(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】統合型車両制動システム
(51)【国際特許分類】
B60W 30/02 20120101AFI20230725BHJP
B60G 23/00 20060101ALI20230725BHJP
B60G 17/0165 20060101ALI20230725BHJP
【FI】
B60W30/02
B60G23/00
B60G17/0165
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501348
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-06
(86)【国際出願番号】 US2021041030
(87)【国際公開番号】W WO2022011223
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512321121
【氏名又は名称】クリアモーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】チェン,アレン,チャン-ハオ
【テーマコード(参考)】
3D241
3D301
【Fターム(参考)】
3D241BA49
3D241BA55
3D241BA61
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(57)【要約】
制動システム及びアクティブサスペンションシステムを有する車両用の車両制御システムが提供される。車両制御システムは、車両の1つ又は複数のホイールにおけるホイール力の法線成分を調整して、制動事象中の1つ又は複数のホイールにおける平均トラクション力を増加させるように構成されてもよい。車両制御システムは、参考道路情報、前方監視道路情報、及び/又は車両センサデータに基づいて、1つ又は複数のホイールにおけるホイール力の法線成分を調整し得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のホイールと、
第2のホイールと、
前記第1のホイール及び前記第2のホイールに制動力を適用するように構成された制動システムと、
前記第1のホイール及び前記第2のホイールに動作可能に結合されたアクティブサスペンションシステムであって、少なくとも1つの動作モードにおいて前記第1のホイール及び前記第2のホイールに能動的な力を適用して、前記第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、前記第2のホイールと前記路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整するように構成されたアクティブサスペンションシステムと、
前記ブレーキシステム及び前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成された少なくとも1つのプロセッサであって、
前記車両の位置を判定し、
前記車両の位置に対応する参考道路情報を取得し、
前記取得した参考道路情報に少なくとも部分的に基づいて、前記制動システム及び前記アクティブサスペンションシステムを制御する、
ように構成された、少なくとも1つのプロセッサと
を備える車両。
【請求項2】
前記第1のホイールが前記車両の前輪であり、前記第2のホイールが前記車両の後輪であり、前記第1のホイールと前記第2のホイールは前記車両の反対側のコーナーに位置決めされる、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記取得された参考道路情報に基づいて前記第1のホイールの法線成分及び前記第2のホイールの法線成分を増加するように前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成される、請求項2に記載の車両。
【請求項4】
前記取得された参考道路情報が道路の乱れを含む、請求項3に記載の車両。
【請求項5】
前記道路の乱れが、公称道路摩擦に対する路面の摩擦の変化である、請求項4に記載の車両。
【請求項6】
前記取得された参考道路情報が旋回部を含む、請求項3に記載の車両。
【請求項7】
前記第1のホイールが前記車両の第1の前輪であり、前記第2のホイールが前記車両の第2の前輪であり、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記アクティブサスペンションシステムを制御して前記車両のピッチを調整するように構成される、請求項1に記載の車両。
【請求項8】
前記取得された参考道路情報が道路の乱れを含み、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記道路の乱れに基づいて前記第1のホイール接触力の法線成分及び前記第2のホイール接触力の法線成分を一時的に増加させるように前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成される、請求項7に記載の車両。
【請求項9】
前記少なくとも1つのプロセッサが、制動事象が進行中であると判定するように構成され、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記制動事象に基づいて前記車両のピッチ周波数を判定するように構成され、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記判定されたピッチ周波数に基づいて前記車両のピッチを調整するように前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成される、請求項7に記載の車両。
【請求項10】
前記第1のホイールが、前記車両の第1のサイドホイールであり、前記第2のホイールが、前記車両の同じ側に位置決めされた前記車両の第2のサイドホイールであり、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記車両のロールを調整するために前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成される、請求項1に記載の車両。
【請求項11】
前記取得された参考道路情報が道路の乱れを含み、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記道路の乱れに基づいて前記第1のホイール接触力の法線成分及び前記第2のホイール接触力の法線成分を一時的に増加させるように前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成される、請求項10に記載の車両。
【請求項12】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
制動事象が進行中であると判定し、
前記制動事象の間の前記車両の予想される応答を判定し、
前記予想される応答に基づいて、前記制動システム及び前記アクティブサスペンションシステムを制御する
ように構成される、請求項1~8又は10~12のいずれか一項に記載の車両。
【請求項13】
前記取得された参考道路情報が、乱れのサイズを伴う道路の乱れを含み、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記乱れのサイズが作動閾値を超えているかどうかを判定するように構成され、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記制動事象の継続時間中、前記乱れのサイズが作動閾値を超えていない場合、前記アクティブサスペンションシステムを無効にするように構成される、請求項1に記載の車両。
【請求項14】
前記取得された参考道路情報が、前記車両に搭載されたメモリに格納されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の車両。
【請求項15】
前記取得された参考道路情報が、前記車両の前方に位置する第2の車両から受信される、請求項1~14のいずれか一項に記載の車両。
【請求項16】
制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法であって、前記アクティブサスペンションシステムが第1のホイール及び第2のホイールに動作可能に結合されており、前記方法は、
前記車両の位置を判定することと、
前記車両の位置に対応する参考道路情報を取得することと、
前記取得した参考道路情報に少なくとも部分的に基づいて、前記制動システム及び前記アクティブサスペンションシステムを制御することと
を含み、前記アクティブサスペンションシステムを制御することが、前記第1のホイール及び前記第2のホイールに能動的な力を適用して、前記第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、前記第2のホイールと前記路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整することを含む、方法。
【請求項17】
前記第1のホイールが前記車両の前輪であり、前記第2のホイールが前記車両の後輪であり、前記第1のホイールと前記第2のホイールが前記車両の反対側のコーナーに位置決めされる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記取得された参考道路情報に基づいて前記第1のホイールの法線成分及び前記第2のホイールの法線成分を増加するように前記アクティブサスペンションシステムを制御することをさらに含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記取得された参考道路情報が道路の乱れを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記道路の乱れが、公称道路摩擦に対する路面の摩擦の変化である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記取得された参考道路情報が旋回部を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
前記第1のホイールが前記車両の第1の前輪であり、前記第2のホイールが前記車両の第2の前輪であり、前記取得された参考道路情報が道路の乱れを含み、前記方法が、前記道路の乱れに基づいて前記車両のピッチを調整するように前記アクティブサスペンションシステムを制御することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
制動事象が進行中であると判定することと、
前記制動事象に基づいて前記車両のピッチ周波数を判定することと、
前記判定されたピッチ周波数に基づいて前記車両のピッチを調整するように前記アクティブサスペンションシステムを制御することと
をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第1のホイールが、前記車両の第1のサイドホイールであり、前記第2のホイールが、前記車両の同じ側に位置決めされた前記車両の第2のサイドホイールであり、前記取得された参考道路情報が道路の乱れを含み、前記方法が、前記道路の乱れに基づいて前記車両のロールを調整するように前記アクティブサスペンションシステムを制御することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
制動事象が進行中であると判定することと、
前記制動事象の間の前記車両の予想される応答を判定することと、
前記予想される応答に基づいて、前記制動システム及び前記アクティブサスペンションシステムを制御することと
をさらに含む、請求項16~21又は24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記取得された参考道路情報が、乱れのサイズを伴う道路の乱れを含み、前記方法が、前記乱れのサイズが作動閾値を超えているかどうかを判定することと、前記制動事象の継続時間中、前記乱れのサイズが作動閾値を超えていない場合、前記アクティブサスペンションシステムを無効にすることとをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項27】
前記参考道路情報を取得することが、前記車両の前方に位置する第2の車両から前記参考道路情報を受信することを含む、請求項16~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
第1のホイールと、
第2のホイールと、
前記第1のホイール及び前記第2のホイールに制動力を適用するように構成された制動システムと、
前記第1のホイール及び前記第2のホイールに動作可能に結合されたアクティブサスペンションシステムであって、少なくとも1つの動作モードにおいて前記第1のホイール及び前記第2のホイールに能動的な力を適用して、前記第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、前記第2のホイールと前記路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整するように構成されたアクティブサスペンションシステムと、
前方監視道路情報を感知するように構成された前方監視センサと、
前記制動システム及び前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成された少なくとも1つのプロセッサであって、
前記前方監視センサから前記前方監視道路情報を受信し、
前記感知された前方監視道路情報に少なくとも部分的に基づいて、前記制動システム及び前記アクティブサスペンションシステムを制御する
ように構成された少なくとも1つのプロセッサと
を備える車両。
【請求項29】
前記第1のホイールが前記車両の前輪であり、前記第2のホイールが前記車両の後輪であり、前記第1のホイールと第2のホイールが前記車両の反対側のコーナーに位置決めされる、請求項28に記載の車両。
【請求項30】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記前方監視道路情報に基づいて前記第1のホイールの法線成分及び前記第2のホイールの法線成分を増加するように前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成される、請求項29に記載の車両。
【請求項31】
前記前方監視道路情報が道路の乱れを含む、請求項30に記載の車両。
【請求項32】
前記道路の乱れが、公称道路摩擦に対する路面の摩擦の変化である、請求項31に記載の車両。
【請求項33】
前記前方監視道路情報が旋回部を含む、請求項30に記載の車両。
【請求項34】
前記第1のホイールが前記車両の第1の前輪であり、前記第2のホイールが前記車両の第2の前輪であり、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記車両のピッチを調整するように前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成される、請求項28に記載の車両。
【請求項35】
前記前方監視道路情報が道路の乱れを含み、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記道路の乱れに基づいて前記第1のホイール接触力の法線成分及び前記第2のホイール接触力の法線成分を一時的に増加させるように前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成される、請求項34に記載の車両。
【請求項36】
前記少なくとも1つのプロセッサが、制動事象が進行中であると判定するように構成され、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記制動事象に基づいて前記車両のピッチ周波数を判定するように構成され、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記判定されたピッチ周波数に基づいて前記車両のピッチを調整するように前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成される、請求項34に記載の車両。
【請求項37】
前記第1のホイールが、前記車両の第1のサイドホイールであり、前記第2のホイールが、前記車両の同じ側に位置決めされた前記車両の第2のサイドホイールであり、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記車両のロールを調整するために前記アクティブサスペンションシステムを制御するように構成される、請求項28に記載の車両。
【請求項38】
前記前方監視道路情報が道路の乱れを含み、前記少なくとも1つのプロセッサが前記アクティブサスペンションシステムを制御して、前記道路の乱れに基づいて前記第1のホイール接触力の法線成分及び前記第2のホイール接触力の法線成分を一時的に増加させるように構成される、請求項37に記載の車両。
【請求項39】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
制動事象が進行中であると判定し、
前記制動事象の間の前記車両の予想される応答を判定し、
前記予想される応答に基づいて、前記制動システム及び前記アクティブサスペンションシステムを制御する
ように構成される、請求項28~35又は37若しくは38のいずれか一項に記載の車両。
【請求項40】
前記前方監視道路情報が、乱れのサイズを伴う道路の乱れを含み、前記少なくとも1つのプロセッサが、前記乱れのサイズが作動閾値を超えているかどうかを判定するように構成され、前記少なくとも1つのプロセッサは、前記制動事象の継続時間中、前記乱れのサイズが作動閾値を超えていない場合、前記アクティブサスペンションシステムを無効にするように構成される、請求項28に記載の車両。
【請求項41】
前記前方監視センサがLIDARである、請求項28~40のいずれか一項に記載の車両。
【請求項42】
前記前方監視センサが少なくとも1つのカメラである、請求項28~40のいずれか一項に記載の車両。
【請求項43】
制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法であって、前記アクティブサスペンションシステムが第1のホイール及び第2のホイールに動作可能に結合されており、前記方法は、
前方監視センサで前方監視道路情報を感知することと、
前記前方監視道路情報に少なくとも部分的に基づいて前記制動システム及び前記アクティブサスペンションシステムを制御することと
を含み、前記アクティブサスペンションシステムを制御することが、前記第1のホイール及び前記第2のホイールに能動的な力を適用して、前記第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、前記第2のホイールと前記路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整することを含む、方法。
【請求項44】
前記第1のホイールが前記車両の前輪であり、前記第2のホイールが前記車両の後輪であり、前記第1のホイールと第2のホイールが前記車両の反対側のコーナーに位置決めされる、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記前方監視道路情報に基づいて、前記第1のホイールの法線成分及び前記第2のホイールの法線成分を増加するように前記アクティブサスペンションシステムを制御することをさらに含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記前方監視道路情報が道路の乱れを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記道路の乱れが、公称道路摩擦に対する路面の摩擦の変化である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
前記前方監視道路情報が旋回部を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記第1のホイールが前記車両の第1の前輪であり、前記第2のホイールが前記車両の第2の前輪であり、前記前方監視道路情報が道路の乱れを含み、前記方法が、前記道路の乱れに基づいて前記車両のピッチを調整するように前記アクティブサスペンションシステムを制御することをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項50】
制動事象が進行中であると判定することと、
前記制動事象に基づいて前記車両のピッチ周波数を判定することと、
前記判定されたピッチ周波数に基づいて前記車両のピッチを調整するように前記アクティブサスペンションシステムを制御することと
をさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記第1のホイールが、前記車両の第1のサイドホイールであり、前記第2のホイールが、前記車両の同じ側に位置決めされた前記車両の第2のサイドホイールであり、前記前方監視道路情報が道路の乱れを含み、前記方法が、前記道路の乱れに基づいて前記車両のロールを調整するように前記アクティブサスペンションシステムを制御することをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項52】
制動事象が進行中であると判定することと、
前記制動事象の間の前記車両の予想される応答を判定することと、
前記予想される応答に基づいて、前記制動システム及び前記アクティブサスペンションシステムを制御することと
をさらに含む、請求項43~49又は51のいずれか一項に記載の方法。
【請求項53】
前記前方監視道路情報が、乱れのサイズを伴う道路の乱れを含み、前記方法が、前記乱れのサイズが作動閾値を超えているかどうかを判定することと、前記制動事象の継続時間中、前記乱れのサイズが作動閾値を超えていない場合、前記アクティブサスペンションシステムを無効にすることとをさらに含む、請求項43に記載の方法。
【請求項54】
前記前方監視センサがLIDARである、請求項43~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
前記前方監視センサが少なくとも1つのカメラである、請求項43~53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法であって、
制動事象が進行中であることを判定することと、
前記制動事象中の第1のホイールに対する制動力要求が閾値制動力を超えていることを判定することと、
前記制動力要求が前記閾値制動力を超えていることを判定すると、前記アクティブサスペンションシステムにより前記車両の1つ又は複数のホイールにおけるホイール力の法線成分を調整し、前記制動事象中の前記第1のホイールにおける平均トラクション力を増加させることと
を含む方法。
【請求項57】
前記制動力要求を判定することが、前記第1のホイールがスリップしていると判定することを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記1つ又は複数のホイールにおける前記ホイール力の法線成分を調整することが、前記アクティブサスペンションシステムで前記第1のホイールにおける第1のホイール力の法線成分を増加させることを含む、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
前記第1のホイールの位置を判定することと、
前記アクティブサスペンションシステムで前記第1のホイールにおける第1のホイール力の法線成分を増加させることと、
前記アクティブサスペンションシステムで前記第2のホイールにおける第2のホイール力の法線成分を増加させることと
をさらに含む、請求項56又は57に記載の方法。
【請求項60】
前記第1のホイール及び前記第2のホイールが、前記車両の反対側のコーナーに位置決めされる、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記第1のホイール及び前記第2のホイールが、前記車両の前部に位置決めされ、前記第1のホイール力の法線成分及び前記第2のホイール力の法線成分を増加させることが、前記車両のピッチを調整する、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
前記制動事象に基づいて前記車両のピッチ周波数を判定することと、
前記ピッチ周波数に基づいて、前記第1のホイール力の法線成分及び前記第2のホイール力の法線成分を調整することと
をさらに含む、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
前記第1のホイール及び前記第2のホイールが、前記車両の側方に位置決めされ、前記第1のホイール力の法線成分及び前記第2のホイール力の法線成分を増加させることが、前記車両のロールを調整する、請求項59に記載の方法。
【請求項64】
前記1つ又は複数のホイールにおける前記ホイール力の法線成分を調整することが、前記1つ又は複数のホイールにおける制動力の適用後に行われる、請求項56~63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法であって、
制動事象が進行中であることを判定することと、
前記車両のピッチ振動のピッチ周波数を判定することと、
前記アクティブサスペンションシステムにより1つ又は複数のホイールにおけるホイール力の法線成分を調整し、前記制動事象中に前記ピッチ振動を前記ピッチ周波数において減衰させることと
を含む方法。
【請求項66】
前方監視センサで前方監視道路情報を感知することをさらに含み、前記ピッチ周波数を判定することが、前記前方監視道路情報に少なくとも部分的に基づく、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
参考道路情報を取得することをさらに含み、前記ピッチ周波数を判定することが、前記参考道路情報に少なくとも部分的に基づく、請求項65又は66に記載の方法。
【請求項68】
前記参考道路情報を取得することが、前記車両の前方に位置する第2の車両から前記参考道路情報を受信することを含む、請求項67に記載の方法。
【請求項69】
制動力要求を判定することと、
前記制動力要求が閾値制動力を超えているかどうかを判定することと、
前記制動力要求が前記閾値制動力を超えていないと判定した場合に、前記制動事象の持続時間の間、前記アクティブサスペンションシステムを無効にすることと
をさらに含む、請求項65~68のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
[0001] 本出願は、2020年7月10日に提出された米国仮特許出願第63/050,706号の米国特許法第119条(e)の下での優先権の利益を主張し、その開示内容は参照により完全な形で本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
分野
[0002] 開示された実施形態は、統合型車両制動システム、アクティブサスペンションシステム、及び関連する使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
[0003] 従来の車両制動システムは、車両の速度を低下させるか又は車両を停止させるように設計されている。ほとんどの制動システムは、車両のホイールのうちの1つ又は複数に遅延トルクを適用し、したがって、地面との接触点(例えば、タイヤのコンタクトパッチ)においてタイヤに縦方向の(例えば、車両の進行方向に沿った)スリップを生じさせることによって作用する。このスリップにより、法線荷重及びタイヤと地面との間の摩擦係数に関連する縦方向の力が発生する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
概要
[0004] いくつかの実施形態において、車両は、第1のホイールと、第2のホイールと、第1のホイール及び第2のホイールに制動力を適用するように構成された制動システムと、第1のホイール及び第2のホイールに動作可能に結合されたアクティブサスペンションシステムとを含み、アクティブサスペンションシステムは、少なくとも1つの動作モードにおいて第1のホイール及び第2のホイールに能動的な力を適用して、第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、第2のホイールと路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整するように構成される。車両はまた、ブレーキシステム及びアクティブサスペンションシステムを制御するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む。少なくとも1つのプロセッサは、車両の位置を判定し、車両の位置に対応する参考道路情報を取得し、取得した参考道路情報に少なくとも部分的に基づいて、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御するように構成される。
【0005】
[0005] いくつかの実施形態において、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法であって、アクティブサスペンションシステムは第1のホイール及び第2のホイールに動作可能に結合されている、制御する方法は、車両の位置を判定することと、車両の位置に対応する参考道路情報を取得することと、取得した参考道路情報に少なくとも部分的に基づいて、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御することとを含み、アクティブサスペンションシステムを制御することは、第1のホイール及び第2のホイールに能動的な力を適用して、第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、第2のホイールと路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整することを含む。
【0006】
[0006] いくつかの実施形態において、車両は、第1のホイールと、第2のホイールと、第1のホイール及び第2のホイールに制動力を適用するように構成された制動システムと、第1のホイール及び第2のホイールに動作可能に結合されたアクティブサスペンションシステムとを含み、アクティブサスペンションシステムは、少なくとも1つの動作モードにおいて第1のホイール及び第2のホイールに能動的な力を適用して、第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、第2のホイールと路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整するように構成される。車両はまた、前方監視道路情報を感知するように構成された前方監視センサと、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御するように構成された少なくとも1つのプロセッサとを含む。少なくとも1つのプロセッサは、前方監視センサから前方監視道路情報を受信し、取得された前方監視道路情報に少なくとも部分的に基づいて、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御するように構成される。
【0007】
[0007] いくつかの実施形態において、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法であって、アクティブサスペンションシステムは第1のホイール及び第2のホイールに動作可能に結合されている、制御する方法は、前方監視センサで前方監視道路情報を感知することと、前方監視道路情報に少なくとも部分的に基づいて制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御することとを含み、アクティブサスペンションシステムを制御することは、第1のホイール及び第2のホイールに能動的な力を適用して、第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、第2のホイールと路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整することを含む。
【0008】
[0008] いくつかの実施形態において、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法は、制動事象が進行中であることを判定することと、制動事象中の第1のホイールに対する制動力要求が閾値制動力を超えていることを判定することと、制動力要求が閾値制動力を超えていることを判定すると、アクティブサスペンションシステムにより車両の1つ又は複数のホイールにおけるホイール力の法線成分を調整し、制動事象中の第1のホイールにおける平均トラクション力を増加させることとを含む。
【0009】
[0009] いくつかの実施形態において、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法は、制動事象が進行中であることを判定することと、車両のピッチ振動のピッチ周波数を判定することと、アクティブサスペンションシステムにより1つ又は複数のホイールにおけるホイール力の法線成分を調整し、制動事象中にピッチ振動をピッチ周波数において減衰させることとを含む。
【0010】
[0010] 前述の概念、及び後述する追加の概念は、本開示はこの観点から限定されないので、任意の適切な組み合わせで配置され得ることを理解されたい。さらに、本開示の他の利点及び新規な特徴は、添付の図と併せて考慮されるとき、様々な非限定的な実施形態の以下の詳細な記載から明らかになるであろう。
【0011】
図面の簡単な説明
[0011] 添付の図面は、原寸に比例して描かれることを意図していない。図面において、様々な図に示されている各同一又はほぼ同一の構成要素は、同様の数字によって表される場合がある。明確にするために、すべての構成要素がすべての図面においてラベル付けされるとは限らない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0012]車両制御システム及び車両制御システムのための車両出力部を含む車両の一実施形態のブロック図である。
【
図3】[0014]いくつかの例示的な実施形態による、様々なホイール法線力に関するホイールスリップ比対縦力のグラフである。
【
図4A】[0015]第1の状態における車両及び道路の一実施形態の概略図である。
【
図4B】[0016]第2の状態における
図4Aの車両及び道路の概略図である。
【
図4C】[0017]第3の状態における
図4Aの車両及び道路の概略図である。
【
図5】[0018]いくつかの例示的な実施形態による、アクティブサスペンションで車両に適用されるねじれ力対停止距離のグラフである。
【
図6】[0019]いくつかの例示的な実施形態による、アクティブサスペンションで車両に適用されるねじれ力対ステアリングホイールトルクのグラフである。
【
図7】[0020]車両を制御する方法の一実施形態にかかるフローチャートである。
【
図8A】[0021]第1の状態における車両及び道路の一実施形態の概略図である。
【
図8B】[0022]第2の状態における
図8Aの車両及び道路の概略図である。
【
図8C】[0023]第3の状態における
図8Aの車両及び道路の概略図である。
【
図8D】[0024]第4の状態における
図8Aの車両及び道路の概略図である。
【
図9】[0025]車両を制御する方法の他の実施形態のフローチャートである。
【
図10】[0026]車両を制御する方法のさらに別の実施形態のフローチャートである。
【
図11A】[0027]第1の状態における車両の一実施形態の概略図である。
【
図12】[0031]車両を制御する方法のさらに別の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
発明の詳細な説明
[0032] 従来の自動車システムでは、ブレーキコントローラ又はトラクションコントロールシステムなどの車両の主要なサブシステムは、別々に設計され、その後、車両への統合時に組み合わせることができる。このようなサブシステムは、実質的に互いに相互作用しない場合があり、個々のサブシステムに影響を与える組み合わされたダイナミクスに基づいて制御されない場合がある。さらに、これらのサブシステムは、車両全体のダイナミクスに対する各サブシステムの組み合わされた影響に基づいて制御されない場合がある。従来の自動車システムでは、ブレーキコントローラが、制動事象中の車両制御を単独で担当することがある。
【0014】
[0033] 上記に鑑み、本発明者らは、自動車サブシステム間の強い相互作用の存在により全体的な車両ダイナミクスを組み込んだ組み合わせ型車両制御システムの利点を認識するに至った。特に、本発明者らは、ブレーキシステム及びアクティブサスペンションシステムを統合して、制動事象中の平均トラクション及び/又は車両ハンドリングを改善する組み合わせ型車両制御システムの利点を認識するに至った。さらに、組み合わせ型車両制御システムは、道路摩擦が低い状況(例えば、道路の乱れ又は路面状態によって引き起こされる)においてトラクション及びハンドリングを改善するために採用されてもよい。
【0015】
[0034] いくつかの実施形態において、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを有する車両のための車両制御システムが提供される。制動システムは、車両の1つ又は複数のホイール(例えば、4つのホイール)に制動力を適用するように構成されてもよい。アクティブサスペンションシステムは、1つ又は複数のホイールに動作可能に結合されてもよく、少なくとも1つの動作モードにおいて1つ又は複数のホイールに能動的な力を適用して1つ又は複数のホイールと路面との間のホイール接触力の法線成分を調整するように構成されてもよい。車両制御システムは、単一のサブシステム又は両方のサブシステムの機能性を向上させるために、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを組み合わせて制御するように構成されてもよい。特に、本明細書に記載される例示的な実施形態によれば、車両制御システムは、制動システムの機能性を向上させるためにアクティブサスペンションシステムを採用し得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、制動事象の間、車両の1つ又は複数のホイールの平均トラクションを向上させてもよい。本明細書でさらに考察するように、いくつかの実施形態において、車両制御システムは、参考道路情報、前方監視道路情報、及び/又は車両センサデータに基づいて、1つ又は複数のホイールにおけるホイール力の法線成分を調整し得る。
【0016】
[0035] いくつかの実施形態において、車両制御システムは、車両の別のサブシステムよりも車両の1つのサブシステムに優先順位をつけてもよい。このように、1つ又は複数の他のサブシステムが故障又は利用不可能な場合であっても最低限の機能を達成するために、そのようなサブシステムの1つをマスターコントローラとして割り当ててもよい。例えば、制動システムがマスター制御システムとして割り当てられてもよい。マスター制御システムとして、制動システムは、他のシステムの利用可能性を明確に示す通信がある場合に、アクティブサスペンションシステムなどの他のシステムに依存し得る。制動システムは、例えばアクティブサスペンションシステムなどの別のシステムから正しい状態応答を受信しない場合、より保守的なフェイルセーフモードに移行するように構成されてもよい。このようにして、制動システムの制御は、制動システムの最小限の有効性が維持され得るように、アクティブサスペンションシステムよりも優先されてもよい。
【0017】
[0036] 本発明者らは、タイヤと地面との間の摩擦係数μが、タイヤ、車速、及び道路の表面状態を含む多くの要因に依存し得ることを認識した。例えば、異なるタイプのアスファルトコーティングは、異なる摩擦係数を有し得る。例えば、異なるタイプのアスファルトコーティングは異なるμを有し得、所与の表面又は道路セクションのμは、例えば雨、雪、泥及び/又は氷による環境条件によって大幅に変化することがある。どのタイヤにおいても車両が利用できる総制動力(例えば、車両の進行方向と反対方向の縦力)又は横力(例えば、車両の旋回方向における横方向の力)は、摩擦係数μ及びタイヤにかかる法線力に基づいている。タイヤ力の性質は、ある縦方向スリップ時に生じる縦力が逓減マップを介してそのタイヤにかかる法線力に関係付けられるようなものである。すなわち、タイヤにかかる法線力が大きいほど、縦力は大きくなるが、その増大は正比例するほどではない。したがって、本発明者らは、ある場合には、所与の法線力平均荷重を有する変動する法線力荷重は、変動なしの同じ平均法線力荷重よりも少ない制動力又は旋回力を生じさせる可能性があることを認識した。本明細書のいくつかの実施形態によれば、車両制御システムは、タイヤの平均法線力荷重を増加させるために、又は法線力の変動を低減させるためにアクティブサスペンションシステムを採用し得る。
【0018】
[0037] 本発明者らは、制動又はコーナリング事象の間、車両が減速、加速、及び/又はコーナリングする可能性があることも認識している。車両の加速は、車両に慣性力を誘発する可能性があり、これは、車両の重心がタイヤ接地点又はパッチに対して異なる平面上にある可能性があるので、転倒モーメントをもたらす可能性がある。この転倒モーメントは、タイヤにかかる法線力の差によって均衡される場合がある。例えば、制動時には、フロントタイヤはリアタイヤよりも大きな法線力を受ける可能性がある。別の例として、加速時には、リアタイヤがより多くの法線力を受ける可能性がある。さらに別の例として、コーナリング時には外側のタイヤがより大きな荷重を受ける。減速時、加速時、及びコーナリング時の車両のダイナミクスに基づいて法線力を変化させる効果は、本明細書において荷重移動と呼ばれる。本明細書のいくつかの実施形態によれば、車両制御システムは、一時的に制動力を増加させ、平均制動力を増加させ、コーナリングを支援し、及び/又は転倒モーメントを緩和して横転の可能性を低減するために荷重移動を修正し、別の方法で採用するアクティブサスペンションシステムを採用し得る。
【0019】
[0038] 本発明者らは、垂直方向、ピッチ方向、又はロール方向における車両のばね上質量又はばね下質量のいかなる加速も、最終的に車両の1つ又は複数のタイヤによって運ばれ得る慣性モーメントを引き起こす可能性もあることも認識している。したがって、例えば坂道発進時など、車体が下方に加速する場合、すべてのタイヤにかかる法線荷重が一時的に減少する。この効果は、車両の平均荷重が車両の総質量に等しいので、一時的なものである。同時に、この一時的な効果は、タイヤや車体のバウンドによって、法線荷重が一時的に増減する可能性があるという点で重要である。前述したように、タイヤに対する法線荷重の変動は、車両の縦力及び横力を誘発する能力を低下させるため、車両の挙動に悪影響を及ぼす可能性がある。同時に、法線荷重の一時的な増加が、例えば、より高い縦方向の力(例えば、制動力)の一時的な要求に対応するように正しくタイミングを計れば、法線荷重の増加又は減少の一時的な効果は、有利に利用され得る。本明細書のいくつかの実施形態によれば、車両制御システムは、アクティブサスペンションシステムを採用して、タイヤの法線力荷重を一時的に増加させて、道路の平面におけるより大きなタイヤ力に対する一時的な要求に対応させてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、緊急停止状況において、又は制動事象の持続時間を判定可能である一時的な制動事象の間に、より大きな制動力が望まれる場合がある。そのような制御の追加の例及びそのような制御をいつ実施するかを判定するための要因は、本明細書でさらに考察される。
【0020】
[0039] 本発明者らは、車両がアンチロックブレーキシステム(ABS)を装備している場合があることも認識している。ABSシステムは、縦方向のタイヤ力が一般に最大スリップ比で最も高くなるのではなく、タイヤのスリップが増加するにつれてピークに達し、その後低下するという事実を利用する。したがって、摺動するタイヤは、より少なくスリップしているタイヤよりも低い制動力を生成し、したがって、ABSシステムは、ブレーキが「ロック」するのを防ぎ、それによりタイヤが全体的に高い制動力を発揮することを可能にする。ABSは一般に、ある望ましいスリップ比に達するまでブレーキをかけタイヤをスリップさせ、その後、特定のスリップの値を超えないようにブレーキを解放する。このようにして、ABSシステムは、制動事象の間、より大きな平均制動力を達成する。しかしながら、いくつかの実施形態において、ABSシステムは、所望のスリップ比及び道路状況によって判定されるブレーキ周波数でブレーキをパルス状にし得る。本明細書のいくつかの実施形態によれば、車両制御システムは、ABSシステムによるブレーキの適用に対応するように、タイヤへの一時的な法線力荷重を増加させるために、アクティブサスペンションシステムを採用し得る。例えば、いくつかの実施形態において、アクティブサスペンションは、ブレーキを適用したときに1つ又は複数のタイヤの法線力荷重を一時的に増加させ、ブレーキを適用しないときに法線力荷重が減少するようにしてもよい。
【0021】
[0040] 本発明者らは、車両の一方の側に他方の側とは異なるブレーキを適用すると、車両にヨーモーメントが誘発されることも認識している。すなわち、車両の反対側の異なる制動力は、車両にヨーモーメントを発生させる。このような制動力の差は、車両の反対側間の道路状況の変動(例えば、氷の張り、水たまり、窪み、又は他の道路の乱れ)によって引き起こされる可能性がある。本明細書のいくつかの実施形態によれば、車両制御システムは、アクティブサスペンションシステムを採用して、より低い制動力を経験している車両側のタイヤの法線力荷重を増加させてもよい。制動力がより低い車両側のタイヤの法線力荷重を増加させることにより、制動力を均衡させ、ヨーモーメントを低減させるための追加の制動力を発生させてもよい。したがって、本明細書に記載された例示的な実施形態による車両制御システムは、横転の発生を遅らせ、車両のオーバーステアを防止し、ある表面摩擦係数範囲を有する表面での制動によって誘発されるヨーを低減するために使用され得る。
【0022】
[0041] 本明細書に記載の例示的な実施形態によれば、アクティブサスペンションシステムは、ばね上質量とホイールを含むばね下質量との間に相対力を生じさせることによって車両の少なくとも1つのホイール(及びタイヤ)に及ぼされる法線力を変化させることができるサスペンションシステムである。いくつかの実施形態において、アクティブサスペンションシステムは、油圧式、電磁式、電気機械式、又は水力発電式のアクティブサスペンションアクチュエータを含み得る。いくつかの実施形態において、アクティブサスペンションシステムは、電気式又は油圧式のアクティブロールアクチュエータを含み得る。いくつかの実施形態において、アクティブサスペンションシステムは、磁気レオロジーシステム又は可変オリフィスシステムなどのセミアクティブ可変ダンパシステムを含み得る。もちろん、本開示はそれほど限定されないので、アクティブサスペンションシステムは、車両のホイール及びタイヤに適用される法線力を調整するための任意の適切なアクチュエータ、ばね、及び/又はダンパーを含み得る。いくつかの実施形態において、アクティブサスペンションは、迅速な応答時間、及び入力に対する動的応答を生成する能力を有し得る。実施形態によっては、応答時間は、(例えば、車体への)適用された垂直力の段階的変化のコマンドに対して50ミリ秒未満、25ミリ秒未満、又は10ミリ秒未満であり得、応答時間は、段階的変化のコマンドから定常状態出力の90%に達するまでの遅延として定義される。本明細書に開示される実施形態は、そのような能力を提供する。さらに、本発明のアクティブセーフティサスペンションシステムは、複数のアクチュエータを協調して使用することによって、車両上の複数の自由度を利用することができる。いくつかの実施形態において、アクティブサスペンションシステムの応答は、サスペンションシステムが判定する、又は他の車両サブシステム(例えば、ABSシステムなどの制動システム)から受け取る車両状態パラメータ情報に対して正確に調整され、タイミングを合わせたホイール力の瞬時又は短時間(例えば、主サスペンションばね上の車体の固有周波数の約半分の周期)変化を生じさせるために道路に対して垂直方向に方向付けることができる。
【0023】
[0042] いくつかの実施形態において、車両制御システムは、ステアリング、制動、又は加速などの方向及び速度制御入力などの運転者の仕事を支援する1つ又は複数の運転者支援システムを含み得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、制動システム及び/又はアクティブサスペンションシステムの制御において1つ又は複数の運転者支援システムを採用し得る。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の運転者支援システムは、制動システム及び/又はアクティブサスペンションシステムに情報を提供し得る。例えば、いくつかの実施形態において、運転者支援システムは、車両制御システムに前方監視道路情報を提供し得る。前方監視道路情報は、近づいている道路の乱れ、他の車両に関する情報、障害物に関する情報、旋回に関する情報、又は他の任意の情報を含み得る。運転者支援システムは、自動制動システム(例えば、目に見えない障害物に反応する)、車線支援システム(例えば、他の入力が提供されない場合、車両を走行車線に維持する)、及び死角警告システム(例えば、死角に隠れた車両について運転者に警告する)を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0024】
[0043] 本明細書に記載された例示的な実施形態によれば、車両制御システムは、1つ又は複数のプロセッサによって操作されてもよい。1つ又は複数のプロセッサは、揮発性又は不揮発性メモリに格納されたコンピュータ可読命令を実行するように構成されてもよい。1つ又は複数のプロセッサは、車両の様々な要素(例えば、制動システム、アクティブサスペンションシステム、運転者支援システム等)に関連付けられた1つ又は複数のアクチュエータと通信して、車両の様々な要素の起動及び移動を制御してもよい。1つ又は複数のプロセッサは、車両の様々な要素に関するフィードバックを提供する1つ又は複数のセンサから情報を受信してもよい。例えば、1つ又は複数のプロセッサは、全地球測位システム(GPS)又は他の測位システムから、車両に関する位置情報を受信してもよい。車両に搭載されるセンサは、ホイール回転速度センサ、慣性計測ユニット(IMU)、光学センサ(例えば、カメラ、LIDAR)、レーダ、サスペンション位置センサ、ジャイロスコープ等を含み得るが、これらに限定されるものではない。このようにして、車両制御システムは、車両の様々な要素の比例制御、積分制御、微分制御、それらの組み合わせ(例えば、PID制御)、又は他の制御ストラテジーを実施し得る。他のフィードバック又はフィードフォワード制御方式も企図され、本開示はこの点で限定されない。任意の望ましい量の任意の適切なセンサが、1つ又は複数のプロセッサにフィードバック情報を提供するために採用されてもよい。センサからの情報は、望ましい処理技術(例えば、マシンビジョン)と連携して採用されてもよい。1つ又は複数のプロセッサはまた、適切な無線又は有線通信プロトコルを用いて、ローカルエリアネットワーク、ワイドエリアネットワーク、又はインターネット上の他のコントローラ、コンピュータ、及び/又はプロセッサと通信し得る。本明細書に記載される例示的な実施形態は、単一のプロセッサを参照して記載されるが、本開示はそれほど限定されないので、任意の適切な数のプロセッサが車両の一部として採用されてもよいことに留意されたい。
【0025】
[0044] いくつかの実施形態において、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法は、制動事象が進行中であると判定することを含む。いくつかの実施形態において、制動システムによってブレーキが適用されたときに、制動事象が進行中であると判定されてもよい。いくつかの実施形態において、緊急制動システムのような運転者支援補助装置が作動することによって制動事象が進行中であると判定されてもよい。いくつかの実施形態において、車両の前方にある障害物又は他の車両の検出に基づいて、制動事象が進行中であると判定されてもよい。本方法は、制動事象中の第1のホイールに対する制動力要求が閾値制動力を超えていると判定することと、制動力要求が閾値制動力を超えていると判定した場合に、アクティブサスペンションシステムで車両の1つ又は複数のホイールにおけるホイール力の法線成分を調節して制動事象中の第1のホイールにおける平均トラクション力を増加させることと、を含み得る。閾値制動力は、タイヤの目標縦方向スリップ量に基づいて設定されてもよい。いくつかの実施形態において、閾値制動力は、タイヤの縦方向スリップがABSシステムが作動され得るような値よりも大きくなる前に、アクティブサスペンションシステムがホイール力の法線成分を増大させるように構成されるように設定されてもよい。いくつかの実施形態において、閾値制動力は、調整された法線荷重によって生成される追加の制動力が有益でない、ホイール力の法線成分を増加させる目的で、アクティブサスペンションシステムが日常の制動事象中に使用されないように設定されてもよい。日常的な制動事象の間に垂直力を増加させるためにアクティブサスペンションシステムを作動させないことによって、制動事象ごとに垂直力を増加させるためにアクティブサスペンションシステムを常に作動させる場合と比較して、車両の動力消費を低減させることができる。もちろん、いくつかの実施形態において、本開示はそれほど限定されないので、アクティブサスペンションシステムは、ホイール力の法線成分を増加させる目的で、すべての又はほとんどすべての制動事象に対して使用されてもよい。
【0026】
[0045] いくつかの実施形態において、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法は、制動事象が進行中であると判定することを含む。いくつかの実施形態において、制動システムにおけるブレーキの適用から、制動事象が進行中であると判定されてもよい。いくつかの実施形態において、緊急制動システムのような運転者支援補助装置の作動によって、制動事象が進行中であると判定されてもよい。いくつかの実施形態において、車両の前方にある障害物又は他の車両の検出に基づいて、制動事象が進行中であると判定されてもよい。前述したように、制動事象の間、車両において荷重移動が発生することがある。特に、法線荷重は、制動中に少なくとも部分的に後輪から前輪に移行する場合がある。この移行の間、車両のばね上質量は、振動がサスペンションシステムによって減衰されるまで、制動力に応じて振動する可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、方法は、車両のピッチ振動のピッチ周波数を判定することも含み得る。いくつかの実施形態において、ピッチ周波数を判定することは、慣性監視ユニット(IMU)による加速度データの測定、及び/又はアクティブサスペンションの1つ又は複数の構成要素に関する位置情報を含み得る。本方法はまた、アクティブサスペンションシステムにより1つ又は複数のホイールにおけるホイール力の法線成分を調整して、制動事象中にピッチ周波数においてピッチ振動を減衰させることも含み得る。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のホイールの法線成分の調整は、フロントタイヤ上の法線荷重の変動を減衰させるために採用されてもよい。いくつかの実施形態において、1つ又は複数のホイールの法線成分の調整は、車両のばね上質量のピッチ振動を減衰し得る。
【0027】
[0046] 上記に加えて、本発明者らは、制動システム及び/又はアクティブサスペンションシステムの制御のための道路プレビュー情報の利点も認識している。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、制動事象中のアクティブサスペンションシステムの作動のタイプ及び持続時間の制御において、道路情報を採用し得る。車両制御システムは、様々な制御戦略の中から選択することを可能にし得る1つ又は複数のソースからの道路情報を採用し得る。いくつかの実施形態において、道路情報は、例えば、クラウドサービス、サーバ、又は他の車両から取得される参考道路情報であり得る。例えば、いくつかの実施形態において、参考道路情報は、車両の前方にある路面の一部についてダウンロードされてもよい。参考道路情報は、情報をダウンロードする車両の前方に位置する別の車両から受信されてもよい。いくつかの実施形態において、参考道路情報は、クラウドソースの道路状況を含み得る。いくつかの実施形態において、参考道路情報は、ローカル又は超ローカルの天気図に基づく天気分析を含み得る。いくつかの実施形態において、道路情報は、車両に搭載された1つ又は複数の前方監視センサから供給されてもよい。例えば、そのような前方監視センサは、カメラ、LIDAR、及びレーダを含み得るが、これらに限定されない。前方監視センサは、道路の乱れ、及び車両の前方の路面の他の特性を感知するように構成されてもよい。前方監視情報及び/又は参考道路情報に含まれる情報に基づいて、様々な制御戦略が実行されてもよい。例えば、遭遇しようとしている滑りやすい道路の既知のパターンの範囲が短いか長いか、滑りやすい道路のパターンが車両の左側と右側とで交互になっているか、又は滑りやすい路面の低摩擦面が車両の片側のみにあるかどうかに応じて、異なる制御戦略を実行してもよい。
【0028】
[0047] いくつかの実施形態において、車両は、第1のホイールと、第2のホイールと、第1のホイール及び第2のホイールに制動力を適用するように構成された制動システムと、第1のホイール及び第2のホイールに動作可能に結合されたアクティブサスペンションシステムとを含む。アクティブサスペンションシステムは、少なくとも1つの動作モードにおいて第1のホイール及び第2のホイールに能動的な力を適用して第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、第2のホイールと路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整するように構成されてもよい。車両はまた、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含む。少なくとも1つのプロセッサは、車両の位置を判定し、車両の位置に対応する参考道路情報を取得し、取得した参考道路情報に少なくとも部分的に基づいて、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御するように構成される。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのプロセッサは、全地球測位システム(GPS)、局地的測位システム、及び/又は車両の位置を判定することができる任意の他の適切なタイプの測位システムからの入力に基づいて車両の位置を判定し得る。いくつかの実施形態において、参考道路情報は、クラウドサービスから取得されてもよい。いくつかの実施形態において、参考道路情報は、近くの第2の車両から受信されてもよい。例えば、近くの第2の車両は、道路上で当該車両の前方に位置していてもよい。
【0029】
[0048] いくつかの実施形態において、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法であって、アクティブサスペンションシステムが第1のホイール及び第2のホイールに動作可能に結合されている、制御する方法は、車両の位置を判定することと、車両の位置に対応する参考道路情報を取得することと、得られた参考道路情報に少なくとも部分的に基づいて制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御することであって、アクティブサスペンションシステムを制御することは、第1のホイール及び第2のホイールに能動的な力を適用して、第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、第2のホイールと路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整することを含む、制御することとを含む。いくつかの実施形態において、アクティブサスペンションシステムを制御することは、車両の第1のコーナーに配置された第1のホイール及び車両の第2の反対側のコーナーに配置された第2のホイールにおけるホイール力の法線成分を増加することを含み得る。この態様において、車両のシャーシにねじれ力が適用されてもよい。このような力は、路面摩擦が低下した(例えば、水たまり、氷の張り、積雪区画等に起因する)車両の側の前輪の平均法線成分荷重を増加させるために採用されてもよい。参考道路情報は、車両制御システムがアクティブサスペンションシステムでホイールに適切に力を適用し得るように、路面摩擦の減少の事例又は路面の凹凸に起因するトラクションの減少の事例を示す道路の乱れを含み得る。いくつかの実施形態において、第1のホイール及び第2のホイールは前輪であり得、方法は、車両のピッチを調整することを含み得る。いくつかの実施形態において、第1のホイール及び第2のホイールは、車両のサイドホイールであり得、方法は、車両のロールを調整することを含み得る。このような実施形態によれば、方法は、少なくとも1つのホイールに対する法線力荷重を一時的に増加させるために、車両のピッチ又はロールを一時的に調整することを含み得る。いくつかの実施形態において、そのような一時的な調整は、0.5~1秒の時間期間にわたって発生し得るが、他の時間期間も使用されてもよい。
【0030】
[0049] いくつかの実施形態において、参考道路情報を採用する車両制御システムは、車両の正確で高解像度(例えば、いくつかの実施形態において1メートル未満の解像度に等しい)且つ再現可能な位置特定が可能なシステム及び方法に依存し得る。いくつかの実施形態において、車両は、車両を位置特定できるようにするためにGPSを含み得る。いくつかの実施形態において、車両は、無線信号(例えば、セルラー信号)を用いた三角測量法を採用し得る。いくつかの実施形態において、車両は、位置特定を支援するために、ランドマーク(例えば、標識、マイル表示、その他)の視覚的識別を採用し得る。いくつかの実施形態において、道路又は他の地形の表面特性(例えば、標高変化、傾斜、土手、例えば、隆起及び/又は陥没などの表面押し出しの位置、並びに他の表面詳細)を含む環境特性が、例えば、指紋又は顔の特徴が人を識別するために使用され得るのと同様に、車両の位置(例えば、道路上の車両の位置)を識別するため、位置特定に利用されてもよい。このような表面ベースの位置特定は、いくつかの実装において、車両によって横断される路面の表面特性のシーケンスを検出し、続いて検出されたシーケンスを、以前に生成された参考マップに格納される参考表面特性のシーケンスと照合することを含み得る。路面特性のシーケンスは、アクティブサスペンションシステムによって検出されてもよい。例えば、アクティブサスペンションシステムからのフィードバックが、以前に生成された参考マップに基づく車両の位置を特徴付けるために採用されてもよい。
【0031】
[0050] いくつかの実施形態において、参考道路情報は、車両の現在位置に基づいて、車両によって取得されてもよい。すなわち、車両が一旦位置特定されると、車両は、その現在の位置で車両に関連する参考道路情報のバッファリングされたローカルマップをダウンロードし得る。このような実施形態によれば、グローバル参考マップをダウンロードする場合と比較して、より少ないデータが車両に転送され得る。車両が走行するにつれて、継続的な位置特定により、車両は、車両を取り巻く領域における追加の参考道路情報をバッファリングすることが可能であり得る。いくつかの実施形態において、すべての参考道路情報は、車両の所定の半径内でダウンロードされてもよい。いくつかの実施形態において、参考道路情報は、車両の進行方向に基づいてバッファリングされてもよい。例えば、車両が既に通過した道路の道路情報は、バッファリングされなくてもよい。いくつかの実施形態において、参考道路情報は、路面上を走行する複数の車両によって生成され、共有されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、車両は、路面上を通過した後に参考道路情報をアップロードし、参考道路情報は、その路面をその後走行する他の車両のために更新されてもよい。このように、参考道路情報は動的であり得、路面の現状に合うように更新されてもよい。他の実施形態において、本開示はそれほど限定されないので、更新頻度のより少ない静的なマップが採用されてもよい。
【0032】
[0051] いくつかの実施形態において、車両は、第1のホイールと、第2のホイールと、第1のホイール及び第2のホイールに制動力を適用するように構成された制動システムと、第1のホイール及び第2のホイールに動作可能に結合されたアクティブサスペンションシステムとを含み、アクティブサスペンションシステムは、少なくとも1つの動作モードにおいて、第1のホイール及び第2のホイールに能動的な力を適用して第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し第2のホイールと路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整するように構成される。また、車両は、前方監視道路情報を感知するように構成された前方監視センサと、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御するように構成された少なくとも1つのプロセッサとを含む。少なくとも1つのプロセッサは、前方監視センサから前方監視道路情報を受信し、得られた前方監視道路情報に少なくとも部分的に基づいて、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御するように構成される。いくつかの実施形態において、前方監視センサは、1つ又は複数のカメラ、LIDAR、及びレーダを含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0033】
[0052] いくつかの実施形態において、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを含む車両を制御する方法であって、アクティブサスペンションシステムが第1のホイール及び第2のホイールに動作可能に結合されている、制御する方法は、前方監視センサで前方監視道路情報を感知することと、前方監視道路情報に少なくとも部分的に基づいてブレーキシステム及びアクティブサスペンションシステムを制御することとを含み、アクティブサスペンションシステムを制御することは、第1のホイール及び第2のホイールに能動的な力を適用して第1のホイールと路面との間の第1のホイール接触力の法線成分を調整し、第2のホイールと路面との間の第2のホイール接触力の法線成分を調整することを含む。いくつかの実施形態において、アクティブサスペンションシステムを制御することは、車両の第1のコーナーに位置決めされた第1のホイール及び車両の第2の反対側のコーナーに位置決めされた第2のホイールにおけるホイール力の法線成分を増加することを含み得る。この態様において、車両のシャーシにねじれ力が適用されてもよい。このような力は、路面摩擦が低下した(例えば、水たまり、氷の張り、積雪区画、その他)車両側の前輪の平均法線成分荷重を増加させるために採用されてもよい。前方監視道路情報は、車両制御システムがアクティブサスペンションシステムでホイールに適切に力を適用し得るように、路面摩擦の低下の事例を示す道路の乱れを含み得る。いくつかの実施形態において、第1のホイール及び第2のホイールは前輪であり得、方法は、車両のピッチを調整することを含み得る。いくつかの実施形態において、第1のホイール及び第2のホイールは、車両のサイドホイールであり得、方法は、車両のロールを調整することを含み得る。このような実施形態によれば、方法は、ホイールへの法線力荷重を一時的に増加させるために、車両のピッチ又はロールを一時的に調整することを含み得る。いくつかの実施形態において、そのような一時的な調整は、0.5~1秒の時間期間又は他の適切な時間期間にわたって発生し得る。
【0034】
[0053] いくつかの実施形態において、前方監視道路情報は、制動事象又は他のシナリオにおける車両ハンドリング及び安全活動における協調を高めるために、車両制御システムによって採用されてもよい。前方監視情報は、1つ又は複数の前方監視センサから供給されてもよい。前方監視センサは、ビジョンセンサ(例えば、ステレオビジョンカメラ)、距離測定システム、例えば、適応クルーズ制御レーダ、ソナー、又はLIDARなど、及び任意の他の適切なセンサシステムを含み得る。いくつかの実施形態において、プロセッサは、前方監視道路情報に基づいて道路の乱れを検出するように構成されてもよい。例えば、プロセッサは、他の車両、歩行者、又は静止している物体などの物体を検出し、車両に対するその空間的関係を判定し得る(例えば、ステレオビジョン技術を用いた距離測定又はレーダセンサを用いた距離測定)。いくつかの実施形態において、プロセッサは、例えば、制動事象中の測定及び分析に基づいて、車両及び物体の運動学を予測し得る。
【0035】
[0054] 本明細書の例示的な実施形態によれば、車両制御システムは、車両の1つ又は複数のセンサからのフィードバックに基づいて、路面上の絶対又は相対タイヤ摩擦を判定するように構成されてもよい。いくつかの実施形態において、タイヤ摩擦は、ABS制動事象に到達することに基づいて判定されてもよい。すなわち、ABSシステムが作動するような所定のホイールスリップに達したとき、車両制御システムによって摩擦が認識されてもよい。しかしながら、場合によっては、ABSシステムの作動レベルに、1つのホイール又は車両の総ホイール数よりも少ない数のホイールで到達することがある。そのような場合、車両制御システムは、ABSシステムが作動していない1つ又は複数のホイールがより大きなタイヤ摩擦を有することを認識し得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、各ホイールの絶対タイヤ摩擦を認識することなく、車両のホイール間のこの相対的な差に基づいて操作されてもよい。他の実施形態では、車両制御システムは、タイヤ挙動に基づく摩擦推定器を採用し得る。摩擦推定器は、タイヤ摩擦の絶対値、又は特定のタイヤ及び路面に対する摩擦係数を推定するために、ホイールトルク、スリップしたホイールのホイール速度、及び1つ又は複数のセンサによって測定された車速の測定値を採用し得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、摩擦推定器によって算出された摩擦係数に少なくとも部分的に基づいて、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御し得る。そのような実施形態では、車両制御システムは、ホイール摩擦が測定可能に変化するまで摩擦係数が同じままであり得、変化の時点で摩擦係数が更新され得ると仮定し得る。いくつかの実施形態において、車両のホイールの推定摩擦係数は、参考道路情報又は前方監視道路情報に基づいて更新されてもよい。例えば、車両制御システムが参考道路情報又は前方監視道路情報に基づいて氷に遭遇すると予想する場合、制動システム及びアクティブサスペンションシステムの制御のための予想摩擦係数は低減されてもよい。
【0036】
[0055] 一実施形態において、車両の一方の側で他方の側に対して異なる摩擦係数μを有する路面に遭遇することがある(「スプリットμ」シナリオと称される)。シナリオによっては、摩擦係数の差が大きく、例えば、車両の片側でμが0.7~1.0、他方側でμが0.2~0.4(例えば、μの差が0.5以上)である場合もある。このようなシナリオでは、車速の低減が望まれる場合、表面μが低い側で達成可能な縦方向のタイヤ力(例えば、制動力)は、μが高い側のものよりも低い可能性がある。縦方向のタイヤ力のこのような格差は、車両をμが高い表面に向かって効果的に引っ張るヨーモーメントの原因となり得る。これは、所望の車両経路からの逸脱につながる可能性があり、車両をスピンアウトさせ及び/又は異なる走行車線に進入させるのに十分であることさえある。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、車両の各側の推定摩擦係数に基づいてヨーメトリックを計算し得る。ヨーメトリックは、例えば、閾値最大ヨーレート又はヨー加速度、車両の各側の制動力の差、又は所望の経路からの最大横方向オフセット、又は車両が走行する所望の経路と実際の経路との間の差を記述する他の適切なメトリックであり得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、ヨーメトリックが閾値(例えば、最大ヨーレート、最大制動力差等)を超えているかどうかを判定し得、ヨーメトリックを閾値未満に低減するために制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御し得る。
【0037】
[0056] ヨーメトリックが閾値を超えるいくつかの実施形態において、車両制御システムは、アクティブサスペンションアクチュエータで1つ又は複数のホイールに垂直方向の力を適用し得る。いくつかの実施形態において、力は、例えば、スプリットμシナリオが持続する場合、延長された持続時間にわたってねじれパターンで適用されてもよい。ねじれパターンでは、車両の反対側のコーナーに位置する2つのホイールの法線荷重が増加されてもよい。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、より低いμ表面に遭遇する前輪により多くの法線力を適用し、したがって、対応するタイヤが縦方向の力を生成する能力を増加させ得る。本発明者らによって認識されたように、いくつかの動作条件において、車両の減速が車両の後端の荷重を解放し、同時に車両の前部により重く荷重をかけ得るという事実により、フロントタイヤはリアタイヤと比べてより多くの制動力を生成し得る。このような法線力の適用は、それに応じて、車両が制動事象の間に適用される総制動力を増加することを可能にし得る。
【0038】
[0057] 本明細書に記載された例示的な実施形態によれば、車両が、車両、ひいてはホイールにねじれ力を誘発することができるアクティブサスペンションを備えている場合、安定性及び停止距離が改善される可能性がある。特に、上述したようなねじれ力の適用は、前車軸の左側と右側との間の縦方向の制動力の対称性を向上させる。いくつかの実施形態において、この対称性は、安定性を向上させ得る。さらに、縦方向の力の対称性に起因して、運転者に対するステアリングトルクの乱れが低減され、運転者がループにいる状態での車両安定性がさらに改善される可能性がある。さらに、ヨー安定性目標を有するABSシステムを用いたスプリットμ制動シナリオに関する固定安定性制約が与えられると、前記ねじれ力戦略を用いてスプリットμシナリオにおける停止距離が短縮される場合がある。
【0039】
[0058] この発明の別の態様は、例えば、車両の反対側のコーナーの2つのホイールが押し上げられ、他の2つが実質的に同時に押し下げられるようにねじれ方向に配置されたアクティブサスペンションシステムからの力を使用して、一般の制動状況下でも車両の望ましくないヨー挙動を緩和するように車両上の縦力を変更することに関するものである。一例として、路面のクラウン又は轍が、制動事象中に横方向の引力を発生させることがあり、アクティブサスペンションを使用してその影響を緩和するためのねじれ力を適用してもよい。この緩和は2つの形態で発生し得る-それは効果を緩和して、例えばピークヨーレート又は所望の経路からのピーク横方向逸脱などの上述の測定基準を低減しようとすることがあるが、それは、例えばそのようなシナリオの間に生じるステアリングトルクを緩和することによって、知覚された挙動を打ち消そうとすることもある。制動システム、ステアリングシステム、及びアクティブサスペンションシステムはすべてヨーを誘発することができ、どのようにふるまうかを判定するために理想的には同期して動作しなければならないので、車両内の異なるシステム間のコミュニケーションは、このシナリオにおいて重要な側面である。
【0040】
[0059] ヨーメトリックが閾値を超えるいくつかの実施形態において、車両制御システムは、スプリットμシナリオの短時間の間、低μに遭遇する側の両方のタイヤに力を適用するようにアクティブサスペンションシステムを制御し得る。このような実施形態において、アクティブサスペンションシステムは、車両をロール方向に加速し得る。このロール加速度は、低μ面に位置するホイールの法線荷重を一時的に増加させ、限られた期間、制動性能の改善及びヨーメトリックの低減を提供することを可能にし得る。例えば、いくつかの実施形態において、そのようなロール加速度は、0.5~1.0秒以上の間、アクティブサスペンションシステムによって生成されてもよい。ロール加速度の適用後、低μ面に位置するホイールの法線力荷重は一時的に減少し得、これはこの特定の実施形態を、短時間スプリットμシナリオ又は制動が短時間のみ必要とされ得るシナリオによく適合させる。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、参考道路情報又は前方監視道路情報に基づいて、車両にロール加速度を適用し得る。
【0041】
[0060] 緊急車線変更シナリオは、車両をスピンも横転もさせることなく、可能な限り高い速度で1つの車線から隣接する車線に車両を操舵する場合に生じる。これは、トラックやSUVなどの重心の高い車両では特に困難である。従来の制動システムは、万一横転の状況が認識された場合、車両をコーナーから逸脱させるようにブレーキを適用する。これにより車両がコーナーから滑り出て、速度が低下する可能性がある。本発明者らは、いくつかの実施形態において、アクティブサスペンションシステムが、ブレーキシステムと協調して、そのようなシナリオにおける車両の安定性を改善するために採用され得ることを認識した。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、アクティブサスペンションシステムに、車両の重心を下げ、かくして横転及びタイヤスリップの問題を同時に軽減するように命令し得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、車両のロール加速度を低減し、したがって横転のリスクを低減するような方法で車両のホイールに力を適用するようにアクティブサスペンションシステムに命令し得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、車両がオーバーステアする傾向を低減するような方法で、ねじれパターンで力を適用するようにアクティブサスペンションシステムに命令し得る。
【0042】
[0061] 緊急車線変更シナリオと同様に、ハンドリング操縦中(例えば、活発な運転中)、本発明者らは、運転者が望む方向に車両を動かし続け、車両のアンダーステア目標を維持しながら、縦方向及び横方向の両方で可能な限り高いトラクションを達成することが有益であることを認識した。従来の車両では、安定制御システムは、この目的を達成するために制動トルクを適用し、その結果、車両を減速させるが、これは、活発な運転(例えば、レースシナリオにおいて)には望ましくない場合がある。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、アクティブサスペンションシステムを使用して、適切な量のねじれ力を適用し得る。いくつかの実施形態において、ねじれ力は、トラクションを必要とするタイヤを有する車軸に均等に荷重がかかるように適用されてもよい。いくつかの実施形態において、コーナリング時にフロントタイヤに対するコーナリング荷重が低減され(車両の仮想ロールスタビライザを車両の後部に移動させるがアクティブサスペンション力を適用することによりそれを行うことに相当)、その車軸への法線荷重がより均等に分配されることにより、より高い横力耐性につながる可能性がある。同様に、いくつかの実施形態において、ねじれ力は、後輪駆動車両において加速中に後車軸上のより均等な法線荷重分布を、又は4輪駆動車両についてより中立的な法線荷重分布を作り出すために使用されてもよい。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、アンダーステア目標(一般的には、「旋回部から逸脱すること」が望まれ得る)を満たすために必要な力を判定することによって、適用するねじれ力の量を判定し得る。このようなねじれ力の適用は、ロールスタビライザを車両の前部に移動させること、又はロールモーメント分布を車両の前部にシフトさせることと等価であり得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、可能な限り最大のホイールトラクションを達成するために必要な力を判定することによって、適用するねじれ力の量を判定し得る。例えば、いくつかの実施形態では、車両制御システムは、旋回部の開始時(例えば、制動段階中)に法線荷重分布を後方にシフトし、次に、旋回部の中点又はその付近で法線荷重分布を車両の中心にシフトし、次に、旋回部からの出口の間に法線荷重分布を車両の前方にシフトし得る。
【0043】
[0062] 本明細書の例示的な実施形態によれば、車両が旋回中にある状況に遭遇し、急速に減速する必要性又は欲求がある場合、制動力の適用により、車両が旋回部から滑り出る可能性がある。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、差し迫った又は進行中の制動事象を警告する警告信号に基づいて、制動システムを支援することを優先するために、アクティブサスペンションシステムによる力の適用を修正し得る。例えば、いくつかの実施形態において、車両制御システムは、車両がその最適又は所望の経路で走行することを維持し、迅速に減速することが最も必要なホイール(例えば、前輪)に、より均等に荷重をかけるためにねじれ力を適用し得る。
【0044】
[0063] 別のシナリオは、車両がコーナリング中に、車体を振動させる(例えば、ピッチ振動)のに十分な大きさの隆起部に遭遇する状況であり得る。これらの振動は、数サイクルの間持続し、車両に利用可能な横方向トラクション力を減少させ、次に増加させ、次に再び減少させ得る。このシナリオでは車両はコーナリングしているので、これは、車両を横方向に移動させ得るヨー擾乱につながる可能性がある。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、アクティブサスペンションシステムを制御して、車体加速度を緩和し、このような発生の可能性を低減し得る。特に、車両制御システムは、横方向のトラクション力を変動させる原因となる法線力の振動を緩和するようにアクティブサスペンションシステムを制御し得る。
【0045】
[0064] 場合によっては、車両が、例えば0.5未満の低μ面を走行している間の制動事象の間、以下のプロセスが発生し得る:(i)まず、高いブレーキトルクが適用され得る;(ii)次に、いくつかの又はすべてのホイールが、対応するタイヤ上の縦力がピークに達するポイントに達し、タイヤが転がる代わりに滑り始め得る;(iii)そのポイントで、制動システムは、再びタイヤの回転を明確に検出できるポイントまでブレーキ圧を撤回し、ブレーキトルクを再適用し得る。このプロセスは、制動事象の間、繰り返され得る。この繰り返される制動力の適用とブレーキの撤回の間、タイヤ又はホイールは、例えば路面状態に起因して(タイヤが必ずしも路面との接触を失うことなく)上下に跳ね、垂直力の変動が生じ、これはブレーキシステムが、そのような変動のないタイヤと比較して制動力の適用を遅延させる可能性がある。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、アクティブサスペンションを制御して、ホイールへの荷重を一時的に増加させ得る。いくつかの実施形態において、増加した荷重は、周期的に高い制動を実現するために、上述した制動サイクルにおけるブレーキ圧の上昇とタイミングを合わせてもよい。
【0046】
[0065] いくつかの実施形態において、平坦でない道路、例えば凹凸の多い道路を走行中に車速低下が望まれる場合、制動システムと組み合わせたアクティブサスペンションシステムは、達成可能な制動性能を向上させ得る。そのようなシナリオでは、道路の凹凸は、車両のホイール(例えば、ばね下質量)及び車体(例えば、ばね上質量)において運動を励起し得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、各タイヤのタイヤ力の変動を低減し、したがって、より高い平均縦方向タイヤ力を達成し、より良い制動性能(例えば、より短い停止距離)をもたらし得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、車両の制動性能を向上させるために、参考道路情報及び/又は前方監視道路情報を採用し得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、参考道路情報及び/又は前方監視道路情報に基づいて、車両の1つ又は複数のばね下質量又はばね上質量における予想運動周波数を判定し得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、判定された運動周波数に基づいて、ばね上質量加速度を低減するためにアクティブサスペンションシステムを制御するように構成されてもよい。例えば、より低い周波数の運動は、車両制御システムに、ばね上質量の運動を減衰させ得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、判定された運動周波数に基づいてばね下質量加速度を低減するようにアクティブサスペンションシステムを制御するように構成されてもよい。例えば、予想されるより高い周波数の運動は、車両制御システムに、ばね下質量の運動を減衰させ得る。
【0047】
[0066] ABSの介入を採用する減速の間、例えば0.6g以上で減速する場合、制動システムは、タイヤの接着限界まで可能な限り多くの縦力を発生させようとすることがある。制動事象中に車両が減速すると、車体が前方及び後方に1回以上揺さぶられることがある(ピッチ動作)。例えば、車両は、前方にピッチ動作し、フロントタイヤに荷重をかけ、リアタイヤを道路から離すような法線力の荷重移動を発生させ得る。その後、車両は、後方にピッチ動作し、フロントタイヤを道路から離し、リアタイヤに荷重をかけ得る。リアタイヤの荷重解除は、後車軸のトラクションがない車両が安定性を低下させる可能性があるため、車両の制御を低下させることにつながる可能性がある。車両は、振動がサスペンションシステムによって減衰されるまで、フロントタイヤに荷重をかけ、解除するサイクルを繰り返し得る。いくつかの実施形態において、制動システムによって適用されるブレーキトルクは、ピッチ動作を低減するように変調されてもよく、しかしながら、これは、ブレーキトルクの適用が制限され、したがって、停止距離が長く、平均減速度が低くなる可能性がある。本発明者らは、いくつかの実施形態において、車両制御システムが、ピッチ加速度を低減する(例えば、特定のピッチ周波数又は周波数の範囲においてピッチ振動を減衰させる)ためにアクティブサスペンションシステムを制御し得ることを認識した。さらに、いくつかの実施形態において、車両制御システムは、車両が最大に底入れしたときに、リバウンドのエネルギーを拡散するように、アクティブサスペンションシステムを制御し得る。この制御戦略は、ピッチ振動を誘発することなく、より高い制動力の適用をもたらし、乗員にとってより優れた快適性につながり得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、ピッチ力適用を、制動システムによる制動力適用の周波数と同期させ得る。いくつかのそのような実施形態では、車両制御システムは、制動システムによる制動の周波数に基づいて、ピッチ振動のピッチ周波数を判定し得る。
【0048】
[0067] いくつかの実施形態において、車両のアクティブサスペンションシステムは、制動又はコーナリング事象の間に(例えば、センサからの)1つ又は複数の測定入力に基づいて制御されてもよい。場合によっては、アクティブサスペンションシステムは、より大きな動力消費を犠牲にして、いくつかの軽微な制動ケースにおいてほとんど利益を提供しないことがあるので、すべての制動及び/又はコーナリング事象に応答してアクティブサスペンションを制御することは望ましくない可能性がある。場合によっては、大きな制動及び/又はコーナリング事象に応答してアクティブサスペンションシステムを制御することは望ましくない場合があり、そのような制御は、車両の全体的な制動効果を低下させる可能性があるからである。したがって、本発明者らは、制動又はコーナリング事象に応答してアクティブサスペンションシステムを作動及び非作動にするために、1つ又は複数の閾値を採用し得ることを認識した。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、制動事象の間、ホイールに対する制動力要求が閾値制動力を超えていると判定し得る。そのような実施形態によれば、制動力要求が閾値制動力を超えていると判定した場合、システムは、制動事象の間、アクティブサスペンションシステムにより車両の1つ又は複数のホイールにおけるホイール力の法線成分を調整し、第1のホイールにおける平均トラクション力を増加させ得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、制動力要求が制動力閾値を超えないと判定し、制動事象に応答してアクティブサスペンションシステムを無効にするか、又は別の方法で作動しない場合がある。
【0049】
[0068] いくつかの実施形態において、車両制御システムは、参考道路情報及び/又は前方監視道路情報から道路の乱れのサイズ及び/又は持続時間を判定するように構成されてもよい。道路の乱れ又は異常のサイズ及び/又は継続時間は、車両制御システムによって実施される制御戦略に影響を与える可能性がある。例えば、1秒未満のオーダーしか続かないと予想される比較的小さな大きさの道路の乱れは、車体のピッチ及び/又はロール加速度を修正することにより、タイヤの法線荷重を一時的に増加させることを求める場合がある。別の例として、1秒より長く続くと予想される長い道路の乱れは、車体のピッチ又はロールモーメントの発生を避けるように、ねじれ力の適用を要求する場合がある。したがって、いくつかの実施形態において、車両制御システムは、道路の乱れの程度及び/又は持続時間の閾値に基づいて動作モードを判定し得る。いくつかの実施形態において、道路の乱れの程度及び/又は持続時間は、制動事象の持続時間の間、道路の乱れに遭遇した際のアクティブサスペンションの応答をアクティブにする又は不能にするために採用されてもよい。いくつかのそのような実施形態によれば、乱れの程度が作動閾値を超えるかどうかを判定すると、アクティブサスペンションシステムは、ホイール力の法線成分を増加させる目的で使用されてもよい。これに対応して、乱れの程度が制動事象の持続時間の間、作動閾値を超えない場合、アクティブサスペンションシステムは、そのような乱れに応答しないことがある。
【0050】
[0069] いくつかの実施形態において、車両制御システムは、車両運動振動周波数(例えば、ピッチ周波数)を判定するように構成されてもよい。車両運動周波数に応じて、車両制御システムは、車両のばね下質量又はばね上質量のいずれを減衰させるかを判定し得る。いくつかの実施形態において、低周波数振動の特性(例えば、10Hz以下の周波数における大きさ又はエネルギー)は、車両制御システムに、アクティブサスペンションシステムを制御して、車両のばね上質量の運動を減衰させる可能性がある。いくつかの実施形態において、高周波数振動(例えば、約10Hzと15Hzとの間の周波数における大きさ又はエネルギー)は、車両制御システムに、アクティブサスペンションシステムを制御して、車両のばね下質量(例えば、ホイール)の動きを減衰させる可能性がある。言うまでもなく、本開示はそれほど限定されないので、車両のばね下質量又はばね上質量のどちらを減衰させるかを判定するために、任意の特定の周波数閾値が採用されてもよい。
【0051】
[0070] 本明細書で使用される際、アクティブサスペンションシステムは、他の動作モードにおいて抵抗力を適用することに加えて、少なくとも1つの動作モードにおいて1つ又は複数のホイールと車体との間に能動的な力を適用するように構成される。能動的な力は、ホイールの移動方向に適用される。これは、ホイール及び/又は車体の動きに抵抗する受動的な減衰力を採用する従来のサスペンションシステムとは対照的である。
【0052】
[0071] 本明細書で使用される際、道路の乱れは、路面上を走行中に車両が遭遇する可能性のあるいずれかの非正規の道路状態である。例えば、道路の乱れは、荒れた舗装、道路の穴、凹凸のある車線、可変の道路材料(例えば、土、砂利、舗装、コンクリート、金属、その他)、及び道路被覆(例えば、雪、氷、塩、砂、土、水、その他)を含み得るが、これらに限定されるものではない。
【0053】
[0072] 本明細書で使用される際、制動事象は、例えば車両を減速又は停止させるために車両の1つ又は複数のブレーキが適用される、又は車両がドライブトレーン内の1つ又は複数の回転構成要素に抗力を加えることによって減速される(例えば、惰性走行中)、いずれかの過程又は時間期間である。本開示はそれほど限定されないので、制動事象は任意の持続時間を有し得る。いくつかの実施形態において、本開示はそれほど限定されないので、制動事象は、ブレーキの単一の適用又はブレーキの複数の適用を含み得る。
【0054】
[0073] 図に目を向けると、特定の非限定的な実施形態がさらに詳細に記載されている。本開示は本明細書に記載された特定の実施形態のみに限定されないので、これらの実施形態に関連して記載された様々なシステム、構成要素、特徴、及び方法は、個別に及び/又は任意の所望の組み合わせで使用されてもよいことを理解されたい。
【0055】
[0074]
図1は、車両制御システム102と、車両制御システムのための車両出力部120とを含む車両100の一実施形態の例示的なブロック図である。車両制御システムは、コンピュータ可読命令を実行し、車両出力部120を制御するように構成された少なくとも1つのプロセッサを含み得る。
図1に示すように、車両制御システムは、電子安定制御システム104、及びアンチロックブレーキシステム(ABS106)を含み得る。電子安定制御システムは、トラクションが失われたときに、運転者が意図する場所に車両を操舵するのを助けるために、自動的にブレーキをかけるように構成され得る。前述したように、ABSは、ホイールがロックして滑走することを抑制するように構成されている。
図1に示すように、車両制御システムは、前方監視センサ108を含み得る。前方監視センサは、道路特性、道路の乱れ、又は車両前方の物体を感知し得、前方監視道路情報として少なくとも1つのプロセッサに提供されてもよい。
図1の実施形態では、車両制御システムは、車両制御システム搭載のメモリに格納されてもよい参考道路情報110も含み得る。
図1に示すようないくつかの実施形態において、車両制御システムは、情報を送信又は受信するように構成されたトランシーバ112も含み得る。いくつかの実施形態において、トランシーバ112は、他の車両又はクラウドサービス(例えば、1つ又は複数のサーバ)から参考道路情報を受信するように構成されてもよい。本開示はそれほど限定されないので、トランシーバは、任意の適切な無線プロトコルを介して無線で通信するように構成されてもよい。
【0056】
[0075]
図1に示すように、車両は、車両制御システムによって制御される複数の車両出力部120を含み得る。特に、車両出力部は、スロットル122(エンジン又は電気モータのスロットルを含み得る)、ステアリングモジュール124、アクティブサスペンションシステム126、制動システム128、及び他の出力部130を含む。車両制御システムは、これらの車両出力部を個別に又は様々な組み合わせで制御するように構成され得る。様々な車両出力部を組み合わせて制御することにより、車両制御システムは、各システムを独立して制御する車両と比較して、向上した安定性及び制動力を提供し得る。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、特定の出力に優先順位をつけ得る。例えば、制動システムは、ステアリング又はアクティブサスペンションシステムよりも優先され得る。このように、所与のシナリオに対してより重要なシステムが、他の車両出力部の可能な補助を受けながら、制御のために優先され得る。車両出力部の動作モード及び制御スキームについては、以下でさらに記載する。
【0057】
[0076]
図1に示すようないくつかの実施形態において、車両は、様々なサブシステムと車両出力部との間の通信を可能にするリアルタイム双方向通信システム140を含み得る。通信システムは、例えば、コントローラエリアネットワーク(CAN)、ローカルインターコネクトネットワーク(LIN)、車両エリアネットワーク(VAN)、FlexRay、D2B、イーサネット、直接通信リンク(ワイヤや光ファイバなど)、又は無線通信リンクなど、任意の適切な接続プロトコルを採用し得る。通信システムは、ABS又はESCのようなサブシステム間で情報を共有する一方、これらの同じ又は他のシステムから車両状態パラメータ又は他の情報を受信するために採用され得る。サブシステム間で共有され、車両出力制御のために採用され得る情報は、例えば、車両ヨー及びヨーレート、車両速度、車両加速度、車両横加速度、ステアリングホイール位置、ステアリングホイールトルク、(ブレーキがかかっている場合)、及びサスペンションスプリング圧縮を含むが、これらに限定されるものではない。車両制御システムは、異常な事象の間に係合するABS106及びESC104などの1つ又は複数の車両サブシステムの状態などの車両からの情報に基づいて、アクティブサスペンションシステム126を制御し得る。例えば、システムは、1つ又は複数のシステムが係合した場合、ホイール及び車両の異なる制御を提供し得る。
【0058】
[0077] 上記に加えて、いくつかの実施形態において、アクティブサスペンションシステム126は、道路、ホイール、車体の動きに関連するいくつかのパラメータ、及び他の車両サブシステムに有益であり得る他のパラメータを感知し得る。そのような情報は、アクティブサスペンションシステムから通信システム140を介して他のサブシステムに送信されてもよい。他の車両サブシステムは、アクティブサスペンションシステムからの情報に基づいて、その制御を変更し得る。このように、アクティブセーフティサスペンションシステムと他のサブシステムとの間で双方向の情報が伝達されてもよく、アクティブサスペンションシステムと他の車両システムの両方の制御が、少なくとも部分的にこの情報伝達に基づいて提供されてもよい。例えば、ABS106による制動システム128のブレーキの適用は、1つ又は複数のホイールに対するアクティブサスペンションシステムによるホイール力の増大と同期されてもよい。
【0059】
[0078]
図2は、
図1の車両100の概略図である。
図2に示されるように、車両は、通信システム140を介して様々なサブシステムと通信し得る車両制御システム102を含む。
図2に示すように、車両は、車両のホイール150に動作可能に結合されたアクティブサスペンションシステム126を含む。特に、アクティブサスペンションの別個のアクチュエータが車両の別個のホイールを独立して制御し得るように、車両の各ホイールと車体との間にアクティブサスペンションのアクチュエータが動作可能に介在されてもよい。車両はまた、制動システム128を含み得る。制動システムは、制動力が各ホイールに独立して適用され得るように、車両のホイール150のそれぞれに結合された独立したブレーキを含み得る。
図2の実施形態によれば、車両はまた、前方監視センサ108を含み得る。前方監視センサ108は、車両制御システム102によって採用され得る前方監視道路情報を感知するように構成され得る少なくとも1つのカメラ、LIDAR、レーダ、又はそれらの組み合わせであり得る。
【0060】
[0079]
図2に示すように、車両は道路200の上を横断し得る。道路は、1つ又は複数の道路の乱れ202を含み得る。道路の乱れ202は、車両のホイール150の垂直荷重の変動を引き起こし得る(例えば、ホイールを上方及び/又は下方に加速させることによって)。いくつかの実施形態において、道路の乱れは、ホイール150と道路200との間の有効摩擦係数を減少し得る。
【0061】
[0080]
図3は、本明細書のいくつかの例示的な実施形態による、様々なホイールの法線力に関するホイールのスリップ比対縦力のグラフである。先に考察したように、タイヤの縦力は、自由回転速度に対するタイヤの回転速度の測定値であるスリップ比の関数である。タイヤの縦力は、スリップ比の増加とともに、ある時点まで増加し、その後ピークに達し、減少する。制動力を最大にするために、ABSシステム及び車両制御システムは、縦力のピーク値を目標に車両を制御し得る。
図3に示すように、タイヤの法線力が大きいほど、発生可能な最大縦力は大きくなり、そのピーク力が達成されるスリップ比は大きくなる。したがって、いくつかのシナリオでは、タイヤの法線力を大きくすることで、そのタイヤで制動力を発生させる車両の能力を著しく向上できる可能性がある。
【0062】
[0081]
図4Aは、第1の状態における車両100及び道路200の例示的な実施形態の概略図である。
図4Aの概略図に示すように、車両は、第1のホイール150a(例えば、左前輪)、第2のホイール150b(例えば、右前輪)、第3のホイール150c(例えば、左後輪)、及び第4のホイール150d(例えば、右後輪)を含む。
図4A~4Cに示すホイールの大きさは、それぞれのホイールにおけるホイール力の法線成分を表している。
図4Aに示すように、車両は定常状態にあり、法線成分はそれに応じて均衡し、互いにほぼ等しい。車両は、各ホイールのホイール力の法線成分を独立して調整するように構成され得るアクティブサスペンションシステムを含む。
【0063】
[0082]
図4Aに示すように、道路200は、複数の道路の乱れ202を含む。
図4Aの道路の乱れは、基準路面に対してより低い摩擦を有する路面であり得る。
図4Aの実施形態では、道路の乱れは、車両の異なる側のタイヤと路面との間の摩擦係数が異なる、スプリットμシナリオを作り出す。
図4Aに示される状態において、車両は、制動開始線204において制動を受けようとしている。道路の乱れは線206で始まる。
図4Aの例示的な道路の乱れは、市松模様に配置されており、これは、従来の車両が制動中に処理することが特に困難である可能性がある。前述したように、車両の片側のタイヤ摩擦が減少することにより、車両にヨーモーメントがかかる場合がある。このヨーモーメントは、
図4A~4Cを参照してさらに考察するように、ねじれ力の適用を介して補償され得る。
【0064】
[0083]
図4Bは、第2の状態における
図4Aの車両100及び道路の概略図である。
図4Bに示すように、車両は制動を開始している。まず、荷重移動により、法線荷重が後輪150c、150dから離れ、前輪150a、150dに移動する。
図4Bに示すように、
図4Aに対して第3のホイール150cと第4のホイール150dの大きさが小さくなっており、法線力の差が表れている。
図4Bにおいて、第1のホイール150aは、道路の乱れ202に遭遇している。前述したように、第1のホイールと道路200との間の摩擦係数は、乱れ202(例えば、道路の乱れはアイスパッチであり得る)により、ホイール150bよりも低くなっている場合がある。従来の車両では、第1のホイールが同じ縦方向の力を発生させることができないため、第2のホイール150bに比べて第1のホイール150aで制動力が低くなるであろう。しかしながら、
図4Bの車両では、アクティブサスペンションシステムを制御して、車両の両側の制動力の差を補償することができる。特に、
図4Bに示すホイールの塗りつぶしは、アクティブサスペンションがホイールに下向きの力を加える(例えば、ホイールの法線荷重を増大させる)ホイールを示している。したがって、
図4Bに示すように、第1のホイール150a及び第4のホイール150dは、アクティブサスペンションによってその法線荷重が増大する(例えば、車両にねじれ力が加えられる)。第1のホイール150a及び第4のホイール150dの法線荷重が増加すると、それに応じて第2のホイール150b及び第3のホイール150cの法線荷重が減少する。その結果、車両に加わる荷重移動とねじれ力との組み合わせにより、第1のホイール150aの法線荷重が最も大きくなる。また、第1のホイール150aにかかる法線荷重は、第2のホイール150bにかかる法線荷重よりも大きくなる。このような前輪間の法線荷重の差により、第1のホイール150aに追加の制動力を発生させることができ、道路の乱れ202に起因するヨーモーメントを低減させることができる。
図4Bに示すように、第4のホイール150dの法線荷重も、第3のホイール150cの法線荷重より大きい。
【0065】
[0084] いくつかの実施形態において、車両100は、ホイールのスリップが検出されると、
図4Bに示されるねじれパターンを適用し得る。例えば、第1のホイール150aが道路の乱れ202に遭遇したときに制動事象中にABSシステムが作動してもよい。したがって、ねじれ力の適用は、応答的であり得る。いくつかの実施形態において、車両は、前輪のうちの一方が他方よりもスリップしている(例えば、第1のホイール150aが第2のホイール150bよりもスリップしている)と判定し得る。車両の2つの側におけるホイールのスリップの格差を判定すると、アクティブサスペンションシステムで車両にねじれ力が適用されてもよい。いくつかの実施形態において、車両は、車両のホイールについて、ホイールトルク、ホイール速度、及び車速に基づいて、ホイールスリップの絶対値を判定し得る。1つのホイールのホイールスリップが閾値を超える場合、そのホイールの法線力荷重を増加させるためにねじれ力が適用されてもよい。
【0066】
[0085] いくつかの実施形態において、車両100は、参考道路情報及び/又は(例えば、前方監視センサからの)前方監視道路情報に基づいて、少なくとも部分的に
図4Bに示されるねじれパターンを適用し得る。例えば、車両100は、小修道院道路情報に基づいて道路の乱れ202を予測し、それに応じて制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御し得る。いくつかのそのような実施形態では、第1のホイール150a及び第4のホイール150dにかかる法線力荷重は、第1のホイールが線206に到達する前に調整されてもよい。このように、車両は、車両のダイナミクスへの影響を低減するために、道路の乱れに備え得る。いくつかの実施形態において、参考道路情報又は前方監視道路情報は、ねじれ力を加えることなく、ホイールに法線力荷重の一時的な増加を加えるために採用されてもよい。例えば、道路の乱れ202が、サスペンション応答が1秒以下の持続時間にわたって適用され得るような乱れのサイズを有し得る場合、アクティブサスペンションシステムは、乱れに遭遇した単一のホイール又は2つのホイールの法線力荷重を増加させ得る。例えば、第1のホイール150の法線力荷重は、第4のホイール150dの法線力荷重を増加させることなく増加されてもよい。このような配置は、車両100の車体に加速度を付与する可能性があり、道路の乱れがより長大である場合には不利になる可能性がある。したがって、参考道路情報及び/又は前方監視道路情報を用いて、道路の乱れの大きさが道路の乱れ閾値を超えるか否かを判定し、車両のサスペンションが適切に制御され得るようにしてもよい。
【0067】
[0086]
図4Cは、第3の状態における
図4Aの車両100及び道路200の概略図である。
図4Cに示すように、車両は、
図4Aに示した線204で開始した制動事象を継続しつつ、道路200に沿って前進している。しかしながら、道路の乱れにより路面摩擦の低下を経験しているホイールは、
図4Bに示されたホイールとは異なっている。したがって、車両100に加えられるねじれ力は調整されている。
図4Cに示すように、第2のホイール150bは、第3のホイール150cと同様に、道路の乱れ202上に位置している。したがって、アクティブサスペンションシステムは、
図4Cに示すように、第2のホイール及び第3のホイールの法線力荷重を増加させるように使用されてもよい。これらのホイールの法線荷重を増加させることにより、車両の各側に発生する制動力の差を補償し、それによってヨー運動を減少させる。いくつかの実施形態において、車両の前輪のいずれがより大きなホイールスリップを有するかに基づいて、制動事象の間にねじれ力が適用されてもよい。このように、道路200に応じて、制動中に車両のヨーモーメントを低減するために追加の法線力が最も有益である場所に基づいて、適用されるねじれ力を前後に変更してもよい。
【0068】
[0087] いくつかの実施形態において、
図4A~Cに記載したアクティブサスペンションの力の適用は、反転してもよい。例えば、アクティブサスペンションは、総制動力を最大化するために、より高い摩擦を経験している前輪(例えば、
図4Bの第2のホイール150b)上の法線力を増加させ得る。アクティブサスペンションの力のこの適用は、車両に付与されるヨー擾乱の増加をもたらす可能性があるが、最も高いトラクションを有する前輪の制動力の増加ももたらす可能性がある。いくつかの実施形態において、この戦略は、あらゆる追加のヨー擾乱を緩和するために、ステアリングモジュール124から適切なステアリングモーメントを指令することによって、ステアリングシステムとともに使用されてもよい。いくつかの実施形態において、車両の両側の制動力を均衡させる、又は片側の制動力を最大にする、という戦略は、車両制御システムによって、車両センサからの情報及び/又は近づいている道路情報、例えば、道路事象の程度及び大きさに関する情報、及び制動状況の致命度に関する情報に基づいて判定されてもよい(例えば、車両がその前方の他の車両に衝突しようとしている場合、起こり得るヨー擾乱を犠牲にして制動を最大化する戦略が採用されてもよく、又は例えば、道路が狭いが前方に障害物が検出されない場合、ヨー擾乱を最小化する戦略が採用されてもよい)。
【0069】
[0088]
図5は、いくつかの例示的な実施形態による、アクティブサスペンションを有する車両に適用されるねじれ力対停止距離のグラフである。特に、
図5のグラフは、
図4A~4Cの例示的な実施形態で描かれたシナリオにおいて適用されたねじれの量に基づく停止距離を示している。
図5に示されるように、停止距離は、ねじれ力の適用が大きくなるにつれて減少する。上述したように、ねじれ力の適用は、低μ面と接触しているホイールに追加の制動力を発生させることを可能にする。
【0070】
[0089]
図6は、いくつかの例示的な実施形態による、アクティブサスペンションを有する車両に適用されるねじれ力対ステアリングホイールトルクのグラフである。特に、
図6のグラフは、
図4A~4Cの例示的な実施形態で描かれたシナリオで適用されたねじれの量に基づくステアリングホイールトルクを示すものである。
図6のホイールトルクは、スプリットμシナリオによって生成されるヨーモーメントを示すものである。
図6に示されるように、ステアリングホイールトルクは、ねじれ力の適用が大きくなるにつれて減少する。上述したように、ねじれ力の適用は、そうでなければ摩擦が減少するホイールにおいて追加の制動力を生成することを可能にし、車両の反対側の制動力の間のミスマッチを減少させる。いくつかの実施形態において、これはまた、ステアリングホイール、ひいては運転者に付与される擾乱を低減し得る。
【0071】
[0090]
図7は、車両を制御する方法の一実施形態のフローチャートである。ブロック300において、制動事象が進行中であるかどうかが判定される。制動事象が進行中であるかどうかを判定することは、ユーザ又は他の車両システムによるブレーキの適用を検出することを含み得る。ブロック302において、閾値制動力を超える制動力要求が判定される。制動力要求は、例えばホイールが道路の乱れに遭遇したときに閾値制動力を超える可能性があり、その結果、ホイールの制動力が低下する可能性がある。任意選択のブロック304において、制動事象の間にホイールのスリップが検出されてもよい。例えば、制動事象の間にABSが作動してもよい。いくつかの実施形態において、相対的なホイールのスリップに基づいて摩擦の絶対値を推定するために摩擦推定器が採用されてもよく、この摩擦推定器は、アクティブサスペンションシステムを制御するために採用されてもよい。いくつかの実施形態において、ホイールスリップは、ホイール回転と車速に基づく予想される回転との比較に基づいて推定されてもよい。ブロック306において、ホイールのトラクションを増加させるために、ホイールにおけるホイール力の法線成分がアクティブサスペンションシステムで調整される。いくつかの実施形態において、調整は、ホイールの法線荷重の増加を含み得る。いくつかの実施形態において、調整は、検出されたホイールのスリップに基づいてもよい。任意選択のブロック308において、第1のホイールのトラクションを増加させるために、アクティブサスペンションシステムで第1のホイールの力の法線成分が調整される。任意選択のブロック310において、全体の制動力の要求が全体の閾値を超えるかどうかが判定される。全体的な制動力が閾値を超える場合、制動事象に対するアクティブサスペンションシステムの応答は、一時的に(例えば、制動事象の間)不能にされてもよい。このような配置は、ホイールの法線成分を調整することで全体の制動力を低下させる状況において望ましい場合がある。
【0072】
[0091]
図8A~8Dは、制動事象の間の制動システム性能を改善するためにアクティブサスペンションシステムを採用する車両100の別の実施形態の側面概略図を示している。
図8Aに示すように、車両100は、前方監視道路情報を感知し、その情報を車両制御システムに提供するように構成された、前方監視センサ108を含む。
図4A~4Cのシナリオと同様に、
図8A~8Dのシナリオは、線204で始まる制動事象を含む。車両は、道路の乱れを含む道路200を走行している。
図8A~8Dのシナリオでは、道路の乱れは、スプリットμシナリオを作り出さず、むしろ車両の両側の道路摩擦の喪失を誘発する。道路の乱れ202は、線206で始まり、線208で終わる。
図8A~8Dの道路の乱れは、氷の張り、窪み、水たまり、又は他の道路の乱れであり得る。しかしながら、
図8A~8Dの道路の乱れはサイズが小さく、これは車両100のアクティブサスペンションのサスペンション応答が、以下でさらに考察されるように、一時的なものであり得ることを意味する。
図8A~8Dの実施形態において、車両の前車軸にかかる法線力荷重を示すために、矢印151が示されている。
【0073】
[0092]
図8Bは、第2の状態における
図8Aの車両100及び道路200の概略図である。
図8Bに示すように、車両は、線204を越えた後、制動事象を開始している。前輪150b及び後輪150dに制動力が適用された結果、荷重移動により、後輪150dに連結された後車軸から前輪150bに連結された前車軸に法線力荷重が移動する。
図8Bに示すように、その結果、車両100は前のめりになる。したがって、
図8Aの状態に対して、矢印151で示すように、法線力荷重が増加する。いくつかの実施形態において、前述したように、車両のアクティブサスペンションは、車両のこのピッチ動作に関連するピッチ振動を減衰させ、車両ホイールの法線荷重の変動を低減するように動作され得る。
【0074】
[0093]
図8A~8Dの実施形態によれば、前方監視センサ108は、車両が道路の乱れに到達する前に道路の乱れを感知し得る。車両100の車両制御システムは、道路の乱れの大きさを判定し得、道路の乱れによって引き起こされる制動力の損失を補償するためにアクティブサスペンション応答を準備し得る。いくつかの実施形態において、道路の乱れは、車両に搭載され得る参考道路情報にも含まれ得る。
図8A~8Dの実施形態によれば、道路の乱れ202は比較的小さく、これは車両が1秒未満で道路の乱れを通過し得ることを意味する。車両が道路の乱れを横切る際の制動力の損失を補償するために、アクティブサスペンションシステムは、
図8Cに示すように、車両の前車軸の法線荷重を一時的に増加させるために、車両にピッチ加速度を適用し得る。道路の乱れがより大きい場合には、このような一時的な法線荷重の増加は適用されない場合がある。
【0075】
[0094]
図8Cは、第3の状態における
図8Aの車両100及び道路200の概略図である。
図8Cに示すように、車両100のアクティブサスペンションは、車両の前端を上方に押し上げ、それに対応して、
図8Bに対して矢印151で示すように、前輪150bにかかる荷重を増加させた。車両に付与された加速度は一時的なものであるため、法線荷重の増加も一時的なものである。したがって、アクティブサスペンションは、前輪150bが道路の乱れ202の開始線206に到達するまでは、そのような加速度を付与しないようにしてもよい。増加した法線力により、道路の乱れを通して制動力が維持されてもよい。いくつかの実施形態において、前方監視センサ108は、アクティブサスペンションがそれに応じて制御され得るように、開始線206及び終了線208の位置に関する情報を提供し得る。
【0076】
[0095]
図8Dは、第4の状態における
図8Aの車両100及び道路200の概略図である。
図8Dに示すように、車両100の一時的な加速が完了し、車両が道路の乱れ202を少なくとも部分的に通過すると、車両は、車体が車両前方に前のめりになる姿勢に戻り得る。したがって、法線力荷重も、
図8Bに示すような法線力荷重に戻る可能性がある。もちろん、増加した法線力荷重から元の法線力荷重に戻る移行中に、法線力荷重が一時的に減少されてもよく、車体が前輪150bに向かって加速して戻る。しかしながら、前輪150bが道路の乱れ202の上にもはや位置しないので、この一時的な法線力の低下は、制動力に実質的に影響を与えない可能性がある。
【0077】
[0096]
図9は、車両を制御する方法の別の実施形態のフローチャートである。ブロック400において、前方監視センサで前方監視道路情報が感知される。ブロック402において、前方監視道路情報に基づいて道路の乱れが識別される。例えば、少なくとも1つのプロセッサは、画像処理技術及び/又は機械学習を採用して、道路の乱れの存在、並びにサイズなどの道路の乱れの1つ又は複数の特性を判定してもよい。ブロック404において、制動事象が進行中であると判定され得る。ブロック406において、前方監視道路情報及び道路の乱れに基づいて、制動システムとともにアクティブサスペンションシステムが制御されてもよい。ブロック408において、ホイールが道路の乱れに遭遇したときにホイールのトラクションを増加させるために、ホイールにおけるホイール力の法線成分がアクティブサスペンションシステムで調整される。例えば、いくつかの実施形態において、ねじれ力が車両に適用されてもよい。別の例として、いくつかの実施形態において、ホイールにかかる法線力荷重を一時的に増加させるために、車両のピッチが調整されてもよい。
図9の方法は前方監視道路情報を採用するが、本開示はそれほど限定されないので、参考道路情報も単独で又は前方監視道路情報と組み合わせて採用されてもよいことに留意されたい。いくつかの実施形態において、本方法は、制動事象中の車両の予想される応答を判定することも含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、予想される応答を判定することは、道路の乱れに基づいて予想される制動力の損失を判定することを含み得る。本方法は、判定された予想される応答に少なくとも部分的に基づいて、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御すること(例えば、ホイールの法線力荷重を調整して道路の乱れを補償すること)を含み得る。
【0078】
[0097]
図10は、車両を制御する方法のさらに別の実施形態のフローチャートである。ブロック500において、制動事象が進行中であると判定される。ブロック502において、車両のピッチ振動の周波数範囲が判定される。いくつかの実施形態において、範囲ピッチ周波数は、例えば、以前に収集され保存されたデータ又はIMUからの情報に基づいて判定されてもよい。いくつかの実施形態において、ピッチ周波数の範囲は、制動システムからの情報に基づいて判定されてもよい。ブロック504において、ホイールにおけるホイール力の法線成分は、ピッチ振動周波数の範囲に少なくとも部分的に基づいて、アクティブサスペンションシステムで調整されてもよい。ブロック506において、車両は、ブロック502における周波数の範囲内のピッチ周波数において減衰される。場合によっては、ピッチ周波数の範囲に応じて、車両の異なる部分が減衰されてもよい。例えば、いくつかの実施形態において、1~10Hzの間のピッチ周波数範囲は、車両のばね上質量が減衰される結果をもたらし得る。別の例として、いくつかの実施形態において、10~25Hzの間のピッチ周波数は、車両のばね下質量が減衰される結果をもたらし得る。いくつかの実施形態において、本方法はまた、制動事象中の車両の予想される応答を判定することを含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、予想される応答を判定することは、ピッチ振動周波数に基づいて予想される制動力の損失を判定することを含み得る。本方法は、判定された予想される応答に少なくとも部分的に基づいて、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御すること(例えば、ピッチ振動を減衰させるためにホイールの法線力荷重を調整すること)を含み得る。
【0079】
[0098]
図11A~11Dは、車両100がコーナリングと制動の組み合わせの事象にあるシナリオを描いている。
図11Aに示すように、車両100は、第1のホイール150a(例えば、左前輪)、第2のホイール150b(例えば、右前輪)、第3のホイール150c(例えば、左後輪)、及び第4のホイール150d(例えば、右後輪)を含む。
図11A~11Dに示すホイールの大きさは、それぞれのホイールにおけるホイール力の法線成分に対応する。
図11Aに示すように、車両は定常状態にあり、法線成分はそれに応じて均衡し、互いにほぼ等しい。車両は、各ホイールのホイール力の法線成分を独立して調整するように構成されてもよいアクティブサスペンションシステムを含む。
図11Aに示すように、車両は、線204で制動及びコーナリング事象を開始する前の第1の状態にある。
【0080】
[0099]
図11Bは、制動及びコーナリング事象を開始した後の第2の状態にある
図11Aの車両100の概略図である。
図11Bに示すように、制動力の適用は、後輪150c、150dから前輪150a、150bへの荷重移動をもたらし、それに伴って法線力が増加する。
図11Aと比較すると、第1のホイール150a及び第2のホイール150bの法線力荷重は大きくなっており、第3のホイール150c及び第4のホイール150dの法線力荷重は小さくなっている。
図11Bに示す状態では、アクティブサスペンションは作動しておらず、車両は旋回を開始していない。
【0081】
[0100]
図11Cは、旋回が開始された第3の状態における
図11Aの車両100の概略図である。
図11Cに示されるように、旋回を開始することは、車両の一方の側から車両の他方の側への荷重移動を引き起こすロール加速度を車両に誘発する。特に、法線荷重は、車両の右側から車両の左側へ移動する。その結果、第1のホイール150aは
図11Bの状態よりも大きな法線荷重を有し、第2のホイール150bは
図11Bの状態よりも減少した法線荷重を有する。同様に、第3のホイール150cは、
図11Bのその状態よりも法線荷重が大きくなっているのに対し、第4のホイール150dは、
図11Bのその状態よりも法線荷重が小さくなっている。その結果、車両には、法線荷重の格差により、車両を旋回部から外すように促すヨーモーメントが誘発される。車両制御システムは、
図11Dに示すように、この格差やホイールのスリップの差を検出し、アクティブサスペンションシステムでホイールにかかる法線力荷重を調整し得る。
【0082】
[0101]
図11Dは、第4の状態における
図11Aの車両100の概略図である。
図11Dに示すように、車両にねじれ力が適用されている。特に、第2のホイール150b及び第3のホイール150cにおいて、法線荷重が増加する。その結果、法線力荷重は、第1のホイール150a及び第4のホイール150dから離れるようにシフトされる。
図11Dの実施形態によれば、第1のホイール150aと第2のホイール150bの法線荷重はほぼ等しくなる。したがって、2つの前輪の制動差によって発生するヨーモーメントを低減又は解消することができる。さらに、ねじれ力の付与により、第1のホイール、第2のホイール、及び第3のホイールの間で法線力荷重がより均等に分散され、旋回中に車両が意図した経路に留まることができるようになる場合がある。さらに、前輪150a、150bには全体としてより多くの法線荷重が適用される可能性があるため、パッシブサスペンションシステムと比較して、全体の制動力が増加する可能性がある。このように、アクティブサスペンションシステムによる法線力の調整は、コーナリング及び/又は制動事象における車両の性能を向上させることができる。いくつかの実施形態において、車両制御システムは、制動力要求が閾値制動力を超えると判定し得、応答して車両にねじれ力を適用し、特定のシナリオに対して所望の制動力が生成されることを保証し得る。
【0083】
[0102] いくつかの実施形態において、このシナリオにおけるねじれ力の適用は、車両の所望のヨー運動の観測に依存し得る。例えば、車両がアンダーステアし過ぎていると判定された場合(例えば、車両のヨーレートが制御システムによって判定された所望のヨーレートよりも少なくとも閾値に等しい値だけ低いと判定された場合)、アクティブサスペンション力は、
図11A~Dにおいて記載したように適用されてもよい。例えば、車両がオーバーステアし過ぎていると判定された場合(例えば、車両のヨーレートが制御システムによって判定された所望のヨーレートよりも少なくとも閾値に等しい値だけ大きいと判定された場合)、アクティブサスペンション力の適用は、第1のホイール150a及び第4のホイール150dの法線荷重を増加し、第2のホイール150b及び第3のホイール150cの法線荷重を減少させるために反転されても良い。いくつかの実施形態において、この力の適用は、車両のヨー応答を所望の応答に一致するように制御するために動的に変更されてもよい。いくつかの実施形態において、この所望の応答は、車両制御システムにおける計算によって判定されてもよく、又は予め判定されてもよい。
【0084】
[0103]
図12は、車両を制御する方法のさらに別の実施形態のフローチャートである。ブロック600において、制動事象が進行中であると判定される。ブロック602において、車両のかじ取り角が(例えば、ロータリエンコーダ、ポテンショメータ、又は他の適切なセンサからの情報を用いて)判定される。ブロック604において、制動事象中のホイールに対する制動力要求が閾値制動力を超えていると判定される。いくつかの実施形態において、このような判定は、ABSシステムの作動に基づいてもよい。いくつかの実施形態において、そのような判定は、車両のユーザによって適用された制動力(例えば、ブレーキペダル力)の量に基づいてもよいし、そのような適用のタイミング又は速度によって行われてもよい。ブロック606において、ホイールのトラクションを増加させるために、ホイールにおける第1のホイール力の法線成分がアクティブサスペンションシステムで調整される。ブロック608において、第2のホイールにおける第2のホイール力の法線成分は、アクティブサスペンションシステムで調整される。いくつかの実施形態において、第1のホイール及び第2のホイールは、ねじれ力が車両に適用されるように、車両の反対側のコーナーに位置決めされてもよい。いくつかの実施形態において、本方法は、制動事象の間の車両の予想される応答を判定することも含み得る。例えば、いくつかの実施形態において、予想される応答を判定することは、
図11A~11Dを参照して記載した荷重移動に基づいて、アンダーステアが発生すると判定することを含み得る。本方法は、判定された予想される応答に少なくとも部分的に基づいて、制動システム及びアクティブサスペンションシステムを制御すること(例えば、ねじれ力を適用すること)を含み得る。
【0085】
[0104] 本明細書に記載された技術の上述した実施形態は、多数の方法のいずれかにおいて実装することができる。例えば、実施形態は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの組み合わせを用いて実装され得る。ソフトウェアに実装される場合、ソフトウェアコードは、単一のコンピュータに設けられているか、複数のコンピュータに分散されているかどうかにかかわらず、任意の適切なプロセッサ又はプロセッサの集合体上で実行することができる。そのようなプロセッサは、CPUチップ、GPUチップ、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、又はコプロセッサなどの名称で当技術分野で知られている市販の集積回路コンポーネントを含む、集積回路コンポーネント内に1つ又は複数のプロセッサを有する、集積回路として実装されてもよい。或いは、プロセッサは、ASICなどのカスタム回路、又はプログラマブルロジックデバイスを構成することから生じるセミカスタム回路に実装されてもよい。さらなる別の代替方法として、プロセッサは、市販、セミカスタム、又はカスタムのいずれであっても、より大きな回路又は半導体デバイスの一部分であってもよい。具体的な例として、いくつかの市販のマイクロプロセッサは、複数のコアを有し、それらのコアの1つ又はサブセットがプロセッサを構成する場合がある。ただし、プロセッサは、任意の適切な形式の回路を使用して実装することができる。
【0086】
[0105] さらに、コンピュータは、ラックマウント型コンピュータ、デスクトップ型コンピュータ、ラップトップ型コンピュータ、又はタブレット型コンピュータなどの多数の形態のいずれかで具現化されてもよいことを理解されたい。さらに、コンピュータは、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、スマートフォン、又は他の任意の適切な携帯型又は固定型の電子装置を含む、一般にコンピュータとみなされないが適切な処理能力を有する装置に組み込まれてもよい。
【0087】
[0106] また、コンピュータは、1つ又は複数の入力装置及び出力装置を有し得る。これらの装置は、とりわけ、ユーザインタフェースを提示するために使用することができる。ユーザインタフェースを提供するために使用できる出力装置の例としては、出力を視覚的に提示するためのプリンタ又はディスプレイスクリーン、出力を聴覚的に提示するためのスピーカー又は他の音発生装置が挙げられる。ユーザインタフェースに使用できる入力装置の例としては、キーボード、及びマウス、タッチパッド、及びデジタル化タブレットなどのポインティングデバイスが挙げられる。別の例として、コンピュータは、音声認識を通じて、又は他の可聴フォーマットで入力情報を受信し得る。
【0088】
[0107] このようなコンピュータは、企業ネットワーク又はインターネットなど、ローカルエリアネットワーク又はワイドエリアネットワークを含む、任意の適切な形態の1つ又は複数のネットワークによって相互接続されてもよい。そのようなネットワークは、任意の適切な技術に基づいてもよく、任意の適切なプロトコルに従って動作し得、無線ネットワーク、有線ネットワーク、又は光ファイバーネットワークを含み得る。
【0089】
[0108] また、本明細書で概説した様々な方法又はプロセスは、様々なオペレーティングシステム又はプラットフォームのうちの任意の1つを採用する1つ又は複数のプロセッサ上で実行可能なソフトウェアとしてコード化されてもよい。さらに、そのようなソフトウェアは、多数の適切なプログラミング言語及び/又はプログラミング若しくはスクリプトツールのいずれかを使用して書かれてもよく、また、フレームワーク又は仮想マシン上で実行される実行可能な機械語コード又は中間コードとしてコンパイルされてもよい。
【0090】
[0109] この点に関して、本明細書に記載される実施形態は、1つ又は複数のコンピュータ又は他のプロセッサで実行すると、上述の様々な実施形態を実施する方法を実行する1つ又は複数のプログラムでコード化されているコンピュータ可読記憶媒体(又は複数のコンピュータ可読媒体)(例えば、コンピュータメモリ、1つ又は複数のフロッピーディスク、コンパクトディスク(CD)、光ディスク、デジタルビデオディスク(DVD)、磁気テープ、フラッシュメモリ、フィールドプログラマブルゲートアレイ又は他の半導体デバイスの回路構成、又は他の有形コンピュータ記憶媒体)として具現化され得る。前述の例から明らかなように、コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ実行可能な命令を非一時的な形態で提供するのに十分な時間、情報を保持し得る。1つ又は複数のそのようなコンピュータ可読記憶媒体は、その上に記憶された1つ又は複数のプログラムを1つ又は複数の異なるコンピュータ又は他のプロセッサにロードして、上述した本開示の様々な態様を実施できるように、輸送可能であり得る。本明細書で使用される場合、「コンピュータ可読記憶媒体」という用語は、製造物(すなわち、製造品)又は機械とみなすことができる非一時的コンピュータ可読媒体のみを包含する。代替的又は追加的に、本開示は、伝搬信号など、コンピュータ可読記憶媒体以外のコンピュータ可読媒体として具現化されてもよい。
【0091】
[0110] 「プログラム」又は「ソフトウェア」という用語は、本明細書において、上述したように本開示の様々な態様を実施するためにコンピュータ又は他のプロセッサをプログラムするために採用できる、任意のタイプのコンピュータコード又はコンピュータ実行可能命令のセットを指す一般的意味で使用されている。さらに、本実施形態の一態様によれば、実行されると本開示の方法を実行する1つ又は複数のコンピュータプログラムは、単一のコンピュータ又はプロセッサ上に存在する必要はなく、本開示の様々な態様を実施するために多数の異なるコンピュータ又はプロセッサの間でモジュール式に分散され得ることを理解されたい。
【0092】
[0111] コンピュータ実行可能命令は、1つ又は複数のコンピュータ又は他のデバイスによって実行される、プログラムモジュールなどの多くの形態であり得る。一般に、プログラムモジュールは、特定のタスクを実行する、又は特定の抽象データ型を実装するルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造等を含む。一般に、プログラムモジュールの機能は、様々な実施形態において所望に応じて組み合わせたり、分散させたりすることができる。
【0093】
[0112] また、データ構造は、任意の適切な形態でコンピュータ可読媒体に格納されてもよい。説明を簡単にするために、データ構造は、データ構造内の位置を介して関連するフィールドを有するように示されてもよい。そのような関係は、同様に、フィールド間の関係を伝えるコンピュータ可読媒体内の位置を有するフィールドのためのストレージを割り当てることによって達成されてもよい。しかしながら、データ構造のフィールドの情報間の関係を確立するために、ポインタ、タグ、又はデータ要素間の関係を確立する他の機構の使用など、任意の適切な機構が使用されてもよい。
【0094】
[0113] 本開示の様々な態様は、単独で、組み合わせて、又は先に記載された実施形態で特に考察されなかった様々な配置で使用することができ、したがって、先の記載で規定した又は図面に例示した構成要素の詳細及び配置にその適用が制限されることはない。例えば、ある実施形態において記載した態様は、他の実施形態で記載した態様と任意の態様で組み合わせることができる。
【0095】
[0114] また、本明細書に記載された実施形態は、一例が提供された方法として具現化されてもよい。方法の一部として実行される行為は、任意の適切な方法で順序付けされてもよい。したがって、例示的な実施形態では連続した行為として示されていても、いくつかの行為を同時に行うことを含む、例示とは異なる順序で行為が実行される実施形態が構築されてもよい。
【0096】
[0115] さらに、いくつかの行為は、「ユーザ」によって行われるものとして記載されている。「ユーザ」は単一の個人である必要はなく、いくつかの実施形態において、「ユーザ」に起因する行為は、個人のチーム及び/又はコンピュータ支援ツール又は他の機構と組み合わせた個人によって実行されてもよいことを理解されたい。
【0097】
[0116] 本教示は、様々な実施形態及び例と併せて記載されてきたが、本教示がそのような実施形態又は例に限定されることは意図されていない。それどころか、本教示は、当業者によって理解されるように、様々な代替物、修正物、及び均等物を包含している。したがって、前述の記載及び図面は、例に過ぎない。
【国際調査報告】