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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】洗濯機
(51)【国際特許分類】
   D06F 39/10 20060101AFI20230726BHJP
   D06F 37/12 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
D06F39/10 B
D06F37/12
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022573455
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 CN2021095694
(87)【国際公開番号】W WO2021213543
(87)【国際公開日】2021-10-28
(31)【優先権主張番号】202010476216.0
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010476189.7
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(71)【出願人】
【識別番号】520148792
【氏名又は名称】海爾智家股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HAIER SMART HOME CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No.1 Haier Road, Laoshan District Qingdao, Shandong 266101 China
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】趙志強
(72)【発明者】
【氏名】許升
【テーマコード(参考)】
3B165
3B166
【Fターム(参考)】
3B165AA11
3B165AA15
3B165AE01
3B165AE02
3B165BA10
3B165BA42
3B165BA73
3B165BA84
3B165CA01
3B165CA11
3B165CB01
3B165CB31
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3B165CB60
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3B165GA02
3B165GA12
3B165GA13
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3B166AA15
3B166AE01
3B166AE02
3B166BA10
3B166BA42
3B166BA73
3B166BA84
3B166CA01
3B166CA11
3B166CB01
3B166CB02
3B166CB11
3B166CB12
3B166DB03
3B166DB18
3B166DE01
3B166DE02
3B166GA02
3B166GA04
3B166GA12
3B166GA22
3B166GA24
(57)【要約】
本発明は、一局面において、回転可能な貯水タンクを構成する内槽を含み、内槽に糸屑フィルタが設けられている洗濯機を開示する。孔無し内槽に糸屑フィルタを設置して、洗浄水中の糸屑を濾過及び収集することで、洗浄水中の糸屑の残留が減少し、洗浄効果が向上する。本発明は、別の局面において、回転可能な貯水タンクを構成する内槽を含み、内槽に排水口が設けられており、排水口に糸屑フィルタが設けられている洗濯機を開示する。孔無し内槽に排水口を覆う糸屑フィルタを設置し、洗濯機の排水水流中の糸屑を濾過することで、洗浄水中の糸屑が排水口まで流れて排水口を詰まらせるとの問題が防止される。これにより、クリーニング不要の洗濯機の孔無し内槽における排水の円滑性が向上する
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な貯水タンクを構成する内槽を含み、前記内槽に糸屑フィルタが設けられていることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記糸屑フィルタは内部に濾過室を有し、前記糸屑フィルタには、前記濾過室を前記内槽の内部と連通させる入水口及び吐水口が設けられており、前記入水口及び前記吐水口には、水流の流動方向を制御する逆止弁がそれぞれ設けられており、前記濾過室内、前記吐水口、前記逆止弁のいずれか又はそれらを組み合わせた箇所には、通過する水流中の糸屑を濾過する濾過構造が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記内槽には汚れ排出孔が設けられており、前記内槽は外槽内に嵌装され、前記汚れ排出孔は前記濾過室と前記外槽とを連通させ、
或いは、前記内槽には汚れ排出孔が設けられており、前記内槽の下方には集水槽が設けられており、前記内槽の側壁には、下方に向かって鉛直に延伸する流路が設けられており、前記流路の下端は前記集水槽内に伸入しており、前記汚れ排出孔は前記濾過室と前記流路とを連通させることを特徴とする請求項2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記糸屑フィルタの前記濾過室には、前記汚れ排出孔の開閉を制御する弁が装着されており、
好ましくは、前記弁は遠心弁であり、前記内槽の回転速度が所定の値に達すると、遠心弁構造のバルブコアは遠心力の作用を受けて前記汚れ排出孔を自動的に開放することを特徴とする請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記内槽は、軸線が鉛直に設置され、上端が開口した槽状構造をなしており、前記糸屑フィルタは、前記内槽の側壁の中間部に設置され、前記内槽の側壁は、上端の径方向サイズが大きく、下端の径方向サイズが小さいテーパー状をなしていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記内槽の側壁には複数の前記糸屑フィルタが分布しており、各前記糸屑フィルタは前記内槽の軸線に対して対称に間隔を置いて分布していることを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記内槽は複数の洗浄水位を有し、前記糸屑フィルタは、少なくとも一部が内槽における最低洗浄水位よりも高くなっており、少なくとも一部が前記内槽における最高洗浄水位よりも低くなっていることを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記内槽の上端には複数の排水口が分布しており、前記内槽は回転可能に外槽内に嵌装され、各排水口はそれぞれ前記内槽と前記外槽とを連通させ、
或いは、前記内槽の上端には排水口が設けられており、前記内槽の下方には集水槽が設けられており、前記内槽の側壁には下方に向かって鉛直に延伸する流路が設けられており、前記流路は、上端が前記排水口と連通しており、下端が前記集水槽内に伸入していることを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記遠心弁は、
移動可能に前記汚れ排出孔を密封又は開放するバルブコアと、
前記バルブコアに接続されて、前記内槽が高速回転する際に遠心力の作用で前記バルブコアを引き動かして前記汚れ排出孔を開放させる遠心装置と、
前記バルブコアに接続されて、前記内槽が低速回転する際に遠心力に抗して前記バルブコアを動かし、前記汚れ排出孔を閉止させる弾性部材、を含むことを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項10】
前記糸屑フィルタはケーシングを含み、前記ケーシングは前記内槽の側壁の内側に係合及び装着され、前記ケーシングと前記内槽が濾過室を包囲しており、前記糸屑フィルタの前記ケーシングのうち、前記内槽の回転方向における対向する両側には第1開口及び第2開口がそれぞれ設置され、前記第1開口及び前記第2開口には、軸周りに回転可能な弁体がそれぞれ設置され、前記弁体の回転軸は前記内槽の軸線と平行であり、前記弁体は、水流からの衝撃を受けて前記ケーシングの内部に向かって回転し、開口を開放可能であるとともに、前記ケーシングに位置規制されることで、前記ケーシングの外部には回転し得ず、前記ケーシングにおける前記内槽の内部に面する側及び/又は上側、下側には吐水口が設けられており、前記吐水口には、流出する水流について糸屑濾過を行う格子構造が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項11】
回転可能な貯水タンクを構成する内槽を含み、前記内槽に排水口が設けられており、前記排水口に糸屑フィルタが設けられていることを特徴とする洗濯機。
【請求項12】
前記糸屑フィルタは、前記排水口を覆う格子構造、網目構造、櫛歯構造のうちの1つ又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項11に記載の洗濯機。
【請求項13】
前記糸屑フィルタは前記内槽と一体的な部材であり、或いは、前記糸屑フィルタは前記内槽に固定的に装着される独立した部材であり、
好ましくは、前記内槽にはバランスリングが装着されており、前記糸屑フィルタは前記バランスリングに固定的に接続されるか一体的に成型されることを特徴とする請求項11に記載の洗濯機。
【請求項14】
前記糸屑フィルタは、前記内槽の側壁の内周に設けられて前記排水口を覆う環状構造をなしており、前記糸屑フィルタと前記内槽の内壁が共同で通水空間を囲繞しており、前記通水空間は前記排水口を通じて前記内槽の外部と連通しており、前記通水空間は前記糸屑フィルタの濾過隙間を通じて前記内槽の内部と連通しており、
好ましくは、環状の前記糸屑フィルタの上下両側は、それぞれ、前記内槽の内壁に直接的に接続されるか、間接的に接続されることを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項15】
前記内槽は、軸線が鉛直に設置され、上端が開口した槽状構造をなしており、前記内槽の側壁は、上端の径方向サイズが大きく、下端の径方向サイズが小さいテーパー状をなしており、前記内槽の側壁の天井部には少なくとも1つの排水口が設けられており、環状の前記糸屑フィルタが前記内槽の天井部の内周側に設けられていることを特徴とする請求項14に記載の洗濯機。
【請求項16】
前記糸屑フィルタは、前記内槽の周方向に沿って間隔を置いて分布する複数の濾過櫛歯を含み、隣り合う前記濾過櫛歯間の隙間が水流を通過させる濾過隙間を構成し、前記濾過隙間の幅dは排水口の孔径Dよりも小さく、
好ましくは、前記濾過櫛歯はシート状構造をなしており、シート状の前記濾過櫛歯と前記内槽の径方向断面との夾角をaとすると、aは0以上90未満であることを特徴とする請求項15に記載の洗濯機。
【請求項17】
環状の前記糸屑フィルタは、下から上に向かって徐々に収縮するテーパー状をなしていることを特徴とする請求項16に記載の洗濯機。
【請求項18】
環状の前記糸屑フィルタは上部の収集部と下部の濾過部に分割され、
前記収集部と前記濾過部はテーパー度の異なるテーパー状をなしており、前記収集部のテーパー度a2は前記濾過部のテーパー度a1よりも大きく、或いは、前記収集部は筒状をなしており、前記濾過部はテーパー状をなしており、
好ましくは、前記濾過部には、通水空間の内部に向かって窪み、前記内槽の内部方向に開口して設置される収集槽が設けられていることを特徴とする請求項17に記載の洗濯機。
【請求項19】
各前記濾過櫛歯の下端は前記内槽の内壁に接続され、上端は止水プレートを介して前記内槽の内壁に接続されることを特徴とする請求項17に記載の洗濯機。
【請求項20】
前記止水プレートは、水平に設置されて前記内槽の径方向に延伸する環状をなしており、環状の前記止水プレートは、内周が各前記濾過櫛歯の上端に接続され、外周が前記内槽の内周に接続されることを特徴とする請求項19に記載の洗濯機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗濯機の分野に属し、具体的には、洗浄水が内槽と外槽の間でクロスフローしないクリーニング不要の洗濯機に関し、特に、孔無し内槽内の糸屑を濾過及び収集可能な洗濯機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、従来技術の洗濯機は内槽と外槽を含み、外槽の内部に内槽が装着される。外槽は、洗浄水を収容するために用いられ、内槽内には衣類が投入される。また、内槽の内部にはパルセータ等の洗浄構造が装着されている。内槽及び/又はパルセータは、モータの駆動により回転することで、洗浄水流を発生させて衣類を洗浄する。洗浄過程において、内槽は、内槽に設けられている脱水孔を通じて外槽に接続されるため、内槽及び外槽のいずれの内部にも水が貯えられる。そのため、従来技術における一般的な洗濯機には、次の3つの課題が存在する。
【0003】
第1に、水が無駄となる。実際の動作中には内槽内の水のみが必要とされる。
【0004】
第2に、細菌が繁殖する。内槽と外槽との接続箇所の水は完全には排出できず、クリーニングすることも不可能なため、長期的に使用していると、外槽に細菌が繁殖して衣類を汚染する。
【0005】
第3に、外槽が存在することで洗濯機の容量が大幅に減少する。一般的な洗濯機の場合、容量を増大させたければ洗濯機の構造全体を大きくするしかないため、ユーザの居住空間を過剰に占有することになり、間取りの小さなユーザにとって極めて不親切である。
【0006】
上記の課題を解消するために、出願人は、孔無し内槽を有する洗濯機を提供した。当該洗濯機では、内槽を脱水孔のない密閉容器とすることで、洗浄水を内槽内に貯え、貯水及び回転洗浄という2つの機能を内槽に兼備させた。これにより、洗浄水が内槽と外槽の間を流動するために、内槽と外槽の間の空間をクリーニングできず、汚染されるとの課題は回避された。
【0007】
しかし、孔無し内槽は密封状の内槽であるため、洗浄過程で衣類から抜け落ちた糸屑等が洗浄水中に残留し、洗濯機の排水時に糸屑が孔無し内槽の排水口付近に堆積する結果、排水口が詰まり、洗濯機の正常な排水に支障をきたしてしまう。
【0008】
また、孔無し内槽は密封状の内槽であるため、洗浄過程で洗浄水に混入した糸屑を排出することが難しい。特に、最後の脱水段階では、排水水流が弱くなるが、遠心力のかかった水を内槽の最上部の排水口まで上昇させて排出せねばならない。これにより、排水の動力が更に弱まる結果、大量の糸屑が内槽内に残留して、洗濯機による衣類の洗浄効果に大きな影響を及ぼしてしまう。
【0009】
且つ、従来の洗濯機の糸屑フィルタは、糸屑を無限に収集することはできず、洗濯機が衣類の処理を実行するたびに糸屑フィルタを速やかに洗浄する機能も備わっていない。そのため、糸屑フィルタが飽和状態となったままで洗濯機が運転を続け、糸屑フィルタが槽内の糸屑を速やか且つ効果的に収集できなくなるとの問題が発生しやすい。
【0010】
以上に鑑みて、本発明を提案する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明が解決しようとする技術的課題は、従来技術の瑕疵を解消するために、クリーニング不要の洗濯機の洗浄過程において、孔無し内槽の排水口に糸屑が堆積し、排水が詰まり、孔無し内槽内に糸屑が大量に残留する等の課題を解決する洗濯機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、第1の局面において、回転可能な貯水タンクを構成する内槽を含み、内槽に糸屑フィルタが設けられており、内槽内の水が糸屑フィルタを通過し、通過する水中の糸屑を糸屑フィルタが濾過する洗濯機を開示する。
【0013】
更に、糸屑フィルタは内部に濾過室を有する。糸屑フィルタには、濾過室を内槽の内部と連通させる入水口及び吐水口が設けられている。入水口及び吐水口には、水流の流動方向を制御する逆止弁がそれぞれ設けられている。濾過室内、吐水口、逆止弁のいずれか又はそれらを組み合わせた箇所には、通過する水流中の糸屑を濾過する濾過構造が設けられており、糸屑を濾過室内に堰き止めるために用いられる。
【0014】
更に、内槽には汚れ排出孔が設けられている。汚れ排出孔は、糸屑フィルタの濾過室と内槽の外部の外槽を連通させる。
【0015】
或いは、内槽の下方には集水槽が設けられている。また、内槽の側壁には、下方に向かって鉛直に延伸する流路が設けられており、流路の下端が集水槽内に伸入している。汚れ排出孔は、糸屑フィルタの濾過室と流路を連通させて、堰き止めた糸屑を洗濯機の排水とともに汚れ排出孔から内槽の外部に排出するために用いられる。
【0016】
更に、糸屑フィルタ内の濾過室には、汚れ排出孔の開閉を制御する遠心弁構造が装着されている。内槽の回転速度が所定の値に達すると、遠心弁構造のバルブコアは遠心力の作用を受けて汚れ排出孔を開放する。
【0017】
更に、内槽は、軸線が鉛直に設置され、上端が開口した槽状構造をなしている。糸屑フィルタは、内槽の側壁の中間部に設置される。内槽の側壁は、上端の径方向サイズが大きく、下端の径方向サイズが小さいテーパー状をなしている。
【0018】
更に、内槽の側壁には複数の糸屑フィルタが分布しており、各糸屑フィルタは内槽の軸線に対して対称に間隔を置いて分布している。
【0019】
更に、内槽は複数の洗浄水位を有している。糸屑フィルタの少なくとも一部は内槽における最低洗浄水位よりも高くなっており、好ましくは、糸屑フィルタの最も高い部分が内槽における最高洗浄水位よりも低くなっている。
【0020】
更に、内槽の上端には複数の排水口が分布している。内槽は回転可能に外槽内に嵌装され、各排水口はそれぞれ内槽と外槽を連通させる。
【0021】
或いは、内槽の上端には排水口が設けられており、内槽の下方には集水槽が設けられている。内槽の側壁には下方に向かって鉛直に延伸する流路が設けられている。流路は、上端が排水口と連通しており、下端が集水槽内に伸入している。排水口は、流路を通じて内槽の内部と内槽外部の集水槽を連通させており、遠心力を受けて内槽の槽口まで上昇した水を排水口から内槽の外部に排出するために用いられる。
【0022】
更に、前記遠心弁構造は、移動可能に孔を密封又は開放するバルブコアと、バルブコアに接続されて、内槽が高速回転する際に遠心力の作用でバルブコアを引き動かして孔を開放させる遠心装置と、バルブコアに接続されて、内槽が低速回転する際に遠心力に抗してバルブコアを動かし、孔を閉止させる弾性部材、を含む。
【0023】
更に、糸屑フィルタはケーシングを含む。ケーシングは内槽の側壁の内側に係合及び装着される。また、ケーシングと内槽が濾過室を包囲している。糸屑フィルタのケーシングのうち、内槽の回転方向における対向する両側には第1開口及び第2開口がそれぞれ設置される。第1開口及び第2開口には、軸周りに回転可能な弁体がそれぞれ設置される。弁体の回転軸は内槽の軸線と平行である。弁体は、水流からの衝撃を受けてケーシングの内部に向かって回転し、開口を開放可能であるとともに、ケーシングに位置規制されることで、ケーシングの外部には回転し得ない。これにより、内槽が軸周りに回転する際には、水流が一方の開口の弁体に衝撃を与えることで内側に回転させて、対応する開口を開放させるが、他方の開口の弁体はケーシングに位置規制されて対応する開口を閉止する。その結果、糸屑フィルタの両側の開口を択一的に開放し、択一的に閉止するとの効果が達成される。また、ケーシングにおける内槽の内部に面する側及び/又は上側、下側には吐水口が設けられている。吐水口には、流出する水流について糸屑濾過を行う格子構造が設けられている。
【0024】
上記の技術方案を用いることで、本発明は従来技術と比較して以下の有益な効果を有する。
【0025】
孔無し内槽に糸屑フィルタを設置して、洗浄水中の糸屑を濾過及び収集することで、洗浄水中の糸屑の残留が減少し、洗浄効果が向上する。また、特に、糸屑フィルタに遠心弁を有する汚れ排出孔を設置し、糸屑フィルタが収集した糸屑を洗濯機の排水水流とともに押し流せるようにすることで、洗浄のたびに排水水流を利用して糸屑フィルタを自動クリーニングするとの効果が実現される。
【0026】
本発明は、第2の局面において、回転可能な貯水タンクを構成する内槽を含み、内槽に排水口が設けられており、排水口に糸屑フィルタが設けられている洗濯機を提供する。
【0027】
更に、糸屑フィルタは、排水口を覆う格子構造、網目構造、櫛歯構造のうちの1つ又はそれらの組み合わせである。
【0028】
更に、糸屑フィルタは内槽と一体的な部材である。或いは、糸屑フィルタは内槽に固定的に装着される独立した部材である。好ましくは、内槽にはバランスリングが装着されており、糸屑フィルタはバランスリングに固定的に接続されるか一体的に成型される。
【0029】
更に、糸屑フィルタは、内槽の側壁の内周に設けられて排水口を覆う環状構造をなしている。糸屑フィルタと内槽の内壁は共同で通水空間を囲繞しており、通水空間は排水口を通じて内槽の外部と連通している。通水空間は、糸屑フィルタの濾過隙間を通じて内槽の内部と連通している。
【0030】
好ましくは、環状の糸屑フィルタの上下両側は、それぞれ、内槽の内壁に直接的に接続されるか、間接的に接続される。
【0031】
更に、内槽は、軸線が鉛直に設置され、上端が開口した槽状構造をなしている。また、内槽の側壁は、上端の径方向サイズが大きく、下端の径方向サイズが小さいテーパー状をなしている。内槽の側壁の天井部には少なくとも1つの排水口が設けられている。また、環状の糸屑フィルタが内槽の天井部の内周側に設けられている。
【0032】
更に、糸屑フィルタは、内槽の周方向に沿って間隔を置いて分布する複数の濾過櫛歯を含み、隣り合う濾過櫛歯間の隙間が水流を通過させる濾過隙間を構成する。濾過隙間の幅dは排水口の孔径Dよりも小さい。好ましくは、濾過櫛歯はシート状構造をなしており、シート状の濾過櫛歯と内槽の径方向断面との夾角をaとすると、aは0以上90未満である。
【0033】
更に、環状の糸屑フィルタは、下から上に向かって徐々に収縮するテーパー状をなしている。
【0034】
更に、環状の糸屑フィルタは上部の収集部と下部の濾過部に分割される。収集部と濾過部はテーパー度の異なるテーパー状をなしており、収集部のテーパー度a2は濾過部のテーパー度a1よりも大きい。或いは、収集部は筒状をなしており、濾過部はテーパー状をなしている。好ましくは、濾過部には、通水空間の内部に向かって窪み、内槽の内部方向に開口して設置される収集槽が設けられている。
【0035】
更に、各濾過櫛歯は、少なくとも1つの固定リングを通じて連なっている。好ましくは、各濾過櫛歯は固定リングと一体的に設置される。
【0036】
更に、各濾過櫛歯の下端は内槽の内壁に接続され、上端は止水プレートを介して内槽の内壁に接続される。
【0037】
更に、止水プレートは、水平に設置されて内槽の径方向に延伸する環状をなしている。環状の止水プレートは、内周が各濾過櫛歯の上端に接続され、外周が内槽の内周に接続される。
【発明の効果】
【0038】
上記の技術方案を用いることで、本発明は従来技術と比較して以下の有益な効果を有する。
【0039】
孔無し内槽に排水口を覆う糸屑フィルタを設置し、洗濯機の排水水流中の糸屑を濾過することで、洗浄水中の糸屑が排水口まで流れて排水口を詰まらせるとの問題が防止される。これにより、洗濯機における排水の円滑性が向上する。また、特に、糸屑フィルタをテーパー状とすることで、糸屑フィルタが濾過した糸屑を排水水流による衝撃の作用で上方に移動可能とする。これにより、糸屑が糸屑フィルタの下方に堆積し、排水の円滑性に影響を及ぼすとの問題が回避されるため、糸屑フィルタの濾過効率を向上させるとの効果が達成される。
【0040】
且つ、本発明は構造がシンプルであり、効果が著しく、利用普及に適している。
【0041】
以下に、図面を組み合わせて、本発明の具体的実施形態につき更に詳細に述べる。
【0042】
図面は、本発明の一部として本発明の更なる理解のために用いられる。また、本発明の概略的実施例及びその説明は本発明の解釈のために用いられるが、本発明を不当に限定するものではない。なお、言うまでもなく、以下で記載する図面は実施例の一部にすぎず、当業者であれば、創造的労働を要さないことを前提に、これらの図面から更にその他の図面を得ることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1図1は、本発明の一実施例における洗濯機の概略構造図である。
図2図2は、本発明の別の実施例における洗濯機の概略構造図である。
図3図3は、本発明の実施例における図1のA部分の拡大構造の概略図である。
図4図4は、本発明の実施例における図3のB-B断面の糸屑フィルタの閉止時の概略構造図である。
図5図5は、本発明の実施例における図3のB-B断面の糸屑フィルタの開放時の概略構造図である。
図6図6は、本発明の更なる実施例における洗濯機の概略構造図である。
図7図7は、本発明の実施例における図6のC部分の拡大構造の概略図である。
図8図8は、本発明の実施例における糸屑フィルタの側面構造の概略図である。
図9図9は、本発明の実施例における糸屑フィルタの概略構造図である。
図10図10は、本発明の別の実施例における図6のC部分の拡大構造の概略図である。
図11図11は、本発明の別の実施例における糸屑フィルタの側面構造の概略図である。
図12図12は、本発明の別の実施例における糸屑フィルタの概略構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
説明すべき点として、これらの図面及び文字記載は何らかの方式で本発明の構想の範囲を制限するとの意図ではなく、特定の実施例を参照して当業者に本発明の概念を説明するためのものである。
【0045】
本発明における実施例の目的、技術方案及び利点をより明瞭とすべく、以下では、本発明の実施例にかかる図面を組み合わせて、実施例の技術方案につき明瞭簡潔に述べる。なお、以下の実施例は本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を制限するものではない。
【0046】
本発明の記載において、説明すべき点として、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「鉛直」、「内」、「外」等の用語で示される方向又は位置関係は、図示に基づく方向又は位置関係であって、本発明の記載の便宜上及び記載の簡略化のためのものにすぎず、対象となる装置又は部材が特定の方向を有し、且つ特定の方向で構成及び操作されねばならないことを明示又は暗示するものではない。よって、本発明を制限するものと理解すべきではない。
【0047】
本発明の記載において、説明すべき点として、別途明確に規定及び限定しない限り、「装着する」、「連なる」、「接続する」との用語は広義に解釈すべきである。例えば、固定的な接続であってもよいし、取り外し可能な接続であってもよいし、一体的な接続であってもよい。また、機械的な接続であってもよいし、電気的な接続であってもよい。更には、直接的な連なりであってもよいし、中間媒体を介した間接的な連なりであってもよい。当業者であれば、具体的状況に応じて本発明における上記用語の具体的意味を解釈可能である。
【実施例1】
【0048】
図1図5に示すように、本実施例では洗濯機について説明する。当該洗濯機は、ハウジング2を含む。ハウジング2内には内槽1が設けられている。内槽1の軸線は鉛直に設置される。また、内槽1の上端を開口するよう設置することで内槽の槽口101が構成されており、底端を密封状に設置することで内槽底103が構成されている。内槽の槽口101と内槽底103の間は、内槽の側壁102により接続されている。また、天井部が開口するよう設置された貯水タンクを内槽1の内部が構成するよう、内槽1の少なくとも中間部及び下部の槽壁には貫通孔が設けられていない。且つ、洗濯機のハウジング2の上端には、外側に開放可能な扉4が装着されている。そのため、扉4が開放されたあとに、内槽の槽口101から内槽1内に衣類を投入するとの目的が実現される。内槽1の下部は、内槽支持部材3を介して洗濯機のハウジング2内に装着される。前記内槽支持部材3は内槽1と同軸に設置される。内槽支持部材3は、制震懸架ロッド又は制震支持脚を介して洗濯機のハウジング2に接続される。これにより、内槽支持部材3を震動可能に洗濯機のハウジング2内に装着するとの目的が実現される。且つ、内槽1を回転駆動させるために、内槽底103の中心は、洗濯機の駆動モータ5のモータ軸に同軸に設置される。また、内槽1及び駆動モータ5はいずれも内槽支持部材3に固定的に装着される。好ましくは、内槽底103及び駆動モータ5は、それぞれ内槽支持部材3の上下両側に設置される。駆動モータ5は内槽支持部材3に固定的に接続される。駆動モータ5のモータ軸は、軸受を介して内槽支持部材3を貫通し、内槽底103に同軸に固定的に接続される。且つ、駆動モータ5のモータ軸は内槽支持部材3に対し回転可能である。これにより、内槽1及び駆動モータ5を内槽支持部材3に装着し、駆動モータ5の作用によって内槽1を単独で回転可能とすることで、内部の衣類を洗浄するとの目的を実現する。
【0049】
更に、内槽1内には相対的に回転可能な攪拌構造が装着されている。攪拌構造は、例えば、パルセータ10や攪拌棒等の従来のいずれかの装置とすることができる。これにより、駆動モータの作用の下で、内槽1及び/又は攪拌構造を回転駆動させて、内槽内に多様な水流を形成し、水流を利用して内槽内の衣類を処理する。且つ、内槽の回転時の安定性を保証するために、内槽1にはバランスリング11が設置されている。好ましくは、バランスリング11は内槽の槽口101に位置する。
【0050】
且つ、洗濯機が洗浄を行う際に内槽が貯水タンクを形成することで、衣類は、洗浄過程において貯水内槽内の洗浄水とのみ接触する。これにより、内槽と外槽の間の洗浄水にクロスフローが生じ、内槽と外槽の間の洗浄水が内槽内に流入して衣類を汚染するとの事態が回避されるため、洗濯機による洗浄の清潔度が大幅に向上する。また、内槽と外槽の間が洗浄水により汚染されることで洗濯機による衣類の洗浄が徹底されないとの事態が回避される。
【0051】
本発明の実施例では、洗濯機の内槽1内の衣類から離脱した水流を外部に排出するとともに、洗濯機の動作過程において、内槽1を密封して貯水することで通常洗浄を行うべく、以下のように設置する。
【0052】
本発明の実施例における洗濯機は、回転可能な貯水タンクを構成する内槽1を備えた従来技術におけるいずれかの洗濯機とすることができる。内槽1は、槽径が下から上に向かって徐々に増大するテーパー状をなしている。内槽1の天井部における最大槽径の断面には少なくとも1つの排水口7が設置される。よって、内槽1の通常洗浄及びすすぎ過程では、洗浄水が排水口7まで振り飛ばされて流出することはなく、内槽1が洗浄水及びすすぎ水を収容するための貯水槽を直接構成することで、内槽内に貯えられた洗浄水及びすすぎ水を利用して衣類の洗浄又はすすぎを行う。一方、内槽1が脱水及び排水を実行する過程において、内槽1の回転速度が所定の値よりも高くなると、洗浄水は遠心力を受けて上方へ流動し、内槽1の天井部に設置された排水口7へと流れて内槽1から円滑に外部へ排出される。これにより、孔無し内槽を有する洗濯機に脱水プログラムを正常に実行させるとの目的が達成される。本発明の実施例における洗濯機は図中の構造に限らない。例えば、図1に示すように、従来の一般的な洗濯機を採用してもよく、洗濯機の内槽1が少なくとも中間部と下部に脱水孔を有さず、洗濯機の洗浄時に貯水タンクを形成する洗濯機とすればよい。
【0053】
且つ、内槽1内の密封性を保証するために、内槽1に内槽の槽口101を開閉可能な内槽蓋を設置して、内槽の槽口101を然るべく開閉すればよい。そのほか、洗浄水が排水口7から誤って排出されるのを防止するために、排水口7を然るべく開閉する遠心弁8を内槽1に設置してもよい。これにより、通常時には遠心弁8が排水口7を閉止しているが、洗濯機が脱水を実行する際には、内槽の回転速度が所定の値に達するよう制御されたあと、遠心弁8のバルブコアが遠心力によって排水口7を開放することで、円滑に排水するとの効果が実現される。
【0054】
本発明の実施例では、洗濯機の内槽1が貯水タンクとなるため、洗濯機の洗浄過程において、衣類から洗浄により抜け落ちた糸屑が洗浄水中に残留する結果、洗浄後の衣類に糸屑が戻って残留するとの問題が生じる。上記の問題を解決するために、本発明では、洗濯機の回転可能な貯水タンクである内槽1に糸屑フィルタ6が設けられている。内槽1内の水は、糸屑フィルタ6を通過することで濾過処理される。糸屑フィルタ6は、通過する水中の糸屑を濾過し、洗濯機の内槽内の糸屑収集を実現することで、洗浄水に混入した糸屑が洗浄後の衣類に残留するとの問題を効果的に回避可能とする。
【0055】
本発明の実施例において、糸屑フィルタ6は、洗浄水中の糸屑を濾過及び収集可能な従来のいずれかの構造とすることができる。本発明の実施例では、記載の便宜上、糸屑フィルタ6を以下のように設置する。即ち、図3図5に示すように、糸屑フィルタ6は内槽1の内壁に装着される。糸屑フィルタ6の内部には濾過室60が備わっている。糸屑フィルタ6には、濾過室60を内槽1の内部と連通させる入水口71及び吐水口72が設けられている。入水口71及び吐水口72には、水流の流動方向を制御する逆止弁がそれぞれ設けられている。濾過室60内、吐水口72、逆止弁のいずれか又はそれらを組み合わせた箇所には、通過する水流中の糸屑を濾過する濾過構造73が設けられており、糸屑を濾過室60内に堰き止めるために用いられる。
【0056】
本発明の実施例では、図1に示すように、内槽1に汚れ排出孔61が設けられている。汚れ排出孔61は、糸屑フィルタ6の濾過室60と内槽1の外部の外槽31を連通させる。好ましくは、外槽31の槽口には、外部への水流の飛散を防止するために、開閉可能な外槽蓋12が設けられている。
【0057】
或いは、図2に示すように、内槽1には汚れ排出孔61が設けられており、内槽1の下方には集水槽32が設けられている。また、内槽の側壁102には、下方に向かって鉛直に延伸する流路9が設けられており、流路9の下端が集水槽32内に伸入している。汚れ排出孔61は、糸屑フィルタ6の濾過室60と流路9を連通させて、堰き止めた糸屑を洗濯機の排水とともに汚れ排出孔61から内槽1外部の集水槽32に排出するために用いられる。
【0058】
本発明の実施例において、糸屑フィルタ6内の濾過室60には、汚れ排出孔61の開閉を制御する遠心弁8が装着されている。内槽の回転速度が所定の値に達すると、遠心弁8のバルブコアは遠心力の作用を受けて汚れ排出孔61を開放する。
【0059】
洗濯機が洗浄プログラムを正常に実行する際には、遠心弁8が汚れ排出孔61を閉止することで、糸屑フィルタ6の濾過室60は内槽1の内部とのみ連通する。よって、内槽1内の洗浄水が糸屑フィルタ6を通過したあと、糸屑は濾過室60内に堰き止められる。これにより、糸屑フィルタ6は、内槽1内の糸屑を収集するとの効果を実現する。一方、洗濯機が脱水及び排水プログラムを実行する際には、内槽が高速回転することで、遠心弁8が遠心力を受けて動作し、汚れ排出孔61を開放する。これにより、糸屑フィルタ6の濾過室60が内槽1の内外とそれぞれ連通する。また、内槽1内の洗浄水は、遠心力を受けて上方へ流動し、流動過程で糸屑フィルタ6を通過することで、一部の洗浄水がフィルタ6及び汚れ排出孔61を通過して内槽から流出する。流出過程では、濾過室60内に収集された糸屑が一緒に流されて、内槽1から押し流される。これにより、糸屑フィルタ6が収集した糸屑を内槽1から押し流すことで、糸屑フィルタ6を自動クリーニングするとの効果を達成する。
【0060】
本発明の実施例では、孔無し内槽に糸屑フィルタ6を設置する。また、糸屑フィルタ6に内槽1の外部と連通する汚れ排出孔61を設置し、汚れ排出孔61に内槽の回転速度により生じる遠心力を受けて開閉を制御する遠心弁8構造を設置する。これにより、糸屑フィルタ6が収集した糸屑を、洗濯機が脱水又は排水を実行する際に排水水流とともに内槽から押し流せるため、糸屑フィルタ6を自動クリーニングするとの効果が達成される。
【0061】
図1図5に示すように、本発明の実施例において、内槽1は、軸線が鉛直に設置され、上端が開口した槽状構造をなしている。糸屑フィルタ6は、内槽の側壁102の中間部に設置される。洗浄水中の糸屑が糸屑フィルタ6により効果的に収集及び濾過されるよう保証すべく、糸屑フィルタ6は、少なくとも一部が洗濯機の内槽1における最高洗浄水位よりも低くなっており、少なくとも一部が洗濯機の内槽1における最低洗浄水位よりも高くなっている。且つ、本発明の実施例において、内槽1は、内槽の側壁102が、上端の径方向サイズが大きく、下端の径方向サイズが小さいテーパー状をなしている。これにより、洗濯機の脱水及び排水時に、内槽1内の洗浄水は、遠心力を受けて内槽の側壁102に密着しつつ上方へ流動する。流動時には、少なくとも一部の洗浄水が糸屑フィルタ6の濾過室60内に流入するため、排水水流を利用して糸屑フィルタ6を自動クリーニングするとの効果が達成される。
【0062】
本発明の実施例において、内槽の側壁102には、複数の糸屑フィルタ6が分布している。各糸屑フィルタ6は内槽1の軸線に対して対称に間隔を置いて分布しているため、洗濯機の濾過効果が向上する。且つ、これにより、内槽1の中心をレベリング処理することも可能なため、内槽の偏心回転を効果的に防止できる。
【0063】
本発明の実施例では、図1に示すように、内槽1の上端における内槽の側壁102に複数の排水口7が分布している。内槽1は回転可能に外槽31内に嵌装され、外槽31は内槽支持部材3を構成する。また、各排水口7は内槽1の内部と内槽1外部の外槽31を連通させる。よって、内槽1の排水口7から流出した洗浄水は、外槽31内に集められたあと、外槽31の底部と連通する排水管から外部に排出可能となる。好ましくは、外部への洗浄水の飛散を防止するために、外槽31には、外槽の槽口を然るべく開閉する外槽蓋12を設置すればよい。
【0064】
或いは、図2に示すように、内槽1の上端には複数の排水口7が分布しており、内槽1の下方には集水槽32が設けられている。また、内槽の側壁102には、下方に向かって鉛直に延伸する流路9が設けられている。流路9の上端は排水口7と一対一で対向して連通しており、流路9の下端はいずれも集水槽32内に伸入している。排水口7は、内槽1の内部と内槽1外部の流路9を連通させており、遠心力を受けて内槽の槽口101まで上昇した水を排水口7から流路9に排出し、流路9で案内したあと、内槽1外部の集水槽32内に流入させるために用いられる。好ましくは、集水槽32と内槽1は同軸に設置される。また、集水槽32の開口の径方向サイズは内槽1の径方向サイズよりも大きい。更に好ましくは、内槽1の少なくとも下端部は集水槽32内に伸入し、且つ、内槽1の外壁と集水槽32の内壁の間には間隔が保持される。これにより、内槽の回転を保証しつつ、排水を全て集水槽32内に流入させることが可能となる。
【0065】
図3に示すように、本発明の実施例において、遠心弁8構造は、内槽1に設けられるとともに、貫通するよう設置されて水流を通過させる汚れ排出孔61と、内槽1に装着されており、且つ汚れ排出孔61に対応して設けられる遠心弁8、を含む。遠心弁8のバルブコアは汚れ排出孔61を閉塞している。また、内槽1の回転速度が所定の値に達すると、遠心弁8のバルブコアは遠心力の作用を受けて開放される。好ましくは、遠心弁8は弾性部材を更に含む。弾性部材は、バルブコアと内槽1の間に挟持されており、バルブコアに復元力を付与することで、バルブコアを動かして汚れ排出孔61を閉塞させる。上記の遠心弁8は、遠心力の作用を受けて孔の開放を実現可能な従来技術におけるいずれかの弁体構造とすればよい。当然ながら、本願の遠心弁8は、内槽の回転時の遠心力で駆動され、汚れ排出孔61を然るべく開閉する従来のいずれかの構造としてもよい。且つ、本願において、汚れ排出孔61に設置される弁は、遠心弁8に限らず、例えば、電気制御弁、油圧弁等の汚れ排出孔61を開閉制御可能なその他の形式の弁としてもよい。
【0066】
図1図3に示すように、本実施例において、前記遠心弁8は、以下のように設置可能である。即ち、内槽の側壁102に汚れ排出孔61が設けられており、内槽の側壁102の内側に遠心弁8が装着されている。遠心弁8は、内槽1の内側に装着されるホルダ65含む。ホルダ65には、ヒンジ接続されるカウンタウェイト62が装着されている。また、汚れ排出孔61には、上下動可能なバルブプラグ64が設けられている。バルブプラグ64はカウンタウェイト62にヒンジ接続される。バルブプラグ64と内槽の側壁102の間には戻しバネ66が挟持されている。これにより、内槽1の回転時の遠心力の作用で、カウンタウェイト62が内槽1の軸線から離れる方向に移動すると、ヒンジ接続部分において、バルブプラグ64が内槽1の軸線方向に移動することで汚れ排出孔61が開放される。
【0067】
本発明の実施例において、糸屑フィルタ6は、洗浄水中の糸屑を収集可能な従来技術におけるいずれかの糸屑濾過装置とすることができる。
【0068】
図4及び図5に示すように、本願における糸屑フィルタ6は、以下のように設置可能である。糸屑フィルタ6はケーシング70を含む。ケーシング70は、内槽の側壁102の内側に係合及び装着される。また、ケーシング70と内槽1が濾過室60を包囲している。糸屑フィルタ6のケーシング70のうち、内槽1の回転方向における対向する両側には第1開口711及び第2開口712がそれぞれ設置される。第1開口711及び第2開口712には、軸周りに回転可能な弁体74がそれぞれ設置される。弁体74の回転軸は内槽1の軸線と平行である。弁体74は、水流からの衝撃を受けてケーシング70の内部に向かって回転し、開口を開放可能であるとともに、ケーシング70に位置規制されることで、ケーシング70の外部には回転し得ない。これにより、内槽1が軸周りに回転する際には、水流が一方の開口の弁体74に衝撃を与えることで内側に回転させて、対応する開口を開放させるが、他方の開口の弁体74はケーシング70に位置規制されて対応する開口を閉止する。その結果、糸屑フィルタ6の両側の開口を択一的に開放し、択一的に閉止するとの効果が達成される。このようにして、第1開口711及び/又は第2開口712は、糸屑フィルタ6の開閉可能な入水口71を構成する。ケーシング70における内槽1の内部に面する側及び/又は上側、下側には吐水口72が設けられている。吐水口72には、流出する水流について糸屑濾過を行う濾過構造73が設けられている。これにより、糸屑フィルタ6の濾過室60を通過する水流中の糸屑が濾過構造73によって濾過室60内に堰き止められるため、内槽1内の糸屑の収集が実現される。
【0069】
本発明の実施例において、前記濾過構造73は、本発明で図示したフィルタ孔構造に限らず、フィルタネット、フィルタ格子、濾過櫛歯600等の従来のいずれか又はそれらを組み合わせた構造としてもよい。且つ、本発明の実施例において、前記濾過構造73はケーシング70と一体的に設置される。ただし、濾過構造73はこれに限らず、濾過構造73を単独の部材としてもよい。単独で設置される濾過構造73は、ケーシング70又は内槽1に装着される。この場合でも同様に、通過する水流について糸屑濾過処理を行うとの効果を実現可能である。
【0070】
衣類の洗浄過程では、内槽1が洗浄水を時計回り又は反時計回りに回転させる。すると、洗浄水は、側壁に設置された逆止弁74を押し開けて糸屑フィルタ6に進入し、糸屑フィルタ6の前側板及び対向する側板上の濾過構造73を通過して濾過されたあと、フィルタ孔で構成される吐水口72から排出される。これにより、糸屑が濾過室60内に残留することで内槽1内の洗浄水の濾過が完了する。
【0071】
弁体74は、糸屑フィルタ6の一方の側にのみ設置してもよい。即ち、糸屑フィルタ6の一方の側にのみ入水口71を設置してもよい。このような糸屑フィルタは、内槽1が一方向に回転する際にのみ糸屑を濾過する作用を奏し得る。好ましい方案として、図4及び図5に示すように、逆止弁74が装着された入水口71を糸屑フィルタ6の左右両側に設置すれば、2方向の濾過効果を発揮可能である。この場合、内槽1が時計回り又は反時計回りに回転する際のいずれであっても、洗浄水は糸屑フィルタ6に進入可能なため、濾過作用がより包括的となる。
【実施例2】
【0072】
図6図12に示すように、本実施例では洗濯機について説明する。当該洗濯機は、ハウジング2を含む。ハウジング2内には内槽1が設けられている。内槽1の軸線は鉛直に設置される。また、内槽1の上端を開口するよう設置することで内槽の槽口101が構成されており、底端を密封状に設置することで内槽底103が構成されている。内槽の槽口101と内槽底103の間は、内槽の側壁102により接続されている。また、天井部が開口するよう設置された貯水タンクを内槽1の内部が構成するよう、内槽1の少なくとも中間部及び下部の槽壁には貫通孔が設けられていない。且つ、洗濯機のハウジング2の上端には、外側に開放可能な扉4が装着されている。そのため、扉4が開放されたあとに、内槽の槽口101から内槽1内に衣類を投入するとの目的が実現される。内槽1の下部は、内槽支持部材3を介して洗濯機のハウジング2内に装着される。前記内槽支持部材3は内槽1と同軸に設置される。内槽支持部材3は、制震懸架ロッド又は制震支持脚を介して洗濯機のハウジング2に接続される。これにより、内槽支持部材3を震動可能に洗濯機のハウジング2内に装着するとの目的が実現される。且つ、内槽1を回転駆動させるために、内槽底103の中心は、洗濯機の駆動モータ5のモータ軸に同軸に設置される。また、内槽1及び駆動モータ5はいずれも内槽支持部材3に固定的に装着される。好ましくは、内槽底103及び駆動モータ5は、それぞれ内槽支持部材3の上下両側に設置される。駆動モータ5は内槽支持部材3に固定的に接続される。駆動モータ5のモータ軸は、軸受を介して内槽支持部材3を貫通し、内槽底103に同軸に固定的に接続される。且つ、駆動モータ5のモータ軸は内槽支持部材3に対し回転可能である。これにより、内槽1及び駆動モータ5を内槽支持部材3に装着し、駆動モータ5の作用によって内槽1を単独で回転可能とすることで、内部の衣類を洗浄するとの目的を実現する。
【0073】
更に、内槽1内には相対的に回転可能な攪拌構造が装着されている。攪拌構造は、例えば、パルセータ10や攪拌棒等の従来のいずれかの装置とすることができる。これにより、駆動モータ5の作用の下で、内槽1及び/又は攪拌構造を回転駆動させて、内槽内に多様な水流を形成し、水流を利用して内槽内の衣類を処理する。且つ、内槽の回転時の安定性を保証するために、内槽1にはバランスリング11が設置されている。好ましくは、バランスリング11は内槽の槽口101に位置する。
【0074】
且つ、洗濯機が洗浄を行う際に内槽が貯水タンクを形成することで、衣類は、洗浄過程において貯水内槽内の洗浄水とのみ接触する。これにより、内槽と外槽の間の洗浄水にクロスフローが生じ、内槽と外槽の間の洗浄水が内槽内に流入して衣類を汚染するとの事態が回避されるため、洗濯機による洗浄の清潔度が大幅に向上する。また、内槽と外槽の間が洗浄水により汚染されることで洗濯機による衣類の洗浄が徹底されないとの事態が回避される。
【0075】
本発明の実施例では、洗濯機の内槽1内の衣類から離脱した水流を外部に排出するとともに、洗濯機の動作過程において、内槽1を密封して貯水することで通常洗浄を行うべく、以下のように設置する。
【0076】
本発明の実施例における洗濯機は、回転可能な貯水タンクを構成する内槽1を備えた従来技術におけるいずれかの洗濯機とすることができる。内槽1は、槽径が下から上に向かって徐々に増大するテーパー状をなしている。内槽1の天井部における最大槽径の断面には少なくとも1つの排水口7が設置される。よって、内槽1の通常洗浄及びすすぎ過程では、洗浄水が排水口7まで振り飛ばされて流出することはなく、内槽1が洗浄水及びすすぎ水を収容するための貯水槽を直接構成することで、内槽内に貯えられた洗浄水及びすすぎ水を利用して衣類の洗浄又はすすぎを行う。一方、内槽1が脱水及び排水を実行する過程において、内槽1の回転速度が所定の値よりも高くなると、洗浄水は遠心力を受けて上方へ流動し、内槽1の天井部に設置された排水口7へと流れて内槽1から円滑に外部へ排出される。これにより、孔無し内槽を有する洗濯機に脱水プログラムを正常に実行させるとの目的が達成される。本発明の実施例における洗濯機は図中の構造に限らない。例えば、図6に示すように、従来の一般的な洗濯機を採用してもよく、洗濯機の内槽1が少なくとも中間部と下部に脱水孔を有さず、洗濯機の洗浄時に貯水タンクを形成する洗濯機とすればよい。
【0077】
且つ、内槽1内の密封性を保証するために、内槽1に内槽の槽口101を開閉可能な内槽蓋を設置して、内槽の槽口101を然るべく開閉すればよい。そのほか、洗浄水が排水口7から誤って排出されるのを防止するために、排水口7を然るべく開閉する遠心弁8を内槽1に設置してもよい。これにより、通常時には遠心弁8が排水口7を閉止しているが、洗濯機が脱水を実行する際には、内槽の回転速度が所定の値に達するよう制御されたあと、遠心弁8のバルブコアが遠心力によって排水口7を開放することで、円滑に排水するとの効果が実現される(図中には明記していない)。
【0078】
図7図12に示すように、本発明の実施例では、洗濯機の内槽1が貯水タンクとなるため、洗濯機の洗浄過程において、衣類から洗浄により抜け落ちた糸屑が洗浄水中に残留する結果、洗濯機が排水する際に、糸屑が排水とともに排水口7に向かって流動し、糸屑が排水口7に堆積して詰まらせるとの問題が生じる。上記の問題を解決するために、本発明では、洗濯機の回転可能な貯水タンクである内槽1に糸屑フィルタ6が設けられている。内槽1から排水口7に向かって流動する排水水流に混入した糸屑は、糸屑フィルタ6で濾過されて堰き止められる。これにより、洗濯機の内槽から外部への排水中の糸屑について濾過及び堰き止めが実現されるため、洗浄水に混入した糸屑が外部に排出される際に孔無し内槽の排水口7を詰まらせるとの問題が効果的に回避される。
【0079】
本発明の実施例において、糸屑フィルタ6は、洗浄水中の糸屑を濾過及び収集可能な従来のいずれかの構造とすることができる。例えば、糸屑フィルタ6は、排水口7を覆う格子構造、網目構造、櫛歯構造のうちの1つ又はそれらの組み合わせであり、格子構造の透かし格子孔、網目構造の透かし孔、櫛歯構造の透かし部等が糸屑フィルタ6の透かし濾過隙間を構成する。透かし隙間は、排水水流を通過させ、排水水流中の糸屑が糸屑フィルタ6により濾過されて堰き止められる。
【0080】
本発明の実施例において、糸屑フィルタ6は内槽1と一体的な部材としてもよい。或いは、糸屑フィルタ6は内槽1に固定的に装着される独立した部材としてもよい。好ましくは、内槽1の天井部における内槽の槽口101に環状のバランスリング11が装着されており、糸屑フィルタ6は、バランスリング11に固定的に接続されるか、一体的に成型される。これにより、糸屑フィルタ6を内槽1に固定的に装着して一緒に回転させるとの効果が実現される。
【0081】
図6図12に示すように、本発明の実施例において、糸屑フィルタ6は、内槽の側壁102の内周に設けられて排水口7を覆う環状構造をなしている。環状の糸屑フィルタ6の上下両側は、それぞれ内槽1の内壁に接続されており、糸屑フィルタ6と内槽1の内壁が共同で通水空間602を囲繞している。通水空間602は、排水口7を通じて内槽1の外部と連通している。また、通水空間602は、糸屑フィルタ6の濾過隙間を通じて内槽1の内部と連通している。
【0082】
当然ながら、本発明の実施例では、環状の糸屑フィルタ6の上側及び/又は下側をその他の部材を介して内槽1の内壁に間接的に接続することで通水空間602を囲繞してもよい。例えば、内槽の槽口101にバランスリング11を装着し、環状の糸屑フィルタ6の下側を内槽1の内壁に接続するとともに、環状の糸屑フィルタ6の上側をバランスリング11の下側に接続する。これにより、環状の糸屑フィルタ6、バランスリング11及び内槽1の内壁が共同で通水空間602を囲繞する(図中には明記していない)。
【0083】
環状の濾過装置の上下両側を内槽の内壁にそれぞれ接続して環状の通水空間602を形成することで、内槽の排水水流全てを糸屑フィルタ6で濾過したあと、通水空間602に流入させて、内槽の排水口7から外部に排出する必要が生じる。これにより、洗濯機の排水水流全てについて糸屑濾過処理を行うことで、糸屑による孔無し内槽の排水口7の詰まりを防止するという顕著な技術的進歩が保証される。
【0084】
本発明の実施例において、内槽1は、軸線が鉛直に設置され、上端が開口した槽状構造をなしている。また、内槽の側壁102は、上端の径方向サイズが大きく、下端の径方向サイズが小さいテーパー状をなしている。内槽の側壁102の天井部には少なくとも1つの排水口7が設けられている。また、環状の糸屑フィルタ6が内槽1の天井部の内周側に設けられている。各排水口7は、環状の糸屑フィルタ6と内槽1の内壁で囲繞された通水空間602とそれぞれ連通している。これにより、内槽の回転時の遠心力の作用を受けて天井部まで上昇した排水水流は、糸屑フィルタ6で濾過されたあと、通水空間602を経由して排水口7から外部に排出される。
【0085】
図6図12に示すように、本発明の実施例において、糸屑フィルタ6は、内槽の周方向に沿って間隔を置いて分布する複数の濾過櫛歯600を含み、隣り合う濾過櫛歯600間の櫛歯隙間dが水流を通過させる濾過隙間を構成する。櫛歯隙間dは排水口7の孔径Dよりも小さい。好ましくは、濾過櫛歯600はシート状構造をなしている。シート状の濾過櫛歯600と内槽1の径方向断面との夾角をaとすると、aは0以上90未満である。上記の断面は、シート状の濾過櫛歯600の外周側と内槽との接続箇所に位置する内槽の断面であり、夾角aは上記断面とシート状の濾過櫛歯600が位置する断面との夾角である。
【0086】
本発明の実施例において、環状の糸屑フィルタ6は、下から上に向かって徐々に収縮するテーパー状をなしている。糸屑フィルタ6が堰き止めた糸屑は、排水水流の衝撃の作用で上方へ移動する。これにより、糸屑フィルタ6に引っ掛かった糸屑はテーパー状の糸屑フィルタ6の下部から退避するため、テーパー状の糸屑フィルタ6の下部に糸屑が堆積するとの事態が回避される。また、小さな排水水流であっても糸屑フィルタ6の濾過隙間を通過可能なため、洗濯機における円滑な排水が実現される。
【0087】
図7図9に示すように、本発明の実施例において、環状の糸屑フィルタ6は、筒状の上部の収集部605と、テーパー状の下部の濾過部604に分割可能である。前記収集部605は内槽1と同軸の槽状をなしている。好ましくは、収集部605の糸屑収集効率を向上させるために、収集部605には、通水空間602側に窪み、内槽の径方向側に開口して設置される収集槽606が設けられる。
【0088】
図10図12に示すように、本発明の実施例において、環状の糸屑フィルタ6は、テーパー度の異なる上部収集部605及び下部濾過部604に分割可能である。テーパー状の収集部605のテーパー度a2は、テーパー状の濾過部604のテーパー度a1よりも大きい。
【0089】
環状の糸屑フィルタ6をテーパー度の異なる上下2つの部分に分割することで、2つの部分の接続箇所に曲がり角が形成される。これにより、糸屑は、水流の衝撃及び内槽の回転時の遠心力の作用で、テーパー角がa1の濾過部の斜面を超えて曲がり角に収集され得る。且つ、テーパー角がa2の収集部605は一定の延伸長を有しているため、収集された糸屑は当該箇所に堰き止められる。更に、濾過された糸屑が曲がり角に収集されるため、糸屑フィルタ6の濾過部604には糸屑が残留しないか、残留が極めて少なくなる。よって、排水水流は、糸屑フィルタ6と内槽で囲繞される通水空間602に円滑に進入可能となり、洗濯機の排水水流の流動が妨げられることはない。
【0090】
好ましくは、図7図12に示すように、本発明の実施例では、糸屑フィルタ6の濾過効率を更に向上させるために、糸屑フィルタ6の濾過櫛歯600に、通水空間602の内部に向かって窪み、内槽の内部に向かって開口して設置される収集槽606が設けられる。また、前記収集槽606は、濾過櫛歯600の収集部605に設置される。これにより、排水水流の衝撃を受けた糸屑は収集槽606に引っ掛かるため、濾過部604への糸屑の堆積が防止される。
【0091】
本発明の実施例において、各濾過櫛歯600は、少なくとも1つの固定リングを通じて連なっている。好ましくは、各濾過櫛歯600は固定リングと一体的に設置される。更に好ましくは、図7図12に示すように、各濾過櫛歯600の天井部は、止水プレート601を通じて連なっている。止水プレート601は固定リングを構成する。且つ、止水プレート601と各濾過櫛歯600は一体部材である。これにより、複数の濾過櫛歯600で構成される糸屑フィルタ6が1つの環状の一体構造を形成するため、糸屑フィルタ6の一体性が保証され、装着が容易となる。
【0092】
本発明の実施例において、各濾過櫛歯600の下端は内槽1の内壁に接続され、上端は止水プレート601を介して内槽1の内壁に接続される。これにより、濾過櫛歯600で構成される糸屑フィルタ6の上下両端がそれぞれ内槽1に接続されて、排水水流を通過させる通水空間602を囲繞する。従って、遠心力の作用を受けて内槽1の内壁に密着しつつ上方へ流動した排水水流は、全てが糸屑フィルタ6で濾過されたあと、通水空間602を通過して排水口7から外部に排出される。且つ、排水水流は、止水プレート601で遮断されるため、洗濯機の排水水流が上部において通水空間602から流出し、ひいては内槽の槽口101から飛散するとの事態が回避される。
【0093】
本発明の実施例において、止水プレート601は、水平に設置されて内槽1の径方向に延伸する環状をなしている。環状の止水プレート601は、内周が各濾過櫛歯600の上端に接続され、外周が内槽1の内周に接続されるため、環状の通水空間602の上方全てが止水プレート601により遮断される。これにより、通水空間602に流入した排水水流が上部から溢れ、ひいては内槽から飛散するとの事態が効果的に防止されるため、洗濯機の排水水流の円滑性が効果的に保証される。
【0094】
本発明の実施例では、図6に示すように、内槽1の上端における内槽の側壁102に複数の排水口7が分布している。内槽1は回転可能に外槽31内に嵌装され、外槽31は内槽支持部材3を構成する。また、各排水口7は内槽1の内部と内槽1外部の外槽31を連通させる。よって、内槽1の排水口7から流出した洗浄水は、外槽31内に集められたあと、外槽31の底部と連通する排水管から外部に排出可能となる。好ましくは、外部への洗浄水の飛散を防止するために、外槽31には、外槽の槽口を然るべく開閉する外槽蓋12を設置すればよい。
【0095】
或いは、内槽1の上端には複数の排水口7が分布しており、内槽1の下方には集水槽32が設けられている。また、内槽の側壁102には、下方に向かって鉛直に延伸する流路9が設けられている。流路9の上端は排水口7と一対一で対向して連通しており、流路9の下端はいずれも集水槽32内に伸入している。排水口7は、内槽1の内部と内槽1外部の流路9を連通させており、遠心力を受けて内槽の槽口101まで上昇した水を排水口7から流路9に排出し、流路9で案内したあと、内槽1外部の集水槽32内に流入させるために用いられる。好ましくは、集水槽32と内槽1は同軸に設置される。また、集水槽32の開口の径方向サイズは内槽1の径方向サイズよりも大きい。更に好ましくは、内槽1の少なくとも下端部は集水槽32内に伸入し、且つ、内槽1の外壁と集水槽32の内壁の間には間隔が保持される。これにより、内槽の回転を保証しつつ、排水を全て集水槽32内に流入させることが可能となる(図中には明記していない)。
【0096】
以上の記載は本発明の好ましい実施例にすぎず、本発明を何らかの形式に制限するものではない。本発明については好ましい実施例によって上記のように開示したが、本発明を限定するとの主旨ではない。本発明の技術方案を逸脱しない範囲において、当業者が上記で提示した技術内容を用いて実施可能なわずかな変更或いは補足は、同等に変形された等価の実施例であって、いずれも本発明の技術方案の内容を逸脱するものではない。また、本発明の技術的本質に基づいて上記の実施例に加えられる任意の簡単な修正、同等の変形及び補足は、いずれも本発明の方案の範囲に属する。
【符号の説明】
【0097】
1 内槽
2 ハウジング
3 内槽支持部材
4 扉
5 駆動モータ
6 糸屑フィルタ
7 排水口
8 遠心弁
9 流路
10 パルセータ
11 バランスリング
12 外槽蓋
31 外槽
32 集水槽
60 濾過室
61 汚れ排出孔
62 カウンタウェイト
64 バルブプラグ
65 ホルダ
66 戻しバネ
600 濾過櫛歯
601 止水プレート
602 通水空間
604 濾過部
605 収集部
606 収集槽
70 ケーシング
71 入水口
72 吐水口
73 濾過構造
74 弁体
711 第1開口
712 第2開口
101 内槽の槽口
102 内槽の側壁
103 内槽底
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【手続補正書】
【提出日】2023-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能な貯水タンクを構成する内槽を含み、前記内槽に糸屑フィルタが設けられていることを特徴とする洗濯機。
【請求項2】
前記糸屑フィルタは内部に濾過室を有し、前記糸屑フィルタには、前記濾過室を前記内槽の内部と連通させる入水口及び吐水口が設けられており、前記入水口及び前記吐水口には、水流の流動方向を制御する逆止弁がそれぞれ設けられており、前記濾過室内、前記吐水口、前記逆止弁のいずれか又はそれらを組み合わせた箇所には、通過する水流中の糸屑を濾過する濾過構造が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項3】
前記内槽には汚れ排出孔が設けられており、前記内槽は外槽内に嵌装され、前記汚れ排出孔は前記濾過室と前記外槽とを連通させ、
或いは、前記内槽には汚れ排出孔が設けられており、前記内槽の下方には集水槽が設けられており、前記内槽の側壁には、下方に向かって鉛直に延伸する流路が設けられており、前記流路の下端は前記集水槽内に伸入しており、前記汚れ排出孔は前記濾過室と前記流路とを連通させることを特徴とする請求項2に記載の洗濯機。
【請求項4】
前記糸屑フィルタの前記濾過室には、前記汚れ排出孔の開閉を制御する弁が装着されており、
好ましくは、前記弁は遠心弁であり、前記内槽の回転速度が所定の値に達すると、遠心弁構造のバルブコアは遠心力の作用を受けて前記汚れ排出孔を自動的に開放することを特徴とする請求項3に記載の洗濯機。
【請求項5】
前記内槽は、軸線が鉛直に設置され、上端が開口した槽状構造をなしており、前記糸屑フィルタは、前記内槽の側壁の中間部に設置され、前記内槽の側壁は、上端の径方向サイズが大きく、下端の径方向サイズが小さいテーパー状をなしていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項6】
前記内槽の側壁には複数の前記糸屑フィルタが分布しており、各前記糸屑フィルタは前記内槽の軸線に対して対称に間隔を置いて分布していることを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項7】
前記内槽は複数の洗浄水位を有し、前記糸屑フィルタは、少なくとも一部が内槽における最低洗浄水位よりも高くなっており、少なくとも一部が前記内槽における最高洗浄水位よりも低くなっていることを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項8】
前記内槽の上端には複数の排水口が分布しており、前記内槽は回転可能に外槽内に嵌装され、各排水口はそれぞれ前記内槽と前記外槽とを連通させ、
或いは、前記内槽の上端には排水口が設けられており、前記内槽の下方には集水槽が設けられており、前記内槽の側壁には下方に向かって鉛直に延伸する流路が設けられており、前記流路は、上端が前記排水口と連通しており、下端が前記集水槽内に伸入していることを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項9】
前記遠心弁は、
移動可能に前記汚れ排出孔を密封又は開放するバルブコアと、
前記バルブコアに接続されて、前記内槽が高速回転する際に遠心力の作用で前記バルブコアを引き動かして前記汚れ排出孔を開放させる遠心装置と、
前記バルブコアに接続されて、前記内槽が低速回転する際に遠心力に抗して前記バルブコアを動かし、前記汚れ排出孔を閉止させる弾性部材、を含むことを特徴とする請求項4に記載の洗濯機。
【請求項10】
前記糸屑フィルタはケーシングを含み、前記ケーシングは前記内槽の側壁の内側に係合及び装着され、前記ケーシングと前記内槽が濾過室を包囲しており、前記糸屑フィルタの前記ケーシングのうち、前記内槽の回転方向における対向する両側には第1開口及び第2開口がそれぞれ設置され、前記第1開口及び前記第2開口には、軸周りに回転可能な弁体がそれぞれ設置され、前記弁体の回転軸は前記内槽の軸線と平行であり、前記弁体は、水流からの衝撃を受けて前記ケーシングの内部に向かって回転し、開口を開放可能であるとともに、前記ケーシングに位置規制されることで、前記ケーシングの外部には回転し得ず、前記ケーシングにおける前記内槽の内部に面する側及び/又は上側、下側には吐水口が設けられており、前記吐水口には、流出する水流について糸屑濾過を行う格子構造が設けられていることを特徴とする請求項5に記載の洗濯機。
【請求項11】
回転可能な貯水タンクを構成する内槽を含み、前記内槽に排水口が設けられており、前記排水口に糸屑フィルタが設けられていることを特徴とする請求項1に記載の洗濯機。
【請求項12】
前記糸屑フィルタは、前記排水口を覆う格子構造、網目構造、櫛歯構造のうちの1つ又はそれらの組み合わせであることを特徴とする請求項11に記載の洗濯機。
【請求項13】
前記糸屑フィルタは前記内槽と一体的な部材であり、或いは、前記糸屑フィルタは前記内槽に固定的に装着される独立した部材であり、
好ましくは、前記内槽にはバランスリングが装着されており、前記糸屑フィルタは前記バランスリングに固定的に接続されるか一体的に成型されることを特徴とする請求項11に記載の洗濯機。
【請求項14】
前記糸屑フィルタは、前記内槽の側壁の内周に設けられて前記排水口を覆う環状構造をなしており、前記糸屑フィルタと前記内槽の内壁が共同で通水空間を囲繞しており、前記通水空間は前記排水口を通じて前記内槽の外部と連通しており、前記通水空間は前記糸屑フィルタの濾過隙間を通じて前記内槽の内部と連通しており、
好ましくは、環状の前記糸屑フィルタの上下両側は、それぞれ、前記内槽の内壁に直接的に接続されるか、間接的に接続されることを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載の洗濯機。
【請求項15】
前記内槽は、軸線が鉛直に設置され、上端が開口した槽状構造をなしており、前記内槽の側壁は、上端の径方向サイズが大きく、下端の径方向サイズが小さいテーパー状をなしており、前記内槽の側壁の天井部には少なくとも1つの排水口が設けられており、環状の前記糸屑フィルタが前記内槽の天井部の内周側に設けられていることを特徴とする請求項14に記載の洗濯機。
【請求項16】
前記糸屑フィルタは、前記内槽の周方向に沿って間隔を置いて分布する複数の濾過櫛歯を含み、隣り合う前記濾過櫛歯間の隙間が水流を通過させる濾過隙間を構成し、前記濾過隙間の幅dは排水口の孔径Dよりも小さく、
好ましくは、前記濾過櫛歯はシート状構造をなしており、シート状の前記濾過櫛歯と前記内槽の径方向断面との夾角をaとすると、aは0以上90未満であることを特徴とする請求項15に記載の洗濯機。
【請求項17】
環状の前記糸屑フィルタは、下から上に向かって徐々に収縮するテーパー状をなしていることを特徴とする請求項16に記載の洗濯機。
【請求項18】
環状の前記糸屑フィルタは上部の収集部と下部の濾過部に分割され、
前記収集部と前記濾過部はテーパー度の異なるテーパー状をなしており、前記収集部のテーパー度a2は前記濾過部のテーパー度a1よりも大きく、或いは、前記収集部は筒状をなしており、前記濾過部はテーパー状をなしており、
好ましくは、前記濾過部には、通水空間の内部に向かって窪み、前記内槽の内部方向に開口して設置される収集槽が設けられていることを特徴とする請求項17に記載の洗濯機。
【請求項19】
各前記濾過櫛歯の下端は前記内槽の内壁に接続され、上端は止水プレートを介して前記内槽の内壁に接続されることを特徴とする請求項17に記載の洗濯機。
【請求項20】
前記止水プレートは、水平に設置されて前記内槽の径方向に延伸する環状をなしており、環状の前記止水プレートは、内周が各前記濾過櫛歯の上端に接続され、外周が前記内槽の内周に接続されることを特徴とする請求項19に記載の洗濯機。
【国際調査報告】