(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】二本鎖オリゴヌクレオチド及びこれを含むコロナウイルス感染症-19(COVID-19)治療用組成物
(51)【国際特許分類】
C12N 15/113 20100101AFI20230726BHJP
C12N 15/87 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20230726BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/713 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/7105 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/712 20060101ALI20230726BHJP
A61K 47/60 20170101ALI20230726BHJP
【FI】
C12N15/113 100Z
C12N15/87 Z ZNA
A61K31/7088
A61P31/14
A61K31/713
A61K31/7105
A61K31/712
A61K47/60
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022570238
(86)(22)【出願日】2021-05-21
(85)【翻訳文提出日】2022-12-13
(86)【国際出願番号】 IB2021054404
(87)【国際公開番号】W WO2021234647
(87)【国際公開日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】10-2020-0061828
(32)【優先日】2020-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514171197
【氏名又は名称】バイオニア コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】BIONEER CORPORATION
【住所又は居所原語表記】8-11, Munpyeongseo-ro, Daedeok-gu, Daejeon 34302, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】522397709
【氏名又は名称】サーナゲン セラピューティックス コーポレーション
【氏名又は名称原語表記】SIRNAGEN THERAPEUTICS CORPORATION
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】パク ハンオ
(72)【発明者】
【氏名】キム チャンソン
(72)【発明者】
【氏名】イ ミスン
(72)【発明者】
【氏名】チェ ソニア
(72)【発明者】
【氏名】イ ウングァン
(72)【発明者】
【氏名】ビュン サンジン
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA30
4C076CC35
4C076CC41
4C076EE59
4C076FF32
4C076FF63
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA44
4C086NA14
4C086ZB33
(57)【要約】
本発明は、SARS-Cov-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)の増殖を非常に特異的に且つ高い効率で阻害できる二本鎖オリゴヌクレオチド、好ましくは、RNA/RNA、DNA/DNA、又はDNA/RNAハイブリッド形態の配列を含む二本鎖オリゴヌクレオチド、前記二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及びナノ粒子、並びにそのコロナウイルス感染症-19治療用途に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10からなる群から選ばれるいずれか一つの配列を含むセンス鎖と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖と、を含むSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項2】
前記センス鎖又はアンチセンス鎖は、19個~31個のヌクレオチドで構成されることを特徴とする、請求項1に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項3】
前記オリゴヌクレオチドは、siRNA、shRNA又はmiRNAであることを特徴とする、請求項1に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項4】
前記センス又はアンチセンス鎖は、独立的にDNA又はRNAであることを特徴とする、請求項1に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項5】
前記二本鎖オリゴヌクレオチドのセンス鎖又はアンチセンス鎖は、化学的修飾を含むことを特徴とする、請求項1に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項6】
前記化学的修飾は、
ヌクレオチド内の糖構造の2’炭素位置で水酸基(-OH)がメチル基(-CH
3)、メトキシ基(-OCH
3)、アミン基(-NH
2)、フッ素(-F)、O-2-メトキシエチル基、O-プロピル基、O-2-メチルチオエチル基、O-3-アミノプロピル基、O-3-ジメチルアミノプロピル基、O-N-メチルアセトアミド基及びO-ジメチルアミドオキシエチルからなる群から選ばれるいずれか一つに置換される修飾;
ヌクレオチド内の糖構造の酸素が硫黄に置換される修飾;
ヌクレオチド結合がホスホロチオエート(phosphorothioate)結合、ボラノホスフェート(boranophosphate)結合及びメチルホスホネート(methylphosphonate)結合からなる群から選ばれるいずれか一つの結合になる修飾;及び
PNA(peptide nucleic acid)、LNA(locked nucleic acid)及びUNA(unlocked nucleic acid)形態への修飾;からなる群から選ばれるいずれか一つ以上であることを特徴とする、請求項5に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項7】
前記二本鎖オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の5’末端に一つ以上のリン酸基が結合されていることを特徴とする、請求項1に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド。
【請求項8】
下記の構造式1の構造を含むSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYは、それぞれ独立的に単純共有結合又はリンカーが媒介した共有結合を意味し、Rは、請求項1~7のうちいずれか1項に記載の二本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【請求項9】
下記の構造式(2)の構造を含む、請求項8に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
前記構造式(2)において、S及びASは、それぞれ請求項8に記載の二本鎖オリゴヌクレオチドのセンス鎖及びアンチセンス鎖を意味し、A、B、X及びYは、請求項8での定義と同一である。
【請求項10】
下記の構造式(3)又は構造式(4)の構造を含む、請求項9に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
前記構造式(3)及び(4)において、A、B、X、Y、S及びASは、請求項9での定義と同一であり、5’及び3’は、二本鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の5’及び3’末端を意味する。
【請求項11】
前記親水性物質は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン及びポリオキサゾリンからなる群から選ばれる、請求項8に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項12】
前記親水性物質は、下記の構造式(5)又は構造式(6)の構造を有することを特徴とする、請求項8に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
前記構造式(5)又は構造式(6)において、A’は親水性物質単量体、Jは、m個の親水性物質単量体の間又はm個の親水性物質単量体と二本鎖オリゴヌクレオチドとを互いに連結するリンカー、mは1~15の整数、nは1~10の整数を意味し、
親水性物質単量体A’は、下記の化合物(1)~化合物(3)から選ばれたいずれか一つの化合物であり、リンカー(J)は、-PO
3
--、-SO
3-及び-CO
2-からなる群から選ばれる;
前記化合物(1)において、Gは、O、S及びNHからなる群から選ばれる;
【請求項13】
下記の構造式(7)又は構造式(8)の構造を有することを特徴とする、請求項12に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体:
(A’
m-J)
n-X-R-Y-B 構造式(7)
(J-A’
m)
n-X-R-Y-B 構造式(8)。
【請求項14】
前記親水性物質の分子量は、200~10,000であることを特徴とする、請求項8に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項15】
前記疎水性物質の分子量は、250~1,000であることを特徴とする、請求項8に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項16】
前記疎水性物質は、ステロイド誘導体、グリセリド誘導体、グリセロールエーテル、ポリプロピレングリコール、C
12~C
50の不飽和又は飽和炭化水素、ジアシルホスファチジルコリン(diacylphosphatidylcholine)、脂肪酸、リン脂質、リポポリアミン(lipopolyamine)、脂質(lipid)、トコフェロール(tocopherol)及びトコトリエノール(tocotrienol)からなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項15に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項17】
前記ステロイド誘導体は、コレステロール、コレスタノール、コール酸、コレステリルホルメート、コレスタニルホルメート及びコレステリルアミンからなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項16に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項18】
前記グリセリド誘導体は、モノグリセリド、ジグリセリド及びトリグリセリドからなる群から選ばれたいずれか一つであることを特徴とする、請求項16に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項19】
前記X及びYで表示される共有結合は、非分解性結合又は分解性結合であることを特徴とする、請求項8に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項20】
前記非分解性結合は、アミド結合又はリン酸化結合であることを特徴とする、請求項19に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項21】
前記分解性結合は、ジスルフィド結合、酸分解性結合、エステル結合、アンハイドライド結合、生分解性結合及び酵素分解性結合からなる群から選ばれるいずれか一つであることを特徴とする、請求項19に記載のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド構造体。
【請求項22】
請求項8~21のいずれか1項に記載の二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子。
【請求項23】
前記ナノ粒子は、相違する二本鎖オリゴヌクレオチドを含む2種以上の二本鎖オリゴヌクレオチド構造体が混合されて構成されることを特徴とする、請求項22に記載のナノ粒子。
【請求項24】
請求項1~7のいずれか1項に記載の二本鎖オリゴヌクレオチド、請求項9~21のいずれか1項に記載の二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を有効成分として含むコロナウイルス感染症-19治療用医薬組成物。
【請求項25】
請求項22に記載のナノ粒子を有効成分として含むコロナウイルス感染症-19治療用医薬組成物。
【請求項26】
請求項24に記載のコロナウイルス感染症-19治療用医薬組成物を含む凍結乾燥された形態の剤形。
【請求項27】
請求項25に記載のコロナウイルス感染症-19治療用医薬組成物を含む凍結乾燥された形態の剤形。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SARS-Cov-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)の増殖を非常に特異的に且つ高い効率で阻害できる二本鎖オリゴヌクレオチド、好ましくは、RNA/RNA、DNA/DNA、又はDNA/RNAハイブリッド形態の配列を含む二本鎖オリゴヌクレオチド、該二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及びナノ粒子、並びにそのコロナウイルス感染症-19治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
1995年、GuoとKemphuesは、C.elegansでアンチセンス(antisense)を用いた遺伝子の発現を抑制するのに、アンチセンスRNAと同様にセンスRNAも有効であることを発見することによって、その原因を究明するための研究が進められ、1998年、Fire等が最初にdsRNA(double stranded RNA)を注入し、それに対応するmRNAが特異的に分解され、遺伝子の発現が抑制される現象を確認し、これをRNAi(RNA interference)と命名した。RNAiは、遺伝子の発現を抑制するために使用される方法であって、簡便でありながら少ない費用で遺伝子抑制効果が明確に表れ得るので、その技術の応用分野が多様になっている。
【0003】
このような遺伝子の発現を抑制する技術は、特定の遺伝子の発現を調節できるので、特定の遺伝子の過剰発現が原因となる癌、遺伝疾患などの標的遺伝子をmRNAのレベルで除去することができ、疾病治療のための治療剤開発及び標的検証の重要な道具として活用され得る。標的遺伝子の発現を抑制する従来の技術としては、標的遺伝子に対する転移遺伝子を導入する技術が開示されているが、プローモーターを基準にして逆方向(antisense)に転移遺伝子を導入する方法と、プローモーターを基準にして正方向(sense)に移植遺伝子を導入する方法とがある。
【0004】
このようなRNAを標的とするRNA治療法は、標的RNAに対するオリゴヌクレオチドを用いて該当の遺伝子の機能を除去する方法であって、既存の抗体及び化合物(small molecule)などの従来の治療剤が主にタンパク質を標的とするのとは異なると言える。RNAを標的とする接近法には、大きく二つが存在するが、その一つは、二重鎖-RNAが媒介したRNAiで、他の一つは、アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)である。現在、多様な疾病において、RNAを標的とした臨床が試みられている。
【0005】
アンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)(以下、「ASO」という)は、ワトソン-クリック塩基反応によって目的遺伝子に結合されるようにデザインされた短い長さの合成DNAであって、遺伝子の特定の塩基配列の発現を特異的に抑制できるので、遺伝子の機能を研究し、癌などの疾患を分子レベルで治療できる治療剤を開発するのに用いられてきた。このようなASOは、遺伝子の発現を抑制する目標を多様に設定し、容易に製作され得るという長所を有するので、発癌遺伝子の発現及び癌細胞の成長を抑制するのに活用しようとする研究が進められてきた。ASOが特定の遺伝子の発現を抑制する過程は、相補的なmRNA配列と結合し、RNase H活性を誘導しながらmRNAを除去したり、タンパク質翻訳のためのリボソーム複合体の形成及び進行を妨害することによって行われる。また、ASOは、ゲノムDNAと結合し、トリプル-ヘリックス(Triple helix)構造を形成することによって遺伝子の転写を抑制すると報告されたこともある。ASOは、上記のような潜在的可能性を有するが、これを臨床に活用するためにはヌクレアーゼ(nuclease)に対する安定性を向上させ、目的遺伝子の塩基配列に特異的に結合するように標的組織や細胞内に効率的に伝達されなければならない。また、遺伝子mRNAの2次及び3次構造は、ASOの特異的結合に重要な要素であって、mRNAの2次構造の少ない部分が、ASOが接近するのに非常に有利であるので、ASOを合成する前に、mRNAの2次構造が少なく生成される領域を体系的に分析し、生体外のみならず、生体内でも遺伝子-特異的抑制を効果的に達成するために努力してきた。このようなASOは、RNAの種類であるsiRNAより非常に安定的であって、水及び生理食塩水などによく溶解されるという長所を有しており、現在、3個のASOがFDA (Federal Drug Administration)に承認された(Jessica,C.,J Postdoc Res,4:35-50,2016)。
【0006】
干渉RNA(RNA interference)(以下、「RNAi」という)は、その役割が発見されて以来、多様な種類の哺乳動物細胞(mammalian cell)で配列特異的mRNAに作用するという事実が明らかになった(Barik,S.,J Mol.Med.(2005)83:764-773)。長い二本鎖RNAが細胞に伝達されると、伝達された二本鎖RNAは、Dicerというエンドヌクレアーゼ(endonuclease)によって21個~23個の二本鎖(base pair、bp)にプロセッシングされた短い干渉RNA(small interfering RNA)(以下、「siRNA」という)に変換され、siRNAは、RISC(RNA-induced silencing complex)に結合し、ガイド(アンチセンス)鎖がターゲットmRNAを認識して分解する過程を通じてターゲット遺伝子の発現を配列特異的に阻害する。siRNAを用いた遺伝子の発現抑制技術は、標的細胞での標的遺伝子の発現を抑制し、これによる変化を観察することによって標的細胞での標的遺伝子の機能を特定する研究に有用に使用される。特に、感染性ウイルス又は癌細胞などで標的遺伝子の機能を抑制することは、該当の疾病の治療方法を開発するのに有用に活用され得る。また、生体外(in vitro)での研究及び実験動物を用いた生体内(in vivo)研究を行った結果、siRNAによる標的遺伝子の発現抑制が可能であると報告されたことがある。
【0007】
Bertrandの研究陣によると、同一のターゲット遺伝子に対するsiRNAが、アンチセンスオリゴヌクレオチド(Antisense oligonucleotide、ASO)に比べて生体内/外(in vitro及びin vivo)でのmRNA発現の阻害効果に優れ、該当の効果が長い間持続されるという効果を有することが明らかになった。また、siRNAの作用メカニズムは、ターゲットmRNAと相補的に結合し、配列特異的にターゲット遺伝子の発現を調節するので、既存の抗体ベースの医薬品や化学物質医薬品(small molecule drug)に比べて適用可能な対象が画期的に拡大され得るという長所を有する(MA Behlke,MOLECULAR THERAPY.2006 13(4):664-670)。
【0008】
siRNAの優れた効果及び多様な使用範囲にもかかわらず、siRNAが治療剤として開発されるためには、体内でのsiRNAの安定性(stability)改善及び細胞伝達効率の改善を通じてsiRNAがターゲット細胞に効果的に伝達されなければならない(FY Xie,Drug Discov.Today.2006 Jan;11(1-2):67-73)。体内安定性の向上及びsiRNAの非特異的な細胞免疫反応(innate immune stimulation)問題を解決するために、siRNAの一部のヌクレオチド又は骨格(backbone)を、核酸分解酵素抵抗性を有するように修飾(modification)したり、ウイルス性ベクター(viral vector)、リポソーム又はナノ粒子(nanoparticle)などの伝達体を用いるなど、これに対する研究が活発に試みられている。
【0009】
アデノウイルスやレトロウイルスなどのウイルス性ベクターを用いた伝達システムは、形質移入効率(transfection efficacy)が高いが、免疫原性(immunogenicity)及び発癌性(oncogenicity)が高い。その一方で、ナノ粒子を含む非ウイルス性(non-viral)伝達システムは、ウイルス性伝達システムに比べて細胞伝達効率が低い方であるが、生体内(in vivo)での安定性が高く、ターゲット特異的に伝達可能であり、内包されているRNAiオリゴヌクレオチドを細胞又は組織に吸収(uptake)及び内在化(internalization)し、細胞毒性及び免疫誘発(immune stimulation)がほとんどないという長所を有しており、現在は、ウイルス性伝達システムに比べて有力な伝達方法として評価されている(Akhtar S,J Clin Invest.2007 December 3;117(12):3623-3632)。
【0010】
非ウイルス性伝達システムのうちナノ伝達体(nanocarrier)を用いる方法は、リポソーム、陽イオン高分子複合体などの多様な高分子を使用することによってナノ粒子を形成し、siRNAをこのようなナノ粒子(nanoparticle)、すなわち、ナノ伝達体(nanocarrier)に担持してから細胞に伝達する方法である。ナノ伝達体を用いる方法のうち主に活用される方法は、高分子ナノ粒子(polymeric nanoparticle)、高分子ミセル(polymer micelle)、リポプレックス(lipoplex)などがあるが、このうちリポプレックスを用いた方法は、陽イオン性脂質で構成され、細胞のエンドソーム(endosome)の陰イオン性脂質と相互作用することによってエンドソームの脱安定化効果を誘発し、細胞内に伝達する役割をする。
【0011】
また、siRNAパッセンジャー(passenger;センス(sense))鎖の末端部位に化学物質などを連結し、増進した薬物動態学(pharmacokinetics)な特徴を付与することによって、生体内(in vivo)で高い効率を誘導できることが知られている(J Soutschek,Nature 11;432(7014):173-8,2004)。このとき、siRNAセンス(パッセンジャー)又はアンチセンス(ガイド(guide))鎖の末端に結合された化学物質の性質によってsiRNAの安定性が変わる。例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)などの高分子化合物が接合された形態のsiRNAは、陽イオン性物質が存在する条件でsiRNAの陰イオン性リン酸基と相互作用しながら複合体を形成することによって、改善されたsiRNA安定性を有する伝達体になる(SH Kim,J Control Release 129(2):107-16,2008)。特に、高分子複合体で構成された各ミセル(micelle)は、薬物伝達運搬体として使用される他のシステムである微小球体(microsphere)又はナノ粒子などに比べて、そのサイズが極めて小さいながらも分布が非常に一定であり、自発的に形成される構造であるので、製剤の品質管理及び再現性の確保が容易であるという長所を有する。
【0012】
siRNAの細胞内伝達効率性を向上させるために、siRNAに生体適合性高分子である親水性物質(例えば、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG))を単純共有結合又はリンカー-媒介(linker-mediated)共有結合で接合させたsiRNA組立体を通じて、siRNAの安定性の確保及び効率的な細胞膜透過性のための技術が開発された(大韓民国登録特許第883,471号)。しかし、siRNAの化学的修飾及びポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)を接合させること(PEGylation)のみでは、生体内での低い安定性、及び標的臓器への伝達が円滑でないという短所が依然として存在する。このような短所を解決するために、オリゴヌクレオチド、特に、siRNAなどの二本鎖オリゴRNAに親水性及び疎水性物質が結合された二本鎖オリゴRNA構造体が開発された。前記構造体は、疎水性物質の疎水性相互作用によってSAMiRNATM(self assembled micelle inhibitory RNA)と命名された自己組織化ナノ粒子を形成するようになるが(大韓民国登録特許第1,224,828号)、SAMiRNATM技術は、既存の各伝達技術に比べて、非常にサイズが小さいながらも均一な(homogenous)ナノ粒子を収得できるという長所を有する。
【0013】
SAMiRNATM技術の具体的な例としては、親水性物質としてPEG(polyethylene glycol)又はHEG(Hexaethylene glycol)が使用されるが、PEGは、合成ポリマー(synthetic polymer)であって、医薬品、特にタンパク質の水溶性(solubility)の増加及び薬物動態学の調節のために使用される。PEGは、多分散系(polydisperse)物質であって、一つのバッチ(batch)のポリマーは、他の個数の単量体(monomer)の総和からなり、分子量がガウス曲線形態を示し、多分散指数(polydisperse value、Mw/Mn)で物質の同質性程度を表現する。すなわち、PEGが低い分子量(3kDa~5kDa)であるときに約1.01の多分散指数を示し、高い分子量(20kDa)であるときに約1.2という高い多分散指数を示し、高い分子量であるほど、物質の同質性が相対的に低いという特徴を示す。よって、PEGを医薬品に結合させた場合、接合体にPEGの多分散的特徴が反映され、単一物質の検証が容易でないという短所を有するので、PEGの合成及び精製過程の改善を通じて低い多分散指数を有する物質を生産する趨勢であるが、特に、分子量が小さい物質にPEGを結合させた場合、結合が容易に行われたかどうかを確認することが容易でないという不便さがあるなど、物質の多分散性特徴による各問題が存在する(Francesco M.VDRUG DISCOVERY TODAY(2005)10(21):1451-1458)。
【0014】
これによって、最近は、既存の自己組織化ナノ粒子であるSAMiRNATM技術の改良された形態として、SAMiRNATMを構成する二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の親水性物質を、一定の分子量を有する均一な1個~15個の単量体、及び必要によってリンカー(linker)を含む基本単位にブロック(block)化し、これを必要によって適切な個数だけ使用することによって、既存のSAMiRNATMに比べてより小さいサイズを有し、また、多分散性が画期的に改善された新しい形態の伝達体技術が開発された。また、体内にsiRNAを注入した場合、血液内に存在する多様な酵素によってsiRNAが急速に分解され、標的細胞又は組織などへの伝達効率が良好でないことが既に知られているように、改良されたSAMiRNATMでも標的遺伝子によって安定性及び発現阻害率の偏差が表れた。よって、本発明者等は、改良された自己組織化ナノ粒子であるSAMiRNATMを用いて標的遺伝子の発現をより安定的且つ効果的に阻害するために、ガイドであるセンス鎖はASOであるDNA配列を、パッセンジャーであるアンチセンス鎖はRNA配列を用いてDNA-RNAハイブリッド形態の二本鎖オリゴヌクレオチドを適用することによって、標的遺伝子に対する発現阻害効果及び安定性が著しく増加し得ることを確認したことがある。
【0015】
一方、コロナウイルス感染症-19(COVID-19)は、SARS-Cov-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)感染による呼吸器症侯群であって、コロナウイルス感染症-19は、約2日~14日の潜伏期を経た後、発熱、咳や呼吸困難などの呼吸器症状、及び肺炎が主な症状として表れ、咳やくしゃみをするときに生じた飛沫(唾液)又はSARS-Cov-2に汚染した品物に触れた後、目、鼻及び口に触れることによって伝播されるものとして知られている。
【0016】
コロナウイルス感染症-19は、2019年12月に中国の武漢で最初に発生して以来、中国全域と全世界に拡散され、2020年4月現在、280万人の患者が確診され、20万人以上の死亡者が発生した。世界保健機構(WHO)は、2020年1月30日に、コロナウイルス感染症-19に対して国際的公衆保健非常事態(PHEIC、Public health Emergency of International Concern)を宣布し、その後、3月11日に、コロナウイルス感染症-19に対して世界的大流行、すなわち、パンデミック(pandemic)を宣言した。伝染病危険最高段階であるパンデミックは、「大多数の人々が免疫力を有していないウイルスの全世界拡散」を意味し、確診者、死亡者、被害国の数は継続的に増加している状況にある。
【0017】
コロナウイルスは、外被にS(Spike)タンパク質が電子顕微鏡上で王冠の形状を帯びることを特徴とし、陽性単一鎖(+ssRNA)ウイルスであって、円形或いは楕円形のウイルスである。コロナウイルスは、alphaCoV、betaCoV、deltaCoV及びgammaCoVの4つの属に分類され、一般的な呼吸器感染を起こすalphaCoVは、HCoV-229E及びHCoV-NL63を含み、betaCoVは、HCoV-OC43及びHCoV-HKU1を含み、風邪などの上部呼吸器感染及び消火器疾患を誘導することもある。betaCoVに属するSARS-CoV(B lineage)とMERS-CoV(C lineage)は、急性呼吸器症状を特徴とする深刻な呼吸器伝染病を誘発する。COVID-19の発生初期、肺炎患者から分離された誘電体配列は、batSARS-like-CoVZXC21とのヌクレオチド相同性が89%、SARS-CoVとの相同性は82%であると分析され、同じbetaCoVに属することが明らかになり、SARS-CoV-2と命名された。
【0018】
韓国の場合、コロナウイルス感染症-19の発生初期には、コンベンショナルPCR(Conventional PCR)と塩基配列分析の一致有無を通じた確診検査を行っていた。しかし、現在は、リアルタイムRT-PCR(Real time reverse transcription polymerase chain reaction)検査法を通じてコロナウイルス感染症-19診断検査を行っている。現在、全世界の多数の製薬会社でワクチンの開発が完了し、接種が進行中であるが、コロナウイルス感染症-19に対して卓越した効果を有する治療剤は未だに公開されていない状態である。
【0019】
前記言及したように、コロナウイルス感染症-19に対するRNAi治療剤及びその伝達技術に対する技術開発は未だに微々たる状況であり、特異的に且つ高効率でSARS-Cov-2の増殖を阻害できる二本鎖オリゴヌクレオチド治療剤及びその伝達技術に対する市場の需要は非常に高い状況にある。
【0020】
そこで、本発明者等は、SARS-Cov-2を標的とする二本鎖オリゴヌクレオチドを選別し、特にSARS-Cov-2の増殖を阻害することによってコロナウイルス感染症-19を効率的に治療できるRNAi治療剤及びその伝達体を特定し、本発明を完成するに至った。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【特許文献1】米国特許第5,034,323号
【特許文献2】米国特許第5,231,020号
【特許文献3】米国特許第5,283,184号
【特許文献4】大韓民国登録特許第883471号
【特許文献5】大韓民国登録特許第1224828号
【非特許文献】
【0022】
【非特許文献1】Jessica,C.,J Postdoc Res,4:35-50,2016
【非特許文献2】Barik,S.J Mol.Med.(2005)83:764-773
【非特許文献3】MA Behlke,MOLECULAR THERAPY.2006 13(4):664-670)
【非特許文献4】FY Xie,Drug Discov.Today.2006 Jan;11(1-2):67-73
【非特許文献5】Akhtar S,J Clin Invest.2007 December 3;117(12):3623-3632
【非特許文献6】J Soutschek,Nature 11;432(7014):173-8,2004
【非特許文献7】SH Kim,J Control Release 129(2):107-16,2008
【非特許文献8】Francesco M.VDRUG DISCOVERY TODAY(2005)10(21):1451-1458
【非特許文献9】ムン・ソンシル,BRIC View 2020-TX2(2020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
本発明の目的は、SARS-Cov-2(Severe acute respiratory syndrome coronavirus 2)の増殖を非常に特異的に且つ高い効率で阻害できる二本鎖オリゴヌクレオチド、好ましくは、RNA/RNA、DNA/DNA、又はDNA/RNAハイブリッド形態の配列を含む二本鎖オリゴヌクレオチド、前記二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及びナノ粒子を提供することにある。
【0024】
本発明の他の目的は、前記二本鎖オリゴヌクレオチド、これを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及び/又はナノ粒子を有効成分として含有するコロナウイルス感染症-19治療用医薬組成物を提供することにある。
【0025】
本発明の更に他の目的は、前記コロナウイルス感染症-19治療用医薬組成物を、コロナウイルス感染症-19治療を必要とする個体に投与する段階を含むコロナウイルス感染症-19治療方法を提供することにある。
【0026】
本発明の更に他の目的は、コロナウイルス感染症-19治療に使用するための前記二本鎖オリゴヌクレオチド、これを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及び/又はナノ粒子を提供することにある。
本発明の更に他の目的は、コロナウイルス感染症-19治療に使用するための前記薬学的組成物を提供することにある。
【0027】
本発明の更に他の目的は、コロナウイルス感染症-19治療のための薬物を製造するための前記二本鎖オリゴヌクレオチド、これを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及びナノ粒子の用途を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0028】
前記目的を達成するために、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10で構成された群から選ばれたいずれか一つの配列を含むセンス鎖(sense strand)と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖(anti-sense strand)とを含む二本鎖オリゴヌクレオチドを提供する。
また、本発明は、前記二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及び/又はナノ粒子を提供する。
【0029】
また、本発明は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10で構成された群から選ばれたいずれか一つの配列を含むセンス鎖と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とを含む二本鎖オリゴヌクレオチド、前記二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体、又はナノ粒子を含むコロナウイルス感染症-19治療用医薬組成物を提供する。
【0030】
また、本発明は、前記コロナウイルス感染症-19治療用医薬組成物を、コロナウイルス感染症-19治療を必要とする個体に投与する段階を含むコロナウイルス感染症-19治療方法を提供する。
【0031】
本発明に係る二本鎖オリゴヌクレオチドは、一般的なRNAi(RNA interference)作用を有する全ての物質を含む概念であって、前記SARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドにSARS-Cov-2特異的shRNAなども含まれることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明である。すなわち、前記オリゴヌクレオチドは、siRNA、shRNA又はmiRNAであることを特徴とすることができる。
【0032】
本発明において、前記センス又はアンチセンス鎖は、独立的にDNA又はRNAであることを特徴とすることができ、例えば、センス鎖はDNAで、アンチセンス鎖はRNAであったり、センス鎖はRNAで、アンチセンス鎖はDNAであるハイブリッド(hybrid)形態であり得る。
【0033】
本発明において、前記配列番号1~10の配列は、DNA形態で記載されているが、RNA形態が使用される場合、配列番号1~10の配列としては、これに対応するRNA配列、すなわち、TがUに変更された配列が使用され得る。
【0034】
また、本発明に係る二本鎖オリゴヌクレオチドは、SARS-Cov-2に対する特異性が維持される限り、配列のセンス鎖がSARS-Cov-2遺伝子の結合部位と100%相補的な塩基配列である場合、すなわち、完全一致(perfect match)のみならず、一部の塩基配列が一致しない場合、すなわち、不完全一致(mismatch)も含む。
【0035】
本発明に係る二本鎖オリゴヌクレオチドは、一本鎖又は両鎖の3’末端に一つ又はそれ以上の非結合された(unpaired)ヌクレオチドを含む構造であるオーバーハング(overhang)を含むことができる。
【0036】
本発明において、前記センス鎖又はアンチセンス鎖は、好ましくは、19個~31個のヌクレオチドで構成されることを特徴とすることができるが、これに限定されない。
【0037】
本発明において、前記二本鎖オリゴヌクレオチドのセンス鎖又はアンチセンス鎖は、生体内の安定性の向上のために、又は核酸分解酵素抵抗性の付与及び非特異的免疫反応の減少のために、多様な化学的修飾(chemical modification)を含むことを特徴とすることができ、化学的修飾は、ヌクレオチド内の糖(sugar)構造の2’炭素位置において水酸基(-OH)がメチル基(-CH3)、メトキシ基(-OCH3)、アミン基(-NH2)、フッ素(-F)、O-2-メトキシエチル基、O-プロピル基、O-2-メチルチオエチル基、O-3-アミノプロピル基、O-3-ジメチルアミノプロピル基、O-N-メチルアセトアミド基及びO-ジメチルアミドオキシエチルで構成された群から選ばれるいずれか一つに置換される修飾;ヌクレオチド内の糖構造の酸素が硫黄に置換される修飾;ヌクレオチド結合がホスホロチオエート(phosphorothioate)結合、ボラノホスフェート(boranophosphate)結合及びメチルホスホネート(methyl phosphonate)結合で構成された群から選ばれるいずれか一つの結合になる修飾;及びPNA(peptide nucleic acid)、LNA(locked nucleic acid)及びUNA(unlocked nucleic acid)形態への修飾;DNA-RNAハイブリッド形態への修飾;で構成された群から選ばれたいずれか一つ以上であることを特徴とすることができるが(Ann.Rev.Med.55,61-65 2004;US 5,660,985;US 5,958,691;US 6,531,584;US 5,808,023;US 6,326,358;US 6,175,001;Bioorg.Med.Chem.Lett.14:1139-1143,2003;RNA,9:1034-1048,2003;Nucleic Acid Res.31:589-595,2003;Nucleic Acids Research,38(17)5761-773,2010;Nucleic Acids Research,39(5):1823-1832,2011)、これに限定されない。
【0038】
本発明において、二本鎖オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖の5’末端に一つ以上のリン酸基(Phosphate group)が結合されていることを特徴とすることができ、好ましくは、1個~3個のリン酸基が結合されていることを特徴とすることができる。
【0039】
本発明は、他の観点において、下記の構造式(1)の構造を含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体に関するものであって、下記の構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYは、それぞれ独立的に単純共有結合又はリンカーが媒介した共有結合を意味し、Rは二本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0040】
一つの好ましい具体例として、本発明に係るSARS-Cov-2特異的配列を含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、構造式(1)のような構造を有することが好ましい。
A-X-R-Y-B 構造式(1)
【0041】
前記構造式(1)において、Aは親水性物質、Bは疎水性物質、X及びYは、それぞれ独立的に単純共有結合又はリンカーが媒介した共有結合を意味し、Rは、SARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを意味する。
【0042】
本発明に係る二本鎖オリゴヌクレオチドの形態としては、DNA-RNAハイブリッド、siRNA(short interfering RNA)、shRNA(short hairpin RNA)及びmiRNA(microRNA)などが好ましいが、これに限定されなく、miRNAに対する拮抗剤(antagonist)としての役割をすることができる単一鎖のmiRNA阻害剤も含まれる。
【0043】
以下、本発明に係る二本鎖オリゴヌクレオチドは、RNAを中心に説明するが、本発明の二本鎖オリゴヌクレオチドと同一の特性を有する他の二本鎖オリゴヌクレオチドにも適用可能であることは、当業界の通常の技術者にとって自明である。
【0044】
より好ましくは、本発明に係るSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(2)の構造を有する。
A-X-S-Y-B
AS 構造式(2)
【0045】
前記構造式(2)において、A、B、X及びYは、前記構造式(1)での定義と同一であり、Sは、SARS-Cov-2特異的ヌクレオチド配列のセンス鎖を意味し、ASは、SARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドのアンチセンス鎖を意味する。
【0046】
より好ましくは、SARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(3)又は(4)の構造を有する。
【0047】
前記構造式(3)及び構造式(4)において、A、B、S、AS、X及びYは、前記構造式(2)での定義と同一であり、5’及び3’は、SARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の5’末端及び3’末端を意味する。
【0048】
前記親水性物質は、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン及びポリオキサゾリンで構成された群から選ばれることを特徴とすることができるが、これに限定されない。
【0049】
前記構造式(1)~構造式(4)での前記SARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、アンチセンス鎖の5’末端にリン酸基(phosphate group)が1個~3個結合され得る。ここで、RNAの代わりにshRNAも使用可能であることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。
【0050】
前記構造式(1)~構造式(4)での親水性物質は、分子量が200~10,000である高分子物質であることが好ましく、分子量が1,000~2,000である高分子物質であることがさらに好ましい。例えば、親水性高分子物質としては、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポリオキサゾリンなどの非イオン性親水性高分子化合物を使用することが好ましいが、必ずしもこれに限定されることはない。
【0051】
特に、構造式(1)~構造式(4)での親水性物質(A)は、下記の構造式(5)又は構造式(6)のような形態の親水性物質ブロックの形態で利用可能であるが、このような親水性物質ブロックを必要によって適切な個数(構造式(5)又は構造式(6)でのn)だけ使用することによって、一般の合成高分子物質などを使用する場合に発生し得る多分散性による問題を大きく改善することができる。
(A’m-J)n 構造式(5)
(J-A’m)n 構造式(6)
【0052】
前記構造式(5)又は構造式(6)において、A’は親水性物質単量体を意味し、Jは、m個の親水性物質単量体の間又はm個の親水性物質単量体とオリゴヌクレオチドとを互いに連結するリンカーを意味し、mは1~15の整数、nは1~10の整数を意味し、(A’m-J)又は(J-A’m)で表示される反復単位が親水性物質ブロックの基本単位に該当する。
【0053】
前記構造式(5)又は構造式(6)のような親水性物質ブロックを有する場合、本発明に係るSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体は、下記の構造式(7)又は構造式(8)のような構造を有することができる。
(A’m-J)n-X-R-Y-B 構造式(7)
(J-A’m)n-X-R-Y-B 構造式(8)
【0054】
前記構造式(7)及び構造式(8)において、X、R、Y及びBは、構造式(1)での定義と同一であり、A’、J、m及びnは、構造式(5)及び構造式(6)での定義と同一である。
【0055】
前記構造式(5)~構造式(8)において、親水性物質単量体(A’)は、非イオン性親水性高分子の単量体のうち、本発明の目的に符合するものであれば制限なく使用可能であり、好ましくは、表1に記載の化合物(1)~化合物(3)から選ばれた単量体、さらに好ましくは、化合物(1)の単量体であり得る。また、化合物(1)において、Gは、好ましくはO、S及びNHから選ばれ得る。
【0056】
特に、親水性物質単量体のうち、特に化合物(1)で表示される単量体は、多様な官能基を導入することができ、生体内親和性が良く、免疫反応を少なく誘導するなど、生体適合性(bio-compatibility)に優れるだけでなく、構造式(7)又は構造式(8)による構造体内に含まれた二本鎖オリゴヌクレオチドの生体内安定を増加させ、伝達効率を増加できるという長所を有しており、本発明に係る構造体の製造に非常に適している。
【0057】
【表1】
前記構造式(5)~構造式(8)での親水性物質は、総分子量が1,000~2,000の範囲内であることが特に好ましい。
【0058】
例えば、構造式(5)~構造式(8)において、化合物(1)によるヘキサエチレングリコール(Hexaethylene glycol)、すなわち、GがOで、mが6である物質が使用される場合、ヘキサエチレングリコールスペーサー(spacer)の分子量が344であるので、反復回数(n)は3~5であることが好ましい。特に、本発明は、必要によって、前記構造式(5)~構造式(8)において、(A’m-J)n又は(J-A’m)nで表示される親水性グループの反復単位、すなわち、親水性物質ブロック(block)がnで表示される適切な個数だけ使用され得ることを特徴とする。前記各親水性物質ブロック内に含まれる親水性物質単量体であるAとリンカーであるJは、独立的に各親水性物質ブロックの間で同一又は異なり得る。すなわち、親水性物質ブロックが3個使用される場合(n=3)、1番目のブロックには化合物(1)による親水性物質単量体が、2番目のブロックには化合物(2)による親水性物質単量体が、3番目のブロックには化合物(3)による親水性物質単量体が使用されるなど、全ての親水性物質ブロック別に異なる親水性物質単量体が使用されてもよく、全ての親水性物質ブロックに化合物(1)~化合物(3)による親水性物質単量体から選ばれたいずれか一つの親水性物質単量体が同一に使用されてもよい。同様に、親水性物質単量体の結合を媒介するリンカーも、各親水性物質ブロック別に全て同一のリンカーが使用されてもよく、各親水性物質ブロック別に異なるリンカーが使用されてもよい。また、親水性物質単量体の個数であるmも、各親水性物質ブロックの間で同一又は異なり得る。すなわち、1番目の親水性物質ブロックでは親水性物質単量体が3個連結(m=3)され、2番目の親水性物質ブロックでは親水性物質単量体が5個(m=5)連結され、3番目の親水性物質ブロックでは親水性物質単量体が4個連結(m=4)されるなど、互いに異なる個数の親水性物質単量体が使用されてもよく、全ての親水性物質ブロックで同一の個数の親水性物質単量体が使用されてもよい。
【0059】
また、本発明において、前記リンカー(J)は、-PO3
--、-SO3-及び-CO2-で構成された群から選ばれることが好ましいが、これに制限されなく、使用される親水性物質の単量体などによって、本発明の目的に符合する限り、如何なるリンカーも使用可能であることは通常の技術者にとって自明である。
【0060】
前記構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)での疎水性物質(B)は、疎水性相互作用を通じて構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)による二本鎖オリゴヌクレオチド構造体で構成されたナノ粒子を形成する役割をする。前記疎水性物質は、分子量が250~1,000であることが好ましく、ステロイド(steroid)誘導体、グリセリド(glyceride)誘導体、グリセロールエーテル(glycerol ether)、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol)、C12~C50の不飽和又は飽和炭化水素(hydrocarbon)、ジアシルホスファチジルコリン(diacylphosphatidylcholine)、脂肪酸(fatty acid)、リン脂質(phospholipid)、リポポリアミン(lipopolyamine)などであり得るが、これに制限されなく、本発明の目的に符合するものであればいずれの疎水性物質も使用可能であることは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。
【0061】
前記ステロイド誘導体は、コレステロール、コレスタノール、コール酸、コレステリルホルメート、コレスタニルホルメート及びコレステリルアミンで構成された群から選ばれ得る。また、前記グリセリド誘導体は、モノ-、ジ-及びトリ-グリセリドなどから選ばれ得るが、このとき、グリセリドの脂肪酸は、C12~C50の不飽和又は飽和脂肪酸であることが好ましい。
【0062】
特に、前記疎水性物質のうち、飽和又は不飽和炭化水素やコレステロールは、本発明に係る二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の合成段階で容易に結合できるという長所を有しているという点で好ましく、C24炭化水素、特に、ジスルフィド結合(disulfide bond)を含む形態であることが最も好ましい。
【0063】
前記疎水性物質は、親水性物質の反対側末端(distal end)に結合され、siRNAのセンス鎖又はアンチセンス鎖のいずれの位置に結合されても構わない。
【0064】
本発明に係る構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)での親水性物質又は疎水性物質とSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドは、単純共有結合又はリンカーが媒介した共有結合(X又はY)によって結合される。前記共有結合を媒介するリンカーは、親水性物質又は疎水性物質とSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドの末端で共有結合し、必要によって特定の環境で分解が可能な結合を提供する限り、特に限定されない。よって、前記リンカーとしては、本発明に係る二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の製造過程でSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチド及び/又は親水性物質(又は疎水性物質)を活性化するために結合させるいずれの化合物も使用され得る。前記共有結合は、非分解性結合及び分解性結合のうちいずれであっても構わない。このとき、非分解性結合としては、アミド結合又はリン酸化結合があり、分解性結合としては、ジスルフィド結合、酸分解性結合、エステル結合、アンハイドライド結合、生分解性結合又は酵素分解性結合などがあるが、これに限定されない。
【0065】
また、前記構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)でのR(又はS及びAS)で表示されるSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドは、SARS-Cov-2のmRNAと特異的に結合できる特性を有する二本鎖オリゴヌクレオチドであればいずれも制限なく使用可能である。
【0066】
好ましくは、本発明では、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10番で構成された群から選ばれたいずれか一つの配列を含むセンス鎖と、それに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とで構成される。
【0067】
また、本発明は、本発明に係るSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体において、前記構造体内の親水性物質のオリゴヌクレオチドと結合された反対側末端部位にアミン基又はポリヒスチジン(polyhistidine)グループがさらに導入され得る。
【0068】
これは、本発明に係るSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の伝達体の細胞内導入及びエンドソーム脱出を容易にするためのものであって、既に、量子ドット(Quantum dot)、デンドリマー(Dendrimer)、リポソーム(liposome)などの伝達体の細胞内導入及びエンドソーム脱出を容易にするためにアミングループの導入及びポリヒスチジングループが利用可能であるという点及びその効果が報告されたことがある。
【0069】
具体的には、伝達体の末端或いは外側に修飾された一次アミン基は、生体内pHでプロトン化されながら陰電荷を帯びる遺伝子との静電気的相互作用によって結合体を形成し、細胞内に流入した後、エンドソームの低いpHで緩衝効果を有する内部の三次アミンによってエンドソームの脱出が容易になることによって、リソソームの分解から伝達体を保護できることが知られている(高分子ベースのハイブリッド物質を用いた遺伝子伝達及び発現抑制。Polymer Sci Technol.,Vol.23,No.3,pp254-259)。
【0070】
非必須アミノ酸の一つであるヒスチジンは、残基(-R)にイミダゾールリング(pKa3 6.04)を有するので、エンドソームとリソソームでの緩衝能力(buffering capacity)を増加させるという効果を有し、リポソームを始めとした非ウイルス性遺伝子伝達体(non-viral gene carrier)でのエンドソーム脱出効率を高めるためにヒスチジン修飾が利用可能であることが知られている(Novel histidine-conjugated galactosylated cationic liposomes for efficient hepatocyte selective gene transfer in human hepatoma HepG2 cells.J.Controlled Release 118,pp262-270)。
前記アミン基又はポリヒスチジングループは、一つ以上のリンカーを介して親水性物質又は親水性物質ブロックと連結され得る。
【0071】
本発明の構造式(1)による二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の親水性物質にアミン基又はポリヒスチジングループが導入される場合は、構造式(9)のような構造を有することができる。
P-J1-J2-A-X-R-Y-B 構造式(9)
前記構造式(9)において、A、B、R、X及びYは構造式(1)での定義と同一である。
【0072】
また、Pは、アミン基又はポリヒスチジングループを意味し、J1及びJ2はリンカーであって、J1及びJ2は、独立的に単純共有結合、PO3
-、SO3、CO2、C2-12アルキル、アルケニル、及びアルキニルから選ばれ得るが、これに限定されなく、使用される親水性物質によって、本発明の目的に符合するJ1及びJ2としていずれのリンカーも使用可能であることは通常の技術者にとって自明である。
好ましくは、アミン基が導入された場合は、J2は、単純共有結合又はPO3
-で、J1はC6アルキルであることが好ましいが、これに限定されない。
【0073】
また、ポリヒスチジングループが導入された場合は、構造式(9)において、J
2は、単純共有結合又はPO
3
-で、J
1は化合物(4)であることが好ましいが、これに限定されない。
【0074】
また、構造式(9)による二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の親水性物質は、構造式(5)又は構造式(6)による親水性物質ブロックであって、これにアミン基又はポリヒスチジングループが導入される場合は、構造式(10)又は構造式(11)のような構造を有することができる。
P-J1-J2-(A’m-J)n-X-R-Y-B 構造式(10)
P-J1-J2-(J-A’m)n-X-R-Y-B 構造式(11)
【0075】
前記構造式(10)及び構造式(11)において、X、R、Y、B、A’、J、m及びnは、構造式(7)又は構造式(8)での定義と同一であり、P、J1及びJ2は、構造式(9)での定義と同一である。
【0076】
特に、前記構造式(10)及び構造式(11)において、親水性物質は、SARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の3’末端に結合された形態であることが好ましく、この場合、前記構造式(9)~構造式(11)は、次の構造式(12)~構造式(14)の形態を有することができる。
【0077】
前記構造式(12)~構造式(14)において、X、R、Y、B、A、A’、J、m、n、P、J1及びJ2は、前記構造式(9)~構造式(11)での定義と同一であり、5’及び3’は、SARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドセンス鎖の5’末端及び3’末端を意味する。
【0078】
本発明で導入され得るアミン基としては、1次~3次アミン基が使用可能であり、1次アミン基が使用されることが特に好ましい。前記導入されたアミン基はアミン塩の形態で存在することもできるが、例えば、1次アミン基の塩はNH3
+の形態で存在することができる。
【0079】
また、本発明で導入され得るポリヒスチジングループは、3個~10個のヒスチジンを含むことが好ましく、特に好ましくは5個~8個、最も好ましくは6個のヒスチジンを含むことができる。さらに、ヒスチジン以外に、一つ以上のシステインが含まれ得る。
【0080】
一方、本発明に係るSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及びこれから形成されたナノ粒子にターゲッティング部分が備えられると、効率的にターゲット細胞への伝達を促進し、比較的低い濃度の投与量でもターゲット細胞に伝達されるので、高いターゲット遺伝子発現調節機能を示すことができ、他の臓器及び細胞への非特異的なSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドの伝達を防止することができる。
【0081】
これによって、本発明は、前記構造式(1)~構造式(4)、構造式(7)及び構造式(8)による構造体に、リガンド(L)、特に受容体媒介内包作用(receptor-mediated endocytosis、RME)を通じてターゲット細胞内在化を増進させる受容体と特異的に結合する特性を有するリガンド(ligand)がさらに結合された二本鎖オリゴRNA構造体を提供し、例えば、構造式(1)による二本鎖オリゴRNA構造体にリガンドが結合された形態は、下記の構造式(15)のような構造を有する。
(Li-Z)-A-X-R-Y-B 構造式(15)
【0082】
前記構造式(15)において、A、B、X及びYは、前記構造式(1)での定義と同一であり、Lは、受容体媒介内包作用(receptor-mediated endocytosis、RME)を通じてターゲット細胞内在化を増進させる受容体と特異的に結合する特性を有するリガンドを意味し、iは、1~5の整数、好ましくは1~3の整数である。
【0083】
前記構造式(15)でのリガンドは、好ましくは、ターゲット細胞特異的に細胞内在化を増進させるRME特性を有するターゲット受容体特異的抗体、アプタマー及びペプチド;又は葉酸(Folate、一般に、folateとfolic acidは、互いに交差して使用されており、本発明での葉酸は、自然状態又は人体での活性化状態であるfolateを意味する)、N-アセチルガラクトサミン(N-acetyl Galactosamine、NAG)などのヘキソサミン(hexoamine)、ブドウ糖(glucose)、マンノース(mannose)を始めとした糖や炭水化物(carbohydrate)などの化学物質などから選ばれ得るが、これに限定されない。
また、前記構造式(15)での親水性物質Aは、構造式(5)及び構造式(6)による親水性物質ブロックの形態で使用され得る。
【0084】
本発明の更に他の様態として、本発明は、SARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する方法を提供する。
本発明に係るSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する過程は、例えば、
(1)固形支持体(solid support)をベースにして親水性物質を結合させる段階;
(2)前記親水性物質が結合された固形支持体をベースにしてオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階;
(3)前記オリゴヌクレオチド単一鎖5’末端に疎水性物質を共有結合させる段階;
(4)前記オリゴヌクレオチド単一鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階;
(5)合成が完了すると、固形支持体からオリゴヌクレオチド-高分子構造体及びオリゴヌクレオチド単一鎖を分離・精製する段階;及び
【0085】
(6)製造されたオリゴヌクレオチド-高分子構造体と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖のアニーリングを通じて二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する段階;
を含んで構成され得る。
【0086】
本発明での固形支持体は、CPG(Controlled Pore Glass)であることが好ましいが、これに限定されなく、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)シリカゲル、セルロースペーパーなどであり得る。CPGの場合、直径が40μm~180μmであることが好ましく、500Å~3000Åの空隙サイズを有することが好ましい。前記段階(5)以降、製造が完了すると、精製されたRNA-高分子構造体及びオリゴヌクレオチド単一鎖の分子量をMALDI-TOF質量分析機で測定し、目的とするオリゴヌクレオチド-高分子構造体及びオリゴヌクレオチド単一鎖が製造されたかどうかを確認することができる。前記製造方法において、(2)段階で合成されたオリゴヌクレオチド単一鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階(4)は、(1)段階前又は(1)段階~(5)段階のうちいずれか一つの過程中に行われても構わない。
【0087】
また、(2)段階で合成されたオリゴヌクレオチド単一鎖と相補的な配列を含むオリゴヌクレオチド単一鎖は、5’末端にリン酸基が結合された形態で用いられたことを特徴とする製造方法も使用され得る。
【0088】
一方、本発明のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体に追加的にリガンドが結合された二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の製造方法を提供する。
リガンドが結合されたSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する方法は、例えば、
(1)官能基が結合されている固形支持体に親水性物質を結合させる段階;
(2)官能基-親水性物質が結合されている固形支持体をベースにしてオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階;
(3)前記オリゴヌクレオチド単一鎖の5’末端に疎水性物質を共有結合させる過程で合成する段階;
(4)前記オリゴヌクレオチド単一鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階;
(5)合成が完了すると、固形支持体から官能基-オリゴヌクレオチド-高分子構造体及び相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を分離する段階;
(6)前記官能基を用いて親水性物質の末端にリガンドを結合し、リガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体単一鎖を製造する段階;及び
【0089】
(7)製造されたリガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖のアニーリングを通じてリガンド-二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造する段階;
を含んで構成され得る。
【0090】
前記(6)段階以降、製造が完了すると、リガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体及び相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を分離・精製した後、MALDI-TOF質量分析機で分子量を測定し、目的とするリガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体及び相補的なオリゴヌクレオチドが製造されたかどうかを確認することができる。製造されたリガンド-オリゴヌクレオチド-高分子構造体と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖のアニーリングを通じてリガンド-二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を製造することができる。前記製造方法において、(3)段階で合成されたオリゴヌクレオチド単一鎖の配列と相補的な配列のオリゴヌクレオチド単一鎖を合成する段階(4)は、独立的な合成過程であって、(1)段階前又は(1)段階~(6)段階のうち一つの過程中に行われても構わない。
【0091】
本発明は、更に他の観点において、本発明に係る二本鎖オリゴヌクレオチド構造体を含むナノ粒子に関するものである。本発明に係る二本鎖オリゴヌクレオチド構造体の場合、疎水性物質の疎水性相互作用によって自己組織化ナノ粒子を形成するようになるが(大韓民国登録特許公報第1224828号)、このようなナノ粒子は、体内への伝達効率及び体内での安定性に極めて優れるだけでなく、粒子サイズの均一性に優れ、QC(Quality Control)が容易であるので、薬物への製造工程が簡単である。
【0092】
本発明において、前記ナノ粒子は、相違する二本鎖オリゴヌクレオチドを含む1種以上、好ましくは、2種以上の二本鎖オリゴヌクレオチド構造体が混合されて構成されることを特徴とすることができる。例えば、前記ナノ粒子は、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10で構成された群から選ばれるいずれか一つの配列を含むセンス鎖と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とを含む一種類のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含むこともでき、更に他の様態として、配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9及び10で構成された群から選ばれるいずれか一つの配列を含むセンス鎖と、これに相補的な配列を含むアンチセンス鎖とを含む互いに異なる種類のSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを共に含むことができ、本発明で開示されていないSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを共に含むこともできる。
【0093】
本発明は、他の観点において、本発明に係る二本鎖オリゴヌクレオチド、二本鎖オリゴヌクレオチド構造体又はナノ粒子を有効成分として含有するコロナウイルス感染症-19治療用医薬組成物に関するものである。
【0094】
本発明の組成物は、投与のために、前記記載した有効成分以外に、追加的に薬剤学的に許容可能な担体を1種以上含んで製造され得る。薬剤学的に許容可能な担体は、本発明の有効成分と両立可能でなければならなく、食塩水、滅菌水、リンゲル液、緩衝食塩水、デキストロース溶液、マルトデキストリン溶液、グリセロール、エタノール及びこれらのうち一つの成分又は二つ以上の成分を混合して使用することができ、必要によって、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤などの他の通常の添加剤を添加することができる。また、希釈剤、分散剤、界面活性剤、結合剤及び滑剤をさらに添加し、水溶液、懸濁液、乳濁液などの注射用剤形に製剤化することができる。特に、凍結乾燥(lyophilized)された形態の剤形に製剤化して提供することが好ましい。凍結乾燥剤形の製造のために、本発明の属する技術分野で通常的に知られている方法が使用されてもよく、凍結乾燥のための安定化剤が追加されてもよい。さらに、当分野の適正な方法又はレミントン薬科学(Remington’s pharmaceutical Science,Mack Publishing company,Easton PA)に開示されている方法を用いて各疾病又は成分によって好ましく製剤化することができる。
【0095】
本発明の組成物は、通常の患者の症侯及び疾病の深刻度に基づいて本技術分野の通常の専門家が決定することができる。また、散剤、錠剤、カプセル剤、液剤、注射剤、軟膏剤、シロップ剤などの多様な形態で製剤化することができ、単位投与量又は多回投与量容器、例えば、密封されたアンプル及び瓶などに提供されてもよい。
【0096】
本発明の組成物は、経口又は非経口投与が可能である。本発明に係る組成物の投与経路は、これらに限定されないが、例えば、口腔、吸入用、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髓内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、腸管、舌下又は局所投与が可能である。
【0097】
特に、コロナウイルス感染症-19が呼吸器疾患であるという点で、鼻内投与、好ましくは、スプレー方式を用いた鼻内投与、気管支内への点滴注入を通じた肺への投与が可能であるが、これに限定されない。
【0098】
本発明に係る組成物の投与量は、患者の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、方法、排泄率又は疾病の重症度などによってその範囲が多様であり、本技術分野の通常の専門家が容易に決定することができる。また、臨床投与のために、公知の技術を用いて本発明の組成物を適切な剤形に製剤化することができる。
【0099】
本発明の一様態では、フェレットを用いて、本発明に係るSARS-CoV-2配列をターゲットとして、SAMiRNA
TMをSARS-CoV-2ウイルスに感染したフェレットに投与し、フェレットの鼻腔洗浄液(Nasal wash)でqRT-PCRを通じてSARS-CoV-2コピー数(copy number)を測定した結果、皮下注射及び気管支投与群でSARS-CoV-2ウイルスの数が感染対照群に比べて有意に減少することを確認し、TCID50を用いたウイルス力価の測定結果、皮下注射投与群と皮下注射及び気管支投与群のいずれにおいても、感染対照群に比べて統計的に有意にウイルス力価が減少したことを確認した(
図5)。
本発明は、他の観点において、本発明に係る医薬組成物を含む凍結乾燥された形態の剤形に関するものである。
【0100】
本発明は、他の観点において、本発明に係るコロナウイルス感染症-19治療用医薬組成物を、コロナウイルス感染症-19治療を必要とする個体に投与する段階を含むコロナウイルス感染症-19治療方法に関するものである。
【0101】
本発明は、更に他の観点において、コロナウイルス感染症-19治療に使用するための前記二本鎖オリゴヌクレオチド、これを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及びナノ粒子に関するものである。
本発明は、更に他の観点において、コロナウイルス感染症-19治療に使用するための前記薬学的組成物に関するものである。
【0102】
本発明は、更に他の観点において、コロナウイルス感染症-19治療のための薬物を製造するための前記二本鎖オリゴヌクレオチド、これを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及びナノ粒子の用途に関するものである。
【発明の効果】
【0103】
本発明に係るSARS-Cov-2特異的二本鎖オリゴヌクレオチドを含む二本鎖オリゴヌクレオチド構造体及びこれを有効成分として含む医薬組成物は、副作用なしで高い効率でSARS-Cov-2の発現を抑制することができ、コロナウイルス感染症-19治療に卓越した効果を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【
図1】SARS-CoV-2特異的オリゴヌクレオチド候補配列デザインのためにゲノム(genome)で1-塩基スライディングウィンドウアルゴリズム(1-base sliding window algorithm)を適用し、19個の塩基で構成された候補配列を選別する過程を示す図である。
【
図2】SAMiRNA処理Huh7細胞株がCOVID-19に感染した後、EとRdrp遺伝子Ct値の測定結果を示す図である。
【
図3】SAMiRNA-COVID19のin-vivo抗ウイルス効能評価のための過程を示す図である。
【
図4】SAMiRNA-COVID19のin-vivo抗ウイルス効能評価におけるフェレットの体重及び体温変化を示す図である。
【
図5】SAMiRNA-COVID19のin-vivo抗ウイルス効能評価において、フェレットの鼻腔洗浄液サンプル内のSARS-CoV-2ウイルスRNAコピー数及びウイルス力価を特定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0105】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものに過ぎなく、本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないことは、当該技術分野で通常の知識を有する者にとって自明である。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲及びそれらの等価物によって定義されると言える。
【実施例】
【0106】
実施例1.SARS-CoV-2をターゲットとするオリゴヌクレオチドスクリーニングのためのアルゴリズムと候補配列の選定
siRNAベース治療剤高速大量スクリーニング(siRNA based drug high-throughput screening)は、RNAウイルスゲノム(virus genome)配列の全体に対してスライディングウィンドウアルゴリズム(sliding window algorithm)を適用することによって可能な全ての候補配列を生成し、相同性フィルタリング(homology filtering)を通じて不必要な候補配列を除去し、最終的に選別された全てのオリゴヌクレオチドに対して該当のウイルス複製の阻害程度を確認する方法である。
【0107】
SARS-CoV-2のためのオリゴヌクレオチド候補配列に対するデザイン過程は、SARS-CoV-2リファレンスゲノム(reference genome)(NC_045512.2,29,903 bp)に対して1-塩基スライディングウィンドウアルゴリズムを適用し、19個の塩基で構成された29,885個の候補配列を生成した(
図1)。
【0108】
生成されたオリゴヌクレオチド候補配列リストをヒト総リファレンス配列RNA(human total reference seq RNA)に対するBLAST e-値100以下で行い、ヒト遺伝子とRNA配列に対して同一性(identity)が15塩基以下である6,885個の候補配列を選別した。これをSARS-CoV(NC_004718.3,29,751 bp)に対して19塩基が全て一致する候補配列560個を選別し、siRNA効率を考慮した上で、GC含量(content)30区間~60区間で480個を最終的に選別した。
【0109】
実施例2.二本鎖オリゴRNA構造体の合成
本発明で製造された二本鎖オリゴRNA構造体(SAMiRNA)は、下記の構造式のような構造を有する。
C24-5’S 3’-(ヘキサエチレングリコール-PO4
-)3-ヘキサエチレングリコール
AS 5’-PO4
【0110】
monoSAMiRNA(n=4)二本鎖オリゴ構造体のセンス鎖は、3,4,6-トリアセチル-1-ヘキサ(エチレングリコール)-N-アセチルガラクトサミン-CPG(1-Hexa(Ethylene Glycol)-N-Acetyl Galactosamine-CPGを支持体とし、親水性物質単量体であるDMTヘキサエチレングリコールホスホルアミデート(Demethoxytrityl hexaethylene glycol phosphoramidate)3個を前記反応を通じて連続して結合した後、RNA又はDNA合成を行った後、追加的に5’末端部位に疎水性物質であるジスルフィド結合が含まれているC24(C6-S-S-C18)を結合させ、3’末端にNAG-ヘキサエチレングリコール-(-PO3
-ヘキサエチレングリコール)3が結合されており、5’末端にC24(C6-S-S-C18)が結合されているmonoSAMiRNA(n=4)のセンス鎖を作った。
【0111】
合成が完了すると、60℃の温湯器(water bath)で28%(v/v)アンモニア(ammonia)を処理し、合成されたRNA単一鎖及びオリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体をCPGから剥ぎ取った後、脱保護(deprotection)反応を通じて保護残基を除去した。保護残基が除去されたRNA単一鎖及びオリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体は、70℃のオーブンでN-メチルピロリドン(N-methylpyrolidon)、トリエチルアミン(triethylamine)及びトリエチルアミントリハイドロフルオライド(triethylaminetrihydrofluoride)を体積比10:3:4の比率で処理し、2’TBDMS(tert-butyldimethylsilyl)を除去した。前記各反応物から高速液体クロマトグラフィー(High Performance Liquid Chromatography、HPLC)を通じてRNA単一鎖、オリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体及びリガンドが結合されたオリゴ(DNA又はRNA)-高分子構造体を分離し、この分子量をMALDI-TOF質量分析機(MALDI TOF-MS、SHIMADZU、日本)で測定し、合成しようとする塩基配列及びオリゴ-高分子構造体と符合するかどうかを確認した。その後、それぞれの二本鎖オリゴ構造体を製造するためにセンス鎖とアンチセンス鎖を同量混合し、1Xアニーリングバッファー(30mM HEPES、100mMカリウムアセテート(Potassium acetate)、2mMマグネシウムアセテート(Magnesium acetate)、pH7.0~7.5)に入れ、90℃恒温水槽で3分間反応させた後、再び37℃で反応させることによって目的とするSAMiRNAを製造した。製造された二本鎖オリゴRNA構造体のアニーリングは、電気泳動を通じて確認した。
【0112】
実施例3.SARS-CoV-2をターゲットとしてRNAiを誘導するSAMiRNAナノ粒子の高速大量スクリーニング
3.1 SAMiRNAナノ粒子の製造
実施例2で合成されたSARS-CoV-2配列をターゲットとする960種のSAMiRNAを1XDPBS(Dulbecco’s Phosphate Buffered Saline)(WELGENE、KR)に溶かした後、96-ウェルフィルトレーションプレート(well Filtration Plate)MultiScreenHTS GVフィルタープレート(Filter Plate)、0.22μm、クリア(clear)、滅菌(sterile)(MERCK、DE)でフィルターした後、これを本発明のための実験に使用した。
【0113】
3.2 SAMiRNAナノ粒子の細胞内処理方法
SARS-CoV-2の発現を抑制するSAMiRNAを発掘するためにヒト由来の肝臓癌細胞株であるHuh7を用いており、SAMiRNA処理(treatment)24時間前に、96-ウェルプレート(Well plate)にHuh-7細胞(JCRB、JP)を接種(seeding)した。RPMI 1640(sh30027.01)(Hyclone、US)培地を細胞培養液として使用し、1ウェル当たり100μlずつ入れた後、37℃、5%CO2の条件で細胞を培養した。培地の組成においては、RPMI 1640に2.05mMのL-グルタミン、1%ペニシリン-ストレプトマイシン(Hyclone、US)、及び10%FBS(Fetal Bovine Serum)(Hyclone、US)が追加された。SAMiRNA候補物質は、二つの培地を交替すると共に、10μMの濃度で1回処理した後、24時間にわたって37℃、5%CO2の条件で細胞を培養した。
【0114】
3.3 細胞内SARS-CoV-2感染方法
実施例3.2で培養された96-ウェル細胞培養プレート(well cell culture plate)の培地を除去した後、準備された0.01MOIのウイルスを各ウェルに処理してから1時間30分間感染させた。その後、2%FBS(Fetal Bovine Serum)が含まれたRPMI 1640培地(ウイルス増殖培地(virus growth media))に交換し、37℃、5%CO2の条件で2日間細胞を培養した。最後に、細胞培養プレートで細胞培養液を収得した後、ExiprepTM 96ウイルス(Viral)DNA/RNAキット(BIONEER、KR)のカートリッジ1番(溶解バッファー(Lysis buffer))、プロテイナーゼ(Proteinase)Kと混合した後、65℃で2時間培養した。
【0115】
3.4 SARS-CoV-2 gRNA発現抑制効能分析を通じたSAMiRNAスクリーニング
実施例3.3で収得した細胞培養液からgRNAを抽出するために、核酸抽出自動化装備であるExiPrepTM 96ライト(lite)(BIONEER、KR)とExiprepTM 96ウイルスDNA/RNAキット(BIONEER、KR)を用いた。抽出された核酸は、AccuPower■ SARS-CoV-2リアルタイム(Real-Time)RT-PCRキット(BIONEER、KR)の製造社マニュアルに従って、EとRdrp遺伝子をExicyclerTM 96リアルタイム定量的サーマルブロック(Real-Time Quantitative Thermal Block)(BIONEER、KR)を用いて50℃で30分、94℃で10分、95℃で15秒及び60℃で1分の45サイクルによってRT-qPCRで分析した。
【0116】
SAMiRNAが処理されたウイルス感染細胞培養サンプルから得られるE及びRdrp遺伝子の生物学的/技術的反復から導出される全てのCt値を整列した。前記結果物にもとづいて、SARS-CoV-2の遺伝子領域別に最適なSAMiRNA候補群を選別した。選別されたSAMiRNA候補群は、COVID19データベースに登録された7259種の配列と比較し、遺伝子配列変異を検定した。
【0117】
その結果、表2に示したように、SARS-CoV-2阻害能を保有する10種のSAMiRNAを最終的に選別した。選別されたSAMiRNA候補群は、記載された順にそれぞれ配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9、10の配列を有するSAMiRNAである。選別された配列番号1~10は、それぞれ
図2の#161、#214、#233、#246、#249、#544、#625、#707、#715、#758と一致する。
【0118】
【0119】
実施例4.SARS-CoV-2感染フェレット(Ferret)モデルでのSAMiRNATMの症状緩和効能評価
4.1 SAMiRNATMナノ粒子の製造
表2で確保されたSARS-CoV-2配列をターゲットとする10種のSAMiRNATM混合物を1XDPBS(Dulbecco’s Phosphate Buffer ed Saline)(WELGENE、KR)に溶かした後、96-ウェルフィルトレーションプレート(well Filtration Plate)MultiScreenHTS GVフィルタープレート(Filter Plate)、0.22μm、クリア(clear)、滅菌(sterile)(MERCK、DE)でフィルターした後、これを本発明のための実験に使用した。
【0120】
4.2 SARS-CoV-2感染フェレット動物試験方法
平均15月齢の雌のフェレット(IDBio、韓国)を合計11匹感染させた後、無処理対照群3匹、皮下投与(sc)群4匹、及び皮下及び気管支(sc+intratracheal)投与群4匹に分けて実験を行った。
【0121】
フェレットの鼻腔と気管支に、SARS-CoV-2(CBNU-nCoV-01)を1×105.5TCID50/mLでそれぞれ0.5mLずつ合計1.0mL接種した。ウイルスに感染してから24時間後、各実験動物に、皮下注射(50mpk)、皮下注射(50mpk)と気管支(500μl)経路でSAMiRNATMナノ粒子を単回投与した。
【0122】
ウイルスに感染する前の0日目、ウイルスに感染した後の2日、4日、6日、8日、10日目に対照群及び試験群の個別個体の体重及び体温変化を測定し、鼻腔洗浄液サンプルを採取した(
図3)。採取したサンプルは、TCID50方法を用いてウイルス力価を測定したり、RNAを抽出した後、AccuPower
■ SARS-CoV-2リアルタイム(Real-Time)RT-PCRキット(BIONEER、KR)の製造社マニュアルに従ってqRT-PCRでウイルスRNAコピー数の絶対定量分析を行った。
【0123】
その結果、ウイルスに感染した後のフェレットの体重は、ウイルスに感染する前に比べて7%~8%減少し、体温は、4dpiであるとき、平均0.5℃以上上昇してから回復し、SAMiRNA処理による有意な差はなかった(
図4)。
【0124】
フェレットの鼻腔洗浄液(Nasal wash)でqRT-PCRを通じてSARS-CoV-2コピー数を測定した結果、8dpiの皮下注射と気管支投与群でSARS-CoV-2ウイルスの数が感染対照群に比べて有意に減少した(
図5A)。
【0125】
TCID50を用いたウイルス力価を測定した結果、4dpiの皮下注射投与群及び皮下注射と気管支投与群のいずれにおいても、感染対照群に比べて統計的に有意にウイルス力価が減少した。皮下注射と気管支投与群は、6dpiでも感染対照群に比べて統計的な有意性を確認した(
図5B)。
【0126】
以上、本発明の内容の特定部分を詳細に記述したが、当業界で通常の知識を有する者にとって、このような具体的技術は好ましい実施例に過ぎなく、これによって本発明の範囲が制限されないことは明白であろう。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義されると言えるだろう。本発明の単純な修飾及び変更は、この分野で通常の知識を有する者によって容易に利用可能であり、このような修飾や変更は、いずれも本発明の領域に含まれるものと見なすことができる。
【配列表】
【国際調査報告】