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特表2023-532986多機能セメント添加剤及びその使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】多機能セメント添加剤及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/00 20060101AFI20230725BHJP
   C04B 24/18 20060101ALI20230725BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20230725BHJP
   C04B 22/12 20060101ALI20230725BHJP
   C04B 24/20 20060101ALI20230725BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20230725BHJP
   C04B 24/06 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C04B28/00
C04B24/18 B
C04B24/38 C
C04B24/38 Z
C04B22/12
C04B24/20
C04B22/08 B
C04B24/06 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500296
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(85)【翻訳文提出日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 US2021040609
(87)【国際公開番号】W WO2022010962
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/050,097
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522352199
【氏名又は名称】ソリュゲン インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン,ジュン スー
(72)【発明者】
【氏名】ガントゥン,フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】シラジ,アブドゥル
(72)【発明者】
【氏名】タン,ルンイー
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB04
4G112MB08
4G112PB07
4G112PB09
4G112PB17
4G112PB23
4G112PB24
4G112PB39
(57)【要約】
多機能セメント添加剤は、バイオキレート剤と溶媒とを含有する。バイオキレート剤は、グルカル酸ナトリウムの液体酸化生成物を含有し、液体酸化生成物は、多量のグルコン酸のアニオン及びグルカル酸のアニオンと、少量成分のn-ケト酸及びC-Cの二酸とを含有する。セメント組成物は、(i)セメント系材料と、(ii)バイオキレート剤と、(iii)溶媒とを含有する。バイオキレート剤はグルカル酸ナトリウムの液体酸化生成物を含有し、液体酸化生成物は、多量のグルコン酸のアニオン及びグルカル酸のアニオンと、少量成分のn-ケト酸及びC-Cの二酸とを含有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多機能セメント添加剤であって、
バイオキレート剤と、
溶媒と、
を含有し、
前記バイオキレート剤はグルカル酸ナトリウム液体酸化生成物を含み、
前記グルカル酸ナトリウム液体酸化生成物は、多量のグルコン酸のアニオン及びグルカル酸のアニオンと、少量成分のn-ケト酸及びC-Cの二酸とを含有する。
【請求項2】
請求項1に記載の多機能セメント添加剤であって、
ASTM G180分極抵抗試験により決定される電気伝導度が、約0.1μS/cmから約25μS/cmである。
【請求項3】
請求項1に記載の多機能セメント添加剤であって、
減水剤、遅硬剤、速硬剤、高流動化剤、腐食防止剤、及びAE剤からなる群から選択される機能を少なくとも3つ有する。
【請求項4】
請求項1に記載の多機能セメント添加剤であって、
減水剤を含有する。
【請求項5】
請求項4に記載の多機能セメント添加剤であって、
前記減水剤は、リグノスルホン酸塩、ヒドロキシカルボン酸、又はその組合せを含有する。
【請求項6】
請求項1に記載の多機能セメント添加剤であって、
遅硬剤を含有する。
【請求項7】
請求項6に記載の多機能セメント添加剤であって、
前記遅硬剤は、リグノスルホン酸塩、ウェランガム、キサンタンガム、セルロース、ポリアニオン性セルロース、有機酸、有機酸のアルカリ金属塩、カルボキシヘキソース、カルボキシラクトン、多価金属塩、又はその組合せを含有する。
【請求項8】
請求項1に記載の多機能セメント添加剤であって、
速硬剤を含有する。
【請求項9】
請求項8に記載の多機能セメント添加剤であって、
前記速硬剤は、塩化カルシウム、ケイ酸三カルシウム、又はその組合せを含有する。
【請求項10】
請求項1に記載の多機能セメント添加剤であって、
高流動化剤を含有する。
【請求項11】
請求項10に記載の多機能セメント添加剤であって、
前記高流動化剤は、末端ホスホン酸型ポリエステル、ナフタレンスルホン酸塩ポリマー、ホルムアルデヒドポリマー、又はその組合せを含有する。
【請求項12】
請求項1に記載の多機能セメント添加剤であって、
腐食防止剤を含有する。
【請求項13】
請求項12に記載の多機能セメント添加剤であって、
前記腐食防止剤は、亜硝酸塩、硝酸塩、又はその組合せを含有する。
【請求項14】
請求項1に記載の多機能セメント添加剤であって、
AE剤を含有する。
【請求項15】
請求項14に記載の多機能セメント添加剤であって、
前記AE剤は、天然の木の樹脂、動物の脂肪、湿潤剤、酸の水溶性石けん、又はその組合せを含有する。
【請求項16】
セメント組成物であって、
(i)セメント系材料と、
(ii)バイオキレート剤と、
(iii)溶媒と
を含有し、
前記バイオキレート剤はグルカル酸ナトリウム液体酸化生成物を含有し、
前記グルカル酸ナトリウム液体酸化生成物は、多量のグルコン酸のアニオン及びグルカル酸のアニオンと、少量成分のn-ケト酸及びC-Cの二酸とを含有する。
【請求項17】
請求項16に記載のセメント組成物であって、
前記セメント系材料は、ポルトランドセメント、ポゾランセメント、石こうセメント、リン酸セメント、アルミナ高含有セメント、シリカセメント、高アルカリ性セメント、シェールセメント、酸/塩基セメント、ソレルセメントなどのマグネシアセメント、フライアッシュセメント、ゼオライトセメントシステム、セメントキルンダストセメントシステム、スラグセメント、マイクロファインセメント、メタカオリン、又はそれらの組合せを含む。
【請求項18】
請求項16に記載のセメント組成物であって、
前記セメント系材料は、セメント重量基準(BWOC)で約0.01%から約5%含まれる。
【請求項19】
請求項16に記載のセメント組成物であって、
前記バイオキレート剤は、前記セメント組成物の全重量に対して約0.1重量%から約40重量%含まれる。
【請求項20】
請求項16に記載のセメント組成物であって、
前記溶媒は、真水又は塩水を含有する。
【請求項21】
請求項16に記載のセメント組成物であって、
水分は、セメント重量基準(BWOC)で約20%から約180%含まれる。
【請求項22】
請求項16に記載のセメント組成物であって、
バイオキレート剤を含まない類似のセメント組成物と比較して約5%から約100%増加した圧縮強度を有する。
【請求項23】
請求項16に記載のセメント組成物であって、
バイオキレート剤を含まない類似のセメント組成物と比較して約5%から約400%増大したシックニングタイムを有する。
【請求項24】
請求項16に記載のセメント組成物であって、
バイオキレート剤を含まない類似のセメント組成物と比較して約0.5インチから約9インチ増加したスランプ値を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2020年7月9日に出願された「セメント添加剤組成物及びその使用方法(Cement Additive Compositions andMethods of Using Same)」の名称の米国仮特許出願第63/050,097号の利益を主張し、当該出願の全てがあらゆる目的のために参照によって本明細書中に援用される。
【0002】
分野
本開示は、水和させた際に硬化物を形成する材料と共に使用する組成物及び方法に主に関連する。より具体的には、本開示はセメント添加剤及びその使用方法に関連する。
【0003】
背景
セメント添加剤は、セメントスラリーに添加されてスラリー又は硬化したセメントの性質を改善する化合物及び/又は物質として一般に説明される。本開示はセメント添加剤に言及するが、本明細書で開示される物質はコンクリートに類似の機能を付与してもよい。
【0004】
セメント添加剤は、大きく6個の異なるカテゴリー、つまり(1)減水剤、(2)遅硬剤、(3)速硬剤、(4)高流動化剤(superplasticizer)、(5)腐食防止剤、(6)AE剤(air entrainers)に分類できる。現在、多くのセメント及び/又はコンクリート混合物が、単一機能生成物又は二重機能生成物であるセメント添加剤を含有する。例えば、リグノスルホン酸塩は、遅硬剤及び流動化剤(plasticizer)の両方として従来から利用されている化合物である。
【発明の概要】
【0005】
本明細書の開示内容は、バイオキレート剤(biochelant)と溶媒とを含有する多機能セメント添加剤である。バイオキレート剤はグルカル酸ナトリウム液体酸化生成物を含み、グルカル酸ナトリウム液体酸化生成物は、多量のグルコン酸のアニオン及びグルカル酸のアニオンと、少量成分のn-ケト酸及びC-Cの二酸とを含有する。
【0006】
また、本明細書の開示内容は(i)セメント系材料、(ii)バイオキレート剤、及び(iii)溶媒を含有するセメント組成物であり、バイオキレート剤はグルカル酸ナトリウム液体酸化生成物を含み、グルカル酸ナトリウム液体酸化生成物は、多量のグルコン酸のアニオン及びグルカル酸のアニオンと、少量成分のn-ケト酸及びC-Cの二酸とを含有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の発明の詳細な説明のため、添付の図面が参照される。
図1】時間の関数として実施例1のサンプルのコンシステンシーを示すグラフである。
図2】実施例2のサンプルの電気伝導度を示すグラフである。
図3】時間の関数として実施例3の中アルカリセメントの圧縮強度を示すグラフである。
図4】時間の関数として実施例3の低アルカリセメントの圧縮強度を示すグラフである。
図5】時間の関数として実施例3のホルシム(HOLCIM)セメントの圧縮強度を示すグラフである。
図6】実施例3の中アルカリセメントを含有するサンプルの硬化時間を示す棒グラフである。
図7】実施例3の低アルカリセメントを含有するサンプルの硬化時間を示す棒グラフである。
図8】実施例3のホルシムセメントを含有するサンプルの硬化時間を示す棒グラフである。
図9】実施例3のサンプルのスランプ時間を示す棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上述した通り、多くのセメント添加剤は単一機能生成物又は二重機能生成物である。例えば、リグノスルホン酸塩は、遅硬剤及び流動化剤の両方として従来から利用されている化合物である。グルコン酸塩及び/又はグルコへプトン酸塩を含有し、広く使用されている化学添加剤も二重機能を示す。これらの物質の使用に対する挑戦は、単一機能又は二重機能に限定されているため、目的に応じて用途に必要な性質を有するセメント系組成物を提供するためには複数の追加材料が必要である。したがって、セメント及び/又はコンクリートに使用される高次の機能を有する新規な添加剤に対する需要が現在存在する。
【0009】
本明細書の開示内容は、セメント添加剤として使用される組成物である。ある態様では、本開示のセメント添加剤は、減水剤、遅硬剤、速硬剤、高流動化剤、腐食防止剤、及びAE剤からなる群から選択される少なくとも三つの機能を備える多機能セメント添加剤である。本明細書において、これらの物質は「高機能性セメント添加剤」又はCAHFと呼ばれる。通常、CAHFを含有するセメントは様々な用途に使用可能である。CAHFを含有するセメントに好適な用途の例は、試掘孔内における被覆のセメント硬化などの油井及びガス井の仕上げ作業である。
【0010】
ある態様では、CAHFはキレート剤を含有する。本明細書において、同様に捕捉剤、キレート薬とも呼ばれるキレート剤は、金属と結合可能な分子を指す。キレート薬は2個以上の電子供与基を有するリガンドであり、リガンド上の原子と金属との間で1個より多い結合が形成される。この結合は与格又は配位共有結合であり、各陰性原子由来の電子が金属中心に対して結合を形成する両方の電子を提供することを意味する。ある態様では、キレート剤はバイオキレート剤である。本明細書において使用される場合、接頭辞「バイオ」は、酵素触媒を用いるなどの生物学的方法によって生産される化合物を指す。
【0011】
ある態様では、バイオキレート剤は、アルドン酸、ウロン酸、アルダル酸、又はそれらの組合せと、対カチオンとを含有する。対カチオンは、アルカリ金属(第1族)、アルカリ土類金属(第2族)又はその組合せを含有してもよい。ある態様では、対カチオンはナトリウム、カリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、セシウム、又はそれらの組合せである。
【0012】
ある態様では、バイオキレート剤は、グルコース酸化生成物、グルコン酸酸化生成物、グルコン酸塩、又はそれらの組合せを含有する。グルコース酸化生成物、グルコン酸酸化生成物、グルコン酸塩、又はそれらの組合せは、適切なpHに緩衝化されていてもよい。緩衝化は、任意の好適な方法、例えば、バイオキレート剤の全重量に対して約1重量%から約10重量%、又は約1重量%から約3重量%、又は約5重量%から約9重量%の量のpH調整剤を用いて実施可能である。ある態様では、バイオキレート剤は20重量%のグルコン酸塩溶液中に約1重量%から約8重量%の苛性アルカリ溶液を含有する。
【0013】
あるいは、バイオキレート剤は、緩衝化されたグルコース酸化生成物、緩衝化されたグルコン酸酸化生成物、又はそれらの組合せを含有する。その態様では、緩衝化されたグルコース酸化生成物、緩衝化されたグルコン酸酸化生成物、又はそれらの組合せは、任意の好適な酸又は塩基を用いて好適なpH、例えば約6から約7に緩衝化されている。その態様では、バイオキレート剤はグルコン酸とグルカル酸の混合物を含有しており、更にn-ケト酸、C-Cの二酸、又はその組合せを含む少量成分を含有する。ある態様では、バイオキレート剤は、テキサス州ヒューストンにあるソリュゲン インコーポレーテッド(Solugen Inc.)から市販されているBIOCHELATE(商標)金属キレート剤を含有する。
【0014】
ある態様では、キレート剤は、CAHF全量に対して約0.1重量%から約40重量%、又は約0.1重量%から約20重量%、又は約20重量%から約40重量%の量でCAHF中に存在する。
【0015】
本明細書で開示される種類のCAHFは、減水剤、遅硬剤、速硬剤、高流動化剤、腐食防止剤、AE剤、又はその組合せとして機能するセメント添加剤として使用されてもよい。
【0016】
ある態様では、CAHFは他の従来の減水剤の非存在下で減水剤として機能する。本明細書において、減水剤は、スラリーのレオロジー性に悪影響を及ぼすことなく、セメント系組成物のセメントに対する水の比率を低減可能な物質を指す。減水剤は、コンクリートの多孔性を低減し、コンクリートの強度を向上し、セメントスラリーの加工性を向上し、硬化したセメントの水浸透性を低減し、コンクリート中のアグレッシブエージェント(aggressive agent)の拡散率を低減するため、コンクリートの耐久性を向上すると共により優れた表面仕上げを提供できる。
【0017】
ある態様では、CAHFは、リグノスルホン酸塩及びヒドロキシカルボン酸などの従来の減水剤と共にセメントに含まれる。
【0018】
ある態様では、CAHFは、他の従来の遅硬剤の非存在下で遅硬剤として機能する。本明細書において、遅硬剤は、セメントスラリーのシックニングタイムを増大して適切な配置を可能にするために使用される物質を指す。セメントの硬化作業を終了するために必要な時間が増加し、セメントの硬化工程における温度上昇の効果のため、深さが増すと共にセメントの遅硬の必要性は増加する。
【0019】
ある態様では、CAHFは、リグノスルホン酸塩、ウェランガム、キサンタンガム、セルロース、ポリアニオン性セルロース、有機酸、有機酸のアルカリ金属塩、カルボキシヘキソース及び対応するラクトン、多価金属塩(例えば、多価金属ハロゲン化物)などの従来の遅硬剤と共にセメントに含まれる。
【0020】
ある態様では、本明細書で開示される種類のCAHFは、CAHFを含有しない類似のセメント系組成物と比較して、約5%から約400%、又は約100%から約400%、又は約5%から約50%、又は約40%から約200%だけセメントのシックニングタイムを増加させる。ある態様では、本明細書で開示される種類のCAHFは、API RP 10B-2 9節及びASTM C403に基づき決定されるシックニングタイムが約2時間から約34時間、又は約2時間から約8時間、又は約4時間から約30時間、又は約6時間から約34時間である。
【0021】
ある態様では、CAHFは、他の従来の速硬剤の非存在下において速硬剤として機能する。本明細書において、速硬剤は、作業を進めるために十分な圧縮強度を得るために必要なセメントの硬化時間を短縮するために使用される物質を指す。通常、速硬剤は温度が比較的低い表面付近の用途に使用される。ある態様では、CAHFは、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、ギ酸カルシウム、又はケイ酸三カルシウムなどの従来の速硬剤と共にセメントに含まれる。
【0022】
ある態様では、本明細書で開示される種類のCAHFは、CAHFを含有しない類似のセメント系組成物と比較して、API RP 10B-2 9節及びASTM C403に基づくセメントの硬化時間が約20%から約90%、又は約40%から約80%、又は約60%から約90%、又は約20%から約50%だけ短縮される。
【0023】
ある態様では、CAHFは、従来の高流動化剤の非存在下において高流動化剤として機能する。本明細書において、高性能減水剤(high range water reducer)としても知られる高流動化剤は、(i)含水率を30%以上低減したセメントを生成可能であり、(ii)セメントの硬化を遅らせる物質を指す。高流動化剤は、良く分散した粒子の懸濁液がスラリーのレオロジーを改善するために所望される場合に使用される。それをセメント系組成物に添加することにより、混合物の加工性に悪影響を及ぼすことなくセメントに対する水の比率を低減でき、自己硬化型セメント系組成物及び高性能セメント系組成物の生成が可能である。ある態様では、CAHFは、末端ホスホン酸型ポリエステル、及びナフタレンスルホン酸塩/ホルムアルデヒドポリマーなどの従来の高流動化剤と共にセメントに含有される。
【0024】
ある態様では、CAHFは、他の従来の腐食防止剤の非存在下において腐食防止剤として機能する。本明細書において、腐食防止剤は、作業中に金属含有(例えば、鉄含有、鋼鉄含有)成分を苛性材料による分解から保護するために使用される物質を指す。CAHFは二酸を含有するため、金属表面に結合し、不導態化して耐腐食フィルムを形成することにより、金属表面に腐食耐性を付与できる。また、CAHFは溶液中に金属カチオンを可溶化して維持できるため、高濃度の金属の溶液を提供できる。溶液中の高濃度の金属イオンは、効果の小さな濃度勾配を生じるため、固体金属から水溶液相又はコロイド相への物質移動率及び腐食率を限定及び低減する。腐食防止剤としての本明細書に開示の種類のCAHFの使用は、材料コストの低減、バッチング時間の増加などの経済的な利点をもたらし、また、温暖な気候で作業を実施する際は高い適合性を示す。ある態様では、CAHFは、亜硝酸塩及び硝酸塩などの従来の腐食防止剤と共にセメントに含有される。
【0025】
ある態様では、本明細書で開示される種類のCAHFは、CAHFを含有しない類似のセメント系組成物と比較して約10%から約10,000%、又は約400%から約800%、又は約600%から約10,000%、又は約10%から約500%だけセメントの電気伝導度を低減することにより腐食防止剤として機能する。ある態様では、本明細書で開示される種類のCAHFは、ASTM G180分極抵抗試験により決定される電気伝導度が、約0.1μS/cmから約25μS/cm、又は約0.1μS/cmから約1μS/cm、又は約2μS/cmから約25μS/cm、又は約1μS/cmから約20μS/cmである。
【0026】
ある態様では、CAHFは、他の従来のAE剤の非存在下においてAE剤として機能する。本明細書において、AE剤は、コンクリート中の気泡の意図的な形成を促進する物質を指す。気泡は、容易に流動し且つ硬化していないコンクリートを混合する間に形成され、その大半は硬化したコンクリートの一部として残存する。空気の混入の主な目的は、特に凍結融解に晒される気候において硬化したコンクリートの耐久性を向上すること、及び可塑(流動)状態におけるコンクリートの加工性を向上することである。ある態様では、CAHFは、天然の木の樹脂、動物の脂肪、湿潤剤、及び所定の酸の水溶性石けんなどの従来のAE剤と組み合わされる。
【0027】
ある態様では、CAHFは、水硬セメントを含有するセメント又はセメント系組成物に添加される。通常、水硬セメントは、酸化カルシウム、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、及び硫黄酸化物を含有し、水との反応により硬化する。本開示における使用に好適な水硬セメントの非限定的な例には、ポルトランドセメント(例えば、クラスA、B、C、G、及びHのポルトランドセメント)、ポゾランセメント、石こうセメント、リン酸セメント、アルミナ高含有セメント、シリカセメント、高アルカリ性セメント、シェールセメント、酸/塩基セメント、ソレルセメント(Sorel cement)のようなマグネシアセメント、フライアッシュセメント、ゼオライトセメントシステム、セメントキルンダストセメントシステム、スラグセメント、マイクロファインセメント、メタカオリン、及びそれらの組合せが含まれる。ある態様では、セメントは、酸化カルシウム、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、及び硫黄酸化物の混合物であるポルトランドセメントである。
【0028】
一つ以上の態様では、CAHFは、セメント系材料中においてセメント重量基準(BWOC)で0.01から5%、又は約0.01%から約5%、又は約0.1%から約1%、又は約2%から約5%の範囲で存在する。
【0029】
ある態様では、セメント系組成物は圧送可能なセメントスラリーを形成するのに十分な水性流体を含有する。水性流体は、真水又は塩水であってもよく、塩水は、例えば食塩水又は海水などの不飽和塩水溶液又は飽和塩水溶液である。ある態様では、水性流体は、セメントスラリー中において約20%から約180%(BWOC)、約28%から約60%(BWOC)、又は約36%から約66%(BWOC)の範囲で存在する。
【0030】
ある態様では、セメント系スラリーはセメント系材料と、水性流体と、CAHFとを混合して作製される。これらの成分は、組成物に合った任意の混合装置、例えばバルクミキサーを用いて混合可能である。ある態様では、セメント系材料、水性流体、及びCAHFは、現場又は使用する場所(例えば、仕上作業が実施される坑井現場)で混合される。この場所は、製造現場、混合場所、又は油井孔若しくはガス井孔を含んでもよい。あるいは、セメント系材料、水性流体、及びCAHFは現場から離れた場所で混合され、その後に使用する場所又は現場(例えば、井戸)で使用される。例えば、CAHFは現場から離れた場所で乾燥セメントと乾燥状態で混合され、その後に坑井現場に運ばれて圧送可能なスラリーに加工され、配置されてもよい。例えば、CAHFを含むセメント系組成物は、建設場所、又は坑井現場の坑井に配置することができる。あるいは、CAHFは、後でセメント系材料と接触される混合用水に水溶液(例えば濃縮液)として添加される。または、CAHFは、セメンチング作業中にスラリーに導入される水性エマルジョン/ディスパージョンとして構成される。
【0031】
ある態様では、CAHFは、セメントスラリーに添加すると、CAHFを含有しない硬化セメントと比較して硬化セメントの圧縮強度が向上する。ある態様では、硬化セメントの圧縮強度は約5%から約100%、又は10%から約50%、又は約5%から約30%だけ増加する。ある態様では、本明細書で開示される種類のCAHFを含有する硬化セメントは、ASTM C39に準じて決定される圧縮強度が約500psiから約8,000psi、又は約5,000psiから約8,000psi、又は約500psiから約3,000psi、又は約2,000psiから約6,000psiである。
【0032】
ある態様では、本明細書で開示される種類のCAHFを含有するセメントスラリーは、スランプ値が約0.5インチから約9インチ、又は約1インチから約5インチ、又は約0.5インチから約3インチ、又は約3インチから約7インチだけ増加する。ある態様では、本明細書で開示される種類のCAHFを含有するセメントスラリーは、ASTM C31に基づき決定されるスランプ値が約5.6インチから約9インチ、又は約7インチから約9インチ、又は約6インチから約8インチ、又は約5.6インチから約7.2インチである。
【0033】
本明細書で開示されるCAHFは、減水剤、遅硬剤、AE剤、速硬剤、高流動化剤、又はその組合せとして機能する多機能混合物である。また、CAHFは、セメントの改質剤としての亜硝酸塩、リグノスルホン酸塩、及び他のカルボン酸の使用を低減又は省略できる腐食防止剤としても機能し得る。
【0034】
さらに、本明細書で開示される種類のCAHFは、酵素学的方法から得られる容易に生分解可能な生成物である。これは、一般に硫酸又は硝酸が導入される方法を経て環境に有害な硫酸塩又は硝酸塩由来の廃棄物を生じるリグノスルホン酸塩などの従来のセメント添加剤と明らかに対照的である。本明細書で開示される種類のCAHFの使用は、製造される亜硝酸塩、硝酸塩、及び硫酸塩の生成物の量を低減することにより、硝酸塩/亜硝酸塩の排水放出の低減などの付随的な利点と共に二酸化炭素排出量の低減をもたらすことが予測される。
【0035】
例えば分子量分布又は架橋などにおけるリグノスルホン酸塩の不均一性は、リグノスルホン酸塩の泥状化などの予測不能な反応をもたらす可能性があるため、本明細書で開示される種類のCAHFの使用はリグノスルホン酸塩などの既存成分(incumbent)に対して有益である。本明細書で開示される種類のCAHFの分子量はしっかりと制御されており、泥状化を最小限にする。
【0036】
また、本明細書で開示される種類のCAHFはその適合性において非常に柔軟であり、その性能を更に向上するために必要に応じて既存の腐食防止剤、遅硬剤、減水剤、AE剤、速硬剤、及び高流動化剤と組み合わせることもできる。
【0037】
追加の開示
以下の記載は本開示に係る非限定的で具体的な態様である。
【0038】
第1の態様は、キレート剤、ポルトランドセメント、及び溶媒を含有する凝結遅延セメント用の組成物である。
【0039】
第2の態様は第1の態様の組成物であって、キレート剤は、アルドン酸、ウロン酸、アルダル酸、それらの塩若しくは誘導体、又はその組合せを含む。
【0040】
第3の態様は第1の態様の組成物であって、キレート剤はグルコン酸ナトリウム及びグルカル酸ナトリウムの液体酸化生成物を含み、液体酸化生成物は多量のグルコン酸のアニオン及びグルカル酸のアニオンと、少量成分のn-ケト酸及びC-Cの二酸とを含有する。
【0041】
第4の態様は第1の態様の組成物であって、セメントが酸化カルシウム、二酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化第二鉄、及び硫黄酸化物を含有する。
【0042】
第5の態様は第1の態様の組成物であって、溶媒は水を含有する。
【0043】
第6の態様は、バイオキレート剤及び溶媒を含有する多機能セメント添加剤であって、バイオキレート剤はグルカル酸ナトリウム液体酸化生成物を含み、グルカル酸ナトリウム液体酸化生成物は、多量のグルコン酸のアニオン及びグルカル酸のアニオンと、少量成分のn-ケト酸及びC-Cの二酸とを含有する。
【0044】
第7の態様は第1の態様の多機能セメント添加剤であって、ASTM G180分極抵抗試験により決定される電気伝導度が、約10%から約10,000%である。
【0045】
第8の態様は第6又は第7の態様の多機能セメント添加剤であって、減水剤、遅硬剤、速硬剤、高流動化剤、腐食防止剤、及びAE剤からなる群から選択される機能を少なくとも3つ有する。
【0046】
第9の態様は第6から第8の態様のいずれかの多機能セメント添加剤であって、減水剤を含有する。
【0047】
第10の態様は第9の態様の多機能セメント添加剤であって、減水剤は、リグノスルホン酸塩、ヒドロキシカルボン酸、又はその組合せを含有する。
【0048】
第11の態様は第6から第10の態様のいずれかの多機能セメント添加剤であって、遅硬剤を含有する。
【0049】
第12の態様は第11の態様の多機能セメント添加剤であって、遅硬剤は、リグノスルホン酸塩、ウェランガム、キサンタンガム、セルロース、ポリアニオン性セルロース、有機酸、有機酸のアルカリ金属塩、カルボキシヘキソース、カルボキシラクトン、多価金属塩、又はその組合せを含有する。
【0050】
第13の態様は第6から第12の態様のいずれかの多機能セメント添加剤であって、速硬剤を含有する。
【0051】
第14の態様は第13の態様の多機能セメント添加剤であって、速硬剤は、塩化カルシウム、ケイ酸三カルシウム、又はその組合せを含有する。
【0052】
第15の態様は第6から第14の態様のいずれかの多機能セメント添加剤であって、高流動化剤を含有する。
【0053】
第16の態様は第15の態様の多機能セメント添加剤であって、高流動化剤は、末端ホスホン酸型ポリエステル、ナフタレンスルホン酸塩ポリマー、ホルムアルデヒドポリマー、又はその組合せを含有する。
【0054】
第17の態様は第6から第16の態様の多機能セメント添加剤であって、腐食防止剤を含有する。
【0055】
第18の態様は第17の態様の多機能セメント添加剤であって、腐食防止剤は、亜硝酸塩、硝酸塩、又はその組合せを含有する。
【0056】
第19の態様は第6から第18の態様の多機能セメント添加剤であって、AE剤を含有する。
【0057】
第20の態様は第19の態様の多機能セメント添加剤であって、AE剤は、天然の木の樹脂、動物の脂肪、湿潤剤、酸の水溶性石けん、又はその組合せを含有する。
【0058】
第21の態様は、(i)セメント系材料、(ii)バイオキレート剤、及び(iii)溶媒を含むセメント組成物であって、バイオキレート剤はグルカル酸ナトリウム液体酸化生成物を含有し、グルカル酸ナトリウム液体酸化生成物は、多量のグルコン酸のアニオン及びグルカル酸のアニオンと、少量成分のn-ケト酸及びC-Cの二酸とを含有する。
【0059】
第22の態様は第21の態様のセメント組成物であって、セメント系材料は、ポルトランドセメント、ポゾランセメント、石こうセメント、リン酸セメント、アルミナ高含有セメント、シリカセメント、高アルカリ性セメント、シェールセメント、酸/塩基セメント、ソレルセメントなどのマグネシアセメント、フライアッシュセメント、ゼオライトセメントシステム、セメントキルンダストセメントシステム、スラグセメント、マイクロファインセメント、メタカオリン、又はそれらの組合せを含む。
【0060】
第23の態様は第21又は第22の態様のセメント組成物であって、セメント系材料は約0.01%から約5%(BWOC)である。
【0061】
第24の態様は第21から第23の態様のいずれかのセメント組成物であって、バイオキレート剤はセメント組成物の全重量に対して約0.1重量%から約40重量%である。
【0062】
第25の態様は第21から第24の態様のいずれかのセメント組成物であって、溶媒は真水又は塩水を含む。
【0063】
第26の態様は第21から第25の態様のいずれかのセメント組成物であって、水分は約20%から約180%(BWOC)である。
【0064】
第27の態様は第21から第26の態様のいずれかのセメント組成物であって、バイオキレート剤を含まない類似のセメント組成物と比較して圧縮強度が約5%から約100%向上している。
【0065】
第28の態様は第21から第27の態様のいずれかのセメント組成物であって、バイオキレート剤を含まない類似のセメント組成物と比較してシックニングタイムが約5%から約400%増加している。
【0066】
第29の態様は第21から第28の態様のいずれかのセメント組成物であって、バイオキレート剤を含まない類似のセメント組成物と比較してスランプが約0.5インチから約9インチ増大している。
【実施例
【0067】
実施例
本明細書で開示される発明が一般的に説明されたが、以下の実施例は発明の具体的な態様として提示されており、その実施及び利点を示す。実施例は説明のために提示されており、明細書又は請求項をあらゆる態様でも限定することを意図しないことが理解される
【0068】
実施例1
本明細書で開示される種類のCAHFのセメント遅硬剤としての機能が検討された。遅硬剤添加物として使用されるCAHFは、ソリュゲン インコーポレーテッドのBIOCHELATE(商標)の製品である。具体的には、16.4ppgのクラスHスラリー、35%(BWOC)の硅砂粉末、0.25%(BWOC)の分散剤であるポリナフタレンスルホン酸塩、0.60%(BWOC)のセルロース生成物である流体損失剤(fluid loss agent)、及び0.180ガロン/サック(gal/sack)の遅硬剤添加物を含む基本混合物を含有するセメント組成物に対してシックニングタイムの試験を実施した。試験条件は、API RP10B-2 9節に基づき目標圧力が6656psi、目標温度が250°Fであった。業界標準に基づき、Bearden単位のコンシステンシーとして70(Bc)がセメントの「硬化」が決定される数値として使用された。結果を表1に示し、時間の関数としてのコンシステンシーのグラフを図1に示す。
【表1】
【0069】
BIOCHELATE(商標)PROはグルカル酸、グルカル酸ナトリウム、グルコン酸、及びナトリウムの混合物であり、BIOCHELATE(商標)PRO MAXはグルカル酸混合物である。表1及び図1を参照すると、本明細書で開示される種類のCAHF(BIOCHELATE(商標)PRO及びBIOCHELATE(商標)PRO MAXの生成物)を含有する組成物は、グルコン酸ナトリウムの遅硬性能よりも優れていた。
【0070】
表1に記載の混合物は、混合物の圧縮強度を決定するために、非破壊性超音波試験により更に試験された。表2は、セメントスラリーを24時間硬化した後の超音波試験の結果を示す。
【表2】
【0071】
表2は、グルコン酸ナトリウム添加剤を含有する組成物が最も低い圧縮強度であり、BIOCHELATE(商標)PRO及びBIOCHELATE(商標)PRO MAXの製品はグルコン酸ナトリウムよりも高い圧縮強度であったことを示す。
【0072】
実施例2
本明細書で開示される種類のCAHFの腐食防止剤としての性能を、0.5MのNaClを用いたASTM G180分極抵抗試験により測定した。本実施例で使用したコントロールは、ホルシムのポルトランドセメントのタイプI-II低アルカリセメントを含有した。セメントは、タイプI-IIセメント用のASTM C1450及びAASHTO M85を実施した。この評価の結果を表3に示す。
【表3】
【0073】
添加剤は0.23gpy(ガロン毎立方ヤード=1.15L/m=8.02mL/L)添加された。表3を参照すると、電気伝導度のベースラインからの顕著な低下が観察されており、これは腐食防止を示す。更に、電気伝導度は8分の1(16.4から0.8μS/cm)に低下しており、BIOCHELATE(商標)PROが腐食防止剤であることを示した。
【0074】
この試験後に、BIOCHELATE(商標)PROの特徴を更に特定するために、変更したG180試験を実施した。この試験では、NaClは0.5Mに対して1Mで添加され、これは試験の分析精度を向上した。この試験の結果を図2に示す。図2を参照すると、0.23gpyのBIOCHELATE(商標)PROは、電気伝導度を81.7から22に低下させた。更に、CNI(亜硝酸カルシウム)とBIOCHELATE(商標)PRO製品の組合せは、化合物の合計使用量を低減する一方で(CNIは2gpyで1.1μS/cm、一方、0.4gpyのBIOCHELATE(商標)PROと1gpyのCNI(合計で1.4gpy)で1μS/cm)、CNI単独よりも優れた性能を示した。
【0075】
実施例3
本明細書で開示される種類のCAHF(BIOCHELATE(商標)PRO製品)のセメントスラリーの圧縮強度を改善する性質及び遅硬剤として作用する性質を検討した。
【0076】
具体的には、低アルカリセメント、中アルカリセメント、及び「ホルシムタイプII(Holcim Type II)」ブレンドの圧縮強度を、ASTM C39に基づき測定した。ホルシムタイプIIブレンドセメントの組成を表4に示し、表5は低アルカリセメントの組成を示し、表6は中アルカリセメントの組成を示す。ホルシムタイプIIブレンドは、アメリカのホルシムインコーポレーテッド(HOLCIM Inc.)から市販されている適度に硫酸塩抵抗性であるポルトランドセメントである。
【表4】

【表5】

【表6】
【0077】
図3は、低アルカリセメントを含有するサンプルの時間の関数としての圧縮強度のプロットである。図4は、中アルカリセメントを含有するサンプルの時間の関数としての圧縮強度のプロットである。図5は、ホルシムタイプIIセメントを含有するサンプルの時間の関数としての圧縮強度のプロットである。BIOCHELATE(商標)PROの使用は、中及び低アルカリセメントの両方において、約7日を過ぎると最終的により高い圧縮強度を示した。効果は低アルカリセメントでより判断されたが、BIOCHELATE(商標)PROの使用はセメントの圧縮強度を最高で2080psiまで向上した。CNIとBIOCHELATE(商標)PROの混合物を含有するサンプルでは、BIOCHELATE(商標)PROの添加はCNIとの混合物の圧縮強度を向上した。
【0078】
サンプルの硬化時間はASTM C403に基づいて決定され、その結果を図6,7,及び8に示す。図6は、低アルカリセメントを含有するサンプルの日数の関数としての硬化時間の棒グラフである。図7は、中アルカリセメントを含有するサンプルの日数の関数としての硬化時間の棒グラフである。図8は、ホルシムタイプIIブレンドセメントを含有するサンプルの日数の関数としての硬化時間の棒グラフである。その結果は、BIOCHELATE(商標)PROの使用はより長い初期及び最終セメントスラリー硬化時間をもたらすことを示しており、API RP 10B-2 9節の試験に係る油田セメント試験で見られた結果を裏付ける。また、これらの結果は、ホルシムタイプIIセメントのデータに見られるように、BIOCHELATE(商標)PROはCNIによる硬化の遅延を軽減できることを示す。
【0079】
図9は、低アルカリセメント、中アルカリセメント、及びホルシムタイプIIセメントを含有するサンプルの添加剤の量の関数としてのスランプ値のプロットである。試験はASTM C31に基づき行った。図9を参照すると、BIOCHELATE(商標)PROの添加はコントロールに対して高いスランプ値を示しており、BIOCHELATE(商標)PROがスランプ値を向上したことを示している。
【0080】
発明が示されて説明されたが、当業者は発明の要旨及び教示を逸脱することなくその改変が可能である。本明細書で説明した態様は、単なる例示であり、限定することを意図しない。本明細書に開示された発明の多数の変形および改変が可能であり、開示された発明の範囲内に該当する。数値範囲または数値限定は明確に記載されている場合、そのような表現の範囲または限定は、明確に記載された範囲または限定内に該当する同じ程度の反復の範囲または限定を含む(例えば、約1から約10は2、3、4などを含み、0.10より大きいは0.11、0.12、0.13などを含む)ことが理解されなければならない。請求項の構成要素に対する用語「任意に」の使用は、対象の要素が必要である、または、必要でないことを意味する。両方の選択肢が請求項の範囲内であることを意図する。有する、含む、備えるなどの広い用語の使用は、~からなる、実質的にからなる、実質的に~であるなどの狭い用語をサポートすることが理解されなければならない。
【0081】
したがって、保護の範囲は上述の説明によって限定されず、以下の請求項によってのみ限定されており、その範囲は請求項に係る発明の全ての均等物を含む。それぞれ及び全ての請求項は、本開示の態様として明細書に導入される。そのため、請求項は更なる説明であり、本発明の態様の追加である。本明細書における参照文献、特に本願の優先日後の発行日である文献の説明は、本開示の発明に対する従来技術であることを認めるものではない。本明細書で引用される全ての特許、特許出願及び公報の開示内容は、それらが本明細書に記載の内容を補う例示の、手順の、又は他の詳細を提供する範囲において、参照によって本明細書中に援用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【国際調査報告】