(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させる方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/07 20060101AFI20230726BHJP
A61K 31/015 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/59 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/525 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/375 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/197 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/122 20060101ALI20230726BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20230726BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20230726BHJP
A61P 3/14 20060101ALI20230726BHJP
A61P 37/08 20060101ALI20230726BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20230726BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230726BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20230726BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20230726BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20230726BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20230726BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20230726BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230726BHJP
A61P 25/24 20060101ALI20230726BHJP
A61P 25/14 20060101ALI20230726BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20230726BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20230726BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20230726BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230726BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
A61K31/07
A61K31/015
A61K31/59
A61K31/525
A61K31/375
A61K31/197
A61K31/122
A61K31/202
A61P25/18
A61P3/14
A61P37/08
A61P25/22
A61P3/04
A61P29/00
A61P11/06
A61P1/04
A61P1/00
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P3/10
A61P25/24
A61P25/14
A61P1/16
A61P25/00
A61P25/28
A61P43/00 121
A61P1/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022578836
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-07
(86)【国際出願番号】 EP2021068935
(87)【国際公開番号】W WO2022008633
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
【住所又は居所原語表記】Het Overloon 1, NL-6411 TE Heerlen,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ファム, タン‐ヴァン
(72)【発明者】
【氏名】レーマン, アティークル
(72)【発明者】
【氏名】サイフェルト, ニコール
(72)【発明者】
【氏名】シュタイネール, ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】シベスマ, ウィルバート
【テーマコード(参考)】
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA04
4C086BA18
4C086CB09
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4C086ZA16
4C086ZA18
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4C086ZA96
4C086ZB11
4C086ZB13
4C086ZB15
4C086ZC23
4C086ZC26
4C086ZC28
4C086ZC29
4C086ZC35
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206CA10
4C206CB28
4C206DB09
4C206GA05
4C206GA36
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA80
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZC75
(57)【要約】
様々な疾患を有する人々では、腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数が低下している。本発明者らは、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA又はEPAなどのビタミン/ビタミンの組合せの投与が、腸内細菌叢に栄養を直接提供するように大腸に直接投与されるとき、ディアリスター属菌(Dialister spp.)の増加をもたらし得ることを見出した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させる方法であって、菌数を増加させるのに有効な量の、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択されるビタミン又はPUFAを動物、好ましくはヒトの大腸に直接投与することを含む方法。
【請求項2】
腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の減少した菌数と関連する疾患又は有害な状態を治療及び又は予防する方法であって、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択されるビタミン又はPUFAを、それを必要とする動物、好ましくはヒトの大腸に直接投与することを含む方法。
【請求項3】
前記それを必要とする動物は、過敏性腸症候群、自閉症スペクトラム障害、カルシウム吸収不全、食物アレルギー及び感作(乳、卵、落花生、大豆、クルミ及び小麦)、全般性不安障害、小児肥満、乳幼児の成長障害及び病的状態、免疫媒介性炎症性疾患、アトピー性疾患(小児の喘息及びアレルギーを含む)、クローン病、関節リウマチ及び変形性関節症、早発型子癇前症、1型糖尿病、若年性特発性関節炎、抑うつ、注意欠陥多動障害(ADHD)、B型慢性肝炎、大うつ病性障害、気道アレルギー、多発性硬化症、慢性炎症並びにアルツハイマー病からなる群から選択される疾患又は有害な状態を経験している、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択されるビタミン又はPUFAの使用において、前記ビタミン又はPUFAは、動物、好ましくはヒトの大腸に、過敏性腸症候群、自閉症スペクトラム障害、カルシウム吸収不全、食物アレルギー及び感作(乳、卵、落花生、大豆、クルミ及び小麦)、全般性不安障害、小児肥満、乳幼児の成長障害及び病的状態、免疫媒介性炎症性疾患、アトピー性疾患(小児の喘息及びアレルギーを含む)、クローン病、関節リウマチ及び変形性関節症、早発型子癇前症、1型糖尿病、若年性特発性関節炎、抑うつ、注意欠陥多動障害(ADHD)、B型慢性肝炎、大うつ病性障害、気道アレルギー、多発性硬化症、慢性炎症並びにアルツハイマー病の群から選択される疾患又は有害な状態を治療又は予防するために直接送達されることを特徴とする使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、ビタミン又はビタミンの組合せを動物、好ましくはヒトの腸内細菌叢に直接送達することにより、ディアリスター属菌(Dialister spp.)の腸内細菌叢の菌数を増加させる方法に関する。これは、例えば、選択されたビタミン又はPUFA、好ましくはβ-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せの遅延放出製剤を使用することによって達成され得る。
【0002】
[発明の背景]
ディアリスター属(Dialister)は、腸内細菌叢に見られる細菌の属名であり、腸内細菌叢に見られるD.ニューモシンテス(D.pneumosintes)、D.インビサス(D.invisus)、D.ミクラエロフィルス(D.micraerophilus)、D.ホミニス(D.hominis)、D.マシリエンシス(D.massiliensis)、D.サクシナティフィラス(D.succinatiphilus)及びD.プロピオニシファシエンス(D.propionicifaciens)を含む。D.ニューモシンテス(D.pneumosintes)は、以前にはバクテリオデス・ニューモシンテス(Bacteriodes pneumosintes)として知られていた。
【0003】
研究は、腸内のディアリスター属菌(Dialister spp.)の正常未満の量が、一見無関係に見える様々な病状及び/又は有害な状態と関連していることを示している。これらは、以下を含む:過敏性腸症候群、自閉症スペクトラム障害、カルシウム吸収不全、食物アレルギー及び感作(乳、卵、落花生、大豆、クルミ及び小麦)、全般性不安障害、小児肥満、乳幼児の成長障害及び病的状態、免疫媒介性炎症性疾患、アトピー性疾患(小児の喘息及びアレルギーを含む)、クローン病、関節リウマチ及び変形性関節症、早発型子癇前症、1型糖尿病、若年性特発性関節炎、抑うつ、注意欠陥多動障害(ADHD)、B型慢性肝炎、大うつ病性障害、気道アレルギー、多発性硬化症、慢性炎症並びにアルツハイマー病。
【0004】
腸内細菌叢、特に上述の疾患/有害な状態又はこの疾患/有害な状態の1つと関連する症状を経験しているか又は経験する危険性がある個体において、腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させる方法を提供することが望ましいであろう。
【0005】
[発明の詳細な説明]
多くの研究は、動物、好ましくはヒトが特定の疾患/有害な状態に罹患すると、その特定の疾患/有害な状態に罹患していない動物中に存在する菌数と比較して、腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数が減少することを示している。しかし、これらのいずれの研究も、ディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させ、それによりその疾患/有害な状態の症状の少なくとも1つを緩和する方法を示唆していない。本発明に従い、特定のビタミン又は多価不飽和脂肪酸(「PUFA」)を動物、好ましくはヒトの大腸に直接送達することにより、腸内細菌叢に栄養を提供し、且つディアリスター属菌(Dialister spp.)の定住菌数を増加させ得ることが見出された。したがって、本発明は、腸に直接送達される少なくとも1種のビタミン又はPUFAを投与することにより、腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の正常未満の菌数を特徴とする疾患/有害な状態を予防し、その発症のリスクを低減するか若しくは発症を遅延させ、且つ/又は疾患/有害な状態を治療する方法に関する。
【0006】
本発明に従い、本発明者らは、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、ドコヘキサエン酸「DHA」、エイコサペンタエン酸「EPA」並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択される特定のビタミン及びPUFAが、腸内細菌叢に提供されるとき、腸内のディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させるのに適していることを見出した。
【0007】
したがって、本発明の一態様は、腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させる方法であって、菌数を増加させるのに有効な量の、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択されるビタミン又はPUFAを動物、好ましくはヒトの大腸に直接投与することを含む方法である。
【0008】
本発明の他の実施形態は、腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の減少した菌数と関連する疾患又は有害な状態の治療及び又は予防であって、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択されるビタミン又はPUFAを、それを必要とする動物、好ましくはヒトの大腸に直接投与することを含む治療及び又は予防である。ディアリスター属菌(Dialister spp.)の減少した菌数によって特徴付けられる状態又は疾患は、過敏性腸症候群、自閉症スペクトラム障害、カルシウム吸収不全、食物アレルギー及び感作(乳、卵、落花生、大豆、クルミ及び小麦)、全般性不安障害、小児肥満、乳幼児の成長障害及び病的状態、免疫媒介性炎症性疾患、アトピー性疾患(小児の喘息及びアレルギーを含む)、クローン病、関節リウマチ及び変形性関節症、早発型子癇前症、1型糖尿病、若年性特発性関節炎、抑うつ、注意欠陥多動障害(ADHD)、B型慢性肝炎、大うつ病性障害、気道アレルギー、多発性硬化症、慢性炎症並びにアルツハイマー病を含む。
【0009】
本発明の他の実施形態は、ディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させるのに有効な量の、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択されるビタミン又はPUFAと、賦形剤とを含む経口送達用製剤であり、前記形態は、ビタミン又はPUFAが大腸の腸内細菌叢に送達されることを特徴とする。
【0010】
本発明の他の実施形態は、過敏性腸症候群、自閉症スペクトラム障害、カルシウム吸収不全、食物アレルギー及び感作(乳、卵、落花生、大豆、クルミ及び小麦)、全般性不安障害、小児肥満、乳幼児の成長障害及び病的状態、免疫媒介性炎症性疾患;アトピー性疾患(小児の喘息及びアレルギーを含む)、クローン病、関節リウマチ及び変形性関節症、早発型子癇前症、1型糖尿病、若年性特発性関節炎、抑うつ、注意欠陥多動障害(ADHD)、B型慢性肝炎、大うつ病性障害、気道アレルギー、多発性硬化症、慢性炎症並びにアルツハイマー病からなる群から選択される疾患/有害な状態の少なくとも1つの症状を経験している患者の栄養上の必要性に対処する医療用食品であって、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択される栄養素を含む医療用食品において、この栄養素は、腸内細菌叢に直接送達されるように製剤化されることを特徴とする医療用食品である。
【0011】
[定義]
本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して使用される場合、以下の定義が適用される。
【0012】
「ディアリスター属菌(Dialister spp.)」とは、ディアリスター属(Dialister)の少なくとも1つの種を意味し、D.ニューモシンテス(D.pneumosintes)、D.インビサス(D.invisus)、D.ミクラエロフィルス(D.micraerophilus)、D.ホミニス(D.hominis)、D.マシリエンシス(D.massiliensis)、D.サクシナティフィラス(D.succinatiphilus)及びD.プロピオニシファシエンス(D.propionicifaciens)を含み得る。
【0013】
「減少した菌数」は、個体内に存在するディアリスター属菌(Dialister spp.)の量が、健康な人の集団に見られる量と比較して低下していることを意味する。
【0014】
本明細書において使用される「健康な」とは、ヒトを含む動物が、腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の減少した菌数と関連することが知られている疾患/有害な状態を経験していないことを意味する。
【0015】
「ビタミンB2」及び「リボフラビン」という用語は、互換的に使用され、そのエステル、特にリボフラビン-5’-リン酸を含む。
【0016】
「ビタミンK」という用語は、ビタミンK1及びビタミンK2の一方又は両方を含む。
【0017】
「DHA」は、その遊離酸形態に加えて、塩及びエチルエステルなどのエステルを含む。これは、純度が少なくとも90%のものなどの様々な濃度のものも含む。これは、天然に存在する量又は濃縮された量のいずれかでDHAを含み、EPAも含み得る魚油及び藻油も含む。これは、DHAトリグリセリドを更に含む。
【0018】
「EPA」は、その遊離酸形態に加えて、その塩及びエステルを含む。これは、純度が少なくとも90%のものなどの様々な濃度のものも含む。これは、EPAをある程度の量で含み得る魚油及び藻油も含み、DHAも含み得る。更に、これは、EPAトリグリセリドも含む。
【0019】
本明細書において使用される「ビタミンD」という用語は、ビタミンD3を意味する。ビタミンD3に替えて又はビタミンD3に加えて、25-ヒドロキシビタミンD3を好ましくは非ヒト種に使用することができる。25-ヒドロキシビタミンD3のビタミンD3に対する相対的な強度は、約40:1であり、したがって、25-ヒドロキシビタミンD3を投薬する場合、これに従って調整する必要がある。
【0020】
「ディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させる必要がある」動物、好ましくはヒトは、過敏性腸症候群、自閉症スペクトラム障害、カルシウム吸収不全、食物アレルギー及び感作(乳、卵、落花生、大豆、クルミ及び小麦)、全般性不安障害、小児肥満、乳幼児の成長障害及び病的状態、免疫媒介性炎症性疾患、アトピー性疾患(小児の喘息及びアレルギーを含む)、クローン病、関節リウマチ及び変形性関節症、早発型子癇前症、1型糖尿病、若年性特発性関節炎、抑うつ、注意欠陥多動障害(ADHD)、B型慢性肝炎、大うつ病性障害、気道アレルギー、多発性硬化症、慢性炎症並びにアルツハイマー病からなる群から選択される少なくとも1つの疾患/有害な状態の危険性があるか又はそれを現在経験している。
【0021】
「予防」は、疾患/有害な状態に到達したことがない状況に限定されない。代わりに、本明細書及び特許請求の範囲の全体を通して使用される場合、それは、疾患/有害な状態又はその症状の重症度を軽減すること;疾患/有害な状態又はその症状の発症を遅延させること;疾患/有害な状態又はその症状に早期に介入すること;及び疾患/有害な状態又は症状が発症する危険性を低減することを含み得る。
【0022】
「直接送達」とは、ビタミン又はPUFAを、ビタミン又はPUFAが胃及び/又は小腸で吸収されずに、むしろ、ビタミン及び/又は組合せが、微生物叢がそれを利用できる遠位腸管、好ましくは大腸に存在するように投与することを意味する。これらのビタミン又はPUFAは、ヒトの通常の1日の栄養要求量(一般に食事及び従来のビタミン又はPUFA補給を通して得られるもの)の一部ではなく、それを上回る量で投与される。ヒトに使用する場合の好ましい方法は、腸管に到達するまで送達を遅延させる形態を介した方法である。非ヒト動物について、好ましい送達は、送達されたビタミン又はPUFAの一部のみが胃で吸収され、有効用量である残部が腸管で利用できるような十分に多い用量を投与する方法を含み、好ましくはないが、この送達方法は、ヒトにも使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1A】インビトロ実験1における、ビタミン投与後のディアリスター属(Dialister)の相対存在比である。対照と比較した24時間後の発酵上清中のディアリスター属(Dialister)の存在比のlog10倍率変化を示す。
【
図1B】インビトロ実験2における、ビタミン投与後のディアリスター属(Dialister)の相対存在比である。対照と比較した24時間後の発酵上清中のディアリスター属(Dialister)の存在比のlog10倍率変化を示す。
【
図1C】ヒト試験における、ビタミン投与後のディアリスター属(Dialister)の相対存在比である。ヒト試験において結腸を標的とするビタミンを投与した後の糞便中のディアリスター属(Dialister)の相対存在比を示す。
【0024】
[疾患/有害な状態]
本発明の他の実施形態は、動物、好ましくはヒトの腸内細菌叢に直接送達するために製剤化されたPUFA又はビタミンの使用において、送達時、PUFA又はビタミンは、腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させることを特徴とする使用である。好ましくは、ビタミン及び/又はビタミンの組合せは、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択される。
【0025】
幾つかの実施形態において、ディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させる必要があるヒトを含む動物は、過敏性腸症候群、自閉症スペクトラム障害、カルシウム吸収不全、食物アレルギー及び感作(乳、卵、落花生、大豆、クルミ及び小麦)、全般性不安障害、小児肥満、乳幼児の成長障害及び病的状態、免疫媒介性炎症性疾患、アトピー性疾患(小児の喘息及びアレルギーを含む)、クローン病、関節リウマチ及び変形性関節症、早発型子癇前症、1型糖尿病、若年性特発性関節炎、抑うつ、注意欠陥多動障害(ADHD)、B型慢性肝炎、大うつ病性障害、気道アレルギー、多発性硬化症、慢性炎症並びにアルツハイマー病からなる群から選択される疾患又は状態の危険性があるか又はそれを経験しており、ディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数は、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択されるビタミン又はPUFAを投与することによって増加される。
【0026】
本発明の他の実施形態は、腸内細菌叢に直接送達するために製剤化されたPUFA及び/又はビタミンの非治療的使用において、送達時、PUFA及び/又はビタミンは、動物、好ましくはヒトの腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させることを特徴とする非治療的使用である。好ましくは、PUFA又はビタミンは、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択される。
【0027】
本発明の他の実施形態は、直接送達するために製剤化される医薬の製造におけるビタミン又はPUFAの組合せの使用において、送達時、ビタミン又はPUFAの組合せは、動物、好ましくはヒトの腸内細菌叢におけるディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させることを特徴とする使用である。好ましくは、PUFA又はビタミンは、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択される。
【0028】
幾つかの実施形態において、PUFA又はビタミンは、過敏性腸症候群、自閉症スペクトラム障害、カルシウム吸収不全、食物アレルギー及び感作(乳、卵、落花生、大豆、クルミ及び小麦)、全般性不安障害、小児肥満、乳幼児の成長障害及び病的状態、免疫媒介性炎症性疾患、アトピー性疾患(小児の喘息及びアレルギーを含む喘息)、クローン病、関節リウマチ及び変形性関節症、早発型子癇前症、1型糖尿病、若年性特発性関節炎、抑うつ、注意欠陥多動障害(ADHD)、B型慢性肝炎、大うつ病性障害、気道アレルギー、多発性硬化症、慢性炎症並びにアルツハイマー病からなる群から選択される疾患又は状態の危険性があるか又はそれを経験している動物又はヒトのディアリスター属菌(Dialister spp.)の菌数を増加させるために、β-カロテン、ビタミンA、ビタミンD、ビタミンB5、ビタミンB2、ビタミンB2及びビタミンCの組合せ、ビタミンK、DHA、EPA並びにEPA及びDHAの組合せからなる群から選択されるビタミン又はビタミンを投与することによって使用される。
【0029】
上述のビタミン及びビタミンの組合せは、単独の活性剤として投与され得るか、又は従来使用されているプレバイオティクス、プロバイオティクス、腸内細菌叢を調節することができる他の成分及び従来の医薬品若しくは栄養剤と組み合わせて投与され得る。したがって、DHAを単独の活性剤として選択することができ;EPAを単独の活性剤として選択することができ;ビタミンKを単独の活性剤として選択することができ;β-カロテンを単独の活性剤として選択することができ;ビタミンAを単独の活性剤として選択することができ;ビタミンDを単独の活性剤として選択することができ;ビタミンB5を単独の活性剤として選択することができ;ビタミンB2を単独の活性剤として選択することができ;ビタミンB2及びビタミンCの組合せを単独の活性剤として選択することができ;又はEPA及びDHAの組合せを単独の活性剤として選択することができる。
【0030】
[動物]
「動物」は、哺乳動物、家禽類、好ましくはヒトを含む。好ましい非ヒト動物は、伴侶動物であり、イヌ、ネコ及びウマを含む。農業上重要な動物の中でも、好ましい動物は、家禽類、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ及びウマを含む。
【0031】
[投与量]
本明細書において使用する投与量は、一般的な栄養目的で摂取される活性成分に追加されるものを意図する。代わりに、これらは、腸内細菌の腸内細菌叢環境全体に属、種及び菌株レベルで作用する。この活性剤は、ヒトを含む動物によって直接代謝されることを意図したものではない。むしろ、これらは、結腸の細菌集団に利用されることが意図される。したがって、以下に報告する量は、動物によって通常の食餌に加えて摂取されることになるが、その放出が遅延されるため、動物に直接利用されない。
【0032】
好適な1日あたりの投与量は、以下の通りである:
リボフラビン:1日あたり最大200mg;好ましくは1日あたり1~85mg;より好ましくは1日あたり70~80mg。一実施形態では、1日あたり約75mgが使用される。好ましくは、リボフラビンは、結腸内でのその局所濃度が少なくとも0.05g/L、好ましくは少なくとも0.1g/L、より好ましくは0.125g/Lとなるような量で投与される。結腸内での好ましい局所濃度は、約0.1g/L~約0.5g/L又は約0.1g/L~約0.2g/Lの範囲であり、好ましくは約0.125g/Lである。好ましい1日あたりの投与量の1つは、最大200mgであり得る。
【0033】
β-カロテン:1日あたり最大150mg(追加範囲)。好ましくは、β-カロテンは、結腸内でのその局所濃度が少なくとも0.1g/L、好ましくは少なくとも0.15g/L、最も好ましくは少なくとも0.2g/Lとなるような量で投与される。結腸内での好ましい局所濃度は、約0.05g/L~約0.4g/L、より好ましくは約0.15g/L~約0.25g/Lの範囲である。1日あたりの好ましい投与量の1つは、最大150mgである。
【0034】
ビタミンB5:1日あたり最大1500mg(追加範囲)。好ましくは、ビタミンB5は、結腸内でのその局所濃度が少なくとも1g/L、好ましくは少なくとも1.5g/L、最も好ましくは少なくとも2g/Lとなるような量で投与される。結腸内での好ましい局所濃度は、約0.5g/L~約4g/L、より好ましくは約1.5g/L~約2.5g/Lの範囲である。1日あたりの好ましい投与量の1つは、最大1500mgである。
【0035】
ビタミンC:1日あたり最大2000mg;好ましくは1日あたり400~600mg;より好ましくは1日あたり450~550mg。好ましくは、アスコルビン酸は、結腸内でのその局所濃度が少なくとも0.05g/L、好ましくは少なくとも0.1g/L、最も好ましくは少なくとも0.8g/Lとなるような量で投与される。結腸内での好ましい局所濃度は、約0.05g/L~約1.5g/L、より好ましくは約0.5g/L~約1g/L、最も好ましくは約0.8g/L~約0.9g/Lの範囲である。1日あたりの好ましい投与量の1つは、最大2000mgである。
【0036】
ビタミンD3:1日あたり最大250マイクログラム;好ましくは1日あたり5~80マイクログラム;より好ましくは1日あたり15~25マイクログラム。
【0037】
ビタミンK:1日あたり最大10,000マイクログラム、好ましくは1日あたり80~140マイクログラム、より好ましくは1日あたり100~120マイクログラム。一実施形態において、1日あたり110マイクログラムが投与される。
【0038】
DHA及びEPAの組合せ:1日あたり最大5,000mg。DHA対EPAの比は、重要ではない。一実施形態において、EPA対DHAの比は、天然の魚油又は藻油に見られる組合せの比と同じであり得る。他の非限定的な提供可能な比は、10~1:1~10のDHA対EPAの比を含む。
【0039】
DHA:1日あたり最大1000mg;好ましくは1日あたり80~120mg;より好ましくは90~110mg。一実施形態において、約100mgが使用される。
【0040】
EPA:1日あたり最大1800mg、好ましくは1日あたり最大80~120mg;より好ましくは1日あたり最大90~110mg。一実施形態において、1日あたり約100mgが使用される。
【0041】
ビタミンB2及びCの組合せに関して、ビタミンB2対Cの比は、重要ではない。一般に、ビタミンCの量は、B2の量よりもはるかに高く、例えば、ビタミンCは、500mg~1000mgであり、ビタミンB2は、1mgである。
【0042】
遅延放出製剤を使用して直接送達を行うために、投与量は、好ましくは、1日1回摂取されるが、必要に応じてより少ない用量で複数回(即ち半分の用量で1日あたり2回又は1/3の用量で1日あたり3回)摂取され得る。
【0043】
動物がヒトではない場合に一般的に行われるように腸に直接送達するのではなく、高用量で投与される場合、その投与量は、推奨用量の少なくとも約10倍又は更に20倍であり得、例えば1日の推奨用量が5mgである場合、ビタミン及び/又はPUFAを結腸に存在させるために、50mg又は100mgの量が好ましくは食品、剤形又は飼料中で投与される。ヒトの場合、より高い投与量に調整することが必要となり得る。
【0044】
この用量の摂取を例えば少なくとも1週間、好ましくは少なくとも2週間、より好ましくは少なくとも1ヵ月間の期間にわたって継続することが好ましい。この用量は、必要に応じて、長期間にわたり毎日摂取され得る。
【0045】
[製剤]
好適な製剤は、ビタミン/PUFAの数種の一部が正常に吸収されるが、残部が腸内の腸内細菌叢で有効量において利用できるような十分に高い投与量を含み得る。他の製剤としては、坐剤又は注射剤などの非経口経路を介したものが挙げられる。好ましい製剤は、経口用遅延放出製剤である。
【0046】
本明細書において使用される「遅延放出」とは、活性剤が投与直後よりも遅れて放出されることを指す。好ましくは、「遅延放出」は、経口投与後、活性剤が、大腸、好ましくは結腸に、即時放出製剤と比較して遅れて送達されることを意味する。
【0047】
「腸溶性層」は、芯物質を取り囲む層であり、芯物質は、活性剤を含み、層は、胃液に対する耐性を付与する。「腸溶性シェル」は、活性剤を取り囲むか又は封入しているシェル又はマトリックスであり、シェルは、胃液に対する耐性を付与する。代わりに、マトリックスに基づく送達系を使用することもできる。マトリックスに基づく系は、別個の被覆材料の層が存在せず、活性剤は、マトリックス中にある程度均質に分布している。更に、例えば、繊維マトリックス(酵素に応答する)に活性剤が埋め込まれており、最外層が腸溶性被覆である結腸放出系がある。
【0048】
ヒトのための好ましい実施形態において、本発明の製剤は、経口投与のための固体剤形である。この製剤は、小腸の前、好ましくは結腸の前で活性剤が放出されることを防止するための遅延放出性被覆又はシェルで任意選択的に被覆されたカプセル剤、ペレット、ビーズ、球体、小球体、錠剤、小型錠剤又は顆粒剤の形態であり得る。
【0049】
経口投与により活性剤を遅延放出させるため、特に回腸又は大腸内で標的化放出させるための被覆、シェル又はマトリックス材料は、当技術分野において知られている。これらは、特定のpHを超えると崩壊する被覆材料、消化管内で特定の滞留時間が経過した後に崩壊する被覆材料及び腸の特定の領域の微生物叢に特有の酵素に応答して崩壊する被覆材料に細分することができる。異なる種類に分類されている被覆又はシェル材料を組み合わせて使用することは、一般的である。大腸に標的化するための被覆又はシェル材料のこれらの3つの異なる種類については、例えば、Bansal et al.(Polim.Med.2014,44,2,109-118)に概説されている。本発明の一実施形態において、遅延放出性被覆は、pH依存的に崩壊する被覆材料、時間依存的に崩壊する被覆材料、腸内環境(例えば、回腸及び大腸の腸内環境)におけるトリガー酵素に応答して崩壊する被覆材料及びこれらの組合せから選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0050】
pH依存的に崩壊する被覆材料としては、ポリビニルアセテートフタレート、トリメリット酸酢酸セルロース、フタル酸ヒドロキシプロピルメチルセルロースHP-50、HP-55又はHP-55S、酢酸フタル酸セルロース、シェラック、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネート(HPMCAS)、ポリ(メタクリル酸-アクリル酸エチル)1:1(Eudragit(登録商標)L100-55、Eudragit(登録商標)L30D-55)、ポリ(メタクリル酸-メタクリル酸メチル)1:1(Eudragit(登録商標)L-100、Eudragit(登録商標)L12.5)、ポリ(メタクリル酸-メタクリル酸メチル)1:2(Eudragit(登録商標)S-100、Eudragit(登録商標)S12,5及びEudragit(登録商標)FS30D)が挙げられる。
【0051】
時間依存的に崩壊する被覆材料としては、Eudragit(登録商標)RL、Eudragit(登録商標)RS及びエチルセルロースが挙げられる。
【0052】
大腸環境内の酵素トリガーに応答して崩壊する被覆材料としては、コンドロイチン硫酸、ペクチン、グアーガム、キトサン、イヌリン、ラクツロース、ラフィノース、スタキオース、アルギン酸塩、デキストラン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アラビノガラクタン、シクロデキストリン、プルラン、カラギーナン、スクレログルカン、キチン、カーデュラン、レバン、アミロペクチン、デンプン、アミロース、難消化性デンプン及びアゾ結合を切断する細菌により分解されるアゾ化合物が挙げられる。
【0053】
一実施形態において、製剤は、活性剤を含む組成物が充填された腸溶性カプセルを含む。腸溶性カプセルは、胃の酸性環境に対する耐性を付与する。例えば、ソフトゲル製剤は、活性剤を溶液で送達することができ、且つ固形剤形の利点をなおも提供することができる。ソフトゲルカプセルは、水に溶解しにくい疎水性の活性剤に特に適している。ビタミンK及びオメガ-3脂肪酸は、ソフトゲルカプセル剤として製剤化するのに好ましい。
【0054】
他の実施形態において、製剤は、(i)活性剤を含む芯物質、及び(ii)腸溶性被覆などの遅延放出性被覆を含む錠剤である。これは、ハードゲルカプセルであり得る。
【0055】
活性剤の放出は、小腸まで遅延させることができる。他の実施形態において、活性剤の放出は、遠位小腸まで遅延される。更なる他の実施形態において、活性剤の放出は、結腸まで遅延される。
【0056】
以下の非限定的な例により、本発明をよりよく説明する。
【0057】
[実施例]
[実施例1]
[インビトロ発酵試験1]
[ドナー及びサンプル調製]
この回分式腸発酵培養の開始時、以下を含む(g/l)改変栄養培地に全ての試験成分を原液から添加した:K2HPO4(2.5)、KH2PO4(10.9)、NaHCO3(2)、酵母エキス(2)、ペプトン(2)、ムチン(1)、システイン(0.5)、Tween 80(2)、グルコース(2)、デンプン(2)、セロビオース(2)、NaCl(0.1)、MgSO4.7H2O(0.01)、CaCl2.6H2O(0.01)、ヘミン(0.05)、胆汁酸塩(0.5)。
【0058】
以下の化合物を、水中で調製したビタミンB2及びB9の原液並びにエタノール中で調製したビタミンK1、DHA及びEPAの原液から添加した。
【0059】
【0060】
各化合物を3つの異なる濃度で試験した。微生物群の供給源として、ドナーから採取直後に調製した糞便懸濁液を反応器に加えた。各反応器は、70mlの容量を有した。空試験以外の全ての試験を1連で実施した。培養条件は、37℃の嫌気性条件下で48時間振盪(90rpm)するものとした。
【0061】
[測定]
微生物組成:本試験を通して回収した全ての発酵サンプルから、QIAamp DNA stool minikit(Qiagen、Crawley、United Kingdom)を使用し、先に述べられているようにビーズ破砕ステップを追加したこと及び溶解温度を95℃まで昇温したことを除いて、製造業者の指示に従って全DNAを抽出した。DNAを単離した後、Qubit High Sensitivity DNA assay(Thermo Fisher)を使用してDNAを定量した。次いで、Illumina Nextera XTキット(Illumina)を製造業者の指示に従って使用し、以下の改変を行って全メタゲノムライブラリーを調製した:第1に、タグメンテーション時間を7分間に延長し、第2に、インデックス付加及び生成物のAmpure精製後、サンプルをAgilent High Sensitivity Chip(Agilent)上で電気泳動することによってそれぞれ個々にサイズ確認し、Qubit High Sensitivity DNA assay(Thermo Fisher)を使用して、Teagasc Sequencing Platform SOPに従って定量した。次いで、サンプルを等モル量でプールし、Illumina NextSeq 500でNextSeq 500/550 v2高出力試薬キット(300サイクル)を用いてシーケンシングを行った。全てのシーケンシングは、Teagascシーケンシング設備において、標準的なIlluminaシーケンシングプロトコルに従って実施した。納品されたFASTQ形式の生配列ファイルを以下の通り品質チェックした:SAM及びPicardツールの組合せを使用して、低品質及び重複リードを削除すると共に、トリミングを行った。Metaphlan2ソフトウェアを使用して、リードを分類群に当てはめた。
【0062】
[実施例2]
[インビトロ発酵試験2]
[ドナー及びサンプル調製]
この回分式腸発酵培養の開始時、以下を含む(g/l)改変栄養培地に全ての試験成分を原液から添加した:K2HPO4(2.5)、KH2PO4(10.9)、NaHCO3(2)、酵母エキス(2)、ペプトン(2)、ムチン(1)、システイン(0.5)、Tween 80(2)、グルコース(2)、デンプン(2)、セロビオース(2)、NaCl(0.1)、MgSO4.7H2O(0.01)、CaCl2.6H2O(0.01)、ヘミン(0.05)、胆汁酸塩(0.5)。
【0063】
以下の化合物を、水中で調製した原液から添加した:
β-カロテン、
ビタミンB3、
ビタミンB5、
ビタミンB7、
フルクトオリゴ糖(陽性対照)。
【0064】
各化合物を3つの異なる濃度で試験し、概要を以下の表2に示す。微生物群の供給源として、ドナーから採取直後に調製した糞便懸濁液を反応器に加えた。各反応器は、70mlの容量を有した。空試験以外の全ての試験を1連で実施した。培養条件は、37℃の嫌気性条件下で48時間振盪(90rpm)するものとした。
【0065】
【0066】
[測定]
微生物組成:培養開始時及び24時間培養後にIlluminaシーケンシングを実施した。この技法は、遺伝子全体に可変領域及び保存領域が分散している構造を有する16S rRNA遺伝子を標的とするものである。これは、タンパク質発現において重要な役割を果たすため、保存領域は、非常に遅い進化速度によって特徴付けられる。
【0067】
適用される方法論は、16S rRNA遺伝子の2つの超可変領域(V3-V4)に及ぶプライマーを伴う。ペアエンドシーケンス手法を用いて2×250bpをシーケンシングすることにより、424bpのアンプリコンを生成する。このような断片は、より短い断片よりも多くの分類学的情報を含む。Illuminaシーケンシングで解析したサンプルを、全細菌細胞数を決定するためにフローサイトメトリーでも分析し、それによりIlluminaで得られた相対値を絶対量に換算した。サンプルは、BDFacs verseで分析した。サンプルは、高流速で流した。SYTOチャネルで閾値を200に設定して、細菌細胞を培地の残滓及びシグナルノイズから分離した。全ての集団を測定するために、親細胞及び娘細胞に適切なゲートを設定した。
【0068】
[実施例3]
[臨床試験]
[ヒト対象]
6つのビタミン群にそれぞれ12人の参加者を割り付け、24人の参加者をプラセボ群に割り付けた。96人の参加者全員が介入を完了した。以下を満たす参加者を本試験の登録適格者とする:同意説明文書を提出できること;年齢が20歳以上50歳以下であること;BMIが18.5~30Kg/m2であること;過去3ヵ月間にわたり体重が安定していること(変化率<5%);試験責任医師により健康状態が概ね良好と判断されていること;ベースライン来院前の4週間以内に栄養補助食品、プレバイオティクス、プロバイオティクス、栄養又は繊維豊富な補助食品を摂取しておらず、試験終了時までこれらの補助食品を控える意思があること;試験期間にわたりレバーの摂取を控える意思があること;試験期間にわたり各自の現時点の水準の身体活動を維持する意思があること;及び試験期間にわたり毎日IPを摂取する意思があること。以下に該当する参加者は、除外された:通常の繊維摂取量が>30g/日である;妊娠中であるか若しくは妊娠を計画している;禁止されている投薬治療を受けた;過去3ヵ月間にわたり食事内容が大きく変化したか、若しくは生活スタイルを大きく変えることを計画している;過去60日以内に試験に参加した;又は責任医師が試験の目的に影響を及ぼすであろうと見なした病気が継続しているか若しくは既往症がある。
【0069】
本試験手順は、Cork Teaching Hospitalsの臨床研究倫理委員会により承認され(プロトコル番号:AFCRO-087)、ヘルシンキ宣言に準拠して実施した。各対象は、試験に組み込まれる前に同意説明文書を提出した。この試験は、clinical trials.govにID:NCT03668964で登録された。
【0070】
[試験設計]
本試験は、無作為化二重盲検プラセボ対照並行試験であり、対象は、ビタミン補助剤又はプラセボのいずれかを4週間にわたり投与された。来院は、3回であった:1)スクリーニング;2)ベースライン(スクリーニングの1週間後)、及び3)追跡調査(ベースラインの4週間後)。スクリーニング来院(来院1)では、同意説明を行い、病歴聴取及び身体検査を含む適格性を評価した。適格な参加者は、1週間の導入期間に入り、極端なダイエットを控えるように指導された。参加者は、毎日eDiaryに記録し、無作為化来院の48時間前に糞便サンプルを採取した。無作為化来院前に、参加者の通常の繊維摂取量が<30g繊維/日であることを確認するために、食物摂取頻度調査票を分析した。この基準を満たさなかった参加者又は他の適格性基準を満たさなかった参加者を除外した。
【0071】
ベースライン来院(来院2)では、参加者に、来院前の48時間以内に採取した糞便サンプルを返却させ、適格性を評価した。適格な参加者を組み入れて無作為化番号を割り付け、7つの群の1つから4週間分の治験薬(IP)を渡した。割り付けに関して、参加者及び研究スタッフの両方が盲検化された。参加者は、GSRS及びSF-36の質問票に記入した。血液サンプルを採取し、施設内で-80℃において保管した。参加者は、極端なダイエットを控え、各自毎日eDiaryに記入し、以後4週間にわたり毎日1カプセルずつ摂取するように指導された。
【0072】
最終来院(来院3)では、参加者に、来院前48時間以内に採取した糞便サンプルを返却させた。参加者は、GSRS及びSF-36の質問票に記入した。血液サンプルを採取し、施設内で-80℃において保管した。参加者にIPを返却させ、遵守を評価した。
【0073】
[治験薬]
治験薬は、以下の通りであった:
1)ビタミンA(レチノール当量(RE)250μg/日)、
2)ビタミンC(アスコルビン酸500mg/日)、
3)ビタミンB2(75mg/日)+ビタミンC(500mg/日)、
4)ビタミンD3(コレカルシフェロール60μg/日)、又は
5)微結晶セルロース200mg/日(プラセボ)。
【0074】
ビタミン類は、全てDSM Nutritional Products Ltd(Kaiseraugst、Switzerland)により提供されたものであり;プラセボは、Fagron(Waregem、Belgium)から入手した。治験薬は、結腸を標的とする送達に有効であることが確認されている(Cole et al.,2002)pH依存性ポリマーであるEudragit S100(Evonik Nutrition&Care GmbH、Darmstadt、Germany)を使用して被覆したハードゼラチンカプセルとして、結腸放出形態で製剤化した(Lonza、Bornem、Belgium)。選択された用量は、過去の研究におけるビタミンの高用量の経口送達に基づき(de Vries et al.,2006;Lakoff et al.,2014;Cantarel et al.,2015;Steinert et al.,2016;Tang et al.,2016)、各ビタミンの推定腸管吸収量(Graf,1980;Basu及びDonaldson,2003;Gropper et al.,2004;Reboul,2013)を差し引いた。上限値が規定されていないビタミンB2を除いて、全ての用量を、EFSAにより発表されている上限値未満とした(https://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/assets/UL_Summary_tables.pdf)。
【0075】
[測定]
糞便の微生物組成:DNA抽出及びシーケンシングは、インビトロ発酵試験1の発酵サンプルに用いたものと同じ方法を用いた。
【0076】
[結果]
・インビトロ実験1(
図1A):
ディアリスター属(Dialister)の相対存在比のビタミンB9による明らかな増加は、見られなかった。対照的に、ビタミンB2、並びに特にビタミンK1並びに多価不飽和脂肪酸であるEPA及びDHAを投与すると、試験した全ての濃度で24時間後のディアリスター属(Dialister)の相対存在比が対照と比較して大幅に増加した。
【0077】
・インビトロ実験2(
図1B):
ディアリスター属(Dialister)の相対存在比のビタミンB3及びB7による明らかな増加は、見られなかった。対照的に、試験した全ての濃度のβ-カロテン並びに0.2倍及び5倍のビタミンB5の投与により、ドナーCのディアリスター属(Dialister)の相対存在比が増加した。これらの増加は、プレバイオティクスであるFOSで見られた増加と同等であった。
【0078】
・ヒト試験(
図1C):
ビタミンA、ビタミンD3並びにビタミンB2及びCの組合せを4週間にわたり投与することにより、ディアリスター属(Dialister)の相対存在比がプラセボと比較して増加した。これは、ビタミンCで観測されたものとは対照的であった。
【国際調査報告】