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特表2023-533372冗長電流測定機能を備える電流測定装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】冗長電流測定機能を備える電流測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 15/00 20060101AFI20230726BHJP
   G01R 15/20 20060101ALI20230726BHJP
【FI】
G01R15/00 300
G01R15/00 500
G01R15/20 B
G01R15/20 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023502956
(86)(22)【出願日】2021-04-20
(85)【翻訳文提出日】2023-01-16
(86)【国際出願番号】 EP2021060245
(87)【国際公開番号】W WO2022012791
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】102020118637.1
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593116434
【氏名又は名称】イザベレンヒュッテ ホイスラー ゲー・エム・ベー・ハー ウント コンパニー コマンデイトゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100100860
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100222922
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 朋子
(72)【発明者】
【氏名】マリエン、ヤン
(72)【発明者】
【氏名】クラム、ベネディクト
【テーマコード(参考)】
2G025
【Fターム(参考)】
2G025AA00
2G025AB01
2G025AB02
2G025AB04
2G025AB05
2G025AC01
(57)【要約】
本発明は、4線式技術に従う電流測定のための低抵抗電流測定用抵抗器(1)と磁界センサ(14)とを備える、電流(I)を冗長的に測定する電流測定装置に関する。本発明は、電流測定装置において測定される電流(I)が、主電流(I1)の主電流経路と副電流(I2)の副電流経路とに分けられ、主電流経路と副電流経路とが共に並列回路を形成することを提供する。低抵抗電流測定用抵抗器(1)は、主電流経路に配置され、主電流(I1)がそこを通って流れ、磁界センサ(14)は副電流経路に配置されて副電流(I2)を測定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電流(I)を測定するための電流測定装置であって、
a)4線式技術に従って電流を測定するための低抵抗電流測定用抵抗器(1)、及び、
b)冗長電流測定のための、特にホールセンサとしての又は磁気抵抗磁界センサとしての磁界センサ(14)、
を備え、
c)測定される前記電流(I)は、前記電流測定装置内で、主電流(I1)の主電流経路(25)と、副電流(I2)の副電流経路(26)とに分けられ、前記主電流経路(25)と前記副電流経路(26)とは、共に並列回路を形成し、
d)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)が、前記主電流経路(25)に配置され、前記主電流(I1)が前記主電流経路(25)を流れ、及び、
e)前記磁界センサ(14)は、前記副電流経路(26)に配置され、前記副電流(I2)を測定する、
ことを特徴とする電流測定装置。
【請求項2】
前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)を有する前記主電流経路(25)を通る前記主電流(I1)が、前記磁界センサ(14)を有する前記副電流経路(26)における前記副電流(I2)よりも大きく、特に、少なくとも10倍、100倍、200倍、500倍、又は1000倍大きいように、前記並列回路が設計されている、
ことを特徴とする請求項1に記載の電流測定装置。
【請求項3】
a)前記副電流経路(26)は、前記主電流経路(25)の抵抗よりも、少なくとも10倍、100倍、200倍、500倍、又は1000倍大きい電気抵抗値を有し、及び/又は、
b)前記主電流経路(25)の前記抵抗値は、1μΩ、10μΩ、20μΩ、50μΩ、100μΩ、200μΩ、又は500μΩの範囲にあり、誤差は最大で±50%、±20%、±10%、±5%、±2%、又は±1%であり、及び/又は、
c)前記副電流経路の前記抵抗値は、1mΩ、2mΩ、5mΩ、10mΩ、20mΩ、50mΩ、又は100mΩ、の範囲にあり、誤差は最大で±50%、±20%、±10%、±5%、±2%、又は±1%である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の電流測定装置。
【請求項4】
前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)は、前記磁界センサ(14)よりも大きな電流測定範囲を有し、特に、少なくとも10倍、100倍、200倍、500倍、又は1000倍である、
ことを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の電流測定装置。
【請求項5】
a)補償抵抗(13)が、前記磁界センサ(14)を備える前記副電流経路(26)に配置され、
b)前記補償抵抗(13)は、抵抗値に関して、導体材料の前記抵抗値の温度依存性が少なくとも部分的に補償されるように寸法決めされており、
c)前記主電流経路(25)及び前記副電流経路(26)は、それぞれ、抵抗値に関して特定の第1の温度係数を有する導体材料と、抵抗値に関して特定の第2の温度係数を有する抵抗材料とを含み、
d)前記導体材料の前記第1の温度係数は、好ましくは、前記抵抗材料の前記第2の温度係数よりも実質的に大きく、特に、少なくとも10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍大きく、
e)前記副電流経路(26)における前記補償抵抗(13)は、前記導体材料よりも実質的に低い温度係数を、好ましくは有する抵抗材料からなる、
ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の電流測定装置。
【請求項6】
前記主電流経路(25)と前記副電流経路(26)は、前記導体材料の抵抗値と前記抵抗材料の抵抗値との抵抗比が同じであり、特に誤差が±20%、±10%、±5%、±2%以下である、
ことを特徴とする請求項5に記載の電流測定装置。
【請求項7】
a)前記導体材料の前記第1の温度係数は、1,000~10,000ppm/K又は3,600~4,000ppm/Kであり、及び/又は、
b)前記抵抗材料の前記第2の温度係数は、0~±100ppm/K、0~±50ppm/K、0~±20ppm/K、又は0~±10ppm/Kの範囲である、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の電流測定装置。
【請求項8】
前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)は、板状の電流接続部(2、3)と板状の抵抗素子(4)とを備える板状であり、前記板状の抵抗素子(4)は、電流の流れる方向において、2つの前記板状の電流接続部(2、3)の間に配置されている、
ことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の電流測定装置。
【請求項9】
a)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の2つの前記板状の電流接続部(2、3)のうち少なくとも1つは、温度補償のために、片側又は両側に切欠部(21~24)を有し、及び/又は、
b)2つの前記板状の電流接続部(2、3)の少なくとも1つは、前記抵抗値のトリミングのため、中央に切欠部(27、28)を有する、
ことを特徴とする請求項8に記載の電流測定装置。
【請求項10】
a)複数の電圧測定接点(15~20;U2、U2a、U3、U3a)が、前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記板状の電流接続部(2、3)上に配置され、
b)前記電圧測定接点(15~20;U2、U2a、U3、U3a)が、電流の流れ方向に対して横方向に分布し、及び/又は、
c)前記板状の電流接続部(2)の前記中央の切欠部(27)が、電流シャドウとして、前記電圧測定接点(15~20;U2、U2a、U3、U3a)の1つを囲む、
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の電流測定装置。
【請求項11】
a)プリント回路基板(7)は、板状の前記電流測定用抵抗器(1)上に配置され、及び/又は、
b)前記プリント回路基板(7)は、前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記2つの電流接続部(2、3)と、それぞれの場合に少なくとも1つのビア(8、9)によって接触し、及び/又は、
c)前記磁界センサ(14)は、前記プリント回路基板(7)上に配置される、及び/又は、
d)一方の前記磁界センサ(14)と、他方の前記電流測定用抵抗器(1)とが、前記プリント回路基板(7)の両側に配置され、及び/又は、
e)前記補償抵抗(13)は、前記プリント回路基板(7)上に、特に前記磁界センサ(14)と同じ側に配置され、及び/又は、
f)前記副電流経路(26)が、前記プリント回路基板(7)上に、及び/又は中に伸び、前記主電流経路(25)は、前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)を通って伸び、及び/又は、
g)評価回路が、前記プリント回路基板(7)上に配置され、前記評価回路は、以下の
g1)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記抵抗素子(4)における電圧降下、
g2)前記磁界センサ(14)の出力信号、及び/又は、
g3)前記副電流経路(26)における前記補償抵抗(13)における前記電圧降下、
を検出し、及び/又は、
h)前記評価回路が、前記磁界センサ(14)の前記出力信号を出力するためのインターフェースを有する、
ことを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の電流測定装置。
【請求項12】
a)前記プリント回路基板(7)は、複数の層を有し、
b)前記補償抵抗(13)は、前記プリント回路基板(7)の最上層に配置され、
c)前記補償抵抗(13)の上流側の前記副電流経路(26)は、前記プリント回路基板(7)の複数の層に分割され、
d)前記副電流経路(26)は、前記プリント回路基板(7)の前記最上層の上の前記補償抵抗(13)の上流でまとめられ、そして、前記プリント回路基板(7)の前記最上層上の前記補償抵抗(13)を完全に通って伸び、及び、
e)前記補償抵抗(13)の下流側の前記副電流経路(26)は、前記プリント回路基板(7)の複数の層に再び分割される、
ことを特徴とする、請求項11に記載の電流測定装置。
【請求項13】
前記副電流経路(26)においても、前記4線式技術に従った電流測定のための前記補償抵抗(13)における前記電圧降下を測定するための電圧測定接点(U5、U6)を備え、前記副電流経路(26)における前記電流測定を、前記4線式技術に従って且つ前記磁界センサ(14)によって実施する、
ことを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の電流測定装置。
【請求項14】
a)前記電流測定装置は、高電圧領域と低電圧領域とを有し、
b)前記磁界センサ(14)は、前記高電圧領域において入力側の前記副電流(I2)を測定し、及び、
c)前記磁界センサ(14)は、前記低電圧領域における前記出力側で、前記出力信号を出力し、
d)前記補償抵抗(13)は、好ましくは前記高電圧領域に配置され、
e)前記磁界センサ(14)は、好ましくは、前記低電圧領域を前記高電圧領域から絶縁する絶縁体を含む、
ことを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の電流測定装置。
【請求項15】
a)前記電流測定装置は、少なくとも0.5kA、1kA、2kA、5kA、10kA、又は20kAに及ぶ電流測定範囲を有し、及び/又は、
b)前記電流測定装置は、前記入力側で、少なくとも100V、500V、又は1kVの動作電圧を許容し、及び/又は、
c)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記電流接続部(2、3)の前記導体材料は、銅、又は銅合金、又はアルミニウム、又はアルミニウム合金であり、及び/又は、
d)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記抵抗素子(4)の前記抵抗材料は、以下の
d1)銅合金、特に銅-マンガン-ニッケル合金、特に、CuMn12Ni、Cu84NiMn12、又はCu65Mn25Ni10、又は銅-マンガン-スズ合金、特にCuMnSn2,3、又は銅-クロム合金、
d2)ニッケル合金、特にNiCr又はCuNi、
の合金のうちの1つであり、及び/又は、
e)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記電流接続部(2,3)の前記導体材料は、前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記抵抗素子(4)の前記抵抗材料より低い比電気抵抗を有し、及び/又は、
f)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記抵抗素子(4)の前記抵抗材料は、1000μΩcm未満、500μΩcm未満、250μΩcm未満、100μΩcm未満、又は50μΩcm未満の比電気抵抗を有し、及び/又は、
g)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記電流接続部(2、3)の前記導体材料は、20μΩcm未満、10μΩcm未満、5μΩcm未満、又は2μΩcm未満の比電気抵抗を有し、及び/又は、
h)磁気抵抗式の前記磁界センサ(14)は、GMRセンサであり、及び/又は、
i)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)が、最大で500mΩ、200mΩ、100mΩ、50mΩ、20mΩ、10mΩ、5mΩ、2mΩ、又は1mΩの抵抗値を有する。
ことを特徴とする請求項1乃至14のいずれか1項に記載の電流測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電流を冗長的に測定するための電流測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1から、低抵抗電流測定用抵抗器(「シャント」)を有し、それにより被測定電流が4線式技術によって測定される電流測定装置が知られている。ここでは、被測定電流は、低抵抗電流測定用抵抗器を通り、それにより、低抵抗電流測定用抵抗器の電圧降下を測定する。オームの法則に従い、低抵抗電流測定用抵抗器の電圧降下は、被測定電流の指標となる。
【0003】
更に、先行技術から、被測定電流によって発生する磁界を検出する電流測定のためのホールセンサを使用することが知られている。
【0004】
加えて、特許文献2から、両方の測定原理を組み合わせ、低抵抗電流測定用抵抗器(「シャント」)とホールセンサとの両方を備え、冗長な電流測定を可能とする電流測定装置が知られている。この既知の電流測定装置では、被測定電流は低抵抗電流測定用抵抗器を流れ、ホールセンサは低抵抗電流測定用抵抗器の上方に配置され、同じ電流を測定する。この既知の電流測定装置は、±1000Aまでの電流を測定することができ、分解能は1~5A、誤差は±10%である。
【0005】
更に、統合された導体を備えるホールセンサも知られており、被測定電流は統合された導体を通って流れる。そのようなホールセンサは、約0.5~1Aの分解能を有し、誤差は±1%である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許出願公開第0605800号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第2511714号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102011088893号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2020/0300917号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、これらの既知の電流測定装置の欠点は、電流測定装置全体の測定範囲が、±1000Aに制限され、低い分解能と高い誤差を有するという事実にある。チップセンサは、より低い測定範囲を有するが、よりよい分解能及びより小さい誤差を有する。
【0008】
最後に、請求項1のプリアンブルに係る電流測定装置は、特許文献3及び特許文献4から知られている。しかし、これらの既知の電流測定装置は、まだ最適ではない。
【0009】
従って、本発明は、相応に改善された電流測定装置を作成するという課題に基づく。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、主請求項に係る電流測定装置によって解決される。
【0011】
第1に、本発明に係る電流測定装置は、技術の現状に従い、例えば特許文献1から知られているように、4線式技術に従う電流測定を可能にするために低抵抗電流測定用抵抗器を有する。この場合、電流は、低抵抗電流測定用抵抗器を通り、低抵抗電流測定用抵抗器における電圧降下が測定される。そして、この電圧測定値は、オームの法則に従って、電流の測定値を形成する。
【0012】
更に、特許文献2による先行技術に従って、本発明に係る電流測定装置は、冗長電流の測定のための磁界センサも備える、つまり、磁界センサは4線式以外の測定原理に従って電流を測定する。例えば、磁界センサは、それ自体が知られているように、ホールセンサであってもよい。しかしながら、代替的に、磁界センサが、いわゆるGMRセンサ(GMR:Giant Magnetoresistance)のような磁気抵抗式の磁界センサであることも可能であり、これも従来技術からそれ自体が知られている。このように、本発明は、特定のタイプの磁界センサに限定されない。
【0013】
次に、本発明に係る電流測定装置は、測定装置における被測定電流が、主電流を有する主電流経路と副電流を有する副電流経路とに分けられ、主電流経路と副電流経路とが共に並列回路を形成している点で先行技術とは区別される。
【0014】
主電流経路に低抵抗電流測定用抵抗器を配置し、主電流を流すことにより、4線式技術に従って主電流を測定することができる。
【0015】
一方、磁界センサは副電流経路に配置され、副電流を別の測定原理に従って測定し、再び冗長電流測定が可能となる。
【0016】
特許文献2による既知の電流測定装置とは対照的に、一方の低抵抗電流測定用抵抗器と他方の磁界センサとは、同じ電流ではなく、異なる電流を測定する、すなわち一方で主電流を、他方で副電流を測定する。これは、磁界センサは低抵抗電流測定用抵抗器とは異なる電流を測定するため、電流測定装置全体の測定範囲が、磁界センサの限られた測定範囲によって制限されないという利点を有する。
【0017】
本発明の好適な実施形態において、一方の主電流経路と他方の副電流経路とを備える並列回路は、主電流経路を流れる主電流が副電流経路の副電流よりも実質的に大きくなるように設計されている。例えば、主電流は、少なくとも10倍、100倍、200倍、500倍、又は更に1000倍、副電流より大きくすることができる。
【0018】
従って、副電流経路は、好ましくは、主電流経路の抵抗値よりも著しく大きい電気抵抗値を有する。例えば、副電流経路の抵抗値は、主電流経路の抵抗値よりも、10倍、100倍、200倍、500倍、又は1000倍大きくてもよい。
【0019】
絶対値では、主電流経路の抵抗値は、1μΩ、10μΩ、20μΩ、50μΩ、100μΩ、200μΩ、又は500μΩの範囲であり、この範囲定義において±50%、±20%、±10%、±5%、±2%、又は±1%を超える誤差の可能性はない。
【0020】
他方、副電流経路の抵抗値は、絶対値で、例えば、1mΩ、2mΩ、5mΩ、10mΩ、20mΩ、50mΩ、又は100mΩの範囲にあり、この範囲定義内で最大で±50%、±20%、±10%、±5%、±2%、又は±1%の誤差の可能性がある。
【0021】
低抵抗電流測定用抵抗器は、磁界センサよりも大きな電流測定範囲を有することが好ましい。従って、磁界センサの電流測定範囲は、通常、低抵抗電流測定用抵抗器の電流測定範囲よりかなり小さい。しかしながら、一方では磁界センサが、他方では低抵抗電流測定用抵抗器が、異なる電流を測定するため、磁界センサのより小さい電流測定範囲は、本発明に係る電流測定装置の全体の電流測定範囲を制限しないため、これは本発明による電流測定装置において厄介なことではない。
【0022】
更に、測定の温度依存性を低減するために、磁界センサの副電流経路において補償抵抗を追加的に配置することができる。測定の温度依存性を低減するために補償抵抗を使用するアイデアは、独国特許発明第102016014130号明細書から原理的に知られているため、補償抵抗がどのように機能するかについての詳細な説明は省略することが可能である。この時点で、本発明に係る電流測定装置における主電流経路及び副電流経路はそれぞれ、抵抗値に対して所定の第1の温度係数を有する導体材料(例えば銅)と、抵抗値に対して所定の第2の温度係数を有する抵抗材料とを含み、導体材料の第1の温度係数は抵抗材料の第2の温度係数より実質的に大きいことのみを言及するべきである。従って、導体材料の抵抗値は、抵抗材料の抵抗値よりも実質的に温度依存性が高い。例えば、一方の導体材料と他方の抵抗材料との2つの温度係数は、少なくとも10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍、異なっていてもよい。他方、副電流経路の補償抵抗は、導体材料よりも温度係数が著しく低い抵抗体材料からなる。補償抵抗は、導体材料の抵抗値の温度依存性が少なくとも部分的に補償されるように、その抵抗値に関して寸法が決められている。
【0023】
従って、導体材料の第1の温度係数は、1,000~10,000ppm/K、又は3,600~4,000ppm/Kの範囲であり、抵抗材料の第2の温度係数は、0~±100ppm/K、0~±50ppm/K、0~±20ppm/K、又は0~±10ppm/Kの範囲であってもよい。
【0024】
温度依存性を補償するため、主電流経路と副電流経路とは、導体材料の抵抗値と、低抵抗電流測定用抵抗器又は補償抵抗の抵抗材料の抵抗値と、の抵抗比が同じであることが好ましい。好ましくは、主電流経路と副電流経路との間の抵抗比の誤差は、±20%、±10%、±5%、又は±2%よりも小さい。
【0025】
本発明に係る電流測定装置において、低抵抗電流測定用抵抗器は、従来の方法で形成することができる。好ましくは、低抵抗電流測定用抵抗器は、欧州特許出願公開0605800号明細書から既にそれ自体知られているように、板状の電流接続部と板状の抵抗素子とを有する板状であり、板状の抵抗素子は、2つの板状の電流接続部の間の電流の流れ方向に配置される。
【0026】
更に、低抵抗電流測定用抵抗器の2つの板状の電流接続部、及び/又は抵抗素子のうち少なくとも一方が、抵抗値をトリミングするための切欠部を片側又は両側に有することが、本発明の範囲内で可能である。更に、板状の電流接続部は、抵抗値をトリミングするための中央切欠部を有することもできる。
【0027】
4線式技術に従った電流測定において、低抵抗電流測定用抵抗器における電圧降下が、オームの法則に従って低抵抗電流測定用抵抗器を流れる電流の指標となることは、既に述べた。従って、本発明に係る電流測定装置は、低抵抗電流測定用抵抗器における電圧降下を測定する少なくとも1対の電圧測定接点を有する。
【0028】
好ましくは、電流測定用抵抗器における電流密度の不均一性を計量的に補償することができるように、電流の流れ方向に対して横方向に分散して配置された複数対の電圧測定接点も更に提供される。低抵抗電流測定用抵抗器における電圧降下を複数の対の電圧測定接点によって測定するというアイデアは、国際公開第2014/161624号からそれ自体が知られており、それゆえ、詳細に説明する必要はない。
【0029】
更に、本発明の範囲内において、独国特許出願第102020111634.9号明細書に記載されているように、低抵抗電流測定用抵抗器上に、電流の流れる方向に複数対の電圧測定接点を直列に配置することも可能である。
【0030】
加えて、低抵抗電流測定用抵抗器の電流接続部は、電流接続部の電流密度に影響を与えるために、電流シャドウとも呼ばれる中央切り込みを、電圧測定接点の1つをそれぞれ囲むように有することができる。このような電流シャドウは、先行技術から既に知られており、例えば、独国特許出願第102020111634.9号明細書に記載されている。
【0031】
本発明の好適な実施形態では、板状の電流測定用抵抗器上に、磁界センサ(例えばホールセンサ、GMRセンサ)も担持するプリント回路基板が配置される。一方の磁界センサと他方の電流測定用抵抗器とは、好ましくは、プリント回路基板の向かい合う側に配置される。
【0032】
プリント回路基板は、好ましくは、低抵抗電流測定用抵抗器に堅く接続され、低抵抗電流測定用抵抗器の2つの電流接続部に接触できるように、ビアを有する。ビアは、好ましくは、低抵抗電流測定用抵抗器の抵抗素子よりも前の下流側の電流接続部と、低抵抗電流測定用抵抗器の抵抗素子よりも後の下流側の電流接続部と、に接触する。
【0033】
この場合、好ましくは、副電流経路はプリント回路基板上又はプリント回路基板内を伸び、主電流経路は低抵抗電流測定用抵抗器を通って伸びる。
【0034】
プリント回路基板は、低抵抗電流測定用抵抗器の抵抗素子における電圧降下、磁界センサの出力信号、及び/又は副電流経路の補償抵抗における電圧降下を測定する評価回路も担持してもよい。
【0035】
更に、プリント回路基板は、磁界センサの出力信号、及び/又は低抵抗電流測定用抵抗器の抵抗素子における電圧の読み取り値を出力するインターフェースを有してもよい。
【0036】
本発明の好適な実施形態において、プリント回路基板は、複数の平行な層を有する。この場合、補償抵抗は、プリント回路基板の最上層に配置されることが好ましい。副電流を有する副電流経路は、好ましくは、最初は補償抵抗の上流側でプリント回路基板の複数の層に分かれており、補償抵抗の直前でのみまとめられ、副電流の全体が補償抵抗を通って流れるようにされる。そして、補償抵抗の下流側では、副電流経路が再びプリント回路基板の様々な層で分割される。このように副電流経路をプリント回路基板の複数の層に分けることで、副電流経路の抵抗値が比較的小さくなるという利点をもたらす。
【0037】
更に、電流測定装置は、通常、高電圧領域と低電圧領域とを有することに言及すべきである。低抵抗電流測定用抵抗器は、全体が高電圧領域に配置され、一方、磁界センサは高電圧領域と低電圧領域とを分離する。このように、磁界センサは低電圧側を有しており、例えば、出力信号の出力及び電源電圧の供給に使用される。加えて、磁界センサは、副電流経路を含む高電圧側を有する。磁界センサは、高電圧側と低電圧側とを分離するアイランドを含む。
【0038】
一般に、本発明に係る電流測定装置は、少なくとも0.5kA、1kA、2kA、5kA、10kA、又は20kAに及ぶ電流測定範囲を有することができることに言及すべきである。
【0039】
更に、本発明に係る電流測定装置は、好ましくは、例えば、少なくとも100V、500V、又は1kVの動作電圧まで及ぶ、入力側の高い絶縁耐力を有することができることに言及すべきである。
【0040】
電流接続部の上述の導体材料は、好ましくは、銅、又は銅合金、又はアルミニウム、又はアルミニウム合金である。
【0041】
低抵抗電流測定用抵抗器の抵抗素子の抵抗材料は、例えば、銅合金、特に、銅-マンガン-ニッケル合金を用いることができる。例えば、CuMn12Ni、Cu84NiMn12、又はCu65Mn25Ni10とすることができる。代わりに、抵抗材料は、CuMnSn2,3のような銅-マンガン-スズ合金であることもできる。更に、抵抗材料は、銅-クロム合金であることもできる。最後に、抵抗材料が、NiCr、又はCuNiのようなニッケル合金であってもよい。
【0042】
更に、低抵抗電流測定用抵抗器の電流接続部の導体材料は、好ましくは、抵抗素子の抵抗材料よりも低い比電気抵抗を有することに言及すべきである。
【0043】
例えば、低抵抗電流測定用抵抗器の電流接続部の導体材料は、20μΩcm、10μΩcm、5μΩcm、又は2μΩ未満の比電気抵抗を有していてもよい。
【0044】
これに対して、低抵抗電流測定用抵抗器の抵抗素子の抵抗材料は、好ましくは、1000μΩcm、500μΩcm、250μΩcm、100μΩcm又は50μΩcm未満の比電流抵抗を有する。
【0045】
一般に、低抵抗電流測定用抵抗器は、好ましくは、最大で500mΩ、200mΩ、100mΩ、50mΩ、20mΩ、10mΩ、5mΩ、2mΩ、又は1mΩの抵抗値を有することになお言及すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
本発明の他の有利な更なる実施形態は、従属請求項に示される、又は図を参照する本発明の好適な実施形態の説明と共に以下により詳細に説明される。
【0047】
図1図1は、低抵抗電流測定用抵抗器とホールセンサとを備える本発明に係る電流測定装置の斜視図を示す。
図2図2は、図1に係る電流測定装置の上面図を示す。
図3図3は、図1及び図2に係る電流測定装置の上面図を示す。
図4図4は、図1~3に係る電流測定装置の等価回路を示す。
図5図5は、図3の変形例を示す。
図6図6は、図3の更なる変形例を示す。
図7図7は、補償抵抗を備える場合と備えない場合との主電流経路における電流測定の温度依存性を示す。
図8図8は、補償抵抗を備える場合と備えない場合との副電流経路における電流測定の温度依存性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0048】
図1~4は、電流Iを測定するための本発明に係る電流測定装置の異なる説明を示し、それにより、電流測定は冗長に、すなわち一方では既知の4線式技術に従って、他方では磁界測定によって実施される。
【0049】
4線式技術に従う電流測定のために、電流測定装置は、2つの板状の電流接続部2、3と、同じく板状で二つの電流接続部2、3間の電流の流れ方向に位置する低抵抗抵抗素子4とからなる低抵抗電流測定用抵抗器1を有する。電流接続部2は、先行技術から知られているように、被測定電流Iを電流測定用抵抗器1に導入するために機能し、電流接続部3は、被測定電流Iを電流測定用抵抗器1から導出するために機能する。
【0050】
2つの電流接続部2、3は、例えばバスバーの機械的接続を可能とする円柱状のボア5、6をそれぞれ有する。
【0051】
電流測定用抵抗器1の上面には、2つのビア8、9を用いて接続部2及び3に接続された多層プリント回路基板7がある。ビア8は電流接続部2に接触し、ビア9は他方の電流接続部3に接触する。
【0052】
プリント回路基板7の上側には、導体経路10、11、12と、補償抵抗13とがある。
【0053】
本発明に係る電流測定装置では、被測定電流Iは、主電流I1と副電流I2とに分けられる。主電流I1は、電流測定用抵抗器1において、電流接続部2から抵抗素子4を通り電流接続部3へ流れる。他方、副電流I2は、電流接続部2からビア8を通り、導体経路10を通り、補償抵抗13を通り、導体経路11を通り、ホールセンサ14を通り、導体経路12を通り、ビア9を通り、電流接続部3に戻り、副電流I2は再び主電流I1と合流して電流Iを形成する。
【0054】
4線式技術に従う電圧測定のため、複数の対の電圧測定接点15~20が設けられ(図3参照)、対の電圧測定接点15、16、17、18、又は19、20のそれぞれは、一方では電流接続部2における電圧を測定し、他方では電流接続部3における電圧を測定する。国際公開第2014/161624号に記載されているように、電圧測定接点15~20の対は、電流測定用抵抗器1における電流密度の不均一性を計量的に補償できるように、ここでは電流の流れ方向に対して横方向に分散して配置されている。
【0055】
電圧測定接点15~20における電圧は、例えば、ホールセンサ14に統合されることができる測定回路によって測定することができる。しかし、代替的に、低抵抗電流測定用抵抗器1の抵抗素子4における電圧降下を測定する別の測定回路が、プリント回路基板7上に配置されることも可能である。
【0056】
更に、電流測定用抵抗器1は、温度補償のための補償抵抗と組み合わせて機能する複数の切欠部21~24を、2つの電流接続部2、3の横方向に有することに言及すべきである。
【0057】
副電流経路の補償抵抗13の目的は、独国特許発明第102016014130号明細書から既にそれ自体知られているように、測定の温度依存性を低減させることである。
【0058】
更に、ホールセンサ14は、この目的のためにホールセンサ14を通って流れる副電流I2を測定することに言及すべきである。従って、その測定側では、ホールセンサ14は、副電流経路の高電圧に曝される。加えて、ホールセンサ14は、測定信号の出力及び電源電圧の供給に使用され低電圧側も有する。このように、ホールセンサ14は、高電圧側と低電圧側とを分離し、この目的のために、統合された絶縁体を有する。
【0059】
本発明に係る電流測定装置によれば、異なる測定原理によって、つまり、一方では、低抵抗電流測定用抵抗器1による4線式測定によって、他方では、ホールセンサ14による磁界測定によって、冗長電流測定が可能である。
【0060】
ここで、副電流I2は、低抵抗電流測定用抵抗器1を通って流れる主電流I1よりもかなり小さいことに言及すべきである。従って、ホールセンサ14は、はるかに小さい電流測定範囲を有することができ、これは有利である。例えば、統合された導体を備えるホールセンサは、5A~50Aの小さな電流測定範囲を有することが多い。
【0061】
以下では、図4に係る等価回路図について説明し、図4は、主電流経路25及び副電流経路26を示し、これによって主電流経路25と副電流経路26とは並列回路を形成する。
【0062】
主電流経路25において、基本的に低抵抗電流測定用抵抗器1のみが配置されており、等価回路図では、オーミック抵抗器RShuntとオーミック抵抗器RCu1との直列接続によって表されている。抵抗器RShuntは、低抵抗抵抗素子4のオーミック抵抗を表す。一方、オーミック抵抗器RCu1は、2つの電流接続部2、3の抵抗を表している。
【0063】
ホールセンサ14は、副電流経路26に配置されている。更に、補償抵抗13は、副電流経路26に配置され、オーミック抵抗Rとオーミック抵抗RCu2とで表される。抵抗器Rは、補償抵抗13の抵抗素子に相当し、抵抗器RCu2は、補償抵抗13の2つの接続部に相当する。また、副電流経路16には、ビア8、9及び導体経路10~12の抵抗値を示す抵抗器RCu0が示されている。
【0064】
動作時には、評価回路が低抵抗電流測定用抵抗器1の抵抗素子4における電圧降下を測定する。この目的のために、図3の電圧測定接点15~20に相当する電圧測定接点U2/U3、U2A/U3Aを図4の等価回路図に示す。
【0065】
第2に、評価回路は、ホールセンサ14で測定された出力電圧UHALLを検出する。
【0066】
最後に、評価回路は、均等化抵抗器13において降下する電圧も検出する。この目的のために、電圧測定接点U5/U6は、図4に係る等価回路図に示されている。
【0067】
図5は、図3に係る電流測定用抵抗器1の変形例を示す。図5に係る変形例は、大部分が図3に係る電流測定用抵抗器1に対応しており、繰り返しを避けるために、上記の説明を参照し、対応する詳細については同じ参照符号を使用する。
【0068】
この実施形態の特別な特徴は、電流接続部2に電流シャドウとも呼ばれる切欠部27を配置し、電圧測定接点17を取り囲む点にある。このような電流シャドウの技術的背景及び動作は、例えば、国際公開第2014/161624号明細書に記載されている。このように、電流シャドウを用いることで、測定精度を向上させることができる。
【0069】
図6は、図5に係る電流測定用抵抗器1の更なる変形例を示し、繰り返しを避けるために、再び上記の説明を参照し、対応する詳細については同じ参照符号を使用する。
【0070】
この実施形態の特別な特徴は、他方の電流接続部3に切欠部28も配置する点にある。
【0071】
図7は、異なる変形例における主電流I1の電流測定値の温度依存性を示す。実線は、補償抵抗R又は13を使用せず、電流接続部2、3のオーミック抵抗RCu1を考慮しない場合の変化の経過を示す。一方、破線は補償抵抗13を考慮した場合の経過を示す。最後に、点線は、補償抵抗Rを考慮し、且つ電流接続部2、3のオーミック抵抗RCu1も考慮した経過を示す。
【0072】
図8は、図7と同じ変形例について、副電流経路26の副電流I2の電流測定値の温度依存性を示す。
【0073】
本発明は、上述した好適な実施形態に限定されるものではない。むしろ、本発明の思想を利用する多数の変形例及び逸脱例も考えられ、それらも保護範囲に含まれる。特に、本発明は、引用されるそれぞれの請求項とは独立に、特に主請求項の特徴がなくとも、従属請求項の主題及び特徴に対する保護を請求するものでもある。従って、本発明は、互いに独立して保護を享受する本発明の様々な態様を含む。
【0074】
[付記]
[付記1]
電流(I)を測定するための電流測定装置であって、
a)4線式技術に従って電流を測定するための低抵抗電流測定用抵抗器(1)、及び、
b)冗長電流測定のための、特にホールセンサとしての又は磁気抵抗磁界センサとしての磁界センサ(14)、
を備え、
c)測定される前記電流(I)は、前記電流測定装置内で、主電流(I1)の主電流経路(25)と、副電流(I2)の副電流経路(26)とに分けられ、前記主電流経路(25)と前記副電流経路(26)とは、共に並列回路を形成し、
d)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)が、前記主電流経路(25)に配置され、前記主電流(I1)が前記主電流経路(25)を流れ、及び、
e)前記磁界センサ(14)は、前記副電流経路(26)に配置され、前記副電流(I2)を測定する、
ことを特徴とする電流測定装置。
【0075】
[付記2]
前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)を有する前記主電流経路(25)を通る前記主電流(I1)が、前記磁界センサ(14)を有する前記副電流経路(26)における前記副電流(I2)よりも大きく、特に、少なくとも10倍、100倍、200倍、500倍、又は1000倍大きいように、前記並列回路が設計されている、
ことを特徴とする付記1に記載の電流測定装置。
【0076】
[付記3]
a)前記副電流経路(26)は、前記主電流経路(25)の抵抗よりも、少なくとも10倍、100倍、200倍、500倍、又は1000倍大きい電気抵抗値を有し、及び/又は、
b)前記主電流経路(25)の前記抵抗値は、1μΩ、10μΩ、20μΩ、50μΩ、100μΩ、200μΩ、又は500μΩの範囲にあり、誤差は最大で±50%、±20%、±10%、±5%、±2%、又は±1%であり、及び/又は、
c)前記副電流経路の前記抵抗値は、1mΩ、2mΩ、5mΩ、10mΩ、20mΩ、50mΩ、又は100mΩ、の範囲にあり、誤差は最大で±50%、±20%、±10%、±5%、±2%、又は±1%である、
ことを特徴とする付記1又は2に記載の電流測定装置。
【0077】
[付記4]
前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)は、前記磁界センサ(14)よりも大きな電流測定範囲を有し、特に、少なくとも10倍、100倍、200倍、500倍、又は1000倍である、
ことを特徴とする、付記1乃至3のいずれか1つに記載の電流測定装置。
【0078】
[付記5]
a)補償抵抗(13)が、前記磁界センサ(14)を備える前記副電流経路(26)に配置され、
b)前記補償抵抗(13)は、抵抗値に関して、導体材料の前記抵抗値の温度依存性が少なくとも部分的に補償されるように寸法決めされており、
c)前記主電流経路(25)及び前記副電流経路(26)は、それぞれ、抵抗値に関して特定の第1の温度係数を有する導体材料と、抵抗値に関して特定の第2の温度係数を有する抵抗材料とを含み、
d)前記導体材料の前記第1の温度係数は、好ましくは、前記抵抗材料の前記第2の温度係数よりも実質的に大きく、特に、少なくとも10倍、20倍、50倍、100倍、又は200倍大きく、
e)前記副電流経路(26)における前記補償抵抗(13)は、前記導体材料よりも実質的に低い温度係数を、好ましくは有する抵抗材料からなる、
ことを特徴とする付記1乃至4のいずれか1つに記載の電流測定装置。
【0079】
[付記6]
前記主電流経路(25)と前記副電流経路(26)は、前記導体材料の抵抗値と前記抵抗材料の抵抗値との抵抗比が同じであり、特に誤差が±20%、±10%、±5%、±2%以下である、
ことを特徴とする付記5に記載の電流測定装置。
【0080】
[付記7]
a)前記導体材料の前記第1の温度係数は、1,000~10,000ppm/K又は3,600~4,000ppm/Kであり、及び/又は、
b)前記抵抗材料の前記第2の温度係数は、0~±100ppm/K、0~±50ppm/K、0~±20ppm/K、又は0~±10ppm/Kの範囲である、
ことを特徴とする付記5又は6に記載の電流測定装置。
【0081】
[付記8]
前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)は、板状の電流接続部(2、3)と板状の抵抗素子(4)とを備える板状であり、前記板状の抵抗素子(4)は、電流の流れる方向において、2つの前記板状の電流接続部(2、3)の間に配置されている、
ことを特徴とする、付記1乃至7のいずれか1つに記載の電流測定装置。
【0082】
[付記9]
a)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の2つの前記板状の電流接続部(2、3)のうち少なくとも1つは、温度補償のために、片側又は両側に切欠部(21~24)を有し、及び/又は、
b)2つの前記板状の電流接続部(2、3)の少なくとも1つは、前記抵抗値のトリミングのため、中央に切欠部(27、28)を有する、
ことを特徴とする付記8に記載の電流測定装置。
【0083】
[付記10]
a)複数の電圧測定接点(15~20;U2、U2a、U3、U3a)が、前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記板状の電流接続部(2、3)上に配置され、
b)前記電圧測定接点(15~20;U2、U2a、U3、U3a)が、電流の流れ方向に対して横方向に分布し、及び/又は、
c)前記板状の電流接続部(2)の前記中央の切欠部(27)が、電流シャドウとして、前記電圧測定接点(15~20;U2、U2a、U3、U3a)の1つを囲む、
ことを特徴とする付記8又は9に記載の電流測定装置。
【0084】
[付記11]
a)プリント回路基板(7)は、板状の前記電流測定用抵抗器(1)上に配置され、及び/又は、
b)前記プリント回路基板(7)は、前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記2つの電流接続部(2、3)と、それぞれの場合に少なくとも1つのビア(8、9)によって接触し、及び/又は、
c)前記磁界センサ(14)は、前記プリント回路基板(7)上に配置される、及び/又は、
d)一方の前記磁界センサ(14)と、他方の前記電流測定用抵抗器(1)とが、前記プリント回路基板(7)の両側に配置され、及び/又は、
e)前記補償抵抗(13)は、前記プリント回路基板(7)上に、特に前記磁界センサ(14)と同じ側に配置され、及び/又は、
f)前記副電流経路(26)が、前記プリント回路基板(7)上に、及び/又は中に伸び、前記主電流経路(25)は、前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)を通って伸び、及び/又は、
g)評価回路が、前記プリント回路基板(7)上に配置され、前記評価回路は、以下の
g1)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記抵抗素子(4)における電圧降下、
g2)前記磁界センサ(14)の出力信号、及び/又は、
g3)前記副電流経路(26)における前記補償抵抗(13)における前記電圧降下、
を検出し、及び/又は、
h)前記評価回路が、前記磁界センサ(14)の前記出力信号を出力するためのインターフェースを有する、
ことを特徴とする付記8乃至10のいずれか1つに記載の電流測定装置。
【0085】
[付記12]
a)前記プリント回路基板(7)は、複数の層を有し、
b)前記補償抵抗(13)は、前記プリント回路基板(7)の最上層に配置され、
c)前記補償抵抗(13)の上流側の前記副電流経路(26)は、前記プリント回路基板(7)の複数の層に分割され、
d)前記副電流経路(26)は、前記プリント回路基板(7)の前記最上層の上の前記補償抵抗(13)の上流でまとめられ、そして、前記プリント回路基板(7)の前記最上層上の前記補償抵抗(13)を完全に通って伸び、及び、
e)前記補償抵抗(13)の下流側の前記副電流経路(26)は、前記プリント回路基板(7)の複数の層に再び分割される、
ことを特徴とする、付記11に記載の電流測定装置。
【0086】
[付記13]
前記副電流経路(26)においても、前記4線式技術に従った電流測定のための前記補償抵抗(13)における前記電圧降下を測定するための電圧測定接点(U5、U6)を備え、前記副電流経路(26)における前記電流測定を、前記4線式技術に従って且つ前記磁界センサ(14)によって実施する、
ことを特徴とする付記1乃至12のいずれか1つに記載の電流測定装置。
【0087】
[付記14]
a)前記電流測定装置は、高電圧領域と低電圧領域とを有し、
b)前記磁界センサ(14)は、前記高電圧領域において入力側の前記副電流(I2)を測定し、及び、
c)前記磁界センサ(14)は、前記低電圧領域における前記出力側で、前記出力信号を出力し、
d)前記補償抵抗(13)は、好ましくは前記高電圧領域に配置され、
e)前記磁界センサ(14)は、好ましくは、前記低電圧領域を前記高電圧領域から絶縁する絶縁体を含む、
ことを特徴とする付記1乃至13のいずれか1つに記載の電流測定装置。
【0088】
[付記15]
a)前記電流測定装置は、少なくとも0.5kA、1kA、2kA、5kA、10kA、又は20kAに及ぶ電流測定範囲を有し、及び/又は、
b)前記電流測定装置は、前記入力側で、少なくとも100V、500V、又は1kVの動作電圧を許容し、及び/又は、
c)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記電流接続部(2、3)の前記導体材料は、銅、又は銅合金、又はアルミニウム、又はアルミニウム合金であり、及び/又は、
d)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記抵抗素子(4)の前記抵抗材料は、以下の
d1)銅合金、特に銅-マンガン-ニッケル合金、特に、CuMn12Ni、Cu84NiMn12、又はCu65Mn25Ni10、又は銅-マンガン-スズ合金、特にCuMnSn2,3、又は銅-クロム合金、
d2)ニッケル合金、特にNiCr又はCuNi、
の合金のうちの1つであり、及び/又は、
e)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記電流接続部(2,3)の前記導体材料は、前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記抵抗素子(4)の前記抵抗材料より低い比電気抵抗を有し、及び/又は、
f)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記抵抗素子(4)の前記抵抗材料は、1000μΩcm未満、500μΩcm未満、250μΩcm未満、100μΩcm未満、又は50μΩcm未満の比電気抵抗を有し、及び/又は、
g)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)の前記電流接続部(2、3)の前記導体材料は、20μΩcm未満、10μΩcm未満、5μΩcm未満、又は2μΩcm未満の比電気抵抗を有し、及び/又は、
h)磁気抵抗式の前記磁界センサ(14)は、GMRセンサであり、及び/又は、
i)前記低抵抗電流測定用抵抗器(1)が、最大で500mΩ、200mΩ、100mΩ、50mΩ、20mΩ、10mΩ、5mΩ、2mΩ、又は1mΩの抵抗値を有する。
ことを特徴とする付記1乃至14のいずれか1つに記載の電流測定装置。
【符号の説明】
【0089】
1 低抵抗電流測定用抵抗器
2 被測定電流を導入するための電流測定用抵抗器の電流接続部
3 被測定電流を導出するための電流測定用抵抗器の電流接続部
4 電流測定用抵抗器の抵抗素子
5,6 電流接続部を固定するための電流測定用抵抗器におけるボア
7 プリント回路基板
8 補償抵抗の前のプリント回路基板内のビア
9 補償抵抗の後ろのプリント回路基板内のビア
10 補償抵抗の前のプリント回路基板上の導体経路
11 補償抵抗と磁界センサとの間のプリント回路基板上の導体経路
12 磁界センサの後ろのプリント回路基板上の導体経路
13 補償抵抗
14 ホールセンサ
15~20 電流測定用抵抗器の抵抗素子上の電圧測定のための電圧測定接点
21~24 電流接続部内の切欠部
25 主電流経路
26 副電流経路
27、28 切欠部(電流シャドウ)
I 被測定電流
I1 主電流
I2 副電流
Shunt 電流測定用抵抗器の抵抗素子の抵抗
Cu1 電流測定用抵抗器の電流接続素子の抵抗
補償抵抗の抵抗素子の抵抗
Cu2 補償抵抗の電流接続部の抵抗
Cu0 補償抵抗の前後の副電流経路の抵抗
Hall ホール電圧
U2/U3 電流測定用抵抗器の抵抗素子における電圧測定のための電圧測定接点
U2a/U3a 電流測定用抵抗器の抵抗素子における電圧測定のための電圧測定接点
U5/U6 補償抵抗の抵抗素子における電圧測定のための電圧測定接点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】