」させ、粒子が生成される際の欠陥状態の濃度を制御するために使用されてもよい。プロセス要因の特定の組合せでは、結晶欠陥の存在に起因し得る着色を呈する粉末が生成される。プロセス条件の特定の組合せでは、この着色は、過剰な亜鉛原子の存在と関連する可能性があり、望ましくない不完全な酸化を示す。このような望ましくない材料は、酸素雰囲気下で熱重量分析により測定した場合、400℃より高い開始点を有する明確な変曲点を示す質量増加を必然的に呈する準化学量論的酸化亜鉛である。経験的プロセスマッピングによって(すなわち、異なるプロセス条件を試験し、生成された生成物を試験することによって)特定することができるプロセス条件の様々な個別の選択された組合せでは、非水性液体中に分散させた際に深い橙色から黄褐色の着色を呈する化学量論的酸化亜鉛が形成される。以下の例1は、そのような条件の1セットを提供する。望ましい酸化亜鉛生成物は、(1)分散色試験でΔE≧15、(2)DPPH光触媒安定性試験でΔE≦10、(3)平均粒子径10~300nm及び(4)亜鉛と酸素の比に関して化学量論的であるという基準を同時に満たす。
【0036】
化学量論的酸化亜鉛粒子はまた、化学量論的酸化亜鉛の均衡のとれたドナー及びアクセプター欠陥を誘導するのに十分な機械的応力を適用することにより、分散液、好ましくは非水性液体媒体で調製されてもよい。こうした場合における化学量論的組成は、すべての液体担体の強熱及び表面処理後に確立されたベースライン質量に対して、先に規定したような酸化に関連した質量増加がないことによって検証される。機械的応力は、様々な方法を使用して、好ましくは撹拌媒体ミルを用いて適用することができる。欠陥の十分な濃度をもたらす原子の無秩序を作り出すために使用される機械的応力を任意の化学量論的酸化亜鉛に適用し、ラジカルを捕捉する欠陥の濃度を高めることができる。流体の種類、媒体のサイズ、形状及び組成に関連する流体力学的パラメータ及び衝突特性の効果、並びに比エネルギー入力の効果は、一般に媒体粉砕に関して広範に教示されてきた(R. Gers, E. Climent, D. Legendre, D. Anne-Archard, and C. Frances, Chemical Engineering Science, 65, 2052 (2010)、R.J Tamblyn, Ph.D. Dissertation, University of Birmingham (2009))。このプロセスは、粉砕媒体のサイズを制御することにより、粒子径を減少させる機械的破砕の有無にかかわらず進行することができる。後者(機械的破壊を伴わない)の場合、破砕によって達成され得る実用的な最終粒子径が、処理される粉末の出発平均粒子径のものを超えるように十分に大きい媒体サイズを選択すると、粒子径の減少が回避される。粉砕は、粒子が、分散色試験で酸化亜鉛を試験してΔE≧15と決定することにより、励起子を消光して粒子を光触媒安定性にするのに十分な濃度の欠陥を含有するまで行われる。このようにして生成された化学量論的酸化亜鉛はまた、(1)分散色試験でΔE≧15、(2)DPPH光触媒安定性試験でΔE≦10、(3)平均粒子径10~300nm、及び(4)亜鉛と酸素の比に関して化学量論的であるという基準も同時に満たす。化学量論的酸化亜鉛が分散液で調製されていても、蒸発により液体媒体を除去し、乾燥粉末を得ることができる。
【0037】
酸化亜鉛は、粒子の光触媒活性をさらに低下させるために、無機酸化物を使用して表面処理又はコーティングされてもよい。このような表面コーティングは、エマルジョンの不安定化又は沈殿物の形成を引き起こす可能性のある亜鉛の配合物中への溶解(Zn(II)イオンの漏出)も防止する。表面処理の適用方法は周知である。表面処理に好ましい酸化物は、シリカ(米国特許第2,885,366号明細書、米国特許第3,437,502号明細書、米国特許第4,845,054号明細書)及びアルミナ(米国特許第3,437,502号明細書)である。このようなシリカ及びアルミナコーティングは、分散色試験において色に影響を与えない。無機表面処理は、酸化亜鉛粒子の質量の0.5%~40%で適用することができ、好ましい範囲は粒子の質量の2.0%~20%であり、粒子の比表面積に基づいて調整され、比表面積の値が大きいと一般により高いレベルの表面処理が必要になる。好ましくは、化学量論的酸化亜鉛は、以下のさらなる表面処理又はコーティングの前に、無機酸化物を使用して最初に表面処理される。
【0038】
酸化亜鉛粒子は、粉末の疎水性を高めるために、1種又は2種以上の有機部位含有コーティングでコーティングされてもよい。このようなコーティング及び表面処理は、一般的に分散色試験において色に影響を与えない。このようなコーティング及び表面処理は、コーティングされていない粒子又は無機酸化物でコーティングされた粒子に適用されてもよい。
【0039】
酸化亜鉛は、シラン化剤で表面処理されてもよい。シラン化剤は、未加工状態、又は無機酸化物を使用して最初に表面処理された後のいずれかで粒子の表面に適用されてもよい。シラン化剤は、粒子の表面に官能化ポリシロキサンをもたらす任意の物質であってもよい。適切なシラン化剤の例は周知であり(米国特許第2,938,009号明細書、米国特許第6,214,106号明細書、米国特許第3,849,152号明細書、米国特許第3,920,865号明細書、米国特許第5,486,631号明細書、米国特許第5,565,591号明細書、米国特許第5,756,788号明細書、米国特許第5,993,967号明細書、米国特許第6,033,781号明細書、米国特許第9,139,737号明細書、国際公開20180291210A1、米国特許第10,555,892号明細書)、反応性シリコーン及びシラン疎水化表面処理(例えば、トリエトキシカプリリルシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、水素ジメチコン(CAS番号68037-59-2/69013-23-6/70900-21-9)及びCAS番号69430-47-3(シロキサン及びシリコーン、ジ-Me、Me水素シロキサン及び1,1,3,3-テトラメチルジシロキサンとの反応生成物))を含む。シラン化表面処理は、粒子をUV保護局所調製物の油相に保持し、耐水性を付与するために疎水化する役割を果たす。
【0040】
好ましくは、酸化亜鉛粒子は、米国特許公開第2018/0291210号明細書に記載される架橋ポリマー、例えばプロピルシルセスキオキサン/ジメチコノール/シリケートの架橋ポリマーを使用してコーティングされ、これらのポリマーは、酸化亜鉛粒子のUV誘導フリーラジカル発生をさらに抑制し、それにより典型的な酸化亜鉛粉末と比較して、抗酸化活性の増強及びUV曝露時に皮膚で発生するフリーラジカルの抑制を可能にすることが示されている。このコーティングを有する酸化亜鉛粒子は、超光安定性である。米国特許公開第2018/0291210号明細書は、光安定性の試験、及び酸化亜鉛粉末が超光安定性かどうかを決定するための基準を記載している。
【0041】
酸化亜鉛は、植物由来のホスファチドで表面処理されてもよい。この表面処理のための方法は、当技術分野で教示されている(米国特許第4,056,494号明細書、米国特許第4,126,591号明細書、米国特許第4,305,853号明細書)。例えば、適切なホスファチドをUSPヘプタンなどのUSPグレードの溶媒に溶解し、粉末表面に噴霧して乾燥し、その後100~150℃で加熱して永久に疎水性の粉末を得ることができる。ホスファチドの好ましい範囲は0.5~25重量%であり、ホスファチドのより好ましいレベルは1.0~10重量%である。好ましいホスファチドはレシチンである。
【0042】
酸化亜鉛は、脂肪アルコール又はポリグリセリル(ポリオール)化合物を粒子表面にエステル化することによって表面処理されてもよい。この表面処理のための方法は教示されている(米国特許第2,657,149号明細書)。例えば、適切な脂肪アルコール又はポリグリセリル化合物をUSPイソプロパノールなどのUSPグレードの溶媒に溶解し、粉末表面に噴霧して乾燥し、その後130~200℃で加熱して永久に疎水性の粉末を得ることができる。脂肪アルコール又はポリグリセリル化合物の好ましい範囲は0.5~25重量%であり、脂肪アルコール又はポリグリセリル化合物のより好ましいレベルは1.0~10重量%である。脂肪アルコールの適切な例は、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、オクチルドデカノール、及びセテアリルアルコールである。ポリグリセリル(ポリオール)化合物の適切な例は、ポリグリセリルエステル(例えば、リシノール酸ポリグリセリル-3、リシノール酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10及びオレイン酸ポリグリセリル-4)、ポリグリセリルポリエステル(例えば、ジイソステアリン酸/ポリヒドロキシステアリン酸/セバシン酸ポリグリセリル-4、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2及びステアリン酸/イソステアリン酸/ダイマージリノール酸ポリグリセリル-3クロスポリマー)である。
【0043】
好ましくは、粉末は疎水性である。疎水性は、以下の疎水性試験(この試験は、化粧品産業で一般的に使用される可視水浮遊試験であり、米国特許第4,454,288号に記載される)を使用して測定される。およそ30mLの脱イオン水をガラス瓶に入れる。試験される粉末およそ3.0g±0.30gをガラス瓶に添加する。ガラス瓶を密閉し、試料を約4~5回振り回し、水と粉末の間の密な接触が達成されるように4~5回激しく振盪する。粉末に浮力があり(水面に浮遊している)、15分後に水が透明であれば、粉末は疎水性とみなされる。粉末に浮力がないが15分後に水が透明である場合、又は粉末に浮力があるが15分後に水が透明でない場合、試料はわずかに疎水性である。
【0044】
液体担体中の酸化亜鉛粉末の分散液は、調製されたままの化学量論的酸化亜鉛粒子から、又は1若しくは2以上の表面処理に続いて調製することができる。分散液は、従来の配合技術によって調製することができる。例えば、酸化亜鉛粒子、任意の界面活性剤/分散剤及び液体担体を容器内で合わせ、均質になるまで撹拌してもよい。次に、分散液を媒体ミルなどのミルに移し、所望の平均粒子径を達成するように破砕してもよい。
【0045】
液体担体は、親油性である任意の流体又はワックス、好ましくは化粧品として許容される流体又はワックスであってもよく、それらの混合物を含む。適切な液体担体の例として、トリグリセリド(例えば、カプリル/カプリン酸トリグリセリド)、エステル(例えば、C12-C15安息香酸アルキル、ラウリン酸イソペンチル、イソステアリン酸イソプロピル、カプリル酸ヤシアルキル、カプリル酸カプリン酸ヤシアルキル、イソノナン酸エチルヘキシル、サリチル酸トリデシル、イソノナン酸エチルヘキシル、サリチル酸イソデシル、ネオペンタン酸オクチルドデシル、サリチル酸ブチルオクチル、ホホバエステル及びシアバターエチルエステル)、天然油及びバター(例えば、ホホバ(Simmondsia chinensis)種子油、シアバター、アルガンノキ(Argania spinosa)(アルガン)油、クロヨナ属(カランジャ)油、及びメドウフォーム(Limnanthes alba)(ホワイトメドウフォーム)種子油)、アルカン(例えば、スクワラン、ヘミスクワラン、イソドデカン及びイソヘキサデカン)、シリコーン(例えば、ジメチコン、ベヘニルジメチコン、セチルジメチコン、セテアリルメチコン及びフェニルジメチコン)、ワックス(例えば、天然ワックス、合成ワックス及びシリコーンワックス)並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0046】
界面活性剤/分散剤は、未加工又は表面処理された酸化亜鉛粒子と強酸-塩基相互作用を有する任意の界面活性剤又は分散剤であってもよい。適切な界面活性剤/分散剤の例として、脂肪アルコール及びポリオール(例えば、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール及びセテアリルアルコール)、脂肪酸(例えば、ステアリン酸及びオレイン酸)、アミノ酸(例えば、ラウロイルリシン及びミリストイルグルタミン酸)、ポリグリセリルエステル(例えば、リシノール酸ポリグリセリル-3、リシノール酸ポリグリセリル-6、ペンタステアリン酸ポリグリセリル-10及びオレイン酸ポリグリセリル-4)、ポリグリセリルポリエステル(例えば、ジイソステアリン酸/ポリヒドロキシステアリン酸/セバシン酸ポリグリセリル-4、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2及びステアリン酸/イソステアリン酸/ダイマージリノール酸ポリグリセリル-3クロスポリマー)、ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリエステル(例えば、ポリヒドロキシステアリン酸)、ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリウレタン、ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリアミド、ヒドロキシル、アミン又はアミド基を有するポリアクリレート、リン酸エステル(例えば、トリラウレス-4リン酸及びトリセテアレス-4リン酸)、ポリマー性リン酸塩(例えば、1,2-エタンジアミン、アジリジンを有するポリマー、N-[3-[(2-エチルヘキシル)オキシ]-3-オキシプロピル]誘導体及びポリエチレン-ポリプロピレングリコールを含む化合物)、リン脂質、セラミド、スフィンゴシド(例えばレシチン、リゾレシチン及びセラミド3)、基を有する置換シリコーン(例えば、セチルジグリセリルトリス(トリメチルシロキシ)シリルエチルジメチコン、CAS番号104780-66-7(シロキサン及びシリコーン、ジ-Me、3-ヒドロキシプロピル基末端)、CAS番号102782-61-6(シロキサン及びシリコーン、ジ-Me、3-ヒドロキシプロピルMe)、並びにCAS番号106214-84-0(シロキサン及びシリコーン、ジメチル、3-アミノプロピル))並びにこれらの組合せが挙げられる。
【0047】
酸化亜鉛粒子は、0.1~85.0重量%の量で分散液中に存在してもよく、これには0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、2.0%、3.0%、4.0%、5.0%、6.0%、7.0%、8.0%、9.0%、10.0%、15.0%、20.0%、25.0%、30.0%、35.0%、40.0%、45.0%、50.0%、55.0%、60.0%、65.0%、70.0%、75%、80%、及び85%重量が含まれる。
【0048】
界面活性剤/分散剤は、酸化亜鉛粒子の質量の1.0~100.0%の量で分散液中に存在してもよく、これには1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%、2.0%、2.5%、3.0%、3.5%、4.0%、4.5%、5.0%、5.5%、6.0%、6.5%、7.0%、7.5%、8.0%、8.5%、9.0%、9.5%、10.0%、15.0%、20.0%、25.0%、30.0%、35.0%、40.0%、45.0%、50.0%、55.0%、60.0%、65.0%、70.0%、75.0%、80.0%、85.0%、90.0%及び95.0%が含まれる。好ましくは、界面活性剤は、酸化亜鉛粒子の質量の2.0~60.0%の量で存在する。
【0049】
分散液中の液体担体の量は、分散液中に存在する酸化亜鉛粒子の量及び界面活性剤の量に依存する。酸化亜鉛又は表面処理された酸化亜鉛粒子と界面活性剤を組み合わせた後、所望の分散液を生成するために必要な任意の適切な量で担体ビヒクルを添加することができる。
【0050】
酸化亜鉛粒子は、調製物の油相中又は粉末調製物中に形成されてもよい。好ましくは、調製物は局所塗布に適切である。適切な調製物の例として、エマルジョン(水中油型及び油中水型エマルジョン)、スプレー、バーム、スティック、粉末、パウダートゥクリーム(powder-to-cream)調製物、親油性調製物及び無水調製物が挙げられる。
【0051】
酸化亜鉛粒子を含有する調製物は、様々な異なる用途で使用するために配合されてもよい。適切な配合物の例として、化粧品(例えば、チーク、フェイスパウダー、ファンデーション、口紅、化粧下地及びルージュ)、スキンケア製品(例えば、皮膚洗浄用クリーム、ローション、液体及びパッド;フェイス及びネッククリーム、ローション、パウダー及びスプレー;ボディ及びハンドクリーム、ローション、パウダー及びスプレー;フットパウダー及びスプレー;保湿剤;ナイトクリーム、ローション、パウダー及びスプレー;ペーストマスク/泥パック;並びにスキンフレッシュナー)並びに日焼け止め剤が挙げられる。日焼け止め剤は特に好ましい配合物である。配合物は、局所投与に適した任意の形態、例えば局所懸濁液、ローション、クリーム、軟膏、ゲル、ヒドロゲル、フォーム、ペースト、チンキ、リニメント、スプレー可能な液体、エアロゾル、スティック又は粉末で提供されてもよい。配合物は、共乳化剤、油脂、ワックス、安定化剤、増粘剤、生物活性成分、膜形成剤、香料、色素、真珠光沢剤、保存剤、顔料、電解質及びpH調整剤などの不活性成分、補助剤及び/又は添加剤を含んでいてもよい。
【0052】
日焼け止め剤は、酸化亜鉛粒子及び追加のUV線保護剤を含んでもよい。UV線保護剤は、UV線を吸収、反射及び/又は散乱させる任意の物質であってもよい。日焼け止め剤は、メトキシクリレン及びポリエステル-8などの紫外線防御指数(SPF、sun protection factor)増強剤又は安定化剤を含んでいてもよい。適切な追加のUV線保護剤の例として、二酸化チタン(TiO2)、p-アミノ安息香酸(PABA,p-aminobenzoic acid)、パディメートO(OD-PABA、オクチルジメチル-PABA、σ-PABA)、フェニルベンズイミダゾールスルホン酸(エンスリゾール、EUSOLEX(登録商標)232、PBSA、PARSOL(登録商標)HS)、シノキサート(2-エトキシエチルp-メトキシシンナメート)、ジオキシベンゾン(ベンゾフェノン-8)、オキシベンゾン(ベンゾフェノン-3、EUSOLEX(登録商標)4360、ESCALOL(登録商標)567)、ホモサレート(サリチル酸ホモメチル、HMS)、アントラニル酸メンチル(メラジメート)、オクトクリレン(EUSOLEX(登録商標)OCR、2-シアノ-3,3-ジフェニルアクリル酸、2-エチルヘキシルエステル)、メトキシケイヒ酸オクチル(オクチノキサート、EMC、OMC、メトキシケイヒ酸エチルヘキシル、ESCALOL(登録商標)557、パラメトキシケイヒ酸2-エチルヘキシル、PARSOL(登録商標)MCX)、サリチル酸オクチル(オクチサレート、サリチル酸2-エチルヘキシル、ESCALOL(登録商標)587)、スリソベンゾン(2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸、3-ベンゾイル-4-ヒドロキシ-6-メトキシベンゾスルホン酸、ベンゾフェノン-4、ESCALOL(登録商標)577)、サリチル酸トロラミン(サリチル酸トリエタノールアミン)、アボベンゾン(1-(4-メトキシフェニル)-3-(4-tert-ブチルフェニル)プロパン-1,3-ジオン、ブチルメトキシジベンゾイルメタン、BMDBM、PARSOL(登録商標)1789、EUSOLEX(登録商標)9020)、エカムスル(MEXORYL(登録商標)SX、テレフタリリデンジカンファースルホン酸)、酸化セリウム(CeO2)、ドロメトリゾールトリシロキサン(MEXORYL(登録商標)XL)、ビス-エチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン(TINOSORB(登録商標)S)、ビソクトリゾール(TINOSORB(登録商標)M、MILESTABTM360)及びこれらの組合せが挙げられる。好ましくは、追加のUV線保護剤は、米国(米国食品医薬品局又はFDA,U.S. Food and Drug Administration)、カナダ、欧州連合、オーストラリア、日本、韓国、中国、メルコスール、東南アジア諸国連合(ASEAN,the Association of Southeast Asian Nations)、独立国家共同体(CIS,the Commonwealth of Independent States)及び湾岸協力会議(GCC,the Gulf Cooperation Council)の規制機関の少なくとも1つによって承認されている。
【0053】
日焼け止め剤用途での使用に適した酸化亜鉛は、色試験(Color Test)に記載されているもののように完全に分散した状態にあるとき、少なくとも370nmの臨界波長(76 FR 35660, June 17, 2011、76 FR 38975, July 5, 2011への改正を参照されたい)を有するという基準も満たさなければならない。この基準を満足しない場合、酸化亜鉛から配合された生成物は、選択された管轄区域で広域スペクトル保護を提供するという基準を満たさないであろう(US 21CFR201.327及びHealth Canada Sunburn Protectants Monograph of October 12, 2006を参照されたい)。臨界波長は、スペクトルの吸光度曲線の積分値が、290nm~400nmのUVスペクトルの積分値の90%に達する波長として特定される。臨界波長は以下の式によって定義される:
【0054】
【0055】
ここでλc=臨界波長、A(λ)=各波長における平均吸光度、dλ=測定間の波長間隔であり、平均臨界波長が370nm以上の場合、広域スペクトル保護と分類される。以下の非比較例のすべての酸化亜鉛は、376nm~380nmの範囲の臨界波長値を有する。好ましくは、化学量論的酸化亜鉛は、376~380nmを含む少なくとも370nm、より好ましくは少なくとも375nmの臨界波長値を有する。好ましくは、コーティングされた粒子、多層コーティングされた粒子、分散液、又は化粧学/皮膚科学的組成物は、376~380nmを含む少なくとも370nm、より好ましくは少なくとも375nmの臨界波長値を有する。
【0056】
酸化亜鉛粒子を含む配合物は、DPPH光触媒安定性試験における性能によって証明されるように、UV曝露時に光ラジカルを発生する傾向が少ないため、様々な健康上の利益を提供する。UVによる光ラジカル発生が少ないことを特徴とし、それゆえ前述の試験に従って光触媒安定性である酸化亜鉛粒子は、(1)UV線に曝露される局所調製物の抗酸化性能を増強し、(2)電子スピン共鳴試験の結果に基づき、UV曝露後の皮膚のみならず(3)皮膚の真皮層及び表皮層のフリーラジカル発生を抑制し、(4)UV線及び環境汚染物質の組み合わされた影響から保護することができることが以前に(米国特許第10,555,892号明細書、H. W. Sarkas, K. Cureton, and K. Jung, Eurocosmetics, 5, 20 (2018)、E. F. Bernstein, W. W. Sarkas, and P. Boland, J. Cosmet. Dermatol., 00, 1-9 (2019))示されている。
【0057】
これらの特性により、酸化亜鉛粒子は、UV線の直接的な減衰のみならず、フリーラジカル及び活性酸素種の抑制を通じて、皮膚、毛髪及び爪の酸化ストレス又は損傷を治療又は予防し、したがってケラチン物質(毛髪、手の爪、足の爪及び皮膚の外層など)を保護し、ヒトの皮膚を保護し、過酸化脂質を抑制し、皮膚の筋及びシワを予防又は低減し、皮膚の弾力性の損失を予防し、皮膚の菲薄化を予防し、皮膚の色素暗色化を予防することができる。これらの健康上の利益は、酸化亜鉛粒子を含有する配合物を皮膚、毛髪及び/又は爪の領域に塗布することによって得ることができる。
【0058】
本発明の好ましい態様の1つは、コーティングされた粉末を含有する分散液に抗酸化物質を添加することである。抗酸化物質は、UV線に曝露されると酸化され、抗酸化力(AP)が低下する。さらに、酸化亜鉛及び他の金属酸化物は光反応性であり、UV線曝露時にフリーラジカルを生成する。金属酸化物を抗酸化物質と組み合わせると、抗酸化物質単独よりもAPの損失が大きくなる。しかし、コーティングされた粉末と抗酸化物質を組み合わせることにより、分散液の相対AP値は抗酸化物質単独のものよりも高く保たれる。コーティングされた粉末は超光安定性であるため、コーティングされた粉末及び抗酸化物質の組成物は、共に相乗効果を示す。UV線が粒子によって遮断又は吸収され、AP値が保持されるため、抗酸化物質は効果を発揮することができる。
【0059】
分散液は、1種又は2種以上の抗酸化物質を含有してもよい。抗酸化物質は、ビタミン、抗酸化ミネラル、抗酸化タンパク質、抗酸化酵素及び補酵素、植物栄養素、抗酸化ホルモン、マイコスポリン様アミノ酸(MAA,mycosporine-like amino acid)、海藻に由来する抗酸化物質、及び他の種類の抗酸化物質を含んでもよい。抗酸化物質は、水溶性、脂溶性、又は脂溶性かつ水溶性であってもよい。適切なビタミン類として、ビタミンA(レチノイド及びカロテノイドを含む)、ビタミンC(アスコルビン酸)、ビタミンE(トコフェロール)、及びビタミンKが挙げられる。適切なレチノイドとして、レチノール、レチノイン酸(トレチノイン)、レチナール及びパルミチン酸レチニルが挙げられる。適切なミネラルとして、銅、マンガン、ヨウ化物及び亜鉛が挙げられる。適切な酵素及び補酵素として、メラトニン、スーパーオキシドジスムターゼ、カタラーゼ及びグルタチオンペルオキシダーゼが挙げられる。適切な植物栄養素として、カロテノイド、フラボノイド、フェノール酸及び非フラボノイドフェノール類が挙げられる。適切なカロテノイドとして、アルファ-カロチン、レチノール、アスタキサンチン、ベータ-カロチン、カンタキサンチン、ルテイン、リコピン及びゼアキサンチンが挙げられる。適切なフラボノイドとして、ヒンダードフェノール、アピゲニン、ルテオリン、タンジェリチン、イソラムネチン(isohamnetin)、ケンペロール、ミリセチン、プロアントシアニジン、ケルセチン、エリオジクチオル、ヘスペレチン、ナリンゲニン、カテキン、ガロカテキン、エピカテキン、エピガロカテキン、テアルビジン、ダイゼイン、ゲニステイン、グリシテイン、レスベラトロール、プテロスチルベン、シアニジン、デルフィニジン、マルビジン、ペラルゴニジン及びペチュニジンが挙げられる。適切なフェノール酸として、フェノール、ポリフェノール、アルキル化フェノール、及びヒンダードフェノールが挙げられる。適切なフェノール類として、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、カンナビノイド、カプサイシン、カルバクロール、クレゾール、エストラジオール、オイゲノール、没食子酸、グアイアコール、チモール、チロシン及びセサモールが挙げられる。没食子酸は、ガレートとしても公知の没食子酸の塩及びエステルを含む。適切な非フラボノイドフェノール類として、クルクミン、フラボノリグナン、キサントン及びオイゲノールが挙げられる。適切なマイコスポリン様アミノ酸(MAA)として、マイコスポリン-グリシン(gycine)及びマイコスポリン-タウリンなどのモノ置換MAA、パリテン酸及びシノリンなどのジ置換MAA、並びにパリシン-スレオニン硫酸及びパリシン-スレオニングリコシドなどの誘導体化MAAが挙げられる。適切なMAAの例は、Wada et al.(2015)に見出すことができる。海藻に由来する抗酸化物質として、アスコルビン酸塩、グルタチオン、フロロタンニン、エコール、エクストロノール、プレニルトルキノン、テトラプレニルトルキノール、サルゴサンベルゴールA、フコジフロレトール、テルペノイド、フィコシアニン、フィコシアノビリン、フコキサンチン、フロロタンニン及びルテインが挙げられる。可能性がある他の有機抗酸化物質として、ビリルビン、クエン酸、シュウ酸、フィチン酸、n-アセチルシステイン、尿酸、緑茶、ヒドロキシ-チロソール(hydoxy-tryrosol)、ジヒドロ-ケルセチン(dihydo-quercetin)、ユビキノン、グルタチオン、アルファ-リポ酸、葉酸、エラグ酸、コーヒー酸及びフィトエストロゲンが挙げられる。上記の抗酸化物質はまた、抗酸化物質の任意の塩、エステル又は酸の形態も含む。
【0060】
分散液は、1種又は2種以上のフィト抽出物(phyto-extracts)を含有してもよい。「フィト抽出物」は、植物から得られる物質である。好ましくは、フィト抽出物は色を付与する。フィト抽出物は、非水性組成物と適合し、空気中で安定であり、皮膚に対して非染色性であり、使用される量で皮膚に対して非刺激性であり、使用される量で非毒性でなければならない。フィト抽出物は、少なくとも95%の純度レベルを有する。適切なフィト抽出物の例として、クルクミン、リコピン、ベータ-カロチン、ルテイン、ゼアキサンチン、メソ-ゼアキサンチン及びアントシアニンが含まれる。クルクミンの供給源には、ターメリックが含まれる。リコピンの供給源には、ビート、サクランボ、クコの実、ピンクグレープフルーツ、ザクロ、ラズベリー、赤キャベツ、赤タマネギ、イチゴ、トマト及びスイカが含まれる。ベータ-カロチンの供給源には、アンズ、カンタループ、ニンジン、オレンジ、パパイヤ、モモ、カキ、カボチャ、ペポカボチャ、サツマイモ、冬カボチャ及びヤムイモが含まれる。ルテイン、ゼアキサンチン及びメソ-ゼアキサンチンの供給源には、アボカド、ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、サヤインゲン、葉緑野菜、オレンジトウガラシ、エンドウ、ホウレンソウ、イエローコーン及びズッキーニが含まれる。アントシアニンの供給源には、ビート、カシス、ブルーベリー、サクランボ、ナス、イチジク、ブドウ、プラム、プルーン、赤キャベツ及びアカフサスグリが含まれる。フィト抽出物は、加水分解、水素化、エステル化又は鹸化により化学修飾されてもよい。通常、色を付与するフィト抽出物が化学修飾された場合、もはや色を付与しない可能性がある。例えば、クルクミンは黄色を付与するが、水素化されたテトラ-ヒドロクルクミンは無色である。
【0061】
分散液は、1又は2以上の植物バイオ抽出物を含有してもよい。「植物バイオ抽出物」は、芳香を与え、色も与え得る植物の天然抽出物である。植物バイオ抽出物は、非水性組成物と適合し、空気中で安定であり、皮膚に対して非染色性であり、使用される量で皮膚に対して非刺激性であり、使用される量で非毒性でなければならない。植物バイオ抽出物の合成されたものは、用語「植物バイオ抽出物」の範囲外である。適切な植物バイオ抽出物の例として、アルニカ抽出物(アルニカ・モンタナ(Arnica montana))、バジル抽出物(スイートバジル(Ocimum basilicum))、ボスウェリア抽出物(ボスウェリア・サクラ(Boswellia sacra))、キンセンカ抽出物(カレンデュラ(Calendula officinalis))、カモミール抽出物(ローマカミツレ(Anthemis nobilis))、ケイヒ油(セイロンニッケイ(Cinnamomum verum))、クローブ油(チョウジ(Syzygium aromaticum))、オウレン抽出物(コプチス・アスプレニイフォリア(Coptis aspleniifolia))、エキナセア抽出物(ムラサキバレンギク(Echinacea purpurea))、ユーカリ油(ユーカリプタス・オクシデンタリス(Eucalyptus occidentalis))、ショウガ根抽出物(Zingiber officinale)、ブドウ種子抽出物(ヨーロッパブドウ(Vitis vinefera))、緑茶抽出物(チャノキ(Camilia sinensis))、グッグル樹脂抽出物(Commiphora wightii)、セイヨウトチノキの実抽出物(Aesculus hippocastanum)、イタドリ抽出物(Polygonum cuspidatum)、カンゾウ抽出物(スペインカンゾウ(Glycyrrhiza glabra))、ニームの葉抽出物(インドセンダン(Azadirachta indica))、オリーブ果実及びオリーブの葉の抽出物(Olea europaea)、パパイヤ抽出物(Carica papaya)、ペルーバルサム(Myroxylon balsamum)、パイナップル抽出物(Ananas comosus)、ザクロ抽出物(Punica granatum L.)、ローズマリー抽出物(Rosmarinus officinalis)、セージ抽出物(Salvia officinalis)、ビャクダン抽出物(Santalum album)、ウコン抽出物(Curcuma longa)及びマンサク抽出物(Hamamelis japonica)が挙げられる。すべての上記例は、植物の同一属の異なる種を含み得る。例えば、マンサク抽出物は、マンサク、ハマメリス・オバリス(Hamamelis ovalis)、シナマンサク(Hamamelis mollis)又はアメリカマンサク(Hamamelis virginiana)から得ることができる。
【0062】
組成物は、フィト抽出物を含んでいてもよい。フィト抽出物は、色を与えるように選択されてもよい。色を付与しないフィト抽出物も、組成物に含まれてもよい。フィト抽出物は、非水性組成物と適合し、空気中で安定であり、皮膚に対して非染色性であり、使用される量で皮膚に対して非刺激性であり、使用される量で非毒性でなければならない。フィト抽出物は、少なくとも95%の純度レベルを有する。適切なフィト抽出物の例には、クルクミン、リコピン、ベータ-カロチン、ルテイン、ゼアキサンチン、メソ-ゼアキサンチン及びアントシアニンが含まれる。クルクミンの供給源には、ターメリックが含まれる。リコピンの供給源には、ビート、サクランボ、クコの実、ピンクグレープフルーツ、ザクロ、ラズベリー、赤キャベツ、赤タマネギ、イチゴ、トマト及びスイカが含まれる。ベータ-カロチンの供給源には、アンズ、カンタループ、ニンジン、オレンジ、パパイヤ、モモ、カキ、カボチャ、ペポカボチャ、サツマイモ、冬カボチャ及びヤムイモが含まれる。ルテイン、ゼアキサンチン及びメソ-ゼアキサンチンの供給源には、アボカド、ブロッコリー、芽キャベツ、キャベツ、サヤインゲン、葉緑野菜、オレンジトウガラシ、エンドウ、ホウレンソウ、イエローコーン及びズッキーニが含まれる。アントシアニンの供給源には、ビート、カシス、ブルーベリー、サクランボ、ナス、イチジク、ブドウ、プラム、プルーン、赤キャベツ及びアカフサスグリが含まれる。フィト抽出物は、加水分解、水素化、エステル化又は鹸化により化学修飾され得る。クルクミンなどの通常は色を付与するフィト抽出物が、テトラ-ヒドロクルクミンのように化学修飾された場合、もはや色を付与しない可能性がある。組成物は、0.01%~5.0%のフィト抽出物、好ましくは0.02%、0.03%、0.04%、0.05%、0.06%、0.07%、0.08%、0.09%、0.10%、0.11%、0.12%、0.13%、0.14%、0.15%、0.16%、0.17%、0.18%、0.19%及び0.20%のフィト抽出物を含む0.01%~1.0%のフィト抽出物を含有し得る。
【0063】
組成物は、植物バイオ抽出物を含んでいてもよい。植物バイオ抽出物は、芳香を与え、色も与える場合がある。植物バイオ抽出物は、親油性又は疎水性などの非水性組成物と適合し、空気中で安定であり、皮膚に対して非染色性であり、使用される量で皮膚に対して非刺激性であり、使用される量で非毒性でなければならない。適切な植物バイオ抽出物の例として、アルニカ抽出物(アルニカ・モンタナ)、バジル抽出物(スイートバジル)、ボスウェリア抽出物(ボスウェリア・サクラ)、キンセンカ抽出物(カレンデュラ)、カモミール抽出物(ローマカミツレ)、ケイヒ油(セイロンニッケイ)、クローブ油(チョウジ)、オウレン抽出物(コプチス・アスプレニイフォリア)、エキナセア抽出物(ムラサキバレンギク)、ユーカリ油(ユーカリプタス・オクシデンタリス)、ショウガ根抽出物、ブドウ種子抽出物(ヨーロッパブドウ)、緑茶抽出物(チャノキ)、グッグル樹脂抽出物、セイヨウトチノキの実抽出物、イタドリ抽出物、カンゾウ抽出物(スペインカンゾウ)、ニームの葉抽出物(インドセンダン)、オリーブ果実及びオリーブの葉の抽出物、パパイヤ抽出物、ペルーバルサム、パイナップル抽出物、ザクロ抽出物、ローズマリー抽出物、セージ抽出物、ビャクダン抽出物、ウコン抽出物及びマンサク抽出物が挙げられる。分散液は、藻類種からの抽出物を含んでいてもよい。これらの種には、ヒジキ(Hijikia fusiformis)、スピルリナ・プラテンシス(Spirulina platensis)、アファニゾメノン属(Aphanizomenon)、スピルリナ・マキシマ(Spirulina maxima)、サルガッスム・クジェラマニアヌム(Sargassum kjellamanianum)、S.シリクアストルム(S.siliquastrum)、ロドメラ・コンフェルボイデス(Rhodomela confervoides)、シンフジョクラジア・ラチウスクラ(Symphjocladia latiuscula)、カッパフィクス・アルバレッジ(Kappaphycus alvarezzi)、ボツリオコッカス・ブラウニー(Botryococcus braunii)、ドナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)、シストセイラ・クリニテ(Cystoseira crinite)、ツルアラメ(Ecklonia stolonifera)、ウミトラノオ(Sargassum thunbergii)、S.サンベルギイ(S.thunbergii)及びカジメ(Ecklonia cava)が含まれる。組成物は、0.10%~10.0%の植物バイオ抽出物、好ましくは2.1%、2.2%、2.3%、2.4%、2.5%、2.6%、2.7%、2.8%、2.9%、3.0%、3.1%、3.2%、3.3%、3.4%、3.5%、3.6%、3.7%、3.8%、3.9%及び4.0%の植物バイオ抽出物を含む2.0%~6.0%の植物バイオ抽出物を含有し得る。
【0064】
組成物は、油溶性抗酸化物質を含んでいてもよい。抗酸化物質が存在する場合、抗酸化物質はフィト抽出物とは異なる。適切な抗酸化物質の例として、カロチン、カテキン、リコピン、レスベラトロール、ビタミンE又はビタミンAが挙げられ、「ビタミンE」は、アルファ-トコフェロール及びガンマ-トコトリエノールなどの、化合物のビタミンEファミリーを構成するトコフェロール又はトコトリエノール化合物のいずれかを指す場合がある。組成物は、0.01%~5.0%の抗酸化物質、好ましくは0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%及び2.0%の抗酸化物質を含む0.1%~3.0%の抗酸化物質を含有してもよい。
【0065】
分散液は、1種又は2種以上の原生生物抽出物を含有してもよい。「原生生物抽出物」は、原生生物から得られる物質である。原生生物には、動物、植物又は菌類ではない真核生物が含まれる。原生生物抽出物は、アスタキサンチンが豊富な物質であることが好ましい。適切な原生生物抽出物の例には、プランクトン抽出物及び藻類抽出物、特に紅藻類抽出物が含まれる。
【0066】
分散液は、原生生物抽出物を含んでいてもよい。原生生物抽出物は、アスタキサンチンが豊富な物質であることが好ましい。適切な原生生物抽出物の例には、プランクトン抽出物及び藻類抽出物、特に紅藻類抽出物が含まれる。分散液は、0.01%~5.0%の原生生物抽出物、好ましくは0.1%、0.2%、0.3%、0.4%、0.5%、0.6%、0.7%、0.8%、0.9%、1.0%、1.1%、1.2%、1.3%、1.4%、1.5%、1.6%、1.7%、1.8%、1.9%及び2.0%の原生生物抽出物を含む0.1%~3.0%の原生生物抽出物を含有してもよい。化粧学及び皮膚科学的調製物は、化粧品成分、補助剤及び/又は添加剤、例えば共乳化剤、油脂及びワックス、安定化剤、増粘剤、生物活性成分、膜形成剤、香料、色素、真珠光沢剤、防腐剤、顔料、電解液、及びpH調整剤を含んでもよい。適切な共乳化剤は、好ましくは公知のW/O及びO/W乳化剤、例えばポリグリセロールエステル、ソルビタンエステル又は部分的にエステル化されたグリセリドである。油脂の典型的な例は、グリセリド;蜜蝋、パラフィンワックス又は微細結晶性ワックスなどのワックスであり、親水性ワックスとの組合せであってもよい。安定化剤は、脂肪酸の金属塩、例えばステアリン酸マグネシウム、アルミニウム及び/又は亜鉛を含む。増粘剤の例には、架橋ポリアクリル酸及びその誘導体、キサンタンガム、グアーガム、寒天、アルギン酸塩及びチロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシエチルセルロースなどの多糖類、並びに脂肪アルコール、モノグリセリド及び脂肪酸、ポリアクリレート、ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンが含まれる。生物活性成分には、植物抽出物、タンパク質加水分解物及びビタミン複合体が含まれる。通例の膜形成剤には、例えばキトサン、微細結晶性キトサン又は四級化キトサン、ポリビニルピロリドン、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー、アクリル酸系のポリマー及び第四級セルロース誘導体などの親水コロイドが含まれる。防腐剤の例には、パラベン、ジアゾリジニル尿素、ブチルカルバミン酸ヨードプロピニル及びソルビン酸が含まれる。真珠光沢剤の例には、ジステアリン酸エチレングリコールなどのグリコールジステアリン酸エステル、脂肪酸及び脂肪酸モノグリコールエステルが含まれる。使用することができる色素は、化粧品目的に適切であり、承認された物質である。アミノ酸、レチノール、フラボノイド、ポリフェノール、ビタミンC及びトコフェロールなどの抗酸化物質も含まれてもよい。
【0067】
化粧学及び皮膚科学的調製物は、溶液、分散液又はエマルジョンの形態であってもよく、例えば、日焼け止め剤調製物は、例えば油中水型クリーム、水中油型クリーム及びローション、エアロゾル発泡クリーム、ゲル、油、マーキング用ペンシル、粉末、スプレー又はアルコール-水性ローションとして、液体、ペースト又は固体形態であってもよい。これらの組成物用の溶媒には、水;カプリン酸又はカプリル酸のトリグリセリド、同様にヒマシ油などの油;油脂、ワックス並びに他の天然及び合成脂肪物質、脂肪酸と低炭素数のアルコール、例えばイソプロパノール、プロピレングリコール若しくはグリセロールとのエステル、又は脂肪アルコールと低炭素数のアルカン酸又は脂肪酸とのエステル;低炭素数のアルコール、ジオール又はポリオール及びそれらのエーテル、好ましくはエタノール、イソプロパノール、プロピレングリコール、グリセロール、エチレングリコール、エチレングリコールモノエチル又はモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチル、モノエチル又はモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチル又はモノエチルエーテルが含まれる。他の例には、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピル、オレイン酸イソプロピル、ステアリン酸n-ブチル、アジピン酸ジイソプロピル、ラウリン酸n-ヘキシル、オレイン酸n-デシル、ステアリン酸グリセリル、ステアリン酸イソオクチル、ステアリン酸イソノニル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-エチルヘキシル、ステアリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルドデシル、オレイン酸オレイル、エルカ酸オレイル、オレイン酸エルシル、及びエルカ酸エルシルが含まれる。
【0068】
化粧学及び皮膚科学的調製物は、固体スティックの形態であってもよく、天然又は合成ワックス、脂肪アルコール又は脂肪酸エステル、液体油、例えばパラフィン油、ヒマシ油、ミリスチン酸イソプロピル、半固体構成成分、例えばワセリン、ラノリン、固体構成成分、例えば蜜蝋、セレシン及び微細結晶性ワックス及び臭蝋、並びにカルナウバワックス及びキャンデリラワックスを含む高融点ワックスを含んでもよい。
【0069】
化粧学的調製物はゲルの形態であってもよく、好ましくは水、有機増粘剤、例えばアラビアガム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、セルロース誘導体、例えばメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及び無機増粘剤、例えばケイ酸アルミニウム、例えばベントナイト、又はポリエチレングリコールとステアリン酸又はジステアリン酸ポリエチレングリコールの混合物を含む。
【0070】
酸化亜鉛及び酸化亜鉛を含有する組成物は、酸化亜鉛粒子を含有する組成物で皮膚をコーティングすることを含む、皮膚を光から保護する方法で使用されてもよい。酸化亜鉛及び酸化亜鉛を含有する組成物は、酸化亜鉛粒子を含有する組成物でケラチン物質をコーティングすることを含む、ケラチン物質を保護する方法で使用されてもよい。酸化亜鉛及び酸化亜鉛を含有する組成物は、酸化亜鉛粒子を含有する組成物で皮膚をコーティングすることを含む、皮膚を光から保護する方法で使用されてもよい。酸化亜鉛及び酸化亜鉛を含有する組成物は、酸化亜鉛粒子を含有する組成物で皮膚をコーティングすることを含む、過酸化脂質を抑制する方法で使用されてもよい。酸化亜鉛及び酸化亜鉛を含有する組成物は、酸化亜鉛粒子を含有する組成物で皮膚をコーティングすることを含む、皮膚の筋及びシワを予防する又は低減する方法で使用されてもよい。酸化亜鉛及び酸化亜鉛を含有する組成物は、酸化亜鉛粒子を含有する組成物で皮膚をコーティングすることを含む、皮膚の弾力性の損失を予防する方法で使用されてもよい。酸化亜鉛及び酸化亜鉛を含有する組成物は、酸化亜鉛粒子を含有する組成物で皮膚をコーティングすることを含む、皮膚の菲薄化を予防する方法で使用されてもよい。酸化亜鉛及び酸化亜鉛を含有する組成物は、酸化亜鉛粒子を含有する組成物で皮膚をコーティングすることを含む、環境汚染から皮膚を保護する方法で使用されてもよい。
[実施例]
【0071】
例1
六方晶紅亜鉛鉱結晶構造を有するUSPグレードの酸化亜鉛粒子を、移行アーク物理的気相合成によって、ZnO 1kg当たり4.0kWの比電力入力、及びZn蒸気1kg当たり空気5.3ft
3の急冷ガス入力(急冷空気は、安定したアークを維持する噴射された合流プラズマジェットの原点の最も近くに導入される)で、ZnO 1kg当たり空気1300ft
3の平均輸送空気流量を利用して生成した。得られた粉末生成物は、平均粒子径40nm、分散色試験においてΔE値17.69±0.26(95%CI)、DPPH光触媒安定性試験においてΔE値7.22±0.29、及びDPPH暗所ラジカル試験(DPPH Dark Radical Test)においてΔE値0.17±0.15(95%CI)を有する。
図2に示される熱重量分析の結果は、生成物が化学量論的ZnOであることを示す。
【0072】
例2
比較例
六方晶紅亜鉛鉱結晶構造を有するUSPグレードの酸化亜鉛粒子を、移行アーク物理気相合成により、ZnO 1kg当たり3.4kWの比電力入力及び急冷ガス入力なしで、ZnO 1kg当たり空気1,130ft
3の平均輸送空気流量を利用して生成した。得られた白色粉末生成物は、平均粒子径150nm、分散色試験においてΔE値9.51±0.10(95%CI)、及びDPPH光触媒安定性試験においてΔE値18.57±0.17を有する。
図2に示される熱重量分析の結果は、生成物が化学量論的ZnOであることを示す。
【0073】
例3
化学量論的酸化亜鉛標準の比較例
例2の粉末を空気中800℃で1時間焼成した。得られた白色粉末生成物は、平均粒子径300nm、分散色試験においてΔE値9.69、及びDPPH光触媒安定性試験においてΔE値34.80を有する。
図2に示される熱重量分析の結果により、生成物が化学量論的ZnOであることが確認される。
【0074】
例4
米国特許第6,869,956号明細書の比較例
例3の粉末を水素/窒素雰囲気中で還元した。得られた粉末生成物は、UVA線を照射すると緑色の発光を呈し、分散色試験において16.50のΔE値、及びDPPH光触媒安定性試験において16.45のΔE値を有する。DPPH光触媒安定性試験の結果は、ΔE値が親酸化亜鉛のものよりも小さく、統計的に有意であることから、比較組成物のものと一致する。結果は、材料が、化学量論的酸化亜鉛と比較すると光触媒安定性でないことも明確に示しており、実際、認識可能な着色を呈さないいくつかの市販の酸化亜鉛よりも光触媒安定性でないことが見出される(例15参照)。本例の組成物はまた、DPPH暗所ラジカル試験(下記参照)で10.21のΔE値を生じ、組成物が暗所でフリーラジカルを生成することを示し、この材料が局所UV保護配合物環境にとって理想的ではないことを示唆する。これは、化学量論的酸化亜鉛とは明らかに対照的である。
図2に示す熱重量分析の結果は、約450C°に開始点を有する明確な質量増加特徴に基づき、生成物が準化学量論的ZnOであることを示す。TGA分析を使用して組成を計算してもよく、この組成はおよそZnO
0.96であり、したがって化学量論的酸化亜鉛とは明らかに対照的に、酸素が著しく不足している。
【0075】
放射線への曝露の非存在下での酸化亜鉛粉末のフリーラジカル発生を、以下の試験を使用して測定する。この試験を「DPPH暗所ラジカル試験」と称する。まず、50mLの使い捨てプラスチックビーカー6個に、活性物質基準で0.025g±0.001gのZnO粉末を添加する。ジフェニルピクリルヒドラジルとも称される0.0125%DPPH(ジ(フェニル)-(2,4,6-トリニトロフェニル)イミノアザニウム;CAS番号1898-66-4)を、BCS(エチレングリコールブチルエーテル)中で調製する。酸化亜鉛粉末を含有する各ビーカーに、0.0125%DPPHのBCS中溶液19.950g±0.001、及び脱イオン水0.025g±0.001gを添加する。酸化亜鉛活性物質を分散液から試験する場合、酸化亜鉛活性物質0.025g±0.001を、酸化亜鉛含有量が既知の分散液から6個の50mL使い捨てプラスチックビーカーに添加する。公称0.0125%のDPPH溶液をBCS(エチレングリコールブチルエーテル)中で調製し、BCSの濃度は、液体分散担体及び酸化亜鉛を含有する分散液中の他の賦形剤成分を補償するのに十分な量で調整される。調整した公称0.0125%DPPHのBCS中溶液19.975g±0.001及び脱イオン水0.025g±0.001gを、酸化亜鉛分散液を含有する各ビーカーに添加する。試料をガラス撹拌棒で十分に混合し、各ビーカーを60秒間超音波処理し、粒子が溶液全体によく分散するようにする。超音波処理後、試料を標識されたシンチレーションバイアルに移す。次に、試料を、40±2℃に維持された暗室に正確に60分間移す。1時間の暗室保持期間の後、各試料を遠心管に移し、5000RCFで15分間遠心分離し、その後0.2ミクロンのPVDFシリンジフィルターを使用して濾過し、すべての粒子状物質を除去する。各試料について、この濾過液10mlを新しいシンチレーションバイアルに移し、色試験を行う。0.0125%DPPHのBCS中溶液19.950g±0.001、及び脱イオン水0.025g±0.001gをシンチレーションバイアルに添加し、その後十分に混合して色基準(color reference)を調製する。この標準液10mlを新しいシンチレーションバイアルに移し、これを色試験用の色基準とする。
【0076】
各試料及び色基準の色を、NISTトレーサブル白色タイルを使用して校正されたKonica Minolta社製比色計CM-600D Colorimeter又は適切な同等の比色計で測定する。この試験を、「分散色試験」と称する。色差は、色基準に対する色の総変化(L*a*b*色空間におけるΔE)として表すことができる。ΔEは、CIE76の定義に従い、以下の式から計算される:
【0077】
【数4】
式中、
は、被験試料の色座標であり、式中
は、色基準の色座標である。データは、6つの試料の平均ΔE値として報告される。暗所でフリーラジカルを発生する傾向のない粒子は、色基準のものと知覚可能な色差がない溶液を生成するはずである。定量的には、上記のDPPH暗所ラジカル試験でΔEが1.0を超える場合、粒子は照射の非存在下でフリーラジカルを発生するとみなされる。
【0078】
例5
例1の粉末を粉末質量に対して2%のレシチンで表面処理し、粉末質量に対して8%のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2を分散剤として使用して、72重量%の酸化亜鉛でカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド担体に分散させた。プロペラブレードミキサーを使用して粉末を分散液に湿潤させ、低強度超音波処理を使用して分散させた。得られた分散液は注入可能であり、深い特徴的な橙色から黄褐色を有していた。得られた分散生成物は、分散色試験において17.98のΔE値、及びDPPH光触媒安定性試験において7.12のΔE値を有する。
【0079】
例6
例1の粉末を粉末質量に対して2%のレシチンで表面処理し、粉末質量に対して6%のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2を分散剤として使用して、75重量%の酸化亜鉛でカプリル酸カプリン酸ヤシアルキル担体に分散させた。プロペラブレードミキサーを使用して粉末を分散液に湿潤させ、粉砕のために水平媒体ミルに移した。0.3mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して、分散生成物が分散色試験で17.64のΔE値を生じるまで分散液を粉砕した(粉砕時間は330分であった)。得られた生成物は注入可能であり、DPPH光触媒安定性試験で7.04のΔE値を有する。
【0080】
例7
例1の粉末を、粉末質量に対して2%のレシチンで表面処理し、粉末質量に対して6%のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2を分散剤として使用して、75重量%の酸化亜鉛でカプリル酸カプリン酸ヤシアルキル担体に分散させた。プロペラブレードミキサーを使用して粉末を分散液に湿潤させ、粉砕のために水平媒体ミルに移した。0.2mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して、分散生成物が分散色試験で19.74のΔE値を生じるまで分散液を粉砕した(粉砕時間は450分であった)。得られた生成物は、DPPH光触媒安定性試験で6.53のΔE値を有する。
【0081】
例8
例7の分散液を、粉砕のために水平媒体ミルに戻した。0.2mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して、分散生成物が分散色試験で25.04のΔE値を生じるまで分散液をさらに粉砕した(粉砕時間は870分であった)。得られた生成物は、DPPH光触媒安定性試験で4.70のΔE値を有する。
【0082】
例9
例3の粉末を、分散剤として粉末質量に対して3%のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2及び1%のレシチンを使用して、30重量%の酸化亜鉛でカプリル酸カプリン酸ヤシアルキル担体に分散させた。分散液を、粉砕のために水平媒体ミルに移した。0.3mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して、分散生成物が分散色試験で20.51のΔE値を生じるまで分散液を粉砕した(粉砕時間は80分であった)。得られた生成物は、DPPH光触媒安定性試験で9.65のΔE値を有する。
【0083】
例10
例9の分散液を、さらなる粉砕のために水平媒体ミルに戻した。0.3mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して、分散生成物が分散色試験で25.45のΔE値を生じるまで分散液を粉砕した(粉砕時間は120分であった)。得られた生成物は、DPPH光触媒安定性試験で6.92のΔE値を有する。熱重量分析は、400℃より上で質量増加特徴を示さず、400℃~800℃の間で0.36%の小さな質量減少を示し、生成物が化学量論的ZnOとしてとどまっていたことを示した。
【0084】
例11
例2の粉末を、粉末質量に対して2.5重量%のオクチルトリエトキシシランを使用してシラン化表面処理に供した。得られた粉末を、粉末質量に対して2.5重量%のポリヒドロキシステアリン酸を使用して、70重量%の酸化亜鉛でカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド担体に分散させた。プロペラブレードミキサーを使用して、粉末を分散液に湿潤させた。当初、分散液は白色を呈していた。この分散液を水平媒体ミルに移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して、分散生成物が分散色試験で17.15のΔE値を生じるまで粉砕した(粉砕時間は120分であった)。得られた生成物は、DPPH光触媒安定性試験で9.02のΔE値を有する。このΔEは、例2からの出発粉末のΔE値のわずか49%である。
【0085】
例12
例2の粉末を、プロピルシルセスキオキサン/ジメチコノール/シリケートの架橋ポリマーを含む表面処理に供し、得られた粉末は92重量%の酸化亜鉛である。この粉末を、粉末質量に対して10重量%のレシチンを使用して、64重量%の酸化亜鉛でスクワランに分散させた。当初、分散液は白色を呈していた。分散液を水平媒体ミルに移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して、分散生成物が分散色試験で19.16のΔE値を生じるまで粉砕した(粉砕時間は60分であった)。得られた生成物は、DPPH光触媒安定性試験で4.02のΔE値を有する。
【0086】
例13
例1の粉末をシリカで表面処理し、92重量%の酸化亜鉛を含む粉末を得た。得られた粉末を、分散剤として粉末質量に対して2%のレシチン及び6%のジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2を使用して、60.3重量%の酸化亜鉛でカプリル酸/カプリン酸トリグリセリド担体に分散させた。プロペラブレードミキサーを使用して粉末を分散液に湿潤させ、得られた分散液は当初の黄褐色を呈していた。この分散液を、粉砕のために水平媒体ミルに移した。0.2mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して、分散生成物が分散色試験で17.08のΔE値を生じるまで分散液を粉砕した(粉砕時間は180分であった)。得られた生成物は、DPPH光触媒安定性試験で1.68のΔE値を有する。
【0087】
例14
例2の粉末をシリカで表面処理し、96重量%の酸化亜鉛を含む粉末を得た。得られた粉末を、分散剤として2.5%のレシチンを使用して、60.5重量%の酸化亜鉛でスクワラン担体に分散させた。当初、分散液は白色を呈していた。分散液を水平媒体ミルに移し、0.3mmのイットリア安定化ジルコニア媒体を使用して、分散生成物が分散色試験で19.44のΔE値を生じるまで分散液を粉砕した(粉砕時間は180分であった)。得られた生成物は、DPPH光触媒安定性試験で2.97のΔE値を有する。
【0088】
例15
市販酸化亜鉛の比較例
分散色試験及びDPPH光触媒安定性試験による評価のために、10種類の市販酸化亜鉛UVフィルターを世界中から入手した。材料は、酸化亜鉛UVフィルターが大規模に製造される世界の各地域から得た。粉末と分散液の両方の製品形態を評価した。材料は、「例15 市販材料1~10」と表記する。試験の結果を、前記の試料の結果と共に表1に示す。すべての市販材料は、分散色試験において12未満のΔE値、及びDPPH光触媒安定性試験において15より大きいΔE値を有し、光触媒安定性でないことが示される。
【0089】
例1~15に記載されたすべての材料について、分散色試験のΔE値をDPPH光触媒安定性のΔE値に対してプロットし、
図3に示す。データから、本発明の組成物は、比較組成物と比較して明確な特徴を呈することが明らかである。固有の光触媒安定性をさらに高めるために表面処理された化学量論的酸化亜鉛に関するデータ(例12~14)は、DPPH光触媒安定性のΔE値が、コーティングのない化学量論的酸化亜鉛粒子の特性を反映しているか、又はコーティングが光触媒安定性に大きく影響しない化学量論的酸化亜鉛とは異なる記号で図中に表記されることに留意されたい。
【0090】
【0091】
例16
例1の粉末を、酸化亜鉛粉末に対して8重量%のレシチンで表面処理した。レシチンをまず40重量%のUSPヘプタンに溶解し、溶液を、最終目標組成物を得るのに十分な量で、不活性環境中で混合しながら粉末に噴霧した。得られた混合物を乾燥させ、空気中110℃で熱処理した。得られた粉末生成物は、疎水性試験に合格する。
【0092】
例17
例1の粉末を、酸化亜鉛粉末に対して5重量%のセテアリルアルコールで表面処理した。セテアリルアルコールをまず20重量%のUSPイソプロパノールに溶解し、溶液を、最終目標組成物を得るのに十分な量で、不活性環境中で混合しながら粉末に噴霧した。得られた混合物を乾燥させ、空気中130℃で熱処理してエステル化表面処理をもたらした。得られた粉末生成物は、疎水性試験に合格する。
【0093】
例18
例1の粉末を、酸化亜鉛粉末に対して8重量%のオクチルドデカノールで表面処理した。オクチルドデカノールをまず40重量%のUSPイソプロパノールと混合し、溶液を、最終目標組成物を得るのに十分な量で、不活性環境中で混合しながら粉末に噴霧した。得られた混合物を乾燥し、空気中130℃で熱処理してエステル化表面処理をもたらした。得られた粉末生成物は、疎水性試験に合格する。
【0094】
例19
例13のシリカ表面処理粉末を、粉末に対して8重量%のレシチンでさらに表面処理した。レシチンをまず40重量%のUSPヘプタンに溶解し、溶液を、最終目標組成物を得るのに十分な量で、不活性環境中で混合しながら粉末に噴霧した。得られた混合物を乾燥させ、空気中110℃で熱処理した。得られた粉末生成物は、疎水性試験に合格する。
【0095】
例20
例13のシリカ表面処理粉末を、粉末に対して5重量%のセテアリルアルコールでさらに表面処理した。セテアリルアルコールをまず20重量%のUSPイソプロパノールに溶解し、溶液を、最終目標組成物を得るのに十分な量で、不活性環境中で混合しながら粉末に噴霧した。得られた混合物を乾燥させ、空気中130℃で熱処理してエステル化表面処理をもたらした。得られた粉末生成物は、疎水性試験に合格する。
【0096】
例21
例13のシリカ表面処理粉末を、粉末に対して8重量%のオクチルドデカノールでさらに表面処理した。オクチルドデカノールをまず40重量%のUSPイソプロパノールと混合し、溶液を、最終目標組成物を得るのに十分な量で、不活性環境中で混合しながら粉末に噴霧した。得られた混合物を乾燥し、空気中130℃で熱処理してエステル化表面処理をもたらした。得られた粉末生成物は、疎水性試験に合格する。
【0097】
例22
本例は、油中水型エマルジョン化粧料日焼け止め剤調製物を示す。それぞれの相の成分を以下に列挙する。
【0098】
【0099】
まず、相Aの成分を加熱された容器中で合わせ、均一になるまで混合しながら80℃に加熱することによって配合物を調製する。次に、相Bの成分を加熱された容器中で合わせ、均一になるまで混合しながら80℃に加熱する。次に、ローター・ステーター型ホモジナイザーを使用して、均一になるまで5000RPMで5分間均質化しながら相Aを相Bに添加する。その後、低速で継続的に混合しながら、配合物を25℃に冷却する。
【0100】
例23
本例は、油中水型エマルジョン化粧料日焼け止め剤調製物を示す。それぞれの相の成分を以下に列挙する。
【0101】
【0102】
まず、相Aの成分を加熱された容器中で合わせ、均一になるまで混合しながら80℃に加熱することによって配合物を調製する。次に、相Bの成分を加熱された容器中で合わせ、均一になるまで混合しながら80℃に加熱する。次に、ローター・ステーター型ホモジナイザーを使用して、均一になるまで5000RPMで5分間均質化しながら相Aを相Bに添加する。その後、低速で継続的に混合しながら、配合物を25℃に冷却する。
【0103】
例24
(想定)
UV保護をもたらすコンシーラースティック組成物を、化学量論的酸化亜鉛を含む無水配合物として調製する。組成を以下の表に示す。
【0104】
【0105】
配合物は以下のように加工される。相Aを合わせ、高せん断条件下で混合する。相Bを相Aに添加し、混合物を高せん断条件下で85℃に加熱する。温度を85℃に維持しながら、相Cを高せん断条件下でその混合物に分散する。その後、バッチを高せん断混合下で冷却する。65℃を下回ったら、D相及びE相を高せん断混合条件下で段階的にその混合物に添加する。バッチを継続的に冷却させ、温度が60℃に達したら最終包装に分配する。
【0106】
例25
(想定)
UV保護をもたらすコンシーラースティック組成物を、化学量論的酸化亜鉛を含む無水配合物として調製する。組成を以下の表に示す。
【0107】
【0108】
配合物は以下のように加工される。相Aを合わせ、高せん断条件下で混合する。相Bを相Aに添加し、混合物を高せん断条件下で85℃に加熱する。温度を85℃に維持しながら、相Cを高せん断条件下でその混合物に分散する。その後、バッチを高せん断混合下で冷却する。65℃を下回ったら、相D及び相Eを高せん断混合条件下で段階的にその混合物に添加する。バッチを継続的に冷却させ、温度が60℃に達したら最終包装に分配する。
【0109】
例26
(想定)
化学量論的酸化亜鉛を含む化粧料乾燥粉末日焼け止め剤配合物を調製する。組成を以下の表に示す。
【0110】
【0111】
乾燥粉末成分をブレンドし、均一になるまで粉砕する。
【0112】
例27
(想定)
化学量論的酸化亜鉛を含む化粧料乾燥粉末日焼け止め剤配合物を調製する。組成を以下の表に示す。
【0113】
【0114】
乾燥粉末成分をブレンドし、均一になるまで粉砕する。
【0115】
(参考文献)
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31. 国際公開20180291210A1
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【国際調査報告】