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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】アポトーシス耐性細胞株
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/10 20060101AFI20230726BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20230726BHJP
   C12N 15/33 20060101ALI20230726BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230726BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230726BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20230726BHJP
   C12N 15/09 20060101ALN20230726BHJP
【FI】
C12N5/10 ZNA
C12N15/12
C12N15/33
C12N1/15
C12N1/19
C12N15/86 Z
C12N15/09 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580157
(86)(22)【出願日】2021-06-23
(85)【翻訳文提出日】2023-01-31
(86)【国際出願番号】 US2021038574
(87)【国際公開番号】W WO2021262783
(87)【国際公開日】2021-12-30
(31)【優先権主張番号】63/043,545
(32)【優先日】2020-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/210,640
(32)【優先日】2021-06-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.PLURONIC
2.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】509012625
【氏名又は名称】ジェネンテック, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ミサギ, シャーラム
(72)【発明者】
【氏名】タン, タンミン
(72)【発明者】
【氏名】シェン, エイミー
(72)【発明者】
【氏名】レアード, マイケル
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA91X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA25
4B065CA46
(57)【要約】
本発明の開示は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を有する真核細胞株に関する。そのような細胞株を生成する方法も提供される。本開示はまた、そのような細胞株を含む組成物及び細胞培養物と、組換えポリペプチド又はウイルスベクターなどの生成物を生成する方法と、細胞、組成物及び細胞培養物の使用とに関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単離された真核細胞株であって、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む、細胞株。
【請求項2】
Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む、請求項1に記載の細胞株。
【請求項3】
動物細胞株又は真菌細胞株である、請求項1又は2に記載の細胞株。
【請求項4】
動物細胞株が哺乳動物細胞株である、請求項3に記載の細胞株。
【請求項5】
哺乳動物細胞株が、COS細胞株、VERO細胞株、HeLa細胞株、HEK 293細胞株、PER-C6細胞株、K562細胞株、MOLT-4細胞株、Ml細胞株、NS-1細胞株、COS-7細胞株、MDBK細胞株、MDCK細胞株、MRC-5細胞株、WI-38細胞株、WEHI細胞株、SP2/0細胞株、BHK細胞株、若しくはCHO細胞株、又はそれらの誘導体である、請求項4に記載の細胞株。
【請求項6】
CHO細胞株が、CHO K1細胞株、CHO K1SV細胞株、DG44細胞株、DUKXB-11細胞株、CHOK1S細胞株、若しくはCHO K1M細胞株、又はそれらの誘導体である、請求項5に記載の細胞株。
【請求項7】
Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに欠失を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項8】
ウイルスゲノムと、ウイルスカプシドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドとをさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項9】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項10】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、標的位置で細胞株の細胞ゲノムに組み込まれている、請求項9に記載の細胞株。
【請求項11】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、細胞株の細胞ゲノムに無作為に組み込まれている、請求項9に記載の細胞株。
【請求項12】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、染色体外ポリヌクレオチドである、請求項9から11のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項13】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、細胞株の染色体に組み込まれている、請求項9から11のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項14】
目的の生成物が組換えポリペプチドを含む、請求項9から11のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項15】
目的の生成物が、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンを含む、請求項9から14のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項16】
抗体が多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、請求項15に記載の細胞株。
【請求項17】
抗体が、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなる、請求項15又は16に記載の細胞株。
【請求項18】
抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含む、請求項15から17のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項19】
抗体がモノクローナル抗体を含む、請求項15から18のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項20】
ポリヌクレオチドと、野生型Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの機能的コピーとを含む、対応する単離された真核細胞よりも高い比生産性を有する、請求項7から19のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項21】
Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの機能的コピーを含む対応する単離された真核細胞株よりもアポトーシスに対して耐性である、請求項1から20のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項22】
フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、又は連続灌流などの細胞培養プロセスで用いられる、請求項1から21のいずれか一項に記載の細胞株。
【請求項23】
強化灌流プロセスで用いられる、請求項22に記載の細胞株。
【請求項24】
請求項1から23のいずれか一項に記載の真核細胞株を含む組成物。
【請求項25】
細胞培地をさらに含む、請求項24に記載の組成物。
【請求項26】
細胞培地及び複数の真核細胞を含む細胞培養物であって、複数の各細胞が、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む、細胞培養物。
【請求項27】
各細胞が、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む、請求項26に記載の細胞培養物。
【請求項28】
複数の各細胞が、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに欠失を含む、請求項26又は27に記載の細胞培養物。
【請求項29】
細胞が動物細胞又は真菌細胞である、請求項26から28のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項30】
動物細胞が哺乳動物細胞である、請求項29に記載の細胞培養物。
【請求項31】
哺乳動物細胞が、COS細胞、VERO細胞、HeLa細胞、HEK 293細胞、PER-C6細胞、K562細胞、MOLT-4細胞、Ml細胞、NS-1細胞、COS-7細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WEHI細胞、SP2/0細胞、BHK細胞、若しくはCHO細胞、又はそれらの誘導体である、請求項30に記載の細胞培養物。
【請求項32】
CHO細胞が、CHO K1細胞、CHO K1SV細胞、DG44細胞、DUKXB-11細胞、CHOK1S細胞、若しくはCHO K1M細胞、又はそれらの誘導体である、請求項31に記載の細胞培養物。
【請求項33】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項26から32のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項34】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、標的位置で細胞の細胞ゲノムに組み込まれている、請求項33に記載の細胞培養物。
【請求項35】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、細胞の細胞ゲノムに無作為に組み込まれている、請求項33に記載の細胞培養物。
【請求項36】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、染色体外ポリヌクレオチドである、請求項33から35のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項37】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、細胞の染色体に組み込まれている、請求項33から35のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項38】
目的の生成物が組換えポリペプチドを含む、請求項33から37のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項39】
目的の生成物が、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンである、請求項33から38のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項40】
抗体が多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、請求項39に記載の細胞培養物。
【請求項41】
抗体が、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなる、請求項39又は40に記載の細胞培養物。
【請求項42】
抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含む、請求項39から41のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項43】
抗体がモノクローナル抗体を含む、請求項39から42のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項44】
細胞のそれぞれが、組換えポリヌクレオチドをさらに含む、請求項26から43のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項45】
細胞が、フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、又は連続灌流などの細胞培養プロセスで用いられる、請求項26から44のいずれか一項に記載の細胞培養物。
【請求項46】
強化灌流プロセスで用いられる、請求項45に記載の細胞培養物。
【請求項47】
真核細胞におけるアポトーシス活性を低下させる方法であって、細胞に遺伝子組換えシステムを施すことを含み、遺伝子組換えシステムが:
a.Baxポリペプチドアイソフォームの発現をノックダウン又はノックアウトし;
b.Bakポリペプチドアイソフォームの発現をノックダウン又はノックアウトする、
方法。
【請求項48】
フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、又は連続灌流細胞培養プロセスで真核細胞を用いることをさらに含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
真核細胞が強化細胞培養プロセスで用いられる、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
遺伝子組換えシステムが、CRISPR/Casシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システム、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項47から49のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
遺伝子組換えシステムが、CRISPR/Cas9システムであるか又はそれを含む、請求項47から50のいずれか一項に記載の方法。
【請求項52】
CRISPR/Cas9システムが、
a.Cas9分子と、
b.Bax遺伝子内の標的配列に対して相補的な標的配列を含む少なくとも1つの第1のガイドRNA(gRNA)と、
c.Bak遺伝子内の標的配列に対して相補的な標的配列を含む少なくとも1つの第2のgRNAと
を含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
標的配列のうちの少なくとも1つが、Bax遺伝子の一部であり、且つ/又は標的配列のうちの少なくとも1つが、Bak遺伝子の一部である、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
Baxポリペプチドの発現及び/又はBakポリペプチドの発現がノックアウトされ、細胞のアポトーシス活性が、基準細胞のアポトーシス活性と比較して低下する、請求項47から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項55】
Baxポリペプチドの発現及び/又はBakポリペプチドの発現がノックダウンされ、細胞のアポトーシス活性が、基準細胞のアポトーシス活性と比較して低下する、請求項47から53のいずれか一項に記載の方法。
【請求項56】
細胞のアポトーシス活性が、産生期の第14日に決定された前記基準細胞の集合の生存率と比較した前記細胞の集合の生存率から決定される、請求項54又は55に記載の方法。
【請求項57】
基準細胞が、Bax遺伝子及びBak遺伝子の野生型対立遺伝子を含む細胞である、請求項54から56のいずれか一項に記載の方法。
【請求項58】
遺伝子組換えシステムが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システム又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システムであるか又はそれを含む、請求項47から57のいずれか一項に記載の方法。
【請求項59】
細胞株発生システムが、標的化組込み、ランダム組込み、又はトランスポサーゼシステムを含む、請求項47から58のいずれか一項に記載の方法。
【請求項60】
細胞が動物細胞又は真菌細胞である、請求項47から59のいずれか一項に記載の方法。
【請求項61】
動物細胞が哺乳動物細胞である、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
哺乳動物細胞が、COS細胞、VERO細胞、HeLa細胞、HEK 293細胞、PER-C6細胞、K562細胞、MOLT-4細胞、Ml細胞、NS-1細胞、COS-7細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WEHI細胞、SP2/0細胞株、BHK細胞、若しくはCHO細胞株、又はそれらの誘導体である、請求項61に記載の方法。
【請求項63】
CHO細胞が、CHO K1細胞、CHO K1SV細胞、DG44細胞、DUKXB-11細胞、CHOK1S細胞、若しくはCHO K1M細胞、又はそれらの誘導体である、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
細胞が、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、請求項47から63のいずれか一項に記載の方法。
【請求項65】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、標的位置で細胞の細胞ゲノムに組み込まれている、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、細胞の細胞ゲノムに無作為に組み込まれている、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、染色体外ポリヌクレオチドである、請求項64から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項68】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、細胞の染色体に組み込まれている、請求項64から66のいずれか一項に記載の方法。
【請求項69】
目的の生成物が組換えポリペプチドを含む、請求項64から68のいずれか一項に記載の方法。
【請求項70】
目的の生成物が、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンである、請求項64から69のいずれか一項に記載の方法。
【請求項71】
抗体が多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、請求項70に記載の方法。
【請求項72】
抗体が、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなる、請求項70又は71に記載の方法。
【請求項73】
抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含む、請求項70から72のいずれか一項に記載の方法。
【請求項74】
抗体がモノクローナル抗体を含む、請求項70から73のいずれか一項に記載の方法。
【請求項75】
細胞のそれぞれが、組換えポリヌクレオチドをさらに含む、請求項70から74のいずれか一項に記載の方法。
【請求項76】
組換えポリペプチドを生成する方法であって、
ポリペプチドの生成に適した条件下で、真核細胞株を培養することであって、真核細胞株が、
(a)Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異と、
(b)組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと、
を含む、真核細胞株を培養することを含む、方法。
【請求項77】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、標的位置で細胞株の細胞の細胞ゲノムに組み込まれている、請求項76に記載の方法。
【請求項78】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、細胞株の細胞の細胞ゲノムに無作為に組み込まれている、請求項76に記載の方法。
【請求項79】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、染色体外ポリヌクレオチドである、請求項76から78のいずれか一項に記載の方法。
【請求項80】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、細胞株の細胞の染色体に組み込まれている、請求項76から79のいずれか一項に記載の方法。
【請求項81】
組換えポリペプチドが、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンである、請求項76から80のいずれか一項に記載の方法。
【請求項82】
抗体が多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、請求項81に記載の方法。
【請求項83】
抗体が、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなる、請求項81又は82に記載の方法。
【請求項84】
抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含む、請求項81から83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
抗体がモノクローナル抗体を含む、請求項81から84のいずれか一項に記載の方法。
【請求項86】
組換えポリペプチドを単離することをさらに含む、請求項76から85のいずれか一項に記載の方法。
【請求項87】
ウイルスベクターを生成する方法であって、
ウイルスベクターの生成に適した条件下で、(a)Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異と、(b)ウイルスゲノムと、(c)ウイルスカプシドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドとを含む真核細胞株を培養することを含む、方法。
【請求項88】
ウイルスベクターを単離することをさらに含む、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
細胞株が動物細胞株又は真菌細胞株である、請求項87又は88に記載の方法。
【請求項90】
動物細胞株が哺乳動物細胞株である、請求項89に記載の方法。
【請求項91】
哺乳動物細胞株が、COS細胞株、VERO細胞株、HeLa細胞株、HEK 293細胞株、PER-C6細胞株、K562細胞株、MOLT-4細胞株、Ml細胞株、NS-1細胞株、COS-7細胞株、MDBK細胞株、MDCK細胞株、MRC-5細胞株、WI-38細胞株、WEHI細胞株、SP2/0細胞株、BHK細胞株、若しくはCHO細胞株、又はそれらの誘導体である、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
CHO細胞株が、CHO K1細胞株、CHO K1SV細胞株、DG44細胞株、DUKXB-11細胞株、CHOK1S細胞株、若しくはCHO K1M細胞株、又はそれらの誘導体である、請求項91に記載の方法。
【請求項93】
細胞株が細胞培地中で培養される、請求項87から92のいずれか一項に記載の方法。
【請求項94】
細胞株が、フェドバッチ培養条件又は灌流培養条件下で培養される、請求項87から93のいずれか一項に記載の方法。
【請求項95】
細胞株が、フェドバッチ培養条件下で培養され、任意選択的には、フェドバッチ培養条件が強化フェドバッチ培養条件である、請求項94に記載の方法。
【請求項96】
細胞株が灌流培養条件下で培養され、任意選択的には、灌流培養条件が半連続灌流又は連続灌流である、請求項87から95のいずれか一項に記載の方法。
【請求項97】
細胞株が、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む、請求項87から96のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年6月24日に出願された米国仮特許出願第63/043,545号及び2021年6月15日に出願された米国仮特許出願第63/210,640号の優先権を主張し、それらの全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
1.技術分野
本開示は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を有する真核細胞株に関する。そのような細胞株を生成する方法も提供される。本開示はまた、前記細胞を含む組成物及び細胞培養物と、組換えポリペプチド又はウイルスベクターなどの生成物を生成する方法と、目的の生成物を生成する方法における前記細胞、組成物及び細胞培養物の使用とに関する。
【0003】
2.背景技術
モノクローナル抗体(mAb)及び他の組換えタンパク質は、免疫学、腫瘍学、神経科学などを含む多くの疾患適応症のための成功した治療薬として確立されている(例えば、Reichert(2017)mAbs. 9:167-181;Singh et al.(2017)Curr. Clin. Pharmacol. 13:85-99を参照されたい)。バイオテクノロジー業界において300を超えるmAbが開発中であり、mAb市場は2020年までに70のmAb製品に拡大すると予測されている(Ecker et al.(2015)mAbs. 7:9-14)。業界が拡大し、標的がより複雑になるにつれて、多数のmAb変異体をスクリーニングし、所望の特徴を有する臨床候補を同定するために、より大きな抗体発見キャンペーンが必要とされる。
【0004】
哺乳動物細胞などの真核細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、その、適切なタンパク質の折りたたみ、集合、及び翻訳後修飾に対する能力故に、臨床用途のための治療用タンパク質の製造において、幅広く使用されている。しかし、目的の分子の大量の細胞培養及び生産は困難である。したがって、治療用タンパク質などの所望の生成物の生成をさらに最適化するための改良された細胞及び方法を提供することが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
組換えポリヌクレオチド又は組換えポリペプチドなどの目的の生成物を生成するために、哺乳動物細胞株(例えば、CHO細胞株)などの真核細胞株を培養するための最適な方法が依然として必要とされている。我々は、目的の生成物を生成するために細胞株を使用するとき、細胞が高い生存率を示すことが有利である(例えば、より良い生成物力価を提供する)ことを確認した。そのため、野生型の対応物よりも高い生産性とバイオリアクターでのより強力な性能を提供するために、アポトーシスに対する耐性を有する哺乳動物細胞株(例えば、CHO細胞株)を含む細胞株が必要とされている。
【0006】
これら及び他の必要性を満たすために、本明細書では、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を有する、哺乳動物細胞株(例えば、CHO細胞株)などの真核細胞株が提供される。したがって、本開示は、本開示の細胞を使用して、目的の産物、例えば組換えポリヌクレオチド及び/又は組換えポリペプチドを生成するための、方法、細胞、及び細胞を含む組成物に関する。特に、本明細書に記載の方法、細胞、及び組成物は、目的の生成物を発現する改良された哺乳動物細胞を含み、細胞(例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞)は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を有する。細胞及び細胞株におけるBax遺伝子とBak遺伝子のダウンレギュレーション又は欠失は、所望のアポトーシス活性に関連する望ましくない影響、例えば真核細胞の生存率及び生産性の低下を減少させる。
【0007】
一態様では、本開示は、単離された真核細胞株を提供し、この細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む。
【0008】
特定の実施態様では、細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む。
【0009】
特定の実施態様では、細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに欠失を含む。
【0010】
特定の実施態様では、細胞株は、動物細胞株又は真菌細胞株である。細胞株は、動物細胞株、例えば哺乳動物細胞株であり得る。例示的な哺乳動物細胞株には、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞株、COS細胞株、VERO細胞株、HeLa細胞株、HEK 293細胞株、PER-C6細胞株、K562細胞株、MOLT-4細胞株、Ml細胞株、NS-1細胞株、COS-7細胞株、MDBK細胞株、MDCK細胞株、MRC-5細胞株、WI-38細胞株、WEHI細胞株、SP2/0細胞株、BHK細胞株(BHK-21細胞株を含む)、又はそれらの誘導体が含まれる。細胞株は、CHO細胞株、例えば、CHO K1細胞株、CHO K1SV細胞株、DG44細胞株、DUKXB-11細胞株、CHOK1S細胞株、若しくはCHO K1M細胞株、又はそれらの誘導体であり得る。細胞株は、真菌細胞株、例えば酵母細胞株であり得る。
【0011】
特定の実施態様では、細胞株は、ウイルスゲノムと、ウイルスカプシドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドとをさらに含む。
【0012】
特定の実施態様では、細胞株は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0013】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、標的位置で細胞株の細胞ゲノムに組み込まれ得る。目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、細胞株の細胞ゲノムに無作為に組み込まれ得る。目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、染色体外ポリヌクレオチドであり得る。目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、細胞株の染色体に組み込まれ得る。
【0014】
目的の生成物は、組換えポリペプチドであり得るか又はそれを含み得る。目的の生成物(組換えポリペプチドなど)は、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンであり得るか又はそれを含み得る。目的の生成物は、抗体であり得るか又はそれを含み得る。目的の生成物は、抗原であり得るか又はそれを含み得る。目的の生成物は、酵素であり得るか又はそれを含み得る。目的の生成物は、ワクチンであり得るか又はそれを含み得る。
【0015】
抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。抗体は、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなり得る。抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含み得る。抗体は、モノクローナル抗体を含み得る。
【0016】
特定の実施態様では、細胞株は、ポリヌクレオチドと、野生型Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの機能的コピーとを含む、対応する単離された真核細胞よりも高い比生産性を有する。
【0017】
特定の実施態様では、細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの機能的コピーを含む対応する単離された真核細胞株よりもアポトーシスに対して耐性である。
【0018】
特定の実施態様では、細胞株は、フェドバッチ、灌流、プロセス強化灌流、半連続灌流、又は連続灌流などの細胞培養プロセスで使用される。例えば、限定されないが、細胞株は、強化灌流プロセスで使用され得る。
【0019】
別の態様では、本開示は、本発明の真核細胞株、例えば第1の態様の細胞株を含む組成物を提供する。組成物は、細胞培地も含み得る。
【0020】
特定の実施態様では、組成物は、フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、又は連続灌流などの細胞培養プロセスで使用される。例えば、限定されないが、細胞培養プロセスは、強化灌流プロセスであり得る。
【0021】
別の態様では、本開示は、細胞培地と、複数の真核細胞であって、複数の各細胞がBax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む複数の真核生物細胞とを含む細胞培養物を提供する。
【0022】
特定の実施態様では、細胞培養物は、フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、又は連続灌流などの細胞培養プロセスで使用される。細胞培養プロセスは、強化灌流プロセスであり得る。
【0023】
特定の実施態様では、各細胞は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む。
【0024】
特定の実施態様では、複数の細胞は各々、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに欠失を含む。
【0025】
特定の実施態様では、細胞は動物細胞又は真菌細胞である。細胞は、動物細胞、例えば哺乳動物細胞であり得る。例示的な哺乳動物細胞には、ハイブリドーマ細胞、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、HeLa細胞、HEK 293細胞、PER-C6細胞、K562細胞、MOLT-4細胞、Ml細胞、NS-1細胞、COS-7細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WEHI細胞、SP2/0細胞、BHK細胞(BHK-21細胞を含む)、又はそれらの誘導体が含まれる。細胞は、CHO細胞、例えば、CHO K1細胞、CHO K1SV細胞、DG44細胞、DUKXB-11細胞、CHOK1S細胞、若しくはCHO K1M細胞、又はそれらの誘導体であり得る。細胞は、真菌細胞、例えば酵母細胞であり得る。
【0026】
特定の実施態様では、細胞は、ウイルスゲノムと、ウイルスカプシドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドとをさらに含む。
【0027】
特定の実施態様では、細胞培養物(例えば、複数の細胞)は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0028】
特定の実施態様では、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、標的位置で細胞の細胞ゲノムに組み込まれ得る。特定の実施態様では、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、細胞の細胞ゲノムに無作為に組み込まれ得る。特定の実施態様では、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、染色体外ポリヌクレオチドであり得る。特定の実施態様では、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、細胞の染色体に組み込まれ得る。
【0029】
特定の実施態様では、目的の生成物は、組換えポリペプチドであり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、目的の生成物(組換えポリペプチドなど)は、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンであり得るか又はそれを含み得る。目的の生成物は、抗体であり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、目的の生成物は、抗原であり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、目的の生成物は、酵素であり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、目的の生成物は、ワクチンであり得るか又はそれを含み得る。
【0030】
特定の実施態様では、抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。特定の実施態様では、抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。特定の実施態様では、抗体は、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなり得る。特定の実施態様では、抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含み得る。抗体は、モノクローナル抗体を含み得る。
【0031】
特定の実施態様では、細胞のそれぞれは、組換えポリヌクレオチドをさらに含む。
【0032】
別の態様では、本開示は、真核細胞におけるアポトーシス活性を低下させる方法であって、細胞に遺伝子組換えシステムを施すことを含む、方法を提供する。特定の実施態様では、遺伝子組換えシステムは:(a)Baxポリペプチドアイソフォームの発現をノックダウン又はノックアウトし;(b)Bakポリペプチドアイソフォームの発現をノックダウン又はノックアウトする。
【0033】
特定の実施態様では、方法は、フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、又は連続灌流細胞培養プロセスで真核細胞を使用することをさらに含む。真核細胞は、強化細胞培養プロセスで使用され得る。
【0034】
特定の実施態様では、遺伝子組換えシステムは、CRISPR/Casシステム(例えばCRISPR/Cas9システム)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システム、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システム、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。遺伝子組換えシステムは、CRISPR/Casシステムであり得る。遺伝子組換えシステムは、ZFNシステムであり得る。遺伝子組換えシステムは、TALENシステムであり得る。
【0035】
特定の実施態様では、遺伝子組換えシステムは、CRISPR/Cas9システムであるか又はそれを含む。CRISPR/Cas9システムは、(a)Cas9分子と、(b)Bax遺伝子の標的配列に相補的な標的配列を含む少なくとも1つの第1のガイドRNA(gRNA)と、(c)Bak遺伝子の標的配列に相補的な標的配列を含む少なくとも1つの第2のgRNAとを含み得る。標的配列の少なくとも1つは、Bax遺伝子の一部であり得る。標的配列の少なくとも1つは、Bak遺伝子の一部であり得る。標的配列の少なくとも1つは、Bax遺伝子の一部であり得、標的配列の少なくとももう1つは、Bak遺伝子の一部であり得る。
【0036】
特定の実施態様では、Baxポリペプチドの発現又はBakポリペプチドの発現はノックアウトされ、細胞のアポトーシス活性は、基準細胞のアポトーシス活性と比較して低下する。ある実施態様では、Baxポリペプチドの発現及びBakポリペプチドの発現はノックアウトされ、細胞のアポトーシス活性は、基準細胞のアポトーシス活性と比較して低下する。
【0037】
特定の実施態様では、Baxポリペプチドの発現又はBakポリペプチドの発現はノックダウンされ、細胞のアポトーシス活性は、基準細胞のアポトーシス活性と比較して低下する。ある実施態様では、Baxポリペプチドの発現又はBakポリペプチドの発現はノックダウンされ、細胞のアポトーシス活性は、基準細胞のアポトーシス活性と比較して低下する。
【0038】
特定の実施態様では、アポトーシス活性は、基準細胞のアポトーシス活性よりも低い(例えば、アポトーシス活性は、基準細胞のアポトーシス活性よりも約80%低いか、約50%低いか、又は約30%低い)。例えば、アポトーシス活性は、基準細胞のアポトーシス活性よりも約1%から約99%低い。細胞のアポトーシス活性は、産生期中に決定された前記基準細胞の集合の生存率と比較した前記細胞の集合の生存率から決定され得る。基準細胞は、Bax遺伝子及びBak遺伝子の野生型対立遺伝子を含む細胞であり得る。例えば、基準細胞は、基準細胞はBax遺伝子及びBak遺伝子の野生型対立遺伝子を含むという点においてのみ、アポトーシス減弱細胞とは実質的に異なる細胞であり得る。ある実施態様では、アポトーシスの少なさは、生存率が高い細胞と相関している。
【0039】
特定の実施態様では、細胞は、動物細胞又は真菌細胞である。細胞は、動物細胞、例えば哺乳動物であり得る。例示的な哺乳動物細胞には、ハイブリドーマ細胞、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、HeLa細胞、HEK 293細胞、PER-C6細胞、K562細胞、MOLT-4細胞、Ml細胞、NS-1細胞、COS-7細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WEHI細胞、SP2/0細胞、BHK細胞(BHK-21細胞を含む)、又はそれらの誘導体が含まれる。細胞は、CHO細胞、例えば、CHO K1細胞、CHO K1SV細胞、DG44細胞、DUKXB-11細胞、CHOK1S細胞、若しくはCHO K1M細胞、又はそれらの誘導体であり得る。細胞は、真菌細胞、例えば酵母細胞であり得る。
【0040】
特定の実施態様では、細胞は、ウイルスゲノムと、ウイルスカプシドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドとをさらに含む。
【0041】
特定の実施態様では、細胞は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0042】
特定の実施態様では、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、標的位置で細胞の細胞ゲノムに組み込まれ得る。特定の実施態様では、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、細胞の細胞ゲノムに無作為に組み込まれ得る。特定の実施態様では、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、染色体外ポリヌクレオチドであり得る。特定の実施態様では、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、細胞の染色体に組み込まれ得る。
【0043】
特定の実施態様では、目的の生成物は、組換えポリペプチドであり得るか又はそれを含み得る。目的の生成物(組換えポリペプチドなど)は、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンであり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、目的の生成物は、抗体であり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、目的の生成物は、抗原であり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、目的の生成物は、酵素であり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、目的の生成物は、ワクチンであり得るか又はそれを含み得る。
【0044】
特定の実施態様では、抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。特定の実施態様では、抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。特定の実施態様では、抗体は、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなり得る。特定の実施態様では、抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含み得る。特定の実施態様では、抗体は、モノクローナル抗体を含み得る。
【0045】
特定の実施態様では、細胞のそれぞれは、組換えポリヌクレオチドをさらに含む。
【0046】
別の態様では、本開示は、組換えポリペプチドを生成する方法を提供する。特定の実施態様では、方法は、ポリペプチドの生成に適した条件下で真核細胞株を培養することを含む。特定の実施態様では、細胞株は、(a)Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異と、(b)組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含む。
【0047】
特定の実施態様では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、標的位置で細胞株の細胞の細胞ゲノムに組み込まれる。特定の実施態様では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細胞株の細胞の細胞ゲノムに無作為に組み込まれる。
【0048】
特定の実施態様では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、染色体外ポリヌクレオチドである。特定の実施態様では、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細胞株の細胞の染色体に組み込まれる。
【0049】
特定の実施態様では、組換えポリペプチドは、抗体、抗原、酵素、又はワクチンであり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、組換えポリペプチドは、抗体であり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、組換えポリペプチドは、抗体融合タンパク質であり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、組換えポリペプチドは、抗原であり得るか又はそれを含み得る。特定の実施態様では、組換えポリペプチドは、酵素であり得るか又はそれを含み得る。組換えポリペプチドは、ワクチンであり得るか又はそれを含み得る。
【0050】
特定の実施態様では、抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。特定の実施態様では、抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。特定の実施態様では、抗体は、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなり得る。特定の実施態様では、抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含み得る。特定の実施態様では、抗体は、モノクローナル抗体を含み得る。
【0051】
特定の実施態様では、方法は、組換えポリペプチドを単離することをさらに含む。単離することは、典型的には、細胞株から組換えポリペプチドを単離することを含む。
【0052】
特定の実施態様では、細胞株は、動物細胞株又は真菌細胞株である。細胞株は、動物細胞株、例えば哺乳動物細胞株であり得る。例示的な哺乳動物細胞株には、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞株、COS細胞株、VERO細胞株、HeLa細胞株、HEK 293細胞株、PER-C6細胞株、K562細胞株、MOLT-4細胞株、Ml細胞株、NS-1細胞株、COS-7細胞株、MDBK細胞株、MDCK細胞株、MRC-5細胞株、WI-38細胞株、WEHI細胞株、SP2/0細胞株、BHK細胞株(BHK-21細胞株を含む)、又はそれらの誘導体が含まれる。細胞株は、CHO細胞株、例えば、CHO K1細胞株、CHO K1SV細胞株、DG44細胞株、DUKXB-11細胞株、CHOK1S細胞株、若しくはCHO K1M細胞株、又はそれらの誘導体であり得る。細胞株は、真菌細胞株、例えば酵母細胞株であり得る。
【0053】
特定の実施態様では、細胞株は、細胞培地で培養される。細胞株は、フェドバッチ培養条件又は灌流培養条件下で培養され得る。細胞株は、フェドバッチ培養条件下で培養され得る。フェドバッチ培養条件は、強化フェドバッチ培養条件であり得る。細胞株は、灌流培養条件下で培養され得る。灌流培養条件は、半連続灌流であり得る。灌流培養条件は、連続灌流であり得る。
【0054】
特定の実施態様では、細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む。
【0055】
別の態様では、本開示は、ウイルスベクターを生成する方法を提供する。特定の実施態様では、方法は、ウイルスベクターの生成に適した条件下で真核細胞株を培養することを含む。特定の実施態様では、細胞株は、(a)Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異と、(b)ウイルスゲノムと、(c)ウイルスベクターの生成に適した条件下でウイルスカプシドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドとを含む。
【0056】
特定の実施態様では、方法は、ウイルスベクターを単離することをさらに含む。単離することは、典型的には、細胞株からウイルスベクターを単離することを含む。
【0057】
特定の実施態様では、細胞株は、動物細胞株又は真菌細胞株である。細胞株は、動物細胞株、例えば哺乳動物細胞株であり得る。例示的な哺乳動物細胞株には、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞株、COS細胞株、VERO細胞株、HeLa細胞株、HEK 293細胞株、PER-C6細胞株、K562細胞株、MOLT-4細胞株、Ml細胞株、NS-1細胞株、COS-7細胞株、MDBK細胞株、MDCK細胞株、MRC-5細胞株、WI-38細胞株、WEHI細胞株、SP2/0細胞株、BHK細胞株(BHK-21細胞株を含む)、又はそれらの誘導体が含まれる。細胞株は、CHO細胞株、例えば、CHO K1細胞株、CHO K1SV細胞株、DG44細胞株、DUKXB-11細胞株、CHOK1S細胞株、若しくはCHO K1M細胞株、又はそれらの誘導体であり得る。細胞株は、真菌細胞株、例えば酵母細胞株であり得る。
【0058】
特定の実施態様では、細胞株は、細胞培地で培養される。細胞株は、フェドバッチ培養条件又は灌流培養条件下で培養され得る。細胞株は、フェドバッチ培養条件下で培養され得る。フェドバッチ培養条件は、強化フェドバッチ培養条件であり得る。細胞株は、灌流培養条件下で培養され得る。灌流培養条件は、半連続灌流であり得る。灌流培養条件は、連続灌流であり得る。
【0059】
特定の実施態様では、細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む。
【0060】
別の態様では、本開示は、組換えポリペプチドを生成する方法であって、第4の態様に従ってアポトーシス活性を低下させ、その後、第5の態様の方法に従って組換えポリペプチドを生成する方法を含む、方法を提供する。
【0061】
別の態様では、本開示は、ウイルスベクターを生成する方法であって、第4の態様に従ってアポトーシス活性を低下させ、その後、第6の態様の方法に従ってウイルスベクターを生成する方法を含む、方法を提供する。
【0062】
別の態様では、本開示は、目的の生成物の生成のための第1の態様の単離された真核細胞株の使用であって、細胞株が目的の生成物をコードするポリヌクレオチドを含む、使用を提供する。使用は、目的の生成物を単離することをさらに含み得る。
【0063】
別の態様では、本開示は、目的の生成物の生成のための第2の態様の組成物の使用であって、前記組成物の細胞株が目的の生成物をコードするポリヌクレオチドを含む、使用を提供する。使用は、目的の生成物を単離することをさらに含み得る。
【0064】
別の態様では、本開示は、目的の生成物の生成のための第3の態様の細胞培養物の使用であって、前記細胞培養物の複数の真核細胞が目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、使用を提供する。使用は、目的の生成物を単離することをさらに含み得る。
【0065】
別の態様では、本開示は、細胞培養プロセスにおける第1の態様の細胞株、第2の態様の組成物、又は第3の態様の細胞培養物の使用を提供する。細胞培養プロセスは、フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、又は連続灌流細胞培養プロセスであり得るか又はそれを含み得る。細胞培養プロセスは、強化灌流プロセスを含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0066】
図1】野生型(WT)及び2つの異なるBax/Bakダブルノックアウト(DKO)宿主からそれぞれ生成された最高の抗体力価を有する4から5のクローンの第14日のIVCC結果を提供する。これらは、強化された(高播種密度)抗体産生プロセスの14日間にわたる生存細胞濃度の積分について分析された(IVCC、1e8細胞-d/L)。Bax/Bak DKOクローンは、WTクローンと同等か又はそれよりも高いIVCCを有した。
図2A-2C】強化生成プロセス中のWTクローン及びBax/Bak DKOクローンのVCCを提供する。WT宿主(A)又は2つの異なるBax/Bak DKO宿主(B及びC)からの示されたクローンの生細胞数(VCC、1e6細胞/mL)を測定及びプロットした。Bax/Bak DKOクローンとWTクローンは、最初の2日間で同様の成長速度を有した。VCCは第3日の後に減少したが、これは、供給物を追加し、さまざまなアッセイのために培養細胞を除去することにより、毎日細胞培養物を希釈したためである。
図3A-3C】強化生成プロセス中のWTクローン及びBax/Bak DKOクローンの生存率を提供する。WT宿主(A)又は2つの異なるBax/Bak DKO宿主(B&C)から生成された示されたクローンの生存率(%)を測定及びプロットした。WTクローンは第10日の後に生存率が減少し(A)、その一方、Bax/Bak DKOクローンは、プロセスの終わりまで高い生存率を維持した。これは、Bax遺伝子及びBak遺伝子の欠失が、強化プロセスの後期段階の細胞死を有意に防ぐことを示唆している。
図4】示されたクローンの第14日の生存率(%)を提供する。Bax/Bak DKO遺伝子は、第14日にWTクローンよりもはるかに高い生存率を示した。これは、Bax遺伝子及びBak遺伝子の欠失が、強化プロセスの後期段階の細胞死を有意に減少させることを裏付けている。
図5】第14日の細胞ペレットの切断カスパーゼのウエスタンブロット分析を提供する。アポトーシスマーカータンパク質である切断カスパーゼ-3のレベルについてのウエスタンブロットにより、示されたクローンの第14日の細胞ペレットを分析した。すべてのWTクローンは、高レベルの切断カスパーゼ-3を発現した。これは、WT細胞が強化プロセスの後期段階でアポトーシスを遂げていること、及びアポトーシス細胞死が培養生存率の減少の主な要因であることを示している。すべてのBax/Bak DKO遺伝子は、低レベルの切断カスパーゼ-3の切断を有した。これは、Bax遺伝子及びBak遺伝子の欠失が、アポトーシス細胞死を十分にブロックすることを示唆している。
図6】第3、7、10、及び14日に得た力価を示す。示されたクローンについての14日間の強化プロセスにおける第3、7、10、及び14日の抗体力価(g/L)を測定及びプロットした。Bax/Bak DKOクローンの第7日の力価は、平均してWTクローンと同等であったが、第14日の力価は有意に高かったことに留意されたい。より重要なことには、Bax/Bak DKOクローンの大部分について、第14日の力価は第10日の力価よりも高かった。これは、細胞が生成培養の最後の4日間で依然として抗体を産生していたことを示している。しかし、WTクローンでは、力価は第10日から第14日までで増加しなかった。これは、これらのクローンが強化生成プロセスの最後に生産性を失ったことを示唆している。WTクローンの生産性の損失は、これらの培養におけるアポトーシス細胞死による可能性が高かった。
図7】平均的な比生産性を示す。第14日の力価(g/L)を第14日のIVCC(1e8 細胞-d/L)で割ることによって、細胞の比生産性(Qp、pg/細胞-d)を計算した。Bax/Bak DKOクローンのQpは、平均して、WTクローンのQpよりも高かった。
図8】14日のプロセス全体における上位クローンの修正した平均比生産性を示す。細胞の比生産性(Qp、pg/細胞-d)を希釈倍率によって修正した。WT宿主の上位クローン及びBax/Bak DKO宿主の上位2-3クローンについての結果を図8に提供する。
図9】強化生成プロセス中の異なる段階での上位クローンの修正した比生産性を提供する。示された上位クローンの修正した比生産性(Qp、pg/細胞-d)を強化プロセス中の異なる段階で提供した。すべてのクローンについて、第0日から第3日は細胞増殖段階であった。このとき、Qpは安定段階(第3日の後)中よりも低かった。WTクローンのみが、第10日から第14日の間のQpの低下を示した。Qpは生細胞についてのみ計算されたため、この結果は、WT細胞の生存率が低下しただけではなく、プロセスの最後の4日間での生産性も低下したことを示唆している。この生産性の低下は、アポトーシスの開始時のBaxタンパク質及びBakタンパク質の活性化によって引き起こされるミトコンドリア膜の損傷による可能性が高い。その一方で、Bax/Bak DKOクローンは、生存率が向上しただけではなく、生産性も向上した。したがって、これら2つの遺伝子の欠失は、アポトーシスを防ぐだけでなく、ミトコンドリアの完全性及び健康を維持するのにも役立ったと考えられる。
図10】上位クローンのグルコース消費割合を示す。強化生成プロセス中に消費したグルコースの総量(mg)を、異なる時点での総細胞数(1e6細胞-d)の積分に対してプロットした。傾斜は、示されたクローンのグルコース消費割合(mg/1e6 細胞-d)を表す。グルコース消費割合は、Bax/Bak DKOクローンとWTクローンとの間で同等であった。
図11】強化生成プロセス中の上位クローンの培養物のラクテート濃度を示す。示されたクローンの収集細胞培養物(HCCF)中のラクテート濃度を、毎日測定し、プロットした。結果は、強化生成プロセス中でのWTクローン及びBax/Bak DKOクローンのラクテート代謝は同等であったことを示唆する。
図12】第14日のHMWS(%)を提供する。示されたクローンの第14日のHCCF中の凝集抗体のレベル(%)を示す。%HMWSレベルは、WTクローンとBax/Bak DKOクローンとの間で、平均して同等であった。
図13】第14日の%メインピークを示す。これは、示されたクローンの第14日のHCCFにおけるインタクトな抗体及び単量体抗体のレベル(%)を説明する。%メインピークレベルは、WTクローンとBax/Bak DKOクローンとの間で、平均して同等であった。
図14】% LMWSとしての抗体断片の量を説明する。示されたクローンの第14日のHCCFにおける抗体断片のレベルを示す。%LMWSレベルは、WTクローンとBax/Bak DKOクローンとの間で、平均して同等であった。
図15】クローンの第14日のHCCFにおける抗体酸性電荷バリアントの量(%)を示す。%酸性ピークレベルは、WTクローンとBax/Bak DKOクローンとの間で、平均して同等であった。
図16】メインピークの結果を示す。これは、クローンの第14日のHCCFにおける抗体中性電荷バリアントのレベル(%)を示す。%メインピークレベルは、WTクローンとBax/Bak DKOクローンとの間で、平均して同等であった。
図17】クローンの第14日のHCCFにおける抗体塩基性電荷バリアントの量(%)を示す。%塩基性ピークレベルは、WTクローンとBax/Bak DKOクローンとの間で、平均して同等であった。
図18A-18C】Bax/Bak遺伝子をノックアウトすることにより、強化生成プロセスにおいて標準的なmAb発現CHOプールの細胞生存率及び力価が改善されることを示す。示された宿主細胞株から生成されたmAb-Aを発現する細胞のプールの生存率、生細胞数(VCC)、力価、及び第14日の平均比生産性(Qp)を、振とうフラスコ中での低播種密度プラットフォーム-1プロセスで(18A)、AMBR15バイオリアクター中での低播種密度プラットフォーム-1プロセスで(18B)、AMBR15バイオリアクター中での高播種密度プラットフォーム-1プロセスで(18C)、測定した。
図19A-19B】Bax/Bak DKO宿主から生成された単一細胞クローンが、強化生成プロセスにおいて標準mAbの生存率の延長及びより高い力価を達成したことを示している。示された宿主細胞株から生成されたmAb-Aを発現する上位クローンの生存率、VCC、力価、及び第14日の平均比生産性を、振とうフラスコ中での低播種密度プロセスで(19A)、及びAMBR15バイオリアクター中での強化プロセスで(19B)測定した。エラーバーは、示された宿主から生成された4-5の上位クローンの標準偏差を示す。
図20】Bax/Bak DKO宿主から生成された単一細胞クローンが、スケールアップ強化生成プロセスにおいて標準mAbの生存率の延長及びより高い力価を達成したことを示している。示された宿主細胞株から生成されたmAb-Aを発現する上位クローンの生存率、VCC、力価、及び第14日の平均比生産性を、AMBR250バイオリアクターを使用して強化プロセスで測定した。エラーバーは、同じWT上位クローンの4つの複製物の標準偏差を示す。
図21A-21C】Bax/Bak遺伝子をノックアウトすることによってCHO強化生成プロセスにおける複合分子の発現が改善されることを示す。WT宿主細胞株及び2つのDKO宿主細胞株から生成された、複合分子B(21A)、二重特異性抗体分子C(21B)、及び複合分子D(21C)の生存率、VCC、力価、及び第14日の平均比生産性を、AMBR15バイオリアクター中での強化生成プロセスで測定した。エラーバーは、示された分子の同じ宿主に由来した2つの複製プールの標準偏差を示す。
図22A-22D】Bax/Bak DKO細胞株の生成と、3つの生成プロセスにおいてWTプール及びDKOプールで生成されたmAb-Aの生成物の質の特性とを示す。WT細胞株由来のBax遺伝子及びBak遺伝子の連続したノックアウトを、以下のように実施した。工程1、RNA標的Bax遺伝子をWT細胞にトランスフェクトし、続いて単一細胞をクローニングしてBax KOクローン#40を生成する。工程2、RNA標的Bak遺伝子をBax KOクローン#40細胞にトランスフェクトし、続いて単一細胞をクローニングして、Bax/Bak DKOクローン1、2、3、7、8、21を生成する。(22B-22D)。高分子量種(HMWS)/凝集体レベル、異なるグリカン種レベル、及び電荷バリアントレベルを、低播種密度(SD)の振とうフラスコ中での生成プラットフォーム-1で(22B)、低SDのAMBR15中での生成プラットフォーム-1で(22C)、及び高SDのAMBR15中での生成プラットフォーム-1(22D)で、mAb-A発現プールについて測定した。
図23A-23C】振とうフラスコ及びAMBR15バイオリアクター中でWT宿主及びDKO宿主から生成されたmAb-A発現上位クローンの生成物の質の特性を示す。異なるグリカン種レベル、電荷バリアントレベル、及び高分子量種(HMWS)/凝集体レベルを、低SDの振とうフラスコ中での生成プラットフォーム-1で(23A)、及びAMBR15中での強化生成プラットフォーム-1で(23B)、mAb-A発現クローンについて測定した。Cは、AMBR15中での強化生成プラットフォーム-1での第14日の細胞における切断カスパーゼ3のレベルのウエスタンブロットである。
図24A-24C】AMBR15バイオリアクター中での強化プロセスにおいてCHOプールで発現した複合分子及び二重特異性抗体の生成物の質の特性を示す。電荷バリアントレベル、高分子量種(HMWS)/凝集体レベル、及び異なるグリカン種レベルを、複合分子B(24A)、二重特異性分子C(24B)、及び複合分子C(24C)を発現するCHOプールについて測定した。二重特異性分子Cは非グリコシル化分子であるため、この分子についてのグリコシル化のデータは該当なしであることに留意されたい。
図25A-25D】複合分子Eを発現するトランスフェクトしたCHO細胞のプールにおけるBax/Bak遺伝子のノックアウトが高播種密度生成プロセスで細胞生存率を改善したことを示す。(25A)複合分子E発現構築物をトランスフェクトしたCHO細胞のプールでのBax/Bak遺伝子ノックアウトを評価するための戦略の概要。模擬トランスフェクション又はBax/Bak gRNAトランスフェクション後のCHO細胞の複合分子E発現プールの力価(25B)、細胞生存率(25C)、及びVCC(25D)。
【発明を実施するための形態】
【0067】
本明細書及び特許請求の範囲を通じて、「含む(comprise)」及び「含む、含有する(contain)」という用語並びにそれらの変形例は、「含むが限定されない」ことを意味し、それらは、他の部分、添加物、成分、整数、又は工程を排除することを意図しない(及び排除しない)。本明細書及び特許請求の範囲を通じて、文脈が別途必要としない限り、単数形は複数形を包含する。特に、不定冠詞が使用される場合、明細書は、文脈が別途必要としない限り、単一性だけでなく複数性も考慮していると理解されるべきである。
【0068】
本発明の特定の態様、実施態様又は実施例に関連して記載される特徴、整数、特性、化合物、化学的部分又は基は、両立しない場合を除き、本明細書に記載される任意の他の態様、実施態様又は実施例に適用可能であると理解されるべきである。本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約書及び図面を含む)に開示された特徴の全て、及び/又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスの工程の全ては、そのような特徴及び/又は工程の少なくとも一部が相互に排他的である組合せを除き、任意の組合せで組み合わされ得る。本発明は、いずれの開示される実施態様の細部にも限定されない。本発明は、本明細書(任意の添付の特許請求の範囲、要約及び図面を含む)に開示された特徴の任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組合せ、又はそのように開示された任意の方法若しくはプロセスの工程の任意の新規な1つ若しくは任意の新規な組合せに及ぶ。
【0069】
読者の注意は、本出願に関連して本明細書と同時に又は本明細書より前に提出され、本明細書とともに公衆の閲覧に開放されているすべての論文及び文書に向けられており、そのようなすべての論文及び文書の内容は参照により本明細書に援用される。
【0070】
特許出願、特許公報、非特許文献、及びUniProtKB/Swiss-Prot受託番号を含む、本明細書において引用されるすべての参考文献は、個々の参考文献がそれぞれ参照により援用されるように具体的かつ個別に示されているかのように、参照によりそれらの全体が本明細書に援用される。
【0071】
疑義を避けるために、「背景技術」という見出しの下、本明細書で前に開示された情報は、本発明に関連し、本発明の開示の一部として読まれるべきであるとここに述べる。
【0072】
限定するためではなく、明確化のために、本明細書にて開示する主題の詳細の説明を、以下の小節に分ける:
5.1 定義;
5.2 BAX及びBAKの発現を調節するための方法
5.3 細胞株;
5.4 細胞培養物;
5.5 生成方法;及び
5.6 生成物。
【0073】
5.1 定義
以下の用語及び方法の説明は、本開示をよりよく説明し、本開示の実施において当業者を導くために提供される。
【0074】
本明細書で使用される場合、「約」又は「およそ」という用語は、当業者によって決定される特定の値について許容される誤差範囲内であることを意味し、これは、その値が測定又は決定される方法、即ち、測定システムの限界にある程度依存する。例えば、「約」とは、当該技術分野での1回の実施当たり3つ又は3つよりも多くの標準偏差以内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の、最大20%、好ましくは最大10%、より好ましくは最大5%、そしてより好ましくはさらに最大1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システム又はプロセスに関して、この用語は、値の1桁違い以内、好ましくは5倍以内、より好ましくは2倍以内を意味し得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、互換的に使用することができ、概して、ペプチジル結合によって結合された約10個を超える共有結合アミノ酸を有するペプチド及びタンパク質を指す。タンパク質という用語は、精製された天然産物、又は組換え技術若しくは合成技術を使用して部分的若しくは全体的に生成され得る産物を包含する。ペプチド及びタンパク質という用語は、二量体若しくは他の多量体、融合タンパク質、タンパク質バリアント、又はそれらの誘導体などのタンパク質の凝集体を指し得る。この用語は、タンパク質の修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、ペグ化、ユビキチン化などによって修飾されたタンパク質も含まれる。タンパク質は、核酸コドンによってコードされていないアミノ酸を含み得る。タンパク質は、より高いレベルの三次及び/又は四次構造を生成するのに十分な長さのアミノ酸配列を有し得る。本明細書における典型的なタンパク質は、少なくとも約15~20kD、好ましくは少なくとも約20kDの分子量を有し得る。本明細書の定義に包含されるタンパク質の例としては、全ての哺乳動物タンパク質、特に、治療用及び診断用抗体などの治療用及び診断用タンパク質、並びに、1つ又は複数の鎖間及び/又は鎖内ジスルフィド結合を含む多鎖ポリペプチドを含む、1つ又は複数のジスルフィド結合を含有する一般的なタンパク質が挙げられる。
【0076】
「タンパク質修飾」又は「タンパク質変異」とは、ポリペプチド配列におけるアミノ酸の置換、挿入及び/若しくは欠失、又はタンパク質に化学的に結合された部分に対する改変を意味する。例えば、修飾は、タンパク質に結合した改変された炭水化物又はPEG構造でありうる。本発明のタンパク質は、少なくとも1つのこのようなタンパク質修飾を含み得る。
【0077】
「修飾されたタンパク質」又は「変異したタンパク質」という用語は、アミノ酸の少なくとも1つの置換、挿入、及び/又は欠失を有するタンパク質を包含する。修飾されたタンパク質又は変異したタンパク質は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10又はそれを超えるアミノ酸修飾(置換、挿入、欠失、及びそれらの組み合わせ)を有し得る。
【0078】
本明細書で使用される「抗体」という用語は、所望の抗原結合活性を示す限り、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、単一特異性抗体(例えば、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列からなる抗体(このようなペアリングの多量体を含む))、多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)及び抗体断片を含むがこれらに限定されない様々な抗体構造を包含する。
【0079】
本明細書で使用する場合、抗体の「抗体断片」、「抗原結合部」(若しくは単に「抗体部」)、又は、抗体の「抗原結合断片」という用語は、インタクトな抗体が結合する抗原に結合するインタクトな抗体の一部を含むインタクトな抗体以外の分子を指す。抗体断片の例としては、Fv、Fab、Fab’、Fab’-SH、F(ab’)2;ダイアボディ;直鎖状抗体;一本鎖抗体分子(例えばscFv及びscFab);単一ドメイン抗体(dAb);並びに抗体断片から形成された多重特異性抗体が挙げられるが、これらに限定されない。特定の抗体断片の総説については、Holliger and Hudson, Nature Biotechnology 23:1126-1136(2005)を参照されたい。
【0080】
「キメラ」抗体という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が特定の供給源又は種に由来し、重鎖及び/又は軽鎖の残りの部分が異なる供給源又は種に由来する抗体を意味する。
【0081】
「ヒト抗体」という用語は、ヒト若しくはヒト細胞により産生されるか、又はヒト抗体のレパートリー若しくは他のヒト抗体をコードする配列を利用した非ヒト起源に由来する抗体のものに対応するアミノ酸配列を有する抗体を意味する。ヒト抗体のこの定義は、非ヒト抗原結合残基を含むヒト化抗体を特に除外する。
【0082】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒトCDRのアミノ酸残基及びヒトFRのアミノ酸残基を含むキメラ抗体を意味する。実施例では、ヒト化抗体は、少なくとも1つ、典型的には2つの可変ドメインの全てを実質的に含み、そのドメイン中ではCDRの全て又は実質的に全てが非ヒト抗体のCDRに対応し、FRの全て又は実質的に全てがヒト抗体のFRに対応することになる。ヒト化抗体は、場合により、ヒト抗体に由来する抗体定常領域の少なくとも一部を含んでいてもよい。抗体、例えば、非ヒト抗体の「ヒト化形態」は、ヒト化を受けた抗体を指す。
【0083】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均一な抗体の集合から得られる抗体、すなわち、概して少量で存在している起こり得るバリアント抗体(例えば天然に存在する突然変異を含んでいるか、又はモノクローナル抗体調製物の生成中に生じるもの)を除いて、同一であり、且つ/又は同じエピトープに結合する集合を含む個々の抗体を意味する。典型的には異なる決定基(エピトープ)に対して指向する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、モノクローナル抗体調製物のそれぞれのモノクローナル抗体は、1つの抗原上の単一の決定基に対して指向する。したがって、修飾詞「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集合から得られる抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とするように構築されない。例えば、本開示の主題に従ったモノクローナル抗体は、ハイブリドーマ法、組換えDNA法、ファージディスプレイ法、及びヒト免疫グロブリン遺伝子座の全て又は一部を含有するトランスジェニック動物を利用する方法を含むが、これらに限定されない様々な技法によって作製することができ、そのような方法及び他の例示のモノクローナル抗体の作製方法は、本明細書に記載されている。
【0084】
「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、抗体と抗原との結合に関与する、抗体の重鎖又は軽鎖のドメインを意味する。天然抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれVH及びVL)は、概して、類似の構造を有し、それぞれのドメインは、4つの保存されたフレームワーク領域(FR)と、3つの相補性決定領域(CDR)とを含む。(例えば、Kindt et al. Kuby Immunology, 6th ed., W.H. Freeman and Co., page 91(2007)を参照のこと)。抗原結合特異性を与えるには、単一のVH又はVLドメインで十分であり得る。さらに、特定の抗原に結合する抗体は、その抗原に結合する抗体からのVH又はVLドメインを使用して相補的VL又はVHドメインのライブラリをそれぞれスクリーニングして、単離されてもよい。例えば、Portolano et al., J. ImmunolImmunol.:880-887(1993);Clarkson et al., Nature 352:624-628(1991)を参照のこと。
【0085】
本明細書で使用する場合、用語「超可変領域」又は「HVR」とは、配列内で超可変可能であり、抗原結合特異性を決定する、抗体可変ドメインの領域、例えば「相補性決定領域」(CDR)のそれぞれを意味する。一般に、抗体は6つのCDRを含み、3つがVH中にあり(CDR-H1、CDR-H2、CDR-H3)、3つがVL中にある(CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3)。本明細書における例示的なCDRには、以下が含まれる:
アミノ酸残基26-32(L1)、50-52(L2)、91-96(L3)、26-32(H1)、53-55(H2)、及び96-101(H3)に生じる超可変ループ(Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917(1987));
アミノ酸残基24-34(L1)、50-56(L2)、89-97(L3)、31-35b(H1)、50-65(H2)、及び95-102(H3)に生じるCDR(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991));並びに
アミノ酸残基27c-36(L1)、46-55(L2)、89-96(L3)、30-35b(H1)、47-58(H2)、及び93-101(H3)に生じる抗原コンタクト(MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262::732-745(1996))。
【0086】
CDRは、Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD(1991)に従って決定され得る。CDRの名称はまた、Chothia and Lesk, J. Mol. Biol. 196:901-917(1987), MacCallum et al. J. Mol. Biol. 262::732-745(1996)、又は任意の他の科学的に認められた命名システムに従って決定され得る。
【0087】
抗体に関連する「クラス」という用語は、その重鎖によって保有される定常ドメイン又は定常領域の種類を意味する。抗体には、5つの主要なクラス:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMが存在し、これらのうちのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分けることができる。抗体は、IgG1アイソタイプであり得る。抗体は、IgG2アイソタイプであり得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれa、d、e、g、及びmと呼ばれる。抗体の軽鎖は、その定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの種類のうちの1つに割り当てることができる。
【0088】
「核酸分子」又は「ポリヌクレオチド」という用語は、ヌクレオチドのポリマーを含む任意の化合物及び/又は物質を含む。各ヌクレオチドは、塩基で構成され、具体的には、プリン塩基又はピリミジン塩基(すなわち、シトシン(C)、グアニン(G)、アデニン(A)、チミン(T)又はウラシル(U))、糖(すなわち、デオキシリボース又はリボース)、及びリン酸基で構成される。多くは、核酸分子は、塩基配列によって記述され、ここで、当該塩基は、核酸分子の一次構造(線状構造)を表す。塩基の配列は、典型的には、5’から3’へと表される。本明細書において、核酸分子という用語は、デオキシリボ核酸(DNA)(例えば、相補的DNA(cDNA)及びゲノムDNAを含む)、リボ核酸(RNA)、特に、メッセンジャーRNA(mRNA)、DNA又はRNAの合成形態、及びこれらの分子の2つ以上を含む混合ポリマーを包含する。核酸分子は、直鎖状又は環状であってもよい。これに加え、核酸分子という用語は、センス鎖及びアンチセンス鎖、並びに一本鎖形態及び二本鎖形態の両方を含む。さらに、本明細書で記載される核酸分子は、天然に存在するヌクレオチド又は天然に存在しないヌクレオチドを含むことができる。天然に存在しないヌクレオチドの例としては、誘導体化された糖若しくはリン酸骨格結合を有する修飾ヌクレオチド塩基又は化学的に修飾された残基が挙げられる。核酸分子はまた、in vitro及び/又はin vivo、例えば宿主又は患者において本開示の抗体を直接発現させるためのベクターとして好適なDNA分子及びRNA分子を包含する。そのようなDNA(例えば、cDNA)又はRNA(例えば、mRNA)ベクターは、修飾されていなくてもよく、又は修飾されていてもよい。例えば、mRNAは、in vivoで抗体を産生するために対象にmRNAを注入することができるように、RNAベクターの安定性及び/又はコードされた分子の発現を高めるように化学修飾され得る(例えば、Stadler et al,Nature Medicine 2017,published online 12 June 2017,doi:10.1038/nm.4356又は欧州特許第2 101 823号B1を参照されたい)。「ベクター」という用語は、文脈が別途必要としない限り、結合された別の核酸を輸送することができる核酸分子を意味する。
【0089】
「単離された」という用語は、成分、すなわち他の染色体及び染色体外DNA及びRNA、並びにタンパク質が天然に存在する生物体の細胞の他の生体成分から実質的に分離又は精製されている生体成分(例えば核酸分子又はタンパク質)を意味する。「単離された」核酸及びタンパク質は、標準的な精製方法により精製された核酸及びタンパク質を含む。この用語は、宿主細胞において組換え発現により調製された核酸及びタンパク質、並びに化学的に合成された核酸分子、タンパク質、及びペプチドも包含する。
【0090】
精製:この用語は、絶対的な純度を必要せず、むしろ、相対的な用語として意図されている。よって、例えば、精製された生成物は、生成物がそれに付随し得る細胞成分(核酸、脂質、炭水化物、及び[その他の]ポリペプチド)から実質的に分離されるように、細胞内のその環境にある生成物(例えば、ポリペプチド又はタンパク質)よりも濃縮されている生成物である。
【0091】
一例では、本開示の目的の生成物(例えば、抗体などのポリペプチド)は、サンプルの少なくとも50重量%が生成物で構成されるとき、例えば、サンプルの少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、92%、95%、98%、又は99%、又はそれより多くがポリペプチドで構成されるとき、精製される。ポリペプチドを精製するために使用することができる方法の例には、Sambrook et al.(Molecular Cloning:A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor, N.Y., 1989, Ch. 17)に開示される方法が含まれるが、これらに限定されない。タンパク質の精製は、例えば、高圧液体クロマトグラフィー又はその他の従来の方法によって決定することができる。
【0092】
「力価」という用語は、細胞培養によって生成された目的の生成物(例えば、抗体などの組換えポリペプチド)の総量を所定量の培地体積で割ったものを意味する。力価は典型的には、1ミリリットル又は1リットルの培地当たりの、抗体のミリグラムの単位(mg/mL又はmg/L)にて表される。特定の実施態様において、力価は、1リットルの培地当たりの抗体のグラム(g/L)で表される。力価は、異なる培養条件下でタンパク質産生物を得ることと比較しての、力価の増加割合といった、相対的な測定値の観点から表現又は評価することができる。
【0093】
「配列同一性」という用語:2つ以上の核酸配列又は2つ以上のアミノ酸配列間の同一性は、配列間の同一性又は類似性に関して表される。配列同一性は、パーセンテージ同一性に関して測定することができ、このパーセンテージが高いほど、配列はより一致している。パーセンテージ同一性は、配列の全長にわたって計算される。核酸配列又はアミノ酸配列のホモログ又はオルソログは、標準的な方法を使用して整列させた場合、比較的高度な配列同一性を保有する。この相同性は、オルソロガスタンパク質又はcDNAがより密接に関連する種(例えば、ヒト及びマウス配列)に由来するとき、より遠い関連種(例えば、ヒト及びC.elegans配列)と比較してより重要である。
【0094】
本明細書で使用される「細胞」という用語は、真核細胞への言及を含む。文脈が別途必要としない限り、細胞への言及は、複数(の細胞)への言及を含み得る。真核細胞は、動物細胞(例えば哺乳動物細胞)又は真菌細胞(例えば酵母細胞)であり得る。真核細胞は、哺乳動物細胞、例えば、ハイブリドーマ、CHO細胞、COS細胞、VERO細胞、HeLa細胞、HEK 293細胞、PER-C6細胞、K562細胞、MOLT-4細胞、Ml細胞、NS-1細胞、COS-7細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WEHI細胞、SP2/0細胞、BHK細胞(BHK-21細胞を含む)、及びそれらの誘導体であり得る。CHO細胞は、例えば、CHO K1細胞、CHO K1SV細胞、DG44細胞、DUKXB-11細胞、CHOK1S細胞、若しくはCHO K1M細胞、又はそれらの誘導体であり得る。
【0095】
本明細書で使用される「細胞株」という用語は、繰り返し増殖し得る真核細胞の培養物への言及を含む。細胞株の真核細胞は、本明細書で定義されるような任意の細胞から選択され得る。
【0096】
「宿主細胞」、「宿主細胞株」及び「宿主細胞培養物」という用語は、本明細書で互換的に使用され、中に外因性の核酸が導入された細胞(そのような細胞の子孫を含む)を指す。宿主細胞には「形質転換体」及び「形質転換細胞」が含まれ、これらの細胞には、初代形質転換細胞及びそれに由来する子孫が、継代数に関係なく含まれる。子孫は、親細胞の核酸含有量と完全に同一である必要はないが、変異を含むことができる。元々の形質転換された細胞についてスクリーニングされるか又は選択されるのと同じ機能又は生物活性を有する変異体の子孫は、本発明に含まれる。
【0097】
本明細書で使用される「哺乳動物宿主細胞」又は「哺乳動物細胞」という用語は、適切な栄養素及び成長因子を含有する培地内の、単一層培養物又は懸濁培養物のいずれかに置いたときに、増殖及び生残可能な哺乳動物に由来する細胞及び細胞株を指す。特定の細胞株に必要な成長因子は、例えばMammalian Cell Culture(Mather,J.P.ed.,Plenum Press,N.Y.1984)、及びBarnes and Sato,(1980)Cell,22:649に記載されているように、過度な実験をすることなく、実験により速やかに決定される。典型的には、細胞は、目的の、多量の特定のタンパク質、例えば糖タンパク質を、培地中に発現させて分泌させることができる。好適な哺乳動物宿主細胞の例には、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO,Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216 1980);dp12.CHO細胞(1989年3月15日に出版された欧州特許第307,247号);CHO-K1(ATCC,CCL-61);SV40により形質転換したサル腎臓CV1株(COS-7,ATCC CRL 1651);ヒト胎児腎臓株(293細胞、又は、懸濁培養物中での増殖のためにサブクローニングされた293細胞、Graham et al.,J.Gen Virol.,36:59 1977);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK,ATCC CCL 10);マウスセルトリ細胞(TM4,Mather,Biol.Reprod.,23:243-251 1980);サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザルサル腎臓細胞(VERO-76,ATCC CRL-1587);ヒト子宮頚癌細胞(HELA,ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK,ATCC CCL 34);バッファロー系ラット肝臓細胞(BRL 3A,ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138,ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2,HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562,ATCC CCL51);TRI細胞(Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.,383:44-68 1982);MRC 5細胞;FS4細胞;及びヒト肝癌株(Hep G2)が含まれ得る。哺乳動物細胞は、チャイニーズハムスター卵巣細胞/-DHFR(CHO,Urlaub and Chasin,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,77:4216 1980);dp12.CHO細胞(1989年3月15日に公開された欧州特許第307,247号)を含む。
【0098】
「ハイブリドーマ」という用語は、免疫原の不死化細胞株と、抗体産生細胞との融合により産生される、ハイブリッド細胞株を意味する。この用語は、ヒト細胞とマウス骨髄腫細胞株とを融合した後、トリオーマ細胞株として一般に知られる形質細胞と融合した結果である、ヘテロハイブリッド骨髄腫融合物の後代を包含する。さらに、この用語は、抗体を産生する、あらゆる不死化ハイブリッド細胞株、例えばクアドローマなどを含むことを意味する。例えば、Milstein et al., Nature, 537:3053(1983)を参照のこと。
【0099】
本明細書で使用される「細胞培地」という用語は、細胞を培養するための栄養液を指す。「細胞培養供給物」及び「細胞培養添加物」は、培地性能を改善するために細胞培地に添加され得る栄養補充物を表す。例えば、細胞培養供給物及び/又は細胞培養添加物は、細胞のバッチ培養中に細胞培地に添加され得る。細胞培地は、化学的に定義されていてもよく、又は定義されていない成分を含んでいてもよい。例えば哺乳動物細胞用の、細胞培地は、典型的には、以下のカテゴリーの1つ又は複数に由来する少なくとも1つの成分を含む:
1)通常、グルコースなどの炭水化物の形態のエネルギー供給源;
2)全ての必須アミノ酸、及び通常、20個のアミノ酸+システインの、塩基性のセット;
3)低濃度で必要とされるビタミン及び/又は他の有機化合物;
4)遊離脂肪酸;並びに
5)微量元素(微量元素は、非常に低濃度、通常マイクロモル範囲で典型的には必要とされる、無機化合物又は天然に存在する元素として定義される)。
【0100】
細胞培地及び類似の栄養液は任意に、以下のカテゴリーのいずれかに由来する1つ又は複数の成分が補充され得る:
1)例えばインスリン、トランスフェリン、及び上皮増殖因子などの、ホルモン及び他の増殖因子;
2)例えばカルシウム、マグネシウム、及びホスフェートなどの、塩類及び緩衝液;
3)例えばアデノシン、チミジン、及びヒポキサンチンなどの、ヌクレオシド及び塩基;並びに
4)タンパク質及び組織加水分解物。
【0101】
本明細書で使用される「化学的に定義された」培地は、すべての原料が既知である培地である。化学的に定義された培地は、それぞれ未知の成分を含む、血清、胚抽出物、及び加水分解物とは区別される。本開示の細胞培地は、化学的に定義された培地であり得る。本開示の細胞培養供給物は、化学的に定義されていてもよい。本開示の細胞培養添加物は、化学的に定義されていてもよい。
【0102】
本明細書で使用される「定義されていない培地」又は「定義されていない成分を含む培地」は、未知の1つ又は複数の原料を含む培地への言及を含む。定義されていない成分は、例えば、血清、ペプトン、加水分解物(酵母、植物、又は血清加水分解物など)、及び胚抽出物によって提供され得る。
【0103】
「培養すること」という用語は、細胞を、細胞の生存及び/又は成長及び/又は増殖に好適な条件下で、細胞培地と接触させることを指す。
【0104】
「バッチ培養物」という用語は、培養プロセスの開始時に、細胞培養のための全ての成分(細胞及び全ての培養栄養素を含む)が培養バイオリアクターに供給されている培養物を指す。
【0105】
本明細書で使用される場合、「フェドバッチ細胞培養物」という用語は、細胞及び培地が培養バイオリアクターに最初に供給され、追加の培養栄養素が、培養終了前の定期的な細胞及び/又は生成物の採取の有無にかかわらず、培養プロセス中に培養物に継続して、又は個別に増加して、供給されるバッチ培養物を指す。
【0106】
連続培養物と呼ばれることがある「還流培養物」という用語は、細胞が、例えば濾過、封入、マイクロ担体へのアンカリングなどにより培養物中に保持され、培地が連続して、段階的に、又は断続的に(又はこれらの任意の組み合わせで)導入され、培養バイオリアクターから取り除かれる培養物である。
【0107】
細胞培養物の「増殖期」という用語は、細胞が概して急速に分裂する、指数的に細胞が増殖する期間(対数期)を指す。増殖期にて、細胞が維持される時間の長さは、例えば細胞の種類、細胞の増殖速度、及び/又は培地の状態に基づいて変化することができる。この期の間に、細胞は一定期間(例えば1~4日間)、細胞増殖が最大化されるような条件下において培養される。宿主細胞の増殖サイクルの決定は、過度な実験をすることなく想到される、特定の宿主細胞に対して決定される。「細胞増殖が最大化されるような期間及び条件下」などは、特定の細胞株に対して、細胞増殖及び分裂が最適であると測定される培養条件を意味する。例えば哺乳動物細胞の、特定の細胞培養物について、増殖期の間に、細胞は、特定の細胞株に対しての最適な増殖が達成されるように、概して約30~40℃の加湿・制御大気下で、必要な添加物を含有する栄養素培地で培養される。細胞は、約1日と4日の間、通常は2日と3日の間の期間、増殖期で維持され得る。
【0108】
細胞培養の「移行期」という用語は、産生期の培養条件が関与する期間を意味する。移行期の間、細胞培養物の温度、培地浸透圧等の環境要因は、増殖条件から産生条件へと移動する。
【0109】
細胞培養の「産生期」という用語は、細胞増殖が停滞する/停滞を続ける期間を指す。対数的な細胞増殖は典型的には、この期の前、又は間に低下し、タンパク質産生に引き継がれる。産生期の間、対数的な細胞増殖は終わり、生成物(例えばポリペプチド)の生成が主となる。この期間の間、培地は、概して、タンパク質の連続した生成を支持し、所望の生成物(糖タンパク質であり得る)を達成するために補充される。フェドバッチ培養及び/又は還流細胞培養プロセスは、この期の間に細胞培地を補充するか又は新鮮な培地を提供して、所望の細胞密度、生存率、及び/又は組換えタンパク質生成物の力価を達成及び/又は維持する。産生期は大規模に実施することができる。
【0110】
用語「発現」又は「発現する」は、本明細書において、宿主細胞内で生じる転写及び翻訳を意味するように用いられる。宿主細胞内での産生遺伝子の発現度合いは、細胞内に存在する、対応するmRNAの量、又は、細胞により産生される産生遺伝子によりコードされるタンパク質の量のいずれかに基づいて測定することができる。例えば、産生遺伝子から転写されるmRNAは、ノーザンハイブリダイゼーションにより定量化され得る。Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, pp. 7.3-7.57(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。産生遺伝子によりコードされるタンパク質は、タンパク質の生物活性をアッセイすること、又はそのような活性とは無関係な、タンパク質と反応可能な抗体を使用するウエスタンブロット若しくはラジオイムノアッセイなどのアッセイを用いることのいずれかにより定量化することができる。Sambrook et al., Molecular Cloning:A Laboratory Manual, pp. 18.1-18.88(Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989)。
【0111】
「細胞密度」という用語は、所与の体積の培地中での、細胞の数を指す。特定の実施態様では、より高いタンパク質の生産性をもたらすという点で、高い細胞密度が望ましい。細胞密度は、培地からサンプルを抽出し、顕微鏡の下で細胞を分析すること、市販されている細胞計数装置を使用すること、又は、バイオリアクターそのもの(若しくは培地及び懸濁細胞が通過して、バイオリアクターに戻るループ)に導入した、市販されている好適なプローブを使用することを含むがこれらに限定されない、当該技術分野において公知の任意の技術によりモニタリングすることができる。
【0112】
5.2 BAX及びBAKの発現を調節するための方法
本明細書では、遺伝子組換えシステムを用いて(a)Baxポリペプチドアイソフォームの発現;及び(b)Bakポリペプチドアイソフォームの発現を調節(すなわちノックダウン又はノックアウト)することにより、真核細胞におけるアポトーシス活性を低下させる方法が提供される。これはまた、真核宿主細胞中への機能喪失変異又は機能減弱変異の安定した組み込みを可能にする任意の真核宿主細胞に変異を導入することにより、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は安定した機能減弱変異を提供する。安定した組み込みを可能にする真核宿主細胞は、標的組込み(TI)(例えば、国際公開第2019/126634号に記載されるようなもの)、ランダム組込み(RI)、又はトランスポサーゼ媒介組込みを含む様々な方法によって生成され得る。当該技術分野で知られる様々な遺伝子組換えシステムは、前記機能喪失又は機能減弱組換えに使用することができる。このような組換えシステムの非制限的な例には、CRISPR/Casシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システム、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システムが含まれる。従来の、改善された、又は修正されたCasシステム、及び、Cpf-1などの、その他の細菌ベースのゲノム切除ツールを含む、当該技術分野において公知の任意のCRISPR/Casシステムを、本明細書で開示される方法と共に使用することができる。
【0113】
特定の実施態様では、本開示の細胞は、BAXの発現の低下又は排除を示す。特定の実施態様では、本明細書で使用されるBAXは、真核生物BAX細胞タンパク質、例えば、CHO BAX細胞タンパク質(Entrez遺伝子ID:100689032;GenBank ID:EF104643.1)、及びその機能的バリアントを指す。特定の実施態様では、本明細書で使用される場合、BAXの機能的バリアントは、目的の組換え生成物の生成に使用される修飾細胞の野生型BAX配列と50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一性を有するBAX配列バリアントを包含する。
【0114】
特定の実施態様では、本開示の細胞は、BAKの発現の低下又は排除を示す。特定の実施態様では、本明細書で使用されるBAKは、真核生物BAK細胞タンパク質、例えば、CHO BAK細胞タンパク質(GenBank ID:EF104644.1)、及びその機能的バリアントを指す。特定の実施態様では、本明細書で使用される場合、BAKの機能的バリアントは、目的の組換え生成物の生成に使用される修飾細胞の野生型BAK配列と50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%同一性を有するBAK配列バリアントを包含する。
【0115】
Bax遺伝子及び/又はBak遺伝子のそれぞれの全遺伝子又は一部は、Baxポリペプチド及び/又はBakポリペプチドの発現を調節、例えばノックダウン又はノックアウトするために欠失され得る。Bax遺伝子の少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%が欠失され得る。Bak遺伝子の少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%が欠失され得る。Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの少なくとも約2%、少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約85%、又は少なくとも約90%が欠失され得る。
【0116】
Bax遺伝子の約2%以下、約5%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、約30%以下、約35%以下、約40%以下、約45%以下、約50%以下、約55%以下、約60%以下、約65%以下、約70%以下、約75%以下、約80%以下、約85%以下、又は約90%以下が欠失され得る。Bak遺伝子の約2%以下、約5%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、約30%以下、約35%以下、約40%以下、約45%以下、約50%以下、約55%以下、約60%以下、約65%以下、約70%以下、約75%以下、約80%以下、約85%以下、又は約90%以下が欠失され得る。Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの約2%以下、約5%以下、約10%以下、約15%以下、約20%以下、約25%以下、約30%以下、約35%以下、約40%以下、約45%以下、約50%以下、約55%以下、約60%以下、約65%以下、約70%以下、約75%以下、約80%以下、約85%以下、又は約90%以下が欠失され得る。
【0117】
特定の実施態様では、Bax遺伝子の約2%と約90%の間、約10%と約90%の間、約20%と約90%の間、約25%と約90%の間、約30%と約90%の間、約40%と約90%の間、約50%と約90%の間、約60%と約90%の間、約70%と約90%の間、約80%と約90%の間、約85%と約90%の間、約2%と約80%の間、約10%と約80%の間、約20%と約80%の間、約30%と約80%の間、約40%と約80%の間、約50%と約80%の間、約60%と約80%の間、約70%と約80%の間、約75%と約80%の間、約2%と約70%の間、約10%と約70%の間、約20%と約70%の間、約30%と約70%の間、約40%と約70%の間、約50%と約70%の間、約60%と約70%の間、約65%と約70%の間、約2%と約60%の間、約10%と約60%の間、約20%と約60%の間、約30%と約60%の間、約40%と約60%の間、約50%と約60%の間、約55%と約60%の間、約2%と約50%の間、約10%と約50%の間、約20%と約50%の間、約30%と約50%の間、約40%と約50%の間、約45%と約50%の間、約2%と約40%の間、約10%と約40%の間、約20%と約40%の間、約30%と約40%の間、約35%と約40%の間、約2%と約30%の間、約10%と約30%の間、約20%と約30%の間、約25%と約30%の間、約2%と約20%の間、約5%と約20%の間、約10%と約20%の間、約15%と約20%の間、約2%と約10%の間、約5%と約10%の間、又は約2%と約5%の間が欠失され得る。特定の実施態様では、Bak遺伝子の約2%と約90%の間、約10%と約90%の間、約20%と約90%の間、約25%と約90%の間、約30%と約90%の間、約40%と約90%の間、約50%と約90%の間、約60%と約90%の間、約70%と約90%の間、約80%と約90%の間、約85%と約90%の間、約2%と約80%の間、約10%と約80%の間、約20%と約80%の間、約30%と約80%の間、約40%と約80%の間、約50%と約80%の間、約60%と約80%の間、約70%と約80%の間、約75%と約80%の間、約2%と約70%の間、約10%と約70%の間、約20%と約70%の間、約30%と約70%の間、約40%と約70%の間、約50%と約70%の間、約60%と約70%の間、約65%と約70%の間、約2%と約60%の間、約10%と約60%の間、約20%と約60%の間、約30%と約60%の間、約40%と約60%の間、約50%と約60%の間、約55%と約60%の間、約2%と約50%の間、約10%と約50%の間、約20%と約50%の間、約30%と約50%の間、約40%と約50%の間、約45%と約50%の間、約2%と約40%の間、約10%と約40%の間、約20%と約40%の間、約30%と約40%の間、約35%と約40%の間、約2%と約30%の間、約10%と約30%の間、約20%と約30%の間、約25%と約30%の間、約2%と約20%の間、約5%と約20%の間、約10%と約20%の間、約15%と約20%の間、約2%と約10%の間、約5%と約10%の間、又は約2%と約5%の間が欠失され得る。特定の実施態様では、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの約2%と約90%の間、約10%と約90%の間、約20%と約90%の間、約25%と約90%の間、約30%と約90%の間、約40%と約90%の間、約50%と約90%の間、約60%と約90%の間、約70%と約90%の間、約80%と約90%の間、約85%と約90%の間、約2%と約80%の間、約10%と約80%の間、約20%と約80%の間、約30%と約80%の間、約40%と約80%の間、約50%と約80%の間、約60%と約80%の間、約70%と約80%の間、約75%と約80%の間、約2%と約70%の間、約10%と約70%の間、約20%と約70%の間、約30%と約70%の間、約40%と約70%の間、約50%と約70%の間、約60%と約70%の間、約65%と約70%の間、約2%と約60%の間、約10%と約60%の間、約20%と約60%の間、約30%と約60%の間、約40%と約60%の間、約50%と約60%の間、約55%と約60%の間、約2%と約50%の間、約10%と約50%の間、約20%と約50%の間、約30%と約50%の間、約40%と約50%の間、約45%と約50%の間、約2%と約40%の間、約10%と約40%の間、約20%と約40%の間、約30%と約40%の間、約35%と約40%の間、約2%と約30%の間、約10%と約30%の間、約20%と約30%の間、約25%と約30%の間、約2%と約20%の間、約5%と約20%の間、約10%と約20%の間、約15%と約20%の間、約2%と約10%の間、約5%と約10%の間、又は約2%と約5%の間が欠失され得る。
【0118】
Baxポリペプチド及び/又はBakポリペプチドの発現を調節するために、CRISPR/Cas9システムが用いられ得る。クラスター化され、規則的に間隔が空いた短い回文構造の繰り返し(CRISPR)システムは、原核細胞にて発見されたゲノム編集ツールである。ゲノム編集に利用する場合、システムは、Cas9(crRNAをガイドとして利用してDNAを修飾することができるタンパク質)、CRISPR RNA(crRNA、Cas9により使用され、Cas9と活性の複合体を形成するtracrRNA(一般にヘアピンループ形態である)に結合する領域と共に、宿主DNAの正しい部分にcrRNAをガイドするためのRNAを含有する)、及び、トランス活性化crRNA(tracrRNA、crRNAに結合し、Cas9との活性の複合体を形成する)を含む。「ガイドRNA」及び「gRNA」という用語は、Cas9などのRNAガイドヌクレアーゼの、細胞中のゲノム配列又はエピソーム配列などの標的配列への特異的会合(又は「標的化」)を促進する任意の核酸を指す。gRNAは、単分子(単一のRNA分子を含み、代わりにキメラと呼ばれる)又はモジュラー(通常は、例えば二重化によって、相互に関連付けられているcrRNA及びtracrRNAなどの複数の、典型的には2つの別個のRNA分子を含む)であり得る。CRISPR/Cas9法では、哺乳動物細胞をトランスフェクションするためのベクターを使用することができる。ガイドRNA(gRNA)は、Cas9を使用して、細胞内の標的DNAを識別して、直接結合するための配列であるため、各用途に対して設計することができる。複数のcrRNA及びtracrRNAを合わせてパッケージ化して、一本鎖ガイドRNA(sgRNA)を形成することができる。細胞内にトランスフェクションするために、sgRNAをCas9遺伝子と共に結合させ、ベクター内に組み入れることができる。
【0119】
1つ又は複数のBaxポリペプチド及び/又はBakポリペプチドの発現の調節における使用のためのCRISPR/Cas9システムは、Cas9分子と、Bax遺伝子及び/又はBak遺伝子の標的配列に相補的である標的ドメインを含む1つ又は複数のgRNAとを含み得る。標的遺伝子は、Bax遺伝子及び/又はBak遺伝子の領域であり得る。したがって、標的配列は、Bax遺伝子内の任意のエキソン又はイントロン領域であり得、例えば、その標的化は、Baxポリペプチドの発現を排除又は低下させる。したがって、標的配列は、Bak遺伝子内の任意のエキソン又はイントロン領域であり得、例えば、その標的化は、Bakポリペプチドの発現を排除又は低下させる。
【0120】
gRNAは、単一ベクターの細胞に投与され得、Cas9分子は、第2のベクターの細胞に投与され得る。gRNA及びCas9分子は、単一ベクターの細胞に投与され得る。あるいは、gRNA及びCas9分子のそれぞれは、別個のベクターによって投与され得る。実施例では、CRISPR/Cas9システムは、1つ又は複数のgRNAと複合体を形成したCas9タンパク質を含むリボ核タンパク質複合体(RNP)として細胞に送達され得、例えば、エレクトロポレーションによって送達され得る(RNPを細胞に送達するさらなる方法については、例えば、DeWitt et al., Methods 121-122:9-15(2017)を参照のこと)。細胞にCRISPR/Cas9システムを投与すると、典型的には、BaxポリペプチドとBakポリペプチドの両方の発現のノックアウト又はノックダウンがもたらされる。
【0121】
Baxポリペプチド及び/又はBakポリペプチドの発現を調節するために使用される遺伝子組換えシステムは、ZFNシステムであり得る。ZFNは制限酵素として作用することができ、これは、ジンクフィンガーDNA結合ドメインを、DNA切断ドメインと組み合わせることにより作製される。ジンクフィンガードメインを操作して、特異的なDNA配列を標的化することができ、これにより、ジンクフィンガーヌクレアーゼが、ゲノム内で所望の配列を標的化することが可能になる。個々のZFNのDNA結合ドメインは典型的には、複数の、個別のジンクフィンガー反復を含有し、それぞれが複数の塩基対を認識することができる。新しいジンクフィンガードメインを生成するための、最も一般的な方法は、既知の特異性を有する小さいジンクフィンガー「モジュール」を組み合わせることである。最も一般的な、ZFNの切断ドメインは、II型制限エンドヌクレアーゼFokI由来の、非特異的切断ドメインである。ZFNは、標的DNA配列内で二本鎖の切断(DSB)を行うことにより、タンパク質の発現を調節し、これは、相同テンプレートの不存在下にて、非相同末端結合(NHEJ)により修復される。このような修復は、塩基対の欠失又は挿入をもたらし、フレームシフトを生成し、有害なタンパク質の産生を防ぐことができる(Durai et al., Nucleic Acids Res.;33(18):5978-90(2005))。ZFNの複数の対を使用して、ゲノム配列の大きなセグメント全体を完全に削除することもできる(Lee et al., Genome Res.;20(1):81-9(2010))。標的遺伝子は、Bax遺伝子の一部であり得る。標的遺伝子は、Bak遺伝子の一部であり得る。
【0122】
Baxポリペプチド及び/又はBakポリペプチドの発現を調節するために使用される遺伝子組換えシステムは、TALENシステムであり得る。TALENは、操作してDNAの特異的な配列を切断することができる制限酵素である。TALENシステムは、ZFNに類似した原理で作動する。TALENは、転写活性化因子様エフェクターDNA結合ドメインを、DNA切断ドメインと組み合わせることにより生成される。転写活性化因子様エフェクター(TALE)は、特定のヌクレオチドを強く認識する2つの可変位置を有する33~34のアミノ酸の繰り返しモチーフで構成されている。これらのTALEのアレイを組み立てることにより、TALE DNA結合ドメインを操作して所望のDNA配列に結合し、それによってヌクレアーゼがゲノムの特定の位置で切断するように誘導することができる(Boch et al., Nature Biotechnology;29(2):135-6(2011)。標的遺伝子は、Bax遺伝子の一部であり得る。標的遺伝子は、Bak遺伝子の一部であり得る。
【0123】
本明細書で開示される遺伝子組換えシステムは、ウイルスベクター、例えばガンマレトロウイルスベクター等のレトロウイルスベクター及びレンチウイルスベクターを使用して哺乳動物細胞に送達され得る。キャプシドタンパク質が、ヒト細胞を感染させるのに機能的である場合、レトロウイルスベクターと、適切なパッケージング株の組み合わせが好適である。PA12(Miller, et al.(1985)Mol. Cell. Biol. 5:431-437);PA317(Miller, et al.(1986)Mol. Cell. Biol. 6:2895-2902);及びCRIP(Danos, et al.(1988)Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:6460-6464)を含むがこれらに限定されない様々な両種性ウイルス産生株が知られている。非両種性粒子、例えば、VSVG、RD114、又はGALVエンベロープ及び当該技術分野で知られている他の任意のものでシュードタイプされた粒子も好適である。形質導入の可能な方法には、例えばBregni, et al.(1992)Blood 80:1418-1422の方法による、細胞と産生細胞の直接共培養、又は適切な成長因子及びポリカチオンの有無にかかわらず、例えばXu, et al.(1994)Exp. Hemat. 22:223-230;及びHughes, et al.(1992)J. Clin. Invest. 89:1817の方法によるウイルス上清単独又は濃縮ベクターのストックとの培養も含まれる。
【0124】
他の形質導入ウイルスベクターを使用して、本明細書にて開示した哺乳動物細胞を修飾することができる。特定の実施態様では、選択されたベクターは、高い感染効率と安定した組み込み及び発現とを示す(例えば、Cayouette et al., Human Gene Therapy 8:423-430, 1997;Kido et al., Current Eye Research 15:833-844, 1996;Bloomer et al., Journal of Virology 71:6641-6649, 1997;Naldini et al., Science 272:263-267, 1996;及びMiyoshi et al., Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A. 94:10319, 1997を参照のこと)。使用することができる他のウイルスベクターには、例えば、アデノウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノ関連ウイルスベクター、ワクシニアウイルス、ウシパピローマウイルス、又はヘルペスウイルス、例えばエプスタインバーウイルス(例えば、Miller, Human Gene Therapy 15-14, 1990;Friedman, Science 244:1275-1281, 1989;Eglitis et al., BioTechniques 6:608-614, 1988;Tolstoshev et al., Current Opinion in Biotechnology 1:55-61, 1990;Sharp, The Lancet 337:1277-1278, 1991;Cornetta et al., Nucleic Acid Research and Molecular Biology 36:311-322, 1987;Anderson, Science 226:401-409, 1984;Moen, Blood Cells 17:407-416, 1991;Miller et al., Biotechnology 7:980-990, 1989;LeGal La Salle et al., Science 259:988-990, 1993;and Johnson, Chest 107:77S-83S, 1995のベクターも参照のこと)が含まれる。レトロウイルスベクターは特によく開発されており、臨床現場で使用されている(Rosenberg et al.、N. Engl. J. Med 323:370, 1990、Anderson et al.、米国特許第5,399,346号。)
【0125】
5.3 細胞株
本開示は、単離された真核細胞株であって、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む、細胞株に関する。ある態様では、単離された細胞株は、真核細胞株である。
【0126】
特定の実施態様では、細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む。
【0127】
特定の実施態様では、細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに欠失を含む。
【0128】
特定の実施態様では、細胞株は、動物細胞株又は真菌細胞株である。細胞株は、動物細胞株、例えば哺乳動物細胞株であり得る。例示的な哺乳動物細胞株には、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞株、COS細胞株、VERO細胞株、HeLa細胞株、HEK 293細胞株、PER-C6細胞株、K562細胞株、MOLT-4細胞株、Ml細胞株、NS-1細胞株、COS-7細胞株、MDBK細胞株、MDCK細胞株、MRC-5細胞株、WI-38細胞株、WEHI細胞株、SP2/0細胞株、BHK細胞株(BHK-21細胞株を含む)、又はそれらの誘導体が含まれる。細胞株は、CHO細胞株、例えば、CHO K1細胞株、CHO K1SV細胞株、DG44細胞株、DUKXB-11細胞株、CHOK1S細胞株、若しくはCHO K1M細胞株、又はそれらの誘導体であり得る。細胞株は、真菌細胞株、例えば酵母細胞株であり得る。
【0129】
特定の実施態様では、細胞株は、ウイルスゲノムと、ウイルスカプシドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドとをさらに含む。
【0130】
特定の実施態様では、細胞株は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む。
【0131】
目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、標的位置で細胞株の細胞ゲノムに組み込まれ得る。目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、細胞株の細胞ゲノムに無作為に組み込まれ得る。目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、染色体外ポリヌクレオチドであり得る。目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、細胞株の染色体に組み込まれ得る。
【0132】
特定の実施態様では、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドは、標的位置で細胞株の細胞ゲノムに組み込まれ得る。このような標的化組込みは、外因性ヌクレオチド配列が宿主細胞ゲノムの1つ又は複数の所定の部位に組み込まれることを可能にする。特定の実施態様では、標的化組込みは、1つ又は複数の組換え認識配列(RRS)を認識するリコンビナーゼによって媒介される。RRSは、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、及びφC31 attB配列からなる群から選択され得る。標的化組込みは、相同組換えによって媒介され得る。標的化組込みは、外因性の部位特異的ヌクレアーゼとそれに続く相同性指向修復(HDR)及び/又は非相同末端結合(NHEJ)によって媒介され得る。本開示による標的化組込みは、国際公開第2019/126634号でさらに説明される通りであり得る(例えば、国際公開第2019/126634号、セクション5.1、5.2、5.3、及び5.4、42-55頁を参照のこと。標的化組込みを使用して細胞を調製する方法は、セクション6.1及び6.2、55-67頁でさらに説明されている)。
【0133】
標的化組込みを用いる特定の実施態様では、外因性ヌクレオチド配列は、宿主細胞(「TI宿主細胞」)のゲノムの特定の遺伝子座内の部位で組み込まれる。特定の実施態様では、外因性ヌクレオチド配列が組み込まれている遺伝子座は、Contigs NW_006874047.1、NW_006884592.1、NW_006881296.1、NW_003616412.1、NW_003615063.1、NW_006882936.1、及びNW_003615411.1から選択される配列に少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.9%相同である。
【0134】
特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列のすぐ5’のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、又はNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705、及びそれらに少なくとも50%相同な配列からなる群から選択される。特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列のすぐ5’のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、又はNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705に少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.9%相同である。
【0135】
特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列のすぐ3’のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、又はNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117、及びそれらに少なくとも50%相同な配列からなる群から選択される。特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列のすぐ3’のヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、又はNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117に少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.9%相同である。
【0136】
特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、及びNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705、及びそれらに少なくとも50%相同な配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によって5’に隣接している。特定の実施態様では、組み込まれた外因性配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、及びNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117、及びそれらに少なくとも50%相同な配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列によって3’に隣接している。特定の実施態様では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列の5’に隣接するヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド41190-45269、NW_006884592.1のヌクレオチド63590-207911、NW_006881296.1のヌクレオチド253831-491909、NW_003616412.1のヌクレオチド69303-79768、NW_003615063.1のヌクレオチド293481-315265、NW_006882936.1のヌクレオチド2650443-2662054、又はNW_003615411.1のヌクレオチド82214-97705に少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、及び少なくとも約99.9%相同である。特定の実施態様では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列の3’に隣接するヌクレオチド配列は、NW_006874047.1のヌクレオチド45270-45490、NW_006884592.1のヌクレオチド207912-792374、NW_006881296.1のヌクレオチド491910-667813、NW_003616412.1のヌクレオチド79769-100059、NW_003615063.1のヌクレオチド315266-362442、NW_006882936.1のヌクレオチド2662055-2701768、又はNW_003615411.1のヌクレオチド97706-105117に少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、及び少なくとも約99.9%相同である。
【0137】
特定の実施態様では、組み込まれた外因性ヌクレオチド配列は、Contigs NW_006874047.1、NW_006884592.1、NW_006881296.1、NW_003616412.1、NW_003615063.1、NW_006882936.1、及びNW_003615411.1、並びにそれらに少なくとも50%相同な配列からなる群から選択されるヌクレオチド配列に作用可能に結合している。特定の実施態様では、外因性ヌクレオチド配列に作用可能に結合しているヌクレオチド配列は、Contigs NW_006874047.1、NW_006884592.1、NW_006881296.1、NW_003616412.1、NW_003615063.1、NW_006882936.1、及びNW_003615411.1から選択される配列に少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約99%、又は少なくとも約99.9%相同である。
【0138】
特定の実施態様において、目的の生成物をコードする核酸を、トランスポサーゼ型組込みを使用して宿主細胞ゲノムに組み込むことができる。トランスポサーゼ型組込み技術は、例えば、Trubitsyna et al., Nucleic Acids Res. 45(10):e89(2017), Li et al., PNAS 110(25):E2279-E2287(2013)及び国際公開第2004/009792号に開示されており、これらは参照によりその全文が本明細書に援用される。
【0139】
目的の生成物は、組換えポリペプチドであり得るか又はそれを含み得る。目的の生成物(組換えポリペプチドなど)は、抗体、抗原、酵素、又はワクチンであり得るか又はそれを含み得る。抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。抗体は、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなり得る。抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含み得る。目的の生成物は、複合分子、例えば、一部が抗体で一部がタンパク質であり得るか、又は非抗体複合タンパク質、及びそのような誘導体であり得る。抗体は、モノクローナル抗体を含み得る。
【0140】
特定の実施態様では、細胞株は、ポリヌクレオチドと、野生型Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの機能的コピーとを含む、対応する真核細胞よりも高い比生産性を有する。例えば、細胞株は、ポリヌクレオチドと、野生型Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの機能的コピーとを含む、対応する真核細胞株の比生産性よりも少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、又は少なくとも約60%高い比生産性(Qp)を有し得る。例えば、細胞株は、ポリヌクレオチドと、野生型Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの機能的コピーを含む、対応する真核細胞株の力価よりも少なくとも約5%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、又は少なくとも約60%高い力価を有し得る。
【0141】
特定の実施態様では、細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの機能的コピーを含む対応する単離された真核細胞株よりもアポトーシスに対して耐性である。
【0142】
5.4 細胞培養物
細胞培養物は、細胞培地と、少なくとも1つ(典型的には複数)の細胞とを含む。例えば、細胞培地は、細胞培地と複数の真核細胞とを含んでもよく、ここで、複数の各細胞は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む。
【0143】
細胞培地は、多くの成分を含有する。細胞培地は、制御された、人工の、in vitro環境で細胞を維持及び成長させるのに必要な栄養物を提供する。細胞培地の特性及び組成は、特定の細胞要件によってさまざまである。重要なパラメータには、浸透圧、pH、及び栄養製剤が含まれる。
【0144】
アミノ酸、グルコース、塩、ビタミン、及びその他の栄養物の混合物を含み、粉末又は液体のいずれかの形態で供給業者から入手可能である。これらの成分の要件は、細胞株によってさまざまである。pHの調節は最適な培養条件にとって重要であり、一般に、適切な緩衝系を使用して達成される。化学的に定義された培地(CDM)は、無菌状態で調製及び使用されるときに再現性のあるコンタミネーションフリーの培地を提供するため、治療及び関連用途に好ましいが、いくつかの細胞型には、血清、タンパク質、又はその他の生物学的抽出物(酵母抽出物又は植物若しくは動物物質の酵素消化物など)を含む培地を使用することが必要な場合がある。
【0145】
細胞培養には、ビタミン、アミノ酸、有機塩、無機塩、及び緩衝剤から本質的になる極めて単純な定義培地も使用されてきた。しかし、このような培地(「基礎培地」と呼ばれることが多い)では、ほとんどの動物細胞が必要とする栄養含有量が、通常著しく不足している。したがって、これらの培地は、完全な培地を形成するために、例えば、供給物又はその他の添加物を補充する必要がある場合が多い。さらに、バッチ培養系では、培養細胞の生存率を、及び/又はポリペプチド(例えば、抗体、又は抗体の生物学的に機能する断片)、タンパク質、ペプチド、ホルモン、ウイルス若しくはウイルス様粒子、核酸、又はその断片などの生物学的生成物の生成を維持するために、濃縮した供給物又は添加物で培地を定期的に補充することが多い。
【0146】
基礎培地に存在し得る原料には、アミノ酸(窒素源)、ビタミン、無機塩、糖類(炭素源)、緩衝塩、及び脂質が含まれる。ある哺乳動物細胞培養系と共に使用するための基礎培地は、エタノールアミン、D-グルコース、N-[2-ヒドロキシエチル]-ピペラジン-N’-[2-エタンスルホン酸](HEPES)、リノール酸、リポ酸、フェノールレッド、PLURONlC F68、プトレシン、ピルビン酸ナトリウムを含み得る。
【0147】
培地に含まれ得るアミノ酸原料には、L-アラニン、L-アルギニン、L-アスパラギン、L-アスパラギン酸、L-システイン、L-グルタミン酸、L グルタミン、グリシン、L-ヒスチジン、L-イソロイシン、L-ロイシン、L-リジン、L-メチオニン(rnethionine)、L フェニルアラニン、L-プロリン、L-セリン、L-スレオニン、L-トリプトファン、L-チロシン、L-バリン、及びそれらの誘導体が含まれる。これらのアミノ酸は、例えばSigma(Saint Louis, Missouri)から、商業的に入手することができる。
【0148】
培地に含まれ得るビタミン原料には、ビオチン、塩化コリン、D-Ca2+-パントテネート、葉酸、i-イノシトール、ナイアシンアミド、ピリドキシン、リボフラビン、チアミン、及びビタミンB12が含まれる。これらのビタミンは、例えばSigma(Saint Louis, Missouri)から、商業的に入手することができる。
【0149】
培地に使用され得る無機塩原料には、1つ又は複数のカルシウム塩(例えば、CaCl2)、Fe(NO3)3、KCl、1つ又は複数のマグネシウム塩(例えばMgCl2及び/又はMgSO4)、1つ又は複数のマンガン塩(例えばMnCl2)、NaCl、NaHCO3、N2HPO4、並びに微量元素セレニウム、バナジウム、亜鉛、及び銅のイオンが含まれる。これらの微量元素は、様々な形態で、好ましくは、Na2SeO3、NH4VO3、ZnSO4、及びCuSO4などの塩の形態で提供され得る。これらの無機塩は、例えばSigma(Saint Louis, Missouri)から、商業的に入手することができる。
【0150】
哺乳動物細胞の培養に有用な例示的な培地には、ハムF10(Sigma)、最小必須培地((MEM)Sigma)、RPMI-1640(Sigma)、及びダルベッコ改変イーグル培地((DMEM)、Sigma)等の市販の培地が含まれ、これらは、宿主細胞の培養に適している。さらに、Ham and Wallace(1979), Meth. in Enz. 58:44;Barnes and Sato(1980), Anal. Biochem. 102:255;米国特許第4,767,704号;同第4,657,866号;同第4,927,762号;又は同第4,560,655号;国際公開第90/03430号;同第87/00195号;米国再発行特許第30,985号;又は米国特許第5,122,469号(これらの開示のすべては参照により本明細書に援用される)に記載されるいずれの培地も、宿主細胞の培地として使用され得る。これらの培地のうちのいずれかには、必要に応じて、ホルモン及び/又は他の成長因子(インスリン、トランスフェリン、又は上皮成長因子など)、塩(塩化ナトリウム、カルシウム、マグネシウム、及びリン酸塩等)、緩衝液(HEPES等)、ヌクレオシド(アデノシン及びチミジン等)、抗生物質(GentamycinTM薬物等)、微量元素(通常マイクロモル範囲の最終濃度で存在する無機化合物と定義される)、並びにグルコース又は等価エネルギー源が補充され得る。任意の他の必要な補充物もまた、当業者に公知の適切な濃度で含まれ得る。培養条件、例えば、温度、pH等は、発現のために選択された宿主細胞で既に使用したものであり、当業者に明らかであろう。例示的な培養条件は、M. Takagi and K. Ueda, 「Comparison of the optimal culture conditions for cell growth and tissue plasminogen activator production by human embryo lung cells on microcarriers」, Biotechnology,(1994), 41, 565-570;H.J. Morton, 「A survey of commercially available tissue culture media」, In Vitro(1970), 6(2), 89-108;J. Van der Valk, et al.,(2010), 「Optimization of chemically defined cell culture media-replacing fetal bovine serum in mammalian in vitro methods」, Toxicology in vitro, 24(4), 1053-1063;R.J. Graham et al., 「Consequences of trace metal variability and supplementation on Chinese hamster ovary(CHO)cell culture performance:A review of key mechanisms and considerations」, BIotechnol. Bioeng.(2019), 116(12), 3446-3456;S. Janoschek et al., A protocol to transfer a fed‐batch platform process into semi‐perfusion mode:The benefit of automated small‐scale bioreactors compared to shake flasks as scale‐down model」, Biotechnol. Prog.,(2019), 35(2), e2757;及びM. Kuiper et al., 「Repurposing fed‐batch media and feeds for highly productive CHO perfusion processes」, Biotechnology Progress, 15 April 2019, https://doi.org/10.1002/ btpr.2821に提供されており、これらのすべては参照によりその全体が本明細書に援用される。
【0151】
CHO細胞の産生に有用な例示的な培地は、任意にグリシン、ヒポキサンチン、及びチミジンを含有する、アミノ酸、塩類、糖、及びビタミン;組換えヒトインスリン、Primatone HS若しくはPrimatone RL(Sheffield,England)などの加水分解ペプトン、又は等価物;Pluronic F68又は等価なプルロニックポリオールなどの、細胞保護剤;ゲンタマイシン;及び微量元素などの、いくつかの構成成分の濃度が変更された、DMEM/HAM F-12系配合物などの、基礎培地構成成分(DMEM及びHAM F12培地の組成物に関しては、American Type Culture Collection Catalogue of Cell Lines and Hybridomas,Sixth Edition,1988、346-349頁を参照のこと)(米国特許第5,122,469号に記載の培地の配合物が、特に適切である)を含有し得る。
【0152】
細胞培養物は、組換えタンパク質を発現する、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む真核細胞を含み得る。組換えタンパク質は、様々な細胞培養条件下にて、目的の生成物を発現する細胞を成長させることにより産生することができる。例えば、タンパク質の大規模又は小規模産生のための、細胞培養手順は、本開示の文脈にて、潜在的に有用である。流動床バイオリアクター、中空繊維バイオリアクター、ローラーボトル培養、振とうフラスコ培養、又は撹拌槽バイオリアクターシステムが挙げられるがこれらに限定されない手順を使用することができ(後者の2つのシステムでは、マイクロ担体と共に、又は無しで)、代替的にバッチ式、フェドバッチ培養式、又は連続モードで操作することができる。
【0153】
本開示の細胞培養は、撹拌槽バイオリアクターシステムで実施されてもよく、フェドバッチ培養手順が用いられる。フェドバッチ培養では、真核生物宿主細胞(例えば、哺乳動物細胞)及び培地が培養容器に最初に供給され、追加の培養栄養素が、培養終了前の定期的な細胞及び/又は生成物の採取の有無にかかわらず、培養中に培養物に継続して、又は個別に増加して供給される。フェドバッチ培養には、例えば、定期的に全ての培養物(細胞と培地を含む)が取り除かれ、新鮮な培地で交換される、半連続式フェドバッチ培養が含まれ得る。フェドバッチ培養は、細胞培養のための全ての構成成分(細胞、及び全ての培養栄養素を含む)が、培養プロセスの開始時に培養容器に供給される、単純なバッチ培養とは区別される。フェドバッチ培養はさらに、上清がプロセス中に培養容器から取り除かれない限りにおいて、還流培養とは区別することができる(還流培養では、細胞は例えば、濾過、封入、マイクロ担体へのアンカリングにより、培養物中に保持される。そして培地が連続して、又は断続的に導入され、培養容器から取り除かれる)。
【0154】
想到される特定の宿主細胞及び特定の産生プランに好適であり得る、任意のスキーム又はルーティンに従い、培養物の細胞を増殖させることができる。したがって、本開示は、単一工程又は複数工程の培養手順を想到する。単一工程培養において、宿主細胞を培養環境に播種し、本開示のプロセスを、細胞培養の1回の産生期の間に用いる。あるいは、複数の段階培養を想到する。複数段階培養において、細胞は多数の工程又は段階で培養することができる。例えば、細胞を、第1工程又は増殖期培養中に成長させることができる。この段階において、場合により貯蔵庫から取り除かれた細胞が、成長及び高生存能を促進するのに好適な培地に播種される。新鮮な培地を宿主細胞培養物に添加することにより、細胞を好適な期間、増殖期で維持することができる。
【0155】
典型的にはフェドバッチ培養又は連続細胞培養条件を考案して、細胞培養物の増殖期における真核細胞(例えば哺乳動物細胞)の増殖を増強する。増殖期において、細胞は、増殖のために最大化された条件下、及び期間、増殖する。培養条件、例えば温度、pH、溶存酸素(dO2)などは、特定の宿主で用いられるものであり、当業者には明らかであろう。概して、pHは、酸(例えばCO2)又は塩基(例えばNa2CO3又はNaOH)のいずれかを使用して、約6.5と7.5の間のレベルに調整される。CHO細胞などの哺乳動物細胞の培養に適切な温度範囲は、約30℃と38℃の間であり、適切なdO2は空気飽和度の5~90%である。
【0156】
特定の段階において、細胞を使用して、細胞培養の産生期又は産生工程を播種することができる。あるいは、上述のとおり、産生期又は工程を、播種又は増殖期又は工程と連続させることができる。
【0157】
本開示に記載される培養方法は、例えば、細胞培養の産生期に、細胞培養物から生成物を採取することをさらに含み得る。特定の実施態様では、本開示の細胞培養方法により生成された生成物は、第3のバイオリアクター、例えば生成バイオリアクターから採取され得る。例えば、限定されるものではないが、開示した方法は、細胞培養の産生期の完了時に、生成物を回収することを含むことができる。あるいは、又はさらに、生成物は、産生期の完了前に回収することができる。特定の実施態様において、生成物は、特定の細胞密度が達成されると、細胞培養物から回収することができる。例えば、限定されるものではないが、細胞密度は、回収前に、約2.0×10細胞/mL~約5.0×10細胞/mLであり得る。
【0158】
細胞培養物から生成物を採取することは、遠心分離、濾過、音波分離、凝集及び細胞除去技術のうちの1つ又は複数を含み得る。
【0159】
目的の生成物を宿主細胞から分泌させることができ、又は、目的の生成物は、膜結合、サイトゾル、若しくは核タンパク質であり得る。ポリペプチドの可溶形態を、条件づけられた細胞培地から精製することができ、発現する細胞から全ての膜画分を調製し、TRITON(登録商標)X-100(EMD Biosciences,San Diego,Calif.)などの非イオン性界面活性剤を用いて膜を抽出することにより、ポリペプチドの膜結合形態を精製し得る。宿主細胞を(例えば、機械的な力、音波処理、及び/又は界面活性剤により)溶解させ、遠心分離により細胞膜画分を取り除き、上清を保持することにより、サイトゾル又は核タンパク質を調製し得る。
【0160】
ある実施態様では、本発明は、本明細書に開示されるような真核細胞株であって、細胞株の細胞がBax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む、真核細胞株と、本明細書に開示されるような細胞培地とを含む組成物を提供する。
【0161】
別の実施態様は、細胞培地と、複数の真核細胞であって、複数の各細胞がBax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む、複数の真核生物細胞とを含む細胞培養物を提供する。細胞は、本明細書に開示されるような特徴をさらに有し得る。細胞培地は、本明細書に開示されるようにさらに定義され得る。
【0162】
5.5 生成方法
特定の実施態様では、本開示は、組換えポリペプチドを生成する方法を提供する。特定の実施態様では、方法は、ポリペプチドの生成に適した条件下で真核細胞株を培養することを含む。特定の実施態様では、細胞株は、(a)Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異と、(b)組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含む。
【0163】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、標的位置で細胞株の細胞の細胞ゲノムに組み込まれ得る。このような標的化組込みは、外因性ヌクレオチド配列が宿主細胞ゲノムの1つ又は複数の所定の部位に組み込まれることを可能にする。特定の実施態様では、標的化組込みは、1つ又は複数の組換え認識配列(RRS)を認識するリコンビナーゼによって媒介される。RRSは、LoxP配列、LoxP L3配列、LoxP 2L配列、LoxFas配列、Lox511配列、Lox2272配列、Lox2372配列、Lox5171配列、Loxm2配列、Lox71配列、Lox66配列、FRT配列、Bxb1 attP配列、Bxb1 attB配列、φC31 attP配列、及びφC31 attB配列からなる群から選択され得る。標的化組込みは、相同組換えによって媒介され得る。標的化組込みは、外因性の部位特異的ヌクレアーゼとそれに続く相同性指向修復(HDR)及び/又は非相同末端結合(NHEJ)によって媒介され得る。本開示による標的化組込みは、国際公開第2019/126634号でさらに説明される通りであり得る(例えば、国際公開第2019/126634号、セクション5.1、5.2、5.3、及び5.4、42-55頁を参照のこと。標的化組込みを使用して細胞を調製する方法は、セクション6.1及び6.2、55-67頁でさらに説明されている)。
【0164】
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細胞株の細胞の細胞ゲノムに無作為に組み込まれ得る。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、染色体外ポリヌクレオチドであり得る。ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、細胞株の細胞の染色体に組み込まれ得る。
【0165】
組換えポリペプチドは、抗体、抗原、酵素、又はワクチンであり得るか又はそれを含み得る。組換えポリペプチドは、抗体であり得るか又はそれを含み得る。組換えポリペプチドは、抗原であり得るか又はそれを含み得る。組換えポリペプチドは、酵素であり得るか又はそれを含み得る。組換えポリペプチドは、ワクチンであり得るか又はそれを含み得る。抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。抗体は、多重特異性抗体又はその抗原結合断片であり得る。抗体は、単一の重鎖配列及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなり得る。抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含み得る。抗体は、モノクローナル抗体を含み得る。
【0166】
方法は、組換えポリペプチドを単離することをさらに含み得る。このような単離は、典型的には、細胞株から組換えポリペプチドを単離することを含む。組換えポリペプチドを単離することは、遠心分離、濾過、音波分離、凝集、及び細胞除去技術のうちの1つ又は複数を含むことができる。単離された組換えポリペプチドは、精製され得る。
【0167】
細胞株は、動物細胞株又は真菌細胞株であり得る。細胞株は、動物細胞株、例えば哺乳動物細胞株であり得る。例示的な哺乳動物細胞株には、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞株、COS細胞株、VERO細胞株、HeLa細胞株、HEK 293細胞株、PER-C6細胞株、K562細胞株、MOLT-4細胞株、Ml細胞株、NS-1細胞株、COS-7細胞株、MDBK細胞株、MDCK細胞株、MRC-5細胞株、WI-38細胞株、WEHI細胞株、SP2/0細胞株、BHK細胞株(BHK-21細胞株を含む)、又はそれらの誘導体が含まれる。細胞株は、CHO細胞株、例えば、CHO K1細胞株、CHO K1SV細胞株、DG44細胞株、DUKXB-11細胞株、CHOK1S細胞株、若しくはCHO K1M細胞株、又はそれらの誘導体であり得る。細胞株は、真菌細胞株、例えば酵母細胞株であり得る。
【0168】
細胞株は、細胞培地で培養され得る。細胞培地及び/又は細胞培養条件は、上の「細胞培養物」の見出しでさらに記載され得る。細胞株は、フェドバッチ培養条件又は灌流培養条件下で培養され得る。細胞株は、フェドバッチ培養条件下で培養され得る。フェドバッチ培養条件は、強化フェドバッチ培養条件であり得る。細胞株は、灌流培養条件下で培養され得る。灌流培養条件は、半連続灌流であり得る。灌流培養条件は、連続灌流であり得る。
【0169】
細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含み得る。
【0170】
特定の実施態様では、本開示は、ウイルスベクターを生成する方法を提供する。特定の実施態様では、方法は、ウイルスベクターの生成に適した条件下で真核細胞株を培養することを含む。特定の実施態様では、細胞株は、(a)Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異と、(b)ウイルスゲノムと、(c)ウイルスベクターの生成に適した条件下でウイルスカプシドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドとを含む。
【0171】
特定の実施態様では、方法は、ウイルスベクターを単離することをさらに含み得る。特定の実施態様では、単離することは、典型的には、細胞株からウイルスベクターを単離することを含む。ウイルスベクターを単離することは、遠心分離、濾過、音波分離、凝集、及び細胞除去技術のうちの1つ又は複数を含むことができる。単離されたウイルスベクターは、精製され得る。
【0172】
細胞株は、動物細胞株又は真菌細胞株であり得る。細胞株は、動物細胞株、例えば哺乳動物細胞株であり得る。例示的な哺乳動物細胞株には、ハイブリドーマ細胞株、CHO細胞株、COS細胞株、VERO細胞株、HeLa細胞株、HEK 293細胞株、PER-C6細胞株、K562細胞株、MOLT-4細胞株、Ml細胞株、NS-1細胞株、COS-7細胞株、MDBK細胞株、MDCK細胞株、MRC-5細胞株、WI-38細胞株、WEHI細胞株、SP2/0細胞株、BHK細胞株(BHK-21細胞株を含む)、又はそれらの誘導体が含まれる。細胞株は、CHO細胞株、例えば、CHO K1細胞株、CHO K1SV細胞株、DG44細胞株、DUKXB-11細胞株、CHOK1S細胞株、若しくはCHO K1M細胞株、又はそれらの誘導体であり得る。細胞株は、真菌細胞株、例えば酵母細胞株であり得る。
【0173】
細胞株は、細胞培地で培養され得る。細胞培地及び/又は細胞培養条件は、上の「細胞培養物」の見出しでさらに記載され得る。細胞株は、フェドバッチ培養条件又は灌流培養条件下で培養され得る。細胞株は、フェドバッチ培養条件下で培養され得る。フェドバッチ培養条件は、強化フェドバッチ培養条件であり得る。細胞株は、灌流培養条件下で培養され得る。灌流培養条件は、半連続灌流であり得る。灌流培養条件は、連続灌流であり得る。
【0174】
特定の実施態様では、細胞株は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含み得る。
【0175】
特定の実施態様では、本開示は、組換えポリペプチドを生成する方法であって、本明細書に記載されるように(「Bax及びBakの発現を調節するための方法」の見出しの下)アポトーシス活性を低下させ、続いて本開示の方法によって(例えば上で開示されるように)組換えポリペプチドを生成することを含む、方法を提供する。
【0176】
5.6 生成物
本開示の細胞、及び/又は細胞株、及び/又は方法を使用して、本明細書に開示される細胞によって発現し得る任意の目的の生成物を生成することができる。本開示の細胞、及び/又は細胞株、及び/又は本開示の方法は、ポリペプチド、例えば哺乳動物ポリペプチドの生成に使用され得る。このようなポリペプチドの非限定的な例には、ホルモン、受容体、抗体融合タンパク質(例えば、抗体-サイトカイン融合タンパク質)を含む融合タンパク質、調節因子、成長因子、補体系因子、酵素、凝固因子、抗凝固因子、キナーゼ、サイトカイン、CDタンパク質、インターロイキン、治療用タンパク質、診断用タンパク質、及び抗体が含まれる。本開示の細胞、及び/又は細胞株、及び/又は方法は、典型的には、分子、例えば、生成される抗体に対して、特異的ではない。
【0177】
本開示の方法は、治療用及び診断用抗体、又はその抗原結合断片を含む抗体の生成に使用され得る。本開示の細胞、細胞株、及び/又は方法により生成される抗体は、単一特異性抗体(例えば、一本鎖重鎖配列及び一本鎖軽鎖配列からなる、このような対の多量体を含む抗体)、多重特異性抗体、及びその抗原結合断片であり得るが、これらに限定されない。例えば、限定されるものではないが、多重特異性抗体は、二重特異性抗体、二重エピトープ抗体、T細胞依存性二重特異性抗体(TDB)、二重作用FAb(DAF)、又はこれらの抗原結合断片であることができる。
【0178】
多重特異性抗体
抗体は、多重特異性抗体、例えば二重特異性抗体であり得る。「多重特異性抗体」は、少なくとも2つの異なる部分、即ち異なる抗原の異なるエピトープ(即ち、二重特異的)、又は、同じ抗原の異なるエピトープ(即ち、二重エピトープ)に対する結合特異性を有するモノクローナル抗体である。多重特異性抗体は、3以上の結合特異性を有し得る。多重特異性抗体は、本明細書に記載した完全長抗体又は抗体断片として調製することができる。
【0179】
多重特異性抗体を作製するための技法には、限定されないが、異なる特異性を有する2つの免疫グロブリン重鎖-軽鎖ペアの組換え共発現(Milstein及びCuello、Nature 305:537(1983)を参照)及び「ノブ-イン-ホール」操作(例えば、米国特許第5,731,168号及びAtwellら、J.Mol.Biol.270:26(1997)を参照)が含まれる。多重特異性抗体はまた、抗体Fcヘテロ二量体分子を作製するための静電ステアリング効果の操作(例えば、国際公開第2009/089004号を参照);2つ以上の抗体又は断片の架橋(例えば、米国特許第4,676,980号、及びBrennan et al., Science, 229:81(1985)を参照);ロイシンジッパーを使用した二重特異性抗体の産生(例えば、Kostelny et al., J. Immunol., 148(5):15471553(1992)及び国際公開第2011/034605号を参照);軽鎖のミスペアリング問題を回避するための、一般的な軽鎖技術の使用(例えば国際公開第98/50431号を参照);二重特異性抗体断片を作製するための「ダイアボディ」技術の使用(例えば、Hollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90:6444-6448(1993)を参照);及び一本鎖Fv(sFv)二量体の使用(例えば、Gruber et al., J. Immunol., 152:5368(1994)を参照);及び例えばTutt et al. J. Immunol. 147:60(1991)に記載されている三重特異性抗体の調製によって作製することができる。
【0180】
例えば、「オクトパス(Octopus)抗体」を含む3つ以上の抗原結合部位を有する操作された抗体、又はDVD-Igも本明細書に含まれる(例えば、国際公開第2001/77342号及び国際公開第2008/024715号を参照)。3つ以上の抗原結合部位を有する多重特異性抗体の別の非限定例は、国際公開第2010/115589号、同第2010/112193号、同第2010/136172号、同第2010/145792号、及び同第2013/026831号に見出すことができる。二重特異性抗体又はその抗原結合断片は、「二重作用FAb」又は「DAF」も含む(例えば、米国特許出願公開第2008/0069820号及び国際公開第2015/095539号を参照のこと)。
【0181】
多重特異性抗体はまた、同じ抗原特異性の1つ又は複数の結合アームにドメインクロスオーバーを有する非対称の形で、すなわちVH/VLドメイン(例えば、国際公開第2009/080252号及び国際公開第2015/150447号を参照)、CH1/CLドメイン(例えば、国際公開第2009/080253号を参照)、又は完全なFabアーム(例えば、国際公開第2009/080251号、国際公開第2016/016299号を参照、Schaefer et al,PNAS,108(2011)1187-1191、及びKlein at al.,MAbs 8(2016)1010-20も参照)を交換することによっても、提供され得る。多重特異性抗体は、クロスFab断片を含み得る。「クロスFab断片」又は「xFab断片」又は「クロスオーバーFab断片」という用語は、重鎖及び軽鎖の可変領域又は定常領域のいずれかが交換されたFab断片を指す。クロスFab断片は、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖定常領域1(CH1)で構成されるポリペプチド鎖、並びに重鎖可変領域(VH)及び軽鎖定常領域(CL)で構成されるポリペプチド鎖を含む。非対称Fabアームは、荷電又は非荷電アミノ酸変異をドメイン界面に導入して正しいFabペアリングを指向することによって操作することもできる。例えば、国際公開第2016/172485を参照のこと。
【0182】
多重特異性抗体の様々なさらなる分子フォーマットが当該技術分野で知られており、本明細書に含まれる(例えば、Spiess et al., Mol. Immunol. 67(2015)95-106を参照のこと)。
【0183】
本明細書に同様に含まれる特定のタイプの多重特異性抗体は、標的細胞、例えば腫瘍細胞上の表面抗原と、T細胞受容体(TCR)複合体の活性型不変構成成分、例えば、T細胞を再標的化して標的細胞を死滅させるためのCD3とに同時に結合するように設計された二重特異性抗体である。
【0184】
この目的に有用であり得る二重特異性抗体フォーマットのさらなる非限定的な例には、2つのscFv分子が柔軟なリンカーにより融合された、いわゆる「BiTE」(二重特異性T細胞エンゲージャー)(例えば、国際公開第2004/106381号、同第2005/061547号、同第2007/042261号、及び同第2008/119567号、Nagorsen and Baeuerle,Exp Cell Res 317,1255-1260(2011)を参照のこと);ダイアボディ(Holliger et al.,Prot.Eng.9,299-305(1996))及びその誘導体、例えばタンデム二重特異性抗体(「TandAb」;Kipriyanov et al.,J Mol Biol 293,41-56(1999));ダイアボディフォーマットに基づくが、さらなる安定化のための、C末端ジスルフィド架橋を特徴とする「DART」(二重親和性再標的化)分子(Johnson et al.,J Mol Biol 399,436-449(2010))、及び、全ハイブリッドマウス/ラットIgG分子である、いわゆるトリオマブ(Seimetz et al.,Cancer Treat.Rev.36,458-467(2010)で確認される)が含まれるが、これらに限定されない。本明細書に含まれる、具体的なT細胞二重特異性抗体形式は、国際公開第2013/026833号、国際公開第2013/026839号、国際公開第2016/020309号;Bacac et al.,Oncoimmunology 5(8)(2016)e1203498に記載されている。
【0185】
抗体断片
本明細書に提供される細胞、及び/又は細胞株、及び/又は方法は、抗体断片であり得る。例えば、限定されるものではないが、抗体断片は、Fab、Fab’、Fab’-SH、又はF(ab’)2断片、特にFab断片であり得る。インタクトな抗体をパパイン消化すると、重鎖及び軽鎖の可変ドメイン(それぞれ順にVH及びVL)に加えて、軽鎖の定常ドメイン(CL)及び重鎖の第1定常ドメイン(CH1)もそれぞれが含む、2つの同一の抗原結合断片(いわゆる「Fab」断片)が得られる。よって「Fab断片」とは、VLドメイン及びCLドメインを含む軽鎖と、VHドメイン及びCH1ドメインを含む重鎖断片を有する抗体断片のことである。「Fab’断片」は、抗体ヒンジ領域から1つ又は複数のシステインを含むCH1ドメインのカルボキシ末端にて、残基を添加することによって、Fab断片とは異なる。Fab’-SHとは、定常ドメインのシステイン残基)が遊離チオール基を保持するFab’断片である。ペプシン処理により、2つの抗原結合部位(2つのFab断片)と、Fc領域の一部とを有するF(ab’)2断片が得られる。サルベージ受容体結合エピトープ残基を含み、且つin vivo半減期を増加させたFab及びF(ab’)2断片の議論については、米国特許第5869046号を参照のこと。
【0186】
抗体は、ダイアボディ、トリアボディ、又はテトラボディであり得る。「ダイアボディ」は、二価又は二重特異性であってよい、2つの抗原結合部位を有する抗体断片である。例えば、EP404,097;国際公開第1993/01161号;Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134(2003);及びHollinger et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448(1993)を参照のこと。トリアボディ及びテトラボディについても、Hudson et al., Nat. Med. 9:129-134(2003)に記載されている。
【0187】
抗体断片は、一本鎖Fab断片であり得る。「一本鎖Fab断片」又は「scFab」は、抗体重鎖可変ドメイン(VH)、抗体重鎖定常ドメイン1(CH1)、抗体軽鎖可変ドメイン(VL)、抗体軽鎖定常ドメイン(CL)、及びリンカーからなるポリペプチドであり、上記抗体ドメイン及び上記リンカーは、N末端からC末端方向に、以下の順序:a)VH-CH1-リンカー-VL-CL、b)VL-CL-リンカー-VH-CH1、c)VH-CL-リンカー-VL-CH1、又はd)VL-CH1-リンカー-VH-CLのうちの1つを有する。特に、前記リンカーは、少なくとも30個のアミノ酸、好ましくは32個と50個の間のアミノ酸のポリペプチドであり得る。当該一本鎖Fab断片は、CLドメインとCH1ドメインとの間の天然ジスルフィド結合によって安定化される。加えて、これらの一本鎖Fab断片は、システイン残基の挿入(例えば、Kabatナンバリングによると、可変重鎖の位置44及び可変軽鎖の位置100)を介した鎖間ジスルフィド結合の生成によって、さらに安定化し得る。
【0188】
抗体断片は、一本鎖可変断片(scFv)であり得る。「一本鎖可変断片」又は「scFv」は、リンカーにより接続された、抗体の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変ドメインの融合タンパク質である。特に、リンカーは、10~25個のアミノ酸の短いポリペプチドであり、典型的には、柔軟性のためにグリシンが、かつ、溶解性のためにセリン又はスレオニンが豊富であり、VHのN末端をVLのC末端と、又はこの逆のいずれかで、接続させることができる。このタンパク質は、定常領域が取り除かれ、リンカーが導入されているにもかかわらず、元の抗体の特異性を保持することができる。scFv断片の総説については、例えば、Plueckthun, The Pharmacology of Monoclonal Antibodies, 113巻, Rosenburg and Moore eds.,(Springer-Verlag, New York), p. 269-315(1994)を参照のこと。また、国際公開第93/16185号;並びに米国特許第5571894号及び同第5587458号も参照のこと。
【0189】
抗体断片は、単一ドメイン抗体であり得る。「単一ドメイン抗体」は、抗体の重鎖可変ドメインの全部若しくは一部、又は軽鎖可変ドメインの全部若しくは一部を含む抗体断片である。単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体であり得る(Domantis, Inc., Waltham, MA;例えば、米国特許第6,248,516号を参照)。
【0190】
特定の態様では、本明細書において提供される細胞及び方法により生成される抗体融合タンパク質は、抗体-サイトカイ融合タンパク質である。このような抗体-サイトカイン融合タンパク質は完全長抗体を含み得る一方、抗体-サイトカイン融合タンパク質の抗体は、特定の実施態様では、抗体断片、例えば、一本鎖可変断片(scFv)、ダイアボディ、Fab断片、又は小さな免疫タンパク質(SIP)である。特定の実施態様では、サイトカインは、抗体のN末端又はC末端に融合され得る。特定の実施態様では、抗体-サイトカイン融合タンパク質のサイトカインは、複数のサブユニットからなる。特定の実施態様では、サイトカインのサブユニットは、同じ(ホモマー)である。特定の実施態様では、サイトカインのサブユニットは、異なる(ヘテロマーである)。特定の実施態様では、サイトカインのサブユニットは、同じ抗体に融合する。特定の実施態様では、サイトカインのサブユニットは、異なる抗体に融合する。抗体-サイトカイン融合タンパク質の総説については、例えば、Murer et al., N Biotechnol., 52:42-53(2019)を参照のこと。
【0191】
抗体断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解を含むがこれに限定されない、様々な技術により作製され得る。
【0192】
キメラ抗体及びヒト化抗体
本明細書で提供される細胞、及び/又は細胞株、及び/又は方法は、キメラ抗体であり得る。特定のキメラ抗体は、例えば、米国特許第4816567号、及びMorrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855(1984)に記載されている。一例では、キメラ抗体は、非ヒト可変領域(例えば、マウス、ラット、ハムスター、ウサギ、又は非ヒト霊長類、例えば、サル由来の可変領域)及びヒト定常領域を含む。さらなる例では、キメラ抗体は、クラス又はサブクラスが親抗体のそれから変更されている「クラススイッチ」抗体である。キメラ抗体は、その抗原結合断片を含む。
【0193】
キメラ抗体は、ヒト化抗体であり得る。典型的には、非ヒト抗体は、ヒトに対する免疫原性を低下させるようにヒト化される一方、親非ヒト抗体の特異性及び親和性を保持する。概して、ヒト化抗体は、CDR(又はその一部分)が非ヒト抗体に由来する1つ又は複数の可変ドメインを含み、FR(又はの一部分)はヒト抗体配列に由来する。ヒト化抗体はまた、任意に、ヒト定常領域の少なくとも一部分を含み得る。ある特定の実施態様では、ヒト化抗体におけるいくつかのFR残基は、例えば、抗体特異性又は親和性を復元又は改善するように、非ヒト抗体(例えば、CDR残基が由来する抗体)由来の対応する残基で置換される。
【0194】
ヒト化抗体及びそれらの製造方法は、例えばAlmagro and Fransson, Front. Biosci. 13:1619-1633(2008)で総説されており、さらに、例えばRiechmann et al., Nature 332:323-329(1988);Queen et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 86:10029-10033(1989)、米国特許第5821337号、同第7527791号、同第6982321号、及び同第7087409号;Kashmiri et al., Methods 36:25-34(2005)(特異性決定領域(SDR)のグラフティングを記載)、Padlan, Mol. Immunol. 28:489-498(1991)(「リサーフェイシング」を記載)、Dall’Acqua et al., Methods 36:43-60(2005)(「FRシャッフリング」を記載)、並びにOsbourn et al., Methods 36:61-68(2005)及びKlimka et al., Br. J. Cancer, 83:252-260(2000)(FRシャッフリングに対する「誘導選択」アプローチを記載)に記載されている。
【0195】
ヒト化のために使用され得るヒトフレームワーク領域には、以下が含まれるが、これらに限定されない: 「ベストフィット」法を使用して選択されたフレームワーク領域(例えば、Sims et al., J.Immunol.151:2296(1993)を参照);軽鎖又は重鎖可変領域の特定のサブグループのヒト抗体のコンセンサス配列に由来するフレームワーク領域(例えば、Carter et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA、89:4285(1992);及びPresta et al., J.Immunol., 151:2623(1993)を参照);ヒト成熟(体細胞変異)フレームワーク領域又はヒト生殖系列フレームワーク領域(例えば、Almagro and Fransson、Front.Biosci.13:1619-1633(2008)を参照);及びFRライブラリのスクリーニングに由来するフレームワーク領域(例えば、Baca et al., J.Biol.Chem.272:10678-10684(1997)及びRosok et al., J.Biol.Chem.271:22611-22618(1996)を参照)。
【0196】
ヒト抗体
本明細書で提供される細胞、及び/又は細胞株、及び/又は方法は、ヒト抗体であり得る。ヒト抗体は、当該技術分野で知られる様々な技法を使用して産生され得る。ヒト抗体は、概して、van Dijk and van de Winkel, Curr. Opin. Pharmacol. 5:368-74(2001)及びLonberg, Curr. Opin. Immunol. 20:450-459(2008)に記載されている。
【0197】
ヒト抗体は、抗原曝露に応答して、インタクトなヒト抗体、又はヒト可変領域を有するインタクトな抗体を生成するように改変されたトランスジェニック動物に、免疫原を投与することによって調製することができる。このような動物は、典型的には、内因性免疫グロブリン遺伝子座に取って代わるか、又は染色体外に存在するか、若しくは動物の染色体にランダムに組み込まれるヒト免疫グロブリン遺伝子座の全部又は一部分を含む。そのようなトランスジェニックマウスでは、内因性免疫グロブリン遺伝子座は、概して不活性化されている。トランスジェニック動物からヒト抗体を得るための方法の概説については、Lonberg,Nat.Biotech.23:1117-1125(2005)を参照のこと。また、例えば、XENOMOUSETM技術を記載している、米国特許第6075181号及び同第6150584号;HuMab(登録商標)技術を記載している米国特許第5770429号;K-M MOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許第7041870号、及びVELOCIMOUSE(登録商標)技術を記載している米国特許公開第2007/0061900号も参照されたい。このような動物によって生成されたインタクトな抗体由来のヒト可変領域は、例えば、異なるヒト定常領域と組み合わせることによってさらに修飾することができる。
【0198】
ヒト抗体はまた、ハイブリドーマベースの方法によって作製することができる。ヒトモノクローナル抗体を産生するためのヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株が記載されている。(例えば、Kozbor J. Immunol., 133:3001(1984);Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, pp. 51-63(Marcel Dekker, Inc., New York, 1987);及びBoerner et al., J. Immunol., 147:86(1991)を参照のこと。) ヒトB細胞ハイブリドーマ技術を介して生成されるヒト抗体はまた、Li et al., Proc.Natl.Acad.Sci.USA、103:3557-3562(2006)に記載されている。さらなる方法は、例えば、米国特許第7189826号(ハイブリドーマ細胞株からのモノクローナルヒトIgM抗体の産生を記載)及びNi, Xiandai Mianyixue, 26(4):265-268(2006)(ヒト-ヒトハイブリドーマを記載)に記載されるものを含む。ヒトハイブリドーマ技術(トリオーマ技術)も、Vollmers and Brandlein, Histology and Histopathology, 20(3):927-937(2005)及びVollmers and Brandlein, Methods and Findings in Experimental and Clinical Pharmacology, 27(3):185-91(2005)に記載されている。
【0199】
標的分子
本明細書で開示される細胞及び方法により生成された抗体により標的化され得る分子の非限定的な例には、可溶性血清タンパク質及びそれらの受容体、並びに他の膜結合タンパク質(例えばアドヘシン)が含まれる。特定の実施例では、本明細書で開示される細胞及び方法により産生される抗体は、8MPI、8MP2、8MP38(GDFIO)、8MP4、8MP6、8MP8、CSFI(M-CSF)、CSF2(GM-CSF)、CSF3(G-CSF)、EPO、FGF1(αFGF)、FGF2(βFGF)、FGF3(int-2)、FGF4(HST)、FGF5、FGF6(HST-2)、FGF7(KGF)、FGF9、FGF1 0、FGF11、FGF12、FGF12B、FGF14、FGF16、FGF17、FGF19、FGF20、FGF21、FGF23、IGF1、IGF2、IFNA1、IFNA2、IFNA4、IFNA5、IFNA6、IFNA7、IFN81、IFNG、IFNWI、FEL1、FEL1(EPSELON)、FEL1(ZETA)、IL 1A、IL 1B、IL2、IL3、IL4、IL5、IL6、IL7、IL8、IL9、IL1 0、IL 11、IL 12A、IL 12B、IL 13、IL 14、IL 15、IL 16、IL 17、IL 17B、IL 18、IL 19、IL20、IL22、IL23、IL24、IL25、IL26、IL27、IL28A、IL28B、IL29、IL30、PDGFA、PDGFB、TGFA、TGFB1、TGFB2、TGFBb3、LTA(TNF-β)、LTB、TNF(TNF-α)、TNFSF4(OX40リガンド)、TNFSF5(CD40リガンド)、TNFSF6(FasL)、TNFSF7(CD27リガンド)、TNFSF8(CD30リガンド)、TNFSF9(4-1 BBリガンド)、TNFSF10(TRAIL)、TNFSF11(TRANCE)、TNFSF12(APO3L)、TNFSF13(April)、TNFSF13B、TNFSF14(HVEM-L)、TNFSF15(VEGI)、TNFSF18、HGF(VEGFD)、VEGF、VEGFB、VEGFC、IL1R1、IL1R2、IL1RL1、IL1RL2、IL2RA、IL2RB、IL2RG、IL3RA、IL4R、IL5RA、IL6R、IL7R、IL8RA、IL8RB、IL9R、IL10RA、IL10RB、IL 11RA、IL12RB1、IL12RB2、IL13RA1、IL13RA2, IL15RA、IL17R、IL18R1、IL20RA、IL21R、IL22R、IL1HY1、IL1RAP、IL1RAPL1、IL1RAPL2、IL1RN、IL6ST、IL18BP, IL18RAP、IL22RA2, AIF1、HGF、LEP(レプチン)、PTN、及びTHPOからなる群から選択される、1つ、2つ又はそれ以上のサイトカイン、サイトカイン関連タンパク質、及びサイトカイン受容体に結合することができる。
【0200】
本明細書で開示される細胞及び方法により生成される抗体は、CCLI(1-309)、CCL2(MCP-1/MCAF)、CCL3(MIP-Iα)、CCL4(MIP-Iβ)、CCL5(RANTES)、CCL7(MCP-3)、CCL8(mcp-2)、CCL11(エオタキシン)、CCL13(MCP-4)、CCL15(MIP-Iδ)、CCL16(HCC-4)、CCL17(TARC)、CCL18(PARC)、CCL19(MDP-3b)、CCL20(MIP-3α)、CCL21(SLC/エクソダス-2)、CCL22(MDC/STC-1)、CCL23(MPIF-1)、CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2)、CCL25(TECK)、CCL26(エオタキシン-3)、CCL27(CTACK/ILC)、CCL28、CXCLI(GROI)、CXCL2(GR02)、CXCL3(GR03)、CXCL5(ENA-78)、CXCL6(GCP-2)、CXCL9(MIG)、CXCL10(IP10)、CXCL11(1-TAC)、CXCL12(SDFI)、CXCL13、CXCL14、CXCL16、PF4(CXCL4)、PPBP(CXCL7)、CX3CL1(SCYDI)、SCYEI、XCLI(リンホタクチン)、XCL2(SCM-Iβ)、BLRI(MDR15)、CCBP2(D6/JAB61)、CCRI(CKRI/HM145)、CCR2(mcp-IRB IRA)、CCR3(CKR3/CMKBR3)、CCR4、CCR5(CMKBR5/ChemR13)、CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6)、CCR7(CKR7/EBII)、CCR8(CMKBR8/TER1/CKR-L1)、CCR9(GPR-9-6)、CCRL1(VSHK1)、CCRL2(L-CCR)、XCR1(GPR5/CCXCR1)、CMKLR1、CMKOR1(RDC1)、CX3CR1(V28)、CXCR4、GPR2(CCR10)、GPR31、GPR81(FKSG80)、CXCR3(GPR9/CKR-L2)、CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo)、HM74、IL8RA(IL8Rα)、IL8RB(IL8Rβ)、LTB4R(GPR16)、TCP10、CKLFSF2、CKLFSF3、CKLFSF4、CKLFSF5、CKLFSF6、CKLFSF7、CKLFSF8、BDNF、C5、C5R1、CSF3、GRCC10(C10)、EPO、FY(DARC)、GDF5、HDF1、HDF1α、DL8、PRL、RGS3、RGS13、SDF2、SLIT2、TLR2、TLR4、TREM1、TREM2、及びVHLからなる群から選択されるケモカイン、ケモカイン受容体、又はケモカイン関連タンパク質に結合することができる場合がある。
【0201】
特定の実施例では、本明細書で開示される方法により生成された抗体(例えば、二重特異性抗体などの多重特異性抗体)は、以下から選択される1つ又は複数の標的分子に結合することができる:0772P(CA125、MUC16)(すなわち、卵巣がん抗原)、ABCF1;ACVR1;ACVR1B;ACVR2;ACVR2B;ACVRL1;ADORA2A;アグリカン;AGR2;AICDA;AIF1;AIG1;AKAP1;AKAP2;AMH;AMHR2;アミロイドベータ;ANGPTL;ANGPT2;ANGPTL3;ANGPTL4;ANPEP;APC;APOC1;AR;ASLG659;ASPHD1(アスパラギン酸ベータ-ヒドロキシラーゼドメイン含有1;LOC253982);AZGP1(亜鉛-a-糖タンパク質);B7.1;B7.2;BAD;BAFF-R(B細胞活性化因子受容体、BLyS受容体3、BR3;BAG1;BAI1;BCL2;BCL6;BDNF;BLNK;BLRI(MDR15);BMP1;BMP2;BMP3B(GDF10);BMP4;BMP6;BMP8;BMPR1A;BMPR1B(骨形成タンパク質受容体-IB型);BMPR2;BPAG1(プレクチン);BRCA1;ブレビカン;C19orf10(IL27w);C3;C4A;C5;C5R1;CANT1;CASP1;CASP4;CAV1;CCBP2(D6/JAB61);CCL1(1-309);CCL11(エオタキシン);CCL13(MCP-4);CCL15(MIP1δ);CCL16(HCC-4);CCL17(TARC);CCL18(PARC);CCL19(MIP-3β);CCL2(MCP-1);MCAF;CCL20(MIP-3α);CCL21(MTP-2);SLC;エクソダス-2;CCL22(MDC/STC-1);CCL23(MPIF-1);CCL24(MPIF-2/エオタキシン-2);CCL25(TECK);CCL26(エオタキシン-3);CCL27(CTACK/ILC);CCL28;CCL3(MTP-Iα);CCL4(MDP-Iβ);CCL5(RANTES);CCL7(MCP-3);CCL8(mcp-2);CCNA1;CCNA2;CCND1;CCNE1;CCNE2;CCR1(CKRI/HM145);CCR2(mcp-IRβ/RA);CCR3(CKR/CMKBR3);CCR4;CCR5(CMKBR5/ChemR13);CCR6(CMKBR6/CKR-L3/STRL22/DRY6);CCR7(CKBR7/EBI1);CCR8(CMKBR8/TER1/CKR-L1);CCR9(GPR-9-6);CCRL1(VSHK1);CCRL2(L-CCR);CD164;CD19;CD1C;CD20;CD200;CD22(B細胞受容体CD22-Bアイソフォーム);CD24;CD28;CD3;CD37;CD38;CD3E;CD3G;CD3Z;CD4;CD40;CD40L;CD44;CD45RB;CD52;CD69;CD72;CD74;CD79A(CD79α、免疫グロブリン関連アルファ、B細胞特異的タンパク質);CD79B;CDS;CD80;CD81;CD83;CD86;CDH1(E-カドヘリン);CDH10;CDH12;CDH13;CDH18;CDH19;CDH20;CDH5;CDH7;CDH8;CDH9;CDK2;CDK3;CDK4;CDK5;CDK6;CDK7;CDK9;CDKN1A(p21/WAF1/Cip1);CDKN1B(p27/Kip1);CDKN1C;CDKN2A(P16INK4a);CDKN2B;CDKN2C;CDKN3;CEBPB;CER1;CHGA;CHGB;キチナーゼ;CHST10;CKLFSF2;CKLFSF3;CKLFSF4;CKLFSF5;CKLFSF6;CKLFSF7;CKLFSF8;CLDN3;CLDN7(クローディン-7);CLL-1(CLEC12A、MICL、及びDCAL2);CLN3;CLU(クラスタリン);CMKLR1;CMKOR1(RDC1);CNR1;COL 18A1;COL1A1;COL4A3;COL6A1;補体因子D;CR2;CRP;CRIPTO(CR、CR1、CRGF、CRIPTO、TDGF1、奇形癌由来増殖因子);CSFI(M-CSF);CSF2(GM-CSF);CSF3(GCSF);CTLA4;CTNNB1(b-カテニン);CTSB(カテプシンB);CX3CL1(SCYDI);CX3CR1(V28);CXCL1(GRO1);CXCL10(IP-10);CXCL11(I-TAC/IP-9);CXCL12(SDF1);CXCL13;CXCL14;CXCL16;CXCL2(GRO2);CXCL3(GRO3);CXCL5(ENA-78/LIX);CXCL6(GCP-2);CXCL9(MIG);CXCR3(GPR9/CKR-L2);CXCR4;CXCR5(バーキットリンパ腫受容体1、Gタンパク質共役受容体);CXCR6(TYMSTR/STRL33/Bonzo);CYB5;CYC1;CYSLTR1;DAB2IP;DES;DKFZp451J0118;DNCLI;DPP4;E16(LAT1、SLC7A5);E2F1;ECGF1;EDG1;EFNA1;EFNA3;EFNB2;EGF;EGFR;ELAC2;ENG;ENO1;ENO2;ENO3;EPHB4;EphB2R;EPO;ERBB2(Her-2);EREG;ERK8;ESR1;ESR2;ETBR(エンドセリンB型受容体);F3(TF);FADD;FasL;FASN;FCER1A;FCER2;FCGR3A;FcRH1(Fc受容体様タンパク質1);FcRH2(IFGP4、IRTA4、SPAP1A(SH2ドメイン含有ホスファターゼアンカータンパク質1a)、SPAP1B、SPAP1C);FGF;FGF1(αFGF);FGF10;FGF11;FGF12;FGF12B;FGF13;FGF14;FGF16;FGF17;FGF18;FGF19;FGF2(bFGF);FGF20;FGF21;FGF22;FGF23;FGF3(int-2);FGF4(HST);FGF5;FGF6(HST-2);FGF7(KGF);FGF8;FGF9;FGFR;FGFR3;FIGF(VEGFD);FELl(EPSILON);FILl(ZETA);FLJ12584;FLJ25530;FLRTI(フィブロネクチン);FLT1;FOS;FOSL1(FRA-1);FY(DARC);GABRP(GABAa);GAGEB1;GAGEC1;GALNAC4S-6ST;GATA3;GDF5;GDNF-Ra1(GDNFファミリー受容体アルファ1;GFRA1;GDNFR;GDNFRA;RETL1;TRNR1;RET1L;GDNFR-アルファ1;GFR-ALPHA-1);GEDA;GFI1;GGT1;GM-CSF;GNASI;GNRHI;GPR2(CCR10);GPR19(Gタンパク質共役受容体19;Mm.4787);GPR31;GPR44;GPR54(KISS1受容体;KISS1R;GPR54;HOT7T175;AXOR12);GPR81(FKSG80);GPR172A(Gタンパク質共役受容体172A;GPCR41;FLJ11856;D15Ertd747e);GRCCIO(C10);GRP;GSN(ゲルソリン);GSTP1;HAVCR2;HDAC4;HDAC5;HDAC7A;HDAC9;HGF;HIF1A;HOP1;ヒスタミン及びヒスタミン受容体;HLA-A;HLA-DOB(MHCクラスII分子のベータサブユニット(Ia抗原);HLA-DRA;HM74;HMOXI;HUMCYT2A;ICEBERG;ICOSL;1D2;IFN-a;IFNA1;IFNA2;IFNA4;IFNA5;IFNA6;IFNA7;IFNB1;IFNガンマ;DFNW1;IGBP1;IGF1;IGF1R;IGF2;IGFBP2;IGFBP3;IGFBP6;IL-l;IL10;IL10RA;IL10RB;IL11;IL11RA;IL-12;IL12A;IL12B;IL12RB1;IL12RB2;IL13;IL13RA1;IL13RA2;IL14;IL15;IL15RA;IL16;IL17;IL17B;IL17C;IL17R;IL18;IL18BP;IL18R1;IL18RAP;IL19;IL1A;IL1B;ILIF10;IL1F5;IL1F6;IL1F7;IL1F8;IL1F9;IL1HY1;IL1R1;IL1R2;IL1RAP;IL1RAPL1;IL1RAPL2;IL1RL1;IL1RL2、ILIRN;IL2;IL20;IL20Rα;IL21 R;IL22;IL-22c;IL22R;IL22RA2;IL23;IL24;IL25;IL26;IL27;IL28A;IL28B;IL29;IL2RA;IL2RB;IL2RG;IL3;IL30;IL3RA;IL4;IL4R;IL5;IL5RA;IL6;IL6R;IL6ST(糖タンパク質130);インフルエンザA;インフルエンザB;EL7;EL7R;EL8;IL8RA;DL8RB;IL8RB;DL9;DL9R;DLK;INHA;INHBA;INSL3;INSL4;IRAK1;IRTA2(免疫グロブリンスーパーファミリー受容体転座関連2);ERAK2;ITGA1;ITGA2;ITGA3;ITGA6(a6インテグリン);ITGAV;ITGB3;ITGB4(b4インテグリン);α4β7及びαEβ7インテグリンヘテロ二量体;JAG1;JAK1;JAK3;JUN;K6HF;KAI1;KDR;KITLG;KLF5(GC Box BP);KLF6;KLKIO;KLK12;KLK13;KLK14;KLK15;KLK3;KLK4;KLK5;KLK6;KLK9;KRT1;KRT19(ケラチン19);KRT2A;KHTHB6(毛髪特異的H型ケラチン);LAMAS;LEP(レプチン);LGR5(ロイシンリッチリピート含有Gタンパク質共役受容体5;GPR49、GPR67);Lingo-p75;Lingo-Troy;LPS;LTA(TNF-b);LTB;LTB4R(GPR16);LTB4R2;LTBR;LY64(リンパ球抗原64(RP105)、ロイシンリッチリピート(LRR)ファミリーのI型膜タンパク質);Ly6E(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座E;Ly67,RIG-E,SCA-2,TSA-1);Ly6G6D(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座G6D;Ly6-D、MEGT1);LY6K(リンパ球抗原6複合体、遺伝子座K;LY6K;HSJ001348;FLJ35226);MACMARCKS;MAG又はOMgp;MAP2K7(c-Jun);MDK;MDP;MIB1;midkine;MEF;MIP-2;MKI67;(Ki-67);MMP2;MMP9;MPF(MPF、MSLN、SMR、巨核球増強因子、メソテリン);MS4A1;MSG783(RNF124、仮想タンパク質FLJ20315);MSMB;MT3(メタロチオネクチン-111);MTSS1;MUC1(ムチン);MYC;MY088;Napi3b(NaPi2bとしても知られる)(NAPI-3B、NPTIIb、SLC34A2、溶質担体ファミリー34(リン酸ナトリウム)、メンバー2、II型ナトリウム依存性ホスフェート輸送体3b);NCA;NCK2;ニューロカン;NFKB1;NFKB2;NGFB(NGF);NGFR;NgR-Lingo;NgR-Nogo66(Nogo);NgR-p75;NgR-Troy;NME1(NM23A);NOX5;NPPB;NR0B1;NR0B2;NR1D1;NR1D2;NR1H2;NR1H3;NR1H4;NR112;NR113;NR2C1;NR2C2;NR2E1;NR2E3;NR2F1;NR2F2;NR2F6;NR3C1;
NR3C2;NR4A1;NR4A2;NR4A3;NR5A1;NR5A2;NR6A1;NRP1;NRP2;NT5E;NTN4;ODZI;OPRD1;OX40;P2RX7;P2X5(プリン受容体P2Xリガンド依存性イオンチャネル5);PAP;PART1;PATE;PAWR;PCA3;PCNA;PD-L1;PD-L2;PD-1;POGFA;POGFB;PECAM1;PF4(CXCL4);PGF;PGR;ホスファカン;PIAS2;PIK3CG;PLAU(uPA);PLG;PLXDC1;PMEL17(銀同族体;SILV;D12S53E;PMEL17;SI;SIL);PPBP(CXCL7);PPID;PRI;PRKCQ;PRKDI;PRL;PROC;PROK2;PSAP;PSCA hlg(2700050C12Rik、C530008O16Rik、RIKEN cDNA 2700050C12、RIKEN cDNA 2700050C12遺伝子);PTAFR;PTEN;PTGS2(COX-2);PTN;RAC2(p21 Rac2);RARB;RET(ret癌源遺伝子;MEN2A;HSCR1;MEN2B;MTC1;PTC;CDHF12;Hs.168114;RET51;RET-ELE1);RGSI;RGS13;RGS3;RNF110(ZNF144);ROBO2;S100A2;SCGB1D2(lipophilin B);SCGB2A1(マンマグロビン2);SCGB2A2(マンマグロビン1);SCYEI(内皮単球活性化サイトカイン);SDF2;Sema 5b(FLJ10372、KIAA1445、Mm.42015、SEMA5B、SEMAG、セマフォリン5b Hlog、セマドメイン、7のトロンボスポンジンリピート(1型及び1型様)、膜貫通ドメイン(TM)及び短細胞質ドメイン、(セマフォリン)5B);SERPINA1;SERPINA3;SERP1NB5(マスピン);SERPINE1(PAI-1);SERPDMF1;SHBG;SLA2;SLC2A2;SLC33A1;SLC43A1;SLIT2;SPPI;SPRR1B(Sprl);ST6GAL1;STABI;STAT6;STEAP(6の前立腺の膜貫通上皮抗原);STEAP2(HGNC_8639、IPCA-1、PCANAP1、STAMP1、STEAP2、STMP、前立腺がん関連遺伝子 1、前立腺がん関連タンパク質1、6の前立腺の膜貫通上皮抗原2、6の膜貫通前立腺タンパク質);TB4R2;TBX21;TCPIO;TOGFI;TEK;TENB2(推定膜貫通プロテオグリカン);TGFA;TGFBI;TGFB1II;TGFB2;TGFB3;TGFBI;TGFBRI;TGFBR2;TGFBR3;THIL;THBSI(トロンボスポンジン-1 );THBS2;THBS4;THPO;TIE(Tie-1 );TMP3;組織因子;TLR1;TLR2;TLR3;TLR4;TLR5;TLR6;TLR7;TLR8;TLR9;TLR10;TMEFF1(EGF様及び2つのフォリスタチン様ドメインを有する膜貫通タンパク質1;トモレグリン-1);TMEM46(shisa同族体2);TNF;TNF-a;TNFAEP2(B94 );TNFAIP3;TNFRSFIIA;TNFRSF1A;TNFRSF1B;TNFRSF21;TNFRSF5;TNFRSF6(Fas);TNFRSF7;TNFRSF8;TNFRSF9;TNFSF10(TRAIL);TNFSF11(TRANCE);TNFSF12(AP03L);TNFSF13(April);TNFSF13B;TNFSF14(HVEM-L);TNFSF15(VEGI);TNFSF18;TNFSF4(OX40リガンド);TNFSF5(CD40リガンド);TNFSF6(FasL);TNFSF7(CD27リガンド);TNFSFS(CD30リガンド);TNFSF9(4-1 BBリガンド);TOLLIP;Toll様受容体;TOP2A(トポイソメラーゼEa);TP53;TPM1;TPM2;TRADD;TMEM118(リングフィンガータンパク質、膜貫通2;RNFT2;FLJ14627);TRAF1;TRAF2;TRAF3;TRAF4;TRAF5;TRAF6;TREM1;TREM2;TrpM4(BR22450、FLJ20041、TRPM4、TRPM4B、一過性受容体電位カチオンチャネル、サブファミリーM、メンバー4);TRPC6;TSLP;TWEAK;チロシナーゼ(TYR;OCAIA;OCA1A;チロシナーゼ;SHEP3);VEGF;VEGFB;VEGFC;バーシカン;VHL C5;VLA-4;XCL1(リンホタクチン);XCL2(SCM-1b);XCRI(GPR5/ CCXCRI);YY1;及びZFPM2と結合し得るか又は相互作用し得る。
【0202】
特定の実施例では、本明細書で開示される細胞及び方法により生成される抗体は、CD3、CD4、CD5、CD16、CD19、CD20、CD21(CR2(補体受容体2)又はC3DR(C3d/エプスタインバーウイルス受容体)、又はHs.73792);CD33;CD34;CD64;CD72(B細胞分化抗原CD72、Lyb-2);CD79b(CD79B、CD79β、IGb(免疫グロブリン関連β)、B29);EGF受容体、HER2、HER3、又はHER4受容体などの、ErbB受容体ファミリーのCD200メンバー;LFA-1、Mac1、p150.95、VLA-4、ICAM-1、VCAM、α4/β7インテグリン、及び、αv/β3インテグリン(これらのα又はβサブユニットのいずれかを含む)などの細胞接着分子(例えば、抗CD11a、抗CD18、又は抗CD11b抗体);VEGF-A、VEGF-C;組織因子(TF);αインターフェロン(αIFN)などの成長因子;IL-1β、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-8、IL-9、IL-13、IL-17AF、IL-1S、IL-13Rα1、IL13Rα2、IL-4R、IL-5R、IL-9R、IgEなどの、インターロイキンであるTNFα;血液群抗原、flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA-4;RANKL、RANK、RSV Fタンパク質、プロテインCなどのCDタンパク質に結合することができる。
【0203】
特定の実施例では、本明細書において提供される細胞、細胞株、及び方法を使用して、補体プロテインC5に特異的に結合する抗体(二重特異性抗体などの多重特異性抗体)(例えば、ヒトC5に特異的に結合する抗C5アゴニスト抗体)を産生することができる。抗C5抗体は、(a)SSYYMA(配列番号1)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)AIFTGSGAEYKAEWAKG(配列番号26)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)DAGYDYPTHAMHY(配列番号27)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;(d)RASQGISSSLA(配列番号28)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(e)GASETES(配列番号29)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;及び(f)QNTKVGSSYGNT(配列番号30)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される、1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDRを含み得る。例えば、抗C5抗体は、(a)SSYYMA(配列番号1)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)AIFTGSGAEYKAEWAKG(配列番号26)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)DAGYDYPTHAMHY(配列番号27)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;から選択される1つ、2つ、又は3つのCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)配列、並びに/又は、(d)RASQGISSSLA(配列番号28)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(e)GASETES(配列番号29)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;及び(f)QNTKVGSSYGNT(配列番号30)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1つ、2つ、又は3つのCDRを含む重鎖可変ドメイン(VL)配列を含み得る。重鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3、並びに軽鎖可変領域のCDR1、CDR2、及びCDR3の配列は、米国特許公開第2016/0176954号にそれぞれ、配列番号117、配列番号118、配列番号121、配列番号122、配列番号123、及び配列番号125として開示されている(米国特許公開第2016/0176954号の表7及び8を参照のこと)。
【0204】
特定の実施例では、抗C5抗体は、VH配列及びVL配列
QVQLVESGGG LVQPGRSLRL SCAASGFTVH SSYYMAWVRQ APGKGLEWVG AIFTGSGAEY KAEWAKGRVT ISKDTSKNQV VLTMTNMDPV DTATYYCASD AGYDYPTHAM HYWGQGTLVT VSS(配列番号31)及びDIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQGIS SSLAWYQQKP GKAPKLLIYG ASETESGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQN TKVGSSYGNT FGGGTKVEIK(配列番号32)をそれぞれ含み、それらの配列の翻訳後修飾を含む。上記VH及びVL配列は、米国特許公開第2016/0176954号にそれぞれ、配列番号106及び配列番号111として開示されている。(米国特許公開第2016/0176954号の表7及び8を参照のこと。)抗C5抗体は、305L015であり得る(米国特許公開第2016/0176954号を参照のこと)。
【0205】
特定の実施例では、本明細書で開示される方法により生成される抗体は、OX40に結合することができる(例えば、ヒトOX40に特異的に結合する抗OX40アゴニスト抗体)。抗OX40抗体は、(a)DSYMS(配列番号2)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)DMYPDNGDSSYNQKFRE(配列番号3)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)APRWYFSV(配列番号4)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;(d)RASQDISNYLN(配列番号5)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(e)YTSRLRS(配列番号6)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;及び、(f)QQGHTLPPT(配列番号7)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、又は6つのCDRを含み得る。例えば、抗OX40抗体は、(a)DSYMS(配列番号2)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)DMYPDNGDSSYNQKFRE(配列番号3)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;及び(c)APRWYFSV(配列番号4)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;から選択される1つ、2つ、又は3つのCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)配列、並びに/又は(a)RASQDISNYLN(配列番号5)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(b)YTSRLRS(配列番号6)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;及び(c)QQGHTLPPT(配列番号7)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1つ、2つ、又は3つのCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含み得る。特定の実施態様では、抗OX40抗体は、VH配列及びVL配列
EVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT DSYMSWVRQA PGQGLEWIGD MYPDNGDSSY NQKFRERVTI TRDTSTSTAY LELSSLRSED TAVYYCVLAP RWYFSVWGQG TLVTVSS(配列番号8)及びDIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCRASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKLLIYY TSRLRSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ GHTLPPTFGQ GTKVEIK(配列番号9)をそれぞれ含み、それらの配列の翻訳後修飾を含み得る。
【0206】
特定の実施例では、抗OX40抗体は、(a)NYLIE(配列番号10)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)VINPGSGDTYYSEKFKG(配列番号11)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;(c)DRLDY(配列番号12)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;(d)HASQDISSYIV(配列番号13)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(e)HGTNLED(配列番号14)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;及び(f)VHYAQFPYT(配列番号15)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1、2、3、4、5、又は6個のCDRを含む。例えば、抗OX40抗体は、(a)NYLIE(配列番号10)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR1;(b)VINPGSGDTYYSEKFK(配列番号11)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR2;及び(c)DRLDY(配列番号12)のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域CDR3;から選択される1つ、2つ、又は3つのCDRを含む重鎖可変ドメイン(VH)配列、並びに/又は(a)HASQDISSYIV(配列番号13)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR1;(b)HGTNLED(配列番号14)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR2;及び(c)VHYAQFPYT(配列番号15)のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域CDR3から選択される1つ、2つ、又は3つのCDRを含む軽鎖可変ドメイン(VL)配列を含み得る。抗OX40抗体は、VH配列及びVL配列EVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYAFT NYLIEWVRQA PGQGLEWIGV INPGSGDTYY SEKFKGRVTI TRDTSTSTAY LELSSLRSED TAVYYCARDR LDYWGQGTLV TVSS(配列番号16)及びDIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCHASQDIS SYIVWYQQKP GKAPKLLIYH GTNLEDGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCVH YAQFPYTFGQ GTKVEIK(配列番号)をそれぞれ含み得、それらの配列の翻訳後修飾を含み得る。
【0207】
抗OX40抗体に関するさらなる詳細が、国際公開第2015/153513号で開示されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0208】
特定の実施例では、本明細書で開示される細胞及び方法により生成される抗体は、インフルエンザウイルスBヘマグルチニン、即ち「fluB」に結合することができる(例えば、in vitro及び/又はin vivoでインフルエンザBウイルスのYamagataリネージ由来のヘマグルチニンに結合する、インフルエンザBウイルスのVictoriaリネージ由来のヘマグルチニンに結合する、インフルエンザBウイルスの祖先リネージ由来のヘマグルチニンに結合する、又は、インフルエンザBウイルスのYamagataリネージ、Victoriaリネージ、及び祖先リネージ由来のヘマグルチニンに結合する抗体)。抗FluB抗体に関する更なる詳細は国際公開第2015/148806号で開示されており、その全体が本明細書に参照により組み込まれている。
【0209】
特定の実施例では、本明細書で開示される細胞及び方法により生成される抗体は、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質(LRP)-1若しくはLRP-8又はトランスフェリン受容体、並びに、ベータ-セクレターゼ(BACE1又はBACE2)、アルファ-セクレターゼ、ガンマ-セクレターゼ、タウ-セクレターゼ、アミロイド前駆体タンパク質(APP)、細胞死受容体6(DR6)、アミロイドベータペプチド、アルファ-シヌクレイン、パーキン、ハンチンチン、p75 NTR、CD40、及びカスパーゼ-6からなる群から選択される少なくとも1つの標的に結合することができる。
【0210】
特定の実施例では、本明細書で開示される細胞及び方法により生成される抗体は、CD40に対するヒトIgG2抗体である。特定の実施例では、抗CD40抗体はRG7876である。
【0211】
特定の実施例では、本開示の細胞、細胞株、及び/方法を使用して、ポリペプチドを生成することができる。ポリペプチドは、標的化された免疫サイトカインであり得る。標的化された免疫サイトカインは、CEA-IL2v免疫サイトカイン、例えばCEA-IL2v免疫サイトカインRG7813であり得る。標的化された免疫サイトカインは、FAP-IL2v免疫サイトカインであり得、例えばFAP-IL2v免疫サイトカインはRG7461である。
【0212】
実施例では、本明細書で提供される細胞、細胞株、及び/又は方法により生成される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、CEAと、少なくとも1つの追加の標的分子とに結合することができる。本明細書で提供される方法に従って生成される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、腫瘍標的化サイトカインと、少なくとも1つの追加の標的分子とに結合することができる。本明細書で提供される方法に従って生成される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、IL2v(即ち、インターロイキン2バリアント)に融合され、IL-1系免疫サイトカインと、少なくとも1つの追加の標的分子とに結合する。特定の実施例では、本明細書で提供される方法に従って生成される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、T細胞二重特異性抗体(即ち、二重特異性T細胞エンゲージャー又はBiTE)である。
【0213】
特定の実施例では、本明細書で提供される方法に従って生成される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、IL-1アルファ及びIL-1ベータ、IL-12及びIL-1S;IL-13及びIL-9;IL-13及びIL-4;IL-13及びIL-5;IL-5及びIL-4;IL-13及びIL-1ベータ;IL-13及びIL-25;IL-13及びTARC;IL-13及びMDC;IL-13及びMEF;IL-13及びTGF-~;IL-13及びLHRアゴニスト;IL-12及びTWEAK;IL-13及びCL25;IL-13及びSPRR2a;IL-13及びSPRR2b;IL-13及びADAMS;IL-13及びPED2;IL17A及びIL17F;CEA及びCD3;CD3及びCD19;CD138及びCD20;CD138及びCD40;CD19及びCD20;CD20及びCD3;CD3S及びCD13S;CD3S及びCD20;CD3S及びCD40;CD40及びCD20;CD-S及びIL-6;CD20及びBR3;TNFアルファ及びTGF-ベータ、TNFアルファ及びIL-1ベータ;TNFアルファ及びIL-2、TNFアルファ及びIL-3、TNFアルファ及びIL-4、TNFアルファ及びIL-5、TNFアルファ及びIL6、TNFアルファ及びIL8、TNFアルファ及びIL-9、TNFアルファ及びIL-10、TNFアルファ及びIL-11、TNFアルファ及びIL-12、TNFアルファ及びIL-13、TNFアルファ及びIL-14、TNFアルファ及びIL-15、TNFアルファ及びIL-16、TNFアルファ及びIL-17、TNFアルファ及びIL-18、TNFアルファ及びIL-19、TNFアルファ及びIL-20、TNFアルファ及びIL-23、TNFアルファ及びIFNアルファ、TNFアルファ及びCD4、TNFアルファ及びVEGF、TNFアルファ及びMIF、TNFアルファ及びICAM-1、TNFアルファ及びPGE4、TNFアルファ及びPEG2、TNFアルファ及びRANKリガンド、TNFアルファ及びTe38、TNFアルファ及びBAFF、TNFアルファ及びCD22、TNFアルファ及びCTLA-4、TNFアルファ及びGP130、TNFa及びIL-12p40、VEGF及びアンジオポエチン、VEGF及びHER2、VEGF-A及びHER2、VEGF-A及びPDGF、HER1及びHER2、VEGFA及びANG2、VEGF-A及びVEGF-C、VEGF-C及びVEGF-D、HER2及びDR5、VEGF及びIL-8、VEGF及びMET、VEGFR及びMET受容体、EGFR及びMET、VEGFR及びEGFR、HER2及びCD64、HER2及びCD3、HER2及びCD16、HER2及びHER3、EGFR(HER1)及びHER2、EGFR及びHER3、EGFR及びHER4、IL-14及びIL-13、IL-13及びCD40L、IL4及びCD40L、TNFR1及びIL-1R、TNFR1及びIL-6R並びにTNFR1及びIL-18R、EpCAM及びCD3、MAPG及びCD28、EGFR及びCD64、CSPGs及びRGM A;CTLA-4及びBTN02;IGF1及びIGF2;IGF1/2及びErb2B;MAG及びRGM A;NgR及びRGM A;NogoA及びRGM A;OMGp及びRGM A;POL-l及びCTLA-4;並びにRGM A及びRGM Bから選択される少なくとも2つの標的分子に結合する。
【0214】
特定の実施例では、本明細書で提供される方法に従って生成される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体である。抗CEA/抗CD3二重特異性抗体はRG7802である。特定の実施態様では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、以下に示す配列番号18~21に記載のアミノ酸配列:
DIQMTQSPSS LSASVGDRVT ITCKASAAVG TYVAWYQQKP GKAPKLLIYS ASYRKRGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCHQ YYTYPLFTFG QGTKLEIKRT VAAPSVFIFP PSDEQLKSGT ASVVCLLNNF YPREAKVQWK VDNALQSGNS QESVTEQDSK DSTYSLSSTL TLSKADYEKH KVYACEVTHQ GLSSPVTKSF NRGEC(配列番号18)
QAVVTQEPSL TVSPGGTVTL TCGSSTGAVT TSNYANWVQE KPGQAFRGLI GGTNKRAPGT PARFSGSLLG GKAALTLSGA QPEDEAEYYC ALWYSNLWVF GGGTKLTVLS SASTKGPSVF PLAPSSKSTS GGTAALGCLV KDYFPEPVTV SWNSGALTSG VHTFPAVLQS SGLYSLSSVV TVPSSSLGTQ TYICNVNHKP SNTKVDKKVE PKSC(配列番号19)
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT EFGMNWVRQA PGQGLEWMGW INTKTGEATY VEEFKGRVTF TTDTSTSTAY MELRSLRSDD TAVYYCARWD FAYYVEAMDY WGQGTTVTVS SASTKGPSVF PLAPSSKSTS GGTAALGCLV KDYFPEPVTV SWNSGALTSG VHTFPAVLQS SGLYSLSSVV TVPSSSLGTQ TYICNVNHKP SNTKVDKKVE PKSCDGGGGS GGGGSEVQLL ESGGGLVQPG GSLRLSCAAS GFTFSTYAMN WVRQAPGKGL EWVSRIRSKY NNYATYYADS VKGRFTISRD DSKNTLYLQM NSLRAEDTAV YYCVRHGNFG NSYVSWFAYW GQGTLVTVSS ASVAAPSVFI FPPSDEQLKS GTASVVCLLN NFYPREAKVQ WKVDNALQSG NSQESVTEQD SKDSTYSLSS TLTLSKADYE KHKVYACEVT HQGLSSPVTK SFNRGECDKT HTCPPCPAPE AAGGPSVFLF PPKPKDTLMI SRTPEVTCVV VDVSHEDPEV KFNWYVDGVE VHNAKTKPRE EQYNSTYRVV SVLTVLHQDW LNGKEYKCKV SNKALGAPIE KTISKAKGQP REPQVYTLPP CRDELTKNQV SLWCLVKGFY PSDIAVEWES NGQPENNYKT TPPVLDSDGS FFLYSKLTVD KSRWQQGNVF SCSVMHEALH NHYTQKSLSL SPGK(配列番号20)
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT EFGMNWVRQA PGQGLEWMG WINTKTGEATY VEEFKGRVTF TTDTSTSTAY MELRSLRSDD TAVYYCARWD FAYYVEAMD YWGQGTTVTVS SASTKGPSVF PLAPSSKSTS GGTAALGCLV KDYFPEPVTV SWNSGALTS GVHTFPAVLQS SGLYSLSSVV TVPSSSLGTQ TYICNVNHKP SNTKVDKKVE PKSCDKTHT CPPCPAPEAAG GPSVFLFPPK PKDTLMISRT PEVTCVVVDV SHEDPEVKFN WYVDGVEVH NAKTKPREEQY NSTYRVVSVL TVLHQDWLNG KEYKCKVSNK ALGAPIEKTI SKAKGQPRE PQVCTLPPSRD ELTKNQVSLS CAVKGFYPSD IAVEWESNGQ PENNYKTTPP VLDSDGSFF LVSKLTVDKSR WQQGNVFSCS VMHEALHNHY TQKSLSLSPG K(配列番号21)
を含む。
抗CEA/抗CD3二重特異性抗体に関するさらなる詳細は、国際公開第2014/121712号で提供されており、その全体が参照により本明細書に援用される。
【0215】
特定の実施例では、本明細書で開示される細胞及び方法により生成される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、抗VEGF/抗アンジオポエチン二重特異性抗体である。特定の実施例では、抗VEGF/抗アンジオポエチン二重特異性抗体はCrossmabである。特定の実施例では、抗VEGF/抗アンジオポエチン二重特異性抗体はRG7716である。特定の実施例では、抗CEA/抗CD3二重特異性抗体は、以下に示す配列番号22~25に記載のアミノ酸配列:
EVQLVESGGG LVQPGGSLRL SCAASGYDFT HYGMNWVRQA PGKGLEWVGW INTYTGEPTY AADFKRRFTF SLDTSKSTAY LQMNSLRAED TAVYYCAKYP YYYGTSHWYF DVWGQGTLVT VSSASTKGPS VFPLAPSSKS TSGGTAALGC LVKDYFPEPV TVSWNSGALT SGVHTFPAVL QSSGLYSLSS VVTVPSSSLG TQTYICNVNH KPSNTKVDKK VEPKSCDKTH TCPPCPAPEA AGGPSVFLFP PKPKDTLMAS RTPEVTCVVV DVSHEDPEVK FNWYVDGVEV HNAKTKPREE QYNSTYRVVS VLTVLAQDWL NGKEYKCKVS NKALGAPIEK TISKAKGQPR EPQVYTLPPC RDELTKNQVS LWCLVKGFYP SDIAVEWESN GQPENNYKTT PPVLDSDGSF FLYSKLTVDK SRWQQGNVFS CSVMHEALHN AYTQKSLSLS PGK(配列番号22)
QVQLVQSGAE VKKPGASVKV SCKASGYTFT GYYMHWVRQA PGQGLEWMGW INPNSGGTNY AQKFQGRVTM TRDTSISTAY MELSRLRSDD TAVYYCARSP NPYYYDSSGY YYPGAFDIWG QGTMVTVSSA SVAAPSVFIF PPSDEQLKSG TASVVCLLNN FYPREAKVQW KVDNALQSGN SQESVTEQDS KDSTYSLSST LTLSKADYEK HKVYACEVTH QGLSSPVTKS FNRGECDKTH TCPPCPAPEA AGGPSVFLFP PKPKDTLMAS RTPEVTCVVV DVSHEDPEVK FNWYVDGVEV HNAKTKPREE QYNSTYRVVS VLTVLAQDWL NGKEYKCKVS NKALGAPIEK TISKAKGQPR EPQVCTLPPS RDELTKNQVS LSCAVKGFYP SDIAVEWESN GQPENNYKTT PPVLDSDGSF FLVSKLTVDK SRWQQGNVFS CSVMHEALHN AYTQKSLSLS PGK(配列番号23)
DIQLTQSPSS LSASVGDRVT ITCSASQDIS NYLNWYQQKP GKAPKVLIYF TSSLHSGVPS RFSGSGSGTD FTLTISSLQP EDFATYYCQQ YSTVPWTFGQ GTKVEIKRTV AAPSVFIFPP SDEQLKSGTA SVVCLLNNFY PREAKVQWKV DNALQSGNSQ ESVTEQDSKD STYSLSSTLT LSKADYEKHK VYACEVTHQG LSSPVTKSFN RGEC(配列番号24)
SYVLTQPPSV SVAPGQTARI TCGGNNIGSK SVHWYQQKPG QAPVLVVYDD SDRPSGIPER FSGSNSGNTA TLTISRVEAG DEADYYCQVW DSSSDHWVFG GGTKLTVLSS ASTKGPSVFP LAPSSKSTSG GTAALGCLVK DYFPEPVTVS WNSGALTSGV HTFPAVLQSS GLYSLSSVVT VPSSSLGTQT YICNVNHKPS NTKVDKKVEP KSC(配列番号25)
を含む。
【0216】
特定の実施態様では、本明細書で開示される方法により生成される多重特異性抗体(二重特異性抗体など)は、抗Ang2/抗VEGF二重特異性抗体である。抗Ang2/抗VEGF二重特異性抗体はRG7221であり得る。抗Ang2/抗VEGF二重特異性抗体は、CAS番号1448221-05-3を有し得る。
【0217】
他の分子にコンジュゲートされていてもよい可溶性抗原又はその断片は、抗体を生成するための免疫原として使用され得る。受容体等の膜貫通分子に対しては、これらの断片(例えば、受容体の細胞外ドメイン)が、免疫原として使用され得る。あるいは、膜貫通分子を発現する細胞が免疫原として使用され得る。このような細胞は、自然源(例えば、がん細胞株)由来であってもよく、又は膜貫通分子を発現するように組換え技法によって形質転換された細胞であってもよい。抗体の調製に有用な他の抗原及びその形態は、当業者には明らかであろう。
【0218】
特定の実施例では、本明細書で開示される細胞、細胞株、及び/又は方法により生成されるポリペプチド(例えば抗体)は、染料又は細胞傷害性剤、例えば化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、微生物、菌類、植物若しくは動物由来の酵素活性毒素、又はこれらの断片)、又は放射性同位体(即ち放射性コンジュゲート)などの化学分子にさらにコンジュゲートすることが可能となり得る。本明細書に記載の方法を使用して生成される抗体又は二重特異性抗体を含むイムノコンジュゲートは、重鎖の1つのみ又は軽鎖の1つのみの定常領域にコンジュゲートした細胞傷害性剤を含有し得る。
【0219】
抗体バリアント
本明細書で提供される抗体のバリアントについて検討する。例えば、抗体の結合親和性及び/又は他の生物学的性質を変化させることが望ましい場合がある。抗体のアミノ酸配列バリアントは、適切な修飾を、抗体をコードするヌクレオチド配列に組み込むことにより、又はペプチド合成により調製することができる。このような修飾には、例えば、抗体のアミノ酸配列内の残基からの欠失、及び/又は抗体のアミノ酸配列内の残基への挿入、及び/又は抗体のアミノ酸配列内の残基の置換が含まれる。欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせは、最終構築物が、所望の特徴(例えば、抗原結合)を有する限り、最終構築物に到達するように行うことができる。
【0220】
置換、挿入、及び欠失バリアント
例えば、1つ又は複数のアミノ酸置換を有する抗体バリアントが提供される。置換変異誘発の対象部位には、CDR及びFRが含まれる。保存的置換の例は、表1において、「好ましい置換」の見出しの下に示される。より実質的な変化の例は、表1において、「例示的な置換」の見出しの下に提供され、またアミノ酸側鎖クラスを参照して以下にさらに記載される通りである。目的の抗体中にアミノ酸置換を導入して、その生成物を、所望の活性、例えば、保持/改善された抗原結合、減少した免疫原性、又は改善されたADCC若しくはCDCについてスクリーニングすることができる。
【0221】
【0222】
アミノ酸は、共通の側鎖の特性に従ってグループ化することができる:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響を及ぼす残基:Gly、Pro;及び
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
【0223】
非保存的置換は、概して、これらのクラスのうちの1つのメンバーを別のクラスのメンバーと交換することを伴う。
【0224】
ある種の置換バリアントは、親抗体(例えば、ヒト化抗体又はヒト抗体)の1つ又は複数の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、さらなる試験ために選択される結果として生じるバリアントは、親抗体と比較して特定の生物学的特性(例えば、親和性の増加、免疫原性の低減)の修正(例えば、改善)を有し、かつ/又は実質的に保持された親抗体の特定の生物学的特性を有する。例示的な置換バリアントは、例えば、本明細書に記載されるものなどのファージディスプレイに基づく親和性成熟技法を使用して好都合に生成することができる、親和性成熟抗体である。簡潔には、1つ又は複数。CDR残基が変異され、バリアント抗体がファージにディスプレイされ、特定の生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。
【0225】
例えば抗体親和性を向上させるために、CDRにおいて改変(例えば、置換)が行われ得る。そのような改変は、CDR「ホットスポット」、すなわち、体細胞成熟プロセス中に高頻度で突然変異を受けるコドンによってコードされる残基(例えば、Chowdhury, Methods Mol. Biol. 207:179-196(2008)を参照されたい)、及び/又は抗原と接触する残基内で行われ得、結果として得られるバリアントVH又はVLが結合親和性について試験される。二次ライブラリを構築し、再選択することによる親和性成熟が、例えば、Hoogenboom et al. in Methods in Molecular Biology 178:1-37(O’Brien et al., ed., Human Press, Totowa, NJ,(2001))に記載されている。親和性成熟のいくつかの態様では、多様な方法(例えば、エラープローンPCR、鎖シャッフリング、又はオリゴヌクレオチド指向性変異誘発)のいずれかによって、成熟のために選択される可変遺伝子に多様性が導入される。次いで、二次ライブラリが作製される。次いで、このライブラリをスクリーニングして、所望の親和性を有する抗体バリアントを同定する。多様性を導入する別の方法は、いくつかのCDR残基(例えば、一度に4~6残基)がランダム化されるCDR指向手法を含む。抗原結合に関与するCDR残基は、例えば、アラニンスキャニング変異誘発又はモデリングを使用して、特異的に特定され得る。特にCDR-H3及びCDR-L3が標的とされることが多い。
【0226】
置換、挿入、又は欠失は、そのような改変が抗原に結合する抗体の能力を実質的に低下させない限り、1つ又は複数のCDR内で起こり得る。例えば、結合親和性を実質的に低下させない保存的改変(例えば、本明細書で提供されるような保存的置換)は、CDRで行われ得る。そのような改変は、例えば、CDR内の抗原接触残基の外側で生じ得る。上述の特定のバリアントVH及びVL配列において、各CDRは、改変されていないか、又は1つ、2つ、又は3つ以下のアミノ酸置換を有するかのいずれかである。
【0227】
突然変異誘発のために標的とすることができる抗体の残基又は領域を同定するための有用な方法は、Cunningham and Wells(1989)Science, 244:1081-1085により記載されるように「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。この方法では、抗体と抗原との相互作用が影響を受けるかどうかを決定するために、残基又は標的残基群(例えば、帯電した残基、例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGlu)が同定され、中性又は負に帯電したアミノ酸(例えば、アラニン又はポリアラニン)によって置き換えられる。更なる置換が、初期置換に対する機能的感受性を示すアミノ酸位置に導入されてもよい。あるいは、又はさらに、抗原-抗体複合体の結晶構造を使用して、抗体と抗原との間の接触点を特定することができる。そのような接触残基及び隣接残基は、置換の候補として標的とされるか、又は除去されてもよい。バリアントは、所望の特性を有するか否かを判定するためにスクリーニングされてもよい。
【0228】
アミノ酸配列挿入には、1個の残基から100個以上の残基を含むポリペプチドまでの長さの範囲のアミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに1個又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例としては、N末端メチオニル残基を有する抗体が挙げられる。抗体分子の他の挿入バリアントとしては、酵素(例えば、ADEPT(抗体指向性酵素プロドラッグ治療法のための)又はポリペプチドへの抗体のN末端若しくはC末端の融合が挙げられ、これは抗体の血清半減期を増大させる。
【0229】
グリコシル化バリアント
特定の実施例では、本明細書で提供される抗体は、抗体がグリコシル化されている程度を増加又は減少させるように改変される。抗体へのグリコシル化部位の付加又は欠失は、1つ又は複数のグリコシル化部位が作り出されるか、又は除去されるようにアミノ酸配列を改変させることにより好都合に達成され得る。
【0230】
抗体がFc領域を含む場合、Fc領域に結合したオリゴ糖を改変することができる。哺乳動物細胞によって産生された天然抗体は、典型的には、N結合によってFc領域のCH2ドメインのAsn297に概して結合される分岐状の二分岐オリゴ糖を含む。例えばWright et al. TIBTECH 15:26-32(1997)を参照。オリゴ糖は、様々な炭水化物、例えば、マンノース、N-アセチルグルコサミン(GlcNac)、ガラクトース、及びシアル酸、並びに二分岐オリゴ糖構造の「ステム」のGlcNacに結合したフコースを含み得る。いくつかの実施例では、特定の改善された特性を有する抗体バリアントを作成するために、本開示の抗体中のオリゴ糖に修飾を加えることができる。
【0231】
いくつかの実施例では、非フコシル化オリゴ糖、即ち、Fc領域へのフコース結合(直接又は間接)が欠落した、オリゴ糖構造を有する抗体バリアントが提供される。このような非フコシル化オリゴ糖(「アフコシル化」オリゴ糖とも呼ばれる)は特に、二分枝オリゴ糖構造のステムに第1のGlcNAcが結合したフコース残基を欠く、N結合オリゴ糖である。実施例では、天然又は親抗体と比較して、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の比率が増加した抗体バリアントが提供される。例えば、非フコシル化オリゴ糖の割合は、少なくとも約20%、少なくとも約40%、少なくとも約60%、少なくとも約80%、又は場合によっては約100%(即ち、フコシル化オリゴ糖が存在しない)であってもよい。非フコシル化オリゴ糖の割合は、例えば、国際公開第2006/082515号に記載のMALDI-TOF質量分析法により測定した、Asn297に結合した全てのオリゴ糖の合計(例えば、複合体、ハイブリッド、及びハイマンノース構造)に対する、フコース残基を欠くオリゴ糖の(平均)量である。Asn297は、Fc領域の約297位に位置するアスパラギン残基を指す(Fc領域残基のEUナンバリング);しかしながら、Asn297は、抗体のマイナーな配列変化のために、位置297の上流又は下流、すなわち位置294と300の間の約±3個のアミノ酸にも位置し得る。Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の比率が増加した、このような抗体は、改善されたFcγRIIIa受容体結合、及び/又は改善されたエフェクター機能、特に改善されたADCC機能を有することができる。例えば、米国特許出願公開第2003/0157108号;同第2004/0093621号を参照のこと。
【0232】
低減したフコシル化を有する抗体を生成することのできる細胞株の例には、タンパク質フコシル化を欠くLec13 CHO細胞(Ripka et al. Arch. Biochem. Biophys. 249:533-545(1986);米国特許公開第2003/0157108号;及び国際公開第2004/056312号、特に実施例11)、及びノックアウト細胞株、例えばアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子、FUT8、ノックアウトCHO細胞(例えば、Yamane-Ohnuki et al. Biotech. Bioeng. 87:614-622(2004);Kanda, Y. et al., Biotechnol. Bioeng., 94(4):680-688(2006);及び国際公開第2003/085107号を参照)、又はGDP-フコース合成若しくは輸送タンパク質が低減若しくは消失した細胞(例えば、米国特許公開第2004259150号、同第2005031613号、同第2004132140号、同第2004110282号を参照)が含まれる。
【0233】
さらなる実施例では、抗体バリアントには、例えば、抗体のFc領域に結合した二分岐オリゴ糖がGlcNAcにより二分されている、二分されたオリゴ糖が提供される。そのような抗体バリアントは、上述のとおり、低下したフコシル化、及び/又は改善されたADCCを有することができる。このような抗体バリアントの例は、例えば、Umana et al., Nat Biotechnol 17, 176-180(1999);Ferrara et al., Biotechn Bioeng 93, 851-861(2006);国際公開第99/54342号;同第2004/065540号、同第2003/011878号に記載されている。
【0234】
Fc領域に付着したオリゴ糖中に少なくとも1つのガラクトース残基を持つ抗体バリアントも提供される。そのような抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有することができる。このような抗体バリアントの例は、例えば、国際公開第1997/30087号;同第1998/58964号;及び同第1999/22764号に記載されている。
【0235】
Fc領域バリアント
特定の実施例では、1つ又は複数のアミノ酸修飾が本明細書に提供される抗体のFc領域に導入され、それにより、Fc領域バリアントが生成され得る。Fc領域バリアントは、1つ又は複数のアミノ酸位置にアミノ酸修飾(例えば置換)を含むヒトFc領域配列(例えばヒトIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4 Fc領域)を含み得る。
【0236】
本開示は、全てではないがいくつかのエフェクター機能を有することで、抗体のin vivo半減期が重要でありながら、特定のエフェクター機能(例えば補体依存性細胞傷害(CDC)及び抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC))が不必要又は有害である用途に対して望ましい候補となる、抗体バリアントを想到する。in vitro及び/又はin vivo細胞傷害性アッセイを行って、CDC及び/又はADCC活性の低減/欠乏を確認することができる。例えば、Fc受容体(FcR)結合アッセイを行って、抗体がFcγR結合を欠いている(そのため、ADCC活性を欠いている可能性が高い)が、FcRn結合能力を保持することを確実にすることができる。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するのに対して、単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。造血細胞内でのFcR発現は、Ravetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol. 9:457-492(1991の第464頁の表3にまとめられている。目的の分子のADCC活性を評価するためのin vitroアッセイの非限定的な例は、米国特許第5,500,362号(例えば、Hellstrom, I. et al. Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 83:7059-7063(1986)を参照)及びHellstrom, I et al., Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 82:1499-1502(1985);米国特許第5,821,337号(例えば、Bruggemann, M. et al., J. Exp. Med. 166:1351-1361(1987)を参照)に記載されている。あるいは、非放射性アッセイ法が用いられ得る(例えば、フローサイトメトリーのためのACTITM非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology, Inc. Mountain View, CA;及びCytoTox 96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega, Madison, WIを参照)。そのようなアッセイに有用なエフェクター細胞としては、末梢血単核球(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が挙げられる。あるいは、又は加えて、目的の分子のADCC活性は、例えば、Clynes et al. Proc. Nat’l Acad. Sci. USA 95:652-656(1998)に開示されているような動物モデルにおいて、in vivoで評価することができる。C1q結合アッセイを実行して、抗体がC1qに結合することができないためにCDC活性を欠くことを確認することができる。例えば、国際公開第2006/029879号及び国際公開第2005/100402号のC1q及びC3c結合ELISAを参照。補体活性化を評価するために、CDCアッセイを実施することができる(例えば、Gazzano-Santoro et al., J. Immunol. Methods 202:163(1996);Cragg, M.S. et al.、Blood 101:1045-1052(2003);及びCragg, M.S. and M.J. Glennie, Blood 103:2738-2743(2004)を参照)。FcRn結合及びin vivoクリアランス/半減期の決定は、当該技術分野で知られる方法を使用しても実施することができる(例えば、Petkova, S.B. et al., Int’l. Immunol. 18(12):1759-1769(2006);国際公開第2013/120929号を参照)。
【0237】
エフェクター機能が低下した抗体としては、Fc領域の残基238、265、269、270、297、327及び329の1つ又は複数の置換を含むものが挙げられる(米国特許第6,737,056号)。そのようなFc変異体は、残基265及び297のアラニンへの置換を有する、いわゆる「DANA」Fc変異体を含む、アミノ酸位置265、269、270、297及び327の2つ以上での置換を有するFc変異体を含む(米国特許第7,332,581号)。
【0238】
FcRへの結合が改善又は減少した特定の抗体バリアントが記載されている。(例えば、米国特許第6737056号;国際公開第2004/056312号、及びShields et al., J. Biol. Chem. 9(2):6591-6604(2001)を参照)。特定の実施例では、抗体バリアントは、ADCCを改善する1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の298位、333位、及び/又は334位(残基のEU番号付け)における置換を含むFc領域を含む。
【0239】
ある特定の実施例では、抗体バリアントは、FcγR結合を減少させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置234及び235(EUナンバリングの残基)を有するFc領域を含む。一態様では、置換はL234A及びL235A(LALA)である。抗体バリアントは、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域にD265A及び/又はP329Gをさらに含み得る。置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域のL234A、L235A、及びP329G(LALA-PG)であり得る。(例えば、国際公開第2012/130831号を参照されたい。)置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域のL234A、L235A、及びD265A(LALA-DA)であり得る。
【0240】
いくつかの実施例では、例えば、米国特許第6,194,551号、国際公開第99/51642号、及びIdusogie et al. J. Immunol. 164:4178-4184(2000)に記載されるように、改変された(すなわち、改善されたか又は減少したかのいずれか)C1q結合及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)をもたらす改変が、Fc領域において行われる。
【0241】
半減期が延長され、新生児Fc受容体(FcRn)への結合性が改善された、胎児への母性IgGの移行を担う抗体(Guyer et al., J. Immunol. 117:587(1976)及びKim et al., J. Immunol. 24:249(1994))が、米国特許公開第2005/0014934号(Hinton et al.ら)に記載されている。それらの抗体は、Fc領域とFcRnとの結合を改善する1つ又は複数の置換をその中に有するFc領域を含む。このようなFcバリアントとしては、Fc領域残基:238、252、254、256、265、272、286、303、305、307、311、312、317、340、356、360、362、376、378、380、382、413、424、又は434の1つ又は複数において置換、例えば、Fc領域残基434の置換を有するものが挙げられる(例えば、米国特許第7,371,826号;Dall’Acqua,W.F.,et al.J.Biol.Chem.281(2006)23514-23524を参照のこと)。
【0242】
マウスFcマウスFcRn相互作用に決定的なFc領域残基は、部位特異的突然変異誘発により識別されている(例えば、Dall’Acqua, W.F., et al. J. Immunol 169(2002)5171-5180を参照)。残基I253、H310、H433、N434、及びH435(EUインデックスナンバリング)は、相互作用に関与している(Medesan, C., et al., Eur. J. Immunol. 26(1996)2533;Firan, M., et al., Int. Immunol. 13(2001)993;Kim, J.K., et al., Eur. J. Immunol. 24(1994)542)。残基I253、H310、及びH435が、ヒトFcとマウスFcRnの相互作用に決定的であることが発見された(Kim,J.K.,et al.,Eur.J.Immunol.29(1999)2819)。ヒトFc-ヒトFcRn複合体の研究により、残基I253、S254、H435、及びY436が相互作用に決定的であることが示された(Firan,M.,et al.,Int.Immunol.13(2001)993;Shields,R.L.,et al.,J.Biol.Chem.276(2001)6591-6604)。Yeung,Y.A.,et al.(J.Immunol.182(2009)7667-7671)において、残基248~259、及び301~317、及び376~382、及び424~437の様々な突然変異が報告され、調査されている。
【0243】
ある特定の実施例では、抗体バリアントは、FcRn結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fcの領域位置253、及び/又は310、及び/又は435(EUナンバリングの残基)における置換を有するFc領域を含む。ある特定の実施例では、抗体バリアントは、位置253、310、及び435におけるアミノ酸置換を有するFc領域を含む。置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域のI253A、H310A、及びH435Aであり得る。例えばGrevys, A., et al., J. Immunol. 194(2015)5497-5508を参照のこと。
【0244】
ある特定の実施例では、抗体バリアントは、FcRn結合を低下させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置310、及び/又は433、及び/又は436(EUナンバリングの残基)における置換を有するFc領域を含む。ある特定の実施例では、抗体バリアントは、位置310、433、及び436におけるアミノ酸置換を有するFc領域を含む。置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域のH310A、H433A、及びY436Aであり得る。(例えば、国際公開第2014/177460号を参照のこと)。
【0245】
ある特定の実施例では、抗体バリアントは、FcRn結合を増加させる1つ又は複数のアミノ酸置換、例えば、Fcの領域位置252、及び/又は254、及び/又は256(EUナンバリングの残基)における置換を有するFc領域を含む。ある特定の実施例では、抗体バリアントは、位置252、254、及び256におけるアミノ酸置換を有するFc領域を含む。一態様において、置換は、ヒトIgG1 Fc領域に由来するFc領域における、M252Y、S254T及びT256Eである。Duncan & Winter, Nature 322:738-40(1988);米国特許第5648260号;同第5624821号;及び、Fc領域バリアントの他の例に関しては国際公開第94/29351号も参照のこと。
【0246】
本明細書に報告されるような抗体の重鎖のC末端は、アミノ酸残基PGKで終わる完全なC末端であってもよい。重鎖のC末端は、C末端アミノ酸残基のうち1つ又は2つが除去された、短くなったC末端であってもよい。好ましい一実施例では、重鎖のC末端は、PGを終結させる短縮型C末端である。本明細書に報告される全ての態様のうちの1つの態様では、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む抗体は、C末端グリシン-リシンジペプチドを含む(G446及びK447、EUインデックス・ナンバリングのアミノ酸位置)。本明細書に報告される全ての態様のうちの1つの態様では、本明細書に明記されるC末端のCH3ドメインを含む重鎖を含む抗体は、C末端グリシン残基を含む(G446、EUインデックス・ナンバリングのアミノ酸位置)。
【0247】
システイン操作抗体バリアント
ある特定の実施例では、抗体の1つ又は複数の残基がシステイン残基で置換されているシステイン操作抗体、例えば、THIOMABTM抗体を生成することが望ましい場合がある。特定の実施例では、置換された残基は、抗体の利用しやすい部位で生じる。これらの残基をシステインで置換することにより、反応性チオール基が抗体の接触可能部位に配置され、抗体を他の部位、例えば薬物部位、又はリンカー/薬物部位と結合させ、本明細書で更に記載する免疫抱合体を作製するのに用いることができる。システイン操作抗体は、例えば、米国特許第7,521,541号、同第8,30,930号、同第7,855,275号、同第9,000,130号、又は国際公開第2016040856号に記載のように生成することができる。
【0248】
抗体誘導体
特定の実施例では、本明細書で提供される抗体は、当該技術分野で既知であり、容易に入手可能な追加の非タンパク質性部分を含有するようにさらに修飾され得る。抗体の誘導体化に適した部位には、水溶性ポリマーが含まれるが、これに限定されない。水溶性ポリマーの非限定的な例には、ポリエチレングリコール(PEG)、エチレングリコール/プロピレングリコールのコポリマー、カルボキシメチルセルロース、デキストラン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ-1,3-ジオキソラン、ポリ-1,3,6-トリオキサン、エチレン/無水マレイン酸コポリマー、ポリアミノ酸(ホモポリマー又はランダムコポリマーのいずれか)、及びデキストラン又はポリ(n-ビニルピロリドン)ポリエチレングリコール、プロピレングリコールホモポリマー、プロピレンオキシド/エチレンオキシドコポリマー、ポリオキシエチル化ポリオール(例えばグリセロール)、ポリビニルアルコール、並びにこれらの混合物が含まれる(ただし、これらに限定されない)。ポリエチレングリコールプロピオンアルデヒドは、水中でのその安定性のため、製造時に有利であり得る。ポリマーは任意の分子量であることができ、かつ分枝又は非分枝であることができる。抗体に結合したポリマーの数は異なってもよく、複数のポリマーが結合している場合、それらは同じ分子であっても、異なる分子であってもよい。一般に、誘導体化のために使用されるポリマーの数及び/又はタイプは、限定するものではないが、改良される抗体の特定の特性又は機能、抗体誘導体が定義された条件下で治療に使用されるかどうか等の考慮事項に基づいて決定することができる。
【0249】
イムノコンジュゲート
本開示はまた、1つ又は複数の治療剤、例えば細胞傷害性剤、化学療法剤、薬物、成長阻害剤、毒素(例えばタンパク質毒素、微生物、菌類、植物若しくは動物由来の酵素活性毒素、又はこれらの断片)、又は放射性同位体にコンジュゲートした(化学結合した)、本明細書で開示される抗体を含むイムノコンジュゲートを提供する。
【0250】
いくつかの実施例では、イムノコンジュゲートは、抗体が上述の治療剤のうちの1つ又は複数にコンジュゲートしている抗体-薬物コンジュゲート(ADC)である。抗体は典型的には、リンカーを使用して、治療剤の1つ又は複数に接続される。治療剤及び薬物及びリンカーの例を含む、ADC技術の概説が、Pharmacol Review 68:3-19(2016)に記載されている。
【0251】
他の実施例では、イムノコンジュゲートは、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(シュードモナス・アエルギノーサ(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、アレウリテス・フォーディ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンシンタンパク質、フィトラカ・アメリカーナ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII、及びPAP-S)、モモルディカ・チャランチア(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポナリア・オフィシナリス(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含むがこれらに限定されない、酵素活性毒素又はその断片にコンジュゲートされた本明細書に記載の抗体を含む。
【0252】
他の実施例では、イムノコンジュゲートは、放射性原子にコンジュゲートされて、放射性コンジュゲートを形成する、本明細書に記載される抗体を含む。放射性コンジュゲートの生成には、様々な放射性同位体が利用可能である。例としては、At211、I131、I125、Y90、Re186、Re188、Sm153、Bi212、P32、Pb212、及びLuの放射性同位体が挙げられる。放射性コンジュゲートは、検出のために使用されるとき、シンチグラフ研究のための放射性原子、例えばtc99m又はI123、あるいは核磁気共鳴(NMR)イメージング(磁気共鳴イメージング、MRIとしても知られる)のためのスピン標識(ここでもヨウ素-123、ヨウ素-131、インジウム-111、フッ素-19、炭素-13、窒素-15、酸素-17、ガドリニウム、マンガン、又は鉄など)を含み得る。
【0253】
抗体と細胞傷害性剤とのコンジュゲートは、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えばN-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル-4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルスベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビスアジド化合物(例えばビス(p-アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス-ジアゾニウム誘導体(例えばビス-(p-ジアゾニウムベンゾイル)-エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン 2,6-ジイソシアネート)、及びビス活性フッ素化合物(例えば1,5-ジフルオロ-2,4-ジニトロベンゼン)を使用して作製することができる。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitettaら、Science 238:1098(1987)に記載されているように調製することができる。炭素-14-標識1-イソチオシアナトベンジル-3-メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX-DTPA)は、放射性ヌクレオチドを抗体にコンジュゲートするための例示的なキレート化剤である。国際公開第94/11026号を参照されたい。リンカーは、細胞内において細胞傷害性薬物の放出を容易にする「切断可能リンカー」であってもよい。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ感受性リンカー、感光性リンカー、ジメチルリンカー、又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131(1992);米国特許第5,208,020号)を使用することができる。
【0254】
本明細書のイムノコンジュゲート又はADCは、市販されている(例えば、Pierce Biotechnology,Inc.,Rockford,IL.,U.S.Aから)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC-SMCC、MBS、MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ-EMCS、スルホ-GMBS、スルホ-KMUS、スルホ-MBS、スルホ-SIAB、スルホ-SMCC、及びスルホ-SMPB、並びにSVSB(スクシンイミジル-(4-ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むが、これらに限定されない架橋試薬で調製される、このようなコンジュゲートを明示的に企図するが、これらに限定されない。
【0255】
5.7 例示的な非限定的実施態様
A.特定の実施態様では、本開示は、単離された真核細胞株であって、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む、細胞株を対象とする。
【0256】
A1. 特定の実施態様では、本開示は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む、Aの細胞株を対象とする。
【0257】
A2.特定の実施態様では、本開示は、動物細胞株又は真菌細胞株である、A又はA1の細胞株を対象とする。
【0258】
A3.特定の実施態様では、本開示は、動物細胞株が哺乳動物細胞株である、A2の細胞株を対象とする。
【0259】
A4.特定の実施態様では、本開示は、哺乳動物細胞株が、COS細胞株、VERO細胞株、HeLa細胞株、HEK 293細胞株、PER-C6細胞株、K562細胞株、MOLT-4細胞株、Ml細胞株、NS-1細胞株、COS-7細胞株、MDBK細胞株、MDCK細胞株、MRC-5細胞株、WI-38細胞株、WEHI細胞株、SP2/0細胞株、BHK細胞株、若しくはCHO細胞株、又はそれらの誘導体である、A3の細胞株を対象とする。
【0260】
A5.特定の実施態様では、本開示は、CHO細胞株が、CHO K1細胞株、CHO K1SV細胞株、DG44細胞株、DUKXB-11細胞株、CHOK1S細胞株、若しくはCHO K1M細胞株、又はそれらの誘導体である、A4の細胞株を対象とする。
【0261】
A6.特定の実施態様では、本開示は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに欠失を含む、AからA5のいずれかの細胞株を対象とする。
【0262】
A7.特定の実施態様では、本開示は、ウイルスゲノムと、ウイルスカプシドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドとをさらに含む、AからA6のいずれかの細胞株を対象とする。
【0263】
A8.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、AからA7のいずれかの細胞株を対象とする。
【0264】
A9.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、標的位置で細胞株の細胞ゲノムに組み込まれる、A8の細胞株を対象とする。
【0265】
A10.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、無作為に細胞株の細胞ゲノムに組み込まれる、A8の細胞株を対象とする。
【0266】
A11.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、染色体外ポリヌクレオチドである、A8からA10の細胞株を対象とする。
【0267】
A12.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、細胞株の染色体に組み込まれる、A8からA10のいずれかの細胞株を対象とする。
【0268】
A13.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物が組換えポリペプチドを含む、A8からA10のいずれかの細胞株を対象とする。
【0269】
A14.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物が、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンを含む、A8からA13のいずれかの細胞株を対象とする。
【0270】
A15.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、A14の細胞株を対象とする。
【0271】
A16.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、単一の重鎖配列、及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなる、A14又はA15の細胞株を対象とする。
【0272】
A17.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含む、A14からA16のいずれかの細胞株を対象とする。
【0273】
A18.特定の実施態様では、本開示は、抗体がモノクローナル抗体を含む、A14からA17のいずれかの細胞株を対象とする。
【0274】
A19.特定の実施態様では、本開示は、ポリヌクレオチドと、野生型Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの機能的コピーを含む、対応する単離された真核細胞よりも高い比生産性を有する、A6からA18のいずれかの細胞株を対象とする。
【0275】
A20.特定の実施態様では、本開示は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれの機能的コピーを含む対応する単離された真核細胞株よりもアポトーシスに対して耐性である、AからA19のいずれかの細胞株を対象とする。
【0276】
A21.特定の実施態様では、本開示は、フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、又は連続灌流などの細胞培養プロセスで用いられる、AからA20のいずれかの細胞株を対象とする。
【0277】
A22.特定の実施態様では、本開示は、強化灌流プロセスで用いられる、A21の細胞株を対象とする。
【0278】
A23.特定の実施態様では、本開示は、AからA22のいずれかの真核細胞株を含む組成物を対象とする。
【0279】
A24.特定の実施態様では、本開示は、細胞培地をさらに含む、A23の組成物を対象とする。
【0280】
B.特定の実施態様では、本開示は、細胞培地と、複数の真核細胞であって、複数の各細胞がBax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異を含む複数の真核生物細胞とを含む細胞培養物を対象とする。
【0281】
B1.特定の実施態様では、本開示は、各細胞が、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む、Bの細胞培養物を対象とする。
【0282】
B2.特定の実施態様では、本開示は、複数の各細胞が、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに欠失を含む、B又はB1の細胞培養物を対象とする。
【0283】
B3.特定の実施態様では、本開示は、細胞が動物細胞又は真菌細胞であるBからB2のいずれかの細胞培養物を対象とする。
【0284】
B4.特定の実施態様では、本開示は、動物細胞が哺乳動物細胞である、B3の細胞培養物を対象とする。
【0285】
B5.特定の実施態様では、本開示は、哺乳動物細胞が、COS細胞、VERO細胞、HeLa細胞、HEK 293細胞、PER-C6細胞、K562細胞、MOLT-4細胞、Ml細胞、NS-1細胞、COS-7細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WEHI細胞、SP2/0細胞、BHK細胞、若しくはCHO細胞、又はそれらの誘導体である、B4の細胞培養物を対象とする。
【0286】
B6.特定の実施態様では、本開示は、CHO細胞が、CHO K1細胞、CHO K1SV細胞、DG44細胞、DUKXB-11細胞、CHOK1S細胞、若しくはCHO K1M細胞、又はそれらの誘導体である、B5の細胞培養物を対象とする。
【0287】
B7.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、BからB6の細胞培養物を対象とする。
【0288】
B8.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、標的位置で細胞の細胞ゲノムに組み込まれる、B7の細胞培養物を対象とする。
【0289】
B9.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、無作為に細胞の細胞ゲノムに組み込まれる、B7の細胞培養物を対象とする。
【0290】
B10.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、染色体外ポリヌクレオチドである、B7からB9のいずれかの細胞培養物を対象とする。
【0291】
B11.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、細胞の染色体に組み込まれる、B7からB9のいずれかの細胞培養物を対象とする。
【0292】
B12.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物が組換えポリペプチドを含む、B7からB11のいずれかの細胞培養物を対象とする。
【0293】
B13.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物が、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンを含む、B7からB12のいずれかの細胞培養物を対象とする。
【0294】
B14.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、B13の細胞培養物を対象とする。
【0295】
B15.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、単一の重鎖配列、及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなる、B13又はB14の細胞培養物を対象とする。
【0296】
B16.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体、又はヒト化抗体を含む、B13からB15のいずれかの細胞培養物を対象とする。
【0297】
B17.特定の実施態様では、本開示は、抗体がモノクローナル抗体を含む、B13からB16のいずれかの細胞培養物を対象とする。
【0298】
B18.特定の実施態様では、本開示は、細胞のそれぞれが、組換えポリヌクレオチドをさらに含む、BからB17のいずれかの細胞培養物を対象とする。
【0299】
B19.特定の実施態様では、本開示は、細胞が、フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、又は連続灌流などの細胞培養プロセスで用いられる、BからB18のいずれかの細胞培養物を対象とする。
【0300】
B20.特定の実施態様では、本開示は、細胞が強化灌流プロセスで用いられる、B19の細胞培養物を対象とする。
【0301】
C. 特定の実施態様では、本開示は、真核細胞におけるアポトーシス活性を低下させる方法であって、細胞に遺伝子組換えシステムを施すことを含み、遺伝子組換えシステムが、a)Baxポリペプチドアイソフォームの発現をノックダウン又はノックアウトし;(b)Bakポリペプチドアイソフォームの発現をノックダウン又はノックアウトする、方法を対象とする。
【0302】
C1.特定の実施態様では、本開示は、フェドバッチ、灌流、プロセス強化、半連続灌流、又は連続灌流細胞培養プロセスで真核細胞を使用することをさらに含む、Cの方法を対象とする。
【0303】
C2.特定の実施態様では、本開示は、真核細胞が強化細胞培養プロセスで用いられる、C1の方法を対象とする。
【0304】
C3.特定の実施態様では、本開示は、遺伝子組換えシステムが、CRISPR/Casシステム、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システム、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システム、及びこれらの組み合わせからなる群より選択される、CからC2のいずれかの方法を対象とする。
【0305】
C4.特定の実施態様では、本開示は、遺伝子組換えシステムが、CRISPR/Cas9システムであるか又はそれを含む、CからC3のいずれかの方法を対象とする。
【0306】
C5.特定の実施態様では、本開示は、(a)Cas9分子と、(b)Bax遺伝子の標的配列に相補的な標的配列を含む少なくとも1つの第1のガイドRNA(gRNA)と、(c)Bak遺伝子の標的配列に相補的な標的配列を含む少なくとも1つの第2のgRNAとを含む、C4の方法を対象とする。
【0307】
C6.特定の実施態様では、本開示は、標的配列のうちの少なくとも1つが、Bax遺伝子の一部であり、且つ/又は標的配列のうちの少なくとも1つが、Bak遺伝子の一部である、C5の方法を対象とする。
【0308】
C7.特定の実施態様では、本開示は、Baxポリペプチドの発現及び/又はBakポリペプチドの発現がノックアウトされ、細胞のアポトーシス活性が、基準細胞のアポトーシス活性と比較して低下する、CからC6のいずれかの方法を対象とする。
【0309】
C8.特定の実施態様では、本開示は、Baxポリペプチドの発現及び/又はBakポリペプチドの発現がノックダウンされ、細胞のアポトーシス活性が、基準細胞のアポトーシス活性と比較して低下する、CからC6の方法を対象とする。
【0310】
C9.特定の実施態様では、本開示は、細胞のアポトーシス活性が、産生期の第14日に決定された前記基準細胞の集合の生存率と比較して、前記細胞の集合の生存率から決定される、C7又はC8の方法を対象とする。
【0311】
C10.特定の実施態様では、本開示は、基準細胞が、Bax遺伝子及びBak遺伝子の野生型対立遺伝子を含む細胞である、C7からC9のいずれかの方法を対象とする。
【0312】
C11.特定の実施態様では、本開示は、遺伝子組換えシステムが、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)システム又は転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)システムであるか又はそれを含む、CからC10のいずれかの方法を対象とする。
【0313】
C12.特定の実施態様では、本開示は、細胞株発生システムが、標的化組込み、ランダム組込み、又はトランスポサーゼシステムを含む、CからC11のいずれかの方法を対象とする。
【0314】
C13.特定の実施態様では、本開示は、細胞が動物細胞又は真菌細胞であるCからC12のいずれかの方法を対象とする。
【0315】
C14.特定の実施態様では、本開示は、動物細胞が哺乳動物細胞である、C13の方法を対象とする。
【0316】
C15.特定の実施態様では、本開示は、哺乳動物細胞が、COS細胞、VERO細胞、HeLa細胞、HEK 293細胞、PER-C6細胞、K562細胞、MOLT-4細胞、Ml細胞、NS-1細胞、COS-7細胞、MDBK細胞、MDCK細胞、MRC-5細胞、WI-38細胞、WEHI細胞、SP2/0細胞株、BHK細胞、若しくはCHO細胞株、又はそれらの誘導体である、C14の方法を対象とする。
【0317】
C16.特定の実施態様では、本開示は、CHO細胞が、CHO K1細胞、CHO K1SV細胞、DG44細胞、DUKXB-11細胞、CHOK1S細胞、若しくはCHO K1M細胞、又はそれらの誘導体である、C15の方法を対象とする。
【0318】
C17.特定の実施態様では、本開示は、細胞が、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドをさらに含む、CからC16の方法を対象とする。
【0319】
C18.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、標的位置で細胞の細胞ゲノムに組み込まれる、C17の方法を対象とする。
【0320】
C19.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、細胞の細胞ゲノムにランダムに組み込まれる、C17の方法を対象とする。
【0321】
C20.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、染色体外ポリヌクレオチドである、C17からC19のいずれかの方法を対象とする。
【0322】
C21.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物をコードするポリヌクレオチドが、細胞の染色体内に組み込まれる、C17からC19のいずれかの方法を対象とする。
【0323】
C22.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物が、組換えポリペプチドを含む。C17からC21のいずれかの方法を対象とする。
【0324】
C23.特定の実施態様では、本開示は、目的の生成物が、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンである、C17からC22のいずれかの方法を対象とする。
【0325】
C24.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、C23の方法を対象とする。
【0326】
C25.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、単一の重鎖配列、及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなる、C23又はC24の方法を対象とする。
【0327】
C26.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体を含む、C23からC25のいずれかの方法を対象とする。
【0328】
C27.特定の実施態様では、本開示は、抗体がモノクローナル抗体を含む、C23からC26のいずれかの方法を対象とする。
【0329】
C28.特定の実施態様では、本開示は、細胞のそれぞれが組換えポリヌクレオチドをさらに含む、C23からC27のいずれかの方法を対象とする。
【0330】
D.特定の実施態様では、本開示は、組換えポリペプチドを生成する方法であって、真核細胞株を培養することを含み、真核細胞株が、(a)Bax遺伝子とBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異と、(b)ポリペプチドの生成に適した条件下で、組換えポリペプチドをコードするポリヌクレオチドとを含む、方法を対象とする。
【0331】
D1.特定の実施態様では、本開示は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、標的位置で細胞株の細胞の細胞ゲノムに組み込まれる、Dの方法を対象とする。
【0332】
D2.特定の実施態様では、本開示は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、細胞株の細胞の細胞ゲノムにランダムに組み込まれる、Dの方法を対象とする。
【0333】
D3.特定の実施態様では、本開示は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、染色体外ポリヌクレオチドである、DからD2のいずれかの方法を対象とする。
【0334】
D4.特定の実施態様では、本開示は、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、細胞株の細胞の染色体内に組み込まれる、D-D3の方法を対象とする。
【0335】
D5.特定の実施態様では、本開示は、組換えポリペプチドが、抗体、抗体融合タンパク質、抗原、酵素、又はワクチンである、DからD4のいずれかの方法を対象とする。
【0336】
D6.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、多重特異性抗体又はその抗原結合断片である、D5の方法を対象とする。
【0337】
D7.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、単一の重鎖配列、及び単一の軽鎖配列、又はそれらの抗原結合断片からなる、D5又はD6の方法を対象とする。
【0338】
D8.特定の実施態様では、本開示は、抗体が、キメラ抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体を含む、D5からD7のいずれかの方法を対象とする。
【0339】
D9.特定の実施態様では、本開示は、抗体がモノクローナル抗体を含む、D5からD8のいずれかの方法を対象とする。
【0340】
D10.特定の実施態様では、本開示は、組換えポリペプチドを単離することをさらに含む、DからD9のいずれかの方法を対象とする。
【0341】
E. 特定の実施態様では、本開示は、ウイルスベクターを生成する方法であって、真核細胞株を培養することを含み、真核細胞が、(a)Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異又は機能減弱変異と、(b)ウイルスゲノムと、(c)ウイルスベクターの生成に適した条件下でウイルスカプシドをコードする1つ又は複数のポリヌクレオチドとを含む、方法を対象とする。
【0342】
E1.特定の実施態様では、本開示は、ウイルスベクターを単離することをさらに含む、Eの方法を対象とする。
【0343】
E2.特定の実施態様では、本開示は、細胞株が動物細胞株又は真菌細胞株である、EからE1のいずれかの方法を対象とする。
【0344】
E3.特定の実施態様では、本開示は、動物細胞株が哺乳動物細胞株である、E2の方法を対象とする。
【0345】
E4.特定の実施態様では、本開示は、哺乳細胞株が、COS細胞株、VERO細胞株、HeLa細胞株、HEK 293細胞株、PER-C6細胞株、K562細胞株、MOLT-4細胞株、Ml細胞株、NS-1細胞株、COS-7細胞株、MDBK細胞株、MDCK細胞株、MRC-5細胞株、WI-38細胞株、WEHI細胞株、SP2/0細胞株、BHK細胞株、若しくはCHO細胞株、又はそれらの誘導体である、E3の方法を対象とする。
【0346】
E5.特定の実施態様では、本開示は、CHO細胞株が、CHO K1細胞株、CHO K1SV細胞株、DG44細胞株、DUKXB-11細胞株、CHOK1S細胞株、若しくはCHO K1M細胞株、又はそれらの誘導体である、E4の方法を対象とする。
【0347】
E6.特定の実施態様では、本開示は、細胞株が細胞培地で培養される、EからE5のいずれかの方法を対象とする。
【0348】
E7.特定の実施態様では、本開示は、細胞株が、フェドバッチ培養条件又は灌流培養条件下で培養される、EからE6のいずれかの方法を対象とする。
【0349】
E8.特定の実施態様では、本開示は、細胞株が、フェドバッチ培養条件下で培養され、任意選択的には、フェドバッチ培養条件が強化フェドバッチ培養条件である、E7の方法を対象とする。
【0350】
E9.特定の実施態様では、本開示は、細胞株が灌流培養条件下で培養され、任意選択的には、灌流培養条件が半連続灌流又は連続灌流である、EからE8のいずれかの方法を対象とする。
【0351】
E10.特定の実施態様では、本開示は、Bax遺伝子及びBak遺伝子のそれぞれに安定して組み込まれた機能喪失変異を含む、EからE9のいずれかの方法を対象とする。
【実施例
【0352】
6.実施例
本開示は、以下の実施例を参照することによってより完全に理解されることになる。しかし、これらは、本開示の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に記載の実施例及び実施態様は、例示のみを目的としており、それに照らして様々な修正又は変更が当業者に提案され、本出願の精神及び範囲並びに添付の特許請求の範囲内に含まれることが理解される。
【0353】
実施例1:アポトーシス耐性株の生成及び試験
この実施例は、14日間の強化プロセスでのアポトーシス耐性宿主から生成された細胞株の評価について記載する。この実験では、標準分子(抗体A)をモデル分子として試験した。抗体Aを発現する安定した細胞株の生成は、標準細胞株(CLD)プロトコールに従った。野生型(WT)標的化組込み(TI)CHO宿主又はBax遺伝子とBak遺伝子の両方がノックアウトされた(Bax/Bak DKO)2つの遺伝子組換え宿主から生成された上位クローンを、14日間の強化プロセスを使用してambr15ミニバイオリアクター中CHO生成培地で評価した。プロセスの初めの7日間では、WTクローン及びBax/Bak DKOクローンは、同様の力価、細胞成長、生存率、及びQpを示した。しかし、第7日と第14日の間では、WTクローンは生存率及びQpの低下を示し、その一方、Bax/Bak DKOクローンは生存率が高いままであった。上位Bax/Bak DKOクローンは、この14日間延長強化プロセスにおいて上位WTクローンと比較して50%の力価の上昇を示した。これは、Bax遺伝子及びBak遺伝子をノックアウトすることによるアポトーシスの遮断が、強化プロセスにおける生成を改善することを示す。さらに、これにより、強化プロセスでの産生期の延長が可能になり、より高い力価が達成されるはずである。これにより、製造プロセスのコストが削減されるだけでなく、所定の量の所望の生成物を得るために必要な製造作業の回数も削減される。
【0354】
方法
Bax/Bak DKO 宿主生成
野生型TI宿主細胞に、Cas9タンパク質、及びBax遺伝子とBak遺伝子とを標的とするgRNAを同時トランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、Cytenaの単一細胞プリンタを使用して、選択試薬を含有する40μLの独自のシードトレイン培地が事前に充填されたイメージング品質の384ウェルプレート(Corning #7311)で1細胞/ウェルで単一細胞プリントし、Celigo Imagerを使用した白色光及び蛍光モードですぐにイメージングした。37℃、5% CO2、加湿環境でプレートを2週間インキュベートした後、コンフルエンスに基づいて48個のコロニー由来のクローンを選択した。クローンを宿主シードトレイン培地で増殖させ、ウエスタンブロット分析によりBax/Bak DKO効率を評価した。Bax/Bak DKOが確認されたクローンをスケールアップして、抗体A発現クローンを生成した。
【0355】
抗体A発現細胞の単一細胞クローニング
野生型TI宿主細胞株及びBax/Bak DKO宿主細胞株を使用して、抗体A発現標的化組込み単一細胞クローンを生成した。標準細胞株発生プロトコールに従って、トランスフェクション及び単一細胞クローニングを実施した。
【0356】
細胞を、選択試薬を含有する40μLの単一細胞クローニング(SCC)培地が事前に充填された384ウェルプレートで1細胞/ウェルで単一細胞プリントし、各宿主から88個のクローンを採取し、96ウェルプレートに移した。HTRF力価スクリーニングアッセイを3回行った後、1つの宿主あたり5つのクローン由来の単一細胞クローンを、ambr15でのフェドバッチ生成アッセイ評価のために選択した。
【0357】
クローン評価
CHO生成培地(専用)を有するambr15強化プロセスにおいてクローン評価を14日間実施した。すべてのクローンを、N-1代継代について振とうフラスコでスケールアップした。培養4日後、細胞を遠心分離によって濃縮し、生成の第0日に高播種密度で接種した。
【0358】
生成評価の期間にわたって、培養温度を35℃に維持した。第1日、第3日、第5日、第12日、及び(浸透圧が低い場合は)第7日又は第9日に、(作業容量の)15%及び(作業容量の)2.6%の適切な供給物を追加した。クローンを第14日に収穫した。表2は、アッセイの種類及びそれぞれのサンプル収集日の概要を示している。
【0359】
【0360】
結果
生存率及び細胞成長
14日間のプロセスにわたって、すべてのBax/Bak DKOクローンは、WTクローンと同等か又はそれより高い生細胞数(VCC)を有した(図1及び2)。VCCは体積単位で決まるため、供給物の添加による希釈により、生成期間中のすべてのクローンでVCCがいくらか低下した。これは、生存率(%)を計算するときに修正される。WTクローンは、第10日の後に生存率の減少を示したが、Bax/Bak DKOクローンの生存率はプロセスの終わりまで高いままであった(図3)。第14日に、すべてのWTクローンは70%未満の生存率を有したが、Bax/Bak DKOクローンは80%を超える生存率を有した(図4)。切断カスパーゼ3のウエスタンブロット分析は、すべてのWTクローンが実験の終わりにアポトーシスを受けたが、Bax/Bak DKOクローンはそうではなかった(図5)。
【0361】
力価及び比生産性
第3日、第7日、第10日、及び第14日の力価と、第14日の比生産性を、それぞれ図6及び図7に示す。WTクローン及びBax/Bak DKOクローンの第7日の力価は、同等であった。しかし、第14日では、Bax/Bak DKO宿主から生成された上位クローンは、WTクローンよりも高い力価を示した。より重要なことには、WTクローンの生産性は、第10日の後に有意に減少したが、Bax/Bak DKOクローンは、依然として抗体を生成した。この実験における供給戦略は最適化されず、複数のBax/Bak DKOクローンには、第7日及び第10日に必須アミノ酸がなくなったことに留意されたい。供給戦略のさらなる最適化を伴うと、これらのBax/Bak DKOクローンの力価は高くなると予想される。
【0362】
サンプリング又は体積減少のために細胞培養物を除去し、供給物を追加することにより、細胞培養物はプロセス中に毎日希釈されたため、図7に示す比生産性は過小評価されることになった。14日間のプロセス中の異なる段階での比生産性を計算するために、希釈倍率を使用して力価及びVCCの読み取り値を修正した。WT TI宿主から生成された上位クローンWT-4を、2つのBax/Bak DKO宿主から生成された上位クローンと共に、14日間のプロセス全体(図8)における、及びプロセス中に異なる段階での(図9)比生産性について分析した。図9に示されるように、WT-4クローンの比生産性は、第10日と第14日の間に有意に減少したが、すべてのBax/Bak DKOクローンの比生産性は第10日の後に高いままであった。
【0363】
代謝物
最初のグルコース供給戦略は、グルコースの読み取り値が培養中の最適レベルを下回るか、又は下回ると予想される場合に実施され、さらにグルコースが追加された。第2日に、すべてのクローンがグルコースを使い果たしたが、標準量のグルコースのみが供給された。第4日から最後まで、毎日の培養グルコース消費量を計算し、追加のグルコースを追加して、翌日のグルコース読み取り値が2g/Lの所望のしきい値を下回らないようにした。図10は、上位のクローンのグルコース消費の概要を示している。図11は、上位のクローンのラクテートの概要を示している。
【0364】
生成物品質
第14日のPQA分析からの生成物品質データは、Bax/Bak DKOクローンから生成された生成物が、WTクローンと同等の生成物品質を有したことを示唆している。
【0365】
サイズバリアント(%):HMWS、メインピーク、LMWS。図12、13、及び14は、WTクローン及びBax/Bak DKOクローンの分子サイズデータを示している。凝集データは、WTクローンとBax/Bak DKOクローンとの間で同等であった。
【0366】
電荷バリアント(%):酸性、メインピーク、塩基性。図15、16、及び17はそれぞれ、酸性、メイン、塩基性の割合を示している。電荷バリアントデータは、WTクローンとBax/Bak DKOクローンとの間で同等であった。
【0367】
HILICグリカンアッセイ(%)。第14日に採取した細胞培養物(HCCF)をグリカンアッセイのためにAOで検証した。表3は、分析した主要グリカン種の概要を示している。グリカン種レベルは、WTクローンとBax/Bak DKOクローンとの間で全体的に同等であった。図12-17及び表3から得た結果は、Bax/Bak DKO宿主から生成した抗体は、WT宿主から生成した抗体と同等の生成物品質を有することを示唆している。
【0368】
【0369】
結論
力価が高いプロセスはコストを削減するだけでなく、製造ネットワークをより柔軟にすることができる。ただし、生成培養期間の延長、細胞密度の増加、又はHDAC阻害剤を使用したQpの改善などの戦略は、細胞内でアポトーシスを誘導し、それによってVCCを減少させることによって妨げられる。アポトーシス耐性宿主細胞株を使用することによって、これらの戦略におけるこの望ましくない影響を低減することができる。この実施例では、延長強化プロセスでBax/Bak DKOアポトーシス耐性宿主を試験した。Bax/Bak DKO宿主から生成された抗体A産生クローンは、WT細胞株と比べて生存率の改善を示しただけでなく、14日間の強化プロセスの後期段階において生産性の延長も示した。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、Bax/Bak DKOクローンの拡張された生産性は、次の理由による場合がある:1)Bax遺伝子及びBak遺伝子のノックアウトは、生成の後期段階でミトコンドリアの完全性と健康を維持するのに役立ち、2)培養中のアポトーシスも防止/遅延する。このプロセスでは、上位Bax/Bak DKOクローンは、上位WTクローンと比べて50%多い抗体を生成した。供給戦略をさらに修正すると、力価をさらに増加させることが可能である。生成物品質は、Bax/Bak DKOクローンとWTクローンとの間で同等であった。Bax/Bak DKOクローンはまた、WTクローンと同様の代謝を有した。
【0370】
実施例2:アポトーシス耐性株の生成及び試験
治療用分子の製造におけるBax/Bak欠乏の利点をさらに定義するために、本実施例は、標準的なモノクローナル抗体分子とBax/Bak DKO遺伝的背景におけるいくつかの複雑な分子との両方の産生を、定期的に又は強化されたプロセス及び異なる規模で評価した。
【0371】
材料及び方法
細胞培養
150rpm、37℃、及び5% COの125mLの振とうフラスコ中独自のDMEM/F12系培地中で、細胞を培養した。3~4日毎に4×10細胞/mLの播種密度で細胞を継代した。
【0372】
抗体発現細胞株発生
安定にmAbを発現する細胞のプールを、Misaghi et al., Biotechnol Prog 2013, 29, 727に記載されるように生成した。発現プラスミドを、MaxCyte STXエレクトロポレーション(MaxCyte, Gaithersburg, MD)によって、WT細胞又はBax/Bak DKO CHO細胞にトランスフェクトした。トランスフェクトした細胞を、その後、選択し、mAbの発現をヒトIgG染色を介してFACSによって確認した。
【0373】
フェドバッチ生成アッセイ
独自の化学的に定義された生成培地を含む、振とうフラスコ、AMBR15、又はAMBR250バイオリアクター(TAP Biosystems)で、フェドバッチ生成培養を実施した。標準又は低播種密度プロセスについては、細胞を生成段階の第0日(N)に2×10細胞/mlで播種した。第3、7、及び10日に、培養物に独自の供給培地を加えた。強化プロセスについては、細胞を、AMBR15容器又はAMBR250容器中、生成の第0日(N)に3×10細胞/mlで播種した。2~4日毎に培養物に独自の供給培地を加えた。AMBR15システムでの生成を、37℃、DO 30%、pH 7.2、及び1400rpmの撹拌速度の設定値で操作した。AMBR250システムの生成を、35℃、DO 30%、pH 7.2、及び477rpmの撹拌速度の設定値で操作した。
【0374】
Bax遺伝子及びBak遺伝子のノックアウト
CHO細胞でBax遺伝子及びBak遺伝子をノックアウトするために、Integrated DNA Technologies, Inc.の遺伝子標的Alt-R(登録商標)crRNA及び非特異的Alt-R(登録商標)tracrRNAを、Nuclease-Free Duplex Bufferで100μMに再構成し、1:1の比で混合した。その後、95℃で5分間インキュベートし、室温まで冷却してアニーリングした。その後、ガイドRNA-Cas9リボ核タンパク質(RNP)複合体を、3μL(150pmol)のアニールしたgRNAと1μLのCas9タンパク質(IDT、10mg/mL)を混合し、その後、室温で10分間インキュベートして調製した。Bax遺伝子及びBak遺伝子を、Neon Electroporation System(Thermo Fisher Scientific)を使用してGenentech CHO-K1宿主細胞株の100万個の細胞に5μLのgRNA-Cas9 RNPをトランスフェクトし、続いて個々のBax/Bak DKO宿主細胞株を単離するための単一細胞クローニングによって順次標的にした。これらのDKO宿主細胞におけるBax遺伝子及びBak遺伝子の完全なノックアウトを、ウエスタンブロットによって確認した。
【0375】
gRNAオリゴヌクレオチドの配列:
Bax gRNA:GGGTCGGGGGAGCAGCTCGG
Bak gRNA-1:TCATCACAGTCCTGCCTAGG
Bak gRNA-2:ATGGCGTCTGGACAAGGACC。
【0376】
オフラインでのサンプル分析
生細胞数(VCC)及び生存能について、Vi-Cell XR(Beckman Coulter)を使用して、また、pO、pH、pCO、Na、グルコース、及びラクテートについて、Bioprofile 400(Nova Biomedical)を使用して、1日おきに上清サンプルを分析した。AMBRバイオリアクターの全てのサンプルを、サンプリングして気体発生を最小限に抑えた後、BioProfile 400で数分間分析した。同じVi-Cell XR,BioProfile 400及び浸透圧計(Model 2020,Advanced Instruments)を全てのサンプルに使用し、機器間での変動性を取り除いた。プレカラム誘導体化及び逆相高速液体クロマトグラフィーによって上清のアミノ酸濃度を測定した。すべてのアミノ酸を6-アミノキノリル-N-ヒドロキシスクシンイミジルカルバメート(AQC)で誘導体化して、蛍光性の高い誘導体を生成した。プロテインAカラムを備える高圧液体クロマトグラフィー(HPLC)を使用して、抗体力価を測定した。PhyTipプロテインAカラムにより精製した、細胞培養上清サンプルを使用して、抗体産生物の品質アッセイを実施した。蛍光検出を伴うキャピラリー電気泳動(CE)によって抗体グリカン分布を分析し、その一方、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって分子サイズ分布を分析した。タンパク質の電荷の不均一性は、画像化されたキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)を使用して測定した。すべての電荷不均一性サンプルは、カルボキシペプチダーゼ Bで前処理した。すべてのタンパク質生成物品質アッセイは社内で開発され、詳細なプロトコールが公開されている(例えば、Hopp et al., Biotechnol Prog 2009, 25, 1427)。
【0377】
結果
Bax/Bakダブルノックアウト宿主から生成されたプールは、標準mAbの改善された生存率及びより高い力価をもたらす。
リボ核タンパク質(RNP)トランスフェクションを用いてGenentech CHO-K1宿主細胞株で Bax遺伝子及びBak遺伝子を連続的に標的とすることにより、ウエスタンブロットによってBax/Bak欠損が確認された、いくつかの異なる単一細胞クローンBax/Bak DKO宿主細胞株を生成することができた。これらのDKO宿主細胞株が、親のWT宿主細胞株と比較してより優れた生存率及び組換えタンパク質発現を達成するかどうかを試験するために、各DKO及びWT宿主細胞株をトランスフェクトして、モノクローナル抗体(mAb-A)を発現する安定したプールを生成した。これらのプールを、振とうフラスコ(図1A)内で、同様に、温度、pH、及び酸素レベルが継続的にモニタリングされ、厳密に制御された、AMBR15バイオリアクター(図1B)内で、14日間の低播種密度生成プラットフォーム(プラットフォーム1)における細胞培養性能及びmAb-A生産性について最初に評価した。振とうフラスコでは、最初に細胞増殖が良好であったいくつかのプール(WT、DKO2、DKO8)は、プロセスの最後に生存率の低下を示したが、これは、おそらくプロセス制御(例えばpH制御)の欠如又はガス発生が原因である。対照的に、AMBR15バイオリアクターでは、すべてのプールがプロセス全体で良好な生存率を示し、WTプールのみが、培養プロセスの最後に生存率のわずかな減少を示したウエスタンブロットロセスとAMBR15プロセスの両方で、平均して、DKO宿主由来のプールは、WTと比べてわずかに良好又は同等の力価及び比生産性を達成した(図1A及び1B)。
【0378】
Bax/Bak DKO細胞が強化プロセスでより良好な生存率及び生産性を達成するかを決定するために、プールを、その後、AMBR15バイオリアクター中、高播種密度プロセスで試験した(図1C)。高播種密度プロセスでは、WTプールは、第3日から生存率の低減を示し、プロセスの最後に67%のみの生細胞を有したのに対して、すべてのDKOプールは、プロセス全体で90%を超える生存率を維持した。すべてのDKOプールは、強化プロセスにおいてWTプールよりも高い力価を達成したが、これは主に、より良好な生存率及びより高い生細胞数(VCC)によるものであった。これらの結果は、Bax/Bak DKO遺伝子組換えが強化プロセスにおいて細胞死を防いだためにより高い力価をもたらしたことを示唆している。
【0379】
振とうフラスコ生成プロセスとAMBR15生成プロセスの両方において、WTプールとDKOプールの間で生成物の品質属性に劇的な違いは観察されなかった(補足図1B-D)。強化プロセスでは、DKOプールから生成された生成物において観察された高分子量種(HMWS)又はタンパク質凝集の割合は高かった(補足図1D)。これは、通常、高い力価に関連している。これらの細胞株はすべて、他の生成物の品質属性、例えば電荷バリアント又はグリコシル化レベルに関して同等であった(補足図1B-D)。
【0380】
Bax/Bakダブルノックアウト宿主から生成された単一細胞クローンは、細胞培養生存率の改善によりプロセスの延長を可能にし、強化プロセスで標準mAbの力価は高くなった。
Bax/Bak DKOプールで観察されたより良好な生存率及びmAb-A力価を達成することの利点が、単一細胞クローニングの後も維持され得るかを決定するために、WTプール及び2つのBax/Bak DKOプールを単一細胞クローニングし、プレート力価アッセイを2回行った後に各アームから上位4-5クローンを採取した。単一細胞クローン(SCC)を、振とうフラスコ中、低細胞播種密度フェドバッチ生成プロセスで最初に分析した(図2A)。プールの結果と同様に、細胞培養の生存率が向上し、WTクローンと比較してDKOクローンの力価がわずかに増加した。WTクローンとDKOクローンとの間で、すべての生成物の品質属性は同等であった(補足図2A)。
【0381】
Bax/Bak DKOクローンが強化プロセスにおいてより高い力価を達成するかどうかを試験した。WT及び2つのDKOアームからの上位のクローンは、AMBR15バイオリアクターで、目標の30×10細胞/mL開始細胞播種密度で、長時間(14日間)の強化プラットフォーム-1フェドバッチ生成プロセスで試験した(図2B)。プロセスの後期で生存率が低下したWTクローンとは異なり、DKOクローンは14日間のプロセスが終了するまで高い生存率を維持した(図2B)。アポトーシスマーカータンパク質である切断カスパーゼ3のレベルは、第14日にWTクローンで上昇したが、DKOクローンでは上昇しなかった。これは、WT細胞が強化生成プロセスの後期段階でアポトーシスを受けたが、Bax/Bak遺伝子をノックアウトすることでそれが防止されたことを示している(補足図2C)。さらに、WTクローンの力価は、第10日あたりで頭打ちになり、第14日に4.7±0.7g/Lに達したが、DKOクローンの力価は増加し続け、第14日には7.1±0.8g/Lに達した。第10日から第14日までのWTクローンの力価の低下と、DKOクローンの力価の緩やかな上昇は、培養物からサンプルを除去し、供給物及びグルコースを培養物に戻すことによる生成培養物の希釈によるものであることに留意されたい。プロセスの最後の4日間におけるWTクローンのmAb-A生産性の低下は、生存率とVCCの損失だけでなく、比生産性(Qp)の低下にも起因していた。
平均して、WTクローンは最初の10日間(図2B、最下部のパネル、第0日~第10日)よりもプロセス全体の14日間(図2B、最下部のパネル、第0日~第14日)で全体的なQpが低かった。これは、WTクローンで最後の4日間にQpが減少したことを示している。プロセスの最終段階でDKO クローンに対してWTクローンのQpが低いのは、生細胞でのBax/Bak活性化によるミトコンドリア膜の損傷が原因である可能性がある。これらの結果は、Bax/Bak DKO細胞が、細胞培養物の生存率の延長を可能にし、よって、強化プロセスにおける生成プロセスの延長を可能にして、最良の場合は、WTクローンと比較して44%の力価の上昇をもたらしたことを示している。WT細胞と比べて、DKO細胞では有意な生成物の品質の変化は観察されなかった(補足図2B)。
【0382】
生成スケールがDKO細胞の性能に影響を及ぼすかどうかを評価するために、同じ強化プロセスにおけるAMBR250容器中の各宿主からの上位クローンを試験した。このより大きなスケールでは、AMBR15プロセスと同様に、DKOクローンは、WTクローン(5.5±0.4g/L、同じクローンから4回複製)よりも良好な生存率、Qp、及び力価(8.2g/L)を達成した(図3)。
【0383】
Bax/Bakのダブルノックアウトはまた、強化プロセスでの生存率を改善することにより、複合抗体の産生も改善する。
標準的なmAb分子と比較して、二重特異性抗体又は複合抗体の産生は、それらの非標準的な形式のため、より困難であり、生成物の不安定性、望ましくない副産物種、より高い生成物断片又は凝集レベル、及び低発現レベルなどの追加の製造上の問題を引き起こす可能性がある。二重特異性抗体又は複合分子の非天然形式は、分子の誤った折り畳み及びジスルフィド結合の誤対合の可能性を高め、細胞内の活性酸素種(ROS)の蓄積及び細胞内部の酸化ストレスのレベルを高め、最終的にVCD、生存率、及び生産性の低下を引き起こす。Bax/Bak DKO細胞株がこれらの問題を緩和するのに役立つかどうかを試験した。
【0384】
2つの複合分子(B及びD)と1つの二重特異性分子(C)の生成を、WT宿主又はDKO宿主のいずれかで比較した(図4)。複合分子B及び二重特異性分子Cについては、各宿主から2つの安定した発現プールが生成されたが、複合分子Dについては、各宿主から1つの安定した発現プールが生成された。これらのプールを、AMBR15バイオリアクターでの長期間(14日間)の強化生成プロセスで試験した。これら3つすべての分子について、DKO宿主から生成されたプールはプロセス全体で高い生存率を維持したが、WTプールは、生成の後期段階で生存率の減少を示した(図4)。生存率が向上すると、DKOプールのVCCも高くなり、分子B及び分子Cの収率が、WT(それぞれ6.0±0.5g/L及び6.2±0.8g/L)と比較して、DKO1宿主では約30%高くなる(それぞれ7.9±0.5及び7.8±1.0g/L)(図4B及び4C)。分子Dでは、DKOプールは、WTプールと比べて5%高い力価を達成しただけであるが、これは主に、培養中のシステインなどの必須アミノ酸の枯渇によって引き起こされる可能性が高い、生成の後期段階でのDKOプールの比生産性の低下に起因する(図4C)。すべての生成物の品質属性は、3つすべての分子のWTプールとDKOプールの間で同等であった(補足図3)。全体として、二重特異性分子又は複合分子を発現するBax/Bak DKO細胞株は、14日間の強化生成プロセスで高い生存率を維持し、生成物の品質に影響を与えることなく、より高い生成物力価をもたらした。
【0385】
確立された治療用タンパク質を発現する細胞株からBax/Bakをノックアウトすると、プール段階でもいくつかの有益な特性が示された。補足図4に示すように、モック又はBax/Bak gRNAのいずれかを、抗体サイトカイン複合分子E)発現コンストラクトで予めトランスフェクトした細胞のプールにトランスフェクトした。コントロール及びBax/Bak DKOプールの細胞培養性能及び力価を、AMBR250バイオリアクターでの強化生成プロセスで比較した。以前の結果と同様に、Bax/Bak遺伝子の欠失により、生成の後期段階で培養生存率が向上したが、Bax遺伝子及びBak遺伝子のノックアウト効率が50%未満であったため(データは非表示)、DKOプールでのVCC及び力価の改善はほとんど観察されなかった。遺伝子ノックアウト効率を最適化及び改善することにより、確立された細胞株又は最近トランスフェクトされた細胞プールへのBax/Bak gRNAのトランスフェクションとそれに続くSCCも、強化生成プロセスで高い生存率及び力価を達成することができる完全なBax/Bak DKO表現型を有する単一細胞クローンの単離を可能にすると考えられる。
【0386】
考察
この実施例では、Bax/Bak DKOアポトーシス耐性宿主細胞株が生成され、標準的なモノクローナル抗体といくつかの複合分子の両方が、プール及び単一細胞クローンとして、異なるスケールで、強化生成プロセスで発現した。Bax/Bak DKO宿主から生成された治療用タンパク質発現プール又はクローンは、生存率と生産性の延長を示したが、WT宿主を用いると、強化生成プロセスの後期段階で生存率と生産性の両方が低下した。一方、生成物の品質属性は、Bax/Bak DKO細胞株とWT細胞株の間で同等であった。全体として、データは、アポトーシス耐性宿主細胞株の利用がプロセス強化戦略を大幅に改善し、生成物の品質を変えることなくより高い容積生産性をもたらし、よって生産プロセスの延長を可能にすることを示している。Bax遺伝子とBak遺伝子の両方をノックアウトすることで、すべてのケースで14日間の生成プロセスを通じて高い生存率を維持することができた。複合分子を発現するコンストラクトを以前にトランスフェクトした細胞株にBax/Bak gRNAをトランスフェクトすることによっても、異種プールを生成し(補足図4)、生存率の向上に役立った。高い培養生存率自体は、生成物の品質をより適切に制御できるため、製造プロセスにとって非常に有益である。生存率の改善に加えて、強化生成プロセスのほとんどで、培養力価が30~80%増加した。
【0387】
[001]通常又は低い播種密度(図1A及び2A)では、強化プロセスと比べて、力価の向上はほとんど見られなかったが、これは主に、コントロール培養物における細胞死が少ないためである。アポトーシスは、細胞密度が高いとき、強化生成プロセス中により頻繁に発生する。これは、おそらく、低酸素症、せん断応力、栄養欠乏のリスクの上昇、並びに、阻害性代謝産物(例えば、イソ吉草酸及びギ酸)及び活性酸素種(ROS)を含む細胞により生成された有毒な代謝副生成物の迅速な蓄積による可能性が高い。細胞内ROSの蓄積を減少させ、培養物に酸素及び栄養素を継続的に提供しながら細胞培養物から阻害代謝物を除去することにより、灌流技術を使用してこれらの細胞ストレスを軽減することができる。ただし、複雑なプロセス制御と大量の培地が必要なため、一般に灌流細胞培養はあまり理想的ではない。この研究におけるアポトーシス耐性Bax/Bak DKO細胞株の利用は、培養細胞密度を増加させ、強化フェドバッチ培養における力価を改善するための代替アプローチを提供する。フェドバッチ強化生成プロセス中の広範な培養生存率の低下を軽減する別の方法は、フェドバッチ培養時間を短縮し、生存率が低下し始める前に培養物を収穫することである。しかし、培養時間を短縮すると、経済的利益及び改善された製造ネットワークの柔軟性が減少する。これは、生成培養物を確立するために必要な材料と労力に莫大なコストがかかるためである。したがって、培養の生産性を維持しながら培養時間を延長することは、所望の利益費用比を達成し、製造の柔軟性を高めるために重要である。この実施例に示すように、Bax/Bak DKO細胞株を使用することにより、生成培養時間をWT細胞の7~10日と比較して少なくとも14日に延長することができ、標準抗体と複合分子の両方で30~50%の力価の増加が可能になる。これは、生成物単位あたりの生成コストを有意に削減することになる。要約すると、Bax/Bakアポトーシス耐性CHO細胞は、高い細胞密度及び長い培養時間により、高生存率/高収量の強化生成プロセスを可能にする。
図1
図2A-2C】
図3A-3C】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18A-18C】
図19A-19B】
図20
図21A-21C】
図22A-22D】
図23A-23C】
図24A-24C】
図25A-25D】
【配列表】
2023533217000001.app
【国際調査報告】