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特表2023-533323血液及び体液からの微生物の単離及び迅速検出のための方法及び組成物
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  • 特表-血液及び体液からの微生物の単離及び迅速検出のための方法及び組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】血液及び体液からの微生物の単離及び迅速検出のための方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/06 20060101AFI20230726BHJP
   C12Q 1/04 20060101ALI20230726BHJP
   G01N 33/48 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
C12N1/06
C12Q1/04
G01N33/48 M
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501209
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-28
(86)【国際出願番号】 US2021040951
(87)【国際公開番号】W WO2022011182
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】63/050,509
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523005405
【氏名又は名称】アキュタス ダイアグノスティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100115794
【弁理士】
【氏名又は名称】今下 勝博
(74)【代理人】
【識別番号】100119677
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 賢治
(74)【代理人】
【識別番号】100160495
【弁理士】
【氏名又は名称】畑 雅明
(74)【代理人】
【識別番号】100173716
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 真理
(72)【発明者】
【氏名】シャンムガム、メイユヴァハナン
(72)【発明者】
【氏名】アクタル、マムタズ
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドバーグ、デイビット
(72)【発明者】
【氏名】ボン オム、マージョリー
【テーマコード(参考)】
2G045
4B063
4B065
【Fターム(参考)】
2G045AA28
2G045CA25
2G045CA26
2G045CB21
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ06
4B063QQ08
4B063QR41
4B063QR49
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4B063QS28
4B063QX01
4B065AA01X
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BD32
4B065BD33
4B065BD43
4B065CA46
(57)【要約】
本開示は、血液試料を試験して、血流感染症(BSI)の存在を判定し且つ種類を特定するための方法及び組成物を提供する。一実施形態では、組成物は、ベタイン塩酸塩、スペルミジン、サポニン、及びTriton(登録商標)X-100を含む溶解試薬又は組成物である。方法は、溶解試薬を血液試料と組み合わせることと、BSIを引き起こす微生物を単離するための少なくとも1つの遠心分離工程と、を含む。微生物は、様々な方法工程が行われた後でも血液試料に対して診断試験が行われ得るように生存したままである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミンと、
脂肪動員薬と、
サポニンと、
界面活性剤と、
を含む、血液細胞溶解用試薬組成物。
【請求項2】
前記ポリアミンは、スペルミジン、プトレシン、スペルミン、アグマチン、カダベリン、及びそれらの任意の組合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の試薬組成物。
【請求項3】
前記ポリアミンは、スペルミジンである、請求項1に記載の試薬組成物。
【請求項4】
前記脂肪動員薬は、ベタイン塩酸塩、オキシベタイン、トリメチルグリシン、イノシトール、メチオニン、それらの任意の組合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の試薬組成物。
【請求項5】
前記脂肪動員薬は、ベタイン塩酸塩である、請求項1に記載の試薬組成物。
【請求項6】
前記界面活性剤は、親水性ポリエチレンオキシド鎖を有する非イオン性界面活性剤である、請求項1に記載の試薬組成物。
【請求項7】
前記組成物は、
0.25~1mmol/Lのポリアミンと、
0.5~1mmol/Lの脂肪動員薬と、
0.2272~0.3636体積%の界面活性剤と、
0.0909~0.2272体積%のサポニンと、
を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
少なくとも1つの細菌によって引き起こされる血流感染症について患者の血液試料を試験する方法であって、
前記患者から試料を採取する工程と、
請求項1に記載の組成物を前記試料と混合して、第1の混合物を形成する工程と、
前記第1の混合物を遠心分離して、前記第1の混合物を、上清及びペレットに分離する工程と、
前記上清を廃棄する工程と、
前記ペレットを増殖培地に入れて、第2の混合物を形成する工程と、
前記第2の混合物を遠心分離する工程と、
前記第2の混合物を試験して、前記少なくとも1つの細菌の存在を判定する工程と、
を含む、少なくとも1つの細菌によって引き起こされる血流感染症について患者の血液試料を試験する方法。
【請求項9】
前記混合工程の後、且つ前記第1の遠心分離工程の前に、前記第1の混合物をベタイン塩酸塩及び水を含む第2の組成物で希釈する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の混合物を遠心分離する工程の後、且つ前記試験工程の前に、前記第2の混合物を遠心分離する工程の間中に生成された第2のペレットを廃棄する工程を更に含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の混合物は、
0.25~1mmol/Lのポリアミンと、
0.5~1mmol/Lの脂肪動員薬と、
0.2272~0.3636体積%の界面活性剤と、
0.0909~0.2272体積%のサポニンと、
を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの細菌によって引き起こされる血流感染症を有することが知られている患者の血液試料を試験する方法であって、
前記患者から試料を採取する工程と、
請求項1に記載の組成物を前記試料と混合して、第1の混合物を形成する工程と、
前記第1の混合物を遠心分離して、前記第1の混合物を、上清及びペレットに分離する工程と、
前記上清を廃棄し、且つ前記ペレットを保持する工程と、
前記ペレットを試験して、前記少なくとも1つの細菌の種類を特定する工程と、
を含む、少なくとも1つの細菌によって引き起こされる血流感染症を有することが知られている患者の血液試料を試験する方法。
【請求項13】
前記混合工程の後且つ前記第1の遠心分離工程の前に、前記第1の混合物をベタイン塩酸塩及び水を含む第2の組成物で希釈する工程を更に含む、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、血流感染症の感染源又は原因を迅速に特定するための血液検査方法及び組成物に関する。特に、本開示は、接種され、ベタイン塩酸塩と、スペルミジンと、サポニンと、Triton(登録商標)X-100等の界面活性剤とを含む新規な組成物と組み合わされる、血流試料中の感染源を迅速に特定する方法を提供する。試料は、次いで、グラム染色又は他の診断のために処理されて、感染症の種類を特定する。
【背景技術】
【0002】
血流感染症(Blood Stream Infection:BSI)は、世界的に深刻な病状であり、感染に対する宿主応答の調節不全により、生命を脅かす多臓器不全を導く。米国では、BSIが院内死亡の主な原因であり、年間240億ドルを超える費用がかかる。
【0003】
健康な患者では、血液は無菌である。全身又は局所感染は、微生物を血流に侵入させる可能性があり、これは「菌血症」として知られている。菌血症の大部分は免疫系によって迅速に排除される。圧倒的な微生物感染は、免疫系に打ち勝ち、BSIを生じさせ得る。血流感染症に関与する微生物を特定するために、血液培養物が必要とされる。血液培養物は、微生物(細菌又は酵母細胞)の増殖を支援する液体ブロス培地を含有する特殊な血液培養瓶に接種された、BSIを有すると疑われる患者からの血液試料からなる。
【0004】
BSIでは、患者血液1mL当たりの微生物の数が非常に少ない。血液培養瓶中の微生物増殖の検出は、血液が患者から採取された後、数時間(最低24~72時間)かかる。処置の1時間毎の遅延は、死亡の相対リスクの6~8%の増加をもたらす。現在、多くの医療従事者は、患者のBSIの程度及び種類を知らないにもかかわらず、「抗生物質の投与開始が1時間遅れるごとに、生命が犠牲になる」という慣行を採用し、且つ抗生物質を投与している。これは、不適切な抗生物質投与による抗生物質耐性のレベルを増加させ、これは世界的な危機となり得る。さらに、不適切な抗生物質又はBSIの種類に不適なものもまた、臓器損傷、ミトコンドリア機能不全、宿主マイクロバイオームに対する影響、ならびに真菌及びクロストリジウム・ディフィシル(Clostridium difficile)感染による過剰増殖を介する等、患者に害を及ぼし得る。
【0005】
必要とする患者に役立てるために、早期診断のためのより良いツール及びプロトコルが、迅速且つ適切な抗生物質治療のための前提条件である。したがって、血液培養瓶からの微生物の増殖を迅速に検出する方法を開発する必要がある。微生物(複数可)の増殖が検出されると、グラム陽性、陰性及び酵母を区別するためにグラム染色が行われる。この早期情報は、臨床医が、必要とする患者に最も適切な抗生物質治療を決定するのを助けることができる。
【0006】
さらに、血液培養瓶からの微生物増殖の迅速な検出では、溶解によって血球を除去しながら微生物の生存率を維持することが重要である。微生物の生存率は、薬剤感受性試験(Antimicrobial Susceptibility Testing:AST)等の下流工程での試験にとっても重要である。インタクトな微生物を有することは、PCR又はMALDI-TOF質量分析及び次世代シーケンシング(Next Generation Sequencing:NGS)等の更なる微生物特定にとって重要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の方法は、患者からの採血直後の血液培養瓶、及び/又は微生物について陽性であることが既に知られている血液培養試料からの生存微生物の単離を可能にする。本開示の方法は、脂肪動員薬(lipotropic agent、脂肪作用薬)(例えば、ベタイン塩酸塩)と、ポリアミン(例えば、スペルミジン)と、サポニンと、非イオン性界面活性剤(例えば、Triton(登録商標)X100)等の血球を溶解することが知られている溶解緩衝液とを含む組成物又は溶解試薬で血液培養試料を処理することを含む。この方法には、血液試料から微生物を濃縮し、且つ単離するための少なくとも1つの遠心分離工程も存在する。
【0008】
重要なことに、本開示の方法は、血液培養試料のほんの一部から生存微生物を提供する。タイムラプスデジタル顕微鏡を使用して、試料に対して迅速な微生物増殖検出が行われ得る。微生物の生存率は、微生物の同定及びAST試験等の下流工程での複数の試験が実施されることを可能にする。本開示のこれらの方法はまた、更なる分析のために純粋培養物を調製し、且つ増殖させる選択肢を提供する。
【0009】
一実施形態において、本開示は、ポリアミンと、脂肪動員薬と、サポニンと、界面活性剤とを含む、血液細胞溶解溶液用試薬組成物を提供する。組成物は、0.5~1mmol/Lのポリアミンと、0.5~1mmol/Lの脂肪動員薬と、0.0909~0.2272体積%の界面活性剤と、0.2727~0.3636体積%のサポニンとを含むことができる。
【0010】
本開示はまた、少なくとも1つの細菌によって引き起こされる血流感染症について患者の血液試料を試験する方法を提供する。本方法は、患者から試料を採取する工程と、前段落の組成物を試料と混合して第1の混合物を形成する工程と、第1の混合物を遠心分離して、第1の混合物を、上清及びペレットに分離する工程と、上清を廃棄する工程と、ペレットを増殖培地に入れて、第2の混合物を形成する工程と、第2の混合物を遠心分離する工程と、第2の混合物を試験して、少なくとも1つの細菌の存在を判定する工程と、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示の第1の方法の概略図である。
図2】本開示の第2の方法の概略図である。
図3】本開示の第3の方法の概略図である。
図4】血液試料に対する本開示の方法の使用後の選択された微生物の増殖を確認する、選択された時点でのデジタル顕微鏡写真を示す。顕微鏡写真は、タイムラプスデジタル顕微鏡を使用して撮影される。
図5a】選択された微生物の増殖曲線を時間の関数として示し、データは、デジタル顕微鏡を使用して得られる。
図5b】選択された微生物の増殖曲線を時間の関数として示し、データは、デジタル顕微鏡を使用して得られる。
図5c】選択された微生物の増殖曲線を時間の関数として示し、データは、デジタル顕微鏡を使用して得られる。
図5d】選択された微生物の増殖曲線を時間の関数として示し、データは、デジタル顕微鏡を使用して得られる。
図5e】選択された微生物の増殖曲線を時間の関数として示し、データは、デジタル顕微鏡を使用して得られる。
図5f】選択された微生物の増殖曲線を時間の関数として示し、データは、デジタル顕微鏡を使用して得られる。
図5g】選択された微生物の増殖曲線を時間の関数として示し、データは、デジタル顕微鏡を使用して得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面、特に図1図3を参照すると、本開示の方法の概略図が示されている。本開示の方法は、患者からの新たに接種された血液試料の迅速な処理を提供して、患者が血流感染症(BSI)を有するか否か、且つ有する場合、感染症を引き起こしている細菌の種類を特定する。本開示の方法はまた、BSIを有することが知られているが、どの種類であるかが明らかでない患者からの試料の迅速な分析を提供することができる。本開示の方法は、脂肪動員薬と、ポリアミンと、サポニンと、溶解緩衝液とを含む新規な組成物で血液試料を処理することを含む。一実施形態では、新規な組成物は、ベタイン塩酸塩と、スペルミジンと、サポニンと、非イオン性界面活性剤、例えばTriton(商標)X100とを含む。得られた組成物は撹拌され、且つ/又は少なくとも1つの遠心分離工程にかけられて、組成物の成分を分離する。
【0013】
適切な脂肪動員薬は、ベタイン塩酸塩、オキシベタイン(oxibetaine)、トリメチルグリシン、イノシトール、メチオニン、及びそれらの任意の組合わせを含む。一実施形態では、脂肪動員薬はベタイン塩酸塩である。
【0014】
適切なポリアミンは、スペルミジン、プトレシン、スペルミン、アグマチン、カダベリン、及びそれらの任意の組合わせを含む。一実施形態では、脂肪動員薬はスペルミジンである。
【0015】
適切な溶解緩衝液は、界面活性剤、特に非イオン性界面活性剤を含む。具体的な非イオン性界面活性剤は、Triton(登録商標)X100及びIGEPAL(登録商標)CA-630、又はそれらの組合わせを含む。Triton(商標)X100は、Sigma Aldrich(登録商標)から入手可能であり、一般名ポリエチレングリコールtert-オクチルフェニルエーテル又はt-オクチルフェノキシポリエトキシエタノールを有し、式t-oct-C-(OCHCH)xを有し、式中、xは9又は10である。IGEPAL(登録商標)CA-630は、Sigma Aldrich(登録商標)から入手可能であり、一般名オクチルフェノキシポリ(エチレンオキシ)エタノールを有し、分岐しており、式(CO)1422Oを有する。
【0016】
重要なことに、本開示の方法は、現在利用可能なものよりもはるかに短い時間でBSIの存在及び原因となる細菌の種類を同定することができる試験結果を提供する。前述のように、従来技術の方法は24~72時間かかる可能性があり、これは患者にとって壊滅的な影響、最も顕著には、1時間経過毎の死亡の可能性の有意な増加を引き起こす。対照的に、本方法は、以下でより詳細に説明するように、4時間以内に結果を提供することができる。さらに、他の先行技術の方法が細菌試料を破壊する可能性がある場合、本開示の方法は、更に分析され且つ試験され得る生存微生物試料を提供する。
【0017】
以下でより詳細に論じるように、本明細書に記載の詳細な方法は、微生物(複数可)の早期検出のために、新たに接種した血液培養試料、血液培養陽性試料及び他の体液からの生存微生物(複数可)(すなわち、BSIを引き起こす因子)の単離を提供する。検出は、タイムラプスデジタル顕微鏡を用いて、且つその後の単離された微生物(複数可)の下流工程での試験のために行われ得る。様々な方法は、新たに接種した血液培養試料及び血液培養陽性試料から単離された微生物(複数可)の下流工程での複数の分析を可能にする。
【0018】
本開示はまた、新たに回収された血液培養物から、又は微生物(複数可)の存在について陽性と試験された血液培養試料から生存微生物(複数可)を単離、検出、及び/又は評価する方法を提供する。これらの方法は、少なくとも1つの微生物を含有すると判定された生物学的試料を得ることと、生物学的試料の少なくとも一部をベタイン塩酸塩及びスペルミジン含有溶解試薬と組み合わせて、生物学的試料中の非標的細胞(例えば、血液試料中の血球)を溶解することと、インタクトな微生物(複数可)を単離することと、生物学的試料中の微生物(複数可)の増殖を早期に検出することと、場合によりプレートに播種した純粋培養物又は単一の接種物を調製することと、単離された生存微生物(複数可)又は場合により純粋な培養物/接種物に対して下流工程での分析を行うことと、を含む。
【0019】
図1には、本開示の方法の第1の実施形態が参照番号1000で示されている。まず、BSIを有することが疑われる患者から培養物が採取される(工程1001)。試料は、撹拌しながら高温(例えば30℃~35℃)で一定期間(例えば、2~3時間)インキュベートされる(工程1002)。新たに接種した血液培養試料(例えば、5~10mL)の一部が培養物から得られる(工程1003)。一定量の溶解試薬(例えば、0.5~1mL)が血液培養物に添加される(工程1004)。試薬については、以下でより詳細に説明される。
【0020】
新たに接種した血液培養試料と溶解試薬との混合物は、一定期間(例えば30~60秒)ボルテックスされ、十分に混合され、且つ室温で最大5分間インキュベートされて(工程1005)、インキュベートした、溶解試料を生成する。インキュベートした溶解試料は、溶解試料に添加した場合のベタイン塩酸塩の最終濃度が約1mmol/Lになるように、ベタイン塩酸塩水溶液で希釈され(例えば、1:10~1:20希釈)、且つ混合される(工程1006)。希釈した試料は、最大10分間遠心分離(例えば2000×g~3000×g)されて、上清及びペレットを生成する(工程1007)。ペレットは、もしあれば微生物を含有するであろう。上清は廃棄される(工程1007a)。
【0021】
単離された生存微生物(複数可)を含有するペレットは、増殖培地(例えば、0.1~0.3mL)に再懸濁される(工程1008)。増殖培地については、以下でより詳細に説明される。単離/生存微生物(複数可)の再懸濁ペレットは、ボルテックスされ、且つよく混合される(工程1008)。次いで、再懸濁した単離/生存微生物(複数可)は、一定期間(例えば、最大10分)遠心分離される(例えば、約150×g~175×g)(工程1009)。上清は、ウェルプレート(例えば、96ウェルプレート)中の単一ウェルに移され(工程1010)、一方、ペレットは、廃棄される(工程1009a)。ウェルプレートは、遠心分離され(例えば、約100×g~200×gで最大5分間)(工程1011)、且つ次いで、タイムラプスデジタル顕微鏡観察及び分析に直ちにかけられる(工程1012)。微生物(複数可)の陽性増殖試料は、グラム染色にかけられる(工程1013)。これは、試料中に存在する特定の種類の微生物を同定するのに役立つ。図1の方法が要する合計時間は、4時間以下とすることができる。
【0022】
図2を参照すると、本開示の第2の方法が参照番号2000で示されている。方法2000は、方法1000と同様であるが、以下で説明するいくつかの重要な違いがある。方法2000では、まず、BSIを有すると疑われる患者から培養物が採取される(工程2001)。試料は、撹拌しながら高温(例えば30℃~35℃)で一定期間(例えば、2~3時間)インキュベートされる(工程2002)。新たに接種した血液培養試料(例えば、5~10mL)の一部を培養物から得る(工程2003)。一定量の溶解試薬(例えば、0.5~1mL)が血液培養物部分に添加される(工程2004)。さらに、試薬は、以下でより詳細に説明される。
【0023】
新たに接種した血液培養試料と溶解試薬との混合物は、一定期間(例えば30~60秒)ボルテックスされ、十分に混合され、且つ室温で最大5分間インキュベートされて(工程2005)、インキュベートした溶解試料を生成する。インキュベートした溶解試料は、溶解試料に添加した場合のベタイン塩酸塩の最終濃度が0.5~1mmol/Lになるように、ベタイン塩酸塩水溶液で希釈される(例えば、1:10~1:20希釈)(工程2006)。希釈した試料は、最大10分間遠心分離されて(例えば、約2000×g~3000×g)、上清及びペレットを生成する(工程2007)。ペレットは、もしあれば微生物を含有するであろう。上清は廃棄される(工程2007a)。
【0024】
単離された生存微生物(複数可)を含有するペレットは、増殖培地(例えば、0.1~0.3mL)に再懸濁される(工程2008)。増殖培地については、以下でより詳細に説明される。ここにおいて、方法2000は、方法1000と異なる。再懸濁したペレットが再度遠心分離される別の遠心分離工程(方法2010のように)ではなく、方法2000では、工程2008からのペレットは、ウェルプレート(例えば、96ウェルプレート)内の単一ウェルに直接移される(工程2010)。次いで、ウェルプレートは、遠心分離され(例えば、約200×gで最大5分間)(工程2011)、且つ次いで、タイムラプスデジタル顕微鏡観察及び分析に直ちにかけられる(工程2012)。微生物(複数可)の陽性増殖試料は、グラム染色にかけられる(工程2013)。これは、試料中に存在する特定の種類の微生物を同定するのに役立つ。図2の方法が要する合計時間は、3時間30分以下とすることができる。方法2000は、2つの遠心分離工程を有し、方法1000は、3つの遠心分離工程を有していた。
【0025】
図3に示され、符号3000で参照される第3の方法は、患者がBSIを有すると推定されているか、又は知られているという点で方法1000及び2000とは異なる(工程3001)。したがって、方法3000では、血液培養陽性(PBC)試料の一部(例えば、5~10mL)が得られる(工程3002)。試薬は、PBC試料に添加される(工程3003)。PBC試料と溶解試薬との混合物は、一定期間(例えば、30~60秒)ボルテックスされ、十分に混合され、且つ室温で一定期間(例えば最大5分)インキュベートされる(工程3004)。インキュベートした溶解試料は、ベタイン塩酸塩水溶液で希釈されて(例えば、1:10~1:20希釈)、溶解試料に添加した場合のベタイン塩酸塩の最終濃度は、0.5~1mmol/Lになる(工程3005)。
【0026】
希釈した試料は、遠心分離されて(例えば、約2000×g~3000×gで最大10分間)、上清及びペレットを生成する(工程3006)。上清は、廃棄され(工程3007)、単離/生存微生物(複数可)を含有するペレットは保持される(工程3008)。次いで、ペレットは、任意の数の診断試験にかけられて、試料中に存在する微生物の種類を特定することができる(工程3009)。例えば、これらの試験は、マトリックス支援レーザ吸着イオン化飛行時間型質量分析(matrix-assisted laser adsorption ionization time-of-flight mass spectrometry:MALDI-TOF)、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)、次世代シーケンシング(NGS)、薬剤感受性試験(AST)、グラム染色、及び純粋培養技術を含み得る。図3の方法にかかる合計時間は、30分以下とすることができる。方法3000では、単一の遠心分離工程が存在する。
【0027】
以下の表1は、溶解試薬組成物の一実施形態の成分及び量を示し、これは、溶解試薬組成物が血液試料に添加された後の各成分のモル量又は体積量である。本開示は、予想外にも、ベタイン塩酸塩及びスペルミジンが、上記の方法に記載されるように、患者の身体から抽出され、且つインキュベートされ、ボルテックスされ、且つ遠心分離された後に、微生物の生存を維持する優れた能力を提供することを見出した。これは、存在する微生物の種類を特定するために試料に対して行うことができる無数の診断試験を可能にするという点で重要である。表1の組成物はまた、上記の代替物、例えば、ベタイン塩酸塩を代替するオキシベタイン、又はスペルミジンを代替するプトレシンを含み得る。
【0028】
【表1】
【0029】
以下の表2は、方法10及び100で使用される増殖培地の組成物を示す。
【0030】
【表2】
【0031】
表3及び表4並びに図4図5gは、本開示の方法が特定の血液試料で試験される場合に達成された結果に関する。まず、血液試料は、表3に列挙した量の特定の種類の細菌でスパイクされた。表4は、本明細書に記載の方法の様々な段階に必要な時間を示す。図4図5gは、このデータをグラフ形式で示している。一部の細菌、例えばE.クロアカ(E.cloacae)は、他の細菌よりも増殖に時間がかかり得る。しかし、表4に見られるように、すべての場合において、BSIの存在を判定し且つ種類を特定するための総時間は8.5時間未満であった。示された細菌のほとんどで、必要な時間は6.5時間以下又は5.5時間以下であった。血液試料中の細菌数が多い場合、BSIの存在を決定する総時間は更に短く、すなわち4時間以下であり得る(前述のように)。細菌数が少ない場合、例えば表3に記載のように細菌数が少ない場合、表4の時間で示されるように、増殖を検出するのにより多くの時間がかかる。いずれの場合でも、本開示は、前述したように24時間から72時間もかかる可能性がある現行の方法に対する大幅な改善を提供する。したがって、本開示の方法及び組成物は、BSIの療養者及びそれらを治療する医療専門家に大きな利益を提供する。
【0032】
【表3】
【0033】
【表4】
【0034】
1つ以上の例示的な実施形態を参照して本開示が説明されてきたが、本開示の範囲から逸脱することなく、様々な変更がなされ得、等価物によって、その要素が置き換えられ得ることは当業者によって理解されるであろう。時間、量又は濃度等の上記の任意の範囲について、本明細書は、その範囲及びそれらの間の任意の部分範囲を企図する。例えば、本明細書が30~60秒の範囲を記載する場合、本開示は、35~55秒、40~50秒、30~55秒等も企図する。加えて、本開示の範囲から逸脱することなく、特定の状況又は材料を本開示の技術に適合させるために多くの変更がなされ得る。したがって、本開示は、企図される最良の形態として開示された特定の実施形態(複数可)に限定されず、それは、添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施形態を含むことが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図5c
図5d
図5e
図5f
図5g
【国際調査報告】