(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】半導体デバイスの仮ボンディング用乾式接着材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20230726BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
H01L21/68 N
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023501633
(86)(22)【出願日】2021-07-08
(85)【翻訳文提出日】2023-02-13
(86)【国際出願番号】 US2021040966
(87)【国際公開番号】W WO2022011193
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523009953
【氏名又は名称】ナノグリップテック,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】NANOGRIPTECH,INC.
【住所又は居所原語表記】91 43rd Street,Suite 130,Pittsburgh,PA 15201 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110001438
【氏名又は名称】弁理士法人 丸山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グラス,ポール サミュエル
(72)【発明者】
【氏名】デシュパンデ,シュリ
(72)【発明者】
【氏名】ボーン,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ゲイコウスキ,エリオット
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA60
5F131CA12
5F131CA32
5F131CA33
5F131DA33
5F131DA42
5F131EA07
5F131EA17
5F131EB54
5F131EB56
5F131EB58
5F131EB75
5F131EC43
5F131EC54
5F131EC62
5F131EC72
5F131EC73
5F131GA05
5F131GA26
5F131GA68
(57)【要約】
【解決手段】先端部が拡大した複数のファイバーを備える乾式接着マイクロファイバーアレイであって、その乾式接着材はシリコンウエハ及び/又はキャリアの表面に接着可能である。その乾式接着材は、化学薬品又は熱を使わずにデボンディングでき、ウエハ表面に残らない。加えて、乾式接着材と半導体デバイスの界面に液体を導入することで、接着力を調節することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスをキャリアに仮ボンディングするための接着材であって、
先端部が拡大した複数のファイバーを有する乾式接着マイクロファイバーアレイを備えており、
前記先端部は、前記半導体デバイスの表面に接触するように構成されており、
前記先端部は、機械的な動作によって前記半導体デバイスから外れるように構成されている、接着材。
【請求項2】
前記先端部と前記半導体デバイスの表面との界面に配置された液体を更に備える、請求項1に記載の接着材。
【請求項3】
半導体デバイスをキャリアにボンディングする方法において、
拡大した先端部で終端する複数のファイバーを有する乾式接着マイクロファイバーアレイを提供することと、
前記乾式接着マイクロファイバーアレイの先端部を前記半導体デバイスの表面に接触させて、前記半導体デバイスが前記乾式接着マイクロファイバーアレイに付着することと、
前記乾式接着マイクロファイバーアレイを前記キャリアに貼り付けることと、
を含む方法。
【請求項4】
機械的な動作により、前記マイクロファイバーアレイを前記シリコンウエハからデボンディングすることを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記機械的な動作は、前記シリコンウエハから前記マイクロファイバーアレイを剥がすことを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記機械的な動作は、前記シリコンウエハを前記キャリアの表面に平行な方向に移動させることを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
バッキング層の表面における前記複数のファイバーの密度を変化させることにより、前記マイクロファイバーアレイの結合強度を調節することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記マイクロファイバーアレイの結合強度を、前記先端部の表面積を変化させることで調節することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記半導体デバイスを前記乾式接着マイクロファイバーアレイに接着させた状態で、前記キャリアの位置を操作することを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
前記マイクロファイバーアレイを濡らして接着力を増加させることを更に含む、請求項3に記載の方法。
【請求項11】
前記キャリアから前記半導体デバイスを外す前に前記マイクロファイバーアレイを乾燥させることを更に含む、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願との相互参照>
本願は、2020年7月8日に出願された仮出願第63/049,314の35 U.S.C119条に基づく利益を主張するものであり、当該仮出願は、参照により本明細書の一部となる。
【0002】
<連邦政府資金による研究の記載>
無し。
【0003】
本発明は概して、乾式接着材に関する。より具体的には、本発明は、製造中においてシリコンウエハをキャリアに仮ボンディングするために使用される、マイクロスケールやナノスケールのファイバーアレイを含む乾式接着材に関する。
【背景技術】
【0004】
半導体製造は、幾つかの処理工程を含んでいる。例えば、プロセッサへと加工されるシリコンウエハには、洗浄、パッシベーション、フォトリソグラフィ、エッチング、デポジション、研磨、研削、ダイシング、チップ/ダイパッケージングなどが施される。各処理工程においてウエハ、ダイやその他の半導体デバイスを丁寧に取り扱うことが、スループットを向上させ、製造装置のフットプリントを削減し、粒子汚染を抑制/防止して、高い歩留まりを維持するために求められる。ウエハレベルパッケージング(WLP)プロセスの導入が進むことで、適切なウエハハンドリング技術の必要性が高まっている。WLPプロセスでは、ダイがまだウエハ上にある間にダイのパッケージングが行われる。ウエハは、半導体チップ/デバイスを使用するモバイルデバイスの多様性によってより薄くなってきている。WLPのために薄いウエハの取り扱いを可能にするために、製造工程では、ウエハをキャリア又は基材に仮ボンディングすることがある。処理工程の幾つかはウエハの裏側で実行されることからウエハのデバイス側で一時的なボンディングが起こるので、ウエハのデバイス側への損傷を防ぐためにはボンディング-デボンディングプロセス(BDB)が非常に重要になる。一般的に、仮ボンディング材料には、広い面への接着性、高ストレス基材との接着性、及び広い温度範囲での接着性が求められる。
【0005】
仮ボンディングは、幾つかの技術によって行うことができる。ある例では、ウエハとキャリアの間に液状接着剤が使用される。接着剤によるボンディングでは、液状の熱可塑性接着剤がウエハのデバイス側にスピンコーティングされて、その後、約200乃至250度の高温で硬くされる。これらの追加工程は、スループットを低下させて、全体的なコストを増加させる可能性がある。更に、処理の完了時には、ウエハは、薬液、熱、又はレーザーなどの手段を用いてキャリアからデボンディングされる必要がある。ケミカルデボンディングでは、ウエハが溶剤に曝されて汚染される可能性が高くなり、また、大型ウエハでは時間効率が良くない。熱でデボンディングすると、高温で基材が曲がったり反ったりすることで歩留まりが低下する可能性がある。最後に、レーザーデボンディングには透明なキャリアが必要であるが、ウエハ検出・位置合わせシステムは大抵の場合目視を用いたシステムなので、他の処理工程への変更が必要になる場合がある。別の仮ボンディング技術では、感圧接着テープが使用される。しかしながら、この種のテープは、デボンディング後に残留物を残すことがあり、ウエハから残留物を除去するための更なる処理工程が必要となる。更に、これらの既存技術の多くは、使用する接着材料の固有の特性によって結合強度が決定されることから、特定の用途に合わせた調節が容易ではない。
【0006】
従って、これらの制限を、結合強度の微調節を可能にする一方で汚染除去とウエハの損傷の可能性を減らすような効率的なボンディング/デボンディングプロセスを提供することによって克服する乾式接着材を開発することは有益であろう。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態によれば、乾式接着材は、シリコンウエハの表面のような、滑らかな平坦面や模様面に付着可能なファイバーのアレイを有する。乾式接着材は、ある実施形態では、表面から延びるマイクロスケール又はナノスケールのファイバーのアレイを含んでおり、それらファイバーの先端部の形状は拡大している。先端部はウエハの表面に接触して、接着力を発揮する。除去は、乾式接着材をウエハから剥がすか、乾式接着材の表面に平行な方向にウエハを移動させることで行える。加えて、乾式接着材は湿らせると、その接着力を高めることができる。その結果、水やイソプロピルアルコールなどの液体を導入することで、接着材の接着特性を調節することができる。
【0008】
乾式接着材は、薄膜、テープとして形成されてよく、又は、キャリアの表面に直接組み合わせられてよい。乾式接着材のデボンディングは、キャリアからウエハを物理的に除去する以外に薬液や複雑な処理工程を必要としない。乾式接着材は複雑な多成分液状接着剤ではないことから、デボンディング後にウエハ表面に残る残留物が大幅に削減される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、ある実施形態に基づく乾式接着材の構造を示す画像である。
【0010】
【
図2】
図2は、乾燥状態及び湿潤状態における接着材の接着力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
ある例示的な実施形態では、乾式接着マイクロファイバーアレイ100は、バッキング層、キャリア、又は基材102に付着する複数のファイバー101を含む。一実施形態では、ファイバー101は、実質的に垂直な角度でバッキング層、キャリア、又は基材102に付着する。各ファイバーは、ステム103と、拡大した先端部104(即ち、先端部の半径がステムの半径よりも大きい)とを含む。一実施形態では、先端部104は、平らな表面を有するキノコ状の先端部104である。ステム103と先端部104は、(先端部104との接続箇所105までの)ステム103の半径aがステム103の長さに沿って一定となるように、対称軸回りに対称的である。しかしながら、代替的な実施形態ではステム103の半径はその長さに沿って変化してよく、バッキング層102の近くのステム103の半径が拡大するような一実施形態も含まれる。先端部104はまた、対称性を有しており、径方向に定置されているので、シリコンウエハ、チップ、ダイ、半導体パッケージ等の半導体デバイスの表面への接触性が高められている。一実施形態では、先端部104の表面とステム103の断面とは、円形になっている。他の実施形態では、しかしながら、長円形又は楕円形の形状及び/又は断面が採用されてよい。きのこ状の先端部104の下側側面の形状は直線状であるが、代替的に、ステム軸方向及び先端面に対して凸状又は凹状にされてよい。
【0012】
代替的実施形態において、乾式接着材100は、両面テープのように両面にファイバーを有するフィルム又はテープを備えてよい。この構成では、テープ100がキャリアに配置されて、その後、半導体デバイスがテープ100の上に配置される。デボンディングの際、製造者はキャリアをデバイスから取り外すか、又は、デバイスをキャリアから取り外すかを選択できる。例えば、ウエハが後続の処理工程のために別のキャリアに移される場合、ウエハ及びテープ100は、キャリアから取り外されて、別のキャリアの表面に置かれてよい。乾式接着ファイバーアレイ100は、取り外されても接着力が低下しないことから別のキャリアに接着できる。乾式接着材100をウエハに貼り付けたままにすることで、ウエハのデバイス側を含むハンドリング工程が削減される。
【0013】
ボンディングプロセスでは、乾式接着材100の複数のファイバー101が、当該技術分野で知られているように、デバイスの表面に付着、又はその他の方法で結合する。より具体的には、ファイバー101の先端部104がデバイスの表面に接触して、接着力をもたらす。乾式接着材100の結合強度は、特定の処理工程に合わせて調節される。例えば、デバイスが大きな力や乱暴な取り扱いを受けないクリーニング工程を施されている場合には、より小さい結合強度が用いられてよい。小さい結合強度を用いることで、デボンディング時にデバイスを損傷する可能性を低減できる。結合強度は、ファイバー設計のパラメータを変えることで調節でき、当該パラメータには、ファイバー長、ファイバー半径、バッキング層の厚さ、先端直径、先端高さ、先端面と側面との角度、ファイバー密度、材料選択などが挙げられる。ある例示的な実施形態では、ファイバー101は、当該分野における通常の知識を有する者に知られている成形プロセスでポリウレタンから作られる。この例示的な実施形態では、乾式接着材100は、4μmのステム半径、8μmの先端半径、及び20μmの長さを有するファイバー101を有してよい。
【0014】
先に説明したように、ファイバーの特性を変化させることで結合強度を調節することができる。水やイソプロピルアルコールなどの液体の存在も、乾式接着材100の接着特性に影響を与え得る。液体が存在しているが、糊のように液体が直接接着をもたらさないので、接着材100は乾式接着材であると考えられる。つまり、その液体は接着材ではない。むしろ、液体は、デバイスの表面とファイバー101の先端部104との間の界面に影響を与える。
図2は、乾燥した状態(下側の線)とイソプロピルアルコールで濡らされた状態(上側の線)である2つの状態における乾式接着材100の接着力を示している。
図2のy軸は法線力をニュートンで示し、X軸は同じ乾式接着材100の個々の測定値を示している。
図2は、一連の20回の測定と、それに続く、3日後の追加の5回の測定を示している。追加の5回の試験は、イソプロピルアルコールに曝された後のファイバーの弾力性を示す。
図2に示すように、イソプロピルアルコールの存在は、乾式接着材100と比較して、法線方向の接着力を増加させる。
【0015】
乾燥状態と濡れ状態との間の接着力の差がデボンディング段階で利用されて、キャリアからデバイスを取り外すのに必要な力をできるだけ小さくする。例えば、半導体デバイスは乾式接着材100でボンディングされて、イソプロピルアルコールで濡らされてから加工を開始されてよい。イソプロピルアルコールの存在は接着力を増加させる。加工後、接着材100は、冷気又は加熱空気の流れを利用して乾燥されてよい。乾燥させると、接着力が弱まってキャリアから半導体デバイスを容易に外すことができる。
【0016】
乾式接着材100は、ボンディング及びデボンディングについて既存の機構を超える特有の利点を提供する。例えば、本発明の乾式接着材100は、室温でボンディング及びデボンディング可能であるので、不必要な熱への暴露や、熱膨張係数の変化による潜在的な不具合を防止することができる。更に、全てのデボンディングプロセスは異っているため(即ち、標準的なデボンディング工程は存在しない)、結合強度を調節できることは、機械的な除去工程でウエハのデバイス側を損傷しないことを保証する一方で、必要とされる接着強度はプロセスを通して取り付けを維持できる程度であることを意味する。このように、既存のボンディング機構と比較して、乾式接着ファイバーアレイ100は、プロセススループットの向上、処理の簡略化、低温接合プロセスの提供、及び高歩留まりを可能にする。
【0017】
上記の説明、添付の特許請求の範囲、又は添付の図面に開示された特徴は、それらの具体的な形態で、或いは、開示された機能を実行するための手段、又は開示された結果を達成するための方法又はプロセスの観点から表現されており、必要に応じて、それらの特徴は、別々に又は任意に組み合わされて本発明を多様な形態で実現するために利用されてよい。特に、本明細書に記載された任意の実施形態における1又は複数の特徴は、本明細書に記載された他の任意の実施形態の1又は複数の特徴と組み合わされてよい。
【0018】
また、本開示との組合せで参照されている及び/又は参照により組み込まれる1又は複数の刊行物に開示された任意の特徴についても保護が求められ得る。
【国際調査報告】