(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】食品製品
(51)【国際特許分類】
A23L 33/22 20160101AFI20230726BHJP
A21D 13/80 20170101ALI20230726BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20230726BHJP
A21D 10/00 20060101ALI20230726BHJP
A23G 1/40 20060101ALI20230726BHJP
A23L 29/206 20160101ALI20230726BHJP
A23L 9/20 20160101ALI20230726BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20230726BHJP
A23L 2/52 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
A23L33/22
A21D13/80
A21D2/36
A21D10/00
A23G1/40
A23L29/206
A23L9/20
A23L2/00 B
A23L2/00 E
A23L2/52
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501069
(86)(22)【出願日】2021-08-02
(85)【翻訳文提出日】2023-01-06
(86)【国際出願番号】 US2021044171
(87)【国際公開番号】W WO2022031596
(87)【国際公開日】2022-02-10
(32)【優先日】2020-08-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508351303
【氏名又は名称】インターコンチネンタル グレート ブランズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ディマルティーノ, ジャンルカ
(72)【発明者】
【氏名】ムケルジー, インドラネイル
(72)【発明者】
【氏名】プライス, ウェイン
【テーマコード(参考)】
4B014
4B018
4B025
4B032
4B041
4B117
【Fターム(参考)】
4B014GB01
4B014GG06
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(57)【要約】
本発明は、カカオポッド殻の粉末であって、カカオポッド殻の総重量の少なくとも55重量%の不溶性食物繊維の濃度を有し、かつ/又はカカオポッド殻の総重量の少なくとも68重量%の総繊維の濃度を有し、粉末の総灰分含有量は、6.0重量%以下である、カカオポッド殻の粉末を提供する。本発明は、カカオポッド殻を湿式粉砕処理で砕いてペーストにする工程と、少なくとも80℃又は少なくとも85℃の温度でペーストを乾燥させる工程と、を含む、本発明のカカオポッド殻の粉末を作製する方法を更に提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カカオポッド殻の粉末であって、前記カカオポッド殻の総重量の少なくとも55重量%の不溶性食物繊維の量を有し、かつ/又は前記カカオポッド殻の総重量の少なくとも68重量%の総食物繊維の量を有し、前記粉末の総灰分含有量は、6.0重量%以下である、カカオポッド殻の粉末。
【請求項2】
8重量%以下の総糖類を含む、請求項1に記載のカカオポッド殻の粉末。
【請求項3】
5.0重量%以下の灰分含有量を有するカカオポッド殻の粉末。
【請求項4】
カカオポッド殻を湿式粉砕処理で砕いてペーストにする工程と、少なくとも80℃の温度で前記ペーストを乾燥させる工程と、を含む方法によって製造された、請求項1~3のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末。
【請求項5】
前記カカオポッド殻の粉末の総重量の少なくとも60重量%の不溶性食物繊維の量及び/又は前記カカオポッド殻の総重量の少なくとも70重量%の総食物繊維の量を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末。
【請求項6】
前記粉末は、前記粉末の総重量の12.5重量%以下の量の水分を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末。
【請求項7】
前記カカオポッド殻の水活性は、Aw0.4以下である、請求項1~6のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末。
【請求項8】
前記カカオポッド殻の総重量の2重量%未満の量の脂肪と、10重量%未満の量のタンパク質と、を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末。
【請求項9】
前記カカオポッド殻は、カカオポッド殻の果肉及び/又はカカオポッド殻の果皮を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末。
【請求項10】
前記カカオポッド殻の粉末は、全カカオポッド殻を含む、請求項9に記載のカカオポッド殻の粉末。
【請求項11】
2~750マイクロメートル、好ましくは20~250マイクロメートルの平均粒径を有する、請求項1~10のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末を含む食品製品。
【請求項13】
菓子、焼成製品、具材、スプレッド、及び飲料から選択される製品を含む、請求項12に記載の食品製品。
【請求項14】
ゲル化剤、増粘剤、又は増量剤としての請求項1~11のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末の使用。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の食品製品における、請求項14に記載のカカオポッド殻の粉末の使用。
【請求項16】
食品製品における卵固形物の代替物としての請求項1~11のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末の使用。
【請求項17】
請求項1~11のいずれか一項に記載のカカオポッド殻の粉末を1つ以上の食品製品成分と均質に混合し、前記食品製品を形成することを含む、食品製品を製造する方法。
【請求項18】
カカオポッド殻を湿式粉砕処理で砕いてペーストにする工程と、少なくとも80℃又は少なくとも85℃の温度で前記ペーストを乾燥させる工程と、を含む、カカオポッド殻の粉末を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カカオポッド殻の粉末、食品製品、及びその製造方法に関する。特に、本発明は、カカオポッド殻の粉末、カカオポッド殻を含む食品製品、及びヒト食品製品における使用のためのカカオポッド殻の粉末を製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「カカオフルーツ果肉」としても知られるカカオポッド殻(cocoa pod husk、「CPH」)は、カカオ豆の芯及びカカオパルプを取り囲むカカオポッド又は果実の外側本体である。これは、「カスカラ」、「カカオポッドの果皮」、「カカオポッドの外皮」、「表層」、及び「シェル」などの他の名称によっても知られている。以下、「カカオポッド殻」及び「カカオ果実の果肉」という用語は、カカオ果実の外側本体を示すために互換的に使用される。カカオポッド殻は、新鮮な無傷のカカオポッド又は果実のうちの約52~76重量%を占める。カカオポッドの処理中、ポッドから抽出された乾燥カカオ豆の1トン当たり、約10トンの湿ったカカオポッド殻が生成される。
【0003】
カカオポッド殻は、一般に廃棄物製品と見なされ、埋め立て、焼却などを通して廃棄される。食品製品に組み込むことができる製品として、カカオポッド殻、又は少なくともその一部を利用する試みがあった。例えば、米国特許第4206245号では、カカオポッド殻(当該特許においてcocoa fruit flesh(カカオフルーツ果肉)と呼ばれる)は、最初に、外皮を殻から剥離し、次いで、カカオ豆及びパルプを除去し、剥離されたカカオポッド殻を残すことによって処理される。次いで、この剥離された殻は、ペクチンを含有する果汁を抽出するか、又は更なる製品で使用され得る粉末を提供するために粉砕されるかのいずれかで処理される。米国特許第4206245号における例は、抽出された殻果汁をタバコ製品の製造において使用することと、飲料、マヨネーズ、マカロニ、ケーキミックス、チョコレートデザート、ピザベース、及び動物飼料を含む様々な食材における剥離された殻粉の使用と、を含む。
カカオポッド殻の粉末を生成する他の方法は、B.Yapo,V.Besson,B.BenoitandL.Kouassi,「Adding Value to Cacao Pod Husks as a Potential Antioxidant-Dietary Fiber Source」,American Journal of Food and Nutrition,vol.1,no.3,pp.38-46,2013、R.Martinez,P.Torres,M.A.Meneses,J.G.Figueroa,J.A.Perez-Alvarez and M.Viuda-Martos,「Chemical,technological and in vitro antioxidant properties of cocoa(Theobroma cacao L.)co-products」、L.Vriesmann,R.Amboni,C.Petkowicz「Cacao pod husks(Theobroma cacao L.):Composition and hot-water-soluble pectins」、P.Ozung,O.Oko and E.A.Agiang「Chemical Composition of Differently Treated Forms of Cocoa POD Husk Meal(CPHM)」、及びI.Amir,H.Hanida and A.Syafiq,「Development and physical analysis of high fiber bread incorporated with cocoa(Theobroma cacao sp.)pod husk powder」,International Food Research Journal,vol.20,no.3,pp.1301-1305,2013に記載されている。これらの方法は、異なる組成構成を有するカカオポッド殻の粉末を生成し、得られた生成物の総食物繊維又は不溶性食物繊維を最大化しない。従来技術のCPH粉末のうち、Ozung et al.に記載されている方法を使用して生成されたカカオポッド殻の粉末中の繊維の最大総量は、粉末の61.8重量%であるが、不溶性食物繊維の最大総量は、53重量%であると、Martinez et al.に記載されている。
食品及び飲料におけるカカオポッド殻の使用が限定的であったのは、既知の方法によって生成されたカカオポッド殻の化学的構成が、市販の有用な製品においてカカオポッド殻の利用のために利益にならないためである。特に、カカオポッド殻の果汁又は摩砕粉末などのカカオポッド殻製品を製造するための既知の技術では、高いレベルの繊維、特にペクチンを有さない製品をもたらし、繊維は、それらの製品を、増粘剤、ゲル化剤、又は低カロリーの繊維に富む充填剤として使用するのに準最適なものにする。更に、高レベルの灰分及び/又は糖は、ベーカリー製品及び菓子を含む多様な食材における有効な穀粉代替物又は増粘剤としての、既知のカカオポッド殻の粉末の能力を低下させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】B.Yapo,V.Besson,B.BenoitandL.Kouassi,「Adding Value to Cacao Pod Husks as a Potential Antioxidant-Dietary Fiber Source」,American Journal of Food and Nutrition,vol.1,no.3,pp.38-46,2013
【非特許文献2】R.Martinez,P.Torres,M.A.Meneses,J.G.Figueroa,J.A.Perez-Alvarez and M.Viuda-Martos,「Chemical,technological and in vitro antioxidant properties of cocoa(Theobroma cacao L.)co-products」
【非特許文献3】L.Vriesmann,R.Amboni,C.Petkowicz「Cacao pod husks(Theobroma cacao L.):Composition and hot-water-soluble pectins」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、多様な食品製品で使用することができ、従来技術のカカオポッド殻製品の1つ以上の欠陥を克服するカカオポッド殻の粉末及び材料を提供することが有利であろう。
【0007】
更に、有効なゲル化剤、増粘剤、又は増量剤として利用することができ、異なる食材又は飲料において効果的に使用するために更なる処理を必要としない、カカオポッド殻の粉末を提供することが有利であろう。また、カカオ粉末と同様に機能することができる、チョコレートなどの菓子で効果的に使用するために、有意な増粘化能力を有さないカカオポッド殻の粉末を提供することも有利であろう。
【0008】
また、既知のカカオポッド殻の粉末と比較して、より高いレベルの繊維、特により高いレベルの不溶性繊維を有する改善されたカカオポッド殻の粉末を提供することも有利であろう。更に、可溶性繊維に対する不溶性繊維の比率が増加したカカオポッド殻の粉末を提供することが有利であろう。
【0009】
したがって、本発明の実施形態の目的は、従来技術の少なくとも1つの問題を克服又は軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様によれば、カカオポッド殻の総重量の少なくとも55重量%の不溶性食物繊維の量及び/又は少なくとも68重量%の総食物繊維含有量を有するカカオポッド殻の粉末が提供され、総灰分含有量は、6.0重量%以下である。
【0011】
本発明の第1の態様のカカオポッド殻の粉末の灰分含有量は、5.5重量%以下、5.4重量%以下、5.3重量%以下、5.2重量%以下、5.1重量%以下、5.0重量%以下、又は4.5重量%以下であり得る。6.0重量%未満の灰分、特に5.5重量%以下又は5.0重量%以下の灰分を含む本発明のカカオポッド殻の粉末が、本発明のCPH粉末を、食材の味覚又は食感を顕著に損なうことなく、非甘味増量剤、穀粉代替物、及び/又は増粘剤を含む様々な役割を果たして、はるかに広範囲の食材で利用されることを可能にすることが見出された。
【0012】
いくつかの実施形態では、不溶性食物繊維(insoluble dietary fibre、IDF)濃度は、少なくとも56重量%又は少なくとも58重量%である。好ましい実施形態では、カカオポッド殻の粉末における不溶性食物繊維の量は、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも67重量%、少なくとも68重量%、又は少なくとも70重量%である。いくつかの実施形態では、総食物繊維(total dietary fibre、TDF)は、少なくとも70重量%、少なくとも71重量%、少なくとも72重量%、少なくとも73重量%、少なくとも74重量%、又は少なくとも75重量%である。いくつかの実施形態では、不溶性食物繊維含有量は、カカオポッド殻の総重量の少なくとも60重量%であり、総食物繊維含有量は、少なくとも70重量%である。他の実施形態では、TDFは、少なくとも72重量%であり得、IDFは、少なくとも65重量%であり得るか、又はTDFは、少なくとも75重量%であり得、IDFは、少なくとも67重量%であり得る。
【0013】
本発明の別の態様によれば、カカオポッド殻の総重量の少なくとも60重量%の不溶性食物繊維含有量及び少なくとも70重量%の総食物繊維含有量を有するカカオポッド殻の粉末が提供される。本発明のこの態様では、総灰含有量が比較的高い場合があるが、非常に高レベルのIDF及びTDFではこの製品は、穀粉代替物、増粘剤などとして多様な食品製品で使用することが可能になる。好ましい実施形態では、カカオポッド殻の粉末における不溶性食物繊維の量は、少なくとも60重量%、少なくとも65重量%、少なくとも67重量%、少なくとも68重量%、又は少なくとも70重量%である。いくつかの実施形態では、総食物繊維は、少なくとも70重量%、少なくとも71重量%、少なくとも72重量%、少なくとも73重量%、少なくとも74重量%、又は少なくとも75重量%である。他の実施形態では、TDFは、少なくとも72重量%であり得、IDFは、少なくとも65重量%であり得るか、又はTDFは、少なくとも75重量%であり得、IDFは、少なくとも67重量%であり得る。
【0014】
本明細書全体を通して、「カカオポッド殻」は、カカオポッド殻の果皮、カカオポッド殻の果肉、又はその両方のいずれかを指し得るが、「全カカオポッド殻」という用語は、組み合わされたカカオポッド殻の果肉及び果皮を意味する。
【0015】
「カカオポッド殻」は、カカオ豆及び果肉内のパルプを取り囲む、カカオ果肉又はポッドの外側本体を意味することにも留意されたい。「カカオポッド殻」という用語は、当該技術分野では、ポッド又は果肉内のカカオ豆(ニブ)の果皮又はシェルを指す「カカオシェル」、「カカオニブシェル」又は「カカオニブ殻」と混同してはならない。「食品製品」は、食品又は飲料の製品又は成分を意味する。「灰分」は、カカオポッド殻のミネラル含有量を意味し得、カリウム、リン、カルシウム、ケイ素、マグネシウム、ナトリウム、及び鉄、並びにそれらの酸化物を含む。灰分は、試験方法AOAC942.05(AOAC INTERNATIONAL(OMA)オンラインの公式分析方法)を使用して決定され得る。
【0016】
総食物繊維及び不溶性食物繊維は、AOAC2009.01及びAOAC2011.25などの任意の好適な方法によって決定され得る。
【0017】
驚くべきことに、カカオポッド殻の粉末が、従来技術の製品と比較して、増強されたレベルの繊維、特に不溶性食物繊維を有して、また驚くべきことに、灰分含有量も低減されて、製造され得ることが見出された。より高い繊維含有量、より低い灰含有量、及び繊維機能性を調節する能力は、本発明のカカオポッド殻が、広範囲の製品における増粘、ゲル化、及び充填用途などのように、これまで商業的に達成可能ではなかった又は許容可能ではなかった用途のために食品製品に使用することを可能にするが、有意なカロリー数の一因とはならない。高レベルの繊維及び低レベルの灰分は、カカオポッド殻を、食材の味覚、口当たり、又は食感に顕著に影響を与えることなく、多くの食材における代替成分として使用することを可能にする。従来技術のカカオポッド殻製品では、より低いレベルの繊維は、多くの場合、より高いレベルの炭水化物をもたらし、炭水化物は、結果として生じる製品に味覚、食感、及び品質においてより顕著に影響を及ぼし、比較的より多くのカロリーの一因となる。
【0018】
本発明の別の態様によれば、5.0重量%以下の灰分含有量を有するカカオポッド殻の粉末が提供される。灰分含有量が許容できないレベルまで上昇する方法で殻を処理することなく、カカオポッド殻の抽出物及び粉末を提供することが可能であるとは、以前は考えられていなかった。本発明者らは、驚くべきことに、灰含有量を従来技術では以前に達成不可能なレベルまで低下させることができ、より広い種類の食品製品で利用することができる製品をもたらす、カカオポッド殻の粉末(抽出物)を生成する方法を見出した。
【0019】
以下の記述は、本発明の全ての態様に適用される。
【0020】
カカオポッド殻の粉末は、粉末化カカオポッド殻の果皮及び/又は粉末化カカオポッド殻の果肉を含んでもよい。いくつかの実施形態では、カカオポッド殻の粉末は、除去された果皮を有していた粉末化カカオポッド果肉を含み、他の実施形態では、カカオポッド殻の粉末は、全カカオポッド殻の粉末を含む。
【0021】
カカオポッド殻の粉末は、15重量%以下、14重量%以下、13重量%以下、12重量%以下、11重量%以下、又は10重量%以下の量のタンパク質を含み得る。
【0022】
カカオポッド殻の粉末は、5重量%以下、4重量%以下、3重量%以下、2重量%以下、又は1.5重量%以下の量の脂肪を含み得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、カカオポッド殻の粉末は、少なくとも55重量%の不溶性食物繊維、10重量%以下のタンパク質、及び2重量%以下の脂肪を含む。例示的なカカオポッド殻の粉末は、少なくとも65重量%の不溶性食物繊維、8.5重量%以下のタンパク質、及び1.5重量%以下の脂肪を含む。
【0024】
カカオポッド殻の粉末の含水量は、10重量%以下、8.5重量%以下、又は特に8重量%以下であり得る。いくつかの実施形態では、含水量は、8重量%未満であり得る。本発明のカカオポッド殻の粉末中の水分の減少は、高濃度の繊維と組み合わせて、本発明の製品を、従来技術のCPH粉末又は製品を使用しては不可能な用途で使用することを可能にする。したがって、好ましい実施形態では、本発明のカカオポッド殻の粉末は、少なくとも55重量%の不溶性食物繊維及び8重量%未満の水分を含む。
【0025】
カカオポッド殻の粉末の水活性(Aw)は、好ましくは0.5未満、0.4未満、又は0.3未満である。
【0026】
カカオポッド殻の粉末の糖含有量は、粉末の8重量%以下、好ましくは7重量%以下であり得る。本発明の別の態様によれば、8重量%以下の糖を含むカカオポッド殻の粉末が提供される。8重量%以下、特に7重量%以下の糖を含むカカオポッド殻の粉末が、CPH粉末を、非甘味増量剤、穀粉代替剤、及び/又は増粘剤を含む多様な役割を果たして、はるかに広範囲の食材で利用されることを可能にすることが見出された。いくつかの実施形態では、カカオポッド殻の粉末は、8重量%以下又は7重量%以下の糖を含み、転化糖を含まないか、あるいは1重量%未満の転化糖を含む。
【0027】
カカオポッド殻の粉末の繊維は、リグニン、セルロース、及び/又はペクチンを含み得る。好ましい実施形態では、繊維は、リグニン、セルロース、及びペクチンの3つ全てを含む。粉末中のセルロースに対するリグニンの比は、2:1~1:2、好ましくは1.25:1~1:1.25であり得る。粉末中のリグニンとセルロースとの総量に対するペクチンの量の比は、1:3~1:5又は1:3~1:4であり得る。
【0028】
不溶性食物繊維:可溶性食物繊維の比は、4:1~10:1であり得、好ましくは4:1超、又は4.5:1超、又は5:1超である。低カロリー増量剤としての使用などの本発明のカカオポッド殻の粉末のいくつかの用途では、不溶性繊維:可溶性繊維の比は、少なくとも5:1又は少なくとも6:1であり得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、カカオポッド殻の粉末は、少なくとも5重量%のペクチン、又は少なくとも7.5重量%のペクチンを含む。驚くべきことに、有意なレベルの機能性ペクチンを含むカカオポッド殻の粉末を製造することができることが見出され、これは、カカオポッド殻を、ペクチンが特に有用である多様な用途で使用することを可能にする。
【0030】
本発明の更なる態様によれば、本発明の他の態様のいずれかのカカオポッド殻の粉末を含む食品製品又は食用製品が提供される。
【0031】
食品製品中の他の成分と混合される場合、本発明のカカオポッド殻の粉末は、最終製品において粉末形態であってもよく、又は粉末形態でなくてもよく、したがって、食品製品中の「カカオポッド殻」と称されるべきであることを理解されたい。
【0032】
食品製品又は食用製品は、任意の好適な食品又は飲料であり得、これは、飲料、菓子、焼成食品、食用具材、及びスプレッドからなる群から選択され得る。他の実施形態では、食用製品は、食料成分又は飲料成分であり得る。食料成分又は飲料成分は、例えば、増量剤であり得、いくつかの実施形態では、例えば、チョコレート又は他の菓子製品のための増量剤であり得る。食品成分又は飲料成分は、CPH粉末、並びに繊維、タンパク質、乳製品粉末、脂肪、乳化剤、ヒドロコロイド、炭水化物、ミネラル、ビタミン、増粘剤、風味剤、着色剤、及び甘味料を含む群から独立して選択される1つ以上の更なる成分を含み得る。CPH粉末は、25:75~99.5:0.5のCPH粉末:更なる成分(複数可)の比で更なる成分と完全に混合され得る。CPH粉末及び更なる成分又は複数の更なる成分は、凝集、噴霧乾燥、流動床乾燥、押出、又は任意の他の好適な技術によって完全に混合され得る。
【0033】
飲料は、果物風味粉末飲料、カカオ粉末、モルト飲料、又はそれらの任意の組み合わせから選択され得る粉末飲料を含み得る。粉末飲料中のカカオポッド殻は、粉末を含み得る。カカオポッド殻の粉末及び飲料粉末は、均質な混合物を含み得る。カカオポッド殻の粉末は、飲料粉末の総重量の45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下の量で飲料粉末中に存在し得る。
【0034】
飲料は、ミルク、ミルクセーキ、チョコレートミルク、スムージー、麦芽系飲料、チョコレート飲料、スープ、ヨーグルト飲料、及びコーヒー系飲料から選択され得る液体飲料を含み得る。カカオポッド殻は、飲料粉末の総重量の45重量%以下、40重量%以下、35重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、又は10重量%以下の量で液体飲料中に存在し得る。
【0035】
飲料粉末及び液体飲料の両方において、カカオポッド殻は、得られた飲料において増粘剤又はゲル化剤として作用し得る。他の実施形態では、カカオポッド殻は、カロリーを低減した増量剤若しくは充填剤、又は、分散の容易さを改善するために糖及びヒドロコロイド粒子を分離するのに作用し得る間隔剤として機能し得る。
【0036】
菓子製品は、チョコレートを含み得る。本発明の文脈における「チョコレート」という用語は、政府及び規制当局によって提供されるチョコレートの様々な定義によって制限されない。「チョコレート」は、単に、脂肪相を含有し、カカオ生成物及び甘味料を含む製品である。チョコレートの他の任意選択の成分には、乳成分(例えば、乳脂及び粉ミルク)が挙げられる。
【0037】
脂肪は、カカオバター、バター脂肪、カカオバター等価物(cocoa butter equivalent、CBE)、カカオバター代用物(cocoa butter substitute、CBS)、標準周囲温度及び圧力(standard ambient temperature and pressure、SATP、25℃及び100kPa)で液体である植物性脂肪、又は上記の任意の組み合わせであり得る。特定の実施形態では、チョコレートは、カカオバターを含む。
【0038】
CBEは、指令2000/36/ECに定義されている。好適なCBEには、イリッペ、ボルネオタロウ、テンカワン、パーム油、サラソウジュ、シアバター、コクムバター、及びマンゴー核が挙げられる。CBEは通常、カカオバターと組み合わせて使用される。一実施形態では、チョコレートは、5重量%以下のCBEを含む。
【0039】
チョコレートは、カカオバターの一部又は全部の代わりに、カカオバター代用物(CBS)(カカオバター代替物(cocoa butter replacer、CBR)として既知である場合もある)を含み得る。そのようなチョコレート材料は、複合チョコレートとして知られている場合がある。好適なCBSには、CBSラウリン酸エステル及びCBS非ラウリン酸エステルが含まれる。CBSラウリン酸エステルは、短鎖脂肪酸グリセリドである。それらの物理的特性は異なるが、それらは全て、それらをカカオバターと相溶性にするトリグリセリド構成を有する。好適なCBSには、パーム核油及びココナツ油に基づくものが挙げられる。CBS非ラウリン酸エステルは、水素化油から得られた画分からなる。油は、トランス酸の形成を伴って選択的に水素化され、トランス酸は、脂肪の固相を増加させる。CBS非ラウリン酸エステルの好適な供給源としては、大豆、綿実種、ピーナッツ、ナタネ、及びコーン(トウモロコシ)の油が挙げられる。
【0040】
チョコレートは、標準的な周囲温度及び圧力(SATP、25℃及び100kPa)で液体である少なくとも1つの植物性脂肪を含み得る。好適な植物性脂肪としては、コーン油、綿種子油、ナタネ油、パーム油、ベニバナ油、及びヒマワリ油が挙げられる。
【0041】
本発明は更に、脂肪の一部又は全部が、部分的又は全体的に非代謝性脂肪、例えば、カプレニンによって構成されるチョコレート製品に適用可能である。
【0042】
チョコレートは、少なくとも1つの甘味料を含み得る。少なくとも1つの甘味料は、増量甘味料又は強力甘味料であり得る。好適な増量甘味料としては、スクロース、転化糖シロップ、カラメル、グルコース、フルクトース、ポリデキストロース、高フルクトースコーンシロップ、マルトデキストリン、ハチミツ、メープルシロップ、ステビア、及び糖アルコール、例えば、グリセロール、マルチトール、イソマルト、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、エリトリトール、ガラクチトール、ポリグリシトール、マンニトールが挙げられるか、又はラフィノース、イヌリン、FOS、GOS、IMO、XOS、HMO、可溶性トウモロコシ繊維、シクロデキストリン、耐性マルトデキストリン、若しくは他の可溶性繊維から選択されてもよい。
【0043】
チョコレート製品は、2つ以上のチョコレート材料を含み得る。一実施形態では、チョコレートは、2つの異なるチョコレート材料又は異なる外観を有する2つの異なるチョコレート材料を含む。例えば、チョコレートは、ミルクチョコレート及びホワイトチョコレートの両方を含み得るか、又はミルクチョコレート及びダークチョコレートの両方を渦巻きパターンで含み得る。
【0044】
チョコレート製品は、チョコレートバー、例えば、固形チョコレートバー又は詰物をしたチョコレートバー若しくは品目であり得る。チョコレート製品は、成形チョコレート製品(すなわち、溶融チョコレートが金型内で固化されるもの)であり得る。
【0045】
カカオポッド殻は、チョコレート製品中のチョコレート成分と均質に混合され得る。
【0046】
カカオポッド殻は、チョコレートの総重量の30重量%以下、20重量%以下、15重量%以下、又は12重量%以下の量でチョコレート中に存在し得る。いくつかの実施形態では、カカオポッド殻は、チョコレートの総重量の2~10重量%又は5~10重量%の量で存在する。したがって、いくつかの実施形態では、他のチョコレート成分に対するカカオポッド殻の比は、例えば、30:70~1:99であり得る。
【0047】
菓子製品は、糖食品又は糖代替物又はキャンディ製品などの非チョコレート菓子であり得る。本発明に好適なキャンディ製品としては、例えば、カラメル、タフィー、ファッジ、マシュマロ、及びヌガーなどのチューイキャンディ、砂糖菓子、ゼリー、並びにガムが挙げられる。キャンディ製品は、少なくとも1つの甘味料を含み得る。少なくとも1つの甘味料は、増量甘味料又は強い甘味料であり得る。好適な増量甘味料としては、スクロース、転化糖シロップ、カラメル、グルコース、フルクトース、ポリデキストロース、高フルクトースコーンシロップ、マルトデキストリン、ハチミツ、メープルシロップ、ステビア、及び糖アルコール、例えば、グリセロール、マルチトール、イソマルト、ソルビトール、キシリトール、ラクチトール、エリトリトール、ガラクチトール、ポリグリシトール、マンニトールが挙げられるか、又はラフィノース、イヌリン、FOS、GOS、IMO、XOS、HMO、可溶性トウモロコシ繊維、シクロデキストリン、耐性マルトデキストリン、若しくは他の可溶性繊維から選択されてもよい。
【0048】
いくつかの実施形態では、キャンディ製品は、特にチューイキャンディ、ガム(又はガムキャンディ)、ゼリー(又はゼリーキャンディ)、及びマシュマロでは、少なくとも1つのゲル化剤又は増粘剤を含む。
【0049】
本明細書で使用される場合、「チューイキャンディ」は、当該技術分野では、脂肪及び乳化剤を含有し、かつバルク非晶質相内に結晶性糖又は無糖バルク甘味料を含む、特定の種類のチュアブルキャンディを指す。それはまた、最大20%まで空気を含ませてもよい。
【0050】
ゼリー及びグミは、望ましいチューイング感覚を甘味風味と組み合わせるので、人気のある菓子スナックである。ゼリー及びグミのキャンディは、伝統的に、ゼラチンなどのゲル化剤と共に糖又は無糖バルク甘味料を使用して製造されてきた。本発明のゼリー又はグミのキャンディでの使用に好適なゲル化剤としては、ゼラチン、キサンタンガム、ペクチン、ローカストビーンガム、サイリウム、アラビアガム、デンプン、及びアルギン酸ナトリウムから選択される、1つ以上の可溶性親水コロイドが挙げられる。
【0051】
カカオポッド殻は、チューイ、グミ、又はゼリーのキャンディにおけるゲル化剤又は増粘剤の一部若しくは全てを置き換えるために使用され得る。いくつかの実施形態では、キャンディ中に通常存在するゲル化剤又は増粘剤の少なくとも5%、10%、15%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は最大100%が、カカオポッド殻によって置き換えられ得る。したがって、ゲル化剤又は増粘剤を含むキャンディの実施形態では、ゲル化剤又は増粘剤(又はゲル化剤若しくは増粘剤の総量)に対するカカオポッド殻の比は、1:9~99:1、例えば、1:4~50:1、又は1:1~9:1であり得る。特に、カカオポッド殻は、チューイ、ゼリー、又はグミのキャンディにおいてペクチンを置き換えるために使用され得る。
【0052】
製品が具材である場合、具材は、菓子用具材であり得る。いくつかの菓子用具材は、当業者には明らかであろう。具材は、脂肪系具材材料又は水性具材材料であり得る。好適な脂肪系具材材料としては、トリュフ、ムース、及びチョコレートが挙げられる。好適な水性具材材料としては、カラメル、フォンダンクレーム、ジャム、及びターキッシュディライトなどのゼリーが挙げられる。一実施形態では、具材材料は、室温で液体又は流動性材料である。例えば、具材材料は、カラメル、フォンダンクレーム、又はターキッシュディライトなどのゼリーなどの粘稠液であり得る。
【0053】
カカオポッド殻は、具材中のゲル化剤又は増粘剤のうちの一部又は全てを置き換えるために使用され得る。いくつかの実施形態では、具材中に通常存在するゲル化剤又は増粘剤の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は最大100%は、カカオポッド殻によって置き換えられ得る。したがって、ゲル化剤又は増粘剤を含む具材の実施形態では、ゲル化剤又は増粘剤(又はゲル化剤若しくは増粘剤の総量)に対するカカオポッド殻の比は、1:9~99:1、例えば、1:4~50:1、又は1:1~9:1であり得る。特に、カカオポッド殻は、具材においてペクチンを置き換えるために使用され得る。
【0054】
食品製品が焼成製品である実施形態では、焼成製品は、穀粉ベースの製品であり得る。「焼成製品」及び焼成を受けた食料製品では、製品が生又は部分的に調理された生地又はバッター形態を含む場合など、焼成の作用前の製品もまた含む。穀粉ベースの食料製品は、ケーキ、ビスケット、クッキー、又はペイストリーなどの生地ベース又はバッターベースの製品を含み得る。生地又はバッターは、小麦、大麦、ライ麦、オート麦、若しくはトウモロコシ(コーン)の粉又は任意の他の好適な穀物若しくは非穀物の粉を含み得る。
【0055】
カカオポッド殻は、焼成製品中に充填剤を含み得る。カカオポッド殻は、焼成製品中の穀粉の少なくとも一部を置き換えるために使用され得る。いくつかの実施形態では、焼成製品中に通常存在する穀粉の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、又は33%は、カカオポッド殻によって置き換えられ得る。したがって、いくつかの実施形態では、焼成製品中の穀粉に対するカカオポッド殻の比は、5:95~35:65、又は10:90~25:75であり得る。
【0056】
本発明の別の態様によれば、全カカオポッド殻の粉末を含む食品製品が提供される。食品製品は、本発明の他の態様について上記で定義され、かつ記載されているとおりであり得る。全カカオ殻粉末は、全カカオ殻粉末の総重量の少なくとも55重量%、56重量%、57重量%、58重量%、59重量%、又は少なくとも60重量%の量で不溶性食物繊維を含み得る。好ましい実施形態では、カカオポッド殻の粉末中の不溶性食物繊維の量は、少なくとも65重量%、66重量%、67重量%、68重量%、又は少なくとも69重量%である。
【0057】
本発明の態様のいずれかのカカオポッド殻の粉末は、以下の:
a)カカオポッド殻を砕いて小片にする工程と、
b)任意選択で、カカオポッド殻の小片を、35~85℃の温度で水中でインキュベートする工程と、
c)カカオポッド殻の小片を湿式粉砕してペーストを形成する工程と、
d)ペーストを乾燥させる工程と、
e)乾燥ペーストから粉末を形成する工程と、を含む方法によって製造され得る。
工程b)及びc)は、任意の順序で実施され得る。
【0058】
したがって、本発明の別の態様は、以下の:
a)カカオポッド殻を砕いて小片にする工程と、
b)任意選択で、カカオポッド殻の小片を、35~85℃の温度で水中でインキュベートする工程と、
c)カカオポッド殻の小片を湿式粉砕してペーストを形成する工程と、
d)ペーストを乾燥させる工程と、
e)乾燥ペーストから粉末を形成する工程と、を含む、カカオポッド殻の粉末を製造する方法を提供する。
工程b)及びc)は、任意の順序で実験され得る
【0059】
驚くべきことに、上記のプロセスを利用すると、従来技術で達成された不溶性食物繊維レベルをはるかに超える、カカオポッド殻の粉末の総重量の55重量%又は更には60重量%を超える不溶性食物繊維のレベルを有するカカオポッド殻の粉末が生成されることが見出された。更に、総食物繊維含有量は、68重量%又は更には70重量%を超え、これもまた従来技術のレベルをはるかに超える。そのプロセスはまた、6.0重量%以下の灰分含有量を有する製品を生成する上述のように、本明細書に記載の方法によって生成されたカカオポッド殻の粉末は、従来技術の製品と比較してペクチンの機能性を保持しており、これは、本発明のカカオポッド殻の粉末を広範囲の食品製品で、また、(例えば、ゼリー、グミ、若しくはチューイキャンディ、具材、又は飲料における)増粘剤及びゲル化剤の置換など、又は(チョコレートなどの菓子製品、並びに、例えば、クッキー、ビスケット、及びケーキなどの穀粉ベースの製品における)増量剤としての、多数の成分用途について利用することを可能にする。
【0060】
カカオポッド殻の小片を(従来技術から知られているように、全ポッドを利用し、アルカリ及び酸処理工程でそれらを中和するのではなく)温熱水中で蒸留する工程は、カカオポッド殻からの浸出から失われる不溶性繊維の量を減少させるが、あまり望ましくない可溶性繊維を浸出させることによって、不溶性繊維を保持し、濃縮することに役立つ。
【0061】
工程a)は、全カカオポッド殻、カカオポッド殻の果肉、又はカカオポッド殻の果皮のせん断又は切断を含んでも良いが、好ましくは、全カカオポッド殻を使用する。小片は、0.05cm~10cm、又は0.05cm~5cm、好ましくは0.5cm~3cm、より好ましくは1cm~3cmの最大寸法を有し得る。
【0062】
工程a)で使用されるカカオポッド殻は、好ましくは、(例えば、ポッドを開いて豆を回収した直後に得られた)それまで処理されていなかった新鮮なカカオポッド殻であるか、又は代替的には、真空密封されて凍結されたカカオポッド殻であり、この場合、凍結乾燥カカオポッド殻を解凍する工程a)の前の工程が存在し得る。
【0063】
工程a)で使用されるカカオポッド殻はまた、好ましくは水で、清浄化かつ洗浄され得る。
【0064】
いくつかの実施形態では、カカオポッド殻の果皮は、皮むきなどによって、工程a)の前に除去されてもよいが、好ましい実施形態では、果皮は、カカオポッド殻に残される。
【0065】
工程b)は、カカオポッド殻の小片を水中で少なくとも30分、45分、60分、90分、2時間、2.5時間、又は少なくとも3時間インキュベートすることを含み得る。いくつかの実施形態では、時間は、少なくとも4時間、5時間、又は6時間である。
【0066】
工程b)は、カカオポッド殻の小片を40℃以上、45℃以上、又は50℃以上、かつ80℃以下、75℃以下、70℃以下、又は65℃以下の温度でインキュベートすることを含み得る。いくつかの実施形態では、工程b)の温度は、45℃~65℃、又は45℃~60℃、好ましくは50℃~60℃である。いくつかの実施形態では、温度は、約52~54℃である。
【0067】
工程b)は、カカオポッド殻の小片を浸漬し、水溶性ペクチン、糖、可溶性繊維、ポリフェノール、及びいくつかのタンパク質/ペプチドのいくつかを抽出し、不溶性ペクチンなどのより望ましい不溶性繊維を残すと考えられ、さもなければ、不溶性繊維は、例えば、アルカリ又は酸処理によって、従来技術のプロセスでは除去されるであろう。更に、これは、以下の工程c)におけるサイズ減少(湿式粉砕)のために小片を軟化させると考えられている。
【0068】
工程b)で使用される水の量は、カカオポッド殻の小片1kg当たり1L~5L、好ましくは、カカオポッド殻の小片1kg当たり約2.5~3.5Lなどの、2L~4Lであり得る。
【0069】
好ましい温度、時間、及び水の量は、有用なカカオポッド殻の繊維の収率と、カカオポッド殻中及びカカオポッド殻上のカビ、重金属、殺虫剤、及び害虫の低減との間の良好なバランスをもたらすと考えられる。
【0070】
工程b)は、水中での1つ以上の防腐剤の使用を含み得る。好適な防腐剤としては、ソルビン酸塩、クエン酸、酸化防止剤、精油、温和なアルカリ、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。インキュベート水における防腐剤の使用により、カカオポッド殻の小片上でのあらゆるカビの増殖が確実に最小化される。
【0071】
工程b)の後、インキュベート液を除去して廃棄し、湿潤カカオポッド殻の小片が回収され得る。
【0072】
工程c)は、好適な摩砕機又は粉砕機で断片を湿式粉砕することを含み得る。カカオポッドの小片は、例えば、カカオポッドの小片1kg当たり0.25~1Lの水を添加して、又は添加せずに、摩砕機又はブレンダーに配置されてもよい。あるいは、カカオポッドの小片は、摩砕又は粉砕前に小片の含水量を低減するために、例えば、スクリュープレスを使用して機械的に圧搾され得る。別のアプローチでは、カカオポッドの小片は、それらをせん断ミル若しくはコロイドミル、又は湿潤スラリーのサイズ低減のために設計された他の装置に通すことによって均質化され得る。しかしながら、カカオポッドの小片は、摩砕又は粉砕(又は機械的圧搾)の前に乾燥されないことに留意されたい。
【0073】
次いで、工程c)の終了時に生成されたペーストを、工程d)中に乾燥させる。乾燥は、オーブン乾燥、ドラム乾燥、天日乾燥、凍結乾燥、流動床乾燥、及び真空乾燥が挙げられるがこれらに限定されない、任意の好適な方法によって実施され得る。乾燥技術は、操作のスケール、最終粉末生成物の所望の色、機能性、及び水結合能力に応じて選択することができる。選択された乾燥方法は、最終生成物の機能性に大きな影響を及ぼし、特に粘度を高めるその能力に影響を与え、これはいくつかの用途では望ましいが、他の用途では望ましくない場合がある。
【0074】
好ましい実施形態では、乾燥が凍結乾燥又はオーブン乾燥(真空で若しくは真空なし)を使用して行われるのは、これらの乾燥技術が、得られた粉末に有益であるが異なる特性を与えることが見出されているためである。凍結乾燥中、ペーストが90~95重量%の水を失い、0.3未満、ほとんどの場合0.2未満又は0.15未満の水分活性(Aw)を有する乾燥ケーキを形成する。Awがより低く(0.25未満、又は最も好ましくは0.2未満に)なると、得られる粉末における潜在的なマイコトキシン増殖の可能性がより低くなる。
【0075】
凍結乾燥は、少なくとも6時間、12時間、18時間、24時間、3日間、4日間、5日間、6日間、又は少なくとも7日間行ってもよい。
【0076】
真空乾燥のために、ペーストを85℃の真空オーブンに入れ、<-20mmHgで排気して、90~95重量%の水が失われ、凍結乾燥と同じAwレベルを達成する乾燥ケーキを生成することができる。オーブン乾燥などの熱処理を使用する代替的な乾燥方法もまた、所望の機能性を達成するために用いられ得る。
【0077】
工程e)は、ナイフ粉砕、ハンマー粉砕、又は工程d)の後に生成された乾燥生成物を摩砕する他の方法を含み得る。工程e)は、乾燥生成物をd90<26マイクロメートルなどの、d90>5マイクロメートル~d90<70マイクロメートルの平均粒径に砕くことを含み得る。
【0078】
本発明の別の態様によれば、カカオポッド殻の粉末を作製する方法が提供され、その方法は、カカオポッド殻を湿式粉砕処理で砕いてペーストにする工程と、少なくとも80℃の温度でペーストを乾燥させて、ペーストから粉末を形成する工程と、を含む。
【0079】
乾燥工程は、真空乾燥を含み得る。乾燥工程は、少なくとも85℃の温度でペーストを乾燥させることを含み得る。
【0080】
少なくとも80℃、好ましくは少なくとも85℃の温度で、乾燥中にペーストを熱処理工程に供することにより、不溶性食物繊維及び総食物繊維のレベルが増加し、水分含有量が低減されたカカオポッド殻の繊維の生成が可能になることが見出された。
【0081】
本方法を使用して、上記の本発明の他の態様のいずれかのカカオポッド殻の粉末を生成することができる。
【0082】
本発明の別の態様によれば、ゲル化剤、増粘剤、又は増量剤としての本発明のカカオポッド殻の粉末の使用が提供される。
【0083】
本発明の別の態様によれば、食品製品における卵固形物代替物としてのカカオ殻粉末の使用が提供される。
【0084】
本発明の別の態様によれば、生地又はバッターにおける穀粉代替物としての本発明のカカオ殻粉末の使用が提供される。カカオ殻粉末は、生地又はバッター中の穀粉の1重量%~50重量%又は5重量%~33重量%を置き換えるために使用され得る。
【0085】
本発明の別の態様によれば、少なくとも68重量%の不溶性食物繊維を含むカカオポッド殻の粉末が提供される。いくつかの実施形態では、不溶性食物繊維の量は、カカオポッド殻の粉末の総重量の少なくとも70重量%である。カカオポッド殻の粉末、不溶性食物繊維、及び粉末を製造する方法は、本発明の他の態様について上記で説明され、かつ定義されるとおりであり得る。
【図面の簡単な説明】
【0086】
特許又は出願ファイルは、色付きで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面(複数可)を有する本特許又は特許出願公開のコピーは、請求及び必要な料金の支払いによって、特許庁によって提供されることとなる。
本発明がより明確に理解され得るようにするために、ここで、実施形態が添付の図面を参照して単なる一例として記載される。
【
図1A-1】本発明のCPH粉末の繊維及び他の成分の濃度、並びに本発明のCPH粉末の様々な成分パラメータを示す表である(
図1A、実験Z3、Z11、B13~14、及びB16~19)。
【
図1A-2】本発明のCPH粉末の繊維及び他の成分の濃度、並びに本発明のCPH粉末の様々な成分パラメータを示す表である(
図1A、実験Z3、Z11、B13~14、及びB16~19)。
【
図1B-1】米国特許第4206425号に記載のCPH製品、他の従来技術のCPH生成物、及び脱脂カカオ粉末の繊維及び他の成分の濃度、並びにパラメータを示す表である。
【
図1B-2】米国特許第4206425号に記載のCPH製品、他の従来技術のCPH生成物、及び脱脂カカオ粉末の繊維及び他の成分の濃度、並びにパラメータを示す表である。
【
図2】RVA法41.02(ヤングNWG、非デンプン用途-ヒドロコロイド(The RVA Handbook(Crosbie GB,Ross AS(eds.)),AACC International,St.Paul,MN,2007,p.85-94に記載)を使用する市販の食品親水コロイドと比較した、異なる処理を伴うCPH材料の増粘挙動を示すグラフであり、160RPMの撹拌速度で、ヒドロコロイドの1%w/w水溶液(又は懸濁液)を80℃で5分間維持し、次いで、1℃/分で20℃まで冷却した。
【
図3】対照クッキーと比較して、穀粉の25%代替物として本発明の凍結乾燥CPH(「CPH-FD」)及び85℃の真空乾燥CPH(「CPH-Vac85C」)を使用して生成されたクッキーを示す一連の写真である。
【
図4A】卵を使用して生成されたソフトケーキ(対照ケーキ)並びにCPH-FDを30%及び100%の卵固体の代替物として使用して生成されたソフトケーキの写真である。
【
図5A】実施例4に記載の実験用チョコレートマス用の精製機を最初に通過する前の精製機用ペーストの写真であり、対照(左)、CPH-Vac85C(中央)及びCPH-FD(右)である。
【
図5B】実施例4に記載の実験用チョコレートマスに対する粒径及び粘度測定の表である。
【
図5C】実施例4に記載の実験用チョコレートバーの写真であり、対照(左)、9.2%のCPH-Vac85Cを有するバー(中央)、9.2%のCPH-FDを有するバー(右)である。
【
図5D】実施例4に記載の実験用チョコレートバーの略式官能試食試験からのコメントの要約である。
【
図6A】CPHを<200gスケールでミルクチョコレートマスに組み込むための実験台プロセスの概略図である。このプロセスは、実施例5及び6に記載のチョコレートを調製する際に用いる。
【
図6B】以下を含有する実施例5に記載の実験用チョコレートバーを比較する写真である。(5i)10%のNFDM(比較例)、(5ii)10%のCPH(>230メッシュのふるいにかけた実験番号B19由来)、(5iii)(<230メッシュのふるいにかけた実験番号B19由来)、(5iv)10%のCPH(<325メッシュのふるいにかけた実験番号B19由来)、及び(5v)10%のCPH(<325メッシュのふるいにかけた実験番号B18由来)。
【
図7】以下を含有する実施例6に記載の実験用チョコレートバーを比較する写真である。(6i)15%のCPH(<230メッシュのふるいにかけた実験番号B19由来)及び(6ii)10%のラクトース(比較例)。
【実施例】
【0087】
以下に記載され、図に示される実施例では、以下の略語が使用される。
【0088】
CPH-カカオポッド殻
【0089】
CPH-FD-本発明に従って作製された凍結乾燥カカオポッド殻
【0090】
CPH-Vac85C-本発明に従って作製された85℃真空乾燥カカオポッド殻
【0091】
FD-本発明の方法の乾燥工程に従って凍結乾燥した
【0092】
Vac85C-本発明の方法の乾燥工程に従って85℃で真空乾燥した
【0093】
CPHS-本発明によるカカオポッド殻の果皮
【0094】
CPHF-本発明によるカカオポッド殻の果肉
【0095】
CPH(混合物)-本発明によるカカオポッド殻の果皮及び果肉
【0096】
St-本発明の方法のインキュベーション工程b)に従って蒸留した
【0097】
Ml-本発明の方法の工程c)に従って湿式粉砕した
【0098】
StMl及びMISt-発明の方法の工程b)及びc)に従って蒸留かつ湿式粉砕した、又は逆も同様である。
【0099】
全CBS-本発明による処理をしていない全カカオポッド
【0100】
TDF-総食物繊維
【0101】
IDF-不溶性食物繊維
【0102】
食品製品-食料又は飲料製品
実施例1-全カカオポッド殻の粉末、カカオポッド果肉粉末及びカカオポッド果皮粉末の調製
【0103】
カカオポッド殻(以下、「CPH」)を、ポッドを開けた(チョコレート加工のために豆を除去し、CPHが通常廃棄される標準的なプロセス)直後に回収した。新鮮なCPHを凍結又は真空密封し、処理のためにカカオ農場から出荷した。他の実施形態では、凍結/真空封止工程は、ポッドを開ける場所に近い処理施設を設置することによって排除することができる。
【0104】
次いで、凍結/密封されたCPHを解凍/開封し、室温で脱イオン水で洗浄して、外側の汚れ及び破片を除去した。洗浄後、2種類のカカオポッド殻を調製した。
a)CPHの外皮を、一般的な果物皮むき器又は他の皮むき機構で除去した。これにより、汚染物質についてのみ評価されたカカオポッド殻の果皮(
図1を参照)と、カカオポッド殻の果肉と、が得られ、続いて両方とも更なる処理工程で別々に使用された。
図1の試料番号Z3及びZ11は、カカオポッド殻の果肉のみの例であり、果皮は、皮むき器を使用して除去された。
b)一部のCPHを未処理のまま、果皮及び果肉の両方を未処理で(すなわち、全カカオポッド殻)保管し、全カカオポッド殻をその後の処理工程で使用した(
図1の試料番号B16、B17、B18、及びB19は、果皮及び果肉の両方が未処理である全ての例である)。
【0105】
次に、2種類の各々のCPHを、直径及び/又は長さが約1cmの小さな塊に切断し、温かい脱イオン水浴中でインキュベートした。浴温度は、いくつかの実施形態では、45~85℃又は45~60℃で変化し得る。様々な試料の浴温度を
図1において報告する。このインキュベーション工程又は「浸漬」工程は、リグニン、セルロース、及び不溶性ペクチンなどの有意な量の不溶性繊維を保持しながら、水溶性ペクチン、糖、可溶性繊維、一部のポリフェノール、水溶性タンパク質/ペプチド、及び一般に、カカオポッド殻の熟成中に発生した酸化プロセスで形成されたいくつかの小分子のうちの一部が抽出されるように部分的に設計された。
【0106】
典型的には、1kgの使用可能なCPH(又はCPH果肉)に対して3.5Lの水をインキュベーション工程で使用し、インキュベーション工程を約3.5時間行った。より多い量の水、より長い浸漬時間、及び浸漬中の撹拌もまた、場合によっては収量の低下を犠牲にして、重金属及び殺虫剤を所望のレベルに更に低減するために潜在的に使用され得る。60℃を超えるインキュベーション浴温度を使用する場合、CPH小片中の低いペクチン濃度が望ましい用途(例えば、わずかなゲル化又は増粘が必要な食材など)のために、収量の低下を犠牲にして、より大量のペクチンが抽出されることが予想されるであろう。
【0107】
次に、浸漬されたCPH塊をワイヤバスケット又は有孔バスケット(水切りざる)で回収し、浸漬/インキュベーション液(このとき色が暗くより粘性)を廃棄した。次いで、湿潤CPHを、約0.5L(/kgCPH)の脱イオン水と共にフードプロセッサに入れ、プロセッサ内で微細ペーストに湿式粉砕した。任意選択的に、浸漬されたCPH塊は、水含有量を低減するために(例えば、スクリュープレス又は他の脱水プレスによって)機械的に圧搾され得るか、又はせん断ミルを通過させることによって均質化され得る。
【0108】
次いで、ペーストを凍結乾燥(試料番号Z3、Z11、B13、B17)又は85℃に設定された温度を有する真空オーブン(試料番号B14、B16、B19)のいずれかを使用して乾燥させた。一実施形態(試料番号B18)では、ペーストを、最初に短時間、温度を190℃に設定した回転(リール)オーブンで乾燥させ、次いで、95℃に設定した対流式オーブン内で更に乾燥させた。
【0109】
凍結乾燥(試料番号Z3、Z11、B13、B7)について、ペーストを凍結乾燥トレイに移し、凍結状態から8日間乾燥させた。凍結乾燥中、ペーストは、約93重量%の水を失い、乾燥ケーキを形成し、次いで、その乾燥ケーキをAw<0.25の乾燥粉末にナイフ粉砕した。真空を用いる又は用いない加熱オーブン乾燥(試料番号B14、B16、B19、B18)について、ペーストを使い捨てアルミホイルベーキングトレイに移し、これを予熱したオーブンに入れた。真空オーブン乾燥(試料番号B14、B16、B19)について、真空オーブンを85℃の温度に設定し、<-20mmHgで4~6日間排気した。試料番号B18について、ペーストを、最初に190℃の回転オーブン内で45の間乾燥させ、次いで、95℃に設定された対流式オーブン内で14時間、続いて65℃で7日間更に乾燥させた。いくつかの実施形態は、衝突オーブン、赤外線オーブンなどの異なるオーブンを用いることができる。代替的な工業的乾燥処理、例えば、流動床乾燥を使用してもよく、いくつかの実施形態では、乾燥時間は、数時間まで低減され得る。
【0110】
チョコレート作製の好ましい実施形態(
図1AのB19を参照)では、凍結CPHを水で1時間洗浄し(解凍)、次いで、調理用ナイフを使用して塊に切断した。次いで、塊(9.9kg)を、ジャケット付き多目的混合容器(Armfield FT140 CCT550)内60℃で、脱イオン水(38リットル)中で3時間浸漬した。脱イオン水を、浸漬プロセス中に1回交換した。浸漬させた塊を、フードプロセッサを使用して湿潤ペーストに変換した。次に、ペーストを85℃、-760mmHg真空の真空オーブンで9日間乾燥させた。次いで、材料をハンマーミル(Bauermeister,USA)で摩砕し、40メッシュスクリーンに通した。次いで、得られた粉末を、3つの粒径フラクションに分離した。a)230メッシュスクリーンの上に残存(すなわち、>64マイクロメートル)、b)230メッシュスクリーンを通過(すなわち、<64マイクロメートル)、及びc)325メッシュスクリーンを通過(すなわち、<44マイクロメートル)。望ましいチョコレート機能性をもたらす最も好ましい実施形態(B18)では、前述の実施形態(B19)からの湿潤ペーストを、最初に190℃の回転オーブン内で45分間乾燥させ、次いで、95℃の対流式オーブン内で14時間、続いて65℃で7日間更に乾燥させた。続いて、これをコーヒー摩砕機で摩砕し、325メッシュ(44マイクロメートル)スクリーンを通過させた。
【0111】
インキュベーション工程及び湿式粉砕工程後に得られた本発明の製品の様々なパラメータを
図1Aの表に示すが、
図1Bは、米国特許第4206245号及び他の従来技術に記載されているカカオ粉末及びカカオポッド殻製品と同じパラメータを示す。
【0112】
他の実施形態において、ソルビン酸塩(E200及びE202)及びクエン酸(E330)、並びに他の食品グレードの防腐剤(酸化防止剤、精油など)は、望ましくないカビの増殖の可能性を最小限に抑えるために、洗浄工程及び浸漬工程に添加され得る。
結果
【0113】
汚染物質低減
【0114】
全ての試料の重金属レベルは、許容可能な閾値を常に下回った。
【0115】
カカオ成分の場合、通常懸念される主要な重金属は、カドミウム(Cd)である。しかしながら、浸漬処理により、Cdレベルは、対照実験R1(本発明ではない)での0.4ppmから、本発明に従って行われる実験での0.2ppm以下まで下げることを助けた(また、浸漬し、その後、本発明の方法に従って湿式粉砕された実験Z3では、0.1ppm未満まで低下)。このようにして、圃場由来のCPHが、>0.4ppmのCdレベルを有する場合、本発明のプロセスを使用して、レベルを<0.3ppmまで、はるかにより低くすることができる。
【0116】
結果からまた、本発明のプロセスを使用して製造されたCPH成分が、従来技術のカカオ豆「シェル」及び「カカオブラン」材料と比較して、より低い鉛及びカドミウムのレベルを有することが示された。また、殺虫剤及びマイコトキシンレベルは、世界的なカカオ産業及び大部分の国における食品規制において許容されるリスクレベルに対して十分に低かった。
【0117】
インキュベーション及び湿式粉砕後のCPHの組成
【0118】
図1に示すように、様々なCPH出発材料の乾燥粉末製品の全てについて、粉末CPHは、本発明の方法によって、最大12%の水分及びAw<0.4(及びほとんどの場合、0.2以下)を有する乾燥粉末として得られた。収率は、一般に、使用可能な殻の11~16%の湿潤重量の範囲である(外側の果皮は、殻の比較的少量の構成物であり、したがって汚染物質決定より先の評価に供されないため、CPH果皮粉末の収率は約3%であることに留意されたい)。インキュベーション及び粉砕プロセスの終了時に生成されたCPHは、主に炭水化物(>70重量%)で構成され、その炭水化物の大部分は、不溶性繊維の形態であり、典型的なレベルは、約15~25重量%のリグニンを有する60重量%超である。
【0119】
図1に示すように、本発明の成分は、以下の特徴的な組成によって特定可能である。
-不溶性食物繊維(IDF)>55重量%、好ましくは、
-総食物繊維>68重量%(一般に70%超)、
-タンパク質<10重量%、
-脂肪<1.5重量%
【0120】
本発明のCPH成分の別の特定可能な特徴は、<8重量%(一般に、<6重量%)であるその低い総糖類含有量である。
【0121】
本発明のCPH成分の第3の特定可能な特徴は、<6重量%であるその低い灰分含有量である。
インキュベーション、湿式粉砕、乾燥、及び粉砕後のCPHの特性
【0122】
図2に示すように、カカオポッド殻の増粘挙動は、処理条件及び材料の起源によって大幅に変化した。一般に、最終粘度値は、
図2に示すように、低メトキシペクチン及び高メトキシペクチンで観察された最終粘度値と同等であった。2つの試料、CPH(ミックス)StMl FD(実験B13)及びCPH(ミックス)StMl Vac85C(実験B14)が特に興味深かった。両方の試料を浸漬させ、一緒に湿式粉砕し、それらを乾燥時点でのみ分離した。CPH(ミックス)StMl FDを凍結乾燥し(したがって、「FD」とラベル付け)、CPH(混合物)StMl Vac85Cを85℃の真空オーブン内で乾燥させた(したがって、「Vac85C」とラベル付け)。しかしながら、それらの増粘能力を表す最終粘度値は、完全に異なっていた。凍結乾燥材料は、高メトキシペクチンと比較して最終粘度を有していたが、真空オーブン乾燥材料は、アラビアガムよりも更に低い粘度を有した。その結果は、乾燥温度(熱処理)などの加工条件を変化させることによって、CPH成分の増粘能力を変化させることができることを示唆している。
【0123】
以下の表は、CPH-FD及びCPH-Vac85Cが、比較的大量の総食物繊維(TDF)、それぞれ69%及び75%を有していたことを示す。しかしながら、より多い可溶性繊維含有量(SDF)は、凍結乾燥試料(B13)が、ゲル化剤/増粘剤として効果的に粘度及び機能を構築することを可能にした。逆に、真空オーブン乾燥試料(B14)のより多い不溶性繊維含有量(IDF)は、その試料がチョコレート菓子などの用途に好ましい低い粘度を維持することを可能にした。
【表1】
組成物に対する処理(凍結又は熱処理)の効果
【0124】
熱処理がCPHの機能的挙動を変化させるため、成分組成及び分子量に対するそのような熱処理の効果を調査した。真空オーブンで乾燥させたCPH(CPH-Vac85C)及び凍結乾燥CPH(CPH-FD)を、全栄養素分析(近似分析)について比較し、結果を
図1に示した。繊維組成をより詳細に調査し、合計、不溶性食物繊維及び可溶性食物繊維の総含有量、並びにリグニン及びウロン酸の含有量を比較し、結果を上記の表に示した。
【0125】
組成分析は、CPH-FDでわずかにより低い総食物繊維(TDF)を示した。しかしながら、CPH-FD中の大部分の繊維は、水溶性であった(SDFは、CPH-FDではるかにより高かった)。それに対応して、CPH-FDは、CPH-Vac85Cよりも低いリグニン含有量を示した。
【0126】
興味深いことに、両方の処理は、ほぼ同じウロン酸含有量を示し、CPH-FD中のペクチンがCPH-Vac85Cよりも高いメトキシ含有量を有し得ることを示唆している。CPH-Vac85Cの熱処理は、ある程度の脱メトキシ化を引き起こした可能性がある。
【0127】
分子レベルでの熱処理の効果を研究するために、CPH-Vac85C及びCPH-FDの1%水性スラリーを24時間撹拌した。次いで、上清(水抽出物)を、屈折率(Refractive Index、RI)検出器を備えたサイズ排除クロマトグラフィ(Size Exclusion Chromatography、SEC)カラムに通した。比較のために、市販の高メトキシペクチン粉末及び低メトキシペクチン粉末(分散剤としてのスクロースを含有する)を参照材料として使用した。
【0128】
SEC結果は、CPH-FDの水抽出物が、市販のペクチンよりも格段に特に大きい高分子量画分(約1000kDa)を有することを明らかにした。この画分は、CPH-Vac-85Cでは欠落しており、代わりに22~800kDaの範囲の非常に幅広いピークで置き換えられた。
【0129】
この高MW水溶性画分の存在は、CPH-Vac85Cと比較して、CPH-FDの著しく高い粘度及び増粘能力を説明し得る。
実施例2-実施例1のCPH粉末を含むクッキー生地
【0130】
CPH(実施例1の方法に従ってインキュベート、粉砕、かつ乾燥されたCPH-StMl)を使用して、クッキー配合物中の25重量%の穀粉を置き換えた。クッキー配合物(CPHとの穀粉置換前)は、13.54%のショートニング(パーム油系、Loders Croklaan製のSansTrans(商標)39クッキーショートニング)、27.51%の砂糖(粒状、Dominos)、0.44%の塩、0.53%の炭酸水素ナトリウム、0.39%のデキストロース一水和物(Tate&Lyle製のStaleydex333)、9.98%の脱イオン水、47.61%の穀粉(軟質小麦ブレンド、精製粉)を含んでいた。含水量は、穀粉の含水量に関係して、14%の水分基準を想定している。クッキーの他の実施形態について、水分含有量が異なる穀粉では、水は、AACCI10-50方法論(http: //methods.aaccnet.org/methods/10-50.pdf)に従って調節することができる。穀粉置換実験について、小麦粉の25%がCPHで置き換えられ、その結果、レシピは、11.9%のCPH及び35.71%の小麦粉を含有し、配合物中の含水量は、CPH及び小麦粉を含む乾燥穀粉ブレンドの含水量に調整された。全てのパーセンテージは、重量基準(重量%)である。CPHの2つのバージョンが使用され、上記のように、一方は、CPH乾燥工程が凍結乾燥(CPH-FD)であり、他方は、85℃で真空乾燥(CPH-Vac 85 C)した。
【0131】
CPHを、穀粉と均一にブレンドし、穀粉-CPHを通常の方法で他のクッキー生地成分と混合した。
【0132】
CPHを使用しなかった(穀粉置換なし)対照生地もまた調製した。
【0133】
得られたクッキー生地を、400°F(204.4℃)に設定された回転オーブンで11分間焼成した。オーブン温度は、焼成中に381~420°Fで変動した。
結果
【0134】
実施例2の方法によって生成された得られたクッキーの写真を
図3に示す。CPH-FD又はCPH-Vac85Cを使用して、対照クッキー中の穀粉の25%を置き換えることによって調製されたクッキーの食感は、口当たりが良かったが、色がわずかにより暗いことが分かる。
【0135】
生地粘度の大幅な増加がみられ、LFRA値をCPH-FDの対照に対して約9倍増加させた。また、焼成時の水分損失は、大幅に低減し、クッキー直径(広がり)は、大きく低減し、クッキーの高さ(厚さ/スタックの高さ)は、大幅に増加した。これらの挙動の全ては、CPH内のペクチンの高い水分保持機能に起因する可能性がある。更に、CPH含有変形形態は、優れた「赤褐色」の色をもたらし、円卓試食結果は、対照クッキーに対してはるかにより柔らかい食感を示した。穀粉の25%を真空オーブン乾燥CPH(CPH-Vac85C)に置き換えることにより、挙動及び幾何学的形状において対照にはるかにより近い生成物が得られたが、チョコレートクッキーに出現する可能性がある、より濃「赤褐色」の色を有する。
【0136】
このようにして、有意な繊維レベル(及び特に有意なペクチンレベル)を有する本発明によるCPHは、クッキー焼成における機能性成分として機能することができ、かつ/又はクッキーの高さを増加させ、広がりを低減し、食感を柔らかくし、色を暗くするなどのための部分穀粉代替物として使用することができる。
実施例3-実施例1のCPH粉末を含むケーキミックス
【0137】
バッターにおいて卵を使用して焼成されたソフトケーキの、部分的(30%)又は完全(100%)な卵の代替物としてCPH-FDを用いて調製されたソフトケーキとの比較を行った。
【0138】
具体的には、卵に起因する水及び脂肪を、脱イオン水及びキャノーラ油で構成して置き換え(重量対重量)、卵「固形分」(卵の残りの部分)をCPH-FDに置き換えた。
【0139】
図4Aは、卵で、30%の卵固形分をCPH-FDで置き換えて、また卵の100%をCPH-FDで置き換えて生成されたソフトケーキ製品の写真を示す。
【0140】
図4Bは、
図4Aに示した3つのケーキ製品の断面の写真を示す。
【0141】
図4A及び
図4Bから分かるように、卵固形物のCPH-FD置換を用いて調製された生成物に対して、CPH-FDによる30%卵交換では、
図8Aに示すように、ケーキの体積、高さ、密度、及び食感に顕著な影響を及ぼさなかった。写真から分かるように、30%CPH-FDケーキ製品は、サイズ及び形状が対照製品と実質的に同様に見え、全体的な生地密度及び食感が同様であることが分かる。これらのケーキは、色を含む、評価された官能属性のいずれかによっても、円卓試食試験において対照(100%卵使用)と区別することができなかった。一方、CPH-FDでの完全な(100%)卵置換は、より低い高さ、より堅い食感、及びはるかに暗い色を有するより高密度のケーキをもたらした。配合物のいずれも、対照ケーキに更に一致するようには最適化されなかった。100%卵置換ケーキは、対照と一致しなかったが、販売されるケーキの特性に応じて、所望され得る異なる官能特性を有する口当たりの良いケーキ製品が依然として得られた。
【0142】
このようにして、水及びキャノーラ油と組み合わせて、CPHを使用して、ソフトケーキレシピで卵を部分的に置き換えることができ、製品には検出可能な影響はない。必要に応じて、100%卵ケーキの特性に一致させるために、更なる作業(例えば、製剤中の他の成分を含む)が必要とされるであろうが、完全な卵なしケーキを配合するためにもCPHを使用することができる。
実施例4-実施例1のCPH粉末を含むチョコレート
【0143】
チョコレート配合物中の成分として実施例1の方法によって製造されたCPHを使用することの影響の評価を行った。凍結乾燥カカオポッド殻(CPH-FD)及び85℃の真空オーブン乾燥カカオポッド殻(CPH-Vac85C)の両方を、約9.2(重量)%レベルで実験用チョコレートに組み込んだ。チョコレートを以下の表に示すレシピで製造した。
【表2】
【0144】
乾燥CPH成分の平均粒径(乾燥粉末レーザー回折によって測定されるd90)は、以下の通りであった。
CPH-Vac85C=411μm、CPH-FD=400μm
対照チョコレートマスは、26マイクロメートル(±2マイクロメートル)の粒径(d90)に作製され、プロセスは、CPHを含有するチョコレート変形形態の調製のために変化しなかった。
【0145】
レシピは、貴重な成分(カカオ固形物、乳固形物及び糖)の低減を可能にするが、対照(カカオバター及び無水乳脂肪(anhydrous milk fat、AMF)を調整することによって)と同じ総脂肪を維持するように修正された。カカオバターとAMFとの間の比は、一定に保たれた。
【0146】
標準的なチョコレート作製手順に従い、全ての試料を作製した。各レシピを1.5kgの総質量に対して作製した。実験用チョコレートマス用の精製器を最初に通過させる前の精製機用ペーストの写真を
図5Aに提供する。CPH変形形態は、スクロース、脱脂乳粉末、及び置き換えられている従来のカカオマスに対するより大きな油結合能力を考慮して、「乾燥剤」ペーストを代替した傾向がある。チョコレートマスの粒径及び粘度を
図5Bに提供する。その結果は、凍結乾燥CPHがチョコレートマスの粘度を増加させた一方で、85℃の真空オーブンで乾燥したCPHは、対照チョコレートマスよりも低い粘度を有し、これは、チョコレート加工中に有利であり得ることを示唆している。全てのレシピをジャケット付きホバートミキサー(40℃に設定)中で練り合せた。
【0147】
完成したマスを手でテンパリング(非テンパリングマスが29℃になる前に、27℃までテンパリング)し、標準的な40gバーに成形した。
【0148】
得られたチョコレートバーの栄養組成を以下の表に提供する。
【0149】
チョコレートバーにカカオポッド殻を含めることにより、繊維含有量の顕著な増加、並びに糖及び添加糖の低減が可能になった。
【表3】
【0150】
CPHを含有する実験用チョコレートバーの写真を
図5Cに提供する。非公式官能評価は、得られたチョコレートの感覚刺激特性に対する、異なる形態のCPHを添加する影響の初期印象を得るために行われた(
図5D)。
【0151】
許容可能な感覚刺激特性は、CPH-FD及びCPH-Vac85Cのチョコレートの両方を用いて達成されたが、それぞれは、対照チョコレートよりも高密度かつより粘土様であった(非従来の成分でチョコレートを製造する場合に予想されていた)。許容可能な感覚刺激特性が達成されたという事実は、本発明のCPH粉末が、チョコレートの食物繊維含有量を増加させるために使用され得、これは、高い繊維摂取に起因する改善された健康上の利点をもたらし得ることを示している。
【0152】
CPHのこの予備評価は、チョコレートにおける安価な増量剤として潜在的な用途の機会を示した。CPHを処理する方法が感覚刺激特性に影響を及ぼすことも実証した。
実施例5-様々な粒径に粉砕した実施例1のCPH粉末を10重量%でミルクチョコレートに組み込む
【0153】
CPH変形形態(
図1の実験番号B19)及び無脂肪乾燥乳、NFDM(比較例)を、増量剤としてミルクチョコレートマスに組み込んだ。市販のミルクチョコレート製品を、これらの実験用の代表的なミルクチョコレートマスとして使用した。典型的な手順として、実施例1の20gのCPH粉末を
図6Aに記載の概略図に従って180gの溶融ミルクチョコレートマスに添加して、
図6Bに示した実験用チョコレートバー(5i、5ii、5iii、5iv、及び5v)を得た。脂肪調整を行わずに、チョコレートを調製した。
【0154】
図6Bは、比較例として10重量%のNFDMを組み込むこととは対照的に、異なる粒径の10重量%の熱処理されたCPH(試料#B18、B19から)をミルクチョコレートマスに組み込む効果を示す。
図6Bは、NFDM(5i)とは対照的に、230メッシュサイズ(5ii)を超える粗CPH粉末が、より濃くより暗い色をもたらしたことを示す。<325メッシュサイズの微細CPH粉末(5iv)は、より大きな光沢(光沢)及び望ましくない脂肪ブルームのより劣った外観を有する濃い茶色の色をもたらした。<325メッシュのCPH粉末の中では、真空オーブン乾燥CPH(5iv)をオーブン乾燥CPH(5v)と比較して、オーブン乾燥CPHが更により暗い茶色の色を提供し、商業的価値が増加している当業者の暗いチョコレートの外観にほぼ似ていたことを明らかになった。
実施例6-実施例1のCPH粉末を15重量%でミルクチョコレートに組み込む
【0155】
図6Aに記載された概略図に従って、CPH変形形態(Run#B19)及びラクトース(比較例)を、脂肪調整(0.25gココアバター/g CPH)を用いて、増量剤としてミルクチョコレートマスに組み込んだ。
図7に示すように、微粒子サイズ(<325メッシュ)のCPHを、15重量%(6i)で市販のミルクチョコレート製品に組み込んだ。比較例(6ii)として、ラクトースを10重量%で組み込んだ(ラクトースはホエイ粉末の主成分であり、典型的にはミルクチョコレートで使用される増量剤である)。使用レベルの増加にもかかわらず、CPHは、より滑らかなチョコレートバーを形成し、これは、濃い茶色(6i)を有し、比較例は、表面上に脂肪溜まりの形態の不均一性を示した(6ii)。非公式円卓試食試験結果は、6iが6iiと比較して、より堅い噛みごたえ、ざらざらした口当たり、甘味の低減、より暗い色、及び草様のオフノートを有することを示唆した。
実施例7-商業規模でCPH成分を生産するための提案プロセス
【0156】
商業規模でCPH成分を生産するための任意のプロセスは、短時間の枠内で、ポッド開口から生成された新鮮なカカオポッド殻を、微生物腐敗の危険性がない安定した中間体(又は最終製品)に変換する必要があり、そうしなければ、微生物腐敗のリスクが高くなり、毒性汚染物質(マイコトキシンなど)の上昇がもたらされる。ポッド開口後のこの時間制約によってもたらされるサプライチェーンの課題を克服するために、新鮮な殻をCPHに変換するプロセスは、好ましくは、殻の供給源、すなわち、カカオ発酵施設(又は農場など)に近接して開始される。高度な産業処理機器及び有能なオペレータがカカオ農場に近接して配置されることによってもたらされるロジスティックな課題を除去するために、使用される機器は、好ましくは「ローテク」であるべきであり、最小限の資本投資及びオペレータ専門知識を必要とする。好ましくは、そのような装置は、世界中のカカオ生育地域において低コストで産地で利用可能である。
【0157】
豆を取得するためにカカオポッドを開ける農場作業者は、1時間当たり約130kgの新鮮なカカオポッド殻を生成することができる。次いで、殻を市販の果物/野菜洗浄機で洗浄して、外側の汚れ、破片、殺虫剤などを除去することができる。
【0158】
次に、洗浄された殻は、(市販の果物及び野菜の蒸気ブランチング/調理機械中で)蒸気/熱水/希酸中でブランチングを施すことができ、材料を滅菌し、かつ重金属、殺虫剤、及びマイコトキシンを除去することができる。この工程はまた、殻を軟化させるのに役立つ。次いで、ブランチングした殻をプレス機に通して水を排出することができる。スクリュープレス、エキスペラーなどの異なるタイプのプレス機を使用できるが、市販のサトウキビ粉砕機などの産地で利用可能な解決策であるローテクを使用できることが最も好ましい。この工程の目的は、主に水を排出し、材料を約50%以上の固形分含有量にすることである。更に、この工程は、任意の残留汚染物質、及び糖、可溶性繊維などを除去するのに役立ち得るため、最終生成物の総不溶性繊維(IDF)含有量を増加させる。
【0159】
次の工程は、微生物安定性を達成するために重要な閾値として認識される、少なくとも0.65の水分活性(aw)まで材料を乾燥させることを含む。
図8に示される商業的グレードのピザオーブンなどの衝突オーブン、又は低コストの市販のドラム乾燥機、又は産地で利用可能な他の乾燥機及び食品脱水剤を使用して、これを達成することができる(乾燥工程から生成されたポリ芳香族炭化水素、すなわち、PAH、及びアクリルアミドは、食品安全性及び地域規制の準拠を確保するために厳密に監視されなければならないことに留意されたい)。得られた乾燥CPH中間体は、aw<0.65(好ましくは、aw<0.6、最も好ましくはaw<0.55)であり、現在、輸送及び保管に対して安定であると予想される。乾燥工程はまた、CPH中間体の脆性を増強し得、これは、続く摩砕工程に有益である。
【0160】
微生物的に安定である場合、乾燥CPH中間体は、保管して、必要な粒径まで摩砕するために、必要に応じて、摩砕/粉砕施設に出荷することができる。新鮮なカカオポッド殻を(比較的低い投資及び単純な機器を用いて)、保管して出荷することができる安定した中間体に変換する能力は、微生物腐敗の重要な問題、及び、サプライチェーンの考慮に有意なロジスティックな課題を提示する季節性の問題(これは、カカオポッド殻が廃棄物の流れとして活用されないままである1つの理由である)を克服する。
【0161】
場合によっては、保管及び輸送後に受け取ったCPH中間体は、aw<0.2になるように更に乾燥され、総水分含有量を低減してもよい。
【0162】
市販のハンマーミル、ジェットミル、セルミル、及びナイフミルを使用してサイズ低減を達成することができるが、セラミック摩砕媒体及び風力選別機ミルを備えた遊星ボールミルは、チョコレートに必要な微粒子サイズ(d90<30マイクロメートル、好ましくは<20マイクロメートル)を達成するのに特に効率的であると予想される。
【0163】
このようにして、チョコレート用途に最も好ましいCPH成分は、比較的低い資本投資により、かつ顕著なサプライチェーン及びロジスティックの制約なしで商業的に製造され得る。
【0164】
上記の実施形態/複数の実施形態は、単なる一例として記載されている。添付の特許請求の範囲に定義される本発明の範囲から逸脱することなく、多くの変更が可能である。
【国際調査報告】