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特表2023-533111免疫チェックポイント阻害剤とのSTINGアゴニスト併用治療
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  • 特表-免疫チェックポイント阻害剤とのSTINGアゴニスト併用治療 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】免疫チェックポイント阻害剤とのSTINGアゴニスト併用治療
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/06 20060101AFI20230726BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 31/7084 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20230726BHJP
【FI】
A61K45/06
A61P35/00
A61K39/395 U
A61K31/7084
A61K47/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022568780
(86)(22)【出願日】2021-05-17
(85)【翻訳文提出日】2022-12-26
(86)【国際出願番号】 US2021032800
(87)【国際公開番号】W WO2021232019
(87)【国際公開日】2021-11-18
(31)【優先権主張番号】63/025,905
(32)【優先日】2020-05-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/091,874
(32)【優先日】2020-10-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522018907
【氏名又は名称】イミューンセンサー セラピューティクス、インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】522440647
【氏名又は名称】ザ ボード オブ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チェン、ジーチャン
(72)【発明者】
【氏名】サン、リージュン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076BB13
4C076BB15
4C076BB16
4C076CC07
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE41
4C076EE59
4C076FF70
4C084AA20
4C084AA24
4C084MA01
4C084MA52
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084ZB26
4C084ZC41
4C084ZC75
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB12
4C085BB31
4C085EE01
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG03
4C085GG04
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA52
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086ZB26
4C086ZC41
4C086ZC75
(57)【要約】
本開示は、とりわけ、患者の疾患又は障害、特にがんを治療するための方法及び使用を提供し、CTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体)及びSTINGアゴニストを合わせて患者に投与することを含み、CTLA4阻害剤は患者に腫瘍内投与される。STINGアゴニストは、腫瘍内、経口、又は全身(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)で患者に投与され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
がんの治療を必要とする患者のがんを治療する方法であって、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストを合わせて患者に投与することを含み、CTLA4阻害剤は腫瘍内投与される、上記方法。
【請求項2】
CTLA4阻害剤が抗CTLA4抗体である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
抗CTLA4抗体がイピリムマブ又はトレメリムマブである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
STINGアゴニストが腫瘍内投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
STINGアゴニストが全身投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
STINGアゴニストが静脈内投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
STINGアゴニストが筋肉内投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
STINGアゴニストが皮下投与される、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
STINGアゴニストが環状ジヌクレオチドである、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
環状ジヌクレオチドが、以下の構造又はその薬学的に許容される塩を有する、請求項9に記載の方法。
【化1】
【請求項11】
STINGアゴニストが経口投与される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
PD-1阻害剤を患者に投与することを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
PD-1阻害剤が抗PD-1抗体である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
PD-1阻害剤が患者に全身投与される、請求項12又は請求項13に記載の方法。
【請求項15】
PD-1阻害剤が、患者に静脈内投与、皮下投与、又は筋肉内投与される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
PD-1阻害剤が患者に腫瘍内投与される、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項17】
PD-L1阻害剤を患者に投与することを更に含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
PD-L1阻害剤が抗PD-L1抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
PD-L1阻害剤が患者に全身投与される、請求項17又は請求項18に記載の方法。
【請求項20】
PD-L1阻害剤が、患者に静脈内投与、皮下投与、又は筋肉内投与される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
PD-L1阻害剤が患者に腫瘍内投与される、請求項17又は18に記載の方法。
【請求項22】
CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストが、単一の注射可能な医薬組成物で投与される、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
がん患者に腫瘍内投与されたCTLA4阻害剤の抗腫瘍応答を増強させる方法であって、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤を合わせて患者に投与することを含む、上記方法。
【請求項24】
CTLA4阻害剤が抗CTLA4抗体である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
抗CTLA4抗体がイピリムマブ又はトレメリムマブである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
STINGアゴニストが腫瘍内投与される、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
STINGアゴニストが全身投与される、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
STINGアゴニストが静脈内投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
STINGアゴニストが筋肉内投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項30】
STINGアゴニストが皮下投与される、請求項27に記載の方法。
【請求項31】
STINGアゴニストが環状ジヌクレオチドである、請求項23~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
環状ジヌクレオチドが、以下の構造又はその薬学的に許容される塩を有する、請求項31に記載の方法。
【化2】
【請求項33】
STINGアゴニストが経口投与される、請求項23~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
PD-1阻害剤を患者に投与することを更に含む、請求項23~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
PD-1阻害剤が抗PD-1抗体である、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
PD-1阻害剤が患者に全身投与される、請求項34又は請求項35に記載の方法。
【請求項37】
PD-1阻害剤が、患者に静脈内投与、皮下投与、又は筋肉内投与される、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
PD-1阻害剤が患者に腫瘍内投与される、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項39】
PD-L1阻害剤を患者に投与することを更に含む、請求項23~33のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
PD-L1阻害剤が抗PD-L1抗体である、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
PD-L1阻害剤が患者に全身投与される、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項42】
PD-L1阻害剤が、患者に静脈内投与、皮下投与、又は筋肉内投与される、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
PD-L1阻害剤が患者に腫瘍内投与される、請求項39又は40に記載の方法。
【請求項44】
CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストが、単一の注射可能な医薬組成物で投与される、請求項23~43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
CTLA4阻害剤、STINGアゴニスト、及び薬学的に許容される担体を含む、腫瘍内注射用の医薬組成物。
【請求項46】
STINGアゴニストが環状ジヌクレオチドである、請求項45に記載の医薬組成物。
【請求項47】
環状ジヌクレオチドが、以下の構造又はその薬学的に許容される塩を有する、請求項46に記載の医薬組成物。
【化3】
【請求項48】
薬学的に許容される担体が、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含む、請求項46又は請求項47に記載の医薬組成物。
【請求項49】
CTLA4阻害剤が抗CTLA4抗体である、請求項46~48のいずれか一項に記載の医薬組成物。
【請求項50】
CTLA4阻害剤がイピリムマブ又はトレメリムマブである、請求項49に記載の医薬組成物。
【請求項51】
CTLA4阻害剤がイピリムマブである、請求項50に記載の医薬組成物。
【請求項52】
がんの治療を必要とする患者のがんを治療する方法であって、患者に、STINGアゴニストのプライミング用量と、それに続くSTINGアゴニストの維持用量とを含む投与レジメンに従ってSTINGアゴニストを投与することを含み、プライミング用量におけるSTINGアゴニストの量は、各維持用量におけるSTINGアゴニストの量よりも少ない、上記方法。
【請求項53】
患者が、プライミング用量を投与する前に、STINGアゴニストを以前に投与されていなかった、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
プライミング用量が、各維持用量よりも重量で100分の1~2分の1である、請求項52又は請求項53に記載の方法。
【請求項55】
プライミング用量が、各維持用量よりも重量で5分の1~2分の1である、請求項52又は請求項53に記載の方法。
【請求項56】
STINGアゴニストが腫瘍内投与される、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項57】
STINGアゴニストが全身投与される、請求項52~55のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
STINGアゴニストが、皮下投与、静脈内投与、又は筋肉内投与される、請求項57に記載の方法。
【請求項59】
免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与することを更に含む、請求項52~58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
免疫チェックポイント阻害剤が、プライミング用量を投与する前に投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
免疫チェックポイント阻害剤が、プライミング用量を投与した後に投与される、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-L1阻害剤である、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項63】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-1阻害剤である、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項64】
免疫チェックポイント阻害剤がCTLA4阻害剤である、請求項59~61のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
CTLA4阻害剤が抗CTLA4抗体である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
CTLA4阻害剤が全身投与される、請求項64又は請求項65に記載の方法。
【請求項67】
CTLA4阻害剤が腫瘍内投与される、請求項64又は請求項65に記載の方法。
【請求項68】
STINGアゴニストが化合物Aではない、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
STINGアゴニストが、ADU-S100(MIW815)、BMS-986301、CRD5500、CMA(10-カルボキシメチル-9-アクリダノン)、diABZI STINGアゴニスト-1(例えば、カタログ番号:2138299-34-8)、DMXAA(ASA404/vadimezan)、E7766、GSK-532、GSK-3745417、MK-1454、MK-2118、SB-11285、SRCB-0074、TAK-676、TTI-10001、SR-717、及びMSA-2から選択される、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
STINGアゴニストが化合物Bである、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
STINGアゴニストが化合物Cである、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項72】
STINGアゴニストが化合物Dである、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項73】
STINGアゴニストが化合物Eである、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
STINGアゴニストが化合物Fである、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
STINGアゴニストが化合物Gである、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
STINGアゴニストが、抗体にコンジュゲート化され、したがって、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を形成する、請求項52~67のいずれか一項に記載の方法。
【請求項77】
ADCが、式IAの構造を有し、
(IA)Ab-[-L-D]
式中、
「D」は、式IIaの構造を有するCDNを表し、
【化4】

式中、
W、X、Y及びZは独立してCH又はNであり、
は、チオール基、アミノ基、又はC1-6アルキルアミノ基で置換された、C2-4アルキルであり、
は、各出現について独立して、ヒドロキシル、チオール、C1-6アルキル、-BH 、又は-NR’R’’であり、式中、R’及びR’’は、各出現について独立して、水素、又はハロゲン、チオール、ヒドロキシル、カルボキシル、C1-6アルコキシ、C1-6ヒドロキシアルコキシ、-OC(O)C1-6アルキル、-N(H)C(O)C1-6アルキル、-N(C1-3アルキル)C(O)C1-6アルキル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、オキソ、及びアジドから選択される1つ又は複数の基で場合により置換されたC1-6アルキルであるか、あるいは同じ窒素上のR’及びR’’は一緒になってC3-5複素環を形成するか、
あるいはその薬学的に許容される塩であり、
「Ab」は、標的抗原に結合する抗体又はその結合フラグメントを表し、
「L」は、各出現について独立して、Dの1つ又は複数の出現をAbに連結するリンカーを表し、
「n」は、リンカー(L)を介してAbに連結されたDの出現数を表し、式中、CDN(D)は、CDNのR位の、チオール基、アミノ基又はC1-6アルキルアミノ基においてリンカー(L)に共有結合している、
請求項76に記載の方法。
【請求項78】
患者のがんを治療するための薬剤の製造におけるSTINGアゴニストの使用であって、薬剤は、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤を合わせて患者に投与するためのものであり、CTLA4阻害剤は腫瘍内投与される、上記使用。
【請求項79】
がん患者に腫瘍内投与されるCTLA4阻害剤の抗腫瘍応答を増強させるための薬剤の製造におけるSTINGアゴニストの使用であって、薬剤が、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤を合わせて患者に投与するためのものである、上記使用。
【請求項80】
CTLA4阻害剤が抗CTLA4抗体である、請求項78又は請求項79に記載の使用。
【請求項81】
抗CTLA4抗体がイピリムマブ又はトレメリムマブである、請求項80に記載の使用。
【請求項82】
STINGアゴニストが腫瘍内投与される、請求項78~81のいずれか一項に記載の使用。
【請求項83】
STINGアゴニストが全身投与される、請求項78~81のいずれか一項に記載の使用。
【請求項84】
STINGアゴニストが静脈内投与される、請求項83に記載の使用。
【請求項85】
STINGアゴニストが筋肉内投与される、請求項83に記載の使用。
【請求項86】
STINGアゴニストが皮下投与される、請求項83に記載の使用。
【請求項87】
STINGアゴニストが環状ジヌクレオチドである、請求項78~86のいずれか一項に記載の使用。
【請求項88】
環状ジヌクレオチドが、以下の構造又はその薬学的に許容される塩を有する、請求項87に記載の使用。
【化5】
【請求項89】
STINGアゴニストが経口投与される、請求項78~81のいずれか一項に記載の使用。
【請求項90】
PD-1阻害剤を患者に投与することを更に含む、請求項78~89のいずれか一項に記載の使用。
【請求項91】
PD-1阻害剤が抗PD-1抗体である、請求項90に記載の使用。
【請求項92】
PD-1阻害剤が患者に全身投与される、請求項90又は請求項91に記載の使用。
【請求項93】
PD-1阻害剤が、患者に静脈内投与、皮下投与、又は筋肉内投与される、請求項92に記載の使用。
【請求項94】
PD-1阻害剤が患者に腫瘍内投与される、請求項90又は91に記載の使用。
【請求項95】
PD-L1阻害剤を患者に投与することを更に含む、請求項78~89のいずれか一項に記載の使用。
【請求項96】
PD-L1阻害剤が抗PD-L1抗体である、請求項95に記載の使用。
【請求項97】
PD-L1阻害剤が患者に全身投与される、請求項95又は請求項96に記載の使用。
【請求項98】
PD-L1阻害剤が、患者に静脈内投与、皮下投与、又は筋肉内投与される、請求項97に記載の使用。
【請求項99】
PD-L1阻害剤が患者に腫瘍内投与される、請求項95又は96に記載の使用。
【請求項100】
STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤が、単一の注射可能な医薬組成物で投与される、請求項78~99のいずれか一項に記載の使用。
【請求項101】
投与レジメンに従ってがんの治療を必要とする患者のがんを治療するための薬剤の製造におけるSTINGアゴニストの使用であって、投与レジメンは、STINGアゴニストのプライミング用量とそれに続くSTINGアゴニストの維持用量とを含み、プライミング用量におけるSTINGアゴニストの量は、各維持用量におけるSTINGアゴニストの量よりも少ない、上記使用。
【請求項102】
患者が、プライミング用量を投与する前に、STINGアゴニストを以前に投与されていなかった、請求項101に記載の使用。
【請求項103】
プライミング用量が、各維持用量よりも重量で100分の1~2分の1である、請求項101又は請求項102に記載の使用。
【請求項104】
プライミング用量が、各維持用量よりも重量で5分の1~2分の1である、請求項101又は請求項102に記載の使用。
【請求項105】
投与レジメンが、STINGアゴニストを腫瘍内投与することを含む、請求項101~104のいずれか一項に記載の使用。
【請求項106】
投与レジメンが、STINGアゴニストを全身投与することを含む、請求項101~104のいずれか一項に記載の使用。
【請求項107】
投与レジメンが、STINGアゴニストを皮下投与、静脈内投与又は筋肉内投与することを含む、請求項106に記載の使用。
【請求項108】
投与レジメンが、免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与することを更に含む、請求項101~107のいずれか一項に記載の使用。
【請求項109】
投与レジメンが、プライミング用量を投与する前に免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む、請求項108に記載の使用。
【請求項110】
投与レジメンが、プライミング用量を投与した後に免疫チェックポイント阻害剤を投与することを含む、請求項108に記載の使用。
【請求項111】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-L1阻害剤である、請求項108~110のいずれか一項に記載の使用。
【請求項112】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-1阻害剤である、請求項108~110のいずれか一項に記載の使用。
【請求項113】
免疫チェックポイント阻害剤がCTLA4阻害剤である、請求項108~110のいずれか一項に記載の使用。
【請求項114】
CTLA4阻害剤が抗CTLA4抗体である、請求項113に記載の使用。
【請求項115】
投与レジメンが、CTLA4阻害剤を全身投与することを含む、請求項113又は請求項114に記載の使用。
【請求項116】
投与レジメンが、CTLA4阻害剤を腫瘍内投与することを含む、請求項114に記載の使用。
【請求項117】
STINGアゴニストが化合物Aではない、請求項101~116のいずれか一項に記載の使用。
【請求項118】
STINGアゴニストが、ADU-S100(MIW815)、BMS-986301、CRD5500、CMA(10-カルボキシメチル-9-アクリダノン)、diABZI STINGアゴニスト-1(例えば、カタログ番号:2138299-34-8)、DMXAA(ASA404/vadimezan)、E7766、GSK-532、GSK-3745417、MK-1454、MK-2118、SB-11285、SRCB-0074、TAK-676、TTI-10001、SR-717、及びMSA-2から選択される、請求項101~116のいずれか一項に記載の使用。
【請求項119】
STINGアゴニストが化合物Bである、請求項101~116のいずれか一項に記載の使用。
【請求項120】
STINGアゴニストが化合物Cである、請求項101~116のいずれか一項に記載の使用。
【請求項121】
STINGアゴニストが化合物Dである、請求項101~116のいずれか一項に記載の使用。
【請求項122】
STINGアゴニストが化合物Eである、請求項101~116のいずれか一項に記載の使用。
【請求項123】
STINGアゴニストが化合物Fである、請求項101~116のいずれか一項に記載の使用。
【請求項124】
STINGアゴニストが化合物Gである、請求項101~116のいずれか一項に記載の使用。
【請求項125】
STINGアゴニストが、抗体にコンジュゲート化され、したがって、抗体薬物コンジュゲート(ADC)を形成する、請求項101~116のいずれか一項に記載の使用。
【請求項126】
ADCが、式IAの構造を有し、
(IA)Ab-[-L-D]
式中、
「D」は、式IIaの構造を有するCDNを表し、
【化6】

式中、
W、X、Y及びZは独立してCH又はNであり、
は、チオール基、アミノ基、又はC1-6アルキルアミノ基で置換された、C2-4アルキルであり、
は、各出現について独立して、ヒドロキシル、チオール、C1-6アルキル、-BH 、又は-NR’R’’であり、式中、R’及びR’’は、各出現について独立して、水素、又はハロゲン、チオール、ヒドロキシル、カルボキシル、C1-6アルコキシ、C1-6ヒドロキシアルコキシ、-OC(O)C1-6アルキル、-N(H)C(O)C1-6アルキル、-N(C1-3アルキル)C(O)C1-6アルキル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、オキソ、及びアジドから選択される1つ又は複数の基で場合により置換されたC1-6アルキルであるか、あるいは同じ窒素上のR’及びR’’は一緒になってC3-5複素環を形成するか、
あるいはその薬学的に許容される塩であり、
「Ab」は、標的抗原に結合する抗体又はその結合フラグメントを表し、
「L」は、各出現について独立して、Dの1つ又は複数の出現をAbに連結するリンカーを表し、
「n」は、リンカー(L)を介してAbに連結されたDの出現数を表し、式中、CDN(D)は、CDNのR位の、チオール基、アミノ基又はC1-6アルキルアミノ基においてリンカー(L)に共有結合している、
請求項125に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、とりわけ、がんを含む特定の疾患又は障害を治療するために、免疫系を活性化するためのSTINGアゴニストと組み合わせた、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(cytotoxic T-lymphocyte-associated protein 4:CTLA4)に対する腫瘍内投与抗体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
進行性固形腫瘍悪性腫瘍並びに多くの血液悪性腫瘍の治療は、満たされていない高い医学的必要性によって定義され続けている。ほとんどの状況において、細胞傷害性化学療法及び標的化キナーゼ阻害剤による治療は、薬物耐性腫瘍クローンの出現並びにその後の腫瘍の進行及び転移をもたらす。
【0003】
近年、免疫介在性腫瘍破壊の活性化を中心とした代替アプローチを通じて注目すべき成功が達成されている。免疫系は、ヒト及び動物をがんから防御するのに極めて重要な役割を果たす。抗腫瘍効果は、抗腫瘍免疫を活性化する陽性因子及び免疫系を阻害する陰性因子によって制御される。抗腫瘍免疫を阻害する陰性因子には、細胞傷害性Tリンパ球関連タンパク質4(CTLA4)、プログラム細胞死-1(programmed cell death-1:PD-1)、及びプログラム死リガンド1(programmed death-ligand 1:PD-L1)等の免疫チェックポイントタンパク質が含まれる。これらのチェックポイントタンパク質に対する抗体を含む免疫腫瘍学(IO)アプローチは、いくつかのタイプのヒトがんにおいて顕著な有効性を示している。
【0004】
しかしながら、免疫チェックポイント遮断を介した既存のがん免疫療法は、がん患者の一部のみ(平均20~30%)に有効である。免疫チェックポイントの遮断に抵抗性である患者は、炎症を起こさない腫瘍、又はいわゆる「冷たい(cold)」腫瘍細胞を有することが多く、すなわち、腫瘍浸潤白血球(TIL)、例えば、分化抗原群8(CD8)T細胞を欠くか、又は腫瘍微小環境がTILの機能を抑制する。進行中のがん薬物開発研究の主な推進力は、より幅広い患者にわたってより良好な腫瘍制御を達成するために、「冷たい(cold)」腫瘍細胞を「熱い(hot)」腫瘍細胞に変換することに依然として焦点を当てている。
【0005】
病原体及びがん細胞に対する防御の第一線である自然免疫系は、非炎症性腫瘍(「冷たい(cold)」)を炎症性(「熱い(hot)」)微小環境に変えるために重要である。最近発見された自然免疫経路であるサイクリックGMP-AMPシンターゼ(cGAS)-インターフェロン遺伝子刺激因子(Stimulator of Interferon Genes:STING)経路は、抗腫瘍免疫において重要な役割を果たす。cGASは、I型インターフェロン経路を活性化するDNA感知酵素である。DNAに結合すると、cGASが活性化されて2’3’-サイクリックGMP-AMP(2’3’-cGAMP)を合成し、次いでこれがアダプタータンパク質STINGに結合してこれを活性化する二次メッセンジャーとして機能する。次いで、STINGは、I型インターフェロン、サイトカイン及び他の免疫メディエーターの産生をもたらすシグナル伝達カスケードを活性化する。
【0006】
サイトカイン産生は抗腫瘍免疫を生成するために不可欠であるが、高いサイトカインレベルは安全性の懸念をもたらす。具体的には、高いサイトカインレベルは、免疫療法を受けているがん患者において炎症応答を誘発する可能性がある。炎症応答は、免疫系を調節する他の化合物、例えば免疫チェックポイント阻害剤の存在下で増強され得る。改善された治療指数を有する免疫療法の開発は、依然として優先順位が高い。
【0007】
抗CTLA4抗体の投与は、しばしば重度の自己免疫毒性に関連する。Frasen et al.Clin.Cancer Res.19:5831-5839(2013)を参照されたい。以前の研究は、腫瘍の部位に局所的に投与される低用量の抗CTLA4抗体の投与が、高用量での抗CTLA4抗体の全身投与に関連する毒性学的問題のいくつかを潜在的に克服し得ることを示している。しかしながら、腫瘍部位への低用量の抗CTLA4抗体の局所投与は、不十分な有効性を被り得る。したがって、抗CTLA4抗体をがんに投与するための非常に有効な毒物学的に許容される方法を開発することは、更なる進歩を必要とする重要な目標である。
【発明の概要】
【0008】
本開示は、特に免疫チェックポイント阻害剤、例えばCTLA4、PD-1及び/又はPD-L1の阻害剤、特にこれらのタンパク質の抗体阻害剤と組み合わせて、STINGアゴニストを患者に安全に投与する方法を提供する。
【0009】
一態様では、本開示は、患者のがんを治療する方法を提供し、CTLA4アンタゴニスト/阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体)及びSTINGアゴニストを合わせて患者に投与することを含み、CTLA4阻害剤は、患者の腫瘍内に投与される。STINGアゴニストは、腫瘍内、経口、又は全身(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)で患者に投与され得る。
【0010】
特定の実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは、患者に腫瘍内投与される。いくつかのそのような実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは、単一の医薬組成物で投与され得るか、又は最初にCTLA4阻害剤を投与し、次いでSTINGアゴニストを投与するか、又はその逆等、連続的を含む、別々に投与され得る。
【0011】
他の実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストを合わせて投与する本明細書に記載の方法は、例えば、PD-L1のアンタゴニスト/阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)又はPD-1のアンタゴニスト/阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)を合わせて患者に投与することを更に含む。いくつかのこのような実施形態では、PD-1又はPD-L1阻害剤は、患者に、全身(例えば、静脈内、筋肉内、若しくは皮下)又は腫瘍内投与され得る。
【0012】
別の態様では、本開示は、がん患者に腫瘍内投与されたCTLA4阻害剤の抗腫瘍応答を増強させる方法を提供し、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤を合わせて患者に投与することを含む。STINGアゴニストは、腫瘍内、経口、又は全身(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)で患者に投与され得る。
【0013】
別の態様では、本開示は、CTLA4阻害剤、STINGアゴニスト、及び薬学的に許容される担体を含む、腫瘍内注射用の医薬組成物を提供する。そのような実施形態では、医薬組成物は腫瘍内注射に適しており、これは、組成物は、腫瘍内注射に適した1つ又は複数の薬学的に許容される担体並びに/あるいはSTINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤の用量を含むことを意味する。
【0014】
他の実施形態では、本開示は、がんを含む疾患又は障害を治療するためのキットを提供し、キットは、CTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体)及びSTINGアゴニストを含む。特定の実施形態では、キットは、腫瘍内投与のために製剤化されたCTLA4阻害剤及び腫瘍内、経口又は全身(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)投与用に製剤化されたSTINGアゴニストを提供する。特定の実施形態では、キットは、PD-L1阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)又はPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)を更に含む。そのような実施形態のいくつかにおいて、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤は、腫瘍内投与又は全身投与(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)のために製剤化される。
【0015】
特定の実施形態では、本開示は、がん患者を治療する方法を提供し、CTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体)を、以下の構造を有する化合物(「化合物A」)、又はその薬学的に許容される塩と合わせて腫瘍内投与することを含み、
【化1】

ここで、化合物Aは、患者に腫瘍内又は全身(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)投与される。化合物Aは、STINGを活性化することができる環状ジヌクレオチドであり、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2018/0230177号に記載されている。様々な塩形態の化合物Aをがん患者に投与することができる。例えば、一実施形態では、治療有効量の化合物Aのナトリウム塩ががん患者に投与される。本開示における化合物Aへの任意の言及は、その薬学的に許容される塩も含むことが理解されよう。
【0016】
別の態様では、本開示は、がんを治療する方法を提供し、がん患者にSTINGアゴニストを合わせて投与することを含み、投与レジメンが、治療の開始時にSTINGアゴニストのプライミング用量を投与し、続いてSTINGアゴニストの維持用量を投与することを含む。STINGアゴニストは、腫瘍内、経口、又は全身投与され得る。STINGアゴニストは、単独で、又は1つ若しくは複数の抗がん剤と合わせて投与され得る。例えば、STINGアゴニストは、CTLA4阻害剤、PD-1阻害剤若しくはPD-L1阻害剤、又はそれらの組合わせと合わせて投与され得る。特定の実施形態では、CTLA4阻害剤、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤は、腫瘍内又は全身投与され得る。いくつかのこのような実施形態では、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤は腫瘍内投与され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1のパネルA及びBは、化合物A及び抗CTLA4抗体の腫瘍内投与の効果を示す図である。B16F10腫瘍を有するC57BL6マウス(n=5)の群を、腫瘍移植後6、10、及び14日目に示されるように処置した。図1のパネルAは経時的な腫瘍成長を示し、図1のパネルBは経時的なマウス生存を示す。データを平均±SEMとして示す。
【0018】
図2図2のパネルA及びBは、化合物A(I.T.)、PD-L1抗体(I.P.)及び抗CTLA4抗体(I.P.)の三重の組合せの効果を示す図である。B16F10腫瘍を有するC57BL6マウス(n=5)の群を、腫瘍移植後6、10、及び14日目に示されるように処置した。図2のパネルAは経時的な腫瘍成長を示し、図2のパネルBは経時的なマウス生存を示す。データを平均±SEMとして示す。
【0019】
図3図3のパネルA及びBは、DMXAA(これは、5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸であり、既知のSTINGアゴニストである)及び抗CTLA4抗体の抗腫瘍効果を示す図である。C57BL6/Jマウス(n=5)の群に、0日目に、B16F10黒色腫細胞を右側腹部に皮下移植した。6、9、12、及び15日目に、マウスを抗CTLA4抗体若しくはDMXAA、又は抗CTLA4抗体及びDMXAAの両方の組合わせで腫瘍内処置した。図3のパネルAは経時的な腫瘍成長を示し、図3のパネルBは経時的なマウス生存を示す。データを平均±SEMとして示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
5.1.STINGアゴニストと組み合わせたCTLA4阻害剤の腫瘍内投与
本開示は、必要とする患者において、疾患又は障害、特にがんを治療する方法を提供し、CTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体)及びSTINGアゴニストを組み合わせて(例えば、合わせて)患者に投与することを含み、CTLA4阻害剤は腫瘍内投与される。特定の実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは、合わせて患者に投与される。合わせた投与は、以前に患者に投与されたことがある別の治療剤(例えば、STINGアゴニスト)が依然として患者の体内で有効である場合の、1つの治療剤(例えば、CTLA4阻害剤)の投与を指す。合わせた投与は、CTLA4阻害剤がSTINGアゴニストの投与と同時に、投与前に、又は投与後に投与され得ることを企図する。
【0021】
いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは両方とも患者に腫瘍内投与され得る。これらの実施形態では、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤は、同じ医薬組成物又は別々の医薬組成物で一緒に投与され得る。他の実施形態では、CTLA4阻害剤は患者に腫瘍内投与され得、STINGアゴニストは患者に全身(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)投与され得る。更に他の実施形態では、CTLA4阻害剤は患者に腫瘍内投与され得、STINGアゴニストは患者に経口投与され得る。
【0022】
CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストが別々の組成物で投与される実施形態では、2つの組成物は同時に又は連続的に投与され得る。CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストが連続的に投与される特定の実施形態では、STINGアゴニストは、CTLA4阻害剤の投与前に投与され得る。あるいは、STINGアゴニストは、CTLA4阻害剤の投与後に投与され得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは、任意の追加の治療剤なしで、組み合わせて、例えば合わせて投与され得る。驚くべきことに、本明細書中に例示される腫瘍等いくつかの腫瘍については、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストの組合わせは、更なる化学療法剤又は免疫療法剤が更なる腫瘍阻害をもたらさないように十分な腫瘍阻害をもたらす。
【0024】
それにもかかわらず、いくつかの実施形態では、更なる臨床的利益は、他の治療剤との投与によって達成され得る。したがって、いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは、他の治療剤と組み合わせて、例えば合わせて投与され得る。例えば、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは、1つの更なる免疫チェックポイント阻害剤と合わせて投与され得る。特定の実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体)との三重組合せの一部として投与され得る。
【0025】
一実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは、本明細書に記載されるもの等のPD-1又はPD-L1阻害剤と組み合わせて、例えば合わせてがんに投与され得る。そのような場合、PD-1又はPD-L1阻害剤は、CTLA4阻害剤及び/又はSTINGアゴニストの投与と同時に、投与前又は投与後に投与され得る。いくつかの実施形態では、PD-1又はPD-L1阻害剤は腫瘍内投与され得る。他の実施形態では、PD-1又はPD-L1阻害剤は、全身、例えば静脈内、皮下、又は筋肉内投与され得る。特定の実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストの両方はがん患者に腫瘍内投与され、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤は全身投与される。他の実施形態では、CTLA4阻害剤はがん患者に腫瘍内投与され、STINGアゴニスト及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の両方は全身投与される。特定の実施形態では、CTLA4阻害剤及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の両方はがん患者に腫瘍内投与され、STINGアゴニストは全身投与される。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の両方はがん患者に腫瘍内投与され、STINGアゴニストは経口投与される。他の実施形態では、CTLA4阻害剤、STINGアゴニスト、及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤は全て、がん患者に腫瘍内投与される。更に他の実施形態では、CTLA4阻害剤はがん患者に腫瘍内投与され、STINGアゴニストは患者に経口投与され、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤はがん患者に全身投与される。
【0026】
いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤は、T細胞上のCTLA4と腫瘍微小環境における樹状細胞又はマクロファージ等の抗原提示細胞上のCD80(B7.1)又はCD86(B7.2)との間の相互作用を阻害する。
【0027】
CTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体)の腫瘍内投与は、潜在的に有効性の低下を犠牲にしても、CTLA4阻害剤の全身投与に関連する安全性の問題を軽減する。本明細書に開示されるように、CTLA4阻害剤の腫瘍内投与に関連する有効性は、CTLA4阻害剤がSTINGアゴニストと合わせて投与された場合に有意に増強され得る。STINGアゴニストは、腫瘍内、全身又は経口投与され得る。本明細書に開示されるSTINGアゴニストの投与は、先行技術の安全性及び有効性の問題を克服する。
具体的には、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストが合わせて投与される場合、STINGアゴニストはCTLA4阻害剤と相乗作用し、それらの部分の合計よりも有意に大きい効果をもたらす(すなわち、相加効果を超える)。したがって、腫瘍を治療するために必要なSTINGアゴニスト及び/又はCTLA4阻害剤の用量は、組み合わせて使用する場合、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤を個別に投与する場合に必要な用量よりも低い。本明細書で実証されるように、腫瘍応答の増強は、腫瘍の縮小又は生存期間の延長によって示され得る。
【0028】
驚くべきことに、本明細書の例2に示すように、特定のSTINGアゴニスト(化合物A)が抗CTLA4抗体の抗腫瘍効果を増強する能力は、抗CTLA4抗体を腫瘍内投与した場合、抗CTLA4抗体を全身投与した場合よりも有意に大きい。具体的には、化合物Aの腫瘍内用量と組み合わせて投与した場合、疾患マウスへの抗CTLA4抗体の低用量(50μg)の腫瘍内投与は、全身投与されたより高用量(200μg)の抗CTLA4抗体と比較した場合、腫瘍サイズ及び全生存に関して有意な利益を提供した。実際、抗CTLA4抗体の腫瘍内用量を5分の1に(10μgに)減少させた場合であっても、抗腫瘍効果は、全身投与された抗CTLA4抗体200μgの効果と同様であった。
【0029】
したがって、本開示は、腫瘍内投与されたCTLA4阻害剤の抗腫瘍効果が、STINGアゴニストの合わせた腫瘍内投与によって有意に増強され得ることを示す。したがって、一態様では、本開示は、がん患者に腫瘍内投与されたCTLA4阻害剤の抗腫瘍応答を増強する方法を提供し、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤を患者に腫瘍内及び合わせて投与することを含む。本明細書で実証されるように、腫瘍応答の増強は、腫瘍の縮小又は生存期間の延長によって示され得る。
【0030】
一態様では、本開示は、治療有効量のSTINGアゴニストと共にCTLA4阻害剤の腫瘍内用量を合わせてがん患者に投与することを含む、ヒトがん患者における転移を治療又は予防する方法を提供する。特定の実施形態では、STINGアゴニストは、CTLA4阻害剤と同じ医薬組成物又はCTLA4阻害剤とは異なる組成物のいずれかで腫瘍内投与される。他の実施形態では、STINGアゴニストは、全身投与される(例えば、皮下、筋肉内、又は静脈内)。更に他の実施形態では、STINGアゴニストは経口投与される。特定の実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤と合わせて投与される。
【0031】
本開示のいくつかの実施形態では、STINGアゴニストは、CTLA4阻害剤の腫瘍内用量と組み合わせて、免疫チェックポイント療法に対して抵抗性又は難治性のがんを治療することができる。例えば、併用療法は、免疫チェックポイント療法に抵抗性の原発性又は転移性腫瘍を治療するために使用され得る。いくつかのこのような実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストは、PD-1阻害剤又はPD-L1阻害剤と合わせて投与される。
【0032】
一実施形態では、STINGアゴニストは、免疫チェックポイント阻害療法を既に受けているヒトがん患者、例えばがんが安定化しているヒトがん患者に投与される。特定の実施形態では、がん患者は、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤の腫瘍内用量の投与前に、少なくとも1又は2サイクルの免疫チェックポイント阻害剤療法を受けている。例えば、がん患者は、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤の腫瘍内用量の投与前に、2、3、4、5、6、7又は8サイクルの免疫チェックポイント阻害療法を受けていてもよい。これらの実施形態の特定のものでは、がん患者は、STINGアゴニストの連続サイクルが投与されると共に免疫チェックポイント阻害療法を受け続ける。
【0033】
特定の実施形態では、CTLA4阻害剤と組み合わせて、例えば合わせて投与されるSTINGアゴニストは、環状ジヌクレオチド(CDN)化合物である。例えば、STINGアゴニストは、上に示される2’3’-CDN、例えば2’3’-cGAMP又は化合物Aであり得る。他の実施形態では、STINGアゴニストは、3’3’-CDN、2’2’-CDN又は3’2’-CDNである。いくつかの実施形態では、STINGアゴニストは、ベンゾフェノン類似体である。更なる実施形態では、STINGアゴニストは、二量体アミドベンズイミダゾールである。本開示に従って使用することができるSTINGアゴニストの例としては、ADU-S100(MIW815)、BMS-986301、CRD5500、CMA(10-カルボキシメチル-9-アクリダノン)、diABZI STINGアゴニスト-1(例えば、カタログ番号:2138299-34-8)、DMXAA(ASA404/vadimezan)、E7766、GSK-532、GSK-3745417、MK-1454、MK-2118、SB-11285、SRCB-0074、TAK-676、TTI-10001、SR-717、及びMSA-2が挙げられる。
【0034】
一実施形態では、本開示に従って投与されるCDNは、以下の化合物(「化合物A」)又はその薬学的に許容される塩である。
【化2】
【0035】
化合物Aは、局所的及び全身的の両方で作用して、強力な抗腫瘍効果を発揮することができる。化合物Aは、必要とするがん患者に特定の投与量で投与された場合、転移の拡大を実質的に低減又は防止することができる。本開示によれば、CTLA4阻害剤の腫瘍内用量と合わせて投与した場合、転移の発症及び/又は進行を低減又は予防する化合物Aの能力を増強することができる。更に、化合物Aは、本開示に従って、CTLA4阻害剤の腫瘍内用量と合わせて投与された場合に強力なアブスコパル効果を発揮することが発見されている。
【0036】
化合物Aが、CTLA4阻害剤の腫瘍内用量と合わせて投与されるSTINGアゴニストとして作用するいくつかの実施形態では、化合物Aは複数サイクルにわたって投与され得る。例えば、一実施形態では、最初のサイクルは、4週間の期間の1、8及び15日目に化合物Aを投与することを含み、その後のサイクルは、4週間の期間の1及び15日目(すなわち、隔週)に化合物Aを投与することを含む。化合物Aは、皮下、筋肉内又は静脈内を含む、腫瘍内又は全身に投与され得る。いくつかの実施形態では、投与に指定されたサイクルの日に、化合物Aは、50μg~6,500μgの範囲の投与量で投与され得る。いくつかの実施形態では、投与に指定されたサイクルの日に、化合物Aは、100μg~3,000μgの範囲の投与量で投与され得る。いくつかの実施形態では、投与に指定されたサイクルの日に、化合物Aは、100μg~1,200μgの範囲の投与量で投与され得る。
【0037】
一実施形態では、本開示に従って投与されるCDNは、以下の化合物(「化合物B」)又はその薬学的に許容される塩である。
【化3】
【0038】
別の実施形態では、本開示に従って投与されるCDNは、以下の化合物(「化合物C」)又はその薬学的に許容される塩である。
【化4】
【0039】
別の実施形態では、本開示に従って投与されるSTINGアゴニストは、参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2019/165032号に開示されている化合物である。そのようなSTINGアゴニストは、患者に経口、全身、又は腫瘍内投与され得る。本開示に従って投与され得る1つのそのようなSTINGアゴニストの例は、以下の構造を有するSR-717(「化合物D」)、又はその薬学的に許容される塩である。
【化5】
【0040】
別の実施形態では、本開示に従って投与されるSTINGアゴニストは、以下の構造を有するMSA-2(化合物E)、又はその薬学的に許容される塩である。
【化6】

MSA-2は、患者に経口、全身、又は腫瘍内投与され得る。
【0041】
本方法においてSTINGアゴニストとして使用することができるCDNの更なる例は、以下の刊行物、国際公開第2014/144666号、国際公開第2014/179335号、国際公開第2014/189806号、国際公開第2015/161762号、国際公開第2016/096174号、国際公開第2017/027646号、国際公開第2017/027645号、国際公開第2017/161349号、国際公開第2018/118664号、国際公開第2018/118665号、国際公開第2018/208667号、国際公開第2019/165032号、及び国際公開第2019/046511号に開示されており、これらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0042】
他の実施形態では、本開示に従って投与されるSTINGアゴニストは、抗体又は抗原結合フラグメントにコンジュゲート化され得、したがって、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)が生成され得る。
【0043】
一実施形態では、本開示に従って投与されるADCは、米国特許第2017/0298139号、国際公開第2017/100305号、国際公開第2018/200812号又は国際公開第2018/140831号に記載されているような構造を有し、その各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0044】
特定の実施形態では、本開示に従って投与されるADCは、式IAの構造を有し、
(IA)Ab-[-L-D]
式中、
「D」は、式IIaの構造を有するCDNを表し、
【化7】

式中、
W、X、Y及びZは独立してCH又はNであり、
は、チオール基、アミノ基、又はC1-6アルキルアミノ基で置換された、C2-4アルキルであり、
は、各出現について独立して、ヒドロキシル、チオール、C1-6アルキル、ボラノ(-BH )、又は-NR’R’’であり、式中、R’及びR’’は、各出現について独立して、水素、又はハロゲン、チオール、ヒドロキシル、カルボキシル、C1-6アルコキシ、C1-6ヒドロキシアルコキシ、-OC(O)C1-6アルキル、-N(H)C(O)C1-6アルキル、-N(C1-3アルキル)C(O)C1-6アルキル、アミノ、C1-6アルキルアミノ、ジ(C1-6アルキル)アミノ、オキソ、及びアジドから選択される1つ又は複数の基で場合により置換されたC1-6アルキルであるか、あるいは同じ窒素上のR’及びR’’は一緒になってC3-5複素環を形成するか、
あるいはその薬学的に許容される塩であり、
「Ab」は、標的抗原に結合する抗体又はその結合フラグメントを表し、
「L」は、各出現について独立して、Dの1つ又は複数の出現をAbに連結するリンカーを表し、
「n」は、リンカー(L)を介してAbに連結されたDの出現数を表し、式中、CDN(D)は、CDNのR位の、チオール基、アミノ基又はC1-6アルキルアミノ基においてリンカー(L)に共有結合している。
【0045】
STINGアゴニストが、式IAのADCの一部として投与されるいくつかの実施形態では、ADCのCDNは、式IIb又はその薬学的に許容される塩の構造を有する。
【化8】
【0046】
STINGアゴニストが、式IAのADCの一部として投与されるいくつかの実施形態では、ADCのCDNは、式IIc又はその薬学的に許容される塩の構造を有する。
【化9】
【0047】
STINGアゴニストが、式IAのADCの一部として投与されるいくつかの実施形態では、ADCは、式IIIの構造を有する。
【化10】
【0048】
STINGアゴニストが、式IAのADCの一部として投与されるいくつかの実施形態では、ADCは、式IVの構造を有する。
【化11】
【0049】
STINGアゴニストが式IAのADCの一部として投与されるいくつかの実施形態では、ADC(「化合物F」)は、以下の構造を有する。
【化12】
【0050】
STINGアゴニストが式IAのADCの一部として投与されるいくつかの実施形態では、ADC(「化合物G」)は、以下の構造を有する。
【化13】
【0051】
本開示に従って使用することができるCTLA4阻害剤の例としては、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))及びトレメリムマブ(チシリムマブ)、CBT-509、CS1002、BMS-986249、AGEN1181、AGEN1194、AGN2041、BA3071、ATOR-1015、ATOR-1144、ADV-1604及びBCD-145が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態では、CTLA4阻害剤は、イピリムマブ(Yervoy(登録商標))及びトレメリムマブから選択される抗CTLA4抗体である。
【0052】
PD-1阻害剤がCTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストと組み合わせて投与されるいくつかの実施形態では、PD-1阻害剤は、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、AMP-224、AMP-514、又はPDR001であり得るが、これらに限定されない。PD-1阻害剤は、一般に全身投与又は腫瘍内投与され得る。
【0053】
PD-L1阻害剤がCTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストと組み合わせて投与されるいくつかの実施形態では、PD-L1阻害剤は、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、ウルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS-936559、又はCK-301であり得るが、これらに限定されない。PD-L1阻害剤は、一般に全身投与又は腫瘍内投与され得る。
【0054】
特定の実施形態では、抗CTLA4抗体イピリムマブは、化合物Aと腫瘍内及び合わせて投与され、これは腫瘍内又は全身に投与され得る。そのような実施形態では、イピリムマブと化合物Aとの組合わせは、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、AMP-224、AMP-514、及びPDR001から選択されるPD-1阻害剤と合わせて投与され得る。あるいは、イピリムマブと化合物Aとの組合わせは、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、ウルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS-936559、又はCK-301から選択されるPD-L1阻害剤と合わせて投与され得る
【0055】
特定の実施形態では、抗CTLA4抗体イピリムマブは、化合物Aと腫瘍内及び合わせて投与され、これは腫瘍内又は全身に投与され得る。そのような実施形態では、イピリムマブと化合物Aとの組合わせは、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、AMP-224、AMP-514、及びPDR001から選択されるPD-1阻害剤と合わせて投与され得る。あるいは、イピリムマブと化合物Aとの組合わせは、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、ウルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS-936559、又はCK-301から選択されるPD-L1阻害剤と合わせて投与され得る
【0056】
特定の実施形態では、抗CTLA4抗体イピリムマブは、化合物Bと腫瘍内及び合わせて投与され、これは腫瘍内又は全身に投与され得る。そのような実施形態では、イピリムマブと化合物Bとの組合わせは、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、AMP-224、AMP-514、及びPDR001から選択されるPD-1阻害剤と合わせて投与され得る。あるいは、イピリムマブと化合物Bとの組合わせは、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、ウルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS-936559、又はCK-301から選択されるPD-L1阻害剤と合わせて投与され得る
【0057】
特定の実施形態では、抗CTLA4抗体イピリムマブは、化合物Cと腫瘍内及び合わせて投与され、これは腫瘍内又は全身に投与され得る。そのような実施形態では、イピリムマブと化合物Cとの組合わせは、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、AMP-224、AMP-514、及びPDR001から選択されるPD-1阻害剤と合わせて投与され得る。あるいは、イピリムマブと化合物Cとの組合わせは、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、ウルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS-936559、又はCK-301から選択されるPD-L1阻害剤と合わせて投与され得る
【0058】
特定の実施形態では、抗CTLA4抗体イピリムマブは、化合物Dと腫瘍内及び合わせて投与され、これは腫瘍内又は全身に投与され得る。そのような実施形態では、イピリムマブと化合物Dとの組合わせは、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、AMP-224、AMP-514、及びPDR001から選択されるPD-1阻害剤と合わせて投与され得る。あるいは、イピリムマブと化合物Dとの組合わせは、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、ウルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS-936559、又はCK-301から選択されるPD-L1阻害剤と合わせて投与され得る
【0059】
特定の実施形態では、抗CTLA4抗体イピリムマブは、化合物Eと腫瘍内及び合わせて投与され、これは腫瘍内又は全身に投与され得る。そのような実施形態では、イピリムマブと化合物Eとの組合わせは、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、AMP-224、AMP-514、及びPDR001から選択されるPD-1阻害剤と合わせて投与され得る。あるいは、イピリムマブと化合物Eとの組合わせは、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、ウルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS-936559、又はCK-301から選択されるPD-L1阻害剤と合わせて投与され得る
【0060】
特定の実施形態では、抗CTLA4抗体イピリムマブは、化合物Fと腫瘍内及び合わせて投与され、これは腫瘍内又は全身に投与され得る。そのような実施形態では、イピリムマブと化合物Fとの組合わせは、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、AMP-224、AMP-514、及びPDR001から選択されるPD-1阻害剤と合わせて投与され得る。あるいは、イピリムマブと化合物Fとの組合わせは、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、ウルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS-936559、又はCK-301から選択されるPD-L1阻害剤と合わせて投与され得る
【0061】
特定の実施形態では、抗CTLA4抗体イピリムマブは、化合物Gと腫瘍内及び合わせて投与され、これは腫瘍内又は全身に投与され得る。そのような実施形態では、イピリムマブと化合物Gとの組合わせは、ペムブロリズマブ(Keytruda(登録商標))、ニボルマブ(Opdivo(登録商標))、セミプリマブ(Libtayo(登録商標))、AMP-224、AMP-514、及びPDR001から選択されるPD-1阻害剤と合わせて投与され得る。あるいは、イピリムマブと化合物Gとの組合わせは、アテゾリズマブ(Tecentriq(登録商標))、アベルマブ(Bavencio(登録商標))、ウルバルマブ(Imfinzi(登録商標))、BMS-936559、又はCK-301から選択されるPD-L1阻害剤と合わせて投与され得る
【0062】
5.2.更なる治療方法
本明細書に開示される併用療法は、疾患又は障害、特にがんを治療するために使用することができる。本開示によれば、併用療法は、原発腫瘍及び転移性腫瘍の両方を治療するために使用することができる。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤、STINGアゴニスト及び場合により1つ又は複数の更なる抗がん剤(例えば、PD-1又はPD-L1阻害剤)は、原発腫瘍及び原発腫瘍に由来する転移の発生の縮小又は根絶をもたらす本明細書に開示される用量レベル又は特定の投与レジメン下で投与され得る。
【0063】
したがって、一態様では、本開示は、CTLA4阻害剤、STINGアゴニスト及び場合により1つ又は複数の追加の抗がん剤(例えば、PD-1又はPD-L1阻害剤)を合わせて投与することを含む、対象のがんを治療する方法を提供し、CTLA4阻害剤は腫瘍内投与される。STINGアゴニスト及び更なる抗がん剤は、腫瘍内、全身又は経口投与され得る。
CTLA4阻害剤、STINGアゴニスト及び場合により1つ又は複数の更なる抗がん剤を、単一の医薬組成物中で一緒に投与することができる。あるいは、CTLA4阻害剤、STINGアゴニスト及び場合により1つ又は複数の追加の抗がん剤は、別々の医薬組成物で投与され得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、それを必要とする哺乳動物に投与される。特定の実施形態では、医薬組成物は、それを必要とするヒト患者に投与される。
【0064】
いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストの両方が患者の原発腫瘍内に腫瘍内投与される。特定のSTINGアゴニスト(例えば、化合物A)を原発腫瘍内に腫瘍内投与すると、腫瘍成長は、原発腫瘍の部位だけでなく、遠位腫瘍の部位でも抑制されることが見出されている。したがって、そのようなSTINGアゴニストは、アブスコパル効果を示す。更に、STINGアゴニストは、注射部位及び遠位領域の両方において、腫瘍微小環境におけるT細胞プライミング及び炎症を増強することによって、CTLA4のチェックポイント調節を増強する。したがって、CTLA4阻害のアブスコパル可能性は、STINGアゴニストとの同時投与によって増強される。
【0065】
したがって、本開示は、本明細書に開示される併用療法を投与することによって原発腫瘍及び遠位腫瘍(接近可能ながん及び接近不可能ながんを含む)の両方を治療する方法を提供する。
【0066】
いくつかの実施形態では、STINGアゴニストは、患者に全身投与される。例えば、STINGアゴニストは、がん患者に静脈内、筋肉内、又は皮下投与され得る。
【0067】
特定の実施形態では、STINGアゴニストは経口投与され得る。いくつかのそのような実施形態では、経口STINGアゴニストは、SR-717又はMSA-2である。
【0068】
本開示はまた、本明細書に記載のSTINGアゴニストを患者に投与することを含む、本明細書に記載のCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体)の腫瘍内用量で同時に治療されている患者を治療する方法を提供する。特定の実施形態では、STINGアゴニストは腫瘍内投与される。他の実施形態では、STINGアゴニストは、全身投与される(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)。更なる実施形態では、STINGアゴニストは経口投与される。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載のPD-L1阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)又はPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)を患者に投与することを更に含む。特定のこれらの実施形態では、患者は、本明細書に記載されるもの等のがんに罹患している。いくつかの実施形態では、患者を治療する方法は、がんに対して患者を治療する。
【0069】
本開示はまた、本明細書に記載のCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体)を患者に腫瘍内投与することを含む、本明細書に記載のSTINGアゴニストで同時に治療されている患者を治療する方法を提供する。いくつかの実施形態では、方法は、本明細書に記載のPD-L1阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)又はPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)を患者に投与することを更に含む。特定のこれらの実施形態では、患者は、本明細書に記載されるもの等のがんに罹患している。いくつかの実施形態では、患者を治療する方法は、がんに対して患者を治療する。
【0070】
特定の実施形態では、本開示の併用療法は、肺、骨、膵臓、皮膚、頭部、頸部、子宮、卵巣、胃、結腸、乳房、食道、小腸、腸、内分泌系、甲状腺、副甲状腺、副腎、尿道、前立腺、陰茎、精巣、尿管、膀胱、腎臓又は肝臓のがんを治療するために使用することができる。本開示の併用療法によって治療可能な更なるがんとしては、直腸がん、肛門領域のがん;卵管、子宮内膜、子宮頸部、膣、外陰部、腎盂、及び腎細胞のがん;軟部組織肉腫;粘液腫;横紋筋腫;線維腫;脂肪腫;奇形腫;胆管がん;肝芽腫;血管肉腫;血管腫;肝がん;線維肉腫;軟骨肉腫;骨髄腫;慢性又は急性白血病;リンパ球性リンパ腫;原発性CNSリンパ腫;CNSの新生物;脊髄軸腫瘍;扁平上皮がん;滑膜肉腫;悪性胸膜中皮腫;脳幹神経膠腫;下垂体腺腫;気管支腺腫;軟骨腫性過誤腫;類皮腫;ホジキン病;又は前述のがんの1つ若しくは複数の組合わせが挙げられる。
【0071】
特定の実施形態では、本開示の併用療法は、免疫チェックポイント阻害療法に対して難治性又は非応答性であるがんを治療するために使用することができる。
そのようながんには、前立腺がん、膵臓がん、リンパ腫、頭頸部がん、腎臓がん、黒色腫、結腸がん、乳がん、及び肺がんが含まれ得るが、これらに限定されない。特定の実施形態では、がんは、前立腺がん、膵臓がん、リンパ腫、頭頸部がん、及び腎臓がんから選択される。いくつかの実施形態では、がんは、黒色腫、結腸がん、乳がん、及び肺がんから選択される。
【0072】
5.3.医薬組成物キット及び併用療法
本開示は更に、CTLA4阻害剤、STINGアゴニスト、及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物を提供する。特定の実施形態では、医薬組成物は、例えば腫瘍内注射用の注射可能な医薬組成物である。いくつかの実施形態では、薬学的に許容される担体は、生理食塩水又はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を含み得る。本開示によって提供される特定の利点は、STINGアゴニスト及びCTLA4阻害剤を単一の組成物で腫瘍内投与できることである。単一組成物の投与は、必要とされる注射回数を減少させ、個々の治療剤の複数回投与に関連する副作用の発生率を減少させる。更に、CTLA4阻害剤をSTINGアゴニストと共に投与した場合に観察される相乗効果のために、有効性を達成するための薬剤のいずれかの用量は、薬剤のいずれかが単剤療法として投与された場合に有効性を達成するための用量よりも少ない。したがって、この相乗効果により、刺激等の副作用の発生が更に低減される。
【0073】
他の実施形態では、本開示は、がんを含む疾患又は障害を治療するためのキットを提供し、キットは、CTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体)及びSTINGアゴニストを含む。特定の実施形態では、キットは、腫瘍内投与のために製剤化されたCTLA4阻害剤及び腫瘍内、経口又は全身(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)投与用に製剤化されたSTINGアゴニストを提供する。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストの両方は、腫瘍内投与のために製剤化される。他の実施形態では、CTLA4阻害剤は腫瘍内投与のために製剤化され、STINGアゴニストは全身投与のために製剤化される。更に他の実施形態では、CTLA4阻害剤は腫瘍内投与のために製剤化され、STINGアゴニストは経口投与のために製剤化される。
【0074】
特定の実施形態では、キットは、PD-L1阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)又はPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)を更に含む。そのような実施形態のいくつかにおいて、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤は、腫瘍内投与又は全身投与(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)のために製剤化される。特定の実施形態では、CTLA4阻害剤及びSTINGアゴニストの両方は腫瘍内投与のために製剤化され、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤は全身投与のために製剤化される。他の実施形態では、CTLA4阻害剤は腫瘍内投与のために製剤化され、STINGアゴニスト及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の両方は全身投与のために製剤化される。特定の実施形態では、CTLA4阻害剤及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の両方は腫瘍内投与のために製剤化され、STINGアゴニストは全身投与のために製剤化される。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の両方は腫瘍内投与のために製剤化され、STINGアゴニストは経口投与のために製剤化される。他の実施形態では、CTLA4阻害剤、STINGアゴニスト、及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤は全て、腫瘍内投与のために製剤化される。更に他の実施形態では、CTLA4阻害剤は腫瘍内投与のために製剤化され、STINGアゴニストは経口投与のために製剤化され、PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤は全身投与のために製剤化される。
【0075】
本開示はまた、例えば本明細書に記載されるがんを治療するための併用療法を提供し、併用療法は、本明細書に記載されるCTLA4阻害剤(例えば、抗CTLA4抗体)の腫瘍内投与レジメン及びSTINGアゴニストのレジメンを含む。STINGアゴニストレジメンは、腫瘍内、経口又は全身(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)投与レジメンであり得る。いくつかの実施形態では、併用療法はPD-L1阻害剤(例えば、抗PD-L1抗体)又はPD-1阻害剤(例えば、抗PD-1抗体)のレジメンを更に含む。PD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤レジメンは、腫瘍内又は全身(例えば、静脈内、筋肉内、又は皮下)投与レジメンであり得る。
【0076】
特定の実施形態では、併用療法は、CTLA4阻害剤の腫瘍内投与レジメン、STINGアゴニストの腫瘍内投与レジメン、及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の腫瘍内投与レジメンを含む。他の実施形態では、併用療法は、CTLA4阻害剤の腫瘍内投与レジメン、STINGアゴニストの全身投与レジメン、及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の腫瘍内投与レジメンを含む。
他の実施形態では、併用療法は、CTLA4阻害剤の腫瘍内投与レジメン、STINGアゴニストの腫瘍内投与レジメン、及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の全身投与レジメンを含む。他の実施形態では、併用療法は、CTLA4阻害剤の腫瘍内投与レジメン、STINGアゴニストの全身投与レジメン、及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の全身投与レジメンを含む。他の実施形態では、併用療法は、CTLA4阻害剤の腫瘍内投与レジメン、STINGアゴニストの経口投与レジメン、及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の全身投与レジメンを含む。また更に他の実施形態では、併用療法は、CTLA4阻害剤の腫瘍内投与レジメン、STINGアゴニストの経口投与レジメン、及びPD-L1阻害剤又はPD-1阻害剤の腫瘍内投与レジメンを含む。
【0077】
5.4.投与レジメン
CTLA4阻害剤の腫瘍内投与に関連する特定の利点は、それが全身投与経路よりも少ない用量で送達され得ることである。しかしながら、CTLA4阻害剤の腫瘍内投与は、限定された抗がん効果を提供し得る。本明細書に開示されるように、腫瘍内投与された低用量のCTLA4阻害剤の抗腫瘍効果は、STINGアゴニストとの合わせた投与によって著しく増強され得る。CTLA4阻害剤の「低用量」投与は、全身投与した場合に治療効果を有することが知られているCTLA4阻害剤の用量よりも有意に低いCTLA4阻害剤の用量を指す。例えば、市販のCTLA4阻害剤の「低用量」投与は、例えば、CTLA4阻害剤の製品ラベルに反映されるように、患者に全身投与されるCTLA4阻害剤の治療有効用量よりも有意に低いCTLA4阻害剤の用量を指し得る。例えば、CTLA4阻害剤の腫瘍内用量は、例えば製品ラベルに反映されるように、CTLA4阻害剤の治療有効用量の50分の1~2分の1であり得る。いくつかの実施形態では、CTLA4阻害剤の腫瘍内用量は、例えば製品ラベルに反映されるように、CTLA4阻害剤の治療有効用量の50分の1~3分の1であり得る。他の実施形態では、CTLA4阻害剤の腫瘍内用量は、例えば製品ラベルに反映されるように、CTLA4阻害剤の治療有効用量の10分の1~4分の1であり得る。
【0078】
STINGアゴニストと組み合わせて投与されるCTLA4阻害剤の特定の用量及び投与レジメンは、特定のCTLA4阻害剤及び治療されるがんに依存する。CTLA4阻害剤が抗CS1抗体である実施形態では、抗体は、1~4週間ごとに投与され得る。特定の実施形態では、STINGアゴニストは、週に1回、2週間に1回、3週間に1回、又は月に1回投与され得る。そのような実施形態では、STINGアゴニストは、抗CTLA4抗体が投与されるたびに投与され得る。あるいは、STINGアゴニストは、抗CTLA4抗体よりも頻繁に投与され得る。例えば、STINGアゴニストは、毎週又は隔週で投与することができ、抗CTLA4抗体は、隔週、3週間に1回、4週に1回、又は毎月投与され得る。
【0079】
CTLA4阻害剤、STINGアゴニスト及びPD-1(又はPD-L1)阻害剤の投与に関する実施形態では、CTLA4阻害剤及びPD-1(又はPD-L1)阻害剤の特定の用量及び投与スケジュールは、特定の阻害剤及び治療されるがんに依存する。CTLA4及びPD-1(又はPD-L1)阻害剤が抗体である実施形態では、抗体は、同じ投与スケジュール又は代替の投与スケジュールに従って送達され得る。一実施形態では、STINGアゴニスト及び抗CTLA4抗体は、特定の投与スケジュールに従って腫瘍内投与することができ、抗PD-1抗体(又は抗PD-L1抗体)は、代替の投与スケジュールで全身(例えば、静脈内、皮下、又は筋肉内)投与され得る。そのような一実施形態では、抗CTLA4抗体及びSTINGアゴニストは、特定の用量数について毎週、隔週又は3週間に1回のスケジュールで合わせて及び腫瘍内投与することができ、その後、残りの投与スケジュールについては2~4週間ごとに抗PD-1抗体(又は抗PD-L1抗体)の投与が続く。
【0080】
一実施形態では、抗CTLA4抗体はイピリムマブであり、イピリムマブ及びSTINGアゴニストは両方ともがん患者に腫瘍内投与される。イピリムマブに関して、腫瘍内用量は0.01mg/kg~1mg/kgの間で変動し得る。例えば、イピリムマブの腫瘍内用量は、0.01mg~0.5mg/kg、0.05mg~0.5mg/kg、0.1mg/kg~0.5mg/kg、0.2mg/kg~0.5mg/kg、0.2mg/kg~0.4mg/kg、0.2mg/kg~0.3mg/kgの間で変動し得る。特定の実施形態では、イピリムマブ及びSTINGアゴニストは、毎週、隔週又は3週間に1回で合わせて投与され得る。他の実施形態では、STINGアゴニストは、毎週投与することができ、イピリムマブは、隔週投与され得る。他の実施形態では、STINGアゴニストは、毎週又は隔週に投与することができ、イピリムマブは、3週間に1回で投与され得る。他の実施形態では、STINGアゴニストは、毎週又は隔週で投与することができ、イピリムマブは、4週間ごと又は毎月投与され得る。他の実施形態では、STINGアゴニストは、本明細書中で論じられる投与スケジュールに従って、例えば、最初の28日間のサイクルでは最初の3週間は毎週、その後のサイクルでは隔週で投与することができ、イピリムマブは、全てのサイクルで隔週で投与され得る。1つの特定の実施形態では、イピリムマブと組み合わせて投与されるSTINGアゴニストは、化合物Aである。この実施形態では、化合物Aは、5.5節に記載される投与レジメンによって投与され得る。
【0081】
別の実施形態では、抗CTLA4抗体イピリムマブ及びSTINGアゴニストは両方とも、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体と組み合わせてがん患者に腫瘍内投与される。抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体は、イピリムマブ及びSTINGアゴニストと同じ投与スケジュール又は代替の投与スケジュールで投与され得る。一実施形態では、イピリムマブ及びSTINGアゴニストは、前の段落に記載の投与スケジュールに従って合わせて及び腫瘍内投与され、抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体は、腫瘍内投与レジメンの完了後に全身投与される(例えば、静脈内、皮下、又は筋肉内)。例えば、イピリムマブ及びSTINGアゴニストは、4~8回の用量で2~3週間ごとに合わせて及び腫瘍内に投与され、続いて治療期間中2~4週間ごとに抗PD-1抗体又は抗PD-L1抗体が投与され得る。1つの特定の実施形態では、イピリムマブと組み合わせて投与されるSTINGアゴニストは、化合物Aである。この実施形態では、化合物Aは、5.5節に記載される投与レジメンによって投与され得る。
【0082】
STINGアゴニストの投与量は、特定のSTINGアゴニスト及び投与経路に応じて変化する。一般に、全身投与又は腫瘍内投与の場合、STINGアゴニストは、1~1000μg/kgの範囲の用量で投与され得る。経口投与の場合、STINGアゴニストは、5~5000μg/kgの範囲の用量で投与され得る。
【0083】
5.5.安全性プロファイルが改善されたSTINGアゴニスト投与レジメン
いくつかの実施形態では、STINGアゴニストは、プライミング用量とそれに続く複数回の維持用量とを含む投与スケジュールで投与される。プライミング用量は、特定の活性剤(例えば、STINGアゴニスト)に対する身体の耐性を高めるために維持用量よりも低い用量で投与される用量を指す。プライミング用量のSTINGアゴニストの投与は、STINGアゴニストの安全性プロファイルを改善し、そうでなければ許容されるであろうよりも高い維持用量レベルで化合物を送達することを可能にすることが見出された。一般に、プライミング投与量は、所与の投与サイクルの経過にわたって維持用量未満である。
【0084】
したがって、本開示は、プライミング用量の投与とそれに続く維持用量の投与とを必要とする特定の投与スケジュールに基づくSTINGアゴニストのための新規な投与スケジュールを提供する。STINGアゴニストは、単独で、又は1つ若しくは複数の抗がん剤と組み合わせて投与され得る。STINGアゴニストは、腫瘍内、全身又は経口投与され得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の新規STINGアゴニスト投与スケジュールはまた、1つ又は複数の免疫チェックポイント阻害剤、特にCTLA4阻害剤、PD-1阻害剤、又はPD-L1阻害剤との合わせた投与を含む。特定の実施形態では、STINGアゴニストと合わせて投与されるCTLA4、PD-1及びPD-L1阻害剤は、5.1節に記載されている。特定の実施形態では、CTLA4阻害剤は、5.1節~5.2節を含む本明細書に記載されるように、腫瘍内投与される。腫瘍内CTLA4投与と合わせて、STINGアゴニストプライミング/維持投与レジメンの組合わせを使用することは、改善された治療指数を提供することが予想される。
【0085】
開示されたプライミング/維持投与スケジュールを使用して投与され得る特定のSTINGアゴニストは、上記の5.1節に記載されている。いくつかの実施形態では、開示されるプライミング/維持投与スケジュールで投与されるSTINGアゴニストは、化合物Aである。いくつかの実施形態では、開示されるプライミング/維持投与スケジュールで投与されるSTINGアゴニストは、化合物Aではない。
いくつかの実施形態では、開示されるプライミング/維持投与スケジュールで投与されるSTINGアゴニストは、化合物Bである。いくつかの実施形態では、開示されるプライミング/維持投与スケジュールで投与されるSTINGアゴニストは、化合物Cである。いくつかの実施形態では、開示されるプライミング/維持投与スケジュールで投与されるSTINGアゴニストは、化合物Dである。いくつかの実施形態では、開示されるプライミング/維持投与スケジュールで投与されるSTINGアゴニストは、化合物Eである。いくつかの実施形態では、開示されるプライミング/維持投与スケジュールで投与されるSTINGアゴニストは、化合物Fである。いくつかの実施形態では、開示されるプライミング/維持投与スケジュールで投与されるSTINGアゴニストは、化合物Gである。特定の実施形態では、開示されるプライミング/維持投与スケジュールで投与されるSTINGアゴニストは、本明細書に記載されるもの等のADCの一部として投与される。
【0086】
いくつかの実施形態では、STINGアゴニストのプライミング用量は、所与の投与サイクルにおける個々の維持用量の100分の1~2分の1の量(重量基準)で投与され得る。例えば、プライミング用量は、所与のサイクルにおける維持用量の70分の1~2分の1、50分の1~2分の1、30分の1~2分の1、20分の1~2分の1、10分の1~2分の1、50分の1~10分の1、30分の1~10分の1、20分の1~10分の1、又は30分の1~20分の1の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、所与のサイクルにおける維持用量の4分の1~2分の1の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、所与のサイクルにおける維持用量の5分の1~2分の1の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、所与のサイクルにおける維持用量の8分の1~2分の1の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、所与のサイクルにおける維持用量の5分の1~3分の1の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、所与のサイクルにおける維持用量の8分の1~3分の1の量で投与され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、所与のサイクルにおける維持用量の8分の1~4分の1の量で投与され得る。
【0087】
いくつかの実施形態では、プライミング用量は、投与サイクルの経過にわたって維持用量の約2分の1の用量で送達され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、投与サイクルの経過にわたって維持用量の約3分の1の用量で送達され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、投与サイクルの経過にわたって維持用量の約4分の1の用量で送達され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、投与サイクルの経過にわたって維持用量の約5分の1の用量で送達され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、投与サイクルの経過にわたって維持用量の約10分の1の用量で送達され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、投与サイクルの経過にわたって維持用量の約15分の1の用量で送達され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、投与サイクルの経過にわたって維持用量の約20分の1の用量で送達され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、投与サイクルの経過にわたって維持用量の約50分の1の用量で送達され得る。いくつかの実施形態では、プライミング用量は、投与サイクルの経過にわたって維持用量の約100分の1の用量で送達され得る。
【0088】
個々の維持用量に対する上記のプライミング用量の相対量は、比として表すことができることが理解されるべきである。例えば、プライミング用量が維持用量の約2分の1の用量で投与される実施形態では、プライミング用量と個々の維持用量との1:2の比を含む投与レジメンが記載される。したがって、特定の実施形態では、本開示は、STINGアゴニストを、それを必要とする患者に、プライミング用量と個々の維持用量との1:2~1:100の比、例えば、1:2、2:5、3:8、1:3、2:7、1:4、1:5、1:6、1:8、1:9、1:10、1:11、1:12、1:15、1:20、1:30、1:50、1:75又は1:100の比(これらの比によって作り出される範囲、例えば、1:2~1:3、1:2~1:4、1:2~1:5、1:2~1:8、1:2~1:10、1:4~1:8、1:4~1:10、1:4~1:15、1:4~1:20、1:8~1:10、1:8~1:15、1:8~1:20、1:8~1:30、1:10~1:15、1:10~1:20、1:10~1:30、1:10~1:50、1:20~1:30、1:20~1:50、1:20~1:75、1:20~1:100、1:30~1:50、1:30~1:75、1:30~1:100、1:50~1:75、1:50~1:100、又は1:75~1:100を含む)の投与レジメンに従って投与することを含む、がんの治療方法を提供する。
【0089】
いくつかの実施形態では、本開示は、がんを治療する方法を提供し、それを必要とする患者に、プライミング用量と個々の維持用量との比1:4又は1:5、又は1:3~1:6、例えば1:3~1:5、1:4~1:6、又は1:4~1:5の範囲内の比を含む投与レジメンに従ってSTINGアゴニストを投与することを含む。他の実施形態では、比は、1:8又は1:10、又は1:5~1:15の範囲の比、例えば1:6~1:12、1:8~1:12、1:8~1:10、又は1:9~1:10である。
【0090】
いくつかの実施形態では、プライミング用量は、治療サイクルの1日目に投与され得、維持用量は、その後、上記の投与スケジュールで投与され得る。初回維持用量は、プライミング用量の投与の少なくとも2日後、すなわち3日目に投与され得る。例えば、初回維持用量は、プライミング用量の投与の2、3、4、5、6、7、8、9又は10日後に投与され得る。
【0091】
一実施形態では、投与サイクルは、治療サイクルの1日目にSTINGアゴニストのプライミング用量を投与し、引き続いて治療サイクルの8、15及び22日目(すなわち、第2、3及び4週の最初の日)にSTINGアゴニストの維持用量を投与し、引き続いてSTINGアゴニストが患者に投与されない1週間(すなわち、第5週)の期間を含む。維持投与サイクルを繰り返すことができ、又は変更された維持投与スケジュールを使用することができる。
【0092】
別の実施形態では、投与サイクルは、治療サイクルの1日目のプライミング用量のプライミング用量を投与し、続いて投与スケジュールの8日目及び22日目にSTINGアゴニストの維持用量を投与することを含む(すなわち、隔週投与)。維持投与サイクルを繰り返すことができ、又は変更された維持投与スケジュールを使用することができる。
【0093】
5.6.化合物Aと組み合わせた腫瘍内CTLA4阻害剤
腫瘍内投与はCTLA4阻害剤の治療指数を改善するが、特定のSTINGアゴニストの選択は安全性プロファイルを更に改善することができる。理想的には、STINGアゴニストは、しばしば過剰なサイトカイン産生に関連する同時発生の副作用が有意に減少した強力な抗腫瘍効果を引き起こす。化合物Aは、用量依存的にサイトカインの産生を誘発することができるSTINGアゴニストであることが見出された。化合物Aは、非常に低レベルのサイトカイン産生であっても、顕著な抗腫瘍効果を示す。例えば、化合物Aは、がん患者に安全に投与することができ、1~100μg/kgの範囲で投与した場合に治療上の利益を提供することができる。本開示に従って、化合物AをCTLA4阻害剤の腫瘍内投与量と合わせて投与すると、有意に改善された治療指数が達成される。
【0094】
化合物AがSTINGアゴニストとして働く特定の実施形態では、化合物Aは、1~100μg/kgの範囲で腫瘍内投与又は全身投与され得る。例えば、化合物Aは、1~10μg/kg、5~10μg/kg、5~20μg/kg、5~30μg/kg、5~40μg/kg、5~50μg/kg、10~20μg/kg、10~30μg/kg、10~40μg/kg、10~50μg/kg、15~20μg/kg、15~40μg/kg、20~30μg/kg、20~40μg/kg、20~50μg/kg、30~40μg/kg、30~50μg/kg、5~75μg/kg、10~75μg/kg、15~75μg/kg、20~75μg/kg、25~75μg/kg、35~75μg/kg、5~100μg/kg、10~100μg/kg、15~100μg/kg、20~100μg/kg、25~100μg/kg、35~100μg/kg、又は50~100μg/kgの範囲でがん患者に投与され得る。
【0095】
いくつかの実施形態では、化合物Aは、10~6,500μg、例えば50~6,500μgの範囲で、例えば単回又は分割用量でがん患者に投与され得る。特定の実施形態では、化合物Aは、100~3,000μgの範囲で、例えば単回又は分割用量でがん患者に投与され得る。他の実施形態では、化合物Aは、100~1,200μgの範囲で、例えば単回又は分割用量でがん患者に投与され得る。例えば、化合物Aは、10~50μg、10~100μg、10~200μg、50~200μg、100~200μg、100~400μg、100~500μg、100~800μg、200~400μg、400~600μg、400~800μg、100~1,000μg、250~1,000μg、500~1,000μg、500~3,000μg、1,000~3,000μg、500~4,500μg、1,000~4,500μg、500~6,500μg、1,000~6,500μg、2,000~6,500μg、3,000~6,500μg、又は4,500~6,500μgの範囲でがん患者に投与され得る。
【0096】
化合物Aのプライミング用量及び維持用量の投与を含む実施形態では、化合物Aのプライミング用量は、10~1,000μgの範囲の用量でがん患者に投与され得る。例えば、化合物Aのプライミング用量は、10~20μg、10~40μg、10~50μg、10~80μg、20~40μg、40~60μg、40~80μg、50~100μg、100~200μg、100~300μg、100~500μg、200~500μg、200~800μg、200~1,000μg、500~800μg、又は500~1,000μgの範囲でがん患者に投与され得る。特定の実施形態では、化合物Aのプライミング用量は、0.15~20μg/kg、例えば0.15~1μg/kg、0.25~1μg/kg、0.5~1μg/kg、0.5~2μg/kg、1~3μg/kg、1~5μg/kg、2~5μg/kg、2~7μg/kg、1~10μg/kg、2~10μg/kg、3~10μg/kg、5~10μg/kg、5~15μg/kg、10~20μg/kg、又は15~20μg/kgの範囲の投与量でがん患者に投与され得る。
【0097】
化合物Aのプライミング用量及び維持用量の投与を含む実施形態では、化合物Aの維持用量は、100~3,000μgの範囲の用量でがん患者に投与され得る。他の実施形態では、化合物Aの維持用量は、100~1,200μgの範囲の投与量でがん患者に投与され得る。例えば、化合物Aの維持用量は、50~200μg、100~200μg、100~400μg、100~500μg、100~800μg、100~1,000μg、200~400μg、200~800μg、200~1,200μg、250~1,000μg、400~600μg、400~800μg、400~1,200μg、500~1,000μg、500~1,200μg、500~1,500μg、500~2,000μg、500~4,500μg、800~1,200μg、800~1,500μg、800~2,000μg、1,000~2,000μg、1,000~3,000μg、1,000~4,500μg、2,000~4,500μg、500~6,500μg、1,000~6,500μg、1,500~6,500μg、2,000~6,500μg、又は3,000~6,500μgの範囲でがん患者に投与され得る。特定の実施形態では、化合物Aの維持用量は、1~100μg/kg、例えば1~50μg/kgの範囲の投与量でがん患者に投与され得る。例えば、化合物Aの維持用量は、1~10μg/kg、5~10μg/kg、5~20μg/kg、5~30μg/kg、5~40μg/kg、5~50μg/kg、10~20μg/kg、10~30μg/kg、10~40μg/kg、10~50μg/kg、15~20μg/kg、15~40μg/kg、20~30μg/kg、20~40μg/kg、20~50μg/kg、30~40μg/kg、30~50μg/kg、5~75μg/kg、10~75μg/kg、15~75μg/kg、20~75μg/kg、25~75μg/kg、35~75μg/kg、5~100μg/kg、10~100μg/kg、15~100μg/kg、20~100μg/kg、25~100μg/kg、35~100μg/kg、又は50~100μg/kgの範囲でがん患者に投与され得る。
【0098】
別の実施形態では、投与サイクルは、治療サイクルの1日目にプライミング用量の化合物Aを投与し、続いて2つの維持投与レジメン下で化合物Aを投与することを含む。第1の維持投与レジメンは、治療サイクルの8、15及び22日目(すなわち、第2、3及び4週の最初の日)に維持用量の化合物Aを投与し、続いて化合物Aを患者に投与しない1週間(すなわち、第5週)の期間が続く。第2の維持投与レジメンは、化合物Aを隔週投与レジメンで投与することを含む。例えば、化合物Aは、投与サイクルの6週目及び8週目の初めに投与され得る。いくつかの実施形態では、化合物Aの追加の隔週投与が患者に投与され得る。例えば、化合物Aは、投与サイクルの第10週、投与サイクルの第10週及び第12週、投与サイクルの第10週、第12週及び第14週、投与サイクルの第10週、第12週、第14週及び第16週等に投与され得る。
【0099】

例1.化合物Aのプライミング及び維持用量の投与
雄及び雌のカニクイザルを群に割り当て、化合物Aの用量を投与した。動物に、2mL/kgの体積で皮下注射によって投薬した。ビヒクル対照物品/希釈剤はリン酸緩衝生理食塩水(PBS)であった。
【0100】
化合物Aの用量レベルの上昇は、3.0mg/kg/用量まで許容され、所見は、体温の上昇並びにIFNα、IL-6及びTNFαサイトカインレベルの上昇に限定された。IFNα、TNFα及びIL-6レベルを、投与後3、6及び12時間で測定した。用量に関連するが、可変の変化が観察された。中程度のレベルのIFNαが、投与の3時間後及び6時間後に1mg/kg群及び3mg/kg群において認められた。より高いレベルのIFNαが10mg/kg群において認められた。3mg/kg及び10mg/kgでのIFNαレベルは、投与後12時間で減少したが、投与前レベルには戻らなかった。血漿IL-6レベルの増加は、全ての群において投与後3及び6時間で認められた。3mg/kg及び10mg/kgでのIL-6の増加は、投与後12時間で持続した。TNFαレベルは、1mg/kg群において3時間で増加した。3mg/kg及び10mg/kg群では、より低いレベルのTNFαが観察された。サイトカイン応答は、予測されたSTING経路活性化と一致する。10mg/kg/用量の投与の1日以内に病的状態が観察され、したがって、3mg/kgを以下の反復投与相(第II相)の高用量として選択した。
【0101】
第II相では、0.3mg/kgの化合物Aの3回の毎週の投与が認容された。ナイーブ動物における3mg/kg用量は忍容されず、投与の1日以内に罹患率又は死亡の臨床所見をもたらした。所見は、死の可能性がある原因と考えられた化合物A媒介性炎症反応と一致していた。3mg/kg用量レベルでは、血漿中IL-1ra、IL-6及びIFNαサイトカインレベルの化合物関連の用量依存的増加が一般に3及び6時間で認められ、レベルはIL-6及びIFNαについて対照で認められたレベルに戻った。IL-12、顆粒球コロニー刺激因子(G-CSF)及びIFNγレベルの散発的な増加があった。しかしながら、これらの変化は、一般に、性別間で一貫しておらず、用量依存的ではなく、小さい規模であり、したがって、潜在的に化合物Aにのみ関連すると考えられた。炎症促進性サイトカイン及びケモカインMCP-1及びIP-10のレベルの変化は、投与後24時間までの消散を伴う炎症応答を示唆していた。化合物Aによって評価される曝露は、平均Cmax、AUC0-2、AUC0-8、及びAUC0-24値であり、一般に、第II相の1日目に0.3から3mg/kg/日への用量レベルの増加と共に増加し、一般に用量に比例していた。化合物Aの蓄積は、サルにおいて0.3mg/kg/日の複数回投与後に観察されなかった。一般に、化合物Aの平均Cmax、AUC0-2、AUC0-8、及びAUC0-24値の性別差は2倍未満であった。
【0102】
第III相の間、0.6又は1.0mg/kg/日の化合物Aの3回の毎週の用量を投与された全ての動物は、予定された屠殺まで生存した。0.1mg/kg/日のプライミング用量を1.0mg/kg/日の化合物Aの最初の用量の4日前に投与して、3.0mg/kg/日の化合物Aをナイーブ動物に投与した後の第II相中に認められた急性死亡を回避するための耐性を潜在的に生じさせた。0.1mg/kg/日で投与した場合、化合物Aは、雄又は雌のいずれにおいても血漿IFNαレベルの有意な増加を引き起こさなかった。IL-6の血漿中レベルの上昇が投与後3時間及び6時間で認められたが、IL-6レベルは、投与後24時間で検出不能なレベルに戻った。TNFαの上昇したレベルが、雄において投与後6時間で、雌において投与後3時間及び6時間で認められた。両方の場合において、TNFαレベルは、投与の24時間後に検出不能なレベルに戻った。IP-10のわずかな上昇が、雄及び雌の動物において投与の3時間後に認められた。0.6mg/kg/日で投与した場合、化合物Aは、雄又は雌のいずれにおいても血漿IFNαレベルの有意な増加を引き起こさなかった。IL-6の血漿レベルの上昇が、投与後3時間及び6時間で認められた。TNFαの上昇したレベルが、雄において投与後6時間で、雌において投与後1.5、3時間及び6時間で認められた。経時的にIP-10の有意な上昇は認められなかった。1mg/kg/日で投与した場合、化合物Aは、投与後1.5及び3時間でIFNαレベルの有意な変化を引き起こさなかったが、このサイトカインの上昇したレベルが、雄及び雌の両方において投与後6時間で観察された。IL-6レベルの顕著な増加が、雄及び雌の両方において、投与後3時間及び6時間で認められた。
TNFαレベルの上昇が、雄及び雌の両方において、投与後1.5、3、及び6時間で認められた。IP-10のわずかに高い投与前レベルが雄のみで認められたが、投与後1.5、3及び6時間でIP-10レベルの増加は認められなかった。
【0103】
結論として、3.0mg/kg以上の化合物Aの投与は、ナイーブ動物では忍容されず、急性の罹患率及び/又は死亡をもたらし、これは肺水腫に起因するものであった。浮腫は、炎症関連病態及び化合物Aの作用様式の誇張された薬理学と一致している。1.0mg/kg/日(0.1mg/kgのプライミング用量が先行する)又は0.6mg/kg(プライミング用量なし)の3回の毎週の用量の投与は認容された。以前のより低いレベルでの投与が寛容性を発達させたため、動物は第I相で3.0mg/kgへの漸増を認容した。0.6又は1.0mg/kg/日を投与した動物では、化合物関連の所見は、一過性の体温上昇並びに軽度から中等度の臨床的及び解剖学的病理学的所見に限定された。
【0104】
例2.組合わせ研究
抗CTLA4抗体療法は、FDA承認の免疫チェックポイント遮断療法である。しかしながら、この抗体の全身投与は、多くの場合、かなりの毒性を伴う。化合物Aと合わせてした抗CTLA4抗体の腫瘍内注射を試験した。
【0105】
0日目に、雌C57BL6マウス(各群5匹)の脇腹に10個のB16F10黒色腫細胞(ATCC CRL6475)を皮下移植した。6日目に、腫瘍を測定し、各群が同様の平均腫瘍体積(約70mm)を有するようにマウスを再び群分けした。6日目、10日目及び14日目に、マウスを以下で模擬処置又は処置した。0.3μgの化合物Aの腫瘍内(I.T.);50μgの抗CTLA4抗体(BioXcell BE0164、1.T.);0.3μgの化合物A及び10μgの抗CTLA4抗体の組合わせ(両方ともI.T.);0.3μgの化合物A及び50μgの抗CTLA4抗体の組合わせ(両方ともI.T.);又は0.3μgの化合物A(I.T.)及び200μgの抗CTLA4抗体の腹腔内(I.P.)の組合せ。同じ実験セットにおいて、0.3μgの化合物A(I.T.)及び200μgの抗PD-L1抗体(I.P.)の組合わせも、200μgの抗CTLA4抗体(I.P.)との組合わせを有する場合及び有さない場合で試験した。腫瘍体積を2~3日ごとに測定し、マウスの生存を毎日モニタリングした。
【0106】
50μgの抗CTLA4抗体又は0.3μgの化合物A単独のいずれかの腫瘍内投与は、腫瘍増殖を減少させ、マウスの生存を同等の程度まで延長した(図1、パネルA及びB)。10μgの抗CTLA4抗体(I.T.)を0.3μgの化合物A(I.T.)と組み合わせると、化合物A単独及び抗CTLA4抗体単独の両方と比較して、腫瘍成長が更に抑制され、マウス生存が改善された。併用処置における抗CTLA4抗体(I.T.)を50μgに増加させると、より劇的な腫瘍寛解がもたらされた。この併用処置は、0.3μgの化合物A(I.T.)を200μgの抗CTLA4抗体(I.P.)と組み合わせるよりも有効であった(図1、パネルA)。抗CTLA4抗体療法を化合物Aと組み合わせると、低用量の抗CTLA4抗体での抗CTLA4抗体の腫瘍内経路は、より高用量の抗CTLA4抗体での全身経路よりも優れていた。具体的には、0.3μgの化合物A(I.T.)と50μgの抗CTLA4抗体(I.T.)との組合わせ治療は、0.3μgの化合物A(I.T.)と200μgの抗CTLA4抗体(I.P.)との組合わせよりも腫瘍増殖を抑制するのにより有効であった(図1、パネルA)。
【0107】
腫瘍増殖に対する0.3μgの化合物A(I.T.)と50μgの抗CTLA4抗体(I.T.)の上記の効果は、0.3μgの化合物A(I.T.)、200μgの抗PD-L1抗体(I.P.)、及び200μgの抗CTLA4抗体(I.P.)の三重の組合わせに匹敵した(図2、パネルA)。0.3μgの化合物A(I.T.)と200μgの抗CTLA4抗体(I.P.)及び0.3μgの化合物A(I.T.)と200μgの抗PD-L1抗体(I.P.)の組合わせは、腫瘍増殖の同様の減少を有したが、両方とも50μgの抗CTLA4抗体(I.T.)との0.3μgの化合物A(I.T.)よりも劣っており(図2、パネルA)、これらの3つの組合わせは、同様の生存利益を有していた(図2、パネルB)。
【0108】
例3.更なる併用研究
STINGアゴニストDMXAAと合わせてした抗CTLA4抗体の腫瘍内注射を調べた。
【0109】
7~8週齢の雌C57BL6マウスに、10個のB16F10黒色腫細胞(ATCC CRL-6475)を0日目に右脇腹に皮下移植した。6日目に、腫瘍を測定し、各群(n=5)が同様の平均腫瘍体積(-120mm)を有するようにマウスを再び群分けした。6、9、12、15日目に、マウスを、50μgの抗CTLA4抗体(BioXcell,BE0614)、又は50μgのDMXAA((Sigma-Aldrich,D5817)、又は抗CTLA4抗体及びDMXAAの両方の組合わせで腫瘍内処置した。模擬処置群にPBSを腫瘍内注射した。腫瘍体積を2~3日ごとに測定し、マウスの生存を毎日モニタリングした。
【0110】
抗CTLA4抗体単独での処置は、腫瘍成長速度を部分的に低下させたが、マウスの生存に影響を及ぼさなかった。DMXAA単独では、腫瘍成長が大きく抑制され、生存期間が延長された。しかしながら、抗CTLA4抗体とDMXAAとの組合わせは、腫瘍増殖の制御(図3、パネルA)及び生存の延長(図3、パネルB)において、抗CTLA4抗体又はDMXAAのいずれかによる単独療法と比較して有意に改善された効果を示した。
図1
図2
図3
【国際調査報告】