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特表2023-533336血液ガス分析装置、および血液ガス分析装置を備えるシステム、ならびにその使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】血液ガス分析装置、および血液ガス分析装置を備えるシステム、ならびにその使用
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/49 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
G01N33/49 W
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501386
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-01-19
(86)【国際出願番号】 EP2021069142
(87)【国際公開番号】W WO2022008714
(87)【国際公開日】2022-01-13
(31)【優先権主張番号】20185272.0
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】500554782
【氏名又は名称】ラジオメーター・メディカル・アー・ペー・エス
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】エベスン,ティーア・ウベ
(72)【発明者】
【氏名】バウムガルテン,イーダ・ケーアスゴー
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045AA25
2G045CA28
(57)【要約】
携帯型血液試料容器(100)から血液ガス分析装置(1)へと吸引される全血試料などの血液試料中の分析物パラメータについての測定を実施するための血液ガス分析装置(1)は、制御装置(8)と、入口構造体(12a/b)に対する携帯型血液試料容器(100)の存在、位置、および/または配向を検出するためのセンサシステム(5)とを備える。携帯型血液試料容器(100)から血液試料を吸引するために吸引システムが提供され、吸引システムは、携帯型血液試料容器(100)に連結可能である。血液ガス分析装置(1)の使用者(102)に命令を出力するためのユーザインタフェースシステムが提供され、命令は、予め記憶された命令セットの中から選択される。制御装置(8)は、センサシステムから取得された信号の査定に基づいて、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの一方を選択する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液試料中の分析物パラメータについての測定を実施するための血液ガス分析装置(1)であって、前記血液試料は、携帯型血液試料容器(100)から前記血液ガス分析装置(1)へと吸引され、前記血液ガス分析装置(1)が、制御装置(8)と、
- 入口構造体(12a/b)に対する前記携帯型血液試料容器(100)の存在、位置、および/または配向を検出し、前記携帯型血液試料容器(100)の前記検出された存在、位置、および/または配向を表す少なくとも1つのセンサ信号を出力するための少なくとも1つのセンサ(5)を備えるセンサシステムと、
- 前記携帯型血液試料容器(100)から前記血液試料を吸引するための吸引システムであって、前記吸引システムが、
- 前記携帯型血液試料容器(100)に連結するための前記入口構造体(12a/b)を備える、吸引システムと、
- ユーザインタフェースシステムであって、
- 前記血液ガス分析装置(1)の使用者(102)に命令を出力するための命令出力装置と、
- 予め記憶された少なくとも2セットの使用者命令を備える電子メモリ(8a)とを備える、ユーザインタフェースシステムと
を備え、
前記制御装置(8)が、
- 前記入口構造体(12a/b)に対する前記携帯型血液試料容器(100)の前記検出された存在、位置、および/または配向を表す前記少なくとも1つのセンサ信号を受け取り、
- 前記少なくとも1つのセンサ信号の査定に基づいて、前記少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの一方を選択し、
- 前記命令出力装置に、前記少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの前記選択されたセットを前記命令出力装置において出力させるように構成されている、血液ガス分析装置(1)。
【請求項2】
前記少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第1のセットが、前記使用者(102)が前記血液ガス分析装置(1)と相互作用するための第1の詳細レベルでの命令を備え、前記少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第2のセットが、前記使用者(102)が前記血液ガス分析装置(1)と相互作用するための第2の詳細レベルでの命令を備え、前記第1の詳細レベルが前記第2の詳細レベルよりも高い、請求項1に記載の血液ガス分析装置(1)。
【請求項3】
前記少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの前記第1のセットが、前記使用者(102)が前記入口構造体(12a/b)に対する前記携帯型血液試料容器(100)の前記位置および/または前記配向を調節するための使用者命令をさらに備える、請求項2に記載の血液ガス分析装置(1)。
【請求項4】
- 前記吸引システムが、前記携帯型血液試料容器(100)の前方端部と接触するための吸引点を備え、
- 前記入口構造体(12a/b)が、前記携帯型血液試料容器(100)の少なくとも一部を中に受けるための受取り構造体を備え、前記受取り構造体および前記吸引点は、前記吸引点に対して前記受取り構造体が変位しかつ/または前記携帯型血液試料容器(100)が変位すると、前記携帯型血液試料容器(100)の前記前方端部と前記吸引点との間に流体流路を確立するように構成され、
- 前記入口構造体(12a/b)に対する前記携帯型血液試料容器(100)の位置および/または配向を検出するための前記少なくとも1つのセンサ(5)が、前記吸引点に対する前記受取り構造体の変位および/または前記携帯型血液試料容器(100)の変位を検出するように構成されている、
請求項1から3のいずれか一項に記載の血液ガス分析装置(1)。
【請求項5】
前記少なくとも1つのセンサ信号の前記査定により、少なくとも、前記携帯型血液試料容器(100)の前記前方端部が前記吸引点と流体連通しているかどうかが示され、前記予め記憶された少なくとも2セットの使用者命令のうちの少なくとも1つが、前記携帯型血液試料容器(100)を前記吸引点に向かってさらに押すように前記使用者(102)に命令する信号を備える、請求項4に記載の血液ガス分析装置(1)。
【請求項6】
前記入口構造体(12a/b)の前記少なくとも1つのセンサ(5)が、少なくとも2つのセンサ(5)を備え、そのうちの第1のセンサが、前記携帯型血液試料容器(100)の前記前方端部が前記吸引点と流体連通していないある位置における前記携帯型血液試料容器(100)の前記存在を検出するように構成され、そのうちの第2のセンサが、前記携帯型血液試料容器(100)の前記前方端部が前記吸引点と流体連通しているある位置における前記携帯型血液試料容器(100)の前記存在を検出するように構成されている、請求項1から5のいずれか一項に記載の血液ガス分析装置(1)。
【請求項7】
前記携帯型血液試料容器(100)の前記入口構造体(12a/b)に対する前記存在、前記位置、および/または前記配向を検出するための前記少なくとも1つのセンサ(5)のうちの少なくとも1つがホールセンサを備える、請求項1から6のいずれか一項に記載の血液ガス分析装置(1)。
【請求項8】
前記吸引システムが、前記制御装置(8)によって制御されかつ前記入口構造体(12a/b)の前記少なくとも1つのセンサ(5)に動作可能に接続されたポンプ(23)を備え、前記制御装置(8)は、前記携帯型血液試料容器(100)が前記入口構造体(12a/b)に対してその所定の位置および/または配向にあることが検出された後にのみ前記ポンプ(23)を作動させるように構成されている、請求項1から7のいずれか一項に記載の血液ガス分析装置(1)。
【請求項9】
前記入口構造体(12a/b)が、前記携帯型血液試料容器(100)の少なくとも1つの特徴を自動で判定するインタフェースを備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の血液ガス分析装置(1)。
【請求項10】
前記命令出力装置がモニタ(30)を備え、前記予め記憶された命令セットがアニメーション化された映像順序を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の血液ガス分析装置(1)。
【請求項11】
血液ガス分析装置(1)および携帯型血液試料容器(100)を備える、血液試料中の分析物パラメータについての測定を実施するためのシステムであって、前記血液ガス分析装置(1)が、
- 制御装置(8)と、
- 入口構造体(12a/b)に対する前記携帯型血液試料容器(100)の存在、位置、および/または配向を検出し、前記携帯型血液試料容器(100)の前記検出された存在、位置、および/または配向を表す少なくとも1つのセンサ信号を出力するための少なくとも1つのセンサ(5)を備えるセンサシステムと、
- 前記携帯型血液試料容器(100)から前記血液試料を吸引するための吸引システムであって、前記吸引システムが、
- 前記携帯型血液試料容器(100)に連結するための前記入口構造体(12a/b)を備える、吸引システムと、
- ユーザインタフェースシステムであって、
- 前記血液ガス分析装置(1)の使用者に命令を出力するための命令出力装置と、
- 少なくとも2つの予め記憶された命令セットを備える電子メモリ(8a)とを備えるユーザインタフェースシステムと
を備え、
前記血液ガス分析装置(1)の前記制御装置(8)が、
- 前記入口構造体(12a/b)に対する前記携帯型血液試料容器(100)の前記検出された存在、位置、および/または配向を表す前記少なくとも1つのセンサ信号を受け取り、
- 前記少なくとも1つのセンサ信号の査定に基づいて、前記少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの一方を選択し、
- 前記命令出力装置に、前記少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの前記選択されたセットを前記命令出力装置において出力させるように構成されている、システム。
【請求項12】
前記入口構造体(12a/b)が、前記携帯型血液試料容器(100)の少なくとも1つの特徴を自動で判定するインタフェースを備える、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記携帯型血液試料容器(100)が、少なくとも1つの特徴を識別する識別子を備え、前記血液ガス分析装置(1)が、前記血液試料容器(100)の前記識別子から前記少なくとも1つの特徴を導出するためのデータ取込み装置を備える、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記携帯型血液試料容器(100)が、シリンジおよび毛細管のうちの少なくとも1つを備える、請求項11から13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
血液試料中の分析物パラメータについてのポイントオブケア(POC)測定のための、請求項11から14のいずれか一項に記載のシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全血試料などの血液試料中の分析物パラメータについての測定を実施するための血液ガス分析装置およびシステムに関する。より具体的には、本発明は、使用の安全性および効率を向上させる目的で使用者と血液ガス分析装置との相互作用を容易にするための、血液ガス分析装置のユーザインタフェースの改善に関する。
【背景技術】
【0002】
医療業界および臨床業界では、分析物センサを用いて血液試料中の分析物の物理的パラメータを測定するための血液ガス分析装置が広く使用されている。携帯型血液試料容器と共に使用するための血液ガス分析装置は、通常は、携帯型血液試料容器の前方端部と接触するための吸引点を備える。血液試料容器と血液ガス分析装置の内部流れ導管との間に流体流路が確立されると、血液試料またはその一部は分析物センサへと吸引され得る。
【0003】
(当技術分野では「ベッドサイド」システムとも呼ばれる)ポイントオブケア測定システムの文脈、および同様に実験室環境の文脈では、血液ガス分析は、血液ガス分析装置の使用を専門としない使用者である場合がある、看護師などの使用者によって行われることが多い。具体的には、血液ガス分析装置の入口構造体にシリンジまたは毛細管などの携帯型血液試料容器を使用者が正しく配置することが、血液試料を血液ガス分析装置に吸引する際に難易度の高い局面になることが分かっている。入口構造体に対して血液試料容器を不正確に位置決めまたは位置合わせすると、使用者の毎日のワークフローにおいて妨げとなる遅延および/またはフラストレーションを生じさせる恐れがあるだけでなく、血液試料の損失または血液ガス分析装置もしくはその周辺の汚染さえ生じさせる恐れがある。
【0004】
これまで、これらの課題は血液ガス分析装置の開発者および所有者にほとんど注目されてきておらず、こうした課題を経験する使用者は多くの場合において放任されてきた。具体的には、血液ガス分析装置の経験不足の、いわゆる「初心者」である使用者は、熟達した使用者へと徐々に成長するまで、面倒、不便さ、および損なわれる効率という面において結果として生じるあらゆる影響を伴いながら、実践的学習に頼ってきていることが多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記を背景に、本発明の実施形態の一目的は、特に携帯型血液試料容器と血液ガス分析装置の入口構造体との係合が関連する限り、使用者が血液ガス分析装置と相互作用することを容易にする血液ガス分析装置を提供することである。本発明の実施形態の別の目的は、初心者である使用者および熟練した使用者にとってその使用が便利である血液ガス分析装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様によれば、本発明は、携帯型血液試料容器から血液ガス分析装置へと吸引される血液試料中の分析物パラメータについての測定を実施するための血液ガス分析装置を提供し、血液ガス分析装置は、制御装置と、
- 入口構造体に対する携帯型血液試料容器の存在、位置、および/または配向を検出し、携帯型血液試料容器の検出された存在、位置、および/または配向を表す少なくとも1つのセンサ信号を出力するための少なくとも1つのセンサを備えるセンサシステムと、
- 携帯型血液試料容器から血液試料を吸引するための吸引システムであって、吸引システムが、
- 携帯型血液試料容器に連結するための入口構造体を備える、吸引システムと、
- ユーザインタフェースシステムであって、
- 血液ガス分析装置の使用者に命令を出力するための命令出力装置と、
- 予め記憶された少なくとも2セットの使用者命令を備える電子メモリとを備える、ユーザインタフェースシステムと
を備え、
制御装置は、
- 入口構造体に対する携帯型血液試料容器の検出された存在、位置、および/または配向を表す少なくとも1つのセンサ信号を受け取り、
- 少なくとも1つのセンサ信号の査定に基づいて、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの一方を選択し、
- 命令出力装置に、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの選択されたセットを命令出力装置において出力させるように構成されている。
【0007】
入口構造体に対する携帯型血液試料容器の存在、位置、および/または配向が検出される結果、吸引システムの入口構造体に対する携帯型血液試料容器に関する情報が得られ、それに基づいて、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの一方が制御装置によって選択され、続いて命令出力装置を介して使用者に提供され得る。したがって、本発明による血液ガス分析装置は、携帯型血液試料容器および/または血液ガス分析装置の一部を使用者が取り扱うために使用者に命令を提供するだけでなく、センサ信号、すなわち血液試料容器の存在、位置、および/または配向を考慮して、要件を満たした形での命令も提供する。したがって、予め記憶された命令セットのうちの選択されたセットは、通常は使用者の経験のレベル、発生した特定の難題もしくは課題、携帯型血液試料容器のこうした位置ずれ、または携帯型血液試料容器と血液ガス分析装置の吸引点とが完全に係合していないことを反映して、特定の援助の必要性に適合し得る。さらに、使用者の現在の挙動に基づいて、すなわち前の相互作用の間の使用者に関する情報に基づいてではなく、使用者と分析装置との間の目下の相互作用が行われている間に何が起きているかに基づいて、必要とされる援助または案内のレベルに関する推定が実施される。履歴データへのアクセスが必要とされないので、これにより単純なシステムが可能になる。さらに、提供される援助が、実施されている実際の作業、時刻などのような所与の状況下での使用者のニーズに適合するのを確実にすることができる。
【0008】
本発明の一利点は、使用者のリアルタイムな動作および挙動に適応できることである。同じ人が試料を取り扱う方法は、状況および文脈に応じて変化し、または様々である可能性があるので、使用者のリアルタイムな挙動に基づく適応性のある案内が価値を生み出す。たとえば、ある人の取扱いは、患者の命が迅速な結果にかかっているストレスフルで危機的な状況では、危機的でない状況と比較して通常とは異なるかまたは通常から逸脱する場合がある。
【0009】
したがって、命令は、入口構造体に対する携帯型血液試料容器の使用者の取扱いに応じて制御装置によって選択され、命令出力装置を介して使用者に提示され、それにより、たとえば携帯型血液試料容器をさらに押す命令、または携帯型血液試料容器の位置合わせを修正する命令は、携帯型血液試料容器をさらに押す必要があり、その位置合わせを押し下げかつ/または修正する必要がある場合にのみ提示される。したがって、経験不足の使用者、または集中していない使用者は適切な案内を受け取り、一方、操作の特定の側面に関して詳細な命令を必要としない経験を積んだ使用者、および/または完全に集中している使用者は、所与の状況下では必要とされない不必要な命令によって自身の仕事を邪魔されない。この場合、たとえばセンサシステムにより携帯型血液試料容器が存在し、正しく位置決めおよび位置合わせされていることが検出された場合に示される第1の命令は、正しい位置に携帯型血液容器をとどめておくことでもよい。
【0010】
本明細書では、血液試料容器の存在、位置、および/または配向は、具体的には、血液ガス分析装置の対合構造体、吸引点、案内ロッド、入口ポートなどに対するような、入口構造体に対する血液試料容器の存在、位置、および/または配向を指すことができる。
【0011】
この文脈では、用語「血液ガス分析装置」は、携帯型血液試料容器から血液ガス分析装置へと吸引される血液試料中の分析物パラメータについての測定を実施することができる機器を意味すると解釈されるべきである。血液ガスの分析が関連する限り、血液ガス分析装置は、たとえばWO2017/108646に開示された構造体を備え、WO2017/108646に開示された原理に従って動作することができ、これは参照により本明細書に援用される。携帯型血液試料容器は、たとえばそれ自体知られているシリンジまたは毛細管を備えることができる。
【0012】
血液試料は、たとえば全血試料でもよい。この文脈では、用語「全血試料」は、赤血球および白血球、血小板、ならびに血漿を含むそのすべての成分を備えた血液の試料であると解釈されるべきである。血液は、ヒト由来でもよく、哺乳類などの動物由来でもよい。
【0013】
センサシステムのうちの少なくとも1つのセンサは、たとえば近接センサを備えてもよい。こうした近接センサの例は、ホールセンサ、超音波センサ、フォトダイオードベースのセンサなどの光学センサ、容量性センサ、または誘導型センサを含むが、これらに限定されない。部品の近接を検知するそれらの能力により、ホールセンサは、入口構造体内の携帯型血液試料容器の存在、位置、および/または配向を検出するのに特に適している。さらに、ホールセンサは、安価な標準的な部品として提供することができる。
【0014】
別法として、または追加的に、少なくとも1つのセンサは、たとえば1つまたは複数のカメラを備える視覚ベースのシステムを備えることができる。この場合、視覚ベースのシステムによって取り込まれた画像に基づいて、入口構造体での携帯型血液試料容器が正しい位置にあるか否か、かつ/または正しい配向で保持されているか否かを判定することができる。この目的のために、視覚ベースのシステムは、取り込まれた画像と、期待されているかまたは正しい位置および/または配向とを比較することができる。さらに、こうした視覚ベースのシステムを使用して、入口構造体に存在する血液試料容器の種類、たとえば血液試料容器が毛細管であるかそれともシリンジであるかを判定することができる。
【0015】
別法として、または追加的に、センサシステムの少なくとも1つのセンサは、吸引点における血液の存在を検出するセンサを備えてもよい。これは、携帯型血液試料容器と吸引点との間に良好な接触が確立されていること、したがって携帯型血液試料容器が入口構造体に対して正しい方式で位置決めされていることの表れである。
【0016】
別法として、または追加的に、力センサ、機械的スイッチ、運動センサなどのような他の種類のセンサが適用されてもよい。
いくつかの実施形態では入口構造体を取り囲む空洞を備える入口構造体への携帯型血液試料容器の貫入が不十分であると、遅延または取扱いエラーがしばしば生じることが経験により示されているので、センサシステムのセンサは、血液ガス分析装置および/または入口構造体の静止部に対する、携帯型血液試料容器、および/または携帯型血液試料容器と接触するように構成された入口構造体の変位可能部の、具体的には貫入深度などの位置を決定するように構成され得る。貫入深度が不十分である場合、選択される予め記憶された命令セットは、携帯型血液試料容器を血液ガス分析装置に向かってさらに押すように使用者に命令するものでもよい。
【0017】
血液ガス分析装置の命令出力装置は、たとえば、限定されないがテキスト、画像、および/または映像順序によって命令を提供するモニタ、音声または所定の音響信号などの可聴命令を提供するスピーカ、テルテールランプなどのようなランプなどの、それ自体知られている手段を含んでもよい。
【0018】
少なくとも1つのセンサ信号の制御装置による査定は、たとえば受け取ったセンサ信号と既定の閾値との比較を含むことができ、受け取ったセンサ信号が既定の閾値を上回るかそれとも下回るかに応じて、予め記憶された命令セットのうちの1つを選択することができる。たとえば、血液ガス分析装置が経験を積んだ使用者によって取り扱われる場合、受け取ったセンサ信号は、たとえば既定の閾値を上回る場合がある。初心者である使用者が血液ガス分析装置を取り扱っている場合、受け取ったセンサ信号は、たとえば既定の閾値を下回る場合がある。どちらの場合でも、予め記憶された命令セットのうちの対応するものを選択することができ、したがって、命令出力装置は、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの選択されたセットを出力することができる。
【0019】
使用者への命令の提示を使用者の専門技術の様々なレベルに適応させるために、予め記憶された少なくとも2セットの使用者命令は、異なる詳細レベルの命令を備えることができる。たとえば、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第1のセットは、使用者が血液ガス分析装置と相互作用するための第1の詳細レベルでの命令を備えることができ、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第2のセットは、使用者が血液ガス分析装置と相互作用するための第2の詳細レベルでの命令を備えることができ、第1の詳細レベルは第2の詳細レベルよりも高い。
【0020】
一方では、第1の詳細レベルは、たとえば、血液ガス分析装置の吸引プロセスに完璧に精通しているわけではない初心者である使用者のニーズに適合するように調整され得る。こうした使用者は、血液ガス分析装置の取扱い、および/または携帯型血液試料容器とのその相互作用においてより入念な助けを必要とする可能性がある。したがって、予め記憶された命令セットは、たとえば、携帯型血液試料容器と吸引システムとの適切な連結をどのように実現するかについての詳細な命令を備える。
【0021】
他方で、第2の詳細レベルは、たとえば、血液ガス分析装置の吸引プロセスにより精通しており、入念な援助の必要性が低い経験を積んだ使用者に適していてもよい。たとえば、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第2のセットは、携帯型血液試料容器と吸引システムとをどのように連結するかについてのさらなる命令を備えなくてもよい。
【0022】
比較的低い詳細レベルを有する第2の命令セットは、好都合には、比較的高い詳細レベルを有する第1の命令セットのサブセットをなすことができる。したがって、第2の命令セットを第1の命令セットの一部として記憶することができ、それによって第2の命令セットのための別個の記憶スペースが必要とされないという意味で、メモリリソースを節約することができる。
【0023】
センサシステムおよび命令セットが、血液試料から血液を正しく吸引するために使用者が血液ガス分析装置に対して携帯型血液試料容器を位置決めすることを容易にし得るのを実現する目的で、入口構造体に対する携帯型血液試料容器の位置および/または配向を検出するための少なくとも1つのセンサは、血液ガス分析装置の吸引点に対する受取り構造体の変位、および/または携帯型血液試料容器の変位を検出するように構成され得る。吸引システムの吸引点は、携帯型血液試料容器の前方端部と接触するように構成されてもよく、入口構造体は、携帯型血液試料容器の少なくとも一部を中に受けるための受取り構造体を備えることができ、受取り構造体および吸引点は、吸引点に対して受取り構造体が変位しかつ/または携帯型血液試料容器が変位すると、携帯型血液試料容器の前方端部と吸引点との間に流体流路を確立するように構成される。
【0024】
少なくとも1つのセンサ信号の査定は、少なくとも、携帯型血液試料容器の前方端部が吸引点と流体連通しているかどうかを示すことができ、予め記憶された少なくとも2セットの使用者命令のうちの少なくとも1つは、携帯型血液試料容器を吸引点に向かってさらに押すように使用者に命令する信号を備えることができる。追加的に、または別法として、予め記憶された少なくとも2セットの使用者命令のうちの少なくとも一方は、入口構造体に対する血液試料容器の角度を調節するように使用者に命令する信号を備えることができる。一実施形態では、予め記憶された少なくとも2セットの使用者命令のうちの少なくとも一方は、入口構造体に対する血液試料容器の角度を調節するように使用者に命令する信号を備え、続いて携帯型血液試料容器を押すように使用者に命令する信号を備える。したがって、制御装置は、入口構造体の静止部に対する、携帯型血液試料容器および/または入口構造体の変位可能部の検出された変位の査定に基づいて、予め記憶された命令セットを選択するように構成されてもよく、この場合、予め記憶された少なくとも2セットの使用者命令のうちの少なくとも一方は、携帯型血液試料容器の位置および/または配向をどのように調節するかについての命令を備えることができる。
【0025】
たとえば、査定により、携帯型血液試料容器の前方端部が吸引点と流体連通していないことが示された場合、制御装置は、たとえば、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第1のセットを選択することができる。したがって、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第1のセットは、携帯型血液試料容器を吸引点に向かってさらに押すように、かつ/または入口構造体に対する血液試料容器の角度を調節するように使用者に命令する信号を備えることができる。
【0026】
査定により、携帯型血液試料容器が吸引点に完全に連結されたことが示された場合、制御装置は、たとえば、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第2のセットを選択することができる。したがって、携帯型血液試料容器は吸引点に完全に連結されているので、通常は携帯型血液試料容器を入口構造体にさらに押し込むように使用者に命令する必要はなく、入口構造体に対する血液試料容器の角度を調節するように使用者に命令する必要もない。
【0027】
入口構造体の少なくとも1つのセンサは少なくとも2つのセンサを備えることができ、そのうちの第1のセンサは、携帯型血液試料容器の前方端部が吸引点と流体連通していないある位置における携帯型血液試料容器の存在を検出するように構成され、そのうちの第2のセンサは、携帯型血液試料容器の前方端部が吸引点と流体連通しているある位置における携帯型血液試料容器の存在を検出するように構成される。
【0028】
たとえば、2つのセンサは2つのホールセンサの形をとってもよく、それぞれが上述のように携帯型血液試料容器の各位置を検出する。代替手段として、第1のセンサはホールセンサでもよく、一方第2のセンサは吸引点における血液の存在を検出するセンサでもよい。
【0029】
携帯型血液試料容器の検出された存在は、血液ガス分析装置の使用者に適当な命令セットを選択する際に制御装置によって使用され得る。たとえば、少なくとも2つのセンサのうちの第1のセンサのみが携帯型血液試料容器の存在を検出した場合、このことは、携帯型血液試料容器が吸引点と流体連通していないことを示す。したがって、制御装置は、吸引システムが携帯型血液試料容器から血液を吸引することが可能になり得るように、たとえば血液ガス分析装置に対する携帯型血液試料の角度を調節し、かつ/または携帯型血液試料容器を吸引点に向かってさらに押すように使用者に命令する信号を送ることができる。
【0030】
少なくとも2つのセンサのうちの第2のセンサが携帯型血液試料容器の存在を検出した場合、これは、携帯型血液試料容器が吸引点と流体連通していることを示すことができる。したがって、制御装置は、携帯型血液試料容器から血液が吸引され得るように、たとえば、吸引システムを開始するように使用者に命令し、または血液ガス分析装置に自動で吸引を始めるように命令する信号を送ることができる。
【0031】
少なくとも2つのセンサを使用して携帯型血液試料容器の存在を検出することにより、吸引システムが携帯型血液試料容器から血液を吸引することが可能になる位置に携帯型血液試料容器が存在するという確実性をこのように得ることができる。
【0032】
吸引システムは、制御装置によって制御されかつ入口構造体の少なくとも1つのセンサに動作可能に接続されたポンプをさらに備え、制御装置は、携帯型血液試料容器が入口構造体に対してその所定の位置および/または配向にあることが検出された後にのみポンプを作動させるように構成され得る。したがって、制御装置は、少なくとも1つのセンサが入口構造体に対して指定された位置および/または配向にある携帯型血液試料容器を検出した場合に、ポンプを作動させることができる。それによって、携帯型血液試料容器から血液を吸引することが可能である位置に携帯型血液試料容器が存在するときにポンプが作動されるのを確実にすることができる。これにより、失われる試料の数を減少させることができ、それによって成功する携帯型測定の数を増加させることができる。さらに、血液ガス分析装置の内部液体導管においてキャビテーションが起きるリスクを軽減または除去することができる。
【0033】
たとえばシリンジ、毛細管、またはバキュテイナ管であるそのタイプなどの携帯型血液試料容器の特定の特徴に命令の選択を適応させるために、入口構造体は、たとえばシリンジ、毛細管、またはバキュテイナ管であるそのタイプなどの携帯型血液試料容器の特徴を使用者が手動で入力することを可能にする、たとえば命令出力装置の一部としてのタッチスクリーンボタン、または機械的押しボタンなどのインタフェースを備えることができる。
【0034】
たとえばシリンジ、毛細管、またはバキュテイナ管であるそのタイプなどの携帯型血液試料容器の特定の特徴に命令の選択を適応させるために、入口構造体は、携帯型血液試料容器の少なくとも1つの特徴を自動で判定するためのインタフェースを備えることができる。携帯型血液試料容器の適した識別子は、少なくとも1つの無線(RF)タグ、BlueToothエミッタ、他のタイプの無線装置、携帯型血液試料容器の外表面の突出部もしくはくぼみ、またはその任意の他の機械的に検出可能な部分、携帯型血液試料容器もしくはその一部の特定の外寸、またはクイックリーダ(QR)コードもしくはバーコードなどの機械可読コードのうちの1つまたは複数を含んでもよい。携帯型血液試料容器の少なくとも1つの特徴を自動で判定するためのインタフェースは、上述の特徴のうちの任意の1つを判定するための任意の適した受信機またはセンサを備えてもよい。
【0035】
命令出力装置はモニタを備えてもよく、予め記憶された命令セットは、アニメーション化された映像順序を備えてもよい。この文脈では、用語「アニメーション化された映像順序」は、視覚的要素が動く画像として見えるように操作された順序を意味すると解釈されるべきである。アニメーションは、コンピュータで生成されたイメージ(imaginary)を用いて作成されてもよい。アニメーションの錯覚効果は、互いとの違いが最小限である一連の画像を高速で連続させることによって実現され得る。たとえば、アニメーション化された映像順序は、携帯型血液試料容器の提案された調節を使用者の視点から示すことができる。さらに、アニメーション化された映像順序は、任意の特定の動作、および/または任意のこうした動作に関連付けられる使用者への触覚フィードバックを使用者が認識するのを促進するように、また想定される動作を種々の観点から示すように生成され得る。アニメーション化された映像順序は、使用者に提示される実際の状況に似るように、すなわち目下の作業に見えるように生成され得る。
【0036】
携帯型血液試料容器を受ける入口構造体を備えることに加えて、血液ガス分析装置は、携帯型ではないが代わりに自動的に取り扱われる血液試料容器を取り扱うように適応されてもよい。たとえば、分析装置は、1つまたは複数のスロットを備える試料採取器台を備えてもよく、それぞれのスロットは、血液試料を収容する試料採取器を受けるように構成される。試料採取器台が2つ以上のスロットを備える場合、分析装置は、試料の列を取り扱い、どの情報がどの試料に関連するかを把握することを含めて、2つ以上の試料を同時に取り扱うようにさらに適応され得る。試料は、所与の時点で同じように取り扱われなくてもよい。たとえば、ある試料は分析されてもよく、1つまたは複数の他の試料は分析すべき列に存在してもよい。
【0037】
第2の態様によれば、本発明は、血液ガス分析装置および携帯型血液試料容器を備える、血液試料中の分析物パラメータについての測定を実施するためのシステムを提供し、血液ガス分析装置は、
- 制御装置と、
- 入口構造体に対する携帯型血液試料容器の存在、位置、および/または配向を検出し、携帯型血液試料容器の検出された存在、位置、および/または配向を表す少なくとも1つのセンサ信号を出力するための少なくとも1つのセンサを備えるセンサシステムと、
- 携帯型血液試料容器から血液試料を吸引するための吸引システムであって、吸引システムが、
- 携帯型血液試料容器に連結するための入口構造体を備える、吸引システムと、
- ユーザインタフェースシステムであって、
- 血液ガス分析装置の使用者に命令を出力するための命令出力装置と、
- 少なくとも2つの予め記憶された命令セットを備える電子メモリとを備えるユーザインタフェースシステムと
を備え、
血液ガス分析装置の制御装置は、
- 入口構造体内での携帯型血液試料容器の検出された存在、位置、および/または配向を表す少なくとも1つのセンサ信号を受け取り、
- 少なくとも1つのセンサ信号の査定に基づいて、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの一方を選択し、
- 命令出力装置に、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの選択されたセットを命令出力装置において出力させるように構成されている。
【0038】
血液ガス分析装置は、具体的には、本明細書に開示されるその任意の実施形態を含む、本発明の第1の態様による血液ガス分析装置を含むことができる。したがって、本発明の第1の態様を参照して上に述べた所見は、本発明の第2の態様のシステムに関連して同様に適用可能である。
【0039】
入口構造体は、携帯型血液試料容器の少なくとも1つの特徴を自動で判定するためのインタフェースを備えることができる。したがって、携帯型血液試料容器はその少なくとも1つの特徴を識別する識別子を備えてもよく、血液ガス分析装置は、血液試料容器の識別子から少なくとも1つの特徴を導出するためのデータ取込み装置を備えてもよい。この実施形態によれば、それぞれの携帯型血液試料容器の特徴は、その特徴に固有の識別子によって判定されることが好ましい。携帯型血液試料容器の適した識別子は、少なくとも1つの無線(RF)タグ、BlueToothエミッタ、他のタイプの無線装置、携帯型血液試料容器の外表面の突出部もしくはくぼみ、またはその任意の他の機械的に検出可能な部分、携帯型血液試料容器もしくはその一部の特定の外寸、またはクイックリーダ(QR)コードもしくはバーコードなどの機械可読コードのうちの1つまたは複数を含んでもよい。携帯型血液試料容器の少なくとも1つの特徴を自動で判定するためのインタフェースは、上述の特徴のうちの任意の1つを判定するための任意の適した受信機またはセンサを備えてもよい。
【0040】
携帯型血液試料容器は、たとえばシリンジ、毛細管、またはバキュテイナを備えることができる。たとえば、携帯型血液試料容器の上述の特徴は、たとえば制御装置によって認識可能な数値的識別子、またはその寸法もしくは容積などの、そのタイプについての任意の特徴を含むことができる。
【0041】
本発明は、血液試料中の分析物パラメータについてのポイントオブケア(POC)測定のための、本発明の第2の態様によるシステムの使用をさらに提供する。POC測定は、当技術分野では「ベッドサイト」測定とも呼ばれる。この文脈において、用語「ポイントオブケア測定」は、患者のすぐ近くで行われる測定、すなわち実験室で行われない測定を意味すると理解されるべきである。したがって、この実施形態によれば、血液ガス分析装置の使用者は、携帯型血液試料容器内の血液試料の測定を、血液試料が取られた患者の近くで、たとえば患者のベッドを収容している病室もしくは病棟で、または同じ診療科の近くの部屋で実施する。こうした場合、使用者の専門技術のレベルは初心者から経験を積んだものまで様々であることが多く、したがって、血液ガス分析装置がセンサ入力に基づいてそれぞれの個々の使用者の技能に適合する命令を自動で出力できることは、こうした環境では特に有益である。
【0042】
次に、添付図面を参照してより詳細に本発明について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】本発明の一実施形態による血液ガス分析装置の概略図である。
図2】本発明の一実施形態による血液ガス分析装置の側面図である。
図3】本発明の一実施形態による血液ガス分析装置を介して提示される視覚的命令を示す図である。
図4】本発明の一実施形態による血液ガス分析装置を介して提示される視覚的命令を示す図である。
図5】本発明の一実施形態による血液ガス分析装置を介して提示される視覚的命令を示す図である。
図6】本発明の一実施形態による血液ガス分析装置を介して提示される視覚的命令を示す図である。
図7】本発明の一実施形態による血液ガス分析装置を介して提示される視覚的命令を示す図である。
図8】本発明の一実施形態による血液ガス分析装置を介して提示される視覚的命令を示す図である。
図9】本発明の一実施形態による血液ガス分析装置を介して提示される視覚的命令を示す図である。
図10】本発明の一実施形態による血液ガス分析装置を介して提示される視覚的命令を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1は、制御装置8と、1つまたは複数の分析物センサ3(a~i)および4と、測定チャンバ2と、流体処理インフラストラクチャ20とを有する血液ガス分析装置1の概略図である。測定を実施するために、使用者は携帯型血液試料容器100(図3図10を参照)を使用して、血液ガス分析装置1の入口構造体12a/bに血液試料を提供することができる。携帯型血液試料容器を入口構造体12a/bに連結するとき、センサシステム5は携帯型血液試料容器の存在、位置、および/または配向を検出する。携帯型血液試料の検出された存在、位置、および/または配向についてのセンサ信号が、センサシステム5から制御装置8に提供される。制御装置8は、検出されたセンサ信号が、携帯型血液試料容器100が吸引点と流体連通しているかどうかを示すかどうかを査定する。
【0045】
査定により、携帯型血液試料容器100が吸引点に完全に連結されていないことが示された場合、制御装置8は、たとえば、電子メモリ8aに記憶された、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちのうちの第1のセットを選択し、選択された予め記憶された命令セットをモニタ30などの出力装置に出力することができる。少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第1のセットは、携帯型血液試料容器を吸引点に向かってさらに押すように使用者に命令する信号を備え、それにより、血液ガス分析装置1および携帯型血液試料容器100をどのように取り扱うかについて、使用者にさらなる助けを与えることができる。少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第1のセットは、たとえば血液ガス分析装置1の取扱いに完璧に精通しているわけではない初心者である使用者のニーズに適合するように調整され得る。
【0046】
センサシステム5によって提供されたセンサ信号についての制御装置による査定により、携帯型血液試料容器が吸引点に完全に連結されたことが示された場合、または示されると、制御装置8は、たとえば、少なくとも2セットの予め記憶された命令セットのうちの第2のセットを選択することができる。したがって、携帯型血液試料容器が吸引点に完全に連結されると、携帯型血液試料容器を入口構造体12a/bにさらに押し込むように使用者に命令する必要性がなくなる場合がある。したがって、第1の命令セットの出力は省略される場合がある。
【0047】
センサ5は少なくとも2つのセンサを備えることができ、そのうちの第1のセンサは、携帯型血液試料容器100が吸引点と流体連通していないある位置における携帯型血液試料容器の、携帯型血液試料容器100の存在、位置、および/または配向を検出することができる。第2のセンサは、携帯型血液試料容器が吸引点と流体連通しているある位置における携帯型血液試料容器の、携帯型血液試料容器の存在、位置、および/または配向を検出することができる。したがって、第1のセンサまたは第2のセンサは、携帯型血液試料容器100の検出された位置に応じて、制御装置8にセンサ信号を送ることができる。
【0048】
血液試料は、吸引点から入口6を通り、複数の分析物センサ3および4を備える測定チャンバ2へと移送される。分析物センサ3および4は、血液試料中の分析物パラメータについての測定値を提供するように構成される。分析物センサ3および4は、各分析物についての物理的パラメータを表す信号を生成し、その信号を制御装置8に提供する。制御装置8は、分析物センサ3および4からの信号を受け取りかつ処理し、処理された信号をモニタ30において出力として使用者に提示するように構成される。図1に示されているように、流体処理インフラストラクチャ20は、たとえば洗浄/洗い流し、キャリブレーション、および品質管理の作業のための処理液で予め充填された複数のリザーバ21を含む。所与の処理液の正確な組成は、チップ25に記憶されてもよい。所与の処理段階のための処理液は流体セレクタ弁22によって選択され、供給ライン12cを介して吸引点から測定チャンバ2へと移相され得る。測定チャンバ2の正しい充填は、たとえば吸引点に、測定チャンバ2の出口に、また測定装置9の後に位置付けられた液体センサ10(a~c)によって監視される。血液ガス分析装置1を通る流体の流れは、流体ライン13を介して測定装置9に連結されたポンプ23によって動かされる。排出された処理流体は、流体ライン14を通って廃棄物リザーバ24へと運搬される。
【0049】
図2は、血液ガス分析装置入口構造体の側面図である。図2の血液ガス分析装置は、図1に記載の血液ガス分析装置によるものでもよい。したがって、図1を参照して上に述べた所見は、ここで同様に適用可能である。血液ガス分析装置は、静止部12dおよび変位可能部12eをさらに有する。血液ガス分析装置のセンサ5は、血液ガス分析装置および/または入口構造体12a/bの静止部12dに対する、携帯型血液試料容器100および/または携帯型血液試料容器と接触するように構成された入口構造体12a/bの変位可能部12eの、具体的には貫入深度などの位置を検出するように構成され得る。検出された貫入深度が不十分である場合、血液ガス分析装置は、携帯型血液試料容器を血液ガス分析装置に向かってさらに押すように使用者に命令する予め記憶された命令セットを選択し、それによって携帯型血液試料容器が入口構造体12a/bに適切に挿入されるのを確実にすることができる。
【0050】
図3図10には、血液ガス分析装置を介して提示される命令の例が示してある。使用者102は、携帯型血液試料容器100を血液ガス分析装置1の入口構造体12a/bに連結する。こうした携帯型血液試料容器100は、たとえばシリンジまたは毛細管を備えることができる。血液ガス分析装置のセンサシステム5(図1および図2を参照)は、携帯型血液試料容器100の存在、位置、および/または配向を検出し、図1を参照して上述した方式で、予め記憶された命令セットを選択することができる。図3図10の実施形態では、モニタ30に示されている命令は、携帯型血液試料容器100を血液ガス分析装置1の入口構造体12a/bに押し込むように使用者102に命令する。図4では、血液ガス分析装置1が携帯型血液試料容器100を血液ガス分析装置1の入口構造体12a/bに押し込むように使用者102に命令している間に、使用者102は携帯型血液試料容器100の角度的配向を調節するように命令されている。図5および図6では、血液ガス分析装置は、血液が吸引されている間、携帯型血液試料容器100を血液ガス分析装置1の入口構造体12a/bに押し込み続けるように使用者102に命令する。
【0051】
図7および図8に示されているように、センサシステム5が携帯型血液試料容器100の位置を検出すると、血液ガス分析装置1は携帯型血液試料容器100から血液試料を吸引し始める。吸引が完了すると、血液ガス分析装置1は、図9に示されているように携帯型血液試料容器100を血液ガス分析装置1から取り出すように使用者102に命令し、血液試料の測定を開始する(図10を参照)。
【0052】
センサシステム5により、使用者が携帯型血液試料容器100をその前方端部が血液ガス分析装置内の吸引点に到達するのに十分な貫入深度まで進めるのが困難な可能性があることが示された場合、図3図7に示されている命令が制御装置によって選択される。しかし、センサシステム5により、使用者が血液ガス分析装置の内部流れ導管との流体連通が確立される位置まで携帯型血液試料容器100を容易に進めていることが示された場合、図7図10に示された命令のみが選択される。したがって、図3図7のすべてに示された命令セットは、総合すると、経験不足の初心者である使用者の技能および経験に適合するように調整された、第1の、比較的高い詳細レベルを有する第1の命令セットを示すことが理解される。図3図6の命令のサブセットを含まない、図7図10に示された命令のサブセットは、経験を積んだ使用者の技能および経験に適合する第2の、比較的低い詳細レベルを有する第2の命令セットを示す。
【0053】
命令がアニメーション化された映像命令などの映像命令を含む場合、第1の、比較的高い詳細レベルを有する映像命令のサブセットは、第2の、比較的低い詳細レベルを有する映像命令のサブセットよりも長い可能性があり、すなわちより多くの詳細、より多くのフレームを含む可能性があり、かつ/または減速された速さで再生される可能性がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】