(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】蛍光寿命イメージングのための回路及び方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/64 20060101AFI20230725BHJP
H04N 25/773 20230101ALI20230725BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20230725BHJP
【FI】
G01N21/64 B
H04N25/773
H04N25/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501070
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-02-17
(86)【国際出願番号】 EP2021069150
(87)【国際公開番号】W WO2022008715
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501180768
【氏名又は名称】フリーイェ・ユニヴェルシテイト・ブリュッセル
【氏名又は名称原語表記】VRIJE UNIVERSIEIT BRUSSEL
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】クイク,マールテン
(72)【発明者】
【氏名】インゲルバーツ,ハンス
(72)【発明者】
【氏名】バイジョット,セドリック
【テーマコード(参考)】
2G043
5C024
【Fターム(参考)】
2G043EA01
2G043EA10
2G043FA02
2G043KA08
2G043KA09
2G043LA01
2G043LA07
2G043NA06
5C024AX04
5C024CX51
5C024GX03
5C024GX15
5C024GX16
5C024GY39
5C024GY41
5C024GY45
5C024HX13
5C024HX35
(57)【要約】
蛍光寿命を検出するための検出システムは、パルス状の励起光を繰り返し生成するように構成された励起光源と、検出器(600)と、を備える。検出器(600)は、光子の検出時にデジタルパルスを生成するための単一光子検出回路(150)と、一連の測定時間ウィンドウの各々1つの外で発生する検出された光子を拒絶するための、パルス抑制回路(165)であって、各後続する測定時間ウィンドウは、後続する励起光パルスが停止した後に始まり、次の励起光パルスが生成される前に停止し、各測定時間ウィンドウは、測定ウィンドウ期間を有する、パルス抑制回路(165)と、各新しい測定ウィンドウ期間で再開される電圧ランプ信号を受信するための入力端子を有する、スイッチドキャパシタ回路(160)であって、スイッチドキャパシタ回路は、質量中心法の原理に従って、過去の測定時間ウィンドウにわたって記録され、検出されかつ拒絶されない光子に応答して電圧ランプ信号によって決定されたサンプル電圧に適用された指数移動平均関数に基づいて、平均電圧を反復的に計算するように構成され、スイッチドキャパシタ回路は、蛍光寿命の尺度として、計算された平均電圧を出力するためのノード(172)を有する、スイッチドキャパシタ回路(160)と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蛍光寿命を検出するための検出システムであって、前記検出システムは、
パルス状の励起光を繰り返し生成するように構成された励起光源と、
検出器(500、600、900、1200、1500)であって、
光子の検出時にデジタルパルス(120)を生成するための単一光子検出回路(150)と、
一連の測定時間ウィンドウの各々1つの外で発生する検出された光子を拒絶するための、パルス抑制回路(165、166)であって、各後続する測定時間ウィンドウは、後続する励起光パルス(101)が停止した後に始まり、次の励起光パルス(101)が生成される前に停止し、各測定時間ウィンドウは、測定ウィンドウ期間(t
w)を有する、パルス抑制回路(165、166)と、
各新しい測定ウィンドウ期間(t
w)で再開される電圧ランプ信号を受信するための入力端子(171)を有する、第1のスイッチドキャパシタ回路(160)であって、前記第1のスイッチドキャパシタ回路(160)は、質量中心法の原理に従って、過去の測定時間ウィンドウにわたって記録され、検出されかつ拒絶されない光子(121)に応答して電圧ランプ信号によって決定されたサンプル電圧(V
s
i)に適用された指数移動平均関数に基づいて、平均電圧を反復的に計算するように構成され、前記第1のスイッチドキャパシタ回路は、前記蛍光寿命の尺度として、前記計算された平均電圧を出力するための第1のノード(172)を有する、第1のスイッチドキャパシタ回路(160)と、を含む、検出器(500、600、900、1200、1500)と、を備える、検出システム。
【請求項2】
前記第1のスイッチドキャパシタ回路(160)は、第1のサンプリングキャパシタ(C1)と、前記第1のサンプリングキャパシタを、ランプ信号を受信するためのランプ端子(171)及び前記第1のノード(172)に交互に結合するための第1のスイッチ(XN1)及び第2のスイッチ(XN2)と、を含む、請求項1に記載の検出システム。
【請求項3】
前記第1のスイッチドキャパシタ回路(160)は、前記第1のサンプリングキャパシタ(C1)を前記第1のノード(172)に結合するために前記第2のスイッチ(XN2)が駆動されるときに、電荷共有再分配構成となるように構成された、第2のキャパシタ(C2)を更に含む、請求項2に記載の検出システム。
【請求項4】
前記第1のサンプリングキャパシタ(C1)は、前記第2のキャパシタ(C2)よりも少なくとも1桁だけ、好ましくは少なくとも2桁だけ小さい、請求項3に記載の検出システム。
【請求項5】
前記第1のサンプリングキャパシタ(C1)と並列に1つ以上のキャパシタ(C3)を一時的に追加するための手段を更に備える、請求項2~4のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項6】
前記第1のスイッチドキャパシタ回路(160)の前記第1のノード(172)に直列に接続され、入射光子に直接応答しない発振レートで動作するように構成された、第2のスイッチドキャパシタ回路(800)を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に検出システム。
【請求項7】
前記第2のスイッチドキャパシタ回路(800)は、第2のサンプリングキャパシタ(C5)と、前記第2のサンプリングキャパシタを、前記蛍光寿命の尺度として計算された平均電圧を受け取るための前記第1のノード(172)、及び出力ノード(hybridEMA)に交互に結合するための第1のスイッチ(XN5)及び第2のスイッチ(XN6)と、を含む、請求項6に記載の検出システム。
【請求項8】
前記第2のスイッチドキャパシタ回路(800)は、前記第2のサンプリングキャパシタ(C5)を前記出力ノード(hybridEMA)に結合するために前記第2のスイッチ(XN6)が駆動されるときに、電荷共有再分配構成となるように構成された、第4のキャパシタ(C6)を更に含む、請求項7に記載の検出システム。
【請求項9】
前記第2のサンプリングキャパシタ(C5)は、前記第4のキャパシタ(C6)よりも少なくとも1桁だけ、好ましくは少なくとも2桁だけ小さい、請求項8に記載の検出システム。
【請求項10】
前記第1のスイッチドキャパシタ回路(160)を作動させるための非重複信号を提供するための非重複スイッチイネーブル回路(155)を更に備える、請求項1~4のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項11】
前記単一光子検出回路(150)は、単一光子アバランシェ検出器を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項12】
前記パルス抑制回路(166)は、前記単一光子アバランシェ検出器にわたる電圧を下げるように適合された可変電圧源(164)を含む、請求項11に記載の検出システム。
【請求項13】
前記パルス抑制回路(165)は、前記スイッチドキャパシタ回路(160)を駆動するための信号のうちの1つを遮断し、かくしてパルスが考慮に入れられることを防止するように適合されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項14】
前記パルス抑制回路(165)及び前記第1のスイッチドキャパシタ回路(160)と並列に動作するように構成された、少なくとも1つの更なるパルス抑制回路(167)及び少なくとも1つの更なるスイッチドキャパシタ回路(162)を更に備える、請求項13に記載の検出システム。
【請求項15】
検出された光子の数を計数するための光子カウンタ回路(168)を更に備える、先行請求項のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項16】
前記第1のスイッチドキャパシタ回路(160)を作動させるための非重複信号を提供するための非重複スイッチイネーブル回路(155)及び検出された光子の数を計数するための光子カウンタ回路(168)を更に備え、前記光子カウンタ回路(168)は、前記第1のスイッチドキャパシタ回路(160)を作動させるための前記非重複信号によって作動させられるように適合されたスイッチドキャパシタ回路を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の検出システム。
【請求項17】
検出された光子の数を計数するための光子カウンタ回路(168)を更に備え、前記サンプリングキャパシタ(C1)と並列に1つ以上のキャパシタ(C3)を一時的に追加するための前記手段は、それぞれ、前記1つ以上のキャパシタ(C3)と直列の1つ以上のスイッチを含み、前記1つ以上のスイッチは、前記光子カウンタ回路(168)が所定の数の検出された光子を計数したときに開かれる、請求項5に記載の検出システム。
【請求項18】
蛍光イメージングセンサであって、
パルス状の励起光を繰り返し生成するように構成された励起光源と、
検出器(500、600、900、1200、1500)のアレイであって、各検出器は、
光子の検出時にデジタルパルス(120)を生成するための単一光子検出回路(150)と、
一連の測定時間ウィンドウの各々1つの外で発生する検出された光子を拒絶するための、パルス抑制回路(165、166)であって、各後続する測定時間ウィンドウは、後続する励起光パルス(101)が停止した後に始まり、次の励起光パルス(101)が生成される前に停止し、各測定時間ウィンドウは、測定ウィンドウ期間(t
w)を有する、パルス抑制回路(165、166)と、
各新しい測定ウィンドウ期間(t
w)で再開される電圧ランプ信号を受信するための入力端子(171)を有する、第1のスイッチドキャパシタ回路(160)であって、前記第1のスイッチドキャパシタ回路(160)は、質量中心法の原理に従って、過去の測定時間ウィンドウにわたって記録され、検出されかつ拒絶されない光子(121)に応答して電圧ランプ信号によって決定されたサンプル電圧(V
s
i)に適用された指数移動平均関数に基づいて、平均電圧を反復的に計算するように構成され、前記第1のスイッチドキャパシタ回路は、前記蛍光寿命の尺度として、前記計算された平均電圧を出力するための第1のノード(172)を有する、第1のスイッチドキャパシタ回路(160)と、を含む、検出器(500、600、900、1200、1500)のアレイと、を備える、蛍光イメージングセンサ。
【請求項19】
蛍光寿命を決定するための方法であって、光子の検出時にデジタルパルスを生成することと、測定時間ウィンドウの外で発生する検出された光子を拒絶することと、質量中心法の原理に従って、過去の測定時間ウィンドウにわたって記録され、検出されかつ拒絶されない光子に応答して電圧ランプ信号によって決定されたサンプル電圧に適用された指数移動平均関数に基づいて、平均電圧を計算することと、前記蛍光寿命の尺度として、前記計算された平均電圧を出力することと、を含む、方法。
【請求項20】
前記計算された平均電圧を平均化することを更に含む、請求項19に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蛍光を時間領域で捕捉し、その寿命を決定する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光寿命イメージングを実現する良く知られた方法は、周波数領域におけるものである。蛍光体を刺激する光が正弦波状に変調され、受け取られた蛍光が同じ周波数で復調され、位相変化及び変調深度が蛍光体の寿命を抽出するための主要なパラメータである。
【0003】
別の方法は、迅速な寿命決定の原理を使用するものである。非常に高速なゲート型検出器を用いて、2つの時間ウィンドウ(又はビン)内の光子の数を収集することにより、光応答を測定するものである。
【0004】
単一光子検出器に基づくシステムが提案されており、ゲート型ウィンドウが使用されるか、又はイベントの時間がカウンタ及び/又はリング発振器(時間からデジタルへの変換)を使用して記録され、データを収集してイベントを処理するDSPプロセッサに渡される。
【発明の概要】
【0005】
本発明の実施形態の目的は、蛍光寿命を決定するための良好なシステム及び方法を提供することにある。
【0006】
以上の目的は、本発明による方法及び装置によって達成される。
【0007】
第1の態様においては、本発明は、蛍光寿命を検出するための検出システムを提供する。この検出システムは、パルス状の励起光を繰り返し生成するように構成された励起光源と、検出器と、を備える。検出器は、光子の検出時にデジタルパルスを生成するための単一光子検出回路と、一連の測定時間ウィンドウの各々1つの外で発生する検出された光子を拒絶するための、パルス抑制回路であって、各後続する測定時間ウィンドウは、後続する励起光パルスが停止した後に始まり、次の励起光パルスが生成される前に停止し、各測定時間ウィンドウは、測定ウィンドウ期間を有する、パルス抑制回路と、各新しい測定ウィンドウ期間で再開される電圧ランプ信号を受信するための入力端子を有する、第1のスイッチドキャパシタ回路であって、第1のスイッチドキャパシタ回路は、質量中心法の原理に従って、過去の測定時間ウィンドウにわたって記録され、検出されかつ拒絶されない光子に応答して電圧ランプ信号によって決定されたサンプル電圧に適用された指数移動平均関数に基づいて、平均電圧を反復的に計算するように構成される、第1のスイッチドキャパシタ回路と、を含む。測定は、後続する測定時間ウィンドウにわたって行われ、先に取得されたサンプルの平均における重要性が時間の経過とともに減少するように、常に平均化される。スイッチドキャパシタ回路は、蛍光寿命の間接的な尺度として、計算された平均電圧を出力するための、第1のノードを有する。計算された平均電圧は電圧であり、時間値ではないこと、及び、実際の蛍光寿命を得るために、セットアップの状況に応じて、計算された平均電圧に較正補正及び/又はバックグラウンド補正が適用される必要があり得ること、の少なくとも2つの理由のため、計算された平均電圧は、蛍光寿命の間接的な尺度である。
【0008】
本発明の実施形態においては、指数移動平均関数は、検出され拒絶されなかった光子に対応するデジタルパルスが存在するときに、ランプ信号の電圧をサンプリングすることによって、ランプ信号に基づいて実装される。ランプ信号のサンプリングされた電圧は、指数移動平均電圧を更新するためにその都度使用される。
【0009】
本発明の実施形態による検出システムにおいては、第1のスイッチドキャパシタ回路は、第1のサンプリングキャパシタと、第1のサンプリングキャパシタを、ランプ信号を受信するためのランプ端子及び第1のノードに交互に結合するための第1のスイッチ及び第2のスイッチと、を含み得る。このようにして、ランプ信号がサンプリングされ、サンプリングされた電圧は、以上に説明されたように、指数移動平均電圧を更新するために使用される。
【0010】
本発明の実施形態においては、第1のスイッチドキャパシタ回路は、第1のサンプリングキャパシタを第1のノードに結合するために第2のスイッチが駆動されるときに、電荷共有再分配構成となるように構成された、第2のキャパシタを更に含み得る。本発明の実施形態においては、第1のサンプリングキャパシタは、第2のキャパシタよりも少なくとも1桁だけ、好ましくは少なくとも2桁だけ小さい。
【0011】
本発明の実施形態による検出システムは、第1のサンプリングキャパシタと並列に1つ以上のキャパシタを一時的に追加するための手段を更に備え得る。
【0012】
本発明の実施形態による検出システムは、第1のスイッチドキャパシタ回路の第1のノードに直列に接続され、入射光子に直接応答しない発振レートで動作するように構成された、第2のスイッチドキャパシタ回路を更に備え得る。発振レートは、用途の要件によって決定され得る。
【0013】
第2のスイッチドキャパシタ回路は、第2のサンプリングキャパシタと、第2のサンプリングキャパシタを、蛍光寿命の尺度として計算された平均電圧を受け取るための第1のノードと、出力ノードに交互に結合するための第1のスイッチ及び第2のスイッチと、を含み得る。本発明の実施形態においては、第2のスイッチドキャパシタ回路は、第2のサンプリングキャパシタを出力ノードに結合するために第2のスイッチが駆動されるときに、電荷共有再分配構成となるように構成された、第4のキャパシタを更に含み得る。第2のサンプリングキャパシタは、第4のキャパシタよりも少なくとも1桁だけ、好ましくは少なくとも2桁だけ小さくてもよい。
【0014】
本発明の実施形態による検出システムは、スイッチドキャパシタ回路を作動させるための非重複信号を提供するための非重複スイッチイネーブル回路を更に含み得る。本発明の実施形態においては、非重複スイッチイネーブル回路は、ワンショット回路を含み、トリガされると予め定義された継続時間の出力パルスを生成し、その後、安定状態に戻り、再びトリガされるまでそれ以上出力を生成しない。
【0015】
本発明の実施形態によれば、単一光子検出回路は、単一光子アバランシェ検出器(SPAD)を含み得る。かかる実施形態においては、パルス抑制回路は、単一光子アバランシェ検出器にわたる電圧を下げるように適合された可変電圧源を含み得る。本発明の実施形態においては、パルス抑制回路は、スイッチドキャパシタ回路を駆動するための信号の1つを遮断して、パルスが考慮に入れられることを防止するように適合され得る。
【0016】
本発明の実施形態による検出システムは、パルス抑制回路及びスイッチドキャパシタ回路と並列に動作するように構成された、少なくとも1つの更なるパルス抑制回路及び少なくとも1つの更なるスイッチドキャパシタ回路を更に含んでもよい。
【0017】
本発明の実施形態による検出システムは、検出された光子の数を計数するための光子カウンタ回路を更に備え得る。検出器が、スイッチドキャパシタ回路を作動させるための非重複信号を提供するための非重複スイッチイネーブル回路を含む実施形態においては、光子カウンタ回路は、スイッチドキャパシタ回路を作動させるための非重複信号によって作動させられるように適合されたスイッチドキャパシタ回路を含み得る。
【0018】
サンプリングキャパシタと並列に1つ以上のキャパシタを一時的に追加する手段を含む実施形態においては、これら実施形態は、それぞれ、1つ以上のキャパシタと直列の1つ以上のスイッチを含み得、1つ以上のスイッチは、光子カウンタ回路が所定の数の検出された光子を計数したときに開かれる。
【0019】
第2の態様においては、本発明は、蛍光イメージングセンサであって、パルス状の励起光を繰り返し生成するように構成された励起光源と、検出器のアレイであって、各検出器は、光子の検出時にデジタルパルスを生成するための単一光子検出回路と、一連の測定時間ウィンドウの各々1つの外で発生する検出された光子を拒絶するための、パルス抑制回路であって、各後続する測定時間ウィンドウは、後続する励起光パルスが停止した後に始まり、次の励起光パルスが生成される前に停止し、各測定時間ウィンドウは、測定ウィンドウ期間を有する、パルス抑制回路と、各新しい測定ウィンドウ期間で再開される電圧ランプ信号を受信するための入力端子を有する、第1のスイッチドキャパシタ回路であって、第1のスイッチドキャパシタ回路は、質量中心法の原理に従って、過去の測定時間ウィンドウにわたって記録され、検出されかつ拒絶されない光子に応答して電圧ランプ信号によって決定されたサンプル電圧に適用された指数移動平均関数に基づいて、平均電圧を反復的に計算するように構成され、第1のスイッチドキャパシタ回路は、蛍光寿命の尺度として、計算された平均電圧を出力するための第1のノードを有する、第1のスイッチドキャパシタ回路と、を含む、検出器のアレイと、を備える、蛍光イメージングセンサを提供する。アレイ内の検出器の詳細は、本発明の第1の態様の種々の実施形態において提示されるようなものであり得る。
【0020】
第3の態様においては、本発明は、蛍光寿命を決定する方法を提供する。この方法は、光子の検出時にデジタルパルスを生成することと、測定時間ウィンドウの外で発生する検出された光子を拒絶することと、質量中心法の原理に従って、過去の測定時間ウィンドウにわたって記録された、検出されかつ拒絶されない光子に応答して電圧ランプ信号によって決定されたサンプル電圧に適用された指数移動平均関数に基づいて、平均電圧を計算することと、蛍光寿命の尺度として、計算された平均電圧を出力することと、を含む。本発明の実施形態においては、計算された平均電圧は、更に平均化されてもよい。
【0021】
本発明の実施形態の利点は、SPADのような単一光子検出器を使用する場合に幾分か利用可能である、光子到着のタイミングが、質量中心原理の使用のおかげで、寿命の決定において完全に利用されることである。更に、時間ウィンドウ内で検出されるイベントの各々が、寿命推定値の決定に関与する。そのウィンドウは、利用可能な蛍光のほとんどをカバーすることができるので、基本的に、このシステムは最適と考えられ得るものに近い。例えば、20nsの単一のウィンドウを用いれば、200ps~15nsの広い範囲内の寿命を検出することができる。このシステムは、連続的かつ非同期的に動作することができ、検出器がオーバーフローする、又は他方で信号が少なすぎるリスクなしに、最近のイベント/検出の数の最良の寿命推定値を得ることができる。光量が非常に少ない状態も対処されることができ、システムが主にショットノイズ制限される。このため、キャパシタ比に基づく設定可能なメモリ深度を有する、指数移動平均に基づくスライディング平均が使用される。古い測定値ほどあまり考慮に入れられず、新しい測定値ほどより考慮される。読み出し値はアナログであってもよいが、ADCは多くの数の有効ビットを必要としない。画素内平均化は、最適な結果を実現するために、例えば、DSPにおける第2段階の平均化により補完され得る。画素アレイの読み出しは、タイミングが重要なものではなく、バックグラウンドで行われ得る。更に、単一光子検出器のバックグラウンドの明及び/又は暗の計数レートを考慮に入れるために、時間領域における質量中心が平均化される第2のより長いウィンドウが、同時に操作され得る。第3のウィンドウは、複数の蛍光体の寿命、及びその相対的な重要性を発見することを可能にする。システムの一部における遅延の態様は、異なる位置にあるウィンドウを用いて調べることができる。このようにして、例えば、寿命推定のためのウィンドウをその最適な位置により近く位置付けるのに有用である、蛍光の発生を発見することができる。平均化を含む時間ウィンドウにおける時間領域の質量中心の推定のための回路は非常に小さく、複数のこれらのインスタンスが、同時動作のために画素毎に含められ得る。異なる時間ウィンドウの連続的な動作もまた、実現可能である。古典的な照明レベルが同時に検出される必要がある場合においては、同様の回路に基づく光子カウンタも提案される。
【0022】
本発明の特定の及び好ましい態様は、添付の独立請求項及び従属請求項に提示されている。従属請求項からの特徴は、独立請求項の特徴及び他の従属請求項の特徴と適宜組み合わせられてもよく、単に請求項に明示的に提示されたようなものでなくてもよい。
【0023】
本発明及び先行技術に対して実現される利点を要約する目的のため、本発明の特定の目的及び利点が本明細書において以上に説明された。もちろん、必ずしも全てのかかる目的又は利点が、本発明の任意の特定の実施形態によって実現され得るわけではないことは、理解されるべきである。かくして、例えば、当業者は、本明細書で教示又は示唆され得る他の目的又は利点を必ずしも実現することなく、本明細書で教示される1つの利点又は利点の群を実現又は最適化する態様で、本発明が実施化又は実行され得ることを、認識するであろう。
【0024】
本発明の以上の及び他の態様は、以下に説明される実施形態を参照して明らかとなり、説明されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明は、添付の図面を参照しながら、例として以下に更に説明される。
【0026】
【
図1】パルス刺激(100)された蛍光105の寿命τを決定するために使用される時間ウィンドウt
wにおける質量中心方法(先行技術)を示す。
【
図2】実際の寿命τ,に対する測定された質量中心寿命t
cmの逸脱を、当該寿命τに対する実際の時間ウィンドウ期間t
wの関数で示す。
【
図3】本発明の実施形態による、多くの期間にわたって測定する場合の、所定の時間ウィンドウt
wの外のトリガ/光子の拒絶を示す。
【
図4】本発明の実施形態による、指数移動平均(EMA)電圧を更新する、時間ウィンドウt
w並びにそのサンプリングイベント180、181及び182における傾きm129を有する電圧ランプの使用を示す。
【
図5】単一光子検出回路150、非重複スイッチイネーブル回路155、パルス抑制回路166、及びスイッチドキャパシタ回路160を有する、本発明の回路実装の一実施形態を示す。
【
図6】単一光子検出回路150、非重複スイッチイネーブル回路155、パルス抑制回路165及びスイッチドキャパシタ回路160を有する、本発明の実施形態の回路実装の一実施形態を示す。
【
図7】非重複スイッチイネーブル信号125及び126によって駆動され、ランプ信号122から
【数1】
をサンプリングし、指数移動平均EMA電圧曲線123を更新する、本発明の実施形態によるスイッチドキャパシタ回路160の特定の動作を示す。
【
図8】本発明の実施形態による、統計モデルに基づく指数移動平均を示すシミュレーションを示す。
【
図9】本発明の実施形態による、単一の非重複スイッチイネーブル回路155、2つの別個の抑制回路165及び167、並びに2つの別個のスイッチドキャパシタ回路160及び162によって、2つの異なる時間ウィンドウ内で2つの指数移動平均が計算され、2つの指数移動平均EMA1及びEMA2に導く回路を実施化する。
【
図10】バックグラウンド光I
bgの影響を排除しつつ、寿命τ,の推定を可能にする、
図9における回路による、2つの質量中心t
cm1及びt
cm2を測定する、2つの時間ウィンドウt
w1111及びt
w2112の定義を示す。.
【
図11】蛍光寿命τを測定するための第1のウィンドウt
w1111、並びに、遅延t
dについての近似値を導出するために、電気伝送路における蛍光及び信号の移動の遅延の影響を推定するのに有用な第2のウィンドウt
w3113の定義を示す。
【
図12】本発明の実施形態による、質量中心に加えて、イベントカウンタ168を使用して、時間ウィンドウ内の到着した光子の数も計数されることを実施化する回路を示す。
【
図13】適応重み付け回路169を使用して、本発明の実施形態により、指数移動平均化の重みが、計数された入射光子の数に対して局所的にランタイム適応され得る回路を示す。
【
図14】ことによると照明された領域における2つの異なる蛍光体の存在による、2つの蛍光寿命τ1及びτ2,を含む蛍光を測定するための、ウィンドウt
w1、t
w4及びt
w5の定義の一例を示す。画素毎にハードウェアで並列にそれらの測定を実現するために、
図9の回路は、追加的な第3の抑制回路及びスイッチドキャパシタ回路(図示されていない)によって補完され得る。
【
図15】ハイブリッドEMA平均化を有する、本発明の実施形態による特定の回路実装を示し、第1のスイッチドキャパシタ回路160が、第1及び第2のクロック信号CLK1及びCLK2によって駆動される第2のスイッチドキャパシタ回路800によって後続される、通過するSPADイベントに応答して動作する。
【
図16】蛍光入力レベルの4桁のダイナミックレンジを可能にする、
図15のハイブリッドEMA平均化に基づく、画素内第2段階平均化を使用するPhytonシミュレーションを示す。
【0027】
図面は、単に概略的なものであり、限定するものではない。図面において、要素のいくつかのサイズは、例示の目的のため誇張され、定縮尺で描かれていない場合がある。寸法及び相対的な寸法は、必ずしも本発明の実施に対する実際の縮小に対応しない。異なる図において、同じ参照番号が、同じ又は類似の要素を指す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明は、特定の実施形態に関して、特定の図面を参照しながら説明されるが、本発明はこれに限定されるものではなく、請求項によってのみ限定されるものである。請求項におけるいかなる参照記号も、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0029】
本明細書における第1、第2などの用語は、類似の要素間を区別するために使用され、必ずしも、時間的、空間的、順位的、又はその他のいずれの態様でも、順序を記述するために使用されるものではない。そのように使用される用語は、適切な状況下で交換可能であり、本明細書に記載される本発明の実施形態は、本明細書に記載又は説明される以外の順序で動作可能であることは、理解されるべきである。
【0030】
請求項において使用される「含む」という用語は、その後に列挙される手段に限定されるものと解釈されるべきではないことに留意されたい。したがって、「手段A及びBを含む装置」という表現の範囲は、構成要素A及びBのみからなる装置に限定されるべきではない。この表現は、本発明に関しては、装置の最も重要な構成要素がA及びBであることを意味する。
【0031】
同様に、「結合された」という用語は、直接の接続のみに限定されるものと解釈されるべきではないことに留意されたい。したがって、「装置Bに結合された装置A」という表現の範囲は、装置Aの出力部が装置Bの入力部に直接に接続されている装置又はシステムに限定されるべきではない。この表現は、他の装置又は手段を含む経路であり得る、Aの出力部とBの入力部との間の経路が存在することを意味する。
【0032】
本明細書を通じて「一実施形態(one embodiment)」又は「一実施形態(an embodiment)」への言及は、その実施形態に関連して説明される特定の特徴、構造又は特性が、本発明の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書中の様々な場所における「一実施形態(one embodiment)において」又は「一実施形態(an embodiment)において」という語句の出現は、必ずしも全てが同じ実施形態を指すわけではないが、そうである場合もある。更に、特定の特徴、構造又は特性は、1つ以上の実施形態においては、本開示から当業者に明らかであるような、任意の好適な態様で組み合わせられてもよい。
【0033】
同様に、本発明の例示的な実施形態の説明において、開示を合理化し、様々な発明の態様のうちの1つ以上の理解を助ける目的で、本発明の様々な特徴が、単一の実施形態、図、又はその説明にグループ化されることがあることは、理解されるべきである。しかしながら、この開示の方法は、請求される発明が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映するものと解釈されるべきではない。むしろ、以下の請求項が反映するように、発明の態様は、単一の以上に開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない特徴に存する。かくして、詳細な説明に続く請求項は、ここでこの詳細な説明に明示的に組み込まれ、各請求項は、それ自体が、本発明の別個の実施形態として成立する。
【0034】
本発明の特定の特徴又は態様を説明する際の特定の用語法の使用は、その用語法が関連する本発明の特徴又は態様の任意の特定の特性を含むように制限されるように、本明細書で再定義されることを意味するものではないことは、留意されるべきである。
【0035】
本明細書で提供される説明において、多数の特定の詳細が開示される。しかしながら、本発明の実施形態は、これらの具体的な詳細なしに実施され得ることは理解されよう。他の例においては、この説明の理解を妨げないようにするために、良く知られた方法、構造及び技術は、詳細に示されていない。
【0036】
定義
蛍光は、電磁励起放射、例えば、光を、その励起時に吸収した蛍光体による、光の放出である。ほとんどの場合、放出される光は、吸収された励起放射よりも長い波長を有し、それ故、低い光子エネルギーを有する。
【0037】
蛍光寿命は、蛍光体が励起状態から光子を放出することにより基底状態に戻るまでに費やす時間の尺度である。蛍光体の寿命は、ピコ秒から数百ナノ秒の範囲であり得る。
【0038】
蛍光寿命イメージング顕微鏡法(FLIM)は、蛍光試料からの蛍光の指数関数的減衰速度の違いに基づいて、画像を生成するための技術である。FLIMにおいては、画像を作成するために、蛍光体信号の強度ではなく寿命が使用される。例えば、画像ガイド付き手術及び生物医学的用途において、寿命が、蛍光体の化学的/生物学的環境についての追加的な情報を与える、他の多くの用途(必ずしもFLIMとは呼ばれないもの)が、蛍光寿命イメージングを必要とする。
【0039】
蛍光体が、電磁放射のパルス、例えば、光パルスを当てられて、例えば、照明されて、内部状態を励起すると、電子はしばらくの間、より高いエネルギー状態へ移動する。電子は、蛍光体の蛍光寿命によって特徴づけられる指数関数的な減衰過程において、光子又は熱を放出することによって、元の状態に戻ることとなる。蛍光体がその励起状態に留まり、光子を放出する平均時間は、蛍光寿命と呼ばれる。
図1において、印加される励起光100は、例えば、レーザーのような放射源からの所定の波長を有する短く強力なパルスであり、刺激の瞬間t
sにおいてピークを有すると仮定される。蛍光105(典型的にはより長い波長を呈する)は、蛍光体が励起されている刺激の瞬間t
sから始まり、励起が停止した後、蛍光105は、蛍光体の寿命τを有する指数関数的な減衰を示す。生成された蛍光105の曲線は、対数スケールで、下向きの-1/τの傾きを有する一次の曲線である。寿命τを定量化するための既知の測定手法の1つは、質量中心法と称される。この方法を適用するために、励起光100が停止したとき、例えば、第1の瞬間t
0で始まり、第2の瞬間t
1までの、好ましくは測定されるべき寿命よりも長い、ウィンドウ期間t
wを定義することができる(t
w=t
1-t
0)。発光はこのとき、以下の式に従う:
【数2】
ここで、I
0は、第1の瞬間t
0において放出された蛍光の強度である。
次いで、質量中心t
cmを、第1の瞬間t
0と中心瞬間t
cとの間の期間として、一次運動量を使用して、以下により定義することができる。
【数3】
一般に、測定ウィンドウ期間t
wは、蛍光体の寿命よりかなり長くなければならないと考えられる(したがってt
w>>τ)が、何らかの計算を用いて、より短いウィンドウ期間t
wの不正確さについての偏差を求めて、必要なときにそれを補償することができる。
図2は、適用する必要がある相対的な補償119を示す。119を通した簡単な曲線フィッティングは、この関係を簡単に明確にすることができ、それにより、質量中心t
cmを測定するとき、適用される測定ウィンドウ期間t
wが既知であれば、実際の寿命τを推論することができる。換言すれば、質量中心法を使用して、例えば、2nsのウィンドウ期間を用いて、例えば、1nsの寿命を測定することも可能である。以下では、一次運動量t
cmを求め、測定ウィンドウ期間t
wを既知とすることにより、当業者は実際の寿命τを推論することができることが仮定される。
【0040】
画素が小さく、蛍光シーンに由来する光子の数が少ない画像センサにおいては、
図1において提案されるもののようなシングルショット測定に頼ることはできない。実際には、単一のウィンドウ期間t
wの間に、数個の光子若しくは1個の光子しか検出器に到達しない、又は全く光子が検出器に到達しない可能性が非常に高い。このとき、励起光パルス100を何度も再印加し、各ウィンドウ期間t
wの間にデータを収集し、何らかの方法でこれら全てのトリガイベントから質量中心t
cmを計算しなければならないため、このことは、測定を非常に複雑化する。これを実現可能とするために、本発明の実施形態によれば、単一光子検出回路150に頼ることとなる。かかる単一光子検出回路150は、光子を検出するたびに、明確なデジタルパルスを生成する。十分な情報を得るために、図示される例においては、励起パルス100は、測定ウィンドウ期間t
wよりも長い期間を有するために十分低い反復レートで再印加される。反復レートは自由に選択できるが、実際には、限定するものではないが、レーザーの性能、目の安全のために許容される最大光強度、及び/又は蛍光体が一時的に飽和させられるか又は損傷さえさせられる白化現象を起こし得るという事実のような、多くの要素に依存し得る。作用し得る別の要素は、バックグラウンド光もまた光子を与えるという事実、及び/又は使用される検出器がそれ自体の暗電流(又はダークカウントレートDCR)を有し、測定を更に複雑化させるという事実である。
図3に示される実施形態においては、光パルスは、固定された反復レートで繰り返し生成される。しかしながら、図示されていない他の実施形態においては、かかる固定された反復レートは必要とされず、光パルスは、可変の中断を挟んで繰り返し生成されてもよい。同様に、測定ウィンドウ期間は、同じ長さを有し得るか、又は有し得ない。
【0041】
図3において、曲線101は、60ns毎の反復で、したがって16.667MHzの反復レートで、パルス化されている励起光100である。トリガ曲線120は、例えば、SPADのような検出素子が光子の存在を検出したときに、使用される単一光子検出150回路が出力するトリガ/光子イベントを示す。これは、蛍光からの到来する光、例えば、曲線101における励起光パルス100によって励起された蛍光体によって放出される蛍光、バックグラウンド照明からの光、及び検出器自体からのダークカウントを含む。
図3においては、6つのかかるイベントが発生しているが、これら6つのイベントのいずれの発生源は分からない。それにもかかわらず、バックグラウンド及びダークカウントは、蛍光に比べて非常に数が少ないことが、今のところ仮定され得る。拒絶曲線114は、同様に60ns毎に繰り返される、測定ウィンドウ期間t
w=20nsを有する3つの連続した時間ウィンドウを示す。拒絶曲線信号が第1の値、例えば、高を有するとき、トリガ曲線120からのパルスは拒絶され、第2の値、例えば、低を有するとき、パルスは測定処理へと許容され、選択されたトリガ曲線121を与える。このサイクルは、例えば、数十マイクロ秒又は数ミリ秒の間繰り返されてもよく、常時、拒絶曲線114が第2の値、例えば、低を有するときのみ、パルスを通過させる。
【0042】
ここで、
図4において、傾きmを有する電圧ランプ信号122が、各新しい測定ウィンドウ期間t
wに印加される。この電圧ランプ信号122は、選択されたトリガ曲線121において選択されたトリガが発生した瞬間にサンプリングされ、トリガ曲線121における各イベント180、181及び182の開始に応答してサンプル
【数4】
を与える。これは時間-アナログ変換(TAC)、又は時間-電圧変換とみなされ得、ここで、時間は測定ウィンドウ期間t
wの開始からイベント自体までの期間であり、アナログ信号はサンプリングされた電圧
【数5】
である。サンプル
【数6】
は、次の「指数移動平均」の原理に従って、キャパシタに存在する指数移動平均電圧EMAを更新するために毎回使用される。
【数7】
【0043】
平均化長nは、メモリがどれだけ過去へと深いかを示す数である。例えば、n=99の場合、新たなサンプル毎に、99%については以前の結果が再利用され、新しい1%についてだけ新たなサンプルが計数される。過去のサンプルほど徐々に重要ではなくなり、最近のサンプルがより重要になる。「単純移動平均」との違いは、後者を実現するためには、過去100件のリストを保持し、新たなイベントが発生するたびに、最も古いイベントの値を削除し、新たなイベントを含めて、適合された100件のイベントのセットの平均を再計算しなければならないことである。このことは、多くの計算及びメモリを必要とし、画像センサにおける画素毎に実現するのは困難である。
【0044】
時間-電圧変換されたサンプルの指数移動平均をとることにより、時間領域の質量中心法が実現される。
【0045】
EMA曲線123は、この特定の例においては、3つのイベント180、181及び182において電圧ランプ信号曲線122上のランプ電圧より3倍低い電圧レベルを有し、結果として、これらの瞬間(このシミュレーションにおいてはn=7)の各々において小さなステップが増大する。この例においては、ウィンドウ毎に1つの検出イベントが通過させられているが、例えば、高い光レベルの条件では、同じウィンドウ内により多くのイベントがあることも等しく可能であり、そうであっても、低い光レベルでは、イベントのないウィンドウが1つ、1つより多く、又は多くあることが起こり得る。同じウィンドウ内に複数のイベントがあっても、動作上の問題はない。それが非常に多くあり、更には多くのウィンドウで発生する場合には、情報の蓄積が起こり、精度を低下させ得る。これが問題になるか否かは、デッドタイム、同じウィンドウ内にいくつのイベントが発生するか、それがどのくらいの頻度で発生するか、アプリケーション及び所望される精度を含む、多くの要因に依存する。かかる状況においては、励起光源の振幅を小さくすることが解決策となり得る。
【0046】
電圧ランプ信号曲線122は、完全な直線であってもよいが、そうである必要はなく、そのウィンドウ内で、少なくとも単調に増大又は減少するべきである。これはゼロボルトで開始することもできるが、ランプの間の電圧が、取り付けられたスイッチドキャパシタ回路160(以下を参照)のスイッチの動作範囲内である限り、任意の他の好適な電圧レベルで開始することもできる。EMA曲線123が収束に至ると、サンプリングされた電圧は統計的にEMA電圧を上昇及び下降させ、3つのイベント180、181及び181におけるものと常に同じ方向になるわけではない。
【0047】
図5は、本発明の一実施形態による蛍光寿命決定回路500を示す。回路500は、数が非常に限られている場合であっても光子の発生を検出し、それに対応してトリガパルスを生成するための、単一光子検出回路150と、測定時間ウィンドウの外で発生するトリガパルスを拒絶するためのパルス抑制回路166と、指数移動平均関数を実行するためのスイッチドキャパシタ回路160と、スイッチドキャパシタ回路160を駆動するための信号を生成するための非重複スイッチイネーブル回路155と、を含む。
【0048】
図示される実施形態における単一光子検出回路150は、単一光子アバランシェダイオード(SPAD)検出器を実装している。SPAD検出器は、準安定状態において、その降伏電圧を超えて逆バイアスされる半導体pnダイオード接合である。SPAD検出器は、抵抗R1と直列に結合され、この直列接続は、第1のノード152と第2のノード153との間に結合される。第1のノード152は、第1のバイアス電圧Vbias1でバイアスされ、第2のノードは、第2のバイアス電圧Vbias2でバイアスされ、Vbias2は、SPAD検出器の逆バイアスを得るため、Vbias1より高い。単一の光子は、抵抗器R1を通してバイアスされるときに絶縁破壊を開始し、大きな電圧信号を与えることができ、電圧信号は、
図5に見られるような、一時的な電圧降下(V
input)である。SPAD検出器にわたる電圧は、SPAD検出器の降伏電圧を下回るまで低下し、それによって絶縁破壊が停止し、その後、取り付けられた抵抗器R1によってダイオード電圧が元の電圧に戻り、システムは再び準安定状態になる。この降下は、インバータ又はコンパレータ回路(単に一例として例示された回路150においては、本発明はこれに限定されるものではないが、トリップ電圧V
tripを有するインバータX1を有する)のような好適な検出回路によって検出され、ノードp1上にトリガパルスV
p1を生成することができ、トリガパルスの開始は、光子が検出器に入射した瞬間を示す。
図3及び
図4におけるトリガ曲線120は、ノードp1上の6つのかかるトリガパルスV
p1を示している。SPAD検出器、更にはSPAD回路には、能動的なもの(例えば、能動的又は受動的クエンチングを有する)、及び先端技術において知られている回路のタイプを含む、多くのタイプがあり、それらの各々は、本発明と組み合わせて使用され得る。単一光子検出回路150は、任意のSPAD又は任意の単一光子検出器を含むことができる。これらの回路に共通することは、その出力がデジタルトリガパルスであり、その開始が光子吸収の瞬間を示すことである。トリガパルスの幅はそれほど重要ではなく、しばしば多少変動し得る。
【0049】
本明細書では、測定時間ウィンドウの外のパルスを抑制するための、2つの例示的なシステムが説明される。第1のもの、すなわち
図5におけるパルス抑制回路166は、SPAD検出器の両端の電圧を下げることによって、イベントの拒絶を実施するものである。ここでパルス抑制回路166は、第1のノード152と第3のノード154との間、例えば、接地に結合された、可変電圧源164を含む。パルス抑制回路166への、より詳細にはその電圧源164への入力信号Rejectが高である場合、電圧源164の出力電圧V1は、第1のバイアス電圧Vbias1が高になるように、例えば、上昇させられるか又はより高いレベルとされるよう適合され、それ故SPADの両端の電圧がその降伏電圧を下回り、絶縁破壊が防止される。パルス抑制回路166への、より詳細にはその電圧源164への入力信号Rejectが低になった場合、電圧源164の出力電圧V1は、第1のバイアス電圧Vbias1が低になるように、例えば、低下させられる又は低いレベルとされるように適合され、それ故SPADの両端の電圧は再び増大させられ、絶縁破壊が再び起こり得るようになる。第1の電圧Vbias1、は、多くの場合、センサ論理のデジタル電源範囲の電圧範囲内になく、それ故、SPADのバイアスを変調することは、高速な方法で(数十ピコ秒の精度で)実施することは容易ではない。Vbias1は、SPADの降伏電圧を超えるバイアスを実現するために、例えば、-20Vであり、Vbias2は、インバータX1のトリップ電圧V
tripよりも1又は2V高い。それ故、デジタル領域で動作可能な、より有利な解決策が提案され、
図6を参照しながら以下に説明される。
【0050】
スイッチドキャパシタ回路160は、
図4の最下段のグラフにも示されているように、指数移動平均関数を実行するために使用される。
図5に示されるようなスイッチドキャパシタ回路160は、入力端子であるランプ端子171と、出力端子であるEMA端子172と、の間に直列に結合された、2つのスイッチXN1、XN2を含む。2つのスイッチXN1、XN2の間のサンプルノード173において、第1のキャパシタC1が接地に結合されている。出力端子172においては、第2のキャパシタC2が接地に結合されている。
【0051】
スイッチドキャパシタ回路160のスイッチXN1、XN2は、任意の瞬間にスイッチXN1、XN2の一方のみが導通するように作動させられる。スイッチXN1、XN2を作動させるための駆動信号は、以下により詳細に説明される非重複スイッチイネーブル回路155から受信される。
【0052】
図5に示される実施形態においては、スイッチXN1、XN2は、NMOSパスゲートによって実装される。これらのNMOSパスゲートのゲートは、非重複スイッチイネーブル回路155に結合され、該回路から作動信号を受信する。
【0053】
非重複スイッチイネーブル回路155は、本発明の特定の実施形態においては、直列に結合されたインバータの等間隔のシーケンスを含む。この例においては、それぞれが出力ノードp2、p3、p4、p5を有する、4つのインバータX2、X3、X4、X5がある。ノードp2は、スイッチドキャパシタ回路160の第1のスイッチXN1を作動させるための、第1のスイッチイネーブル出力信号である。このノードp2はまた、同様に入力部としてp5を有するNORゲートX6への入力部でもある。p1が高になると、p2は低になり、既に低であるp5は、3つのインバータ遅延後に高になる。このことは、NOR X6の両方の入力部が低になり、その間NORゲートX6が出力部p7において高を出力する、3つのインバータ遅延の期間を残す。これは基本的にワンショット回路であり、入力部p1が高になり(例えば、3nsの間)、出力部p7が、3つのインバータ遅延によって決定される所定の短期間(例えば、1ns)の間に高になる。NORゲートX6の出力信号は、その作動のために第2のスイッチXN2に、例えば、NMOSパスゲートのゲートに供給される。当業者には知られている多くの代替的なワンショット回路も可能である。
【0054】
図4の1つだが最後のグラフに示されているように、指数移動平均関数の実行において、ランプ電圧122が使用される。外部で生成されるランプ電圧は、Ramp端子171において印加され、図示された実施形態においてはNMOSパスゲートによって作られた、第1のスイッチXN1のソースに接続される。第1のスイッチXN1のドレインにおける、すなわちサンプルノード173における信号V
sは、第1のスイッチXN1のゲートが高にバイアスされている限り、電圧ランプ信号122(
図4)に従い、イベントを待機する。
【0055】
図7は、この処理について示す。通過させられたトリガパルスに対応する信号、例えば、インバータX2の出力ノードp2上の信号が、曲線125で表され、NORゲートX6の出力ノードp7における信号が、曲線126で表される。時間=93ns付近で、ノードp2上の電圧は降下し、第1のスイッチXN1は導通を停止する。サンプルノード173においてその瞬間に存在する電圧は、ランプ端子171にその瞬間に印加されたランプ電圧のサンプル
【数8】
である。サンプル
【数9】
はこのとき、キャパシタC1のおかげで、存在/有効であり、その電圧レベルを保持している。ノードp7(曲線126)における信号は、ノードp2における信号(曲線125)と重複せず、このとき高となり、第2のスイッチ(NMOSパスゲート)XN2を導通状態にする。第1及び第2のキャパシタC1及びC2は、互いに短絡され(サンプルノード173における電圧を示す曲線124と、EMA端子172における電圧を示す曲線123とが、t=93.5nsで一緒になる)、電荷共有再分配が行われ、それにより、信号
【数10】
と出力信号EMA(曲線123)とが、互いに向かってC1/C2の比率により決定される値へと変動する。第1のキャパシタC1が第2のキャパシタC2より100倍小さい場合、n=100となる。サンプルノード173上の電圧は、EMA端子172における電圧に向かって約99%変動し、EMA端子172における電圧は、サンプルノード173における電圧に向かって約1%変動する。大まかに言えば、最新の100個のサンプルが、有効な平均結果をほとんど決定すると言うことができる。
図4及び7の例においては、その数はかなり小さく選択され(n=7)、電圧ジャンプをより簡単に見ることができるようにする。以下が近似的に成立する:
【数11】
【0056】
好適な精度を有する出力が望まれる場合は、nが高くとられる、すなわち100~1000であるべきであり、このことは、フィルタの初期化の後、又は寿命の急激な変化の後の、収束に必要とされるサンプルの数を増大させる。変化に要する時間は到来する光子/イベントの数及びn値に完全に依存するため、このことがマイクロ秒の測定時間を要するかミリ秒の測定時間を要するかは分からない。数nを比較的低く、例えば、50に保ち、画素の外からのEMA出力をサンプリングし、追加的な外部算出及び平均化を行い、それによって、例えば、DSPデジタル処理手段を用いた第2段階における正確さ及び精度を高めることも、選択肢の一つである。
【0057】
図8は、n=50であり、2.6nsの寿命を有する指数減衰挙動を考慮に入れたランダム生成器によって生成された時間分布を有する測定時間ウィンドウを通過する200個のサンプルについてシミュレーションが実行される、動作を示している。測定ウィンドウ期間t
wは10nsに設定され、反復レートは10MHzに設定される。棒グラフ141は、10nsのウィンドウ期間にわたる200個の記録されたイベントのヒストグラムを示す。曲線140は、0nsの開始条件で始まるEMA信号(このシミュレーションにおいてはナノ秒単位)である。75個のサンプルの後、約2.4nsの平均及び寿命に対する7%の精度(100から200までのサンプルについて)を有する定常状態が発生する。
図2における曲線119を使用して、寿命が(10nsの)サンプリングウィンドウの約1/4であるという事実を補正することができ、寿命分布サンプル生成のために使用される元の2.6nsの寿命に結果を近くする。精度及び正確さは、通常の統計的規則に従って適合され、例えば、nを4のファクタだけ大きくすると、2のファクタの精度の向上が得られる。
【0058】
実際には、画素中に配置される付随回路は、画素が可能な限り高い充填率を有するように、可能な限り小さくするべきである。それ故、第1のキャパシタC1を完全に省略し、関連するサンプルノード173の残りの寄生キャパシタンスに頼ることが推奨され得る。寄生値C1の推定値を得た後、C2をその値のn倍になるように選択してもよい。C2は次いで、撮像器画素に最もフィットする方法で、当業者によって実装されてもよい。
【0059】
平均化されるサンプルが多いほど、精度は向上する。それ故、大きな平均化長nを使用することが有利である。しかしながら、小さな第1のキャパシタC1を用いても、第2のキャパシタC2は画素の幾分かの面積を占めることとなり、第2のキャパシタC2を大きくすることは、典型的には画素中により大きな面積を必要とする。本発明の実施形態においては、第2のキャパシタC2は、ダイナミックRAMセル内のキャパシタと同様に作られるものであってもよく、基板に深い穴を有し、小さな面積で大きなキャパシタを提供し得る。
【0060】
本発明の実施形態においては、異なるクロックで動作する、2つのスイッチドキャパシタ回路が実装されてもよい。その一例が
図15に示されており、第1のスイッチドキャパシタ回路160は、第2のキャパシタC2上にEMAと名付けられた電圧を提供する(他の全ての前述の実施形態と同様に)通過されたイベント毎に動作させられ、一方、第2の後続するスイッチドキャパシタ回路800は、入射光子に応答するのではなく固定された又は設定可能であり得る発振レートで動作させられる。第2のスイッチドキャパシタ回路800の構造は、第1のスイッチドキャパシタ回路の構造と同様であり、入力端子172と出力端子hybridEMAとの間に直列に結合された、2つのスイッチXN5、XN6を含む。2つのスイッチXN5、XN6の間のサンプルノードVs2において、サンプリングキャパシタとして機能する第3のキャパシタC5が接地に結合されている。出力端子hybridEMAにおいては、第4のキャパシタC6が接地に結合されている。第3のスイッチXN5及び第4のスイッチXN6は、第3のキャパシタC5を、蛍光寿命の尺度としての計算された平均電圧を受け取るためのノード172と、出力ノードhybridEMAと、に交互に結合させることを可能にする。第4のキャパシタC6は、第3のキャパシタC5を出力ノード(hybridEMA)に結合するために第4のスイッチXN6が駆動されるときに、電荷共有再分配構成となるように構成されている。本発明の実施形態においては、第3のキャパシタC5は、第4のキャパシタC6よりも、少なくとも1桁だけ、好ましくは少なくとも2桁だけ、小さくてもよい。
【0061】
第4のキャパシタC6上の電圧である出力信号hybridEMAはこのとき、読み出しのための出力である。入力CLK1、CLK2に対する非重複クロック信号を生成するために、例えば、周波数f
clkを有する通常の発振器が使用され得る。非重複とは、スイッチXN5とXN6とが同じ瞬間に導通することがないことを意味する。CLK1は、スイッチXN5を駆動し、CLK2は、スイッチXN6を駆動する。XN5及びXN6は、この例においては、NMOSパスゲートである。第3のキャパシタC5上の電圧は、CLK1が低になり、スイッチXN5が導通を停止する瞬間における、EMA電圧のサンプルである。CLK2が次いで高になり、第3のキャパシタC5と第4のキャパシタC6との間で電荷の共有が発生する。このことは次いで、古典的なスイッチドキャパシタのローパスフィルタ800を与え、-3dBコーナー周波数は以下となる。
【数12】
【0062】
第1段階の平均化長n1=C2/C1、第2段階の平均化長n2=C6/C5は、全体の平均化長はn1.n2=(C2.C6)/(C1.C5)を与える。したがって、n1=n2=100とすると、最大平均化は10000に達する。10000個のサンプルの平均化は、理論上、1%の相対蛍光寿命精度を与える。
【0063】
図16は、1秒に等しい50個のフレームについてシミュレートされた、n1=n2=100、50fpsのフレームレート(フレーム当たり20ms)に基づくシミュレーションを示す。ウィンドウ期間の幅は20nsであり、反復周波数は50MHzである。かくして、フレーム当たりのサイクル数は10
6である。このシミュレーションにおいては、クロック周波数はf
clk=5kHzに選択されている。光子の寿命は2nsと選択され、20フレーム後に1nsに急激にステップ状に低下する。曲線900は、平均して1万サイクルのうち1サイクルでしか光子が受け取られない場合において実現される、推定される寿命である。1フレーム中に100万サイクルの場合、フレーム当たり100個の光子のみが利用可能である。フレーム20において、寿命は一度に1nsまで減少する。推定される寿命の応答は幾分かの時間を要し、5~10フレームで1nsに減少する。一定の寿命の期間内で、フレームにわたって4.7%の精度が到達される(X=100における曲線905により示される)。サイクル当たり10倍の光子、すなわちフレーム当たり平均1000個の光子は、曲線901を与え、3~5フレームでより高速なステップ状に降下する応答、及び2.7%のより好適な精度を有する。フレーム当たり10,000個の光子は、0.5%の更に好適な精度を有する曲線902に導く。フレーム当たり100,000個及び1,000,000個の光子は、類似したステップ状の応答(曲線は示されていない)を有し、0.5%の同じ低いレベルの精度を有する。このセットアップは、2段階アプローチのおかげで、少なくとも4桁の光入力のダイナミックレンジがサポートされることを示す。レジスタのオーバーフローはなく、パラメータが変更される必要もないため、このことは、1つのビュー内の種々の場所において光レベルのこのダイナミックレンジで同時に、この原理に基づく撮像器を動作させることを可能とする。
【0064】
ハイブリッドEMA平均化原理は、本発明の任意の平均化回路において使用され得る。
【0065】
本発明の実施形態による回路は、提示されたものから大きく逸脱し得る。しかしながら、トランジスタの計数を少なく保つため、特別な注意が払われた。また、動作のほとんどがデジタル領域であるため、非常に限られたアナログの困難さしか存在しない。1%の寿命精度を想定する場合、EMA電圧の変換のためには、低精度ADC(例えば、8ビット)を有することで十分である。トランジスタの幅及び長さ(W/L値)は重要ではなく、当業者により決定され得る。ほとんどのトランジスタは最小の幅と長さのものであり得るが、曲線125及び126(
図7)が重複しないままであり、好ましくは全電源電圧に達することを確認する必要があり、すなわちスイッチドキャパシタ回路160のスイッチが最適に動作する又は少なくとも十分に好適であることを確実にする必要がある。
【0066】
前述したように、
図5を参照しながら説明されたものよりも有利なパルス抑制回路のための解決策が、デジタル領域で動作可能である。
図6は、デジタル領域のパルス抑制回路165を含む、本発明の実施形態による蛍光寿命決定回路600を示す。このパルス抑制回路165の他に、回路600は、単一光子検出回路150、非重複スイッチイネーブル回路155、及びスイッチドキャパシタ回路160を含む。これらの後者の構成要素は、
図5に関して開示された通りであり、ここでは改めて詳しく説明されない。
【0067】
図6の実施形態においては、スイッチドキャパシタ回路160を駆動する信号の1つが遮断され、そのようにして、平均化の実行のためにパルスが考慮に入れられることを防止することができる。このことは、
図6に示されており、パルス抑制回路165は、測定時間ウィンドウの外にあるNORゲートX6の出力ノードp6上の不要なパルスをゲート信号Rejectに応答して削除し、ノードp6上の信号のクリーンにされたバージョンをスイッチドキャパシタ回路160のパスゲートXN2につながるノードp7上に送出する。
図4においては、ノードp6上の信号は、曲線120で与えられ、クリーンにされたバージョン、すなわち測定時間ウィンドウの外にパルスを有するバージョンは、曲線121で与えられる。
図6に描かれているような抑制回路165はまた、異なる方法で、例えば、ANDゲート(図示されていない)を含むことによって、作られることもできる。
【0068】
図6に提示された特定の解決策の素晴らしい特徴の1つは、
図9の検出器900において示されるように、追加的な5つのトランジスタと2つのキャパシタだけで、それ自体の時間ウィンドウ及び同じ又は異なる電圧ランプ信号Ramp2を有する第2のEMA2スイッチドキャパシタ回路162、並びに第2のパルス抑制回路167が作製されることができ、これらが、第1のEMA1スイッチドキャパシタ回路160及びパルス抑制回路165とは完全に独立して(しかしそれと同時に)動作可能である点である。画像センサにおいては、低コストのモノリシックな解決法においては、回路が占める面積が実際の光検出領域のための面積とトレードオフの関係にあるため、追加的な回路の面積が低く抑えられる必要がある。小さい必要とされる面積のため、並行して動作する質量中心測定の数を増大させることができ、このとき、サンプリングされた光子は、専用の適用されるウィンドウに依存して許可又は禁止されることができる。
【0069】
図10は、入力光の2つの質量中心の測定を実行する非常に有用なアプリケーションを示す。励起光100と相関のないバックグラウンド光がある場合、以下の挙動を有する受光が得られる。
【数13】
I
bgは、入力信号においてランダムな瞬間にイベントを生成するバックグラウンド光成分である。時間t
0から始まり時間t
1で終わる、第1の、より短い測定期間t
w1を有する第1の測定時間ウィンドウ111における質量中心t
cm1は、これらのランダムなイベントにより、ウィンドウの中心に向かって(すなわち
【数14】
に近づく)歪まされることになる。同様に時間t
0から始まるが時間t
1よりも遅い時間t
2で終わる、それ故、例えば、第1のウィンドウt
w1の2倍長い、第2の、より長い測定期間t
w2を有する、第2の測定時間ウィンドウ112に基づく、第2の質量中心測定を含むことにより、システムが遵守する必要がある更なる方程式が得られる。このようにして、寿命τ及びバックグラウンド光I
bgという2つの未知数を有する、2つの方程式があることとなる。当業者は、これらの方程式を解くことにより、バックグラウンド光の干渉から引き剥がされた寿命を正確に取り出すことができる。避けられないバックグラウンド光のショットノイズのため、結果における精度は幾分か低下させられることとなる。
【0070】
本発明の実施形態においては、単一光子検出回路150は、バックグラウンド光と同じ影響を与える、上昇させられたダークカウントレート(DCR)を有し得る。かくして、DCRは、
図10に関して説明されたように、二重質量中心アプローチを使用して、同じように対処されることができる。複数の質量中心を測定することは、ちょうど前述したように画像センサ中の各画素に搭載された更なる回路を使用して、並行して実現され得るか、又は、シーン中の条件が変化しないことを前提に、同じ回路を使用して次々に連続的に実現され得る。また、ハードウェアが2つのためにのみ並列に備えられている場合、例えば、最初に2つの質量中心を並列に測定し、次いで別の2つの質量中心を測定するといった、組み合わせも想定され得る。
【0071】
図11は、二重質量中心アプローチの別の使用を示す。ナノ秒のオーダーの短い寿命を有する寿命測定においては、セットアップ内の各信号伝達は、光速の60~70%で伝わる電気信号であれ、光自体であれ、かなりの遅延を有する。最良の精度及び正確さを実現するためには、蛍光107の最大の瞬間t
sから過度に時間が経過しないt
0で開始する測定時間ウィンドウを配置することが、常に好ましい。それ故、励起パルスと蛍光の実際の放出との間の遅延t
dを最初に求めることが有用であり、これは全ての関与する伝送路、光の経路、及び実装システムにおける全体の同期原理の関数である。開始の瞬間t
3を有し、便利にも蛍光の放出の開始時刻t
sの前にt
3が確実にあるように選択され、測定ウィンドウ期間t
w3を有する、更なる測定時間ウィンドウが、適所に配置される。
図11に示される例においては、更なる測定時間ウィンドウは、終了時刻t
1を有し、開始時刻t
0及び終了時刻t
1を有する使用される他の測定時間ウィンドウと同様である。更なる測定時間ウィンドウの測定される質量中心t
cm3は、蛍光の放出の開始時間t
sを超えた瞬間t
c3を指すこととなり、次いでt
sをおおよそ位置特定するための推定がなされ得る。
【0072】
図12は、本発明の実施形態による蛍光寿命決定回路1200が、便利にも、ResetCount入力上のリセットパルスが印加された瞬間からの、測定ウィンドウ期間を通過するイベントの数についての情報を与える、アナログ光子カウンタ回路168を含み得ることを示す。
【0073】
図12に図示された光子カウンタ回路168は、とり得る実装のうちの1つの実施形態に過ぎない。これは、例えば、NMOSパスゲートスイッチであるパスゲートスイッチX12、X22の直列接続を含み、両方のパスゲートスイッチX12、X22の間にカウンタサンプリングノード175を有する。サンプリングキャパシタC12は、接地とカウンタサンプリングノード175との間に結合される。第1のパスゲートスイッチX12のソース側は、図示されていないVddより低い固定電圧V
SX12に結合され、第2のパスゲートスイッチX22のドレイン側は、出力ノードCountoutに結合されている。更なるキャパシタC22は、接地と第2のパスゲートスイッチX22のドレインとの間に結合されている。第1及び第2のパスゲートスイッチX12、X22は、スイッチドキャパシタ回路160内のパスゲートXN1、XN2も作動させる同じ信号によって作動させられ、例えば、これらの信号は、パスゲートスイッチX12、X22のゲートに供給される。
【0074】
トリガパルスが発生しない場合、パスゲートX12のゲートにおける信号はノードp2における信号であり、この信号は高である。このとき、パスゲートX12のドレイン側における電圧レベルVscは、VSX12に等しい。トリガパルスが発生すると、カウンタサンプリングノード175におけるこの電圧がサンプリングされる。
【0075】
ノードp7における信号は、ノードp2の信号と重複せず、ここでは高になり、第2のパスゲートスイッチX22を導通させる。キャパシタC12とC22とは互いに短絡し、電荷共有再分配が起こり、これにより、カウンタサンプリングノード175における信号と出力ノードCountoutにおける信号とが互いに向かってC22/C12の比率により決定される値へと変動する。
【0076】
このようにして、出力ノードCountoutにおける電圧は、かかるイベントが起こるたびにステップ状に上昇するが、飽和する態様であり、Countoutの各ステップが少しずつ小さくなり、最終的にはVSX12に近い飽和電圧となる。飽和時のこのカウンタ数は、選択されたキャパシタ比C22/C12に依存する。C12は、その寄生ノードから完全に作られることができ、回路を小さく保つことができる。大きすぎるキャパシタC22を必要とすることなく、10~数百のカウンタ値を実装することができる。
【0077】
リセットスイッチ700は、出力ノードCountoutをリセットするために、出力ノードCountoutと接地との間に結合される。リセットスイッチ700は、例えば、トランジスタであってもよく、そのゲートは、外部から印加される信号ResetCountに結合される。
【0078】
時々、例えば、起動の直後、又は異なる寿命が突然存在する場合に、EMA平均電圧がまだ収束していないこととなることが知られている。その場合には、スイッチドキャパシタ回路160のn数を一時的に小さくすることによって、収束プロセスを加速させることが可能である。実際、キャパシタC1の値を変更することによって、平均化長さnが便利な方法で変調され得る。このことは、サンプルノード173に外的にキャパシタを追加することによって行われ得る。しかしながら、平均化長さnは、光子カウンタ168を利用して、ウィンドウを通過した光子の数にリンクさせられてもよい。
図13においては、このことは、回路169が、入力ResetCount上のリセットパルスの後に所定の数の光子が計数されたか否かを監視するような方法で示されている。その前に、スイッチX9によって、スイッチドキャパシタ回路160の第1のキャパシタC1に、外的なキャパシタC3が追加される。平均化長nは短く、EMAは迅速に動き、質量中心の大まかで迅速な推定を与える。その後、スイッチX9のゲート(ノードp8)への作動信号が低となるため、外的なキャパシタC3が切り離され、平均化長nが増大させられて、大まかで近似的な最初の推定から開始して、より正確な測定に導く。このようにして、
図8の曲線140は、かなり急な傾きを有し、例えば、大まかな推定値に到達するために75個のサンプルを必要とする代わりに、10回のステップでそこに到達し得る。
図13における回路は、デジタル的に動作するが、もちろん、平均化長さnのより柔軟な増大に導く、より高度な解決策が、当業者によってなされてもよい。例えば、トランジスタのチャネルキャパシタンスのばらつきを利用してもよく、又は専用のバラクタを使用してもよい。
【0079】
時々、刺激の際に2つの寿命を出力する蛍光体の組み合わせを有することがある。
【数15】
【0080】
この場合には、3つの未知数、すなわち第1の寿命τ
1、第2の寿命τ
2、及び最初の瞬間t
0において放出される蛍光の強度の比
【数16】
が求められる必要がある。
【0081】
この場合には、3つの質量中心を求めることが必要とされる。これを解くために、3つの測定時間ウィンドウを戦略的に選択する必要がある。一例として、
図14は、これらの3つの測定時間ウィンドウ、すなわち第1の測定時間ウィンドウt
w1、時間的に遅い第2の測定時間ウィンドウt
w4、並びに第1及び第2の測定時間ウィンドウを合わせた長さの第3の測定時間ウィンドウt
w5についての選択肢を示す。
【0082】
短い寿命は、第1の測定時間ウィンドウtw1における質量中心に主に影響を及ぼす。長い寿命は、第2の測定時間ウィンドウtw4の質量中心に主に影響を及ぼし、tw5における質量中心は、3つの未知数の各々によって大きく影響を及ぼされることとなる。いずれにしても、当業者は、3つの測定された質量中心に基づいて3本の方程式を解き、最も好む方法で3つの未知数を求めることができる。(単一光子検出回路150の)無視できないバックグラウンド光又はDCRをも有する可能性を追加すると、このことは、追加的な質量中心測定時間ウィンドウ(図示されていない)及びその数学的方程式(4つの未知数及び4本の方程式を有する)によって取得され得る、更に別の未知変数を追加することとなる。
【0083】
ここに提示されたシステム、又はそれに基づくシステムのいずれも、画像センサの最新技術において知られている他の手段によって補完されてもよい。例えば、マイクロレンズ、カラーフィルタを適用して、単一光子検出回路への光の入力を質的に又は量的に改善することができる。内的/外的な量子効率、応答性、及び検出確率を改善するためのいずれの手段も、適用され得る。三次元積層が行われ、例えば、ここで、SPAD検出層がCMOS回路ウエハとは別のウエハ/材料に由来するものとされてもよい。背面照射(BSI)が適用され得るか、電流アシストが適用され得るか、又はシリコン・オン・インシュレータ(SOI)が好適となり得る。本発明の提案される実施形態は、センサアレイのための画素としてレイアウトされることができ、全体として蛍光寿命及び蛍光強度の取得のための画像センサを構成する。各読み出し電圧ノードについて、電圧フォロワトランジスタは、CMOS画像センサにおいてしばしば行われるように、行ベースの読み出しのために行選択トランジスタを備えていてもよい。いくつかの信号は、複数の画素毎にグループ化されてもよく、又は、ウィンドウ(Reject)、ランプ信号、リセット信号、及び平均化長nを決定する信号を定義するもののようなアレイ全体に対して同一である。これに加えて、標準的な画像感知を同時に実行するために、標準的な3T又は4T画像センサ画素が追加されてもよい。単一光子検出回路150は、通常のSPADを含んでもよいが、線形ゲイン手法を使用してダイオードを絶縁破壊よりも下で動作させ、更にはデジタル光子到着パルスを実現できるほど大きなゲインを有するアバランシェ光検出器(APD)を含む、単一光子検出を達成する他のいずれの手段を含んでもよい。
【0084】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示及び説明されたが、かかる図示及び説明は、例示するもの又は説明するものであって限定するものではないとみなされるべきである。前述の説明は、本発明の特定の実施形態を詳細に説明するものである。しかしながら、前述のものが本文においていかに詳細に現れていようとも、本発明は多くの方法で実施され得ることは、理解されよう。本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。
【国際調査報告】