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特表2023-533011N-1分岐イミダゾキノリン、そのコンジュゲート、及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】N-1分岐イミダゾキノリン、そのコンジュゲート、及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 471/04 20060101AFI20230725BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 31/4745 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
C07D471/04 105C
A61P43/00 111
A61P37/02
A61P31/12
A61P35/00
A61K31/4745
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500988
(86)(22)【出願日】2021-06-10
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 IB2021055118
(87)【国際公開番号】W WO2022008995
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】62/705,633
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.SPAN
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】グリースグラバー,ジョージ ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】トゥーメイ,マーク エー.
(72)【発明者】
【氏名】コーエン,ハンナ シー.
(72)【発明者】
【氏名】ハナードーズ,デヴォン
【テーマコード(参考)】
4C065
4C086
【Fターム(参考)】
4C065AA05
4C065AA18
4C065BB06
4C065CC09
4C065DD03
4C065EE02
4C065HH01
4C065JJ07
4C065KK01
4C065KK09
4C065LL01
4C065PP03
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086CB05
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZB07
4C086ZB26
4C086ZB33
4C086ZC41
(57)【要約】
イミダゾキノリン化合物、その塩、そのコンジュゲート、当該化合物及びコンジュゲートを含有する医薬組成物、並びにヒト及び動物においてサイトカイン生合成を誘導するための免疫応答調節剤としてのそのような化合物の使用方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
[式中、
nは、0又は1の整数であり;
Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ及び-C(O)-O-アルキルからなる群から選択され;
は、-C1~3アルキレン-O-C1~3アルキルであり;
は、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されており;
Xは、OH又はNHである]
の化合物、又はその塩。
【請求項2】
XがOHである、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項3】
XがNHである、請求項1に記載の化合物又は塩。
【請求項4】
Rが、ハロゲン、ヒドロキシ、-C1~7アルキル、及び-C1~7アルコキシからなる群から選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物又は塩。
【請求項5】
nが0である、請求項1~4のいずれか一項に記載の化合物又は塩。
【請求項6】
が、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在された、C2~18アルキレン基である、請求項1~5のいずれか一項に記載の化合物又は塩。
【請求項7】
式(II):
【化2】
[式中、
は、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されており;
Xは、OH又はNHである]
の化合物、又はその塩。
【請求項8】
XがNHである、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
式(V-A)のIRM含有コンジュゲート:
【化3】
[式中、
nは、0又は1の整数であり;
Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ及び-C(O)-O-アルキルからなる群から選択され;
は、-C1~3アルキレン-O-C1~3アルキルであり;
は、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されており;
Yは、O、N、又はNHであり;
リンカーは、ヘテロ二官能性架橋基であり;
mは、0又は1であり;
Zは、ポリマー部分又は第2の活性部分であり;
前記コンジュゲートのY-Linker-Z部分は、リンカーを有するか又は有しておらず、任意に不安定な結合を含む]。
【請求項10】
式(V-B)のIRM含有コンジュゲート:
【化4】
[式中、
は、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されており;
Yは、O、N、又はNHであり;
リンカーは、ヘテロ二官能性架橋基であり;
mは、0又は1であり;
Zは、ポリマー部分又は第2の活性部分であり;
前記コンジュゲートのY-Linker-Z部分は、リンカーを有するか又は有しておらず、任意に不安定な結合を含む]。
【請求項11】
Zがポリマー部分である、請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項12】
Zが第2の活性部分(SAM)である、請求項10に記載のコンジュゲート。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか一項に記載の化合物と、製薬上許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項14】
請求項9~12のいずれか一項に記載のIRM含有コンジュゲートと、製薬上許容される担体とを含む、医薬組成物。
【請求項15】
ヒト又は動物においてサイトカイン生合成を誘導する方法であって、有効量の請求項13又は14に記載の医薬組成物を前記ヒト又は動物に投与することを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
いくつかの薬剤化合物は、免疫システムの特定の重要な側面を刺激することによって、及び特定の他の側面を抑制することによって、作用する。これらの化合物は、時として、免疫応答調節剤(immune response modifier、IRM)と呼ばれる。いくつかのIRM化合物は、ウイルス性疾患、腫瘍形成、及びT2媒介性疾患を治療するのに有用である。いくつかのIRM化合物は、ワクチンアジュバントとして有用である。
【0002】
IRM化合物は、以下の二環式及び三環式環系に基づいて報告されている:1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;1H-イミダゾ[4,5-c]ピリジン-4-アミン;1H-イミダゾ[4,5-c][1,5]ナフチジン(naphthyidin)-4-アミン;チアゾロ[4,5-c]キノロン-4-アミン及びオキサゾロ[4,5-c]キノロン-4-アミン;6,7,8,9-1H-テトラヒドロ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン;2H-ピラゾロ[3,4-c]キノロン-4-アミン;並びにN-1及び2-置換1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン。IRM化合物とポリマー材料又は他の活性化合物とのコンジュゲーションが知られているが、より高い活性を有する新しいIRM化合物を使用する他のコンジュゲートが望まれている。
【発明の概要】
【0003】
ヒト及び動物におけるサイトカイン生合成の誘導に有用となり得る新規化合物が開示される。このような化合物(又はその塩)は、一般式(I):
【化1】
[式中、
nは、0又は1の整数であり;
Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、及び-C(O)-O-アルキルからなる群から選択され;
は、-C1~3アルキレン-O-C1~3アルキルであり;
は、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されており;
Xは、OH又はNHである]のものである。
【0004】
化合物、及びこれらの化合物の、製薬上許容される塩などの塩は、ヒト又は動物に投与された場合に、サイトカイン生合成を誘導する(例えば、少なくとも1つのサイトカインの合成を誘導する)それらの能力、又はさもなければ免疫応答を調節するそれらの能力により、免疫応答調節剤として使用することができる。したがって、上記化合物は、こうした免疫応答の変化に応答するウイルス性疾患及び腫瘍などの様々な状態の治療に使用され得る。
【0005】
化合物はまた、ポリマー材料又は二次活性物質とのコンジュゲートで使用され得る。そのようなコンジュゲートとしては、以下の式(V-A)のIRM含有コンジュゲート:
【化2】
[式中、
nは、0又は1の整数であり;
Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、及び-C(O)-O-アルキルからなる群から選択され;
は、-C1~3アルキレン-O-C1~3アルキルであり;
は、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されており;
Yは、O、N、又はNH(リンカー又はポリマーと結合したときのXの残基である)であり;
リンカーは、ヘテロ二官能性架橋基であり;
mは、0又は1であり(すなわち、リンカーは存在してもしなくてもよい);
Zは、ポリマー部分又は第2の活性部分であり;
コンジュゲートのY-Linker-Z部分は、リンカーを有するか又は有しておらず、任意に不安定な結合を含む]が挙げられる。
【0006】
有効量の式(I)の化合物(又は製薬上許容されるその塩を含む、その塩)、若しくは式(V-A)のIRM含有コンジュゲート、又はその組み合わせを含有する、医薬組成物が開示される。また、そのような製剤をヒト又は動物に投与することによって、ヒト又は動物においてサイトカイン生合成を誘導する方法、ヒト又は動物においてウイルス性疾患を治療する方法、及びヒト又は動物において腫瘍性疾患を治療する方法も開示される。
【0007】
用語「アルキル」は、アルカンの基である一価の基を指し、直鎖、分枝鎖、環式、及び二環式のアルキル基、並びにこれらの組み合わせを含む。別段の指示がない限り、アルキル基は、典型的には、1個~20個の炭素原子を含有する。いくつかの実施形態では、アルキル基は、1個~10個の炭素原子、1個~9個の炭素原子、1個~8個の炭素原子、1個~7個の炭素原子、1個~6個の炭素原子、1個~5個の炭素原子、1個~4個の炭素原子、1個~3個の炭素原子、又は1個~2個の炭素原子を含有する。「アルキル」基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、イソブチル、t-ブチル、イソプロピル、n-オクチル、n-ヘプチル、エチルヘキシル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、アダマンチル、ノルボルニルなどが挙げられるが、これらに限定されない。
【0008】
用語「アルキレン」は、アルカンの基である二価の基を指し、直鎖、分岐鎖、環式、二環式、又はこれらの組み合わせである基を含む。別段の指示がない限り、アルキレン基は、典型的には、1個~20個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルキレン基は、2~18個の炭素原子、2~14個の炭素原子、2~12個の炭素原子、2~10個の炭素原子、1~10個の炭素原子、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子、1~6個の炭素原子、2~4個の炭素原子、1~4個の炭素原子、又は1~3個の炭素原子を有する。「アルキレン」基の例としては、メチレン、エチレン、1,3-プロピレン、1,2-プロピレン、1,4-ブチレン、1,4-シクロヘキシレン、及び1,4-シクロヘキシルジメチレンが挙げられる。
【0009】
用語「アルケニレン」は、アルケンの基である二価の基を指し、直鎖、分岐鎖、環式、二環式、又はこれらの組み合わせである基を含む。別段の指示がない限り、アルケニレン基は、典型的には、2個~18個の炭素原子を有する。いくつかの実施形態では、アルケニレン基は、2~18個の炭素原子、2~14個の炭素原子、2~12個の炭素原子、2~10個の炭素原子、2~8個の炭素原子、2~6個の炭素原子、又は2~4個の炭素原子を有する。「アルケニレン」基の例としては、エテニレン、プロペニレン、1,4-ブテニレン、1,4-シクロヘキセニレン、及び1,4-シクロヘキセニルジメチレンが挙げられる。
【0010】
任意に一つ以上の非過酸化-O-原子により「介在される」炭素原子を有するアルキレン又はアルケニレン基とは、基が-O-の両側に炭素原子を有することを意味する。例としては、-CHCH-O-CHCH-、-CH-CH-O-CH-CH-O-CHCH-、-CHCH-O-CH=CH-、-CHCH-O-CH=CH-O-CHCH-などが挙げられる。
【0011】
用語「アルコキシ」は、アルキル基に直接結合しているオキシ基を有する一価の基を指す。
【0012】
用語「Cx~yアルキル」、「Cx~yアルコキシ」、及び「Cx~yアルキレン」は、X~Y個の炭素原子を有する直鎖基、分枝鎖基、環状基、及びこれらの組み合わせを含む。例えば、「C1~5アルキル」は、1個の炭素、2個の炭素、3個の炭素、4個の炭素、及び5個の炭素のアルキル基を含む。「C1~5アルキル」のいくつかの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、sec-ブチル、イソブチル、異性体ペンチル、シクロプロピル、シクロペンチル、及び-CH-シクロプロピルが挙げられる。
【0013】
「IRM含有コンジュゲート」及びその変形は、式(I)のIRM化合物に由来する少なくとも1つの免疫応答調節剤(IRM)部分と、少なくとも1つのポリマー部分(例えば、PEG部分)又は第2の活性部分とを含む任意のコンジュゲート(すなわち、コンジュゲート)を指す。
【0014】
「部分」及びその変形は、例えば、特定の生物学的若しくは化学的機能(例えば、免疫調節及び/又は標的特異性)、又は物理的特性(例えば、サイズ、親水性若しくは疎水性)などの特定の特徴を示す化学化合物又はポリマーの一部分を指す。
【0015】
「ヘテロ二官能性架橋基」は、IRM化合物のX基と反応して第1の結合を形成し、ポリマー又は第2の活性化合物の反応性基(例えば、ヒドロキシル(-OH)、アミノ(-NH)、アミド(-NHC(O))、アルデヒド(-CH(O))、又はスルフヒドリル(-SH)基)と反応して第2の結合を形成するヘテロ二官能性架橋化合物から誘導される。ヘテロ二官能性架橋化合物(すなわち、ヘテロ二官能性架橋剤)は、両末端に2つの異なる反応性基、並びに種々の長さ及び組成の有機架橋を含む。
【0016】
「不安定な結合」は、IRM部分とポリマー部分又は第2の活性部分との間の連結が破壊され、それによって免疫細胞と接触して免疫応答を誘導することができる式(I)の遊離及び活性IRM化合物が放出されるように、in vivoで容易に切断される結合を指す。
【0017】
化合物の「塩」としては、Berge,Stephen M.,「Pharmaceutical Salts」,Journal of Pharmaceutical Sciences,1977,66,pages1-19に記載されている塩などの、製薬上許容される塩が挙げられる。例えば、塩は、遊離塩基化合物(すなわち、塩形態でない化合物)を、無機酸又は有機酸、例えば、塩酸、硫酸、臭化水素酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、リンゴ酸、マレイン酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、パラ-トルエンスルホン酸、サリチル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、パモ酸、キシナホ酸、シュウ酸などと反応させることによって調製され得る。
【0018】
本明細書で使用されるとき、「製薬上許容される担体」としては、治療有効量又は予防有効量の本開示の化合物、塩又はコンジュゲートのうちの1つ以上を、選択した投与経路によって対象に送達することができ、対象によって概ね耐容され、かつ許容される毒性プロファイル(好ましくは、投与用量で微毒~無毒)を有する担体が挙げられる。いくつかの好適な製薬上許容される担体は、Remington’s Pharmaceutical Science,18th Edition(1990),Mack Publishing Co.に記載されており、当業者であれば容易に選択することができる。典型的な製薬上許容される塩としては、塩酸塩及び二塩酸塩が挙げられる。
【0019】
「有効量」(「治療有効量」及び「予防有効量」を含む)は、サイトカイン誘導、免疫調節、抗腫瘍活性、及び/又は抗ウイルス活性などの治療的又は予防的効果を誘導するのに十分な化合物、塩又はコンジュゲートの量であると定義される。疾患又は状態に応じて、所望のサイトカインプロファイル、及び/又は許容されるレベルの副作用、有効量は、変化し得る。例えば、少量の非常に活性な化合物若しくは塩、又は多量の低活性の化合物若しくは塩を、望ましくない副作用を回避するために使用することができる。
【0020】
「治療する」及び「治療」、並びにそれらの変形は、進行を低減する、制限する、状態に関連する兆候又は徴候をある程度まで寛解させる、予防する、又は解決することを指す。「寛解させる」及び「寛解している」は、特定の疾患又は状態の兆候又は臨床的特徴の範囲、重症度、頻度、及び/又は尤度の任意の減少を指す。
【0021】
本明細書では、用語「を含む」及びその変化形は、これらの用語が明細書及び特許請求の範囲に記載されている場合、限定的な意味を有するものではない。このような用語は、記述される1つの工程/ステップ若しくは要素、又は複数の工程/ステップ若しくは要素の群が含まれることを示唆するが、いかなる他の1つの工程/ステップ若しくは要素、又は複数の工程/ステップ若しくは要素の群も除外されないことを示唆すると理解される。「からなる」により、この語句「からなる」の前のあらゆるものを含み、これらに限定することを意味する。したがって、語句「からなる」は、列挙された要素が必要又は必須であり、他の要素が存在し得ないことを示す。「から本質的になる」は、この語句の前に列挙されるあらゆる要素を含み、これらの列挙された要素に関して本開示で特定した作用若しくは機能に干渉又は寄与しない他の要素に限定されることを意味する。したがって、語句「から本質的になる」は、列挙された要素が必要又は必須であるが、他の要素は任意であり、列挙された要素の作用若しくは機能に実質的に影響を及ぼすか否かに応じて存在してもよい、又は、しなくてもよいことを示す。オープンエンド言語(例えば、「を含む」とその派生語)で本明細書に記載される、要素のいずれか又は要素の組み合わせは、クローズドエンド言語(例えば、「からなる」とその派生語)及び部分的クローズドエンド言語(例えば、「から本質的になる」とその派生語)で更に記載されると考えられる。
【0022】
「好ましい(preferred)」及び「好ましくは(preferably)」という言葉は、特定の状況下で特定の利益を提供できる、本開示の実施形態を指す。ただし、同一又は他の状況下では、他の請求項もまた好ましい場合がある。更に、1つ以上の好ましい請求項についての詳細な説明は、他の請求項が有用でないことを示唆するものではなく、かつ他の請求項を本開示の範囲から除外することを意図するものでもない。
【0023】
本出願では、「a」、「an」、及び「the」などの用語は、単数の実体のみを指すことを意図するものではなく、一般分類を含み、その一般分類の具体例は、例示のために使用し得る。用語「a」、「an」、及び「the」は、用語「少なくとも1つ」と互換的に用いられる。列挙に後続する「~のうちの少なくとも1つ」及び「~のうちの少なくとも1つを含む」という語句は、列挙内の項目のうちのいずれか1つ、及び、列挙内の2つ以上の項目のいずれかの組み合わせを指す。
【0024】
本明細書で使用される場合、用語「又は」は、内容がそうでない旨を特に明示しない限り、概して「及び/又は」を含む通常の意味で使用される。
【0025】
用語「及び/又は」は、列挙された要素のうちの1つ若しくは全て、又は列挙された要素のうちの任意の2つ以上の組み合わせを意味する。
【0026】
更に本明細書では、全ての数は用語「約」によって修飾されるものとみなされ、特定の実施形態では、好ましくは、用語「正確に」によって修飾されるものとみなされる。本明細書で使用する場合、測定した量との関連において、用語「約」は、測定を行い、測定の目的及び使用される測定機器の精度に見合う水準の注意を払う当業者によって予測されるような測定量の変動を指す。本明細書では、「最大」数字(例えば、最大50)は、その数(例えば、50)を含む。
【0027】
更に本明細書では、端点による数値範囲の記載は、その範囲内に包含される全ての数及びその端点を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4、5などを含む)。
【0028】
本明細書において使用される場合、用語「室温/周囲温度」は、20℃~25℃又は22℃~25℃の温度を指す。
【0029】
用語「の範囲(in the range)」又は「の範囲内(within a range)」(及び類似の記載)は、その記載された範囲の端点を含む。
【0030】
本明細書に開示の代替要素又は実施形態の群分けは、限定されるものと解釈するべきではない。各群のメンバーは、個々に、又は、その群の他のメンバー若しくはその群の中に見出される他の要素との任意の組み合わせで、言及及び特許請求することができる。便宜上及び/又は特許性の理由から、群の1つ以上のメンバーが群に含まれ得るか、又は、群から削除され得ることが見込まれる。任意のこのような包含又は削除が生じた場合、本明細書は、本明細書において改変された群を含むものとみなされ、したがって、添付の特許請求の範囲で用いられた全てのマーカッシュ群の記載内容を実現する。
【0031】
ある基が本明細書に記載の式中に複数存在する場合、具体的に記載されているか否かにかかわらず、各基は「独立して」選択される。例えば、式中に2つ以上のR基が存在するとき、各R基は独立して選択される。
【0032】
本明細書を通しての「一実施形態(one embodiment)」、「実施形態(an embodiment)」、「特定の実施形態(certain embodiments)」、又は「いくつかの実施形態(some embodiments)」などへの言及は、実施形態に関して記載された特定の特徴、構成、組成、又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれていることを意味する。したがって、本明細書を通して様々な箇所にこのような語句が記載されている場合、必ずしも、本発明の同一の実施形態を指しているわけではない。更に、特定の特徴、構成、組成、又は特性は、1つ以上の実施形態において任意の好適な方法で組み合わせてもよい。
【0033】
本開示の上記の「発明の概要」は、本発明の各開示された実施形態又は全ての実施態様の記載を意図するものではない。以下の説明は、例示的な実施形態をより具体的に例示する。本出願を通し、数箇所において、例の列挙を通して指針が提供されており、これらの例は、様々な組み合わせで用いることができる。それぞれの事例において、記載された列挙項目は、代表的な群としての役割のみを果たすものであり、排他的な列挙として解釈されるべきではない。したがって、本開示の範囲は、本明細書に記載の特定の例示的な構造に限定されるべきではなく、少なくとも特許請求の範囲の文言によって説明される構造、及びこれらの構造の同等物にまで拡大する。本明細書において選択肢として積極的に記載されている要素はいずれも、所望に応じた任意の組み合わせで、請求項に明示的に含めてもよい、又は請求項から除外してもよい。様々な理論及び可能な機構が本明細書で検討され得るが、いかなる場合であっても、このような検討は、特許請求可能な主題を限定するものではない。
【発明を実施するための形態】
【0034】
IRM化合物
本開示は、以下の式(I):
【化3】
の化合物(又はその塩)を提供する。
【0035】
式(I)の特定の実施形態では、nは、0又は1の整数である。式(I)の特定の実施形態では、nは、0である。
【0036】
式(I)の特定の実施形態では、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、及び-C(O)-O-アルキルからなる群から選択される。式(I)の特定の実施形態では、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、及びアルコキシからなる群から選択される。式(I)の特定の実施形態では、Rは、ハロゲン、ヒドロキシ、-C1~7アルキル、及び-C1~7アルコキシからなる群から選択される。式(I)の特定の実施形態では、Rは、ヒドロキシ、F、及びClからなる群から選択される。式(I)の特定の実施形態では、Rは、F、及びClからなる群から選択される。
【0037】
式(I)の特定の実施形態では、Rは-C1~3アルキレン-O-C1~3アルキルである。式(I)の特定の実施形態では、Rは、-CHOCH又は-CHOCHCHである。式(I)の特定の実施形態では、Rは、-CHOCH(O)CHCHである。
【0038】
式(I)の特定の実施形態では、Rは、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されている。式(I)の特定の実施形態では、Rは、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在された、C2~18アルキレン基である。式(I)の特定の実施形態では、Rは、C2~12アルキレン基である。式(I)の特定の実施形態では、Rは、C2~6アルキレン基である。式(I)の特定の実施形態では、RはC2~4アルキレン基である。
【0039】
式(I)の特定の実施形態では、Xは、OH又はNHである。式(I)の特定の実施形態では、Xは、OHである。式(I)の特定の実施形態では、Xは、NHである。
【0040】
特定の実施形態では、化合物は、式(II):
【化4】
のもの、又はその塩である。
【0041】
式(II)の特定の実施形態では、Rは、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されている。式(II)の特定の実施形態では、Rは、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在された、C2~18アルキレン基である。式(II)の特定の実施形態では、Rは、C2~12アルキレン基である。式(II)の特定の実施形態では、Rは、C2~6アルキレン基である。式(II)の特定の実施形態では、Rは、C2~4アルキレン基である。
【0042】
式(II)の特定の実施形態では、Xは、OH又はNHである。式(II)の特定の実施形態では、Xは、NHである。
【0043】
特定の実施形態では、化合物は、式(III):
【化5】
のもの、又はその塩である。
【0044】
特定の実施形態では、化合物は、式(IV):
【化6】
のもの、又はその塩である。
【0045】
IRM化合物の調製本開示の化合物は、化学分野でよく知られている方法に類似した方法を含む合成経路によって、特に本明細書に含まれる説明に照らして合成され得る。出発物質は、概ね一般に市販されている。Sigma-Aldrich Company(St.Louis,MO)などの商業的供給元から入手可能であり、又は当業者によく知られている方法によって容易に調製される(例えば、Louis F.Fieser and Mary Fieser,Reagents for Organic Synthesis,v.1-26,Wiley New York;Alan R.Katritsky,Otto Meth-Cohn,Charles W.Rees,Comprehensive Organic Functional Group Transformations,v 1-6,Pergamon Press,Oxford,England,(1995);Barry M. Trost and Ian Fleming,Comprehensive Organic Synthesis、v.1-8、Pergamon Press,Oxford,England,(1991);又はBeilsteins Handbuch der Organischen Chemie,4,Aufl.Ed.Springer-Springer-Verlag,Berlin,Germany(補遺を含む)(Beilsteinオンラインデータベースからも入手可能)に全般的に記載されている方法を使用して調製される)。
【0046】
本開示の化合物は、例えば、反応スキームI及びIIによって調製することができ、式中、R、R、R、X及びnは、上記のとおりである。反応スキームIのステップ(1)において、式(VI)の(S)-2-(tert-ブトキシカルボニルアミノ)-3-(4-tert-ブトキシフェニル)プロパン酸(チロシンのジ保護体)を、クロロギ酸イソブチル及びN-メチルモルホリンと反応させ、続いてステップ(2)において水素化ホウ素ナトリウムと反応させて式(VII)のアルコールを得ることができる。ステップ(3)における式(VII)のアルコールの、例えば硫酸ジアルキル又はハロゲン化アルキルなどのアルキル化剤によるアルキル化により、式(VIII)のアルキルエーテルを得ることができる。反応スキームIのステップ(4)において、保護基は、エタノール中の濃塩酸を使用して、式(VIII)の化合物から加熱により除去され、式(IX)の化合物を得ることができる。
【化7】
【0047】
反応スキームIIにおいて、式(X)の4-クロロ-3-ニトロキノリンを、ステップ(5)において式(IX)の化合物と反応させて、式(XI)の3-ニトロキノリン-4-アミンを得る。反応は、式(IX)のアミンを、ジクロロメタンなどの好適な溶媒中、トリエチルアミンなどの三級アミンの存在下、式(X)の溶液に添加することによって行うことができる。式(X)の4-クロロ-3-ニトロキノリン化合物及び置換類似体は、公知の化合物である(例えば、米国特許第3,700,674号(Diehlら)、同第5,389,640号(Gersterら)、同第6,110,929号(Gersterら)、同第7,923,560号(Wightmanら)、及びそれに引用された参考文献を参照されたい)。多くの場合、式(X)の置換類似体(例えば、n=1、Rはハロゲン、アルコキシ又はベンジルオキシ基である)を、市販の置換アニリン類から出発して調製することができる。
【0048】
反応スキームIIのステップ(6)において、式(XI)のフェノキシ基は、従来の合成方法を使用して式(XII)のエーテルに変換することができる。例えば、式(XI)の化合物を、式LG-R-Y-PGの好適なアルキル化剤及び塩基(炭酸セシウムなど)と、不活性溶媒(N,N-ジメチルホルムアミドなど)中で反応させることができ、式中、LGは脱離基であり、Yは-O-又は-NH-であり、PGは保護基であり、Rは上で定義した通りである。好適な脱離基としては、臭化物、ヨウ化物、メタンスルホニルオキシ及びp-トルエンスルホニルオキシが挙げられるが、これらに限定されない。Y=-O-である場合の好適な保護基としては、アセチル、ベンジル、テトラヒドロピラニル及びシリル保護基(例えば、トリメチルシリル、トリエチルシリル、tert-ブチルジメチルシリルなど)が挙げられるが、これらに限定されない。Y=-NH-である場合の好適な保護基としては、tert-ブトキシカルボニル(BOC)及びベンジルオキシカルボニル(CBZ)が挙げられるが、これらに限定されない。好適なアルキル化剤は、市販(2-ブロモエチルアセテート及び2-(Boc-アミノ)エチルブロミド)されており、又は従来の合成方法を使用して調製することができる。
【0049】
反応スキームIIのステップ(7)において、式(XII)のニトロ基をアミノ基に還元することができる。還元は、水素、触媒量の炭素担持パラジウム又は白金、及びメタノール、アセトニトリル、トルエン、又はそれらの組み合わせなどの溶媒を用いて、耐圧瓶内で行うことができる。反応は、Parr装置で実施することができる。反応スキームIIのステップ(8)において、得られた3,4-ジアミン化合物をオルトギ酸トリエチルと反応させて、式(XIII)の1H-イミダゾ[4,5-c]キノリンを得ることができる。反応は、酢酸プロピル又はトルエンなどの不活性溶媒中で行うことができる。任意に、ピリジン塩酸塩などの触媒を含ませることができる。
【0050】
反応スキームIIのステップ(9)において、式(XIII)の1H-イミダゾ[4,5-c]キノリンを、従来のN-オキシドを形成することができる酸化剤を使用して酸化させて、1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-5N-オキシドを得ることができる。好ましくは、クロロホルム又はジクロロメタンなどの好適な溶媒中式(XIII)の化合物を、3-クロロ過安息香酸と周囲温度で反応させる。
【0051】
反応スキームIIのステップ(10)において、N-オキシド化合物をアミノ化して、式(XI)の1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミンを得ることができる。ステップ(10)は、N-オキシド化合物を、スルホニル化剤及びアミノ化剤と、不活性溶媒、例えばジクロロメタン又はクロロホルム中で反応させることを伴う。好適なスルホニル化剤としては、塩化アルキル又は塩化アリールスルホニル、例えば、塩化ベンゼンスルホニル、塩化メタンスルホニル、又は塩化パラ-トルエンスルホニルが挙げられる。水酸化アンモニウムは、好適なアミノ化剤である。
【0052】
反応スキームIIのステップ(11)において、式(XIV)の保護基(PG)を除去して。式(XV)の化合物を得ることができる。例えば、Y=-O-であり、PGがアセチルである場合、式(XIV)の化合物を、ナトリウムメトキシドなどの好適な塩基と反応させて、アセチル保護基を除去し、X=OHである式(XV)の化合物を得ることができる。別の例では、Y=-NH-であり、PGがtert-ブトキシカルボニルである場合、式(XIV)の化合物をアルコール溶媒中で塩酸と反応させて、tert-ブトキシカルボニル基を除去し、X=NHである式(XV)の化合物を得ることができる。式(XV)は、式(I)の実施形態である。
【化8】
【0053】
本開示の化合物は、反応スキームI及びIIに従って、式(VI)の出発化合物を(S)-3-アミノ-4-(4-ヒドロキシフェニル)ブタン酸及び(S)-4-アミノ-5-(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸の同様のジ保護体で置き換えて、調製することができる。
【0054】
本開示の化合物の調製において、当業者であれば、中間体化合物の他の官能基を反応させる間に特定の官能基を保護することが必要であり得ることについて理解する。このような保護の必要性は、特定の官能基の性質及び特定の反応ステップの条件に応じて変化する。官能基の保護及び脱保護についての反応の総説は、P.G.M.Wuts,Greene’s Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley&Sons 20 New York,USA,2014で見ることができる。
【0055】
分離及び精製の従来の方法及び技術を使用して、本開示の組成物において使用されるIRM化合物を単離することができる。そのような技術としては、例えば、全てのタイプのクロマトグラフィー(高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、シリカゲルなどの一般的な吸着剤を用いたカラムクロマトグラフィー、及び薄層クロマトグラフィー)、再結晶、及び差分(すなわち、液体-液体)抽出技術を挙げることができる。
【0056】
本明細書に記載の化合物は、エナンチオマーの形態であってもよい。本開示の化合物又はその塩の鏡像異性体過剰率は、キラル固定相(CSP)を有するカラムでのガスクロマトグラフィー又はHPLCなどの標準的分析アッセイを用いて決定され得る。CSPを有する好適なカラムは、Chiral Technologies,Inc.(Westchester,PA)から入手可能である。
【0057】
鏡像異性体過剰率(%ee)は、式1に従って計算される。
【数1】
【0058】
鏡像異性体過剰率(%ee)は、式2に従って、多量の鏡像異性体シグナルのピーク面積と、少量の鏡像異性体シグナルのピーク面積とを比較することによって、キラルHPLCクロマトグラムから計算することができる。
【数2】
【0059】
IRM含有コンジュゲート
本開示は、以下の式(V-A)のIRM含有コンジュゲートを提供する。
【化9】
【0060】
式(V-A)の開示において、n、R、R、及びRは、式(I)について上述したとおりである。
【0061】
式(V-A)の特定の実施形態では、Yは、O、N、又はNHである。Yは、リンカーを形成する連結基と結合する際の、又はポリマー若しくは二次活性化合物と結合する際の、式(I)における基Xの残基である。式(V-A)の特定の実施形態では、Yは、Oである。式(V-A)の特定の実施形態では、Yは、NHである。式(V-A)の特定の実施形態では、Yは、Nである。
【0062】
式(V-A)の特定の実施形態では、リンカーはヘテロ二官能性架橋基である。
【0063】
式(V-A)の特定の実施形態では、mは0又は1である(すなわち、リンカーは存在してもしなくてもよい)。リンカーは、存在する場合(mは1の場合)、ヘテロ二官能性化合物に由来する。
【0064】
式(V-A)の特定の実施形態では、Zは、ポリマー部分又は第2の活性部分である。
【0065】
式(V-A)の特定の実施形態では、コンジュゲートのY-Linker-Z部分は、リンカーを有するか又は有しておらず、任意に不安定な結合を含む。
【0066】
本開示は、以下の式(V-B)のIRM含有コンジュゲート:
【化10】
を提供する。
【0067】
式(V-B)の開示において、RY、リンカー、m、及びZは、式(V-A)について上に記載される通りである。
【0068】
IRM含有コンジュゲートのリンカー
リンカーは、mは1の場合に存在し、ヘテロ二官能性化合物から誘導される。
【0069】
式(V-A)のIRM含有コンジュゲート(すなわち、IRM含有複合体)は、ヘテロ二官能性架橋剤を用いて調製することができる。ヘテロ二官能性架橋剤の全般的な定義は以下の通りである「...ヘテロ二官能性架橋剤は、両末端に2つの異なる反応性基、並びに様々な長さ及び組成の有機架橋を含む」(Hermanson,G.(1996),Bioconjugate Techniques,Academic Press,Chapter 5「Heterobifunctional Cross-Linkers」,page 229)。例えば、式(I)の化合物をヘテロ二官能性架橋剤と反応させて、エステル又はアミド結合を形成することができる。ヘテロ二官能性架橋剤上の他の反応性基は、それらが式(V-A)のIRM含有複合体のZ成分上の官能基と反応できるように選択される。式(V-A)のIRM含有複合体のZ成分上に多くの場合見出される有用な官能基としては、アミン反応性基、チオール反応性基、及びアルデヒド反応性基をそれぞれ含有するヘテロ二官能性架橋剤で誘導体化することができるアミン(-NH)、チオール(-SH)、及びアルデヒド(-CHO)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0070】
多くのヘテロ二官能性架橋剤が公知であり(Hermanson,G.(1996),Bioconjugate Techniques、Academic Press,Chapter 5「Heterobifunctional Cross-Linkers」,pages 229-285)、多くが市販されている(ThermoFisher Scientific Incorporated、Waltham Ma及び他の供給業者)。更に、ヘテロ二官能性架橋剤はまた、従来の方法を使用して合成することができる。
【0071】
有用なヘテロ二官能性架橋剤の例としては、スルホ-N-スクシンイミジル4-(マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレートナトリウム塩(スルホSMCC)
【化11】
N-(γ-マレイミドブチリルオキシ)スルホスクシンイミドエステル(スルホ-GMBS)
【化12】
スクシンイミジル-[(N-マレイミドプロピオンアミド)-テトラエチレングリコール]エステル(NHS-PEO-マレイミド)
【化13】
N-スクシンイミジル3-(ブロモアセトアミド)プロピオネート(SBAP)
【化14】
及び4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-α-(2-ピリジルジチオ)トルエン(SMPT)
【化15】
が挙げられる。
【0072】
IRM含有コンジュゲートにおける任意選択の不安定な結合
式(V-A)の特定の実施形態では、コンジュゲートのY-Linker-Z部分は、リンカーを有するか又は有しておらず、任意に不安定な結合を含む。「不安定な結合」は、IRM部分とポリマー部分又は第2の活性部分との間の連結が破壊され、それによって免疫細胞と接触して免疫応答を誘導することができる式(I)の遊離及び活性IRM化合物、並びに特定の実施形態では第2の活性物質が放出されるように、in vivoで容易に切断される結合を指す。
【0073】
不安定な結合は、in vivoで容易に切断され、IRM部分の免疫調節活性の実質的な低下を引き起こすIRM部分上の位置で第2の活性部分又はポリマー部分をIRM部分に連結する任意の共有結合であってもよい。不安定な結合が無傷である場合、すなわち、IRM部分が第2の活性部分又はポリマー部分に連結されている場合、IRM部分は、実質的に低減した免疫調節活性を有し得る。しかし、不安定な結合が切断されると、遊離の活性なIRM部分、ここでは遊離IRM化合物が放出され、免疫応答を誘導することができる。
【0074】
いくつかの場合において、免疫調節活性の低下は、置換の同一性及び性質、例えば、サイズ及び/又は立体的性質に主に起因し得る。これらの場合、置換は、例えば、IRM部分のうちの、受容体に結合し、免疫応答をもたらす細胞シグナル伝達カスケードを開始する部分を覆うことによって、IRM部分の免疫調節活性を低下させ得る。
【0075】
好適な不安定な結合の例としては、アミド結合、カルバメート結合、アミジン結合、エステル結合、ジスルフィド結合、又は文献に記載されているものなどの自壊性スペーサーと共に又はそれなしで使用されるペプチド単位のアミド結合が挙げられるが、これらに限定されない(Toki,B.E.et al.,J.Org.Chem.,2002,67,1866-1872;Jeffrey,S.C.らJ.Med.Chem.2005,48,1344-1358;Sun,M.M.C.et al.,Bioconjugate Chem..2005,16,1282-1290)、Tsuchikama,K.及びAn,Z.Protein Cell2018,9,33-46並びに国際公開第2005/082023号(Genentech,Inc.)。
【0076】
いくつかの実施形態では、不安定な結合は、アミド結合、カルバメート結合、アミジン結合、エステル結合、及びジスルフィド結合からなる群から選択される。他の実施形態では、不安定な結合は、アミド結合、カルバメート結合、及びアミジン結合からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、不安定な結合は、アミド結合である。
【0077】
不安定な結合は、in vivoで容易に切断される。切断は、化学的(例えば、生理学的pHでの加水分解又は特定の腫瘍内で見出されるより低いpH環境での加水分解)又は酵素的(例えば、エステラーゼとの反応)生体内変換など、様々な機構によって起こり得る。
【0078】
例えば、腫瘍の治療に使用するために設計されたコンジュゲートは、腫瘍特異的標的化部分と、全身環境よりも腫瘍環境において切断される可能性が高いこと、より迅速であること、又はより効率的であることから選択される不安定な結合と、を含んでもよい。腫瘍の微小環境は、低酸素圧、低細胞外pH、及び低グルコース濃度を有することを特徴とすることが多い。これらの微小環境条件の1つ以上、例えば、低pHを利用し得る不安定な結合は、腫瘍を治療するために設計されたコンジュゲートにおける使用に特に十分に適した不安定な結合を作製し得る。
【0079】
IRM含有コンジュゲートのポリマー部分
式(V-A)の特定の実施形態では、Zは、ポリマー部分である(すなわち、IRM含有コンジュゲートはIRMポリマーコンジュゲートである)。式(V-A)の特定の実施形態では、ポリマー部分は、多種多様なポリマーに由来する。
【0080】
好適なポリマーは、バイオポリマー又は天然に存在するモノマー及びそれらの組み合わせに基づき得る。天然バイオポリマーは、ヌクレオチド(例えば、アデノシン、チミジン)から構成される一本鎖又は二本鎖のRNA又はDNAを含み得る。天然バイオポリマーは、アミノ酸から構成されるペプチドであり得る。これの具体例は、ポリ(リジン)である。バイオポリマーは多糖類であってもよく、グリコーゲン、セルロース、及びデキストランを挙げることができるが、これらに限定されない。更なる例としては、アルギネート及びキトサンを含む、天然に存在する多糖類が挙げられる。好適なポリマーはまた、天然に存在する低分子、例えば、乳酸又はグリコール酸から構成され得るか、又はこの2つのコポリマー(すなわち、PLGA)であり得る。好適な予め形成された粒子はまた、製剤(例えば、安定化エマルジョン、リポソーム及びポリマーソーム)に基づいてもよく、又は粒子の表面上でのコンジュゲーション若しくはイオン交換に好適な粒子を形成する無機塩であってもよく、これはアルミニウム系塩を含んでもよい。
【0081】
特定の実施形態では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)、グリコーゲン、セルロース、デキストラン、アルギネート、キトサン、ポリラクチド、及びそれらの組み合わせから選択される。特定の実施形態では、ポリマーは、PEGである。
【0082】
PEGの以下の説明は、IRM含有コンジュゲートのポリマー部分を形成する他のポリマーに当てはまる。
【0083】
PEG部分は、任意の好適なPEGポリマーであり得るか、又はそれに由来し得る。いくつかの場合において、得られたIRM-PEGコンジュゲートは、少なくとも16キロダルトン(kDa)の分子量を有する。いくつかの実施形態では、得られたIRM-PEGコンジュゲートは、少なくとも20kDaの分子量を有し得る。他の実施形態では、IRM-PEGコンジュゲートは、少なくとも30kDaの分子量を有する。
【0084】
多くの実施形態では、IRM-PEGコンジュゲートは、500キロダルトン(kDa)以下の分子量を有する。いくつかの実施形態では、IRM-PEGコンジュゲートは、200kDa以下の分子量を有する。特定の実施形態では、IRM-PEGコンジュゲートは、100kDa以下、多くの場合50kDa以下の分子量を有する。
【0085】
様々な可能なPEGポリマー、及びPEGポリマーをIRM化合物に結合させるための方法は、例えば、国際公開第2005/110013号(3M)に記載されている。
【0086】
いくつかのPEGポリマーは、IRM部分が結合され得る複数の部位を含み得る。したがって、IRM-PEGコンジュゲートは、複数のIRM部分を含んでもよい。そのような場合、複数のIRM部分は、同種(すなわち、同じIRM化合物に由来する)であってもよく、又は異種(すなわち、異なるIRM化合物に由来する)であってもよい。
【0087】
IRM-PEGコンジュゲートは、IRMの全体的な全身活性を低下させながら、活性又は潜在的に活性なIRM化合物を局所組織領域及び/又は組織型に提供することができる。いくつかの場合において、IRM-PEGコンジュゲートは、固形腫瘍などの組織(例えば、特定の組織型又は局所組織領域)への優先的な沈着を可能にするサイズ及び化学的性質のものであってもよい。これは、例えば、IRM-PEGコンジュゲートに対する組織の血管透過性の増大及び腫瘍組織のリンパ排液の減少の結果として起こり得る。
【0088】
1つ以上のIRM部分は、共有結合又は非共有結合のいずれかを介してPEG部分に結合され得る。巨大分子部分へのIRM部分の非共有結合としては、例えば、親和性結合(例えば、アビジン-ビオチン)が挙げられる。
【0089】
IRM部分をPEG部分に共有結合させるための代表的な方法には、免疫応答調節剤中の反応性基(ヒドロキシル、アミノ、アミド、又はスルフヒドリル基など)とPEG中の他の反応性基(同様の性質のもの)との間に結合を形成するように反応するヘテロ二官能性架橋化合物などの化学架橋剤が含まれる。この結合は、例えば、ペプチド結合、ジスルフィド結合、チオエステル結合、アミド結合、チオエーテル結合などであり得る。IRM化合物はまた、反応性基を含むIRMを、反応性基を含むポリマーと直接反応させることによって、PEGに共有結合させることもできる。IRM部分をPEG部分に結合するための方法は、例えば、国際公開第2005/110013号(3M)に詳細に記載されている。
【0090】
IRM部分とPEG部分とをカップリングするために使用される特定の方法にかかわらず、結合は、例えば、加水分解又は酵素活性によって切断されて、遊離IRM化合物が生じ得る。
【0091】
IRM-PEGコンジュゲートがIRMプロドラッグを提供する実施形態では、IRM部分とPEG部分との間の連結の切断は、ある程度制御され得る。例えば、連結は、特定の生物学的微小環境において加水分解されるように設計され得る。腫瘍の細胞外環境は、正常組織の細胞外環境よりも酸性であることが知られている。したがって、IRM-PEGコンジュゲートは、IRM部分とPEG部分との間の結合が正常組織細胞外pH(7.4~7.5)では無傷のままであるが、固形腫瘍細胞外pH(7.2未満)では加水分解されるプロドラッグとして設計されてもよい。したがって、IRM-PEGコンジュゲート及び抗腫瘍抗原を含む医薬組成物は、固形腫瘍の近傍に投与されてもよい。IRM-PEGコンジュゲート及び抗原は、腫瘍環境に入り込むことができ(例えば、熱応答性ゲル担体からの拡散によって)、その場合、IRM-PEGコンジュゲートが切断されて遊離IRMを生じる。これは、抗腫瘍抗原と遊離IRMとの共局在化をもたらすものであり、これらは、腫瘍近傍の免疫細胞に共送達され、それによって抗原特異的、ひいては腫瘍特異的な免疫応答を生成することができる。
【0092】
他の実施形態では、IRM部分とPEG部分との間の連結は、コンジュゲートが免疫細胞(例えば、樹状細胞などの抗原提示細胞)のエンドソームに到達しない限り及び到達するまで連結が切断されないように設計されてもよい。
【0093】
PEG部分のサイズ及び構造は、IRM部分とPEG部分との間の連結が切断される速度に影響を及ぼし得る。例えば、PEG部分は、ポリアームPEGを含み得る。PEGアームの数及びサイズは、IRM-PEG結合の酵素的切断の速度に影響を及ぼし、それによって遊離IRMを放出し得る。別の例として、IRM部分とPEG部分との間の連結の性質は、連結が加水分解によって切断される速度に影響を及ぼし得る。アミド結合は、カルバメート結合よりも容易に加水分解される傾向がある。
【0094】
IRM含有コンジュゲートの第2の活性部分
式(V-A)の特定の実施形態では、Zは、第2の活性部分(SAM)である(すなわち、IRM含有コンジュゲートはIRM-SAMコンジュゲートである)。
【0095】
第2の活性部分は、生物学的活性を有する第2のIRM部分以外の任意の部分であってもよい。例えば、第2の活性部分は、抗原又は標的化部分を含み得る。
【0096】
抗原及び活性IRM部分を含むコンジュゲートは、例えば、米国特許出願公開第2004/091491号(Kedlら)に記載されている。これらのコンジュゲートは、抗原提示細胞へのIRM化合物及び抗原の共送達を促進することによって、抗原に対する免疫応答を増大させることができる。
【0097】
本開示のいくつかの実施形態は、抗原及びIRM部分を含むコンジュゲートを含み、IRM部分は、不安定な結合が切断されて活性IRM部分を放出するまで不活性である。そのようなコンジュゲートは、投与されたコンジュゲートが免疫応答を誘導する前に標的組織に到達することを可能にするのに有用であり得る。これは、より高度に局在化された抗原特異的免疫応答を誘導することによって治療的利益を提供し得る。IRM部分は、抗原特異的免疫療法が必要とされる標的組織にコンジュゲートが到達するまで不活性に保たれ得、それによって、コンジュゲートがその標的組織に到達することが可能になる前に活性IRM部分によって誘導され得る抗原に対する全身性免疫応答を減少させ、更には防止する。
【0098】
特定の実施形態では、第2の活性部分は、標的化部分、すなわち、特定の組織又は細胞集団へのコンジュゲートの送達を標的化するように作用するか、又はコンジュゲートの選択的保持を引き起こす部分であり得る。標的化部分の特定の性質は、ある程度、意図される標的の同一性及び性質によって決定され得る。例えば、好適な標的化部分は、腫瘍、標的細胞、標的組織、又は標的器官の抗原性部分に対して指向される抗体におけるように、標的への指向された結合を能動的に提供し得る。能動的標的化はまた、受容体-リガンド親和性を利用することによって達成され得る。他の場合において、標的化部分は、標的におけるコンジュゲートの受動的な保持を提供し得る。受動的な保持は、標的対非標的環境の疎水性/親水性、血管多孔性などの差異を利用することによって達成され得る。
【0099】
標的化部分は、コンジュゲートの標的化送達を提供し得る任意の材料であり得る。多くの実施形態では、標的化部分は、免疫特異的標的化を提供し得、すなわち、標的抗原への組成物の免疫特異的結合を促進するのに十分な免疫グロブリン(すなわち、抗体)の部分であり得る。しかしながら、本開示の態様は、例えば、ホルモン(天然又は合成)、脂質などの受容体リガンドなどの非免疫グロブリン標的化材料を使用して同様に実施されてもよい。
【0100】
いくつかの場合において、標的化部分は、抗体(すなわち、ある程度の免疫特異性を提供するために、少なくとも十分な抗体の免疫特異的部分、例えば、十分な軽鎖)であり得るか、又は抗体に由来し得る。しかしながら、他の場合において、標的化部分は、例えば、標的細胞集団によってある程度特異的に発現される受容体に結合するリガンドなどの腫瘍特異的マーカーの少なくとも一部分を認識する薬剤であってもよく、又はそれに由来してもよい。そのような場合、受容体は、腫瘍特異的マーカーとみなすことができる。
【0101】
腫瘍の治療に使用するために設計されたコンジュゲートは、腫瘍特異的標的化部分と、全身環境よりも腫瘍環境において切断される可能性が高いこと、より迅速であること、又はより効率的であることから選択される不安定な結合と、を含んでもよい。腫瘍の微小環境は、低酸素圧、低細胞外pH、及び低グルコース濃度を有することを特徴とすることが多い。これらの微小環境条件の1つ以上、例えば、低pHを利用し得る不安定な結合は、腫瘍を治療するために設計されたコンジュゲートにおける使用に特に十分に適した不安定な結合を作製し得る。
【0102】
黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)受容体は、乳癌、前立腺癌、子宮内膜癌、卵巣癌、及び黒色腫細胞上で有意に上昇する。従って、LHRH受容体のリガンドは、腫瘍部位へのIRM部分の腫瘍特異的標的化送達を提供するために、コンジュゲート中の標的化部分として使用され得る。上記のヒト癌についての動物モデルにおいて、LHRH指向治療剤は、罹患組織に選択的にホーミングする。IRMをLHRH受容体のリガンド(例えば、LHRH又は合成類似体)に結合させることにより、これらの癌の腫瘍細胞へのIRMの標的化送達を提供することができ、それにより、IRMを腫瘍部位に集中させ、IRM化合物単独で観察される治療指数よりも治療指数を増加させる。遊離DoxをLHRHコンジュゲート化Doxと比較する試験において、約200倍多い遊離Doxが、LHRHコンジュゲートに等しい抗腫瘍活性を示すために必要とされた。好適なLHRH受容体リガンドとしては、LHRHデカペプチド、アゴニスト活性若しくはアンタゴニスト活性を有する類似体、又は低分子受容体リガンドを挙げることができる。
【0103】
LHRH受容体は、正常な器官組織と比較して多くの腫瘍細胞(例えば、乳房、前立腺、黒色腫)上で過剰発現されることが公知である。従って、単一のIRM-LHRH受容体リガンドコンジュゲートは、2つ以上の型の癌を治療するために有用であり得る。
【0104】
葉酸受容体リガンドはまた、IRM部分の腫瘍特異的標的化送達を提供する標的化部分として有用であり得る。葉酸受容体の発現は、多くの腫瘍細胞の表面上で増加する。繰り返しになるが、葉酸受容体リガンドのIRM部分への結合は、腫瘍部位でのIRMの選択的蓄積をもたらし、IRM部分の全身的アベイラビリティを低下させ、IRM部分の治療指数を増加させ得る。好適な葉酸受容体リガンドとしては、葉酸、アゴニスト若しくはアンタゴニスト活性を有する類似体、又は低分子受容体リガンドが挙げられる。
【0105】
いくつかの代替的な実施形態では、IRM部分は、樹状細胞標的化部分にコンジュゲートされ得る。標的化部分は、DC特異的マーカーを認識する抗体(例えば、抗DC抗体)又は非抗体リガンドであり得る。
【0106】
好適なDC特異的マーカーとしては、例えば、共刺激マーカー、例えば、TNFRスーパーファミリーの任意のメンバー(例えば、CD40)、CD70、CD80、CD86、B7-CD、B7.1、B7.2などを挙げることができる。共刺激マーカーを認識する標的化部分を含むコンジュゲートは、単一の化学的実体に2つのDC-活性化刺激(すなわち、IRM部分及び共刺激)を送達するために使用され得る。
【0107】
本明細書で使用される場合、抗DC抗体は、樹状細胞抗原を認識する抗体を指す。好適な樹状細胞標的化部分は、樹状細胞によって定性的又は定量的のいずれかで差次的に発現される任意の抗原に結合し得る。好適な樹状細胞標的化部分は、例えば、DEC205、BDCA-1、BDCA-2、BDCA-3、BDCA-4、DC-SIGN、L-SIGN、HLR-DR、CD11c、CD13、CD14、CD21、CD33、CD35、CD123、C型レクチン、インテグリン(例えば、α4、α6、α1β1)、及び/又はToll様受容体(TLR)のいずれか1つなどのような抗原に結合し得る。
【0108】
標的化部分がDC特異的マーカー又は抗原を認識したかどうかにかかわらず、IRM部分を標的化部分にコンジュゲートすることは、全身送達経路を介して投与された場合であっても、IRM部分の全身的アベイラビリティを制限し得る。更に、コンジュゲート、したがってIRM部分は、樹状細胞の近傍に濃縮され、それによって樹状細胞をより効果的に成熟及び活性化することができる。腫瘍の部位で、又は腫瘍塊の内部であっても活性化された樹状細胞は、腫瘍細胞の表面上に存在する腫瘍抗原を利用して、腫瘍に対する免疫応答を開始することが可能であり得る。この方法は、腫瘍特異的抗体を必要とせずに、一般化された抗腫瘍療法を提供することができる。
【0109】
他の代替の実施形態では、IRM部分は、抗マクロファージ標的化部分にコンジュゲートされ得る。マクロファージは、腫瘍細胞の近傍に局在することが多い。従って、ここでもまた、IRM部分の全身的アベイラビリティは制限され得、IRM部分は、標的細胞(すなわち、マクロファージ)の近傍に濃縮され得、それによってマクロファージをより効率的に活性化する。活性化マクロファージは、抗腫瘍活性を有することが知られている。従って、この方法は、腫瘍特異的抗体を必要とせずに、一般化された腫瘍療法を提供することができる。
【0110】
他の代替的な実施形態では、IRM部分は、例えば、CD8細胞傷害性T細胞、NK細胞、又はNKT細胞などの腫瘍細胞を直接死滅させることができる細胞型上の表面抗原を認識する標的特異的部分にコンジュゲートされ得る。繰り返しになるが、コンジュゲートが全身投与される場合であっても、IRM部分は、腫瘍殺傷細胞の近傍に濃縮され得、それによって、(a)腫瘍殺傷細胞をより効果的に活性化する、及び/又は(b)IRM部分の全身的アベイラビリティを制限する。腫瘍の部位で、又は腫瘍塊の内部であっても活性化された腫瘍殺傷細胞は、腫瘍細胞の表面上に存在する腫瘍抗原を利用して、腫瘍に対する免疫応答を開始することが可能であり得る。この方法は、腫瘍特異的抗体を必要とせずに、一般化された腫瘍療法を提供することができる。
【0111】
他の代替の実施形態では、IRM部分は、例えば、内皮標的を認識する標的化部分にコンジュゲートされ得る。正常な毛細血管床と比較して、腫瘍塊の内皮環境に有意差が存在する。差異は、例えば、特定の内皮表面タンパク質、接着分子(例えば、インテグリン)、細胞外マトリックスタンパク質、増殖因子受容体などが発現される同一性及び程度で存在する。これらの差異を利用して、IRM部分の腫瘍関連内皮への送達を標的化することができる。そのような差異を特異的に標的とするいくつかの試薬は、抗血管新生療法として有用であることが実証された。そのような薬剤を標的化部分としてIRM部分にコンジュゲートすることにより、2つの有効な抗腫瘍療法、すなわち免疫療法及び抗血管新生療法を組み合わせることができる。
【0112】
好適な抗血管新生試薬としては、例えば、抗CD105抗体(CD105は、腫瘍内皮において過剰発現される)、抗ED-B抗体(ED-Bは、腫瘍塊において見出されるフィブロネクチンアイソフォームである)、腫瘍に関連する内皮インテグリンによって認識されるペプチド、及びその受容体が腫瘍内皮上でアップレギュレートされる増殖因子(例えば、血管内皮増殖因子)が挙げられる。
【0113】
この方法における抗血管新生試薬の使用は、抗血管新生と免疫療法との組み合わせの有望性をもたらし得る。更に、概して内皮は腫瘍塊よりも変異原性の低い組織であるので、腫瘍自体とは対照的に、腫瘍内皮へのIRMの標的化送達は、より有効な長期治療を提供し得る。したがって、内皮に指向された治療は、薬物耐性を引き起こす可能性がはるかに低くなり得る。また、内皮に対する治療は、腫瘍特異的試薬を必要とすることなく、実質的に任意の血管の腫瘍(例えば、乳癌、前立腺癌、肺癌)に対して有効であり得る。
【0114】
いくつかの実施形態では、標的化部分は、免疫グロブリン又は少なくとも免疫グロブリンの機能的部分を含み得る。免疫グロブリンはタンパク質であることから、修飾された免疫グロブリンを標的化部分としての使用に不適切にすることなく、特定の免疫グロブリンに修飾を行うことができることが理解される。例えば、免疫グロブリンアミノ酸配列の1つ以上の部分が欠失若しくは置換され得、又は更なるアミノ酸が免疫グロブリンに付加され得、この免疫グロブリンは、標的化部分としての使用に好適であるために十分な免疫特異的特徴をなお保持し得る。好適な抗体の例は、例えば、米国特許出願公開第2006/0142202号(Alkanら)に記載されている。
【0115】
医薬組成物及び生物活性
本開示の医薬組成物も想到される。本開示の医薬組成物は、治療有効量の本開示(本明細書に記載)の化合物、塩又はコンジュゲートを、製薬上許容される担体と組み合わせて含有する。
【0116】
式(I)の化合物若しくは式(V-A)のIRM含有コンジュゲート、又はその組み合わせは、対象(ヒト又は動物)への投与に好適な任意の医薬組成物中に提供されてもよく、任意の好適な形態で(例えば、溶液、懸濁液、エマルジョン、又は任意の形態の混合物として)、医薬組成物中に存在してもよい。医薬組成物は、任意の製薬上許容される担体(例えば、賦形剤又はビヒクル)と共に製剤化され得る。いくつかの実施形態では、製薬上許容される担体は、水(例えば、リン酸緩衝生理食塩水又はクエン酸緩衝生理食塩水)を含む。いくつかの実施形態では、製薬上、担体は、油(例えば、トウモロコシ油、ゴマ油、綿実油、ダイズ油、又はベニバナ油)を含む。医薬組成物は、懸濁化剤、界面活性剤、分散剤、及び防腐剤(酸化防止剤など)を含む1つ以上の添加剤を更に含んでもよい。
【0117】
医薬組成物のいくつかの実施形態では、式(I)の化合物若しくは式(V-A)のIRM含有コンジュゲート、又はその組み合わせは、均一に分散した製剤中に組み込まれ得る。医薬組成物のいくつかの実施形態では、式(I)の化合物若しくは式(V-A)のIRM含有コンジュゲート、又はその組み合わせは、乳化製剤中に組み込まれ得る。医薬組成物のいくつかの実施形態では、式(I)の化合物若しくは式(V-A)のIRM含有コンジュゲート、又はその組み合わせは、水中油型製剤中に組み込まれ得る。水中油型製剤は、油成分、水性成分、及び1つ以上の界面活性剤(例えば、ダイズ油、TWEEN 80、SPAN 85、及びリン酸緩衝生理食塩水を含む配合物)を含み得る。医薬組成物のいくつかの実施形態では、式(I)の化合物若しくは式(V-A)のIRM含有コンジュゲート、又はその組み合わせは、リポソーム製剤中に組み込まれ得る。
【0118】
いくつかの実施形態では、医薬組成物は、抗原に対する免疫応答を生成するのに有効な量で、抗原を更に含み得る。いくつかの実施形態では、抗原はワクチンである。
【0119】
医薬組成物は、任意の好適な方法(非経口又は非非経口)で投与されてもよい。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、皮内、皮下、筋肉内、又は静脈内注射によって投与されてもよい。
【0120】
本開示の医薬組成物中で使用される化合物、塩又はIRM含有コンジュゲートの正確な量は、化合物、塩又はIRM含有コンジュゲートの物理的及び化学的性質、担体の性質、並びに意図される投与レジメンなどの当業者に既知の要因に応じて変動することになる。
【0121】
いくつかの実施形態では、医薬組成物中の、式(I)の化合物若しくは式(V-A)のIRM含有コンジュゲート、又はその組み合わせの濃度は、少なくとも0.0005mg/mL、少なくとも0.001mg/mL、又は少なくとも0.05mg/mLであり得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の、式(I)の化合物若しくは式(V-A)のIRM含有コンジュゲート、又はその組み合わせの濃度は、最大2.4mg/mL、最大0.06mg/mL、最大0.01mg/mL、又は最大0.005mg/mLであり得る。
【0122】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、1キログラム当たり少なくとも100ナノグラム(ng/kg)、又は1キログラム当たり少なくとも10マイクログラム(μg/kg)の化合物、塩若しくはコンジュゲートの用量を対象に提供するのに十分な活性成分又はプロドラッグを含有する。いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、1キログラム当たり最大50ミリグラム(mg/kg)、又は最大5mg/kgの用量の化合物、塩若しくはコンジュゲートを、対象に提供するのに十分な活性成分又はプロドラッグを含有する。
【0123】
いくつかの実施形態では、本開示の組成物は、例えば、Dubois法に従って計算して0.01mg/m~5.0mg/mの用量を与えるのに十分な活性成分又はプロドラッグを含有し(この方法では、対象の体表面積(m)を対象の体重を用いて計算する:m=(体重kg0.425×身長cm0.725)×0.007184)、ただしいくつかの実施形態では、本方法は、上記範囲に入らない用量の化合物、塩若しくはコンジュゲートを投与することによって実施されてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、本方法は、0.1mg/m~2.0mg/mの用量、例えば、0.4mg/m~1.2mg/mの用量を対象に提供するのに十分な化合物、塩又はコンジュゲートを投与することを含む。
【0124】
式(I)の化合物を含む医薬組成物の任意の実施形態では、式(I)の化合物は、組成物中に、少なくとも80%の鏡像異性体過剰率、少なくとも90%の鏡像異性体過剰率、少なくとも95%の鏡像異性体過剰率、少なくとも96%の鏡像異性体過剰率、少なくとも96%の鏡像異性体過剰率、少なくとも97%の鏡像異性体過剰率、少なくとも98%の鏡像異性体過剰率、少なくとも99%の鏡像異性体過剰率、少なくとも99.5%の鏡像異性体過剰率、又は少なくとも99.8%の鏡像異性体過剰率で存在する。
【0125】
式(I)の化合物を含む医薬組成物の任意の実施形態では、その化合物に対する反対の鏡像異性体は、組成物中に、10%未満、5%未満、2.5%未満、2%未満、1.5%未満、1%未満、0.5%未満0.25%未満、又は0.1%未満で存在する。
【0126】
種々の剤形を、本開示の化合物、塩又はコンジュゲートをヒト又は動物に投与するために使用することができる。使用され得る剤形としては、例えば、錠剤、トローチ剤、カプセル剤、非経口製剤、クリーム剤、軟膏剤、局所ゲル剤、エアロゾル製剤、液体製剤(例えば、水性製剤)、経皮パッチなどが挙げられる。これらの剤形は、従来の製薬上許容される担体及び添加剤と共に、従来方法を用いて調製することができ、この方法は、概ね、活性成分を担体と会合させるステップを含む。好ましい剤形は、水性製剤中に溶解された本開示の化合物、塩又はコンジュゲートのうちの1つ以上を有する。
【0127】
本明細書に開示の化合物、塩又はコンジュゲートは、「実施例」の記載に従って実施した実験において、特定のサイトカインの産生を誘導する。これらの結果は、この化合物、塩又はコンジュゲートが、多数の異なる方法で免疫応答を増強するのに有用であり、それらを、様々な障害の治療に有用なものとすることを示す。
【0128】
本明細書に記載の化合物、塩若しくはコンジュゲートは、治療レジメンにおいて単一の治療剤として投与することができ、又は本明細書に記載の化合物、塩若しくはコンジュゲートは、抗ウイルス剤、抗生物質、タンパク質、ペプチド、オリゴヌクレオチド、抗体などの他の活性剤と組み合わせて投与することができる。
【0129】
本明細書に記載の化合物、塩又はコンジュゲートは、サイトカイン(例えば、IFN-α、IFN-γ、TNF-α、IP-10)の産生を誘導する。これらの結果は、本開示の化合物、塩又はコンジュゲートが、多数の異なる方法で免疫応答を活性化するのに有用であり、そのため種々の疾患の治療に有用であることを示す。それ故、本開示の化合物、塩又はコンジュゲートは、サイトカイン生合成及び産生のアゴニスト、特にIFN-α、IFN-γ、TNF-α、及びIP-10のサイトカイン生合成及び産生のアゴニストである。
【0130】
本開示の化合物、塩又はコンジュゲートがサイトカイン産生を誘導する1つの方法は、免疫システムにおけるToll様受容体(TLR)、特にTLR-7及び/又はTLR-8の活性化によるものと考えられるが、他の機構も関与し得る。サイトカイン誘導の免疫システム経路(すなわち、機構)において、本開示の化合物、塩又はコンジュゲートは、主にTLR-7及び/又はTLR-8のアゴニストとして作用すると考えられるが、他の経路又は活性も関与し得る。
【0131】
本明細書に記載の化合物、塩又はコンジュゲートの投与は、細胞において、インターフェロン-α(IFN-α)、インターフェロン-γ(IFN-γ)、腫瘍壊死因子-α(TNF-α)、及びIP-10の産生を誘導することができる。本開示の化合物、塩又はコンジュゲートによって生合成を誘導できるサイトカインとしては、IFN-α、IFN-γ、TNF-α、IP-10、及びその他の種々のサイトカインが挙げられる。他の作用の中でも、これらのサイトカインはウイルスの産生及び腫瘍細胞の増殖を阻害することができ、この化合物又は塩を、ウイルス性疾患及び腫瘍性疾患の治療に有用であるようにする。したがって、本開示は、本開示の化合物、塩又はコンジュゲートの有効量をヒト又は動物に投与することによって、ヒト又は動物においてサイトカイン生合成を誘導する方法を提供する。サイトカイン産生の誘導のために化合物、塩又はコンジュゲートが投与されるヒト又は動物は、下記の1つ以上の疾患、障害、又は状態、例えば、ウイルス性疾患又は腫瘍性疾患を有してもよく、化合物、塩又はコンジュゲートの投与は、治療処置を提供し得る。あるいは、化合物、塩又はコンジュゲートの投与が予防処置を提供し得るように、ヒト又は動物が疾患を獲得する前に化合物、塩又はコンジュゲートがヒト又は動物に投与されてもよい。
【0132】
サイトカインの産生を誘導する性質に加え、本明細書に記載の化合物、塩又はコンジュゲートは、自然免疫応答の他の側面にも影響し得る。例えば、ナチュラルキラー細胞の活性が刺激され得るが、これはサイトカイン誘導による作用と考えられる。化合物、塩又はコンジュゲートは、マクロファージも活性化する場合があり、これは次に一酸化窒素の分泌及び追加のサイトカインの産生を刺激する。更に、化合物、塩又はコンジュゲートは、Bリンパ球の増殖及び分化を引き起こす場合がある。
【0133】
本明細書で特定した化合物、塩又はコンジュゲートが治療剤として使用され得る状態としては、以下が挙げられるが、これらに限定されない:
ウイルス性疾患、例えば、アデノウイルス、ヘルペスウイルス(例えば、HSV-I、HSV-II、CMV、又はVZV)、ポックスウイルス(例えば、天然痘若しくはワクシニアなどのオルソポックスウイルス、又は伝染性軟属腫)、ピコルナウイルス(例えば、ライノウイルス又はエンテロウイルス)、オルソミクソウイルス(例えば、インフルエンザウイルス、鳥インフルエンザ)、パラミクソウイルス(例えば、パラインフルエンザウイルス、流行性耳下腺炎ウイルス、麻疹ウイルス、及び呼吸器合胞体ウイルス(respiratory syncytial virus、RSV)、コロナウイルス(例えば、SARS)、パポバウイルス(例えば、性器疣贅、尋常性疣贅、又は足底疣贅を引き起こすものなどのパピローマウイルス)、ヘパドナウイルス(例えば、B型肝炎ウイルス)、フラビウイルス(例えば、C型肝炎ウイルス又はデングウイルス)、又はレトロウイルス(例えば、HIVなどのレンチウイルス)、エボラウイルスによる感染によって引き起こされる疾患;
腫瘍性疾患、例えば、膀胱癌、子宮頸部異形成、子宮頸癌、日光角化症、基底細胞癌腫、皮膚T細胞リンパ腫、菌状息肉腫、セザリー症候群、HPV関連頭部及び頸癌(例えば、HPV陽性口腔咽頭扁平上皮癌腫)、カポジ肉腫、黒色腫、扁平上皮癌腫、腎細胞癌腫、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、多発性骨髄腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、有毛細胞白血病、食道癌、及びその他の癌;
アトピー性皮膚炎又は湿疹、好酸球増加、喘息、アレルギー、アレルギー性鼻炎、及びオメン症候群などのT2媒介性アトピー性疾患;
創傷修復に関連する疾患、例えば、ケロイド形成及び他の種類の瘢痕化の阻害(例えば、慢性創傷を含む創傷治癒の促進);並びに
マラリア、リーシュマニア症、クリプトスポリジア症、トキソプラズマ症、及びトリパノソーマ感染症などであるがこれらに限定されない寄生虫疾患が挙げられる。
【0134】
更に、本明細書に記載の化合物、塩、コンジュゲート又は医薬組成物は、体液性免疫応答及び/又は細胞媒介性免疫応答のいずれかを増大させる任意の物質、例えば、腫瘍抗原(例えば、MAGE-3、NY-ESO-1);生存の、ウイルスイムノゲン、細菌イムノゲン、又は寄生虫のイムノゲン;不活化の、ウイルスイムノゲン、原生動物イムノゲン、真菌イムノゲン、又は細菌イムノゲン;トキソイド;毒素;多糖類;タンパク質;糖タンパク質;ペプチド;細胞ワクチン;DNAワクチン;自家ワクチン;組換えタンパク質などと併用して、ワクチンアジュバントとして使用されてもよい。
【0135】
本明細書で特定される化合物、塩、コンジュゲート又は組成物のワクチンアジュバントとしての使用が有益となり得るワクチンの例としては、BCGワクチン、コレラワクチン、ペストワクチン、腸チフスワクチン、A型肝炎ワクチン、B型肝炎ワクチン、C型肝炎ワクチン、A型インフルエンザワクチン、B型インフルエンザワクチン、マラリアワクチン、パラインフルエンザワクチン、ポリオワクチン、狂犬病ワクチン、麻疹ワクチン、流行性耳下腺炎ワクチン、風疹ワクチン、黄熱病ワクチン、破傷風ワクチン、ジフテリアワクチン、ヘモフィルスインフルエンザb型ワクチン、結核ワクチン、髄膜炎菌ワクチン及び肺炎球菌ワクチン、アデノウイルスワクチン、コロナウイルスワクチン、HIVワクチン、水痘ワクチン、サイトメガロウイルスワクチン、デング熱ワクチン、ネコ白血病ワクチン、家禽ペストワクチン、HSV-1ワクチン及びHSV-2ワクチン、豚コレラワクチン、日本脳炎ワクチン、RSウイルスワクチン、ロタウイルスワクチン、パピローマウイルスワクチン、黄熱病ワクチン、エボラウイルスワクチンが挙げられる。
【0136】
本明細書で特定される化合物、塩、コンジュゲート又は医薬組成物は、大腸癌、頭頸部癌、乳癌、肺癌及び黒色腫に関連する腫瘍抗原と併用して使用された場合に、ワクチンアジュバントとして特に有用となり得る。
【0137】
本明細書で特定される化合物、塩、コンジュゲート又は医薬組成物は、免疫機能が低下した個体に特に有用となり得る。例えば、化合物、塩、コンジュゲート又は組成物は、例えば、臓器移植患者、癌患者、及びHIV患者における細胞媒介性免疫の抑制後に発症する日和見感染症及び腫瘍の治療に使用されてもよい。
【0138】
上記疾患又は疾患の種類の1つ以上、例えば、ウイルス性疾患又は腫瘍性疾患は、それを必要とする(その疾患を有する)ヒト又は動物において、この化合物、塩、コンジュゲート又は組成物の治療有効量をヒト又は動物に投与することによって治療され得る。
【0139】
ヒト又は動物はまた、本明細書に記載の化合物、塩、コンジュゲート又は組成物の有効量を、ワクチンアジュバントとして投与することによって予防接種されてもよい。一実施形態では、ヒト又は動物を予防接種する方法は、本明細書に記載の化合物、塩、コンジュゲート又は組成物の有効量を、ワクチンアジュバントとしてヒト又は動物に投与することを含む。ワクチンアジュバントは、1つ以上の体液性免疫応答及び細胞媒介性免疫応答を増大させる物質と共投与されてもよく、それは、同じ組成物中にそれぞれを含むことによる。あるいは、ワクチンアジュバントと、体液性免疫応答及び/又は細胞媒介性免疫応答のいずれかを増大させる物質とは、別々の組成物中にあってもよい。
【0140】
本明細書で特定される化合物、塩、コンジュゲート又は組成物は、獣医学用途において予防又は治療のワクチンアジュバントとして使用することができる。本明細書で特定される化合物、塩、コンジュゲート若しくは組成物は、例えば、ブタ、ウマ、ウシ、ヒツジ、イヌ、ネコ、家禽(鶏又は七面鳥など)などに投与することができる。
【0141】
本明細書で特定される化合物、塩、コンジュゲート若しくは組成物は、膀胱癌、子宮頸部形成異常、日光角化症、基底細胞癌腫、性器疣贅、ヘルペスウイルス感染症、又は皮膚T細胞リンパ腫を治療するための有効量がヒト又は動物に投与されたときに、特に有用となり得る。上記の状態の場合、本開示の化合物、塩、又は組成物の投与は、好ましくは局所的(すなわち、腫瘍、病変、疣贅、又は感染した組織などの表面への直接適用)である。
【0142】
一実施形態では、有効量の本明細書に記載の化合物、塩、コンジュゲート又は組成物、例えば、水性組成物は、少なくとも1つの膀胱腫瘍を有するヒト又は動物の膀胱に、膀胱内注入(例えば、カテーテルを用いた投与)によって投与される。
【0143】
サイトカイン生合成の誘導に有効な化合物、塩又はコンジュゲートの量は、典型的には、単球、マクロファージ、樹状細胞、及びB細胞などの1つ以上の細胞種に、1つ以上のサイトカイン、例えば、IFN-α、IFN-γ、TNF-α、及びIP-10を、これらのサイトカインのバックグラウンドレベルを超えて増大(誘導)された量で産生させるであろう。正確な用量は、当該技術分野で既知の要因に応じて変動することになるが、典型的には、100ng/kg~50mg/kg、又は10μg/kg~5mg/kgの用量である。他の実施形態では、この量は、例えば、0.01mg/m~5.0mg/m(上記のDubois法に従って計算)であり得るが、他の実施形態では、サイトカイン生合成の誘導は、この範囲外の用量で化合物又は塩を投与することによって実施されてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、本方法は、0.1mg/m~2.0mg/mの用量、例えば、0.4mg/m~1.2mg/mの用量を対象に付与するのに十分な化合物、塩、コンジュゲート又は組成物を投与することを含む。
【0144】
ヒト又は動物においてウイルス感染症を治療する方法、及びヒト又は動物において腫瘍性疾患を治療する方法は、本明細書に記載の化合物、塩又はコンジュゲートの有効量をヒト又は動物に投与することを含み得る。
【0145】
ウイルス感染症を治療又は阻害するための有効量は、未治療のヒト又は動物と比較して、ウイルス性病変、ウイルス負荷、ウイルス産生速度、及び死亡率などのウイルス感染症の発現のうちの1つ以上の低減を引き起こす量であることができる。こうした治療に有効な正確な量は、当該技術分野で既知の要因に応じて変動することになるが、それは、通常、100ng/kg~50mg/kg、又は10μg/kg~5mg/kgの用量である。
【0146】
腫瘍性状態を治療するために有効な化合物、塩又はコンジュゲートの量は、腫瘍のサイズの低減、又は腫瘍病巣の数の低減を引き起こす量であることができる。正確な量は、当該技術分野で既知の要因に応じて変動することになるが、典型的には、100ng/kg~50mg/kg、又は10μg/kg~5mg/kgである。他の実施形態では、この量は、典型的には、例えば、0.01mg/m~5.0mg/m(上記のDubois法に従って計算)であるが、いくつかの実施形態では、サイトカイン生合成の誘導は、この範囲外の用量で化合物、塩又はコンジュゲートを投与することによって実施されてもよい。これらの実施形態のいくつかでは、本方法は、0.1mg/m~2.0mg/mの用量、例えば、0.4mg/m~1.2mg/mの用量を対象に付与するのに十分な化合物、塩、コンジュゲート又は組成物を投与することを含む。
【0147】
例示的な実施形態
実施形態1は、式(I):
【化16】
[式中、
nが、0又は1の整数であり;
Rが、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ及び-C(O)-O-アルキルからなる群から選択され;
が、-C1~3アルキレン-O-C1~3アルキルであり;
が、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されており;
Xが、OH又はNHである]
の化合物、又はその塩である。
【0148】
実施形態2は、Xが-OHである、実施形態1に記載の化合物又は塩である。
【0149】
実施形態3は、Xが-NHである、実施形態1に記載の化合物又は塩である。
【0150】
実施形態4は、Rが、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル(好ましくは-C1~7アルキル)、及びアルコキシ(好ましくは-C1~7アルコキシ)からなる群から選択される、実施形態1~3のいずれか1つに記載の化合物又は塩である。
【0151】
実施形態5は、Rが、ヒドロキシ、F、及びClからなる群から選択される、実施形態4に記載の化合物又は塩である。
【0152】
実施形態6は、Rが、F及びClからなる群から選択される、実施形態5に記載の化合物又は塩である。
【0153】
実施形態7は、nが0である、実施形態1~6のいずれか1つに記載の化合物又は塩である。
【0154】
実施形態8は、Rが、-CHOCH、又は-CHOCHCHである、実施形態1~8のいずれか1つに記載の化合物又は塩である。
【0155】
実施形態9は、Rが-CHOCHCHである、実施形態8に記載の化合物又は塩である。
【0156】
実施形態10は、Rが、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在された、C2~18アルキレン基である、実施形態1~9のいずれか1つに記載の化合物又は塩である。
【0157】
実施形態11は、RがC2~12アルキレン基である、実施形態10に記載の化合物又は塩である。
【0158】
実施形態12は、RがC2~6アルキレン基である、実施形態11に記載の化合物又は塩である。
【0159】
実施形態13は、RがC2~4アルキレン基である、実施形態12に記載の化合物又は塩である。
【0160】
実施形態14は、式(II):
【化17】
[式中、
が、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されており;
Xが、OH又はNHである(好ましくは、XはNHである)]
の化合物、又はその塩である。
【0161】
実施形態15は、Rが、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在された、C2~18アルキレン基である、実施形態14に記載の化合物又は塩である。
【0162】
実施形態16は、RがC2~12アルキレン基である、実施形態15に記載の化合物又は塩である。
【0163】
実施形態17は、RがC2~6アルキレン基である、実施形態16に記載の化合物又は塩である。
【0164】
実施形態18は、RがC2~4アルキレン基である、実施形態17に記載の化合物又は塩である。
【0165】
実施形態19は、式(III):
【化18】
の化合物、又はその塩である。
【0166】
実施形態20は、式(IV):
【化19】
の化合物、又はその塩である。
【0167】
実施形態21は、式(V-A)のIRM含有コンジュゲート:
【化20】
[式中、
nが、0又は1の整数であり;
Rが、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ及び-C(O)-O-アルキルからなる群から選択され;
が、-C1~3アルキレン-O-C1~3アルキルであり;
が、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されており;
Yが、O、N、又はNHであり;
リンカーは、ヘテロ二官能性架橋基であり;
mが0又は1であり;
Zは、ポリマー部分又は第2の活性部分であり;
コンジュゲートのY-Linker-Z部分は、リンカーを有するか又は有しておらず、任意に不安定な結合を含む]である。
【0168】
実施形態22は、YがOである、実施形態21に記載のコンジュゲートである。
【0169】
実施形態23は、YがNHである、実施形態21に記載のコンジュゲートである。
【0170】
実施形態24は、YがNである、実施形態21に記載のコンジュゲートである。
【0171】
実施形態25は、Rが、ハロゲン、ヒドロキシ、アルキル(好ましくは、-Cアルキル)、及びアルコキシ(好ましくは、-Cアルコキシ)からなる群から選択される、実施形態21~24のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0172】
実施形態26は、Rが、ヒドロキシ、F、及びClからなる群から選択される、実施形態25に記載のコンジュゲートである。
【0173】
実施形態27は、Rが、F及びClからなる群から選択される、実施形態26に記載のコンジュゲートである。
【0174】
実施形態28は、nが0である、実施形態21~27のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0175】
実施形態29は、Rが、-CHOCH又は-CHOCHCHである、実施形態21~28のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0176】
実施形態30は、Rが-CHOCHCHである、実施形態29に記載のコンジュゲートである。
【0177】
実施形態31は、Rが、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在された、C2~18アルキレン基である、実施形態21~30のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0178】
実施形態32は、RがC2~12アルキレン基である、実施形態31に記載のコンジュゲートである。
【0179】
実施形態33は、RがC2~6アルキレン基である、実施形態32に記載のコンジュゲートである。
【0180】
実施形態34は、RがC2~4アルキレン基である、実施形態33に記載のコンジュゲートである。
【0181】
実施形態35は、Zがポリマー部分である、実施形態21~34のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0182】
実施形態36は、ポリマー部分が、ポリエチレングリコール(PEG)、グリコーゲン、セルロース、デキストラン、アルギネート、キトサン、ポリラクチド、及びそれらの組み合わせから選択されるポリマーに由来する、実施形態35に記載のコンジュゲートである。
【0183】
実施形態37は、ポリマーがPEGである、実施形態36に記載のコンジュゲートである。
【0184】
実施形態38は、Zが第2の活性部分(SAM)である、実施形態21~34のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0185】
実施形態39は、コンジュゲートのY-Linker-Z部分が、リンカーを有するか又は有しておらず、不安定な結合を含む、実施形態21~34のいずれかに記載のコンジュゲートである。
【0186】
実施形態40は、式(V-B)のIRM含有コンジュゲート:
【化21】
[式中、
が、C2~18アルキレン基又はC2~18アルケニレン基であって、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在されており;
Yが、O、N、又はNHであり;
リンカーは、ヘテロ二官能性架橋基であり;
mが、0又は1であり;
Zは、ポリマー部分又は第2の活性部分であり;
コンジュゲートのY-Linker-Z部分は、リンカーを有するか又は有しておらず、任意に不安定な結合を含む]である。
【0187】
実施形態41は、YがOである、実施形態40に記載のコンジュゲートである。
【0188】
実施形態42は、YがNHである、実施形態40に記載のコンジュゲートである。
【0189】
実施形態43は、YがNである、実施形態40に記載のコンジュゲートである。
【0190】
実施形態44は、Rが、任意に1つ以上の非過酸化-O-原子により介在された、C2~18アルキレン基である、実施形態40に記載のコンジュゲートである。
【0191】
実施形態45は、RがC2~12アルキレン基である、実施形態44に記載のコンジュゲートである。
【0192】
実施形態46は、RがC2~6アルキレン基である、実施形態45に記載のコンジュゲートである。
【0193】
実施形態47は、RがC2~4アルキレン基である、実施形態46に記載のコンジュゲートである。
【0194】
実施形態48は、Zがポリマー部分である、実施形態40~47のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0195】
実施形態49は、ポリマー部分が、ポリエチレングリコール(PEG)、グリコーゲン、セルロース、デキストラン、アルギネート、キトサン、ポリラクチド、及びそれらの組み合わせから選択されるポリマーに由来する、実施形態48に記載のコンジュゲートである。
【0196】
実施形態50は、ポリマーがPEGである、実施形態49に記載のコンジュゲートである。
【0197】
実施形態51は、Zが第2の活性部分(SAM)である、実施形態40~47のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0198】
実施形態52は、コンジュゲートのY-Linker-Z部分が、リンカーを有するか又は有しておらず、不安定な結合を含む、実施形態40~51のいずれか1つに記載のコンジュゲートである。
【0199】
実施形態53は、実施形態1~20のいずれか1つに記載の化合物と、製薬上許容される担体とを含む医薬組成物である。
【0200】
実施形態54は、実施形態21~52のいずれか1つに記載のIRM含有コンジュゲートと、製薬上許容される担体とを含む医薬組成物である。
【0201】
実施形態55は、ヒト又は動物においてサイトカイン生合成を誘導する方法であって、有効量の実施形態53又は54に記載の医薬組成物をヒト又は動物に投与することを含む、方法である。
【0202】
実施形態56は、ヒト又は動物においてIFN-αの生合成を誘導する方法であって、有効量の実施形態53又は54に記載の医薬組成物をヒト又は動物に投与することを含む、方法である。
【0203】
実施形態57は、ヒト又は動物においてIFN-γの生合成を誘導する方法であって、有効量の実施形態53又は54に記載の医薬組成物をヒト又は動物に投与することを含む、方法である。
【0204】
実施形態58は、ヒト又は動物においてTNF-αの生合成を誘導する方法であって、有効量の実施形態53又は54に記載の医薬組成物をヒト又は動物に投与することを含む、方法である。
【0205】
実施形態59は、ヒト又は動物においてIP-10の生合成を誘導する方法であって、有効量の実施形態53又は54に記載の医薬組成物をヒト又は動物に投与することを含む、方法である。
【実施例
【0206】
本開示の目的及び利点を、本明細書に記載の実施例によって更に例示する。これらの実施例で引用される特定の物質及びそれらの量、並びにその他の条件及び詳細は、単なる例示にすぎず、本開示を制限することを意図するものではない。当業者は、本開示の全体を注意深く検討した後で、実施例に具体的に記載されたものに追加して、物質及び条件を使用できるであろう。
【0207】
化合物のカラムクロマトグラフィー精製は、ISOLARA HPFCシステム(Biotage,Inc(Charlottesville,VA)から入手可能な自動高性能フラッシュクロマトグラフィー精製器具)を用いて実施した。各精製に使用した溶離剤は、実施例中に記載する。
【0208】
プロトン核磁気共鳴(H NMR)分析は、BRUKER A500 NMR分光計(Bruker Corporation(Billerica,MA))を用いて行った。
【0209】
炭酸セシウム(CsCO)及び塩化ベンゼンスルホニルは、Sigma-Aldrich Company(St.Louis,MO)から入手した。
【0210】
オルトギ酸トリエチル、炭素担持3%白金、酢酸n-プロピル、2-(Boc-アミノ)エチルブロミド、及びピリジン塩酸塩を、Alfa Aesar Company(Haverhill,MA)から入手した。
【0211】
酢酸2-ブロモエチル及び3-クロロ過安息香酸(約70%MCPBA、Braun,G.Org.Synth.,Collective Volume 1932,1,431によりヨウ素還元法で決定した)は、Oakwood Products Incorporated(Estill,SC)から入手した。
【0212】
5Mナトリウムメトキシドのメタノール溶液は、TCI America(Portland,OR)から入手した。
【0213】
実施例1
(S)-2-(4-(2-(4-アミノ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)-3-エトキシプロピル)フェノキシ)エタン-1-オール
【化22】
【0214】
A剤
25ミリリットル(mL)の無水DMFに溶解した4-[(2S)-3-エトキシ-2-[(3-ニトロ-4-キノリル)アミノ]プロピル]フェノール(国際公開第2019/166937号(3M)に記載の調製物)(2.54グラム(g)、6.92ミリモル(mmol))の撹拌溶液に、CsCO(3.37g、10.4mmol)、続いて酢酸2-ブロモエチル(1.31g、7.84mmol)を添加した。反応混合物をN雰囲気下で65℃まで加熱した。2時間(h)後、反応混合物を75mLの酢酸エチルで希釈し、75mLの水で洗浄した。水性部分を追加の50mLの酢酸エチルで抽出した。合わせた有機部分を、水(5×25mL)及びブラインで洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。カラムクロマトグラフィーによる精製(SiO、1%MeOH/CHCl-2%MeOH/CHCl)により、2.84gの(S)-2-(4-(3-エトキシ-2-((3-ニトロキノリン-4-イル)アミノ)プロピル)フェノキシ)エチルアセテートを黄色固体として得た。
【0215】
B剤
75mLのアセトニトリルに溶解した(S)-2-(4-(3-エトキシ-2-((3-ニトロキノリン-4-イル)アミノ)プロピル)フェノキシ)エチルアセテート(2.80g、6.18mmol)の溶液を耐圧瓶に入れ、100ミリグラム(mg)の炭素担持3%Ptと合わせた。次いで、ボトルをH雰囲気下で5時間振盪した。反応混合物を、セライトのパッドを通して濾過し、アセトニトリルですすぎ、濾液を減圧下で濃縮して、2.60gの(S)-2-(4-(2-((3-アミノキノリン-4-イル)アミノ)-3-エトキシプロピル)フェノキシ)エチルアセテートを橙色シロップとして得た。
【0216】
C剤
50mLの酢酸n-プロピルに溶解した(S)-2-(4-(2-((3-アミノキノリン-4-イル)アミノ)-3-エトキシプロピル)エチルアセテート(2.60g、6.15mmol)の溶液に、オルトギ酸トリエチル(2.04mL、12.3mmol)及びピリジン塩酸塩100mgを添加し、混合物を105℃まで一晩加熱した。冷却した反応混合物を酢酸エチル50mLで希釈し、飽和NaHCO溶液、水及びブラインで、順次洗浄した。有機部分をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮して、アンバー色のシロップを得た。カラムクロマトグラフィーによる精製(SiO、1%MeOH/CHCl~10%MeOH/CHCl)によって、2.72gの(S)-2-(4-(3-エトキシ-2-(1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)プロピル)フェノキシ)エチルアセテートをハチミツ色のシロップとして得た。
【0217】
D剤
50mLのCHClに溶解した(S)-2-(4-(3-エトキシ-2-(1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)プロピル)フェノキシ)エチルアセテート(2.72g、6.28mmol)の溶液を、1.65mgのMCPBA(70%)と合わせ、2時間撹拌した。反応混合物を-10℃まで冷却し、続いて15mLの濃NHOH溶液を添加した。混合物を急速撹拌し、塩化ベンゼンスルホニル(0.96mL、7.54mmol)を1分(min)かけて滴加した。次いで、反応混合物を周囲温度まで45分かけて加温した。20mLの水の添加によって反応をクエンチし、混合物を15分間撹拌した。次いで、層を分離し、有機部分をHO、5%NaCO溶液及びブラインで順次洗浄した。有機部分をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィーによる精製(SiO、NHOHで飽和した4%MeOH/CHCl)によって、2.12gの(S)-2-(4-(2-(4-アミノ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)-3-エトキシプロピル)フェノキシ)エチルアセテートをアンバー色の泡状物として得た。
【0218】
E剤
25mLの無水メタノールに溶解した(S)-2-(4-(2-(4-アミノ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)-3-エトキシプロピル)フェノキシ)エチルアセテート(2.10g)の溶液を、2滴の5Mナトリウムメトキシド溶液と合わせた。30分間撹拌した後、更に3滴の5Mナトリウムメトキシド溶液を反応混合物に添加し、撹拌を90分間続けた。反応混合物を濃縮し、カラムクロマトグラフィー(SiO、NHOHで飽和した5%MeOH/CHCl)による精製に供して、1.10gの淡褐色泡状物を得た。泡状物を20mLのCHClに溶解し、1N NaOH(2×10mL)、水及びブラインで順次洗浄した。有機部分をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。得られた材料を20mLのエタノール及び1mLの濃塩酸に溶解し、混合物を濃縮乾固した。次いで、材料をエタノールから濃縮し、次いでアセトニトリルから濃縮して、白色固体を得た。白色固体を20mLの還流アセトニトリル中で加熱し、混合物を周囲温度まで一晩放冷した。得られた固体を濾過により単離し、アセトニトリルですすぎ、真空下で乾燥して、818mgの(S)-2-(4-(2-(4-アミノ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)-3-エトキシプロピル)フェノキシ)エタン-1-オール塩酸塩を淡黄色固体として得た。H NMR(500MHz,重水)δ8.26(s,1H),7.82(d,J=8.3Hz,1H),7.43(d,J=7.6Hz,1H),7.35(d,J=8.3Hz,1H),7.25(t,J=7.7Hz,1H),6.48(d,J=7.3Hz,2H),6.29(d,J=7.6Hz,2H),5.31(m,1H),3.94(d,J=6.0Hz,2H),3.62-3.55(m,4H),3.46(m,2H),2.94(m,1H),2.80(m,1H),0.94(t,J=7.0Hz,3H)。
【0219】
実施例2
(S)-1-(1-(4-(2-アミノエトキシ)フェニル)-3-エトキシプロパン-2-イル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン
【化23】
【0220】
A剤
10mLの無水DMFに溶解した4-[(2S)-3-エトキシ-2-[(3-ニトロ-4-キノリル)アミノ]プロピル]フェノール(1.29g、3.52mmol)の撹拌溶液に、CsCO(1.72g、5.28mmol)、続いて2-(Boc-アミノ)エチルブロミド(788mg、3.52mmol)を添加した。反応混合物をN雰囲気下で65℃まで加熱した。4時間後、更に105mgのtert-ブチル(2-ブロモエチル)カルバメートを添加し、反応混合物を周囲温度まで一晩放冷した。次いで、反応混合物を減圧下で濃縮し、得られた材料を50mLの酢酸エチルと50mLの水との間で分液した。有機部分を水(2×20mL)及びブラインで順次洗浄し、NaSOで乾燥し、濾過し、濃縮した。カラムクロマトグラフィーによる精製(SiO、1%MeOH/CHCl-3%MeOH/CHCl)により、1.30gのtert-ブチル(S)-(2-(4-(3-エトキシ-2-((3-ニトロキノリン-4-イル)アミノ)プロピル)フェノキシ)エチル)カルバメートを黄色シロップとして得た。
【0221】
B剤
50mLのアセトニトリルに溶解した(S)-(2-(4-(3-エトキシ-2-((3-ニトロキノリン-4-イル)アミノ)プロピル)フェノキシ)エチル)カルバメート(1.30g、2.55mmol)の溶液を耐圧瓶に入れ、70mgの炭素担持3%Ptと合わせた。次いで、瓶をH雰囲気下(48ポンド/平方インチ(PSI))で5時間振盪した。反応混合物を、セライトのパッドを通して濾過し、アセトニトリルですすぎ、濾液を減圧下で濃縮して、1.16gのtert-ブチル(S)-(2-(4-(2-((3-アミノキノリン-4-イル)アミノ)-3-エトキシプロピル)フェノキシ)エチル)カルバメートを橙色固体として得た。
【0222】
C剤
50mLの酢酸n-プロピルに溶解したtert-ブチル(S)-(2-(4-(2-((3-アミノキノリン-4-イル)アミノ)-3-エトキシプロピル)エチル)カルバメート(1.16g、2.42mmol)の溶液に、オルトギ酸トリエチル(0.80mL、4.83mmol)及びピリジン塩酸塩50mgを添加し、混合物を105℃まで一晩加熱した。次いで、反応混合物を冷却し、続いて飽和NaHCO溶液を添加した。15分間撹拌した後、層を分離し、有機部分を水及びブラインで順次洗浄した。有機部分をNaSOで乾燥し、濾過し、濃縮して、アンバー色のシロップを得た。カラムクロマトグラフィーによる精製(SiO、1%MeOH/CHCl-3%MeOH/CHCl)によって、1.07gのtert-ブチル(S)-(2-(4-(3-エトキシ-2-(1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)プロピル)フェノキシ)エチル)カルバメートを灰白色泡状物として得た。
【0223】
D剤
25mLのCHClに溶解したtert-ブチル(S)-(2-(4-(3-エトキシ-2-(1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)プロピル)フェノキシ)エチル)カルバメート(1.07g、2.18mmol)の溶液を、590mgのMCPBA(70%)と合わせ90分間撹拌した。反応混合物を-10℃まで冷却し、続いて8mLの濃NHOH溶液を添加した。混合物を急速攪拌し、塩化ベンゼンスルホニル(0.34mL、2.66mmol)を1分かけて滴加した。次いで、反応混合物を周囲温度まで45分かけて加温した。20mLの水の添加によって反応をクエンチし、混合物を15分間撹拌した。次いで、層を分離し、有機部分をHO、5%NaCO溶液及びブラインで順次洗浄した。有機部分をNaSOで乾燥し、濾過し、減圧下で濃縮した。カラムクロマトグラフィーによる精製(SiO、NHOHで飽和した4%MeOH/CHCl)によって、843mgのtert-ブチル(S)-(2-(4-(2-(4-アミノ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)-3-エトキシプロピル)フェノキシ)エチル)カルバメートをアンバー色の泡状物として得た。
【0224】
E剤
15mLのエタノールに溶解したtert-ブチル(S)-(2-(4-(2-(4-アミノ-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-1-イル)-3-エトキシプロピル)フェノキシ)エチル)カルバメート(750mg、1.48mmmol)の溶液を、1mLの濃塩酸と合わせ、混合物を90分間加熱還流した。反応混合物を濃縮し、シロップを得た。次いで、シロップをエタノールから濃縮し、次いでアセトニトリルから濃縮して、白色固体を得た。白色固体を、数滴のエタノールを含む20mLの熱アセトニトリル中で加熱した。次いで、熱溶液をピペットで新しいフラスコに移し、不溶性材料を残した。溶液を周囲温度まで一晩冷却した。得られた固体を濾過により単離し、アセトニトリルですすぎ、吸引で乾燥して、(S)-1-(1-(4-(2-アミノエトキシ)フェニル)-3-エトキシプロパン-2-イル)-1H-イミダゾ[4,5-c]キノリン-4-アミン二塩酸塩483mgを淡い褐色固体として得た。1H NMR(500 MHz,重水)δ8.33(s,1H),7.97(d,J=8.3Hz,1H),7.53-7.43(m,2H),7.33(t,J=7.5Hz,1H),6.69(d,J=8.0Hz,2H),6.49(d,J=8.3Hz,2H),5.45(m,1H),4.04-3.97(m,2H),3.89(t,J=4.8Hz,2H),3.52-3.43(m,2H),3.16(t,J=4.7Hz,1H),3.13(m,1H),2.96(dd,J=8.8,14.1Hz,1H),0.94(t,J=7.0Hz,3H)。
【0225】
ヒト細胞におけるサイトカイン誘導
健康なヒト供与者からの全血を、静脈穿刺によって、EDTAを含有するバキュテイナー管又はシリンジに採取した。密度勾配遠心分離により、ヒト末梢血単核球(peripheral blood mononuclear cell、PBMC)を全血から分離した。Histopaque 1077(15mL、Sigma(St.Louis,MO))を、6×50mL滅菌ポリプロピレン製の円錐形の管に移した。Histopaqueに、ハンクス平衡塩溶液(Hank’s Balanced Salts Solution、HBSS)(Gibco,Life Technologies(Grand Island NY))中で1:2に希釈した血液15~25mLを重層した。次いで、この管を、1370回転/分(rpm)、30分、20℃、中断なしで遠心分離した(400×g、GH 3.8A Rotor)。
【0226】
PBMCを含有する境界面(軟膜)を回収し、新たな滅菌50mL円錐形ポリプロピレン製の遠心管に入れた。PBMCを等量のHBSSと混合し(境界面からの約20mLと約20mLのHBSS)、次いで、1090rpm、10分、20℃、中断ありで遠心分離した(270×g、GH 3.8A Rotor)。遠心分離を完了した後、細胞を、2~3mLのACK赤血球溶解バッファー(塩化アンモニウムカリウム溶液、Gibco,Life Technologies)に再懸濁し、20℃で2~5分間インキュベートした。次に、HBSS(40mL)を細胞に添加し、この試料を、270×g、10分、20℃で遠心分離した。上清をデカンテーションし、細胞ペレットを5mLのAIM V培地(Gibco,Life Technologies)に再懸濁した。細胞溶液をBD Falcon 70ミクロンナイロンセルストレーナ(BD Biosciences(San Jose,CA))を通して濾過することによって、細胞凝集体及び破片を除去した。
【0227】
生存細胞数を、Miltenyi FACS装置(Miltenyi Biotec Inc.(San Diego,CA))で計数することによって、又は血球計を用いることによって、決定した。血球計を用いて細胞生存率を決定するために、細胞を、0.4%トリパンブルー及びHBSS(具体的には、トリパンブルー50マイクロリットル+HBSS40マイクロリットル+細胞溶液10マイクロリットルをマイクロチューブに添加して混合した)中、1/10に希釈した。次いで、希釈した細胞10μLを血球計に適用し、生存PBMCの数を、顕微鏡により決定した。
【0228】
次いで、PBMC試料を、96ウェルプレート内で、8×10細胞/ウェルの濃度で、0.1mLのAIM-V培地中に再懸濁した。各化合物をジメチルスルホキシド(DMSO)に可溶化し、3mMの原液を調製した。次いで、原液をAIM-V培地で更に希釈して、段階希釈液を調製した。次いで、希釈化合物(100μL)をPBMCに移し、30、10、3.3、1.1、0.37、0.12、0.04、0.01μMの最終化合物濃度で試験セットを得た。プレートは、陽性対照と陰性対照との両方も有した。陰性対照のウェルには、実施例の化合物なしで、AIM-V培地のみを含有させた。陽性対照のウェルには、30、10、3.3、1.1、0.37、0.12、0.04、0.01μMの濃度に段階希釈したイミキモドを入れた。対照セットにおいて用いた濃度は、試験セットにおいて用いた濃度と一致するように選択した。次いで、プレートを37℃/5%COで21~24時間培養した。96ウェルプレートを2100rpm、23℃で10分間遠心分離することによって、無細胞上清を回収した。次いで、およそ160マイクロリットルの上清をNUNC 96ウェルプレートに保存し、圧縮キャップで覆い、サイトカイン分析を行うまで-80℃で保存した。
【0229】
IFN-αサイトカインレベル(ピコグラム/mL)を、ELISA(ヒトIFN-α、pan特異的、Mabtech(Cincinnati,OH))によって測定した。IFN-γ及びTNF-αレベル(ピコグラム/mL)を、製造業者の説明書に従って多重ビーズアッセイ(磁気ビーズ、R&D Systems(Minneapolis,MN)によって測定した。
【0230】
データを解析し、各化合物について、アッセイにおいて特定のサイトカインの誘導が観察された最小有効濃度(minimum effective concentration、MEC)を決定した。具体的には、各化合物の最小有効濃度(μM)は、測定されたサイトカイン応答を、陰性対照のウェルで観察されたレベルよりも少なくとも2倍高いレベル(ピコグラム/mL)で誘導した化合物の最低濃度として決定した。結果を表1に報告する。表記「≦0.01」は、アッセイにおいて評価された化合物の最低濃度でサイトカイン誘導が観察されたことを示す。
【0231】
【表1】
【0232】
TLR活性化及び特異性
HEK-BLUE-hTLR7又はhTLR8レポーター細胞は、InvivoGen(San Diego,CA)から入手した。製造業者の説明書に従って、これらのレポーター細胞を、誘導性分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)レポーター遺伝子及びヒトTLR7又はTLR8遺伝子のいずれかによるHEK293細胞の共トランスフェクションによって調製した。SEAPレポーター遺伝子を、5つのNF-κB及びAP-1結合部位に融合したIFN-β最小プロモーターの制御下に置いた。TLRリガンドの存在下では、NF-κB及びAP-1の活性化が起こり、SEAPレベルの対応する増加をもたらす。
【0233】
誘導性SEAPレポーターを発現するが、TLR7もTLR8も発現しない親HEK293細胞(ヌル)を、InvivoGenから入手し、アッセイにおける陰性対照として使用した。
【0234】
アッセイにおいて、HEK細胞を、1%ペニシリン/ストレプトマイシン及び10%熱不活性化Gibcoウシ胎児血清(ThermoFisher Scientific)を補充したダルベッコ改変イーグル培地(ThermoFisher Scientific Incorporated(Waltham,MA))を含有する増殖培地中で、標準的な細胞培養技術を使用して増殖させ、維持した。各化合物をDMSOに可溶化し、3mMの原液を調製した。次いで、原液を増殖培地で更に希釈して、段階希釈液を調製した。各試験化合物を、30、10、3.3、1.1、0.37、0.12、0.04、及び0.01μMの濃度で、96ウェルフォーマットを用いて、ウェル当たり5×10個の細胞及び200μLの増殖培地で試験した。
【0235】
各化合物について、hTLR7、hTLR8、及びそれらのそれぞれのヌル対照HEK細胞をスクリーニングした。増殖培地中に連続希釈したDMSOをビヒクル対照として役立てた。SEAPレポーターを含有する細胞培養上清を、細胞培養インキュベーター(37℃、5%CO)中での16~20時間のインキュベーション期間後に収集し、直ちに分析するか、又は-80℃で保存するかのいずれかとした。SEAPレベルを、比色酵素アッセイ(QUANTI-BLUE(InvivoGen)を製造業者の説明書に従って使用して測定した。
【0236】
データを解析し、各化合物について、アッセイにおいて活性化が観察された最小有効濃度(minimum effective concentration、MEC)を決定した。具体的には、各化合物の最小有効濃度(μM)は、ビヒクル対照のウェルで観察された応答よりも少なくとも2倍高いSEAP発現応答を生じさせた化合物の最低濃度として決定した。結果を表2に報告する。表記「≦0.01」は、アッセイにおいて評価された化合物の最低濃度でTLR活性化が観察されたことを示す。
【0237】
【表2】
【0238】
本明細書に引用した特許、特許文献、及び刊行物の全開示は、それぞれが個別に組み込まれたかのごとく、それらの全体が参照により組み込まれる。本発明に対する様々な改変及び変更は、本発明の範囲及び趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかとなるであろう。本発明が本明細書で説明されている例示的な実施形態及び例によって不当に限定されることは意図されておらず、このような例及び実施形態は例としてのみ提示されており、本発明の範囲は、本明細書で以下に記載されている特許請求の範囲によってのみ限定されることが意図されていると理解されたい。
【国際調査報告】