(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】可塑剤組成物、およびこれを含む塩化ビニル樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20230725BHJP
C08K 5/12 20060101ALI20230725BHJP
C08L 91/00 20060101ALI20230725BHJP
C08L 63/00 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K5/12
C08L91/00
C08L63/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022581612
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2022-12-28
(86)【国際出願番号】 KR2021008087
(87)【国際公開番号】W WO2022005130
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】10-2020-0080952
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501014658
【氏名又は名称】ハンワ ソリューションズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】HANWHA SOLUTIONS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ミュン-イク・ユ
(72)【発明者】
【氏名】ジェソン・キム
(72)【発明者】
【氏名】スンミン・リュ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002AE052
4J002BD031
4J002CD163
4J002EH136
4J002FD022
4J002FD023
4J002FD026
4J002GG02
4J002GL00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ01
(57)【要約】
本発明は、シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物、植物性オイル、エポキシ化植物油を含む環境にやさしい可塑剤組成物およびこれを含む塩化ビニル樹脂組成物に関する。本発明により製造された塩化ビニル樹脂組成物は、低温安定性、粘度、臭いなどを改善させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
i)下記化学式1で表されるシクロヘキサンジカルボキシレート系化合物;
ii)植物性オイル;および
iii)エポキシ化植物油を含む、可塑剤組成物:
【化1】
前記化学式1中、
R
1およびR
2はそれぞれ独立して、炭素数4~12の直鎖状または分枝状アルキル基である。
【請求項2】
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、下記化学式1-1~化学式1-3のうちのいずれか1つである、請求項1に記載の可塑剤組成物:
【化2】
前記化学式1-1~1-3中、
R
3~R
8はそれぞれ独立して、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、2-プロピルヘプチル基、デシル基、またはイソデシル基である。
【請求項3】
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)、ジ(イソノニル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(isononyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)、ジ(2-プロピルヘプチル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(2-propylheptyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)、ジ(デシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(decyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)、およびジ(イソデシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(isodecyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項4】
前記植物性オイルは、大豆油(soybean oil)、ヒマシ油(castor oil)、亜麻仁油(linseed oil)、パーム油(palm oil)、トール油(tall oil)、桐油(tung oil)、グレープシードオイル(grape seed oil)、オリーブ油(olive oil)、ホホバオイル(jojoba oil)、ケシ油(poppyseed oil)、綿実油(cottonseed oil)、カノーラ油(canola oil)、小麦胚芽油(wheat germ oil)、ピーナッツオイル(peanut oil)、クルミ油(walnut oil)、およびこれらの誘導体からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項5】
前記エポキシ化植物油は、エポキシ化大豆油(epoxidized soybean oil)、エポキシ化ヒマシ油(epoxidized castor oil)、エポキシ化亜麻仁油(epoxidized linseed oil)、エポキシ化パーム油(epoxidized palm oil)、エポキシ化トール油(epoxidized tall oil)、エポキシ化桐油(epoxidized tung oil)、エポキシ化グレープシードオイル(epoxidized grape seed oil)、エポキシ化オリーブ油(epoxidized olive oil)、エポキシ化ホホバオイル(epoxidized jojoba oil)、エポキシ化ケシ油(epoxidized poppyseed oil)、エポキシ化綿実油(epoxidized cottonseed oil)、エポキシ化カノーラ油(epoxidized canola oil)、エポキシ化小麦胚芽油(epoxidized wheat germ oil)、エポキシ化ピーナッツオイル(epoxidized peanut oil)、およびエポキシ化クルミ油(epoxidized walnut oil)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項6】
前記可塑剤組成物100重量部に対して、
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を50重量部~70重量部、
前記植物性オイルを10重量部~35重量部、および
前記エポキシ化植物油を10重量部~30重量部で含む、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項7】
零下20℃~零下10℃で結氷しない、請求項1に記載の可塑剤組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の可塑剤組成物を含む、塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項9】
塩化ビニル樹脂100重量部に対して、前記可塑剤組成物を10重量部~200重量部で含む、請求項8に記載の塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項10】
請求項8に記載の塩化ビニル樹脂組成物を含む、塩化ビニル樹脂成形品。
【請求項11】
前記塩化ビニル樹脂成形品は、壁紙、床材、デコシート、食品包装用ラップ、電線、自動車内装材、フィルム、ホースまたはチューブである、請求項10に記載の塩化ビニル樹脂成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2020年7月1日付の韓国特許出願第10-2020-0080952号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、低温安定性および粘度特性を改善した可塑剤組成物およびこれを含む塩化ビニル樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
塩化ビニル樹脂(PVC樹脂)は、硬質、軟質特性により多様に成形が可能で、価格競争力に優れて効用性が高く、様々な応用分野に適用されている。塩化ビニル樹脂の加工を容易にし、最終製品の性能を改良するために補助材料として添加剤がよく使用される。このような添加剤としては、可塑剤(plasticizer)、安定剤(stabilizer)、充填材(filler)、発泡剤(blowing agent)などがあり、樹脂製造過程でこれらを混合して最終樹脂を製造する。その中で可塑剤は、樹脂の柔軟性を増加させることで、多様な製品を製造することができる。
【0004】
可塑剤は、分子構造式によりフタレート系、エポキシ系、ポリエステル系に分類される。そのうちのフタレート系可塑剤は、塩化ビニル樹脂と相溶性に優れて可塑化効率が高いので、最も普遍的に用いられる代表的な可塑剤である。フタレート系可塑剤は、フタレート構造に多様なアルキル基が置換された物質である。フタレート系可塑剤としては、DEHP(di-2-ethylhexyl phthalate)、DINP(di-isononyl phthalate)、DIDP(di-isodecyl phthalate)、DBP(di-butyl phthalate)などが挙げられる。
【0005】
上記の長所にもかかわらず、フタレート系可塑剤は環境ホルモン物質であって、人体に有害であるという研究結果があり、危険物質と規定されて代替成分が求められた。フタレート系可塑剤を代替するための環境にやさしい可塑剤に関する研究が始まった。代表的に、テレフタレート系可塑剤、エポキシド系可塑剤、植物油脂系可塑剤、シクロヘキサン系可塑剤およびこれらの混合可塑剤が挙げられる。環境にやさしい可塑剤中の汎用製品としては、テレフタル酸をベースとするDOTP(di-octyl terephthalate)がある。しかしながら、依然として有害性が問題となり、品質的にフタレート系可塑剤を代替できず、最近では、シクロヘキサン系可塑剤に関する研究が進められている。
【0006】
代表的なシクロヘキサン系可塑剤としては、DEHCH(di(2-ethylhexyl)cyclohexane dicarboxylate)が挙げられる。DEHCHは、硬度特性に優れ、ゲル化速度が速く、フタレート系可塑剤のような環境問題が少ない。しかし、DEHCHは低温安定性、揮発特性、熱安定性などに問題がある。DEHCHの物性を補完するために、DEHCHにさらに多様な物質を混合した可塑剤組成物に関する先行研究があった。ただし、低温安定性、粘度特性に問題があり、臭いがする致命的な短所により汎用性が低く、追加的な研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、熱安定性を改善し、低温安定性および粘度特性を改善した環境にやさしい可塑剤組成物を提供する。
【0008】
また、本発明は、前記可塑剤組成物を使用して汎用性の高い環境にやさしい塩化ビニル樹脂組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物、植物性オイル、およびエポキシ化植物油を含む可塑剤組成物を提供する。
【0010】
また、本発明は、前記可塑剤組成物を含む塩化ビニル樹脂組成物を提供する。
【0011】
本明細書で使用される用語は単に例示的な実施形態を説明するために使用されたものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0012】
単数の表現は文脈上明白に異なる意味を示さない限り、複数の表現を含む。
【0013】
本明細書において、「含む」、「備える」または「有する」などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定するためであり、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加の可能性をあらかじめ排除しないものと理解されなければならない。
【0014】
本発明は多様な変更を加えることができ、様々な形態を有することができるため、特定の実施例を例示して以下で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解しなければならない。
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
本発明に係る可塑剤組成物は、シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物、植物性オイルおよびエポキシ化植物油を含む可塑剤組成物を提供する。
【0016】
シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、下記化学式1の構造を有する。
【0017】
【0018】
前記化学式1中、
R1およびR2はそれぞれ独立して、炭素数4~12の直鎖状または分枝状アルキル基の中から選択される。
【0019】
前記化学式1で表される化合物は、シクロヘキサンにカルボキシルレート基の置換位置によって下記化学式1-1~化学式1-3で表される、
【0020】
【0021】
前記化学式1-1は、シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート系化合物であり、前記化学式1-2は、シクロヘキサン-1,3-ジカルボキシレート系化合物であり、前記化学式1-3は、シクロヘキサン-1,2-ジカルボキシレート系化合物である。
【0022】
また、前記化学式1-1~1-3中、R3~R8はそれぞれブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、イソノニル基、2-プロピルヘプチル基、デシル基、またはイソデシル基である。
【0023】
例えば、シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート系化合物においてR3とR4が同一である場合、ジ(ブチル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、ジ(イソノニル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートなどであり;R3とR4が異なる場合、ブチル(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート、ブチル(イソノニル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレートなどであり得る。
【0024】
本発明の一実施形態によれば、可塑剤組成物の構成成分中の前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート系化合物に、R3およびR4が全て2-エチルヘキシル基である化合物であり得る。該化合物は、下記化学式1-4の構造を有し、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate、DEHCH)である。
【0025】
【0026】
本発明の一実施形態によれば、可塑剤組成物中の前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、ジ(2-エチルヘキシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(2-ethylhexyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)、ジ(イソノニル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(isononyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)、ジ(2-プロピルヘプチル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(2-propylheptyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)、ジ(デシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(decyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)、およびジ(イソデシル)シクロヘキサン-1,4-ジカルボキシレート(di(isodecyl)cyclohexane-1,4-dicarboxylate)からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0027】
前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、常温および低温粘度が低いので優れたコーティング特性を実現することができ、ゲル化速度が速く、可塑剤の移行性が少なく、硬度特性に優れている。ただし、シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を単独で使用する場合、従来の汎用可塑剤DOTPに比べて揮発特性、熱安定性、伸び率が劣る問題がある。
【0028】
本発明に係る可塑剤組成物の構成成分の1つである植物性オイルは、例えば、下記化学式2の構造の化合物を含み得る。
【0029】
【0030】
前記植物性オイルは、グリセロールと脂肪酸がエステル結合しているトリグリセリド構造を有し得る。R21~R23は炭素数1~20の直鎖状または分枝状のアルケニル基またはアルキル基であって、ただし、エポキシ基を含まない。R21~R23の不飽和度は、最終樹脂組成物の色、質感、および機械的物性などに影響を及ぼすことができる。このような不飽和度は、不飽和結合をヨウ化するヨウ素価測定法を用いて測定することができる。
【0031】
また、前記植物性オイルは、大豆油(soybean oil)、ヒマシ油(castor oil)、亜麻仁油(linseed oil)、パーム油(palm oil)、トール油(tall oil)、桐油(tung oil)、グレープシードオイル(grape seed oil)、オリーブ油(olive oil)、ホホバオイル(jojoba oil)、ケシ油(poppyseed oil)、綿実油(cottonseed oil)、カノーラ油(canola oil)、小麦胚芽油(wheat germ oil)、ピーナッツオイル(peanut oil)、クルミ油(walnut oil)、およびこれらの誘導体などが挙げられる。植物性オイル誘導体は、植物性オイルと脂肪酸、ハロゲン化物などの混合物であり得る。
【0032】
本発明の可塑剤組成物の構成成分の1つであるエポキシ化植物油は、化学式3のように植物性オイルの脂肪酸鎖にエポキシ基を有する構造の化合物を含み得る。
【0033】
【0034】
前記エポキシ化植物油は、植物性オイルの不飽和結合にエポキシ化反応によりエポキシ基を導入した化合物であり得る。R31~R33は、エポキシ基を含む炭素数1~20の直鎖状または分枝状のアルケニル基またはアルキル基であり得る。前記エポキシ化植物油は、植物性オイルをエポキシ反応させて得られる。エポキシ反応においてはギ酸を使用することができる。
【0035】
具体的には、前記エポキシ化植物油は、エポキシ化大豆油(epoxidized soybean oil)、エポキシ化ヒマシ油(epoxidized castor oil)、エポキシ化亜麻仁油(epoxidized linseed oil)、エポキシ化パーム油(epoxidized palm oil)、エポキシ化トール油(epoxidized tall oil)、エポキシ化桐油(epoxidized tung oil)、エポキシ化グレープシードオイル(epoxidized grape seed oil)、エポキシ化オリーブ油(epoxidized olive oil)、エポキシ化ホホバオイル(epoxidized jojoba oil)、エポキシ化ケシ油(epoxidized poppyseed oil)、エポキシ化綿実油(epoxidized cottonseed oil)、エポキシ化カノーラ油(epoxidized canola oil)、エポキシ化小麦胚芽油(epoxidized wheat germ oil)、エポキシ化ピーナッツオイル(epoxidized peanut oil)、エポキシ化クルミ油(epoxidized walnut oil)またはこれらの混合物であり得る。
【0036】
エポキシ化植物油が含まれている可塑剤組成物は揮発特性、熱安定性が向上する。ただし、エポキシ構造によって低温安定性が低く、温度が低い場合結氷問題があり、特に、冬場の場合粘度が高くて使用に制限がある。
【0037】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物の長所である透明性、ゲル化特性、耐候性;およびエポキシ化植物油が有する長所である揮発特性、熱安定性が維持される。さらに、植物性オイルを特定比率で含むことによってエポキシ構造を有する可塑剤の短所である低温安定性、粘度特性が改善された特徴がある。
【0038】
本発明の一実施形態による可塑剤組成物は、可塑剤組成物100重量部に対して、前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物を約50重量部~約70重量部、および前記植物性オイルを約10重量部~約35重量部、および前記エポキシ化植物油を約10重量部~約30重量部で含み得る。
【0039】
具体的には、前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物は、前記可塑剤組成物100重量部に対して約50重量部~約70重量部、好ましくは約60重量部~70重量部で含み得る。前記可塑剤組成物に対して、前記シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物が約50重量部未満の場合冬場に可塑剤が凍ってしまい、可塑剤の流れ(配管移送など)に問題があり、ColorがYellowで製品の調色が難しく、伸び率が低くて製品の施工時に破れる問題が生じる。約70重量部超の場合、熱安定性、引張強さが劣る問題があり得る。
【0040】
また、前記植物性オイルは、前記可塑剤組成物100重量部に対して約10重量部~約35重量部、好ましくは、約15重量部~30重量部で含み得る。前記可塑剤組成物に対して、前記植物性オイルが約10重量部未満の場合伸び率が低く、粘度が高い問題があり、約35重量部超の場合揮発減量が多く、熱安定性が劣る問題があり得る。
【0041】
また、前記エポキシ化植物油は、前記可塑剤組成物100重量部に対して約10重量部~約30重量部、好ましくは、約15重量部~約25重量部で含み得る。前記可塑剤組成物に対して、前記エポキシ化植物油が約10重量部未満の場合、熱安定性が劣り、揮発減量が多い問題があり、約30重量部超の場合粘度が高くなり、伸び率が劣る問題があり得る。
【0042】
本発明の一実施形態によれば、前記可塑剤組成物は、前記シクロヘキサンジカルボキシレート系物質、前記植物性オイルおよび前記エポキシ化植物油を混合ブレンドする方式で製造することができる。
【0043】
本発明の一実施形態によれば、前記可塑剤組成物は零下20℃~零下10℃では結氷しない。本明細書において、結氷とは、肉眼観察の際、液体状態の可塑剤組成物が結晶を形成して流動性のない固体状態に変化することを意味する。
【0044】
また、本発明は、前記可塑剤組成物を含む塩化ビニル樹脂組成物を提供する。本発明の一実施形態による可塑剤組成物を含む塩化ビニル組成物は、低温安定性、揮発特性、熱安定性などが改善される。
【0045】
本明細書全体において、塩化ビニル樹脂組成物とは、塩化ビニル系単量体単独、または塩化ビニル系単量体およびこれと共重合可能な共単量体が共重合された(共)重合体を指す。さらに、懸濁剤、緩衝剤、および重合開始剤などを混合して懸濁重合、微細懸濁重合、乳化重合、またはミニエマルション重合などの重合方法によって製造することができる。
【0046】
また、本発明の一実施形態による塩化ビニル樹脂組成物は、前記塩化ビニル樹脂組成物100重量部に対して前記可塑剤組成物を約10重量部~約200重量部、好ましくは、約10重量部~約120重量部で含む塩化ビニル樹脂組成物を提供する。前記可塑剤組成物が相対的に少なく含まれる場合、樹脂組成物の柔軟性が低くて完成品の物性を実現することが難しくなり、相対的に多く含まれる場合、粘度が低くて加工が難しく、製品の表面にTacky性が現れる問題があり得る。
【0047】
それに加えて、前記塩化ビニル樹脂組成物は、安定剤、充填剤、発泡剤などその他の添加剤をさらに含み得る。前記安定剤は、樹脂組成物の物性の変化を防止するために添加することで、Ca-Zn系化合物、K-Zn系化合物、Ba-Zn系化合物、有機Tin系化合物;マタリック石鹸系化合物、フェノール系化合物、燐酸エステル系化合物、および亜燐酸エステル系化合物からなる群より選択されるいずれか1つ以上を使用することができる。
【0048】
また、前記充填剤は、樹脂組成物の生産性、乾燥状態感触などを向上させるために用いられ、炭酸カルシウム、シリカ、アルミナ、カオリン、および水酸化マグネシウムなどからなる群より選択されるいずれか1つ以上を使用することができる。
【0049】
また、前記発泡剤は、樹脂組成物の軽量化のために用いられ、化学的または物理的発泡剤であり得る。化学的発泡剤としては、アゾジカーボンアミド(azodicarbonamide)、アゾジイソブチロニトリル(azodiisobutyro-nitrile)、ベンゼンスルホニルヒドラジド(benzenesulfonhydrazide)、p-トルエンスルホニルセミ-カルバジド(p-toluene sulfonyl semi-carbazide)、重炭酸ナトリウム、重炭酸アンモニウムなどが挙げられる。物理的発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、シクロヘキサン、トルエン、1,2-ジクロロエタン、アセトン、メチルエチルケトンなどが挙げられる。
【0050】
また、その他の添加剤は、本発明の目的を阻害しない範囲で前記物質以外にも用いられ、塩化ビニル樹脂組成物の目的に応じて適切な比率で選択することができる。
【0051】
さらに、本発明は、可塑剤組成物を含む塩化ビニル樹脂成形品を提供することができる。
【0052】
前記塩化ビニル樹脂成形品は、壁紙、床材、デコシートなどの室内装飾材、食品包装用ラップを含む包装材、電線、自動車内装材、フィルム、ホースおよびチューブなどの各種押出、射出、カレンダリングおよびコンパウンド業種に用いられるが、これらに限定されない。
【発明の効果】
【0053】
本発明に係る3成分系可塑剤組成物は、既存の環境にやさしい可塑剤組成物に比べて低温安定性、粘度だけでなく、熱安定性、揮発減量特性、機械的物性などの全般的な物性に優れ、環境にやさしい可塑剤として利用価値が高い。
【0054】
したがって、本発明に係る可塑剤組成物を含む塩化ビニル樹脂組成物は、環境にやさしく、既存の低温安定性、粘度、臭い問題が改善され、汎用性が高い。
【発明を実施するための形態】
【0055】
以下、発明の具体的な実施例によって発明の作用および効果をより詳しく説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するためのものに過ぎず、発明の権利範囲がこれによって定まるものではない。
【0056】
<実施例>
実施例1
可塑剤組成物の製造
シクロヘキサンジカルボキシレート系化合物としてDEHCHを使用し、植物性オイルとしてFatty acids、vegetable-oil、Me esters、chlorinated(Cas No:95009-45-3)を使用し、エポキシ化植物油としてエポキシ化大豆油(松原産業E-700)を使用して可塑剤組成物を製造した。
【0057】
実施例2、実施例3、比較例1~10
前記実施例1において、可塑剤組成を表1の通り調整したことを除いては、実施例1と同様にして可塑剤組成物を製造した。
【0058】
このように製造した可塑剤組成物の組成を下記表1に整理した。
【0059】
【0060】
塩化ビニル樹脂組成物
実施例1-1および実施例1-2
前記実施例1で製造した可塑剤組成物を使用して、2種類の塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0061】
Suspension:PVC(ハンファソリューションズ、P-1000F)100重量部、実施例1の可塑剤組成物40重量部、Ba/Zn系熱安定剤1.5重量部、およびE-700 2重量部を添加して塩化ビニル樹脂組成物を製造した(実施例1-1)。
【0062】
Emulsion PVC(プラスチゾル):PSR(ハンファソリューションズ、EL-103)100重量部および実施例1の可塑剤組成物60重量部を添加して塩化ビニル樹脂組成物を製造した(実施例1-2)。
【0063】
実施例2-1~実施例3-2、および比較例1-1~比較例9-2
前記実施例1-1において、実施例1の可塑剤組成物の代わりにそれぞれ実施例2、実施例3、および比較例1~9の可塑剤組成物を使用したことを除いては、実施例1-1および実施例1-2と同様の方法で塩化ビニル樹脂組成物を製造した。
【0064】
<実験例>
(1)揮発減量
可塑剤組成物を200℃で1時間放置後、前/後の重量変化を測定した。
揮発減量(%)=[(初期可塑剤組成物の重量-放置後の可塑剤組成物の重量)/初期可塑剤組成物の重量]×100
【0065】
(2)低温安定性
冬季屋外保管による安定性を間接的に評価するために、零下20℃~零下10℃の冷凍庫に混合した可塑剤組成物を入れ、凍る形状を観察した。
【0066】
(3)粘度
粘度は、前記それぞれ製造されたプラスチゾルを25℃の恒温オーブンで1時間熟成させた後、Brookfield粘度計(spindle #6、20RPM)を用いて初期粘度を測定し、その結果を下記表1に示す。
【0067】
(4)ゲル化特性
配合された樹脂54gを95℃ Brabender Mixerに投入し、30rpmで10分間Mixingした。Mixer加工時間の間のトルク変化により樹脂のゲル化時間を分析した。
【0068】
(5)可塑剤の移行性
可塑剤の移行性は、ISO 177:1988(Plastics--Determination of migration of Plasticizer)方法を参照して行った。直径50mmの円形にCuttingしたMolding Sheetの試験片を準備し、試験片の上/下に油紙(PP多孔性フィルム)とガラス板を順次重畳して試験片に移行された可塑剤が油紙に吸収されるようにした。試験片上に5kgの荷重を印加して70℃のOvenにそれぞれ5日間放置した後、減少した試験片の重量変化率(%)を測定して可塑剤の移行の程度を分析した。
【0069】
試験片の重量変化率は、[(試験片の重量変化/試験前の試験片の重量)×100]で求め、油紙の重量変化率は、[(油紙の重量変化/試験前の油紙の重量)×100]で求めた。試験片の重量減少量は油紙の重量増加量と同じであり、本実験においては試験片の重量変化率のみで可塑剤の移行性を評価した。
【0070】
(6)硬度特性
硬度は、前記それぞれ製造されたSuspension塩化ビニル組成物をRoll mill(170℃)とPress(180℃)加工により2mmのシートで製作し、Shore A硬度計で硬度を測定した。
【0071】
(7)初期着色性
ASTM E313規格によりRoll Mill加工SheetをKonica Minolta(CR400)色差計でSheetのYellow Indexを測定した。
【0072】
(8)熱安定性
Roll Mill加工Sheetを15mm×480mmのStrap形態に切断して190℃、Mathis Ovenに装着した。Oven内に装着された試験片が15mm/5分の速度でOven外部に排出されるように設定した。試験終了後、変色開始時点までの長さ(炭化していない長さ、mm)によって耐熱時間(分)を計算した。
【0073】
(9)引張強さおよび伸び率
引張強さおよび伸び率は、Molding SheetをASTM D638に従ってダンベル状試験片で製造した後、UTM(Universal Test Machine)で500mm/分の速度で測定した。
【0074】
【0075】
【0076】
上記表2および表3を参照すると、実施例においては汎用可塑剤(DINP、DOTP)より低温安定性が改善され、特に、DINPより粘度特性、DOTPより熱安定性が改善されたことを確認することができた。その他の物性も汎用可塑剤と類似した水準であることを確認することができた。
【0077】
DEHCH単一物質と比較すると揮発減量、低温安定性および熱安定性が特に向上し、残りの機械的物性も類似した水準であることを確認することができた。DEHCHと植物性オイルまたはエポキシ化植物油のうちの1つを混合した比較例3~比較例8と比べると、植物性オイルのみを混合する場合、低温安定性は確保したものの、粘度、揮発減量、熱安定性が非常に低下し、エポキシ化植物油のみを混合する場合、熱安定性は確保したものの、低温安定性、粘度特性、引張強さ、伸び率などが非常に低下することを確認することができた。
【0078】
したがって、DEHCH、植物性オイルおよびエポキシ化植物油の3成分系混合物である本発明の可塑剤組成物は物性が均等に向上し、単一物質または2成分混合物に比べて可塑剤特性が改善されたことを確認することができた。
【国際調査報告】