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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】変換可能な把持装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 7/04 20060101AFI20230726BHJP
   B25J 15/08 20060101ALI20230726BHJP
   B23F 23/06 20060101ALI20230726BHJP
   B23Q 3/06 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B23Q7/04 L
B25J15/08 Z
B23F23/06
B23Q3/06 304K
B23Q3/06 304J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568540
(86)(22)【出願日】2021-07-02
(85)【翻訳文提出日】2023-01-10
(86)【国際出願番号】 EP2021068422
(87)【国際公開番号】W WO2022008391
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】00844/20
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】599172531
【氏名又は名称】ライシャウァー アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カサウレタ,パトリック
【テーマコード(参考)】
3C016
3C025
3C033
3C707
【Fターム(参考)】
3C016CB06
3C016CB11
3C016CE00
3C025HH03
3C033HH25
3C707DS10
3C707ES03
3C707ES05
3C707ET08
3C707MT10
(57)【要約】
把持装置は、ホルダー100と、2つのグリッパユニット210、210’とを備える。グリッパユニットのそれぞれは、本体211;211’と、2つのベースジョー212、213;212’、213’とを備える。ベースジョーは、本体に対して互いに反対方向に同期して動くことができる。グリッパユニットは、ホルダー上で互いに隣接し、したがって、2つのグリッパユニットのベースジョーが共通のグリッパ平面に対して平行に動くことができる。把持装置は、第1のグリッパフィンガー250;250’のみを2つの外側ベースジョー212、212’のそれぞれに取り付けることにより、シングルグリッパとして構成される。把持装置は、2つの更なるグリッパフィンガーを内側ベースジョーに取り付けることにより、又は、第1のグリッパフィンガーを取り外して、第2のグリッパフィンガーを4つのベースジョーのそれぞれに取り付けることにより、ダブルグリッパに非常に容易に変換することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
把持装置であって、
ホルダー(100)と、
2つのグリッパユニット(210、210’)と、
を備え、
前記グリッパユニット(210、210’)のそれぞれは、駆動部と、2つのベースジョー(212、213;212’、213’)とを含むベース本体(211;211’)を備え、前記ベースジョー(212、213;212’、213’)は、前記駆動部によって、前記ベース本体(211;211’)に対して互いに反対方向に同期して可動であり、
前記2つのグリッパユニット(210、210’)は、双方のグリッパユニット(210、210’)の前記ベースジョー(212、213;212’、213’)が共通のグリッパ平面(E)に対して平行に可動であるように、前記ホルダー(100)に横並びで配置され、各グリッパーユニット(210、210’)の前記ベースジョーのうちの一方は、内側ベースジョー(213;213’)であり、各グリッパユニットの他方の前記ベースジョーは、外側ベースジョー(212;212’)であり、前記2つのグリッパユニットの前記内側ベースジョー(212、212’)は、前記2つのグリッパユニットの前記外側ベースジョー(213、213’)間に配置され、
前記把持装置は、シングルグリッパとして構成され、第1のグリッパフィンガー(250;250’)が、前記外側ベースジョー(212、212’)のそれぞれに取り付けられ、それにより、第1の物体(320)を前記第1のグリッパフィンガー(250、250’)によって捕捉することができ、一方、前記内側ベースジョー(213、213’)は、物体を捕捉するグリッパフィンガーを保持しないことを特徴とする、前記把持装置。
【請求項2】
第1の動作モードにおいて、前記2つのグリッパユニット(210、210’)の前記駆動部を、前記2つのグリッパユニット(210、210’)の前記外側ベースジョー(212、212’)が互いに反対方向に同期して動くように連動して制御するように構成されるコントローラー(440)をさらに備える、請求項1に記載の把持装置。
【請求項3】
前記把持装置は、2つのさらなる第1のグリッパフィンガーを前記内側ベースジョー(213、213’)に取り付けることによって、又は、2つの前記第1のグリッパフィンガー(250、250’)を前記外側ベースジョー(212、212’)から取り外し、第2のグリッパフィンガー(220、230、220’、230’)を前記外側ベースジョー(212、212’)及び前記内側ベースジョー(213、213’)のそれぞれに取り付けることによって、ダブルグリッパ構成に変換可能であり、それにより、第2の物体(310、310’)を、前記2つのグリッパユニット(210、210’)のそれぞれによって捕捉することができる、請求項1又は2に記載の把持装置。
【請求項4】
双方のグリッパユニット(210、210’)の前記内側ベースジョー(213、213’)に取り付けられるように構成される2つのさらなる第1のグリッパフィンガー、又は、
前記第1のグリッパフィンガー(250、250’)を取り外した後に、前記2つのグリッパユニット(210、210’)の前記ベースジョー(212、213、212’、213’)のそれぞれ1つに取り付けられ、それにより、第2の物体(310、310’)を前記2つのグリッパユニット(210、210’)のそれぞれによって独立して捕捉することができるように構成される4つの第2のグリッパフィンガー(220、230、220’、230’)、
を備える、請求項3に記載の把持装置。
【請求項5】
前記コントローラーは、前記2つのグリッパユニット(210、210’)を互いに独立して制御する第2の動作モードに切替え可能である、請求項3又は4と組み合わせた場合の請求項2に記載の把持装置。
【請求項6】
前記グリッパユニット(210、210’)のそれぞれは、位置検知装置(240、240’)を備え、前記位置検知装置(240、240’)は、それぞれの前記グリッパユニット(210、210’)の前記外側ベースジョー(212、212’)に取り付けられるグリッパフィンガー(220、220’)上のターゲット(243、243’)の位置を確定するように構成される、請求項1~5のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項7】
前記位置検知装置(240、240’)は、誘導位置センサー(241、241’)を備え、前記ターゲット(243、243’)は、軟磁性材料を含む、請求項6に記載の把持装置。
【請求項8】
前記第1のグリッパフィンガー(250、250’)及び/又は第2のグリッパフィンガー(220、230、220’、230’)のそれぞれは、
ベースフィンガー(251;251’;221;231)と、
グリッパ爪(252;252’;222;232)と、
を備え、
前記ベースフィンガー(251;251’;221;231)は、前記ベースジョー(212;213、212’、213’)のうちの1つに解除可能に接続可能であり、
前記グリッパ爪(252;252’;222;232)は、前記ベースフィンガー(251;251’;221;231)に解除可能に接続される、請求項1~7のいずれか1項に記載の把持装置。
【請求項9】
前記グリッパ爪(252;252’;222;232)は、解除可能なスナップ接続によって前記ベースフィンガー(251;251’;221;231)に接続可能である、請求項8に記載の把持装置。
【請求項10】
前記グリッパ爪(252;252’;222;232)は、少なくとも1つの締結カム(229)を備え、
前記ベースフィンガー(251;251’;221;231)は、フィンガーの長手方向を規定し、前記フィンガーの長手方向に対して横断方向に延在する側面挿入開口(223)を有し、前記側面挿入開口(223)には、前記グリッパ爪(252;252’;222;232)の少なくとも1つの前記締結カム(229)を、前記フィンガーの長手方向に対して横断方向に挿入することができ、
特に横方向ピン(225)の形態の掛止突出部を有するとともに、前記挿入開口(223)内に延在する、ばね付勢された固定ピン(224)が、前記ベースフィンガー(251;251’;221;231)に設けられ、
前記固定ピン(224)は、前記締結カム(229)が前記挿入開口(223)に挿入されて、前記解除可能なスナップ接続を確立したときに、前記掛止突出部が前記締結カム(229)の凹部に掛止するように、及び、前記解除可能なスナップ接続が、前記固定ピン(224)に形成される又は前記固定ピン(224)に接続される作動部材(226)に対する圧力によって解除可能であるように、形成及び配置される、請求項9に記載の把持装置。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の把持装置を備える歯切り盤であって、前記第1のグリッパフィンガー(250、250’)及び/又は第2のグリッパフィンガー(220、230、220’、230’)は、歯付きワークを捕捉するように構成される、前記歯切り盤。
【請求項12】
歯付きワークを捕捉する、特に、歯切り盤(400)におけるワーク変更を行う、請求項1~10のいずれか1項に記載の把持装置の使用。
【請求項13】
請求項1~10のいずれか1項に記載の把持装置の動作方法であって、
前記第1のグリッパフィンガー(250、250’)を用いて、前記2つのグリッパユニット(210、210’)の前記駆動部を、前記2つのグリッパユニット(210、210’)の前記外側ベースジョー(212、212’)が互いに反対方向に同期して動くように連動して制御することによって、物体(320)を捕捉することを含む、方法。
【請求項14】
2つのさらなる第1のグリッパフィンガーを前記内側ベースジョー(213、213’)に取り付けることにより、又は、2つの前記第1のグリッパフィンガー(250、250’)を前記外側ベースジョー(212、212’)から取り外し、第2のグリッパフィンガー(220、230、220’、230’)を前記外側ベースジョー(212、212’)及び前記内側ベースジョー(213、213’)のそれぞれに取り付けることにより、前記把持装置をシングルグリッパ構成からダブルグリッパ構成に変換することを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記ダブルグリッパ構成への変換後、前記2つのグリッパユニット(210、210’)のそれぞれの前記ベースジョー(212、213;212’、213’)が、それぞれの他の前記グリッパユニットの前記ベースジョーとは独立して、互いに反対方向に同期して動くように、前記2つのグリッパユニット(210、210’)の前記駆動部を独立して制御することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記2つのグリッパユニット(210、210’)の前記外側ベースジョー(212、212’)に取り付けられるグリッパフィンガー(220、220’)のそれぞれのターゲット(243)の位置を確定することを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、把持装置、把持装置を備える加工機、そのような把持装置の使用、及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
いわゆる2爪平行グリッパが従来技術から既知である。2爪平行グリッパは、ベース本体と、2つのグリッパ爪とを備える。グリッパ爪は、ベース本体上で、互いに接離するように同期して直線的に動くことができる。このストローク運動に用いる駆動部は、例えば、空気式又は電気式のものとすることができる。2爪平行グリッパは、例えば、ドイツ、77866、ライナウ所在のZimmer Group GmbH社から、「GPP5000シリーズ」(空気式)及び「GEP5000シリーズ」(電気式)として、異なるサイズで、異なるストローク範囲及び異なる把持力範囲のものを入手可能である。爪は、復帰ばねによって開放位置又は閉鎖位置の方向に予付勢することができる。空気駆動式2爪平行グリッパは、ドイツ、74348、ラウフェン所在のSchunk GmbH & Co.KG社による「ユニバーサルグリッパーPGN-Plus-P 380」の製品情報からも既知である。
【0003】
従来技術から、いわゆる2爪アングルグリッパも既知である。2爪アングルグリッパにおいて、グリッパ爪は、2つの平行な旋回軸周りに互いに接離するように同期して旋回される。Zimmer Group GmbH社による「GPW5000シリーズ」が一例として言及される。以下では、2爪平行グリッパ及び2爪アングルグリッパは、総称して2爪グリッパと呼ぶ。
【0004】
従来技術では、共通のホルダーに2つの個別の2爪グリッパを配置して、ダブルグリッパを形成することが提案されている。例えば、特許文献1において、2つの2爪アングルグリッパを、共通のホルダーに互いに角度をなして又は隣同士平行に配置することが提案されている。
【0005】
グリッパの重要な適用領域は、加工機におけるワークを変更する、特に歯切り盤における歯車を変更するハンドリング装置である。ハンドリング装置は、ワークスピンドルとワークレストとの間でワークを移動させるのに使用される。このために、ワークは、ハンドリング装置のグリッパによって把持される。
【0006】
加工機のサイクル時間を最小限にするために、ダブルグリッパを備えるハンドリング装置が使用される場合がある。一方の2爪グリッパを使用して、ワークスピンドルから完成したワーク(完成部品)を取り外す一方で、他方の2爪グリッパは、次のブランクを準備して保持している。次いで、ハンドリング装置は、ダブルグリッパがブランクをワークスピンドルに移送する位置に、ダブルグリッパを移動させる。その後、ハンドリング装置は、ダブルグリッパが完成部品をワークレストに置き、次のブランクを捕捉する位置に、ダブルグリッパを移動させる。これにより、シングルグリッパと比較して相当な時間を削減することができる。
【0007】
ダブルグリッパを備えるハンドリング装置は、小さな直径を有するワークに主に使用されるが、これらのハンドリング装置は、空間的な理由から、より大きなワークに対して使用することができないことが多い。したがって、大小双方のワークを同じ機械において処理する場合、ダブルグリッパの利点は必然的になくなるか、又は、時間のかかるハンドリング装置全体の交換若しくは変換をその都度行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】独国実用新案第29500340号
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、異なるサイズのワークに対して使用することができ、特に迅速なワーク変更を可能にするように、より小さなワークに向けた変更を可能にする把持装置を提供することである。
【0010】
この目的は、請求項1の特徴によって達成される。有利な実施形態は、従属請求項に提供される。
【0011】
ホルダー及び2つのグリッパユニットを備える把持装置が提案される。グリッパユニットのそれぞれは、各自の駆動部と2つのベースジョーとを備えるベース本体を有する。ベースジョーは、駆動部によって、ベース本体に対して互いに反対方向に同期して動くことができる。2つのグリッパユニットは、双方のグリッパユニットのベースジョーが、共通のグリッパ平面に対して平行に動くことができるように、ホルダーで互いに横並びで配置される。各グリッパユニットのベースジョーのうちの一方は、内側ベースジョーを形成し、各グリッパユニットの他方のベースジョーは、外側ベースジョーを形成する。2つのグリッパユニットの内側ベースジョーは、外側ベースジョー間に配置される。把持装置は、シングルグリッパとして形成され、ここでは、第1のグリッパフィンガーが、外側ベースジョーのそれぞれに取り付けられ、第1のグリッパフィンガーを用いて第1の物体を捕捉することができるが、内側ベースジョーは、物体を捕捉するグリッパフィンガーを保持しないようになっている。
【0012】
したがって、2つのグリッパユニットは、例えば旋回アームとして設計することができる共通のホルダーに横並びで設けられる。そのような設計は、本質的にダブルグリッパの特徴である。しかしながら、把持装置は、ダブルグリッパとして動作せず、シングルグリッパとして動作する。各グリッパユニットの外側ベースジョーのみが使用される一方で、内側ベースジョーは把持プロセスに関与しない。2つのグリッパユニットの外側ベースジョーは、各個別のグリッパユニットの2つのベースジョーよりも互いに対して遠くに離隔される。これにより、シングルグリッパユニットを用いるよりも大きな物体(特にワーク)を、把持装置によって捕捉することが可能である。2つのグリッパユニットのそれぞれは、各自の駆動部を有し、必要に応じて各自の復帰ばねを有するため、シングルグリッパユニットに比べて2倍の把持力を生成することができる。これは、大きな物体の場合に特に有利である。
【0013】
把持装置は、第1の動作モードにおいて、2つのグリッパユニットの駆動部を、物体を捕捉する又は置くために、2つのグリッパユニットの外側ベースジョーが互いに反対方向に同期して動くように連動して制御するように構成されるコントローラーを備えることが好ましい。
【0014】
把持装置は、2つの追加の第1のグリッパフィンガーを内側ベースジョーに取り付けることにより、又は、2つの第1のグリッパフィンガーを外側ベースジョーから取り外して、他の、通常はより小さな物体を捕捉するように設計される第2のグリッパフィンガーを外側ベースジョー及び内側ベースジョーのそれぞれに取り付けることにより、ダブルグリッパに容易に変換することができる。このようにして、2つのグリッパユニットのそれぞれは、他方のグリッパユニットとは独立して第2の物体を捕捉するように使用することができる。
【0015】
したがって、把持装置は、ダブルグリッパとして動作するための変換に必要な更なるグリッパフィンガーをキットとして含むことができる。特に、把持装置は、言及した2つの更なる第1のグリッパフィンガー又は言及した4つの第2のグリッパーフィンガーを備えることができる。これらのグリッパフィンガーは、ダブルグリッパ動作のために対応するベースジョーに取り付けることができるが、シングルグリッパ動作においてベースジョーから取り外される。
【0016】
したがって、ダブルグリッパ動作用のコントローラーは、2つのグリッパユニットを互いに独立して制御する第2の動作モードに切り替えることができることが有利である。
【0017】
把持装置の動作状態を確実に確定することが可能であるように、グリッパユニットのそれぞれは、グリッパフィンガーのうちの1つにおけるターゲットの位置を確定するように設計される位置検知装置を備えることができる。これは、それぞれの外側グリッパフィンガー、すなわち、それぞれの外側ベースジョーに取り付けられるグリッパフィンガーであることが好ましい。このようにして、2つの外側ベースジョーの位置は、シングルグリッパ動作及びダブルグリッパ動作の双方において確実に確定することができる。
【0018】
特に、位置検知装置は、誘導位置センサーを備えることができる。この場合、ターゲットは、軟磁性材料から作製されるターゲットであることが好ましい。しかしながら、他の測定原理、例えば、光学距離センサー又は渦電流センサーも想定可能である。
【0019】
ベースジョーは、それぞれのグリッパユニットのベース本体に対して直線的に変位可能である、すなわち、それぞれのグリッパユニットは、2爪平行グリッパを形成することが好ましい。代替的に、ベースジョーは、ベース本体に対して旋回することが可能であり得る、すなわち、それぞれのグリッパユニットは、2爪アングルグリッパを形成することができる。
【0020】
各グリッパユニットのベースジョーに対する駆動部は、特に、空気式又は電気式に作動することができる。ベースジョーは、駆動部が作動すると、同期して反対方向の動きを強制的に実行するように、駆動部に機械的に結合することができる。各グリッパユニットは、グリッパ爪を非駆動状態でベースジョーの閉鎖位置又は開放位置の方向に予付勢する復帰ばねを備えることができる。
【0021】
第1のグリッパフィンガー及び第2のグリッパフィンガーは、様々なタイプの物体を捕捉するように構成することができる。物体の重要なクラスの1つは、加工機のワークである。好ましい実施形態において、グリッパフィンガーは、歯付きワーク、特に外歯車(平歯車)を捕捉するように設計される。この場合、ワークは、2つのグリッパフィンガーを互いに向かって同期して動かすことによって、グリッパフィンガー間に捕捉される。各グリッパーフィンガーは、ワークに向かって内方に向いたグリッパ爪を有し、このグリッパ爪は、この動きの結果として、グリッパ爪がワークの外周を内向きの把持力によって力嵌合様式で保持するように設計される。しかしながら、把持装置を使用して、環状の、特に内歯付きのワークを内周において捕捉することも想定可能である。このために、グリッパフィンガーは、対応して外方に向いたグリッパ爪又はグリッパボルトを有することができ、このグリッパ爪又はグリッパボルトは、グリッパフィンガーが互いに反対方向に外向きに動く結果として、ワークの内周を外向きの把持力によって力嵌合様式で保持するように設計される。
【0022】
グリッパフィンガーは、モジュール式設計であり、異なるタイプのワークに特に迅速かつ柔軟に適合することを可能にすることが好ましい。このために、第1のグリッパフィンガー及び/又は第2のグリッパフィンガーのそれぞれは、ベースフィンガー及びベースフィンガーとは別個に形成されるグリッパ爪を備える。ベースフィンガーは、ベースジョーのうちの1つに、特にその近位端部に着脱可能に接続することができる。グリッパ爪は、ベースフィンガーに、特に、ベースフィンガーの近位端部と遠位端部との間の領域に解除可能に接続される。このようにして、グリッパ爪は、装置を異なるワークに適合させるために、非常に容易かつ迅速に交換することができる。
【0023】
それぞれのグリッパ爪を着脱可能なスナップ接続によって関連するベースフィンガーに接続することができる場合、グリッパ爪の特に迅速な変更が可能である。
【0024】
有利な実施形態において、グリッパ爪は、このために少なくとも1つの締結カムを有する。ベースフィンガーは、フィンガーの長手方向を規定する。ベースフィンガーは、フィンガーの長手方向に対して横断方向に延在する側面挿入開口を有し、この側面挿入開口には、グリッパ爪の少なくとも1つの締結カムを、フィンガーの長手方向に対して横断方向に挿入することができる。掛止突出部を有するばね付勢された固定ピンがベースフィンガーに取り付けられる。掛止突出部は、例えば、固定ピンを通じて横断方向に延在する横方向ピンによって形成することができる。少なくとも掛止突出部が挿入開口内に延在する。固定カムが挿入開口に挿入されて、解除可能なスナップ接続を確立したとき、掛止突出部が固定カムの凹部に係合する。固定ピンは、ピンの長手方向軸を規定する。固定ピンは、ピンの長手方向軸に沿ってベースフィンガーに対して変位可能である。固定ピンは、ベースフィンガーの外側の領域内に延在する。この領域では、作動部材が固定ピンに形成されるか又は固定ピンに接続される。作動部材は、特に、使用者の指に対する接触面を形成するディスク又はキャップとして設計することができる。解除可能なスナップ接続は、作動部材に対する軸方向圧力と、その結果生じるピンの長手方向軸に沿った固定ピンの変位とによって再び解除することができる。固定ピンは、ベースフィンガーの外側の領域において螺旋ばねによって包囲することができる。ばねは、例えば、少なくとも1つの締結カムを固定する位置の方向において固定ピンにばね力を印加するために、ベースフィンガーの外面と、固定ピンに取り付けられ、作動部材に形成することができる対向停止部との間で圧縮可能とすることができる。グリッパ爪は、2つの平行な固定カムを有し、固定ピンは、挿入状態において、固定カムの間に位置する挿入開口の領域を貫通することが好ましい。したがって、固定ピンは、ピンの長手方向軸に対して横断方向の固定ピンの長手方向軸に対して対称に延在する2つの掛止突出部を有する。特にこの場合、掛止突出部が、固定ピンを横断方向に貫通する横方向ピンによって固定ピンの両側に形成される場合が有利である。
【0025】
把持装置を使用して、歯切り盤において、特にワーク交換のために、歯付きワークをハンドリングする、すなわち、ブランクを歯切り盤に給送するとともに、歯切り盤から完成部品を取り外すことができることが特に有利である。したがって、本発明は、上述したタイプの把持装置を備える歯切り盤にも関する。
【0026】
本発明は、上記タイプの把持装置の動作方法をさらに提供する。この方法において、シングルグリッパ動作では、第1のグリッパフィンガーにより、2つのグリッパユニットの駆動部を、2つのグリッパユニットの外側ベースジョーが互いに反対方向に同期して動くように連動して制御することによって物体を捕捉する。
【0027】
本方法は、2つの追加の第1のグリッパフィンガーを内側ベースジョーに取り付けることにより、又は、2つの第1のグリッパフィンガーを外側ベースジョーから取り外し、第2のグリッパフィンガーを外側ベースジョー及び内側ベースジョーのそれぞれに取り付けることにより、把持装置をシングルグリッパからダブルグリッパに変換することをさらに含むことができる。
【0028】
このプロセスは、ダブルグリッパへの変換の後、2つのグリッパユニットによって互いに独立して物体を捕捉することを含むことができる。このために、2つのグリッパユニットの駆動部は、2つのグリッパユニットのそれぞれのベースジョーが、それぞれの他のグリッパユニットのベースジョーとは独立して、互いに反対方向に同期して動くように制御される。
【0029】
本方法は、シングルグリッパ動作及び/又はダブルグリッパ動作において、2つのグリッパユニットの外側ベースジョーに取り付けられるグリッパフィンガーのそれぞれにおける1つのターゲットの位置を確定することを含むことができる。
【0030】
本発明の好ましい実施形態が、図面を参照して以下に記載されるが、図面は、単に説明としての役割を果たすものであり、限定するものとして解釈されるようには意図されない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、それ自体既知のシングルグリッパユニットの拡大図である。
図2図2は、2つのグリッパユニットを備える把持装置の斜視図である。
図3図3は、図1の把持装置の分解図である。
図4図4は、シングルグリッパ動作用に改造した後の図1の把持装置の分解図である。
図5図5は、一対のベースフィンガーの斜視図である。
図6図6は、ベースフィンガーのうちの一方の平面図である。
図7図7は、図6のA-A面の拡大断面図である。
図8図8は、図7の部分Zの拡大断面図である。
図9図9は、図2の把持装置を備える歯切り盤の概略斜視図である。
図10図10は、図9の部分Bの拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
<シングルグリッパユニット>
図1は、従来技術からそれ自体既知のグリッパユニット210を示している。グリッパユニットは、多くの異なる変形において市販されている空気駆動式2爪平行グリッパである。グリッパユニット210は、別個には図示されていない空気式駆動部が収容される、ベース本体211を備える。圧縮空気がホース接続部214を介して駆動部に供給される。グリッパユニット210は、2つのベースジョー212、213をさらに備え、ベースジョー212、213は、ベース本体211において変位方向Vに沿って同一直線上でガイドされる。ベースジョー212、213は、駆動部により、ベース本体210に対して互いに反対方向に接離するように同期して変位可能である。実施形態に応じて、ベース本体210内に復帰ばねが存在する場合があり、復帰ばねにより、非駆動状態で、閉鎖又は開放する復帰力がベースジョー212、213に対して印加される。
【0033】
<ダブルグリッパ設計>
図2及び図3は、2つのグリッパユニット210、210’を備えるグリッパアームの形態の把持装置を示している。これらのグリッパユニットのそれぞれは、図1に従って構成される。グリッパユニット210、210’は、旋回アームの形態の共通のホルダー100上に横並びで取り付けられる。グリッパユニット210、210’は、実質的に同一の構成であり、グリッパユニット210、210’間の中心に延在する鉛直鏡面に関して互いに鏡反転式に取り付けられる。各グリッパユニットに接続される更なる構成要素のそれぞれも、他方のグリッパユニット上のそれぞれの構成要素に対して鏡反転式に配置される。
【0034】
図2の右側に配置されるグリッパユニット及びそれに接続される全ての構成要素は、以下でプライム記号なしの参照符号によって示す。図2の左側に配置されるグリッパユニット及びそれに接続される全ての構成要素は、同じ参照符号にプライム記号を付けて示す。
【0035】
2つのグリッパユニット210、210’のベースジョー212、213、212’、213’は、いずれも、共通のグリッパ平面Eにおける変位方向Vに沿って互いに対して同一直線上で変位可能である。各グリッパユニットのうち、それぞれ他方のグリッパユニットのベースジョーに隣接して配置されるベースジョー213、213’は、以下で「内側ベースジョー」と称し、他の2つのベースジョー212、212’は、「外側ベースジョー」と称する。内側ベースジョー213、213’は、変位方向Vに関して外側ベースジョー212、212’の間に配置される。
【0036】
図2及び図3の実施形態において、把持装置は、ダブルグリッパとして設計される。このために、グリッパフィンガー220、230、220’、230’は、ベースジョー212、213、212’、213’のそれぞれに取り付けられる。第1のグリッパユニット210のベースジョー212、213におけるグリッパフィンガー220、230は、歯車形状のワーク310を間に受けるように形成及び配置される。ワーク310を把持するためには、第1のグリッパユニット210が、ベースジョー212、213を、好ましくは復帰ばねの閉鎖復帰力の作用によって互いに向かって同期して動かす。その結果、ワーク310は、グリッパフィンガー220、230間の内向きの把持力によって力嵌合様式で保持される。ワーク310を解放するためには、第1のグリッパユニット210が、ベースジョー212、213を互いから離れるように同期して動かす。第1のグリッパユニット210におけるグリッパフィンガー220、230と鏡対称となるように、第2のグリッパユニット210’におけるグリッパフィンガー220’、230’も、別のワーク310’を間に受けることができるように形成及び配置される。ワーク310’を把持及び解放するためには、第2のグリッパユニット210’が、ベースジョー212’、213’を互いに対して接離するように同期して動かす。これは、第1のグリッパユニット210の作動とは独立して行われる。このように、全体として2つのワークを把持装置によって互いに独立して捕捉すること及び置くことができる。
【0037】
グリッパフィンガー220、230、220’、230’は、モジュール式構成である。例えば、グリッパフィンガー220は、ベースフィンガー221及びグリッパ爪222を備える。ベースフィンガー221は、近位端部及び遠位端部を有する。近位端部において、ベースフィンガー221は、第1のグリッパユニット210の外側ベースジョー212に着脱可能に取り付けられる。この取付けは、例えば、図示されていないねじ接続によって達成することができる。位置決めの正確さを増すために、位置決めスリーブを、それ自体既知の様式でベースジョーに設けることができる。グリッパ爪222は、ベースフィンガー221の近位端部と遠位端部との間に位置する領域においてベースフィンガー221に横方向に取り付けられる。この接続も解除可能である。本例において、グリッパ爪222のベースフィンガー221への取付けは、下記でさらに詳細に説明するクイックチェンジ装置によって達成される。グリッパフィンガー230は、グリッパフィンガー220と同様に構築され、同様に、ベースフィンガー231及びグリッパ爪232を備える。グリッパ爪222、232は、間にワーク310を受けることができるように互いに面する。その際、各グリッパ爪は、ワークが傾くのを防止するために、ワークの円周に沿った少なくとも2箇所においてワーク310に接触する。グリッパフィンガー220’、230’の構造は、グリッパフィンガー220、230の鏡像である。
【0038】
モジュール式設計に起因して、グリッパフィンガーは、グリッパ爪を単に交換することによって、異なるワーク、例えば、異なる直径を有する歯車に非常に迅速かつ容易に適合することができる。
【0039】
グリッパユニット210、210’のそれぞれには、それぞれのグリッパユニット210、210’の動作状態を確定する位置検知装置240、240’が設けられる。位置検知装置240、240’は、それぞれの外側グリッパフィンガー220、220’の近位端部付近に位置するターゲット243、243’の位置をそれぞれ確定する。本例において、位置検知装置240、240’は、誘導位置センサー(変位トランスデューサー)241、241’をそれぞれ備える。したがって、ターゲット243、243’は、対応する鋼等の軟磁性材料から少なくとも部分的に作製される。位置センサーを保護するために、各位置検知装置240、240’は、それぞれのグリッパユニット210、210’のベース本体211、211’に取り付けられるとともに、それぞれの位置センサー241、241’及びそれぞれのターゲット243、243’の双方を覆うハウジング242、242’を備える。
【0040】
<シングルグリッパ設計>
図4は、シングルグリッパへの変換を示している。このために、ダブルグリッパとして動作するように使用されていたグリッパフィンガー220、230、220’、230’は、内側ベースジョー213、213’及び外側ベースジョー212、212’から取り外される。代わりに、ここでは2つの他のグリッパフィンガー250、250’が、外側ベースジョー212、212’に取り付けられる。内側ベースジョー213、213’は、空いたままにするか又はカバーによって保護される。内側ベースジョー213、213’は、もはや把持プロセスには関与しない。
【0041】
グリッパフィンガー250、250’もモジュール式であり、ベースフィンガー251、251’及びグリッパ爪252、252’をそれぞれ備える。ベースフィンガー251、251’及びグリッパ爪252、252’は、ここでは、より大きなワーク320をグリッパフィンガー250、250’間に捕捉することができるような寸法である。
【0042】
ワーク320を把持する又は置くために、2つのグリッパユニット210、210’の駆動部は、2つのグリッパユニット210、210’の外側ベースジョー212、212’が互いに接離するように同期して動くように連動して制御される。
【0043】
2つの外側ベースジョー212、212’のそれぞれが、各自の駆動部と、必要に応じて各自の復帰ばねとを備える異なるグリッパユニット210、210’に属するため、シングルグリッパユニット210と比較して、この構成では2倍の把持力を達成することができる。これは、より大きなワークの場合に特に利点である。
【0044】
グリッパフィンガー250、250’も、双方のグリッパユニット210、210’の動作状態を確定するために位置検知装置240、240’とともに使用されるターゲット243、243’をそれぞれ保持する。
【0045】
シングルグリッパからダブルグリッパへの逆方向の変換も容易に可能である。
【0046】
<グリッパ爪のクイックチェンジ装置>
図5図8を参照して、グリッパ爪222の関連するベースフィンガー221への取付けをより詳細に説明する。他のグリッパ爪も、それぞれのベースフィンガーに同じ方法で取り付けられる。
【0047】
図3に見ることができるように、グリッパ爪222は、2つの平行締結カム229を有する。細長いベースフィンガー221は、主延在方向に沿ってフィンガーの長手方向を規定する。特に図5及び図7に見ることができるように、側面挿入開口223が、ベースフィンガー221において、フィンガーの長手方向に対して横断方向に形成される。グリッパ爪222の2つの締結カム229は、フィンガーの長手方向に対して横断方向に挿入開口223に挿入可能である。固定ピン224が、ベースフィンガー221に取り付けられる。固定ピン224は、ピンの長手方向軸を規定する。固定ピン224は、ベースフィンガー221に対して、ピンの長手方向軸に沿って、フィンガーの長手方向に対して横断方向かつ2つの締結カム229の挿入方向に対して横断方向に、変位可能である。締結カム229が挿入開口223に挿入されたとき、固定ピンは、挿入開口223の締結カム229間に位置する領域を通じて延在する。横方向ピン225が、固定ピン224を通じて横断方向に延在する。横方向ピン225は、固定ピン224の両側にそれぞれの掛止突出部を形成する。掛止突出部は、締結カム229が挿入開口223に挿入されると、締結カム229の下側の対応する凹部に掛止する。このようにして、グリッパ爪222とベースフィンガー221との間に解除可能なスナップ接続が提供される。固定ピン224の一端部は、ベースフィンガー221の外側に位置する領域に延在する。この領域では、固定ピン224は、螺旋ばね227によって包囲される。キャップ226の形態の作動部材が、固定ピン224の関連する端部に取り付けられる。キャップ226の内側端面は、螺旋ばね227に対する対向停止部を形成する。螺旋ばね227は、横方向ピン225が締結カム229を固定する位置の方向において、ばね力によって固定ピン224を付勢するように、ベースフィンガー221の外面とキャップ226との間で圧縮可能である。これに関して、固定ピン224における周方向カラー228が、ばね力の方向における固定ピン224の移動範囲を制限し、特定のばね付勢を確実にする。キャップ226にかかる軸方向圧力と、その結果生じるピンの長手方向軸に沿った固定ピン224の変位とにより、横方向ピン225は、締結カム229の凹部から出る。その結果、解除可能なスナップ接続が再び解除される。この観点から、キャップ226は、押しボタンとして機能する。
【0048】
<歯切り盤における用途>
提案される把持装置の重要な用途は、歯切り盤におけるワーク変更に関する。これは、図5及び図6における例によって示されており、ここでは歯切り盤400の一例が示されている。それ自体既知の方法において、歯切り盤400は、機械ベッド410と、ワークキャリア420と、工具キャリア430と、制御パネル441を伴う機械コントローラー440とを備える。
【0049】
ワークキャリア420は、タレットとして設計される。ワークキャリア420は、2つのワークスピンドル421を保持し、2つのワークスピンドル421は、タレットの鉛直旋回軸に対して互いに180°オフセットされて配置される。図5では、これらのワークスピンドルのうちの一方のみが見えている。このワークスピンドルは、ワーク変更位置にあり、この位置では、完成部品をワークスピンドルから取り外すことができ、新たなブランクをクランプすることができる。他方のワークスピンドルは、図5ではタレットによって隠れている。このワークスピンドルは、加工位置にあり、この位置では、事前にクランプされたワークを工具キャリア430上の工具によって、それ自体既知の方法で加工することができる。
【0050】
ワーク交換位置にあるワークスピンドル421上のワークを交換するために、上述した把持装置が、図5の例ではダブルグリッパ動作において使用される。グリッパアームとして設計される把持装置は、図示されていないグリッパアームキャリアに取り付けられる。グリッパアームキャリアは、機械ベッド410の隣に静止状態で配置されるが、振動を分離するために、機械ベッドに接続されない。把持装置は、グリッパアームキャリアに取り付けられ、対応する駆動部によって、Z方向に対して平行に延びる鉛直旋回軸周りに、グリッパアームキャリアに対して旋回することができ、Z方向において(すなわち、鉛直方向に沿って)直線的に動くことができるようになっている。
【0051】
完成したワーク310(完成部品)は、ワークスピンドル421のワーククランプ部422に設置されている。センタリング先端部424を有する関連する心押し台423が上方に後退する。把持装置は、歯切り盤400の作業空間の外側にあるときの位置から、図5及び図6に示されている旋回位置まで旋回し、Z方向に下降し、それにより、第1のグリッパユニット210が、取り付けられたグリッパフィンガーによって、完成部品310をワークスピンドルから捕捉することができる。把持装置は、短いストロークの移動によって、完成部品310をワーククランプ部422から取り外す。その間、第2のグリッパユニット210’は、次に加工されるワーク(ブランク)310’を既に保持している。ここで、把持装置は、ブランク310’がワーク固定部422の上方に来るように少しだけ更に旋回し、再びZ方向に下降し、それにより、ブランク310’をワーク固定部422上に置くことができる。ここで、ブランク310’は、ワーククランプ固定部422にクランプされる。把持装置は、Z方向に再び上昇し、作業領域の外に旋回し、ワーク保管部500に至る。ここでは、グリッパユニット210によって先に捕捉された完成部品310が置かれ、新たなブランクがグリッパユニット210’によって捕捉される。その間、ブランク310’は、センタリング先端部424によってさらに固定及び心出しされ、ワークスピンドル軸に対するブランク310’の歯部の角度位置を確定するために、図示されていない歯合せ装置によって歯合せ動作が行われる。ワークキャリア420は、ここで180°旋回し、それにより、ブランク310’がクランプされたワークスピンドル421が加工位置に移動し、一方、別の完成部品が載った他のワークスピンドルがワーク変更位置に移動する。ここで、ブランク310’が工具によって加工され、記載されたサイクルがさらなる完成部品のために繰り返される。
【0052】
したがって、ワークは、別のワークを加工している間に変更される。完成部品をワークスピンドルのうちの一方から取り外し、新たなブランクと交換するのに必要となるのは、僅かな直線運動及び旋回運動のみであるため、ワークの変更は、非常に迅速に行われる。特に、把持装置は、このために歯切り盤400の作業空間とワーク保管部500との間での旋回を必要としない。結果として、ワーク変更全体は、他のブランクが加工されている処理時間内に行うことができ、生産性のないアイドル時間が最小限になる。
【0053】
ただし、ダブルグリッパとしての動作は、比較的小さなワークに対してのみ可能である。したがって、より大きなワークを処理する場合、把持装置は、上述したように、シングルグリッパとして動作するように変換される。シングルグリッパを用いると、はるかに大きなワークを着脱することができる。シングルグリッパ動作で扱うことができるワークの最大直径は、ダブルグリッパ動作で扱うことができるワークの最大直径を2.5倍よりも多く超えることができる。上述のように、ワークの変更は、処理時間と並行して可能である。しかしながら、ここで、把持装置は、完成部品を取り出してから次のブランクをクランプするまでの間に、歯切り盤400の作業領域とワーク保管部500との間を完全に往復して旋回しなければならない。これには、ダブルグリッパによる短い直線運動及び旋回運動よりも多くの時間が必要となる。しかしながら、一方で、より大きなワークの加工には、通常、より多くの時間も必要となるため、ここでも、サイクル全体の時間はより大きくなるにもかかわらず、生産性のない非生産時間は小さく抑えることができる。
【0054】
<動作状態の制御及び監視>
グリッパアームキャリアに対する把持装置の全ての動き及び2つのグリッパユニット210、210’の作動は、制御装置、すなわち「コントローラー」によって制御される。このために、別個のコントローラーを提供することができる。代替的に、このタスクは、加工機のコントローラー440によって又はワーク保管部500のコントローラーによって実行することもできる。このために、対応するコントローラーは、対応するソフトウェアを有する。
【0055】
特に、ソフトウェアは、2つの動作モード間、すなわち、把持装置がダブルグリッパとして動作する第1のモードと、把持装置がシングルグリッパとして動作する第2のモードとを区別することができる。第1の動作モードでは、2つのグリッパユニットが互いに独立して開閉し、一方、第2の動作モードでは、2つのグリッパユニットが連動して同時に開閉する。
【0056】
動作モード間の切替えは、制御パネルで対応する入力を行うことによって手動で実行することができる。しかしながら、グリッパユニットのベースジョーに、グリッパフィンガーが当該のベースジョーに取り付けられているか否かを判断する存在センサーを設けること、及び、これらのセンサーからの信号に基づいて、第1の動作モードと第2の動作モードとの間を自動的に切り替えることも想定可能である。
【0057】
コントローラーは、位置検知装置240、240’から2つのグリッパユニットに関する位置信号を受信することが好ましい。これらの位置信号に基づいて、特に、以下の状態の区別することができる。
-関連するグリッパユニットが開放している、
-関連するグリッパユニットが完全に閉鎖している、及び、
-関連するグリッパユニットが部分的に閉鎖し、ワークが把持されている。
【0058】
「ワーク把持」状態のグリッパユニットの確定位置が期待位置に対応するか否かをチェックすることも可能である。確定位置が期待位置から所定の公差範囲(例えば、±1mm)を超えて逸脱する場合、コントローラーは、エラーが起こったものと判定することができ、さらなる処理を停止することができる。このようにして、センタリング装置及び/又は加工工具に損傷を与え得る、不適切な直径を有するブランクがワークスピンドルに到達することを防止することができる。
【0059】
<変更形態>
当然ながら、特許請求の範囲に示す本発明の範囲から逸脱することなく、多数の変形を行うことができる。
【0060】
例えば、グリッパユニットは、シングルグリッパ動作においてより一層大きなワークを捕捉することが可能であるように、上述した例示的な実施形態よりも変位方向Vに沿って大きな距離を有することができる。異なる直径に適合するように、グリッパユニット210、210’は、変位方向Vに沿って変位可能であるように、ホルダー100上に取り付けることができる。このために、ホルダー100は、任意選択的に、グリッパユニットが変位可能に取り付けられる対応するレールを有することができる。
【0061】
グリッパユニットは、2爪平行グリッパの代わりに、2爪アングルグリッパとして設計することもできる。したがって、ベースジョーは、それぞれのグリッパユニットのベース本体に対して直線的に動かず、旋回する。旋回運動は、ここでも、グリッパ平面Eにおける全てのベースジョーについて行われる。この場合、衝突を回避するために、グリッパユニットは、上述した例示的な実施形態よりも方向Vに沿っていくらか大きな距離を置いて取り付けられることが好ましい。
【0062】
グリッパユニットは、空気式の代わりに電気式に駆動してもよい。
【0063】
グリッパ爪のクイックチェンジ装置は、図示のものとは異なるように設計することもできる。特に、作動部材は、キャップの代わりに平坦ディスクとして設計することもできる。横方向ピンの代わりに、固定ピンにおける掛止突出部を他の方法で形成することもできる。
【0064】
把持装置は、外歯車(平歯車)だけでなく、他のタイプのワーク、特に円筒状外形を有する他のタイプのワークにも使用することができる。異なるワークへの適合は、グリッパ爪を変更することによって非常に短時間で可能である。
【0065】
把持装置は、内歯付きの歯車又は他の物体を内周において捕捉するように使用することも想定可能である。このために、グリッパフィンガーには、例えば、下方に突出するピン又は下方に突出するとともに外方に向いたグリッパ爪を設けることができる。この場合、物体を捕捉するために、グリッパユニットは、閉鎖動作に代わって開放動作を実行する。したがって、安全上の理由から、復帰ばねが開放復帰力を生成する把持装置を使用することが有利であり得る。
【0066】
誘導位置センサー(変位トランスデューサー)の代わりに、他のタイプの位置センサー、例えば、光学距離センサー又は渦電流センサーを使用して、動作状態を検出することができる。
【符号の説明】
【0067】
100 ホルダー
210、210’ グリッパユニット
211、211’ ベース本体
212、212’ 外側ベースジョー
213、213’ 内側ベースジョー
214 ホース接続部
220、220’ 外側グリッパフィンガー
221、231 ベースフィンガー
222、232 グリッパ爪
223 挿入開口
224 固定ピン
225 横方向ピン
226 キャップ
227 螺旋ばね
228 カラー
229 締結カム
230、230’ 内側グリッパフィンガー
240 位置検知システム
241 位置検知装置
242 カバー
243 ターゲット
250、250’ グリッパフィンガー
251、251’ ベースフィンガー
252、252’ グリッパ爪
310、310’ ワーク
320 ワーク
410 機械ベッド
420 ワークキャリア
421 ワークスピンドル
422 ワーククランプ部
423 心押し台
424 センタリング先端部
430 工具キャリア
440 加工機のコントローラー
441 制御パネル
500 ワーク保管部
E グリッパ平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】