(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】埋め込み型デバイスからの治療薬の放出速度を制御する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/16 20060101AFI20230725BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20230725BHJP
A61K 47/02 20060101ALI20230725BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20230725BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230725BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20230725BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20230725BHJP
A61L 31/02 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
A61K38/16
A61K9/48
A61K47/02
A61K47/32
A61P3/10
A61L31/04 110
A61L31/16
A61L31/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501239
(86)(22)【出願日】2021-07-06
(85)【翻訳文提出日】2023-01-05
(86)【国際出願番号】 US2021040444
(87)【国際公開番号】W WO2022010846
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523005830
【氏名又は名称】ナノ プレシジョン メディカル,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100182730
【氏名又は名称】大島 浩明
(72)【発明者】
【氏名】ライアン オルフ
(72)【発明者】
【氏名】ライル ゴードン
(72)【発明者】
【氏名】ウォーター ルーダ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C084
【Fターム(参考)】
4C076AA53
4C076AA62
4C076AA67
4C076AA94
4C076BB32
4C076CC21
4C076DD21M
4C076EE09H
4C076EE11H
4C076FF21
4C076FF31
4C081AC06
4C081BB06
4C081CA081
4C081CD112
4C081CF142
4C081DA11
4C081DB03
4C084AA02
4C084AA03
4C084BA01
4C084BA08
4C084BA19
4C084BA23
4C084MA05
4C084MA37
4C084MA67
4C084NA12
4C084ZC35
(57)【要約】
本開示は、埋め込み型薬物送達システムのリザーバーからの治療薬の放出速度を制御するための治療薬及び放出速度制御剤の組成物を提供する。 本開示はまた、本開示の組成物を組み込む移植可能な薬物送達システム、並びに組成物及び移植可能な薬物送達システムを使用して糖尿病を治療する方法を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み型デバイスからの治療薬の放出速度を制御する方法であって、
以下:
埋め込み用に構成され、そしてリザーバーを有するカプセル;
リザーバー内に収容され、そしてpHを有する治療薬の流体製剤;
カプセルに取り付けられた複数の細孔を有し、そしてリザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供するナノ多孔性膜、
を含むデバイスを提供し;ここでナノ多孔性膜を通る治療薬の放出速度が、製剤のpHに依存し;そして
治療薬の所望の放出速度を達成するのに適したレベルで製剤のpHを選択することを含んで成る方法。
【請求項2】
前記ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記治療薬が、ペプチド又はタンパク質である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペプチド又はタンパク質がインクレチン模倣薬である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記インクレチン模倣薬がエクセナチドである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記治療薬がエクセナチドであり、ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜であり、そしてpHが4.0~6.5である、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記治療薬がエクセナチドであり、ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜であり、そしてpHが4.5~6.0である、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記デバイスが不溶性ポリマー安定剤をさらに含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記不溶性ポリマー安定剤が、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両方のモノマー単位を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
埋め込み型デバイスからの等電点を有する治療薬の放出速度を制御する方法であって、
以下:
埋め込み用に構成され、そしてリザーバーを有するカプセル;
リザーバー内に収容され、そしてpHを有する治療薬の流体製剤;
カプセルに取り付けられた複数の細孔を有し、そしてリザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供する、等電点を有する内面を有するナノ細孔を有するナノ多孔性膜、
を含むデバイスを提供し;ここで前記放出速度は、治療薬とナノ細孔の内面との間の電荷類似度によって決定され;そして
治療薬の所望の放出速度を達成するのに適したレベルで製剤のpHを選択することを含んで成る方法。
【請求項11】
前記ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記治療薬が、ペプチド又はタンパク質である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記ペプチド又はタンパク質がインクレチン模倣薬である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記インクレチン模倣薬がエクセナチドである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記治療薬がエクセナチドであり、ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜であり、そしてpHが4.0~6.5である、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記治療薬がエクセナチドであり、ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜であり、そしてpHが4.5~6.0である、請求項10に記載の方法。
【請求項17】
前記デバイスが不溶性ポリマー安定剤をさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記不溶性ポリマー安定剤が、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両方のモノマー単位を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
制御された速度で治療薬を放出するための埋め込み型デバイスであって、
埋め込み用に構成され、そしてリザーバーを有するカプセル;
リザーバー内に収容され、そしてpHを有する治療薬の流体製剤;
カプセルに取り付けられた複数の細孔を有し、そしてリザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供するナノ多孔性膜、
を含み;
ここでナノ多孔性膜を通る治療薬の放出速度が、製剤のpHに依存し;そして
前記製剤のpHが治療薬の所望の放出速度を達成するのに適している、埋め込み型デバイス。
【請求項20】
前記ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜である、請求項19に記載のデバイス。
【請求項21】
前記治療薬が、ペプチド又はタンパク質である、請求項19又は20に記載のデバイス。
【請求項22】
前記ペプチド又はタンパク質がインクレチン模倣薬である、請求項21に記載のデバイス。
【請求項23】
前記インクレチン模倣薬がエクセナチドである、請求項22に記載のデバイス。
【請求項24】
前記治療薬がエクセナチドであり、ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜であり、そしてpHが4.0~6.5である、請求項19に記載のデバイス。
【請求項25】
前記治療薬がエクセナチドであり、ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜であり、そしてpHが4.5~6.0である、請求項19に記載のデバイス。
【請求項26】
前記デバイスが不溶性ポリマー安定剤をさらに含む、請求項19に記載のデバイス。
【請求項27】
前記不溶性ポリマー安定剤が、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両方のモノマー単位を含む、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
埋め込み型デバイスから制御された速度で治療薬を放出するための治療薬の製剤であって、前記製剤がpHを有し、そして埋め込み型デバイスのリザーバー内に含まれ、 前記デバイスが、以下:
埋め込み用に構成され、そしてリザーバーを有するカプセル;
カプセルに取り付けられた複数の細孔を有し、そしてリザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供するナノ多孔性膜、
を含み;
ここで前記ナノ多孔性膜を通る治療薬の放出速度が、製剤のpHに依存し;そして
前記製剤のpHが治療薬の所望の放出速度を達成するのに適している、製剤。
【請求項29】
前記ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜である、請求項28に記載の製剤。
【請求項30】
前記治療薬が、ペプチド又はタンパク質である、請求項28又は29に記載の製剤。
【請求項31】
前記ペプチド又はタンパク質がインクレチン模倣薬である、請求項30に記載の製剤。
【請求項32】
前記インクレチン模倣薬がエクセナチドである、請求項31に記載の製剤。
【請求項33】
前記治療薬がエクセナチドであり、ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜であり、そしてpHが4.0~6.5である、請求項28に記載の製剤。
【請求項34】
前記治療薬がエクセナチドであり、ナノ多孔性膜がチタニアナノ多孔性膜であり、そしてpHが4.5~6.0である、請求項28に記載の製剤。
【請求項35】
前記デバイスが不溶性ポリマー安定剤をさらに含む、請求項28に記載の製剤。
【請求項36】
前記不溶性ポリマー安定剤が、アクリル酸、メタクリル酸、又はその両方のモノマー単位を含む、請求項35に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2020年7月8日に出願された米国仮出願第63/049,573号の優先権を主張し、その内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
動物だけでなく人間の多くの対象は、治療薬による長期の治療を必要としている。 アドヒアランスを改善するために、多くの対象は、所望の治療薬を所望の速度で長期間にわたって放出する埋め込み型デバイスによって提供されるアドヒアランスから利益を得るであろう。 長年の研究にもかかわらず、そのようなデバイスの開発、特に治療対象への埋め込み時にそのようなデバイスからの治療薬の放出速度を制御する方法が依然として必要とされている。 本開示は、この必要性を満たし、追加の利点も提供する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
1つの実施形態によれば、本開示は、埋め込み型デバイスからの治療薬の放出速度を制御する方法を提供し、ここで前記方法は、
以下:
埋め込み用に構成され、そしてリザーバーを有するカプセル;
リザーバー内に収容され、そしてpHを有する治療薬の流体製剤;
カプセルに取り付けられた複数の細孔を有し、そしてリザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供するナノ多孔性膜、
を含むデバイスを提供し;ここでナノ多孔性膜を通る治療薬の放出速度が、製剤のpHに依存し;そして
治療薬の所望の放出速度を達成するのに適したレベルで製剤のpHを選択することを含んで成る。
【0004】
別の実施形態によれば、本開示は、埋め込み型デバイスからの等電点を有する治療薬の放出速度を制御する方法を提供し、ここで前記方法は、
以下:
埋め込み用に構成され、そしてリザーバーを有するカプセル;
リザーバー内に収容され、そしてpHを有する治療薬の流体製剤;
カプセルに取り付けられた複数の細孔を有し、そしてリザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供する、等電点を有する内面を有するナノ細孔を有するナノ多孔性膜、
を含むデバイスを提供し;ここで前記放出速度は、治療薬とナノ細孔の内面との間の電荷類似度によって決定され;そして
治療薬の所望の放出速度を達成するのに適したレベルで製剤のpHを選択することを含んで成る。
【0005】
さらに別の実施形態によれば、本開示は、制御された速度で治療薬を放出するための埋め込み型デバイスを提供し,ここで前記デバイスは、
埋め込み用に構成され、そしてリザーバーを有するカプセル;
リザーバー内に収容され、そしてpHを有する治療薬の流体製剤;
カプセルに取り付けられた複数の細孔を有し、そしてリザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供するナノ多孔性膜、を含み;
ここでナノ多孔性膜を通る治療薬の放出速度が、製剤のpHに依存し;そして
前記製剤のpHが治療薬の所望の放出速度を達成するのに適している。
【0006】
さらに別の実施形態によれば、本開示は、埋め込み型デバイスから制御された速度で治療薬を放出するための治療薬の製剤を提供し、前記製剤がpHを有し、そして埋め込み型デバイスのリザーバー内に含まれ、ここで前記デバイスが、
以下:
埋め込み用に構成され、そしてリザーバーを有するカプセル;
カプセルに取り付けられた複数の細孔を有し、そしてリザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供するナノ多孔性膜、を含み;
ここで前記ナノ多孔性膜を通る治療薬の放出速度が、製剤のpHに依存し;そして
前記製剤のpHが治療薬の所望の放出速度を達成するのに適している。
【0007】
さらに別の実施形態によれば、本開示は、埋め込み型デバイスからの治療薬の放出速度を制御するためへのpHの使用を提供し、ここで前記使用は、
以下:
埋め込み用に構成され、そしてリザーバーを有するカプセル;
リザーバー内に収容され、そしてpHを有する治療薬の流体製剤;
カプセルに取り付けられた複数の細孔を有し、そしてリザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供するナノ多孔性膜、を含むデバイスを提供し;
ここでナノ多孔性膜を通る治療薬の放出速度が、製剤のpHに依存し;そして
治療薬の所望の放出速度を達成するのに適したレベルで製剤のpHを選択することを含んで成る。
【0008】
これら及び他の態様、目的、及び実施形態は、以下の詳細な説明及び図を読めば、より明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【0010】
【
図2】
図2は、デバイスからの治療薬の放出に対する外部放出速度緩衝液のpHの変化の効果を表す。
【0011】
【
図3】
図3は、デバイスからの治療薬の放出に対する内部製剤緩衝液のpH及び組成の変化の効果を表す。
【0012】
【
図4】
図4は、デバイスからの治療薬の放出に対する内部製剤緩衝液のpHの変化の効果を表す。
【0013】
【
図5】
図5は、デバイスからの治療剤の放出に対する内部製剤緩衝液のpHの漸進的上昇の効果を表す。
【0014】
【
図6】
図6は、デバイスからの治療薬の放出に対する膜ディスクの向きの効果を表す。
【0015】
【
図7】
図7は、本開示の放出速度プロフィールを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示は、制御された速度で治療剤の持続的送達を提供する埋め込み型デバイスを用いた対象の長期治療の分野に関する。 本開示の実施形態は、デバイス、製剤、及びそのようなデバイスからの治療薬の放出速度を制御する方法を含む。 さらに、本開示の実施形態は、本開示のデバイス及び製剤を用いて対象を治療する方法を含む。 2021 年 2月 25 日に出願されたPCT/US2021/019559号出願は、参照によりその全体が本開示に組み込まれる。
定義
【0017】
「ポリペプチド」とは、2つ以上のアミノ酸残基から成る骨格鎖を有する分子を指す。 一部のポリペプチドは、金属タンパク質の金属イオン、ヘムタンパク質などの小さな有機分子、又は糖タンパク質などの炭水化物基など、追加の関連基を有する場合がある。 関連基には、主鎖に共有結合した側鎖が含まれる場合がある (例えば、 リラグルチド又はセマグルチド)。
【0018】
「ペプチド」及び「タンパク質と」は、ポリペプチドのサブグループを指す。 本開示において、ペプチド及びタンパク質の定義は、米国食品医薬品局(FDA)の慣例に従い、ペプチドを最大40個のアミノ酸残基を有するポリペプチドと定義し、タンパク質を40個を超えるアミノ酸残基を有するポリペプチドと定義する。
【0019】
インクレチン模倣薬とは、グルカゴン様ペプチド-1(GLP-1)などのインクレチン ホルモンのように作用する薬剤を指す。 それらはGLP-1受容体に結合し、グルコース依存性インスリン放出を刺激するため、血糖降下薬として作用する。 本開示のインクレチン模倣薬には、限定するものではないが、エクセナチド、リラグルチド、セマグルチド、コタデュチド、デュラグルチド、アルビグルチド、リキシセナチド、シタグリプチン、サクサグリプチン、アログリプチン、及びリナグリプチンが含まれる。 本開示のいくつかの実施形態では、2つ以上のインクレチン模倣薬が存在し得る。 本開示のいくつかの実施形態では、インクレチン模倣薬はエクセナチドである。
【0020】
エクセナチド(天然、組換えおよび合成、エキセンジン-4とも呼ばれる)は、アミノ酸配列 His Gly Glu Gly Thr Phe Thr Ser Asp Leu Ser Lys Gln Met Glu Glu Glu Ala Val Arg Leu Phe Ile Glu Trp Leu Lys Asn Gly Gly Pro Ser Ser Gly Ala Pro Pro Pro Pro Serを指す。
【0021】
「治療剤の製剤」とは、治療薬が製品又は製品製造中間体に存在する実際の状態を指し、そして治療薬に加えて、必要に応じて、使用される追加の治療薬、使用される製剤賦形剤、及び使用される製剤溶媒が含まれる。
【0022】
「膜」とは、構造を通して構造の一方の側から他方の側への分子の大量輸送を可能にする透過性構造を指す。
【0023】
「多孔性膜」は、膜マトリックス材料が一相、典型的には連続相を表す二相系の存在を特徴とする膜を指し、これは、膜の一方の側から他方の側に伸びる開いたチャネルによって浸透され、そして、第 2 相 (多くの場合、流体相) で満たされ、これにより、膜を通過する物質輸送が行われる。
【0024】
「高密度」又は「非多孔性膜」とは、流体で満たされた細孔のない膜を指す。 そのような膜では、物質輸送は、溶解拡散メカニズムによって起こり得、治療薬は、膜材料自体に溶解し、それを通して拡散することによって膜を透過する。
【0025】
「ナノ多孔性膜」および「ナノ細孔膜」は交換可能に使用され、細孔が1000ナノメートル未満の最小直径を有する多孔性膜を指す。
【0026】
「ナノチューブ膜」は、細孔がナノチューブのアレイによって形成されるナノ多孔性膜を指す。
【0027】
「チタニアナノチューブ膜」は、チタニアナノチューブの少なくとも一部が両端で開いており、チタニアナノチューブを介して膜の一方の面から他方の面への拡散を可能にするチタニアナノチューブのアレイを指す。 特定の例では、チタニアナノチューブのアレイはチタン基板上に配置される。 特定の例では、チタニアナノチューブ膜は以下の2つの面又は側面を有する:チタニアナノチューブのアレイを有する第1の面又は側面、及びチタン基板の第2の面又は側面。 特定の局面において、チタニアナノチューブのアレイは、電気化学的陽極酸化によってチタン基板上で成長される。
【0028】
ポリマーの「分子直径」は、ポリマーの回転球の直径を指し、これは、分子のサイズの物理的尺度であり、分子のコアから分子内の各質量要素までの質量加重平均距離の2 倍として定義される。
【0029】
「ストークス直径」又は「流体力学的直径」は、分子が水溶液中を移動するときの分子とそれに関連する水分子の寸法を指し、観測中の分子と同じ速度で拡散する等価硬球の半径として定義される。
【0030】
「イオン交換樹脂」は、酸性又は塩基性基、又はそれらの組み合わせを含み、例えば架橋によって不溶性にされ、陰イオン又は陽イオン、又はそれらの組み合わせをそれを取り囲む媒体と交換することができるポリマーを指す。
【0031】
本開示で使用される「流体」及び「流体形」は、物質の流動可能な状態を指し、気体、溶液、懸濁液、エマルジョン、コロイド、分散液などを含むが、これらに限定されない。
【0032】
「流体接触」とは、流体と接触している実体を指す。
【0033】
「中性pH」とは、6.5~7.5の間のpHを指す。
【0034】
治療薬を放出するためのナノ多孔性膜を有する埋め込み型デバイスは、例えば、米国特許第9814867号及び第9770412号並びに米国特許公開第US20190091140号 及びPCT/US2021/019559号に以前に記載されている。 これらのデバイスからの治療薬の放出速度は、治療薬の製剤のpHによって強力に制御できることが現在見出されている。
【0035】
本開示のいくつかの実施形態は、リザーバーを封入する円筒形カプセル、カプセルの一端に取り付けられたナノ多孔質膜、及びリザーバー内に含まれる治療薬の製剤を有するデバイスを含む。 被験体へのデバイスの埋め込み後のリザーバーからの治療薬の放出は、ナノ多孔性膜によって制御される。
【0036】
本開示のいくつかの実施形態は、放出速度を制御するためのさらなる手段として、治療剤の製剤のpHを利用する。 さらに、いくつかの実施形態は、リザーバに対する膜の配向を使用して、治療剤の放出の持続時間を制御する。
デバイス
【0037】
図1に示されるように、本開示のデバイスは、埋め込みに適したカプセル100を含み、カプセルは、治療薬及び任意にpH制御剤を保持するのに適したリザーバー110を有する。 いくつかの実施形態によれば、2つ以上のリザーバーが存在する。 カプセルは、任意の適切な生体適合性材料から作製され得る。 いくつかの実施形態によれば、カプセルは、チタン又はステンレス鋼などの医療グレードの金属、又はシリコーン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミドなどの医療グレードのポリマー材料でできている。 いくつかの実施形態によれば、カプセルは複数の材料でできている。 本開示のいくつかの実施形態によれば、カプセルはチタン製である。
【0038】
本開示のデバイスは、本明細書に記載されるように、カプセルに取り付けられ、リザーバーと流体接触する少なくとも1つの膜(120)を有し、ここで、膜は、リザーバー内に含まれる治療薬を、そのリザーバーから出て、カプセルが埋め込まれた対象の体内に大量輸送するための経路を提供する。本開示において、「カプセルに取り付けられた」とは、カプセルに対して適所に固定され、そして溶接、接着、圧入、及びねじ込み手段の使用、又はこれらの任意の組み合わせを含む、任意の適切な手段を使用することによって、カプセルに直接的又は間接的に接続された構成要素を指す。米国特許第9814867号に記載されている膜の場合、
図1に示されているように、ナノチューブ膜は、ナノチューブ121のアレイの一部であり、そのうちのいくつかは、それらが成長したチタン基板130に依然として付着しており、そして基板はカプセルに取り付けられてもよい。ナノチューブの少なくとも一部は両側が開いており、リザーバーからの治療薬の大量輸送を可能にしている。 1つの側面によれば、膜120は、以下の2つの面又は側面を有するチタニアナノチューブ膜120である:チタニアナノチューブ121のアレイを有する第1の面又は側面、及びチタン基板130の第2の面又は側面。
図1は、カプセルに取り付けられた膜を示し、チタン基板130がデバイスのリザーバーに面している。
【0039】
本開示のデバイスのさらなる説明は、PCT/US2021/019559号に見出すことができる。
膜
【0040】
本開示の実施形態は、本開示のデバイスのリザーバーからの治療薬の大量輸送のための経路を提供する少なくとも1つの膜を含む。
【0041】
本開示の実施形態では、多種多様な膜を使用することができる。 本開示の膜には、高密度及び多孔性膜が含まれ;多孔性膜には、ナノ多孔性膜及びナノチューブ膜が含まれる。
【0042】
本開示の膜に適した材料には、有機及び無機材料、ポリマー、セラミック、金属、金属酸化物、及びそれらの組み合わせが含まれる。 膜に適した材料には、シリコン、シリカ、チタン、及びチタニアが含まれる。
【0043】
いくつかの実施形態によれば、膜はナノ多孔性膜である。 いくつかの実施形態によれば、膜はナノチューブ膜である。 いくつかの実施形態によれば、膜はチタニアナノチューブ膜である。
【0044】
本開示の実施形態は、薬剤の放出がナノ多孔性膜によって制御される、治療薬剤の持続送達デバイスとして特に有用である。
【0045】
本開示の膜の製造は米国特許第9814867号に記載されており、ナノ細孔の内径の制御は米国特許第9770412号に記載されている。
【0046】
本開示の膜のさらなる説明は、PCT/US2021/019559号に見出すことができる。
製剤
【0047】
本開示のデバイスは、少なくとも1つの治療剤、例えば本開示に記載されるような治療剤を有する製剤を含む。 治療剤は、固体又は流体の形態であり得る。 場合によっては、治療剤は、治療剤の飽和溶液中の治療剤の固体形の懸濁液などの混合形で存在し得る。 場合によっては、製剤は固体の形であり、場合によっては製剤は液体の形である。 流体形の製剤、例えばリザーバ内の治療薬の少なくとも一部の溶液を含む製剤は、pHを有し得る。
【0048】
本開示の製剤のさらなる説明は、PCT/US2021/019559号に見出すことができる。
pH制御剤
【0049】
pHを制御するための材料は、治療薬自体、低分子量のpH安定剤、例えば、緩衝剤として使用できる弱酸性及び弱塩基性化合物を含む酸性及び塩基性化合物、又はポリ酸又はポリ塩基のような高分子量化合物であり得る。多くのそのような化合物が文献で知られており、医薬製剤開発の当業者は、過度の実験を行うことなく製剤に適した成分を選択することができる。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、pH制御材料は、PCT/US2021/019559号に記載されている不溶性高分子安定剤である。
【0051】
本開示に適した他のpH制御剤は、米国特許第10045943号および第10479868号に見出すことができる。
【0052】
「酸」とは、Bronsted-Lowry の定義でプロトン(H+) を供与できる化合物、又は Lewis の定義で電子対受容体である化合物を指す。 本開示において有用な酸としては、本明細書で定義されるように、アルカン酸又はカルボン酸(ギ酸、酢酸、クエン酸、乳酸、シュウ酸など)、スルホン酸及び鉱酸を含むがこれらに限定されないブレンステッド・ローリー酸が挙げられる。鉱酸は、ハロゲン化水素(フッ化水素酸、塩酸、臭化水素酸など)、ハロゲンオキソ酸(次亜塩素酸、過塩素酸など)、及び硫酸、硝酸、リン酸、クロム酸及びホウ酸である。スルホン酸には、とりわけ、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸が含まれる。
【0053】
「塩基」とは、ブレンステッド・ローリーの定義の下でプロトン(H+)を受け入れることができる化合物を指し、又はルイスの定義の下で電子対供与体である。 代表的な塩基は、以下を含む:ヒドロキシ、アルキルヒドロキシ、アミン(-NRR)、アルキルアミン、アリールアミン、アミド(-C(O)NRR)、スルホンアミド(-S(O)2NRR)、ホスホンアミド(-P(O))(-NRR)2)、カルボキシレート (-C(O)O-) など。
【0054】
場合によっては、pH調整剤は緩衝剤である。緩衝液は、以下から成る群から選択され得る:クエン酸塩/クエン酸、酢酸塩/酢酸、リン酸塩/リン酸、ギ酸塩/ギ酸、プロピオン酸塩/プロピオン酸、乳酸塩/乳酸、炭酸塩/炭酸、アンモニウム/アンモニア、エデト酸塩/エデト酸、及びそれらの組み合わせ。
治療薬
【0055】
本開示の実施形態に適した治療薬は、PCT/US2021/019559号に記載されている。 いくつかの実施形態によれば、治療物質はペプチド又はタンパク質である。 いくつかの実施形態によれば、ペプチド又はタンパク質はインクレチン模倣薬である。 いくつかの実施形態によれば、インクレチン模倣薬はエクセナチドである。 エクセナチドは、II 型糖尿病の治療に使用され、肥満や非アルコール性脂肪性肝炎などの他の疾患や状態の治療についても調査中である。
製造
【0056】
デバイス及び製剤の製造方法は、PCT/US2021/019559号に記載されている。
方法
【0057】
本開示のデバイスは、制御された速度で膜のナノ細孔を通してリザーバーに含まれる治療薬を放出する能力を有する。 場合によっては、治療薬の放出速度は非フィック放出速度、すなわち放出を促進する濃度勾配に比例しない放出速度である。 ナノ多孔性膜を介した非フィック解放速度の例は、米国特許第9814867号に記載されている。
【0058】
膜のナノ細孔が放出速度を制御する正確なメカニズムは、詳細には理解されていない。 治療薬の拡散分子とナノチューブの内壁との間の相互作用は、このメカニズムで役割を果たしている可能性がある。
【0059】
実験的に、膜を介した治療薬の放出速度は、リザーバー内の治療薬の製剤のpHレベルに強く依存する可能性があることがわかった。
【0060】
本開示の実施形態を用いた実験的研究において、エクセナチドの放出速度は、治療薬の製剤のpHに強く依存することが見出された。 実施例1~4及び
図2~5に見られるように、約3.6~7.4のpH範囲にわたって放出速度の有意な増加が観察され、より低いpHレベルでは低い放出速度が観察され、より高いpHレベルでは高い放出速度が観察された。
【0061】
多くの物質の正味の荷電状態はpHに依存する。 低いpHでは、水溶液中に豊富な H+又はH3O+ イオンが存在する場合、物質は正味の正電荷を持つ傾向がある。 高いpHでは、水溶液中に豊富なOH-イオンが存在するため、物質は正味の負電荷を持つ傾向がある。 物質の等電点 (IEP、PI)は、物質が正味の中性電荷を持つpHである。
【0062】
実験的に、エクセナチドのIEPは、キャピラリー等電点電気泳動で測定して 5.46 であると決定された。(http://en.cnki.com.cn/Article_en/CJFDTotal-SWTX201403019.htm、Internal Communications)。
【0063】
本開示の膜のナノチューブの内部表面のIEPは確実には知られていない。 一般的に、文献データはpH3~6の範囲を示しており、社内のモデル研究では約4.5の pH が示されている。
【0064】
図4に見られるように、本開示の膜を通るエクセナチドの放出速度は、エクセナチド製剤のpHに強く依存する。 pH4.5では放出はほとんど観察されず、製剤のpHがpH6.0まで上昇するにつれて、放出速度は徐々に増加した。
【0065】
特定の理論に拘束されるものではないが、これは、エクセナチドなどの治療薬とナノチューブの内面との間の静電相互作用を変化させることによって説明することができる。 PH4.5では、エクセナチドは主に正に帯電した形で存在する。 ナノチューブの内面のIEPを4.5と仮定すると、同数の正電荷と負電荷のサイトが存在する。 このpHでは、放出はほとんど観察されない。 pHが徐々に上昇すると、エクセナチドとナノチューブの内部表面の両方がますます負に帯電し、静電相互作用が変化する。同時に、放出速度の増加が観察される。 pH6.0では、エクセナチドとナノチューブの内部表面の両方が主に負に帯電しており、高い放出速度が観察される。 従って、治療薬とナノチューブの内面との間の電荷類似性のレベルの増加は、放出速度の増加と関連していた。 言い換えれば、内部表面の負電荷とエクセナチドが増加すると、放出速度も増加する。
【0066】
エクセナチドを含む多くのペプチド及びタンパク質は、pH6.0以上で脱アミド反応に敏感なアスパラギン残基がペプチド主鎖に存在する結果として、pH6.0以上で安定性プロファイルが低下する。 特定の側面によれば、本開示の膜を介した治療薬の送達のためにpH依存ウィンドウが存在し得、pH効果が放出速度を決定する一方、pH効果は治療分子の安定性にも影響し得る。
【0067】
他の例では、そのようなウィンドウには異なる考慮事項が存在する場合がある。 ペプチドやタンパク質を含む他の分子は、環境のpHに関連して異なる安定性プロファイルを持つ場合がある。 あるいは、又はさらに、pH依存性の溶解効果が存在し得る。 このようなウィンドウ内で、pH は膜を介した治療薬の放出速度を制御するための強力なツールとなる。
【0068】
適切なpHレベルの範囲は、使用されるナノ多孔性膜のタイプ、及び送達される治療薬のタイプに依存する。 場合によっては、治療薬は、6.0よりも高いpHレベルで実質的な安定性を有する場合があり、製剤のpHウィンドウのはるかに高い上限を可能にする。 場合によっては、治療薬は実質的により高いIE を有する場合があり、実際にはより高いpHでのpH ウィンドウを必要とする場合がある。
【0069】
同様に、チタニア膜以外のナノ多孔性膜は、異なるIEPを持ち、異なる pHウィンドウを必要とする場合がある。
【0070】
ナノ多孔性膜と治療薬のさまざまな組み合わせに適したpHウィンドウは、文献データ及び標準的な種類の放出速度実験に基づいて、医薬品開発の当業者が決定できる。
【0071】
PCT/US2021/019559号は、本開示の製剤において治療役を安定化させるためのpH制御剤の使用を開示している。特定の例では、pH制御剤は、本開示のデバイス内の治療薬の化学的安定化を提供するために、弱酸性基又は弱塩基性基などの、望ましいpHレベルで緩衝能を提供するために使用できる複数のpH感受性安定化基を有する不溶性ポリマー剤である。これらのポリマー剤は、本開示の製剤のpHを制御することによって治療剤を安定化させる。 本明細書に開示されるように、PCT/US2021/019559号に開示されるようなpH制御剤は、放出速度も制御できることが見出された。
【0072】
場合によっては、インプラントからの薬物の放出速度が経時的に徐々に上昇することが望ましいと考えられる。 例えば、エクセナチドの場合、1日当たりの投与量を徐々に増やすと、吐き気の発生率が低下する。 本開示のいくつかの実施形態によれば、デバイスの初期内部pHは比較的低いレベルに設定され、内部pHがデバイスの外部環境、すなわち間質液とゆっくりと平衡化するにつれて、時間の経過とともに上昇することが可能になる。 pH の緩やかな上昇は、放出速度の緩やかな増加を伴う。
【0073】
場合によっては、治療薬の乾燥製剤は、対象への移植時にデバイス内に存在し得る。 そのような場合、水溶性ガスなどの水取り込みの促進剤がリザーバー内に存在し得る。 移植後、水溶性ガスは、デバイスの膜を通してリザーバーへの間質液の取り込みを促進することができる。 本開示の実施形態は、間質液の取り込み後に、治療剤の所望の放出速度を提供するpHを有する液体製剤を生成する組成物を有するリザーバ内の乾燥製剤を含み得る。
【0074】
本開示のいくつかの実施形態は、リザーバー中の製剤のpHを制御することによって、リザーバーからナノチューブ膜を介して治療薬が放出される速度を制御する方法を提供する。
【0075】
本開示のいくつかの実施形態は、リザーバーからナノチューブ膜を通る治療薬の放出速度を制御する製剤を提供し、ここで製剤は、pHを制御することによって放出速度を制御する。
【0076】
本開示のいくつかの実施形態は、治療剤の制御された放出速度のためのデバイスを提供し、ここでデバイスは、治療約及び任意にpH制御剤を含む。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、pH制御剤は、PCT/US2021/019559号に記載されているような高分子安定剤である。 いくつかの実施形態によれば、放出速度は、低分子量の酸又は塩基などの可溶性pH制御安定剤でpHを制御することによって制御される。
【0078】
さらに、放出速度は、本開示のデバイス上に存在する膜の数及びサイズによって制御することができる。 しかしながら、埋め込み型デバイスの場合、デバイスのサイズを制限すると、通常、埋め込み手順が容易になり、患者の観点からデバイスの受容性が向上する。 従って、膜を介した輸送速度を最適化することによって放出速度を最適化することは、通常、膜を大きくしたり、膜の数を増やしたりすることによって放出速度を最適化するよりも好まれる。
【0079】
実験的に、いくつかの研究では、特定の時点で放出速度の加速的な低下が発生することがわかった。 時点は研究によって異なったが、一般的に約4~7週間で観察された。
【0080】
本開示の膜は、チタン基板上に酸化チタンナノチューブの陽極酸化層を成長させることによって調製される(米国特許第9814867号)。 従って、そのようなメンブレンディスクは、一方の面にチタン基板層を有し、他方の面にチタン側ナノチューブの層を有する。 実験的に、チタン基板層を内側に向けて、すなわちリザーバーに向けて膜をカプセルに取り付けることによって、加速された低下を効果的に防ぐことができることが分かった。米国特許第9814867号に従って調製されたナノチューブは、本質的にいくぶんテーパーが付けられており、チタン基板層に向かってテーパーの直径が小さい。 リザーバーに向かって狭いテーパーを備えた構成は、膜のリザーバー側に存在するナノ粒子状物質によるナノ細孔の詰まりの影響を受けにくい可能性がある。
【0081】
これらの概念をサポートするために、多くの放出速度研究が行われました。 これらの研究では、治療薬を放出するデバイスは、これらのデバイスの使用環境を模倣した環境、すなわち、デバイスが埋め込まれた皮下ポケット内の間質液に置かれた。 さまざまなpHレベルでさまざまなpH制御剤を含む製剤を含むデバイスを、生理的 pH 及びイオン強度の放出速度緩衝液、例えば pH7.4 のNaCl/bis-tris緩衝液に沈めることによって試験した。
【0082】
エクセナチドの放出速度は、デバイスを制御された量の放出速度媒体に沈め、選択された間隔で放出速度媒体を変更し、放出速度媒体中の放出されたエクセナチドの量を測定することによって測定した。
【0083】
特定の実施形態によれば、1日あたりに送達される治療剤の量は、以下であり得る:1日当たり、約0.1μg~約1000μg、例えば0.1μg~約750μg、又は約1μg~約500μg、又は約1μg~約100μg、又は約1μg~約50μg、または約1μg~約15μg、又は約1μg~約10μg、又は約1μg~約5μg、又は約5μg~約500μg、又は約5μg~約100μg、又は約5μg~約50μg。送達量は連続放出可能であり得る。
【0084】
場合によっては、1日当たりの放出量を増減できる。 特定の実施形態によれば、治療薬はエクセナチドである。 いくつかの実施形態によれば、1日当たりに送達されるエクセナチドの量は、以下であり得る:1日当たり、約1μg~約500μg、例えば約1μg~約250μg、又は約1μg~約100μg、又は約1μg~約50μg、又は約1μg~約25μg、又は約1μg~約15μg、又は約1μg 約10μg~約10μg、又は約1μg~約5μg、叉は約5μg~約500μg、又は約5μg~約100μg、又は約5μg~約50μg、又は約15μg~ 約500μg、又は約15μgから約100μg、又は約15μg~約50μg。送達量は連続放出可能であり得る。 場合によっては、1 日当たりの放出量を増減できる。
【0085】
場合によっては、リザーバーの容量は、1日当たり約1μg~約500μgであり得る1日当たりの送達量の持続時間が、少なくとも10日間、少なくとも30日間、少なくとも45日間、少なくとも 60 日、少なくとも 75 日、少なくとも 90 日、少なくとも 120 日、又はそれ以上続くようなものである。
【0086】
2型糖尿病の治療に適したエクセナチドの用量は、対象における治療薬の任意の適切な平均定常状態血漿濃度を提供することができる。 例えば、平均定常状態血漿濃度は、10pg/ml~10,000ng/mlであり得る。いくつかの実施形態によれば、エクセナチドの平均定常状態血漿濃度は、50pg/ml~600pg/mlであり得る。 いくつかの実施形態によれば、エクセナチドの平均定常状態血漿濃度は、170pg/ml~350pg/mlであり得る。 いくつかの実施形態によれば、エクセナチドの平均定常状態血漿濃度は、170pg/ml~290pg/mlであり得る。
【0087】
特定の実施形態によれば、1日当たり送達されるエクセナチドの量は、以下のpHである:約4.0~約7.0、又は約4.1~約6.5、又は約4.2~約6.5、又は約4.3~約6.5、又は約4.4~約6.5、又は約4.5~約6.5、又は約4.6~約6.5、又は約4.7~約6.5又は約4.8~約6.5、又は約4.9~約6.5、又は約5.0~約6.5、又は約5.1~約6.5、又は約5.2~約6.5、又は約5.3~約6.5、又は約5.4~約6.5、又は約5.5~約6.5、又は約5.6~約6.05、又は約5.7~約6.5、又は約5.8~約6.5、又は約5.9~約6.5。
【0088】
特定の実施形態によれば、1日当たり約4.0~約6.0、又は約5.0~約6.0、又は約5.5~約6.0のpHで送達されるエクセナチドの量は、以下である:1日当たり、約1μg~約500μg、例えば約1μg~約250μg、又は約1μg~約100μg、又は約1μg~約50μg、又は約1μg~約25μg、又は約1μg~約15μg、又は約1μg~約10μg、又は約1μg~約5μg、又は約5μg~約500μg、又は約5μg~約100μg、又は約5μg~約50μg。送達量は連続放出可能であり得る。 場合によっては、1 日当たりの放出量を増減できる。
【0089】
特定の実施形態によれば、本開示は、治療薬の第1の投与様式から第2の異なる投与様式へのシームレスな移行を提供する。 例えば、本開示は、エクセナチドの皮下投与から、本明細書に開示されるエクセナチドのリザーバーを有する埋め込み型デバイスへの移行を提供する。
【0090】
特定の実施形態によれば、本開示は、疾患の治療のための埋め込み型デバイスを提供する。 本開示のデバイスは、移植用に構成されたカプセルを含み、そしてリザーバー、リザーバー内に含まれる治療薬の流体製剤、及びカプセルに取り付けられ、リザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供する複数の細孔を有するナノ多孔性膜を有する。いくつかの実施形態によれば、製剤のpHは、治療薬の安定性を最適化するレベルである。 いくつかの実施形態によれば、製剤は、ナノ多孔性膜を通る治療薬の放出速度を最適化するレベルにある。
【0091】
いくつかの実施形態によれば、製剤は、治療剤の安定性及びナノ多孔性膜を介した治療剤の放出速度の両方を最適化するレベルにある。
【0092】
場合によっては、放出速度及び安定性は、治療が少なくとも 10 日、少なくとも 30 日、少なくとも 45 日、少なくとも 60 日、少なくとも 75 日、少なくとも 90 日、又は少なくとも 120 日又はそれ以上持続するように最適化される。
【0093】
場合によっては、治療薬はインクレチン模倣薬である。 場合によっては、インクレチン模倣薬はエクセナチドである。 場合によっては、治療薬は、II型糖尿病、肥満、又は非アルコール性脂肪性肝炎などの疾患を治療する。 他の例では、治療薬は、正常血糖を回復する、対象における糖尿病の進行の持続的な遅延もしくは改善を達成する、又は糖尿病のリスクのある対象における糖尿病発症の遅延を達成するのに有効である。
【0094】
特定の実施形態によれば、本開示は、疾患の治療のための方法を提供する。本開示の方法は、疾患の治療のためのデバイスを提供すること、及び治療を必要とする対象にデバイスを埋め込むことを含む。本開示のデバイスは、移植用に構成されたカプセルを含み、そしてリザーバー、リザーバー内に含まれる治療薬の流体製剤、及びカプセルに取り付けられ、リザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供する複数の細孔を有するナノ多孔性膜を有する。いくつかの実施形態によれば、製剤のpHは、治療剤の安定性を最適化するレベルである。 いくつかの実施形態によれば、製剤は、ナノ多孔性膜を通る治療薬の放出速度を最適化するレベルにある。
【0095】
いくつかの実施形態によれば、製剤は、治療薬の安定性及びナノ多孔性膜を介した治療薬の放出速度の両方を最適化するレベルにある。
【0096】
場合によっては、放出速度及び安定性は、治療が少なくとも 10 日、少なくとも 30 日、少なくとも 45 日、少なくとも 60 日、少なくとも 75 日、少なくとも 90 日、又は少なくとも 120 日又はそれ以上持続するように最適化される。
【0097】
場合によっては、治療薬はインクレチン模倣薬である。 場合によっては、インクレチン模倣薬はエクセナチドである。 場合によっては、治療薬は、II型糖尿病、肥満、又は非アルコール性脂肪性肝炎などの疾患を治療する。
【0098】
特定の実施形態によれば、本開示は、血糖コントロールの改善を必要とする対象においてヘモグロビンA1Cの血漿レベルを低下させるための方法を提供し、前記方法は、以下:
(i)埋め込み用に構成され、そしてリザーバーを有するカプセル;
(ii)リザーバー内に収容される治療薬の流体製剤;
(iii)カプセルに取り付けられた複数の細孔を有し、そしてリザーバーから治療薬を放出するための拡散経路を提供するナノ多孔性膜、
を含むデバイスを提供し;そして
A1C血漿レベルの付随する減少を伴う、対象へのデバイスの埋め込むことを含む。
【0099】
1つの側面によれば、減少は、皮下投与と比較して、対象が埋め込みデバイス上に配置されたときから測定される。 埋め込まれたデバイスは、対象の HbA1c レベルを低下させる。
【0100】
特定の場合、対象のHbA1cレベルは、約1%~約12%であり得る。 典型的には、正常な個人の場合、HbA1c レベルは次の通りである:約5.6%未満、例えば約1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3、3.1、3.2、3.3 、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、又は約5.6%。
【0101】
5.7% 5.8、5.9、6、6.1、6.2、6.3、6.4 などの6.5% をわずかに下回る HbA1c のレベルは、中程度の高血糖の存在を示している可能性がある。
【0102】
≧6.5%、 例えば 6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、 8.6、8.7、8.8、8.9、9、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9、10、10.1、10.2、10.3、10.4、10.5、10.6、10.7、10.8、1、10.9 11.1、11.2、11.3、11.4、11.5、11.6、11.7、11.8、11.9、及び/又は 12%のHbA1c レベルは、糖尿病を示す。一般的な血漿グルコース検査とは対照的に、糖化ヘモグロビンのレベルは血糖濃度の日々の変動の影響を受けないが、過去 6 ~ 8 週間の平均グルコースレベルを反映している。
【0103】
特定の場合、皮下注射と比較して埋め込みデバイスを使用した場合のHbA1cレベルの低下は、HbA1cレベルの少なくとも約0.1%~約5.0%である。 特定の場合、HbA1cの減少は、約0.1%、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、 2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、 又は5.0%である。
【実施例】
【0104】
PCT/US2021/019559号に記載されている薬物送達デバイス及び製造方法を使用して、異なるレベルのpHでエクセナチドの製剤を用いた一連の実験を行った。
【0105】
簡単に説明すると、約 27 マイクロリットル又は約 50 マイクロリットルのリザーバーを備えた円筒形のポリカーボネート カプセルに、一方の端に貫通可能なシリコン セプタムを取り付け、もう一方の端にチタニア ナノチューブ膜を保持するチタン スクリュー キャップを取り付けた。 これらの実験室での実験では、内容物の目視検査を可能にするためにポリカーボネート カプセルが使用された。場合によっては、治療薬であるエクセナチドの乾燥製剤をリザーバーに充填し、場合によっては不溶性ポリマー安定剤と一緒に充填し、その後、チタンスクリューキャップを取り付けてカプセルを密封した。 セプタムを貫通する注射針によって、適切な溶媒をデバイスに充填した。 場合によっては、治療薬を適切な緩衝系に溶解した後、溶液をリザーバーに満たした。 リザーバーの充填は、水和プロセス中に膜を通して減圧を適用することによって促進された。
【0106】
米国特許第9814867号に従って膜を調製した。全ての膜は、米国特許第 9770412 号に従って、少なくとも 20 サイクルの原子層堆積を受けた。膜の直径は約 0.3mmで、膜当たり約 6,000,000 個のナノ細孔があり; チタン基板端の細孔径は28nm程度であった。膜の直径は約 0.3mmで、膜当たり約 6,000,000 個のナノ細孔があり; チタン基板端の細孔径は28nm程度であった。
【0107】
使用したエクセナチドは、Bachem Americas, Inc., 3132 Kashiwa Street, Torrance, CA 90505, USA から酢酸エクセナチドの形で入手された。
実施例1
【0108】
内部リザーバー容量が約 50 マイクロリットルのポリカーボネート カプセルに、一方の端にシリコン セプタムを取り付け、もう一方の端にチタニア ナノチューブ膜を保持するチタン スクリュー キャップを取り付けた。 カプセルに蓋をする前に、リザーバーに約 10.8mgのエクセナチドを充填した。デバイス内のエクセナチドを溶液にするために、メンブレンを通してリザーバーに真空を適用した後、クエン酸バッファーを送達するポンプシステムに取り付けた注射針でセプタムを突き刺すことにより、pH3.1の0.5M クエン酸緩衝液をリザーバーに注入した。以前の研究では、結果としてリザーバー内の溶液のpHが約3.6になることが示されている。
【0109】
デバイスは、USP-App7放出速度試験機で10mlの放出速度緩衝液に沈められ、攪拌された。
【0110】
初期放出速度緩衝液は、0.5M クエン酸緩衝液、pH3.6であった。 (
図2)14日後、放出速度緩衝液をpH7.4のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に切り替えた。 放出速度の大幅な増加が観察された。28 日目に、放出速度緩衝液をクエン酸 pH3.6に戻すと、放出速度の低下が観察された。 29 日目に、放出速度緩衝液を再び PBS pH 7.4に切り替えて放出速度を増加させ、30 日目に放出速度緩衝液を再びクエン酸 pH3.6に切り替えると、放出速度が低下した。
実施例2
【0111】
約27マイクロリットルの内部リザーバー容量を備えたポリカーボネート カプセルに、一方の端にシリコン セプタムを取り付け、もう一方の端にチタニア ナノチューブ膜を保持するチタン スクリュー キャップを取り付けた。 カプセルに蓋をする前に、リザーバーに約 5.7mgのエクセナチドを充填した。 デバイス内のエクセナチドを溶液にするために、膜を介してリザーバーに真空を適用した後、緩衝液を送達するポンプシステムに取り付けられた注射針でセプタムを突き刺すことにより、クエン酸緩衝液をリザーバーに注入した。 クエン酸緩衝液は、0.02M Tween(登録商標)20 を含む pH 3.6 の 0.5M 緩衝液、又は0.02M Tween(登録商標)20 を含むpH5.6の0.5M 緩衝液のいずれかであった。
【0112】
デバイスは、USP-App7 放出速度試験機で 10mlの放出速度緩衝液に沈められ、攪拌された。 放出速度媒体は、pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水又は炭酸緩衝生理食塩水のいずれかであった。
【0113】
図3に見られるように、pH3.6の緩衝液で満たされたデバイスからの放出は、pH5.6の緩衝液で満たされたデバイスからの放出よりもかなり遅かった。 効果は、リン酸緩衝放出速度媒体及び炭酸緩衝放出速度媒体について同様であった。
実施例3
【0114】
約52マイクロリットルの内部リザーバー容量を備えたポリカーボネート カプセルに、一方の端にシリコン セプタムを取り付け、もう一方の端にチタニア ナノチューブ膜を保持するチタン スクリュー キャップを取り付けた。 この実験では、デバイスは既製のエクセナチド溶液で満たされていた。エクセナチド溶液は25重量%のエクセナチドを含み、そして4.5、5.0、5.5 及び 6.0の目標pHレベルに調整された。溶液は 0.9%NaClで調製し、NaOH 又は HCL で H を調整した。 デバイスをエクセナチド溶液で満たすために、膜を通してリザーバーに真空を適用した後、クエン酸緩衝液を送達するポンプシステムに取り付けられた注射針で隔壁を突き刺すことにより、エクセナチド溶液をリザーバーに注入した。
【0115】
デバイスは、USP-App7 放出速度試験機で10mlの放出速度緩衝液に沈められ、攪拌された。 結果を
図4に示す。ねじ付きキャップのねじ山など、デバイスの外側に残留エクセナチドが存在することが原因と考えられる放出の最初の短いバーストの後、製剤に対する放出速度の明確な依存性が観察された。pH4.5では、放出速度は1日当たり約1~5mcg の範囲に留まったが、pH6では速度が1日当たり 60~80mcg に上昇し、少なくとも 10 倍高くなった。
実施例4
【0116】
内部リザーバー容量が約 50 マイクロリットルのポリカーボネート カプセルに、一方の端にシリコン セプタムを取り付け、もう一方の端にチタニア ナノチューブ膜を保持するチタン スクリュー キャップを取り付けた。 カプセルに蓋をする前に、約10mgのエクセナチドと10mgのpH安定化イオン交換樹脂、Diaion WK40L(米国仮特許出願第62/983,296号を参照のこと)でリザーバーを満たした。デバイス内のエクセナチドを溶液にするために、メンブレンを通してリザーバーに真空を適用し、その後、クエン酸緩衝液(0.2M、pH 5.2、注射用水中0.27% Tween(登録商標))をリザーバーに、緩衝液を提供するポンプ システムに接続されている注射針で隔壁を突き刺すことによって注入した。最終pHは4.9で記録された。
【0117】
インビトロ放出速度実験は、pH 7.4 の Bis-Tris 緩衝液 3 mL を含む 4 mL HPLC バイアルで実施した。 バイアルを37℃のインキュベーター内のシェーカープレートで振とうした。 期間の終わりに、デバイスを終了し、分解し、内部の pH を測定しました。
【0118】
図5に見られるように、初期放出率は約5bmcg/日であった。 28 日で内部 pH は 5.4 に上昇し、放出速度は約 120mcg/日に増加した。
実施例5
【0119】
内部リザーバー容量が約 50 マイクロリットルのポリカーボネート カプセルに、一方の端にシリコン セプタムを取り付け、もう一方の端にチタニア ナノチューブ膜を保持するチタン スクリュー キャップを取り付けました。 カプセルに蓋をする前に、リザーバーに約15mg のエクセナチドを充填した。 この研究では追加の pH 安定剤は使用されなかった。デバイス内のエクセナチドを溶液にするために、メンブレンを通してリザーバーに真空を適用し、その後、クエン酸緩衝液(0.5M、注射用水中 0.27%Tween(登録商標)、pH=5.05)をリザーバーに、緩衝液を提供するポンプ システムに接続されている注射針で隔壁を突き刺すことによって注入した。
【0120】
デバイスの1つのグループは、チタン基板がリザーバーに面するように取り付けられた膜を有し、他のグループは、放出速度媒体に向けて、チタン基板が外側に面するように取り付けられた膜を有した。
【0121】
USP-App7放出速度テスターで、デバイスを10mlの放出速度緩衝液(pH7.4のリン酸緩衝生理食塩水)に浸し、撹拌した。
【0122】
図6に見られるように、チタン基板が外側を向くように取り付けられた膜を有するグループは、30日目頃に放出速度の急速な低下を示した。他のグループは、135日にわたってはるかに遅く、緩やかな低下を示した。
【0123】
従って、本開示の実施形態は、デバイス内の製剤のpHに対する薬剤の放出速度の依存性を決定し、そして次に、所望の放出速度を提供するpHでそれらの製剤を調製することにより、埋め込み型デバイスからの治療薬の放出を制御するための強力な方法を提供する。
実施例6
【0124】
この実施例の結果を
図7に示す。ポリカーボネートリザーバーの代わりにチタンリザーバーを使用する。 チタンリザーバーは、長さ約25mm、直径約2.25mmであった。 酸化チタンナノポーラス膜を備えたチタン基板が、デバイスの一端に溶接された。 ナノポーラス膜の直径は 0.3 mm で、約 6,000,000 個のナノポアで構成されていた。 基板端でのナノポアの平均直径は約20nmであった。
【0125】
リザーバーのもう一方の端にシリコン製の隔壁が挿入された。 リザーバーには、約 10mgの架橋ポリメタクリレート ビーズ (Purolite C115, Purolite, Inc, 2201 Renaissance Boulevard, King of Prussia, PA 19406, USA) が含まれており、NaOH で滴定してpHを5.5に調整した。 PCT/US2021/019559号の方法に従って、24%エクセナチド酢酸塩(w/w)、0.25%ポリソルベート20、154mM Na+及び5.5のpHを含む製剤約46mgをデバイスに充填した。
【0126】
放出速度試験は、37℃のシェーカープレート上の26mM ビス-トリス緩衝液、154mMのNaCl3mlにデバイスを沈め、逆相HPLC により一定間隔で放出量を測定することにより実施した。 得られた放出速度プロフィール(n=8)を
図7に示す。エラーバーは標準偏差を示す。
【0127】
上記の説明は、例示を意図したものであり、限定を意図したものではないことを理解されるべきである。 上記の説明を読めば、当業者には多くの実施形態が明らかになるであろう。 従って、開示の範囲は、上記の説明を参照して決定されるべきではなく、代わりに、添付の請求項を参照して決定されるべきであり、そのような請求項が権利を有する均等物の全範囲とともに決定されるべきである。 特許出願、特許、及びPCT刊行物を含む、本出願で引用されるすべての記事及び参考文献の開示は、すべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】