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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】3D印刷によって作られた冷却板
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/36 20060101AFI20230725BHJP
   H05K 7/20 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
H01L23/36 Z
H05K7/20 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023500989
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 IB2021056185
(87)【国際公開番号】W WO2022009169
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/049,745
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【弁理士】
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】プロトニコフ,エリザヴェータ ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ムーン,サン ダブリュ.
(72)【発明者】
【氏名】プロイト,ニコラス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ジョーダン,マイロン ケー.
【テーマコード(参考)】
5E322
5F136
【Fターム(参考)】
5E322AA01
5E322AA05
5E322AA11
5E322FA01
5E322FA04
5F136BA04
5F136BA06
5F136FA03
5F136GA40
(57)【要約】
銅ベース板と、銅ベース板上の複数のフィンとを有する冷却板。フィンは、多孔質であり、銅ベース板に銅-銀合金を3D印刷することによって作られる。代替的に、フィンは、3D印刷され、次いで、ろう付け材料によって銅ベース板に接着することができる。銅ベース板は、熱伝導材料を使用して、チップパッケージなどの冷却される電子機器上に配置される。フィンにわたって冷却剤を循環させるために、銅ベース板に任意のマニホールドを配置することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ベース板と、
前記金属ベース板上の複数のフィンであって、多孔質であり、積層造形可能な材料を含む、前記複数のフィンと、
を備える冷却板。
【請求項2】
前記金属ベース板が銅を含む、請求項1に記載の冷却板。
【請求項3】
前記フィンが銅-銀合金を含む、請求項1に記載の冷却板。
【請求項4】
前記フィンが銅を含む、請求項1に記載の冷却板。
【請求項5】
前記フィンが銅系合金を含む、請求項1に記載の冷却板。
【請求項6】
前記フィンが真っ直ぐである、請求項1に記載の冷却板。
【請求項7】
前記フィンが湾曲している、請求項1に記載の冷却板。
【請求項8】
前記フィンが、熱処理前に約600マイクロメートル~1ミリメートルの幅を有する、請求項1に記載の冷却板。
【請求項9】
前記フィンが、熱処理前に約500マイクロメートルの間隔を有する、請求項1に記載の冷却板。
【請求項10】
前記フィンの細孔が、熱処理後に約5マイクロメートル~10マイクロメートルの直径を有する、請求項1に記載の冷却板。
【請求項11】
金属板と、
前記金属板上の冷却板であって、
金属ベース板と、
前記金属ベース板上の複数のフィンであって、多孔質であり、積層造形可能な材料を含む、複数のフィンと、
を備える冷却板と、
前記金属板上にあり、前記冷却板を覆っているマニホールドであって、前記マニホールドに冷却剤を受けるための少なくとも1つの第1のポートと、前記マニホールドから前記冷却剤を出すための少なくとも1つの第2のポートとを含む、マニホールドと、
を備える冷却板冷却システム。
【請求項12】
前記金属板が銅を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記金属ベース板が銅を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項14】
前記フィンが銅-銀合金を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項15】
前記フィンが銅を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項16】
前記フィンが銅系合金を含む、請求項11に記載のシステム。
【請求項17】
前記フィンが真っ直ぐである、請求項11に記載のシステム。
【請求項18】
前記フィンが湾曲している、請求項11に記載のシステム。
【請求項19】
前記フィンが、熱処理前に約600マイクロメートル~1ミリメートルの幅を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項20】
前記フィンが、熱処理前に約500マイクロメートルの間隔を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項21】
前記フィンの細孔が、熱処理後に約5マイクロメートル~10マイクロメートルの直径を有する、請求項11に記載のシステム。
【請求項22】
前記金属板の前記冷却板とは反対側上に熱伝導材料をさらに備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項23】
冷却板を作るための方法であって、
金属ベース板を用意するステップと、
前記金属ベース板上に、多孔質である複数のフィンを3D印刷するステップと、
を含む方法。
【請求項24】
冷却板を作るための方法であって、
金属ベース板を用意するステップと、
多孔質である複数のフィンを3D印刷するステップと、
前記フィンを前記金属ベース板に接着するステップと、
を含む方法。
【請求項25】
冷却板の3次元モデルを表すデータを有する非一時的な機械可読媒体であって、3Dプリンタとインタフェースする1つ以上のプロセッサによってアクセスされたときに、前記3Dプリンタに前記冷却板を作り出させ、前記冷却板が、
金属ベース板と、
前記金属ベース板上の多孔質である複数のフィンと、を備え、
前記冷却板が、互いに直接接合された複数の金属層を含む、非一時的な機械可読媒体。
【請求項26】
冷却板であって、
金属ベース板と、
前記金属ベース板上の多孔質である複数のフィンと、を備え、
前記冷却板が、互いに直接接合された複数の金属層を含む、
冷却板の3Dモデルを表すデータを非一時的な機械可読媒体から読み出すことと、
前記データを使用する製造デバイスを介して、1つ以上のプロセッサによって3D印刷アプリケーションを実行することと、
前記冷却板の物理的オブジェクトを前記製造デバイスによって生成することと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
冷却板は、プロセッサが動作中に冷却される効率的な方法を提供し、高価値集積回路チップの寿命を延ばすことができる。大規模データセンタに配置されたサーバラック内で使用されるようなプロセッサは、動作中に600Wの熱を発生させることがある。サーバラック内のプロセッサの密な間隔並びにサーバラック間の間隔を考慮すると、特に、産業が、他の用途よりも高い処理能力を必要とする、より人工多くの知能及び機械学習能力に移行するときに、空冷は、規模において効率的な解決策ではない。従来のダイレクトチップ冷却板は、例えば、CNC又はスカイビングマシンを使用して表面に機械加工された真っ直ぐな薄いフィンを備えた銅板からなる。そのような構造体は、流量1L/分で約0.05℃/Wの熱抵抗率を概ね達成することができる。
【発明の概要】
【0002】
冷却板が、金属ベース板と、金属ベース板上の複数のフィンとを含む。フィンは、多孔質であり、積層造形可能な材料を含む。
【0003】
冷却板冷却システムが、金属板と、金属板上の冷却板と、金属板上にあり冷却板を覆っているマニホールドとを含む。マニホールドは、マニホールドに冷却剤を受けるための少なくとも1つの第1のポートと、マニホールドから冷却剤を出すための少なくとも1つの第2のポートとを含む。冷却板は、金属ベース板と、金属ベース板上の複数のフィン又はピンとを含み、フィン又はピンが、多孔質であり、積層造形可能な材料を含む。
【0004】
冷却板を作るための第1の方法が、金属ベース板を用意するステップと、金属ベース板上に複数の多孔質のフィン又はピンを3D印刷するステップとを含む。
【0005】
冷却板を作るための第2の方法が、金属ベース板を用意するステップと、複数の多孔質のフィン又はピンを3D印刷するステップと、フィン又はピンを金属ベース板に接着するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1A】冷却板冷却システムの斜視図である。
図1B】冷却板の斜視図である。
図1C】物品の積層造形のためのシステムの図である。
図1D】物品の積層造形のための方法のフローチャートである。
図2】a)3D印刷されたアダプタを使用した、プリンタのビルド側への銅板の配置、b)プリンタの供給側への粉末の充填、c)銅板を覆うような粉末の第1の層の散布、及びd)印刷後の完成したフィン付き構造体を示す画像である。
図3】ExOne製水性バインダー中の水を蒸発させるために使用される熱処理の前後における機械加工された銅板上の印刷されたフィン付き構造体を示す画像である。
図4】焼結熱処理の前後における印刷されたフィン付き構造体を備えた機械加工された銅板を示す画像である。
図5】二次熱処理の前後における独立型フィン付き構造体を示す画像である。
図6】ろう付けのための指定領域にろう付け箔及びペーストが適用された機械加工された銅板を示す画像である。
図7】ろう付け箔(左)及びろう付けペースト(右)を使用して銅板にろう付けされた後の板/ろう付け/印刷構造体の組立体を示す画像である。
図8】カスタムベンチトップ試験装置の概略図である。
図9】3つのサンプルについて、シミュレートされた性能を実験的に測定された熱抵抗の値と比較するグラフである。
図10】実施例2のために作られたフィン付き構造体の後方散乱画像であり、3D印刷による層及び多孔質構造体の存在を示す水平線を示している。
図11】実施例2のために作られたフィン付き構造体の後方散乱画像であり、3D印刷による層及び多孔質構造体の存在を示す水平線を示している。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の実施形態は、バインダージェット方式による3D印刷を使用して銅板上にフィン付き構造体を作り出す方法を含む。この3D印刷された金属構造体は、例えば、電子機器用途のための単相ダイレクトチップ(direct-to-chip)冷却に使用される銅又は銅-銀合金の真っ直ぐな又は湾曲したフィンを含む。バインダージェット方式は、製造中のスループットを向上させる可能性と、多孔質であり、かつ、表面粗さが大きく、それゆえに冷却流体と接触する総表面積を増加させる、最終構造体とを含む、従来のミリング加工を上回るいくつかの利点を提供する。
【0008】
図1Aは、チップパッケージ10などの電子機器を冷却するための、熱伝導材料12を有する冷却板冷却システムの斜視図である。冷却システムは、熱伝導材料12と物理的に接触する銅板14と、銅板14上にあり銅板14と物理的に接触するヒートシンク16と、ヒートシンクを覆い銅板14と物理的に接触する任意のマニホールド20とを含む。マニホールド20は、ヒートシンク16にわたって流れる冷却剤を受けるための少なくとも1つのポート22と、冷却剤がマニホールド20から出るための少なくとも1つのポート24とを含む。銅板14、ヒートシンク16及びマニホールド20は、チップパッケージ10を冷却するためのサーモモジュール18を形成する。
【0009】
図1Bは、冷却板を形成するヒートシンク16の斜視図である。ヒートシンク16は、金属ベース板26と、金属ベース板26上に形成されたフィン28とを含む。代替的に、フィン28は、例えばろう付け材料などで銅板14に接着することによって銅板14に直接配置するために、ベース板26なしで形成することができる。フィン28は、実施例に記載されるように、積層造形可能な材料を使用して3D印刷によって作られた多孔質構造体を備える。フィンは、3D印刷されるので、フィンがバインダージェット方式などの3D印刷によって作られたことを示す、層の存在によって断面特色を有することができる。フィンは、典型的に直径5マイクロメートル~10マイクロメートルの細孔を含む。フィンの例示的なサイズとしては、600マイクロメートルのフィンの幅及び500マイクロメートルのフィンの間隔(チャネル幅)が挙げられる。フィンの特徴部又は冷却板の他の構造体のサイズの典型的な範囲は、300マイクロメートル~1mmである。特徴部が熱処理後に20%~25%収縮するので、これらの例示的なサイズは印刷時のものである。フィンは、湾曲していても真っ直ぐであってもよく、連続していても連続していなくてもよい。フィンが連続していない場合、フィンはピンに似ていてもよい。
【0010】
いくつかの実施形態では、少なくともいくつかの実施形態による冷却板の積層造形において、非一時的な機械可読媒体が使用される。データは、通常、機械可読媒体に保存される。データは、冷却板の3次元モデル、又は互いに積層されたときに3次元モデルを構成する一連の2次元モデルを表し、これらには、積層造形機器(例えば、3Dプリンタ、製造デバイス又は他のそのようなデバイス)とインタフェースする少なくとも1つのコンピュータプロセッサによってアクセスすることができる。データは、積層造形機器に冷却板を作り出させるために使用される。本明細書で使用される場合、「三次元モデル」という用語は、三次元の1つのモデルと、互いに積み重ねられて三次元モデルを提供する、それぞれが二次元の2つ以上のモデルとの両方を指す。
【0011】
冷却板を表すデータは、コンピュータ支援設計(CAD)データなどのコンピュータモデリングを使用して生成することができる。冷却板の設計を表す画像データは、STLフォーマット又は任意の他の好適なコンピュータ処理可能なフォーマットにて、積層造形機器にエクスポートすることができる。冷却板を表すデータを作成するために、3次元オブジェクトを走査するための走査法も使用してもよい。データを取得するための1つの例示的な技法は、デジタル走査である。X線写真、レーザ走査、コンピュータ断層撮影(computed tomography;CT)、磁気共鳴画像法(magnetic resonance imaging;MRI)、及び超音波イメージングを含む、任意の他の好適な走査技法を、物品を走査するために使用することができる。他の可能な走査法は、例えば、米国特許出願公開第2007/0031791号に記載されている。走査オペレーションによる生データと、生データから生成された物品を表すデータとの両方を含み得る、初期デジタルデータセットを処理して、任意の周囲構造体(例えば、冷却板用の支持体)から冷却板の設計を分わけることができる。
【0012】
機械可読媒体は、コンピューティングデバイスの一部として提供することができる。コンピューティングデバイスは、1つ以上のプロセッサ、揮発性メモリ(RAM)、機械可読媒体を読み取るためのデバイス、並びに、例えば、ディスプレイ、キーボード及びポインティングデバイスなどの入力/出力デバイスを有し得る。更に、コンピューティングデバイスは、オペレーティングシステム及び他のアプリケーションソフトウェアなどの他のソフトウェア、ファームウェア、又はこれらの組み合わせも含み得る。コンピューティングデバイスは、例えば、ワークステーション、ラップトップ、携帯情報端末(PDA)、サーバ、メインフレーム又は任意の他の汎用若しくは特定用途向けコンピューティングデバイスであり得る。コンピューティングデバイスは、ハードドライブ、CD-ROM、又はコンピュータメモリなどのコンピュータ可読媒体から実行可能なソフトウェア命令を読み出してもよく、又は別のネットワークコンピュータなどの、コンピュータに論理的に接続された別のソースからの命令を受信してもよい。
【0013】
図1Cは、物品を積層造形するためのシステム30の図である。システム30は、物品(例えば、図1Bに示される冷却板)の3Dモデル34を表示できるディスプレイデバイス36と、ユーザによって選択、さもなければ有効化された3Dモデル34に応じて、物品44の物理的オブジェクトを3Dプリンタ/積層造形デバイス42に作り出させる1つ以上のプロセッサ38とを含む。特にユーザが3Dモデル34を選択するために、ディスプレイデバイス36及び少なくとも1つのプロセッサ38とともに、入力デバイス40(例えば、キーボード及び/又はカーソル制御デバイス)を使用することができる。3Dモデル34は典型的に、非一時的な機械可読メモリなどの記憶デバイス32内に記憶され、プロセッサ38によってローカルで又はネットワークを介してリモートでアクセスされる。冷却板44は、金属ベース板と、金属ベース板上の複数の多孔質フィンとを備える。冷却板は、互いに直接接合されたいくつかの金属層を含む。
【0014】
図1Dは、積層造形法のフローチャートである。この方法は、例えばシステム30によって、少なくとも部分的に実装及び実行することができる。方法は、少なくとも1つの実施形態による物品(すなわち、冷却板)の3Dモデルを表すデータを非一時的な機械可読媒体から読み出すこと50を含む。方法は、1つ以上のプロセッサ(例えば、プロセッサ38)によって、3Dモデルなどのデータを使用する製造デバイス(例えば、デバイス42)を介して積層造形アプリケーションを実行すること52と、製造デバイスによって、所望の冷却板などの物品の物理的オブジェクトを生成すること54とをさらに含む。1つ以上の様々な任意の後処理ステップ56、例えば、支持体の除去及び熱処理を行うことができるが、これらに限定されない。
【実施例
【0015】
【表1】
【0016】
実施例1:銅板へのフィン付き構造体の直接印刷
12インチ×48インチ、1/8インチの101銅の平板を45×34×3mmに機械加工した。四隅に取り付け穴を穿孔し、一面に熱電対スロットをミリング加工した。機械加工中の板の反りを補償するために必要な又は所望の程度まで平坦度の要件を具体的に求めた。
【0017】
米国特許第7,727,931号の第13欄40行~第14欄39行に記載されているように、(金ターゲットを銀で置き換えて)銅粉末(D90<20μm)を銀でプラズマコーティングし、薄くて(~約20nm)不均一なコーティングを作り出して銅-銀粉末を製造した。ExOne(North Huntingdon,PA)製のMlabバインダージェット3Dプリンタに粉末を装填し、標準的な製造業者推奨始動プロセスに従ってプリンタを印刷のために準備した。プリンタは、ExOne製水性バインダーを使用した。
【0018】
プリンタの50×70mmのビルド側にぴったりと嵌め込み、フィン付き構造体が確実に板の中心になるように、機械加工された銅板を3D印刷されたアダプタに挿入した。厚さ1mm、高さ0.6mmの一組のフィンを含むCADファイルをプリンタソフトウェアにロードした。表1に列挙されたパラメータを使用して印刷を行った。第1の層を銅板上に直接印刷し、このような方法で後続の各層も板に接着した。調製及び印刷プロセスを図2に示す。
【0019】
【表2】
【0020】
印刷ステップに続いて、印刷されたフィン付き構造体及びそれを取り囲んでいる粉末のいずれも乱すことなく、銅板をプリンタから慎重に持ち上げ、熱処理して水性バインダー中の水分の大部分を除去した。
【0021】
熱処理は、CM furnaces製の水素雰囲気1200シリーズ炉内で行った。以下の熱処理サイクルを使用した。
1. 流量80SCFHの100%窒素によって室温で20分間パージする。
2. 流量10SCFHの100%水素にガスを切り替える。
3. 5℃/分の速度で195℃まで加熱する。
4. 195℃で2時間保持する。
5. 5℃/分の速度で80℃まで冷却する(下記参照)。
6. 流量80SCFHの100%窒素にガスを切り替える。
7. 窒素によって20分間パージする。
【0022】
5℃/分の名目上の冷却速度を炉にプログラムしたが、炉は、炉自体をそのように急速に冷却する手段を有していなかった。プログラムは、代わりに、プログラムされた速度から10℃の遅延を伴って可能な限り急速に炉を冷却させた。
【0023】
図3は、熱処理プロセスの前後における機械加工された銅板上の印刷されたフィン付き構造体を示す。わずかな色の変化が、金属粉末の銅成分に対する炉の還元性雰囲気の影響を示していた。
【0024】
熱処理プロセスに続いて、固まっていない粉末を機械加工された銅板から手作業で払い落とし、印刷された構造体だけを残した。固まっていない残った少量の粉末を低圧空気ホースを用いて吹き飛ばした。
【0025】
次に、清浄化した「硬化していない」部品に(同じ炉内で)第2の熱処理を施して構造体を焼結させた。以下の熱処理サイクルを使用した。
1. 流量80SCFHの100%窒素を用いて室温で20分間パージする。
2. 流量10SCFHの100%水素にガスを切り替える。
3. 5℃/分の速度で500℃まで加熱する。
4. 500℃で1時間保持する。
5. 5℃/分の速度で900℃まで加熱する。
6. 900℃で10時間保持する。
7. 5℃/分の速度で100℃まで冷却する(下記参照)。
8. 流量80SCFHの100%窒素にガスを切り替える。
9. 窒素によって20分間パージする。
【0026】
5℃/分の名目上の冷却速度を炉にプログラムしたが、炉は、炉自体をそのように急速に冷却する手段を有していなかった。プログラムは、代わりに、プログラムされた速度から10℃の遅延を伴って可能な限り急速に炉を冷却させた。
【0027】
図4は、焼結熱処理の前後における機械加工された銅板及び印刷されたフィン付き構造体を示す。色の変化が、炉の還元性雰囲気を示していた。フィンは、粉末の固化及び緻密化により、焼結プロセス後に見た目により薄くなった。実験により観察されたこの粉末のx-y平面における線収縮率は、22%であり、印刷された部品の(拘束されていない)上部が、(拘束されている)底部よりもわずかに大きく収縮していた。したがって、フィンは1mmの名目上の幅に印刷されたが、焼結後に得られた幅は~800μmであった。
【0028】
実施例2:独立型フィン付き構造体の印刷と、その後のろう付け
実施例1で概説したのと同じ印刷パラメータを使用して、ベースを備えた独立型フィン付き構造体を印刷した。
【0029】
第1の層のベースとして銅板を使用する代わりに、印刷中及び印刷後に、印刷された部品を固まっていないパウダー中に留めた。印刷された構造体は、真っ直ぐなフィン及び厚さ1mmの正方形のベースからなっていた。焼結中の収縮を補償するために、印刷された構造体をx-y平面において27%過大にした。
【0030】
第2の熱処理中の900℃での保持時間を10時間から4時間に短縮したこと一点を除いて、実施例1に記載されたパラメータを使用して部品を印刷し、熱処理した。
【0031】
図5は、(より高温の)第2の熱処理の前後における1つのフィン付き構造体を示す。熱処理後の構造体の収縮に留意されたい(写真は同じスケールである)。全体的な収縮は、図4における収縮よりも著しかったが、これは、独立型フィン付き構造体が、印刷された構造体の底面に対する固定具として機能する銅板上になかったためである。したがって、構造体は、実施例1よりもはるかに収縮する可能性があった。
【0032】
第2の熱処理プロセスに続いて、フィン付き構造体を(実施例1に従って機械加工された)きれいな銅板上にろう付けした。Silverbraze 45ろう材を2つの異なる形態、すなわち、1)薄箔;2)ペースト/スラリーの形態で使用した。
【0033】
機械加工された銅板(図6)にろう付け材料を適用し、ろう付け材料の上に印刷されたフィン付き構造体を置いた。
【0034】
図6は、ろう付けのための指定領域にろう付け箔及びペーストを適用した機械加工された銅板を示す画像である。
【0035】
機械加工された銅板、ろう付け材料、及び印刷されたフィン付き構造体の積層体を、以下のプログラム(実施例1で使用したのと同じ炉)に従って熱処理して、板/ろう付け/印刷された構造体の組立体を形成した。
1. 流量80SCFHの100%窒素を用いて室温で20分間パージする。
2. 流量10SCFHの100%水素にガスを切り替えた。
3. 5℃/分の速度で635℃まで加熱する。
4. 635℃で30分間保持する。
5. 5℃/分の速度で780℃まで加熱する。
6. 780℃で10分間保持する。
7. 5℃/分の速度で100℃まで冷却する(下記参照)。
8. 流量80SCFHの100%窒素にガスを切り替える。
9. 窒素によって20分間パージする。
【0036】
5℃/分の名目上の冷却速度を炉にプログラムしたが、炉は、炉自体をそのように急速に冷却する手段を有していなかった。プログラムは、代わりに、プログラムされた速度から10℃の遅延を伴って可能な限り急速に炉を冷却させた。
【0037】
ろう付け材料の固相線温度及び液相線温度(それぞれ655℃及び745℃として供給業者によって報告されている)に従って保持温度を選択した。
【0038】
図7は、ろう付け熱処理を経た後の板/ろう付け/印刷された構造体の組立体を示す。
【0039】
実施例3:より薄いフィン付き構造体の銅板への直接印刷
実施例1のステップを、以下の2つの変更を加えて繰り返した。
1. CADモデルにおけるフィンの幅を1mmから0.5mmに縮小した。
2. 第2の熱処理中における900℃での保持期間の長さを10時間から5時間に短縮した。
【0040】
熱的性能
カスタムベンチトップ設定を使用して、冷却板の熱特性を測定した。設定は、プロセッサの熱環境を再現すると同時に、テスト全体にわたって実際のプロセッサよりも細かな制御及び良好な再現性を可能にする。
【0041】
試験設定は以下を含んでいた。
●脱イオン水のリザーバ。
●入力DC電圧による可変制御を伴う水ポンプ(Micropump 83472)(Micropump(Vancouver,WA))。
●流量計(Micro-flo FTB324D,Omega(Norwalk,CT))。
●被試験デバイス(DUT)への入口における水温を測定するための熱電対。
●冷却システムであって、
○模倣するプロセッサと同じ主要寸法を有する銅製加熱台座。
○銅製加熱台座に挿入された加熱ロッド。
○台座の上部に取り付けられたDUT(微細構造化表面)。
○DUTの上部に取り付けられた透明マニホールド。
○DUTにわたる圧力低下を監視するための圧力測定器(Setra 2301050PD2F11B)(Setra(Boxborough,MA))。
○銅製台座の温度をその垂直長さに沿って測定する3つの熱電対。
○DUTの底面に取り付けられた熱電対。
●熱電対の測定値及び水圧の測定値を監視するためのデータ取得システム(Keysight 34972Aシャーシを備えたKeysight 34901Aカード)(Keysight(Santa Rosa,CA))。
●加熱ロッドへのAC電力を制御するための可変トランスフォーマ(ISE,Inc.(Cleveland,OH))。
【0042】
図8は、カスタムベンチトップ試験装置の概略図である。
【0043】
冷却板の底部に最も近接して取り付けられた熱電対と入口水温との温度差から、微細構造体から流体への熱対流を計算した。
【0044】
【数1】
ここで、熱流束密度φは、電力を台座の断面積で割った値に等しかった。台座内に埋め込まれた、図8のx及びxなどの熱電対の温度差から、台座を通る電力を推定した。試験は、温度、流量及び圧力データを収集することからなった。試験毎に変更された入力パラメータは、入力電力及び(流量を修正するための)ポンプ電圧を含む。
【0045】
【表3】
【0046】
ベースライン比較
微細チャネル冷却板の熱抵抗を、計算流体力学(CFD)モデルを使用して実験設定と同じ条件の下、異なる流量でシミュレートした。有限体積法(FVM)を用いて、計算領域における熱流動場を計算した。
【0047】
3つの異なる冷却板を作製し、それらの熱的性能を試験することにより、モデルを検証した。熱抵抗データを流量200~1400mLPMで収集し、シミュレーション結果と比較した。
【0048】
第1のサンプルは、微細チャネルのない平坦な銅板であった。
【0049】
第2及び第3のサンプルは、微細チャネルを形成する放電加工(EDM)法によって作製された微細チャネルを有し、それらのチャネル幅はそれぞれ、152μm及び203μmであった。
【0050】
図9は、3つのサンプルについて、シミュレートされた性能を、実験的に測定された熱抵抗の値と比較する。
【0051】
この計算は、流量1000mLPMで実験的に測定された熱インピーダンスの3%以内でヒートシンク性能を予測するシミュレーションを実証する。それゆえに、シミュレーションは、高い信頼性で性能を予測する効果的な手段を提供した。
【0052】
表3は、実施例3の方法を使用して製造されたヒートシンクの性能を、同じ(実施例4)及び2分の1の(実施例5)機械加工された銅製ヒートシンクの予測された性能と比較する。
【0053】
実施例3のサンプルの熱的性能は、機械加工された比較対象の銅サンプルよりも優れていた(熱抵抗は2.4分の1であった)。その熱抵抗は、チャネル幅250μmの機械加工された銅製ヒートシンクの抵抗よりもはるかに小さかった。これは、バインダージェット方式を使用してヒートシンクチャネルを作製することによって達成された改善を伴う予期せぬ結果であった。
【0054】
【表4】
【0055】
図10は、実施例2のために作られたフィン付き構造体の後方散乱画像であり、3D印刷による層及び多孔質構造体の存在を示す水平線を示している。
【0056】
図11は、実施例2のために作られたフィン付き構造体の後方散乱画像であり、3D印刷による層及び多孔質構造体の存在を示す水平線を示している。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【国際調査報告】