(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】バイヤービリガーモノオキシゲナーゼによるファルネシルアセトンのホモファルネシルアセタートへの変換
(51)【国際特許分類】
C12P 5/00 20060101AFI20230725BHJP
C12P 7/28 20060101ALI20230725BHJP
C12N 9/02 20060101ALN20230725BHJP
【FI】
C12P5/00
C12P7/28
C12N9/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500078
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2021067983
(87)【国際公開番号】W WO2022003017
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501105842
【氏名又は名称】ジボダン エス エー
(74)【代理人】
【識別番号】100102842
【氏名又は名称】葛和 清司
(72)【発明者】
【氏名】アイクホルン,エリック
(72)【発明者】
【氏名】ゲーケ,アンドレアス
【テーマコード(参考)】
4B064
【Fターム(参考)】
4B064AB01
4B064AC33
4B064CA21
4B064CB11
4B064DA20
(57)【要約】
補因子の存在下で、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素とファルネシルアセトンを接触させることを含む、ホモファルネシルアセタートの産生方法。該方法は、ホモファルネシルアセタートをホモファルネソールへ加水分解することをさらに含んでもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】
式中、
Rはメチルまたはエチルである、
で表されるアセタートを、
式(II)
【化2】
式中、
Rは上記で与えられた意味を有する、
で表されるケトンから産生する方法であって、
該方法が、補因子の存在下において、式(II)で表される化合物をバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素と接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
補因子が、NADHおよびNADPH、またはそれらの組み合せから選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
補因子再生系の存在をさらに含む、請求項1~2に記載の方法。
【請求項4】
補因子再生系が、アルコールデヒドロゲナーゼ酵素とイソプロパノールとの組み合わせである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4に記載の方法であって、該方法が、式(I)で表されるアセタートを式(III)
【化3】
式中、
Rはメチルまたはエチルである、
で表されるアルコールへ加水分解することをさらに含む、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホモファルネソール、とりわけ(3E,7E)-ホモファルネソール、およびそのエチル誘導体の調製のための新しいプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ホモファルネソールは、需要の高いフレグランス成分である、(-)-Ambrox(3a,6,6,9a-テトラメチルドデカヒドロナフト[2,1-b]フラン)の産生のための重要な中間体である。本文献は、ホモファルネソールの調製のためのさまざまなプロセスを説明する。例えば、ホモファルネソールは、Nerolidol(3,7,11-トリメチルドデカ-1,6,10-トリエン-3-オール)から出発してホモファルネシル酸アミドを介する冗長なプロセスにおいて合成される(A.F.Barrero et al.,J.Org.Chem.1996,61,2215)。あるいは、ホモファルネソールは、極性溶媒およびハロゲン化パラジウム触媒の存在下において、Nerolidolの脱カルボニル化によって調整されてもよい(WO92/06063)。ホモファルネソールの別の産生方法は、ジヒドロフランから出発してホモゲラニオールを介し5段階にわたり、P. Kociensikiら(J. Org. Chem. 1989, 54, 1215)によって説明されている。最近では、ゲラニルアセトンからウィッティヒオレフィン化を介し、これに続くシクロプロパン環の開環およびホルミルオキシ化による、ホモファルネソールの合成が、文献(WO2013/156398)において説明されている。
【0003】
すべての従来知られている方法は、例えば、使用される試薬が高価である、プロセス条件が経済的に魅力がない(例として、温度が0℃未満)、使用される試薬が有毒である、および/または使用される溶媒が可燃性である、などの欠点を有する。
したがって、ホモファルネソールおよびエチルホモファルネソールおよび/またはその前駆体を作製するための、新たなまたは改良された方法を提供することが望まれる。
【発明の概要】
【0004】
本発明の第1の側面により、式(I)
【化1】
式中、
Rはメチルまたはエチルである、
で表されるアセタートを、式(II)
【化2】
式中、
Rは上記で与えられた意味を有する、
で表されるケトンから産生する方法が提供され、該方法は、補因子の存在下において、式(II)で表される化合物をバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素と接触させることを含む。
【0005】
本発明の第2の側面により、式(III)
【化3】
式中、
Rはメチルまたはエチルである、
で表されるアルコールを、本発明の第1の側面の方法によって得られる式(I)で表されるアセタートから、加水分解によって産生する方法が提供される。
【0006】
本発明の第3の側面により、式(III)で表されるアルコールの生成のための前駆体として、本発明の第1の側面によって得られる、および/または得ることが可能な式(I)で表されるアセタートの使用が提供され、それは任意で、フレグランス成分の酵素媒介性の産生のための基質として使用される。
【0007】
本発明の任意の側面のある態様は、以下の利点の1以上を提供し得る:
・ホモファルネソール/エチルホモファルネソールの前駆体への異例かつ新規な生物学的経路、
・グリーンケミストリーおよび環境に優しい合成プロセスの履行のための酵素技術の使用。
【0008】
本発明の論述される任意の特定の1以上の側面に関連して提供される詳細、例および選好は、本明細書にさらに説明され、かつ本発明のすべての側面へ等しく適用されるであろう。本明細書に説明される態様、例および選好の任意の組み合わせは、その全ての実施可能なバリエーションにおいて、本明細書に特段示されないか、または文脈によって明らかに否定されない限り、本発明によって網羅される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、グルコースデヒドロゲナーゼ酵素との組み合わせにおいて、NADまたはNADPの存在下でのファルネシルアセトンの経時的変換を示す。
【
図2】
図2は、異なる濃度のアセトンまたはイソプロパノールの存在下でのファルネシルアセトンの経時的変換を示す。
【0010】
詳細な説明
本発明は、線状アルケン鎖を有する式(II)で表されるケトンが、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素の存在下で酸化を起こし、その結果としてアセタートを生じ、それがホモファルネソールまたはエチルホモファルネソールなどのアルコールの調製のための前駆体として使用され得るという驚くべき発見に基づく。
BVMO酵素は、ケトンのエステルへの変換を触媒し得ることが知られている。しかしながら、報告されているこれらの酵素は、環状基質(テルペノンおよびベンゾ縮合ケトンを包含する)、脂肪族ケトンおよび脂肪族ヒドロキシケトンに生態系において作用すると説明されているのみである。驚くべきことに、式(II)によって定義されるような多価不飽和分枝ケトンが式(I)で表されるアセタートへ変換されることもまた、BVMO酵素によって触媒されるのであるということが今や発見された。BVMO酵素が多価不飽和分枝ケトンに作用し得ることが報告されている文献はどこにもない。
【0011】
したがって、式(I)
【化4】
式中、
Rはメチルまたはエチルである、
で表されるアセタートを、
式(II)
【化5】
式中、
Rは上記で与えられた意味を有する、
で表されるケトンから産生する方法が本明細書で提供され、該方法は、補因子の存在下において、式(II)で表される化合物をバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ(BVMO)酵素と接触させることを含む。
【0012】
式(II)で表される化合物は、例えば、5E,9E-または5Z,9E-立体配置を有する式(II)で表される化合物として、4種の異なる立体異性体の形態で現れる。
【0013】
ある態様において、方法は、式(II)で表される5E,9E-化合物を式(II)で表される任意の他の立体異性体の非存在下でBVMO酵素と接触させることを含む。
【0014】
他の態様において、式(II)で表される化合物は、例えば、立体異性体の混合物であってもよい。ある態様において、混合物は、式(II)で表される5E,9E-化合物および式(II)で表される1種以上の他の立体異性体を含む。
【0015】
ある態様において、混合物は、式(II)で表される5E,9E-化合物および式(II)で表される5E,9Z-化合物を含む。
【0016】
ある態様において、混合物は、式(II)で表される5E,9E-化合物を主成分として含む。主成分とは、混合物中に存在する5E,9E-化合物の重量%が式(II)で表される5Z,9E-化合物の重量%より大きいことを意味する。
【0017】
Rがメチルの場合、式(II)で表される化合物は、E,E-ファルネシルアセトン、E,Z-ファルネシルアセトン、Z,E-ファルネシルアセトン、Z,Z-ファルネシルアセトンおよびその混合物を網羅するファルネシルアセトンと称されてよい。
Rがエチルの場合、式(II)で表される化合物は、E,E-エチルファルネシルアセトン、E,Z-エチルファルネシルアセトン、Z,E-エチルファルネシルアセトン、Z,Z-エチルファルネシルアセトンおよびその混合物を網羅するエチルファルネシルアセトンと称されてよい。
Rがメチルである式(II)で表される化合物は、市販されている。Rがエチルである式(II)で表される化合物は、それ自体新規である。それは、実施例11に説明されている通りの手順に従って、5,9-ジメチルデカ-4,8-ジエナールから合成されてもよい。
【0018】
本明細書で使用される用語「BVMO(バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ)」は、さまざまな酸化反応を触媒し得るモノオキシゲナーゼのことを称し、式(II)で表されるケトンの酸化による式(I)で表されるエステル化合物の産生のためのバイヤービリガー酸化を包含する。
BVMO酵素は、野生型酵素であっても、あるいは改変型酵素であってもよい。本明細書で使用される用語「野生型」は、酵素などのポリペプチド、遺伝子などのポリヌクレオチド、生物、細胞、または任意の他の物質に関連するかどうかにかかわらず、該物質の天然起源の形態のことを称する。本明細書で使用される用語「改変型」は、酵素などのポリペプチド、遺伝子などのポリヌクレオチド、生物、細胞、または任意の他の物質に関連するかどうかにかかわらず、野生型とは異なるものとしての物質のことを称する。野生型物質に対して好適に変更を加えると、改変型物質を産生することもあり、これは遺伝子材料に対する変更、タンパク質材料に対する変更を包含する。遺伝子材料に対する変更は、その材料を野生型とは異なるものにする当該技術分野で既知の任意の遺伝子改変を包含し得る。かかる遺伝子改変の例は、これらに限定されないが、欠失、挿入、置換、融合等々を包含し、これは改変される関連遺伝子(単数または複数)を含有するポリヌクレオチド(単数/複数)上に行われることもある。
【0019】
本発明の目的に関して、BVMO酵素が宿主細胞内で産生され、および式(II)で表されるケトンからその鎖の中に導入されるエステル基を有する式(I)で表されるアセタート(例として、ファルネシルアセトンからホモファルネシルアセタート)を産生する反応を触媒することができる限り、そのBVMOは、、特にこれらに限定されないが、Pseudomonas sp.、Rhodococcus sp.、Brevibacterium sp.、Comanonas sp.、Acinetobacter sp.、Arthrobacter sp.、Brachymonas sp.、Themobifida sp.、Gordonia sp.、Pseudooceanicola sp.などの微生物に由来するBVMO、より好ましくは、Pseudomonas sp.、Brachymonas sp.、Pseudooceanicola sp.またはAcinetobacter sp.に由来するBVMO、ならびに最も好ましくは、Acinetobacter sp.、Pseudomonas sp.(例として、Pseudomonas veronii)、Brachymonas sp.(例として、Brachymonas petroleovorans)またはPseudooceanicola sp.(例として、Pseudooceanicola batsensis)に由来するBVMOでよい。ある特定の態様において、BVMOは、Acinetobacter sp.またはPseudomonas sp.(例として、Pseudomonas veronii)に由来する。BVMOコード遺伝子のヌクレオチド配列は、NCBIのGenBankなどのデータベースから得られ得る。
【0020】
酵素は、EC分類にしたがってそれらの機能によって定義されることもある。酵素番号(EC番号)は、酵素が触媒する化学反応にもとづいた酵素の数値分類体系である。本明細書に説明されている変換を実行するのに好適なBVMOは、例えば、EC1.4.13クラス(一方のドナーとしてNADHまたはNADPHをともなって分子酸素の取り込みまたは還元をし、他方のドナー中へ酸素の1原子を取り込む、対をなすドナーに作用する酸化還元酵素)に属する。
【0021】
BVMOは、例えば、以下の例において使用される1種以上のBVMO酵素であってもよく、これらは例えば、San Diego (USA)のEnzymeWorks, Inc.から得られるEW-103(野生型Acinetobacter sp.のBVMO酵素の変異型)、またはGecco Biotech B.V.から得られるMekAがある。
【0022】
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼ補因子(BVMO補因子)は、反応の触媒作用中にBVMO酵素を補助する補因子である。本明細書で提供される方法において使用されるBVMO補因子は、式(II)で表されるケトンを式(I)で表されるアセタートへ変換することを補助するために好適な任意の型であってもよい。補因子は、例えば、無機分子であっても有機分子であってもよい。BVMO補因子は、例えば、ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NADH)およびニコチンアミドアデニンジヌクレオチドリン酸(NADPH)、またはその組み合わせから選択されてもよい。
好ましくは、BVMO補因子は、BVMO酵素がNAD(P)Hで飽和しているなどの、BVMOに関する開始モル濃度にて反応混合物中に存在する。したがって、好ましくは、NAD(P)Hは、BVMO酵素の濃度に少なくとも等しい濃度で、反応混合物中に存在する。
【0023】
本発明の一態様においては、NAD(P)Hは反応混合物中に、約1から10mg/ml、例として1から5mg/mlの間、または1から4mg/mlの間の開始濃度で存在する。
【0024】
一般的には、補因子は高価なので化学量論的な量で使用されることはできず、それを再生することが望まれる。さらに、補因子を再生することによって、所望の変換の効率を高めたり、製品の分離を容易にすることが可能であり、それによって、プロセスのコストがさらに低減される。このため、補因子再生系がしばしば使用される。
【0025】
グルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)酵素は、NAD(P)Hの再生に一般的なものである。例えば、GDH酵素はCodexis Inc. (GDH-105、GDH-901、CDX-019)、Johnson Matthey (GDH-101)またはEnzymeWorks (GDH-EW)から市販されている。文献によれば、さらなるGDH酵素が得られて、例えば、枯草菌からのグルコースデヒドロゲナーゼ(UniProtKB accession number: P12310, E.C. 1.1.1.47, (1986) J. Bacteriol. 1986, 166, 238 - 43)である。GDH酵素は一般的に、補因子再生のために、例としてグルコースとの組み合わせで使用され得る。あるいは、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)酵素は、特定のBVMO酵素によって触媒される反応を妨げない場合、例としてイソプロパノールと組み合わされる時に、補因子再生に使用され得る。
【0026】
補因子再生において使用され得る他の酵素は、例えば、例として亜りん酸ナトリウムと組み合わせた亜リン酸デヒドロゲナーゼ(PTDH)がある。
バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、無細胞抽出物などのしかしそれに限定されることのない当該技術分野で既知である任意の好適な形態における反応混合物中に存在するか、または宿主生物細胞内に含有されていてもよく、およびこれらは溶液/懸濁液中の遊離形態、または精製された形態および/または固定化形態(膜上に保持される、またはカラムへ/カラム内で結合される)などのしかしそれに限定されることのない当該技術分野で既知であるいずれの好適なやり方において反応混合物内にあってもよい。好ましくは、BVMOは、溶存酸素の相対的なレベルにて産生可能な式(I)で表されるアセタートの所要の量を産生するのに必要な濃度にて反応混合物中に存在する。
【0027】
一態様において、バイヤービリガーモノオキシゲナーゼは、それが産生された細胞から調製された細胞抽出物として反応混合物中に存在し、ここで、細胞は、好ましくは、BVMO酵素を産生するのに使用された細菌宿主細胞である。細胞抽出物は、宿主細胞を溶解することが可能な任意の好適な手段、これらに限定されないが、超音波処理、RNAse/リゾチーム処置、凍結融解処置、またはアルカリ処置を包含する、によって得られてもよい。
好ましくは、細胞抽出物はその後、本明細書で説明する方法においてバイヤービリガーモノオキシゲナーゼの供給源として使用される前に細胞破片を除去するように処置される。細胞溶解液は、当該技術分野で既知の任意の好適な手段、これらに限定されないが、清澄化した細胞抽出液を得るための、ろ過、遠心分離、または塩類による精製を包含する、によって処置されてもよい。
【0028】
補因子再生系は、BVMO補因子が式(II)で表されるケトンを式(I)で表されるアセタートへ変換することを補助するために使用された後に、BVMO補因子を再生する役割を果たす。補因子再生系は、補因子の還元型(例えば、NADHおよび/またはNADPH)を例えば再生することもある。本明細書で説明される方法において使用される補因子再生系は、BVMO酵素によって式(II)で表されるケトンを式(I)で表されるアセタートへ(例として、ファルネシルアセトンをホモファルネシルアセタートへ)変換することにおいて有用であるBVMO補因子を再生するために好適である任意のタイプであってもよい。
このように、式(II)で表されるケトンから式(I)で表されるアセタートを産生する方法がさらなる側面において提供され、その方法は、補因子および補因子再生系の存在下で、式(II)で表されるケトンをBVMO酵素と接触させることを含む。
【0029】
1つの特定の態様において、補因子再生系は、ADH/イソプロパノール補因子再生系である。
別の特定の態様において、補因子再生系は、GDH/グルコース補因子再生系である。
別の特定の態様において、補因子再生系は、ホスファイトデヒドロゲナーゼ/ホスファイト補因子再生系である。
ADH/イソプロパノール補因子再生系を使用することは、GDH/グルコース系と比較して、反応媒体の酸性化がないという利点がある。
式(II)で表されるケトンから式(I)で表されるアセタートを産生する方法は、式(II)で表されるケトンを式(I)で表されるアセタートへ変換できるようにさせる、時間、温度、pHおよび可溶化剤の条件下で実施される。
【0030】
反応混合物のpHは、4から9、好ましくは7から9(約8.5のpHを包含する)の範囲であってよく、反応混合物へバッファの添加、またはpH補正によって維持され得る。この目的のための例示的なバッファは、Tris-HClバッファ、またはGlycine/NaOHバッファである。
【0031】
温度は、検討されるBVMO酵素の場合、約15℃から約60℃の間であり、例えば約15℃から約50℃まで、または約15℃から約45℃まで、または約30℃から約60℃まで、または約35℃から約55℃までである。温度は、生物変換プロセス中に、一定に保ち得るし、あるいは変更させ得る。
本明細書で提供される方法は、式(I)で表される化合物の精製、および/または式(II)で表される任意の未反応化合物からの分離をさらに含むこともある。例えば、式(I)で表される化合物は、溶媒抽出(例として、メチルベンゼン、ヘキサン、tert.ブチルメチルエーテル(tBME))および/または蒸留により精製されることもある。
【0032】
本発明のさらなる側面において、式(I)で表される化合物は、さらに反応させられることもある。例えば、式(I)で表される化合物は、式(III)
【化6】
式中、
Rはメチルまたはエチルである、
で表される化合物へ加水分解されることもある。
【0033】
ある態様において、加水分解は生体触媒で行われ、任意で同じ反応ブロス中で行われることもある。
あるいは、式(I)で表される化合物は、好ましくは精製後に、例として炭酸カリウムが存在するメタノール溶液中で、化学的に加水分解され得る。
このようにして得られたアルコールは、例えば、生体触媒による変換のための基質として使用されることもある。
【0034】
ある態様において、Rがメチルである式(III)で表される化合物は、SHC(スクアレンホペンシクラーゼ(Squalene Hopene Cyclase))酵素の存在下で、(-)-Ambroxへ変換されることもある。
ある態様において、Rがエチルである式(III)で表される化合物は、エチルアンブロフィックス(これは、WO2021/110858においてより詳細に説明されている)へ変換されることもある。
本明細書に説明されている例は、本開示を例示するものであり、それに限定することを意図するものではない。本開示の異なる態様が、本開示にしたがって説明されている。本開示の精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に説明および図示された技術へ、多くの改変および変化がなされてもよい。したがって、例は例示に過ぎず、本開示の範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0035】
例
例1:ガスクロマトグラフィー(GC)分析、変換率の計算
1μlの溶媒相(溶媒抽出サンプル)を30m×0.32mm×0.25μmのZebron ZB-5カラムに注入(スプリット比3)する。カラムは定流量(4ml/min、H2)にて、温度勾配:100℃、200℃へ15℃/min、240℃へ120℃/min、240℃にて4分、をつけて展開した。入口温度:250℃、検出器温度:250℃(Thermo Trace 1310 GC装置)
【0036】
ファルネシルアセトン変換率を、記録された基質と産物のピーク面積から、以下のように計算した。
変換率(%):100×(産物ピーク面積/(産物ピーク面積+基質ピーク面積)
【0037】
例2:エチオンアミドモノオキシゲナーゼ(EthA)を用いたファルネシルアセトンのBVMO反応
EthA(GenBank: AAK48336.1, UniProtKB P9WNF8, Fraaije et al. 2004, J. Biol. Chem. 279(5), 3354)産生用の、プラスミドで形質転換したE. coli TOP10を、100μg/mlのアンピシリンおよび200μg/mlのFADで補充された200mlLB培地においてOD650nm 0.75まで培養(37℃、200rpm)した。0.2%のアラビノースを加えることによって酵素産生の誘導をその後引き起こした。ファルネシルアセトン(0.1%)を培養物へ加え、30℃にてさらに23hの間インキュベーションした。培養物をサンプリングし、メチル-t-ブチルエーテル(MTBE)を用いて抽出し、基質および産物の含有量をGC分析した。反応産物の同一性を、GC-MS分析によって確認した。ファルネシルアセトンのホモファルネシルアセタートへの変換率は、2セットの独立した実験において2~5%であった。
【0038】
例3:シクロペンタデカノンモノオキシゲナーゼ(CPDMO)を用いたファルネシルアセトンのBVMO反応
CPDMO(GenBank AB232538.1, UniProtKB Q1T7B5)産生用の、pJ401由来のプラスミドを用いて形質転換したE. coli BL21(DE3)細胞からCPDMOを産生した。
200ml LB培地培養物(50g/ml カナマイシン)を、一晩の種培養物から播種し、OD650nm 0.500~0.600まで28℃、160rpmにて約3.5hの間インキュベートした。酵素産生の誘導のために、IPTGを0.8mMまで加えた。培養物を、28℃、160rpmにてさらに3~4hの間インキュベートした。遠心分離によって細胞を採取し、洗浄した。回収した細胞ペレットを2.5mlの反応バッファ(50mMのTris-Cl、pH9.0)中で懸濁し、細胞を超音波処理によって破砕した。超音波処理した材料に最後に16.5mlの50mMのTris-HCl、pH9.0を加え、結果としてCPDMO粗酵素調製物とした。酵素活性を測定するために、950μlの粗CPDMO酵素調製物へ10μlのファルネシルアセトンおよび40μlの50mM NADHを加えた。反応物を30℃にて3hの間インキュベートし、MTBEを用いて抽出し、GC分析した。ファルネシルアセトンのホモファルネシルアセタートへの変換率は、約7%であった。
【0039】
例4:EnzymeWorksのBVMO酵素を用いたファルネシルアセトンのBVMO反応
酵素供給者であるEnzymeWorks, Inc, (http://www.enzymeworking.com)から入手可能な8種のバイヤービリガーモノオキシゲナーゼ酵素を、ファルネシルアセトンをホモファルネシルアセタートへ変換するそれらの能力について試験した。反応物は、100mMのグリシン/NaOHバッファ(pH9.0)中に、2g/lのファルネシルアセトン、25mMのグルコース、1mMのNADP、2g/lのBVMO酵素、2g/lのグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)を含有していた。反応物を、穏やかに振とう(70rpm)しながら30℃にて24hの間インキュベートした。0.5mlの反応物を1.5mlのMTBEを用いて抽出し、GC分析した。EW-103BVMOを用いて24hで、ファルネシルアセトン変換率は約50%であった。
【0040】
例5:Gecco-BiotechのBVMO酵素を用いたファルネシルアセトンのBVMO反応
Gecco Biotech (http://www.gecco-biotech.com/)が供給するBVMO酵素(野生型または変異型酵素)を、ファルネシルアセトンのホモファルネシルアセタートへの変換へ適用した。BVMO酵素を、亜リン酸デヒドロゲナーゼ(PTDH)との精製融合タンパク質として提供した。20mMのファルネシルアセトン(約5g/l)を、50mMのTris HCl(pH7.5)バッファ(1ml反応容積)中で、20μMのBVMO、1mMのNADPおよび100mMのNa2HPO3.5H2Oの存在下で、20時間24℃にて反応させた。
【0041】
下表においてまとめた結果は、使用したBVMO酵素に応じて、ファルネシルアセトン変換率が3から52%の間であることを示した。
表中に使用した略語は、n.a.:該当しない、STMO:ステロイドモノオキシゲナーゼ、PAMO:フェニルアセトンモノオキシゲナーゼ、HAPMO:4-ヒドロキシアセトフェノンモノオキシゲナーゼ、ACMO:アセトンモノオキシゲナーゼ、CPDMO:シクロペンタデカノン1,2-モノオキシゲナーゼである。
【表1】
【0042】
例6:BVMO酵素EW-103の補因子要件
EW-103BVMOを用いて、NADPHとNADHとの両方がファルネシルアセトン変換において補因子として作用し得るかどうかを調査した。
反応は、7.6mMのファルネシルアセトン、1mMの補因子、2mg/mlのBVMOEW-103、2mg/mlのGDHおよび25mMのグルコースを用いて、50mMのTris-HClバッファ(pH8.5)中で行った(5ml容量、Heidolph Synthesis 1、30℃、900rpm)。1つの反応においては、NADPがNADによって置換された。ファルネシルアセトン変換は、補因子としてのNADHによってサポートされていたが、驚くべきことに、2時間のインキュベーション後に、約20%の変換率にて突然停止した。NADPHを補因子として使用した場合には、ほぼ同じ時間において完全なファルネシルアセトン変換を得た。
2種の異なるグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)酵素を使用するとともに、増大したNAD濃度(1、2および5mM)にて反応を繰り返した。適用したNAD濃度、および使用したGDH酵素とは関係なく、ファルネシルアセトン変換は約20%にて停止したが、NADPHが補因子である場合は再び完全変換を達成した(
図1参照)。
【0043】
例7:補因子再生系
補因子再生用に、グルコースまたはイソプロパノールを使用する場合のグルコースデヒドロゲナーゼ(GDH)またはアルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)の使用を想定し得る。イソプロパノールおよびアセトンに対するEW-103の感度を試験して、GDH/グルコースではなくADH/イソプロパノールを使用する可能性を調査した。
7.6mMのファルネシルアセトン(2g/l)、1mMのNADP、2g/lのBVMOEW-103、2g/lのGDHおよび25mMのグルコースを用いて、50mMのTris-HClバッファ(pH8.5)中で行った(5ml、Heidolph Synthesis 1、30℃、900rpm)反応において、イソプロパノールまたはアセトンを5%および10%(v/v)まで加えた。
反応物へ5%イソプロパノールまたはアセトンを加えても、ファルネシルアセトン変換率に影響はなかった。イソプロパノールまたはアセトンを10%まで加えた場合、ファルネシルアセトン変換率は低下した。反応物が10%イソプロパノールを含有する場合、ファルネシルアセトン変換率は24hでほんの64%程度であった。EW-103BVMOは、アセトンを加えることに対して感度がより低く:10%アセトンを含有する反応においては24hでファルネシルアセトン変換率が80%であった(
図2参照)。
【0044】
この結果は、アルコールデヒドロゲナーゼ(ADH)/イソプロパノール補因子再生系を使用する可能性を示した。ADH酵素は、多くの酵素製造業者および供給業者から入手可能である(例として、Codexis Inc.からのKRED-P2-H07)。
【0045】
1mMのNADPH、1g/LのBVMOEW-103、0.5g/LのADH(Codexis KRED-P2-H07)、35mMのイソプロパノールの存在下で、8g/lのファルネシルアセトン(30.5mM)を用いて、50mMのTris-Clバッファ(pH8.5)(総容積150mL)中で行った反応において、ADH/イソプロパノール補因子再生系の使用を確認した。ファルネシルアセトン変換率は、24時間で約75%であった。この反応構成において、1gのEW-103BVMO酵素を用いて、約6gのファルネシルアセトンをホモファルネシルアセタートへ変換した。この変換収率は、GDH/グルコース補因子再生系を使用した同様の実験操業において、およびそこで1gのBVMOEW-103酵素が3.6gのファルネシルアセトンしか変換できなかったことよりも、高かった。
【0046】
例8:BVMOファルネシルアセトン変換の反応産物
使用したBVMO酵素によるファルネシルアセトン変換の産物として、ホモファルネシルアセタートをGC-MS分析によって同定した。
いくつかの反応において、興味深くかつ驚いたことに、反応産物としてホモファルネシルアセタートおよびホモファルネソールの両方の産生を観察した。これは、例としてリパーゼ(使用した酵素凍結乾燥物または細胞抽出物中に存在する)によって触媒されたBVMO非依存性反応に起因するホモファルネシルアセタート加水分解の結果であると考える。これはさらには調査しなかったが、ファルネシルアセトンのホモファルネシルアセタートへの酸化ステップ、およびそれに続くホモファルネシルアセタートのホモファルネソールへの加水分解は、BVMO触媒反応と、例として適当なホモファルネシルアセタートのリパーゼ触媒加水分解と組み合わせた、および適正な反応条件を適用したワンポット反応において触媒され得ることが考えられ得る。
【0047】
例9:プロセス関連反応条件および変換収率
EW-103BVMOを用いたファルネシルアセトン変換を、9g/lのBVMOEW-103、3.2g/lのADHKRED-P2-H07および1.5g/lのNADPH(2mM)を用いて、27g/lのイソプロパノール(0.44M)の存在下で106g/lの基質(0.4M)にて行った。30℃にて50mMのTris-Clバッファ(pH8.5)中で、一定攪拌で反応を行った。反応サンプルをMTBEで抽出し、GC分析した。48時間の反応後、ファルネシルアセトン変換率は約70%であって、1gのBVMO酵素あたり8gのファルネシルアセトンの変換収率に相当する。
【0048】
27g/lのイソプロパノール(0.44M)の存在下で106g/lの基質(0.4M)にて、他の反応パラメータを変化させながら、さらなる反応を行った:BVMO、ADH、およびNADPH濃度を、以下のように設定した:
(1)45g/l、10g/l、5mM、または
(2)5g/l、10g/l、0.5mM
おおよそ24時間の反応後、(1)においてファルネシルアセトンの変換率は86.2%であって、MTBEを用いて抽出した反応サンプルから判断する限りでは、1gのBVMO酵素あたり2gのファルネシルアセトンの変換収率を表す。(2)においては、MTBEを用いて抽出した反応サンプルから判断する限りでは、ファルネシルアセトンの変換率は59%であって、1gのBVMO酵素あたり約12.5gのファルネシルアセトンが変換された変換収率に相当する。
この結果は、約24時間でBVMO酵素(例として、BVMOEW-103)を用いてファルネシルアセトンを完全に変換する可能性が高く、かつ基質比率に対しての酵素を注意深く設定することで、1gのBVMO酵素あたりで変換される基質のグラム数として定義する変換収率、および1gのBVMO酵素あたりのファルネシルアセトン変換率と反応時間の観点から定義する産生能が増大することを証明している。
【0049】
例10:BVMO酵素を用いたエチルファルネシルアセトンの変換
エチルファルネシルアセトン(4種異性体の混合物)をEnzymeWorksのBVMOEW-103を用いてBVMO酸化に供した。反応物(5ml容量)は、50mMのグリシン/NaOHバッファ(pH9.0)中に、2g/lの基質、2g/lのBVMO酵素、0.5g/lのNADP、4.5g/lのグルコース、2g/lのGDHを含有していた。反応物を、30℃、650rpmにて、インキュベートした(Heidolph Synthesis 1装置)。反応物を開始後5、12.5、48hでサンプリングし、抽出(0.7mlのMTBEに対して0.6mlの反応物)し、GC-FIDによって基質/産物の含有量を分析した。4種の異性体基質ピークから4種の反応産物を認めた。GC-MS分析によって、エチルファルネシルアセトンがホモエチルファルネシルアセタートへ変換されたことを認めた。全体として25~30%の変換率を観察した。
【0050】
反応産物であるホモエチルファルネシルアセタートを、例として、例えばリパーゼ酵素を使用してさらに加水分解すると、エチルホモファルネソールを産生し、これはスクアレンホペンシクラーゼ(Squalene Hopene Cyclase(SHC))酵素を用いてEthylambrofixへ環化するための基質である。
【0051】
例11:エチルファルネシルアセトン
ジエチルエーテル中の臭化エチルマグネシウム(3M、175mL、525mmol、1.2当量)の溶液を、ジエチルエーテル(200mL)中の5,9-ジメチルデカ-4,8-ジエナル(E/Z混合物、78.8g、437mmol)の溶液へ、-50℃にて30分の間滴加した。添加完了後、冷却槽を取り除き、混合物を1時間攪拌した。その後、それを2M HCl水溶液(200mL)に注ぎ、混合物をメチルt-ブチルエーテル(MTBE、150mL)を用いて抽出した。有機層を、水および希釈したNaCl水溶液でpH中性まで洗浄し、MgSO4上で乾燥させた。ろ過およびロータリーエバポレータ内の溶媒の除去後、無色透明の液体を得て(79.2g、86%)、これをアセトン(200mL)に溶解した。0℃へ冷却後、ジョーンズ試薬(H2SO4水溶液中に4MのCrO3、94.1mL)を滴加し、その間に温度が43℃へ上昇し、混合物は緑褐色に変じた。添加終了後、混合物を室温にて1hの間攪拌し、その後、ジョーンズ試薬の追加量(30mL)を加え、20分間攪拌を続け、その後、2-プロパノール(20mL)を加えた。上記の通りワークアップおよび抽出を行い、透明な黄色液体(74.8g)を生じ、これを10cmビグリューカラム上で91~95℃(0.09mbar)にて蒸留し、わずかに黄色の透明オイルとして7,11-ジメチルドデカ-6,10-ジエン-3-オン(50.1g、64%、E/Z混合物)を生じた。
【0052】
THF(100mL)中の7,11-ジメチルドデカ-6,10-ジエン-3-オン(34.0g、163mmol)の溶液を、-5℃にて30分の間、新たに準備したTHF中の臭化ビニルマグネシウムの溶液(0.9M、228mmol、1.4当量)へ加えた。その結果得られた混合物を、20分間室温にて攪拌し、その後、NH4Cl飽和水溶液(150mL)を加えることによって加水分解した。上記の通りさらにワークアップを行い、透明な黄色液体(37.5g)を生じ、これを10cmビグリューカラム上で蒸留(90℃/0.07mbarにて蒸留)することによって精製して3-エチル-7,11-ジメチルドデカ-1,6,10-トリエン-3-オール(12.0g、31%,無色透明な液体、GCによるE/Z比5:4)を生じた。
【0053】
この産物(12.0g、50.8mmol)へ、2-メトキシプロペン(7.33g、102mmol、2当量)およびリン酸(10mg)を加えた。混合物をオートクレーブ容器中に入れ、3hの間170℃にて攪拌した。室温まで冷却した後、上述と同量の2-メトキシプロペンおよびリン酸を加え、その混合物を18hの間170℃にて攪拌した。室温まで冷却した後、混合物をロータリーエバポレータ内で濃縮して茶色の液体(14.91g)を生じ、これをクーゲルロールオーブン内で150℃/0.05mbarにて蒸留して透明な黄色の液体(12.66g)を生じ、これをヘプタン/MTBE(95:5)を用いてシリカゲル上でフラッシュクロマトグラフィーによってさらに精製して無色の液体(E/Z異性体の混合物、GCによれば31/26/25/18%)として6-エチル-10,14-ジメチルペンタデカ-5,9,13-トリエン-2-オン(6.51g、46%)を生じた。
【0054】
1H-NMR (CDCl3, 400 MHz): 4.88 - 5.37 (m, 3 H), 2.46 (d, J=7.8 Hz, 2 H), 2.29 (br d, J=7.8 Hz, 2 H), 2.15 (s, 3 H), 1.96 - 2.11 (m, 10 H), 1.67 - 1.73 (m, 5 H), 1.60 - 1.65 (m, 4 H), 0.94 - 1.03 (m, 3 H). 13C-NMR (CDCl3, 101 MHz): 208.8 (s), 208.7 (s), 142.3 (s), 142.2 (s), 142.1 (s), 135.3 (s), 135.2 (s), 135.1 (s), 135.0 (s), 131.5 (s), 131.3 (s), 131.3 (s), 124.7 (d), 124.3 (d), 124.2 (d), 124.0 (d), 122.0 (d), 121.6 (d), 121.5 (d), 44.1 (t), 39.7 (t), 39.7 (t), 36.8 (t), 36.5 (t), 32.0 (t), 32.0 (t), 31.9 (t), 30.6 (t), 30.3 (t), 30.0 (q), 29.9 (q), 29.5 (t), 26.9 (t), 26.8 (t), 26.7 (t), 26.7 (t), 26.6 (t), 26.6 (t), 25.7 (q), 25.7 (q), 23.4 (q), 23.4 (q), 23.1 (t), 23.1 (t), 22.7 (t), 22.2 (t), 22.1 (t), 17.7 (q), 17.6 (q), 16.0 (q), 16.0 (q), 14.1 (q), 13.2 (q), 13.2 (q), 12.8 (q). MS (EI, 70eV): 276 (M+, <1), 218(<1), 207(<1), 149(10), 136(15), 121(28), 107(10), 95(16), 81(36), 69(89), 55(15), 43(100).
【国際調査報告】