(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】ロボット用の減速ギアボックスおよび減速ギアボックスを備えたロボット
(51)【国際特許分類】
F16H 1/32 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
F16H1/32 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502858
(86)(22)【出願日】2021-06-17
(85)【翻訳文提出日】2023-01-13
(86)【国際出願番号】 DE2021100520
(87)【国際公開番号】W WO2022012712
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】102020118797.1
(32)【優先日】2020-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515009952
【氏名又は名称】シェフラー テクノロジーズ アー・ゲー ウント コー. カー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】Schaeffler Technologies AG & Co. KG
【住所又は居所原語表記】Industriestr. 1-3, 91074 Herzogenaurach, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ウーヴェ ユンギンガー
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー ベルシュ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス スメタナ
【テーマコード(参考)】
3J027
【Fターム(参考)】
3J027FA37
3J027FB32
3J027GC07
3J027GC22
3J027GD04
3J027GD08
3J027GD12
3J027GE25
(57)【要約】
本発明は、ロボット(12)用の減速ギアボックス(1)であって、波動発生器(2)によって回転する、外側歯部(3a)付きの半径方向に変形可能な可撓性リング要素(3)と、内側歯部(4a)付きの剛性リング要素(4)と、を備え、可撓性リング要素(3)の外側歯部(3a)は、トルクを伝達するために、少なくとも1つの歯の噛合い領域(5a、5b)において、剛性リング要素(4)の内側歯部(4a)と歯の噛合い状態にあり、波動発生器(2)は、回転要素(7)、回転要素(7)用の第1の軌道(8a)付き内側リング(8)、および回転要素(7)用の第2の軌道(9a)付き外側リング(9)を含む、非円形に形成された軸受要素(6)を有し、軸受要素(6)は、少なくとも部分的に可撓性リング要素(3)内へと軸線方向に突出し、内側リング(8)は、シャフト(16)に相対回転不能に接続され、軸受要素(6)は、単列円筒ころ軸受として形成され、回転要素(7)用の第2の軌道(9a)は、外側リング(9)の内周面において、半径方向で回転要素(7)の方向に少なくとも部分的に凸状に湾曲している、減速ギアボックス(1)に関する。更に、本発明は、そのような減速ギアボックス(1)を備えるロボット(12)に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボット(12)用の減速ギアボックス(1)であって、波動発生器(2)によって回転する、外側歯部(3a)付きの半径方向に変形可能な可撓性リング要素(3)と、内側歯部(4a)付きの剛性リング要素(4)と、を備え、前記可撓性リング要素(3)の前記外側歯部(3a)は、トルクを伝達するために、少なくとも1つの歯の噛合い領域(5a、5b)において、前記剛性リング要素(4)の前記内側歯部(4a)と歯の噛合い状態にあり、前記波動発生器(2)は、回転要素(7)、前記回転要素(7)用の第1の軌道(8a)付き内側リング(8)、および前記回転要素(7)用の第2の軌道(9a)付き外側リング(9)を含む、非円形に形成された軸受要素(6)を有し、前記軸受要素(6)は、少なくとも部分的に前記可撓性リング要素(3)内へと軸線方向に突出し、前記内側リング(8)は、シャフト(16)と相対回転不能に接続されている、減速ギアボックス(1)において、
前記軸受要素(6)は、単列円筒ころ軸受として形成されており、前記回転要素(7)用の前記第2の軌道(9a)は、前記外側リング(9)の内周面において、半径方向で前記回転要素(7)の方向に少なくとも部分的に凸状に湾曲していることを特徴とする、減速ギアボックス(1)。
【請求項2】
前記軸受要素(6)の前記内側リング(8)は、第1の縁部(8b)を有し、前記シャフト(16)は、第2の縁部(16a)を有することを特徴とする、請求項1に記載の減速ギアボックス(1)。
【請求項3】
前記軸受要素(6)の前記外側リング(9)は、第3の縁部(9b)および第4の縁部(9c)を有することを特徴とする、請求項1または2に記載の減速ギアボックス(1)。
【請求項4】
前記軸受要素(6)の前記可撓性リング要素(3)および前記外側リング(9)は、一体部品として形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の減速ギアボックス(1)。
【請求項5】
前記軸受要素(6)の前記内側リング(8)は、第1の縁部(8b)および第2の縁部(8c)を有することを特徴とする、請求項4に記載の減速ギアボックス(1)。
【請求項6】
前記軸受要素(6)の前記回転要素(7)は、保持器(10)の中で案内されていることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の減速ギアボックス(1)。
【請求項7】
前記軸受要素(6)の前記保持器(10)は、高分子材料で形成されていることを特徴とする、請求項6に記載の減速ギアボックス(1)。
【請求項8】
前記回転要素(7)用の前記第2の軌道(9a)は、半径方向で対向し、かつ前記可撓性リング要素(3)の前記外側歯部(3a)の実質的に中央に配置されている、前記外側リング(9)の領域内に形成されていることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の減速ギアボックス(1)。
【請求項9】
前記可撓性リング要素(3)の前記外側歯部(3a)は、トルクを伝達するために、前記波動発生器(2)の回転軸(11)を基準にして対称に対向している2つの歯の噛合い領域(5a、5b)において、少なくとも部分的に前記剛性リング要素(4)の前記内側歯部(4a)と歯の噛合い状態にあることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の減速ギアボックス(1)。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載の減速ギアボックス(1)を備える、ロボット(12)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボット用の減速ギアボックスであって、波動発生器によって回転する、外側歯部付きの半径方向に変形可能な可撓性リング要素と、内側歯部付きの剛性リング要素と、を備える、減速ギアボックスに関する。可撓性リング要素は、トルクを伝達するために、剛性リング要素と歯の噛合い状態にある。更に、本発明はまた、減速ギアボックスを備えたロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許第10 2018 123 915(A1)号によれば、波動発生器によって回転する、外側歯部付きの局所的に半径方向に変形可能な可撓性リング要素と、内側歯部付きの剛性リング要素と、を備える、減速ギアボックスが公知である。可撓性リング要素の外側歯部は、トルクを伝達するために、少なくとも1つの歯の噛合い領域において、剛性リング要素の内側歯部と歯の噛合い状態にある。波動発生器は、内側リングと、外側リングと、半径方向にそれらの間に配置されている回転要素と、からなる、非円形に形成された軸受要素を含む。軸受要素は、球面ころ軸受として形成されており、内側リングは、相対回転不能にシャフトに接続されている。外側リングおよび可撓性リング要素は、相対回転不能に相互接続されている、2つの個別部品である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、特にロボット用の、代替的な減速ギアボックスを開発することである。更に、減速ギアボックスは、長期の耐用期間を有している必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本課題は、特許請求項1の対象物によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項、説明および図面を参照されたい。
【0005】
本発明による、ロボット用の減速ギアボックスは、波動発生器によって回転する、外側歯部付きの半径方向に変形可能な可撓性リング要素と、内側歯部付きの剛性リング要素と、を備え、可撓性リング要素の外側歯部は、トルクを伝達するために、少なくとも1つの歯の噛合い領域において、剛性リング要素の内側歯部と歯の噛合い状態にあり、波動発生器は、回転要素、回転要素用の第1の軌道付き内側リング、および回転要素用の第2の軌道付き外側リングを含む、非円形に形成された軸受要素を有し、軸受要素は、少なくとも部分的に可撓性リング要素内へと軸線方向に突出し、内側リングは、シャフトに相対回転不能に接続され、軸受要素は、単列円筒ころ軸受として形成され、回転要素用の第2の軌道は、外側リングの内周面において、半径方向で回転要素(7)の方向に少なくとも部分的に凸状に湾曲している。
【0006】
ウェーブジェネレータ(Wave Generator)とも称する波動発生器は、シャフトと動作連結状態にあり、シャフトは、好適には電気機械によって駆動されて、波動発生器を回転運動させる。例えば、波動発生器、特に軸受要素の内側リングは、長円形または楕円形の横断面形状を有する。内側リングおよびシャフトは、好適には、個別の2つの部品であり、内側リングは、相対回転不能な接続を実現するために、例えば、シャフト上に押し付けられている。あるいは、内側リングおよびシャフトを一体部品として形成することが考えられる。波動発生器は、減速ギアボックスの駆動ユニットであり、シャフトと内側リングとの2ピース構成の場合、好適には、可撓性の、詳しく言えば弾性変形可能なリング要素に軸受要素と一緒に圧入される。例えば、シャフトは、中空シャフトとして形成されている。あるいは、シャフトは、中実シャフトとしても形成されていてもよい。
【0007】
可撓性リング要素は、フレクススプライン(Flexspline)とも称し、高強度かつねじれ剛性のスリーブ要素である。この可撓性リング要素は、波動発生器を軸受要素で少なくとも部分的に軸線方向に収容できるように可撓性に形成されており、波動発生器の外側形状に応じて局所的に変形可能である。特に、波動発生器の外側形状は、外側リングによって形成される。軸受要素の回転要素は、内側リングの外周面に設置され、回転要素用の第1の軌道は、内側リングの外周面に形成されている。更に、回転要素の軸受要素は、外側リングの内周面に設置され、回転要素用の第2の軌道は、外側リングの内周面に形成されている。可撓性リング要素は、軸受要素を備えた波動発生器を収容するために、少なくとも1つの開いた軸線方向側を有し、可撓性リング要素の内周面は、波動発生器の領域において、軸受要素の外側リングの外周面を相対回転不能に収容するように設計されている。
【0008】
外側リングは、相対回転不能にも、当初回転可能にも、可撓性リング要素と接続されてもよく、「当初回転可能」とは、軸受要素の可撓性リング要素への組付け中に外側リングが可撓性リング要素に対する直接的な回転止めを有しないことを意味する。しかし、外側リングは、可撓性リング要素の長円形または楕円形の形状への弾性変形後に、もはや回転できなくなり、これによって、可撓性リング要素に対して相対回転不能である。
【0009】
動作中、波動発生器が回転し、これによって、軸受要素の内側リングは、可撓性リング要素と、その中に相対回転不能に収容されている軸受要素の外側リングと、に対して、回転する。この場合、可撓性リング要素は、波動発生器の回転方向および回転速度に応じて弾性変形する。換言すれば、波動発生器は、減速ギアボックスの動作中、可撓性リング要素が全周変形を起こすことをもたらす回転運動を引き起こす。
【0010】
好ましくは、可撓性リング要素の外側歯部は、トルクを伝達するために、波動発生器の回転軸を基準にして対称に対向している2つの歯の噛合い領域において、少なくとも部分的に剛性リング要素の内側歯部と歯の噛合い状態にある。これによって、均一な力の導入または伝達を実現することができ、減速ギアボックスを省スペースに形成することができる。
【0011】
サーキュラスプライン(Circular Spline)とも称する剛性リング要素は、ねじれ剛性の剛性リングであり、その内側歯部は、可撓性リング要素の外側歯部より多くの歯を有する。特に、剛性リング要素は、中空ホイールとして形成されている。波動発生器の回転によって、可撓性リング要素および剛性リング要素の歯の常時の、全周噛合いがもたらされる。換言すれば、対向している歯の噛合い領域は、波動発生器の回転中、波動発生器の回転軸周りに、または円周方向に常時移動している。可撓性リング要素が有する歯は、剛性リング要素より少ないため、波動発生器の回転は、可撓性リング要素の剛性リング要素に対する相対移動をもたらす。この場合、単列円筒ころ軸受の回転要素の回転は、内側リングと外側リングとの間で行われる。
【0012】
円筒ころとして形成された回転要素は、外側リングの少なくとも部分的に凸状に湾曲している第2の軌道と組み合わせて、特に有利に、傾斜運動を軸受要素内で、ひいては波動発生器内でも補正することができる。外側リングの少なくとも部分的に凸状に湾曲している第2の軌道とは、回転要素用の外側の軌道として設けられている外側リングの内周面が、半径方向に、回転要素の内側に向かって、凸状の湾曲を有していることと理解されたい。特に、この凸状の湾曲は、回転要素に対して、部分的にだけでなく、第2の軌道に沿って全体にも延在している。外側リングの凸状に形成された第2の軌道の湾曲の半径または角度によって、ヘルツの接触応力を調整する、特に低減することができ、これにより、減速ギアボックスの耐用期間が延長される。更に、波動発生器の組立も、特に、円筒ころの数が増加し、円筒ころの直径が減少している場合に、玉軸受付き波動発生器と比べて単純化されている。
【0013】
本発明の好ましい実施形態によれば、軸受要素の内側リングは、第1の縁部を有し、シャフトは、第2の縁部を有する。第1の縁部または第2の縁部とは、回転要素の軸線方向の、したがって前面への摺動を可能にし、これによって、回転要素の軸線方向の位置を限定するように設計されている、実質的に半径方向に外側へ形成された内側リングまたはシャフトの形状、と理解されたい。
【0014】
好適には、軸受要素の外側リングは、第3の縁部および第4の縁部を有する。第3の縁部または第4の縁部とは、回転要素の軸線方向の、したがって前面への摺動を可能にし、これによって、回転要素の軸線方向の位置を限定するように設計されている、実質的に半径方向に内側へ形成された外側リングの形状、と理解されたい。
【0015】
本発明の更なる好ましい実施形態によれば、可撓性リング要素と、軸受要素の外側リングとは、一体部品として形成されている。換言すれば、可撓性リング要素および外側リングは、一体式であり、外側歯部と回転要素の第2の軌道とは、一体部品として1つの部品、すなわち可撓性リング要素に形成されている。したがって、外側リングは、可撓性リング要素に一体化されており、可撓性リング要素の外周面にある剛性リング要素用の歯切部の機能を、可撓性リング要素の内周面にある回転要素用の軌道の機能と結合している。単独の外側リングは存在しないため、外側リングと可撓性リング要素との間の隙間ばめはなく、この場合、これによって、減速ギアボックスの剛性が絶えず維持されることになり、これにより、減速ギアボックスの精度および効率性が向上している。
【0016】
好ましくは、軸受要素の内側リングは、第1の縁部および第2の縁部を有する。第1の縁部または第2の縁部とは、回転要素の軸線方向の、したがって前面への摺動を可能にし、これによって、回転要素の軸線方向の位置を限定するように設計されている、実質的に半径方向に外側へ形成された内側リングの形状、と理解されたい。
【0017】
本発明の好ましい実施形態によれば、回転要素は、保持器の中で案内されている。好適には、保持器は、高分子材料で形成されている。これによって、特に、回転要素の摩耗が低下する。
【0018】
好適には、回転要素用の第2の軌道は、半径方向で対向し、かつ可撓性リング要素の外側歯部の実質的に中央に配置されている、外側リングの領域内に形成されている。換言すれば、回転要素は、可撓性リング要素の外側歯部の中央で軸線方向に転動する。これによって、とりわけ滑らかかつ効率的な歯の噛合いが実現される。
【0019】
本発明は、また、本発明による減速ギアボックスを備えるロボットに関する。特に、本発明による減速ギアボックスは、ロボットアーム用の継手内に配置されており、2つのロボットアームセグメント間で少なくとも間接的に作動する。
【0020】
以下で図を参照して本発明の好ましい2つの実施例の説明と併せて、本発明を改善するさらなる措置を示す。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1a】第1の実施例による、半分図示された、本発明による減速ギアボックスの簡略化した概略断面図である。
【
図1b】
図1aによる減速ギアボックスの簡略化した概略部分縦断面図である。
【
図2a】第2の実施例による、半分図示された、本発明による減速ギアボックスの簡略化した概略断面図である。
【
図2b】
図2aによる減速ギアボックスの簡略化した概略部分縦断面図である。
【
図3】本発明による減速ギアボックスを備える部分的にのみ図示されたロボットの簡略化した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1aおよび
図1bは、本発明の第1の実施例を示す。
図1aおよび
図1bによれば、本明細書では半分のみ図示されている、本発明による減速ギアボックス1は、波動発生器2を、単列円筒ころ軸受として形成された軸受要素6と共に有する。軸受要素6は、内側リング8、外側リング9、およびそれらの間の空間に配置され、相互に離間して案内される複数の回転要素7を有する。内側リング8の肉厚は、誇張して図示されている。回転要素7は、相互に離間して保持器10内で案内されており、保持器10は、高分子材料で形成されている。内側リング8は、外周面に回転要素7用の第1の軌道8aを有する。外側リング9は、内周面に回転要素7用の第2の軌道9aを有し、第2の軌道9aは、半径方向に回転要素7の方向に凸状に湾曲しているため、湾曲により外側リング9の最大肉厚となっているのは、回転要素7の実質的に軸線方向の中央である。軸受要素6の内側リング8は、第1の縁部8bを有し、シャフト16は、第2の縁部16aを有する。第1の縁部8bは、回転要素7用の軸線方向のスラスト面として使用され、第2の縁部16aは、一方では回転要素7用の軸線方向のスラスト面として、他方では内側リング8用の軸線方向のストッパとして使用される。軸受要素6の外側リング9は、それぞれ回転要素7用の軸線方向のスラスト面として設けられている第3の縁部9bおよび第4の縁部9cを有する。更に、波動発生器2は、内側リング8が相対回転不能な接続を形成するために焼きばめされているシャフト16を有し、波動発生器2は、シャフト16を介して、ここでは図示されていない電気モータによって、回転運動を起こすことが可能である。本明細書では、シャフト16は、中空シャフトとして形成されている。
【0023】
軸受要素6の内側リング8および外側リング9は、本明細書では、長円形の外形形状を有しており、外側リング9の外周面は、可撓性リング要素3の内周面に相対回転不能に接触している。軸受要素6の組立前、外側リング9は、実質的に円形の外形形状を有しているが、この外側リング9は、組立中、内側リング8の外形形状に応じて長円形の外形形状に弾性変形する。波動発生器2または軸受要素6は、可撓性リング要素3内に圧入されているため、波動発生器2は、軸受要素6と共に可撓性リング要素3内へと突出する。その場合、可撓性リング要素3は、波動発生器2の長円形形状を受け入れる。減速ギアボックス1の動作中、波動発生器2は、回転運動を起こし、外側リング9および可撓性リング要素3は、局所的に半径方向に変形する。換言すれば、波動発生器2の回転が回転軸11周りに作用するため、可撓性リング要素3および外側リング9は、全周にわたって変形する。
【0024】
更に、
図1aでは、可撓性リング要素3が、トルクを伝達するために、減速ギアボックス1の剛性リング要素4の内側歯部4aと歯の噛合い状態にある外側歯部3aを有することが図示されている。可撓性リング要素3は、波動発生器1の長円形形状に適合しているため、可撓性リング要素3は、その外側歯部3aが、対称に対向している2つの歯の噛合い領域5a、5bにおいて、剛性リング要素4の内側歯部4aと歯の噛合い状態にある。
【0025】
図1bによれば、軸受要素6は、可撓性リング要素3内へと軸線方向に完全に突出している。更に、回転要素7用の第2の軌道9aは、半径方向で対向し、かつ可撓性リング要素3の外側歯部3aの中央で軸線方向に配置されている、外側リング9の領域内に形成されている。
図1bでは、簡略化するために、剛性リング要素4の図示は省略されている。更に、可撓性リング要素3の肉厚は、誇張して図示されている。
【0026】
図2aおよび
図2bは、本発明の第2の実施例を示す。
図2aおよび
図2bによれば、本発明による減速ギアボックス1は、内側リング8および複数の回転要素7を備える軸受要素6を有する波動発生器2を含む。内側リング8の肉厚は、誇張して図示されている。回転要素7は、相互に離間して保持器10内で案内されており、保持器10は、高分子材料で形成されている。軸受要素6は、単列円筒ころ軸受として形成されているため、回転要素7は、円筒ころとして形成されている。内側リング8は、回転要素7用の第1の軌道8aを有する。第1の軌道8aは、内側リング8の外周面の全周にわたって形成されている。続いて、回転要素7は、内側リング8の外周面で転動する。更に、軸受要素6の内側リング8は、第1の縁部8bおよび第2の縁部8cを有する。両方の縁部8b、8cは、回転要素7用の軸線方向のスラスト面として使用される。更に、波動発生器2は、内側リング8が相対回転不能な接続を形成するために焼きばめされているシャフト16を有し、波動発生器2は、シャフト16を介して、ここでは図示されていない電気モータによって、回転運動を起こすことが可能である。本明細書では、シャフト16は、中空シャフトとして形成されている。更に、減速ギアボックス1は、波動発生器2によって回転する、外側歯部3a付きの半径方向に変形可能な可撓性リング要素3と、内側歯部4a付きの剛性リング要素4と、を備える。可撓性リング要素3の前記外側歯部3aは、トルクを伝達するために、波動発生器2の回転軸11を基準にして対称に対向している2つの歯の噛合い領域5a、5bにおいて、少なくとも部分的に剛性リング要素4の内側歯部4aと歯の噛合い状態にある。剛性リング要素4は、中空ホイールとして形成されている。
【0027】
本発明の第2の実施例によれば、可撓性リング要素3と、軸受要素6の外側リング9とは、一体部品として形成されている。外側リング9は、本明細書では、可撓性リング要素3に一体化されており、これによって、個別部品としてはもはや存在しない。可撓性リング要素3は、可撓性リング要素3の外周面にある剛性リング要素4用の歯切部の機能を、可撓性リング要素3の内周面にある回転要素用の軌道の機能と結合している。可撓性リング要素3には、回転要素7用の第2の軌道3bが形成されている。外側リング9の可撓性リング要素3への一体化によって形成されている第2の軌道9bは、半径方向に回転要素7の方向に凸状に湾曲しているため、湾曲により可撓性リング要素3の最大肉厚となっているのは、回転要素7の実質的に軸線方向の中央である。
【0028】
可撓性リング要素3は、外側歯部3および第2の軌道3bと共に一体部品として形成されている。続いて、回転要素7は、可撓性リング要素3の内周面で直接転動する。回転要素7は、第1の軌道3aの偏心形状に従い、これによって、外側歯部3a付きの可撓性リング要素3を変形させる。可撓性リング要素3aの外側歯部3aと剛性リング要素4内側歯部4aとの間で歯の数が若干異なるため、シャフト16と剛性リング要素4との間で高変速比が生じる。
【0029】
図2bによれば、軸受要素6は、可撓性リング要素3内へと軸線方向に完全に突出している。更に、回転要素7用の第2の軌道3bは、半径方向に対向し、かつ外側歯部3aの中央で軸線方向に配置されている、可撓性リング要素3の領域内に形成されている。
図2bでは、簡略化するために、剛性リング要素4の図示は省略されている。更に、可撓性リング要素3の肉厚は、誇張して図示されている。
【0030】
図3は、ロボット12の一部分を示している。第1のロボットアームセグメント12aと第2のロボットアームセグメント12bとの間には、両方のロボットアームセグメント12a、12bを、柔軟に相互に接続する継手13が配置されている。両方のロボットアームセグメント12a、12b相互の位置を変更するために、ロボット12は、電気モータ15および本発明による減速ギアボックス1を含む駆動ユニット14を有する。
【符号の説明】
【0031】
1 減速ギアボックス
2 波動発生器
3 可撓性リング要素
3a 可撓性リング要素の外側歯部
3b 可撓性リング要素の第2の軌道
4 剛性リング要素
4a 剛性リング要素の内側歯部
5a、5b 歯の噛合い領域
6 軸受要素
7 回転要素
8 内側リング
8a 内側リングの第1の軌道
8b 内側リングの第1の縁部
8c 内側リングの第2の縁部
9 外側リング
9a 外側リングの第2の軌道
9b 外側リングの第3の縁部
9c 外側リングの第4の縁部
10 保持器
11 回転軸
12 ロボット
12a 第1のロボットアームセグメント
12b 第2のロボットアームセグメント
13 継手
14 駆動ユニット
15 電気モータ
16 シャフト
16a シャフトの第2の縁部
【国際調査報告】