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特表2023-533174ACE-tRNAのコード化及び発現
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ACE-tRNAのコード化及び発現
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/11 20060101AFI20230726BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230726BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230726BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230726BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 3/02 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 7/04 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 5/50 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 27/16 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61P 5/00 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20230726BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C12N15/11 Z ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K48/00
A61P3/02 102
A61P7/04
A61P7/06
A61P13/12
A61P5/50
A61P13/02
A61P21/00
A61P17/00
A61P25/00
A61P27/02
A61P27/16
A61P35/00
A61P31/04
A61P43/00 111
A61P5/00
A61K31/711
A61K9/14
A61P43/00 105
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2022576100
(86)(22)【出願日】2021-06-07
(85)【翻訳文提出日】2023-02-08
(86)【国際出願番号】 US2021036165
(87)【国際公開番号】W WO2021252354
(87)【国際公開日】2021-12-16
(31)【優先権主張番号】63/038,245
(32)【優先日】2020-06-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508144129
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ ロチェスター
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】リュック, ジョン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ポーター, ジョセフ ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】ソーントン, チャールズ エー.
(72)【発明者】
【氏名】コ, ウリ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA23
4B065CA44
4C076AA29
4C076AA65
4C076BB24
4C076CC10
4C076FF70
4C084AA13
4C084MA38
4C084MA43
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA33
4C084ZA34
4C084ZA53
4C084ZA55
4C084ZA81
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZB21
4C084ZB26
4C084ZB35
4C084ZC06
4C084ZC23
4C084ZC35
4C084ZC41
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA24
4C086MA43
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA33
4C086ZA34
4C086ZA53
4C086ZA55
4C086ZA81
4C086ZA89
4C086ZA94
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB35
4C086ZC06
4C086ZC23
4C086ZC35
4C086ZC41
(57)【要約】
本発明は、未成熟終止コドンに関連する疾患又は障害を治療するための組成物及び方法に関する。本発明のある特定の態様は、ポリヌクレオチド、ベクター及び宿主細胞、並びにそれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)プロモーター及び(ii)抗コドン編集tRNA(ACE-tRNA)をコードする配列を含む、閉端環状非ウイルス非プラスミドDNA分子。
【請求項2】
分子が、閉端DNAスレッド(CEDT)分子又はミニサークル(MC)分子である、請求項1に記載の分子。
【請求項3】
DNA核標的配列(DTS)、転写増強5’リーダー配列(TELS)及びACE-tRNAバーコード配列(ABS)からなる群より選択される1つ又は複数のエレメントをさらに含む、請求項1又は2に記載の分子。
【請求項4】
DTSがSV40-DTSを含む、請求項3に記載の分子。
【請求項5】
いかなる細菌核酸配列も含まない請求項1~4のいずれか一項に記載の分子。
【請求項6】
4個以下のCpGジヌクレオチドを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の分子。
【請求項7】
CpGジヌクレオチドを含まない、請求項6に記載の分子。
【請求項8】
約200~約1,000bpのサイズである、請求項1から7のいずれか一項に記載の分子。
【請求項9】
約500bpのサイズである、請求項8に記載の分子。
【請求項10】
ACE-tRNAが、(i)配列番号1~10からなる群から選択されるか、又は(ii)配列番号11~305からなる群から選択される配列によってコードされる配列を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の分子。
【請求項11】
ACE-tRNAが、(i)配列番号1、4、5及び8からなる群から選択されるか、又は(ii)配列番号79及び94からなる群から選択される配列によってコードされる配列を含む、請求項10に記載の分子。
【請求項12】
(i)請求項1~11のいずれか一項に記載の分子及び(ii)薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤。
【請求項13】
細胞においてACE-tRNAを発現させるための方法であって、(i)細胞を請求項1~11のいずれか一項に記載の分子と接触させること、及び(ii)細胞を、ACE-tRNAの発現を可能にする条件下で維持することを含む、方法。
【請求項14】
(i)細胞が、1つ又は複数の未成熟終止コドン(PTC)を含む変異核酸を有し、(ii)変異体核酸の野生型がポリペプチドをコードし、(iii)ACE-tRNAが1つ又は複数のPTCを救済し、ポリペプチドの発現を回復させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
ポリペプチドが嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)であり、変異核酸が切断型CFTRをコードする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
変異核酸がTrpから終止のPTCを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ACE-tRNAがTrpから終止のPTCをLeuに翻訳する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~11のいずれか一項に記載の分子を含む宿主細胞。
【請求項19】
PTCに関連する疾患の治療を必要とする対象においてPTCに関連する疾患を治療する方法であって、請求項1~11のいずれか一項に記載の分子又は請求項12に記載の薬学的組成物を対象に投与することを含む、方法。
【請求項20】
疾患が、嚢胞性線維症、デュシェンヌ-ベッカー型筋ジストロフィー、網膜芽細胞腫、神経線維腫症、運動失調-毛細血管拡張症、テイ・サックス病、ウィルムス腫瘍、血友病A、血友病B、メンケス病、ウルリッヒ病、β-サラセミア、2A型及び3型フォン・ヴィレブランド病、ロビノウ症候群、短指症B型(指及び中手骨の短縮)、マイコバクテリア感染に対する遺伝性感受性、遺伝性網膜疾患、遺伝性出血傾向、失明、先天性神経感覚性難聴及び結腸無神経節症、並びに神経感覚性難聴、結腸無神経節症、末梢神経障害及び中枢性ミエリン形成異常を含む遺伝性神経発達障害、リドル症候群、色素性乾皮症、ファンコーニ貧血、貧血、甲状腺機能低下症、p53関連がん、食道がん、骨がん、卵巣がん、肝細胞がん、乳がん、肝細胞がん、線維性組織球腫、卵巣がん、SRY性転換、トリオースリン酸イソメラーゼ-貧血、糖尿病、くる病、ハーラー症候群、ドラベ症候群、脊髄性筋ジストロフィー、アッシャー症候群、無虹彩症、コロイデレミア、眼性コロボマ、網膜色素変性、栄養障害性表皮水疱症、シュードキサントーマ・エラスチカム、アラジール症候群、ワールデンブルグ・シャー、乳児型神経セロイドリポフスチン症、シスチン症、X連鎖腎性尿崩症、マックアードル病及び多発性嚢胞腎疾患からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
疾患が、錐体ジストロフィー、シュタルガルト病(STGD1)、錐体杆体ジストロフィー、網膜色素変性症(RP)、加齢性黄斑変性症に対する感受性の増加、先天性停止性夜盲2(CSNB2)、先天性停止性夜盲1(CSNB1)、ベスト病、VMD、及びレーバー先天性黒内障(LCA16)からなる群から選択される眼の遺伝性疾患である、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
投与が、ナノ粒子、エレクトロポレーション、ポリエチレンイミン(PEI)、受容体標的化ポリプレックス、リピソーム、又は流体力学的注入を用いて行われる、請求項19から21のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月12日に出願された米国仮出願第63/038,245号の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
技術分野
本発明は、抗コドン編集(ACE)-tRNAに基づく薬剤、及び未成熟終止コドン(PTC)に関連する障害を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0003】
遺伝コードは、DNAからタンパク質への翻訳の基礎であるトリプレット「コドン」を形成する4つのヌクレオチドを使用する。合計64個のコドンが存在し、そのうち61個がアミノ酸をコードするために、3個(TAG、TGA及びTAA)が翻訳終結シグナルをコードするために使用される。ナンセンス突然変異は、一般に単一ヌクレオチド置換によってアミノ酸コドンをPTCに変化させ、欠損した切断型タンパク質及び重篤な形態の疾患をもたらす。ナンセンス突然変異は、全遺伝性疾患の10%超、及び世界中で約3億人が罹患しているがんを含む約1,000の遺伝のヒトの障害を占めている。実際、嚢胞性線維症(CF)は、「クラス1」のPTC変異(例えば、p.G542X、p.R553X及びp.W1282X)を有する全CF患者の約22%に適するようになり、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の機能のほぼ完全な喪失及び重度の臨床症状をもたらす。ナンセンス関連疾患の非常に高い有病率及び統一機構のために、PTC治療薬を同定するための協調的な努力がなされてきた。アミノグリコシド(AMG)は、これらの取り組みの主要な焦点であった。しかし、長期化した使用に伴う耳毒性及び腎毒性は、それらの使用を臨床的に制限している。オフターゲット効果を低減するために合成AMG誘導体が現在研究されているが、それらはしばしば低いリードスルー効率を被る。非AMG小分子(例えば、タイロシン、アタルレン)も、毒性がほとんどない有望なPTCリードスルー化合物として同定されている。しかし、これらの手法は、元のPTC部位におけるミスセンス変異の生成をしばしばもたらす近同族tRNAの挿入を含めて、未だ克服されていないいくつかの課題を有する。さらに、化合物のいくつかは、ヒト初代細胞においてPTC抑制の効率が低く、アタルレンの第3相臨床治験不合格をもたらした(ACT DMD第3相臨床治験、NCT01826487;ACTCF、NCT02139306)。ナンセンス突然変異に関連する障害を治療するための治療剤及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、いくつかの態様において上述した必要性に対処する。
【0005】
一態様では、本発明は、(1)プロモーター及び(ii)抗コドン編集tRNA(ACE-tRNA)をコードする配列を含む、閉端環状非ウイルス非プラスミドDNA分子を提供する。分子は、閉端DNAスレッド(CEDT)分子又はミニサークル(MC)分子であり得る。分子は、DNA核標的配列(DTS)、転写増強5’リーダー配列(TELS)及びACE-tRNAバーコード配列(ABS)からなる群より選択される1つ又は複数のエレメントをさらに含み得る。5’リーダー配列の例としては、配列番号306が挙げられる。DTSの例としては、SV40-DTS、例えば配列番号307が挙げられる。いくつかの実施形態では、分子は、いかなる細菌核酸配列も含まない。分子は、4個以下のCpGジヌクレオチドを含むことができる。好ましくは、分子はCpGジヌクレオチドを含まない。分子は、約200~約1,000bpのサイズ、例えば約500bpのサイズであり得る。ACE-tRNAは、TrpTGAchr17.trna39、LeuTGAchr6.trna81、LeuTGAchr6.trna135、LeuTGAchr11.trna4、GlyTGAchr19.trna2、GlyTGAchr1.trna107、GlyTGAchr17.trna9、ArgTGAchr9.trna6/ノイントロン、GlnTAGchr1.trna101及びGlnTAGchr6.trna175からなる群から選択されるものであり得る。例としては、配列番号1~10の配列を含むRNAが挙げられる。さらなる例としては、配列番号11~305によってコードされるものが挙げられる。一実施形態では、ACE-tRNAが、(i)配列番号1、4、5及び8からなる群から選択される配列、又は(ii)配列番号79及び94からなる群から選択される配列によってコードされる配列を含む。
【0006】
分子は、細胞におけるACE-tRNAの発現方法に用いることができる。発現したACE-tRNAは、mRNAの翻訳中にPTCをアミノ酸に戻す機能を有する。その目的に対して、本方法は、(i)目的の細胞を上記の分子と接触させること、及び(ii)ACE-tRNAの発現を可能にする条件下で細胞を維持することを含む。細胞は、1つ又は複数のPTCを含む変異体核酸を有することができる。その場合、野生型核酸は完全に機能的なポリペプチドをコードする。この方法を使用して、発現したACE-tRNAは、細胞におけるポリペプチドの発現を回復させるか又はポリペプチドの機能的活性を改善するために、1つ又は複数のPTCを救済する。例えば、ポリペプチドは嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)であり得、変異体核酸は切断型CFTRをコードする。一例において、変異体核酸は、Trpから終止のPTCを有する。ACE-tRNAは、Trpから終止のPTCをLeuに翻訳する。本発明の範囲内は、上記の分子の1つ以上を含む宿主細胞である。
【0007】
上記の分子は、PTC関連障害を治療するための方法において使用することができる。したがって、本発明はまた、(i)分子及び(ii)薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤を提供する。それを必要とする対象において、PTCに関連する疾患を治療する方法も提供される。この方法は、上記の分子又は薬学的組成物を対象に投与することを含む。疾患の例としては、嚢胞性線維症、デュシェンヌ-ベッカー型筋ジストロフィー、網膜芽細胞腫、神経線維腫症、運動失調-毛細血管拡張症、テイ・サックス病、ウィルムス腫瘍、血友病A、血友病B、メンケス病、ウルリッヒ病、β-サラセミア、2A型及び3型フォン・ヴィレブランド病、ロビノウ症候群、短指症B型(指及び中手骨の短縮)、マイコバクテリア感染に対する遺伝性感受性、遺伝性網膜疾患、遺伝性出血傾向、失明、先天性神経感覚性難聴及び結腸無神経節症、並びに神経感覚性難聴、結腸無神経節症、末梢神経障害及び中枢性ミエリン形成異常を含む遺伝性神経発達障害、リドル症候群、色素性乾皮症、ファンコーニ貧血、貧血、甲状腺機能低下症、p53関連がん、食道癌、骨癌、卵巣癌、肝細胞癌、乳癌、肝細胞癌、線維性組織球腫、卵巣癌、SRY性転換、トリオースリン酸イソメラーゼ-貧血、糖尿病、くる病、ハーラー症候群、ドラベ症候群、脊髄性筋ジストロフィー、アッシャー症候群、無虹彩症、コロイデレミア、眼性コロボマ、網膜色素変性、栄養障害性表皮水疱症、シュードキサントーマ・エラスチカム、アラジール症候群、ワールデンブルグ・シャー、乳児型神経セロイドリポフスチン症、シスチン症、X連鎖腎性尿崩症、及び多発性嚢胞腎疾患を含む。いくつかの例では、疾患は、錐体ジストロフィー、シュタルガルト病(STGD1)、錐体杆体ジストロフィー、網膜色素変性症(RP)、加齢性黄斑変性症に対する感受性の増加、先天性停止性夜盲2(CSNB2)、先天性停止性夜盲1(CSNB1)、ベスト病、VMD、及びレーバー先天性黒内障(LCA16)からなる群から選択される眼の疾患である。
【0008】
治療法は、ナノ粒子、エレクトロポレーション、ポリエチレンイミン(PEI)、受容体標的化ポリプレックス、リピソーム又は流体力学的注入を含む任意の適切な方法を使用して実施することができる。
【0009】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1A及び1Bは、治療上の送達によく適した2つの小型ACE-tRNA発現カセットを示す図である。内部プロモーター箱A及びB領域(約76塩基対又はbps)、並びに短い5’転写増強リーダー配列(TELS、ハッシュ)を含むACE-tRNAの全発現カセットは、全長が約125bps以下である。図1Cは、ミニサークル及びCEDTの概略図を示す。
図2図2A及び図2Bは、ACE-tRNA発現後のmRNA転写物のリボソームプロファイリングを示す図である。(A)コード化領域に>5RPKM(遺伝子のキロベースあたりの読み取り/100万のマッピングされた読み取り)を有し、3’UTRに>0.5RPKMを有する転写物について、ACE tRNAサプレッサーと対照との間の3’UTRにおけるリボソームフットプリント密度のLog2の倍率変化。各点は、1つの遺伝子転写物を表す。エラーバー:Mean±SD。(B)CDSが遺伝子コード配列(各転写物は等しく重み付けされている)であるすべての転写物の終止コドンを囲む、正規化された平均リボソームフットプリント占有率。(挿入図)(B)の拡大図。
図3】ACE-tRNAミニサークル及び閉端DNAスレッド産生スキームを示す写真及び図のセットである。
図4A-B】A及びBは、ACE-tRNAArgのMC及びCEDTが強固なPTC抑制能を示したことを示す図である。(A)HEK293細胞において、200bpsもの小さなMCが、ACE-tRNAを発現し(白色バー)、PTCレポーターを安定的に発現した。(B)CEDTは、16HBE14o-細胞におけるPTCレポーターの同時送達により、強固なPTCの抑制を示した。
図5A-F】A~Fは、CRISPR/Cas9改変16HBE14o-細胞へのACE-tRNAのCEDTの送達がCFTR機能を有意に救済し、ナンセンスコドン介在的分解(NMD)を阻害することを示す写真及び図である。(A)Transwellでトランスフェクトされた16HBE14o-細胞の代表的な画像。(B)Ussingチャンバー記録で、WT(黒)、空ベクターでトランスフェクトされたp.R1162X 16HBE14oe-細胞(赤色)、及び500bpのACE-tRNAArgのCEDT(青色)から追跡した代表的なCl短絡電流。(C)平均Forskolin及びIBMX並びに(D)Inhb172応答は、500bpのACE-tRNAArgのCEDT(青色)によるCFTR機能の有意な救済を示した。(E)わずかな(30%)トランスフェクション効率の後、ACE-tRNAGly(灰色の線)、ACE-tRNAArg(緑色の水平線)及びACE-tRNALeu(オランジュベールの線)をコードするプラスミドはすべて、qPCRによって測定したとき、それぞれp.G542X、p.R1162X及びpW1282X 16HBE14o-細胞でNMDを有意に阻害した。重要なことに、500bpのCEDTArg(緑色の対角線)、800bpのMCArg(緑色の点)及び800bpのMCLeu(オレンジ色の点)はすべて、トランスフェクションの48時間後に、それぞれのCFTRのPTCのプラスミドベースの発現に対する有意で同等の救済をもたらした。すべてのコンストラクトが等量でトランスフェクトされた。*p<0.05;**p<0.0001。
図5G】CRISPR/Cas9改変16HBE14o-細胞へのACE-tRNAのCEDTの送達がCFTR機能を有意に救済し、ナンセンスコドン介在的分解(NMD)を阻害することを示す写真及び図である。(A)Transwellでトランスフェクトされた16HBE14o-細胞の代表的な画像。(B)Ussingチャンバー記録で、WT(黒)、空ベクターでトランスフェクトされたp.R1162X 16HBE14oe-細胞(赤色)、及び500bpのACE-tRNAArgのCEDT(青色)から追跡した代表的なCl短絡電流。(C)平均Forskolin及びIBMX並びに(D)Inhb172応答は、500bpのACE-tRNAArgのCEDT(青色)によるCFTR機能の有意な救済を示した。(E)わずかな(30%)トランスフェクション効率の後、ACE-tRNAGly(灰色の線)、ACE-tRNAArg(緑色の水平線)及びACE-tRNALeu(オランジュベールの線)をコードするプラスミドはすべて、qPCRによって測定したとき、それぞれp.G542X、p.R1162X及びpW1282X 16HBE14o-細胞でNMDを有意に阻害した。重要なことに、500bpのCEDTArg(緑色の対角線)、800bpのMCArg(緑色の点)及び800bpのMCLeu(オレンジ色の点)はすべて、トランスフェクションの48時間後に、それぞれのCFTRのPTCのプラスミドベースの発現に対する有意で同等の救済をもたらした。すべてのコンストラクトが等量でトランスフェクトされた。*p<0.05;**p<0.0001。
図6A-B】A及びBは、マウスの肺へのミニベクターのエレクトロポレーション送達が気道上皮の効率的な形質導入及びPTCリードスルーをもたらしたことを示す写真及び図である。(A)マウスの肺気道上皮に、エレクトロポレーションによってGFP発現ベクター(挿入図)を効率的に形質導入した。(B)NLuc-UGA PTCレポータープラスミドとプラスミドACE-tRNAArg、500bpのCEDTArg、800bpのMCLeu及び800bpのMCArgとの同時送達は、強力なPTCの抑制をもたらした。
図7A-B】A及びBは、5’フランキング配列がACE-tRNA発現を調節したことを示す写真及び図である。(A)HEK293細胞におけるW1282X-CFTR及びACE-tRNATrp UGAをTELSあり(左レーン)なし(右レーン)でコードするcDNAのトランスフェクション後の完全長CFTRタンパク質のウエスタンブロット(WB)によって示されるように、ACE-tRNATrp UGAによるW1282X-CFTRの抑制は、ヒトTyr TELSによって増強された(左レーン)。(B)TELSスクリーニングHTC/HTSプラスミドの設計。
図8A-D】A~Dは、ACE-tRNAプラスミドが核に能動的に輸送されなかったことを示す写真及び図である。(A)ACE-tRNAプラスミドcDNAの、細胞の細胞質への注入は、細胞質局在化をもたらし、一方、(B)核注入は転写と一致する病巣の形成をもたらした。(C)空のプラスミドへのSV40 DNA標的化配列の付加は、細胞質注入の4時間後に核局在化をもたらした。(D)SV40 DTSを有するACE-tRNAのMC及びCEDTの概略図。
図9】肺におけるミニベクターPTC抑制の局在化、効率及び持続性を判定するためのPTCレポータープラスミドを示す図である。
図10A-C】A~Cは、転写活性を測定するためのACE-tRNAバーコード技術を示す図である。(A)ACE-tRNAバーコードスキーム(ABS)の概略図。(B)ACE-tRNAArg及びACE-tRNATroバーコードのqPCR測定。(C)ACE-tRNAArg UGA及びACE-tRNAArg UGAバーコードのPTC抑制活性。
図11A-C】A~Cは、は、転写活性を測定するための別のACE-tRNAバーコード技術を示す図である。(A)tis ACE-tRNAバーコードスキームの概略図。(B)ACE-tRNAArg及びACE-tRNAArgバーコードのqRT-PCR測定。(C)ACE-tRNAArg及びACE-tRNAArgバーコードのPTC抑制活性。
図12A】異なるサイズのArgTGAミニサークルライゲーション産物及び対応するPCR産物を、エチジウムブロマイドを含有する1.5%アガロースゲルで分離したことを示す写真である。
図12B】異なるサイズのArgTGAミニサークルライゲーション産物及び対応するPCR産物を、エチジウムブロマイドを含有する1.5%アガロースゲルで分離したことを示す写真である。
図12C】T5エキソヌクレアーゼでインキュベートし、エチジウムブロマイドを含有する1.5%アガロースゲル上で分離したArgTGAミニサークルライゲーション産物及びPCR産物を示す写真である。ミニサークルライゲーションにおけるエキソヌクレアーゼ耐性産物の存在は、共有結合的に閉じたミニサークル産物の産生を示した。
図12D】T5エキソヌクレアーゼでインキュベートし、エチジウムブロマイドを含有する1.5%アガロースゲル上で分離したArgTGAミニサークルライゲーション産物及びPCR産物を示す写真である。ミニサークルライゲーションにおけるエキソヌクレアーゼ耐性産物の存在は、共有結合的に閉じたミニサークル産物の産生を示した。
図13A】200bpのCEDT産物のCEDT/4×ArgTGA産物の産生を示す図及び写真である。対応するPCR産物のそれぞれを陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した後、N15ファージプロテロメラーゼ(telN)で消化した。CEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、これは、telNによる共有結合的に閉じた末端の産生を示す。制限酵素Bsu36Iによるエンドヌクレアーゼ切断後、各CEDT産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図13B】400bpのCEDT産物のCEDT/4×ArgTGA産物の産生を示す図及び写真である。対応するPCR産物のそれぞれを陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した後、N15ファージプロテロメラーゼ(telN)で消化した。CEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、これは、telNによる共有結合的に閉じた末端の産生を示す。制限酵素Bsu36Iによるエンドヌクレアーゼ切断後、各CEDT産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図13C】900bpのCEDT/1×ArgTGA産物のCEDT/4×ArgTGA産物の産生を示す図及び写真である。対応するPCR産物のそれぞれを陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した後、N15ファージプロテロメラーゼ(telN)で消化した。CEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、これは、telNによる共有結合的に閉じた末端の産生を示す。制限酵素Bsu36Iによるエンドヌクレアーゼ切断後、各CEDT産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図13D】900bpのCEDT/4×ArgTGA産物の産生を示す図及び写真である。対応するPCR産物のそれぞれを陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した後、N15ファージプロテロメラーゼ(telN)で消化した。CEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、これは、telNによる共有結合的に閉じた末端の産生を示す。制限酵素Bsu36Iによるエンドヌクレアーゼ切断後、各CEDT産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図13E】850bpの1×ArgTGAミニサークル産生物及び850bpの4×ArgTGAミニサークル産生物をそれぞれ示す図及び写真のセットであり、両方ともT5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、共有結合的に閉じたミニサークルの産生を示している。制限酵素Smalによるエンドヌクレアーゼ切断後、各ミニサークル産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図13F】850bpの1×ArgTGAミニサークル産生物及び850bpの4×ArgTGAミニサークル産生物をそれぞれ示す図及び写真のセットであり、両方ともT5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、共有結合的に閉じたミニサークルの産生を示している。制限酵素Smalによるエンドヌクレアーゼ切断後、各ミニサークル産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図14】cDNA及びRNAとしてのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のCFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図15A】蛍光性PTCレポーター16HBE14ge-細胞株を作製するためのコンストラクト、及びPTC抑制アッセイにおけるその細胞株の使用を示す、図のセットである。
図15B】蛍光性PTCレポーター16HBE14ge-細胞株を作製するためのコンストラクト、及びPTC抑制アッセイにおけるその細胞株の使用を示す、図のセットである。
図16A】cDNAとしてのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のCFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。**=p<0.001;****=p<0.0001。
図16B】cDNAとしてのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のCFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。**=p<0.001;****=p<0.0001。
図17A】MCでのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のR1162X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図17B】MCでのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のR1162X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図18A】MCでのACE-tRNAの送達が、ロイシンで、16HBE14ge-細胞における内因性のW1282X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図18B】MCでのACE-tRNAの送達が、ロイシンで、16HBE14ge-細胞における内因性のW1282X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図19A】異なるCEDTでのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のR1162X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図19B】異なるCEDTでのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のR1162X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図20】PB-Donkeyシステムの開発を示す図である。
図21A】ACE-tRNAArgの安定な組み込み及び発現が、R1162X16HBE14ge-細胞における内因性のCFTR機能を救済したことを示す図のセットである。
図21B】ACE-tRNAArgの安定な組み込み及び発現が、R1162X16HBE14ge-細胞における内因性のCFTR機能を救済したことを示す図のセットである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、ACE-tRNA、関連ベクター、及び関連送達、並びにPTC又はナンセンス突然変異に関連する障害の治療のための使用に関する。
【0012】
全遺伝性疾患の約10~15%がナンセンス突然変異によって引き起こされている。米国だけで約300万人が罹患しており、全遺伝性遺伝性障害の1/3がナンセンス関連であると推定されている。単一のヌクレオチド変化がコドンをコードするアミノ酸を未成熟終止コドン(TGA、TAG又はTAA)に変換し、その結果、機能の完全な喪失又は変化を伴う切断型タンパク質、及びナンセンスコドン介在的分解(NMD)経路によるmRNA転写産物の分解がもたらされるこれらの疾患のすべてについて統一機構が存在する。本明細書に記載のDNA分子、薬学的製剤、方法及び細胞は、これらの疾患を治療するために使用することができる。
【0013】
一態様では、本開示は、(1)プロモーター及び(ii)抗コドン編集tRNA(ACE-tRNA)をコードする配列を含む、閉端環状非ウイルス非プラスミドDNA分子を提供する。
【0014】
いくつかの実施形態では、分子は、閉端DNAスレッド(CEDT)分子又はミニサークル(MC)分子である。
【0015】
上記の実施形態のいずれかにおいて、分子は、DNA核標的配列(DTS)、転写増強5’リーダー配列(TELS)及びACE-tRNAバーコード配列(ABS)からなる群より選択される1つ又は複数のエレメントをさらに含む。
【0016】
一実施形態では、DTSはSV40-DTSを含む。
【0017】
上記の実施形態のいずれにおいても、分子は、いかなる細菌核酸配列も含まない。
【0018】
上記の実施形態のいずれかにおいて、分子は、4個、3個、2個、1個又はそれより少ないCpGジヌクレオチドを含む。
【0019】
一実施形態では、分子はCpGジヌクレオチドを含まない。
【0020】
上記の実施形態のいずれかにおいて、分子は約200~約1,000bpのサイズである。
【0021】
一実施形態では、分子は、約200bp、250bp、300bp、350bp、400bp、450bp、500bp、550bp、600bp、650bp、700bp、750bp、800bp、850bp、900bp、950bp、又は1000bpのサイズである。CEDTのいくつかの例では、ACE-tRNAをコードする二本鎖の切片は、例えば、約200bp、400bp又は900bpのサイズであるが、対応するCEDTは、付加されたCEDT末端に起因して、約260bp、456bp又は956bpのサイズである。その場合、CEDTは、ACE-tRNAをコードする二本鎖の切片のサイズを示すために、200bpのCEDT、400bpのCEDT、又は900bpのCEDTと呼ばれることがある。例えば、図13及び図19を参照されたい。
【0022】
上記の実施形態のいずれかにおいて、ACE-tRNAは、(i)配列番号1~10からなる群から選択される配列、又は(ii)配列番号11~305からなる群から選択される1つによってコードされる配列を含む。
【0023】
一実施形態では、ACE-tRNAが、(i)配列番号1、4、5及び8からなる群から選択される配列、又は(ii)配列番号79及び94からなる群から選択される配列によってコードされる配列を含む。
【0024】
本開示はまた、(i)上記の実施形態のいずれか1つの分子及び(ii)薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤を提供する。
【0025】
本開示はさらに、(i)細胞を上記の任意の実施形態の分子と接触させること、及び(ii)細胞を、ACE-tRNAの発現を可能にする条件下で維持することを含む、細胞においてACE-tRNAを発現させるための方法を提供する。
【0026】
方法の一実施形態では、(i)細胞が、1つ又は複数の未成熟終止コドン(PTC)を含む変異体核酸を有し、(ii)変異体核酸の野生型がポリペプチドをコードし、(iii)ACE-tRNAが1つ又は複数のPTCを救済し、ポリペプチドの発現を回復させる。
【0027】
一実施形態では、ポリペプチドは嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)であり、変異体核酸は切断型CFTRをコードする。
【0028】
一実施形態では、変異体核酸は、Trpから終止のPTCを有する。
【0029】
一実施形態では、ACE-tRNAは、Trpから終止のPTCをLeuに翻訳する。
【0030】
本開示はさらに、上記の実施形態のいずれか1つの分子を含む宿主細胞を提供する。
【0031】
本開示はさらに、PTCに関連する疾患の治療を必要とする対象においてPTCに関連する疾患を治療する方法であって、上記の実施形態のいずれか1つの分子又は上記の薬学的組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0032】
いくつかの実施形態では、疾患は、嚢胞性線維症、デュシェンヌ-ベッカー型筋ジストロフィー、網膜芽細胞腫、神経線維腫症、運動失調-毛細血管拡張症、テイ・サックス病、ウィルムス腫瘍、血友病A、血友病B、メンケス病、ウルリッヒ病、β-サラセミア、2A型及び3型フォン・ヴィレブランド病、ロビノウ症候群、短指症B型(指及び中手骨の短縮)、マイコバクテリア感染に対する遺伝性感受性、遺伝性網膜疾患、遺伝性出血傾向、失明、先天性神経感覚性難聴及び結腸無神経節症、並びに神経感覚性難聴、結腸無神経節症、末梢神経障害及び中枢性ミエリン形成異常を含む遺伝性神経発達障害、リドル症候群、色素性乾皮症、ファンコーニ貧血、貧血、甲状腺機能低下症、p53関連がん、食道癌、骨癌、卵巣癌、肝細胞癌、乳癌、肝細胞癌、線維性組織球腫、卵巣癌、SRY性転換、トリオースリン酸イソメラーゼ-貧血、糖尿病、くる病、ハーラー症候群、ドラベ症候群、脊髄性筋ジストロフィー、アッシャー症候群、無虹彩症、コロイデレミア、眼性コロボマ、網膜色素変性、栄養障害性表皮水疱症、シュードキサントーマ・エラスチカム、アラジール症候群、ワールデンブルグ・シャー、乳児型神経セロイドリポフスチン症、シスチン症、X連鎖腎性尿崩症、マックアードル病及び多発性嚢胞腎疾患からなる群から選択される。
【0033】
いくつかの実施形態では、疾患は、錐体ジストロフィー、シュタルガルト病(STGD1)、錐体杆体ジストロフィー、網膜色素変性症(RP)、加齢性黄斑変性症に対する感受性の増加、先天性停止性夜盲2(CSNB2)、先天性停止性夜盲1(CSNB1)、ベスト病、VMD、及びレーバー先天性黒内障(LCA16)からなる群から選択される眼の遺伝性疾患である。
【0034】
上記の治療方法の実施形態の中のいくつかの実施形態では、投与は、ナノ粒子、エレクトロポレーション、ポリエチレンイミン(PEI)、受容体標的化ポリプレックス、リピソーム、又は流体力学的注入を用いて行われる。
【0035】
ACE-tRNA
ACE-tRNAは、PTCが、最初に失われたアミノ酸又は異なるアミノ酸に効果的かつ治療的に復帰するように配列が操作された、被操作tRNA分子である。そのような被操作tRNAは、特定のアミノ酸に対して疾患を引き起こすナンセンスコドンの「再編集」を可能にする。本明細書に開示されるように、被操作tRNAは、TAC又はTAAにわたるTGAなど、1種類の終止コドンのみを標的とすることができる。これらのtRNA分子が小さいサイズであることは、tRNA及びプロモーターが一緒になってわずか約300bpであり得るので、これらを容易な発現に適したものにする。その目的のために、ヒトの細胞において機能的なtRNA遺伝子の構造的成分を含むように、オリゴヌクレオチドを合成することができる。このオリゴヌクレオチドの配列は、特定のtRNAにナンセンス又は他の特定の突然変異を認識させるtRNAのアンチコドン領域において行われた置換を経る既知の配列に基づいて、設計することができる。ACE-tRNAの例としては、国際公開第2019090154号パンフレット、国際公開第2019090169号パンフレット及びLueck,J.D.et al.Nature communications10,822,2019に記載されているものが挙げられる。これらの各文献の内容は、参照により援用される。
【0036】
一般に、ACE-tRNAは、Tアーム、Dアーム、及びアンチコドンアーム、並びにアクセプターアームを含む一般的な4アーム構造を有する(国際公開第2019090169号パンフレットの図2を参照)。Tアームは、「Tステム」と「TΨCループ」とから構成されている。ある特定の実施形態において、Tステムは、tRNAの安定性を高めるように改変される。特定の実施形態では、ACE-tRNAは、内因性のTステム配列と比較して終止部位を抑制する生物活性を増加させる、被修飾Tステムを有する。
【0037】
ACE-tRNAをPTCの抑制に使用することができる。しかし、PTCの有効な抑制には潜在的な欠点がある。例えば、PTC抑制戦略は、in vivoでの実際のナイーブな終止コドンのリードスルーをもたらし得、全体的なナイーブな終止コドンのリードスルーは有害であるという懸念があった。しかし、いくつかの細胞機構が、正常な終止のリードスルー及びその損傷効果の両方を制限するために配置されている。より具体的には、複数のフレーム内終止コドンが通常の翻訳の終結において頻繁に見出され、したがって効率的なPTC抑制因子の存在下での翻訳終結の確率を高めている。さらに、誤った翻訳の終結、特殊化されたユビキチンリガーゼ及びリボソーム関連経路に関するタンパク質の同定及び分解のために、少なくとも2つの細胞機構が配置されている。遺伝子の末端の天然終止コドンは、増強された終結効率を促進する周囲の配列状況を有し、PTCに見られる終結複合体は「実際の」終止とは異なるという証拠がある。予想外にも、内因性の終止コドンのリードスルーが動物において一般的であり、有害ではないという発見は、PTCの抑制が実行可能な治療の手法であることを示唆している。実際、リボソームプロファイリングの予備データは、「実際の」終止のACE-tRNAリードスルーがまれであることを示唆している(図2)。
【0038】
本発明に有用なACE-tRNAは、国際公開第2019090154号パンフレット、国際公開第2019090169号パンフレット及びLueck,J.D.et al.,Nature communications10,822(2019)に記載されている戦略に従って、作製することができる。この戦略を使用して、細胞の培養におけるPTCの効果的な救済のためのACE-tRNAの広範なライブラリーが作製されている。以下の表1は、本発明に有用なACE-tRNAのいくつかの例である。疾患を引き起こすPTCを抑制するための他の被操作のヒトtRNA配列としては、国際公開第2019090154号パンフレット、国際公開第2019090169号パンフレット及び、Lueck,J.D.et al.,Nature communications10,822(2019)に記載されているものが挙げられる。さらなる例としては、以下の表2の配列番号11~305によってコードされるものが挙げられる。以下の各配列において、アンチコドンに対応する3文字の配列は、小さい場合には下線が引かれている。
【0039】
本明細書に開示されるように、ACE-tRNA遺伝子構造はPTC療法によく適合している。tRNA遺伝子は、内部プロモーターエレメント(図1の箱A及びB)の2型RNAポリメラーゼ(Pol)IIIの認識によってtRNAに転写され、tRNAは、短い(<50bp)5’隣接領域、及び短い一連のチミジンヌクレオチドからなる3’転写終結エレメント(約4チミジン、Ts)に隣接している。ほとんどのtRNA遺伝子は72~76bpsの長さであり、したがって、tRNA発現カセット全体は約125bpsのみからなることができる(図1)。
【0040】
最適化され得るACE-tRNAの転写及び翻訳機能に関与する様々な配列エレメントが存在する。RNAポリメラーゼIIIは、2型遺伝子内プロモーターエレメントを利用して真核生物におけるtRNA遺伝子の発現を駆動する(図1A又は図1Bの箱A及びB)。箱A及びBは2型プロモーターの機能に十分であるが、tRNAの発現は、遺伝子に対して5’のところに、約50bpの配列(5’-フランキング配列)によって調節及び増強され得る。tRNAの転写は、短いチミジンヌクレオチドのストレッチ(4個以下のチミジン、Ts)によって終結する。
【0041】
本明細書に開示されるように、本発明者らは、嚢胞性線維症(「CF」)をもたらすCFTR遺伝子内に存在するものを含む、疾患を引き起こすPTCの効率的かつ持続的な抑制を示す治療薬の開発のために、ミニサークル(MC)及び閉端DNAスレッド(CEDT)などの小型DNAベクターの作製におけるtRNAの独特の遺伝子特徴を利用した。
【0042】
このACE-tRNA手法は、(1)コドンの特異性、(2)シームレス救済をもたらすPTCのACE-tRNA抑制、したがってタンパク質の安定性、折り畳み、輸送及び機能に対する偽の影響を否定する、及び(3)p.G542X又はp.W1282X CF変異を有するCFTRチャネルなどの、影響を受けたタンパク質の意味ある機能的救済をもたらすACE-tRNAのこれらのin vitro送達を含む、他のリードスルー戦略を超えるいくつかの重要な利点を提供する。予備的結果は、内因性の翻訳終止コドンの最小限の抑制を示し、このことは、翻訳領域に対するわずかな副作用を示唆した。ACE-tRNAは、複数の細胞型においてPTCの位置が異なるいくつかのcDNA遺伝子において、PTCの抑制に有効であることが示されている。ACE-tRNAは、既知の有害な作用を伴わずにPTCの抑制において高い効率を示すので、治療薬として使用することができる。
【0043】
ミニベクター
本発明の一態様は、PTC治療を目的とした、抑制tRNAをコードする小型DNAミニベクターの作製及びin vivo送達に関する。最適な治療属性を考慮する場合、ゴールドスタンダードは1回限りの治療である。しかし、ワクチン以外では、これらの治癒はほとんど実現されていない。近年、CRISPR/Cas9が、ゲノムに永久的な変化を加えることができるために、有望な治療薬としての牽引力を得ている。重要なことに、CRISPR/Cas9によって行われるものを含むゲノム操作は、幹細胞集団が標的化されない限り、改変された細胞の寿命の間だけ持続する。細胞の代謝回転では、治療薬の再送達が必要であり、治療薬に対する免疫応答を考慮しなければならない。したがって、本発明者らは、反復送達、標的細胞に適合する半減期(例えば、気道上皮細胞)、病原性の低下及び挿入突然変異誘発の低い能力を可能にするために、限定された免疫原性のACE-tRNAプラットフォームに基づくPTC治療薬を設計することに着手した。
【0044】
いくつかの実施形態では、DNAミニストリング、Doggybone DNA(商標)又は線状に共有結合的に閉鎖(LCC)しているDNAとしても知られている2つの小型cDNAベクター形式、ミニサークル(MC)及び閉端DNAスレッド(CEDT)を生成し、使用する。例えば、ACE-tRNAを発現する小型DNAベクター(ミニベクター)を使用して、細胞、マウス及びブタにおけるin vivoのデータセットを得て、CFを含むナンセンス関連障害の治療を開発する。治療的有用性を有するDNA分子に関する実施形態では、DNA鋳型は、典型的には、1つ以上のプロモーター又はエンハンサーエレメントと、目的のRNA又はタンパク質をコードする遺伝子又は他のコード配列とを含む発現カセットを含む。
【0045】
本発明のベクターは、典型的には、上記のような発現カセット、すなわち、目的の遺伝子又はタンパク質をコードする配列に動作可能に連結された真核性プロモーター、及び場合により真核生物転写終結配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる発現カセットを含む。場合により、発現カセットは、以下に定義されるような最小発現カセット、すなわち、典型的には、(i)細菌複製開始点、(ii)細菌選択マーカー(典型的には抗生物質耐性遺伝子)及び(iii)非メチル化CpGモチーフからなる群から選択される1つ以上の細菌又はベクター配列を欠く最小発現カセットであり得る。
【0046】
好ましくは、本発明のベクターは、そのような不要な配列のいずれも含まない。すなわち、ベクターはそのような不要な配列を含まない。そのような不要な又は無関係な配列(細菌又はベクター配列としても記載される)は、細菌の複製開始点、細菌選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)、及び非メチル化CpGジヌクレオチドを含み得る。そのような配列の欠失は、外来遺伝物質を含有しない「最小」の発現カセットを作り出す。また、上記の種類の細菌配列は、いくつかの治療手法において問題となり得る。例えば、哺乳動物細胞内で、細菌/プラスミドDNAは、目的の遺伝子又はタンパク質の持続的発現が達成され得ないように、クローン化遺伝子をオフにすることができる。また、細菌増殖に使用される抗生物質耐性遺伝子は、ヒトの健康に対するリスクを引き起こす可能性がある。さらに、細菌プラスミド/ベクターDNAは、望ましくない非特異的免疫応答を誘発し得る。細菌DNA配列の特定の特徴、典型的にはCpGモチーフとして知られる非メチル化シトシン-グアニンジヌクレオチドの存在もまた、望ましくない免疫応答をもたらし得る。
【0047】
ミニサークル(MC)
MCは、遺伝子発現のための最小配列、一般にプロモーター、目的の遺伝子(GOI)及び終止配列のみを含有するように構築された小型の環状ベクター(<5キロベース(kb))である。小さなサイズであると、細胞進入及び核への細胞内輸送が増加し、送達及び転写バイオアベイラビリティの増加をもたらす。さらに、それらは、コードされたGOIの長期発現のための病原性及びエピソーマルサイレンシングを減少させるプラスミドに一般的に見られる細菌配列を欠いている。肝臓では、MCが115日間より長くGOIを発現し、試験終了前に発現の減少はほとんど又は全くないことが実証されている。
【0048】
気道上皮は、マウスでは気管で6ヶ月、細気管支で17ヶ月、ヒトでは50日間の半減期を有する。小型DNAベクター、主に3kbを超えるサイズのMCは、ポリエチレンイミン(PEI)、受容体標的化ポリプレックス、リピソーム、流体力学的注入及びエレクトロポレーションを含むいくつかの方法で、in vivoで広く送達することができる。CpGが少ないCFTR(約7kb)をコードするMCが、PEI凝縮及びエアロゾル化によってマウスの肺に送達されており、これにより、送達の56日後に発現が持続していた。
【0049】
閉端DNAスレッド(CEDT)
本明細書で使用される場合、「閉端DNAスレッド」又は「CEDT」は、閉じた線状のDNA分子を指す。そのような閉端線状DNA分子は、図4B及び図8Dに示されるような一本鎖環状分子として見ることができる。CEDT分子は、典型的には、相補的DNA鎖間の塩基ペアリングが存在しないヘアピンループとしても記載される、共有結合的に閉じた末端を含む。ヘアピンループは、相補的DNA鎖の末端を結合する。このタイプの構造は、典型的には、閉鎖構造に末端ヌクレオチドを隔離することによって染色体DNAの喪失又は損傷から保護するために、染色体のテロメア末端に形成される。本明細書に記載されるCEDT分子の特定の例では、ヘアピンループは相補的な塩基対DNA鎖に隣接し、「ドッグボーン」形の構造(図4B及び8Dに示すようなもの)を形成する。
【0050】
CEDT分子は、典型的には、共有結合的に閉じた末端、すなわちヘアピン末端を有するDNAの線状二本鎖切片を含む。ヘアピンは、分子が完全に変性した場合に一本鎖環状DNA分子が生成されるように、線状二本鎖DNA鎖の末端を結合する。通常、本明細書に記載のCEDTは、配列が本質的に完全に相補的であるが、いくつかの小さな変形又は「ゆらぎ」は構造によって許容され得る。したがって、閉じた線状DNA又はCEDTは、配列が少なくとも75%、80%、85%、90%又は95%相補的、又は少なくとも96、97、98、99又は100%相補的であり得る。変性された場合、それは実質的に、互いに隣接する順方向(センス又はプラス)鎖及び逆方向(アンチセンス又はマイナス)鎖の両方を含む環状分子である。これは、相補配列(マイナス及びプラス)が別個の環状の鎖に存在するプラスミドDNA又はMC DNAとは対照的である(図4A図4Bと比較)。
【0051】
ヘアピンの頂点(末端又はターン)の中の塩基は、この点で、DNA鎖にかかる配座的ストレスのために、塩基対を形成することができない場合がある。例えば、頂点の部分の頂点にある少なくとも2つの塩基対は塩基対を形成しない可能性があるが、正確な立体配座は、DNAが維持される条件及びヘアピン周囲の正確な配列に応じて、変動を受けやすい。したがって、2つ又はそれを超える塩基は、それらの相補的な性質にもかかわらず、関与する構造的なゆがみを考慮すると、対を形成することができない場合がある。ヘアピンの長さの中の非相補的塩基の一部「ゆらぎ」は、構造に影響を及ぼさない場合がある。ゆらぎは回文の切れ目であり得るが、配列は相補的なままであり得る。しかし、ヘアピンの配列は完全に自己相補的であることが好ましい。
【0052】
相補性は、配列(5’から3’)での各ポリヌクレオチドの塩基が、どのようにして、同じ鎖(内部相補配列)又は異なる鎖であり得る逆平行(3’から5’)鎖の相補的な塩基、AからT(又はU)及びCからGと水素結合対を形成するかを記載する。この定義は、本発明の任意の実施形態又は実施形態に適用される。ヘアピンの配列は、90%相補的、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、98%、99%又は100%相補的であることが好ましい。
【0053】
CEDTは、天然由来又は人工のいずれかの、二本鎖配列内の任意の配列を含み得る。それは、少なくとも1つのプロセシングより多いプロセシング酵素標的部位を含み得る。そのような標的配列は、DNAが場合により合成後にさらにプロセシングされることを可能にするためのものである。プロセシング酵素は、その標的部位を認識し、DNAをプロセシングする酵素である。プロセシング酵素標的配列は、制限酵素の標的配列であってもよい。制限酵素、すなわち制限エンドヌクレアーゼは、標的配列に結合し、特定の点で切断する。プロセシング酵素標的配列は、リコンビナーゼの標的であり得る。リコンビナーゼは、各リコンビナーゼに特異的な短い(30~40ヌクレオチド)標的部位配列間のDNA交換反応を指向的に触媒する。リコンビナーゼの例としては、Creリコンビナーゼ(標的配列としてloxPを有する)及びFLPリコンビナーゼ(短いフリッパーゼ認識標的(FRT)部位を有する)が挙げられる。プロセシング酵素標的配列は、phiC31インテグラーゼなどの部位特異的インテグラーゼの標的であり得る。
【0054】
プロセシング酵素標的配列は、CEDTがRNA合成の鋳型になるように、RNAポリメラーゼの標的配列であってもよい。この場合、プロセシング酵素標的化部位はプロモーター、好ましくは真核性プロモーターである。その目的のために、CEDTは、目的のRNA(例えば、tRNA)又はタンパク質を封入する配列に動作可能に連結された真核性プロモーター、及び場合により真核生物転写終結配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる発現カセットを含み得る。「プロモーター」は、ポリヌクレオチドの転写を開始及び調節するヌクレオチド配列である。「動作可能に連結された」は、そのように記載された成分がそれらの通常の機能を実行するように構成されるエレメントの配置を指す。したがって、核酸配列に動作可能に連結された所与のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合、その配列の発現を行うことができる。「動作可能に連結された」という用語は、転写複合体によるプロモーターエレメントの認識時に目的のDNA配列の転写の開始を可能にするプロモーターエレメント及び目的のDNA配列のいずれかの間隔又は配向を包含することを意図している。
【0055】
CEDT又はMCは、任意の適切な長さであってもよい。特に、CEDT又はMCは最大4kbであり得る。好ましくは、DNA鋳型は、100bp~2kb、200bp~1kb、最も好ましくは200bp~800bpであり得る。200bp以上のMC及びCEDTは、複数のACE-tRNAカセットコピーを収容することができる。これにより、各MC及びCEDTユニットからのより高次のACE-tRNA発現が可能になり得る。各ミニベクターからのACE-tRNAの複数のコピーを有することにより、各ユニットに1つ以上の配列を含めることが可能になる。例えば、ロイシンACE-tRNA及びトリプトファンACE-tRNAは、1つのMC又はCEDTミニベクターに含めることができる。これらのACE-tRNAの両方は、異なるtRNAアミノアシルシンセターゼを利用するので、突然変異W1282X-CFTRを救済又は抑制する際に嚢胞性線維症に有効であり、抑制活性を有意に増強することができる。
【0056】
閉じたDNA分子は、治療剤、すなわち、in vivoで遺伝子産物を発現するために使用することができるDNA医薬としての有用性を有する。これは、それらの共有結合的に閉じた構造がエキソヌクレアーゼなどの酵素による攻撃を防ぎ、露出したDNA末端を有する「開放型」DNA分子と比較して、遺伝子発現の安定性及び寿命が向上するためである。線状二本鎖開放型カセットは、宿主組織に導入した場合、遺伝子発現に関して非効率的であることが実証されている。これは、細胞外空間におけるエキソヌクレアーゼの作用によるカセットの不安定性に起因するとされてきた。
【0057】
共有結合的に閉じた構造の内側のDNA末端の配列決定には、他の利点もある。DNA末端がゲノムDNAと一体化するのが妨げられるため、閉じた線状DNA分子の安全性が向上する。また、閉じた線状構造は、宿主細胞の内側のDNA分子のコンカテマー化を防ぎ、したがって遺伝子産物の発現レベルをより高い感度で調節することができる。
【0058】
CEDTは、MCと同じ利点すべてを有するが、共有結合的に閉じた末端を有する線状DNAカセットトポロジを示す。CEDTは、その製造の容易さ、送達効率、低い病原性及び持続的発現のために、ワクチンを生成するための抗原の発現のためにin vivoで使用されてきた。CEDTは、GMPグレードで高い存在量で容易に完全に合成的に作製することができ、したがって迅速な設計及び製造を可能にするので、MCを越えるいくつかの利点を有する。
【0059】
CEDTは、当技術分野で公知の方法を使用して作製することができる。CEDTのセルフリー生産は、米国特許第9499847号明細書、米国特許第20190185924号明細書、国際公開第2010/086626号パンフレット及び国際公開第2012/017210号パンフレットに記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。本方法は、DNA鋳型を使用した各末端で共有結合的に閉じた線状二本鎖DNA(閉じた線状DNA)の生成に関し、DNA鋳型は少なくとも1つのプロテロメラーゼ認識配列を含み、鋳型は少なくとも1つのDNAポリメラーゼを使用して増幅され、プロテロメラーゼ酵素を使用して処理されて、閉じた線状DNAを生成する。閉じた線状DNAの閉端はそれぞれ、プロテロメラーゼ認識配列の一部を含む。閉じた線状DNAを鋳型として使用することは、列挙された用途に記載されており、そのような鋳型の使用は、製造中に最小限の量の試薬が浪費されることを意味するので有利である。これらの方法によって産生されるCEDT分子は、線状であり、二本鎖であり、プロテロメラーゼ認識配列の一部によって各末端で共有結合的に閉じられている。この線状状二本鎖DNA分子は、1つ以上のステムループモチーフを含むことができる。
【0060】
本明細書に開示されるように、一例では、本開示は、電場を使用した、MC及びCEDTミニベクターなどのACE-tRNA発現ミニベクターの肺への送達効率、並びにin vitro及びin vivoでの気道上皮細胞におけるPTCのACE-tRNA抑制の有効性及び持続性を評価する。ACE-tRNA遺伝子の小さなサイズ(約80nt)を利用して、本発明者らは、知る限りこれまでで最小の治療用発現ベクターの作製に成功した。
【0061】
有効なACE-tRNAのライブラリーが手元にあると、in vivoで最も有効な送達方法を判定することができる。本明細書に開示されるように、3つの最も一般的なCFナンセンス突然変異(p.G542X、p.W1282X及びp.R553X)を標的とするために、MC及びCEDTにおいてACE-tRNATrp UGA、ACE-tRNALeu UGA、ACE-tRNAGly UGA及びACE-tRNAArg UGAをコードすることができる。MC及びCEDT技術は、送達可能なプラットフォームとして、ここで実証されるナノ粒子、タンパク質複合体、及び電場を含む多数の送達方法と対にすることができる。MCミニベクター及びCEDTミニベクターは、それらを遺伝子治療に魅力的なものにするいくつかの特徴、すなわち(1)細胞内輸送中の障害を克服することを可能にし、したがってバイオアベイラビリティを改善する、劇的に減少したサイズ、(2)より高い細胞進入効率、(3)転写活性構造の保有、及び(4)ゲノムインテグレーションを伴わない持続的な導入遺伝子発現を有する:。
【0062】
設計構造
ミニベクター配列の設計は、発現効率及び持続性に重要な意味を有する。本明細書に開示されるように、本発明のミニベクター、MC又はCEDTのいずれかは、本明細書に記載されるようなtRNA発現カセットに加えて、いくつかの有利なエレメント及び/又は破壊を場合により含む。例としては、ACE-tRNA-バーコード化配列(ABS)、転写増強5’リーダー配列(TELS)及びDNA核標的配列(DTS)が挙げられる。
【0063】
1つの重要な特徴は、CpG配列含有量及びそのメチル化である。DNAメチル化及び転写に対するその影響は、広く研究されている。メチル化の欠如は、メチル化されたCpGアイランドが不活性X染色体上及び親インプリント遺伝子のサイレンシングされた対立遺伝子に見出される活性転写のための前提条件である。さらに、DNAのin vitroでのメチル化は遺伝子発現を阻害することが示されている。ACE-tRNA遺伝子は非常に小さく、平均して4つのCpG配列しか含まないので、本発明者らは、ACE-tRNA発現の持続性を高めるために、自らのミニベクターを、CpG配列をほとんど完全に欠いているように設計することができた。さらに、500bpsであっても、ACE-tRNA遺伝子は、全ペイロードのほんの一部だけ消費して、3’ABS、TELS、及びDTSを含む選択肢を残す。ABS、TELS及びDTSの実施態様は、以下の実施例6及び7に記載されている。
【0064】
PTCを効率的に抑制する能力は、PTCが存在する遺伝的環境によって意義深く支配される。したがって、ミニベクターから発現されるACE-tRNAの、培養中のヒト気道上皮などの標的細胞におけるPTCを抑制する効率を判定することが不可欠である。その目的のために、転写活性を増加させ、ミニベクターを核に標的化することによって、TELS及びDTSを使用して、in vivoでのACE-tRNA発現を増強することができる。
【0065】
TELS
ミニベクターからのACE-tRNAの発現の増加は、ACE-tRNAの治療有効性に対する送達効率の負荷を減少させ得る。真核生物tRNA遺伝子の転写が遺伝子内プロモーターエレメント(箱A及びB)によって指令されることは十分に確立されているが、5’フランキング配列領域も、おそらくpolIII転写複合体との相互作用を介してtRNA転写を顕著に調節する。そのような領域は、転写促進5’リーダー配列(TELS)として使用することができる。いくつかの例では、同一のコード配列を有するtRNA遺伝子は、転写を増加又は減少させる異なる5’フランキング配列を有する。さらに、5’フランキング配列は、組織発現特異性を調節すると考えられる。その目的のために、TELSとしてヒトtRNA Tyr5’リーダー配列(5’-AGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTC-3’、配列番号306)を使用することができる。
【0066】
図7Aは、5’リーダー配列を含めると、W1282X-CFTRに対するACE-tRNATrp UGAの抑制活性が5倍超増加することを示す。約416個のtRNA遺伝子がヒトゲノムにおいてアノテーションされている(tRNAscan-SE
database,Lowe et al.,Nucleic Acids Res 25,955-964,(1997))。416個すべてのtRNA遺伝子のtRNA5’フランキング配列(1kb)を、本発明のTELSとして使用することができる。
【0067】
DTS
DNA核標的配列又はDTSは、そうでなければ細胞質に局在化したDNAの核内導入を支えるのに必要なDNA配列又はDNA配列の反復である。ウイルスのプロモーター又は哺乳動物遺伝子のプロモーターに天然に存在するDNA配列は、非分裂細胞で発現され得る発現ベクターに導入遺伝子を含むDNAを組み込むことによって、それらのDNAの核侵入をもたらす。DTSの非限定的な例は、エンハンサーリピート(5’-atgctttgca tacttctgcc tgctggggag cctggggact ttccacaccc taactgacac acattccaca gctggttggt acctgca-3’、配列番号307)を含有するSV40ゲノムからのDNA配列である。このSV40 DTSは、プラスミドDNAの配列特異的DNA核導入を支えることが示されている(例えば、Dean et al.,Exp.Cell Res.253:713-722,1999)。本明細書に開示されているように、以下の例に記載されている方法で、追加のDTSを取得することができる。
【0068】
バーコード
本発明に記載されるミニベクターは、ACE-tRNA転写活性の直接的な測定を可能にする1つ又は複数のさらなるエレメントを含み得る。一例はバーコード配列である。
【0069】
mRNA、ノンコーディングRNA、マイクロRNA、核内低分子/核小体RNA及びrRNA165を分析するために、標準的なRNAシーケンシング(RNA-seq)法が使用されている。しかし、tRNAは、これらの標準的なRNA-seq法を実施することができない唯一の小型の細胞RNAのクラスである。直接的な方法を妨げる重大な障害には、ポリメラーゼ増幅に干渉する転写後修飾の存在、及びアダプターライゲーションをブロックする安定で広範な二次構造が含まれる。最近、これらの問題を回避するためにいくつかの方法が開発されているが、これらの手法は比較的複雑であり、コストが非常に高い。さらに、ACE-tRNA配列は、1つ又は複数の内因性のtRNAと1つのヌクレオチドのみが異なるので、ノーザンブロット、マイクロアレイ及び断片化RNA-seqは、外因性治療用ACE-tRNA及び内因性のtRNAの発現レベルを識別することができない。いくつかの最近の研究では、tRNAをプロモーターとして利用して、tRNA:sgRNA(Cas9単一ガイドRNA)融合転写物の高い発現レベルを駆動し、次いで、それを内因性のtRNase Zによって効率的かつ正確に切断する。
【0070】
本発明のミニベクターは、1つ以上のACE-tRNA-バーコード化配列又はABSを含み得る。ABSは、ベクターがACE-tRNA及びバーコードの融合転写物をコードするように、ACE-tRNAをコードする配列の3’又は5’にあり得る。一例では、バーコード配列は3’末端にあり、ミニベクターはACE-tRNA:バーコード融合転写物をコードし、バーコード配列は内因性のtRNase Zによって切断され、qPCR定量化を可能にして相対的なACE-tRNA発現を判定しながら、完全に機能的なACE-tRNAを得ることができる(図10A)。以下の実施例11に示すように、本発明者らは、マウスのゲノム配列と相同性のないランダムな200bpのバーコード配列を設計した。NLuc-UGAを安定して発現する16HBE14o-細胞にトランスフェクトされた場合、ACE-tRNAArg UGA-及びACE-tRNATrp UGA-バーコードは、qPCRによってモニターした場合にロバストな発現を示すが、非バーコード化ACE-tRNAは意義あるシグナルを与えなかった(図10B)。1つの場合では、ACE-tRNAArg UGAの抑制活性は、3’バーコード配列の存在によって妨げられ得るが、ACE-tRNA活性の欠損は、バーコード配列に対してプローブ探査されるノーザンブロットによって判定することができる3’プロセシングが不十分であるためである可能性が最も高い。そのような欠損は、その配列がバーコード又は改変させたバーコードリンカー配列としても作用して3’プロセシングを改善することができる3’肝炎デルタウイルス(HDV)自己切断リボザイムを使用することによって、修正することができる。3’リボザイムの組み込みは、改善されたACE-tRNAの3’プロセシングをもたらし、それらのPTC抑制活性を増加させ得る。さらに、ABS技術は、NLuc PTCレポーターを補完するためのACE-tRNA発現の測定を可能にする(図9)。
【0071】
本願の任意の実施形態では、本明細書に記載の核酸分子又はベクターは、場合により1つ以上のレポーター分子を含むことができる。レポーターは、細胞における発現が細胞に検出可能な形質を付与する分子である。様々な実施形態では、レポーターとしては、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシルトランスフェラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、NanoLuc(登録商標)、アルカリホスファターゼ、並びに緑色蛍光性タンパク質(例えば、GFP、TagGFP、T-Sapphire、Azami Green、Emerald、mWasabi、mClover3)、赤色蛍光性タンパク質(例えば、tdTomato、mRFPl、JRed、HcRedl、AsRed2、AQ143、mCherry、mRuby3、mPlum)、黄色蛍光性タンパク質(例えば、EYFP、mBanana、mCitrine、PhiYFP、TagYFP、Topaz、Venus)、橙色蛍光性タンパク質(例えば、DsRed、Tomato、Kusabria Orange、mOrange、mTangerine、TagRFP)、シアン蛍光性タンパク質(例えば、CFP、mTFPl、Cerulean、CyPet、AmCyanl)、青色蛍光性タンパク質(例えば、Azurite、mtagBFP2、EBFP、EBFP2、Y66H)、近赤外蛍光性タンパク質(例えば、iRFP670、iRFP682、iRFP702、iRFP713及びiRFP720)、赤外蛍光性タンパク質(例えば、IFP1.4)及び光活性化可能蛍光性タンパク質(例えば、Kaede、Eos、IrisFP、PS-CFP)を含むがこれらに限定されない蛍光性タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0072】
ACE-tRNAをコードする核酸の細胞への導入
外因性遺伝物質(例えば、1つ又は複数の治療用ACE-tRNAをコードする核酸又はミニベクター)を、遺伝子導入法、例えばトランスフェクション又は形質導入によってin vivoで目的の標的細胞に導入して、遺伝子改変細胞をもたらすことができる。様々な発現ベクター(すなわち、標的細胞への外因性遺伝物質の送達を促進するためのビヒクル)が当業者に公知である。本明細書で使用される場合、「外因性遺伝物質」は、天然又は合成のいずれかであり、細胞に天然には見られない核酸又はオリゴヌクレオチド、又はそれが細胞において天然に見出される場合、細胞によって生物学的に意味のあるレベルで転写又は発現されない核酸又はオリゴヌクレオチドを指す。したがって、「外因性遺伝物質」には、例えば、tRNAに転写され得る天然に存在しない核酸が含まれる。
【0073】
本明細書で使用されるとき、「細胞のトランスフェクション」とは、細胞によって、付加された核酸(DNA、RNA、又はそれらのハイブリッド)の組み込みによる新しい遺伝物質を獲得されることを指す。したがって、トランスフェクションとは、物理的又は化学的方法を用いた細胞への核酸の導入を指す。リン酸カルシウム核酸共沈殿、ストロンチウムホスフェート核酸共沈殿、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション及びタングステン粒子促進微小粒子ガンを含むいくつかのトランスフェクション技術が、当業者に公知である。対照的に、「細胞の形質導入」は、DNA又はRNAウイルスを使用して核酸を細胞に移入するプロセスを指す。核酸を細胞に移入するためのRNAウイルス(すなわち、レトロウイルス)は、本明細書では形質導入キメラレトロウイルスと呼ばれる。レトロウイルス内に含まれる外因性遺伝物質は、形質導入された細胞のゲノムに組み込まれる。キメラDNAウイルス(例えば、治療剤をコードするcDNAを有するアデノウイルス)で形質導入された細胞は、そのゲノムに組み込まれた外因性遺伝物質を有しないが、細胞内で染色体外に保持された外因性遺伝物質を発現することができる。
【0074】
典型的には、外因性遺伝物質は、新しい遺伝子の転写を制御するためのプロモーターと共に、異種遺伝子(治療用RNA又はタンパク質をコードする)を含む。プロモーターは、特徴的には、転写を開始するのに必要な特定のヌクレオチド配列を有する。場合により、外因性遺伝物質は、所望の遺伝子転写活性を得るために必要な追加の配列(すなわち、エンハンサー)をさらに含む。この論述の目的では、「エンハンサー」は、プロモーターによって指示される基底転写レベルを変化させるために(シスで)コード配列と近接するように作用する、単純に任意の非翻訳DNA配列である。外因性遺伝物質は、プロモーター及びコード配列がコード配列の転写を可能にするように動作可能に連結されたように、プロモーターのすぐ下流の細胞のゲノムに導入され得る。レトロウイルス発現ベクターは、挿入された外因性遺伝子の転写を制御するための外因性プロモーターのエレメントを含み得る。そのような外因性プロモーターには、構成的プロモーター及び誘導性プロモーターの両方が含まれる。
【0075】
天然に存在する構成的プロモーターは、必須の細胞の機能の発現を制御する。その結果、構成的プロモーターの制御下にある遺伝子は、細胞が増殖するあらゆる条件下で発現される。例示的な構成的プロモーターには、特定の構成的又は「ハウスキーピング」機能をコードする以下の遺伝子のためのプロモーターが含まれる、すなわちヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、アデノシンデアミナーゼ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセロールムターゼ、アクチンプロモーター、ユビキチン、伸長因子-1、及び当業者に公知の他の構成的プロモーターである。さらに、多くのウイルスプロモーターは、真核細胞において構成的に機能する。これらには、SV40の早期プロモーター及び後期プロモーター、数ある中でも、モロニー白血病ウイルス及び他のレトロウイルスの長末端反復配列(LTR)、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが含まれる。したがって、上記の構成的プロモーターのいずれかを使用して、異種遺伝子インサートの転写を制御することができる。
【0076】
誘導性プロモーターの制御下にある遺伝子は、誘導剤の存在下でのみ又はより高度に発現される(例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下での転写は、特定の金属イオンの存在下で大きく増加する)。誘導性プロモーターには、それらの誘導因子が結合したときに転写を刺激する応答性エレメント(RE)が含まれる。例えば、血清因子、ステロイドホルモン、レチノイン酸及びサイクリックAMPのREがある。誘導性応答を得るために、特定のREを含有するプロモーターを選択することができ、場合によっては、RE自体を異なるプロモーターに結合させ、それによって組換え遺伝子に誘導能を付与することができる。したがって、適切なプロモーターを選択することによって(構成的対誘導的、強対弱)、遺伝子改変細胞において治療剤の発現の存在及びレベルの両方を制御することが可能である。治療剤をコードする遺伝子が誘導性プロモーターの制御下にある場合、in situでの治療剤の送達は、遺伝子改変された細胞を、治療剤の転写を可能にする条件にin situで曝露することによって、例えば薬剤の転写を制御する誘導性プロモーターの特異的誘導因子の注入によって、誘発される。例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下にある遺伝子によってコードされる治療剤の遺伝子改変細胞によるin situ発現は、遺伝子改変細胞を適切な(すなわち、誘導する)金属イオンを含む溶液とin situで接触させることによって、増強される。
【0077】
したがって、in situで送達される治療剤の量は、(1)挿入された遺伝子の転写を指示するために使用されるプロモーターの性質、(すなわち、プロモーターが構成的であるか誘導性であるか、強いか弱いか)、(2)細胞に挿入される外因性遺伝子のコピー数、(3)患者に投与(例えば、移植)される形質導入/トランスフェクトされる細胞の数、(4)インプラントのサイズ(例えば、グラフト又はカプセル化発現システム)、(5)インプラント数、(6)形質導入/トランスフェクトされた細胞又はインプラントが所定の位置に残される時間の長さ、(7)遺伝子改変細胞による治療剤の産生速度などの因子を制御することによって調節される。特定の治療剤の治療有効用量の送達のためのこれらの因子の選択及び最適化は、上段に開示された因子及び患者の臨床プロファイルを考慮して、過度の実験なしに当業者の範囲内であると考えられる。
【0078】
少なくとも1つのプロモーター、及び治療剤をコードする少なくとも1つの異種核酸に加えて、発現ベクターは、発現ベクターでトランスフェクト又は形質導入された細胞の選択を容易にするための選択遺伝子、例えばネオマイシン耐性遺伝子を含み得る。あるいは、細胞は、2つ以上の発現ベクター、治療剤をコードする遺伝子を含む少なくとも1つのベクター、選択遺伝子を含む他のベクターでトランスフェクトされる。適切なプロモーター、エンハンサー、選択遺伝子及び/又はシグナル配列の選択は、過度の実験なしに、当業者の範囲内であると考えられる。
【0079】
本発明のACE-tRNAコンストラクトは、任意のタイプの標的細胞又は宿主細胞に挿入することができる。発現ベクターに関連して、ベクターは、当技術分野における任意の方法によって宿主細胞、例えば哺乳動物、細菌、酵母又は昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的又は生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。
【0080】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、パーティクルガン、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当技術分野で周知である。例えば、See,for example,Sambrook et al.を参照されたい(2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)。
【0081】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法には、DNA及びRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒトの細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号明細書、及び同第5,585,362号明細書を参照されたい。
【0082】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散体、及び水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。in vitro及びin vivoで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0083】
転写因子Aミトコンドリア(TFAM)などのDNA結合タンパク質の添加を使用して、DNAを凝縮し、電荷を遮蔽することができる。小さいサイズ及びコンパクトな形状のために、DNA:タンパク質(DNP)複合体は、次いで、細胞透過性ペプチド、PEG誘導体、リポソーム又はエレクトロポレーションによって細胞に送達され得る。いくつかの例では、DNA結合タンパク質は、DNAミニベクターが転写される細胞質から核へのDNPの能動的輸送のための核局在化シグナルをコードすることができる。
【0084】
非ウイルス送達システムが利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。宿主細胞(in vitro、エクスビボ又はin vivo)への核酸の導入のために、脂質製剤の使用が企図される。別の態様では、核酸は脂質と会合していてもよい。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化され得て、リポソームの脂質二重層の内部に散在し得て、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに付着し得て、リポソームに封入され得て、リポソームと複合体を形成し得て、脂質を含有する溶液に分散され得て、脂質と混合され得て、脂質と組み合わされ得て、脂質に懸濁液として含まれ得て、ミセルと含有若しくは複合体を形成し得て、又はそうでなければ脂質と会合し得る。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液のいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは、二重層構造、ミセルとして、又は「崩壊」構造で存在し得る。それらはまた、溶液に単に散在してもよく、場合によってはサイズ又は形状が均一でない凝集体を形成する。脂質は、天然に存在する脂質又は合成脂質であり得る脂肪物質である。例えば、脂質には、細胞質に天然に存在する脂肪滴、並びに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含有する化合物のクラスが含まれる。
【0085】
使用に適した脂質は、市販の供給源から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」は、Sigma、St.Louis、MOから入手することができ、ジセチルホスフェート(「DCP」は、K&K Laboratories(ニューヨーク州プレインビュー)から入手することができ、コレステロール(「Choi」は、Calbiochem-Behringから入手することができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(アラバマ州バーミンガム)から入手することができる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノールの脂質の保存溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは、メタノールよりも容易にエバポレートするので、唯一の溶媒として使用される。
【0086】
「リポソーム」は、封入された脂質二重層又は凝集体の生成によって形成された様々な単層及び多層脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部水性媒体を有するベシクル構造を有するものとして特徴付けることができる。多層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁されると自然に形成する。脂質成分は、閉じた構造の形成前に自己再配列を受け、脂質二重層の間に水及び溶解した溶質を捕捉する(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。しかし、溶液において通常のベシクル構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造をとるか、又は単に脂質分子の不均一な凝集体として存在し得る。リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0087】
本発明の核酸分子は、エレクトロポレーションを介して、例えば米国特許第7,664,545号明細書に記載されている方法によって投与することができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。エレクトロポレーションは、米国特許第6,302,874号明細書、同第5,676,646号明細書、同第6,241,701号明細書、同第6,233,482号明細書、同第6,216,034号明細書、同第6,208,893号明細書、同第6,192,270号明細書、同第6,181,964号明細書、同第6,150,148号明細書、同第6,120,493号明細書、同第6,096,020号明細書、同第6,068,650号明細書、及び同第その5,702,359号明細書に記載されている方法及び/又は装置によって行うことができ、それらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。エレクトロポレーションは、低侵襲性装置を介して実行されてもよい。
【0088】
低侵襲性エレクトロポレーション装置「MID」は、上述の組成物及び関連する流体を体組織に注入するための装置であり得る。装置は、中空針、DNAカセット、及び流体送達手段を含むことができ、装置は、使用中に流体送達手段を作動させて、針を前述の体組織に挿入する間にDNAを体組織に同時に(例えば、自動的に)注入するように適合される。これは、針が挿入されている間にDNA及び関連する流体を徐々に注入できることが、体組織を通る流体のより均一な分布をもたらすという利点を有する。注入中に経験する痛みは、注入されるDNAの分布がより広い領域にわたるために軽減され得る。
【0089】
MIDは、針を使用せずに組織に組成物を注入してもよい。MIDは、組成物が組織の表面を穿刺し、下にある組織及び/又は筋肉に入るような力で、組成物を小さな流れ又はジェットとして注入することができる。小さな流れ又はジェットの背後の力は、数分の1秒以内にマイクロオリフィスを通る二酸化炭素などの圧縮ガスの膨張によって供給され得る。低侵襲性エレクトロポレーション装置及びそれらを使用する方法の例は、公開された米国特許出願公開第20080234655号明細書、米国特許第6,520,950号明細書、米国特許第7,171,264号明細書、米国特許第6,208,893号明細書、米国特許第6,009,347号明細書、米国特許第6,120,493号明細書、米国特許第7,245,963号明細書、米国特許第7,328,064号明細書、及び米国特許第6,763,264号明細書に記載されており、これらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。MIDは、組織を痛みなく穿刺する液体の高速ジェットを生成する注入器を備えることができる。このような無針注入器は市販されている。本明細書で利用することができる無針注入器の例には、米国特許第3,805,783号明細書、同第4,447,223号明細書、同第5,505,697号明細書、及び同第4,342,310号明細書に記載されているものが含まれ、これらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0090】
直接的又は間接的な電気輸送に適した形態の所望の組成物は、通常、組織への組成物の浸透を引き起こすのに十分な力で薬剤のジェットの送達を作動させるように組織表面を注入器と接触させることによって、無針注入器を使用して治療される組織に導入(例えば、注入)され得る。例えば、治療すべき組織が粘膜、皮膚又は筋肉である場合、作用物質は、作用物質を角質層を通って真皮層に、又はその下の組織及び筋肉にそれぞれ浸透させるのに十分な力で、粘膜又は皮膚表面に向かって投射される。
【0091】
無針注入器は、あらゆる種類の組織、特に皮膚及び粘膜に組成物を送達するのによく適合している。いくつかの実施形態では、無針注入器を使用して、組成物を含有する液体を対象の皮膚又は粘膜の表面及び中に推進することができる。本発明の方法を用いて治療することができる様々な種類の組織の代表的な例としては、膵臓、喉頭、鼻咽頭、下咽頭、中咽頭、唇、喉、肺、心臓、腎臓、筋肉、乳房、結腸、前立腺、胸腺、精巣、皮膚、粘膜組織、卵巣、血管、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0092】
MIDは、組織をエレクトロポレーションする針電極を有し得る。例えば矩形又は正方形のパターンで設定された、複数の電極アレイの複数の電極対間をパルス化することにより、一対の電極間のパルス化よりも改善された結果が得られる。例えば、「Needle Electrodes for Mediated Delivery of Drugs and Genes」と題する米国特許第5,702,359号明細書には、針のアレイが開示されており、療法の治療中、複数対の針にパルスをかけることができる。完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれるその出願では、針は円形アレイに配置されたが、針電極の対向する対の間でのパルス発生を可能にするコネクタ及びスイッチング装置を有する。組換え発現ベクターを細胞に送達するための一対の針電極を使用することができる。そのような装置及びシステムは、米国特許第6,763,264号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、DNAの注入及び通常の注入針に似た単針によるエレクトロポレーションを可能にし、現在使用されている装置によって送達されるものよりも低い電圧のパルスを適用し、したがって患者が経験する電気感覚を低減する単針装置を使用することができる。
【0093】
MIDは、1つ以上の電極アレイを備え得る。アレイは、同じ直径又は異なる直径の2つ以上の針を備え得る。針は、均等又は不均等に離間し得る。針は、0.005インチ~0.03インチ、0.01インチ~0.025インチ、又は0.015インチ~0.020インチの間であってもよい。針は、直径0.0175インチであってもよい。針は、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、又はそれ以上離間していてもよい。
【0094】
MIDは、パルス発生器と、単一のステップで組成物及びエレクトロポレーションパルスを送達する2つ以上の針組成物注入器とからなってもよい。パルス発生器は、フラッシュカードで動作するパーソナルコンピュータを介したパルス及び注入パラメータの柔軟なプログラミング、並びにエレクトロポレーション及び患者のデータの包括的な記録及び記憶を可能にすることができる。パルス発生器は、短期間中に様々なボルトパルスを送達することができる。例えば、パルス発生器は、持続時間が100msの3つの15ボルトのパルスを送達することができる。そのようなMIDの例は、米国特許第7,328,064号明細書に記載されているELGEN1000システムであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0095】
MIDは、身体又は植物の選択された組織の細胞へDNAなどの高分子を導入するのを容易にするモジュール式電極システムであるCELLECTRA(INOVIO Pharmaceuticals)の装置及びシステムであり得る。モジュール式電極システムは、複数の針電極、皮下注入針、プログラマブル定電流パルスコントローラから複数の針電極への導電リンクをもたらす電気コネクタ、及び電源を備えることができる。オペレータは、支持構造体に取り付けられた複数の針電極を把持し、それらを身体又は植物の選択された組織にしっかりと挿入することができる。次いで、高分子が、皮下注入針を介して選択された組織に送達される。プログラマブル定電流パルスコントローラが起動され、定電流電気パルスが複数の針電極に印加される。印加された定電流電気パルスは、複数の電極間の細胞内へ高分子を導入するのを容易にする。細胞の過熱による細胞死は、定電流パルスによって組織での電力散逸を制限することによって、最小限に抑えられる。Cellectra装置及びシステムは米国特許第7,245,963号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。MIDは、ELGEN1000システム(INOVIO Pharmaceuticals)であり得る。ELGEN1000システムは、中空針及び流体送達手段を設ける装置を備え得て、装置は、使用中の流体送達手段を作動させて、針を体組織に挿入する間に、本明細書に記載の組成物である流体を前述の体組織に同時に(例えば自動的に)注入するように適合される。利点は、針が挿入されている間に流体を徐々に注入できることが、体組織を通る流体のより均一な分布をもたらすということである。注入中に経験される痛みは、流体の注入される体積の分布がより広い領域にわたるために軽減されるとも考えられる。
【0096】
さらに、流体の自動的な注入は、注入された流体の実際の用量の自動的な監視及び登録を容易にする。このデータは、必要に応じて、文書化の目的で制御ユニットによって記憶することができる。
【0097】
注入速度は線形又は非線形のいずれかであり得、針が治療される対象の皮膚を通して挿入された後、及び腫瘍組織、皮膚、組織、肝臓組織、及び筋肉組織などの体組織にさらに挿入されている間に、注入が実行され得ることが理解されよう。
【0098】
装置は、体組織への針の挿入を誘導するための針挿入手段をさらに備える。流体注入の速度は、針の挿入速度によって制御される。これは、針の挿入及び流体の注入の両方を、挿入速度を所望の注入速度に一致させることができるように制御することができるという利点を有する。これはまた、ユーザが装置を操作しやすくする。必要に応じて、体組織内に針を自動的に挿入するための手段を設けることができる。
【0099】
ユーザは、流体の注入をいつ開始するかを選択することができる。しかし、理想的には、針の先端が筋肉組織に到達したときに注入が開始され、装置は、流体の注入を開始するのに十分な深さまで針が挿入されたときを感知するための手段を含むことができる。これは、針が所望の深さ(通常は筋組織が始まる深さである)に達したときに流体の注入を自動的に開始するように促すことができることを意味する。筋組織が始まる深さは、例えば、針が皮膚の層を通過するのに十分であると考えられる4mmの値などの、予め設定された針の挿入の深さと解釈することができる。
【0100】
感知手段は、超音波プローブを備えることができる。感知手段は、インピーダンス又は抵抗の変化を感知するための手段を備えることができる。この場合、手段は、そのように体組織内の針の深さを記録するのではなく、むしろ、針が異なるタイプの体組織から筋肉内に移動する際のインピーダンス又は抵抗の変化を感知するように適合される。これらの代替形態のいずれも、注入が開始され得ることを感知する比較的正確で操作が簡単な手段を提供する。針の挿入する深さは、必要に応じてさらに記録することができ、針の挿入する深さが記録されているときに注入される流体の量が判定されるように流体の注入を制御するために使用することができる。
【0101】
装置は、針を支持するためのベース、及びベースを内部に受け入れるためのハウジングをさらに備えることができ、ベースは、ベースがハウジングに対して第1の後方位置にあるときに針がハウジング内に引き込まれ、ベースがハウジング内の第2の前方位置にあるときに針がハウジングから延出するように、ハウジングに対して移動可能である。これは、ハウジングを患者の皮膚に整列させることができ、その後、ハウジングをベースに対して移動させることによって針を患者の皮膚に挿入することができるため、ユーザにとって有利である。
【0102】
上述のように、流体が皮膚に挿入されるときに針の長さにわたって均一に分配されるように、制御された速度の流体の注入を達成することが望ましい。流体送達手段は、制御された速度で流体を注入するように適合されたピストン駆動手段を備えることができる。ピストン駆動手段は、例えば、サーボモータによって作動させることができる。しかし、ピストン駆動手段は、ベースがハウジングに対して軸方向に移動することによって作動されてもよい。流体送達のための代替手段を設け得ることが理解されよう。したがって、例えば、制御された速度又は制御されていない速度で流体送達のために圧迫することができる密閉容器を、シリンジ及びピストンシステムの代わりに設けることができる。
【0103】
上述の装置は、任意のタイプの注入に使用することができる。しかし、エレクトロポレーションの分野において特に有用であることが想定され、したがって、針に電圧を印加するための手段をさらに備えることができる。これにより、針を注入のためだけでなく、エレクトロポレーション中の電極としても使用することができる。これは、電界が、注入された流体と同じ領域に印加されることを意味するので、特に有利である。従来、エレクトロポレーションには、電極を以前に注入された流体と正確に位置合わせすることが非常に困難であるという問題があり、そのため、ユーザは、より大きな領域にわたって必要とされるよりも大量の流体を注入し、注入された物質と電界との間の重なりを保証しようとするためにより高い領域にわたって電界を印加する傾向があった。本発明を使用すると、電界と流体との間の良好な適合を達成しながら、注入される流体の体積及び印加される電界のサイズの両方を低減することができる。
【0104】
外因性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞に組換え核酸配列が存在することを確認するために、様々なアッセイが実施され得る。そのようなアッセイとしては、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンブロット及びノーザンブロット、RT-PCR及びPCR、例えば免疫学的手段(ELISA及びウエスタンブロット)又は当業者に公知の他のアッセイによって、特定のペプチドの存在又は非存在を検出するなどの「生化学的」アッセイが挙げられる。
【0105】
一実施形態では、本発明は、ヒトナンセンスCF細胞培養モデルにおけるCFTRmRNA発現及びチャネル機能を救済するための、MC及びCEDTをコードするACE-tRNAの有効性を記載する。例えば、MC及びCEDTをコードするACE-tRNAをpに送達した後、p.G542X、p.R1162X、p.W1282X 16HBE14oe-細胞、NMDからのCFTR mRNA発現のレスキューをqPCRによって判定し、CFTR機能をUssingチャンバー記録によって評価する。また、(1)転写増強5’リーダー配列(TELS)のライブラリーを使用してACE-tRNA発現を増加させること、及び(2)DNAターゲティング配列(DTS)のライブラリーを使用して核ターゲティング及び転写バイオアベイラビリティを増加させることを含む、いくつかの方法によってミニベクター治療能力を増強することも開示される。
【0106】
したがって、本発明のDNAミニベクター(MC又はCEDTのいずれか)は、プロモーター及びアンチコドン編集tRNAをコードする核酸配列を含む。DNAミニベクターは、TELS、DTS、ABS及びレポーター核酸配列からなる群から選択される1つ又は2つ又は3つ又は4つのDNA配列をさらに含む。
【0107】
一実施形態では、DNAミニベクターは、プロモーター、アンチコドン編集tRNAをコードする配列、及びTELSを含む。
【0108】
一実施形態では、DNAミニベクターは、プロモーター、アンチコドン編集tRNAをコードする配列、TELS及びDTSを含む。
【0109】
一実施形態では、DNAミニベクターは、プロモーター、アンチコドン編集tRNAをコードする配列、TELS、DTS及びABSを含む。
【0110】
一実施形態では、DNAミニベクターは、プロモーター、アンチコドン編集tRNAをコードする配列、TELS、DTS、ABS及びレポーター配列を含む。
【0111】
本明細書に記載のDNAミニベクターのいずれかにおいて、DNAミニベクターはMCである。
【0112】
本明細書に記載のDNAミニベクターのいずれかにおいて、DNAミニベクターはCEDTである。
【0113】
別の実施形態では、本発明は、p.G542X-CFTR及びp.W1282X-CFTRマウスの気道上皮におけるプラスミド、MC及びCEDTSをコードするACE-tRNAによるナンセンス抑制の有効性及び持続性を記載する。cDNAプラスミドMC及びCEDTを発現するACE-tRNAを、電場を使用し、野生型p.G542X-CFTR及びp.W1282X-CFTRマウスの肺に送達することができる。定常状態のCFTRmRNAの発現は、免疫蛍光法(IF)及びウエスタンブロット(WB)によってqPCR及びCFTRタンパク質によって測定することができる。ベクターの細胞特異的送達は、解剖された肺セグメントにおける蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によって判定することができる。エンドポイントは、単回送達後42日まで評価することができる。ベクターからのACE-tRNA発現の持続性は、7日、14日及び1、2、6及び12ヶ月でのPTCレポーターベクターのその後の送達及びACE-tRNAバーコード配列のqPCRによって野生型マウスの肺において定量することができる。
【0114】
さらに別の実施形態では、本発明は、他のより大きな実験動物の肺への送達後のMC及びCEDTにコードされるACE-tRNAの効率及び持続性を記載する。野生型動物は、電場パルスによってMC及びCEDTを受け取ることができる。ACE-tRNA発現の持続性及び送達の肺マッピングを、PTCレポーターベクターのその後の送達、並びに蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)及び免疫蛍光(IF)と対になったACE-tRNAバーコード配列のqPCRによって6ヶ月まで判定することができる。
【0115】
疾患の状態及び治療方法
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載の治療剤(例えば、ACE-tRNA)をコードするベクターを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物(ヒトなど)におけるPTCに関連する疾患又は障害を治療する方法を提供する。本開示の特定の実施形態は、哺乳動物において疾患を治療するのに有用な医薬品を調製するための、本明細書に記載の治療剤又は治療剤をコードするベクターの使用を提供する。
【0116】
PTCに関連する疾患又は障害には、ジストロフィン中のPTCによるデュシェンヌ型筋ジストロフィー及びベッカー型筋ジストロフィー、RBI中のPTCによる網膜芽細胞腫、NF1又はNF2中のPTCによる神経線維腫症、ATM中のPTCによる毛細管拡張性運動失調、HEXA中のPTCによるテイ・サックス病、CFTR中のPTCによる嚢胞性線維症、WT1中のPTCによるウィルムス腫瘍、第VIII因子中のPTCによる血友病A、第IX因子中のPTCによる血友病B、p53中のPTCによるp53関連がん、メンケス病、ウルリッヒ病、ベータグロビン中のPTCによるβサラセミア、ウィルブランド因子中のPTCによる2A型及び3型フォン・ヴィレブランド病、ロビノウ症候群短指症B型(指及び中手骨の短縮)、IFNGR1におけるPTCに起因するマイコバクテリア感染に対する遺伝的感受性、CRXにおけるPTCに起因する遺伝性網膜疾患、凝固因子XにおけるPTCに起因する遺伝性出血傾向、ロドプシンにおけるPTCに起因する遺伝性失明、SOX10におけるPTCに起因する先天性神経感覚消失及び結腸無神経変性、並びにSOX10におけるPTCに起因する神経感覚消失、結腸無神経変性、末梢神経障害及び中枢性ミエリン形成異常性白質ジストロフィーを含む遺伝性神経発達障害、リドル症候群、色素性乾皮症、ファンコーニ貧血、貧血、甲状腺機能低下症、p53関連(例えば、p53扁平上皮癌、p53肝細胞癌、p53卵巣癌)、食道癌、骨癌、卵巣癌、肝細胞癌、乳癌、肝細胞癌、線維性組織球腫、卵巣癌、SRY性転換、トリオースリン酸イソメラーゼ貧血、糖尿病及びくる病、その他多数のバリアントが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態における本発明は、本発明のACE-tRNAの導入によってナンセンス突然変異に関連する、存在する突然変異の効果を逆転させることによって、嚢胞性線維症を治療するための組成物及び方法を含む。さらなる障害には、ハーラー症候群、ドラベ症候群、脊髄性筋ジストロフィー、アッシャー症候群、無虹彩症、コロイデレミア、眼性コロボマ、網膜色素変性症、栄養障害性表皮水疱症、シュードキサントーマ・エラスチカム、アラジール症候群、ワールデンブルグ・シャー、乳児神経セロイドリポフスチン症、シスチノーシス、X連鎖腎性尿崩症及び多発性嚢胞腎疾患が含まれる。
【0117】
本明細書に記載のDNA分子及び方法によって治療することができるPTCに関連する疾患又は障害には、いくつかの眼疾患も含まれる。特定の変異を有する疾患及び遺伝子の例としては、以下のものが挙げられる。
錐体ジストロフィー(シュタルガルト病(STGD1)、錐体杆体ジストロフィー、網膜色素変性症(RP)、及び加齢黄斑変性に対する感受性の増加):KCNV2 Glu143X、KCNV2 Glu306X、KCNV2 Gln76X、KCNV2 Glu148X、CACNA2D4、Tyr802X、CACNA2D4、Arg628X、RP2、Arg120X、Rho、Ser334X、Rpe65、Arg44X、PDE6A、Lys455X;
先天性停止性夜盲2(CSNB2):CACNA1F、Arg958X、CACNA1F、Arg830X
先天性停止性夜盲1(CSNB1):TRPM1、Gln11X、TRPM1、Lys294X、TRPM1、Arg977X、TRPM1、Ser882X、NYX、W350X
ベスト病又は、BVMD、BEST1、Tyr29X、BEST1、Arg200X、BEST1、Ser517X
レーバー先天性黒内障(LCA):KCNJ13、Trp53X、KCNJ13、Arg166X、CEP290、Arg151X、CEP290、Gly1890X、CEP290、Lys1575X、CEP290、Arg1271X、CEP290、Arg1782X、CRB1、Cys1332X、GUCY2D、Ser448X、GUCY2D、Arg41091X、LCA5、Gln279X、RDH12、Tyr194X、RDH12、Glu275X、SPATA7、Arg108X、TULP1、Gln301X;
アッシャー症候群1:USH1C、Arg31X、PCDH15、Arg3X、PCDH15、Arg245X、PCDH15、Arg643X、PCDH15、Arg929X、IQCB1、Arg461X、IQCB1、Arg489X、PDE6A、Gln69X、ALMS1、Ser999X、ALMS1、Arg3804X;
無虹彩症:Pax6、Gly194X
眼コロボマ:Pax2、Arg139X、Lamb1、Arg524X
コロイデレミア:REP1、Gln32X
【0118】
一態様によれば、哺乳動物レシピエントにおいて治療剤を発現させるための細胞発現システムが提供される。発現システム(本明細書では、「遺伝子組換え細胞」とも呼ばれる)は、細胞と、治療剤を発現させるための発現ベクターとを含む。発現ベクターには、ウイルス、プラスミド、及び異種遺伝物質を細胞に送達するための他のビヒクルが含まれるが、これらに限定されない。したがって、本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、異種遺伝物質を細胞に送達するためのビヒクルを指す。特に、発現ベクターはCEDT又はMCミニベクターである。発現ベクターの他の例としては、組換えアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、又はレンチウイルス若しくはレトロウイルスベクターが挙げられる。
【0119】
発現ベクターは、異種遺伝子の転写を制御するためのプロモーターをさらに含む。プロモーターは、誘導性プロモーターであり得る。発現システムは、哺乳動物レシピエントへの投与に適合している。発現システムは、複数の不死化されていない遺伝子改変細胞を含み得、各細胞は、少なくとも1つの治療剤をコードする少なくとも1つの組換え遺伝子を含む。
【0120】
細胞発現システムは、in vivoで形成され得る。さらに別の態様によれば、哺乳動物レシピエントをin vivoで治療するための方法が提供される。この方法は、異種遺伝子産物を発現させるための発現ベクターを、例えば静脈内投与によって、in situで患者の細胞に導入することを含む。in vivoで発現システムを形成するために、治療剤を発現させるための発現ベクターをin vivoで哺乳動物レシピエントに静注で導入する。
【0121】
さらに別の態様によれば、哺乳動物レシピエントをin vivoで治療するための方法が提供される。この方法は、標的治療剤をin vivoで患者に導入することを含む。異種遺伝子を発現させるための発現ベクターは、異種遺伝子産物の転写を制御するための誘導性プロモーターを含み得る。したがって、in situでの治療剤の送達は、細胞を、異種遺伝子の転写を誘導する条件にin situで曝露することによって制御される。
【0122】
本開示は、ACE-tRNAをコードする発現ベクターを細胞又は患者に投与することによって、対象(例えば、哺乳動物)の疾患を治療する方法を提供する。遺伝子治療の方法について、分子生物学及び遺伝子治療の当業者は、過度の実験をすることなく、本開示の新規方法で使用される発現ベクターの適切な投与量及び投与経路を判定することができるであろう。
【0123】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される作用物質及び方法は、PTCによって引き起こされる疾患の治療/管理のために使用され得る。例としては、デュシェンヌ-ベッカー型筋ジストロフィー、網膜芽細胞腫、神経線維腫症、毛細血管拡張性運動失調症、テイ・サックス病、嚢胞性線維症、ウィルムス腫瘍、血友病A、血友病B、メンケス病、ウルリッヒ病、βサラセミア、2A型及び3型フォン・ヴィレブランド病、ロビノウ症候群、短指症B型(指及び中手骨の短縮)、マイコバクテリア感染に対する遺伝的感受性、遺伝性網膜疾患、遺伝性出血傾向、遺伝性失明、先天性神経感覚消失及び結腸無神経変性、並びに神経感覚消失、結腸無神経変性、末梢神経障害及び中枢性ミエリン形成異常性白質ジストロフィーを含む遺伝性神経発達障害、リドル症候群、色素性乾皮症、ファンコーニ貧血、貧血、甲状腺機能低下症、p53関連がん(例えば、p53扁平上皮癌、p53肝細胞癌、p53卵巣癌)、食道癌、骨癌、卵巣癌、肝細胞癌、乳癌、肝細胞癌、線維性組織球腫、卵巣癌、SRY性転換、トリオースリン酸イソメラーゼ貧血、糖尿病及びくる病、その他多数の変異体が含まれるが、これらに限定されない。この治療法は、改良された終止コドン抑制特異性をもたらすという点で有利である。本発明の治療用ACE-tRNAは、特定の終止コドン、例えばTGAを標的とし、したがって、疾患に無関係な終止コドンでのオフターゲット効果を減少させる。本療法はまた、アミノ酸特異性をもたらすという点で有利である。発現されたtRNAは、疾患終止コドンの挿入によって失われたアミノ酸を特異的に置換するように操作され、したがってタンパク質の安定性、折り畳み及び輸送に対するいかなる偽の影響も打ち消される。
【0124】
特定の実施形態では、本システムはモジュール式であり、したがってあらゆる可能性のある疾患PTCに「パーソナル化」することができる。例えば、Trpシンテターゼによって認識されるヒトゲノムには9つの個々のトリプトファンtRNAが存在し、それらのすべてがmRNA UGGコドンを抑制する。したがって、これらの9つのTrp tRNAのそれぞれは、コドン再編集耐性(UGG→UGA)の機会を提供する。さらに、遺伝暗号中の終止コドンに近接していることを考えると、アルギニンコドンのPTCナンセンスコドンへの変異は疾患において一般的である。コドン編集耐性及び抑制の有効性について試験することができる30を超えるArg tRNAが存在する。アルギニンをコードするACE-tRNAは、遺伝子にかかわらず、すべてのArg→PTC変異に対して実行可能な治療薬である。実際、LCAの35%はナンセンス突然変異によって引き起こされ、その大部分は終止するアルギニンである。本発明のさらなる利点は、システム全体(tRNA+プロモーター配列)がコンパクトであるため、容易な発現及び細胞特異的送達を提供することである。
【0125】
製剤
本発明に従って産生されたベクター又は別の形態のDNAが十分な量で生成及び精製されると、本発明の方法は、DNA組成物、例えば治療用DNA組成物としてのその製剤をさらに含み得る。治療用DNA組成物は、上記の種類の治療用DNA分子を含む。そのような組成物は、所望の経路による投与に適合した形態の治療的有効量のDNA、例えば、経口、粘膜又は局所投与に適したエアロゾル、注入可能な組成物又は製剤を含むことができる。
【0126】
従来の薬学的調製物としてのDNAの製剤化は、当業者に利用可能な標準的な薬学的製剤化学及び方法論を使用して行うことができる。任意の薬学的に許容される担体又は添加物が使用され得る。湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が添加物又はビヒクル中に存在してもよい。これらの添加物、ビヒクル及び補助物質は、一般に、過度の毒性なしに投与することができ、ワクチン組成物の場合、組成物を受けている個体において免疫応答を誘導しない医薬剤である。適切な担体はリポソームであり得る。
【0127】
薬学的に許容される添加物には、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロール及びエタノールなどの液体が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ホスフェート、硫酸塩などの鉱酸塩、及び酢酸塩、プロピオナート、マロン酸塩、ベンゾエートなどの有機酸の塩も含まれ得る。必須ではないが、調製物が組成物に含まれる場合、特にペプチド、タンパク質又は他の同様の分子のための安定剤として働く薬学的に許容される添加物を含むことも好ましい。ペプチドの安定剤としても作用する適切な担体の例としては、限定されないが、医薬グレードのデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストランなどが挙げられる。他の適切な担体としては、やはり限定されないが、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウム又はリン酸カルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。薬学的に許容される添加物、ビヒクル及び補助物質の完全な考察は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.,N.J.1991)で入手でき、参照により本明細書に取込まれる。
【0128】
本発明の薬剤(例えば、ミニベクター)は、遺伝性疾患(例えば、嚢胞性線維症)に関連する少なくとも1つの症状の軽減をもたらすように投与することができる。投与される量は、選択される組成物、特定の疾患、体重、身体状態、及び対象の年齢、並びに予防又は治療が達成されるべきかどうかを含むがこれらに限定されない様々な要因に応じて変化する。そのような因子は、動物モデル又は当技術分野で周知の他の試験系を使用する臨床医によって容易に判定することができる。
【0129】
本発明は、本発明に開示される薬剤、例えばACE-tRNA又は発現ベクターの投与によってPTCに関連する疾患又は障害を治療することを想定している。本発明による治療剤の投与は、例えば、レシピエントの生理的状態、投与の目的が治療的であるか予防的であるか、及び当業者に公知の他の因子に応じて、連続的又は断続的であり得る。本発明の薬剤の投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であってもよく、又は一連の間隔を空けた用量であってもよい。局所投与及び全身投与の両方が企図される。
【0130】
本発明の治療剤(1つ又は複数)を有する1つ又は複数の適切な単位投与形態は、後述するように、場合により持続放出のために製剤化することができ(例えば、マイクロカプセル化を使用して)、静脈内及び筋肉内経路を含む非経口を含む様々な経路によって、並びに疾患組織への直接注入によって投与することができる。製剤は、適切な場合には、別個の単位投与形態で簡便には提示され得、薬学的に周知の方法のいずれかによって調製され得る。そのような方法は、治療剤を液体担体、固体マトリックス、半固体担体、微粉固体担体又はそれらの組み合わせと会合させ、次いで、必要に応じて、産生物を所望の送達システムに導入又は成形するステップを含み得る。
【0131】
本発明の治療剤を投与のために調製する場合、それらを薬学的に許容される担体、希釈剤又は添加物と組み合わせて薬学的製剤又は単位投与形態を形成することができる。そのような製剤中の全活性成分は、製剤の0.1~99.9重量%を含む。薬学的に許容される担体は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに有害ではない担体、希釈剤、添加物及び/又は塩であり得る。投与のための有効成分は、粉末又は顆粒として溶液、懸濁液又はエマルジョンとして、存在し得る。
【0132】
本発明の治療剤を含有する薬学的製剤は、周知の容易に入手可能な成分を使用して、当技術分野で公知の手順によって調製することができる。本発明の治療剤はまた、例えば筋肉内、皮下又は静脈内経路による非経口投与に適切な溶液として製剤化することができる。本発明の治療剤の薬学的製剤はまた、水性若しくは無水の溶液若しくは分散体の形態、又は代替的にエマルジョン若しくは懸濁液の形態をとることができる。
【0133】
したがって、治療剤は、非経口投与(例えば、注入、例えばボーラス注入又は連続的注入による)のために製剤化されてもよく、アンプル、プレフィルドシリンジ、小容量点滴容器、又は防腐剤が添加された複数回投与容器に単位用量形態で提供されてもよい。活性成分は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンなどの形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合剤を含有することができる。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水で構成するために、滅菌固体の無菌の単離又は溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態であってもよい。
【0134】
各剤形の個々のエアロゾル用量に含まれる1つ又は複数の活性成分の単位含有量は、複数の剤形の投与によって必要な有効量に達することができるので、それ自体が特定の適応症又は疾患を治療するための有効量を構成する必要はないことが理解されよう。さらに、有効量は、個別に、又は一連の投与のいずれかで、剤形の用量より少なく使用して達成され得る。
【0135】
本発明の薬学的製剤は、任意の成分として、薬学的に許容される担体、希釈剤、可溶化剤又は乳化剤、及び当技術分野で周知の種類の塩を含み得る。本発明の薬学的製剤に有用な担体及び/又は希釈剤の具体的な非限定的な例としては、水及び生理的に許容される緩衝生理食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水pH7.0~8.0及び水が挙げられる。
【0136】
ナノ粒子組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される薬学的組成物は、国際公開第2020263883号、国際公開第2013123523号パンフレット、国際公開第2012170930号パンフレット、国際公開第2011127255号パンフレット、及び国際公開第2008103276号パンフレット、並びに米国特許出願公開第20130171646号明細書に記載されているものなどの脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化されており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがって、本開示は、(i)送達剤を含む脂質組成物、及び(ii)少なくとも1つの核酸、例えばACE-tRNA又はACE-tRNAをコードするDNA、例えばMC又はCEDTを含むナノ粒子組成物を提供する。そのようなナノ粒子組成物では、本明細書に開示される脂質組成物は、核酸をカプセル化することができる。
【0137】
ナノ粒子組成物は、典型的にはマイクロメートル以下程度のサイズであり、脂質二重層を含むことができる。ナノ粒子組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム(例えば、脂質ベシクル)、及びリポプレックスを包含する。例えば、ナノ粒子組成物は、500nm以下の直径を有する脂質二重層を有するリポソームであり得る。
【0138】
ナノ粒子組成物には、例えば、脂質ナノ粒子、リポソーム、及びリポプレックスが含まれる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、1つ以上の脂質二重層を含むベシクルである。特定の実施形態では、ナノ粒子組成物は、水性区画によって分離された2つ以上の同心二重層を含む。脂質二重層は、互いに官能化及び/又は架橋され得る。脂質二重層は、1つ以上のリガンド、タンパク質、又はチャネルを含むことができる。
【0139】
一実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質、構造脂質、リン脂質、及び目的の核酸を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、イオン化可能な脂質、PEG修飾脂質、ステロール及び構造脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約20~60%のイオン化可能な脂質、約5~25%の構造脂質、約25~55%のステロール、及び約0.5~15%のPEG修飾脂質のモル比を有する。
【0140】
いくつかの実施形態では、LNPは、0.4未満の多分散性値を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、中性pHで正味の中性電荷を有する。いくつかの実施形態では、LNPは50~150nmの平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは80~100nmの平均直径を有する。
【0141】
本明細書全体で定義されるように、「脂質」という用語は、疎水性又は両親媒性特性を有する小分子を指す。脂質は、天然に存在するものであってもよく、又は合成のものであってもよい。脂質のクラスの例としては、脂肪、ワックス、ステロール含有代謝産物、ビタミン、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質及びポリケチド、並びにプレノール脂質が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、いくつかの脂質の両親媒性により、それらは水性媒体中でリポソーム、ベシクル又は膜を形成する。
【0142】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質を含み得る。本明細書で使用される場合、「イオン化可能な脂質」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味を有し、1つ以上の荷電した部分を含む脂質を指し得る。いくつかの実施形態では、イオン化可能な脂質は、正に荷電していても負に荷電していてもよい。イオン化可能な脂質は正に荷電していてもよく、その場合、「カチオン性脂質」と呼ぶことができる。特定の実施形態では、イオン化可能な脂質分子は、アミン基を含み得、イオン化可能なアミノ脂質と呼ばれ得る。本明細書で使用される場合、「荷電した部分」は、例えば、一価(+1、又は1)、二価(+2、又は2)、三価(+3、又は3)などの形式的な電子電荷を有する化学的部分である。荷電した部分は、アニオン性(すなわち、負に荷電している)又はカチオン性(すなわち、正に荷電している)であり得る。正に荷電した部分の例としては、アミン基(例えば、第一級、第二級及び/又は第三級アミン)、アンモニウム基、ピリジニウム基、グアニジン基、及びイミジゾリウム基が挙げられる。特定の実施形態では、荷電した部分はアミン基を含むことができる。負に荷電した基又はその前駆体の例としては、カルボキシレート基、スルホネート基、硫酸塩基、ホスホネート基、ホスフェート基、ヒドロキシル基などが挙げられる。荷電した部分の電荷は、場合によっては、環境条件によって変化し得、例えば、pHの変化は、部分の電荷を変化させ得、及び/又は部分を荷電又は非荷電にし得る。一般に、分子の電荷密度は、所望するように選択され得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、イオン化可能な脂質は、当技術分野で「イオン化可能なカチオン性脂質」と呼ばれることもあるイオン化可能なアミノ脂質である。一実施形態では、イオン化可能なアミノ脂質は、リンカー構造を介して接続された正に荷電した親水性頭部及び疎水性尾部を有し得る。これらに加えて、イオン化可能な脂質は、環状アミン基を含む脂質であってもよい。一実施形態では、イオン化可能な脂質は、国際公開第2013086354号パンフレット及び国際公開第2013116126号パンフレットに記載されているイオン化可能な脂質から選択されてもよいが、これらに限定されず、その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに別の実施形態では、イオン化可能な脂質は、米国特許第7,404,969号明細書の式CLI-CLXXXXIIから選択され得るが、これらに限定されず、その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0144】
一実施形態では、脂質は、その全体が参照により組み込まれる国際公開第2012170889号パンフレットに記載されているものなどの、切断可能な脂質であり得る。一実施形態では、脂質は、当技術分野で公知の方法によって、及び/又は国際公開第2013086354号パンフレットに記載されているように、合成することができ、その各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0145】
ナノ粒子組成物は、様々な方法によって特徴付けることができる。例えば、顕微鏡法(例えば、透過型電子顕微鏡法又は走査電子顕微鏡)を使用して、ナノ粒子組成物の形態及びサイズ分布を調べることができる。ゼータ電位を測定するために、動的光散乱又は電位差測定(例えば、電位差滴定)を使用することができる。動的光散乱を利用して粒径を判定することもできる。Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd,Malvern、ウスターシャー、英国)などの機器を使用して、粒径、多分散指数、及びゼータ電位などのナノ粒子組成物の複数の特性を測定することもできる。ナノ粒子のサイズは、限定されないが、炎症などの生物学的反応に対抗するのを助けることができ、又はポリヌクレオチドの生物学的効果を増加させることができる。本明細書で使用される場合、ナノ粒子組成物の文脈における「サイズ」又は「平均サイズ」は、ナノ粒子の平均直径を指す。
【0146】
一実施形態では、本明細書に記載の核酸は、約10~約100nmの直径を有する脂質ナノ粒子に製剤化することができる。一実施形態では、ナノ粒子は、約10~500nmの直径を有する。一実施形態では、ナノ粒子は、100nmを超える直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物の最大寸法は、1μm又はそれより短いもの(例えば、1μm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、50nm、又はそれより短いもの)である。
【0147】
ナノ粒子組成物は、比較的均質であり得る。多分散指数を使用して、ナノ粒子組成物の均一性、例えばナノ粒子組成物の粒径分布を示すことができる。小さな(例えば、0.3未満)多分散指数は、一般に、狭い粒径分布を示す。ナノ粒子組成物は、約0~約0.25、例えば0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24又は0.25の多分散指数を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるナノ粒子組成物の多分散指数は、約0.10~約0.20であり得る。
【0148】
ナノ粒子組成物のゼータ電位を使用して、組成物の動電電位を示すことができる。例えば、ゼータ電位は、ナノ粒子組成物の表面電荷を表すことができる。より高次に荷電した種が体内の細胞、組織、及び他のエレメントと望ましくなく相互作用する可能性があるため、正又は負である相対的に低い電荷を有するナノ粒子組成物が、概して望ましい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるナノ粒子組成物のゼータ電位は、約-10mV~約+20mV、約-10mV~約+15mV、約10mV~約+10mV、約-10mV~約+5mV、約-10mV~約0mV、約-10mV~約-5mV、約-5mV~約+20mV、約-5mV~約+15mV、約-5mV~約+10mV、約-5mV~約+5mV、約-5mV~約0mV、約0mV~約+20mV、約0mV~約+15mV、約0mV~約+10mV、約0mV~約+5mV、約+5mV~約+20mV、約+5mV~約+約+15mV、又は約+5mV~+10mVであり得る。
【0149】
核酸/ポリヌクレオチドの「カプセル化効率」という用語は、供給される初期の量に対して、調製後にナノ粒子組成物によってカプセル化されるか、そうでなければ会合される核酸/ポリヌクレオチドの量を表す。本明細書で使用される場合、「カプセル化」は、完全な、実質的な、又は部分的な封入、閉じ込め、包囲、又は囲い込みを指すことができる。カプセル化効率は高いことが望ましい(例えば、100%に近い)。カプセル化効率は、例えば、ナノ粒子組成物を分割する前後のナノ粒子組成物を含有する溶液の核酸/ポリヌクレオチドの量を、1つ以上の有機溶媒又は界面活性剤と比較することによって、測定することができる。
【0150】
蛍光を使用して、溶液の遊離ポリヌクレオチドの量を測定することができる。本明細書に記載のナノ粒子組成物の場合、核酸/ポリヌクレオチドのカプセル化効率は、少なくとも50%、例えば50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%であり得る。いくつかの実施形態では、カプセル化効率は、少なくとも80%であり得る。特定の実施形態では、カプセル化効率は、少なくとも90%であり得る。
【0151】
本明細書に開示される薬学的組成物に存在する核酸/ポリヌクレオチドの量は、核酸/ポリヌクレオチドのサイズ、所望の標的及び/又は用途、又はナノ粒子組成物の他の特性などの複数の因子、並びに核酸/ポリヌクレオチドの特性に依存し得る。例えば、ナノ粒子組成物に有用な核酸/ポリヌクレオチドの量は、核酸/ポリヌクレオチドのサイズ(長さ又は分子量として表される)、配列、及び他の特性に依存し得る。ナノ粒子組成物の核酸/ポリヌクレオチドの相対的な量も変化し得る。本開示の脂質ナノ粒子組成物の中に存在する脂質組成物及び核酸/ポリヌクレオチドの相対的な量は、有効性及び忍容性を考慮して最適化することができる。
【0152】
ナノ粒子組成物を提供することに加えて、本開示はまた、ポリヌクレオチドをカプセル化することを含む脂質ナノ粒子を産生する方法を提供する。そのような方法は、本明細書に開示される薬学的組成物のいずれかを使用すること、及び当技術分野で公知の脂質ナノ粒子の製造方法に従って脂質ナノ粒子を製造することを含む。例えば、Wang et al.(2015)’’Delivery of oligonucleotides with lipid nanoparticles’’ Adv.Drug Deliv.Rev.87:68-80、Silva et al.(2015)’’Delivery Systems for Biopharmaceuticals.Part I:Nanoparticles and Microparticles’’ Curr.Pharm.Technol.16:940-954、Naseri et al.(2015)’’Solid Lipid Nanoparticles and Nanostructured Lipid Carriers:Structure,Preparation and Application’’ Adv.Pharm.Bull.5:305-13、Silva et al.(2015)’’Lipid nanoparticles for the delivery of biopharmaceuticals’’ Curr.Pharm.Biotechnol.16:291-302、及びそこに引用されている参考文献を参照されたい。
【0153】
脂質ナノ粒子製剤は、典型的には、1つ以上の脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質は、当技術分野で「イオン化可能なカチオン性脂質」と呼ばれることもあるイオン化可能な脂質(例えば、イオン化可能なアミノ脂質)である。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子製剤は、リン脂質、構造脂質、及び粒子凝集を減少させることができる分子、例えばPEG又はPEG修飾脂質を含む他の成分をさらに含む。
【0154】
例示的なイオン化可能な脂質としては、限定されないが、本明細書に開示される化合物1~342、DLin-MC-DMA(MC)、DLin-DMA、DLenDMA、DLin-D-DMA、DLin-K-DMA、DLin-M-C2-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、DLin-KC-DMA、DLin-KC4-DMA、DLin-C2K-DMA、DLin-MP-DMA、DODMA、98N12-5、C2-200、DLin-C-DAP、DLin-DAC、DLinDAP、DLinAP、DLin-EG-DMA、DLin-2-DMAP、KL10、KL22、KL25、オクチル-CLinDMA、オクチル-CLinDMA(2R)、オクチル-CLinDMA(2S)、及びそれらの任意の組み合わせのいずれか1つが挙げられる。他の例示的なイオン化可能な脂質としては、(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン(L608)、(20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20ジエン-9-アミン、(16Z,19Z)-N5N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-8-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチルドコサ-13,16-ジエン-5-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチルヘニコサ-12,15-ジエン-4-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-6-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-7-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-10-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-5-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-4-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-9-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-8-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-7-アミン、(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-6-アミン、(22Z,25Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22,25-ジエン-10-アミン、(21Z,24Z)-N,N-ジメチルトリアコンタ-21,24-ジエン-9-アミン、(18Z)-N,N-ジメチルヘプタコス-18-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルヘキサコス-17-エン-9-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-7-アミン、N,N-ジメチルヘプタコサン-10-アミン、(20Z,23Z)-N-エチル-N-メチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、1-[(11Z,14Z)-1-ノニルコサ-11,14-ジエン-1-イル]ピロリジン、(20Z)-N,N-ジメチルヘプタコス-20-エン-10-アミン、(15Z)-N,N-ジメチルエプタコス-15-エン-10-アミン、(14Z)-N,N-ジメチルノナコス-14-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルノナコス-17-エン-10-アミン、(24Z)-N,N-ジメチルトリトリアコン-24-エン-10-アミン、(20Z)-N,N-ジメチルノナコス-20-エン-10-アミン、(22Z)-N,N-ジメチルヘントリアコン-22-エン-10-アミン、(16Z)-N,N-ジメチルペンタコス-16-エン-8-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチル-2-ノニルヘンニコサ-12,15-ジエン-1-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]エプタデカン-8-アミン、1-[(1S,2R)-2-ヘキシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-21-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]へニコサン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘキサデカン-8-アミン、N,N-ジメチル-[(1R,2S)-2-ウンデシルシクロプロピル]テトラデカン-5-アミン、N,N-ジメチル-3-{7-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプチル}ドデカン-1-アミン、1-[(1R,2S)-2-ヘプチルシクロプロピル]-N,N-ジメチルオクタデカン-9-アミン、1-[(1S,2R)-2-デシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルペンタデカン-6-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ペンタデカン-8-アミン、R-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、S-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}ピロリジン、(2S)-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-[(5Z)-オクタ-5-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}アゼチジン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘプチルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-(ノニルオキシ)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン;(2S)-N,N-ジメチル-1-[(6Z,9Z,12Z)-オクタデカ-6,9,12-トリエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(ペンチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-3-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(13Z,16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z,16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z)-ドコス-13-エン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(13Z)-ドコス-13-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(9Z)-ヘキサデカ-9-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2R)-N,N-ジメチル-H(1-メトイルオクチル)オキシ]-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2R)-1-[(3,7-ジメチルオクチル)オキシ]-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-(オクチルオキシ)-3-({8-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]オクチル}オキシ)プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-{[8-(2-オクチルシクロプロピル)オクチル]オキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、及び(11E,20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-11,20,2-トリエン-10-アミン、並びにそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0155】
リン脂質としては、限定されないが、グリセロリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール及びホスファチジン酸が挙げられる。リン脂質には、スフィンゴミエリンなどのホスホスフィンゴ脂質も含まれる。いくつかの実施形態では、リン脂質は、DLPC、DMPC、DOPC、DPPC、DSPC、DUPC、18:0ジエチルエーテルPC、DLnPC、DAPC、DHAPC、DOPE、4ME16:0 PE、DSPE、DLPE、DLnPE、DAPE、DHAPE、DOPG、及びそれらのいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、リン脂質は、MPPC、MSPC、PMPC、PSPC、SMPC、SPPC、DHAPE、DOPG、及びそれらのいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、脂質組成物の中のリン脂質(例えば、DSPC)の量は、約1mol%~約20mol%の範囲である。
【0156】
構造脂質には、ステロール及びステロール部分を含む脂質が含まれる。いくつかの実施形態では、構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、アルファ-トコフェロール、及びそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、構造脂質はコレステロールである。いくつかの実施形態では、脂質組成物の構造脂質(例えば、コレステロール)の量は、約20mol%~約60mol%の範囲である。
【0157】
PEG修飾脂質としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジン酸、PEG-セラミドコンジュゲート(例えば、PEG-CerC4又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン及びPEG修飾1,2-ジアシルオキシプロパン-3-アミンが挙げられる。このような脂質は、PEG化脂質とも呼ばれる。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG DMPE、PEG-DPPC又はPEG-DSPE脂質であり得る。いくつかの実施形態では、PEG-脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロールメトキシポリエチレングリコール(PEG-DMG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)](PEG-DSPE)、PEG-ジステリルグリセロール(PEG-DSG)、PEG-ジパルメトレイル、PEG-ジオレイル、PEG-ジステアリル、PEG-ジアシルグリカミド(PEG-DAG)、PEG-ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DPPE)、又はPEG-l,2-ジミリスチロキシルプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である。いくつかの実施形態では、PEG部分は、約1000、2000、5000、1万、15,000又は2万ダルトンのサイズを有する。いくつかの実施形態では、脂質組成物のPEG-脂質の量は、約0mol%~約5mol%の範囲である。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のLNP製剤は、透過性エンハンサー分子をさらに含むことができる。非限定的な透過性エンハンサー分子は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050222064号明細書に記載されている。
【0159】
LNP製剤は、ホスフェートコンジュゲートをさらに含むことができる。ホスフェートコンジュゲートは、in vivoの循環時間を増加させ、及び/又はナノ粒子の標的送達を増加させることができる。ホスフェートコンジュゲートは、例えば国際公開第2013033438号パンフレット又は米国特許出願公開第20130196948号明細書に記載されている方法によって作製することができる。LNP製剤はまた、例えば、米国特許出願公開第20130059360号明細書、米国特許出願公開第20130196948号明細書及び米国特許出願公開第20130072709号明細書に記載されているようなポリマーコンジュゲート(例えば、水可溶型コンジュゲート)を含むことができる。各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0160】
LNP製剤は、対象におけるナノ粒子の送達を増強するためのコンジュゲートを含むことができる。さらに、コンジュゲートは、対象におけるナノ粒子の食作用クリアランスを阻害することができる。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、ヒト膜タンパク質CD47から設計された「自己」ペプチド(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Rodriguez et al,Science 2013339,971-975に記載の「自己」粒子)であり得る。Rodriguezらによって示されるように、自己ペプチドはナノ粒子のマクロファージ媒介性クリアランスを遅延させ、これによりナノ粒子の送達が増強された。
【0161】
LNP製剤は、炭水化物担体を含むことができる。非限定的な例として、炭水化物担体としては、限定されないが、無水物修飾フィトグリコーゲン又はグリコーゲン型材料、オクテニルスクシネートフィトグリコーゲン、フィトグリコーゲンβ-デキストリン、無水物修飾フィトグリコーゲンβ-デキストリン(例えば、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2012109121号パンフレット)を挙げることができる。
【0162】
LNP製剤は、粒子の送達を改善するために界面活性剤又はポリマーでコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、LNPは、それだけに限らないが、その全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第20130183244号明細書に記載されているような、中性表面電荷を有するPEGコーティング及び/又はコーティングなどの親水性コーティングでコーティングすることができる。
【0163】
LNP製剤は、米国特許第8,241,670号明細書、及び米国特許第2013110028号明細書に記載されているように、脂質ナノ粒子が粘膜バリアに浸透することができるように、粒子の表面特性を変化させるように操作することができる。これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。粘液を透過するように操作されたLNPは、ポリマー材料(すなわち、ポリマーコア)及び/又はポリマービタミンコンジュゲート及び/又はトリブロックコポリマーを含むことができる。ポリマー材料は、ポリアミン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカルバメート、ポリ尿素、ポリカーボネート、ポリ(スチレン)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリアセチレン、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリイソシアネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びポリアリレートを含むことができるが、これらに限定されない。
【0164】
粘液を透過するように操作されたLNPはまた、表面改質剤、例えば、限定されないが、アニオン性タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)、界面活性剤(例えば、カチオン性界面活性剤、例えばジメチルジオクタデシルアンモニウム臭化物)、糖類又は糖誘導体(例えば、シクロデキストリン)、核酸、ポリマー(例えば、ヘパリン、ポリエチレングリコール及びポロキサマー)、粘液溶解剤(例えば、N-アセチルシステイン、ヨモギ、ブロメライン、パパイン、クレロデンドラム、アセチルシステイン、ブロムヘキシン、カルボシステイン、エプラジノン、メスナ、アンブロキソール、ソブレロール、ドミドール、レトスチン、ステプロニン、チオプロニン、ゲルゾリン、チモシンb4ドルナーゼアルファ、ネルテネキシン、エルドステイン)及びrhDNaseを含む様々なDNaseを含み得る。いくつかの実施形態では、粘液透過性LNPは、粘膜透過性増強コーティングを含む低張性製剤であり得る。製剤は、それが送達される上皮に対して低張性であり得る。低張性製剤の非限定的な例は、例えば、国際公開第2013110028号パンフレットに見出すことができ、これは参照によりその全体が組み込まれる。
【0165】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、制御放出及び/又は標的化送達のために製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「制御放出」は、治療結果をもたらすための特定の放出パターンに適合する薬学的組成物又は化合物放出プロファイルを指す。一実施形態では、核酸は、制御放出及び/又は標的化送達のために、本明細書に記載される及び/又は当技術分野で公知の送達剤にカプセル化することができる。本明細書で使用される場合、「カプセル化する」という用語は、封入する、包囲する、又は包み込むことを意味する。本発明の核酸の製剤に関するので、カプセル化は、実質的、完全又は部分的であり得る。「実質的にカプセル化される」という用語は、本発明の薬学的組成物又は化合物の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99超、又は99%超を送達剤の中に封入する、包囲する、又は包み込むことができることを意味する。「部分的にカプセル化」は、10、10、20、30、4050又はそれ未満の本発明の薬学的組成物又は化合物を送達剤の中に封入する、包囲する、又は包み込むことができるということを意味する。
【0166】
いくつかの実施形態では、核酸組成物は、持続放出のために製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「持続放出」は、特定の期間にわたって放出速度に適合する薬学的組成物又は化合物を指す。期間は、数時間、数日、数週間、数ヶ月及び数年を含むことができるが、これらに限定されない。非限定的な例として、本明細書に記載の持続放出ナノ粒子組成物は、国際公開第2010075072号パンフレット、米国特許出願公開第20100216804号明細書、米国特許出願公開第20110217377号明細書、米国特許出願公開第20120201859号明細書及び米国特許出願公開第20130150295号明細書に開示されているように製剤化することができ、これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2008121949号パンフレット、国際公開第2010005726号パンフレット、国際公開第2010005725号パンフレット、国際公開第2011084521号パンフレット、国際公開第2011084518号パンフレット、米国特許出願公開第20100069426号明細書、米国特許出願公開第20120004293号明細書及び米国特許出願公開第20100104655号明細書に記載されているものなど、標的特異的であるように製剤化することができる。
【0167】
投与
上述の治療剤及び組成物は、本明細書に記載の1つ以上の組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象のPTC関連疾患を治療する、それに対して保護する、及び/又はそれを予防するために使用することができる。
【0168】
そのような薬剤及び組成物は、特定の対象の年齢、性別、体重及び状態、並びに投与経路などの要因を考慮して、医学界の当業者に周知の投与量及び技術によって、適用量で投与することができる。組成物の用量は、1μg~10mg活性成分/kg体重/時間であり得、20μg~10mg成分/kg体重/時間であり得る。組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30又は31日ごとに投与することができる。有効な治療のための組成物用量の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり得る。
【0169】
薬剤又は組成物は、予防又は治療で投与することができる。治療用途では、薬剤又は組成物は、治療効果を誘発するのに十分な量で、それを必要とする対象に投与される。これを達成するのに十分な量を「治療有効用量」と定義する。この使用に有効な量は、例えば、投与される組成物レジメンの特定の組成物、投与様式、疾患の病期及び重症度、対象の一般的な健康状態、及び処方する医師の判断に依存する。
【0170】
薬剤又は組成物は、Donnellyら(Ann.Rev.Immunol.15:617-648(1997))、米国特許第5,580,859号明細書、米国特許第5,703,055号明細書及び米国特許第5,679,647号明細書に記載されているような当技術分野で周知の方法によって投与することができる。そのすべての内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組成物のDNAは、例えばワクチンガンを使用して、個体に投与することができる粒子又はビーズに複合体化することができる。当業者は、生理的に許容され得る化合物を含む薬学的に許容される担体の選択が、例えば、発現ベクターの投与経路に依存することを知っているであろう。組成物は、様々な経路を介して送達され得る。典型的な送達経路としては、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内又は皮下送達が挙げられる。他の経路としては、経口投与、鼻腔内及び膣内経路が挙げられる。特に組成物のDNAについては、組成物を個体の組織の間質腔に、送達することができる(米国特許第5,580,859号明細書及び米国特許第5,703,055号明細書、これらのすべての内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。組成物はまた、筋肉に投与することができ、又は皮内若しくは皮下注入を介して、又はイオン導入などによって経皮的に投与することができる。組成物の表皮投与も使用することができる。表皮投与は、表皮の最外層を機械的又は化学的に刺激して、刺激物に対する免疫応答を刺激することを含み得る(米国特許第5,679,647号明細書)。
【0171】
一実施形態では、組成物は、鼻腔を介した投与のために製剤化することができる。担体が固体である経鼻投与に適した製剤は、例えば約10~約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗い粉末を含むことができ、これは嗅ぎタバコを摂取するように、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻腔経路を通して急速に吸入することによって。投与される。製剤は、鼻腔スプレー、点鼻薬、又はネブライザーによるエアロゾル投与によるものであり得る。製剤は、組成物の水溶液又は油性溶液を含むことができる。
【0172】
組成物は、懸濁液、シロップ剤又はエリキシル剤などの液体製剤であり得る。組成物はまた、非経口、皮下、皮内、筋肉内又は静脈内投与(例えば、注入可能投与)のための調製物、例えば滅菌懸濁液又はエマルジョンであり得る。
【0173】
組成物は、リポソーム、ミクロスフェア又は他のポリマーマトリックス(米国特許第5,703,055号明細書;Gregoriadis,Liposome Technology,Vols.Ito III(2nd ed.1993)、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に組み込むことができる。リポソームは、リン脂質又は他の脂質からなることができ、作製及び投与が比較的単純な非毒性の生理的に許容される代謝可能な担体であり得る。
【0174】
ACE-tRNA又はACE-tRNAをコードする核酸分子は、経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入による、頬側投与による、胸膜内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、髄腔内及び関節内又はそれらの組み合わせを含む異なる経路によって投与され得る。獣医学的使用のために、組成物は、通常の獣医学的実施に従って適切に許容される製剤として投与され得る。獣医は、特定の動物に最も適した投薬レジメン及び投与経路を容易に判定することができる。組成物は、従来のシリンジ、無針注入装置「マイクロプロジェクタイルによる銃の発射」、又はエレクトロポレーション(「EP」)、「流体力学的方法」、若しくは超音波などの他の物理的方法によって投与することができる。
【0175】
ACE-tRNA又はACE-tRNAをコードする核酸分子は、in vivoエレクトロポレーションを伴う又は伴わないDNA注入、リポソーム媒介性、ナノ粒子促進性、組換えアデノウイルス、組換えアデノウイルス関連ウイルス及び組換えワクシニアなどの組換えベクターを含むいくつかの周知の技術によって、哺乳動物に送達され得る。ACE-tRNA又はACE-tRNAをコードする核酸分子は、DNA注入及びin vivoエレクトロポレーションを介して送達され得る。
【0176】
エレクトロポレーション
エレクトロポレーションによる組成物の投与は、細胞膜に可逆的細孔を形成させるのに有効なエネルギーパルスを哺乳動物の所望の組織に送達するように構成することができるエレクトロポレーション装置を使用して、達成することができ、好ましくは、エネルギーパルスは、ユーザによって入力されたプリセット電流と同様の定電流である。エレクトロポレーション装置は、エレクトロポレーションの成分及び電極アセンブリ又はハンドルアセンブリを備え得る。エレクトロポレーションの成分は、コントローラ、電流波形発生器、インピーダンステスタ、波形ロガー、入力エレメント、状態報告エレメント、通信ポート、メモリ成分、電源、及び電源スイッチを含む、エレクトロポレーション装置の様々なエレメントの1つ又は複数を含み、組み込むことができる。エレクトロポレーションは、in vivoのエレクトロポレーション装置、例えば、プラスミドによる細胞のトランスフェクションを容易にするためのCELLECTRA EPシステム又はELGENエレクトロポレーターを使用して達成され得る。
【0177】
エレクトロポレーションの成分は、エレクトロポレーション装置の1つのエレメントとして機能することができ、他のエレメントは、エレクトロポレーションの成分と通ずる別個のエレメント(又は成分)である。エレクトロポレーションの成分は、エレクトロポレーションの成分とは別個のエレクトロポレーション装置のさらに他のエレメントと通ずることができるエレクトロポレーション装置の2つ以上のエレメントとして、機能することができる。1つの電気機械装置又は機械装置の一部として存在するエレクトロポレーション装置のエレメントは、1つの装置として、又は互いに通信する別個のエレメントとして機能することができるため、限定される必要がない。所望の組織において定電流を生成し、フィードバック機構を含む、エレクトロポレーションの成分は、エネルギーパルスを送達することができる。電極アセンブリは、空間配置の複数の電極を有する電極アレイを含むことができ、電極アセンブリは、エレクトロポレーション成分からエネルギーのパルスを受け取り、それを電極を通して所望の組織に送達する。複数の電極のうちの少なくとも1つは、エネルギーパルスの送達中は中性であり、所望の組織のインピーダンスを測定し、インピーダンスをエレクトロポレーションの成分に伝達する。フィードバック機構は、測定されたインピーダンスを受信することができ、エレクトロポレーションの成分によって送達されるエネルギーのパルスを調整して定電流を維持することができる。
【0178】
複数の電極は、分散するパターンでエネルギーのパルスを送達することができる。複数の電極は、プログラムされたシーケンスの下で電極の制御を介して非中央集権型パターンでエネルギーのパルスを送達することができ、プログラムされたシーケンスは、ユーザによってエレクトロポレーションの成分に入力される。プログラムされたシーケンスは、順番に送達される複数のパルスを含むことができ、複数のパルスの各パルスは、インピーダンスを測定する1つの中性電極を有する少なくとも2つの活性電極によって送達され、複数のパルスの後続のパルスは、インピーダンスを測定する1つの中性電極を有する少なくとも2つの活性電極のうちの異なる1つによって送達される。
【0179】
フィードバック機構は、ハードウェア又はソフトウェアのいずれかによって実行されてもよい。フィードバック機構は、アナログ閉ループ回路によって実行され得る。フィードバックは、50μβ、20μβ、10又は1μβごとに行われるが、好ましくはリアルタイムフィードバック又は瞬時(すなわち、応答時間を判定するために利用可能な技術によって判定されるときに実質的に瞬間的である)である。中性電極は、所望の組織におけるインピーダンスを測定し、インピーダンスをフィードバック機構に伝達することができ、フィードバック機構は、インピーダンスに応答し、エネルギーのパルスを調整して、定電流をプリセット電流と同様の値に維持する。フィードバック機構は、エネルギーパルスの送達中に連続的かつ瞬時に定電流を維持することができる。
【0180】
本発明の組成物の送達を容易にし得るエレクトロポレーション装置及びエレクトロポレーションの方法の例としては、米国特許第7245963号明細書及び米国特許出願公開第2005/0052630号明細書に記載されているものが挙げられ、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。当技術分野で公知の他のエレクトロポレーション装置及びエレクトロポレーションの方法も、組成物の送達を容易にするために使用することができる。例えば、米国特許第9452285号明細書、米国特許第7245963号明細書、米国特許第5273525号明細書、米国特許第6110161号明細書、米国特許第6958060号明細書、米国特許第6939862号明細書、米国特許第6697669号明細書、米国特許第7328064号明細書及び米国特許出願公開第2005/0052630号明細書を参照されたい。
【0181】
定義
核酸又はポリヌクレオチドは、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、又はDNA若しくはRNAアナログを指す。DNA又はRNAアナログは、ヌクレオチドアナログから合成することができる。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。「単離された核酸」は、その構造が任意の天然に存在する核酸の構造又は天然に存在するゲノム核酸の任意の断片の構造と同一ではない核酸を指す。したがって、この用語は、例えば、(a)天然に存在するゲノムDNA分子の一部の配列を有するが、天然に存在する生物のゲノム中の分子のその部分に隣接するコード配列の両方に隣接しないDNA、(b)得られた分子がいずれかの天然に存在するベクター又はゲノムDNAと同一でないように、ベクター又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた核酸、(c)cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって産生される断片、又は制限断片などの別個の分子、及び(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列を包含する。上記の核酸は、本発明のtRNAを発現させるために使用することができる。この目的のために、核酸を適切な調節配列に動作可能に連結して発現ベクターを生成することができる。
【0182】
ベクターは、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターは、自律複製又は宿主DNAへの組み込みが可能であってもなくてもよい。ベクターの例は、プラスミド、コスミド又はウイルスベクターが挙げられる。ベクターは、宿主細胞における目的の核酸の発現に適した形態の核酸を含む。好ましくは、ベクターは、発現される核酸配列に動作可能に連結された1つ以上の調節配列を含む。
【0183】
「調節配列」には、プロモーター、エンハンサー及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。調節配列には、ヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、並びに組織特異的調節及び/又は誘導性配列が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質又はRNAの発現レベルなどの因子に依存し得る。発現ベクターを宿主細胞に導入して、目的のRNA又はポリペプチドを産生することができる。プロモーターは、RNAポリメラーゼがDNAに結合してRNA合成を開始するように指示するDNA配列として定義される。強力なプロモーターは、RNAを高い頻度で開始させるものである。
【0184】
「プロモーター」は、ポリヌクレオチドの転写を開始及び調節するヌクレオチド配列である。プロモーターには、誘導性プロモーター(プロモーターに動作可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現は、被分析物、補助因子、制御タンパク質などによって誘導される)、抑制性プロモーター(プロモーターに動作可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現は、分析物、補因子、制御タンパク質などによって抑制される)及び構成的プロモーターが含まれ得る。「プロモーター」又は「制御エレメント」という用語は、完全な長さのプロモーター領域及びこれらの領域の機能的(例えば、転写又は翻訳を制御する)セグメントを含むことが意図される。
【0185】
「動作可能に連結された」は、そのように記載された成分がそれらの通常の機能を実行するように構成されるエレメントの配置を指す。したがって、核酸配列に動作可能に連結された所与のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合、その配列の発現を行うことができる。プロモーターは、その発現を指示するように機能する限り、配列と近接する必要はない。したがって、例えば、介在する翻訳されていないが転写された配列がプロモーター配列と核酸配列との間に存在することができ、プロモーター配列は依然としてコード配列に「動作可能に連結された」と考えることができる。したがって、「動作可能に連結された」という用語は、転写複合体によるプロモーターエレメントの認識時に目的のDNA配列の転写の開始を可能にするプロモーターエレメント及び目的のDNA配列の任意の間隔又は配向を包含することを意図している。
【0186】
本明細書で使用される「発現カセット」は、適切な宿主細胞において特定のヌクレオチド配列の発現を指示することができる核酸配列を意味し、これは、終結シグナルに動作可能に連結され得る目的のヌクレオチド配列に動作可能に連結されたプロモーターを含み得る。それはまた、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を含み得る。コード化領域は、通常、目的のRNA又はタンパク質をコードする。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットはキメラであり得る。発現カセットはまた、天然に存在するが、異種発現に有用な組換え形態で得られたものであってもよい。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、宿主細胞が何らかの特定の刺激に曝露された場合にのみ転写を開始する構成的プロモーター又は調節可能なプロモーターの制御下にあり得る。多細胞生物の場合、プロモーターはまた、特定の組織若しくは器官又は発達段階に特異的であり得る。特定の実施形態では、プロモーターは、PGK、CMV、RSV、HI又はU6プロモーター(Pol II及びPol IIIプロモーター)である。
【0187】
「核酸断片」は、所与の核酸分子の一部である。ポリヌクレオチド配列の「実質的な同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、標準的なパラメータを使用して記載されるアラインメントプログラムの1つを使用する参照配列と比較して、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、若しくは79%、又は少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、若しくは89%、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、若しくは94%)、又はさらには少なくとも95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。
【0188】
本明細書で使用される場合、「ミニベクター」は、複製開始点及び抗生物質選択遺伝子を欠き、約100bpから約5kbpまでのサイズを有する、ミニサイズ及び環状DNAベクターシステム、例えば二本鎖環状DNA(例えば、ミニサークル)又は閉じた線状DNA分子(例えば、CEDT)を指す。それは、例えば、組換え部位の外側のプラスミド配列を排除するための親プラスミドの部位特異的組換えによって得ることができる。それは、例えば、プロモーター及び目的の核酸配列を含む、導入遺伝子発現カセットのみを有する核酸分子を含み、核酸配列は、例えば、PTCを抑制するためのACE-tRNAであり得、重要なことに、細菌起源の配列はない。
【0189】
「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含む。治療のための好ましい対象はヒトである。本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、対象が任意の形態の治療を受けているか、又は現在経験しているかどうかに関係なく、交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、「対象(1人及び複数)」という用語は、限定するものではないが、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット及びマウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、チンパンジーなどのサル)及びヒト)を含む任意の脊椎動物を指し得る。一実施形態では、対象はヒトである。別の実施形態では、対象は、疾患モデルとして適した実験的な非ヒト動物又は動物である。
【0190】
PTC又はナンセンス突然変異、PTC関連疾患、又はPTC関連疾患に関連する疾患又は障害とは、1つ又は複数のナンセンス突然変異が、単一ヌクレオチド置換によってアミノ酸コドンをPTCに変化させ、その結果、欠損切断型タンパク質が生じることによって引き起こされる、又は特徴付けられる任意の状態のことを指す。
【0191】
本明細書で使用される場合、「治療すること」又は「治療」は、障害、障害の症状、障害に続発する疾患状態、又は障害に対する素因を治癒、緩和、軽減、矯正、発症の遅延、予防、又は改善する目的で、障害を有するか、又は障害を発症するリスクがある対象に化合物又は薬剤を投与することを指す。「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防処置」などの用語は、障害又は状態を有していないが、障害又は状態を発症するリスクがあるか又は発症しやすい対象において、障害又は状態を発症する確率を低下させることを指す。「改善」は、一般に、疾患又は障害の徴候又は症状の数又は重症度の低減を指す。
【0192】
「予防する」、「予防すること」、「予防」という用語は、一般に、対象における疾患又は障害の発症の減少を指す。予防は、完全であってもよく、例えば、対象における疾患又は障害の完全な欠如であってもよい。予防はまた部分的であってもよく、対象における疾患又は障害の発生が、本発明の実施形態がなければ生じたであろうものよりも少なくなるようにする。疾患を「予防すること」は、一般に、疾患の完全な発症を阻害することを指す。
【0193】
「薬学的組成物」という用語は、活性剤と不活性又は活性の担体との組み合わせを指し、組成物をin vivo又はエクスビボでの診断又は治療使用に特に適したものにする。「薬学的に許容される担体」は、対象に投与された後に、又は対象に投与されたとたん、望ましくない生理的効果を引き起こしはしない。薬学的組成物の担体は、活性成分と適合性があり、それを安定化することができるという意味でも「許容可能」でなければならない。1つ又は複数の可溶化剤を、活性化合物の送達のための薬学的担体として利用することができる。薬学的に許容される担体の例としては、剤形として使用可能な組成物を得るための生体適合性ビヒクル、アジュバント、添加剤及び希釈剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の担体としては、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0194】
「約」という用語は、一般に、示された数の±10%を指す。例えば、「約10%」は9%~11%の範囲を示すことができ、「約1」は0.9~1.1を意味することができる。「約」の他の意味は、四捨五入などの文脈から明らかであり得、例えば「約1」はまた、0.5から1.4を意味し得る。
【0195】
本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に入る各々の別個の値を個別に参照する簡略方法として役立つことを意図している。本明細書に別途指示がない限り、各々の個々の値は、本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0196】
実施例1 ACE-tRNAプラットフォーム
新規ハイスループットクローニング(HTC)及びスクリーニング(HTS)法を用いて、500を超えるサプレッサーtRNA(ACE-tRNA)のライブラリーが最近開発された。ライブラリーでは、ヒトtRNA遺伝子のアンチコドンを、疾患を引き起こすPTCコドン(UAG、UAA及びUGA)を認識するように操作した。ACE-tRNAプラットフォームは、翻訳されたコドンからの1つのヌクレオチド変化の結果生じるすべての可能なPTCを標的とした(tRNAArg UGA、tRNAGln UAA、tRNAGln UAG、tRNATrp UGA、tRNATrp UAG、tRNAGlu UAA、tRNAGlu UAG、tRNACys UGA、tRNATyr UAG、tRNATyr UAA、tRNALeu UGA、tRNALeu UAG、tRNALeu UAA、tRNALys UAG、tRNALys UGA、tRNASer UGA、tRNASer UAG、andtRNASer UAA)。ACE-tRNAGly UGA(例えば、配列番号5)はUGAコドンに特異的であり、これは、ACE-tRNAが3つすべての終止コドンを一般的に標的とする分子(例えば、小分子)よりもin vivoでオフターゲット効果が少ないという前提を裏付けている。さらに、ACE-tRNAGly UGA(例えば、配列番号5)は、HEK293細胞における48時間のインキュベーション後にAMG G418及びゲンタマイシンよりも有意に優れたことが見出された。
【0197】
スクリーニングで同定されたACE-tRNAがアミノアシル-tRNAシンセターゼによる認識を犠牲にして官能化されているかどうかを確かめるためにアッセイを行った。具体的には、最も効果的であるためには、ACE-tRNAは正しいアミノ酸(同族アミノ酸)でPTCを抑制しなければならない。高分解能質量分析を使用して、ACE-tRNAGly UGA及びtRNATrp UGAの両方の同族アミノ酸が、高い忠実度でコードされ、シームレスなPTC抑制をもたらすことが確認された。
【0198】
「実際の終止」のACE-tRNA依存的抑制の効率を判定するためにアッセイがまた行われた。その目的のために、ACE-tRNAGln UAA、ACE-tRNAGlu UAG、ACE-tRNAArg UGA、ACE-tRNAGly UGA及びACE-tRNATrp UGA(例えば、配列番号79及び94によってコードされるもの、並びに配列番号8、5及び1を有するもの)をコードするcDNAプラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトし、48時間後、細胞RNAをRibo-Seqに供して、3’非翻訳領域(UTR)のリボソーム占有率が、対照と比較して、ACE-tRNAの存在下でより高いものであるかどうかを判定した(図2)。図2Aは、UAA(赤色)、UAG(緑色)及びUGA(青色)を有する個々の転写物(ドット)のmRNA 3’UTRリボソーム占有率の倍率変化を示す。リボソームの3’UTR占有量は名目上の量であり、ACE-tRNAが「実際の」終止を有意に抑制しなかったことを示した。図2Bに示されるRibo-Seqの結果により、ACE-tRNAの「真の」終止抑制活性の結果としての終止コドンに関連するすべての翻訳されたRNA転写産物上の3’UTRリボソーム占有の平均位置及び大きさの視覚化が可能になった。「鋸歯状」パターンが、個々のコドンリボソーム占有率を表した。ACE-tRNAArg UGAによる終止コドンの後に観察された連続した鋸歯状パターンは、フレーム内リードスルーを示したが、軽微であった。ACE-tRNAによる翻訳終結の平均的抑制が、HEK293細胞におけるACE-tRNAのトランスフェクション後に最小であることは有望である。ACE-tRNAのオフターゲット効果は、トランスジェニック16HBE14o-細胞及びマウスにおける持続的発現後に調べられている。
【0199】
実施例2 ミニDNAベクターの作製
ACE-tRNAが治療送達物として小型DNAベクターに効率的にコードされ得るかどうかを調べるためにアッセイを行った。
【0200】
本発明者らはまず、どの程度小さいMCがACE-tRNAを効率的に発現するかを判定することに着手した。ACE-tRNA発現カセットは125bpsであったため、理論的には生成可能な最小の発現ベクターであった。しかし、これまでにない状況では、転写因子の立体的制約及びDNAの高度な屈曲がACE-tRNAの発現を阻害し得る可能性が考慮された。さらに、300bps未満のそのような小型のMCの生成は、DNA二重らせんの固有の剛性又は堅さによって妨げられる。線状DNAのライゲーション依存性の環状化は、反応のDNAの濃度が低く(ナノモル濃度)、治療量の生成を妨げない限り、主に線状コンカテマーを含有する生成物をもたらす。in vitroの産生のためにこれらの問題を回避するための操作は、目的のDNA配列を有するMCの生成を妨げ、労働集約的なプロセス及び許容できない非効率性の両方をもたらす。250bps未満の大腸菌におけるMCの生成もまた、低い組換え効率を付与するDNAの剛性のために問題があると報告されている。上に列挙した技術的困難性、及びほとんどの発現カセットが典型的には3kbよりも大きいという事実のために、数キロベースよりも小さいMCを使用する研究はほとんどなく、本発明者らの知る限りでは、383及び400bpsが最小の公開された発現ミニベクターであった。
【0201】
転写因子A、ミトコンドリアとしても知られる組換えミトコンドリアDNA屈曲タンパク質、ARS結合因子2タンパク質(Abf2p)を使用して(TFAM,Thibault,T.et al.,Nucleic Acids Res 45,e26-e26,doi:10.1093/nar/gkw1034(2017))、本発明者らは、in vitroでミリグラム量で200bpsという少量のMCの産生を合理化した(図3の方法I)。ここで、産生量は、約1.5mgを生成するように容易にスケーリングすることができ、本発明者らの研究室では、大腸菌における組換えDNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ(PHUSION)、T5エキソヌクレアーゼ及びTFAMタンパク質の生成及び精製によって生産コストが有意に最小化された。この方法を使用して、本発明者らは、サイズが200~1000bpのMCを生成した(図3、方法I、底部のゲル)。以前に公開された方法(Kay,M.A.,et al.,Nat Biotechnol 28,1287-1289,doi:10.1038/nbt.1708(2010))と同様に、φC31依存性組換えを利用する社内で生成されたプラスミド(図3、方法II)を使用して、大腸菌で500bp以上のMCを生成した。
【0202】
上記の方法を使用して、異なるサイズの例示的なArgTGA(例えば、配列番号8をコードする)ミニサークルライゲーション産物を作製した。サイズには、約1000bp、900bp、850bp、800bp、700bp、600bp、50bp、400bp、300bp及び200bpが含まれた。図12A図12B図13E及び図13Fに示すように、これらのArgTGAミニサークルのライゲーション産物及びPCR産物は、エチジウムブロマイドを含有する1.5%アガロースゲルで分離及び可視化することができた。ArgTGAミニサークルのライゲーション産物及び対応するPCR産物をT5エキソヌクレアーゼと共にインキュベートし、エチジウムブロマイドを含有するアガロースゲル上で分離した。ミニサークルライゲーションにおけるエキソヌクレアーゼ耐性産物の存在は、共有結合的に閉じたミニサークル産物の産生を示した(図12C図12D図13E図13F)。
【0203】
MC及びCEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化又はサイズ排除クロマトグラフィー(図3の方法I、II、III及びIV、底部のゲル)の使用によって親プラスミド骨格から効率的に精製することができる。これらの2つの方法を使用すると、本発明者らは、このプロジェクトに妥当なコストで(<500bpのMCの約1.5mgsに対して約$400、≧500bpのMCの100mgに対して約$580)、生成したいMC ACE-tRNA配列に迅速に対応することができる。
【0204】
CEDTの産生がいくつかの方法で達成され得る場合(Wong,S.et al.J Vis Exp,53177-53177,doi:10.3791/53177(2016),Schakowski,F.et al.In vivo(Athens,Greece)21,17-23(2007),and Heinrich,J.et al.,Journal of molecular medicine(Berlin,Germany)80,648-654,doi:10.1007/s00109-002-0362-2(2002))、本発明者らは、大腸菌由来のエンドトキシン汚染を減少させるために、組換え原核生物テロメラーゼ、バクテリオファージN15のプロテロメラーゼTelNを使用するin vitroの手法を追求した。テロメア認識部位telRL(56bp)に作用して、プロテロメラーゼは環状プラスミドDNAを効率的な一段階酵素反応で線状共有結合的に閉じたダンベル形状の分子に変換した。目的の遺伝子に隣接する発現プラスミドに2つのTelRL部位を挿入すると、それを切断し、TelN酵素(5’末端を3’末端にライゲートする)によって連結して、目的の遺伝子をコードする線状の閉端ミニDNAスレッドを得た。この直接的な方法は、図3の方法IIIに概説されている。重要なことに、in vitroの方法I及びIVを使用して、大量のエンドトキシンを含まないMC及びCEDTをそれぞれ精製することが可能である(Butash,K.A.,et al.,BioTechniques 29,610-614,616,618-619,doi:10.2144/00293 rr 04(2000))。方法IIIを使用して、本発明者らは、このプロジェクトに妥当なコストで様々なACE-tRNA配列のCEDTを迅速に生成することができた(約1.5mgsのCEDTで約$400、100mgのCEDTで約$1000)。
【0205】
図13A図13B図13C及び図13Dに示すのは、200bpのCEDT(2つの200bpの連続するArgTGAのCEDTセグメントを含有する634bpのPCR産物を使用)、400bpのCEDT(400bpのCEDTセグメントを含有する570bpのPCR産物を使用)、900bpのCEDT(1×ArgTGAをコードする1065bpのPCR産物を使用)及び900bpのCEDT(4×ArgTGAをコードする1065bpのPCR産物を使用)を含む4つの例示的なCEDTの産生である。対応するPCR産物のそれぞれを陰イオン交換クロマトグラフィー(Machery Nagelキット)によって精製した後、上記のようにTelNで消化した。隣接する2つのTelRL部位がTelN酵素によって連結されると、4つのCEDTは、それぞれ260bp、456bp、956bp、及び956bpになる。図に示されるように、CEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、これは、TelNによる共有結合的に閉じた末端の産生を示す。しかし、制限酵素Bsu36Iによるエンドヌクレアーゼ切断後、各CEDT産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
【0206】
実施例3 ACE-tRNAをコードするMC及びCEDTによるPTC抑制の有効性。
上記の実施例に記載されるMC及びCEDT DNAベクターを、細胞の培養及びin vivoにおけるPTCの抑制におけるそれらの有効性を検証するために調べた。手短に言えば、PTCレポーターcmv-NLuc-TGAを安定的に発現したHEK293細胞への200~1000bpのACE-tRNAArgのMCの等量(配列番号8、図4A、白色バー)のトランスフェクションは、ACE-tRNAArgのプラスミドベースの発現に匹敵する強固なPTC抑制をもたらした(図4A、灰色のバー)。ここで、MCがACE-tRNAの強固な発現及びその後のPTC抑制を助けることが初めて示された。本発明者らの知る限り、これらは、報告された最小の機能的発現のMC(<383bps)に関する結果であった。
【0207】
次に、ACE-tRNAArg(配列番号8)をコードする700及び400bpのCEDTベクターが、PTCレポーターcmv-NLuc-UGA(図4B)を安定的に発現する16HBE14o-細胞にトランスフェクトされた。MCとは異なり、400及び700bpのACE-tRNAArgのCEDTは強力なPTC抑制を助けた(図4B、白色バー)が、それらはプラスミドに基づくACE-tRNAArg UGA図4B、灰色のバー)よりも有効性が低く、有意なサイズの効果を示し、400bpのCEDTは700bpのCEDTの半分程度PTC抑制に有効であった。ベクターのサイズのこの明らかな効果がACE-tRNAの転写の効率に起因するのか、又はこの差異がトランスフェクションに基づく送達による細胞侵入効率の差に起因するのかは不明である。異なるトポロジー及びサイズのDNAは、異なる担体による送達効率に有意に影響を及ぼすことが報告されていた。
【0208】
本明細書に概説されるように、200~1000bpのMC及びCEDTのPTCレポーター16HBE14o-細胞へのエレクトロポレーションに基づく送達を行うことによって、細胞進入に対するDNAのサイズの影響に対処するために、さらなるアッセイを行う。エレクトロポレーションでは、DNAベクターのサイズの減少が細胞侵入を促進すると予想され、したがって、200~500bpのCEDTによる抑制活性のいずれかの観察された減少は、DNAトポロジーによって付与される非効率的な転写によって説明される可能性が高い。
【0209】
実施例4 ACE-tRNAを用いた内因性のCFTR PTCの救済
以前の研究の大部分は、cDNAからコードされるPTCを救済するためにサプレッサーtRNAを使用していた。有益ではあるが、これらの研究は、肺上皮におけるCFTRの低い内因性の転写、mRNAの転写後プロセシング/調節及びナンセンスコドン介在的分解(NMD)など、in vivoで遭遇する障害のすべてを提示したわけではなかった。この実施例では、ヒト細気管支上皮細胞株である16HBE14o-細胞を使用して、内因性のゲノムランドスケープ内のACE-tRNAs PTC抑制活性を判定した。また、位置p.G542X-、p.R1162X-及びp.W1282X-CFTRにPTCを引き起こすCFを担持するように改変されたCRISPR/Cas9である変異体16HBE14o-細胞も使用した。細胞を使用して、CFTR及び気道上皮のバイオロジー(Cozens,A.L.et al.American journal of respiratory cell andmolecular biology10,38-47(1994))を研究した。
【0210】
手短に言えば、WT 16HBE14o-細胞が、トランスフェクション効率を判定するために、TRANSWELLインサートでGFP発現プラスミドによりトランスフェクトされた。36時間後、細胞を画像化し、トランスフェクション効率が10%未満であることが見出された(図5A)。低いトランスフェクション効率にもかかわらず、使用Ussingチャンバー測定を行った。
【0211】
最初に、R1162X-CFTR HBE14o細胞を、CMV-hCFTRプラスミドでTranswellインサートにトランスフェクトして、hCFTRの機能的救済の「最良のシナリオ」を判定した。発現が強力なpol IIプロモーターによって駆動されるにもかかわらず、hCFTR cDNAトランスフェクションは、トランスフェクションの6日後に、たった約4%のCFTRチャネルの機能的救済をもたらした(図5G)。次に、ACE-tRNAArg(配列番号8)の500bpのCEDTを、同じ方法論を使用してR1162X-CFTR HBE14o細胞に送達した。注目すべきことに、ACE-tRNAArg500bpのCEDTは、CFTR機能の約3%の救済をもたらし(図5G)、CMV-hCFTR cDNAによる全遺伝子置換の値と同様の値であった。
【0212】
図5B図5C及び図5Dにも示されているように、p.R1162X-CFTR16HBE14o-細胞へのACE-tRNAArg UGA500bpのCEDTのトランスフェクションの6日後において、本発明者らは、驚くべきことに、フォルスコリン及びIBMXの添加(図5B及びC、WTの約3%)後におけるCFTR機能の緩やかな救済(図5B、青線)、並びに空のベクター(図5B、C&D、「R1162X+空」)のトランスフェクション後における測定可能なCFTR機能を伴わないInh172(図8B及びD、WTの3%)による阻害を測定した。CFTR機能のわずか10~15%の救済で、肺におけるCF症状を逆転させるのに十分であると推定されていることに留意すべきである(Amaral,M.D.Pediatric Pulmonology 39,479-491,doi:10.1002/ppul.20168(2005))。
【0213】
本発明者らは次に、ACE-tRNA転写物のトランスフェクション後にACE-tRNAがNMDを阻害するかどうかを調べた。興味深いことに、プラスチックにトランスフェクションを行うことにより、効率がはるかに高いことが分かった(約30%、図5E)。qPCRを、p.G542X-(図5F、左から2番目のバー)、p.R1162X-(図5F、左から4番目、5番目、6番目)p.R1162X-及びp.W1282X-CFTR(図5F、右から4つのバー)から単離されたmRNAに対して行った。空のDNAベクター又はACE-tRNAをコードするDNAベクターのトランスフェクションの2日後の16HBE14o-細胞。CFTRmRNA発現が有意に減少した(WTの25%未満)ことが見出された。4×ACE-tRNAGly UGA(配列番号5、図5F、左から3番目のバー)及び4×ACE-tRNAArg UGA図5F、水平線を有する左から5番目のバー)プラスミドのトランスフェクションは、定常状態のCFTRmRNAレベルの有意な増加をもたらし、それぞれ約10%及び約15%であった。さらに、p.R1162X-CFTR16HBE14o-細胞に対するACE-tRNAArg UGA500bpのCEDT及び800bpのMC(図5F、左から6番目のバー、7番目のバー)の送達は、ACE-tRNAArg UGAプラスミドと同様の定常状態のCFTRmRNAの増加(約15%)をもたらしたことが見出された。
【0214】
p.W1282X-CFTR16HBE14o-細胞における4×ACE-tRNATrp UGA(配列番号1)プラスミドのトランスフェクションは、ACE-tRNATrp UGAがライブラリーの最も機能していないファミリーであったので、CFTRmRNAの定常状態の発現に影響を及ぼさなかった(図5F、右から3本目の線付きバー)。Ussingチャンバー記録(Xue,X.et al.,Humanmolecular genetics 26,3116-3129,doi:10.1093/hmg/ddx196(2017))について測定されたように、CFTR p.W1282(p.W1282L)におけるロイシンが、約80%のWT CFTR機能を与えるということが以前に示されていた。本発明者らのACE-tRNAライブラリーは本質的にアラカートライブラリーであるため、最良の1×ACE-tRNALeu UGA(配列番号4)プラスミドを選択し、それらをp.W1282X-CFTR16HBE 24o細胞にトランスフェクトすることができ、これにより、CFTR mRNAの定常状態発現が約17%有意に増加した(図5F、右から2番目の縦線付きバー)。
【0215】
図5に示されている結果は、ACE-tRNAが内因性のCFTR mRNAのNMDを強力に阻害し、CFがPTCを引き起こすことを初めて実証したが、これは、先駆けとなるラウンドの翻訳を促進することによるものである可能性が最も高い。さらに、Transwellではトランスフェクション効率がかなり低いにもかかわらず、CEDTから発現されたACE-tRNAは、p.R1162X-CFTR16HBE14o-細胞において、内因性のCFTRの機能的レスキューを促進した。
【0216】
実施例5 in vivoでのPTCのACE-tRNA依存的リードスルー。
この実施例では、in vivoでのPTCのACE-tRNA依存的リードスルーを調べるためにアッセイを行った。
【0217】
最初に、CMV-GFPをコードするcDNAプラスミドを、吸引後に電場を使用してマウスの肺に送達し、3日後に蛍光性顕微鏡法(図6A)によって評価した。GFP発現の定量は、遺伝子導入のエレクトロポレーション法が非常に効率的であり、すべての細胞型において肺の細胞の33.2%±3.5%(複数のマウスからの複数の切片で18から52%)で発現が観察されることを示した。重要なことに、GFP分布は、実質と比較して気道で優勢であるように見えた(図6A、左挿入図)。
【0218】
次いで、効率的な送達がPTC抑制レポータープラスミドpNanoLuc-UGAとACE-tRNAをコードするベクターとの同時送達によって達成され得るかどうかを判定するためにアッセイを行った。対照マウスにPTCレポーターpNLuc-UGAプラスミドを投与して擬似PTCリードスルーを測定した。エレクトロポレーションの2日後、肺を解剖し、生理食塩水を灌流し、ビーズビーター装置内の溶解バッファー(PROMEGA)でホモジナイズした。溶解物を高速で回転させ、プレートリーダーを使用して上清をNLuc活性について分析した。ACE-tRNAベクターの非存在下では、有意な発光は測定されなかった(図6B、左から1番目のバー)。ACE-tRNAArg(配列番号8)プラスミド(図6B、左から2番目のバー)、500bpのACE-tRNAArgのCEDT(図6B、中央のバー)、800bpのACE-tRNALeu(配列番号4)MC(図6B、右から2番目のバー)及び800bpのACE-tRNAArgのMC(図6B、右から1番目のバー)が、in vivoでマウスの肺においてNLuc-PTC救済を助けることが見出された。これらの結果は、(i)p.G542X-CFTR及びp.W1282X-CFTRのマウスの気道上皮におけるプラスミド、MC及びCEDTSをコードするACE-tRNAによるナンセンス抑制の有効性及び持続性、及び(ii)肺への送達後のMC及びCEDTにコードされるACE-tRNAの効率及び持続性の原理の証明をもたらす。
【0219】
実施例6 TELSの同定
この実施例は、TELSを同定してtRNA5’フランキング配列からのACE-tRNA発現を増強するためのアッセイを記載する。Lowe et al.,Nucleic Acids Res 25,955-964,doi:10.1093/nar/25.5.955(1997)に記載されている416個のtRNA遺伝子のうちの1つ以上などのtRNA遺伝子由来のtRNA5’フランキング配列(約1kb)を使用することができる。
【0220】
哺乳動物細胞への送達後に発光を使用してPTC抑制のハイスループットクローニング(HTC)及び定量的ハイスループットスクリーニング(HTS)の両方を助けるオールインワンcDNAプラスミドに、各配列をクローニングする(図7B)。1kbの5’フランキング配列を、gBlocks(Integrated DNA Technologies)として、GOLDEN GATEクローニングを使用して96ウェル形式でHTC部位にクローニングし、ccdBネガティブ選択と対にして、約100%のクローニング効率を得る。すべてのクローンをサンガー配列決定によって確認する。TEL配列をACE-tRNAArg UGA-(配列番号8、図7B)のすぐの5’側にクローニングし、NLuc-UGA抑制効率を、プレートリーダーを用いて96ウェル様式で読み取ると、PTC抑制の増加はACE-tRNAArg UGAの発現の増加を示す。最初のスクリーニングが完了した後、やはりgBlock配列をクローニングすることによって、上位10個の1kb配列を250bp配列に分割して転写増強の起源を同定する。ACE-tRNAの転写を増強又は阻害する1kbリーダー配列を、多数の開発されたソフトウェアツール(Sharov,A.A.&Ko,M.S.H.DNA Research16,261-273,doi:10.1093/dnares/dsp 014(2009))106を用いて配列モチーフについて分析する。1つ又は複数のTELSは、ACE-tRNAの発現を数倍増強して、あまり効率的でない送達を可能にし、強力なPTC抑制を維持することができると予想される。また、この研究からの結果から、tRNA転写の調節に対する洞察を得る。
【0221】
実施例7 DTSの同定
この実施例は、ミニベクター核局在化を駆動するDTSを同定するためのアッセイを記載する。
【0222】
プラスミドを非分裂細胞の核に標的化するいくつかのDNA配列が同定されている。例えば、Dean,D.A.Exp.Cell Res.230,293-302(1997)、Dean,D.A.,et al.,Exp.Cell Res.253,713-722(1999)、Vacik,J.,et al.,Gene Therapy 6,1006-1014(1999)、Young,J.L.,et al.,Mol.Biol.Cell 10S,443a(1999)、Langle-Rouault,F..J Virol 72,6181-6185(1998)、Mesika,A.,et al.,Mol Ther 3,653-657.(2001)、Degiulio,J.V.,et al.,Gene Ther,doi:gt2009166 [pii] 10.1038/gt.2009.166(2010)、Sacramento,C.B.,et al.,Brazilian journal of medical and biological research 43,722-727(2010)、及びCramer,F.et al.,Cancer Gene Ther 19,675-683,doi:10.1038/cgt.2012.54(2012)を参照されたい。これらの配列に共通する特徴は、それらが転写因子の結合部位を含むことである。興味深いことに、SV40エンハンサーは、核局在化配列(NLS)を含有する>10の遍在的に発現された転写因子の結合のために、すべての細胞型においてDTSとして作用する。典型的な転写因子は、核内に輸送され、その調節DNA標的配列に結合し、転写を活性化又は抑制する。しかし、転写因子結合部位を含有するDNAが細胞質に存在する場合、細胞質転写因子は、核取り込み前にこの部位に結合し(図8)、DNA-タンパク質複合体を核内に転位させ得る。
【0223】
本発明者らは、60を超える強力な一般的及び細胞特異的プロモーターをスクリーニングし、7つのDTSを見出した。これらのうち、2つは遍在的に機能するが、5つは細胞のサブセットで発現される特異的転写因子に結合する。発現プラスミドへのDTSの組み込みは、微量注入及びトランスフェクトされた非分裂細胞における遺伝子発現を増加させ、本発明にとって重要なことは、プラスミドの核標的化及びその後のin vivoでの遺伝子発現を増加させるように作用することが見出された。ここで、本発明者らは、ACE-tRNAをコードするミニベクター親pUC57プラスミドが、細胞質マイクロインジェクション後に、非分裂細胞の核に輸送されないことを示した。プラスミド核局在化及びその後のACE-tRNAの発現を改善するために、プラスミドにSV40 DTSを含めることができる。
【0224】
ACE-tRNAミニベクターの送達、発現、及び最終的にはナンセンス抑制を改善するために、核標的化においてSV40 DTSよりも効果的な、新しいDTSを同定するためのスクリーニングを行うこともできる。すべての細胞のタイプにおいて作用するDTSを同定することが好ましいので、遍在的に発現されるプロモーターをスクリーニングすることができる。マイクロアレイ、RNAseq及び単一細胞シーケンシングによって同定されたハウスキーピング遺伝子の多数のデータベースが、例えば、Curina,A.et al.,Genes Dev 31,399-412,doi:10.1101/gad.293134.116(2017)、Eisenberg,E.&Levanon,E.Y.Trends Genet 19,362-365,doi:10.1016/S0168-9525(03)00140-9(2003)、及びEisenberg,E.&Levanon,E.Y.Trends Genet 29,569-574,doi:10.1016/j.tig.2013.05.010(2013)において公開されてきた。
【0225】
上位20のハウスキーピング遺伝子のプロモーター配列は、公開された配列又は生物情報学的分析及びDBTSSデータセット(dbtss.hgc.jp)からの各プロモーターの転写開始部位の同定に基づいて同定することができる。これらのプロモーターは、典型的には500~2000bpのサイズの範囲であり、CMVプロモーター由来のGFPを発現するレポータープラスミド(DTSとして機能しない)に、ヒトゲノムDNAからPCRによってクローニングすることができる。このプラスミドはまた、三重鎖形成ペプチド核酸(PNA)のための結合部位を担持して、DNAの蛍光性標識を可能にすることができる。Cy3標識PNAをプラスミドのこの部位にハイブリダイズさせることによって、高い量子収率の蛍光性標識プラスミドを生成して、核取り込みをリアルタイムで追跡することができる(Gasiorowski,J.Z.&Dean,D.Mol Ther12,460-467(2005))。
【0226】
プラスミドをCy3-PNAで直接標識する代替的な手法として、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行って、注入されたDNAを可視化することもできる。DTS候補プラスミドを、微量注入されたA549肺上皮細胞において30分~8時間にわたって核取り込み活性について試験することができる(Dean,D.A.Exp.Cell Res.230,293-302(1997),Dean,D.A.,et al.,Exp.Cell Res.253,713-722(1999),and Vacik,J.,et al.,Gene Therapy 6,1006-1014(1999))。本発明者らは、SV40配列が30分以内にプラスミドの核内取り込みを媒介することを見出したが、SMGAプロモーターは、プラスミドが平滑筋細胞の核に局在するのに4時間を必要とする。この手法は、それらの核取り込み速度に基づいてSV40 DTSに対して配列をランク付けすることを可能にすることができる。DTSを含まないpUC57プラスミドの陰性対照及びpUC57-SV40 DTSのポジティブコントロールもまた、注入後に細胞が生存可能なままであり、核内にDNAを輸送する能力を有することを確実にするために注入することができる。
【0227】
細胞特異性を試験するために、候補DTS含有プラスミドを、HEK293、初代平滑筋細胞及び内皮細胞、並びにヒト線維芽細胞を含む複数の細胞型に、微量注入することができる。本発明者らの経験に基づいて、この画面から2~4つの一般的なDTSを識別できると予測することができる。移入活性を示すプロモーター配列が同定されると、Miller,A.M.&Dean,D.A.Gene Ther 15,1107-1115(2008)、Degiulio,J.V.,et al.,Gene Ther 17,541-549,doi:10.1038/gt.2009.166(2010)、及びGottfried,L.,et al.,Gene Ther 23,734-742,doi:10.1038/gt.2016.52(2016)に記載されている方法で、核標的化を助ける最小配列の長さを同定するために、限られた数の切断型プロモーター(例えば、3~4)を作製することができる。次に、Dean,D.A.,et al.,Gene Ther 10,1608-1615(2003)、Machado-Aranda,D.et al.Am J Respir Crit Care Med 171,204-211(2005)、Mutlu,G.M.et al.,Am J Respir Crit Care Med 176,582-590(2007)、Zhou,R.,et al.,Gene therapy 14,775-780,doi:10.1038/sj.gt.3302936(2007)、Young,J.L.,et al.,Methods Mol Biol 1121,189-204,doi:10.1007/978-1-4614-9632-8_17(2014)、及びYoung,J.L.et al.,Adv Genet 89,49-88,doi:10.1016/bs.adgen.2014.10.003(2015)に記載されているように、これらの最小DTSが、エレクトロポレーションによるマウスの肺への送達後のin vivoでのプラスミド核ターゲティングを助け、肺の薄い切片におけるeGFP発現のためのIFによるプラスミドの核送達を定量化するかどうかを判定することができる。対照として、DTS又はSV40 DTSを保有していないレポータープラスミドもマウスの肺に移入する。
【0228】
2~4個のプロモーターが培養細胞において一般的なDTS活性を示すことが予想される。したがって、マウスにおいて4つの潜在的DTS及び2つの対照を試験することができる(n=6)。これを雄及び雌のC57B6マウスで別々に試験し、実験を1回繰り返すこともできる。遺伝子導入の2日後、動物を安楽死させ、肺を灌流し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、ショ糖溶液に通し、凍結薄切片化のためにOCTに包埋する。GFP陽性細胞を各細胞特異的マーカーと共にカウントして、各細胞型に対するGFP陽性細胞の数を判定する。アセチル化チューブリン(線毛気道上皮細胞)、CCSP(クラブ細胞)、Muc5AC(杯細胞)、CD31(内皮細胞)及びSMAA(平滑筋)に対する抗体を使用して、肺細胞型を同定することができる。本発明者らは、過去にこの手法を使用して、核移入の細胞特異性を判定した。次いで、最良の配列を本発明者らのACE-tRNAミニベクターに組み込んで、送達及び発現を最大化することができる。重要なことに、同定されたDTSは、核標的化及び治療的導入遺伝子発現を増強するためのすべてのDNA治療手法に直接適用することができる。
【0229】
実施例8 DTS及びTELSを有するMC及びCEDT
この実施例では、500bpのACE-tRNAArg UGA(配列番号8)MC及びCEDTへのDTS及びTELSの組み込みが、核標的化、転写及びPTC抑制を改善するかどうかを調べるためにアッセイを行う。
【0230】
重要なことに、既存のMC及びCEDT技術は、細胞培養及びin vivoの両方で、PTC抑制において効率的である(図4図7及び図10)。かく言うものの、tRNA転写因子(Pol III転写エレメント)は、細胞質注入後にACE-tRNAArgのMCを核(図8B)の中にエスコートしなかった。したがって、核標的化、転写及びPTC抑制を改善するために、72ヌクレオチドSV40 DTS及び一般に活性なDTSを有するACE-tRNAArg UGAのMC及びCEDTが生成されている。16HBE14o-細胞へのこれらのベクターの細胞質及び核注入は、本明細書に記載されるのと同じ方法で行われる。
【0231】
DNA局在化を、4時間後にFISHを使用して判定する。以下に概説するように、pNLuc-UGA PTCレポータープラスミド(CEDT、n=8;CEDT-DTS、n=8;MC、n=8;MC-DTS、n=8;男性4人及び女性4人)と同時エレクトロポレーションをしたDTSを伴う又は伴わないCEDT及びMCを用いた限定的マウスの肺エレクトロポレーション試験も実施する。SV40 DTS及び4つのDTSを、MC又はCEDTあたり合計5つのDTSについて試験する(96匹のマウスを使用)。様々なDTSの添加は、その核生物学的利用能を増加させることによってACE-tRNA転写を大幅に増強し、その後PTC抑制を増強すると仮定される。DTS修飾を包含することは、in vivoのエレクトロポレーション研究において2倍を超えるPTC抑制をもたらし得ると予測される。
【0232】
実施例9 ミニベクターの細胞内PTC抑制能力
この実施例は、16HBE14o-細胞(p.G542X、p.R1162X及びp.W1282X)においてPTCを抑制するミニベクターの能力を判定するための研究を記載する。ここで使用される送達方法は、LONZA 4D-NUCLEOFECTOR(商標)Xシステムであり、溶液「SG」及びプログラムCM-137は、16HBE14o-細胞に対して既に最適化されている。
【0233】
pR1162X-CFTR16HBE14o-細胞において、ベクターのサイズがACE-tRNAのCEDT及びMCのPTC抑制に与える影響を、125、200、300、400、500、600、700、800、900及び1000bpのDNAミニベクターのスクリーニングを行うことによって調べる。p.R1162X-CFTRのレスキュー機能を、Ussingチャンバーの記録(n=4~6)及びその後のqPCR分析を使用して判定して、定常状態のCFTRmRNAの発現を判定する(n=4~6)。Ussingチャンバーの記録の場合、本発明者らは、5mMデキストロースを補充したCl-勾配(140mMのCl-基底外側/4.8mMのCl-)及びその後のアミロライド(100μM)の添加を用いてENaC及びDID(100μM)をブロックしてCaCC活性をブロックする。その後、CFTRはフォルスコリン(10μM)及びIBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン、100μM)によって活性化され、10μMのInh172によって阻害される。CFTR活性のレスキューを、図5Bに記載されるように、F&Iの前後及びInh172の前後のブロックのΔIClとして分析する。
【0234】
最適なミニベクターの条件を使用して、p.W1282X 16HBE14o-細胞に送達されるACE-tRNALeu UGA(配列番号4)をコードするMC及びCEDTの機能を検証する。上記の例で同定された上位のDTS及びTEL配列は、最適のサイズのミニベクターに含まれる。ミニベクターのPTC抑制能を数倍に高めることが期待される。
【0235】
実施例10 ACE-tRNA発現ベクターは、マウスにおけるCFTR p.G542X及びp.W1282Xを抑制する。
この実施例は、マウスの肺における、ACE-tRNAをコードするcDNAプラスミド、CEDT及びMCが、CFTRのp.G542X及びp.W1282Xを抑制する能力を調べるための研究を記載する。p.G542X及びp.W1282X-CFTRのPTC変異を備えるマウスモデルが生成されている。例えば、p.G542Xマウスは、McHugh,D.R.,et al.,PloS one 13,e0199573,doi:10.1371/journal.pone.0199573(2018)において公表されている。これらのp.G542X及びp.W1282X-CFTRマウスは、CFTR転写物の変化がヒトを細かく再現するので、PTC治療を研究するために使用される。
【0236】
電界(エレクトロポレーション)法は、当技術分野で公知の方法を使用してDNAベクターを肺に送達するために利用される。例えば、Dean,D.A.,et al.,Gene Ther 10,1608-1615(2003)、Zhou,R.&Dean,D.A.Experimental biology and medicine(メイウッド、ニュージャージー州)232,362-369(2007)、O’Reilly,M.A.et al.The American journal of pathology 181,441-451,doi:10.1016/j.ajpath.2012.05.005(2012)、Mutlu,G.M.et al.,American journal of respiratory and critical care medicine 176,582-590,doi:10.1164/rccm.200608-1246OC(2007)、Blair-Parks,K.,et al.,The journal of gene medicine 4,92-100(2002)、and Barnett,R.C.et al.,Experimental biology and medicine(メイウッド、ニュージャージー州)242,1345-1354,doi:10.1177/1535370217713000(2017)を参照のこと。ここでは、cDNAプラスミド並びに500bpのCEDT及びMCを、3週齢(離乳)ホモ接合性CFTRのp.G542X(ACE-tRNAGly UGA)及びp.W1282X(ACE-tRNALeu UGA)マウスの肺に、エレクトロポレーションにより送達する。スクランブルのtRNA配列をコードするcDNAプラスミド(MC及びCEDTの両方に対して2.7kbのpuc57親プラスミド)を、エレクトロポレーションの効果、及び発現されたACE-tRNAが肺細胞生存率に与える可能な効果の対照として使用する。簡潔には、塩平衡溶液中の50ulのDNA(2mg/ml)をマウスの肺に吸引する。送達直後に、イソフルランを投与しながら、小児の皮膚ペースメーカー電極(MEDTRONICS)を使用して一連の8×10msecの方形波電気パルス(200V/cm)を動物に投与する。電極は、コンダクタンスを助けるために、少量の外科用潤滑剤を使用して、胸部の両側に配置される。
【0237】
マウスを、送達の7、14及び21日後(d)に分析する。腸閉塞のために、ホモ接合p.G542X-及びp.W1282X-CFTRマウスのわずか40%しか40日齢まで生存しなかったので、研究は、各群について、n=6を達成するよう大規模コホートのマウス(n=12)から開始する。合計で、最低で384匹のマウスを使用してこの研究を完了している。適切な実験動物を実現するために、両方の性別を使用している。各時点で、マウスを安楽死させ、肺を取り出し、左右の肺葉に分離する。凍結させた切片のため、OCTに埋め込む前に、右葉を灌流し、4%パラホルムアルデヒド/30%スクロースで膨張固定する。左葉をタンパク質(ウエスタンブロット、WB)及びRNA単離のために急速凍結する。肺の左葉を液体窒素下で粉砕し、肺粉末の1/8をCFTRmRNAについて分析する。残りの肺を、150mMのNaCl、50mMのTris、pH8.0を含有するバッファーの中で、ダウンス式にホモジナイズし、プロテアーゼ阻害剤及び2%のCHAPS(w/v)を補充する。グリコシル化CFTRタンパク質を、小麦胚芽アグルチン(WGA)結合アガロースビーズを使用して親和性精製し、洗浄し、200mMのN-アセチルグルコサミン(NAG)で溶出する。試料を、抗CFTR抗体(1:1000;米国MILLIPOREのM3A7)を使用して免疫ブロットする。マウス由来の腸は、WB及びqPCR分析のための未治療組織対照として機能する。右葉の切片を、上、中央、及び下を表す肺の3つの高さで切断し、ミニベクター及びDAPIに向かってFISH(Cy5又はCy3)で染色する(図8)。気道の細胞は、どの細胞がトランスフェクトされているかを同定するために、連続的な切片で特異的抗体と共染色することによって、同定される。定量は、肺の各レベルからの10の切片におけるFISH+細胞/総細胞の数を数えることによって行う。
【0238】
共染色に使用される抗体には、ケラチン5(粘膜下の腺の基底細胞)、アセチル化チューブリン及びFoxJ1(染色に応じて線毛又は非線毛気道上皮細胞)、神経発育因子受容体、ケラチン14、p63(気道の基底細胞)、及びMuc5AC(杯細胞)が含まれる。CFTRは、マウスモノクローナルCFTR-769を使用して免疫組織化学及び免疫蛍光法によって検出される。エレクトロポレーションはDNAを気道上皮細胞(図6A)に送達するのに非常に効率的であるので、本発明者らは、IFによって検出するのに十分高いレベルである、気道上皮細胞におけるCFTRタンパク質の有意な救済(>10%)を予測している。
【0239】
炎症性サイトカインレベルを、マウスのサブセット(n=6)において、エレクトロポレーションの前及び直後に測定し、次いで、再度、肺採取時(7日の時点)に測定して、治療が炎症応答を引き起こしたかどうかを判定する。重要なことに、これは以前に、エレクトロポレーション後、ブタ又はマウスにおいて炎症性反応を示さなかった。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)組織学的分析を行って、肺の形態の変化を検出する。
【0240】
実施例11 WTマウスの肺におけるACE-tRNAArgUGA発現ベクターの持続性
この実施例は、WTマウスの肺におけるACE-tRNAArg UGA(配列番号8)発現プラスミド、CEDT及びMCの持続性を判定するための研究である。
【0241】
40日間生存したp.G542X及びp.W1282X-CFTRマウスが非常に少ないため、おそらく、実施例10ではCEDT及びMCからのACE-tRNA発現の完全な持続性を判定することが不可能であり得る。本発明者らは、>6ヶ月齢のマウスの肺における導入遺伝子の発現を実証した。したがって、本発明者らは、実施例10)に以前に記載されたように、3週齢のC57Bl/6雄WTマウスの肺に、ACE-tRNAArg UGAをコードするcDNAプラスミド(MC及びCEDTの両方について2.7kbのpuc57親プラスミド)、500bpのCEDT及びMCを送達し、それらの送達効率及び持続性並びにPTC抑制効率を判定する。スクランブルのtRNA配列をコードする親プラスミドを、エレクトロポレーションの効果、並びに発現されたACE-tRNAが7日間、14日間及び1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月及び12ヶ月で肺細胞の生存率に与える可能な効果の対照として使用する。
【0242】
試験は、治療あたり10匹のマウス(雄5匹/雌5匹)で開始し、エンドポイントは、合計240匹のマウスについて、試験のこの部分のために使用される。各エンドポイントの3日前に、短いユビキチンCプロモーター(shUbC)の制御下でn末端血液凝集素(HA)エピトープタグ及びc末端FLAGエピトープタグを有するNLuc-UGAタンパク質を発現する核標的化のためのSV40-DTSを有する小型(3kb)PTCレポーターcDNAプラスミドの後続的な送達を行う(図9)。
【0243】
定められたエンドポイントで、肺を取り出し、IF及びFISH分析(右葉)並びにタンパク質生化学(左葉)について、上記のように治療する。PTCレポータープラスミドは、多機能性であり、ミンベクター(minvector)とは完全に異なる配列を有し、したがって、プラスミドの共送達効率を判定するためにco-FISHによって同定することができる。ミニベクターとPTCレポータープラスミドが共局在する場合、リードスルー効率は、in vivoイメージングを使用するNLuc発光、外植された肺組織のプレートリーダー測定(図6B)、又はc末端FLAGタグを使用する生化学的測定(左葉)によって、判定することができる。NLucタンパク質の発現の後に、n末端HAエピトープタグを使用してIF又はWBを続けることができ、PTCが抑制された場合にのみ、明らかなFLAGシグナルが存在する。重要なことに、このDNAコンストラクトは、PTC抑制のための最良のACE-tRNA配列を同定するために本発明者らのハイスループットスクリーニングで使用されるものと類似している。これは、バックグラウンドのリードスルーを低減して真正なPTC抑制を忠実に報告することによって、ノイズに高いシグナルを与えるように修正されている。
【0244】
この試験では、マウスで概説した実験の再現性を確実にするために、1バッチで、5.5gのエンドトキシンを不含有のPTCレポーターcDNAプラスミドを作製した(ALDEVRON)。500bpのミニベクターの送達は、(細胞の共FISH標識によって判定されるように)3kbのPTCレポータープラスミドよりも効率的であり、したがってミニベクターのPTC抑制活性の過小評価を与えると予測される。本発明者らは、ミニベクターに対してFISHを使用して、各エンドポイントでの肺におけるミニベクターの存在の持続性を判定し、PTCレポーターc末端FLAGエピトープに対する発光及びIFを使用して、抑制作用の持続性を定量する。FISHと対にした実施例10に詳述されているIF抗体及び技術を使用して、どの細胞型が形質導入されているかを同定する。
【0245】
CFTRの機能の測定を行うために、Grubb,B.R.,et al.,Am J Physiol 267,C293-300,doi:10.1152/ajpcell.1994.267.1.C293(1994),160 Grubb,B.R.et al.Nature 371,802-806,doi:10.1038/371802a0(1994)、及びGrubb,B.R.,et al.,Am J Physiol 266,C1478-1483,doi:10.1152/ajpcell.1994.266.5.C1478(1994)に記載されているように、気管を除去し、長手方向に半分に分割する。半分は、直径2mmの開口チャンバーを有するUssingチャンバー(PHYSIOLOGIC INSTRUMENTS)に分析のために取り付けられ、短絡電流は、Cooney,A.L.et al.,Nucleic Acids Res 46,9591-9600,doi:10.1093/nar/gky773(2018)、Cooney,A.L.et al.,JCI Insight 1,doi:10.1172/jci.insight.88730(2016)、Mall,M.,et al.,Nat Med 10,487-493(2004)、and Zhou,Z.et al.J Cyst Fibros 10 Suppl 2,S172-182,doi:10.1016/S1569-1993(11)60021-0(2011)に記載されている方法で測定される。短絡電流の差は、図7B図7Dで行われた実験と同様に、気管切片の基底外側に10μMのフォルスコリン及び100μMのIBMXを添加し、続いて10μMのInh172を添加した後に計算される。残りの気管の切片を使用して、NBD2ドメインに対するCFTR769抗体を使用する免疫蛍光によって、気道におけるCFTRの発現を判定することができる。重要なことに、肺の切除された部分は、将来のRNAseq及びRiboseq研究のために積み立てられる。
【0246】
本明細書に記載されるいくつかの実験のために、本発明者らは、ACE-tRNAの持続的発現を外挿するためにPTC抑制プレートリーダー発光アッセイに依拠する。目標は、ACE-tRNA転写活性の直接的な測定を可能にする技術を創出することである。その目的のために、本発明者らは、ACE-tRNA:バーコード融合転写物をコードし、バーコード配列(ABS)は内因性のtRNase Zによって切断され、qPCR定量化を可能にして相対的なACE-tRNA発現を判定しながら、完全に機能的なACE-tRNAを得ることができる(図10A)。
【0247】
本発明者らは、マウスのゲノム配列と相同性のないランダムな200bpのバーコード配列を設計した。NLuc-UGAを安定して発現する16HBE14o-細胞にトランスフェクトされた場合、ACE-tRNAArg UGA-及びACE-tRNATrp UGA-バーコードは、qPCRによってモニターした場合にロバストな発現を示すが、非バーコード化ACE-tRNAは意義あるシグナルを与えなかった(図10B)。しかし、1つの場合では、ACE-tRNAArg UGAの抑制活性は、3’バーコード配列の存在によって妨げられた(図10C)。ACE-tRNA活性の欠損は、3’プロセシングが不十分であるためである可能性が最も高く、バーコード配列に対してプローブ探査されたノーザンブロットによって判定することができる。その配列がバーコード又は改変させたバーコードリンカー配列としても作用して3’プロセシングを改善する3’HDV自己切断リボザイムをコードすることによって、ABS技術を改善するための作業を行うことができる。3’リボザイムの組み込みは、改善されたACE-tRNAの3’プロセシングをもたらし、それらのPTC抑制活性を増加させ得る。さらに、ABS技術はNLuc PTCレポーターを補完するためのACE-tRNA発現の測定を可能にする(図9)。
【0248】
別の実施形態では、本発明者らは、定常状態のACE-tRNA転写活性の高分解能で直接的な測定を可能にする新規なACE-tRNAバーコードシステム技術を作り出した(図11A)。標準的なRNA-seq法は、広範な転写後修飾及び二次構造のために、tRNAで実施することができない。Zheng,G.et al.,Nature Methods 12,835 and Pang et al.,Wiley Interdiscip Rev RNA 5,461-480,doi:10.1002/wrna.1224(2014)。さらに、ACE-tRNA配列は、1つ又は複数の内因性のtRNAと1つのヌクレオチドのみが異なり、したがって、ノーザンブロット、マイクロアレイ及び断片化RNA-seqは、外因性治療用ACE-tRNA及び内因性のtRNAの発現レベルを識別することができない。したがって、本発明者らは、これらの問題を回避し、ACE-tRNA転写の信頼性の高い直接的かつ高感度のqRT-PCR測定をもたらすバーコード技術を生成した。ここで、固有の3’バーコード配列は、HDVリボザイム(drz-Bfo-2、60bp)をコードする。(Webb et al.,Science 326,953(2009)、及びWebb et al.,RNA Biol 8,719-727(2011))、転写後にACE-tRNA本体から自身を効率的に切断する(90%超)(図11B)。ACE-tRNAの転写によって駆動されるHDVの発現を、プローブベースのqRT-PCRを使用して定量する。重要なことに、バーコード化ベクターで発現されるACE-tRNAは、3’末端の2’、3’環状ホスフェート基修飾(Schurer et al.,Nucleic Acids Res 30,e56-e56,2002)のために翻訳に関与することができず、したがってPTC抑制の結果を混同しない。
【0249】
実施例12 G418及びACE-tRNAの内因性のCFTRのPTCの救済
この実施例では、内因性のCFTRのPTCの救済を調べ、従来のPTCリードスルー剤(すなわち、G418)及びプラスミドに送達されたACE-tRNAと比較するために、試験が実行された。その目的のために、操作されたヒト細気管支上皮細胞株、16HBE14ge-を使用した(Valley et al.,Journal of Cystic Fibrosis,Volume 18,Issue 4,July 2019,Pages 476-483)。G418(Geneticin)は、リボソームの復号中心と相互作用し、近い同族tRNAでPTCの抑制を促進することによって作用し、したがって多くの場合誤ったアミノ酸を組み込む標準的なPTCリードスルー剤である。その非特異的な性質のために、G418による救済は、ナンセンス突然変異からのミスセンス変異の生成をもたらす。対照的に、本明細書に開示されるようなACE-tRNAは、所望のアミノ酸に入れられる。
【0250】
アッセイを実施するために、W1282X-CFTR又はR1162X-CFTRの変異を有する野生型16HBE14geー細胞又は16HBE14geー細胞は、(i)100uMのG418又はビヒクルで処理するか、又は(ii)実施例4に記載の方法で、3つのACE-tRNA(配列番号8、4及び1)、1×ACE-tRNAArg、4×ACE-tRNAArg、1×ACE-tRNALeu、4×ACE-tRNALeu、1×ACE-tRNATrp及び4×ACE-tRNATrpの1つ又は4つのコピーをコードする空のプラスミド又は様々なプラスミドで、トランスフェクトされた。48時間後、対応するCFTRmRNA発現レベルを次いで判定した。結果を図14に示す。
【0251】
図に示されるように、プラスミドからコードされ、16HBE14ge-細胞にトランスフェクトされたACE-tRNAは、アルギニン及びロイシンACE-tRNAを使用して、翻訳の先駆けとなるラウンドを促進することによって、G418よりも、ナンセンスコドン介在的分解過程の阻害において、有意に効果的であった。このデータの重要な態様はまた、本明細書に開示されるプラットフォームがアラカルトのPTC抑制を助けることである。予想外にも、ロイシンACE-tRNAは、トリプトファンACE-tRNAよりも効果的にW1282Xを抑制することが見出された。W1282Xの位置のロイシンは、WTレベルのCFTR機能を助ける(Xu et al.,Hum Mol Genet.2017 Aug 15;26(16):3116-3129)ので、本明細書に記載のACE-tRNALeuを使用して、変異pf W1282X-CFTRを救済又は抑制することができる。
【0252】
PTCは、(a)完全な機能喪失又は変化した機能を有する切断型タンパク質、及び(b)NMD経路によるmRNA転写物の分解の両方をもたらすので、両方のフロントに対するACE-tRNAの効果を調べるために、追加のアッセイを設計し、実施した。より具体的には、図15Aに示すように、16HBE14ge-細胞を作製して、PTCリードスルー・レポーターpiggyBac導入遺伝子を発現させた。導入遺伝子はPTCを有するmNeonGreen(mNG)タンパク質をコードするので、ACE-tRNAによるPTCの抑制は、発現したmNGタンパク質からの蛍光に基づくFACの選別によって、定量することができる。その目的に対して、蛍光の増加は、翻訳レベルでのPTCの抑制を表す。
【0253】
これらの細胞は、100uMのG418で処理するか、又は上記の方法で4×ACE-tRNAArgをコードするプラスミドでトランスフェクトされた。次いで、細胞を、発現したmNGタンパク質からの蛍光について調べた。結果を図15Bに示す。図に示すように、アルギニンACE-tRNAは、強固なPTC抑制及び完全長のmNeonGreenタンパク質の生成を助けた。対照的に、G418は強固なPTC抑制を助けなかった。灰色のプロファイルは、非処理のPB-mNeonGreen-R1162X-16HBE14ge-細胞についてのものであった。
【0254】
実施例13 様々なフォーマットで送達されるACE-tRNAの内因性のCFTRのPTCのレスキュー
この実施例では、内因性のCFTRのPTCの救済を調べ、様々なフォーマット、例えば、プラスミド、CEDT及びMCで送達されるACE-tRNAに送達されたACE-tRNAと比較するために、アッセイが実行された。PTCリードスルー・レポーターpiggyBac導入遺伝子(図15A)を発現する上記の16HBE14ge-細胞を使用した。より具体的には、細胞が、ACE-tRNAをコードするプラスミド、CEDT又はMCでトランスフェクトされた。次いで、細胞をFACSによって選別し、mRNAを非緑色細胞及び緑色細胞から単離した。標的化RT-qPCRを使用して、CFTRのmRNA発現を定量した。
【0255】
いくつかの論文では、細胞が、ACE-tRNAArg及びACE-tRNALeuをコードするプラスミド(配列番号8及び4)でトランスフェクトされた。結果を図16A及び図16Bに示す。図16Bに示すように、プラスミドを介して送達されたACE-tRNAArg及びACE-tRNALeuの両方が、それぞれR1162X及びW1282X16HBE14ge-細胞からCFTRmRNAを有意にレスキューした。このようなCFTRのmRNAの救済は、緑色細胞(GFP+)及び非緑色細胞(GFP-)の両方で観察された。非緑色の細胞が依然としてCFTRのmRNA発現の救済をしていた理由は、ACE-tRNAが、有意なレベルの翻訳ではなく、先駆けとなるラウンドの翻訳によって、mRNAの発現を効果的にレスキューしていたためであった。これらの結果は、NMDの阻害が強固な翻訳レスキューよりも達成が比較的容易であることを示唆した。
【0256】
他のアッセイでは、R1162X-CFTR及びPTCリードスルー・レポーターpiggyBac導入遺伝子を有する16HBEge細胞に、エレクトロポレーションによってACE-tRNAをコードするミニサークルがトランスフェクトされた。これらの細胞をmRNA発現分析のためにFACSによって選別せず、むしろ集団全体を分析した。図17Aに示すように、ミニサークルをコードするACE-tRNAは、大部分の細胞において強固なmNeonGreenの発現を助けた。これらの結果は、ミニサークルを発現するACE-tRNAが、タンパク質レベルで定量可能なレベルまでPTCの抑制を助けることを示した。この救済は、親プラスミド(約7.0kbのサイズ)及びスクランブルの対照よりも有意に良好であった。また、ACE-tRNAの1つのコピーをコードする850bpのMC(「1×ACE-tRNAArg850bpのMC」)及びACE-tRNAの4つのコピーをコードする850bpのMC(「4×ACE-tRNAArg850bpのMC」)は、同様のレベルのCFTRmのRNAの発現をもたらした(図17B)。しかし、後者は、はるかに多くのmNeonGreenの発現細胞をもたらした(図17A、下2つのパネル)。これらの結果は、ACE-tRNAの量の増加がNMD阻害を増加させるようには見えなかったが、タンパク質の生成を増加させることを示唆した。このレベルのmRNA発現救済は、前例のない新規なものであった。
【0257】
さらなるアッセイを、W1282X-CFTR及びPTCリードスルー・レポーターpiggyBac導入遺伝子を有する16HBEge細胞を使用して行った。これらのアッセイでは、細胞が、スクランブル対照、4コピーのACE-tRNALeuをコードするプラスミド(「4×ACE-tRNALeu親プラスミド」)、又はエレクトロポレーションによって4コピーのACE-tRNALeuをコードする850bpのMC(「4×ACE-tRNALeu850bpのMC」)でトランスフェクトされた。細胞をmRNA発現分析のためにFACSによって選別せず、むしろ集団全体を分析した。図18Aに示すように、ミニサークルは大部分の細胞で強固なmNeonGreen発現を助け、ミニサークルを発現するACE-tRNAがタンパク質レベルで定量可能なレベルまでPTC抑制を助けることを示した。この救済もまた、スクランブル対照及び親プラスミド(約7.0kbのサイズ)よりも有意に良好であった。図18Bを参照されたい。
【0258】
同様のアッセイを行って、CEDTがまた、強固なタンパク質発現及びR1162X-CFTRの救済の両方を助けたことを示した。より具体的には、R1162X-CFTR及びPTCリードスルー・レポーターpiggyBac導入遺伝子を有する16HBEge細胞に、スクランブル対照、4×ACE-tRNAArgをコードするプラスミド、及びエレクトロポレーションによって1x又は4×ACE-tRNAArgをコードする異なるサイズの4つのCEDTが、トランスフェクトされた。図19に示すように、200bp、400bp及び900bpのCEDTは、強固なCFTR mRNA(図19B)及びmNeonGreenタンパク質発現(図19A)を助けた。CFTR mRNA発現及びmNeonGreenタンパク質発現を救済するそれらの能力は、CEDTのサイズによって影響されなかった。
【0259】
自然界では一過性であるトランスフェクションに加えて、ACE-tRNAArgの安定的なゲノムインテグレーションも調べた。それを行うために、PB-ドンキーシステム(図20)を使用して、トランスポゾンリピート(TR)に隣接するACE-tRNAArgコード配列の複数のコピーを有するベクターを作製した。このベクターを使用して、ゲノムDNAに安定的に組み込まれるACE-tRNAArgを有する16HBEge細胞を作製した。これらの細胞を、CFTRのmRNAの発現及びチャネル機能について、上記の様式で調べた。結果を図21に示した。安定的に発現したACE-tRNAArgが内因性のCFTRの機能を救済することが見出された。定量的PCR(qPCR)によるさらなる分析は、わずか16個のACE-tRNAArg発現カセットが、野生型細胞についてのレベルの約6~7%でR1162X16HBE14ge-細胞における強固なCFTR機能を助けるのに十分であることを示した。
【0260】
好ましい実施形態の前述の例及び説明は、特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものとしてではなく、むしろ例示するものとして解釈されるべきである。容易に理解されるように、特許請求の範囲に記載の本発明から逸脱することなく、上記の特徴の多数の変形及び組み合わせを利用することができる。そのような変形は、本発明の範囲からの逸脱と見なされず、そのような変形はすべて、後続の特許請求の範囲に含まれることが意図される。本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
図1
図2
図3
図4A-B】
図5A-F】
図5G
図6A-B】
図7A-B】
図8A-D】
図10A-C】
図11A-C】
図12A
図12B
図12C
図12D
図13A
図13B
図13C
図13D
図13E
図13F
図14
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20
図21A
図21B
【配列表】
2023533174000001.app
【手続補正書】
【提出日】2022-04-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年6月12日に出願された米国仮出願第63/038,245号の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
政府の利益
本発明は、国立衛生研究所によって授与されたHL153988の下で政府の支援を受けてなされた。政府は、本発明に一定の権利を有する。
【0003】
技術分野
本発明は、抗コドン編集(ACE)-tRNAに基づく薬剤、及び未熟終止コドン(PTC)に関連する障害を治療するための方法に関する。
【背景技術】
【0004】
遺伝コードは、DNAからタンパク質への翻訳の基礎であるトリプレット「コドン」を形成する4つのヌクレオチドを使用する。合計64個のコドンが存在し、そのうち61個がアミノ酸をコードするために、3個(TAG、TGA及びTAA)が翻訳終結シグナルをコードするために使用される。ナンセンス突然変異は、一般に単一ヌクレオチド置換によってアミノ酸コドンをPTCに変化させ、欠損した切断型タンパク質及び重篤な形態の疾患をもたらす。ナンセンス突然変異は、全遺伝性疾患の10%超、及び世界中で約3億人が罹患しているがんを含む約1,000の遺伝のヒトの障害を占めている。実際、嚢胞性線維症(CF)は、「クラス1」のPTC変異(例えば、p.G542X、p.R553X及びp.W1282X)を有する全CF患者の約22%に適するようになり、嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)の機能のほぼ完全な喪失及び重度の臨床症状をもたらす。ナンセンス関連疾患の非常に高い有病率及び統一機構のために、PTC治療薬を同定するための協調的な努力がなされてきた。アミノグリコシド(AMG)は、これらの取り組みの主要な焦点であった。しかし、長期化した使用に伴う耳毒性及び腎毒性は、それらの使用を臨床的に制限している。オフターゲット効果を低減するために合成AMG誘導体が現在研究されているが、それらはしばしば低いリードスルー効率を被る。非AMG小分子(例えば、タイロシン、アタルレン)も、毒性がほとんどない有望なPTCリードスルー化合物として同定されている。しかし、これらの手法は、元のPTC部位におけるミスセンス変異の生成をしばしばもたらす近同族tRNAの挿入を含めて、未だ克服されていないいくつかの課題を有する。さらに、化合物のいくつかは、ヒト初代細胞においてPTC抑制の効率が低く、アタルレンの第3相臨床治験不合格をもたらした(ACT DMD第3相臨床治験、NCT01826487;ACTCF、NCT02139306)。ナンセンス突然変異に関連する障害を治療するための治療剤及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、いくつかの態様において上述した必要性に対処する。
【0006】
一態様では、本発明は、(1)プロモーター及び(ii)抗コドン編集tRNA(ACE-tRNA)をコードする配列を含む、閉端環状非ウイルス非プラスミドDNA分子を提供する。分子は、閉端DNAスレッド(CEDT)分子又はミニサークル(MC)分子であり得る。分子は、DNA核標的化配列(DTS)、転写増強5’リーダー配列(TELS)及びACE-tRNAバーコード配列(ABS)からなる群より選択される1つ又は複数のエレメントをさらに含み得る。5’リーダー配列の例としては、配列番号306が挙げられる。DTSの例としては、SV40-DTS、例えば配列番号307が挙げられる。いくつかの実施形態では、分子は、いかなる細菌核酸配列も含まない。分子は、4個以下のCpGジヌクレオチドを含むことができる。好ましくは、分子はCpGジヌクレオチドを含まない。分子は、約200~約1,000bpのサイズ、例えば約500bpのサイズであり得る。ACE-tRNAは、TrpTGAchr17.trna39、LeuTGAchr6.trna81、LeuTGAchr6.trna135、LeuTGAchr11.trna4、GlyTGAchr19.trna2、GlyTGAchr1.trna107、GlyTGAchr17.trna9、ArgTGAchr9.trna6/ノイントロン、GlnTAGchr1.trna101及びGlnTAGchr6.trna175からなる群から選択されるものであり得る。例としては、配列番号1~10の配列を含むRNAが挙げられる。さらなる例としては、配列番号11~305によってコードされるものが挙げられる。一実施形態では、ACE-tRNAが、(i)配列番号1、4、5及び8からなる群から選択される配列、又は(ii)配列番号79及び94からなる群から選択される配列によってコードされる配列を含む。
【0007】
分子は、細胞におけるACE-tRNAの発現方法に用いることができる。発現したACE-tRNAは、mRNAの翻訳中にPTCをアミノ酸に戻す機能を有する。その目的に対して、本方法は、(i)目的の細胞を上記の分子と接触させること、及び(ii)ACE-tRNAの発現を可能にする条件下で細胞を維持することを含む。細胞は、1つ又は複数のPTCを含む変異体核酸を有することができる。その場合、野生型核酸は完全に機能的なポリペプチドをコードする。この方法を使用して、発現したACE-tRNAは、細胞におけるポリペプチドの発現を回復させるか又はポリペプチドの機能的活性を改善するために、1つ又は複数のPTCを救済する。例えば、ポリペプチドは嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)であり得、変異体核酸は切断型CFTRをコードする。一例において、変異体核酸は、Trpから終止のPTCを有する。ACE-tRNAは、Trpから終止のPTCをLeuに翻訳する。本発明の範囲内は、上記の分子の1つ以上を含む宿主細胞である。
【0008】
上記の分子は、PTC関連障害を治療するための方法において使用することができる。したがって、本発明はまた、(i)分子及び(ii)薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤を提供する。それを必要とする対象において、PTCに関連する疾患を治療する方法も提供される。この方法は、上記の分子又は薬学的組成物を対象に投与することを含む。疾患の例としては、嚢胞性線維症、デュシェンヌ-ベッカー型筋ジストロフィー、網膜芽細胞腫、神経線維腫症、運動失調-毛細血管拡張症、テイ・サックス病、ウィルムス腫瘍、血友病A、血友病B、メンケス病、ウルリッヒ病、β-サラセミア、2A型及び3型フォン・ヴィレブランド病、ロビノウ症候群、短指症B型(指及び中手骨の短縮)、マイコバクテリア感染に対する遺伝性感受性、遺伝性網膜疾患、遺伝性出血傾向、失明、先天性神経感覚性難聴及び結腸無神経節症、並びに神経感覚性難聴、結腸無神経節症、末梢神経障害及び中枢性ミエリン形成異常を含む遺伝性神経発達障害、リドル症候群、色素性乾皮症、ファンコーニ貧血、貧血、甲状腺機能低下症、p53関連がん、食道癌、骨癌、卵巣癌、肝細胞癌、乳癌、肝細胞癌、線維性組織球腫、卵巣癌、SRY性転換、トリオースリン酸イソメラーゼ-貧血、糖尿病、くる病、ハーラー症候群、ドラベ症候群、脊髄性筋ジストロフィー、アッシャー症候群、無虹彩症、コロイデレミア、眼性コロボマ、網膜色素変性、栄養障害性表皮水疱症、シュードキサントーマ・エラスチカム、アラジル症候群、ワールデンブルグ・シャー、乳児型神経セロイドリポフスチン症、シスチン症、X連鎖腎性尿崩症、及び多発性嚢胞腎疾患を含む。いくつかの例では、疾患は、錐体ジストロフィー、シュタルガルト病(STGD1)、錐体杆体ジストロフィー、網膜色素変性症(RP)、加齢性黄斑変性症に対する感受性の増加、先天性停止性夜盲2(CSNB2)、先天性停止性夜盲1(CSNB1)、ベスト病、VMD、及びレーバー先天性黒内障(LCA16)からなる群から選択される眼の疾患である。
【0009】
治療法は、ナノ粒子、エレクトロポレーション、ポリエチレンイミン(PEI)、受容体標的化ポリプレックス、リピソーム又は流体力学的注入を含む任意の適切な方法を使用して実施することができる。
【0010】
本発明の1つ又は複数の実施形態の詳細は、以下の説明に記載される。本発明の他の特徴、目的、及び利点は、説明及び特許請求の範囲から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1A及び1Bは、治療上の送達によく適した2つの小型ACE-tRNA発現カセットを示す図である。内部プロモーター箱A及びB領域(約76塩基対又はbps)、並びに短い5’転写増強リーダー配列(TELS、ハッシュ)を含むACE-tRNAの全発現カセットは、全長が約125bps以下である。図1Cは、ミニサークル及びCEDTの概略図を示す。
図2図2A及び図2Bは、ACE-tRNA発現後のmRNA転写物のリボソームプロファイリングを示す図である。(A)コード化領域に>5RPKM(遺伝子のキロベースあたりの読み取り/100万のマッピングされた読み取り)を有し、3’UTRに>0.5RPKMを有する転写物について、ACE tRNAサプレッサーと対照との間の3’UTRにおけるリボソームフットプリント密度のLog2の倍率変化。各点は、1つの遺伝子転写物を表す。エラーバー:Mean±SD。(B)CDSが遺伝子コード配列(各転写物は等しく重み付けされている)であるすべての転写物の終止コドンを囲む、正規化された平均リボソームフットプリント占有率。(挿入図)(B)の拡大図。
図3】ACE-tRNAミニサークル及び閉端DNAスレッド産生スキームを示す写真及び図のセットである。
図4A-B】A及びBは、ACE-tRNAArgのMC及びCEDTが強固なPTC抑制能を示したことを示す図である。(A)HEK293細胞において、200bpsもの小さなMCが、ACE-tRNAを発現し(白色バー)、PTCレポーターを安定的に発現した。(B)CEDTは、16HBE14o-細胞におけるPTCレポーターの同時送達により、強固なPTCの抑制を示した。
図5A-F】A~Fは、CRISPR/Cas9改変16HBE14o-細胞へのACE-tRNAのCEDTの送達がCFTR機能を有意に救済し、ナンセンスコドン介在的分解(NMD)を阻害することを示す写真及び図である。(A)Transwellでトランスフェクトされた16HBE14o-細胞の代表的な画像。(B)Ussingチャンバー記録で、WT(黒)、空ベクターでトランスフェクトされたp.R1162X 16HBE14oe-細胞(赤色)、及び500bpのACE-tRNAArgのCEDT(青色)から追跡した代表的なCl短絡電流。(C)平均Forskolin及びIBMX並びに(D)Inhb172応答は、500bpのACE-tRNAArgのCEDT(青色)によるCFTR機能の有意な救済を示した。(E)わずかな(30%)トランスフェクション効率の後、ACE-tRNAGly(灰色の線)、ACE-tRNAArg(緑色の水平線)及びACE-tRNALeu(オランジュベールの線)をコードするプラスミドはすべて、qPCRによって測定したとき、それぞれp.G542X、p.R1162X及びpW1282X 16HBE14o-細胞でNMDを有意に阻害した。重要なことに、500bpのCEDTArg(緑色の対角線)、800bpのMCArg(緑色の点)及び800bpのMCLeu(オレンジ色の点)はすべて、トランスフェクションの48時間後に、それぞれのCFTRのPTCのプラスミドベースの発現に対する有意で同等の救済をもたらした。すべてのコンストラクトが等量でトランスフェクトされた。*p<0.05;**p<0.0001。
図5G】CRISPR/Cas9改変16HBE14o-細胞へのACE-tRNAのCEDTの送達がCFTR機能を有意に救済し、ナンセンスコドン介在的分解(NMD)を阻害することを示す写真及び図である。(A)Transwellでトランスフェクトされた16HBE14o-細胞の代表的な画像。(B)Ussingチャンバー記録で、WT(黒)、空ベクターでトランスフェクトされたp.R1162X 16HBE14oe-細胞(赤色)、及び500bpのACE-tRNAArgのCEDT(青色)から追跡した代表的なCl短絡電流。(C)平均Forskolin及びIBMX並びに(D)Inhb172応答は、500bpのACE-tRNAArgのCEDT(青色)によるCFTR機能の有意な救済を示した。(E)わずかな(30%)トランスフェクション効率の後、ACE-tRNAGly(灰色の線)、ACE-tRNAArg(緑色の水平線)及びACE-tRNALeu(オランジュベールの線)をコードするプラスミドはすべて、qPCRによって測定したとき、それぞれp.G542X、p.R1162X及びpW1282X 16HBE14o-細胞でNMDを有意に阻害した。重要なことに、500bpのCEDTArg(緑色の対角線)、800bpのMCArg(緑色の点)及び800bpのMCLeu(オレンジ色の点)はすべて、トランスフェクションの48時間後に、それぞれのCFTRのPTCのプラスミドベースの発現に対する有意で同等の救済をもたらした。すべてのコンストラクトが等量でトランスフェクトされた。*p<0.05;**p<0.0001。
図6A-B】A及びBは、マウスの肺へのミニベクターのエレクトロポレーション送達が気道上皮の効率的な形質導入及びPTCリードスルーをもたらしたことを示す写真及び図である。(A)マウスの肺気道上皮に、エレクトロポレーションによってGFP発現ベクター(挿入図)を効率的に形質導入した。(B)NLuc-UGA PTCレポータープラスミドとプラスミドACE-tRNAArg、500bpのCEDTArg、800bpのMCLeu及び800bpのMCArgとの同時送達は、強力なPTCの抑制をもたらした。
図7A-B】A及びBは、5’フランキング配列がACE-tRNA発現を調節したことを示す写真及び図である。(A)HEK293細胞におけるW1282X-CFTR及びACE-tRNATrp UGAをTELSあり(左レーン)なし(右レーン)でコードするcDNAのトランスフェクション後の完全長CFTRタンパク質のウエスタンブロット(WB)によって示されるように、ACE-tRNATrp UGAによるW1282X-CFTRの抑制は、ヒトTyr TELSによって増強された(左レーン)。(B)TELSスクリーニングHTC/HTSプラスミドの設計。
図8A-D】A~Dは、ACE-tRNAプラスミドが核に能動的に輸送されなかったことを示す写真及び図である。(A)ACE-tRNAプラスミドcDNAの、細胞の細胞質への注入は、細胞質局在化をもたらし、一方、(B)核注入は転写と一致する病巣の形成をもたらした。(C)空のプラスミドへのSV40 DNA標的化配列の付加は、細胞質注入の4時間後に核局在化をもたらした。(D)SV40 DTSを有するACE-tRNAのMC及びCEDTの概略図。
図9】肺におけるミニベクターPTC抑制の局在化、効率及び持続性を判定するためのPTCレポータープラスミドを示す図である。
図10A-C】A~Cは、転写活性を測定するためのACE-tRNAバーコード技術を示す図である。(A)ACE-tRNAバーコードスキーム(ABS)の概略図。(B)ACE-tRNAArg及びACE-tRNATroバーコードのqPCR測定。(C)ACE-tRNAArg UGA及びACE-tRNAArg UGAバーコードのPTC抑制活性。
図11A-C】A~Cは、は、転写活性を測定するための別のACE-tRNAバーコード技術を示す図である。(A)tis ACE-tRNAバーコードスキームの概略図。(B)ACE-tRNAArg及びACE-tRNAArgバーコードのqRT-PCR測定。(C)ACE-tRNAArg及びACE-tRNAArgバーコードのPTC抑制活性。
図12A】異なるサイズのArgTGAミニサークルライゲーション産物及び対応するPCR産物を、エチジウムブロマイドを含有する1.5%アガロースゲルで分離したことを示す写真である。
図12B】異なるサイズのArgTGAミニサークルライゲーション産物及び対応するPCR産物を、エチジウムブロマイドを含有する1.5%アガロースゲルで分離したことを示す写真である。
図12C】T5エキソヌクレアーゼでインキュベートし、エチジウムブロマイドを含有する1.5%アガロースゲル上で分離したArgTGAミニサークルライゲーション産物及びPCR産物を示す写真である。ミニサークルライゲーションにおけるエキソヌクレアーゼ耐性産物の存在は、共有結合的に閉じたミニサークル産物の産生を示した。
図12D】T5エキソヌクレアーゼでインキュベートし、エチジウムブロマイドを含有する1.5%アガロースゲル上で分離したArgTGAミニサークルライゲーション産物及びPCR産物を示す写真である。ミニサークルライゲーションにおけるエキソヌクレアーゼ耐性産物の存在は、共有結合的に閉じたミニサークル産物の産生を示した。
図13A】200bpのCEDT産物のCEDT/4×ArgTGA産物の産生を示す図及び写真である。対応するPCR産物のそれぞれを陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した後、N15ファージプロテロメラーゼ(telN)で消化した。CEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、これは、telNによる共有結合的に閉じた末端の産生を示す。制限酵素Bsu36Iによるエンドヌクレアーゼ切断後、各CEDT産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図13B】400bpのCEDT産物のCEDT/4×ArgTGA産物の産生を示す図及び写真である。対応するPCR産物のそれぞれを陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した後、N15ファージプロテロメラーゼ(telN)で消化した。CEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、これは、telNによる共有結合的に閉じた末端の産生を示す。制限酵素Bsu36Iによるエンドヌクレアーゼ切断後、各CEDT産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図13C】900bpのCEDT/1×ArgTGA産物のCEDT/4×ArgTGA産物の産生を示す図及び写真である。対応するPCR産物のそれぞれを陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した後、N15ファージプロテロメラーゼ(telN)で消化した。CEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、これは、telNによる共有結合的に閉じた末端の産生を示す。制限酵素Bsu36Iによるエンドヌクレアーゼ切断後、各CEDT産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図13D】900bpのCEDT/4×ArgTGA産物の産生を示す図及び写真である。対応するPCR産物のそれぞれを陰イオン交換クロマトグラフィーによって精製した後、N15ファージプロテロメラーゼ(telN)で消化した。CEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、これは、telNによる共有結合的に閉じた末端の産生を示す。制限酵素Bsu36Iによるエンドヌクレアーゼ切断後、各CEDT産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図13E】850bpの1×ArgTGAミニサークル産生物及び850bpの4×ArgTGAミニサークル産生物をそれぞれ示す図及び写真のセットであり、両方ともT5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、共有結合的に閉じたミニサークルの産生を示している。制限酵素Smalによるエンドヌクレアーゼ切断後、各ミニサークル産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図13F】850bpの1×ArgTGAミニサークル産生物及び850bpの4×ArgTGAミニサークル産生物をそれぞれ示す図及び写真のセットであり、両方ともT5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、共有結合的に閉じたミニサークルの産生を示している。制限酵素Smalによるエンドヌクレアーゼ切断後、各ミニサークル産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
図14】cDNA及びRNAとしてのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のCFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図15A】蛍光性PTCレポーター16HBE14ge-細胞株を作製するためのコンストラクト、及びPTC抑制アッセイにおけるその細胞株の使用を示す、図のセットである。
図15B】蛍光性PTCレポーター16HBE14ge-細胞株を作製するためのコンストラクト、及びPTC抑制アッセイにおけるその細胞株の使用を示す、図のセットである。
図16A】cDNAとしてのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のCFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。**=p<0.001;****=p<0.0001。
図16B】cDNAとしてのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のCFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。**=p<0.001;****=p<0.0001。
図17A】MCでのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のR1162X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図17B】MCでのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のR1162X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図18A】MCでのACE-tRNAの送達が、ロイシンで、16HBE14ge-細胞における内因性のW1282X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図18B】MCでのACE-tRNAの送達が、ロイシンで、16HBE14ge-細胞における内因性のW1282X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図19A】異なるCEDTでのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のR1162X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図19B】異なるCEDTでのACE-tRNAの送達が、16HBE14ge-細胞における内因性のR1162X-CFTRのmRNAを救済したことを示す図のセットである。
図20】PB-Donkeyシステムの開発を示す図である。
図21A】ACE-tRNAArgの安定な組み込み及び発現が、R1162X16HBE14ge-細胞における内因性のCFTR機能を救済したことを示す図のセットである。
図21B】ACE-tRNAArgの安定な組み込み及び発現が、R1162X16HBE14ge-細胞における内因性のCFTR機能を救済したことを示す図のセットである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、ACE-tRNA、関連ベクター、及び関連送達、並びにPTC又はナンセンス突然変異に関連する障害の治療のための使用に関する。
【0013】
全遺伝性疾患の約10~15%がナンセンス突然変異によって引き起こされている。米国だけで約300万人が罹患しており、全遺伝性遺伝性障害の1/3がナンセンス関連であると推定されている。単一のヌクレオチド変化がコドンをコードするアミノ酸を未熟終止コドン(TGA、TAG又はTAA)に変換し、その結果、機能の完全な喪失又は変化を伴う切断型タンパク質、及びナンセンスコドン介在的分解(NMD)経路によるmRNA転写産物の分解がもたらされるこれらの疾患のすべてについて統一機構が存在する。本明細書に記載のDNA分子、薬学的製剤、方法及び細胞は、これらの疾患を治療するために使用することができる。
【0014】
一態様では、本開示は、(1)プロモーター及び(ii)抗コドン編集tRNA(ACE-tRNA)をコードする配列を含む、閉端環状非ウイルス非プラスミドDNA分子を提供する。
【0015】
いくつかの実施形態では、分子は、閉端DNAスレッド(CEDT)分子又はミニサークル(MC)分子である。
【0016】
上記の実施形態のいずれかにおいて、分子は、DNA核標的化配列(DTS)、転写増強5’リーダー配列(TELS)及びACE-tRNAバーコード配列(ABS)からなる群より選択される1つ又は複数のエレメントをさらに含む。
【0017】
一実施形態では、DTSはSV40-DTSを含む。
【0018】
上記の実施形態のいずれにおいても、分子は、いかなる細菌核酸配列も含まない。
【0019】
上記の実施形態のいずれかにおいて、分子は、4個、3個、2個、1個又はそれより少ないCpGジヌクレオチドを含む。
【0020】
一実施形態では、分子はCpGジヌクレオチドを含まない。
【0021】
上記の実施形態のいずれかにおいて、分子は約200~約1,000bpのサイズである。
【0022】
一実施形態では、分子は、約200bp、250bp、300bp、350bp、400bp、450bp、500bp、550bp、600bp、650bp、700bp、750bp、800bp、850bp、900bp、950bp、又は1000bpのサイズである。CEDTのいくつかの例では、ACE-tRNAをコードする二本鎖の切片は、例えば、約200bp、400bp又は900bpのサイズであるが、対応するCEDTは、付加されたCEDT末端に起因して、約260bp、456bp又は956bpのサイズである。その場合、CEDTは、ACE-tRNAをコードする二本鎖の切片のサイズを示すために、200bpのCEDT、400bpのCEDT、又は900bpのCEDTと呼ばれることがある。例えば、図13及び図19を参照されたい。
【0023】
上記の実施形態のいずれかにおいて、ACE-tRNAは、(i)配列番号1~10からなる群から選択される配列、又は(ii)配列番号11~305からなる群から選択される1つによってコードされる配列を含む。
【0024】
一実施形態では、ACE-tRNAが、(i)配列番号1、4、5及び8からなる群から選択される配列、又は(ii)配列番号79及び94からなる群から選択される配列によってコードされる配列を含む。
【0025】
本開示はまた、(i)上記の実施形態のいずれか1つの分子及び(ii)薬学的に許容される担体を含む薬学的製剤を提供する。
【0026】
本開示はさらに、(i)細胞を上記の任意の実施形態の分子と接触させること、及び(ii)細胞を、ACE-tRNAの発現を可能にする条件下で維持することを含む、細胞においてACE-tRNAを発現させるための方法を提供する。
【0027】
方法の一実施形態では、(i)細胞が、1つ又は複数の未熟終止コドン(PTC)を含む変異体核酸を有し、(ii)変異体核酸の野生型がポリペプチドをコードし、(iii)ACE-tRNAが1つ又は複数のPTCを救済し、ポリペプチドの発現を回復させる。
【0028】
一実施形態では、ポリペプチドは嚢胞性線維症膜コンダクタンス制御因子(CFTR)であり、変異体核酸は切断型CFTRをコードする。
【0029】
一実施形態では、変異体核酸は、Trpから終止のPTCを有する。
【0030】
一実施形態では、ACE-tRNAは、Trpから終止のPTCをLeuに翻訳する。
【0031】
本開示はさらに、上記の実施形態のいずれか1つの分子を含む宿主細胞を提供する。
【0032】
本開示はさらに、PTCに関連する疾患の治療を必要とする対象においてPTCに関連する疾患を治療する方法であって、上記の実施形態のいずれか1つの分子又は上記の薬学的組成物を対象に投与することを含む方法を提供する。
【0033】
いくつかの実施形態では、疾患は、嚢胞性線維症、デュシェンヌ-ベッカー型筋ジストロフィー、網膜芽細胞腫、神経線維腫症、運動失調-毛細血管拡張症、テイ・サックス病、ウィルムス腫瘍、血友病A、血友病B、メンケス病、ウルリッヒ病、β-サラセミア、2A型及び3型フォン・ヴィレブランド病、ロビノウ症候群、短指症B型(指及び中手骨の短縮)、マイコバクテリア感染に対する遺伝性感受性、遺伝性網膜疾患、遺伝性出血傾向、失明、先天性神経感覚性難聴及び結腸無神経節症、並びに神経感覚性難聴、結腸無神経節症、末梢神経障害及び中枢性ミエリン形成異常を含む遺伝性神経発達障害、リドル症候群、色素性乾皮症、ファンコーニ貧血、貧血、甲状腺機能低下症、p53関連がん、食道癌、骨癌、卵巣癌、肝細胞癌、乳癌、肝細胞癌、線維性組織球腫、卵巣癌、SRY性転換、トリオースリン酸イソメラーゼ-貧血、糖尿病、くる病、ハーラー症候群、ドラベ症候群、脊髄性筋ジストロフィー、アッシャー症候群、無虹彩症、コロイデレミア、眼性コロボマ、網膜色素変性、栄養障害性表皮水疱症、シュードキサントーマ・エラスチカム、アラジル症候群、ワールデンブルグ・シャー、乳児型神経セロイドリポフスチン症、シスチン症、X連鎖腎性尿崩症、マックアードル病及び多発性嚢胞腎疾患からなる群から選択される。
【0034】
いくつかの実施形態では、疾患は、錐体ジストロフィー、シュタルガルト病(STGD1)、錐体杆体ジストロフィー、網膜色素変性症(RP)、加齢性黄斑変性症に対する感受性の増加、先天性停止性夜盲2(CSNB2)、先天性停止性夜盲1(CSNB1)、ベスト病、VMD、及びレーバー先天性黒内障(LCA16)からなる群から選択される眼の遺伝性疾患である。
【0035】
上記の治療方法の実施形態の中のいくつかの実施形態では、投与は、ナノ粒子、エレクトロポレーション、ポリエチレンイミン(PEI)、受容体標的化ポリプレックス、リピソーム、又は流体力学的注入を用いて行われる。
【0036】
ACE-tRNA
ACE-tRNAは、PTCが、最初に失われたアミノ酸又は異なるアミノ酸に効果的かつ治療的に復帰するように配列が操作された、被操作tRNA分子である。そのような被操作tRNAは、特定のアミノ酸に対して疾患を引き起こすナンセンスコドンの「再編集」を可能にする。本明細書に開示されるように、被操作tRNAは、TAC又はTAAにわたるTGAなど、1種類の終止コドンのみを標的とすることができる。これらのtRNA分子が小さいサイズであることは、tRNA及びプロモーターが一緒になってわずか約300bpであり得るので、これらを容易な発現に適したものにする。その目的のために、ヒトの細胞において機能的なtRNA遺伝子の構造的成分を含むように、オリゴヌクレオチドを合成することができる。このオリゴヌクレオチドの配列は、特定のtRNAにナンセンス又は他の特定の突然変異を認識させるtRNAのアンチコドン領域において行われた置換を経る既知の配列に基づいて、設計することができる。ACE-tRNAの例としては、国際公開第2019090154号パンフレット、国際公開第2019090169号パンフレット及びLueck,J.D.et al.Nature communications10,822,2019に記載されているものが挙げられる。これらの各文献の内容は、参照により援用される。
【0037】
一般に、ACE-tRNAは、Tアーム、Dアーム、及びアンチコドンアーム、並びにアクセプターアームを含む一般的な4アーム構造を有する(国際公開第2019090169号パンフレットの図2を参照)。Tアームは、「Tステム」と「TΨCループ」とから構成されている。ある特定の実施形態において、Tステムは、tRNAの安定性を高めるように改変される。特定の実施形態では、ACE-tRNAは、内因性のTステム配列と比較して終止部位を抑制する生物活性を増加させる、被修飾Tステムを有する。
【0038】
ACE-tRNAをPTCの抑制に使用することができる。しかし、PTCの有効な抑制には潜在的な欠点がある。例えば、PTC抑制戦略は、in vivoでの実際のナイーブな終止コドンのリードスルーをもたらし得、全体的なナイーブな終止コドンのリードスルーは有害であるという懸念があった。しかし、いくつかの細胞機構が、正常な終止のリードスルー及びその損傷効果の両方を制限するために配置されている。より具体的には、複数のフレーム内終止コドンが通常の翻訳の終結において頻繁に見出され、したがって効率的なPTC抑制因子の存在下での翻訳終結の確率を高めている。さらに、誤った翻訳の終結、特殊化されたユビキチンリガーゼ及びリボソーム関連経路に関するタンパク質の同定及び分解のために、少なくとも2つの細胞機構が配置されている。遺伝子の末端の天然終止コドンは、増強された終結効率を促進する周囲の配列状況を有し、PTCに見られる終結複合体は「実際の」終止とは異なるという証拠がある。予想外にも、内因性の終止コドンのリードスルーが動物において一般的であり、有害ではないという発見は、PTCの抑制が実行可能な治療の手法であることを示唆している。実際、リボソームプロファイリングの予備データは、「実際の」終止のACE-tRNAリードスルーがまれであることを示唆している(図2)。
【0039】
本発明に有用なACE-tRNAは、国際公開第2019090154号パンフレット、国際公開第2019090169号パンフレット及びLueck,J.D.et al.,Nature communications10,822(2019)に記載されている戦略に従って、作製することができる。この戦略を使用して、細胞の培養におけるPTCの効果的な救済のためのACE-tRNAの広範なライブラリーが作製されている。以下の表1は、本発明に有用なACE-tRNAのいくつかの例である。疾患を引き起こすPTCを抑制するための他の被操作のヒトtRNA配列としては、国際公開第2019090154号パンフレット、国際公開第2019090169号パンフレット及び、Lueck,J.D.et al.,Nature communications10,822(2019)に記載されているものが挙げられる。さらなる例としては、以下の表2の配列番号11~305によってコードされるものが挙げられる。以下の各配列において、アンチコドンに対応する3文字の配列は、小さい場合には下線が引かれている。
【0040】
本明細書に開示されるように、ACE-tRNA遺伝子構造はPTC療法によく適合している。tRNA遺伝子は、内部プロモーターエレメント(図1の箱A及びB)の2型RNAポリメラーゼ(Pol)IIIの認識によってtRNAに転写され、tRNAは、短い(<50bp)5’隣接領域、及び短い一連のチミジンヌクレオチドからなる3’転写終結エレメント(約4チミジン、Ts)に隣接している。ほとんどのtRNA遺伝子は72~76bpsの長さであり、したがって、tRNA発現カセット全体は約125bpsのみからなることができる(図1)。
【0041】
最適化され得るACE-tRNAの転写及び翻訳機能に関与する様々な配列エレメントが存在する。RNAポリメラーゼIIIは、2型遺伝子内プロモーターエレメントを利用して真核生物におけるtRNA遺伝子の発現を駆動する(図1A又は図1Bの箱A及びB)。箱A及びBは2型プロモーターの機能に十分であるが、tRNAの発現は、遺伝子に対して5’のところに、約50bpの配列(5’-フランキング配列)によって調節及び増強され得る。tRNAの転写は、短いチミジンヌクレオチドのストレッチ(4個以下のチミジン、Ts)によって終結する。
【0042】
本明細書に開示されるように、本発明者らは、嚢胞性線維症(「CF」)をもたらすCFTR遺伝子内に存在するものを含む、疾患を引き起こすPTCの効率的かつ持続的な抑制を示す治療薬の開発のために、ミニサークル(MC)及び閉端DNAスレッド(CEDT)などの小型DNAベクターの作製におけるtRNAの独特の遺伝子特徴を利用した。
【0043】
このACE-tRNA手法は、(1)コドンの特異性、(2)シームレス救済をもたらすPTCのACE-tRNA抑制、したがってタンパク質の安定性、折り畳み、輸送及び機能に対する偽の影響を否定する、及び(3)p.G542X又はp.W1282X CF変異を有するCFTRチャネルなどの、影響を受けたタンパク質の意味ある機能的救済をもたらすACE-tRNAのこれらのin vitro送達を含む、他のリードスルー戦略を超えるいくつかの重要な利点を提供する。予備的結果は、内因性の翻訳終止コドンの最小限の抑制を示し、このことは、翻訳領域に対するわずかな副作用を示唆した。ACE-tRNAは、複数の細胞型においてPTCの位置が異なるいくつかのcDNA遺伝子において、PTCの抑制に有効であることが示されている。ACE-tRNAは、既知の有害な作用を伴わずにPTCの抑制において高い効率を示すので、治療薬として使用することができる。
【0044】
ミニベクター
本発明の一態様は、PTC治療を目的とした、抑制tRNAをコードする小型DNAミニベクターの作製及びin vivo送達に関する。最適な治療属性を考慮する場合、ゴールドスタンダードは1回限りの治療である。しかし、ワクチン以外では、これらの治癒はほとんど実現されていない。近年、CRISPR/Cas9が、ゲノムに永久的な変化を加えることができるために、有望な治療薬としての牽引力を得ている。重要なことに、CRISPR/Cas9によって行われるものを含むゲノム操作は、幹細胞集団が標的化されない限り、改変された細胞の寿命の間だけ持続する。細胞の代謝回転では、治療薬の再送達が必要であり、治療薬に対する免疫応答を考慮しなければならない。したがって、本発明者らは、反復送達、標的細胞に適合する半減期(例えば、気道上皮細胞)、病原性の低下及び挿入突然変異誘発の低い能力を可能にするために、限定された免疫原性のACE-tRNAプラットフォームに基づくPTC治療薬を設計することに着手した。
【0045】
いくつかの実施形態では、DNAミニストリング、Doggybone DNA(商標)又は直鎖に共有結合的に閉鎖(LCC)しているDNAとしても知られている2つの小型cDNAベクター形式、ミニサークル(MC)及び閉端DNAスレッド(CEDT)を生成し、使用する。例えば、ACE-tRNAを発現する小型DNAベクター(ミニベクター)を使用して、細胞、マウス及びブタにおけるin vivoのデータセットを得て、CFを含むナンセンス関連障害の治療を開発する。治療的有用性を有するDNA分子に関する実施形態では、DNA鋳型は、典型的には、1つ以上のプロモーター又はエンハンサーエレメントと、目的のRNA又はタンパク質をコードする遺伝子又は他のコード配列とを含む発現カセットを含む。
【0046】
本発明のベクターは、典型的には、上記のような発現カセット、すなわち、目的の遺伝子又はタンパク質をコードする配列に動作可能に連結された真核性プロモーター、及び場合により真核生物転写終結配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる発現カセットを含む。場合により、発現カセットは、以下に定義されるような最小発現カセット、すなわち、典型的には、(i)細菌複製開始点、(ii)細菌選択マーカー(典型的には抗生物質耐性遺伝子)及び(iii)非メチル化CpGモチーフからなる群から選択される1つ以上の細菌又はベクター配列を欠く最小発現カセットであり得る。
【0047】
好ましくは、本発明のベクターは、そのような不要な配列のいずれも含まない。すなわち、ベクターはそのような不要な配列を含まない。そのような不要な又は無関係な配列(細菌又はベクター配列としても記載される)は、細菌の複製開始点、細菌選択マーカー(例えば、抗生物質耐性遺伝子)、及び非メチル化CpGジヌクレオチドを含み得る。そのような配列の欠失は、外来遺伝物質を含有しない「最小」の発現カセットを作り出す。また、上記の種類の細菌配列は、いくつかの治療手法において問題となり得る。例えば、哺乳動物細胞内で、細菌/プラスミドDNAは、目的の遺伝子又はタンパク質の持続的発現が達成され得ないように、クローン化遺伝子をオフにすることができる。また、細菌増殖に使用される抗生物質耐性遺伝子は、ヒトの健康に対するリスクを引き起こす可能性がある。さらに、細菌プラスミド/ベクターDNAは、望ましくない非特異的免疫応答を誘発し得る。細菌DNA配列の特定の特徴、典型的にはCpGモチーフとして知られる非メチル化シトシン-グアニンジヌクレオチドの存在もまた、望ましくない免疫応答をもたらし得る。
【0048】
ミニサークル(MC)
MCは、遺伝子発現のための最小配列、一般にプロモーター、目的の遺伝子(GOI)及び終止配列のみを含有するように構築された小型の環状ベクター(<5キロベース(kb))である。小さなサイズであると、細胞進入及び核への細胞内輸送が増加し、送達及び転写バイオアベイラビリティの増加をもたらす。さらに、それらは、コードされたGOIの長期発現のための病原性及びエピソーマルサイレンシングを減少させるプラスミドに一般的に見られる細菌配列を欠いている。肝臓では、MCが115日間より長くGOIを発現し、試験終了前に発現の減少はほとんど又は全くないことが実証されている。
【0049】
気道上皮は、マウスでは気管で6ヶ月、細気管支で17ヶ月、ヒトでは50日間の半減期を有する。小型DNAベクター、主に3kbを超えるサイズのMCは、ポリエチレンイミン(PEI)、受容体標的化ポリプレックス、リピソーム、流体力学的注入及びエレクトロポレーションを含むいくつかの方法で、in vivoで広く送達することができる。CpGが少ないCFTR(約7kb)をコードするMCが、PEI凝縮及びエアロゾル化によってマウスの肺に送達されており、これにより、送達の56日後に発現が持続していた。
【0050】
閉端DNAスレッド(CEDT)
本明細書で使用される場合、「閉端DNAスレッド」又は「CEDT」は、閉じた直鎖のDNA分子を指す。そのような閉端直鎖DNA分子は、図4B及び図8Dに示されるような一本鎖環状分子として見ることができる。CEDT分子は、典型的には、相補的DNA鎖間の塩基ペアリングが存在しないヘアピンループとしても記載される、共有結合的に閉じた末端を含む。ヘアピンループは、相補的DNA鎖の末端を結合する。このタイプの構造は、典型的には、閉鎖構造に末端ヌクレオチドを隔離することによって染色体DNAの喪失又は損傷から保護するために、染色体のテロメア末端に形成される。本明細書に記載されるCEDT分子の特定の例では、ヘアピンループは相補的な塩基対DNA鎖に隣接し、「ドッグボーン」形の構造(図4B及び8Dに示すようなもの)を形成する。
【0051】
CEDT分子は、典型的には、共有結合的に閉じた末端、すなわちヘアピン末端を有するDNAの直鎖二本鎖切片を含む。ヘアピンは、分子が完全に変性した場合に一本鎖環状DNA分子が生成されるように、直鎖二本鎖DNA鎖の末端を結合する。通常、本明細書に記載のCEDTは、配列が本質的に完全に相補的であるが、いくつかの小さな変形又は「ゆらぎ」は構造によって許容され得る。したがって、閉じた直鎖DNA又はCEDTは、配列が少なくとも75%、80%、85%、90%又は95%相補的、又は少なくとも96、97、98、99又は100%相補的であり得る。変性された場合、それは実質的に、互いに隣接する順方向(センス又はプラス)鎖及び逆方向(アンチセンス又はマイナス)鎖の両方を含む環状分子である。これは、相補配列(マイナス及びプラス)が別個の環状の鎖に存在するプラスミドDNA又はMC DNAとは対照的である(図4A図4Bと比較)。
【0052】
ヘアピンの頂点(末端又はターン)の中の塩基は、この点で、DNA鎖にかかる配座的ストレスのために、塩基対を形成することができない場合がある。例えば、頂点の部分の頂点にある少なくとも2つの塩基対は塩基対を形成しない可能性があるが、正確な立体配座は、DNAが維持される条件及びヘアピン周囲の正確な配列に応じて、変動を受けやすい。したがって、2つ又はそれを超える塩基は、それらの相補的な性質にもかかわらず、関与する構造的なゆがみを考慮すると、対を形成することができない場合がある。ヘアピンの長さの中の非相補的塩基の一部「ゆらぎ」は、構造に影響を及ぼさない場合がある。ゆらぎは回文の切れ目であり得るが、配列は相補的なままであり得る。しかし、ヘアピンの配列は完全に自己相補的であることが好ましい。
【0053】
相補性は、配列(5’から3’)での各ポリヌクレオチドの塩基が、どのようにして、同じ鎖(内部相補配列)又は異なる鎖であり得る逆平行(3’から5’)鎖の相補的な塩基、AからT(又はU)及びCからGと水素結合対を形成するかを記載する。この定義は、本発明の任意の実施形態又は実施形態に適用される。ヘアピンの配列は、90%相補的、好ましくは91%、92%、93%、94%、95%、96%、98%、99%又は100%相補的であることが好ましい。
【0054】
CEDTは、天然由来又は人工のいずれかの、二本鎖配列内の任意の配列を含み得る。それは、少なくとも1つのプロセシングより多いプロセシング酵素標的部位を含み得る。そのような標的配列は、DNAが場合により合成後にさらにプロセシングされることを可能にするためのものである。プロセシング酵素は、その標的部位を認識し、DNAをプロセシングする酵素である。プロセシング酵素標的配列は、制限酵素の標的配列であってもよい。制限酵素、すなわち制限エンドヌクレアーゼは、標的配列に結合し、特定の点で切断する。プロセシング酵素標的配列は、リコンビナーゼの標的であり得る。リコンビナーゼは、各リコンビナーゼに特異的な短い(30~40ヌクレオチド)標的部位配列間のDNA交換反応を指向的に触媒する。リコンビナーゼの例としては、Creリコンビナーゼ(標的配列としてloxPを有する)及びFLPリコンビナーゼ(短いフリッパーゼ認識標的(FRT)部位を有する)が挙げられる。プロセシング酵素標的配列は、phiC31インテグラーゼなどの部位特異的インテグラーゼの標的であり得る。
【0055】
プロセシング酵素標的配列は、CEDTがRNA合成の鋳型になるように、RNAポリメラーゼの標的配列であってもよい。この場合、プロセシング酵素標的化部位はプロモーター、好ましくは真核性プロモーターである。その目的のために、CEDTは、目的のRNA(例えば、tRNA)又はタンパク質を封入する配列に動作可能に連結された真核性プロモーター、及び場合により真核生物転写終結配列を含むか、それからなるか、又はそれから本質的になる発現カセットを含み得る。「プロモーター」は、ポリヌクレオチドの転写を開始及び調節するヌクレオチド配列である。「動作可能に連結された」は、そのように記載された成分がそれらの通常の機能を実行するように構成されるエレメントの配置を指す。したがって、核酸配列に動作可能に連結された所与のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合、その配列の発現を行うことができる。「動作可能に連結された」という用語は、転写複合体によるプロモーターエレメントの認識時に目的のDNA配列の転写の開始を可能にするプロモーターエレメント及び目的のDNA配列のいずれかの間隔又は配向を包含することを意図している。
【0056】
CEDT又はMCは、任意の適切な長さであってもよい。特に、CEDT又はMCは最大4kbであり得る。好ましくは、DNA鋳型は、100bp~2kb、200bp~1kb、最も好ましくは200bp~800bpであり得る。200bp以上のMC及びCEDTは、複数のACE-tRNAカセットコピーを収容することができる。これにより、各MC及びCEDTユニットからのより高次のACE-tRNA発現が可能になり得る。各ミニベクターからのACE-tRNAの複数のコピーを有することにより、各ユニットに1つ以上の配列を含めることが可能になる。例えば、ロイシンACE-tRNA及びトリプトファンACE-tRNAは、1つのMC又はCEDTミニベクターに含めることができる。これらのACE-tRNAの両方は、異なるtRNAアミノアシルシンセターゼを利用するので、突然変異W1282X-CFTRを救済又は抑制する際に嚢胞性線維症に有効であり、抑制活性を有意に増強することができる。
【0057】
閉じたDNA分子は、治療剤、すなわち、in vivoで遺伝子産物を発現するために使用することができるDNA医薬としての有用性を有する。これは、それらの共有結合的に閉じた構造がエキソヌクレアーゼなどの酵素による攻撃を防ぎ、露出したDNA末端を有する「開放型」DNA分子と比較して、遺伝子発現の安定性及び寿命が向上するためである。直鎖二本鎖開放型カセットは、宿主組織に導入した場合、遺伝子発現に関して非効率的であることが実証されている。これは、細胞外空間におけるエキソヌクレアーゼの作用によるカセットの不安定性に起因するとされてきた。
【0058】
共有結合的に閉じた構造の内側のDNA末端の配列決定には、他の利点もある。DNA末端がゲノムDNAと一体化するのが妨げられるため、閉じた直鎖DNA分子の安全性が向上する。また、閉じた直鎖構造は、宿主細胞の内側のDNA分子のコンカテマー化を防ぎ、したがって遺伝子産物の発現レベルをより高い感度で調節することができる。
【0059】
CEDTは、MCと同じ利点すべてを有するが、共有結合的に閉じた末端を有する直鎖DNAカセットトポロジを示す。CEDTは、その製造の容易さ、送達効率、低い病原性及び持続的発現のために、ワクチンを生成するための抗原の発現のためにin vivoで使用されてきた。CEDTは、GMPグレードで高い存在量で容易に完全に合成的に作製することができ、したがって迅速な設計及び製造を可能にするので、MCを越えるいくつかの利点を有する。
【0060】
CEDTは、当技術分野で公知の方法を使用して作製することができる。CEDTのセルフリー生産は、米国特許第9499847号明細書、米国特許第20190185924号明細書、国際公開第2010/086626号パンフレット及び国際公開第2012/017210号パンフレットに記載されており、これらは参照により本明細書に組み込まれる。本方法は、DNA鋳型を使用した各末端で共有結合的に閉じた直鎖二本鎖DNA(閉じた直鎖DNA)の生成に関し、DNA鋳型は少なくとも1つのプロテロメラーゼ認識配列を含み、鋳型は少なくとも1つのDNAポリメラーゼを使用して増幅され、プロテロメラーゼ酵素を使用して処理されて、閉じた直鎖DNAを生成する。閉じた直鎖DNAの閉端はそれぞれ、プロテロメラーゼ認識配列の一部を含む。閉じた直鎖DNAを鋳型として使用することは、列挙された用途に記載されており、そのような鋳型の使用は、製造中に最小限の量の試薬が浪費されることを意味するので有利である。これらの方法によって産生されるCEDT分子は、直鎖であり、二本鎖であり、プロテロメラーゼ認識配列の一部によって各末端で共有結合的に閉じられている。この直鎖状二本鎖DNA分子は、1つ以上のステムループモチーフを含むことができる。
【0061】
本明細書に開示されるように、一例では、本開示は、電場を使用した、MC及びCEDTミニベクターなどのACE-tRNA発現ミニベクターの肺への送達効率、並びにin vitro及びin vivoでの気道上皮細胞におけるPTCのACE-tRNA抑制の有効性及び持続性を評価する。ACE-tRNA遺伝子の小さなサイズ(約80nt)を利用して、本発明者らは、知る限りこれまでで最小の治療用発現ベクターの作製に成功した。
【0062】
有効なACE-tRNAのライブラリーが手元にあると、in vivoで最も有効な送達方法を判定することができる。本明細書に開示されるように、3つの最も一般的なCFナンセンス突然変異(p.G542X、p.W1282X及びp.R553X)を標的とするために、MC及びCEDTにおいてACE-tRNATrp UGA、ACE-tRNALeu UGA、ACE-tRNAGly UGA及びACE-tRNAArg UGAをコードすることができる。MC及びCEDT技術は、送達可能なプラットフォームとして、ここで実証されるナノ粒子、タンパク質複合体、及び電場を含む多数の送達方法と対にすることができる。MCミニベクター及びCEDTミニベクターは、それらを遺伝子治療に魅力的なものにするいくつかの特徴、すなわち(1)細胞内輸送中の障害を克服することを可能にし、したがってバイオアベイラビリティを改善する、劇的に減少したサイズ、(2)より高い細胞進入効率、(3)転写活性構造の保有、及び(4)ゲノムインテグレーションを伴わない持続的な導入遺伝子発現を有する:。
【0063】
設計構造
ミニベクター配列の設計は、発現効率及び持続性に重要な意味を有する。本明細書に開示されるように、本発明のミニベクター、MC又はCEDTのいずれかは、本明細書に記載されるようなtRNA発現カセットに加えて、いくつかの有利なエレメント及び/又は破壊を場合により含む。例としては、ACE-tRNA-バーコード化配列(ABS)、転写増強5’リーダー配列(TELS)及びDNA核標的化配列(DTS)が挙げられる。
【0064】
1つの重要な特徴は、CpG配列含有量及びそのメチル化である。DNAメチル化及び転写に対するその影響は、広く研究されている。メチル化の欠如は、メチル化されたCpGアイランドが不活性X染色体上及び親インプリント遺伝子のサイレンシングされた対立遺伝子に見出される活性転写のための前提条件である。さらに、DNAのin vitroでのメチル化は遺伝子発現を阻害することが示されている。ACE-tRNA遺伝子は非常に小さく、平均して4つのCpG配列しか含まないので、本発明者らは、ACE-tRNA発現の持続性を高めるために、自らのミニベクターを、CpG配列をほとんど完全に欠いているように設計することができた。さらに、500bpsであっても、ACE-tRNA遺伝子は、全ペイロードのほんの一部だけ消費して、3’ABS、TELS、及びDTSを含む選択肢を残す。ABS、TELS及びDTSの実施態様は、以下の実施例6及び7に記載されている。
【0065】
PTCを効率的に抑制する能力は、PTCが存在する遺伝的環境によって意義深く支配される。したがって、ミニベクターから発現されるACE-tRNAの、培養中のヒト気道上皮などの標的細胞におけるPTCを抑制する効率を判定することが不可欠である。その目的のために、転写活性を増加させ、ミニベクターを核に標的化することによって、TELS及びDTSを使用して、in vivoでのACE-tRNA発現を増強することができる。
【0066】
TELS
ミニベクターからのACE-tRNAの発現の増加は、ACE-tRNAの治療有効性に対する送達効率の負荷を減少させ得る。真核生物tRNA遺伝子の転写が遺伝子内プロモーターエレメント(箱A及びB)によって指令されることは十分に確立されているが、5’フランキング配列領域も、おそらくpolIII転写複合体との相互作用を介してtRNA転写を顕著に調節する。そのような領域は、転写促進5’リーダー配列(TELS)として使用することができる。いくつかの例では、同一のコード配列を有するtRNA遺伝子は、転写を増加又は減少させる異なる5’フランキング配列を有する。さらに、5’フランキング配列は、組織発現特異性を調節すると考えられる。その目的のために、TELSとしてヒトtRNA Tyr5’リーダー配列(5’-AGCGCTCCGGTTTTTCTGTGCTGAACCTCAGGGGACGCCGACACACGTACACGTC-3’、配列番号306)を使用することができる。
【0067】
図7Aは、5’リーダー配列を含めると、W1282X-CFTRに対するACE-tRNATrp UGAの抑制活性が5倍超増加することを示す。約416個のtRNA遺伝子がヒトゲノムにおいてアノテーションされている(tRNAscan-SE
database,Lowe et al.,Nucleic Acids Res 25,955-964,(1997))。416個すべてのtRNA遺伝子のtRNA5’フランキング配列(1kb)を、本発明のTELSとして使用することができる。
【0068】
DTS
DNA核標的化配列又はDTSは、そうでなければ細胞質に局在化したDNAの核内導入を支えるのに必要なDNA配列又はDNA配列の反復である。ウイルスのプロモーター又は哺乳動物遺伝子のプロモーターに天然に存在するDNA配列は、非分裂細胞で発現され得る発現ベクターに導入遺伝子を含むDNAを組み込むことによって、それらのDNAの核侵入をもたらす。DTSの非限定的な例は、エンハンサーリピート(5’-atgctttgca tacttctgcc tgctggggag cctggggact ttccacaccc taactgacac acattccaca gctggttggt acctgca-3’、配列番号307)を含有するSV40ゲノムからのDNA配列である。このSV40 DTSは、プラスミドDNAの配列特異的DNA核導入を支えることが示されている(例えば、Dean et al.,Exp.Cell Res.253:713-722,1999)。本明細書に開示されているように、以下の例に記載されている方法で、追加のDTSを取得することができる。
【0069】
バーコード
本発明に記載されるミニベクターは、ACE-tRNA転写活性の直接的な測定を可能にする1つ又は複数のさらなるエレメントを含み得る。一例はバーコード配列である。
【0070】
mRNA、ノンコーディングRNA、マイクロRNA、核内低分子/核小体RNA及びrRNA165を分析するために、標準的なRNAシーケンシング(RNA-seq)法が使用されている。しかし、tRNAは、これらの標準的なRNA-seq法を実施することができない唯一の小型の細胞RNAのクラスである。直接的な方法を妨げる重大な障害には、ポリメラーゼ増幅に干渉する転写後修飾の存在、及びアダプターライゲーションをブロックする安定で広範な二次構造が含まれる。最近、これらの問題を回避するためにいくつかの方法が開発されているが、これらの手法は比較的複雑であり、コストが非常に高い。さらに、ACE-tRNA配列は、1つ又は複数の内因性のtRNAと1つのヌクレオチドのみが異なるので、ノーザンブロット、マイクロアレイ及び断片化RNA-seqは、外因性治療用ACE-tRNA及び内因性のtRNAの発現レベルを識別することができない。いくつかの最近の研究では、tRNAをプロモーターとして利用して、tRNA:sgRNA(Cas9単一ガイドRNA)融合転写物の高い発現レベルを駆動し、次いで、それを内因性のtRNase Zによって効率的かつ正確に切断する。
【0071】
本発明のミニベクターは、1つ以上のACE-tRNA-バーコード化配列又はABSを含み得る。ABSは、ベクターがACE-tRNA及びバーコードの融合転写物をコードするように、ACE-tRNAをコードする配列の3’又は5’にあり得る。一例では、バーコード配列は3’末端にあり、ミニベクターはACE-tRNA:バーコード融合転写物をコードし、バーコード配列は内因性のtRNase Zによって切断され、qPCR定量化を可能にして相対的なACE-tRNA発現を判定しながら、完全に機能的なACE-tRNAを得ることができる(図10A)。以下の実施例11に示すように、本発明者らは、マウスのゲノム配列と相同性のないランダムな200bpのバーコード配列を設計した。NLuc-UGAを安定して発現する16HBE14o-細胞にトランスフェクトされた場合、ACE-tRNAArg UGA-及びACE-tRNATrp UGA-バーコードは、qPCRによってモニターした場合にロバストな発現を示すが、非バーコード化ACE-tRNAは意義あるシグナルを与えなかった(図10B)。1つの場合では、ACE-tRNAArg UGAの抑制活性は、3’バーコード配列の存在によって妨げられ得るが、ACE-tRNA活性の欠損は、バーコード配列に対してプローブ探査されるノーザンブロットによって判定することができる3’プロセシングが不十分であるためである可能性が最も高い。そのような欠損は、その配列がバーコード又は改変させたバーコードリンカー配列としても作用して3’プロセシングを改善することができる3’肝炎デルタウイルス(HDV)自己切断リボザイムを使用することによって、修正することができる。3’リボザイムの組み込みは、改善されたACE-tRNAの3’プロセシングをもたらし、それらのPTC抑制活性を増加させ得る。さらに、ABS技術は、NLuc PTCレポーターを補完するためのACE-tRNA発現の測定を可能にする(図9)。
【0072】
本願の任意の実施形態では、本明細書に記載の核酸分子又はベクターは、場合により1つ以上のレポーター分子を含むことができる。レポーターは、細胞における発現が細胞に検出可能な形質を付与する分子である。様々な実施形態では、レポーターとしては、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、β-ガラクトシルトランスフェラーゼ、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、ルシフェラーゼ、NanoLuc(登録商標)、アルカリホスファターゼ、並びに緑色蛍光性タンパク質(例えば、GFP、TagGFP、T-Sapphire、Azami Green、Emerald、mWasabi、mClover3)、赤色蛍光性タンパク質(例えば、tdTomato、mRFPl、JRed、HcRedl、AsRed2、AQ143、mCherry、mRuby3、mPlum)、黄色蛍光性タンパク質(例えば、EYFP、mBanana、mCitrine、PhiYFP、TagYFP、Topaz、Venus)、橙色蛍光性タンパク質(例えば、DsRed、Tomato、Kusabria Orange、mOrange、mTangerine、TagRFP)、シアン蛍光性タンパク質(例えば、CFP、mTFPl、Cerulean、CyPet、AmCyanl)、青色蛍光性タンパク質(例えば、Azurite、mtagBFP2、EBFP、EBFP2、Y66H)、近赤外蛍光性タンパク質(例えば、iRFP670、iRFP682、iRFP702、iRFP713及びiRFP720)、赤外蛍光性タンパク質(例えば、IFP1.4)及び光活性化可能蛍光性タンパク質(例えば、Kaede、Eos、IrisFP、PS-CFP)を含むがこれらに限定されない蛍光性タンパク質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0073】
ACE-tRNAをコードする核酸の細胞への導入
外因性遺伝物質(例えば、1つ又は複数の治療用ACE-tRNAをコードする核酸又はミニベクター)を、遺伝子導入法、例えばトランスフェクション又は形質導入によってin vivoで目的の標的細胞に導入して、遺伝子改変細胞をもたらすことができる。様々な発現ベクター(すなわち、標的細胞への外因性遺伝物質の送達を促進するためのビヒクル)が当業者に公知である。本明細書で使用される場合、「外因性遺伝物質」は、天然又は合成のいずれかであり、細胞に天然には見られない核酸又はオリゴヌクレオチド、又はそれが細胞において天然に見出される場合、細胞によって生物学的に意味のあるレベルで転写又は発現されない核酸又はオリゴヌクレオチドを指す。したがって、「外因性遺伝物質」には、例えば、tRNAに転写され得る天然に存在しない核酸が含まれる。
【0074】
本明細書で使用されるとき、「細胞のトランスフェクション」とは、細胞によって、付加された核酸(DNA、RNA、又はそれらのハイブリッド)の組み込みによる新しい遺伝物質を獲得されることを指す。したがって、トランスフェクションとは、物理的又は化学的方法を用いた細胞への核酸の導入を指す。リン酸カルシウム核酸共沈殿、ストロンチウムホスフェート核酸共沈殿、DEAE-デキストラン、エレクトロポレーション、カチオン性リポソーム媒介トランスフェクション及びタングステン粒子促進微小粒子ガンを含むいくつかのトランスフェクション技術が、当業者に公知である。対照的に、「細胞の形質導入」は、DNA又はRNAウイルスを使用して核酸を細胞に移入するプロセスを指す。核酸を細胞に移入するためのRNAウイルス(すなわち、レトロウイルス)は、本明細書では形質導入キメラレトロウイルスと呼ばれる。レトロウイルス内に含まれる外因性遺伝物質は、形質導入された細胞のゲノムに組み込まれる。キメラDNAウイルス(例えば、治療剤をコードするcDNAを有するアデノウイルス)で形質導入された細胞は、そのゲノムに組み込まれた外因性遺伝物質を有しないが、細胞内で染色体外に保持された外因性遺伝物質を発現することができる。
【0075】
典型的には、外因性遺伝物質は、新しい遺伝子の転写を制御するためのプロモーターと共に、異種遺伝子(治療用RNA又はタンパク質をコードする)を含む。プロモーターは、特徴的には、転写を開始するのに必要な特定のヌクレオチド配列を有する。場合により、外因性遺伝物質は、所望の遺伝子転写活性を得るために必要な追加の配列(すなわち、エンハンサー)をさらに含む。この論述の目的では、「エンハンサー」は、プロモーターによって指示される基底転写レベルを変化させるために(シスで)コード配列と近接するように作用する、単純に任意の非翻訳DNA配列である。外因性遺伝物質は、プロモーター及びコード配列がコード配列の転写を可能にするように動作可能に連結されたように、プロモーターのすぐ下流の細胞のゲノムに導入され得る。レトロウイルス発現ベクターは、挿入された外因性遺伝子の転写を制御するための外因性プロモーターのエレメントを含み得る。そのような外因性プロモーターには、構成的プロモーター及び誘導性プロモーターの両方が含まれる。
【0076】
天然に存在する構成的プロモーターは、必須の細胞の機能の発現を制御する。その結果、構成的プロモーターの制御下にある遺伝子は、細胞が増殖するあらゆる条件下で発現される。例示的な構成的プロモーターには、特定の構成的又は「ハウスキーピング」機能をコードする以下の遺伝子のためのプロモーターが含まれる、すなわちヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、アデノシンデアミナーゼ、ホスホグリセロールキナーゼ(PGK)、ピルビン酸キナーゼ、ホスホグリセロールムターゼ、アクチンプロモーター、ユビキチン、伸長因子-1、及び当業者に公知の他の構成的プロモーターである。さらに、多くのウイルスプロモーターは、真核細胞において構成的に機能する。これらには、SV40の早期プロモーター及び後期プロモーター、数ある中でも、モロニー白血病ウイルス及び他のレトロウイルスの長末端反復配列(LTR)、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーターが含まれる。したがって、上記の構成的プロモーターのいずれかを使用して、異種遺伝子インサートの転写を制御することができる。
【0077】
誘導性プロモーターの制御下にある遺伝子は、誘導剤の存在下でのみ又はより高度に発現される(例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下での転写は、特定の金属イオンの存在下で大きく増加する)。誘導性プロモーターには、それらの誘導因子が結合したときに転写を刺激する応答性エレメント(RE)が含まれる。例えば、血清因子、ステロイドホルモン、レチノイン酸及びサイクリックAMPのREがある。誘導性応答を得るために、特定のREを含有するプロモーターを選択することができ、場合によっては、RE自体を異なるプロモーターに結合させ、それによって組換え遺伝子に誘導能を付与することができる。したがって、適切なプロモーターを選択することによって(構成的対誘導的、強対弱)、遺伝子改変細胞において治療剤の発現の存在及びレベルの両方を制御することが可能である。治療剤をコードする遺伝子が誘導性プロモーターの制御下にある場合、in situでの治療剤の送達は、遺伝子改変された細胞を、治療剤の転写を可能にする条件にin situで曝露することによって、例えば薬剤の転写を制御する誘導性プロモーターの特異的誘導因子の注入によって、誘発される。例えば、メタロチオネインプロモーターの制御下にある遺伝子によってコードされる治療剤の遺伝子改変細胞によるin situ発現は、遺伝子改変細胞を適切な(すなわち、誘導する)金属イオンを含む溶液とin situで接触させることによって、増強される。
【0078】
したがって、in situで送達される治療剤の量は、(1)挿入された遺伝子の転写を指示するために使用されるプロモーターの性質、(すなわち、プロモーターが構成的であるか誘導性であるか、強いか弱いか)、(2)細胞に挿入される外因性遺伝子のコピー数、(3)患者に投与(例えば、移植)される形質導入/トランスフェクトされる細胞の数、(4)インプラントのサイズ(例えば、グラフト又はカプセル化発現システム)、(5)インプラント数、(6)形質導入/トランスフェクトされた細胞又はインプラントが所定の位置に残される時間の長さ、(7)遺伝子改変細胞による治療剤の産生速度などの因子を制御することによって調節される。特定の治療剤の治療有効用量の送達のためのこれらの因子の選択及び最適化は、上段に開示された因子及び患者の臨床プロファイルを考慮して、過度の実験なしに当業者の範囲内であると考えられる。
【0079】
少なくとも1つのプロモーター、及び治療剤をコードする少なくとも1つの異種核酸に加えて、発現ベクターは、発現ベクターでトランスフェクト又は形質導入された細胞の選択を容易にするための選択遺伝子、例えばネオマイシン耐性遺伝子を含み得る。あるいは、細胞は、2つ以上の発現ベクター、治療剤をコードする遺伝子を含む少なくとも1つのベクター、選択遺伝子を含む他のベクターでトランスフェクトされる。適切なプロモーター、エンハンサー、選択遺伝子及び/又はシグナル配列の選択は、過度の実験なしに、当業者の範囲内であると考えられる。
【0080】
本発明のACE-tRNAコンストラクトは、任意のタイプの標的細胞又は宿主細胞に挿入することができる。発現ベクターに関連して、ベクターは、当技術分野における任意の方法によって宿主細胞、例えば哺乳動物、細菌、酵母又は昆虫細胞に容易に導入することができる。例えば、発現ベクターは、物理的、化学的又は生物学的手段によって宿主細胞に移入することができる。
【0081】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための物理的方法としては、リン酸カルシウム沈殿、リポフェクション、パーティクルガン、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションなどが挙げられる。ベクター及び/又は外因性核酸を含む細胞を産生する方法は、当技術分野で周知である。例えば、See,for example,Sambrook et al.を参照されたい(2012,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,New York)。
【0082】
目的のポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための生物学的方法には、DNA及びRNAベクターの使用が含まれる。ウイルスベクター、特にレトロウイルスベクターは、哺乳動物、例えばヒトの細胞に遺伝子を挿入するための最も広く使用されている方法となっている。他のウイルスベクターは、レンチウイルス、ポックスウイルス、単純ヘルペスウイルスI、アデノウイルス及びアデノ随伴ウイルスなどに由来し得る。例えば、米国特許第5,350,674号明細書、及び同第5,585,362号明細書を参照されたい。
【0083】
ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入するための化学的手段としては、高分子複合体、ナノカプセル、ミクロスフェア、ビーズなどのコロイド分散体、及び水中油型エマルジョン、ミセル、混合ミセル、及びリポソームを含む脂質ベースの系が挙げられる。in vitro及びin vivoで送達ビヒクルとして使用するための例示的なコロイド系は、リポソーム(例えば、人工膜小胞)である。
【0084】
転写因子Aミトコンドリア(TFAM)などのDNA結合タンパク質の添加を使用して、DNAを凝縮し、電荷を遮蔽することができる。小さいサイズ及びコンパクトな形状のために、DNA:タンパク質(DNP)複合体は、次いで、細胞透過性ペプチド、PEG誘導体、リポソーム又はエレクトロポレーションによって細胞に送達され得る。いくつかの例では、DNA結合タンパク質は、DNAミニベクターが転写される細胞質から核へのDNPの能動的輸送のための核局在化シグナルをコードすることができる。
【0085】
非ウイルス送達システムが利用される場合、例示的な送達ビヒクルはリポソームである。宿主細胞(in vitro、エクスビボ又はin vivo)への核酸の導入のために、脂質製剤の使用が企図される。別の態様では、核酸は脂質と会合していてもよい。脂質と会合した核酸は、リポソームの水性内部にカプセル化され得て、リポソームの脂質二重層の内部に散在し得て、リポソームとオリゴヌクレオチドの両方と会合した連結分子を介してリポソームに付着し得て、リポソームに封入され得て、リポソームと複合体を形成し得て、脂質を含有する溶液に分散され得て、脂質と混合され得て、脂質と組み合わされ得て、脂質に懸濁液として含まれ得て、ミセルと含有若しくは複合体を形成し得て、又はそうでなければ脂質と会合し得る。脂質、脂質/DNA又は脂質/発現ベクター関連組成物は、溶液のいかなる特定の構造にも限定されない。例えば、それらは、二重層構造、ミセルとして、又は「崩壊」構造で存在し得る。それらはまた、溶液に単に散在してもよく、場合によってはサイズ又は形状が均一でない凝集体を形成する。脂質は、天然に存在する脂質又は合成脂質であり得る脂肪物質である。例えば、脂質には、細胞質に天然に存在する脂肪滴、並びに脂肪酸、アルコール、アミン、アミノアルコール、及びアルデヒドなどの長鎖脂肪族炭化水素及びそれらの誘導体を含有する化合物のクラスが含まれる。
【0086】
使用に適した脂質は、市販の供給源から得ることができる。例えば、ジミリスチルホスファチジルコリン(「DMPC」は、Sigma、St.Louis、MOから入手することができ、ジセチルホスフェート(「DCP」は、K&K Laboratories(ニューヨーク州プレインビュー)から入手することができ、コレステロール(「Choi」は、Calbiochem-Behringから入手することができ、ジミリスチルホスファチジルグリセロール(「DMPG」及び他の脂質は、Avanti Polar Lipids,Inc.(アラバマ州バーミンガム)から入手することができる。クロロホルム又はクロロホルム/メタノールの脂質の保存溶液は、約-20℃で保存することができる。クロロホルムは、メタノールよりも容易にエバポレートするので、唯一の溶媒として使用される。
【0087】
「リポソーム」は、封入された脂質二重層又は凝集体の生成によって形成された様々な単層及び多層脂質ビヒクルを包含する総称である。リポソームは、リン脂質二重層膜及び内部水性媒体を有するベシクル構造を有するものとして特徴付けることができる。多層リポソームは、水性媒体によって分離された複数の脂質層を有する。それらは、リン脂質が過剰の水溶液に懸濁されると自然に形成する。脂質成分は、閉じた構造の形成前に自己再配列を受け、脂質二重層の間に水及び溶解した溶質を捕捉する(Ghosh et al.,1991 Glycobiology 5:505-10)。しかし、溶液において通常のベシクル構造とは異なる構造を有する組成物も包含される。例えば、脂質は、ミセル構造をとるか、又は単に脂質分子の不均一な凝集体として存在し得る。リポフェクタミン-核酸複合体も企図される。
【0088】
本発明の核酸分子は、エレクトロポレーションを介して、例えば米国特許第7,664,545号明細書に記載されている方法によって投与することができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。エレクトロポレーションは、米国特許第6,302,874号明細書、同第5,676,646号明細書、同第6,241,701号明細書、同第6,233,482号明細書、同第6,216,034号明細書、同第6,208,893号明細書、同第6,192,270号明細書、同第6,181,964号明細書、同第6,150,148号明細書、同第6,120,493号明細書、同第6,096,020号明細書、同第6,068,650号明細書、及び同第その5,702,359号明細書に記載されている方法及び/又は装置によって行うことができ、それらの内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。エレクトロポレーションは、低侵襲性装置を介して実行されてもよい。
【0089】
低侵襲性エレクトロポレーション装置「MID」は、上述の組成物及び関連する流体を体組織に注入するための装置であり得る。装置は、中空針、DNAカセット、及び流体送達手段を含むことができ、装置は、使用中に流体送達手段を作動させて、針を前述の体組織に挿入する間にDNAを体組織に同時に(例えば、自動的に)注入するように適合される。これは、針が挿入されている間にDNA及び関連する流体を徐々に注入できることが、体組織を通る流体のより均一な分布をもたらすという利点を有する。注入中に経験する痛みは、注入されるDNAの分布がより広い領域にわたるために軽減され得る。
【0090】
MIDは、針を使用せずに組織に組成物を注入してもよい。MIDは、組成物が組織の表面を穿刺し、下にある組織及び/又は筋肉に入るような力で、組成物を小さな流れ又はジェットとして注入することができる。小さな流れ又はジェットの背後の力は、数分の1秒以内にマイクロオリフィスを通る二酸化炭素などの圧縮ガスの膨張によって供給され得る。低侵襲性エレクトロポレーション装置及びそれらを使用する方法の例は、公開された米国特許出願公開第20080234655号明細書、米国特許第6,520,950号明細書、米国特許第7,171,264号明細書、米国特許第6,208,893号明細書、米国特許第6,009,347号明細書、米国特許第6,120,493号明細書、米国特許第7,245,963号明細書、米国特許第7,328,064号明細書、及び米国特許第6,763,264号明細書に記載されており、これらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。MIDは、組織を痛みなく穿刺する液体の高速ジェットを生成する注入器を備えることができる。このような無針注入器は市販されている。本明細書で利用することができる無針注入器の例には、米国特許第3,805,783号明細書、同第4,447,223号明細書、同第5,505,697号明細書、及び同第4,342,310号明細書に記載されているものが含まれ、これらの各々の内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0091】
直接的又は間接的な電気輸送に適した形態の所望の組成物は、通常、組織への組成物の浸透を引き起こすのに十分な力で薬剤のジェットの送達を作動させるように組織表面を注入器と接触させることによって、無針注入器を使用して治療される組織に導入(例えば、注入)され得る。例えば、治療すべき組織が粘膜、皮膚又は筋肉である場合、作用物質は、作用物質を角質層を通って真皮層に、又はその下の組織及び筋肉にそれぞれ浸透させるのに十分な力で、粘膜又は皮膚表面に向かって投射される。
【0092】
無針注入器は、あらゆる種類の組織、特に皮膚及び粘膜に組成物を送達するのによく適合している。いくつかの実施形態では、無針注入器を使用して、組成物を含有する液体を対象の皮膚又は粘膜の表面及び中に推進することができる。本発明の方法を用いて治療することができる様々な種類の組織の代表的な例としては、膵臓、喉頭、鼻咽頭、下咽頭、中咽頭、唇、喉、肺、心臓、腎臓、筋肉、乳房、結腸、前立腺、胸腺、精巣、皮膚、粘膜組織、卵巣、血管、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0093】
MIDは、組織をエレクトロポレーションする針電極を有し得る。例えば矩形又は正方形のパターンで設定された、複数の電極アレイの複数の電極対間をパルス化することにより、一対の電極間のパルス化よりも改善された結果が得られる。例えば、「Needle Electrodes for Mediated Delivery of Drugs and Genes」と題する米国特許第5,702,359号明細書には、針のアレイが開示されており、療法の治療中、複数対の針にパルスをかけることができる。完全に記載されているかのように参照により本明細書に組み込まれるその出願では、針は円形アレイに配置されたが、針電極の対向する対の間でのパルス発生を可能にするコネクタ及びスイッチング装置を有する。組換え発現ベクターを細胞に送達するための一対の針電極を使用することができる。そのような装置及びシステムは、米国特許第6,763,264号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。あるいは、DNAの注入及び通常の注入針に似た単針によるエレクトロポレーションを可能にし、現在使用されている装置によって送達されるものよりも低い電圧のパルスを適用し、したがって患者が経験する電気感覚を低減する単針装置を使用することができる。
【0094】
MIDは、1つ以上の電極アレイを備え得る。アレイは、同じ直径又は異なる直径の2つ以上の針を備え得る。針は、均等又は不均等に離間し得る。針は、0.005インチ~0.03インチ、0.01インチ~0.025インチ、又は0.015インチ~0.020インチの間であってもよい。針は、直径0.0175インチであってもよい。針は、0.5mm、1.0mm、1.5mm、2.0mm、2.5mm、3.0mm、3.5mm、4.0mm、又はそれ以上離間していてもよい。
【0095】
MIDは、パルス発生器と、単一のステップで組成物及びエレクトロポレーションパルスを送達する2つ以上の針組成物注入器とからなってもよい。パルス発生器は、フラッシュカードで動作するパーソナルコンピュータを介したパルス及び注入パラメータの柔軟なプログラミング、並びにエレクトロポレーション及び患者のデータの包括的な記録及び記憶を可能にすることができる。パルス発生器は、短期間中に様々なボルトパルスを送達することができる。例えば、パルス発生器は、持続時間が100msの3つの15ボルトのパルスを送達することができる。そのようなMIDの例は、米国特許第7,328,064号明細書に記載されているELGEN1000システムであり、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0096】
MIDは、身体又は植物の選択された組織の細胞へDNAなどの高分子を導入するのを容易にするモジュール式電極システムであるCELLECTRA(INOVIO Pharmaceuticals)の装置及びシステムであり得る。モジュール式電極システムは、複数の針電極、皮下注入針、プログラマブル定電流パルスコントローラから複数の針電極への導電リンクをもたらす電気コネクタ、及び電源を備えることができる。オペレータは、支持構造体に取り付けられた複数の針電極を把持し、それらを身体又は植物の選択された組織にしっかりと挿入することができる。次いで、高分子が、皮下注入針を介して選択された組織に送達される。プログラマブル定電流パルスコントローラが起動され、定電流電気パルスが複数の針電極に印加される。印加された定電流電気パルスは、複数の電極間の細胞内へ高分子を導入するのを容易にする。細胞の過熱による細胞死は、定電流パルスによって組織での電力散逸を制限することによって、最小限に抑えられる。Cellectra装置及びシステムは米国特許第7,245,963号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。MIDは、ELGEN1000システム(INOVIO Pharmaceuticals)であり得る。ELGEN1000システムは、中空針及び流体送達手段を設ける装置を備え得て、装置は、使用中の流体送達手段を作動させて、針を体組織に挿入する間に、本明細書に記載の組成物である流体を前述の体組織に同時に(例えば自動的に)注入するように適合される。利点は、針が挿入されている間に流体を徐々に注入できることが、体組織を通る流体のより均一な分布をもたらすということである。注入中に経験される痛みは、流体の注入される体積の分布がより広い領域にわたるために軽減されるとも考えられる。
【0097】
さらに、流体の自動的な注入は、注入された流体の実際の用量の自動的な監視及び登録を容易にする。このデータは、必要に応じて、文書化の目的で制御ユニットによって記憶することができる。
【0098】
注入速度は線形又は非線形のいずれかであり得、針が治療される対象の皮膚を通して挿入された後、及び腫瘍組織、皮膚、組織、肝臓組織、及び筋肉組織などの体組織にさらに挿入されている間に、注入が実行され得ることが理解されよう。
【0099】
装置は、体組織への針の挿入を誘導するための針挿入手段をさらに備える。流体注入の速度は、針の挿入速度によって制御される。これは、針の挿入及び流体の注入の両方を、挿入速度を所望の注入速度に一致させることができるように制御することができるという利点を有する。これはまた、ユーザが装置を操作しやすくする。必要に応じて、体組織内に針を自動的に挿入するための手段を設けることができる。
【0100】
ユーザは、流体の注入をいつ開始するかを選択することができる。しかし、理想的には、針の先端が筋肉組織に到達したときに注入が開始され、装置は、流体の注入を開始するのに十分な深さまで針が挿入されたときを感知するための手段を含むことができる。これは、針が所望の深さ(通常は筋組織が始まる深さである)に達したときに流体の注入を自動的に開始するように促すことができることを意味する。筋組織が始まる深さは、例えば、針が皮膚の層を通過するのに十分であると考えられる4mmの値などの、予め設定された針の挿入の深さと解釈することができる。
【0101】
感知手段は、超音波プローブを備えることができる。感知手段は、インピーダンス又は抵抗の変化を感知するための手段を備えることができる。この場合、手段は、そのように体組織内の針の深さを記録するのではなく、むしろ、針が異なるタイプの体組織から筋肉内に移動する際のインピーダンス又は抵抗の変化を感知するように適合される。これらの代替形態のいずれも、注入が開始され得ることを感知する比較的正確で操作が簡単な手段を提供する。針の挿入する深さは、必要に応じてさらに記録することができ、針の挿入する深さが記録されているときに注入される流体の量が判定されるように流体の注入を制御するために使用することができる。
【0102】
装置は、針を支持するためのベース、及びベースを内部に受け入れるためのハウジングをさらに備えることができ、ベースは、ベースがハウジングに対して第1の後方位置にあるときに針がハウジング内に引き込まれ、ベースがハウジング内の第2の前方位置にあるときに針がハウジングから延出するように、ハウジングに対して移動可能である。これは、ハウジングを患者の皮膚に整列させることができ、その後、ハウジングをベースに対して移動させることによって針を患者の皮膚に挿入することができるため、ユーザにとって有利である。
【0103】
上述のように、流体が皮膚に挿入されるときに針の長さにわたって均一に分配されるように、制御された速度の流体の注入を達成することが望ましい。流体送達手段は、制御された速度で流体を注入するように適合されたピストン駆動手段を備えることができる。ピストン駆動手段は、例えば、サーボモータによって作動させることができる。しかし、ピストン駆動手段は、ベースがハウジングに対して軸方向に移動することによって作動されてもよい。流体送達のための代替手段を設け得ることが理解されよう。したがって、例えば、制御された速度又は制御されていない速度で流体送達のために圧迫することができる密閉容器を、シリンジ及びピストンシステムの代わりに設けることができる。
【0104】
上述の装置は、任意のタイプの注入に使用することができる。しかし、エレクトロポレーションの分野において特に有用であることが想定され、したがって、針に電圧を印加するための手段をさらに備えることができる。これにより、針を注入のためだけでなく、エレクトロポレーション中の電極としても使用することができる。これは、電界が、注入された流体と同じ領域に印加されることを意味するので、特に有利である。従来、エレクトロポレーションには、電極を以前に注入された流体と正確に位置合わせすることが非常に困難であるという問題があり、そのため、ユーザは、より大きな領域にわたって必要とされるよりも大量の流体を注入し、注入された物質と電界との間の重なりを保証しようとするためにより高い領域にわたって電界を印加する傾向があった。本発明を使用すると、電界と流体との間の良好な適合を達成しながら、注入される流体の体積及び印加される電界のサイズの両方を低減することができる。
【0105】
外因性核酸を宿主細胞に導入するために使用される方法にかかわらず、宿主細胞に組換え核酸配列が存在することを確認するために、様々なアッセイが実施され得る。そのようなアッセイとしては、例えば、当業者に周知の「分子生物学的」アッセイ、例えば、サザンブロット及びノーザンブロット、RT-PCR及びPCR、例えば免疫学的手段(ELISA及びウエスタンブロット)又は当業者に公知の他のアッセイによって、特定のペプチドの存在又は非存在を検出するなどの「生化学的」アッセイが挙げられる。
【0106】
一実施形態では、本発明は、ヒトナンセンスCF細胞培養モデルにおけるCFTRmRNA発現及びチャネル機能を救済するための、MC及びCEDTをコードするACE-tRNAの有効性を記載する。例えば、MC及びCEDTをコードするACE-tRNAをpに送達した後、p.G542X、p.R1162X、p.W1282X 16HBE14oe-細胞、NMDからのCFTR mRNA発現のレスキューをqPCRによって判定し、CFTR機能をUssingチャンバー記録によって評価する。また、(1)転写増強5’リーダー配列(TELS)のライブラリーを使用してACE-tRNA発現を増加させること、及び(2)DNAターゲティング配列(DTS)のライブラリーを使用して核ターゲティング及び転写バイオアベイラビリティを増加させることを含む、いくつかの方法によってミニベクター治療能力を増強することも開示される。
【0107】
したがって、本発明のDNAミニベクター(MC又はCEDTのいずれか)は、プロモーター及びアンチコドン編集tRNAをコードする核酸配列を含む。DNAミニベクターは、TELS、DTS、ABS及びレポーター核酸配列からなる群から選択される1つ又は2つ又は3つ又は4つのDNA配列をさらに含む。
【0108】
一実施形態では、DNAミニベクターは、プロモーター、アンチコドン編集tRNAをコードする配列、及びTELSを含む。
【0109】
一実施形態では、DNAミニベクターは、プロモーター、アンチコドン編集tRNAをコードする配列、TELS及びDTSを含む。
【0110】
一実施形態では、DNAミニベクターは、プロモーター、アンチコドン編集tRNAをコードする配列、TELS、DTS及びABSを含む。
【0111】
一実施形態では、DNAミニベクターは、プロモーター、アンチコドン編集tRNAをコードする配列、TELS、DTS、ABS及びレポーター配列を含む。
【0112】
本明細書に記載のDNAミニベクターのいずれかにおいて、DNAミニベクターはMCである。
【0113】
本明細書に記載のDNAミニベクターのいずれかにおいて、DNAミニベクターはCEDTである。
【0114】
別の実施形態では、本発明は、p.G542X-CFTR及びp.W1282X-CFTRマウスの気道上皮におけるプラスミド、MC及びCEDTSをコードするACE-tRNAによるナンセンス抑制の有効性及び持続性を記載する。cDNAプラスミドMC及びCEDTを発現するACE-tRNAを、電場を使用し、野生型p.G542X-CFTR及びp.W1282X-CFTRマウスの肺に送達することができる。定常状態のCFTRmRNAの発現は、免疫蛍光法(IF)及びウエスタンブロット(WB)によってqPCR及びCFTRタンパク質によって測定することができる。ベクターの細胞特異的送達は、解剖された肺セグメントにおける蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)によって判定することができる。エンドポイントは、単回送達後42日まで評価することができる。ベクターからのACE-tRNA発現の持続性は、7日、14日及び1、2、6及び12ヶ月でのPTCレポーターベクターのその後の送達及びACE-tRNAバーコード配列のqPCRによって野生型マウスの肺において定量することができる。
【0115】
さらに別の実施形態では、本発明は、他のより大きな実験動物の肺への送達後のMC及びCEDTにコードされるACE-tRNAの効率及び持続性を記載する。野生型動物は、電場パルスによってMC及びCEDTを受け取ることができる。ACE-tRNA発現の持続性及び送達の肺マッピングを、PTCレポーターベクターのその後の送達、並びに蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)及び免疫蛍光(IF)と対になったACE-tRNAバーコード配列のqPCRによって6ヶ月まで判定することができる。
【0116】
疾患の状態及び治療方法
本開示の特定の実施形態は、本明細書に記載の治療剤(例えば、ACE-tRNA)をコードするベクターを哺乳動物に投与することを含む、哺乳動物(ヒトなど)におけるPTCに関連する疾患又は障害を治療する方法を提供する。本開示の特定の実施形態は、哺乳動物において疾患を治療するのに有用な医薬品を調製するための、本明細書に記載の治療剤又は治療剤をコードするベクターの使用を提供する。
【0117】
PTCに関連する疾患又は障害には、ジストロフィン中のPTCによるデュシェンヌ型筋ジストロフィー及びベッカー型筋ジストロフィー、RBI中のPTCによる網膜芽細胞腫、NF1又はNF2中のPTCによる神経線維腫症、ATM中のPTCによる毛細管拡張性運動失調、HEXA中のPTCによるテイ・サックス病、CFTR中のPTCによる嚢胞性線維症、WT1中のPTCによるウィルムス腫瘍、第VIII因子中のPTCによる血友病A、第IX因子中のPTCによる血友病B、p53中のPTCによるp53関連がん、メンケス病、ウルリッヒ病、ベータグロビン中のPTCによるβサラセミア、ウィルブランド因子中のPTCによる2A型及び3型フォン・ヴィレブランド病、ロビノウ症候群短指症B型(指及び中手骨の短縮)、IFNGR1におけるPTCに起因するマイコバクテリア感染に対する遺伝的感受性、CRXにおけるPTCに起因する遺伝性網膜疾患、凝固因子XにおけるPTCに起因する遺伝性出血傾向、ロドプシンにおけるPTCに起因する遺伝性失明、SOX10におけるPTCに起因する先天性神経感覚消失及び結腸無神経変性、並びにSOX10におけるPTCに起因する神経感覚消失、結腸無神経変性、末梢神経障害及び中枢性ミエリン形成異常性白質ジストロフィーを含む遺伝性神経発達障害、リドル症候群、色素性乾皮症、ファンコーニ貧血、貧血、甲状腺機能低下症、p53関連(例えば、p53扁平上皮癌、p53肝細胞癌、p53卵巣癌)、食道癌、骨癌、卵巣癌、肝細胞癌、乳癌、肝細胞癌、線維性組織球腫、卵巣癌、SRY性転換、トリオースリン酸イソメラーゼ貧血、糖尿病及びくる病、その他多数のバリアントが含まれるが、これらに限定されない。一実施形態における本発明は、本発明のACE-tRNAの導入によってナンセンス突然変異に関連する、存在する突然変異の効果を逆転させることによって、嚢胞性線維症を治療するための組成物及び方法を含む。さらなる障害には、ハーラー症候群、ドラベ症候群、脊髄性筋ジストロフィー、アッシャー症候群、無虹彩症、コロイデレミア、眼性コロボマ、網膜色素変性症、栄養障害性表皮水疱症、シュードキサントーマ・エラスチカム、アラジル症候群、ワールデンバー・シャー、乳児神経セロイドリポフスチン症、シスチノーシス、X連鎖腎性尿崩症及び多発性嚢胞腎疾患が含まれる。
【0118】
本明細書に記載のDNA分子及び方法によって治療することができるPTCに関連する疾患又は障害には、いくつかの眼疾患も含まれる。特定の変異を有する疾患及び遺伝子の例としては、以下のものが挙げられる。
錐体ジストロフィー(シュタルガルト病(STGD1)、錐体杆体ジストロフィー、網膜色素変性症(RP)、及び加齢黄斑変性に対する感受性の増加):KCNV2 Glu143X、KCNV2 Glu306X、KCNV2 Gln76X、KCNV2 Glu148X、CACNA2D4、Tyr802X、CACNA2D4、Arg628X、RP2、Arg120X、Rho、Ser334X、Rpe65、Arg44X、PDE6A、Lys455X;
先天性停止性夜盲2(CSNB2):CACNA1F、Arg958X、CACNA1F、Arg830X
先天性停止性夜盲1(CSNB1):TRPM1、Gln11X、TRPM1、Lys294X、TRPM1、Arg977X、TRPM1、Ser882X、NYX、W350X
ベスト病又は、BVMD、BEST1、Tyr29X、BEST1、Arg200X、BEST1、Ser517X
レーバー先天性黒内障(LCA):KCNJ13、Trp53X、KCNJ13、Arg166X、CEP290、Arg151X、CEP290、Gly1890X、CEP290、Lys1575X、CEP290、Arg1271X、CEP290、Arg1782X、CRB1、Cys1332X、GUCY2D、Ser448X、GUCY2D、Arg41091X、LCA5、Gln279X、RDH12、Tyr194X、RDH12、Glu275X、SPATA7、Arg108X、TULP1、Gln301X;
アッシャー症候群1:USH1C、Arg31X、PCDH15、Arg3X、PCDH15、Arg245X、PCDH15、Arg643X、PCDH15、Arg929X、IQCB1、Arg461X、IQCB1、Arg489X、PDE6A、Gln69X、ALMS1、Ser999X、ALMS1、Arg3804X;
無虹彩症:Pax6、Gly194X
眼コロボマ:Pax2、Arg139X、Lamb1、Arg524X
コロイデレミア:REP1、Gln32X
【0119】
一態様によれば、哺乳動物レシピエントにおいて治療剤を発現させるための細胞発現システムが提供される。発現システム(本明細書では、「遺伝子組換え細胞」とも呼ばれる)は、細胞と、治療剤を発現させるための発現ベクターとを含む。発現ベクターには、ウイルス、プラスミド、及び異種遺伝物質を細胞に送達するための他のビヒクルが含まれるが、これらに限定されない。したがって、本明細書で使用される「発現ベクター」という用語は、異種遺伝物質を細胞に送達するためのビヒクルを指す。特に、発現ベクターはCEDT又はMCミニベクターである。発現ベクターの他の例としては、組換えアデノウイルス、アデノ随伴ウイルス、又はレンチウイルス若しくはレトロウイルスベクターが挙げられる。
【0120】
発現ベクターは、異種遺伝子の転写を制御するためのプロモーターをさらに含む。プロモーターは、誘導性プロモーターであり得る。発現システムは、哺乳動物レシピエントへの投与に適合している。発現システムは、複数の不死化されていない遺伝子改変細胞を含み得、各細胞は、少なくとも1つの治療剤をコードする少なくとも1つの組換え遺伝子を含む。
【0121】
細胞発現システムは、in vivoで形成され得る。さらに別の態様によれば、哺乳動物レシピエントをin vivoで治療するための方法が提供される。この方法は、異種遺伝子産物を発現させるための発現ベクターを、例えば静脈内投与によって、in situで患者の細胞に導入することを含む。in vivoで発現システムを形成するために、治療剤を発現させるための発現ベクターをin vivoで哺乳動物レシピエントに静注で導入する。
【0122】
さらに別の態様によれば、哺乳動物レシピエントをin vivoで治療するための方法が提供される。この方法は、標的治療剤をin vivoで患者に導入することを含む。異種遺伝子を発現させるための発現ベクターは、異種遺伝子産物の転写を制御するための誘導性プロモーターを含み得る。したがって、in situでの治療剤の送達は、細胞を、異種遺伝子の転写を誘導する条件にin situで曝露することによって制御される。
【0123】
本開示は、ACE-tRNAをコードする発現ベクターを細胞又は患者に投与することによって、対象(例えば、哺乳動物)の疾患を治療する方法を提供する。遺伝子治療の方法について、分子生物学及び遺伝子治療の当業者は、過度の実験をすることなく、本開示の新規方法で使用される発現ベクターの適切な投与量及び投与経路を判定することができるであろう。
【0124】
ある特定の実施形態において、本明細書に記載される作用物質及び方法は、PTCによって引き起こされる疾患の治療/管理のために使用され得る。例としては、デュシェンヌ-ベッカー型筋ジストロフィー、網膜芽細胞腫、神経線維腫症、毛細血管拡張性運動失調症、テイ・サックス病、嚢胞性線維症、ウィルムス腫瘍、血友病A、血友病B、メンケス病、ウルリッヒ病、βサラセミア、2A型及び3型フォン・ヴィレブランド病、ロビノウ症候群、短指症B型(指及び中手骨の短縮)、マイコバクテリア感染に対する遺伝的感受性、遺伝性網膜疾患、遺伝性出血傾向、遺伝性失明、先天性神経感覚消失及び結腸無神経変性、並びに神経感覚消失、結腸無神経変性、末梢神経障害及び中枢性ミエリン形成異常性白質ジストロフィーを含む遺伝性神経発達障害、リドル症候群、色素性乾皮症、ファンコーニ貧血、貧血、甲状腺機能低下症、p53関連がん(例えば、p53扁平上皮癌、p53肝細胞癌、p53卵巣癌)、食道癌、骨癌、卵巣癌、肝細胞癌、乳癌、肝細胞癌、線維性組織球腫、卵巣癌、SRY性転換、トリオースリン酸イソメラーゼ貧血、糖尿病及びくる病、その他多数の変異体が含まれるが、これらに限定されない。この治療法は、改良された終止コドン抑制特異性をもたらすという点で有利である。本発明の治療用ACE-tRNAは、特定の終止コドン、例えばTGAを標的とし、したがって、疾患に無関係な終止コドンでのオフターゲット効果を減少させる。本療法はまた、アミノ酸特異性をもたらすという点で有利である。発現されたtRNAは、疾患終止コドンの挿入によって失われたアミノ酸を特異的に置換するように操作され、したがってタンパク質の安定性、折り畳み及び輸送に対するいかなる偽の影響も打ち消される。
【0125】
特定の実施形態では、本システムはモジュール式であり、したがってあらゆる可能性のある疾患PTCに「パーソナル化」することができる。例えば、Trpシンテターゼによって認識されるヒトゲノムには9つの個々のトリプトファンtRNAが存在し、それらのすべてがmRNA UGGコドンを抑制する。したがって、これらの9つのTrp tRNAのそれぞれは、コドン再編集耐性(UGG→UGA)の機会を提供する。さらに、遺伝暗号中の終止コドンに近接していることを考えると、アルギニンコドンのPTCナンセンスコドンへの変異は疾患において一般的である。コドン編集耐性及び抑制の有効性について試験することができる30を超えるArg tRNAが存在する。アルギニンをコードするACE-tRNAは、遺伝子にかかわらず、すべてのArg→PTC変異に対して実行可能な治療薬である。実際、LCAの35%はナンセンス突然変異によって引き起こされ、その大部分は終止するアルギニンである。本発明のさらなる利点は、システム全体(tRNA+プロモーター配列)がコンパクトであるため、容易な発現及び細胞特異的送達を提供することである。
【0126】
製剤
本発明に従って産生されたベクター又は別の形態のDNAが十分な量で生成及び精製されると、本発明の方法は、DNA組成物、例えば治療用DNA組成物としてのその製剤をさらに含み得る。治療用DNA組成物は、上記の種類の治療用DNA分子を含む。そのような組成物は、所望の経路による投与に適合した形態の治療的有効量のDNA、例えば、経口、粘膜又は局所投与に適したエアロゾル、注入可能な組成物又は製剤を含むことができる。
【0127】
従来の薬学的調製物としてのDNAの製剤化は、当業者に利用可能な標準的な薬学的製剤化学及び方法論を使用して行うことができる。任意の薬学的に許容される担体又は添加物が使用され得る。湿潤剤又は乳化剤、pH緩衝物質などの補助物質が添加物又はビヒクル中に存在してもよい。これらの添加物、ビヒクル及び補助物質は、一般に、過度の毒性なしに投与することができ、ワクチン組成物の場合、組成物を受けている個体において免疫応答を誘導しない医薬剤である。適切な担体はリポソームであり得る。
【0128】
薬学的に許容される添加物には、水、生理食塩水、ポリエチレングリコール、ヒアルロン酸、グリセロール及びエタノールなどの液体が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される塩、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ホスフェート、硫酸塩などの鉱酸塩、及び酢酸塩、プロピオナート、マロン酸塩、ベンゾエートなどの有機酸の塩も含まれ得る。必須ではないが、調製物が組成物に含まれる場合、特にペプチド、タンパク質又は他の同様の分子のための安定剤として働く薬学的に許容される添加物を含むことも好ましい。ペプチドの安定剤としても作用する適切な担体の例としては、限定されないが、医薬グレードのデキストロース、スクロース、ラクトース、トレハロース、マンニトール、ソルビトール、イノシトール、デキストランなどが挙げられる。他の適切な担体としては、やはり限定されないが、デンプン、セルロース、リン酸ナトリウム又はリン酸カルシウム、クエン酸、酒石酸、グリシン、高分子量ポリエチレングリコール(PEG)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。薬学的に許容される添加物、ビヒクル及び補助物質の完全な考察は、REMINGTON’S PHARMACEUTICAL SCIENCES(Mack Pub.Co.,N.J.1991)で入手でき、参照により本明細書に取込まれる。
【0129】
本発明の薬剤(例えば、ミニベクター)は、遺伝性疾患(例えば、嚢胞性線維症)に関連する少なくとも1つの症状の軽減をもたらすように投与することができる。投与される量は、選択される組成物、特定の疾患、体重、身体状態、及び対象の年齢、並びに予防又は治療が達成されるべきかどうかを含むがこれらに限定されない様々な要因に応じて変化する。そのような因子は、動物モデル又は当技術分野で周知の他の試験系を使用する臨床医によって容易に判定することができる。
【0130】
本発明は、本発明に開示される薬剤、例えばACE-tRNA又は発現ベクターの投与によってPTCに関連する疾患又は障害を治療することを想定している。本発明による治療剤の投与は、例えば、レシピエントの生理的状態、投与の目的が治療的であるか予防的であるか、及び当業者に公知の他の因子に応じて、連続的又は断続的であり得る。本発明の薬剤の投与は、予め選択された期間にわたって本質的に連続的であってもよく、又は一連の間隔を空けた用量であってもよい。局所投与及び全身投与の両方が企図される。
【0131】
本発明の治療剤(1つ又は複数)を有する1つ又は複数の適切な単位投与形態は、後述するように、場合により持続放出のために製剤化することができ(例えば、マイクロカプセル化を使用して)、静脈内及び筋肉内経路を含む非経口を含む様々な経路によって、並びに疾患組織への直接注入によって投与することができる。製剤は、適切な場合には、別個の単位投与形態で簡便には提示され得、薬学的に周知の方法のいずれかによって調製され得る。そのような方法は、治療剤を液体担体、固体マトリックス、半固体担体、微粉固体担体又はそれらの組み合わせと会合させ、次いで、必要に応じて、産生物を所望の送達システムに導入又は成形するステップを含み得る。
【0132】
本発明の治療剤を投与のために調製する場合、それらを薬学的に許容される担体、希釈剤又は添加物と組み合わせて薬学的製剤又は単位投与形態を形成することができる。そのような製剤中の全活性成分は、製剤の0.1~99.9重量%を含む。薬学的に許容される担体は、製剤の他の成分と適合性であり、そのレシピエントに有害ではない担体、希釈剤、添加物及び/又は塩であり得る。投与のための有効成分は、粉末又は顆粒として溶液、懸濁液又はエマルジョンとして、存在し得る。
【0133】
本発明の治療剤を含有する薬学的製剤は、周知の容易に入手可能な成分を使用して、当技術分野で公知の手順によって調製することができる。本発明の治療剤はまた、例えば筋肉内、皮下又は静脈内経路による非経口投与に適切な溶液として製剤化することができる。本発明の治療剤の薬学的製剤はまた、水性若しくは無水の溶液若しくは分散体の形態、又は代替的にエマルジョン若しくは懸濁液の形態をとることができる。
【0134】
したがって、治療剤は、非経口投与(例えば、注入、例えばボーラス注入又は連続的注入による)のために製剤化されてもよく、アンプル、プレフィルドシリンジ、小容量点滴容器、又は防腐剤が添加された複数回投与容器に単位用量形態で提供されてもよい。活性成分は、油性又は水性ビヒクル中の懸濁液、溶液又はエマルジョンなどの形態をとることができ、懸濁化剤、安定化剤及び/又は分散剤などの調合剤を含有することができる。あるいは、活性成分は、使用前に適切なビヒクル、例えば滅菌パイロジェンフリー水で構成するために、滅菌固体の無菌の単離又は溶液からの凍結乾燥によって得られる粉末形態であってもよい。
【0135】
各剤形の個々のエアロゾル用量に含まれる1つ又は複数の活性成分の単位含有量は、複数の剤形の投与によって必要な有効量に達することができるので、それ自体が特定の適応症又は疾患を治療するための有効量を構成する必要はないことが理解されよう。さらに、有効量は、個別に、又は一連の投与のいずれかで、剤形の用量より少なく使用して達成され得る。
【0136】
本発明の薬学的製剤は、任意の成分として、薬学的に許容される担体、希釈剤、可溶化剤又は乳化剤、及び当技術分野で周知の種類の塩を含み得る。本発明の薬学的製剤に有用な担体及び/又は希釈剤の具体的な非限定的な例としては、水及び生理的に許容される緩衝生理食塩水、例えばリン酸緩衝生理食塩水pH7.0~8.0及び水が挙げられる。
【0137】
ナノ粒子組成物
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される薬学的組成物は、国際公開第2020263883号、国際公開第2013123523号パンフレット、国際公開第2012170930号パンフレット、国際公開第2011127255号パンフレット、及び国際公開第2008103276号パンフレット、並びに米国特許出願公開第20130171646号明細書に記載されているものなどの脂質ナノ粒子(LNP)として製剤化されており、これらの各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。したがって、本開示は、(i)送達剤を含む脂質組成物、及び(ii)少なくとも1つの核酸、例えばACE-tRNA又はACE-tRNAをコードするDNA、例えばMC又はCEDTを含むナノ粒子組成物を提供する。そのようなナノ粒子組成物では、本明細書に開示される脂質組成物は、核酸をカプセル化することができる。
【0138】
ナノ粒子組成物は、典型的にはマイクロメートル以下程度のサイズであり、脂質二重層を含むことができる。ナノ粒子組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)、リポソーム(例えば、脂質ベシクル)、及びリポプレックスを包含する。例えば、ナノ粒子組成物は、500nm以下の直径を有する脂質二重層を有するリポソームであり得る。
【0139】
ナノ粒子組成物には、例えば、脂質ナノ粒子、リポソーム、及びリポプレックスが含まれる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、1つ以上の脂質二重層を含むベシクルである。特定の実施形態では、ナノ粒子組成物は、水性区画によって分離された2つ以上の同心二重層を含む。脂質二重層は、互いに官能化及び/又は架橋され得る。脂質二重層は、1つ以上のリガンド、タンパク質、又はチャネルを含むことができる。
【0140】
一実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質、構造脂質、リン脂質、及び目的の核酸を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、イオン化可能な脂質、PEG修飾脂質、ステロール及び構造脂質を含む。いくつかの実施形態では、LNPは、約20~60%のイオン化可能な脂質、約5~25%の構造脂質、約25~55%のステロール、及び約0.5~15%のPEG修飾脂質のモル比を有する。
【0141】
いくつかの実施形態では、LNPは、0.4未満の多分散性値を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、中性pHで正味の中性電荷を有する。いくつかの実施形態では、LNPは50~150nmの平均直径を有する。いくつかの実施形態では、LNPは80~100nmの平均直径を有する。
【0142】
本明細書全体で定義されるように、「脂質」という用語は、疎水性又は両親媒性特性を有する小分子を指す。脂質は、天然に存在するものであってもよく、又は合成のものであってもよい。脂質のクラスの例としては、脂肪、ワックス、ステロール含有代謝産物、ビタミン、脂肪酸、グリセロ脂質、グリセロリン脂質、スフィンゴ脂質、サッカロ脂質及びポリケチド、並びにプレノール脂質が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの例では、いくつかの脂質の両親媒性により、それらは水性媒体中でリポソーム、ベシクル又は膜を形成する。
【0143】
いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、イオン化可能な脂質を含み得る。本明細書で使用される場合、「イオン化可能な脂質」という用語は、当技術分野におけるその通常の意味を有し、1つ以上の荷電した部分を含む脂質を指し得る。いくつかの実施形態では、イオン化可能な脂質は、正に荷電していても負に荷電していてもよい。イオン化可能な脂質は正に荷電していてもよく、その場合、「カチオン性脂質」と呼ぶことができる。特定の実施形態では、イオン化可能な脂質分子は、アミン基を含み得、イオン化可能なアミノ脂質と呼ばれ得る。本明細書で使用される場合、「荷電した部分」は、例えば、一価(+1、又は1)、二価(+2、又は2)、三価(+3、又は3)などの形式的な電子電荷を有する化学的部分である。荷電した部分は、アニオン性(すなわち、負に荷電している)又はカチオン性(すなわち、正に荷電している)であり得る。正に荷電した部分の例としては、アミン基(例えば、第一級、第二級及び/又は第三級アミン)、アンモニウム基、ピリジニウム基、グアニジン基、及びイミジゾリウム基が挙げられる。特定の実施形態では、荷電した部分はアミン基を含むことができる。負に荷電した基又はその前駆体の例としては、カルボキシレート基、スルホネート基、硫酸塩基、ホスホネート基、ホスフェート基、ヒドロキシル基などが挙げられる。荷電した部分の電荷は、場合によっては、環境条件によって変化し得、例えば、pHの変化は、部分の電荷を変化させ得、及び/又は部分を荷電又は非荷電にし得る。一般に、分子の電荷密度は、所望するように選択され得る。
【0144】
いくつかの実施形態では、イオン化可能な脂質は、当技術分野で「イオン化可能なカチオン性脂質」と呼ばれることもあるイオン化可能なアミノ脂質である。一実施形態では、イオン化可能なアミノ脂質は、リンカー構造を介して接続された正に荷電した親水性頭部及び疎水性尾部を有し得る。これらに加えて、イオン化可能な脂質は、環状アミン基を含む脂質であってもよい。一実施形態では、イオン化可能な脂質は、国際公開第2013086354号パンフレット及び国際公開第2013116126号パンフレットに記載されているイオン化可能な脂質から選択されてもよいが、これらに限定されず、その各々の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。さらに別の実施形態では、イオン化可能な脂質は、米国特許第7,404,969号明細書の式CLI-CLXXXXIIから選択され得るが、これらに限定されず、その各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0145】
一実施形態では、脂質は、その全体が参照により組み込まれる国際公開第2012170889号パンフレットに記載されているものなどの、切断可能な脂質であり得る。一実施形態では、脂質は、当技術分野で公知の方法によって、及び/又は国際公開第2013086354号パンフレットに記載されているように、合成することができ、その各々の内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0146】
ナノ粒子組成物は、様々な方法によって特徴付けることができる。例えば、顕微鏡法(例えば、透過型電子顕微鏡法又は走査電子顕微鏡)を使用して、ナノ粒子組成物の形態及びサイズ分布を調べることができる。ゼータ電位を測定するために、動的光散乱又は電位差測定(例えば、電位差滴定)を使用することができる。動的光散乱を利用して粒径を判定することもできる。Zetasizer Nano ZS(Malvern Instruments Ltd,Malvern、ウスターシャー、英国)などの機器を使用して、粒径、多分散指数、及びゼータ電位などのナノ粒子組成物の複数の特性を測定することもできる。ナノ粒子のサイズは、限定されないが、炎症などの生物学的反応に対抗するのを助けることができ、又はポリヌクレオチドの生物学的効果を増加させることができる。本明細書で使用される場合、ナノ粒子組成物の文脈における「サイズ」又は「平均サイズ」は、ナノ粒子の平均直径を指す。
【0147】
一実施形態では、本明細書に記載の核酸は、約10~約100nmの直径を有する脂質ナノ粒子に製剤化することができる。一実施形態では、ナノ粒子は、約10~500nmの直径を有する。一実施形態では、ナノ粒子は、100nmを超える直径を有する。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物の最大寸法は、1μm又はそれより短いもの(例えば、1μm、900nm、800nm、700nm、600nm、500nm、400nm、300nm、200nm、175nm、150nm、125nm、100nm、75nm、50nm、又はそれより短いもの)である。
【0148】
ナノ粒子組成物は、比較的均質であり得る。多分散指数を使用して、ナノ粒子組成物の均一性、例えばナノ粒子組成物の粒径分布を示すことができる。小さな(例えば、0.3未満)多分散指数は、一般に、狭い粒径分布を示す。ナノ粒子組成物は、約0~約0.25、例えば0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.11、0.12、0.13、0.14、0.15、0.16、0.17、0.18、0.19、0.20、0.21、0.22、0.23、0.24又は0.25の多分散指数を有することができる。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるナノ粒子組成物の多分散指数は、約0.10~約0.20であり得る。
【0149】
ナノ粒子組成物のゼータ電位を使用して、組成物の動電電位を示すことができる。例えば、ゼータ電位は、ナノ粒子組成物の表面電荷を表すことができる。より高次に荷電した種が体内の細胞、組織、及び他のエレメントと望ましくなく相互作用する可能性があるため、正又は負である相対的に低い電荷を有するナノ粒子組成物が、概して望ましい。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるナノ粒子組成物のゼータ電位は、約-10mV~約+20mV、約-10mV~約+15mV、約10mV~約+10mV、約-10mV~約+5mV、約-10mV~約0mV、約-10mV~約-5mV、約-5mV~約+20mV、約-5mV~約+15mV、約-5mV~約+10mV、約-5mV~約+5mV、約-5mV~約0mV、約0mV~約+20mV、約0mV~約+15mV、約0mV~約+10mV、約0mV~約+5mV、約+5mV~約+20mV、約+5mV~約+約+15mV、又は約+5mV~+10mVであり得る。
【0150】
核酸/ポリヌクレオチドの「カプセル化効率」という用語は、供給される初期の量に対して、調製後にナノ粒子組成物によってカプセル化されるか、そうでなければ会合される核酸/ポリヌクレオチドの量を表す。本明細書で使用される場合、「カプセル化」は、完全な、実質的な、又は部分的な封入、閉じ込め、包囲、又は囲い込みを指すことができる。カプセル化効率は高いことが望ましい(例えば、100%に近い)。カプセル化効率は、例えば、ナノ粒子組成物を分割する前後のナノ粒子組成物を含有する溶液の核酸/ポリヌクレオチドの量を、1つ以上の有機溶媒又は界面活性剤と比較することによって、測定することができる。
【0151】
蛍光を使用して、溶液の遊離ポリヌクレオチドの量を測定することができる。本明細書に記載のナノ粒子組成物の場合、核酸/ポリヌクレオチドのカプセル化効率は、少なくとも50%、例えば50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%であり得る。いくつかの実施形態では、カプセル化効率は、少なくとも80%であり得る。特定の実施形態では、カプセル化効率は、少なくとも90%であり得る。
【0152】
本明細書に開示される薬学的組成物に存在する核酸/ポリヌクレオチドの量は、核酸/ポリヌクレオチドのサイズ、所望の標的及び/又は用途、又はナノ粒子組成物の他の特性などの複数の因子、並びに核酸/ポリヌクレオチドの特性に依存し得る。例えば、ナノ粒子組成物に有用な核酸/ポリヌクレオチドの量は、核酸/ポリヌクレオチドのサイズ(長さ又は分子量として表される)、配列、及び他の特性に依存し得る。ナノ粒子組成物の核酸/ポリヌクレオチドの相対的な量も変化し得る。本開示の脂質ナノ粒子組成物の中に存在する脂質組成物及び核酸/ポリヌクレオチドの相対的な量は、有効性及び忍容性を考慮して最適化することができる。
【0153】
ナノ粒子組成物を提供することに加えて、本開示はまた、ポリヌクレオチドをカプセル化することを含む脂質ナノ粒子を産生する方法を提供する。そのような方法は、本明細書に開示される薬学的組成物のいずれかを使用すること、及び当技術分野で公知の脂質ナノ粒子の製造方法に従って脂質ナノ粒子を製造することを含む。例えば、Wang et al.(2015)’’Delivery of oligonucleotides with lipid nanoparticles’’ Adv.Drug Deliv.Rev.87:68-80、Silva et al.(2015)’’Delivery Systems for Biopharmaceuticals.Part I:Nanoparticles and Microparticles’’ Curr.Pharm.Technol.16:940-954、Naseri et al.(2015)’’Solid Lipid Nanoparticles and Nanostructured Lipid Carriers:Structure,Preparation and Application’’ Adv.Pharm.Bull.5:305-13、Silva et al.(2015)’’Lipid nanoparticles for the delivery of biopharmaceuticals’’ Curr.Pharm.Biotechnol.16:291-302、及びそこに引用されている参考文献を参照されたい。
【0154】
脂質ナノ粒子製剤は、典型的には、1つ以上の脂質を含む。いくつかの実施形態では、脂質は、当技術分野で「イオン化可能なカチオン性脂質」と呼ばれることもあるイオン化可能な脂質(例えば、イオン化可能なアミノ脂質)である。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子製剤は、リン脂質、構造脂質、及び粒子凝集を減少させることができる分子、例えばPEG又はPEG修飾脂質を含む他の成分をさらに含む。
【0155】
例示的なイオン化可能な脂質としては、限定されないが、本明細書に開示される化合物1~342、DLin-MC-DMA(MC)、DLin-DMA、DLenDMA、DLin-D-DMA、DLin-K-DMA、DLin-M-C2-DMA、DLin-K-DMA、DLin-KC2-DMA、DLin-KC-DMA、DLin-KC4-DMA、DLin-C2K-DMA、DLin-MP-DMA、DODMA、98N12-5、C2-200、DLin-C-DAP、DLin-DAC、DLinDAP、DLinAP、DLin-EG-DMA、DLin-2-DMAP、KL10、KL22、KL25、オクチル-CLinDMA、オクチル-CLinDMA(2R)、オクチル-CLinDMA(2S)、及びそれらの任意の組み合わせのいずれか1つが挙げられる。他の例示的なイオン化可能な脂質としては、(13Z,16Z)-N,N-ジメチル-3-ノニルドコサ-13,16-ジエン-1-アミン(L608)、(20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20ジエン-9-アミン、(16Z,19Z)-N5N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-8-アミン、(13Z,16Z)-N,N-ジメチルドコサ-13,16-ジエン-5-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチルヘニコサ-12,15-ジエン-4-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-6-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-7-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-10-アミン、(15Z,18Z)-N,N-ジメチルテトラコサ-15,18-ジエン-5-アミン、(14Z,17Z)-N,N-ジメチルトリコサ-14,17-ジエン-4-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-9-アミン、(18Z,21Z)-N,N-ジメチルヘプタコサ-18,21-ジエン-8-アミン、(17Z,20Z)-N,N-ジメチルヘキサコサ-17,20-ジエン-7-アミン、(16Z,19Z)-N,N-ジメチルペンタコサ-16,19-ジエン-6-アミン、(22Z,25Z)-N,N-ジメチルヘントリアコンタ-22,25-ジエン-10-アミン、(21Z,24Z)-N,N-ジメチルトリアコンタ-21,24-ジエン-9-アミン、(18Z)-N,N-ジメチルヘプタコス-18-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルヘキサコス-17-エン-9-アミン、(19Z,22Z)-N,N-ジメチルオクタコサ-19,22-ジエン-7-アミン、N,N-ジメチルヘプタコサン-10-アミン、(20Z,23Z)-N-エチル-N-メチルノナコサ-20,23-ジエン-10-アミン、1-[(11Z,14Z)-1-ノニルコサ-11,14-ジエン-1-イル]ピロリジン、(20Z)-N,N-ジメチルヘプタコス-20-エン-10-アミン、(15Z)-N,N-ジメチルエプタコス-15-エン-10-アミン、(14Z)-N,N-ジメチルノナコス-14-エン-10-アミン、(17Z)-N,N-ジメチルノナコス-17-エン-10-アミン、(24Z)-N,N-ジメチルトリトリアコン-24-エン-10-アミン、(20Z)-N,N-ジメチルノナコス-20-エン-10-アミン、(22Z)-N,N-ジメチルヘントリアコン-22-エン-10-アミン、(16Z)-N,N-ジメチルペンタコス-16-エン-8-アミン、(12Z,15Z)-N,N-ジメチル-2-ノニルヘンニコサ-12,15-ジエン-1-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]エプタデカン-8-アミン、1-[(1S,2R)-2-ヘキシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-21-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]へニコサン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]ノナデカン-10-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘキサデカン-8-アミン、N,N-ジメチル-[(1R,2S)-2-ウンデシルシクロプロピル]テトラデカン-5-アミン、N,N-ジメチル-3-{7-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ヘプチル}ドデカン-1-アミン、1-[(1R,2S)-2-ヘプチルシクロプロピル]-N,N-ジメチルオクタデカン-9-アミン、1-[(1S,2R)-2-デシルシクロプロピル]-N,N-ジメチルペンタデカン-6-アミン、N,N-ジメチル-1-[(1S,2R)-2-オクチルシクロプロピル]ペンタデカン-8-アミン、R-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、S-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}ピロリジン、(2S)-N,N-ジメチル-1-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-3-[(5Z)-オクタ-5-エン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、1-{2-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]-1-[(オクチルオキシ)メチル]エチル}アゼチジン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘプチルオキシ)-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-(ノニルオキシ)-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-[(9Z)-オクタデカ-9-エン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン;(2S)-N,N-ジメチル-1-[(6Z,9Z,12Z)-オクタデカ-6,9,12-トリエン-1-イルオキシ]-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(ペンチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-(ヘキシルオキシ)-3-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(11Z,14Z)-イコサ-11,14-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(13Z,16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z,16Z)-ドコサ-13,16-ジエン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、(2S)-1-[(13Z)-ドコス-13-エン-1-イルオキシ]-3-(ヘキシルオキシ)-N,N-ジメチルプロパン-2-アミン、1-[(13Z)-ドコス-13-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、1-[(9Z)-ヘキサデカ-9-エン-1-イルオキシ]-N,N-ジメチル-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、(2R)-N,N-ジメチル-H(1-メトイルオクチル)オキシ]-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、(2R)-1-[(3,7-ジメチルオクチル)オキシ]-N,N-ジメチル-3-[(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン-1-イルオキシ]プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-(オクチルオキシ)-3-({8-[(1S,2S)-2-{[(1R,2R)-2-ペンチルシクロプロピル]メチル}シクロプロピル]オクチル}オキシ)プロパン-2-アミン、N,N-ジメチル-1-{[8-(2-オクチルシクロプロピル)オクチル]オキシ}-3-(オクチルオキシ)プロパン-2-アミン、及び(11E,20Z,23Z)-N,N-ジメチルノナコサ-11,20,2-トリエン-10-アミン、並びにそれらのいずれかの組み合わせを含む。
【0156】
リン脂質としては、限定されないが、グリセロリン脂質、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール及びホスファチジン酸が挙げられる。リン脂質には、スフィンゴミエリンなどのホスホスフィンゴ脂質も含まれる。いくつかの実施形態では、リン脂質は、DLPC、DMPC、DOPC、DPPC、DSPC、DUPC、18:0ジエチルエーテルPC、DLnPC、DAPC、DHAPC、DOPE、4ME16:0 PE、DSPE、DLPE、DLnPE、DAPE、DHAPE、DOPG、及びそれらのいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、リン脂質は、MPPC、MSPC、PMPC、PSPC、SMPC、SPPC、DHAPE、DOPG、及びそれらのいずれかの組み合わせである。いくつかの実施形態では、脂質組成物の中のリン脂質(例えば、DSPC)の量は、約1mol%~約20mol%の範囲である。
【0157】
構造脂質には、ステロール及びステロール部分を含む脂質が含まれる。いくつかの実施形態では、構造脂質は、コレステロール、フェコステロール、シトステロール、エルゴステロール、カンペステロール、スチグマステロール、ブラシカステロール、トマチジン、トマチン、ウルソール酸、アルファ-トコフェロール、及びそれらの混合物を含む。いくつかの実施形態では、構造脂質はコレステロールである。いくつかの実施形態では、脂質組成物の構造脂質(例えば、コレステロール)の量は、約20mol%~約60mol%の範囲である。
【0158】
PEG修飾脂質としては、PEG修飾ホスファチジルエタノールアミン及びホスファチジン酸、PEG-セラミドコンジュゲート(例えば、PEG-CerC4又はPEG-CerC20)、PEG修飾ジアルキルアミン及びPEG修飾1,2-ジアシルオキシプロパン-3-アミンが挙げられる。このような脂質は、PEG化脂質とも呼ばれる。例えば、PEG脂質は、PEG-c-DOMG、PEG-DMG、PEG-DLPE、PEG DMPE、PEG-DPPC又はPEG-DSPE脂質であり得る。いくつかの実施形態では、PEG-脂質は、1,2-ジミリストイル-sn-グリセロールメトキシポリエチレングリコール(PEG-DMG)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[アミノ(ポリエチレングリコール)](PEG-DSPE)、PEG-ジステリルグリセロール(PEG-DSG)、PEG-ジパルメトレイル、PEG-ジオレイル、PEG-ジステアリル、PEG-ジアシルグリカミド(PEG-DAG)、PEG-ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(PEG-DPPE)、又はPEG-l,2-ジミリスチロキシルプロピル-3-アミン(PEG-c-DMA)である。いくつかの実施形態では、PEG部分は、約1000、2000、5000、1万、15,000又は2万ダルトンのサイズを有する。いくつかの実施形態では、脂質組成物のPEG-脂質の量は、約0mol%~約5mol%の範囲である。
【0159】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のLNP製剤は、透過性エンハンサー分子をさらに含むことができる。非限定的な透過性エンハンサー分子は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第20050222064号明細書に記載されている。
【0160】
LNP製剤は、ホスフェートコンジュゲートをさらに含むことができる。ホスフェートコンジュゲートは、in vivoの循環時間を増加させ、及び/又はナノ粒子の標的送達を増加させることができる。ホスフェートコンジュゲートは、例えば国際公開第2013033438号パンフレット又は米国特許出願公開第20130196948号明細書に記載されている方法によって作製することができる。LNP製剤はまた、例えば、米国特許出願公開第20130059360号明細書、米国特許出願公開第20130196948号明細書及び米国特許出願公開第20130072709号明細書に記載されているようなポリマーコンジュゲート(例えば、水可溶型コンジュゲート)を含むことができる。各参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0161】
LNP製剤は、対象におけるナノ粒子の送達を増強するためのコンジュゲートを含むことができる。さらに、コンジュゲートは、対象におけるナノ粒子の食作用クリアランスを阻害することができる。いくつかの実施形態では、コンジュゲートは、ヒト膜タンパク質CD47から設計された「自己」ペプチド(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Rodriguez et al,Science 2013339,971-975に記載の「自己」粒子)であり得る。Rodriguezらによって示されるように、自己ペプチドはナノ粒子のマクロファージ媒介性クリアランスを遅延させ、これによりナノ粒子の送達が増強された。
【0162】
LNP製剤は、炭水化物担体を含むことができる。非限定的な例として、炭水化物担体としては、限定されないが、無水物修飾フィトグリコーゲン又はグリコーゲン型材料、オクテニルスクシネートフィトグリコーゲン、フィトグリコーゲンβ-デキストリン、無水物修飾フィトグリコーゲンβ-デキストリン(例えば、参照によりその全体が組み込まれる国際公開第2012109121号パンフレット)を挙げることができる。
【0163】
LNP製剤は、粒子の送達を改善するために界面活性剤又はポリマーでコーティングすることができる。いくつかの実施形態では、LNPは、それだけに限らないが、その全体が参照により組み込まれる米国特許出願公開第20130183244号明細書に記載されているような、中性表面電荷を有するPEGコーティング及び/又はコーティングなどの親水性コーティングでコーティングすることができる。
【0164】
LNP製剤は、米国特許第8,241,670号明細書、及び米国特許第2013110028号明細書に記載されているように、脂質ナノ粒子が粘膜バリアに浸透することができるように、粒子の表面特性を変化させるように操作することができる。これらの各々は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。粘液を透過するように操作されたLNPは、ポリマー材料(すなわち、ポリマーコア)及び/又はポリマービタミンコンジュゲート及び/又はトリブロックコポリマーを含むことができる。ポリマー材料は、ポリアミン、ポリエーテル、ポリアミド、ポリエステル、ポリカルバメート、ポリ尿素、ポリカーボネート、ポリ(スチレン)、ポリイミド、ポリスルホン、ポリウレタン、ポリアセチレン、ポリエチレン、ポリエチレンイミン、ポリイソシアネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリアクリロニトリル、及びポリアリレートを含むことができるが、これらに限定されない。
【0165】
粘液を透過するように操作されたLNPはまた、表面改質剤、例えば、限定されないが、アニオン性タンパク質(例えば、ウシ血清アルブミン)、界面活性剤(例えば、カチオン性界面活性剤、例えばジメチルジオクタデシルアンモニウム臭化物)、糖類又は糖誘導体(例えば、シクロデキストリン)、核酸、ポリマー(例えば、ヘパリン、ポリエチレングリコール及びポロキサマー)、粘液溶解剤(例えば、N-アセチルシステイン、ヨモギ、ブロメライン、パパイン、クレロデンドラム、アセチルシステイン、ブロムヘキシン、カルボシステイン、エプラジノン、メスナ、アンブロキソール、ソブレロール、ドミドール、レトスチン、ステプロニン、チオプロニン、ゲルゾリン、チモシンb4ドルナーゼアルファ、ネルテネキシン、エルドステイン)及びrhDNaseを含む様々なDNaseを含み得る。いくつかの実施形態では、粘液透過性LNPは、粘膜透過性増強コーティングを含む低張性製剤であり得る。製剤は、それが送達される上皮に対して低張性であり得る。低張性製剤の非限定的な例は、例えば、国際公開第2013110028号パンフレットに見出すことができ、これは参照によりその全体が組み込まれる。
【0166】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の核酸は、制御放出及び/又は標的化送達のために製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「制御放出」は、治療結果をもたらすための特定の放出パターンに適合する薬学的組成物又は化合物放出プロファイルを指す。一実施形態では、核酸は、制御放出及び/又は標的化送達のために、本明細書に記載される及び/又は当技術分野で公知の送達剤にカプセル化することができる。本明細書で使用される場合、「カプセル化する」という用語は、封入する、包囲する、又は包み込むことを意味する。本発明の核酸の製剤に関するので、カプセル化は、実質的、完全又は部分的であり得る。「実質的にカプセル化される」という用語は、本発明の薬学的組成物又は化合物の少なくとも50、60、70、80、85、90、95、96、97、98、99超、又は99%超を送達剤の中に封入する、包囲する、又は包み込むことができることを意味する。「部分的にカプセル化」は、10、10、20、30、4050又はそれ未満の本発明の薬学的組成物又は化合物を送達剤の中に封入する、包囲する、又は包み込むことができるということを意味する。
【0167】
いくつかの実施形態では、核酸組成物は、持続放出のために製剤化することができる。本明細書で使用される場合、「持続放出」は、特定の期間にわたって放出速度に適合する薬学的組成物又は化合物を指す。期間は、数時間、数日、数週間、数ヶ月及び数年を含むことができるが、これらに限定されない。非限定的な例として、本明細書に記載の持続放出ナノ粒子組成物は、国際公開第2010075072号パンフレット、米国特許出願公開第20100216804号明細書、米国特許出願公開第20110217377号明細書、米国特許出願公開第20120201859号明細書及び米国特許出願公開第20130150295号明細書に開示されているように製剤化することができ、これらの各々は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、ナノ粒子組成物は、それぞれ参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2008121949号パンフレット、国際公開第2010005726号パンフレット、国際公開第2010005725号パンフレット、国際公開第2011084521号パンフレット、国際公開第2011084518号パンフレット、米国特許出願公開第20100069426号明細書、米国特許出願公開第20120004293号明細書及び米国特許出願公開第20100104655号明細書に記載されているものなど、標的特異的であるように製剤化することができる。
【0168】
投与
上述の治療剤及び組成物は、本明細書に記載の1つ以上の組成物を対象に投与することによって、それを必要とする対象のPTC関連疾患を治療する、それに対して保護する、及び/又はそれを予防するために使用することができる。
【0169】
そのような薬剤及び組成物は、特定の対象の年齢、性別、体重及び状態、並びに投与経路などの要因を考慮して、医学界の当業者に周知の投与量及び技術によって、適用量で投与することができる。組成物の用量は、1μg~10mg活性成分/kg体重/時間であり得、20μg~10mg成分/kg体重/時間であり得る。組成物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30又は31日ごとに投与することができる。有効な治療のための組成物用量の数は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10であり得る。
【0170】
薬剤又は組成物は、予防又は治療で投与することができる。治療用途では、薬剤又は組成物は、治療効果を誘発するのに十分な量で、それを必要とする対象に投与される。これを達成するのに十分な量を「治療有効用量」と定義する。この使用に有効な量は、例えば、投与される組成物レジメンの特定の組成物、投与様式、疾患の病期及び重症度、対象の一般的な健康状態、及び処方する医師の判断に依存する。
【0171】
薬剤又は組成物は、Donnellyら(Ann.Rev.Immunol.15:617-648(1997))、米国特許第5,580,859号明細書、米国特許第5,703,055号明細書及び米国特許第5,679,647号明細書に記載されているような当技術分野で周知の方法によって投与することができる。そのすべての内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。組成物のDNAは、例えばワクチンガンを使用して、個体に投与することができる粒子又はビーズに複合体化することができる。当業者は、生理的に許容され得る化合物を含む薬学的に許容される担体の選択が、例えば、発現ベクターの投与経路に依存することを知っているであろう。組成物は、様々な経路を介して送達され得る。典型的な送達経路としては、非経口投与、例えば、皮内、筋肉内又は皮下送達が挙げられる。他の経路としては、経口投与、鼻腔内及び膣内経路が挙げられる。特に組成物のDNAについては、組成物を個体の組織の間質腔に、送達することができる(米国特許第5,580,859号明細書及び米国特許第5,703,055号明細書、これらのすべての内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。組成物はまた、筋肉に投与することができ、又は皮内若しくは皮下注入を介して、又はイオン導入などによって経皮的に投与することができる。組成物の表皮投与も使用することができる。表皮投与は、表皮の最外層を機械的又は化学的に刺激して、刺激物に対する免疫応答を刺激することを含み得る(米国特許第5,679,647号明細書)。
【0172】
一実施形態では、組成物は、鼻腔を介した投与のために製剤化することができる。担体が固体である経鼻投与に適した製剤は、例えば約10~約500ミクロンの範囲の粒径を有する粗い粉末を含むことができ、これは嗅ぎタバコを摂取するように、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻腔経路を通して急速に吸入することによって。投与される。製剤は、鼻腔スプレー、点鼻薬、又はネブライザーによるエアロゾル投与によるものであり得る。製剤は、組成物の水溶液又は油性溶液を含むことができる。
【0173】
組成物は、懸濁液、シロップ剤又はエリキシル剤などの液体製剤であり得る。組成物はまた、非経口、皮下、皮内、筋肉内又は静脈内投与(例えば、注入可能投与)のための調製物、例えば滅菌懸濁液又はエマルジョンであり得る。
【0174】
組成物は、リポソーム、ミクロスフェア又は他のポリマーマトリックス(米国特許第5,703,055号明細書;Gregoriadis,Liposome Technology,Vols.Ito III(2nd ed.1993)、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる)に組み込むことができる。リポソームは、リン脂質又は他の脂質からなることができ、作製及び投与が比較的単純な非毒性の生理的に許容される代謝可能な担体であり得る。
【0175】
ACE-tRNA又はACE-tRNAをコードする核酸分子は、経口、非経口、舌下、経皮、直腸、経粘膜、局所、吸入による、頬側投与による、胸膜内、静脈内、動脈内、腹腔内、皮下、筋肉内、鼻腔内、髄腔内及び関節内又はそれらの組み合わせを含む異なる経路によって投与され得る。獣医学的使用のために、組成物は、通常の獣医学的実施に従って適切に許容される製剤として投与され得る。獣医は、特定の動物に最も適した投薬レジメン及び投与経路を容易に判定することができる。組成物は、従来のシリンジ、無針注入装置「マイクロプロジェクタイルによる銃の発射」、又はエレクトロポレーション(「EP」)、「流体力学的方法」、若しくは超音波などの他の物理的方法によって投与することができる。
【0176】
ACE-tRNA又はACE-tRNAをコードする核酸分子は、in vivoエレクトロポレーションを伴う又は伴わないDNA注入、リポソーム媒介性、ナノ粒子促進性、組換えアデノウイルス、組換えアデノウイルス関連ウイルス及び組換えワクシニアなどの組換えベクターを含むいくつかの周知の技術によって、哺乳動物に送達され得る。ACE-tRNA又はACE-tRNAをコードする核酸分子は、DNA注入及びin vivoエレクトロポレーションを介して送達され得る。
【0177】
エレクトロポレーション
エレクトロポレーションによる組成物の投与は、細胞膜に可逆的細孔を形成させるのに有効なエネルギーパルスを哺乳動物の所望の組織に送達するように構成することができるエレクトロポレーション装置を使用して、達成することができ、好ましくは、エネルギーパルスは、ユーザによって入力されたプリセット電流と同様の定電流である。エレクトロポレーション装置は、エレクトロポレーションの成分及び電極アセンブリ又はハンドルアセンブリを備え得る。エレクトロポレーションの成分は、コントローラ、電流波形発生器、インピーダンステスタ、波形ロガー、入力エレメント、状態報告エレメント、通信ポート、メモリ成分、電源、及び電源スイッチを含む、エレクトロポレーション装置の様々なエレメントの1つ又は複数を含み、組み込むことができる。エレクトロポレーションは、in vivoのエレクトロポレーション装置、例えば、プラスミドによる細胞のトランスフェクションを容易にするためのCELLECTRA EPシステム又はELGENエレクトロポレーターを使用して達成され得る。
【0178】
エレクトロポレーションの成分は、エレクトロポレーション装置の1つのエレメントとして機能することができ、他のエレメントは、エレクトロポレーションの成分と通ずる別個のエレメント(又は成分)である。エレクトロポレーションの成分は、エレクトロポレーションの成分とは別個のエレクトロポレーション装置のさらに他のエレメントと通ずることができるエレクトロポレーション装置の2つ以上のエレメントとして、機能することができる。1つの電気機械装置又は機械装置の一部として存在するエレクトロポレーション装置のエレメントは、1つの装置として、又は互いに通信する別個のエレメントとして機能することができるため、限定される必要がない。所望の組織において定電流を生成し、フィードバック機構を含む、エレクトロポレーションの成分は、エネルギーパルスを送達することができる。電極アセンブリは、空間配置の複数の電極を有する電極アレイを含むことができ、電極アセンブリは、エレクトロポレーション成分からエネルギーのパルスを受け取り、それを電極を通して所望の組織に送達する。複数の電極のうちの少なくとも1つは、エネルギーパルスの送達中は中性であり、所望の組織のインピーダンスを測定し、インピーダンスをエレクトロポレーションの成分に伝達する。フィードバック機構は、測定されたインピーダンスを受信することができ、エレクトロポレーションの成分によって送達されるエネルギーのパルスを調整して定電流を維持することができる。
【0179】
複数の電極は、分散するパターンでエネルギーのパルスを送達することができる。複数の電極は、プログラムされたシーケンスの下で電極の制御を介して非中央集権型パターンでエネルギーのパルスを送達することができ、プログラムされたシーケンスは、ユーザによってエレクトロポレーションの成分に入力される。プログラムされたシーケンスは、順番に送達される複数のパルスを含むことができ、複数のパルスの各パルスは、インピーダンスを測定する1つの中性電極を有する少なくとも2つの活性電極によって送達され、複数のパルスの後続のパルスは、インピーダンスを測定する1つの中性電極を有する少なくとも2つの活性電極のうちの異なる1つによって送達される。
【0180】
フィードバック機構は、ハードウェア又はソフトウェアのいずれかによって実行されてもよい。フィードバック機構は、アナログ閉ループ回路によって実行され得る。フィードバックは、50μβ、20μβ、10又は1μβごとに行われるが、好ましくはリアルタイムフィードバック又は瞬時(すなわち、応答時間を判定するために利用可能な技術によって判定されるときに実質的に瞬間的である)である。中性電極は、所望の組織におけるインピーダンスを測定し、インピーダンスをフィードバック機構に伝達することができ、フィードバック機構は、インピーダンスに応答し、エネルギーのパルスを調整して、定電流をプリセット電流と同様の値に維持する。フィードバック機構は、エネルギーパルスの送達中に連続的かつ瞬時に定電流を維持することができる。
【0181】
本発明の組成物の送達を容易にし得るエレクトロポレーション装置及びエレクトロポレーションの方法の例としては、米国特許第7245963号明細書及び米国特許出願公開第2005/0052630号明細書に記載されているものが挙げられ、その内容は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。当技術分野で公知の他のエレクトロポレーション装置及びエレクトロポレーションの方法も、組成物の送達を容易にするために使用することができる。例えば、米国特許第9452285号明細書、米国特許第7245963号明細書、米国特許第5273525号明細書、米国特許第6110161号明細書、米国特許第6958060号明細書、米国特許第6939862号明細書、米国特許第6697669号明細書、米国特許第7328064号明細書及び米国特許出願公開第2005/0052630号明細書を参照されたい。
【0182】
定義
核酸又はポリヌクレオチドは、DNA分子(例えば、cDNA又はゲノムDNA)、RNA分子(例えば、mRNA)、又はDNA若しくはRNAアナログを指す。DNA又はRNAアナログは、ヌクレオチドアナログから合成することができる。核酸分子は、一本鎖又は二本鎖であり得るが、好ましくは二本鎖DNAである。「単離された核酸」は、その構造が任意の天然に存在する核酸の構造又は天然に存在するゲノム核酸の任意の断片の構造と同一ではない核酸を指す。したがって、この用語は、例えば、(a)天然に存在するゲノムDNA分子の一部の配列を有するが、天然に存在する生物のゲノム中の分子のその部分に隣接するコード配列の両方に隣接しないDNA、(b)得られた分子がいずれかの天然に存在するベクター又はゲノムDNAと同一でないように、ベクター又は原核生物若しくは真核生物のゲノムDNAに組み込まれた核酸、(c)cDNA、ゲノム断片、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって産生される断片、又は制限断片などの別個の分子、及び(d)ハイブリッド遺伝子、すなわち融合タンパク質をコードする遺伝子の一部である組換えヌクレオチド配列を包含する。上記の核酸は、本発明のtRNAを発現させるために使用することができる。この目的のために、核酸を適切な調節配列に動作可能に連結して発現ベクターを生成することができる。
【0183】
ベクターは、それが連結されている別の核酸を輸送することができる核酸分子を指す。ベクターは、自律複製又は宿主DNAへの組み込みが可能であってもなくてもよい。ベクターの例は、プラスミド、コスミド又はウイルスベクターが挙げられる。ベクターは、宿主細胞における目的の核酸の発現に適した形態の核酸を含む。好ましくは、ベクターは、発現される核酸配列に動作可能に連結された1つ以上の調節配列を含む。
【0184】
「調節配列」には、プロモーター、エンハンサー及び他の発現制御エレメント(例えば、ポリアデニル化シグナル)が含まれる。調節配列には、ヌクレオチド配列の構成的発現を指示するもの、並びに組織特異的調節及び/又は誘導性配列が含まれる。発現ベクターの設計は、形質転換される宿主細胞の選択、所望のタンパク質又はRNAの発現レベルなどの因子に依存し得る。発現ベクターを宿主細胞に導入して、目的のRNA又はポリペプチドを産生することができる。プロモーターは、RNAポリメラーゼがDNAに結合してRNA合成を開始するように指示するDNA配列として定義される。強力なプロモーターは、RNAを高い頻度で開始させるものである。
【0185】
「プロモーター」は、ポリヌクレオチドの転写を開始及び調節するヌクレオチド配列である。プロモーターには、誘導性プロモーター(プロモーターに動作可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現は、被分析物、補助因子、制御タンパク質などによって誘導される)、抑制性プロモーター(プロモーターに動作可能に連結されたポリヌクレオチド配列の発現は、分析物、補因子、制御タンパク質などによって抑制される)及び構成的プロモーターが含まれ得る。「プロモーター」又は「制御エレメント」という用語は、完全な長さのプロモーター領域及びこれらの領域の機能的(例えば、転写又は翻訳を制御する)セグメントを含むことが意図される。
【0186】
「動作可能に連結された」は、そのように記載された成分がそれらの通常の機能を実行するように構成されるエレメントの配置を指す。したがって、核酸配列に動作可能に連結された所与のプロモーターは、適切な酵素が存在する場合、その配列の発現を行うことができる。プロモーターは、その発現を指示するように機能する限り、配列と近接する必要はない。したがって、例えば、介在する翻訳されていないが転写された配列がプロモーター配列と核酸配列との間に存在することができ、プロモーター配列は依然としてコード配列に「動作可能に連結された」と考えることができる。したがって、「動作可能に連結された」という用語は、転写複合体によるプロモーターエレメントの認識時に目的のDNA配列の転写の開始を可能にするプロモーターエレメント及び目的のDNA配列の任意の間隔又は配向を包含することを意図している。
【0187】
本明細書で使用される「発現カセット」は、適切な宿主細胞において特定のヌクレオチド配列の発現を指示することができる核酸配列を意味し、これは、終結シグナルに動作可能に連結され得る目的のヌクレオチド配列に動作可能に連結されたプロモーターを含み得る。それはまた、ヌクレオチド配列の適切な翻訳に必要な配列を含み得る。コード化領域は、通常、目的のRNA又はタンパク質をコードする。目的のヌクレオチド配列を含む発現カセットはキメラであり得る。発現カセットはまた、天然に存在するが、異種発現に有用な組換え形態で得られたものであってもよい。発現カセットにおけるヌクレオチド配列の発現は、宿主細胞が何らかの特定の刺激に曝露された場合にのみ転写を開始する構成的プロモーター又は調節可能なプロモーターの制御下にあり得る。多細胞生物の場合、プロモーターはまた、特定の組織若しくは器官又は発達段階に特異的であり得る。特定の実施形態では、プロモーターは、PGK、CMV、RSV、HI又はU6プロモーター(Pol II及びPol IIIプロモーター)である。
【0188】
「核酸断片」は、所与の核酸分子の一部である。ポリヌクレオチド配列の「実質的な同一性」という用語は、ポリヌクレオチドが、標準的なパラメータを使用して記載されるアラインメントプログラムの1つを使用する参照配列と比較して、少なくとも70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、若しくは79%、又は少なくとも80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、若しくは89%、又は少なくとも90%、91%、92%、93%、若しくは94%)、又はさらには少なくとも95%、96%、97%、98%、若しくは99%の配列同一性を有する配列を含むことを意味する。
【0189】
本明細書で使用される場合、「ミニベクター」は、複製開始点及び抗生物質選択遺伝子を欠き、約100bpから約5kbpまでのサイズを有する、ミニサイズ及び環状DNAベクターシステム、例えば二本鎖環状DNA(例えば、ミニサークル)又は閉じた直鎖DNA分子(例えば、CEDT)を指す。それは、例えば、組換え部位の外側のプラスミド配列を排除するための親プラスミドの部位特異的組換えによって得ることができる。それは、例えば、プロモーター及び目的の核酸配列を含む、導入遺伝子発現カセットのみを有する核酸分子を含み、核酸配列は、例えば、PTCを抑制するためのACE-tRNAであり得、重要なことに、細菌起源の配列はない。
【0190】
「対象」という用語は、ヒト及び非ヒト動物を含む。治療のための好ましい対象はヒトである。本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、対象が任意の形態の治療を受けているか、又は現在経験しているかどうかに関係なく、交換可能に使用される。本明細書で使用される場合、「対象(1人及び複数)」という用語は、限定するものではないが、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラット及びマウス、非ヒト霊長類(例えば、カニクイザル、チンパンジーなどのサル)及びヒト)を含む任意の脊椎動物を指し得る。一実施形態では、対象はヒトである。別の実施形態では、対象は、疾患モデルとして適した実験的な非ヒト動物又は動物である。
【0191】
PTC又はナンセンス突然変異、PTC関連疾患、又はPTC関連疾患に関連する疾患又は障害とは、1つ又は複数のナンセンス突然変異が、単一ヌクレオチド置換によってアミノ酸コドンをPTCに変化させ、その結果、欠損切断型タンパク質が生じることによって引き起こされる、又は特徴付けられる任意の状態のことを指す。
【0192】
本明細書で使用される場合、「治療すること」又は「治療」は、障害、障害の症状、障害に続発する疾患状態、又は障害に対する素因を治癒、緩和、軽減、矯正、発症の遅延、予防、又は改善する目的で、障害を有するか、又は障害を発症するリスクがある対象に化合物又は薬剤を投与することを指す。「予防する」、「予防すること」、「予防」、「予防処置」などの用語は、障害又は状態を有していないが、障害又は状態を発症するリスクがあるか又は発症しやすい対象において、障害又は状態を発症する確率を低下させることを指す。「改善」は、一般に、疾患又は障害の徴候又は症状の数又は重症度の低減を指す。
【0193】
「予防する」、「予防すること」、「予防」という用語は、一般に、対象における疾患又は障害の発症の減少を指す。予防は、完全であってもよく、例えば、対象における疾患又は障害の完全な欠如であってもよい。予防はまた部分的であってもよく、対象における疾患又は障害の発生が、本発明の実施形態がなければ生じたであろうものよりも少なくなるようにする。疾患を「予防すること」は、一般に、疾患の完全な発症を阻害することを指す。
【0194】
「薬学的組成物」という用語は、活性剤と不活性又は活性の担体との組み合わせを指し、組成物をin vivo又はエクスビボでの診断又は治療使用に特に適したものにする。「薬学的に許容される担体」は、対象に投与された後に、又は対象に投与されたとたん、望ましくない生理的効果を引き起こしはしない。薬学的組成物の担体は、活性成分と適合性があり、それを安定化することができるという意味でも「許容可能」でなければならない。1つ又は複数の可溶化剤を、活性化合物の送達のための薬学的担体として利用することができる。薬学的に許容される担体の例としては、剤形として使用可能な組成物を得るための生体適合性ビヒクル、アジュバント、添加剤及び希釈剤が挙げられるが、これらに限定されない。他の担体としては、コロイド状酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、セルロース、ラウリル硫酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0195】
「約」という用語は、一般に、示された数の±10%を指す。例えば、「約10%」は9%~11%の範囲を示すことができ、「約1」は0.9~1.1を意味することができる。「約」の他の意味は、四捨五入などの文脈から明らかであり得、例えば「約1」はまた、0.5から1.4を意味し得る。
【0196】
本明細書における値の範囲の列挙は、単に、その範囲内に入る各々の別個の値を個別に参照する簡略方法として役立つことを意図している。本明細書に別途指示がない限り、各々の個々の値は、本明細書に個別に列挙されているかのように本明細書に組み込まれる。
【実施例
【0197】
実施例1 ACE-tRNAプラットフォーム
新規ハイスループットクローニング(HTC)及びスクリーニング(HTS)法を用いて、500を超えるサプレッサーtRNA(ACE-tRNA)のライブラリーが最近開発された。ライブラリーでは、ヒトtRNA遺伝子のアンチコドンを、疾患を引き起こすPTCコドン(UAG、UAA及びUGA)を認識するように操作した。ACE-tRNAプラットフォームは、翻訳されたコドンからの1つのヌクレオチド変化の結果生じるすべての可能なPTCを標的とした(tRNAArg UGA、tRNAGln UAA、tRNAGln UAG、tRNATrp UGA、tRNATrp UAG、tRNAGlu UAA、tRNAGlu UAG、tRNACys UGA、tRNATyr UAG、tRNATyr UAA、tRNALeu UGA、tRNALeu UAG、tRNALeu UAA、tRNALys UAG、tRNALys UGA、tRNASer UGA、tRNASer UAG、andtRNASer UAA)。ACE-tRNAGly UGA(例えば、配列番号5)はUGAコドンに特異的であり、これは、ACE-tRNAが3つすべての終止コドンを一般的に標的とする分子(例えば、小分子)よりもin vivoでオフターゲット効果が少ないという前提を裏付けている。さらに、ACE-tRNAGly UGA(例えば、配列番号5)は、HEK293細胞における48時間のインキュベーション後にAMG G418及びゲンタマイシンよりも有意に優れたことが見出された。
【0198】
スクリーニングで同定されたACE-tRNAがアミノアシル-tRNAシンセターゼによる認識を犠牲にして官能化されているかどうかを確かめるためにアッセイを行った。具体的には、最も効果的であるためには、ACE-tRNAは正しいアミノ酸(同族アミノ酸)でPTCを抑制しなければならない。高分解能質量分析を使用して、ACE-tRNAGly UGA及びtRNATrp UGAの両方の同族アミノ酸が、高い忠実度でコードされ、シームレスなPTC抑制をもたらすことが確認された。
【0199】
「実際の終止」のACE-tRNA依存的抑制の効率を判定するためにアッセイがまた行われた。その目的のために、ACE-tRNAGln UAA、ACE-tRNAGlu UAG、ACE-tRNAArg UGA、ACE-tRNAGly UGA及びACE-tRNATrp UGA(例えば、配列番号79及び94によってコードされるもの、並びに配列番号8、5及び1を有するもの)をコードするcDNAプラスミドをHEK293細胞にトランスフェクトし、48時間後、細胞RNAをRibo-Seqに供して、3’非翻訳領域(UTR)のリボソーム占有率が、対照と比較して、ACE-tRNAの存在下でより高いものであるかどうかを判定した(図2)。図2Aは、UAA(赤色)、UAG(緑色)及びUGA(青色)を有する個々の転写物(ドット)のmRNA 3’UTRリボソーム占有率の倍率変化を示す。リボソームの3’UTR占有量は名目上の量であり、ACE-tRNAが「実際の」終止を有意に抑制しなかったことを示した。図2Bに示されるRibo-Seqの結果により、ACE-tRNAの「真の」終止抑制活性の結果としての終止コドンに関連するすべての翻訳されたRNA転写産物上の3’UTRリボソーム占有の平均位置及び大きさの視覚化が可能になった。「鋸歯状」パターンが、個々のコドンリボソーム占有率を表した。ACE-tRNAArg UGAによる終止コドンの後に観察された連続した鋸歯状パターンは、フレーム内リードスルーを示したが、軽微であった。ACE-tRNAによる翻訳終結の平均的抑制が、HEK293細胞におけるACE-tRNAのトランスフェクション後に最小であることは有望である。ACE-tRNAのオフターゲット効果は、トランスジェニック16HBE14o-細胞及びマウスにおける持続的発現後に調べられている。
【0200】
実施例2 ミニDNAベクターの作製
ACE-tRNAが治療送達物として小型DNAベクターに効率的にコードされ得るかどうかを調べるためにアッセイを行った。
【0201】
本発明者らはまず、どの程度小さいMCがACE-tRNAを効率的に発現するかを判定することに着手した。ACE-tRNA発現カセットは125bpsであったため、理論的には生成可能な最小の発現ベクターであった。しかし、これまでにない状況では、転写因子の立体的制約及びDNAの高度な屈曲がACE-tRNAの発現を阻害し得る可能性が考慮された。さらに、300bps未満のそのような小型のMCの生成は、DNA二重らせんの固有の剛性又は堅さによって妨げられる。直鎖DNAのライゲーション依存性の環状化は、反応のDNAの濃度が低く(ナノモル濃度)、治療量の生成を妨げない限り、主に直鎖コンカテマーを含有する生成物をもたらす。in vitroの産生のためにこれらの問題を回避するための操作は、目的のDNA配列を有するMCの生成を妨げ、労働集約的なプロセス及び許容できない非効率性の両方をもたらす。250bps未満の大腸菌におけるMCの生成もまた、低い組換え効率を付与するDNAの剛性のために問題があると報告されている。上に列挙した技術的困難性、及びほとんどの発現カセットが典型的には3kbよりも大きいという事実のために、数キロベースよりも小さいMCを使用する研究はほとんどなく、本発明者らの知る限りでは、383及び400bpsが最小の公開された発現ミニベクターであった。
【0202】
転写因子A、ミトコンドリアとしても知られる組換えミトコンドリアDNA屈曲タンパク質、ARS結合因子2タンパク質(Abf2p)を使用して(TFAM,Thibault,T.et al.,Nucleic Acids Res 45,e26-e26,doi:10.1093/nar/gkw1034(2017))、本発明者らは、in vitroでミリグラム量で200bpsという少量のMCの産生を合理化した(図3の方法I)。ここで、産生量は、約1.5mgを生成するように容易にスケーリングすることができ、本発明者らの研究室では、大腸菌における組換えDNAリガーゼ、DNAポリメラーゼ(PHUSION)、T5エキソヌクレアーゼ及びTFAMタンパク質の生成及び精製によって生産コストが有意に最小化された。この方法を使用して、本発明者らは、サイズが200~1000bpのMCを生成した(図3、方法I、底部のゲル)。以前に公開された方法(Kay,M.A.,et al.,Nat Biotechnol 28,1287-1289,doi:10.1038/nbt.1708(2010))と同様に、φC31依存性組換えを利用する社内で生成されたプラスミド(図3、方法II)を使用して、大腸菌で500bp以上のMCを生成した。
【0203】
上記の方法を使用して、異なるサイズの例示的なArgTGA(例えば、配列番号8をコードする)ミニサークルライゲーション産物を作製した。サイズには、約1000bp、900bp、850bp、800bp、700bp、600bp、50bp、400bp、300bp及び200bpが含まれた。図12A図12B図13E及び図13Fに示すように、これらのArgTGAミニサークルのライゲーション産物及びPCR産物は、エチジウムブロマイドを含有する1.5%アガロースゲルで分離及び可視化することができた。ArgTGAミニサークルのライゲーション産物及び対応するPCR産物をT5エキソヌクレアーゼと共にインキュベートし、エチジウムブロマイドを含有するアガロースゲル上で分離した。ミニサークルライゲーションにおけるエキソヌクレアーゼ耐性産物の存在は、共有結合的に閉じたミニサークル産物の産生を示した(図12C図12D図13E図13F)。
【0204】
MC及びCEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化又はサイズ排除クロマトグラフィー(図3の方法I、II、III及びIV、底部のゲル)の使用によって親プラスミド骨格から効率的に精製することができる。これらの2つの方法を使用すると、本発明者らは、このプロジェクトに妥当なコストで(500bp未満のMCの約1.5mgsに対して約400ドル、500bp以上のMCの100mgに対して約580ドル)、生成したいMC ACE-tRNA配列に迅速に対応することができる。
【0205】
CEDTの産生がいくつかの方法で達成され得る場合(Wong,S.et al.J Vis Exp,53177-53177,doi:10.3791/53177(2016),Schakowski,F.et al.In vivo(Athens,Greece)21,17-23(2007),and Heinrich,J.et al.,Journal of molecular medicine(Berlin,Germany)80,648-654,doi:10.1007/s00109-002-0362-2(2002))、本発明者らは、大腸菌由来のエンドトキシン汚染を減少させるために、組換え原核生物テロメラーゼ、バクテリオファージN15のプロテロメラーゼTelNを使用するin vitroの手法を追求した。テロメア認識部位telRL(56bp)に作用して、プロテロメラーゼは環状プラスミドDNAを効率的な一段階酵素反応で直鎖共有結合的に閉じたダンベル形状の分子に変換した。目的の遺伝子に隣接する発現プラスミドに2つのTelRL部位を挿入すると、それを切断し、TelN酵素(5’末端を3’末端にライゲートする)によって連結して、目的の遺伝子をコードする直鎖の閉端ミニDNAスレッドを得た。この直接的な方法は、図3の方法IIIに概説されている。重要なことに、in vitroの方法I及びIVを使用して、大量のエンドトキシンを含まないMC及びCEDTをそれぞれ精製することが可能である(Butash,K.A.,et al.,BioTechniques 29,610-614,616,618-619,doi:10.2144/00293 rr 04(2000))。方法IIIを使用して、本発明者らは、このプロジェクトに妥当なコストで様々なACE-tRNA配列のCEDTを迅速に生成することができた(約1.5mgsのCEDTで約400ドル、100mgのCEDTで約1000ドル)。
【0206】
図13A図13B図13C及び図13Dに示すのは、200bpのCEDT(2つの200bpの連続するArgTGAのCEDTセグメントを含有する634bpのPCR産物を使用)、400bpのCEDT(400bpのCEDTセグメントを含有する570bpのPCR産物を使用)、900bpのCEDT(1×ArgTGAをコードする1065bpのPCR産物を使用)及び900bpのCEDT(4×ArgTGAをコードする1065bpのPCR産物を使用)を含む4つの例示的なCEDTの産生である。対応するPCR産物のそれぞれを陰イオン交換クロマトグラフィー(Machery Nagelキット)によって精製した後、上記のようにTelNで消化した。隣接する2つのTelRL部位がTelN酵素によって連結されると、4つのCEDTは、それぞれ260bp、456bp、956bp、及び956bpになる。図に示されるように、CEDT産物は、T5エキソヌクレアーゼ消化に対する耐性を示し、これは、TelNによる共有結合的に閉じた末端の産生を示す。しかし、制限酵素Bsu36Iによるエンドヌクレアーゼ切断後、各CEDT産物はT5エキソヌクレアーゼによる分解を受けやすかった。
【0207】
実施例3 ACE-tRNAをコードするMC及びCEDTによるPTC抑制の有効性。
上記の実施例に記載されるMC及びCEDT DNAベクターを、細胞の培養及びin vivoにおけるPTCの抑制におけるそれらの有効性を検証するために調べた。手短に言えば、PTCレポーターcmv-NLuc-TGAを安定的に発現したHEK293細胞への200~1000bpのACE-tRNAArgのMCの等量(配列番号8、図4A、白色バー)のトランスフェクションは、ACE-tRNAArgのプラスミドベースの発現に匹敵する強固なPTC抑制をもたらした(図4A、灰色のバー)。ここで、MCがACE-tRNAの強固な発現及びその後のPTC抑制を助けることが初めて示された。本発明者らの知る限り、これらは、報告された最小の機能的発現のMC(<383bps)に関する結果であった。
【0208】
次に、ACE-tRNAArg(配列番号8)をコードする700及び400bpのCEDTベクターが、PTCレポーターcmv-NLuc-UGA(図4B)を安定的に発現する16HBE14o-細胞にトランスフェクトされた。MCとは異なり、400及び700bpのACE-tRNAArgのCEDTは強力なPTC抑制を助けた(図4B、白色バー)が、それらはプラスミドに基づくACE-tRNAArg UGA図4B、灰色のバー)よりも有効性が低く、有意なサイズの効果を示し、400bpのCEDTは700bpのCEDTの半分程度PTC抑制に有効であった。ベクターのサイズのこの明らかな効果がACE-tRNAの転写の効率に起因するのか、又はこの差異がトランスフェクションに基づく送達による細胞侵入効率の差に起因するのかは不明である。異なるトポロジー及びサイズのDNAは、異なる担体による送達効率に有意に影響を及ぼすことが報告されていた。
【0209】
本明細書に概説されるように、200~1000bpのMC及びCEDTのPTCレポーター16HBE14o-細胞へのエレクトロポレーションに基づく送達を行うことによって、細胞進入に対するDNAのサイズの影響に対処するために、さらなるアッセイを行う。エレクトロポレーションでは、DNAベクターのサイズの減少が細胞侵入を促進すると予想され、したがって、200~500bpのCEDTによる抑制活性のいずれかの観察された減少は、DNAトポロジーによって付与される非効率的な転写によって説明される可能性が高い。
【0210】
実施例4 ACE-tRNAを用いた内因性のCFTR PTCの救済
以前の研究の大部分は、cDNAからコードされるPTCを救済するためにサプレッサーtRNAを使用していた。有益ではあるが、これらの研究は、肺上皮におけるCFTRの低い内因性の転写、mRNAの転写後プロセシング/調節及びナンセンスコドン介在的分解(NMD)など、in vivoで遭遇する障害のすべてを提示したわけではなかった。この実施例では、ヒト細気管支上皮細胞株である16HBE14o-細胞を使用して、内因性のゲノムランドスケープ内のACE-tRNAs PTC抑制活性を判定した。また、位置p.G542X-、p.R1162X-及びp.W1282X-CFTRにPTCを引き起こすCFを担持するように改変されたCRISPR/Cas9である変異体16HBE14o-細胞も使用した。細胞を使用して、CFTR及び気道上皮のバイオロジー(Cozens,A.L.et al.American journal of respiratory cell andmolecular biology10,38-47(1994))を研究した。
【0211】
手短に言えば、WT 16HBE14o-細胞が、トランスフェクション効率を判定するために、TRANSWELLインサートでGFP発現プラスミドによりトランスフェクトされた。36時間後、細胞を画像化し、トランスフェクション効率が10%未満であることが見出された(図5A)。低いトランスフェクション効率にもかかわらず、使用Ussingチャンバー測定を行った。
【0212】
最初に、R1162X-CFTR HBE14o細胞を、CMV-hCFTRプラスミドでTranswellインサートにトランスフェクトして、hCFTRの機能的救済の「最良のシナリオ」を判定した。発現が強力なpol IIプロモーターによって駆動されるにもかかわらず、hCFTR cDNAトランスフェクションは、トランスフェクションの6日後に、たった約4%のCFTRチャネルの機能的救済をもたらした(図5G)。次に、ACE-tRNAArg(配列番号8)の500bpのCEDTを、同じ方法論を使用してR1162X-CFTR HBE14o細胞に送達した。注目すべきことに、ACE-tRNAArg500bpのCEDTは、CFTR機能の約3%の救済をもたらし(図5G)、CMV-hCFTR cDNAによる全遺伝子置換の値と同様の値であった。
【0213】
図5B図5C及び図5Dにも示されているように、p.R1162X-CFTR16HBE14o-細胞へのACE-tRNAArg UGA500bpのCEDTのトランスフェクションの6日後において、本発明者らは、驚くべきことに、フォルスコリン及びIBMXの添加(図5B及びC、WTの約3%)後におけるCFTR機能の緩やかな救済(図5B、青線)、並びに空のベクター(図5B、C&D、「R1162X+空」)のトランスフェクション後における測定可能なCFTR機能を伴わないInh172(図8B及びD、WTの3%)による阻害を測定した。CFTR機能のわずか10~15%の救済で、肺におけるCF症状を逆転させるのに十分であると推定されていることに留意すべきである(Amaral,M.D.Pediatric Pulmonology 39,479-491,doi:10.1002/ppul.20168(2005))。
【0214】
本発明者らは次に、ACE-tRNA転写物のトランスフェクション後にACE-tRNAがNMDを阻害するかどうかを調べた。興味深いことに、プラスチックにトランスフェクションを行うことにより、効率がはるかに高いことが分かった(約30%、図5E)。qPCRを、p.G542X-(図5F、左から2番目のバー)、p.R1162X-(図5F、左から4番目、5番目、6番目)p.R1162X-及びp.W1282X-CFTR(図5F、右から4つのバー)から単離されたmRNAに対して行った。空のDNAベクター又はACE-tRNAをコードするDNAベクターのトランスフェクションの2日後の16HBE14o-細胞。CFTRmRNA発現が有意に減少した(WTの25%未満)ことが見出された。4×ACE-tRNAGly UGA(配列番号5、図5F、左から3番目のバー)及び4×ACE-tRNAArg UGA図5F、水平線を有する左から5番目のバー)プラスミドのトランスフェクションは、定常状態のCFTRmRNAレベルの有意な増加をもたらし、それぞれ約10%及び約15%であった。さらに、p.R1162X-CFTR16HBE14o-細胞に対するACE-tRNAArg UGA500bpのCEDT及び800bpのMC(図5F、左から6番目のバー、7番目のバー)の送達は、ACE-tRNAArg UGAプラスミドと同様の定常状態のCFTRmRNAの増加(約15%)をもたらしたことが見出された。
【0215】
p.W1282X-CFTR16HBE14o-細胞における4×ACE-tRNATrp UGA(配列番号1)プラスミドのトランスフェクションは、ACE-tRNATrp UGAがライブラリーの最も機能していないファミリーであったので、CFTRmRNAの定常状態の発現に影響を及ぼさなかった(図5F、右から3本目の線付きバー)。Ussingチャンバー記録(Xue,X.et al.,Humanmolecular genetics 26,3116-3129,doi:10.1093/hmg/ddx196(2017))について測定されたように、CFTR p.W1282(p.W1282L)におけるロイシンが、約80%のWT CFTR機能を与えるということが以前に示されていた。本発明者らのACE-tRNAライブラリーは本質的にアラカートライブラリーであるため、最良の1×ACE-tRNALeu UGA(配列番号4)プラスミドを選択し、それらをp.W1282X-CFTR16HBE 24o細胞にトランスフェクトすることができ、これにより、CFTR mRNAの定常状態発現が約17%有意に増加した(図5F、右から2番目の縦線付きバー)。
【0216】
図5に示されている結果は、ACE-tRNAが内因性のCFTR mRNAのNMDを強力に阻害し、CFがPTCを引き起こすことを初めて実証したが、これは、先駆けとなるラウンドの翻訳を促進することによるものである可能性が最も高い。さらに、Transwellではトランスフェクション効率がかなり低いにもかかわらず、CEDTから発現されたACE-tRNAは、p.R1162X-CFTR16HBE14o-細胞において、内因性のCFTRの機能的レスキューを促進した。
【0217】
実施例5 in vivoでのPTCのACE-tRNA依存的リードスルー。
この実施例では、in vivoでのPTCのACE-tRNA依存的リードスルーを調べるためにアッセイを行った。
【0218】
最初に、CMV-GFPをコードするcDNAプラスミドを、吸引後に電場を使用してマウスの肺に送達し、3日後に蛍光性顕微鏡法(図6A)によって評価した。GFP発現の定量は、遺伝子導入のエレクトロポレーション法が非常に効率的であり、すべての細胞型において肺の細胞の33.2%±3.5%(複数のマウスからの複数の切片で18から52%)で発現が観察されることを示した。重要なことに、GFP分布は、実質と比較して気道で優勢であるように見えた(図6A、左挿入図)。
【0219】
次いで、効率的な送達がPTC抑制レポータープラスミドpNanoLuc-UGAとACE-tRNAをコードするベクターとの同時送達によって達成され得るかどうかを判定するためにアッセイを行った。対照マウスにPTCレポーターpNLuc-UGAプラスミドを投与して擬似PTCリードスルーを測定した。エレクトロポレーションの2日後、肺を解剖し、生理食塩水を灌流し、ビーズビーター装置内の溶解バッファー(PROMEGA)でホモジナイズした。溶解物を高速で回転させ、プレートリーダーを使用して上清をNLuc活性について分析した。ACE-tRNAベクターの非存在下では、有意な発光は測定されなかった(図6B、左から1番目のバー)。ACE-tRNAArg(配列番号8)プラスミド(図6B、左から2番目のバー)、500bpのACE-tRNAArgのCEDT(図6B、中央のバー)、800bpのACE-tRNALeu(配列番号4)MC(図6B、右から2番目のバー)及び800bpのACE-tRNAArgのMC(図6B、右から1番目のバー)が、in vivoでマウスの肺においてNLuc-PTC救済を助けることが見出された。これらの結果は、(i)p.G542X-CFTR及びp.W1282X-CFTRのマウスの気道上皮におけるプラスミド、MC及びCEDTSをコードするACE-tRNAによるナンセンス抑制の有効性及び持続性、及び(ii)肺への送達後のMC及びCEDTにコードされるACE-tRNAの効率及び持続性の原理の証明をもたらす。
【0220】
実施例6 TELSの同定
この実施例は、TELSを同定してtRNA5’フランキング配列からのACE-tRNA発現を増強するためのアッセイを記載する。Lowe et al.,Nucleic Acids Res 25,955-964,doi:10.1093/nar/25.5.955(1997)に記載されている416個のtRNA遺伝子のうちの1つ以上などのtRNA遺伝子由来のtRNA5’フランキング配列(約1kb)を使用することができる。
【0221】
哺乳動物細胞への送達後に発光を使用してPTC抑制のハイスループットクローニング(HTC)及び定量的ハイスループットスクリーニング(HTS)の両方を助けるオールインワンcDNAプラスミドに、各配列をクローニングする(図7B)。1kbの5’フランキング配列を、gBlocks(Integrated DNA Technologies)として、GOLDEN GATEクローニングを使用して96ウェル形式でHTC部位にクローニングし、ccdBネガティブ選択と対にして、約100%のクローニング効率を得る。すべてのクローンをサンガー配列決定によって確認する。TEL配列をACE-tRNAArg UGA-(配列番号8、図7B)のすぐの5’側にクローニングし、NLuc-UGA抑制効率を、プレートリーダーを用いて96ウェル様式で読み取ると、PTC抑制の増加はACE-tRNAArg UGAの発現の増加を示す。最初のスクリーニングが完了した後、やはりgBlock配列をクローニングすることによって、上位10個の1kb配列を250bp配列に分割して転写増強の起源を同定する。ACE-tRNAの転写を増強又は阻害する1kbリーダー配列を、多数の開発されたソフトウェアツール(Sharov,A.A.&Ko,M.S.H.DNA Research16,261-273,doi:10.1093/dnares/dsp 014(2009))106を用いて配列モチーフについて分析する。1つ又は複数のTELSは、ACE-tRNAの発現を数倍増強して、あまり効率的でない送達を可能にし、強力なPTC抑制を維持することができると予想される。また、この研究からの結果から、tRNA転写の調節に対する洞察を得る。
【0222】
実施例7 DTSの同定
この実施例は、ミニベクター核局在化を駆動するDTSを同定するためのアッセイを記載する。
【0223】
プラスミドを非分裂細胞の核に標的化するいくつかのDNA配列が同定されている。例えば、Dean,D.A.Exp.Cell Res.230,293-302(1997)、Dean,D.A.,et al.,Exp.Cell Res.253,713-722(1999)、Vacik,J.,et al.,Gene Therapy 6,1006-1014(1999)、Young,J.L.,et al.,Mol.Biol.Cell 10S,443a(1999)、Langle-Rouault,F..J Virol 72,6181-6185(1998)、Mesika,A.,et al.,Mol Ther 3,653-657.(2001)、Degiulio,J.V.,et al.,Gene Ther,doi:gt2009166 [pii] 10.1038/gt.2009.166(2010)、Sacramento,C.B.,et al.,Brazilian journal of medical and biological research 43,722-727(2010)、及びCramer,F.et al.,Cancer Gene Ther 19,675-683,doi:10.1038/cgt.2012.54(2012)を参照されたい。これらの配列に共通する特徴は、それらが転写因子の結合部位を含むことである。興味深いことに、SV40エンハンサーは、核局在化配列(NLS)を含有する>10の遍在的に発現された転写因子の結合のために、すべての細胞型においてDTSとして作用する。典型的な転写因子は、核内に輸送され、その調節DNA標的配列に結合し、転写を活性化又は抑制する。しかし、転写因子結合部位を含有するDNAが細胞質に存在する場合、細胞質転写因子は、核取り込み前にこの部位に結合し(図8)、DNA-タンパク質複合体を核内に転位させ得る。
【0224】
本発明者らは、60を超える強力な一般的及び細胞特異的プロモーターをスクリーニングし、7つのDTSを見出した。これらのうち、2つは遍在的に機能するが、5つは細胞のサブセットで発現される特異的転写因子に結合する。発現プラスミドへのDTSの組み込みは、微量注入及びトランスフェクトされた非分裂細胞における遺伝子発現を増加させ、本発明にとって重要なことは、プラスミドの核標的化及びその後のin vivoでの遺伝子発現を増加させるように作用することが見出された。ここで、本発明者らは、ACE-tRNAをコードするミニベクター親pUC57プラスミドが、細胞質マイクロインジェクション後に、非分裂細胞の核に輸送されないことを示した。プラスミド核局在化及びその後のACE-tRNAの発現を改善するために、プラスミドにSV40 DTSを含めることができる。
【0225】
ACE-tRNAミニベクターの送達、発現、及び最終的にはナンセンス抑制を改善するために、核標的化においてSV40 DTSよりも効果的な、新しいDTSを同定するためのスクリーニングを行うこともできる。すべての細胞のタイプにおいて作用するDTSを同定することが好ましいので、遍在的に発現されるプロモーターをスクリーニングすることができる。マイクロアレイ、RNAseq及び単一細胞シーケンシングによって同定されたハウスキーピング遺伝子の多数のデータベースが、例えば、Curina,A.et al.,Genes Dev 31,399-412,doi:10.1101/gad.293134.116(2017)、Eisenberg,E.&Levanon,E.Y.Trends Genet 19,362-365,doi:10.1016/S0168-9525(03)00140-9(2003)、及びEisenberg,E.&Levanon,E.Y.Trends Genet 29,569-574,doi:10.1016/j.tig.2013.05.010(2013)において公開されてきた。
【0226】
上位20のハウスキーピング遺伝子のプロモーター配列は、公開された配列又は生物情報学的分析及びDBTSSデータセット(dbtss.hgc.jp)からの各プロモーターの転写開始部位の同定に基づいて同定することができる。これらのプロモーターは、典型的には500~2000bpのサイズの範囲であり、CMVプロモーター由来のGFPを発現するレポータープラスミド(DTSとして機能しない)に、ヒトゲノムDNAからPCRによってクローニングすることができる。このプラスミドはまた、三重鎖形成ペプチド核酸(PNA)のための結合部位を担持して、DNAの蛍光性標識を可能にすることができる。Cy3標識PNAをプラスミドのこの部位にハイブリダイズさせることによって、高い量子収率の蛍光性標識プラスミドを生成して、核取り込みをリアルタイムで追跡することができる(Gasiorowski,J.Z.&Dean,D.Mol Ther12,460-467(2005))。
【0227】
プラスミドをCy3-PNAで直接標識する代替的な手法として、蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)を行って、注入されたDNAを可視化することもできる。DTS候補プラスミドを、微量注入されたA549肺上皮細胞において30分~8時間にわたって核取り込み活性について試験することができる(Dean,D.A.Exp.Cell Res.230,293-302(1997),Dean,D.A.,et al.,Exp.Cell Res.253,713-722(1999),and Vacik,J.,et al.,Gene Therapy 6,1006-1014(1999))。本発明者らは、SV40配列が30分以内にプラスミドの核内取り込みを媒介することを見出したが、SMGAプロモーターは、プラスミドが平滑筋細胞の核に局在するのに4時間を必要とする。この手法は、それらの核取り込み速度に基づいてSV40 DTSに対して配列をランク付けすることを可能にすることができる。DTSを含まないpUC57プラスミドの陰性対照及びpUC57-SV40 DTSのポジティブコントロールもまた、注入後に細胞が生存可能なままであり、核内にDNAを輸送する能力を有することを確実にするために注入することができる。
【0228】
細胞特異性を試験するために、候補DTS含有プラスミドを、HEK293、初代平滑筋細胞及び内皮細胞、並びにヒト線維芽細胞を含む複数の細胞型に、微量注入することができる。本発明者らの経験に基づいて、この画面から2~4つの一般的なDTSを識別できると予測することができる。移入活性を示すプロモーター配列が同定されると、Miller,A.M.&Dean,D.A.Gene Ther 15,1107-1115(2008)、Degiulio,J.V.,et al.,Gene Ther 17,541-549,doi:10.1038/gt.2009.166(2010)、及びGottfried,L.,et al.,Gene Ther 23,734-742,doi:10.1038/gt.2016.52(2016)に記載されている方法で、核標的化を助ける最小配列の長さを同定するために、限られた数の切断型プロモーター(例えば、3~4)を作製することができる。次に、Dean,D.A.,et al.,Gene Ther 10,1608-1615(2003)、Machado-Aranda,D.et al.Am J Respir Crit Care Med 171,204-211(2005)、Mutlu,G.M.et al.,Am J Respir Crit Care Med 176,582-590(2007)、Zhou,R.,et al.,Gene therapy 14,775-780,doi:10.1038/sj.gt.3302936(2007)、Young,J.L.,et al.,Methods Mol Biol 1121,189-204,doi:10.1007/978-1-4614-9632-8_17(2014)、及びYoung,J.L.et al.,Adv Genet 89,49-88,doi:10.1016/bs.adgen.2014.10.003(2015)に記載されているように、これらの最小DTSが、エレクトロポレーションによるマウスの肺への送達後のin vivoでのプラスミド核ターゲティングを助け、肺の薄い切片におけるeGFP発現のためのIFによるプラスミドの核送達を定量化するかどうかを判定することができる。対照として、DTS又はSV40 DTSを保有していないレポータープラスミドもマウスの肺に移入する。
【0229】
2~4個のプロモーターが培養細胞において一般的なDTS活性を示すことが予想される。したがって、マウスにおいて4つの潜在的DTS及び2つの対照を試験することができる(n=6)。これを雄及び雌のC57B6マウスで別々に試験し、実験を1回繰り返すこともできる。遺伝子導入の2日後、動物を安楽死させ、肺を灌流し、4%パラホルムアルデヒドで固定し、ショ糖溶液に通し、凍結薄切片化のためにOCTに包埋する。GFP陽性細胞を各細胞特異的マーカーと共にカウントして、各細胞型に対するGFP陽性細胞の数を判定する。アセチル化チューブリン(線毛気道上皮細胞)、CCSP(クラブ細胞)、Muc5AC(杯細胞)、CD31(内皮細胞)及びSMAA(平滑筋)に対する抗体を使用して、肺細胞型を同定することができる。本発明者らは、過去にこの手法を使用して、核移入の細胞特異性を判定した。次いで、最良の配列を本発明者らのACE-tRNAミニベクターに組み込んで、送達及び発現を最大化することができる。重要なことに、同定されたDTSは、核標的化及び治療的導入遺伝子発現を増強するためのすべてのDNA治療手法に直接適用することができる。
【0230】
実施例8 DTS及びTELSを有するMC及びCEDT
この実施例では、500bpのACE-tRNAArg UGA(配列番号8)MC及びCEDTへのDTS及びTELSの組み込みが、核標的化、転写及びPTC抑制を改善するかどうかを調べるためにアッセイを行う。
【0231】
重要なことに、既存のMC及びCEDT技術は、細胞培養及びin vivoの両方で、PTC抑制において効率的である(図4図7及び図10)。かく言うものの、tRNA転写因子(Pol III転写エレメント)は、細胞質注入後にACE-tRNAArgのMCを核(図8B)の中にエスコートしなかった。したがって、核標的化、転写及びPTC抑制を改善するために、72ヌクレオチドSV40 DTS及び一般に活性なDTSを有するACE-tRNAArg UGAのMC及びCEDTが生成されている。16HBE14o-細胞へのこれらのベクターの細胞質及び核注入は、本明細書に記載されるのと同じ方法で行われる。
【0232】
DNA局在化を、4時間後にFISHを使用して判定する。以下に概説するように、pNLuc-UGA PTCレポータープラスミド(CEDT、n=8;CEDT-DTS、n=8;MC、n=8;MC-DTS、n=8;男性4人及び女性4人)と同時エレクトロポレーションをしたDTSを伴う又は伴わないCEDT及びMCを用いた限定的マウスの肺エレクトロポレーション試験も実施する。SV40 DTS及び4つのDTSを、MC又はCEDTあたり合計5つのDTSについて試験する(96匹のマウスを使用)。様々なDTSの添加は、その核生物学的利用能を増加させることによってACE-tRNA転写を大幅に増強し、その後PTC抑制を増強すると仮定される。DTS修飾を包含することは、in vivoのエレクトロポレーション研究において2倍を超えるPTC抑制をもたらし得ると予測される。
【0233】
実施例9 ミニベクターの細胞内PTC抑制能力
この実施例は、16HBE14o-細胞(p.G542X、p.R1162X及びp.W1282X)においてPTCを抑制するミニベクターの能力を判定するための研究を記載する。ここで使用される送達方法は、LONZA 4D-NUCLEOFECTOR(商標)Xシステムであり、溶液「SG」及びプログラムCM-137は、16HBE14o-細胞に対して既に最適化されている。
【0234】
pR1162X-CFTR16HBE14o-細胞において、ベクターのサイズがACE-tRNAのCEDT及びMCのPTC抑制に与える影響を、125、200、300、400、500、600、700、800、900及び1000bpのDNAミニベクターのスクリーニングを行うことによって調べる。p.R1162X-CFTRのレスキュー機能を、Ussingチャンバーの記録(n=4~6)及びその後のqPCR分析を使用して判定して、定常状態のCFTRmRNAの発現を判定する(n=4~6)。Ussingチャンバーの記録の場合、本発明者らは、5mMデキストロースを補充したCl-勾配(140mMのCl-基底外側/4.8mMのCl-)及びその後のアミロライド(100μM)の添加を用いてENaC及びDID(100μM)をブロックしてCaCC活性をブロックする。その後、CFTRはフォルスコリン(10μM)及びIBMX(3-イソブチル-1-メチルキサンチン、100μM)によって活性化され、10μMのInh172によって阻害される。CFTR活性のレスキューを、図5Bに記載されるように、F&Iの前後及びInh172の前後のブロックのΔIClとして分析する。
【0235】
最適なミニベクターの条件を使用して、p.W1282X 16HBE14o-細胞に送達されるACE-tRNALeu UGA(配列番号4)をコードするMC及びCEDTの機能を検証する。上記の例で同定された上位のDTS及びTEL配列は、最適のサイズのミニベクターに含まれる。ミニベクターのPTC抑制能を数倍に高めることが期待される。
【0236】
実施例10 ACE-tRNA発現ベクターは、マウスにおけるCFTR p.G542X及びp.W1282Xを抑制する。
この実施例は、マウスの肺における、ACE-tRNAをコードするcDNAプラスミド、CEDT及びMCが、CFTRのp.G542X及びp.W1282Xを抑制する能力を調べるための研究を記載する。p.G542X及びp.W1282X-CFTRのPTC変異を備えるマウスモデルが生成されている。例えば、p.G542Xマウスは、McHugh,D.R.,et al.,PloS one 13,e0199573,doi:10.1371/journal.pone.0199573(2018)において公表されている。これらのp.G542X及びp.W1282X-CFTRマウスは、CFTR転写物の変化がヒトを細かく再現するので、PTC治療を研究するために使用される。
【0237】
電界(エレクトロポレーション)法は、当技術分野で公知の方法を使用してDNAベクターを肺に送達するために利用される。例えば、Dean,D.A.,et al.,Gene Ther 10,1608-1615(2003)、Zhou,R.&Dean,D.A.Experimental biology and medicine(メイウッド、ニュージャージー州)232,362-369(2007)、O’Reilly,M.A.et al.The American journal of pathology 181,441-451,doi:10.1016/j.ajpath.2012.05.005(2012)、Mutlu,G.M.et al.,American journal of respiratory and critical care medicine 176,582-590,doi:10.1164/rccm.200608-1246OC(2007)、Blair-Parks,K.,et al.,The journal of gene medicine 4,92-100(2002)、and Barnett,R.C.et al.,Experimental biology and medicine(メイウッド、ニュージャージー州)242,1345-1354,doi:10.1177/1535370217713000(2017)を参照のこと。ここでは、cDNAプラスミド並びに500bpのCEDT及びMCを、3週齢(離乳)ホモ接合性CFTRのp.G542X(ACE-tRNAGly UGA)及びp.W1282X(ACE-tRNALeu UGA)マウスの肺に、エレクトロポレーションにより送達する。スクランブルのtRNA配列をコードするcDNAプラスミド(MC及びCEDTの両方に対して2.7kbのpuc57親プラスミド)を、エレクトロポレーションの効果、及び発現されたACE-tRNAが肺細胞生存率に与える可能な効果の対照として使用する。簡潔には、塩平衡溶液中の50ulのDNA(2mg/ml)をマウスの肺に吸引する。送達直後に、イソフルランを投与しながら、小児の皮膚ペースメーカー電極(MEDTRONICS)を使用して一連の8×10msecの方形波電気パルス(200V/cm)を動物に投与する。電極は、コンダクタンスを助けるために、少量の外科用潤滑剤を使用して、胸部の両側に配置される。
【0238】
マウスを、送達の7、14及び21日後(d)に分析する。腸閉塞のために、ホモ接合p.G542X-及びp.W1282X-CFTRマウスのわずか40%しか40日齢まで生存しなかったので、研究は、各群について、n=6を達成するよう大規模コホートのマウス(n=12)から開始する。合計で、最低で384匹のマウスを使用してこの研究を完了している。適切な実験動物を実現するために、両方の性別を使用している。各時点で、マウスを安楽死させ、肺を取り出し、左右の肺葉に分離する。凍結させた切片のため、OCTに埋め込む前に、右葉を灌流し、4%パラホルムアルデヒド/30%スクロースで膨張固定する。左葉をタンパク質(ウエスタンブロット、WB)及びRNA単離のために急速凍結する。肺の左葉を液体窒素下で粉砕し、肺粉末の1/8をCFTRmRNAについて分析する。残りの肺を、150mMのNaCl、50mMのTris、pH8.0を含有するバッファーの中で、ダウンス式にホモジナイズし、プロテアーゼ阻害剤及び2%のCHAPS(w/v)を補充する。グリコシル化CFTRタンパク質を、小麦胚芽アグルチン(WGA)結合アガロースビーズを使用して親和性精製し、洗浄し、200mMのN-アセチルグルコサミン(NAG)で溶出する。試料を、抗CFTR抗体(1:1000;米国MILLIPOREのM3A7)を使用して免疫ブロットする。マウス由来の腸は、WB及びqPCR分析のための未治療組織対照として機能する。右葉の切片を、上、中央、及び下を表す肺の3つの高さで切断し、ミニベクター及びDAPIに向かってFISH(Cy5又はCy3)で染色する(図8)。気道の細胞は、どの細胞がトランスフェクトされているかを同定するために、連続的な切片で特異的抗体と共染色することによって、同定される。定量は、肺の各レベルからの10の切片におけるFISH+細胞/総細胞の数を数えることによって行う。
【0239】
共染色に使用される抗体には、ケラチン5(粘膜下の腺の基底細胞)、アセチル化チューブリン及びFoxJ1(染色に応じて線毛又は非線毛気道上皮細胞)、神経発育因子受容体、ケラチン14、p63(気道の基底細胞)、及びMuc5AC(杯細胞)が含まれる。CFTRは、マウスモノクローナルCFTR-769を使用して免疫組織化学及び免疫蛍光法によって検出される。エレクトロポレーションはDNAを気道上皮細胞(図6A)に送達するのに非常に効率的であるので、本発明者らは、IFによって検出するのに十分高いレベルである、気道上皮細胞におけるCFTRタンパク質の有意な救済(>10%)を予測している。
【0240】
炎症性サイトカインレベルを、マウスのサブセット(n=6)において、エレクトロポレーションの前及び直後に測定し、次いで、再度、肺採取時(7日の時点)に測定して、治療が炎症応答を引き起こしたかどうかを判定する。重要なことに、これは以前に、エレクトロポレーション後、ブタ又はマウスにおいて炎症性反応を示さなかった。ヘマトキシリン及びエオシン(H&E)組織学的分析を行って、肺の形態の変化を検出する。
【0241】
実施例11 WTマウスの肺におけるACE-tRNAArgUGA発現ベクターの持続性
この実施例は、WTマウスの肺におけるACE-tRNAArg UGA(配列番号8)発現プラスミド、CEDT及びMCの持続性を判定するための研究である。
【0242】
40日間生存したp.G542X及びp.W1282X-CFTRマウスが非常に少ないため、おそらく、実施例10ではCEDT及びMCからのACE-tRNA発現の完全な持続性を判定することが不可能であり得る。本発明者らは、6ヶ月齢を超えるマウスの肺における導入遺伝子の発現を実証した。したがって、本発明者らは、実施例10)に以前に記載されたように、3週齢のC57Bl/6雄WTマウスの肺に、ACE-tRNAArg UGAをコードするcDNAプラスミド(MC及びCEDTの両方について2.7kbのpuc57親プラスミド)、500bpのCEDT及びMCを送達し、それらの送達効率及び持続性並びにPTC抑制効率を判定する。スクランブルのtRNA配列をコードする親プラスミドを、エレクトロポレーションの効果、並びに発現されたACE-tRNAが7日間、14日間及び1ヶ月、2ヶ月、6ヶ月及び12ヶ月で肺細胞の生存率に与える可能な効果の対照として使用する。
【0243】
試験は、治療あたり10匹のマウス(雄5匹/雌5匹)で開始し、エンドポイントは、合計240匹のマウスについて、試験のこの部分のために使用される。各エンドポイントの3日前に、短いユビキチンCプロモーター(shUbC)の制御下でn末端血液凝集素(HA)エピトープタグ及びc末端FLAGエピトープタグを有するNLuc-UGAタンパク質を発現する核標的化のためのSV40-DTSを有する小型(3kb)PTCレポーターcDNAプラスミドの後続的な送達を行う(図9)。
【0244】
定められたエンドポイントで、肺を取り出し、IF及びFISH分析(右葉)並びにタンパク質生化学(左葉)について、上記のように治療する。PTCレポータープラスミドは、多機能性であり、ミンベクター(minvector)とは完全に異なる配列を有し、したがって、プラスミドの共送達効率を判定するためにco-FISHによって同定することができる。ミニベクターとPTCレポータープラスミドが共局在する場合、リードスルー効率は、in vivoイメージングを使用するNLuc発光、外植された肺組織のプレートリーダー測定(図6B)、又はc末端FLAGタグを使用する生化学的測定(左葉)によって、判定することができる。NLucタンパク質の発現の後に、n末端HAエピトープタグを使用してIF又はWBを続けることができ、PTCが抑制された場合にのみ、明らかなFLAGシグナルが存在する。重要なことに、このDNAコンストラクトは、PTC抑制のための最良のACE-tRNA配列を同定するために本発明者らのハイスループットスクリーニングで使用されるものと類似している。これは、バックグラウンドのリードスルーを低減して真正なPTC抑制を忠実に報告することによって、ノイズに高いシグナルを与えるように修正されている。
【0245】
この試験では、マウスで概説した実験の再現性を確実にするために、1バッチで、5.5gのエンドトキシンを不含有のPTCレポーターcDNAプラスミドを作製した(ALDEVRON)。500bpのミニベクターの送達は、(細胞の共FISH標識によって判定されるように)3kbのPTCレポータープラスミドよりも効率的であり、したがってミニベクターのPTC抑制活性の過小評価を与えると予測される。本発明者らは、ミニベクターに対してFISHを使用して、各エンドポイントでの肺におけるミニベクターの存在の持続性を判定し、PTCレポーターc末端FLAGエピトープに対する発光及びIFを使用して、抑制作用の持続性を定量する。FISHと対にした実施例10に詳述されているIF抗体及び技術を使用して、どの細胞型が形質導入されているかを同定する。
【0246】
CFTRの機能の測定を行うために、Grubb,B.R.,et al.,Am J Physiol 267,C293-300,doi:10.1152/ajpcell.1994.267.1.C293(1994),160 Grubb,B.R.et al.Nature 371,802-806,doi:10.1038/371802a0(1994)、及びGrubb,B.R.,et al.,Am J Physiol 266,C1478-1483,doi:10.1152/ajpcell.1994.266.5.C1478(1994)に記載されているように、気管を除去し、長手方向に半分に分割する。半分は、直径2mmの開口チャンバーを有するUssingチャンバー(PHYSIOLOGIC INSTRUMENTS)に分析のために取り付けられ、短絡電流は、Cooney,A.L.et al.,Nucleic Acids Res 46,9591-9600,doi:10.1093/nar/gky773(2018)、Cooney,A.L.et al.,JCI Insight 1,doi:10.1172/jci.insight.88730(2016)、Mall,M.,et al.,Nat Med 10,487-493(2004)、and Zhou,Z.et al.J Cyst Fibros 10 Suppl 2,S172-182,doi:10.1016/S1569-1993(11)60021-0(2011)に記載されている方法で測定される。短絡電流の差は、図7B図7Dで行われた実験と同様に、気管切片の基底外側に10μMのフォルスコリン及び100μMのIBMXを添加し、続いて10μMのInh172を添加した後に計算される。残りの気管の切片を使用して、NBD2ドメインに対するCFTR769抗体を使用する免疫蛍光によって、気道におけるCFTRの発現を判定することができる。重要なことに、肺の切除された部分は、将来のRNAseq及びRiboseq研究のために積み立てられる。
【0247】
本明細書に記載されるいくつかの実験のために、本発明者らは、ACE-tRNAの持続的発現を外挿するためにPTC抑制プレートリーダー発光アッセイに依拠する。目標は、ACE-tRNA転写活性の直接的な測定を可能にする技術を創出することである。その目的のために、本発明者らは、ACE-tRNA:バーコード融合転写物をコードし、バーコード配列(ABS)は内因性のtRNase Zによって切断され、qPCR定量化を可能にして相対的なACE-tRNA発現を判定しながら、完全に機能的なACE-tRNAを得ることができる(図10A)。
【0248】
本発明者らは、マウスのゲノム配列と相同性のないランダムな200bpのバーコード配列を設計した。NLuc-UGAを安定して発現する16HBE14o-細胞にトランスフェクトされた場合、ACE-tRNAArg UGA-及びACE-tRNATrp UGA-バーコードは、qPCRによってモニターした場合にロバストな発現を示すが、非バーコード化ACE-tRNAは意義あるシグナルを与えなかった(図10B)。しかし、1つの場合では、ACE-tRNAArg UGAの抑制活性は、3’バーコード配列の存在によって妨げられた(図10C)。ACE-tRNA活性の欠損は、3’プロセシングが不十分であるためである可能性が最も高く、バーコード配列に対してプローブ探査されたノーザンブロットによって判定することができる。その配列がバーコード又は改変させたバーコードリンカー配列としても作用して3’プロセシングを改善する3’HDV自己切断リボザイムをコードすることによって、ABS技術を改善するための作業を行うことができる。3’リボザイムの組み込みは、改善されたACE-tRNAの3’プロセシングをもたらし、それらのPTC抑制活性を増加させ得る。さらに、ABS技術はNLuc PTCレポーターを補完するためのACE-tRNA発現の測定を可能にする(図9)。
【0249】
別の実施形態では、本発明者らは、定常状態のACE-tRNA転写活性の高分解能で直接的な測定を可能にする新規なACE-tRNAバーコードシステム技術を作り出した(図11A)。標準的なRNA-seq法は、広範な転写後修飾及び二次構造のために、tRNAで実施することができない。Zheng,G.et al.,Nature Methods 12,835 and Pang et al.,Wiley Interdiscip Rev RNA 5,461-480,doi:10.1002/wrna.1224(2014)。さらに、ACE-tRNA配列は、1つ又は複数の内因性のtRNAと1つのヌクレオチドのみが異なり、したがって、ノーザンブロット、マイクロアレイ及び断片化RNA-seqは、外因性治療用ACE-tRNA及び内因性のtRNAの発現レベルを識別することができない。したがって、本発明者らは、これらの問題を回避し、ACE-tRNA転写の信頼性の高い直接的かつ高感度のqRT-PCR測定をもたらすバーコード技術を生成した。ここで、固有の3’バーコード配列は、HDVリボザイム(drz-Bfo-2、60bp)をコードする。(Webb et al.,Science 326,953(2009)、及びWebb et al.,RNA Biol 8,719-727(2011))、転写後にACE-tRNA本体から自身を効率的に切断する(90%超)(図11B)。ACE-tRNAの転写によって駆動されるHDVの発現を、プローブベースのqRT-PCRを使用して定量する。重要なことに、バーコード化ベクターで発現されるACE-tRNAは、3’末端の2’、3’環状ホスフェート基修飾(Schurer et al.,Nucleic Acids Res 30,e56-e56,2002)のために翻訳に関与することができず、したがってPTC抑制の結果を混同しない。
【0250】
実施例12 G418及びACE-tRNAの内因性のCFTRのPTCの救済
この実施例では、内因性のCFTRのPTCの救済を調べ、従来のPTCリードスルー剤(すなわち、G418)及びプラスミドに送達されたACE-tRNAと比較するために、試験が実行された。その目的のために、操作されたヒト細気管支上皮細胞株、16HBE14ge-を使用した(Valley et al.,Journal of Cystic Fibrosis,Volume 18,Issue 4,July 2019,Pages 476-483)。G418(Geneticin)は、リボソームの復号中心と相互作用し、近い同族tRNAでPTCの抑制を促進することによって作用し、したがって多くの場合誤ったアミノ酸を組み込む標準的なPTCリードスルー剤である。その非特異的な性質のために、G418による救済は、ナンセンス突然変異からのミスセンス変異の生成をもたらす。対照的に、本明細書に開示されるようなACE-tRNAは、所望のアミノ酸に入れられる。
【0251】
アッセイを実施するために、W1282X-CFTR又はR1162X-CFTRの変異を有する野生型16HBE14geー細胞又は16HBE14geー細胞は、(i)100uMのG418又はビヒクルで処理するか、又は(ii)実施例4に記載の方法で、3つのACE-tRNA(配列番号8、4及び1)、1×ACE-tRNAArg、4×ACE-tRNAArg、1×ACE-tRNALeu、4×ACE-tRNALeu、1×ACE-tRNATrp及び4×ACE-tRNATrpの1つ又は4つのコピーをコードする空のプラスミド又は様々なプラスミドで、トランスフェクトされた。48時間後、対応するCFTRmRNA発現レベルを次いで判定した。結果を図14に示す。
【0252】
図に示されるように、プラスミドからコードされ、16HBE14ge-細胞にトランスフェクトされたACE-tRNAは、アルギニン及びロイシンACE-tRNAを使用して、翻訳の先駆けとなるラウンドを促進することによって、G418よりも、ナンセンスコドン介在的分解過程の阻害において、有意に効果的であった。このデータの重要な態様はまた、本明細書に開示されるプラットフォームがアラカルトのPTC抑制を助けることである。予想外にも、ロイシンACE-tRNAは、トリプトファンACE-tRNAよりも効果的にW1282Xを抑制することが見出された。W1282Xの位置のロイシンは、WTレベルのCFTR機能を助ける(Xu et al.,Hum Mol Genet.2017 Aug 15;26(16):3116-3129)ので、本明細書に記載のACE-tRNALeuを使用して、変異pf W1282X-CFTRを救済又は抑制することができる。
【0253】
PTCは、(a)完全な機能喪失又は変化した機能を有する切断型タンパク質、及び(b)NMD経路によるmRNA転写物の分解の両方をもたらすので、両方のフロントに対するACE-tRNAの効果を調べるために、追加のアッセイを設計し、実施した。より具体的には、図15Aに示すように、16HBE14ge-細胞を作製して、PTCリードスルー・レポーターpiggyBac導入遺伝子を発現させた。導入遺伝子はPTCを有するmNeonGreen(mNG)タンパク質をコードするので、ACE-tRNAによるPTCの抑制は、発現したmNGタンパク質からの蛍光に基づくFACの選別によって、定量することができる。その目的に対して、蛍光の増加は、翻訳レベルでのPTCの抑制を表す。
【0254】
これらの細胞は、100uMのG418で処理するか、又は上記の方法で4×ACE-tRNAArgをコードするプラスミドでトランスフェクトされた。次いで、細胞を、発現したmNGタンパク質からの蛍光について調べた。結果を図15Bに示す。図に示すように、アルギニンACE-tRNAは、強固なPTC抑制及び完全長のmNeonGreenタンパク質の生成を助けた。対照的に、G418は強固なPTC抑制を助けなかった。灰色のプロファイルは、非処理のPB-mNeonGreen-R1162X-16HBE14ge-細胞についてのものであった。
【0255】
実施例13 様々なフォーマットで送達されるACE-tRNAの内因性のCFTRのPTCのレスキュー
この実施例では、内因性のCFTRのPTCの救済を調べ、様々なフォーマット、例えば、プラスミド、CEDT及びMCで送達されるACE-tRNAに送達されたACE-tRNAと比較するために、アッセイが実行された。PTCリードスルー・レポーターpiggyBac導入遺伝子(図15A)を発現する上記の16HBE14ge-細胞を使用した。より具体的には、細胞が、ACE-tRNAをコードするプラスミド、CEDT又はMCでトランスフェクトされた。次いで、細胞をFACSによって選別し、mRNAを非緑色細胞及び緑色細胞から単離した。標的化RT-qPCRを使用して、CFTRのmRNA発現を定量した。
【0256】
いくつかの論文では、細胞が、ACE-tRNAArg及びACE-tRNALeuをコードするプラスミド(配列番号8及び4)でトランスフェクトされた。結果を図16A及び図16Bに示す。図16Bに示すように、プラスミドを介して送達されたACE-tRNAArg及びACE-tRNALeuの両方が、それぞれR1162X及びW1282X16HBE14ge-細胞からCFTRmRNAを有意にレスキューした。このようなCFTRのmRNAの救済は、緑色細胞(GFP+)及び非緑色細胞(GFP-)の両方で観察された。非緑色の細胞が依然としてCFTRのmRNA発現の救済をしていた理由は、ACE-tRNAが、有意なレベルの翻訳ではなく、先駆けとなるラウンドの翻訳によって、mRNAの発現を効果的にレスキューしていたためであった。これらの結果は、NMDの阻害が強固な翻訳レスキューよりも達成が比較的容易であることを示唆した。
【0257】
他のアッセイでは、R1162X-CFTR及びPTCリードスルー・レポーターpiggyBac導入遺伝子を有する16HBEge細胞に、エレクトロポレーションによってACE-tRNAをコードするミニサークルがトランスフェクトされた。これらの細胞をmRNA発現分析のためにFACSによって選別せず、むしろ集団全体を分析した。図17Aに示すように、ミニサークルをコードするACE-tRNAは、大部分の細胞において強固なmNeonGreenの発現を助けた。これらの結果は、ミニサークルを発現するACE-tRNAが、タンパク質レベルで定量可能なレベルまでPTCの抑制を助けることを示した。この救済は、親プラスミド(約7.0kbのサイズ)及びスクランブルの対照よりも有意に良好であった。また、ACE-tRNAの1つのコピーをコードする850bpのMC(「1×ACE-tRNAArg850bpのMC」)及びACE-tRNAの4つのコピーをコードする850bpのMC(「4×ACE-tRNAArg850bpのMC」)は、同様のレベルのCFTRmのRNAの発現をもたらした(図17B)。しかし、後者は、はるかに多くのmNeonGreenの発現細胞をもたらした(図17A、下2つのパネル)。これらの結果は、ACE-tRNAの量の増加がNMD阻害を増加させるようには見えなかったが、タンパク質の生成を増加させることを示唆した。このレベルのmRNA発現救済は、前例のない新規なものであった。
【0258】
さらなるアッセイを、W1282X-CFTR及びPTCリードスルー・レポーターpiggyBac導入遺伝子を有する16HBEge細胞を使用して行った。これらのアッセイでは、細胞が、スクランブル対照、4コピーのACE-tRNALeuをコードするプラスミド(「4×ACE-tRNALeu親プラスミド」)、又はエレクトロポレーションによって4コピーのACE-tRNALeuをコードする850bpのMC(「4×ACE-tRNALeu850bpのMC」)でトランスフェクトされた。細胞をmRNA発現分析のためにFACSによって選別せず、むしろ集団全体を分析した。図18Aに示すように、ミニサークルは大部分の細胞で強固なmNeonGreen発現を助け、ミニサークルを発現するACE-tRNAがタンパク質レベルで定量可能なレベルまでPTC抑制を助けることを示した。この救済もまた、スクランブル対照及び親プラスミド(約7.0kbのサイズ)よりも有意に良好であった。図18Bを参照されたい。
【0259】
同様のアッセイを行って、CEDTがまた、強固なタンパク質発現及びR1162X-CFTRの救済の両方を助けたことを示した。より具体的には、R1162X-CFTR及びPTCリードスルー・レポーターpiggyBac導入遺伝子を有する16HBEge細胞に、スクランブル対照、4×ACE-tRNAArgをコードするプラスミド、及びエレクトロポレーションによって1x又は4×ACE-tRNAArgをコードする異なるサイズの4つのCEDTが、トランスフェクトされた。図19に示すように、200bp、400bp及び900bpのCEDTは、強固なCFTR mRNA(図19B)及びmNeonGreenタンパク質発現(図19A)を助けた。CFTR mRNA発現及びmNeonGreenタンパク質発現を救済するそれらの能力は、CEDTのサイズによって影響されなかった。
【0260】
自然界では一過性であるトランスフェクションに加えて、ACE-tRNAArgの安定的なゲノムインテグレーションも調べた。それを行うために、PB-ドンキーシステム(図20)を使用して、トランスポゾンリピート(TR)に隣接するACE-tRNAArgコード配列の複数のコピーを有するベクターを作製した。このベクターを使用して、ゲノムDNAに安定的に組み込まれるACE-tRNAArgを有する16HBEge細胞を作製した。これらの細胞を、CFTRのmRNAの発現及びチャネル機能について、上記の様式で調べた。結果を図21に示した。安定的に発現したACE-tRNAArgが内因性のCFTRの機能を救済することが見出された。定量的PCR(qPCR)によるさらなる分析は、わずか16個のACE-tRNAArg発現カセットが、野生型細胞についてのレベルの約6~7%でR1162X16HBE14ge-細胞における強固なCFTR機能を助けるのに十分であることを示した。
【0261】
好ましい実施形態の前述の例及び説明は、特許請求の範囲によって定義される本発明を限定するものとしてではなく、むしろ例示するものとして解釈されるべきである。容易に理解されるように、特許請求の範囲に記載の本発明から逸脱することなく、上記の特徴の多数の変形及び組み合わせを利用することができる。そのような変形は、本発明の範囲からの逸脱と見なされず、そのような変形はすべて、後続の特許請求の範囲に含まれることが意図される。本明細書で引用されるすべての参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。
【国際調査報告】