(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】再生併流縦型シャフト炉において鉱物岩をか焼する方法および使用される炉
(51)【国際特許分類】
C04B 2/12 20060101AFI20230726BHJP
F27B 1/04 20060101ALI20230726BHJP
F27D 13/00 20060101ALI20230726BHJP
F27B 1/26 20060101ALI20230726BHJP
F27B 1/24 20060101ALI20230726BHJP
F27D 9/00 20060101ALI20230726BHJP
F27D 17/00 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C04B2/12
F27B1/04
F27D13/00 B
F27B1/26
F27B1/24
F27D9/00
F27D17/00 101G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022580377
(86)(22)【出願日】2021-06-28
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2021067734
(87)【国際公開番号】W WO2022002869
(87)【国際公開日】2022-01-06
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】BE
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2020/083769
(32)【優先日】2020-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518234243
【氏名又は名称】ロイスト ルシェルシュ エ デヴロップマン エス.ア.
【氏名又は名称原語表記】Lhoist Recherche et Developpement S.A.
【住所又は居所原語表記】Rue Charles Dubois 28,1342 Ottignies-Louvain-la-Neuve,Royaume de Belgique
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ジアド・ハビブ
(72)【発明者】
【氏名】オリヴィエ・ヴァン カンフォール
(72)【発明者】
【氏名】トリスタン・クロアレック
【テーマコード(参考)】
4K045
4K056
4K063
【Fターム(参考)】
4K045AA01
4K045BA05
4K045DA01
4K045GA04
4K045GB07
4K045GB13
4K045MA08
4K056AA12
4K056BA01
4K056BB01
4K056CA07
4K056DA02
4K056DA33
4K063AA06
4K063AA13
4K063BA01
4K063CA02
4K063EA06
4K063EA10
4K063GA03
4K063GA06
4K063GA31
4K063GA33
4K063GA36
(57)【要約】
本発明は、再生併流縦型シャフト炉において鉱物岩をか焼する方法であって、再循環回路(18)において炉シャフトから、予熱モード(2)において排出されるガス状廃棄物の一部を収集することと、ガス状廃棄物から収集した前記一部を酸素源(20)からの高濃度酸素と混合することにより、酸化性混合物を形成することと、前記酸化性混合物を焼成モードのシャフト(1)の頂部に挿入することにより、酸素の存在下での燃料の燃焼を保証することと、を含み、炉から排出されるガス状廃棄物が高濃度のCO
2を有する、方法に関する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生併流縦型シャフト炉において鉱物岩をか焼する方法で、少なくとも2つのシャフトがガス移動チャネルを介して相互接続された、方法であり、生産モードにおいて、
前記炉の頂部で炭酸塩鉱物岩を載荷することと、
前記岩を予熱することと、
脱炭酸を伴う前記岩の焼成によってか焼材料を得ることと、
冷却空気によって前記か焼材料を冷却することと、
前記シャフトの底部で前記か焼材料を除荷することと、
を含み、
各シャフトが、焼成モードおよび予熱モードで交互に動作し、あるシャフトが所定の期間にわたって焼成モードである一方、少なくとも1つの他のシャフトが予熱モードであり(その逆もまた同様)、
焼成モードでは、
前記の通り、焼成モードにおいて、前記シャフトの頂部で炭酸塩鉱物岩を載荷し、
前記シャフト中に降下する前記予熱炭酸塩鉱物岩の存在下にて、酸素の存在下で燃料を燃焼させることにより、焼成モードにおいて前記シャフト中を順流降下するガス流の形態の燃焼ヒュームの放出と併せて、前記岩を焼成させるとともに、その脱炭酸によってか焼材料を取得し、
前記燃焼ヒュームを含む前記ガス流が前記ガス移動チャネルの使用により、焼成モードの前記シャフトから予熱モードの前記少なくとも1つのシャフトに移動し、
予熱モードでは、
前記の通り、前記ガス移動チャネルから前記載荷炭酸塩鉱物岩への逆流して予熱モードの前記少なくとも1つのシャフト中を上昇する前記燃焼ヒュームを含む前記ガス流との熱交換によって、前記載荷炭酸塩鉱物岩を予熱し、
前記燃焼ヒュームを含む前記ガス流に基づいて、予熱モードの前記少なくとも1つのシャフトの頂部でガス状廃棄物を前記炉から排出する、方法であって、
前記炉から排出される前記ガス状廃棄物の一部を収集することと、
前記炉から排出される前記ガス状廃棄物の前記収集した一部を高濃度酸素と混合することにより、酸化性混合物を形成することと、
焼成モードの前記シャフトの頂部で前記酸化性混合物を導入することにより、酸素の存在下での前記燃料の燃焼を保証することと、
をさらに含み、
前記炉から排出される前記ガス状廃棄物のCO
2濃度が高いことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記か焼材料の前記冷却が、前記シャフトそれぞれの底部において、前記降下するか焼材料を通って逆流し、前記か焼材料との接触により加熱される冷却空気を供給することを含み、前記加熱された冷却空気が、前記ガス移動チャネルを通る移動前は、焼成モードの前記シャフト中の前記燃焼ヒュームを含む前記ガス流と混ざり合い、移動後は、予熱モードの前記少なくとも1つのシャフト中の前記ガス流と混ざり合い、前記炉から排出されるCO
2濃度の高い前記ガス状廃棄物が、前記燃焼ヒュームおよび前記冷却空気を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記か焼材料の前記冷却が、焼成モードの前記唯一のシャフトの底部において、前記降下するか焼材料を通って逆流し、前記か焼材料との接触により加熱される冷却空気を供給することを含み、前記加熱された冷却空気が、前記ガス移動チャネルを通る移動前は、前記燃焼ヒュームを含む前記ガス流と混ざり合い、前記炉から排出されるCO
2濃度の高い前記ガス状廃棄物が、前記燃焼ヒュームおよび前記冷却空気を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記冷却空気が、前記か焼材料を100℃の基準温度まで冷却するのに必要な熱力学的最小値以下の総体積で前記炉に供給されることを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記炉に供給される冷却空気の総体積が、前記熱力学的最小値のおよそ40~60%、好ましくは50%に等しいことを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記か焼材料の前記冷却が、前記シャフトそれぞれの底部または焼成モードの前記唯一のシャフトの底部において、前記降下するか焼材料を通って逆流し、前記か焼材料との接触により加熱される冷却空気を供給することを含み、当該方法が、前記炉から前記加熱された冷却空気を除去することをさらに含み、前記炉から排出される前記ガス状廃棄物が、乾燥ガスで少なくとも90体積%のCO
2含有物を含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記炉から除去される前記加熱された冷却空気と高濃度酸素との混合前または混合後の前記炉から排出されるガス状廃棄物の前記収集した一部との間の熱交換をさらに含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記ガス移動チャネルにおいて、前記炉から排出されるガス状廃棄物の前記収集した一部のごく一部を注入することと、任意選択として前記注入の前に、前記炉から除去される前記加熱された冷却空気と注入される前記ごく一部との間の熱交換と、をさらに含むことを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス移動チャネルにおいて、水を注入することをさらに含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記燃料の燃焼が、気体、液体、または固体燃料を焼成モードの前記シャフトに導入することを含み、固体燃料の場合、前記導入が、前記炉から排出されるガス状廃棄物の前記収集した一部のさらに一部または搬送ガスとしての別のCO
2源を用いて実行されることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記燃料の燃焼が、化学量論的必要量に対して過剰な酸素の存在下で発生する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実行する再生併流縦型シャフト炉であり、
ガス移動チャネルにより相互接続された少なくとも2つのシャフト(1、2)で、それぞれがオンまたはオフ位置において、
少なくとも1つの燃料供給装置(4)と、
少なくとも1つの酸素含有オキシダント供給開口(6)と、
当該シャフトの頂部で炭酸塩鉱物岩を載荷する入口(5)と、
当該シャフトの底部で生成されたか焼材料を除荷する出口(8)と、
を備えた、少なくとも2つのシャフト(1、2)と、
煙突(15)に接続された前記シャフトの頂部のガス状廃棄物排出ダクト(14)と、
前記生成されたか焼材料を冷却する冷却空気源(7)と、
前記シャフトの動作を反転させるシステム(16)で、各シャフトが生産モードにおいて、焼成モードおよび予熱モードで交互に動作し、あるシャフトが所定の期間にわたって焼成モードである一方、少なくとも1つの他のシャフトが予熱モードであり(その逆もまた同様)、前記オンおよびオフ位置を制御するように構成された、反転させるシステム(16)と、
を備えた、炉であって、
前記シャフトの前記ガス状廃棄物排出ダクト(14)と前記シャフトの前記オキシダント供給開口(6)との間に配置された再循環回路(18)と、
前記ダクト(14)を介して、前記炉から排出されるガス状廃棄物の一部を収集して前記再循環回路(18)に導入可能な分離部材(17)と、
前記再循環回路(18)との接続により高濃度酸素を供給することによって、酸化性混合物を形成する高濃度酸素源(20)であり、焼成モードの前記シャフト(1)の前記オキシダント供給開口(6)が、前記反転システム(16)を介した前記オン位置での供給によって、燃料の燃焼を保証する、高濃度酸素源(20)と、
をさらに備えたことを特徴とする、炉。
【請求項13】
前記シャフトが、円形断面を有し、前記ガス移動チャネルが、各シャフトの周囲に配置された周辺チャネル(13)の接続によってガスの移動を可能にする接続炉筒(3)であり、前記シャフトが、前記接続炉筒(3)の下方において、排出要素(26)との接続により加熱された冷却空気の当該炉からの除去を可能にする収集リング(25)が設けられたことを特徴とする、請求項12に記載の炉。
【請求項14】
前記円形シャフトが、前記接続炉筒(3)の下方において、排出要素(26)との接続により加熱された冷却空気の当該炉からの除去を可能にする中央収集要素(27)を底部にさらに備えたことを特徴とする、請求項13に記載の炉。
【請求項15】
前記シャフトが、矩形断面を有し、シャフト(1)の第1の面(28)が隣接シャフト(2)の第1の面(29)に対向するとともに、各シャフトが互いに対向する面(28、29)と反対の第2の面(30、31)を備え、前記ガス移動チャネルが、第1の面(28、29)をそれぞれ介して一方のシャフトを他方に直接接続する接続炉筒(3)であり、前記シャフトの前記第1の面および前記第2の面が、前記接続炉筒の下方において、排出要素(26)との接続により加熱された冷却空気の当該炉からの除去を可能にする収集トンネル(32~35)が設けられたことを特徴とする、請求項12に記載の炉。
【請求項16】
前記再循環回路の酸素源として、空気を酸素および窒素に分離するユニット(20)を備えたことを特徴とする、請求項12から15のいずれか一項に記載の炉。
【請求項17】
当該炉から除去される加熱された冷却空気が供給される熱交換器(36)が前記再循環回路(18)に組み込まれたことを特徴とする、請求項12から16のいずれか一項に記載の炉。
【請求項18】
100℃超の温度に耐えるか焼材料を除荷する設備(24)を備えたことを特徴とする、請求項12から17のいずれか一項に記載の炉。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再生併流縦型シャフト炉において炭酸塩鉱物岩をか焼する方法および使用される炉に関する。
【背景技術】
【0002】
再生併流縦型シャフト炉または併流再生キルン(PFRK)は、エネルギー効率が85%~90%である。これは、エネルギー集約型のセメント、鉄鋼、およびガラス工業全体の中でも、石灰部門において最も高い。欧州においては、石灰の60%がこの種の炉で生産されている。この割合は、エネルギーおよび生態学的遷移のロードマップを考慮すると、欧州および世界中で増加すると思われる。
【0003】
「PFRK」炉は、約10~15分間にわたって燃料が2つのシャフトで交互に噴射され、サイクル間の約1~2分の停止期間に空気および燃料の回路を反転させる縦型ダブルシャフト炉である。この停止期間が「反転」期間である。2つのシャフトは、接続炉筒を介して接続されている。一方のシャフトの燃焼時(焼成モード)には、高温の燃焼ヒュームが接続炉筒(ガス移動チャネル)を通過し、その熱の一部をか焼対象の鉱物岩に与えることにより、再生または予熱モードにて他方のシャフトで鉱物岩を予熱する。PFRK炉のシャフトは、円筒形状または矩形状である。場合によっては3つのシャフトが存在し、2つが予熱モード、1つが焼成モードである。以下に概説する課題および解決手段は、すべてのPFRK炉の形状に有効である。
【0004】
これら既知の炉で用いられる方法は、生産モードにおいて、
炉の頂部で炭酸塩鉱物岩を載荷することと、
前記岩を予熱することと、
脱炭酸を伴う前記岩の焼成によってか焼材料を得ることと、
冷却空気を用いてか焼材料を冷却することと、
シャフトの底部でか焼材料を除荷することと、
を含み、
各シャフトは、焼成モードおよび予熱モードで交互に動作し、あるシャフトが所定の期間にわたって焼成モードである一方、少なくとも1つの他のシャフトが予熱モードであり(その逆もまた同様)、
焼成モードでは、
前記の通り、焼成モードにおいて、シャフトの頂部で炭酸塩鉱物岩を載荷し、
このシャフト中に降下する前記予熱炭酸塩鉱物岩の存在下にて、酸素の存在下で燃料を燃焼させることにより、焼成モードにおいてシャフト中を順流降下するガス流の形態の燃焼ヒュームの放出と併せて、この岩を焼成させるとともに、その脱炭酸によってか焼材料を取得し、
これらの燃焼ヒュームを含む前記ガス流が前記ガス移動チャネルの使用により、焼成モードのシャフトから予熱モードの前記少なくとも1つのシャフトに移動し、
予熱モードでは、
前記の通り、ガス移動チャネルから前記載荷炭酸塩鉱物岩への逆流して予熱モードの前記少なくとも1つのシャフト中を上昇する燃焼ヒュームを含むガス流との熱交換によって、載荷炭酸塩鉱物岩を予熱し、
燃焼ヒュームを含むガス流に基づいて、予熱モードの前記少なくとも1つのシャフトの頂部でガス状廃棄物を炉から排出する。
【0005】
本発明の意味において、炭酸塩鉱物岩は、特に、石灰岩、ドロマイト岩、および/またはマグネサイトを意味し、それぞれか焼によって、生石灰、か焼ドロマイト、および/またはマグネシアになる。石灰石の石灰へのか焼の式は、以下の通りである。
CaCO3(固体)+熱←→CaO(固体)+CO2(気体)
【0006】
これは可逆的な吸熱反応であり、石灰は900℃未満の最初の機会でCO2と再結合するが、これは、平衡状態を伴い、CO2の温度および環境濃度に応じて、より速いまたはより遅い反応速度を示す。
【0007】
したがって、このプロセスにおいては、最初の石灰石またはドロマイト岩がか焼によって石灰またはドロマイトになる間に、大量のCO2が放出される。さらに、このか焼を実行するには高温に達する必要があるため、燃料を燃焼させる必要があり、その結果、大量のCO2が放出される。全体として、か焼法には、温室効果への積極的な加担という欠点がある。
【0008】
この一般的なか焼法には、燃料が空気とともに燃焼され、か焼生成物が空気により冷却されるという欠点もある。その結果、炉の頂部で放出されるガス状廃棄物の窒素が高水準である一方、CO2は比較的低水準(乾燥ガスでおよそ20%~27%の体積濃度)であり、使用する空気からの窒素(dinitrogen:二窒素)の割合が大きいことから、回収にはコストが掛かる。
【0009】
このCO2を回収するため、「アミン類」と称する化学溶剤による除去方法の使用が考えられるが、これは、集塵フィルタの後、ラインの最後で炉ヒュームに適用される技術として最も広く普及している。ただし、10~15分ごとに1~2分間の炉停止を伴うPFRK炉のサイクル特性は、この技術と相容れない。また、コストが非常に高い上、環境法の観点から持続可能ではない溶剤を必要とする。
【0010】
PFRK炉において放出されるCO2を回収できるように、使用する方法においては、当該方法によるすべての空気(固体燃料を搬送する燃焼空気および冷却空気)をリサイクル燃焼ヒュームで置換し、焼成モードにおいて純酸素をシャフトに導入することが既に提案されている(CN105000811参照)。石灰が冷却中に再炭酸塩化することから、このプロセスが実現不可能であることは当業者に明らかである。このように、CO2の再循環によって石灰を冷却することは不可能である。石灰は直ちにこのCO2と再結合して、CaCO3を再構成するためである。一方、炉の頂部で純酸素を使用することには、材料適合性の観点で深刻な問題があり、この入力では、再生エリアに蓄積された熱を効果的に回収するのに十分な質量流とはならない。この方法の欠点および実現可能性の問題については、米国特許出願公開第2020/0048146号において既に論じられている。
【0011】
また、PFRK炉の冷却空気は、回転炉とは対照的に、たとえば焼成モードにおける燃焼およびシャフトにおけるか焼プロセスに直接的な影響を及ぼさないことに留意するものとする。製品の品質への影響は考えられない。
【0012】
生産モードとは、炉がか焼材料を連続的に生成する通常の稼働状態にあることを意味する。したがって、このモードは、炉の起動および停止段階にも、故障時の保守にも適用されない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、PFRK型炉のサイクル運転を変更することもなく、その構造を変更することもほとんどまたは一切なく、大気中への著しいCO2排出という問題を少なくとも部分的に改善することを目的とする。また、炉が放出するガス状廃棄物中に存在するCO2を回収可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この課題を解決するため、本発明は、最初に述べた通り、再生併流縦型シャフト炉において鉱物岩をか焼する方法であって、
炉から排出されるガス状廃棄物の一部を収集することと、
炉から排出されるガス状廃棄物の収集した一部を高濃度の酸素(dioxygen:二酸素)と混合することにより、酸化性混合物を形成することと、
焼成モードのシャフトの頂部でこの酸化性混合物を導入することにより、酸素の存在下での前記燃料の燃焼を保証することと、
を含み、
炉から排出されるガス状廃棄物が高濃度のCO2を有する、方法を提供している。
【0015】
高濃度酸素中で燃料を燃焼させると、通例の炉設備には高すぎる火炎温度となる。また、本発明によれば、CO2が豊富なガス状廃棄物の一部を収集して酸素と混合することも可能である。空気のO2+N2混合物により形成される通例のオキシダントの代わりに、適当な火炎温度におけるO2+CO2の混合物がこのようにして得られる。
【0016】
酸素中で燃料を燃焼させると、燃焼ヒュームを含むガス流が生成されるとともに、炭酸塩岩がか焼される。これにより、燃料およびか焼対象材料中に微量に存在する不純物と、燃料の燃焼で残った酸素と、を含むCO2が主として生成される。当然のことながら、これらの燃焼ヒュームには、酸化性混合物に供給されるCO2も含む。その結果、明らかなこととして、炉の頂部から排出されるガス状廃棄物のCO2濃度が従来の方法よりも大幅に高くなる。本発明によれば、ガス状廃棄物のCO2濃度が高いことは、乾燥ガスでのCO2含有量が少なくとも35体積%、有利には少なくとも45体積%、好ましくは少なくとも60体積%、とりわけ少なくとも80体積%、特に有利には少なくとも90体積%であることを意味する。そして、このCO2を好条件下で使用または回収することにより、温室効果に対する炉の寄与を劇的に低減可能となる。
【0017】
この方法の使用には、炉自体の任意特定の設計を必ずしも必要としない。炉の変更箇所は、炉の外部のみであって、炉から出る廃棄物回路の変更および少なくとも1つの高濃度酸素源の提供から成る。
【0018】
本発明によれば、高濃度二酸素(以下、酸素と称する)は、酸素レベルが50体積%を超えるガスを意味する。これは、90体積%以上、特に93体積%、有利には98~100体積%であるのが好ましい。高濃度酸素源は、たとえば空気を酸素および窒素に分離するとともに、炉または炉の隣に設置された酸素タンクと並行して動作する空気分離ユニットであってもよい。燃料の燃焼は、化学量論的燃焼必要量に対して、好ましくはおよそ5~50体積%、特に10~30体積%、有利には15~25体積%の過剰な酸素の存在下で発生するのが好都合である。
【0019】
本発明によれば、燃料は、任意の固体、液体、または気体燃料(たとえば、天然ガス、水素、バイオガス、重油、油類、石炭またはコークス粉末、おがくず等の固体バイオマス、プラスチック、紙、段ボール等の固体回収燃料)を意味する。固体燃料の場合、焼成モードのシャフトへの導入は、搬送ガスとして炉から排出されるガス状廃棄物の前記収集した一部のさらに一部を使用することにより、粒状または粉末状の形態にて実行されるのが好都合である。また、その他任意の供給源からのCO2が搬送ガスとして提供されるようになっていてもよい。
【0020】
本発明の一実施形態によれば、か焼材料の冷却は、シャフトそれぞれの底部において、降下するか焼材料を通って逆流し、か焼材料との接触により加熱される冷却空気を供給することを含み、加熱された冷却空気が、ガス移動チャネルを通る移動前は、焼成モードのシャフト中の燃焼ヒュームを含むガス流と混ざり合い、移動後は、予熱モードの前記少なくとも1つのシャフト中のガス流と混ざり合い、炉から排出されるCO2濃度の高いガス状廃棄物が、燃焼ヒュームおよび冷却空気を含む。この場合は、炉から排出されるCO2濃度の高いガス状廃棄物および酸素に基づく酸化性混合物によって、従来方法の燃焼空気のみが置換される。このような方法によれば、従来のPFRK炉から排出されるガス状廃棄物のCO2含有量を乾燥ガスで20~27体積%から、本発明に係る炉中での乾燥ガスで少なくとも35体積%、有利には少なくとも45体積%、さらには最大65体積%の値まで高くすることが可能となる。例示として、この方法を用いたPFRK炉によりソーダ灰プラントで現在使用されているコークス炉を置き換えることによって、40体積%のCO2を含むヒュームを提供可能となるため都合が良い。また、PFRKは、「持続可能」なエネルギー効率の良い炉であり、とりわけ、汚染物質(CO、NH3、H2S等)の著しい排出等、コークス炉に関連付けられるすべての環境問題を解決することができる。
【0021】
本発明の特定の一実施形態によれば、冷却空気は、か焼材料を100℃の基準温度まで冷却するのに必要な熱力学的最小値以下の総体積で炉に供給される。炉に供給される冷却空気の総体積は、前記熱力学的最小値のおよそ40~60%、好ましくは50%に等しいのが好都合と考えられる。この場合、除荷される生成物は、通常の運転よりも高い温度となる。したがって、この温度に耐える材料に対して除荷設備を適応させる必要がある。
【0022】
また、か焼材料の冷却は、焼成モードの唯一のシャフトの底部において、降下するか焼材料を通って逆流し、か焼材料との接触により加熱される冷却空気を供給することを含むのが好都合と考えられ、加熱された冷却空気が、ガス移動チャネルを通る移動前は、燃焼ヒュームを含むガス流と混ざり合い、炉から排出されるCO2濃度の高いガス状廃棄物が、燃焼ヒュームおよび冷却空気を含む。この場合も、冷却空気は、か焼材料を100℃の基準温度まで冷却するのに必要な熱力学的最小値未満の総体積で炉に供給されるようになっていてもよい。したがって、炉に供給される冷却空気の総体積は、前記熱力学的最小値のおよそ40~60%、好ましくは50%に等しいのが好都合と考えられる。
【0023】
本発明の特に有利な一実施形態によれば、か焼材料の前記冷却は、シャフトそれぞれの底部または焼成モードの唯一のシャフトの底部において、降下するか焼材料を通って逆流し、か焼材料との接触により加熱される冷却空気を供給することを含み、この方法は、炉から加熱された冷却空気を除去することをさらに含み、炉から排出されるガス状廃棄物が、乾燥ガスで少なくとも90体積%、好ましくは少なくとも95体積%のCO2含有物を含む。この場合、炉から排出されるガス状廃棄物は、ほぼ燃焼ヒュームのみで形成される。このようなガスを特殊な産業で使用または回収することが可能になる。
【0024】
本発明の特定の一実施形態によれば、この方法は、炉から除去される加熱された冷却空気と高濃度酸素との混合前または混合後の炉から排出されるガス状廃棄物の前記収集した一部との間の熱交換をさらに含む。これにより、酸化性混合物の熱回収を焼成モードのシャフトに導入することが可能となる。
【0025】
本発明に係る方法の他の詳細および特徴については、添付の特許請求の範囲に記載する。
【0026】
また、本発明は、PFRK型の再生併流縦型シャフト炉に関する。
【0027】
このような炉は、
ガス移動チャネルにより相互接続された少なくとも2つのシャフトであり、それぞれがオンまたはオフ位置において、
少なくとも1つの燃料供給装置と、
燃料燃焼用の少なくとも1つの酸素含有オキシダント供給開口と、
当該シャフトの頂部で炭酸塩鉱物岩を載荷する入口と、
当該シャフトの底部で生成されたか焼材料を除荷する出口と、
を備えた、少なくとも2つのシャフトと、
煙突に接続されたシャフトの頂部のガス状廃棄物排出ダクトと、
生成されたか焼材料を冷却する冷却空気源と、
シャフトの動作を反転させるシステムであり、各シャフトが生産モードにおいて、焼成モードおよび予熱モードで交互に動作し、あるシャフトが所定の期間にわたって焼成モードである一方、少なくとも1つの他のシャフトが予熱モードであり(その逆もまた同様)、前記オンおよびオフ位置を制御するように構成された、システムと、
を備える。
【0028】
本発明によれば、この炉は、
シャフトの前記ガス状廃棄物排出ダクトとシャフトの前記オキシダント供給開口との間に配置された再循環回路であり、前記反転システムが、予熱モードのシャフトからのガス状廃棄物の少なくとも一部の収集を制御する、再循環回路と、
再循環回路との接続により高濃度酸素を供給することによって、酸化性混合物を形成する高濃度酸素源であり、焼成モードのシャフトの前記オキシダント供給開口が、前記反転システムを介したオン位置での供給によって、燃料の燃焼を保証する、高濃度酸素源と、
をさらに備える。
【0029】
上記説明の通り、PFRK炉はサイクル運転を行い、各シャフトが所定の期間にわたって焼成モードで動作した後、1~2分間の反転時間を経て予熱モードで動作し、以下同様である。反転時間において、反転システムは、たとえばシャフト中の燃料供給装置のノズルを焼成モードでは開き、予熱モードに移行した場合は閉じることによって、一方のモードから他方への移行に必要なすべての変更を同期して制御する。したがって、反転システムは、多くのバルブおよびゲートのみならず、載荷・除荷設備またはさまざまな吸引、圧送、もしくは噴射要素の動作をも制御する。
【0030】
上述の通り、本発明に係る炉は、炉の外部にわずかな構造的変更を加えるのみである。したがって、既存の炉の簡単な構成により、本発明に係るか焼法を実行するようにしてもよい。
【0031】
本発明の一実施形態によれば、シャフトは、円形断面を有し、前記ガス移動チャネルが、各シャフトの周囲に配置された周辺チャネルの接続によってガスの移動を可能にする接続炉筒であり、前記シャフトが、接続炉筒の下方において、排出要素との接続により加熱された冷却空気の炉からの除去を可能にする収集リングが設けられる。円形シャフトは、接続炉筒の下方において、排出要素との接続により加熱された冷却空気の炉からの除去を可能にする中央収集要素を底部にさらに備えるのが好都合である。
【0032】
本発明に係る炉の別の実施形態によれば、シャフトは、矩形断面を有し、シャフトの第1の面が隣接シャフトの第1の面に対向するとともに、各シャフトが互いに対向する面と反対の第2の面を備え、ガス移動チャネルが、第1の面をそれぞれ介して一方のシャフトを他方に直接接続する接続炉筒であり、シャフトの前記第1の面および前記第2の面がそれぞれ、接続炉筒の下方において、排出要素との接続により加熱された冷却空気の炉からの除去を可能にする収集トンネルが設けられる。
【0033】
本発明の一実施形態によれば、この炉は、再循環回路の酸素源として、空気を酸素および窒素に分離するユニットを備える。また、酸素タンクが設けられていてもよい。炉から除去される加熱された冷却空気が供給される熱交換器の再循環回路への組み込みにより、焼成モードのシャフトへの供給に先立って、前述の酸化性混合物を加熱するのが好都合である。
【0034】
本発明に係る炉の他の詳細および特徴については、添付の特許請求の範囲に記載する。
【0035】
本発明の他の特徴は、以下の説明からも明らかとなろうが、これは何ら限定的なものではなく、添付の図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】従来のPFRK炉を模式的に示した図である。
【
図2】
図2aおよび
図2bは、円形断面の従来のPFRK炉および矩形断面の従来のPFRK炉におけるガス流の酸素質量%濃度のデジタルモデリングを示した図である。
【
図3】本発明に係る、円形断面の炉の複数の実施形態を模式的に示した図である。
【
図4】本発明に係る、円形断面の炉の複数の実施形態を模式的に示した図である。
【
図5】本発明に係る、矩形断面の炉の一実施形態を断片的に表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
図中、同一または類似の部分には、同じ参照符号を使用する。従来は、左側に示すシャフトが焼成モードで、右側に示すシャフトが予熱モードである。載荷または除荷設備等の標準的な部分については、図面が煩雑にならないように、図示しないか、または、非常に模式的に示す。
【0038】
図1に見られるように、図示の「PFRK」炉は、約12分間にわたって燃料があるシャフト1および後続の別のシャフト2で交互に噴射され、サイクル間の1~2分の停止期間に回路を反転させる縦型ダブルシャフト炉1、2である。この停止期間が「反転」期間である。いずれのシャフトも円形断面を有し、接続炉筒3により相互接続された周辺チャネル13が設けられている。シャフトは、垂直方向に、炭酸塩岩がか焼前に予熱される予熱エリアA、炭酸塩岩の焼成が行われる燃焼エリアB、およびか焼材料の冷却が行われる冷却エリアCという3つのエリアに分割されている。
【0039】
シャフトが焼成モードの場合(ここでは、シャフト1の場合)は、ノズル4の形態の燃料供給装置が燃料9をシャフトに噴射するが、この燃料は、図示の例では天然ガスである。シャフトの頂部で開放位置の入口5を介して載荷された炭酸塩岩は、シャフト中を徐々に降下する。シャフトの頂部で供給開口6を介して燃焼空気が導入されるが、これによって、ノズル4の出口での燃料の燃焼および炭酸塩岩のか焼材料10への脱炭酸が可能となる。燃焼および脱炭酸により形成されたガス流11がか焼材料に対して順流降下し、周辺チャネル13によって接続炉筒3に移動する。シャフトの底部で供給ダクト7を介して冷却空気がか焼材料に対して逆流導入され、これを冷却する。加熱された冷却空気12は、燃焼ヒューム11を含むガス流と混ざり合って、接続炉筒3に移動する。か焼材料は、出口8を介して、除荷設備24へと除荷される。
【0040】
シャフトが予熱モードの場合(ここでは、シャフト2の場合)は、燃料供給装置が閉じられるため、ノズル4がオフとなる。炭酸塩岩の入口5および燃焼空気を供給する開口6にも同じことが当てはまる。ただし、冷却空気の供給ダクト7およびか焼材料の出口8は、開放位置に保たれる。降下するか焼材料10との熱交換の後、加熱された冷却空気は、接続炉筒3から周辺チャネル13を介してシャフトに入ったガス流11と混ざり合う。このガス流11は、シャフトの上部に達するまで進み、排出ダクト14を介して炉から排出され、煙突15まで運ばれる。焼成モードのシャフト1においては、この排出ダクト14が閉じられている。
【0041】
また、この炉は、模式的に示した反転システム16を備える。これは、シャフトの反転時間中のシャフトの動作を同期して直接または遠隔制御する。また、生産モードにおいて、各シャフトが焼成モードおよび予熱モードで交互に動作するように、炉のすべての要素のオン/オフ切り替えを制御する。
【0042】
場合によっては3つのシャフトが存在し、2つが予熱モード、1つが燃焼モードである。
【0043】
図1は、1日当たり430トンの石灰を生産するように設計された炉を示している。以下に述べるガス流はすべて、生産される石灰のNm
3/tの単位で表す。
【0044】
燃料としてシャフト1に噴射されたガスとの反応のため、1120Nm3/tの燃焼空気の使用によって、化学量論的必要量に対して19重量%の過剰な空気を得るとともに、燃焼時に100Nm3/tのCO2を形成する。流入ガスが空気であるため、その酸素の質量濃度は23%である。その後の到達温度は900℃をはるかに上回り、石灰岩の脱炭酸が起こって、380Nm3/tのCO2が放出される。生成された石灰をおよそ100℃に冷却するため、両シャフトの底部を介して290Nm3/tの冷却空気が導入され、その合計は580Nm3/tである。煙突では、480Nm3/tのCO2を含む2250Nm3/tのガス状廃棄物が得られるが、このガス状廃棄物は、乾燥ガスで23%のCO2含有量となる。このように少ない含有量のCO2の使用または回収は困難であるため、ガス状廃棄物はすべて大気中に放出される。
【0045】
図2aは、円形断面のPFRK炉のデジタルモデリングであって、ガスの酸素含有量に応じたルートを示している。これは、ノズルの端部からの燃焼エリアBおよび冷却エリアCしか示しておらず、シャフトの頂部は図示していない。
【0046】
エリアa:焼成モードのシャフトにおける冷却空気(底部)および燃焼空気(頂部で、ノズルの端部の上方のみ)であって、O2含有量が23重量%である。
【0047】
エリアb:ノズルにより放出された燃焼ヒュームジェットであって、酸素はほとんど残っていないが、ジェット間に未反応のO2が残っている可能性がある。
【0048】
エリアc:ヒュームが冷却空気と徐々に混ざり合うことで、冷却エリアC中深くに侵入している。これらは、ガス状混合物を周辺チャネル13ひいては接続炉筒3へと押し込む。
【0049】
エリアd:予熱モードのシャフトにおける冷却空気である。
【0050】
エリアe:周辺チャネル13からのガス流および冷却空気の混合物である。シャフトの中心に近いほど、残留O2含有量が多くなる。
【0051】
図2bは、シャフトが矩形断面のPFRK炉について、このようなデジタルモデリングを示している。ここで、ガス流の分布はもはや、円形シャフトの場合のように対称ではない。
【0052】
図3は、本発明に係る炉の図である。この場合、炉の構造に変更はない。炉から排出されたガス状廃棄物の一部を収集して再循環回路18に導入可能な分離部材17が外部の排出ダクト14に設けられている。この回路において、収集したガス状廃棄物の一部は、処理ユニット19において処理されるのが好都合であり、たとえばフィルタリングおよび/または乾燥が行われるようになっていてもよい。空気分離ユニット20は、ダクト21により供給された空気を、ダクト22を介して排出されるN
2および供給ダクト23を介して再循環回路18に供給されるO
2に分離する。そして、この回路18は、再循環したガス状廃棄物の一部および高濃度O
2により形成された酸化性混合物を供給開口6でシャフトそれぞれの頂部に供給する。
【0053】
図3の炉の動作は、PFRK炉に類似する。分離部材17は、継続的に稼働状態であっても、処理ユニット19および空気分離ユニット20と同じである。上述の通り、反転システム16は、焼成モードにおいて、シャフトの頂部で排出ダクト14を閉鎖する。ただし、このシャフトの頂部では、供給開口6の開放によって酸化性混合物の導入を可能にするが、予熱モードにおいては、シャフトの頂部で閉鎖となる。
【0054】
使用する炭酸塩岩の量ならびに燃料および冷却空気の流量は、上述の従来の炉と同じである。炉から排出された830Nm3/tのガス状廃棄物は、CO2が豊富であり、再循環ダクト18を介して収集される。この再循環廃棄物は、160Nm3/tのO2と混合されることにより、このように形成された酸化性混合物中のO2の質量濃度を同じ23%に維持するとともに、燃焼中の化学量論的必要量に対して同じ19重量%の過剰な酸素を得ることができる。これにより、燃焼空気の窒素N2は、その質量に相当するCO2で置き換えられる。これが窒素よりも重いため(1.25g/Nm3に対して比重1.977)、炉のヒュームの総量が減少し、従来の炉に対して13%の圧力損失の減少をもたらす。煙突では、1240Nm3/tのガス状廃棄物が排出されるが、その中には乾燥ガスで43体積%のCO2が含まれる。上記説明の通り、この含有量では、たとえばソーダ灰プラントにおける産業利用が可能になる。
【0055】
本発明に係るこのような炉の変形例として、この方法の空気の入力をさらに減らすため、冷却空気の流れが抑制されるようになっていてもよい。たとえば、この入力は、50%まで抑制され、290Nm3/tの冷却空気であってもよい。この減少した体積は、焼成モードの唯一のシャフトの供給ダクト7を介して導入されるようになっていてもよいし、両シャフトの供給ダクト7を利用して導入されるようになっていてもよい。この方策によって、ヒュームの希釈が50%低下する。このため、出口8を介して排出されたか焼材料の冷却の程度は弱くなる。したがって、耐熱鋼製除荷テーブルおよび鋼製ドラッグチェーン等、100℃よりも高い温度に耐えられる除荷設備の提供が必要となる。石灰が高温で出てくるため、冷却空気による熱回収はほとんどないが、これは、燃焼時に120Nm3/tのCO2が形成されるように燃料の入力を少し増やすことによって補償される。一方、このような増加には、再循環回路において炉から排出される1730Nm3/tのガス状廃棄物の収集を865Nm3/tに変更するとともに、この収集した廃棄物を200Nm3/tのO2と混合することによって、このように形成された酸化性混合物中のO2の質量濃度を同じ23%に維持するとともに、燃焼中の化学量論的必要量に対して同じ19重量%の過剰な酸素を得る必要がある。したがって、煙突では、CO2含有量が乾燥ガスで63体積%と高い865Nm3/tのガス状廃棄物しか得られない。
【0056】
実際のところ、煙突では、か焼材料を100℃の基準温度まで冷却するのに必要な熱力学的最小体積の100%~50%に冷却空気量を調整することによって、40体積%~65体積%のカスタムCO2濃度を規定可能である。この目的で設置された高温除荷・移送システムとの石灰の温度適合性の限界内において、冷却空気の入力を50%未満に抑えることで、より高い濃度のCO2を得ることが可能となり得る。
【0057】
図4は、本発明に係る有利な炉の図である。上述の通り、本実施形態には、
図3に係る実施形態の特徴を含むが、追加として、炉の外部構造のわずかな変形も含む。
【0058】
この場合は、除去システムの設置によって、加熱された冷却空気がか焼材料との接触により抽出される。シャフト1および2にはそれぞれ、排出要素26との接続によって加熱された冷却空気を炉から除去可能な収集リング25が接続炉筒3および周辺チャネル13の下方に設けられている。このように、燃焼ヒュームのごく一部の抽出により、燃焼空気の一部または全部が必要に応じて抽出されるようになっていてもよい。実際のところは、
図2aに示すように、降下するガスが冷却エリアC中深くに侵入するため、冷却空気は、収集リングが配置された炉の外壁に押し付けられる。シャフトは任意選択として、接続炉筒3の下方において、排出要素26との接続により加熱された冷却空気の中央除去を可能にする中央収集要素27を底部にさらに備えていてもよい。
【0059】
矩形の炉の場合は、側方回収エリアの使用により、収集リングなしで冷却空気を抽出することも可能である。
図5に見られるように、各シャフトは、4つの面を含む。あるシャフトの面28が隣接シャフトの面29に対向するとともに、各シャフトが互いに対向する面と反対の第2の面30および31を備え含む。ガス移動チャネルは、それぞれの面28および29を介して一方のシャフトを他方に直接接続する接続炉筒3である。接続炉筒の下方において、面28~31にはそれぞれ、排出要素26との接続によって加熱された冷却空気を炉から除去可能な収集トンネル32~35が設けられている。
【0060】
矩形シャフトの炉におけるガス流の広がりが非対称であることから(
図2b参照)、冷却空気は、高温のヒュームによって一方の面にしか押されない。また、シャフト1が焼成モードでシャフト2が予熱モードの図示の炉において、反転システム16は、収集トンネル32および34しか開放しない。また、後続のサイクルにおいては、収集トンネル33および35しか開放されない。
【0061】
図4に示す炉において、使用する炭酸塩岩の量および冷却空気の流量は、上述の従来の炉と同じである。加熱された冷却空気は、排出要素26を介して炉から除去される。シャフト1においては、燃焼時に105Nm
3/tのCO
2が形成されるように、燃料の導入が実行される。シャフト2の頂部では、1330Nm
3/tのガス状廃棄物が排出される。CO
2が豊富なこの排出ガス状廃棄物のうちの730Nm
3/tが再循環回路18を介して収集される。この再循環廃棄物は、220Nm
3/tのO
2と混合されることにより、このように形成された酸化性混合物中のO
2の質量濃度を同じ23%に維持するとともに、燃焼中の化学量論的必要量に対して同じ19重量%の過剰な酸素を得ることができる。したがって、煙突では、CO
2含有量が乾燥ガスで96%の600Nm
3/tのガス状廃棄物しか得られない。
【0062】
図4に示す炉においては、排出要素26により除去される高温空気のエネルギーの一部を回収するため、高濃度酸素との混合前または混合後に、熱交換器36を用いて再循環ガス状廃棄物の一部の熱交換が行われるようになっていてもよい。
【0063】
さらに、接続炉筒3および周辺チャネル13においては、注入ダクト37の使用によって、炉から排出されるガス状廃棄物の前記収集した一部のごく一部が注入されるようになっていてもよい。任意選択として事前に、熱交換器(たとえば、熱交換器36)の使用によって、炉から除去される加熱された冷却空気と注入される前記ごく一部との間の熱交換が行われるようになっていてもよい。熱交換器36がない場合は、図示しない熱交換器が注入ダクト37に設けられていてもよい。
【0064】
さらに別の変形例によれば、接続炉筒および/または周辺リングの選択箇所での水の注入によって、炉筒の温度が緩和されるようになっていてもよい。この追加の水は、乾燥ガスでCO2の濃度を希釈する効果を持たない。
【0065】
炉から除去される加熱された冷却空気から熱を回収するこのような構成は当然のことながら、熱交換器のほか、接続炉筒におけるこのようなCO2または水注入装置の使用により、矩形シャフトの炉でも提供可能である。
【0066】
図4に示す炉と類似の炉の設計では、2つのシャフトのうちの一方の底部においてのみ、冷却空気が注入されるようになっていてもよいことが明らかである。
【0067】
以下の表1には、従来の炉および本発明に係るさまざまな炉の変形例における流れを含み、表2には、炉の入口におけるさまざまなガス状元素の量を含む。
【0068】
各例の列において、1は従来のPFRK炉、2および3は冷却空気の流れを可変とした
図3に係る炉、4および5は熱交換器の有無それぞれの
図4に係る炉を示す。
【0069】
【0070】
【0071】
本発明は、上述の実施形態に何ら限定されず、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく変更可能であることが了解される。
【0072】
たとえば、空気で冷却される燃料噴射ノズルを熱絶縁ノズルに置き換え可能であっても都合が良い。
【国際調査報告】