(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】微生物感染を消毒、処置および予防するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 33/20 20060101AFI20230725BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20230725BHJP
A61P 31/02 20060101ALI20230725BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230725BHJP
A61K 47/10 20170101ALI20230725BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20230725BHJP
A61K 9/06 20060101ALI20230725BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20230725BHJP
A61K 9/72 20060101ALI20230725BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20230725BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61K33/20
A61K47/12
A61P31/02
A61K47/32
A61K47/10
A61K9/08
A61K9/06
A61K9/107
A61K9/72
A61P31/04
A61P31/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501076
(86)(22)【出願日】2021-07-07
(85)【翻訳文提出日】2023-03-01
(86)【国際出願番号】 IB2021000462
(87)【国際公開番号】W WO2022008972
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518421924
【氏名又は名称】ダブリューアイエービー ウォーター イノベーション エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】アルモス, ゲール ヘルモード
(72)【発明者】
【氏名】ロングヴェード, ポール
(72)【発明者】
【氏名】ビャルンスホルト, トマス
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076AA09
4C076AA12
4C076AA14
4C076AA17
4C076AA93
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4C076CC31
4C076DD23
4C076DD30Z
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4C076DD61U
4C076EE09P
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4C086AA01
4C086AA02
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4C086HA24
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA13
4C086MA17
4C086MA28
4C086MA56
4C086MA63
4C086NA14
4C086ZA89
4C086ZA90
4C086ZB33
4C086ZB35
(57)【要約】
本発明は、塩素の酸化された状態の固体前駆体の使用を含む安定な抗菌および消毒組成物を提供する。本発明はまた、オンデマンド貯蔵および混合容器ならびにオンデマンド製剤を調製および送達するための方法を提供する。さらに、本発明は、インビボでの、表面でのおよびスプレー適用を介した抗ウイルス、抗生物質および一般的な抗菌使用を提供する。上記組成物は、薬学的に許容され得る希釈剤、補助剤または担体中に溶解され、活性化剤と組み合わされた塩素の酸化された状態の前駆体を含む消毒組成物であり得、インビボでの使用および表面消毒のための改善された抗菌剤を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗菌製剤であって、
以下の式の固体の酸化塩素塩:
M
n+[Cl(O)
x]
n
n-
式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属および遷移金属イオンの1つであり、nは1または2であり、xは1、2、3または4である;
以下の式の活性化剤:
R
1XO
n(R
2,)
m
式中、R
1は、アミノ、アミド、カルボン酸、スルホン酸またはヒドロキシ基で必要に応じて置換された1~10個の水素化された炭素原子を含み、Xは、炭素、リンおよび硫黄の1つであり、nおよびmはそれぞれ2または3であり、R
2は、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属イオン塩またはアンモニウム塩の1つである;ならびに
薬学的に許容され得る希釈剤、補助剤または担体:
を含む、抗菌製剤。
【請求項2】
前記酸化塩素塩が次亜塩素酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記活性化剤が酢酸である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
前記酸化塩素塩が亜塩素酸のアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩である、請求項1に記載の製剤。
【請求項5】
前記活性化剤が酢酸である、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
前記活性化剤が酢酸である、請求項1に記載の製剤。
【請求項7】
約0.1mOsm~約500mOsmの範囲のオスモル濃度を有する、請求項1に記載の製剤。
【請求項8】
約4~約8のpHを有する、請求項6に記載の製剤。
【請求項9】
増粘剤をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項10】
前記増粘剤が前記酸化塩素塩による酸化に耐性である、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記増粘剤が水溶性ゲル化剤を含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項12】
前記水溶性ゲル化剤が、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリ(アクリル酸)-アクリルアミドアルキルプロパンスルホン酸共重合体、ホスフィノポリカルボン酸、アポリ(アクリル酸)-アクリルアミドアルキルプロパンおよびスルホン酸-スルホン化スチレン三元重合体からなる群から選択される、請求項11に記載の製剤。
【請求項13】
比色色素をさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項14】
前記色素が酸化還元色素である、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記色素の色および色の強度が、前記酸化塩素化合物の酸化状態に依存する、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
水溶液、ゲル、クリーム、軟膏または油中に製剤化された、請求項1に記載の製剤。
【請求項17】
多区画容器中に製造および保存された、請求項1に記載の製剤。
【請求項18】
流体および固体成分が、組成物を製造するために前記流体および固体成分を組み合わせるより前に、別々のそれぞれの区画内に収容される、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
約25ppm~約100ppmの次亜塩素酸および約5.5のpHの約0.25%の酢酸を含む吸入製剤。
【請求項20】
前記製剤が血液に対して等張である、請求19に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その内容の全体が参照により本明細書に組み入れられる、2020年7月7日に出願された米国仮出願第63/048,815号の優先権および恩典を主張する。
技術分野
【0002】
本発明は、一般的には、塩素の酸化された状態の固体または液体前駆体と酢酸またはその塩との組み合わせを含む新規な組成物に関し、このような組成物は、広範囲の細菌および/またはウイルス、真菌および寄生虫の病原体、ならびに本明細書で総称される微生物を処置するための有用な消毒剤である。
【背景技術】
【0003】
背景
感染性疾患は、世界中で主要な死因であり、全小児死亡率のほぼ2/3を含む、毎年1300万人を超える死亡の原因である。さらに、抗生物質耐性が増加しており、肺炎、結核およびコレラを含む広範囲のヒト疾患の罹患率に寄与している。特に懸念されるのは、多くのヒト病原体が従来の抗生物質に対する耐性を生じていることである。既存の耐性機構が新しい誘導体に対応するように素早く適応するので、既存の抗生物質の新しいより強力な誘導体を導入することは、一時的な解決策を提供するにすぎない。耐性グラム陽性菌は重大な脅威をもたらすが、大腸菌などの一般的なグラム陰性病原体の多剤耐性(MDR)株の出現が特に懸念される。さらに、緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)、Acinetobacter baumanniiおよび腸内細菌科(Enterobacteriaceae)の分離株は、実質的にすべての抗生物質に耐性であることが示されている。
【0004】
ウイルスも、感染症疫学において重要な懸念事項である。多くが人畜共通感染症起源である深刻なウイルスの大流行がますます一般的になってきている。例えば、2000年初頭から中頃にかけてのSARS(重症急性呼吸器症候群)およびMERS(中東呼吸器症候群)の大流行、2009年のH1N1パンデミック、およびその後の2020年のSARS CoV-2パンデミックは、これらのウイルス病原体の処置および拡散の予防の両方に関して注目を集めた。
【0005】
気道に感染する多くのウイルスは、飛沫感染を介して伝達される。その場合、ウイルスを含有する呼吸器飛沫が感染者によって排出され、直接接触または飛沫が付着した表面との接触によって、他者によって捕捉される。典型的には、感染は、鼻、目、耳または口への侵入の結果として、粘膜または上皮細胞上の受容体へのウイルスの結合を介して進行する。さらに、いくつかのウイルスは、ウイルスを含有するエアロゾル粒子を介して伝達されるか、または空気感染する。いずれの場合も、ウイルスは、感染個体からの発現後、数時間から数日間生存し得る。
【0006】
表面または汚染された上皮の消毒のための従来の組成物および方法は、すべての感染因子の不活化には十分ではない。伝統的な消毒組成物の現在の形態は、長い非実用的な曝露時間を必要とする場合があり、または敏感な器具もしくは生体組織に対して使用することができない有害なもしくは腐食性の溶液もしくは蒸気を使用する場合があり、したがって、耐性病原体からの増大する健康リスクに対する実用的な解決策を提供することができない。
【0007】
塩素酸化物または酸化塩素(本明細書では、「OC]とも称される)は、化学種の大きなクラスを構成し、自然界のみならず、哺乳動物中の生物系においてもよく見られる。塩素酸化物はまた、中性化合物またはイオン、いわゆるオキシアニオンとして存在し得る。塩素にはいくつかのオキシアニオンが存在し、オキシアニオンは、対応する次亜塩素酸アニオン(ClO-)、亜塩素酸アニオン(ClO2
-)、塩素酸アニオン(ClO3
-)または過塩素酸アニオン(ClO4
-)によって+1、+3、+5または+7の酸化状態をとることができる。次亜塩素酸(HOCl)の低pHでの標準還元電位は+1.63であり、亜塩素酸(HClO2)については標準還元電位は1.64であるが、塩基性pHではそれぞれ+0.89および+0.78である。5~7のpHでは、還元電位は+1より高い。
【0008】
その結果、次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩は、一般に、微生物および寄生生物を死滅させる可能性を有する最も有用な酸化状態である。特に、塩化物イオンCl-は、最も安定した酸化状態にあり、反応性ではなく、消毒剤としても有効ではない。酸化状態+5および+7の塩素酸塩および過塩素酸塩は、より低い酸化状態よりも反応性が高く、取り扱いがより困難な場合がある。
【0009】
次亜塩素酸イオンは化学式ClO-を有し、塩素(Cl)は酸化状態+1にあり、Clの低エネルギー酸化状態は-1であるため、これは潜在的に不安定な酸化状態である。次亜塩素酸イオンと亜塩素酸イオンはいずれもいくつかのカチオンと結合して、これらの酸化塩素の塩として次亜塩素酸塩および亜塩素酸塩を形成する。一般的な例には、一般に水処理(例えば、水泳用プールなど)のために使用される、漂白粉、塩素粉末または塩素化石灰を含む市販製品の主要活性成分である、次亜塩素酸ナトリウム(家庭用漂白剤)および次亜塩素酸カルシウムが含まれる。本明細書で「主要塩素酸化物」とも呼ばれる亜塩素酸イオンおよび次亜塩素酸イオンは、様々な状況において有用である。亜塩素酸ナトリウムおよび次亜塩素酸ナトリウムは強力な酸化剤であり、浄水、消毒、ならびに動物性製品の漂白および消臭に使用されている。
【0010】
次亜塩素酸ナトリウムは酸性条件下で非常に毒性の高い塩素ガスを生成するので、家庭用に市販されている水溶液は強塩基性溶液であり、水酸化ナトリウムを使用してpHが調整されている。
【0011】
次亜塩素酸は、細菌、藻類、真菌および他の有機物を急速に不活性化することが知られている弱酸であり、広範囲の微生物にわたって有効な作用物質となっている。さらに、次亜塩素酸は、弱酸であり、人々は次亜塩素酸に耐えることを可能にするある種の化合物を天然に産生するので、一般にヒトに対して非毒性である。その殺生物特性とその安全性プロファイルの組み合わせのため、次亜塩素酸は、医療、食品サービス、食品小売、農業、創傷ケア、実験室、ホスピタリティ、歯科、または花卉産業などの多くの異なる産業にわたって多くの有益な用途を有することが明らかとなっている。
【0012】
塩素が水に溶解すると次亜塩素酸が形成される。特に、次亜塩素酸塩の酸性化は、塩素原子が酸化状態+1にある次亜塩素酸を生成する。次亜塩素酸は、溶液から漏出することができる塩素ガスと平衡状態で存在する。平衡は、以下の式(式1)に示すように、pH依存性である。
Cl2+H2O ⇔ HOCl+Cl-+H+⇔ ClO-+Cl-+2 H+(1)
pH上昇→
【0013】
上記の式(式1)を参照すると、高いpHは反応を右に動かし、塩素の塩化物および次亜塩素酸塩への不均化を促進するのに対して、低いpHは反応を左に動かし、有毒であり得る塩素ガス(Cl2)の放出を促進する。
【0014】
塩素、特に-1よりも高い酸化状態の塩素の溶液の従来の医学的使用における重要な課題は、これらの化学種がより高いエネルギー状態にあり、塩化物イオンCl-に戻る傾向があり、周囲温度で溶液中で分解するため、その安定性である。これは、塩素酸化物の薬学的製剤および医療機器の周囲条件で必要とされる貯蔵寿命安定性の妨げとなる。したがって、医療機器および薬物に要求されるような適切な貯蔵寿命を、塩素酸化物の溶液に対して達成することは困難である。塩素のすべての酸化物に内在するこの制限は、特に温度、光湿度および大気気体が変化する領域におけるより高温での輸送および貯蔵の妨げとなる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、塩素酸化物を含有する製剤は有効な抗菌剤であり得るが、従来の製剤は重大な欠点を有する。例えば、弱酸であるHOClは、従来の条件下で製造された場合に不安定であり、純粋でない。その結果、意図される短期間の使用を可能にする安定性を有する塩素酸化物を現場で供給することができる、より制御された即時の調製方法が必要とされている。一般に、耐性微生物およびウイルスを処置するための新規治療薬に対する多大な満たされていない医学的要求が存在する。
要旨
【0016】
本発明は、薬学的に許容され得る希釈剤、補助剤または担体中に溶解され、活性化剤と組み合わされた塩素の酸化された状態の前駆体を含む消毒組成物を提供する。得られた組成物は、インビボでの使用および表面消毒のための改善された抗菌剤を提供する。好ましい製剤において、本発明の組成物は、次亜塩素酸塩の形態と組み合わせて酢酸活性化剤を含む。必要に応じて、本発明の製剤は、増粘剤および/または色素と組み合わされ得る。例えば、本発明の製剤の粘度は、増粘剤を使用してゲルを形成するように調整することができる。本発明の製剤は、好ましくは、使用前に多区画装置の一部として分離したチャンバーを備える容器内で混合される。本発明の組成物は、経口、静脈内、皮膚または吸入に基づく投与のために製剤化され得る。さらに、本発明の製剤は、患者の呼吸器系への迅速な導入のためにネブライザーまたは同様の装置を介した吸入のために調製することができる。したがって、本発明の組成物は、インビボおよび表面上の両方で、広範囲の細菌および/またはウイルス性病原体を処置するための有用な消毒剤である。
【0017】
特定の局面において、本発明は、ウイルス感染症および細菌感染症の両方を含む呼吸器感染症を処置および予防する安全かつ有効な手段を提供する抗菌製剤に関する。好ましい組成物は、次亜塩素酸ベースの広域スペクトル抗ウイルス性および/または抗菌性吸入溶液を含む。本発明の溶液は、好ましくは、吸入送達のために噴霧される。より具体的には、好ましい製剤は、酢酸(約0.25%)で安定化され、顕著な抗菌効果を有するHOClの持続可能な濃度をもたらす次亜塩素酸(HOCl)(約25ppm~約200ppm)を含む。酢酸の添加はHOCl安定性を増加させ、したがって延長した貯蔵寿命を有する処置を開発することを可能にする。さらに、組成物は、好ましくはpH5.5で製剤化され、生理学的に等張であり、それによって気道内での忍容性を増大させる。
【0018】
本発明の組成物は、特有の抗病原性特性を有する。一局面において、本発明の組成物は、エンベロープを有するウイルスに対して作用し、コロナ型ウイルスに対して優れた抗ウイルス効果を提供する。したがって、このような組成物は、SARS感染症(例えば、COVID-19)の処置および拡大の防止に特に有用である。より具体的には、SARS-CoV-2および多くの他のウイルスは、呼吸器系の細胞内への侵入点である表面タンパク質(すなわち、スパイクタンパク質)を有する。これらのスパイクタンパク質は、HOClによる酸化に対して脆弱な-SH基を含む。比較的低濃度のHOClでさえ、正常な組織および細胞内酵素に対して無害でありながら、細胞外-SH基(例えば、ウイルスのスパイクタンパク質上)を酸化する。したがって、本発明の組成物の抗ウイルス効果は、最初の曝露時、感染中、およびビリオンが細胞内にあり、その後気道内の細胞によって放出されるときに、気道内のウイルス粒子を破壊する。
【0019】
したがって、特にエンベロープを有するウイルスに対する、本発明の組成物の特有の殺ウイルス特性によって、このような組成物は、コロナウイルスの拡散を防止するための継続的な努力において強力なツールとなる。このような組成物は、広範な患者集団で疾患の持続時間および症候の重症度を低下させる。
【0020】
別の局面において、本発明は、固体の酸化塩素種塩、酢酸などの活性化剤、および薬学的に許容され得る希釈剤、補助剤または担体を含む消毒組成物を提供する。固体の酸化塩素種塩は、式Mn+[Cl(O)x]n
n-に基づき、式中、Mはアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属イオンであり、nは1または2であり、xは1~4の整数であり、両端を含む。活性化剤は、式R1XOn(R2,)mに基づき、式中、R1基は、アミノ、アミド、カルボン酸、スルホン酸またはヒドロキシ基で必要に応じて置換された1~10個の水素化された炭素原子を含み、基Xは、炭素、リンおよび硫黄から選択され;nおよびmは、それぞれ独立して、2または3であり、R2は、H、アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属イオン塩およびアンモニウム塩から選択される。
【0021】
好ましい態様において、酸化塩素塩は、次亜塩素酸HOClのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む。このような態様において、活性化剤は酢酸である。他の態様において、酸化塩素塩は、亜塩素酸HOClOのアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を含む。同じく、このような態様において、活性化剤は酢酸である。
【0022】
いくつかの態様において、組成物は、約0.1mOsm~約500mOsmの範囲のオスモル濃度を有する。
【0023】
いくつかの態様において、ある量の酸化塩素種塩、酢酸またはその金属もしくはアンモニウム塩は、4~8のpHを生じる。
【0024】
いくつかの態様において、組成物は、増粘剤をさらに含む。いくつかの局面において、増粘剤は、酸化塩素種によって酸化され得ない。
【0025】
いくつかの態様において、増粘剤は水溶性ゲル化剤を含む。水溶性ゲル化剤としては、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリ(アクリル酸)-アクリルアミドアルキルプロパンスルホン酸共重合体、ホスフィノポリカルボン酸、ならびにポリ(アクリル酸)-アクリルアミドアルキルプロパン、およびスルホン酸-スルホン化スチレン三元重合体が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0026】
いくつかの態様において、組成物は色素を含む。色素は、好ましくは、製剤中の酸化塩素化合物の存在の比色指示薬を生成する。色素は、酸化還元色素であり得る。好ましい態様において、色素の色および強度は、酸化塩素化合物の酸化状態に依存する。
【0027】
本発明の製剤は、水溶液、ゲル、クリーム、軟膏または油として構成され得る。本発明の製剤は製造され、多区画容器中に保存され得る。いくつかの局面において、水性および固体成分は、組み合わせの前に別々のそれぞれの区画内に収容される。
【0028】
本発明の製剤は、表面上の抗菌剤として、および疾患処置への適用に有用である。したがって、本発明の製剤は、例えば、ネブライザー、吸入器、噴霧器または他の適切な送達手段と共に使用するための吸入製品として有用である。さらに、本発明の組成物は、動物または農業育種における皮膚、創傷乳腺炎または任意の他の感染性疾患への適用ならびに抗ウイルス用途のために製剤化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図面の簡単な説明
【
図1】
図1は、本発明の態様による消毒組成物を製造し、貯蔵し、分配するための例示的な多区画または多チャンバー容器を示す概略図である。
【0030】
【
図2】
図2は、本発明に従って試料溶液を用いて得られた結果を示す。
【0031】
【
図3】
図3は、本発明に従って試料溶液を用いて得られた結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
詳細な説明
本発明は、一般に、塩素の酸化された状態の固体および液体前駆体と活性化剤、例えば酢酸またはその塩との組み合わせ、ならびに1またはそれを超える追加の成分を含む組成物に関する。このような組成物の使用は、様々な生物学的および非生物学的表面および環境上の広範囲の細菌性および/またはウイルス性病原体の処置のための消毒剤として作用する。
【0033】
本発明のいくつかの好ましい製剤は、長期安定性を有する組成物を即座に生成する固体形態の多成分(すなわち、2成分、3成分、4成分など)製剤である。これは、先行技術に記載されている次亜塩素酸または二酸化塩素の従来の溶液で通例観察される貯蔵寿命に関連する制限を低減する。より具体的には、固体前駆体(API-P)からの酸化塩素種の直ちに使用可能な製剤の即時生成は、使用場所において多区画装置または容器内で実行され得る。多区画装置または容器は、本発明と一致する調製された組成物の調製、分配および長期安定貯蔵のために使用される。特に、本明細書に記載されるこのような多区画容器は、本発明の組成物を製造するために必要とされる成分を別々に含有するいくつかの区画またはチャンバーを有し得る。一例では、製剤は、塩素の酸化された状態の固体前駆体および酢酸またはその塩、増粘剤、および色素を含み、その後、所望の使用時および現場で抗菌組成物を調製するために組み合わされる。
【0034】
抗菌製剤中のAPIとして有用な別の塩素酸化物は二酸化塩素であり、塩素原子は酸化状態+3である。亜塩素酸ナトリウムの主な反応は、以下の式(式2)に示されるように、二酸化塩素の生成である。
5 NaClO2+4 HOR ⇔ 5 NaOR+4 ClO2+2H2O(2)
【0035】
上記の式(式2)を参照すると、まず亜塩素酸ナトリウムを亜塩素酸に変換し、次いで室温で高度に水溶性の気体である二酸化塩素に変換するためにプロトン源が必要とされるので、HORは通常、HClまたはクエン酸などの鉱酸である。
【0036】
二酸化塩素の利点は、有毒な環境汚染物質である塩素化炭化水素、例えばトリハロメタンと反応することが知られている塩素ガスCl2を発生させることができないことである。二酸化塩素の別の利点は、消毒剤としての活性またはその水溶液の安定性がpH依存性ではないことである。
【0037】
本発明は、塩素酸化物を使用する従来技術の組成物に伴う課題に対処する。特に、本発明は、塩素の酸化された状態(OC)の固体前駆体とプロトン源を提供する活性化剤との組み合わせを含む組成物を提供する。活性化剤の好ましい例は、酢酸またはその塩であり、本発明の消毒組成物は、意図される短期間の使用を可能にする安定性を有して、使用部位で、制御された即時の過程において即座に形成される。このような組成物は、広範囲の微生物の処理に有用な消毒剤である。特に、活性医薬成分が、以下で「API-P」と称される、塩素酸化物の安定な固体前駆体から使用部位で生成される場合、溶液またはゲルを生体適合性のpH値に同時に緩衝する活性化剤として例えば酢酸を含めると、従来技術における安定性の問題はもはや存在しない。
【0038】
前述のように、先行技術における技術的解決策は、生物学的流体と生体適合性を有する最終的な抗菌溶液のイオン強度またはオスモル濃度をどのように確保するかに対処していない。さらに、先行技術は、例えばレオロジーおよび流動性を調節することによって、治療的に関心のある領域におけるAPIの接触時間および持続性をどのように調節および増加させるかを示していない。さらに、従来技術は、APIの酸化状態を監視する比較的単純であるが効果的な手段、および消毒組成物の混合中にAPIが適用された場所の視覚的表示を提供していない。
【0039】
さらに、いくつかの態様において、本発明の組成物は、増粘剤(本明細書では、「VE」とも称される。)の使用をさらに含み得る、および/または塩素の酸化された状態の固体前駆体と活性化剤、例えば酢酸またはその塩との組み合わせを含み得る。
【0040】
本発明の別の態様は、塩素原子の酸化状態とともに変化する色を有する色素、好ましくは例えば酸化還元感受性色素を製剤に含めることである。
【0041】
特に、本発明のいくつかの好ましい組成物は、長期安定性を有する組成物を即座に生成する、破壊可能な壁または障壁によって隔てられた固体形態の多成分(すなわち、2成分、3成分、4成分など)製剤である。これにより、先行技術に記載されている次亜塩素酸または二酸化塩素の溶液で見られる貯蔵寿命に関連する一切の問題が取り除かれる。
【0042】
より具体的には、固体前駆体API-Pからの酸化塩素種の直ちに使用可能な製剤の即時生成は、使用場所において多区画装置または容器内で実行され得る。多区画装置または容器は、本発明と一致する調製された組成物の調製、分配および長期安定貯蔵のために使用され得る。特に、本明細書に記載されるこのような多区画容器は、本発明の組成物を製造するために必要とされる成分を別々に含有するいくつかの区画またはチャンバーを有し得る。例では、塩素の酸化された状態の固体前駆体および活性化剤、例えば酢酸またはその塩、増粘剤、および色素が混合され、その後、組成物は、所望の時間および使用の場所で、消毒剤の所望される製剤で生成する。
【0043】
酢酸は、様々な哺乳動物組織に見られる豊富な天然化合物である。酢酸は、炭水化物の細菌発酵の副生成物でもある。
【0044】
酢酸ナトリウムは非毒性であり、経口および非経口(parental)使用のための薬物製剤において許容される。酢酸の殺菌効果は周知である。酢酸は、P.vulgaris、P.aeruginosaおよびA.Baumanniiなどの問題のあるグラム陰性菌に対して確認された効果を有する。酢酸の微生物学的スペクトルは、0.5~3%の低濃度で試験した場合でも広い。予め形成されたバイオフィルムを根絶した酢酸の濃度は、0.10%~2.5の範囲であった。したがって、酢酸およびその金属塩は、pHの安定化のためにその金属塩と共に緩衝剤として作用する能力の故に、抗菌製剤において使用するのに極めて魅力的な化合物である。
【0045】
さらに、その抗菌特性に加えて、酢酸はOCなどの酸化剤によってさらに酸化することができないので、および生体組織中において濃度が高いその内因性の性質が故に、酢酸は魅力的である。
【0046】
したがって、多区画容器は、即座に、使用の場所でAPIの活性溶液を生成するために必要な成分を混合する上で実用的な使用を可能にする。医療用途の場合には、使用領域でのオスモル濃度に適合するように最終抗菌溶液のイオン強度またはオスモル濃度を確保するために、計画された使用に応じて、予め計算された量のNaClを多区画装置中に含めることができることに留意されたい。
【0047】
本発明の好ましい態様は、呼吸器投与のための吸入製剤である。したがって、液体をエアロゾルに変換する、嚢胞性線維症、喘息、COPDおよび他の呼吸器疾患または障害の処置のために一般的に使用されるネブライザーまたは吸入器は、本発明において有用である。吸入投与のための装置は、本発明の製剤の微粒化を生成するために、圧縮空気または超音波エネルギーを使用し得る。任意の種類の加圧定量吸入器(pMDI)、乾燥粉末吸入器(DPI)、低速ミスト吸入器(SMI)も有用である。任意の静電または非静電吸入器、例えば、VORTEXまたはPariまたはSympotecもまた、本発明を実施するのに有用である。
【0048】
本明細書に記載される予め装填された多区画容器は、成分の混合時に安定な広域抗菌溶液を生成し、生体適合性の不活性化学種のみを自然に残す。
【0049】
上記のように、本発明のAPIの活性化は、微生物に対して酸化塩素と相乗的に作用し、4~8のpH範囲に酸性度をさらに維持する活性化剤、例えば酢酸を使用して生成される。消毒組成物を水溶液として保存する必要がないので、本発明の方法およびその製剤は、溶液中での酸化塩素OCの長期安定性の本質的欠如を回避する。
【0050】
本発明の別の利点は、適用を補助する他の化合物を添加する選択肢である。例えば、創傷治癒用途では、接触時間を延長するために皮膚上での製品の粘度(μ)を増加させる必要がある。本発明は、APIによって化学的に酸化され得ない水溶性または溶解性増粘剤(VE)の使用によってこの問題を解決し、それによって治療関心領域におけるAPIの接触時間および持続性の改善された制御を提供する。VEは、完全な流動性を有する溶液またはゲルを生成するために、レオロジーおよび流動性がそれぞれの方法および消毒領域に適合されることを確実にする。VEは、例えば、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、またはAPIによって酸化され得ない任意の他のオリゴマーもしくはポリマーなどの水溶性ゲル化剤を含み得る。
【0051】
さらに、本発明の組成物は、色および強度が酸化塩素の酸化状態に依存する酸化還元色素(本明細書において、「ROD」または「RODs」とも称される。)の群から好ましくは選択される1またはそれを超える色素を含み得る。塩素原子の酸化状態の視覚的表示(すなわち、色によって)を提供することに加えて、RODsはそれ自体の抗菌効果をさらに提供することに留意されたい。これは、製剤中の成分間の相乗作用を新規な様式で増強する。RODは、APIである酸化塩素の酸化活性を監視し、さらに製剤が適用された領域の視覚的表示を提供するのに十分な期間、その色を維持することができる。
【0052】
本発明のさらなる利点およびさらなる発明的特徴は、以下に提供される本発明の説明から明らかになるであろう。
【0053】
好ましい態様において、酸化塩素種(OC)は、以下に示される一般式を有する。
Mn+[Cl(O)x]n
n-
式中、Mは任意のアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属イオンであり、nは整数1~5であり、xは整数1~4である
【0054】
M=Na、n=1、x=1の場合、API-Pは固体NaOClである。M=Ca、n=2、x=1の場合、API-Pは固体Ca(OCl)2である。M=Na、n=1、x=2の場合、API-Pは固体NaClO2である。M=Ca、n=2、x=2の場合、API-Pは固体Ca(ClO2)2である。x=3または4の場合、API-Pは、より反応性の高い塩素酸塩および過塩素酸塩種を生成する。
【0055】
1つの非限定的な例は、
図1によるキャップ2内での次亜塩素酸ナトリウムまたは次亜塩素酸カルシウムからの次亜塩素酸の即時の生成であり、区画4内の酢酸ナトリウム緩衝液の溶液は、必要に応じて着色剤および増粘剤を含むpH5~6のAPI次亜塩素酸の即時使用可能な溶液を区画9内に提供する。
【0056】
別の非限定的な例は、HOClのための安定で水溶性のAPI-Pである二次亜塩素酸カルシウムCa(OCl)2である。次亜塩素酸カルシウムは直ちに水に可溶であり、水酸化カルシウムのみを残し、水酸化カルシウムは自然界に存在し、本発明における2つの活性成分のうちの1つであるHOClを生成し、HOClはCl-ならびに水素および酸素を含有する生体適合性種に分解する。
【0057】
本発明の別の好ましい態様は、参照により本明細書に組み入れられるMeuerらのカナダ特許第2616008号によって記載されているように調製された、WF10またはOXO-K993の安定化された溶液として知られている、酸化塩素の固体前駆体テトラクロロ-デカオキシド(TCDO)、CAS番号92047-76-2である。テトラクロロ-デカオキシド(TCDO)は、亜塩素酸イオンClO2
-のアルカリ塩またはアルカリ土類塩を水中で過剰な酸素と組み合わせることによって調製することができる。
【0058】
したがって、本発明の1つの利点は、乾燥した、水を含まない品質での固体形態の前駆体API-Pには薬学的安定性の問題が存在しないことであり、したがって、本発明は、先行技術における主要な技術的問題の1つを解決する。
【0059】
本発明の一局面は、それぞれが製剤中でAPI-Pの活性化剤として機能するカルボン酸官能性-COOH、スルホン酸官能性-SO3H、リン酸官能性-PO3Hまたはホウ酸官能性-B(OH)2を含む分子とのAPI-Pの組み合わせである。一般に、活性化剤は、一般式R1XOn(R2,)mを有し、式中、基R1は、アミノ、アミド、カルボン酸またはヒドロキシ基で必要に応じて置換された、約1~約10個の水素化された炭素原子を含む基であり得る。基Xは、炭素、リンまたは硫黄原子であり得、nおよびmは2または3であり、R2はプロトン(H)、または任意のアルカリ金属、アルカリ土類金属もしくは遷移金属イオンである。式中の置換基の性質は、用途および塩素種によって異なり、アミノ基を含む任意の化合物、例えばアンモニア、アミノ酸、例えばタウリンまたは製剤の相乗的潜在能力を増大させる治療薬であり得る。活性化剤は、一般式R1XOnR2によって定義される2またはそれを超える化合物の任意の組み合わせまたは混合物であり得る。
【0060】
好ましい非限定的な例は、R3がHであるか、またはヒドロキシル基で必要に応じて置換された約1~約24個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐飽和もしくは不飽和炭化水素鎖であるカルボン酸R3COOHである。活性化剤の非限定的な例は、酢酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、馬尿酸、マレイン酸、ホウ酸、硫酸、リン酸、ホウ酸、3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸(MOPS)、2-(カルバモイルメチルアミノ)エタンスルホン酸(ACES)、2-(カルバモイルメチルアミノ)エタンスルホン酸(ADA)、2-(カルバモイルメチルアミノ)エタンスルホン酸(ビシン)、ピペラジン-N,N’-ビス(2-エタンスルホン酸、PIPES)、または任意のアミノ酸であり得る。
【0061】
タウリンは、通常、体内でOCの効果を加減する内因性アミノ酸であり、それ自体が抗菌特性を有するClNH-CH2CH2-SO3Hのような内因性N-クロロ-アミノ酸を形成するためにOCと組み合わされ得るので、特に好ましい。
【0062】
酢酸は、ヒトにおいて内因性であり、抗菌特性を有し、非常に低い毒性を有し、その金属塩と混合して緩衝液を形成するので好ましく、本発明のさらなる説明において非限定的な例として使用される。
【0063】
本発明の利点は、API-Pが固体であり、大規模に市販されているので、温度、空気、湿度、光、酸素またはその他の周囲条件にかかわらず、本発明による固体多成分製品は、医薬品または医療機器の環境における安定性の問題によって妨げられないことである。
【0064】
本明細書に開示されるAPI-Pは、水に可溶性であり得、酢酸および/またはその塩と組み合わされた最終溶液中でほぼ即座に生理学的pHおよびイオン強度に達することができる。
【0065】
インサイチュで即座に抗菌APIを生成する能力は、製品の使いやすさおよび汎用性を増大させる。さらに、成分の包装は、個別であり得、要求に応じて合わせることができ、貯蔵安定性および現場での使用にさらに大きな影響を与える。
【0066】
小型で安定した使い捨ての2または3構成要素の装置が本発明によって想定され、旅行、惨事対応、軍関係者または微生物のパンデミックに理想的に適している。さらに、活性抗菌剤の前駆体(本明細書ではAPI-Pと称されることがある)を含有する大型フォーマット(例えば、タンク)のデザインは、農業環境、水産養殖産業または軍事活動において有用であり、より大きな領域を消毒するのに適している。
粘性溶液およびゲルの調製物のための増粘剤
【0067】
本発明のいくつかの態様において、API以外の成分を含めることができる。例えば、増粘剤は、創傷治癒または皮膚消毒にとって好ましい。好ましい増粘剤は、APIを酸化しない水溶性ゲル化剤である。ゲル化剤は、関心対象の領域、例えば皮膚においてAPIの長期持続性を提供する。
【0068】
本発明によるゲル化剤の例としては、ポリアクリル酸(CARBOMER)、ポリエチレングリコールまたは任意の他のオリゴマー、ポリマーもしくはそれらのブロックコポリマーが挙げられるが、これらに限定されない。さらに、増粘剤は、ポリ(アクリル酸)-アクリルアミドアルキルプロパンスルホン酸コポリマー、ホスフィノポリカルボン酸ならびにポリ(アクリル酸)-アクリルアミドアルキルプロパンおよびスルホン酸スルホン化スチレン三元重合体から選択され得る。
【0069】
アクリラートコポリマーなどのポリマーは、本発明の製剤中で、約0.01~約5%の濃度範囲で良好に機能する。アクリラートコポリマーは、ポリアルケニルポリエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーである。アクリラートコポリマーは、様々なグラフト密度で存在する。1つの例示的な架橋剤は、非常に安定であるペンタエリトリトールである。H2O2の製剤を安定化することが知られているポリアクリル酸(PAA)ポリマーを本発明と共に使用することができる。
【0070】
本発明によるOCのポリマー安定化された溶液は、多くの状況において、例えば創傷処置、無菌包装、エレクトロニクス製造、ならびにパルプおよび紙の漂白において用途を有する。APIは、ゲルまたは粘性流体として製剤化することができ、必要なレベルのAPIとの長期間の密接な接触を確実にするために、無生物の表面または感染した上皮粘膜もしくは皮膚表面の代表のいずれかである標的表面に適用され得る。APIの非粘性製剤も、環境の消毒を達成するために、または呼吸器疾患の処置のための吸入目的のために、ミストとして、限定された空間内の空気中に分散され得る。例えば、ポリアクリル酸CARBOMERの濃度は、0.01~0.1%の濃度において増加した粘度を有する。所望であれば、ポリアクリル酸CARBOMERの濃度は、0.1~1%の濃度範囲で規則的なゲルを形成する。
指示薬としての抗菌酸化還元感受性抗菌色素
【0071】
本発明の製剤へのさらなる添加剤は、酸化還元色素(以下、ROD)であり、色素の色および強度はOCの酸化状態に依存する。さらにより有利には、ROD自体が抗菌効果を有し、本明細書に提示される製剤の構成成分間の抗菌相乗効果を増加させる。RODの標準的な半電池電位がOCよりも低い正の値を有する場合、OCが活性である限り、製剤の色は維持される。それにより、色は、製剤が適用された領域および活性なOCが存在する領域において視覚的な手がかりを提供する。これは、例えば、ウシの大きな集団を乳腺炎のために処置する必要がある乳腺炎の処置において本発明による製剤が使用される場合に特に有利であり、着色された本発明による製剤は、どの動物が処置されたかを視覚化した。さらに、OCの酸化力が消失しているときに色が現れる反対のタイプの指示薬の使用も有用である。
【0072】
本発明において有用な適切な色素の非限定的な例は、OCの存在下で可視的なpH非依存性色素である。好ましい例は、N-フェニルアントラニル酸(紫-赤)、N-エトキシクリソイジン(シアン)、o-ジアニシジン(赤)、ジフェニルアミンスルホン酸ナトリウム(赤-紫)、ジフェニルベンジジン(紫)、ジフェニルアミン(紫)およびOCの存在下では無色であるが、OCの非存在下では濃い青色であるビオロゲンである。
【0073】
活性なOCの存在下では濃い青色であるが、ODの非存在下では無色であるpH依存性色素の例は、ナトリウム2,6-ジブロモフェノール-インドフェノールまたはナトリウム2,6-ジクロロフェノール-インドフェノール、ナトリウムo-クレゾールインドフェノール、チオニン(同義語ラウスバイオレット)、メチレンブルー、Gentian Violet、インジゴテトラスルホン酸、インジゴカルミン(同義語インジゴジスルホン酸)、インジゴモノスルホン酸である。OCの存在下で赤色または赤紫色である色素の例は、フェノサフラニン、サフラニンT、ニュートラルレッドおよびジアルキル-p-フェニレンジアミン(SPD、赤紫色)である。
【0074】
これらの色素の多くは、それら自体に抗菌効果を有している、すなわちメチレンブルー(MB)およびGentian Violet(GV)およびそれらの組み合わせは、例えば、EdwardsによってAdvances in Wound Care(2016),5,pp11-19に記載されているように、ポリビニルアルコールまたはポリウレタンのようなポリマーと組み合わせて創傷被覆材中の発泡体中で抗菌色素として使用されている。
【0075】
本発明において有用な色素の特に有用なクラスは、代謝的、生態学的および進化的な重要性を有する着色された、酸化還元活性な窒素含有芳香族化合物である微生物のフェナジンである。
【0076】
さらなるクラスのフェナジンとしては、親フェナジンよりもさらに強い抗菌特性を有するビス-N-オキシドフェナジンが挙げられる。これらの化合物の大部分は、細菌によって産生される天然化合物であり、ヘテロ芳香族N酸化化合物であり、以下、HANOXと表記される。酸化還元色素、RODSであることに加えて、それらの色がOCの酸化状態に依存するので、HANOX化合物は本発明において有用である。
【0077】
さらに、ある種のフェナジン誘導体。特に、ある種のフェナジン誘導体は、Streptococcus agalactiae、黄色ブドウ球菌(Streptococcus aureus)、大腸菌、Corynebacterium pyogenes、Moraxella bovis、Pseudomonas aeruginosa、Candida albicansおよびMicrosporum canisなどの多種多様な細菌、酵母および真菌に対して高い活性を示した。したがって、フェナジン誘導体は、農業における微生物起源の動物性疾患の処置において特に有用である。
【0078】
これらの誘導体に関する驚くべき知見は、使用条件下で組織に対する有害作用がないことであり、これらの誘導体を局所適用に特に適するものとしており、好ましくは組成物の0.05重量%~1.0重量%の範囲の量で使用される。
【0079】
これらの誘導体は、局所適用において、例えば微粉化された粉末および粒状材料を含む固体またはゲル製剤において、ならびに溶液、懸濁液、濃縮物、チンキ剤、スラリーおよびエアロゾル、クリーム、ゲル、ゼリー、軟膏およびペーストを含む液体製剤において特に価値がある。
【0080】
FDAがメチレンブルーを薬物製剤中の賦形剤として承認しており、メチレンブルーは抗菌特性を有し、治療剤としてのその効果が光線力学的療法を使用して増強され得るので、メチレンブルーは、本発明において有用な別の特に好ましい色素である。
本発明において有用な多区画装置
【0081】
図1は、本発明による製剤の即時生成のための例示的な多区画装置を示す概略図である。
【0082】
区画の数を含む装置の設計は、使用の仕様に適合させることができる。装置8は、APIの固体前駆体を含有する第1の区画を伴うスクリューキャップ1からなり、API-Pは乾燥形態(2)で表されている。スクリューキャップ1は、シールまたはポート3を一方向に回転させることによって、シールまたはポート3を開く能力を有し、活性化剤の水溶液を含み、溶液の最終オスモル濃度を体液と等オスモル濃度にするための予め計算された量の塩化ナトリウムも含む第2の区画4にAPI-Pを入れる。
所望の最終pHを得るために、水中の活性化剤および必要に応じて、予め計算された量のその金属塩またはアミノ酸塩が、必要に応じて区画4、5または10に予め充填され得る。4中のより小さな粒子は、API-Pが活性化剤溶液中に急速に溶解してAPIを生成していることを示している。第3の区画5は、それぞれの装置の技術的用途に応じて、酸化還元色素(ROD)の溶液を含有するために、必要に応じて設けられる。区画4および5は、壁6によって隔てられている。区画4および5は、破壊可能な隔壁または壁7によって区画10からも分離されている。必要に応じて、4および5と同じ高さの第4の区画は、APIの安定化のために、アミノ酸、例えば必須もしくは非必須アミノ酸またはタウリンを含有することができる。簡単にするために、この図では、第4の区画10は、必要に応じて純水、活性化剤溶液であってもよい。スクリューキャップ2を反対方向に回転させると、直ちに使用できる消毒剤溶液が装置から放出され、消毒のために関心対象の領域に適用され得る。本発明の一局面は、酸化塩素種である、スクリューキャップ2内の固体前駆体API-Pである。多区画装置からの得られた溶液は、最終的に、水溶液中の増粘剤(VE)の溶液を生成するために使用され得る。前駆体成分と添加剤の混合を可能にするように機能する任意の多チャンバー装置が、瓶、袋、シリンジ、吸入器、手消毒装置、噴霧瓶、フラスコまたはタンクを含む本発明の文脈において有用である。上述したように、複雑な混合手順なしにベッドサイドまたは現場で容易に作動させることができ、周囲温度で保管することができる装置が好ましい。
【0083】
本発明による多区画装置は閉鎖された系であり、混合エラーを排除し、患者および職員への望ましくない曝露を回避するように設計することができ、Joint CommissionおよびUSO797ガイドラインを満たす。
【0084】
本発明において有用な設計の非限定的な例は、B BraunのDuplex Container、Credence Companion Safety Syringe System、Dual-Mixマルチチャンバーバッグ、またはAPIの直ちに使用できる製剤を生成するために1またはそれを超える液相中に混合するために固体または固体の混合物を放出するスクリューキャップを備えるEasyrecキットである。
光線力学的療法との抗菌目的のための本発明の使用
【0085】
抗菌光線力学的療法(aPDT)を使用した細菌の除去が、インプラント周囲炎処置において代替的治療様式を使用して示されている。したがって、OC、酢酸またはその塩、必要に応じて増粘剤を含む本製剤の別の好ましい態様は、例えば哺乳動物における創傷治癒または細菌感染症を改善するために、光線力学的療法を使用するためにメチレンブルーによって例示されるRODを含めることである。この場合には、本発明による生成物の投与部位に、色素の光線力学的効果の生成に適合した波長を有する光を照射することができる。
【0086】
Photodiagnosis Photodyn.Ther.(2018),23,pp347-352において、Souzaらは、enterococcus faecalisに感染した歯根管に対する光線力学的療法に関連した次亜塩素酸塩溶液および反転回転器具の抗菌活性を示すために、光線力学的療法を使用した。しかしながら、試験溶液は抗菌性色素を欠いていた。これらの技術は、参照により本発明に含まれる。
API製造のための段階的方法
【0087】
本発明は、活性化剤、例えば酢酸またはその塩と組み合わされた、塩素化された種の固体前駆体API-Pの組成物および使用方法、ならびにその使用方法を提供する。例示的な方法は、以下の6つの工程を含む。
【0088】
1.以下に示される一般式Mn+[Cl(O)x]n
n-を有するAPI-Pの予め計算された量、式中、Mは任意のアルカリ金属、アルカリ土類金属または遷移金属イオンであり得、式中、nは整数1~5であり、xは整数1~4であり、yは整数1~2である。固体状態(API-P)は、0.01~1000ppmの区間、好ましくは0.1~100ppmの範囲で、OCの形態で最終溶液中にAPIの濃度を生成し、多区画装置の区画1中に装填される。API-Pは、区間0.1~500mOsm内の最終オスモル濃度を生成するための予め計算された量のNaClおよび必要に応じて任意の他の安定化固体と混合される。
【0089】
2.予め計算された量の、一般式R1XOn(R2,)mを有する活性化剤、活性化剤は、好ましくは酢酸であり、必要に応じてその金属塩またはアンモニウム塩との混合物である。活性化剤を薬学的に許容され得る希釈剤、補助剤または担体に溶解して、0.05~10%の区間、好ましくは0.08~0.5%の範囲、さらにより好ましくは0,10~0,2%の範囲の活性化剤の濃度を生成する。API-PがNaClと予め混合されていない場合、工程2における溶液は、工程からのNaClの量を含むことができ、いずれにしろ、0.1~500mOsmの区間、好ましくは150mMのNaClに対応する約300mOsmの最終オスモル濃度を生成する。溶液の一定分量が、多区画装置の第2の区画中に装填される。
【0090】
3.本発明による主生成物を生成するために、区画1および2は、これらの区画中の内容物を混合するために、ポートを開くか、または第1の区画と第2の区画との間のシール、膜バリアを破壊した後、消毒剤溶液を生成するために周囲を圧迫するか、または振盪することによって混合される。得られた溶液は、使用前に多区画装置上のキャップを通して取り出すことができる。溶液は等張性であり、4~9、好ましくは5~6の区間のpHを有し、一般的には、抗菌目的のために、例えば、哺乳動物中の上気道のウイルス感染症と戦うために例えば喘息吸入器またはネブライザーを使用する吸入療法のために使用される。
【0091】
4.工程4における色指示薬が治療手順において、例えば乳腺炎の処置において情報を追加することができる用途のために、またはAPIの酸化活性の指標のために、0.01~1000ppmの濃度範囲で色素の濃度を生成するために予め計算された量で、APIの酸化状態によって変化する色を有する色素(ROD)が、多区画装置の必要に応じて設けられる区画中に必要に応じて装填される。
【0092】
5.意図される用途に応じて、予め計算された量の、APIの安定剤としてのアミノ酸、好ましくはAPIと同じ濃度のタウリンが、多区画装置の必要に応じて設けられる区画中に必要に応じて、必要に応じて装填される。工程4は、生体表面への酸化ストレスを軽減するために行われる。
【0093】
6.意図する用途に応じて、0.01~25%の濃度範囲、好ましくは0.1~10%の範囲、さらにより好ましくは0.2~1%の範囲で、APIによって酸化され得ない水溶性増粘剤(VE)のある量を、工程4~5のうちの任意の工程と必要に応じて組み合わされた工程1~3の選択された順序から得られた溶液と混合する。0.01~0.1%のVE濃度は粘性であるが流動性の溶液を生成するのに対して、0.3~1%はゲルを生成する。皮膚または創傷用途では、粘性またはゲル形成生成物を生成するために、VEを含む工程3における第3の区画を混合手順に含めることができる。
農業における本発明の使用
【0094】
農業では特に畜産農場では、細菌、ウイルスおよび真菌によって引き起こされる多くの種類の感染性疾患が農場の日常業務に影響を及ぼし、施設を運営する際のコストに影響を及ぼす。これらの状況では、本発明による設計された製剤は、治療的または予防的に作用し、皮膚感染症において特に有用である。
【0095】
重要な一例はウシの乳腺炎であり、これは米国の酪農産業に毎年約17~20億米ドルの負担をかけている。長期に抗生物質を与えられた雌牛からの乳は、残留薬物が系を出るまで市場性がないので、乳腺炎の効果的で環境に優しい処置は困難であることが判明している。牛の乳房および乳首内の感染は動物の主要な血流から離れているので、ワクチンは効果的ではない。処置を受けた雌牛に印を付けるために、酪農従事者はテープ片を貼り付けて警告し、処置された牛に印を付ける。
【0096】
したがって、本発明の好ましい局面は、OC、酢酸またはその塩、増粘剤VEおよびメチレンブルーによって例示されるRODを含むゲルまたは粘性溶液を使用する乳腺炎の処置である。色の付いたゲルは、乳房および乳首の領域に留まり、酢酸は、乳首の皮膚内に浸透する能力を有し、色はテープ片の使用を不要にする。さらに、適用されたゲルは、ゲルの治療効果を増大させるために、適切な波長を有する光を使用して照射することができる。この場合には、有用な本製剤を与えるために、工程1~4および工程6を実施する。
水産養殖における本発明の使用
【0097】
水質は、魚、カキ、小エビおよびエビによって例示される水産動物の養殖が成功するための必要条件である。開放水系は、ウイルス、細菌、シラミ、原生動物、真菌病原体、藻類および寄生虫のような生物をもたらすことが多い。食物生産にとって魅力的な水生生物種において高い死亡率をもたらす一般的なウイルス感染症は、コイヘルペスウイルス病、膵臓疾患(PD)および感染性サケ貧血症(ISA)である。適切な水質または十分な量のきれいな水は、ほとんどの場合入手できない。従来技術における繁殖設備は、これらの感染種が繁殖種に接近し、影響を与えることを妨げる手段を有していないことが多い。さらに、一旦感染すると、これらの疾患に対して効率的な療法を提供するための効率的な治療法は存在しない。
【0098】
本発明による酸化塩素種OCの好ましい態様は、これらすべての感染症および有害生物および細胞の効果的な処置である。本OCの製剤は、これらの水媒介性病原体を抑制する上で高度に効果的である。例において、二酸化塩素は、先行技術における明確な問題を解決するのに有効な広域スペクトル殺生物剤である。本発明の製剤は、疾患を引き起こす微生物に対して破壊的な効果を有しながら、魚のえらまたは飼育種の任意の他の部分に害を与えることなく、例えば飼育されたサケを繰り返し処置するための特別なタンク中で使用されさえする。これらの用途では、工程1~3において、API-PがNaOClO2またはCa(OClO2)2である調製物の列が区画1中に装填され、予め計算された量の酢酸と混合される。
本発明の抗ウイルス使用
【0099】
汚染された表面、機器、例えば医療機器、家具表面、ドアノブ、装置、衣類または人員の処置のための本明細書に開示される方法。本発明の製剤は、ゲル、水溶液として、または表面もしくは限定された空間中へのAPIのミスト化もしくは気化によって適用することができる。製剤が要求に応じて調製されるという事実は、貯蔵分解の懸念なしに高効力の抗菌剤で領域を処置することを可能にする。
【0100】
本発明の方法は、感染性組織または体液によって汚染されたことが疑われる人員上にさえ、隙間および微小環境中への活性剤の分散を想定する。これらの製剤の気化は、耐性ウイルス性、細菌性または真菌性感染症に対する有益な治療的または予防的影響を可能にし得る。
【0101】
本発明の製剤は、実質的な毒性リスクなしに適用することができる。好ましい態様は、上気道におけるウイルス感染の処置である。したがって、本発明の系および方法は、気道におけるウイルス感染を処置する手段として酸化塩素OCを提供する。本発明の組成物は、SARS、MERSおよびSARS CoV-2感染症を含むがこれに限定されない他の感染症を処置するのに有用である。周囲条件で保存されていた溶液の活性の欠如を評価する必要がないので、これは、本発明による多区画装置と組み合わされたAPIの本前駆体を通じて初めて促進された。
【0102】
特に、OC、活性化剤、例えば酢酸、最終溶液のレオロジーを調節する賦形剤、オスモル濃度調節剤、例えば塩化ナトリウムの吸入可能な次亜塩素酸製剤。このような本製剤は、今では、ソフトミスト吸入器、ジェット式ネブライザー、超音波ネブライザーおよび振動メッシュネブライザーなどのネブライザーを介した送達方法と共に、現場で調製することができる。使用時に、吸入器およびネブライザーは、吸入による送達のために本発明の組成物をエアロゾル化する。
【0103】
エアロゾル化のための製剤は、乾燥粉末形態、溶液または懸濁液形態で提供され得る。微細な液滴、スプレーおよびエアロゾルは、鼻腔内または肺内ポンプディスペンサまたはスクイーズボトルによって送達することができる。組成物は、定量吸入器または乾燥粉末吸入器などの吸入器を介して吸入することもできる。組成物はまた、超音波ネブライザーなどのネブライザーを介して吸入することができ、吸入可能な製剤を介してOCおよび酢酸の組成物を直接気道に提供する。これは、ウイルスおよび他の微生物によって引き起こされる呼吸器系の感染症を予防および処置する。本発明によれば、本明細書に記載される製剤は、ウイルス感染の予防および処置に安全で、有効である。
【0104】
本発明の組成物はまた、呼吸器粘膜への送達を容易にするために、希釈剤などの薬学的に許容され得る担体を含み得る。担体は、生理食塩水などの水性担体であり得る。組成物は等張性であり得、血液および涙液と同じ浸透圧を有する。適切な非毒性の薬学的に許容され得る担体は当業者に公知である。様々な担体は、例えば、それが点滴剤として、またはスプレー、懸濁液、または肺送達のための別の形態として使用されるかどうかにかかわらず、組成物の異なる製剤に特に適し得る。
【0105】
吸入のための製剤は、乾燥粉末形態、溶液または懸濁液形態で提供され得る。組成物は、点滴剤、液滴およびスプレーを投与するための当技術分野で公知の様々な装置によって送達することができる。組成物は、滴下器、ピペットまたはディスペンサによって送達することができる。微細な液滴、スプレーおよびエアロゾルは、鼻腔内または肺内ポンプディスペンサまたはスクイーズボトルによって送達することができる。
【0106】
鼻腔内送達は、鼻腔スプレー装置を介して提供され得る。したがって、本発明による製剤は、経鼻スプレーとして設計され得る。鼻腔スプレーは、鼻の中に吹き込まれ、気道に送達される。
【0107】
ソフトミスト吸入器は、ばねに蓄えられた力学的エネルギーをユーザによる駆動によって使用して液体容器に圧力をかけ、ソフトミストの形態での吸入のために、含有される液体をノズルから噴霧させる。ソフトミスト吸入器は、動作のためにガス噴霧剤または電力に依存しない。ソフトミスト吸入器における平均液滴サイズは約5.8マイクロメートルである。
【0108】
ジェット式ネブライザーが最も一般的に使用されており、アトマイザーと呼ばれることもある。ジェット式ネブライザーは、圧縮ガス(例えば、空気または酸素)を使用して、そこから高速で放出されたときに液剤をエアロゾル化する。次いで、治療用溶液または懸濁液の得られたエアロゾル化された液滴は、処置のために使用者によって吸入される。圧縮ガスは、貯蔵容器内で予め圧縮され得るか、またはネブライザー内の圧縮機によって要望に応じて圧縮され得る。
【0109】
超音波ネブライザーは、溶液の治療用懸濁液のリザーバを通じて導かれたときに、吸入のために薬剤をエアロゾル化する高周波超音波を生成するために電子発振器に依存する。
【0110】
振動メッシュネブライザーは、吸入用の微細液滴ミストをエアロゾル化するために、液体リザーバの上部に数千の孔を有する膜の振動を使用する。振動メッシュネブライザーは、超音波ネブライザーの欠点のいくつかを回避し、処置時間が短縮され、噴霧されている液体の加熱がより少なくなったより効率的なエアロゾル化を提供する。
【0111】
ウイルス感染の処置は、酢酸と次亜塩素酸の相乗的組成物を使用して達成される。酢酸成分は、組織中に浸透するのに特に効果的であり、一方、次亜塩素酸は、組織の外面上の感染を処置するのに特に効果的である。上述のように、これらの組成物は、気道を処置するのに、および呼吸器感染を予防するのに有効である。
【0112】
NaClで次亜塩素酸と酢酸の濃度のバランスをとることがウイルスの安全な処理を可能にするので、開示された組成物は特に効果的である。正確なバランスは、製剤、処置部位、さらには所望される表面浸透量に依存する。次亜塩素酸は、約5ppm~最大約1000ppmまたはそれを超えて存在することができる。異なる用途、異なる送達方法および組織の種類は、より高いまたはより低い濃度を必要とし得る。酢酸は、約0.1%~最大約5.0%またはそれを超えて、好ましくは約1.0%で存在し得る。2つの成分のバランスをとることにより、組成物は、それが適用される組織の表面および表面の下で処置するという二重の効果を有することができる。
【0113】
OCが次亜塩素酸HOClである場合には、約15~60ppmの濃度のOCを有する本組成物が、通常、感染した肺の処置に十分である。OCが二酸化塩素OCl2である場合には、0、1~5ppmの濃度が通常十分である。
【0114】
いくつかの事例では、ウイルスを完全に破壊するために、またはウイルスが気道に入るのを防ぐために、組成物は、数秒~数分、1時間またはそれを超える範囲の長期間、ウイルスと接触すべきである。したがって、ある態様においては、組成物は、感染部位とのより長い接触時間を可能にするゲルの形態である。
【0115】
公知の抗ウイルス処置と組み合わせた組成物の使用は、組成物の有効性を増加させ得る。いくつかの態様において、本発明の方法は、1またはそれを超える用量の抗ウイルス物質の投与(本発明の組成物と同時にまたは逐次に)をさらに含む。これらには、アシクロビル、アデホビル、アダマンチン、ボセプレビル、ブリブジン(brivudin)、シドホビル、エムトリシタビン、エンテカビル、ファムシクロビル、ホミビルセン、ホスカルネット、ガンシクロビル、ラミブジン、ペンシクロビル、テラプレビル、テルビブジン、テノホビル、バラシクロビル、バルガンシクロビル、ビダラビン、m2阻害剤、ノイラミニダーゼ阻害剤、インターフェロン、リバビリン、ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非ヌクレオシド逆転写酵素阻害剤、非構造タンパク質5a(ns5a)阻害剤、ケモカイン受容体拮抗薬、インテグラーゼストランド転移阻害剤、プロテアーゼ阻害剤およびプリンヌクレオシドが含まれ得るが、これらに限定されない。
【0116】
本発明の組成物はまた、公知の抗菌処置と組み合わせて有用である。いくつかの態様において、本発明の方法は、シプロフロキサシン、アンピシリンまたはカルバペネム系などのベータラクタム抗生物質、アジスロマイシン、セファロスポリン、ドキシサイクリン、フシジン酸、ゲンタマイシン、リネゾリド、レボフロキサシン、ノルフロキサシン、オフロキサシン、リファンピン、テトラサイクリン、トブラマイシン、バンコマイシン、アミカシン、デフタジジム(ceftazidime)、セフェピム、トリメトプリム/スルファメトキサゾール、ピペラシリン/タゾバクタム、アズトレアナム、メロペネム、コリスチンまたはクロラムフェニコールを含むがこれらに限定されない抗生物質の1またはそれを超える用量の投与(本発明の組成物と同時にまたは逐次に)をさらに含む。
【0117】
いくつかの態様において、本発明の方法は、アミノグリコシド、カルバセフェム、カルバペネム、第1世代セファロスポリン、第2世代セファロスポリン、第3世代セファロスポリン、第4世代セファロスポリン、グリコペプチド、マクロライド、モノバクタム、ペニシリン、ポリペプチド、キノロン、スルホンアミド、テトラサイクリン、リンコサミドおよびオキサゾリジノンを含むがこれらに限定されない抗生物質クラスからの抗生物質の1またはそれを超える用量の投与をさらに含む。いくつかの態様において、本発明の方法は、セルトラリン、ラセミ体および立体異性体形態のチオリダジン、過酸化ベンゾイル、タウロリジンおよびヘキシチジン(hexitidine)を含むがこれらに限定されない非抗生性抗菌物質の投与を含む。
【0118】
組成物の投与計画は、組成物への曝露の量、頻度および期間を含み得る。投与計画は、感染の重症度、またはウイルス感染の処置もしくは予防のために処方される計画に依存し得る。
【0119】
組成物は、1日1回用量でまたは複数回の用量、例えば1日当たり2、3、4またはそれを超える用量で投与され得る。組成物を受ける対象は、数時間または数分間、組成物に曝露され得る。曝露の期間は、頻度、量または感染の重症度に依存し得る。
【0120】
固体前駆体から本溶液中に形成されるAPIの1日の総量は、OCの性質に応じて、0.01~1000mgの範囲内であり得る。実際の投与量は、投与される具体的な組成物、投与様式、および当技術分野で公知の他の要因に応じて変化し得る。
【0121】
組成物は、呼吸上皮、鼻腔、鼻上皮、咽頭、食道、喉頭、喉頭蓋、気管、気管分岐部、気管支、細気管支または肺など、気道の任意のメンバーに投与され得る。組成物を気道に投与することにより、ウイルスによって伝播される任意の疾患または障害が処置予防される。
【0122】
ある特定の他の態様において、本発明の組成物は、例えば、部屋全体、施設医療機器および手術器具を消毒するために使用することができる。医療機器の供給品は、最初は無菌であることが多いが、追加のまたはその後の洗浄および消毒または滅菌を必要とし得る。特に、任意の公知の技術を使用して、再使用のる前に、再使用可能な医療機器を滅菌または消毒することは特に重要である。組成物は、を使用して医療機器に適用することができる。例えば、機器の表面上に組成物を拭くかもしくは広げることによって、機器上に組成物のエアロゾルもしくはミスト形態を噴霧することによって、ある量の組成物を含有する容器内に機器を浸漬することによって、または蛇口などからの組成物の流れの中に機器を配置することによって、組成物を適用することができる。これに加えてまたはこれに代えて、医療機器および手術器具はまた、組成物中に沈めて保存され、使用時に取り出され得る。
【0123】
開示される組成物のいくつかは、2%またはそれを超える酢酸を含有し、OCと組み合わせた場合、皮膚および他の組織を処置するのに安全かつ有効であることが証明されている。これらの組成物中のOCは、酢酸の調節効果を有することが見出された。これにより、組成物は、組織に害を引き起こすことなく酢酸の消毒特性を利用することが可能となる。
COVID-19処置および他の呼吸器感染性疾患のための本発明の使用
【0124】
前述のように、一局面において、本発明は、SARS-CoV-2を含む呼吸器感染症を処置し、その拡散の予防する安全で効果的な手段を提供するために開発された消毒組成物に関する。
【0125】
SARS感染症を処置する上で使用するための組成物は、次亜塩素酸をベースとする、噴霧される広域抗ウイルスおよび抗菌吸入溶液を含む。より具体的には、製剤は、酢酸(約0.25%)で安定化され、好ましい抗菌効果を有するHOClの持続可能な濃度をもたらす次亜塩素酸(HOCl)(25ppm~200ppm)を含む。酢酸の添加はHOCl安定性を増加させ、したがって延長した貯蔵寿命を有する処置を開発することを可能にする。さらに、組成物は、5.5の増加したpHおよび等張性で製剤化され、それによって気道内での忍容性を増加させる。
【0126】
本発明の組成物は、特にエンベロープを有するウイルスに対して特有の殺ウイルス特性を有し、優れた抗ウイルス活性を提供する。したがって、このような組成物は、例えばCOVID-19の処置および予防に特に有用であり得る。より具体的には、SARS-CoV-2および多くの他のウイルスは、呼吸器系中のヒト細胞への 「ドアオープナー」 と呼ばれる表面タンパク質(すなわち、スパイクタンパク質)を有する。これらのスパイクタンパク質は、HOClによる酸化に対して脆弱な-SH基を含む。低濃度のHOClは、正常な組織および細胞内酵素に対して無害でありながら、細胞外-SH基(例えば、ウイルスのスパイクタンパク質)を酸化する可能性が高い。したがって、本発明の組成物の抗ウイルス効果は、最初の曝露時、感染中、およびビリオンが細胞内にあり、その後ヒト気道細胞によって放出されるときに、気道内のウイルス粒子を破壊することができる。したがって、特にエンベロープを有するウイルスに対する、本発明の組成物の特有の殺ウイルス特性によって、本発明の組成物は、コロナウイルスの拡散を防止するための継続的な努力において強力なツールとなり得る。世界中でのコロナウイルスの病原性を考慮すると、このような組成物は、特に前例のない必要時に、COVID-19患者の広範な集団の間で疾患の期間および症候の重症度を軽減することができる。
【0127】
表1(下記)は、25ppm~200ppmのHOCl+0.25%酢酸からなる本発明の組成物の成分のリストを提供する。
【表1】
不活性ガス:アルゴン(100%)
*次亜塩素酸ナトリウム溶液は、別のGMP産生剤に変更され得る。
【0128】
本発明の好ましい組成物中の活性成分は、次亜塩素酸(HOCl)である。この活性成分は、アルカリpHでの、気体状Cl2の水との反応から水溶液として生産される次亜塩素酸ナトリウムに由来する。3%NaOClが生産され、最大200ppm(0.01%w/w)のHOClに達するように、最終ISに添加される。組成物の他の成分には、以下が含まれる:水酸化ナトリウム、Ph.Eur./USP-NFグレード、必要とされるpH(5.5)になるように0.1M溶液を添加;pH安定剤 酢酸、Ph.Eur./USP-NFグレードの氷酢酸、0.25%;オスモル濃度調整剤 塩化ナトリウム、Ph.Eur./USP-NFグレード、等張製剤(303mOsm)に達するように添加;精製水、逆浸透によって精製され、イオン交換過程によってまたはPh.Eur./USP-NFモノグラフに従って脱イオンされた水。
【0129】
組成物の好ましい臨床投与量は、5mLの25~100ppmの次亜塩素酸である。最終生成物は、0.25%酢酸緩衝液も含有する。したがって、溶液は、99.1%を超えるHOClおよび0.9%未満のOCl-を含有する。HOClはIS中の活性物質であり、同等濃度のOCl-と比較して、殺菌剤として80倍効果的であることが明らかとなっている。したがって、HOClは、APIであり、かつ最終生成物中で微生物の増殖を阻害するための抗菌剤として作用するという二重の効果をIS中で果たす。組成物は、プラスチックPETバイアル/瓶に入れて提供され得る。患者への投与前に、組成物は、ネブライザー/吸入装置リザーバに移される。この移動は診療所で行われる。ネブライザーに移された後、溶液は、液体エアロゾル送達を通じて、患者に直ちに(1~2時間以内に)投与される。患者は、5mLの噴霧された組成物を受けるべきである。
【0130】
ウイルス投与のための組成物は、典型的には単回投与であり、例えば、PARI BOYを使用して、噴霧によって気道に送達される。ネブライザーPARI BOY Classic Inhalation Systemは、PARI BOY Classic Compressor、PARI LC SPRINTネブライザーを含む。下気道および上気道における試験溶液の適切な堆積を得るために、ネブライザーにはPARI SMARTMASKが装備される。他のネブライザーおよび吸入器を使用し得ることに留意されたい。
【0131】
HOClは、身体自体の免疫細胞、すなわち好中球および単球/マクロファージによって産生される。HOClは、分子構造、特にチオール、チオール-エーテル、およびアミノ基を有する分子構造(例えば、タンパク質、脂肪酸)を塩素化および酸化し、広範囲の微生物の変性および正常な機能の喪失をもたらす強力な酸化剤である。HOClは、FDAによって、「広範囲の微生物に対して最も高い殺菌活性を有する遊離の利用可能な塩素の形態」であると考えられている。HOClは強力な酸化剤であるが、低濃度(≦0.1%)では、創傷ケア用途において極めて良好に忍容され、安全である。
参照による組み入れ
【0132】
本開示を通じてなされた、特許、特許出願、特許公報、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツなどの他の文書に対する一切の参照および引用は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み入れられる。
均等物
【0133】
本発明は、その精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の具体的な形態で具体化されてもよい。したがって、前述の態様は、本明細書に記載されている発明を限定するものではなく、あらゆる点で例示的であると見なされるべきである。
【実施例】
【0134】
実施例
[実施例1]
実施例1:多区画装置中に装填するためのAPI-PとNaClの乾燥した、空気を含まない固体混合物の調製のための一般的手順。
1a.塩化ナトリウム中に50ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む乾燥粉末の製造
8.95gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、50mgの乾燥した次亜塩素酸ナトリウム(分子量:74.44g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1b.塩化ナトリウム中に100ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む乾燥粉末の製造
【0135】
8.90gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、100mgの乾燥した次亜塩素酸ナトリウム(分子量:74.44g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1c.塩化ナトリウム中に200ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む乾燥粉末の製造
【0136】
8.8gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、200mgの乾燥した次亜塩素酸ナトリウム(分子量:74.44g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1d.塩化ナトリウム中に500ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む乾燥粉末の製造
【0137】
8.5gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、500mgの乾燥した次亜塩素酸ナトリウム(分子量:74.44g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1e.塩化ナトリウム中に25ppmの二次亜塩素酸カルシウムを含む乾燥粉末の製造
【0138】
8.975gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、25mgの乾燥した次亜塩素酸カルシウム(calium)(分子量:142.98g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1f.塩化ナトリウム中に50ppmの二次亜塩素酸カルシウムを含む乾燥粉末の製造
【0139】
8.975gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、50mgの乾燥した次亜塩素酸カルシウム(calium)(分子量:142.98g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1g.塩化ナトリウム中に100ppmの二次亜塩素酸カルシウムを含む乾燥粉末の製造
【0140】
8.9gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、100mgの乾燥した次亜塩素酸カルシウム(calium)(分子量:142.98g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1h.塩化ナトリウム中に100ppmの二次亜塩素酸カルシウムを含む乾燥粉末の製造
【0141】
8.9gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、100mgの乾燥した次亜塩素酸カルシウム(calium)(分子量:142.98g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1i.塩化ナトリウム中に100ppmの二次亜塩素酸カルシウムを含む乾燥粉末の製造
【0142】
8.9gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、100mgの乾燥した次亜塩素酸カルシウム(分子量:142.98g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1j.塩化ナトリウム中に1ppmの亜塩素酸ナトリウムを含む乾燥粉末の製造
【0143】
89.99gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、10mgの乾燥した亜塩素酸ナトリウム(分子量:90.44g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1k.塩化ナトリウム中に5ppmの亜塩素酸ナトリウムを含む乾燥粉末の製造
【0144】
89.99gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、50mgの乾燥した亜塩素酸ナトリウム(分子量:90.44g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
1l.塩化ナトリウム中に10ppmの亜塩素酸カルシウムを含む乾燥粉末の製造
【0145】
89.99gの乾燥したNaCl(分子量:58.44g/mol)中に、100mgの乾燥した亜塩素酸カルシウム(分子量:157.89g/mol)を均質な混合された粉末になるように混合し、遮光された容器内で、空気を含まない乾燥した条件下で保存した。90mgの粉末の一定分量を多区画装置の区画1中に装填する。
【0146】
[実施例2]
実施例2:多区画装置中への少量の一定分量装填のための活性化剤の1L原液の調製のための一般的手順
2a.酢酸活性化剤原液(0.125%、pH2.95)
998.75mLの無菌水中に、1.25mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)を溶解した。
2b.酢酸活性化剤原液(0.125%、pH4.3)
【0147】
998.75mLの無菌水中に、1.25mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)を溶解した。10N NaOHを用いてpHを4.3に調整した。
2c.酢酸活性化剤原液(0.25%、pH4.3)
【0148】
998.75mLの無菌水中に、2.5mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)を溶解した。10N NaOHを用いてpHを4.3に調整した。
2d.酢酸活性化剤原液(0.25%、pH5.0)
【0149】
998.75mLの無菌水中に、2.5mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)を溶解した。10N NaOHを用いてpHを5.0に調整した。
2e.酢酸活性化剤原液(1%、pH4.3)
【0150】
998.75mLの無菌水中に、10mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)を溶解した。10N NaOHを用いてpHを4.3に調整した。
2f.酢酸活性化剤原液(2%、pH4.3)
【0151】
998.75mLの無菌水中に、20mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)を溶解した。10N NaOHを用いてpHを4.3に調整した。
2g.酢酸/酢酸ナトリウム活性化剤原液(0.1M、pH5.0)
【0152】
800mLの蒸留水中で、5.772gの酢酸ナトリウム(分子量:82g/mol)、1.778gの酢酸(分子量:60.05g/mol)を溶液に加えた。10N HClまたは10N NaOHを用いてpHを5.0に調整し、体積が1Lになるまで蒸留水を添加した。
2h.等張酢酸活性化剤原液(0.125%、pH2.95)
【0153】
998.75mLの無菌水中に、1.25mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)および8.4gのNaCl(分子量:58.44g/mol)を添加した。
2i.等張酢酸活性化剤原液(0.125%、pH4.3)
【0154】
998.75mLの無菌水中に、1.25mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)および8.4gのNaCl(分子量:58.44g/mol)を添加した。10N NaOHを用いてpHを4.3に調整した。
2j.等張酢酸活性化剤原液(0.25%、pH4.3)
【0155】
998.75mLの無菌水中に、2.5mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)および8.4gのNaCl(分子量:58.44g/mol)を添加した。10N NaOHを用いてpHを4.3に調整した。
2k.等張酢酸活性化剤原液(0.125%、pH5.0)
【0156】
998.75mLの無菌水中に、1.25mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)および8.4gのNaCl(分子量:58.44g/mol)を添加した。10N NaOHを用いてpHを5.0に調整した。
2l.等張酢酸活性化剤原液(0.25%、pH5.0)
998.75mLの無菌水中に、2.5mLの酢酸(分子量:60.05g/mol)および8.4gのNaCl(分子量:58.44g/mol)を添加した。10N NaOHを用いてpHを5.0に調整した。
2m.等張酢酸/酢酸ナトリウム活性化剤原液(0.1M、pH5.0)
【0157】
800mLの蒸留水中で、5.772gの酢酸ナトリウム(分子量:82g/mol)、1.778gの酢酸(分子量:60.05g/mol)および8.4gのNaCl(分子量:58.44g/mol)を溶液に加えた。10N HClまたは10N NaOHを用いてpHを5.0に調整し、体積が1Lになるまで蒸留水を添加した。
2n.酢酸緩衝液(0.1M、pH5.0)
【0158】
800mLの無菌水中で、5.772gの酢酸ナトリウム(分子量:82g/mol)、1.778gの酢酸(分子量:60.05g/mol)を溶液に加えた。10N HClを用いてpHを5.0に調整し、体積が1Lになるまで蒸留水を添加した。
2o.ACES緩衝液(0.1M、pH6.7)
【0159】
800mLの無菌水中で、18.22gのN-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(分子量:182.2g/mol)を溶液に添加した。10N NaOHを用いて、pHを用いて6.7にpHを調整し、体積が1Lになるまで蒸留水を添加した。
2p.クエン酸溶液(0.1M、pH2.2)
【0160】
19.2gの量のクエン酸(分子量:192.1g/mol)を1Lの無菌水中に溶解した。
2q.クエン酸緩衝液(0.1M、pH6.0)
【0161】
800mLの無菌水中で、12.044gのクエン酸ナトリウム(分子量:294.1g/mol)および11.341gのクエン酸(分子量:192.1g/mol)を溶液に添加した。0.1N NaOHを用いてpHを6.0に調整し、体積が1Lになるまで蒸留水を添加した。
2r.ADA緩衝液(0.1M、pH6.6)
【0162】
800mLの無菌水中で、95.11gの2-[(2-アミノ-2-オキソエチル)-(カルボキシメチル)アミノ]酢酸(ADA、分子量:190.22g/mol)を溶液に添加した。10N NaOHを用いてpHを用いてpHを6.6に調整するとADAが溶解し、体積が1Lになるまで蒸留水を加えた。
2s.色素フェノールレッド(pH7.0)を含むEBBS緩衝液
【0163】
800mLの無菌水中で、200mgのCaCl2(分子量:110.98g/mol)、200mgのMgSO4-7H2O(分子量:246.47g/mol)、400mgのKCl(分子量:75g/mol)、2.2gのNaHCO3(分子量:84.01g/mol)、6.8gのNaCl(分子量:58.44g/mol)、140mgのNaH2PO4H2O(分子量:138g/mol)、1gのD-グルコース(デキストロース)(分子量:180.16g/mol)および10mgのフェノールレッドPhenol Red(分子量:354.38g/mol)を溶液に添加した。HClまたはNaOHを使用して、溶液のpHを7.0または別の所望のpHに調整した。
2t.無菌等張酸素化水
【0164】
酸素で飽和された1Lの無菌水のストック体積に9gのNaClを添加し、遮光した密閉ボトル内において室温で保存する。
【0165】
[実施例3]
実施例3:実施例1からの溶液と組み合わせた酸化塩素の固体塩からの即時使用可能な消毒製剤の即時調製。
実施例3.1:一般的手順の非限定的な工程
1.実施例1からの粉末のいずれかの90mgの一定分量を、多区画装置の区画4中に装填する。
【0166】
2.実施例2からの活性化剤溶液のいずれかの10mLの一定分量を、多区画装置の区画4中に装填する。
【0167】
3.本発明による主生成物を生成するために、スクリューキャップと区画4の間の
図1によるシール、バリアまたはポート3を破壊または開放して、区画1中の内容物を区画4中の溶液と混合した後、穏やかに絞るか、または振盪して消毒剤溶液を生成する。得られた溶液は、多区画装置上のスクリューキャップを取り外した後に開口部を通して取り出すことができ、直ちに使用することができる。等張溶液は、4~9、好ましくは5~6の区間のpHを有し、一般に抗菌目的で使用される。
【0168】
4.必要に応じて、意図される用途に応じて、0.01~1000ppmの濃度範囲の色素の濃度を生成するために、予め計算された量の、APIの酸化状態によって変化する色を有する固体形態の水溶性染料(ROD)が、必要に応じて多区画装置の区画9内に装填され、区画1、4および9の混合物を含めて3.の手順が繰り返される。
【0169】
5.必要に応じて、意図される用途に応じて、APIの安定剤としてのアミノ酸、好ましくはAPIと同じ濃度のタウリンの予め計算された量が、必要に応じて多区画装置の区画5内に装填され、区画1、4および5の混合物を含めて3.の手順が繰り返される。
【0170】
6.必要に応じて、意図される用途、例えば皮膚または創傷への適用に応じて、0.01~25%の濃度範囲の最終溶液中のVEの濃度を得るために、予め計算された、APIによって酸化され得ない水溶性増粘剤(VE)の量が、多区画装置の区画5に装填される。0.01~0.1%のVE濃度は粘性であるが流動性の溶液を生成するのに対して、0.3~1%はゲルを生成する。工程3、4および/または5からの溶液中のVEの分散液は、Silverson MixerまたはYstral Mixerを使用して粘性溶液またはゲルに変換され、皮膚または創傷適用のために現場で使用される。粘性溶液またはゲルは、分子の動きがより遅いために増大した安定性を有し、後に使用するために溶液またはゲルを空気および光から保護する柔らかい袋、瓶に詰められ得る。
【0171】
[実施例4]
実施例4:HOClおよび酢酸の実施例3の試験溶液のインビトロ抗バイオフィルム効果。
【0172】
3つの異なる試験溶液を多区画装置から生成した。3つの試験溶液はすべて、実施例3.1に記載されているように、塩化ナトリウム中に200ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む90mgの乾燥粉末(実施例1c)を区画1中に装填された多区画装置から生成される。3つの異なる多区画装置中の区画4中のからの10mLの酢酸溶液(0.125%、pH4.3、実施例2b)の3つの一定分量。溶液1:(0.25%、pH4.3、実施例2c)、溶液2:(1%、pH4.3、実施例2e)、溶液3:(2%、pH4.3、実施例2f)。
実験の設定
【0173】
試験生物:緑膿菌または黄色ブドウ球菌野生株 バイオフィルムの型:0.5%グルコースを補充した固化培地上に配置された半透膜上で増殖させた48時間または24時間齢のバイオフィルム。48時間齢のバイオフィルムの場合、バイオフィルムを有する膜を24時間後に新しいプレート上に移した。
最初の生細胞量:5×109コロニー形成単位(CFU)
【0174】
処理方法:バイオフィルムを含む膜を新しいプレートに移した。8~10層の無菌ガーゼを第2の膜上に置き、1mlの抗菌溶液をガーゼ層上にピペットで添加した。処理は、室温で2~3時間、または4~6時間行った。4~6時間の処理の場合、処理を開始した2または3時間後に、ガーゼ層を、1mlの試料溶液を含む新しいガーゼ層と交換した。
【0175】
評価方法:ガーゼ層を廃棄し、バイオフィルムを有する各膜を、5mlの0.9%NaClを含有する15mlチューブ中に移し、10秒間ボルテックス撹拌し、超音波浴中で10分間超音波処理し、再び10秒間ボルテックス撹拌した。10倍段階希釈を行い、生存CFU計数のために10ulの各希釈物をLBプレートにスポットプレートした。
結果および結論
【0176】
図2は、試料溶液を用いて得られた結果を示す。200ppmHOCl溶液中のHAc濃度を0.25%から1%および2%に増加させると、黄色ブドウ球菌バイオフィルムの死滅が徐々に増加した。1%酢酸単独の効果は、バイオフィルムにわずかな効果しか及ぼさなかった。3つの試験溶液を市場で販売されている4つの異なる競合する創傷治癒製品と比較したが、これらの製品はすべて、黄色ブドウ球菌バイオフィルムに対してわずかな効果しか示さなかった。緑膿菌由来のバイオフィルムに対してはさらに強い効果が示された。pH4.3の次亜塩素酸および酢酸は、他の研究で安全であることが示されている濃度で相乗的かつ効率的に作用すると結論付けられる。
【0177】
[実施例5]
実施例5:インビボ毒性研究
実施例5.1:ラットにおける7日間の吸入毒性研究。
Kogelらによって、2913年に、https://www.pmiscience.com/resources/docs/default-source/default-document-library/2013_ukogel_ict_poster.pdf?sfvrsn=d6a9f606_0に記載されたように、ラットにおける7日間の吸入毒性研究を行う。ラット吸入研究は、経済協力開発機構(OECD)に従って実施する。試験溶液は、実施例3.1に記載されているように、塩化ナトリウム中に100ppmの次亜塩素酸ナトリウムを含む90mgの乾燥粉末(実施例1b)が区画1中におよび10mLの酢酸溶液(0.125%、pH4.3、実施例2b)の一定分量が区画4中に装填された多区画装置から生成される。試験ガイドライン412、Sprague-Dawleyラットを、参照としての濾過された新鮮な空気(シャム)または試験溶液に曝露する。動物の管理および使用は、米国実験動物科学協会規約(1996)に従う。すべての動物実験は、動物実験委員会(IACUC)によって承認されている。組織病理学的評価は、定義された等級付けシステムに従って、鼻および左肺の定義された解剖学的部位で行われる。フローサイトメトリーによって遊離の肺細胞を気管支肺胞洗浄液中で決定し、炎症メディエータを多重分析物プロファイリング(MAP)によって測定する。Systems Toxicologyアプローチのために、気道中の特定の部位、すなわち呼吸鼻上皮(RNE)および肺からRNA試料を得る。肺RNA単離のために、主気管支および肺実質の呼吸上皮をLaser Capture Microdissection(LCM)によって分離し、さらに処理し、全ゲノムAffymetrixマイクロアレイ(GeneChip(登録商標)Rat Genome 230 2.0 Array)上で分析する。気管支または肺実質における炎症、細胞ストレス、細胞増殖に関連する大きな撹乱は見られない。
[実施例6]
実施例6:乳腺炎の処置
【0178】
工程4における色指示薬が治療手順において情報を追加することができる用途のために、例えばAPIの酸化活性の指標においてまたは指標のために、RODを含む区画が手順中に含められる。
[実施例7]
実施例7:臨床的抗ウイルス療法
【0179】
実施例3.1に記載されているように、塩化ナトリウム中に1ppmの亜塩素酸ナトリウムを含む90mgの乾燥粉末(実施例1j)が区画1中におよび10mLのクエン酸溶液(0.1M、pH2.2、実施例2p)の一定分量が区画4中に装填された多区画装置から生成された5mLの試験溶液を、Gima Aerosol Corsia Nebulizerのメディシンカップに装填した。コロナウイルス肺感染症を有する患者の口をネブライザーに取り付けられたホースおよびフェイスマスクに取り付け、ネブライザーを始動する。10~15分の呼吸の後、流体は使い尽くされ、ネブライザーを停止させる。処置の副作用が生じていないことを確実にするために、患者は数時間監視される。潜在的な副作用について、患者の粘膜および繊毛を調べる。
[実施例8]
実施例8:吸入溶液(IS)の薬理学
【0180】
改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)に対する組成物の吸入溶液(IS)のウイルス不活性化特性を調べた。50、100および200ppmのHOCl(pH5.5)のIS生成物(および希釈された50%溶液)はウイルス不活化特性を示し、ウイルス不活化を示すIS生成物の最低濃度が25ppm HOClであることを示唆した。さらなる希釈物を試験し、5、10および20ppmの濃度の希釈溶液はウイルス不活化および効果を示さず、活性がないより低い範囲が実証されたことを示唆した。50、100および200ppmのHOCl(pH5.5)を含むIS生成物は、全ての試験したHOCl濃度について、エンベロープを有するDNAワクシニアウイルスに対して抗ウイルス活性を示した。ワクシニアウイルスに対する抗ウイルス活性を有する生成物は、SARS-CoV-2を含むすべてのエンベロープを有するウイルスに対して活性であると考えられる。別の研究において、ISは10~200ppmのHOClでSARS-CoV-2を不活性化することが示された。
【0181】
抗菌活性に関しては、黄色ブドウ球菌および緑膿菌の一晩培養物をそれぞれ2時間および24時間増殖させて、浮遊性細菌およびバイオフィルム増殖細菌の両方に対してISを試験した。緑膿菌および黄色ブドウ球菌については、50ppmのHOCl IS(但し、黄色ブドウ球菌バイオフィルムについては、100ppmのHOCl IS)で完全な効果が見られた
【0182】
要約すると、50~200ppmのHOCl濃度を有するIS生成物は、インビトロ試験で、2つの異なるMVAにおいてウイルス不活性化を示す。試験生成物の希釈後、抗ウイルス活性を示す最低濃度は25ppmのHOClであり、抗ウイルス活性を示さない試験した最低希釈濃度は5、10および20ppmのHOClであった。これらの実験から、抗ウイルス有効濃度範囲は25~200ppmのHOClであった。ISは、様々な濃度でSARS-CoV-2を不活性化することが示された。
実施例8.1:抗ウイルス効果
ワクシニアウイルスに対するHOClの抗ウイルス有効性
【0183】
改変ワクシニアウイルスAnkara(MVA)に対するHOClの殺ウイルス活性を評価するために、抗ウイルスアッセイを実施した。使用した生成物は、以下の濃度で、50、100および200ppmのHOClを含有するISであった:
・非希釈(80.0%)
・aqua bidestで希釈(50.0%)
・aqua bidestで希釈(10.0%)
・aqua bidestで希釈(1.0%)-200ppmのHOClのみ
【0184】
試験方法は、感染力アッセイによって確認された、MVAに感染したBHK21細胞に1~80%の希釈で試験生成物(50、100および200ppmのHOCl)を曝露させることを含んだ。生成物をMVA感染細胞と1分間または2分間接触させ、次いで不活性化アッセイを実施して殺ウイルス活性を決定した。生成物接触後に細胞傷害性の測定も行った。
方法
【0185】
試験ウイルス懸濁液を調製するために、BHK21細胞をMEMおよび10%または2%ウシ胎児血清と共に培養した。細胞を0.1の感染効率で感染させた。試験生成物を希釈せずに試験した。妨害物質および試験ウイルス懸濁液の添加により、80.0%溶液が得られた。
【0186】
EN5.5に従って、最高希釈から始めて、0.1mLの新たに分割した細胞(ウェルあたり10~15×103細胞)に、マイクロタイタープレートの8つのウェル中に0.1mLの各希釈物を移す終点滴定として感染力を決定した。マイクロタイタープレートを5%CO2雰囲気中、37℃でインキュベートした。倒立顕微鏡を使用することによって、細胞傷害性効果を読み取った。感染量TCID50/mLの計算は、SpearmanおよびKarberの方法を用いて計算した。
【0187】
消毒剤なしの対照滴定と比較して力価の減少を計算することによって、試験消毒剤の殺ウイルス活性を評価した。この差は、減少係数(RF)として与えられる。EN14476によれば、ある濃度の消毒剤または消毒剤溶液は、推奨される曝露期間内に力価が少なくとも4log10段階低下した場合に、ウイルス不活化効果を有する。これは、99.99%以上の不活性化に相当する。
【0188】
殺ウイルス活性の決定は、EN5.5に従って実施した。不活性化試験は、20℃±1.0℃の水浴中において、密封された試験管内で実施した。適切な曝露時間後に一定分量を保持し、残存する感染力を決定した。細胞傷害性の測定は、EN5.5.4.1に従って行った。試験検証のための参照として、EN5.5.6に従って0.7%ホルムアルデヒド溶液を含めた。接触時間は、5、15、30および60分であった。さらに、ホルムアルデヒド試験溶液の細胞傷害性を、EN5.5.6.2に従って10-5までの希釈物で測定した。
【0189】
結果
80.0%アッセイにおける全ての希釈されていない試験生成物(すなわち、50、100、200ppmのHOCl)は、1分の曝露時間後にMVAを不活性化することができた。減少係数は以下の通りであった:
・50ppmのHOCl:≧5.25±0.33
・100ppmのHOCl:≧5.13±0.25
・200ppmのHOCl:≧5.25±0.33
【0190】
これらは、99.999%以上の不活性化に相当した。
50.0%溶液も、1分の曝露時間後にMVAを不活性化することができた。減少係数は以下の通りであった:
・50ppmのHOCl:≧4.25±0.33
・100ppmのHOCl:≧4.13±0.25
・200ppmのHOCl:≧4.25±0.33
【0191】
これらは、99.99%以上の不活性化に相当した。
【0192】
10.0%溶液は、1分の曝露時間以内にMVAを不活性化することができなかった。1.0%溶液(200ppmのHOCl)も、1分以内にMVAを不活性化することができなかった。
【0193】
結論として、希釈せずに試験した50、100および200ppmのHOClでの吸入用生成物ISは、1分の曝露時間(0.3g/LBSA)後にMVAに対して活性を示した。
実施例8.2:抗菌および抗バイオフィルム有効性
実施例8.2.1.ISの抗菌および抗バイオフィルム有効性
【0194】
浮遊性細菌およびバイオフィルム細菌をそれぞれ代表するために、2時間または24時間のいずれかで増殖させた緑膿菌および黄色ブドウ球菌に対するISの殺菌活性を評価するために抗菌アッセイを行った。使用した生成物は、以下の濃度のIS(すなわち、0.25%酢酸あり、pH5.5、等張)であった:
・ 10ppmのHOCl
・ 50ppmのHOCl
・ 100ppmのHOCl
・ 200ppmのHOCl
・ 500ppmのHOCl
【0195】
生成物を緑膿菌または黄色ブドウ球菌のいずれかと1時間接触させ、次いで一定分量を播種し、一晩インキュベートした。翌日、プレートを増殖について評価し、部分増殖の場合には対数減少を定量した。
方法
【0196】
培養チューブで一晩(17時間)、37℃で、180rpmで振盪しながら、MH340(緑膿菌PAO1)を5mLのLB中で、NCTC-8325-4(黄色ブドウ球菌)を5mLのTSB中で増殖させた。
【0197】
その後、一晩培養物を50倍希釈し、ウェル当たり200μLの希釈された細菌懸濁液を96円形ウェルマイクロタイタープレート(8個の技術的反復)中に堆積させた。細菌当たり、条件および処理当たり1つのマイクロタイタープレート。2時間の増殖(「浮遊性」細菌)+1時間の処理および24時間の増殖(「バイオフィルム」細菌)+1時間の処理。37℃でそれぞれ2時間および24時間、細菌をインキュベートした。
【0198】
その後、細菌を0.9%NaCl(対照)、10ppmのHOCl、50ppmのHOCl、100ppmのHOCl、200ppmのHOClおよび500ppmのHOCl ISで、37℃で1時間処理した。
【0199】
処理期間(1時間)後、ウェルあたり20μLをLBプレート上にスポットし、37℃で一晩培養した。翌日、増殖(生理食塩水が対照である)または無増殖についてプレート確認した。
結果
【0200】
以下の表2に見られるように、緑膿菌浮遊性細菌およびバイオフィルムは、黄色ブドウ球菌よりも低い生成物濃度で根絶された。代表的な浮遊性およびバイオフィルム黄色ブドウ球菌および緑膿菌では、全体にわたって最終IS生成物(100ppmのHOCl)の完全な抗菌効果が存在する。
【表2】
【0201】
結論として、10または50ppmのHOCl濃度でのISは、それぞれ一般的な浮遊性細菌病原体である緑膿菌および黄色ブドウ球菌を死滅させる。50または100ppmのHOClを含むISは、それぞれ緑膿菌および黄色ブドウ球菌のバイオフィルム形態を死滅させる。
実施例8.2.2.ISおよび酢酸の抗菌および抗バイオフィルム有効性
【0202】
浮遊性細菌を代表するために、2時間増殖させた緑膿菌および黄色ブドウ球菌に対するISおよび酢酸の殺菌活性を評価するために別の抗菌アッセイを行った。使用した生成物は、以下の濃度のIS(すなわち、0.25%酢酸あり、pH5.5、等張)または酢酸のみであった:
・ 25ppmのHOCl
・ 50ppmのHOCl
・ 100ppmのHOCl
・0.25%酢酸、pH5.5、等張
【0203】
生成物を緑膿菌または黄色ブドウ球菌のいずれかと1時間接触させ、次いで一定分量を播種し、一晩インキュベートした。翌日、プレートを増殖について評価し、部分増殖の場合には対数減少を定量した。
方法
【0204】
浮遊性グラム陽性菌およびグラム陰性菌に対する抗菌特性を試験するために、黄色ブドウ球菌(NCTC-8325-4)および緑膿菌PAO1(MH340)の希釈した一晩培養物(0.5のOD、黄色ブドウ球菌では約107、緑膿菌では約108)を96ウェルマイクロタイタープレート中で2時間増殖した。その後、採取前に1時間、様々な濃度のHOCl(25、50および100ppmのHOCl、0.25%酢酸、pH5.5、等張)のIS、等張0.25%酢酸(pH5.5)および0.9%生理食塩水(対照)でウェルを処理した。
【0205】
1時間後、ISを不活性化するために、Dey-Engley中和ブロス(Sigma Aldrich、D3435)をすべてのウェルに添加し、ウェルの内容物を10倍系列で希釈し、関連する寒天プレート上にプレーティングした(10-8まで)。プレートを37℃で18時間好気的に増殖させた。対数減少を計算するために、計数可能な希釈物中のコロニー数からCFUカウントを計算した。試験は、各細菌の3つの技術的反復を用いて行った。
結果
【0206】
以下の表3に見られるように、25、50および100ppmのHOCl ISは、グラム陽性(黄色ブドウ球菌)およびグラム陰性(緑膿菌)細菌の両方を根絶した。等張の0.25%酢酸(pH5.5)は細菌を根絶しなかった。
【表3】
【0207】
結論として、ISは、それぞれ25ppmおよび10ppmのHOCl濃度で、浮遊性グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌)およびグラム陰性菌(緑膿菌)を効率的に根絶する。酢酸はグラム陽性(黄色ブドウ球菌)菌を根絶せず、グラム陰性菌(緑膿菌)には最小限の減少を示す。
【0208】
実施例8.3:抗SARS-CoV-2有効性
SARS-CoV-2に感染したVero E6細胞に対するISの殺ウイルス活性を評価するために、ウイルス不活化および細胞傷害性アッセイを実施した。使用した生成物は以下の濃度のISであった:
・ 10ppmのHOCl
・ 50ppmのHOCl
・ 100ppmのHOCl
・ 200ppmのHOCl
【0209】
試験方法は、10~200ppmのHOCl濃度の試験生成物を、SARS-Cov-2を感染させたVero E6細胞に、48時間曝露することを含んだ。次いで、細胞を染色し、ウイルス抗原陽性細胞の数を数えた。細胞傷害性を評価するために細胞増殖アッセイを実施した。
方法
【0210】
Vero E6細胞/ウェルを96ウェルプレートに播種し、ウイルス(感染効率0.002)を添加し、または非処理対照および細胞傷害性アッセイについては培地のみとし、37℃で1時間インキュベートした。ウイルスを除去し、希釈せずまたは半分に希釈したIS10ppmHOCl、50,100または200ppmHOClを15分間添加し、その後、アッセイを48時間インキュベートした。
【0211】
インキュベートした細胞を固定し、一次抗体SARS-CoV-2スパイクキメラモノクローナル抗体および二次抗体F(ab’)2-ヤギ抗ヒトIgG FcCross-Adsorbed Secondary Antibody、HRPで染色した。単一の感染細胞をDAB基質で可視化し、ImmunoSpotシリーズ5UV分析器によって自動的に計数した。Cell Titer AQueous One Solution Cell Proliferation Assayを使用して、細胞傷害性アッセイを行った。
結果
【0212】
本研究では、対照と比較した、ウイルスを含まないVERO細胞の量によって、試験化合物の抗ウイルス効果を評価した。結果に基づくと、ISは、ウイルス陽性VERO細胞の量を低下させ、したがって、ISは、VERO細胞を死滅させることなく10ppm~100ppmのHOCl濃度でSARS-CoV-2をIS不活性化した。VERO細胞は非常に脆弱であり、ISの研究にあまり適していないことが報告されているので、より強固な細胞を用いればさらに良好な抗ウイルス活性が得られたかもしれない。しかしながら、SARS-CoV-2はクラス3微生物として分類されるため、これらの実験を他の細胞型で行うことはできなかった。ウイルス不活化および細胞傷害性の結果を
図3に示す。
【0213】
図3を参照すると、各バーは、平均の標準誤差(エラーバー)とともに平均を表している。左軸は、非処理対照に対して正規化されたウイルス抗原陽性細胞の数を(百分率で)示す。右軸は、非処理対照に対して正規化された細胞生存率(吸光度)を(百分率で)示す。MOI=感染効率。
【0214】
50、100および200ppmでの希釈されていない実験は、未知の機構のためにVERO細胞を死滅させたので、上の図には報告されていないことに留意されたい。しかしながら、10ppmの非希釈および50、100および200ppmの50:50希釈はVERO細胞を死滅させず、SARS-CoV-2不活性化が観察された。結論として、様々な濃度で、ISはSARS-CoV-2を不活性化する。
[実施例9]
実施例9:吸入溶液(IS)の毒性
【0215】
いくつかのインビボ研究が行われており、ISの毒性学を特性評価することが進行中である。
【0216】
ゲッティンゲンミニブタにおける非GLPインビボ吸入毒性研究が、デンマークにおいてEllegaard Gottingen Minipigで行われている。これらの研究には、選択された動物に対する2または4週間の回復期間を含む、噴霧されるISでの挿管によるミニブタにおける5日間の反復投与研究が含まれる。さらに、その後の研究のための用量レベルの選択を助けるために、挿管による小規模なパイロット研究を行った。肺に到達するISの量を最大化するために、これらの研究では投与経路として挿管を選択した。
【0217】
これらの研究に続いて、提案された臨床試験において研究される予定の意図されたヒト曝露を模倣するために、噴霧されたISをマスクによって投与する、5日間のさらなる研究もEllegaard Gottingen minipigsで行った。
【0218】
ミニブタにおけるさらなる非GLP最大耐容用量研究を、ミニブタにおける14日間反復投与GLP吸入毒性研究への予備研究として行った。両研究(予備研究および主研究)は、同じく、ヒト投与を可能な限り厳密に模倣するために、マスクを介した投与を有する。動物福祉上の制約のために、ミニブタは1日に1回しか投薬され得ず、したがって、1日に複数回の5mL投薬とは異なり、臨床研究で意図される1日の投薬(すなわち、100ppmで18mL)を送達するために、噴霧されたISに60分間曝露される。
実施例9.1:反復投与毒性
【0219】
初期毒性研究(非GLP)は、デンマークのEllegaard Gottingen Minipigsにおいて行った。さらなる予備的非GLP研究が英国のCovanceで行われ、GLP研究が英国のCovanceで進行中である。全ての完了したおよび計画された反復投与毒性研究を以下のサブセクションに要約する。
実施例9.1.1:インビボ吸入試験-挿管
【0220】
6~8月齢の42匹の健康な若齢成体ゲッティンゲンミニブタ、21匹の雄および21匹の雌をこの実験で使用した。ミニブタの体重は約12kgであった。ミニブタは、Ellegaard Gottingen Minipigsにおいて、AAALAC Internationalが承認したバリア施設ハウジング内で、局所環境、摂食およびケアに関する施設の基準に従って、飼育し、収容した。実験プロトコルはDanish Animal Experiments Inspectorate(ライセンス番号2020-15-0201-00530)によって承認され、すべての手順はDanish Animal Testing Actに従って実施した。本研究はGLPに従って実施されなかったが、データは記録され、文書化された研究計画および現地の標準操作手順(Standard Operating Procedures)に従って報告された。
【0221】
本研究は、2つの別個の段階で実施した。第1段階では、32匹の動物(1群あたり雄4匹および雌4匹)を5日間処置し、終了させた。第2段階では、さらに10匹の動物(雄5匹および雌5匹)を最高用量で処置した。最後の処置の5日後に雄1匹および雌1匹を殺し、14または28日間の回復期間後に雄2匹および雌2匹をそれぞれ殺した。便宜上、ここでは両段階をまとめて単一の研究として報告する。
【0222】
動物を以下のように投与群に割り当てた:
主段階
・対照としての0.9%NaCl(雄4匹および雌4匹)
・50ppmのHOCl+0.25%HAc、pH5.5、等張(雄4匹および雌4匹)
・100ppmのHOCl+0.25%HAc、pH5.5、等張(雄4匹および雌4匹)
・200ppmのHOCl+0.25%HAc、pH5.5、等張(雄4匹および雌4匹)
回復段階
・200ppmのHOCl+0.25%HAc、pH5.5、等張(最終投与後に雄1匹および雌1匹を屠殺)
・200ppmのHOCl+0.25%HAc、pH5.5、等張(2週間の回復後に雄2匹および雌2匹を屠殺)
・200ppmのHOCl+0.25%HAc、pH5.5、等張(4週間の回復後に雄2匹および雌2匹を屠殺)
【0223】
さらに、パイロット研究では4匹のミニブタを使用し、3匹には500ppm+0.25%HAc、pH5.5の等張ISを投与し、一方、1匹には生理食塩水を与え、対照として機能させた。
【0224】
(静脈内カテーテルによってブトルファノールによって強化されたプロポフォールで)すべてのミニブタを5日間毎日麻酔し、気管内チューブを通して5mLの噴霧生成物(対照群には生理食塩水)を与えた。GE麻酔機を使用して、体積制御された換気で、2L/分(50%酸素)の総流量および10mL/kgの一回換気量でミニブタを換気した。Pピーク(潜在的な気管支収縮を評価するための、本発明者らの主要な結果パラメータ)を含む肺活量測定、ならびにカプノメトリ、非侵襲的血圧、心拍数(ECG)および温度を2分ごとに記録した。
【0225】
換気装置システムで動物を少なくとも10分間安定化させた後、Pピークを含む観察を記録した。ベースライン測定値として動物を10分間モニターし、その後、5mL生成物の噴霧を開始した(Aerogen Soloネブライザー、TimikAps、Kolding、Denmark)。噴霧化は11~20分継続した(製造業者に従って、2~5分/mL)。全ての生成物を噴霧した後、意識を回復する前に動物をさらに15分間(吸入後)監視した。
【0226】
麻酔/吸入前に毎朝および麻酔/吸入後すべての午後に、すべての動物をスコア化して、全身状態、食欲、行動、咳、肺機能および運動性を評価した。最初の投与前におよび再度最後の投与後に血液試料を採取し、臨床病理パラメータについて評価した。回復動物については、投与中止期間中の臨床病理についても血液を評価した。
【0227】
2または4週間の投与中止後に屠殺した回復群の動物を除いて、投与終了後5日目に、全ての動物を屠殺した。インサイチュでの毒性の潜在的な肉眼的徴候を観察するために、安楽死の後に、経験豊富な獣医病理学者によって、呼吸器系に特別な注意を払った通例の剖検が行われた。肺および縦隔リンパ節を秤量した。全ての動物(に加えて、動物施設からの2匹の歩哨非処置動物)の7つ全ての肺葉から、気管、気管分岐部、縦隔リンパ節、心臓(右心室筋および左心室筋)、腎臓および肝臓から、組織病理学のための試料を近位方向(主気管支を含む)および遠位方向に収集した。
【0228】
500ppmのHOClを用いたパイロット研究では、呼吸上皮中に、主に近位肺試料中に中程度の繊毛の喪失が存在した。この知見に基づいて、200ppmのHOClが主研究に適した高用量レベルであることが決定された。
【0229】
主研究では、全てのミニブタが1日2回の臨床評価において正常であることが明らかとなった。
【0230】
血液学的および生化学的パラメータは、ベースライン(吸入前1日目)および実験の終了時(吸入後5日目)にすべての群で顕著ではなかった。処置の影響を示す所見は存在しなかった。
【0231】
肺活量測定では、主要な結果パラメータであるPピークは、吸入に関しておよび吸入後に、異なる処置群または対照間で異ならなかった。さらに、実験あたりミニブタあたりに見られたPピークの最大差は1cmH2Oであり、これは機械の検出の限界内であり、臨床的重要性はないが、2匹のブタ(対照群に1匹および200ppmのHOCl群に1匹)については、Pピークの差は2cmH2Oであった。これは、噴霧された生成物の吸入が気管支収縮を誘発しなかったことを明確に示している。他のすべてのパラメータは、処置による影響を受けなかった。
【0232】
剖検時、処置に対する反応の明らかな肉眼的徴候は観察されなかった。
【0233】
本研究の第1の部分(0、50、100または200ppmでの1群あたり4+4匹の動物の処置に加えて、500ppmのHOClで投与された3匹の動物のパイロット群)では、薬物曝露に関連する病理学的所見は、局所リンパ節過形成、気管分岐部領域(気管分岐部)および主気管支における上皮性繊毛の喪失であった。主気管支については、主に肺葉中に近位に繊毛の喪失が存在し、すべての葉が等しく影響を受けた。好中球顆粒球浸潤は、気管、気管分岐部および主気管支の粘膜および粘膜下層中に見られ、発生頻度は、繊毛喪失のパターンに従っていた。500および200ppmのHOClが投与された場合、薬物曝露に関連する病理学的所見が存在した。しかしながら、500ppmが最も顕著な所見をもたらした。100ppmのHOClを与えられた単一の動物では、最小限の繊毛喪失のみが観察された。他のすべての軽微な肉眼的および顕微鏡的所見は、毎日の麻酔処置に関連するか、または偶発的な所見であると考えられる。雄の動物と雌の動物の間で差は観察されなかった。
【0234】
本研究の第2の部分(200ppmで投与され、最後の投与直後(1+1)、または2週間の回復後(2+2)もしくは4週間の回復後(2+2)に屠殺された動物)では、回復なしの200ppmのHOCl群における組織病理学的所見は、主研究における200ppm群と同等であることが明らかとなった。したがって、200ppmのHOClを5日間毎日吸入すると、気管、気管分岐部領域および主気管支中の繊毛の喪失がもたらされることが確認された。2週間および4週間の回復後の両方で、繊毛喪失の回復が見られた。細胞の再生の徴候を現す、回復群における気管支および細気管支上皮中に過形成が見られた。回復後、気管、気管分岐部および主気管支の粘膜および粘膜下層中に好中球顆粒球浸潤は見られなかった。回復群は、肺胞内マクロファージの量の増加を示した。しかしながら、各群の動物数が少ないことに加えて、大きな変動が見られたことが、試験した薬物に所見を明確に関連付けることを困難にする。さらに、第1の研究における200ppmのHOCl群での肺胞内マクロファージの推定数は、第2の研究におけるよりはるかに高かった。さらに、時折ミネラル化を伴う肺胞マクロファージの限局性浸潤が、ゲッティンゲンミニブタにおける一般的な所見として報告されている。雌の動物と雄の動物の間で差は観察されなかった。
【0235】
100ppmのHOCl(5.0mL)でのSISは、挿管によるミニブタの投与後に無毒性量であると考えられた。
実施例9.1.2:インビボ吸入研究-マスクされる
【0236】
本研究では、鼻を覆うマスクによって、10mL(10mLがネブライザーに加えられるが、残存体積が1.2mLであるので、予想される送達は8.8mLであった。)の噴霧ISまたは噴霧生理食塩水(0.9%w/vのNaCl、対照として)で、健康なミニブタを5日間毎日処置した。前に見出された100ppmの無毒性量の他、50ppmを試験し、生理食塩水対照と比較した。
【0237】
12匹の健康な若齢成体ゲッティンゲンミニブタ(6~8月齢)をこの実験(31355)で使用した。ミニブタ(雄6匹および雌6匹)の体重は約12kgであった。ミニブタは、Ellegaard Gottingen Minipigsにおいて、AAALAC Internationalが承認したバリア施設ハウジング内で、局所環境、摂食およびケアに関する施設の基準に従って、飼育し、収容した。実験プロトコルはDanish Animal Experiments Inspectorate(ライセンス番号2020-15-0201-00530)によって承認され、すべての手順はDanish Animal Testing Actに従って実施した。
【0238】
動物を無作為に4匹の動物(雄2匹および雌2匹)の以下の投与群に分けた:
・対照としての0.9%NaCl(n=4)
・50ppmのHOCl+0.25%酢酸、pH5.5、等張(n=4)
・100ppmのHOCl+0.25%酢酸、pH5.5、等張(n=4)
【0239】
ミニブタは、研究前の週に2回吊り紐による拘束を受け入れるように訓練された。研究中、一度に2匹のミニブタを静かで薄暗い処置室中で吊り紐に入れた。低用量のミダゾラム(0.3~0.7mg/kg-各動物を穏やかに保つために必要に応じて5日の間に増加させた)で動物を軽く鎮静させ、動物の眼を覆って穏やかに保った。その後、マスクを鼻の上に置き、マスクをPari Boy(登録商標)クラシックネブライザーに接続した。ネブライザーのチャンバーを最初に4mLのISまたは生理食塩水で満たし、およそ30分後に10mLが投与されるまで連続して補充した(2mLで3回)。製造業者によれば、残存体積は約1.2mLであり、したがって、投与された用量は約8.8mLであった。各動物の尾にパルスオキシメータを接続し、脈拍および酸素飽和度を測定した。呼吸数のカウントを含む測定値を、5、10、15および20分の吸入後に記録した。処置後、動物を回復箱の中に入れ、完全に回復するまで観察し、その後豚房に戻るように誘導した。この手順を5日間毎日繰り返した。5日目に、最後の吸入後に動物を安楽死させた。
【0240】
手順前に毎朝および手順後午後に、すべての動物をスコア化して、全身状態、食欲、行動、咳、肺機能および運動性を評価した。
【0241】
吸入の1日前(ベースライン)に、および吸入後、吸入の最終日に血液試料を採取した。白血球百分率を含む標準的な生化学および血液学を実施した。
【0242】
インサイチュでの毒性の潜在的な肉眼的徴候を観察するために、安楽死の後に、経験豊富な獣医病理学者によって、呼吸器系に特別な注意を払った通例の剖検が行われた。肺および縦隔リンパ節を秤量した。右頭側および左鼻側肺葉から、気管、気管分岐部、縦隔リンパ節、心臓(右心室筋および左心室筋)、腎臓および肝臓から、組織病理学のための試料を近位方向(主気管支を含む)および遠位方向に収集した。3つの鼻のレベルを調べるための標準化されたアプローチを使用することによって、組織病理学のために鼻腔を収集した。
【0243】
肺(気管、気管分岐部、気管支および細気管支を含む)、リンパ節(気管分岐部)、鼻腔(鼻口を覆う扁平上皮、移行上皮、呼吸上皮および嗅上皮、鼻甲介、上顎甲介(maxiloturbinate)、鋤鼻器官(vomernasal)、篩骨甲介および鼻咽頭)、肝臓、腎臓および心臓を組織学的に検査した。
【0244】
数回、吸引に関連して、または鼻からマスクを取り外した後に、数回の咳またはくしゃみが聞こえた。これは、対照群の動物1匹、50ppm群の動物2匹および100ppm群の動物1匹について認められた。これは、マスクが鼻の周りに作り出す湿気のある局所環境に対する反応である可能性があり得る。発生率は群間で類似していたため、ISに起因するとは考えられない。呼吸数、脈拍および酸素飽和度は群間で同様であった。動物は、投与後最大10分で軽度の鎮静から回復した。
【0245】
定期的な毎日のチェックでは臨床徴候は見られなかった。ベースライン(吸入前1日目)から実験後(吸入後5日目)までの血液学的および生化学的パラメータの発生は、全ての群で顕著ではなかった。すべての群で見られたクレアチンキナーゼの上昇は、取り扱いおよび採血に関連したもがき反応のためである可能性が最も高いと考えられる。
【0246】
剖検では、毒性の明らかな肉眼的徴候は観察されなかった。
【0247】
薬物曝露に関連する病理学的所見は、気管、気管分岐部領域および肺では観察されなかった。気管、気管分岐部領域および肺に見られる全ての軽微な肉眼的および顕微鏡的所見は、毎日の鎮静処置、頸静脈から血液を採取する試みの失敗、安楽死に関連するか、または偶発的な所見であると考えられた。例えば、時折ミネラル化を伴う肺胞マクロファージの限局性浸潤が全ての群の一部の動物で見られ、ゲッティンゲンミニブタにおける共通の所見として報告されている。ラット、マウス、ウサギ、モルモット、ヒツジ、非ヒト霊長類、イヌおよびネコにおける研究に基づいて、ペントバルビタールによる安楽死は、鬱血、浮腫、出血、気腫および壊死を含む肺組織損傷を誘発することができ、種間で一貫性が見られることも報告されている。
【0248】
鼻および鼻咽頭内では、充血、上皮剥離、繊毛の喪失およびリンパ過形成が3つの群内すべてで見られた。変化は、病巣領域において最も頻繁に見られた。鼻咽頭については、生理食塩水群と比較した場合、100ppmおよび50ppmのHOCl群内の両方でより多くの動物が変化を登録された。しかし、病変の記載は群間で同様であり、動物の数が少ないことに基づけば、3つの研究群間に明確な差を認めることができないと結論付けられた。上皮剥離は、組織サンプリングの人為的結果として見ることができることに留意されたい。100および50ppmのHOClのマスク吸入は、生理食塩水対照群と比較して重大な所見の増加と関連付けることができないと結論付けられる。
【0249】
結論として、生理食塩水対照を含む全ての群で所見が見られたが、ISに起因すると考えられる所見は、IS処置動物には存在しなかった。本研究に基づけば、マスクによる投与では、ISの無毒性量は100ppm(8.8mL)であった。
実施例9.1.3:インビボ複数回投与安全性研究
【0250】
最大耐用量を評価して、その後のGLP研究における用量の選択を補助するために、ミニブタでのインビボ吸入モデルでISを試験した。鼻を覆うマスクによって、1.2、2.3または5.4μg/Lのエアロゾル濃度で(50、100または200ppmのHOCl+0.25%酢酸、pH5.5、等張を使用)、健康なミニブタ(n=6;群あたり雄1匹および雌1匹の3つの群)を7日間毎日処置した。毎日の処置期間は60分であり、各動物は、50、100および200ppmのISを毎日投与された群において、それぞれ19.9、19.1または22.2mLを受けた。ISの7日間の吸入後、8日目に動物を安楽死させた。研究の間、臨床状態、体重、餌消費、血液学(末梢血)、血液化学、臓器重量、肉眼的病理および組織病理調査を行った。達成されたエアロゾル濃度および製剤の名目上の次亜塩素酸塩濃度から計算されたHOCl濃度は、それぞれ第1、2および3群についての目標の99%、92%および110%であった。臨床状態、体重、餌消費、血液学もしくは血液化学パラメータ、または臓器重量に対する試験項目に関連した影響は存在せず、項目に関連した肉眼的病理または組織病理所見は存在しなかった。フェイスマスクを介して1日当たり60分間、7日間連続してゲッティンゲンミニブタに投与された場合、ISは十分に忍容されると結論付けられ、50、100または200ppmの濃度は、ゲッティンゲンミニブタにおけるより長期の毒性研究での60分間の毎日の曝露に適していると考えられた。
[実施例10]
実施例10:創傷洗浄溶液(WIS)の細胞傷害性
【0251】
200ppmのHOClでの創傷洗浄溶液(WIS)のインビトロ細胞傷害性を、2つの細胞傷害性研究において評価した。研究の目的は、インビトロで培養された哺乳動物L929細胞に対してWISが毒性であるかどうかを決定することであった。試験は、ISO10993-5に記載される方法に準拠し、試験品の製剤は、ISO10993-12に準拠して調製した。以下のサブセクションは、インビトロ細胞傷害性研究を要約する。
実施例10.1:WIS(200ppmのHOCl)のインビトロ細胞傷害性
【0252】
培養された哺乳動物細胞(マウス線維芽細胞)に対する潜在的な細胞傷害活性を決定するために、0.25%酢酸および200ppmのHOCl、pH:4.3を含有する試験品WIS(SOF0001/05-01)を調べた。試験は、米国薬局方、方法<87>およびISO10993-5ガイドラインに従って実施した。
【0253】
完全細胞培養培地(10%ウシ胎児血清および50μg/mLゲンタマイシンを補充したHamのF12培地)を用いて、WIS(SOF0001/05-01)の製剤を調製した。0.2gの試験品/mL希釈剤媒体の希釈剤比を使用した。希釈せずに、また製剤1部+新鮮な細胞培養培地3部で希釈してこの製剤を試験した。
【0254】
陽性対照(ラウリル硫酸ナトリウム(SLS)、0.2mg/mL)および非処理対照培養物(陰性対照としても機能し、完全細胞培養培地で処理した)を本研究に含めた。3つ組の細胞培養物を各試験点で48時間処理した。対照処理は適切な応答をもたらし、試験系の正しい機能および感度を実証した。希釈された製剤は傷害性を示さなかった(すべての場合において細胞傷害性グレード0)が、希釈されていない製剤は細胞傷害性を示した(すべての場合において細胞傷害性グレード4)。
【0255】
本研究の試験条件下(長時間の曝露、48時間)では、希釈されていないWIS(0.25%酢酸および200ppmの次亜塩素酸、pH:4.3)は、培養されたL929細胞に対して細胞傷害性効果を示した。これらの結果に基づいて、WIS0.25%酢酸および200ppm次亜塩素酸、pH:4.3は、細胞傷害性グレードが>2であったので、ISO10993-5およびUSP<87>の要件を満たさなかったと結論付けられる。しかしながら、WISの希釈された製剤(SOF0001/05-01)は毒性を示さなかった(全ての場合において細胞傷害性グレード0)。
実施例10.2:WIS(200および448ppmのHOCl)のインビトロ細胞傷害性
【0256】
本研究では、WIS(200ppmのHOCl、0.25%酢酸)、SOF003/53(448ppmのHOCl、1%酢酸)およびSOF003/51(200ppmのHOCl、1%酢酸)製剤のインビトロ細胞傷害性を評価した。適用されたインビトロアッセイは、製剤への1、4、24および48時間の曝露後に、破裂した細胞膜からの乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)の放出および細胞株NCTCクローン929(L-929)における代謝活性(MTT)を測定する。アッセイは、EUNCL SOP(EUNCL-GTA-03)に従って実施した。
【0257】
試験した全ての製剤について、試験した濃度(10~0.005%)および曝露期間(1、4、24および48時間)で有意な膜破裂は測定されなかった。
【0258】
ISO-10993-5国際規格のガイドラインによれば、2つの最も短い曝露期間(1および4時間)において、いずれのWIS製剤もNCTCクローン929(L-929)細胞で細胞傷害効果(すなわち、細胞生存率の30%を超える低下)を引き起こさなかった。
【0259】
曝露の24時間および48時間後、WISは細胞に対して細胞傷害効果を有さなかった(すなわち、細胞生存率の30%未満の低下)のに対して、SOF003/53およびSOF003/51製剤はこれらの時点で細胞傷害性を誘導した(すなわち、それぞれ24時間の曝露後に生存率を40~45%および48時間後に55~60%低下させた。)。
[実施例11]
実施例11:吸入溶液(IS)の遺伝毒性
【0260】
ISを用いたGLPインビトロ研究は、Charles River Laboratories,Hungaryで行われている。
実施例11.1:インビトロ細菌復帰変異アッセイ
【0261】
Bacterial Reverse Mutation Assayを使用して、潜在的突然変異誘発活性について本発明の吸入溶液を試験した。本研究は、GLPに従って実施した。
【0262】
フェノバルビタール/β-ナフトフラボンで誘導されたラットの肝臓から調製したミトコンドリア後上清(S9画分)の存在下および非存在下で、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)(ネズミチフス菌TA98、TA100、TA1535およびTA1537)のヒスチジン要求性栄養要求性株および大腸菌(大腸菌WP2 uvrA)のトリプトファン要求性栄養要求性株を用いて実験を行った。本研究には、Preliminary Compatibility TestおよびAssay 1(Plate Incorporation Method)が含まれた。以下の濃度が選択され、以下のように適切な書類とともに、スポンサーによって提供された:50ppm、100ppm、200ppmおよび500ppm、これらは0.05、0.1、0.2および0.5mg/mLに相当する。最も高い処理体積(500μL)では、これらは25、50、100および250μg/プレートに相当し、これらの濃度をAssay 1において使用した。細胞傷害性のために、それぞれ、6.3μL、20μL、63.2μLおよび200μLで供給される材料の処理体積を使用して、50ppm試験品濃度のプレート当たりのより少ない処理体積:0.3162、1.0、3.162および10μg/プレートで、追加の処理プレート濃度も使用した。最大試験濃度は250μgであり、最小は0.3162μgの試験品/プレートであった(合計8つの濃度)。250、100および50μg/プレート濃度で代謝活性化なし、および250μg/プレート濃度で代謝活性化ありで、試験品の阻害的、細胞傷害効果(非存在/わずかに低下したバックグラウンド菌叢発達)が調べた全ての細菌株で観察された。
【0263】
アッセイでは、溶媒対照と比較して、復帰突然変異体コロニーの数は生物学的に関連する増加を示さなかった。再現性のある用量関連の傾向は存在せず、処置に関連する影響は認められなかった。
【0264】
この変異原性アッセイの報告されたデータは、適用された実験条件下で、試験品が、使用された株のゲノムにおいて塩基対変化またはフレームシフトによって遺伝子変異を誘導しなかったことを示し、したがって、結論として、ISは、本研究において使用された試験条件下で変異原性活性を有していなかった。
実施例11.2:インビトロ哺乳動物細胞小核アッセイ
【0265】
マウスリンパ腫L5178Y TK+/-3.7.2C細胞を使用して、インビトロ小核試験において本発明の吸入溶液を試験した。本研究は、GLPに従って実施した。2つのアッセイを行った(アッセイ1およびアッセイ2)。両アッセイにおいて、代謝活性化を伴う3時間の処理(S9-ミックスの存在下)ならびに代謝活性化を伴わない3時間および24時間の処理(S9-ミックスの非存在下)を行った。処理開始から24時間後にサンプリングを行った。
【0266】
アッセイ1(代謝活性化ありおよびなし)における試験品の調査された濃度は、スポンサーによって、以下のように選択および提供され:50ppm、100ppm、200ppmおよび500ppm、これらは、OECD No.487ガイドライン(10%(v/v))で決定された場合に1mLであった処理値を考慮すると、最終処理培地中での0.05、0.1、0.2および0.5mg/mLに相当する。アッセイ1では、試験品の過剰な細胞傷害性が観察されたため、研究を終了した。選択された濃度間隔は、少なくとも3つの試験濃度が許容性基準を満たす(適切な細胞傷害性範囲内にある)ことを評価するのに十分に精密化されていなかった。本アッセイにおいては、約40%未満の細胞数の相対的増加(RICC)を有する任意の結果は許容され得ず、使用した濃度がガイドライン基準を満たすのに十分であったことを実証するために、目標は、本アッセイにおいて達成された約40%~50%の細胞傷害性を有することであるべきである。したがって、細胞傷害性効果に関するさらなる情報を与えるために、および規制上の許容性基準を満たすために、改変された、より近接して間隔を置いた濃度で、さらなる実験(アッセイ2)を行った。
【0267】
アッセイ2(代謝活性化ありおよびなし)における試験品の調査された濃度はアッセイ1と同じであったが、さらなるより低い処理濃度が適用された。したがって、代謝活性化ありでの短い処理の場合の評価については、10、5および2μg/mL(合計3つ)の許容され得る濃度が選択され、代謝活性化なしでの短い処理の場合の評価については、6、2および1μg/mL(合計3つ)の濃度が選択され、代謝活性化なしでの長い処理の場合の評価については、7、6、2および1ppm(合計4つ)の濃度が選択された。代謝活性化ありおよびなしの実験における適切な陰性(ビヒクル)対照値と比較した場合、いずれの処理濃度も、小核化された細胞の数の生物学的または統計学的に有意な増加を引き起こさなかった。
【0268】
結論として、ISは、代謝活性化ありおよびなしで行われた実験において、小核化されたマウスリンパ腫L5178Y TK+/-3.7.2C細胞の頻度の統計的にまたは生物学的に有意な再現性のある増加を引き起こさなかった。したがって、ISは、本研究の条件下で、この試験系において遺伝毒性ではないと考えられた。
[実施例12]
実施例12:他の毒性研究
実施例12.1:インビトロ肺サーファクタント機能性
【0269】
肺サーファクタント機能に対する本発明の吸入溶液の影響を評価するために、本発明の吸入溶液をシミュレートされた肺胞モデルにおいて試験した。肺サーファクタントは肺の表面張力を低下させ、呼吸中の正常な拡張および収縮を可能にする。肺サーファクタントを妨害するエアロゾルの吸入は、毒性応答を誘発し得る。
【0270】
試験方法は、肺サーファクタント表面張力を定量化しながら、シミュレートされた呼吸サイクル中に少量の肺サーファクタントを噴霧されたISに曝露することを含んでいた。表面張力の変化を評価した。
方法
【0271】
肺サーファクタント機能に対する生成物の効果を試験するために、拘束液滴表面張力計の機構を通した、以前に十分に記載された定流量を使用した。この方法は、インビボ研究と比較した場合、有害物質の検出において100%の感度を示した。
【0272】
(肺胞を模倣するために)肺サーファクタントのシミュレートされた呼吸サイクル中に、一滴の肺サーファクタント(10μg)を噴霧された500ppmのHOCl IS(5分間にわたって5mL)に曝露した。インビボで無気肺を誘発するような潜在的な非常に低い表面張力(10mN/m未満)を検出するために、軸対称液滴振盪(shake)分析によって表面張力を連続的に評価した。
結果
【0273】
肺サーファクタントが最高濃度(500ppmのHOCl+0.25%酢酸、pH5.5、等張)の噴霧された吸入生成物に曝露された場合、肺サーファクタント機能の阻害は測定されなかった。0.9%NaCl(対照)についても同様の結果が得られた。
実施例12.2:単離ニワトリ眼球法を用いた眼刺激試験
【0274】
溶液は口および鼻に送達されるので、眼に対して起こり得る刺激特性を調べるための研究を行った。ガイドラインOECD 438に記載されている方法に従って、GLP研究、Test for Ocular Irritation:Isolated Chicken Eye Method with Inhalation Solution(SIS)を実施した。4つの濃度のIS、それぞれ500、200、100または50ppmの次亜塩素酸(HOCl)がスポンサーによって提供された。研究は2日間にわたって行われ、それぞれの日を実験(すなわち、実験1および実験2)と称した。各実験では、3つの眼を30μLの試験品(実験1では500ppmまたは200ppmおよび実験2では100ppmまたは50ppm)で処理した。各実験では、30μLの5%(w/v)塩化ベンザルコニウム溶液を用いて、3つの陽性対照眼球を同様に処理した。陰性対照の眼球は、30μLの生理食塩水(0.9%(w/v)NaCl溶液)で処理した。角膜厚、角膜混濁およびフルオレセイン保持を測定し、任意の形態学的影響(例えば、上皮の陥凹または緩み)を評価した。
【0275】
本研究に使用された全ての眼球から得られた結果は、品質管理基準を満たした。陰性対照および陽性対照の結果は、本実験における過去の対照データ範囲内であった。したがって、本研究は妥当であると考えられた。
【0276】
ガイドラインによれば、本研究の結果は、非刺激性または著しい刺激性またはさらなる情報が必要とされるもののいずれかという3つのカテゴリーの1つに試験物質が割り当てられることである。異なる濃度の吸入溶液(SIS)を用いた単離ニワトリ眼球におけるこのインビトロ眼球刺激アッセイに基づいて、500ppm、200ppmおよび100ppmの試験品濃度は、さらなる情報を必要とすると分類された。これらの濃度でのインビボ研究が示唆される。50ppmの試験品濃度は、非刺激性として分類された。
[実施例13]
実施例13:吸入溶液(IS)を用いた抗菌試験
【0277】
浮遊性に増殖したグラム陽性菌(黄色ブドウ球菌)およびグラム陰性菌(緑膿菌)に対する抗菌アッセイにおいて本発明の吸入溶液を試験したところ、10~25ppmのHOClの濃度で両方の細菌の効率的な死滅を示した。試験は、コペンハーゲン大学Costerton Biofilm Centerで行った。このような試験の結果を以下の4に示す。
【表4】
【0278】
結果:表4に見られるように、緑膿菌に対して10ppmのHOClで既に抗菌効果が見られ、いずれの細菌も25ppmのHOClで増殖しなかった。
【0279】
要約:本発明の吸入溶液は、それぞれ25ppmおよび10ppm、ならびにそれらより上のHOCl濃度で、グラム陽性菌(黄色ブドウ球菌)およびグラム陰性菌(緑膿菌)を効率的に根絶する。IS25ppmのHOClでは、すべての細菌に対して完全な効果が見られた。
【0280】
これらの観察に基づいて、ISの製造中の任意の潜在的な細菌汚染は、HOClの広域スペクトル抗菌活性によって生成物中で直ちに根絶されることは明らかである。したがって、エンドトキシンを産生するには細菌を要するので、エンドトキシンが産生される可能性は極めて低い。
[実施例14]
実施例14:ワクシニアウイルスに対するISの規格EN14476(25ppmのHOClで開始)による抗ウイルス活性
【0281】
一般的な殺ウイルス活性に関するEN14476は、化学消毒剤および消毒薬に対して行われる。これは、医療分野において殺ウイルス活性を評価するための定量的懸濁試験であり、認定された研究室によって行われる。
【表5】
n.d.=実施せず
【0282】
ISの結果:ISの試験生成物、50%希釈として50ppm、25ppmのHOClは、きれいな条件下で1分間の曝露時間後にワクシナ(vaccina)ウイルスを不活化することができた(表5参照)。したがって、30分後または60分後には、活性は測定しなかった。減少係数は、≧4.25+0.33(1分)であった。EN14476規格によれば、ワクシニアウイルスに対する抗ウイルス活性を有する生成物は、すべてのエンベロープを有するウイルスに対して活性であると考えられる。
【0283】
手指および表面消毒剤の結果:手指消毒剤および表面消毒剤溶液(HOCl、200+30ppm、HAc0.25%、pH4.3)に対しても、殺生物性製品規制に従うEN試験を実施した。結果は、大腸菌、真菌、酵母およびワクシナ(vaccina)ウイルスに対する抗菌効率を示す(データは示さず)。
【0284】
要約:全てのEN試験は、手指消毒剤および表面消毒剤に対する規格に従って、1分から30秒までの酵母、真菌、細菌およびウイルスの迅速かつ効果的な不活性化を示す。ISの結果は、手指消毒剤溶液と著しく異ならず、25ppmのHOClでも同様の消毒特性を示す。
[実施例15]
実施例15:抗菌効果試験
【0285】
保存効力試験は、USP42-NF37 2Sの<51>章有効性またはPh.Eur.5.1.3抗菌保存に従って実施され得る。溶液バッチ(pH4.3、ISに対する代表的なHOClバッチに様々な微生物および以下を混入させ、USP42-NF37 2Sの<51>章による試験を以下の表6に示す:
【表6】
【0286】
結果および要約:USP42-NF37 2Sの<51>章に記載されている抗菌効果試験の合格基準は、14日目と28日目の両方ですべての試験微生物について満たされた。さらに、ISの最低濃度は、抗菌効果についてUSP42-NF37 2Sの<51>章に従って試験され得る。
[実施例16]
実施例16:最小発育阻止濃度(MIC)試験
【0287】
ISに代表的な微量液体希釈法(試験物質、HOCl溶液、pH4.3の最高濃度の希釈物、100ppmのHOCl+1%酢酸および希釈物)によって、5つの病原性細菌株に対する最小発育阻止濃度(MIC)の決定を行った。マイクロタイタートレイ中での処理後24時間のインキュベーションの後、光学密度を測定して増殖を評価した。さらに、翌日、懸濁液を寒天上に撒き、増殖に関して制御した。全ての試験は、Biofilm Test Facility、University of Copenhagen、Faculty of Health and Medical Sciences、Department of Immunology and Microbiologyで行った。
【表7】
【0288】
結果:試験した全ての微生物について、MICは25ppmのHOCl+0.25%酢酸であった。増殖は、光学密度(プレートリーダー)およびMueller Hinton寒天プレート上での増殖の両方によって決定した。
ISの微生物学的属性に関する結論
【0289】
10ppmのHOClから始まる本発明の吸入溶液(IS)生成物および他の代表的なHOCl製剤を用いて行われた抗菌試験の結果は、IS生成物が優れた抗菌活性を有することを明確に支持し、したがって、本発明者らは、他の代表的な生成物については、ISも微生物を一切含まずに送達されるはずであると確信している。これは、pH4.3およびpH5.5の両方で生成物(SIS)中のHOClの抗菌活性が広域であるためであり、溶液中のHOClの酸形態が非常に優勢(>99.1%)である。これは、HOCl(酸形態)の抗菌活性に関する文献報告によって、および既に承認され、市場で販売されている様々なヘルスケア製品(例えば、創傷洗浄/リンス溶液)中で微生物の増殖を阻害するための防腐剤としてHOClが使用されてきたことによっても裏付けられる。したがって、ISは、非無菌、非滅菌設備で製造される。
【国際調査報告】