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特表2023-533162哺乳動物における疾患の予防及び/又は治療に有用な組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】哺乳動物における疾患の予防及び/又は治療に有用な組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/17 20060101AFI20230726BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 31/16 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 31/18 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 15/08 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
A61K38/17
A61K48/00
A61K45/00
A61P37/00
A61P35/00
A61P31/12
A61K31/16
A61P31/18
A61P35/02
A61P15/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022575231
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-26
(86)【国際出願番号】 IB2021056179
(87)【国際公開番号】W WO2022009165
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】2020/03850
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(31)【優先権主張番号】2020/04008
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ZA
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522473678
【氏名又は名称】ヴィロ-ゲン(ピーティーワイ)エルティディー
【氏名又は名称原語表記】VIRO-GEN (PTY) LTD
【住所又は居所原語表記】313 Cliff Avenue, Waterkloof Ridge X2 0181, Pretoria, Gauteng (ZA)
(74)【代理人】
【識別番号】100105131
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 満
(74)【代理人】
【識別番号】100105795
【弁理士】
【氏名又は名称】名塚 聡
(72)【発明者】
【氏名】スミット,ミシェル オルガ パトリシア ジエステイラ ダ シルバ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C206
【Fターム(参考)】
4C084AA02
4C084AA13
4C084AA19
4C084BA01
4C084BA22
4C084CA26
4C084MA02
4C084MA52
4C084MA55
4C084MA56
4C084MA59
4C084MA60
4C084MA63
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB07
4C084ZB09
4C084ZB26
4C084ZB27
4C084ZB33
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA01
4C206GA22
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA76
4C206MA79
4C206MA80
4C206MA83
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB07
4C206ZB09
4C206ZB26
4C206ZB27
4C206ZB33
(57)【要約】
免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患により特徴づけられる疾患から、被験体を保護するための、又は同疾患を患う被験体を処置するための、新規な方法及び医薬物質又は医薬が記載される。本発明によれば、臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質、及び/又は、Ksp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質に翻訳されるKSP37遺伝子でコードされるベクター及び/又は極性化合物のうち、治療的に有効な量の1つ又は複数が被験体に投与される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患に対する被験体の免疫応答を増強するのに使用するための治療的に有効な量の臨床的に改変された又は遺伝子操作された、Ksp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質、及び/又は、Ksp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質に翻訳されるKSP37遺伝子でコードされるベクター、及び/又は、極性化合物の1つ又は複数を含む医薬物質。
【請求項2】
前記物質が、適切な期間にわたって前記被験体に1回又は複数回投与された場合に、前記被験体のKsp37血漿濃度レベルを400ng/mL~700ng/mLに上昇させるように製剤化される、請求項1に記載の医薬物質。
【請求項3】
前記物質が、薬学的に許容される賦形剤を含む、請求項1又は2に記載の医薬物質。
【請求項4】
免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患と戦うのに有用であるKSP37遺伝子でコードされる前記ベクターが、天然に存在するKsp37タンパク質と同一のタンパク質に翻訳する核酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の医薬物質。
【請求項5】
Ksp37タンパク質に翻訳される前記KSP37遺伝子でコードされた前記ベクターが、pGEM-Tベクター又はpCMV3-C-GFPスパークを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の医薬物質。
【請求項6】
前記ベクターが、pGEM-Tベクター、KSP37/FGFBP2 cDNA ORF CLONE(SinoBiological社)である、請求項5に記載の医薬物質。
【請求項7】
前記極性化合物がN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である、請求項1~6のいずれか一項に記載の医薬物質。
【請求項8】
Ksp37産生を活性化するためのDMFの量が、2mg/l~200mg/l、より好ましくは100mg/l~200mg/l、及び最も好ましくは100mg/l~150mg/l又は150mg/l~200mg/lのDMFのピーク血漿レベルを生じる用量である、請求項7に記載の医薬物質。
【請求項9】
免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患から被験体を保護すること、及び/又は、免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患を患う被験体を処置することにおける使用のための、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬物質。
【請求項10】
免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患から被験体を保護するための、及び/又は、免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患を患う被験体を処置するための、医薬の製造における、請求項1~8のいずれか一項に記載の医薬物質の治療的に有効な量の使用。
【請求項11】
前記医薬が、適切な期間にわたって1回又は複数回投与された場合に、前記被験体のKsp37血漿濃度レベルを400ng/mL~700ng/mLに上昇させる量で投与するために製剤化される、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37が、哺乳動物の体重1kg当たり0.001μgから哺乳動物の体重1kg当たり20μgの間の用量で投与するために製剤化される、請求項10又は11に記載の使用。
【請求項13】
前記医薬が、前記臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37を哺乳動物にゆっくりと放出することができる制御放出組成物を含む、請求項10~12のいずれか一項に記載の使用。
【請求項14】
前記臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質が、血液成分及び/又は組織から抽出され、次いで精製され、アセチル化され、遺伝子操作され、クローン化され、そして免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患に対する治療用及び/又は予防用ワクチンとして哺乳動物宿主に戻される、請求項10~13のいずれか一項に記載の使用。
【請求項15】
前記医薬が、経鼻、経口、局所、吸入、経皮、直腸又は非経口投与を含む許容可能な投与経路を介して前記被験体に投与するために製剤化される、請求項10~14のいずれか一項に記載の使用。
【請求項16】
前記ウイルスがレトロウイルス、具体的にはHIVである、請求項10~15のいずれか一項に記載の使用。
【請求項17】
前記ウイルス癌が卵巣癌又は白血病である、請求項10~16のいずれか一項に記載の使用。
【請求項18】
前記被験体が哺乳動物である、請求項10~17のいずれか一項に記載の使用。
【請求項19】
免疫系障害及びウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患から被験体を保護する方法、及び/又は、免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患を患う被験体を処置する方法であって、前記被験体に、請求項1~8のいずれか一項に記載の物質の治療的に有効な量を投与して、前記被験体におけるKsp37タンパク質の血漿レベルを400ng/mL~700ng/mLの間に増加させるステップを含む、方法。
【請求項20】
前記治療的に有効な量の、臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質が、哺乳動物の体重1kg当たり0.001μg~哺乳動物の体重1kg当たり20μgである、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記医薬物質が、経鼻、経口、局所、吸入、経皮、直腸又は非経口投与を含む許容可能な投与経路を介して前記被験体に投与される、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記Ksp37タンパク質が、血液成分及び/又は組織から抽出され、次いで精製され、アセチル化され、遺伝子操作され、クローン化され、そして免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患に対する治療用及び/又は予防用ワクチンとして哺乳動物宿主に戻される、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
Ksp37産生を活性化するためのDMFの治療的に有効な量が、2mg/l~200mg/l、好ましくは100mg/l~200mg/l、及び最も好ましくは100mg/l~150mg/l又は150mg/l~200mg/lのDMFのピーク血漿レベルを生じる用量である、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
DMFが経皮投与される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記ウイルスがレトロウイルス、具体的にはHIVである、請求項19に記載の方法。
【請求項26】
ウイルス癌が卵巣癌又は白血病である、請求項19に記載の方法。
【請求項27】
前記被験体が哺乳動物である、請求項19に記載の方法。
【請求項28】
免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患に対する治療用及び/又は予防用ワクチンであって、前記ワクチンは、臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質、及び/又は、Ksp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質に翻訳されるKSP37遺伝子でコードされるベクターを含む、ワクチン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする、哺乳動物における疾患の処置に有用な組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レトロウイルスに分類されるヒト免疫不全ウイルス(”HIV”)として知られるウイルスは、世界中の何百万人もの人々の生活に影響を与えている。このウイルスは、治療が施されない場合、数年以内に後天性免疫不全症候群(「AIDS」)を発症するまで進行する健康な個体に感染する(Mann, J. et al. (2016) ’The latest science from the IAS Towards an HIV Cure Symposium 16-17 July 2016, Durban, South Africa’, (7月), pp. 235-241)。
【0003】
HIVは、レトロウイルスのレンチウイルスファミリーのメンバーである(Teichet. al., 1984, RNA Tumor Viruses, Weisset. al., 編, CSH-press, pp. 949-956)。レトロウイルスは、一本鎖RNAゲノムを含有する小エンベロープウイルスであり、ウイルスによりコードされた逆転写酵素、RNA依存性DNAポリメラーゼ(Varmus, H., 1988, Science 240:1427-1439)により産生されるDNA中間体を介して複製する。
【0004】
他のレトロウイルスには、例えば、ヒトT細胞白血病ウイルス(HTLV-1、-II、-III)、及びネコ白血病ウイルスのような発癌性ウイルスが含まれる。
【0005】
HIVの構造とゲノム機構
成熟したHIVビリオンは直径100nm~120nmの球状構造で、密に切断された円錐形のヌクレオカプシド(「コア」)を取り囲む脂質二重層膜からなる。コアは、2つの9.8kbの長さのポジティブセンス、一本鎖、線状RNA分子、cDNA合成を開始する分子、細胞tRNA、Gagポリタンパク質、ウイルスエンベロープ(Env)タンパク質、及び3つの酵素:逆転写酵素(RT)、ウイルスプロテアーゼ(PR)、インテグラーゼ(IN)、及びいくつかの他の細胞因子を含む(S Sierra, et al.,2005)。
【0006】
HIVゲノムは、長い末端反復配列(”LTR”)に挟まれたアクセサリー遺伝子及び調節遺伝子を含む。ウイルスゲノムには、3つの機能グループに分けられる合計9つの遺伝子がある:
● 構造遺伝子Gag、Pol、Env
● 調節遺伝子TatとRev
● アクセサリー遺伝子、Vpu、Vpr、Vif、Nef (JM Costin, 2007)
【0007】
Gag遺伝子はコアタンパク質をコードし、Pol遺伝子はRT、プロテアーゼ、インテグラーゼ、Env遺伝子はエンベロープタンパク質(gp160)をコードする。Tat遺伝子はTatタンパク質をコードし、Rev遺伝子はRevタンパク質をコードする。TatとRev調節タンパクはRNA結合タンパク質として機能する。RNAの結合に加えて、Tatタンパク質は転写のアクチベーターとしても働き、HIVの完全長ゲノムが確実に形成されるようにしている。Revタンパク質はまた、HIVの遺伝子発現を初期から後期に移行させるのに役立つ。一方、アクセサリー遺伝子によってコードされるアクセサリータンパク質は多機能である。Nef又は負の因子は、T細胞の活性化、既存の主要組織適合遺伝子複合体(MHC)Iのダウンレギュレーション、及びリソソームにおける脱顆粒による細胞表面のCD4に関与し、ビリオン感染能も刺激する。Vprは核-細胞質輸送因子として働き、HIVが非分裂細胞に感染するのを可能にする。Vpuはイオンチャネルの発生を介してビリオンの放出を増強し、またユビキチンを介した分解を介してCD4の発現をダウンモジュレートする。リンパ球、単球、マクロファージにおけるHIVの複製はVifによって調節される。
【0008】
ビリオンのエンベロープには膜貫通タンパク質gp120とgp41があり、スパイク(最大72)の形でビリオンから外側に突き出ている。高度に免疫原性のタンパク質であるので、CD4レセプターに結合するgp120は、大部分の宿主抗体のための適切な標的である。これらの株特異的抗体の大部分は、これらの受容体に結合することによって、CD4受容体とgp120タンパク質との相互作用を遮断する。脂質二重層の下にあるマトリックスは、Gagタンパク質17(ウイルスgagタンパク質切断産物)からなる。コア又はカプシドは、p24タンパク質(Gag遺伝子の産物)の被覆、及び第3のGagタンパク質p7を含む(Lampejo T et al., 2013)。
【0009】
HIVの生活環
ヒト免疫不全ウイルスの侵入は、基本的に3つの段階に分けられる:
(1) 結合
(2) 活性化及び
(3) 融合。
【0010】
主要なHIV-1とHIV-2受容体と補助受容体は、それぞれCD4とCCR5、CXCR4である。サイクルは、MHCクラスII分子の主要補助レセプターであるCD4レセプター(58kDaの単量体糖タンパク質)を細胞表面にもつHIVエンベロープ三量体複合体、gp120及びgp41の認識から始まる。CD4がgp120と結合すると、コンホメーション変化が起こり、その結果、CCR5ケモカイン補助レセプターが結合するgp120ドメインが露出される。これまで、17のケモカイン受容体リガンドがこのプロセスにおいて同定されている(Fanales-Belasioet. al., 2010)。
【0011】
gp120の二重結合に続いて、安定な付着複合体が形成され、これは、原形質膜におけるgp120ペプチド浸透のN末端側を可能にする。gp41タンパク質において、HR1及びHR2配列は、一緒に作用し、gp41のヘアピン構造を形成し、これは、ウイルス及び細胞膜の融合を引き起こす(S Sierraet. al.,2005)。
【0012】
融合ウイルスコアが細胞質内で放出された後、ウイルスカプシドの脱外皮は、ウイルスのMA、Nef、Vifタンパク質因子を介して起こる(Lampejo T et al., 2013)。
【0013】
ウイルスのRTリボヌクレアーゼH部位によって、ウイルスRNAはプライマー結合部位から始まってDNAに転写される。転写の完了後、リボヌクレアーゼHは、dsRN/DNAハイブリッドを切断し、RT重合によって、dsDNAに変換された活性部位を切断する(Fanales-Belasioet. al., 2010)。プロウイルスの状態は、このdsDNAをインテグラーゼ酵素によって宿主細胞ゲノムに組み込むことによって得られる。インテグラーゼタンパク質は、各DNA鎖の3’末端に粘着性末端を生成する。今や修飾されたウイルスDNAは核膜孔を通って核に運ばれ、ウイルスのVprによって指令され、このインテグラーゼによって組み込み機能が遂行される(Sierra S)。
【0014】
ウイルスゲノムが発現するためには、宿主ゲノム組込み部位は活性状態にあるべきである(Fanales-Belasio)。
【0015】
プロウイルス状態では、ウイルスDNAは宿主ゲノム中に数年間留まることがあり、活性化シグナルを受け取ると、宿主ポリメラーゼ酵素を用いてmRNAを発現する(Yousaf MZ et al., 2011)。
【0016】
潜伏感染したT細胞、マクロファージ、単球、ミクログリア細胞は、HIVゲノムの主要な保有宿主である。活性細胞状態では、HIVゲノムの転写は、ウイルスLTRと結合することによって、宿主RNAポリメラーゼII及び他の転写因子によって開始される。転写に続いて、翻訳はタンパク質(Tat、Rev及びNef)の基礎量をもたらす。Tatが十分に産生されると、LTR及び他の転写細胞活性化因子上のTARエレメントとTatが結合することによって、さらなる転写が制御される(Sierra S)。初期の段階では、多重スプライシングを受けたmRNAがRev、Tat、Nefをつくる。十分な量のRevを達成すると、非スプライシングmRNA及びより長いmRNAが産生され、これはポリソームと呼ばれ、その結果、他のウイルスタンパク質及びゲノムRNAが産生される。スプライシングを受けていないRNA RREには、Revが結合し、スプライシングを受けずに細胞質に安全に輸送されて翻訳されるというRev応答配列が存在する(Lampejo T)。
【0017】
REVはまた、酵素及び構造タンパク質の発現及び調節タンパク質の阻害を引き起こすため、成熟ビリオンの産生に役割を果たす。細胞質では、ENV遺伝子はERでグリコシル化されたgp160に翻訳され、HIV‐1プロテアーゼにより成熟gp120とgp140になった(Fanales-Belasio)。
【0018】
翻訳中、Gag polタンパク質を生じるリボソーム-1フレームシフトには、PR、RT及びINが含まれる。成熟ビリオンの核はGag及びPol遺伝子タンパク質によって形成される。大きな160kDa前駆体Gag及びPolタンパク質から、ウイルスプロテアーゼによってp24、p9、p7、p17 Gag最終産物及びPol産物に切断される。この切断は、感染性ウイルス粒子ENVタンパク質に必要であり、翻訳後、膜に向かって移動し、それに挿入される。Gag及びGag-Polポリタンパク質はまた、細胞膜に向かって移動し、Gagポリタンパク質によって媒介されて集合を始める。フルサイズのゲノムRNA、細胞tRNAlys-3-プライマー、酵素、及びすべての細胞化合物は、未成熟ウイルスコアと連結される(Sierra S)。
【0019】
未成熟ウイルスの出芽は細胞膜を介して行われる。ウイルスの集合と出芽が起こるときには、細胞表面のCD4分子の数を減らす必要がある。この過程にはNef、ENV及びVpuが関与している。初期段階のNefはMHCクラスI及びII分子のエンドサイトーシス及び死滅を媒介する。後期の段階では、NpuはCD4分子の分解を誘導する。出芽の間に、Gag及びGag-Polポリタンパク質を自己触媒的に切断するタンパク質プロテアーゼの活性化が起こり、構造タンパク質及びウイルス酵素をもたらした。個々のタンパク質とカプシド、ヌクレオカプシドタンパク質とのさらなる相互作用は、円錐ヌクレオカプシドをもたらし、MAはウイルスエンベロープに結合したままである(Sierra S)。
【0020】
現在のHIV感染症治療
現在のHIV感染症の治療には、以下の組み合わせが含まれる:
・非ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬
・ヌクレオシド系逆転写酵素阻害剤
・プロテアーゼ阻害薬。
【0021】
この薬剤の組み合わせは、一般的に高活性抗レトロウイルス治療(”HAART”)と呼ばれている。HAARTは、ウイルスDNAが宿主DNAに取り込まれるのを阻害することにより、また、ウイルスRNAからのウイルスDNAの形成を阻害することにより、AIDSの発生を遅らせることを目的として、患者に提供される(Chupradit K et. al., 2017 ’Current peptide and protein candidates challeng HIV therapy of the vaccine Era’, Viruses, 9(10), pp. 1-14. doi:10.3390/v9100281)。
【0022】
これらは、HIV陽性の患者に投与される薬物とその作用機序のごく一部である。
【0023】
これまでのところ、HIV感染に対するワクチンの開発、又はHIV感染症の治療法の開発の試みは成功していない。
【0024】
ワクチン開発の典型的なアプローチは、ウイルスの一部に体内を感染させ、抗体反応を誘発することである。ワクチン接種した宿主が将来、本当のウイルスに感染すると、免疫系はワクチンに含まれていたウイルスの抗原を認識し、即座に圧倒的な免疫応答が引き起こされることになる。このワクチン開発戦略は一部のウイルスには効くが、HIV感染の原因となるHI-Virusとその後のAIDSには効かない。なぜなら、HI-Virusが変異する能力があるからである。HI-Virusの変異の結果、ウイルス抗原の検出が遅れ、ウイルス感染細胞の増殖が可能となる。
【0025】
ヒトにおいて、HIV複製はCD4 Tリンパ球集団において顕著に起こり、そしてHIV感染はこの細胞型の枯渇をもたらし、最終的には免疫不全、日和見感染、神経学的機能不全、腫瘍性増殖、そして最終的には死に至る。
【0026】
「Drug Delivery Devices and Methods for Treatment of Viral and Microbial Infections and Wasting Syndromes」と題する南アフリカ特許第1998/04649号は、極性化合物N,N-ジメチルホルムアミド(「DMF」)を含む治療組成物を含有するか又はその上に吸収されたリザーバを含む、治療剤の経皮投与のための薬物送達デバイスを教示している。
【0027】
HIVに感染しているにもかかわらず、ZA1998/064649の教示を作成した研究者は、抗レトロウイルス治療を受けずに350を超えるCD4 T細胞数を20年間以上維持している。これらの個体は、本明細書では長期非進行者(「LTNP」)と呼ばれる。
【0028】
そのような個体の1人は、1996年12月に、63.298 HIV-1 RNAコピー/mlの血漿を検出するHIV PCRを最初に提示した。2006年3月に実施された追跡HIV PCRは、経皮的DMF試験に参加してから数年後に、<40 HIV-1 RNAコピー/mlの血漿を検出し、2011年には、さらなる追跡HIV PCRは、HIV-1 RNAコピー/mlの血漿を検出せず920/μLのCD4カウントを検出した。
【0029】
DMFの作用様式は完全には理解されなかったが、この群のLTNP個体についてのさらなる研究は、それらのCD8細胞が、Ksp37として知られるタンパク質の上昇した水準を産生することを明らかにした。
【0030】
Ksp37を産生するCD8細胞の特徴は、以下を含む:
・これらの細胞のフェノタイプマーカーは、CD27、CD45RO及びCD57であり、
・これらの細胞のシグナル分子は、MIP-1βであることが確認されている(Bennett, Salter and Smith, 2018年「新しいクラスの抗レトロウィルス免疫をHIV Vif依存性分解から保護することにより可能にする」, Elsevier Ltd. 24(5), p. 507-520. doi:10.1016/j.molmed.2018.03.004)。
【0031】
Ksp37は、すべてのヒト及び多くの他の動物に存在するが、通常、400ng/mL未満の量で存在する。LTNP個体におけるKsp37のレベルが、これらの個体においてHIVが進行できない重要な理由である可能性があると仮定される。
【0032】
タンパク質Ksp37の特徴
KSP37遺伝子(FGBP2としても知られる)は、NK、CD8 T、cd T及びCD4 T細胞によって一般に発現され、223個のアミノ酸から構成される(Ogawaet. al., 2001,「細胞傷害性リンパ球によって選択的に産生される新規血清タンパク質」、The Journal of Immunology, 166(10), 6404~6412頁, doi:10.4049/jimmunol.166.10.6404)。
【0033】
Ksp37又は37kDaのキラー特異的分泌タンパク質、又は線維芽細胞成長因子結合タンパク質2(FGF‐BP2)として知られるタンパク質が単離され、次のように配列決定された。
【0034】
起源
【0035】
配列は、BLAST同定のために、アクセッション番号AB021123の下で保存される。このタンパク質は、ヒト線維芽細胞結合タンパク質2と99%の類似性を有する(Ogawa et. al., 2001)。そのようなものとして、FGFBP2は、キラー特異的分泌タンパク質37の同義語として一般に使用される。FGFBP2遺伝子はチンパンジー、アカゲザル、ニワトリ、ゼブラフィッシュ及びカエルで保存されている。137の生物はヒト遺伝子FGFBP2のオーソログをもつ。
【0036】
本発明の時点では、LTNP中のKsp37のレベル、又はLTNP、HIV陰性者、HAART上のHIV陽性者及び治療を開始していないHIV陽性者間のKsp37のレベルの差に関する適切な研究は実施されていなかった。
【0037】
上記に照らして、長期非進行者の活性化CD8 Tリンパ球によって分泌されるタンパク質又はペプチドを同定し、特徴付け、これらの長期非進行者によって産生されるKsp37の量を決定し、そしてこれらの成果をウイルス感染及び/又はウイルス癌の処置又は予防のための治療用ワクチンの開発に利用する必要がある。
【0038】
したがって、本発明の実施形態は、少なくともある程度、上記で特定された問題に対処することを目的とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
本発明は、ヒトを含む哺乳動物における、ウイルス感染及び/又は免疫系障害に関連する疾患及び/又はウイルス癌を特徴とする疾患の処置に有用な組成物及び方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0040】
本発明は、24kDa~45kDaの範囲の分子量を有する、Ksp37として同定されたタンパク質が、免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患に対する被験体(又は、被験者/患者)の免疫応答を増強し、この同定された濃度範囲のタンパク質を、免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患の処置のための、ならびにウイルス感染及び/又は免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連する疾患の処置のための医薬及び医薬の調製に利用する最適濃度範囲を同定することに基づく。
【0041】
本発明によれば、Ksp37タンパク質が免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患に対する被験体の免疫応答を増強する最適濃度範囲は、血漿1mL当たり400ng Ksp37~血漿1mL当たり700ng Ksp37である。
【0042】
したがって、本発明は、被験体を、ウイルス感染及び/又は免疫系障害及びウイルス癌に関連する疾患を特徴とする疾患から保護し、又は被験体の血漿中のKsp37のレベルを治療有効濃度レベルまで上昇させることによって、ウイルス感染及び/又は免疫系障害及びウイルス癌に関連する疾患を特徴とする疾患を罹患する被験体を処置する方法を提供し、ここで、Ksp37の治療有効レベルは、400ng/mL~700ng/mLである。
【0043】
被験体におけるKsp37のレベルは、以下の経路の1つ以上によって増加され得る:
a) 治療有効量の臨床的に改変又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質を含む医薬を被験体に投与することによって;及び/又は
b) 被験体に、免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患と戦うのに有用な、24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するKsp37タンパク質及び/又はタンパク質に翻訳されるKSP37遺伝子でコードされるベクターを投与することによって、治療有効レベルまで被験体におけるKsp37の産生を刺激することによって;及び/又は
c) 極性化合物で被験体を化学的に処理することによって、被験体におけるKsp37の産生を治療有効レベルまで刺激して、増加したKsp37産生を活性化することによって。
Ksp37の治療有効レベルは、好ましくは400ng/mL~700ng/mLの血漿濃度レベルであり、24kDa~45kDaの範囲の分子量を有する、臨床的に改変又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質及び/又はタンパク質の治療有効量は、400ng/mL~700ng/mLのKsp37血漿濃度レベルを生じる量である。
【0044】
本発明はまた、免疫系障害及びウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患から被験体を保護する方法において使用するための、臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質、及び/又はKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質に翻訳されるKSP37遺伝子でコードされるベクターを提供する。
【0045】
本発明はさらに、免疫系障害及びウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患から被験体を処置及び/又は保護するための医薬の製造における、臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するKsp37タンパク質及び/又はタンパク質に翻訳されるKSP37遺伝子でコードされるベクターの使用を提供し、ここで該医薬は、被験体におけるKsp37タンパク質のレベルを400ng/mL~700ng/mLの間に増加させる。
【0046】
本発明はさらに、治療有効量の1つ以上の臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質、及び/又はKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質に翻訳されるKSP37遺伝子でコードされたベクター、及び/又は極性化合物を含む、免疫系障害及びウイルスに関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患から被験体を保護する方法において使用するための医薬組成物を提供する。
【0047】
Ksp37タンパク質又は修飾タンパク質の治療有効量は、適切な期間にわたって1回又は複数回投与した場合に、被験体におけるKsp37タンパク質のレベルを400ng/mL~700ng/mLに増加させることができる量を含み、哺乳動物1kg当たり0.001μg~哺乳動物1kg当たり20μgである。
【0048】
薬学的組成物又は医薬は、水、生理食塩水、リン酸緩衝溶液、リンガー溶液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、生理学的平衡塩類溶液及び他の水性生理学的平衡塩類溶液を含有するポリエチレングリコールならびに非水性ビヒクル(例えば、固定油、ゴマ種子油、エチレンオレエートトリグリセリド)を含むが、これらに限定されない、薬学的に許容される賦形剤をさらに含み得る。
【0049】
医薬組成物又は医薬はまた、Ksp37を哺乳動物にゆっくりと放出することができる制御放出組成物を含み得る。
【0050】
医薬組成物又は医薬は、鼻、経口、局所、吸入、経皮、直腸又は非経口投与を含む許容可能な投与経路を介して被験体に投与され得る。
【0051】
ウイルス感染を特徴とする疾患から哺乳動物を保護するKsp37の能力を増強することができる追加の化合物は、医薬組成物又は医薬に含まれてもよく、化合物としては、細胞媒介免疫応答を調節することができる、Tヘルパー細胞活性を調節することができる、肥満細胞の脱顆粒を調節することができる、感覚神経終末を保護することができる、好酸球及び/又は芽細胞活性を調節することができる、及び/又は平滑筋収縮を予防又は弛緩させることができる化合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0052】
Ksp37タンパク質は、血液成分及び/又は組織から抽出され、次いで精製され、アセチル化され、遺伝子操作され、クローン化され、そしてウイルス感染及び/又は免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連する疾患に対する治療的及び/又は予防的ワクチンとして哺乳動物宿主に戻され得る。
【0053】
ウイルス感染及び/又は免疫系障害及び/又はウイルス性癌に関連する疾患と戦うのに有用であるKSP37遺伝子でコードされるベクターは、天然に存在するKsp37タンパク質と同一のタンパク質に翻訳する核酸配列を含む。
【0054】
適切なベクターは、pGEM-Tベクター又はpCMV3-C-GFPスパークを含む。
【0055】
宿主細胞は、Ksp37の産生のための主要な位置として同定される、宿主免疫系に関連する全ての血液成分及び哺乳動物組織細胞を含み得る。
【0056】
本発明はさらに、治療有効量の極性化合物を含む医薬組成物を提供し、ここで、治療有効量の極性化合物は、被験体において400ng/mL~700ng/mLのレベルまで増加したKsp37産生を活性化するのに十分な量である。
【0057】
極性化合物は、好ましくはN,N-ジメチルホルムアミド(DMF)である。
【0058】
Ksp37産生を活性化するためのDMFの治療有効用量は、約2mg/l~200mg/l、より好ましくは約100mg/l~200mg/l、さらにより好ましくは約150mg/lのDMFのピーク血漿レベルをもたらす用量であり得る。特に好ましいのは、100mg/l~150mg/l又は150mg/l~200mg/lのDMFのピーク血漿レベルである。
【0059】
ウイルスはレトロウイルスである可能性があり、ウイルス性癌には卵巣癌、白血病、バーキットリンパ腫、上咽頭癌、及びある種のホジキン病が含まれる。
【0060】
被験体は哺乳動物である。
【0061】
本発明はまた、免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患に対する治療及び/又は予防ワクチンを提供し、このワクチンは、治療有効量の臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質、及び/又は免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患と戦うのに有用であるKSP37遺伝子でコードされたベクターを含む。
【発明を実施するための形態】
【0062】
以下の説明は、本発明の実施可能な教示として提供され、本発明に関連する原理の例示であり、本発明の範囲を限定することを意図しない。本発明の結果を達成しながら、及び/又は本発明の範囲から逸脱することなく、図示及び説明された実施形態(複数可)に変更を加えることができる。さらに、本発明のいくつかの結果又は利点は、他の特徴を利用することなく、本発明の特徴のいくつかを選択することによって達成され得ることが理解される。従って、当業者は、本発明に対する改変及び適応が可能であり得、特定の状況において望ましくさえあり得、本発明の一部を形成し得ることを認識する。
【0063】
1. 異なるサンプル群間でのKsp37のレベルの比較
5人の既知のLTNP個体(LTNP1-LTNP5)のサンプルならびに15人のボランティアの無作為サンプルを、ジョージ・ムカリアカデミー病院から選択した。15人の無作為ボランティアをさらに以下のクラスに分けた:
‐HIV陽性かつHAARTを受けているボランティア5名(HAART1-HAART5)
‐HIVと診断されたばかりで、まだHAARTを開始していないボランティア5名(NAIVE1-NAIVE5)
‐HIV陰性のボランティア5名(NEG1-NEG5)
【0064】
5人のLTNP個体のサンプルサイズは、既知のLTNP個体の不足によって決定された。
【0065】
これら20名から血液サンプルを採取した。
【0066】
a. 細胞単離
全血からの全RNAの単離は、RNA抽出キット(Thermo Fischer Tempus Spin RNA Isolation Kit)を用いて、製造業者の指示に従って行った。細胞を、250×gで5分間(min/s)の遠心分離によって全血から分離した。次に、細胞ペレットを氷冷PBS、pH7.4で2回洗浄し、β-メルカプトエタノールを補充した600μlの溶解緩衝液に再懸濁し、続いて10秒間(sec/s)ボルテックス混合(又は、渦巻混合/vortex mixing)した。360μlのエタノールを細胞溶解物に添加し、吸引によって混合した。次いで、700μlの溶解物を、収集チューブに挿入されたRNA精製カラム上に移した。カラム内容物を、12000×gで1分間の遠心分離に供した。フロースルーを廃棄した。精製カラムを洗浄緩衝液1及び2で洗浄し、続いて12000×gで1分間遠心分離し、フロースルーを廃棄した。RNAを50μlのヌクレアーゼを含まない滅菌脱イオン水で溶出し、続いて12000×gで1分間遠心分離した。溶出RNAを-70℃で保存した。
【0067】
b. RNAのcDNAへの変換
cDNA合成キット(Thermo Scientific Superscript VILO cDNA Synthesis Kit)を用いて、製造業者の指示に従って、抽出RNAをcDNAに逆転写した。cDNA反応混合物は、10μlの鋳型RNA、2μlのオリゴd(T)プライマー、12μlのヌクレアーゼを含まない脱イオン水、4μlの5x反応緩衝液、1μlのRibobLock RNase阻害剤及び1μlのMuLV逆転写酵素を含有した。得られたcDNAを、使用するまで-70℃で保存した。
【0068】
c. 得られたcDNAの増幅及び定量
製造業者の指示に従って、ポリメラーゼ連鎖反応キット(Kapa Bio systems社、米国)を用いてcDNAを増幅した。PCR反応混合物は、2μlの順方向5’-CTTCCGAGGGTGACAGGTGA-3’及び逆方向5’-TCCAGTGTGAGAACGTTGGATTG-3’プライマー(それぞれ0.4μM)、5μlの鋳型cDNA、16μlのヌクレアーゼを含まない脱イオン水、及び25μlの2x Ready Mixを含有した。PCR反応は、95℃での90秒間の変性、59℃での30秒間のプライマーアニーリング、及び7分間で72℃での1分間のエロンゲーション(又は伸長/elongation)からなった。PCR産物を、室温で少なくとも60分間、75ボルト(V)で2パーセント(%)アガロースゲル電気泳動で分析した。ゲルを観察し、Chemo(Bio-Rad社)を用いてバンド強度を推定した。次いで、制限断片長多型を用いてタンパク質多型を決定した。
【0069】
d. 異なる群におけるサイトカイン定量
選択されたサイトカイン(IFN-y、IL-5、GM-CSF、TNF-aIL-2、IL-13、IL-4、IL-10、IL12p70)の量を、健康なドナーの新鮮な末梢血由来の単一ヒトCD8リンパ球中のサイトカインタンパク質の直接的、定量的測定を用いて、異なる群間で測定した(Saxena et. al., 2018,「ex-vivo刺激前線に続くヒト血液由来の単一リンパ球中のサイトカイン蛋白質の超高感度定量」 Front. Immunol., 9:2462. doi:10.3389/fimmu.2018.02462.eCollection2018)。
【0070】
結果
リアルタイムPCR分析は、以下の表に示されるようなKsp37レベルを示した。
【0071】
リアルタイムPCR結果は、以下のグラフに反映されるように、他の研究群の血清と比較した場合、LTNP血清中のKsp37の検出のためのより少ないサイクル(平均26サイクル)によって観察されたHPLCのピークを確認する。
【0072】
グラフ1:リアルタイムPCR結果
結果は、Long-term Non-Progressor Groupの血清が、タンパク質Ksp37の有意に高いレベルを有することを示す。
【0073】
このタンパク質は、次の表2に示すように、より高いレベルの他のサイトカイン及びタンパク質、すなわちIL-12p70、IFN-γ及びIL-4とも関連していることが見られた。レベルはng/mLで測定した。
【0074】
使用されたサンプルは培養細胞由来であり、したがって上表の値はヒト宿主から直接採取されたサンプルから予想されるサイトカイン値を代表するものではないことに留意すべきであるが、この値は、高レベルのKsp37に関連する免疫の経路に関する観察結果を導くものである。
【0075】
IFN-γとIP-12p70の産生は一部正のフィードバックループによって調節されており、IFN-γとGM-CSFはIL-12p70の産生を促進し、IL-12p70は次にIFN-γとGM-CSFの分泌を刺激する。IL-12p70及びIFN-γはTh1の分化を促進し、細胞性免疫に有利であり、Th2応答を阻害する。
【0076】
上記のIFN-yの結果を考慮すると、LTNPの平均値は他の研究群の値よりもかなり高い。IFN-γは自然免疫と適応免疫の両方に重要なサイトカインであり、ナチュラルキラー細胞と好中球の刺激に加えて、マクロファージの一次活性化因子として機能する。
【0077】
IFN-γは、HIV感染におけるより良好な疾患予後の相関因子として同定されており、CD8 T細胞及び活性化NK細胞数と正に関連している(Lopez M et. al., 2011,「HIV特異的CD8+ T細胞の質ではなく、拡大能は、長期非進行者における防御的ヒト白血球抗原クラスI対立遺伝子と関連している」、Immunology, 134(3), pp. 305-313. doi:10.1111/j.1365-2567.2011.03490.x.)。
【0078】
同様に、IL-12p70の値を考慮すると、LTNPにおける平均値は他の研究群からの値よりもかなり高い。IL-12p70はT細胞の増殖と機能、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞からのインターフェロンγ(IFN-γ)及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)の産生を刺激し、IL-4を介したIFN-γの抑制を低下させる。
【0079】
SIV感染マカク(macaque)では、急性感染中のIL-12p70の処置は、ウイルス負荷の減少、CD8 NK及びT細胞の増加、ホーミングマーカーを発現するナイーブなCD4 T細胞の減少、HIV特異的CTLの滞留及び生残の延長と関連していた。
【0080】
上記の結果はまた、他の研究群と比較した場合、LTNP群においてより高いレベルのIL-4を指摘している。IL-4は、活性化されたB細胞及びT細胞の増殖の刺激、ならびにB細胞の形質細胞への分化を含む多くの生物学的役割を有する。液性免疫及び適応免疫における重要な調節因子である。IL-4はB細胞のIgEへのクラススイッチを誘導し、MHCクラスII産生をアップレギュレートする。IL-4とIL-12p70は相補的な役割をもつ。IL-4の主な機能は、適応免疫系及びCD8細胞傷害性細胞を刺激することである。全IL-12p70はIL-4の抑制を妨げる。
【0081】
最近の研究でも、IL-10が単球/マクロファージにおけるHIV-1の複製を有意に阻害できることが示された。単球/マクロファージにおけるHIV-1の産生に対するIL-10の阻害作用は、これらの細胞におけるHIV-1の発現をアップレギュレートすることができる、腫瘍壊死因子α及びIL-6等の他のサイトカインの合成のIL-10誘導阻害の結果である。
【0082】
2. Ksp37の作用様式
Ksp37の作用様式の研究が進行中であるが、Ksp37のレベルの増加は、多くの異なる機構によってHIVのAIDSへの進行を阻害するようである。これらは以下を含む。
【0083】
a. CD8の考慮
Ksp37レベルの増加がHIVのAIDSへの進行を阻害する1つの可能な機構は、HIV GAG特異的細胞であるKsp37の産生部位に関連している。GAG特異的CD8細胞は、CD107a、IFN-γ、MIP-1β、IL-2、TNF-αの産生レベルによって特徴付けられる(T, H. C. D. et. al., (2006), IMMUNOBIOLOGY,「HIV非進行因子は、高機能性を優先的に維持する」, Blood, 107(12), pp. 4781-4789. doi:10.1182/blood-2005-12-4818)。
【0084】
これらの成分の産生は、HIVの免疫抑制能力を否定すると考えられる。Ksp37は、これらのHIV特異的CD8細胞の寿命を増加させる原因である。Ksp37は、CD8細胞からのパーフォリン、TNF-α及びIL-2等の成分の放出も制御することによって、HIVの免疫抑制作用を制御すると仮定される。LTNP個体におけるHIV感染に対する初期反応は、他の研究群でみられるものと同じである。HIV特異的CD8細胞がLTNP個体において活性化されると、いくつかの結果が観察される。TNF-αのレベルは上昇するが、以下の表3に示すように、Ksp37のレベルが増加するにつれて減少する。
【0085】
体内におけるTNF-αの主な役割は、人体における炎症と結びついている。TNF-αの減少した濃度は、活性化部位での炎症を減少させ、従って、CD4細胞からの反応を低下させる。これは、ウイルスを血流中に露出させたままにし、CD4宿主細胞に感染することができない。これは、HIV特異的CD8細胞がウイルスを直接的に攻撃することを可能にする。ウイルスは、典型的には、ウイルス特異的CD8 T細胞によって排除され、これは、感染細胞の表面にHLAクラスI分子との複合体として現れるプロセシングされたウイルスタンパク質を認識する。T細胞受容体(TCR)を介する認識は、活性化事象のカスケードを開始させ、最終的にグランザイム及びパーフォリンの放出及び感染細胞の殺傷につながり、感染性の子孫ウイルス粒子が産生される前に起こりうる(R. Brad Jones et al., 2016)。
【0086】
高いIL-2レベルは、中心記憶T細胞の減少及びエフェクターの増加の両方によって、早期記憶T細胞の全体的な生成の減少をもたらす(T. Kaartinen et al., 2017)。従って、IL-2のレベルとCD8 T細胞の生成及び/又は寿命との間には逆相関がある。Ksp37を発現するCD4及びCD8 T細胞は、IL-2を産生する能力を欠く(Ogawa et. al., 2001)。したがって、高レベルのKsp37は、活性化時のIL-2産生のより低いレベルと関連する。従って、Ksp37のレベルはIL-2のレベルに反比例する。
【0087】
従って、Ksp37レベルが高い場合、IL-2は低く、CD8記憶細胞の生成は、より長い寿命と共に増大する。これは、ウイルスを殺すより大きな能力を支持する。免疫系の最初の活性化はIL-2の結果であり、一旦IL-2が除去されると、大量の感染細胞死が生じる。HIV特異的CD8細胞は、IL-2を産生する能力を欠くので(Ogawa et. al., 2001)、これらは、IL-2レベルによって大きく影響されない。
【0088】
上述したように、サンプル研究では、実験室内及び宿主免疫系外で増殖させた細胞を利用し、その結果、記録されたIL-2レベルは、LTNP宿主中に通常見出されるものを完全には代表していない。
【0089】
発がん性発現に対する極性物質の作用は、がん細胞がより良性になる誘導であると仮定されている。悪性細胞を良性型に転換するには、そもそも悪性腫瘍を引き起こす遺伝子発現の何らかの調節があるはずであるというのが理にかなっていると思われる。
【0090】
2001年にOgawaらが行った研究は、Ksp37がEpstein-Barrウイルス患者における細胞傷害性リンパ球媒介性免疫の必須過程に関与している可能性があり、Ksp37はin vivoで細胞傷害性リンパ球をモニタリングするための新しいタイプの血清指標としても臨床的価値がある可能性があることを示唆している。EBVはバーキットリンパ腫、上咽頭癌、及び一部の型のホジキン病と関連している。EBVはヒトB細胞の遺伝暗号に容易に感染し、変化させることができ、免疫抑制状態の患者を悪性腫瘍に罹患しやすくする可能性がある。
【0091】
b. Vif阻害剤としてのKsp37
Ksp37はまた、Vif阻害剤として作用すると考えられる。
【0092】
レトロウイルスに対する体の自然免疫応答は、APOBEC3タンパク質の機能に基づいている。ヒトAPOBEC3(A3)タンパク質は細胞性シチジンデアミナーゼであり、ウイルスcDNAの超変異及び/又は逆転写の阻害によりレトロウイルスの複製を強力に制限する。このファミリーにはA3A、B、C、D、E、F、G及びHを含む7つのメンバーがあり、すべてヒト22番染色体上の縦列にコードされている。A3F及びA3Gは、HIV-1の最も強力な阻害剤であるが、ウイルスによりコードされるタンパク質Vifの非存在下でのみ存在する(Shingo K, et al., 2011)。
【0093】
シチジンデアミナーゼAPOBEC3G(A3G)はHIV‐1の感染に対して多面的抗ウイルス効果を発揮する。まず、A3Gは、逆転写の際にウイルスDNAのマイナス鎖のシトシン残基をウラシルに脱アミノ化することによってHIVの感染を終結させることができることが示された(Sadler H et al., 2010「APOBEC3Gは亜致死的変異誘発を介してHIV-1の変異に寄与する」, Journal of Virology, 84(14), pp. 7396-7404. doi:10.1128/jvi.00056-10)。また、多くの研究が、A3Gが編集を介さない機構によってHIV-1逆転写を阻害することを示している。
【0094】
HIV Vifは、ヒトのエロンギンB/C(EloBC)-クリン-SOCSボックス(ECS)型E3ユビキチンリガーゼをハイジャックすることにより、ヒト抗ウイルスタンパク質APOBEC3Gに拮抗し、APOBEC3Gのポリユビキチン化及びその後のそのプロテアソーム分解をもたらす(Matsui Y et. al., 2016,「Core結合因子βは、HIV、MDM2媒介分解から1型アクセサリー蛋白質ウイルス感染能因子を保護する」, Journal of Biological Chemistry, 291(48), pp. 24892-24899. doi:10.1074/jbc.M116.734673)。
【0095】
HIV Vifタンパク質は、Epstein-Barrウイルス(EBV)上に見出されるp23抗原と類似の機能を有する(その中でも、Hsp90/70シャペロンタンパク質とのそれぞれの相互作用において)。抗原p23は、//Vif HIVタンパク質のアイソフォームである。タンパク質アイソフォーム、すなわち「タンパク質変異体」は、単一の遺伝子又は遺伝子ファミリーに由来し、かつ遺伝的差異の結果である高度に類似したタンパク質のファミリーの一員である。タンパク質アイソフォームは、同じ又は類似の生物学的機能を有する傾向がある。Ogawaらは、EBVの存在下で、Ksp37のより大きな産生があることを見出した。これは、Ksp37の抗ウイルス特性を示す。
【0096】
EBVとの戦いにおけるAPOBEC3Gタンパク質の機能を支持するKsp37の機構は、HIV VifとEBV p23抗原の類似性を考慮すると、HIVとの戦いにおけるAPOBEC3Gタンパク質の機能を支持するKsp37の機構と類似していると考えられる。
【0097】
したがって、Ksp37の作用機序は、E3リガーゼ複合体の形成を阻害するVif阻害剤のサブ分類をそれに与え得る。Vifタンパク質の阻害の可能性は、A3Gタンパク質がウイルスDNAの翻訳を破壊することを可能にするであろう。
【0098】
3. Ksp37が最も有効である濃度レベル
上記の表1~3の結果は、Ksp37が400ng/mL~700ng/mLの血清濃度レベルで機能的であることを示す。
【0099】
Ksp37は400ng/mL未満の濃度で正常な健常者に存在する。このレベルでは、HIVウイルス及びおそらく他のレトロウイルスの免疫無力化複製を阻害するのに効果的ではない。逆に、750ng/mLを超えるKsp37の濃度レベルは、免疫系の活性増加に関連するIL-5及びTNF-αのようなサイトカインに対してKsp37が有する正の効果のため、喘息及びダウン症候群を含む自己免疫疾患につながる可能性がある。
【0100】
これに照らして、本発明は、被験体中のKsp37のレベルを400ng/mL~700ng/mlに増加させることによって、被験体を、免疫系障害及びウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患から保護する方法を提供する。
【0101】
被験体におけるKsp37のレベルは、以下の経路の1つ又は複数によって増加され得る。
(a) 治療的に有効な量の臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質及び/又は24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するタンパク質を被験体に投与することによって、
(b) Ksp37タンパク質に翻訳されるKSP37遺伝子でコードされたベクターを被験体に投与することによって、400ng/mL~700ng/mLの濃度レベルまで被験体中のKsp37の産生を刺激することによって、
(c) 極性化合物で被験体を処置することによって400~700ng/mLの濃度レベルに被験体におけるKsp37の産生を刺激して、増加したKsp37の産生を活性化することによって。
【0102】
被験者にはすべての哺乳類が含まれる可能性があり、ヒトのみに限定されるものではない。
【0103】
4. 臨床的に改変された又は遺伝子操作されたKsp37タンパク質を被験体に投与すること
本発明の一実施形態では、Ksp37タンパク質及び/又は臨床的に改変/クローン化又は遺伝子操作されている24kDa~45kDaの範囲のタンパク質、及び/又は、Ksp37タンパク質及び/又は臨床的に改変/クローン化又は遺伝子操作されている24kDa~45kDaの範囲のタンパク質を含む製剤を、被験体に投与して、免疫系障害及びウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患を特徴とする疾患を処置又は予防することができる。
【0104】
被験体は哺乳動物である。
【0105】
このタンパク質は、Kspタンパク質のグループ及びそれのすべての種から選択され、ここで、このタンパク質は哺乳動物タンパク質である。
【0106】
このタンパク質は、223個のアミノ酸鎖を有する約37kDaの分子量を有し、N末端シグナル配列、短いC末端疎水性領域、ならびに潜在的なO-グリコシル化部位及びシステイン側鎖を含む。
【0107】
該タンパク質は、血液成分及び/又は組織から抽出され、次いで、精製され、アセチル化され、遺伝子操作され、クローン化され、そして免疫系障害及びウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患に対する治療用及び/又は予防用ワクチンとして哺乳動物宿主に戻すことができる。
【0108】
1つ又は複数の組換え分子を使用して、エクスビボでKsp37タンパク質を産生することができる。1つの実施形態において、コードされた産物は、タンパク質を産生するのに有効な条件下で核酸分子を発現することによって産生される。
【0109】
コードされたタンパク質を産生するための好ましい方法は、Ksp37タンパク質をコードする核酸配列を有する1つ又は複数の組換え分子で宿主細胞をトランスフェクトして、組換え細胞を形成することを含む。トランスフェクションに適切な細胞は、トランスフェクトされ得る任意の細胞である。宿主細胞は、トランスフェクト細胞、又は少なくとも1つの核酸分子で既に形質転換されている細胞のいずれかであり得る。
【0110】
本発明において有用な宿主細胞は、細菌、真菌、哺乳動物及び昆虫の細胞を含む、Ksp37タンパク質を産生することができる任意の細胞であり得る。
【0111】
核酸分子の宿主細胞へのトランスフェクションは、核酸分子を細胞に挿入することができる任意の方法によって達成することができる。トランスフェクション技術としては、トランスフェクション、電気泳動、マイクロインジェクション、リポフェクション、吸着及びプロトプラズム融合が挙げられるが、これらに限定されない。組換えDNA技術の使用において、発現は、宿主細胞内のトランスフェクトされた核酸分子Ksp37をコードする核酸分子がそれによって転写され得る効率、得られた転写物が翻訳される効率、及び核酸分子の発現を増加させるために有用な翻訳後修飾組換え技術の効率によって改善されることができる。
【0112】
Ksp37タンパク質のex vivo産生には、これらに限定されないが、宿主細胞のコダム(codum)の使用及び転写産物を不安定化するシーケンスの欠失に対応する、核酸分子を高コピー数プラスミドに作動可能に連結すること、核酸分子を1つ又は複数の宿主細胞染色体に組み込むこと、ベクター安定性配列をプラスミドに添加すること、転写制御シグナル(プロモーター、オペレーター、エンハンサー)のサブセクション化又は修飾、翻訳制御シグナル(例えば、リボソーム結合部位、Shere-Dalogansシグナル)、核酸分子を修飾することを含む。発現された組換えKsp37タンパク質の活性は、このようなタンパク質をコードする核酸分子を断片化、修飾又は誘導体化することによって改善され得る。
【0113】
哺乳動物における標的細胞へのKsp37タンパク質を含む製剤の送達。
「標的部位」は、治療製剤を送達することを所望する哺乳動物中の部位を指す。例えば、標的部位は、リンパ球、幹細胞、全ての血液成分、ならびに細胞及び細胞膜を含む天然脂質含有送達ビヒクル、ならびにリポソーム及びミセルを含む人工脂質含有送達ビヒクルを含むが、これらに限定されない他の送達ビヒクルであり得る。
【0114】
送達ビヒクルは、哺乳動物における特定の部位を標的化し、それによってその部位における核酸分子を標的化し、利用するために、公知の技術によって修飾され得る。
【0115】
適切な修飾は、送達ビヒクルの脂質位置の化学式を操作すること、及び/又は好ましい部位、例えば、好ましい細胞型に送達ビヒクルを特異的に標的化し得る化合物をビヒクルに導入することを含む。特別なターゲティングとは、ビヒクル中の化合物と細胞の表面上の分子との相互作用によって送達ビヒクルを特定の細胞に結合させることをいう。適切な標的化化合物は、特定の部位で別の分子に選択的に結合することができるリガンドを含む。このようなリガンドの例には、抗体、抗原、受容体及び受容体リガンドが含まれる。
【0116】
送達ビヒクルの脂質位置の化学式を操作することにより、送達ビヒクルの細胞外又は細胞内標的化を調節することができる。例えば、リポソームが特定の電荷特性を有する特定の細胞と融合するように、リポソームの脂質二重層の電荷を変化させる化学物質をリポソームの脂質式に添加することができる。
【0117】
賦形剤
被験体に投与されるKsp37タンパク質を含む製剤はまた、薬学的に受容可能な賦形剤などの他の成分を含み得る。例えば、本発明の製剤は、被験体が耐えることができる賦形剤中に製剤化することができ、このような賦形剤の例としては、水、生理食塩水、リン酸緩衝溶液、リンゲル溶液、デキストロース溶液、ハンクス溶液、生理学的平衡塩類溶液を含有するポリエチレングリコール及び他の水性生理学的平衡塩類溶液が挙げられる。不揮発性油、ゴマ種子油及びエチレンオレエートトリグリセリド等の非水性ビヒクルも使用することができる。
【0118】
他の有用な製剤には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール又はデキストリン等の粘度増強剤を含有する懸濁液が含まれる。賦形剤はまた、等張性及び化学的安定性又は緩衝剤を増強する物質などの少量の添加剤を含有することができる。緩衝液の例としては、リン酸緩衝液、重炭酸緩衝液、トレス緩衝液が挙げられ、防腐剤の例としては、トリメレサール、m-オロ-クレゾール、ホルマリン及びベンジルアルコールが挙げられる。
【0119】
標準的な製剤は、液体又は注射可能物又又は注射用の懸濁液又は溶液として適切な液体に取り込むことができる固体のいずれかであり得る。したがって、非液体製剤では、賦形剤は、投与前に滅菌水又は生理食塩水を添加することができるデキストリル、ヒト血清アルブミン、防腐剤等を含むことができる。
【0120】
Ksp37タンパク質は、経口、経鼻、局所、吸入、経皮、直腸及び非経口(皮下/筋肉内)投与からなる群から選択される少なくとも1つの経路によって投与され得る。
【0121】
制御放出
哺乳動物に投与されるKsp37タンパク質又は修飾タンパク質を含む製剤は、Ksp37を哺乳動物にゆっくりと放出することができる制御放出組成物を含み得る。本明細書中で使用されるように、制御放出組成物は、Ksp37タンパク質を含むか、又は制御放出ビヒクル中にある。
【0122】
適切な制御放出ビヒクルとしては、生体適合性ポリマー、他のポリマーマトリックスカプセル、マイクロカプセル、マイクロ粒子、ボーラス調製物、浸透圧ポンプ、拡散デバイス、リポソーム、リポスフェア、乾燥粉末及び経皮送達システムが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の他の制御放出は、哺乳動物に投与すると、in-situで固体又はゲルを形成する液体を含む。
【0123】
追加の化合物
ウイルス感染によって特徴付けられる疾患から哺乳動物を保護するKsp37の能力を増強することができる追加の化合物を、連続的に又は同時に投与することができる。そのような化合物には、細胞媒介性免疫応答を調節することができる化合物、ヘルパーT細胞活性を調節することができる化合物、肥満細胞の脱顆粒を調節することができる化合物、知覚神経末端を保護することができる化合物、好酸球及び又は芽球細胞活性を調節することができる化合物、及び/又は平滑筋収縮を予防又は弛緩させることができる化合物が含まれる。このような化合物は、微小血管透過性をさらに誘導するか、又はTh1及び/又はTh2細胞サブセット分化を調節する。
【0124】
Ksp37タンパク質と組み合わせて投与される化合物の選択は、哺乳動物の種々の特徴に基づいて当業者によってなされ得る。特に、哺乳動物の遺伝的背景、健康歴、身体的徴候、レスキュー薬の使用及び血液ガス、ならびに血液分析である。
【0125】
用量
哺乳動物に投与されるKsp37タンパク質又は修飾タンパク質の治療用量は、適切な期間にわたって1回又は複数回投与される場合、感染及び/又はTh-1型免疫応答によって特徴付けられる疾患から哺乳動物を保護し、及び/又は同疾患を処置することができる用量を含む。
【0126】
あるいは、Ksp37タンパク質又は修飾タンパク質の治療用量は、哺乳動物の免疫系を改善する用量を含む。さらに別法として、Ksp37タンパク質又は修飾タンパク質の治療用量は、ウイルス感染を減少させる及び/又はTh-1型サイトカインを増加させる用量を含む。
【0127】
治療的又は予防的結果を生じると仮定される好ましいKsp37タンパク質又は修飾タンパク質の単回用量は、哺乳動物の体重1kg当たり0.001μg/~哺乳動物の体重1kg当たり20μgであることが同定されている。
【0128】
4. 細胞内でKSP37の発現を刺激する方法
遺伝子治療は、様々な遺伝性及び後天性疾患の治療のために考慮されている新しい治療様式である。それは、治療目的に向けて遺伝子発現を操作するという前提で働く。バイオテクノロジーの最近の進歩は、インビボでの細胞への治療遺伝子の直接送達に基づくインビボ遺伝子治療アプローチの開発を刺激した。遺伝子治療は、タンパク質の機能を回復、増加又は修飾するために、問題の遺伝子の正常なコピーを導入することを目的とする。
【0129】
Ksp37タンパク質をコードする核酸分子は、その天然供給源から、(完全である)遺伝子全体又はその一部のいずれかとして得ることができる。あるいは、核酸分子は、組換えDNA技術(ポリメラーゼ連鎖反応増幅クローニング)又は化学合成を使用して産生され得る。
【0130】
核酸分子としては、天然の核酸分子及びその相同体が挙げられ、相同体はこれらに限定されないが、天然の対立遺伝子変異体、及びヌクレオチドが、そのような修飾が、本発明の方法において有用なKsp37タンパク質をコードする核酸能力を実質的に妨害しないような様式で、挿入、欠失、置換及び/又は反転されている修飾核酸分子、を含む。
【0131】
一実施形態では、HIV及びウイルス癌などのウイルス免疫系関連感染と戦うのに有用なKsp37タンパク質をコードする核酸分子は、天然に存在するKsp37タンパク質と同一であるタンパク質に翻訳する核酸配列である。
【0132】
単離された、又は生物学的に純粋な核酸分子は、その天然環境から除去された核酸分子である。
【0133】
Ksp37タンパク質をコードする核酸分子は、当業者に公知の多くの方法のいずれかを使用して産生することができ、これには、部位特異的変異導入、突然変異を誘導するための極性化合物による核酸分子の化学処理、核酸断片の制限酵素切断、核酸断片の洗浄、核酸配列の選択された領域のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)及び/又は変異導入、オリゴヌクレオチド混合物の合成、核酸分子の混合物を構築するための混合物群の連結、及びそれらの組合せ等の組換えDNA技術が含まれる。核酸分子エンベロープは、核酸によってコードされる機能のスクリーニングによって修飾核酸の混合物から選択することができる。
【0134】
本発明の方法において有用なKsp37タンパク質をコードするために使用される核酸分子は、1つ又は複数の転写制御配列に作動可能に連結されて、組換え分子を形成することができる。「作動可能に連結された」という語句は、トランスフェクト、形質導入又は全細胞への形質転換の際に分子が発現され得るような様式で、核酸分子を転写制御配列に連結することを指す。転写制御配列は転写の開始、伸長、終結を制御する配列である。特に重要なのは、制御された転写開始、プロモーター、エンハンサー、オペレーター及びリプレッサー配列である。
【0135】
適切な転写制御配列には、Ksp37タンパク質の発現に有用な、及び/又は本発明の方法において哺乳動物に投与するのに有用な組換え細胞において転写することができる任意の転写制御配列が含まれ、好ましい転写制御配列には、哺乳動物、細菌、又は昆虫の細胞において機能するものが含まれる。
【0136】
本発明の転写制御配列はまた、本発明の方法において有用なKSP37タンパク質をコードする遺伝子と天然に関連する天然に存在する転写制御配列を含むことができる。
【0137】
DNA又はRNAのいずれかであり得る本発明の組換え分子はまた、翻訳調節配列、オリジン又は複製、及び組換え細胞と適合性のある他の調節配列等のさらなる調節配列を含み得る。1つの実施形態において、本発明の組換え分子は、発現されたKsp37タンパク質が、タンパク質を産生する細胞から分泌されることを可能にするために、分泌シグナル(シグナルセグメント核酸配列)を含有する。
【0138】
適切なシグナルセグメントとしては、限定されるものではないが、本明細書において前述したKsp37タンパク質のいずれかと天然に関連するシグナルセグメント、ならびにKsp37タンパク質のすべての関連種及びヌクレオチドが挙げられる。
【0139】
遺伝子治療の律速技術は、遺伝子導入を達成するために使用される、ベクターとして知られる遺伝子送達ビヒクルである。ベクターはまた、特定のタンパク質の遺伝子産生を増加させるために使用され得る。
【0140】
適切なベクター
Ksp37タンパク質をコードする核酸分子の投与に特に有用な医薬品グレードの許容されるベクターの例は
● pGEM-Tベクター
● pCMV3-C-GFPスパーク
である。
【0141】
これらは、KSP37配列のベクターとして現在市販されているベクターのいくつかである。
【0142】
発現ベクターは、別名、発現構築物として知られており、通常、細胞における遺伝子発現のために設計されたプラスミド又はウイルスである。ベクターは特定の遺伝子を標的細胞に導入するのに用いられ、細胞のタンパク質合成機構を指揮して、その遺伝子にコードされているタンパク質をつくることができる。
【0143】
このケースで対象となる遺伝子はKSP37であり、これは通常、ヒト宿主における適応免疫のCD8細胞部分によって産生される(Lopezet. al., 2011)。
【0144】
pCMV3-C-DDK(Flag)は、哺乳動物細胞におけるKSP37の発現のために使用される発現ベクターである。ベクターは、発現を可能にする特定のセグメントを含むべきであり、これらは、プロモーター、リボソーム結合部位及び開始コドンのような正しい翻訳開始配列、終止コドン及び転写終結配列を含む。遺伝子産物の発現後に、発現されたタンパク質を精製することが必要であり得る。しかしながら、宿主細胞の大多数のタンパク質から目的のタンパク質を分離することは、長引くプロセスであり得る。この精製処理を容易にするために、精製タグをクローンされた遺伝子に追加することができる。
【0145】
ベクターを細胞にトランスフェクトし、安定したトランスフェクションの場合には相同組換えによってDNAをゲノムに組み込むこともできるし、細胞を一時的にトランスフェクトすることもできる。哺乳動物発現ベクターの例には、アデノウイルスベクター、pSV及びpCMVシリーズのプラスミドベクター、ワクシニア及びレトロウイルスベクター、ならびにバキュロウイルスが含まれる。サイトメガロウイルス(CMV)及びSV40のプロモーターは、遺伝子発現を駆動するために哺乳動物発現ベクターにおいて一般的に使用される。
【0146】
特に、SinoBiological社から供給されたpGEM-Tベクター、KSP37/FGFBP2 cDNA ORF CLONEは、哺乳類におけるレトロウイルス感染、ウイルス癌及びプリオンに対する遺伝子治療に使用するための、ヒト線維芽細胞成長因子結合タンパク質2.2単位~10単位の全長クローンDNAの適当なクローニングベクターとして同定されている。
【0147】
賦形剤/送達ビヒクル
本発明によれば、Ksp37タンパク質をコードする核酸分子は、薬学的に許容される賦形剤と共に投与され得る。薬学的に許容される賦形剤としては、天然脂質含有基質、油、エステル、グリコール、ウイルス、金属粒子又はカチオン性分子が挙げられ得るが、これらに限定されない。
【0148】
ターゲティングすることができる薬学的に許容される賦形剤は、本明細書では「送達ビヒクル」と呼ばれる。本発明の薬学的に許容される賦形剤は、Ksp37タンパク質及び/又はKsp37タンパク質をコードする核酸分子を含む製剤を、哺乳動物の標的細胞に送達することができる。「標的部位」は、治療製剤を送達することを所望する哺乳動物中の部位を指す。例えば、標的部位は、リンパ球、幹細胞、全ての血液成分であり得る。
【0149】
送達ビヒクルとしては、細胞及び細胞膜を含む天然脂質含有送達ビヒクルと、リポソーム及びミセルを含む人工脂質含有送達ビヒクルを含むが、これらに限定されない。
【0150】
本発明の送達ビヒクルは、哺乳動物における特定の部位を標的化し、それによってその部位における核酸分子を標的化し、利用するために修飾され得る。
【0151】
適切な修飾は、送達ビヒクルの脂質位置の化学式を操作すること、及び/又は好ましい部位、例えば、好ましい細胞型に送達ビヒクルを特異的に標的化することができる化合物をビヒクルに導入することを含む。
【0152】
特別なターゲティングとは、ビヒクル中の化合物と細胞の表面上の分子との相互作用によって、送達ビヒクルを特定の細胞に結合させることを指す。適切な標的化化合物は、特定の部位で別の分子に選択的に結合することができるリガンドを含む。このようなリガンドの例には、抗体、抗原、受容体及び受容体リガンドが含まれる。
【0153】
送達ビヒクルの脂質位置の化学式を操作することにより、送達ビヒクルの細胞外又は細胞内標的化を調節することができる。例えば、リポソームが特定の電荷特性を有する特定の細胞と融合するように、リポソームの脂質二重層の電荷を変化させる化学物質をリポソームの脂質式に添加することができる。
【0154】
ベクターの投与
ベクターは、経鼻、経口、局所、吸入、経皮又は非経口投与を含む許容可能な投与経路を介して被験体に投与される。
【0155】
追加の化合物
ウイルス感染によって特徴付けられる疾患から哺乳動物を保護するKsp37の能力を増強することができる追加の化合物を、連続的に又は同時に投与することができる。そのような化合物には、細胞媒介性免疫応答を調節することができる化合物、ヘルパーT細胞活性を調節することができる化合物、肥満細胞の脱顆粒を調節することができる化合物、知覚神経末端を保護することができる化合物、好酸球及び又は芽球細胞活性を調節することができる化合物、及び/又は平滑筋収縮を予防又は弛緩させることができる化合物が含まれる。このような化合物は、微小血管透過性をさらに誘導するか、又はTh1及び/又はTh2細胞サブセット分化を調節する。
【0156】
Ksp37タンパク質をコードする核酸分子と組み合わせて投与される化合物の選択は、哺乳動物の種々の特徴に基づいて当業者によってなされ得る。特に、哺乳動物の遺伝的背景、健康歴、身体的徴候、レスキュー薬の使用及び血液ガス、ならびに血液分析である。
【0157】
7. Ksp37産生を活性化するための極性化合物による化学処理
上記で開示されたように、極性化合物ジメチルホルムアミド(DMF)及びDMSOは、HIV産生の強力な阻害剤であることが示されている。HIV‐1に感染した患者のジメチルホルムアミド(DMF)を含有する経皮パッチによる治療は有望な結果を示した。
【0158】
発がん性発現に対する極性物質の作用は、がん細胞がより良性になる誘導であると仮定されている。悪性細胞を良性型に転換するには、そもそも悪性腫瘍を引き起こす遺伝子発現の何らかの調節があるはずであるというのが理にかなっていると思われる。HL-60ヒト前骨髄球性白血病細胞において、ジメチルスルホキシド[DMSO]は、c-筋癌遺伝子(c-myoncogenes)の発現を80~90%減少させた[5]。
【0159】
細胞分化の化学的誘導物質は、宿主細胞の細胞機構に影響を与えることにより、ウイルス複製に重要な役割を果たすことが示唆される。
【0160】
DMFを含む極性化合物は、CD8細胞の活性化で始まり、次いでKsp37の産生を活性化する事象のカスケードを通して、ウイルス感染及び疾患の臨床管理において使用され得る。
【0161】
ジメチルホルムアミド[DMF]のような極性化合物は、KSP37タンパク質の活性化剤として使用され得る。
【0162】
DMFは一般に極性溶媒として用いられ、経皮、吸入、経口摂取により容易に吸収される。DMFは主に肝臓で速やかに代謝され、主に尿中に排泄される。
【0163】
化学物質の経皮及び坐薬送達は、患者のホルモン特性を変化させる一般的な方法である。
【0164】
DMFは、任意の適切な薬物送達デバイスを使用して、例えば、1つ又は複数の皮膚パッチを適用することによって、又はKsp37産生を活性化するための直腸適用のための坐薬を使用して、経皮適用を介して患者に投与され得る。Ksp37産生を活性化するための皮膚パッチでの処置は、約8時間の期間、1週間に1回、皮膚へのパッチの適用を含み、一方、Ksp37産生を活性化するためのDMFの直腸適用による処置は、理想的には、1週間に1回、坐薬の使用を含む。
【0165】
Ksp37産生を活性化するためのDMFの治療的に有効な用量は、約2mg/l~200mg/l、好ましくは約100mg/l~200mg/l、さらにより好ましくは約150mg/lのDMFのピーク血漿レベルをもたらす用量である。特に好ましいのは、100mg/l~150mg/l又は150mg/l~200mg/lのDMFのピーク血漿レベルである。
【0166】
極性化合物の経皮投与の場合、吸収速度は、被験体の皮膚によって決定される。ヒトの皮膚に曝露すると、液体のDMFは定常状態で約9.4mg/cm/時の速度で吸収される(Mraz and Nohova, 1992, Occup. Env. Health 64:85-92参照)。
【0167】
従って、所望の吸収速度は、各パッチの面積及び皮膚に適用されるパッチの数を決定することによって、薬物に曝露される皮膚の表面積を制御することによって達成され得る。例えば、径9cmの2枚のパッチは、127cmの総皮膚表面積を極性化合物に曝露する。DMFについては、これは、1時間当たり約1.2gのDMFの吸収速度を生じる。
【0168】
約15mg/kgのDMTの初期用量が特に好ましい。
【0169】
Ksp37タンパク質の産生が少なくとも20年間必要とされる治療範囲まで十分に遺伝子改変される前に、DMFによる約2年間の長期処置が必要とされることが予想される。
【0170】
したがって、本発明は、24kDa~45kDaの範囲の分子量を有するKsp37が、免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患に対する被験体の免疫応答を増強する最適濃度範囲を同定し、免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患の処置のための医薬及び医薬の調製、ならびに免疫系障害及び/又はウイルス癌に関連するウイルス感染及び/又は疾患に対する処置及び/又は保護の方法を提供する。
【0171】
本明細書に引用される全ての刊行物は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書における参考文献の引用又は議論は、そのようなものが本発明の先行技術であることの承認として解釈されるべきではない。
【国際調査報告】