IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ヘリオゾニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特表-湾曲面へのレーザ印刷 図1
  • 特表-湾曲面へのレーザ印刷 図2
  • 特表-湾曲面へのレーザ印刷 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】湾曲面へのレーザ印刷
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/48 20060101AFI20230726BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230726BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20230726BHJP
   B41J 2/455 20060101ALI20230726BHJP
   B41J 2/447 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
B41J2/48
B41M5/00 120
B41M5/00 100
C09D11/02
B41J2/455
B41J2/447 101P
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022579761
(86)(22)【出願日】2021-06-08
(85)【翻訳文提出日】2022-12-22
(86)【国際出願番号】 EP2021065231
(87)【国際公開番号】W WO2022002534
(87)【国際公開日】2022-01-06
(31)【優先権主張番号】20183337.3
(32)【優先日】2020-07-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】322002676
【氏名又は名称】ヘリオゾニック ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ウド レーマン
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン レーベルマン
(72)【発明者】
【氏名】フランク バルター
【テーマコード(参考)】
2C162
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C162AE25
2C162AE28
2C162AE37
2C162AE47
2C162FA04
2C162FA15
2H186AB11
2H186AB26
2H186DA01
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB48
2H186FB57
4J039AB02
4J039AD07
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE07
4J039BA04
4J039BE01
4J039EA04
4J039EA42
(57)【要約】
本発明は、インク層を有するインク担体を有する可動印刷ヘッドを備えたインク印刷アセンブリを用いることにより、湾曲面部分を有する基板を印刷する方法であって、インク層は、インク液滴の分離を引き起こす熱膨張がインク層内に形成されるように領域的に照射され、インク印刷アセンブリがインク層からインクの液滴を噴射するノズルレス液滴噴射器として作用し、印刷ヘッドと基板の湾曲部分との間の距離は、並進移動の3自由度を印刷ヘッドに与えることによって印刷ヘッドを基板に対して移動させることによって調節され、水平方向Tx、垂直方向Tg及び深さ方向Tzの並進移動が可能となる、方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク層を有するインク担体を備える可動印刷ヘッドを有する、インク印刷アセンブリを用いることにより、湾曲面部分を有する基板を印刷する方法において、
前記インク層は、インク液滴の分離を引き起こす熱膨張が前記インク層内で形成されるように領域的に照射され、前記インク印刷アセンブリが前記インク層からインクの液滴を噴射するためのノズルレス液滴噴射器として作用し、
前記印刷ヘッドと前記基板の前記湾曲面部分との間の距離は、並進移動の3自由度を前記印刷ヘッドに与えることによって前記印刷ヘッドを前記基板に対して移動させることによって調節され、水平方向(Tx)、垂直方向(Tg)及び深さ方向(Tz)の並進移動が可能となる、方法。
【請求項2】
前記インク層は、レーザによって照射され、より詳細には、スイッチレーザによって照射される、ことを特徴とする請求項1に記載の印刷方法。
【請求項3】
前記インク担体と前記インク層を互いに平行に移動させる、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷方法。
【請求項4】
前記印刷ヘッドには、2つの垂直な軸線に沿った回転(Rx、Ry)を可能にすることによって、前記印刷ヘッドの配向を支持しかつ保証する、2つの回転自由度が追加的に設けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項5】
前記スイッチレーザは、単一の光波長で作用するレーザとして設計されている、請求項2~4のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項6】
前記インク担体と接触している前記インク層は、噴射される前記インクの流量が調節可能となるように、可変厚さで生成される、ことを特徴とする請求項2~5のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項7】
噴射された前記インクの流量は、前記照射の強度の変動によって、より詳細には前記レーザ出力の変動によって調節可能である、請求項2~6のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項8】
前記インク層は、吸収粒子及び/又は反射粒子、及び、重量平均(Mw)分子量が250000g/molよりも大きい可溶性ポリマーを有し、前記可溶性ポリマーの分子量の重量平均(Mw)は、DIN55672-2:2016-3に従って決定される、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項9】
前記可溶性ポリマーは、250000g/mol~2500000g/molの重量平均(Mw)分子量を有する、ことを特徴とする請求項8に記載の印刷方法。
【請求項10】
前記可溶性ポリマーの割合が、全インク混合物の0.05重量%~2重量%を占める、ことを特徴とする請求項8又は9に記載の印刷方法。
【請求項11】
前記吸収粒子がカーボンブラックを含有するかカーボンブラックからなる、ことを特徴とする請求項8~10のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項12】
印刷後のインクが乾燥又は熱硬化させられ、かつ/又は、2つ以上のインク層が重畳して塗布される、ことを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の印刷方法。
【請求項13】
10μmを超えるウェットコーティングの厚さとの組合せで、mm2当たり5つの飛沫未満のサテライト生成率が達成される、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法によって印刷される湾曲面部分を有する基板。
【請求項14】
自動車部品によって提供される、請求項13に記載の基板。
【請求項15】
印刷装置において、
前記印刷装置は、
ノズルレス液滴噴射器と、
移動可能な印刷ヘッドと、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法を実行するために構成される、水平(Tx)、垂直方向(Tg)及び深さ(Tz)並進移動を可能にするように、並進移動の3自由度を提供するように前記印刷ヘッドを移動させるための装置とを備える、印刷装置。
【請求項16】
前記印刷ヘッドを移動させるための装置が、前記印刷ヘッドと接続されたアームを有するロボットとして設けられている、請求項15に記載の印刷装置。
【請求項17】
前記印刷ヘッドを移動させるための装置は、2つの垂直軸線に沿った回転(Rx、Ry)を可能にすることによって、前記印刷ヘッドの配向を支持しかつ保証する、2つの回転自由度を付加的に提供する、請求項15又は16に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湾曲面部分を有する基板上に印刷するための方法、印刷される基板、及び、使用される印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの場合、物体の湾曲面、特に自動車の湾曲面に塗装したり印刷したりすることが望まれる。
【0003】
特殊な印刷機が利用可能でない場合には、基板をマスキングを外した単純なスプレー塗装で十分な結果が得られうる。このために、スプレー塗装用のマスキングテープが使用されている。湾曲した縁部及び三次元表面をマスキングする必要がある場合、非常にレベルの高い適合性を有する特殊な微細線テープを使用する場合がある。
【0004】
しかしながら、接着残留物を残さずにかつその後に取り除くことができる関連する良好な接着性を基板上に提供する、マスキングテープを提供することは困難であることが頻繁にある。さらに、例えば自動車部品上に文字のフレームを設けるなどの、基板のマスキングは、時間がかかり、時間的に効率的であると見なすことができない。この方法のさらなる欠点は、オーバースプレーとして知られる塗装された塗料の一部は、塗装されるべき基板の部分上に着地せず、マスキング材料上に着地するように、塗装効率が最適でないことである。
【0005】
従って、効率を高めるために、物体の湾曲面にインクジェット印刷を行うための複雑な印刷装置が使用されることが頻繁にある。上記の印刷装置は、典型的には、複数のノズルを有するインクジェット印刷ヘッドを有し、また、ノズルと基板を相対的に移動させるように作動するものもある。
【0006】
特許文献1(米国特許出願公開第2011/02626号明細書)及び特許文献2(米国特許第10150304号明細書)は、車両部品を塗料で塗装するための上記の印刷機のタイプを提案している。前記の印刷機のタイプは、前記コーティング剤を塗布する塗布装置を備え、この塗布装置は、前記印刷ヘッドに含まれる複数のコーティング剤ノズルから前記コーティング剤を放出する印刷ヘッドを備える。
【0007】
しかしながら、この複雑な印刷機は、コーティングノズルが必要であるため、使用の柔軟性と効率に関して最適ではない。コーティングノズルの使用は、一般に、流動学及び使用される塗料の成分に関する制限を意味する。一般に、高粘度の塗料又は塗料を含むより大きな粒子をノズルを通して印刷することは困難である。さらに、インクノズルが詰まりやすくなり、インクの変化時にはノズルの洗浄が必要になる。これにより、上記の印刷機の普遍的かつ実用的な使用をさらに制限する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2011/02626号明細書
【特許文献2】米国特許第10150304号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/145300号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、本発明によって解決すべき課題は、物体の湾曲面上に選択的に印刷する方法を提供することである。印刷結果は高品質であるべきでありかつ印刷方法は効率的であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題の解決策は、インク層を有するインク担体を備える可動印刷ヘッドを備えるインク印刷アセンブリを用いることにより、湾曲面部分を有する基板を印刷する方法において、インク層は、インク液滴の分離を引き起こす熱膨張がインク層内で形成されるように領域的に照射され、インク印刷アセンブリがインク層からインクの液滴を噴射するためのノズルレス液滴噴射器として作用し、印刷ヘッドと基板の湾曲部分との間の距離は、並進移動の3自由度を印刷ヘッドに与えることによって印刷ヘッドを基板に対して移動させることによって調節され、水平方向(Tx)、垂直方向(Tg)及び深さ方向(Tz)の並進移動が可能となる、方法である。
【0011】
ノズルレス液滴噴射とは、関連する印刷機構に応じたインクノズルを使用しないことをいう。
【0012】
並進移動に3自由度を有し、これは、水平軸線、垂直軸線及び深さ軸線に沿った並進移動を可能にすることによって、印刷アセンブリを位置決めするために使用され、これにより、著しく湾曲した基板上にさえも、鋭い縁部を有する印刷ができる。
【0013】
本発明の印刷方法により、物体の湾曲面上、特に自動車の湾曲面上で鋭い縁部で塗装するか又は印刷することができる。効率が高くなるように、関連する基板が印刷前にマスキングを外される必要はない。
【0014】
本発明の印刷方法は、印刷ノズルの使用を回避するので、さらなる利点が生じる。作用するノズルレス(Working nozzleless)とは、例えば、高粘度の塗料又はより大きな粒子含有塗料も印刷することが可能であるため、印刷方法の柔軟性及び普遍性を増すことを意味する。関連するノズルレス印刷により、印刷されたインクの色に変わりやすくなる。
【0015】
また、転写されたインク液滴の周囲にサテライトが形成されることを回避できると言うべきである。
【0016】
本発明の印刷方法によって、湾曲した基板上にも鋭い縁部を有する印刷が可能となることを指摘すべきである。
【0017】
新しいコーティング方法にはノズルがないため、ノズルによる解像度の制限はない。この本発明の技術により、高粘度で大きな粒子を有するインクを、問題なく高印刷解像度で印刷することができる。
【0018】
この本発明のノズルレスデジタル印刷技術は、高いコーティングの厚さと組み合わせて、500μm未満又は200μm未満又は100μm未満の印刷ドットサイズの印刷解像度を達成する。ウェットコーティングの厚さは、10μmを超え、より好ましくは20μmを超える。「ウェットコーティングの厚さ」は重量測定法で決定される。「ドライコーティングの厚さ」は正確に測定するのが難しくなる(例:光学顕微鏡による長さ測定)。(最終製品の)ドライコーティングの厚さと(印刷直後の)ウェットコーティングの厚さとの差は、その乾燥(溶媒の除去)中のインク層の収縮に依存する。実際には、ドライコーティングの厚さは、典型的には、対応するウェットコーティングの厚さの約5%~50%である。
【0019】
関連する高い印刷品質は、低い「サテライト生成率」(印刷画像の外の飛沫)という特徴もある。サテライト生成率は、顕微鏡によるサテライトの計数(飛沫の計数)を介して決定される。関連するサテライトの生成率は、mm2当たり5つの飛沫未満であり、印刷画像の外側の0mm~1mmの距離(領域とみなす)であり、0mmの距離は、印刷画像の縁部として定義されるべきであり、1cm2の対応する全基準領域を参照して(サテライトの生成率の)算術平均であり、光学顕微鏡によって検出可能でありかつ少なくとも1つの寸法において10μmより長い長さを有する飛沫のみが計数される。より小さな飛沫は、一般に印刷品質に関しわずかな影響しか及ぼさないことに言及すべきである。
【0020】
従って、本発明は、上述のような方法によって印刷される湾曲面部分を有する基板であって、10μmを超えるウェットコーティングの厚さとの組合せで、mm2当たり5つの飛沫未満のサテライト生成率が達成される、基板を提供する。
【0021】
本発明の方法の印刷機構
典型的には、インク層は、好ましくは線毎にインク担体を通ってインク層を領域的に加熱するレーザによって加熱され、その結果、インクは、特に、気化成分によって加熱され、膨張を形成する。
【0022】
使用されるレーザは、特に、スイッチレーザとしうる。一実施形態によれば、レーザは、印刷画像を形成する格子状のドットを生成する。別の実施形態によれば、レーザは線で移動する。ドットと線の組み合わせも同様に考えられる。
【0023】
要約すると、インク層は、通常、レーザによって照射され、より詳細には、スイッチレーザによって照射される。
【0024】
インク層は、形成されたインク粒子が分離されて基板の方向に投げ出されるように加熱される。
【0025】
インクの分離は、インク転写の方法であり、特に、インク液滴が基板上に行き、インク液滴が基板永久的に付着し、印刷されたドット又は印刷された線を形成する方法である。
【0026】
この付着は、好ましくは、主に、より好ましくは排他的に、基板と形成されるインク液滴との間の接着力によって行われる。
【0027】
しかし、膨張が基板上に付着し、その結果、基板上に行く液滴を形成するように、磁力又は静電力を利用することも少なくとも支持機能においては考えられる。
【0028】
一般に、インク担体及びインク層は、互いに平行に移動させられる(典型的には、インク層は、循環するインクリボン上に存在する)。
【0029】
通常、基板及びインク担体は、典型的には印刷速度の約半分に相当する速度で互いに相対的に移動させられる。
【0030】
印刷速度は、1秒当たりの走査印刷線数に印刷線幅を乗じたものとして定義するべきである。
【0031】
これにより、きれいな印刷画像と高解像度を達成することができる。
【0032】
印刷アセンブリの位置決めは、2つの回転自由度を提供する特殊な結合によって追加的に支持しうる。次いで、印刷ヘッドには、典型的には、2つの回転自由度が設けられ、これにより、2つの垂直な軸線に沿った印刷ヘッドの回転(Rx、Ry)を可能にすることによって、印刷ヘッドの配向を支持しかつ保証する。
【0033】
使用されるスイッチレーザは、通常、単一光波長で作用するレーザとして設計されるが、光強度及びスイッチング周波数に関して可変性を提供する。
【0034】
インクリボンをインクでコーティングすることにより、インク層を形成することができる。これは、特に、インク層を製造するためにインク装置、より詳細にはニップインク装置を通って案内される、循環リボンで構成することができる。
【0035】
インク担体と接触する前記インク層は、噴射されるインクの流量が調節可能であるように、可変厚さで(無段階で)生成されうる。(インクリボン上の)インク層の厚さは、通常30μmを超える必要がある。
【0036】
典型的には、噴射されるインクの流量は、照射の強度の変動、より詳細にはレーザ出力の変動によって(無段階に)調節可能である。
【0037】
本発明の方法により、厚さ1μm~100μm、好ましくは10μm~50μmのインク層を基板に塗布することができる。
【0038】
好ましい実施形態では、インク層は、吸収粒子と、250000g/molを超える重量平均(Mw)分子量を有する可溶性ポリマーとを有し、可溶性ポリマーの分子量の重量平均(Mw)は、DIN55672-2:2016-3に従って決定される。
【0039】
本発明の好ましい実施形態によれば、250000g/molを超える分子量Mwを有する可溶性ポリマーが、インク層に使用されるインクの溶媒に添加剤として添加される。
【0040】
分子量の前記重量平均(Mw)は、DIN55672-2:2016-3に従って決定され、N,N-ジメチルアセトアミドを溶出溶媒として使用される。
【0041】
追加の実用的な測定詳細、特にPSS-SDV-ゲル(マクロポーラススチレン-ジビニルベンゼン共重合体ネットワーク)カラムの使用。(さらに)特に、4つのPSS‐SDV‐ゲル(マクロポーラススチレン‐ジブニルベンゼン共重合体ネットワーク)カラムの組合せの使用。寸法:カラム当たり300mm×8mm内径。粒径:5μm又は10μm。孔径:1×105Å;1×104Å;1×103Å;1×500Å。
【0042】
溶媒に溶解性のあるポリマーを添加することで、サテライト(飛沫)の形成のリスクを大幅に低減できることが明らかになっている。
【0043】
このことは、理論とは関係なく、修正されたインクの部分のより大きな弾力性を含む要因によるものと考えられる。
【0044】
可溶性ポリマーの割合は、本発明の一実施形態によれば、全インク混合物の0.05重量%~2重量%である。可溶性ポリマーの割合は、好ましくは、全インク混合物の0.05重量%を超えかつ/又は1重量%未満、典型的には0.1重量%を超えかつ/又は0.8重量%未満である。
【0045】
好ましい可溶性ポリマーは、一般に、高い分子量を有しかつ使用される溶媒中では可溶性であるようなものである。
【0046】
本発明の1つの好ましい実施形態に従って使用される可溶性ポリマーは、セルロースエステル、硝酸セルロース、セルロースエーテル、より具体的にはヒドロキシプロピルセルロース、ポリウレタン又はビニルポリマーを有する。特にヒドロキシプロピルセルロース、言い換えると、ヒドロキシル基の一部がヒドロキシプロピル基を有するエーテルとして連結されているセルロースエーテルは、本発明の効果に特に適していると思われる。しかしながら、ポリエーテル(例えばポリエチレングリコール)、ポリアクリレート(例えばポリアクリル酸)、又は天然高分子(例えばアルギン酸をベースとする)などの他の種類の可溶性ポリマーを使用することもできる。適切な溶媒又は溶媒混合物を、関連するポリマーが可溶性であるように選択しなければならないことを考慮に入れるべきである。典型的には、(重合可能なビニル単量体などの単量体に基づいて)(極性)有機溶媒が使用しうる。しかし、特殊な用途には水も有利な溶媒であろう。
【0047】
約250000g/mol~約1500000g/molの平均分子量Mwの可溶性高分子の低レベル混合は、インクの印刷挙動に好ましい影響を及ぼすことが分かっている。
【0048】
これらの混和剤は、インクの弾力性と呼ばれるものを修正する。下側のMw範囲(Mw:10000g/mol~約100000g/mol)の周りの可溶性高分子の混和剤は、厚化効果があるだけで、わずかな飛沫防止特性しかない。(1500000g/molを超える)より高いMw値を有するポリマーは、これ以上の飛沫防止特性の改善をもたらさないのと対照的に、溶解性をさらに妨げるだけである。したがって、2500000g/mol未満、より好ましくは1500000g/mol未満の分子量(Mw)を有するポリマーを使用することが好ましい。
【0049】
要約すると、可溶性ポリマーは、一般に、250000g/mol~2500000g/molの重量平均(Mw)分子量を有し、好ましくは、可溶性ポリマーの割合は、全インク混合物の0.05重量%~2重量%を占める。
【0050】
好ましい一実施形態によれば、吸収粒子はカーボンブラックを含むか、又はカーボンブラックからなる。
【0051】
しかしながら、上記の純粋な吸収粒子の代わりに又はに加えて、反射性粒子も使用しうる。上記の反射性粒子は、レーザビームに関して、特に使用されるレーザの波長範囲、より詳細には300nm~3000nmの範囲においても吸着特性を有するべきである。しかしながら、カーボンブラック粒子などの吸収粒子とは対照的に、反射粒子は可視波長スペクトルに関する反射特性も有する。
【0052】
使用されるレーザの波長、より詳細には300nm~3000nmに対して高い反射を有する粒子を使用することができる。
【0053】
例えばカーボンブラックなどの従来技術から知られている吸収粒子とは対照的に、反射粒子は、インク層によって搬送される着色印象に対して実質的に中間しうる。
【0054】
使用し得る粒子は、まず、例えば、金属の粒子又は金属コーティング担体材料の粒子である。これらの粒子は、ミラーリング表面に基づいて反射を生じる。特に、効果色素、好ましくは光沢色素と呼ばれるものを用いることができる。
【0055】
反射粒子は、特に、1を超える重量%かつ/又は10重量%未満の量でインク層に使用されるインクに添加することができる。
【0056】
更に、透明な粒子を使用して、全反射によってミラーリング効果を展開させることができる。光学的干渉コーティングを有する粒子を使用することもできる。
【0057】
粒径は、レーザ回折測定によって決定することができる。これは、例えば、レーザサイズアナライザShimadzu(登録商標)のSALD-2201を測定器として使用して行うことができる。
【0058】
このようにして、特に効果的な吸収を達成することができる。
【0059】
高い反射効果を達成するために、50を超える、好ましくは70を超える、より好ましくは80を超えるL*a*b*色空間においてL*値を有する粒子を使用しうる。
【0060】
さらに、粒子は、中間色としうる。一実施形態では、L*a*b*色空間内の粒子は、+/-30のa*及び/又はb*値を有する。使用は、特に、+/-5未満、好ましくは+/-3のL*a*a*b*色空間においてa*及び/又はb*値を有する粒子で使用することができる。
【0061】
反射性粒子は、典型的には、アスペクト比が50を超え、通常、平均粒子厚さPTは80+3PS未満である(PS:平均粒径、値(単位:mm)、PT:平均粒子厚さ、値(単位:nm))。
【0062】
反射性粒子の多くは、アスペクト比が25を超え、PTは80+3PS未満である。
【0063】
粒径分布は、製造業者の表示に従って、またISO13320-1に従って、Helos又はBRのマルチレンジ(Sympatec社)装置を用い、レーザ散乱粒径分布により測定する。粒径分布を測定する前に、攪拌下で粒子をイソプロパノールに溶解する。粒径関数を、球相当の体積重み付き累積度数分布としてフラウンホーファー近似で計算した。中央値d50は、測定された粒子の50%が(体積平均分布で)この値を下回っていることを意味する。d50値を平均粒径とする。粒径は反射電子顕微鏡(REM)を用いて決定する。電子顕微鏡法で通常使用される樹脂、例えば、TEMPFIX(登録商標)(独国のD-48031のミュンスターのゲルハルト・ノイバウアー・ケミカルズ社)は、試料板に塗布され、加熱板上で軟化するように加熱される。続いて、試料板を加熱板から採取し、測定すべき試料を軟化樹脂上に散乱させる。厚さの測定において、色素の方位角αは、表面に垂直な平面に対して推定され、式に従って厚さを評価するときに考慮される。
eff=Hmes/cosα
【0064】
累積度数曲線は、出現の相対頻度を援用してHeff値からプロットした。少なくとも約100個の粒子が計数され、Heffの平均値が平均粒子の厚さとして取得される。
【0065】
L*a*b*色空間における値は、DTM1045(登録商標)の分光光度計を用い、15°~25°の角度で測定した。
【0066】
典型的には、印刷後のインクは、乾燥させられるか、又は熱硬化させられ、かつ/又は、2つ以上のインク層が重畳して塗布される。
【0067】
本発明は、また、上述のような方法によって印刷される湾曲面部分を有する基板を対象とする。
【0068】
前記基板は、自動車部品によって提供しうる。しかしながら、基板は、任意の他の本体のタイプ、特に機械(例えば、航空機又は船舶)又は機械部品に基づきうる。例えば、金属、人工材料、石材、用紙又は木材などの、基板本体の関連材料に関する制限はない。
【0069】
また、本発明は、ノズルレス液滴噴射器と、可動印刷ヘッドと、水平(Tx)、垂直方向(Tg)及び深さ(Tz)並進移動を可能にする、3つの並進移動の自由度を提供するように前記印刷ヘッドを移動させるための装置とを有する印刷装置であって、上述したような方法を実施するように構成されている、印刷装置に関する。
【0070】
典型的には、印刷ヘッドを移動させるための装置は、印刷ヘッドと接続されたアームを有するロボットとして提供される。
【0071】
特別な実施形態によれば、印刷ヘッドを移動させるための装置は、さらに、2つの垂直な軸線に沿った回転(Rx、Ry)を可能にすることによって、印刷ヘッドの配向を支持しかつ保証する2つの回転自由度を提供する。
【0072】
特許文献3(国際公開第2019/145300号)において、異なるインク噴射機構を提供する印刷装置が記載されている。印刷ヘッドの一般的な原理は類似しているが、この印刷装置は平坦な表面での印刷にのみ使用できる。以下に実際に前記印刷装置との対照を示すことで、本発明に係る印刷装置の動作方法を図面によって示す。
【図面の簡単な説明】
【0073】
図1図1は、印刷ヘッドの例示概略断面である。
図2図2は、空間制御された印刷ヘッドの概略図である。
図3図3は、湾曲した基板上への印刷の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図面による印刷システムでは、典型的には、以下の構成要素が関連する。インクリボン、インク、エネルギビームプロジェクタ、エネルギビーム、インク装置、書き込み線、三次元表面、印刷ヘッド、印刷されたインク。
【0075】
筒状のインク担体(1)は、印刷すべきインク(2)を有する、特別に設計されたインク装置(5)によって、完全かつ継ぎ目なくコーティングされる。インク担体(1)内に配置されたエネルギビームシステム(3)は、エネルギビーム(4)が閉じた線(6)をアドレス指定できるように、エネルギビーム(4)をアドレス指定する。情報が、エネルギビーム(4)が印刷されるべき情報と同時にオン又はオフに切り替わり、エネルギビームは書き込み線上でアドレス指定されるように印刷される。1つ又は複数のエネルギビーム(4)をこの目的のために使用することができる。エネルギビーム(4)は、書き込み線(6)を横切って連続的に移動(走査)させることができ、又は、配列を使用することによって、書き込み線(6)を1つのステップで完全にアドレス指定し、エネルギビーム(4)によって書き込むこともできる。
【0076】
これにより、インク装置(5)は、インク担体(1)上の使用済みインク(2)を交換することができる。
【0077】
三次元表面上の印刷方法
印刷ヘッド(8)は、書き込み線(6)と三次元表面(7)との間の合計距離が可能な限り小さくなるが、印刷ヘッド(8)と三次元表面(7)との間の接触がないように、三次元表面(7)上を移動させられる。次いで、印刷ヘッド(8)は、三次元表面(7)上を軸線に沿って移動させられる。全体の状態は、1つの軸線における移動中に常に変化しうるので、印刷ヘッド(8)は、3つの空間軸線X、Y、Zの全てにおいて、また場合によっては空間軸線X、Y、Z上の回転によって、可能な移動によって常に追跡されなければならない。
【0078】
それにもかかわらず、印刷ヘッド(8)は、このようにして、変形した三次元表面(7)に概ね最適に調節することしかできない。これにより、三次元表面(7)の曲率半径に応じて、均質な色膜を転写するための条件が常に変化することになる。これを補償するために、印刷ヘッド(8)は、書き込み線(6)に沿ってエネルギビーム(4)の強度を変化させることによって、異なる量のインクを転写することができる。異なる量のインクの転写により、変化する程度にインク担体(1)に直接的にインク供給することによっても達成することができ、その結果、インク膜勾配がインク担体(1)の表面上に作られる。
【0079】
本発明は、以下の印刷例によって追加的に示される。
本発明の典型的な印刷の方法は、以下の通りである。
約0,25%の高分子量エチルセルロース
約3%のポリビニルブチラール(PVB)
約6%のカーボンブラック
約4%の分散添加剤(例えば、DisperBYK102)
約87%の溶媒(例えば、メトキシプロパノール)
【0080】
次いで、この混合物を用いて、30μm~40μmの厚膜で印刷ヘッドをコーティングする。次いで、この印刷ヘッドを異なる距離で基板に移動させ、レーザがインクを印刷する。ここで重要なのは、例えば、追加することにより、飛沫の数を減らすことである。サテライト生成に関する結果(ウェットコーティングの厚さは約30μm)
【表1】
図1
図2
図3
【国際調査報告】