(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-02
(54)【発明の名称】被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法
(51)【国際特許分類】
A61M 21/02 20060101AFI20230726BHJP
【FI】
A61M21/02 G
A61M21/02 C
A61M21/02 E
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023525122
(86)(22)【出願日】2021-07-09
(85)【翻訳文提出日】2023-03-10
(86)【国際出願番号】 EP2021069230
(87)【国際公開番号】W WO2022008747
(87)【国際公開日】2022-01-13
(32)【優先日】2020-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523010579
【氏名又は名称】メタフィジクス エンジニアリング ソシエテ アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ログニーニ、ジュリオ
(72)【発明者】
【氏名】ガッロ、シモン
(72)【発明者】
【氏名】ブランケ、オラフ
(57)【要約】
被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法、デバイス、およびシステムが、本明細書で開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法であって、前記方法が、
a)音声/映像デバイスを介して、映像ファイルと共にまたは別に、音声ファイルを再生する工程と、
b)前記被験体の遠位部分に熱-触覚刺激を提供して、前記遠位部分の皮膚において血管の拡張度を増大させる工程であって、前記熱-触覚刺激が、前記音声ファイルによって得られたハプティックプロファイルに従ってハプティックデバイスを介して提供され、これによって、前記被験体において熱調節と共にリラクゼーション状態を誘発して、入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善する、工程と、を含む方法。
【請求項2】
前記被験体の遠位部分が、手、足、足首、手首、頭、および首の少なくとも1つを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記被験体の遠位部分の皮膚における血管の温度および/または拡張度、またはその変化を経時的にモニターする工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記音声ファイルが、少なくとも声をエンコードする音声トラックおよび音をエンコードする音声トラックを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記ハプティックプロファイルが、
a)音声ファイルから導出された音声信号を処理し、それによって前記音声信号の周波数および/または振幅の少なくとも1つのプロファイルを取得すること、および
b)前記周波数および/または振幅のプロファイルをハプティックプロファイルに変換すること、によって取得される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
処理された音声信号が、音をエンコードする音声ファイルから取得される、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記被験体の体幹の少なくとも一部の温度、および前記被験体の遠位部分の温度を測定および/またはモニターする工程を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記熱-触覚刺激が、時空間的に前記被験体の皮膚に提供された、熱勾配および圧力勾配を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記熱-触覚刺激が、前記被験体の生理学的パラメータ、運動パラメータ、および/または心理的パラメータに基づく持続時間を有する、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記ハプティックデバイスが、前記遠位部分に適応するために可撓性であり、および、圧力および/または温度および/またはアクティブ化時間および/または持続時間が別々に制御される複数のセルを含み、前記複数のセルは、好ましくはセル内の媒体の圧力および/または温度によって制御される、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記複数のセルが、セルパターンを定義するために前記遠位部分に配置される、請求項10記載の方法。
【請求項12】
ピークと谷を含む、前記音声信号の周波数および/または振幅の波プロファイルを判定する工程と、
少なくとも、前記波プロファイルの立ち上がり時間と立ち下がり時間、前記波プロファイルの立ち上がり持続時間と立ち下がり持続時間、前記波プロファイルの波勾配および/または波振幅を含む、前記波プロファイルにおいて複数の波パラメータを特定する工程と、前記波パラメータを、セルのアクティブ化時間、アクティブ化持続時間、圧力および/または温度を含む、ハプティックプロファイルパラメータに変換する工程と、を含み、
熱-触覚刺激を提供する工程が、複数の信号を複数のセルに送信することを含み、複数の信号の各々が、前記ハプティックプロファイルパラメータに関連付けられ、複数のセルの1つに方向づけられており、第2のセルの前に前記セルパターンで配置された第1のセルをアクティブ化する信号の送信が、前記セルパターンで前記第2のセルをアクティブ化するための信号の送信の前に行われる、請求項11記載の方法。
【請求項13】
1つのセルに方向づけられた信号の送信が、別のセルへの他の信号の送信が終了する前に開始される、請求項12記載の方法。
【請求項14】
1つのセルに方向づけられた信号が、別のセルに方向づけられた信号が送信されると同時に送信される、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記熱-触覚刺激の持続時間が、信号の持続時間に対応し、1つのセルに方向づけられた信号の持続時間が、複数のセルのうちの別のセルへの他の信号の持続時間と異なるかまたは等しくなり、前記熱-触覚刺激の圧力および/または温度が、前記遠位部分とは異なる身体部分で測定された身体パラメータに基づいて設定される、請求項12記載の方法。
【請求項16】
システムであって、前記システムが、
a)ユーザに熱-触覚刺激を提供するように構成された複数の触覚ディスプレイを備えるハプティックデバイスと、
b)映像ファイルと共にまたは別に、音声ファイルを再生するように構成された少なくとも1つの音声/映像デバイスと、
c)前記ハプティックデバイス、前記音声/映像デバイス、およびセンサと動作可能に接続されたデータ処理装置であって、請求項1~9に記載の方法を実施するために前記システムを動作させるように構成された命令を含むプロセッサを有する、データ処理装置と、を備える、システム。
【請求項17】
手、足、足首、手首、頭、および首の少なくとも1つなどの、被験体の少なくとも遠位部分の温度、またはその変化を測定するように構成されたセンサをさらに備える、請求項16記載のシステム。
【請求項18】
一連の命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、請求項16または17に記載のシステムに備えられるデータ処理装置によって実行されたときに、前記データ処理装置によって請求項1~9に記載の方法を実施するように前記システムを動作させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項19】
前記命令が、
i)被験体の少なくとも1つの遠位部分の温度、またはその変化に関するデータを受信および/または処理すること、
ii)映像ファイルと共にまたは別に、音声ファイルを再生するように音声/映像デバイスを操作すること、
iii)前記音声ファイルによって得られたハプティックプロファイルに関するデータを受信および/または処理すること、および
iv)前記被験体の少なくとも1つの遠位部分に熱-触覚刺激を提供するようにハプティックデバイスを操作すること、を含む、請求項18記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記命令が、
v)前記被験体に配置されたセンサによって測定された、前記被験体の体幹の少なくとも一部の温度またはその変化に関するデータを受信および/または処理すること、および/または前記被験体の体幹の少なくとも一部の温度と前記被験体の少なくとも1つの遠位部分の温度との差として定義された、前記被験体の遠位-近位温度勾配に関するデータを受信および/または処理すること、をさらに含む、請求項19記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項21】
前記命令が、
vi)前記被験体の生理学的、運動、および/または心理的パラメータに関するデータの受信および/または処理することをさらに含む、請求項19または20に記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項22】
請求項18~21に記載の非一時的コンピュータ可読媒体を備えるデータ処理装置。
【請求項23】
入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するために被験体の熱調節と共にリラクゼーション状態を誘発するための請求項16または17に記載のシステムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被験体の入眠を促進する、および/または睡眠の質を改善するための方法、デバイス、およびシステムの分野にある。
【背景技術】
【0002】
人は、生涯を通じて多くの時間を任意の他のどの活動よりも睡眠に費やす。睡眠は、急速に幸福の第3の柱の基本的な要素になりつつあり、フィットネスおよび栄養が主要な消費者カテゴリーになったのと同じように大きな変化を遂げようとしている。
【0003】
睡眠不足は高い人的コストを引き起こし、経済的コストを伴って罹患した固体の身体的および精神的な健康に大きな影響を与え、これは、ほとんどの場合、生産性の損失に起因している。たとえば、高齢者の睡眠不足は、多くの場合、疲労レベルの上昇、認知能力や気分の障害、および臨床的不眠症を含む、日中の機能障害に関連づけられる。しかし、複雑な睡眠の生理機能、睡眠段階の定義、および1950年代以降の夢の研究に関する多くの画期的な発見にもかかわらず、今日の社会では睡眠不足およびそれに関連する障害が増え続けている。これは、ライフスタイルの変化および高齢化を含む、睡眠に影響を与える複雑な性質および多くの要因に関連しているようである。
【0004】
不眠症などの睡眠の問題に対する典型的な解決策は、多くの場合、薬理学的処置に依存している。しかし、そのような処置は一時的な改善にすぎず、依存症を含む副作用が伴う。認知行動療法などの非薬理学的解決策は、睡眠の必要性を調節し、睡眠に関する期待、姿勢、および信念を修正することに焦点を当てている。薬物療法とは異なり、これらの後者の治療法は、睡眠の質により長期的な効果があり、重大な禁忌はない。しかし、これらは、高度な訓練を受けたセラピストによる管理が必要なため、費用がかかり、多くの地域および状況では利用することができない。
【0005】
体温調節およびその概日パターンは、睡眠のいくつかの態様に影響を与えることが最近示されている。したがって、ヒトの実験的研究では、人の四肢(すなわち、手および足)の「治療的」熱刺激が入眠を促進することを示すことによって、入眠中の温度変化の重要性が強調された(Krauchi, Kurt & Cajochen, Christian & Werth, Esther & Wirz-Justice, Anna.(1999). Warm feet promote the rapid onset of sleep. Nature. 401. 36-37. 10.1038/43366)。睡眠のための体温調節の重要性にもかかわらず、入眠のプロセスによって生理学的に必要とされる身体の熱変化を操作しようと試みる解決策は現在のところない。
【0006】
非薬理学的介入の中でも、リラクゼーション-瞑想技法などの心身介入は、睡眠研究で広く研究されており、入眠を促進し、睡眠の質を改善することが示されている。たとえば、リラクゼーション-瞑想は、気分の乱れおよび窮迫を軽減することができる(すなわち、自律神経系の注意制御の増加、心配および反芻の減少、気分障害の軽減)(Neuendorf, Rachel et al. “The Effects of Mind-Body Interventions on Sleep Quality: A Systematic Review.” Evidence-based complementary and alternative medicine: eCAM vol. 2015 (2015): 902708.)。
【0007】
しかし、家庭で一般的に使用されている足浴装置などの既出の解決策を超えて、体温調節がリラクゼーション-瞑想と組み合わされ得るかどうか、またどのように組み合わされ得るかは現在のところ不明である。これは、足の温度調節に対する時間的および空間的な制御が非常に乏しく、それらをリラクゼーション-瞑想のシナリオに必要な正確な時空間特徴と統合することは不可能である。
【0008】
したがって、睡眠を改善するための就寝前の足の体温調節および就寝前の瞑想/リラクゼーション技法の根底にある心理的、生理学的、および神経学的メカニズムは、ほとんど理解されていないままであり、体系的に調査されたことはない。両方のアプローチの統合は、家庭での実際の設定で使用される可能性を有しながら、温度および瞑想/リラクゼーション方法の正確な制御と統合を同時に達成し得る技術の欠如によっても妨げられている。睡眠を改善するための現在の技術ベースの解決策は、瞑想/リラクゼーションコンテンツのデジタル配信または睡眠の質の定量的測定の改善のいずれかに焦点を当てている。しかし、睡眠のためのアプリベースの解決策は科学的に検証されておらず、クライアントに合わせて個別化されていない。近年のセンシング技術(たとえば、アクティビティトラッカーまたはEEG)に基づく解決策は、睡眠の質をより客観的に測定することができるが、それを改善するまたは入眠を促進するための積極的な解決策は提供されていない。
【0009】
睡眠の質および効率は、人々の日課およびストレスや不安のレベルなどの個々の認知状態に大きく影響される。言及された個々の状態をある程度の精度で検出し、これらの状態が睡眠効率にどのように影響するかを予測することさえ可能にするウェアラブルセンシングの進歩にもかかわらず、これらの方法を、睡眠への直接、自動化、および個別化された介入にリンクさせる統合された解決策はない。
【発明の概要】
【0010】
本発明は、先行技術の解決策の上述の欠点を解決するか、または少なくとも軽減することを目的とする。この目的のために、本発明者らは、被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法およびシステムを開発した。
【0011】
特に、本発明の第1の目的は、入眠のプロセスおよび睡眠の質を促進するために被験体の身体部分の熱調節を正確かつ動的にも最適化する統合システムを提供することである。
【0012】
本発明のさらなる目的は、睡眠時間の増加および改善することを目的として瞑想-リラクゼーション技法を被験体の体温調節と相乗的に組み合わせるための方法およびシステムを提供することである。
【0013】
本発明のさらなる別の目的は、被験体の精神的および身体的なリラクゼーションプロセスを支援することである。
【0014】
これらの目的はすべて、本明細書および添付の請求項に記載されるように、本発明によって達成されている。
【0015】
本発明は、睡眠の健康の2つの重要な要素、1)体温調節、および、2)ガイド付き瞑想-リラクゼーションの実践を、現実的な没入型体験に組み込んで入眠を促進し睡眠の質を改善するための方法について記載している。
【0016】
本発明の一実施形態では、体温調節は、その全体が引用により本明細書に含まれる、米国特許第9,703,381号明細書に記載されるマルチモーダルハプティックデバイス(multimodal haptic device)によって制御される。睡眠を改善するために、この非限定的な実施形態では、マルチモーダルハプティック技術(multimodal haptic technology)が足デバイスに埋め込まれている。これは、体温調節、リラクゼーション、および睡眠における足の温度の生理学的重要性によるものである。
【0017】
本発明は、次の3つの主要部分から構成される:1)被験体の入眠を促進するために必要とされる熱刺激を個別化(personalize)する手順、2)入眠を促進し睡眠の質を向上させるための没入型体験への、熱刺激およびガイド付きリラクゼーション-瞑想技法の融合、および、3)特定の日に被験体から記録されたデータに従って、さまざまなセッション期間を提案することができる推奨システム(閉ループの解決策)を開発するためのウェアラブルセンシングの統合。
【0018】
上記を考慮して、本発明によれば、請求項1に記載の被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法およびシステムが提供される。
【0019】
本発明の別の目的は、請求項10に記載のシステム、ならびに請求項15に記載の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するために被験体の熱調節と共にリラクゼーション状態を誘発するためのその使用に関する。
【0020】
本発明のさらなる別の目的は、請求項11に記載の非一時的コンピュータ可読媒体に関する。
【0021】
本発明のさらなる実施形態は、添付の請求項によって定義される。本明細書で提示される主題の上記および他の目的、特徴、および利点は、以下の説明の検討から明らかになる。本発明による方法は外科的または医学的な工程を含まず、当該方法を実施するシステムは人体との侵襲的なインタラクションを必要としない。たとえば、「被験体の遠位部分の皮膚における血管の温度および/または拡張度、またはその変化を経時的にモニターする工程」について言及する場合、そのようなモニタリングが、皮膚の外面を本発明によるデバイスと接触させることによって行われることが意図され、したがって、デバイスを体血管に到達させるために皮膚に外科的介入を行う必要はない。
【0022】
また、本発明の方法は、治療による処置のための方法およびシステムではなく、病理学的状態からではなく正常で健康な状態から開始することを意味している。実際、たとえばストレスまたは疲労の通常の状況によって誘発された睡眠不足の状態は、損傷の症状と重なることはない。さらに、システムおよび方法は、睡眠を改善するだけでなく、リラクゼーションおよび健康を誘発するために適用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法を説明する図。
【
図2】被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法における第1の工程を説明する図。
【
図2a】複数のセルに対する入力圧力を説明する図。
【
図2b】複数のセルに対する入力圧力を説明する図。
【
図6】熱-触覚状態の断片化に対するピアソンの相関を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に記載される主題は、本発明のいくつかの態様の記載によって明らかにされる。しかし、本発明の保護範囲は、記載される態様のみに限定されないことが理解されるべきであり、反対に、本発明の保護範囲は請求項によって定義される。また、以下に記載されるおよび/または示される具体的な条件またはパラメータは、本発明の保護範囲を限定するものではなく、本明細書で使用される用語は、例としてのみ特定の態様を説明する目的のためのものであり、限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。
【0025】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。さらに、文脈上別段の要求がない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。本開示の方法および技術は、概して、別段の指示がない限り、当技術分野で周知である、および本明細書全体で引用および議論される、さまざまな一般的およびより具体的な参考文献に記載されるような従来の方法に従って実施される。
【0026】
以下の説明は以下の定義によってよりよく理解される。
【0027】
以下および添付の請求項で使用されるように、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈が別段明確に指示しない限り、複数の指示対象を含む。また、「または」の使用は、別段明記のない限り「および/または」を意味する。同様に、「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「備える(comprising)」、「含む(include)」、「含む(includes)」、および「含む(including)」は交換可能であり、限定を意図するものではない。さまざまな実施形態の説明のために用語「備える(comprising)」が使用される場合、当業者は、いくつかの具体的な例では、代替的に、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「からなる(consisting of)」という言葉を使用して実施形態を説明することができることを理解することがさらに理解されるだろう。
【0028】
本開示の枠内では、「動作可能に接続された」という表現およびその類似した表現は、デバイスのいくつかのコンポーネント間またはそれらの中のシステム間の機能的関係を反映し、すなわち、コンポーネントが、指定された機能を実施する方法で相関されることを意味している。「指定された機能」は、接続に関与するさまざまなコンポーネントに応じて変化し得る。
【0029】
同様に、関連付けることができる任意の2つのコンポーネントは、所望の機能性を達成するために互いに「動作可能に連結可能」であるとみなすこともできる。動作可能に連結可能であるものの具体的な例としては、限定されないが、物理的に相互作用するコンポーネント、および/またはワイヤレスで対話可能なおよび/またはワイヤレスで対話するコンポーネント、および/または論理的に対話するおよび/または論理的に対話可能なコンポーネントが挙げられる。当業者は、本発明の開示に基づいて、本発明のデバイスまたはシステムのあらゆるコンポーネントの指定された機能の他に、それらの相関関係を容易に理解し、解決するであろう。
【0030】
「ハプティックデバイス」は、ハプティック技術を利用する任意のデバイスである。本開示で使用されるように、「ハプティック技術」または「ハプティック」は、ユーザに力、圧力、温度、電気刺激、振動、および/または動作を適用することによって触覚を再構築または刺激するフィードバック技術である。この機械的/熱刺激は、たとえば、コンピュータシミュレーションで仮想オブジェクトの作成を支援し、そのような仮想オブジェクトを制御し、マシンおよびデバイスのリモートコントロールを強化する(テレロボティクス)ために使用することができる。ハプティックデバイスは、ユーザによってインターフェースに加えられた、および、逆に加えられた力、圧力、振動、温度、または運動を測定するセンサを組み込んでもよい。
【0031】
本明細書で使用されるように、「遠位身体部分」は、手、足、足首、手首、頭、および首の少なくとも1つを含む人の身体部分を指す。逆に、「近位身体部分」は被験体の体幹を指す。したがって、「遠位体温」は、本明細書では、手、足、足首、手首、頭、および首の少なくとも1つを含む、被験体の少なくとも遠位身体部分の温度、すなわち平均温度を指す。「近位体温」は、本明細書では、鎖骨下、大腿、および/または胃の温度などの近位(体幹)身体部分に関連する体温を指す。
【0032】
「遠位-近位勾配」とは、本明細書では、(1つまたは複数の)遠位身体部分の体温(またはその平均)と(1つまたは複数の)近位身体部分の体温(またはその平均)との間の温度差を意味する。遠位-近位温度勾配(DPG)は、(動静脈吻合によって効率的に調節された)遠位皮膚領域における血流の間接的な尺度を提供し、それによって遠位の熱損失の間接的な指標を提供する。
【0033】
「EEG」は、脳の電気的活動を記録するための電気生理学的なモニタリング方法である。これは典型的に非侵襲的であり、電極は頭皮に沿って配置されているが、皮質脳波検査法でのように侵襲的な電極が使用されることもある。
【0034】
「体温調節」とは、周囲の温度が大きく異なる場合でも、生物がその体温を特定の境界内に保つ能力である。対照的に、熱適合性生物(thermoconforming organism)は、周囲の温度を自身の体温として単純に採用するため、内部体温調節の必要性が回避される。
【0035】
睡眠検査とも呼ばれる「睡眠ポリグラフィ」は、睡眠障害を診断するために使用される検査である。睡眠ポリグラフィでは、検査中の脳波、血中酸素レベル、心拍数と呼吸の他に、目と脚の運動を記録する。
【0036】
「入眠」は、消灯から睡眠段階N1および睡眠段階N2までの経過時間である。これは、睡眠の最も浅い段階であり、50%を超えるアルファ脳波が低振幅混合周波数(LAMF)の活性に置き換えられるときに開始する。骨格筋には筋緊張が存在し、規則的な速度で呼吸が行われる傾向がある。この段階は典型的に1~5分間続く傾向があり、睡眠サイクル全体のおよそ5%に相当する。段階N2は、心拍数と体温が低下するときの、より深い睡眠段階を表す。これは、睡眠紡錘波、K複合波、またはその両方の存在を特徴とする。睡眠紡錘波は、上側頭回、前帯状回、島皮質、および視床を活性化する。K複合波は、より深い睡眠への移行を示す。それらは、1秒間しか続かない単一の長いデルタ波である。より深い睡眠が続き、個体がN3段階に移行すると、それらの波のすべてはデルタ波に置き換えられる。段階2は、最初のサイクルで約25分間続き、各々の続くサイクルごとに長くなり、最終的には合計睡眠時間の約50%になる。
【0037】
「マルチモーダル」は、本明細書では、本開示によるハプティックデバイスがユーザにフィードバックを提供する特徴的な方法を指す。特に、マルチモーダルのフィードバックによって、ユーザはハプティックデバイスとインターフェース接続する複数のモードを体験することが可能になる。マルチモーダルのインタラクションは、自然な通信モードを介する仮想環境および/または物理環境とのインタラクションである。このインタラクションによって、より自由で自然なコミュニケーションが可能になり、入力と出力の両方でユーザが自動化されたシステムとインターフェース接続する。しかし、本開示の枠内では、マルチモーダルという用語は、より具体的には、ハプティックデバイスがユーザに触覚フィードバックを提供することができるいくつかのモードを指す。人間の触覚は2つの別個のチャネルに分けることができる。運動感覚の知覚は、筋肉および腱から生じる位置、速度、力、および拘束の感覚を指す。力フィードバック装置は、コンピュータ制御の力を提示して硬い表面との接触の錯覚を作り出すことによって運動感覚に働きかける。皮膚クラスの感覚は皮膚表面との直接接触によって生じる。皮膚刺激は、圧力、伸展、振動、および温度の感覚にさらに分離することができる。触覚デバイスは、概して、皮膚の圧入、振動、伸展、および/または電気刺激によって皮膚の感覚に働きかける。触覚デバイスは、運動感覚または皮膚感覚の中の1つまたは複数、場合によってはそれらの組み合わせを含む触覚フィードバックを提供するために構築され、組み立てられる。
【0038】
ハプティックデバイスは、少なくともユーザの生理学的パラメータ、環境パラメータ、またはそれらの組み合わせを検出し、場合によっては保存するための1つまたは複数のセンサを備えてもよく、ハプティックデバイスの少なくとも1つの要素と動作可能に接続されている。本明細書で使用されるような「センサ」は、所与のシステム、または一般的な環境の信号、刺激、または量的および/または質的特徴の変化を検出し(また場合によってはそれに応答し)、対応する出力を提供するデバイスである。出力は概して、センサ位置で人間に読めるディスプレイに変換されるか、または読み取りまたはさらなる処理のためにネットワークを介して電子的に送信される信号である。具体的な入力は、たとえば、光、熱、動作、湿気、圧力、または他の多数の環境現象のいずれか1つであり得る。本発明によれば、センサは、好ましくは、ユーザの生理学的パラメータ、環境パラメータ、またはそれらの組み合わせを検出し、場合によっては保存するための手段を含む。したがって、センサは、情報を保持する、情報を処理する、またはその両方のためのデータ記憶装置を備えることができる。一般的に使用されるデータ記憶装置は、メモリカード、ディスクドライブ、ROMカートリッジ、揮発性および不揮発性RAM、光ディスク、ハードディスクドライブ、フラッシュメモリなどを含む。センサによって検出および収集された情報は、たとえば、筋肉収縮(姿勢筋収縮を含む)、心拍数、皮膚コンダクタンス(皮膚電気反応GSRとも呼ばれる)、呼吸数、呼吸量、体温、血圧、有機/無機化合物(たとえば、グルコース、電解質、アミノ酸、タンパク質、脂質など)の血中濃度、脳波、発汗などの、ユーザの生理学的パラメータに関連し得る。代替的または追加的に、センサによって検出および収集された情報は、温度、湿度、光、音などの環境パラメータに関連し得る。好ましくは、センサは、上述のパラメータに関する検出された、および場合によっては保存されたデータを、より好ましくはワイヤレス接続を介して、コンピュータに送信するための手段をさらに含む。「ワイヤレス」は、本明細書では、導電体によって接続されていない、すなわちワイヤを使用しない、2つまたはそれ以上のデバイス間の情報信号の転送を指す。信号をワイヤレスで転送するいくつかの一般的な手段には、限定されないが、WiFi(登録商標)、ブルートゥース(登録商標)、磁気、無線、遠隔測定、赤外線、光、超音波接続などが含まれる。
【0039】
一実施形態では、センサは、デバイスの機能性を調整することができるコンピュータからのフィードバック入力をワイヤレスで受信するための手段をさらに含む。一実施形態では、センサは、ディスプレイユニットおよび/またはマニホールドに動作可能に接続される。主作動ユニットは、(構成によるが、少なくともバルブが主要なマニホールド上にある構成で)ケーブルなしでデバイス内のセルを制御する。主作動ユニットは、たとえばすべてのコンポーネント(すなわち、ポンプ、バルブ、センサ、および主要なマニホールドに取り付けられた任意の他のコンポーネント)を制御するマイクロコントローラを備えるプリント回路基板(PCB)を特徴とし得る。このため、プリント回路基板は、セル内の圧力および場合によっては温度を制御する閉フィードバックループなどの低レベル機能を管理する。プリント回路基板は、高レベル機能を管理するコンピュータまたは携帯電話とワイヤレスで通信するデバイスのためのドライバと見なすことができる。
【0040】
フィードバック制御システムとしても知られる「閉ループシステム」は、本明細書では、開ループシステムの概念(ここで、出力は入力信号の制御動作への影響または効果はない)をそのフォワードパスとして使用するが、その出力と入力との間に1つまたは複数のフィードバックループ(故にこの名あり)またはパスを有する制御システムを指す。「フィードバック」への言及は、出力の一部が入力に戻されて、システムの励起の一部を形成することを意味する。通常、閉ループシステムは、所望の出力状態を実際の状態と比較することによって所望の出力状態を自動的に達成し、維持するように設計されている。これは、出力と基準入力との間の差である「エラー」信号を生成することによって行われる。言い換えれば、閉ループシステムは、その制御アクションが何らかの形で出力に依存する完全自動制御システムである。
【0041】
「ハプティックプロファイル」という表現は、本明細書では、1つまたは複数の入力データに従ってハプティックデバイスを機能的に操作するために必要な一連の命令を意図するために使用される。より正確には、「ハプティックプロファイル」は、本明細書では、ディスプレイユニット内の動作可能に接続された複数の触覚ディスプレイの、時空間アクティブ化などのアクティブ化をエンコードする命令を指し、上記アクティブ化は音声ファイルの音声プロファイルと一貫性がある。ハプティックプロファイルは、提供される触覚のタイプ(すなわち、圧力、場合によってはいくつかの実施形態では、好ましくは温度と組み合わされる)、ディスプレイの数と独自性およびそれらの相対的位置づけ、ディスプレイの刺激の持続時間、ディスプレイ間の刺激開始の同期性/非同期性、およびユニット内のディスプレイ間のアクティブ化のオーバーラップのパーセンテージに基づいて、ディスプレイユニットのアクティブ化パターンをエンコードし、同時に、これらのいくつかのパラメータの変調は、音声処理の出力(本明細書では「音声プロファイル」と呼ばれる)と密接に関連しており、これによって、続いて、音声からハプティック、または映像からハプティックへの変換を介してハプティックプロファイルが生じ、ここで、音声信号の処理された周波数および/または振幅の精緻化によって、音声プロファイルが生成され、したがって、触覚ディスプレイのアクティブ化の正確なシグネチャが生成される。
【0042】
「コンピュータ可読データキャリア」または「コンピュータ可読媒体」とは、本明細書では、プロセッサによってアクセスすることができる任意の利用可能な媒体を意味し、揮発性媒体と不揮発性媒体の両方、取り外し可能な媒体と取り外し不可能な媒体、通信媒体、および記憶媒体を含み得る。通信媒体は、コンピュータ可読命令、データ構造、プログラムモジュール、または搬送波もしくは他の搬送機構などの変調されたデータ信号内の他のデータを含み得、当該技術分野で公知の情報配信媒体の任意の他の形式を含み得る。記憶媒体は、RAM、フラッシュメモリ、ROM、消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(「EPROM」)、電気的に消去可能なプログラム可能な読み取り専用メモリ(「EEPROM」)、レジスタ、ハードディスク、リムーバブルディスク、コンパクトディスク読み取り専用メモリ(「CD-ROM」)、または当該技術分野で公知の記憶媒体の他の形式を含み得る。
【0043】
一態様では、本発明は、被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法を特徴とし、当該方法は以下の工程を含む(
図1):
a)音声/映像デバイスを介して、映像ファイルと共にまたは別に、音声ファイルを再生する工程、および
b)被験体の遠位部分に熱-触覚刺激を提供して、上記遠位部分の皮膚において血管の拡張度を増大させる工程であって、熱-触覚刺激が、上記音声ファイルによって得られたハプティックプロファイルに従ってハプティックデバイスを介して提供され、これによって、入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するために被験体において熱調節と共にリラクゼーション状態を誘発する工程。被験体の遠位部分は、本発明によれば、手、足、足首、手首、頭、および首の少なくとも1つを含む。
【0044】
本発明の方法は、睡眠段階を開始する準備を行いたい、睡眠段階を開始するように準備される、またはそうでなければ睡眠段階を開始する準備ができた被験体、特に人間に対して実施される。特に、被験体は、被験体のニーズに応じて適切な睡眠位置で、座位にあるか、またはベッドやマットなどの適切な睡眠サポートに横になっている。したがって、本発明の方法は、入眠しようとしているとき、すなわち、N1睡眠段階の60分から1分前など、被験体がN1睡眠段階に入る直前に、および/または被験体の任意のまたはあらゆる睡眠段階中に被験体に対して実施される。
【0045】
したがって、本発明の方法は、覚醒状態から睡眠への移行を準備する、伴う、支持する、促進する、および/または容易にするように構築および構成される他に、特定の実施形態では、睡眠段階またはその質を維持および/または改善するように構築および構成され、1つまたは複数の睡眠段階の長さを延長する、1つの睡眠サイクルから別の睡眠サイクルへの移行を促進する、再び眠りにつくプロセスを平滑にすることなどを含む。
【0046】
本発明の方法は、好ましくは、本発明の別の態様を表す統合システムを介して実施され、上記システムは、
a)ユーザに熱-触覚刺激を提供するように構成された複数の触覚ディスプレイを備えるハプティックデバイスと、
b)映像ファイルと共にまたは別に、音声ファイルを再生するように構成された少なくとも1つの音声/映像デバイスと、
c)上記ハプティックデバイスおよび音声/映像デバイスと動作可能に接続されたデータ処理装置であって、本発明の方法を実施するためにシステムを動作させるように構成された命令を含むプロセッサを有する、データ処理装置と、を備える。本発明のデータ処理装置は、コンピュータ、スマートフォン、タブレット、音声起動デバイス(すなわち、スマートスピーカー/音声アシスタント)などの任意の適切なデバイスを備えることができる。好ましい実施形態では、当該システムは、データ処理装置に動作可能に接続されたセンサをさらに備え、センサは、手、足、足首、手首、頭、および首の少なくとも1つなどの、被験体の少なくとも遠位部分の温度、またはその変化を測定するように構成されている。
【0047】
いくつかの実施形態では、音声ファイルを再生するように構成された少なくとも1つの音声/映像デバイスは、1つまたは複数のスピーカーを備える。コンピュータのプロセッサは、音声信号をスピーカーに送信し得、スピーカーは順に音声効果を出力する。代替的に、イヤホンまたはヘッドホンが使用され得る。
【0048】
本開示による適切なハプティックデバイスは、可撓性であり、ユーザの解剖学的構造に適応可能であり、熱-触覚ハプティックフィードバックを提供することができる。概して、当該デバイスは、フレキシブルディスプレイユニットに接続された少なくとも1つの作動ユニットを備える。作動ユニットは、液体または気体などの流体媒体の圧力および温度を気圧および/または液圧で制御して、ディスプレイに触れている被験体に触覚および温度のキューを提供する。触覚キューは、流体媒体の圧力を介してディスプレイの可撓性膜の形状を制御することによって作成される。一実施形態では、マルチモーダルフィードバックを得るためにいくつかの剛性アクチュエータを利用する既知の触覚ディスプレイとは対照的に、本発明によるハプティックデバイスは、触覚および固有感覚性(たとえば、熱キュー)の両方で、複数のハプティックフィードバックの完全性を生成する単一の作動システムを特徴とする。
【0049】
一実施形態では、同じ膜を介した流体媒体とユーザの皮膚との間の熱交換によって、熱キューが提供される。ディスプレイ内で流れる流体媒体の流れの温度は、特定の温度でいくつかの流体の流れを混合することによって達成される。これらの流体は、たとえばペルチェ素子を使用して、特定の温度に加熱または冷却され、バッファタンクに保存することができる。媒体の流れおよび圧力は、マイクロポンプとバルブの組み合わせを使用して制御される。フレキシブルディスプレイは、触覚ディスプレイまたはセルと呼ばれるセルのアレイで構成されている。セルの数およびそれらの配置は、セル密度を皮膚のタイプおよび表面に適応させるためにモジュール式である。一実施形態では、媒体の圧力および温度は、バルブおよびマニホールドのシステムを使用して各々の個々のディスプレイセルにおいて制御することができ、場合によってはコンパクトな作動ユニットに組み込むことができる。触覚ディスプレイは、ユーザの解剖学的構造に適応したさまざまな機能形状を有することができる。
【0050】
一実施形態では、本発明によるハプティックデバイスは、米国特許第9,703,381号明細書に記載されており、本発明のシステムおよび方法の対象アプリケーションに特に適している。
【0051】
本発明の主要な実施形態によれば、被験体の遠位部分に提供された熱-触覚刺激は、上記遠位部分の皮膚において血管の拡張度を増加させるために、熱を提供しながら被験体の遠位部分と接触するハプティックデバイスをアクティブ化するか、またはそうでなければ動作させることによって被験体に供給される。ハプティックデバイスと被験体の皮膚との間の熱交換は、好ましくは触覚ディスプレイまたはセルによって実施され、ハプティックデバイスによって提供された熱量は、一定または可変の程度の血管拡張を保つために、可変であり、動的に調節することができる。典型的に、本発明の方法を実施するのに適したハプティックデバイスは、被験体の皮膚を最大40~45℃まで加熱して、上記被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための適切な血管拡張を誘発することができる。
【0052】
一実施形態では、本発明の方法は、被験体の遠位部分の皮膚における血管の温度および/または拡張度、またはその変化を経時的にモニターする工程をさらに含む。本実施形態では、本発明によるシステムは、好ましくはリアルタイムで、被験体の身体部分の皮膚の血管の温度および/または拡張度に加えて、血流も測定するように構成された温度および/または血圧センサを備え、本発明の方法を受ける上記被験体の皮膚と接触して、上記センサは、適切な血管拡張を維持するために、データ処理装置と閉ループで動作して、デバイスと被験体との間の熱交換を動的に設定する。
【0053】
本発明の好ましい実施形態では、再生された音声ファイルは、少なくとも声をエンコードする音声トラックおよび音をエンコードする音声トラックを含む。
【0054】
本発明の好ましい実施形態では、ハプティックプロファイルは、
a)音声ファイルから導出された音声信号を処理し、それによって上記音声信号の周波数および/または振幅の少なくとも1つのプロファイルを取得すること、および
b)上記周波数および/または振幅のプロファイルをハプティックプロファイルに変換すること、によって取得される。
【0055】
いくつかの実施形態では、処理された音声信号は、音をエンコードする音声ファイルから取得される。
【0056】
本発明のいくつかの実施形態では、当該方法は、被験体の体幹の少なくとも一部の温度、および被験体の遠位部分の温度を測定および/またはモニターする工程を含む。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態では、当該方法は、時空間的に被験体の皮膚に対して、熱勾配および圧力勾配を含む、熱-触覚刺激を提供する工程を予見する。
【0058】
本発明の特定の実施形態によれば、熱-触覚刺激は、被験体の生理学的パラメータ、運動パラメータ、および/または心理的パラメータに基づく持続時間を有する。上記パラメータは、ウェアラブルセンサを使用してリアルタイムで、(後述するように、上記パラメータに関するファイルを本発明によるデータ処理装置にアップロードすることによって)オフラインで、またはそれらの組み合わせで取得することができる。本実施形態は、本発明の方法のいわゆる「活動依存的個人化」を達成すると解釈される。睡眠研究は、ストレスや不安などの日中の個々の状態が睡眠の質に重要な役割を果たすことを示しており、並行した計算睡眠研究は、活動データ、ならびに心拍数、呼吸パターン、および体温などの他の身体信号によって、睡眠の質および効率を予測することができることを示しているため、本発明の方法は、参加者のウェアラブルな日々のセンシングデータプロファイルに従って選択された、睡眠導入セッションの理想的な持続時間を提案する「推奨システム」を予見する。これによって、異なる日々にわたって睡眠の質を改善することが可能になる。たとえば、異なる夜間の同様の入眠および質を維持するために、睡眠導入セッションは、ストレスの多い日の後により長く続くようにプログラムされ得る。
【0059】
異なる日で同様の睡眠改善を達成するためには睡眠導入状態の異なる持続時間が必要になることが予想される。たとえば、何日も強いストレスを感じた後は、睡眠導入セッションのより長い持続時間が必要になることが予想される。パッシブセンシング技術とは異なり、本発明は、個々の知覚と個々の精神的および生理学的状態を直接介入にリンクして、入眠を促進し、睡眠の質を改善することを可能にする。
【0060】
本発明のさらに別の態様は、本発明のシステムのデータ処理装置によって実行されたときに、上記データ処理装置によって本発明に従って方法を実施するようにシステムを動作させる一連の命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体に関する。さらに、本発明の一態様は、本発明の非一時的コンピュータ可読媒体を備えるデータ処理装置に関する。
【0061】
実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる命令は、
i)被験体の少なくとも1つの遠位部分の温度、またはその変化に関するデータを受信および/または処理すること、
ii)映像ファイルと共にまたは別に、音声ファイルを再生するように音声/映像デバイスを操作すること、
iii)上記音声ファイルによって得られたハプティックプロファイルに関するデータを受信および/または処理すること、および
iv)被験体の少なくとも1つの遠位部分に熱-触覚刺激を提供するようにハプティックデバイスを操作すること、を含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体に含まれる命令は、
v)上記被験体に配置されたセンサによって測定された、被験体の体幹の少なくとも一部の温度またはその変化に関するデータを受信および/または処理すること、および/または被験体の体幹の少なくとも一部の温度と被験体の少なくとも1つの遠位部分の温度との差として定義された、被験体の遠位-近位温度勾配に関するデータを受信および/または処理すること、をさらに含む。
【0063】
一実施形態では、当該装置は、プロセッサによって実行されたときに機能性を提供するソフトウェアモジュールを格納するメモリを備える。当該モジュールは、当該装置にオペレーティングシステムの機能性を提供するオペレーティングシステムを含む。当該モジュールはさらに、以下でより詳細に開示されるように、音声信号を、どのようにハプティックデバイスを操作するかに関する情報をエンコードするハプティックプロファイルに変換する、ハプティック変換モジュールを含む。当該装置は、リモートソースからデータを送信および/または受信する実施形態において、ブルートゥース(登録商標)、赤外線、ラジオ、Wi-Fi(登録商標)、セルラーネットワーク、または他の次世代ワイヤレスデータネットワーク通信などの、モバイルワイヤレス通信を提供するネットワークインターフェースカードなどの通信デバイスをさらに含む。他の実施形態では、通信デバイスは、イーサネット(登録商標)接続またはモデムなどの有線ネットワーク接続を提供する。
【0064】
本実施形態によれば、データ処理装置は、上記音声信号の周波数および/または振幅の少なくとも1つのプロファイルを取得するように音声ファイルから導出された音声信号を処理することによって、当該方法の第1の工程を実行する(
図2)。
【0065】
一実施形態によれば、音声信号のエンベロープが最初に抽出される。エンベロープは、元の音声信号のすべての周波数または元の音声信号のフィルタ処理されたバージョンを使用して抽出することができる。しかし、エンベロープ自体は元の音声信号と同じ周波数成分を有していない。
【0066】
本発明の実施形態では、上記音声信号の周波数および/または振幅のプロファイルを取得するために、処理は、所望の周波数を中心に広く、帯域通過フィルタを入力音声ファイルに適用することを含む。その後、信号は整流され、ローパスフィルタが適用されて信号のエンベロープが取得される。いくつかの実施形態では、エンベロープは、その後、ダウンサンプリングされ、ノイズ閾値振幅が適用される。いくつかの実施形態では、その後、時定数が所望の信号に関する事前知識に基づく畳み込みハニング窓などの窓関数が適用される。
【0067】
フィルタ処理されたエンベロープが取得されると、コンピュータ装置は、ハプティックコンバータモジュールによって、フィルタ処理されたエンベロープの形態の周波数および/または振幅のプロファイルをハプティックプロファイルに変換することによって、当該方法の第2の工程を実行する。エンベロープの振幅が、後にハプティックフィードバックの「強度」に変換される、音声信号の「強度」をエンコードするため、エンベロープのピークと谷(すなわち、局所的な最大値と最小値)が追跡される。所望のハプティックフィードバックのタイプに関する事前知識は、ピーク間の最小時間と最小ピーク振幅を定義することによってピークリサーチを微調整するためにも使用することができる。
【0068】
ピークと谷が特定されると、コンピュータ装置は、得られたハプティックプロファイルに従ってハプティックデバイスを操作することによって当該方法のさらなる工程を実行する。
【0069】
「得られたハプティックプロファイルに従ってハプティックデバイスを操作すること」とは、本明細書では、プロセッサが、得られたハプティックプロファイルに関連付けられた信号をハプティックデバイスに送信し、続いてハプティック感覚を被験体に出力することを意味する。
【0070】
一例として、波の音は、たとえば3セル(各セルは圧力と温度で制御可能である)で構成された熱-触覚表示を提供された触覚刺激に変換することができる。
【0071】
ピークが特定されると、波の開始、すなわちエンベロープの振幅がノイズ閾値を上回ったときのピーク前の最後の発生、および波の終了、すなわちエンベロープの振幅がノイズ閾値を下回ったときのピーク後の最初の発生を推定することが可能である。そこから、波の立ち上がり時間と立ち下がり時間も導出され、波は十分に特徴付けられる。波を3つのセル上に広げられた触覚刺激に変換するために、以下の3つの波のパラメータが考慮される:立ち上がり時間(tr)、立ち下がり時間(tf)、および波の最大振幅(Amax)。
【0072】
ユーザの皮膚上で波が移動している感覚を与えるために、波の立ち上がり時間および立ち下がり時間は、3つの表示セルのアクティブ化の時空間パターンとしてエンコードされ、したがって、結果として波の立ち上がりと立ち下がりに対して2つの別々の触覚パターンが得られる。ユーザが、波をエンコードする滑らかな触覚の移動を知覚することを確かなものとするために、3つの別々の刺激ではなく、セルのアクティブ化は時間的にオーバーラップする。波の最大振幅は、(ユーザまたはディスプレイで利用可能な最大圧力によって決定された)最大触覚圧力値によって標準化され、セル用の入力圧力コマンドとして使用される。
【0073】
しかし、別の一連の実施形態では、ハプティックプロファイルは、データベースで事前に判定または読み出しされており、ハプティックデバイスを操作するために直接使用することができる。
【0074】
いくつかの実施形態では、非一時的コンピュータ可読媒体によって処理された命令は、
vi)被験体の生理学的、運動、および/または心理的パラメータに関するデータの受信および/または処理することをさらに含む。
【0075】
当業者に明らかなように、記載されたことに基づいて、本発明のさらに別の態様は、入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するために被験体において熱調節と共にリラクゼーション状態を誘発するための本発明によるシステムの使用に関する。
【0076】
より一般的な態様では、ハプティックデバイスは、遠位部分に適応するために可撓性であり得、複数のセルを含み得、複数のセルは、好ましくはセル内の媒体の圧力および/または温度によって、圧力および/または温度および/またはアクティブ化時間および/または持続時間が別々に制御される。複数のセルは、セルパターンを定義するために遠位部分に配置される。
【0077】
入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法は、
ピークと谷を含む、音声信号の周波数および/または振幅の波プロファイルを判定する工程と、
少なくとも、立ち上がり時間、すなわち波が立ち上がり始める時間、立ち上がり持続時間、すなわち波が立ち上がる時間の長さ、立ち下がり時間、すなわち波が立ち下がり始める時間、立ち下がり持続時間、すなわち波が立ち下がる時間の長さ、波の勾配、および波の振幅を含む、複数の波パラメータを特定する工程と、複数のセルを駆動させるために複数の波パラメータをハプティックプロファイルパラメータに変換する工程と、を含み得る。
【0078】
たとえば、波パラメータとして得られた立ち上がり時間、立ち上がり持続時間、立ち上がり時の勾配、および波の振幅に基づいて、ハプティックプロファイルパラメータは以下の通りに判定される。
【0079】
セルパターンでの第1のセルのハプティックプロファイルパラメータは、波の立ち上がり時間に対応する第1のセルのアクティブ化開始時間、波の立ち上がり持続時間の一部(またはパーセンテージ)に対応する第1のセルのアクティブ化持続時間を含む。
【0080】
たとえば、セルiが媒体で膨張したままの時間である、n個のセルのパターンでのセルiのアクティブ化持続時間は、波の立ち上がり中のそのアクティブ化時間から波の立ち下がり中のその非アクティブ化時間までの時間である。各セルiのアクティブ化持続時間diは、そのアクティブ化時間taiと非アクティブ化時間tdiから以下の通りに導出することができる。各セルのアクティブ化時間taiは以下であり:
tai=tr+(dr/m)*i、
式中、m<nであり、drは波の立ち上がり持続時間であり、trは波の立ち上がり時間である。
【0081】
各セルiの波の立ち下がり中の非アクティブ化時間tdiは以下であり:
tdi=tf+(df/m)*i、
式中、m<nであり、dfは立ち下がり持続時間であり、tfは波の立ち下がり時間である。
【0082】
各セルのアクティブ化持続時間は以下である:
di=tdi-tai
【0083】
第1のセルのアクティブ化持続時間は、セルパターンでのすべての他のセルのアクティブ化持続時間に対応し得る。しかし、パターンでの1つのセルのアクティブ化時間は、好ましくは、たとえばパターンでの前のセルに対する遅延に基づいて、パターンでの他のセルとは異なる。パターンでのセルの位置によっては遅延がより大きくなり得、たとえば、パターンでの第1のセルに対する第3のセルのアクティブ化の遅延は、パターンでの第1のセルに対する第2のセルのアクティブ化の遅延よりも大きくなり得る。
【0084】
アクティブ化時間およびアクティブ化持続時間に加えて、ハプティックプロファイルパラメータは、セルにおいて設定する圧力および/または温度の値を含む。依然として上記の例を参照すると、波の一部(波パターン)を谷からピークまで得て、および立ち上がり時間から開始して、セル内の媒体の圧力および/または温度は、波パターンの勾配および/または振幅に応じて決定され得る。
【0085】
したがって、遅延が原因で、セルパターンに沿った(したがって身体の遠位部分に沿った)セルの圧力および/または温度は異なり得る。
【0086】
本発明の例として与えられた上述のハプティックプロファイルパラメータはすべて、セルを駆動させるための信号を設定するために使用される。
【0087】
したがって、熱-触覚刺激を提供する工程は、複数の信号を複数のセルに送信することを含み、複数の信号の各々は、複数のハプティックプロファイルパラメータに関連付けられ、複数のセルの1つに方向づけられて、そのアクティブ化時間、持続時間、圧力および/または温度などに関して動作させる。
【0088】
上記の例では、立ち上がり時に開始する波パターンは、複数のセルの時空間アクティブ化パターンを提供するように適合されたハプティックプロファイルパラメータに変換される。同じように、立ち下がり時に開始する波パターンは、複数のセルの時空間アクティブ化パターンを提供するように適合されたハプティックプロファイルパラメータに変換され得る。
【0089】
第1のセルへの信号の送信は、別のセルに送信される信号に関して非同期である。たとえば、1つのセルに方向づけられた信号の送信は、別のセルへの他の信号の送信が終了する前に開始される。しかし、セルの重複作動を提供するために、1つのセルに方向づけられた信号が、別のセルに方向づけられた信号が送信されると同時に送信されることを妨げるものは何もない。
【0090】
熱-触覚刺激の持続時間は信号の持続時間に対応している。しかし、1つのセルに方向づけられた信号の持続時間は、複数のセルのうちの別のセルへの他の信号の持続時間と異なり得るかまたは等しくなり得る。
【0091】
熱-触覚刺激の圧力および/または温度は、遠位部分とは異なる身体部分で測定された身体パラメータに基づいて設定される。
【0092】
要約すると、別の例も提供することによって、波を複数のセル(たとえば、
図2aおよび2bに示されるような3つのセル)上に広げられた触覚刺激に変換するために、以下の複数の波のパラメータが考慮される:立ち上がり時間と立ち上がり持続時間、立ち下がり時間と立ち下がり持続時間、波の最大振幅、その勾配など。ユーザの皮膚上で波が移動している感覚を与えるために、立ち上がり時間および立ち下がり時間は、複数のセルのアクティブ化の時空間パターンとしてエンコードされ、たとえば、結果として波の立ち上がりと立ち下がりに対して2つの別々の触覚パターンが得られる。複数(3つ)の別々の刺激ではなく、波をエンコードする滑らかな触覚の移動の印象をユーザに与えるために、セルのアクティブ化は時間的にオーバーラップする。オーバーラップは、刺激された身体部分(異なる身体部分における異なる空間解像度が原因)によって、およびディスプレイのセル間の距離によって決定される。波の所与の立ち上がり(および立ち下がり)時間(t
rまたはt
f)に関して、セルの刺激の持続時間(DoS)および刺激開始の非同期性(SOA)は、以下の式によってオーバーラップのパーセンテージ(O
p)に基づいて決定され得る:
(1)t
r=3×DoS×O
p
(2)SOA=(1-O
p)×DoS
【0093】
好ましくは、波の最大振幅は、(ユーザまたはディスプレイで利用可能な最大圧力によって決定された)最大触覚圧力値によって標準化され、セルに対する入力圧力コマンドとして使用される。この考えられ得る例を参照して、
図2aおよび2bも参照される。
【0094】
当業者は、上述されたより一般的な態様を参照して開示された特徴が、本発明の方法およびシステムの実施形態のいずれか1つにおいて適用され得、したがって、これらの特徴がすべての実施形態に関して繰り返されないことを理解し得る。
【実施例】
【0095】
本発明をより明確に説明および例示するために、以下の実施例が詳細に提供されるが、これらは本発明を限定するようには意図されていない。
【0096】
(熱のパーソナライゼーション(Thermal Personalization))
以前の研究では、手足の皮膚における血管拡張度が、これらの四肢での熱損失を増加させるが、急速な入眠のための最良の生理学的予測因子であることが示された(Krauchi et al., 1999)。このパラメータをモニターする代用として、これらの著者は、遠位熱損失の間接的な指標を提供する(動静脈吻合によって効率的に調節された)遠位皮膚領域の血流の尺度である、遠位-近位温度勾配(DPG)を計算した。この目的のために、温度センサは、好ましくは、マルチモーダルハプティックシステム内に統合される。これに基づいて、熱刺激を利用する各セクションの前に、遠位血管拡張のパーソナライズされた最大化(すなわちDPGの最大化)を目的としたベイジアン最適化アプローチを介して、各参加者に対する正確な熱刺激パターンが選択される。
【0097】
(睡眠を強化するための多感覚および認知の刺激)
熱のパーソナライゼーションのフェーズ後に、ユーザは没入型体験のフェーズに進む。ユーザは、たとえば、就寝の数分前に椅子に座るか、またはたとえば、ベッドに横になり、マルチモーダルハプティックデバイスに足および/または手を置き、ヘッドホンを装着して、目を閉じる。例として、ユーザの好みに応じて、ユーザの足および/または手のひらの下で、触覚、温度、および音を介して、海または湖の水の波がシミュレートされる。同時に、ガイド音声によって、ユーザが瞑想またはリラクゼーションの実践を行うことを助ける。
【0098】
説明された多感覚のシナリオ(触覚と音の両方でシミュレートされた水の波)は、瞑想の没入感(たとえば 湖岸に位置し、水の波に触れているという感覚)を高め、瞑想体験を向上させることができる(たとえば瞑想への集中と没頭の向上)。
【0099】
実験的研究(40人のナイーブで健康な参加者 - 20人の男性;すべての女性は月経周期に相対して同時に試験される - 正常および定期的な睡眠-覚醒習慣を有する)では、主な実験状態(睡眠導入)は、両足下の熱刺激、および瞑想の専門家によって準備されたビーチのサウンドスケープ(soundscape)および予め録音されたガイダンスへの没頭を特徴とするリラクゼーション-瞑想のパーソナライズされた適用を組み込む。就寝直前に、参加者は、10~20分間の睡眠導入状態または以下の3つの対照状態にさらされる:
1)熱刺激のないガイド付きリラクゼーション瞑想(睡眠導入状態の間に同じガイド付きリラクゼーション瞑想が使用されるが、熱刺激もサウンドスケープも伴わない);
2)ガイド付きリラクゼーション瞑想のない熱刺激(睡眠導入状態で同じ熱刺激が使用されるが、ガイド付きリラクゼーション瞑想もサウンドスケープも伴わない);
3)対照:参加者は、睡眠前に同じ時間同じ位置にとどまるが、他の刺激は伴わない。
【0100】
実験前に、睡眠の質と量が、各実験セッション前の3晩連続して、自己採点式の睡眠アンケートおよび手首のアクチメトリ(wrist actimetry)によって評価される。実験に含める前に各参加者によって、不安、気分、リラクゼーション、覚醒状態などを評価するための一連の標準化されたアンケートが記入され、毎晩の前後に再評価される。
【0101】
EEGデータおよび/または睡眠ポリグラフィは、実験状態に対して盲検な2人の経験豊富な採点者によって、標準的な基準に従って、30エポック秒(30s epochs)にわたってスコア化することができる(たとえば、AASM Manual for the Scoring of Sleep and Associated Events: Rules, Terminology and Technical Specifications (2020), url:https://aasm.org/clinical-resources/scoring-manual/)。いくつかの睡眠パラメータが計算され得る:段階N1(消灯から)およびN2(第1のN1期間から)までの潜時、各睡眠段階の時間とパーセンテージ、合計睡眠時間(TST;異なる睡眠段階で費やされた時間の合計)、合計睡眠期間(SPT;睡眠中の覚醒間隔を含む、入眠から最終覚醒までの合計時間)。睡眠効率は、TST/SPT×100として定義される。睡眠紡錘波は、それらの典型的な紡錘形態に基づいて、乳様突起チャネルに対して参照されたCz接触で視覚的に定量化される。睡眠導入状態と対照状態との間の計画された比較は、以下の特定の仮説に基づいて、対応のある両側t検定を使用して実施される。
【0102】
睡眠導入状態が、他の実験状態と比較して、入眠を促進することが予想される(すなわち、段階N1の睡眠の持続時間がより短く、段階N2の潜時が短縮される)。パーソナライズされた熱刺激とガイド付きリラクゼーションの組み合わせに基づいて、睡眠導入と対照2を比較した場合に少なくとも15%の入眠の促進を達成し、睡眠導入と対照状態1、2、および3を比較した場合に少なくとも20%の入眠の促進を達成することが予想される。また、睡眠導入状態が、他の対照状態と比較して、段階N2およびN3の睡眠の持続時間を増加させ、睡眠振動(紡錘波および徐波)を強化することによって、固定された睡眠を促進すると予想される。最後に、他の対照状態よりも、睡眠導入において(アンケートで評価されるように)全体的な睡眠の量と質が良好であることが予想される。
【0103】
没入型の音声および熱-触覚刺激は、覚醒状態を向上させる(反応時間がより短い)、より回復力のある(それほど断片的でない)昼寝を提供する。正常および定期的な睡眠覚醒習慣を有する23人のナイーブで健康な参加者(15人の女性、年齢:25.7+/-5.1)が、この研究に参加した。実験前に、睡眠の質と量を、各実験セッション前に3晩連続して、自己採点式の睡眠アジェンダおよび手首のアクチメトリによって評価した。実験に含める前に各参加者が、日中の眠気、主観的な睡眠の質、抑鬱症状、および健康状態を評価するための一連の標準化されたアンケートに記入した。すべての参加者が、自己申告したナイーブな瞑想者(瞑想を実践したことがないか、または生涯で1回または2回の瞑想セッションを時折受けた)および定常的でない昼寝者(週に最大1回の時折の昼寝)であった。参加者は、女性用の経口避妊薬を除いて、睡眠または概日系に影響を与えることが知られている薬、心血管薬、および向精神薬を服用していてはならず、神経学的または精神医学的障害の病歴があってはならない。
【0104】
3つの異なる日の間に、各参加者は、脳波(EEG)がセッション全体で記録された、3つの異なる実験状態に対応する、3つの異なる記録セッションを完了した。各セッションは、薄暗い光の中で12分間の瞑想段階で開始した:参加者は、リラックスできる椅子に座り、靴下を履いたまま靴を脱ぎ、マルチモーダルハプティックデバイスに足を置き、足を毛布で覆い、EEGデバイスに加えてヘッドホンを着用して、目を閉じた(
図3)。各実験状態は同じ時間続いた。参加者を、擬似無作為化かつ均衡した順序で以下の3つの状態にさらした:
1)熱-触覚状態:多感覚没入型瞑想シナリオ - 主な実験状態。多感覚シナリオ(足元の触覚と温度の両方および音によってシミュレートされた水の波)では、海岸のサウンドスケープと45℃の温度での熱-触覚刺激の両方を使用した。同時に、瞑想の専門家によって準備された予め録音されたガイダンスによって、ユーザが睡眠を導入する瞑想を実践することを助けた(
図4);
2)音の瞑想:熱刺激や触覚刺激を伴わない、サウンドスケープを有するガイド付きリラクゼーション瞑想。瞑想およびサウンドスケープは、熱-触覚状態で使用されたものとまったく同じであった。
3)休息:参加者に、睡眠前に同じ姿勢を保ちながら、呼吸に集中するよう求めた。この実験状態の間に、瞑想、熱、触覚、または聴覚刺激のいずれも施さなかった。
【0105】
熱-触覚状態を作り出すために、サウンドスケープ(すなわち、自然の水の波の音)を、各足に3つの、6つのセルで構成された熱-触覚ディスプレイ(各セルは圧力と温度で制御可能である)を介して、ユーザの足元に提供された触覚刺激へと変換した。
【0106】
これを、
図2で説明した工程に従って行い、ここで、波の最大振幅を300mPaの最大触覚圧力値によって標準化した一方で、セルの温度を45℃に設定した。自然の波の周波数を、0.2Hzになるように選択し、これは、この周波数付近の慣性または音の刺激が睡眠を促進し、睡眠の質を改善することが示されているためである(Bayer, L, Constantinescu, I., Perrig, S., Vienne, J., Vidal, P. P., Mhulethaler, M., & Schwartz, S. (2011). Rockingsynchronizes brain waves during a short nap. Current biology, 21(12), R461-R462; Cordi, Maren Jasmin, Sandra Ackermann, and Bjorn Rasch. “Effects of relaxing music on healthy sleep.” Scientific reports 9.1 (2019): 1-9)。
【0107】
瞑想セッションの終了直後、参加者は、目を開け、足をフットレストに置き、椅子の背もたれをリクライニングさせ、45分間再び目を閉じ、その間に眠気を感じたかもしれない。消灯して、昼寝時間の開始をマークした。
【0108】
45分が経過した時点で、被験体を目覚めさせ、明かりをつけて、眠りから覚めるまで参加者に15分間与えた。参加者は、コンピュータベースのタスク(Psychomotor Vigilance Task;PVT)でセッションを終了して、覚醒状態を評価した。PVTは、参加者がコンピュータ画面にサインが表示されるとすぐにボタンを押すように求められる反応時間タスクである。反応時間が短いほど覚醒状態のレベルが高いことを示している。
【0109】
EEGデータおよび/または睡眠ポリグラフィを、実験状態に対して盲検な2人の経験豊富な採点者によって、標準的な基準に従って、30エポック秒にわたってスコア化した(たとえば、Iber C, Ancoli-lsrael S, Chesson A, Quan S, for the American Academy of Sleep Medicine. The AASM manual for the scoring of sleep and associated events: rules, terminology and technical specifications. 1st ed. American Academy of Sleep Medicine: Westchester; 2007)。いくつかの睡眠パラメータを計算した:段階N1、N2、N3、およびNREM(消灯から)までの、その段階に達した場合の潜時、各睡眠段階の時間とパーセンテージ、合計睡眠時間(TST;異なる睡眠段階で費やされた時間の合計)、合計睡眠期間(SPT;睡眠中の覚醒間隔を含む、入眠から最終覚醒までの合計時間)。睡眠効率を、TST/SPT×100として定義した。睡眠断片化および関連するパラメータを睡眠経過図に基づいて計算した。正規分布データ(コルモゴロフ-スミルノフ検定)に関して、対応のある両側t検定を使用して、熱-触覚状態と対照状態との間のANOVA比較および事後計画比較を実施した。他の方法では、ノンパラメトリックウィルコクソン検定を使用した。
【0110】
15人の被験体を解析に含め、残りは信号品質が悪いか、録音中に問題があったために除外した。
【0111】
図5は、睡眠の質の指標(N=15)である、睡眠中の睡眠段階推移の数(断片化:断片化が少ないほど睡眠の質が良好である)を示している。3つの実験状態(休息、音、熱-触覚)を因子とする反復測定ANOVAは、睡眠段階の主な効果を示した(F(2,28=3.95、p<0.05))。重要なことに、音瞑想状態と比較して熱-触覚に対する断片化が大幅に減少し(対応のある両側t検定、p<0.05)、休息状態と比較して熱-触覚に対する量的減少があった。縦棒は平均値の標準誤差を示す。したがって、熱-触覚状態は、昼寝中の睡眠段階間の移行を減らすことによって固定された睡眠段階を促進した。これは、他の条件と比較して、熱-触覚状態の間の睡眠の質が良好であることを示唆している。
【0112】
図6は、熱-触覚状態の断片化に対する2つの有意なピアソンの相関、すなわち、SPTに対するN1で費やされた時間のパーセンテージ(r=0.7、p<0.05)およびSPTに対してN3で費やされた時間のパーセンテージ(r=-0.5、p<0.05;N=15)を示す。したがって、熱-触覚状態の間、断片化が少ないほど、SPTに対する浅い睡眠段階(N1)で費やされる時間のパーセンテージが低くなり、断片化が少ないほど、SPTに対する深い、より回復力のある睡眠段階(N3)に費やされる時間のパーセンテージが高くなる。これによって、断片化が少ないことと、睡眠をより深くまたはより回復力のあるようにすることとの間の関係性が強化される。
【0113】
図7は、実験状態ごとの、コンピュータベースのタスク(PVT)(N=12)で評価された、昼寝後の平均反応時間を示す。対応のある両側t検定では、休息対熱-触覚に対する反応時間の有意差(p<0.02)、および熱-触覚に関して音状態と比較して反応時間が短くなる傾向があった。したがって、熱-触覚状態は、神経睡眠測定基準だけでなく行動データにも影響を与えた。熱-触覚状態は、視覚刺激に対する参加者の反応時間を短縮することによって昼寝後の覚醒状態を改善する。この結果は、断片化に関する神経の結果と一致しており、他の実験状態よりも熱-触覚状態の間の睡眠(昼寝)の回復力がよりあるという好適な結果である。
【0114】
要約すると、EEGと行動データの両方で評価されるように、熱-触覚状態は睡眠を改善し、より回復力のある睡眠段階に到達して留まる傾向が高まって、より良好な睡眠の質をもたらし、覚醒状態を取り戻す助けになった(反応時間がより短い)。後者の行動結果は、昼寝後の効率および生産性の向上につながり得る。
【0115】
本発明は、特定の好ましい実施形態を参照して開示されているが、本発明の領域および範囲から逸脱することなく、記載された実施形態、およびそれらの等価物に対する多数の修正、変更、および変化が可能である。したがって、本発明が、記載された実施形態に限定されず、添付の請求項の文言に従って最も広い合理的な解釈が与えられることが意図されている。
【手続補正書】
【提出日】2023-03-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための
システムであって、前記
システムが、
a)ユーザに熱-触覚刺激を提供するように構成された複数の触覚ディスプレイを備えるハプティックデバイスと、
b)映像ファイルと共にまたは別に、音声ファイルを再生するように構成された少なくとも1つの音声/映像デバイスと、
c)前記ハプティックデバイスおよび前記音声/映像デバイスと動作可能に接続されたデータ処理装置であって、
a)
前記音声/映像デバイスを介して、映像ファイルと共にまたは別に、
前記音声ファイルを再生する
、および
b)前記被験体の遠位部分に
前記熱-触覚刺激を提供して、前記遠位部分の皮膚において血管の拡張度を増大させ
、前記熱-触覚刺激が、前記音声ファイルによって得られたハプティックプロファイルに従って
前記ハプティックデバイスを介して提供され、これによって、前記被験体において熱調節と共にリラクゼーション状態を誘発して、入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善する、
ためにシステムを動作させるように構成された命令を含むプロセッサを有する、データ処理装置と、を備える、システム。
【請求項2】
手、足、足首、手首、頭、および首の少なくとも1つなどの、前記被験体の遠位部分の温度、またはその変化を測定するように構成されたセンサをさらに備える、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
前記触覚ディスプレイが、前記遠位部分に適応するために可撓性であり、および、圧力および/または温度および/またはアクティブ化時間および/または持続時間が別々に制御される複数のセルを含み、前記複数のセルは、好ましくは前記複数のセル内の媒体の圧力および/または温度によって制御される、請求項1記載のシステム。
【請求項4】
前記複数のセルが、セルパターンを定義するために前記遠位部分に配置される、請求項3記載のシステム。
【請求項5】
前記システムが、
ピークおよび谷を含む、前記音声ファイルの音声信号の周波数および/または振幅の波プロファイルを判定する、
前記波プロファイルにおいて複数の波パラメータを特定し、前記複数の波パラメータが、少なくとも、前記波プロファイルの立ち上がり時間と立ち下がり時間、前記波プロファイルの立ち上がり持続時間と立ち下がり持続時間、前記波プロファイルの波勾配および/または波振幅を含み、前記波パラメータを、セルのアクティブ化時間、アクティブ化持続時間、圧力および/または温度を含む、ハプティックプロファイルパラメータに変換する、
複数の信号を前記複数のセルに送信し、前記複数の信号の各々が、前記ハプティックプロファイルパラメータに関連付けられ、前記複数のセルの1つに方向づけられる、ようにさらに構成され、
前記システムが、前記セルパターンで第2のセルをアクティブ化するための信号の送信の前に、前記第2のセルの前に前記セルパターンで配置された第1のセルをアクティブ化する信号の送信するように構成されている、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
1つのセルに方向づけられた前記複数の信号の送信を、別のセルへの他の信号の送信が終了する前に開始するように構成されている、請求項5記載のシステム。
【請求項7】
1つのセルに方向づけられた信号を、別のセルに方向づけられた信号が送信されると同時に送信するように構成されている、請求項5記載のシステム。
【請求項8】
前記熱-触覚刺激の持続時間が、信号の持続時間に対応して設定され、1つのセルに方向づけられた信号の持続時間が、前記複数のセルのうちの別のセルへの他の信号の持続時間と異なるかまたは等しくなり、前記熱-触覚刺激の圧力および/または温度が、前記遠位部分とは異なる身体部分で測定された身体パラメータに基づいて設定される、請求項5記載のシステム。
【請求項9】
前記被験体の遠位部分の皮膚における血管の温度および/または拡張度、またはその変化を経時的にモニターするようにさらに構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
前記音声ファイルが、少なくとも声をエンコードする音声トラックおよび音をエンコードする音声トラックを含む、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
a)前記音声ファイルから導出された音声信号を処理し、それによって前記音声信号の周波数および/または振幅の少なくとも1つのプロファイルを取得すること、および
b)前記周波数および/または振幅のプロファイルを前記ハプティックプロファイルに変換すること、によって前記ハプティックプロファイルを取得するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
前記熱-触覚刺激が、時空間的に前記被験体の皮膚に提供された熱勾配および圧力勾配を含む、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
前記被験体の生理学的パラメータ、運動パラメータ、および/または心理的パラメータに基づいて前記熱-触覚刺激の持続時間を設定するように構成されている、請求項1記載のシステム。
【請求項14】
一連の命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体であって、請求項1記載のシステムに備えられるデータ処理装置によって実行されたときに、前記データ処理装置によって、
a)音声/映像デバイスを介して、映像ファイルと共にまたは別に、音声ファイルを再生する、および
b)被験体の遠位部分に熱-触覚刺激を提供して、前記遠位部分の皮膚において血管の拡張度を増大させ、前記熱-触覚刺激が、前記音声ファイルによって得られたハプティックプロファイルに従ってハプティックデバイスを介して提供され、これによって、前記被験体において熱調節と共にリラクゼーション状態を誘発して、入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善する、ように前記システムを動作させる、非一時的コンピュータ可読媒体。
【請求項15】
前記命令が、
i)前記被験体の少なくとも1つの遠位部分の温度、またはその変化に関するデータを受信および/または処理すること、
ii)前記映像ファイルと共にまたは別に、前記音声ファイルを再生するように前記音声/映像デバイスを操作すること、
iii)前記音声ファイルによって得られた前記ハプティックプロファイルに関するデータを受信および/または処理すること、および
iv)前記被験体の遠位部分に熱-触覚刺激を提供するように前記ハプティックデバイスを操作すること、を含む、請求項14記載の非一時的コンピュータ可読媒体。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
本発明は、先行技術の解決策の上述の欠点を解決するか、または少なくとも軽減することを目的とする。この目的のために、被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法およびシステムが開示されている。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0011
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0011】
特に、システムの第1の目的は、入眠のプロセスおよび睡眠の質を促進するために被験体の身体部分の熱調節を正確かつ動的にも最適化することである。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
システムのさらなる目的は、睡眠時間の増加および改善することを目的として瞑想-リラクゼーション技法を被験体の体温調節と相乗的に組み合わせることである。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0013】
システムのさらなる別の目的は、被験体の精神的および身体的なリラクゼーションプロセスを支援することである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0015
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0015】
睡眠の健康の2つの重要な要素、1)体温調節、および、2)ガイド付き瞑想-リラクゼーションの実践を、現実的な没入型体験に組み込んで入眠を促進し、睡眠の質を改善するための方法が開示されている。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0016
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0016】
一実施形態では、体温調節は、その全体が引用により本明細書に含まれる、米国特許第9,703,381号明細書に記載されるマルチモーダルハプティックデバイス(multimodal haptic device)によって制御される。睡眠を改善するために、この非限定的な実施形態では、マルチモーダルハプティック技術(multimodal haptic technology)が足デバイスに埋め込まれている。これは、体温調節、リラクゼーション、および睡眠における足の温度の生理学的重要性によるものである。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0017
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0017】
次の3つの主要部分が開示される:1)被験体の入眠を促進するために必要とされる熱刺激を個別化(personalize)する手順、2)入眠を促進し睡眠の質を向上させるための没入型体験への、熱刺激およびガイド付きリラクゼーション-瞑想技法の融合、および、3)特定の日に被験体から記録されたデータに従って、さまざまなセッション期間を提案することができる推奨システム(閉ループの解決策)を開発するためのウェアラブルセンシングの統合。
【手続補正9】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0018】
上記を考慮して、本発明によれば、請求項1に被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するためのシステム、ならびに入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するために被験体の熱調節と共にリラクゼーション状態を誘発するためのその使用が請求される。
【手続補正10】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0019
【補正方法】削除
【補正の内容】
【手続補正11】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0020
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0020】
システムに備えられたデータ処理装置によって実行されたときに、データ処理装置によって被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するようにシステムを動作させる一連の命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体も開示されている。
【手続補正12】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0021
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0021】
本発明のさらなる実施形態は、添付の請求項によって定義される。本明細書で提示される主題の上記および他の目的、特徴、および利点は、以下の説明の検討から明らかになる。開示されるような方法は外科的または医学的な工程を含まず、当該方法を実施するシステムは人体との侵襲的なインタラクションを必要としない。たとえば、「被験体の遠位部分の皮膚における血管の温度および/または拡張度、またはその変化を経時的にモニターする工程」について言及する場合、そのようなモニタリングが、皮膚の外面を本発明によるデバイスと接触させることによって行われることが意図され、したがって、デバイスを体血管に到達させるために皮膚に外科的介入を行う必要はない。
【手続補正13】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
また、開示されるような方法は、治療による処置のための方法およびシステムではなく、病理学的状態からではなく正常で健康な状態から開始することを意味している。実際、たとえばストレスまたは疲労の通常の状況によって誘発された睡眠不足の状態は、損傷の症状と重なることはない。さらに、システムおよび方法は、睡眠を改善するだけでなく、リラクゼーションおよび健康を誘発するために適用され得る。
【手続補正14】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0043
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0043】
一態様では、本
開示は、被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための方法を特徴とし、当該方法は以下の工程を含む(
図1):
a)音声/映像デバイスを介して、映像ファイルと共にまたは別に、音声ファイルを再生する工程、および
b)被験体の遠位部分に熱-触覚刺激を提供して、上記遠位部分の皮膚において血管の拡張度を増大させる工程であって、熱-触覚刺激が、上記音声ファイルによって得られたハプティックプロファイルに従ってハプティックデバイスを介して提供され、これによって、入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するために被験体において熱調節と共にリラクゼーション状態を誘発する工程。被験体の遠位部分は、本
開示によれば、手、足、足首、手首、頭、および首の少なくとも1つを含む。
【手続補正15】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0044
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0044】
本開示の方法は、睡眠段階を開始する準備を行いたい、睡眠段階を開始するように準備される、またはそうでなければ睡眠段階を開始する準備ができた被験体、特に人間に対して実施される。特に、被験体は、被験体のニーズに応じて適切な睡眠位置で、座位にあるか、またはベッドやマットなどの適切な睡眠サポートに横になっている。したがって、本開示の方法は、入眠しようとしているとき、すなわち、N1睡眠段階の60分から1分前など、被験体がN1睡眠段階に入る直前に、および/または被験体の任意のまたはあらゆる睡眠段階中に被験体に対して実施される。
【手続補正16】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0045
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0045】
したがって、本開示の方法は、覚醒状態から睡眠への移行を準備する、伴う、支持する、促進する、および/または容易にするように構築および構成される他に、特定の実施形態では、睡眠段階またはその質を維持および/または改善するように構築および構成され、1つまたは複数の睡眠段階の長さを延長する、1つの睡眠サイクルから別の睡眠サイクルへの移行を促進する、再び眠りにつくプロセスを平滑にすることなどを含む。
【手続補正17】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0046】
本開示の方法は、好ましくは、本開示の別の態様を表す統合システムを介して実施され、上記システムは、
a)ユーザに熱-触覚刺激を提供するように構成された複数の触覚ディスプレイを備えるハプティックデバイスと、
b)映像ファイルと共にまたは別に、音声ファイルを再生するように構成された少なくとも1つの音声/映像デバイスと、
c)上記ハプティックデバイスおよび音声/映像デバイスと動作可能に接続されたデータ処理装置であって、本開示の方法を実施するためにシステムを動作させるように構成された命令を含むプロセッサを有する、データ処理装置と、を備える。本開示のデータ処理装置は、コンピュータ、スマートフォン、タブレット、音声起動デバイス(すなわち、スマートスピーカー/音声アシスタント)などの任意の適切なデバイスを備えることができる。好ましい実施形態では、当該システムは、データ処理装置に動作可能に接続されたセンサをさらに備え、センサは、手、足、足首、手首、頭、および首の少なくとも1つなどの、被験体の少なくとも遠位部分の温度、またはその変化を測定するように構成されている。
【手続補正18】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0048
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0048】
本開示による適切なハプティックデバイスは、可撓性であり、ユーザの解剖学的構造に適応可能であり、熱-触覚ハプティックフィードバックを提供することができる。概して、当該デバイスは、フレキシブルディスプレイユニットに接続された少なくとも1つの作動ユニットを備える。作動ユニットは、液体または気体などの流体媒体の圧力および温度を気圧および/または液圧で制御して、ディスプレイに触れている被験体に触覚および温度のキューを提供する。触覚キューは、流体媒体の圧力を介してディスプレイの可撓性膜の形状を制御することによって作成される。一実施形態では、マルチモーダルフィードバックを得るためにいくつかの剛性アクチュエータを利用する既知の触覚ディスプレイとは対照的に、ハプティックデバイスは、触覚および固有感覚性(たとえば、熱キュー)の両方で、複数のハプティックフィードバックの完全性を生成する単一の作動システムを特徴とする。
【手続補正19】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0050
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0050】
一実施形態では、ハプティックデバイスは、米国特許第9,703,381号明細書に記載されており、本開示のシステムおよび方法の対象アプリケーションに特に適している。
【手続補正20】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0051
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0051】
本開示の主要な実施形態によれば、被験体の遠位部分に提供された熱-触覚刺激は、上記遠位部分の皮膚において血管の拡張度を増加させるために、熱を提供しながら被験体の遠位部分と接触するハプティックデバイスをアクティブ化するか、またはそうでなければ動作させることによって被験体に供給される。ハプティックデバイスと被験体の皮膚との間の熱交換は、好ましくは触覚ディスプレイまたはセルによって実施され、ハプティックデバイスによって提供された熱量は、一定または可変の程度の血管拡張を保つために、可変であり、動的に調節することができる。典型的に、本開示の方法を実施するのに適したハプティックデバイスは、被験体の皮膚を最大40~45℃まで加熱して、上記被験体の入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するための適切な血管拡張を誘発することができる。
【手続補正21】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0052
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0052】
一実施形態では、本開示の方法は、被験体の遠位部分の皮膚における血管の温度および/または拡張度、またはその変化を経時的にモニターする工程をさらに含む。本実施形態では、本開示によるシステムは、好ましくはリアルタイムで、被験体の身体部分の皮膚の血管の温度および/または拡張度に加えて、血流も測定するように構成された温度および/または血圧センサを備え、本開示の方法を受ける上記被験体の皮膚と接触して、上記センサは、適切な血管拡張を維持するために、データ処理装置と閉ループで動作して、デバイスと被験体との間の熱交換を動的に設定する。
【手続補正22】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
本開示の好ましい実施形態では、再生された音声ファイルは、少なくとも声をエンコードする音声トラックおよび音をエンコードする音声トラックを含む。
【手続補正23】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0054
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0054】
本開示の好ましい実施形態では、ハプティックプロファイルは、
a)音声ファイルから導出された音声信号を処理し、それによって上記音声信号の周波数および/または振幅の少なくとも1つのプロファイルを取得すること、および
b)上記周波数および/または振幅のプロファイルをハプティックプロファイルに変換すること、によって取得される。
【手続補正24】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
本開示のいくつかの実施形態では、当該方法は、被験体の体幹の少なくとも一部の温度、および被験体の遠位部分の温度を測定および/またはモニターする工程を含む。
【手続補正25】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0057
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0057】
本開示のいくつかの実施形態では、当該方法は、時空間的に被験体の皮膚に対して、熱勾配および圧力勾配を含む、熱-触覚刺激を提供する工程を予見する。
【手続補正26】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0058
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0058】
本開示の特定の実施形態によれば、熱-触覚刺激は、被験体の生理学的パラメータ、運動パラメータ、および/または心理的パラメータに基づく持続時間を有する。上記パラメータは、ウェアラブルセンサを使用してリアルタイムで、(後述するように、上記パラメータに関するファイルを本開示によるデータ処理装置にアップロードすることによって)オフラインで、またはそれらの組み合わせで取得することができる。本実施形態は、本開示の方法のいわゆる「活動依存的個人化」を達成すると解釈される。睡眠研究は、ストレスや不安などの日中の個々の状態が睡眠の質に重要な役割を果たすことを示しており、並行した計算睡眠研究は、活動データ、ならびに心拍数、呼吸パターン、および体温などの他の身体信号によって、睡眠の質および効率を予測することができることを示しているため、本開示の方法は、参加者のウェアラブルな日々のセンシングデータプロファイルに従って選択された、睡眠導入セッションの理想的な持続時間を提案する「推奨システム」を予見する。これによって、異なる日々にわたって睡眠の質を改善することが可能になる。たとえば、異なる夜間の同様の入眠および質を維持するために、睡眠導入セッションは、ストレスの多い日の後により長く続くようにプログラムされ得る。
【手続補正27】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0059
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0059】
異なる日で同様の睡眠改善を達成するためには睡眠導入状態の異なる持続時間が必要になることが予想される。たとえば、何日も強いストレスを感じた後は、睡眠導入セッションのより長い持続時間が必要になることが予想される。パッシブセンシング技術とは異なり、本開示は、個々の知覚と個々の精神的および生理学的状態を直接介入にリンクして、入眠を促進し、睡眠の質を改善することを可能にする。
【手続補正28】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
本開示のさらに別の態様は、本発明のシステムのデータ処理装置によって実行されたときに、上記データ処理装置によって本開示に従って方法を実施するようにシステムを動作させる一連の命令を含む非一時的コンピュータ可読媒体に関する。さらに、本開示の一態様は、本発明の非一時的コンピュータ可読媒体を備えるデータ処理装置に関する。
【手続補正29】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0066
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0066】
本開示の実施形態では、上記音声信号の周波数および/または振幅のプロファイルを取得するために、処理は、所望の周波数を中心に広く、帯域通過フィルタを入力音声ファイルに適用することを含む。その後、信号は整流され、ローパスフィルタが適用されて信号のエンベロープが取得される。いくつかの実施形態では、エンベロープは、その後、ダウンサンプリングされ、ノイズ閾値振幅が適用される。いくつかの実施形態では、その後、時定数が所望の信号に関する事前知識に基づく畳み込みハニング窓などの窓関数が適用される。
【手続補正30】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0075
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0075】
当業者に明らかなように、記載されたことに基づいて、本開示のさらに別の態様は、入眠を促進するおよび/または睡眠の質を改善するために被験体において熱調節と共にリラクゼーション状態を誘発するための本発明によるシステムの使用に関する。
【手続補正31】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0086
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0086】
本開示の例として与えられた上述のハプティックプロファイルパラメータはすべて、セルを駆動させるための信号を設定するために使用される。
【手続補正32】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0094
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0094】
当業者は、上述されたより一般的な態様を参照して開示された特徴が、本開示の方法およびシステムの実施形態のいずれか1つにおいて適用され得、したがって、これらの特徴がすべての実施形態に関して繰り返されないことを理解し得る。
【手続補正33】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0095
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0095】
本開示をより明確に説明および例示するために、以下の実施例が詳細に提供されるが、これらは請求項に定義されるような保護の範囲を限定するようには意図されていない。
【手続補正34】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0115
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0115】
本発明は、特定の好ましい実施形態を参照して開示されているが、特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された実施形態、およびそれらの等価物に対する多数の修正、変更、および変化が可能である。したがって、本発明が、記載された実施形態に限定されず、添付の請求項の文言に従って最も広い合理的な解釈が与えられることが意図されている。
【国際調査報告】