(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】電気機械的な滅菌分離
(51)【国際特許分類】
A61B 90/40 20160101AFI20230726BHJP
A61B 46/10 20160101ALI20230726BHJP
【FI】
A61B90/40
A61B46/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580152
(86)(22)【出願日】2021-06-25
(85)【翻訳文提出日】2023-02-15
(86)【国際出願番号】 EP2021067533
(87)【国際公開番号】W WO2021260191
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】102020116769.5
(32)【優先日】2020-06-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
【住所又は居所原語表記】Am Aesculap-Platz, 78532 Tuttlingen Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローランド-アロイス ヒューゲル
(72)【発明者】
【氏名】トーステン ケトレール
(57)【要約】
本開示は、滅菌分離のための滅菌分離要素(1)に関し、滅菌分離要素は、プラグ接続部/電気機械ロック(2)のプラグコネクタ(10、11)の間に配置されるように設けられ、従って、プラグコネクタ(10、11)の滅菌分離を提供する。電気機械ロック(2)は、少なくとも1つの電気接続ピン(9)を有し、少なくとも1つの電気接続ピン(9)は、滅菌分離要素(1)が少なくとも1つの電気接続ピン(9)の全周にわたって防菌的に直接フィットするように、滅菌分離要素(1)を個々に貫通する。よって、少なくとも1つの電気接続ピン(9)は、接続される少なくとも2つのライン(5)の対応する電気プラグソケット(12)と電気機械接続または導電プラグ接続するように設けられ構成された2つの自由ピン端部を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
好ましくはフレキシブルで、さらに好ましくはカバーシートまたは分離シートの形態である、平坦な滅菌分離要素(1)と、
前記滅菌分離要素(1)の一方側である非滅菌側の少なくとも1つの電気ライン(5)を前記滅菌分離要素(1)の他方側である滅菌側の少なくとも1つの電気ライン(5)に電気的に接続するために、前記滅菌分離要素(1)に一体化される、または挿入可能/配置可能な電気機械ロック(2)であって、前記電気機械ロック(2)が少なくとも1つの電気接続ピン(9)を有し、前記少なくとも1つの電気接続ピン(9)は、前記滅菌分離要素(1)が前記少なくとも1つの電気接続ピン(9)の全周にわたって防菌的に直接フィットするように、前記滅菌分離要素(1)を個々に貫通する、電気機械ロック(2)と、を備え、
前記少なくとも1つの電気接続ピン(9)は、接続される少なくとも2つの前記ライン(5)の対応する電気ピンおよび/またはプラグソケット(12)と電気機械接続または電気伝導プラグ接続するように設けられ構成された2つの突出する自由ピン端部を有することを特徴とする、滅菌バリア。
【請求項2】
前記滅菌分離要素(1)は、ホイル状、ドレープ状、および/または板状であることを特徴とする、請求項1に記載の滅菌バリア。
【請求項3】
前記電気機械ロック(2)は、少なくとも1つの第1のモジュールハウジング(10)を有する電気機械カップリングモジュールを形成し、
前記第1のモジュールハウジング(10)は、少なくとも1つの前記電気接続ピン(9)の一方の前記自由ピン端部が自由に突出する滅菌分離要素当接側面または当接表面を有することを特徴とする、請求項1から2のいずれか一項に記載の滅菌バリア。
【請求項4】
前記第1のハウジングは、前記当接側面と対向するハウジング側において、少なくとも1つの前記電気接点ピン(9)の他方の前記自由ピン端が突出し、少なくとも1つの前記プラグソケット(12)が挿入可能な挿入シャフトを形成することを特徴とする、請求項3に記載の滅菌バリア。
【請求項5】
前記電気機械カップリングモジュールは、中空円筒の形態の第2のモジュールハウジング(11)を有し、
前記第2のモジュールハウジング(11)が、軸方向に連続した挿入シャフトを囲み、
前記滅菌分離要素(1)を既に貫通した少なくとも1つの前記接続ピン(9)の前記自由端部が前記第2のモジュールハウジング(11)の前記挿入シャフト内に突出するように、一端面において前記滅菌分離要素(1)に当接するように設けられて構成され、他端面において、少なくとも1つの他の前記ライン(5)の前記プラグソケット(12)が挿入可能であることを特徴とする、請求項3から4のいずれか一項に記載の滅菌バリア。
【請求項6】
一方側、特に前記非滅菌側のピン端部またはピン端部セクションは、ケーブルの雌型プラグソケットに接続されるように構成され適合された雄型プラグを形成することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の滅菌バリア。
【請求項7】
一方側、特に前記滅菌側のピン端部またはピン端部セクションは、ケーブルの雄型プラグに接続されるように設けられた雌型プラグソケットを形成することを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の滅菌バリア。
【請求項8】
前記雄型プラグと前記雌型プラグソケットは、相補的な形状であることを特徴とする、請求項6および7に記載の滅菌バリア。
【請求項9】
平行に離間された複数の接続ピン(9)が設けられ、
対応する数の接続ソケット(12)は、前記滅菌分離要素(1)の少なくとも一方側に設けられ、好ましくは、組み合わされて単一のプラグ(8、13)を形成することを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の滅菌バリア。
【請求項10】
前記第1のモジュールハウジング(10)または前記プラグ(13)は、外部物、特に手術台に固定されるように設けられ構成されたホルダ(6)を有するように構成される、または装備可能であることを特徴とする、請求項9に記載の滅菌バリア。
【請求項11】
医療機器と、前記医療機器のためのエネルギー源と、請求項1から11のいずれか一項に記載の滅菌バリアと、を有するシステムであって、
前記滅菌バリアは、好ましくはシート状またはホイル状の滅菌分離要素(1)において、前記医療機器と前記エネルギー源との間で中間プラグの形態で配置されたロック(2)を有する、システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えばシートまたはホイル(ドレープとも呼ばれる)などのカバー要素または分離要素と、その要素に一体化されたまたは一体化可能である/取り付け可能である電気機械的な防菌ロックであって、非滅菌側の配線から滅菌側の配線へ電気エネルギーおよび/または電気制御信号を送るための防菌ロックと、を有する滅菌バリアに関し、特に、請求項1のプレアンブルに記載の滅菌バリアに関する。
【背景技術】
【0002】
手術室でのデジタル化が進むことに伴って、電気駆動外科用モータシステムの電子機器やソフトウェアの統合が増える。電子要素は、多大な手間と制限を伴って滅菌されるしかないため、基本的な目的は、例えば、滅菌エリア(制限なしに再処理可能であり、外科医によって制限なしに操作可能な器具)および非滅菌エリア(再処理に重要であり、外科医によって触れられてはならない器具)において、外科用ドライブを提供する、または分離することである。この概念の利点の1つは、外科用ドライブの必須部分が非滅菌エリアに移されるため、外科医が最小限の質量(体積)を扱わなければならないことである。これらの2つのエリア(滅菌エリア/非滅菌エリア)は、一方では、手術前に電気機械的に接触させられなければならず、他方では、手術中に交互に接触解除/接続解除され、他の滅菌エリアと再び接触させられなければならない。この作業は、滅菌要件に従って、手術台にいる滅菌作業員によって行われるのが理想である。こうするには、現在の外科衛生要件に適合され、確実に実行可能な滅菌分離概念が必要である。
【0003】
添付の
図3は、滅菌バリアによって分離され、本開示のために提供され得る、滅菌エリアと非滅菌エリアの一般的な配置を示す。
【0004】
例えば、アクチュエータまたは保持装置を含むロボット100は、ドレープ101によって周囲の滅菌エリアSから遮蔽された非滅菌エリアUに配置される。ドレープは、少なくとも2つの通路/開口部102、103を有し、そのうちの一方の通路102は、ロボット100の保持アームのための通路開口部として構成されており、他方の通路103は、非滅菌エリアU内の非滅菌ケーブルセクション(図示せず)に滅菌エリアS内の滅菌ケーブルセクション104を接続するように構成されている。この目的のために、コネクタ装置105が提供される。この場合、滅菌エリアS内のケーブルは、例えば、ロボット100を制御するための制御部106に接続される。
【0005】
他の基本的な適用例としては、例えば、非滅菌エリア内の制御モジュールまたはロボットアームに滅菌エリア内の駆動モータを接触させることなどが挙げられる。例えば、いわゆる保護シールドを滅菌モータケーブルに取り付けることが既に知られている。保護シールドは、接続/差し込み工程時または非滅菌制御ユニットへのモータケーブルの差し込み時において、非滅菌コンポーネントとの接触リスクを低減するように配置される。このいわゆる保護シールドは、滅菌保護キャップとも呼ばれる。
【0006】
しかしながら、その重大な欠点は、接続/差し込みを1回行うと、モータケーブルが少なくともそのコネクタエリアで汚染されてしまい、ケーブルを取り外して/抜いて、滅菌エリア内の滅菌器具台に戻すことができなくなることである。これによって、手術中に、異なるドライブが異なる外科ステップに使用されることが防止される。
【0007】
さらに、最新技術では、滅菌エリアと非滅菌エリアを分離し、供給ラインが通過可能なインターフェースまたはポートを備えるカバーシートまたは分離シートの形態の、いわゆる滅菌バリアが存在する。このために、このようなインターフェースは、例えば、必要に応じて対応する通路を形成する開閉可能な多数のフラップを有する。
【0008】
米国特許出願公開第2018/0145443号明細書は、患者の体内で移動可能であり追跡可能な電磁追跡装置に関連する電気コネクタを開示している。それによって、医療環境で使用される多部品電気(プラグ)コネクタシステムでは、コネクタシステムの第1のセクションが、例えば繊維材料からなる成形可能な滅菌バリアを穿孔するように配置され、この配置は、コネクタシステムの第1の部分をコネクタシステムの第2の部分に連結する間に行われる。しかしながら、特に米国特許出願公開第2018/0145443号明細書の
図9、
図11A、および
図11Eから分かるように、提案された穿孔では、各スポットにおいて菌経路が(局所的に)制限されていないことが不利である。開けられた孔における汚染が制限されない結果、以前に存在していたであろう滅菌性は、自然に損なわれてしまう、または終結してしまう。
【0009】
米国特許出願公開第2018/0049833号明細書は、外科用ロボットシステムと共に使用される滅菌バリアを開示している。滅菌バリアは、ロボットアームに接続されたツールドライバと接続し、外科用ツールを取り外し可能に受け入れるように構成されたハウジングを含んでよい。滅菌バリアのハウジングは、ハウジングから延びる滅菌フレキシブル布を有し、ハウジングおよびフレキシブル布は、2つ以上の平面で形成され、外科用ツールが配置される滅菌側と、ツールが配置される非滅菌側と、を画定する。ハウジングは、ツールドライバおよびロボットアームの少なくとも一方に設けられた少なくとも1つの相補電気接続部と動作可能に接続されるように構成された少なくとも1つのピン形状の電気接続部を有してよい。よって、布は、ピン形状の電気接続部をそれぞれ通すように配置された、または構成された予め作られた開口部を有するように形成されている。
【0010】
米国特許出願公開第2016/0058513号明細書は、先行技術で知られている別の滅菌バリアを開示している。ここでは、外科システムが、手術的使用のために外科用器具を取り外し可能に受け入れる座部を有する第1の要素を含む。2つのコネクタであって、他方のコネクタと係合するための電気接続部が設けられた2つのコネクタの少なくとも1つは、他方のコネクタとの電気接続のために、第1の後退停止位置と第2の前進位置との間で制御可能に移動可能であるように適合されている。
【0011】
さらに、本出願人の独国実用新案第202007002332号明細書は、医療用滅菌カバーを開示しており、カバーに設けられた開口部のそれぞれを介して、プラグ接続部が対応するプラグソケットに挿入される。それに関して、密封のために、強固な接着が提案される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本開示の課題は、従来技術の欠点を回避する、または少なくとも軽減することである。特に、例えば電気機械インターフェースなどの、滅菌適用部品と非滅菌手術部品を繰り返し適応/分離するために手術台に存在するインターフェースは、確実で、衛生的で、および/または、費用効果が高くあるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示によれば、この課題は、請求項1の特徴を有する滅菌バリアによって解決される。本開示のさらなる有利な進展は、サブクレームの主題事項である。
【0014】
本開示の核となる概念は、本質的に、例えばシート、ホイル、またはドレープの形態の、シンプルな滅菌分離要素(滅菌バリア)と、滅菌分離要素の一方側から、マンドレルのように滅菌分離要素に挿入でき/差し込むことができ/差し込まれ、滅菌分離要素の他方の側から突出するように配置され構成された少なくとも1つの接続ピンを有する電気機械ロック/カップリングと、を提供することにある。その結果、少なくとも1つの接続ピンが、滅菌分離要素によって防菌的に(近接して/直接的に)取り囲まれる、または、滅菌分離要素が、少なくとも1つの接続ピンの周囲全体にわたって防菌的にフィットし、接続ピンは、例えばプラグソケットまたはプラグを用いて、少なくとも1つの端部/端部セクションにおいて、ラインによって接続され得る。
【0015】
少なくとも1つの接続ピンは、互いに本質的に同様/同一の2つのロッド端部/ピン端部を有してもよく、これにより、対応するソケット形状/スリーブ形状の接続要素を有する、またはそれらから構成される互いに同様/同一の2つのソケットを両側に差し込むことができるということを、この時点ですでに留意されたい。しかしながら、代替的に、特に、好ましくは滅菌分離要素の非滅菌側の一端部が(小径の)ピンとして形成され、好ましくは滅菌分離要素の滅菌側の他端部が(大径の)スリーブ/プラグソケットとして形成されるように、少なくとも1つの接続ピンが、相互に異なる(2つの)ピン端部を有して形成されることも考えられる。このように、滅菌分離要素を貫通する接続ピンに対して、一方側(非滅菌側)では、(大径の)スリーブ形状の接続ピンを有する一種のソケット/プラグソケットが差し込まれてもよく、他方側(滅菌側)では、(小径の)ピン形状を有する一種のプラグ/挿入ピンが差し込まれてもよい。後者は、例えば、通常では(ピン形状の電気接続部を有する)電気ケーブルおよびケーブルプラグが固定される滅菌側の電気医療器具が、追加の(中間)アダプタを介さずに、少なくとも1つの接続ピン(または、そのスリーブ形状のピン端部)に電気的に連結されるという利点を提供する。同じことが、非滅菌側のいわゆる延長ケーブルにも当てはまり、少なくとも1つのスリーブ形状の接続ピンを有する延長ケーブルのそれぞれの一端部のソケットも、アダプタを介さずに、滅菌分離要素に挿入された少なくとも1つの接続ピンのピンとして形成されたピン端部に電気的に連結され得る。
【0016】
好ましくは(代替的に、または累積的に)、少なくとも1つの接続ピンは、滅菌分離要素の一方側で、第1のハウジングにおいて/第1のハウジングによって保持され、第1のハウジングは、プラグソケットおよび/またはプラグのための受入シャフトを形成している、または、少なくとも1つの接続ピンに固定される少なくとも1つのラインが、第1のハウジングから引き出される。ここで、同じタイプの受入シャフトまたはプラグソケットが滅菌分離要素の両側に配置される必要は必ずしもないが、好ましくは、滅菌分離要素の非滅菌側である一方側にプラグを配置し、好ましくは滅菌側である他方側にプラグソケットを配置してよいことにも留意されたい。
【0017】
さらに好ましくは(代替的に、または累積的に)、滅菌分離要素の他方側に第2のハウジングが設けられ、第2のハウジングは、(滅菌中間層としての)滅菌分離要素を介して、第1のハウジングに押し付けられるように構成されており、その結果、少なくとも1つの接続ピンが、滅菌分離要素を突き抜けて、第2のハウジングの内部へ突出する。したがって、さらなるプラグソケットまたはプラグが第2のハウジングに挿入されて、少なくとも1つの接続ピンと接続されるように、第2のハウジングは、好ましくは、受入シャフトとして形成されてよく、さらに好ましくは、接続ピンにおいて、つまり第1のハウジングにおいて、第2のハウジングを保持する。
【0018】
このような設計は、特に、シンプルで、安価で、さらに確実なので、一方向滅菌シートに特に適している。
【0019】
言い換えれば、本開示によると、滅菌分離のための平坦で、好ましくはフレキシブルな滅菌要素が提供される。滅菌分離要素は、プラグ接続/電気機械ロックの第1のプラグコネクタ/ハウジングと第2のプラグコネクタ/ハウジングとの間に配置される、またはそれらの間に嵌合するように設けられる、または形成されており、したがって、プラグコネクタの滅菌分離を提供する、または達成するように設けられる、または形成されている。
【0020】
プラグ接続は、好ましくは、フォースロック接続および/またはフォームフィット接続であってよい。第1のプラグコネクタ/ハウジングと第2のプラグコネクタ/ハウジングとを接続するとき、滅菌分離要素は、好ましくは、プラグコネクタ間に配置されてよく、プラグコネクタ間のプラグ接続の幾何学的形状に実質的に単独で適合する。
【0021】
本明細書において、「滅菌分離」という用語は、特に、滅菌要素が、少なくとも所定の接触点または手動操作/接触のために意図された点において汚染されないように、滅菌要素を非滅菌要素から分離することを意味すると解釈されるべきである。
【0022】
有利な実施形態は、サブクレームでクレームされており、以下でより詳細に説明される。
【0023】
例えば、滅菌分離要素は、折り畳み可能および/またはフレキシブルであってよい。滅菌分離要素は、例えば、使い捨て品として、1回限りの使用(英語では、single-use)のために提供されてもよい。このようにして、確実で衛生的な滅菌分離手段を簡単に提供することができる。
【0024】
プラグ接続は、電気プラグ接続であってよい。プラグ接続のプラグコネクタのうちの一方は、雄型(接続ピン)であり、プラグ接続のプラグコネクタの他方は、雌型(プラグソケット)であってよい。
【0025】
滅菌分離要素は、雄型プラグコネクタ(接続ピン)のいくつかの(または複数の)電気接続部によって貫通されるように設けられる。特に、滅菌分離要素は、雌型プラグコネクタ/プラグソケットと雄型プラグコネクタ(接続ピン)との間で、それらの差し込み工程中に、中間層を形成するように設けられてよい。
【0026】
有利な実施形態では(代替的に、または累積的に)、滅菌分離要素は、使用時に、平坦要素がプラグコネクタのうちの1つの上に折り返し(Stulpe)を形成するように、寸法決めされてもよい。これにより、汚染のリスクを伴わずに、プラグコネクタを容易に把持することができる。
【0027】
例えば(代替的に、または累積的に)、滅菌分離要素に消毒剤を染み込ませてよい。例えば、消毒剤は、アルコール(エタノールまたは2-プロパノール)およびエチル硫酸メセトロニウムに基づいて作られてよい。さらに、消毒剤は、皮膚刺激を引き起こさないように、脂質物質を含んでもよい。したがって、平坦要素は、手指消毒ワイプであってよい。消毒剤はまた、次の1つまたは複数を含んでもよい。酸化剤、過酢酸、過酸化水素、ハロゲン(ヨウ素、塩素化合物)、オゾン、(クロロキシレノール、トリクロサンを含む)フェノール誘導体、アルデヒド(例えば、ホルムアルデヒド)、アルコール、洗浄剤、窒素化合物(例えば、塩化ベンザルコニウム)、および、同様なもの(クロルヘキシジン、オクテニジン、ポリヘキサニド)。したがって、平坦要素自体が、滅菌/無菌であってよい。
【0028】
同様に、好ましくは(代替的に、または累積的に)、滅菌分離要素は、使用時に、プラグコネクタに接続されたケーブルにまで折り返しを形成するように構成されてもよい。これにより、作業者は、プラグコネクタを汚染することなく、プラグコネクタを容易に操作/接続することができる。
【0029】
任意の、または複数の実施形態によれば、滅菌分離要素は、ホイル、ドレープ、またはシートであってよい。滅菌分離要素は、破断耐性を有するように構成されてもよい。少なくとも、平坦要素は、例えば少なくとも1N/mm2または10N/mm2などの、所定の引張力を維持してもよく、すなわち、引張力に耐性を有してもよい。平坦要素はまた、例えば15N/mm2または150N/mm2などの、最大引張力のために構成されてもよい。
【0030】
特に、非滅菌プラグコネクタは、(代替的に、または累積的に)手術台などの外部静止物への取り付けのための取付部を含んでもよい。これにより、作業員は、例えばプラグ接続アダプタまたは平坦要素を用いて、滅菌ケーブルと非滅菌ケーブルとを接続するのに、滅菌部品に触れるだけでよい。
【0031】
本開示は、以下の添付図面を参照して、好ましい実施形態に基づいて、以下により詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】本開示による構成の必須部/コンポーネントを示すための概略図または概略基本構造における、電気機械ロックを有する滅菌分離要素の形態の滅菌バリアの模式図を示す。
【
図2】本開示の第1の好ましい実施形態(2つの自由ピン端部を有する少なくとも1つの電気接続ピンに関する)による、電気機械ロックを有する滅菌分離要素の形態の滅菌バリアであって、特に滅菌分離モジュールとして構成された滅菌バリアの概略図を示す。
【
図3】本開示の第2の好ましい実施形態(2つの自由ピン端部を有する少なくとも1つの電気接続ピンに関する)による、電気機械ロックを有する滅菌分離要素の形態の滅菌バリアであって、特に滅菌分離モジュールとして構成された滅菌バリアの概略図を示す。
【
図4】滅菌エリアおよび非滅菌エリアの一般的な配置/区分を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1は、本開示による構成の必須部/コンポーネントを示すための概略図または概略基本構造で滅菌バリアを示し、当該構成は、好ましくはドレープ状またはシート状の、フレキシブルな滅菌分離要素1(以下では、単に滅菌ドレープと称する)と、滅菌ドレープ1内/滅菌ドレープ1に位置する電気機械ロック2であって、滅菌分離要素1を個々に貫通する少なくとも1つの電気接続ピン9を有する電気機械ロック2と、いくつか/複数のライン/ケーブルからなり、非滅菌エリアでロック2につながる(第1の)ラインバス5と、対応するいくつかの/複数のライン/ケーブルからなり、滅菌エリアでロック2から離れるように延びるさらなる(第2の)ラインバス5と、を有する。
【0034】
具体的には、滅菌ドレープ1は、滅菌エリアを非滅菌エリアから分離するように設けられ構成された防菌布または(防菌)ホイルである。例えば、滅菌エリアは、ロボットアームまたは様々なドライブおよび/または制御デバイス/医療デバイスが配置される手術エリア/手術室であってもよく、これらの機器は、それら自体において非滅菌エリアを構成しており、したがって、防菌的に滅菌エリアから分離されなければならない。この目的ために、そのような非滅菌エリアは、図示される滅菌ドレープ1によって囲まれ/覆われてよいが、例えば、防菌の滅菌バリアを損傷/破壊することなく、非滅菌エリア内の電気装置、エネルギー源、または制御システムが、滅菌ドレープ1を介して、外科用電気駆動ハンドル、照明手段などの滅菌エリア内の(医療技術または外科用)装置と電気的に接続することが保証されなければならない。
【0035】
この基本構造または概略基本構造は、
図4に示される構成に対応し、よって、それに関して、
図1を参照した上記の説明に論及することができる。滅菌状態の維持のために、以下により詳細に記載される、本開示による電気機械ロック2が提供される。
【0036】
原則として、本開示による電気機械ロック2は、いくつかの、好ましくは複数の、接続ピン(ロック接続部)9を有し、これらは、好ましくは第1のハウジング(スリーブ)10内で支持/固定され、ハウジングの一方側(以下、当接側と称する)において、マンドレルの形態で第1のハウジング10から突出する。接続ピン9は、互いに平行な間隔で配置されている。
【0037】
各接続ピン9は、滅菌ドレープ1を突き抜けるように設けられ、および構成/適合される少なくとも1つの自由ピン端部/自由突出ピン端部または自由端セクションを有する。この目的のために、接続ピン9の一方のピン端部は、例えば、尖っている、または鋭利であってもよく、または、接続ピン9のそれぞれは、滅菌ドレープ1を引き裂くことなく、滅菌ドレープ1を貫通することができるくらいの小さな直径を有する。ここで重要なのは、非常に小さい穿孔が形成されるため、滅菌ドレープ1がピンの全周にわたって防菌的にフィットすることによって、貫通した接続ピン9が取り囲まれるということである。
【0038】
好ましくは、例えば、滅菌エリア内に配置された電気医療技術デバイス/外科用デバイスまたは同様の作業機器のバッテリを制御するための電子機器4などの、制御電子機器が第1のハウジング10内に既に配置されていてよい。この場合、滅菌エリア内の各電気医療技術デバイス/外科用デバイスには、例えば第1のロックハウジング10内に既に存在するデバイス固有の制御要素または電源等を有する、デバイス固有のロック2が割り当てられる。
【0039】
図1に示されるさらなる部分的な開示態様によれば、少なくとも1つの電気接続ピン9は、滅菌分離要素1の滅菌側または非滅菌側において、少なくとも1つのライン5の対応する電気プラグソケット12と電気機械接続または電気伝導プラグ接続するように設けられ構成された自由ピン端部を有し、その一方で、少なくとも他のライン5が、滅菌分離要素1の他方側で、他方のピン端部においてしっかりと接続される。したがって、ライン(ケーブル)が、各接続ピン9の他方の自由ピン端部または他方の自由端セクションに固定され、これらのライン(ケーブル)は組み合わさってラインバス(ケーブルハーネス)5を形成し、このラインバス(ケーブルハーネス)は、当接側と対向するハウジングの側に設けられたハウジング開口を通して外部へ導かれる。次に、このケーブルハーネス5は、滅菌エリア内で、対応する医療デバイス(さらに図示せず)に電気的に連結される。
【0040】
そして、(
図1に示されるように)一般的には、ホルダ6が第1のハウジング10に配置/構成されてもよく、例えば、ロック2だけでなく滅菌ドレープ1も定常的に保持するために、ホルダ6によって、第1のハウジング10が手術台などの(静止)固定物に固定されてもよい。
【0041】
第1のハウジング10と反対の滅菌ドレープ1の側には、中空の略円筒形/管状形を有する第2のハウジング11が示されており、第2のハウジング11の一端面は、滅菌ドレープに当接し、滅菌ドレープ1は、第1のハウジング10と第2のハウジング11との間に挟まれている。よって、(滅菌ドレープ1をすでに押し通った)接続ピン9の一方の自由ピン端部/端部セクションは、中空円筒形の第2のハウジング11の内部へ突出する。
【0042】
接続ピン9のこれらの自由ピン端部は、接続ソケット12と電気プラグ接続するように設けられ構成されており、接続ソケット12にもライン/ケーブルが取り付けられ、これらのライン/ケーブルは、一緒になって、滅菌ドレープの他方側のケーブルハーネス5同等のケーブルハーネス5を形成する。これらのプラグソケット12が接続ピン9の自由ピン端部/端部セクションに差し込まれると、プラグソケット12が、滅菌ドレープの他方側に位置する第1のハウジング10の当接側に滅菌ドレープ1を押し付けて、ロックアセンブリ全体を保持する。
【0043】
ここで、
図1で別個に示されている接続ソケット12を組み合わせて、中空円筒形の第2のハウジング12に合う形状のプラグを形成し、それを差し込むことができるようにしてもよいことに留意されたい。
【0044】
図2は、本開示の第1の実施形態を示し、以下では基本的に、
図1の例とは異なる設計特徴が論じられる(したがって、他のすべての上記説明は、本開示による第1の実施形態にも適用される)。この点で、同じコンポーネントについては、同じ語および参照番号が使用される。
【0045】
本例では、
図1による(第2のハウジング11による)第1のハウジング10とは対照的に、第1のハウジング10は、いくつかのプラグソケットまたはプラグソケットが組み合わせられたプラグ13のための挿入シャフトも形成し、プラグ13は第1のハウジング10の挿入シャフトに適合される。すなわち、
図2の本開示による第1の実施形態(または変形例)では、
図1に示される固定ライン接続部3が追加のプラグ接続部に置き換えられており、したがって、本例では、接続ピン9は、対応するライン/ケーブルとのプラグ接続のために設けられ構成された2つの自由ピン端部/端部セクションを有する。
【0046】
さらに、
図2の本開示による第1の実施形態では、ロック2を(静止した)固定物に固定するためのホルダ6は、第1のハウジング10に配置/構成されず、プラグ13に配置/構成される。そのため、
図2の本開示による第1の実施形態では、
図1に示されるプラグソケット12の代用物/代替物として、前述されたプラグ8もここで図式的に示される。
【0047】
要するに、本開示は、滅菌分離のための滅菌分離要素1に関し、滅菌分離要素は、プラグ接続/電気機械ロックのプラグコネクタ10、11との間に配置され、従って、プラグコネクタ10、11の滅菌分離を提供するように設けられる。
【0048】
図3に、本開示の第2の実施形態が少なくとも概略的に示されており、以下では、第1の実施形態との相違点のみがより具体的に説明される。
【0049】
図2から分かるように、接続ピン9は、滅菌分離要素1の両側で挿入端部を形成する均一なロッドとして構成され、これらは、ソケットのような挿入ソケットにプラグのように挿入可能である。これは、両側に構成された電気/電気機械ロック2のプラグと接触係合可能なソケットを滅菌分離要素1の両側に設けなければならないことを意味する。
【0050】
しかしながら、医療用電気機器は、通常、単純な接続ピンを有するプラグが既に取り付けられた電気ケーブルを既に備えていることが分かっている。これらを
図2のロック2に接続するためには、追加のアダプタが設けられなければならない。そのような追加のコンポーネントを回避するために、本開示の第2の実施形態では、少なくとも滅菌分離要素1の滅菌側において、少なくとも1つの接続ピン9の端部がスリーブ/プラグソケットの形態で構成されており、滅菌分離要素1の滅菌側のロック2が、例えば
図1に示されるように、少なくとも1つの単純な接続ピンを有するプラグを挿入可能な一種のソケットを形成する。この変形例は、
図2の変形例に対して、医療器具にすでに存在するプラグをロック2と直接プラグ接続させることができるという利点を有する。
【0051】
本開示の部分的なさらなる態様によれば、特に、本出願の主題ではないが、後の分割出願において請求され得る
図1の概略図(特に、自由ピン端部と、対応するラインにしっかりと接続された別のピン端部と、を有する少なくとも1つの電気接続ピンの特徴に関して)を参照すると、目的は、以下の特徴または特徴の組合せによって(代替的に)解決される。
【0052】
(さらなる部分的な態様による第1の実施形態)
好ましくはカバーシートまたは分離シートの形態の、平坦な滅菌分離要素(1)と、滅菌分離要素(1)の一方側である非滅菌側の少なくとも1つの電気ライン(5)を滅菌分離要素(1)の他方側である滅菌側の少なくとも1つの電気ライン(5)に電気的に接続するために、滅菌分離要素(1)に一体化される、または挿入可能/配置可能な電気機械式ロック(2)と、を備える滅菌バリアであって、電気機械ロック(2)は、滅菌分離要素(1)が少なくとも1つの電気接続ピン(9)の全周にわたって防菌的に直接フィットするように、滅菌分離要素(1)を個々に貫通する少なくとも1つの電気接続ピン(9)を有し、少なくとも1つの電気接続ピン(9)は、滅菌分離要素(1)の滅菌側または非滅菌側において、少なくとも1つのライン(5)の対応する電気プラグソケットおよび/または電気ピン(12)と電気機械接続または電気伝導性プラグ接続するように設けられ構成された自由突出ピン端部を有し、滅菌分離要素(1)の他方側では、少なくとも他のライン(5)が他方のピン端部にしっかりと接続されることを特徴とする、滅菌バリア。
【0053】
(さらなる部分的な態様による第2の実施形態)
滅菌分離要素(1)が、ホイル状、ドレープ状、および/または板状であることを特徴とする、さらなる部分的な態様による第1の実施形態の滅菌バリア。
【0054】
(さらなる部分的な態様による第3の実施形態)
電気機械ロック(2)は、少なくとも1つの第1のモジュールハウジング(10)を有する電気機械カップリングモジュールを形成し、少なくとも1つの第1のモジュールハウジング(10)は、少なくとも1つの電気接続ピン(9)の一方の自由ピン端部が自由に突出する滅菌分離要素当接側面または当接表面を有することを特徴とする、さらなる部分的な態様による先行の第1または第2の実施形態のいずれかに記載の滅菌バリア。
【0055】
(さらなる部分的な態様による第4の実施形態)
第1のハウジングは、当接側面と対向するハウジング側で閉じられており、滅菌分離要素(1)の滅菌側または非滅菌側で少なくとも1つの接続ピン(9)にしっかりと接続される少なくとも1つのライン(5)のための通路開口部を有することを特徴とする、さらなる部分的な態様による第3の実施形態の滅菌バリア。
【0056】
(さらなる部分的な態様による第5の実施形態)
電気機械カップリングモジュールは、中空円筒の形態の第2のモジュールハウジング(11)を有し、第2のモジュールハウジングは、軸方向に連続する挿入シャフトを囲み、滅菌分離要素(1)を既に貫通した少なくとも1つの接続ピン(9)の自由端部が第2のモジュールハウジング(11)の挿入シャフト内に突出するように、一端面において滅菌分離要素(1)に当接するように設けられて構成され、他端面において、少なくとも1つの他のライン(5)のプラグソケット(12)が挿入可能であることを特徴とする、さらなる部分的な態様による先行の第3から第4の実施形態のいずれかによる滅菌バリア。
【0057】
(さらなる部分的な態様による第6の実施形態)
平行に離間された複数の接続ピン(9)が設けられ、対応する数の接続ソケット(12)は、滅菌分離要素(1)の少なくとも一方側に設けられ、接続ソケット(12)は、組み合わされて単一のプラグ(8、13)を形成することを特徴とする、さらなる部分的な態様による先行の第1から第5の実施形態のいずれかによる滅菌バリア。
【0058】
(さらなる部分的な態様による第7の実施形態)
第1のモジュールハウジング(10)またはプラグ(13)は、外部物、特に手術台に固定されるように設けられ構成されたホルダ(6)を有するように構成される、または装備可能であることを特徴とする、さらなる部分的な態様による第6の実施形態の滅菌バリア。
【符号の説明】
【0059】
1 :滅菌分離要素/滅菌ドレープ/ドレープ
2 :電気機械ロック/滅菌分離モジュール
3 :固定ライン接続部/接点
4 :電子機器
5 :ケーブルハーネス/ラインバス
6 :ホルダ
8、13:プラグ
9 :接続ピン/ロック接点
10 :第1のハウジング/プラグコネクタ
11 :第2のハウジング/プラグコネクタ
12 :プラグソケット
【国際調査報告】