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特表2023-533029トロンボキサンレセプターアンタゴニスト製剤
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】トロンボキサンレセプターアンタゴニスト製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/277 20060101AFI20230725BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20230725BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230725BHJP
   A61P 17/04 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61K31/277
A61K47/32
A61K47/38
A61K9/14
A61K9/20
A61K9/48
A61P11/00
A61P11/06
A61P9/12
A61P43/00 105
A61P29/00
A61P37/02
A61P17/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P21/00
A61P9/00
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/10 101
A61P35/00
A61P31/12
A61P17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501078
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-03-03
(86)【国際出願番号】 EP2021068672
(87)【国際公開番号】W WO2022008515
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/048,856
(32)【優先日】2020-07-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】320012934
【氏名又は名称】エイティーエックスエー セラピューティクス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】キンセラ, ビー. テレーズ
(72)【発明者】
【氏名】リード, ヘレン
(72)【発明者】
【氏名】マルバニー, エイモン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076AA36
4C076AA53
4C076BB01
4C076CC11
4C076CC15
4C076CC18
4C076CC27
4C076CC35
4C076EE07
4C076EE07A
4C076EE12
4C076EE12A
4C076EE13
4C076EE13A
4C076EE16
4C076EE16A
4C076EE32
4C076EE32A
4C076EE48
4C076EE48A
4C076FF01
4C206AA01
4C206AA02
4C206JA17
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA05
4C206MA55
4C206MA57
4C206MA63
4C206MA72
4C206NA02
4C206NA11
4C206ZA36
4C206ZA37
4C206ZA42
4C206ZA45
4C206ZA59
4C206ZA89
4C206ZA94
4C206ZA96
4C206ZB07
4C206ZB11
4C206ZB15
4C206ZB21
4C206ZB26
4C206ZB33
(57)【要約】
本発明は、トロンボキサンレセプターアンタゴニストのバイオアベイラビリティーを増強し、上記アンタゴニストが、プロスタノイドトロンボキサンAおよび偶発的なトロンボキサンAレセプターリガンドが関係する疾患適応症に罹患している被験体において、トロンボキサンAレセプターに結合することを可能にする製剤を提供する。上記製剤は、ベンゼンスルホニルウレア、および経口または他の送達経路を介する投与に適したポリマーを含む固体分散物を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
置換されたベンゼンスルホニルウレアを含む薬物;および
薬学的に受容可能なポリマー、
を含む固体分散物を含む製剤。
【請求項2】
前記ポリマーは、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、ジメチルアミノエチルメタクリレート-コポリマーまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースである、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
前記薬学的に受容可能なポリマーは、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーである、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
前記製剤は、無定形固体分散物である、請求項3に記載の製剤。
【請求項5】
前記製剤は、噴霧乾燥分散物である、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
経口投与形態に製剤化される、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記経口投与形態は、錠剤、バイアル、サシェまたはカプセル剤の形態にある、請求項6に記載の製剤。
【請求項8】
高いpH環境よりも低いpH環境において前記製剤が溶解しにくい、請求項1に記載の製剤。
【請求項9】
2未満のpHにおいて前記製剤は溶解しない、請求項3に記載の製剤。
【請求項10】
5より高いpHにおいて前記製剤は実質的に溶解する、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
前記ベンゼンスルホニルウレア 対 ポリマーの比は、約1:1~約1:8の間、好ましくは約1:4である、請求項5に記載の製剤。
【請求項12】
前記ベンゼンスルホニルウレア 対 ポリマーの比は、1:4である、請求項5に記載の製剤。
【請求項13】
前記ベンゼンスルホニルウレアは、式(I)の化合物:
【化13】
であって、ここで
は、シクロアルキル基、アルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化ヘテロシクロアルキル基、メトキシ基、ハロゲン化メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ハロゲン化エトキシ基、ハロゲン化イソプロポキシ基、ハロゲン化tert-ブトキシ基、一級アミド(-CONH)、二級アミド(-CONHCH)、三級アミド(-CONH(CH)、またはニトリル基であり;
は、2~6個の炭素のアルキル基、および2~6個の炭素のハロゲン化アルキル基であり;
は、ニトリル基もしくはニトロ基である、
化合物、またはその薬学的に受容可能な塩である、請求項11または12に記載の製剤。
【請求項14】
は、シクロアルキル基、アルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化ヘテロシクロアルキル基、メトキシ基、ハロゲン化メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ハロゲン化エトキシ基、ハロゲン化イソプロポキシ基、ハロゲン化tert-ブトキシ基、一級アミド(-CONH)、二級アミド(-CONHCH)、三級アミド(-CONH(CH)、またはニトリル基であり、
は、tertブチル基であり;
は、ニトリル基である、
請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
前記置換されたベンゼンスルホニルウレアは、以下の式:
【化14】
の化合物である、請求項11に記載の製剤。
【請求項16】
式(IV):
【化15】
の化合物;および
ビニルピロリドン-酢酸ビニル、
を含み、ここで前記式(IV)の化合物:前記ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーの比は、約1:1~1:8の間である、製剤。
【請求項17】
前記比は、約1:4であり;2未満のpHでは、前記製剤は溶解せず;5より高いpHでは、前記製剤は実質的に溶解する、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
前記製剤は、噴霧乾燥分散物である、請求項17に記載の製剤。
【請求項19】
経口投与形態に製剤化される、請求項18に記載の製剤。
【請求項20】
前記経口投与形態は、錠剤、バイアル、サシェまたはカプセル剤の形態にある、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
肺状態の処置における使用のための、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
前記肺状態は、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、COVID-19関連肺高血圧症、COVID-19関連肺微小血管塞栓症、COVID-19関連肺線維症、肺の炎症、皮膚筋炎、特発性肺線維症、曝露/職業性間質性肺疾患、処置関連の間質性肺疾患、多発性筋炎、肺動脈性高血圧症、肺線維症、肺高血圧症、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、および全身性エリテマトーデスからなる群より選択される、請求項21に記載の製剤。
【請求項23】
心血管状態の処置における使用のための、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項24】
前記心血管状態は、心不全、筋ジストロフィー、特発性拡張型心筋症、糖尿病性心筋症、アテローム血栓症、脳卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化性血管疾患、血栓塞栓症、深部静脈血栓症、動脈血栓症、COVID-19関連心微小血管塞栓症、COVID-19関連全身性微小血管塞栓症、虚血、末梢血管疾患、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈疾患、狭心症、および一過性脳虚血発作からなる群より選択される、請求項23に記載の製剤。
【請求項25】
増殖性障害の処置における使用のための、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項26】
前記増殖性障害は、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸がん、食道がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、肺がんおよび卵巣がんからなる群より選択される、請求項25に記載の製剤。
【請求項27】
皮膚障害の処置における使用のための、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項28】
前記皮膚障害は、掻痒症(かゆみ)、皮膚炎(アトピー性皮膚炎を含む)からなる群より選択される、請求項27に記載の製剤。
【請求項29】
ウイルス感染の処置における使用のための、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項30】
肺動脈性高血圧症の処置における使用のための、請求項1~20のいずれか1項に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本開示は、トロンボキサンレセプターアンタゴニストの経口送達製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
背景
TプロスタノイドトロンボキサンAのレベルにおける不均衡またはそのレセプターのシグナル伝達における不均衡に苦しんでいる個体は、身体の多数の重要な系(心血管系、腎臓系、肺系、および前立腺系を含む)に干渉する障害に罹患している可能性がある。より近年になって、TプロスタノイドトロンボキサンA、TプロスタノイドトロンボキサンAシンターゼ、およびTプロスタノイドレセプターはまた、新生物疾患状態(TプロスタノイドトロンボキサンAが、腫瘍促進作用の中でも腫瘍細胞増殖、移動、侵襲、血管新生、炎症および免疫を促進し得る膀胱、前立腺、乳房および肺のがんを含む)に関連があった。
【0003】
TプロスタノイドトロンボキサンAおよびそのレセプターの役割の知識にもかかわらず、多くの個体は、適切な処置を受けることなく、これらの不均衡およびそれらの壊滅的な影響に苦しみ続けている。旧来の治療アプローチは、TプロスタノイドトロンボキサンAの生合成を阻害することを目的とする。これらの中には、非ステロイド性抗炎症薬といわれるシクロオキシゲナーゼインヒビターのクラスがある。これは、アスピリン、ならびに関連シクロオキシゲナーゼ1および/またはシクロオキシゲナーゼ2インヒビターを含む。低用量アスピリンは、TプロスタノイドトロンボキサンA生成を阻害することによって、心血管エピソードのリスクにある患者において過剰な血栓症を防止するために未だに広く使用されている。
【0004】
しかし、低用量アスピリンの使用が関わるアプローチは、十分に有効ではなく、他のプロスタノイド(プロスタグランジンD、プロスタグランジンE、プロスタグランジンF2αおよびプロスタグランジンI/プロスタサイクリン)の合成を無差別に阻害することに起因して、関連する副作用を引き起こす。有効性がないことがまた起こり得る。なぜなら一般的集団のうちの比較的高いパーセンテージが、アスピリン治療に応じてTプロスタノイドトロンボキサンAレベルを低下させることに概して失敗する原因となるアスピリン耐性を示すからである。さらに、有害な心血管エピソードの発生率の増大は、シクロオキシゲナーゼIB(シクロオキシゲナーゼ2選択的インヒビター)治療を受けている患者において起こり得る。
【0005】
結果として、TプロスタノイドトロンボキサンA不均衡を有する多くの個体は、有効な処置を受けられずに、または部分的にのみ有効な処置の副作用に苦しみ続ける。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
要旨
本開示は、ヒト使用に関する経口投与のためのビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを有するトロンボキサンAレセプターアンタゴニスト薬物の製剤を提供する。上記薬物は、胃の低いpHにおいて保護され、薬物:ポリマー複合体として無傷のままであるが、最大限の吸収のために腸のより高いpHにおける溶解の準備ができている。本発明は、効果的にプロスタノイドトロンボキサンレベルの均衡をとるために、上記トロンボキサンレセプターアンタゴニストがプロスタノイドトロンボキサンA不均衡に苦しんでいる被験体においてプロスタノイドトロンボキサンAレセプターに結合することを可能にする製剤を提供する。上記製剤は、トロンボキサンレセプターアンタゴニストおよび経口投与に適した薬学的に受容可能なポリマーを含む固体分散物を含む。いったん本発明の製剤が投与されると、心血管系、腎臓系、肺系、および前立腺系は、機能障害および最終的な崩壊(collapse)からレスキューされ得る。さらに、TプロスタノイドトロンボキサンA関連障害に由来する膀胱、前立腺、乳房および肺のがんのリスクおよび増殖は、防止され得る。
【0007】
本発明の製剤の置換されたベンゼンスルホニルウレア化合物は、トロンボキサンAレセプターに結合し、血小板、種々のタイプの平滑筋細胞、内皮細胞、単球/マクロファージ、ケラチノサイト、一次求心性ニューロンおよび免疫系のある特定の細胞が挙げられるが、これらに限定されないトロンボキサンAレセプターが発現される心血管系、腎臓系、肺系、または他の系内で、血栓症および他の事象を阻害し得る。
【0008】
置換されたベンゼンスルホニルウレア化合物は、良好な透過性を有するが、不十分な溶解度を有し得る。これは、それらのバイオアベイラビリティーを、特に経口製剤において有意に低下させ得る。有利なことには、本発明の製剤は、置換されたベンゼンスルホニルウレアを含む薬物の顕著な溶解度増強を提供し、それらの吸収および経口バイオアベイラビリティーを最大化する。結果として、上記製剤は、pH約1.6を有する胃の酸性環境から保護されるが、pH約6.5を有し、これが最大限吸収され得る腸のより高いpH環境においては分散する。本発明の製剤は、適切な経口投与形態を提供し得る。本発明の製剤は、相対的に不十分な溶解度を有する置換されたベンゼンスルホニルウレアを含む薬物が、溶解度増強とともに、その吸収、経口バイオアベイラビリティー、および曝露を最大化することを可能にし得る。
【0009】
本発明の製剤は、高いpH環境よりも低いpH環境においてより不溶性であり得る。例えば、本発明の製剤は、2未満のpHにおいて実質的に不溶性であり得る。本発明の製剤は、5より高いpHにおいて実質的に可溶性であり得る。
【0010】
本発明の製剤は、このような化合物が、TプロスタノイドトロンボキサンA(肺において生成される主な血管収縮プロスタグランジン)を阻害するのみならず、TプロスタノイドトロンボキサンA自体の作用に加えて、酸化的ストレス由来イソプロスタン 8-イソ-プロスタグランジンF2αの有害作用をも阻害するという点で、使用される他の肺動脈性高血圧症治療剤を超える付加的な利点を有し得る。肺動脈性高血圧症に加えて、アテローム血栓症のような他の疾患において、標準治療であるアスピリンを本発明の製剤で置き換えることは、本発明の製剤が、(i)TプロスタノイドトロンボキサンA、プロスタグランジンG/プロスタグランジンHおよび20-ヒドロキシエイコサテトラエン酸の作用を遮断し得るのみならず、アスピリン非感受性トロンボキサンAレセプターアゴニスト(例えば、酸化的傷害の間のフリーラジカルによって多量に生成される8-イソ-プロスタグランジンF2α)もまた遮断し得る;(ii)同様に(アスピリンとは異なり)、血管床の細胞および循環するマクロファージ/単球において発現され、炎症性のアテローム血栓症の間に存在するトロンボキサンAレセプターを阻害する;(iii)集団のうちの約33%において起こると予測されるアスピリン耐性を克服し得ることから、いくつかの利点を提供する。
【0011】
本発明の製剤のポリマーは、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーであり得る。上記ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、BASF SE(Ludwigshafen, Germany)によって商標KOLLIDON VA64の下で販売されるとおりのビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーであり得る。本発明の製剤のポリマーは、ジメチルアミノエチルメタクリレート-コポリマー(例えば、Evonik Industries AG(Essen, Germany)によって商標EUDRAGIT EPOの下で販売されるジメチルアミノエチルメタクリレート-コポリマー)であり得る。
【0012】
本発明の製剤のポリマーは、メタクリル酸およびメチルメタクリレートアニオン性コポリマーであり得る。上記メタクリル酸およびメチルメタクリレートコポリマーは、Evonik Industries AG(Essen, Germany)によって商標EUDRAGIT L100の下で販売されるとおりであり得る。
【0013】
本発明の製剤のポリマーは、ポリマー、ヒドロキシプロピルメチルセルロースまたはヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネートであり得る。
【0014】
本発明の製剤のポリマーは、可塑剤(例えば、ポリオキシル40水素添加ヒマシ油またはBASFによって商標KOLLIPHOR RH40の下で販売されるマクロゴールグリセロールヒドロキシステアレートのような可溶化剤および乳化剤)と合わされ得る。
【0015】
本発明の製剤は、無定形固体分散物であり得る。本発明の製剤は、噴霧乾燥分散物であり得る。有利なことには、上記製剤は、経口投与形態に製剤化され得る。
【0016】
本発明の製剤アプローチ、例えば、噴霧固体分散物製剤の利点は、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが、ベンゼンスルホニルウレアへの保護を付与し得、上記製剤を胃の低いpHから遮蔽し(例えば、pH 約1.6を有する絶食状態模倣胃液(Fasted State Simulated Gastric Fluid)(FaSSGF)中での薬物溶解試験を通じて模倣され得るとおり)、小腸のより高いpHへの通過の際(例えば、pH 約6.5を有する絶食状態模倣腸液(Fasted State Simulated Intestinal Fluid)(FaSSIF)中で模倣されるとおり)に実質的にベンゼンスルホニルウレアが放出されるまでベンゼンスルホニルウレア:ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー複合体中でそれを維持することである。有利なことには、ベンゼンスルホニルウレア:ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー噴霧固体分散物製剤中のベンゼンスルホニルウレアは、胃の酸性環境(約pH1.6)から保護され、それが最大限吸収され得る腸のより高いpH環境において分散する。
【0017】
経口投与形態はさらに、錠剤、バイアル、サシェ(sachet)またはカプセル剤の形態にあり得る。
【0018】
上記製剤は、1:1~1:8の間のベンゼンスルホニルウレア 対 ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーの比をさらに含み得る。例えば、上記製剤は、1:4のベンゼンスルホニルウレア:ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーの比を含みうる。
【0019】
有利なことには、本発明の製剤は、必要性のある患者において、肺動脈性高血圧症、他の肺および心肺疾患、アテローム血栓症、脳卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化性血管疾患、血栓塞栓症、深部静脈血栓症、動脈血栓症、虚血、末梢血管疾患、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈疾患、狭心症、腎臓疾患、泌尿器系疾患および一過性脳虚血発作からなる群より選択される状態を処置する方法、またはその状態の処置における使用のための方法であって、上記方法は、患者に本発明の製剤を投与する工程を包含する方法において使用され得る。
【0020】
有利なことには、本発明の製剤は、必要性のある患者において、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸がん、食道がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、肺がんおよび卵巣がん(これらが挙げられるが、これらに限定されない)からなる群より選択される増殖性障害を処置する方法またはその障害を処置することにおける使用のための方法であって、上記方法は、患者に本発明の製剤を投与する工程を包含する方法において使用され得る。
【0021】
有利なことには、本発明の製剤は、必要性のある患者において、肺炎、肺高血圧症、肺動脈性高血圧症、間質性肺疾患、特発性肺線維症、喘息、急性肺炎症および慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられるが、これらに限定されない肺状態からなる群より選択されるウイルス感染、炎症または線維性の状態を処置する方法またはこれらを処置することにおける使用のための方法であって、上記方法は、患者に、本発明の製剤を投与する工程を包含する方法において使用され得る。
【0022】
本発明の局面において、本発明の製剤において使用される置換されたベンゼンスルホニルウレアを含む薬物は、式(I)の化合物:
【化1】
であって、ここで
は、シクロアルキル基、アルキル基、ヘテロシクロアルキル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化ヘテロシクロアルキル基、メトキシ基、ハロゲン化メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ハロゲン化エトキシ基、ハロゲン化イソプロポキシ基、ハロゲン化tert-ブトキシ基、一級アミド(-CONH)、二級アミド(-CONHCH)、三級アミド(-CONH(CH)、またはニトリル基であり;Rは、2~6個の炭素のアルキル基、および2~6個の炭素のハロゲン化アルキル基であり;そしてRは、ニトリル基もしくはニトロ基である化合物、またはその薬学的に受容可能な塩である。好ましい実施形態において、Rは、ニトリル基である。
【0023】
本発明の局面において、上記ベンゼンスルホニルウレアは、式(IV)の化合物:
【化2】
である。
【0024】
本発明の一局面において、式(IV)の化合物:
【化3】
および
1:4の式(IV)の化合物:ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーの比率のビニルピロリドン-酢酸ビニル、
を含む製剤であって、
ここで上記製剤は、2未満のpHにおいて実質的に不溶性であり、5より高いpHにおいて実質的に可溶性である、
製剤が提供される。
【0025】
上記製剤は、噴霧乾燥分散物であり得る。
【0026】
上記製剤はさらに、経口投与形態として製剤化され得る。上記経口投与形態は、錠剤、バイアル、サシェまたはカプセル剤の形態にあり得る。
【0027】
有利なことには、本発明の製剤は、必要性のある患者において、肺動脈性高血圧症、他の肺および心肺疾患、アテローム血栓症、脳卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化性血管疾患、血栓塞栓症、深部静脈血栓症、動脈血栓症、虚血、末梢血管疾患、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈疾患、狭心症、腎臓疾患、泌尿器系疾患、および一過性脳虚血発作からなる群より選択される状態を処置する方法またはこれらを処置することにおける使用のための方法であって、上記方法は、患者に、本発明の製剤を投与する工程を包含する方法において使用され得る。
【0028】
有利なことには、本発明の製剤は、必要性のある患者において、非ホジキンリンパ腫、結腸直腸がん、食道がん、前立腺がん、卵巣がん、乳がん、膵臓がん、膀胱がん、結腸がん、肺がんおよび卵巣がんからなる群より選択される増殖性障害を処置する方法またはこれらを処置することにおける使用のための方法であって、上記方法は、患者に、本発明の製剤を投与する工程を包含する方法において使用され得る。
【0029】
有利なことには、本発明の製剤は、必要性のある患者において、肺炎、肺高血圧症、肺動脈性高血圧症、間質性肺疾患、特発性肺線維症、喘息、急性肺炎症および慢性閉塞性肺疾患(COPD)が挙げられるが、これらに限定されない肺状態からなる群より選択されるウイルス感染、炎症または線維性の状態を処置する方法またはこれらを処置することにおける使用のための方法であって、上記方法は、患者に、本発明の製剤を投与する工程を包含する方法において使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1図1は、本発明の製剤の放出率のグラフを示す。
【0031】
図2図2は、本発明の製剤の放出率のグラフを示す。
【0032】
図3図3は、本発明の製剤の放出率のグラフを示す。
【0033】
図4図4は、本発明の製剤の放出率のグラフを示す。
【0034】
図5図5は、本発明の製剤の放出率のグラフを示す。
【0035】
図6図6は、本発明の製剤の薬物動態データの表を示す。
【0036】
図7図7は、ベンゼンスルホニルウレアおよびポリマーの製剤の放出率を示す。
【0037】
図8図8は、ベンゼンスルホニルウレアおよびポリマーの製剤の放出率を示す。
【0038】
図9図9は、ベンゼンスルホニルウレアおよびポリマーの製剤の放出率を示す。
【0039】
図10図10は、本発明の製剤の放出率のグラフを示す。
【0040】
図11図11は、本発明の製剤の放出率のグラフを示す。
【0041】
図12図12は、本発明の製剤の放出率のグラフを示す。
【0042】
図13図13は、本発明の製剤の放出率のグラフを示す。
【0043】
図14図14は、本発明の製剤の薬物動態データの表を示す。
【0044】
図15図15は、前臨床有効性試験の実験デザインを図示する。
【0045】
図16図16は、平均肺動脈圧(mPAP)を示す結果を与える。
【0046】
図17図17は、右室収縮期圧(RVSP)を示す結果を与える。
【0047】
図18図18は、全身動脈圧を示す結果を与える。
【0048】
図19図19は、心拍数を示す結果を与える。
【0049】
図20図20は、肺血管リモデリング(血管閉塞)を示す。
【0050】
図21図21は、肺血管リモデリング(筋肥大した血管(muscularised vessel))を示す。
【0051】
図22図22は、心肥大(Fulton指数)を示す結果を与える。
【0052】
図23図23は、右室線維症を示す結果を与える。
【0053】
図24図24は、肺線維症を示す結果を与える。
【0054】
図25図25は、肺の炎症(CD68+ マクロファージ)を示す結果を与える。
【0055】
図26図26は、ラットにおけるMCT PAHに対するNTP42:KVA4の効果を示す表である。
【0056】
図27図27は、肺血管リモデリングを示す肺組織切片を示す。
【0057】
図28図28は、全血血小板凝固アッセイ(whole blood platelet aggregation assay)の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0058】
詳細な説明
本発明は、ベンゼンスルホニルウレアおよびポリマーを含む製剤を提供し、上記ポリマーは、ベンゼンスルホニルウレアのバイオアベイラビリティーに、プロスタノイドトロンボキサンA、および以下に列挙した偶発的なトロンボキサンAレセプターリガンドが関連している疾患適応症に罹患する被験体において、それがプロスタノイドトロンボキサンAレセプターに結合させることを可能にする。上記製剤は、ベンゼンスルホニルウレアおよび経口投与に適したポリマー(例えば、ビニルピロリドン-酢酸ビニル)を含む固体分散物を含む。ベンゼンスルホニルウレアは、TプロスタノイドトロンボキサンAのアンタゴニスト、および他の偶発的なトロンボキサンAレセプターリガンド(トロンボキサンAレセプターに結合し、血小板活性化および凝集を刺激し、それによって、臨床上顕著な血栓もしくは塞栓のリスクを減少させるか、または心血管系、腎臓系、肺系もしくは他の系(例えば、皮膚の状態が挙げられるが、これらに限定されない)の細胞において発現されるトロンボキサンAレセプターαおよび/もしくはトロンボキサンAレセプターβアイソフォームに拮抗するエンドペルオキシド プロスタグランジンG/H、20-ヒドロキシエイコサテトラエン酸およびイソプロスタン(例えば、8-イソ-プロスタグランジンF2α)を含む)である。従って、本発明の製剤は、心血管系、腎臓系、肺系、掻痒症(かゆみ)、皮膚炎、またはトロンボキサンAレセプターが発現されるおよび/もしくはそのリガンドが調節不全にされる他の系内の血栓症、炎症、線維症、細胞増殖、血管リモデリングおよび他の事象を処置するための有益な薬学的特性を提供する。
【0059】
本発明の製剤において使用される置換されたベンゼンスルホニルウレアを含む薬物は、式(I)の化合物:
【化4】
であって、ここで
は、シクロアルキル基、アルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化ヘテロシクロアルキル基、メトキシ基、ハロゲン化メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ハロゲン化エトキシ基、ハロゲン化イソプロポキシ基、ハロゲン化tert-ブトキシ基、一級アミド(-CONH)、二級アミド (-CONHCH)、三級アミド(-CONH(CH)、またはニトリル基であり;Rは、2~6個の炭素のアルキル基、および2~6個の炭素のハロゲン化アルキル基であり;そしてRは、ニトリル基またはニトロ基である化合物、またはその薬学的に受容可能な塩であり得る。好ましい実施形態において、Rは、ニトリル基である。
【0060】
本発明の製剤は、Rがtertブチル基であり、Rがニトリル基であり;そしてRがシクロアルキル基、アルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化ヘテロシクロアルキル基、メトキシ基、ハロゲン化メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ハロゲン化エトキシ基、ハロゲン化イソプロポキシ基、ハロゲン化tert-ブトキシ基、一級アミド、二級アミド、三級アミド、またはニトリル基であるベンゼンスルホニルウレアを含み得る。
【0061】
本発明の局面において、上記置換されたベンゼンスルホニルウレアは、式(IV)の化合物:
【化5】
である。
【0062】
さらなるベンゼンスルホニルウレアは、本発明の製剤において使用され得る。
【0063】
上記置換されたベンゼンスルホニルウレアは、以下で記載される化合物のうちの1またはこれより多くのものであり得る。例えば、上記ベンゼンスルホニルウレアは、式(I)によって表される化合物であって:ここでRは、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化ヘテロシクロアルキル基、メトキシ基、ハロゲン化メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ハロゲン化エトキシ基、ハロゲン化イソプロポキシ基、ハロゲン化tert-ブトキシ基、一級アミド、二級アミド、三級アミド、OH、ハロゲン、COH、メチルケトン、ニトリル基、メチルエステル基、エチルエステル基、イソプロピルエステル基、tert-ブチルエステル基、ハロゲン化メチルエステル基、ハロゲン化エチルエステル基、ハロゲン化イソプロピルエステル基、およびハロゲン化tert-ブチルエステル基からなる群より選択され;そしてRは、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、およびハロゲン化アリール基からなる群より選択される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩であり得る。好ましい実施形態において、Rは、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化ヘテロシクロアルキル基、メトキシ基、ハロゲン化メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ハロゲン化エトキシ基、ハロゲン化イソプロポキシ基、ハロゲン化tert-ブトキシ基、一級アミド、二級アミド、三級アミド、およびニトリル基からなる群より選択され;そしてRは、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、およびハロゲン化アリール基からなる群より選択される、化合物またはその薬学的に受容可能な塩であり得る。
【0064】
ある特定の実施形態において、本発明は、Rが、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化メトキシ基、一級アミド、二級アミド、三級アミド、およびニトリル基からなる群より選択され;そしてRが、3~6個の炭素のアルキル基、および3~6個の炭素のハロゲン化アルキル基からなる群より選択される式(I)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0065】
ある特定の実施形態において、本発明は、Rが、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、一級アミド、二級アミド、三級アミド、およびニトリル基からなる群より選択され;そしてRが、6個もしくはこれより少ない炭素のアルキル基および6個もしくはこれより少ない炭素のハロゲン化アルキル基からなる群より選択される式(I)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0066】
他の実施形態に置いて、本発明は、式(II)の化合物:
【化6】
であって、ここでRは、ハロゲン、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化ヘテロシクロアルキル基、メトキシ基、ハロゲン化メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ハロゲン化エトキシ基、ハロゲン化イソプロポキシ基、ハロゲン化tert-ブトキシ基、一級アミド、二級アミド、三級アミド、OH、ハロゲン、COH、メチルケトン、ニトリル基、メチルエステル基、エチルエステル基、イソプロピルエステル基、tert-ブチルエステル基、ハロゲン化メチルエステル基、ハロゲン化エチルエステル基、ハロゲン化イソプロピルエステル基、およびハロゲン化tert-ブチルエステル基からなる群より選択され;そしてRは、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、およびハロゲン化アリール基からなる群より選択される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0067】
他の実施形態において、本発明は、Rが、ハロゲン、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化シクロアルキル基、ハロゲン化アリール基、ハロゲン化ヘテロシクロアルキル基、メトキシ基、ハロゲン化メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert-ブトキシ基、ハロゲン化エトキシ基、ハロゲン化イソプロポキシ基、ハロゲン化tert-ブトキシ基、一級アミド、二級アミド、三級アミド、およびニトリル基からなる群より選択され;そしてRが、2~6個の炭素のアルキル基および2~6個の炭素のハロゲン化アルキル基からなる群より選択される式(II)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0068】
他の実施形態において、本発明は、Rが、ハロゲン化アルキル基、ハロゲン化メトキシ基、一級アミド、二級アミド、三級アミド、およびニトリル基からなる群より選択され;そしてRが3~6個の炭素のアルキル基である式(II)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0069】
遙かに好ましい実施形態において、本発明は、Rが、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、一級アミド、二級アミド、三級アミド、およびニトリル基からなる群より選択され;そしてRが、3~5個の炭素のアルキル基および3~5個の炭素のハロゲン化アルキル基からなる群より選択される式(II)の化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0070】
実施形態において、本発明は、式(III)の化合物:
【化7】
であって、ここでRは、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ジフルオロメトキシ基、トリフルオロメトキシ基、一級アミド、二級アミド、三級アミド、およびニトリル基からなる群より選択される化合物、またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。例えば、上記化合物は、式(IV)、(V)、(VI)、(VII)、(VIII)、(IX)、(X)、または(XI):
【化8】
【化9】
【化10】
【化11】
によって表され得る。
【0071】
本発明の製剤において使用され得る置換されたベンゼンスルホニルウレアは、米国特許第9,388,127号;同第9,522,877号;同第9,630,915号;同第9,738,599号;同第9,718,781号;同第9,932,304号;同第10,357,504号;および同第10,966,994号、ならびにWO 2015/185989(全て参考として援用される)に記載されるとおりであり得る。
【0072】
本発明の製剤は、肺動脈性高血圧症のための治療薬として作用し得、過剰な血管収縮を阻害するのみならず、微小血栓症をも防止し、潜在的には、肺動脈性高血圧症において見出される肺動脈リモデリング、右室肥大、内皮細胞機能障害、線維症および局所炎症を制限し得る。本発明の製剤はまた、肺動脈性高血圧症に関係する炎症または増殖経路を直接的に抑制し得る。本発明の製剤はまた、8-イソ-プロスタグランジンF2α、(肺動脈性高血圧症の臨床状況において、および酸化的ストレスまたは傷害が関わり、TプロスタノイドトロンボキサンAに類似の作用を媒介する他の疾患において大量に生成されるフリーラジカル由来イソプロスタン)の作用に拮抗し得るかまたはそれを防止し得、本発明の化合物はまた、肺動脈性高血圧症においてこれらの効果に拮抗する。さらに、TプロスタノイドトロンボキサンAは、血管リモデリング、再狭窄および/または肥大を促進する強力な炎症促進性の、線維症促進性の、ならびに分裂促進因子であり、肺内の主要なシクロオキシゲナーゼ由来収縮プロスタノイドであることから、本発明の製剤は、これらの効果に拮抗し得る。さらに、8-イソ-プロスタグランジンF2αは、血管リモデリング、再狭窄および/または肥大を促進する強力な炎症促進性の、線維症促進性の、ならびに分裂促進因子であり、肺動脈性高血圧症を有する患者において多量に見出されるかまたは上昇していることから、本発明の製剤は、これらの効果に拮抗し得る。
【0073】
本発明の製剤は、強力なトロンボキサンAレセプターアンタゴニスト活性を示し、例えば、エキソビボで、1~10nMのIC50でヒト血小板の凝集を阻害する。本発明の製剤は、優れた特異性、薬物動態、薬力学、および毒性学プロフィール(肺動脈性高血圧症、血栓症および心血管疾患、腎疾患、肺疾患、ならびに乳がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がんおよび他のがんを処置することにおけるものが挙げられる)を有する。
【0074】
本発明の製剤は、ある特定の他の付随的なリガンド(例えば、エンドペルオキシド プロスタグランジンG/プロスタグランジンH(これらの各々は、トロンボキサンAレセプターのアゴニストまたは部分的アゴニストとして作用する))に加えて、TプロスタノイドトロンボキサンAおよびフリーラジカル由来イソプロスタン 8-イソ-プロスタグランジン(プロスタグランジン)F2αの作用を阻害する。上記トロンボキサンAレセプターは、身体全体を通じて特異的細胞タイプのある範囲において発現され、その発現は、いくつかの疾患適応症において変化する。本発明の製剤は、それらの細胞タイプの各々において、および異なる疾患状況(例えば、肺動脈性高血圧症)において発現されるトロンボキサンAレセプター(トロンボキサンAレセプターαおよび/またはトロンボキサンAレセプターβを含む)を標的化する。本発明の製剤のベンゼンスルホニルウレアは、TプロスタノイドトロンボキサンA、8-イソ-プロスタグランジンF2αまたはトロンボキサンAレセプター自体が関連していた他の疾患の処置において使用され得る。これらとしては、種々の心血管疾患(血栓症、種々の高血圧症(全身性高血圧症および妊娠誘発性高血圧症、末梢動脈疾患(arterial peripheral disease)を含む)が挙げられる)、肺疾患(喘息、肺高血圧症、肺動脈性高血圧症、慢性閉塞性肺疾患、間質性肺疾患、特発性肺線維症が挙げられる)および腎疾患(糸球体腎炎および腎性高血圧症が挙げられる)が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の製剤はまた、前立腺疾患(例えば、良性前立腺肥大)、種々の炎症促進性疾患(炎症性の心血管、腎臓、肺、ウイルス感染/微生物感染後が挙げられるが、これらに限定されない)および新生物疾患(例えば、乳がん、肺がんまたは去勢抵抗性前立腺がんを含む前立腺がん)の処置において適用を有する。
【0075】
本発明の製剤は、任意の薬物形式(例えば、経口、静脈内、腹腔内、肺、皮膚、経皮送達システム、髄腔内デバイスにおいてまたは医療用デバイス上で(例えば、ポンプ、緩徐放出ポンプ(slow-release pump)、ステントまたは薬物溶離ステント上で)使用され得る。有利なことには、本発明の製剤は、経口投与形態に関して増大されたバイオアベイラビリティーを提供する。本発明の好ましい局面において、上記製剤は、経口投与形態として製剤化される。
【0076】
上記製剤は、経口投与形態にあってもよく、上記形態は、錠剤、バイアル、サシェまたはカプセル剤であり得る。上記製剤は、散剤、ペレット、マルチ粒子(multi-particulate)、ビーズ、エマルジョン、スフェアまたはこれらの任意の組み合わせの形態にあり得る。経口固体投与形態は、即時放出製剤、制御放出製剤、持続放出(長期放出)製剤または改変放出製剤として製剤化され得る。
【0077】
上記製剤の有効投与量は、患者の年齢、体重、性別および臨床歴のような代表的な要因を考慮して、当業者によって容易に決定され得る。代表的な投与量は、例えば、1~1,000mg/kg、好ましくは5~500mg/kg/日、または約5mg/kg未満のベンゼンスルホニルウレアであり得、例えば、1日に1回、1日に数回、2日ごと、数日ごと、1週間に1回、2週間に2回、または1ヶ月に1回、または限られた回数(例えば、1回だけ、2回もしくは3回、またはより多くの回数)投与され得る。
【0078】
本発明の製剤は、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、急速溶解剤(fast-melt)、サシェ、水性もしくは油性の懸濁物、分散性の散剤もしくは顆粒剤、エマルジョン、硬質もしくは軟質カプセル剤、またはシロップもしくはエリキシル剤として経口使用に適した形態にあり得る。経口使用が意図された製剤は、製剤の製造に関して当該分野で公知の任意の方法に従って調製され得、このような組成物は、薬学的に洗練されかつ口当たりの良い調製物を提供するために、甘味剤、矯味矯臭剤、着色剤および保存剤から選択される1種またはこれより多くの作用物質を含み得る。錠剤は、錠剤の製造に適した非毒性の薬学的に受容可能な賦形剤と混合した状態で活性成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウムまたはリン酸ナトリウム);造粒剤および崩壊剤(例えば、コーンスターチ、またはアルギン酸);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチンまたはアカシアガム)、および滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸またはタルク)であり得る。上記錠剤またはカプセル剤は、コーティングされなくてもよいし、胃での崩壊および消化管下部での吸収を遅らせ、それによって長期間にわたる持続した作用を提供するために公知の技術によってコーティングされてもよい。例えば、時間遅延物質(time delay material)(例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル)が使用され得る。それらはまた、制御放出のための浸透圧治療用錠剤を形成するために、米国特許第4,256,108号および同第4,265,874号に記載される技術によってコーティングされ得る。化合物の調製および投与は、米国特許第6,214,841号および米国特許出願公開2003/0232877号(各々参考として援用される)において考察される。
【0079】
経口使用のための製剤はまた、上記活性成分が、不活性固体希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリン)と混合された硬質ゼラチンカプセル剤として、または上記活性成分が水もしくは油性媒体(例えば、ラッカセイ油、流動パラフィンまたはオリーブ油)と混合された軟質ゼラチンカプセル剤として提示され得る。
【0080】
上記化合物または活性成分の消化管加水分解の制御が求められる代替の経口製剤は、本発明の化合物が、腸溶性コーティング(例えば、置換されたベンゼンスルホニルウレアおよびビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む薬物の複合体を含む腸溶性コーティング)中に被包されている制御放出製剤を使用して達成され得る。
【0081】
水性懸濁物は、水性懸濁物の製造に適した賦形剤と混合した状態で上記製剤を含み得る。このような賦形剤は、懸濁化剤(例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、トラガカントガムおよびアカシアガム);分散剤もしくは湿潤剤(例えば、天然に存在するホスファチド(例えば、レシチン)、またはアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンステアレート)、またはエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、またはエチレンオキシドと、脂肪酸およびヘキシトールから得られる部分エステル(例えば、ポリオキシエチレンと脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られる部分エステル)との縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)である。上記水性懸濁物はまた、1またはこれより多くの保存剤(例えば、エチル、またはn-プロピルp-ヒドロキシベンゾエート)、または1またはこれより多くの着色剤、1またはこれより多くの矯味矯臭剤、および1またはこれより多くの甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン)を含み得る。
【0082】
油性懸濁物は、上記製剤を、植物油(例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油またはココナッツ油)中で、または鉱油(例えば、流動パラフィン)中で懸濁することによって製剤化され得る。上記油性懸濁物は、増粘剤(例えば、蜜蝋、固形パラフィンまたはセチルアルコール)を含み得る。甘味剤(例えば、上記で示されるもの)および矯味矯臭剤は、口当たりの良い経口調製物を提供するために添加され得る。これらの製剤は、抗酸化剤(例えば、アスコルビン酸)の添加によって保存され得る。
【0083】
水の添加による水性懸濁物の調製に適した分散性の散剤および顆粒剤は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁化剤および1若しくはこれより多くの保存剤と混合した状態で上記製剤を提供する。適切な分散剤もしくは湿潤剤および懸濁化剤は例証されており、例えば、甘味剤、矯味矯臭剤および着色剤がまた、存在し得る。
【0084】
本発明の製剤はまた、水中油型エマルジョンの形態にあり得る。その油相は、植物油(例えば、オリーブ油またはラッカセイ油)、または鉱油(例えば、流動パラフィン)またはこれらの混合物であり得る。適切な乳化剤は、天然に存在するガム(例えば、アカシアガムまたはトラガカントガム)、天然に存在するホスファチド(例えば、ダイズレシチン)、および脂肪酸およびヘキシトール無水物から得られるエステルもしくは部分エステル(例えば、ソルビタンモノオレエート)および上記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)であり得る。上記エマルジョンはまた、甘味剤および矯味矯臭剤を含み得る。
【0085】
シロップおよびエリキシル剤は、甘味剤(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトールまたはスクロース)とともに製剤化され得る。このような製剤はまた、粘滑薬、保存剤ならびに矯味矯臭剤および着色剤を含み得る。上記製剤は、滅菌注射用水性懸濁物または油性懸濁物の形態にあり得る。この懸濁物は、上述されている適切な分散剤または湿潤剤および懸濁化剤を使用して公知の技術に従って製剤化され得る。適切な滅菌注射用調製物はまた、非毒性の非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中にある滅菌注射用液剤または懸濁物にあり得る(例えば、1,3-ブタンジオール中の液剤として)。使用され得る受容可能なビヒクルおよび溶媒の中には、水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液がある。さらに、滅菌不揮発性油が、溶媒または懸濁媒体として従来から使用されている。この目的のために、任意の無刺激の不揮発性油が使用され得る(合成モノグリセリドまえたはジグリセリドが挙げられる)。さらに、脂肪酸(例えば、オレイン酸)は、注射物の調製における用途が見出される。
【0086】
上記製剤はまた、上記薬物の直腸投与のための坐剤の形態において投与され得る。これらの製剤は、上記製剤と、通常の温度では固体であるが、直腸の温度では液体であり、従って、直腸では薬物を放出するように融解する適切な非刺激性の賦形剤とを混合することによって調製され得る。このような物質の例は、カカオ脂およびポリエチレングリコールである。
【0087】
上記製剤は、粒度を変化させ、それによって、種々の形態において、例えば、肺経路を通じて送達を促進するように調整され得る。有利なことには、上記製剤は、肺経路を介した投与のために適切であり得る(例えば、吸入可能なエアロゾルまたはネブライザーシステムを使用する)。有利なことには、上記製剤は、広く種々の疾患状況において適用を有し得る。
【0088】
本発明の製剤は、製造においてスケールアップされ得、ヒトにおける経口投与を介する使用に適切であり得る。本発明の製剤のスケールアップされた製造は、効率的で、再現可能なかつ堅固な化学的プロセスにおいて高品質の製剤を提供した。本発明の製剤は、産業的製造に適しており、医薬品の製造管理及び品質管理の基準による手順および医薬品規制調和国際会議の規制ガイドラインを満たし得る。
【0089】
本発明の局面において、本発明の製剤中のポリマーは、 ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーであり得る。ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、ビニルピロリドンおよび酢酸ビニルのフリーラジカル重合によって生成される直線状コポリマーである。上記ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーにおけるビニルピロリドン 対 酢酸ビニルの比は、7:3~3:7のビニルピロリドン 対 酢酸ビニルの範囲の比であり得る。
【0090】
上記ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、Ludwigshafen(Germany)のBASF SEによって販売されるとおりのビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーであり得る(例えば、商標KOLLIDON VA64の下で販売される製品)。上記ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、6:4の比にあるビニルピロリドン:酢酸ビニルを含み得る。上記ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、Buehler, 2009, Kollidon: Polyvinylpyrrolidone excipients for the pharmaceutical industry, BASF SE Pharma Ingredients & Services, 第9版(KOLLIDON VA64として販売される製品の製品ガイドの下でBASF SEのウェブサイトにおいて入手可能である)(その内容は、本明細書に参考として援用される)に記載されるとおりであり得る。
【0091】
ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、造粒用の可溶性結合剤として、直接圧縮技術における乾燥-結合剤として、スプレーにおいてフィルム形成剤として、コーティングにおける孔形成剤として、味覚マスキング適用において、およびホットメルト押し出しプロセスにおける可溶化剤として使用されるコポリマーである。ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、全ての親水性溶媒中に容易に溶解し、10%を超える濃度の溶液は、水、エタノール、イソプロパノール、塩化メチレン、グリセロールおよびプロピレングリコール中で調製され得る。ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、エーテル、環式、脂肪族、および脂環式炭化水素中でそれほど可溶性でなくてもよい。有利なことには、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、天然の結合剤より費用効果的であり得る。
【0092】
本発明の局面において、本発明の製剤におけるポリマーは、ジメチルアミノエチルメタクリレート-コポリマーであり得る。ジメチルアミノエチルメタクリレート-コポリマーは、アクリル酸およびメタクリル酸またはこれらのエステルの重合によって生成されるコポリマーである。ある特定の実施形態は、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートに基づくカチオン性コポリマーを含む。例えば、上記ポリマーは、IUPAC名: ポリ(ブチルメタクリレート-co-(2-デメチルアミノエチル(demethylaminoeethyl))メタクリレート-co-メチルメタクリレート) 1:2:1、ジメチル-アミノエチルメタクリレート-コポリマーを有し得る。このようなポリマーは、低粘性、高顔料結合能、良好な接着、および低ポリマー重量増加によって特徴づけられ得る。実施形態は、CAS番号 24938-16-7およびINCI名: アクリレート/ジメチルアミノエチルメタクリレートコポリマーを有する。ある特定の実施形態は、Evonik Industries AG(Essen, Germany)によって商標EUDRAGIT(登録商標) EPOの下で販売されるとおりのジメチルアミノエチルメタクリレート-コポリマーを使用する。EUDRAGIT(登録商標) EPO(EE)カチオン性ポリマーは、約150,000の平均相対的分子量を有し、ブチルメタクリレート、2-ジメチルアミノエチルメタクリレート、およびメチルメタクリレートの共重合によって調製される。ジメチルアミノエチルメタクリレート基 対 ブチルメタクリレートおよびメチルメタクリレート基の比は、約2:1:1である。Chang, 2009, Polymethacrylates, monograph at pp. 525-533 of Handbook of Pharmaceutical Excipients, 第6版, Roweら編, Pharmaceutical Press (London, UK)(参考として援用される)を参照のこと。
【0093】
ジメチルアミノエチルメタクリレート-コポリマーは、フィルムコーティング、融解、湿式もしくは乾式造粒、ホットメルト押し出し、微小被包化および噴霧乾燥として使用されるコポリマーである。
【0094】
本発明の製剤は、無定形固体分散物であり得る。固体分散物は、固体状態において親水性不活性キャリア中の1またはこれより多くの疎水性活性成分の分散物である。固体分散物は、例えば、融解、溶媒エバポレーション、融合法、混練法、融解法、噴霧乾燥法、共粉砕(co-grinding)法、凍結乾燥技術、ホットメルト押し出し、溶融凝集(melt agglomeration)、超臨界流体技術によって調製され得る。無定形固体分散物は、無定形の活性な薬学的成分と比較した場合に改善された物理的安定性を有するシステムを生成するために、 賦形剤(一般にはポリマー)によって安定化された活性な薬学的成分を含む分子システムである。無定形固体分散物において、上記システムは、好ましくは結晶性の証拠を示さない。
【0095】
上記製剤は、噴霧乾燥分散物を含み得る。噴霧乾燥分散物は、活性な薬学的成分とポリマーとを、安定な無定形固体分散物中で共沈させることによって形成される分散物である。噴霧乾燥は、溶解速度を改善し得、可溶性が不十分な化合物のバイオアベイラビリティーを増強し得る。
【0096】
噴霧乾燥分散物は、置換されたベンゼンスルホニルウレアおよびポリマーの溶媒溶液を先ず作製することによって形成され得る。これは、ベンゼンスルホニルウレアの必要量を秤量し、これを溶媒溶液へと添加し、上記溶液を機械的に混合し、ポリマーを秤量し、上記ポリマーをベンゼンスルホニルウレア-溶媒溶液へと添加し、上記溶液を機械的に混合することによって行われ得る。本発明の局面において、上記溶媒は、アセトンであり得る。本発明の局面において、上記アセトンは、上記溶媒溶液のうちの90%超を構成する。本発明の局面において、上記溶媒は、3:1の比のジクロロメタン(dicholomethane):メタノールであり得る。
【0097】
次いで、上記溶液は、噴霧乾燥され得、置換されたベンゼンスルホニルウレア:ポリマーバルク中間体が作製される。噴霧乾燥は、高い入口温度(例えば、約80℃またはこれより高い温度)および約45℃の出口温度において行われ得る。噴霧乾燥は、約55℃または60℃のエバポレーション温度で行われ得る。
【0098】
バルク中間体は、次いで、二次乾燥に供され得、噴霧固体分散物粉末が形成される。噴霧固体分散物粉末は、一次容器または送達ビヒクル中に容易にパッケージングされるという利点を提供する。二次乾燥は、残留溶媒(例えば、溶媒としてアセトンが使用される場合には、アセトン)をエバポレートするために、ロータリードライヤーによって行われ得る。本発明の好ましい局面において、上記噴霧固体分散物製剤は、5,000ppm未満の溶媒を含む。
【0099】
本発明の代替の局面において、上記無定形固体分散物製剤は、溶媒非含有ホットメルト押し出しにおいて形成され得る。ホットメルト押し出しにおいて、上記薬物およびポリマーは融解され、一緒に混合されて、溶媒の非存在下で無定形固体を形成する。有利なことには、ホットメルト押し出しプロセスにおいて、溶媒が存在しないことが原因で、水の導入は、製造プロセスから低減または排除される。
【0100】
上記製造プロセスの別の代替の局面において、溶媒/界面活性剤プロセスは、本発明の製剤を形成するために使用され得る。溶媒/界面活性剤プロセスにおいて、自己乳化薬物送達システムまたは自己微小乳化-薬物送達システム(SMEDDS)は、界面活性剤を含む親水性の相によって取り囲まれた疎水性の相内に本発明の製剤を被包するために使用される。上記親水性の相はまた、共溶媒を、特に、SMEDDSプロセスにおいて含み得る。
【0101】
上記製剤は、置換されたベンゼンスルホニルウレアを含む薬物、および薬学的に受容可能なビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー(例えば、BASF SE(本部はLudwigshafen(Germany))によって販売されるビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー、例えば、商標KOLLIDON(登録商標) VA64の下で販売される製品)の噴霧乾燥分散物を含み得る。ベンゼンスルホニルウレア薬物 対 ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーの比は、1:4であり得る。例えば、上記製剤は、式(IV)の化合物:
【化12】
およびビニルピロリドン-酢酸ビニルを1:4の式(IV)の化合物 対 ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーの比において含み得る。
【0102】
本発明の製剤アプローチ、例えば、噴霧固体分散物製剤の利点は、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが、ベンゼンスルホニルウレア薬物と特有の複合体を形成し得、そうすることで、上記ベンゼンスルホニルウレアの保護を付与し、それを胃の低いpH(例えば、pH約1.6を有する絶食状態模倣胃液(FaSSGF)における薬物溶解試験を通じて模倣され得るとおり)から遮蔽またはマスクし、ベンゼンスルホニルウレア:ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー複合体におけるベンゼンスルホニルウレアが、小腸のより高いpH(例えば、pH約6.5を有する絶食状態模倣腸液(FaSSIF)において模倣されるとおり)への通過に際して実質的に放出されるまでそれを維持するということである。有利なことには、ベンゼンスルホニルウレア:ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマー噴霧固体分散物製剤におけるベンゼンスルホニルウレアは、胃の酸性環境(約pH1.6)から保護され、薬物-ポリマー複合体から胃の胃液自体へと薬物を放出するのではなく、上記薬物を上記薬物-ポリマー複合体からから、それが最大限吸収され得る腸のより高いpH環境において分散する。
【0103】
本発明の製剤は、高いpH環境よりも低いpH環境においてより不溶性であり得る。低いpH環境は、約5より低いpHである。例えば、本発明の製剤は、2未満のpHにおいて実質的に不溶性であり得る。高いpH環境は、p5より高いH環境である。例えば、本発明の製剤は、5.3より高いpHにおいて実質的に可溶性であり得る。
【0104】
溶解度は、別の物質(例えば、溶媒)の所定の量の中に溶解する物質の量である。上記溶媒は、水であってもよいし、胃液または腸液であってもよい。
【0105】
実質的に不溶性は、上記製剤またはベンゼンスルホニルウレアのうちの10%未満が、75分間で溶媒中に溶解することを意味し得る。実質的に不溶性は、上記製剤またはベンゼンスルホニルウレアのうちの30%未満が、75分間で溶媒中に溶解することを意味し得る。実質的に不溶性は、上記製剤またはベンゼンスルホニルウレアのうちの30%未満が、90分間で溶媒中に溶解することを意味し得る。実質的に可溶性は、上記製剤のうちの60%超が、25分間または25分間未満で溶媒中に溶解することを意味し得る。実質的に可溶性は、上記製剤のうちの60%超が、20分間未満で溶媒中に溶解することを意味し得る。実質的に可溶性は、上記製剤のうちの60%超が、15分間未満で溶媒中に溶解することを意味し得る。実質的に可溶性は、上記製剤のうちの60%超が、10分間未満で溶媒中に溶解することを意味し得る。実質的に可溶性は、上記製剤のうちの70%超が、25分間未満で溶媒中に溶解することを意味し得る。
【0106】
本発明の製剤は、ヒトトロンボキサンAレセプターおよびプロスタノイドレセプターが役割を果たすヒト疾患を処置するために使用され得る。本発明の製剤は、ヒトトロンボキサンAレセプターのレベルにおいて発現の変化が存在するヒト疾患を処置するために使用され得る。本発明の製剤は、TプロスタノイドトロンボキサンAのレベルが上昇しているヒト疾患を処置するために使用され得る。本発明の製剤は、ヒトトロンボキサンAレセプターを通じて作用する他の生化学的実体/リガンド(例えば、プロスタグランジンG/プロスタグランジンH、20-ヒドロキシエイコサテトラエン酸または8-イソ プロスタグランジンF2αを含むイソプロスタン)のレベルが上昇したヒト疾患を処置するために使用され得る。本発明の製剤は、ヒトトロンボキサンAレセプターを通じてシグナル伝達する非酵素的なフリーラジカル由来のイソプロスタン(例えば、8-イソ-プロスタグランジンF2α)のレベルが上昇したヒト疾患を処置するために使用され得る。本発明の製剤は、肺動脈性高血圧症の処置における使用のためにトロンボキサンAレセプターに拮抗するために使用され得る。本発明の製剤は、血栓症を、単独で、または他の治療剤との組み合わせでのいずれかで処置するために使用され得る。本発明の製剤は、微小血管血栓症を、単独で、または他の治療剤との組み合わせでのいずれかで処置するために使用され得る。本発明の製剤は、他の心血管疾患(1型および2型糖尿病と関連する心血管疾患が挙げられる)を処置するために使用され得る。適用分野の例としては、種々の心血管疾患の処置(過剰な血小板凝集と関連するアテローム血栓症、虚血性脳卒中、一過性脳虚血発作(TIA)、急性冠症候群の防止を含む)が挙げられるが、これらに限定されない。これらの状態に関して、本発明の製剤は、単独で、または他の治療薬との組み合わせでのいずれかで使用され得る。本発明の製剤は、他の肺疾患(喘息、肺高血圧症、肺動脈性高血圧症、間質性肺疾患、特発性肺線維症が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために使用され得、単独で、または他の治療薬との組み合わせでのいずれかで使用され得る。本発明の製剤は、腎疾患を処置するために使用され得、単独で、または他の治療薬との組み合わせでのいずれかで使用され得る。本発明の製剤は、前立腺疾患(良性前立腺肥大が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために使用され得、単独で、または他の治療薬との組み合わせでのいずれかで使用され得る。本発明の製剤は、炎症性疾患を処置するために使用され得、単独で、または他の治療薬との組み合わせでのいずれかで使用され得る。本発明の製剤は、がんを含む新生物疾患を処置するために使用され得、単独で、または他の治療薬との組み合わせでのいずれかで使用され得る。本発明の製剤は、脳卒中および一過性脳虚血発作を処置するために使用され得、単独で、または他の治療薬との組み合わせでのいずれかで使用され得る。本発明の製剤は、がんを処置するために免疫モジュレーターと組み合わせて使用され得る。本発明の製剤は、調節不全の平滑筋細胞機能(例えば、種々のタイプの高血圧症および外科的ステント留置後の再狭窄が挙げられるが、これらに限定されない)を処置するために使用され得る。本発明の製剤は、調節不全の内皮細胞機能を処置するために使用され得る。
【0107】
援用の表示
他の文書(例えば、特許、特許出願、特許公報、雑誌、書籍、論文、ウェブコンテンツ)に対する言及および引用は、保温開示全体を通じて行われている。全てのこのような文書は、全ての目的のためにそれら全体において本明細書に参考として援用される。
【0108】
均等物
本発明の種々の改変およびその多くのさらなる実施形態は、本明細書で示されかつ記載されるものに加えて、本明細書中で引用される科学文献および特許文献への言及を含めて、この文書の全内容から当業者に明らかになる。本明細書中の主題は、その種々の実施形態およびその均等物において本発明の実施を適合させ得る重要な情報、例証およびガイダンスを含む。
【実施例
【0109】
実施例
本発明は、ヒトトロンボキサンAレセプター(Tプロスタノイドレセプターともいわれる)のトロンボキサンAレセプターαおよび/またはトロンボキサンAレセプターβ(イソ)形態のアンタゴニストとして作用する、ベンゼンスルホニルウレアおよびビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーの製剤の製造および生物学的評価を提供する。これらのトロンボキサンAレセプターアンタゴニストは、上記レセプターのおよびフリーラジカル由来のイソプロスタン 8-イソ-プロスタグランジン(プロスタグランジン)F2α、ならびに上記トロンボキサンAレセプターを活性化する(アゴニストまたは部分的アゴニストとして作用する)全ての他の付随的な薬剤(例えば、エンドペルオキシド プロスタグランジンG/プロスタグランジンHおよび20-ヒドロキシエイコサテトラエン酸)の作用を阻害する(それに拮抗する)。上記トロンボキサンAレセプターは、身体全体を通じてある範囲の細胞タイプにおいて発現され、本明細書で記載される化合物(トロンボキサンAレセプターアンタゴニスト)は、それら細胞タイプの全てにおいて発現されるトロンボキサンAレセプター(トロンボキサンAレセプターαおよび/またはトロンボキサンAレセプターβを含む)を標的化する。さらに、トロンボキサンAレセプターの発現の変化は、ある範囲の疾患状況において起こり、本明細書で記載される化合物(トロンボキサンAレセプターアンタゴニスト)は、それら細胞タイプの全てにおいて、ならびに炎症およびがんにおけるものを含む異なる疾患状況において発現されるトロンボキサンAレセプター(トロンボキサンAレセプターαおよび/またはトロンボキサンAレセプターβを含む)を標的化する。さらに、上記化合物は、経口製剤において使用され得る。
【0110】
実施例1: NTP42:KVA4溶解速度の評価
式IVの置換されたベンゼンスルホンウレアを含む薬物(本明細書中以降、NTP42といわれる)およびビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む製剤を、成功裡に作製した。上記ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、BASF SE(本部はLudwigshafen(Germany))によって商標KOLLIDON(登録商標) VA64(本明細書中以降「KVA」)の下で販売されるビニルピロリドン-酢酸ビニルであった。無定形固体分散物アプローチ、噴霧乾燥分散物を使用して、1:4のNTP42:ポリマー比を有する薬学的に受容可能なビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーKVAを有する製剤(NTP42:KVA4ともいわれる)を作製した。上記製剤を、溶解に関して試験した。
【0111】
図1は、生体関連絶食状態模倣腸液(FaSSIF;pH 6.5)中のNTP42:KVA4の2つのバッチの溶解速度を示す。2つの実証バッチ(PSD-1、バッチ#1およびPSD-1、バッチ#2といわれる)からのNTP42:KVA4のサンプル(10mg)を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルの中に入れ、それらの溶解能力を、FaSSIF, pH 6.5媒体の中で評価した。複数の時点において、上記媒体のサンプルを、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。示されるデータは、各噴霧固体分散物の3回の独立した溶解実験からの平均値±平均の標準誤差(SEM)である。
【0112】
消化管を経る薬物通過の種々の段階を模倣する異なるpHを有する生体関連媒体中でのNTP42:KVA4の溶解を評価することを目的とした詳細な後続試験(pH切り替え試験を含む)において、結晶化も沈殿もせず、所望の無定形薬物生成物として留まるNTP42は、≧pH 4にある媒体へと放出された。
【0113】
図2は、pH 6.5におけるNTP42:KVA4の溶解速度のグラフを示す。NTP42:KVA4のサンプル(10mg)を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル(実線)またはバイアル(破線)の中に入れ、それらの溶解を、FaSSIF(pH 6.5)のみにおいて評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。
【0114】
図3は、先ずpH 1.6において、75分間でpH 6.5までpHを変化させたNTP42:KVA4の溶解速度のグラフを示す。NTP42:KVA4のサンプル(10mg)を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル(実線)またはバイアル(破線)の中に入れ、それらの溶解を、最初に生体関連絶食状態模倣胃液(FaSSGF)、pH 1.6媒体において、続いて、FaSSIF、pH 6.5媒体に切り替えて評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。
【0115】
図4は、pH 5におけるNTP42:KVA4の溶解速度のグラフを示す。NTP42:KVA4のサンプル(10mg)をヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルの中に入れ、それらの溶解を、生体関連摂食状態模倣腸液(FeSSIF)、pH 5のみにおいて評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。
【0116】
図5は、先ずpH 4.5において、75分間でpH 5までpHを変化させたNTP42:KVA4の溶解速度のグラフを示す。NTP42:KVA4のサンプル(10mg)を、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルの中に入れ、それらの溶解を、最初に摂食状態胃溶解媒体(Fed Gastric Dissolution Media)(FEDGAS)、pH 4.5媒体において、続いて、FeSSIF、pH 5媒体に切り替えて評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。
【0117】
示されるように、NTP42:KVA4の溶解は、低いpHにおいて、すなわち、FaSSGF、pH 1.6において起こらなかった。ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、非常に水溶性であり、ここでその溶解度は、pHには無関係である。従って、FaSSGF、pH 1.6中のNTP42:KVA4の溶解の欠如は、驚くべきことであった。さらに、FaSSGF、pH 1.6からFaSSIF、pH 6.5へとpHを切り替える試験において、NTP42は、NTP42:KVA4から容易に放出された。これは、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが、NTP42に対して防御効果を付与し、これを、FaSSGF、pH 1.6という低いpHから遮蔽し、より高いpH(例えば、FaSSIF、pH 6.5)における放出のために複合体中にそれを維持することを示す。
【0118】
実施例2: ラット薬物動態(PK)試験
NTP42:KVA4を、ラット薬物動態試験において評価した。この試験から、「ボトル中の薬物(Drug-in-Bottle)」懸濁製剤または「カプセル中の薬物(Drug-in-Capsule)」の両方として動物に経口的に投与された場合に、優れたバイオアベイラビリティーおよびNTP42薬物曝露が確認された。NTP42を、DMSO、Cremophor-ELおよびPBS(10%: 10%: 80% v/v/v 比)から構成される投与ビヒクル中でIVによって投与した(1mg/kg)。インビボでのラット薬物動態試験における「ボトル中の薬物」および「カプセル中の薬物」形式としての噴霧固体分散物製剤の評価のために、噴霧乾燥した材料を、「カプセル中の薬物」形式に関しては(ii)ゼラチンカプセルおよび(iii)ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルへと充填し、(i)「ボトル中の薬物」形式と比較した。ここで噴霧固体分散物材料を、0.5% ヒドロキシプロピルメチルセルロース-E3(w/v)投与ビヒクル中の懸濁物として投与した。ラットは、薬物投与前に16時間絶食したことに注意のこと。
【0119】
結果を図6に示す。これは、表1、「ボトル中の薬物」懸濁物または「カプセル中の薬物」として絶食したラットへと経口的に送達したNTP42:KVA4の薬物動態データのまとめを示す。示されるデータは、各投与群からの4匹の独立した動物からの平均値である。表1において、AUCは、曲線下面積を意味する;Cmaxは、NTP42の最大血漿濃度を意味する;HPMCは、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを意味する;IVは、静脈内を意味する;そしてTmaxは、NTP42血漿濃度がCmaxに達するためにかかる時間を意味する。
【0120】
実施例3: ポリマー溶解比較
NTP42およびポリマー、BASF SE(本部は、Ludwigshafen(Germany))によって販売されるとおりのビニルピロリドン-酢酸ビニル(例えば、商標KOLLIDON(登録商標) VA64の下で販売される製品(「KVA」と省略))、Evonik Industries AG(本部はEssen(Germany)によって商標EUDRAGIT(登録商標) EPOの下で販売されるポリマー(本明細書中以降「EPO」)、ポリマー ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリマー ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートスクシネート、およびEvonik Industries AG(本部はEssen(Germany))によって商標EUDRAGIT(登録商標) L100の下で販売されるポリマーの製剤を、試験した。ポリマーを、単独で、または可塑剤(例えば、ポリエチレングリコールおよびポリオキシル40水素添加ヒマシ油または商標KOLLIPHOR RH40の下で販売されるマクログリセロールヒドロキシステアレート)の存在下で試験した。
【0121】
図7は、上記製剤の溶解速度のグラフを示す。各無定形固体分散物製剤のサンプルを、バスケットの中に入れ、それらの溶解能力を、リン酸緩衝液、pH 6.5のみにおいて評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、無定形固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。グラフは、各無定形固体分散物に関する3回の独立した溶解実験の代表である。
【0122】
全てのNTP42:ポリマー製剤は、無定形物質を生じた。KVAおよびEPOを含む製剤に関して低レベルの分解が見出され、さらなる試験のために選択した。
【0123】
1:1、1:4、1:8 NTP42:KVAの比におけるNTP42およびKVAの製剤の溶解を、1:4、1:9、および1:19 NTP42:EPOの比におけるNTP42およびEPOの製剤と比較した。さらに、噴霧乾燥プロセスの間に水分への 上記製剤の曝露のレベルを低減するために、賦形剤Syloidの包含を伴う製剤を、1:1:4 NTP42:Syloid:KVA64および1:1:4 NTP42:Syloid:EPOの比において評価した。
【0124】
図8は、上記製剤の溶解速度のグラフを示す。各噴霧固体分散物製剤のサンプルを、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルの中に入れ、それらの溶解能力を、FaSSIF、pH 6.5媒体単独において評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。グラフは、各噴霧固体分散物に関する3回の独立した溶解実験の代表である。
【0125】
図9は、上記製剤の溶解速度のグラフを示す。各噴霧固体分散物製剤のサンプルを、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセルの中に入れ、それらの溶解能力を、最初にFaSSGF、pH 1.6媒体において、続いて、FaSSIF、pH 6.5媒体に切り替えて評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。グラフは、各噴霧固体分散物に関する3回の独立した溶解実験の代表である。
【0126】
示されるように、SSD製剤を、生体関連FaSSIF(pH 6.5)において、およびpH切り替え実験において溶解に関して評価した。ここで溶解を、FaSSGF(pH 1.6)媒体において、続いてFaSSIF、pH 6.5に切り替えて評価した。FaSSIF、pH 6.5中でのNTP42の最大溶解(≧80%)は、薬物:ポリマー比 1:8においてNTP42:ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーに関して観察された。pH切り替え評価に関しては、EPOベースの噴霧固体分散物製剤の最大溶解は、NTP42の約80%放出を有するFaSSGF pH 1.6媒体において観察された。
【0127】
しかし、約30分後に、媒体中に存在するNTP42の迅速な減少によって示されるように、再結晶が起こった。さらに、FaSSGF、pH 1.6からFaSSIF、pH 6.5へのpH切り替えに伴って溶解が増大したが、これは一過性であり、可溶性のNTP42の減少が観察された。
【0128】
低いpHにおいてビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーベースの噴霧固体分散物製剤は溶解しなかったが、FaSSIF(pH 6.5)媒体中では溶解が起こった。ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーの溶解度は、pHに依存しないので、FaSSGF(pH 1.6)媒体中でのNTP42の溶解の欠如は、驚くべきことであった。さらに、FaSSIF、pH 6.5単独で起こったものと比較して減少したが、pH切り替え後に溶解が起こった。
【0129】
FaSSIF(pH 6.5)における刺激的な溶解データ(ここでNTP42のほぼ100%の溶解は、1:8 薬物:ポリマー比にあるNTP42:KVAで観察された)およびFaSSGF(pH 1.6)中でのビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーベースの噴霧固体分散物の溶解の欠如という驚くべき知見に鑑みて、さらなる溶解試験を、1:4および1:8の薬物:ポリマー比においてNTP42:KVAを比較して行った。
【0130】
これらは、以下の調査を含んだ:
(i)FaSSIF(pH 6.5)中、および生体関連FaSSGF、pH 1.6からFaSSIF(pH 6.5)媒体へのpH切り替えでの反復溶解(ここでカプセル中の噴霧固体分散物材料の溶解を、バイアル中のその粉末のものと比較した)
(ii)摂食状態模倣腸液(FeSSIF; pH 5.0)中および生体関連摂食状態胃溶解媒体(FEDGAS、pH 4.5)からFeSSIF(pH 5.0)媒体へのpH切り替えでの溶解。
【0131】
図10は、FaSSGF中のNTP42:KVA製剤からのNTP42の溶解速度のグラフを示す。1:4(NTP42:KVA4)および1:8(NTP42:KVA8) 薬物:ポリマー比の製剤におけるNTP42:KVAのサンプルを、バイアル(実線)中に、または比較のためにヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル(破線)中に入れ、それらの溶解能力を、FaSSIF、pH 6.5媒体単独において評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。グラフは、各噴霧固体分散物に関する3回の独立した溶解実験の代表である。
【0132】
図11は、FASSGFからFASSIF試験におけるNTP42:KVA製剤の溶解速度のグラフを示す。1:4(NTP42:KVA4)および1:8(NTP42:KVA8) 薬物:ポリマー比の製剤におけるNTP42:KVAのサンプルを、バイアル(実線)中に、または比較のためにヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル(破線)中に入れ、それらの溶解能力を、最初にFaSSGF、pH 1.6媒体において、続いて、FaSSIF、pH 6.5媒体へと切り替えて評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。グラフは、各噴霧固体分散物に関する3回の独立した溶解実験の代表である。
【0133】
NTP42およびEPO比較試験の知見と一致して、両方のNTP42:KVA 噴霧固体分散物製剤の溶解は、FaSSIF媒体単独において起こり、ここで溶解の程度は、カプセル中の粉末のものと比較して、バイアル中の噴霧固体分散物粉末に関してより大きかった。pH切り替え溶解試験において、両方のNTP42:KVA製剤の最大溶解を観察した。ここで顕著な改善は、1:4比のNTP42:KVAに関して観察された。これらの溶解試験から、KVAがNTP42の保護を付与し、これを胃の酸性環境(すなわち、FaSSGF、pH 1.6)から保護し、より高いpH(例えば、FaSSIF、pH 6.5)における放出のために複合体中にこれを維持した。
【0134】
図12は、FeSSIF、pH 5中でのNTP42:KVA製剤の溶解速度のグラフを示す。1:4(NTP42:KVA4)および1:8(NTP42:KVA8) 薬物:ポリマー比の製剤におけるNTP42:KVAのサンプルを、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル中に入れ、それらの溶解能力を、FeSSIF、pH 5媒体単独において評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。グラフは、各噴霧固体分散物に関する3回の独立した溶解実験の代表である。
【0135】
図13は、FEDGAS、pH 4.5からFeSSIF、pH 5試験におけるNTP42:KVA製剤の溶解速度のグラフを示す。噴霧固体分散物製剤(1:4および1:8 薬物:ポリマー比におけるNTP42:KVA)のサンプルを、ヒドロキシプロピルメチルセルロースカプセル中に入れ、それらの溶解能力を、FeSSIF、pH 5単独において評価した。示された時点において、上記媒体のサンプルをHPLC分析のために採取して、噴霧固体分散物から放出されたNTP42の量を決定した。グラフは、各噴霧固体分散物に関する3回の独立した溶解実験の代表である。
【0136】
FeSSIF媒体(pH 5)において、NTP42:KVA4の溶解は、NTP42:KVA8の溶解より大きかったが、FEDGASのより低いpH(pH 4.5)では、NTP42:KVA4の溶解は、NTP42:KVA8の溶解より遅かった。
【0137】
実施例4: ポリマー比較のためのラット薬物動態(PK)試験
さらに、1:4および1:8 薬物:ポリマー比におけるNTP42:KVA 噴霧固体分散物製剤は、PK試験においてラットへの経口送達後に、良好な曝露を提供することが確認された。NTP42を、DMSO、Cremophor-ELおよびPBS(10%:10%:80% v/v/v 比)から構成される投与ビヒクル中でIVによって投与した(1mg/kg)。インビボでのラット薬物動態(PK)試験における「ボトル中の薬物」形式としての噴霧固体分散物製剤の評価のために、噴霧乾燥した材料を、投与ビヒクル、0.5% ヒドロキシプロピルメチルセルロース-E3中で投与した。
【0138】
図14は、表2、1:4および1:8 薬物:ポリマー比におけるNTP42:KVA4の薬物動態データのまとめを示す。示されるデータは、各投与群からの4匹の独立した動物の平均値である。表2において、AUCは、曲線下面積を意味する;Cmaxは、NTP42の最大血漿濃度を意味する;IVは、静脈内を意味する;そしてTmaxは、NTP42血漿濃度がCmaxに達するためにかかる時間を意味する。
【0139】
実施例5: ヒト経口投与試験
NTP42:KVA4を、ヒト被験体への経口投与形態において投与する。NTP42:KVA4は、経口投与に適していることが見出される。NTP42:KVA4は、胃の低いpHの中で保護され、薬物:ポリマー複合体として無傷のままであるが、最大限の吸収のために腸のより高いpHにおいて溶解する準備ができている。
【0140】
実施例6: 肺動脈性高血圧症(PAH)のラットモノクロタリン(MCT)モデルにおけるNTP42:KVA4のインビボ有効性の実証
NTP42:KVA4を、肺動脈性高血圧症(PAH)のモノクロタリン(MCT)モデルにおいて前臨床有効性試験で評価する。ここでのデータは、これらの実施例の中で示される。
【0141】
製剤化されていない薬物としてのNTP42は、ラットにおいてPAHのモノクロタリン(MCT)およびSugen5416/低酸素(Su/Hx)誘導性モデルの両方において有効性を示した。Mulvaneyら. BMC Pulmonary Medicine (2020) 20:85 & Mulvaneyら. Eur J Pharmacol (2020) 889:173658(ともに参考として援用される)を参照のこと。
【0142】
製剤化した薬物生成物、NTP42:KVA4の開発および製造後に、上記MCT誘導性PAHラットモデルを、PAHの前臨床モデルにおいてその有効性を示すために使用した。MCTは、内皮および血管損傷、狭窄部位での血栓形成(in situ thrombosis)および肺浮腫の発生によって特徴づけられる肺動脈傷害を選択的に引き起こすことが公知の毒素である。損傷した内皮および血管細胞のリモデリングは、血管内腔の狭窄/閉塞(obliteration)の原因であるので、肺動脈を経る血流を制限し、肺動脈圧(PAP)を増大させる。これは、次に、右室(RV)後負荷を増大させ、MCT処置ラットにおいて顕著なRV肥大の発生をもたらす。
【0143】
PAHのMCT誘導性モデルにおいて経口製剤NTP42:KVA4として送達される場合のNTP42の有効性を評価するために、ラットは、試験開始時に、MCT(60mg/kg)溶液または生理食塩水(MCTなし)の1回の皮下注射を受けた。
【0144】
図15は、ラットモノクロタリン(MCT)誘導性肺動脈性高血圧症(PAH)モデルにおける前臨床委有効性試験の実験デザインを図示する。
【0145】
0日目に、雄性Sprague-Dawleyラット(7~9週齢および体重284g~424g)を、モノクロタリン(MCT;60mg/kg)の単一用量で、またはコントロール生理食塩水(MCTなし)として、いずれかで皮下注射した。
【0146】
薬物処置を、7日目に開始し、ここで動物を、NTP42:KVA4(1mg/kg)または陰性コントロールとしてプラシーボ(30mg/kg BID KOLLIDON VA 64)のいずれかで、22日間にわたって1日に2回(BID)処置した。全ての処置を、0.5%(w/v)ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)中の懸濁物として経口胃管栄養によって投与した。
【0147】
29日目に、MCT誘導後、ラットを、心臓手術のために麻酔をかけ、血行動態パラメーターを記録した。ベースライン心エコー図(ECHO)評価を、6日目および最後の血行動態手術前の29日目に各群からの5匹の無作為に選択した動物で行った。
【0148】
手術当日(29日目)に、血行動態パラメーター(全身動脈圧、右室血圧および肺血圧;ならびに心拍数)を、麻酔したラットにおいて記録した。その後、肺および心臓を取り出し、秤量した。左肺を生理食塩水で洗い流し、次いで、10% 非緩衝化ホルマリン(NBF)で灌流した。心臓を切除して、Fulton指数を決定するために、右室(RV)および左室+中隔の測定を容易にした。肺内では、肺血管リモデリング(血管の形態計測およびα-平滑筋アクチン(SMA)発現)、肺の炎症(CD68+マクロファージ)、および肺線維症(マッソントリクローム染色)に関して組織学的分析を行った。RV内では、心線維症に関してさらなる組織学的分析を行った(マッソントリクローム染色)。
【0149】
上記データ(図16図25および図26に示される)は、NTP42:KVA4(1mg/kg、BID)は、顕著な処置利益を提供し、多数の疾患パラメーターにわたってMCT誘導性PAHの重篤度を低減することを示す。
【0150】
これは、全身平均動脈圧(mAP、図18)または心拍数(HR、図19)のいずれに対する有害な影響もなく、平均肺動脈圧(mPAP;図16)および右室収縮期圧(RVSP;図17)の血行動態測定においてMCT誘導性の増大の低減を含む。NTP42:KVA4は、2種の組織学的方法、形態測定(図20)およびα-平滑筋アクチン発現(図21)を通じて評価されるように、MCT誘導性血管リモデリングを有意に低減した。H&E染色およびα-SMA染色の肺組織に関する代表的組織学を図27に示す。ここでNTP42:KVA4での処置は、病的でない(MCTなしコントロール)のものに類似するようである組織を生じ、実質的にMCTのみのプラシーボコントロールより健常であった。
【0151】
心臓内では、NTP42:KVA4は、Fulton指数を使用してアッセイされるようにRV肥大を低減し、RV線維症の組織学的評価から、NTP42:KVA4の有意な処置利益が示された(図22および図23)。
【0152】
さらなる定量的組織学的分析において、NTP42:KVA4は、小さな肺細動脈の周りの線維症の程度を有意に低減することおよびCD68+ マクロファージ浸潤におけるMCT誘導性の増大を低減することが示された(図24および図25)。
【0153】
図16図25は、ラットにおけるモノクロタリン誘導性肺動脈性高血圧症に対するNTP42:KVA4の効果を示す。雄性Sprague-Dawleyラットに、単一用量のモノクロタリン(MCT; 60mg/kg)、またはコントロールとして生理食塩水(MCT)なしのいずれかを皮下注射した。MCT注射後7日目から、動物を、NTP42:KVA4(1mg/kg)、または陰性コントロールとしてプラシーボ(30mg/kg BID KOLLIDON VA 64)のいずれかで、22日間にわたって1日に2回処置した。ここで全ての処置を、0.5%(w/v) ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)中の懸濁物として経口胃管栄養によって投与した。29日目に、MCT誘導後、ラットを心臓手術のために麻酔をかけ、血行動態パラメーターを記録した。その後、心臓および肺をひとまとめにして取り出し、心臓および肺の湿重量を記録し、次いで、固定し、組織病理学のために処理した。この図の中に含まれるデータは、以下を含む。
【0154】
図16は、平均肺動脈圧(mPAP)を示す。
【0155】
図17は、右室収縮期圧(RVSP)を示す。
【0156】
図18は、平均全身動脈圧(mAP)を示す。
【0157】
図19は、心拍数(HR)を示す
【0158】
図20は、ヘマトキシリンおよびエオシン(H&E)染色切片上での形態測定的評価から測定される血管閉塞として、肺血管リモデリングを示す。
【0159】
図21は、抗α-SMA染色切片上で筋肥大の程度の評価から測定される場合の肺血管リモデリングを示す。
【0160】
図22は、RV肥大のFulton指数を示す。
【0161】
図23は、心臓(RV)線維症を示す。
【0162】
図24は、CD68+ マクロファージ密度の分析から肺の炎症の程度を示す。
【0163】
図25は、肺線維症を示す。図16~25の全てに関して、平均(±S.E.M.)データが示され、ここでアスタリスクは、MCTなしコントロール群からの有意差を示し、ハッシュ(hash)は、その値が、MCTのみのプラシーボ群から有意差があることを示し、ここで*/#、**/##、***/###および****/####は、それぞれ、p<0.05、p<0.01、p<0.001およびp<0.0001に相当する。
【0164】
図26は、ラットにおけるモノクロタリン誘導性肺動脈性高血圧症に対するNTP42:KVA4の効果を示す表である。
【0165】
略語: BID、1日に2回(bis in die)/1日に2回(twice daily); bpm、1分間当たりの心拍数; CD68、表面抗原分類68; HR、心拍数; mAP、平均全身動脈圧; MCT、モノクロタリン; mPAP、平均肺動脈圧; RVSP、右室収縮期圧; SMA、α-平滑筋アクチン。
【0166】
図27は、MCT誘導性PAHラットモデルにおける肺血管リモデリングに対するNTP42:KVA4の効果を示す肺組織切片を示す。
【0167】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)肺組織切片を、H&Eおよび抗α-平滑筋アクチンで染色し、Aperioシステムを使用して、デジタルスキャンした。代表的な画像は、左肺内の小さな肺細動脈(10~50μm)の肺血管リモデリングの程度(H&E、左パネル)および筋肥大の程度(抗α-SMA、右パネル)を示す。H&E染色スライドの形態測定的評価および抗α-SMA染色切片上の筋肥大の程度の評価から、NTP42:KVA4がMCT誘導性血管リモデリングを有意に低減することが確認された。例として、パーセンテージ血管閉塞におけるMCT誘導性増大は、NTP42:KVA4で処置した動物において有意に低減された(1mg/kg, BID; p=0.0019)。各画像中の水平のスケールバーは、20μmに相当し、ここで全ての画像は、40×倍率で獲得した。
【0168】
実施例7: 非ヒト霊長類(NHP)カニクイザルにおいてエキソビボで血小板の凝集を阻害するNTP42:KVA4のインビボ有効性の実証
製剤化された薬物生成物NTP42:KVA4の経口投与後に、NTP42がトロンボキサン(TX)AまたはそのレセプターTPによって誘導される血小板凝集を阻害する能力を、非ヒト霊長類(NHP)カニクイザルにおいて示した。全血血小板凝固アッセイを、100mg/kg NTP42:KVA4、BID(200mg/kg/日)を14日間投与したNHPから採取した血液サンプルにおいてエキソビボで行った(n=3)。血小板凝集アッセイのこのタイプにおいては、血小板数の低減が、血小板凝集を示す。血液を、最初の一日用量の前に(用量前)、および最初の一日用量の45分後および24時間後に集め、血小板数を、ベースライン(非処置)における血液サンプル中で、および薬物ビヒクル、トロンボキサン摸倣物U46619、またはコントロールとして他の血小板アゴニスト(例えば、ADP、コラーゲン、トロンビン、リストセチン、エピネフリン)とともにインキュベートした血液サンプル中で決定した。ベースラインの血小板数は、120~190×10 血小板/μlの範囲に及んだ。
【0169】
図28に示されるように、製剤化された薬物生成物NTP42:KVA4の投与は、投与後14日目にTXA(U46619)誘導性血小板凝集をエキソビボで阻害する(血小板数の減少によって測定されるとおり)が、それらの同じ動物に由来する血液において他の血小板アゴニストによって誘導される凝集に対しては効果がない。
【0170】
図28は、NHPカニクイザルにおける100mg/kg/用量 NTP42:KVA4での1日に2回の経口投与後14日目の全血血小板凝固アッセイを示す。全血血小板凝固アッセイを、100mg/kg NTP42:KVA4、BID(200mg/kg/日)を14日間投与したNHP(n=3)から採取した血液サンプルにおいてエキソビボで行った。血液を、最初の一日用量の前に(用量前)、および最初の一日用量の45分後および24時間後に集め、血小板数を、ベースライン(非処置)における血液サンプル中で、および薬物ビヒクル、トロンボキサン摸倣物U46619、またはコントロールとして50μM ADPとともにインキュベートした血液サンプル中で決定した。このアッセイにおいて、血小板数の低減は、血小板凝集を示す。
【0171】
具体的には、ビヒクル処置後に、血小板数は、ベースライン値に類似であり、これは、予測されるように、薬物ビヒクルに応じて凝集が起こらなかったことを示す。処置の14日目に、投与前ですら、血液サンプルと1μM U46619とのインキュベーションに応じていかなる時点においても血小板数の低減は存在しなかった。薬物動態データの裏付けは、NTP42が、最初の一日用量の前にNHP血漿中に、および血小板のU46619媒介性凝集を阻害するために十分なレベルにおいて存在することを確認した。対照的に、血小板数は、他の血小板アゴニストとのインキュベーションに応じて有意に低減した。例として、図28に示されるように、血小板数は、50μM ADPに応じて有意に低減した。これは、血小板凝集が、このアゴニストに応じて起こったことを示す。200mg/kg/日での14日間の反復投与後に、13,200ng/mlのCmax値に相当したNHP血漿中のNTP42レベル(25μMに等しい)は、投与後24時間においてなお検出可能であった。よって、予測されるように、薬物NTP42は、TP媒介性血小板凝集を選択的に阻害したが、他の血小板アゴニスト(例えば、50μM ADP)によって誘導される凝集に影響を及ぼさなかった。決定的なことには、試験は、「U46619誘導性血小板凝集の欠如は、NTP42が、TP誘導性血小板凝集を阻害したこと、およびTPレセプター標的係合の薬物動態インジケーターとして検討され得ることを示唆する」と結論づけた。
【0172】
実施例8: 処置における使用のための製剤
ここで示される結果は、本開示の製剤が、心血管および肺における有意な利益を示し、種々の心肺障害の有害効果の改善のために使用され得ることを示す。
【0173】
よって、本開示の実施形態は、心肺状態の処置における使用のための本開示の製剤のうちのいずれかを提供する。その結果は、肺状態または心臓状態を処置することにおいて利益を有するNTP42/NTP42:KVA4処置後に、肺線維症および心臓線維症の低減に関する証拠を示す。
【0174】
いくつかの実施形態は、肺状態の処置における使用のための本開示の製剤を提供する。例示的な肺状態としては、特発性肺線維症(IPF);サルコイドーシス;自己免疫疾患および結合組織疾患、例えば、狼瘡、強皮症、多発性筋炎および皮膚筋炎、関節リウマチ;曝露/職業性間質性肺疾患、例えば、石綿肺症、珪肺症、過敏性肺炎;ならびに例えば、化学療法、放射線療法、またはある特定の薬物療法後の処置関連間質性肺疾患が挙げられる。
【0175】
ある特定の実施形態は、心臓状態の処置における使用のための本開示の製剤を提供する。例示的な心臓状態としては、高血圧の心臓状態(例えば、PAH以外の他のPHグループ)であるが、駆出率の保たれた心不全(HFpEF)、駆出率が低下した心不全(HFrEF)などを含む左心状態も同様;心筋症が関連する筋ジストロフィー(MD)(例えば、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、肢帯筋ジストロフィー(LGMD)、ベッカー型筋ジストロフィー(BMD));特発性拡張型心筋症(DCM);糖尿病性心筋症;ならびに心筋梗塞(MI)後の瘢痕化が挙げられる。
【0176】
よって、本開示の実施形態は、肺状態を処置する方法における使用のための本開示の製剤のうちのいずれかを提供する。上記肺状態は、気管支喘息、慢性閉塞性肺疾患、COVID-19関連肺高血圧症、COVID-19関連肺微小血管塞栓症、COVID-19関連肺線維症、肺の炎症、皮膚筋炎、特発性肺線維症、曝露/職業性間質性肺疾患、処置関連の間質性肺疾患、多発性筋炎、肺動脈性高血圧症、肺線維症、肺高血圧症、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、および全身性エリテマトーデスからなる群より選択され得る。
【0177】
また、本開示の実施形態は、心血管状態を処置する方法における使用のための本開示の製剤のうちのいずれかを提供する。上記心血管状態は、心不全、筋ジストロフィー、特発性拡張型心筋症、糖尿病性心筋症、アテローム血栓症、脳卒中、心筋梗塞、アテローム性動脈硬化症、動脈硬化性血管疾患、血栓塞栓症、深部静脈血栓症、動脈血栓症、COVID-19関連心微小血管血栓症、COVID-19関連全身性微小血管血栓症、虚血、末梢血管疾患、末梢動脈閉塞性疾患、冠動脈疾患、狭心症、および一過性脳虚血発作からなる群より選択され得る。
【0178】
考察
上記製剤は、臨床現場における上記製剤の安全性および耐容性を評価するために、ファースト・イン・ヒューマン第1相臨床試験に適した高品質薬物生成物を提供する。
【0179】
無定形固体分散物アプローチを使用すると、1:4のNTP42:ポリマー比の薬学的に受容可能なビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを有する噴霧乾燥分散物製剤(NTP42:KVA4といわれる(ここで上記ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーは、KVAへと省略され、4は、上記薬物:ポリマー比を示す))は、NTP42単独と比較して、改善されたバイオアベイラビリティーを有することが見出された。NTP42:KVA4は、図1に図示されるように、生体関連媒体、例えば、絶食状態模倣腸液(FaSSIF; pH 6.5)中の活性な薬学的成分単独と比較して、増強された溶解を示した。
【0180】
本発明は、活性な薬学的成分NTP42単独と比較して、増強された溶解度および優れた曝露および経口バイオアベイラビリティーを提供する製剤を記載する。さらに、候補薬物生成物、NTP42:KVA4は、異なるポリマーおよび活性な薬学的成分 対 ポリマーの異なる比を含む製剤を超える有利な特性を有することが見出された。
薬物は、NTP42:KVA4が適切な投与ビヒクル(例えば、0.5% ヒドロキシプロピルメチルセルロース E3)中で投与される、「ボトル中の薬物」形式として経口投与され得る。
【0181】
噴霧固体分散物製剤の驚くべき利点は、ビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーが、ベンゼンスルホニルウレアに対して保護効果を付与し、これを低いpH(例えば、FaSSGF、pH 1.6)から保護し、より高いpH(例えば、FaSSIF、pH 6.5)における放出のためにそれを複合体中で維持することである。よって、溶解データに基づけば、噴霧固体分散物材料におけるビニルピロリドン-酢酸ビニルとの複合体中のベンゼンスルホニルウレアは、胃の酸性環境、pH 1.6から保護され、それが最大限吸収され得る腸のより高いpH環境においては分散する。本発明によって、ベンゼンスルホニルウレアおよびビニルピロリドン-酢酸ビニルコポリマーを含む製剤におけるベンゼンスルホニルウレアのpH依存性溶解度および放出が、発見された。
【0182】
驚くべきことに、薬物負荷を低下させても(例えば、1:8比(ベンゼンスルホニルウレア:ビニルピロリドン-酢酸ビニル)におけるビニルピロリドン-酢酸ビニルとの複合体中のベンゼンスルホニルウレアの場合のように)、低いpH(例えば、FaSSGF、pH 1.6)において増強された溶解をもたらさなかった。さらに、薬物負荷を上昇させても(1:1比(ベンゼンスルホニルウレア:ビニルピロリドン-酢酸ビニル)におけるビニルピロリドン-酢酸ビニルとの複合体中のベンゼンスルホニルウレアの場合のように)、低いpH(例えば、FaSSGF、1.6)からより高いpH(例えば、FaSSIF、pH 6.5)へと切り替えた際に、ベンゼンスルホニルウレアの放出を変化させず、その溶解も増強しなかった。
【0183】
対照的に、非ステロイド性抗炎症薬およびポリマー複合体中の非ステロイド性抗炎症薬の製剤は、薬物負荷に依存する溶解速度を示す。例えば、低薬物負荷を有する非ステロイド性抗炎症薬はしばしば、それらが製剤化されている複合体とは無関係に、低いpH環境においてそれらの全体が溶解する。従って、本発明の製剤の溶解特性は、特有であり、かつ他の薬物および薬物:ポリマー製剤の場合に観察されるものとは完全に異なる。
【0184】
さらに、多くの薬物、例えば、非ステロイド性抗炎症薬は、好ましくは、圧縮(compress)/圧縮(compacted)材料およびホットメルト押し出し製造プロセスから製剤化される。対照的に、本発明のベンゼンスルホニルウレア:ビニルピロリドン-酢酸ビニル製剤は、驚くべきことに、無定形固体分散物、例えば、噴霧乾燥分散物として製剤化される場合に、改善された溶解およびバイオアベイラビリティーを有することが見出された。このプロセスは、ホットメルト押し出しとは対照的に、上記複合体が、腸の中で最大限放出される場合にTプロスタノイドレセプターのアンタゴニストとして効果的に作用するために、ベンゼンスルホニルウレアへの内部の化学(internal chemistry)を保存する制御された温度で形成されることを可能にする。
【0185】
記載された本発明の種々の実施形態は、技術的に不適合でない限り、1つまたはそれより多くの他の実施形態と合わせて使用され得る。
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【国際調査報告】