(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】拘束運動を用いた絶対的ヘディング推定
(51)【国際特許分類】
G01C 19/00 20130101AFI20230725BHJP
【FI】
G01C19/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501374
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 EP2021068286
(87)【国際公開番号】W WO2022008361
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】102020118321.6
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523007719
【氏名又は名称】ノルディック イナーシャル オーイー
(74)【代理人】
【識別番号】100098729
【氏名又は名称】重信 和男
(74)【代理人】
【識別番号】100206911
【氏名又は名称】大久保 岳彦
(74)【代理人】
【識別番号】100204467
【氏名又は名称】石川 好文
(74)【代理人】
【識別番号】100148161
【氏名又は名称】秋庭 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100195833
【氏名又は名称】林 道広
(72)【発明者】
【氏名】コリン,ユッシ
【テーマコード(参考)】
2F105
【Fターム(参考)】
2F105AA02
2F105BB01
2F105BB17
(57)【要約】
本発明は、物体の偏角、方位、及び位置の少なくとも1つを測定する方法に関し、前記物体に取り付けられたジャイロスコープを、旋回軸を中心に枢動角速度で枢動させるステップと、前記物体の、前記旋回軸とは異なる軸を中心とした未測定の枢動を、前記ジャイロスコープを用いて計測するステップと、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分を、前記未測定の枢動、及び、前記枢動角速度を用いて測定するステップと、前記物体の、真北に対する偏角を、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分から測定するステップ、又は、前記物体の前記方位及び位置を、前記物体の初期方位及び初期位置から出発して、前記未測定の枢動、前記枢動角速度、及び前記物体が移動した距離を用いて測定し、且つ、地球の回転の前記測定された成分の、前記物体の前記方位及び位置における影響を補償するステップと、を含む方法において、前記物体が、車両又は車両の一部であり、当該車両が、第1車両部分及び第2車両部分を含み、前記第1車両部分が、前記旋回軸を中心に前記第2車両部分に対して枢動可能であり、前記ジャイロスコープが前記第1車両部分に機械的に取り付けられており、且つ、前記方法が、さらに、前記ジャイロスコープの、前記旋回軸を中心とした前記枢動角速度を、前記ジャイロスコープとは異なる第2センサを用いて測定するステップを含むことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体(102a,102b,102c)の偏角、方位、及び位置の少なくとも1つを測定する方法であって、
前記物体(102a,102b,102c)に取り付けられたジャイロスコープ(101a,101b,101c)を、旋回軸(4,7,9)を中心に枢動角速度(ω
carousel)で枢動させるステップと、
前記物体(102a,102b,102c)の、前記旋回軸(4,7,9)とは異なる軸を中心とした未測定の枢動を、前記ジャイロスコープ(101a,101b,101c)を用いて計測するステップと、
前記ジャイロスコープ(101a,101b,101c)に作用する地球の回転の成分を、
前記未測定の枢動、及び、
前記枢動角速度(ω
carousel)を用いて測定するステップと、
前記物体(102a,102b,102c)の、真北に対する偏角を、前記ジャイロスコープ(101a,101b,101c)に作用する地球の回転の成分から測定するステップ、又は、
前記物体(102a,102b,102c)の前記方位及び位置を、前記物体(102a,102b,102c)の初期方位及び初期位置から出発して、
前記未測定の枢動、
前記枢動角速度(ω
carousel)、及び
前記物体(102a,102b,102c)が移動した距離を用いて測定し、且つ、
地球の回転の前記測定された成分の、前記物体(102a,102b,102c)の前記方位及び位置における影響を補償するステップと、を含む方法において、
前記物体が、車両(1)又は車両の一部(102a,102b,102c)であり、当該車両(1)が、第1車両部分及び第2車両部分を含み、
前記第1車両部分が、前記旋回軸(4,7,9)を中心に前記第2車両部分に対して枢動可能であり、
前記ジャイロスコープ(101a,101b,101c)が前記第1車両部分に機械的に取り付けられており、且つ、
前記方法が、さらに、
前記ジャイロスコープ(101a,101b,101c)の、前記旋回軸(4,7,9)を中心とした前記枢動角速度(ω
carousel)を、前記ジャイロスコープ(101a,101b,101c)とは異なる第2センサ(103a,103b,103c)を用いて測定するステップを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記車両が車輪付き車両又は無限軌道車両であり、前記第1車両部分が車輪であり、当該車輪が既知の車輪半径を含み、且つ、前記第2車両部分が、前記車輪付き車両のフレーム又は本体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両がマニピュレータアームを備え、前記第1車両部分が前記マニピュレータアームの第1アームセクションであり、且つ、前記第2車両部分が前記マニピュレータアームの第2アームセクションであり、又は、前記第2車両部分が車両のフレーム又は本体である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第2センサが加速度センサであり、当該加速度センサが、前記旋回軸からの既知の距離を含む、請求項1乃至3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記枢動が360度以上の回転である、請求項1乃至4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記ジャイロスコープがマイクロエレクトロメカニカルシステムである、請求項1乃至5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記ジャイロスコープ及び加速度計が、6自由度の計測システムを形成する、請求項1乃至6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
さらに、前記物体の方位を、真北に対する前記物体の偏角から測定するステップを含む、請求項1乃至7のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、物体の偏角、方位、及び位置のうちの少なくとも1つを測定するための方法に関し、この方法は、前記物体に取り付けられたジャイロスコープを、旋回軸を中心に枢動角速度で枢動させるステップと、前記物体の、前記旋回軸とは異なる軸を中心とした未測定の枢動を、前記ジャイロスコープを用いて計測するステップと、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転(自転)の成分を、前記未測定の枢動及び前記枢動角速度を用いて測定するステップと、前記物体の、真北に対する偏角を、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分から測定するステップ、又は、前記物体の方位及び位置を、前記物体の初期方位及び初期位置から出発して、前記未測定の枢動、前記枢動角速度、及び、前記物体が移動した距離を用いて測定し、そして、地球の回転の前記測定された成分の、前記物体の方位及び位置における影響を補償するステップと、を含む。
【背景技術】
【0002】
先行技術において、物体の真北からの偏角を測定するために、北を見つけるシステムが知られている。北を見つけるこれらのシステムにおいて、好ましくは、地球の回転速度を検知できるジャイロスコープが、より自立した計測値を提供できるため、しばしば使用される。真北に対する物体の偏角から、物体の方位が測定され得る。
【0003】
さらに、先行技術から、物体の方位及び位置を、物体の初期方位及び初期位置から出発して測定することが知られており、これは、物体の初期位置からの移動距離を計算に入れ、そして、物体の軸を中心とした未測定の枢動を考慮することにより行われる。この適用に関して、地球の回転速度により生じる物体の枢動の計測へのいずれの影響も補償することが推奨される。
【0004】
地球の回転速度は1時間につき約15度しかなく、この速度を正確且つ直接計測するためには、大型でコスト高な検知装置、例えばナビゲーショングレードの慣性航法システムが必要である。このようなジャイロの精度の要求条件を減らすために、センサ回転技術が数十年にわたり提案されてきた。これらの技術においては、ジャイロスコープの精度は、計測中にジャイロスコープを、旋回軸を中心に既知の角速度で回転させることにより高められる。この技術は、カルーセリング(回転が連続的である場合)又はインデキシング(回転が増分的な場合)としても知られている。
【0005】
最近の自動車は、衛星ベースの測位システムをナビゲーションに採用している。現在、自動車のナビゲーションシステムは主に、オンロード及びオフロードで運転者の道案内をするために使用されている。しかし、自律走行が可能になると、車両のナビゲーションシステムは益々重要な役割を担うことになる。人間が車両を制御する影響力が小さくなるほど、ナビゲーション、測位及び方位推定の信頼性が、より重要になる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】H. Seraji“Configuration control of redundant manipulators: theory and implementation,"(IEEE Transactions on Robotics and Automation)、第5巻、第4、472頁~490頁、1989年8月、コード:10.1109/70.88062
【非特許文献2】D. Titterton、J. Weston 著「Strapdown Inertial Navigation Technology」第2版(Progress in Astronautics & Aeronautics)、 ISBN-13:9781563476938、2005年1月、283頁、10.3.2項、 “Ground alignment methods”
【非特許文献3】D. Titterton、J. Weston 著「Strapdown Inertial Navigation Technology」第2版(Progress in Astronautics & Aeronautics)、ISBN-13:9781563476938、2005年1月、“Ground alignment methods”、31頁“Local geographic navigation frame mechanization”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、車両周辺の景観による制約により、衛星信号の100%のカバレッジを、全ての環境下で保証できるわけではない。例えば、可用性及び精度が、都市ビルの谷間、トンネル若しくは鉱道などの地面、又は、高木や岩などの遮蔽物が周囲にある道路で低下する。
【0008】
衛星信号が利用できない、又は質の悪い信号しか得られないような状況を克服するために、ジャイロスコープを車両に組み込んで、ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分の測定を可能にすることが望ましいであろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示によるこの目的は、物体の偏角、方位、及び位置の少なくとも1つを測定するための方法により解決される。この方法は、前記物体に取り付けられたジャイロスコープを、旋回軸を中心に枢動角速度で枢動させるステップと、前記物体の、前記旋回軸とは異なる軸を中心とした未測定の枢動を、前記ジャイロスコープを用いて計測するステップと、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分を、前記未測定の枢動及び前記枢動角速度を用いて測定するステップと、前記物体の、真北に対する偏角を、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分から測定するステップ、又は、前記物体の方位及び位置を、前記物体の初期方位及び初期位置から出発して、前記未測定の枢動、前記枢動角速度、及び、前記物体が移動した距離を用いて測定し、且つ、地球の回転の前記測定された成分の、前記物体の方位及び位置における影響を補償するステップと、を含む。前記物体は、車両又は車両の一部であり、当該車両は、第1車両部分及び第2車両部分を含み、前記第1車両部分は、前記旋回軸を中心に前記第2車両部分に対して枢動可能であり、前記ジャイロスコープは前記第1車両部分に機械的に取り付けられている。前記方法は、さらに、前記ジャイロスコープの、前記旋回軸を中心とした前記枢動角速度を、前記ジャイロスコープとは異なる第2センサを用いて測定するステップを含む。
【0010】
本開示の基本概念は、車両に取り付けられたジャイロスコープであって、車両又は車両の一部の少なくとも偏角又は方位を、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分を考慮して測定する性能を有するジャイロスコープを提供することである。前記ジャイロスコープに作用する地球の回転成分を測定することを可能にするために、ジャイロスコープは旋回軸を中心に枢動角速度で枢動され、この枢動を計測するためには、別のセンサが使用される。
【0011】
本開示は、旋回軸を中心に互いに相対的に枢動可能な2つの車両部分を含む車両を利用する。前記ジャイロスコープは、前記2つの車両部分のうちの1つ、すなわち第1車両部分に機械的に取り付けられる。そして、前記2つの車両部分を互いに相対的に枢動させることにより、前記ジャイロスコープのカルーセリング又はインデキシングを画定させる。
【0012】
前記ジャイロスコープを、第2車両部分に対して相対的に枢動される第1車両部分に取り付けることにより、いずれにせよ前記ジャイロスコープのカルーセリング又はインデキシングが、かなり低コスト且つ省スペースで利用可能である。これにより、ジャイロスコープの効率的なバイアス推定が可能になる。
【0013】
前記旋回軸を中心とした前記第1車両部分と前記第2車両部分との互いの相対的な枢動により生じる前記ジャイロスコープの枢動運動を利用できるようにするために、前記第2車両部分に対する第1車両部分の、前記旋回軸を中心とした枢動角速度が第2センサにより計測される。この第2センサは、前記ジャイロスコープとは別個のものである。前記第2車両部分に対する前記第1車両部分の相対的な枢動角速度を計測することにより、前記旋回軸を中心とした前記ジャイロスコープの枢動角速度もまた測定される。前記別個の第2センサは、地球速度により影響を受けない枢動角速度を提供する。
【0014】
本開示による方法は、物体の方位又は位置の少なくとも一方を測定するために使用され得る。本開示の意味での方位は、前記物体が、それが占める空間内にどのように配置されるかの説明の一部である。方位は、前記物体を基準配置からその現在の配置に移動させるために必要な仮想的な回転を指す。対照的に、前記物体の位置は、前記物体を基準配置からその現在の配置に移動させるために必要な仮想的な変換を指す。方位及び位置は共に、前記物体が空間内にどのように配置されるかを完全に説明する。本開示によれば、前記物体の方位は、真北を基準にする。
【0015】
本開示によるジャイロスコープのカルーセリングは、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分を測定するために使用される。本開示によるジャイロスコープに作用する地球の回転の測定された成分は、2つの異なる方法で使用される。
【0016】
第1の態様によれば、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分は、真北に対する前記物体の偏角を測定するために使用される。本開示による偏角は、前記物体の位置で水平である平面において、物体の予め定められた軸と真北との間の角度として定義される。真北と前記予め定められた前記物体の軸とが一致するために、前記物体の定められた軸が、この角度だけ軸回転されなければならない。真北は、惑星の回転軸が惑星表面と交差する点に向かう、惑星表面に沿った方向である。真南も同様に定義できる。
【0017】
一実施形態において、その後、真北に対する前記偏角が、前記物体の方位を測定するために使用される。本開示による方位は、真北に対する偏角と、さらなる枢動軸を中心とした少なくとも1つのさらなる回転に関する情報(前記物体を、予め定められた基準配置からその現在の配置に位置合わせするために必要)とを含むと見なされる。
【0018】
或いは、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転の測定された成分は、ターゲット方位における物体の方位及び位置と、物体が既知の初期方位及び既知の初期位置からターゲット方位及びターゲット位置に移動した後のターゲット位置との測定の精度を高めるために使用される。この態様において、前記物体の未測定の枢動と、前記物体が初期位置からターゲット位置まで移動した距離(経路長)とが、前記ターゲット位置における前記物体の方位及び位置を測定するために用いられる。
【0019】
もし、地球の回転を計算に入れなければ枢動角に偏差が生じる。この偏差を最小にすれば、方位に関するより正確な情報が得られるであろう。
【0020】
この態様において、前記物体の未測定の枢動と、前記物体が前記初期位置からターゲット位置まで移動した距離、すなわち経路長が、前記ターゲット位置での前記物体の方位及び位置を測定するために用いられる。前記物体の移動距離は、旋回軸の枢動角と、車両の一部の既知の寸法とを積算することにより求められる。移動距離を測定する方法が、特許文献1に記載されている。
【0021】
前記ターゲット位置での前記物体の方位及び位置の測定は、旋回軸及び未測定の旋回軸の両方に重畳する地球の回転により影響を受ける。ジャイロセンサとは別個のセンサを用いて旋回枢動角を冗長的に計測することにより、地球の回転成分の影響が両方の軸において補償できる。ジャイロセンサとは別の前記センサは、例えば、加速度計、ロータリエンコーダ、磁力計、視覚センサ、又は光検出測距システムである。このようなセンサは、地球速度により影響を受けない枢動角又は枢動角速度を提供できるはずである。
【0022】
本開示の一実施形態において、前記車両は、車輪(ホイール)付き車両又は無限軌道車両であり、前記第1車両部分が車輪であり、且つ、前記第2車両部分が、前記車輪付き車両又は無限軌道車両のフレーム又は本体である。前記車両の車輪を使用して移動距離を枢動から推測できるようにするために、前記車輪の半径を知ることが必要である。車両が無限軌道車両であるならば、一実施形態における前記車輪は、連続軌道をガイドする車輪であることは明らかである。代替的な実施形態において、前記車輪は、前記車両のステアリングホイールである。
【0023】
本開示のさらなる実施形態において、前記車両はマニピュレータアームを備え、前記第1車両部分は前記マニピュレータアームの第1アームセクションであり、且つ、前記第2車両部分は、エクスカベータ(掘削機)アームの第2アームセクションであり、又は、前記車両のフレーム又は本体である。
【0024】
驚くべきことに、マニピュレータアームの枢動運動の使用は、車輪の回転の使用と同様の結果をもたらす(マニピュレータが提供するのは360度未満の純粋な枢動であり、全回転ではないが)。さらに、前記ジャイロスコープの枢動運動を提供するためにマニピュレータアームを使用することで、マニピュレータアーム又はその一部の、本開示の意味における物体としての測定が可能になる。
【0025】
上記の開示では、前記ジャイロスコープの定められた枢動運動を提供するマニピュレータの枢動運動に基づくカルーセリング及びインデキシングを、地球の回転成分の測定と組み合わせて説明したに過ぎない。しかし、車両のマニピュレータの枢動運動を利用することは、前記ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分を測定せずとも、それ自体が発明とみなされ得る。
【0026】
従って、本開示は、さらに、物体の方位又は位置の少なくとも一方を測定する方法に関する。この方法は、前記物体に取り付けられたジャイロスコープを、旋回軸を中心に枢動角速度で枢動させるステップと、前記物体の、前記旋回軸とは異なる軸を中心とした未測定の枢動を、ジャイロスコープを用いて計測するステップと、前記物体の方位及び位置を、前記物体の初期方位及び初期位置から出発して、未測定の枢動、前記枢動角速度、及び、前記物体が移動した距離を用いて測定するステップと、を含む。前記物体は、車両又は車両の一部であり、当該車両は、第1車両部分及び第2車両部分を含み、前記第1車両部分は、前記旋回軸を中心に前記第2車両部分に対して枢動可能であり、前記ジャイロスコープは前記第1車両部分に機械的に取り付けられている。前記方法は、さらに、前記ジャイロスコープの、前記旋回軸を中心とした前記枢動角速度を、前記ジャイロスコープとは異なる第2センサを用いて測定するステップを含む。前記車両はマニピュレータアームを備え、前記第1車両部分は前記マニピュレータアームの第1アームセクションであり、且つ、前記第2車両部分は前記マニピュレータアームの第2アームセクション、又は、車両のフレーム又は本体である。
【0027】
本開示の一実施形態において、マニピュレータアームを備えた前記車両はエクスカベータであり、前記マニピュレータアームは、エクスカベータのアームである。
【0028】
本開示の一実施形態において、前記第2センサは加速度センサであり、当該加速度センサは、前記旋回軸からの既知の距離を含む。
【0029】
本開示のさらなる実施形態において、前記枢動は360度以上の回転である。例えば、前記車両の走行中の車輪付き又は無限軌道車両の車輪は、所与の、しかし変化する速度で、360度以上の全回転により回転することが明らかである。
【0030】
本開示のさらなる実施形態において、ジャイロスコープは、マイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)である。これまで、MEMSに基づくジャイロスコープは、ジャイロスコープに作用する地球の回転の成分を計測できなかった。しかし、効果的なノイズ除去及びバイアス補償(特には、本開示によるカルーセリング/インデキシングにより行われる)により、市販の安価なMEMSベースのジャイロスコープが利用可能であり、これにより、地球の回転の成分を測定できる。
【0031】
本開示の一実施形態において、前記ジャイロスコープ及び加速度計は、6自由度計測システムを形成する。いわゆる6自由度計測システムにおいて、加速度計及びジャイロスコープは、3つの非平行な計測軸から計測値を観測する(いわゆる6自由度システム)。
【0032】
本開示のさらなる利点、特徴及び用途は、以下の実施形態の説明及び対応する添付図から明らかになろう。前述の内容は、実施形態の以下の詳細な説明と同様に、添付図面と併せて読むと、より良好に理解されよう。示される実施形態が、図示されている正確な配置及び器具に限定されないことを理解されたい。図面において、類似の要素は同一の参照番号により示す。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】エクスカベータの一実施形態の概略側面図である。
【
図2】枢動角の時間変化を示す図である。枢動角の時間微分が枢動角速度である。
【
図3】枢動角の違いとそれに対応する偏角の概略図である。
【
図4】
図1のエクスカベータの運転中の概略上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、本開示の意味における車両の一例としてのエクスカベータ1の概略側面図である。
【0035】
参照番号101a,101b,101cは、エクスカベータの異なる場所に配置されたMEMSベースのジャイロスコープを示す。ジャイロスコープは、本開示による方法を実行するために使用される。参照番号102a,102b,102cは、本開示の物体と見なされるエクスカベータ1の異なる部分を示している。本開示に記載する方法を用いて、エクスカベータ1のそれぞれの部分102a,102b,102cの、少なくとも方位又は位置が測定される。
【0036】
要約すると、概略的に図示したエクスカベータは、ジャイロスコープ101a,101b,101c及び物体102a,102b,102cの、以下のセットアップを可能にする。
【0037】
ジャイロスコープ101aは、エクスカベータ1の連続トラック(軌道)3をガイドする車輪2に取り付けられている。車輪2は旋回軸4を中心に回転している。ジャイロスコープ101aは、エクスカベータ1のシャーシ102aの方位及び位置を測定するために使用される。ジャイロスコープ101aの枢動角速度ωcarouselを計測するために、第2センサとしての加速度計103aが車輪2に取り付けられている。
【0038】
ジャイロスコープ101bは、マニピュレータアーム5の第1アームセクション102c上に取り付けられている。マニピュレータアーム5は、第1アームセクション102c、及び、第2アームセクションとしてのショベル8を含む)。第1マニピュレータアームセクション102cは、エクスカベータ1の本体102bに対して旋回軸7を中心に相対的に枢動可能である。ジャイロスコープ101bは、エクスカベータ1の本体102bの方位及び位置を測定するために使用される。ジャイロスコープ101bの枢動角速度ωcarouselを計測するために、第2センサとしての加速度計103bが、第1マニピュレータアームセクション102cに取り付けられている。
【0039】
さらに、ショベル8は、第1マニピュレータアームセクション102cに対して旋回軸9を中心に枢動可能である。ジャイロスコープ101cがショベル8に取り付けられている。動作中、エクスカベータ1は、第1マニピュレータアームセクション102cに対して旋回軸9を中心に枢動運動を行う。ジャイロスコープ101cの枢動角速度ωcarouselを計測するために、第2センサとしての加速度計103cがショベル8に取り付けられている。
【0040】
以下に、一例として、エクスカベータ1の本体102bの真北からのずれ(偏差)の測定について説明する。
【0041】
処理システムは、ジャイロスコープ101からの計測信号ω、加速度センサ103bからの計測信号a、及び、初期方位C
0を入力として用い、位置p及び方位Cを出力fとして提供する。すなわち、
【数1】
【0042】
処理システムは、シャーシ102aの位置の推定を、車輪2の運動による拘束を介して可能にし、反復により最適なCを求めることができる。Cを方向余弦行列とすると、その微分値は、
【数2】
式中、[ωx]は、ジャイロスコープデータの非対称行列である。これは地球速度の影響を受けており、C又はCの一部の明確な計測値を用いて、地球速度の影響を推定できる。
【0043】
地球速度の影響が最小化されたならば、Cは既に、絶対的に基準とされる方位情報を含んでいる。完全な方位推定がなぜ可能なのかを明らかにするために、重力及び地球速度の両方が、本体基準フレーム(すなわち、回転ジャイロスコープ101a及び加速度計103aに固定された基準フレーム)において観測可能であり、また、地球フレーム、すなわち地球/月/火星に固定された基準フレームで既知であることが理解されよう。このようにして2つの非平行なベクトルを知ることは、当技術分野で知られているように、完全な方位情報が得られることを意味する。これは、例えば、特許文献2に記載されている。地球の回転により影響を受ける地球速度信号が、車両の回転を遅くする。本開示によれば、地球速度信号の方向は、地球速度がナビゲーション出力に最も誤差を生じない方向を見つけることにより推定される。ジャイロスコープの生信号を慣性航法アルゴリズムで処理すると、その中の任意の定数信号成分が、加速度の計算において正弦波に変調されるであろう。擬似定数信号成分の例は、MEMS加工又は地球の回転速度によるセンサバイアスである。関節角力学及び車両車輪の寸法から、この正弦波信号が実信号ではなく、ジャイロスコープ101aの強制回転と擬似定常成分との複合効果による合成信号であることが分かる。慣性航法アルゴリズムが、一定のオフセットに非常に敏感であることは明らかである。例えば、慣性航法アルゴリズムから導出される加速度と、関節角力学の計測値から導出される加速度(慣性センサによっても得られるが、角度及び車両寸法を用いる)を見ると、地球回転により生じる成分を把握することが可能である。最小化処理により、角度から導出される加速度と、慣性航法から導出される加速度との最良の合致をもたらす方位が見つけられる。これは、先行技術から知られるMEMSベースデバイスに関するバイアス推定と同様である。慣性計算及び寸法ベースの計算に基づく加速度の差は、異なる絶対的方位を試すことにより最小化される。この最小化は、位置ドメイン又は速度ドメインで(演算の都合から、いずれか最適な方で)実施され得る。地球速度信号は非常に弱いので、地球速度測定はバイアス推定よりもかなりノイズに影響されやすい。しかし、より長い時間をかけて観測すれば、間違った絶対的方位から導出される加速度、速度、及び/又は位置における明確な違いがわかるであろう。
【0044】
以下の例では、加速度センサ及びジャイロスコープの両方が、3つの非平行計測軸からの計測を観察していると仮定する(いわゆる6自由度システム)。
【0045】
図2は、先行技術(例えば、特許文献3)において公知の慣性航法式を用いて計算された旋回軸7の枢動角を示す。アスタリスク印は、誤った偏角を慣性航法機械化アルゴリズムに与えた場合の結果を示す。丸印は、より良い偏角の推定値をアルゴリズムに与えた場合の結果を示す。これらの2つの間の偏差は、地球速度が計測値に影響を与えることによる。菱形印は枢動角を示し、この角度は、加速度計により計算された位置(既知の寸法を利用)を、慣性航法機械化システムへの外部フィードバックとして用いて計算することにより得られる。
図3に、誤った偏角とフィードバックシステムの結果との差(アスタリスク印)、及び、より良い偏角とフィードバックシステムとの差(丸印)が示されている。この差は、偏角が良いほど小さくなり、従って、この差を最小にすることを目的としたアルゴリズムが偏角を解決することが理解されよう。また
図3には、対応する偏角が、エクスカベータの偏角の上面図で示されており、実線の矢印は、
図2の真の偏角及び対応する偏角を示している。差を最小化する方法は、ブルートフォース、或いは、好ましくは、勾配検索アルゴリズム又は拡張カルマンフィルタ又は最新の機械学習方法であり得る。フィードバックシステムは、当該技術分野で知られているような、位置更新を伴う拡張カルマンフィルタであり得る。そして、枢動角及び車両寸法から導出される位置更新が、システムの外部計測と見なされる。好ましくは、このようなフィルタは、ジャイロスコープバイアスに関する状態推定を含み、さらに、ニューラルネットワークにより増強された拡張カルマンフィルタであり得る。
【0046】
図4は、
図1のエクスカベータ1の上面図であり、軌跡、例えば偏角及び移動距離401から蓄積された位置履歴を示す。移動距離401は、既知の車輪半径及び枢動角から導出され得る。別の移動距離401を、マニピュレータアーム5の既知の寸法及び既知の枢動角から、ベクトル加算(例えば、車両の中心に対するショベル位置402)を用いて算出できる。偏角は、真北Nと物体の主軸404との間の角度403である。
【0047】
当業者であれば容易に理解できるように、一実施形態に関連して説明した特徴が、その他の実施形態でも用いられ得ることに留意されたい。本発明を、詳細に、図面を参照して説明してきたが、この説明は単なる例示に過ぎず、特許請求の範囲により定義される保護範囲を制限するものとは見なされない。既知の距離又は半径は、そのような計測値の情報を、例えばmm、cm、メートルレベルで示し得る。
【0048】
特許請求の範囲において、用語「備えている」(comprising)は、その他の要素又はステップを排除するものではなく、また、未定義の冠詞(a)は複数を排除するものではない。幾つかの特徴が異なる請求項に記載されているという単なる事実は、それらの組合せを排除するものではない。請求項中の参照番号は、保護範囲を限定するとみなされるべきではない。
【符号の説明】
【0049】
1 エクスカベータ
2 車輪
3 連続トラック
4,7,9 旋回軸
5 マニピュレータアーム
6 第1アームセクション
8 ショベル
101a,101b,101c ジャイロスコープ
102a シャーシ
102b 本体
102c 第1アームセクション
103a,103b,103c 加速度計
401 移動距離
402 ショベル位置
403 真北と物体の主軸との間の角度
404 物体の主軸
ωcarousel 角速度
N 真北
【国際調査報告】