IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ベクトン ディキンソン フランスの特許一覧 ▶ ベクトン ディキンソン ホールディングス ピーティーイー リミテッドの特許一覧

特表2023-533009医療用容器をコネクタに流体接続するための装置及びこの装置を製造するための方法
<>
  • 特表-医療用容器をコネクタに流体接続するための装置及びこの装置を製造するための方法 図1
  • 特表-医療用容器をコネクタに流体接続するための装置及びこの装置を製造するための方法 図2
  • 特表-医療用容器をコネクタに流体接続するための装置及びこの装置を製造するための方法 図3
  • 特表-医療用容器をコネクタに流体接続するための装置及びこの装置を製造するための方法 図4
  • 特表-医療用容器をコネクタに流体接続するための装置及びこの装置を製造するための方法 図5
  • 特表-医療用容器をコネクタに流体接続するための装置及びこの装置を製造するための方法 図6
  • 特表-医療用容器をコネクタに流体接続するための装置及びこの装置を製造するための方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】医療用容器をコネクタに流体接続するための装置及びこの装置を製造するための方法
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20230725BHJP
   A61M 39/22 20060101ALI20230725BHJP
   A61M 39/02 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61M5/168 506
A61M39/22
A61M39/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500985
(86)(22)【出願日】2021-07-05
(85)【翻訳文提出日】2023-02-27
(86)【国際出願番号】 EP2021068550
(87)【国際公開番号】W WO2022008463
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】20305769.0
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】310021434
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン フランス
(71)【出願人】
【識別番号】514197821
【氏名又は名称】ベクトン ディキンソン ホールディングス ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アマルシン ディーリプラオ ジャドハブ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066AA07
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD08
4C066EE14
4C066FF01
4C066HH12
4C066JJ03
4C066QQ15
4C066QQ35
(57)【要約】
流体入口(22)から流体出口(24)まで医療用流体を循環させるための内部管路(20)を画定するハウジング(2)と、内部管路(20)内に配置され、医療用流体の流体出口(24)への流れを許容及び防止する開口位置及び閉鎖位置との間で、中心長手方向軸Aに沿って移動可能であるスライダ(5)と、スライダ(5)に接続され、スライダ(5)が閉鎖位置にあるときに流体出口(24)を閉じるプラグ(4)と、プラグの近位に配置され、スライダ(5)に近位力を及ぼし、スライダ(5)を開口位置で維持する弾性部材(7)と、スライダ(5)の作動部材(52)に設けられ、近位方向に配向され、医療用流体圧力が所定の閾値以上である場合に、スライダ(5)を弾性部材(7)の作用に抗して閉鎖位置に到達させることにより、プラグ(4)に流体出口(24)を閉鎖させる、圧力領域(50)と、を備える装置(1)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用流体を含む医療用容器(100)をコネクタ(200)に流体接続するための装置(1)であって、
ハウジング(2)であって、前記ハウジング(2)は、流体入口(22)から流体出口(24)まで医療用流体を循環させるための内部管路(20)を画定する、ハウジング(2)と、
前記内部管路(20)内に配置され、医療用流体が前記流体出口(24)を通って流れることが許容される開口位置と、医療用流体が前記流体出口(24)を通って流れることが防止される閉鎖位置との間で、中心長手方向軸Aに沿って移動可能であるスライダ(5)であって、前記スライダ(5)が、前記中心長手方向軸Aに沿って延びる連結ロッド(58)を含み、前記連結ロッド(58)が、前記作動部材(52)と前記プラグ(4)を接続する、スライダと、
前記スライダ(5)に接続された前記プラグ(4)であって、前記スライダ(5)が閉鎖位置にあるときに前記流体出口(24)を閉じるように構成された前記プラグ(4)と、
前記プラグ(4)の近位に配置され、前記スライダ(5)に近位力を及ぼすように構成された弾性部材(7)であって、前記弾性部材(7)が、前記スライダ(5)を開口位置に維持する、弾性部材(7)と、
前記スライダ(5)の前記作動部材(52)に設けられた近位方向に配向された圧力領域(50)であって、前記圧力領域(50)に及ぼされる医療用流体圧力が、所定の閾値以上である場合に、前記スライダ(5)を前記弾性部材(7)の作用に抗して閉鎖位置に到達させることにより、前記プラグ(4)に流体出口(24)を閉鎖させるよう構成される、圧力領域(50)と、
ホルダ(8)であって、前記ホルダ(8)は、前記中心長手方向軸Aに沿って、前記連結ロッド(58)を案内するための案内要素(80)と、前記ハウジング(2)の一部を形成する外側リング(84)と、前記案内要素(80)を前記外側リング(84)に接続し、保持要素(82)が前記ホルダ(8)を通して、医療用流体が流れることを可能にする開口(86)を区切るように、前記保持要素(82)を含む、ホルダ(8)と、を備える装置(1)。
【請求項2】
前記作動部材(52)が、前記開口位置と前記閉鎖位置との間の前記スライダ(5)のスライド移動を案内するように構成された周辺縁部(56)を含み、前記圧力領域(50)は、医療用流体が前記作動部材(52)を通過することを可能にする少なくとも2つの貫通孔(54)を区切る、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも2つの貫通孔(54)が、前記中心長手方向軸Aを含む長手方向平面に対して対称である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記作動部材(52)が円盤形状を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記圧力領域(50)が、前記中心長手方向軸Aに対して直交する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記作動部材(52)が、前記作動部材(52)及び前記連結ロッド(58)が単一の部分を形成するように、前記連結ロッド(58)と一体である、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記弾性部材(7)が、前記連結ロッド(58)の周囲に延在するベローズである、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記弾性部材(7)が、前記作動部材(52)と前記ホルダ(8)の前記案内要素(80)との間に延在する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記ハウジング(2)が、上部ハウジング(30)と下部ハウジング(32)とからなり、前記ホルダ(8)の前記外側リング(84)が、前記上部及び下部ハウジング(30,32)の間に介在する中間ハウジング(2)部を形成する、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
前記プラグ(4)が、前記スライダ(5)よりも軟らかい材料で作られる、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の装置。
【請求項11】
前記医療用容器(100)は、医療用流体を収容するためのリザーバを含み、
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置(1)が、前記医療用容器(100)の前記リザーバに流体接続される、医療用容器(100)。
【請求項12】
請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の装置(1)を製造するための方法であって、
前記ホルダ(8)、前記スライダ(5)、前記弾性部材(7)、及び、前記プラグ(4)を組み立てるステップと、
前記ホルダ(8)を前記下部ハウジング(32)に、好ましくは、超音波溶接によって固定するステップと、
前記ホルダ(8)を前記上部ハウジング(30)に、好ましくは、超音波溶接によって固定するステップと、を備える、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、患者への医療用流体の注入又は注射のために、注射器などの医療容器、及び、血管アクセス装置、カテーテル、又は、ニードルハブなどのコネクタに差し込むように構成された装置に関するものである。また、本発明は、この装置を構成する医療用容器及びコネクタ、並びに、この装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願において、部品又は装置の遠位端は、患者に最も近い端部を意味し、近位端は、患者に最も遠い端部を意味すると理解される。同様に、本願では、「遠位方向」は、注入又は注射の方向を意味すると理解され、「近位方向」は、注入又は注射の方向と反対の方向、すなわち、患者から遠ざかる方向を意味すると理解されるものとする。
【0003】
一般に医療用注射器は、限られた量の医薬組成物を体内に注入するために使用される。より大量の医薬組成物を体内に注入する場合、血管アクセス装置を使用することがある。このような装置は、末梢血管又は中枢血管を経由して静脈に挿入される。血管アクセス装置は、流体(例えば、生理食塩水、血液、医薬品、及び/又は、全非経口栄養)を患者の体内に注入したり、患者から流体(例えば、血液)を取り出したり、及び/又は、患者の血管系の様々なパラメータを監視するために使用することができる。
【0004】
しかし、血管アクセス装置は閉塞する可能性がある。血管アクセス装置が適切に使用され、閉塞しないようにするために、診療基準が策定される。この規格には、一般にフラッシュ処置と呼ばれる洗浄処置が含まれる。これらのフラッシュ処置は、血管アクセス装置の開通性を維持する。
【0005】
洗浄処置は、例えば10mL容量の注射器バレルなど、より低い注入圧力を発生するように特別に設計された注射器の使用、または閉塞又は他の望ましくない効果を引き起こす可能性のあるカテーテル内の破片又は残留物を除去する「プッシュポーズ」又は脈動洗浄技術の使用によって強化することができる。しかし、これらの処置は、医療従事者にとって難しく、また、患者の静脈に医薬組成物を注入する速度が速すぎる可能性がある。
【0006】
医薬組成物を末梢静脈ラインに高速注入すると、カテーテル内及びカテーテルが留置される静脈内に一時的に圧力がかかることがある。この高すぎる圧力は、破裂や崩壊など静脈の損傷につながる可能性がある。また、注入する医療用組成物が、注入装置の外部に浸潤又は漏出し、臨床的合併症を引き起こすことや、末梢静脈カテーテルなどの注入装置の交換や注入部位の変更を余儀なくされることがある。
【0007】
したがって、上記の欠点を回避するために、所定の閾値以下に留まるフラッシュ注入圧力を確保することを可能にする薬物送達装置が必要とされる。
【0008】
米国特許出願公開第2003/078534号明細書は、皮下注射で薬剤を投与する際に生じる不適切な圧力による主観的な痛み反応と患者の潜在的な組織損傷を最小限に抑えることを提案している。しかし、この装置は動力駆動であり、駆動機構や射出時に発生する内圧を測定するセンサーなど複数の部品を含むため、使用方法が複雑になり、コストが高く、装置も煩雑になる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本発明の目的は、注射器から血管アクセス装置への注入圧力を制限することにより、上記の欠点を緩和し、血管の損傷を回避し、かつコンパクトで取り扱いや製造が容易な装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、医療用流体を含む医療用容器をコネクタに流体接続するための医療用装置などの装置であり、装置は、流体入口から流体出口まで医療用流体を循環させるための内部管路を画定するハウジングと、内部管路内に配置され、医療用流体が流体出口を通って流れることが許容される開口位置と、医療用流体が流体出口を通って流れることが防止される閉鎖位置との間で、中心長手方向軸Aに沿って移動可能であるスライダと、スライダに接続されたプラグであって、スライダが閉鎖位置にあるときに、流体出口を閉じるように構成される、プラグと、プラグの近位に配置される弾性部材であって、スライダを開口位置に維持するように、スライダに近位力を及ぼすように構成される、弾性部材と、スライダの作動部材に設けられた近位方向に配向された圧力領域であって、圧力領域にかかる医療用流体圧力が、所定の閾値以上である場合に、スライダが、弾力部材の作用に抗して、閉鎖位置に達するように構成されることにより、プラグに流体出口を閉じさせる、圧力領域と、を備える、装置。
【0011】
したがって、本発明の医療装置によれば、血管アクセス装置における注入圧力を制限することができる。これにより、血管への損傷を防ぐことができる。圧力制限機構は、モータ駆動ではないため、部品点数が少なく、小型化、低コスト化が可能である。
【0012】
一実施形態では、作動部材は、開口位置と閉鎖位置との間のスライダのスライド移動を案内するように構成された周辺縁部を含む。
【0013】
一実施形態では、圧力領域は、医療用流体が作動部材を通過することを可能にする少なくとも2つの貫通孔を区切る。
【0014】
好ましくは、少なくとも2つの貫通孔は、中心長手方向軸Aを含む長手方向平面に対して対称である。
【0015】
これにより、圧力領域の流路が対称になり、圧力領域にかかる圧力が均一になるため、スライダの傾斜運動や任意の閉塞を防ぎ、装置の信頼性を向上させることができる。
【0016】
好ましくは、作動部材は円盤形状である。
【0017】
好ましくは、圧力領域は、中心長手方向軸Aに対して直交する。
【0018】
一実施形態では、スライダは、中心長手方向軸Aに沿って延びる連結ロッドを含み、この連結ロッドは、作動部材をプラグに接続する。
【0019】
好ましくは、作動部材は、作動部材及び連結ロッドが単一の部分を形成するように、連結ロッドと一体である。
【0020】
好ましくは、弾性部材は、連結ロッドの周囲に延びるベローズである。
【0021】
好ましくは、装置は、ホルダを含み、ホルダは、中心長手方向軸Aに沿って、連結ロッドを案内するための案内要素と、ハウジングの一部を形成する外側リングと、案内要素を外側リングに接続する保持要素であって、保持要素は、医療用流体がホルダ内を流れることを可能にするための開口部を区切る、保持要素と、を含む。
【0022】
好ましくは、弾力部材は、作動部材とホルダの案内要素との間に延在する。
【0023】
好ましくは、ハウジングは、上部ハウジングと下部ハウジングとからなり、ホルダの外側リングは、上部ハウジングと下部ハウジングとの間に介在する中間ハウジング部を形成する。
【0024】
一実施形態では、プラグは、スライダよりも柔らかい材料で作られる。
【0025】
本発明の別の態様は、医療用流体を収容するためのリザーバを備える医療用容器と、この医療用容器のリザーバに流体接続される前述の装置と、を備える。
【0026】
本発明の別の態様は、前述の装置を製造する方法であって、ホルダ、スライダ、弾性部材、及び、プラグを組み立てるステップと、ホルダを下部ハウジングに、好ましくは超音波溶接によって固定するステップと、ホルダを上部ハウジングに、好ましくは超音波溶接によって固定するステップ、とを備える、方法。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明およびそれから生じる利点は、以下の添付の図面を参照して以下に示す詳細な説明から明らかになる。
図1図1は、本発明の一実施形態に係る装置の斜視図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る装置の長手方向平面における断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る装置の分解斜視図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る装置の動作を説明する長手方向平面における断面図である。
図5図5は、本発明の一実施形態に係る装置の半透過斜視図である。
図6図6は、本発明の一実施形態に係る装置の動作を説明する長手方向平面における断面図である。
図7図7は、本発明の一実施形態に係る医療用容器及び血管アクセス装置の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る装置1が示される。図7に示されるように、装置1は、事前充填または事前充填可能な注射器などの医療用容器100、及び、ニードルハブ又は血管アクセス装置、例えば、IV(静脈)カテーテルなどのコネクタ200に接続され、医療用容器100に含まれる医療用流体が、コネクタ200に達する前に、装置1を通過するように構成される。装置1が付加型の装置であることが企図される。したがって、本発明の装置1を用いずに、医療用容器100をコネクタ200に接続することも可能である。医療用容器100は、典型的には、医療用流体を含むリザーバを規定するバレル108と、リザーバと流体連通する通路を画定する遠位先端部102とを含む。医療用容器100は、遠位先端部102を介して医療用製品を排出するためのストッパ110とプランジャロッド112とから構成されてもよい。
【0029】
図1及び図2を参照すると、付加型の装置1は、流体入口22から流体出口24まで装置1を介して、医療製品を循環させるための内部管路20を画定するハウジング2を含むことができる。ハウジング2は、医療用容器100に収容された医療用流体が医療用容器100から流体入口22を介して、装置1に流れるように、装置1を医療用容器100に接続するための、ねじ又は鍔部262などの近位接続手段を備える近位端26と、医療用流体が装置1から流体出口24を介して、コネクタ200に流れるように、装置1をコネクタ200に接続するための、ねじ284などの遠位接続手段を備える遠位端28を有する。
【0030】
装置1は、流体出口24を閉じるためのプラグ4と、プラグ4が流体出口24から離れた位置にある開口位置(図2)とプラグ4が流体出口24を閉じる閉鎖位置(図6)との間で、プラグ4と共に移動可能なスライダ5と、スライダ5及びプラグ4を開口位置に向けて付勢する弾性部材7と、装置1の中心長手方向軸Aに沿って、開口位置及び閉鎖位置のスライダ5のスライド移動をガイドするホルダ8とを更に含む。
【0031】
図4図6を参照して、スライダ5は、内部管路20の内部を循環する医療用流体が圧力領域50に遠位圧力を作用させるように、医療用流体の流路の近位部に圧力領域50が配置されて構成される。圧力領域50は、そこに作用する医療用流体圧力によって、スライダ5及びプラグ4が、閉鎖位置に向かって弾性部材7の作用に抗して、遠位側に移動するように構成される。
【0032】
圧力が所定の閾値未満を維持する限り、弾性部材7はプラグ4を流体出口24から離して維持し、スライダ5は中間位置(図4)に留まり、閉鎖位置には到達しない。したがって、医療用流体は、コネクタ200を介して下流に流れることができる。
【0033】
圧力が所定の閾値に等しくなると、圧力領域50に及ぼされる遠位力が、弾性部材7の近位力に打ち勝ち、したがって、スライダ5が閉鎖位置に到達し、プラグ4が流体出口24を閉鎖させる。これにより、医療用流体は、コネクタ200を流れることが防止される。圧力領域50にかかる医療用流体の圧力が所定の閾値以上である場合、医療用流体がコネクタ200を流れることが防止される。
【0034】
圧力領域50、所定の圧力閾値、及び、図2に示す開口位置と図6に示す閉鎖位置との間のスライダ5の移動距離は、注入する医療用流体の体積、及び/又は、医療用容器100の寸法(例えば容器の内径)に応じて決定することができる。例えば、圧力領域50の面積は、30mm2と35mm2との間、好ましくは、約33mm2との間に含まれ得る。所定の閾値は、約25psi、すなわち、1.7×105Paと1.8×105Paとの間であってよい。図2に示す開口位置と図6に示す閉鎖位置との間のスライダ5の移動距離は、例えば、2mm程度とすることができる。
【0035】
圧力領域50は、スライダ5の円盤状の作動部材52の近位面によって画定されてもよい。圧力領域50は、好ましくは、長手方向軸Aに対して直交する。図4又は図6に示すように、スライダ5、より具体的には作動部材52は、スライダ5のどの位置にあっても、医療用流体を遮断せずに、内部管路20の内部に流れるように構成される。
【0036】
したがって、作動部材52は、医療用流体が圧力領域50を通過することを可能にする少なくとも1つ、好ましくは2つの貫通孔54を含んでいてもよい。貫通孔54は、医療用流体の流れが対称性を保つように、中央長手軸Aを含む長手方向平面に関して、好ましくは対称的である。図示されていない代替の実施形態では、作動部材52の周辺縁部56は、医療用流体が、スライダ5によって、より正確にはスライダ5と内部管路20の内面との間を通過することを可能にする切欠きを含んでもよい。
【0037】
弾性部材7は、ベローズの形態であってもよい。装置1の内部を循環する医療用流体がない場合、弾性部材7は、図2に示すように、スライダ5とプラグ4とをスライダ5の近位端の位置である開口位置に維持する。しかしながら、弾性部材7は、医療用流体圧力が所定の閾値以上になると、スライダ5とプラグ4が閉鎖位置に達するように設計される。
【0038】
スライダ5は、圧力領域50とプラグ4とを連結するために、軸方向に延びる連結ロッド58などの連結部材を含む。作動部材52は、作動部材52と連結ロッド58とが単一の部分を形成するように、連結ロッド58と一体であってもよい。
【0039】
しかし、図3を参照すると、プラグ4は、例えば摩擦力によって又は接着剤材料を介して、接続部材に固定される別個の構成要素であってもよい。プラグ4は、連結ロッド58及び必要に応じて接着剤材料を受け入れるための穴40を構成してもよい。
【0040】
図示された実施形態では、作動部材52は、スライダ5の近位端、より具体的には、連結ロッド58の近位端に設けられる。プラグ4は、スライダ5の遠位端、より具体的には連結ロッド58の遠位端に固定される。なお、弾性部材7は、連結ロッド58の周囲に配置されてもよい。したがって、連結ロッド58は、弾性部材7を貫通して延在する。
【0041】
図2及び図3を参照すると、ホルダ8は、長手方向軸Aに沿って、スライダ5の並進運動を案内するように構成された案内要素を含んでいる。案内要素は、ロッド58が内側管状リング80にスライドするように、スライダ5のロッド58を受け入れる形状の内側管状リング80の形態であってよい。
【0042】
スライダ5の周辺縁部56、より具体的には作動部材52の周辺縁部56は、スライダ5が内部管路20の内部で動くときに、内部管路20の内壁に接触し、この周辺縁部56が、長手方向軸Aに沿ってスライダ5を案内するのに役立つように構成されてもよいことに留意されたい。
【0043】
弾性部材7は、ホルダ8の内側管状リング80によって支持される一端と、作動部材52の遠位面に対して軸受する反対側の端部とを有する。
【0044】
ホルダ8は、内部管路20内の医療用流体の流れを妨げることなく、内側管状リング80をハウジング2に接続するための半径方向スポーク82などの保持要素を含んでいてもよい。したがって、半径方向スポーク82は、ホルダ8を通る流体の循環のための貫通開口86を区切る。なお、スポーク82は、円周方向に規則的に分布していてもよい。
【0045】
図3を参照すると、ハウジング2は、上部ハウジング30及び下部ハウジング32から構成されてもよく、ホルダ8は、ハウジング2の一部を形成し得る外側リング84から構成されてもよい。上部ハウジング30は、この外側リング84の近位面に固定されてもよく、一方、下部ハウジング32は、外側リング84の遠位面に固定されてもよい。
【0046】
図7を参照すると、近位接続手段及び遠位接続手段は、装置1と医療用容器100との間の接続、及び、装置1とコネクタ200との間の接続が取り外し可能であるように構成される。このように、装置1は、医療用容器100やコネクタ200と一体化されていない別部品であるしたがって、医療従事者は、必要に応じて装置1を取り外すか否かを自由に決定することができる。
【0047】
近位接続手段は、医療用容器100の円筒形又は円錐形の遠位先端部102に対応する雄型継手をしっかりと受け入れるように構成された、管状部分の形態であってもよい雌型継手260から構成されてもよい。さらに、近位接続手段は、医療用容器100の遠位先端部102に取り付けられたアダプタ106の内側ねじ104と係合するように設計された、2つの径方向に対向する外側鍔部262などの接続特徴から構成されてもよい。したがって、近位接続手段は、3mL,5mL、又は、10mLの注射器など、任意の標準注射器と協働することもでき、特に、この医療用容器100とのルアースリップ又はルアーロック接続のいずれかを確立することができる。
【0048】
図1,2及び7に見えるように、遠位接続手段は、コネクタ200の雌型継手202と堅く係合するように構成された、円筒形又は円錐形の管状先端部の形態であってよい雄型継手280から構成されてもよい。遠位接続手段は、コネクタ200の雌型継手202上に配置された対応する外側ねじ204を係合するための内側ねじ284を備える鍔部282を含んでいてもよい。したがって、遠位接続手段も、好ましくは、コネクタ200の任意の標準的な継手と協働するように設計される。
【0049】
例えば、図4を参照すると、内部管路20は、第1の直径を有する第1のセクション20aと、第1のセクション20aから遠位にあり、第2の直径を有する第2のセクション20bと、第2のセクション20bから遠位にあり、第3の直径を有する第3のセクション20cとから構成されてもよい。第2の直径は、第1の直径よりも大きくてもよい。第3の直径は、第2の直径よりも小さい場合があり、第1の直径よりも小さい場合がある。第1及び第2のセクション20a,20bは、近位テーパセクション20dによって分離されてもよい。同様に、第2及び第3のセクション20b,20cは、遠位テーパセクション20eによって分離されてもよい。図2の開口位置において、作動部材52は、近位テーパセクション20dに対して当接することができる。閉鎖位置では、プラグ4は、遠位テーパセクション20eに当接することができる。中間位置(図4)では、圧力領域50及びプラグ4は、テーパセクション20d,20eから離れた位置にある場合がある。
【0050】
一実施形態では、プラグ4及び弾性部材7は、ハウジング2、スライダ5及びホルダ8よりも軟らかい材料で作られる。例えば、プラグ4及び/又は弾性部材7は、ゴム又はシリコーン材料で形成されてもよい。ハウジング2、スライダ5及び/又はホルダ8は、ポリプロピレン又はポリカーボネートで作られてもよい。一実施形態では、プラグ4、弾性部材7、スライダ5、ホルダ8、及び、ハウジング2,28は、射出成形によって作製されてもよい。
【0051】
図2を参照すると、プラグ4は、流体出口24を封止するための遠位テーパ部分42を含んでもよい。
【0052】
以下、図2図4図5図6を参照しながら、装置1の動作を説明する。装置1の内部を循環する医療用流体がない場合(図2)、弾性部材7は、スライダ5を、スライダ5の最接近位置に相当する位置に維持する。プラグ4は、流体出口24から離れた位置にある。
【0053】
ユーザが医療用流体を注入するために医療用容器100のプランジャロッド112を押すと、遠位圧力が圧力領域50にかかる(図5上の矢印51)。この遠位圧力により、スライダ5が遠位方向に押され、それによって弾性部材7が圧縮される。圧力領域50に作用する流体圧力が所定の閾値よりも低い限り、スライダ5は、図2の開口位置と図6の閉鎖位置との中間的な開口位置(図4)に弾性部材7によって維持される。プラグ4は、医療用流体が流体出口24を通ってコネクタ200に向かって流れるように、流体出口24から離れたところに留まる(矢印240を参照)。
【0054】
圧力領域50に及ぼされる流体圧力が所定の閾値に達するか又はそれを越えると、作動部材52に及ぼされる遠位力が、スライダ5が閉鎖位置に達するまで遠位方向にさらに移動させられるように、弾性部材7の近位力に勝り、プラグ4が流体出口24(図6)を閉鎖させる。したがって、医療用流体は、装置1の内部で遮断され、コネクタ200内を流れることができない。したがって、医療製品を注入する医療従事者は、注入を追求するために、プランジャロッド112に指によって及ぼされる圧力を低減させなければならない。
【0055】
圧力領域50に及ぼされる流体圧力が低下して再び所定の閾値より低くなると、弾性部材7がスライダ5を開口位置(図2又は図4)に向かって押し戻す。プラグ4は、流体出口24から近位方向に移動し、再び医療用流体が、装置1から出てコネクタ200内を循環することを可能にする。
【0056】
図7を参照すると、本発明はさらに、医療製品を含むリザーバを画定するバレル108と、リザーバと流体連通する通路を画定する遠位先端部102と、遠位先端部102に接続された前述の装置1とを含む、予め充填されたまたは予め充填可能な注射器などの医療用容器100に関する。医療用容器100は、遠位先端部102を介して、医療用製品を排出するためのプランジャ110とプランジャロッド112とから構成されてもよい。医療用容器100は、好ましくは、遠位先端部102に取り付けられたアダプタ106を含み、アダプタ106は、接続を固定するために、装置1の近位端に設けられた近位接続手段と係合する内側ねじ104などの接続手段を含む。
【0057】
本発明の装置はまた、ニードルハブ又は血管アクセス装置、例えば、静脈内(IV)カテーテル、より具体的には末梢静脈内(PIV)カテーテルなどのコネクタ200に接続することができる。このようにして、装置1は、コネクタ200の雌型継手202に接続される。この雌型継手202は、好ましくは、接続を確実にするために、装置1のねじ付き鍔部282に係合する外側ねじ204などの接続手段を有する。装置1は、さらに、医療用容器100に接続されてもよい。
【0058】
本発明はまた、前述の装置1を製造するための方法に関し、当該方法は、
ホルダ8、スライダ5、弾性部材7、及び、プラグ4を組み立てるステップ(i)と、
ホルダ8を下部ハウジング32に、好ましくは、超音波溶接によって固定するステップ(ii)と、
ホルダ8を上部ハウジング30に、好ましくは、超音波溶接によって固定するステップ(iii)と、を備える。
【0059】
ステップ(i)において、弾性部材7は、まず、スライダ5のロッド58の周りに位置決めされてもよい。次いで、ロッド58は、ホルダ8の内側管状リング80の内部に挿入することができる。次いで、プラグ4は、例えば、接着剤によってスライダ5に固定されてもよい。
【0060】
したがって、本発明の装置1は、注入及び/又は、注入圧力を制御することができ、容易に取り付け可能な付加型の構成を提供する。装置1は、カテーテルの閉塞や血管の損傷を防止するものである。この装置1は、あらゆる注射器、カテーテル、ニードル、NFC(ニードルフリー接続)装置と併用できるため、汎用性がある。医療従事者は、さらに、装置1の接続を外すだけで、圧力制御機能を解除することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】