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特表2023-533067ナノスケール磁場センサを用いる単一分子、リアルタイム、無標識動的バイオセンシング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-01
(54)【発明の名称】ナノスケール磁場センサを用いる単一分子、リアルタイム、無標識動的バイオセンシング
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20230725BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20230725BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20230725BHJP
【FI】
G01N27/72
G01N33/543 541A
C12N15/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501384
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 US2021040767
(87)【国際公開番号】W WO2022011067
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】62/705,639
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(71)【出願人】
【識別番号】504056130
【氏名又は名称】ウェスタン デジタル テクノロジーズ インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100138759
【弁理士】
【氏名又は名称】大房 直樹
(72)【発明者】
【氏名】トポランチク,ユライ
(72)【発明者】
【氏名】ブラガンカ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】アスティエ,ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シン,ソン-ホ
(72)【発明者】
【氏名】マイジク,ゾルト
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA04
2G053AB01
2G053BA08
2G053BB08
2G053CA06
2G053CA18
2G053DA01
2G053DB01
(57)【要約】
本明細書では、磁気センサおよび磁性粒子(MNP)を使用して単一分子生物学的プロセスを監視するための装置、システム、および方法が開示される。MNPは、バイオポリマー(例えば、核酸、タンパク質など)に結合され、MNPの動きは、磁気センサを使用して検出および/または監視される。MNPは、小さく(例えば、そのサイズは、監視されている分子のサイズに匹敵する)、バイオポリマーにテザリングされているため、溶液中のMNPのブラウン運動の容積の変化が監視されて、MNPの動き、および推測により、テザリングされたバイオポリマーの動きを監視することができる。磁気センサは、小さく(例えば、ナノスケールであるか、またはMNPおよびバイオポリマーのサイズ程度のサイズを有する)、磁気センサの検知領域内のMNPの位置の小さな変化さえも検出するために使用することができる。
【選択図】図20
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知領域を有する磁気センサ(105)を使用して単一分子生物学的プロセスを監視するための方法(300)であって、
前記磁気センサによって検知された結合部位にバイオポリマーを結合すること(304)と、
磁性粒子を前記バイオポリマーに結合すること(306)と、
第1の検出期間中および第2の検出期間中に前記磁気センサからの信号を取得すること(308)と、
前記第1の検出期間と前記第2の検出期間との間の前記信号の変化に基づいて、前記磁性粒子の動きを検出すること(310)と
を含む、方法。
【請求項2】
前記磁性粒子が磁性ナノ粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記磁性粒子が超常磁性である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記磁性粒子のサイズが約5nm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記磁性粒子が、酸化鉄(FeO)、Fe、またはFePtを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記バイオポリマーが核酸またはタンパク質である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記信号が、電流、電圧、または抵抗を伝達する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記信号が、検出された磁場を伝達する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の検出期間と前記第2の検出期間との間の前記信号の前記変化に基づいて、前記磁性粒子の前記動きを検出することが、
前記第1の検出期間に対応する前記信号の一部の第1の自己相関を取得することと、
前記第2の検出期間に対応する前記信号の一部の第2の自己相関を取得することと、
前記第1の自己相関と前記第2の自己相関との間の少なくとも1つの差を識別することと
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記信号をサンプリングすることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の検出期間と前記第2の検出期間とが重ならない、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記信号がノイズを伝達する、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記ノイズが周波数ノイズまたは位相ノイズである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記信号が、前記磁気センサの発振周波数を伝達する、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記信号をサンプリングすることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記磁気センサが磁気トンネル接合(MTJ)を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記磁気センサがスピントルク発振子(STO)を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記磁気センサがスピンバルブを備える、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記磁気センサの検知領域の容積が約10nmから約5×10nmの間である、請求項1に記載の方法。
【請求項20】
前記結合部位が、検出システムの流体チャンバ内に位置し、前記流体チャンバに溶液を添加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記流体チャンバに前記溶液を添加することが、前記第1の検出期間と前記第2の検出期間との間に行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記溶液がMg2+イオンを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記溶液が、少なくとも1つのバイオマーカーを含む、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記磁性粒子に磁場を印加することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記第1の検出期間と前記第2の検出期間との間の前記信号の前記変化に基づいて、前記磁性粒子の前記動きを検出することが、少なくとも1つのローレンツ関数を決定することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項26】
第3の検出期間中に前記磁気センサから前記信号を取得することをさらに含み、前記第3の検出期間が、前記磁性粒子が前記検知領域の外側にある間に行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項27】
前記第3の検出期間中に検出された前記信号を使用して前記磁気センサのノイズパワースペクトル密度(PSD)を決定することをさらに含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
コーナー周波数を特徴とするローレンツ関数を決定することをさらに含み、前記ローレンツ関数と前記磁気センサの前記ノイズPSDとの合計が、前記第1の検出期間中または前記第2の検出期間中の前記磁気センサからの前記信号のPSDにほぼ等しい、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
第1のコーナー周波数を特徴とする第1のローレンツ関数を決定することであって、前記第1のローレンツ関数と前記磁気センサの前記ノイズPSDとの合計が、前記第1の検出期間中の前記磁気センサからの前記信号の第1のPSDにほぼ等しい、第1のローレンツ関数を決定することと、
第2のコーナー周波数を特徴とする第2のローレンツ関数を決定することであって、前記第2のローレンツ関数と前記磁気センサの前記ノイズPSDとの合計が、前記第2の検出期間中の前記磁気センサからの前記信号の第2のPSDにほぼ等しい、第2のローレンツ関数を決定することと、
前記第1のコーナー周波数が前記第2のコーナー周波数と異なることに基づいて、生物学的プロセスが生じたと結論付けることと
をさらに含む、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
前記生物学的プロセスが、バイオマーカーが前記バイオポリマーに結合することを含み、前記第2の検出期間が、複数のバイオマーカーを含む複合生物学的溶液の添加に続き、前記第1のコーナー周波数が前記第2のコーナー周波数よりも大きい、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
第1のコーナー周波数を特徴とする第1のローレンツ関数を決定することであって、前記第1のローレンツ関数が、前記第1の検出期間中の前記磁性粒子の動きに起因する第1のノイズPSDを表す、第1のローレンツ関数を決定することと、
第2のコーナー周波数を特徴とする第2のローレンツ関数を決定することであって、前記第2のローレンツ関数が、前記第2の検出期間中の前記磁性粒子の動きに起因する第2のノイズPSDを表す、第2のローレンツ関数を決定することと
をさらに含み、
前記第1の検出期間と前記第2の検出期間との間の前記信号の前記変化に基づいて、前記磁性粒子の前記動きを検出することが、前記第1のコーナー周波数と前記第2のコーナー周波数との間の差を識別することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項32】
前記第2の検出期間が、複数のバイオマーカーを含む複合生物学的溶液の添加に続き、前記第1のコーナー周波数が前記第2のコーナー周波数よりも大きい、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
バイオポリマー(101)に結合された磁性粒子(102)の動きを監視するためのシステム(100)であって、
一度に1つ以下のバイオポリマーを保持するための結合部位(116)を含む流体チャンバ(115)であって、前記結合部位が、前記バイオポリマーの端部を前記流体チャンバの表面(117)に結合させ、かつ前記磁性粒子が動くことを可能にするように構成される、流体チャンバ(115)と、
少なくとも1つのプロセッサ(130)と、
前記流体チャンバ内に検知領域(206)を有する磁気センサ(105)であって、前記検知領域が、前記結合部位を含むが他の結合部位を含まず、前記磁気センサが、前記検知領域内の磁気環境を特徴付ける信号(207)を生成し、前記信号を前記少なくとも1つのプロセッサに提供するように構成される、磁気センサと
を備え、
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記信号の第1の部分を取得することであって、前記信号の前記第1の部分が、第1の検出期間中の前記検知領域内の前記磁気環境を表す、前記信号の第1の部分を取得することと、
前記信号の第2の部分を取得することであって、前記信号の前記第2の部分が、第2の検出期間中の前記検知領域内の前記磁気環境を表し、前記第2の検出期間は前記第1の検出期間の後である、前記信号の第2の部分を取得することと、
前記信号の前記第1の部分および前記信号の前記第2の部分を分析して、前記磁性粒子の動きを検出することと
を行うように構成される、システム。
【請求項34】
前記信号が、電流、電圧、または抵抗を伝達する、請求項33に記載のシステム。
【請求項35】
前記信号がノイズを伝達する、請求項33に記載のシステム。
【請求項36】
前記ノイズが周波数ノイズまたは位相ノイズである、請求項35に記載のシステム。
【請求項37】
前記信号が、前記磁気センサの発振周波数を伝達する、請求項33に記載のシステム。
【請求項38】
前記磁気センサが磁気トンネル接合(MTJ)を備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項39】
前記磁気センサがスピントルク発振子(STO)を備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項40】
前記磁気センサがスピンバルブを備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項41】
前記検知領域の容積が約10nmから約5×10nmの間である、請求項33に記載のシステム。
【請求項42】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記信号の前記第1の部分の第1の自己相関関数を決定し、かつ
前記信号の前記第2の部分の第2の自己相関関数を決定する
ようにさらに構成され、
前記信号の前記第1の部分および前記信号の前記第2の部分を分析して前記磁性粒子の動きを検出することが、前記第1の自己相関関数を前記第2の自己相関関数と比較することを含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項43】
前記磁気センサおよび前記少なくとも1つのプロセッサに結合された検出回路をさらに備える、請求項33に記載のシステム。
【請求項44】
前記検出回路が、少なくとも1つのラインを備える、請求項43に記載のシステム。
【請求項45】
前記検出回路が、増幅器またはアナログ-デジタル変換器のうちの少なくとも一方を備える、請求項43に記載のシステム。
【請求項46】
前記結合部位が、前記バイオポリマーを前記結合部位に固定するように構成された構造を含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項47】
前記構造が、空洞または隆起部を備える、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記磁性粒子が第1の磁性粒子であり、前記バイオポリマーが第1のバイオポリマーであり、前記磁気センサが第1の磁気センサであり、前記検知領域が第1の検知領域であり、前記信号が第1の信号であり、前記流体チャンバが、一度に1つ以下のバイオポリマーを保持するための第2の結合部位をさらに含み、前記第2の結合部位が、第2のバイオポリマーの端部を前記流体チャンバの前記表面に結合させ、かつ前記第2のバイオポリマーに結合した第2の磁性粒子が動くことを可能にするように構成され、
前記流体チャンバ内に第2の検出領域を有する第2の磁気センサであって、前記第2の検出領域が、前記第2の結合部位を含むが他の結合部位を含まず、前記第2の磁気センサが、前記第2の検出領域内の磁気環境を特徴付ける第2の信号を生成し、前記第2の信号を前記少なくとも1つのプロセッサに提供するように構成される、第2の磁気センサをさらに備え、
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記第2の信号の第1の部分を取得することであって、前記第2の信号の前記第1の部分が、第3の検出期間中の前記第2の検知領域内の前記磁気環境を表す、前記第2の信号の第1の部分を取得することと、
前記第2の信号の第2の部分を取得することであって、前記第2の信号の前記第2の部分が、第4の検出期間中の前記第2の検知領域内の前記磁気環境を表す、前記第2の信号の第2の部分を取得することと、
前記第2の信号の前記第1の部分および前記第2の信号の前記第2の部分を分析して、前記第2の磁性粒子の動きを検出することと
を行うようにさらに構成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項49】
前記第1の検出期間および前記第3の検出期間が同一であり、前記第2の検出期間および前記第4の検出期間が同一である、請求項48に記載のシステム。
【請求項50】
前記磁気センサが、センサアレイ(110)内に配置された複数の磁気センサのうちの1つである、請求項33に記載のシステム。
【請求項51】
前記センサアレイを前記少なくとも1つのプロセッサに結合する少なくとも1つのラインをさらに備える、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記結合部位が、前記少なくとも1つのラインの第1のラインのトレンチ内に位置する、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記複数の磁気センサが、矩形グリッドパターンで配置される、請求項50に記載のシステム。
【請求項54】
前記少なくとも1つのプロセッサが、少なくとも2つのプロセッサを備え、前記少なくとも2つのプロセッサのうちの第1のプロセッサが、前記信号の前記第1の部分および前記第2の部分を取得するように構成され、前記少なくとも2つのプロセッサのうちの第2のプロセッサが、前記信号の前記第1の部分および前記第2の部分を分析して前記磁性粒子の前記動きを検出するように構成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項55】
前記第1のプロセッサが、前記磁気センサを備える装置内に配置され、前記第2のプロセッサが、前記装置の外部にある、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記少なくとも1つのプロセッサが、ローレンツ関数を決定するようにさらに構成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項57】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記磁気センサのノイズパワースペクトル密度を決定するようにさらに構成される、請求項33に記載のシステム。
【請求項58】
前記少なくとも1つのプロセッサが、
前記信号の前記第1の部分の第1のパワースペクトル密度(PSD)を決定し、かつ
前記信号の前記第2の部分の第2のPSDを決定する
ようにさらに構成され、
前記信号の前記第1の部分および前記信号の前記第2の部分を分析して前記磁性粒子の動きを検出することが、第1のローレンツ関数を前記第1のPSDにフィッティングさせることと、第2のローレンツ関数を前記第2のPSDにフィッティングさせることとを含む、請求項33に記載のシステム。
【請求項59】
前記信号の前記第1の部分および前記信号の前記第2の部分を分析して前記磁性粒子の動きを検出することが、前記第1のローレンツ関数の第1のコーナー周波数を前記第2のローレンツ関数の第2のコーナー周波数と比較することをさらに含む、請求項58に記載のシステム。
【請求項60】
前記少なくとも1つのプロセッサが、前記第1のローレンツ関数の第1のコーナー周波数と前記第2のローレンツ関数の第2のコーナー周波数との比較に基づいて、特定のバイオマーカーが前記バイオポリマーに結合していると決定するようにさらに構成される、請求項58に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景
生体分子間の相互作用を定量する能力は、診断、スクリーニング、疾患病期分類、法医学分析、妊娠検査、薬物開発および検査、ならびに科学的および医学的研究などの様々な用途にとって興味深い。生体分子相互作用の測定可能な特徴の例は、相互作用の親和性(例えば、分子がどれだけ強く結合/相互作用するか)および反応速度(例えば、分子の会合および解離が起こる速度)を含む。
【0002】
従来の酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)システムは、反応生成物を最終的に希釈する大量の容積を必要とするアナログシステムであり、従来のプレートリーダーを使用して検出可能な信号を生成するために数百万の酵素標識を必要とする。したがって、従来のELISA感度は、ピコモル(pg/mL)範囲以上に限定される。
【0003】
ELISAシステムとは対照的に、各分子を検出および計数することができるそれぞれの信号を提供するため、単一分子システムは本質的にデジタルである。単一分子システムは、信号の絶対量または振幅を検出するよりも、信号の有無を判定する方が容易であるという利点を有する。換言すれば、統合するよりも計数する方が容易である。
【0004】
近年、単一分子の検出への関心が高まっている。例えば、COVID-19のパンデミックは、化学療法、幹細胞移植、または手術後にウイルス感染を起こしやすい可能性があるため、癌患者を通常よりも高いリスクにさらしている。別の例として、COVID-19抗体またはヒトSARS-CoV-2抗体を検出するなどのための、超高感度ウイルスおよび病原体の検出が必要とされている。単一分子検出から利益を得ることができる用途の別の例は、簡単で高感度のタンパク質バイオマーカー検出を提供するための単一分子イムノアッセイである。
【0005】
いくつかの用途では、単一分子の検出が可能になっている。例えば、テザリング粒子運動(TPM)技術の使用は、センシング装置の表面に固定された受容体への単一生体分子の結合を検出することを可能にした。TPMでは、バイオポリマー(例えば、DNA、RNAなど)の一端が固体支持体上に固定化され、それによって「テザリングされたバイオポリマー」を作製し、小粒子(例えば、マイクロメートルサイズまたはナノメートルサイズ)が他端に結合される。溶液中では、制約されたブラウン運動(媒体中に懸濁した粒子のランダムな運動)により、テザリングされたバイオポリマーおよび結合した粒子が移動する。テザリングされたバイオポリマー(および結合した粒子)が占める容積は限られており、テザリングされたバイオポリマーのサイズおよび形状に依存する。バイオポリマーと直接相互作用する酵素は、任意の所与の時点でバイオポリマーの構造を変化させることができる。例えば、DNAおよびRNAの場合、結合した粒子が占める容積は、DNAの変形(例えば、DNAループ形成またはDNA伸長)に応じて変化する。粒子の位置の変化を時間の関数として観察および解釈することによって、例えば、溶液中のバイオポリマーと酵素との間の相互作用の動態および生化学的動態を記述することができる。
【0006】
テザリングされたバイオポリマーは、DNA断片などのヌクレオチド配列とすることができる。結合事象は、典型的には、受容体の分子動力学を変化させる。相補的ヌクレオチドが組み込まれる前に、DNA断片は、コイル状またはU字形(ループ状)の立体配座をとり(例えば、ヌクレオチド配列中の(部分的な)パリンドロームの存在に起因して)、次いで、相補的ヌクレオチドが組み込まれたときに、より線状または伸長した立体配座をとることができる。この立体配座の変化は、テザリングされたバイオポリマーが生息するブラウン運動の容積に影響を及ぼす。TPMでは、粒子(ラベルと呼ばれることもある)を受容体に結合させ、光学技術を使用して粒子の動きを観察することによって、容積の変化を検出することができる。
【0007】
TPMシステムにおけるデータ取得は、典型的には、高解像度高速ビデオ顕微鏡法を使用して、微小環境の局所的変化によって引き起こされる粒子平均速度および運動範囲のナノスケール変動を追跡および記録する。この単一分子分析技術は、例えば、DNA-タンパク質相互作用の動的インビトロ監視、およびタンパク質、DNA、およびRNAの生化学的に誘導された立体構造変化の検出のために実施されている。
【0008】
TPMは、確率的動きパターンの小さな変動を解決する能力に依存しているため、画像コントラストは、粒子の追跡およびその後の分析を可能にするのに十分であり、フレーム取得レートは、十分に高くなければならない。最先端のTPMシステムは、短い(例えば、約50nm)テザーに結合したナノスケール粒子を1~2nmの局在化精度で光学的に追跡することができる。高解像度は印象的であるが、小さな視野内で同時に追跡および分析することができる粒子の数は数百に限定される。したがって、そのようなシステムのスループットは制限される。10,000個のナノ粒子の監視を可能にするために視野を増加させると、局在化精度が約100nm超に低下する。この制限は、ナノスケールでのハイスループットリアルタイムモーショントラッキングの技術的複雑さと相まって、これまでのところ、TPMの使用を学術的な科学的興味の範囲内に限定しており、診断および創薬などの商業用途での広範な使用を妨げている。
【0009】
粒径は、TPM測定において重要な役割を果たす。大きな粒子は、小さな粒子よりも観察および追跡が容易であるが、それらの確率的運動は、粒子と受容体との間の大きなサイズの相違に起因して、単一分子プロセスによって僅かに影響を受けるだけである。さらに、大きなテザリングされた粒子が固体表面に近接していると(例えば、受容体が結合している)、バイオポリマーに伸張力が生じ、生物物理学的特性が変化し、分子がバイオマーカー結合反応に関与している場合、結合平衡に著しい変動を引き起こす可能性がある。したがって、インビボプロセスを正確に再現するためには、テザリングされた粒子をできるだけ小さくすることが望ましい。より小さい粒子の確率的運動パターンもまた、個々の生体分子の結合によって引き起こされる摂動に対してより感受性が高い。しかしながら、小さな粒子の問題は、光学系を使用して観察することがより困難であることである。二次元生体膜内に閉じ込められた強く散乱する10nmの金ナノ粒子が観察され、光学的に追跡されている。粒子がバイオポリマーで表面にテザリングされ、焦点面の内外に動くことができる場合、より大きなサイズ(典型的には直径40nmより大きい)が信頼性の高い追跡のために好ましい。しかしながら、これらの寸法は、粒子を多くの生物医学的に関連するプロセスに関与する分子のサイズよりもかなり大きくする。これらの長さスケールでの光散乱の量は直径の6乗に比例するため、分子寸法に一致するように粒径をさらに縮小すると、今日利用可能な最も高度な光学系でさえも追跡することができなくなる。
【0010】
したがって、生体分子間の相互作用を監視および/または定量するための改良された単一分子装置、システム、および方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
概要
この概要は、本開示の非限定的な実施形態を表す。
【0012】
本明細書では、磁気センサを使用して単一分子プロセスを監視するための装置、システム、および方法が開示される。いくつかの実施形態では、本明細書でMNPと呼ばれる磁性粒子(例えば、磁性ナノ粒子)を、テザーとも呼ばれるバイオポリマー(例えば、核酸、タンパク質など)に結合させて、MNPの動きを検出する。例えば、個々の分子の結合、抗体/抗原反応、および/またはタンパク質もしくは核酸の立体配座の変化を、磁気センサを使用することによってMNPの位置および/または動きを観察、追尾、または追跡することによって検出することができる。MNPは小さく(例えば、そのサイズは、監視されている分子のサイズに匹敵する)、バイオポリマーにテザリングされ、溶液中のMNPのブラウン運動の容積は、MNPが溶液の分子に衝突することに起因して変化し、それによってMNPの位置が変化し、MNPの運動、および推論により、テザリングされたバイオポリマーの観察および/または監視が可能になる。MNPの位置および/または動きの変化を、磁気センサから得られた信号の変化から推測することができる。例えば、磁気センサから得られた信号の自己相関関数またはパワースペクトル密度の分析は、MNPの存在、位置、および/または動きを明らかにすることができる。
【0013】
磁気センサ(例えば、ナノスケール、またはMNPおよび/もしくはバイオポリマーのサイズ程度のサイズを有する)が使用されて、磁気センサの検出領域内のMNPの位置の小さな変化さえも検出することができる。磁気センサのベースライン応答(例えば、信号)を、MNPの非存在下で決定することができ、次いで、MNPが磁気センサの検知領域内のバイオポリマーに結合された後、磁気センサによって提供される信号は、MNPのブラウン運動とベースラインセンサ応答との重ね合わせである。したがって、ランダムなプロセスにしたがって移動するMNPの効果は、ベースラインセンサ応答にノイズを加えることである。時間領域および周波数領域のいずれかまたは双方においてセンサ信号内のMNPからのノイズ寄与を検出および/または分析することによって(例えば、平均の周りの変動を検出すること、自己相関関数またはパワースペクトル密度を検査/処理/分析することなどによって)、MNPの存在、位置、および/または動きに関する結論を引き出すことができる。このようにして、MNPは、バイオポリマー活性のレポーター(例えば、立体構造変化)とすることができる。
【0014】
開示された装置、システム、および方法は、イメージングに依存しないため、MNPは、TPMシステムにおいて使用されるものよりも実質的に小さくすることができ、それによってより高い解像度を提供し、選択されたサイズの装置からのより高いスループットを可能にする。さらに、磁気センサおよびMNPが使用されて、ナノスコープの動きを高精度(例えば、数ナノメートル程度の動き)で確実に検出することができる。開示された装置、システム、および方法は、診断、スクリーニング、疾患病期分類、法医学分析、妊娠検査、薬物開発および検査、イムノアッセイ、核酸配列決定、ならびに科学的および医学的研究を含むがこれらに限定されない様々な単一分子用途に使用することができる。それらは、光学に依存する従来のTPMまたは従来のELISA手法よりも潜在的に高いスループットおよび高い感度および精度を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
本開示の目的、特徴、および利点は、添付の図面と併せて、特定の実施形態の以下の説明から容易に明らかになるであろう。
【0016】
図1A】いくつかの実施形態にかかる、バイオポリマーに結合したMNPの動きのナノスケール監視の概略図である。
図1B】いくつかの実施形態にかかる記録されたセンサ信号の例を示している。
図2A】いくつかの実施形態にかかる、MNP速度および可動域パターンに影響を及ぼす4つの可逆的生体分子単一分子プロセスの例を示している。
図2B】いくつかの実施形態にかかる、MNP速度および可動域パターンに影響を及ぼす4つの可逆的生体分子単一分子プロセスの例を示している。
図2C】いくつかの実施形態にかかる、MNP速度および可動域パターンに影響を及ぼす4つの可逆的生体分子単一分子プロセスの例を示している。
図2D】いくつかの実施形態にかかる、MNP速度および可動域パターンに影響を及ぼす4つの可逆的生体分子単一分子プロセスの例を示している。
図3】いくつかの実施形態にかかる磁気センサの一部を示している。
図4A】いくつかの実施形態にしたがって使用することができる磁気抵抗(MR)センサの抵抗を示している。
図4B】いくつかの実施形態にしたがって使用することができる磁気抵抗(MR)センサの抵抗を示している。
図5A】いくつかの実施形態にしたがって使用することができるスピントルク発振子(STO)センサを示している。
図5B】例示的な条件下でのSTOの実験応答を示している。
図5C】いくつかの実施形態にしたがって使用することができるSTOの短いナノ秒のフィールドパルスを示している。
図5D】いくつかの実施形態にしたがって使用することができるSTOの短いナノ秒のフィールドパルスを示している。
図6】垂直磁気記録(PMR)用途に使用する磁気センサを含む例示的な読み出しヘッドの一部の図である。
図7図7Aはいくつかの実施形態にかかる、その近傍にMNPを有しない磁気センサを示している。図7Bはいくつかの実施形態にかかる、その真上に位置するMNPを有する磁気センサを示している。図7Cはいくつかの実施形態にかかる、MNPを横方向にオフセットさせた磁気センサを示している。
図8】いくつかの実施形態にかかる、磁気センサに対して様々な位置にMNPが存在する場合の例示的な磁気センサのナノ磁気シミュレーションの結果を示している。
図9A】いくつかの実施形態にかかる、MNPがその検知領域内にある例示的な磁気センサの平面図走査電子顕微鏡(SEM)画像である。
図9B】いくつかの実施形態にかかる図9Aの例示的な磁気センサの挙動を示している。
図9C】いくつかの実施形態にかかる図9Aの例示的な磁気センサの挙動を示している。
図10A】いくつかの実施形態にかかる、MNPの動きを分析するための例示的なモデルを示している。
図10B】DNA鎖によって印加された調和電位において拡散する単一粒子の図表現である。
図11A】思考実験を示している。
図11B】思考実験を示している。
図12A】いくつかの実施形態にかかる例示的な磁気センサを示している。
図12B】例示的な磁気センサの予想ノイズパワースペクトル密度(PSD)と、MNPの限定されたブラウン運動のPSDを特徴付けるローレンツ関数とをプロットしている。
図13】本発明者らによって行われた実験の図示である。
図14】試験した3つの磁気センサの測定されたPSDを示している。
図15A】磁気センサバイアス電圧の影響を調査した試験結果を示している。
図15B】磁気センサバイアス電圧の影響を調査した試験結果を示している。
図15C】磁気センサバイアス電圧の影響を調査した試験結果を示している。
図15D】磁気センサバイアス電圧の影響を調査した試験結果を示している。
図15E】磁気センサバイアス電圧の影響を調査した試験結果を示している。
図16】磁気センサによる力成分を含む一次元モデルを示している。
図17図17Aはいくつかの実施形態にかかるシステムの3つの状態を示している。図17Bはいくつかの実施形態にかかるシステムの3つの状態を示している。図17Cはいくつかの実施形態にかかるシステムの3つの状態を示している。
図18A】いくつかの実施形態にかかる、2つの例示的な磁気センサおよび対応する自己相関関数の例示的な記録された電流変動を示している。
図18B】いくつかの実施形態にかかる、2つの例示的な磁気センサおよび対応する自己相関関数の例示的な記録された電流変動を示している。
図18C】いくつかの実施形態にかかる、2つの例示的な磁気センサおよび対応する自己相関関数の例示的な記録された電流変動を示している。
図19A】いくつかの実施形態にかかる例示的な監視システムの構成要素を示すブロック図である。
図19B】いくつかの実施形態にかかる例示的な監視システムの一部を示している。
図19C】いくつかの実施形態にかかる例示的な監視システムの一部を示している。
図19D】いくつかの実施形態にかかる例示的な監視システムの一部を示している。
図19E】いくつかの実施形態にかかるセンサアレイの磁気センサのパターンを示している。
図20】いくつかの実施形態にかかる、テザリングされたMNPの動きを検知する例示的な方法のフロー図である。
図21】いくつかの実施形態にかかる多重磁気デジタル均一非酵素的(HoNon)ELISAに関与するいくつかの成分を示している。
図22A】いくつかの実施形態にかかる多重化磁気デジタルHoNon ELISAのための例示的な手順の一部を示している。
図22B】いくつかの実施形態にかかる多重化磁気デジタルHoNon ELISAのための例示的な手順の一部を示している。
図23-1】いくつかの実施形態にかかる多重化磁気デジタルHoNon ELISAのための例示的な手順のさらなるステップを示している。
図23-2】いくつかの実施形態にかかる多重化磁気デジタルHoNon ELISAのための例示的な手順のさらなるステップを示している。
図24A】いくつかの実施形態にかかる、複数のバイオマーカーを含有する複合生物学的溶液の添加を示している。
図24B】いくつかの実施形態にかかる、複数のバイオマーカーを含有する複合生物学的溶液の添加後にセンサアレイがどのように見えるかの描写である。
図25】いくつかの実施形態にかかる、特定の磁気センサの検出されたノイズPSDからバイオマーカーの結合をどのように検出することができるかを示している。
図26】いくつかの実施形態にかかる、磁気センサアレイを使用する方法を示すフロー図である。
【0017】
理解を容易にするために、可能であれば、図に共通する同一の要素を示すために同一の参照符号が使用されている。一実施形態で開示された要素を、特定の記載なしに他の実施形態で有益に利用することができることが企図される。さらに、1つの図面の文脈における要素の説明は、その要素を示す他の図面にも適用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
詳細な説明
生物学的系に埋め込まれた自由拡散またはテザリングさられた粒子の確率的運動は、かなり豊富な情報を明らかにする。粒子運動の統計分析は、それらのインビトロ結果を通して重要なインビボプロセスの理解を容易にすることができる。10nm程度の小さな強い散乱粒子を自由に拡散させる追跡は、生体膜を研究するための強力なツールであるが、テザリングされた粒子の追跡は、はるかに広範囲の単一分子挙動を明らかにする。TPM実験は、一端が固体表面に固定され、他端が粒子に結合されたバイオポリマー(例えば、DNA、RNA、タンパク質)を使用して、様々な生物物理学的および生化学的プロセスを監視するが、従来のTPMシステムのスループットおよび精度は、粒子を追跡するための光学技術に依存するために制限される。
【0019】
本明細書では、イメージングを含まないテザリングされたナノ粒子の動きパターンの生化学的に誘発される変化を動的に検知するための装置、システム、および方法が開示される。代わりに、本明細書に開示される実施形態は、磁気センサを使用し、それらの磁気センサの応答を監視して、テザリングされた磁性粒子が磁気センサのそれぞれの検出領域内でまたは検出領域内外を確率的に移動するときに、磁性粒子の限定された拡散を検出する。磁気センサは、例えば、ナノスケール磁場センサ(MFS)であってもよい。磁気センサの検出された応答または特性は、例えば、時間または周波数領域における検出されたトンネル電流、電圧、または抵抗、または検出可能な磁気センサの任意の他の特性であってもよい。磁気センサの検出領域は、例えば、約10nmから5×10nmの容積を有することができる。
【0020】
磁性粒子は、例えば、分子、超常磁性ナノ粒子、または強磁性粒子などの磁性ナノ粒子(MNP)とすることができるか、またはそれを含むことができる。当業者によって理解されるように、磁性ナノ粒子は、一般に、直径1から100ナノメートル(nm)の間の物質の粒子であると考えられる。磁性粒子は、高い磁気異方性を有するナノ粒子であってもよい。高い磁気異方性を有する磁性粒子の例は、Fe、FePt、FePdおよびCoPtを含むが、これらに限定されない。ヌクレオチドを含むいくつかの用途では、磁性粒子が合成され、例えばSiOによってコーティングすることができる。例えば、M.Aslam,L.Fu,S.Li,およびV.P.Dravid,「Silica encapsulation and magnetic properties of FePt nanoparticles」,Journal of Colloid and Interface Science,Volume 290,Issue 2,2005年10月15日,pp.444-449を参照されたい。
【0021】
磁性粒子は、例えば、有機金属化合物とすることができるか、または有機金属化合物を含むことができる。理解されるように、有機金属化合物は、炭素が有機基の一部である少なくとも1つの金属-炭素結合を含有する物質のクラスの任意のメンバーである。有機金属化合物の例は、ギルマン試薬(リチウム、銅を含む)、グリナール試薬(マグネシウムを含む)、テトラカルボニルニッケル、フェロセン(遷移金属を含む)、有機リチウム化合物(例えば、n-ブチルリチウム(n-BuLi))、有機亜鉛化合物(例えば、ジエチル亜鉛(EtZn))、有機スズ化合物(例えば、トリブチルスズヒドリド(BuSnH))、有機ボラン化合物(例えば、トリエチルボラン(EtB))、有機アルミニウム化合物(例えば、トリメチルアルミニウム(MeAl))などを含む。
【0022】
磁性粒子は、例えば、荷電分子、またはナノスケール磁気センサによって検出することができる任意の他の官能性分子基とすることができるか、またはそれを含むことができる。別の言い方をすれば、磁気センサが候補磁性粒子の存在を検出することができ、候補磁性粒子を目的のバイオポリマーに結合させることができる場合、その候補磁性粒子は、本明細書に記載の装置、システム、および方法における使用に適している。
【0023】
多くの用途で使用される磁性粒子は、観察されるバイオポリマーに匹敵するサイズであるようにナノ粒子である可能性が高いと予想されるが、本明細書に記載のシステム、装置、および方法は、一般に磁性粒子に適用される。したがって、本明細書では便宜上「MNP」という略語が使用され、「MNP」は、一般に磁性粒子を指すことができることを理解されたい。したがって、文脈によって別途示されない限り、MNPに言及するまたはMNPを例示する本明細書の開示は、必ずしもナノ粒子のみに限定されない。同様に、MNPは、超常磁性とすることができると予想されるが、本開示は、超常磁性MNPとの使用に限定されない。
【0024】
図1Aおよび図1Bは、いくつかの実施形態にかかる、磁気センサを使用したMNPの動きのナノスケール監視の原理を示している。図1Aに示すように、MNP102は、バイオポリマー101(例えば、ssDNA、dsDNA、RNA、タンパク質など)によって監視装置の固体表面117にテザリングされる。バイオポリマー101は、「テザー」と呼ばれることもある。周囲の流体の分子との相互作用のために、MNP102は、磁気センサ105からのある平均距離<r>付近の容積である制約された動き領域203内で、図1Aの矢印103によって表される確率的(ランダム)運動を受ける。MNP102は、磁気センサ105の検出領域206内で、または内外を移動する。いくつかのバイオセンシング用途では、検知領域206は、例えば、約10nmから約5×10nmの容積を有することができる。当然ながら、検知領域206の容積を、特定の用途に適するように選択することができ、これらの値よりも大きくても小さくてもよい。磁気センサ105の設計(例えば、その感度)、磁気センサ105に印加されるバイアス電圧、MNP102の特性(例えば、そのサイズ)、バイオポリマー101の特性(例えば、その長さ)、およびバイオポリマー101が磁気センサ105に対して表面117にテザリングされている位置に応じて、制約された動き領域203および検知領域206は、実質的に重なり合ってもよく、または図1Aの例に示すようにオフセットされてもよい。同様に、制約された動き領域203および検知領域206の容積は、同じであっても異なっていてもよい。図1Aに示す例では、制約された動き領域203は、検知領域206よりも大きく、それから横方向ρにオフセットされている。
【0025】
図1Bは、いくつかの実施形態にかかる記録されたセンサ信号207の例を示している。この例では、センサ信号207は、磁気センサ105のいくつかの検出可能な特性の統計的に定常な変動として記録され、これは、以下にさらに説明されるように、例えば、測定された電流、電圧、抵抗、発振周波数、位相ノイズ、周波数ノイズ、または磁気センサ105の磁気環境(例えば、MNP102の存在、不在、および/または動きに起因する、検知領域206内)の検出された変化を示す磁気センサ105の任意の他の特性であってもよい。磁気センサ105を使用する利点の1つは、MNP102が、光学追跡に依存するTPMシステムにおいて使用する粒子よりもかなり小さくなり得ることである。いくつかの実施形態では、例えば、MNP102は、生体分子寸法(例えば、そのサイズは、約5nmまたは5nm未満とすることができる)を有する。
【0026】
MNP102の検出を可能にするために、センサ信号207によって表される磁気センサ105の応答は、個々の単一分子(例えば、周囲の溶液)との相互作用によって影響を受けるMNP102の移動度に起因して変化するべきである。したがって、MNP102は、その移動度が他の分子によって影響されるのに十分に小さいことが望ましい。センサ信号207(例えば、MNP102の動きに起因するセンサ信号207のノイズ成分)は、例えば、図18A図18B、および図18Cの説明で後述するように、同等のサイズの生体分子がMNP102に結合した分子に結合するとき、または結合した分子(バイオポリマー101)がその立体配座を変化させるときに変化するべきである。どちらの場合も、テザリングされたMNP102の有効流体力学的半径は変化し、その統計的な速度および動きの範囲も変化する。したがって、センサ信号207の振幅およびノイズの双方は、テザリングされたMNP102が特定の標的結合によって磁気センサ105表面上またはその近くに固定化されたとき、およびテザー/バイオポリマー101の配座状態(例えば、dsDNA、ssDNA、RNA、タンパク質)が変化したときの双方で変化するべきである。
【0027】
本明細書に開示されるシステム、装置、および方法は、例えば、ループ形成(接続および切断)、タンパク質の折り畳みおよび展開、抗体/抗原相互作用およびそれらの強度などの立体構造動態などの生体分子プロセスの様々な変化を検出および/または監視するために使用することができる。図2A図2B図2C、および図2Dは、いくつかの実施形態にかかる、MNP102の速度および移動範囲パターンに影響を及ぼす4つの可逆的生体分子単一分子プロセスの例を示している。図2A図2B図2C、および図2Dのそれぞれは、バイオポリマー101とともに磁気センサ105を示し、バイオポリマーの一端は、磁気センサ105の近傍の監視装置の表面117に結合され(例えば、以下に論じられる結合部位116において)、バイオポリマーの他端は、MNP102に結合されている。図2Aおよび図2Cは、例示的な抗体-抗原反応を示し、図2Bおよび図2Dは、例示的な立体配座変化を示している。図2Aは、例えばタンパク質、DNA、またはRNAなどの大きな生体分子をMNP102に結合すると、MNP102の質量ならびにその有効流体力学的半径が増加し、検出可能な限られた拡散に変化を引き起こすことを示している。(以下にさらに詳細に説明するように、MNP102に匹敵するサイズの分子の結合は、MNP102の限定されたブラウン運動のノイズPSDを特徴付けるローレンツ関数のコーナー周波数の変化を検出することによって検出することができる。)図2Bは、例えばタンパク質または核酸の折り畳みおよび展開などの著しい立体配座変化もまた、MNP102の有効流体力学半径を変化させることを示し、これもまた検出することができる。図2Cは、図2Aと同様に、MNP102が、監視装置の表面117上に固定化された分子(図2Cの例において抗原として示されている)に結合することができることを示している。相互作用の強度は、いくつかの実施形態にしたがって研究することができる。図2Dは、例えばDNAまたはRNAヘアピン形成などのテザー(バイオポリマー101)の立体構造変化もMNP102の運動を制限することを示している。例えば、温度の関数として核酸がどのように挙動するか(例えば、ラップアンドアンラップ)が重要であり得る。本明細書に開示される装置、システム、および方法は、図2A図2B図2C、および図2Dに示されるものを含むがこれらに限定されない変化を検出および/または監視するために使用することができる。
【0028】
磁気センサ
本明細書に開示される実施形態は、バイオポリマー101に結合された1つ以上のMNP102(例えば、磁性ナノ粒子、有機金属錯体、荷電分子など)の存在を検出するために、少なくとも1つの磁気センサ105(例えば、磁気抵抗ナノスケールセンサまたは任意の他のタイプの磁気センサ)を使用する。図3は、いくつかの実施形態にかかる例示的な磁気センサ105の一部を示している。図3の例示的な磁気センサ105は、下面108および上面109を有し、第1の強磁性層106A、第2の強磁性層106B、および第1の強磁性層106Aと第2の強磁性層106Bとの間の非磁性スペーサ層107の3つの層を含む。第1の強磁性層106Aおよび第2の強磁性層106Bに使用するための好適な材料は、例えば、Co、NiおよびFeの合金(他の元素と混合されることもある)を含む。いくつかの実施形態では、磁気センサ105は、薄膜技術を使用して実装され、第1の強磁性層106Aおよび第2の強磁性層106Bは、それらの磁気モーメントが膜の平面内または膜の平面に対して垂直に配向されるように操作される。非磁性スペーサ層107は、例えば、銅または銀などの金属材料であってもよく、その場合、構造はスピンバルブ(SV)と呼ばれ、または例えば、アルミナまたは酸化マグネシウムなどの絶縁体であってもよく、その場合、構造は磁気トンネル接合(MTJ)と呼ばれる。
【0029】
界面平滑化、テクスチャ加工、および/または磁気センサ105が組み込まれる装置をパターニングするために使用される処理からの保護などの目的を果たすために、図3に示す第1の強磁性層106A、第2の強磁性層106B、および非磁性スペーサ層107の下および上の双方に追加の材料を堆積することができる。さらに、以下にさらに説明するように、磁気センサ105は、単一分子分析に使用される流体から保護するために、材料によって包まれるかまたは覆われてもよい。それにもかかわらず、磁気センサ105の活性領域は、図3に示す三層構造にある。したがって、磁気センサ105と接触する構成要素(例えば、読み出し回路)は、第1の強磁性層106A、第2の強磁性層106B、または非磁性スペーサ層107のいずれかと接触していてもよく、または磁気センサ105の他の部分と接触していてもよい。
【0030】
図4Aおよび図4Bに示すように、磁気抵抗センサ(例えば、磁気センサ105の1つの可能なタイプ)の抵抗は、1-cos(θ)に比例し、ここで、θは、図3に示す第1の強磁性層106Aと第2の強磁性層106Bのモーメント間の角度である。磁場によって生成された信号を最大化し、印加磁場に対する磁気センサ105の線形応答を提供するために、磁気センサ105は、第1の強磁性層106Aおよび第2の強磁性層106Bのモーメントが磁場の不在下で互いに対してπ/2ラジアンまたは90度に配向されるように設計されてもよい。この配向は、当該技術分野において公知の任意の数の方法によって達成することができる。例えば、1つの解決策は、反強磁性体を使用して交換バイアスと呼ばれる効果によって強磁性層の一方(「FM1」と呼ばれる第1の強磁性層106Aまたは第2の強磁性層106Bのいずれか)の磁化方向を「ピン止め」し、次いで磁気センサ105を絶縁層および永久磁石を有する二重層によってコーティングすることである。絶縁層は、磁気センサ105の電気的短絡を回避し、永久磁石は、FM1のピン止め方向に垂直な「ハードバイアス」磁場を供給し、その後、第2の強磁性体(「FM2」と呼ばれる第2の強磁性層106Bまたは第1の強磁性層106Aのいずれか)を回転させ、所望の構成を生成する。次いで、FM1に平行な磁場は、FM2をこの90度の構成の周りで回転させ、磁気センサ105の抵抗の変化は、磁気センサ105に作用する磁場を測定するために較正することができる電圧(または電流)信号(例えば、センサ信号207)をもたらす。このように、磁気センサ105は、磁場電圧変換器として機能する。
【0031】
バイオセンシング用途では、磁気センサ105は、FM1とFM2とが弱く結合し、MNP102の存在によって引き起こされるFM2の位置への摂動をセンサ信号207において検出することができるように設計されるべきである。FM1とFM2との間の結合が強すぎる場合、MNP102の存在は、検出されるべきセンサ信号207に十分な摂動を生じさせない。一方、FM1とFM2との間の結合が弱すぎる場合、磁気センサ105は、熱的に不安定であり、熱揺らぎが支配的になり、信号対雑音比(SNR)を低下させる可能性がある。以下にさらに説明するように、磁気記録に使用するように設計された特定の磁気センサ105は、特定のバイオセンシング用途に使用されることを可能にする特性を有する。
【0032】
直上で論じた例は、それらのモーメントが互いに対して90度で膜の平面内に配向されている強磁性体の使用を説明しているが、代替的に、強磁性層の一方(第1の強磁性層106Aまたは第2の強磁性層106B)のモーメントを膜の平面外に配向することによって垂直構成を達成することができ、これは垂直磁気異方性(PMA)と呼ばれるものを使用して達成することができることに留意されたい。
【0033】
いくつかの実施形態では、磁気センサ105は、スピントランスファートルクとして知られる量子力学的効果を使用する。このような磁気センサ105では、SVまたはMTJにおいて第1の強磁性層106A(あるいは、第2の強磁性層106B)を通過する電流は、層のモーメントに平行なスピンを有する電子を優先的に透過させることを可能にするが、スピン反平行を有する電子は反射されやすい。このようにして、電流は、一方のスピンタイプの電子が他方よりも多くなるようにスピン分極される。次いで、このスピン偏極電流は、第2の強磁性層106B(または第1の強磁性層106A)と相互作用し、その層のモーメントにトルクを及ぼす。このトルクは、異なる状況では、第2の強磁性層106B(または第1の強磁性層106A)のモーメントを強磁性体に作用する有効磁場の周りで歳差運動させることができるか、またはモーメントを系内で誘導される一軸異方性によって定義される2つの向きの間で可逆的に切り替えることができる。得られたスピントルク発振子(STO)は、それらに作用する磁場を変化させることによって周波数調整可能である。したがって、磁気記録にSTOセンサを使用する概念を示す図5Aに示すように、磁場対周波数(または位相)変換器として作用する(それによって周波数を有するAC信号を生成する)能力を有する。図5Bは、1GHzの周波数および5mTのピークツーピーク振幅を有するAC磁場がSTOにわたって印加されたときの遅延検出回路を通るSTOの実験応答を示している。この結果ならびに短いナノ秒の磁場パルスについて図5Cおよび図5Dに示されている結果は、これらの発振器がナノスケールの磁場検出器としてどのように使用することができるかを示している。さらなる詳細は、T.Nagasawa,H.Suto,K.Kudo,T.Yang,K.Mizushima,およびR.Sato,「Delay detection of frequency modulation signal from a spin-torque oscillator under a nanosecond-pulsed magnetic field」,Journal of Applied Physics,Vol.111,07C908(2012)に見出すことができ、これはあらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0034】
いくつかの実施形態では、磁気センサ105は、バイオポリマー101に結合されたMNP102によって引き起こされる磁場を検知するためのSTOを備える。磁気センサ105は、磁気センサ105の磁性層の磁化の歳差発振周波数の変化または有無を検出して、MNP102の磁界を検知するように構成される。磁気センサ105は、図3の説明において上述したように、磁気自由層(例えば、第1の強磁性層106Aまたは第2の強磁性層106B)、磁気ピン止め層(例えば、第2の強磁性層106Bまたは第1の強磁性層106A)、および自由層とピン止め層との間の非磁性層(例えば、非磁性スペーサ層107)を含むことができる。いくつかの実施形態では、動作中、磁気センサ105に結合された検出回路は、磁気センサ105の層を通して電気(DC)電流を誘導する。磁気センサ105を通って移動する電子のスピン偏極は、層のうちの1つ以上の磁化のスピントルク誘起歳差運動を引き起こす。この発振の周波数は、磁気センサ105の近傍のMNP102が発生する磁界に応じて変化する。いくつかの実施形態では、センサの発振の周波数の変化または発振周波数のノイズ(位相ノイズまたは周波数ノイズと呼ばれる)が使用されて、磁場、したがってMNP102の存在、不在、または変化を検出することができる。
【0035】
いくつかの実施形態では、磁気センサ105は、MTJを含み、磁気センサ105の抵抗、電流、または電圧の変化が使用されて、磁気センサ105の検出領域206内のMNP102の存在、不在、または移動を検出する。例えば、ハードディスクドライブにおいて使用されるものと同様のMTJは、本明細書に記載の装置、システム、および方法における使用に適した磁気センサ105の例である。そのような磁気センサ105は、以下にさらに説明するように、例えば20nmの超常磁性酸化鉄ナノ粒子などの任意の適切なMNP102の運動パターンのナノスケール変化を監視するために使用することができる。例えばFeおよびFePtなどの他のMNP102も使用することができるが、他の粒子(例えば、FeおよびFePt)は、テザリングのために官能化するのがより困難であり、検出領域206内のMNP102の存在を確認するために走査型電子顕微鏡を使用してイメージングするのが困難または不可能であり得るため、以下の実験結果は、酸化鉄ナノ粒子に関するものであることを理解されたい。同様に、20nmよりも大きいかまたは小さいMNP102を使用することができる。
【0036】
本明細書に記載の装置、システム、および方法において使用される磁気センサ105に適用可能な特定の概念を説明するために、図6は、磁気記録媒体に以前に記録されたデータを読み取ることができる磁気センサの動作を示している。具体的には、図6は、垂直磁気記録(PMR)用途に使用される磁気センサを含む例示的な読み出しヘッド240の一部の図である。記録媒体250の表面は、記録媒体250に記憶された情報を読み取る例示的な読み出しヘッド240の空気支持面(ABS)と同様に、x-z平面内にある。記録媒体250は、図6において読み取られているトラックであるトラック251を含む、情報を記録することができる複数の同心トラックを有することができる。例示的な読み出しヘッド240は、ウェハ面内に複数の層を含み、これは、図6に示す座標を使用するとx-y平面である。複数の層は、自由層260、参照層262、およびピン止め層264を含む。自由層260、参照層262、および、ピン止め層264は、それぞれ、上述した第1の強磁性層106A、非磁性スペーサ層107、および、第2の強磁性層106B(または、等価的に、第2の強磁性層106B、非磁性スペーサ層107、および第1の強磁性層106A)に対応することができる。参照層262の磁気モーメント263は、図6の正のy方向にあるものとして示されている特定の方向にある。ピン止め層264の磁気モーメント265は、上述したように、反強磁性体266によってピン止め(特定の方向に固定)されてもよい。図6において、ピン止め層264の磁気モーメント265は、負-y方向にピン止めされている。自由層260の磁気モーメント261は、印加または誘導された磁場に応答して自由に回転する。ハードバイアス領域268Aおよび268Bは、ピン止め層264の磁気モーメント265の方向に垂直な磁場を供給するために、自由層260、参照層262、および/またはピン止め層264から横方向に(サイドトラック方向と呼ばれる方向に)位置することができる。図6において、ハードバイアス領域268A、268Bのモーメント269A、269Bは、正のx方向においてページの右に向けられている。層に結合された回路270は、記録媒体250に記憶された情報を読み取るためにバイアス電圧(または、等価的に、バイアス電流)を提供する。
【0037】
図6に示すように、自由層260の磁気モーメント261は、図6では、x軸に沿って、参照層262の磁気モーメント263に垂直且つピン止め層264の磁気モーメント265に垂直なページの右にある何らかのデフォルトまたは平衡方向に配向される。図6に示すように、記録媒体250上の「ビット」が、例示的な読み出しヘッド240に向かって上向きの磁場を引き起こすと、自由層260の磁気モーメント261は、上方に回転し、回路270によって例示的な読み出しヘッド240に印加されたバイアスによって生成された磁場に成分を建設的に加える。その結果、例示的な読み出しヘッド240の抵抗が減少する。逆に、記録媒体250上の「ビット」が、例示的な読み出しヘッド240から離れて下方を向く磁場を引き起こすと、自由層260の磁気モーメント261は、反対方向に下方に回転し、それによって回路270によって印加されるバイアスによって生成される磁場に破壊的成分を加える。その結果、例示的な読み出しヘッド240の抵抗が増大する。したがって、抵抗の変化は、記録媒体250上の2つの可能な「ビット」(0または1(またはその逆)として解釈することができる上または下)のうちのどれが検出されたかを示す。
【0038】
図7A図7B、および図7Cは、本明細書に開示されるいくつかの実施形態にかかる、これらの同じ原理を単一分子検出装置、システム、および方法にどのように適用することができるかを示している。図7Aは、MNP102が近傍にない磁気センサ105の部分を示している。正のz方向(例えば、バイアス電圧によって引き起こされる)に配向された印加磁場Hの存在下では、自由層260の磁気モーメント261は、x軸からある角度
【数1】
で、図7Aの上部パネルに示す方向に配向される。印加磁場Hが負のz方向に配向される場合、自由層260の磁気モーメント261は、図7Aの下側パネルに示す方向に、x軸からある角度
【数2】
で配向される。したがって、図示の条件下で磁気センサ105によって検知されるピークツーピーク電流(例えば、印加磁場の方向が反転したときのこれらの条件下での振幅の差)は、
【数3】
によって与えられる。したがって、
【数4】
は、MNP102が存在しない場合の磁気センサ105のベースラインピークの正および負の電流振幅を提供する。
【0039】
図7Bは、磁気センサ105の自由層260の真上(z方向)に位置するMNP102を有する磁気センサ105を示している。上のパネルに示すように、正のz方向の印加磁場Hは、MNP102の磁気モーメントを印加磁場Hと実質的に同じ方向に向ける。結果として、自由層260の位置では、MNP102によって引き起こされる磁場が印加磁場Hに建設的に加わり、自由層260の磁気モーメント261が、ここではx軸からある角度
【数5】
で、印加磁場Hの方向により近く回転する。印加磁場Hが負のz方向に配向される場合、MNP102によって引き起こされる磁場が印加磁場Hに建設的に加わるため、自由層260の磁気モーメント261は、x軸からある角度
【数6】
図7Bの下のパネルに示される方向に回転する。これらの条件下で磁気センサ105によって検知される電流のピークツーピーク振幅は、
【数7】
によって与えられる(式中、「MP」は、「磁性粒子」を表す)。自由層260の磁気モーメント261は、図7Aに示す場合よりも印加磁場Hとより密接に位置合わせされているため、磁気センサ105の抵抗は、図7Aの値、および
【数8】
に対して減少する。
【0040】
図7Cは、磁気センサ105の自由層260(具体的には、x方向のオフセット)から横方向にオフセットされたMNP102を有する磁気センサ105を示している。図7Cの上のパネルに示すように、正のz方向の印加磁場Hは、MNP102の磁気モーメントを印加磁場Hと実質的に同じ方向に向ける。しかしながら、ここで、MNP102は、自由層260から横方向にオフセットされているため、MNP102によって引き起こされる磁場は、自由層260の位置において印加磁場Hとは反対の方向にある。したがって、MNP102によって引き起こされる磁場は、自由層260に対する印加磁場Hの影響を低減し、自由層260の磁気モーメント261は、図7Bのその方向から回転する。ここで、自由層260の磁気モーメント261は、x軸からある角度
【数9】
にある。同様に、印加磁場Hが負のz方向に配向されると、自由層260の磁気モーメント261は、MNP102の磁場が自由層260の位置において印加磁場Hを損なうため、図7Bの下のパネルに示すように、x軸からある角度
【数10】
で回転する。この場合、磁気センサ105によって検知されるピークツーピーク電流振幅は、
【数11】
に減少し、ここで、
【数12】
である。
【0041】
したがって、磁気センサ105を通る電流(または抵抗または電圧などの電流の任意の代理、または、異なるタイプの磁気センサ105の場合、磁気センサ105によって検知された磁気環境を表す何らかの他の特性)を監視することによって、以下にさらに説明するように、自由層260(したがって、磁気センサ105)に対するMNP102の存在および位置を検出および監視することができる。図8は、いくつかの実施形態にかかる、磁気センサ105に対する様々な位置におけるMNP102の存在下での例示的な磁気センサ105のナノ磁気シミュレーションの結果を示している。輪郭プロット402は、MNP102がx-y平面の上方10nm(z値10nm)にあるときに、図7A図7B、および図7Cのx-y平面内のMNP102の様々な横方向位置に対して磁気センサ105に作用する磁場を示している。断面406によって示されるように、磁気センサ105は、位置404として示されるx-y平面内の座標(0,0)に中心が置かれる。断面406は、y=0の位置(輪郭プロット402の破線416で示す)および磁気センサ105の表面から10nmから60nmの範囲のz軸に沿った様々な位置における、x軸に沿ったMNP102の横方向位置の関数としての磁場の大きさを示す。プロット408は、断面406における破線420に沿った磁場の大きさを示す。図示されるように、MNP102が磁気センサ105の真上10nmにあるとき、磁場振幅は、約100エルステッドであり、MNP102が磁気センサ105の真上60nmにあるとき、磁場振幅は0付近である。
【0042】
断面412は、x=0の位置(輪郭プロット402の破線418によって示される)および磁気センサ105の表面から10nmから60nmの範囲のz軸に沿った様々な位置におけるy軸に沿ったMNP102の横方向位置の関数としての磁場の大きさを示す。プロット414は、y軸に沿って39nmの横方向オフセットにある輪郭プロット402に示されている位置410における、断面412の破線422に沿った磁場の大きさを示す。図示されるように、MNP102が磁気センサ105の表面から10nm上方にあり、39nmだけ横方向にオフセットされているとき、磁場振幅は約-4エルステッドであり、MNP102が磁気センサ105から60nm上方にあり、39nmだけ横方向にオフセットされているとき、磁場振幅は0付近である。したがって、図8は、MNP102が三次元空間内の位置を変化させるにつれて、磁場の大きさが実質的に変化することを示している。位置の僅かな変化でさえも、検出される磁場の著しい変化を引き起こす。その振幅および方向の双方の変化、ならびにこれらの変化は、磁気センサ105の自由層260によって検出することができる。したがって、MNP102の位置は、イメージングシステムを使用して直接観察するのではなく、磁気センサ105からの信号を解釈することによって推測することができる。
【0043】
図9Aは、MNP102が検知領域206内に結合された状態で、x-y平面における表面積が約30×40nmのMTJである例示的な磁気センサ105の平面図走査電子顕微鏡(SEM)画像である(破線は、x-y平面における検知領域206の推定境界または近似境界を示す)。図示の例示的な実施形態では、接合領域は(紙面外の)x-z平面に平行であり、トンネル電流は、y軸方向に流れる。図9Aは、検知領域206内の単一の20nmのMNP102を示している。磁気記録用途のために最初に開発された例示的な磁気センサ105の有効検知領域206は、記録媒体内の小さな磁区の磁化配向を検出し、かつ磁気記録の密度を最大化するために、非常に小さく(例えば、約10nmから約5×10nm)なるように設計されている。したがって、それは、本明細書に記載されるようなMNP102の確率的運動の検出によく適している。検知領域206の容積は任意の適切な値とすることができ、上記の範囲は、単なる例であることを理解されたい。
【0044】
図9Bおよび図9Cは、磁気センサ105の表面に垂直に印加される外部磁場Hを示す磁気センサ105の断面図を示している。図9Bでは、MNP102(円として示されているが、図面が不明瞭になるのを避けるためにラベルが付されていない)は、磁気センサ105(同じくラベルが付されていないが、対角線で塗りつぶされて示されている)の上方に固定され、磁気センサ105の近傍で、磁場線は、センサ領域内で太い矢印として示されている外部磁場と位置合わせされる。上述したように、MNP102が存在する場合、磁場は建設的に加わるため、磁気センサ105によって測定される有効磁場は増加する。
【0045】
図9Cでは、MNP102(これもまたラベル化されていないが、斜めの塗りつぶしで示されている)は、磁気センサ105から横方向に離れて配置され、自由層260に影響を及ぼす磁場線は、外部磁場とは反対の方向を向く。この場合、上述したように、磁気センサ105によって測定される有効磁場は減少する。したがって、MNP102の存在に起因するセンサ信号207への摂動は、MNP102が磁気センサ105から横方向に離れるにつれて、正から負に急速に変化する。図9Bおよび図9Cに示すように、磁場摂動は、磁気センサ105に対するMNP102の位置に極めて敏感である。MNP102の磁場線は、図9Bに示すようにMNP102が磁気センサ105の上方にあるときには外部磁場と位置合わせするが、図9Cに示すようにMNP102が横方向に変位するときには反対方向を指す。
【0046】
センサ信号207に対するMNP102の動きの影響は、図9Bおよび図9Cの曲線209によって概略的に示されている。磁気センサ105の近傍にテザリングされたMNP102は、MNP102の磁気モーメントを特定の方向に固定するために外部磁場が印加されている間にMNP102が動き回るときに、センサ信号207に動的確率的摂動を誘発する。磁気センサ105の応答は、MNP102の面内(x-y平面内)および面外(z軸に沿った)運動の双方の影響を受ける。外部磁場が印加されていない場合であっても、磁気モーメントが十分に高いMNP102の存在を磁気センサ105によって検出することができる。換言すれば、開示された実施形態は、例えば、超常磁性および強磁性MNPとともに使用することができる。
【0047】
従来のTPMシステムにおいて使用される映像イメージングシステムでは、時間平均(露光時間)および観測の頻度(フレームレート)の結果がよく理解されている。露光時間およびフレームレートは、自由に拡散するブラウン粒子の追跡を制限しないが、生物系におけるテザリングされたナノ粒子などの異常な(または限定された)拡散を受ける粒子の観察に深刻な影響を及ぼす。そのような粒子のイメージングにおける時間平均は、観測された速度が観測の持続時間に依存するため、報告された運動の見かけの特性に重大な結果をもたらす可能性がある。露光時間が長すぎる極端な場合、粒子は、ぼやけ、何らかの平衡位置において静止しているように見える。これらの欠点は、本明細書に記載の磁気センサ105を使用するシステム、装置、および方法によって軽減または克服することができる。
【0048】
磁気センサ105がセンサ信号207の変化を検出する能力は、検出回路(例えば、以下に説明するように、検出増幅回路、他の検出電子回路)の応答性に依存する。例えば、磁気センサ105の応答が遅すぎる(例えば、例えば、サンプリングレートなどの検出回路の制限に起因して)場合、監視装置またはシステムは、図2Cおよび図2Dに示すプロセス中にMNP102が異なる平衡位置に移動したときを検出することができることがあるが、平衡位置に影響を与えずにMNP102の統計的速度を変化させるプロセス、例えば、図2Aおよび図2Bに示す分子結合および立体配座の変化を検出することができないことがある。
【0049】
空間および時間の双方で粒子の位置を追跡するために一連の粒子画像を生成する映像イメージングシステムとは異なり、磁気センサ105は、MNP102に衝突する溶液の分子によって引き起こされるランダムな一連の同様の(ただし同一ではない)衝撃またはパルスに対する時間応答を生成する。自由拡散MNP102は、MNP102の動きを検出することができる磁気センサ105の応答時間およびサンプリングレートを推定するために考慮することができる。自由拡散MNP102は、長い可撓性ポリマー(例えば、バイオポリマー101)によって磁気センサ105の表面にテザリングされたMNP102の場合の良好な第1の近似である。ポリマーの長さは、検知領域206の寸法よりもかなり長いと仮定される。この制約は、MNP102が磁気センサ105からあまりにも遠くに拡散する(例えば、長期間にわたって検知領域206の外にある)のを防止することによって検出の確率を高めるが、そうでなければその動きを制約せず、それは依然として単純なブラウン運動とみなすことができる。
【0050】
流体の分子との衝突による流体中の粒子のランダムな動きは、ランジュバン方程式を解くことによって数学的に記述することができる。これは、粘性または摩擦を説明する速度減衰項を有する運動方程式である。短時間スケールでの粒子の平均二乗変位(MSD)は、以下によって与えられる:
【数13】
式中、kはボルツマン定数であり、Tは温度であり、mは粒子質量であり、tは観察時間である。これは、約
【数14】
の平均速度を有する熱力学的平衡下での自由粒子運動を本質的に説明する。室温(RT)(298K)におけるkTの値は4.11×10-21Jであり、酸化鉄の例示的なMNP102は、約5g/cm3の密度を有する。これは、20nmの球状粒子の質量を約2×10-20kgとし、約0.8m/sの平均粒子速度を与える。これは、このサイズのコロイド状ナノ粒子の視覚的に観察される速度よりもかなり大きい。そのような速度は、ナノメートル以下の空間分解能と、周囲の液体によって与えられる平均抗力を受ける粒子の緩和時間(τ)よりも短い制限応答時間とを有する機器を使用してのみ測定することができる。粒子の初期速度は、
【数15】
のように減少し、緩和時間は、以下によって流体の粘度(η)に関連する:
【数16】
式中、aは粒子半径である。水の粘度(室温で
【数17】
に代入すると、約0.1nsの緩和時間を生み出し、これは、映像イメージングシステムの応答時間を下回るが、いくつかの磁気センサ105の範囲内である。より長いタイムスケール
【数18】
では、粒子MSDは、以下のように時間的に線形に成長する:
【数19】
これは、水分子との衝突によるランダムな拡散を説明する。ストークス-アインシュタイン方程式からの微視的拡散係数である。20nm酸化鉄MNP102のブラウン運動D≒2.5×10nm/sはかなり速く(約0.25mm/s)、約100×130nmの有効検知領域にわたって拡散するには平均で約0.2msかかる。これは、例えばナノ秒単位の応答時間でギガヘルツ領域で動作することができる適切に設計された市販の磁気センサ105の範囲内に十分に含まれる。
【0051】
緊密に閉じ込められたナノ粒子(例えば、テザーの長さ≒磁気センサ105の検知領域206のサイズ≒MNP102のサイズ)の動きに対する磁気センサ105の応答は、かなり解釈が困難である。MNP102は、検知領域206内で局所的にのみ拡散しており、その見かけの拡散係数(自由拡散当量)は、時間平均によって著しく影響を受ける。MNP102の運動に起因して到達する(例えば、センサ信号207の)信号パルスは、離散的でも、明確に定義されてもいない。MNP102の動きは、固有の磁気センサ105のノイズに加えられ、検出されたセンサ信号207のノイズ特性を変化させるランダムノイズの別の発生源を生成する。MNP102の動きの変化を検出するために、以下にさらに説明するように、検知帯域幅にわたる信号スペクトルとノイズスペクトルとの間の差を利用することができる。エネルギー検出または自己相関などの様々な先進的な検知スキームが、低信号対雑音比(SNR)条件における検出を改善するために以下に記載されるように開発されて実装される。
【0052】
MNP102の存在および位置が磁気センサ105にどのように影響するかを理解するのを助けるために、物理的問題を定義することができる。図10Aは、例示的なモデルを提示する。磁気センサ105の表面には、テザーによってMNP102が結合されている。(磁気センサ105の表面自体は、実際には、テザー(例えば、バイオポリマー101)、MNP102、および絶縁体などの何らかの種類の保護バリアによってMNP102に作用する任意の流体から物理的に分離されてもよいことを理解されたく、本明細書の他の箇所でさらに説明される。本明細書が「磁気センサ105の表面」に言及する場合、それは簡単にするためであり、磁気センサ105の表面は露出していなくてもよく、物理的に近くにあることを理解されたい。)例えば、テザー(バイオポリマー101)は、図10Aに示すようにペグ/ビオチン/ストレプトアビジンを含むことができる。周囲溶液の分子がMNP102と衝突すると、MNP102は、確率的ブラウン摂動を介して移動する。運動を、一次元高調波ポテンシャルとして近似することができる。具体的には、図10Aに示すように、MNP102は、ばね上の質量(例えば、バイオポリマー101)と考えることができる。重力を無視すると、駆動力は、ブラウン関数的且つ確率的であり、周囲の溶液の分子がMNP102と衝突することによって引き起こされる。ブラウン駆動力は、MNP102の直径および温度(ケルビン度)の関数であり、
【数20】
として表することができる。ばね復元力および液体減衰力は、いずれも決定論的であり、駆動力に対抗する。ばね復元力は、
【数21】
として表すことができ、ここで、Kは、分子テザーのばね定数(例えば、バイオポリマー101)であり、xは、MNP102の位置である。決定論的液体減衰力は、
【数22】
として表することができ、ここで、ηは、周囲の液体の動粘度(室温における水の場合、それはおよそ
【数23】
である)であり、dは、MNP102の直径である。
【0053】
高調波ポテンシャル場における時間tにおける初期位置xが与えられた位置xおよび時間tにおける拡散球状粒子の分布確率Pの一次元時間開法は、運動方程式によって与えられる:
【数24】
溶液を有する、
【数25】
式中、
【数26】
であり、緩和時間τは
【数27】
である。緩和時間τは、パワースペクトル密度(PSD)において、本明細書でコーナー周波数fと呼ばれるものに関連し、ここで、f=1/πτである。したがって、コーナー周波数は、以下のように近似することができる。
【数28】
【0054】
図10Bは、「捕捉電位における拡散粒子の動的分析」と題するM.Lindnerらによる論文の図1の再現である。(M.Lindnerら,「Dynamic analysis of a diffusing particle in a trapping potential」,Physical Review E 87,022716(2013)を参照されたい。)図10Bは、DNA鎖によって印加された調和電位において拡散する単一粒子の図表現である。上のパネルは、2つの立体配座を示し、下のパネルは、ボルツマン定常状態分布、ならびにx=-650nmの値を有する0.01τ、0.1τおよび10τの
【数29】
の値の確率分布を示す。したがって、下のパネルは、MNP102が特定の時間に特定の位置を占める確率を提供する。
【0055】
MNP102の存在および動きが磁気センサ105によって提供されるセンサ信号207にどのように影響するかを説明するために、まず、図11Aに示すように、光学的手法を使用した思考実験を考える。MNP102は、20nmの直径を有し、テザー(例えば、ペグ/ビオチン/ストレプトアビジン)によって装置の表面に結合されていると仮定する。さらに、MNP102の直径に匹敵する波長の光を生成することができる光源が存在し、フォトダイオード502が、装置の表面に結合したMNP102によって特定の方向に反射された光子を検出すると仮定する。MNP102が静止しており、光源によって照明される場合、反射光の強度は、経時的に一定のままである。したがって、フォトダイオード502の信号505のPSDは、フォトダイオード502によってもたらされるノイズの表示を提供する。換言すれば、MNP102が動いていない限り、フォトダイオード502信号のノイズは、完全にフォトダイオード502の特性に起因する。フォトダイオード502のノイズフロアを白色(例えば、熱ノイズまたはジョンソン-ナイキストノイズ)とすると、図11Bの一点鎖線に示すように、ノイズのスペクトルは、ある程度低いレベルでほぼ平坦になる。MNP102が動くことが可能になると、確率的摂動は、(テザーがMNP102の浮遊を防止するため)MNPを限定されたブラウン運動で移動させる。限定されたブラウン運動のPSDは、ローレンツ関数であり、これは以下の形態のPSDを有する。
【数30】
式中、上記で説明したように、コーナー周波数
【数31】
である。再び図11Bを参照すると、MNP102が限定されたブラウン運動で動くことが可能なときのフォトダイオード502信号505の全体的なPSDは、フォトダイオード502自体のホワイトノイズと、MNP102の限定されたブラウン運動に起因するローレンツ関数との和である。全体的なノイズPSDは、10kHz付近のより低い周波数の肩部(コーナー周波数)と、300kHz付近のより高い周波数の肩部とを有し、フォトダイオード502のノイズフロアが全体的なノイズPSDを支配し始める。
【0056】
限定されたブラウン運動のPSD(シグネチャと考えることができる)がローレンツ関数であることが分かると、移動するMNP102の非存在下および移動するMNP102の存在下での磁気センサ105からのセンサ信号207の予想されるPSDは、最初にその近傍にMNP102のない磁気センサ105のノイズPSDを考慮し、次にそのノイズPSDに対するMNP102の効果がどのようであるべきかを評価することによって同様に決定することができる。図12Aは、図6の説明において前述したものと同様の構成を有する例示的な磁気センサ105を示している。図12Aにも示されている図6の構成要素の説明は、図12Aに適用され、繰り返されない。
【0057】
完全なMTJのノイズPSDは、1/f挙動を示す(それは10dB/10進だけ減少する)。図12Bは、選択されたバイアス電圧(以下にさらに説明する)によって駆動される完全なMTJである例示的な磁気センサ105の予想ノイズPSDと、MNP102の限定されたブラウン運動のPSDを特徴付けるローレンツ関数とをプロットしている。図12Bの例では、ローレンツ関数は、約2kHzから約70kHzの周波数範囲で磁気センサ105のノイズPSDを超える。結果として、対数/対数スケールでは、全体的なPSDは、この周波数範囲において140とラベル付けされた識別可能な「バンプ」を有する。したがって、磁気センサ105がMNP102の存在に感度を有する場合、その感度は、センサ信号207のPSD内の識別可能なバンプ140として現れる。以下にさらに詳細に説明するように、ローレンツ関数が磁気センサ105のノイズPSDを超えるかどうか、およびどの周波数範囲で超えるかは、磁気センサ105の設計および磁気センサ105を駆動するために使用されるバイアス電圧(または電流)、ならびにローレンツ関数のコーナー周波数を決定する上述した要因(例えば、分子テザーのばね定数、MNP102の直径、MNP102を取り囲む液体の動粘度)を含む様々な要因に依存する。
【0058】
上記の理論的分析を検証するために、本発明者らは、MTJの形態の磁気センサ105を使用して実験を行い、収集されたセンサ信号207のPSDが実際に上記で導出された挙動を示すかどうかを判定した。図13は、実験の図示である。最初に、最も左のパネルによって示されるように、外部磁場が印加され、センサ信号207が捕捉されて、(上述したように、理想的には、1/fプロファイルを有する)MNP102が存在しない場合の磁気センサ105のノイズPSDを決定した。次に、外部磁場がオフにされ、上述したようにペグ/ビオチン/ストレプトアビジンを用いてMNP102(直径20nm)が表面117にテザリングされた。磁気センサ105にバイアス電圧が印加され、磁気センサ105の近傍に磁界を発生させた。この磁場に応答して、MNP102の磁化は、磁場と位置合わせしてそれ自体を配向し、次いで上述したように制約されたブラウン運動で移動した。図13の中央および右端のパネルにグラフで示されているように、MNP102が動き回るときに、磁気センサ105の磁気モーメントと磁気センサ105の自由層260の磁気モーメント261との間の双極子相互作用を捕捉するために、センサ信号207が捕捉された。
【0059】
図14は、試験された3つの磁気センサ105の測定されたPSDを示している。161とラベル付けされた円付きの各一点鎖線は、試験された磁気センサ105(いかなるMNP102もない)のうちの1つのノイズPSDであり、162とラベル付けされた菱形付きの各実線は、MNP102と磁気センサ105とを組み合わせたPSDである。図14のプロットに示すように、結合されたPSDのそれぞれは、MNP102が検出されたときに予想される特性バンプ140を有する。したがって、実験は、約10mVのバイアス電圧に対して、テザリングされたMNP102が高調波電位に閉じ込められた粒子のように挙動することを確認した。さらに、そのPSDは、図14に示すように、約488Hzから120kHzの範囲のローレンツ関数で表すことができる。図14に示すように、各ローレンツ関数のコーナー周波数は、磁気センサ105毎に若干異なるが、いずれも45kHz前後である。図14は、3つの例示的な磁気センサ105からのデータのみを示しているが、他の試験された磁気センサ105も同様に挙動した。全ての実験において、MNP102の限定されたブラウン運動によるローレンツ関数のコーナー周波数は、約45kHzであることが分かった。
【0060】
上記で説明したように、コーナー周波数は、選択されたテザー(例えば、バイオポリマー101)、具体的には、そのばね定数に依存する。ポリマーテザーは、P-G.de Gennesによる「Scaling Concepts in Polymer Physics」(コーネル大学出版局、イサカ、1979年)に記載されているように、「エントロピー」ばねと考えることができる。コイルをその平衡サイズから引き伸ばすまたは圧縮することは、可能な立体配座の数を減少させ、したがってエントロピーを減少させる。その結果、自由エネルギーが増大する。自由エネルギーは、鎖サイズの変化において二次式であり、ばね定数は、以下によって与えられる。
【数32】
式中、Rはコイルのサイズ、Tは温度、kはボルツマン定数である。いくつかの実施形態では、軟性および短分子テザーを使用して、MNP102を磁気センサ105の検知領域206に保持することと、コーナー周波数(したがって、システムのサンプリングレートおよび関連するアナログデジタル複雑度)を小さいMNP102にとって妥当なものに保つこととの双方を行うことが望ましい。前述のペグ/ビオチン/ストレプトアビジンテザーに加えて、RNA、好中球微絨毛、PEG3300、PEG6260、およびポリ(スチレン)は、全て、適切なテザーの例である。
【0061】
上述したように、磁気センサ105に印加されるバイアス電圧は、MNP102が存在するときに測定されたセンサ信号207においてPSD全体の特性バンプ140が明らかであるかどうか、およびどの程度までであるかに影響を及ぼす。MNP102の存在および動きを検出するために、磁気センサ105のノイズPSDに追加して検出された全体PSDをもたらすことができるローレンツ関数を見つけることが望ましい。図15A図15B図15C図15D、および図15Eは、この手順に対するバイアス電圧の影響を調査するために行われた実験の結果を示している。図15Aは、バイアス電圧が11mVのときの結果を示している。図15Bは、バイアス電圧が25mVのときの結果を示している。図15Cは、バイアス電圧が50mVのときの結果を示している。図15Dは、バイアス電圧が75mVのときの結果を示している。図15Eは、バイアス電圧が100mVのときの結果を示している。
【0062】
図15A図15B図15C図15D、および図15Eの間の比較が示すように、より高いバイアス電圧では、MNP102の限定されたブラウン運動を表すローレンツ関数を測定データにフィッティングさせることがますます困難になる。より高いバイアス電圧の使用は、超拡散の開始をトリガしている可能性があり、その場合、MNP102の動きはもはやブラウン運動ではなく、駆動された動きになる(例えば、MNP102は、追加の力の影響を受け、限定されたブラウン運動で移動するよりも速く移動する)。磁気センサ105が、単にMNP102を観察するのではなく、MNP102の動きに影響を及ぼす(駆動する)場合、超拡散が生じることができる。より高いバイアス電圧の結果として、PSD全体の高周波テールの勾配は2よりも大きくなり、これは超拡散の特徴である。本発明者らの実験では、より高いバイアス電圧に対して、MNP102のPSDは、ローレンツ関数によってではなく、むしろ関数によって表すことができないことが分かった。
【数33】
式中、βは2よりも大きい値である。図15A図15B図15C図15D図15Eの各バイアス電圧についてのβの値が図に示されている。すなわち、図15A図15B図15C図15D図15Eに示す実験結果は、バイアス電圧が大きすぎると系が非線形となり、予測できなくなることを示している。
【0063】
超拡散を考慮して数学的モデルを調整するために、上記で導出された一次元高調波電位近似は、磁気センサ105のバイアス電圧によって引き起こされる磁力を表す成分を含むように修正することができる。図16は、磁気センサ105がMNP102の動きに影響を及ぼすことに起因する成分を含むようにモデルがどのように修正することができるかを示している。ここでも、MNP102は、テザー(例えば、バイオポリマー101)であるばね上の質量であると考えられる。ブラウン駆動力、液体減衰力、およびばね復元力は同じであり、図10Aに示され、上記の図の説明で説明されている。これらの力に加えて、図16のモデルは、以下のように表される、磁気センサ105によって引き起こされる磁力を加える。
【数34】
式中、
【数35】
はMNP102の磁気モーメントであり、
【数36】
はMNP102の位置における磁場である。磁場勾配内の調和ポテンシャル場における時間tにおけるその初期位置xを考慮した、位置xおよび時間tにおける拡散球状粒子の分布確率Pの一次元時間発展は、運動方程式によって与えられる:
【数37】
この式は、既知の解析解を有しない。したがって、流体力学的半径とコーナー周波数との関係は、これらの状況下では知られていない。
【0064】
超拡散の開始を回避し、磁気センサ105がその動きに実質的に影響を及ぼすことなくMNP 102が限定されたブラウン運動で動くことを可能にするために、磁気センサ105のバイアス電圧は、MNP102の存在によって引き起こされる特性バンプ140がPSD全体に存在するのに十分低く保たれるべきであり、上述したようなMNP102の限定されたブラウン運動を表すローレンツ関数とフィッティングさせることができる。別の言い方をすれば、測定されたPSDデータをローレンツ関数にフィッティングさせることが不可能である場合、磁気センサ105を駆動するために使用されるバイアス電圧は高すぎる可能性があり、低減する必要があり得る。
【0065】
上述した説明は主にMTJセンサに焦点を当てているが、SVセンサについていくつか説明すると、磁気センサ105は、任意の種類の磁気センサとすることができることを理解されたい。実験および実施例におけるMTJの使用は、限定を意図するものではない。適切な磁気センサ105は、巨大磁気抵抗(GMR)センサ、ホール効果装置、スピンバルブ、およびスピン蓄積センサを含むが、これらに限定されない。一般に、磁気センサ105は、MNP102の有無および/または動きをセンサ信号207から検出することを可能にすることができる任意の磁気センサとすることができる。
【0066】
さらなる実施例
本明細書に記載の動的スペクトルバイオセンシング技術の実現可能性および実施を実証するために、緩衝液のイオン強度を変化させることによって誘導される例示的なバイオポリマー101、ssDNAの立体構造変化を、フローセル内に位置する磁気センサ105を使用して監視した。
【0067】
実施した3段階の実験が、図17A図17Bおよび図17Cに概略的に示されている。最初に、図17Aに示すように、銅触媒アジド-アルキンクリックケミストリーを使用して、150ヌクレオチド(nt)のssDNAの5’末端を磁気センサ105の検知領域206内の装置の表面117に最初に結合させた。次いで、3’末端ビオチン化20-merをssDNAの3’末端にハイブリダイズさせた。したがって、図17Aは、MNP102が結合される前の磁気センサ105の近くの表面117に結合した例示的な150ntのssDNAを示している。ssDNAは、磁気センサ105がssDNAの他端に結合したMNP102を検出することができるように、磁気センサ105の近傍の表面117に結合している。実験では、次に、均一な15エルステッド外部磁場を磁気センサ105の露出面に垂直な方向(図17Aのz軸に沿って、正方向および負方向の双方)に印加し、MNP102が存在しない状態でセンサ信号207を記録した。
【0068】
次に、ストレプトアビジン被覆20nmのMNP102をssDNAテザー(バイオポリマー101)の端部に結合した。図17Bは、ストレプトアビジン被覆20nmのMNP102が結合したssDNAテザーを示している。図17Bに示すように、テザリングされた20nmのMNP102は、磁気センサ105の近くにある(例えば、一般にその検知領域206内にある)。MNP102がストレプトアビジンによってコーティングされて、ssDNAテザーに強く結合することを可能にする。MNP102に重なる矢印は、MNP102の確率的運動の程度を表す。センサ信号207を10mMのトリス緩衝液中で記録した。
【0069】
例えば、Mg2+イオンの添加は、ssDNAの圧縮を引き起こす。したがって、ssDNAに結合したMNP102の限定された確率的運動は、Mg2+イオンの添加時に減衰するべきである。(同様の挙動が、ポリウリジン(U)メッセンジャー(m)RNAにおいてTPMによって観察された。)そこで、試験では、溶液にマグネシウムイオンを添加した。図17Cは、マグネシウムイオンの添加およびその後のssDNAテザーの圧縮後の例示的な状態を示している。図17Bと比較して、MNP102の確率的運動は、MNP102を覆う短い矢印によって表されるように減衰される。センサ信号207が15mMのトリス-MgCl緩衝液中で記録された。
【0070】
図17A図17B、および図17Cの上述した説明は、ただ1つのMNP102およびただ1つの磁気センサ105を記載しているが、試験は、一連の磁気センサ105、複数のMNP102、および複数のssDNA断片(バイオポリマー101)を使用した。試験では、フローセルの表面に固定化されたssDNAの密度は制御されず、特定の観察されたMNP102が複数のDNA鎖によって表面に結合した可能性がある。(この可能性を軽減または排除するための単一分子システムは、例えば、図19A図19B図19C図19D、および図19Eの文脈で以下に説明される。)したがって、結合されたMNP102の密度は、検知領域206内にただ1つのMNP102が存在することを確実にするように、磁気センサ105の近傍に単一または少数のMNP102のみがテザリングされた磁気センサ105が存在することを確実にするように調整された。いくつかのそのような磁気センサ105が特定され、それらの磁気センサ105の記録されたセンサ信号207は、6kHzの中程度のサンプリングレートでサンプリングされた。記録されたセンサ信号207および2つのそのような代表的な磁気センサ105の対応する自己相関関数が図18A図18B、および図18Cに示されている。
【0071】
図18Aは、2つの磁気センサ105のそれぞれの近くであるが任意のMNP102の結合前の表面117に150ntのssDNA(例えば、各バイオポリマー101)を結合した(固定した)後の、印加された外部磁場Hの存在下での2秒の期間にわたる、「センサ1」および「センサ2」と示される2つの異なる例示的な磁気センサ105の例示的な記録された電流変動(例えば、センサ信号207)を示している。その状態が図18Aの最上段(非プロット)に示されている。換言すれば、強度対時間のプロットによって示される、2つの磁気センサ105のそれぞれについて記録された電流変動は、図17Aに示す段階についての2つの磁気センサ105、センサ1およびセンサ2のバックグラウンドまたはベースラインセンサ信号207である。測定されたセンサ信号207の正および負の自己相関関数もまた、センサ1およびセンサ2のそれぞれについて図18Aに示されている。各自己相関プロットの滑らかな一点鎖線の曲線は、それぞれのベースライン測定センサ信号207の平均自己相関である。
【0072】
図18Bは、センサ1およびセンサ2の測定されたセンサ信号207(強度対時間)、ならびに試験においてDNA鎖のそれぞれの末端につながれたそれぞれの20nmのFe粒子であったMNP102の結合後およびトリス緩衝液の添加後のそれらの自己相関関数を示している。図18Bは、ssDNAがその伸長した立体配座にあり、図17Bに示される段階に対応する場合の結果を提供している。段階は、図18Bの最上段(非プロット)に示されている。MNP102の導入は、それぞれのセンサ信号207における記録された電流変動および自己相関関数の双方を図18Aに対して変化させる。例えば、図18A図18Bとの比較が示すように、センサ1の正および負の自己相関関数は、約1msから200~300msの遅延時間の間、ベースラインセンサ信号207に対して上方にシフトするが、センサ2の自己相関関数は、一般に、約1msから約50msの遅延時間の間、ベースラインセンサ信号207に対して下方にシフトする。したがって、検知領域206内のMNP102の存在は、図18Aのベースラインに対する自己相関関数のシフトから推測することができる(MNP102が存在しない場合)。
【0073】
図18Cは、センサ1およびセンサ2の測定されたセンサ信号207(強度対時間)、ならびにDNAテザー(例えば、バイオポリマー101)がMg2+イオンの導入によって圧縮されたときのそれらの自己相関関数を示している。すなわち、図18Cは、図17Cに示す段階に対応する。段階は、図18Cの最上部(非プロット)部分によって示されている。図18Bの自己相関関数を図18Cおよび/または図18Aの自己相関関数と比較すると、立体配座の変化が自己相関関数において検出可能であることが明らかになる。例えば、センサ1について図18Bに示す自己相関関数と比較して、正および負の自己相関関数は、Mg2+イオンの添加後1msから約60~70msの遅延時間の間に僅かに下方にシフトし、約300msを超える遅延時間の平均自己相関関数により近くなる。同様に、センサ2について図18Bに示す自己相関関数と比較して、Mg2+イオンの添加によって引き起こされるssDNAの立体配座の変化は、約1msから約50msの遅延時間について正および負の自己相関関数の下方へのシフト、および約200~300msの遅延時間について上方へのシフトとして現れる。したがって、図18A図18B、および図18Cに示すように、3つの状態間でノイズ自己相関関数の有意な変化が観察され、それによってセンサ1およびセンサ2の検知領域206内のMNP102の有無および動きの双方を検出および/または監視することを可能にする。
【0074】
図18A図18B、および図18Cに記載および示された結果は、磁気センサ105がMNP102の平均平衡位置の変化を検出することができるだけでなく、単一分子プロセスによって誘発されるノイズ変動の小さな可逆的変動も監視することができることを確認する。単一分子感度を有する何十億ものそのような磁気センサ105は、半導体およびデータストレージ産業によって開発された既存の成熟した技術および大量生産能力を利用しながら、診断および薬物発見のための次世代ハイスループットシステムを作成するために、CMOSプラットフォーム(例えば、東芝の4Gビット密度STT-MRAMチップと同様)上に潜在的に集積することができる。
【0075】
本明細書に記載の実験が示すように、特定の試験された磁気センサ105の固定層と自由層との間の結合は、バイオセンシングに適している。これらの磁気センサ105は、適切な磁気センサ105の一例である。バイオセンシング用途または特定のタイプのMNP102に最適化されたFM1とFM2との間の結合を有する他の磁気センサ105も使用することができ、実験で使用された例示的な磁気記録センサよりも良好に機能することができる。
【0076】
監視装置およびシステム
以下にさらに説明するように、いくつかの実施形態では、バイオポリマー101に結合されたMNP102の動きを監視するためのシステム100は、流体チャンバ115と、少なくとも1つのプロセッサ130と、磁気センサ105とを備えることができる。流体チャンバは、バイオポリマー101の端部を流体チャンバ115の表面に固定し、かつMNP102が(例えば、周囲の流体の分子が衝突すると)動くことが可能なように構成された結合部位116を含む。結合部位116は、バイオポリマー101を結合部位116に固定するように構成された構造(例えば、空洞または隆起部)を含むことができる。
【0077】
磁気センサ105は、例えば、MTJまたはSTOを含むことができる。磁気センサ105は、流体チャンバ115内にMNP102を検出することができる検出領域206を有する。検知領域206は、例えば、約10nmから約5×10nmの間の容積を有することができる。検知領域206は、結合部位116を含む。磁気センサ105は、検知領域206内の磁気環境(例えば、MNP102の有無および/または位置)を特徴付けるセンサ信号207を生成し、かつセンサ信号207を少なくとも1つのプロセッサ130に提供するように構成される。センサ信号207は、電流、電圧、抵抗、ノイズ(例えば、周波数ノイズまたは位相ノイズ)、周波数または周波数の変化(例えば、発振周波数またはローレンツコーナー周波数)などのうちの1つ以上を伝達(例えば、報告)することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプロセッサ130は、(a)第1の検出期間中の検出領域206内の磁気環境を表すセンサ信号207の第1の部分を取得し、(b)第1の検出期間の後である第2の検出期間中の検出領域206内の磁気環境を表すセンサ信号207の第2の部分を取得し、(c)センサ信号207の第1の部分および第2の部分を分析して、テザリングされたMNP102の動きを検出することが可能な機械実行可能命令を実行するように構成される。例えば、以下にさらに説明するように、少なくとも1つのプロセッサ130は、信号の第1の部分の第1の自己相関関数を決定し、信号の第2の部分の第2の自己相関関数を決定し、第1の自己相関関数および第2の自己相関関数を分析して(例えば、第1の自己相関関数と第2の自己相関関数とを比較する)、テザリングされたMNP102の動きを検出することができる。少なくとも1つのプロセッサ130は、時間領域、周波数領域、またはその双方において、センサ信号207またはその一部を処理することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプロセッサ130は、MNP102の限定されたブラウン運動を特徴付けるローレンツ関数を決定するように構成される。
【0079】
システム100は、磁気センサ105および少なくとも1つのプロセッサ130に結合された検出回路120をさらに含むことができる。回路120は、例えば、少なくとも1つのプロセッサ130が磁気センサ105を読み取ったり問い合わせたりすることを可能にする1つ以上のラインを含むことができる。回路120は、アナログ-デジタル変換器および/または増幅器などの構成要素を含むことができる。
【0080】
いくつかの実施形態では、監視システム100は、監視システム100が各磁気センサ105で単一分子プロセスを検出することができるように、使用中に個々の単一生体分子によってそれぞれ機能化される複数の磁気センサ105を備える。図19Aは、いくつかの実施形態にかかる例示的な監視システム100の構成要素を示すブロック図である。図示のように、例示的な監視システム100は、少なくとも1つのプロセッサ130に結合された回路120に結合されたセンサアレイ110を含む。センサアレイ110は、以下にさらに説明するように、任意の適切な方法で配置することができる複数の磁気センサ105を備える。(センサアレイ110は、少なくとも1つの磁気センサ105を含むことを理解されたい。)
【0081】
回路120は、例えば、センサアレイ110内の磁気センサ105が少なくとも1つのプロセッサ130によって(例えば、電流または電圧源、増幅器、アナログ-デジタル変換器などの当該技術分野において周知の他の構成要素の助けを借りて)調査することを可能にする1つ以上のラインを含むことができる。例えば、動作中、プロセッサ130は、回路120に、そのようなラインにバイアス電圧または電流を印加させて、センサアレイ110内の少なくとも1つの磁気センサ105の磁気環境を報告するセンサ信号207を検出させることができる。センサ信号207は、検知領域206内のMNP102の有無、位置、および/または動きを示す。換言すれば、センサ信号207は、磁気センサ105の何らかの特性(例えば、磁場、抵抗、電圧、電流、発振周波数、信号レベル、ノイズレベル、周波数ノイズ、位相ノイズなど)を示す。センサ信号207は、検査および/または処理されて、磁気センサ105が時間の経過とともにMNP102またはMNP102の動き(例えば、位置の変化)を検出したかどうかを決定することができる。例えば、少なくとも1つのプロセッサ130は、センサ信号207の1つ以上の時間領域、周波数領域、決定論的、および/または統計的特性(例えば、ピークまたは平均振幅、変動、平均または予想ピークからの逸脱、自己相関、パワースペクトル密度など)を監視し、かつMNP102またはMNP102の動きが検出された(または検出されなかった)と決定することができる。具体例として、少なくとも1つのプロセッサ130は、選択された時間にまたは選択された期間にわたる磁気センサ105のセンサ信号207の形態(例えば、自己相関、PSDなど)を、より早い時間にまたはより早い時間もしくは異なる期間にわたるセンサ信号207の形態(例えば、図17A図17B、および図17Cの説明で上述したようなベースライン自己相関、または、例えば、図21図26の説明で以下に説明するようなベースラインノイズPSD)と比較し、MNP102が検出されたか、または検出されなかったか、または移動したか、または移動しなかったかの判定を、センサ信号207の変化に基づかせることができる。例えば、少なくとも1つのプロセッサ130は、第1の検出期間中のセンサ信号207の第1の全体的なノイズPSDおよび第2の検出期間中のセンサ信号207の第2の全体的なノイズPSDを決定し、かつMNP102が存在するか、および/または移動したかどうかを分析することができる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプロセッサ130は、磁気センサ105のベースラインノイズPSDに加えられると、第1の検出期間および第2の検出期間の一方または双方の間にセンサ信号207の全体的なノイズPSDをもたらすローレンツ関数を決定する。
【0082】
センサ信号207およびそれが磁気センサ105の磁気環境を特徴付けるために伝達する情報は、監視システム100において使用される磁気センサ105のタイプに依存することができる。いくつかの実施形態では、磁気センサ105は、例えば、磁場もしくは抵抗、磁場の変化もしくは抵抗の変化、またはノイズレベルを検出することができる磁気抵抗(MR)センサ(例えば、MTJ、SVなど)である。いくつかの実施形態では、センサアレイ110の磁気センサ105のそれぞれは、MR効果を使用して、磁気センサ105に関連するそれぞれの結合部位116に結合したバイオポリマー101に結合したMNP102を検出することができる薄膜装置である。磁気センサ105は、検知された磁場の強度および/または方向が変化するにつれて変化する抵抗を有するポテンショメータとして動作することができる。いくつかの実施形態では、磁気センサ105は、磁気発振器(例えば、STO)を備え、センサ信号207は、磁気発振器によって生成された周波数、または周波数、周波数ノイズ、もしくは位相ノイズの変化を報告する。
【0083】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つのプロセッサ130は、回路120の助けを借りて、センサアレイ110内の磁気センサ105の一部または全部の磁気環境の偏差または変動を検出する。例えば、MNP102の非存在下におけるMR型の磁気センサ105は、MNP102からの磁場変動が検知強磁性体のモーメントの変動を引き起こすことから、MNP102の存在下における磁気センサ105と比較して、特定の周波数を超える比較的小さいノイズを有するべきである。これらの変動は、例えば、(例えば、ノイズパワー密度を測定することによって)ヘテロダイン検出を使用して、または磁気センサ105の電流もしくは電圧を直接測定することによって測定することができ、結合部位116を検知しない別のセンサ素子と比較するために比較回路を使用して評価することができる。いくつかの実施形態では、磁気センサ105は、STO素子を含み、MNP102からの変動磁場は、位相検出回路を使用して検出することができる周波数の瞬間的な変化に起因して磁気センサ105の位相のジャンプを引き起こす。
【0084】
本明細書で提供されるMNP102および磁気センサ105の例は、単なる例示であることを理解されたい。一般に、バイオポリマー101に結合させることができる任意のタイプのMNP102は、そのタイプのMNP102を検出することができる任意のタイプの磁気センサ105のアレイ110とともに使用することができる。
【0085】
監視システム100の構成要素は分散されてもよく、または単一の物理装置に含まれてもよいことも理解されたい。例えば、少なくとも1つのプロセッサ130が複数のプロセッサを含む場合、第1のプロセッサは、少なくとも1つの磁気センサ105のセンサアレイ110を含む装置(例えば、チップ)の一部であってもよく、第2のプロセッサは、異なる物理的位置(例えば、付属のコンピュータ内のオフチップ)にあってもよい。具体例として、監視システム100内の第1のプロセッサは、磁気センサ105からセンサ信号207を取り出すように構成することができ、必ずしも第1のプロセッサと同じ物理装置の一部ではない監視システム100内の第2のプロセッサは、センサ信号207を処理して(例えば、自己相関関数、PSD、ローレンツ関数などを計算し、および/または信号処理および/または分析などを実行する)、MNP102の有無および/または動きを検出することができる。したがって、図19Aに示す構成要素は、同じ場所に配置または分散することができる。別の言い方をすれば、システムは、図19Aに示す構成要素を単一の物理装置に備えてもよく、または図19Aの構成要素を分散させることができる。同様に、監視システム100は、例えば、とりわけ、センサ信号207またはセンサ信号207のサンプリングもしくは処理されたバージョン、または少なくとも1つのプロセッサ130による実行のための命令を記憶するためのメモリなどの他の構成要素を含むことができる。
【0086】
図19B図19C、および図19Dは、いくつかの実施形態にかかる、単一分子プロセスの検出および監視のための例示的な監視システム100の一部を示している。図19Bは、監視システム100の一部の平面図である。図19Cは、図19Bの「19C」と記された一点鎖線の位置における断面図であり、図19Dは、図19Bの「19D」と記された一点鎖線の位置における断面図である。
【0087】
図19B図19C、および図19Dに示す監視システム100の例示的な部分は、監視システム100の流体チャンバ115内のMNP102を検知するためのセンサアレイ110を備える。センサアレイ110は、複数の磁気センサ105を含み、図19Bのアレイ110には16個の磁気センサ105が示されている。監視システム100の実装は、任意の数の磁気センサ105(例えば、僅か1つ、または数百、数千、数百万、または数十億の磁気センサ105)を含むことができることを理解されたい。図面を不明瞭にすることを避けるために、図19Bでは、磁気センサ105のうちの7つ、すなわち磁気センサ105A、105B、105C、105D、105E、105F、および105Gのみがラベル付けされている。(簡単にするために、この文書では、一般に磁気センサ105を参照符号105によって参照している。個々の磁気センサ105には、参照符号105の後に文字が付されている。)上記で説明したように、磁気センサ105は、MNP102の有無およびそれぞれの検知領域206内のMNP102の動きを検出することができる。換言すれば、各磁気センサ105は、その近傍に(例えば、検知領域206に)MNP102があるかどうかを検出することができ、磁気センサ105によって提供されるセンサ信号207はまた、MNP102が動いているかどうか、およびどのように動いているかの指示を提供する。
【0088】
ここで図19Bに関連して図19Cおよび図19Dを参照すると、各磁気センサ105は、監視システム100の例示的な実施形態では円筒形状を有するものとして示されている。しかしながら、一般に、磁気センサ105は、任意の適切な形状を有することができることを理解されたい。例えば、磁気センサ105は、三次元の直方体であってもよい。さらに、異なる磁気センサ105は、異なる形状(例えば、一部は直方体であり、他の一部は円筒形などであってもよい)を有することができる。図面は単なる例示であることを理解されたい。
【0089】
図19Cおよび図19Dに示すように、監視システム100は、流体チャンバ115を含む。流体チャンバ115は、表面117上に複数の結合部位116を含む。流体チャンバ115は、流体(例えば、緩衝液、ヌクレオチド前駆体、他の流体または溶液)を保持する。図示の実施形態では、各磁気センサ105は、それぞれの結合部位116に関連付けられている。(簡単にするために、この文書では、一般に、結合部位に参照番号116を付している。個々の結合部位には、参照番号116の後に文字が付されている。)換言すれば、磁気センサ105と結合部位116とは、一対一の関係にある。図19Bに示すように、磁気センサ105Aは、結合部位116Aに関連付けられ、磁気センサ105Bは、結合部位116Bに関連付けられ、磁気センサ105Cは、結合部位116Cに関連付けられ、磁気センサ105Dは、結合部位116Dに関連付けられ、磁気センサ105Eは、結合部位116Eに関連付けられ、磁気センサ105Fは、結合部位116Fに関連付けられ、磁気センサ105Gは、結合部位116Gに関連付けられる。図19Bに示される他のラベル付けされていない磁気センサ105のそれぞれはまた、それぞれの結合部位116に関連付けられる。図19B図19C、および図19Dの例示的な実施形態では、各磁気センサ105は、そのそれぞれの結合部位116の下方に配置されて示されているが、結合部位116は、それらのそれぞれの磁気センサ105に対して他の位置にあってもよいことを理解されたい。例えば、結合部位116は、それぞれの磁気センサ105の側面にあってもよい。
【0090】
結合部位116のそれぞれは、流体チャンバ115内の表面117に1つ以下のバイオポリマー101(例えば、ssDNA、RNA、タンパク質など)を結合するように構成される。換言すれば、各結合部位116は、それぞれの磁気センサ105(または後述するように複数の磁気センサ105)による検知および監視のために、1つ、および1つのみのバイオポリマー101を結合させ、それによりシステム100を単一分子システムにすることを可能にすることを意図した特性および/または特徴を有する。その後、それぞれの磁気センサ105は、結合部位116に結合したバイオポリマー101に結合したMNP102の動きを検出および監視することができる。いくつかの実施形態では、結合部位116は、バイオポリマー101を結合部位116に固定するように構成された構造(または複数の構造)を有する。例えば、構造(または複数の構造)は、空洞または隆起部を含むことができる。図19Cおよび図19Dは、結合部位116を流体チャンバ115の表面117から延びるものとして示しているが、結合部位116は、流体チャンバ115の表面117と同一平面上にあってもよく、またはエッチングされてもよいことを理解されたい。
【0091】
結合部位116は、各結合部位116への唯一のバイオポリマー101の結合を容易にする任意の適切なサイズおよび形状を有することができる。例えば、結合部位116の形状は、磁気センサ105の形状と同様または同一とすることができる(例えば、磁気センサ105が三次元で円筒形である場合、結合部位116は、円筒形であってもよく、流体チャンバ115の表面117から突出するか、または流体チャンバ115の表面117内に流体容器を形成し、それぞれの磁気センサ105の半径よりも大きく、小さく、または同じサイズとすることができる半径を有する。磁気センサ105が三次元の直方体である場合、結合部位116は直方体であってもよく、磁気センサ105の最も近い部分などと、より大きく、より小さく、または同じサイズであってもよい)。一般に、結合部位116および流体チャンバ115の表面117は、各結合部位116への単一のバイオポリマー101の結合を容易にし、磁気センサ105がそれぞれの結合部位116に結合したバイオポリマー101に結合したMNP102の存在および動きを検出することを可能にする任意の形状および特性を有することができる。
【0092】
図19Cおよび図19Dは、x-y平面内に延びる頂部を有する囲まれた流体チャンバ115を示しているが、流体チャンバ115が囲まれる必要はない。いくつかの実施形態では、流体チャンバ115の表面117は、バイオポリマー101を結合部位116に結合させ、磁気センサ105が結合部位116に結合したバイオポリマー101に結合したMNP102を検出することを可能にしながら、流体チャンバ115内にあるいかなる流体からもセンサ105を保護する特性および特性を有する。流体チャンバ115の材料(および場合によっては結合部位116の材料)は、絶縁体とすることができるか、または絶縁体を含むことができる。いくつかの実施形態では、流体チャンバ115の表面117は、有機ポリマー、金属、またはケイ酸塩を含む。流体チャンバ115の表面117は、例えば、金属酸化物、二酸化ケイ素、ポリプロピレン、金、ガラス、またはシリコンを含むことができる。流体チャンバ115の表面117の厚さは、磁気センサ105が流体チャンバ115内の結合部位116に結合したバイオポリマー101に結合したMNP102を検出することができるように選択することができる。いくつかの実施形態では、表面117は、各磁気センサ105が、それぞれの結合部位116に結合したバイオポリマー101に結合した任意のMNP102から約5nmから約50nmの間にあるように、約3nmから20nmの厚さである。これらの値は、単なる例示であることを理解されたい。実装は、より厚いまたはより薄い表面117を有する流体チャンバ115を有することができ、上記で説明したように、検知領域206は、任意の適切なサイズとすることができることが理解されよう。
【0093】
監視システム100の回路120は、1つ以上のライン125を含むか、またはそれによってセンサアレイ110に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、各磁気センサ105は、少なくとも1つのライン125に結合される。図19B図19C、および図19Dに示す例では、監視システム100は、8本のライン125A、125B、125C、125D、125E、125F、125G、および125Hを含む。(簡単にするために、この文書は、一般に、参照符号125によって行を参照する。個々の行には、参照符号125とそれに続く文字が与えられている。)図19B図19C、および図19Dの例示的な実施形態では、一対のライン125が使用されて、個々の磁気センサ105にアクセス(例えば、読み取ったりまたは問い合わせたりする)することができる。図19B図19C、および図19Dに示す例示的な実施形態では、センサアレイ110の各磁気センサ105は、2つのライン125に結合される。例えば、磁気センサ105Aは、ライン125Aおよび125Hに結合されている。磁気センサ105Bは、ライン125Bおよび125Hに結合されている。磁気センサ105Cは、ライン125Cおよび125Hに結合されている。磁気センサ105Dは、ライン125Dおよび125Hに結合されている。磁気センサ105Eは、ライン125Dおよび125Eに結合されている。磁気センサ105Fは、ライン125Dおよび125Fに結合されている。磁気センサ105Gは、ライン125Dおよび125Gに結合されている。図19B図19C、および図19Dの例示的な実施形態では、ライン125A、125B、125C、および125Dは、磁気センサ105の下方に存在するように示され、ライン125E、125F、125G、および125Hは、磁気センサ105の上方に存在するように示される。図19Cは、ライン125Dおよび125Eに関連する磁気センサ105E、ライン125Dおよび125Fに関連する磁気センサ105F、ライン125Dおよび125Gに関連する磁気センサ105G、ならびにライン125Dおよび125Hに関連する磁気センサ105Dを示している。図19Dは、ライン125Dおよび125Hに関連する磁気センサ105D、ライン125Cおよび125Hに関連する磁気センサ105C、ライン125Bおよび125Hに関連する磁気センサ105B、ならびにライン125Aおよび125Hに関連する磁気センサ105Aを示している。
【0094】
図19B図19C、および図19Dに示す例示的な監視システム100の磁気センサ105は、矩形パターンを有するセンサアレイ110に配置される。(正方形パターンは、矩形パターンの特殊な場合であることを理解されたい)ライン125のそれぞれは、センサアレイ110の行または列を識別する。例えば、ライン125A、125B、125C、および125Dのそれぞれは、センサアレイ110の異なる行を識別し、ライン125E、125F、125G、および125Hのそれぞれは、センサアレイ110の異なる列を識別する。図19Cに示すように、ライン125E、125F、125G、125Hのそれぞれは、断面に沿って磁気センサ105のいずれかと接触しており(すなわち、ライン125Eは、磁気センサ105Eの上部と接触しており、ライン125Fは、磁気センサ105Fの上部と接触しており、ライン125Gは、磁気センサ105Gの上部と接触しており、ライン125Hは、磁気センサ105Dの上部と接触している)、ライン125Dは、センサ105E、105F、105G、および105Dのそれぞれの下部と接触している。同様に、図19Dに示すように、ライン125A、125B、125C、125Dのそれぞれは、断面に沿ってセンサ105のうちの1つの下部と接触しており(すなわち、ライン125Aは、磁気センサ105Aの下部と接触しており、ライン125Bは、磁気センサ105Bの下部と接触しており、ライン125Cは、磁気センサ105Cの下部と接触しており、ライン125Dは、磁気センサ105Dの下部と接触している)、ライン125Hは、磁気センサ105D、105C、105B、および105Aのそれぞれの上部と接触している。
【0095】
磁気センサ105およびセンサアレイ110に接続するライン125の一部は、それらが監視システム100内に埋め込まれ得ることを示すために破線を使用して図19Bに示されている。上述したように、磁気センサ105は、それ自体が囲まれ得る流体チャンバ115の内容物から(例えば、絶縁体によって)保護することができる。したがって、様々な図示された構成要素(例えば、ライン125、磁気センサ105、結合部位116など)は、監視システム100の物理的インスタンス化(例えば、絶縁体などの保護材料に埋め込まれるか、または保護材料で覆われてもよい)において必ずしも目に見えるわけではないことを理解されたい。
【0096】
いくつかの実施形態では、結合部位116の一部または全部は、磁気センサ105を通過するライン125のナノセルまたはトレンチ内に存在する。例えば、図19Dの例に示すように、ライン125Hは、磁気センサ105の間よりも磁気センサ105上で薄くてもよい。例えば、ライン125Hは、磁気センサ105Dの上方の第1の厚さ、磁気センサ105Dと105Cとの間の第2のより大きい厚さ、および磁気センサ105Cの上方の第1の厚さを有する。そのような構成は、従来の薄膜製造方法を使用して(例えば、材料を堆積させ、堆積された材料にマスクを塗布し、(例えば、エッチングによって)マスクにしたがって堆積された材料の一部を除去することによって)有利に製造することができる。結合部位116および存在する場合にはナノウェルの双方は、従来の技術を使用して製造することができる。
【0097】
説明を簡単にするために、図19B図19C、および図19Dは、センサアレイ110内に16個のみの磁気センサ105、16個のみの対応する結合部位116、および8本のライン125を有する例示的な監視システム100を示している。監視システム100は、センサアレイ110内のより少ないまたはより多い磁気センサ105を有することができ、したがって、より多いまたはより少ない結合部位116を有することができることを理解されたい。同様に、ライン125を備える実施形態は、より多いまたはより少ないライン125を有することができる。一般に、磁気センサ105、結合部位116、および結合部位116に結合したバイオポリマー101に結合したMNP102を磁気センサ105が検出することを可能にする回路120(例えば、ライン125を含む)の任意の構成を使用することができる。同様に、センサ信号207が磁気センサ105から取り出されることを可能にする1つ以上のライン125または何らかの他の機構の任意の構成を使用することができる。本明細書に提示される例は、限定することを意図するものではない。
【0098】
図19B図19C、および図19Dに示す磁気センサ105は、結合部位116に近接しており、したがって、結合部位116に結合しているバイオポリマー101およびMNP102にも近接している。
【0099】
図19B図19C、および図19Dは、磁気センサ105および結合部位116を一対一の関係で示しているが、各結合部位116は、複数の磁気センサ105によって検知することができることを理解されたい。例えば、監視システム100が結合部位116よりも多くの磁気センサ105を有する場合、(例えば、MNP102およびその動きの検出精度を向上させるために)少なくともいくつかのMNP102が複数の磁気センサ105によって検知されることが可能であり得る。そのような手法は、観察の多様性を提供することによってSNRを改善することができる。
【0100】
図19B図19C、および図19Dの文脈で図示および説明された例示的なセンサアレイ110は、矩形アレイであり、磁気センサ105は、行および列に配置されている。換言すれば、センサアレイ110の複数の磁気センサ105は、矩形グリッドパターンで配列されている。いくつかの実施形態では、矩形グリッドパターンの隣接する行および列は互いに等距離にあり、その結果、磁気センサ105は、図19Eに示すように正方形グリッド(または格子)パターンで配置される。磁気センサ105が正方形グリッドパターンで配置される実施形態では、各磁気センサ105は、最大4つの最近傍を有する。例えば、図19Eに示すように、磁気センサ105Aは、105B、105C、105D、および105Eとラベル付けされた4つの最近傍を有する。最も近いセンサ105は、図19Eに示すように、最近傍距離112だけ離れている。したがって、センサ105B、105C、105D、および105Eのそれぞれは、磁気センサ105Aから最近傍距離112だけ離れている。
【0101】
いくつかの実施形態によれば、例示的な監視システム100は、図18A図18B、および図18Cの説明で上述したように、個々のMNP102を検出することができる高密度充填ナノスケール磁気センサ105の高精度ナノスケール製造を使用することができる。官能基化結合部位116のサイズは、例えば、複数のバイオポリマー101が同じ結合部位116に結合することができないように、または同じ磁気センサ105によって検知することができないように(例えば、各磁気センサ105がただ1つのMNP102を検出/検知するように)、MNP102が結合したバイオポリマー101のサイズと同様とすることができる。次いで、センサアレイ110のサイズおよび/または選択されたサイズのセンサアレイ110内にフィッティングさせることができる磁気センサ105の最大数を決定するために使用することができる最近傍距離112の適切な値は、磁気センサ105の特性(例えば、感度、サイズなど)、監視システム100が監視することを意図しているバイオポリマー101の特性(例えば、長さ、柔らかさなど)、および使用されているMNP102の特性(例えば、サイズ、タイプなど)に基づいて、決定することができる。例えば、使用されるバイオポリマー101の合計長さおよびMNP102のサイズは、センサアレイ110内の2つの磁気センサ105がどの程度近接して配置され得るかについての物理的制限を提供することができる。いくつかの実施形態では、磁気センサ105のサイズは、センサアレイ110を製造するために使用されるプロセスのナノスケールのパターニング能力によって制限することができる。例えば、書き込み時に利用可能な技術を使用して、各磁気センサ105(例えば、円筒形センサ105を仮定すると、x-y平面内のセンサ105の直径)のサイズを20nm程度としてもよい。監視されるバイオポリマー101の種類がssDNAであり、150nt長までのフラグメントを監視することが望ましいと仮定すると、配列決定されるバイオポリマー101の最大長は、伸長状態で約50nmであるが、ssDNA立体配座は、緩衝液のイオン強度に応じて、伸長状態とコイル状状態との間で変化することができる。MNP102は、単一分子反応に関与するため、MNP102は、分子寸法を有するべきである。上記で説明したように、MNP102は、例えば、超常磁性ナノ粒子、有機金属化合物、またはナノスケール磁気センサ105によって検出することができる任意の他の官能性分子基とすることができる。
【0102】
上述したように、例示的な監視システム100は、様々な構成の磁気センサ105を使用して実装することができる。例えば、監視システム100のいくつかの実施形態では、磁気センサ105(例えば、MTJ)は、既存のクロスポイントMRAMセンサ形状と互換性のある正方格子に配置される。具体例としては、2016年に国際電子素子会議(IEDM)において最初に導入された東芝の4Gビット密度STT-MRAMチップ単体と同様の構成を有するセンサアレイ110が使用することができる。この場合、各ナノスケール磁気センサ105の領域またはその直近は、それぞれの結合部位116として機能するように官能化することができる。東芝プラットフォームの磁気センサ105間の最小最近傍距離112は90nmであり、これは、MNP102が超常磁性ナノ粒子(例えば、酸化鉄、白金鉄など)であり、バイオポリマー101が長さ150ntであり、センサアレイ110が、不揮発性データ記憶用途で使用されるものと同様の磁気トンネル接合(MTJ)の矩形(例えば、正方形)アレイであると仮定すると十分な間隔である。
【0103】
グリッドパターン(例えば、図19Bに示すような正方格子)における磁気センサ105の配置は、多くの可能な配置のうちの1つであることを理解されたい。磁気センサ105の他の配置も可能であり、本明細書の開示の範囲内であることが当業者によって理解されよう。例えば、磁気センサ105は、六角形のパターンで配置されてもよく、この場合、各磁気センサ105は、全て最近傍距離112にある最大6つの最近傍を有する。当業者によって理解されるように、結合部位116および磁気センサ105の六角形の配置を有する監視システム100のセンサ充填限界(例えば、最近傍距離112の最小値)は、磁気センサ105のサイズ、形状、および特性、バイオポリマー101の予想される長さ、ならびに使用されるMNP102のサイズおよびタイプの知識から導出することができる。
【0104】
例示的な監視方法
上述したように(例えば、図17A図17B図17C図18A図18B、および図18Cの説明において)、本明細書に記載の磁気センサ105は、単一分子プロセスを監視するための方法において使用することができる。図20は、いくつかの実施形態にかかる、テザリングされたMNP102の動きを検知する例示的な方法300のフロー図である。302において、任意に、磁気センサ105のノイズPSDは、その近傍にMNP102が全くない状態で決定される。上記で説明したように、このステップは、実行される場合、MNP102が存在するかどうかを決定するために他のPSDと比較することができるベースラインセンサPSDを確立する。
【0105】
304において、MNP102は、バイオポリマー101(例えば、核酸、タンパク質など)の第1の末端に結合される。上記で説明したように、MNP102は、例えば、超常磁性粒子および/または数ナノメートル(例えば、約5nm未満)の直径を有する粒子を含む任意の適切な粒子とすることができる。MNP102は、異なるサイズ(例えば、20nm)であってもよい。MNP102は、磁気センサ105によって検出され得る任意の適切な材料を含むことができるか、またはそれとすることができる。例えば、MNP102は、酸化鉄(FeO)、Fe、またはFePtとすることができるか、またはそれを含むことができる。
【0106】
306において、バイオポリマー101の第2の末端(他端)は、磁気センサ105によって検知される結合部位116に結合される。上述したように、結合部位116は、監視システム100の流体チャンバ115内にあってもよい。また上述したように、磁気センサ105は、任意の適切なセンサであってもよい。例えば、磁気センサ105は、MTJまたはSTOを含むことができる。
【0107】
308において、センサ信号207が、第1の検出期間中および第2の検出期間中に磁気センサ105から取得される。上記で説明したように、センサ信号207は、例えば、電流、電圧、抵抗、ノイズ(例えば、周波数ノイズまたは位相ノイズ)、周波数(例えば、STOの発振周波数)、磁場などとすることができるか、またはそれらを示すことができる。第1の検出期間および第2の検出期間は、部分的に重複する期間であってもよく、または重複しなくてもよく、その場合、(例えば、図17Bおよび図17Cならびに図18Bおよび図18Cの説明において上述したように)第1の期間および第2の期間の間に解(例えば、Mg2+イオンを含有する)が(例えば、検出装置流体チャンバ115に)追加されてもよい。
【0108】
310において、第1の検出期間と第2の検出期間との間のセンサ信号207の変化の分析に基づいて、MNP102の動きが検出される。第1の検出期間と第2の検出期間との間のセンサ信号207の変化は、例えば、第1の検出期間に対応する信号の一部の第1の自己相関を取得し、第2の検出期間に対応する信号の一部の第2の自己相関を取得し、(例えば、図18A図18B、および図18Cの説明において上述した自己相関関数を比較することによって)第1の自己相関と第2の自己相関との間の少なくとも1つの差を識別することによって検出されてもよい。別の例として、第1の検出期間と第2の検出期間との間のセンサ信号207の変化は、部分的には、磁気センサ105のノイズPSDに加えられると、第1の検出期間および/または第2の検出期間中にセンサ信号207のPSDをもたらす少なくとも1つのローレンツ関数を決定することによって検出されてもよい。MNP102の動きは、第1の検出期間中に捕捉されたセンサ信号207にフィッティングさせるローレンツ関数と、第2の検出期間中に捕捉されたセンサ信号207にフィッティングさせるローレンツ関数との比較に基づいて、決定することができる。センサ信号207の処理および/または分析は、時間領域、周波数領域、またはこれらの組み合わせで実行することができる。例えば、上述したように、異なる時間に取られたセンサ信号207の部分の自己相関関数は、磁気センサ105によって検知されているMNP102の動きを明らかにすることができる。状況によっては、この分析には時間領域処理が好ましい場合がある。別の例として、上述したように、センサ信号207のPSDは、ローレンツ関数によって処理および/またはフィッティングされてもよく、および/または異なるローレンツ関数が比較されてもよい。いくつかの状況では、この処理は、周波数領域においてより便利とすることができる。さらに別の例として、センサ信号207が周波数(例えば、磁気センサ105のSTOの発振周波数)を伝達する場合、周波数領域処理(例えば、以下の時間領域データのフーリエ変換)が好ましい場合がある。さらに別の例として、自己相関関数が計算または決定され、さらなる分析のために周波数領域に変換することができる。
【0109】
方法300のステップは、例示的な順序で示されているが、ステップの少なくともいくつかは、異なる順序で実行することができることが理解されよう。ほんの一例として、ステップ306は、ステップ304(例えば、図17A図17B、および図17Cの説明において上述したように)の前に実行することができる。図20に示されるステップのいくつかは、リアルタイムで(またはほぼリアルタイムで)または後に実行することができることも理解されよう。例えば、ステップ302は、実行される場合、他のステップのいずれよりもはるかに早く、または他のステップの全てが完了した後(例えば、MNP102がすすぎ落とされた後に)でさえも実行することができる。別の例として、ステップ308の間に収集された1つ以上の信号を記録することができ、記録されたデータに対してステップ310を実行することができる。具体的には、磁気センサ105は、試験または実験中に読み取られる/問い合わせすることができ、収集されたセンサ信号207は、そのネイティブ形式または別の形式(例えば、サンプリング、増幅、正規化など)のいずれかで記録することができる(例えば、メモリに保存される)。後のある時点で、1つ以上のプロセッサ(例えば、少なくとも1つのプロセッサ130)は、記録されたセンサ信号207を取得および処理し、磁気センサ105によって監視されているMNP102が試験または実験中に移動したかどうか、および/またはいつ、および/またはどのように移動したかを決定することができる。
【0110】
多重磁気デジタル均一、非酵素的(HoNon)ELISA
上記で説明したように、従来のELISA(アナログ)読み出しシステムは、反応生成物を最終的に希釈する大量の容積を必要とし、従来のプレートリーダーを利用して検出可能な信号を生成するために数百万の酵素標識を必要とする。従来のELISA感度は、ピコモル濃度(例えば、pg/mL)以上の範囲に限定される。
【0111】
対照的に、単一分子測定は、本質的にデジタルである。各分子は、検出および計数することができる信号を生成する。信号の絶対量を検出するよりも、信号の有無(1sおよび0s)を測定する方が容易である。デジタルELISA感度は、アトモル(aM)からサブフェムトモル(fM)程度である。
【0112】
単一分子デジタルELISA技術の一例は、QuanterixのSimoaビーズに基づくアッセイである。(https://www.quanterix.com/simoa-technology/、2021年6月30日に最終訪問。)Simoaでは、常磁性粒子は、特定の標的に結合するように設計された抗体に結合される。これらの粒子は、試料に添加される。次いで、蛍光を発生させることができる検出抗体が添加され、目的は、ビーズ、結合タンパク質、および検出抗体からなる免疫複合体を形成することである。濃度が十分に低い場合、各ビーズは、1つの結合タンパク質または0個の結合タンパク質のいずれかを含有する。次いで、試料は、それぞれが1つのビーズを保持するのに十分な大きさの多数のマイクロウェルを有するアレイに装填される。蛍光基質を用いる酵素信号増幅および蛍光イメージングの後、データを分析することができる。
【0113】
従来のELISAおよびデジタルELISAの双方は、酵素信号増幅ならびに通常数時間続く複数の時間のかかるインキュベーション、反応および洗浄ステップを含む異種アッセイである。均一アッセイは、分析時間を大幅に短縮する分離または洗浄ステップによって試料を処理する必要なしに、単純なミックスアンドリード手順によるアッセイ測定を可能にするアッセイ形式である。しかしながら、短い検出時間は、通常、感度およびダイナミックレンジの減少と相関する。
【0114】
均一なアッセイの簡単さにより、デジタルELISAに匹敵する高感度の検出を得ることが可能である。例えば、均一エントロピー駆動生体分子アッセイ(HEBA)は、酵素の使用または正確な温度サイクルなしでワンポット触媒増幅信号生成を達成する。(例えば、Donghyuk Kimら,「Homogeneous Entropy-Driven Amplified Detection of Biomolecular Interactions」,ACS Nano,2016年7月,10(8),7467-75を参照されたい。)
【0115】
信号増幅を伴わないデジタル均一非酵素(HoNon)免疫吸着アッセイELISAが実証されている。(例えば、Kenji Akamaら,「Wash-and Amplification-Free Digital Immunoassay Based on Single-Particle Motion Analysis」,ACS Nano,2019年11月 13(11),13116-26;Kenji AkamaおよびHiroyuki Noji,「Multiplexed homogeneous digital immunoassay based on single-particle motion analysis」,Lab on a Chip,2020年12月発行;Kenji AkamaおよびHiroyuki Noji,「Multiparameter single-particle motion analysis for homogeneous digital immunoassay」,Lab on a Chip,2020年12月発行を参照されたい。)
【0116】
光学、プラズモン、および電気化学バイオセンサと比較して、磁気バイオセンサ(例えば、本明細書に記載の磁気センサ105)は、生物学的環境の大部分が非磁性であるため、低いバックグラウンドノイズを示す。センサ信号207はまた、試料マトリックスの種類の影響を受けにくく、それによって正確で信頼性の高い検出プロセスを可能にする。したがって、本明細書に記載のシステム(例えば、システム100)、装置、および方法の実施形態を使用して、「多重化磁気デジタルHoNon ELISA」と呼ぶことができるものを提供することができる。
【0117】
図21は、いくつかの実施形態にかかる多重化磁気デジタルHoNon ELISAに関与するいくつかの構成要素を示している。例の目的のために、図21に示すように、試験対象の3つのバイオマーカーA、B、およびCがあるものとする。これらの3つのバイオマーカーを試験するために、3つの抗バイオマーカービーズA、B、およびCも示されている。各ビーズは、MNP102と、可撓性分子テザーに結合することを可能にするテザー結合基(小さい円として示されている)とを含む。同じタイプのMNP102を各ビーズに使用することができ、または異なるビーズが異なるタイプのMNP102を含むことができる。例えば、抗バイオマーカービーズA、B、およびCに含まれるMNP102は、同じタイプ(例えば、同じ化学組成とすることができる(例えば、FeO、Fe、FePtなど)を有する単一のタイプのMNP102が、抗バイオマーカービーズA、B、およびCの全てに使用することができる)。あるいは、異なる抗バイオマーカービーズに対して2つ以上のMNP102タイプを使用することができる(例えば、FeOが抗バイオマーカービーズAに使用することができ、FePtが抗バイオマーカービーズBに使用することができるなど)。図21において、抗バイオマーカーAビーズは、第1のタイプのMNP102Aを含み、抗バイオマーカーBビーズは、第1のタイプと同じであっても異なっていてもよい第2のタイプのMNP102Bを含み、抗バイオマーカーCビーズは、第1のタイプおよび/または第2のタイプと同じであっても異なっていてもよい第3のタイプのMNP102Cを含む。異なるタイプの抗バイオマーカーの種類は、それらが互いに区別されることを可能にするように図面において異なって陰影が付けられているが、図面における陰影は、使用中のMNP102の化学組成が異なることを必ずしも意味しないことを理解されたい。
【0118】
上述したように、監視システム100は、センサアレイ110を含むことができる。図21は、いくつかの実施形態にかかる、そのようなセンサアレイ110の一部118を示している。部分118は、3つの磁気センサ105、すなわち磁気センサ105A、磁気センサ105B、および磁気センサ105Cを含む。各磁気センサ105は、流体チャンバ115内にあってもよい、センサアレイ110の表面117上のそれぞれの結合部位116を有する(すなわち、磁気センサ105Aは、結合部位116Aを有し、磁気センサ105Bは、結合部位116Bを有し、磁気センサ105Cは、結合部位116Cを有する)。各結合部位116における表面117には、それぞれの可撓性分子テザー(例えば、バイオポリマー101)が結合されている。例えば、結合部位116Aは、テザー101Aであり、結合部位116Bは、テザー101Bであり、結合部位116Cは、テザー101Cである。
【0119】
図22Aおよび図22Bは、いくつかの実施形態にかかる多重化磁気デジタルHoNon ELISAのための例示的な手順の一部を示している。図22Aは、(例えば、監視システム100の流体チャンバ115に溶液を添加することによる)MNP102Aを含む複数の抗バイオマーカーAビーズのセンサアレイ110への導入を示している。図22Aの右側に示されるように、MNP102Aを含む抗バイオマーカーAビーズは、磁気センサ105Aによって検知された結合部位116Aにおいてテザー101Aに結合する。図22Bは、MNP102Aのテザー101Aへの結合が、(例のためにMTJであると仮定される)磁気センサ105によって検出されたセンサ信号207にどのように影響するかを示している。センサ信号207によって示され、図22Bの左側にプロットされているように、MNP102Aを含む抗バイオマーカーAビーズがテザー101Aに結合する前に、センサ信号207のノイズPSDは、MNP102が存在しない場合にMTJセンサに予想される1/f特性を示す。図22Bの右側は、MNP102Aがテザー101Aに結合された後、センサ信号207のノイズPSDが、ノイズ全体にローレンツ関数が存在することに起因して予想される特性バンプ140を呈することを示している。全体的なノイズPSDにおけるバンプ140の存在は、MNP102が磁気センサ105Aにおいてテザー101Aに結合したことを示す。この時点では抗バイオマーカーAビーズのみが追加されているため、センサアレイ110内の全ての磁気センサ105が問い合わせられて、それらの全体PSDのうちのどれがバンプ140を有するかを識別し、それによって(例えば、テザー101の全てのうちのどれがタイプAの抗バイオマーカービーズを組み込んでいるかを決定するために)抗バイオマーカーAビーズの位置を決定することができる。
【0120】
図23は、図22Aおよび図22Bに示す例示的な手順における追加の可能なステップを示している。「(a)」および「(b)」とラベル付けされた図23の部分は、図22Aおよび図22Bの説明において上述された。その説明は、図23に適用され、繰り返されない。センサアレイ110内の抗バイオマーカーAビーズの位置を記録した後、別の複数の抗バイオマーカービーズを任意に添加することができる。例えば、図23は、複数の抗バイオマーカーBビーズを追加することを示し、そのうちの1つは、次にMNP102Bを含む。図23の「(c)」と表示された部分に示すように、MNP102Bを含む抗バイオマーカーBビーズは、磁気センサ105Cにおいてテザー101 Cに結合する。上記で説明したように、MNP102Bの存在は、磁気センサ105Cのセンサ信号207において検出することができ、全体的なノイズPSDは、MNP102Bによってもたらされるローレンツ成分に起因するバンプ140を有する。したがって、センサアレイ110内の抗バイオマーカーBビーズの位置は、以前に抗バイオマーカーAビーズを検知しなかったセンサアレイ110の磁気センサ105に問い合わせることによって決定することができる。抗バイオマーカーBビーズを検出する磁気センサ105の識別情報が決定された後、抗バイオマーカーAビーズを検出する磁気センサ105の識別情報/位置、およびセンサアレイ110内の抗バイオマーカーBビーズを検出する磁気センサ105の識別情報/位置が知られる。
【0121】
次に、任意に、別の複数の抗バイオマーカービーズを添加することができる。例えば、図23は、次に、そのうちの1つがMNP102Cを含む複数の抗バイオマーカーCビーズを添加することを示している。図23の「(d)」と表示された部分に示すように、MNP102Cを含む抗バイオマーカーCビーズは、磁気センサ105Bにおいてテザー101Bに結合する。上述したように、MNP102Cの存在は、磁気センサ105Bのセンサ信号207において検出することができ、全体的なノイズPSDは、MNP102Cによってもたらされるローレンツ成分に起因するバンプ140を有する。したがって、抗バイオマーカーCビーズの位置は、以前に抗バイオマーカーAビーズまたは抗バイオマーカーBビーズを検知しなかったセンサアレイ110の磁気センサ105を調べることによって決定することができる。抗バイオマーカーCビーズを検知する磁気センサ105の識別情報が決定された後、抗バイオマーカーAビーズを検知する磁気センサ105の識別情報/位置、抗バイオマーカーBビーズを検知する磁気センサ105の識別情報/位置、抗バイオマーカーCビーズを検知する磁気センサ105の識別情報/位置、およびセンサアレイ110内のMNP102を検知しなかった磁気センサ105の位置/識別情報は、全て既知である。
【0122】
任意に、追加の種類の抗バイオマーカービーズを添加し(例えば、3種類より多いまたは少ないバイオマーカーを試験することができる)、これらの追加の抗バイオマーカービーズの位置が上述したように決定することができる。
【0123】
次に、図24Aに示すように、先に添加した抗バイオマーカービーズに対応するバイオマーカーを添加することができる(例えば、監視システム100の流体チャンバ115に)。図24Aは、バイオマーカーA、B、およびCの全てを含有する複合生物学的溶液の添加を示している。抗バイオマーカーAビーズ、抗バイオマーカーBビーズ、および抗バイオマーカーCビーズの位置は既知であり、各バイオマーカーの種類は同じ種類の抗バイオマーカーのビーズにのみ結合するため、試験されるバイオマーカーの全てが干渉することなく同時に添加することができる。図24Aの例に示すように、タイプAのバイオマーカーは、テザー101Aに結合したMNP102Aを含む抗バイオマーカーAビーズに結合する。同様に、タイプBのバイオマーカーは、テザー101Cに結合したMNP102Bを含む抗バイオマーカーBビーズに結合し、タイプCのバイオマーカーは、テザー101Bに結合したMNP102Cを含む抗バイオマーカーCビーズに結合する。図24Bは、3つ全てのバイオマーカーA、B、およびC(上述したように、センサアレイ110の実装は、本明細書の図に示されているよりも多くの磁気センサ105を含有する(例えば、数千、数百万など)を有することができることを理解されたい)複合生物学的溶液の添加後にセンサアレイ110全体がどのように見えるかの例を示している。
【0124】
図25は、特定の磁気センサ105のセンサ信号207の検出されたノイズPSDからバイオマーカーの結合がどのように検出することができるかを示している。図25の左側は、(例えば、図22Aの右側に示されているセンサアレイ110の状態に対応する)MNP102Aがテザー101Aに結合した後の磁気センサ105Aの例示的なノイズPSDを示している。図25の左側のサイズは、成分センサノイズPSD(磁気センサ105Aによって引き起こされる)およびローレンツ関数(MNP102Aによって引き起こされる)を示しており、これらは、センサノイズPSDに加えられると、センサ信号207における全体的なノイズのPSDを生成する。図示の例では、ローレンツ関数のコーナー周波数は約10kHzであり、これは、上述したように、MNP102Aの直径の関数である:
【数38】
式中、上述したように、ηは周囲の液体の動粘度であり(室温における水の場合、それはおよそ
【数39】
である)、dはMNP102Aの直径であり、Kは分子テザー101Aのばね定数である。
【0125】
図25の右側は、複合生物学的溶液の添加後、およびタイプAのバイオマーカーが、磁気センサ105Aにおいてテザー101Aに結合したMNP102Aを含む抗バイオマーカーAビーズに結合した後の、磁気センサ105AのノイズPSDの例を示している。また、センサノイズPSDに加えられると、センサ信号207内の全体的なノイズのPSDを生成する成分センサノイズPSDおよびローレンツ関数も示されている。センサノイズPSDは、図25の左側と同じであるが、タイプAのバイオマーカーの組み込みにより、ローレンツ関数が変化している。タイプAのバイオマーカーの直径がMNP102Aの直径とほぼ同じであると仮定すると、ローレンツ関数のコーナー周波数は、以下によって与えられるより低い周波数にシフトする。
【数40】
したがって、磁気センサ105AにおけるバイオマーカーAの存在は、MNP102Aの見かけの直径をほぼ2倍にし、ローレンツ関数のコーナー周波数の無視できないシフトを引き起こす。このコーナー周波数のシフトを検出することにより、磁気センサ105AにおけるバイオマーカーAの存在を検出することができる。他の磁気センサ105における(あらゆる種類の)バイオマーカーの存在も同様に検出することができる。
【0126】
図26は、いくつかの実施形態にかかる、バイオマーカーの結合を検出するプロセス600のフロー図である。例えば、プロセス600は、とりわけ、図2Aの文脈で説明したような生物学的事象を検出するために使用することができる。602において、センサアレイ110の磁気センサ105のノイズPSDは、MNP102が存在しない(例えば、検知領域206にMNP102が全くない)状態で決定される。604において、バイオポリマー101(テザー)は、それぞれの磁気センサ105によって検知されるそれぞれの結合部位116に結合される。606において、複数の抗バイオマーカービーズを調製する。図21の考察において上述したように、抗バイオマーカービーズは、MNP102を含む。608において、抗バイオマーカービーズの第1のセット(例えば、試験される第1のタイプ)が監視システム100の流体チャンバ115に添加される。610において、抗バイオマーカービーズを検出する磁気センサ105の同一性(または位置)を決定する。上記で説明したように(例えば、図22Aおよび図22Bの説明において)、特定の磁気センサ105における抗バイオマーカービーズの存在は、抗バイオマーカービーズ(したがって、MNP102)の添加後のセンサ信号207の全体的なノイズPSDが、MNP102によって引き起こされるノイズのPSDを特徴付けるローレンツ関数の添加によるバンプ140を有するかどうかを決定することによって検出することができる。
【0127】
612において、試験される抗バイオマーカービーズがさらに存在するかどうか(例えば、図23を参照すると、抗バイオマーカーBビーズまたは抗バイオマーカーCビーズが存在するかどうか)が決定される。そうである場合、プロセス600は、ステップ608および610を繰り返す。追加される抗バイオマーカービーズがなくなると、監視システム100は、センサアレイ110のどの磁気センサ105が抗バイオマーカービーズを組み込んだテザー101を検知しているか、および複数のタイプの抗バイオマーカービーズの場合、どの磁気センサ105がどのタイプの抗バイオマーカービーズを検知しているかのマップを有する。
【0128】
614において、流体チャンバ115内の抗バイオマーカービーズに対応するバイオマーカーを含む溶液を流体チャンバ115に添加する。上記で説明したように、いくつかの実施形態の1つの利点は、複数のバイオマーカーを一度に試験することができるということである。したがって、流体チャンバ115が複数の種類の抗バイオマーカービーズを含む場合、添加された溶液は、複数の種類のバイオマーカーを含むことができ、それらの全てを同時に流体チャンバ115に添加することができる。(もちろん、試験される複数のバイオマーカーがある場合、それらは別々に添加することができることを理解されたい。)
【0129】
616において、センサ信号207は、それぞれのMNP102を検知する少なくともそれらの磁気センサ105から取得される。618において、バイオマーカーの結合は、ステップ610において収集されたセンサ信号207とステップ616において収集されたセンサ信号との間の比較に基づいて、検出される。例えば、図25の説明において上述したように、ステップ610からのセンサ信号207の全体的なノイズPSDにフィッティングさせるローレンツ関数のコーナー周波数が、ステップ616からのセンサ信号207の全体的なノイズPSDにフィッティングさせるローレンツ関数のコーナー周波数と比較されて、コーナー周波数が変化したかどうかを確認することができる。具体的には、上記で説明したように、バイオマーカーの組み込みは、MNP102の有効直径が増加することによるコーナー周波数の減少から検出することができる(例えば、バイオポリマー101の有効質量が増加し、MNP102の運動周波数が低下する)。
【0130】
プロセス600のステップは例示的な順序で示されているが、いくつかのステップは、異なる順序で実行することができることを理解されたい。単なる一例として、ステップ602、604、および606の順序は異なっていてもよい(例えば、ステップ604は、ステップ602の前またはステップ606の後に実行することができる。ステップ606は、ステップ602の前および/またはステップ604の前に実行することができるなど)。
【0131】
前述の説明および添付の図面では、開示された実施形態の完全な理解を提供するために特定の用語が記載されている。場合によっては、用語または図面は、本発明を実施するために必要とされない特定の詳細を意味することができる。
【0132】
本開示を不必要に不明瞭にすることを避けるために、周知の構成要素は、ブロック図形式で示され、および/または詳細には説明されず、または場合によっては全く説明されない。
【0133】
本明細書において特に明確に定義されていない限り、全ての用語には、本明細書および図面から暗示される意味、ならびに当業者によって理解される意味、および/または辞書、論文などで定義されている意味を含む、可能な限り最も広い解釈が与えられるべきである。本明細書に明示的に記載されているように、いくつかの用語は、それらの通常または通例の意味と一致しない場合がある。
【0134】
本明細書で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、特に明記しない限り、複数の指示対象を除外しない。「または」という単語は、特に明記しない限り、包括的であると解釈すべきである。したがって、「AまたはB」という句は、以下の全てを意味すると解釈すべきである:「AおよびBの双方」、「AであるがBではない」、および「BであるがAではない」。本明細書におけるいかなる「および/または」の使用も、「または」という単語が単独で排他性を意味することを意味しない。
【0135】
本明細書で使用される場合、「A、B、およびCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、またはCのうちの少なくとも1つ」、「A、B、またはCのうちの1つ以上」および「A、B、およびCのうちの1つ以上」の形態の語句は交換可能であり、それぞれ以下の意味の全てを包含する:「Aのみ」、「Bのみ」、「Cのみ」、「AおよびBであるがCではない」、「AおよびCであるがBではない」、「BおよびCであるがAではない」、および「A、B、およびCの全て」。
【0136】
「含む(include)」、「有する(having)」、「有する(has)」、「有する(with)」という用語、およびそれらの変形が本明細書で使用される限り、そのような用語は、「備える(comprising)」という用語と同様の方法で包括的である、すなわち、「含むが限定されない(including but not limited to)」を意味することを意図している。「例示的な(exemplary)」および「実施形態(embodiment)」という用語は、例を表すために使用され、選好または要件を表すために使用されない。「結合された(coupled)」という用語は、本明細書では、直接接続/取り付け、および1つ以上の介在要素または構造を介した接続/取り付けを表すために使用される。「上(over)」、「下(under)」、「間(between)」、および「上(on)」という用語は、本明細書では、他の特徴に対する1つの特徴の相対位置を指す。例えば、別の特徴の「上」または「下」に配置された1つの特徴は、他の特徴と直接接触してもよく、または介在材料を有してもよい。さらに、2つの特徴「の間」に配置された1つの特徴は、2つの特徴と直接接触してもよく、または1つ以上の介在する特徴または材料を有してもよい。対照的に、第2の特徴「上の」第1の特徴は、その第2の特徴と接触している。
【0137】
「実質的に(substantially)」という用語は、大部分またはほぼ述べられているような構造、構成、寸法などを説明するために使用されるが、製造公差などに起因して、実際には、構造、構成、寸法などが常にまたは必ずしも述べられているように正確ではない状況をもたらすことがある。例えば、2つの長さを「実質的に等しい」と記述することは、2つの長さが全ての実用的な目的で同じであることを意味するが、十分に小さいスケールで正確に等しくなくてもよい(およびそうである必要がなくてもよい)。別の例として、「実質的に垂直」である構造は、水平に対して正確に90度ではない場合であっても、全ての実用的な目的のために垂直であるとみなされる。
【0138】
図面は必ずしも縮尺通りではなく、特徴の寸法、形状、およびサイズは、図面に示されている方法とは実質的に異なっていてもよい。
【0139】
特定の実施形態が開示されているが、本開示のより広い精神および範囲から逸脱することなく、様々な変更および変形を行うことができることは明らかであろう。例えば、実施形態のいずれかの特徴または態様は、少なくとも実行可能な場合には、実施形態の他のいずれかと組み合わせて、またはその対応する特徴または態様の代わりに適用することができる。したがって、本明細書および図面は、限定的な意味ではなく例示的な意味でみなされるべきである。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図5D
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図15D
図15E
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図19D
図19E
図20
図21
図22A
図22B
図23-1】
図23-2】
図24A
図24B
図25
図26
【国際調査報告】