IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ゼァージァン リサーチ インスティチュート オブ ケミカル インダストリー カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ ゼァージァン ジョンラン ニュー エナジー マテリアルズ カンパニー リミテッドの特許一覧 ▶ シノケム ランティアン カンパニー リミテッドの特許一覧

特表2023-533380シラン系添加剤、前記添加剤を含む電解液、及びリチウムイオン電池
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】シラン系添加剤、前記添加剤を含む電解液、及びリチウムイオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20230726BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20230726BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20230726BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20230726BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0569
H01M10/0568
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023503096
(86)(22)【出願日】2021-07-14
(85)【翻訳文提出日】2023-01-25
(86)【国際出願番号】 CN2021106328
(87)【国際公開番号】W WO2022012601
(87)【国際公開日】2022-01-20
(31)【優先権主張番号】202010679893.2
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】202010756752.6
(32)【優先日】2020-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518090890
【氏名又は名称】ゼァージァン リサーチ インスティチュート オブ ケミカル インダストリー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHEJIANG RESEARCH INSTITUTE OF CHEMICAL INDUSTRY CO.,LTD
(71)【出願人】
【識別番号】523016098
【氏名又は名称】ゼァージァン ジョンラン ニュー エナジー マテリアルズ カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】514062758
【氏名又は名称】シノケム ランティアン カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】SINOCHEM LANTIAN CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】Sinochem Building, NO.96 Jiangnan Avenue, Binjiang Hangzhou, Zhejiang 310051 People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ディン,シァンファン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ナン
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ホン
(72)【発明者】
【氏名】ジァン,イーイー
(72)【発明者】
【氏名】リ,ヂョンカイ
(72)【発明者】
【氏名】マー,グオチァン
(72)【発明者】
【氏名】シュ,チョン
【テーマコード(参考)】
5H029
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL01
5H029AL03
5H029AL07
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ09
5H029HJ10
5H029HJ18
(57)【要約】
セルのガス発生を抑制するための、電解液における炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤の使用、電解液における前記シラン系添加剤と成膜添加剤との複合添加剤の使用、電解液における前記シラン系添加剤と含フッ素リチウム塩系添加剤との複合添加剤の使用、並びに前記シラン系添加剤を含む電解液及びリチウムイオン電池を提供する。シラン系添加剤と成膜添加剤を併用する、シラン系添加剤と含フッ素リチウム塩系添加剤とを併用することにより、セルのガス発生を抑制し、電池の高温貯蔵特性を向上させることができるだけではなく、電池の高温サイクル及び常温サイクルの安定性を改善する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルのガス発生を抑制し、構造が下記式(I)で示されることを特徴とする電解液における炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤の使用。
【化1】
(ただし、R、R、R、及びRは、独立して、アルキル基、アルキニル基、フルオロアルキル基、及びフルオロアルキニル基から選択されるいずれか1つであり、かつR、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、炭素-炭素三重結合を含有する。)
【請求項2】
、R、R、及びRは、独立して、C1~C6アルキル基、C2~C6アルキニル基、フルオロC1~C6アルキル基、及びフルオロC2~C6アルキニル基から選択される1つである、請求項1に記載の電解液における炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤の使用。
【請求項3】
、R、R、及びRは、独立して、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、エチニル基又はプロピニル基から選択される1つである、請求項2に記載の電解液における炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤の使用。
【請求項4】
前記シラン系添加剤は、以下の構造から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載の電解液における炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤の使用。
【化2】
【請求項5】
前記シラン系添加剤は、電解液全質量の0.1%~5.0%を占める、請求項1~4のいずれか1項に記載の電解液における炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤の使用。
【請求項6】
電解液における請求項1~5のいずれか1項に記載のシラン系添加剤と成膜添加剤との複合添加剤の使用であって、
前記成膜添加剤の成膜電位が、1.5V(vs.Li/Li)未満であることを特徴とする使用。
【請求項7】
前記成膜添加剤は、酸無水物系化合物、スルホン酸エステル系化合物、硫酸エステル系化合物、トリメチルシリルエステル系化合物、不飽和環状炭酸エステル系化合物又はフルオロ環状炭酸エステル系化合物から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
前記成膜添加剤は、電解液全質量の0.1%~8.0%を占める、請求項6又は7に記載の使用。
【請求項9】
リチウム塩と有機溶媒と、を含むリチウムイオン電池電解液であって、
請求項1~5のいずれか1項に記載のシラン系添加剤、又は請求項6~8のいずれか1項に記載のシラン系添加剤と成膜添加剤との複合添加剤をさらに含むことを特徴とするリチウムイオン電池電解液。
【請求項10】
前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、リチウムビス(オキサラト)ホウ酸、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムから選択される少なくとも1種であり、かつ電解液中の前記リチウム塩の濃度が、0.3M~3Mである、請求項9に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項11】
前記有機溶媒は、C3~C6の炭酸エステル系化合物、C3~C8のカルボン酸エステル系化合物、スルホン系化合物、及びエーテル系化合物から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項12】
正極と、負極と、セパレータと、を含むリチウムイオン電池であって、
請求項9~11のいずれか1項に記載の電解液をさらに含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項13】
請求項1~4のいずれか1項に記載の炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤から選択され、セルのガス発生を抑制し、電解液全質量の0.01%~10.0%を占めるシラン系添加剤と、
セルの初期インピーダンスを改善し、サイクル中のセルのインピーダンス増加を抑制し、電解液全質量の0.1%~10.0%を占める含フッ素リチウム塩系添加剤と、を含むことを特徴とする電解液におけるシラン系添加剤組成物の使用。
【請求項14】
前記シラン系添加剤は、電解液全質量の0.1%~3.0%を占め、前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、電解液全質量の0.2%~5.0%を占める、請求項13に記載の電解液におけるシラン系添加剤組成物の使用。
【請求項15】
前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、ホウ素又はリンを中心イオンとした含フッ素リチウム塩化合物である、請求項13に記載の電解液におけるシラン系添加剤組成物の使用。
【請求項16】
前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムから選択される少なくとも1種である、請求項15に記載の電解液におけるシラン系添加剤組成物の使用。
【請求項17】
リチウム塩と、有機溶媒と、を含むリチウムイオン電池電解液であって、
請求項13~16のいずれか1項に記載のシラン系添加剤組成物をさらに含むことを特徴とするリチウムイオン電池電解液。
【請求項18】
前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムから選択される少なくとも1種であり、かつ電解液中の前記リチウム塩のモル濃度が、0.4mol/L~1.6mol/Lである、請求項17に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項19】
前記有機溶媒は、C3~C6の炭酸エステル系化合物、C3~C8のカルボン酸エステル系化合物、スルホン系化合物、及びエーテル系化合物から選択される少なくとも1種である、請求項17に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項20】
正極活物質を含有する正極シート、負極活物質を含有する負極シート、セパレータ、及び請求項17~19のいずれか1項に記載の電解液を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項21】
電池高温貯蔵特性と高温サイクル特性とを同時に向上させる方法であって、
電解液中に、請求項6~8のいずれか1項に記載の電解液全質量の0.1%~5.0%を占める式(I)構造のシラン系添加剤と、電解液全質量の0.1%~8.0%を占める成膜添加剤とを添加する、又は、電解液中に、請求項13~16のいずれか1項に記載のシラン系添加剤組成物を添加することを含むことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リチウムイオン電池電解液、特に炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤、前記シラン系添加剤と成膜添加剤との複合添加剤、前記シラン系添加剤と含フッ素リチウム塩系添加剤との複合添加剤、前記シラン系添加剤を含む電解液、及びリチウムイオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
高エネルギー密度は、リチウム電池の発展のトレンドであり、エネルギー密度を向上させる方法として、動作電圧の向上や正極材料のニッケル含有量の増加などが一般的に行われているが、いずれの方法もセルのサイクル特性と安全性とに新たな挑戦をもたらす。そのため、電池の高温サイクル特性や高温貯蔵安定性に注目が集まっている。
【0003】
リチウムイオン電池の高温貯蔵特性を改善するために、通常、電解液に炭酸ビニレン(VC)、炭酸ビニルエチレン(VEC)、1,3-プロパンスルトン(PS)、1-プロペン1,3-スルトン(PST)、トリス(トリメチルシリル)ボレート(TMSB)等の高温特性を改善する添加剤を添加することが採用されている。VC、及びVEC等は、負極にSEI膜を形成し、電解液と負極との副反応を抑制し、高温貯蔵時の電極の安定性を向上させる。PS、PST、及びTMSB等は、負極の成膜に加えて、高ニッケル正極材料の表面にCEI系保護膜を形成することができ、高ニッケル正極における金属イオンの溶出と、それに伴う寄生反応とを抑制し、高ニッケル正極材料のリチウム電池の高温貯蔵特性を向上させる役割を果たす。
【0004】
しかし、これらの添加剤には欠点が存在しており、VEC又はVCは、高電圧電池システムで、電池の高温貯蔵後の体積膨張(ガス発生)が大きく、セルのインピーダンスの増加速度を抑制する効果も悪く、PS、及びPST等のスルホン酸エステル系添加剤は、セルのガス発生を顕著に抑制する効果があるが、その初期インピーダンス及びインピーダンス増加率が高く、電池の低温特性、及びレート特性等に不利であり、さらに重要なのは、PSは発癌性物質であり、Reach規制物質リストに登録されており、その使用がますます制限されていることである。PST又は1,4-ブタンスルトン(BS)のような同族体又は構造類似体にも同様の危険性があり、使用は推奨されない。TMSBは、高ニッケル材料系の高温特性を向上させることができたが、セルのガス発生を抑制する効果は不十分であり、インピーダンスの増加を抑制する効果も良くなかった。
【0005】
東莞市杉杉電池材料有限公司の特許CN109888386Aには、鎖状硫酸エステル系化合物Mと環状スルホン酸エステル系化合物Nとが開示されている。前記化合物Mは、正極と負極との界面で不動態化膜の形成に関与し、高温特性を向上させ、電池のガス発生を抑制するが、インピーダンスが高く、サイクル特性が悪い。前記化合物Nは、電池のサイクル特性を向上させ、インピーダンスを調整することができるが、不安定であり、貯蔵環境や使用環境に非常に厳格に要求される。化合物Mと化合物Nとを併用することにより、電池のサイクル特性や貯蔵特性を最適化することができるが、化合物Nの不安定性に直面している。
【0006】
寧徳時代社の特許CN109309248Aは、硫酸エステル系化合物とリン酸エステル系化合物との複合添加剤を開示しており、この複合添加剤は、正極表面に優先的に皮膜を形成することができ、HFとSEI膜又はCEI膜との結合によるガス発生を防止すると同時に、電極界面を効果的に保護し、高温条件下での活性リチウムの損失を低減し、さらに電池の高温貯蔵特性を著しく改善する。しかし、この複合添加剤の高温貯蔵特性は、まだ向上させる必要があり、しかも高温サイクル安定性の改善が言及されていない。
【0007】
総合的に言えば、従来の高温特性改善型添加剤は、高温貯蔵特性を向上させる必要があるだけでなく、その界面保護膜の大部分のインピーダンスが高く、インピーダンスの増加率も高く、電池のレート特性、低温特性や長期サイクル安定性を劣化させる。そのため、高温貯蔵特性を改善すると同時に、電池の高温サイクル安定性、低温特性、及びレート特性を両立させることは、現在の技術的難点の1つである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の技術的課題を解決するために、本発明は、化合物が安定的であり、セルのガス発生を抑制すると同時に、電池の高温貯蔵特性及び高温サイクル特性を向上させるシラン系添加剤及びシラン系添加剤組成物を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、以下の技術的解決手段によって実現される。
一態様では、本発明は、セルのガス発生を抑制し、構造が下記式(I)で示される、電解液における炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤の使用を提案する。
【0010】
【化1】
(ただし、R、R、R、及びRは、独立して、アルキル基、アルキニル基、フルオロアルキル基、及びフルオロアルキニル基から選択されるいずれか1つであり、かつR、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、炭素-炭素三重結合を含有する。)
【0011】
アルキル基又はアルキニル基鎖が長すぎることによる立体効果により、材料と電解液との界面での成膜効率が低く、内部抵抗が高すぎるという問題を回避するために、好ましくは、R、R、R、及びRは、独立して、C1~C6アルキル基、C2~C6アルキニル基、フルオロC1~C6アルキル基、及びフルオロC2~C6アルキニル基から選択される1つである。より好ましくは、R、R、R、及びRは、独立して、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、エチニル基又はプロピニル基から選択される1つである。最も好ましくは、前記シラン系添加剤は、下記の構造から選択される少なくとも1種である。
【0012】
【化2】
【0013】
前記シラン系添加剤は、電解液全質量の0.1%~5.0%を占め、この濃度では、前記シラン系添加剤はセルのガス発生を抑制する役割を果たすことができる。好ましくは、前記シラン系添加剤は、電解液全質量の0.2%~3.0%を占める。
【0014】
本発明のシラン系添加剤は、電解液中で、フォーメーション時に酸化重合や還元重合が正極と負極とで起こり、緻密な表面膜を形成して、この表面膜は一定のイオン透過性を持つと同時に、電解液を酸化性の強い正極(又は還元性の強い負極)と隔離することができ、電解液中の溶媒が、高温下で電極シートと発生する副反応を減少させる。例えば、炭酸エステル系溶媒の分解反応又は酸化反応は、二酸化炭素、一酸化炭素やアルカン、オレフィン系ガスを生成し、放置又は貯蔵中にセルがガスを発生することを引き起こす。溶媒と電極シートとの間の副反応を抑制することができれば、電池の高温貯蔵中のガス発生を抑制することができる。
【0015】
本発明のシラン系化合物は、高温貯蔵中にセルのガス発生を抑制する効果を発揮するが、その高温サイクル特性はまだ理想的ではなく、その原因としては、不飽和シラン成膜時のインピーダンスが高く、電池内部の界面インピーダンスが少し高過ぎることが考えられる。本発明者らは研究により、電解液中にさらに他の成膜添加剤を加えると、負極又は正極上に新たな表面皮膜を形成することができ、表面膜の構造に影響を与え、それによって、電極シートインピーダンスを効果的に減少させ、また、高温貯蔵特性と高温サイクル特性との向上も図れることを発見した。
【0016】
したがって、本発明は、また、上記のいずれか1項に記載の電解液におけるシラン系添加剤と成膜添加剤との複合添加剤の使用を提供し、前記成膜添加剤は、成膜電位が1.5V(vs.Li/Li)よりも低く、電解液全質量の0.1%~8.0%を占め、前記シラン系添加剤は、電解液全質量の0.1%~5.0%を占める。好ましくは、前記成膜添加剤は電解液全質量の0.2~3.0%を占め、前記シラン系添加剤は、電解液全質量の0.2~3.0%を占める。より好ましくは、前記成膜添加剤は、電解液全質量の0.2~2.0%を占め、前記シラン系添加剤は、電解液全質量の0.2~2.0%を占める。
【0017】
電解液における上記シラン系添加剤と成膜添加剤との複合添加剤の使用によれば、好ましくは、前記成膜添加剤は、酸無水物系化合物、スルホン酸エステル系化合物、硫酸エステル系化合物、トリメチルシリルエステル系化合物、不飽和環状炭酸エステル系化合物、及びフルオロ環状炭酸エステル系化合物から選択される少なくとも1種である。
【0018】
前記酸無水物系化合物は、コハク酸無水物、マレイン酸無水物、及びシトラコン酸無水物から選択される少なくとも1種であり、前記スルホン酸エステル系化合物は、1,3-プロパンスルトン、1,4-ブタンスルトン、メチレンメタンジスルホナート、及び1-プロペン1,3-スルトンから選択される少なくとも1種であり、前記硫酸エステル系化合物は、硫酸エチレン、環状硫酸トリメチレン、環状硫酸1,2-プロピレン、及び4,4’-ビエチレンスルファートから選択される少なくとも1種であり、前記トリメチルシリルエステル系化合物は、トリス(トリメチルシリル)ボラート、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、トリス(トリメチルシリル)ホスファイト、及びトリス(トリメチルシリル)トリフルオロメタンスルホネートから選択される少なくとも1種であり、前記不飽和環状炭酸エステル系化合物は、炭酸ビニレン及び/又は炭酸ビニルエチレンから選択され、前記フルオロ環状炭酸エステル系化合物は、フルオロエチレン炭酸エステル、ジフルオロエチレン炭酸エステル、又はトリフルオロメチルエチレン炭酸エステルから選択される少なくとも1種である。
より好ましくは、前記成膜添加剤は、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、及び硫酸エチレンから選択される少なくとも1種である。
【0019】
本発明は、また、リチウム塩、有機溶媒、及び上記いずれか1項に記載のシラン系添加剤又はシラン系添加剤と成膜添加剤との複合添加剤を含むリチウムイオン電池電解液を提供する。
【0020】
前記リチウム塩は、電解液によく使用されるリチウム塩を使用すればよい。好ましくは、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、リチウムビス(オキサラト)ホウ酸、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムから選択される少なくとも1種であり、かつ電解液中の前記リチウム塩の濃度は、0.3M~3Mである。より好ましくは、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含み、かつ電解液中の濃度が、0.3~2Mである。
【0021】
前記有機溶媒は、電解液によく使用される溶媒を使用すればよい。好ましくは、前記有機溶媒は、C3~C6の炭酸エステル系化合物、C3~C8のカルボン酸エステル系化合物、スルホン系化合物、及びエーテル系化合物から選択される少なくとも1種である。より好ましくは、前記C3~C6の炭酸エステル系化合物は、エチレン炭酸エステル、プロピレン炭酸エステル、ブチレン炭酸エステル、ジメチル炭酸エステル、メチルエチル炭酸エステル、ジエチル炭酸エステル、ジプロピル炭酸エステル、メチルプロピル炭酸エステル、及びエチルプロピル炭酸エステルから選択される少なくとも1種であり、前記C3~C8のカルボン酸エステル系化合物は、γ-ブチロラクトン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ブタン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ブタン酸エチル、酢酸プロピル、及びプロピオン酸プロピルから選択される少なくとも1種であり、前記スルホン系化合物は、スルホランから選択され、前記エーテル系化合物は、トリエチレングリコールジメチルエーテル又はテトラエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも1種である。
【0022】
本発明は、また、正極、負極、セパレータ、及び上記のいずれか1項に記載の電解液を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0023】
前記正極は、リチウム電池の分野によく使用される正極を使用すればよい。好ましくは、前記正極活物質は、LiNi1-x-y-zCoMnAl、ニッケルマンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、リチウムリッチマンガン系固溶体、マンガン酸リチウム又はリン酸鉄リチウムから選択される1種であり、ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、かつ0≦x+y+z≦1である。
【0024】
前記負極は、リチウム電池の分野によく使用される負極を使用すればよい。好ましくは、前記負極活物質は、人造石墨、被覆型天然石墨、シリコン-炭素負極、シリコン負極又はチタン酸リチウムから選択される1種である。
【0025】
前記リチウムイオン電池の電圧は、2.5~4.2Vの一般的な電池電圧範囲又は4.2V以上の高電圧テスト範囲としてもよい。
【0026】
本発明は、また、電池の高温貯蔵特性と高温サイクル特性とを同時に向上させる方法であって、電解液中に、上記のいずれか1項に記載の電解液全質量の0.1%~5.0%を占める式(I)構造のシラン系添加剤と、電解液全質量の0.1%~8.0%を占める他の成膜添加剤との複合添加剤を添加することを含む方法を提供する。
【0027】
別の態様では、本発明は、また、
前記組成物は、
セルのガス発生を抑制し、電解液全質量の0.01%~10.0%を占め、構造が下記式(I)で示されるシラン系添加剤と、
セルの初期インピーダンスを改善し、サイクル中のセルのインピーダンスの持続的な増加を抑制し、電解液全質量の0.1%~10.0%を占める含フッ素リチウム塩系添加剤と、を含む、電解液におけるシラン系添加剤組成物の使用を提供する。
【0028】
【化3】
(ただし、R、R、R、及びRは、独立して、アルキル基、アルキニル基、フルオロアルキル基、及びフルオロアルキニル基から選択されるいずれか1つであり、かつR、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、炭素-炭素三重結合を含有する。)
【0029】
より好ましくは、前記シラン系添加剤は、電解液全質量の0.1%~3.0%を占め、前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、電解液全質量の0.2%~5.0%を占める。
【0030】
電解液における上記シラン系添加剤組成物の使用によれば、好ましくは、R、R、R、及びRは、独立して、C1~C6アルキル基、C2~C6アルキニル基、フルオロC1~C6アルキル基、及びフルオロC2~C6アルキニル基から選択され、より好ましくは、前記シラン系添加剤は、以下の構造から選択される少なくとも1種である。
【0031】
【化4】
【0032】
前記シラン系添加剤は、溶媒よりも先に正極で酸化分解し、正極の表面に安定的な保護膜を形成し、電解液と正極材料との寄生反応を抑制し、正極金属イオンの溶出を防止することによって、電池の高温貯蔵特性を改善することができる。また、本発明のシラン系添加剤は、従来の高温添加剤と比べて、低い初期インピーダンスを有し、電池の総合的特性の改善に有利である。
【0033】
前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、ホウ素又はリンを中心イオンとした含フッ素リチウム塩化合物であり、好ましくは、前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(略語LiDFOB)、四フッ化ホウ酸リチウム(略語LiBF))、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(略語LiDFOP)、テトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(略語LiTFOP)から選択される少なくとも1種である。前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、イオン導電率がより高く、電荷移動に有利である界面膜を形成することができ、しかも、この界面膜は正負極の界面膜を持続的に修飾し、電池のサイクル中におけるセルのインピーダンスの持続的な増加を抑制し、電池の長期間の高温サイクル安定性を向上させる。
【0034】
電解液にシラン系添加剤と含フッ素塩系添加剤とを併用することによって、電池の高温貯蔵中のガス発生をさらに抑制し、初期インピーダンス及び電池のサイクル中のインピーダンス増加を抑制し、電池の容量回復特性及び容量維持特性を向上させ、電池のレート特性及び低温放電特性を改善することができる。
【0035】
本発明は、また、リチウム塩、有機溶媒及び上記のいずれか1項に記載のシラン系添加剤及び含フッ素リチウム塩系添加剤の組成物を含むリチウムイオン電池電解液を提供する。
【0036】
前記リチウム塩は、電解液によく使用されるリチウム塩を使用すればよい。好ましくは、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムから選択される少なくとも1種であり、かつ電解液中の前記リチウム塩のモル濃度は、0.4~1.6mol/Lである。より好ましくは、前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウムを含み、電解液中の前記ヘキサフルオロリン酸リチウムのモル濃度が、0.6~1.2mol/Lである。
【0037】
前記有機溶媒は、電解液によく使用される溶媒を使用すればよい。好ましくは、前記有機溶媒は、C3~C6の炭酸エステル系化合物、C3~C8のカルボン酸エステル系化合物、スルホン系化合物、及びエーテル系化合物から選択される少なくとも1種である。より好ましくは、前記C3~C6の炭酸エステル系化合物は、エチレン炭酸エステル、プロピレン炭酸エステル、ブチレン炭酸エステル、ジメチル炭酸エステル、メチルエチル炭酸エステル、ジエチル炭酸エステル、ジプロピル炭酸エステル、メチルプロピル炭酸エステル、及びエチルプロピル炭酸エステルから選択される少なくとも1種であり、前記C3~C8のカルボン酸エステル系化合物は、γ-ブチロラクトン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ブタン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ブタン酸エチル、酢酸プロピル、及びプロピオン酸プロピルから選択される少なくとも1種であり、前記スルホン系化合物は、スルホランから選択され、前記エーテル系化合物は、トリエチレングリコールジメチルエーテル又はテトラエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも1種である。最も好ましくは、前記C3~C6の炭酸エステル系化合物は、エチレン炭酸エステル、プロピレン炭酸エステル、ブチレン炭酸エステル、ジメチル炭酸エステル、メチルエチル炭酸エステル、ジエチル炭酸エステル、ジプロピル炭酸エステル、メチルプロピル炭酸エステル、及びエチルプロピル炭酸エステルから選択される少なくとも1種であり、前記C3~C8のカルボン酸エステル系化合物は、γ-ブチロラクトン、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、ブタン酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、ブタン酸エチル、酢酸プロピル、及びプロピオン酸プロピルから選択される少なくとも1種であり、前記スルホン系化合物は、スルホランから選択され、前記エーテル系化合物は、トリエチレングリコールジメチルエーテル又はテトラエチレングリコールジメチルエーテルから選択される少なくとも1種である。
【0038】
本発明は、また、正極、負極、セパレータ、及び上記のいずれか1項に記載の電解液を含むリチウムイオン電池を提供する。
【0039】
前記正極は、リチウム電池の分野によく使用される正極を使用すればよい。好ましくは、前記正極活物質は、ニッケル・コバルト・マンガン三元材料LiNi1-x-y-zCoMnAl2、ニッケルマンガン酸リチウム、コバルト酸リチウム、リチウムリッチマンガン系固溶体、マンガン酸リチウム又はリン酸鉄リチウムから選択される1種であり、ただし、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、かつ0≦x+y+z≦1である。
【0040】
前記負極は、リチウム電池の分野によく使用される負極を使用すればよい。好ましくは、前記負極活物質は、人造石墨、被覆型天然石墨、シリコン-炭素負極、シリコン負極又はチタン酸リチウムから選択される1種である。
【0041】
前記リチウムイオン電池の電圧は、2.0~4.2Vの一般的な電池電圧範囲、又は4.2V以上の高電圧テスト範囲としてもよい。
【0042】
本発明は、また、電解液中に、上記のいずれか1項に記載のシラン系添加剤及び含フッ素リチウム塩系添加剤の組成物を添加することを含む、電池高温貯蔵特性と高温サイクル特性とを同時に向上させる方法を提供する。
【発明の効果】
【0043】
従来技術と比べて、本発明が有する有益な効果は以下のとおりである。
1.本発明の炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤は、電解液に適用する場合に、高温でより安定であり、正極又は負極の表面に形成されたCEI膜が破壊されにくく、ガスの発生が低減され、セルのガス発生が抑制され、電池の高温貯蔵特性が向上する。
2.本発明は、シラン系添加剤と他の成膜添加剤との併用により、負極又は正極上に新たな表面皮膜を形成することができ、電極シートのインピーダンスを効果的に低減し、また、電池の高温貯蔵特性及び高温サイクル安定性を同時に向上させることができる。
3.本発明の炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤は、正極表面に保護層を形成することができ、それによって、高温貯蔵中の電解液と正極材料との寄生反応を抑制し、正極材料による電解液の触媒分解を抑制し、高温貯蔵及び高温サイクル中の体積膨張を効果的に改善することができ、従来技術の高温添加剤よりも低い初期インピーダンス及びインピーダンス増加率を有する。また、本発明の含フッ素リチウム塩系添加剤は、同時にかつ持続的に正負極に成膜反応を起こし、正負極の界面膜の構造と成分を調整し、正負極へ低インピーダンスで安定性の高い界面膜を生成することを促進し、サイクル中のインピーダンスの持続的な増加を抑制し、電池のレート特性、低温放電特性、及び長期高温サイクル安定性を改善する。本発明は、三元リチウムイオン電池又は他の高電圧電池システムに適用した場合に、炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤と含フッ素リチウム塩系添加剤とを併用することにより、電池の高温貯蔵特性、及び高温サイクル安定性を同時に改善し、また、電池の低温放電特性とレート特性とを両立させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、具体的な実施例を参照して本発明をさらに説明するが、本発明はこれらの具体的な実施形態に限定されるものではない。当業者にとって明らかなように、本発明は、特許請求の範囲に含まれ得る全ての可能な代替形態、改良形態及び等価形態を含む。
【実施例
【0045】
一態様では、本発明の実施形態の調製例及び実施例は以下の通りである。
【0046】
調製例1
基礎電解液の調製:酸素含有量及び水含有量の両方が0.1ppm以下の高純度アルゴングローブボックスにて、エチレン炭酸エステル(EC)、ジエチル炭酸エステル(DEC)、及びメチルエチル炭酸エステル(EMC)を質量比EC:DEC:EMC=3:2:5で混合した後に、混合液に質量百分率が12.5wt%のヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を緩やかに加えた。
リチウムイオン電池の作製:上記で調製されたリチウムイオン電池の電解液を十分に乾燥させた4.3V LiNi0.83Co0.07Mn0.2/黒鉛重合体電池に注入し、電池を45℃で放置し、フォーメーション(化成)及び二次封口をした後に、キャパシティグレーディングをしてテストした。
【0047】
実施例1.1
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物1を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0048】
実施例1.2
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物3を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0049】
実施例1.3
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物5を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0050】
実施例1.4
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物10を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0051】
実施例1.5
電解液に、電解液全質量の1.5wt%を占める化合物1を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0052】
実施例1.6
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物1、及び電解液全質量の1.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0053】
実施例1.7
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物3、及び電解液全質量の1.0wt%を占める1,3-プロパンスルトン(PS)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0054】
実施例1.8
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物5、及び電解液全質量の1.0wt%を占めるトリス(トリメチルシリル)ホスフェート(TMSP)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0055】
実施例1.9
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物7、及び電解液全質量の1.0wt%を占める硫酸エチレン(DTD)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0056】
実施例1.10
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物10、及び電解液全質量の1.0wt%を占める1-プロペン1,3-スルトン(PES)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0057】
実施例1.11
電解液に、電解液全質量の0.2wt%を占める化合物1、及び電解液全質量の1.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0058】
実施例1.12
電解液に、電解液全質量の1.0wt%を占める化合物3、及び電解液全質量の1.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0059】
実施例1.13
電解液に、電解液全質量の2.0wt%を占める化合物5、及び電解液全質量の1.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0060】
実施例1.14
電解液に、電解液全質量の3.0wt%を占める化合物10、及び電解液全質量の1.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0061】
実施例1.15
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物1、及び電解液全質量の0.2wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0062】
実施例1.16
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物5、及び電解液全質量の2.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0063】
実施例1.17
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物9、及び電解液全質量の3.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0064】
実施例1.18
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物3、及び電解液全質量の8.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本実施例の操作は調製例1と同様であった。
【0065】
比較例1.1
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物1,3-プロパンスルトン(PS)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0066】
比較例1.2
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物アジポニトリル(ADN)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0067】
比較例1.3
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物ジフェニルジメトキシシラン(DPDMS)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0068】
比較例1.4
電解液に、電解液全質量の1.5wt%を占める化合物炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0069】
比較例1.5
電解液に、電解液全質量の1.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0070】
比較例1.6
電解液に、電解液全質量の1.0wt%を占める1,3-プロパンスルトン(PS)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0071】
比較例1.7
電解液に、電解液全質量の1.0wt%を占める1-プロペン1,3-スルトン(PES)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0072】
比較例1.8
電解液に、電解液全質量の1.0wt%を占めるトリス(トリメチルシリル)ホスフェート(TMSP)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0073】
比較例1.9
電解液に、電解液全質量の1.0wt%の硫酸エチレン(DTD)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0074】
比較例1.10
電解液に、電解液全質量の2.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0075】
比較例1.11
電解液に、電解液全質量の8.0wt%を占める炭酸ビニレン(VC)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0076】
比較例1.12
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物5、及び電解液全質量の1.0wt%を占めるアジポニトリル(ADN)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
【0077】
比較例1.13
電解液に、電解液全質量の0.5wt%を占める化合物7、及び電解液全質量の1.0wt%を占めるトリメチルシリルメチルイソシアネート(TMSNCS)を加えた以外、本比較例の操作は調製例1と同様であった。
実施例1.1~1.18及び比較例1.1~1.13について、電池の常温サイクル特性、高温サイクル特性、及び電池の高温貯蔵特性をそれぞれテストし、テスト結果を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
実施例1.1~1.4と比較例1.1~1.3のテスト結果を比較した結果、電解液に本発明の前記炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤を加えると、セルのガス発生が減少することが分かった。
実施例1.5~1.18と比較例1.4~1.11のテスト結果を比較した結果、炭素-炭素三重結合を含むシラン系添加剤と成膜添加剤とを併用すると、セルの高温サイクル特性が向上し、また高温貯蔵特性も改善されることが分かった。その中でも、炭酸ビニレン、1,3-プロパンスルトン、トリス(トリメチルシリル)ホスフェート、及び硫酸エチレンは効果が高かった。
実施例1.5~1.10と比較例1.12~1.13のテスト結果を比較した結果、高温サイクル特性に優れた他の一般的な添加剤と併用する場合と比べて、本発明の前記シラン系添加剤と成膜添加剤とを併用すると、高温サイクル特性及び高温貯蔵特性はより顕著に改善された。
【0080】
別の態様では、本発明の実施形態の調製例及び実施例は以下のとおりである。
【0081】
調製例2:
基礎電解液の調製:酸素含有量及び水含有量の両方が0.1ppm以下の高純度アルゴングローブボックスにて、エチレン炭酸エステル(EC)、ジエチル炭酸エステル(DEC)、及びメチルエチル炭酸エステル(EMC)を質量比EC:DEC:EMC=3:2:5で混合した後に、混合液にヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)をモル濃度が1mol/Lとなるまで加えた。
リチウムイオン電池の作製:上記で調製されたリチウムイオン電池の電解液を十分に乾燥させた4.3V LiNi0.83Co0.07Mn0.2/石墨電池に注入し、電池を45℃で放置し、フォーメーション及び二次封口をした後に、キャパシティグレーディングをしてテストした。
【0082】
実施例2.1
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物1、及び電解液全質量に対して0.5%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0083】
実施例2.2
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物1、及び電解液全質量に対して1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0084】
実施例2.3
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物1、及び電解液全質量に対して2.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0085】
実施例2.4
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物1、及び電解液全質量に対して3.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0086】
実施例2.5
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物1、及び電解液全質量に対して5.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0087】
実施例2.6
電解液、に電解液全質量に対して1.0%の化合物1、及び電解液全質量に対して1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0088】
実施例2.7
電解液に、電解液全質量に対して2.0%の化合物1、及び電解液全質量に対して1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0089】
実施例2.8
電解液に、電解液全質量に対して3.0%の化合物1、及び電解液全質量に対して1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0090】
実施例2.9
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物3、及び電解液全質量に対して1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0091】
実施例2.10
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物3、及び電解液全質量に対して1.0%のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDFOP)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0092】
実施例2.11
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物3、及び電解液全質量に対して1.0%のテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウム(LiTFOP)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0093】
実施例2.12
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物3、及び電解液全質量に対して1.0%の四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0094】
実施例2.13
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物5、及び電解液全質量に対して1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0095】
実施例2.14
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物7、及び電解液全質量に対して1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0096】
実施例2.15
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物10、及び電解液全質量に対して1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本実施例の操作は調製例2と同様であった。
【0097】
比較例2.1
本比較例の操作は調製例2と同様であり、すなわち、基礎電解液を用いて、添加剤を使用しなかった。
【0098】
比較例2.2
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の化合物1を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0099】
比較例2.3
電解液に、電解液全質量に対して1.0%の化合物1を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0100】
比較例2.4
電解液に、電解液全質量に対して1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0101】
比較例2.5
電解液に、電解液全質量に対して1.0%の1,3-プロパンスルトン(PS)を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0102】
比較例2.6
電解液に、電解液全質量に対して1.0%の1,3-プロパンスルトン(PS)及び1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0103】
比較例2.7
電解液に、電解液全質量に対して1.0%の化合物3を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0104】
比較例2.8
電解液に、電解液全質量に対して1.0%のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDFOP)を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0105】
比較例2.9
電解液に、電解液全質量に対して0.5%の1-プロペン1,3-スルトン(PST)を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0106】
比較例2.10
電解液に、電解液全質量に対して0.5%のPST及び1.0%のジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム(LiDFOP)を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0107】
比較例2.11
電解液に、電解液全質量に対して0.5%のPST及び1.0%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0108】
比較例2.12
電解液に、電解液全質量に対して1.0%のトリス(トリメチルシリル)ボレート(TMSB)を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0109】
比較例2.13
電解液に、電解液全質量に対して1.0%のトリス(トリメチルシリル)ボレート(TMSB)及び0.5%のジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム(LiDFOB)を加えた以外、本比較例の操作は調製例2と同様であった。
【0110】
実施例2.1~2.15と比較例2.1~2.13について、ニッケル・コバルト・マンガン三元電池において初期DCR、-20℃低温放電、電池3Cレート放電、高温サイクル特性及び高温貯蔵特性をテストし、テスト結果を表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
以上の結果から分かるように、シラン添加剤と含フッ素リチウム塩系添加剤との両方は相乗作用を果たし、いずれも不可欠なものであり、高温貯蔵特性及び高温サイクル安定性を確保しつつ、電池の低温特性及びレート特性を両立させる。シラン添加剤と含フッ素リチウム塩系添加剤とを併用する場合に、総合的特性は、添加剤を使用しない、単一のシラン添加剤又は単一の含フッ素リチウム塩系添加剤、及び一般的な高温型添加剤(例えばPS、PST、TMSB等)と含フッ素リチウム塩系添加剤との組み合わせを使用した比較例のいずれよりも優れた。
【手続補正書】
【提出日】2023-02-03
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で示されるシラン系添加剤を、セルにおける電解液に添加することにより、前記電解液におけるガス発生を抑制することを特徴とするシラン系添加剤の使用方法。
【化1】
(ただし、R、R、R、及びRは、独立して、アルキル基、アルキニル基、フルオロアルキル基、及びフルオロアルキニル基から選択されるいずれか1つであり、かつR、R、R、及びRのうち少なくとも1つは、炭素-炭素三重結合を含有する。)
【請求項2】
前記シラン系添加剤は、前記式(I)における、R、R、及びR 、独立して、C1~C6アルキル基、C2~C6アルキニル基、フルオロC1~C6アルキル基、及びフルオロC2~C6アルキニル基から選択される1つである、請求項1に記載のシラン系添加剤の使用方法
【請求項3】
前記シラン系添加剤は、前記式(I)における、R、R、及びR 、独立して、メチル基、エチル基、トリフルオロメチル基、トリフルオロエチル基、エチニル基又はプロピニル基から選択される1つである、請求項2に記載のシラン系添加剤の使用方法
【請求項4】
前記シラン系添加剤は、以下の構造から選択される少なくとも1種である、請求項3に記載のシラン系添加剤の使用方法
【化2】
【請求項5】
前記シラン系添加剤は、前記電解液全質量に対して0.1%~5.0%を占める、請求項1~4のいずれか1項に記載のシラン系添加剤の使用方法
【請求項6】
下記式(I)で示されるシラン系添加剤と、成膜電位が1.5V(vs.Li /Li)未満である成膜添加剤との複合添加剤を、セルにおける電解液に添加することにより、前記シラン系添加剤によって前記電解液におけるガス発生を抑制すること特徴とする、シラン系添加剤と成膜添加剤との複合添加剤の使用方法。
【化3】
(ただし、R 、R 、R 、及びR は、独立して、アルキル基、アルキニル基、フルオロアルキル基、及びフルオロアルキニル基から選択されるいずれか1つであり、かつR 、R 、R 、及びR のうち少なくとも1つは、炭素-炭素三重結合を含有する。)
【請求項7】
前記成膜添加剤は、酸無水物系化合物、スルホン酸エステル系化合物、硫酸エステル系化合物、トリメチルシリルエステル系化合物、不飽和環状炭酸エステル系化合物又はフルオロ環状炭酸エステル系化合物から選択される少なくとも1種である、請求項6に記載のシラン系添加剤と成膜添加剤との複合添加剤の使用方法
【請求項8】
前記成膜添加剤は、前記電解液全質量に対して0.1%~8.0%を占める、請求項6又は7に記載のシラン系添加剤と成膜添加剤との複合添加剤の使用方法
【請求項9】
リチウム塩と有機溶媒と、を含むリチウムイオン電池電解液であって、
下記式(I)で示され、セルにおける電解液のガス発生を抑制するシラン系添加剤、又は、
前記シラン系添加剤と、成膜電位が1.5V(vs.Li+/Li)未満である成膜添加剤と、を含む複合添加剤を含むことを特徴とするリチウムイオン電池電解液。
【化4】
(ただし、R 、R 、R 、及びR は、独立して、アルキル基、アルキニル基、フルオロアルキル基、及びフルオロアルキニル基から選択されるいずれか1つであり、かつR 、R 、R 、及びR のうち少なくとも1つは、炭素-炭素三重結合を含有する。)
【請求項10】
前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、リチウムビス(オキサラト)ホウ酸、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムから選択される少なくとも1種であり、かつ前記電解液中の前記リチウム塩の濃度が、0.3M~3Mである、請求項9に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項11】
前記有機溶媒は、C3~C6の炭酸エステル系化合物、C3~C8のカルボン酸エステル系化合物、スルホン系化合物、及びエーテル系化合物から選択される少なくとも1種である、請求項9に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項12】
正極と、負極と、セパレータと、を含むリチウムイオン電池であって、
請求項9に記載のリチウムイオン電池電解液をさらに含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項13】
下記式(I)で示され、セルにおける電解液のガス発生を抑制するシラン系添加剤と、
前記セルの初期インピーダンスを改善し、サイクル中の前記セルのインピーダンス増加を抑制する含フッ素リチウム塩系添加剤と、
を含むシラン系添加剤組成物を、前記電解液に添加するシラン系添加剤組成物の使用方法であって、
前記シラン系添加剤は、前記電解液全質量に対して0.01%~10.0%を占め、
前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、前記電解液全質量に対して0.1%~10.0%を占めることを特徴とする、シラン系添加剤組成物の使用方法。
【化5】
(ただし、R 、R 、R 、及びR は、独立して、アルキル基、アルキニル基、フルオロアルキル基、及びフルオロアルキニル基から選択されるいずれか1つであり、かつR 、R 、R 、及びR のうち少なくとも1つは、炭素-炭素三重結合を含有する。)
【請求項14】
前記シラン系添加剤は、前記電解液全質量に対して0.1%~3.0%を占め、
前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、前記電解液全質量に対して0.2%~5.0%を占める、請求項13に記載のシラン系添加剤組成物の使用方法
【請求項15】
前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、ホウ素又はリンを中心イオンとした含フッ素リチウム塩化合物である、請求項13に記載のシラン系添加剤組成物の使用方法
【請求項16】
前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、ジフルオロ(オキサラト)ホウ酸リチウム、四フッ化ホウ酸リチウム、ジフルオロビス(オキサラト)リン酸リチウム、及びテトラフルオロ(オキサラト)リン酸リチウムから選択される少なくとも1種である、請求項15に記載のシラン系添加剤組成物の使用方法
【請求項17】
リチウム塩と、有機溶媒と、を含むリチウムイオン電池電解液であって、
下記式(I)で示され、セルにおける電解液のガス発生を抑制するシラン系添加剤と、
前記セルの初期インピーダンスを改善し、サイクル中の前記セルのインピーダンス増加を抑制する含フッ素リチウム塩系添加剤と、
を含むシラン系添加剤組成物を更に含み、
前記シラン系添加剤は、前記電解液全質量に対して0.01%~10.0%を占め、
前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、前記電解液全質量に対して0.1%~10.0%を占めることを特徴とするリチウムイオン電池電解液。
【化6】
(ただし、R 、R 、R 、及びR は、独立して、アルキル基、アルキニル基、フルオロアルキル基、及びフルオロアルキニル基から選択されるいずれか1つであり、かつR 、R 、R 、及びR のうち少なくとも1つは、炭素-炭素三重結合を含有する。)
【請求項18】
前記リチウム塩は、ヘキサフルオロリン酸リチウム、リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド、及びビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウムから選択される少なくとも1種であり、かつ前記電解液中の前記リチウム塩のモル濃度が、0.4mol/L~1.6mol/Lである、請求項17に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項19】
前記有機溶媒は、C3~C6の炭酸エステル系化合物、C3~C8のカルボン酸エステル系化合物、スルホン系化合物、及びエーテル系化合物から選択される少なくとも1種である、請求項17に記載のリチウムイオン電池電解液。
【請求項20】
正極活物質を含有する正極シート、負極活物質を含有する負極シート、セパレータ、及び請求項17に記載のリチウムイオン電池電解液を含むことを特徴とするリチウムイオン電池。
【請求項21】
下記式(I)で示され、セルにおける電解液のガス発生を抑制するシラン系添加剤と、成膜電位が1.5V(vs.Li /Li)未満である成膜添加剤とを含む複合添加剤を、前記電解液に添加することにより、電池高温貯蔵特性と高温サイクル特性とを同時に向上させる方法であって、
前記シラン系添加剤は、前記電解液全質量に対して0.1%~5.0%を占め、
前記成膜添加剤は、前記電解液全質量に対して0.1%~8.0%を占めることを特徴とする、電池高温貯蔵特性と高温サイクル特性とを同時に向上させる方法。
【化7】
(ただし、R 、R 、R 、及びR は、独立して、アルキル基、アルキニル基、フルオロアルキル基、及びフルオロアルキニル基から選択されるいずれか1つであり、かつR 、R 、R 、及びR のうち少なくとも1つは、炭素-炭素三重結合を含有する。)
【請求項22】
下記式(I)で示され、セルにおける電解液のガス発生を抑制するシラン系添加剤と、前記セルの初期インピーダンスを改善し、サイクル中の前記セルのインピーダンス増加を抑制する含フッ素リチウム塩系添加剤とを含むシラン系添加剤組成物を、前記電解液に添加することにより、電池高温貯蔵特性と高温サイクル特性とを同時に向上させる方法であって、
前記シラン系添加剤は、前記電解液全質量に対して0.01%~10.0%を占め、
前記含フッ素リチウム塩系添加剤は、前記電解液全質量に対して0.1%~10.0%を占めることを特徴とする、電池高温貯蔵特性と高温サイクル特性とを同時に向上させる方法。
【化8】
(ただし、R 、R 、R 、及びR は、独立して、アルキル基、アルキニル基、フルオロアルキル基、及びフルオロアルキニル基から選択されるいずれか1つであり、かつR 、R 、R 、及びR のうち少なくとも1つは、炭素-炭素三重結合を含有する。)
【国際調査報告】