IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧 ▶ 独立行政法人国際農林水産業研究センターの特許一覧

特表2023-533425固体燃料製造システム及び固体燃料製造方法
<>
  • 特表-固体燃料製造システム及び固体燃料製造方法 図1
  • 特表-固体燃料製造システム及び固体燃料製造方法 図2
  • 特表-固体燃料製造システム及び固体燃料製造方法 図3
  • 特表-固体燃料製造システム及び固体燃料製造方法 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2023-08-03
(54)【発明の名称】固体燃料製造システム及び固体燃料製造方法
(51)【国際特許分類】
   C10L 5/44 20060101AFI20230727BHJP
【FI】
C10L5/44
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022572410
(86)(22)【出願日】2022-06-20
(85)【翻訳文提出日】2022-12-01
(86)【国際出願番号】 JP2022024517
(87)【国際公開番号】W WO2023276755
(87)【国際公開日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】PI2021003802
(32)【優先日】2021-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】MY
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(71)【出願人】
【識別番号】501174550
【氏名又は名称】国立研究開発法人国際農林水産業研究センター
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】山下 雅治
(72)【発明者】
【氏名】小杉 昭彦
(72)【発明者】
【氏名】チュア、 ケン フア
【テーマコード(参考)】
4H015
【Fターム(参考)】
4H015AA12
4H015AB01
4H015BA01
4H015BA09
4H015BA13
4H015BB03
4H015BB05
4H015BB10
4H015CB01
(57)【要約】
固体燃料製造システム(1)は、リグノセルロースバイオマスに含まれる水分でリグノセルロースバイオマスを爆砕する連続式爆砕部(13)を備える。固体燃料製造システム(1)は連続式爆砕部(13)で爆砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する乾燥部(14)を備える。固体燃料製造システム(1)は乾燥部(14)で乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する成形部(15)を備える。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロースバイオマスに含まれる水分で前記リグノセルロースバイオマスを爆砕する連続式爆砕部と、
前記連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する乾燥部と、
前記乾燥部で乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する成形部と、
を備える、固体燃料製造システム。
【請求項2】
前記連続式爆砕部はエクストルーダを含む、請求項1に記載の固体燃料製造システム。
【請求項3】
前記リグノセルロースバイオマスは繊維状バイオマスを含む、請求項1又は2に記載の固体燃料製造システム。
【請求項4】
前記リグノセルロースバイオマスは、オイルパームのパーム空果房、オイルパームの剪定枝葉及びオイルパームの中果皮繊維からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の固体燃料製造システム。
【請求項5】
前記連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマスを摩砕する摩砕部をさらに備え、
前記乾燥部は前記連続式爆砕部で爆砕され、かつ、前記摩砕部で摩砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する、請求項1~4のいずれか一項に記載の固体燃料製造システム。
【請求項6】
前記摩砕部は石臼式摩砕機を含む、請求項5に記載の固体燃料製造システム。
【請求項7】
前記摩砕部は湿式摩砕機を含む、請求項5又は6に記載の固体燃料製造システム。
【請求項8】
前記摩砕部は前記連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する、請求項5~7のいずれか一項に記載の固体燃料製造システム。
【請求項9】
前記連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する除去部をさらに備え、
前記摩砕部は前記連続式爆砕部で爆砕され、かつ、前記除去部で灰分が除去されたリグノセルロースバイオマスを摩砕し、
前記乾燥部は前記連続式爆砕部で爆砕され、かつ、前記摩砕部で摩砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する、請求項5~8のいずれか一項に記載の固体燃料製造システム。
【請求項10】
前記リグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する除去部をさらに備え、前記連続式爆砕部は前記除去部で灰分が除去されたリグノセルロースバイオマスを爆砕する、請求項1~8のいずれか一項に記載の固体燃料製造システム。
【請求項11】
前記連続式爆砕部で爆砕された前記リグノセルロースバイオマスからパームオイルを回収する回収部をさらに備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の固体燃料製造システム。
【請求項12】
リグノセルロースバイオマスに含まれる水分で前記リグノセルロースバイオマスを連続式爆砕部によって爆砕する爆砕工程と、
前記爆砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する成形工程と、
を含む、固体燃料製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固体燃料製造システム及び固体燃料製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
パーム油はオイルパーム果実から採取される植物油であり、食品及び燃料などの多くの用途に利用されている。一方、パーム古木、パーム空果房、剪定枝葉及び中果皮繊維などの有効利用法が模索されており、これらを固体燃料として利用することが提案されている。
【0003】
特許文献1では、バイオマスから糖液を搾汁する搾汁工程と、搾汁工程で得られた搾り滓を固体燃料化する搾り滓燃料化工程とを有する固体燃料製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6403347号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来技術では、主にオイルパームの幹を原料として固体燃料を製造している。一方、繊維状のバイオマスを原料として固体燃料を製造すると、繊維間の接着力が十分に得られないため、強固な固体燃料を成形しにくい場合があった。
【0006】
そこで、本開示は、繊維状のバイオマスを含む原料を用いた場合であっても、強固な固体燃料を成形することが可能な固体燃料製造システム及び固体燃料製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る固体燃料製造システムは、リグノセルロースバイオマスに含まれる水分でリグノセルロースバイオマスを爆砕する連続式爆砕部を備える。固体燃料製造システムは連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する乾燥部を備える。固体燃料製造システムは乾燥部で乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する成形部を備える。
【0008】
連続式爆砕部はエクストルーダを含んでいてもよい。
【0009】
リグノセルロースバイオマスは繊維状バイオマスを含んでいてもよい。
【0010】
リグノセルロースバイオマスは、オイルパームのパーム空果房、オイルパームの剪定枝葉及びオイルパームの中果皮繊維からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0011】
固体燃料製造システムは連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマスを摩砕する摩砕部をさらに備え、乾燥部は連続式爆砕部で爆砕され、かつ、摩砕部で摩砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥してもよい。
【0012】
摩砕部は石臼式摩砕機を含んでいてもよい。
【0013】
摩砕部は湿式摩砕機を含んでいてもよい。
【0014】
摩砕部は連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去してもよい。
【0015】
固体燃料製造システムは連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する除去部をさらに備えていてもよい。摩砕部は連続式爆砕部で爆砕され、かつ、除去部で灰分が除去されたリグノセルロースバイオマスを摩砕してもよい。乾燥部は連続式爆砕部で爆砕され、かつ、摩砕部で摩砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥してもよい。
【0016】
固体燃料製造システムはリグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する除去部をさらに備え、連続式爆砕部は除去部で灰分が除去されたリグノセルロースバイオマスを爆砕してもよい。
【0017】
固体燃料製造システムは連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマスからパームオイルを回収する回収部をさらに備えていてもよい。
【0018】
本開示に係る固体燃料製造方法は、リグノセルロースバイオマスに含まれる水分でリグノセルロースバイオマスを連続式爆砕部によって爆砕する爆砕工程を含む。固体燃料製造方法は、爆砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する乾燥工程を含む。固体燃料製造方法は、乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する成形工程を含む。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、繊維状のバイオマスを含む原料を用いた場合であっても、強固な固体燃料を成形することが可能な固体燃料製造システム及び固体燃料製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1図1は、一実施形態に係る固体燃料製造システムを示す概略図である。
図2図2は、一実施形態に係る固体燃料製造システムを示す概略図である。
図3図3は、一実施形態に係る固体燃料製造システムを示す概略図である。
図4図4は、一実施形態に係る固体燃料製造システムを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、いくつかの例示的な実施形態について、図面を参照して説明する。なお、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0022】
(第1実施形態)
まず、第1実施形態に係る固体燃料製造システム1及び固体燃料製造方法について図1を用いて説明する。本実施形態では、リグノセルロースバイオマス(以下、「バイオマス」ともいう)を原料として固体燃料が製造される。固体燃料製造システム1は、図1に示すように、除去部11と、脱水部12と、連続式爆砕部13と、乾燥部14と、成形部15と、バイオリアクタ16と、発電部17と、加熱部18と、蒸気生成部19とを備えている。また、本実施形態に係る固体燃料製造方法は、除去工程と、脱水工程と、爆砕工程と、乾燥工程と、成形工程と、メタン発酵工程と、発電工程と、加熱工程と、蒸気生成工程とを含んでいる。
【0023】
リグノセルロースバイオマスは、リグノセルロースを含むバイオマスである。リグノセルロースは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。リグノセルロースバイオマスは、草木バイオマス、その加工物及び廃棄物からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。草木バイオマスは、草本バイオマス及び木本バイオマスの少なくともいずれか一方を含んでいてもよい。草本バイオマスは、オイルパーム、イネ、ムギ、バナナ、サトウキビ、トウモロコシ、キャッサバ、サゴ椰子、ニッパ椰子、ヤムイモ、ソルガム及び馬鈴薯からなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。木本バイオマスは、スギ、ヒノキ、マツ、ユーカリ及びブナからなる群より選択される少なくとも一種を含んでいてもよい。
【0024】
リグノセルロースバイオマスは、繊維状バイオマスを含んでいてもよい。繊維状バイオマスは、繊維が長く、繊維間同士を接着可能なバインダ成分も少ないため、バインダ成分を添加するなどしなければ、固体燃料の生産性が低下する場合がある。しかしながら、固体燃料製造システム1によれば、後述するように、バイオマスが連続式爆砕部13で爆砕されるため、強固な固体燃料を成形することができる。
【0025】
リグノセルロースバイオマスは、オイルパームのパーム空果房(EFB:Empty Fruit Bunch)、オイルパームの剪定枝葉(OPF:Oil Palm Frond)及びオイルパームの中果皮繊維(MCF:Mesocarp Fiber)からなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。これらのバイオマスは繊維状バイオマスを含んでおり、上述のように固体燃料の成形が難しかったが、固体燃料製造システム1によれば強固な固体燃料を成形することができ、これらのバイオマスをエネルギー資源として有効活用することができる。なお、本実施形態によれば、バイオマスが繊維状バイオマスを含んでいなくても強固な固体燃料を成形することができる。そのため、バイオマスはパーム古木(OPT:Oil Palm Trunk)などを含んでいてもよい。
【0026】
除去部11では、除去工程が実施される。除去部11は、リグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する。灰分は、固体燃料を燃焼器で燃焼させた場合に、燃焼器に付着して燃焼器の燃焼効率を低下させる原因物質となるおそれがある。そのため、固体燃料を成形する前に灰分をバイオマスから除去することにより、灰分の少ない固体燃料を製造することができる。また、除去液は水を含んでおり、水が灰分を溶解することができるため、バイオマスから灰分を効率よく除去することができる。
【0027】
また、バイオマスには、灰分だけでなく、樹液も含まれている。そのため、除去部11では、バイオマスの樹液に含まれているグルコース、スクロース及びフルクトースなどの糖分を、浸透圧によって除去液に抽出することもできる。糖分を含む除去液は、バイオリアクタ16に移送され、バイオガスを生成するための原料として用いることができる。除去液は、水道水、地下水、河川水、湖水又は純水などの淡水であってもよい。これらの水は浸透圧によって灰分又は糖分を効率よく抽出することができる。
【0028】
除去部11は水槽を含み、水槽中の除去液にバイオマスを浸漬することによって灰分を除去してもよい。また、除去部11はベルトコンベアのような搬送部をさらに含み、搬送部の一部が除去液中に配置されていてもよい。そして、搬送部上にバイオマスを載置し、搬送部を所定の速度で駆動させることにより、バイオマスの除去液への浸漬及び除去液からの引き上げを自動で連続的に行ってもよい。また、除去部11は、除去液をバイオマスに掛け流すことで灰分を除去してもよい。
【0029】
バイオマスから抽出される灰分及び糖分は、バイオマスを除去液に接触させる時間が長い程多くなる傾向にある。バイオマスの除去液への浸漬時間は、5分以上であってもよく、15分以上であってもよく、30分以上であってもよい。浸漬時間の上限は特に限定されないが、浸漬時間は24時間以下であってもよく、12時間以下であってもよく、3時間以下であってもよい。除去液の温度は5℃以上80℃以下であってもよい。固形分であるバイオマスは脱水部12に供給され、除去液はバイオリアクタ16に供給される。
【0030】
脱水部12では脱水工程が実施される。脱水部12では、固形分であるバイオマスと、灰分及び糖分を含む液体分である除去液とが分離される。固形分であるバイオマスの水分含有率は25質量%以上75質量%以下であってもよい。脱水部12は、ロータリースクリーン、遠心分離機、スクリュープレス及びフィルタープレスからなる群より選択される少なくとも1種の分離機を含んでいてもよい。固形分には、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンからなる群より選択される少なくとも一種が含まれている。また、液体分には、灰分及び糖分が含まれている。固形分であるバイオマスは連続式爆砕部13に供給され、液体分である除去液はバイオリアクタ16に供給される。
【0031】
連続式爆砕部13では爆砕工程が実施される。連続式爆砕部13は除去部11で灰分が除去されたリグノセルロースバイオマスを爆砕する。連続式爆砕部13は、リグノセルロースバイオマスに含まれる水分でリグノセルロースバイオマスを爆砕する。具体的には、連続式爆砕部13は、バイオマスを加圧及び加温した後、加圧及び加温されたバイオマスを急速に減圧する。この減圧により、バイオマスに含まれる水分は膨張し、バイオマスは爆砕される。そのため、バイオマスの繊維が解繊及び微細化されることから、バイオマスは柔らかくなり、固体燃料を成形するのに適したサイズになる。連続式爆砕部13に繊維状バイオマスが供給される場合、供給されるバイオマスの繊維の平均長さは例えば5mm以上50mm以下であり、爆砕されたバイオマスの繊維の平均長さは2mm以上3mm以下程度であってもよい。
【0032】
なお、連続式爆砕部13に代えて切断機を用いてバイオマスを切断する場合、切断機を効率よく稼働させるためには、バイオマスの水分含有率が例えば5質量%以下となるようにバイオマスを乾燥される必要がある。しかしながら、上記のような水分含有率までバイオマスを乾燥させた場合、バイオマス同士を接着させるため、バイオマスの水分含有率が所定の範囲になるようにバイオマスを加湿する必要がある。しかしながら、水蒸気下でバイオマスを加湿した場合、例えば繊維状バイオマスの塊の外表面のみが加湿されやすく、中心部は加湿されにくい。そのため、バイオマスが均一に加湿されにくく、バイオマス同士の接着にムラが生じてしまうおそれがある。一方、本実施形態では、バイオマスを連続式爆砕部13によって爆砕しているため、バイオマスの水分含有率が5質量%以下となるように乾燥させなくてもよい。したがって、バイオマスの再加湿をしなくてもよいため、バイオマスの水分含有率を均一にすることができ、バイオマス同士の結合にムラが生じてしまうことを抑制することができる。
【0033】
さらに、連続式爆砕部13でバイオマスが爆砕されていることにより、バイオマスに含まれるセルロース、ヘミセルロース及びリグニンからなる群より選択される少なくとも1種が分解又は化学変化し、繊維組織の性状の変化が期待される。例えば、繊維状バイオマスを連続式爆砕部13で爆砕した場合と、連続式爆砕部13を用いないでカットした場合とでは、バイオマスの水分含有率の程度を同じ程度にした場合であっても、バイオマス同士の接着性が後者より前者の方が高くなる。これは、爆砕によってヘミセルロースからキシロースのような糖が生成され、このような成分がバインダとして機能するためであると考えられる。
【0034】
連続式爆砕部13でバイオマスを加圧する際の圧力は、0.7MPaG以上であってもよい。圧力が0.7MPaG以上である場合、バイオマス中の水分が適度に加圧及び加温されるため、バイオマスの排出後においてバイオマス中の水分が膨張し、バイオマスが適度に粉砕される。また、連続式爆砕部13内の圧力は特に限定されないが、例えば10MPaG以下であってもよい。
【0035】
連続式爆砕部13でバイオマスを加温する際の温度は、100℃以上であってもよい。上記温度が100℃以上である場合、加圧によって液体の状態を保っていたバイオマス中の水分が、バイオマスの排出後に気化し、バイオマスが適度に粉砕される。上記温度は、200℃以下であってもよい。上記温度が200℃以下である場合、バイオマスが過度に爆砕されることを抑制することができる。
【0036】
連続式爆砕部13に供給されるバイオマスの水分含有率は25質量%以上75質量%以下であってもよい。水分含有率が上記範囲内である場合、バイオマス内の水分の気化により、バイオマスを効果的に爆砕することができる。なお、水分含有率は35質量%以上であってもよく、65質量%以下であってもよい。
【0037】
連続式爆砕部13はエクストルーダを含んでいてもよい。エクストルーダによれば、バイオマスを簡易な操作によって連続的に爆砕することができる。エクストルーダは、通常、ホッパと、シリンダと、シリンダ内に設けられたスクリュとを含んでいる。ホッパから供給されたバイオマスは、シリンダ内のスクリュに供給される。バイオマスは、スクリュの回転によってシリンダ内で加圧及び加温される。バイオマスがエクストルーダの排出口から排出されると、バイオマスの圧力が解放され、バイオマスが爆砕される。エクストルーダは、単軸爆砕機であってもよく、二軸などの多軸爆砕機であってもよい。エクストルーダはヒータを含んでいてもよいが、加圧によってバイオマス中の水分が加熱される場合もあるため、ヒータを含んでいなくてもよい。
【0038】
乾燥部14では乾燥工程が実施される。乾燥部14は、連続式爆砕部13で爆砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する。乾燥部14は、例えばバイオマスの水分含有率が10質量%以上20質量%以下程度となるようにバイオマスを乾燥する。バイオマスの水分含有率を上記の範囲内とすることにより、成形部15でバイオマスから固体燃料を容易に成形することができる。乾燥部14は、乾燥に必要な熱源として後述する蒸気生成部19で生成された水蒸気を用いてもよい。
【0039】
成形部15では成形工程が実施される。成形部15は、乾燥部14で乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する。成形部15によって成形された固体燃料は持ち運びが容易になるため、バイオマスを燃料として有効活用することができる。成形部15はペレタイザであり、バイオマスをペレット状に加圧成形してもよい。ペレットを成形する金型の直径に対する長さの比であるL/D比(圧縮比)は、4以上5.5以下であってもよい。
【0040】
バイオリアクタ16では、メタン発酵工程が実施される。バイオリアクタ16では、メタン生成菌などの微生物の作用により、糖分を含む除去液からメタン及び二酸化炭素を含むバイオガスが生成される。また、バイオリアクタ16では、メタン発酵によって、消化液も生成される。消化液は、公知の活性汚泥処理方法によって処理することができる。
【0041】
発電部17では発電工程が実施される。発電部17では、バイオリアクタ16で生成されたバイオガスを燃料として発電する。発電部17は、発電機と、ガスエンジン又はガスタービンとを含んでいてもよい。バイオガスを燃料としてガスエンジン又はガスタービンを作動させることにより、発電機が駆動され、電力を得ることができる。発電部17で発電された電力は、固体燃料製造システム1の駆動に用いることができる。これにより、固体燃料製造システム1の駆動に必要な電力量を低減することができる。
【0042】
加熱部18では加熱工程が実施される。加熱部18は、発電部17で生成された熱を利用することにより、水を加熱して温水を生成する。加熱部18で生成された温水は、除去部11に供給される除去液として利用することができる。
【0043】
蒸気生成部19では蒸気生成工程が実施される。蒸気生成部19では、バイオリアクタ16で生成されたバイオガスを燃料として水蒸気を生成する。蒸気生成部19は貫流ボイラを含んでいてもよく、貫流ボイラでバイオガスを燃料として水蒸気を生成してもよい。蒸気生成部19で生成された水蒸気は、乾燥部14に供給され、バイオマスを乾燥するために用いられてもよい。これにより、外部から供給されるエネルギー量を低減することができる。
【0044】
以上説明した通り、本実施形態に係る固体燃料製造システム1及び固体燃料製造方法によれば、繊維状のバイオマスを含む原料を用いた場合であっても、強固な固体燃料を成形することができる。
【0045】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態に係る固体燃料製造システム1及び固体燃料製造方法について図2を用いて説明する。図2に示すように、本実施形態に係る固体燃料製造システム1は、摩砕部20を備え、脱水部12の配置を変更している点において第1実施形態と大きく異なっている。これ以外の点については、特に言及がなければ上記実施形態と同様であるため説明を省略している。
【0046】
除去部11は、上記実施形態と同様に、リグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する。本実施形態においては、除去部11で灰分が除去されたバイオマスは脱水部12で脱水されずに連続式爆砕部13に供給される。連続式爆砕部13は除去部11で灰分が除去されたリグノセルロースバイオマスを爆砕する。
【0047】
連続式爆砕部13は、上記実施形態と同様に、リグノセルロースバイオマスに含まれる水分でリグノセルロースバイオマスを爆砕する。なお、繊維状バイオマスなどのバイオマスは、その形状のため、連続式爆砕部13で爆砕されずに摩砕部20に投入されると、繊維状バイオマスが絡まって摩砕部20で詰まってしまうおそれがある。一方、本実施形態に係る固体燃料製造システム1では、バイオマスが連続式爆砕部13で爆砕されるため、バイオマスが微細化される。そのため、繊維状バイオマスのようなバイオマスであっても摩砕部20で詰まるのを抑制することができる。
【0048】
摩砕部20は、連続式爆砕部13で爆砕されたリグノセルロースバイオマスを摩砕する。摩砕部20でバイオマスを摩砕することにより、リグノセルロースバイオマスの維管束及び柔組織を破壊してスラリー状にし、脱水部12においてバイオマスの脱水効率を向上させることができる。また、摩砕部20による摩砕によって灰分及び糖分の除去液への抽出を促進することができる。
【0049】
摩砕部20は、連続式爆砕部13で爆砕されたリグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去してもよい。摩砕部20では、除去部11と同様に、固体燃料を成形する前に灰分をバイオマスから除去することにより、灰分の少ない固体燃料を製造することができる。摩砕部20では、バイオマスが摩砕されて微細化されているため、灰分を効率的に除去することができる。除去液は、上述したように、水道水、地下水、河川水、湖水又は純水などの淡水であってもよい。また、摩砕部20では、バイオマスの樹液に含まれている糖分を、浸透圧によって除去液に抽出することもできる。除去液の温度は5℃以上80℃以下であってもよい。摩砕部20は、加熱部18で生成された温水を、除去液として利用してもよい。
【0050】
摩砕部20は、石臼式摩砕機を含んでいてもよい。石臼式摩砕機を用いることにより、バイオマスを微細に摩砕することができる。石臼式摩砕機は、上部グラインダと、下部グラインダとを含んでいてもよい。上部グラインダと下部グラインダとはクリアランスを挟んで対向して配置されており、上部グラインダ及び下部グラインダのいずれか一方は回転可能に設けられていてもよい。上部グラインダ及び下部グラインダは中央部に開口部を有した円環形状をしていてもよい。バイオマスが円環中央の開口部から供給されると、バイオマスは上部グラインダ及び下部グラインダのいずれか一方の回転によってクリアランス内で摩砕されながら、円環の外周縁側から摩砕物として排出されてもよい。クリアランスは、50μm以上1000μm以下であってもよい。
【0051】
摩砕部20は湿式摩砕機を含んでいてもよく、乾式摩砕機を含んでいてもよい。なお、摩砕部20が湿式摩砕機である場合、バイオマスと除去液の混合物を摩砕することにより、バイオマスを摩砕によって微細化するとともに除去液によって灰分を除去し、糖分を回収することができる。摩砕部20が湿式摩砕機である場合、バイオマスに対する除去液の添加量は質量比で0.1以上10以下であってもよい。また、摩砕部20は、連続式摩砕機であってもよく、バッチ式摩砕機であってもよい。
【0052】
脱水部12では、上記実施形態と同様に、固形分であるバイオマスと、灰分及び糖分を含む液体分である除去液とが分離される。脱水部12は、ロータリースクリーン、遠心分離機、スクリュープレス及びフィルタープレスからなる群より選択される少なくとも1種の分離機を含んでいてもよい。固形分であるバイオマスは乾燥部14に供給され、液体分である除去液はバイオリアクタ16に供給される。
【0053】
乾燥部14は連続式爆砕部13で爆砕され、かつ、摩砕部20で摩砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する。成形部15は乾燥部14で乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する。
【0054】
以上説明した通り、本実施形態に係る固体燃料製造システム1及び固体燃料製造方法によれば、繊維状のバイオマスを含む原料を用いた場合であっても、強固な固体燃料を成形することができる。また、バイオマスが爆砕されるため、繊維状バイオマスのようなバイオマスであっても摩砕部20で詰まるのを抑制することができる。
【0055】
(第3実施形態)
次に、第3実施形態に係る固体燃料製造システム1及び固体燃料製造方法について図3を用いて説明する。図3に示すように、本実施形態に係る固体燃料製造システム1は、除去部11と連続式爆砕部13の配置が異なっている点において第2実施形態と大きく異なっている。これ以外の点については、特に言及がなければ第2実施形態と同様であるため説明を省略している。
【0056】
本実施形態では、まず、連続式爆砕部13が、上記実施形態と同様に、リグノセルロースバイオマスに含まれる水分でリグノセルロースバイオマスを爆砕する。次に、連続式爆砕部13で爆砕されたバイオマスは、除去部11に供給される。
【0057】
除去部11は、連続式爆砕部13で爆砕されたリグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する。この点を除き、本実施形態に係る除去部11は、上記実施形態と同様のため説明を省略する。
【0058】
摩砕部20は連続式爆砕部13で爆砕され、かつ、除去部11で灰分が除去されたリグノセルロースバイオマスを摩砕する。摩砕部20は、連続式爆砕部13で爆砕されたバイオマス中の灰分を除去液で除去する。乾燥部14は連続式爆砕部13で爆砕され、かつ、摩砕部20で摩砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する。成形部15は乾燥部14で乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する。
【0059】
本実施形態に係る固体燃料製造システム1及び固体燃料製造方法によれば、繊維状のバイオマスを含む原料を用いた場合であっても、固体燃料を成形することができる。また、バイオマスが爆砕されるため、繊維状バイオマスのようなバイオマスであっても摩砕部20で詰まるのを抑制することができる。さらに、固体燃料製造システム1は、連続式爆砕部13でバイオマスを爆砕してから連続浸漬するため、バイオマスと除去液との接触面積を増やし、灰分の除去効率を向上させることができる。
【0060】
(第4実施形態)
次に、第4実施形態に係る固体燃料製造システム1及び固体燃料製造方法について図4を用いて説明する。図4に示すように、本実施形態に係る固体燃料製造システム1は、回収部21をさらに備えている点において第3実施形態と大きく異なっている。これ以外の点については、特に言及がなければ第3実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0061】
連続式爆砕部13は、リグノセルロースバイオマスに含まれる水分でリグノセルロースバイオマスを爆砕する。連続式爆砕部13で爆砕されたバイオマスは除去部11に供給される。回収部21は、除去部11で得られた除去水、及び、脱水部12で得られた除去水の少なくともいずれか一方の除去液からパームオイルを回収する。
【0062】
回収部21は、連続式爆砕部13で爆砕されたリグノセルロースバイオマスからパームオイルを回収する。回収部21は、デカンタ型三相遠心分離機のような遠心分離機を備えていてもよい。三相遠心分離機によれば、バイオマスの浸漬によって得られた浸漬液を、固形分、パームオイルを含む軽液及び軽液よりも重く、糖分を含む重液の三相に分離することができる。重液は、バイオリアクタ16へ供給され、メタン発酵の原料として用いることができる。
【0063】
特に、バイオマスがオイルパームの中果皮繊維を含む場合、搾汁後の中果皮繊維であっても、爆砕によって繊維が破壊され、パームオイルが繊維の内部から表面へ遊離するのが促進される。そのため、遊離したパームオイルを回収することで、原料当たりのパームオイル回収量を向上させることができる。中果皮繊維:水=1:3の質量比で爆砕前後の中果皮繊維を水に浸漬させたところ、表1に示すように、爆砕後の中果皮繊維の方が、爆砕前の中果皮繊維よりもパームオイルの回収量が多いことが確認できた。なお、表1中、TCODはTotal Chemical Oxygen Demandを意味し、SCODはSoluble Chemical Oxygen Demandを意味する。
【0064】
【表1】
【0065】
以上の通り、本実施形態に係る固体燃料製造システム1及び固体燃料製造方法によれば、固体燃料の成形に加え、これまで回収が難しかった搾汁後の中果皮繊維からオイルパームをさらに回収することができる。
【0066】
以上、第1から第4実施形態によって固体燃料製造システム1及び固体燃料製造方法について説明した。すなわち、本実施形態に係る固体燃料製造システム1は、リグノセルロースバイオマスに含まれる水分でリグノセルロースバイオマスを爆砕する連続式爆砕部13と、連続式爆砕部13で爆砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する乾燥部14とを備えている。固体燃料製造システム1は、乾燥部14で乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する成形部15を備えている。
【0067】
また、本実施形態に係る固体燃料製造方法は、リグノセルロースバイオマスに含まれる水分でリグノセルロースバイオマスを連続式爆砕部13によって爆砕する爆砕工程と、爆砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する乾燥工程とを含んでいる。上記方法は、乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する成形工程を含んでいる。
【0068】
本実施形態に係る固体燃料製造システム1及び固体燃料製造方法では、爆砕によってバイオマスが微細化され、爆砕による反応によってバイオマス同士の接着性も向上する。そのため、水分含有率が5質量%以下になるまでバイオマスを乾燥させなくてもよい。そのため、繊維状のバイオマスを含む原料を用いた場合であっても、強固な固体燃料を成形することができる。
【0069】
また、固体燃料製造システム1は、最大寸法2~3mm程度のチップ状に破砕することで、繊維状のバイオマスだけでなく、パーム古木のようなチップ状のバイオマスも固体燃料の原料とすることができる。そのため、固体燃料製造システム1を用いることにより、繊維状バイオマス又はチップ状バイオマスに特化した仕様に変更しなくても、強固な固体燃料を成形することができる。すなわち、固体燃料製造システム1は、繊維状バイオマスだけでなく、チップ状バイオマス、並びに繊維状バイオマス及びチップ状バイオマスを混合したバイオマスであっても強固な固体燃料を成形することができる。これにより、固体燃料を効率的に製造することができ、廃棄される予定であった生物資源の有効活用を促進することができる。
【実施例
【0070】
以下、本実施形態を実施例及び比較例によりさらに詳細に説明するが、本実施形態はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0071】
(実施例1)
第1実施形態と同様の構成により固体燃料を作製した。具体的には、まず、破砕及び搾油した繊維状のパーム空果房を水に浸漬させた。次に、パーム空果房を脱水処理し、脱水処理したパーム空果房を、モリマシナリー株式会社のエクストルーダB55で連続爆砕させた。エクストルーダの出口ゲートの開口部は100%オープンにし、インバータ制御を50Hzとした。次に、連続爆砕したバイオマスを水分含有率が12質量%~15質量%の範囲内となるように乾燥させた。次に、乾燥させたバイオマスをペレットに成形した。
【0072】
(実施例2)
第2実施形態と同様の構成により固体燃料を作製した。具体的には、まず、破砕及び搾油した繊維状のパーム空果房を水に浸漬させた。次に、浸漬したパーム空果房を取出し、取出したパーム空果房を、実施例1と同様の条件で連続爆砕させた。次に、連続爆砕させたバイオマスと水とを混合し、混合物を増幸産業株式会社の石臼式摩砕機であるスーパーマスコロイダーを用いて摩砕した。次に、摩砕したバイオマスを水分含有率が50質量%となるように脱水し、得られた固形分を実施例1と同様の条件で乾燥し、ペレットに成形した。
【0073】
(実施例3)
第3実施形態と同様の構成により固体燃料を作製した。具体的には、まず、破砕及び搾油した繊維状のパーム空果房を実施例1と同様の条件で連続爆砕させた。次に、連続爆砕させたバイオマスを実施例1と同様の条件で水に浸漬させた後、実施例2と同様の条件で摩砕した。次に、摩砕したバイオマスを水分含有率が50質量%となるように脱水し、得られた固形分を実施例1と同様の条件で乾燥し、ペレットに成形した。
【0074】
(比較例1)
破砕及び搾油した繊維状のパーム空果房を実施例1と同様の条件で浸漬及び脱水した。次に、脱水したバイオマスを水分含有率が5質量%以下となるように乾燥させ、乾燥させたバイオマスをファイバーカッタで切断した。次に、切断したバイオマスを水分含有率が12質量%~15質量%となるように加湿し、加湿したバイオマスを実施例1と同様の条件でペレットに成形した。
【0075】
(評価)
(L/D比)
ペレットの成形に適した金型のL/D比(直径に対する長さの比)を評価した。
【0076】
(嵩密度)
ペレットをL/D比6の金型で成形した場合の嵩密度を測定した。
【0077】
(耐久性)
成形したペレットを容器に密閉し、ペレット同士が衝突するように所定の回転速度で所定時間容器を回転させた。その後、ペレットを容器から取り出し、粉砕されていないペレットの質量を測定した。そして、容器に供給する前のペレットの質量に対する粉砕されていないペレットの質量の割合を算出し、耐久性とした。
【0078】
(歩留まり)
原料の投入量とペレットの生産量から歩留まりを評価した。
【0079】
(ペレタイザの消費電力)
ペレタイザの消費電力を比較例1と比較して評価した。
【0080】
(乾燥エネルギー)
バイオマスの乾燥に使用された乾燥エネルギーを比較例1と比較して評価した。
【0081】
(カリウム含有率)
ペレット中のカリウムの含有率(質量比)を評価した。
【0082】
【表2】
【0083】
表2に示すように、実施例1~実施例3の方法では、比較例1と比べ、最適な金型のL/D比が低減し、嵩密度も向上させることができた。この結果から、実施例1~実施例3の方法によって、ペレットの成形性が向上したことが分かる。また、実施例1~実施例3の方法では、ペレットの成形性が向上したことに伴い、耐久性、歩留まり及びペレタイザの消費電力も向上した。さらに、実施例1~実施例3では、バイオマスを爆砕したため、5質量%以下の水分含有率まで乾燥させる必要がなくなった。そのため、実施例1~実施例3の方法では、比較例1と比べ、乾燥エネルギーを約20質量%低減させることができた。さらに、実施例2及び実施例3では、バイオマスを浸漬するだけでなく、湿式摩砕によって灰分を除去している。そのため、ペレットのカリウム含有率を質量比で500ppm以下に低減することができた。また、実施例3は実施例2と比較し、ペレットのL/D比を低減することができたため、ペレタイザの消費電力をさらに低減することができた。
【0084】
なお、オイルパームの剪定枝葉及びオイルパームの中果皮繊維についても実施例3と同様の方法でペレットを成形したが、パーム空果房と同様にペレットを成形することができた。
【0085】
マレーシア特許出願番号PI2021003802(出願日:2021年7月2日)の全内容は、ここに援用される。
【0086】
いくつかの実施形態を説明したが、上記開示内容に基づいて実施形態の修正または変形をすることが可能である。上記実施形態のすべての構成要素、及び請求の範囲に記載されたすべての特徴は、それらが互いに矛盾しない限り、個々に抜き出して組み合わせてもよい。
【0087】
本開示は、例えば、国際連合が主導する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12『持続可能な生産消費形態を確保する』、目標13『気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる』、目標15『陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処並びに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する』及び目標17『持続可能な開発のための実施形態を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する』に貢献することができる。
【符号の説明】
【0088】
1 固体燃料製造システム
11 除去部
13 連続式爆砕部
14 乾燥部
15 成形部
20 摩砕部
21 回収部
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2022-12-05
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リグノセルロースバイオマスに含まれる水分で前記リグノセルロースバイオマスを爆砕する連続式爆砕部と、
前記連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する乾燥部と、
前記乾燥部で乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する成形部と、
を備える、固体燃料製造システム。
【請求項2】
前記連続式爆砕部はエクストルーダを含む、請求項1に記載の固体燃料製造システム。
【請求項3】
前記リグノセルロースバイオマスは繊維状バイオマスを含む、請求項1又は2に記載の固体燃料製造システム。
【請求項4】
前記リグノセルロースバイオマスは、オイルパームのパーム空果房、オイルパームの剪定枝葉及びオイルパームの中果皮繊維からなる群より選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の固体燃料製造システム。
【請求項5】
前記連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマスを摩砕する摩砕部をさらに備え、
前記乾燥部は前記連続式爆砕部で爆砕され、かつ、前記摩砕部で摩砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する、請求項1又は2に記載の固体燃料製造システム。
【請求項6】
前記摩砕部は石臼式摩砕機を含む、請求項5に記載の固体燃料製造システム。
【請求項7】
前記摩砕部は湿式摩砕機を含む、請求項に記載の固体燃料製造システム。
【請求項8】
前記摩砕部は前記連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する、請求項に記載の固体燃料製造システム。
【請求項9】
前記連続式爆砕部で爆砕されたリグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する除去部をさらに備え、
前記摩砕部は前記連続式爆砕部で爆砕され、かつ、前記除去部で灰分が除去されたリグノセルロースバイオマスを摩砕し、
前記乾燥部は前記連続式爆砕部で爆砕され、かつ、前記摩砕部で摩砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する、請求項に記載の固体燃料製造システム。
【請求項10】
前記リグノセルロースバイオマス中の灰分を、水を含む除去液で除去する除去部をさらに備え、前記連続式爆砕部は前記除去部で灰分が除去されたリグノセルロースバイオマスを爆砕する、請求項1又は2に記載の固体燃料製造システム。
【請求項11】
前記連続式爆砕部で爆砕された前記リグノセルロースバイオマスからパームオイルを回収する回収部をさらに備える、請求項1又は2に記載の固体燃料製造システム。
【請求項12】
リグノセルロースバイオマスに含まれる水分で前記リグノセルロースバイオマスを連続式爆砕部によって爆砕する爆砕工程と、
前記爆砕されたリグノセルロースバイオマスを乾燥する乾燥工程と、
前記乾燥されたリグノセルロースバイオマスを固体燃料に成形する成形工程と、
を含む、固体燃料製造方法。
【国際調査報告】